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1962-09-03 第41回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年九月三日(月曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   委員の異動  九月三日   辞任      補欠選任    小柳  勇君  大和 与一君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鈴木  壽君    理事            岡村文四郎君            佐藤 芳男君            仲原 善一君            横山 フク君            相澤 重明君            大森 創造君    委員            川野 三暁君            上林 忠次君            久保 勘一君            鈴木 恭一君            園木  登君            野知 浩之君            二木 謙吾君            谷村 貞治君            北村  暢君            佐野 芳雄君            武内 五郎君            横川 正市君            中尾 辰義君            高山 恒雄君            奥 むめお君            林   塩君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    大蔵政務次官  竹内 俊吉君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    大蔵省管財局長 白石 正雄君    大蔵省銀行局長 大月  高君    会計検査院事務    総局第一局長  秋山 昌平君    会計検査院事務    総局第五局長  白木 康進君   参考人    国民金融公庫総    裁       石田  正君    国民金融公庫総    務部長     内田 勇夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計歳入歳出決  算(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度特別会計歳入歳出決  算(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度国税収納金整理資金  受払計算書(第四十回国会内閣提  出) ○昭和三十五年度政府関係機関決算書  (第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度物品増減及び現在額  総計算書(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度国有財産増減及び現  在額総計算書(第四十回国会内閣提  出) ○昭和三十五年度国有財産無償貸付状  況総計算書(第四十回国会内閣提出)   —————————————
  2. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和三十五年度決算外三件を議題とし、審査を進めます。  本日は、大蔵省の部でございます。  なお、本日は、国民金融公庫決算をあわせて審査いたすことになっておりますので、公庫側より石田総裁荒川経理部長ら関係者参考人として出席いたしておりますので、その点お含みおき願います。  それでは、まず大蔵省関係決算につきまして説明を求めます。
  3. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 昭和三十五年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び政府関係機関収入支出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、一般会計歳入決算について申し述べます。  三十五年度歳入決算額は一兆八千七百五十億一千八百万円余でありまして、歳入予算額に比較いたしますと千八百九十一億一千三百万円余の増加となっております。  以下、各部について簡単に申し上げますと、  第一に、租税及び印紙収入決算額は一兆五千七百五十五億八千六百万円余で、予算額に比し九百十四億一千七百万円余の増加となっております。収入増加のおもな理由は、賃金水準の上昇により給与所得予定より増加し、経済界の好況を反映し法人税及び申告所得税において企業所得増加したほか、申告所得税における配当、不動産等資産所得予定より増加したこと、酒税、砂糖消費税揮発油税及び物品税においては堅調な消費需要を反映し課税数量及び価額が予定より増加したこと、並びに関税において機械類金属等有税品目の輸入が予定より増加したこと等によるものであります。  第二に、専売納付金について申し上げますと、日本専売公社納付金決算額は千四百六十四億九千四百万円余で、予算額に比し六十六億二千八百万円余の増加となっております。これは、たばこ販売促進の結果、販売数量増加したほか、上級品への消費移行があったため、たばこ事業の純利益増加したことによるものであります。  第三に、官業益金及び官業収入でありますが、印刷局特別会計受入金決算額は八億八千八百万円余で、予算額に比し一億六千五百万円余の増加となっております。これは、損益計算上の利益予定より多かったためであります。  第四に、政府資産整理収入決算額は二百九億八千万円余で、予算額に比し三十四億六千三百万円余の増加となっております。  これは、土地、建物、工作物等国有財産売払収入予定より増加したほか、道路整備特別会計に引き継いだ地方債証券一般会計に移管されたことによりその償還収入予定より増加したこと等によるものであります。  第五に、雑収入でありますが、その決算額は二百八十八億九千五百万円余で、予算額に比し二十億八千五百万円余の増加となっております。雑収入増加のおもなものは、国有財産貸付収入利子収入共有船舶利用収入等増加であります。  第六に、前年度剰余金受け入れ決算額は千二十一億七千三百万円余で、予算額に比し八百五十三億五千二百万円余の増加となっております。この理由は、前年度剰余金受け入れ予算計上の際は、例年の方式として、前々年度決算によって生じた純剰余金のうち、前年度歳入予算に未計上金額相当額を一応計上するにとどめているのに対して、決算上においては、前年度に生じた剰余金全額含まれてくることとなるためであります。  次に、一般会計歳出決算について御説明いたします。  本年度歳出予算現額は千五百十三億二千七百万円余でありまして、支出済歳出額は千四百七十九億千四百万円余、翌年度繰り越した額は二十二億千六百万円余でありまして、差引不用額は十一億九千六百万円余となっております。  以下、大蔵省所管経費のうち、おもなものにつきまして、支出概要を申し述べます。  まず第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計繰り入れるため二百六十四億六千万円余を支出いたしましたが、これは一般会計負担に属する国債償還及び利払い財源並びにそれらの事務取扱費に充てるためのものであります。このうち、国債償還財源につきましては、昭和二十八年度から昭和三十五年度まで各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律に基づきまして、国債整理基金特別会計法第二条第二項の規定を適用せず、財政法第六条の規定により前々年度決算上の剰余金の二分の一相当額繰り入れたものでありまして、その金額は七十八億五千四百万円余となっており、また国債利子支払い財源として繰り入れ金額は百八十四億七千七百万円余となっております。  次に、以上の国債費に関連して、一般会計負担に属する国債状況について申し上げます。  本年度首の未償還現在額は、内国債約四千五百四十五億円、外貨債邦貨換算額にして約七百九億円でありましたが、内国債につきましては、本年度において国際開発協会に対する通貨代用国庫債券による出資により約二十二億円、遺族及び引揚者に対する国庫債権交付並びに満期到来国債の借りかえ発行等により約六百八十七億円、計七百九億円が増加した一方、遺族及び引揚者国庫債券年賦償還並びに満期到来国債償還等により、約八百二十四億円が減少いたしましたので、年度末現在額は約四千四百三十億円となっております。外貨債につきましては、本年度に約七十六億円を償還いたしましたので、年度末現在額は約六百三十三億円となっております。  なお、国債利子につきましては、内国債利子、約百十七億円、外貨債利子約六十六億円、計約百八十五億円となっております。  以上の結果、この経費において、国債利子支払い予定に達しなかったこと及び大蔵省証券発行がなかったので割引差額を要しなかったこと等により九億四千六百万円余が不用となりました。この不用額が、当初申し述べました大蔵省所管一般会計歳出不用額のおもなものとなっております。  第二に、防衛支出金につきましては、大蔵省所管経費といたしまして、日米相互防衛援助協定第七条に基づく合衆国軍事援助顧問団経費として三億六千六百万円余を支出いたしました。この経費は、軍事援助顧問団交付金並びに日本住宅公団交付する顧問団員住宅管理費でありまして、軍事援助顧問団交付金の使途につきましては、日米間に合意された経理手続に従いまして、軍事援助顧問団から報告されており、事務費労務費住宅費及び移動訓練隊費等に支払われております。  以上の支出済額のほか、防衛支出金につきましては、駐留米軍施設予定区域の変更により、補償、買収等の折衝に不測の日数を要したこと等により十五億九千百万円余が年度内に支出未済となっておりますが、この金額は、財政法第十四条の三第一項の規定により、あらかじめ国会の議決を経、これに基づいて翌年度繰り越しました。この繰越金額が、当初申し述べました大蔵省所管一般会計歳出繰越額の大部分を占めております。  第三に、賠償等特殊債務処理費につきましては、賠償等特殊債務処理特別会計法に基づく旧連合国に対する賠償支払い及び特殊債務処理に充てるための財源をこの会計繰り入れるため、三百八億二千三百万円余を支出いたしております。同会計においては、この繰入財源をもって、ビルマ、フィリピン、インドネシア及びヴェトナムの四カ国に対する賠償費二百二十九億七千万円余のほか、ラオス及びカンボジアの両国に対する経済協力費三千三百万円余及びその他の特殊債務処理費八十二億六千七百万円余の支払いが行なわれました。  第四に、政府出資金につきましては二十二億二千万円を支出いたしましたが、その内訳は、理化学研究所に対しまして、研究設備近代化をはかるとともに、四研究室増設その他に充てるために五億二千万円、農林漁業金融公庫に対しまして、造林事業に対する長期低利融資を行なう資金に充てるため七億円、また、本年度に新たに設立されました医療金融公庫に対しまして、私的医療機関の適正な整備及び機能の強化をはかるための長期低利融資を行なう資金に充てるため十億円を、それぞれ支出いたしました。  第五に、国際開発協会出資金につきましては、国際復興開発銀行開発目的を促進し、その活動を補完し、低開発地域経済開発を促進するために、新たに国際開発協会が設立されましたので、わが国もこれに加盟するための出資として必要な経費であります。本年度においては、わが国出資引受総額の二三%に相当する二十七億八千百万円余を出資したのでありますが、そのうち、現金による出資金額は六億四百万円余であり、残額の二十一億七千六百万円余は通貨代用国庫債券をもって出資いたしました。  第六に、産業投資特別会計への繰り入れとして百二十億円を支出しましたが、この金額は、本年度の同特別会計産業投資支出追加財源に充てるためのものであります。  第七に、産業投資特別会計資金への繰り入れとして三百五十億円を支出いたしました。この金額は、同会計原資を補完し、将来にわたる出資需要の増大に対処するとともに、今後の産業投資経済情勢等に応じて円滑、かつ、弾力的に行ない得るようにしたものであります。  第八に、公務員宿舎施設費につきましては、国家公務員のための国設宿舎を設置するため十四億二千万円余を支出いたしました。公務員宿舎につきましては、その不足の状況にかんがみ、逐年その増設をはかっているのでありますが、以上の支出によりまして、本年度三千八十五戸を新たに設置いたしました。この結果、本年度末における公務員宿舎施設費による設置戸数累計は三万千七百四十七戸となりましたが、これによりましても、なお、公務員の必要とする戸数に対しまして、その充足率は約五四・四%にとどまっている状況であります。なお、公務員宿舎施設費につきましては、敷地の選定、その他工事の関係から支出が翌年度に繰り越されるものがありましたので、以上の支出のほか、五百九戸分三億四千万円余が支出未済繰り越しとなっております。  以上申し述べましたおもな経費のほか、旧令共済組合等年金交付その他経費として、国家公務員共済組合連合会等補助及交付金の項から二十二億五百万円余、日本国有鉄道日本電信電話公社及び資金運用部特別会計国庫預託金に対する利子として、国庫受入預託金利子の項から十四億二千八百万円余、内国税過誤納金の払い戻し及び青色申告制度に基づく還付金に対する加算金として、租税還付加算金の項から十億九千七百万円余を支出いたしました。  なお、大蔵省所管一般行政処理する等のための経費といたしましては、大蔵本省において十九億七千四百万円余、財務局において三十億三千九百万円余、税関において二十七億四千百万円余、国税庁において、いわゆる徴税費として二百六十五億千六百万円余、計三百四十二億七千万円余を支出いたしましたが、この経費のおもなものは、人件費及び事務費でありまして、人件費の占める割合は約七五%であります。  なお、徴税費について、その支出額を、国税庁において取り扱った租税及び印紙収入収納済額と比較いたしますと、徴税費コストは一・八一%となっております。  次に、各特別会計決算につきまして、それぞれの会計事業実績等を主として、簡単に御説明いたします。  まず第一に、造幣局特別会計につきましては、この会計の主たる事業である補助貨幣製造について申し述べますと、百円銀貨幣外四種の補助貨幣を六億二千百五十万枚、額面金額にして七十七億八千三百五十万円を製造し、その全額補助貨幣として発行いたしました。この結果、本年度末における補助貨幣発行高は六百六十一億四千六百万円余となっております。  第二に、印刷局特別会計につきましては、この会計の主たる事業である日本銀行券製造について申し述べますと、一万円券外四種の日本銀行券を七億六千八百万枚、額面金額にして一兆六百七十八億円を製造いたしまして、その全量を日本銀行に引き渡しております。  なお、経済の成長及び経済活動の拡大に伴いまして、通貨流通高が逐年著しく増加しておりますので、日本銀行券補助貨幣製造につきましては、相互に調整をはかりながら、これに対処いたして参りました。  第三に、資金運用部特別会計につきましては、その資金運用及び資金調達実績について申し述べます。  新規運用額は三千四百七十四億円でありまして、当初の計画に対しまして五十八億円の増加となっております。その内訳は、特別会計政府関係機関地方公共団体等への貸付または債券引き受け等となっており、この原資は、郵便貯金厚生保険等預託金増加額二千九百三十一億円及び既運用資金回収等五百四十三億円であります。  なお、運用が当初の計画より増加いたしましたが、この追加運用の内容につきましては、特に中小企業への年末金融対策及び災害復旧対策等につきまして意を用いた次第であります。  第四に、国債整理基金特別会計につきましては、収納済歳入額は五千百九十二億六千万円余、支出済歳出額は四千八百三十六億六千二百万円余であります。  収納済歳入額のおもなものは、一般会計及び特別会計からの国債借入金及び短期証券償還並びに利子等支払基金受け入れとして四千三十三億二千六百万円余、満期到来内国債のうち一部を借りかえ償還するための公債発行収入として六百十六億四千四百万円余、前年度以前における国債既償還未払い及び利払い期到来分利子未払い等による前年度剰余金受け入れとして五百二十一億六千二百万円余となっております。  支出済歳出額のおもなものは、国債借入金及び短期証券償還として四千二百四十五億六千九百万円余、国債借入金利子及び短期証券割引差額として五百八十九億九百万円余となっております。  なお、以上の支出済歳出額収納済歳入額から差し引いた残額は、国債既償還未払い及び利払い期到来分利子未払い等によるものでありまして、それぞれ翌年度繰り越しております。  第五に、貴金属特別会計につきましては、金管理法に基づきまして、新産金の百分の五を政府が買い上げることになっておりますので、金地金を四百六十三キログラム余、金額にして一億八千七百万円余この会計において買い上げており、これに要する資金は、前年度剰余金受け入れ及びこの会計保有銀地金を売却して調達いたしております。  なお、この会計が保有している金地金は、本年度末現在二十四トン三百十七キログラム余となっております。  第六に、外国為替資金特別会計につきましては、収納済歳入額百五十八億六百万円余、支出済歳出額百五十四億三千八百万円余であります。  収納済歳入額のおもなものは、保有外貨資産運用収入として百五十二億三千百万円余であります。  支出済歳出額のおもなものは、国債整理基金特別会計への繰り入れ百五十三億四千七百万円余となっております。  なお、この年度国際収支状況は好調に推移し、六億七百万ドルの受取超過となっております。  第七に、産業投資特別会計につきましては、石油資源開発株式会社外国社日本輸出入銀行外政府関係機関及び日本住宅公団等の三機関に対し四百三億円を出資いたしましたが、これは計画に対して七億円の減少となっております。減少いたしました七億円は、日本海外移住振興株式会社外一社に対するものであります。  以上の結果、この会計における本年度末現在の出資額は四千七百十六億円余、優先株式引受額は七億円余、貸付額は六百八十七億円余となっております。  第八に、経済援助資金特別会計につきましては、わが国工業力強化のための資金として日本航空機製造株式会社へ七億五千万円を出資いたしました。  その結果、本年度末現在におけるこの会計からの投資残高は、日本開発銀行への貸付額約二十億四千二百万円、日本航空機製造株式会社への出資金十億五千万円となっております。  なお、これら投融資のためのこの会計原資は、農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定及び経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づき日本国に贈与された資金をこの会計受け入れたもので、その贈与受入額は約三十三億九千万円であります。  第九に、余剰農産物資金融通特別会計につきましては、農地の開発等のため、愛知用水公団へ四十五億円、地方公共団体へ五千百万円余の貸付を行ないました。  その結果、本年度末現在におけるこの会計貸付残高は約四百十六億円となっております。  なお、この会計原資として、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づいて借り入れた資金は約三百七十八億円であります。  第十に、賠償等特殊債務処理特別会計につきましては、一般会計歳出の部において概要を申し述べましたので、説明を省略させていただきます。  第十一に、国有財産特殊整理資金特別会計につきましては、近畿電波監理局神戸出張所外八官署の庁舎等の売り払い及び前年度剰余金等により九千四百万円余の収入がありましたが、本年度においては資金を効率的に使用するため、全額年度繰り越しをいたしました。  以上が、各特別会計事業実績等概要でございます。各会計決算上の計数につきましては、さきに提出いたしました三十五年度決算書及び決算説明によって御承知いただきたいと存じます。  最後に、大蔵省関係の各政府関係機関決算につきまして、それぞれの機関事業実績等を主として、簡単に御説明いたします。  まず第一に、国民金融公庫につきましては、資金運用部特別会計からの借入金二百四十五億円及び簡易生命保険及郵便年金特別会計からの借入金百億円並びに貸付回収金等により、件数にして約五十四万件、金額にして約千百五億円の貸付を行ないました。  この貸付金額を当初の予定に比較いたしますと、約六十五億円の増加となっております。増加いたしましたおもな理由は、中小企業者に対する年末金融融資のため年度中に政府資金追加があったこと並びに貸付回収金等予定より増加したことによるものであります。  この結果、との公庫における本年度末の貸付残高は、件数にして約百二十七万四千件、金額にして約千百八十五億円となっております。  第二に、住宅金融公庫につきましては、産業投資特別会計からの出資金五十億円、資金運用部特別会計からの借入金百八十七億円及び簡易生命保険及郵便年金特別会計からの借入金百二十三億円並びに貸付回収金等自己資金をもって、住宅建設及び宅地造成のための貸付を行ないましたが、本年度中の貸付契約実績は、住宅建設約十万四千尺、金額にして約四百三十一億円及び宅地造成約九十五万坪、金額にして約二十六億円となっております。  この結果、この公庫における本年度末の貸付残高は、口数にして約五十五万四千口、金額にして約二千九十八億円でありまして、この公庫創設以来の住宅貸付の総契約戸数は、約八十二万戸となっております。  第三に、農林漁業金融公庫につきましては、一般会計からの出資金七億円及び産業投資特別会計からの出資金七十億円、資金運用部特別会計からの借入金九十九億円及び簡易生命保険及郵便年金特別会計からの借入金百三十億円並びに貸付回収金等自己資金をもって農林漁業者に対する貸付を行ないましたが、本年度貸付決定実績は、件数にして約十二万三千件、金額にして約五百二十一億円となっております。この貸付決定額を、当初の予定に比較いたしますと、約四億円の増加となっております。これは、伊勢湾台風災害対策としての融資決定額繰り越しがあったことによるものであります。  この結果、この公庫における本年度末の貸付残高は、件数こして約四十八万二千件、金額にして約二千五十五億円となっております。  第四に、中小企業金融公庫につきましては、資金運用部特別会計からの借入金二百六十億円及び簡易生命保険及郵便年金特別会計からの借入金百億円並びに貸付回収金等自己資金をもって中小企業者に対する貸付を行ないましたが、本年度中の貸付実績は、件数にして約二万六千件、金額にして約七百六十五億円となっております。この貸付額は、当初の予定に比較しまして、約五十億円の増加となっております。この増加いたしましたおもな理由は、中小企業者に対する年末金融融資のため、年度中に政府資金追加が行なわれたためであります。  この結果、この公庫における本年度末の貸付残高は、件数にして約八万七千件、金額にして約千四百九十三億円となっております。  第五に、北海道東北開発公庫につきましては、資金運用部特別会計からの借入金五十億円及び北海道東北開発単券発行による収入金五十九億円のほか、貸付回収金等自己資金をもって、北海道及び東北地方産業振興開発を促進する事業に対し、百五十九億円の投融資を行ないました。  この結果、この公庫における本年度末の貸付残高は、件数にして五百七十四件、金額にして約五百二十八億円、出資残高は、件数にして十件、金額にして四億円となっております。  第六に、公営企業金融公庫につきましては、産業投資特別会計からの出資金三億円及び公営企業債券発行による収入金約百三十三億円のほか、貸付回収金等自己資金をもって、地方公共団体公営企業に対し、件数にして六百六十七件、金額にして約百四十三億円の貸付を行ないました。  この結果、この公庫における本年度末の貸付残高は、件数にして二千一件、金額にして約三百九十四億円となっおてります。  なお、このほか、公営企業金融公庫は、農林漁業金融公庫の委託を受けて、地方公共団体の行なう造林事業に対し、本年度に百三十五件、約二億円の融資を行なっております。  第七に、中小企業信用保険公庫につきましては、産業投資特別会計から十八億円の出資を受けましたが、本年度における業務実績は、保険業務におきましては、件数にして約三十七万七千件、金額にして約千四百二十一億円の保険の引き受けを行ない、また、貸付業務におきましては、信用保証協会に対し、約四十三億円の貸付を行ないました。  この結果、この公庫の本年度末の付保残高は、件数にして約四十三万六千件、金額にして約千七百十六億円となっており、また貸付残高は、件数にして三百四十三件、金額にして約六十八億円となっております。  第八に、この年度新たに設立された医療金融公庫につきましては、一般会計からの出資金十億円及び資金運用部特別会計からの借入金二十億円の資金をもって、私的医療機関に対する貸付を行ないましたが、本年度中の貸付実績は、件数にして千二百三十件、金額にして約二十九億円となっております。  第九に、日本開発銀行につきましては、資金運用部特別会計からの借入金四百三十億円及び貸付回収金等自己資金により、約六百五十二億円の貸付を行ないました。その内訳は、電力約二百十一億円、海運約百三十一億円、その他一般産業約三百十億円となっております。  このほか、この銀行がいわゆる世銀借款の窓口として受け入れた外貨を貸し付けたものは、約二百十八億円となっております。  これらの結果、この銀行の本年度末の貸付残高は、件数にして二千三百六十二件、金額にして約五千四百四十億円となっており、その内訳は、電力約二千七百七十五億円、海運約千六百九十七億円、その他約九百六十八億円となっております。このほか、外貨貸付金は、件数にして二十一件、金額にして約九百七十六億円となっております。  なお、この銀行がその利益を国庫に納付した金額は約百三十一億円に上り、産業投資特別会計の主要な財源となっております。  第十に、日本輸出入銀行につきましては、産業投資特別会計からの出資金百三十五億円、資金運用部特別会計からの借入金三百八十六億円及び貸付回収金等自己資金により、約八百四十五億円の貸付を行ないました。その内訳は、輸出金融約七百五十三億円、輸入金融約五億円、投資金融約八十七億円となっております。  この貸付額を、当初の予定に比較いたしますと、約百二十五億円の増加となっております。そのおもな理由は、船舶輸出の貸付が大幅に増加したこと等に上るもりであります。  この結果、この銀行の本年度末の貸付残高は、件数にして五百六十九件、金額にして約千四百三億円となっております。その内訳は、輸出金融約千百三十四億円、輸入金融約十九億円、投資金融約二百五十億円となっております。  以上が、各政府関係機関事業実績等概要でございます。各機関決算上の計数につきましては、さきに提出いたしました昭和三十五年度決算書及び決算説明によって御承知いただきたいと存じます。  これをもちまして、昭和三十五年度における大蔵省所管決算概要説明を終わります。  なお、会計検査院から、不当事項二件、是正事項百十五件の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これらにつきましては、それぞれ、適切なる是正措置を講じますとともに、今後一そう事務の合理化をはかり、改善に努力を傾注いたしたい所存でございます。  何とぞ、御審議のほどお願いいたします。
  4. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 次に、会計検査院当局より検査報告を聴取いたします。
  5. 秋山昌平

