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1962-08-20 第41回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十七年八月四日)(土曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 床次 徳二君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    青木  正君       赤澤 正道君    井出一太郎君       稻葉  修君    今松 治郎君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       菅野和太郎君    上林榮吉君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    周東 英雄君       田中伊三次君    中曽根康弘君       西村 直己君    橋本 龍伍君       羽田武嗣郎君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松本 俊一君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    井手 以誠君       加藤 清二君    大原津與志君       高田 富之君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    山口丈太郎君       山花 秀雄君    横路 節雄君       佐々木良作君    西村 榮一君 ————————————————————— 八月十日  山村治郎委員長辞任につき、その補欠とし  て塚原俊郎君が議院において委員長に選任され  た。 昭和三十七年八月二十日(月曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 野田 卯一君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    井出一太郎君       今松 治郎君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       田中伊三次君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       井手 以誠君    木原津與志君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       野原  覺君    長谷川 保君       山口丈太郎君    受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大 臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 寺島  榮君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         食糧庁長官   大澤  融君  委員外出席者         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覚君         気象庁長官   和達 清夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 八月四日  委員臼井莊一君上林榮吉君及び床次徳二君  辞任につき、その補欠として灘尾弘吉君、久野  忠治君及び塚原俊郎君が議長指名委員に選  任された。 同月七日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として櫻  内義雄君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補として井手  以誠君議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員加藤清二君及び佐々木良作辞任につき、  その補欠として多賀谷真稔君及び受田新吉君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  加藤清二君が議長指名委員に選任された。 同日  理事重政誠之君七月十八日委員辞任につき、そ  の補欠として青木正君が理事に当選した。 同日  理事床次徳二君同月四日委員辞任につき、その  補欠として赤澤正道君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  私、このたびはからずも予算委員長に選任せられました。まことに光栄に存ずるとともに、その責務の重大なることを痛感いたしておる次第であります。幸いにして練達堪能なる委員各位の御鞭撻と御協力によりまして、委員会の円満にして公正妥当なる運営をはかり、もって国政の審議に遺憾なきを期して参りたい所存でございます。ひとえに各位の御援助をお願いいたしまして、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 塚原俊郎

    塚原委員長 それでは理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動により、現在理事が二名欠員となっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは、先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、青木正君及び赤澤正道君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。  先般の理事会の協議に基づき、予算実施状況について調査を行なうことにいたしたいと存じます。つきましては、この際、議長に対し国政調査承認を求めたいと思いますが、その手続委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  直ちに委員長において所要の手続をとることにいたします。      ————◇—————
  7. 塚原俊郎

    塚原委員長 それでは、これより予算実施状況につきまして調査を進めることにいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。木原津與志君
  8. 木原津與志

    木原委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、当面わが国の外交問題のうち、次の三点に焦点をしぼって、首相並びに外務大臣、その他関係閣僚質疑をいたしたいと思うのでございます。  まず第一番に、私は、国会非核武装宣言に関する決議に関しまして、池田総理所信をただしたいのでございます。  先般この問題につきましては、本会議においてわが党の矢尾同僚議員からも総理所信をただしたところでございます。ところが私が総理の答弁を聞いておりますと、この今回のわが党の提案する非核武装宣言に関する決議趣旨について、総理には若干の誤解があるんじゃないか、こういうふうに私ども考えるのであります。池田内閣は、発足当時から今日まで一貫して、わが国核武装をしない、核兵器を持ち込まないということを、はっきり国会並びに国民に対して言っておられる。これはとりもなおさず非核武装宣言だろうと私は思うのでございます。そこで、池田さんもすでに非核武装宣言をしておられることであるから、この際、国権の最高機関である国会が、池田さんと調子を合わして、国会がさらにこれに一歩を進めて、国会の、全国民意思の表決という形において非核武装宣言決議をしようというのが、この決議案趣旨でございます。従いまして、池田内閣そのものに、非核武装宣言をして下さいということを決議するのじゃない、国会みずからの決議でございます。ただ、これについて自民党との話し合いができておらない。民社党はわれわれと同調してくれるということになっておるが、自民党の方でまだ話し合いに応じておらない。そこで私どもは、自民党総裁池田さん、並びに国会決議でございまするから、国会議員のメンバーとしての池田さんにそのあっせん要求をするということが、私ども真意でございますが、この点について総理のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 総理大臣といたしましては、非核武装宣言をこの際行なうことは、私は得策でないと考えます。やるべきでないと考えておるのであります。従いまして、総理大臣として本会議でそういうふうに答弁いたしました。ただいまあなたの御質問は、自由民主党の党員としてどういうお考えか、こういう御質問のようでございます。私は、非核武装宣言国会でなさることにつきましては、党員総裁としては賛成できかねるのであります。
  10. 木原津與志

    木原委員 時の政権をとっておる政府宣言をすることは差しつかえないが、国会宣言をすることは不適当だ、こうおっしゃる御趣旨だと思いますが、内閣核武装しないということを、さらに国民代表機関においても、内閣と同調をして、これに一歩を進めて、永久にやらないということを決議するということがどうしていけないのか、もう一度お聞かせ願いたい。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 核兵器を持たない、また核兵器を持ち込ませないということは、わが党内閣方針でございます。だから常にそれを言っております。そうして国会がこれを宣言することが国際的にいかなる効果があるか、あるいは効果がないか。百害あって一利とは言いませんが、効果がないという考え方につきましては、いまだかつて一国の国会非核武装宣言をした国はございません。私は、政府として、唯一被爆国として、これを国会国民に、そうしてまた外国におきましては国連を通じて核兵器実験禁止をし、核保有を破棄するように、核戦争に持ち込まないような努力をすることが、現在われわれの国民としての務めだということを、この前の国会におきまして河上委員長にも言ったのでございます。今、国会があらためて非核武装宣言をするということは、私は賛成しかねるのであります。
  12. 木原津與志

    木原委員 核兵器が今や世界の全人類絶滅しようというような悲劇を招来する危機にあることは、この危機の認識については、私ども社会党考え方も、また内閣総理大臣である池田総理考え方も、これは全く同じだろうと思う。今日いろいろと伝えられておるところによれば、アメリカ原水爆保有はすでに三万メガトン、ソ連の保有原水爆も大体アメリカの半分ぐらいの一万五、六千はあるだろう。これだけの核爆弾をもってすれば、三十二億の世界の全人類がことごとく死滅してしまうということが軍事評論家その他科学者によって言われておる。ところが、現実の世界核保有国状態は、一つの国が核実験をやれば、また他国もやる。果てしなく核実験が続く。そうしてまた果てしなく、この絶対的兵器人類絶滅兵器である原水爆核兵器がどんどん増産されておる。もしあやまってこれが戦争にでもなるということになれば、先ほど申しましたような人類絶滅悲劇になる。こういうような危機に直面しておりまするから、私どもは何とかしてこれを阻止しなければならぬ。それにはまず核兵器絶滅、あるいは全面軍縮、あるいは核実験停止という措置に出なければならない、かように確信をいたします。それには一応私ども原爆被害を受けた世界唯一国家が率先して核武装をしないということを国民の名において宣言する。そうしてまたできるならば、われわれの努力の中心を、まず第一段階として、中国を含むアジア太平洋地域だけでも非核武装地帯の設定をすることができれば、これによって世界平和確立のために非常に有効な効果があるということを私どもはかたく確信をしておりまするがゆえに、非核武装宣言決議を行ないたいということを言っておるのであります。池田総理が、たびたび核実験その他の核武装の点についていろいろ御努力をしておられることは、私どもも認めるにやぶさかではない。やぶさかではないが、今までのところ、抗議をしても、なおかつ実験はどんどんと行なわれる、軍縮の問題もいつ解決するかわからぬというような、このときでございまするので、竿頭一歩を進めて、私どもがその第一段階として太平洋非核武装中国を含んで非核武装地帯を設定する。その前提としては、まず国会が、日本国民の名において非核武装宣言決議で行なうというところに非常に大きな意議があろうかと私は思うのでございます。いま一応首相のこれに反対される所信を、もう少し詳しく、世界情勢にのっとって説明をお願いいたしたいと思う。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 非核武装宣言につきましては、従来たびたび論議せられました。わが国唯一被害国として宣言して効果があるかという問題でございます。私は、よその例をとっていかがかと思いますが、ノルウェーが、国連事務総長あっせんによって非核クラブの結成の条件を調べた。ノルウェーはこれに入らないと言っております。それから非核武装宣言につきましては、御承知通りアフリカ・グループ、エチオピア、ギニア、マリ等六カ国が国連において非核武装決議案をあれした。そしてアフリカにおいてはやらないという決議案が通っておるのであります。一国でそういうことをやって効果があるかどうかということを考えますと、私は、そういう積極的に効果があるということはわからないときに、いたずらに国会宣言するということはいかがなものかと思うのであります。それよりも積極的に、今お話しの通り、今までの努力をもっと強く推し進めていく方が効果的だと考えるのであります。
  14. 木原津與志

    木原委員 どうも総理が、これに強固に、かたくななまでに反対をされるその底意には、かねてあなたは、現在の段階において、池田内閣の姿勢の中では、核武装はしない、しかし、自衛隊核武装をするということは、必ずしも憲法違反じゃないということをしばしば当委員会あるいは内閣委員会等において言明をされておる。あなたの憲法論からすれば、戦力にならない程度ならば、自衛隊核武装をすることも差しつかえない、憲法違反ではないということを言われておる。そこで国民が、特に私どもが心配しますのは、池田内閣核武装をやらないかもしれない。しかも情勢が他日変わる、変わった情勢になるということになったその暁においては、憲法においては核武装をすることが違反ではないのであるから、やがては核武装をしなければならぬ時期が必ずくるであろう。そのために、国会において、永久国家意思を決定づけるような、こういう決議は避けておきたい。そういう下心で、そういう真意から、この決議案反対をされるのじゃなかろうかと私は憶測するのでございますが、これは私の思い過ごしでございましょうか。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうお考えをもって非核武装宣言を言われるのなら、私はわかります。憲法上、あらゆる核、いわゆる防御的であろうが何であろうが、あらゆる核兵器を持ってはならないと憲法は規定はしておりません。今後の兵器の進化によって、ほんとうに日本を守るためには、これ以外のものはないという場合において、憲法がそれを否定しておるとは考えておりません。しかし、憲法上はそういう解釈であっても、池田内閣はやらない、こう言っておるのでございますから、つじつまがよく合うと思うのです。だから、憲法論非核武装宣言をしろということは、私が核武装をしない、持ち込むことを許さないということを信用下さらぬことになるのでありまして、内閣を御信用下さるのならば、憲法上にいろいろな議論がありましても、池田内閣は持たない、こういうことでいっておるのであります。従って、非核武装宣言は、私はいたさない、賛成でないということを申し上げておるのであります。
  16. 木原津與志

    木原委員 問題は、あなたのいわゆる憲法解釈の問題、ここに不安があるのです。核武装をすることは、必ずしも憲法で禁じておらない、禁じておらなければ、してもいいのでしょう。憲法論ではできるのだけれども池田内閣は当面やらないんだ、こういうことを言われるから、国民としては、また私どもとしても、現在はやらぬかもしれぬが、将来は、あるいは現在の憲法のもとにおいても、改正しなくともやるのじゃないか、こういうことを想像いたしますときに、さきに私が御指摘いたしましたように、核兵器の非常な危機に直面して、国民がおびえておるから、もう少しここのところをはっきり、国民を安心させるような方向を示していただかなければならぬ。それにはまず第一番の近道が、この国会非核武装決議だと、かようにわれわれは主張するのでございますが、重ねて今の点をもう少しはっきりと、憲法上、核兵器は持てるのか、持てぬのか、禁じておらないというようなことを言わないで、持てるか、持てぬか、持つことは憲法違反にならぬかどうかということをはっきり御答弁していただきたい。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどはっきりお答えしたと思います。私は、これ以上のことは法制局長官から答弁させます。
  18. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、実はもう木原委員もよく御承知と思いますが、私どもも何回か御答弁申し上げたところでございまして、いわゆる核兵器なるがゆえに、すべてがいわゆる戦力憲法で禁止する戦力に当たるとはわれわれも考えないわけでございまして、これは将来の問題もございますし、いわゆる科学技術の発達ということから、純粋に防御的な、まあ小さな核爆発、そういうものができないことは保証できないわけでございまして、そういうものができた場合に、憲法がそれも禁止しているということにはならない、私はかように考えるわけでございまして、要するに、憲法九条二項でいうような戦力に当たらないものがあるとすれば、それを憲法は禁止しているとは私どもは一がいには言えない、かように考えております。
  19. 木原津與志

    木原委員 大きな核兵器だとか小さい核兵器だとか、核兵器の大きい、小さいというようなことで、それが防御になるとか攻撃になるとか、そういうようなくだらぬ議論をするものじゃありません。池田内閣のそういう考え方は、憲法第九条の、なかんずく陸海空の戦力を持たないというその戦力との限界の中で非常に私はこの点は問題があろうかと思う。いずれ内閣委員会その他外務委員会等で後日あらためてこの問題について詳細に総理所信をお伺いいたしてみたいと思いますが、きょうは時間の関係でこの問題については多くを触れません。  次に、どうしても総理がわが党の提案する非核武装宣言に関する決議案賛成をされないということであれば、問題を先に……(「それは国会対策の話だよ」と呼ぶ者あり)委員長、ああいうばかなヤジをしないように注意して下さい。
  20. 塚原俊郎

    塚原委員長 なるべく御静粛に願います。
  21. 木原津與志

    木原委員 そこで私は質問日韓会談に向けたいと思うのでございますが、まず最初に大平外務大臣にお尋ねいたします。  日韓会談が、三月と思いますが、小坂及び韓国の両外務大臣交渉がほとんど決裂の状態に陥って中止されておる。ところが、今度新たに大卒さんが外務大臣に就任せられてから、日韓会談にまた異常な熱を入れられて、聞くところによると、大体今月の二十一日、あしたから予備会談が行なわれる段階にあるということでございますが、それに先だって、先般から新聞報道でいろいろと大平外相日韓会談妥結構想というようなものが各新聞に一斉に発表されております。新聞報道でございまするから、これは確実であるかどうかということをまず前提としなければなりませんので、その点から私はお尋ねいたすわけですが、まず大平構想は、請求権個人的請求権だけに限り、そうして無償有償——有償長期低利借款というような形で、この総額を三億ドル、日本韓国に提供するのが総額において大体三億ドルぐらい、この金額について請求権あるいは経済援助というものを総括的に妥結がされるならば、懸案である李承晩ラインあるいは竹島の領土問題あるいは韓国人法的地位というようなものは、話し合いがつかなければ一応これをたな上げした形において、両国間に共同宣言方式によって国交正常化をしようという構想であり、この構想について最後の断案は池田総理の裁決に待って決定されるようだ、こういう報道がなされておりますが、一体今度の予備会談に臨まれる外務大臣並びに内閣の基本的な妥結構想と申しますか、そういうものがあれば一つこの国会において端的に説明をしていただきたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、過去十年間日韓交渉は断続して参ったわけでございますが、去る三月の外相レベル折衝におきまして、彼我の間に請求権をめぐる問題で相当の開きがあるということは双方とも確認し得たわけでございます。その後、政府といたしましては、杉代表と先方の裏代表の間で、この次の会談はいつどういう姿のものにしようかという話し合いが進められて参っておりましたが、ようやく最近の機会に予備折衝を持とうということになったわけでございます。今までの折衝過程を見てみますと、今御指摘請求権問題というものが最大の障害になっておるということは御指摘通りでございます。この問題につきましては、昨年の十一月に行なわれました池田朴会談でも、合理的な法律的な根拠のあるものにしようじゃないかという点につきましては原則的な一致を見ておるわけでございまするが、いろいろ精査してみますと、請求権に内包する内容につきましては、事実関係の確認でございますとか、あるいは法律的根拠がはっきりしておるかどうかという点につきましては、なかなか越えがたい障害があるようでございます。従って、との問題の一歩前進を画するためには、今までのように、請求権の問題につきまして数字的に法律的に、あるいは事実関係を確認して参るというような方式で続けて参りますことはあまり成算的でないと私ども判断いたしておるのでございまして、何らか国交正常化をはかるためには、そういう目的を達成いたしますためには、どのような割り切り方がいいかと、ただいま次元を変えて考えつつあるわけでございまして、いずれ予備折衝段階におきまして、そういう問題が双方虚心に話し合われることと思うのでございます。  第二の形式の問題でございますが、私ども共同宣言という形式をとろうときめたわけじゃございませんで、今申し上げました通り、今まで折衝過程から一番問題になっておりました請求権問題というようなものをまず打開せねばなりませんし、それから過去数次の会談を通じまして煮詰めて参りました今御指摘の漁業問題でありますとか、あるいは法的地位問題等、その他の問題も鋭意煮詰めて参らなければならぬと思いますが、そういった実体がきまりまして、それに着せるべき衣、方式というものを考えるべきものだと考えております。
  23. 木原津與志

    木原委員 何のことだかわからない。今後予備会談に臨まれる大卒構想政府方針としては、請求権妥結の問題について、請求権とは別に、無償あるいは有償を含む経済援助ということもこの妥結の要件の中に、提案の中に入っておるのかどうか、入っておるとすれば、幾らの金額が入っておるか。もし数字をあなたがおっしゃることがいやならば、差しつかえがあるならば、経済援助というようなものが構想の中に入っておるかどうか、この点について私はお伺いしたい。すでに新聞でもはっきり出している。新聞の書いておることが間違いなら間違いでいいから、はっきりその点をここで明らかにしていただきたい。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 一言お断わりをいたしておきますが、先ほど漁業問題とか法的地位の問題なんかは一応たな上げにして国交妥結をはかるという考えかということのお尋ねでございましたが、その点はそういう考えはないのでございまして、今までの懸案を一括して解決したい、こういう態度で臨んでおります。それから今、その請求権にからませて経済援助云々の考えがあるかということでございますが、先ほど私が申しましたように、今までの折衝の経過から見まして、今までのやり方で、はたして両者に妥結の曙光が見えるかといいますと、なかなかむずかしいと判断いたしておるわけでございまして、何らか高い次元で考えなければならぬのじゃないかというようなところで、今せっかく苦吟をいたしておるところでございます。従いまして、新聞にどのように報道されますかは新聞の方の問題でございまして、政府として、このようにするということを発表した覚えはないのでございまして、問題は微妙な折衝の問題でございますので、具体的なことにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  25. 木原津與志

    木原委員 あなたの言われる高い次元、請求権だけでは問題が解決しないから、高い次元によって解決をはかりたいというその高い次元というのは一体何を意味するのか、その点を聞いておる。ただ、外交上の問題でございますし、金額についてはあるいは幾ら幾らということを言えないかもしれない。しかし、あなた方も、もうあしたから交渉に入られるのですから、あなた方の腹の中にはちゃんときまっているはずだ。しかし、ここでこの金額について幾らということを明らかにせぬでもいいということを私は断わっているのだ。ただ、その高い次元ということが請求権プラスの経済援助ということを意味するのかどうか、その点だけ明らかにしていただきたい。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、請求権をめぐる折衝過程におきまして、この事実関係を確認する、あるいは法律的根拠を明瞭にして参るということは、事実上非常に困難にぶつかっておるということは先ほど申し上げた通りでございます。しかし目的は、はばまれておる国交正常化いたしたいということが目的でございますので、そのためにはこの請求権問題というものも何とか片づけなければならぬ問題、前提になるわけでございます。今の経過から申しまして、そういう積み重ねた方式ではなかなか双方の妥結に接近することは至難であると私ども判断しておるということでございまして、それを克服する道は何かということにつきまして、今せっかく検討いたしてきておるというのが、今申し上げた趣旨でございます。
  27. 木原津與志

    木原委員 子供と子供の問答ではありませんよ。そんなばくとした、つかみどころのない答弁では私は満足をしない。繰り返すように、金額がはっきり言えなければ、高い次元において問題の解決をはかろうということは、請求権のほかに、請求権プラス・アルファの韓国に対する経済援助ということを含んで解決するという、これが高い次元という意味じゃないかと思うのです。だから、それをはっきりおっしゃっていただきたいと思う。違うなら違う、そうならそう、はっきり言っていい。すでにもう新聞は毎日々々じゃんじゃん書き立てておるじゃないか。毎日々々書き立てていることを、この国民代表機関の中で、そういうような高い次元でというようなことで問題をそうしていくというようなことは、これは許されません。もう一ぺん。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 近く予備折衝に入ろうと考えておりますので、私どもといたしましては、この段階でどういう考えであるというようなことを申し上げることだけは、一つ御遠慮いただきたいと思います。
  29. 木原津與志

    木原委員 くどいようですが、あなたはあまりしつこい。私もしつこいかしれぬけれども、あなたもしつこい。毎日の新聞で数字まであげて書いているじゃないか、これを外務省が知らぬとは言わさぬ。朝日、毎日、読売、東京、産経、日経、あらゆる大きな新聞から地方の新聞に至るまで、数字をあげて、これは経済援助妥結するという構想だということを全国津々浦々に、ラジオでまで放送をしておる。このことを自分が発表したのではないとあなたが逃げられたって、それは逃げられるものではありませんよ。これだけ問題が熟してきておる。もうすでに明日から予備会談に入るのであります。それならばせめて、国会でこの数字だけは遠慮さしてもらいたいと言うなら話はわかるが、経済援助を含むのかどうかという、この国民の常識になっておることまであなたが明らかにしないということでは、これは国会軽視もはなはだしいと私は思う。どうです。しつこいようだが、もう一ぺん。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 日本新聞は自由でございまして、私どもは、このように報道をしていただきたいということを御注文申し上げることはできません。しかし私は、各社がこの問題を取り上げて論議いただいておることはけっこうなことだと思っております。そこで対国会の問題でございますが、私ども国会を尊重し、国会の権威を認めるがゆえに、この場においてそういったことを今申し上げるのは非常に非礼だと考えておるわけでございます。
  31. 木原津與志

    木原委員 それなら外務大臣が言わなければ大蔵大臣、新聞によれば、大蔵大臣、総理外務大臣三者列席の上で、この構想についての説明を聞かれ、しかもそれについて大蔵大臣は予算の立場から若干の修正をも考慮されておるというようなことさえ伝えられておる。あなたはあまり大卒大臣のようにしつこい方ではないようですから、あっさりそこのところを、経済援助を含むというのかどうか、その点簡単に一言でいいからお聞かせ願いたい。
  32. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。高い次元というのは、日本韓国とが歴史的にもつながりがあり、一衣帯水であるというような、そういう両国の、しかも唯一無二の隣国でありながら、十年間もやっておってさっぱり進まないというようなことでは困るので、日韓の国交正常化のためによりよい道を選ぼうという姿勢を高い次元と言ったのだと思います。内容に対しては、相手のあることでありますし、今まで表に出ておりますのは、妥当な合法な請求権をお互いの両国がどういうふうな状態で突き合わせをするかというのが現在まで出ておるのでありまして、その後の問題に対しては、ここで申し上げる段階になっておらないということは外務大臣の答弁と同一でございます。
  33. 木原津與志

    木原委員 あなた方が二人でそういうような雲をつかむような答弁をされるならば、私もこの点についてもう少しそれではお聞きいたします。  この韓国の財産請求権の問題は、これは外務大臣あるいは大蔵大臣ともにすでに御承知のことと思いますが、在韓日本人、韓国に当時あった日本人の私有財産と相殺されておるはずでございます。その経過は大体御承知と思いますが、私がその経過についてさらにお話しいたしますが、講和条約の発効前に、終戦直後十二月九日に米軍が三十八度線以南にあった日本人の財産を接収してしまった。しかもこの米軍の接収の措置は、明らかに国際法に違反しておった。というのは、十二月九日に日本の財産を接収したが、極東軍司令官であったマッカーサー元帥が、接収の十日後の同月十九日に、米軍は私有財産は接収をしない、米軍はへーグの陸戦法規を完全に順守するという布告を出しておる。このヘ−グの陸戦法規の中に、私有財産は没収しないということが規定してある。この布告が出たときには、すでに朝鮮に駐在しておった、占領しておったアメリカ軍が日本人の財産を没収してしまっておった。ここに第一の誤りがあった。それを二年後、米韓協定によって、日本人の私有財産をアメリカ韓国無償でその一部を譲与してしまっている。この譲与も法的には国際法上はいろいろと問題があるが、さらに、サンフランシスコ講和条約において、日本代表吉田全権が、この国際法に違反しておる接収行為、譲渡行為を完全に認めて、請求権を放棄してしまった。しかし、この請求権を放棄したけれども、その後アメリカとの間の了解においては、昭和三十二年の米国の国務省の覚書にもある通り日本は平和条約四条(b)項によって在韓財産の請求権を放棄したが、韓国が対日請求権をきめるときはこの事実を考慮に入れる必要があるという覚書をアメリカが出しておる。しかもこの覚書の趣旨は、池田内閣小坂外務大臣によれば、はっきりと、この予算委員会において、日本が放棄したという事実を考慮する必要があるというのは、これは韓国日本に対する請求権と相殺をするのだという意味だということを、あなたの前の外務大臣が言うておるのであります。それならば、この趣旨に基づく限り、日韓会談の中から、財産請求権に基づいてこれをたとい個人的請求権であろうとも、相殺の対象にされておるし、いわんや、あなたは隠しておられるけれども、この財産請求権の名目にかえて、他の高い次元における財産処置によってこの問題を解決して、国交正常化しようということ自体、法的にもあるいは政治的にもあなたの考え方は誤っておると私は思うのですが、この点について外務大臣並びに総理大臣の所見をお伺いしたい。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約四条は、今木原委員が言われたように、朝鮮にありました日本の公約、私的財産は、条約四条によって放棄したという前提に立って私ども考えておるのでございます。そうして韓国の対日請求権というようなものは、特別なアグリーメントが必要であるということでございますので、私どももその特別な協定の合意に達したいということで努力いたしておるわけでございます。この問題と、今私が大所高所から高次元で考えたいということとの関連でございますが、私どもが庶幾いたしておりますのは、両国の間の国交正常化するということにいたしたいということでございまして、その前提に横たわるいろいろな障害物を一つ一つ片づけて参らなければいかぬということでございます。そういうことをやる上におきまして、今までの折衝の経過に見られたようなやり方ではなかなかむずかしいと判断いたしまして、政治的にもう少し工夫をしなければならぬのじゃないかということを考えておるわけでございます。
  35. 木原津與志

    木原委員 この請求権の基礎になるのは、アメリカの覚書に基づいて相殺したものと認めるということになれば、どうしても明らかにしていただかなければならぬのは、当時、私が先ほど申しました十二月の九日にアメリカ日本の私有財産を没収した。その没収した金額が相殺の基礎になるのでございまするから、私は先国会から、その基礎になる重要な資料であるから、アメリカあるいは韓国ともよく照合し合って、この日本から没収した私有財産の明細、金額等について詳細これを国会に報告をしていただきたいということを私は要求いたしました。それに対して時の外務大臣も、あるいは水田大蔵大臣も、わかり次第に、なるべくすみやかに国会にその資料を出します。しかも大体はでき上がっておりますから、あと正確なものが整い次第にこれを出すということを言っておられた。どうです。これを本国会で出される御用意がありますか。大蔵、外務両大臣にお尋ねしたい。
  36. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。大原さんから水田大蔵大臣に対して、ただいまの御発言、御要求がありましたことは記録に明らかでございます。そのときの水田前大臣の答弁は、サンフランシスコ条約でもって放棄をした在韓日本人の、私人法人を問わずすべての財産の目録に対して、日本政府は現在持っておりません。日本においては、日本の国内でその後個人の自由意思に基づいたデータか出されておりますが、これはにわかに信憑性を置くわけにはいかない数字でありますから、国会の席上で申し上げるようなトータルは出ておりませんということを申し上げております。これを一番つまびらかにしておりますのは韓国政府でありますから、韓国政府に対しては、過去数次にわたってこれがリストの提出を求めておりますが、先方は、今日の段階においてもこれが内訳の提出を拒んでおるのであります。そのときの木原さんの御発言に対して、日本政府もこれがデータをぜひ入手をしたいということでありますし、できるだけ韓国政府要求をして、韓国政府から提示があったら御希望に沿いますという御答弁を申し上げておるわけでありますが、現在まで韓国政府が提出をいたしておりません。
  37. 木原津與志

    木原委員 大蔵大臣、韓国政府にこれを要求したってだめなんですよ。まだこれは国交正常化していないし、お互いに大使の交換もしていないというようなところで、まだ交渉が難航している段階韓国政府にこれを出せと言ったって無理です。これは無理ですが、一番はっきりしているのは当時の米軍です。米軍は接収をしたのですから、接収目録というものが必ずあるのですよ。目録なしに接収するというようなばかなことはできるはずがない。人の財産を没収するのに何と何と何、価格幾らというような財産の目録を明らかにしないで没収するというようなことはアメリカといえどもあり得ないと思う。特にこれを韓国に一部を譲渡するときには、譲渡財産目録として目録をつけて、米韓協定の付属文書にはっきり財産目録をつけてやっておるのです。だからアメリカ軍の当時の軍に、また今も引き継いでおる駐留軍の中にはっきり没収した財産その他の明細があるはずでございますから、あなたは交渉を間違えておる。なぜ米軍に交渉をして、米軍からとるようにしないか。アメリカ日本との友好国でありますから喜んで応じましょう。その点、アメリカ交渉してこの明細をすぐとって、そうして国会にすみやかに提出していただきいたと思いますが、いかがです。
  38. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えを申し上げます。私が前大臣から引き継ぎましたこの問題に関する件については、先ほど御答弁を申し上げたわけであります。  それから在韓米軍司令官が在韓の財産に対しての接収をいたしましたのは昭和二十年、一九四五年のことであります。そのときは、品目別にこういうリストがあって、こういう価格でもってやるというのではなく、ごく一般的な宣言式なものでありまして、朝鮮及び日本がかつて領土としておった南方その他の地域において、日本人が財産保管に任じられないような地域におけるものは一切米軍司令官が接収する。こういうことを言っており、その後の講和条約で放棄をいたしたわけでございます。現在までは、当然引き受けを韓国政府がやったのでありますし、その意味で韓国政府に対してリストの提出をお願いをしておるわけでありますが、先ほど申し上げた通りであります。なお、当時の米軍の資料等についても、現在政府が提出を依頼いたしておるようでありますから、木原さんの御発言もありますので、できるだけこれが資料の収集をし、的確な数字を使って御報告をいたしたいと思っております。
  39. 木原津與志

    木原委員 外務大臣にお尋ねしますが、これは私が個人的に聞知したことですから、その真否を私は外務大臣にお尋ねします。  すでにアメリカからはこの没収した財産の目録を外務省はとっておる、もう資料はほぼ完全にでき上がっておるということを伊関アジア局長がだれかに言明したということを私は聞いておるのですが、その言った言わぬは別として、外務省にこの没収日本人財産の目録が米軍から来ておると思うが、この点どうですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のように一部は収集いたしておりますが、まだ全部でございませんので、残部につきまして督促中です。
  41. 木原津與志

