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1962-08-17 第41回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月十七日(金曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君       安藤  覺君    天野 公義君       伊藤 五郎君    大久保武雄君       岡田 修一君    金子 一平君       川村善八郎君    久保田藤麿君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       高見 三郎君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    坊  秀男君       淡谷 悠藏君    井手 以誠君       石村 英雄君    岡  良一君       久保田鶴松君    佐藤觀次郎君       芳賀  貢君    武藤 山治君       春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (理財局長)  稻益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         日本開発銀行総         裁       太田利三郎君         日本輸出入銀行         総裁      古沢 潤一君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 八月十七日  委員田原春次君、広瀬秀吉君及び横山利秋君辞  任につき、その補欠として井手以誠君淡谷悠  藏君及び石村英雄君が議長指名委員選任  された。 同日  委員淡谷悠藏君、井手以誠君及び石村英雄君辞  任につき「その補欠として広瀬秀吉君、田原春  次君及び横山利秋君が議長指名委員選任  された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。平岡忠次郎君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 ここに上程になりました産業投資特別会計法改正案については、内容審議に先立ちまして論議すべきことが多々にあるので、私は逐次政府所信をただしていきたいと存じます。  本改正は、ガリオア・エロア等戦後の米国の対日援助をこの会計債務として支払うという点、さらに一般会計より新たに二百三十億円をこの会計投資財源の一部として繰り入れるという、二点であります。本改正案は、さきに四十国会におきまして衆議院通過したのでありますから、審議時間に制約あってしかるべしとの議論政府与党にありますが、私どもはこれは全く承服しかねるのであります。  その理由を申し上げます。当時われわれは法案の精査、慎重審議はむろん委員会第一義的義務と心得ておりましたが、国会の意見としてガリオア・エロア協定が四月六日に対外的に確定した以上、おのずから審議時間にも限度あるべしとの節度を守りまして、委員会の良識をもって会期ども考慮し、通過に十分なタイミング参議院にこれを送ったのであります。院本来の慎重審議義務と、憲法第九十八条二項の条約順守規定二つの要件を彼我考量して事を処したはずであります。にもかかわりませず、参院段階におきまして政府みずからがこれが棄却廃案をあえてしたのであります。その結果、暑いさなかに二度の勤めを議会に押しつけておりまして、今さら衆議院大蔵委員会審議を軽く見て時間の制約を持ち出すなんということは身勝手に過ぎると私は思います。  池田首相は今回の所信表明の中におきまして、わが国の国際的信用を確保するためにも産業投資特別会計法改正案はぜひ通過さしてもらいたいとおっしゃっており、引き続きまして田中蔵相も、十四日の当委員会審議に先立つ所信表明の中で、国際信用上からも、また国内重要政策推進のためにも、ぜひ今国会で成立させることが必要であると強調されております。われわれから言わしむれば、何を言っているかということであります。国際信用にかかわるのは今国会に始まったことではございません。選挙法改正を強行し、その代償として産投法を放棄したときこそ、政府みずから国際信用を無視したのでありまして、私どものあずかり知らぬところであります。今さら私どもに向かって国際信用理由として審議を督促することは主客転倒というほかはないのであります。前国会幕切れ政府は、内、国民に対しましては選挙法の改悪で不信を犯し、これと表裏の産投法の放棄で政府のいわゆる対外信用をゼロにしたのではないでしょうか。いうなれば不信のダブル・プレイであります。われわれは政府のこの矛盾をただす必要があると思うのであります。時の大蔵大臣水田さんをして産投法案を無視するなら重大な決意をするとまで言わせ、なおかつこれが棄却に踏み切ったのには、国際信用にまさるところのしかるべき重大な理由がなければならぬはずであります。この辺のところから御説明を願いませんと、私どもはこの産投法の本論に入っていくわけには参らぬのであります。そういうことでありますからぜひ納得のいくように御説明を願いたいのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの対日経済援助につきましてはできるだけ早く返せるようにしたいということは私、十年来の念願であったのであります。しかもそれがなかなか国内経済事情その他で許しません。幸いにさき国会におきまして予算案並び協定案が両院を通過いたしまして、私どもはぜひともさき国会で通したいという念願に燃えておったのであります。しかし会期末においてああいう状況になりましたので、私ども特に社会党の河上委員長に会見を申し込みまして、何とか一つ通過するように最後まで努力いたしたのでありますが、通過を見るに至らなかった、まことに遺憾でございますので、お暑いところ、お話の通り御迷惑でございますが、今国会におきましてぜひ通過さしていただきたい、こうお願いしている次第でございます。
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員 池田首相所信表明がこの間本会議でなされました。その論調はいうなれば非常に高姿勢であります。が、しかし産投会計法だけは国際信用を確保するためにぜひ通過するよう切にお願いしますという表現であった。ですから、そういう点で、また今のお答えからも、今後は、政府としても自省するから、まあ何とかここで一つ通してくれとおっしゃられていると私どもも理解してよいと思うのであります。そうすぐに引き下がりたくないのでありますけれども、しかし事は過ぎたことでありまして、われわれはやはりこの前向きの議論をする必要があると思うのです。  ただ、私が言いたかったのは、憲法九十八条によりまして条約とか国際協定というものは誠実に順守しなければならぬということがうたってあるのでありますから、私どもはこのガリオア・エロア債務に当初からこれを不合理なりとして反対しておりましたが、四月六日を期としましてここに協定が成り立った以上、事態は様変わりしておるわけですから、そういう点では私ども議会常道に従いまして、やはり国際的な協定というものは順守すべきだということも最大の顧慮をしなければならぬということ、しかもこの院本来の義務であるところの慎重審議ということも必要だ、この二つの要素をからみ合わせ、彼我考量して、参議院タイミング上間に合うように送り込んだつもりであります。そういういきさつでありますから、ここにまた産投議題になって帰ってきたということは、実に不愉快であり、われわれとしては政府の責任を追及せざるを得ない気持であります。そういうことでありますので、一つ今後こういうことのないように政府としては戒心していただきたいと思うのであります。  それから次にもう一つ、いやみではありませんが、やはりこの際にただしておかなければならぬ事項がございます。それは当法案が四十国会で流れた直後におきまして、米国政府ライシャワー日大使を通じて日本政府をきつく非難したこと、これはまさに留意に値すると思うのであります。非難がそれに値するという意味ではないのであります。そうではなく、主人公の言いつけ通り番頭が事を運ばなかったふがいなさをしかりつけるにも似た米国高圧的態度は、日米両国間のガリオア・エロア協定が、対等の立場での合意ということではさらさらなかったのだという印象を今さらのごとく国民に与えたということであります。そういう意味で留意すべきだと私ども考えておるわけであります。これはお耳にさわるかもしれませんけれども、リモート・コントローラーの意思のままに動く日本政府という印象をどう払拭するか、御答弁をいただきたい。通常の場合におきまして、アメリカはもとより民主主義議会制度をとっておる国であります。そこで憲政の常道アメリカが行く限りにおきまして、日本国会がこれを否決しようと、そこに内政的な干渉をもって威圧するということはあり得ないことだと思うのです。あたかもこの債務協定の締結にあたりまして、日米覚書で、四億九千万ドルというものは大部分を東南アジアの後進国開発に回すという覚書をつくっておりますが、その覚書に即応するところの法律案米国の大統領が議会に送りましたが、これば否決されておる。そういう場合にライシャワー日本にねじ込む論法をもってするならば、日本大使をして米国政府にねじ込ませるということも可能なわけです。そういうことですから、どうもライシャワーさんの非難というものは、われわれは通常の常識では理解できなのです。そこでどういういきさつであるかをこの際明快にしていただきたいと思います。総理大臣にお願いします。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 主人が番頭にしかりつけるようにというお言葉でございますが、そういうことは全然ございません。そういうものをわれわれが受け入れるという態度は、少なくとも私自身はとった覚えはございません。ただ予定は、さき国会通過する予定であったのがおくれました。従いまして、次の機会にはぜひとも早く通すようにという申し入れ、依頼はあったと聞いておりまするが、アメリカがとやこう日本国会の議決について言うべき筋合いのものでないということは――われわれは何ぼ何でもそんなことを考えること自体がどうかと思います。私におきましてはそういうことは考えておりませんし、そういう非難を受けたことは私は承知いたしておりません。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 首相出席時間に制約があります。そこで今申し上げましたような点につきましては後刻大蔵大臣等を相手になお論議したいと思います。しかし制約された時間ですから、私のきょうの質問の最も重点とする点につきまして直ちに入っていきたいと思うのであります。  ただいま申し上げた国会幕切れの不手ぎわ、それに相続くところのラィシャワー大使の抗議の際に、政府が周章ろうばいいたしまして、産投会計が流れても賠償等特殊債務処理特別会計に逃げ込めるとばかり、大平前官房長官など政府首脳鳩首協議をいたしまして、内閣法制局にひそかにこれが検討を命じた事実を指摘しないわけには参りません。はしなくも、そのおり頭を出した賠償等特殊債務処理特別会計こそ、対米債務支払い義務を負わすにふさわしい機関ではないか、会計ではないか。逆にいえば二重払いのそしりを免れることにきゅうきゅうとして産業投資特別会計に本来の目的外支出の課題を背負わせることが適当な処理方法といえるかどうか、これまたわれわれがここにたださんとするところの命題であります。政府の所見をお伺いいたします。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 私は初めから産投会計から払うことが適当だと考えておったのであります。また賠償処理特別会計云々ということは承知いたしておりません。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 産業投資特別会計から払うことが適当なりという総理の判断は、沿革的に産投資金見返り資金積み立てを主にしているという沿革論に発しておると思うのです。ところで、現実産業投資特別会計内容をよくごらんをいただきたいと私は思います。現に今年度におきましても、一般会計から二百三十億円を繰り入れなければならないほど原資は逼迫いたしております。対米債務を背負わせる余地は全然ないはずであります。今年度の産投会計のいわゆる固有原資としては二百三十億円程度のものしか生まれておらぬはずであります。これは来年度以降におきましてもほぼ同様であります。私の計算が間違っているといけませんので、最初事務局の確認をお願いします。
  10. 稻益繁

    稻益政委員 三十七年度の固有原資は、一般会計から受け入れます二百三十億を除きますと三百二億でございます。資金会計から、資金会計と申しますか、産投会計資金からの繰り入れが百五十億、固有原資が百五十二億、三百二億に一般会計からの二百三十億を繰り入れまして五百三十二億でございます。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員 局長答弁に食い違いが、あるんじゃないかと思うのです。というのは、今年度の一般会計からの繰り入れは、この改正案で要求している二百三十億円のほかに、三十五年度補正2号での繰入金三百五十億円の残額の全部、すなわち百五十億円を取りくずしているのですから、結局合計三百八十億円を繰り入れている勘定になるわけです。しかも、支出としまして五百三十二億を予算として組んでおるわけですから、この五百三十二億から今申し上げました一般会計からの繰り入れの総額三百八十億を引きますと、百五十二億になります。ところですでに七十九億は対米債務として支払うものを別にとってあるわけですから、それを加えますと、私が申し上げたように二百三十億程度になるわけです。もう一回局長の回答をお願いします。
  12. 稻益繁