    説明員(秋山昌平君) 大蔵本省、財務局並びに税務官署の会計検査いたしました結果を申し上げます。  検査の結果不当と認めました事項は、決算検査報告の二十八ページに掲記してありますとおり、国有財産の管理に関するもの二件でございます。  その一は、関東財務局の職員が、土地を、国有地を売ってやるといって六百数十万円を詐取したというものでございます。  その二は、関東財務局立川出張所で立木を売り払いました相手方の会社が、売り払いました以外の立木六百六十八立米を不法に伐採したというものでございます。  次に、是正事項につきましては、二十九ページに書いてありますとおり、租税の徴収に関するものでございます。是正事項の件数金額ともに前年度より減少はいたしておりますけれども、なお徴収不足額が二億七千万円に上っており、さらに税務当局で改善の努力が望ましい、こう考えております。  以上でございます。   —————————————
  6. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) ただいま委員の異動がございましたので、御報告いたします。小柳勇君が委員を辞任され、その補欠として大和与一君が委員に選任されました。  以上でございます。   —————————————
  7. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 次に、国民金融公庫決算について御報告願います。
  8. 石田正

    参考人石田正君) 国民金融公庫昭和三十五年度決算概要について御説明申し上げます。  大体のことは会計検査院の検査報告の百二十六ページに書いてございますが、多少詳しく申し上げたいと思います。  昭和三十五年度においては、収入利益総額は約百億円、支出損費総額は八十四億六千万円、差引十五億四千万円二相なるわけでございますが、これにつきましては、固定資産の減価償却引当金の三千万円、滞り貸し償還引当金に十五億一千万円の繰り入れを行ないました結果、三十五年度利益金はゼロとなりまして、国庫への納付は生じなかったのでございます。  なお、収入総額百億円のうち、貸付金利息が九十六億四千万円でございまして、その大部分を占めております。支出は八十四億六千万円でありまして、そのおもなる内訳は、借入金の利息が五十六億三千万円、支出総額に対しまして六六・五%に当たります。それから代理手数料が八億七千万円、同じく総額に対しまして一〇・三%、事務経費は十九億円でございまして、支出総額に対しましては二二・五%に当たっておるわけでございます。  次に、貸付業務について申し上げますと、三十五年度中の貸付額は千百五億円でありまして、前年に比しまして六十六億円、百分比にいたしまして六・四%の増加となっております。このうち、おもな貸付について見ますると、普通貸付は九百九十億円、前年に比しまして七十一億円、七・七%、それから恩給担保貸付は百五億円でありまして、前年に比し七億円、七・一%と、いずれも増加いたしております。この結果、期末貸付金の残高は千百八十四億円となりまして、前年に比しまして百十六億円、一〇・九%の増加でございます。おもなる内訳は、普通貸付が千三億円、前年に比しまして百八億円、二一・一%、恩給担保貸付が百十二億円、前年に比し十四億円、一四三%の増加となっております。  これらの貸付に要しました財源につきましては、まず政府からの借入金が当初二百九十億円、年末資金が五十五億円、この年末資金の五十五億円のうちには短期資金二十億円を含んでおりますが、合計いたしまして三百四十五億円ございましたが、これは前年に比べまして十三億円の増加でございますが、反面、政府への返済金が二百四十億円、前年に比べまして六十四億円増加いたしております。差引いたしまして、ネットの増加といたしましては百五億円でございます。ネットの増加分は、前年に比べまして五十一億円の減少となっておる次第でございます。また、期中の回収金は九百八十八億円ございまして、これは前年に比しまして百十三億円の増加でございます。以上が貸付財源となった次第でございます。  次に、会計検査院の報告には、延滞額について触れておられますので、一応御説明申し上げます。三十五年度の延滞の数字は、お手元にある資料のとおりでございまして、これは最終期限が経過いたしましてから後六カ月をさらに経過したものの数字でございます。それによりますると、延滞額は十四万五千件、金額で二十七億一千二百万円でありまして、件数で申しますると一一・三%、金額では二・二%ということに相なるわけでございます。これは、前年に比べまして、件数では二・五%、金額では〇・五%の減少となっております。このうち、更生資金貸付の延滞額は十一万九千件でございまして、金額では十六億二千八百万円でございます。更生資金の残高のうちでもって、件数では六九・八%、金額では七〇・四%という比率を占めておるわけでございます。これを前年に比較いたしますると、件数では二・九%の減少、金額では〇・六%の増加となっておるのでございます。  次に、公庫のおもなる貸付でありますところの普通貸付におきましては、件数では一万五千件、金額では九億二千四百万円でありまして、普通貸付残高のうち、件数では二・二%、金額では〇・九%というふうに当たっておるわけでございます。これを前年に比しますと、件数では〇・二%、金額では同じく〇・二%減少いたしております。  以上、概略でございますが、公庫昭和三十五年度決算説明を終わります。
  9. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 次に、会計検査院より検査報告を聴取いたします。
  10. 白木康進

    説明員(白木康進君) 昭和三十五年度国民金融公庫の業務につきましては、従来どおり、本公庫の設立の趣旨に従った資金運用が行なわれておるかどうか、また貸付債権の管理が適切に行なわれておるかどうか、こういうことを中心にいたしまして、書面検査及び本所、支所を含めて約十カ所の実地検査を実施いたしましたが、検査の結果不当と認めた事項はございません。なお、先ほど総裁からもちょっと言及されましたように、主として延滞状況を中心にその概要を検査報告の百二十六ページに記載しております。  簡単でございますが、御説明を終わります。
  11. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) それでは、これより直ちに質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  12. 相澤重明

    ○相澤重明君 大蔵次官にお尋ねしたいと思うのですが、三十五年の財政投融資計画などを御説明いただいたわけですが、年度の途中でたびたび改定されておるわけですね。当初の五千九百四十一億円が非常に増加をされておるわけでありますが、年度間に何回改定をしたのか、それはどういう理由なのか、いま一度御説明いただきたいと思います。
  13. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) ただいまのお尋ねに対しましては、調査いたしまして、あとでお答えいたしたいと思います。
  14. 相澤重明

    ○相澤重明君 それでは、あとでまた大蔵大臣も見えると思いますが、大蔵省では、この財政投融資計画について、予算委員会では、財政政策について政府の考えを述べると同時に、これについての計画を発表されておるわけでありますが、この年度の途中で改定をするというようなことになると、資金需要についても相当の問題を残すわけですね。そこで、財政法上から考えて、今後これらの資金計画、いわゆる財政投融資計画については、国会の意思を尊重をするかまえをとっておるのかどうか、これは次官、大蔵大臣とそういうことを相談をされておるのかどうか、あなたのひとつ御見解を伺いたいと思う。
  15. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 今の財政法による法的解釈の問題は、これはまたあとでお答え申し上げたいと思いますが、政治的な意味においては、そういう気がまえでやるべきことであろうと思います。
  16. 相澤重明

    ○相澤重明君 せっかく次官の御答弁をいただいたので、あとでその点は、大蔵大臣が出席してから、なおひとつ確認をしておきたいと思うのであります。  そこでまあ、ゆうべ私ども参議院においても産投法を可決をしたわけです。そうすると、この三十五年度の私は財政投融資計画を見て、そうして非常に需要が大きくなっておることを考えると、当初計画を変更しなければならぬというのは、確かに需要の伸び等も考えられるわけですが、この形のままで一体来年度も予算を——三十八年度の予算編成期に今あるわけですが、どのくらい今の当初予算で各省庁のいわゆる要求があったのか、これは御発表できませんか。重要な関係があると思うのです。
  17. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 各省の概算要求がまだ出そろったわけでもございませんので、予算全体を見合ってそれらのものをこれから検討していこうという段階でございますので、ただいまの御質問に対して直接にお答えする段階ではないと思います。
  18. 相澤重明

    ○相澤重明君 そうすると、大蔵次官の御説明では、まあ現在のところは、財政投融資計画についての面から私は少し知りたかったんでお尋ねしたんですが、まだ実際に、三十八年度の予算の編成をする各省庁の所要資金については、出そろっておらない、こういうことですね。では、いつごろ——コンクリート化するといったら、なかなかむずかしい問題ですが、いつごろ政府はそれを取りまとめをして第一次の査定をする考えですか。
  19. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 各省の概算要求は、今月半ばまでには出そろうはずでありますから、それと勘案しまして財政投融資等の検討をいたすわけでありますが、いつごろまでにそれが固まってどうなるかということは、今の段階ではちょっと予測できないのではないかと、そう思います。
  20. 相澤重明

    ○相澤重明君 それでは、まあそれ以上はお話を聞くというのも無理でしょうから、そこでいま一度三十五年度に戻りまして、三十五年度の財政投融資計画の変更があったのですが、少なくとも、この改定計画に対して、まあ私どもが調べたところによると、百五十三億も実績は下回わっておる。どういう理由で、それが、改定計画をしたにもかかわらず、下回わったのか、そういうおもな理由を述べることできませんか、三十五年度のですよ。これは決算委員会にあなたのほうでは準備しておると思うのですがね、いかがでしょう。
  21. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 先ほどの、財政投融資計画の、何度変更して、どれだけの増減があったかという御質問とあわせて、ただいまの御質問あとでお答え申し上げます。
  22. 相澤重明