    木原委員 それでは外務大臣、あなたの方にわかっておる一部の没収財産の明細並びに金額、これは請求権の相殺の金額の一部になるわけです。その金額は大体幾らですか。わかっている分だけでいいですから、はっきり答弁して下さい。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 今申しましたように、一部参っておりますが、残部の督促中で、それが届いた上で検討してみたいと思っております。
  43. 木原津與志

    木原委員 あしたから予備会談をやって請求権の問題を煮詰めていくというときに、その一部しかない、その一部も、まだ残部が残っておるから出せない、金額がわからぬということでは、これは請求権交渉にならぬじゃないですか。そんなでたらめな交渉の仕方ってありますか。何でもかんでも、日にちが長くなるからあとはどんぶり勘定だ、何らの根拠なしに、しかも没収された日本人の身になってごらんなさい、あなた方はこれに対しては一文の補償もしておらない、没収しっぱなされです。大体請求権を放棄するのに、個人の財産を何ら国家が補償もしないで勝手に講和条約だからといって請求権を放棄してしまうなんというようなことは、私は国際法上間違っておると思う。しかし、それを今とやかく言うたってしょうがないから、放棄したなら放棄したでいいが、せめて幾らのものを、どういうものを、現在の金に直して幾らということを確定して、その上に立って、アメリカも相殺するということを含みとして考慮するということを言うておるのだから、この基礎の上に立って請求権交渉をやらなければ、ほんとうに国民の身になって外交をやっておるのかやっておらぬのかわからぬじゃありませんか。そんなことでどうして国民に、さあ妥結した、国費を三億でも四億でも払うからといって、勝手に税金で経済援助とか請求権だとかを払ってもらったのでは、国民は立つ瀬がありませんよ。その点、どうお考えになりますか。請求権の相殺債権となるこっちの放棄した財産の基礎が明らかにならぬでも、なお国交正常化を急ぐという名のもとに日韓関係妥結をしたいとおっしゃるのか、その点いかがです。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘のような問題も、私ども十分念頭に置きまして折衝に当たりたいと思っております。
  45. 木原津與志

    木原委員 外務大臣はどうも答弁にならない。新米の外務大臣ですから、あまり詳しいことをおっしゃりたくないのかもしれませんが、それでは私どもはどうも納得はいかない。
  46. 井手以誠

    井手委員 関連質問をいたします。  外務大臣にお伺いをいたしますが、あなたは大原委員質問に対して請求権の金額をなかなかおっしゃいません。しかし、在韓の日本人財産は幾らであった、日本にある韓国の財産は幾らであるかについては、すでに外務省は発表してあるはずですよ。あるいはある局長のふろしきの中に入っておるかもしれません。それをここでおっしゃって下さい。すでに外務省は発表しておりますよ。ここではなかなかおっしゃらぬ。おっしゃらぬけれども、すでに外務省は発表されたことがあるんですよ。それをおっしゃって下さい。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ発表したという事実はございません。
  48. 井手以誠

    井手委員 それじゃ、私から申し上げましょう。ここに私は持って参りました。同じ毛のが外務省にプリントしたものがあるはずです。読み上げてみましょう。外務省の発表ですよ。昭和二十八年十月二十二日の発表ですよ。わかっておるはずです。請求権については、——外務省の発表ですよ。請求権については、日本側は戦前韓国にあった日本の公有財産は韓国が取得することを認めるが、私有財産百二十億円ないし百四十億円に対しては請求権があることを主張した、これに対して韓国側は、日本における財産九十億円から百二十億円という請求権を持つものとした、こういう発表をしておりますよ。二十八年の十月の二十二日、問題の久保田発言の当時です。外務省の局長が外務省の記者団に行って発表しておるじゃありませんか。韓国日本に対して請求権は九十億円から百二十億円持つことを日韓会議で主張したと外務省は発表しておるじゃありませんか。なぜこれを言えないのですか。外務省が堂々と記者団に発表しておるんですよ。漏らしたものじゃございません。進んで行って発表したものですよ。しかも日本人の韓国にある財産は百二十億円ないし百四十億円と言われておる。この問題について、韓国の代表がそれは相殺してもよろしいと言ったことが韓国内で問題になって、代表は李承晩からやめさせられた、そういういきさつがある。しかし、この金額に誤りはないはずです。それをおっしゃって下さい。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 恐縮ですが、条約局長から説明させます。
  50. 井手以誠

    井手委員 委員長、ちょっと待って下さい。きわめて大事な内容ですよ。今まで数年にわたって論議されたこの請求権の金額、在韓請求権が幾らであるか、在日請求権が幾らであるかというこの問題について、外務省が発表したこの問題は、私は一条約局長から聞こうとは思いません。大臣が聞いて答弁なさい。ちゃんと写真を写しておりますよ。持っておりますよ。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 二十八年の交渉過程におきまして、例示的にそういう数字がカッコに入って示されたことが、決裂の理由を外務当局が記者団に語ったときにそういう数字が例示的に示されたという事実はあるように聞いておりますが、私どもといたしましては、先ほど御答弁申し上げた通り、米側からも資料を督促中でございますので、国会に申し上げる場合の数字は自信のある的確な数字でなければならぬと思いますので、そのような用意をいたしておるわけでございます。
  52. 井手以誠

    井手委員 今外務大臣は、外務省が記者団に発表されたことは認められました。これは私は銘記しておきます。なお、アメリカ側の資料によって精査する、検討するというお話も、私は聞いておきます。しかし、日本韓国に対して、韓国が請求している金額以上の財産があったことは、これは間違いございません。日本韓国に対して百四十億円の財産請求権を持っておった、韓国日本に対して百二十億円の財産請求権を持っておったことは、これは間違いございません。これはあなたも認めましたから、これで私は関連質問を終わります。
  53. 木原津與志

    木原委員 今請求権の基礎について大体明らかになりましたから、今後の交渉においてこの点を基礎にして懸案の解決をやるということを一つ確認していただきたいと思う。と同時に、私は、これは外務大臣総理大臣の所見を伺って確認しておきたいのですが、そもそもこの日韓交渉というのは、これは戦争のいわゆる終戦処理とは意味が違う、また、国交正常化というようなものとも本質的にはこれは別個のものだ、私どもはこう考える。日本は講和条約によって韓国の独立を承認した。独立を承認すると、当然にこの承認に付随して処理されなければならない問題が、財産請求権及び国境、国籍、こういう問題でございますので、今懸案になっておるこの三つの点は、国交正常化とは全然別個の問題であって、日本が講和条約において独立を承認をした、その承認と不可分な案件になるということでございます。従って、この三つの案件が解決しない限り、国交正常化ということはあり得ない。たといそれが基本条約によろうと、あるいは伝えられるところの共同宣言によろうと、そういうようなことは、これは懸案が解決しない限りできないのだ、問題の範疇が全然違うのだという考えを私ども持っておりますが、外務大臣並びに総理大臣日韓交渉に対する所見としてどのように考えておられるか、この点をお聞きしたい。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国は、御承知のように、すでに五十有余の国から承認を受けておる合法政権でございまして、わが国といたしましても、国交回復いたしておりまする自由圏の中で唯一正常化を見ていない国でございますので、先ほど大蔵大臣も言われました通り、こういう地理的、歴史的な関係にございますので、できることなれば一日も早く正常な姿にいたしたいと私どもは希求いたしておるわけでございます。しかしながら、今御指摘のように、この問題は日本から分離した地域と日本との関係を規律する問題でございまして、平和条約に根拠があるということにつきましても、木原委員のおっしゃる通り心得ております。私どもは、あとう限り、今問題になっておるような問題を煮詰めて、双方が納得ができるような、しかも国際的に見てフェアな解決方式というようなものを達成するように、鋭意努力いたしたいと心得ております。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣が答えた通りでございます。そうして、私はここで、あなたの質問並びに関連質問に対しまして、将来誤解がないように私の気持を申し述べてみたいと思います。  先ほど韓国における日本の私有財産の問題につきましていろいろお話がございました。御承知通りアメリカ軍は一九四五年の十二月六日ですか、いわゆるヴェスティング・デクリーを出しまして、そして没収したわけでございます。そうして、平和条約第四条(b)項によりまして、その帰属が、われわれ放棄したものなりやいなやということにつきましていろいろ問題が起こった。そうして、その問題の一つは、昭和二十八年のいわゆる久保田発言のときでございます。久保田発言のときに、いろいろな議論の間に、折衝の途中でこういう今の数字が出たということも聞いたこともございます。しかし、これは権威のある数字ではないと私は思います。外務省の当局が、これだけのものがあるという政府決定あるいは政府の了解のもとでやったのか、(発言する者あり)——実際の問題を私は申し上げております。交渉過程におきましてそういうことを言ったということを伝え聞いておりますが、それが問題になって、久保田発言によって決裂をしたわけなんです。決裂をしたということは一つはっきりしておいてもらいたい。そうして、その後、この四条の(b)項によりまして、この解釈につきまして、韓国日本、そうしてアメリカ、この三者の間で結末をつけて、三十二年に、この私有財産権を放棄する。ただ、アメリカ解釈として、放棄したことを考慮すべし。考慮という言葉もありましたが、相殺、−相殺ということは、民法上の相殺ではなしに、日本の私有財産が放棄せられたということを考慮に入れて請求権の問題を解決する参考にしろ、こう私は今まで考えておるのであります。民法上の相殺ではございません。従いまして、二十八年の交渉の途中に起きました数字を政府が認めたものだとここで断定をせられますと、私は、政府の決定した金額としていない、交渉の経過に話が出たということで御了承願いたいと思います。  そういう関係をとりまして、請求権の問題は、過去十何年間、アメリカ日本韓国等の間でいろいろ論議せられて、今申し上げたようなことになったということを一応お考え願いたいと思います。
  56. 木原津與志

    木原委員 そこで、今外務大臣は、この日韓交渉は財産請求権その他国境、法的地位、こういうようなものは独立承認と不可分な関係にある案件だということについては、私の所見と外務大臣の所見がほぼ一致しておるのであります。そこで、もしそういう考え方に立つならば、この国交正常化前提とする三懸案の交渉は独立承認と不可分だということになれば、当然朝鮮にはもう一つ北朝鮮人民共和国というのが厳存しておる。しかも、国際連合におきましてもオーソリティとしてこれを認めておる。この認めておる国とも、あなた方が日韓交渉をやるならば、同時並行的に、独立承認に伴う不可分な案件でありますから、これは北鮮ともこの問題について交渉をするということが当然のことだろう、ただ単に国交正常化交渉ではないのでありますから、好むと好まざるとにかかわらず、相手国を日本が好いているとか好かぬとかいうような問題とは別に、当然、独立承認の不可分な案件として、この請求権その他法的地位、国境の問題について交渉をすべき性質のものだと思うが、この点について総理並びに外務大臣はどういう考えを持っておられるか。もしするのだということになれば、いつ北鮮との交渉談判を開始されるか。その点についてもはっきりした御答弁をお願いしたい。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 これもたびたび本議場でも申しました通り、私どもは、日韓間の交渉にあたりましては、韓国の現実の支配が三十八度線以北には事実上及んでいないということを常に念頭に置いてやって参りましたし、今後もそういうつもりでやって参ります。
  58. 木原津與志

    木原委員 今の外務大臣の答弁は何のことかわからぬ。北鮮とやるのかやらぬのか、同時交渉をやるかやらぬのか、もしやるとすればいつから交渉をやるか、その点を聞いている。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、五十余国の承認を受けておる韓国政府と、私どもは今まで十年間の交渉をやってきたわけでございますし、これを相手に今現にやりつつあるわけでございまして、その交渉におきましては、今申しましたように、この支配が三十八度線以北には及んでいないということを念頭に置いてやっておるわけです。
  60. 木原津與志

    木原委員 どうも答弁が食い違ってばかりおって、じりじりするのですが、時間がありません。  そこで、これは一言希望として申し上げて、さらに沖繩問題に入りたいと思います。  日韓交渉について、総理並びに外務大臣の言われるように、請求権交渉をさらに高度の次元において解決をはかりたい、そして国交正常化をしたいということでございますが、私ども憶測するところによれば、その高度の次元というのは、結局無償経済援助あるいは相当額の有償経済援助を含んでの妥結構想だと思うのでございます。そうすれば、一体、韓国との間には、もちろん今申し上げた三案件について独立承認に伴う案件として交渉をしなければならないけれども、今朝鮮は御承知のように南北に分かれておる。しかも、交渉の相手方は、これは民主政権であるかどうか、いろいろ議論して参りましたが、とにかく革命による軍事政権なんだ。しかも、今日まで、日本に対しては、李ラインという、沿岸から最長百九十九海里に及ぶ広大な公海上にラインを設けて、そうして日本人を圧迫しておる。さらにはまた竹島を不法占領しておる。こういう一連の行為を見ますと、これは明らかに国際法上の海賊行為と言わなければならぬ。しかも、これによって日本が精神的あるいは物質的に多大の被害を受けておる。一体、こういう無誠意な国と、何を苦しんで相当額の国民の資金を援助してまで国交の回復をしなければならぬか。しかも、国交回復ということによって東西分裂をさらに激化させる、アジアの平和のためにもこれが一つの紛争の種になる、発火点になるということがしばしば識者によって指摘されておる。こういう状態の中で、一体国民が金まで出してこの国と急いで国交回復をしたいと考えておるかどうか。この点については私は大きな疑問があろうかと思う。しかも、前にも申しましたように、日本人は全財産を韓国に没収されてしまっておる。もう請求権韓国から請求される何ものもないという事態の中で、しかもこういう不法な海賊みたいな国と金まで出して国交回復しなければならぬというその必要性について、国民は大きな疑問を持っていると私は思う。この点について、一ぺん政府国民の世論をよく聞いた上で慎重な態度をもって日韓会談に臨まれるよう、これは希望として総理並びに外務大臣にお願いしておく。  次に、時間がありませんから沖繩問題に入りたいと思いますが、沖繩問題も、もう時間がございません。そこで、簡単に総理の答弁だけ求めておきたいと思います。  先般ケネディ大統領の沖繩援助構想が発表せられまして、沖繩に対する日本の大幅な経済援助の問題について総理所信をお伺いしておきたいと思うのでございますが、沖繩では経済五カ年計画が再来年度からその緒に入って、五カ年間に所得倍増、あなたの好きな所得倍増を実現したい、こういうような構想だそうでございますが、これに対して日本政府としてどういうような態度で臨まれるか。その点、総理並びに大蔵大臣の所見を聞いておきたい。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 沖繩はわが国土の一部でございますので、沖繩住民の方々の福祉増進につきましては、私は従来からこれを考えておったのであります。たまたま、昨年ケネディ大統領と会いましたときにも、沖繩の施政権返還の問題、またそれに至るまでの民生安定向上の問題につきまして話し合いをいたしました。そうして、日米で協力していこうという基本方針を立てたのであります。そういう関係で、本年度におきましても予算上十億円余りの沖繩経済開発につきましての支出をいたしました。また、アメリカにおきましても、従来六百万ドルの援助であったものを、最高二千五百万ドルまでふやし得るという、いわゆるプライス法案が今審議されておる状況でございます。今沖繩の民政府、あそこのキャラウェー民政府は五カ年計画を立てておやりになっておるようでございます。これは、自治権の拡大とか、経済の発展、生活水準の向上、こういうような建前のもとに五カ年計画を立てておられるようであります。また、その問題につきましては、この前の調査団が行ってその案も拝見したようでございます。着々これが進んでいくことを期待しております。しこうして、これにはやはり米国とわれわれが共同で応分の、できるだけの額を出していくことが、私は先決問題だと考えております。
  62. 木原津與志

    木原委員 私どもが伝え聞くところによると、沖繩の経済五カ年計画は、アメリカで四億三千万ドル、日本ではこれの大体三分の一ぐらいの援助をするというようなことになりそうであります。この金額が相当であるかどうかということについてはまた追って議論をいたしたいと思いますが、ただ、私は、最後に確認しておきたいと思うことは、このプライス法の修正によって、これからアメリカが沖繩開発のために相当の援助資金を出す、この援助の資金が相当な額に達すると思うのでございますが、この際あなたに確認しておきたいことは、このアメリカの出した援助資金を、他日、いつになるかわかりませんが、沖繩の主権が日本に戻った場合に、この資金をガリオア・ニロアみたいに債務と心得て、他日また返済問題が起こるんではないかというようなことが巷間でいろいろ言われておりますので、この点を、債務性があるのか、将来日本が沖繩の主権を返してもらった暁において返すべきものかどうか、この点総理の明確な答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 三億ドル、四億ドルもきまっておりますまい。また、どういうところへ出すともきまっておりますまい。従いまして、どれだけの金額をどういうところは出して、それの結末はどうつけるんだということで、いわゆるきまるわけであります。今のところは何もまだきまっておりません。そのときに考うべき問題で、今でははっきり申し上げられません。
  64. 木原津與志

    木原委員 そんなことはありませんよ。このプライス法によってアメリカが出す資金を、日本が将来返すべきものか、これは債務であるかどうかということを今のうちに確定しておかぬと、ガリオア・エロアみたいに、もらったつもりにしておって、それが何年かたって、これは債務と心得るというようなことを言って、これを返済するというようなことに今度の議会でなったんじゃありませんか。その点で国民はいろんな疑点を持っておる。このガリオア・エロアにこりているから、私が国民にかわって、債務性があるかないか、払うのか払わぬのか、払わぬでもいいのかどうか、伺っているのです。私どもは、沖繩の施政権の範囲内において沖繩の振興のために、利用のために出す資金であるから、これは当然施政権の範囲内のものであって、われわれは払わぬでもいいという考えを持っているが、これを払うか払わぬかまだわからぬというのでは、将来問題になると思う。今政治の権力は向こうが握っておる。そうして、その権力に利用するために出した資金を、そのまま日本がひっかぷっていく、将来何年かの後にこれをひっかぶる、主権を取ったあとにひっかぶるということになれば、これは大問題です。だから、私はその点確認しておきたいのですが、払うのか払わないのか、ただかただでないかということをもう一ぺんお答え願って、終わりたいと思います。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 プライス法案は今上院で審議中であると思います。御質問の点は、これからプライス法の修正の結果によって出す金につきましての分は、出すときに十分審議しなければいかぬと思います。今までの六百万ドルの分につきましては、私は詳しく存じませんので、外務当局から返事をさせます。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 その点は、施政権者たるアメリカが住民の福祉のために支出するものでございまして、特別合意がない限り日本の負担になるとは考えておりません。
  67. 木原津與志

    木原委員 それでは、ちょっと外務大臣総理大臣と意見が違うようでありますが、一応外務大臣の払わぬでもいいのだということを確認して、私の質問を終わります。(拍手)
  68. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、淡谷悠藏君。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 冒頭気象庁の長官にちょっとお伺いしたいのですが、おいでになっておりますか。長官、どうも連日台風の報道でお忙しいところ御苦労願いまして、実はぎ、一毛十二号台風のこの先がどうなるか大へん心配になります最中に、ちょっと予算の審議上どうしても一応伺っておかなければならないことがございましたので御苦労願いました。ありがとうございました。  ついては、冒頭お伺いしたいのは、今の十二号台風がこの後どう発展するか、さらに、いよいよ来月になりますと台風シーズンが本格的になると思いまするが、今後の長期にわたる台風の予想がついておる範囲で、一つお答え願いたいと思うのであります。
  70. 和達清夫

    和達説明員 お答え申し上げます。  第十二号台風は、ただいま八丈島の東の方の沖にあります。進行速度が非常におそいためにその進路ははっきりいたしませんが、これから北の方に参りまして、関東地方の東の海岸は少なくとも暴風雨あるいは高波等の襲来を受けると考えております。  今後の見通しでございますが、九月になりまして二個ぐらいの台風が本土に接近または上陸するのではないかと考えております。十月にも一個ぐらい本土に近く参ると思われますが、これは大きな影響は与えないのではないかと考えております。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 何か予算委員会には似合わしからぬ質問と思ったかもしれませんけれども、そうじゃないのであります。  大蔵大臣にお聞きしたいのですが、今年の今までの災害も非常に大きなものがありました。特に九州と北海道を襲うた災害の損害は大へんに大きい。これについて一体大蔵大臣はどれくらいの予算措置をされようとしておるか、的確にお話しを願いたいと思います。
  72. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  ただいままでに起こりました各地の災害、被害につきましては、現在査定中でありまして、正確な数字は計上できないのでありますが、今までの分に対しては、現在残っておる百八十数億の予備費で十分今年度の災害対策費をまかなえるという考えでございます。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この間災害対策委員会でもお話がございましたが、大体本年当面払わなければならない金額がはっきりわかっておるはずであります。ただいまの気象庁長官の予想にもございましたが、九月二個、十月一個また大きな災害が予想されるとしますならば、大体どれくらいの災害対策費を心づもりにしておるか、概算でけっこうでございまするから、お話しを願いたい。八月六日現在で大体きまっておるはずなんであります。
  74. 石野信一

    ○石野政府委員 お答えいたします。  八月十三日現在で本年の被害報告が五百八十六億でございます。それで、これに対する国庫の本年度の所要額でございますが、大体百億程度。すでにそのうち八月三日までに十億の予備費を支出いたしておりまして、従いまして、あと九十億程度でございますが、これに対して予備費が現在百八十億残っております。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さらに大蔵大臣にお聞きしたいと思うのですが、生産者米価の引き上げによりまして予想されます支出はどれくらいでございますか。
  76. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  三十七年度の予算数量は四千二百万石でありますから、四千二百万石に千百円のアップ分を掛けると、おおむね五百億弱、こう考えていただければいいと思います。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 当初見積もりました食管会計への繰り入れ、これをオーバーするのはどれくらいになりますか。
  78. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  三十七年度の予算で食管の赤字と外麦等の赤字を含めまして大体七百億でありますから、それに今年度生産者米価の値上げ分を含めると、おおむね千二百億に近い赤字になると予想せられます。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういたしますと、新たにつけ加えるべき分は五百億と、こう考えてよろしいですか。
  80. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 今年度の予算の数量である四千二百万石を上回わるか下回わるかはまだ見通しはつかない状態でありますが、四千二百万石ないし四千三百万石国庫が買い入れるということになると、今申された通り、千二百億に近い赤字が予想せられるわけであります。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのほか、人事院が勧告を出しておりますので、当然これは公務員のベースも引き上げなければならないと思いまするし、石炭対策あるいは中小企業の不況対策等々見ました場合に、かなり大きく予算がふくれ上がる公算が大きいと思うのでございますが、その点に対する大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  82. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  さきに勧告を受けました人事院の問題につきましては、非常にこまかい要求をされておりまして、現在各省間で鋭意これが内容の検討を行なっております。これが最終的数字がどうなるかということは、現在まだ的確な数字をつかんでおりません。がしかし、政府は今まで勧告を尊重する建前になっておりますので、いずれにしても今年度の予算の中ではまかなえないということはおおむね予想せられるわけであります。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ことしの予算でまかなえるといたしましても、時期の問題がございます。二百億の予備費は、これはやはり年度末まで置いた方がよろしいと思います。これに手をつけてしまってもなお少ないので、食管赤字と災害の方だけで現在きまったのを見ましても六百億、すでにもう予備費でまかなえないことははっきりしております。その点はお考えはどうですか。
  84. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お説の通り、現在の予備費でまかなうことができないだろうということは予想せられますが、食管の赤字の最終的な数字も、人事院勧告も、今検討中でありまして、現在の段階で、いつから幾ら要るのか、しかも、人事院勧告の問題は、非常に経済情勢も悪いのでありますし、これが及ぼす影響も非常に大きいので、慎重に検討をいたしておりますので、的確な数字の集計ができない現在、補正予算を組まなければならないという段階に立ち至っておらぬことを申し上げます。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 給与の問題は、そういうふうな大蔵省の都合だけできめるべきものではないと思うのです。人事院の勧告は十分尊重すべき建前のものでございますから、これはやはり当然支払うべきものだと思う。  はかに石炭の不況対策もございまするが、総理に伺っておきたいのは、一体最近における諸物価の値上がりをどういうふうな方針で押えられるおつもりか、あなたの所得倍増計画と物価倍増の現実とをどのような点で調整されるか、この際はっきり伺っておきたい。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 物価倍増とおっしゃるが、倍増にはなっておりません。消費者物価はかなり上がっておりますが、卸売物価は安定しております。どの程度の上がりかと申しますると、これは長いことを言うとまたしかられますが、この二年間で、勤労者並びに一般国民は、三十四年と三十六年を比べますと、大体総生産は四割、国民一人当たりの所得が三割七分程度の増加です。消費者物価は一〇%足らずでございます。九・三%、九・一%と言っているわけです。この消費者物価の上がる上がりようよりも、これは平均ですが、所得が三倍上がっております。しかし、上がらぬに越したことはありません。所得がふえて消費者物価が上がらぬに越したことはありませんから、上がらぬようにできるだけの措置を講じて参りましたし、また、今後も思い切った措置を講じようとしておるのであります。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理から諸物価が上がらぬに越したことはないという御答弁を伺いまして、これで一応安心いたしました。実は総理は卸売物価を非常に大事に見られておりまするし、また、これは大事でございまするけれども、消費者価格と卸売価格とでは、一般庶民に与える影響というのは、消費者物価の方が非常に大きいわけです。現実にやはり卸売物価をはるかに上回るような消費者物価の値上がりを見ておりますと、これはやはりこの際はっきり総理に物価値上がりの押え方を考えていただきませんと、大へんな社会不安を起こすだろうと思う。ただ、この物価値上がりの状態を見ておりますと、これまで値上がりをした場合とは相当違うものがありまして、われわれの常識から申しますと、米価が上がる、従って労賃、給与が上がっていく、それから諸物価が上がるというのが前からの常識になっておりましたが、今度は逆に、物価が上がってしまって、それから給与が上がって、最後に米価が上がる、逆な上がり方を示しておるようですが、これはやはり総理が扇動した物価値上がりじゃなかったですか。景気が非常によくなるとか、経済が成長するとか、所得が倍増するとか言ったものですから、その手形が払われる前に物価の方がどんどん上がってしまったようにわれわれには受け取れてしょうがない。この値上がりブームを引っ張り出したのは総理自体にあると思うのですが、この点は総理どうお考えになりますか。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 日本国民の生活状況を考えて、これをできるだけ早く先進国並みにしたいというのが、私の所得倍増を申し出した目的でございます。それじゃどうなったかと申しますると、よく統計をごらん下さいますと、先ほど申し上げた通りでございまして、物価は、昨年六%、今度三%でございますが、賃金の上がりようはどうでございましょうか。賃金の上がりようは、昭和三十五年には七%前後でした。三十六年には前年に対して一一%の増でございます。一一%をこえております。ことしの一月から五月は二二%の増でございます。(「物価が上がったからだ」と呼ぶ者あり)物価が上がったからとおっしゃるが、賃金の上がりようは消費者物価の上がりようよりもうんと上じゃありませんか。これはやはり消費の内容がよくなっておる。ふえでいっておる。だから、国民の一人当たりの所得が二年間で三割七分、国民の消費が三割、物価が九・九%、こう追ってみると、全体として上がらないに越したことはないけれども、これでインフレ傾向とか、国民の生活が非常に悪くなったとか、あるいは生活が横ばいだとかいう問題じゃないと思います。そこで、私は、所得をふやしていって、そして物価ができるだけ上がらないように努力する、これが日本がこれから先進国並みに早くいこうという一つの越えなければならぬ関所だと思う。そこで、やはり長い目で自信を持って進んでもらいたい、こういうことでございます。一時の現象、一部面のことにとらわれて、全体を見のがしてはいけないと私は思います。しかし、いつまでも賃金やあるいは所得の上昇が今までのような超高度の成長率をたどるとも言えません。従いまして、今では所得の増加の三分の一、四分の一程度でございますが、ごく細心の注意を払いながら、所得の増加のじゃまにならないようにして、そして生活水準の上がることに応じてみんながよくなっていく。今度の消費者物価の上がりようも、どこが一番上がっておるかというと、やはりお百姓さんのおつくりになる野菜物、くだものが一番上がっておるのであります。そして漁民の方々の分も上がっております。そしてまたサービス料金の上がり方が、去年の暮れからことしにかけて非常に上がっている。お百姓さんもよくならなければいけない。中小企業もよくならなければいけない。自由職業もよくならなければいかぬ。そのよくなった上で、それ以上に所得がふえていく。この現象は、私は大所高所とは申しませんが、実態に沿うように、かけ離れた議論でなしに、全体を見て議論していただきたいと思います。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私も同じようなことを総理に申し上げたいのですが、やはり、大所高所に立たれてけっこうでございますから、全体の生活の状態を見ていただきたいのです。どうも、総理の見ております国民は、ほんとうに苦しみに徹しない国民だろうと思う。やはり、具体的な大衆の生活を見ておりますと、決して総理がお考えになっているようではない。経済成長に伴ってどんどん生活が向上していくような形じゃございません。特に石炭、中小企業、あるいは農業基本法などの影響で土地を離れていく農民の生活——野菜やくだものの値が上がったと申しますが、これは末端の市場においての流通過程における値上がりであって、農民自体はちっとも高いものを売っていない。だから、これは、国民の半数以上、大多数の形を全然見ない説だと私は思う。しかし、こんなことを議論してもしようがありませんので、少し私総理にお考え願いたいのは、今度の参議院選挙でみごとにお勝ちになったので、あまりいい気にならぬようにお願いしたい。それは確かに議席はふえたでしょうけれども、この得票の実態を見ますと、私はそんなに総理がぬけぬけとあなたの政策の成功に安心しておられるような状態じゃないと思う。やはり、もっと国民考えというものを身にしみて感得せられまして、これは一つ真剣にお考えを願いたい。  そこで、この値上がりを押えようという気持があるならば、率直に伺いますが、公共料金の値上げは一体どうなさるか。もうすでに私鉄、電力料金その他の値上げの要求があるようであります。これに対して一体総理は物価抑制の立場からはどう御処置なさるおつもりでありますか、お伺いしたい。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 経済が伸び、国民の生活水準が上昇するにつれまして、今電気のお話が出ましたが、電気がどれだけ需用増加になっておりましょうか。三、四年前と比べまして、電力の使用量も五割程度ふえております。七十一億キロワットから百二十億キロワットくらいにいっております。三十二年のそのときの一キロの発電料は四円二、三十銭でございましたが、今六円になっております。所によっても違います。あるいは水力、火力によっても違います。石炭か重油かによっても違います。大体平均がそのくらいであります。こういうように上がっていくのはどうでしょうか。これは、施政演説で申し上げましたごとく、資本費もふえました。それじゃ電気をやめなければいけませんか。停電があった方がいいか、あるいは所得が上がったんだからある程度の電気を供給して生活の安定を期する方がいいか、これを考えなければいけない。それなら、資本費が上がって、一キロワット二円、五割も上がっているものを、だれが負担するか。政府国民が負担すべきでしょうか、消費者が負担すべきでしょうか。その点がございます。それをお考え願いたい。  それからまた、私鉄運賃を今検討しておりまするが、これだけの輸送量の増加に対処するのにはどうやったらいいか。踏切の問題あるいは施設の安全性をはかるためにどうやったらいいか。その設備の改善増強に要する費用は政府国民が負担するのか、あるいはその使用者が負担するのか、株主や経営者が負担するのか、この点を考えなければいけない。   〔発言する者多し〕
  91. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 電力会社が負担するといって、今の料金で需用がふえて資本費がかかったものを電力会社が負担したときには電力会社がどうなるか、やめればいいというふうな議論はできないと思います。これは民主的じゃありません。やめればいいんだというのだったら、初めから経済は問題にならない。私はそういうことをお考え願いたいと思っておるのであります。だから、そういうことを考えて、消費者にも使用者にも負担してもらおうし、会社の経理も合理的にして冗費を節約しようし、そして、私は、できれば政府の方である程度のめんどうを見ることが適切じゃないか、こういう考えでおるのであります。すぐ会社のめんどうとおっしゃいますが、経済というものは一体でございますから、闘争々々で対立の考え方で経済をやろうとしたら、とても経済はうまくいくものじゃございません。あなた方におかれましても、そういうところをお考えを願いたい。われわれも考えておりますが、どうやってこれを切り抜けるか、やはり将来の日本というものを考えなければならぬ問題でございます。
  93. 淡谷悠藏

