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有馬(輝)
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております
農林省設置法の一部を
改正する
法律案、並びにただいま御提案になりました修正案に対しまして、絶対
反対の態度を表明いたしたいと存じます。
現在
農林行政にとりまして緊要の課題は、いかにして
農政の
方向を定め、
農業を引き合う企業として他
産業並みに引き上げるか、いかにして他
産業との格差を是正するかということにあることは、論を待たないところであります。
政府原案の
農業基本法が通過して一年、
農家は、この基本法がいかに空疎にして無意味なものであったかを身をもって体験しつつあるところであります。当時、
日本社会党は、みずからの
農業基本法を準備して、
政府原案と並立して
審議をわずらわしたところであります。そして基本法の中で、
農業の発展の障害を取り除くのは国の政治の重大な責任であることを明らかにいたしました。
農業と他
産業との格差を是正するためには、予算、
金融についてその確保を明文化し、
土地利用と
生産基盤の改良整備について、その
方向を具体的にし、
生産費
所得補償方式による農産物価格の安定をはかるとともに、流通
機構の整備をはかるなど、総合的な施策を明示したのであります。わが党案は、あわせて
肥料、農薬などの国営ないしは国家管理による需給の安定を企画し、共同化、機械化による近代的な今後の
農政の
方向を明らかにするなど、抜本的にして、真に
農業が企業として成り立ち得るための
条件を整えることにその重点を置いたのであります。この
日本社会党の
農業基本法こそが、
農家の真に希望するものであり、この
方向でなければ、窮地に立たされた
日本の
農業の活路が見出されないことは、きわめて当時明らかでありました。そのゆえにこそ、参議院において、自由民主党みずからが、重要農産物の
価格政策あるいは
農政審議会の
委員の選考など、七項目にわたり附帯決議をつけざるを得なかった経緯によってみても明らかなところであります。現在
政府がしなければならないことは、この通過した
政府原案の
農業基本法を克服して、真の
農政を確立することであって、
内容のない単なる
機構いじりであってはならないはずであります。
重政農林大臣が
農林省にこられて、
重政農政の確立を企図しておられるその重点は、そこに置かれなければならないはずだと思うのであります。
第二の
反対理由は、
政府が法体系の秩序に関する態度において、混乱をきわめておることについてであります。
昨年、臨時行政調査会が設けられ、行政の運営並びに
機構等の整備を三年間にわたり鋭意
検討することになっております。その答申を待って、ただ
農林省に限らず、名君にわたる行政
機構のあり方を固めてからその整備にかかることこそが、本調査会を設けた立法の精神に沿うものであり、法秩序を重んずるゆえんかと思うのであります。にもかかわらず、その答申も待たずして本
法律案を提案することは、法の精神を無視するものであり、ひいては、今次
改正が場当たり的なもので、また近い
機会に
改正を余儀なくされるであろうことは、明らかに予見されるところであります。このことは、昨昭和三十六年度に
農林省設置法の一部
改正が行なわれた事実に徴しても明らかであります。すなわち、昨年度、
農業に関する試験研究の管
理事務を農林水産
技術会議に一元化し、農林水
産業に関する基本的な
計画調査を行なうための
大臣官房の機能強化を目的とする
改正が行なわれたばかりであります。それからまだ一年もたっていないのであります。このような、わずか一年でさえその
展望を持ち得ないような場当たり的というか、イージーというか、めまぐるしいばかりの法
改正案提出の行
政府の態度に対しまして、これを是正することが私
ども立法府の責任でもあると思うのであります。
第三の
反対理由は、
農政の重要なにない手である県や市町村その他
地方自治団体、各種団体の意向、全然反映されていないということであります。
農家の意向はもとより、
農政の推進にあたって重要な役割を果たしているこれら団体の意向を無視した改革が、実情にそぐわない、浮いたものになるであろうことは、明らかに予見されておるところであります。
第四の
反対理由は、今回の
改正案自体がきわめて中途半端で、ただでさえ複雑な
農林行政をさらに複雑なものにするおそれが十分にあることであります。本
改正案が