    稻益政委員 ただいま私説明いたしましたのは、いわゆる投資分としての五百三十二億の内訳を申し上げたのであります。財源といたしましては、その五百三十二億と申し上げます際には、七十九億のガリオア債務返済も入るわけであります。従いまして全体の原資といたしましては、そのほかに要するに三十七年度の産投会計歳入合計が六百三十七億あるわけです。これの主たる内容運用収入の百九十六億、それから特定物資会計よりの受け入れ三十一億、それから一般会計よりの受け入れが二百三十億、資金の取りくずしが百五十億、さらに前年度剰余金受け入れが三十億、これで計六百三十七億になる。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員 もっと簡単に申しましょう。五百三十二億が予算支出ということになりますね。ただしそれは七十九億を取り除けた分であるというのですから、もともとは全体の額としては五百三十二億プラス七十九億というものがあるわけです。ただしそれは一般会計から、この改正で要求している二百三十億と取りくずし分百五十億を含めての額でありますから、その両者を足したものを今申し上げました五百三十二億プラス七十九億の額から引きますと二百三十億ですから、産投固有原資それ自身は二百三十億で間違いございません。事務局は用意があまり十分でないようですから、私の数字が正しいということでこれから議論を進めて参りたいと思います。結局今申したように、今年度の一般会計からの繰り入れ改正案で要求している二百三十億円のほかに三十五年度補正二号での繰り入れ金の残高の全部、すなわち百五十億円を取りくずしておりまするから、合計三百八十億円の繰り入れをしている勘定になるわけです。  ところで今年は七十九億円の対米支払いで済みますが、来年度からは固有原資二百三十億円のところ、対米債務百五十八億円を支払うことになるので、産投で十七機関ですか、十八機関ですか、に投資すべき額は、わずか六十億円程度にとどまるに過ぎません。しかも海運企業の整備に関する臨時措置法案というものが通りますと、なおこれから利子たな上げ分として三十億ないし四十億が差し引かれます。そうしますと、結局投資すべき額としては二、三十億きり残りません。まさに産業投資特別会計機能停止に陥るのです。目に見えております。今年度における三百八十億円の繰り入れと対比いたしてみますと、来年度以降毎年結局三百億円をこえる繰り入れがこの特別会計に必要になって参ります。一般会計からの繰り入れば三百億円以上毎年必要になってくるはずであります。そこで産投公債議論も出てくるし、こういう議論もけだし当然だと私は思っています。こういう事態において、なおかっこの産業投資特別会計に対米支払い債務を背負わせることに固執するのはかえって現実にそぐわないのではないか。これに対する首相並びに大蔵大臣所信と、それから合わせまして、来年度以降の産投会計運用原資をいかにまかなうかを御説明願いたいのであります。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。来年度百五十八億円を引きますと、産投固有原資が六十億ないし六十二億円しか残らぬという、御説の通りでありますが、しかしこの議論をして、こういう状況だからこの会計からガリオア・エロア返済金を出してはならないという議論にはならないと思います。来年度以降の産投の計画というものは、これからの経済状態その他の重要な政策上の方向が決定せられることによって、必要な量はおのずから決定するのでありまして、その場合は政策的に一般会計から繰り入れ等財源措置を行なえばいいわけであります。この産投会計の来年度以降の原資が非常に必要になるのに、ここからガリオア・エロア債務を支払うということは、これは総理もずっと御答弁申し上げております通り、この産投会計原資見返り資金原資だけでやらなければならぬというのではなく、ちょうど見返り資金財源がありまして、その権利義務を全部引き継いだということだけであります。なお産投会計はこの産投会計法の精神からいって、財源としては一般会計から繰り入れてやるというのでありますから、そういう意味で今度の改正案ガリオア・エロア債務産投会計の負担とするということと、政策的に投資が必要であるということとは関連なくお考えになるのが筋だと思います。
  15. 平岡忠次郎

    平岡委員 いずれにいたしましても、首相にしても大蔵大臣にしても、沿革的に見返り資金積み立てがもとになっているからということに固執し過ぎると思います。それはお金に色がついておりませんから、どこから入ろう日本経済基盤を強化するために、特にこの産業投資特別会計の第一条でうたい上げている経済の再建、産業開発、貿易の振興のために経理処理をこれにさせるということになっておりますから、そのことが問題なんで、原資がどこから入ってきたということは二義的に問わるべきもので大した意味はないと思います。ですからどういう筋からお金入ろうとも、経済基盤を拡充するために機能させるというのがこの会計を設けた最大目的でありますから、やはりその最大目的に沿う処理の仕方ということを考えるべきで、見返り資金から積み立てたものが大宗をなすところの資金となっておるこの産投から払うのだということをあまり固執することはいかがかと思う。ですから私はこれは適当ではないのではないかという質問をしているわけです。適当でなくてもやるのだというのであれば別問題であります。  なおこの問題につきまして、首相の、この間の本会議で、佐藤觀次郎君の質問お答えになったことは、債務返済産投会計からすることは、私が大蔵大臣当時から考えていたことだと、高飛車にお答えになっております。が、これは全くドン・キホーテ的な答え方であろうと思います。思いつきの答弁としてはともかくとしまして、全く筋の通らぬことと私は考えます。池田首相の最も新しい蔵相在任の時期はたしか三十一年の十二月から三十二年二月までであります。石橋内閣、引き続き岸内閣最初の時期であります。他方政府ガリオア・エロア米債務支払いを予想いたしまして、賠償特別会計を作ったのはそれより九カ月前の三十一年の三月でありますから、産投会計による支払いに対する首相先見の明をこの際強調するということでありまするなら、産投会計が発生したのは二十八年、対米債務等を含む一切の賠償関係項目を分化せしめて賠償特別会計がつくられたのは三十一年三月でありますから、そのときこそなぜ賠償等特別会計を分化せしめることに首相は抵抗しなかったということになります。要するに、いろいろ合理的に処理していく上に、三十一年におきまして産投会計とは切り離して、対米債務は、賠償等特別会計という入れものをつくっておいて処理していこうということがきまっておるわけなのでありますから、今首相が初めから産投会計処理することを考えておったと言うことは当たらぬと思います。それに、法律は、新法旧法に優先するのですから、新しい入れものをつくったことは、それ自身政府の合理的な考えがそこに現われておるわけですから、それを今さら、おれはもう初めから、産投会計で払うということにきめておったということで、先見の明を誇らんばかりにお答えになること自身がおかしいと思うのです。首相のお考えをこの際お伺いしたいと思います。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、昭和二十四年に対日援助見返資金特別会計をつくりましたときに、やはりいずれはこの経済援助のものは、その金額は別といたしまして、支払わなければならぬという考えを持っておったのであります。従いまして、十八億前後の援助物資のうち、今までやみくもとは申しませんが、国民にはっきりしなかった分は別として、少なくとも将来のことを考えれば、この見返資金という特別会計を置いて、そして払うときにはこれから払っていきたい、その利子で払うくらいにしたいという気持は私はその当時から持っておったわけであります。従いまして、多分昭和二十四年の当初予算におきましては、この補給金補助金等を二千二十億円組んだと思います。これによって税金でそういうものをやり、そして援助物資は換価したものをためおいて経済復興その他に充てていこう、そしていずれはこの利子で払っていきたい、私こういう気持を持っておったのであります。それで昭和二十八年にロバートソン会談のときにも強く請求せられましたが、まだその時期にあらずというので折衝をずっと延ばしてきて、そして初めは六億ドルとか六億五千万ドルとか――とにかくドイツが三分の一でございます。から、日本も三分の一ということになると六億ドル前後になるあるいは六億五千万ドルという話もございましたが、とにかくひた延ばしに延ばしてきて、そうして、いずれにいたしましても十五年ということならば見返資金利子だけで大体払える、そして元本は残る、私はこういう考えできておるのでありますから、あのときに佐藤さんの御質問に対して、自分は前からこういう気持でおったというのでございます。しかも産投会計から払うかあるいは賠償等処理特別会計から払うかというようなことも問題でありましょう。いずれにしても賠償等から払えぬことはございません。一般会計から繰り入れるとかあるいは産投会計から入れるとかすればできましょうが、私の気持は、利子だけで払う、そしてためおいたのだ、この経過的の信念があるものですから、産投会計から払うのだ、それは前から考えておりました。見返資金からその財産を産投会計へ入れたこの沿革からきておるのであります。その点は新法とか旧法とかいう問題ではなしに、私は過去十何年間やって参りましで、ガリオアはどういうふうな形でやろうかという私の苦心の存するところを佐藤さんに申し上げた次第であります。
  17. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 総理のこの前の答弁の中で二点だけどうもまだはっきりしないので、お教え願いたい。  その第一は、総理は、日本は敵国であったから債務性は当然だ、オーストリアと韓国とそれからイタリアは――イタリアは途中で連合軍に属しましたから、そういう答弁がございましたが、これはアメリカの商務省あたりでちゃんとしたそういう規定があるのですか。日本は最後まで敵国だったからだめだというようなことがあるのかという点が一つと、もう一つは、今日問題になっておりますのは、日本債務性について、いろいろ占領時代であったので、一体占領軍で使ったのか、あるいは日本に放出したのかという区分がはっきりしないで、いろいろ疑問を持たれておりますが、そういう点は、池田さんは当時大蔵大臣をやっておりましたし、アメリカに行かれましたが、その二点だけ解明ができないので、関連してちょっとお伺いしたいと思います。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 これはアメリカでそういう意見を言ったわけではございません。韓国あるいはオーストリアからもらわない、日本は敵国だからというのではございません。ただドイツと日本に対して、先般申し上げましたように、スキャッピンその他で債務性を規定しております。それによってわれわれは払うのです。それではイタリアは払わないがどうかと言われたから、私の考えでは、初めは敵国でございましたが、おしまいには連合国側についたものですから、これで多分請求を向こうはしないのだろう、それからオーストリア、あれは解放国でございます。し、いろいろな国際的な事情もございましょうし、そういう意味からアメリカは要求していないのではないかという私の考えでございまして、アメリカが有権的にどうこうした、イタリアからは取らぬという決議があったかどうか存じませんが、ドイツと日本にはこの前お話し申し上げた通りの指令がきておるわけでございます。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点、帳簿ははっきりしているかどうか、この点。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十四年の見返資金特別会計ができますまでの分は、この前たびたびここで議論しましたように、受け入れた分の明細はございます。それをずっと集計したわけでございまして、それが十七億九千何百万ドルだったかと思います。しかし見返資金ができてからの分は、その半分足らずで、七億余りじゃなかったかと思います。大体半分は輸入補給金、輸出補助金に使われた、それはやはり援助の換価物資とそしてわれわれの税金とでまかなわれておったのでございます。二十四年からは援助物資のドルに相当する金額はためおきまして、それが今の日本で換算しますと二千何百億円産投会計に残っておる。それから復金の肩がわりの分も六百五十億円ある。また今度のガリオア・エロアで払う財源として計算しておりませんが、住宅公団とか鉄道とか森林会計へ出資した分も相当あり、これは合計して二、三百億くらいあったかと思います。使いっぱなしのように出資しまして、その利子を多分今度の財源には入れていないと思います。私の計算では、利子を入れますと四千億円くらいになるのではないか、あるいは他の会計に入れたのをなにしますと、四千億をこえるかもしれません。これは正確な数字は大蔵省で持っております。
  22. 平岡忠次郎

    平岡委員 質問を続けます。要するに、今首相お答えの中でわれわれの味得できることは、産投会計資金が見返資金積み立てであるという歴史的な沿革に固執をされておるというように思います。それなりに、あなた自身が手がけてきたことですから、あなた自身一つの方針というものを貫きたい、かような考えはかまわないわけであります。しかし、賠償等特殊債務処理特別会計というれっきとした入れものが用意されておる今日、この会計によることの方が適当ではないかということを私は申し上げておるわけであります。というのは、私は法には法の精神、趣意がそれぞれあると思うのであります。特に特別会計は、財政法におきまして、限定的目的のために運用さるべきことを明記されておるわけであります。従って、産投は特定された目的のためにその会計機能を発揮すべきであり、賠償特別会計もまた特定された目的のために機能すべきだと思います。産投会計において、本来の特定目的を逸脱したり、特定目的を否定するような今回の改正案は、立法常識からも許さるべきことではないと存ずるわけであります。また、賠償特別会計という入れものを無為にほうっておくことも適当ではない、そう思うのであります。しかも、産投から十全にこの対米債務を支払うほどの原資があるなら別といたしまして、もう枯渇していることは目に見えておる。そこで、一般会計から枯渇分を埋めるのですから、むしろそういうややこしいことをとらずに、率直に、産業投資特別会計は本来の経済基盤の増強の目的のためにこの会計の機能を十全に発揮させるということにして置きまして、そして対米債務一般会計から賠償特計の方にその分だけを入れて払っていくということでいいではありませんか。これが二重払いであるかどうかということは――それは公平に考えて、政府の言い分もそれは政府なりにあると思うのですよ。しかし、現実国民大衆に新たな事実として一般会計に負担がかかってくる、国民に、タクス・ペイヤーにかかってくるということは事実ですから、その事実は事実として認めて、今申したようなすっきりした方式をとるべきであるということに私どもの主張があるわけです。ですから、そう沿革に固執なさらずに、この際は今言った明確な筋を通すべきだ。入れものの問題とかそういうことでなしに、事実として国民の負担になっておることははっきりしている、しかし、政府の方とすれば国民に賦課されるけれども、別に見返り資金積み立てが、すでに産投という会計を通じて日本経済に寄与しているということを主張できるわけですから、いずれがよかったという判定は国民が投票とかそういうことによってきめることですから、今言った言いのがれ的なことに固執する必要は少しもないと思う。そういうことで、この際はむしろ特別会計目的に沿うところの機能をそれぞれ発揮せしめるということにやはり立ち戻っていただきたい、さように思うのです。が、重ねて首相の御説明をお願いします。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 平岡さんの御意見と私は違うので、一般国民は――やはりああいうためおいた金があるので、それから利子で払えるということならそれから払うようにするのが自然だと思います。沿革的にもそれではっきりすると思います。賠償等処理特別会計国民の税金で新たに払うということになる。これは今までの物資を換価した代金の利子で払えるのだというので、産投会計を実質的に改正した方がわかりいいのじゃないか、こう私は考えるのであります。予算におきましても、大体そういうふうなあれで御了承を得て国会通過しておるのであります。私はやはり産投から出した方が国民にもわかりいいし、はっきりけじめがつく、こう考えておるのであります。
  24. 平岡忠次郎