    淡谷委員 コストの値上がりに応じていろいろな電気料金あるいは私鉄料金の値上げやむなしというような見方のようでございますが、電力料金にしましても、大口需用と小口需用では非常に値が違っている。それから、一般小口使用者にまで会社の設備その他の負担をさせることがいいか悪いか。これはやはりもう一ぺん考え直すべきで、少なくとも企業である限りは、会社が利益の中からそういう設備費を出すのが当然だと思う。ただし、公共事業でございますから、どうにもならない場合は政府がまあ出してもというようなお考えもございますが、どうも御答弁を通じて察しますると、時期を見て電気料金あるいは私鉄料金の値上がりはしてもよろしいというお考えのようでございますが、的確にどうなんですか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の過去の歩みも見、将来も考え、また世界情勢考えまして、上げなければならぬという結論が出たら上げます。上げなくても済むようならば、政府が相当のめんどうを見て、上げません。しかし、それは今検討しておるので、ただ、情勢とすれば、何にも上げずにいくということは、よほどのことでないとなかなかむずかしいんじゃないかというのが、今の私の心境でございます。しかし、できるだけの努力をいたしたいと思います。
  95. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもなかなかはっきりしない御答弁ですが、では、もう一つ伺いますが、消費者米価はお上げになりますか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 消費者米価も同じ問題でございます。ことにこれは農民に非常に関係がございます。片一方消費者の生活安定の上から言って食管法も置いておりますので、よほど慎重な態度でいかなければなりません。しかし、米がこうやって上がって参りますことは、やはり、農民の労働力の価値、評価の増加に基づくものでございます。だから、私は、適正に米価を上げることは、いろいろ議論がありましたけれどもやぶさかではない。上げました。上げることがやはり日本の経済の今の現状から言って至当だ。しからば、農民のためにあるいはまた国の経済のために上げた、その上がったものをだれが負担するかということですが、三十二年のときに私が大蔵大臣で上げました。上げたときの状況等から考えて、これはやはり国民にい消費者に負担してもらわなければ財政がなかなかむずかしいというので上げたのでございます。その後昭和三十二年から今年まで上げておりません。これはやはり国民の生活を考えた。ことに、今のように消費者物価が上がっていくときに、米を上げたならばどういう影響があるかということも検討しておりますが、ただ、日本の経済がこれだけ伸び、国民の所得がこれだけふえ、生活水準がこれだけ上昇して、いわゆるエンゲル係数も、淡谷さん御存じの通り昭和三十二年には四十、三ではなかったかと思います。そのときにも一割足らず上げました。今のエンゲル係数はどうでございましょうか。所得がふえ、生活水準が上がってきましたから、今のエンゲル係数は三七・幾つでしょう。これだけ国民の生活がよくなっておる。食糧が全体の生計費に対してそれだけの割合になっておる。これは三七というと大体先進国、イギリス並みではございませんか。そのときになおかつ政府が千二百億円も米価の差額を負担して、しかも逆ざやの事態を起こし、そして片一方では農村の画期的構造改革、前進をしなければならぬときに、千二百億をこれにのんべんだらりと使っていいか悪いかということが議論のもとになっておるのでございます。しかし、私は結論を出しておりません。消費者米価の上昇は生活に影響します。しかし、上げたからといって、この前私が上げたときは四二、三%のエンゲル係数で、今三七になっておる。国の将来を考え国民全般を考えて結論を出さなければならぬので、電力の問題よりもよほど大きい問題であるのでございます。私は、この点も農林大臣にとくと考えてもらって、最後の結論は出して、あなた方の前ではっきり、上げない理由、上げるとすれば上げる理由を申し上げて、御賛成を得たいと思っております。
  97. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも消費者物価も何か上がりそうな気がいたします。総理は物価を押えると言っておりますが、公共料金が値上がりになり、しかも、国民の主要食糧でエンゲル係数三七%と申しますけれども、係数だけの問題ではない。総生活費の問題に関係がある。私は必ずしも最近の庶民の生活は楽になっておるとは思っておりません。特に、主要食糧の値上げというものは他のものの値上げとは違った一つの気持を持つ。これをもし総理がおやりになるならば、米価を基準にした労賃や給与り値上がり、さらに物価へのはね返り、もう一ぺんあらためての物価値上がりムードができると思うのでありますが、その点総理のお考えはどうですか。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 消費者物価を上げる上げないによって米価の問題がきまったわけではないと私は心得ております。米価は米価の問題として決定されると思うのであります。従いまして、消費者米価を上げるときにはまたその手続をとってやるのが至当でございます。消費者米価を上げたから生産者米価にはね返るということは、今までもしたことはございません。それはそういう経済情勢によって翌年の米価の決定には影響するかもわかりません。本年の分を変えるという考えはございません。
  99. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、今の日本の食管法から申しますと、消費者米価の値上がりが直ちに生産者米価にはね上がってはならないものだと思っておる。これは基準を当然別に考えまして、生産者米価の場合は生産費と所得を補償するように、消費者米価の場合は安定せる生活を乱さないように、この立場から決定すべきものであって、二重米価が本来食管そのものの持っておる性格なんです。  そこで、重政新農林大臣にお聞きしたいのですが、今も、総理のお考えでは、食管会計の赤字が大へん気になっておるらしい。さっきの大蔵大臣のお考えでは大体千二百億の赤字を出すようなお考えでありましたが、重政新大臣はいかなる抱負を持って食管赤字に対処されるか、御抱負のほどを承りたい。
  100. 重政誠之

    重政国務大臣 お答えいたします。  大体、この問題は、ただいま総理から述べられた通りでありますが、食管法によりますと、消費者米価の決定は家計の安定を旨とするということになっておりますから、農林大臣といたしましては、その点に重点を置いて、どうするかということを検討いたしておるわけであります。ところが、先ほど総理から述べられました通りに、家計費は所得がふえましたために年々増加しております。食糧費も増加しております。ところが、米の家計費に対する比率というものは年々低下をいたしておるわけであります。これは、米代というものが、家計にそれほど大きな影響を現在は及ぼしてないということだろうと思うのであります。そこで、これはそういうデータも十分参考にいたしまして、そうして消費者米価の決定をしなければならぬと思うのであります。  さらに、御参考のために申し上げますと、三十七年度生産者米価一万二千百七十七円ときめられて、前年に比べますと千百二十五円の値上げになっておりまして、それで現在の消費者米価から参りますと、末端において逆ざやになっておるわけであります。ということは、どういうことであるかといえば、生産者は自分の食い扶持も政府に買ってもらって配給を受けた方が安い。その間に三十円前後の差が出ておるのであります。これは計算上そうなっておるようであります。こういうようなことを配給の面におきましても食管法の運営上十分にこれは考えていかなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  101. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重政農林大臣、少しどうも河野農政の跡を継いだようにも見えませんが、あなたの食管会計の赤字に対するお考えをもう少し私は突き詰めてお伺いしたい。一体逆ざや現象が出ましたのは何年からですか。
  102. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、生産者米価は、財政負担に関係なく、昨年来その原則のもとに決定をされておるのであります。財政負担が大きくなってこれをいかに措置するかということは、第二段の問題としてこれは考えられてきておるのであります。そういうことで、三十七年産米の米価が決定をせられております。  そこで、食管の、先ほど申し上げました配給制度の運営上の問題も一面にはある。それからまた千二百億近くの財政負担をするということについては、国の財政上の問題もある。さらには御承知通りに、今はそれほどでもないようでありますが、昔から米が物価形成の基礎になるというようなこともいわれており、少なくとも心理的な影響があるだろうということも軽視はできない。そういうようないろいろの問題を勘案しまして、これは政府として慎重に決定をせらるべきものである、こう私は考えています。
  103. 淡谷悠藏

    淡谷委員 御答弁は全然食い違っていますよ。私は何年から逆ざや現象が出ましたかというのです。食管赤字全体の問題と逆ざや現象と違うくらいは大臣だから知っているでしょう。その逆ざや現象が出たのは何年ですかと聞いている。一言でけっこうです。
  104. 重政誠之

    重政国務大臣 これは三十七年度生産者米価が決定せられましたあの米価と、それから現在の消費者米価が八百五十円、これを据え置くものとして考えればそういうことになりますということを申し上げておるのです。
  105. 淡谷悠藏

    淡谷委員 とんでもない。これは総理にもよくお聞き願いたいのですが、農林大臣自体簡単なことがおわかりにならないようですよ。国内米価が逆ざや現象を呈しましたのは三十六年度でしょう。そうじゃないですか。もっと詳しく申し上げましょうか。三十三年度は売買損益で二百二十二億、これは黒字ですよ。それから三十四年度は売買損益では二百六億の黒字、三十五年度は百四十五億の売買損益の黒字、三十六年に入って初めて百三十一億の売買損が出て赤字になっておる。これを逆ざや現象という、おわかりになりましたか、農林大臣。そこで、三十七年度は、当初の見積もりでは百一億の損失を見ておる。それが今度の新しい米価の決定によりまして、さらにこれが五百億程度ふくれるというのが構想なのでしょう。そうじゃないですか。おわかりになりましたか、大臣。どうですか。あなたはこの認識さえ違っていては話にならない。
  106. 重政誠之

    重政国務大臣 私が申し上げましたのは、末端の国民が配給を受けます末端価格が三十円近くの逆ざやになりますということを言っておる。今淡谷さんのお話は、食管会計の出入りのことを言っておられるわけでありますが、私は末端のことを言っておるのです。これが一番影響するところでありますから、食管の会計が大まかに出入りがどういうふうになるとかいうことは、もちろんこれは財政上の問題でありましょうが、そうでなしに、私は末端の国民が受けることを言っておるのであります。
  107. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重政農林大臣、食管赤字の問題をやっているのですよ。従って、売買損益の逆ざや現象になった場合は、食管会計上の逆ざや現象ではないですか。農林大臣はやはりその点を考えておかなければ困る。それならば、本年度の将来見積もらるべき食管の赤字は千二百億、そのうちで、売買損益によって出る赤字というのは四、五百億なんですが、あとの七百億の食管会計の赤字について、どこに原因があるか、御検討になりましたか。しかも、三十六年まではこの売買損益による赤字はわずかに百三十億なんです。その場合でも、すでに大きな六百億程度の赤字は出ておる。この売買損益以外の、すなわち、米価に関係なしに出ておったこの赤字について、一体大臣はどうお考えになっておるか。
  108. 重政誠之

    重政国務大臣 御質問趣旨がわかりました。米価の売買損益によらない赤字というのは、申すまでもなく、これは政府の経費であります。人件費その他の経費、それから金利、倉敷、それから配給機構の販売のマージン、こういうものであります。おおむねこれは五百億前後のものであろうかと考えております。
  109. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのうちの最も大きな比重を占めておりますのは金利です。この食管会計から払う金利についてもう少し工夫が要りませんか、工夫を要すると思う。ほかのさまざまな経費は、これは消費者に対する対策の経費ですが、食管制度というものがある限りは、これは行政費として見るのが至当だと思いますが、その点は総理はいかがでありましょう。行政費として見るべきもの、あるいはまた集荷の必要上から仮渡しをする金に対する金利、これまで全部ひっくるめて千二百億という膨大な赤字の形を出して、それで消費者米価値上げ必至なりといったような印象を与えることは、私は今の物価値上がりブームにさらに拍車をかけるようなことになると思いますが、この点に対する基本的な総理のお考えを承りたい。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 ずっと以前よりいろいろ議論があったところでございます。今食管赤字が千二百億になる。そのときの今度の増加部分は、いわゆる経費とか行政費以外の分が四、五百億くらいになるかとも思います。まだ私は十分計算しておりません。行政費の分はみな政府が見るのだということにつきましても、これは議論がありましょう。今まで全部見た場合もありますし、見ない場合もあります。  それから御質問の、食管の運転資金につきまして政府がめんどうをみるべきじゃないか、政府としてもできるだけのめんどうはみておると思います。大体今ごろで、政府の余裕金の食管への運用は無利子でございますが、千二、三百億円あると思います。大きいときは二千億円を越えます。政府としてもできるだけの食管への無利子の運転資金は出しておるわけでございます。これ以上出すということにつきましては、これは政府が金を借りてこなければならぬ。そういうことで、これ以上の約束はできませんが、あり金をできるだけ食管と、それから外為の方には使っておるのが実情でございます。両方あわせて二千億あまり使っております。
  111. 淡谷悠藏

    淡谷委員 造船会社その他には相当大きな金が出ているわけですから、少なくとも国民の食糧をまかなう食管会計にはこの際思い切って手を打たれて、そうして消費者米価にはね返らないような措置をとられることは、総理がほんとうに物価値上がりを抑制しようという誠意があるならば、当然すべき態度だと私は思う。特に食管会計の行き方については、非常にさまざまな疑惑を持たれなければならない点がある。米の問題を重視いたしまして、日本の生産者の米価が高いから食管の赤字が大きくなるということを常識にしておる。ところが、外国から輸入する小麦が赤字を出しておる現実を総理お聞きになっておりますか、どうですか。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 小麦、裸麦、大麦につきましては、その年々、外国の事情によって違っております。大麦、裸麦は今まで赤字が通例だったと思います。例外毛ございます。小麦におきましては、従来は外国の小麦が安かったので、ある程度黒字だったと私は記憶しておりますが、最近の様子はつまびらかにしておりませんので、関係当局よりお答えさせます。
  113. 淡谷悠藏

    淡谷委員 千二百億の赤字を出すというこの食管会計は、会計自体として、は大蔵大臣も頭痛の種だろうと思います。しかし、この会計の出し方が総理にさえおわかりにならないような出し方をしておるとすれば、一般国民がそのような誤解をするのは当然なんであります。輸入小麦の勘定で、食用の小麦とえさの小麦と全然反対の市価を出しておる。食用小麦は確かに黒字を出しております。ふすま増産用のえさ用の小麦は年々莫大な赤字を出しておる、この事実はあるでしょう。おわかりにならなかったら、一つ当局からこの点の御説明を願いたい。
  114. 重政誠之

    重政国務大臣 食糧庁長官に答弁させます。
  115. 大澤融

    ○大澤政府委員 えさ用の小麦は約二十億くらいの赤字を出しておるというように記憶しております。
  116. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今は二十億でしょうけれども、最近のえさの輸入状況を見ておりますと、三十一年度から見て約三十倍の増加を見ておるという事実がある。その輸入の小麦がふすまの価格を押え、それから取ります四割の小麦粉の価格を押えまして、あとは会社が全然損をしないような計算をして逆算をするから、払い下げ価格が安くなっておる。その通りでしょう、長官。
  117. 重政誠之

    重政国務大臣 その計算のあれは、後ほど政府委員をして答弁をさせますが、御承知通りに、ふすまは非常に暴騰をいたしますので、農林省といたしましては、このえさ用に回す輸入小麦のふすまは実は農林省が握っておるというので、それによって飼料の高騰を抑制するためにやっておるわけであります。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 農林大臣、何もむずかしい数字じゃないんですよ。ちゃんと食糧庁長官が握っている数字なんです。ちょっとやりましょうか、これは参考になると思いますがね。  輸入食糧の外麦は、三十三年度は売買損益が二百二十七億の益です。三十四年度は二百二十六億の益です。三十五年度は百九十四億に減っている。それから三十六年度は百四十一億に減っている。三十七年度は百八億、これは益が減っています。この減っている分がえさ用の小麦の損失なんであります。いいですか。あなたはふすまの値が暴騰すると言っておりますが、さっき米価では消費者の価格を大へん問題にされた。払い下げております政府のふすまの価格は五百九十九円でしょう。末端で配給を受けておりますのは、八百円から、安いところで七百八十円ですよ。この流通過程における経費というものは、決してふすまの暴騰を押えてはおりません。これは農業基本法による成長部門としての畜産を阻害することおびただしい。乳価にも反映します。しかも、この製麦工場の姿の中に、私はやはり総理にも検討願わなければならない点があると思う。政府が小麦を払い下げる会社は、数が限定されているのです。はっきり申し上げましょう。二十四工場ありますが、中には千代田製粉株式会社がある。日清製粉株式会社がある。かちどき製粉株式会社がある。前田産業株式会社がある。東福製粉株式会社がある。この会社の利益をはっきり守ったままで、食管の主要の小麦の部門だけの赤字をどんどんふやしていっている現状は、これはやはり米価とあわせて考えなければならない重大な点だと思いますが、農林大臣、どうお考えになりますか。あわせて大蔵大臣の考えを聞きたい。
  119. 重政誠之

    重政国務大臣 今お述べになりましたような諸会社で——これはいずれも製粉会社でありますが、食糧用の分とえさ用の分と両方がまじっておる。そうしてえさ用の分は一定のふすまを出すことを条件にして、そのふすまは政府の指図によってこれの配給をやっておる、こう私は考えておるのであります。その間のいろいろ計算のことは私も十分にまだ承知しておりませんから、食糧庁長官をして御答弁をさせます。
  120. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  淡谷さんのただいまの発言は、三十八年度の消費者米価決定に対して、当然食管の内容に対してもう一ぺん精査をして、国民の理解を得られるような状態にしなければならないということだと思いますから、ただいま御発言になられたものも含めて、こまかく検討して合理的な処置をとりたいと考えます。
  121. 淡谷悠藏

    淡谷委員 食管会計は前からだいぶ暗さがうたわれておりましたが、この際やはり十分に検討をされてから措置されませんと、総理、よほど国民の指弾を食います。  ついでだから申し上げておきますが、この工場で出したふすまを販売する会社の資格がきまっておる。これは全購連、全酪連、全畜連、日鶏連、全開連、保税工場会、北海道飼料協会、このほかに、ことし新しく全飼連の元卸連合会というものに指定しようという構想があるように聞いておりますが、食糧庁長官、聞いておりませんか。
  122. 大澤融

    ○大澤政府委員 それはおそらく畜産局の方で、飼料の適正な確保をするという意味でいろいろお考えになっていることだと思いますが、そのようなものを指定するかどうかということは、私はまだ聞き及んでおりません。
  123. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理大臣、この全飼連元卸連合会の会長は安田善一郎君ですよ。いいですか。さっきも申しましたが、私は言いにくいことを率直に申し上げます。高級官僚の選挙違反が今度の選挙ほどはなはだしかったことはない。山崎さんと材木屋の関係、安田さんと飼料屋の関係、これは国民が知っているのです。その安田君が、赤字を出す外国小麦に関係のあるふすまの配給を受けようという連合会の会長になっている。私は、食管会計というものは、国民の食糧の確保をはかり、戦争以来非常に苦しんできました農民の生産意欲をそがないように、十分これを伸長させるような建前から、国が犠牲を払っても作った制度だと思っている。その赤字の中にこういう場面まで食い込んでいるとすれば、私は、これは率直にやはり総理の果断なる措置をお考え願いたいと思う。特に保税工場会というものはどうですか。農林大臣、おわかりになっているのですか。
  124. 重政誠之

    重政国務大臣 保税工場会は配合飼料工場の団体であると考えております。
  125. 淡谷悠藏

    淡谷委員 こういう赤字を出してまでやるのは、末端に対するえさの配給を円滑、低廉にするためのものだと思いまするが、保税工場会に対して単味飼料、混合しない飼料で配給しろという要求が強い。これはここではできないでしょう、どうです。配合じゃなくて、配合する前の単味で配給しろという要求が強い。なぜできないかということです。
  126. 重政誠之

    重政国務大臣 そういうことは私まだ聞いておりませんが、その事情をよく調査してみます。  それから、先ほど淡谷さんが言われたのによりますと、いかにも食管会計がどんぶり勘定をやっているような口吻で言っておられますが、これはどんぶり勘定ではない。どんぶり勘定はいかぬということで、その後改めて、六つの項目に分けてやっておるわけであります。今のお話のえさの関係は、これは農産物価格安定法並びに飼料需給安定法関係は別個に一つの項目として経理をいたしておるわけでありますから、それは一つ御了承賜わっておきます。
  127. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どんぶり勘定のことははっきりしておりますが、これはいずれ通常国会の際でも私はもっと詳しく申し上げますが、保税工場会の存在は戦争中からの問題なんであります。保税工場のくずを集めて飼料をつくっているのでしょう。三井がやっておったのじゃないですか。満州事変当時からのこれは伝統です。そうしてくずを集めたものですから、豆かすも入っている。分けるわけにいかないのでず。それが保税工場会というような名前に変わって、外国小麦の払い下げを受けて指定工場になっている。なっているならなっているように、砂糖と同じように差益が出るはずです。お調べになったことはありますか。お調べになっていなかったら、あらためて徹底してお調べ下さい。これはあなたに調べてもらいたい。周知の事実なんですよ。どうですか、農林大臣、その点はわかっていますか。
  128. 重政誠之

    重政国務大臣 よく調べます。
  129. 淡谷悠藏

    淡谷委員 こういうことはあげて数えるいとまがないくらいある。そこで、一つお伺いしておきたい。社団法人甘味資源振興資金管理会というのは何ですか。これは直接政府関係機関ではないでしょう。政府が指導しているはずです。農林大臣、これは何ですか。
  130. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、先年輸入原糖の例の差益の問題が国会でもいろいろお話が出まして、そこで製糖会社から輸入差益を出すことにいたしたわけでありまして、これを管理をするという一つの社団法人をつくって、これで管理をして、その差益をもって国内甘味資源の開発をやる、こういう建前になっております。
  131. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その差益はどれくらいございますか。
  132. 重政誠之

    重政国務大臣 十八億円を三年間に出すことになっておるようであります。
  133. 淡谷悠藏

    淡谷委員 出す差益でしょうが、この振興会の財源をなしておるところのほんとうの差益はどれくらいありますか。そのうちの何分を出しているのですか。
  134. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、農林省は大蔵省の方といろいろ検討をいたしまして、そうして払った税金等を差し引いた残りが十八億円になっておると承知しております。
  135. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、何もこんないやなことを言う必要もないでしょうけれども、やはり大蔵大臣、あなた今度予算を組むにあたりまして、食管会計の赤字というものの処置は大へんな仕事だろうと思う。食管会計で赤字を何とか処理すべき適当な方法があったら、その最善を尽くすべきだと思う。砂糖などもその一つでしょう。砂糖も食糧でしょう。どうしてこの砂糖だけが食管会計に入らぬのですか。莫大な差益を出し、その差益を、別な団体をつくって、そこからまた吸収するような回りくどい方法をとらなければならない原因がどこにありますか。
  136. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 食管会計の合理化という問題に対しては、十分メスも入れ、また合理化をはかって参りたいという考えであります。
  137. 淡谷悠藏

    淡谷委員 農林大臣おわかりになりませんか。どうして砂糖だけは食管会計に入らぬのか。入れたらいいじゃないですか。十八億の差益をもらったならば、これはやはり食管会計の赤字がだいぶ埋まりますよ。それからもうけている小麦会社からも取りなさい、損をしていないのだから。なぜそういうふうな黒字要因は全然吸収しないで、赤字の要因だけを出しているのか。的確に申しまして、砂糖はなぜ食管会計にお入れにならないのか。
  138. 重政誠之

    重政国務大臣 これは今の食管法がそういうことになっておらないのです。砂糖は、御承知のように、外貨の割当制によってずっともとから入れてきておる。それで関税で処理をするという建前になっておる。この問題は、私も、もっとはっきりやるがよろしい、こういうふうに考えて、今せっかく検討をいたしております。しかし、そのやり方によりますと、これは農民のカンショ、バレイショ、澱粉に影響するところが非常に大きいので、簡単にはできませんが、何とかできないかというので、今せっかく検討をいたしております。
  139. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この秋から自由化をだいぶ進められるようで、私どもは、これは日本の農業だけでなくて、一般産業に及ぼす影響が非常に大きいので、これは延期すべしという説を持っておりますが、この中に砂糖の自由化は入っていないはずですね。これは一体どういうわけです。これくらい需要の多い、しかも日本には資源の少ない——あなたは澱粉とか申しますが、てん菜糖にせよ、澱粉にせよ、出回っている数は知れたものです。数に入りません。その大多数の国民が非常に要求しております砂糖だけは、一体どうして自由化に入れないのですか。私は入れろと言うのではないのですけれども、これを省くならば、あとのものも省いた方がよろしい。どうですか。
  140. 重政誠之

    重政国務大臣 砂糖問題を論議せられる際に、澱粉やイモは大したことはないというようなことを言われると、これは大へんなことであろうと思いますから、これはやはり慎重に御検討願いたいと思うのであります。砂糖を自由化するかしないかということは、それを含めまして、先ほど私が申しましたように、もう少しはっきりとこの内地の甘味資源の開発、輸入原糖の処理の問題並びにこの澱粉の問題、カンショの問題を含めまして、何らかの方策を樹立したい、こう考えて、今せっかく検討いたしておるのであります。自由化の問題は、さしあたっての問題は、本年十月から自由化することを目途として閣議で決定をせられました品目の中には、これは入っておりません。
  141. 淡谷悠藏

    淡谷委員 砂糖の問題はこれだけじゃございませんから、いずれ機会を見てじっくりやりますけれども、私言いたいのは、あなたはもう農林大臣で、農林省の課長じゃないのですから、砂糖の差益を妙な形で吸収するよりは、食管会計の中に入れたらどうか。よろしいというのであるならば、法律改正ででもお出しなさい。法律がないかうやれないというのは、役人の言うことで、大臣の言うことじゃないでしょう。そうじゃないですか。(「法律改正を要しない」と呼ぶ者あり)かりに要したとしても、私はやった方がいいと思う。要するに、食管会計の赤字というものが非常に大きくアピールされまして、消費者米価の値上がりまでかえってこようというのでございますが、食管会計のみならず、私は根本的に掘り下げてみますというと、物価値上がり抑制のために総理に御協力すべき点がたくさんあるのです。初めにお答えになりました、物価の値上がりは抑制するんだという立場に立つならば、こうした不合理な食管会計の赤字は、一日も早く合理的に処理するようにやっていただきたいのですが、これは大蔵大臣と総理大臣の御決意を聞きたい。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 砂糖の問題についてでございますが、これは大豆の自由化と一緒に考えたことがございます。私は、本質的には、他に特別な支障がない限り、砂糖は自由化するのが本筋かと考えます。当時は、農林大臣の言われたように、砂糖以外の甘味の問題、すなわち、澱粉をどうするかという問題、それから北海道のみならず、暖地てん菜糖、このてん菜糖をどうするかという問題がこんがらかりまして、結論が出なかったと思います。しかし、砂糖の特別の利益を食管に入れるということをきめるよりも、まず砂糖自体についてどうすべきかということが私は問題だと思います。それは、最近技術の進歩によりまして、非常に滞貨になっておった澱粉も相当の高い値で売れるようになり、あの大へんな滞貨がほとんどなくなりりつある。それからまた、てん菜糖の助成も、これは関税のきめ方によりまして、これにはガットの譲許規定がございませんので、関税と消費税のやりくりによって、相当のてん菜糖の保護政策は実行できるんじゃないかということで、私は、今のように砂糖の小売値段が一定して、そうして世界市場価格が動くことによって非常に利益が出たり少なくなったりするという今のやり方は、国民大衆に対していかがなものかという気持を持っております。今後これは検討していかなければならぬと思います。専売という考えもありますが、やはり私は、専売ということは、まだ結論は出しておりませんが、そう範囲を拡張すべき問題ではないと思います。それから食管の赤字の問題と、砂糖の自由化、国民大衆に安い砂糖を食べてもらうということとは別個に考えなければならぬ問題でございます。しかし、御意見もあることでございますから、十分今後この砂糖問題については検討いたしたいと思います。
  143. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほどから申し述べられておりますように、三十八年度の消費者米価の問題が重要な問題として議されておるのでありますから、食管の内容の合理化その他に対しては特段の配慮を払って参りたいと考えます。しかし、砂糖その他、食糧部門であるから、利益のあるものはこの特別会計に入れた方がいいという議論には、私は、食管制度の在来の目的が米麦、すなわち、主食を対象にした特別会計でありますから、何でも入れることは当を得ないのではないかと考えます。  それから、砂糖に対しては、時間的な問題はありますが、国民の絶対的な需要品でありますから、できるだけ早い機会に自由化をなすべきだという考えであります。その場合、なぜ自由化ができなかったかというのは、国内甘味資源に対するいろいろな問題があるからであります。
  144. 淡谷悠藏

    淡谷委員 米麦と言っておりますが、食糧管理法第二条には、はっきりこう書いてある。「本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、大麦、裸麦、小麦其ノ他政令ヲ以テ定ムル食糧ヲ謂フ」というのですから、これは別段砂糖を入れて悪いということはないと思う。しかし、あとでそれは機会を見てやりますが、総理にこの際伺っておきたいのは、災害、食管会計についてはいろいろ伺いましたが、給与については、総理は人事院の勧告を当然受け入れられるはずだと思いますが、その点はどうですか。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 今、関係各省で内容につきまして審議いたしております。一応内容を見まして、そうして今年の財政状況あるいは明年等を見越しまして、人事院の勧告を尊重しつつ最善の措置を講じたいと思います。
  146. 淡谷悠藏

