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1962-10-18 第41回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十月十八日(木曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 上林榮吉君    理事 有田 喜一君 理事 岡本  茂君    理事 神田  博君 理事 始関 伊平君    理事 中川 俊思君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 中村 重光君       有馬 英治君    倉成  正君       藏内 修治君    齋藤 憲三君       白浜 仁吉君    周東 英雄君       中村 幸八君    井手 以誠君       滝井 義高君    松井 政吉君       渡辺 惣蔵君    伊藤卯四郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         運輸事務官         (港湾局参事         官)      岡田 良一君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         参  考  人         (佐賀県知事) 池田  直君         参  考  人         (長崎県知事) 佐藤 勝也君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団団長東京大学         名誉教授)   有沢 広巳君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団東京大学名誉         教授)     青山秀三郎君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団日本経済新聞         社主幹)    円城寺次郎君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団朝日新聞社論         説委員)    土屋  清君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団早稲田大学教         授)      中野  実君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団日本開発銀行         副総裁)    平田敬一郎君     ————————————— 九月四日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として松  井政吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 九月二日  一、鉱山保安法の一部を改正する法律案井手   以誠君外四十九名提出衆法第三号)  二、ぼた山崩壊防止法案井手以誠君外四十九   名提出衆法第一〇号)  三、石炭対策に関する件   の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(伊万里湾ボタ処理問題  及び石炭鉱業調査団答申に関する問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、石炭対策に関する件については、将来いろいろな問題で参考人出頭を求め、意見を聴取いたさなければならない場合が多いことと存じますので、この際、閉会中の参考人出頭要求については、その人選、出頭日時等をあらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、先般理事との協議に基づきまして、本日は午前中に伊万里湾ボタ処理の問題について、参考人として佐賀県知事長崎県知事の御出席をいただいて御意見伺い、また午後には、石炭鉱業調査団団長有沢広巳君外団員方々の御出席をいただくこととなっておりますので、御了承願います。      ————◇—————
  4. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際、去る九月に本委員会より石炭鉱山等実情調査のため九州委員を派遣いたしましたので、派遣委員より報告を聴取することといたします。  それでは、私が団長で参りましたので、便宜本席より報告させていただきます。  先般行なわれました九州地区現地調査の結果を御報告申し上げます。  去る九月九日より十四日に至る間、福岡県、佐賀県及び長崎県における石炭鉱山の実態、石炭鉱害被害状況産炭地域現状並びに現地における切実な要望等を直接把握するため、委員長上林山榮吉君外八名が参加され熱心に調査を行なって参ったのであります。  現地より参加された自由民主党の藏内修治君、倉成正君、木村守江君、日本社会党中村重光君、多賀谷真稔君、滝井義高君、井手以誠君民主社会党伊藤卯四郎君とともに視察を行なった個所は、日鉄瀬鉱業所三井田川鉱業所船尾地区炭鉱住宅国見地すべり地帯伊万里土地造成予定地帯国見炭鉱三菱高島鉱業所日鉄伊王島鉱業所三井三池鉱業所等々でありまして、この間、博多を初め各鉱業所県庁等において懇談会を開き、関係方面よりそれぞれの立場に立っての要望等を十分に聴取したのであります。  今回の視察は、石炭調査団答申を目前に控え、現地のなまなましい状況を体得し、今後の石炭問題解決の上に貴重な参考とするため行なったものでありまして、現地の予想以上に深刻な切迫した事態をひしひしと感じて参った次第であります。ゆえに、特に現地におもむいて痛感いたしましたところを申し上げます。  九州石炭事情は、御承知の通り、全国の約半分、二千七百二十万トンを出炭しておりますが、開発の歴史が古く、炭鉱は老朽化し、事業団の買い上げや採掘終了による閉山が多く、激動しておる現状であり、従って鉱害及び盗侵掘や古洞による災害問題が続発しております。特に当該地区の特色として、炭鉱数三百十五のうち、大手は三十七で、月産三千トン以下の小炭鉱は実に二百の多きを数え、しかもその出炭量はわずかに九州出炭量の七・三%にすぎないのであります。  かかる背景のもとに、昭和三十八年までに出炭五千五百万トン、千二百円コスト・ダウンの石炭鉱業合理化目標を達成せねばならず、九州産炭地は筆舌に尽くしがたい危機に直面しておるのでありまして、合理化計画進行に伴い多くの中小鉱山廃閉山のやむなきに至り、必然的に大量の炭鉱離職者発生を見ることとなり、その数は、昭和三十六年度雇用促進事業団で受け付けたものだけでも三万六千人に達しております。  また、石炭鉱業に依存しておる地方自治体関連産業中小商業者等の疲弊も日を追って深刻化し、鉱害発生ボタ山崩壊等も加わり、産炭地域は想像を絶する惨状を呈しておりまして、この際一日も早く確固たる石炭政策を樹立することが目下の急務であると痛切に感じて参ったのであります。  次に、現地における要望の骨子を申し上げますと、一、総合エネルギー政策を早急に樹立し、国内炭地位を確立すること。二、石炭産業近代化を促進し、企業の安定を期すること。三、石炭需要確保拡大をはかること。四、離職者対策の万全を期すること。五、石炭地域振興を積極的に行なうこと。六、石炭鉱山保安確保すること。七、石炭産業に関連する商工業者に対する保護措置を講ずること等々であります。  以下、これらについて感じました点を申し上げます。  一、石炭鉱業の安定について。  エネルギー革命による石炭鉱業の窮状を打開するには、わが国唯一エネルギー源たる石炭地位を明確化し、国産資源活用の精神にのっとり、国の助成のもとに鉱区の調整、統合及び未開発炭田開発等、あらゆる施策を講じ、現在進行中のスクラップ・アンド・ビルドを根幹とする合理化計画をさらに強化し、炭鉱体質改善をはかり、近代化を促進することが必要で、これには、近代化資金及び開発銀行中小企業金融公庫等石炭鉱業向け融資ワク大幅拡大措置を講ずべきであると存じます。これは言うまでもなく、石炭需要拡大をはかる上にも、石炭鉱業の安定を期する上にも欠くことのできない問題でありまして、電力、鉄鋼、セメント業界長期引取量確保するとともに、家庭用炭暖厨房用炭需要を喚起するよう強力な指導を行なうべきであります。  このほか、産炭地火力発電所並び共同火力発電所建設を早急に推進すべしとの声が強いのは当然のことでありますが、韓国に大規模な発電所建設し、大量に石炭を消費せしめるような方法も、流通機構の思い切った確立とともに、今後の課題として検討すべきであると考えるのであります。  二、離職者対策について。  石炭鉱業の不況に伴い炭鉱離職者も激増し、福岡県においてはすでに十数万人をこえ、さらに今後なお数万以上の発生が予想され、今や社会の大問題となっている実情であります。かかる実情にかんがみ、抜本的な離職者対策を樹立することが急務でありますが、特に中高年令層の再就職広域職業紹介職業訓練住宅確保等について万全の措置を講ずるとともに、雇用奨励金訓練手当別居手当等、諸手当の増額をはかることが必要であると存じます。  なお、炭鉱離職者が行なう果樹、園芸、養鶏、養豚等に対しても、資金補助貸付を行なうよう措置すべきであると考えます。  離職者吸収策としては、系列企業への吸収、各種の国家的事業への優先雇用等措置を講ずべきであり、現在福岡県では産炭地振興道路建設工事吸収すること等が計画されておりますが、これは一白数百人の雇用にすぎないと思われるので、近く着工が予定されている九州縦貫道路工事にも優先して離職者を常用すること等も考えなければならないと存じます。  また、職業訓練所等のあり方についても十分検討すべきであり、たとえば、伊万里地区並びに松浦地区を一本化した上で内容の充実した訓練所を設置すること等であります。  三、産炭地域振興について。  疲弊した産炭地域振興をはかるには、抜本的な地域ごと産炭地域振興対策を確立し、その実現を期すべきであり、また産炭地域振興事業団業務範囲拡大し、鉱工業のみでなく、工業用水、農業及び観光開発等も含めた産炭地域振興施策が実施できるよう措置するとともに、これに伴い特に大幅な国家の投融資が期待されているのであります。  なお、種々の悪条件をかかえて悩んでいる産炭地市町村についても特段の措置を講じ、地方自治体の財政を健全化すべきであると存じます。  四、炭鉱納品未収売掛金処理について。  終閉山炭鉱が続出している産炭地域における中小商工業者がこうむる影響はきわめて大きく、その前途は暗たんたるものがあります。特に炭鉱納品未収売掛金は九十七億円余に達し、現行石炭鉱業合理化臨時措置法では、これら売掛金に対しては何らの保証もない状態であります。かかる不安を一掃するため、国において適切なる保護措置を講ずる必要を痛感したのであります。  最後に、ボタ山処理に関して申し上げます。  現在九州地区において、管理責任鉱業権者にあるボタ山だけで約千四百あり、そのうち、保安注意を要するもの八十カ所となっております。しかるに、これら注意を要するボタ山処理は全く不十分であると思います。早急に防護措置を講ずるとともに、臨時石炭鉱害復旧法等を改正するなど法的措置を講じ、災害を未然に防止すべきであると存じます。  この際、これに関連して一言申し上げます。佐賀県においては、ボタ山を利用して伊万里湾沿岸土地造成を行なっているのでありますが、伊万里湾口長崎福島中興鉱業では何らの防護施設もなしにボタ海中に放棄しているのであります。佐賀県では鋭意土地造成港湾の整備を行なっている際、湾の入口でこのようなことが放置されたままになっていることはまことに遺憾でありまして、広域経済圏造成が強く主張せられている今日、かかる事態をすみやかに解消するよう両県当局善処方を強く要請いたしておきます。  以上で報告を終わりますが、次期国会において以上の各問題点等を十分検討されますようお願い申し上げ、報告を終わります。  これにて派遣委員報告は終わりました。      ————◇—————
  5. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。  伊万里湾ボタ処理問題について質疑の通告がありますので、これを許します。  本日、本問題について参考人として、佐賀県知事池田直君、長崎県知事佐藤勝也君の御出席をいただいております。  両県知事には、公務御多端のおり、わざわざ本件調査のため御出席をいただきまして、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。両県知事には、本問題処理のため、この際忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、これより質疑に入ります。井手以誠君
  6. 井手以誠

    井手委員 ただいま委員長からなされました本特別委員会石炭対策に関する現地調査報告の末尾にございました伊万里湾ボタ処理に関してお伺いをいたしたいと思います。  それに関して、きょう佐賀池田知事長崎佐藤知事にはお忙しいところおいでをいただきましたことをお礼申し上げます。私がきょう両県知事お尋ねをしますことは、問題をあくまで追及しようというのではないのでありまして、佐賀長崎両県は、過去においては一つの県でございましたし、今日ではお互い助け合わねばならない隣県でございます。両県相助け合ってこのボタ処理に当たってもらいたいという念願のもとにお伺いをするのでありますから、そういうお含みでお答えをいただきたいと思うのであります。  今委員長から報告のありました伊万里湾は、かつては佐世保の軍港と争ったほどの良港でありまして、重要港湾でございました。ちょうど一升びんのような格好をしておる重要港湾でございますが、きょう問題に取り上げまする福島は、その咽喉を施しておる島でございます。私は、この伊万里湾の西海岸並びに入口の多くの炭鉱がどんどんボタを捨てて、せっかく大事な良港である伊万里湾がだんだん浅くなっておる、漁業被害が非常に大きいという訴えを四、五年前から聞いて参りました。そこで、あの辺の一帯が中小炭鉱零細炭鉱であるというむずかしい問題はありますけれども、このまま放置できないというので、私は福岡鉱山保安監督部長に対して何回となく現地調査を願い、対策を求め、また佐賀県知事にも、少なくとも自分の県だけについては、公有水面埋め立てに関しては十分の管理を願いたいという注意を促して参ったのであります。そして若干その点については進行して参りました。ところが、先般私ども調査に参りましたところ、その伊万里湾咽喉部に当たる福島中興鉱業ボタ山、あるいはまた、その反対側海岸にある土肥ノ浦その他のボタ山海中に山をなしておる状況でありまして、これではせっかくの伊万里湾も大へんなことになるのではないか。のど口にああいうボタ山ができたのでは、伊万里湾はいかに改修をしても、改築をしても、だめになるのではないかという心配をいたしたものは、私だけではございません。今報告になった委員長も、その点については非常に関心を深めて、わざわざその近くまで見に行かれたのであります。また佐賀県、長崎県においては、昨年からその点についての打ち合わせも行なわれておるようでありますが、たとい石炭事情がどうあろうとも、そのボタ山ボタ処理のために伊万里港湾が今後その機能を発揮できないということになりましたら、これは大へんです。産炭地として振興しようとする伊万里にとっては大へんでありますし、また漁業関係にとっても大へんです。ところが、私は実は今さっき佐賀からこっちに着きましたが、けさその汽車の中で地元の新聞を読んでおりますと、こういう訴えが載っておるのです。「ボタ漁獲量が減る」という見出しのもとに、今申した長崎福島中興炭鉱とは反対側にある鯛の鼻炭鉱ボタ捨てが、何らボタ捨てに関する措置が講ぜられておらないために、そのボタのために漁獲がどんどん減って漁民が非常に騒いでおるという記事が、大きく載っておりました。長崎県においてはそれぞれ言い分もあるでありましょうが、佐賀県から見ますと、これはちょうど自分玄関口に隣の人がじゃまものを、あるいはちりあくたを捨てたような格好にもなるのでありますから、これはやはりお互いに助け合うという意味で、一つ最善の努力を長崎佐藤知事さんにも私はお願いをしたいと思う。これらの状態について、まず長崎県の佐藤さんから一つ考え方をお伺いしたいと思います。
  7. 佐藤勝也

    佐藤参考人 北松浦郡の私の方のボタ関係につきまして、いろいろ地域の発展に関連いたしましてお尋ねがありましたことに対しまして、私見を申し述べます。  御承知のように、私ども離島をたくさん持っております。そしてそこにおいて石炭産業は、基幹産業として大きな役割を果たしておる面もあるわけであります。御承知のように、石炭採掘の場合、石炭と一緒に出て参りますボタ処理ということは、それ自身大切な問題でありまして、どこかにこれを捨てなければならない。ところが、それがほかに影響があってはいけない。まず一番大きいのは通常、漁業でございます。私の方におきまして埋め立ての申請がありますと、まず漁業関係調整に最も力を入れまして、大体その地域漁業者の同意を得た上で、そのほかの港湾上の支障があるかないかということでこれを免許いたしておりますことは、ボタ処理という点からやはりやむを得ない点だと思います。そこで、このボタ処理と、やはりそういう島々は地域が非常にございませんので、埋め立てをさして、ある意味におきまして一石二鳥をねらうと申しますか、そういった考え方もございまして、公有水面埋め立てを認めておるわけであります。この埋立工事は、埋め立てをいたします土量最初から十分でありますとき、それからそこの海岸が遠浅で非常に浅い場合は、最初からさくを設けまして徐々に埋めていくという方式もあるわけでありますけれども、非常に深いところは、一定の量になるまでとりあえずそのボタをずっと堆積するわけです。そして一挙に埋め立てる。そのときにさくをいたしましてやることが技術的にもいいのじゃないかということで、福島の場合も、今海に流れておる土量より、むしろ、うず高く積み重ねておる量が多いわけでありまして、あの地域相当水深があるものですから、いよいよあの大きな土量を下におろしまして埋め立てますときは、しっかりした壁を設ける必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。ただいま漁業者に関する問題と港湾に関する問題があったわけでありますが、むろんわれわれもそういった点は十分に注意いたしておりまして、あそこの対岸との距離、相当水深のある点から、今の現状が直ちに、何と申しますか、港湾支障を与えておるというふうには実は考えておらぬわけでありますけれども、しかしながら、それを放任することについてはどうかという考えはむろんあるわけであります。実はこの問題につきまして、私ども直ちに技術者を派遣いたしまして現状調査さしております。最後埋め立てますときは、ちゃんと区画をつけまして防壁を設けてそして埋め立てることに許可条件をいたしております。この問題は佐賀県との関係も非常に密接な問題がありますから、よく地元方々意見も徴し、また港湾関係でありますと、港湾管理者の御意見もあろうと思いますから、関係者十分協議を遂げまして、そういったことのないように、御心配の点が将来起きないように十分善処いたしたいと考えております。これからいよいよ埋め立てるわけでありますから、その場合にどうするかという問題、そういう問題を、地元市町村、お隣の佐賀県はむろんでありますが、港湾管理者、そういった各方面人々意見を徴しまして善処いたしたいと考えております。
  8. 井手以誠

    井手委員 現状認識の点について、若干私どもと違う点があるようであります。長崎県の端島であり、高島であるところの海岸埋め立て、それから伊万里湾入口である福島ボタ捨てとはだいぶ趣が違うのです。私この間、五島の福江に慰問団で参りました。その際にもずっとあの辺を見て回りましたが、あの辺のボタ捨てと伊万里湾とは大へん違うということ、その辺に、長崎県側の若干の違いがありはせぬかと考えるのであります。今、現状について知事さんからお話がございましたが、あそこは海岸——ここが海岸でありますならば、水深はこんなに深くなっております。この海岸のところからボタを捨てるならともかく、海の中に山のようにボタができているのですよ。そのボタというのは、こんなふうに水深が深くなっておりますから——十五メートルくらいございますか、斜めになって深くなっておるところにボタを捨てますと、あれだけ山になるまでには、常識として、よほどのボタの量が海底に流れておらねばならぬ。あれだけの山をつくるには、よほどの量が海底に流れて堆積しておらねば、あれだけの山はできないはずです。その流れたボタというのが伊万里湾入口に堆積して水深が浅くなるという心配を私どもは持っておる。いま一つは、あの北松炭田の炭質の特徴として、あれが、七年、八年、十年たちますと、風化作用を起こして、あの山になったボタ山崩壊作用を来たすということが、保安当局でも非常に心配をされておるのであります。私はあとでまたいろいろとお尋ねをしたいと思いますが、今あなたは、あと埋め立てをする時分に護岸をすれば足りるじゃないかというお考えのようでありますけれども、私は、それではもう護岸をするときにはボタがどんどん湾の大事なところに流れ込んでしまう、それを非常に心配いたすとともに、あと建設省にもお伺いしますが、まず護岸をやるべきじゃないか、護岸が先であるのか、埋め立てが先であるのか、いろいろ議論もありましょうけれども、少なくともボタを捨てる場合には、同時に並行して護岸をやっていくことが正しくはないか。あなたが心配されるように、水深が深くなればなるほど、やはり護岸工事が必要じゃないか。私が見たところでは、あすこには捨て石もしていないようです。その辺に少し考えの違いがありませんか、佐藤さん。
  9. 佐藤勝也

    佐藤参考人 私ども技術を担当しておる者の意見としては、非常に遠浅で平面のところは先にさくをつくって一挙にやることが可能なんですね。ところが、ああいう深いところ、しかも、ボタの量が一挙に埋め立てをするほどないのです。毎日少しずつ出てくるのですから、ある程度ああいうふうに堆積しまして、そうしておいて一挙に埋め立てる。そうしないと、ちょうどうしろにあいておる格好になるものですから、そこで今のところは、ボタが流れていっておる地区というのは埋め立て予定地よりもっと低いわけです。今度もう少し先につくるわけですが、そういうふうに私ども考えておるわけです。ボタがあれだけ堆積しておりますので、いよいよ今度は本物の埋め立てということになれば、むろんしっかりした壁をやらなければならぬ。そうしてこれにはいろいろ見解があろうから、鉱山保安方々、それから今おっしゃる港湾支障があるという問題は港湾管理者、それから地元のそういった人々とこれは一つよく協議を遂げまして、みんなが納得のいく線でやらなければならぬ。実はこの問題につきまして現地の方から私の方へまだお話が正式になかったものですから、調査団の方のお話があったので、私の方も、そういうことがあってはいけないので、実は地元の意向もいろいろ徴しておるわけです。やはりもう少し関係者が話し合っていくべきじゃないか、私はそう考えております。そうして最終的において、あなたの御心配のないようにしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  10. 井手以誠