    平岡委員 政治をとる上において、国民にわかりよくするということ、これは政治家のかまえとしては必要と思うのです。しかし、今度の場合には、わかりよいということを越えまして、少し瞞着のきらいがあると思います。わかりよいという限度においてはけっこうなんですけれども、瞞着のきらいがあると思います。そういうことで、この間佐藤さんの質問に対しまして、今首相がここでおっしゃられた通り産投会計は、援助物資で得た金とその利子が元になっているのであるから、産投会計ガリオア・エロアを支払う方がわかりよいと思うと確かにお答えになっております。国民にわかりやすくすることは政治として十分考慮を払うべきでありましょう。しかし、産投会計法の基本目的を侵してまで産投からの支払いに固執する態度は、春日委員が前国会の大蔵委員会においていみじくも指摘したように、鶏小屋にイタチを同居せしめる態度でありまして、国民の理解を求め得る事柄ではとうていございません。瞞着これに過ぎるものはないと知るべきであります。  私の質問をここに集約いたします。と、政府が真に国民に理解を求めんとするなら、産投による対米債務方式は一擲しまして、最も国民にわかりやすく、一般会計から所要の対米債務支払い原資賠償等特殊債務処理特別会計繰り入れましてこれを支払っていくというオーソドックスな方式を国民に示してその納得を得べきではないかと思います。国民大衆に新たなる負担を賦課する現実をすなおに認めまして、他方、産投会計産投会計として本来の目的のために十全の機能を発揮せしめるために異質の課題は背負わせないという折り目正しい堂々の態度政府はとった方がよいのではないかと思うのであります。これは・池田さんはそうでない方がいいのですから意見が分かれるのですが、結局一つのうそをかざるために百のうそをつかなければならないということは悲しむべきであります。道徳の高揚を説く政府がみずから、再考三思いたしまして、出直してくる用意があるかどうか、くどいようですが、もう一度その決意をお尋ねいたしたいのであります。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は承っておりますが、私自身といたしましては、私の考え方の方が正しいと思っております。そうして、国民にもそれがよくわかっていただけると考えております。ことに予算も通っております。予算の通る通らぬは別問題といたしましても、私のとった考え方が実態にも沿うし、国民に税金で納めてもらったものから払うのじゃないということがはっきりわかる。そうして、それが両国関係にもよいと考えている次第であります。いろいろ議論はございましょうが、私は、一番わかりよい、そうして、どこから払うのだということ、国民の了解を最も得やすい方法をとる、これが政治だと考えております。
  26. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。武藤山治君。
  27. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま総理は私の処理の仕方が正しいということをおっしゃっておりましたが、どうも総理はあまりにもえこじなので、少しく関連質問で――総理の、自分の処理の仕方が正しいという論拠が明らかでないので、ただ言葉だけで私の処理の仕方が正しいなどと言っても国民は納得せぬと思うのです。正しいならば正しいという論拠を明らかにしたいと思うので、私は一つお尋ねしておきたいのですが、時間がありませんから、二点にしぼって今のに関連してちょっとお尋ねしておきたいと思います。  その一つは、産業投資特別会計の運用益は平年度百五十八億円ということを理財局長答弁をしております。そうしますと、ガリオア・エロアの返済金額が平年度百五十八億でどんぴしゃりの数字なんです。そういたします。と、産投会計の運用利益金というものがそっくりアメリカへの返済にいってしまうわけですから、どうしても資金源が足りなくなることは明らかであります。そこで、大蔵大臣は、足りなくなりゃ一番簡単な方法は一般会計から繰り入れるというような無責任な答弁をしておるわけです。これは国民の税金ですよ。国民の税金は――借金をなすためや融資をするために租税原則ができておるのじゃないのです。そういう税金というものの原則を忘れて、足りなくなればまた一般会計から繰り入れればいいなどという答弁では、私は納税をする国民は憤慨をすると思うのです。そこで、以後この運用益金と同額を返済した場合に不足金額が生じたら国民の税金で埋め合わせばしない、そういう確信があるのか、そういう見通しがあるのか、そういう点をまず第一にお尋ねをしておきたい。  もう一つは、総理は、見返り資金会計積み立てをした利息で払うのだから国民は一番わかりやすくていい。しかし、これはごまかしです。それの足りなくなった分を一般会計からまた埋めるのですから、めぐりめぐっては国民の税金で払うことになるのです。国民を愚弄するもはなはだしい答弁ですよ。それよりももっと以前に、はっきりした例があるのですから、そういう以前の例のような処理の仕方をなぜしないのですか。たとえば今回政府から出されたこの積算の基礎を見てみます。と、英連邦軍物資対米引き渡し分として二十万九千四百七十八ドルというものが今回差引勘定で控除されておる。イギリスの軍隊が払い下げた物資代金を、そのイギリスに対してどういう方法で過去日本政府処理したでしょうか、それをまず総理大臣にお尋ねしておきます。その例に基づいて今回差引勘定をされたものと同 性格の金の処理の仕方と、今回のガリ・エロの返済の性格が違うということは、政治の姿勢としておかしいと思うのです。その点、はっきりと総理大臣大蔵大臣からお尋ねしておきたいと思う。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。産投会計から対米債務を支払うことが不合理だという結論を前提とされての御議論のようでありますが、私は必ずしもそう考えておりません。これは産投会計というものは、御承知の通り住宅公団とかその他政府国会も、政治行政の上に絶対必要であるという機関に対する投資をするためにつくられておるわけであります。その財源は、一般会計からの繰り入れもありますし、見返り資金特別会計から引き継いだ資産もありますし、またこれからの原資が不足になれば、きのうは現在の状態において発行する予定はありませんと明確にお答えはしてありますが、産投国債を発行する場合もありましょうし、短期国債を発行していろいろな財源を求めるという場合もあり得るわけであります。そういうように、産投会計そのものが必要であるということでお考えになるならば、その原資は見返り資金特別会計から引き継いだもののみが原資となって、他に原資を仰ぐことができないという制限規定があるわけではありませんし、これは政策産投会計が将来投資を必要とするということによって原資が必要になれば、あらためてどのような具体的な原資調達方法を得るかはあらためて検討すべき問題であります。そのときに、産投会計というものができたときの状況が、見返り資金特別会計の資産の運用ということが事実上行なわれてきたのであるから、これ以外の、特に一般会計から繰り入れるということは不当である、こういうお話には少し飛躍があるんじゃないかと考えます。それはどこかといいますと、産投からの対象になっておる機関そのものに一般会計からも、また財政投融資からも、産投会計からも、いろいろな面から投資及び補助が行なわれるのでありますから、私は一般会計から繰り入れても一向差しつかえない、そういう考えによって今般二百三十億の産投会計に対する繰り入れが行なわれておるのだというふうに考えておるわけでございます。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 田中大蔵大臣お答えになったので尽きると思いますが、英連邦関係のあれ、これは私は貿易関係で、援助との関係ではない問題だと考えております。詳しくは法制局長官あるいは事務当局から答えさせましょう。
  30. 武藤山治

    ○武藤委員 時間がございませんから端的に結論から経過をちょっと申し上げてみたいと思いますが、この資料にもはっきり載っておりますように、今回ガリ・エロ関係で二十万九千ドルというものは控除されておるのですから、当然これは英連邦軍が放出した物資の性格とガリ・エロの性格というものはやや同じ性格のものであると見て差しつかえないと思うのです。そう見て参りますと、イギリス政府に八億六千四百七十六万円の金を返済いたしておりますが、その返済の方法は一体どういう処理をしたかというと、第一回、二十六年に二回にわたって三億円を返済いたしております。そのときの会計処理は、一般会計の貿易特別会計残務処理費で出しておる(「貿易だ、貿易だ」と呼ぶ者あり)今うしろの方でやじが貿易だ、貿易だと言っておりますから、あとでよく、どういうふうに処理したか聞かしてやるから聞いてもらいたいが、第三回の返済は二十六年十二月。二十九年三月には、一般会計の平和回復善後処理費という項目で出しておる。平和が回復されたから占領中のあらゆる債務をここで返済していこうということで、非常にきれいな名称でこの処理がなされておる。第五番目、第六番目が昭和三十一年四月三十日、三十三年の二回にわたって残金を決済いたしております。そのときの方法は、賠償等特殊債務処理特別会計一般会計です。やはり。この賠償等特殊債務処理特別会計というものを三十一年につくらざるを得なかったのは、こういう経過があったからこそ、おそらく法制局などでも、今後特別会計目的を明らかにして占領時代における債務というものをされいに、すっきりした形で処理をしたいということから私は特別会計制度ができたと思う。それを全然使わずに、沿革だけを考えて、見返り資金は払い下げ代金を積んだものだからといって、現在その原資がそのまま返済されても困らないような形を国民に与えておる。こういう印象国民に与えるということは国民をごまかしておる、だまそうとしておる。こういう瞞着する態度が今回の産投会計から出そうとする総理の卑劣な態度だと思う。もっと堂々と、イギリスに返済をしたと同じような方法で、会計原則を乱さずに特別会計目的を守って――あなた一人の好みによって会計原則をじゅうりんするというような態度は正しい政治の姿勢とは私は言えないと思う。こういう総理自身考え方というもの――あなたの好みで一国の政治を動かしているような感じを受ける。はなはだ国民にとっては迷惑だと思う。こういう連邦軍に対する返済の経過から勘案をして、産投から出すということが、それでもあなたどうしても正しいとお考えになりますかどうか。その点を総理答弁を求めます。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 私一人の好みによって云々ということは、これはお言葉がいかがかと思います。私は一国の総理として、また自由民主党の総裁として、そして皆さんに相談し、しかもそのことはさき国会でも議決を得ております。  それから、対日援助の問題と英連邦との関係は、英連邦の方は貿易関係でありまして発生のなにが違います。詳しくは法制局長官からお答えをいたさせます。
  32. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の英連邦関係の物資の払い下げ代金の問題であります。が、ガリオア協定の計算上控除いたしました二十万ドルですか、これは前国会でも御説明いたしたと思いますが、要するに英連邦から日本側に払い下げ予定されたものの中から、物自体を米軍の方に転用したものであります。従いまして、その部分は当然ガリオアから引くということでこれは引いたわけであります。残りのものはこれは日本が払い下げを受けたその関係の代金の支払いでありまして、これは先ほどもちょっと仰せられましたが、要するに貿易関係のものと考え処理をして参ったのであります。貿易特別会計が存在する間は当然貿易会計の負担と考えておったわけでありますが、この支払いの段階におきましては貿易特別会計がたしかなくなっております。なくなっておりますので、今おっしゃったように、初めは残務整理勘定から払い、その後はそれもなくなりましたので、一般会計の最もその目的に合うと思われた平和回復善後処理費あるいは賠特ができたあとは賠特から払う、そういうふうな処理をしたものと考えております。従いまして、このガリオア・エロア関係のようないわゆる見返り資金を見返り資金特別会計積み立てて、それが産投会計に引き継がれたという関係とは実は別問題だと考えております。
  33. 武藤山治

    ○武藤委員 質問ではなくて、一応法制局長官に注文しておきたい。というのは、イギリス連邦政府との関係がはっきりと貿易だと責任を持って確定できるならば、賠償等債務処理特別会計で払うのはおかしい。これはすでに大蔵委員会あるいは外務委員会でかなり議論されて貿易という確定した契約はないのです。そこでこういう科目で出しておる。その問題については午後ゆっくりやりますが、あまりいいかげんな答弁をされては困るのです。一応注意しておきます。以上で関連を終わります。
  34. 平岡忠次郎