    淡谷委員 おそらくゼロ回答なんていうのは出てこないと思いますが、石炭対策については一体どうなさるつもりですか。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 三十五年以来特別措置を講じまして、五千五百万トン、千二百円引き下げという案で一応進んでいっておるのであります。今年に入りまして、いろいろな事情からなかなかむずかしくなりました。従いまして、抜本的な措置を講ずべく、有沢氏を委員長といたしまして特別調査団をつくり、各地の炭鉱の実態調査をして、九月末だったかと思いますが、その答申を得ることになっております。しかし、今の現状は、その答申を待っておるわけにもいかないいろいろな事情がございますので、石炭合理化の線に沿いまして、離職者の対策あるいは閉休山の問題、それから中小炭鉱への一時的金融の措置等々、その調査報告の出るまでにおきましてもできるだけの措置を講じて、そうして調査団の報告を見まして抜本的の措置を講じよう、こういう段階でございます。
  148. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その他の一般中小企業の不況問題、特に自由化いかんによりましては、非鉄金属の鉱山が石炭の二の舞いを演ずる。これはやはり経済成長に伴う一つの犠牲者、総理が非常に経済的に恵まれてきていると言われております大衆の外に置かれていく階級になってくる。ボーダーライン並びにこのボーダーラインからはみ出すような人たちの生活に対して慎重な考慮を払わないと、非常な社会不安を引き起こすと思うのでございますが、これはかなり大胆な施策を要望したい。  そこで、大蔵大臣に最後にお聞きしたいのですが、いろいろ話してみますと、本年見込まるべき予算が相当ふくれるような情勢にあるようであります。食管の問題と災害だけでもちょっと四、五百億の穴があきましょうし、石炭不況対策、非鉄金属の鉱山の対策、一般不況対策、給与、これを入れますと、いつか出されるでございましょう補正予算ではどれくらいの額が必要だと思っておりますか。これは率直にお話し願いたい、われわれも心配しておりますから。
  149. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほどからお答えを申し上げております通り、給与勧告につきましては、非常にデリケートな、またこまかい勧告がなされておりますので、これが一般公務員に幾ら、特別職に幾ら、また地方公務員や教員の二分の一が幾らになるかというようなことを検討するには、まだ時間が当分かかるようであります。  なお、災害につきましては、ただいままでのものについては百億程度でありますから、現在残っておる百八十億の予備費でまかなえるということを、先ほど事務当局から御説明を申し上げた通りであります。  なお、非常に大きく見込まれるといわれる食管の問題に対しては、先ほど御指摘がございましたように、これから内容的に十分検討し、食管制度の問題、また食管の内容、消費者米価の問題等が未定でありますので、できるだけすみやかにこれらの数字を集計して、いついかなる状況において補正予算を組まなければならないかということは、慎重に検討して、御審議を仰ぐようになると存じます。
  150. 淡谷悠藏

    淡谷委員 給与の問題はこまかいいろいろな作業も要りましょうけれども、やはり人間の給与に関する問題ですから、あまりひまをとらぬように、はっきりした方向を出しませんと、人事院勧告という手前もありますし、政府の威信に関するものでもありますから、十分やっていただきたい。  そこで、大体補正予算を組まなければならないことはわかっておりますが、あとのものは通常国会でという逃げ口もございましょうが、災害だけはそうはいかないでしょう。さっき冒頭に気象庁の長官に来てもらったのも、私はことしの台風の見通しが聞きたかった。これではどうもおさまりませんよ、あの予想では。そうすると、災害だけは通常国会まで待てというわけにいかない。そして全部この予備費を使うというわけにもいきませんが、その点は一体財政的に大蔵大臣どうなされるおつもりですか。
  151. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほどお答えいたしました通り、きょう現在までの災害に対しては十分手当ができるわけであります。災害は忘れたころに来るといわれておりますから、あすにも、きょうにも、また大きな台風被害があるかもわかりませんが、その場合、現在の予備費でまかない得ない場合には、当然臨時国会を開いて補正予算をお願いするということになります。
  152. 淡谷悠藏

    淡谷委員 予備費は、一体さっきのお話だと、百八十億しか残っていないそうでございますが、その災害の当面出すべき百億は、予備費から出すつもりですか。
  153. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げました通り、災害は当該年度には、三・五・二の比率で、大体初年度三割ということになっております。これも現在直ちにすぐ三割の金を支出するというのではなく、当該年度中に工事の応急復旧の状態を見つつ支出をするのでありますから、現在の状態に対しましては、百八十億の残っておる予備金の中で十分支出し得る、こういうことを申し上げたわけです。
  154. 淡谷悠藏

    淡谷委員 実はこの間、私党から派遣されまして北海道に行ったのですが、九州の災害も大へんひどいことになっておりますが、北海道の災害もまた大へんひどい。この災害を起こしたときに、対策費を出す時期並びに対策費の出し方、これが非常に大きく災害に影響しているということをあらためて大蔵大臣もお考え願いたい。災害は忘れたころに来ると申しますが、このごろの災害は忘れないころに来るようであります。九号台風の災害を見に行きましたら、十号台風のまん中に入ってしまって、なまなましい現実を見て参りました。見ておりますと、どうも災害復興の工事を予算などの関係で中途半端にやったところが、二倍の大きさで次の災害に見舞われて、特に北海道のごときは、あなたは徐々に出すと申しますけれども、十月に入ったら工事ができない。これは早急に対策をとらないととんでもないことになると思いますし、また、通常国会と言っても、あとはじきと言ってもかなりある。これはやはり国民に安心させるためにも、どうせ組まなければならない補正ならば、この辺で思い切って組んでおいて、安心して仕事ができるようにさしておいた方が政治というものではなかろうかと思いますが、早急に補正予算を組むための措置をおとりになる考えはございませんか。どうせ組まなければならないですよ、ことしは。
  155. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 御説の通り予算の支出のいかんによって災害がより大きくなるという例が過去にたくさんございました。今までは、御承知通り、災害に対しては原形復旧が原則でありましたが、その後の事例にかんがみて、改良復旧を行なうとか、また、特に時間的、地域的にどうしてもやらなければならないようなものに対しては、当該年度で完成するように緊急施工もいたしているのでもります。そういう状態で、今まで起きました災害を検討いたしてみますと、先ほど申し上げました通り、百八十億の残余の予備費で現在は十分まかない得るという考えでございますから、この国会で災害のために特別予備費を組まなければならないという段階ではございません。
  156. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この国会で組みませんでも、いつかはやらなければならない。これは必至です。消費者米価を大幅に上げてまさか食管会計の赤字を切るということもいきません。食管会計の赤字だけでも組まなければいけない。いつごろ補正予算を組むおつもりですか。
  157. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  いつごろというのは、まだ災害が起きておりませんし、現在食管の問題は、先ほども指摘がありましたような問題に対して十分検討のメスを入れなければならないのでございますし、なおかつ、人事院給与の問題については、この内容をせっかく検討中でございますから、これらを集計したときに補正予算をお願いするならばお願いするということになると存じます。また、ずっと過去の例をとりますと、大体大きな災害は九月から十月になってから——去年のように五月、六月の集中豪雨というような異例のものもありましたが、日本在来の災害から言うと、二百十日、二百二十日、その後に最も大きなものが来ておるというような状態でありまして、大体十月の末とか十一月とか、場合によっては十二月の通常国会とあわせてというようなことが、例年の例のようであります。
  158. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣、そのときになってからやったのではいつでも時期を失するので、予備費が百八十億のうち百億使われるとしますと、残るのは八十億しかない。一体人事院給与の問題はいつごろめどをつけられますか。漫然とやっているわけにいかぬでしょう。
  159. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほどの御説によりますと、予備費を百億使ってしまうとあと八十億しかないからと言われますが、予備費というのは、御承知通り、予測しがたい支出が起きたときに使うというのであって、これから台風があり得るから、それに対して予備費を何百億組むような補正の仕方は、財政法上もまずいのじゃないかというふうに考えます。  それから今の人事院の問題は、淡谷さんも御存じだと思いますが、今度の勧告は膨大もないものでむずかしいものであります。これは七・九%というような見方もありますし、よく検討してみますと八・何%、だんだんと集計してみると九%に近いのじゃないかというような、非常にむずかしい表現で勧告をしておりまして、これを集計をしたり、また一般公務員及び教育公務員等にどういうふうな状態ではね返るかというような具体的な数字をはじき出すには、まだ当分時間が必要であるという状態でございます。
  160. 淡谷悠藏

    淡谷委員 災害の方は一度に百億を使わぬと申しますが、使うことははっきりしている。それからまだ先かもしれませんが、人事院給与もやはり何とかしなければならないといっている。食管赤字もその通りです。こういうふうなものは、どうせおそかれ早かれ補正予算を組まなければならないのでしょうけれども、そのときの財源に対する見通しをこの際お聞きしたい。
  161. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 御承知通り、今年度は引き締め政策を行なっており、しかも、引き締め基調が浸透しつつありますので、昨年度、一昨年の例のように自然増収を見込むことも非常に困難な状態であります。しかし、これも仮定の問題でありまして、九月の法人決算等を十分しんしゃくしなければならないわけでありまして、先ほど申し上げたいろいろの問題に対して、この国会で補正予算を組む段階になっておらないという一つの条件の中に、これが財源等の問題も十分勘案し、これをとらえて対処しなければならない問題でありますので、非常に財源が窮屈であるという状態だけ申し上げておきます。
  162. 淡谷悠藏

    淡谷委員 財源は窮屈であるということを聞きますけれども、何かことしもだいぶ歳入の自然増があるように伺っておりますが、率直に言って、どのくらい歳入の増があるんですか。大体試算はできているんですか、今までのところ。
  163. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  予定税収入に対しては、四月から六月に対しては、御承知通り、月間百億ちょっとの自然増収が見込まれたわけでありますが、その後、われわれが考えたよりも、予想外に引き締め基調が浸透いたしておるわけであります。皆さんからも、あまり引き締め過ぎておるので、このような場合ではどうにもならないから、自由化も繰り延べろ、また、産業別に対して緊急救済融資もしなければならないというくらいな状態まで、引き締め基調が非常に浸透いたしておりますので、現在にわかに九月決算を予測することはむずかしい段階でありますので、上期六カ月問を通じてさえも、歳入の自然増に対しては予測しがたい状況でございます。
  164. 淡谷悠藏

    淡谷委員 予測じゃなくて、現在はどうなんです。予測はできがたいでしょうけれども、現在のところでどのくらいの自然増がありますか。
  165. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 これは税の事務当局からお答えをした方がいいと思いますが、私が教えられておるというか、私が知り得る限りにおいては、先ほど申し上げた通り、四月から六月までの実績を見ますと、大体月間百億ちょっとの自然増収がはかられておるということを申し上げたわけであります。詳しくは事務当局からお答えをします。
  166. 淡谷悠藏

    淡谷委員 税務当局からそれでは伺います。
  167. 村山達雄

    ○村山政府委員 一番新しいところで、七月末がきょうちょうど集計ができましたので申し上げておきます。七月末の累計収入済み額で七千二十三億、予算額二兆四百二十一億に対しまして三四・四%でございます。これは昨年度の同月末の収入済み額が六千二百七十二億、これが昨年の決算額二兆三百六十六億に対しまして三〇・八%でございます。従いまして、去年は三〇・八%、ことしの七月末で三四・四%でございますので、三・六%収入歩合ではアップしておる、こういう状況でございます。ただし、ことしは間接税の減税がございまして、間接諸税につきましては、物品税は四、五、六とこれがいずれも減税以前の高い税率のところでそのまま入ってございます。それからビールにつきましては、四、五の二カ月間やはり減税前の税率で入っておる。清酒につきましては、四月と五月の半分は高い税率で入っておる。こういう要素を考慮いたさなくちゃなりません。それからなお、法人の税収は予算の大体三分の一、七千億ございますが、このうちの半分が三、九決算にかかる分でございます。従いまして、この九月決算の状況いかんを見ませんと、今日の好調がそのまま持続するかどうかという点には、もう少し見きわめて参らないとわからぬと思いますが、現在のところ、ますます順調な線をたどっているということは言えるかと思います。
  168. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣とだいぶ違うじゃないですか。大蔵大臣は非常にことしは苦しいと言うし、税務当局はますます好調を続けていると言うのですが、一体どっちがほんとうなんですか。
  169. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私が少し派手な人間でありますから、こまかい数字を落としたのかもしれませんが、今までの税収の一年間を通じての伸び方は、私が先ほど申し上げた通り、非常に引き締め基調がきいておりますから、大体四−六月百億程度ということを私も承知いたしております。今主税局長からお話も申し上げましたが、このような好況を続けるという状態でいけばいいのでありますが、今主税局長がここで述べられた七月末現在の数字で九月決算がなされるということは、私は必ずしも考えておりません。しかし各法人が無理をして決算上の黒字を出したいという考え方はあるようでありますが、将来の日本の健全な経済発展をこいねがっておる立場から見ると、経理は明らかにすべきであって、そのような操作はすべきでない。私の考えから見ると、去年に比べて予想外の増収を見込むことはできないという私の考え方が正しいのではないかというふうに考えます。
  170. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣は、補正予算については、やはり将来を見込んで適当な時期にこれを組むというようなお考えのようでありますが、今のお話にもありました通り、経済見通しが非常にむずかしい状態、もしもさっきのお話のように思うようにいかない場合は、自由化の問題なども押えても何とかしたいというお気持はおありになるのですか。経済の伸びと申しますか、いろいろ企業の経営がうまくいかない場合は、自由化も考えなければなるまいということをさっきちょっとおっしゃいましたが、このお考えに変わりないでしょうね。
  171. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 自由化の問題については、大蔵、通産、外務三省の間で、こまかく今調整をいたしております。この問題を計数別には通産大臣がお答えすることが適当だと思いますが、私の今までの考え方から言いますと、九月末九〇%の自由化を達成するという方向で政府はきておりますので、現在の段階では、その姿勢、態度をくずさずに、なおそれを実行することによって国内的にいろいろ問題がある場合には、別な角度から企業の安定化に対処していくべきだと考えます。
  172. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう約束の時間も参りましたので、これでやめますが、いずれにしても、非常に困った経済の見通し、あるいは予測すべからざる災害と経済の前途のようでありますけれども、それだけに、一日も早くやはり補正予算のための国会をお開きになった方がよろしいと思う。開かれないというのではないようでありますから、財源のとり方につきましても、あるいは目に見えております歳出増の姿につきましても、これはやはり大臣単独でお考えになるよりは、国会の衆知を集めた方が狂いのない方針が出ると思います。いずれにしましても、さまざまな観点から、ますます池田内閣は安心できないような状態になってきておるのではないかということだけは申し上げておきたい。どうか一つその点をあらためて国会に諮って、補正予算等の措置を十分お考えいただきますように総理並びに大蔵大臣に要望いたしまして、質問を終わります。
  173. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  174. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  予算実施状況につきまして質疑を続行いたします。小松幹君。
  175. 小松幹

    小松委員 私は日本社会党を代表して、主として経済問題について総理並びに関係閣僚質問をいたします。  まず最初に、私はさっき淡谷委員総理に消費者物価の問題で尋ねたときのお答えを、今速記録で取りましたけれども総理はちょっと数字に強いようなはずでありましたけれども、どうもいいかげんな数字を言っているのじゃないかと思いましたので、速記録を取ってみましたが、消費者物価の問題について総理はこう答えております。物価は昨年六%、ことし三%くらいの上昇だ、こう言っているのですけれども、現在、ことしの年度はまだ出ておりません。だから総理もおそらくことしの年度を言ったのじゃないと思いますが、昨年は、これは総理府のいわゆる統計資料でございますが、三十五年を一〇〇として、三十六年は一〇五・二%上がっておる。ことしはこれが六月の統計で一二二%に上がっておる。だからあなたが今度は三%くらい上がったと言うのは、一〇をお忘れになったか、あるいは故意に抜かしたか、ただ三%とおっしゃっておる。そうするとあなたの立論は一〇%もサバを読んで御答弁なさっておる。それであなたの論理は通るけれども、聞いている方から見れば全く筋の通らない論理になっておる。そこで、一つ、せっかく物価の問題が出ましたからあなたに承りたいのは、今のいわゆる総理府の統計は、大体三十五年を一応基準に一〇〇と書いております。そうなると、昨年は消費者物価が統計的に見て大体五・二%上がった。ところが昨年国家公務員だけのベースで見ると七・一%ベース・アップをした。そういうことになると、昨年は正確に言うと一・九%だけのベース・アップしかしていないということになるわけです。ところが、ことしはどうかというと、それからまた八%も上がっておる。ことしは二二%の台を今進んでおる。あるいは今月あたりは一四%の消費者物価の値上げになっておるかもしれない。まだことしは公務員の給与は上げておりません。そういうことになると結局去年七%上げたけれども、物価が五%上がったからよかったが、今度はそれが飛躍的に八%上がっておりますから、ことしはその賃金を合わせるためにも絶対にベース・アップをしなければならぬということになるわけです。だから物価の方が先に上がってきて、公務員の給与、特に賃金のうちで公務員をここでとってみますと、公務員の賃金は物価よりもあとから追っかけておる。今、少なくともことしの五月から以降というものは、物価が先にきておるから、言いかえたならば、公務員は物価から追い越されておる。貸してあるということだ。だから人事院の給与が五月からの実施ということになったんだと思う。そうなるとどうしても物価と見合うところの賃金を国家公務員にあげる。いわゆる能率給とか何とかじゃないのです。消費者物価の水準が上がったことによる補てんとして上げるのが、少なくとも五月から上げなければならぬ、そういうことになるわけでありますが、それについて総理はどういうような御判断をしておるのか。さっきの一番は、サバを一〇%読んだのは、あなたのサバ読みかあるいは間違いか、何かの統計か。二番目は、賃金があとに来ておるのだから、当然人事院の勧告は少なくともことしの四月からあるいは五月からこれを上げなければ物価値上げに見合わない、こういうことになるわけなんですが、その辺はどうお考えですか。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 三十五年を基準にいたしまして、私は九・何%あるいは一〇%内外と申しました。そしてまた、その内訳として三十五年に比べて三十六年の消費者価格は六・三%だったと言ったと思います。そして今度は、三十七年は三十六年に比べて三%かそれ以上今上がっております。こう言いますと、合計で三十五年に比べますと九・何%か一〇%内外上がっている、こう答えたのでございます。何もサバを読んだわけではございません。三十五年に比べでの話です。九%何ぼあるいは一〇%内外、年度別に申しますと、五年に比べて三十六年度は六・三%と記憶しております。そしてまた、三十七年度は六年度に比べて大体今のところ三%ぐらい上がっている。しかし、六年度に比べて、前年の同月という意味じゃございません。従って、今のところ大体三十七年度の消費者物価の予想は四・五%ぐらいの気持でいっているんじゃないかと思います。これは、企画庁長官が来ておりますから、企画庁長官からお答えしてもよろしゅうございます。何もサバを読んでやっているわけじゃございません。基準年度を私は三十五年にして、六年がどう、七年は六年に対してどう、こう言っているのであります。  それから、消費者物価が上がるからすぐその割合で公務員の給与が上がるというのは、これは根本的に理論的の錯誤があると思います。公務員給与は民間給与に準じてということになっております。民間給与が五%以上上がった場合には、公務員給与の改定を勧告しなければならぬというのであって、消費者物価がどうなったからこれによってどうこうという建前になっていないと私は記憶しております。従いまして、あなたのその議論には私は承服できません。
  177. 小松幹

    小松委員 最初の指数でありますが、指数はやはり統計指数から見れば、あなたは誤っておる。ことしは三%上がったから、九・何%というけれども、ことしのいつをとってということになれば、少なくとも今の段階をとらなければならぬとすれば、九・何%じゃありません。  それから、あとの問題は、人事院の勧告を言うたのではありません。勧告をとればそういうことになるが、少なくとも勧告をとろうが何をとろうが、今の給与というものは物価よりもおくれておるのだ、物価の方が先にきておるのだ、賃金というものは何も人事院の勧告であるとかあるいは消費者物価でなくして、その人の能率なりその人の労力の報酬として渡すのですから、それは別ですけれども、一応手順からいけば消費者物価の方が先に上がって、少なくとも給与の方はあとだ、そうなると、昨年からことしにかけての消費者物価の値上がりに追いついていないだけでなく、昨年のままに放置されておる、こういうことを言ったのであります。  そこで、物価問題はしつこく今まで何回も言われたと思いますけれども、あなたは非常に物価の問題については冷淡である。これは幾ら所得倍増政策とかあるいは高度成長政策といっても、直接大衆がはだに感じ、日々の生活の中に消化していくものは、この消費者物価の値上がりというものが一番こたえるのです。それが今日十何%も上がってくる。それがおととしからですよ。前からじゃない。おととしから十何%も上がってくるということになれば、少なくとも所得倍増というものは消されておる。実質は、ほんとうに名目だけの賃金にしかすぎないということなんでありますが、この点についてもう少し深刻な御反省を願いたいということを私は特に言いたいのですが、先般経済企画庁で、藤山さんのときでありますが、総合物価対策というのを出した。ところが、総合物価対策というのを各省へあてて出して、一体どういうことをやってきたのか。何もやらぬじゃないか。ただそのときの一つのムードをつくったというか、あるいは行政当局の一つのPRとする意味か、どういう意味か知らぬが、実際は何もやっていない。一体消費者物価あるいは物価対策に対してどういう手を打ったのか。これは経済企画庁長官でもようございますが、昨年藤山さんのときに総合物価対策というものを打ち出したのですが、一体その後どういうことをやったのか、具体的にやったことをここであげてもらいたい。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどの消費者物価の上がりの問題でございますが、総理がお答えいたしました昨年と一昨年の比が六%、これはそれでよろしゅうございますとして、ただいま御指摘の点は、昨年の六月ごろと本年の六月ごろとでは、確かにおっしゃいましたように八%くらいの上げになっておりますけれども、今度は昨年度全体の平均と今年度全体の平均とを考えますと、昨年の最初のうちの物価が低いものでありますから、両年度の平均というものは、従って、先ほど総理が答弁をいたしましたように、大体五%ぐらいのものになるのではないか、こういうふうに御了解願ったらよろしいのじゃないかと思います。小松さんがおっしゃることも誤りではございませんが、それは六月と六月との比をとったわけでございます。  それから総合物価対策の点でございますが、午前中にいろいろここでお話がございましたように、昨年からただいままでの物価の値上がりをいろいろ考えてみますと、いわゆる消費が旺盛であること、あるいは比較的若年の労務者と申しますか、中学校、高等学校出の労務者の所得が急に上がった、そういったことから、それがそのまま消費になって向かってきた、また賃金の水準が上がったということ、それからさらにそれらのもののかなり多くの部分が生産性の向上の困難なサービス部門に向かっていった、そういうところから物価が上がった分、それから野菜、生鮮食料品等天候の不順などにも帰すべき分、もとよりこれは農村にいたしましても漁村にいたしましても、需要の変化に伴って生産構造の変化を急激に行なうということが困難な経済部門でございますから、それが勢いすぐにはね返るということもございます。それからさらには、施政演説で申しましたように、資本費の増加の部分、こういういろいろな部分があると存じます。それで一番当面速急にどうもし得ないようないわゆる生鮮食料品の部門というようなものについては、御承知のように流通機構の改善ということを政府が手を打ち始めておるわけであります。また資本費の増加に伴う部分につきましては、午前中るるここで問答がございましたように、場合によってはある程度財政が介入をすることも必要ではないか。総理の答弁にもございましたが、そういうこともただいま研究中であります。また消費者行政そのものとしては、不当景品であるとかあるいは不当表示であるとかそういうものについてしかるべき罰則を加えてそういうことがないようにする。いずれにしても総合物価対策というのは、申すまでもなくこういう経済の変革期でもございますので、非常に速効的に効果が現われるものではないと存じます。各省で着々閣議の方針に従って施策を進めておりますので、なおしばらく結果をごらんいただきたいと存じます。実際問題としてはいつときのような消費者物価の、場合によっては若干便乗的なものもあったわけでございますが、それはやや鎮静に向かっておるように私ども考えております。
  179. 小松幹

    小松委員 さっきの数字は今度は五%上がったという数字になっておりますが、総理は三%上がったとこう言った。だから、これはまあ取り方にいろいろあると思いますけれども総理はこの数字を扱うときにはっきり論拠を示して数字を扱ってもらいたい。今企画庁は五%、あなたは三%、私はもっと違う数字の二二%、みんな違っている。だからお互いに、あなたは下の方の数字をとり、私は高い方の数字をとり、企画庁はまん中の数字をとる、それでは話にならぬです。そういうごまかしをしないでいただきたい。  それから今企画庁長官の消費者行政についての意見がありましたが、実際は何もやっていないと言われてもいいが、まだ時間が足りないから……。もうあの総合物価対策を出してから三、四カ月になるわけなんですが、実際は何も進んでいない。しかしこういう問題はしばらく待てと言うても、消費者物価というものは日々どんどん上がり、国民というものは待てないのです。ほかかスローモーションでいくなら別なんですけれども、今度閣僚の中で一番スピードを上げてどんどんやっているのは河野建設大臣である。ほかの省はみんな能率を上げていない。このくらい——河野さんのようなスピードをみな見習う必要があるのではないか。消費者物価の問題でもどんどんスピーディに取り扱っていく必要があるんじゃないか。いつまでもてれくれしておったらすぐ当座はすぐ済んでしまう。  そこで問題は、スエーデンあたりは消費庁がある、あるいはノルウェーは消費者庁があり、あるいはデンマークは社会省、英国でも消費者諮問委員会などというものをつくって、そうして積極的に消費者行政をやっておる。ところが日本の場合は幾ら言うても適当に企画庁がゴマをすっておるだけでやっていない。そうしてしかもその中心になる池田さんは、物価の問題を言えば常に卸売物価が下がっておるとか卸がどうだ、そればかり言うて消費者に直結したところのものは扱おうとしない。まことに冷淡な宰相であると私は言わなければならぬ。  これは一ついい例でありますから池田さんに御反省を願いたい。というのは、ケネディ大統領でも消費者保護の教書を議会に送っております。ケネディさんでさえも消費者の保護のための教書を議会に送っておる。ところが池田さんは、もうただ口答えをすると言うては悪いけれども、適当にああでもない、こうでもないと資料を自分なりにつくり上げて、そうして国会答弁をしておるだけがもうせめてものあなたのやっておることなんです。ケネディを見習ってもいいんじゃないですか。ただもうつまらぬところばかりまねせぬで、こういういいところをまねしたらどうです。  また公共料金の問題にしても、あなたは公共料金をさっき上げるとも上げないともわけがわからぬことを言うて、結局上げるという意見を出したですが、これはケネディの話になりますが、ケネディは鉄鋼値上げに対してこれを突っぱねて上げさせなかった、鉄鋼値上げをケネディはやめさせた、公共料金の引き上げをさせなかった。あるいは西ドイツのエアハルト経済相は、自動車の値上げをやろうという業界の意見に対して強く抵抗して突っぱねた。西ドイツのエアハルト経済相もこれは突っぱねた。ところが日本の場合はどの宰相でも突っぱねたこともない。閣僚も適当なことを言っている。しかも裏では業者の言うなりになっておる。電力料金にしてしかり、あるいは私鉄料金にしても、綾部運輸大臣にあとから聞こうと思うが、おそらくあ考えであろうと思うが、まあ一つここでエアハルトのまねをするか。ケネディの意見のような格好で鉄鋼値上げを突っぱねるくらいな、私鉄運賃を上げないと言い切るような宰相であってもらいたいと思うのですが、この点について私は池田総理の施政の姿あるいはあなたの国民に対する、消費者に対する姿勢として、どういう姿勢でおればいいのか、ただ国会で野党の質問の攻撃に対して適当に数字を出して拒否したりあるいはそれをごまかしたりするというようなことでなくして、ほんとうに消費者のためのあなたのほんとうの意見を国会にみずから出すようなケネディのような気持の意見はないのかどうか、この点を一つあなたに承りたい。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 外国の政治家のやる仕事で、それを日本に当てはめていい場合にはもちろん参考にしなければなりません。また日本の経済財政政策でも、外国では、賛成しているものは取り入れておる。お互いに謙虚な気持で各国の施策を検討して、そうしていいものはとっていくということは当然のことでございます。ケネディが、公共料金ではございませんが、鉄鋼価格の引き上げに対するものを拒否したら、当時は非常に拍手かっさいでございました。しかしアメリカにおけるあの措置がその後のアメリカの経済上にどういう影響をしたか、またケネディがこれを拒否しなれけばならぬ情勢、またはエアハルトが自動車の値上げを拒否しなければならぬドイツの今の経済の状況をごらんになりますと、いろんな毀誉褒財は、批判はありましょうけれども、それは最近におきまするドイツの経済状況は、数年前とは違って、ここ二年ぐらい非常なコスト・インフレであります。物価もここ二、三カ月、相当上がりつつあります。会社の経理は非常に窮屈になってきております。従いまして、日本にもある程度会社によってはあるのでございますが、一番大きい会社のフォルクスワーゲンの株価が半分、一時六割ぐらい下がっております。そういう状況で、コスト・インフレで、これが悪循環になってはいかぬということが、ケネディにもエアハルトにもあったと私は考えておるのであります。日本でも、私は昨年の暮れか今年の初めに申しましたごとく、今コスト・インフレの気配が出てきております。去年の七月ぐらい、去年の春闘によりまして、生産性の急激なる上昇にもかかわらず、労働者の賃金はその生産性の向上以上に上がってきておる。先月まで上がっておる。例外は昨年の十月が賃金の上昇よりも生産性の向上が異例でございます。その他は去年の七月からずっと上がっておる。私はこれは数カ月前、昨年の暮れだったか今年の初め国会で言っておる、これが心配なんです。そういう状況でございますから、私は労賃の急激な上昇もやはり生産性の反映にしていかなければならぬということは、常に言っておるのであります。しかし、アメリカやイギリスやドイツほどではございません、イタリアの状況を私は見ながら、イタリア程度にというところで言っておるのであります。企業の当然な利潤、そうして当然な将来への生産性の向上のための資本費というもて受けていくことが国を伸ばすゆえんでございます。先ほどありましたようにただそんな公共事業はつぶれてもいいじゃないか、こういうような議論では決して政治にはならぬと思います。従いまして、私は昨年の八月に申請が出ておる私鉄運賃の値上げも、できるだけ押えなければならぬというので、一年待たせました。結論はいろいろ考えておるのであります。私が消費者物価につきまして無関心だとか、その場のがれだということは、私に対しましては心外でございます。だれよりも私は努力して、適当な方法で、将来国民のため、日本の経済発展のためにりっぱな措置をしたいと考えて進んでおるのであります。
  181. 小松幹

