○山口
政府委員 先ほど、長官から
説明のごさいました
行政不服審査法案並びに
行政不服審査法の
施行に伴う
関係法律の
整理等に関する
法律案につきまして、
説明の便宜上、前者を
審査法、後者を整理法と略称さしていただきまして、補足
説明をさせていただきます。
審査法は全文五十八カ条からなる
法律でございますが、これが三章に分けられまして、第一章総則におきまして、
法律の
趣旨を明らかにするとともに、定義、
不服申し立ての種類、
不服申し立ての根拠等を
規定いたし、第二章の
手続におきまして、
不服申し立ての
手続を
規定いたし、第三章補則におきまして、
教示に関する
規定を掲げておるのであります。
まず、第一章の総則でございますが、問題点を四つに分けまして、第一の問題といたしまして、
審査法の目的について御
説明を申し上げます。
審査法によりますと、「簡易迅速な
手続による
国民の
権利利益の
救済を図るとともに、
行政の適正な
運営を確保すること」を目的といたしておるのでありまして、
現行の
訴願法が、
国民の権利、利益の
救済と
行政の適正な
運営の確保の二面を持っておりますものの、どちらかと申しますと、
行政の適正な
運営の確保に重点が置かれておるのに対しまして、
審査法におきましては、
国民の権利、利益の
救済の面に力を注いでおるのであります。この考え方は、本
法律案の基礎となりました
訴願制度調査会の答申におきましても一貫して流れておる思想でございますが、これを反映いたしまして、本法におきましては特に
国民の権利、利益の
救済に力を注いでおるのであります。
次に、第二の問題といたしまして、
審査法におきましては、
不服申し立て事項につきまして、いわゆる
一般概括主義を採用いたしておる点でございます。この
趣旨は、第一条第一項におきまして「
行政庁の違法又は不当な
処分その他公権力の行使に当たる
行為に関し、
国民に対して広く
行政庁に対する不服申立てのみちを開く」旨を宣言いたしておることから明らかでございまして、第四条並びに第七条におきましてこれを具体的に
規定しておるのであります。すなわち、まず第四条におきましては、
処分につきましては
原則として
審査請求または
異議の申し立てができますし、さらに第二条の定めるところによりまして、公権力の行使に当たる事実上の
行為で、継続的
性質を有するものは、この
法律におきまして
処分という言葉の中に含まれておるのでありまして、これらに対しましても
原則として
審査請求または
異議の申し立てをすることができることに相なっておるのであります。さらに第七条におきまして、不作為、すなわち、「
行政庁が
法令に基づく
申請に対し、
相当の
期間内になんらかの
処分その他公権力の行使に当たる
行為をすべきにかかわらず、これをしないこと」これに対しましても、
原則として
異議申し立てあるいは
審査請求ができることに相なっておるのであります。
しかしながら、この
一般概括主義に対しましても、例外がないわけではないのでございまして、
審査法は第四条第一項におきまして、除外
事項といたしまして、
不服申し立てをすることができない
事項を十一号にわたって掲げておるのであります。この十一号の項目を
性質別に分けますと、大体三つのグループに分けられると存ずるのであります。
その第一のグループに入りますものは、慎重な
手続によって行なわれた
処分でございまして、再考の余地がなく、かりに
不服申し立てをいたしましても、その結果は初めと同じ結論になると予想されるものでございまして、
国会、
地方議会もしくは裁判所が行なう
処分、または
国会、議会もしくは裁判所の同意もしくは
承認を経て行なわれる
処分がこれに属するのであります。
なお、そのほか、第二のグループに入るものといたしましては、他の
手続によって処理するのが適当である
処分でございまして、
当事者訴訟として争うべきものとされておる
処分、あるいは
刑事事件に関する
法令、国税犯則事件に関する
法令等に基づく
処分がこれに属するものと考えられるのであります。
第三のグループに入りますものは、その性格から考えまして、
審査法による
手続によらしめるのが適当でない
処分でございまして、たとえば学校、
刑務所等における
処分、人の学識、技能に関する試験、検定の結果についての
処分、または外国人の出入国もしくは帰化に関する
処分等がこれに属するのであります。第四条第一項に号ないし第四号、これが一のグループ、第五号ないし第七号が第二のグループ、第八号以下が三のグループ、かように種類分けができるからと考えられるのであります。
さらに、この
審査法に除外いたしました
事項のほか、それぞれの
法律におきまして除外
事項が定められておるのでございますが、各種の
行政委員会の
処分によって行なわれる、たとえば土地調整
委員会設置法第二章の
規定による土地調整
委員会の
処分のごときは、第一のグループに入るものと考えられます。緊急事態に対処するための
処分といたしまして、たとえば植物防疫法第九条第一項もしくは第二項または第十四条の
規定による植物防疫官の命令あるいは物の
検査、鑑定あるいは薬事法第四十三条第一項に基づく検定、これらのごときは、先ほど申しました第三のグループに入るものと考えられるのであります。
なお、再
審査請求につきましては、すべての
処分について再
審査を認める必要がございませんので、第八条第一項第一号に明らかにされております
通り、列記主義の
原則をとっておるのであります。しかし、
地方自治法第百五十三条に基づく権限委任がございますと、
審査庁の階層にアンバランスが生じますので、このような場合につきましては概括的に再
審査請求を認めて、そのアンバランスの解消をはかっておるのであります。第八条第一項第二号の