    平岡委員 ガリオア・エロア債務会計処理に関する適正、不適正の法理論は、あとから同僚の井手以誠君がやりますから、私はこの点につきましてこれ以上触れようとは思いません。たまたま総理が先ほどのお答えの中で、ドイツとの比較論をされております。ドイツのことだからあまりよくわからないだろうということで簡単に採用されるのは工合が悪いと思うのです。そこで、実は私どもは一九五七年に、ちょうど同僚の春日君と有馬君と、それに自民党の山本勝市さん、この四名でヨーロッパを回りました際に、例のブンテス・バンクの――当時はバンク・ドイッチェル・レンダーですか、その総裁であるウィルヘルム・ホッケに会見を申し込んだ。なかなか人ぎらいですから会わぬのですけれども、幸いにしまして会うことができました。そのおりたまたま日本国会でもガリオア・エロアの返済問題が、債務なりやいなやということで議論されておったときですから、ドイツはどういう立場をとっているかということもこのウィルヘルム・ホッケに聞いてみました。そのいきさつをここで御披露申し、そして池田さんのおっしゃるのと必ずしもドイツの立場は一緒だとは思われませんので、その点につきまして御判断を得たいと思うのであります。  一九五七年と申しますと昭和三十二年ですが、昭和三十二年の七月に今申した通り四人がフランクフルトへ参りました。そしてそれよりさきへ、ウィルヘルム・ホッケにぜひ会いたいということは内地におるときから申し込んでおりましたところ、やっとその七月の上旬だったと思いますが会うことができたわけであります。私どもの予備知識としては、ウィルヘルムというのはどういう人かというと、興隆ドイツの経済の裏にウィルヘルム・ホッケありといわれているほどヨーロッパにおいては有名で、シャハトやエアハルトよりはむしろ高く評価された人であります。それで新聞記者に会うことが大きらいだ、なかなか人に会わぬという、そういうような予備知識を持っておったわけです。この会見が非常に貴重なものでありまするから、私どもは宿に着きまして、非常におそかったのです。が、鳩首協議をいたしまして、四十分間許されたこの会見を最も有効に生かそうということを相談したのです。たまたま私が、不肖でありますが、この議員団の団長を仰せつかっておった関係で、結局春日君の意見等を加えることにして私がその質問の要項を作りました。その要項は何かというと四つございました。  その第一は、ウィルヘルム・ホッケ連銀総裁は、「財政と金融は全然別個の使命性格を持つものとして、かつその方針を堅持されている様子だが、日本では財政金融一体論」――申すまでもなく池田さん御自身の御持論です。が、「日本では財政金融一体論の財政を行なっているが、これを講評せられたし」ということが一点。  それから第二番目は「ドイツの近来のすばらしい輸出増高はヨーロッパを席捲し、ためにEPU」――これはもうなくなっておりましたけれども、「(ヨーロッパ決済同盟)の存在に危機を招来しているといわれているが、御所見いかん」ということが第二点。  第三番目は「シャハト博士の構想すなわち、ドイツの手持ち外貨約五十億ドルを国外投資すべしとする財政構想をいかに考えられるや。これを否とするなら」理由を付してお答えをいただきたいということ。  それから第四番目に、問題のガリオア・エロアに関してであります。「ドイツの米国から受けているエロア・ガリオア十四億一千六百万ドルは、これを返済の義務ありと考えるか、なしと考えるか。理由を付し」て見解をお示しいただきたい。この四つの問題を申し上げました。  そこで、特に第一問はあとから大蔵大臣等にも大いに所見をただす上に参考になることなんで、ここに一応ついでながら触れさしていただきます。  それから四番目のガリオア・エロアについてのホッケの答弁をここに御紹介しておきたいのであります。  結局、この会見におきまして彼の答弁は次のようでありました。最初の第一問に対しましては、「一九四八年通貨改革」これはマルクを十分の一に切り下げまして、不動産評価のみを据え置いた、この改革でありますが、「一九四八年通貨改革が行なわれ、バンク・ドイッチェル・レンダーができ、十二州の州中央銀行を統括する現ドイツ連邦銀行制度ができ上がった。自分が総裁になったが、就任以来自分の考えは一貫している。それは第一次世界大戦後のインフレの災禍の経験に徴して、マルクの価値維持はドイツにとって至上命令であるとの立場である。財政は選挙民に迎合する予算作成を反映し、時の政治によって浮動し拡大する。ところが、政治、財政等は時の政府の方針ゆえ一時的なものだが、マルク価値維持は永久的な大切な国家の事柄である。私は価値維持のためには金融は独自の立場を貫くべしとして、ドイツ金融政策の衝に当たってきた。断片現象的なものの恣意にドイツ・マルクの永遠的価値をまかせてしまうわけには参らない。少なくともドイツにおいては今後もこの方針を自分は堅持する。」というものであります。マルクの価値維持を至上命令として、少しくらいインフレになってもかまわぬなんて、そういう考えは毛頭ないことをきっぱりと表明いたしておったわけであります。このことは今ここに直接の関係はございません。しかし、傾聴に値する議論だと思うのでついでに御紹介しました。  二問、三問のお答えは省略いたします。  第四番目でありますが、「ドイツの対米ガリオア借款十四億一千六百万ドルはこれを返済の義務ありと考えるか、なしと考えるかは、私の所管事項でないから公式的回答はしない。しかしながら私見をあえて言うなら、」喜んじゃいけませんよ。「大戦の残滓は一切残さずきれいにすべきものと考えている。」その次が問題なんだ。「あたかも対英借款十億ドルも、直ちに返した方がよいのと同様だ。」これらの回答はいずれも非常に明快であります。西独の戦後の産業を指導し、あやまたざる金融操作によって空前の繁栄をドイツにもたらした金融政策の大元締めとしての風格と達識がうかがわれたわけであります。  特に四項に関しまして、日本の対米ガリオア・エロアが贈与か債務かいまだ決着を見ていなかった事例にかんがみましてこの質問をしたわけですが、次元の違うドイツの気魄にわれわれは内省を求められたのであります。というのは、対英十億ドルも早く払うのがよいのと一緒だということは何を言うかというと、これは、ドイツは何といっても戦後の回復を専一にしまして、NATOの軍事同盟へ入れといえば形だけ入りました。しかし、敗戦国ですから、言うなれば欧州隣組の平メンバーだ。イギリス、フランスがマーシャル・プランを受けて、あるいはNATOの中核的な一つの指導的な国としてふるまっておるわけですが、ドイツはその陰に隠れて、しかし、やはりドイツ自身の復興のためには、そういう必要があるならばということで、形式的にはNATOにも入っておりました。そういうことで、いつの間にか割り込んで、伸びるだけ伸びた。今言ったように五十七億ドル、そのときにもう黒字の外貨を持っておりました。かせぐだけかせいで、払うものはそのとき払ってやろうというのですから、これは堂々としております。なけなしのバランス・シートから何とか工面していくというのと非常に違っているのです。だから、非常にこれははっきりしています。しかも、このウィルヘルム・ホッケが対英債務の十億ドルも早く払った方がよいというのは、当時ドイツが疲弊しておりましたので、イギリスから十億ドル貸した。多分十カ年かの期限で無利子で貸したわけです。これは無利子というのは、マーシャル・プランの方からイギリスの手に回されてそれが流れてきているのかもしれません。とにかく無利子でした。ところがその当時ドイツは今申したように五十七億ドルの黒字を持っているのに、イギリスは三十億ドルを割るというので非常に外貨不足でピンチに立ったわけです。そこでドイツに貸した十億ドルを返してくれ、そしてすでに五億ドルを返し、あと五億ドルを返すかどうかということが論議されておるのです。ウィルヘルム・ホッケがその衝にある人です。無利子、十年ということで五億ドル、まだ返すには五年ある。これは返しますが、そのかわりあと五年使えば生ずるであろう利子利子分だけ引くということをがんばった。とにかくこれはむちゃといえばむちゃです。無利子で借りておきながら、期限がこないうちに返すのだから、その利子分に相当する部分は五億ドルから引いて返すのだということで、それでもめていた事情にあったのです。ことほどさように、一国の経済を指導するとか、そういう衝にある人とすれば、やはり対外的にはそれほどのがめつさが必要なのだなと思ったのです。そういうことから考えて、ドイツの、先ほど申し上げましたところの十四億一千六百万ドルというものは、日本のあいまいもことした何が何だかわからぬような勘定書ではなしに、この一事をもってしても完全に明確な債務であったことは事実だと思うのです。そういうことで、なおかつ三分の一に負けさせたということですから、日本の場合のずるずるべったりとは全然性格が違うということ。この構えが私は日本にも必要だと思うのです。国民の感覚としては、ガリオア・エロア支払い額が高かったか安かったかより、ガリオア・エロア債務が合理的な合意のものかどうかが問題なのでありまして、その点につきましては、すでに社会党は別の委員会におきまして政府を追及したわけです。ですから、単に表面だけドイツと同じように三分の一に削らせたんだから成功だというようなことも、その債務産業投資特別会計から、沿革的に資金積み立てられておる産業投資特別会計から払わなければならぬというような考えを固執することも必要はないと思うのです。この事例に徴し、自主性を持って、はっきりとやっていく姿勢を政府はとっていただきたい。少し駄弁を弄しましたが、今後の国政運営の上におきまして政府の、特に首相のかまえをこの際明確にしてほしいと思います。  これをもちまして、御所見をちょうだいして、私は質問を終わりたいと存じます。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 ドイツの事情を私も知っております。ドイツの場合と日本の場合とは必ずしも同一ではございません。われわれは日本国民のために、そうしてまた自由圏の国々との緊密な連絡を増進する信念を持ってやっておる次第でございます。
  36. 臼井莊一

    臼井委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時九分開議
  37. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  38. 武藤山治

    ○武藤委員 午前に平岡委員から質問がございましたので、できるだけ重複を避けて、基本的な点からお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  最初大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、今回、日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基づいて、大へん莫大な金を返済するわけでありますが、もともと私どもの立場では、この返済金は確定的な債務ではない、こういう立場に立って、平たく言うならば、水害にあった場合に、水害見舞としておむすびを贈ったり衣類を贈ったりするのは、人間の道の当然の姿だ。当時占領された日本としては、そういう災害の状態に、国際的道義に基づいて、アメリカがおむすびや衣類を贈ったのにひとしい状態ではないか、そういうものを今さら返せと言う方も言う方だが、またこういうものを債務と心得るなどと言って返そうとする態度態度だ、こういう立場から私どもはそういう金を返すこと自体に賛成をしておらないわけでありますから、本来ならばそういう内容議論にわたって、私どもは反対の立場からいろいろ質問をしたいのでありますが、非常に具体的な金の出し方についての法案が出ておるわけでありますから、そういう内容にわたっては避けて、一応一歩こちらが譲った形で、現在提案になっておる産投会計を中心にしての金の出し方、今後の障害になるかならないか、そういうような問題を中心に一つお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  最初に、まず産業投資特別会計という特別会計ができた目的と申しますか、法の精神というか、そういう性格について大臣はどのような御認識を持っておるか、産業投資特別会計目的を明らかに、あなたの認識を示していただきたい、これを最初にお尋ねしておきます。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  産投特別会計は、御承知の通り昭和二十八年に設立をせられたものでありますが、わが国の経済、貿易等の振興その他の目的を達するために作られた特別会計であります。
  40. 武藤山治