    小松委員 あなたは心外だというけれども、心外よりも侵害を受けている国民の方が大へん心外である。なぜかというと、今一番困っているのは消費者物価の値上がりが国民としては非常に困っておるのだ。それに対してあなたは一生懸命考えておる、下手の考え休むに似たり、何もしていないじゃないですか。実際物価が、先ほど言った通り資本費が上がった、資本費が上がったのをすべて割勘にして国民にかければ、政治は簡単ですよ。経済も簡単です。バランス・シートを作るのはこれほど簡単なことはない。資本費が上がったから、元がかかったから、それを割勘にして国民にかける、こういう初歩的な経済でものを考えたら簡単であります。しかし資本費が上がっても、なおかつ消費者物価に影響しないように考えて、どこがいわゆるネックになっておるかということを考えていか。その使命をなげうって、ただ簡単なるバランス・シートをやるならば、だれでも——あなたは大体がすべて困ったときは人にぶっかけていくのです。そういうようなことを考えたら、やはり私は他山の石として、エアハルトの考えなり、あるいはケネディの考えも参照にしていいと思う。日本の経済がアメリカよりも、あるいは西ドイツよりも大へんいいなら別ですよ。あなたが今おっしゃったように、企業は大へん悪いという。日本の企業はどこがいいですか。今度は、先ほど大蔵大臣も、九月分決算期を見なければ、税収の見通しもつかぬと言っておる。そのくらい最近の企業も悪いのです。そういうときになったら、やはり日本の場合でも、西ドイツよりもアメリカよりも、より以上私は敏感に、もっと親切に消費者に対するサービスとしてやらなければいかぬ。単なる政治家ではないのです。あなたは。やはり一国の宰相として、ほんとうの一億の国民の口を持っておるのです。そういう意味から、もう少し真剣に消費者物価というものと取り組んで——ただ消費者物価対策に対する一般緊急対策要綱をこしらえて、そのまましっぱなしでおる、あとは国会の答弁資料だけ、数字だけ頭に入れておる、そういうような態度では私は政治はできないと言うのです。私が一番言いたいのは、あなたに、この消費者物価に対する基本的な態度というものを、私は国民の気持から訴えておるわけなんです。単にその数字がどうだこうだというのじゃないのです。それはアメリカアメリカ、西ドイツは西ドイツ、日本には日本の家庭の事情があるでしょう。しかし幾ら家庭の事情があろうとも、消費者物価の値上がりは、経済の根本を大きく見ればゆすぶる。何かあなたは、やめたらいいだろうか、やめたらいいだろうというのは、資本費が上がるならば、資本費を何とかして別なワクから考えるとか、あるいは財政投融資でももっと考える、こういうようなことにすればいいのです。あるいは一般財政からでも考えるとか、もう少しはっきりしたならば九電力をもう少し根本的に再々編成するとかいうような、基本的な経済の構造改善というものに取り組まぬから、うら先ばかりだからそういうことになる。だからそういう基本的なものと取り組んでいくならばいざ知らず、そういう基本的な電力のいわゆる再々編成とかあるいは私鉄会社の経理の問題とか、こういう問題をもう少し真剣に考えたならば——何も取り合わぬでおいて、ただ一年間ほったらかしておいて、それが私のせめての抵抗だ、そういうようなことではたまらぬ。最後に引き上げたんでは何にもならぬ。最後まで首尾を貫徹してもらいたい。  綾部運輸大臣にお伺いしますが、私鉄運賃は上げるのか、上げないのか、その点を明確にお答え願いたい。
  182. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  上げるか上げないかは、さきに総理も申しましたように、目下経済企画庁並びに大蔵省と各方面の利害得失を照合して研究中でございます。その結果は私に報告せしめるという話でございますから、その結果の報告を待って私は断を下したいと思っております。
  183. 小松幹

    小松委員 私はそういう借りもんの大臣の意見を聞いたんじゃありません。あなた自身の、上げたらいいのか上げないのかという一つのかまえを聞いたのです。もう少しはっきりお答えをしてもらいたかったんですが、まあ大臣になる早々でありますからやむを得ぬかと思いますが、やはり上げるのか上げないのかさっぱりわからぬ。そうしておっていつの間にか上げるということになれば、国民はもう政治というものを信頼しませんよ。はっきり上げないなら上げない、上げるなら上げると言うならばだいぶ信頼性があるが、上げるとも言わぬし、上げないとも言わぬし、まだ時間があるから、いやまだ資料を検討しているから……。もう各大臣みなそうだろうと思う。そういうことになると思うのです。そこでもう少しはっきりした態度を、近々のうちに綾部大臣も一つ大臣と折衝してきめてもらいたい。上げるなら上げる、上げぬなら上げぬと、そうして信を国民に問えばいいじゃないですか、そんなずるずるべったりなことを言わないで。  その次に河野建設大臣にお尋ねしますが、最近住宅の値上げが非常に大きいのです。特に物価の問題を、ファクターをとってみますと、住宅の費用というのが、地代、家賃代——あの統計に出ている地代、家賃代ならばまだまだいいですけれども、しかしそのほかに権利金やお礼金などということがたくさん重なってくると、あの統計数字以上の実勢だろうと思う。統計数字でも、破格的に住宅の費用というものは上がっておる。住宅の修繕費などというものは二五%も上がっておる。こんなようなことでは、私はもう国民に、衣食住というけれども、住は与えぬのかと不思議に思うくらいでございます。特に私は大衆の住宅建設というものが非常に急がれておると思いますが、建設省でなした仕事は、地代、家賃の統制令の撤廃をことしやりました。地代、家賃の統制を撤廃して値をつり上げる方法だけしかやっていない。こういうことをするよりも、もう少し庶民住宅を一気に建てていくというような大幅な考え方はないのか。私が期待するところは、河野建設大臣が建設大臣になった当座から、非常に国民の側に立って、ほんとうに親切——これは政治的に言えばどういう批判もあるかもしれませんけれども国民の側に立ってとにかく隘路を打開していこうというお考え、スピーディな施策を出しておるところに感心しております。その点、私は他の大臣は見習うべきであると思う。河野大臣のようなああいうスピードのかかった、あるいは国民の側に立った——これは私は言うけれども国民は河野さんを一応見直すかもしれません。国民の側に立って、今道路を歩けばあっちこっち掘り散らかしておるのを、きょうつぶしたかと思えばあしたは別なところが来て掘っておるというような実態を見て、これではいかぬと乗り出した建設大臣のお気持、私はその気持な住宅対策に出していただきたい。少なくとも今若い人たちあるいは結婚した人たち、あるいは人口過剰によって人口が集中しておる。その集中しておる者はおそらく家なき人たちで、非常に困っておると思う。この点について、あなたは建設大臣としてどうお考えになっておるか。さらに来年度予算等で、住宅建設に対して、庶民住宅の建設に対して、どういう意欲を持たれておるかということを率直にここで御披瀝願いたい。私は同時にあなたにそういうことを強く要請したい。こういう考えでございますが、御答弁をお願いします。
  184. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り住宅問題は非常に困難な問題でございまして、私も就任早々でございますから、今勉強中でございます。何さま政府もしくは公共団体等が建設いたします住宅と、一般の国民、市民の諸君がお建てになります住宅もしくは貸しアパートとの間に負担力が非常に違います。そのために公共もしくは国でやりますものは割合に安くいっておりますから、この方面に期待する面が非常に多い。御承知通り、十カ年計画で申しましても、おおむね一千万戸不足しておる。そのうちの当初の五カ年計画で、五カ年間におおむね四百万戸ぐらいつくらなければいかぬだろうという計画のようでございます。その中で百六十万戸ぐらいが国もしくは公共で、その他を民間でというような計画になっておるようでございますが、今申し上げました数字の中でも、公共施設としてできますものの一般のこれを利用する人の負担と、一般の民間でつくりますものとの間には非常に大きな開きがあります。一体こういうことがこのまま住宅政策として伸びていっていいもんだろうかどうだろうか、住宅政策の本質について私は考えなければならぬ時代がきておるんじゃなかろうかと思うのでございます。従って、これを住宅に関する限りイギリス流に、その他一部の国でやっておりますように、公の機関が大衆の住宅についてはほとんど大部分を負担していくんだ、そして低家賃で入りいいようにしていくんだということでありますならば、もっと大幅に思い切ってやらなければならぬ。しかし、そういうことがはたして今の財政で、中央地方を通じてできるかどうか、なかなか私は困難だと思います。食糧につきましては米の統制がありますけれども、その他のものにつきましては、おそらく私は住宅だけが、しかも一部の人が、今申し上げましたように、四百万戸足らない中で、百六十万ぐらいのものは安い家賃で入れる、その他のものは今お話しの通り非常に高い毛のに入らなければならぬ。このあり姿がこのまま伸びていっていいかどうかという本質的な問題と取り組まなければならぬ段階にきておると思うのであります。従って、これをどういうふうにするかということで、私としても今財政当局の意見も聞かなければなりませんし、今後のわが国の住宅のあり方がいずれにこれをいくべきかということをまず第一にきめる。もう少し民間の協力を願うようにするならば民間の協力を願うように、住宅に関する限りその敷地等についてはどういう施策をするか、また民間の住宅については税の関係ではどういうようにするか、もしくは所有権の問題についてはどういうようにするかというようなことで、住宅建設に民間の協力を願い、しかもこれが比較的安い賃金負担で借りられるような施策をしていくことが適当か、それではたして目的が達せられるかどうかということ等を政府の方と両面から詰めて、そうして住宅政策を本質的に方向をきめる段階にきておると思いますので、せっかく今勉強中でございます。その方向をきめた上で、大方の御意見も承わった上で明年度予算等についても考えたい、こう思っております。何分今お話しの通り、足りないといいましても、足りないのはもちろん足らぬ、さればといって今まで入っておる人の中には、極端に申せば農村の住宅等についてはどういうふうにしたらいいかといいますと、全体の国民の中に国の施設、公の施策によるところの割合に恵まれた条件に住宅問題を片づけておる人が一部あるというようなことが、全体の政治の上からいって、このまま進めていいか悪いかという問題も私はあると思うのであります。従って、これらの問題を本質的に解決をし、方向づけていく段階にきているんじゃないかと思ってせっかく勉強中でございますから、いずれまた御答弁申し上げる機会があるだろうと思います。
  185. 小松幹

    小松委員 今一番日本で経済的に問題にすべき点は、私は信用インフレーションの問題だと思っている。同時に宅地というか地代というか、土地価格の値上がりということが日本経済をほんとうに地の底からゆさぶっているのではないかと思う、実際はこれは公共事業をやろうが、開発事業をやろうが、すべて −最低今の臨海工業地帯あたりの土地造成にしても二千円が四千円になり、五千円になって上がってくる。土一升金一升というけれども、そのくらいじゃとても足りない。特に建設事業をどんどん進めていくと、公共的に土地を買い上げるということがまた一つのブームにもなってくる。そうなればいわゆる土地という問題の本質的な解決を迫られておるのじゃないか。同時に、その土地の上に立つ最低の住宅というものが、今河野さんのおっしゃるように、非常に転換期にきているというか、根本的に考え段階になっておる、こう考えるわけです。  そこで総理にお伺いしたいが、あなた自身は今の一億の国民に住居を持たせる、そうしてできるだけ安定した経済的な生活を送らせるという——消費者物価値上がりの大きなファクターになっているところのこの住宅対策に対して、どういうお考えを持っているのか。これはあなたの所得倍増計画の中の要素に入っていないのか。真剣に考え段階がきたのじゃないかと思いますが、これについて総理の御意見を承りたい。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 真剣に考え段階がきたんじゃございません。前からきておる。で、できるだけのことをやっておるのであります。ただお話の土地の暴騰の問題につきましては、いろいろ考えてみましたが、上がることがよくない。これが非常に経済界の発展あるいは民生の安定向上に害をなしておる、これは百も承知しております。しかし、なかなかこれが方策が立たない。あるいは土地増価税とか、いろいろな点がございます。あるいは土地収用法の問題等々もございますが、やはり住宅難は自然増もございますが、都市に人口の過度の集中でございます。ことに教育費その他が高くなりますると、東京なんかの人口の増加の原因は、相当教育問題等がからんできておるのであります。子弟の教育のための東京在住、こういう問題につきましては、首都圏整備法その他抜本的なことを考えなければいかぬというので、住宅建設と同時に人口の都市集中についての何か緩和策はないかということを考えていっておるのであります。何分にも、衣食住と申しますが、衣、食は相当われわれの計画が進んで参りました。あまり事欠かぬようになりました。しかし、住宅につきましては一番おくれているということは御指摘通りでございます。この点につきましては今後今まで以上の努力を続けていきたいと考えております。
  187. 小松幹

    小松委員 そこで最後に、池田さんは早くからきておるというようにおっしゃったが、その通りで、早くからきておる。それじゃ早くきておるならなぜやらないかと、これはもうオウム返しに言いたくなるのです。だからあなたはそういうようなもののお答えをしないで、もう少しすなおにお答えしたらどうですか。早くからきておることはわかっておる。それじゃやればいい。やらぬでおって、人が言やはるから、きたんだ、こういうような言い方そのものがあなたの傲慢な態度なんです。それが一番災いしておる。知っておってやらぬじゃないですか。  そこで河野さんが建設省に乗り込んだときにどう言ったか。新聞のことですからはっきりわかりませんけれども、役人はむずかしいことはあとにやって、やすいことからやるのだ。やすいことから手をつけて、むずかしいところだけは残していくのだ。だからむずかしいことこそ取り組めということをおっしゃったが、私は総理以下全閣僚に書いたい。役人に言う前に、まず皆さん方にも言いたい。むずかしいところから取り組んでやりなさい。やすいところならだれでもやる。三等大臣でもだれでもやる。しかし、このむずかしいところをやり切るのがほんとうの大臣じゃありませんか。ほんとうの力じゃありませんか。それを役人はやすいところから先にやるんだと役人だけ責めないで、自分みずからを責める必要があるんじゃないですか。私はそう思う。この点河野さんがいみじくもそういうことを言ったから、ここで総理自身、あなた自身もむずかしいところをやらなければいかぬ。経済問題について言っても、あなた自身が、自由化に対する対策あるいは今度の企業の新体制、自由化を迎いての新しい企業の新体制でもむずかしいところはそっぽかって、やすいところだけやあやあやっている。そうしてとどのつまり野党からやかましゅう言い立てられて、石炭対策でも何でも追い詰められてわんわん言ったときに初めてみこしをあげている、むずかしいところはあと回し、こういうような日本の古い官僚の型というものを大臣からまず一掃してもらいたい。だから官僚経験者の大臣、総理自身も官僚経験者だろうが、一応そういう気持というものをぬぐい去って、むずかしいものから取り組んでやれと部下に言うならば、みずからそういう気持を持ってやってもらいたい。そういう意味で住宅対策はまことに取り組むべき段階である、かように私は考えて、せっかく総理大臣あるいは河野建設大臣に申し上げたのでございますから、一つむずかしいところからやってもらいたい。部下に言うだけではだめです。  その次に、私は経済問題に移りますが、総理にお伺いします。最近国際収支の均衡状態が回復して、心配されていた危機もやや峠を越してきたと言われておりますが、一体金融引き締め等の一連の調整政策は今後どうするのか——今後じゃない、今としてどうするのか。首相所信表明演説に、「景気調整の建前を堅持しつつ、経済情勢の推移に即して」、云々と言われておりますから、これは景気調整の建前を堅持しつつ、あとは途中でどうなるかわからぬというような言い方になっているが、一体調整政策の転換はやろうと思っているのか、やれないのか、やるならば一体どういう条件が出たときにやろうとするのか、それをお答え願いたい。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来消費者物価の問題、あるいは住宅の問題、むずかしいことを先にやって、楽なことをあとにせいとかいう——あとにせいとはおっしゃらぬけれども、しかし行政にはおのずから軽重があります。事の困難とか容易とかいう問題ではございません。そうしてまた重大で非常に困難な問題につきましては、やっぱり慎重にやらなければいかぬ、やはりそのつどつどで考えていかなければならぬと思うのです。それから消費者物価につきましても、いろいろ議論がございます。それは各国の状況と比べまして、これは七、八年前を基準にしてみますと、一番消費者物価が上がっているフランスの今の経済がどうか、二番目に上がっているイギリスがどうかということになりますが、これは経済全体を見なければ、消費者物価が上がったから、さあその国の生活がどうとかこうとかということで事をするのは、少し私はいかがなものかと思うのです。もちろん消費者物価を軽く見ているわけではない。一番重要な問題として取り扱うのですが、ちょうど今の国際収支の問題でも、さあ日本は破産するのだというふうなことを、去年の秋も言っている人がおられましたが、破産いたしましたでしょうか。この前の国会でも非常に議論がございましたが、私はやはり長い目でいろんな調整策を講じて、少なくともおそくとも今年の十月、十一月ごろには均衡するだろう、それまで努力いたします。こう言ったところ国民の協力によりまして大体お話の通りに今のところ落ちついてきました。しかし今のところ落ちついてきましたが、最近の輸出入信用状等の動きから申しまして、今年度は大体私が予想しておった以上の成績でいくと思います。しかし来年の一−三月の輸入期になってどうなるかという問題、子うしてIMFあるいはアメリカの市中銀行エキジムからの借入金の問題等々もございまして、私の想像以上に早くよくなったからといって、今ここで手をゆるめるわけには参りません。これはやはり今までの調整策を進めていかなければ、このままで、動きを見ていくよりほかない。前ほど非常に苦労しながら見るのでなしに、割合見通しのついた気持でこの調整策を続けていくつもりでおるのであります。
  189. 小松幹

    小松委員 そうするとその調整策は来年の三月までは続けるというお見込みと私は聞いたのですが、そうなんですか。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 経済は生きものでございまして、調整策にはいろいろの点がございます。だから調整の建前で見ておくというときには、何にもせずに、三月までいくか、あるいは八、九、十、この輸出期の状況を見まして、いわゆる十月、十一月くらいまでの信用状の状況を見まして、あるいは九月の決算その他の状況を見まして、いろいろな点で常に毎日毎時考えなければならぬ問題でございます。ただ今の建前としては毛調整策を堅持していく、そうして弾力的に経済施策を行なう、こういうことでございます。
  191. 小松幹

    小松委員 まあそれはそれでいいでしょう。いいでしょうが、大体輸出、輸入というものを見ながらいく、こう言うのでありますから、そこでちょっとお尋ねしたいのですけれども、かりに輸入を見た場合に、今の生産過剰気味なところ、そうしてまあ金詰まりにあった、だから結局輸出は輸出ドライブがかかってきたと思うのです。輸出は相当今日まで施策的にもやったけれども、経済自体の自律的な面から見れば、輸出ドライブがかかったと思うのです。だから、合いには出血輸出あるいは投げ売り的な換金輸出などもあったと思うのです。今後この金融のゆるみがくると思うのです。この金融のゆるみがきたりすると、あるいは輸出意欲というか、マインドの低下がくるのじゃないか。そうした場合にどういうような観点になるか。まあ輸出をとってみたときに、ちょっと金融がゆるむときがあると思うんです。金融のことはあとで申しますが、輸入の場合をとってみた場合には、生産が少し下がらない限りは輸入のポイントは下がらないのじゃないか。そうした場合には相当縮小均衡で輸入を押えておく、そういうところを考えなければ、今の輸入は、ほっておけばふえるのじゃないか。そういう点、どうも経済の見通しを見ると、やはり横ばいから少し上がっている。そうなると輸入というものは現状にとどめることがはたして可能かという問題も出てくる。輸出と輸入の問題を静かに考えたときに、ただこれだけのことであなたは調整政策を判断しておるのか、あるいは別なことで判断をしておるのか。さっき九月の企業の決算を見なければというようなことも言っておりますが、金融のゆるみというようなことについては、お考えを持っていないのかどうか、この占……。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ輸出ドライブがかかって、換金売りとかあるいは商品を一応表面の契約で送っておるとかにいろんなことも聞いておりますが、しかしいずれにいたしましても、日本の卸売物価というものが安定していることが、日本の経済の非常に強みなんです。そうして今、運賃その他関係上輸入原材量の下がりが輸出品の値下がりよりも非常に大きい。これが日本の経済の非常に強みなんです。私は卸売物価というものを国際収支、日本の経済の全体からいうならば、卸売物価は非常に大切だというのは、日本の経済というものは国際収支がもとをなしておることからくる、輸出、輸入がどうなるかというところからくるのであります。アメリカのように自分のところに資源が多くて、総生産に対しての輸出輸入の割合が非常に少ないところは、国内経済だけで相当まかないがっきますが、日本はそういうわけにはいかないものでございますから、そこで卸売物価やあるいは国際収支というものを見ておるのであります。そうして金融がゆるむと申しますが、いかなる状態を金融がゆるむというのでございましょう。今、日本銀行の貸し出しは一兆六千億になっております。昨年のこのごろに比べて八千億円近い増加でございます。これが供米代金その他である程度金融がゆるむことがあるかもわからないが、日本全体としてそう金融がゆるむというようなことはない。一年間で八千億円も貸し出しがふえておる。しかもこの前の国会では、金利の引き上げが二厘では大へんじゃないか、イギリスは二%やったじゃないか、こういう議論であります。しかし日本でも二%以上やっておる。それは公定歩合の引き上げばかりではなしに、預金準備率の引き上げ、そうして第二次高率適用を設けまして、ある銀行におきましては、日本銀行からこれ以上借りたら二%余りの上昇になっておる、そういう強い引き締めをしております。そこで民間では、このごろでは第二次高率適用を廃止するか、あるいは預金準備率をもとへ返すか、いろいろなことを言っておりますが、しかし今ゆるめろというふうな議論はまだない。十月、十一月あるいは十二月かという議論でございます。今金融をゆるめるということは、これは大蔵大臣の専管でございますが、私一個人といたしましても、そういう議論はまだ早いのではないか。どうも議論が半年から二、三カ月ずつ早いのではないか。議論の早いのもいいかもしれませんが、それによっていろいろ影響があるものでございますから、金融をゆるめるという議論は——去年の引き締めたときの状況に比べて、倍の一兆六千億にも日本銀行の貸し出しがふえておるときに、さあ供米代金が出るとかなんとか、輸出が伸びたとかなんとか、輸出が伸びれば金融がゆるむのは当然のことであります。輸出超過の分だけは金融がゆるみます。それにいたしましても、このごろ輸出超過といっても、今月でゆるんだのが二十億円から三十億円、全体としてはほとんど問題になりません。ですから今の状態から申しまして、輸出は大体伸びていきましょう。ことにEEC関係の方も相当伸びております。そしてアメリカの方も、そう急に落ちるということはございません。今のところ、今年に入りまして前年に比べまして三〇%あるいはそれ以上の増加を続けております。そしてEECの方面も二、三割の増加を続けておりますから、私は、今年の輸出は予定の四十七億ドルはあぶないじゃないかといって大へんしかられたのですが、それをこえましょう。それからまた輸入の四十八億ドル、とてもそれで済むものじゃないといいますが、私は一億ないし一億五千万ドル減るのじゃないか。それは在庫も相当ありましたし、ことに八億ドルばかり輸入しておった鉄鋼関係も、今度はスクラップでなしに鉄鉱石を入れることになりまして、輸入関係はよほど変わって参りました。鉄鋼だけでも二億ドル前後の違いがあるのじゃないか。そういうところから見まして、今年は三、四カ月前に非常にしかられたことも、今ではしかられずに、私の予定通りにいくのじゃないか、あるいは予定をちょっと上回るのじゃないか。今年も大体いく。来年の輸入期はどうか。生産はどうなっておるか。六月ぐらいまでは横ばいで参りまして、七月からは下がってくると思います。八月も、今、電力量の使用は全体で一%余りの増加でございますが、これは個人消費の方がふえて、工場の分は伸びておりません。従って八月ぐらいから生産は落ちて、下降状況でいくのじゃないか。いわゆる三〇五、六から七までいったのが、今年内で三〇〇程度ぐらいまで、順次ゆるいカーブで落ちてくるのじゃないか。そう見て参りますと、先ほど申しましたように、輸入も四十八億ドルではなしに、一億なしい一億五千万ドルぐらい減る。これは今の私の想像でございますから、数字でどうこうということはない。私は全体を見て言っておりますが、輸入も落ちて大体いい工合にいくのではないか。そこで、日本の経済はいろいろ言われておりますが、非常に長い目で見れば、うまい足どりをとっていっております。これは国民のおかげでございます。そこで、あまり変わったことをせずに、先走らずに、政府というものが見ながらやっていく。自由主義経済の建前でございますから、民間の方でどんどん生産を拡充すれば、それをわれわれはとめるわけにはいきません。しかし政府としてはこういう考え方だということを言って、過熱にならぬようにやっていっておるのであります。しかしそれだといって、経済が非常な急激な縮小で不景気になっては困ります。不景気にならさないように、過熱にならないように、今の消費者物価が下がる。上がるのはいかぬ。消費者物価を下げるような政策をとったら物価は下がりましょう。しかし国民の生活がどうなるか。国民の生活が世界でも例のないような上昇率を続けていくときに、消費者物価がある程度上がるということはやむを得ぬことです。望みはしません。上がらぬようにするのでありますが、ある程度やはり国全体がよくなることを見る場合において、少しぐらいのところは見のがして——見のがすのではない、がまんしてもらうということが経済の運営の心がまえだと私は思います。
  193. 小松幹

    小松委員 池田さん、あなたは二重人格というような感じがするのです。というのは、あなたは大へん楽観論を言っている。楽観論はそれでいいですよ。楽観論だったら、金融の引き締め政策を取りやめなさい。はっきり言う。景気はいいんだ、こういうようなあなたのおっしゃり方をするならば——何も私は引き締め政策を喜んでしろなんて言ったことはありませんよ。やるからには不況にならないように、デフレ政策にならないようにと言って注意をした。ところが、あなた自身はデフレ政策をやらぬやらぬと言っておるけれども、やっておる。そして経済が超々行き過ぎた。それじゃ、今行き過ぎていなかったら撤廃すればいいじゃないですか。生産もポイントで三〇〇幾らだ、そして国際収支も見通しがいいのだ。まさに万々歳のようなことを言うならば、金融引き締め政策を撤廃しなさい。それはやらぬでおいて、それを言うときには、いやそう言っても、まだ不安定だからどうだと言って、悪いところの例だけ出して来年の三月までやらない。それでは今度は輸入の見通し、均衡ができるのかということになったら、まかしておきなさい。それでは一貫性がない。二重人格だ。こっちへいったときには、いいことを言う。あっちへいったときには、悪いことを言う。それじゃ私は信用ならないと思うのです。だから、あなた自身のやり方の結果として、これはしりぬぐいで、調整政策をやっているのです。私は、無理に調整政策がどうだと言うのではない。あなた自身がやっているのだから、よかったら撤廃しなさい。撤廃しないと言うのでしょう。撤廃しないならば、そんなによくないのじゃないですか。今聞いておると、まさに万々歳のようなことを言って、長い目で見たらわしの言うのが一番いいのだということを言っている。実際はよくないのです。  そこで、金融の問題にいきますか、私は金融を今どうだと言わない。だから、一応こういう意見もあるし、またこういう観点もふる、こういう点で聞いてもらいたい。これは私が言うのではなくて、論者がいろいろ言っておりますから……。うっかりすると、今言う楽観論を言っておったり、悲観論を言うてみたりして、十月、十一月ごろ、いわゆる三・四半期ごろ、九月に入ると、金融は日銀信用の減少とを加えて、九月の月からは少しゆるみかける。あなたは金融のゆるみというものを——今日銀の貸し出しが一兆六千億ありますが、日銀の貸し出しが多いから金融がゆるんだゆるまぬという論拠にはならない。それとこれとは別だと私は思う。金融のゆるみは、日銀の貸し出しが多かろうが少なかろうが、一兆二千億のときでも金融はゆるみます。一兆六千億のときでも金融はゆるみます。金融のゆるみを日本銀行の貸し出しとイコールに考えるというのは、あなたは少し事を間違うておるのではないかと思う。そこは私が間違うておるのか、あなたが間違うておるのか知らぬが、金融のゆるみというものは、いわゆる貨幣が国内に回っている、その回り工合がゆるみだと思うのです。そういう意味からすれば、十月から十二月までの三・四半期には、あなたは簡単に言ったけれども、一般会計は二千五百億の払い超、食管会計では大体米代金が二千億の払い超、外為会計でも五百億、合計五千億ぐらいの払い超になる。去年の三十六年の年末に、日銀券の発行は三千億したから、そういうのを考えてみても、やはり年末までには相当金融のゆるみがくる。これは大体想定がつきます。そうした場合に、一体あなたはどういう政策を——基本的な政策というよりも、そのときの金融政策というものをお考えになっているのか。これは総理の御意見を聞きたい。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 十月から十二月、供米代金あるいは政府の支出超過によって散超になることは当然でございます。ただ外為が五百億の散超になるかどうか、これはまだ正確な数字はわかりません。しかし先ほど申し上げましたように、日銀の貸し出しというものは非常に多くなっております。これは金融が逼迫かどうかを表わす一つの基本的な資料だと私は考えております。あなたは非常にお詳しいが、あなたのなにはどうか。私はそういうふうに見ておる。ただし、金融がゆるむという場合に、今の日本状態はちょっと過去の状態より違う。今の供米代金を主といたしまして、政府散超の金がどこに集まるかということが、金融のゆるむ格好に非常な影響があるのであります。散超した分がどこに集まるか。従来は都市銀行を主として地方銀行、こういうのでございますが、最近の状況は、相互銀行あるいは信用金庫の方に金がよく流れる。そういたしますと、その金はどこへ行くかということになりますと、ここ一年ぐらいの経験では、都市銀行にコールで出るわけです。そのコールで出るやつが、日本銀行の貸し出しの支払いに充てられるか、新規投資にいくか、どういうような動きかによりまして、去年からことしにかけてはちょっと注意を要するのでございますが、私は、例年ある三、四千億の第三・四半期の散超、これで金融かゆるむのだというので調整政策をここで改めるという考え方は持っておりません。まあ大蔵大臣がどう言いますか、なんですが、まだ相談しておりません。大蔵大臣も堅持すると言っておりますから、多分同じ考えだと思います。そこで、それなら今までの調整政策を全然手をつけないかといったら、今の金利の問題でも三つの方法をしておりまして、非常に強い分は第二次高率、そうしてその次は預金準備金制度の強化、これは大体千八、九百億、二千億円、日本銀行に無利子で銀行が預けております。それをやる前は半分の八、九百億円でございます。こういうものに手をつけるかというのが、やはり新聞議論になっておりますが、その問題を第三・四半期の金融がゆるむということによって、今これをどうこうするという段階ではございませんので、今までの調整政策を堅持していく。しかし、われわれが予想しておる通り、あるいは予想以上の結果が出れば、何も調整政策というものは絶対のものではない。そのときのいわゆる薬の盛りようでございますから、薬の盛り方をある程度変えるということは当然のことであるのであります。そうして、今、私は楽観主義だとかあるいはまた悲観で二重人格とおっしゃるが、私の政治家としての、日本経済の将来は明るい、また明るくしなければいかぬ、それは日本人にはできるのだということで、十年以内の倍増計画をやったわけです。それがきき過ぎたと申しますかどうか、とにかく行き過ぎた場合につきましては、やはり調整するのがあたりまえでしょう。調整するということは、楽観とか悲観という意味じゃない。十二、三才ぐらいの子供が二十才ぐらいになったならば、非常にからだもよくなるんだといってどんどん伸びますが、その伸びる場合におきましても、早く伸びる人もおるし、十八、九になって伸びる人もあります。いろんな伸び方もありましょうが、伸び得るんだ、倍になり得るんだ、その間にいろいろおなかをこわすときには、食事も少しは加減しなければいけますまいが、非常に健康で伸び盛りのときは、普通では食べないほどの栄養をどんどん与えることも必要でありましょう。だから、からだに注意させなければいかぬというので、食べものを少し少なくしろということは悲観じゃございません。当然のやり方です。伸びるときだから大いに伸びてというのも、これは楽観じゃありません。当然のことでございます。それを悲観だ、楽観だ、二重人格だというのは、よく私が言っていることをお考え下さいましたら、あなたのような頭のいい方はおわかりだと私は思っておるのであります。
  195. 小松幹