    ○相澤重明君 これではもう、これを実際問題として質問の回答ができないということになると、これはまあ実際の話が進まぬわけですよ、この財政投融資計画の問題については。ですから、いま一度これはひとつ勉強してもらって、それでお答えをいただかないと、質問が進まないですね、最初からこれは話にならぬわけですから。そこで、それは時間をこれはおきましょう。ひとつあとで調べて、そうして答弁書を出して下さい。  その次に、管財局来ていますな。それじゃ管財局に入りましょう。  御承知のように、国有財産については、昭和三十二年から三カ年計画で実態調査をやったわけです。ところが、それが当時池田さんが大蔵大臣だった。私はそのときにずいぶんと意見を申し上げたのですが、それから一年実際には延びて、三十六年からさらに三カ年計画を、また第二次実態調査の計画を樹立したはずなんですが、第一次の調査の実績ですね、結果というものを、どういうふうにあなたのほうでは参考にして取り入れて、この第二次実態調査の計画を策定をされたのか、それをひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  23. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 御指摘のように、国有財産につきまして実態不明の財産があるということは、まことに申しわけない次第でございまするが、御承知のように、終戦後の混乱時に膨大な財産を引き継ぎました関係上、実情の把握が不十分であったのが多々あったわけであります。したがいまして、三十二年度から、これらの財産につきまして実態を明らかにするための計画を立てまして、調査を進めてきたわけでありますが、その実績といたしましては、お手元に参考資料といたしましてお配りいたしておると思いますが、三十二年度におきまして、件数にいたしまして一万五千二百九十一件、三十三年度で一万五千八百五十五件、三十四年度で一万六千四十五件、三十五年度で一万五千五百四十六件、合計この四カ年間で六万二千七百三十七件の実態を把握いたした次第でございます。その結果、財産は、帳簿上いろいろの増減もいたしまして、それもお手元に配付いたしておりまするので、御承知おきを願いたいと思いまするが、それろの結果こおきましては、実在いたしております——帳簿上ありました財産が、実在いたしておりましたものが、件数におきまして五万四千八百件、不存在となっておりましたものが一万二千八百十九件、かような実績を示しております。かような状況にかんがみまして、なお五カ年間調査を進めてきたわけでございまするけれども、なお今まで実態を調査していないという財産がまだ相当残存しておりまするので、これらのものにつきまして、さらに今後計画を立てまして、取り調べを進めたいということで、行なっておるわけでございまするが、人員の関係、時間の問題その他もございまして、やはり過去の今まで行ないました程度のものを大体予定いたしておるわけでございまするが、調査は、重点的に行なうという意味におきまして、こまかいものよりも、まず大きな実益のあるというような方向に手をつけたいということに努力をしております。個々具体的には、各財務局の調査担当者の実情把握等の意見によりまして、そういった重要性を選定しながら行なっていくというようにいたしておる次第でございます。
  24. 相澤重明

    ○相澤重明君 この実態調査を、今までの実績の上に、不存在のものをさらに確認をしていく、こういうことで進む方針というのは今わかりましたが、現在までに調査をされた六万二千有余件ですか、この財産について評価をした場合には、総額はどのくらいになっております。
  25. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 調査完了いたしました六万二千七百三十七件におきましては、二百三十三億六千二百万円というように相なっております。
  26. 相澤重明

    ○相澤重明君 ちょっと少ないような気がするけれども、これはひとついま一度私のほうで調べますが……。それから、大蔵省の所管の一般会計の中で、米軍に貸付をしておる、あるいは使用承認をしておる、こういうようなものは、全体でどのくらいの件数で、どのくらいの坪数になっておりますか。
  27. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) お答え申し上げます。三十六年の三月三十一日現在におきまして、提供中の国有財産は、土地が五千七百七十八万六千坪、それから建物が百四十五万四千坪、その他立竹木とか、そういうものもございますが、大体こういうふうになっております。
  28. 相澤重明

    ○相澤重明君 そうしますというと、この五千七百七十八万六千坪ですね、これは固定資産の対象として見ておるわけですね、そういう意味ですね。
  29. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 国有財産の価格の中の一部を構成いたしている次第でございます。
  30. 相澤重明

    ○相澤重明君 これは、大蔵省の評価はどのぐらいですか。
  31. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 土地が二百七十億二千五百万円と相なっております。
  32. 相澤重明

    ○相澤重明君 建物は。
  33. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 建物は、三百四十七億八千九百万円と相なっております。
  34. 相澤重明

    ○相澤重明君 大蔵次官、大臣と相談をしてもらわないといけないことがここに出てきておるわけだね。これは、大蔵省の林産といえども、米軍に提供しておるものは、これは日本人が使用しておれば、当然それだけの収入があるとみなせるものですね、本来ならば。したがって、それだけ国庫歳入になるわけなんです。とここが、米軍に提供しておるから、それだけいわゆる一般財産としてまあ評価をして、今の価格になると私は思う。そこで、大蔵省が所管をしておる、今の米軍に提供しておるところの普通財産がこれだけあるが、このほか、大蔵省が把握しておる、都道府県、あるいは市町村、いわゆる地方自治団体、この自治団体が米軍に提供しておる土地というものはどのぐらいあるか、こういうことを把握しておりますか。
  35. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 国の財産の分につきましては、今お答えしたとおりでありますが、地方公共団体等の今のお尋ねの点につきましては、大蔵省としては、これは今集計いたしておりませんので、わかりかねる次第でございます。
  36. 相澤重明

    ○相澤重明君 まあこれは、直接大蔵省の所管でないからということでお答えになってしまえば、それまでの話なんだけれども、まあ直接の関係としては自治省でしよう、そういうことにたしかなると思います。なると思いますが、私が実はその次に質問を出したかったのは、これはいわゆる基地交付税等の問題が出てくるわけなんですよ。でありますから、直接国の財産を提供しているものは、今御説明をいただいたとおりでありますが、それにあわせて、地方自治体が提供しておるとすれば、これに対する評価もしなければならぬ。それだけいわゆる地方自治体としての収入は減ってくるわけですから、ここに私が何回も実は基地交付税の問題について政府のお考えをただしておる大きな理由があるわけです。  それでは、ざっくばらんに私はお伺いしたいと思うのですが、これは国有財産の関係でなくて、今度は交付関係ですから、だれですか、出席しているのは。——それでは大蔵次官、これは先日も防衛庁長官や林調達庁長官に私のほうからも希望を述べておきましたが、従来この基地交付税は、五億を初めとして、毎年若干ずつふやしている。そうして、昭和三十五年度は十億のものを、三十七年度は十二億にふやした、三十五、三十六の十億を。ところが、これはあくまでも査定の基準というものが実はないのですよ。どんぶり勘定なんですよ、普通の言葉で言うと。そこで、これについては、やはり評価をして、もし京都なり、あるいは広島なり、長崎なり、神奈川なりという旧軍港だけの例をとっても、これをもし正当な評価をしていくと、私はたいへんな額になると思う。ところが、国の金が少ないということで、実はどんぶり勘定で、まあことしはこのぐらいということでこれはやっているわけですよ。そうして、三十五年、三十六年度の十億というものを、三十七年度の予算では二億ふやした。当時は、少なくとも地方自治団体では四億をふやして十四億にしてくれ、こういう考えであったのです。最終的に、もう仕方がないというので十二億に削ってしまった。それがために、港湾関係の予算というものは削られてしまった。こういう地方団体にきわめて大きな圧迫を加えているわけです。いずれこれは関係の自治体から政府にそういう要請もあると思う。私は、ただ要請があるから、ないからじゃなくて、国有財産の実態調査の上からいって、適正な評価をすると同時に、この地方自治団体のそういう財政計画というものも、やはり大蔵省自体として見てやらなくちゃいけない、こういう建前からくると、今の地方自治団体の実態というものは、やはり自治省とよく相談をしてもらって、そうしてこの基地交付金等も算定をしないと、実はあくまでもこの慣習に従う、どんぶり勘定で終わってしまう、これでは私はいけないと思う。この点で、私は少なくとも五十億ぐらいの交付金というものを出さなければいけないのじゃないか、諸要求を考えれば——ということを言ったのでありますが、なかなかそこまで行っておりません。今申し上げたとおりです。そこで、まあ今年度あたりは、少なくとも基地を持った自治団体としては、非常な苦労をされておるわけですから、そういう点を再検討をしてもらいたいのが一つであります。  それから、いま一つは、政府が調査をした実態の中では、これは国有のものでありまして、国有の土地、国有の建物、これを評価したわけですね。米軍が日本から借りた土地の中に建った建物は評価の対象になっていますか、これは管財局長どうなんです。
  37. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 米軍の基地内に建物を作ります場合は、調達庁がこれを建設いたしました分につきましては、これは国有財産の提供ということになっておりまするので、その建物も中に含まれておるわけでございます。
  38. 相澤重明

    ○相澤重明君 局長、私の質問を聞き出遅えちゃ困る。米軍に日本が土地を提供しておる、いわゆる基地。その基地の中に米軍が自分の費用で建てた建物ですよ。それが固定資産の対象になるかと、こう聞いているんです。
  39. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 御質問の点の、実情の点で、あるいは私実情不明の点があるかとも存じまするが、調達庁を通じてこちらが建設した分につきましては含まれておるわけでございまするが、全然関係なしに、こちらと連絡なしに作った建物がありといたしますれば、それはこちらのほうには含まれていないわけでございます。
  40. 相澤重明

    ○相澤重明君 もっと、いま少しあなたの頭へ入れてもらいたいのは、いいですか、日本政府が米軍に土地を提供しておる、これを称して基地という。その基地の中に米軍の金で建てた建物、これがいわゆる固定資産の対象になるかならぬかと、こう言っている。あなたの言うのは、調達庁が向こうの計画を聞いて建てたものは、それは固定資産の対象になる、そうでないものは入っていないと、こう言っているわけだ。そういうことがわかるかな。
  41. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 行政協定に基づきまして、施設は日本側が提供することになっておりまするので、建物等も調達庁が建設いたしまして提供すると、こういう手続で行なっておるわけでありますが、今御質問の点は、私まだちょっと実情を実は詳細把握していない点があるわけでございまするが、こちらの提供と全然関係なしに米軍が作ったものがありといたしますれば、これは米軍の財産ということになりまして、こちらの国有財産には関係のたいということに理論的にはなろうかと思いまするが、そのあたりの詳細は、今ちょっと私不明でございまするので、的確にお答えいたしかねます。
  42. 相澤重明

    ○相澤重明君 これも、当委員会で、私が何回かこの点は政府にお話をしているところなんです。実は、米軍は日本政府から提供された土地の中に自分で建物を建てているものがあるわけです。これは、地方自治団体の立場でいきますと、日本政府が基地を提供をしておるのであるから、建物であろうと、立木であろうと、これは本来、米軍に貸しておらなければ、日本国民の財産なんでありますから、当然その対象になるわけですね、すべてが。すべてが対象になる。ところが、借りたからといって、自分の土地へ自分の金で建てたからといっても、これは私は、今言ったとおり、もしこれが土地を提供しておらなければ、当然日本国民のだれかがそれを所有し、あるいはまたそれを利用しているわけなんだから、これは対象になる。こういう不満が、実は都道府県知事、市町村長にあるわけなんです。この実態を私は政府がやっぱりつかむべきだと思う。だから、米軍に貸しておる、日本政府の提供しておる、土地は幾ら、建物は幾ら、しかしその中に米軍が作っておるものはどのくらいある、これをつかんだら、日米合同委員会の中に持ち出して、あなたのほうで作ったものといえども、日本政府としては当然これは要求をしてよろしい。こういうことをやらなければ、何が対等の政府交渉ができるか。これは私のものですと、こう言われたって、それはもう除外をいたしましょうと言っていったら、ほんとうのいわゆる財産の格好にはならぬ、あるいは査定にはならぬ、こういうことを私どもは実は常に陳情を受けているわけです。何回となく。でありますから、当委員会でもそのことをひとつ実態を把握して、そして査定をしなさい、同時に、基地の交付金を交付する場合には、そういうものに基づいて査定の基準を作って交付をしなさい、こういうことが適正な査定ではないか、私どもはこう主張しておるわけです。しかし、この点については、管財局長もかわったばかりでありますから、この点全部を実態を把握するというのは、これは無理だけれども、これは私、早急に各市町村あてに照会して、そして実態調査をやってもらいたい。そして、もしそれがはっきりしたならば、私は日米合同委員会の中に持ち出してもらいたい。そして、これは少なくとも、日本側の財産として、この固定資産税の対象になる。財産を作ったのは向こうかもしれないけれども、固定資産税の対象にはなる。いわゆる道路であろうと、橋であろうと、鉄道を作った、そういうものでさえ、全部固定資産の対象になるのですね。それを、向こうの地域の中にあるからということで対象にならないというのは、片手落だ、こういうように私どもは思う。そういう点をひとつ検討してもらいたいと思うのだけれども、次官どうですか、あなたのお考えは。
  43. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) 基地の施設提供は、今お答え申し上げたように、日米行政協定に基づいて、調達庁を通してやることになっておるのでありますから、それに関する限りは、もちろんお答えしたとおりでありますが、それ以外のものがどのぐらいあって、それがどういう性質のものであるかということは、まず実態を調査するということは、なるほど必要なことだと思いますので、関係各省とも連絡をとって、その点を明らかにすることができれば、明らかにする努力を払いたいと思います。
  44. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に、この四カ年間の実態調査の中で、先ほどもお答えいただきました、六万二千七百三十七件というのが報告されたわけでありますが、この中で、政府は全部登記は終了しておる、こういうことですね。仮登記というものはありませんね。
  45. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 調査をいたしました結果、何と申しますか、帳簿上登記があって、実際には実物がなかったというようなものにつきましては、登記は抹消するようにいたしまするし、登記簿上はなくして、実際にはあったと、いわば脱落地と称しておりますが、そういったものにつきましては、登記をするようにいたしております。また、実測等いたしました結果、実際の土地面積と台帳面積との相違がある、増あるいは減があるというようなものもありますので、それぞれ所要の帳簿上の整理をいたしております。
  46. 相澤重明

    ○相澤重明君 それだけでは私の質問のお答えにならぬので、帳簿上の整理、それはわかった。わかったけれども、それは全部登記済みのものであるか、いわゆる本登記でなくて、仮登記のものも含んでおるのか、こういうことを聞いているわけなんです。
  47. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 国有財産につきましては、財務局あるいは出張所に備えつけておりまする台帳で整理いたしておるわけであります。したがいまして、その台帳面におきまして所要の整備をはかっておる、かようにお答えしている次第でございます。
  48. 相澤重明

    ○相澤重明君 すると、管財局長は知らないのだな。その仮登記というものは、本登記でなければ真に国有財産にはならぬのですよ。仮登記のものがあることを知りませんか。そういう報告を聞いていないですか。仮登記はどのくらい件数があるということを知らない……。
  49. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 御質問の仮登記ということを、私、どういうことの御質問の趣旨か、ちょっと承知しておりませんですが……。
  50. 相澤重明

    ○相澤重明君 それじゃ僕からよくそれは教えておこうと思うが、これは戦時中の、軍が強制接収したものがある。このときには、当時は戦争中でありますから、ほとんど本登記はしていない。仮登記だ。金を払って仮登記しておる。これがあの戦後の国有財産の実態調査の中で一番大きな問題なんですよ。だから、私が当委員会で、一番最初三十二年に、池田さんが大蔵大臣のときに、この問題を出したのです。実態調査を早くしなさいと、こう言った。そのときの一つの例として、横浜市の戸塚区大船における国有財産の仮登記の問題で、一体、政府は、旧地主に返すのか返さぬのか、それから、この点は次官に聞いてもらいたいと思うのだが、仮登記の場合には、固定資産税はその地主が払っておるのですよ。政府は持っているのじゃない。政府は仮登記をして、そのときには確かに幾らかの金は払ったかもしれないけれども、戦後十何年間というものは、旧地主が固定資産税を払っておるのですよ。だから、それはいけないから、国有財産は国有財産として処理をしなさい、そしてもしこれが不必要であるというものならば、これは払い下げをしなさい、それからよけいにとり過ぎておる固定資産税があれば、これを返しなさい、こういうことを私は三十二年から言っておるわけです。そういうことがありますが、わからないですか。
  51. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 旧軍が取得いたしました国有財産で、登記簿上はっきり整理していなかったという財産の問題のお尋ねのようでございますが、これらにつきまして、実情調査いたしました上、それぞれその権利の所在がどちらであるかということをはっきりさせまして、そして整理をいたしておるわけでございます。問題のような土地につきましては、民間の所有であるのか、あるいは国有の財産であるのかというようなことが争いの対象となっておりまするので、最後には、場合によっては、訴訟において解決しなければならぬというような問題もあるわけでございまして、これらにつきましては、それぞれ所要の手続を進めて整理をいたしておる次第でございます。
  52. 相澤重明

