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池田国務大臣 いろいろ輸出ドライブがかかって、換金売りとかあるいは商品を一応表面の契約で送っておるとかにいろんなことも聞いておりますが、しかしいずれにいたしましても、
日本の卸売物価というものが安定していることが、
日本の経済の非常に強みなんです。そうして今、運賃その他
関係上輸入原材量の下がりが輸出品の値下がりよりも非常に大きい。これが
日本の経済の非常に強みなんです。私は卸売物価というものを国際収支、
日本の経済の全体からいうならば、卸売物価は非常に大切だというのは、
日本の経済というものは国際収支がもとをなしておることからくる、輸出、輸入がどうなるかというところからくるのであります。
アメリカのように自分のところに資源が多くて、総生産に対しての輸出輸入の割合が非常に少ないところは、国内経済だけで相当まかないがっきますが、
日本はそういうわけにはいかないものでございますから、そこで卸売物価やあるいは国際収支というものを見ておるのであります。そうして金融がゆるむと申しますが、いかなる
状態を金融がゆるむというのでございましょう。今、
日本銀行の貸し出しは一兆六千億になっております。昨年のこのごろに比べて八千億円近い増加でございます。これが供米代金その他である程度金融がゆるむことがあるかもわからないが、
日本全体としてそう金融がゆるむというようなことはない。一年間で八千億円も貸し出しがふえておる。しかもこの前の
国会では、金利の引き上げが二厘では大へんじゃないか、イギリスは二%やったじゃないか、こういう
議論であります。しかし
日本でも二%以上やっておる。それは公定歩合の引き上げばかりではなしに、預金準備率の引き上げ、そうして第二次高率適用を設けまして、ある銀行におきましては、
日本銀行からこれ以上借りたら二%余りの上昇になっておる、そういう強い引き締めをしております。そこで民間では、このごろでは第二次高率適用を廃止するか、あるいは預金準備率をもとへ返すか、いろいろなことを言っておりますが、しかし今ゆるめろというふうな
議論はまだない。十月、十一月あるいは十二月かという
議論でございます。今金融をゆるめるということは、これは大蔵大臣の専管でございますが、私一個人といたしましても、そういう
議論はまだ早いのではないか。どうも
議論が半年から二、三カ月ずつ早いのではないか。
議論の早いのもいいかもしれませんが、それによっていろいろ影響があるものでございますから、金融をゆるめるという
議論は——去年の引き締めたときの状況に比べて、倍の一兆六千億にも
日本銀行の貸し出しがふえておるときに、さあ供米代金が出るとかなんとか、輸出が伸びたとかなんとか、輸出が伸びれば金融がゆるむのは当然のことであります。輸出超過の分だけは金融がゆるみます。それにいたしましても、このごろ輸出超過といっても、今月でゆるんだのが二十億円から三十億円、全体としてはほとんど問題になりません。ですから今の
状態から申しまして、輸出は大体伸びていきましょう。ことにEEC
関係の方も相当伸びております。そして
アメリカの方も、そう急に落ちるということはございません。今のところ、今年に入りまして前年に比べまして三〇%あるいはそれ以上の増加を続けております。そしてEECの方面も二、三割の増加を続けておりますから、私は、今年の輸出は予定の四十七億ドルはあぶないじゃないかといって大へんしかられたのですが、それをこえましょう。それからまた輸入の四十八億ドル、とてもそれで済むものじゃないといいますが、私は一億ないし一億五千万ドル減るのじゃないか。それは在庫も相当ありましたし、ことに八億ドルばかり輸入しておった鉄鋼
関係も、今度はスクラップでなしに鉄鉱石を入れることになりまして、輸入
関係はよほど変わって参りました。鉄鋼だけでも二億ドル前後の違いがあるのじゃないか。そういうところから見まして、今年は三、四カ月前に非常にしかられたことも、今ではしかられずに、私の予定
通りにいくのじゃないか、あるいは予定をちょっと上回るのじゃないか。今年も大体いく。来年の輸入期はどうか。生産はどうなっておるか。六月ぐらいまでは横ばいで参りまして、七月からは下がってくると思います。八月も、今、電力量の使用は全体で一%余りの増加でございますが、これは個人消費の方がふえて、工場の分は伸びておりません。従って八月ぐらいから生産は落ちて、下降状況でいくのじゃないか。いわゆる三〇五、六から七までいったのが、今年内で三〇〇程度ぐらいまで、順次ゆるいカーブで落ちてくるのじゃないか。そう見て参りますと、先ほど申しましたように、輸入も四十八億ドルではなしに、一億なしい一億五千万ドルぐらい減る。これは今の私の想像でございますから、数字でどうこうということはない。私は全体を見て言っておりますが、輸入も落ちて大体いい工合にいくのではないか。そこで、
日本の経済はいろいろ言われておりますが、非常に長い目で見れば、うまい足どりをとっていっております。これは
国民のおかげでございます。そこで、あまり変わったことをせずに、先走らずに、
政府というものが見ながらやっていく。自由主義経済の建前でございますから、民間の方でどんどん生産を拡充すれば、それをわれわれはとめるわけにはいきません。しかし
政府としてはこういう
考え方だということを言って、過熱にならぬようにやっていっておるのであります。しかしそれだといって、経済が非常な急激な縮小で不景気になっては困ります。不景気にならさないように、過熱にならないように、今の消費者物価が下がる。上がるのはいかぬ。消費者物価を下げるような政策をとったら物価は下がりましょう。しかし
国民の生活がどうなるか。
国民の生活が
世界でも例のないような上昇率を続けていくときに、消費者物価がある程度上がるということはやむを得ぬことです。望みはしません。上がらぬようにするのでありますが、ある程度やはり国全体がよくなることを見る場合において、少しぐらいのところは見のがして——見のがすのではない、がまんしてもらうということが経済の運営の心がまえだと私は思います。