    小松委員 さっきの問題ですが、日銀の貸し出しが多いから金融がゆるむ、そこは私はそう考えていないのです。日銀の貸し出しは資金の貸し出しであって、資金がどれだけ要るかどうかという問題、長期、短期の資金がどれだけ要るかという問題、金融がゆるむというのは資金の問題じゃない。金をこの社会にどれだけ持っているかという資金と資本の問題と現実のマネーとを——私は考えがそこで違うと思うのです。あなたの考え方は、それは基本的にはということになれば別かもしれぬけれども、幾ら日銀貸し出しがあろうとも、金融がゆるむ、金融がゆるまないというのはファクターが別個なものだと思っています。そこであなたは、今、十一月ごろ、先のことは言われぬと言ったが、調整政策は堅持して来年の三月までやる。ところが、この金融のゆるむときに、さっき言った金融のトロイカ方式というものの一本足が欠けるかどうかという問題が出てくるわけです。トロイカ方式を全部まるのみにして撤廃するという考えが出てくるのやら、あるいはこの金融のゆるむときに支払い準備金を撤廃するとか、あるいは公定歩合をあたるとか、こういう問題の一本足が欠けるか、あるいは二本足が欠けるかという問題が出てくると思うのです。こなければこないでもいいのですけれども、そこのところをもう少し聞きたかったわけなんです。あなた自身がどんな考えを持っているのか、これは今もっぱら滞貨融資とともに、いつ、あなたがやった金融トロイカ方式の足が欠けるか、これが問題になっている。ということは、金融がゆるむ、あなたの言う楽観論というものが支配しておるのか、あるいは貿易収支がとんとんにいったのかわからないが、そういうムードというものが出てきているから、そのムードにあなたがどう答えるかということを私は知りたかったのです。だから、まだ答えられぬならば答えられぬでもいいが、おそらくその段階になったらトロイカの一本足が欠けるかどうか、あなたは、偶然にも支払い準備金の問題が出たから、おそらく支払い準備金の撤廃なんというのが考えられるのではないか。現在地方の相互銀行あたりは——最近でも相互銀行を集めて、一体余裕金をどういうふうにするかというような問題でやられておると思うのです。この点、やはり金融政策というものはタイミングが大事だという考え方に立って私は今言っているわけです。その点あなたは、これはやらぬというのかどうか、そこをもう一回聞きましょう。そういうときになったら、そのトロイカ方式の一本足でも考える、支払い準備金か、あるいは公定歩合か、何かそういうものを考えるか、あるいは高率適用を撤廃するか、こういうものを全然考えないのか、考慮に入れておるのかということを私は聞きたい。どうです。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 所管外でございますから答えにくいのでございますが、預金準備金を撤廃するか。撤廃なんかできっこありません。先ほど申し上げましたように、去年の調整政策は相当大幅にやったのであります。今までの率の五割くらいは上げましたでしょう。そこで預金がふえましたから金額は倍くらいになりました。そういうものを撤廃するということは、調整策を講ずる以前に、好景気以前に帰ることなんで、これはできやしません。しかし、ああいう措置というものは臨時的なもので、長くやるものじゃございませんから、今でも——前からずっと考えておりますが、結論は出ておりません。こういう問題は大蔵大臣の所管で、私に相談なさるかなさらぬかわかりません。私が大蔵大臣のときは、そういうことは総理大臣には相談しなかった。だから相談なさるかなさらぬかわかりませんが、せっかくのあれでございますから申し上げますが、大蔵大臣も、考えておられましょうけれども、結論は出しておられぬと思います。
  197. 小松幹

    小松委員 それじゃ大蔵大臣にお伺いしましょう。  十月以降三面四半期に金融がゆるむときがくると思うのです。今総理は、外為会計の五百億はわからぬと言ったが、それはわからぬでしょうが、非常に希望的な楽観論を言われた総理ならば、五百億くらいな外為の黒字は考えられると思うのです。そういう点から考えると、年末にかけて、実際に対民間の金融はゆるんでくる。そうした場合に、一体金融対策としてどうするのか。今までのようにただイージー・ゴーイングに、片一方は引き締めをやる、片一方は滞貨融資をやる、滞貨の融資をやって、矛盾した金融引き締めをやっていきよるが、その矛盾をどう解いていくか、金融の矛盾の解き方の問題になる。そこで、このトロイカ方式というものをいつ取りくずすかという、金融のタイミングを合わせて金融方策が出てこなければならぬ。あなたはどういうふうに考えているのか、金融対策として……。
  198. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えいたします。御承知通り、昨年から今年五月の統一見解を通じまして、国際収支の均衡をはかるためと、国内均衡をはかるために、格段の施策を行なっておるわけであります。その意味で、先ほど総理からお答えがありました通り、国際収支も好転して、現在、七月末の手持ち外貨高が十六億三千五百万ドルという数字を計上し、これからもなお十二月までは御承知通りの輸出好況期でありますので、輸出が非常に悪い六月、七月も今申し上げたような状態であり、八月、九月、十月、十一月、十二月までは、おおむね輸出が伸びて、輸入も、去年は多少思惑輸入のような五、六、七月の三カ月間で五〇%も六〇%も例月よりも輸入がふえたというような状況もありまして、これが引き締め基調によって大体落ちつきを示して参り、結果としては、一−三月の輸出が伸びない時期を勘案しても、年間を通じて四十七億ドルの輸出はほぼこれを達成できるとともに、四十八億ドルを計上しておった輸入は幾分控え目になり、大体経常収支で二億八千万ドルくらいの赤字を予測しておったものが、一億ドル程度に押えられる、もう少しいくかもわからないというような状態でございます。しかし、国際収支の均衡や国内均衡という非常にむずかしい目標をもって健全な経済発達をはかっていくのでありますから、われわれは五月の統一見解は、現在の段階においてこれをゆるめていくというような考えは持っておりません。これは大蔵委員会でも申し上げ、また私が大蔵大臣に就任の当初にも申し上げた通り、国内均衡をはかっていかなければならぬことと、第二には、十月をめどにして九〇%の自由化という大きな問題がありますので、国内産業に対しては必要な資金はこれを供給していかなければなりません。必要な資金を供給するということによって、引き締め基調がくずれるということではいけませんので、在来の方針はこれを堅持するということを今日までそのまま実施をして参っておるわけでございます。七月、八月の金融の情勢を見ますと、昨年度に比べて大体揚超幅が千億程度少なくなっております。しかし、ただいま小松さんが言われた通り、九月末から米代金等の払い超がありますので、十月、十一月は相当金融がゆるむのではないか、ただ先ほども申し上げた通り、八月は昨年に比べて幾らか窮屈であり、また、野党の皆さんも、このような引き締めをやっていくと倒産や不況状況が現われるということでありましたので、中小企業等に対しましては八月一ぱいを通じて三百億の買いオペレーションをやったり、また三公庫に対する融資を行なったりしております。そのほかになお五百億の買いオペレーションを日銀の窓口を通じて行なっておるわけでありますが、これの売りオペということもありますし、そういう意味で十月から十一月に対して、金融のゆるみが、五月にわれわれが考えてずっと今堅持しておる基本姿勢に影響があるということであれば、適切な手を打っていかなければならぬと考えております。なお、この問題に対しては金融団体、日銀の窓口、その他自主的に現在九月、十月にどう対処すればいいかということを真剣に検討中でございます。
  199. 小松幹

    小松委員 七月、八月は買いオペレーションなどありましたが、これは売りオペが十一月に来ますから、そうするとますます金融はゆるむ、今買いオペですけれども、売りオぺが来るからおそらくゆるむと思います。そういうことになれば、私は、ただ調整政策を三月まで変えない、変えないというような体制でなくして、あるいはこのトロイカ方式はどうかとか、あるいは何かの形で金融のタイミングを合わせてくるのではないだろうか。金融政策はないというなら別ですけれども、あるというなら、ただ不況対策の滞貨融資だけでずっといくのか、あるいは年末ごろ不況対策以外の金融のゆるみに対する手を打ってくるのかということをお聞きしたのでありますが、まあ大蔵大臣はそういうときがあるかもしれぬというような言い方をなさったと思いますが、大蔵大臣、そうなのですか。
  200. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 総理大臣が先ほどお答えの通り、必ずしも十月、十一月の散超期において金融がゆるむということも考えられないかもわかりませんが、私は、財政責任者として、これらの問題に対してはこまかい面から、また引き締め基調を続けておる現在の立場にいかに影響するかを十分検討いたしておるのであります。あなたが今言われた通り、理屈はあっても、そのときになって大幅な散超となって金融がゆるむ、そうして引き締め基調というものが具体的にくずれていくんじゃないかという現象が現われるおそれがあれば、適切な施策を行ないますということを申し上げたわけです。
  201. 小松幹

    小松委員 金融政策というものは非常にむずかしいと思うのです。二律相反する、引き締めをしながら、片一方ではゆるめねばならぬというようなこともあると思うのです。そういう意味で調整政策なんですから、ただ調整政策だがら輸出輸入のバランスだけにらみっこしておって、輸出輸入のバランスだけとれれば、金融対策は何もない、こういうなら別ですけれども、やはり金融のゆるみなど考えれば、そこにタイミングを合わせて、当座の金融対策が出てくるのではないか、こういうことをお尋ねしておるわけなんです。だから私はやれとも言っておるわけではございません。  次に、私は来年度の予算編成の問題に移っていきたいと思いますが、その前に総理にお聞きしたいのは、来年度もやはり高度経済成長政策を続けておやりになるのかどうか、それをお聞きしたい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 高度という言葉でございますが、十年以内に所得倍増ということは一応高度と言えます。その方針に変わりはございません。従いまして、十年以内の倍増というときに、来年度がどうなるか、高度でいくかという問題でございますが、それは先ほど申し上げましたように、少し食べ過ぎておなかをこわしたときには食べ物を控えるというふうなことにならなければいかぬと思います。それだからといったって、これが高度をやめたというわけではございません。だから、今まで行き過ぎた分を調整しておるのでございまして、高度成長政策という基本的の考え方は私は変えていない。ただ問題が、今の金融論でおっしゃられたように、金融が第三・四半期の散布超過によってゆるんだとして、もしそれがおととしから去年のように向いていくときには、これは何ぼあれだって引き締めを強化しなければいけません。経済の状況によって三千億、四千億の一時的の散布超過があるからといって、金融の基本方策を変えるべきもんじゃないのです。ゆるんできたから金利を落とすかということよりも、経済の動向がどう出るか、一時的のゆるみによって過当投資とか、急激な景気上昇の傾向がある、こういうふうなときには、これは何ぼ散超でも調整を強化しなければならぬのであります。従いまして、私は自由主義経済のもとでございますから、政府としては、やはり今は前のように何でもかんでも設備投資すればもうかるのだという考え方はいきませんよということはずっと続けていくつもりでございます。それによって経済界がどの程度の成長をするかということは、財界の方々の意向にもよることでございます。また財界の方々は、政府予算の編成とかあるいは国際収支等をごらんになりながら各会社、各企業の予定を立てられると思います。過去のあれから申しまして、来年は、先般企画庁が発表いたしました程度のものが予想されるのではないか、こういうことで、閣議決定はいたしませんが、経済企画庁の見通しを大体了承しておるわけでございます。
  203. 小松幹

    小松委員 あなたは調整政策を金融の基本政策のようなおっしゃり方をしたが、調整政策はあくまでも調整政策でしょう。それじゃ調整政策などきょうでも撤廃した方がいいですよ。ほんとうはそうでしょう。基本政策だから変えられないのではない。調整というような名のつく政策というものは、これはきょうが日でも撤廃した方がいいんです。何もこだわる必要はないのです。だからほんとうは基本的な政策じゃないのです。それはもうあなたが薬を飲ませるからといって、いつまでも胃薬ばかり飲ませるわけにいかぬでしょう。あなたが要らぬことを言ったから。だから調整政策というものはほんの胃薬を飲ませる政策なのですから、できるだけ飲ませぬようにする政策が出てくるのが正しいと思うのです。ところが、来年度のお答えとして、私、はっきり聞こえなかったのですけれども、来年度、三十八年度の予算編成を間近に控えて高度経済成長政策でいきこなすのか、それではいけないと思っているのか。少なくとも本年度は、経済見通しによりますと、三十七年度は高度経済成長政策にはなっていないのじゃないか。つまり今のところ、ことしの見通しは四・五%の成長率でしょう。少なくとも来年の見通しは出ていませんから、だから来年はどうなのかと言っているのです。このまま設備投資を中心にした——あなたは少なくとも設備投資を中心にした投資が投資を呼ぶ、こういう姿の高度成長論で成長政策をなし遂げてきたのだ。だからあなたをほめるならば、あなた流に設備投資を中心に高度成長政策をやり上げたのだろうと思う。それならば来年もイージー・ゴーイングに投資を中心とした高度成長政策をやるのかどうかということを聞いているのだ。だから一応あなたの成功はそれで認めた。認めたけれども、来年もその調子でやるのか、それを聞いているのです。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 大体三十七年度の見通しとして、実質的には四・五%と計算しておるのでございます。名目的には六%、しかし、この名目的の六%、実質の四・五%というものは、日本では高度成長とは言えません。しかし、外国から見ると相当高度成長でございます。一年に四・五%。だからその点は私は、世界的には高度成長だが、今までの日本の歩んできた道から言うと、これはかけ足でなしにゆっくりした歩き方だと思います。ゆっくりした歩き方をしてみて、それが輸出入や国民生活やあるいは産業基盤、産業構造にどういう変化があって、十年倍増の計画にのっとり将来はとうなるかということは、今年の実績を見て計画を立つべきであると思います。今年の実績だって、まだ輸出入その他の問題は先ほどお答えした通りでございます。そうして金融が散超だからどうするこうするということが問題になるのは私はまだ早いと思う。日本の経済が将来どうなっていくか、今はどういう動きか、そうして来年はどうなるだろうということをはっきり見通しをつけた上でないと言えませんが、少なくとも私は日本という国は、世界の国よりも違って、国民が非常に勤勉で頭がよくて、そうして今までの経済政策が大した誤りがない、大過なくやってきた、この実績を考えますと、よその国よりも相当高い成長率でいくべきだ、いかれる。それが日本国民生活を早く先進国並みに上げる一つの方法だと考えておるのであります。何%いくとか、それを高度とか低度とかいうわけのものではございません。しかし、少なくとも昭和三十六年度とか三十五年度のような上昇は期待できませんし、また期待することは無理でございます。それはよくないと思います。ただそれがことし四・五%で実質上いったとき、卸売物価、小売物価、国際収支等々を考えて、そうして来年の一月くらいに一つきめるべき問題じゃないかと思っております。
  205. 小松幹

    小松委員 どうも総理とやりとりしていると、やりとりになってしまうのですけれども、あなたは金融の問題は早いとか、こうおっしゃるけれども、いつもあなたのやっている金融政策はタイミングが合わぬ。おくれるのだ。過去においてみなタイミングをはずしておくれておると言われておるでしょう。だから、ときには早くやりなさいということ。それと、高度成長政策をやるのかやらないというのはまだじゃない。今大蔵大臣は予算編成を各省にやらせているでしょう。それならば少なくとも閣議のときに、また河野さんが出るが、河野さんが大蔵大臣に、予算編成の基本方針を出したらどうなんだと、高度成長政策でいくのだというこの一言というものと、いや、ことしの経済成長率は四・五%で、来年はそうもいかぬからな、だから少し成長率を落としたりあるいはあまりそればかりにこだわらぬでもいいぞというのでは、編成方針がずいぶん違いますよ。いや、あくまでも高度成長は看板だからおろされぬのだ、これは池田の旗じるしだからと言えば、これは経済白書をつくっても、経済白書の随所に、みんなあなたの高度経済成長政策は誤りである、不均衡成長だといわれておるじゃないですか。この経済報告書の中を見てみなさい。高度成長政策がいいということは一つも書いてない。不均衡成長、不均衡成長、そうして来年度は転型期になっている。言葉はいろいろ新語をつくっています。転型期になっている。それならば少なくとも大蔵大臣が予算編成をするときに、総理は来年度もやはり高度成長政策でいくのかなというような一つの基本線というものが出されなければ、私は、ただ経常経費のそろばんははじけるけれども、政策としてのものは出てこないと思う。たとえば財源がないといろいろ言っても、それでは公債発行をやるのかやらぬのか、あるいは財政投融資の原資がないのだ、それならばどういう考えでやるのか、あるいは去年は、おととしは、設備投資をうまくふくらましていったけれども、来年度は設備投資でいくことはできないから、今度は新しく財政資金の運用でいかねばならぬとかいう一つの線が、成長政策をやるかやらぬかというような基本から出てくると思う。  それならば大蔵大臣にお伺いしたいが、来年度予算編成は、一体原資というものはどういうものを考えて——一般会計、それから財政投融資の原資が不足がちだいうことは私も知っているが、それをなおかつ補うていかないのかいくのか、補う場合にどうするのか、何を中心に財政政策はやりたいのか、それをお伺いします。
  206. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 来年度の予算編成に際して財源はどうかという御質問は、午前中もございましたが、昨年度、今年度に比べて、来年度は相当財源も窮屈になるであろうということは申し上げたわけであります。しかし、先ほどから小松さんが言われておりますように、来年財源がないから超均衡予算を組むのかということを盛んに言われておりますが、この前の参議院選挙に自由民主党が世間に公表しましたように、三十八年度の予算編成の基本ともなるべき大綱は明らかにいたしております。しかも、これは党及び政府一体になって世に公表したものであり、これらの線は御承知通り、今までの三十五年、三十六年、三十七年の三カ年等は、高度成長政策というよりも、その表現をはるかに上回る超高度的な成長が行なわれたというのでありまして、私たちは行き過ぎたものに対して調整政策を行なっておりますが、本質的なラインとしては経済成長政策を進めていくという基本態度はくずしておらないわけであります。その意味で、来年の予算の基本的な問題に対しては、あらためて九月の決算を見ながら、十月の末及び十一月に、党、政府が一体になって三十八年度に対する態度、基本大綱をきめるわけでありますが、私は、しいて今その姿を言えばどういうことかという質問に対しては、経済成長政策はあくまでこれを推し進めながら、その予算のタイトルともなるべきものは健全均衡という表現を使っておるわけでありまして、乏しい財源であっても有効にこれを運用することによって目的は達成せしめ得る、こう考えております。
  207. 小松幹

    小松委員 時間がありませんから、最後に一つだけ総理にお伺いしたい。  本院において五月七日、自由化に直面する金属鉱業危機打開に関する決議案を可決しましたが、その決議は、自由化実施までに抜本的な対策を樹立することであり、しかも自由化を前にして国際価格は値下がりなどを来たす。それに景気調整、金融引き締めなど地金、鉱石などにも滞貨激増を招き、これが値下がりに拍車をかけております。本年に入って相次いで休山、閉山等の様相を呈しておりますが、これに対してどういうような考え方を持っているか、総理にお伺いしたい。  同時にもう一つは、次にこれは通産大臣になるかと思いますが、十月から実施する貿易自由化九〇%の問題で、マンガン、アンチモニー、水銀、黒鉛、石綿など、外国との価格差の非常に多いものについての自由化対策はどういうようにやるのか。これは実際問題としてやるかやらないかは今からお伺いするのですが、私は、私の対策としては、これは延期したらどうか、こういうことを言いたいのでありますが、通産大臣の御意見を承りたい。  その次にもう一つは、十月からではないけれども、来年の三月末までには自由化をやらねばならぬというようになっているところの銅、亜鉛、鉛、こういうものは自由化以前に、だから三月末以前に探鉱事業団の設立とか価格安定のための買い取り機関の設置などをやるべきではないかと、こういうように考えて、それを臨時国会なり、あるいは少なくとも通常国会の前に何らか予算化の見通しをせんならぬから出すべきではないか、こういうように考えておりますが、はたして銅、鉛、亜鉛等の自由化に対する対策というものはどういうふうにお考えになっておるか。同時に、これはもうほんとうに非鉄関係の問題は、閉山などに関係して離職者の問題もございますから、重要な労働問題にもなっておるわけなんですが、これについての御回答も願いたい。  その次に総理に、さっきの総理ともう一つ総理ですが、石炭の問題でございますが、石炭政策についてはすでに調査団が出て、九月の中旬にこの答えが出る、調査団報告が出るようになっておりますが、その答申の前に、この際石炭政策について首相の基本的態度をお伺いしておきたいのは、総理は四月の五日、炭労のゼネスト決行を前にして、炭労の代表と会見しました。その際総理は、冒頭において、石炭問題は雇用の問題、国際収支の問題、エネルギーの基本対策、あるいは安全保障などの問題について検討する、とこういうように言われましたが、その考えは今も変わりなくそれをさらにやっていこうというお考えに立っておるのか。もしその石炭の基本問題において、総理が炭労の委員長あたりと会見したときの気持が変わりがないとすれば、調査団にそのあなたの真意を十分伝えて、この答申に配慮してもらう必要があるのじゃないかと思いますが、調査団に対して白紙であなたは臨むのか。あなたがかつて四月の五日に約束したことを、調査団にも、一応自分はこういうことを炭労の方々と相談したと、こういう含みのあるところを調査団に言って、よりよき解決をはかろうとしておるのか、その点をお伺いしたい。  さらに調査団の答申は九月の中旬に出されると思いますが、多くの予算立法を必要とするのではないかと思う。しかも、これは待っておれない緊急な事態でもあると思う。だから、この問題の解決は、少なくとも次の臨時国会、あるいは補正予算等も出るかと思いますけれども、次の短期でも長期でも臨時国会を開いて、一般予算を審議する通常国会以前にこの問題の解決をしておかなければならないと思いますが、以上総理には石炭問題が三点、非鉄関係が一点、あとは通産大臣にお伺いします。自由化に対する考え方を分けるならば、十月以降の九〇%の問題と、さらに残り一〇%の三月までにいく問題、この二つの問題についてのお考えなり具体的な折衝の面についてのお答えを願いたい。
  208. 池田勇人

    池田国務大臣 自由化九〇%を今年十月一日から施行するというIMF等への日本政府の態度は変えずに、その目標達成のためにせっかく検討を進めておるのであります。  金属鉱山に対しまする国会決議にいたしましても、あの決議の線に沿って検討をさしております。九〇%との関連がありますので、目下鋭意あらゆる角度から検討いたしております。  また石炭鉱業に対しましての炭労の申し出に対しまして、それを聞いたときの私の気持は今も変わりはございません。そして有沢委員を中心とした調査団につきましては、私は白紙で結論を出していただくよう申しております。なお、炭労と会見したときの申し出に対する私の態度は、関係各省で知っておりまするから、有沢委員も御存じだろうと思っております。また、石炭に対しましての対策は、調査団の報告が出る以前におきましても、現下の状況から見まして、金融にいたしましても、あるいは予算関係費の先回しの使用にいたしましても、また不足する場合におきましての予備金使用等につきましても、できるだけ石炭鉱業、またその従業員の方々のよかれかしという考えのもとに努力をいたしておるのであります。
  209. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいまお尋ねのありました非鉄金属に対する附帯決議その他決議に関しての問題につきましては、ただいま総理がお答えになりました通り、通産省といたしましては慎重な検討をただいまやっております。  なお、次に御質問になりましたマンガンその他石綿等の種類の問題については、十月自由化の予定になっておるけれども、これはどうするのか、自分の意見としては延ばした方がいいように思うが、こういうような御質問と承るのでありますが、この問題等につきましても、通産省としては、一々のその種類の問題、たとえば石綿なら石綿について、現在価格がどういうふうになっておるか、これに対してどういう措置をとったらいいか、また工場が幾つくらいあって、鉱山が幾つくらいあって、そして従業員はどれくらいあるか、これがどの程度ほかの事業に吸収できるか、もしやっていけない場合にはどういうふうに吸収したらいいか、こういうような詳しい面からこまかく検討をいたしておるのでありまして、ただいま、あなたからはどうしたらいいかというお尋ねでありますけれども、ただいま検討中でございますので、まだお答えを申し上げるわけには参りません。  それからまた三月になって、銅、鉛、亜鉛等をどうするかという御質問でございますが、これにつきましても、実は私たちとしては、その関係者に及ぼす影響あるいはまたその鉱山が所在する町の人たちに与える影響、その他社会問題等もいろいろ勘案をいたしまして、そうして十分な検討をして、皆さんにそういうような悪影響のないような形において処置をいたしていくと、こういう観点からただいま調査をいたしておる段階でございます。
  210. 小松幹

    小松委員 今の通産大臣のお答えは、何と言うか、きわめて抽象的な問題のお答えのようでありましたが、私、聞いているのは、自由化を十月からやるのかやらぬのかということを、最初にアンチモニーとかいうのについて聞いているのですよ。だから、検討するというても、あなたのは何だかはっきりしない。まだ一カ月ありますけれども、まだ態度がきまっていない。  もう一つは、亜鉛、銅の問題については、これは一貫して決議案も上がっている。与野党一緒になって国会決議案まで上げている。これに対する対策を国会でやりなさいと言っているのです。それを、まだ緒にもつかぬ。あなたは決議案などというものは何とも思っていないのですか、どういうお考えですか。それをちょっとまたお伺いしたい。
  211. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまこの十月に踏み切るべき自由化の品目は、御承知のように、実はたくさんあるのでありますが、そのうちであなたが御質問になりましたのは、マンガンとかアンチモンとか石綿というようなそういう種類のものは、一体もう結論が出ているのじゃないか、やれるのか、やれないのか、自分の考えではまあむずかしいと思うがどうか、こういうような御質問だったと思うのであります。こういう問題につきましては、ただいま、そういうたとえばマンガンならマンガンについても、どこにどういう鉱山があって、そうしてその鉱山にはどれくらいの従業員がおって、そうしてこれをやった場合にどういう影響があるかということをしさいに今検討いたしておりまして、大体来月上旬かあるいは半ばごろまでには結論を出すように今研究をいたしておる段階でございますから、遺憾ながらここでお答えを申し上げるわけには参らないのであります。  また、先ほど仰せられました、銅、鉛、亜鉛については買い取り機関を作れというような決議等もしておるのであるから、そういうことを具体的に研究しておるかということでありますが、もちろん、衆参両院において御決議のあったことについては、われわれとしてはただいま十分検討いたしておるのであります。検討した上で、その案ができましたならば、通常国会の冒頭にでも何にでも出していく、こういう考えで研究を続けておるということで御了承を願いたいと思います。
  212. 小松幹

    小松委員 終わりますが、通産大臣は検討々々と言っていつまでも検討されたのでは困る。そろそろ結論を出してもらいたい。特に、今度のこの予算委員会というのは短期で、きょうあすだけでございますが、それまでに少なくともこの態度だけははっきりしていただきたかったのです。それができないということはまことに残念です。決議案さえ上がっておるこの非鉄関係の重大な問題でございますから、ただただ検討々々で延ばすのではなくて、具体的に、買い取り機関を設置をするとか、あるいは補正予算を組むとか、それを通常国会までに一つ片づけてもらいたい。(発言する者あり)だから、臨時国会を開くそのときなんでございます。その点を一つ通産大臣に強く要望しまして、私の質問を終わります。
  213. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、受田新吉君。
  214. 受田新吉

    ○受田委員 私は、民主社会党を代表して、特に池田総理を中心に内政・外交の一般的な重要問題について質問を申し上げたいと思います。  総理大臣は、過ぐる所信表明におきまして、きわめてありきたりのごあいさつがあったのでございますが、大幅改造内閣として、このように新鮮味のない所信表明をされたことは、私、十五年の政治生活を通じて初めてであったような印象を受けるのです。しかしながら、その中で一つほど新構想と思われるようなお言葉が出ております。速記録を読んで見ますると、国民経済全体として、国際経済の視野に立ち、生産性の向上と国際協力を基調とする産業の体質改善を進めていくことが要請されると言われ、また、なかんずく、当面の課題として、中小企業の近代化達成と、石炭、非鉄金属、海運につき対策を講ずる、かつまた、経済の急速な発展と変化に即応する雇用問題の処理に当たりたいと言っておられるわけです。そこで、この発言が、年度初めの施政方針演説でなくして、年度半ばでの所信表明であって、特に特定産業まで明らかにして言及された点を、特に私は注目せざるを得ないのであります。私はそれぞれの問題についてこれから結論的な端的な質問を申し上げまするから、簡潔に御答弁をお願いいたします。  第一点は、六月の選挙中のことであります。あなたの最も親しいお友達の、当時の佐藤通産大臣が、その遊説中の旅先で、中小企業基本法を選挙後の国会に提出するという発言をされております。これがただ一片の放言として受け取られるものとは思われません。あなたの最も親しい、実力者のトップと言われる佐藤氏の発言でありまするだけに、特に総理は、この佐藤発言はあなたの御意思として発言されたものとして、次の通常国会に、中小企業の近代化達成の措置と同時に中小企業基本法を提出するという用意があるのかどうか、御答弁をお願いいたします。
  215. 池田勇人

    池田国務大臣 次の通常国会に提出すべく、ただいま検討いたしておるのであります。御承知通り、さきの国会におきまして、与野党ともに出しておるのであります。政府はそういう各党の御意見を参酌しながら案をせっかく立案中でございます。なお、中小企業基本法のみならず、それとも関連がございますが、中小企業の近代化、合理化ということは、われわれ従来からの方針でございます。ことに、自由貿易の建前から申しますると、日本の産業の大きな部分を占めておる中小企業の設備の近代化等は、ぜひやらなければならぬ重大問題と考えております。
  216. 受田新吉

    ○受田委員 明快な御答弁をいただいたので、その点は了承しますが、第二点は、総理が特に石炭非鉄金属、海運という三つの特定産業を指定せられた理由はどこにあるのでございましょう。
  217. 池田勇人

    池田国務大臣 今、不況産業といえば、その三つが業種別には特にあげられる問題だと思います。石炭の問題につきましては、四月以来いろいろ問題がございます。それから、非鉄金属の問題につきましては、これは、今から十二、三年前にいわゆる補助金で一番多く出しておったものは石炭と銅でございます。銅は、時価二十七、八万円のうち、十三、四万円、半分以上は補助金である、それを一ぺんに切ってしまいますとどうもこうもならぬと言っておりましたが、何とかどうにかこうにかなった。しかし、これは自由化のときは一番先に来る問題でございます。石炭につきましても、産業全体から申しますれば、強粘結炭なんかは外国よりも二千円ほど日本は高うございます。二千円あるいは二千数百円高い。これは、経済全体から言えば自由化したい。それだけ日本の産業は強味があるのですけれども、強粘結炭の自由化というものはできません。そこで、今度は銅はどうなるかということになりますと、二、三万円トンで違いましょう。関税でこれをまかない切れるかどうかという点も今考慮しておりますが、いずれにしても、非鉄金属は不況中でございます。それからまた、船舶問題は、御承知通り、海運政策上から言っても何とか整備しなければというので、今法案を国会に提出しておる。今の最大の不況産業として、業種別の産業としてはこの三つが一番大きいので、特に私はこれを掲げた次第でございます。
  218. 受田新吉

