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清水説明員 昨年
濱野文教委員長を中心に、数名の
委員の
先生方が平泉を中心にして御
視察、その後日光の薬師堂の焼けましたことに伴う善後処置について御
視察、そのあといわゆる大谷の麿崖仏について
視察を願ったわけでございます。その際まことに適切な御
意見、御要望がございまして、その線に沿いまして私
ども文化財保護委員会といたしましても努力して参ったのでございます。要点だけ申し上げたいと思います。
御
承知のごとく、ごらんになりまして中尊寺の金色堂が非常に腐りかけておるということは、行ってみましてびっくりいたしたような次第でございます。極端な例を申しますと、ものさしを柱にまっすぐ入れると、ずっと中に入ってしまう。しかしあれは全部ウルシで螺鈿をどういうふうにするか、解体修理にしても、できるかできないかというようなことを
検討いたしたわけでございますが、その後
専門技官も参り数次にわたる
調査をいたしました。その結果、今年度から向こう四カ年計画で、あの金色堂を根本的な解体修理をいたすことになりまして、本年はあの上に仮小屋をつくり、そして現在重要
文化財に
指定せられております覆屋を取りこわしたいということにいたしたいと思っておる次第でございます。全体の経費といたしましては、まだ細部にわたって
検討する必要がありますが、大体八千万円くらいに達するのではなかろうかと思っておる次第でございます。しかしあれは最もむずかしい、最も大切な
昭和の大修理の
一つでございますが、金色堂の
専門修理
委員会を置きまして、藤島亥治郎東大名誉教授を中心にいたしまして、これからの解体方法、それからその後どういうふうに修復してウルシを塗って、螺鈿の問題がありますので、これは単に建造物の問題だけではなく、美術工芸関係も非常に密接な関係がありますので、最も慎重に今後進めて参りたいと思っておる次第でございます。本年から始まりまして四カ年計画でこれをやって参りたいと思っておる次第でございます。
それから大谷の磨崖仏の問題でございますが、これは御
承知のごとくまことにりっぱなものでございまして、西に臼杵の磨崖仏あり、東に大谷の磨崖仏ありと言われるくらいりっぱな大きな作のもので、また内容のきわめて優秀なものでございましたが、御
視察の結果、塑土が落ちており、また石がぼろぼろにこわれかけておる。これをどういうふうに修理して参るかということにつきまして、これもやはり東大名誉教授の辻村博士以下数名をもちまして修理
専門委員会をつくりまして、われわれも入りましてこれを修理して参りたいと思っております。これは三十七年度から三カ年計画でもってやりたいと思っておる次第でございます。総経費といたしましては一千万円近くかかるのではないかと思っておる次第でございます。
なお、ここでつけ加えておきたいと思いますことは、行って御指摘のありましたあの辺は、いわゆる大谷石の産地でありまして、地下何百メートルの大谷石を掘っておりますので、それが大谷の磨崖仏に影響があるかどうかということが非常に心配だったのでありますが、地元の熱意と大谷石採掘の会社の理解によりまして、大谷の磨崖仏に影響のないように、そこに近いところは掘らないということに相なったのであります。
次は、日光の薬師堂の問題でありますが、
濱野委員長以下御
視察を願いまして、この貴重な国民的財産を焼けっぱなしでどうするのか、所有者がいまだにきまらないということはまことに遺憾である、東照宮と輪王寺側がよく話し合って、そうして所有権の所在をはっきりして一日も早く復旧することが日光にとっての最大の急務ではないかということをこんこんとさとし願い、どうしても二者で話し合いがつかなかったならば、知事が乗り出してあっせんして一日も早くこれの保存修理に着手すべきであるという適切な御
意見がございました。その後紆余曲折がございましたが、
結論的に申しますと、
委員長の御意図を体しまして、栃木県知事が中に入りまして、当初いろいろ問題がありましたが、輪王寺側も東照宮側もすべて知事に一任いたし、とにかく私
どもは所有権については、一時的に解決はするが、そう急に解決はできないから、栃木県としてこれを管理していただきたいという申し出が両者からございました。それに基づきまして知事は
文化財保護委員会に来られまして、どうしてもこれは一日もゆるがせにできない、両者の依頼もあるので栃木県が管理団体となって、そうしてこれを保存していきたい、管理団体になると保存管理する
責任があるので、従って修理も何とかいたさなければならないと思うがという
お話がございました。その点を
検討中でありまして、輪王寺も東照宮も知事に一任し、知事も
責任を持って保存して参りたい、管理団体になるという御
意見がございましたので、その線に沿うて現在事務は進行中でございます。この調子で参りますと、今月の下旬か来月の上旬には焼けました薬師堂について、これは金色堂とも申しますが、その管理団体が栃木県に相なるのではないかと思っております。そうして一日も早くこれを保存し、修理に着手しなければならないと思っておる次第であります。
この日光と大谷の磨崖仏、それから中尊寺の御
視察についての私
どもがとりました今日までの要点だけを、十分ではありませんが御礼かたがた御報告申し上げたような次第でございます。