○
北山愛郎君 私は、
日本社会党を代表して、当面の重要問題である
貿易自由化について
政府の所信と
対策をたださんとするものであります。
まずお尋ねしたいことは、この十月九〇%
自由化繰り上げの原因となった昨年の
IMF対
日年次協議において、
政府が八条
国移行の勧告を延期してもらうために、
自由化計画を繰り上げて、おそくとも本年の九月中に九〇%の
自由化を公約したいということであります。世間では、これをもって動かしがたい
至上命令のように言っておるのでありますが、私は、このような約束はきわめて不合理であると思うのであります。
国際収支の
状態が八条
国移行できるまで改善されて心ない国が、将来の
自由化を機械的に約束したとするならば、それはまことにはなはだしい矛盾といわなければならぬのであります。(
拍手)従って、私は、当時の
政府閣僚が
IMFに表明をしました九月中に九〇%
自由化繰り上げのいわゆる公約なるものは、あくまで
政府が自主的な
努力目標として示されたものでありまして、そのような
至上命令ではない、このように考えるものでございますが、これは当然のことでありますけれども、誤解があると思いますので、これらの点につきまして
池田総理の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
八月二十四日の
日本経済新聞は、大蔵省がこの秋の
IMF総会あるいは対
日年次協議を控えまして予想される八条
国移行勧告につきましては、無条件で再延期するように要請する方針を固めたと伝えられておるのであります。私は、この
大蔵省内の意見が正しいと思うのでございますが、
大蔵大臣がおられませんから、
総理からかわりましてその事情を御説明願いたいと思うのであります。
私は、
日本の
国際収支の現況、また
対外資金状態は、昨年の秋よりもむしろ悪化しておると思うのであります。従って、八条
国移行はもちろんのこと、これ以上の
自由化を進めることはこの際適当でないと信ずるものであります。なるほど
貿易収支はようやく改善され、七月の
経常収支は二千二百万
ドルの黒字、また
外貨準備は十六億三千五百万
ドルと、昨年九月の線に戻っておりますけれども、それだけではほんとうの改善ではございません。
この理由の第一は、十六億
ドルの
外貨準備は実質の
余剰金ではないということであります。いつ逃げ出すかわからないような不安定な
短期債務に基づいている点であります。
昭和三十五年以来の
わが国の
国際収支は、
経常収支の大幅な
赤字を
短期外資の増加によって補てんし続けて参ったのであります。三十五年度の初めに十三億六千百万
ドルの
外貨準備は、本年六月までに十一億六千六百万
ドルの
貿易の
赤字によって食いつぶされております。これを二億三千六百万
ドルの
長期資本及び十二億七千八百万
ドルの
短期資本の流入によってカバーしておるのが現在までの
状態であります。言うまでもなく、
外貨準備というものは、
貿易為替取引の季節的な変動とかあるいは食糧の凶作とか、あるいは不況などの万一の事態に備えるものでありまして、その際に
経済の破壊や
為替危機を起こさないように万一の場合に必要な物資、サービスを
外国から購入し得る、そういう
準備金がすなわち
外貨準備であります。いざというときに海外に逃げ出すかもしれないような
外貨では、見せかけにはなるかもしれませんけれども、役に立つものではないのであります。
アメリカが今日百六十一億
ドルという巨大な
金準備を持っておりますけれども、しかもなお
ドルが不安である、
ドルの信用が落ちているということは、一方で二百億
ドル以上の
短期債務を
アメリカがしょっておりまして、そのために
ドル価の維持が心配されるからであります。この点は、
IMFの
事務当局が出しておるいわゆる
適正保有外貨準備の基準というものがございますが、その中にも、
短期資本の
均衡的移動によって
準備高の低下が見込み得る程度を考慮して適正な
保有外貨はきめらるべきである、こういう一項目があるのであります。
私は、これらの点から、今日
外貨準備十六億三千五百万
ドルは表面だけの改善でありまして、その質の面からするならば、むしろ昨年よりも悪化しておる。従って、その質の面を改善し、今後の
経常収支の黒字でもってこれを埋め合わせない限りにおきましては、昨年の
状態に戻ったということはできないと思うのであります。一体、
政府は、適正な
保有外貨を幾らと考えておるのか、お尋ねをしたいのであります。
昭和三十四年当時、
経済企画庁が試算を発表して、
昭和三十六年度
輸出入を三十五億
ドルと見まして、その際においては二十二億六千万