    ○武藤委員 わが国の産業の復興あるいは貿易の振興その他の目的でという、その他の目的というその他の中には何が含まれておるのですか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 経済の再建、産業の復興、貿易等をさしておるわけであります。
  42. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう経済の復興、貿易の振興あるいは今日の新しい言葉でいうならば産業基盤の強化、そういうようなものに使われるのが産投会計目的であろうと思うのです。そういう目的と照らし合わせて今回のガリ・エロの資金を返済するということはどういう関係になるか、そういう目的と一体一致するのか、その点どのような認識に立っておりますか。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 二十八年に創立をせられた当時の産投会計法目的と今度のガリオア・エロアの対米債務の返済というものを同一に考え、現在の時点でそれを論議するのはいささか問題があると存じます。御承知の通り、御審議を願っております法律には、新しくこの産投会計の使命として対米債務はこの特別会計の負担において行なうという目的、俗にいうと定款変更をお願いしておるのでありますから、これが議決をせられる場合には当然新しい法律目的が明記をせられるわけでありまして、改正案が通った場合、二十八年当時の法律目的とは相反するものではないというふうに考えております。  もう一つは、ガリオア・エロア債務をなぜこの会計から払った方が妥当なのかという問題になると思いますが、御承知の通り、対米債務に対しては、さき国会においていろいろな角度から御発言がございました通り、二重払いになるのではないかという御意見に対して、二重払いにはなりませんという明らかな根拠をお示しいたしておるわけであります。それは、しかしこのような大きな金を支払う場合に国民各位の理解を求めて、皆さんが言われた通り二重払いではないんだということを明らかにするためにも見返資金特別会計から引き継いだ資産の内容はこれだけあって、現在産投特別会計の中で約六千億になんなんとする資産のうち四千億はこのガリオア・エロア債務のもととなった見返資金特別会計から引き継いだものだ。そういうことでありますから、この中から二千八十五億を返済してもまだ元金は残るのですということを国民各位の理解を得るためにも、最も合理的であり、妥当な方法であるとして産投特別会計法の改正案の御審議をわずらわしておるわけであります。
  44. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣がそうおっしゃるのでは、事務当局の理財局長にちょっとお尋ねいたしますが、確かに法律ができたのは二十八年でありますから、今とは大へん事情が違うと思うのです。大臣はその当時と今では事情が違うから今ここで従来の目的とは全然関係のない対米債務を返済するという性格変更してもそれは間違いでない、それは合理的で妥当なんだ、こういう御答弁でありますが、法律ができたときだけを対象として考うべき問題でなくて、その後ずっとこれの推移がどうなっておるかということを十分検討しないと、産投会計が寄与してきた経済界に与えた大きな力というものを十分見て――そういう性格変更しても合理的で妥当なんだという我田引水の議論をしておったのでは、産業界の立場から見た場合に私は相当の不満が出てくると思う。  そこで理財局長にちょっとお尋ねいたしますが、産投会計ができてから一般会計から繰り入れした年次別の金額をお示し願いたいと思います。
  45. 稻益繁

    稻益政委員 お答え申し上げます。  二十八年度に産投会計が発足いたしまして、当初の二十八年度には一般会計からの承継分として千百八十七億出資がございます。これは一般会計からの承継分であります。その後一般会計から受け入れました資金であります。が、三十二年度に三百億円、三十四年度に五十億円、三十五年度に百二十億円、この百二十億円は三十五年度の補正予算でありますが、その後の分といたしまして同じく三十五年度に一般会計よりの受け入れが三百五十億円、三十七年度に今回予算として一応予算の上で通っております二百三十億円、以上が一般会計からの受け入れであります。
  46. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、一般会計から産投会計へ出ておる総合計は二千二百三十七億円で間違いないわけですね。
  47. 稻益繁

    稻益政委員 当初に申し上げました承継分を除きますると、今回の二百三十億を入れまして、一般会計からの受け入れが千五十億円、それに一般会計からの承継分、こういうことになると思います。
  48. 武藤山治

    ○武藤委員 さらにここに輸銀の総裁の古沢さんがいらっしゃるようですから、輸出入銀行の出資金が本年度は二百億円でございますが、従来、今日まで産投会計から出ておった総合計は幾らになりますか、ちょっと輸銀の総裁にお願いします。
  49. 古沢潤一

    ○古沢説明員 日本輸出入銀行の産投会計からの資本金の払込額を申し上げます。  年度別に申し上げますと、二十五年末が五十億円、二十六年が百七十億円、二十七年が二百十億円、二十八年が二百十億円、二十九年が二百十億円、三十年が三百四十億円、三十一年が三百八十八億円、三十二年が三百八十八億円、三十三年が三百八十八億円、三十四年が四百四十八億円、三十五年が五百八十三億円、三十六年が七百八十三億円、三十七年が、それに二百億円を足した数字でございます。
  50. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま総裁から年次別の産投会計からの出資額が提示されたわけでありますが、これを見ますと、年々需要に追いつくためにかなり出資額が上昇いたしておるわけですね。そうしますと、この傾向は今後やはり続くようにお考えになっておられるか、それとも資金需要というものは大体本年くらいを基準にしてここ十年くらいは同額で間に合うとお考えになっておられるか、その点あなたのお考えはいかがでしょうか。
  51. 古沢潤一

    ○古沢説明員 私は、輸出振興ということが大きな問題になっている関係上、これから需要は相当あるものと考えておりますけれども、何しろ将来の問題でございますから、これはそのときになってみなければわからないと思っております。
  52. 武藤山治

    ○武藤委員 もちろんこまかい具体的な数字は将来のことでありますから、これは何人もわからぬわけですが、一つの趨勢としては、九百八十三億円なりあるいは前年の七百八十三億円なりが減るような傾向で運営がやっていけるか、それとも何ぼかはふえる方の傾向になっていくのかということの判断は、いかがでしょうか。
  53. 古沢潤一

    ○古沢説明員 私はふえていくものと思っております。
  54. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣にちょっとお尋ねいたしますが、御承知のように産投会計は住宅金融公庫を初め十八ばかりの出資をいたしておるわけであります。が、そういう中で特に今日EECの対策などで、輸出増強ということを力を入れておるわけですね。従って、輸銀などの需要というものもかなりふえる傾向にあると思うのです。そうしなかったら日本経済の成長だの国民所得倍増だのといっても、日本は輸出をある程度伸ばしていく以外に手がないというところへきておるわけですから、そういうような需要というものはただ単に輸出面だけでなくて、住宅問題にしても、結婚したくても家がなくて結婚できぬという青年が二百六十万もおるとか、非常にやらなければならぬ仕事が一ぱいあるわけですね。そういう資金というものを産投会計が出資を従来続けてきたわけですが、今回この中から運用益の大部分がアメリカの返済金に回るということになりますると、そういう出資金というものが私は非常に不足してくるのではないか。もちろん不足をしてくるからといって、午前中大臣がお答えになったように、一般会計からすんなり持ってくればいいんだという安易な考え方でやられると私は困ると思うのですが、とにかくそういう傾向にあるときに、百五十八億円ずつ来年から払っていった場合の原資の不足というものが起こるか起こらぬか、そういうことは心配ないのだ、全く心配ないとするならば、その心配のない具体的な数字を上げてあなたの御計画なり判断を一つお聞かせ願いたいと思います。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。確かに産投会計は各種の産業基盤強化のために、多年にわたって多額の投資、出資を行なっておりますことは、御説の通りであります。このような趨勢から考えまして、来年度以降、産投会計の持つ重要性、また産投会計から当然出資もしくは投資をしなければならないものがふえるであろうことは、容易に首肯できるわけであります。でありますが、来年から投資出資がふえるにもかかわらず、今でさえ枯渇している原資の中から百五十八億一千万円ずつ毎年返していくのはおかしいじゃないかというお話でありますが、産投会計資金の需要というものは政策的なものでありまして、これは別に財源を得るということもまた適当に考えなければならぬということだけは、二十八年の法律条文を見ればすぐおわかりになるのですが、そういうふうにお考えいただいた方がより妥当ではないかと考えます。これは産投会計法の第一条の二項に「この会計においては、前項に掲げる目的を達成するため、特別減税国債の発行に困る収入金、産業投資特別会計の貸付の財源に充てるための外貨債の発行に関する法律」の発行またはそれによる借入金の収入――ちょうどそのときに米国日援助見返資金特別会計からの承継資産から生じる収入金と、特定物資納付金処理特別会計からの繰り入れ金、こういう幾つかの財源措置の中に、ときあたかも見返物資の特別会計からの承継分をも合わせて原資にしようということを規定したのでありまして、この特別会計というものが見返資金特別会計の承継分だけを原資にして、それ以外のものは、万やむを得ざる場合に限ってという法律的な制約が全然ないのでありまして、これはすなおにこの条文通り考えると、産投会計というものは当時の状況から産業経済、貿易振興のためにつくられた特別会計であり、財源に対しては見返資金特別会計からの承継分だけを充てておるものではないということを一つ御了承願いたいと存じます。
  56. 武藤山治

    ○武藤委員 政策的に必要なら幾ら出してもそれは法律違反ではないし、また法律というのは政治の力でつくるものですからね。政治というのは法律をつくる力を持っておるわけですから、そういう考え方でいくなら、まあ産投会計から払ったって別にいいじゃないかという理屈は出るかもしれません。ただ私がここで心配しておるのは、今まで百五十億なり百八十億といろ運用益金がそのまま別に積まれておったならいいのですよ。そうじゃなくてそういう運用益金は従来原資になって、またそれが貸し付けられ、拡大されて雪だるま式に産業資金というものが拡大をしておるわけです。それを今度は百五十八億ずつ減らしていくということは、事実上はむずかしい。そうなると開銀にしても輸出入銀行にしても、住宅公団にしても農林漁業資金にしても、とにかくアメリカにこれだけ払うのだからお前たちがまんしてくれと言って、百五十八億円分を圧縮するということは、事実上できないのではないかと思う。それは大臣は、まずそういう圧縮をして、今まで通りくらいしか一般会計からは繰り入れしなくともやっていける、そういう経済見通しを持っておられるのか、そこら辺はどうでしょう。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 政策的の重点をどこに置くかによって変わる問題ではありますが、先ほど申し上げた通り、現在までの状況考え、将来を見通すときに、当然産業投資特別会計からの出資及び投資というものはふえる状況であるという考えであります。それに対しては、対米債務支払いのために原資が削られることは別にして、別に財源措置は当然考えるべきだと考えます。
  58. 武藤山治

    ○武藤委員 そうなりますと、別な財源考えるべきだというその別な財源にいろいろ問題があるわけです。私は、一般会計から、従来通り以上、不足だからといってぼかぼか出すのは反対なんです。それは、理由はあとで話しますが、租税原則からいって、そういうことは国民大衆に迷惑をかける金の使い方だと私は思うのです。税金ですからね。それとは別な方法として、それでは政策的に必要な場合に充当できる原資はどういう方法で発見するか、あなたの構想ではどういう原資調達の方法を考えておるか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 方向、趨勢としては、投資、出資の額が増大するであろうということは今認めたわけでありますが、これは来年度の政策の重点をどこに置くか、また住宅金融公庫は幾らというようなものは、十一月、十二月になって、三十八年度予算の編成のときに当然考えられる問題であり、現在の段階で、来年度を見通して、産業投資特別会計の新たな財源が幾ら要るであろうというような推定は、現在のところは困難であります。
  60. 武藤山治

    ○武藤委員 私は大臣に数字のことを聞いておるのじゃない。どういう方法で調達をしたらいいかという調達方法について、大蔵大臣ともなれば、二千八十五億円の金をアメリカへ返すのですから、その後、産投会計にどういう手当をしたらいいかとか、これはどういう調達方法をしたらいいかくらいの構想はおそらくお持ちだろうと思うのです。もし持ってないとしたら、ちょっと大臣としては――なに、その場だけ済ませばいいんだ、あとは野となれという考え方では、国民は安心して信頼できないような気がするのです。が、そこらの調達のめどというか、あなたの構想でいいですが、どういうものを持っていますか。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  先ほども申し上げましたように、産業投資特別会計法では、財源となり得るもの、出資となり得る対象を列挙しております。また必要があれば、これの改正案を提出をして御審議願い、国会の議決を得られるならば、別な財源もこれに加えられることは当然のことだと思うのです。そういう意味で、新しい事態に対処しながら、また国民各位の御意見も聞きながら、当委員会の御審議状況や皆さんの御意見も聞きながら、一般会計から当然繰り入れるほど投資及び出資の対象が重要であるか、またそれよりも、別に産投国債を発行してそれによって得るというようなものが妥当であるか、他に求め得る財源があるかというのはこれからの問題でありまして、現在こういうものがありますということを申し上げるのは適当じゃない、こう考えます。
  62. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう抽象的な答弁をされておりますと、これは質問にならなくなるわけでありますが、それではまず、一つ外債の問題、国債の問題からお尋ねいたします。  もし外債で資金調達をした場合、外債の金利というものを考えた場合に、一体現在のような長期低利資金日本産業基盤を強化しようというこの産業投資特別会計の趣旨に合致するだけの資金が調達できるか、その点どうか。  第二は、もし国債を発行して内国債でやる場合に、今の株式市場の金利、配当、そういうようなものを考えた場合に、コストの低い金利で、一体これらの機関に出資ができるかどうか、そういうような点などを一体どのように考えておるか。もしそれが、もう初めから、利息は高くてだめなんだということになれば、全部一般会計におんぶするという答えが出てきますからね。そこらの見当というのは、あなたの考えではどう考えておりますか。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  ただいまの御質問は、新しい時点に立った産投会計原資の問題をとらえられて、現在よりもより安い原資をどうして得るかという問題であって、産投から対米債務を払うということに対しては言及せられておりませんから、御質問の部門に対してだけお答え申し上げますと、産投会計から出資もしくは投資をする相手方がいかに重要であるかということによって、そのウエートの置き方によって、開発銀行から融資した方がいいのか、産投から出資ができる相手なのか、またそれに対しては利子補給を行なった方がいいのか、一般会計からの繰り入れで低金利の資金を仰ぐべきかということは、その内容によってこれから検討せらるべきだと考えます。
  64. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは現在の国債金利、国債発行の場合の金利ですね、そういうものは今どのくらいで、それから産投会計から借り受けていろいろ使用する場合の金利は幾らで、その利ざやがどのくらいになるか、理財局長でもいいです。
  65. 稻益繁