    ○相澤重明君 訴訟までいっておれば、これは裁判で決着がつくのです。訴訟までいってない。先ほど申し上げたように、存在するか存在しないかも、なかなか実態調査をしなければわからぬというのが、三十二年以降の問題だったわけです。そこで、政府としても努力をされて、実態調査の結果、先ほどの御報告のような点になった。しかし、そういう報告を私が聞いておりながらも、なおかつ、そういう本登記ができて、いわゆる国有財産に編入をされておるかどうかと、こういう点について、まだ疑問がたくさんある。現実に、たとえば、一つの例を私お尋ねしたいのですが、旧内務省の管轄になっておった神社仏閣、こういうところの登記を、終戦後したところはいいが、そこの登記をしなかった神社仏閣の寺社領について、そういうものは国有財産になっているでしょう。どうですか。
  53. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) いわば、旧社寺等の使用しておりました財産で、戦後の法律で無償で譲与いたしましたものはございます。無償の譲与にならなかったものにつきましては、国有になっておるわけでございます。これらにつきましては、今お尋ねのように、なお十分処理がなされていないというような財産もございます。これらにつきまして、実態調査を進めまして、整理をはかっておる実情でございます。お尋ねの、旧軍の未登記の財産につきましても、実態調査の結果、事実関係を明らかにいたしまして、そして権利関係を帳簿上も明らかにするというように、手続を進めておる次第でございます。何分事実関係が古く、不明のものもございまして、なお権利関係がはっきりしない、両者において争いがある、こういう財産が残っている次第でございまして、これにつきまして、私どもは鋭意整理をはかっている次第でございます。
  54. 相澤重明

    ○相澤重明君 努力は多といたしますが、しかし今国有財産ですから、国有財産の処理というものはやはり適正でなければならぬ、こういう点で、私はひとつ希望を申し上げると同時に、ひとつ政府でもお考えをいただきたいのは、たとえば神社仏閣等の旧寺社領ですね。それが終戦直後無償でいわゆる返還ができたものはいい。しかし、できなかったものについては、その旧所有者が申請をした場合、これを政府として返還をする考えがあるかないか、これが一つ。  二つ目には、一般の民間の所有でありますが、これは昭和十八年、十九年に強制接収をされたのがたいへん残っている。これは本登記をしてないのがある。すでに日本軍はないわけですから、この場合に、旧所有者が、仮登記のものは、いわゆる固定資産税をいまだに払っている。こういうものについては、当然旧地主に返還をすべきであると思うが、この点についてはどう考えるか。  以上二点についてお答えいただきたい。
  55. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) ただいまお尋ねの二点とも、非常に個別的にいろいろ複雑な、また状況の異なった問題をはらんでいるわけでございまするので、私ども、その事実関係を明らかにするというために、努力を重ねている次第でございます。事実関係を明らかにいたしまして、それぞれ個別的に適正な処理をいたしたいというように考えている次第でございます。
  56. 相澤重明

    ○相澤重明君 そういう抽象的な議論では、話にならぬのだ。私の聞いているのは、当時いわゆる旧日本軍が必要として強制接収をしたのだけれども、今やそういう必要はもうないわけなんだ。そこで、今政府としても、それほど必要としない場所があるわけですね、旧地主が持っていたものは。そういう仮登記のものについては、当然、この固定資産税は旧所有者が払っているのだから、その人たちが申請をする場合には、旧所有者に払い下げてもいいのではないか、こういう点を聞いているわけだ。実態を、個々の問題を調べなければわからぬと言うけれども、方針としては、私はそれがあたりまえだと思う。それが政府のいわゆる公共建物が建っているということになれば、これはもう返せないというのがあたりまえなんだ。しかし、もしそうでない、単に土地だけが登記上いわゆる政府の名目になっているけれども、実際には実態はそうではない、こういうことになれば、それは、私は、旧所有者に当然申請があれば返してやっても差しつかえないのだ、こういうことを聞いているわけです。  それから二つ目に、固定資産税は、政府が仮登記をしているために、本登記をしなかったために、旧所有者が払っているのであるから、これは当然返還すべきものですね。前の三十二年当時、今の総理大臣の池田さんが大蔵大臣のときに、これは返します、こういうことを言われたのでありますから、この点は今でも変わっておりませんね。いかがですか。
  57. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 第一の御質問につきましては、まことに抽象的なお答えで、御満足いただけないかと思いますけれども、その個々につきましては、やはりいろいろ具体的に検討しなければならぬ問題ではなかろうかと考えておりまするので、まあ抽象的なお答えでひとつごかんべんを願いたいと思うのです。  第二の問題につきましては、これもなかなかむずかしい問題でございまして、すみやかに権利関係がはっきりし、これが帳簿上におきましても事実関係と合致するような整理がなされておれば、かような問題は発生しなかったわけでございまするけれども、事実関係が別にありながら、帳簿上の権利関係が別個の様相を呈しておったというために、かような食い違いが生じたかと考えられるわけです。一方、固定資産税といたしましては、帳簿を基礎といたしまして、そうして市町村が課税をするというような建前になっておりますために、こういった事実関係と税関係の複合というような問題が起こって参っております。私ども、この点につきましては、自治省のほうで適正な処理がなされるよう、期待いたしている次第でございます。
  58. 相澤重明

    ○相澤重明君 期待をするだけじゃなくて、私は、こういう実態調査をして、そのことが明らかになったならば、あるいはそういう申請があったならば、政府も積極的に処理をすべきだ。これは、今局長が御答弁をされましたように、地方自治体は、登記上、帳簿上に基づいて課税をしているわけであります。でありますから固定資産税を旧所有者が払っておれば、これは当然、その権利のないものが払わされるということはないわけであります。払ったものはこれは返すべきであるということで、私はやはりその実態の上に立って処理をしてもらいたい、これをひとつ希望をしておきます。  そこで、私は具体的な問題でひとつお尋ねをしたいのですが、管財局長にお答えいただきたいのですが、今の総理大臣の池田さんが通産大臣のときに、横浜市金沢区の東洋化工という火薬を作っている会社が爆発をした、そのときに私が本院の本会議で緊急質問をしたことがあるわけです。その東洋化工という火薬を作っている会社は、政府のいわゆる規定をしているまあ法律、政令に基づくすべての整備がしてなかった、また、時の通産大臣の池田さんのお答えでは、通産省の監督官も手不足であった、こういうことで改善命令を出されると同時に、取り扱いについても非常に政府としても努力をされたことであります。そこで、東洋化工の会社については、今後は火薬は作らせない、こういうことで政府としては監督上の問題としてきびしくされて、ついにこの会社も、火薬を作らないということになった。今まで持っておったものは廃棄処分をする、こういうことなんです。したがって、会社としてはもう火薬を作らないということが明らかになったわけでありますが、私どもが聞いた範囲では、当時この東洋化工の爆発のために東急車輌というのが、すぐそばに会社がある、それから同じすぐそばに横浜市立の大学もあるわけです。こういう学校とか工場とか、あるいは住宅が非常な影響を受けた、そうしてその損害というものは莫大なものがあって、市はその付近の人たちに災害救助法を適用するなり、あるいは多くの国民から見舞金、カンパを集めてそうしてそれらの人たちの復興に、あるいはお見舞に援助をした、こういうことを言われているわけです。ところが、その当時、横浜市の金沢区役所にこの災害特別対策委員会というのが持たれて、そうして会社側に対するところの損害補償要求を市民なりその工場なりが行なった。ところが、会社はそういう爆発事故を起こして、しかも、もう火薬は作らないということを監督官庁から言われたために、財産を処分をしてもそれだけの補償はできない、こういうことでいまだに横浜市にも損害の補償もろくに払っていない、付近の人にも払っていない、こういうことを言われているのであります。ところが、そこに国有財産を払い下げたと、こういう。そこに、私のお尋ねをしたいのは、なぜやめるような会社に国有財産を払い下げなければならない緊急性があったのか、必要性があったのか、この点、これは管財局長、わかりますか。
  59. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) お尋ねの点につきましてお答え申し上げます。お尋ねの場所の国有財産の貸付状況は、過去からの相当長い経緯があったようであります。お尋ねの場所は、旧第一海軍技術廠支廠施設であったわけでございますが、これは終戦直後の二十二年三月ころから各種の会社に一時使用を許可しておったわけであります。それらの会社は、原沢製薬とか、汎極東物産とか、大日本ディーゼルとか、東京光音というような会社であったわけでありますが、これらの会社に終戦直後国有財産を使用させまして、いわば経済の復興をはかるというような見地で一時使用をさせておったわけでありますが、その間に、東洋化工の前身でありまする泰道繊維というのが、大日本ディーゼルと共同使用の形になりまして、そうしてなおかつ、それが他の会社の一時使用の権利関係をいわば引き継ぎまして、そうしてここに、二十七年ごろになりまして、特需の需要にこたえるというような意味で火薬の製造を始めたような状況でございます。その間にお尋ねの点のような爆発事故が起こったわけでありますが、その後におきまして、この会社は、火薬の製造はこれを中止するという届出を出しまして、そうして合成樹脂の製造加工事業に転換いたしたわけであります。そこで財務局といたしましては、この合成樹脂の製造工業は、これはまあ適格なる国有財産払い下げの業種になるということを勘案いたしまして、昭和三十六年の三月に、その合成樹脂の製造に必要な範囲の国有財産を払い下げるという措置をとったわけでございます。
  60. 相澤重明

    ○相澤重明君 政務次官、今の局長の答弁おわかりでしょう。つまり三十六年の三月に合成樹脂を製造する工場のために国有財産を払い下げた。三十四年の十一月ですね、東洋化工の爆発があって、これに対する政府は、今の総理大臣で当時通産大臣の池田さんは、これを、政府の監督上も足りなかった、しかし、会社の設備もよくない。したがって、これは早急に調査をすると同時に、これはいけないから、この火薬製造はやめなさい、こういうことになった。そこで一年有余もんでおって、しかし、賠償金というものは全部出せない、幾らかは出したのでしょう、その処分をして。しかし、地元民の工場なり住宅地なり、あるいは横浜市なり、そういう関係者の損害を与えられたものに対して全部払っていない。話に聞けば、二千四百万以上あるそうです、要求しておるのは、残っておるのは。ところが、その火薬は製造しないというこの会社の名義で実は払い下げているですね。そうすると市民感情としては、国有財産を安くもらったのなら、そのかわりになぜ銀行から金を借りてその補償をしてくれない、自分たちは国有財産をどういうふうに政府と話し合いをしたか、政治家が話をしたか知らぬけれども、とにかくたくさんの土地の払い下げをとって、火薬は作らない、こういうことでほかの会社にするということでやったけれども、実際にはその付近のものに対しては何ら支払いをしない。しかし、話に聞けば、まだ火薬が貯蔵されておるやに聞く、これは政府をごまかしている、こういう感情が地元民にあるのですよ。だから私はそれを、あなたのほうの図面をとって実態を調べたわけです。これは明らかに、手続上はなるほど申請があれば、他に競争者もないし、あるいは、そういう火薬でも扱ったような所ではなかなかほかの買い手はないだろうということで管財局が払い下げに踏み切ったということは、手続上は誤りはないかもしれませんね。けれども事故を起こして、少なくとも本院の本会議で私が緊急質問をして、政府が、監督上の問題やこの会社の問題として自治体の横浜市なり付近の住民なり、そういうものに対して大きな問題になったのに、それから一年有余たって、いつの間にかその土地はその会社に払い下げられて、その会社はどうなっていますか、東洋化工という会社が実際やっておるのじゃないんです。第三者ですよ。それが結局そういうふうに管財局の人たちに話をして払い下げをさせたんですよ。この実態はどうなんですか。しかもそのあと、今払い下げただけでなくて、そのほかのほうもまだ払い下げを申請しているのです。こういう、全く国の財産を預っておる、大蔵省の監督しておる管財局の私は取り扱いとしてはきわめて粗漏だと思う。これは一企業に対しては、なるほど手続上はいいかもしれぬけれども、これだけの大きな問題になった所をなぜもっと慎重に審査をしないのか。横浜市に言わせれば、それだけの財産を国が一企業にやるなら横浜市に払い下げてくれと言う。すぐそばに大学がある。あるいはそれだけの損害をまだ全部の人に補償していないのだから、それならば当然そういうものを、市が国有財産を公共的に使うようにしてもらえばそれだけの補償ができるでしょう。横浜市の不信は絶えませんよ、管財に対する。地域の住民、東急車輌の人たち、この東急車輌がすぐそばにある、爆発した所の。私は爆発したときにすぐ現地に飛んで行った。東急車輌だって大きな工場が一ぺんにやられたんです。当時損害というものは莫大なものだった。そういうことをやっておるにかかわらず、政府に報告したのは、もう火薬はありません。しかし、実際をいろいろ聞いてみると、まだ少し貯蔵されておる。あぶないからこっちにもらいたい。それから、払い下げを受けてしまえば今度ほかの合成樹脂だとか、あるいは医薬品とかなんとか、そういうものをやるんだと、こういうような第三者が入った。なるほど払い下げ申請をしたのは東洋化工の泰道何とかという人かもしれぬけれども、実際は違うでしょう。そういうことをなぜ政府がやらなければいけないのか。そういう問題の起きている所をなぜ政府が急いでやらなければならぬのか。こういうことの不信は私としては絶えないと思う。二万余坪の払い下げをして、さらに二万余坪の今払い下げの申請をしておる。しかし、政府としても——これは管財局の話ですね、それだけあとの払い下げについては、必要がないようだから今保留をしておる、こういうふうな形なんです。しかしこれは、これほど地元民に苦労をさして、地元民をばかにした政府の処置はありませんね。私は、こういう点について、少なくとも管財局のとった処置というものはこれは認められない。地元民として、特に私どものそういう被害をこうむった地元の人たちの不信感というものは絶えないのですから、こういう問題については、私としては、徹底的に追及しなければならぬだろう。何か裏にあるんでしょうか、こういうふうに地元民はみな思っている、横浜市民は。だから、横浜市会の人たちから私にこのことが来たんです。先生、決算委員ですから徹底的にやって下さいと、こんな人をばかにした話はありませんと、これが横浜市会議員の人たちの意見ですよ。私は管財局に、なぜ三十六年になってこれを払い下げなければならぬという理由がありましたか、それを聞きたい。だれがそれでそういうことを折衝に当たったか、どういう理由でやったか、そのことを報告してもらいたい。
  61. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 先ほどもちょっと御答弁いたしましたように、昭和二十七年ごろから、いわば特需関係で火薬の需要が相当ございましたので、この土地が旧軍の火薬関係の仕事をやっておりました土地であるという関係もございまして、火薬の製造には適地であるということを目をつけて、この本社が乗り出してきたようでございまして、したがいまして、その会社に貸付契約をしておったわけでございます。ところが、御承知のように三十四年に爆発事故が起こりまして、地元のほうからもいろいろと反対の運動もあったようでございまするので、その会社といたしましては、直ちに火薬の製造を中止し、廃棄をするということにいたした次第でありまして、財務局といたしましては、これらの土地、今御説明になりましたなお余っておる土地もあわせまして、一括的に貸付契約をいたしておった次第でございまするが、その後、火薬の製造をやめまして、合成樹脂の製造に転換をいたしましたので、その合成樹脂の製造に必要な部分だけを売り払いをいたした次第でございます。残余の部分につきましては、したがいまして、従来どおり貸付契約中でございまするので、その点をいかに処理するかは、なお今後十分検討しなければならない問題であろうかと思います。財務局といたしましては、さような次第で、爆発のために地元民の抱きました不安その他につきましては、できるだけ考慮を払いまして、売り払いも必要最小限度にとどめて処理いたした次第でございます。
  62. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の局長の御答弁はなってないですよ。必要最小限度どころじゃないのだよ。この図面でも見るとおり、火薬工場の中は全部ですよ。そんなものは必要最小限度も何もない。それで今の山のほうを、山林がある、そういう所を今さらに払い下げてほしいという追加申請なんです。だから私は、少なくとも三十四年に事故が起きて、三十五年に政府が調査をし、そしてこれはもうこの火薬を製造することはこの地域では危険である、こういう判断を下したから、通産省としての監督行政が行なわれたわけですよ。その結果に基づいて、三十五年には一月に廃業届けを出したけれども、まだこのときにはたくさん火薬を持っておった。それをとにかく処分をしなければならぬというので、これは売っておるのですよ。廃棄したのもある。しかし売っておるのもある。しかし、まだ全部が処分はし尽されておらないから、まだ少しは残っておるから、これは危険であるからこの土地はここで買いたいというのがそもそもの趣旨でしょう。しかし火薬はもう作りませんと廃業届けを神奈川県に出したわけです。出したのだから、今度はそれにかわるべきものとして、今、管財局長の答弁をしたような会社をやらせるということにしたのでしょう。しかし、申請人は変わらないのですよ。会社はいろいろな会社を作っておるけれども、申請人は変わってないのですよ。そうすると、その申請人がやっておった事業に対する被害が起きたのだから、地元民としてはその人に文句を言う、なぜそんなことをするのだ、こういうことになるのは当然でしょう。不信感は、これはぬぐい切れないです。そういう点が私どもとしては——私はまあ政府にその裏の取引がどうだったとか、あるいはだれがどうしたとかいうことはわかりません。わかりませんから、公式上いわゆるこういう国会決算上の審査としてお尋ねするのは、なぜそういう不信感のあるものについて、そういうふうに急いで処理をしなければならなかったか。この点がどうしても私にはわからない。今の管財局長の答弁だけでは私ども納得することはできません。  そこで、私は次官にこれをひとつ要求をしたい。当時のいわゆる火薬をこの東洋化工が廃棄をした、通産省の監督のもとにこれらの処理をした年月日、これはもう通産省にいえばすぐわかりますから……。それから神奈川県に届け出たもの、処理の内容ですね、そういうものと同時に、なぜこういうふうな払い下げ申請をしたのに、大蔵省が——普通のところではこんなに早く手続が済まない、なかなか申請を出したってそう早くいかない、こう早くきまるものじゃない。この申請の理由と、それからそれらの担当者はだれであったか。これを報告してもらいたい。文書で報告してもらいたい。そしてそのことについては、いま少し次官もお帰りになったら管財局長の話をよく聞いて、大臣と相談をしてもらいたい。これだけの国有財産をこの会社に払い下げるならば、当然損害の該当の人たちは請求しますよ、今度は。だから、それがほんとうに払い下げてあるのかないのかということを私に聞いてもらいたいというので私はお尋ねをしたら、これは払い下げておるということがわかった。こういうような国有財産の管理というものについての不信感ということであれば、私はやはり問題が将来に残ると思う。この点について、次官のひとつ御意見を聞かしてもらいたい。
  63. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) ただいま事務当局からお答えしたように、その取り扱いに関して行政的な措置に過誤がなかったと私は思います。思いますが、お尋ねを承ってみますると、相当込み入った経緯があるようでございますから、通産省その他と資料その他について打ち合わせをいたしますことが御質問の御趣旨に沿うことだと思います。了承いたしました。  先ほど相澤さんからの冒頭のお尋ねに対して答弁を保留さしていただいておりましたが、ここでお答えしてよろしゅうございますか。
  64. 相澤重明