ドルが適正な
外貨準備でなければならぬ、こういうような計算をいたしておるのであります。その内訳は省略いたしますけれども、今日
輸出入が五十億
ドルというような程度のもとにおいて、一体適正な
日本の
保有外貨は幾らなければならないか、また、
保有外貨準備はどういう要件を備えなければならぬかということにつきまして、
経済企画庁長官の
お答えを願いたいのであります。
大蔵大臣はおりませんから、
総理から
お答えを願いたいことは、
保有外貨準備の内容とともに、長期及び
短期の
対外債務の残高が幾らあるかということであります。特に
短期債務の現在高を
項目別に明らかにされたいのであります。あわせて本年度末までの
国際収支の見通しと同時に、
IMFに対する
クレジット借り入れの必要があると考えておるのかどうか。これらの点を明確にしていただきたいと思うのであります。
わが国の
保有外貨のもう一つの
問題点は、金の
保有が非常に少ないということでありまして、
外貨準備のわずか一七%、二億八千七百万
ドルにすぎないのであります。
世界各国の金の
保有状況を見ると、
アメリカが百六十一億
ドル、ソ連は六十五億ないし九十億
ドルあるといわれております。西ドイツは三十七億
ドル、
イギリスが三十五億
ドル、スイスが二十四億
ドル、
フランスや
イタリアはそれぞれ二十二億
ドルございます。いずれも
外貨準備の五割以上を金で持っておるのであります。ポルトガルとかベネズエラ、スペイン、そういう小さな国ですらも四億
ドルの金を持っておるのであります。これに比べまして、わずか二億八千七百万
ドルの
日本は、まことにこれは少ないといわざるを得ないのであります。これは現在、
アメリカの金の
流出現象を中心としまして
ドルの不安、
金価格の高騰ということが問題になっておるのであります。
アメリカは一九五七年以来ずっと
国際収支が
赤字続きで、五七年には二百二十九億
ドルありました金が、最近では百六十一億
ドルを割ろうかとするところまで落ち込んできておるのであります。その結果として、
ドルの
切り下げの不安、
金価格引き上げのうわさが
世界の最大の関心の一つとなっておるのであります。
ケネディ大統領は、この状況に対処するために、一方では
国際収支をよくするために、バイ・
アメリカン政策を初め、いろいろな努力を続けておりますが、同時に先般は
通信衛星まで利用して、
アメリカは
ドル切り下げはいたしませんと
テレビ放送を全
世界にいたしましたが、しかもなお不安は逆に高まるばかりであります。
フランスや
イタリアは盛んに金を買い集めて、
フランスの金の
準備は
外貨保有準備の七五%にも達するといわれておるのであります。
池田総理によると
日本は
大国であります。気前よく賠償も払い、金も貸してやる、しかし、
金準備を見るというと、とても
大国とは言えません。その他大ぜいの中に
日本が入っておるというような、そのような
大国はどこにもございません。もちろん、今は昔と違って
金本位制ではないのでありますけれども、しばらくは金という神様の
身がわりに
アメリカの
ドルでもって間に合っておったのであります。ところが最近になってこの
身がわりの
ドルの信用ががた落ちになって、そしてその値打ちが
切り下げられるという重大な
状態になって参りまして、また再び神様である金それ自体があらためて見直されるという現状であります。
私は、この金の問題につきまして、二年前、三十五年の秋の
臨時国会で
池田総理にこのことを質問したのでございますが、例によって木で鼻をくくったような答弁しかしなかったのであります。あなたの
国際情勢の見方が間違っておる。新聞をよくごらんなさいというような失礼な答弁をあなたはされましたが、しかし、
世界の動向を誤まって見ておったのは私でなくて、池田さん、あなたの方であったのであります。(
拍手)
アメリカは、それ以来、引き続き景気の停滞と
国際収支の
赤字、金の流出、そうして
ドル不安に悩み続けておるのであります。これこそが、
日本に対する
貿易自由化の圧力となり、バイ・
アメリカン政策となり、対
日輸入制限の根因をなしておるではありませんか。もしも、
池田総理が二年前、
アメリカ経済を正しく見、
ドル不安の問題を正しく理解しておったならば、三十五年の末に、あのような
所得倍増計画を出して、それにまたさらに
自由化を並行させて、
民間投資をあおり、そうして今日、にっちもさっちもいかないような
行き詰まりに追い込むような、ばかげた
政策はやれなかった、また、やれなかったと私は思うのであります。(
拍手)今になって気がついてみると、
