○猪俣
委員 私は、韓国の日本に来ております人たちの処遇につきまして
お尋ねしたいと思います。
隣国の韓国は不幸にして政情が安定しておりませんで、政変みたようなものが次々と起こって参ります。そのたびに韓国から脱出して来て、日本に来ておる人が相当数ございます。こういう者たちが日本から韓国へ強制的に帰らされるということになりますと、ここに大きな人道問題が起こって参りますので、それにつきまして法務大臣並びに入管局長並びに
条約局長お見えになっておるようでありますから、二、三所見を承りたいと思うわけであります。
質問の要旨をよく御理解いただくために多少の前文句を申しますが、
御存じのように李承晩政権というものがありまして、これが相当長く続いた。ところが、李承晩のやり方に対して相当反対の人たちが韓国にふえて参りまして、一九五八年に大統領の
選挙がありましたときに、この李承晩に対立いたしまして、チョ・ボンアムという人が候補に立ちまして、この人は非常に人気のある人で、公平に
選挙をやったならば、この人が大統領に当選する可能性があったわけであります。この人が進歩党なるものを組織いたしまして、韓国に一大進歩的政権樹立のために運動したわけであります。そうすると、この人は李承晩政権によって逮捕せられ、一九五九年、大統領の
選挙があった翌年には遂に死刑に処せられてしまった。当時この進歩党の結成などに奔走しておった進歩的な分子、おもに学生なんかが多いのですが、日本に相当脱出して参りました。なお、続いて一九六〇年の大統領
選挙には、
御存じのように李承晩が驚くべき不正
選挙をやりまして、これが遂に彼が崩壊しなければならない運命を作ったものでありますが、この際にも相当の脱出者があったわけであります。なおまた遠くさかのぼるなれば、朝鮮戦争のときに、やはりいろいろの事情から日本に脱出してきた学生なんかが相当あるわけであります。ある人間などは、日本に留学するについては向こうで試験がある、その日本に来る試験には合格したにかかわらず、アメリカのGHQの
許可がなければ日本に来れない。朝鮮戦争で
許可などという手続をやっている余裕がない、そこで好学のあまり日本に脱出してきた。日本では、その事情を認めて滞留
許可をして勉学をされておったのでありますが、
御存じのように昨年は朴政権なるものができた。これはクーデターによって樹立されたファッショ政権であることは天下公知の事実であります。そこで、これらのいろいろの政変下において日本に脱出してきた人たち、ことに学生等で、この朴政権下に帰りますと、人身の自由その他生命の危険さえ脅かされる者が相当出てきたのでありまして、現にずっと李承晩政権あるいは張勉内閣当時から国家の補助によって日本に留学していた学生が、朴政権に反対運動をやったということで相当人数奨学金の停止処分を受けている。その中にはすでに強制退去の命令を受けている者もあるわけであります。こういう人間
ども、ことに大多数は学生でありますが、学生はどこの国でも非常に進歩的な分子が多いわけでありまして、朴政権に反対し、そして南北統一をはかり、民族の独立をはかるということで、日本に来ております学生はその中心勢力になって運動をやっておるわけであります。そこで朴政権は奨学金を停止するとかいろいろの手を使っている。彼らがもし帰国することがあったら、処罰することは明らかでありまして、南北統一運動なんかやっている韓国におります学生は相当やられておるわけであります。昨年の九月二十五日の
新聞の報道するところによりましても、民族統一学生連盟という連中が、これは慶煕大学あるいは京城大学、成均大学、建国大学、外国語大学というような各大学生ですが、これは無期懲役から五年、七年というような長期の懲役を受けている学生が多数あるわけであります。これは何でもない、統一運動をやったというかどであります。
御存じのように朴政権になりましてから、昨年六月六日には非常措置法という
法律ができた。この第三条を見ますと、国民の基本権は革命
事業に抵触しない範囲で保護される、こう書いてあります。だから革命
事業に抵触したと認められれば基本権は全然ない。こういうふうな
法律が昨年の六月六日にはできております。なお六月二十一日には特殊
犯罪処罰特別法ができておる。この六条を見ますと、政党、
社会団体の重要な職にいた者で、国家保安法第一条に
規定せられた反国家団体の情を知りながら、その団体あるいはその活動に同調その他の
方法でこれを助けた者は、死刑、無期または十年以上の懲役に処する。こういう特殊
犯罪処罰特別法というものができておりまして、そしてこの政党、
社会団体の重要な職にいた者が、国家保安法の第一条、要するにこれは反共的なものであって、朝鮮の統一を唱えたりあるいは北朝鮮のことをほめたりするような場合には、国家保安法第一条違反だということに全部認められるのでありまして、そうすると、そういう団体に入ったならば、もう死刑から無期または十年以上の懲役というふうに
規定せられている。日本の治安維持法なんかよりもっと厳重な
法律ができております。なおまた六月二十二日には反共法という
法律ができておる。また九月九日には集会臨時措置法というものができておりますが、これもその三条を見ますと、
政府の
許可しない集会を開催する者は五年以下の懲役に処し、その情を知りながら会合した者は一年以下の懲役に処する、こういうような
法律ができておりまして、現在どんどんやられておることば
御存じの
通りであります。こういうような権利の保障につきまして危険な
法律がたくさん今韓国にはできております。そこで日本におきますこの学生を中心とした南北の統一運動、民族の独立運動、こういうようなことをやった者はみなこれにひっかかるわけであります。
そこで私が
政府に
お尋ねしたいことは、これは相当人道主義の上に立って彼らの生命、身体の安全をはかってやらねばならぬのではなかろうか。日本は国際連合に対して非常に忠実な国とせられておりますが、これは国際連合の精神にもかなうのじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。そこできょうは、あるいは宿題みたいなことになるかも存じませんが、国際連合におきましては、いわゆる難民という名称を使いまして、要するに難民救済ということを第二次世界大戦以後国際連合の
一つの仕事として非常にやってきているわけでありますが、現在一九五〇年十二月十四日に国連総会で、国連難民救済高等文民弁務官に関する規約ができておって、一九五一年一月一日にその事務局が設けられて活動している。これはその後期間がだんだん延ばされまして、一九六三年の十二月三十一日までこれが継続、存続しておることになっておる。この高等文民弁務官の委託権限に関する
法律の難民というものの定義が出ておるわけでありますが、人種、宗教、国籍、政治的思想などの
理由により迫害を受けると信ぜられる十分な根拠があるため、現在本国を離れており、帰国してその国の保護を受けることが不可能か、または帰国を望まぬ人々を、これを難民といって、これに対しては特別なる救済をするということになっておるわけでございます。そうしてこれを中心といたしまして、難民の地位に関する国際条約というものができておりまして、現在三十四カ国がその国際条約を批准しておるのでありますが、日本は、この国際条約を批准しておらないようであります。これにつきまして、
条約局長がおいでになりますが、これはほとんどおもな文明国全部入っております。最初二十六カ国で始まったのが、現在は三十四カ国になっておる。しかるに日本はこの中に入っておらぬようであります。難民救済に関する国際条約、これは一九五一年七月から始まっておるのですが、これに日本が参加しないその
理由がありましたら御説明いただきたい。これは
条約局長から御説明いただきたい。