    ○相澤重明君 ええ。
  65. 竹内俊吉

    説明員竹内俊吉君) それでは申し上げます。三十五年度の財政投融資計画の改定についてでありますが、輸出入銀行、国民金融公庫中小企業金融公庫、商工中金に対する出資並びに融資額を変更、改定をいたしております。これらの内容につきまして簡単に申し上げますと、輸出入銀行に対しては、当初計画が三百六十億のところを、改定後は四百八十五億となっております。このうち、百二十五億が出資であります。国民金融公庫については、当初計画二百九十億のところが、改定後三百二十五億になっております。これは全部融資であります。中小企業金融公庫につきましては、当初計画三百十五億のところ、改定後は三百五十五億になっておりまして、これも政府資金貸付でございます。商工中金に対しましては、当初計画三十億円のところ、改定後七十七億円になっておりまして、そのうち二十億円だけが出資でございます。それから、もう一つは地方債でありますが、これが当初計画では千四百六十億のところが、改定後は千五百七十億円に相なっております。変更した日付等もわかっておりますが、中小企業国民金融公庫、両方は十二月の二日でございます。地方債は十二月の五日、商工中金は一月二十一日で、輸出入銀行は十二月でございます。  この理由は、一々申し上げますとみなあるわけですが、大体論で申し上げますと、経済の情勢に応じて弾力性をとった財政計画の改定である、まあ一つは、地方債等が災害に対する措置としてとられた、こういうことでございます。
  66. 相澤重明

    ○相澤重明君 せっかくお答えいただいたのですから、そこで、そういう計画と改定をした実績が今述べられた、ところが、それが改定をしたけれども、実は改定計画に比して下回っておる、それはなぜか、こういうことで先ほどその次のお答えをいただきたいと、こういうことを言ったわけです。  政務次官、時間の関係で今ここですぐといってもたいへんだろうから、そこで、なぜ百五十三億も改定をしたものが下回ったのかという理由公庫、公団別に調べてひとつあとで答弁して下さい。  それでもう時間がだいぶおそいので、また午後大蔵大臣が出席してずっと質問がありますから、やはり要領よくやるにはそのほうがかえっていいでしょう。
  67. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 資料をちょっと今のに関連してお願いをいたしたいと思うのですが、そこで資料をいただきますために政務次官にちょっとお聞きしておきたいのであります。国民金融公庫の場合、あるいは中小企業金融公庫の場合、中小企業者への貸し出しがふえたということが言われておるのですが、そこで、大蔵省が現在言っておる中小企業の概念ですね、一体その基準はどこに置かれておるのか、現状での概念をひとつ聞かしてもらいたい。
  68. 大月高

    説明員(大月高君) ただいまの段階におきまして、中小企業の概念は、いろいろの場合について若干の相違がございます。具体的に申し上げますと、中小企業金融公庫におきましては、資本金一千万または従業員三百人以下ということでございまして、それはいずれか高いほうによるわけでございます。ただ業種によりましては、たとえばサービス業というようなものにつきましては、従業員の人数を三十人以下というように、これはいずれも融資の対象が法律できまっておるわけでございます。それから国民金融公庫につきましては、具体的に法律上の制限はございません。これは国民大衆という言葉で一括してございますが、中小企業金融公庫に比較いたしまして、国民金融公庫はそれよりもつまり下の段階、いわば零細企業をやるという建前においておのずから限度がきまっておるわけでございます。それから商工中金につきましては、商工組合中央金庫の構成員がございまして、これは主として中小企業者を中心とする商工組合その他、いわば中小企業——一般に中小企業といわれているものの集まりがございますので、その貸し出し対象は構成員に限るということになっておりますから、そこの構成員ということにおいて限度があるわけでございます。それから一般の市中の関係におきましては、相互銀行、信用金庫につきましては……。
  69. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 それはよろしい。そこで、年末に中小企業に金融をされているのですが、その年末金融の実態を、三十四年末、三十五年末、三十六年末の中金並びに中小企業金融公庫国民金融公庫に分けて年末貸付の実情を、ひとつ資料をお願いしたいと思います。
  70. 大月高

    説明員(大月高君) 資料として提出いたします。
  71. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 委員長にお願いしたいのですが、あわせて住宅金融公庫が行なっている産業労務者住宅の分、これの三十四年度、五年度、六年度の分がわかれば、それを今の基準に基づいて比較を出してもらいたいと思います。たとえば三百人以上の会社にも現在労務者住宅融資をこれだけやっているという基準ですね、中小企業の基準概念にはまるものには公庫のほうに幾ら貸している、こういうやつを、これはあとでもいいがお願いいたします。
  72. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) これはすぐきょうぢゅうでございますか。
  73. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 住宅公庫のほうはきょうでなくていい。
  74. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) これは住宅公庫を扱う際にでもいいですか。
  75. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 少し早目に、きょうでなくてもいいが。
  76. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) できるだけ急いで……。
  77. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 国民金融公庫と中金と中小企業公庫のほうはなるべくきょう出してもらいたい。
  78. 大月高

    説明員(大月高君) 二、三日中にできると思います。
  79. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 きょう出ませんか、これはきょう出るでしょう。
  80. 大月高

    説明員(大月高君) 年末対策の関係はきょうじゅうに、住宅公庫関係は二、三日中に出ると思います。
  81. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 この資料ですが、当日もらわないで前日か前々日くらいにひとつ配付してもらうということをやってもらいたいのですが、きょうここに来て、もらって、いろんなものを読むということでは質問もできないと思うのです。
  82. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御要望に沿うように善処いたします。  それでは午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時三十分より委員会を再開し審査を続行いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩    ————・————    午後一時五十七分開会
  83. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) ただいまより決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和三十五年度大蔵省関係決算の審査を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言願います。
  84. 相澤重明

    ○相澤重明君 管財局長にお尋ねをしたいと思うのでありますが、国有財産のうち、道路、河川、港湾などの公共用財産は、国有財産法第三十八条により、国有財産台帳に載せないことになっている。こういうことになっておるのでありますが、一つの例をお尋ねしたいと思うのですが、昔から共用という農民の池がありますね、水をとる、田に水を引く池がある。そういうものは戦後国有財産に編入されておるわけなんですが、これは、その土地の発展のために必要なものは、毛ともとはその土地のものでありますから、これは、その土地に返還をされることになろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) あるいは私の答弁が的はずれであるかもわかりませんですが、その節はまた重ねて答弁申し上げますから。国有財産のうち、火葬場とか墓地とかじんあい焼却場またはと畜場というような、いわゆる公共的な目的に使用せられるものにつきましては、これは公共団体に無償で譲与すると、こういう規定がございまして、こういうような措置は行なっておるわけでございまするが、ただいまお尋ねのような点につきまして、直ちに返還をするというようにはいたしかねるかと存じております。
  86. 相澤重明

    ○相澤重明君 これは田畑に共用という昔からの池あるいは草刈り場等があるわけです。これはしかし、その村の財産あるいは町の財産ということであったわけですが、戦後にはこれは国有財産に登記がされておるわけです。したがって、村なり町なり市なり、そういう地方自治団体が管理をしておるわけでありますが、この管理しておるのは公共用のためには当然今あなたの言うように無償で申請があった場合には払い下げらるべきものと、こう私ども理解をしておったのでありますが、その点を今お尋ねをしているわけです。
  87. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) ただいまの答弁で一部間違っておったところがございますので、訂正させていただきます。  先ほど申し上げましたように、火葬場とか墓地とかじんあい焼却場またはと畜場として公共の用に供する普通財産は、公共団体に無償で譲与いたすのでございまするが、そのほかに、公共団体において緑地とか、公園、ため池、そういったものに供する場合におきましては、無償で貸付をするという規定に相なっておりまするので、これはまた公共団体に無償で貸付をするというような措置を講じておる次第でございます。
  88. 相澤重明

    ○相澤重明君 これは、貸付だけだったですか。公共のためには無償で譲渡されることになっていたのではないですか。今の点は、どうですか、貸付だけですか。つまり、たとえば横浜市に昔のそういう農民の使用しておったため池がある、そのため池を今度は市がその公共用地に使う、そういう場合にはこれは無償譲渡ということになっておったのではないですか。いま一度御答弁いただきます。
  89. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 国有財産法の二十八条に譲与の規定がございましてて、こちらのほうは無償で譲与することになるわけでございますが、その規定の中には「火葬場、墓地、じんあい焼却場又はと畜場として公共の用に供する」と、そういうふうに規定がされております。他方、貸付のほうの規定は、国有財産法の二十二条に設けられておりまして、こちらのほうにはため池がございまして、これは貸付をいたすというように規定ぜられております。
  90. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の貸付だけだということになると、地方自治団体の帳簿には載らないことになり、取得ができないことになるわけですね。載らないことになって、あくまでも国有財産ということになるわけですよ。ところが地方自治団体が、今度はそこに埋め立てなら埋め立てをして、学校を作る、あるいは市役所を作る、こういうことになると、それがいつまでも国有財産ということになると、それは処理の方法として非常に私はまずいと思うのですね。したがって、それはもとをただせば、そこの市の共有地であり、あるいは町村の共有地である。ところが、近代都市になったために、まわりが住宅なり工場地になったために、そこのため池だけが残る。その場合に埋め立てなければならぬ、それを市町村が公共用地に使う、そういう場合には私は無償譲渡という形をとると考えておった。そうじゃなかったのですかね。その際にも、今あなたの言うこの無償譲与の規定に「等」という字はなかったですか、それは。はっきりとと畜場であり、あるいは河川であるというような、そういう規定でもってぴしゃっと押えておりましたか。
  91. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 今、私、この二十八条と二十二条を読んでおるわけでございますが、ここには「等」という規定はなくして、それらの今申し上げましたようなもの、そのものを規定いたしております。したがいまして、これらの用途を限定いたしまして、そういう用途に供すれば、それぞれ一方のほうは無償の譲与をいたしますし、他方のほうは無償の貸付をする、こういう規定になっておるわけでありまして、それらの用途という見地からながめますれば、これはこれらの規定で事は十分果たせるのではなかろうかと考えるわけでございます。今お尋ねのようにため池を埋め立てまして、別に学校を建てるというようなことに相なりますれば、今度は学校を建てるという目的から見て、どういうようにこの国有財産を措置するか、こういう問題に相なろうかと思うわけでありまして、そういたしますと、一般的には、学校用地といたしましては、別に国有財産を売り払うというようなことにまあ相なるわけでございまするので、そのように、その用途あるいはそのときの目的に応じましてそれぞれ国有財産の処分が決定せられるものと考える次第でございます。
  92. 相澤重明

    ○相澤重明君 まあ大体これで終わりたいと思うのですが、そうすると、こういうことになりますね。明治時代に村の共有ということで、草刈り場なり、ため池を作っておったのが、これは法律改正によって一応供出になって、国の帰属になっているわけですよ。ところが今度それを、今のあなたの説明でいくというと、それを今度は、自分たちのものを、一応登記上国になったけれども、これを今度は金を出して買うということですね、そういうことになるのですか。
  93. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 従来の経緯はいろいろあると思いますが、一応それは国有財産に編入せられた暁におきましては、今度は国有財産としての新しい見地から処分が決定せらるべきものと思うわけでございます。したがいまして、従来ため池等が地方の公共団体においていろいろ使用せられておったという経緯を考えまして、国有財産法では、それを無償で貸し付けまして、事実上従来の使用関係を継続していくということでまあ処理されているわけでございますが、これがまた別個に埋め立てて、学校を建てるというような用途に変換が行なわれるということに相なりますれば、今度は国有財産をどのようにこの際処分をするか、またその処分がどうしたら適正であるかという見地から処理せらるべきものであろうと考えられますので、そういった場合におきましては、貸付を返還していただいて、新しく売り払うというような措置に相なろうかと考える次第でございます。
  94. 相澤重明

    ○相澤重明君 その次に国民金融公庫、銀行局長にお聞きいたしますが、国民金融公庫の三十五年度の御報告をいただいたわけでありますが、この中で私ども考えられることは、非常に借り入れ申し込みが多いということですね。で、政府としては、先ほど次官から御説明をいただいた各金庫に対するところの出資増加をしているのでありますが、この三十五年度の中で、借り入れ申し込みに対して貸付の実行が実際には非常に少ない、こういうふうに私どもは受け取っているわけでありますが、その中で、貸付が実際にできないという対象の件数はどのくらいあったのか。これはどうも不適格である、こういうものがどのくらいあったのかしかも、貸付の対象としては適格であるけれども、資金の上からいって、順序からいってこれだけのパーセンテージになった、資金の需要量からこれだけできなかった、こういう点も国民金融公庫のほうから銀行局長のほうには報告があると思う。そこで、銀行局長のほうではどうしてこれを満たすように努力をしたかということが、私は一番、零細借り入れの対象者である国民の立場からいけば、国民金融公庫にたよることが多いのでありますから、その資金不足のために貸付に至らなかったのはどの程度であるか、こういう点を報告をひとつしていただきたいと、こう思うのです。
  95. 大月高

    説明員(大月高君) ただいまのお話の中で、申し込みに対して貸し出しをした比率は低い、その原因の中で、実際は貸し出しの対象になり得ない不適格なものと、適格ではあるけれども金がないということで断わったのと二つあるはずだと、その分類と、こういうお話だと思いますが、われわれの審査いたしておりますところでは、その二つの区別が統計的にははっきりいたしません。われわれの審査の段階といたしましては、まず適格であるかどうかという判断をいたしまして、適格なものについては極力これを充足するというように努力いたしておるわけでございます。手続の関係あるいは資金、審査の時間、こういうようなことから、相当申し込みに対して時間的におくれるというようなこともあろうかと思います。しかし、三十五年度自体の数字について調べてみますと、原因はいろいろございますけれども、充足率は五七%ということになっております。三十四年度におきましては、伊勢湾台風がございまして、その関係で非常に申し込みがふえたわけでございます。三十四年度の三十三年度に対する対比におきましては、一八・二%、そういうような増加を示したわけでございます。で、三十五年度におきましては、その裏が出ておるわけでございまして、三十四年度に対しまして四・七%増というようなところにとまっておるわけでございます。そういたしますと、結局申し込みに対する貸し出しの率から申しますと、三十四年度に比べまして三十五年度は若干融資率は上がりまして五七%、こういうような数字になっておるわけでございます。
  96. 相澤重明