外国では将来を見通して、着々として
金準備をふやしておるのに、
日本は二億八千万
ドルの金しか持っておらない。一体、なぜ金をふやさなかったのでございますか、説明を願いたいのであります。もちろん、今となっては、金を買い入れろといっても無理でございましょう。
アメリカの
市中銀行からまで一時借りをして、
経常収支の
赤字を埋めなければならぬというような、そういう
世界の
大国にもあるまじき前代未聞のことをやっておいて、今さら
アメリカに金を売って下さいとは言えた義理ではないと思うのであります。(
拍手)
池田総理の言われるように、
経済は長い目で見なければなりません。しかし、それは答弁のときの申しわけに使われる言葉ではなくて、その衝に当たる者が、正しい長期の展望に立たなければならぬということを言うのであります。
アメリカの
ドル不安と金の問題について、あらためて
総理の見解を承りたいと思うのであります。(
拍手)
私は、以上申し上げたように、
わが国の
保有外貨の
状態について、それが不安定な
短期の
借金にささえられておる、また
金準備が不足である、質の点では、昨年よりも一そうの悪化となっておる、また、今日の
国際収支も、七月の
経常収支は黒字になりましたけれども、八月の上、中旬はまた
赤字といわれております。下期の
アメリカの景気の下降も心配されます。
貿易収支の前途は決して楽観を許さないのであります。私は、この段階では、
IMF八条
国移行の問題はもちろん、大幅の
輸入自由化の実施も非常に危険であると判断するものであり、
政府は、これらの事態を率直に明らかにして、
IMFに対し、八条
国移行の延期を要請し、また、既定の
貿易自由化についても再検討することの了解を求むべきであると思うが、
総理の所信を伺いたいのであります。(
拍手)
八月一日から、
政府は、
大蔵事務当局の反対を押し切って、いわゆる
株式元本の
外貨送金制限を大幅に緩和いたしました。
投資元本の
回収送金を容易にして、青い目の
株式投資を誘い入れ、一そうの
外国資本を導入して、
行き詰まりの
経済を再び成長の軌道に乗せようというねらいでありましょう。株屋にはだいぶ評判がいいようでありますが、これこそ危険きわまる
ギャンブル政策といわなければならぬのであります。(
拍手)思惑的な
投機資金が自由に出たり入ったりする、こういうことは、
経済の混乱を招き、
外国資本の株式、
経営参加は、規模の小さい
わが国の産業を、米国その他の
巨大資本の支配にまかせるあぶない綱渡りの政治であります。
総理は、今度は
国づくり、
人づくりの上に、
金づくり政策を練っておると伝えられておりますが、それはどうやらこの青い目の
外貨導入のことのようであります。
資本と
貿易の
自由化を進め、
IMF八条国に移行させられると、今度はおそるべき
日米通商航海条約が全面的に発動し、いわゆる内
国民待遇で
アメリカ資本が自由に
日本の国内で活動を始めるでありましょう。それこそ、
アメリカに政治、軍事、
経済を押えられて、文字通り
日本が植民地化する道であります。
国づくりではなくて、国を売ることにもなるのであります。(
拍手)
政府は、すでに
日本銀行から一兆五千億円の
インフレマネーを
独占資本に貸し出し、物価をつり上げて大衆を苦しめました。今度は青い目の
外国資本で
わが国の独立を脅かそうとする
池田内閣を断じて許すことはできないのであります。国民には
借金で物を買わせ、企業には
借金で経営を拡大させ、国家は外資に依存してその独立を失わせようとするような
池田内閣の一億総
借金の
自由化強行政策は、健全な
人づくり、
国づくりの
政策とは縁の遠いものであります。
池田総理は、
日米通商航海条約を改定して、
わが国経済の
自主自立をはかる意思があるかどうか、明確にしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
貿易自由化計画に伴う
国内対策について質問いたします。
昨年九月二十六日、
政府の
貿易・
為替自由化計画の中で、抽象的ながらも一連の
国内政策を決定したのであります。
石油の
自由化については、
石油、
石炭を通ずる
安定価格を可能にする
エネルギー総合対策を立てろ、
鉱産物については、
内外資源の
効率利用をはかるために
地下資源対策の確立、また
農林漁業及び
中小企業の
近代化及び
雇用対策の強化などの方針をきめたのであります。これらの
対策は、
貿易自由化につき
国内産業体制を整備する
政府の約束でありましたが、
自由化は着々進んでおりますけれども、これらの
対策はいまだほとんど確立されておらぬのであります。