規定がそれでございます。
次に、第一章における第一二の問題といたしまして、
名称統一の問題がございます。第三条におきまして、
審査法による
不服申し立ての
名称を 一審といたしましては
審査請求及び
異議申し立て、二審といたしましては再
審査請求に
統一をいたしたのでございます。従来
訴願、
異議の申し立て、不服の申し立て、再
調査の請求あるいは
審査の請求等の種々の
名称がつげられておりましたために、また、その
手続におきましても少しずつの相違がありましたために、
国民にとりましては非常に不便が多かったのであります。このように
名称を三つに
統一いたしますとともに、その
手続の
統一をはかることにいたしたのであります。この場合、一審の
審査請求の
異議申し立ての区別といたしましては、
処分庁あるいは不作為庁に対して行なうものを
異議申し立てと名づけ、その他の
行政庁に対して行なうものを
審査請求と名づけておるのであります。
次に、第一章総則
関係の第四の問題といたしましては、
審査請求と
異議申し立てとの相互
関係についてであります。少し
内容が複雑になりますので、
処分の場合と不作為の場合に分けまして御
説明を申し上げますが、まず
処分につきましては、第五条第一項第一号並びに第六条第一項第一号及び第二号におきましては、
処分庁に
上級庁がある場合は
原則として
審査請求、また
処分庁に
上級庁がない場合には
原則として
異議申し立てができることになっておるのであります。なお、
処分庁が主任の大臣であります場合、あるいは
処分庁が外局もしくは外局に置かれる庁の長であります場合は、
上級庁がないものとみなしまして、
異議申し立てができることになっております。これの例外といたしまして、
異議申し立てにつきましては条例を除いておりますが、
法令に
審査請求または
異議申し立てができる旨の定めがあります場合には、それぞれ
審査請求または
異議申し立てができることに相なっておるのであります。この場合におきまして、
上級庁のない場合に第三者機関に対しまして
審査請求を認めましたときは、第六条本文ただし書きの
規定によりまして、
原則として
異議申し立てをすることができなくなります。
上級庁がある場合に
異議申し立てを認めました場合は、これも例外的な場合でありますが、第二十条の
規定によりまして
異議申し立ての前置が行なわれるのであります。
次に、不作為につきましては、第七条の
規定によりまして、
異議申し立てまたは不作為庁の直近
上級庁に対する
審査請求のいずれかができることになっておるのでございますが、
処分の場合と不作為の場合との取り扱いが異っておりますのは、不作為についての
不服申し立てが、いわば
事務の促進をはかるための手段として認められておるものでございますので、不作為庁に対しまして、なぜ
処分をしてくれないのか、その
理由を明らかにしてもらいたいという申し立てを中心と、いたしまして、それにもかかわらずなお不作為を継続いたします場合には、不作為庁の
上級庁に対して監督権の発動を求めて、それによる何らかの
行為をさせるという道を開く
趣旨であるという考えに立っておるのであります。
次に、第二章の
手続の
規定におきましては、第一節通則におきまして、
不服申し立ての方式、総代、代理人による
不服申し立て、資格証明等、
不服申し立ての
手続に入る前段階における共通
事項を
規定いたし、第二節におきまして
処分についての
審査請求に関し、第三節におきまして
処分についての
異議申し立てに関し、第四節におきまして不作為についての
不服申し立てに関し、最後に第五節におきまして再
審査請求に関し、それぞれ詳細な
規定を設けておるのであります。
手続規定でございますので、
内容の
説明を省略さしていただきます。
次に、第三章の補則でございます。ここにおきまして
教示に関する
規定を設けておるのであります。この
制度は、
行政不服
審査制度そのものの
内容としてではなく、
行政不服
審査制度と密接な
関係を持ち、
行政不服
審査制度が十分にその真価を発掘することができるような手段として認められておるものでございまして、その
関係上、補則に
規定をされておるのであります。
教示に関する
規定は、第五十七条、第五十八条の最後の二カ条に
規定されておりますほか、第十八条及び第十九条におきまして誤った
教示の
救済、また第二十条第一号におきまして
異議申し立ての前置の例外、第四十一条におきまして
教示の方法、第四十六条におきまして誤った
教示の
救済等の
規定が詳細に
規定されておるのであります。
最後に、附則について
一言申し上げます。この
審査法は、
昭和三十七年十月一日から
施行し、これの
施行と同時に、
現行の
訴願法が廃止をされる。また同時に、整理
関係の条文の
改正が行なわれることに相なっておるのであります。
なお、
審査法の
施行前に効力を生じました
処分につきましても、附則第三項及び整理法附則第二項によりまして
審査法が適用されますが、整理法による
改正前の
規定によってすでに
不服申し立てができないこととなっております場合には、
審査法は適用されないことになっておるのであります。
なお、附則第四項及び整理法附則第三項によりまして、すでに提起されている
訴願その他の
不服申し立てにつきましては、そのまま従前の例によるものとし、
審査法
施行後にされた裁決等についても従前の例によって
不服申し立てをすることができますが、
審査法に基づいては
不服申し立てができないことになっている等の経過
規定を附則においてきめておるのであります。
以上、はなはだお粗末でございましたが、五十八条の
内容の大体につきまして補足
説明をさせていただきました。