    ○相澤重明君 政府に対して、今の貸付条件に不適格であったものと、それから資金需要において、対象にはなるけれどもこれが満たされなかった、こういう点についての今のお話を聞いたわけでありますが、国民金融公庫のほうでは、これはどういうふうに区分けができておりましょうか。三十五年度に、この申し込み件数の中で不適格だと、こういうふうにして却下をしたものは何件ぐらいある、それから適格の中で、いわゆる貸付ができなかったもの、こういうふうに区分けをしてひとつ報告して下さい。
  97. 内田勇夫

    参考人(内田勇夫君) ただいま資料を持ち合わせございませんので、後ほど答弁さしていただきます。
  98. 相澤重明

    ○相澤重明君 それくらいの資料はそろえて持って来べきである。決算委員会に。あとでその資料を出していただきますが、その次にお尋ねしておきますが、国民金融公庫が貸し付けておる中で、二十万、十万というのがあるわけですね。それから中には百万というのもあるでしょう。そこで、この十万ぐらいの対象のものは何件ぐらい、二十万ぐらいの対象のものは何件、百万はどのくらい、百万以上というのはどのくらいであるかというような資料はおわかりになりますね。それではそういうのを資料として作成をして、三十五年、六年、その二カ年資料を当委員会に出して下さい。  そこで、これは大蔵大臣にひとつお伺いをしたいのでありますが、大臣も時間で忙しい中出席されて御苦労さんです。そこで、国民金融公庫というのは一番金額が少ないわけですね。借りる人は多くて、借りる金は少ないわけですね。額の少ないのが大ぜい申し込む。そこで現在の十万なり二十万なりというこの単位の金というものは実はやむを得ず、もう仕方がない、国民金融公庫がなかなかそれ以上は貸してくれぬ、もっとほしいのだけれども、二十万でがまんしておく、こういうのが多いと思うのです。そこで、限度をもっと上げる考えは大蔵大臣は持っているのかどうか、この点をひとつお答えをいただきたい。
  99. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 国民金融公庫の内容そのものに対してはこまかく勉強いたしておりませんが、限度は五十万ぐらいを平均にしての目標のようでございますが、現在の状況では、平均すると十七万ぐらいにしかなっていないと思いますが、この分でいくと十七万から十万に下がってくるのではないかという問題に対しては憂慮いたしております。この問題に対しては、私も大臣就任後、一体これを二十万に上げ、三十万に平均を上げていくのにはどうすればいいかということを、財源的な問題とあわせて十分検討するようにというとことで今鋭意事務当局をして検討せしめておる段階でございます。国民金融公庫の持つ社会的な影響、今申されたとおり借りたいのだけれども、財源がないということで、非常に貸し出されておる平均を割る、十七万円から十八万円というような低位の水準にありまして、これではこの公庫の持つ使命を遺憾なく発揮するというわけには参りませんので、三十八年度から将来に対する国民金融公庫中小企業金融公庫また商工組合中央金庫等のいわゆる中小企業対象の三機関の問題に対しては十分検討して、その機能を発揮するようにして参りたいという考えでございます。
  100. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 この際公庫のほうにお伺いしておきたいと思うのです。この三十五年度決算の報告によりますと、中小企業の貸し出し、特に年末期の貸し出しが非常にふえたんだといっておりすまが、この年末金融融資の内容と申しますか、一体どういうのに貸すのか、あるいは貸さないのかということをひとつお伺いしたいと思います。最近は日銀の査定がきびしくなって参りましたものですから、市中の金融機関に金融筋が金を借りに行きましても、運転資金、生産資金には貸す、しかし、賃金資金には困るんだと、非常にきびしく押えられておる。しかし、賃金は生産の根本になるのですから、運転資金を優先するなら、賃金資金も優先しなければならぬと思うのですが、原則として賃金資金融資しないというのが市中金融機関の実情なんです。そこで国民金融公庫なり——中小企業金融公庫は別ですが、国民金融公庫が年末期に非常に貸し出しが多かった、約五十億円の貸し出し増があると思うのですが、その場合に、あくまでも業者のほうから運転資金、そういうことで来た場合には貸しておるけれども、年末に賃金が足らぬ場合には、それは貸さない、そういう処理をされておるかどうか、国民金融公庫のほうにお伺いしたいと思います。
  101. 石田正

    参考人石田正君) 運転資金ということの中には、これは事業をやっていきます場合にいろいろなものに使われるわけでございまして、今のお話にございました賃金の支払いの問題でございましても、一時的にその時期におきまして賃金を支払う必要がある、すぐにまたその事業が動くのであるということでありますならば、広い意味の運転資金という中に含めましてわれわれのほうは融資をするということにいたしております。
  102. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 そういたしますと、この年末金融の融資ということの場合には、いわゆる、たとえば賃金でなしに一時金ですね、年末手当、これはどういうふうに解釈されておりますか。
  103. 石田正

    参考人石田正君) これは、われわれのほうといたしましては、同じ賃金の中でございましても、定期的に支払われるものであるとか、あるいは手当のように一時的に出るものとか、そういう区分によりまして融資をするということはいたしてございません。先ほど申し上げましたような工合に、全体の資金が不足いたしておる、そういう原因はどういうところからきておるか。税金の問題もございましょう。それからまた賃金の問題もございましょう。一時金の問題もございましょう。また原料手当の問題もございましょう。あるいは工賃の先払いの問題もございましょう。それらを含めて、よく内容を見まして、その上で、これは運転資金としてどのくらいの額を出すのが適当であるかということによりまして額をきめてお貸しをするということをいたしております。
  104. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 そういたしますと、公庫のほうでは、労働者の賃金なりあるいはそれに見合うところの一時金等は、当然生産の上に必要であるから特に分けていない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。銀行局長は、やっぱりそういうふうな方針で指導されておりまするか、その点伺いたい。
  105. 大月高

    説明員(大月高君) 総裁のお話のとおりです。
  106. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 実際は、各企業者は市中銀行のほうに融資の要請をしても、はっきり分けて、日銀のほうの審査がきびしいから、特にその場合賃金その他は貸付の対象にしてはいけないという態度であるから貸せないということが実際にあるのですが、その点どういうふうにごらんになりますか。
  107. 大月高

    説明員(大月高君) 一般の市中金融の原則におきましては、設備資金あるいは運転資金、それぞれ実情に応じて貸すことになっておりまして、賃金支払いのために必要とする原資につきましても、これがコマーシャル・ベースに乗るということでございましたならば、応じておるわけでございます。で問題は、多分賃金の問題というのは、たとえば相当企業の状況が悪くなって退職者がふえると、その退職金の支払いに充てるために貸してほしいというふうな場合に、はたして退職者がそれだけ出まして、残った人員でうまく企業が維持できていくのかどうか、収益を上げていけるかどうかという全体の判断において、適当かどうかということを見て、貸すか貸さないかをきめておるのだと思います。そういう意味で、賃金の支払いにつきましても、その賃金支払いのための融資をやりまして企業がうまく回っていくかどうかという全体の判断のもとに融資をいたしておるわけでございまして、賃金の支払い資金は貸さないというような、実情に合わないことはやっておりません。
  108. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 退職の場合とか、そういうふうな新しいひとつの事態が起こった場合というふうにおっしゃっていますが、実際はそうではなしに、鉄鋼、造船等の大会社がいろいろの資金繰りの事情から、会社の経営としては順調にいっておるのだ、しかしながら、金融引き締めのために資金繰りがむずかしいのだ、そういうことのために、下請けの企業に対して支払うべき手形の決済なり、あるいは今まで現金で払っておったものを手形にする、あるいは手形三月以内のものが四月になった、半年になった、こういうことのために、会社自体の経営は順調に進んでおるけれども、実際には金が回らない、そのために賃金が払えない、あるいはことしの夏、御存じのとおり、一時金がほとんど三分の一ないし三分の二は社内預金になった、こういうような実情にあるわけですけれども、それらの企業が全部下向きの企業ではなしに、生産の実態としては上がってきておるわけです。経営としては黒字でおるわけなんです。ところが資金繰りが悪い。そこで、銀行のほうに申し入れましても、運転資金は貸そう、しかし賃金のほうは貸せないのだということで、賃金遅配の原因を起こした。だから、賃金遅配は、経営が悪いから賃金遅配が起こっておる場合もありますけれども、経営自体はいい、生産自体は上向きの状態にある、しかも賃金が払えない、こういうことが起こってきている。日銀の査定があるからという銀行の態度であるのが実は私たちの承知しておる実態なんです、例を申し上げてもいいけれども。こういうようなことについて、今の局長の御答弁とはだいぶ違いますので、もうちょっと御指導の方針だけを承っておきたいと思います。
  109. 大月高

    説明員(大月高君) やはり賃金の支払い資金も運転資金も中に入っておりますから、賃金の支払い資金は貸さないがほかの運転資金なら貸す、こういう区別はございません。やはり企業全体の資金繰りを見まして、その企業がうまく回っていくようにということを考えて融資いたしておるわけでございます。
  110. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 それでは大蔵省としては、金融機関に対して、賃金が運転資金の中にあるものであるというふうにはっきり理解しておるというふうに私たち解釈したいと思うのですが、よろしゅうございますね。
  111. 大月高

    説明員(大月高君) そのとおりでございます。
  112. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 そこで、まあ関連質問一応終わりたいと思いますが、これは大蔵大臣にお願いいたしておきたいと思うのですが、実際は、今申し上げますように、会社の経営は上向きになっておる。ところが、大会社、親会社のほうの支払いが延びてくるので、だんだん資金繰りに困難をして、それが労働者の生活に直接影響のある賃金であるとか、あるいは一時金等に関連をしてきておる。年末はまたたいへんでございますので、賃金その他一時金等も運転資金の中にあることになりますると、中小企業の育成のために十分ひとついろいろ御配慮願いたいと思いますから一応申し上げておきます。
  113. 相澤重明

    ○相澤重明君 大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、三十五年度のこの財政投融資計画及びその実績をまあ先ほど次官から御報告いただいたわけです。そこで、私はひとつ基本的な問題としてお尋ねをしたいのでありますが、政府がこの予算委員会で財政政策の審議の際に、財政投融資計画が当然まあ発表されるのでありますが、現在の財政法上からいけば、これはこの財政計画そのものは議会の承認を得る必要はない、あなたの権限である、こういうことになっておるわけですね。しかし、このたびこの財政投融資計画というものが改定をしなければならぬと、これはこの経済の伸びや、その時の情勢を判断すればそういうことが生まれてくるわけです。ところが、まあ三十五年度の先ほど御説明を聞きましたが、特に今年度、おとといですね、私ども参議院で産投会計を可決したわけだね。そういう問題から見て資金需要というものを考えていった場合に、財政投融資計画というものが政策面とどういうふうに実は関連をしてくるかということは、関連の産業としてきわめて大きい問題だと思う。そこで、まああなたもずいぶん研究されておるし、その中でもまあエキスパートだともいわれているのだけれども、財政投融資計画について議会の承認を得るということが将来は一番大事なことじゃないだろうか、こう思うのだが、あなたどうでしょう。
  114. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、憲法は三権の建前をとっておりまして、行政府は当該年度の予算を編成をして国会の議決を経てこれを使用するということになっております。で、国会の議決案件として出されるものは、一般会計特別会計の予算に関するものでありまして、財政投融資はこれに含まれないということは御承知のとおりでございます。しかし、なかなか世の中が複雑になって参りますと、財政と金融との調整をいかにうまくするかということが政治経済の一番重要な面を占めるわけでございます。で、今までは財政でまかなうものと一般金融でまかなうものの二つに大別せられておったわけでございますが、時代がこう非常に複雑微妙になって参りますと、コマーシャル・ベースに乗らないものもたくさん出て参りますし、それから一般会計でまかなうには法律上疑義もあるという問題がたくさん出てくるわけでございます。しかも、まあそういう意味で、一般コマーシャル・ベースとそれから財政との中間に位するものを救済する意味で作られているものが今の財政投融資でございます。しかし、財政投融資というのは、いずれにしてもコマーシャル・ベースに近いものというよりも一般会計に近いものの分野をこれで補完的な使命を果たすために作られたものでございます。しかし、この対象というものも非常に時代の変遷によって変わってくるわけであります。特に、こう経済のテンポが早いと、今までは、これは一つの例でありますが、財政投融資の対象とするものに対しては相当限定をせられておったものが、時代の変遷によって、全く私企業であってコマーシャル・ベースでなければならないものでさえも、その財政投融資のワクの中に飛び込んでくるものがあります。現在、私鉄とか電力とか、それからもう一つは石炭とか、こういうものはもう完全に私企業ベースで金融の対象になっておったものが、時の変わりによって一部財政投融資をもってまかなわなければならない、その対象にしなければならないというような議論も生まれるわけであります。そういう意味で予算は単年度制をとっておりますので、こういうテンポの早い時期には、財政という、いわゆる国会の議決を経てやっていくということだけではなかなかまかなっていけない。そういう意味で憲法上も法律上も国会の議決を必要としないわけでありますが、あなたの言われるように、一面には非常に重要であるし、日本の産業経済政策の生殺与奪の権さえ持つような財政投融資一般会計と同じように、理論的には議決案件としたほうがいいのじゃないかという議論と、もう一つは、銀行と同じくらいに非常に融通自在で適時適切な投資を行なうためには、議決案件としないで、今までよりもより弾力的な運用ができるようにしなければならぬと、まさに相背反する議論が二つあるわけでありますので、これらの問題をどう調整していくかは、これからの大きな課題であるというふうに考えておりますが、私としては、この間大蔵委員会でも申し上げましたが、戦後作られた金融関係その他非常に手きびしいワクがはめられておりますために、現在の金融経済に対応しない組織もたくさんありますので、そういうものを弾力的に運用しなければならないという議論の出ておる現在、財政投融資国会の議決案件とするということは逆行的なことではないかというふうに個人的には考えておるわけであります。
  115. 相澤重明

    ○相澤重明君 その田中さんの御研究されておることも、一面私もやっぱりあると思うのですよ。しかし、考えてみると、先ほど申し上げたように、産投会計を改正をして出してくることや、それから終戦後の今度は簡易保険の支払いというようなことも考えて、資金需要というものはきわめて私は窮屈になるような気がする。そうすると、政策としては、政府の政策というものは国民の期待する方向に持っていくのだけれども、それに伴う資金需要というものを一体どうするかということは、やっぱり相一致しない面もあるというふうに思うわけです。ですから、ある程度の窮屈な面があっても、私はやはり財政法上に規定をされておらないからというだけで財政投融資計画というものを、今あなたが大蔵大臣だからいい悪いというのじゃないのですよ、どなたがやろうとも、やはりこれは大蔵大臣のそのときの考えだけではなくて、一般にやはり十分理解をしてもらう、こういうことが私は必要ではないかという気がするのです。これは確かに財政経済通でもそれは両論ありますね。両論あるけれども、これからの今あなたのお話のような困難な経済事情の中でいけば、ますますそういう気が私は強くなるわけなんです。そういうことで、一度これはぜひ政府も真剣にひとつ御検討いただいて、できれば国会の議決を求める、こういうようにしていくほうが私は将来のためになるのではないかという気がするのです。これは、気がするのです。あなたの言う意見もあるし、私が申し上げたような意見も、両論あるのだけれども、ひとつできればそういうふうにするほうが、かえって計画経済になるのではないかという期待を持つわけです。そういう点で御検討をいただきたいと思うのですが、大臣どうですか。
  116. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) もちろん検討しないわけじゃありませんし、検討はいたしますが、しかしもうこの問題は、私の言う議論をひとつ納得いただきたいと思うのでございます。これは一般会計でも、単年度制度というものに対しては相当議論をせられておるわけです。昔のように非常に平穏な経済状態でありまして、日本が世界経済というような問題とそうかみ合わないでいい状態ですと、単年度もよかったわけですが、非常にテンポが早くなってきますと、一般会計そのものでも一ぺんきめてしまってどうにもならないということよりも、継続費制度を作ったり、五カ年間の相当の見通しを立てながら弾力的運用という面を相当考えなければいかぬということで、昨年度問題になりましたのは、大蔵当局としては、財政法を改正して、一ぺん議決を得たものであっても、その緩急によって弾力的運用をせしめてもらいたいと、こういうことが政府部内に強かったわけですが、私は民間人でありましたので、昨年はあなたの考えに近い考えで、そういうところまでやることは国会の審議権を侵すおそれもあるので、まあ少し検討したほうがいいでしょうということで、去年は財政法の弾力的運用というのは待ってもらったわけであります。それよりももっと時宜に適して適時適切に原資を求めましたり、また必要なものに対しては投資を行なわなければならない、これは私のみではなく、やはり一つの、コマーシャル・ベースではありませんが、融資でありますから——融資出資、投資でありますので、そういうものについては、現在の経済情勢を考えますと、これは国会の議決案件にしたら、今よりもう少し拘束を受けますので、経済が安定するまではどうしてもやっぱり私の考えのように、議決案件でなくても、十分こうして御議論をちょうだいして、国会の意思は十分反映をせしめておるのでございますし、その上なお資金運用審議会の議等を経て、政府は独断にこれを行なうようなことは全然できないようになっておりますので、私はそういう意味で議決案件にはいたしたくないということだけはっきり申し上げておきます。
  117. 相澤重明