農林行政を総合調整することにその眼目を置くとすれば、その眼目にそぐわないこと、はなはだしいものがあると言わなければなりません。私たちは、もとより今回の
改正の中で、
地方農林局の設置等については絶対に容認できないところでありますけれ
ども、国有林野
事業を担当する営林局署、食糧管理行政を担当する食糧事務所、水産庁の各出先機関をそのまにして、どこに総合調整の実があがると言えるでありましょうか。このことは、補助金行政についても端的に言えるのであります。今回、補助金に関する所掌事務を
地方農林局に大部分移譲することになっておりますが、
農林省所管の補助金が一時は二百数十項目にも上ったことがあります。せっかくの補助金が、その複雑さのゆえに、その額が少ないがゆえに、その流れる系統が多岐にわたっているがゆえに、補助金本来の持つ役割をいつか喪失している事実さえあるのであります。たとえば種苗対策費が一戸当たり五円というがごときは、浮世離れをしているもはなはだしいと言わなければなりません。今
農林省がしなければならないことは、この補助金を
地方農林局に机プランで移譲することではなくて、補助金本来の姿を再
検討して、真に
農家のための補助金にすることでなければなりません。現在の
農林行政は、
農林省の各出先機関及び各
地方自治体によって推進されていることは言うまでもないところでありますが、ここに新たに
地方農林局を設置するということは、本
委員会の
審議を通じても明らかになりましたように、本省、局の事務分掌の重複、あるいはあいまいさ、そういったものによって屋上屋を重ねるだけで、二重行政、三重行政の弊をたちどころに惹起することは、これまた明らかであります。
第五の
反対理由は、現在の
機構を十分生かした上でのやむにをまれぬ発展を約束する
改正ではないところにあります。たとえば、過去はもちろん、今後の
農政に重要な役割を果たす試験研究機関の機能を十分に生かしていなかったことは、幾多の事例でも明らかなところであります。たとえば三十五年一月、四国
農業試験場の職員は、国家公務員法八十六条に基づきまして、旅費の完全支給について人事院に対して行政
措置の要求をいたしまして、六月、当時の入江総裁がその判定を下しております。旅費が所要額の三分の一あるいは五分の一くらいで、極端に不足している事実を認め、その不足を脱法行為にも近い内部規定で補っていることは、早急に是正すべきであり、
農林省当局もこれを認めたのであります。この旅費、超勤の不足、設備の不備、人員の不足、図書費の不足、こういったことは、一場所にとどまらないで全般的なものであることは、まぎれもない事実であります。試験研究機関で、図書費が、専門の図書はおろか、月刊誌の購入にも事欠くような実情で、あるいは研究の結果を発表する
会議に
出席する旅費も出ない実情の中で
農政発展の契機をつかもうなどとは、まるで夢物語であります。現在の
機構の機能を十分発揮させる、機能を発揮し得ない障害があれば、それを除去するというのが先決でなければならないはずであります。
第六の
反対理由は、今回の
地方農林局の設置場所が、地域
農業の発展ということを考慮に入れた本来の要求から発したものではないことであります。もとより、
日本の
農業がその持っておる地域、気象
条件から、地域の特性に応じた
農政の
方向が打ち立てられなければならないことは、古くよりいわれておることであります。ところが、今回の
地方農林局の設置が、たまたま
農地事務局がそれぞれの地域に七局あったからという、きわめて微弱な理由に基づくもので地域
農業のあり方を
検討した上での適正な場所の選定では決してなかったのであります。
最後に、これが
反対理由の第七でありますけれ
ども、
機構改革が無意味な、実情にそぐわない人員整理を約束するおそれが十二分にあるということであります。私たちは、過去幾たびか
機構改革が無意味な人員整理を余儀なくさせ、
農家の期待を裏切り、
農政の後退を来たした事実を見てきているのであります。そのときは、人員整理など全然
考えていないとしながら、時日がたつにつれて、剰員整理という名目で、ただでさえ不十分な定員をさらに削減するがごときことは、絶対に許せないのであります。
以上、
反対理由の一部を申し上げましたけれ
ども、真に
農家のための
農政の確立にはほど遠い、むしろ
農政を後退させる今回の
農林省設置法の一部
改正案に、絶対
反対の態度を表明いたしまして、特に
日本の
農業の発展のために、
与党の各位も、真に
農家の
立場に立って将来の
日本の
農政を
展望して、本
法律案の再
検討の
機会を持たれんことを強く要望いたしまして、私の
反対討論を終わります。(拍手)