    稻益政委員 内国債で申し上げますと、応募者利回りは六分四厘三毛であります。それから現在行なっております類似と申しますか、いわゆる政府保証債の場合が応募者利回りで七分九毛六糸、かようになっております。
  66. 武藤山治

    ○武藤委員 産投会計から住宅金融公庫や農林漁業金融公庫に出資をしておる、この出資額は、出資ですから、無償でいっているわけです。そうすると、もし国内債を発行するということになりますと、この利息はやはり何らかの形で負担しなければならぬわけですが、そういう点は運用益金の中から利子負担して、そして出資金として出してもいいという、そういう場合も考えておるわけですか。理財局はどうですか。
  67. 稻益繁

    稻益政委員 現在のところでは、産投会計原資と申しますか財源として、現実の問題として実は国債を考えておらないわけであります。従いまして、そういう場合の数字は現在は算定いたしておりません。
  68. 武藤山治

    ○武藤委員 池田首相も二日、三日前に国債を発行しないということを言明したようでありますから――先ほど大蔵大臣は、方法としては外債や国債、借入金があるとは申しましたが、今の池田内閣が存続しておる限り、そういう方法はとらぬということを総理が一応は言明したようでありますから、そうなりますと、ガリ・エロの返済を運用益金で充てていきますと、穴が出ることはわかっているのですね。その穴は埋めなくとも運用はつくんだという判断に立っておるのか、それとも当然もう穴があくというはっきりした判断に立っておるのか、理財局長考えはどうでしょう。
  69. 稻益繁

    稻益政委員 事務的に私ども検討いたしておりますところでは、固有原資として若干が、例のガリオア債務を弁済いたしましたあとで、なお残るという計算になっております。たとえて申し上げますと、三十八年度、これにつきましては約四十数億の固有の原資がある。もちろん従来の金額に比べますと、非常に減少するわけであります。この点、先ほど大蔵大臣がお話しになりましたように、原資自体は縮小して苦しいという事情はあるわけでございます。
  70. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、あなたは原資が縮小してもいいという、なかなか思い切った答弁をしておりますが、あなたの前任者の宮川理財局長は、まだそう古くない四月十九日の大蔵委員会質問に対して、はっきり答弁をしておるわけです。ガリ・エロを返済をすることによって、「その分だけは運用収入が減ります。従いまして、もしかりに、政策上他に出資あるいは融資をしなければならぬといたしまするならば、それだけの原資は、何らかの方法をもって調達しなければならぬことは御指摘の通りであります。」そしてそのことは理財局として困るかどうかという質問に対しても、私の方としては非常に困るのだ、こういうことを言っておるわけです。あなたとしては三十八年は四十数億円の不足で、三十九年からはやはりその程度の不足で、何とか一般会計からそれほど繰り入れなくとも間に合う、そういう見通しに立っておるのか、それとも三十九年になると、今度は百五十八億払うのですから、これよりもさらにずっと、七十八億円ふえるのだ、こういう考えでおるのか、そこらはあなたの考えはどうですか。
  71. 稻益繁

    稻益政委員 あるいはただいまの説明に言葉が足りない点があったかと存じますが、私四十数億足りないと申し上げたのではございませんで、固有原資が四十数億程度ある。従って、ことし程度の財政投融資、なかんずく産投会計からの五百億というような出資をするということになりますと、財源が大いに不足する、こういうことになると思います。
  72. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、財源が大いに不足するということだけははっきりしたわけでありますが、そうなります。と、先ほど平岡委員からも二百三十億円は固有原資がないのだから、このうち対米債務に返済をしていくということになりますと、これはもう年々産投会計としては大へん苦しいやりくりをしなければならぬわけです。一方産業界はさらに基盤強化をしなければならない、あるいは環境衛生や水道をずいぶんやらなければならない、事業はますますあって、おまけに見返資金の方から運用益が持っていかれるということになりますと、これは結局一般会計から財源は持っていくつもりではないのですか、そこら辺はどうでしょうか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 お答え申し上げます。先ほども申し上げました通り産投会計の将来における重要性というものを――原資はいずれの方法をとるかということは、これから一つ皆さんの御意見を十分拝聴しながらきめて参りたい、こういうことであります。
  74. 武藤山治

    ○武藤委員 そこまで質問をしてみますと、これはやはり一般会計から繰り入れていくのだという魂胆は、もうわれわれとしてはわかったわけです。そうなりますと、政策的見地だ何だと言ってみたところで、国民の税金から埋めていくということだけは明らかですね。そうなってくると、見返資金積み立て原資、元金は食いつぶさないのだ、利息で払えるのだと言ってみたものの、その見返資金はすでに日本産業の血となり肉となって、もうどの金がどうというような区別もつかない。日本経済復興のために作用をしておるわけですから、それはそれなりに別として、一般会計からその分を年々埋めなければならぬという情勢なのですから、それをこねくり回して産投会計から対米債務を払う必要はないという結論が出てくるのです。どうせ一般会計から繰り入れなければならぬということになれば、やはり税金で払ったことと結果的には同じなのです。ただ見返り資金が積んであったから、その金から払っておるのだという印象国民に与えようとしてごまかしておるにすぎない。その点産投会計から出して、あとはもう一般会計からは繰り入れないというなら話はわかる。ところが足りない部分は一般会計からどんどん持ってこようというのですから、これは二重払いになる。幾ら隠蔽しようとしたって隠蔽できないじゃないですか。それでも二重払いというのはいやだから、やはり見返資金を積み立ったその会計から払うのが合理的なんだ、正しいのだ、妥当なんだ、大臣は合理的で妥当だというけれども、私はどこにその合理的な妥当性というものがあるかわからない。そこまで聞いていくと、(「わかっちゃいるけどいえないんだ」と呼ぶ者あり)ヤジが言っているように、わかっちゃいるけれども言えないというならば、これまた国会を侮辱した話なんですから、わかっておったらそこらも一つはっきり言明をすべきだと思うのです。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 わかっておりますが申し上げられないというのではございません。もちろん国会を侮辱する意思などは毛頭ありません。今のお話をもう少し平たく考えていただくとだれでもおわかりになる議論だと思うのです。産投会計原資が足らなくなるから、よしんば一般会計から繰り入れるということになっても二重払いにはなりません。私は明らかにそう思います。なぜかと言いますと、産投会計の必要性というものは新しい政策的な投資及び出資が必要であるから原資の補てんを行なうということであります。現在幸いに二十八年に承継をした見返資金特別会計財源があって、これが現在運用せられておるという現象に過ぎないのです。でありますから、六千億の運用財産のうち、四千億もあるうちから二千八十五億返すのでありまして、二重払いではありません。二重払い論というものは、普通に言うならば見返資金特別会計から承継をしたものはそのまま政府がとってしまって、新たに対米債務を返済するために特別税法等をつくって、国民から政府が徴収した場合、政府国民に対して二重払いを要請したということは言い得ると思いますが、産投会計の中に非常に大きなウエートを持っておる原資一つである見返資金特別会計から引き継ぎの資産が重要であって、対米債務を返済しないで済むならば、そのままずっと運用していけるものが返さなければならないという新しい時点に立って考えるときに、当然必要性があるから、別の投資のために別の財源を得るということで、よしんば一般会計から繰り入れても対米債務の返済というものとは全然関係なくお考えになることが正しい議論だと考えます。
  76. 武藤山治

    ○武藤委員 対米債務と全然関係ないというけれども、これは大いに関係があるのです。というのは、見返資金から出てきた運用益あるいは開発銀行の納付金、そういうものはみな根本は見返資金から生まれてきた。しかし生まれてきた果実は、これはアメリカへ返さずに従来はそっくり日本産業に使っておったわけです。ですから見返資金から生ずる年々百五十八億円からの運用益金は、全部血となり肉となって日本産業にしみ通っておるわけです。観念的にはこれは確かに見返資金から出た果実だということはわかる。しかし一般会計からも二千億も入っている。ほかの納付金からもいろいろ入っている。そういう原資から生まれてきた果実の中で、従来国内で使っていたものを今度は使えなくなる。使えなくなったために一般会計からほかの理由をくっつけて、足りなくなったからといって出すのですから、これはやっぱり出さざるを得なくなった原因は何かといえば、対米債務返済のために足りなくなってくる、必要になってくるのですから、この金だけは必要なんだとどんな理屈をつけていってみたところで、やはり間接的には国民が税負担をさせられることになるのではないですか。これは全然国民の税負担に関係ないというけれども、よく大臣に認識してもらいたいのは、従来は運用益金が原資になって使えたわけですから、その分だけ一般会計から持ってくるということは、これはどうしたって売り上げ代金を税金と、国民は二重払いになるのではないですか。ただ理屈をくっつけておるにすぎない、こういうことじゃないですか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 産投会計一般会計から繰り入れた場合、二重払いになるという議論を立論されるような、非常にうまい御立論をされておりますが、これは二重払い論というのは、私は根本的に起きないのではないかと考えております。これは日本アメリカにかつて一ぺん払ったのだが、もう一ぺんこの協定によって払うという場合に初めて二重払い論が起きるのであって、産投会計の中に今運用せられておるものが返済期に来てこれを返済する。そのために非常に原資が枯渇をしたために、別に財源を得ても、それがあえて二重払いになるという議論は起こらないというふうに考えます。  これは別のケースで考えて、お互いの生活の中で一つ援用してみますと、銀行から金を一億円借りて投資をして会社の資産がふえておるということになります。その返済期が来たときに、返済金はその運用の中の固定資産を売却して、売却収益をもって返した場合に、もちろんそのまま運用しておれば会社やお互いの利益は、今の産投会計と同じようにどんどんふえてはいきますが、その運用資産を売却して返済に充てても一向二重払いにならないし、よしんば別の金融機関から新規に借り入れて返済しても二重払いにはならぬ、こういうわけです。
  78. 武藤山治