    井手委員 関係者が話し合ってということがございましたが、私どもはもう四、五年の間話し合って参りまして、残ったのはあなたの方だけなんです。私が今四、五年前と申しましたのは、四、五年前からそれを取り上げて佐賀県側には埋め立ての条件の履行を迫って参りました。ところが、佐賀県側の五つ六つの炭鉱業者はこう言うのです。何で佐賀県だけやかましいのですか、何で佐賀県だけ埋め立て護岸工事をやかましく言うのですか、見てごらんなさい、向こうの長崎県の福島炭鉱ではああいう状態じゃございませんか、こう言って、非常に佐賀県に不平を持っておる。そこの足並みをそろえるのが大事だと思って、きょう来てもらったのです。  そこで少し進みまして、建設省の方にお伺いをいたします。  現地は、先刻来申し上げたように、重要港湾でありますけれども、問題の福島ボタを捨てておる場所は、重要港湾の外になっております。ちょっとはずれております。埋め立て関係建設関係だと思いますので、河川局長にお伺いしますが、ここは公有水面埋立法の施行令に書いてある狭水道でもあるわけです。いわゆる水道のようなところでもあるわけです。まずお伺いしたいのは、この重要港湾入口にあるような海岸線の埋め立て、そういう場合の埋め立て知事が免許する基準というものは、埋立法の精神からどういうふうになっておりますか。護岸をまずやれとか、あるいは並行してやれとか、そういう基準がなくてはならぬと考えますが、その辺の建設省の基本方針をまず承っておきたいと思います。
  11. 山内一郎

    ○山内説明員 公有水面埋立法で免許する場合、いろいろなほかに及ぼす影響につきまして考えなければいけないということは当然でございますが、この地域において考えられますことは、漁業に対する影響の問題、それから航路維持といいますか、そういう二点にしぼられてくると思います。従って、その免許する条件においては、その二つは必ず守るような、たとえば護岸の施設というものは当然条件に付すべきであると思います。
  12. 井手以誠

    井手委員 そこで、護岸が条件につけらるべきであるという今のお話からお伺いいたしますが、知事の話では、毎日々々出てくるボタを、一ぺんにはできないから、ある程度まとまったところで埋め立てをして護岸をやるというお話がございました。しかし私は、先刻来申し上げておるように、少なくとも海岸ボタを捨てる場合には護岸が同時に並行して行なわれなくてはならぬと思います。護岸だけをまっすぐりっぱなものを高く築けとは私は申しませんけれどもボタを捨てるその場所の高さには当然護岸が並行して行なわれなければ、それがどんどん海中に放棄される、流出するというおそれがございますから、護岸工事は必要だと考えます。建設当局はどういうふうにお考えになりますか。
  13. 山内一郎

    ○山内説明員 護岸工事は当然必要でございますが、そのやり方についてどういうふうに考えるかという点で、いろいろ考え方があると思います。たとえば非常に深いところにまず護岸をつくる、そういうことになりますと、護岸建設といいますか、こういう点で非常な経費を要する。しかし問題は、先ほど申し上げましたような二点に影響のない、許される範囲内におきまして、やはり護岸建設費というものをできるだけ安くすべきではなかろうか、こういうふうに考えます。従って、ボタをある程度捨てまして、その基礎のもとに護岸の立ち上がりをやって経済的な護岸をつくる、なお、しかしそのボタ海中に流れない限度に仕事を進めていく、そういうふうに考えますと、最初ボタがある程度先行いたしまして、その次の護岸の築造というものは、護岸の高くなるにつれてボタを逐次捨てていくべきである、こういうようには考えます。ただ、先ほど長崎県の知事さんがお話になっていることを聞いておりましたが、ボタが連続的にたくさん出てこない。そういたしますと、護岸を先行した場合に、やはりせっかくつくった護岸がこわれる、こういうような事態も起こると思います。従って、安全なところにある程度貯蔵いたしまして、先ほど申し上げましたような護岸をいわゆる先行していく、こういうことが一番望ましいのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  14. 井手以誠

    井手委員 写真で一つ見て下さい。ボタをあるところに貯蔵しておいて、護岸がしやすいようにというお話がございましたが、海の中に山のようにボタが積まれているのですよ。捨て石もしてないのですよ。土砂の防止施設もしてないのですよ。つまり、どんどん海の中に入っているのですよ。そういう場合には少なくとも捨て石をし、ボタが流出しないような設備をしてボタ山をつくるべきではないでしょうか。あなたに聞いておるのは法的根拠でございますが、実情に即するという点もございましょうから、私はやさしくお聞きをしておるのです。そんな山のようになったところに、何の施設もしてないのですよ。それは中興炭鉱ボタ山です。海中に山のようになっておるのです。何もしてないのですよ。やはりどんな深いところであろうと、まず捨て石をして、捨てたボタが外に流れないように設備するのは、これは常識です。知り合いですから私はあまり言いたくないのですが、やはりきちっと基礎だけはしておかないと、あとでお隣の池田さんと話される上にうまくいきませんから、私少しお伺いしておきたいと思うのです。  河川局長、山のようになっておるのですよ。それは海岸の山から、ずっと上からボタを捨てたものではありません。海の中に山ができておるのですよ。写真を三葉差し上げておりますが、どれも見てごらんなさい、海の中に山のようにボタが捨ててあるのですよ。そこに護岸の設備がしてないというのはおかしいじゃありませんか。それを、ボタが集まったら何とか護岸をやりますからというのではおさまらないでしょう。そういう場合の建設省における基本方針を重ねてお伺いしておきます。
  15. 山内一郎

    ○山内説明員 ただいま写真も拝見いたしましたが、これは全部海の中になっているかどうか、こういう点はちょっと写真では判定しにくいのです。それから護岸の点も、私どもの方で直接調査したことはございませんが、今後調査したいと思います。ただ、お話を聞くと、護岸も逐次建造されつつある、こういうことでございまして、こういう点は今後非常に問題になる点も多うございますので、直接調査をした上明確な答弁をしたいと思いますが、いろいろ長崎県の話を聞きますと、護岸も逐次されつつある、それからボタも全部海の中ではない、乗り出したところの個所は逐次護岸で固めつつある、こういうお話でございますので、そういうことが事実であれば、それはまあ許されるべき範囲ではなかろうか、こういうように考えます。ただ、もう一度直接調査いたしまして、いずれまたの機会に明確な御答弁をしたい、こういうように考えます。
  16. 井手以誠

    井手委員 河川局長、せっかく忙しいところを両県知事も見えておりますから、調査をした上というわけにはいきません。よく写真を見てごらんなさい。どこから見ても海の中ですよ。海の中に三角形のボタ山ができておるのです。海岸に沿って、傾斜地に沿ってボタ山があるわけじゃございませんよ。一番ボタ山の高いところを逐次護岸をしているというお話でございますが、見てごらんなさい、護岸はしてございませんよ。そこまでボタが捨てられておるなら、水面近くまでは常識として護岸がなくちゃならぬはずです。私だけで承知ができぬようですから、一つ委員長、証言して下さい。あなたが見たところ、どんなふうにしておったか。委員長の証言ならば河川局長も納得がいくでしょう。
  17. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 それでは、河川局長に私から申し上げましょう。この問題は、今井手委員が言われるように、私も現地近くで見たので、それこそ測量したわけではないから、その意味においては若干違う点もあるかもわかりませんけれども、目測してみたところでは、ボタ山伊万里湾口の方に向かって半島のように高く積まれておることだけは事実ですね。それから護岸もそれに関する限りは見えていない。これは事実なんです。そういう意味で、私の見たところを、一行に加わった委員の一人として言えというから、この程度のことを申し上げておくけれども、これを参考に答弁できるならば答弁願いたい、こういうふうに申し上げておきます。
  18. 井手以誠

    井手委員 ただいま委員長から目測のお話がございました。その通りです。今そこに写真に見えておりますように、それだけの高いボタ山が、水面には何ら護岸の設備はないのです。これだけでもはっきりするでしょう。そうすると、潮が入るときや波浪の強いときに、そのボタがどんどん移動することも考えなくてはなりません。そういうやり方が公有水面埋立法の法の精神にかなっておるかどうか、もう一回あなたに基準をお聞きしたい。
  19. 山内一郎

    ○山内説明員 明確な御答弁は私の方で直接調査してからいたしたいと思いますが、現にこのボタ海中相当深く流れ込んでいるかどうか、これが問題点になるわけであります。県の写真によると、一部護岸もできております。海面の方には護岸はないようでありますが、側方に一部護岸ができておるようでございます。従って、このできてないところの個所のボタ相当海に入っているかどうか、こういう点が問題の焦点になろうかと思いますが、その辺のところは、直接十分調査をやった上で御答弁をしたい、こういうふうに考えます。
  20. 井手以誠

    井手委員 私もとことんまで言おうと考えておりません、問題だけ明らかにしておきたいと思いますからお尋ねしておるわけです。  この機会に一つ佐賀県ではどういうような対策を今日まで講ぜられておりますか、またこの問題についてはどういうお考えでありますか、その点を承っておきたいと思います。
  21. 池田直

    池田参考人 佐賀県の方も、先ほど来いろいろ御意見の中にありましたように、伊万里湾一帯に山を持っておりまして、そのボタを利用いたしまして埋め立て関係も戦前からやっておるところでございます。従いまして、御意見にもございましたように、このボタを捨てて埋め立てする場合は、漁業関係にまず非常な影響がある、それから港湾関係、航路関係等につきましても非常に影響がありますので、戦前におきましては、このボタ土砂の流出防止の対策といたしまして、護岸築造をなして埋め立てをやっておったところでございます。しかし、戦後は、まず土砂ボタを捨てまして、そして埋め立てがほぼ完成する前に護岸の築造もやむを得ぬということで、少しゆるめて参ってきておったわけなんでございます。ところが、漁業関係あるいは航路関係等につきましても影響考えられますので、三十五年以降でございますけれども護岸築造といたしまして埋め立てをやるなりボタを捨てるなりということに改めて参ったところでございます。そこで、戦後の、護岸あとにするという、そうしたことから影響を受けまして、埋め立ての条件の、護岸築造を先にやるということがなかなか行なわれにくかったわけなんでございます。従いまして、私どもといたしましてもこの監督取り締まりに困っておったところでございます。最近この面で強く指導をいたしておるのでございますが、一部まだやはり不十分な点もございますけれども、今日では護岸築造を先にやらせるということでやっております。  それから今問題になっております福島町の、ちょうど伊万里湾の湾口にあります山のボタ捨ての関係でございますが、この点につきましては、佐賀県側といたしまして、埋め立てをやる場合に護岸を先にやれということで、県内の方につきましてやかましくやったわけでございますが、お隣の長崎県では護岸あとになっておるのだ、佐賀県ばかりどうしてやかましくこれを取り締まるかという不満が相当あった次第で、さようなことで実はお隣の長崎県側に対して、いろいろの御事情もあろうかと思いましたけれども、昨年の十二月、長崎県と佐賀県の両県の協議会、これは佐賀県の県庁におきまして開いたのでありますけれども、いろいろ共通の問題等を取り上げて県政の円滑なる運営に資するということが主たる目的でございますが、この両県の協議会の席上におきまして、この問題につきましても、佐賀県といたしましてこういうような事情だから、一つ歩調を合わせてやっていただきたいということを御要望申し上げたような次第でございます。
  22. 井手以誠

    井手委員 それでは問題をしぼってお聞きしますが、長崎県知事さんに、この福島炭鉱——実は福島炭鉱だけではなくて、鯛ノ鼻の炭鉱あるいは対岸の北松浦郡の土肥ノ浦その他のボタ山の問題ももちろんあるわけですが、そういう埋め立ての条件はどうなっておりますか、お伺いをいたします。免許されている条件はどういうふうに付されておりますか。
  23. 佐藤勝也

    佐藤参考人 公有水面埋め立ての免許の場合は、そういう防壁を最終的につくってきちんとするようになっておりますが、やはりこれは地形的な問題もありまして、あの深いところに、まだボタもないときに一応さくをつくれといいましても、一度台風がくればすぐやられてしまうのですから、要するに、伊万里湾佐賀県側の方とは少し事情が違うのではないかと思います。でありますから、技術的に、さっきも申し上げましたように、一ぺんに埋め立てるだけのボタはないのでありますから、海の中の深いところだけをやって、それからぼつぼついくということは、経費も非常にかかることでありますし、また石炭産業の非常に困窮している時期でもありますから、そう無理なことも言えない。ただ、これが他に重大なる支障を与えるということが現実にあればまた考えるということもありましょうけれども、そこで最終的には深く外壁をつくって治めることになっておるのですが、それまでは積み重ねていく。これが幾分海の方に入っていることも事実と思いますけれども、それが今直ちに伊万里湾の港口を狭くしたとかいうことはないと思います。ほおっておけばそうなることもあり得ると思いますけれども、私どもはそういうことにしないことを念頭に置いてやっておるわけでありますから、大へんその点は先のことをお考えになっての御心配のことでありますので、実は佐賀県と長崎県と協議の結果、両土木部長の方でよく研究して善処することになっておったのでありますが、いろいろ石炭問題や、それ以外の離職者の問題等もあるものですから、そういったことに私どもが専念するひまがなかったといえばなかった、そういう事情でありますが、いよいよ安定産業として落ちつくことになれば、やるべきことはやらなければならぬ。そこはやはり石炭産業現状から、あまり不経済なこともやらせられない。だから私どもが猶予するというのではないのです。技術者もおりますから、技術的に持っていこうということでいいんじゃないかと考えておったわけです。  ところで、いかがでしょうか、私の意見は。この問題についてほんとうに鉱山保安部、それから建設省、航路では運輸省の関係もありましょうし、そういう人たちに集まってもらって早急にこれをしなければならぬが、どこから始めるかという問題もありましょうし、よく現地実情をお調べ願ってやっていきたい。最終的には井出さんのおっしゃるようにしたいと思います。ともかくあの深いところに、ずっと先につくって、ぼちぼちやるといっても、これは大へんなことなんです。ほっておく意思はむろんありませんが、ぼちぼちボタも出します、いよいよ今度埋めていいんじゃないか、その場合、正式に海面に平準化していく場合、これはつくることになっております。これはつくらしたいと思っております。それ以前に一ぺん皆さんの御意向もいろいろ聞きたいと思っております。
  24. 井手以誠

    井手委員 関係者で話し合うという結論的なあなたのお答えですが、それもけっこうでしょうが、県会で御答弁なさるように、ここではおさまるわけには参りません。深いところだからどうにもしようがないということでは、そういう考えでは、ちょっとここで私も引き下がるわけには参りません。深いところであって、護岸工事ができないから問題なんです。そんな深いところに護岸工事ができるかといえば、実際はできません。それじゃ炭鉱がいつまであるかといえば、もし不況のためにつぶれた場合はどうなりますか。護岸工事は全然できなくなりますよ。  もう少し私は話したいが、その前に確かめておきたいのは、あなたの方の条件は、一、埋め立て完了以前に早急に護岸工事を完了すること、二、埋め立て施業に関し土砂流出防止の対策を講ずること、三、埋立地は工業用地とする、この三点は間違いございませんか。
  25. 佐藤勝也

    佐藤参考人 その条件は聞いております。
  26. 井手以誠

    井手委員 深いところだからなかなかやりにくい、こういうお話でございますけれども、それじゃいよいよ埋め立てにかかる、工事にかかる場合に、それが実際できますか、深いから実際はできませんよ。もし不況になって炭鉱がやまったらどうなりますか。大へんなことになりますよ。私も炭鉱関係の議員でございます。私がけさの汽車で来たのは、炭鉱のことで走り回って用事があったためにおくれました。私も同じように炭鉱は何とかしなくちゃならないという立場ですが、そうかといって、このボタ山をほうっておくわけには参りません。もうボタが少ないからというお話でございますが、見てごらんなさい、山をなしているじゃないですか。幾らでも護岸工事をするだけのボタは山のように出ておるのです、写真に明らかなように。  そこでお尋ねしますが、一番目の、早急に護岸工事を完了することという条件は、これはやらせるというお話、二番目の、埋め立て施業に関し土砂流出防止の対策を講ずること、これは励行されておりますか。
  27. 佐藤勝也

    佐藤参考人 ですから今は、どんどんボタを埋めるというためではなくて、あすこに一応堆積させるという過程なんです。その一部がむろん海にいくことはやむを得ぬでしょうが、どんどん今海に埋めるという段階でなくて、一応ボタを、おそらく陸地の方から始まったのでしょうが、堆積している状況になっておる。いよいよ本式にある程度埋め立てるに近いようなボタの量が集まれば、今度は海にいくというふうに技術当局がいっておるわけです。私は技術的にそれでいいんじゃないかと思っておるのですが……。
  28. 井手以誠

    井手委員 ボタ山ボタが少ないから護岸ができないと言うわけにはいかないでしょう。これだけボタがありますよ。それで、あなたの方の公有水面埋め立ての免許の地域というのは、大体このボタの少し先の方です。これから百メートルも二百メートルも先まであなたの方が免許されたわけではございませんよ。ちょっと先までしかございませんよ。公有水面埋め立ての免許ぎりぎりのところまでボタがきていますよ。そうであるならば、これは護岸工事がやれないはずはないのです。これがどんどん下の方に下がって、どのくらい下がっておるかわかりませんよ。また、風化作用を起こしてどどっとくずれる場合もありますよ。はたして将来この護岸工事が完全にできますか、十何メートルのところに。実際はむずかしいのです。だから私結果的に申し上げたいのは、こういう大事なところにはボタ捨てをやるべきじゃないと私は申し上げたいのです。もっとほかに地域はなかったのかと私は申し上げたいのです。話し合いもいいですけれども、おれの方はもう海が深くてとてもしょうがないんだ、こういう考えならば、幾ら話し合いをしたって私はまとまらぬと思う。その先までどのくらい海に流れ込んでおるかわかりませんよ。この下には捨て石はしていないのです。あなたの方は条件の中に書いてある。土砂流出防止の対策を講ずることという条件がついておりますが、何もしてないですよ。少なくともあなた、捨て石はしなくてはならぬでしょう。深いところに捨て石はないですよ。それはどうですか。捨て石がありますか。  それからもう一点聞きますが、将来そういう深いところの護岸ができますか。あなた確約ができますか。りっぱに護岸ができますか。三十八年までの約束ですが、三十八年までに護岸工事がりっぱにできますか。もし不況のため炭鉱がやまったような場合は、だれがいたしますか。この点をお伺いいたしておきます。
  29. 佐藤勝也