石油業法は成立しましたが、
国産原油、アラビア
石油の引き取り処理の問題は未解決であります。
石炭は
石炭調査団の
答申待ちであり、
エネルギー総合対策は
エネルギー懇談会の
審議待ちであります。また、
金属鉱業は
鉱業審議会の
審議待ちにまかせられて、いまだに
基本方針の確立しないままに
自由化ばかり強行されようとしていることは、
政府のはなはだしい怠慢といわざるを得ません。(
拍手)
石炭問題はいよいよ深刻な様相を呈し、すみやかに
電力を含む全
エネルギーの
総合対策の中で、
石炭の
需給と雇用の安定をしなければならない段階であることは、何人にも明らかになっておるにもかかわらず、いまだに
炭価引き下げによって
石油に対抗しようというような姑息な
合理化計画に固執しておるのであります。
ヨーロッパでは順調な
経済発展を続けておる
フランス、
イタリア、
イギリスなどは、
石炭、
電力、
石油、
天然ガスについて、強い国の
規制管理のもとにおいて安定した
エネルギー対策の基盤の上に
産業体制がしかれておるのであります。
イギリスは
石炭、
電力、ガスは国営であり・
イタリアは強力な
国策公社エニーを中心として
天然ガス、
石油精製あるいは
原子力研究までの分野に活発に
政府が活躍しておるのであります。
フランスの
石炭、
電力、ガス及び
原子力はいずれも国有であります。
天然ガスは専売であります。
先進資本主義国であるこれらの国々が
貿易・
為替自由化を進める背景には、
エネルギー政策につきましては強力な
国家統制を行なっておるということを自民党の諸君も
十分参考とすべきであると思うのであります。(
拍手)貴重な
国内資源である
石炭産業を荒廃させ、
国産石油を
国際石油資本の圧迫に放置し、
電力会社の相次ぐ
料金引き上げにただ追随するのみで、漫然と
石油、
石炭の
自由化を許すことは、国民の利益のため、断じてこれを認めることはできないのであります。(
拍手)
政府は、この際、
石油の
自由化を延期し、
総合エネルギー基本政策を急ぎ、
国内石炭、
石油産業を安定せし
むる方針を確立、実行すべきであると思うけれども、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
金属鉱業については、すでに前
国会において具体的な内容を盛った
自由化に直面する
金属鉱業危機打開に関する決議が本院を通過しておるのであります。その中で、
政府は、
自由化実施までに抜本的な
金属鉱業対策を樹立し、
金属鉱業の発展と雇用の安定をはかるべきこと、また
価格安定対策、
鉱業合理化対策、
中小鉱山振興対策など詳細な内容が盛られておるのでありますが、いまだ何一つ具体化されておらないということは、はなはだしく本院の院議を軽視するものであります。(
拍手)
非鉄金属の
自由化は、十月から明年三月の間に行なうと
政府は言明しておりますが、もしもそうだとするならば、
鉱業対策について
通常国会に
提出したのでは、全く手おくれなのであります。
社会党は、すでに前
国会以来、
金属鉱産物価格安定臨時措置法案及び
金属鉱物資源開発助成法案という二つの法案を
国会に
提出をいたしております。
鉱山所在の
地方住民には、
社会党の成立を望む声が次第に高まっておるのであります。(
拍手)野党の
社会党が
具体案を出して、
政府・与党が何の案も持たないというのでは、どちらが
政府であるか、どちらが野党であるか、わからないではありませんか。(
拍手)この際、
政府は、
自由化の実施前に、
社会党の案に負けないようなりっぱな案を
提出できるかどうか、
総理から明確に
お答えいただきたいのであります。(
拍手)
政府の
自由化促進計画には、
自由化に備える
中小企業及び
農林漁業の
近代化がうたわれておるのでありますが、しかし、
所得倍増政策の失敗のために、
中小企業は非常な苦境にあり、
金詰まりから受注の減少が深刻化し、とても
近代化どころではございません。
東京商工興信所の調べによると、
引き締め政策以来一年間の企業の倒産は、
負債額一千万円以上だけで千六百十二件に達し、前年の六三%増であります。
負債金額で千七百三十二億円、前年の実に三・四倍に達するのであります。これはみな
池田内閣の所得倍増の成果であります。近ごろでは、
中小企業の五人、十人は倒産してもやむを得ないなどというまずいことは言われないようになりましたけれども、口で言わなくてもやることだけは以前と何ら変わりがないのであります。(
拍手)今回予定されている
自由化品目のうちには、くだもの、野菜加工品、化粧品、ビスケットなど