    ○相澤重明君 議論をするつもりはありませんが、藤山さんの景気調整の話から池田内閣の国際収支がいいとか、政策がよかったとか、いろいろ池田内閣としてはあるけれども、私はまたあなたの野にあるときの考えが大臣になったら急にどうして変わったのだろうという面も実は少し持っておった、これは少し持っておったのだけれども、そこでひとつ、あなたの今の理論でいくと、こういうことは大臣考えますか、まあ非常に財源が窮屈になってくることは、これは事実ですね。そこで、一般会計からの繰り入れということもなかなかこれはたいへんだ、一面返済をしなければならぬ先ほどの簡易保険等の問題も出てくる、産投会計支出もある、こういうふうになりますと、これだけの需要関係を考えるというと、やはりその補完として国債発行すると、こういうようなことをやはり検討されておりますか、いかがでしょうか。
  118. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) なかなか重要な御発言をいただくわけでありますが、私はいつも申しておるのですけれども、今の財政法その他金融関係法そのものが戦後の日本の状態を基盤にいたしまして、非常に狭義に、非常に拘束的な条文であることは御承知のとおりでありますが、昨年、昭和二十八年、九年、三十二年、今年度というふうに、ここ二年、三年たつと引き締め調整、そういうことをやらなければならないようなことを何回も繰り返すべきではないと思っておるわけであります。そういう意味で来年三月まで待たなければいかぬと考えておった国際収支の均衡も、まあようやくはかられつつありますし、国内均衡もはかられつつあるようでありますが、しかしこれからはひとつ相当長期の見通しを立てて安定経済の道を開かなければいかぬ、こういう原則的な考え方からいたしますと、まあせっかくある法律、制度、機構でありますので、まあこれが非常に障害になる場合は別でありますが、そうでなくても、日本人は、ゆるめるのではないか、また濶達自由自在にやれるのだというふうにもなりますし、社会党の皆さんからなどは、あまり自由経済の本領を発揮するから経済が伸び過ぎるんだというような御注意等もありますので、十分そのような御議論を慎重に検討いたしますと、もうしばらくは現在の制度また機構等を守っていくことが健全財政の道だというふうに考えておりますので、まあ特に対米債務の支払いもございますが、産投会計財源補てんのために産投国債発行する意思はございません。また、現在国債発行の意思もございません、こういうので、明らかにお答えをいたしておるわけでございます。こういう問題は、一政府の考えの問題ではなくて、広い意味で各界の有識者の意見を見定めながら慎重に検討して参るべき問題だと考えております。これらの問題に対しましても、いろいろな、金融制度調査会その他でもって検討している問題でありますので、何かかたくなな気持を持って、戦前のように、この法律のある限りどんな現象が出ても、これで押し通すのだというような考えが通るはずはないのでありまして、絶えず日本の経済、金融、財政の全般に目を配りながら勉強をして参るという現段階でございます。
  119. 相澤重明

    ○相澤重明君 大蔵大臣が慎重な答弁をしておるから、なかなかこれは、どっちをとるかという——今度はあなたの答弁の解釈をどっちにとるかということに苦労するわけですよ。実際には苦労するわけですが、まあ大臣もそういうふうにお話しになっておるから、産投国債も、また外債も考えておらぬと。まあそれはそれといたしまして、ずいぶん三十八年度は、先ほど午前中にお尋ねすると、まあ総ワクはお話しになっておりませんでしたけれども、かなりの各省庁の要求額があるということになると、予算編成としてはずいぶん田中大蔵大臣も御苦労されるだろうと思う。そういうふうになると、一体この三十八年度一般会計のはたして財源的余裕がどの程度あるのかと、こういう点、ちょっとわれわれも心配になるわけです。そういう点は、大臣はどういうふうにお考えになっているのでしょう。
  120. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 一般会計及び財政投融資原資等がいずれにしても窮屈であるということは、御指摘のとおりでございます。しかし、まあ三十四年、五年、六年、七年というものは、これはもう異常に経済が伸び過ぎておりますために、多額の余剰財源が求められたわけでございますが、しかし、まあこういう特に三十六、七年の大幅増収というようなものは平常のものだとやっぱり考えておると、一般会計でもって二割——二割四分もワクが広がるということに比較をしますと、財源は非常に少ないだろうということでありますが、健全な日本の経済発展というものを考え、財政投融資一般会計が持つそのウエートというものを十分検討すれば、三十八年度の予算が組めないというような考え方ではないわけでございます。まあ二兆四千二百億余の非常に大きなものではありますが、これでもっていいところは全部消費をされて、支出をされて、足らないのかと、こういうと、一面においては、追加補正等をもってまかなわなければ——財源も必要ではありますが、その反面、一般会計から繰り越すものも相当あるわけでございます。まあ公共事業一つをとってみても、年間四百億、五百億、多ければ六、七百億も繰り越されるものもあるのでありますし、現在の二兆四千億というものは全然動かないものであって、国民が必要とするものは全部それに上のせをするんだと、こういう考え方でいくと、非常にむずかしいという議論も起こり得るのでありますが、たえず過去の問題に対してメスを入れ、この決算委員会でおやりになっているような立場で、みずからの姿勢を正しながら、今までの一体予算の中に、より合理的な、効率的な投資ができないのかというような問題を検討していけば、私は国民が納得する健全な、しかも均衡のとれた予算財源は求め得るだろう、また求めなければならないと、こういうことを考えております。私自身が、原則的に財政投融資であっても何でも全部できないという見通しであれば、幾ら何でも、産投国債発行いたしません、国債発行いたしませんなどということを言うわけはないのでありまして、こういう問題に対しては、ほんとうに姿勢を正し、国民の理解を求めていくならば、合理的な予算を組み得るし、また組まなければいかぬという見解に立っているわけでございます。
  121. 相澤重明

    ○相澤重明君 それから一つ大臣にお伺いしておきたいのは、三十七年度の税自然増収は、どのくらい見込まれておりますか。
  122. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 三十六年度は御承知のとおり三千五、六百億もあったわけでありますが、三十七年度は、とてもこのような情勢にはございません。まあ何回か臨時国会で議論になったわけでありますが、現在までの状態では、四−六月において、月平均百二、三十億、多い月は百五十億ぐらいの増収になっておりますが、このままでいけば、計算すると千七、八百億もあるのか、こういう議論になりますが、これは減税前の旧税法によって徴収されているものもございますし、それから酒税等も、半分は値下げ前であるというような問題もございますし、それから九月決算は引き締め調整基調で、非常にまあ幾らか決算上はまだ利益計上できるとは思いますが、三十六年度決算をしたような、含みを持っての、余裕ある決算等が可能だとは考えておりませんので、年間を通じてみると、自然増収は昨年のまあ半分も見込むわけにはいかないということで、相当財源的には窮屈だという表現をいたしておるわけでございます。
  123. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 関連して。今、一般の税収についての一応の見通しが質問されたのですが、そこで財政投融資原資計画についての見通しをちょっとお伺いしたいと思う。三十五年度の財政投融資は五千九百四十一億、それが三十六年度には七千二百九十二億、三十七年度には八、千四百億と膨張してきているわけですけれども、このうちで資金運用部の資金が、三十五年度は三千四百十六億円、三十六年度は四千二百九十七億円、三十七年度は五千三十一億円と、ふえているわけです。そこで税収の問題と関連するわけですが、この間の大蔵委員会でちょっとお伺いしたかったのですがやめたのですが、郵便貯金が三十五年度に千三百億円であったものが、三十六年度では千四百五十億円、三十七年度では千五百億円と、伸びがだんだん鈍化しているわけです。ところが厚生年金は、三十五年度には七百七十億円であったのが、三十六年度は千四十億円になり、三十七年度には千三百二十億円になっております。そうして国民年金が三十六年度から始まって、三十七年度は四百億円、こういうふうになってきているので、三十八年度は厚生年金と国民年金は順調に伸びるのですけれども、任意貯蓄であるところの郵便貯金は、やはり税収入の鈍化と同じように、あるいは低下と同じように、鈍化するのではないかと、こう考えられますが、三十八年度資金運用部の郵便貯金がどの程度伸びるか、あるいは厚年と国民年金がどういうふうになるかということについての一応の見通しがあれば、お伺いいたしておきたい。
  124. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まだ、今申し上げたとおり一般会計の税収の見通しもつかないということを申し上げている段階においては、これらの問題に対して見通しをつけるということは非常にむずかしいと思います。がしかし、厚生年金とか国民年金の問題は、これは今仰せられたように、いろいろまあ運用上の問題がございますけれども、収入原資としては伸びていく傾向にあるということは御指摘のとおりでございます。しかし、伸びていくものと来年還付の資金の集中的な返済期というものが一体どうバランスするかという問題はございますけれども、一応二つのものは伸びていくだろうと考えます。三十二年千五百五十億の見通しを立てて三十二年には千五百五十億を幾らか割った郵便貯金が、今年度もうすでに満五年余を経て、同じく予算ベースは千五百五十億でございますが、じゃそれはどうして伸びないのか。確かにこの問題に対してはいろいろ両院においても専門的な御意見で指摘をせられておるわけでございますが、現在の見通しでは、私は郵便貯金は千五百五十億の予算ベースよりも確かに幾らかふえるだろうという考えであります。現在もうすでに千六百五十億か千七百億ぐらいの見通しがつくようでありますが、このような状態でいいのかどうか。まあ、零細な国民のもちろん魂の入った金でありますから、これが千八百五十億、二千億というようなものを見込むためにはどういう措置をしなければならないかというような問題に対しては、まじめに現在検討をいたしておりますが、最終的な結論はまだ得ておりません。
  125. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 相澤委員の御質問が減りますから、もう一度申し上げて私の関連質問を終わりたいと思いますが、今おっしゃいますように厚生年金なり国民年金なり、いわゆる強制の貯蓄制のものが勤労者のふところから吸い上げられて財政投融資の大きな原資になると、こういう中で財政投融資国会の議決を経るような方法はとりたくないというようなことなんですが、したがって、財政投融資の今後の運用につきましては特に今おっしゃったように厳正に、しかもこういう財政投融資原資を出しておるところの人々のためにこれが活用されるということを、やはり運用の面において十分お考え願わないと困るのではないか。したがって、先ほど申し上げました中小企業等が一生懸命商売——仕事しておって、困るというようなことがあるということはあくまでも避けなきゃならぬので、その点ひとつ優先的にお考え願うことを御希望申し上げて、一応関連質問を終わります。
  126. 相澤重明

    ○相澤重明君 それから、これは簡単にひとつお答え願ってけっこうですが、三十五年度専売納付金決算報告を受けたわけですが、たいへんいいわけですな。——そこで、たばこの売れ行きはますますいい、しかも上級が多く出る、こういうことでありますので、ますます大蔵省はほくほくだろうと思うんですが、どうですか、たばこを少し下げる気持はありませんか、値段を。そして、どうせこれだけたくさん売れるんですから、少しは消費者のために値段を下げると、こうしても収益は変わらぬと私は思うんですが、大臣はどうお考えですか。
  127. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) たばこの値下げを行なう意思はないかということは、たびたび御質問もいただいておるわけでありますが、これは現在検討をいたしておる段階にございまして、下げるというようなところまで決定をいたしておりません。それは、専売公社の収入というものに対して、まあ昨年は一〇何%でございますか、二〇%近くきっと伸びておると思いますが、ことしはたばこの売れ行きはあまりよくないんです。これは税と同じことで、オリンピックのたばこなども三億を予定いたしておったところが三百万円も上がらないというので、これから三億円というのが売れるかどうかわからないという工合に、非常に慎重な状況でございます。しかも、このたばこの問題に対しては、去年、税制調査会の答申が三年目でありまして、すなわち三十七年度の今年度でありますが、間接税中心の減税を大幅に行なっておりますので、このたばこの問題もそれにあわせてもう少し減税をしたらどうかというような御意見も一部にはございますが、現在たばこの売れ行きが悪いということと、それから地方税の補てん財源等でまたたばこのほうも使わなければいかぬというような議論も相当ございますし、現在の状態ではたばこの値下げをするという方向には私としてはなっておらぬわけであります。事務当局もなかなか専門家が多いのでありまして、しろうと大蔵大臣の言うことをきくよりもということで、私に何かいろいろ申し込むようなこともありますし、水田大蔵大臣が前の衆参両院の大蔵委員会でこういうことを申し上げておりますというようなお話もございますし、また質問もございますけれども、これは財源に関連する問題でありますし、たばこを安くして国民に煙突のようにたばこを吸わせることがはたしていいのかという、ほんとうにまじめなものの考え方もありますので、そういうことを勘案もしながら、これに対して結論を出して参りたいと考えておるわけであります。
  128. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に、私はこれだけで質問を次の人と交代しますが、予算総則九条に基づく原子力損害の賠償に関する法律の問題であります。これはもちろん原子力委員会、科学技術庁長官のそれぞれの監督下にもある問題ですが、予算の問題があるから大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、その第七条に基づけば、「原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であって、その措置により、一工場若しくは一事業所当たり五十億円を原子力損害の賠償に充てることができるものとして科学技術庁長官の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であって科学技術庁長官の承認を受けたものとする。」、こういうことで第七条が規定され、そして第八条の「原子力損害賠償責任保険契約」、これに基づいて政府としてこの二十六億の予算化ができておると思うのです。そういうことですね。そこで私は、この扱いというものが、これは毎年事故がなければ支出がないわけでありますから、そこで事故があった場合に、当面予算化した二十六億の中から支出をされ、そして、なければそれは翌年はまた同じように予算化をしていく、こういうことであって、最大の事故の起きた場合に五十億までは公社としては払えるけれども、それ以上足りない場合には政府がまた予算化をしなければならぬ、こういう解釈でいっておると思うのです。そこでますます近代国家になった場合に、一旦事故が起きた場合には一事業所という規定をしておるけれども、確かに東海村等の問題だけで焦点はあるようですが、私は先日も文部省の決算をやったときに、各大学を初めとして民間の会社でも原子力研究というのは盛んに行なわれつつあるわけですね。単にこれはまあアメリカの法律をとって作ったものですね。そういうものからみて、これだけでいいだろうかという実は心配があるわけですよ。私は実は今、各大学の法学部長等の意見を聞きながら、当参議院の法制局の意見も徴しながら、実は国家賠償法の問題を今研究しておるところなんです。そこで、そのうちの重要な部面における原子力損害賠償、これについてむしろ使わなかったからこれが不用であるとか、これは積み立てをしておかなくてもいいということでなくて、もっと資金的に政府自体として今後考えていくべきではないか、むしろ私は積み立てをしていく必要があるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この原子力損害賠償政府としての扱い方について、ひとついま一度御趣旨を説明願っておきたい、こう思うのです。
  129. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 技術的な問題に対しては事務当局をして答弁せしめますが、御承知のとおり、旧憲法時代の国家賠償法は、主として公務員の過失及び公務員の責任に帰すべき不当な処置等において行なわれたものに対して、国家賠償法の適用が行なわれると、こういう非常に狭義のものであったわけであります。今度の予算総則によるものは新しい今までの国家賠償法でもって規定できなかったような新しい事態に対して、あらかじめ予見し得る事態もございますので、これに対する対応策として予算総則の規定を置いたわけであります。これに対して、普通は大災害が起きた場合は、災害と同じものであるから臨時国会を開いて補正予算を出せばいいじゃないかと、こういう議論もすなおな議論としては一つありますし、もう一つはそういうような憂いのある、おそれのあるものに対しては、税法上で認められておる危険負担のために対しては積み立ての制度を認めておるような、そういうものを法制上作るべきであるということも、議論としては当然起こり得る議論でございます。こういうものは、まだ原子力の問題については日本も日が浅いわけでありますし、各国の例も見ながら、これら新しい基礎産業といいますか、研究その他に対して、ことに学校でもってやっておる、表に出ておらないものでもいろいろな弊害を起こしておるものもありますし、このごろ化学工業の発達によって公害という問題が、これとはケースが違いますが、議論になっておる問題でありますので、これらの問題の調整をどうするかは、これからの重要な課題として検討をし、措置していきたいと考えております。
  130. 相澤重明