    佐藤参考人 ですから問題は、要するにでき上がってしまったあとなら問題はないと思うんですがね。
  30. 井手以誠

    井手委員 私の質問に答えて下さい。三点の質問に答えて下さい。
  31. 佐藤勝也

    佐藤参考人 やはりあの整理をさせることになっておるのですから、それはさせますけれども、ただ問題は、あなたのおっしゃる港湾を狭くするという問題があれば、これは根本的に考えなければならぬ問題であるからして、関係者意見も十分徴しなければならぬと思います。また、場所を変える問題もありましょう。港湾支障のあるということが、あなたの今の御議論の前提でしょう。その点が多少われわれと見解が違う。私ども港湾支障のないように結論をつけ得ると思っているのですから。今の状態は、あの広い場所は深いのです。ですから、伊万里湾の港口をふさいでいるのは、はたしてあのボタ、あれが直ちに狭くするのか。何と言いますか、伊万里港が埋まってくるのはほかにも原因があるのではないかと私は思う。そこで私は、それは専門家の意見を徴したいと思います、あなたは、あのボタが何か伊万里湾をふさぐ唯一のもののようにおっしゃるけれども、そこに私はやはり議論の開きがあると思うのです、率直に申し上げまして。ですから今のあの条件が、直ちに伊万里湾の港口をふさぐというふうに結論されての議論だと、少し私どもも疑問を持つ。ただ、あのままでほうっておく意思はありません。おっしゃるように防壁をつくれという、それをやるべき時期に来ていると私は思う。そしてそれをやるについては、そういう重大な影響があるとすれば一ぺん各方面の意向も聞いて、そうしてどういうふうにするということも一つ話し合ってやることが必要じゃないでしょうかね、将来に悔いを残さないために。私どもはそういうふうに考えています。伊万里湾の港口をふさぐ意思はありません。ふさがないようにと私は思っておりますから、どうぞ一つ御了承を賜わりたいと思います。
  32. 井手以誠

    井手委員 第一は、前提は重要港湾の問題でありますけれども、この伊万里港湾が浅くなるということが中興のボタ山だけであるとは私は申し上げません。ほかにも原因はかなりあると思います。しかしあの海中に、だれが見てもあれはひどいというようなボタの捨て方をしておることは、ほかにも非常に悪い影響があるから私は取り上げておるわけですよ。そこであの中興のボタ山がどれだけ入口を浅くしておるかということについては、見方によるでしょう。また、調査もして参らなければならぬでしょう。重要港にどれだけの影響を与えるかについては、なお私は議論の余地はあると思います。しかし私がここであなたにお伺いしたいのは、佐賀県側にとっては、またわれわれが見て、これは軽々に、ゆるがせにするわけにはいかぬという判断に立っているわけですから、私のお伺いしたいのは、それではこの護岸工事はいつやらせられますか、返事だけをお伺いしたいのです。三十八年までに完了することになっておりますが、もうこんなふうに山のようにボタがたくさんございます。少ないのではございません。結論的に私がお伺いしたいのは、いつ護岸工事をやらせられますか。もし不幸にして炭鉱がやれない事態になった場合には、県が責任を持って護岸工事をおやりになりますか。この重要港湾の問題とは別個に、私は埋め立ての問題でお聞きしますが、この計画通りに土砂流出防止についてはどういう措置を現在とっておられますか、それが第一点。それから第二番目には、いつ護岸工事をさせられますか。もし炭鉱がしない場合にはどうなさいますか、県でおやりになりますか。あなたの方には免許の期限を延長するという手もあるかもしれませんけれども、このボタ山の模様から見ますと、護岸工事は延長すべきものではないと思いますから、そういう前提でお答えを願いたいと思います。
  33. 佐藤勝也

    佐藤参考人 鉱業所におきましても、われわれの方は当初から護岸をつくることを条件にしておりますから、その計画を持っておるわけなんです。ですから、よく話し合って早急に配慮する、会社がやらなかった場合には県が責任を持つという問題は、重大な問題で、私としては簡単に申し上げられませんが、そういうことがないようにしたいと思います。
  34. 井手以誠

    井手委員 それはちょっと困りますな。あなたの方の免許の期限は三十八年の何月でございますか。
  35. 佐藤勝也

    佐藤参考人 十一月になっております。
  36. 井手以誠

    井手委員 三十八年の十一月までには護岸工事が完了しなければならぬことになっておりますね、そうでしょう。たとえ免許の日にちが延ばされるといたしましても、護岸をするだけの土砂はたくさんあるわけですから、山のようになっておりますから、来年の十一月までには一つ護岸工事をやってもらわなくちゃなりません。これは法規に基づいた問題ですから、重要港湾の認定とは別になります。これだけは一つ励行してもらわなければなりませんが、いかがでございますか。話し合ってからということではいけません。その点は、国会でございますから、はっきりしたお答えを願いたい。
  37. 佐藤勝也

    佐藤参考人 条件はそういうふうになっておりますけれども、しかし行政はやはり実際に即して——十一月までぎりぎりできなかったらどうだという、そういう行き方はどうかと思います。でありますからして、最終的には現実に支障のないようにしなければなりません。ですからして、そういうことで鉱業所も今計画を持っておりますから、われわれも命令をいたしまして、そうしてそういうことにしたいと思います。そこで、やることになっておりますからやらせるのですけれども、今おっしゃった重大なる影響という問題、これを一つ考えて、将来またどうせボタは次々に出て参りますので、処理の場所の問題も考えて、そろいうことも含めて、あのうず高い山の措置は早急にやらせる、そういうことに考えております。その前に一度関係者全部寄って、そうしてお互いに理解を深めた上でやらせたいと思っております。その際、港湾関係であれば港湾当事者の意見も十分拝聴いたしまして、将来のこともありましょうから、その上で一つやらしたいと思います。
  38. 井手以誠

    井手委員 行政ですから、しゃくし定木にいかないことは私もよく承知しております。経済は生きものであることも、私はよく承知しております。あなたから言われるまでもなく、私はよく承知しております。しかし、法規を守らなくてはならぬということは論議する余地もないと思う。あんたの方で来年十一月までの期限を付した免許で、その前に埋め立てを完了しなくてはならぬということであるならば、それはこの国会における参考人の答弁としては、当然完了させますという言葉が正しいのじゃないかと私は思う。どうかわからぬという前提は、知事さんの証言としてはどうも受け取りかねるのですが、そういう答弁を私は聞きたくない。その答弁を聞くくらいのことで国会に御足労願ったわけではございません。もっと筋道の立った話を私は聞きたいのです。そうでしょう。それであるのに、どうかわからぬ、むずかしいことだ、今の炭鉱のことだからよくわからぬ、とにかく今の重要港湾支障を与えなければいいじゃないかというあなたの考えでは、済まされぬと思う。法は法で守っていかなくてはなりません。どうも守れそうにないから、心配して来てもらったのですよ。条件がついておるなら、条件は完了させますというのがあたりまえじゃありませんか。どうかわからぬということじゃ困ります。そういうことじゃ国会は通りません。もうこの条件は履行されぬのがあたりまえのようなお話です。それじゃ私、このままでは済まされません。何かあなたの言い間違いじゃないですか。あんまり責めたくないのですが、もし言葉の不足であれば言い直して下さい。
  39. 佐藤勝也

    佐藤参考人 いいかげんにするということは毛頭ないのでございます。やらせることになっております。要するに順次きておるわけですから、いよいよ護岸をつくるべき時期になっておる。ですから、現実に即して許可条件によってやらせる。しかしやらせる前に、いろいろこれは関係が多いから、一ぺんよくみんな集まってもらって、そしていくべきじゃないか。やはり現場でも、民主的に私はやるべきだと思う。ただしゃくし定木に命令した、それで責任が終わるものでもない。現実に支障がないようにしなければならぬと思いますから、その辺は弾力をもってやらしたい。ただぎりぎりに十一月どうということでなくて、やらなければならぬことですから、そして会社側の計画も立っておるのですから、話し合って、あなたの御心配になるような結果が起きないようにすることが大事だろうと思う。ただ何も支障がないのに、法規がどうだという行き方もありましょうが、現実の生きた動きの中においてそうも言えない点もあります。ですから、ぼやかす意思はございません、やらせますが、そういう時期にまた来ていますから、一ついろいろな会合に皆さんおいでいただいて、安心のいくことで相談しようと考えております。
  40. 井手以誠

    井手委員 誠意ということを私はこう考えます。私はどんな場合でも、埋め立てをする場合には捨て石をやるべきじゃないか。それが土砂流出防止の基本ではないかと思う。河川局長、そうでしょう。それはやはり必要なんですよ。だから来年十一月までにきれいに護岸工事をやってしまえ、それはそういう条件ですよ。それが八分通りで、完成しなかったからということで私はとやかく言いやしませんよ。誠意を見せてもらうことが大事だと思うのです。たとい完成しない場合でも、捨て石をし、護岸を逐次積み重ねていくという、その誠意を見せることが大事じゃありませんか。従来の重要港湾支障があるかどうか、その点が大事だとばかりおっしゃったのでは話は解決しませんよ。まだほかにも質問があるようでございますから多くは申し上げませんが、どうですか、もう捨て石の時期になって護岸工事を始めなくてはならぬのですから、早急にやらせられる御意思がございますか。それが一点。  もう一つは、先刻私がここで披露申し上げたように、佐賀県側の漁民が非常にそのために困っておる問題、ここに非常に支障を来たしておる点について、長崎県知事さんはお考えになる御意思がございますか。御承知の通り、福島佐賀県の肥前町とは百メートルか二百メートル程度の非常に狭い水道、その中間に県境が走っております。漁業問題は私はきょうは触れませんけれども、その狭いところでございますから、当然漁業問題は佐賀県側にも影響があると考えねばならぬ。その佐賀県側に非常に影響が多くて困っておるということについて、補償なさる御意思がございますか。その点あわせてお伺いしたいと思います。
  41. 佐藤勝也

    佐藤参考人 前の問題につきましては先ほど述べた通りで、われわれはほっておく意思はございません。現実に即して早急に手をつけるように十分話し合って進めたいと思います。  漁業者の問題でありますが、大体こういうものを許可いたします場合には、漁業権に一番問題がありますので、そういった関係のありと認められる漁業者の同意を得ておりますので……。
  42. 井手以誠

    井手委員 長崎県側の同意……。
  43. 佐藤勝也

    佐藤参考人 そこで今おっしゃったように、あなたの方の関係について、はたしてほんとうに被害があるのか、それはボタであるか、その辺一つよく調査をしないと、今私が補償するとか言うことは少し早急じゃないかと思うのです。十分に一つ地元にその問題を研究させます。また佐賀県知事さんも隣におるわけですからして、十分一つ調査願って、お話があれば一つどもにしていただいて——そういう問題はもう私どもなれております。しょっちゅうありますから。いいかげんにほうっておきません。ほんとうに被害があるなら何らかの措置をとっておりますから……。ただ中興の今の問題については、少なくとも関係ありと思われる業者には、大体同意を得ております。今の問題については、あらためて一つ調査をしてみたいと思います。
  44. 井手以誠

    井手委員 私はうそは申しませんよ、佐藤さん。国会のこの大事なところで、私はうそは申しませんよ。ほんとうかどうか調査してみるなんて失礼でしょう。何ですか。常識でわかるじゃございませんか。呼べば答えるような狭い水道ですよ。百メートルとか二百メートルくらいの狭い水道で、佐賀県側の漁業支障があるかないかわかるでしょう、そんなことは。長崎県の方に支障が若干でもあるなら、佐賀県側だってありますよ。私が言ったことを、ほんとうかうそかわからぬから調査してみてなんて、そんな失礼なことが言えますか。私はあなたをよく存じ上げておりますから、きょうはあんまり口の荒いことを言わぬつもりでしたけれども、そういうふうに言われると黙っちゃおれませんよ。常識でわかるじゃありませんか。ほんの目の前ですよ。あなたの方の聞かれたのは長崎県側の福島漁業組合ですよ。きょうは天気がいいなあと言えば、ああいいですなという返事ができるような、ほんのすぐそばですよ。向こうの佐賀県側の高串の人間が動いているのが見えるじゃありませんか。長崎県側の漁業組合に支障があるなら、佐賀県だって同じですよ。それでもやはりほんとうかうそかわからぬとおっしゃるのですか。
  45. 佐藤勝也

    佐藤参考人 あなたのおっしゃることがうそとかほんとうとかいうのではなくて、今私初めて聞いたわけですから、被害がありますから補償しますということは、これは私の立場とすれば、十分にやはり納得のいくところをつかまなければならぬ。あなたの言っていることをうそとか何とか言っているのじゃありません。初めて今聞いたわけですからね。ですからして、それは一つ十分ほんとうの現地の方で調査して、われわれの納得のいく材料を得て、初めてその問題に対する問答があっていいと思う。あなたの発言がうそとかほんとうとかいうことは決して申しておりません。そういうことでございますので、あしからず御了承を願いたいと思います。
  46. 井手以誠

    井手委員 知った仲だから言いたくはないのですけれども、どうも佐藤さんのお答えは適当にという——それ以上私申しませんが、適当にここが済めばいいという考えがある。あの福島海岸の、あの深いところに護岸工事ができるものかという考えが腹の中にあると思う。将来できないであろうと思うから、私は特に申し上げておるのですよ。しかしあなたはよく話し合ってお隣に佐賀県の池田さんもいらっしゃるからよく話し合って、保安監督部ともあるいは運輸省ともよく話し合うというお話ですから、私はそれに期待をかけておりますが、ともかく佐賀県の伊万里湾としては、産炭地伊万里は疲弊しておるので、伊万里はあの港を生かして生きていかなければならないというのが七万市民の熱望なのですから、その入口ボタ山があんなに積まれるということは、それがどのくらいの重大な影響になるかについては、簡単に言えない場合もあるでしょうが、その咽喉部を施している福島を管轄していらっしゃる佐藤さんとしても、私は十分なる対策を講じてもらいたい。先刻言ったように、端島とか高島のあの海岸とは違うのですから、私は結論的にもう一ぺんあなたのこの問題に対する誠意を伺っておきたいと思います。
  47. 佐藤勝也

    佐藤参考人 お言葉を返すようでありますが、私がいいかげんなことを言っているということは、非常に私としては聞き捨てならぬことです。これは一つお取り消し願いたい。いいかげんにする意思はございません。現実に即して、やらなければならぬことはやります。しかし、こういうことが実は昨年早急に起きたんですね。そこで、炭鉱の方はそれどころじゃない問題もあった。しかしながら、あなたのおっしゃる伊万里の湾、これは私はそういういいかげんにするようなことはいたしません。ただ将来ボタが出ますから、その処理の問題もあわせてやはり考えなければならぬ。場所をかえる問題もございましょう。私はいいかげんにする考えはございませんよ、井出さん。決して憤慨はしませんけれども、この点は一つ……。そこで、十分に早急に打ち合わせをして、そうしてやることになっていることは、技術的に可能な限り技術者意見も聞いてやりたい。従来とも公有水面埋め立てというのは、技術の問題もありますし、大体まあ事務当局にまかせておるのです、私の方は。そこで、いろいろ経過的に考えますと御意見があると思いますが、大事な場所でありますので、私も重大な関心を持ってこれにつきましては結末をつけたいと考えております。
  48. 上林山榮吉

  49. 中村重光

    中村(重)委員 今のボタ山のことについて、私もお尋ねします。  先ほど委員長報告の中にもありましたし、ただいま井手委員の質問で明らかになったわけでありますが、実は私も一緒に参りまして、伊万里湾から福島ボタ山の集積を見まして、いろいろ問題になった。もちろん私といたしましても、長崎県選出の議員であるだけに、その問題に対しましては深い関心を持ちまして、翌日、長崎県が視察地でありましたが、副知事ともお会いをしまして、いろいろと対策に関しましてお伺いをしたわけです。  そこでお尋ねをいたしますが、三十八年の十一月まで、こういうことになっておる。申請は、御承知の通りに、中興鉱業が工業用地の造成をする、こういうことで、二カ所、八千坪、一万六千坪の造成というようになっておるようであります。先ほどの知事の答弁によりますと、ボタを貯蔵する、こういう形であるようであります。まあ、その必要もあるであろうと思います。そこで、三十八年十一月までということになって参りますと、一年有余でありますが、その八千坪と一万六千坪は、その貯蔵しておるボタで大体容量は足りるのかどうか。またそのボタを直した場合、大体その両方の一万六千坪と八千坪、それはどの程度まで進捗したということになっておるのか。それから申請の護岸を築造するところでありますが、その築造するところの水深は大体どの程度あるのか。これは技術上の問題もありましょうし、一応その点を伺ってみたいと思います。
  50. 佐藤勝也

    佐藤参考人 少し技術的な問題でありますが、大体今蓄積したボタ山がおおむね免許を受けた埋め立て土量に近くなっておるということを聞いております。  それから護岸をする場所の深さでございますが、大体五、六メートルということでございます。これからほんとうの埋め立てに入るのでありますが、その場合はむろん護岸をやってやる、こういうことに考えております。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま井手委員からいろいろ質疑なり指摘があったわけでありますが、井手委員佐賀県選出の議員であるといったような立場から、伊万里湾土地造成とからみまして、関心が特に深いということはよくわかるわけであります。また私どもも、そうした選出の地域の問題ということを離れて、国会議員の立場からきわめて関心を深くいたしておるわけであります。従いまして、伊万里湾が今五万坪の土地造成をやっている、相当大きい船が入港してくるわけでありますが、航路上の支障がないかどうかということにつきましては非常に心配をいたしておりましたが、聞くところによりますと、大体水深二十メートルということでありますので、そう大した影響もないのではないかということに考えられますけれども、先ほど井手委員からるる指摘されましたような問題、弊害が起こって参りますと、やはりその点は無関心でいられないという点もあるわけであります。  そこで三十三年、当時の西岡知事の許可になっておるようでありますが、やはりこれには条件がついておるわけでありまして、その条件の第八項になっておろうかと私は思いますが、やはり土砂の流出の対策ということは、六〇%できておるところは、もう必要の段階にきておるのではないか、こう考えます。従いまして、ただいま井手委員が言われたことは、当然やらなければならぬことでありましょうし、知事も事務当局にまかせておる、こういうわけでありますけれども、国会で取り上げられた問題が非常に重要であるということは十分御理解にもなりましょうし、さっそくこの点に対しましては、条件を満たすようにやっていただかなくちゃならぬ、こう思います。佐賀県の議会におきまして、この問題に対しましては非常に議論が沸騰したということであります。この点は、知事も十分留意されて、直ちにこの条件を満たすように措置していただきたい。そうしなければ、ただいま井手委員が言われましたように、三十八年の十一月にこれが延伸をするという場合には、やるべきことをやって延伸をするということにならなければ、条件を満たさないで延伸ということになって参りまして、政府において延伸を許可するという場合には問題があろうかと私は考えます。この点に対しましては、あまり多く申し上げる必要はないと思います。どうぞ一つその点に対して十分配慮していただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。  なお、河川局長お尋ねをしたいと思うのでありますが、先ほど、現地を見なければわからない、現在のようなボタを捨てる、集積するということは許されてもいいことではなかろうか、流れ込んでおるかどうかということは水中を見なければわからないのだといったいろいろの御答弁があったわけであります。私どもその質疑応答を聞いておりまして、どうも不可解に考えられることは、これはひとり長崎県、佐賀県の問題であってはならないのじゃないか、やはり伊万里港が重要港湾であるという場合に、その港湾入口にそうしたボタが捨てられるといったことに対しましては、特に厳重な基準というものがなければならないのじゃないか。工場用地を造成するということが、その面積がどの程度になるのか、それから護岸を築造することが可能であるのかどうか、それと向こうの対岸までの距離がどの程度あるのか、いろいろな面を十分調査し、それによって許可の可否を決定するということにならなければならないのではなかろうか。今問題になっておりますようなことは、ひとり福島のこの問題だけではなく、全国的にいろいろこういう問題があろうかと私は考えるのであります。そういうことにやはり一貫した政府の方針というものがあるならば、このような問題は起こってこない、こう考えるのであります。その点に対してはどのように考えておられるのか、まず伺っておきたいと思います。
  52. 山内一郎