    ○武藤委員 私は少々そこは見解が違うのですが、主権者の国民の立場に立って納税ということを考え、あるいはものを買った契約という二つの問題があるわけですが、払い下げ物資を代金を出して買った主権者、同時に税金として納めた主権者の立場から見れば、これはやはり一回代金で払っておいて、また一般会計が足りなくなったからといって産投会計で今度は政策目的だといってごまかしてそれに注ぎ込んだのでは、税金でとったり、売り上げ代金でとったりしてけしからぬじゃないか、だから一般会計から全然繰り入れないのなら私は二重払いにならぬと思う。ところが一般会計が足りなくなるとどんどん注ぎ込んで百五十八億円結局埋めていくのですから、そうすると税金を払う人の立場から見れば二回とられることになるでしょう。だから二重払いになると二回とられたことになるでしょう。そういうことを言っている。しかしあなたの方は何とかそんなことにならぬようにという説明で、いつまでも平行線ですから、それは二十一日、二十二日にまた先輩が質問すると思いますからその議論は一応やめたいと思いますが、とにかく産投会計という全然異質の目的を持った特別会計からガリ・エロを払うということは、会計原則を乱しておると私は思いますが、大臣はその点は、会計原則とかあるいは財政法とか、そういうようなものの精神を忠実に解釈をし、忠実に守ろうという考え方に立った場合には、それでも産投会計から出すことは全然そういう財政法を乱すような懸念はないのだ、そう言い切れるだけの確信を持っておるのですか。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。私は、対米債務がこの産投会計法改正を前提として支払われる場合、財政法の違反でもなく、精神をゆがめるものでも全然ないという考えでございます。これは先ほど申し上げた通り、また御発言がありましたように、この会計経済産業、貿易の振興のために作られたのであるから、その定款を変更しろといっても幾らでも変更したらおかしいじゃないか。私鉄が私鉄法に基づいてやっているものが、ビルを建て何を建てるというのは会社の設立の精神に反する、財政法上の精神にも反するようなお考えであります。が、なぜこの特別会計から払わなければならないかという問題の前提をなすものは、私は結局日本アメリカ両国の間に協定が結ばれて、しかも戦後十七年間の今日までわれわれの生活の基盤を築くために相当大きな寄与をしたものに対して、新しい時点に立って両国が合意に達して協定を行ない支払いをしよう、いわゆる対米債務支払いに応じようということでありますから、そのときに国内では二重払い論という今のあなたの議論がなされておるわけであります。しかし、政府側から言いますと、二重払いどころではなく、これを全部払ってもなおかつ払った金額を上回るようなものが原資として残っておるのです。これが十年、土十年、百年、千年と続く場合に、われわれの生活に寄与するものがいかに大きいかという立場に立っておるときに、一部においてさえも二重払い論があるのでありますから、これは国民に対してすっきりした気持で、二重払いではないという確信を持って対米債務支払いに応ずるためには、そのもととなる返さなければならない、いわゆるその返済に応ずるというもとになる金額が、現存をする産投会計のバランスの上にはっきり残っておるわけであります。しかも現在運用されており、国民はこれに対してこの現実を認めておるのでありますから、この会計の中から、これだけの原資原資として、そうしてこの中から払ってなお余りがありますというふうに、国民の理解を得るためにも、この特別会計から支払うことが妥当なり、こう断じたわけであります。
  80. 武藤山治

    ○武藤委員 今大臣の答弁の中で、私鉄の営利会社の定款を変更するというようなそういう比較をされることは、私は政治家として少し感覚がどうかと思うのです。やはり政治家というのは、営利を目的とする会社のような、会計法があったり特別会計という原則があっても、そんなものは多数をもってきめさえすれば変更は幾らでもできる、性格変更してもかまわぬという、そんな考え方で、国民から負託されておる政治家が、法律というものを見られたのでは、私は国民はえらい不安を持つと思うのです。それが問題なのです。あなたの今の答弁のような考え方で政治を処すということ自体に、私たちは問題があると思う。たとえば産投会計目的というものは、貿易の振興、産業開発とはっきり法目的があるのですよ。そういう法目的に沿うような方法で政治を処理するのがあなたの立場でなければならぬ。なに、変更さえすれば性格などなんとでも変えられる。それは多数党は女を男にし、男を女にする以外は何でもできるといわれるのですから、それはできるかもしれませんけれども、しかし、国民がすべてこれに賛成しておるという、うぬぼれた認識をすることは、私は間違いだと思う。政治家はもっと謙虚でなければならぬ。国民の三分の一は少なくともわが党を支持しておるのですから、その三分の一の人たちでもやはり国の政治を監視し、特に大臣の発言を十分注視する権能はあるわけですから、そういう国民というものも十分考えて発言してもらわぬと、性格なんかどうでも変えられるのだ、私鉄の定款を簡単に変えられるということではちょっと困ると思う。やはり財政法の大原則である目的にはずれるような危険のある、疑いのある行為は慎んだ方がいい。私たちはそういう考え方に立って追究しておる。  そこで、次の質問に入っていきます。が、大臣も御存じだと思いますが、昭和三十一年に賠償等特殊債務処理費という特別会計ができました、この特別会計ができた目的と申しますか、この会計は何を処理しようと考え法律でしょうか、この目的一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  その前に、今の私鉄の問題を申し上げますが、私は私鉄の定款と一緒に考えたことは全然ございません。これは私の舌足らずかもわかりませんから、あしからず御了承願います。私が先ほど申し上げようと思いましたのは、この産投会計法の第一条にいろいろと財源が列挙してあります。この中に「米国日援助見返資金特別会計からの承継資産から生ずる収入金」とういうものがあるわけです。今度の対米債務というものは、二十八年からこの特別会計の中に入っておったものを対象にして払うというのでありますから、この運用収益がずっと計上されておるこの特別会計から払った方がより合理的だ、こういうふうに申し上げたのでありまして、これは誤解のないようにお願いしたいと思います。  なお賠特の問題は、御承知のように法律に規定してあります通りに、今まで払いましたような賠償に関する経費をこの中から支払っていくという特別会計であります。
  82. 武藤山治

    ○武藤委員 賠償に関して支払う、そういう会計だというけれども法律目的はその賠償だけですか。
  83. 上林英男

    ○上林説明員 お答え申し上げます。賠償等特殊債務処理特別会計法の第一条に、この会計処理すべき対象が規定されておりますが、これによります。と、「本法が連合国との間に締結する条約に基いて行う賠償」、それから「及びこれらの国民に対し、戦争の遂行の結果又は戦争の遂行若しくは連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務で平和の回復に伴いその支払を要するものの処理に関する政府の経理を一般会計と区分して行うため、特別会計を設置する。」ということになっております。
  84. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、大体賠償等特殊債務処理特別会計で払わなければならないような問題は、今の法律の朗読によって三つあると思うのです。一つは、条約に基づいての賠償及び財産の補償、第二は連合国及びその国民に対し戦争の遂行上の結果生れた負債、さらに第三には、連合国軍隊による占領に関連して負担する債務、大きく分けて大体この三つですね。そうなりますと、ガリ・エロというのは、この第三番目の連合国軍隊による占領に関連して発生した負担だ、こう私は認識をいたしますが、その点は私の認識が間違いでしょうか。
  85. 上林英男

    ○上林説明員 この賠償等特殊債務処理特別会計処理をいたしまするのは、平和の回復に伴いまして処理を必要といたしますると考えましたそういう特殊債務を一般的な類型といたしましてとらまえまして、この会計処理をするという目的をもちましてつくったのであります。従いまして、もちろん当時におきましては、ガリオア・エロア債務であると心得られてはおりましたけれども、確定をいたしたものでございませんので、当初の特別会計処理対象として明確に取り上げたかどうかという問題はございますけれども、一般的な類型といたしましては、御指摘のように、この特別会計処理するということも考えられておったと申しますか、一般的な類型としてはこの概念の中に当てはまり得るということもあると思うのでございます。
  86. 武藤山治

    ○武藤委員 一般的概念からいえば、最も法規を忠実に検討し、法規の運用をはかっておる法規課長が言うのですから、私は特に信頼をしたいのでありますが、一般的概念からいけば、これで処理するということが考えられたでありましょう、こういうのですね。「国の予算」というこの大蔵省の発行しております書物によりましても、この中でもすでにアメリカの対日援助というものはこの特別会計で払うような想定をしているのですね、こういう文書の中で。その中ではっきりいっているのは、戦後アメリカより受けた援助物資の代金返済の問題があると説明までしているわけです。もちろんそれ以外に賠償を初め、連合国財産返還補償、中立国損害補償、特別円の処理のほか、戦後アメリカの云々、こういうように書いてある。ですから一番無理のない常識的なノーマルな会計処理とすれば、こういう特別会計というものを法律で定めたのですから、これを利用するのが、これに当てはめていくのが一番法律を忠実に守る会計処理の仕方と思うのであります。そういう点ではいかがでしょうか。
  87. 上林英男

    ○上林説明員 ガリオア等の債務等につきましては、政府におきましてたびたび御答弁申し上げておりまするように、米国日援助見返資金特別会計を引き継ぎました産投会計におきまして、見返資金の関係の収入をもって返済をしていくのが最も妥当である、こう考えているわけでございます。御指摘の賠償等特別会計につきましては、これは本来一般会計が負担をいたします特殊債務、従いまして、賠償等特殊債務処理特別会計一般会計繰り入れ財源といたしまして返済をいたしていくわけでございますので、そういう意味におきまして、その性格も異なっているわけでございます。従いまして、政府といたしましては、このガリオア・エロアの返済を産投会計で支払うことを最も妥当であると考え、そのためにこの債務産投会計の負担であるということを明定をいたし、この支払い自体も産投会計処理するように改正案をお願い申し上げているということでございます。
  88. 武藤山治

    ○武藤委員 法規課長は、大蔵大臣総理大臣のたびたびの答弁説明にある程度気を使っているようであります。が、そういうことでは、法規を立案する立場上公平な判断を下す人とはいえなくなりそうです。最初答弁は一般的、原則的にはこれで処理するのがいいと言っておきながら、最後には見返資金の積立金を使うことが一番妥当だなんという大臣になったような答弁をしておりますが、これはけしからぬと思うわけであります。こういう特別会計をわざわざ法律できめるからには、ここはやはり一応通していくのが会計規則の上からいったら、そういう原則を乱さない道だと思うのです。だから特別会計の見返資金の運用益から入れるというなら、それを通じて、これから払ってもいいのではないか。それは二重払いだ、いや、アメリカに対してうまくないという気がねをしている。すなわち、結論的には、アメリカをあまり国民から悪者にされないような形で、しかも借金もなしてやろう、こういう配慮をあまりにも丁寧にし過ぎて、親切にし過ぎて産投会計に無理やり変更させる、こういうところにやはり無理があると思うのです。やはり一般的、原則的にはこの特別会計で出すのがいいという、そういう常識的な判断で私は会計というものは処理しなければいかぬと思うのであります。そういう点を十分一つ大蔵大臣には反省をしてもらって、まだこれが参議院に回るまでには日があることですから、十分一つ検討し直してもらいたいと思うわけです。  次にちょっと質問をいたしておきますが、アメリカとの債務だからこれは見返資金から払うというけれどもアメリカ以外の国のも間接的には見返資金あるいはガリ・エロの今度の協定の中で払っているものがあるわけですね。午前中ちょっと申し上げましたが、英連邦軍が日本援助物資として出した物資がありますが、それの支払いというものに対しては、もし担当者がおらなければ法規課長でもいいんですが、どういう方法でイギリスに支払いをしましたか。
  89. 上林英男

    ○上林説明員 御質問の英連邦軍の払い下げ物資でございまするが、これは御存じのようにかつて貿易資金特別会計がございました当時、貿易資金の運用といたしましてその特別会計で買い入れをいたしたものでございます。その後その代金につきましては、昭和二十六年度以降支払いをいたしております。その支払いにつきましては、午前中に御指摘がございましたように、二十六年度におきましては、一般会計の貿特残務整理費で支払っております。と申しますのは、今申しました貿易資金特別会計自体はその後貿易特別会計になっておりますし、その貿易特別会計が廃止されました後は、その債権債務一般会計に引き継ぐことになっておるわけでございます。従いまして、一般会計の貿特残務整理費でもって支払ったわけでございます。その後二十八年度におきましては平和回復前後処理費がございまして、これによりまして支払いをいたしております。二十九年、三十年も同様でございまするが、その後三十一年に至りまして賠償等特殊債務処理特別会計ができまして、これができまするにあたりましては、その目的等にかんがみまして、平和回復前後処理費の一般会計支出残額に相当する金額をこの特別会計へ持って参りまして、その一般会計の平和回復前後処理費の、平たい言葉で申しますると、これをこの特別会計で承継したというような格好になっております。従いまして、三十一年におきましては、この賠償等特殊債務処理特別会計支払い、かつ三十二年度におきましても同様支払って、その債務を完済したということになっております。
  90. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣ただいまお聞きになったと思いますが、イギリス軍の払い下げ物資は、今のように賠償等特殊債務処理特別会計に引き継いでいって、ここから払っている、アメリカのものだけは産投会計で払っていく、こういうものの考え方が一貫性がない、会計原則というものを乱している、そう思うのですが、あなたはどうお考えになりますか。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま法規課長からお答えをいたしました通り、一番初めは別な特別会計で払っておったわけであります。その別な特別会計一般会計に引き継ぎを行ないましたから、一般会計にこのワクは移って、一般会計のその分だけを賠特の会計に移したので、賠特から払っておるということであって、順を追った筋をたどっていかれると、賠特で払っても初めから賠償特別会計で払ったということではないことを御承知願えると存じます。
  92. 武藤山治