    ○受田委員 特に特定産業を指定された理由も一応明らかにされておるのでありますが、その一つである石炭について私ただしたい点があるわけです。石炭につきましては、いわゆる石炭調査団が近く答申をされると承っておりまするが、この答申は政府としては十分尊重して実施するという心がまえでありますかどうですか。
  219. 池田勇人

    池田国務大臣 石炭問題は、先ほどお話がありましたごとく、雇用の点から言っても、国際収支の点から申しましても、また、産業全体として、エネルギーの取り扱い方から言って、非常に大きい問題でございます。私も数年来この問題につきましてタッチいたしておりましたが、やはり、いろいろ考えてみましても、時代の進運というものが非常に早い。ことに、エネルギーにおきましてはそれが顕著でございます。私は、学識経験者という意味から言うと事変わるかもわかりませんが、経済界、また、国際経済に非常にたんのうな方々に十分御検討願って、そしてその答申につきましてはできる限り尊重いたしたいと考えております。
  220. 受田新吉

    ○受田委員 石炭産業はまさに斜陽産業のトップを行く悲運を今かこっておるわけでございますが、この石炭調査団の答申のポイントについて私たちが漏れ承っているところでは、政府の保証公債を発行する、そして石炭各会社の過去の経理は一応たな上げにする、そして新規に経理をスタートして新勘定のもとに石炭の近代的な効果を実現しようという努力をしようという動きがあると聞いております。政府の保証公債の期限を大体十年にするということも常識となっておるようでございますが、これらは相当の巨額に達するものと思いますけれども、私はここで、特にわが国の石炭企業がばらばらの企業経営のもとで赤字にあえいでいる現状を考えたときに、この限界を打開するのには、特に北九州炭鉱のごとき悲惨な炭鉱業者及び炭鉱労働者を救済するためには、総理のおっしゃる、先ほどの施政演説にあった、国民全体の経済問題として、国際経済の視野の上に立ってもぜひこの問題の解決をはからなければならぬと思うのでございます。いかがでしょう、この調査団の内部に動いているいろいろな動きが、私が今指摘しましたような方向に結論が出ました際に、総理ははっきりと、こうした立場を救済するための特別の公債を発行するという用意をお持ちかどうか、御検討を願います。
  221. 池田勇人

    池田国務大臣 調査団から正式の答申を得ておりません。巷間に伝えられるいろいろな案につきまして私が意見を申し述べることは差し控えたいと思います。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 総理はいかなる場合もこの石炭問題の処理についてはそうした公債発行というような勇気はないという心配があるとも私は思うわけです。今までも公債政策というものに非常に冷淡であった総理としては、そういう心配がある。しかしながら、こういう危局を救うための特別対策としてこうした公債の発行ということは、当然の緊急措置として認められるものじゃないでしょうか。
  223. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう大きい問題を公債発行がいいか悪いかで議論する筋合いのものじゃないと思います。全体の答申がどうか、答申全体を見まして、それが日本の経済、社会問題にどういう影響があるかということから総括的に検討すべき問題で、世間で流布されておる問題をここで取り上げてとやこう言うことは、私はかえって答申がわれわれの期待するようなものにならないと考えます。政府は何もこういう問題について前もって意見を言うべきじゃございません。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、お尋ねしましょう。総理は答申を完全実施する方向で処理したいという決意はお持ちですかどうですか。
  225. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国会指名を受けまして内閣を組織しておるのであります。そして委員調査を願っております。そうしたら、内閣総理大臣が、答申の通り完全実施しますとは国民に対して言い得ません。やはり、答申を見まして、自分で国としてどうするかということを結論を出すべきだ。初めから白紙の委任はしないつもりでございます。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 やはり、このような重大な問題については、政府の態度としては、せっかくの調査団の懸命の努力で生まれた結論に対しては、完全実施の努力をするぐらいの熱意が私はほしいと思うのです。一応それは参考に聞こうなどという冷淡な態度では、この問題の解決はできないと思います。  いま一つ、海運事業でございますが、今、海運企業整備臨時措置法案、これが提出されておりますけれども、閣議了解事項として、この法案以上に政府の助成は考えられないというような態度をおきめになっておられるとも聞いておるのですが、これはいかがでしょうか。
  227. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま御審議願っている法案は閣議決定の法案でございます。従いまして、私は、国会におきましてこれを十分論議下さることを期待いたしております。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 今私がお尋ねしておりまするのは、閣議了解事項の中に、これ以上の、この法案に規定された事項以上の助成政策はとれないというようなお話し合いはなかったのですか。
  229. 池田勇人

    池田国務大臣 法案提出後におきまして、この問題について閣議で申し合わせをいたしたことはございません。ただ、運輸大臣から国会審議の状況を報告がございまして、なかなかむずかしい問題だということがございました。あるいは修正とか出直しとかいう議論もあるやに私は聞きましたから、内閣方針としては変わりないということを私は申したことはございます。閣議にかけたことはございません。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 私は、ここで懸念するのは、ただ数社だけの海運企業に対して役立つような政府案であってはならないと思うのです。この海運不況というものは非常に広い範囲に及んでいるわけでありまするから、特定の数社の擁護に尽きるようなことのないように、総理としてはその点は十分考慮することになっておりますか。
  231. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、数社とか十社とか、あるいは二十社ということを考えません。海運業がどうしたならば最もうまく立ち直れるか、その場合に、国民の税金とも申しませんが、国からの補助というものを出すのでございまするから、金利たな上げでございまするから、国民全体が納得のいくような方法によらなければなりません。ただいま石炭の問題もございましたが、やっぱり、石炭、海運、非鉄金属、こういう不況産業につきましては、国民の納得のいく方法でいかなければならぬ。数十社の分が五年間で全部立ち直れるような案があればよろしゅうございますが、安易について、たくさん残せばいいんだというので、せっかくでき上がった利子補給が途中でくずれるというようなことは、政府としても考えなければならぬと思っております。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 せっかく総理が三つの特定産業を指摘されておるのでございまするから、その深刻な実態を把握しておられるだけに、総理としてはよほど真剣に取っ組んでおられるという期待をしておるわけです。御答弁は、それぞれの産業に当たってみると、何だかあいまいもことしたような線も出ておるようでございますので、総理としてはせっかく所信表明に指摘されたこれらの特定産業に対して深刻な決意を持って当たってほしいと思います。よろしゅうございますね。
  233. 池田勇人

    池田国務大臣 海運と石炭とを比較するわけではございませんが、石炭鉱業におきまして、ことに中小企業は、大企業もそうですか、廃山、閉山等、非常にうき目にあっております。海運業だけは利子補給によって全部が全部そのまま安易な態度でいこうということは、これは私は国民が許さぬと思います。やはり、その産業自体がある程度の犠牲を負い、そしてその犠牲があまり多くて立ち直りができぬようならば、国がこれはめんどうを見なければなりませんが、えてして、不況の、非常に資産内容の悪いものが奇貨おくべしとしてこれを利用するということは、石炭のあの状況を見ましても私は考えなければならぬ問題だと思います。従いまして、国民が納得のいく方法で再建案をつくるとすれば、政府としてはこういう考え方でいくべきだと思って御審議願っておるのであります。これにつきましては、十分御議論下さった上で、私は政府としての態度をきめるべきだと思います。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 私はここで今三つの特定産業を指摘してお尋ねしたのでございますけれども、どうしても、これらの企業が自力で国際的な競争の激しい経済社会の中で生き抜こうとするためには、やはり国が相当強い助成をしていかなければならない。従って、好むと好まざるとにかかわらず、ここに単なる私的利益だけを追求するようないわゆる自由経済の基礎であっては、この目的は果たされないと思うのです。最近、池田総理も、例の産業の新秩序建設という目標をお立てになって、倍増計画を何とか一つ改定強化して、新しい設備投資の計画を立てようということで、いろいろと、金融の正常化を強力に推進するとか、あるいは産業別に投資調整をするとか、御考案をされておるように聞いておりまするが、この産業新秩序建設という目標を現にどのような形でお進めになっておられるかをお伺いしたいのであります。
  235. 池田勇人

    池田国務大臣 戦後の日本の経済は急激に伸びて参りました。しかし、それだけ企業の基盤が強化されたかどうか、あるいは適正な規模かどうか、二重投資はないかとか、あるいは一つの会社で少量にたくさんのものをこしらえる、こういう今の状況で、はたしてこれからの自由貿易時代における国際競争力がこれでいいかという問題があるのであります。そこで、私は、政府が音頭をとって官僚統制をやるということは絶対によくないことだが、しかし、民間の人がお互いに、自分の立場のみならず他の業者の立場、しこうしてまた、これが国際的にどうなっていくかということをお考え願うということは、政府としても、当然のことであろうと思います。従いまして、基盤の強化、近代化等々、あるいは経営の合理化を、国全体として見、あるいは世界の状況から考えて、産業界の人が自分で自分らの業者の立場等を考えながら新産業体制を確立していくように、政府努力してみたい、こう考えておるのであります。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、そのあり方としては、官僚統制にならないように、業者の自主的意思が阻害されないようにというようなお気持のようでありますが、具体的に、たとえば投資関係でしたら投資調整協議会とか委員会とか、あるいは現在の経済審議会のようなものを、最高経済会議とか、こういう形にして、それらの機関において問題の解決をはかろうとするような努力もされるわけですか。
  237. 池田勇人

    池田国務大臣 今まで、通産省、あるいは大蔵省、あるいは金融関係、その他産業合理化関係、産業審議会等でいろいろ議論をしております。集まっておやりになっておりますが、あれだけでは十分じゃない。やはり、政府の間でも、また、このもとはやはり金融が相当の役割を占めておるわけでございますから、金融関係の間でも、また、産業と金融、産業と政府政府と金融等々におきまして、やはりいろいろ話し合う機会を、これは法制的のものではございませんが、少なくとも池田自身がこういう三方面の人々の意見を直接に聞く機会を設けたいということは、私はいつかの機会に言ったことがあると思うのであります。国会が始まりましたり、いろいろなことがございますので、その実現が少しおくれておりますが、自分の考えといたしましては、各省所管の資金委員会とか産業審議会とか等々を活用する以外に、自分自身として、そういう問題につきまして、経済ばかりではございません、ほかの労働問題でも、あるいはその他の一般の問題につきましても、直接に聞く機会を持ちたい。実は、閣僚の意見は聞きますが、そういう民間の有識者の意見を聞く機会があまり定期的にないものでありますので、これをやってみたいという心がまえで、今選考に入っておる状態でございます。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 総理は相当苦心をして、産業新秩序体制といいますか、この建設をはかっていきたいというお考えのようで、いわゆる所得倍増計画にもありきたりの方法では非常な壁にぶつかったというお気持も手伝っておるようでありますが、私は、ここで一つ総理所信表明の中に福祉国家建設を特に指摘されておるわけでありますけれども、こういう新秩序体制を今のお説のような形で推進したい、ある程度の懇談会のような形式のものを持っていきたい、こういうお気持である以上、そこに官僚がどうしても一役入って知恵を働かしてもらわなければならないし、業者もいろいろな産業界とかあるいは金融界とかいうものが入って知恵をめぐらすということになりますと、問題は、企業合同、カルテル、トラスト、最後にはコンツェルンというような形のものに漸次発展をしていって、そこでやはり中小企業とか労働大衆とかいう側の方がとかくおろそかにされて、総理のせっかく指摘されたいわゆる福祉政策というものに逆行するような危険もあるわけです。この点は、やはり、企業合同でもやっていく、あるいは銀行にしても一緒になって貸し出し競争をやめていく、こういうようなことをはかっていくと、自然にそこに官僚統制の意思が強く響く、影響があると思うのです。総理、この点、福祉国家をつくるという立場と、せっかく産業新体制をつくろうというお気持との間に矛盾の起こらないような努力は十分お考えになっておられるかどうか、御答弁を願います。
  239. 池田勇人

    池田国務大臣 民主的な経済運営のために独禁法というものもできておるのであります。私はこの精神は生かしていかなければならぬと思う。しかし、今の現状から申しまして、官僚統制ができるかといったら、それは全然できぬとは言いませんけれども話し合いのいわゆる潤滑油になる場合もありましょう。しかし、そうかといって、官僚が万能かというと、経験から申しますと、必ずしもそうではありません。銀行万能の場合も多いのであります。そして、企業形態の合同と申しますが、これは外国でもそういう例がありますし、だんだんそういう方向に向かっております。私が今申し上げましたように、基盤の強化、いわゆる多種生産、少量多種生産を改める。それは、非常な集中合同になりますと、あるいは独禁法との関係も出てくるかもわかりません。しかし、今までの独禁法の考え方というものは、国内の競争ということが主であったわけであります。今度自由化になってきますと、やはりその視野を広げなければいかぬのじゃないか。そうかといって、独禁法を改正をするというのではございませんよ。独禁法の運用その他についても、よほど時代の流れに沿って、そして民主化を確保しながら、そして経済効果をねらうような方向でいくべきではないかと思います。しかし、それには、産業界も、金融界も、技術界の人も、やはり話し合いでうまく民主化の線を生かしながら国際競争力を強めていくということが、これからの進むべき道だと考えております。
  240. 受田新吉

    ○受田委員 非常に緻密な御計画のようですが、そういう新体制を進めていく上において、機構はとうですか。あなたの試案というようなもの、たとえばさっき私が指摘しましたような経済最高会議というようなものでトップ・レベルの会談をやる、それから、そのほかはいろいろと調整をする委員会を設ける、こういうふうな機構を持つことには御異議はないわけですね。
  241. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、経済最高会議というような大それたものではございません。私の諮問機関でございます。これは、各国の首相、大統領なんか、顧問を持っておる。そういうもので、何といいますか、気楽にいろいろな意見を聞き、そして私の意見も申し述べて考える、お互いに聞き合うというものでございます。機構としては、これはやはり各省がございます。各省中心にしていかなければならぬと思います。だから、私に対してのいろいろな答申、意見、あるいは私の意見に対する批判を、これはやはり各省大臣に伝えまして、そうして措置をしていきたいと考えております。
  242. 受田新吉

    ○受田委員 私は、総理の今のような熱意のある御答弁にかかわらず、あなたの指摘されている福祉国家建設というものとは現実の社会は逆に行きつつあることを指摘せざるを得ないのです。それは、一例をあげますけれども、税金の面におきましても、税制改正は当然今度迫られている問題があるわけです。今から指摘します。また、住宅の面におきましても、先ほど小松君の指摘された通り、低い所得の人々が住宅に困っているのである。高い所得の人々、総理やその他ここにおられる自民党御出身の大臣さんたちは、おそらく貧民窟のようなところへ住んでおられないと思うのです。みんなりっぱなお宅に住んでおられる。(「われわれは宿舎にいるよ」と呼ぶ者あり)宿舎もりっぱな宿舎です。そうして所得の高い人はりっぱな住宅に住み、所得の低い人は住宅難にあえいでいる。また、税金の問題で今例をとりますけれども、法人税というものは、これは租税特別措置法などで、あまり景気、不景気の変動を受けないで済むような形で、多少はゆらいでも、その配当を適当に調節する程度で成り立っていくように、そういうふうに法人の側をいたずらに擁護しておる。そうして、わずかに一人か二人か三人くらいの従業員を持つ零細な企業主には、例の事業所得面なども、源泉課税方式にとられているがごとき勤労基礎控除というような措置もとられていない。こういうところに非常に問題があるわけです。総理、明年度予算編成の基本的方針はどこに置かれるか。一つ税制改正の問題でお尋ねいたします。  明年度は、前年度の余裕金と剰余金というものが大体一千二百五十億円程度であるとわれわれは見込んでおります。税の自然増というものが千五百億から二千億円、こういう程度で、本年は余裕金が四千七百億程度あったのと比べると、大へんな財源的苦難の明年度であるように伺うのです。この点について、まず問題の解決のかぎは、法人税をもっと増徴して、今のような景気、不景気の波にあまり支配されないような措置にしないで、少なくとも年間一千億円程度の増収が期待できるように、租税特別措置法の改正を用意される用意があるかないか、御答弁を願います。
  243. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵大臣が答えるべきところでございますが、ちょうど席をはずしておりますので……。  来年度減税はいたしたいのでございまするが、お話の通り、三十八年度はかなり窮屈のようでございます。私宅大蔵大臣から一、二回聞いたことがございますが、昭和三十六年度のように当初予算に比べて三千五百億円の税の自然増収というようなことは、昭和三十七年度でももちろん期待はできません。そうして、経済成長率が前のように九%とか一〇%見込んで一五・六%もいくというふうなことも、なかなか三十八年度にはいかぬと思います。従いまして、かなり苦しいときでございます。しかる場合におきまして、来年度の減税はどうかということになりますと、まだ結論を出しておりませんが、お話の点は、来年度の増税ということでございます。しかし、日本の産業設備に対しまする特別償却制度というものは、これは景気調整の一つの場面になるのであります。ちょうどケネディ大統領が言っておりますように、この償却制度をどうするかということが一つの景気調整になるのであります。日本では、この問題を、日本の産業の合理化、近代化のために、やっぱり租税の経済原則によって昭和二十七、八年ころからかなり多く認めておりました。しかし、最近一、二年間におきましては、だんだん合理化できて参りましたし、また、設備過剰投資という点も手伝ったのでございましょう、大蔵省におきましては、租税特別措置法の範囲を縮小しております。原則として三年が切れたら将来認めないとか、いろいろ施策を講じまして、もうりっぱに基盤の強化された問題については、これをやめていくような方向で行っております。だから、七、八年前のようなことよりもよほど縮小しておりますが、日本の経済の基盤強化とともに、これはだんだん縮小していくべきではないかと私は思います。ただ、問題は、地方の開発の点から申しまして、やはり未開発の地域に対しましての工場誘致その他の点で、この租税政策を使わなければならぬ場合が出てくるのじゃなかろうか。そうしてでもやっぱり産業の地方分散ということをはかりたい、こういう気持を私は持っておりますから、一がいに租税特別措置法をどうこうするということを今ここで議論するのは、なかなかむずかしい点があると思います。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと話が別になりますけれども、あなたは先ほど小松君の質問にも答えて、大体経済は一応安定しておるという御答弁があったわけですけれども、卸売物価というものは大体安定しておる、これはお認めになりますね。消費者物価は相当上がっても、卸売物価は大体安定しておる。そうしますと、ここに例の価格変動のための準備金というものが用意されておるわけですが、これにも一つ検討を加える時期が来ておるのではないでしょうか。
  245. 池田勇人

    池田国務大臣 卸売物価が安定しておりますといっても、それは国際的には必ずしもそう行っておりません。価格変動準備金というものは、会社の経理から申しまして、昔は買い入れ原価並びに時価の一割引、こういうことで行っておりますが、多分、最近は、それではなしに、あと入れ先出しの方法をやり、そうして業種別に差を違えておると思います。しかし、どこの国に参りましてもそうですか、経理というものは、永久とは申しません、長い目で見ていかなければならぬ。これが経営を合理化し、健全化するのでございます。私は、日本が必ずしもいわゆる原材料につきましてその償却を多く認めておるというふうな状況ではないと思います。やはり各国並みに行っておる。経理が平準化する上におきましての価格変動準備金というものは、これは当然会計学の方でも認めておる。その度合いといったら、そう外国と違わないのではないかと思いますが、これは専門的のことになりまするし、私も最近そういうことはあまりやっておりませんので、必要ならば関係当局よりお答えいたさせます。やはり、価格変動準備金は、私の聞いたところでは、もっとふやすべきだという議論を聞いておりますが、これは業者の言うことですから、そのまますぐ受け取れませんが、大体いいところじゃございませんか。何でも検討しなければなりませんが、この問題はそう急に検討しなければならぬほど焦眉の問題ではないと思っております。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 卸売価格が大体安定しておるというときには検討してもいいのではないかと私は思うのです。そういう段階の問題が一つ。  私、時間の関係で、一つぜひ最後に税の問題でお尋ねしておきます。租税特別措置法の問題も検討することにしていただいておるようですし、もう一つ、勤労者と同じ立場に立っておる事業者、いわゆる零細なる企業者に対する税制の特別措置、すなわち、勤労所得でもない、事業所得でもない、いわゆる第三者的な立場の零細企業主の所得に対する特別の措置をとってやる必要がないか、つまり、源泉課税方式に準じた形で勤労控除をこの零細なる、ほんの三人か五人しか従業員のいないところで、従業員以上に長時間働いて、四苦八苦して経営を維持しようという熱意を持った零細企業主というものを擁護する税制政策を、総理考えになる必要はないか。この点は、具体的な問題として、総理と大蔵大臣と両方から御答弁を願います。
  247. 池田勇人

    池田国務大臣 前の問題、卸売物価が一応安定しているから、今の資産の償却なんかにつきましても、一応今の場合でいいのじゃないか。激動しておるときには考えなければならぬ。また、この問題は国際的にも考えなければならぬ。私は、安定しているから、あまり早急に検討しなくてもいい、こういう御返事をしたのであります。非常にフラクチュエートするときには、今の制度がどうかということになります。一番の問題は、証券会社の株か何かでしょう。こういう変動するものも必ずしもあまり多く見ていないようでございます。だから、この問題は、変動するしないということと、安定しておれば安定しておるだけ、やはり検討する必要はない。  それから、今の零細な事業所得者について勤労並みに控除するとかなんとか、いろいろな議論は前から聞いておりますが、御承知通り、その専従者控除等々、以前から見れば、よほどお話のような方向に進んで参っておるのであります。今後どうするかという問題につきましては、私は所管の大蔵大臣からお答えした方がいいと思います。
  248. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えを申し上げます。  税につきましては、原則的な態度としては、できる限りいつでも減税を行なうという姿勢、態度をくずすべきでないと思います。減税を行なっていくという態度、姿勢をくずすべきではないと考えます。  それから、零細な、特に低所得者に対して厚くこれを遇するということも、原則として続けていかなければならぬと考えます。でありますから、池田内閣を通じて戦後一兆円に及ぶ大きな減税を行ないましたが、減税の姿勢、態度というものは、これをあくまでも続けて参りたいという考えでございます。しかし、今年度は新しい税制調査会が誕生いたしたわけでございます。昨年度までは、三カ年間のうちの三年次目として、最終に残った間接税重点の減税を去年行ないまして、今年度は一応新しい角度から新しい立場に立っての税制調査会が誕生し、この間政府としましての基本的な諮問事項を決定して諮問をいたし、この調査会の活動に待っておるわけであります。この中では、今受田さんの言われた通り、いろいろな問題を取り上げております。来年は減税を非常に大幅にすることはむずかしいといっても、少しでも税の不均衡をなくするためにはどうするか、またその分野はどうか、それから直接税と間接税の一体いずれに重点を置くべきか、現在の状態は一体この割合でいいのか、特に特別処置の問題に対しては、新産業都市とか低開発地の開発促進とか、先ほども質問がありました都市改造の問題とか、住宅を建てる場合の不燃建築に対する特例が一体必要なのかどうか、また特に今言われたような零細企業者の特別の控除制度をどうするか、また中小企業者の税を何年分か延べ払いにすることは一体できるのかできないのかというような問題まで、しかも、これらの問題と補助金との得失もあわせて政府側の意見を申し述べ、結論を出していただくようにいたしておるわけであります。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 簡単でいいのです。私の質問にずばり答えていただきたいのですが、今のいわゆる第三者的な事業所得者、今まで恩典に浴しなかった零細企業主、この人々に対する特別の勤労控除制度というものを新しくお設けになってはどうかということ、そのことにお答え願います。
  250. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 勤労控除制というか、もしくは基礎控除というかは必要だと思いますが、いずれにしても、最終的結論は税制調査会の結論を待ってやりたいというふうに考えます。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 しかし、大臣としては、そのことについては、基本的には筋が通るとお考えですか。答申を待ってと言うが、一応あなたの御所見というものはある程度お伺いしておかなければ、税制調査会の答申などと言えば、何事もそういうことになる。
  252. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えを申し上げます。  私が自由民主党の政調会長時代は、今のあなたと同じことを申し上げたのですが、しかし、今度は大蔵大臣として税制調査会に諮問をする場合には、政府の意向を述べないで、全く白紙のまま第三者の意見を伺うことが正しいという姿勢をとっておりますので、今日この段階において私の考えを申し述べることは適当ではないと考えます。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 郷に入れば郷に従うで、名答弁でいらっしゃいます。しかし、これはあなたの気持の中にはひそんでおるものがあるのですね。互いに相通ずるものがありますね。それで一つ次の機会にぜひ要求をしておきます。  そこで、今ここでお尋ねしたい大臣としては、農林大臣、河野建設大臣、お二人に、今からさらに経済構造の中身についてお尋ねをしたいことがあります。  まず農林大臣に、今池田内閣、清新気鋭の人がぶっそろっているこの新内閣で新規構想として伺っておる一つの不況産業対策とあわせて、もう一つ経済の構造改革の考え方の具体的な実践をしたいという御趣旨にのっとってみますと、まず農業の構造改革、特に米麦、主義から酪農畜産等へ移行するための、いわゆる選択的拡大主義に基づいた農林省の過去の態度は、非常な問題があるわけです。いわゆる朝令暮改と言っていいでしょうか、私はここで具体的な例を引きます。農林省はこの三十七年度の予算編成のときに、河野農林大臣が発言をされまして、閣議決定のグリーン・プランというものがあったわけです。それによると、現在の米麦主義から畜産、酪農へ移行するためにまず問題とされたのは、その当時は的確な農業生産の見通しをお立てになったと思うのでございますが、酪農奨励を、まず今の段階では外国の牛乳、乳製品をどんどん買わなければならぬ、そのうちに何とか国内で増産するという御趣旨に基づいて、乳製品の輸入を行なうべきだと声明をされた。ところが、その後、酪農の点につきましては、豚がばかに景気がよくなりまして、わずか数カ月の後に、畜産事業団が現に十五億円の豚肉を豚肉下落の対策として買い受けておる、こういうことになっておる。もう一つは、最も大事なその選択拡大の対策として考えられたもう一つの問題はミルクであります。豚とミルク、乳製品  乳製品が現在、三十七年七月二十六日の農林省統計調査部の発表によりますと、ばかによけい在庫品と生産がありまして、脱脂練乳や脱脂粉乳などはばかげた在庫になっている。数字は読み上げません。また九月二十日には、四大乳業が協定をして価格引き下げを行なわんとしておると伺っております。最近こうした余乳処理対策を打ち出しておる傾向があるのであります。さらに昨年、もち米を転換して、もち米をつくるなと地方の府県庁に通達を出された。本年春、もち米がいよいよ不足したので、今度またもち米をつくれと通達をしている。これには農家も、米麦中心主義からせっかく政府のそうした構造改革に御協力をしょう、選択的拡大主義に御賛成をしようとして努力しているのに、もち米をつくれと出し、もち米をつくるなと出す。豚を飼え、乳牛を飼えといって、もう大へんな増産で行き詰まってくる。こういう朝令暮改式の農業政策というものは、これは自民党の政策としては大へんな問題だと思うのです。河野さん及び現在の重政さんの御所見を伺いたいのであります。
  254. 重政誠之

    重政国務大臣 お答えを申し上げます。  これは朝令暮改主義をやっておるのではないのです。構造改善の問題は、これは基本的な問題でありますが、今一々例をおあげになりました問題につきまして申し上げますと、豚の問題でありますが、もちろん、農業基本法の精神によりまして、作物は選択的拡大をやらなければならぬ、それからまた、真に畜産経営を農業経営に取り入れるということはやらなければならぬ、そういうことで、畜産の方面に農林省が奨励をやっておりますことは事実であります。ただ、だからといって、豚を幾ら飼っても、それで農家の所得がどんどん上がるという筋のものではないことはもちろんであります。この生産の行き過ぎがありますから、そこで畜産振興事業団というようなものをつくって、本年初頭に、その価格の安定をはかるために、豚の購入をいたしたのであります。その成績は、御承知通りに、現在におきましては所期の目的を達成いたしまして、値段も三百円程度になって、今は買い入れを打ち切っておるようなわけであります。そこで手持ちの豚肉は、これを海外に輸出すべく今交渉中でありますが、もしもこれが失敗に終わるということがあれば、学童給食等の方面へもこれを向けよう、こう考えておるのであります。要は、生産をやり過ぎるということにつきましては、十分注意をいたさなければならぬ。これはどこまでも指導によって——大体需給がとうなるかということは、府県庁その他団体等を通じまして、農家を指導していく、こういう方向で現在進んでおるのであります。御承知通りに、はなはだしいのは、子豚を七千円も八千円も出して買うというのでは、これは何としてもそろばんの合うわけがない。こういうことのないようにいたしたいと思います。  それから牛乳の問題でありますが、牛乳も御承知通り、五月、六月、七月のこの天候のかげんによりまして、その消費が減退をします。これは原料乳の方へそれを回して、粉乳を生産をしておるという状態であるわけであります。粉乳も、すでに今お話の通りに、持っておるものは、市場にこれを安く放出することにいたした次第であります。  もち米はつくるなということを何も指令をしたわけではないのでありまして、これは生産者米価を決定いたします際に、もち米の格差を昨年縮めたのであります。格差が大き過ぎるから、これをたしか半減をしたと思いますが、そういうかげんで、従来のようにもち米がうるちよりうんともうかるということにならないために、若干の減少はしておることと思います。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 どうも御答弁があいまいなことですが、私は朝令暮改に対しての答弁を要求しておるわけです。もち米をつくるなといって、またつくれという通牒が現に府県に対して出ておるのです。そういうこと及び、今の豚の場合でも、今滞貨の総量が百億と言っておられますが、非常に多くの滞貨の製品をかかえておる。こういうことでは、農民が協力しようとしても、米麦中心主義から構造改革、選択的拡大の方向で協力しようとしても、この政府の朝令暮改式では、なかなか協力はできないじゃないか。悲惨な農民の生活を思うときに、もっと経済の見通しをはっきりして農林省が御指導にならなければ、農民がついてこれないということを私に指摘しておるわけです。そのことを御答弁願いたいと思うのです。そのことを農林省として十分考えられて、今後このせっかくの総理所信表明の演説の中にあったような農業改善の方向へ、構造改革の方向へ堂々と進められるような、農民の協力態勢をしくような見通しと、これに対する施策をお持ちを願いたいということを要求しておきます。  建設大臣、私は、河野さんは率直な御意見を持っておられ、しかも、断固として実行されるその熱意に、政治家としてあなたを尊敬しております。私はそういう点で御答弁を願いたいことがある。あなたは、今申し上げた点における尊敬する面につきまして、今、小松君が指摘された、当面国民生活の基本である衣食住の中で、住です。住の点において、土地の高騰を防ぐ政策、及び、個人の持ち家からだんだんと国家をつくっていく方向へ、個人の住宅から公的性格を持つ住宅に移行し、住宅の社会化という方向に根本的な対策をお立になる必要はないか。国民総生産の上で、西独からイギリスの辺は、大体国民総生産の住宅投資額が四%から五%となっておるが、日本は二%をちょっとこえるにすぎない。向こうの二・五分の一以下というような住宅対策しか立てられていない。それほどまず住宅というものは人間が生きる基礎になるのですから、この点について、資本主義、自由経済の欠陥を埋めるための社会化をはかる一番大事なお仕事だと思うのですが、総理指摘されておるところのそうした産業新秩序を確立する上におきましても、労働大衆の住宅を安定させるということは最も大きな要素だと思うのです。あなたのお力で一つこの土地の高騰を防止する勇敢な施策をおとり願いたい。そうして、全勤労者に安心して住まえるような雄大な構想をあなたが建設大臣御在任中に打ち立てていただきたい。諸外国のごときは、まず計画的な都市をつくるときは、ちゃんと住宅とか水道とかあるいは公園とかいう環境を整備して、そこに住民があとから行くという形になっております。日本は逆です。そういう社会的環境をりっぱに整備する、水道問題、住宅問題あるいは公園等の対策を、あなたの勇敢なる施策によって、全国民が安心していけるような一つりっぱな施策をここへつくり出していただきたい。土地高騰防止政策など、あなたのツルの一声で何とかなりそうに期待しておる。一つあなたにお尋ねすることは、住宅高騰対策に対する異常な措置をとる段階ではないか。勤労者の住宅を建築することは、国民生活安定の第一要素であるということ、それに基づいた御答弁を願いたいのです。
  256. 河野一郎