    ○山内説明員 公有水面埋め立ての許可をする場合にいろいろ条件とか考え方があるわけでございますが、ただいま先生から御指摘のございました護岸がまずできるかどうかというような点、あるいはその埋め立てをやったために航路が非常に狭くなって、従来の機能が発揮できない、こういう点は、特に重点を置いてやっているわけでございます。従って、全般的に小さい面積につきましては、知事限りの免許、こういうことになっておりますが、航路の問題につきましては、この点が非常に重大な影響があるというような場合には、建設大臣の認可を受けてから免許するようにということで、特に重点を置いてやっているわけでございます。  そこで、この点がはたして航路の関係に合うかどうかという点は、地図を拝見いたしますと、その一番狭い個所からだいぶ離れている、こういう点と、それからまだ相当航路の幅がございますから、このくらいの入口から海に出た場合には、航路には関係がないのじゃなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 私は、今その福島の問題ということだけで申し上げているのではないのであります。炭鉱の場合をとりますと、炭鉱では炭を掘ると当然ボタが出る。そのボタをどこかに捨てなければならない。そのボタの捨て方も、港湾の整備であるとか、あるいは土地の造成であるとかいうことで、有効にこのボタを集積していくといったような方法もいろいろあろうかと思います。今問題になった福島の場合は、ボタの捨て場としても、これは島であるだけに、海でなければならないでありましょう。また、そのことが鉱業権者が工業用地の造成であるということで、一つの計画を持ってやったということは、それなりに認めてやらなければならぬ、いいことだと考えるのであります。しかし、いいことではあるが、一方、先ほど来いろいろ問題になりました漁業に対する弊害、あるいは重要港湾入口であるだけに航路上の問題ということが起こっている。長崎県知事は差しつかえないと思っても、佐賀県知事にとっては迷惑であると考えるでありましょう。そのことは、先ほど来いろいろと繰り返された論議の中においても明らかであります。そういう場合に、やはり総合調整という面が出てこなければならぬ。そのことは、ただいま私が申し上げた通りに、今問題はこの福島中興鉱業ボタの集積のことだけであるけれども、このような事例は全国各地にあるであろう。そこで、こういったようなボタの集積という問題、あるいは土地造成という問題等に対しても、国と県との間に、あるいは県と県との間に、あるいは県と町村との間に、あらゆる角度でこれを検討して調整していくという、総合調整という形がなければならない。その上にのっとってこの許可の可否を決定していくという方向が大切ではなかろうか、そういう面に欠けているところがあるのではないか、こう私は思うのであります。その点を私は指摘をし、考え方を実は聞いているわけです。だから一貫した方針というものがあれば、それを一つ示していただきたい、こう申し上げているわけです。
  54. 山内一郎

    ○山内説明員 埋め立ての問題でいろいろ問題がございますが、そのうちの一点は、やはりただいま御指摘の総合調整と申しますか、その点にあると思います。従って、今後の取り扱いといたしましては、今研究はいたしておりますが、やはり各県の知事さんによく影響するところを御理解願いまして、たとえばこの場合には佐賀県に相当影響があるのではないか、こういうふうにお互いによく注意されまして、今後運営よろしきを得るのが最もいいのではないか、こういうように考えております。従って、そういう点今後建設省としても十分注意をいたしまして指導して参りたい、こういうふうに考えております。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 佐賀県知事お尋ねをいたします。  この伊万里湾に関連をいたしまして、先日私ども調査をしましたときに気づいたことは、向山炭鉱あるいは麻生炭鉱、こういったところもあの湾に実はボタを捨てておるようであります。これに対しては護岸もしてありませんし、土砂流出に対する対策もなかったようであります。こういうことから、やはり今の伊万里湾重要港湾あるいは今産炭地振興という立場からおやりになっておる面に対してのいろいろな問題点も起こってくるのではないか、こう考えるのであります。そこで港湾整備という面から、それから産炭地振興といういろいろな面からの配慮というものもあるであろう、こう考えるのでありますが、そこらの点についてどのようにお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  56. 池田直

    池田参考人 今御指摘いただきましたように、伊万里湾の沿岸に向山あるいは麻生炭鉱、そうした炭鉱ボタの利用によります埋め立て免許を受けておるところがあります。そうしたものが護岸を先にしないで、伊万里湾護岸影響を与える関係、私どもも非常に遺憾でございまして、先ほども井手委員の御質問にお答えいたしたところでございますけれども、戦前はちゃんと護岸を先にやらしておったのでございますけれども、戦後それがゆるやかになったために、非常に漁港なりあるいは港湾関係影響を与えておるということで、三十五年以来やかましくやっておりまして、最近は私どもの指導監督通りにいっております。そこで伊万里湾港湾関係は、御承知のことと存じまするけれども、由来あすこは大陸との間の文化、経済面の交流の有力なる基点であった関係、そうした関係から港の意義が非常に大きいわけでございます。昭和三十二年には長崎税関の出張所も開設されておるようでございます。大正十年には第二種重要港湾の指定を受け、戦後二十六年に重要港湾の指定をいたされたような次第でございまして、その間、あるいは佐世保との間に軍港関係についていろいろ誘致関係、戦後も海上自衛隊の港湾等等につきましてのいろいろな問題があったのでございますが、さようなことで港湾の整備計画ということに非常に力を入れておりまして、二十九年には港湾計画を樹立して、そして整備をやっております。ところが御承知のような経済状況、ことに石炭関係が不況になりました関係で、この計画も実はほんとうは今眠ったままに相なっておることは残念でございます。現在は沿岸にいわゆる工業地帯を造成しよう、そうした計画のもとに埋め立てその他のこともやっております。炭鉱が不況に相なりましてから、産炭地域としての振興に特に重点を置かなければならぬ関係で、皆さん方にもいろいろ御心配をおかけいたしておりますが、産炭地域のいわゆる振興関係の特別の臨時措置法によりまして、産炭地振興地域としての指定も受けておりますので、そうした関係では非常に努力をいたしておるところでございます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまの答弁はよくわかります。現在の石炭事情産炭地の事情からいたしまして、やはりボタは捨てなければならない。ところが炭鉱でもって護岸の築造をやるということは、非常な負担ということがそこへ起こって参ります。そこで、これは当然炭鉱がしなければならぬということになってくるわけでございますけれども、いろいろ問題もある。そういう点は政府といたしましても、あるいは産炭地域の不況、自治体といたしましても産炭地振興という立場から、この点は十分配慮していくということが必要であろうと考えるわけであります。十分その点に関しての留意を希望しておきたい、こう考えます。  それから、河川局長並びに運輸省の岡田参事官もお見えのようでありますが、もちろん公有水面の使用であるとか埋め立て、こういった問題に対しましては無関心であるとは考えておりません、関心は持っておられると思いますが、えてしてこれがその地方自治体にまかせて、書類審査でこれに対してただ判こを押すというような傾向がなきにしもあらずだと思います。これは地方自治体を尊重するという立場から、必ずしも悪いことではありません。しかしこういったような問題が現実に起こって参りましたし、今後いろいろ物議をかもすような事態が起こってこないとも限りません。従ってこれらの許可、認可にあたっては、基準というものが及ぼす影響等を十分配慮されて遺憾なきを期していただきたいということを、強く要望しておきたいと思います。  この機会に、本問題とも関連があり、せっかくの機会でありますので、佐賀長崎県知事お尋ねいたしますが、有沢調査団答申大綱が示されたわけであります。これは新聞紙上等におきましても、私どもに配付されました答申大綱と大体変わっていないようであります。この通り政府がもし行なうといたしますならば、中小炭鉱相当つぶれて参ります。従いまして、九州におきましては、筑豊を中心として佐賀長崎産炭地域は壊滅的な打撃を実は受けるわけであります。ところがこれに対して、遺憾ながら有沢調査団産炭地に対する対策はきわめて抽象的で、十分配慮が払われていないということが言えるわけでありますが、この有沢調査団答申大綱に対する意見とか、いわゆる批判というものは別といたしまして、現在も夕べに一山、あしたに二山という形でつぶれていっている、離職者は滞留している、こういった状況の中に、鉱産税は入ってこない、生活保護費であるとかあるいは失対事業ということで、自治体の負担は非常に多くなって参っております。こういう面から、非常に憂慮すべき事態にあろうかと思うのでありますが、この産炭地振興という面から、いろいろと考え方もあろうかと思うわけであります。この機会に一つ県知事から、産炭地振興の立場からどうあらねばならぬのか、そういう点に対する御意見を聞かしていただければ幸いであると思います。
  58. 佐藤勝也

    佐藤参考人 有沢さんを団長といたします調査団答申が出ましたので、私はむさぼるようにあれを数回読みまして、長崎県の場合にこれが現実にどうなって現われるかということを検討してみました。有沢さんを団長とする調査団答申は、一応筋も通り、体系立ったものであって、あらゆる問題に全部触れております。ですからその点の非常な御労苦に対して私どもは敬意を払っておるわけでありますが、しかし四十二年に至るまでのプロセスにおいて、これが円滑にいかなければ重大な問題が起きるのではないか。どうしてあの答申の内容を現実におろしていくかということが、重大問題である。そのおろし方がまずければ、たとえばスクラップ・ダウンが先行して、ビルド・アップがおくれてもいけないし、また離職の問題がそれにマッチしていかなければ、ゆゆしい社会問題が起きるのであって、あの答申の内容そのものよりも、どうしてそれをおろしていき、しかも円滑に持っていくかということに、私は非常に大きな関心を持っております。これは政府が立てることでありましょう。具体的に計画して、どうして進むか。その際私ども考えるのは、政治、行政は何といってもやはり人間が大事であって、ともかく離職者の問題が優先的に、むしろ先行的に受け入れ態勢ができて、そうしてスクラップ・ダウンが進むことであれば非常にいいと思う。やはりこれは人間の問題を最初一つ考えて、その方面対策をまず立てていく、そういうことが大事であると思います。特に雇用の問題離職者対策の問題が、私はこの問題の一番大きな問題であると思います。  いま一つ企業家の自主性を尊重するということで、ビルドもスクラップも大体自主性にまかすという思想があそこにあるわけであります。私はビルド・アップの方は、これはやはり政府の協力なり融資その他が円滑にいきさえすれば、これは財政の問題でありますが、これは私は企業家の自主性にまかせていけると思っております。しかし、スクラップ・ダウンの方、それに伴う離職者の問題を企業家にまかすというか、その自主性において行なうということは、私は非常に疑問がある。まだ私の考えも固まりませんが、やはりスクラップ・ダウンするかしないかは、むろん企業家の自主性に問うべきでありましょうけれども、きまった以後は一種の政府の管理下に置いて、その管理の方式はいろいろありましょうが、そしてダウンしていくと同時に、離職者の問題をやはり円滑にしなければ、これは私は大問題だと思っております。スクラップ・ダウンの方を適宜企業の自主性にまかすということでは、非常な混乱が起きる、一時に崩壊してくるかもしれません。そういう場合には収拾しがたい社会問題となると思います。私は一種の管理下に置くべきではないか、かように考えております。特に離職者の問題については……。
  59. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 発言中ですけれども中村委員の質問はそこにはないので、答申案に関連して産炭地振興についてどう思うかというのが重点のようでございますので、そういう趣旨で……。
  60. 佐藤勝也

    佐藤参考人 そこで中高年令層ですね。これは過去の私の経験から見まして、簡単に職業訓練その他ではいかない。必ず現地に滞留するわけです。そこで私は現地に即して一つの提案を持っているわけでありますが、これはやはり現地に滞留するので、その労働力をやはり産炭地振興に結びつけて使うということが一番いい。少なくともどんどん就職をあっせんするにしても、あるいは広域あっせんするにしても、なかなか急にいかないので、とりあえず産炭地振興について一番大きな問題は、今もありましたが、ボタ山の整理ですね。これは北松にもたくさんある。江迎のごとき、一たび崩壊すると何億円という復旧費が要るのであって、このボタ山の整理と臨海地帯の造成とを結びつけて、そしてこの労働力を使ってやる、そしてそこに思い切った企業の分散をして工場を持ってくる、そういうことが計画的に行なわるべきじゃないか。北松と伊万里と一体にしまして、一つボタ山の整理と臨海地帯をやっていく。これはやはり五年ぐらいかかりましょうが、大規模にやる。そして、そこに工場を持ってくる。こういった施策を計画的に進めてもらいたいというのが、これは私は離職者対策とも関連して、地域産炭地振興についても適切な方法じゃないか、こういうふうに考えております。ここまできますると、私企業でありますけれども、単に私企業であるということをこえて、その地域産炭地振興、さらにより一そう進んでの国土開発的な地域開発、そういうものを具体的に、第一線からのそういう方策、これをずっと積み上げて、そして政府においてこれを年次的に立てて、具体化して、スクラップ・ダウンとあわせていく、こういうことを強く希望いたしたいと思いますが、近くもう少し具体的なそういう計画もまとめまして、政府、国会の方にもお願いいたしたいと思っております。
  61. 池田直

    池田参考人 石炭調査団答申に対しまする所見ということでございますが、今日まで私どもといたしましては、国会あるいは政府あるいは調査団その他に常にいろいろの重要問題を申し上げまして陳情いたしたところでございますけれども、それらの点にもこの調査団関係はいろいろ触れてある点、これは調査団の方も、非常に重要な緊急な問題で、しかも困難な問題で、非常に御苦労をいただいたことに対しましては、非常に私どもも感謝いたしておるところでございますが、実は問題は、これはいろいろ見方があろうかと思います。佐賀県でも、佐賀産炭地域振興推進協議会というものを各階層の代表者を委員にお願いいたしまして、今日まで佐賀県の産炭地域としての振興関係に努力いたしておるところでございますが、各階層によりましてこれはいろいろ見方がありまして、重点の置きどころがいろいろございます。長崎知事さんも今取りまとめ中だというお話もありましたが、私の方でも、そうした産炭地域振興推進協議会等も開きましてやっておるところでございまして、私が今はっきりと、この問題はこうだああだということを申し上げることは、必ずしも時宜を得たものではないのではないかという感を抱くのでございまするが、ただ私は全体的に総合エネルギー関係の実現につきまして、石油と石炭との配分関係を明確にしていただく関係で、たとえば五千七百万トンの石炭の維持をはっきりして、そうして需要確保していただくということは、これはもう一番根本なんじゃないかという感じもするのでございますけれども、ともかくいろいろな問題につきまして、私どもの方で御要望申し上げたようなことも相当盛り込んであります。しかし、その間にいろいろ軽重の度合いはあるようでございまして、また、各地域とも特殊な事情があるわけでございますが、問題は、ともかくこの実施のいかんの問題が非常に大事じゃなかろうかと思うのでございます。私といたしまして結論的に、この案がどうのこうのということはちょっとお答えを差し控えさせていただきますけれども、たとえば産炭地域振興に関連いたしまして、産炭地域は大体各市町村とも財政力、経済面その他非常に脆弱でございます。佐賀県のように農業と石炭が大きな産業の柱となっておるというようなところにおきましては、県全体がこれまた非常に弱いわけなんでございます。そうしたことから、やはり地方財政の関係を非常に考えていただかなければいかぬと思いますが、このたびの答申案等につきましては、そうした地方財政の面からの関係にあまり強く触れてないような感じがいたします。  なお、商工業でございますが、この産炭地域の商工業の関係、これがたびたび、本日も御意見の出ましたように、商工業というものは非常に疲弊しておるわけなんでございまして、そうした商工業に対する点にあまり具体的に強く触れてないじゃないかという感じもいたしておるようなところでございます。なお、雇用安定その他の関係につきましても、これは重大な問題でございますし、なお一つども要望等もこの特別委員会において強く取り上げていただくようにお願いをいたしたいと思うのでございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 いろいろ私まだ、産炭地の行政の長に対しましてお尋ねしたいこともあります、意見を伺ってみたいこともありますが、午後に有沢調査団に対しての質問をすることになっております。いずれ適当な機会にまた考え方を伺ってみる必要もあろうかと、実は思うのであります。ただいま長崎県知事から、有沢調査団答申大綱に基づいての一つ考え方、問題点に実は触れられたのでありますが、非常に重要な点であろうと考えます。いずれにいたしましても、この有沢調査団答申大綱をこのまま政府において実施されるということになって参りまするならば、私は産炭地振興ということは考えられない。非常な壊滅的な打撃を受けるであろうということを考えます。従いまして、一つ勇気を持って地方自治体の確立のために、産炭地振興のために、がんばってもらいたいということを強く要請をいたしておきたいと思います。  これをもって私の質問を終わります。
  63. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 最後に、締めくくりに委員長から要望いたしておきたいことがございます。  当委員会においては、ボタ山処理という問題は鉱害の予防、あるいは産炭地振興という観点から非常に重大な関心を持っておりますので、やがて法律の改正なり、場合によっては適当な立法なりをしてでも、この重大な問題を解決したいという熱意を持っておるわけであります。そういう観点から、一般的なボタ山処理の問題、ことに特殊な、先ほどからの両県の関係の問題を取り上げて、その所在を明らかにしようとして両県知事においでを願ったわけでございます。私も団長として目測した限りにおいては、発言された委員諸君と同じような意見を持っておりますので、俗に言う権兵衛が種まきゃ一方でカラスがほじくるというような、狭い意味のセクショナリズムにとらわれているのではないかという疑いを持たれるような行政をやってもらうことは、一番大きなボタ山処理、すなわち鉱害対策、ないしは産炭地振興という問題に非常なる影響を及ぼすのじゃないか、こういう意味からお呼びしたわけでございます。  両参考人には、御多忙中のところ、本問題についてわれわれと多少のニュアンスの違っておる点もございますが、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  なお、出席している関係各省の人たちにも一言申し上げたいことは、質疑にもございました通り、この問題はゆるがせにできない重大な問題だという認識を深められて、調査すべきは調査をし、そうして調整すべきは調整をして、今の両県の問題を初め、その他の基準等についても急速なる対策を立てられることが、当特別委員会の問題だけでなしに、重大な問題だと考えますので、この点、善処方要望いたしておきたいと思います。  それでは、午後二時より再開することとして、暫時休憩いたします。   午後零時三十四分休憩   午後二時十一分開議
  64. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  御承知のごとく、今月の十三日に石炭鉱業調査団答申が政府に対して行なわれたのでありますが、本日はその答申に関する問題について、参考人として、石炭鉱業調査団団長有沢広巳君、青山秀三郎君、円城寺次郎君、平田敬一郎君、以上の方々の御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、国の基幹産業でありながら斜陽産業と言われ、危機に当面している石炭産業の長期安定化のために、今回内閣総理大臣の委嘱を受け、その答申大綱を出された調査団方々に、その答申について種々御意見伺い、もってわが国石炭産業の発展に資したいと存じますので、この際忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  まず最初に、調査団を代表して、有沢団長から、今回の答申について御説明をいただき、そのあと委員質疑に応じていただきたいと存じます。なお、答申の大綱は各委員に配付してございますので、その要領を御説明願えれば幸いだと存じます。それでは有沢団長に御説明をお願いいたします。有沢広巳君。
  65. 有沢広巳