    ○相澤重明君 事務当局から条文上の解釈について何かありませんか。
  131. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 突然のお尋ねでありましたので、私あまり十分詳しく存じておりませんが、主計局で予算総則のほうを担当しております立場から申し上げますと、本件の考え方はこの原子力損害賠償補償契約に関する法律の第八条の規定による、そういう場合の政府のいわば再保険的な損害賠償の損失補償、業者に対する損失補償の限度をきめておるものでありまして、いわゆる限度をきめているだけのものでありまして、これ自身繰り越しとか、あるいは翌年に積み立てていくとか、そういう実支出をこれ自身が伴う規定ではございません。損失補償の限度が、たとえば海運などについてかつて損失補償というようなことがございましたが、それの限度額をきめている、同じ趣旨の規定でございますから、ちょっと御質問の点と食い違うかと思います。
  132. 相澤重明

    ○相澤重明君 趣旨は食い違ってはいないのです。そのとおり、今私が文章を読んだとおりなんです。そのとおりであるけれども、これからの近代国家としていく場合にこれでは足りないんではないか、こういう点を私は実は言っておるわけなんです。そこでまあ、今大蔵大臣が言うように、いろいろ私も実は拾っておるわけなんです。その中にたとえば今大臣の言われたような話も出ているわけなんです。海上の問題も、もちろん英国の法律等の研究もあわせてやっておるのですが、火薬の問題、あるいは石油の問題、交通の問題、こういうようなそれぞれの今特殊性を持ったもの、この場合どうなんだろうか、こういうような点をそれぞれ拾っておるところでありますが、私はそれはいずれ法律として出た場合には、そういうこともお互いに議論をすることであるが、今日の場合、一応予算総則に基づいて原子力損害賠償法に規定をしてあるけれども、これだけではどうも少しさびしい気持がする、もっと国民に安心してもらう、こういう場合からいくと、私はこの法律をいま少しそういう方向に持っていく検討が必要ではないか、それが広い意味での、私は今までの旧民法による現在の国家賠償法だけでなくて、広い意味の賠償法というものをそろそろ考えていかなければ、やはり間に合わないのではないか、こういう点でせっかく新しい法律で作ってもらったけれども、どうだろうというので実はお尋ねをしておるわけであります。そういう中ではこの法律でいけば、何も再保険の形の問題でありますから、別にどうこうということではないのですけれども、将来のことを考えると、これはむしろ積み立てておいて、使わなければけっこうでありますから、積み立てておいて、そういう最も困難な時期に私どもはいつでも対処していける、こういう考え方をとるべきではないかという、実は考えを持ったものですからお尋ねをしたわけです。こういう点について事務当局なり、また大蔵大臣としても先ほど御答弁をいただいたのでありますが、今後お考え並びに検討されることがあるかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  133. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 今までのように国家賠償法で片がつくものではないのです。非常にむずかしい技術、科学の発展がもたらすことは当然の要求だと思いまして、国家賠償法として国が法律で責任を負うものの限度も、これは明らかにして一おかなければ、どこまで、すべてのもの——自動車にひかれた人たちや、船で難破をした人たちとか、いろいろなケースがございますので、これは災害等に対して特例法を作るときにいつも問題になる問題でありますが、やはり国家が責任を持つ、法律的な義務を負うという問題に対する限界も現行法でいいのか、もう少し拡大しなければならないかという問題も、もう少し検討しなければならぬと思いますし、保険制度に対しても、今のような考え方と、災害保険のように積み立てていくという方法もあるでありましょうし、その場合、民間と、俗に企業者と政府との持ち率をどうするかという新しいケースの問題が当然考えられるわけであります。これらに対して税法上どういうふうな特例を設けるかというような問題もありますし、広い意味で新しい立法として、また学問上の問題としても、現実上の問題としても、当然検討しておく必要があるというふうに考えます。
  134. 大森創造

    ○大森創造君 この予算の移しかえの問題について大臣でもけっこうですし、どなたでもけっこうですが、二、三お伺いいたします。  まず、昭和三十五年度において、予算の移しかえを行なった金額はどのくらいありますか。
  135. 谷村裕

    説明員谷村裕君) ただいまちょっと手元に資料がございませんから、すぐ調べた上で申し上げます。ちょっとお待ち下さいませ。  ちょっと今総計数字を書いてございませんので、総計の数字を出した上で御返事を申し上げようかと思ったのですが、個々に申し上げれば、国会提出の三十五年度一般会計歳入歳出決算の七ページのところに、職務権限の変更による経費の移しかえ二千九百二十二億四千四百一万五千円、これが職務権限の変更による経費の移しかえであります。これはなぜかと申しますと、非常に巨額でありますが、自治庁が自治省になりまして総理府から移った、こういう組織の変更によるものでございます。それからたとえば通例行なわれております例として、北海道開発事業費の移しかえ百二十八億一千七百四十一万四千円、これは北海道開発費として組んでおきまして、それぞれの実施官庁に移すという例、たとえばその次に、奄美群島復興事業費の移しかえ九千万、あるいはその他御承知のような特別研究促進調整費、あるいは南極地域観測事業費等々七ページからあとに、八ページに出ている数字がそうでございますが、ちょっと総計が書いてございませんので、失礼いたしました。
  136. 大森創造

    ○大森創造君 まああとでひとつ総計をお出し願いたいと思います。  次にお尋ねしますのは、相当巨額に達する移しかえをやっておりますが、その法的根拠はいかなるところにありますか。そういう移しかえの根拠ですね、法的な根拠はどこにございますか。
  137. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 財政法は本来かような移しかえについては特に規定を設けておりません。予算の執行に関しまして、すべて財政法の考え方あるいは憲法の考え方は、国会の議決によって予算を執行するのである、あるいは財政を執行するのであるということが憲法のたしか第八十三条に「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と書いてございますが、この国会の議決という形によりまして、予算の形式といたしましては、予算の中における予算総則というものによって御議決をいただくという形において予算の執行方法としてこれをとっているわけでございます。
  138. 大森創造

    ○大森創造君 予算総則にかかげられている移しかえの条項はどこにございますか。
  139. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 手元にあります三十七年度一般会計予算総則をもって申し上げますと、第三十三条以下でございます。三十三条は、たとえば行政組織の変更に伴って移しかえるような例、それから先ほど申し上げました北海道開発庁に一括組んでおる、あるいは文部省予算に南極観測事業費を一括組んでおる。実行にあたって各省所管に配分していくという例は第三十四条に規定してございます。またたとえば第三十五条に、調達庁に計上いたしました施設提供等諸費にかかる予算の使用について各省に移しかえるというような例がございますかようにして、三十三条以下三十四条、三十五条、三十六条、三十七条あるいは三十八条、三十九条、四十条、四十一条、たとえば特別失業対策事業費等々の規定でございます。
  140. 大森創造

    ○大森創造君 この予算総則の規定によって移しかえを行なうという御説明は納得いたしますが、財政法上の規定はございませんでしょう。
  141. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 財政法上には規定ございません。ただ予算総則でそういうことがまあ可能なようにしてございます。
  142. 大森創造

    ○大森創造君 それが可能だと思いますか、あなたは。
  143. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 財政法の考え方は非常に基本的な原則を示しておると思いますが、財政法の考えております諸般の原則に対して、本件が実質的に悪い例であるか、精神を踏みにじるものであるかどうかということによってきまると思いますが、私どもはこれは可能であり、また財政法の精神に従って国会の御議決をいただいて実行上さようにしていくことが適切であるというふうに考えております。
  144. 大森創造

    ○大森創造君 そういう議論もあるかもしれませんが、厳密な意味でいえば、法制上の解釈としてはそういう考え方は間違っておると私は思う。その精神を生かすとかいっても、やっぱり当決算委員会の目から言うと、これはひっかかる問題です。さっき大蔵大臣のこれの逆な、流動する経済情勢に応ずるための方法としていろいろある、継続費の問題がどうのこうのという御議論もございますが、それはそれとして私はわかります。しかしどうも私はそういう考え方は適当でない。はっきり結論的に言うと、財政法違反ではないかと思う。そこでなぜそうかと言えば、旧憲法時代の会計法と根本的に今の財政法が違うゆえんのものはどこにあると思いますか。あなたのお考えではどういうところが違うと思いますか。今の私が申し上げたいわゆる予算の移しかえという点から眺めてみた場合、旧憲法時代の会計法と現在の財政法と大きく違いがあるのはどこだと思いますか。
  145. 谷村裕

    説明員谷村裕君) 私の考えるところによれば、やはり憲法八十三条の規定を十分尊重いたしまして、かような移しかえを、単に政府の事実上の権限の行使としてやるのではなくて、あらかじめ国会の議決をいただいておいて、それでやるというところが、やはり新しいやり方ではないかと思います。
  146. 大森創造

    ○大森創造君 この旧憲法下での議会の予算に対する協賛は科目と金額だけでございました。科目と金額だけ。所管の区分は議決の対象でなかった。今度の財政法はそうではございません、これは。はっきり予算も、昔の場合は予算もどの機関に配分し、執行せしめるかということは政府の勝手でございました。今そうでない。責任区分を明らかにしている、財政法によれば。だから昔は天皇の大権に基づく官制の移動があれば、たとえば自治省ができるということになれば、それに伴って予算の移しかえは当然のことでありました。今の財政法の趣旨から言うというと、そういうことは不可能だと思うけれども、それは頭のいい大蔵大臣はどうお考えになるか。決して私は予算の移しかえそのものを問題にしているわけではございませんが、どうお考えですか。
  147. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) こまかい技術的な問題は事務当局をして答弁せしめますが、これは原則論といたしまして、国会が議決をしたものに対して、行政府が旧憲法時代のように国会の議決精神さえも踏みにじって適宜適切にというようなことで、政府の自由裁量に基づいて何でも移しかえられるというような弊害を除去するために、新しい現行財政法が非常にきびしく国会の議決を前提とするようにしたことは、これは当然のことだと思いますが、しかし国会の決議をせられたときの意思が忠実に実行せられるということであり、しかも行政府が移しかえをした場合に、国会の議決を経たときと同じ目的で使用せらるるということであるならば、移しかえがせらるるという今の予算総則の表わし方はやむを得ない措置ではないか。こう思います。それはなぜかと申しますと、予算を十二月に決定して一月に出すわけでありますが、提出をするわけでありますが、ときあたかも行政組織の改編等含めて出すわけであります。ところが昔のようにして予算と関係法律案が同時に通るということでなく、国会が非常に慎重審議をするために予算だけ先に通ってしまうけれども、産投法のように通らないというような問題がままありますので、通った場合にはそのまま移しかえをすることが国会の議決を踏みにじるものではない。要は国会の議決、いわゆる国民の代表である最高の意思決定機関の意思が踏みにじられて、他に流用せられるということこそ拘束を受けるべきであって、常識的に考えても、法は国会の意思どおりに運用せられる場合には、長期に拘束をすべきではない。こういうふうに考えているわけであります。
  148. 大森創造

    ○大森創造君 まあ大臣がそういうお考えであれば、ちょっとこれは問題だと思うのだけれども、私の考えでは、予算総則の諸規定というものは、もちろん国会の議決を要しまするけれども、すべて財政法規定に基づいて、ただその範囲内で具体的な方法、金額、限度などを明らかにするにすぎない性質のものである。そうあるべきである。財政法によらないで、政府が勝手に予算執行上都合のよいことを規定して、予算総則を作って、国会の議決を経ればそれでよいという考えは、私はどうも法の精神にもとるものだと思う。先ほど申し上げましたように、私は予算の移しかえそのものを頭から否定しようとは思っていない。しかし、政府がそういう措置を非常にいわゆる変動する経済情勢に対応するために必要だということになれば、おのずから方法があろう。法律を作るなり、それから財政法を改正するなり、何なりして、いずれにしても、財政法に準拠してやるべきであろう。財政法ではないが、予算総則に規定して国会の議決を経たから差しつかえない。これは、そういう考え方は、財政法無視の態度であると思うが、大蔵大臣いかがお考えになりますか。
  149. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 憲法に背反する法律は無効であるということと同じように、そこまで手きびしく言わなくても、財政法に違反するような予算総則であってはならないということはお説のとおりであります。がしかし、これは現実問題として、やはり国会の議決さえあれば財政法に違反してもいいというのが現在の予算総則じゃございません。これは財政法規定に基づいて現在の予算総則を作っておるということだけはひとつお考えいただきたいと思います。それは事例を申し上げると御了解いただけると思いますが、いわゆる農林省予算で計上したものを、また社会保障で計上したものが国防費に使われるとか、全然別なものに使われる場合は、これは別だと思いますけれども、一括して文部省に計上しておったものを一部は北海道に、また一部はどこにというふうに分けなければならない。いわゆる現実的に執行するまでには、法律の整備等が整わないために、予備費ではありませんが、とにかく財政法の精神にのっとった計上の仕方というものがあるわけであります。しかもそれに対しては、特に国会の議決を必要とする。しかもその問題に対しては、準拠法として予算総則で明らかにしておるということは当然踏まなければならない。予算総則で明らかになっておればいいという準拠はどこにあるかということは、財政法二十二条の予算総則に関する規定がございますが、その中の最終の第六項「前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項」というものの中には、今言った移しかえその他当然必要とせらるべき事項の準拠法規があるわけでありまして、この第六項に準拠して予算総則を作っておるというのが事実でございます。
  150. 大森創造

    ○大森創造君 私はその予算総則を九カ条かなんか作って、現実に移しかえをやっている、巨額の移しかえをやっているということ、それは議決を経ればよろしい、財政法の精神にもとらないでいいという考えは、私は少しどこかちょっと間違っているような気がする。この移しかえそのものについての規定はない。流用などについてはあるが、財政法についてはこれはやはり法律そのものを改正して、その改正したもとにおける予算総則の規定ということになるのならわけがわかるけれども、現行法をもってしては幾ら予算総則上並べていても、これは許されないことだと思う。これはあなたのほうが正しくて私のほうが間違っておるというなら仕方ないけれども、これはひとつ大蔵省なり法制局のほうで御研究をいただきたいと思うのです。これは少し議論の対象になるだろうと思うのです。これは失業対策の問題などについては、昭和二十二年当時GHQのほうで一括して安定本部のほうに渡して、それが便利なものだからずっと踏襲して漸次こういう形で行なわれてきたのだろうと思う。現在確かに今の制度上のやり方としては、そういうことが必要であるけれども、現在厳としてある財政法の建前から言うと、そごをすることがあると思うので、この点はもう少し深めた研究をしてもらって、いつかの機会に——先ほども何回も繰り返して述べておるように、移しかえそのものを否定しようとは思いませんけれども、決算委員会の立場からすると、このまま放置していい問題じゃないと思う。もう少し御研究いただきたいと思うのですが、どうですか。あなたの御見解が絶対正しくて、まあひとつおれの言うことに従ってくれというなら、こっちも考えなければいかぬが、どうですか、研究してみていただけませんか。
  151. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 先ほども申し上げましたとおり、全然別なものに流用するわけではございませんので、財政法第二十二条の六項を基準として現行の予算総則は適法だと思いますが、妥当性という問題は、またよりこの種の問題は厳密を必要とするものでありますから、議論の絶えずあるものだそうです。議論のある第六項に対しては、準拠法規の中に流用する場合にはかくかくの表示をすべしというように、明らかにこの条文が改正せられれば、今のような問題は起きてこないわけであります。でありますから、財政法を現在検討いたしておりますので、御説を十分参照しながら考えて参りたいと考えます。ただこの問題昨年財政法の改正が問題になりましたときには、こんな技術的な、非常に厳密なものの考え方というよりも、経済の情勢に対処して弾力的運用をやろう、こういうような考え方で財政法の改正が取り上げられたので、私たちはより慎重にしなければならぬという意味で、あなたに近い意見で出しておるわけでありまして、議論のある問題に対しては明らかに明文を置くというのが法の建前でありますから、そういう方針で検討して参りたいと思います。
  152. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 他に質疑のおありの方はございませんか。——他に質疑もなければ、大蔵省関係の審査は本日をもって終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認めます。よって大蔵省に関する審査はこれをもって終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会