    ○河野国務大臣 案を立てますことは、割合に簡単だと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、国策として、今お話しのように、全勤労者はもちろん、農村低所得者の住宅は、国でこれをお世話申し上げるということに方針、国策を振りかえていくかいかぬかという問題だと思うのであります。これは私が答弁する問題じゃないのであって、総理大臣としてどうおきめを願うか。私はお金がちょうだいできれば、案は立つ、こういうことでございまして、金は大蔵大臣、総理大臣からどういう方向でいくかということをおきめ願わぬと、私はやりようはない。従って、私は先ほど申し上げましたように、国の方針としてどういうふうな方向をたどるかということを十分掘り下げて、そうしてその上で閣議の御批判を仰いで方向をきめていきたい、こう考えておるのでございまして、この点は一つ総理からお答えする方が適当かと思います。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 総理からお答えされる前に、一言私は申し上げたいのですが、住宅政策の社会化という点に転換をするときが私はきていると思うのです。もし個人所有の住宅から、そうした国としての住宅対策が要る時期がきていると思うのです。羽田からお帰りになったり行かれたりする途中に、日本の住宅が、いわゆる文明開化といわれている国々の飛行場をお通りになって、総理が見られて、あまりに貧弱なマッチ箱のような家が並んでいるのを見られて、これがあなたの誇られる文明国の住宅かとお嘆きになっていると思うのです。そのように、一応近代的な諸国家では、近代的な住宅対策だけは完成している、こう言っていいと思う。わが国の住宅について、物の生産と資本の蓄積の過程のみに重点を置かれる形よりも、人間をつくること、人間の暮らしを第一にするということと、国民的資金の合理的な運用という点に重点が置かれる計画的住宅政策というものを、総理お立てにならなければ、これは総理やそのほかの特定の方はりっぱな家に住んでおられても、零細なマッチ箱でも日雇い労務者は三分の一しか住宅を持っていないというような、いわゆる困窮住宅世帯になっておることを思うときに、あなたとしては、これは根本的な人間の立場、人づくりを特に主張されるあなたとして、人間尊重の住宅政策を強力にお進め下さることをお願いしたいのです。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、十年前は非常にデフレ政策をやって国民から非難されました。石橋内閣以来非常に日本の経済が上向いてきましたので、積極的な政策をやると、楽観主義で常に国会でインフレだと言われた。しかし結果は、お話のように、羽田に着いてほんとうに感ずることは、道が悪いことと住宅が悪いこと、非常に劣っていること、これは私はやろうとしてずっと四、五年前からやっておりますけれども、さあインフレだとか、景気のいいときには財政規模を縮小すべしという、昔風の、今に合わぬような財政議論や金融論がありまして、なかなか思うにまかしませんでした。しかし、私の気持は、もう住宅、道路はこれをおりにやっていかなければならぬ。私が道路の一兆円予算をこしらえた三十二年予算では、人はどう言ったか。もう四年たたぬうちに二兆三千億でものにならぬようになった。しかし、私はここに申し上げるのは、私はそう思ったのですが、微力でできなかったのであります。とにかくいろいろな制約がございます。しかし、やろうという気持はだれにも劣っておりません。私はそのつもりで、道路あるいは住宅と所信表明に出しておる通りでございます。どうぞ一つ今後ともこういう積極的な国づくりに御協力を願いたいと思います。御協力下されば、私は思い切ってやり得ると思うのであります。大蔵大臣に対しましても、そういうあなたのお気持は、大蔵大臣も聞いておるからわかると思います。できるだけのことをいたします。今までもやらぬのじゃない、十分でなかったということでございます。
  259. 受田新吉

    ○受田委員 私は、勇気を持ってこういう問題の解決に当たってほしい。河野さんのような熱心な構想をお持ちの方を建設大臣に迎えたこの機会に、総理、大蔵大臣、河野大臣というすばらしい三人のトリオによって、この問題の解決をはかってもらいたい。政府が原案を出さなければ御協力のしようがないじゃありませんか。われわれはやはりあなた方の方から試案を出してもらいたいですね。土地高騰抑止政策、全住宅の社会化というような方向へ漸進主義でいくような努力をしてもらいたいんですね。あなた方の方から政策を出していただかなければならぬ。それともわれわれの政策をのんでいただくか、どちらか。その点については一応熱意を十分認めることにして、何らかの施策の出る期待のもとに、質問はそれで一応終わりましょう。  私は、もう一つ、今度の国会に人事院勧告がされている問題があるわけですけれども、この人事院勧告の内容には触れません。ただ私は、こうした勧告が出た際に、国家公務員法の規定に基づいて提案され、人事院が勧告をし、それに基づいて国会政府が法律案をつくる責任があるわけでございますが、五月にさかのぼって支給するということは、技術的にむずかしい点があるのかどうか、大蔵大臣、御答弁願います。
  260. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  現在五月にさかのぼって支給しないとも、またするとも申し上げておらぬのであります。先ほどから何回か申し上げておりますが、非常に複雑な勧告を受けておりますので、これが今集計を行なっておりますのと、もう一つは、その及ぼす影響等を十分勘案をしておりますということを申し上げております。
  261. 受田新吉

    ○受田委員 私はあまり同じことはお尋ねしませんが、この五月にさかのぼって支給するのは技術的にむずかしいかどうか。たとえば十月になって五月にさかのぼって五カ月分を追加して支払うということは、これは大蔵省の財政支出上の技術としてむずかしい点があるかないか。今五月にさかのぼって支給しないとは言わぬということでございますが、五月にさかのぼって支給する場合もあり得るという御答弁と伺ってよろしゅうございますね。
  262. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私は、この問題に対してまだ省議もきめておりませんし、政府の各省との意見調整もやっておりませんが、私がただいま受田さんの御質問に対して端的にお答えをするとすれば、このような勧告を受けてさかのぼって支給することはどうかという建前をとっております。なぜかというと、本年度の予算は、昨年度の十二月もしくは一月の経済見通しを立てまして、前年度の実績に対して経済見通しをかけたものでもって予算を組んだと思うのでございます。予算のその執行途次においてさかのぼってやるというような、まあこれは、法律は不利益なものは遡及してはならない、利益なものは遡及しても一向差しつかえないということでありますが、国会の議決を経て年度の予算がきまっておるのでありますから、でき得るならば、このような勧告は、現在勧告をしたら、予算編成が、ちょうど八月末で各省から予算が出るのでありますから、来年度から実行するというふうに、三カ月とか六カ月とか先にこれを実行するように勧告することが、正しいのではないか、これは今までの答弁とは違うのでございますが、私が率直に考えを申し上げれば、そのように考えております。
  263. 受田新吉

    ○受田委員 大蔵大臣、きわめて重大な答弁と私は思うのです。そうしますと、人事院が勧督する時期が間違っておる。そういうことになりますと、人事院は常に政府予算編成に見合うような時期を選んで勧告をしなければならないということになってくるし、国家公務員法にはそういう時期を政治的に配慮せよということは書いてないのですから、ちゃんとした五%の上がり下がりがあったときに勧告するということになっておるのです。それに基づいて科学的調査で勧告をしてあるのですから、それが五月という時期が悪いということになると、これは人事院の勧告そのものに対する問題が出てくると思うのです。総理大臣、人事院は直接内閣の指揮、監督を受けるのでなくして、監督される役所にしかすぎないのでございます。すなわち、そのために、公務員の身分、給与等を確保するために、指揮権を持たない機関になっておるわけですね。そのいわゆる政府機関としては政府部内において特別の位置を持った人事院の勧告に時期的な配慮をしなくてはならないということは、非常にむずかしい問題だと思うのです。総理としてはどうお考えになりますか。
  264. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはっきりしないのですが、大蔵大臣が答えられたのは、予算の面から技術的に言われたと思うのです。一つの理想論です。制度についての批判じゃないと思います。五%の差ができたらということになっておる。人事院の勧告をいつから施行するかということは、これは政府国会の審議を経てきめることでございます。政府の案は、十六条の二項でしたか、予算上、資金上の問題で、全部をけってもよろしゅうございますし、一部やっても法的にはいいのです。また実施の時期をいつにするかということは、政府考えで提案して、国会承認を得ることでございます。従いまして、ただいま新聞では七・九%と言っておりますが、実際に計算したらどうなるかということを、関係各省で今内容をずいぶん検討しております。内容を検討した上で結論を出すのであります。お金を出すのに、技術的にというその支払いの方法の問題よりも、今度は財政上の問題、予算上、資金上の問題が大きく響いてくるのでございます。そういう意味で政府考えております。ただ今の人事院のあれが、予算がきまってあとから出るということになりますと、やはり前に出るよりはちょっとやりにくいという点がある。その点を大蔵大臣が言ったのではないかと思います。
  265. 受田新吉

    ○受田委員 技術的な問題を私はお尋ねしておるのです。こういう技術的な問題になると、人事院の勧告というのは、政府予算編成に常にマッチするような方法で出さなければならないということになってくる。しかし人事院は、公務員の給与を常に民間給与などと比較して正当な科学的調査でこれを勧告しておるのでございますから、その勧告は、技術的に五月にさかのぼることは困難なような形で取り扱われたのでは、これは大へんな問題だと思うのです。一つやはりこの問題は、技術的な問題でなくして、勧告を尊重する立場から言うならば、技術を何かの方法で変える必要はないか、変えることはできないのかということが問題なんです。そこが私は非常に大事な問題だと思うのです。勧告より半年も後に実施したのでは、公務員にとっては半分の恩典にしか浴せないわけですからね。技術的な問題として適当かどうか。人事院の立場というのは、非常にこの点、無視されるではないかということです。法律的な答弁ですから、その意味でお答え願います。
  266. 池田勇人

    池田国務大臣 人事院は人事院として勧告されるのであります。それをどういうふうに具現するかということは、政府考えでございます。今公労法の十六条を引きましたが、同じような精神で私はいくべきだと考えております。
  267. 受田新吉

    ○受田委員 予算上とか財政上の措置によって政府が適当な手心を加えることは、やはり政府の権限です。また国会も法律を出す権限があるわけです。これは政府だけじゃないのです。自民党が多数党ですから、自民党から法案を出されてもいいわけです。しかし、技術的に五月にさかのぼることは非常にむずかしいのだという大蔵大臣の答弁では、これは五月にさかのぼることは事実上とても問題にならぬですね。大蔵大臣の今の御答弁では、現実は五月にさかのぼらないと……。
  268. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 五月にさかのぼってはならないということは、私は全然答弁いたしておりません。私が一般的に考えまして、現在の国会予算審議の状況から見ますと、遡及して支給するというよりも、ある一定の期間、いわゆる財源等を十分しんしゃくできる時間をおいてやっていただく方が、——法律上は、これはもう自由に勧告され、また政府にも自由権を与えておるのではありますが、一般論から言うと、私の考え方はこうでありますと言っただけであります。
  269. 受田新吉

    ○受田委員 この問題については、政府がまだ結論を出しておらぬようでございますが、技術的に五月にさかのぼることはむずかしいという答弁だけは、これは私納得できないわけです。  もう一つ科学技術庁長官にお尋ねをしたい点があります。  これから技術庁長官の御答弁を願いたいことは、最近ボストークの三号、四号のソ連の科学技術の成功ということについて、長官はこの成功をどういうふうに見ておるか、官房長官の談話等でも、米ソの協力によって、これが平和利用の方向にいってほしいという御意見があったようですが、この成功に対して、もう一つ、現在日本の国は、宇宙開発審議会というのを中曽根長官の当時につくられて、この諮問等に対する答申も出ておると聞いておるのです。この宇宙開発について、日本は一体科学技術振興上の立場でどのような対策を用意して、この答申に基づいていろいろな研究機関——今度のボストークの電波の受信も、郵政省の電波研究所が受信しているようなことでありますけれども科学技術庁としてはそういう機能もない、研究所もないということでは、大へん情けない御存在だと思います。科学技術振興を国策の重点に置いておられるとき、このボストークの成功をどう見られ、これの平和利用に対してどういう国際的な発言をしていかれようとするか、外務大臣にも関連してこの点をお尋ねして、宇宙開発に対する質問は一点だけで終わらしていただきます。
  270. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 受田委員の御質問に対してお答えいたします。  ソ連のボストークの三号、四号の大成功に対しまして、非常に好成績をおさめた、驚異的なことであるというような考え方は、いろいろな機会に発表され、私といたしましても、心から敬意を表する次第でございますし、またこのこと並びに今後引き続いて行なわれるであろうところの事柄が、すべてあくまでも、平和利用に役立つものでありたいという念願も非常に強いわけでございます。ただこの際、日本の宇宙開発がどうであるかということを考えてみますと、これはすでに御承知であると思いますが、日本の宇宙開発というのは、まだほんの緒についたばかりでございます。気象の観測、あるいは科学計測のロケットの研究といったような、まことにその糸口にも当たらないくらいな微々たるものでございますが、幸いにいたしまして、宇宙開発審議会の方からの答申も出ておりますので、この線に沿いたいと思います。目下のところ、この宇宙開発審議会の答申もきわめて抽象的な答申でございますので、今後これらのことに対しては、具体的にどうするかというときに一々意見を求めて、それによって善処いたして参りたいと思っております。
  271. 大平正芳

    大平国務大臣 今、近藤長官の御説明がありました通りわが国の宇宙空間の平和利用は、緒についたばかりでございますが、私どもといたしましては、国連におきまして一九五九年の十二月、すなわち第十四回国連総会におきまして、宇宙空間の平和利用委員会というのが常設委員会として設置され、この設置にあたりまして、わが国の松平国連大使が委員長になって、準備段階をプリサイドいたしましたことは御承知通りでございます。この機関に協力いたしまして、鋭意宇宙空間の平和利用という方向に国際的な協力を進めて参りたいと考えております。
  272. 受田新吉

    ○受田委員 平和利用という関係の御答弁でございますが、今度のボストークの成功ということと平和的利用ということとは、これは国際関係において、日本が一番これに対して平和利用を強調していい問題だと思うわけです。米ソの協力を提唱するのにも、日本のいい立場があるわけですから、これは一つ外務大臣としては、特に考えてもらいたい。  それから、科学技術庁長官としては、この研究所を設けて、もう少し通信衛星、気象衛星、こういう問題なども、少なくともあなたのところで一括して検討がされる、窓口があなたのところになるような形に科学技術庁の機構をお作りになる必要があると思うのです。あなたそういうことには構想がありますか。もうよその各省にそれぞれやってもらって、自分のところは研究機関としてやっていればいいのだという程度ですか。大臣、婦人大臣の権威を保つために、あなた何かの構想を持っておいでにならないといけないと思うのです。
  273. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 何分、予算面に非常に巨額なものを必要とする問題であり、またその分野もきわめて広うございます。今すぐ科学技術庁が一手にまとめてというところにまで飛躍は私はむずかしいであろうと思います。やっぱし現在の段階では各省庁にありますところのそれぞれの研究機関を通じ、またわが科学技術庁といたしましても、みずからの分野において研究をいたしておる面もございますので、なるべく近い将来において窓口を一本化して強力に進めて参りたいとは思いますけれども、今の段階では少し飛躍があり過ぎるのではないかと、そういうふうに考えております。
  274. 受田新吉

    ○受田委員 外交問題について大事なところだけを短時間にお尋ねいたします。これは総理大臣に御意見を伺いたいのです。私が懸念していることは、国連中心外交をお進めになる日本政府の立場として、アメリカに片寄り過ぎる外交をやっては、やはり国連の場において日本の置かれている地位というものがゆがめられる危険がある。できるだけアメリカの好意は好意としながらも、AAグループとの関係ども十分考慮されて、国連の内部における日本の位置を確立する必要があると思うわけです。その国連中心主義の外交をお進めになるために、来たる九月の十八日からニューヨークで開かれる国連総会において、中国代表権の問題は大卒新外相の路線としてどういう形でお進めになろうとするか。具体的にお尋ねいたします。  十六回のあの総会での中国代表権に関するわが国のとった態度は、米国との共同提案国になった。この問題は、三分の二はとれないという前提でやったものであるが、提案国にならないということと、また投票には棄権するのが国連主義に立つわが外交の基本方針であるべきだと私は思うわけでございまするが、今度の総会に対する日本中国代表権に対する心がまえはどういう姿をお持ちになっておるか、外務大臣それから総理にお尋ねいたします。
  275. 大平正芳

    大平国務大臣 今度の国連総会の議題でございますが、ただいままでのところ加盟国から中国代表権に関する議題は出ておりません。今後出るか出ないか私ども推測いたしかねるわけでございますが、ただいままでのところわが国といたしましては、去年重要事項であるという認定のもとに国連に共同提案いたしました当時の態度をただいま変えるつもりはございません。
  276. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、ことしもやはり中国代表権に対しては米国と行動をともにするということですか。
  277. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題になっていないわけでございます。議題になりましたら諸般の状況を勘案いたしまして日本政府の態度をきめねばならぬのでございますけれども、ただいまはまだ仮定の段階でございます。
  278. 受田新吉

    ○受田委員 その際には提案国にならない場合も、アメリカと行動をともにしない場合も、棄権する場合も考えられることを含んだことになりますね。
  279. 大平正芳

    大平国務大臣 常に公正な世界世論の形成に私どもも鋭意努力いたしたいと思います。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 最近におけるAAグループの動向、新しく国連に加盟した新興国家の動向というものは、中国代表権に対してはどのように動いているのですか。
  281. 高橋覚

    ○高橋説明員 お答えいたします。ただいま詳しい資料を持ち合わせございませんので、若干間違いがあるかと存じますが、昨年の十六総会における中国代表問題における表決におきましては、AAグループのうち重要問題指定に賛成した国として、アジアの方から数えますと、わが国、フィリピン、タイ、ラオス、イラン、トルコ。アフリカのブラザビル・グループと称せられる国に属する十数国、大体二十カ国近くが重要問題指定方式賛成していたのではないかと存じます。それから棄権した国がパキスタンほか若干ありまして、残りは重要問題指定方式反対しております。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 最近における新興諸国家国連に加盟したものがあるわけです。そういう国々の動きというものも十分つかんでおられなければならない。国連の全体の動向をいつもつかんでおらなければならない。日本アメリカの運命共同体で国連の中におるわけではない。大平さん、その点あなたがしつかりしておらないと、かつて岸総理大臣のときに、藤山さんがレバノン事件等で現地の松平さんと意見が違って、演説が全く別々にされて大へん困った事態もあるわけで、外交路線は一本でなければならぬわけですから、はっきりしたものをあなたはお持ちになってあちらに行かれなければならない。少なくとも私は、国連中心主義の外交を進めていただくために、日本アメリカに加担し過ぎるような、運命共同体のような印象を与えることは、ぜひ避けていただきたい。これは総理も、この際国連外交を特に国連中心外交として御推進になることを私はあなたに要望をしておきます。これは一つ日本の置かれている立場を考えて、特にAAグループの側にも立つ考え方というものもあなたはおとりになっていただきたい。さっそく九月の第三火曜日に総会が開かれるわけですが、この十七回総会に対するわが国の態度として、私が今要望しておることは、総理いかがでしょうか。
  283. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、自由国家群の一員であり、またAA国の一員でございます。そういう立場で国連中心主義の外交方式を私はやっております。日本アメリカの追従外交をやっておるということは、みずから自分の立場を弱体化する言葉である思います。決してそういう気持は持っておりません。たまたま自由国家群の一員であるということから結論が似る場合はありましょうけれども、何も追従しておるわけではありません。それからAAグループに対する問題は私は非常な関心を持ちまして、最近も国連大使の岡崎君を特にアフリカの方に行かすよう、また国連代表に松井君を加えましたのも、アフリカ関係はフランス語を使う国が多うございますので、そういう関係で中近東はもちろんでございますが、アフリカの新興国に対しましても、大使の人柄、経歴等から考えまして、日本との関係をよほど強化するように努力しておるのであります。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 私の要望をすなおに聞いていただく。つまり私は別にいずれにも加担しているわけではない。私自身もその意味においては共産主義には対決しておる立場の人間ですから、その意味であなたに申し上げていることは、アメリカに片寄り過ぎる外交であってはならないということ、国連中心の外交ということを特に頭に置いて行動されることを希望しておくわけです。  この間の本会議でわが党の佐々木君から質問された問題を掘り下げてお尋ねしたいことがあります。すなわち、国連の憲章の中における信託統治制度、これは日本アメリカの平和条約三条に、米国が南西諸島と沖繩を将来国連に申請をしたときにはこれに無条件に従う、これが平和条約三条の規定であります。しかしその暫定措置として米国が沖繩に対する施政権を持つということが掲げてあるわけです。従って問題は、この二つは不可分の関係にある立場のものであって、決して分離して考える立場のものでない。信託統治制度というものを削除しておいたならば、当然平和条約三条の規定に基づくところの米国の沖繩に対する施政権そのものも消えると解釈するかどうか、お答え願いたいです。
  285. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約三条は、アメリカ国連に信託統治を提案した場合においては日本はそれに異議を唱えない、それまではアメリカが施政権を持つ、施政権というものはあらゆる権利を持つ、こういうことになっておるのであります。アメリカ国連に信託統治の提案をしないのでございますから、アメリカが施政権を持つということ、その施政権について日本はどうこう言うのではございません。信託統治を申し出るときに日本反対しないということであるのであります。私は、三条の解釈といたしまして、アメリカが施政権を持つということは平和条約からきておる。しかしわれわれはこれではいかない、いつまで持つのかという問題がありますので、施政権というものには日本の主権は沖繩にあるのだということを講和会議のときに吉田首席全権から言って、イギリスの同意を得たわけでございます。従いまして信託統治がないから、あるからという国連の規定の問題でなしに、私はアメリカが平和条約第三条によって施政権を持つと解釈しております。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 総理、あなたにお答えを願っていることは、信託統治という制度はもう国連憲章から削除してもらいたい。事実問題として今三つの、百二十万にすぎないところが残っておるだけであって、これもこの間の西イリアンの処理のように、国連が中へ入った処理方式は非常に私は名案だと思うのです。ああいう方式で信託統治が今後整理されることを国連に提案してもらいたい。そうして国連の場で、この問題を第百九条でなくて、第百八条の個々の問題として処理してもらいたい。そういうときに処理されたとしたときに、これは法理論ですが、沖繩の問題はその根っこの方の信託統治制度そのものがなくなれば、それまでは米国が沖繩に対する施政権を持つというこの行き方がなくなるのではないかという法理論で一時暫定措置の方は信託統治制度がなくなっても残るかどうか。
  287. 池田勇人

    池田国務大臣 信託統治はシリアともう一カ国が独立いたしましたので、今は太平洋諸島とニューギニアともう一カ所、しかしこれを西イリアンのような問題の解決をするといっても、太平洋諸島をどういたしますか。私は今早急に日本が信託統治をやめろということを言って、それが世界の世論の協力を得るかどうか疑問だと思います。ことに三条にひっかけて日本がやるということは——これは法理論でございます。今後十分研究してみますが、三条にひっかけて日本アメリカの施政権を直ちに排除するために信託統治をやめろというようなことを言ったら、国際世論はどう申しますか。  それからまた三条の解釈、もし国連憲章の信託統治制度がなくなった場合に、当然アメリカの施政権がなくなるかということにつきましては、よほど研究しなければならぬと思います。この点は今後研究してみたいと思いますが、私は信託統治をやめろということが三条とつながるということになりますると、よほど問題だと思います。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 沖繩の問題をひっかけるという意味ではないのです。つまり信託統治制度は、当然もう削除すべき段階だ。わずか三つの小さな島の問題が残っておるだけだ。これは国連に訴えても、国連の内部ではきっと賛成すると私は思うのです。そういう勇敢な正義の観念に燃えたわれわれの主張を国連の内部でやってもらいたい。これは独立国になるまでの、独立国になるような実力を持った国でないとすれば、どこかと一緒になって国をつくればいいのですから、大平さん、信託統治制度を一つ削除する努力をしてもらいたい。それを今私要求しておるわけです。  そこでおしまいに総理に伺いたいのは、私、法制局長官の意見としてでなくて、法制局長官の意見を総理の意見としてお答え願いたいのですが、平和条約三条にひっかけるひっかけぬの問題ではなしに、法理論から見て、平和条約三条の信託統治制度というものがなくなれば、その前段の暫定措置としての施政権というものもなくなるのではないか、その方だけ生きるのかどうか。
  289. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点はいろいろ検討の余地もある問題だと思いますけれども、しかし前段の、信託統治制度自身が国連憲章からかりになくなった場合、当然にあとの施政権がなくなるということにすぐ結びつくようにはちょっと思えないのでございます。この条約の解釈問題になりますけれども日本としてそういうことを言うのが有利か不利かという問題はもちろんありますけれども、前段の、信託統治制度というものが国連憲章からなくなったからすぐに施政権の根拠がなくなるということは、簡単には言えないのではないかという気がしております。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいに、沖繩の問題に関連するのですが、今度沖繩に調査団も三回にわたって行った。そうして日米の間で新しい会議が持たれ、日本からの援助を今後することになるのですけれども日本政府としては、沖繩がだんだんと日本へ返るために、この援助をする機会に沖繩の行政機構というものも日本式に漸次移行するような努力をする。日本にやがて返るものとして、向こうの行政機構もアメリカの民政府主義でなくして、日本の行政組織に漸次移行するような形の努力をこの日米交渉においてなされる方針であるかどうか。
  291. 池田勇人

    池田国務大臣 今のお話は、今年の三月、ケネディ大統領自身が言っておるじゃありませんか。将来日本に復帰する場合に備えて、こう言っておるのであります。私は昨年参りましたときに、そういう気持を強く訴えて、ケネディ大統領がああいうことを言ってくれたと非常に徳としておるのであります。しかる場合において、日本が、返るのだから、もう早く返してくれとは言っておりますが、裏に回ってどうこうということではなしに、私はアメリカのその言葉に信頼して、そうしてそれが早く実現するように努力して、その具体的な問題でどうするこうするということは、私は今言わなくてもおわかりと思いますが、やはりアメリカの出先官憲の民政府毛、自治権の拡大とか経済の復興とか言っておるのであります。われわれは教育問題にいたしましても、沖繩が日本の本土である、いつかは返ってくる、早い機会に返してもらおうというので、いろいろな方面で努力いたしておるのであります。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 もう三十秒ありますから、これで質問を終わります。  私の質問は、沖繩に対して経済協力をする場合に、援助する場合に、漸次沖繩の行政の機構が日本式に移行するような努力をやはりこの機会に積み上げていく必要がある。これはやはり日本側として強く主張してもらいたい。  そうしてもう一つは、あなたにお尋ねしたいのだが、この間、大田主席が来られて、近く総選挙がある。その際に、自民党を大いにあなたは激励をしておられたようでございまするが、外交上の努力援助の中身が漸次日本に移ってくるための努力というものをあなたとしてはお約束をされながら、一方では自民党を大いに激励するという形でこの選挙に臨んでおられるということになると、やはり日本政府としては問題がある。新聞でも、あなたが非常に激励されたことが出ておるし、大田首席の談話も出ておりますから、やはり向こうに対して、日本政府自民党が政治的意図を持って沖繩の住民に一つの圧力をかけることは好ましくないと思いまするから、ぜひ一つこの点はお考えをいただいて、沖繩をすくすくと漸次日本に移行するような方式を、日米協力交渉で十分進めていただく、あなたの党の印象ということよりも、日本政府の代表者として努力をしていただきたい。これをあなたにお尋ねをして結論を得たい。  それからいま一つ、時間がきましたが、あしたからの日韓交渉について、あなたは裁断をけさお下しになるだろうという新聞世論でございましたが、まだ裁断が出ておらぬようです。私この交渉にあたって、韓国に在韓日本代表部を置くということは、これはやはり交渉を平等にするのに大事だと思うから、一つ韓国側に日本の代表部を置いて、双方を同じ立場で交渉をさせる努力をぜひ主張させる、そういう方針をお持ち願いたい。これをお尋ねして質問を終わらしていただきます。
  293. 池田勇人

    池田国務大臣 大田首席と会いましたときは、私は総理としては、沖繩の経済復興あるいは日本予算についてその心組みをお話しました。ただ沖繩の自由民主党は、われわれ自由民主党の大会におきましても、向こうの自由民主党から代表者を送りまして、祝辞、激励をしてくれます関係上、自由民主党の総裁として、部屋は総理大臣の部屋でございましたが、これを激励した。これは同志として当然ではないかと思います。何もそれによりまして、私が総理大臣としてどうこう言ったわけではございません。そういう関係がありましたので言ったのであります。  日韓会談の問題につきましては、私はまだ外務大臣に指示をいたしておりません。国会が済みましてから、外務大臣を呼んで自分の意見を言う考えでおります。そうして、今のソウルにおける日本の代表部の設置問題は、私は従来からこれを言っているが、なかなか聞き届けません。いろいろ理由がありましょう。私は、これは公式に内地の新聞記者会見でも言っていることでございます。常にこれは主張しているのでございます。しかし、向こうもいろいろ事情があるのでございましょう。これに応諾の返事をしてきません。しかし、これをしてこないから日韓交渉をやめるかということになると、これはそうはいかぬと思います。ベターではありますけれども、向こうがどうしても国内の事情で聞かぬというのであれば、代表部は置かなくても、やはり交渉は東京あるいはソウルでいたしたいと考えております。
  294. 塚原俊郎

    塚原委員長 次会は明二十一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会