    有沢参考人 石炭調査団答申は、去る十三日、総理大臣に申し上げました。その概要をここで御説明申し上げたいと存じます。  石炭調査団は四月六日の閣議決定に従いまして設置されまして、炭鉱業の近代化、合理化及び雇用実情調査を要請されたのであります。そして、今後の石炭政策について答申をするように求められたのであります。その際に、池田総理大臣が炭労に、石炭政策については雇用の安定、国際収支、エネルギー供給の安全保障の三点を考慮することを約されたということもまた、本調査団に伝えられましたところであります。  今日エネルギー源として石油の優位は、もう技術的にも経済的にも決定的であります。石炭は石油との競争の面で、すべてのエネルギー消費の分野におきまして敗退しつつあり、石炭に対する需要は急速に減退しつつあります。いわゆるエネルギー革命進行でありまして、これは世界的な現象であります。そういうさ中におきまして、調査団は今後の石炭政策を検討しなければならない立場にあったのであります。  ここで、調査団調査の出発といたしましては、二つの道が考えられます。一つは、いわば超越的に望ましい出炭高をまずきめて出発するという考え方であります。他の一つは、需要動向を究明いたしまして、できる限り需要をふやしていこう、こういう考え方であります。前者すなわちいわば超越的に出炭量をきめるという考え方におきましては、いろいろ困難な問題があります。第一には、生産量をきめる根拠に決定的なものがなかなかないということ、またかりに一定の出炭量をきめたといたしましても、その出炭量を現実にしていくためには、それに対する需要がなければなりません。需要が足りない場合にはどうしても無理やりにも需要をつくり出さなければなりません。そのために、経済性を無視したり、あるいは技術的進歩に逆行するということも起こり得るわけであります。後者の場合は、すなわち需要の分析から出発して、できるだけ多くの需要拡大するという考え方の場合は、これは現実的な考え方で、経済性や技術的進歩を考慮しながら、できるだけ多くの需要をつけていこうという、いわば現実的な、そして国民経済に大きな支障をもたらすことなくして進んでいける道であろうと考えます。調査団は、この二つの道の後者をとりました。すなわちまず需要の動向からわれわれの調査を進めていこう、こういう考え方に立ったのであります。  さて、需要の動向の分析に入るにあたりまして、私ども現地調査をいたしましたとき、山の人々から、安住して山とともに生きたい、こういう切実な訴えを聞きました。この訴えはまだわれわれの心の底に残っておる切実な声であります。従って雇用の安定という場合におきまして、できるだけ多くの炭鉱労務者を山で安定した雇用を得させたいとわれわれも考えたのであります。そのためには、需要の動向を分析しながら、一そう多くの需要をつけるように考えようという考え方に立ったのであります。最初、私自身から申しますならば、電力に相当の量を引き取ってもらえるとすれば、おそらく六千万トン程度の出炭規模を実現することはできるのではなかろうかと実は考えていたのであります。石炭需要動向を考えていきます場合には、むろん原料炭と一般炭とに分けて考えなければなりません。原料炭の方はまずその需要先が鉄鋼業とかガス、コークス業であるのでありますから、なかんずく鉄鋼業が最も大きな需要先でありますので、これはわが国の経済の発展とともに鉄鋼業の生産もまた拡大するのでありますから、従って、この鉄鋼業の拡大とともに原料炭に対する需要拡大するのであります。もっとも鉄鋼用の原料炭には強粘結と弱粘結の二つがありまして、強粘結の方はわが国におきましてはあまり生産されません。従って、鉄鋼業の必要とする弱粘結の方は、国内炭はほとんど全部鉄鋼業に引き取ってもらえるとわれわれは考えました。これにつきましても、鉄鋼業の方では、かなりコスト・アップになるのでありますから多少の難色があるようでありますけれども、しかし、われわれの見地から申しますならば、やはり国内において生産される弱粘結炭はこれを全部鉄鋼業、ガス、コークス業において引き取っていただく、こういう考え方をとったのであります。それでありますから、原料炭の方につきましては、需要の伸び一ぱいに国内炭をこれに振り向けるという考え方に立ちました。ところで、原料炭はそうでありますけれども、一般炭の方について需要を分析してみますと、これが私どもの予想しておりました以上に激しい需要の減少を見ることが明らかになりました。三十六年度の、電力を除いたその他の産業においての一般炭の需要というものは、大体二千八百万トン程度あったのでありますが、これがだんだん減って参りまして、昭和四十二年度についてみますと、その半分千四百万トン、さらに四十五年度になりますと九百万トン、すなわち三分の一に減少するのであります。電力につきましては、むろん電力がその能力をますます拡大して参りますから、もっと電力に一般炭を引き取ってもらうことが考えられます。それがために、三十四年度の石炭鉱業合理化計画におきましてもすでに、昭和四十二年度に二千三百万トン引き取ってもらうという、いわゆる長期契約ができ上がっております。しかし、四十二年度二千三百万トンのラインで参りますと、今申しましたように、その他の産業における一般炭の需要が著しい減少を見ますので、かりに今の電力の二千三百万トン・ベースを合わせて考えてみましても、一般炭の需要は、四十二年度で大体三千六、七百万トンという程度であります。それに原料炭の、先ほど申しましたような、国内炭を優先にした供給をするといたしましても、なお五千万トンそこそこであります。それで、もっと電力の方に一般炭を引き取ってもらわなければならないとわれわれも考えました。  そこで、われわれの方の需要の分析の結果、電力には昭和四十五年度に三千万トン引き取ってもらう、その昭和四十五年度三千万トンのベースで申しますと、昭和四十二年度には、従来の二千三百万トンのかわりに、二千五百五十万トンというラインが出て参ります。三十八年度について申しますならば、二千三百万トンのラインのときには、千八百万トンの石炭を電力が——これは九電力でありますが、九電力が引き取るということになりますが、それでは少な過ぎるのでありますから、ここでわれわれはさらに二百五十万トン上乗せをいたしまして、二千五十万トン炭を引き取ってもらう、それから漸次引き上げていただきまして、四十二年度は二千五百五十万トンの炭を引き取ってもらう、こういうふうに考えたのであります。  この考え方でございますが、電力は毎年々々相当発電能力を増加しておるのでありますから、それにもっと多くの炭を食わせることもなるほど一般的には考えられます。けれども、九電力におきましては、すでに石油専焼の火力として着工しておるものもあります。あるいは敷地の選定が終わって、その計画がもう決定しておるものもあります。でありますから、四十二年度ごろまでに、石炭を今申しました二千五百五十万トン以上、もっと食わせるということになりますと、そこに技術的ないろいろの問題が起こって参ります。私ども調査によりますと、この四十二年度ごろまでには、計画ができておりましても、その計画が多少決定的でないものにつきましては二、三——三、四と言った方がいいかもしれませんが、三、四の発電所を、従来の石油専焼から石炭専焼の発電所に変更をしていただきます。そのほかは石油の混焼率を減らす。現在は大体重油が四割程度混焼されておりますが、その混焼率をもっと引き下げてもらう、別の言葉で申しますならば、石炭の方をもっと多くたいてもらう。この石油の混焼率を引き下げることによりまして、できるだけの炭を引き取ってもらうという考え方になっております。三十八年度だけについて見ますと、先ほど申しましたように、三十八年度は、従来の千八百万トンにさらに二百五十万トン上乗せしていただきまして、二千五十万トンの石炭を引き取ってもらうことに考えておりますけれども、三十八年度におきましては石油の混焼率をもっと引き下げることによりまして、もう二百万トン程度はふやすことが可能であります。しかしそれは三十八年度限りのことでございまして、三十九年度になりますと石油専焼の新鋭火力の発電所が続々完成して参りまして、それがために従来の石炭火力の石油の混焼率を一〇%——これはもうぎりぎりのところでございますが、一〇%のところにまで引き下げましても、今申しましたように、三十八年度に二千五十万トンに上乗せする二百万トン程度を消費することができるというそういう状態は、三十九年度においては現われてこないのであります。しいてそれを実行しようといたしますならば、石油専焼火力つまり新鋭の、熱効率が三八%以上もある、その熱効率の高い石油専焼火力のロードを落とす、こういうことなくしては、混焼率をぎりぎりのところまで低下させましても、もはや石炭をそれ以上に引き取るという余地はないのであります。別の言葉で申しますならば、最も能率のいい、熱効率のいい発電所を少し発電能力を人為的に落として、そして熱効率の悪い発電所石炭を食わせる、こういういわば技術の進歩に逆行したような手を打たなければ、石炭をわれわれの考えておる線以上に三十九年度以降にはふやすことができない、こういう結果になったのであります。四十二年度以降につきましては、石炭専焼の火力を新しく打ち立てることによりまして、先ほど申しましたように、四十五年度には三千万トンという線をわれわれは考えたのであります。御承知の通り、石炭と重油では発電コストに約二割から二割以上の較差があります。また建設費につきましても、石油専焼火力の建設費は石炭火力の場合よりも、約二割あるいは二割五分程度も安く建設かできるのであります。そういうわけでありますから、私ども火力にもっと石炭を食わしたいというふうにいろいろ検討をして参りましたけれども、先ほど申しましたように、しいてやろうとすれば、経済性の面はむろんのことでありますが、技術的進歩をはばむような措置をあえてとらなければならないということがわかって参りましたので、われわれの考えでは、ぎりぎりのところまで石炭を食わせる、こういう限度一ぱいの措置考えたわけでございます。  それから、大へん長くなりまして恐縮でございますが、ここは重要なところだと思いましたのでやや詳しくお話を申し上げたわけでございますが、電力のほかには、一般炭の需要先といたしましてはセメントがあります。このセメントなんかも三十六年度には大体四百万トンばかり使っておるのでありますけれども、これが四十五年度になりますと、ほとんど四十万トンばかりに減少する、十分の一以下になるというふうなひどい減り方であります。それから、もう一つ大きな暖厨房用炭でございますが、これはそう大きな減り方ではないですけれども、何しろ大口の消費先でございますから、これが二割、三割減るだけでも相当需要減になるわけでございます。そこで私どもは、今申しましたように、火力それから鉄鋼、ガス、コークスのほかに、なお需要の減少を食いとめると申しましょうか、緩和するために何かその他の産業における需要の減少を阻止、といってもそう大きく阻止することはできませんけれども、なるべくその減少を減らそう、何かそういう措置はなかろうかといろいろ検討を加えましたが、結局セメントにつきましてはどうも適当な措置がありません。しかしこれは一つ政府において、行政指導その他によりまして、セメントの石炭消費が十分の一以下に減るというふうなことでは困るから、もう少し減り方を食いとめるような措置考えてもらおう。それからその他の需要につきましても、重油ボイラー規制法、これは現に施行されておりまして、来年の十月には期限が来て失効することになっておりますが、このボイラー規制法の延長、もしくは重油の価格があまりに安過ぎますので、重油価格を引き上げるという意味もあって重油に消費税をかける、こういう措置も十分検討する必要があろう、そのことも答申の中で、一般炭に対する需要の減少を阻止する手段としてこういうことも一つ十分政府において検討してもらいたいということを申し添えてあります。いずれにいたしましても、われわれは需要の分析を考えまして、いろいろできるだけの需要拡大をはかってみましたけれども、それぞれ需要対策を講じたあとの各産業の需要の積み上げを合計してみますと、実トン数で五千七百万トンという数字になります。これは三十四年度の合理化計画で五千万トンないし五千五百万トンといっておりましたときのカロリー・ベースに換算いたしてみますと、五千五百七十万トン、七十万トンというのは小さい数字でございますけれども、きっちりと計算をしますと五千五百七十万トンというふうな数字になるのでございます。私が最初大づかみに六千万トンくらいは出るだろうというふうに考えておりましたのが、実は五千七百万トン程度にしかならない。三十四年度の合理化計画のカロリ・ベースで申しますと五千五百七十万トンということになりまして、われわれは需要拡大ということにずいぶんいろいろ知恵をしぼってみたつもりでありますけれども、ついに最初にばく然と考えた六千万トン・ベースには達することができなかったのであります。  そういうわけでございますので、需要の分析の結果、われわれは大体実トン数で五千七百万トン程度の需要ならば確保できるという確信を持っておりますが、それ以上の需要になりますと、なかなか確保する道がない、こういうことであります。需要の規模が大体きまりますれば、最初に申し上げましたように、われわれはその需要確保のもとに石炭産業を安定せしめる、こういうことになって参りますが、むろん石炭産業が安定しなければ雇用の安定も考えられない。山に多くの人をかかえる、これは非常に望ましいことでありますから、最初需要の点におきましてもその見地を十分取り入れて検討して参りましたけれども、ただいまのような結果に終わったのであります。そうすれば、この需要のもとにおいて石炭産業を安定する。そのことがまた、山で働く人々の職場を安定させることになる。こういうふうにわれわれは考えざるを得なかったのであります。  ところでこの需要の総量は五千七百万トンでございますけれども、この間には需要の構造は相当大きな変化をしております。一口に申せば原料炭の方がふえ、一般炭の方が減る。一般炭の中におきましても、電力用炭がふえるのですから、あまり高カロリーの炭はふえなくて、比較的低いカロリー、平均でいえば五千四百カロリーでございますが、その程度の炭の生産需要がふえる、こういうわけでございますので、従って需要構造が非常に大きく変わる。  それともう一つは、現在の石炭産業におきましては、企業はどの企業もいずれもといっていいほど赤字を出しておるということであります。この赤字が単に景気変動に基づくところの赤字、つまり短期的な赤字であるということでありますれば、問題はあまりないのでありますが、そうではなくして、この赤字が産業構造の変化に基づくところの赤字であるということになりますと、この構造的な企業の赤字というものは、そのままほうっておくわけには参りません。現在実質の赤字は大手で五百億、おそらく大手の借金は一千億をこえておると思います。これが構造的な赤字として現在企業がしょっておるところの債務である、私どもはこういうふうに考えておるのでありますが、この構造的な赤字はなくなるようにしなければ、石炭産業というものは安定しない。むろん、これを国の補助金でまかなっていくということも考えられないわけではありません。しかし、構造的な赤字を国の補助金でまかなっていくということになりますれば、この措置はいわば永久といっていいほど、いつまでも続けざるを得ないことになります。場合によりましては、構造の変化によりましては、さらに一そう大きな赤字の累積を国がめんどうを見ていくということにならざるを得ないのでありまして、これは産業本来の姿ではなかろうと私ども考えました。  従って、一方では需要構造の変化に基づいて炭鉱の編成がえをしなければなりませんし、他方におきましては、こういう構造上の赤字が解消するような姿をわれわれは描かなければならないということになるのであります。つまり、産業として石炭産業を安定させるためには、今の需要構造の変化と対応するということと、この石炭産業の持っておる構造上の赤字を解消する、この二つの問題を解決しなければ産業としての石炭業の安定は考えられない、こういうふうに私ども考えたのであります。その結果、優秀炭鉱につきましてはこれをビルドする、増強する、そして老朽で劣悪な炭鉱につきましてはこれをスクラップする、こういうふうに考えたのであります。これは一口に申しますならば、石炭業を若返らせるということであります。この石炭業の若返りあるいは体質改善といいますか、そういうことなくしては、この需要構造の変化に対処して、産業としての石炭業を安定させることはできないし、また従って、その石炭業で雇用されている人々の職場を確保する、あるいは安定することはできないと私ども考えたのであります。  そこでスクラップ・アンド・ビルドにつきまして、炭層であるとか炭量であるとか炭質であるとか、あるいは立地とかいうふうなものを基準といたしまして、いろいろ調査を行ないました。これにつきましては技術班の方に大へん大きな努力をしていただいたわけでございますが、この調査の結果といたしましてスクラップ、これは生産減少量ですが、生産減少量としまして千二百万トン程度、少し減るかもしれませんが、大体千二百万トン程度のスクラップが必要であり、同時に需要が、先ほど申しましたように五千七百万トンでございますから、大体千二百万トンのスクラップに対しましては千二百万トンのビルド、増強ということが必要である、こういう結論であります。  そこで私どもがこのスクラップ・アンド・ビルドを通じて描きました石炭業の姿というものは、これは一応四十二年度でわれわれは考えておりますが、あるいはそれが少しずれるということもありましょうが、一応四十二年度で私どもが描きましたところの安定した石炭産業の姿というものは、生産規模が先ほど来申しましたように、需要とマッチした五千七百万トン、そのときの能率を計算してみますと、全国平均で、現在は二十六トンでございますが、それが三十八・六トン、それから在籍人員が十二万人台。在籍人員は、四月ごろといいますか、閣議決定されましたころには、たしか十九万六千人程度でありました。ところがこの九月末の調査によりますと、十七万九千人ということになっております。いずれにしましても、私どもが四十二年度ごろに描きました構想の中においては在籍人員が十二万台、十二万をこえておりますけれども、そう大きくはこえませんで、大体十二万二、三千人というようなところでございます。そうして、あとで申し述べますけれども企業のスクラップ・アンド・ビルドに必要な資金対策を全部間違いなく実施するということになりますれば、会社の経理も四十二年度ごろには全体としましては黒字になります。まだ赤字の企業も若干は残りますけれども、全体としては会社の経理も少しばかり黒字になる。しかしそれまでは会社は、現在も先ほど申しましたように実質赤字をかかえております。借金もたくさん持っておりますが、そういう赤字はなお累増して参りまして、ようやく四十二年度になりまして黒字になるわけです。そうでありますから、その黒字をもって四十二年度以降は今までの赤字を漸次返済していく、こういうことのできる状態になるのであります。ですから、そこでいけば一応石炭産業といたしましては、その後は今までのような構造的な赤字が累積するというふうなことはなくして、だんだん今まで累増した赤字を解消しながら、雇用者の雇用安定をはかり、さらにいえば雇用者の雇用条件を改善しながらやっていける段階になる、ようやくなったということであろうと思います。これが私ども昭和四十二年度ごろに石炭産業が若返って、自立をすると申しておる姿であります。そういう姿にようやく四十二年度に至ってなる。あるいはそれがその間における経済変動のいかんによりましてはまた延びるということもありますけれども、四十二年度までの経過は一応除いて、毎年々々同じような形で進行するというふうに考えますならば、今申しましたように四十二年度ごろには私どもの描いたような姿が実現できるであろう、こういうふうに考えておるのであります。  そのように考えますと、このスクラップ・アンド・ビルドというものがかなり大規模のものになります。そこで、この大規模なスクラップ・アンド・ビルドをうまくといいますか、計画的に円滑に推進していくのでなければ、これは大へん大きな問題でありますので、ときには混乱を起こすことも考えられます。そこでスクラップ・アンド・ビルドの実施の方式といいますか、実施をどういう制度に乗せてやっていくか、その方式が大へん重要なことになるのであります。私ども報告ではこの点かなり力を入れて答申をしておるつもりでありますが、この実施の方式といたしまして私ども考えましたのは、現在あります石炭鉱業審議会を改組いたしまして、その機能というものをもっと拡大する、そしてこの改組されました石炭鉱業審議会に毎年毎年その年のスクラップ・アンド・ビルドの方針、どういう方針でことしはスクラップをし、ビルドをするかというその方針をかけます。それからスクラップ・アンド・ビルドの方針ばかりでなく、その毎年々々の地方別、炭田別のスクラップ・アンド・ビルドの計画、この炭田におきましてはこれだけの量のビルドをし、これだけの量のスクラップをするというスクラップ・アンド・ビルドの計画を、やはり石炭鉱業審議会の方にかけます。それとあわせて、スクラップ・アンド・ビルドといえば、一方では終閉山になる山もあります。また合理化による人員の整理ということもあるのでありますから、どうしても人員の整理が伴う。従ってそういう人員の整理に見合う雇用計画があるかないか、これが大へん重要なことでありますので、政府の策定する雇用計画をもあわせてこの石炭鉱業審議会に付議する。従って石炭鉱業審議会では、いずれも政府原案でございますが、スクラップ・アンド・ビルドの方針、その年の方針と、それからその年の地方別、炭田別のスクラップ・アンド・ビルドの計画と、そしてその年の雇用の計画、この三つが付議されることになるのであります。むろんこれは審議機関でありますから、付議されて、意見を政府が徴するということになるのでありますが、その上で初めて政府のその年のスクラップ・アンド・ビルドの方針と計画が決定される、そしてこれが実施に移される、こういうふうに私ども考えております。  ここでスクラップ・アンド・ビルドの計画とあわせて雇用計画が提示され、あわせて検討されるということが、大へん重要な意味を持っておるのであります。スクラップ・アンド・ビルドを気ままといいましょうか、勝手にやられますと、それから出てくるところの整理人員はどこがこれを受けとめるか、受けとめる先がない、必ずしもきまってないのでありますが、今回の場合におきましては、その整理人員を受けとめるための雇用計画というものがちゃんときまっておるということであります。そしてこの雇用計画も、今申し上げましたように、政府が策定したものである。従って、政府も、策定した者としてその責務に当たっているということが言えるのであります。そしてこの雇用計画には、石炭企業自身が石炭企業内あるいは石炭企業関係会社につくり出すところの職場はむろんのことでありますが、さらにこの場合には、政府自身が造出するところの職場、これがかなり重要な意味を持ってくると思います。政府がその責務につきまして熱心に、どうしてもこの場合はこれだけの職場をつくらなければならないけれども石炭会社の方でも、また広域職業紹介でも、経済事情がどうもあまり思わしくない、にもかかわらずこれだけのスクラップ・アンド・ビルドをしなければならない、そして整理人員もこれだけ出るというような場合には、政府自身がその大きな部分を自分が造出する職場で引き取る、これだけの覚悟を必要とすると思うのであります。  いずれにいたしましても、政府の策定するところの雇用計画とスクラップ・アンド・ビルドの計画と、これが突き合わされて検討され付議されるということが、非常に重要な意味を私は持っておると思います。この方式を見まして、ある人は、この方式は解雇制限を間接ながら行なう方式であるように思われるというふうに言っております。なるほどこの方式を制度として考えてみますならば、そういうふうな面もあると言わざるを得ないと思います。むろんこの方式はスクラップ・アンド・ビルドを計画的に円滑に推進するための方式でありますけれども、しかしその反面、それを裏返して申しますと、今申しましたような解雇制限をするといいますか、少なくとも自ままなスクラップ・アンド・ビルドができないということから申しますならば、それを制限をするという面もあるように思われます。そう申しても差しつかえがないかと思います。  それからもう一つは、これは毎年毎年そういう計画を立てるということでもります。われわれは四十二年度にこういう姿を描いておるというふうに先ほど申しましたけれども、四十二年度までの毎年々々の経済の変動というものは、必ずしもわれわれにとっては予測ができない。従って景気が非常にいい年であるとか、あるいは景気が悪い年であるとかいうふうな景気の変動その他の経済的な諸変動に応じまして、その年その年にスクラップ・アンド・ビルドの計画、それに見合う雇用計画というものが立てられなければならないと思います。そうでなくて、何が何でも四十二年度には私どもが描いておるところの姿にまっしぐらに到達するんだ、こういうふうな考え方をとるのは、これは粗暴だと思います。一歩々々、毎年々々積み重ねをして、そうして私どもが描いておるような石炭鉱業の若返り、自立という形にまで進んでいく、こういうふうに考えなければならないと思います。私どもが描きましたのはそういう途中を飛ばした、というと少し言い過ぎでございますけれども、途中の変動をネグレクトして描いたものであります。この間にはいろいろな起伏があるということは、むろん当然のことであります。その起伏に応じて適切なその年その年の計画を打ち立て、そして私どもの描いたような石炭鉱業の自立の姿にまで進んでいく、こういうふうに考えていただきたいと思うのであります。  だいぶ時間をとりまして恐縮でございますが、一応スクラップ・アンド・ビルドの方式はそういうふうに考えました。そうなりましても、やはり、山におきましては相当数の安定した職場が得られますけれども、他方におきましては、どうしても山で安定した雇用を保持できない、確保されない人々が出てくるのであります。こういう人々に対しましては、他の産業で安定した職場を確保しなければなりません。これはその離職者を出した企業、そうして石炭産業の若返りの大きな仕事を持っておる政府、この政府と企業の責務であろうと思うのであります。企業の方も、何もかも政府に離職者対策はお預けだというふうな考え方でなく、十分自分自身でもできるだけ職場を開拓する、造出するということが必要でありますが、政府もまたそれを企業にまかせたというふうに考えるわけには参りません。政府自身も職場を造出する必要があります。そこで離職者対策というものが重要な問題になってくるわけでありますが、この離職者対策といたしましては、今申し上げましたように、政府の策定する雇用計画に整理人員に見合う職場が計上されておるはずであります。そうでなければ、両者が見合わないわけであります。政府の造出する職場、企業の造出する職場、そのほかに職業紹介、これは広域職業紹介を含める職業紹介によって他の産業における安定した職場を確保する、こういうことを考えておりますが、政府並びに企業の造出する職場、ここはもう一方的に一義的にきまるわけですが、職業紹介による職場の確保ということになりますと、これはなかなか一義的にはきまりません。求人者の方から申しますと、どうしても一定の所要の技能を備えている人がほしい、そういう技能を備えている人ならば、われわれは炭鉱離職者を喜んで迎えたいというふうな求人者がたくさんおるのでありますが、炭鉱離職者は離職の直後にはそれだけの技能を持っておらないことが多いのでありますから、従ってどうしても離職者に対しましては、職業訓練を十分実施しなければならなくなります。産業構造の変化によるところの離職者発生した場合におきましては、これはどの国におきましても、ソ連といえども、この職業訓練を十分行なっておるのであります。職業の訓練、同時に新しい技術の修得ということを伴うものであります。ですから職業訓練につきましては、私どもも十分いろいろ新しい構想、新しい体制を加えることによりまして、この制度を活用したいと考えております。  石炭鉱業離職者に対しては手帳を交付いたしまして、そして職業訓練制度を通じて十分な訓練を受け、広域職業紹介その他の紹介を通して新しい安定した職場の確保ということに努めるつもりでおるわけであります。その際は、政府関係の金融機関も、融資にあたりましては、この炭鉱離職者を優先的に雇い入れるというふうな、条件とまでは言えないかもしれませんけれども、勧奨するということも考えております。しかしそれでもなお、場合によりましては、いろいろの事情で、職業訓練は受けたけれども、就職ができないという人もたまにはあろうかと思います。そういう人々に対しましては、もっといい職場を見当てるまでの間、いわゆる就職促進手当というものを提供しよう。失業保険は期間が一年でございますけれども、この就職促進手当というものは、その後二年間引き続いて、大体失業保険給付に見合う程度のものを支給する、こういうふうに考えております。なおその他離職者が就職しました後のいろいろのアフターケアということにつきましても、私どもは考慮しなければならないというふうに答申しておきました。要するにこの離職者につきましては、一口に申しますならば、とことんまでその離職者のめんどうをみよう、そして失対事業や特別失対事業に追いやるようなことは絶対にしない、こういう考え方に立った離職者対策であるのであります。  大体離職者対策はその程度に話をとどめたいと思いますが、そのほか企業の問題につきましては、企業はどうしても合理化といいましょうか、近代化、合理化の建設資金、設備資金というものを投入しなければなりませんし、他方におきましてはスクラップをするのでありますから、相当巨額の整備資金を供給しなければなりません。大体設備投資に千七百億円、整備資金に八百億円程度のものが必要かと考えられます。むろんこの全部が政府が支給するという資金ではなくて、企業は自己資金をまず振り当てる、それから市中銀行から借り入れられるものは借り入れるというふうにこの資金の調達をするのでありますけれども、何と申しましても、今日の石炭企業でありますから、そう大きく市中から借り入れるということもできますまい。そのためには相当政府の資金を投入しなければならないと考えられます。そうでありますので、そういう会社に対しましては、大体石炭産業が自立するまでの間、経理の規制と監督を政府から受ける状態に会社を置いておくべきである。つまり臨時立法による会社の規制というふうな法律をつくって、それに基づくところの経理の規制と監督というものをやらなければならないだろうと考えられます。  そのほかには、鉱区の調整につきましても、われわれ答申の中に指摘しておきました。これもなかなかむずかしい問題でございますけれども、この鉱区の調整を積極的に推し進めなければスクラップ・アンド・ビルドがうまくできないという問題点もあるように見受けられますので、この鉱区の調整を積極的に行ない得るような態勢を整えるように答申をしておきたい。  それから、石炭流通機構は非常に古い機構でありますが、この流通機構の改革につきましても、私どもはかなり思い切った措置を提案しておきました。一般炭、原料炭の需要というものは、だんだん大口の需要に集中するようになります。大体鉄鋼と電力というふうな二つのものに集中する。原料炭におきましては、もう弱粘結のほとんど全部といっていいものを鉄鋼が引き取る、一般炭におきましては、その八〇%を電力が引き取る、こういうふうな形になるのでありますから、この流通機構の方ももっぱらそういう大口需要に集中して供給ができるような考え方をとることと、他方におきましては、暖厨房用の値段が、山元の値段と消費者の買取値段との間に非常に大きな開きがある、この点も十分考慮いたしまして、そんなに大きな開きのないような状態に、流通機構に改善を加えるということを答申の中で申してあります。銘柄の整理であるとか、あるいは専用船を中心とした共同貯炭、共同荷役といったようなものもこの答申で指摘してあります。  それから最後に、産炭地振興の問題でございます。この産炭地振興という問題は、石炭山の若返りと申しましょうか、山の安定、石炭産業の安定、従ってまた雇用の安定と同時に、重要な問題であります。地元住民、商工業者の生活の安定という問題並びに窮迫しておる市町村財政に対する対策の根本といたしましては、この産炭地振興が最も重要な問題であると私ども考えます。従って産炭地振興につきましては、かなり力を入れた答申をいたしたつもりであります。ただ産炭地は、地域々々によって事情が非常にいろいろと異っております。従ってここに具体的にこうだということを書き上げることは大へんむずかしかったのでありますけれども、何と申しましても筑豊、西九州あたりの産炭地は特に疲弊しておるようにわれわれは見受けましたので、この筑豊、西九州地方における産炭地振興についての考え方というものを打ち出してあります。  一言で申しますならば、道路であるとか工業用水であるとか、工業用地の造成であるとかいうふうな産業基盤を早く打ち立てるということはむろん必要なことでありますけれども、そればかりでなく、私どもはここにまず政府が率先して、政府または政府関係機関の直轄工場を持っていったらどうか、これが一つの大きな誘い水であろう、こういうふうに考えております。また、ここに大きな機械工場を作るというふうな場合には、政府は極力資金その他の面において援助する、助成するということも必要であろう、また、この地域に民間工場としてたとえば縫製品をつくる工場があった場合には、なるべく国の需要の一部をこの民間工場に確保してやるようにするというふうなことも考えてみるべきであろう。いろいろそういう面において考え方を打ち出しておるのでありますが、これはしかし何と申しましても、産炭地振興の場合におきましては、それを具体的に実現するということが最も重要なことであります。  同時に、鉱害復旧の問題、これは鉱害被害者の問題もむろん入りますが、しかし産炭地振興ともつながっておる問題であります。従来鉱害の復旧の問題はとかくおくれがちであって、いろいろむずかしい問題を引き起こしておるようでありますが、これにつきましても、迅速に鉱害の復旧ができるように、そして、無資力の認定が行なわれた場合には全額国が補償するということになっておりますけれども、無資力の判定に際しても、あまりこまかい規定でとやかくのことをいわないで、迅速にこれを認定するように持っていってもらいたいというふうに書いてありますのも、これは被害者はむろんのことでありますが、産炭地振興と結びついてわれわれは重要な問題と考えたからであります。  大へん長くなって恐縮でございましたが、要するに石炭産業というものは、第一に、古い産業であって、そして非常に大きい産業である、それだけにこの石炭問題として関連するところの問題が実に多方面であって、ほとんど乱麻のように入り乱れておるということであります。私ども答申が全部すみからすみまで行き届いていないという点も、むろんあると思います。こういうふうに非常に入り組んだ問題で、多方面の問題を持っておるのでございますから、全部が全部の問題に行き渡らない面もあろうかと思いますけれども、しかし趣旨は私どもとらえてあるつもりであります。今日の段階におきましては、私は政府が英断と果敢な措置をもって、てきぱきと処置していただきたいと存じます。そうでなければ、ついに石炭問題あるいは石炭産業自体が泥沼のような状態に陥るおそれもあります。すでに倒産寸前の企業もあります。企業が倒産するということになりますと、ビルドすべき山もその巻き添えを食うというような、われわれから見ると、まことに悲惨な結果も引き起こしかねない状態であるのであります。それで私自身といたしましては、早く答申の線に沿いまして政府が英断をもって処置していただきたいと存ずる次第でございます。  大へん長くなりまして申しわけありません。(拍手)     —————————————
  66. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより答申について質疑を行ないますが、先ほど御紹介申し上げました参考人のほかに、中野実君、土屋清君の両参考人がお見えになっております。  なお、念のため申し添えますが、青山参考人は、所用のため四時三十分ごろまでしかここにおれないとのことでございますので、御了承願います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。有田喜一君。
  67. 有田喜一