    ○武藤委員 これは法的には前の法律が廃止になって新しい法律ができたから、それに法律は引き継いだかもしれぬ。しかしその金というものは年々予算でもって一般会計から決議をして出しているわけですね。だから、もしイギリスとのが貿易の金だというならば、賠償等特殊債務処理特別会計なんかに貿易の金を入れるというのはおかしいのですよ。やはりこれは払い下げ物資という、ガリ・エロと性格は大体同じものなんですよ。イギリスの場合にはちゃんと会計原則を守って支出をしておって、アメリカの場合だけは額が大きいからとかなんとかいう理由だけはくっつけるかもしれないけれども、そういう会計原則を守らない、産投会計という全く違う法律に持っていくという、その考え方が法律を全くめちゃくちゃにしておる、こういう非難を受けても私は仕方ないと思うのです。その点はどうですか。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま御説の通り法律が廃止をされない場合には、当時存在をした特別会計から払われておったわけであります。その債務が全部支払いを終わるまでその法律があり特別会計がある場合には、当然賠特会計に引き継ぐ必要はなかったわけでありますが、その後残務整理も非常に小さくなり、一般会計に引き継いで、一般会計で引き継いだものをそのまま賠特に移して、移したということをもって賠特会計から支払われておるということであります。またガリオア・エロアの問題は、現に産業投資特別会計が活発に動いておりまして、それでその債務の元となった資金産投特別会計の中で現に運用せられておるのであります。これがただいまの対英の問題のように、産業投資特別会計が廃止をされて一般会計でこれを継承し、そして賠特にこれが移されたというような場合になると、前のケースと同じケースでありますが、現在産業投資特別会計は現存しておるのでありますから、この産業投資特別会計から払うのがより妥当だ、こういうふうに考えたわけであります。
  94. 武藤山治

    ○武藤委員 産投特別会計が現にあるから産投会計から払うのがいいという理屈は成り立たぬです。そうなったとすれば、イギリスの軍隊の払い下げ物資だってみんな当時同じ会計に入って見返資金の中に入ってしまっているのですから、当然その中から出すべきですよ。当時もあったんですから。二十八年から産投会計があるのですから。そういうものは別に処理して、今度だけは産投会計があるからという理由で新しく手をつけるんだからというんだったら逆に考えていいのじゃないですか。賠償等特別会計法があるんだからそちらを活用してそれで処理するというのが一般会計原則に忠実じゃないのですか。大臣の考え、逆じゃないですか。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  どうもあなたのお考えが二重払い論に導く議論でありますからそういうふうな見方も一応成り立つと思うのです。が、私たちは二重払いにはならないのだ、そして対米債務というものが現在二千八十五億という数字が積算されるわけでありますが、返さなければならないという理由が生じた元金というものは今どこにあるのかというと、どっかへ全部いってしまって国民が米にして食ってしまったとか、いろいろな使途に補助金を使ってしまって国民の財産に全部分けてしまってどうにもならない場合には、当然特別税源とか一般財源でもってまかなうということになるわけでありますが、このものは現在産業投資特別会計の中にバランスの上にきちんとあるのであります。現在それが運用せられておるのであります。そういう意味で二重払い論に対してはその特別会計で支払うことを負担とするという議決を賜わって、その法律の決定によって同会計から支払えば国民の方々も納得しますし、なおそれを払っても二千億になんなんとする原資が残っておるということを明らかにするためにも、産業投資特別会計で払った方がいい、こういうふうに考えたわけでございます。  もう一歩進めて議論する場合、それにしてもとにかく賠特で払え、払った方がよりいいというお考えの場合にはどうするかというと、産業投資特別会計の中の見返資金分を一般会計にまた引き継いで、それを賠特に再投資をするか、もしくは産業投資特別会計の中の見返資金分の運用収益を一般会計から繰り入れる以外に賠特に入れることができるという法律改正を行なって、賠特で二重の手数をかけてやるということをとらないと、あなたの言うような二重払い論ではないという議論にはどうにもならないのでありまして……(武藤委員「それが正しいのだ、その正しい方法をとらぬところに問題がある」と呼ぶ)その二重、三重の手間をとらなくても、国民は現在あるものが、現にここにあるものの半分を払うんですと言えば、二重払い論はなお全然起きない。回り道をしてかえってごまかすようなことをしないで、はっきり、借り受けたものはここにあります。運用収益はこれだけあります。これが十五年間で返すものもこの半分で返せるのですという、同特別会計の中の処理が正しい、こういう考えでございます。
  96. 武藤山治

    ○武藤委員 あなたはそう詭弁を弄しますが、水田前大蔵大臣がこの前にやはり大蔵委員会でいろいろ質問責めにあったときに、大蔵大臣自身が、結局産投から出す一番大きなわれわれを説得する理由としてあげたのは何かというと、大した理由はないのですよ。前大蔵大臣のあげた理由は、非常に複雑さが増されるから、複雑さを避けるために、簡単に産投でやりました、特別の勘定を設けてやることが、会計原則としてはいいとは思うけれども国民が見返資金を積んであるというので安心をしてくれると思うから、まあ、そこから出すのがいいと思うというようなことを言っているわけですね。こんなのは理由にならないのです。私が言っておるのは、せっかく国会でつくった特別会計法という法律があるんだから、そういう法律を忠実に守りなさい、行政府だから勝手に法律を守らないで、別にまた目的が全然違う法律をこね回して性格を変えるなんていう、これこそかえって複雑な政治権力万能主義なものの考え方で、すでにつくった法律を忠実に守ろうとしない傲慢な態度だと私は思うのです。こういうような今の政府のやり方というものは、十分私どもは反省をしてもらわなければいかぬ、こういう考え方に立っておる。先ほどから賠償特別会計というものをせっかくつくったんだから、そのつくった目的は何かと言えば、「国の予算」というこの書物にも書いておるように、アメリカなどの対日債務もこれで処理するというのがいいというようなことを書いているのですから、国から出す書物と時の政府のやることがちぐはぐなような結論を出さぬように、私どもは十分監視をしなければいけないということを今度の問題で痛感をいたしておるのです。しかしこれ以上いろいろお尋ねしてみても、考え方の相違だ、並行線だということで最後は片づけるから仕方ないと思いますけれども、しかし私どもはまだまだ二十一日、二十二日、二日の間に、あるいは二十三日になるかもしれませんが、今の政府のやり方というものが国民を欺瞞する手段として産投会計を使っておるということを十分明らかにしなければならぬと思います。  大臣には一応その程度にして、開銀の総裁がせっかくお見えになっておりますので、一つお尋ねをしておきたいと思いますが、結局産投会計からガリ・エロを払っているということになりますと、その一番基礎になる収入は何かというと、開銀からの納付金だと思うのです。開銀からの納付金がスムーズに入らないということになりますと、この返済に非常に困る状態が出てくるわけであります。  そこで開銀納付金の年次別の状況というものを調べてみますると、三十六年が百十億、三十五年が百三十億、三十四年が百二十五億、二十八年からずっと調べてみますると、まあ百億台を割った年もございますが、とにかくここ三年間は百二十五億、百三十億、百十億という納付金を出しておるわけです。そこで今開発銀行が融資をしております。会社別にございますが、その一つ一つの業種別の融資内容や、あるいは延滞状況ども、本来ならばお聞きしたいと思ったのでありますが、そこまでこまかい点を総裁に聞くのはちょっと失礼かと思いますから、御遠慮申し上げますが、こういうような納付金の趨勢というものが、これからさらに相当増加する傾向にあるのか、それとも今海運界の利子補給の問題なども話題になっておりまして、五年間現在の利息を半分に負けてくれ、こういう運動が行なわれたかと思うと、今度はそれじゃ少な過ぎる、五年間まるまる利息は免除してくれという運動にまで切り変わってきたようであります。が、そういうようなことになりますると、なかなかこの納付金もそう順調な上昇カーブをたどって入るということが想像つかなくなるのでありますが、今開銀が各業種別に貸し付けておる預金の状況からいって、納付金というものは今後そういう心配はない、海運界にしても、石炭にしても、その他の産業界にしても、利息を負けてくれといわれても、開銀としては困るんだ、とにかく納付金はこれだけは出さなければいけないんだという決意でいくのか、そのままほうっておいてずっといくのか、そこらのあなたの見通しを一つお聞きしたいと思うのです。
  97. 太田利三郎

    ○太田説明員 今お話ありましたように、開発銀行の納付金は、過去数年間百二十億台、あるいは百四十億くらいになったこともございますが、本年度は大体百三十億円、こういう見込みでおります。これは利息収入と、それから経費を差し引いた残り、それから貸し倒れ準備金を差し引いた残りを政府に納入するということでありまして、結局利子収入がどうなるかということに帰するかと思います。  開銀の方の状況でございますけれども、御承知のように、これは率直に言って、はなはだ不振でございます。われわれとしましても大へん心を痛めている問題でございますが、利息収入自体に関する限りはほとんど延滞なくきている。現在におきましても、利息収入の延滞と申しますのは、約七千万円しかございません。もっともずっと昔に一時利息の徴収の猶予をいたしまして、その善後処置といたしましてまだ四億くらいのものが残っております。が、これは逐年減って参りまして、六十億近くありましたものが現在四億まで減っております。これは逐次減っていく、年次別に減っていく、こういうことになっております。  それで、今後の海運市況の状況でございますが、これはなかなか予測がつきません。物資の輸出入もふえておりますし、輸送量もふえておりますので、積み取り量自体はだんだんふえて参りますけれども、運賃レートがかんばしくないというようなことで、業績はなはだぱっといたしませんけれども、まあ利息収入は今後も何とか従来通りくらいのものは入るのではないか。これ以上ひどく悪くなりません限りは、利息収入については変わりはない、大体こういうふうに思っております。  それから石炭でございますが、これも海運と並んで、開発銀行の融資対象の中ではなかなかめんどうな業種でございまして、現在もある程度利息の延滞がございますけれども、これは目下石炭調査団がいろいろ結論を出そうとしております。それに応じましてどうなるかわかりませんけれども、今後現在程度のものは維持できるのではないか。こういうことから考えますると、百三十億円程度の納付金というものは大体維持できるのではないか。それはこの貸付残高が今後だんだんふえて参りますので、多少ずつはふえて参るのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  98. 武藤山治

    ○武藤委員 もう一点太田さんにお尋ねいたしますが、開銀といたしましては、産投会計の方からの出資額を近い将来にふやしてもらいたいというような御希望は、今のところは全然おありないわけですか。
  99. 太田利三郎

    ○太田説明員 これは現在二千三百四十億の出資をいただいておりますので、金利をもっと下げるという立場から、もっとふやしてくれ、こういう考えは今のところ持っておりません。さしむきのところは今後の資金不足は資金運用部からの借入金でまかなえる、こういうふうに思っております。
  100. 武藤山治

    ○武藤委員 私どもは一番不可解に思っているのは、産投会計からいろいろ各機関に出ておる、そういう機関の責任者を一応出頭願って、それぞれのこれからの資金需要の見通し、産投会計からどの程度の出資金があれば現在の需要にどの程度満足を与えることができるかとか、そういうこまかい点を調べていかぬと、一般会計から繰入金を政策的にどんどん出されるという危険があるわけであります。そこで、私どもとしては一般会計からとにかく産投会計繰り入れる額というものは、ガリオア・エロアの返済を始めてから急激にふえるというようなことは断じて許せない、そういう立場から今後田中蔵相の施政というものを十分一つ監視しながら、国民の税金が税目的以外の形に使われるという、融資などに多額を使われるという施政に対しては、今後租税制度の上からも十分監視をしていきたい、かように考えます。とにかく今回のガリオア・エロアの返済金を産投から出すということに対しては、どうもこれは筋の通らぬ、会計原則を乱しておる処置だという非難を私どもは持っておるのです。そういう非難に今後十分こたえられるような考慮を十分望んで、きょうはあと井手先輩もおりますので、私の質問はこの程度で終わりたいと思います。
  101. 臼井莊一

    臼井委員長 次会は来たる二十一日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会