中小企業に影響のある品目が少なくないのでありますが、それぞれの影響を受ける業種、業態ごとにいかなる
近代化施策がとられておるか、通産大臣から御説明願いたいのであります。
また、バナナ、レモンその他くだもの及び加工品など農畜産物関係の
自由化計画は、農林省において検討の結果どうなっておるのかを農林大臣から具体的に御説明願いたいと思うのであります。これら品目の関係業者の中には、カン詰やジュース、菓子類の原料である砂糖が高くて、
外国とはとても競争ができない。砂糖の方を
自由化して安くしてもらう方が先決問題であるとの意見がありますが、これに対して農林大臣はどのような見解と
対策を持っておるか、明らかにされたいのであります。(
拍手)
自由化対策として最後に伺いたいことは、国産品の愛用であります。今まで
自由化された食料品、家庭用品などの舶来品のはんらんは、まことに目に余るものがあるのであります。特に昨年下期の消費財の輸入は急増しておる。これは
経済白書も指摘しておる通りでありますが、問題になったインスタント・コーヒー、ほしブドウ、冷凍エビなどの昨年度の輸入額はどれくらいに上っておるか、通産大臣から数字をあげて御説明を願いたいと存じます。十月
自由化予定のリストの中には、置時計、万年筆、安全かみそりの刃、化粧品、毛製品、食料品、マカロニ、ビスケットなど、家庭消費財が含まれて、すでに
外国の商社の広告、宣伝、販売体制が進められておるのでありますが、
政府は、国産品愛用につき、具体的にどのような
対策を用意し、実行しておるかを明らかにされたいのであります。
以上、私は、
わが国の
国際収支の実態と
自由化に対する個別
対策の整備されてない現状において
自由化計画を実行することは、金融引き締め、景気調整に苦しむ多くの企業、労働者、農漁民に対して二重の打撃を加えることであり、
経済の自立と国民生活の安定にとってきわめて有害であるという見地から、あらためて
総理に対して、
自由化促進計画を再検討し、全面的に延期することを求めるものでありますが、
総理の見解を伺いたいと思います。(
拍手)
最後に、
世界の大勢と称せられる
貿易自由化の本質について一言触れたいのであります。
第一に、
貿易・
為替自由化というのは、根本の自由
貿易、通商制限の撤廃の理念に基づくことは否定しませんけれども、一九五八年ごろから急速にこれが推進されたというのは、その一つは、西ヨーロッパ諸国の復興が完了して、巨大な
独占資本が発展し、EECのようなブロック
経済圏を足場としてその市場を広めながら国際競争力を強化し、外部に対しては段階的に市場拡大競争のため
自由化を進めつつあるということであります。他の一つは、同じ五八年ごろから
アメリカが
国際収支の
赤字、金の流出、
経済成長の停滞のため、輸出
貿易をふやすために積極的な意欲を見せて、ここに新しい
世界資本主義間における競争が激化し始めた。いわば強い先進国の後進国に対する市場を拡大しろという要求がすなわち
自由化であるということの本質であります。従いまして、
わが国の大企業、大
資本の何倍、何十倍の巨大企業が国内に進出してくることを意味するのであります。財界はどろぼうを見てなわをなうごとく、箱根の山に登って新産業秩序の形成、独禁法改正の論議をされたようでありますけれども、
総理は、このいわゆる新産業秩序の形成、あるいは独禁法の改正にはいかなる見解を持っておるかを承りたいのであります。
以上申し上げまして結論を急ぎますけれども、私は、
日本は単に自由
世界に面を向けたのでは、
日本の今後の平和な繁栄はあり得ないと信じます。
世界の大勢、これは
自由化だけではございません。
自由化の及ぶ範囲は、いわゆる
先進資本主義国の範囲であって、
世界の三分の一にしか満たないのであります。その他の共産圏、あるいはアジア・アフリカのいわゆる後進地域には
自由化は及んでいかないのであります。共産圏は、国営
貿易、計画
貿易のもとでは
自由化はあり得ない。後進国は、自分の産業を保護するためには
自由化はできないのであります。従って、
日本のような自由諸国とも接触をしておる、共産圏ともあるいはアジア、アフリカとも接触しておる、この三つの質の違う領域のちょうどかなめの地位にある
日本の
貿易政策は、断じて
自由化政策だけであってはならない。この三つの地域にそれぞれ即応するような多面的な
貿易政策を確立して、そして
日本の
経済を自立させ、平和な中立な繁栄の中で初めて
日本が今後発展し得る。このことを最後に申し上げまして、私の
緊急質問を終わるものでございます。(
拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