    ○有田委員 私は、有沢団長以下調査団の各位が、この深刻なエネルギー革命のあらしの中で、わが国石炭産業の安定をどうしてはかるか、そうして雇用安定をどうやっていくかといったような重要問題と取り組みながら、五カ月の長きにわたって現地視察、政策の討議等を続けられて、今回その結論を得られ、答申をされまして、ただいま詳しく御説明を承ったのでありますが、その間における御労苦を深く多とするとともに、ここに深甚の敬意を表する次第であります。  この答申の内容は非常に詳細をきわめておりますし、また、ただいまも詳しく説明を承りましたので、一々小さなことについての質問は避けたいと思いまして、ごくその内容の本質的な問題について二、三お尋ねいたしたいと思うのであります。  まず第一にお尋ねしたいことは、石炭需要確保の問題であります。この需要確保は、石炭鉱業安定の上からも、また、雇用の問題の上からも最大の課題でありまするが、それを四十二年度に五千五百七十万トンと想定されておる。しかも電力を二千五百五十万トン、原料炭すなわち鉄鋼、ガス用炭として一千四百五十万トンというような想定のもとに、諸般の対策をこの想定に従って立てられておるように見受けられるのであります。従いまして、この需要確保の点がきわめて重大な問題となることは言うまでもないのでありますが、もしこの一線がくずれると、この答申の諸対策がまたくずれてくる、かようにも考えられるのであります。ところが、この需要確保に対する裏づけがはたしてあるのかどうか。たとえば電力用炭について見ますると、二千五百五十万トンという需要ができるという見通し、私もできる限り石炭需要が多くなるととを希望するものでありますが、はたしてこれができるかどうか、ここに一つ心配があるのであります。この前三十四年度でしたか、合理化対策が立てられたときには、一千二百円コスト・ダウンすれば、大体石油の価格と見合うであろう、こういう想定が一応立てられた。もちろんその当時の想定は違っておりまして、今日のごとく六千円というようなことになって、予想がはずれたのでございますが、しかしその当時は、とにかく一応石油と見合うだろう、こういうことでありましたがゆえに、何とかかんとか言いながらも、あの長期契約ができたのでありますが、しかし今日では調査団みずからも認められておるように、とうてい石炭は石油には太刀打ちができない、これはどう考えても明らかであります。この現状において電力業界その他の需要家にたくさんの石炭をしいるというわけでありますから、これはなかなか容易なことではないと思われるのであります。一方電力にしましても、料金をできるだけ低廉にしたいという使命はやはりになっている。また他方におきましては、石油の自由化も、世界経済の情勢からして、いつまでもこれを延期しておくわけにはいかないと思われるのでありますが、かようなことを考えましたときに、はたしてどうなるかということが非常に心配なんです。もちろん電力界を初めその他の石炭産業需要家の協力を得なければ、石炭のこの窮状は打開できない、これはもちろんであります。しかしやはり、協力にもおのずから限度がある。重油ボイラー規制法の延長とか、あるいは重油消費税の創設とか、いろいろなことを考えられておるようでありますが、経済ベースに乗ってないものを一般の民間企業に無理にしいるということは、これは相当困難性があるのじゃないか。ことに電力にしましても、鉄鋼にしましても、最近はきわめて弱体産業になっておりまするがゆえに、そう規制をしいるわけにもいかないだろう。そうするとやはり、高いものを使わしたら、それだけのものを一方において埋め合わすことを考えてやらなければならぬ、かように私は思うのです。ともかくこの需要確保に対する裏づけというものが必要と思うのでありますが、これに対する有沢団長の御意見、あるいはこういう裏づけがあるから大丈夫だというようなことがありますれば、それを率直に一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  68. 有沢広巳

    有沢参考人 ただいまの御質問の鉄鋼並びに電力に相当大量の石炭を引き取ってもらう、つまり需要確保する、その需要確保の裏づけがどうなっているかという点でございますが、御質問にありましたように、確かにこの需要確保するためには、何らかの裏づけが必要であると私ども考えました。それで電力について考えますならば、先ほども申しましたように、石炭と重油では燃料コストにも大きな開きがある。それから設備の建設費につきましても、かなり大きな開きがある。その石炭を使う電力業界にとりますと、かなり大きな負担がかかってくるわけでございまするので、その負担につきましては、答申の中では「電力および鉄鋼業界における引取数量の増大に伴う負担増と石炭火力発電所建設資金については、国において所要の措置を講ずるものとする。」というふうに書いてあるだけでございます。と申しますのは、むろんこの面につきましても、私どもの中ではかなり検討を進めたのであります。たとえば、電気料金を引き上げるということも一つの道でありましょう。またそうでなくして、この負担増の分を国の財政からまかなうということも、他の一つの道でありましょうし、また所要の建設資金につきましても、何らかのめんどうをもっと国でみるということで言い足りるかもしれません。そういうふうにいろいろの措置の仕方はあるのであります。けれども、これらの問題はほかの問題とも非常につながっておるように私ども考えました。それで私どもから一方的にその答案を出すということは、この場合は差し控えたがしかるべきであろう。なぜならば、政府は私ども答申を尊重すると申しておりますので、私どもが一方的に考えたこの措置につきまして、どうしても政府がこれを尊重しなければならないということになりますと、たとえば政府の、公共料金政策というものも十分われわれ吟味した上でなければ、なかなかきめかねる点もあります。でありますから、そういう点は政府におかれて十分御検討を願う。しかし、措置は確かに必要である、需要確保のための措置が必要である。その措置をどういうふうにするかということは一つ政府において御決定願いたい、こういう趣旨で答申を申し上げたわけであります。  ついででございますけれども、私ども答申の中には、そういうふうに政府において措置を講ずるものとするといって、その措置の内容を何も書いてない場合とか、あるいは先ほどもちょっと触れましたボイラー規制法の存続と重油消費税の創設というふうな問題につきましては、十分検討してもらいたい、石炭の消費の減退を防止する手段として十分検討してもらいたい、こういうふうな書き方にもなっております。あるいは市町村財政と関係いたしまして、鉱産税、固定資産税の問題につきましても、これも税制調査会の検討と答申を早急に求めたい、こういうふうに書いてあります。まあいわば政府や税制調査会に、俗にいうげたを預けたという形になっておりますのは、私どもがこれを一方的に検討をする、あるいは決定するということになりますと、少し視野が狭い点もありはしなかろうか、そういうことをみずから考えまして、あえてこういうふうな表現をとったわけでございます。それでございますから、私どもの趣旨のあるところもおくみ取り願いたいと存ずるわけでございます。しかし長期引取、需要確保の問題につきましては、これは何らかの措置がないと、これくらい大きな量、従来二千三百万トン引き取る場合においても相当いろいろな問題がありましたのに、さらにその上積みに七百万トン、鉄鋼の場合におきましても同様でございますが、そういうものをぜひとも引き取ってもらわなければならないということになりますれば、それに対する措置を必要とすることは、私どもも必要のことだと考えます。それでそういうふうな答申になっておる点を御了承願いたいと存ずるわけでございます。
  69. 有田喜一

    ○有田委員 有沢団長の非常に謙遜された言葉を了とするわけでありますけれども、やはり何と申しましても、この需要確保の問題が一番大事な要素である。石炭産業の安定という点から申しましても、あるいは雇用面から申しましても、私は一番重要なファクターだと思うのであります。この大事な要素に、何と申しますか、多少でも不安の念を与えるというようなことがありましては、本案を推し進めていく上において私は非常に支障がくるのではないかと思うのであります。さような意味におきまして、この裏づけの確保、裏づけの何かがほしい。これはできたら御私見でもよろしゅうございますが、もう少し、この点をこうしていったならば大丈夫、こういうふうな方法でいくんだ、これでいかぬならばこういう方法があるんだというようなことでもあれば、これはあとで政府が裁量しましょうけれども、それがなければ一応全体の問題がくずれてくるおそれがある、何とかここにしっかりした裏づけの方途を講じたいと思うのです。御私見でもけっこうですから伺いたい。
  70. 有沢広巳

    有沢参考人 これは石炭調査団の見解というわけではないのでございまして、ほんとうの個人的な見解でございますが、もっとよく計算をしてみないとわかりませんけれども最初に最も重要なことは、電力について申しますと、設備資金を供給するということだと思います。設備資金が、今のような電源開発のために非常に巨額な資金を必要とするのでございまして、この資金調達に電力会社は実は困難をしておると思います。それでございますから、もう六、七年くらいだったと思いますが、六、七年くらい資金を十分つけて建設を十分行なっていくということになりますれば、その後は大体電力会社は料金を上げるなんということなしにやっていけるような経理の状況だったと私は記憶しております。それですから、何と申しましても、建設資金を供給してやるということが第一義に重要だということが一つ。それから第二は、これは電気料金を引き上げるかどうかという問題でございますが、この電気料金を引き上げるということは、電気ガス税との見合いになるのじゃないかと私は思います。その設備資金を政府がある程度めんどうをみてやってもなお足りないから、電力会社が企業内の調達でやっていこうとする場合には、これは一方において電気料金を若干上げなければならないという問題に逢着すると思いますが、それがほかの公共料金の引き上げ問題と関連してまずいということでありますれば、まあ電気ガス税、これもいろいろ問題がある、いいにつけ悪いにつけ問題になる税金でございますが、この電気ガス税というものを減免するという道が一つ考えられるように思います。しかし、この問題は実際の電力会社の経理、そういったものも十分詰めてでないとはっきりしたことは言えませんけれども、今ここであえてお答えを申し上げるとすれば、そういうふうな感じを私は持っております。
  71. 有田喜一

    ○有田委員 これ以上この問題は追及いたしませんけれども、しかし電力料金にこれを持っていくということはあまりにイージーゴーイング過ぎやしないか、そういうような資金問題とか税制問題その他、一般に負担のかからない方法で軽減措置を講じながらこの需要確保をやっていくべきものじゃないかと私は考えるのです。しかし、やはりこの石炭産業の安定ということを考えましたときは、最後は総合エネルギー対策というものが立たないとうまくいかないのじゃないかと私は思う。答申によりますと、石炭価格が現在千二百円コスト・ダウン、この線はやれるのでありますが、それから先は一体コストはどういうふうになっていくか、おそらく横ばいということを考えておられるのだと思いますが、なかなか将来の予想はむずかしいとは思いますが、これははたして今の千二百円コスト・ダウンの線でうまくいくかどうか、これも一つの不安定の要素じゃないかと私は思う。一方石油は、御承知の通り、ダンピング市場になっておる。世界の石油産出量は、ますます増加の一途をたどっておる。重油の供給量の増加と価格の低落というものはほとんどとどまるところを知らないというような現状であります。しかも今日、重油の自由化は一応は延期されましたけれども、世界経済の情勢からするならば、いつまでも重油の自由化を拒み続けるわけにはいかないのじゃなかろうかと私は思う。そういうことを考えますと、なかなか簡単にはいかないのでありまして、石炭産業オンリーの安定ということは容易に期せられない。そこでやはり総合エネルギー対策ということが必要になってくると思うのです。第一、石油産業の安定とその価格の安定がなければ、石炭産業の安定はとうてい期せられない。また、そのめども立たない。また石炭の最大需要家であるところの電力は、何といっても大事な石炭産業との関連があるのでありまして、この電力問題を離れては石炭産業の安定は考えられない。しかも今日の電力界は、先にも申しましたように、非常に弱体となっておる。犠牲をこれ以上しいるということは、非常に困難です。そうしますと、ここにどうしても確固たる総合エネルギー対策を樹立しなければ、いつまでたっても石炭産業の安定は期せられないのじゃないか、私はこのことを心配するのです。総合エネルギー対策を立てて石炭の確固たる位置づけをはかる。そうして一方におきましては、犠牲をしいられるところの政府の息のかかった特殊会社とかあるいは公団、石炭火力発電所というようなその部分だけの特殊会社あるいは公団というようなものをつくってやっていくようにしないと、なかなかうまくいかない。これは一つの例でございますが、ともかくそういうような具体策を持った総合エネルギー対策をここに樹立することが、私はきわめて緊要なことじゃなかろうか、かように考えるのですが、団長の御所見を承りたい。
  72. 有沢広巳

    有沢参考人 総合エネルギー政策を樹立しなければならぬ、これはおっしゃる通りだと私も思います。その点につきましては、今日重油の問題、価格の問題がありますが、この問題につきましては、石油業法ができ上がっております。ですから、石油業法と石炭政策と結び合わせて運営していってもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、電力との問題について御質問がありましたが、先ほども申しましたように、四十二年から五年ごろにかけましては、一般炭の八〇%は電力用炭になってしまいます。これは大体アメリカが一九七五年ごろにやはりそういう状態になるといわれておりますが、日本の方も大体その時分に八〇%を電力が使うという状態になって参ります。電力につきましては、これもいろいろ電力事業としまして問題があるわけでございますが、しかし何と申しましても、電力というのは九電力、それと石炭の方は八〇%が取引をするという形になるのでございますから、これの規制といいましょうか、調整というものが私は割合に楽にできると思います。ですから石油と電力と石炭と、この結びつきは、一つの総合政策としてお考えにならなければなりませんが、これは今すぐは、なかなかこの問題をこうであるというふうに確定するととはむずかしいかと思います。ことに石炭が総エネルギーの中においてどれくらいの地位を占めるべきかという問題でございますが、これはもう少し時期を待ってその地位をきめるべきでなかろうかと思います。私どもの研究調査の結果によりますと、四十二年ころまでは、先ほども申しましたように、需要をそれ以上つけようと思ってもなかなかつかない状態にあるわけであります。四十二年度以降になりますと、おそらく石油業界の方も安定したといいましょうか、落ちついた姿になろうと思います。電力事業につきましても、今電力事業の審議会があって、公益事業としての電力はどういうふうな姿にあるべきものであるかというふうな審議も行なわれております。でありますから、そういうものの回答が出そろった上で、私は四十二年以降になって総合政策というものを打ち立てるのがいいのではないかと実は考えております。  私どもが五千五百万トン余の需要をはじき出しましたのは、実はできるだけ多くの石炭を国内資源として使うという建前から考えてみたわけでございますから、先ほども申しましたように、これ以上の石炭出炭量確保しようということになりますと、先ほども申しましたように、経済性を無視した、あるいは技術的進歩を無視した、そういう需要を無理につくり出さなければならない状態なのであります。ですから今ここで総合政策を打ち立てられまして、石炭はたとえば六千万トンとか六千五百万トンというふうにきめられましても、実はその需要をつけることにおいて非常な困難を感ずると思うのであります。先ほどのお話のときにちょっと申し落としましたけれども、四十二、三年度以降になりますと、原料炭において百万トン以上、百二、三十万トンになろうかと思いますけれども、百二、三十万トンの不足ができます。これにつきましては、国内においてそれだけの増産をはかるような計画を持って、すぐさま未開発炭田開発のための調査を進める必要があると思います。そして大体四十二、三年ころから出炭ができるような一つの計画を立てる必要があろうと思います。  そういうふうに考えて参りますと、四十二、三年度以降になりますと、一応エネルギーの情勢も確定してくると思いますので、その時分にはそういうような総合エネルギー政策の問題を具体的に考えることができようかと思いますが、今日これを考えるということになりますと、なかなか確定的な数値を決定することは困難だと私は考えております。考え方としてはいろいろの考え方があろうと思いますが、さて具体的にその数値を確定することが非常に困難である。それを確定しなければ、総合エネルギー政策と申しましても、から念仏に終わる結果になろうと思います。そういうふうに私は考えております。  ただ申し添えておきますけれども、私ども、四十二、三年ごろまでの石炭産業自立の構想の中には、できるだけ石炭をたくさん国内において需要するようにという構想を持っておることは、将来の総合エネルギー政策を打ち立てる場合にも大へん必要なことと実は考えて、そういう構想を持った次第であります。そのことを念のためにつけ加えておきたいと思います。
  73. 有田喜一

    ○有田委員 私どもは、今の石炭産業を、今の答申にあるように、いわゆる合理化をどんどん進めて体質改善をはかるということは、やらなければならないと思います。しかし、これをなし遂げるには、やはり総合エネルギー対策というものがなければいけない。それは、答申の中にも、電力のことも石油のことも触れておって、そういう面に御注意を払っておられるということはよくわかるのでありますが、やはり調査団は、こうこうかくかくの総合エネルギー対策を立てるという具体的のものでなくとも、やはり総合エネルギー対策に対する示唆を政府に与えて、政府に検討させるということだけは、おやりになってもよかったのじゃないかと思うのであります。それ以上は意見の相違になりますから申しませんが、私としてはやはりこれだけのことを進めるについての総合エネルギー対策というものがなければ、なかなか容易ではない、かような見解を持っておるわけです。  また答申によりますと、ちょっと小さい問題でありますが、石炭行政機構の強化ということがうたわれております。これはどういうことかわかりませんが、しかし幾ら石炭局ばかり、次長をつくり、あるいは課長をふやしたりして強化されましても、私は今のままではいけないと思う。これは一方で公益事業局がいやと言ってしまえば、何もできない。これは今までの石炭局長が非常に悩んだことでありまして、せっかくこの行政機構の問題に触れるならば、少なくとも行政機構の中では、電力、石炭、石油というようなものを総合したエネルギーの総局というようなものでもおつくりになって、そうしてやはりその辺のところからエネルギー総合対策を樹立する卵をつくっていかないと、今のようなばらばらでは、大臣がそれを統括するといっても、なかなか大臣は忙しくてできませんので、やはり総局長官というようなものでもつくって、そうしてやはり総合エネルギー対策の一歩を進めるという方針でいかれるべきがしかるべきだと思います。これは私の意見になりますが、調査団もせっかくこうして相協力してやってもらっておるわけでありますから、そういうことにつきましても一つよく御理解と御意見をどんどん今後ともそういう問題についてお進め願いたい、かように希望するわけでございます。  次に雇用の安定の問題でございますが、答申によりますと、雇用の安定ということに相当御苦心をなさってお力も入れられておる。その跡がよく見えまして、その点は私も敬意を表するのでありますが、また実際問題として、六万人とか七万人とかいうような多数の人が職場から去っていかれる。そのことはまことに大へんなことでありまして、それらの人の身になってみれば、まことに同情にたえないのでありまして、われわれもそれらの人々にあたたかい愛情とそれから熱意と誠意を持って、この雇用の安定をはかっていかなくちゃならぬと思うのでありますけれども、しかし雇用の安定は、単に石炭産業にできるだけ多くの労働者を残すということではないと私は思う。やはり石炭産業を離れていく人、これは長年住みなれた職場を去っていくのですから、情においては忍びがたいのでありますが、それらの人々に安定した新しい職場を与えること、これが私は真の雇用安定じゃないかと思うのでございます。調査団報告にもあり、また、先ほど有沢団長お話にありました通り、石炭産業の安定があってこそ石炭産業労働者の安定が期せられるのでありまして、なまはんかな整理をやって、いつまでも石炭産業を不安定な状態にしておっては、いつまでたっても雇用の安定は期せられないと私は思う。真の雇用の安定は、石炭産業の安定をはかって、石炭産業に残る労働者の安定をはかるとともに、他方離職していく人々に対しては、安定した職場を完全に与える、離職者対策と再就職対策というものの万全をはかっていく、この二つを完全に遂行することが真に雇用の安定をはかるゆえんであると私は考えるのであります。この意味におきまして、答申はその方針が貫かれておるようでありまして、私はここに敬意を表するのでありますが、しかし労働者の方でも、そこは一つ大きな雇用安定という意味から、よくこのことを理解して協力を願いたいと思うのであります。そのかわりに、政府や石炭鉱業者はもちろんのことでありますが、私はわが国全産業界がこれらの方々にあたたかい愛情と誠意を持って、安定したよき職場を与えることに懸命の努力を払うことでなければならぬと思うわけであります。どうも山の労働者の声は、従来の離職者対策の現実に不満があるようであります。この間もラジオ放送を聞いておりますと、せっかくいい職場があるというので山を離れて新しい職場に行ったが、今までの話と全然違っておるので失望して再び山に帰った、こういうような声が頻々として出ておりました。離職者対策の現実が、円滑に行ってなかったきらいがあるようでございます。そこに政府に対する不信といいますか、いろいろ対策に対する不安というか、そういう気持が先に行っているように私は思われるのでありまして、お互いに信頼ができるということが大事だと思いますが、この重大な石炭対策にこういうようなことから暗影を投ずるということは、まことに遺憾に思うのであります。円滑な炭鉱労務者の雇用転換の達成、これこそ今日の最大の課題でありますが、労働者の方もこのことはよくわかって下さっておると思うのであります。また答申にも、至れり尽くせりの離職者対策が講ぜられております。また政府も着々とその準備にかかっておるようでありますが、要は、石炭産業はこれだけのことをやれば安定するのだ、離職者で再就職を希望する人には、誠意をもってお互いが職場をつけてやるのだ、こういうことを明確にして、その不安な気持を一日も早く解消することが非常に大事だと私は思うのであります。先ほど有沢団長お話にもありましたように、今度の答申一つ前進して、合理化というものと雇用計画というものを同時にやっていく。これは一つの進歩でありまして、非常にけっこうと思いますが、しかし計画は同時にやっても、実際が行なわれなければ何にもならないと思うのですが、そのことは政府に責任をまかされて——もちろん政府が責任を持つでしょうが、政府はそういうことに対する調査団の具体的の意見も聞きたかっただろうと思います。雇用と合理化、スクラップを同時にやるというその計画自身は一つの進歩でございますが、その具体案、こういうようにするのだ、たとえば雇用の方が進まなければスクラップはやらぬという、そこまでいっておるのかどうか、私はそういう極端なことでなくて、やはり並行してだと思いますが、抽象的でなくて、ここまで責任を持つのだ、そしてスクラップをやっていくのだ、こういうような具体的な御見解がございましたら、その点を明らかにしていただきたい。そして今日の不安な状態を一日も早く解消することがいいことじゃないか、私はかように考えるのですが、一つ御所見を承りたい。
  74. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際一言希望を申し上げますが、きょうは質問者がまだたくさん残っておりますので、質疑応答ともにできるだけしかるべく御協力を願いたいと思います。
  75. 有沢広巳

    有沢参考人 御指摘の点は全く私も重要だと存じます。新しい方式によりますと、雇用計画とスクラップ・アンド・ビルドと突き合わせて、それで石炭鉱業審議会がいいとか悪いとか判断を下すわけであります。むろん雇用計画は政府が策定したものでありますから、その通りに実行されるように私は非常に希望しております。そのために、政府の策定する雇用計画につきましては、従来の石炭対策関係閣僚会議ですか、これのメンバーも、政府の造出する職場に関係の深い大臣、建設大臣だとかあるいは郵政あるいは厚生あるいは運輸、そういうふうな大臣方もこの閣僚会議のメンバーとして、できるだけ政府においても職場を造出する。企業の方においてもむろん造出することになっておりまして、現に、もうすでに企業の方から石炭局の方に、自分の方ではこういう会社を産炭地に設立するつもりだから、資金その他については十分御配慮願いたいというふうな申し込みもあるようでございます。そういうふうな会社の造出する職場も、むろん計画の中に入っておるわけでございます。ですから残る問題は、広域職業紹介に乗せる人員の問題だと私は思っております。広域職業紹介は、これは景気の変動によりまして割合に多かったり、あるいは割合い少なかったり、かなり変動するものかと考えます。従って、毎年々々計画を立てるという意味は、先ほども御説明申し上げましたように、その年その年の経済情勢とにらみ合わして雇用計画も立てられておるわけでございます。しかし職業紹介で乗ると考えていたものが乗らなかったという場合も起こり得ると思います。そういう場合にはその余った分、はみ出した分は、翌年の雇用計画には必ず取り入れて、あわせて審議をしていただかなければならないと考えております。翌年に持ち越すような場合は、これは政府の雇用計画としては不手ぎわな場合でございますから、そういう場合には、一そう政府の方でよく御勉強といいましょうか、雇用造出について勉強してもらわなければならないかと思います。従来は、確かに政府の場合も、企業の場合もそうだったかと思いますが、口約束でしょうけれども、約束をした場合、必ずしも実行に移されていない場合があります。そういうことが非常に不信を買っている点だと私は思いますので、今度の場合におきましてはそういうことのないように、約束したものは必ず実行するという建前で事を運んでいただきたいと考えております。  なお、先ほど離職者が再就職いたしまして、行ってみると条件が違っておる、思わしくないというふうな場合もあったという話でございます。私もそういう話を聞いておりますが、今度はそういうことがないように、アフターケアも十分やる、再就職をしたからもうそれでほっぽり出す、もうわれわれの責任でない、こういうふうに考えないで、再就職をした人についてもアフターケアをする、こういう建前をとっておるのであります。なお、石炭鉱業審議会におきましても、ただ審議のしっぱなしでなくて、その年の計画がどういうふうに実施されているか、あるいは実施されていないか、そういう面につきましても、ちゃんと常にトレースしていく、そして、もしうまくいってないような場合がありましたときには、政府に建議をするというふうなことも考えております。それでありますから、従来労働者の方に失望を与えたり、不信感を買ったような場面は、ある程度私どもはこれをふさいでやっていくつもりであります。そういう面で、これは何分にもまだ紙に書いただけのものでございますが、これが運営というか実施という面が、私は非常に重要だと思います。その運営、実施の面におきまして、離職された労働者の期待を裏切らないように進めていかなければならないと思います。その点は新しくできる石炭鉱業審議会も、むろん十分認識されて、そういう行動をとらなければならないだろうと思いますし、政府自身におかれても、それだけの英断をもって事に当たっていただきたいと私は考えておる次第でございます。
  76. 有田喜一

    ○有田委員 もっと問いただしたいのでございますが、また、資金問題などについても問いただしたいのでございますが、同僚の委員にたくさん質問者があるようでございますから、最後にただ一点だけお伺いしたいと思います。  この答申案には非常に敬意を表するのでございますが、現在もう石炭鉱業は火がついて非常に弱っておるのですが、一体この当面の問題、言葉をかえて言えば、三十七年度を一体どうするか、そのことについての答申がないようでございますが、口頭でもけっこうですが、当面の問題をどうするかということが一点。もう一つは、三十八年度の予算額がどのくらいになるだろう。この答申でいきましたら、どのくらいの予算が要るだろうか。それから資金の融資額は、大体どの程度の見込みか、来年度分です、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  77. 有沢広巳

    有沢参考人 二つの御質問に対しまして、第一の御質問に対してだけ私がお答えして、第二の問題は平田さんからお答えしていただくことにいたします。  三十七年度はどうするかという問題で、確かにわれわれの答申が、実施に移る経過といいますか段階、これがかなり重要だと私も考えます。それで、最初は私どもの方でも、何かそれについて意見を申し述べたらどうかということもあったのでありますけれども、しかし、この点につきましては政府におきましても、閣僚会議で御決定になるという話でございますので、私どもはなるべくわれわれの答申を早く実施してもらいたい、所要の措置を早くとってもらいたい、こういうふうに申し上げてあるわけでございます。これは早く実施をしていただかなければ、実は先ほどもちょっと申しましたように、もう少し弱ってきている企業におきましては、持ちこたえられないような企業も出てくるおそれもあります。それでありますから、なるべく早く本答申の大きな骨子は、実施ができるような態勢を整えていただきたい、こういうふうに私ども考えたわけでございますが、もしそれがだいぶんひまをとるようでございましたならば、これは私一個の考えでございますけれども、その実施に移るまでの間は、企業において大きな賃金の不払いがあるとか、あるいは不渡りが出るとかいうことのないような配慮だけはしていただかなければ、大へんなことになりはしないかと、実はこういうふうに考えております。趣旨といたしましては、なるべくすみやかに答申の骨子を実現に移していただくということになろうと思います。  なお、第二の問題は平田さんから。
  78. 平田敬一郎

    ○平田参考人 資金の問題について簡単に補足説明申し上げますが、これだけの対策を実施していくためには、政府はこの五カ年間を通じまして、相当大きな資金を必要とするのじゃないかと考えております。一つは、会社自体と申しますか、石炭企業自体に対しましての設備資金の供給と整備資金の供給、これが一つの大きな問題。それからもう一つは、離職者対策につきましても、これは相当大きな資金を要する。たとえば住宅につきまして、八千戸という具体的な数字を、調査団はこの方は非常に重要性を考えまして、勧告いたしておるわけでございますが、これだけ建設するのでも、目の子算で百万円と計算しましても、八十億というような数字になる。これは非常に大きな数字になるわけでございますが、そういった費用。それからもう一つは、産炭地振興に関連しまして、これは一般会計から出る分と、それから財政投融資から出る分と、これまた相当な金額になるのじゃないかと思っておりますが、そのうちで、特に予算のことでございますので、相当精査を要する部面もございますから、私ども一応資料は検討いたしておるのでございますけれども、この方の最終的な固めは、これはやはり政府に善処してもらうのがいいのじゃないかと思っておりまして、もうすでに資料その他は各省集まりまして、相当検討しつつございますので、この作業は、私は円滑にいくものと確信いたしております。また調査団といたしましては、ぜひそうやってほしい。  そこで一番大事な一つの、会社の資金だけを簡単に申し上げますと、大手十八社につきまして計算しますと、設備資金が概算千四百億ぐらい要るだろう、それに対しまして現在は、御承知の通り政府の資金としては、合理化事業団から年率約二十億ぐらい、それから私の方の開発銀行から、大手だけで約七十億ぐらい出しておりますが、それは一応続けるといたしまして、そのほかに市中並びに財政資金を含めまして、追加して五年間でどれくらい資金を要するだろうか、これも概算で出しております。しかし、これは概算でございますし、非常に精査を要しますので、報告には載せるまでに至っておりませんが、そういう金を入れますと、設備資金でやはり二百五十億から三百億くらいの資金を、これは市中の調達と政府資金でまかなってやる必要があるのじゃないか、今の状況から申しますと、相当多くの部分を政府に依存せざるを得ないということになるのじゃないかと思います。  それから整備資金の方は、報告にございますように、大手だけについて計算しますと、概算で六百八十億となっておりますが、これは見通し通り行った場合の話でございますが、この方も現在は約四十億ほど合理化事業団から財政資金が出ておりますが、今まではこれは大部分市中でまかなっていたわけでございます。その分の不足がやはりこの五カ年間に追加して市中並びに財政資金で何とかめんどうをみなくちゃならぬという金額が三百億前後になりはしないか。ただこの辺は年々今後審議会で資金計画が審議されまして、それに応じまして年々財政資金の必要その他につきましても十分審議が行なわれまして、適正な供給をはかっていくということになると思う次第でございまして、財政資金の適正な供給については私どもも、政府もぜひ万全な態度で臨んでほしいという強い希望を持っておりますことをつけ加えさせていただきたいと思います。  それからもう一つ申し上げますが、今のは五カ年間にわたる計画ですが、そのうちいずれも三十七年度と三十八年度、あるいは三十九年度、前期により多くの資金を要するのじゃなかろうか。来年度につきましてはおそらく政府はもうある程度作業を始めておると思いますが、今年度の補正、それから財政投融資は追加、それから来年度の予算と財政投融資の計画、この二つに分けておそらく対策が講ぜられるだろうと思いまして、その数字は近くなればなるほどやはり数字をこまかく詰めないと無責任なことになりますので、政府において誠意をもって作業いたしますれば、私は所期の目的が達成できるような措置ができるのじゃないかと思っております。  それから炭産地の方は、道路の計画とか、あるいはさっきお話しになりました炭産地における融資、こういうたくさんのファクターがございまして、これも途中の段階、幾つかの数字を検討いたしておりますけれども、これこそよく市町村財政等の関係も検討いたしまして、政府においてこの趣旨に沿った予算あるいは財政投融資の措置をとってほしいということでございまして、そういうことで進めておることを御了承願いたいと思います。
  79. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 多賀谷真稔君。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 調査団方々の半歳にわたる、あるいは現地調査あるいは深夜にわたる討議の労苦に対して全く敬意を表し、多とするものであります。  しかし炭鉱労働者が最も熱烈に要望しておりました雇用の安定、すなわち需要、生産を頭打ちにすれば、幾ら能率を上げても、働けば働くほどみずからの仲間が山から去っていかなければならない、この際限のない首切りを何とかしてもらいたい、これが御存じのように大闘争になり、四月五日午前二時の閣議決定前の炭労に対する報告となり、これが調査団の発足になったわけです。この点については、この調査団報告は残念ながら答えが出ていない、逆にむしろ期待を裏切ったという答えしか出ていない、こういうように感ずるわけです。この石炭政策転換闘争が行なわれましたのは、昭和三十四年度に、石炭鉱業審議会の基本部会において、三十八年度目標として千二百円ダウン、労働者は約十万名の首切りで十七万五千、能率は月二十六トン、これを目標にして発表されたことが契機になって闘争が展開をされた。労働者の抵抗にもかかわらず、実際はその方向に進んだ。そうして昭和三十八年度を待たずして、三十七年度において、すでに答申にもありますように、能率は二十六トン出ておる。労働者は十七万人台になった。ですから労働者に対する要求というものは、大体かなえられておる。それでも何ともならぬというのですから、労働者側にこれ以上要求すべきでなくて、政策転換というのは、他の条件を満たしてやるべきではないか、かように考えておるわけです。この答申を聞いて永久に忘れられないショックである、こういうように山元では言ったという話を聞いたわけですが、私もそうだと思います。これに対して団長はどういうお感じであるか、お聞かせ願いたい。
  81. 有沢広巳

    有沢参考人 私も、ただいま御質問にありましたように、雇用の安定という問題をできるだけ山で確保する、その方針はわれわれ団員一同強く持ったわけでございます。しかし産業の中における雇用ということでありますと、どうしてもその産業が成り立っていくような、自立ができていくような形でなければ、雇用の安定ということも考えられません。それで先ほど来御説明を申し上げましたように、需要というものがどの程度にふやし得るかということについて種々検討を加えたわけでございます。需要がなくともその産業の規模を拡大して維持していけ、こういうことも一方では考え考えられないことはないと思います。しかしその場合には、どうしても私企業ではこれをささえていくことはできない、従って国家がこれを援助する、補助を与えるということでなければならないと思います。補助をしていくという場合におきましても、これが短い年月の場合ならば、なおこれを考えることができると思います。外国でもそういうことをやっている事例を私は知っております。しかし、国家の補助によって一定の規模の生産を一時維持していく、この考え方は実は、たとえばドイツの場合を考えてみましても、私はこれは撤収作戦だと考えております。だんだん石炭産業を小さいものにしていく、そういう見地から申しますならば、しばらくの間は国家の補助でささえていこう、こういう考え方をとることもできると思います。しかし私たちは撤収作戦でなくして、石炭を防衛していこう、防衛し得る規模へ持っていこう、防衛し得る規模と申しましても、現在からこれをずっと減らした規模で維持していくというのではなくて、現在の規模は必ず維持していく、場合によりましては、条件が好転するようなことがあれば、さらにこれを一歩でも前進させよう、これが私、防衛作戦の趣旨だと思います。防衛作戦の見地から考えますならば、やはり需要をできるだけ確保した場合、拡大して確保したその線で産業の自立をはかっていくべきものだ、こういうふうに考えざるを得なかったのであります。  それで、山で雇用の安全を確保することが私どもの期待していたほどに実現をすることができなかったのは、私どもも大へん遺憾に考えております。けれども、そのかわりといっては何でございますけれども、山で維持できなかった雇用は他の産業でこれを維持していく。これは産業構造が著しく変化していく場合には、どうしても考えられなければならない政策だと私は考えます。総理大臣にも今お話のありました雇用の安定という問題について御意見を伺ったことがありますが、総理大臣も、山でできるだけ確保する、しかしどうしても確保できない部分については他の産業において安定した職場を確保する、こういう考え方自分もいるんだというお話でございます。私ども最初申しましたように、山でできるだけ確保する、防衛作戦の見地でこれをやっていく、撤収作戦ではなくて防衛作戦でやっていく、こういう考え方でやってみたわけでございますけれども、十分の雇用を山で確保できませんでしたのは、一に需要というものがわれわれの予想以上に激しい減り方をする、こういうところから生まれてきた結果であったのであります。その点をどうぞ御了承願いたいと存じます。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働者にとりましては、今まで各山元で整理したのを、調査団というもので権威づけられて、国の一括首切りにあう、こういう感じを持っているのじゃないか、ことにスクラップをされるという山がいろいろなところで発表をされておりますから、一そうそういう感じを持っておるのではないかと思います。  そこで調査団答申作成についていろいろ論議をされておりますけれども、その態度に問題があったのではないかと私は思うのです。今有田委員から質問がありましたが、有沢団長は今度の答申は決定版である、こういうようにおっしゃっておるわけです。決定版であるならば、なぜ総合エネルギーにおける石炭の位置づけというものを明確にされなかったか、ここ当分の間の当面政策であるというならば、それはおっしゃるように、昭和四十二年ごろをもって総合エネルギー対策を確立するということも考えられましょうけれども、これが決定版であるというならば、むしろ今日において総合エネルギー対策を樹立して、その中で石炭の位置づけというものを論じられてしかるべきではなかったか。昨年の十月、石炭危機打開に関する決議を衆議院の本会議でいたしましたけれども、その決議の内容は、総合エネルギーにおける石炭の位置づけというものが最も基本的問題でありました。ことに国内エネルギーを重要視して、その中で輸入エネルギーの長期の見通しを慎重に立てるべきである、こういうことも述べられておるわけであります。でありますから、私は、ここ二、三年を切り抜けるための当面政策であるとするならば、おっしゃるように、総合エネルギー対策あとに回してもいいでしょうけれども、決定版であるとおっしゃるならば、むしろここに石油との関係をどうするか、あるいは電力の問題も今の企業のあり方でいいのか、あるいは再編成の形にいくのか、あるいはまた産炭地からだんだん離れていく電力需要地の問題をどうするか、こういう問題をやはり総合的に考えられて解決の方向を見出されるのが妥当ではなかったかと思うわけです。この点についてどういうようにお考えであるか、再度お聞かせ願いたい。
  83. 有沢広巳

    有沢参考人 総合エネルギー政策の見地につきましては、先ほど私申し上げましたように、われわれもこれを十分取り入れて考えたつもりであります。ただ具体的に総合エネルギー政策というものをわれわれが打ち立てなかったのは、今の需要拡大という点から検討を加えましたとき、四十二年度ごろまでは、実は電力会社の経営形態がどういうふうであれ、また石油との関係がどういうふうであれ、この需要拡大は精一ぱいのところである、こういうふうに私どもは判断を下したわけでございます。エネルギー総合政策の見地の中には、もう私からくどくどしく申し上げるまでもないことですが、一つは、エネルギー政策としてはこれはもう世界的に申しまして消費者選択の自由、それに基づくチープネス、エネルギーの安いこと、今日産業発展の見地を考えますならば、エネルギーの安いということが産業の発展にとって非常に重要なファクターであるということは言うまでもありません、従ってこのチープネスを維持する、これが一つの原理になっております。しかし他方におきましては、ただ安ければいいというわけのものでもない。なぜならば石油はインターナショナルな資源である、その性格から申しまして、その事業から申しまして、これはインターナショナルなものであって、ナショナルな見地と必ずしも相いれないものがある。これに反して石炭はナショナルなエネルギー源である、従ってこのナショナルなエネルギー源を重視しなければならない。その観点はいわゆる安全保障の見地であります。従って総合エネルギー政策の見地は、原理としてはこの二つであります。  ところでチープネスの方はむろん考えられますが、安全保障の場合、この問題をわれわれはどう理解するか。安全保障という場合はどういう場合かと申しますれば、一つはエネルギーの価格がその国にとって著しく不利になる、つまりチープネスの原理を発揮することのできないような事情が起こりはしないか、なぜならば、石油はインターナショナルなものだから、こういう一つの見地と、もう一つはその供給が安定してないじゃないか、安定供給の面に不安があるのではないか、こういう面だと思うのであります。先般石油業法が制定されましたのも、私はその二つの問題で、インターナショナルな産物、商品としての石油を何かの形でコントロールしなければならない、あるいは別の言葉で言えば、石油業におきましてはその国に適した秩序を持たなければならない、こういうことであろうと思います。そこでその秩序を実現するための法的な手段として石油業法が制定されたと私は考えております。従ってこの業法からいえば、政府の影響下、国の影響化にある石油能力が三分の一程度あれば、確かに石油がインターナショナルなものであったとしても、石油の価格がこのチープネスの原理を確保していくことは割合にできることだと思っております。残る問題は供給安定の問題でございますが、供給安定につきましては、これは危険がどの程度あるか、供給を不安定にするような危険がどの程度あるか。OEECにおきましてもこの問題は十分検討されました、スエズ運河の経験に基づきまして十分検討されたのでありますが、ロビンソン報告も指摘しておりますように、供給安定の問題については、エネルギー源の多様化、供給源の多様化、これによって安全保障をはかるべきである、こういう結論になっておるようであります。私はこの安全保障が非常に重要だと思います。しかしこの安全保障は、戦前に比べますとき今日ではその危険はそれほど大きくない、また、その危険は漸次小さくなりつつある、こういうふうに考えられます。その危険に対する保険、これが安全保障の見地であります。その保険額をどれくらいの金額をつけるか、その保険料をどの程度にするか、これがエネルギー総合政策における安全保障の見地をどれだけに評価するかという問題と同じ意味を持っていると思うのであります。そういう見地から考えてみますと、実はその危険は少しずつ減りつつある。むろんそう大きく減っているわけではないのですけれども、少しずつ減りつつある。そうするならば、総エネルギー供給の中で国内資源、国内エネルギー源としてどれだけのものを確保しておくべきか、こういう議論になってくると思います。今、日本で国内資源として考えられますのは、第一次エネルギー源は、一つは水力、一つ石炭でございます。これで一体総エネルギーの需要の中でどれだけのものを確保し得るか、こういう点であろうかと思います。今のところ日本の場合は、石炭と水力でまだ四〇数%を持っております。四十二、三年から四十五年になりましても、なお四〇%近いものを持っております。それから後は、まだエネルギー消費がどんどんふえるのでありますから、そのふえる消費が石油に依存していくということになりますれば、むろん今申しましたように割合は減ってくるかと思います。その国内エネルギー源が総エネルギー供給力の中で何十%を占めなければならないか、また占めさせるべきか、そういう場合に初めて、安全保障を確立し得るかどうか、こういうことを検討してみなければならないと思いますが、先ほど申し上げましたように、この何十%を確保したら安全保障になる、こういう数値をきめることは、今の段階ではまだ少し早いんじゃないかと私が申し上げたわけでございます。なお将来は、原子力という新しいエネルギーも登場して参ります。すでにその萌芽が日本におきましても現われております。その原子力エネルギー、水力、それから石炭、こういうものを合わせて、初めて今のナショナル・セキュリティの問題を考えなければならないわけです。原子力の問題を考えるにあたりましても、なおここ八年から十年という時間を要します。これがはたしてどの程度のものになるか。相当のものになるということは予想されますけれども、どの程度のものになるかということにつきましてはもっと検討してみなければなりません。また石油の問題につきましても、もう少し時間をかしてみなければ、今の石油の状態が正常なものであるかどうか、判断をするのになかなか困難な点もあります。従って私は、総合エネルギーを抽象論で議論をする段階ならば、これは今も私がかなり抽象的な問題として議論を申し上げましたが、それは私としてはできると思いますけれども、しかし石炭なら石炭の位置づけをどういう規模で位置づけるか、これがなければ実は石炭政策は立ちません。幾ら総合エネルギー政策を立てようと申しましても、これがなければ立たないのであります。立たないがゆえに、やみくもと言っちゃ少し言い過ぎかもしれませんけれども、大よその見当をつけて、六千万トンであるとか六千五百万トンである、あるいは七千万トンであるというふうな出炭規模をきめる。これは現状の消費者、石炭の消費産業がどういう状況であるか、そういうことも全然判断をしないで、いきなり六千万トン、六千五百万トンというふうな規模をきめ、そしてその規模の出炭確保していくということになりますと、どうしても消費を何らかの形において造出しなければなりません。そのことが経済性を無視したり、技術的進歩を無視したりするような結果になりはしないか。経済性を無視したり、技術的進歩を無視したりすることは、なるほど石炭はそれで確立するかもしれません、しかしその他の産業は一体どうなるか、国民の負担はどうなるかということも考えなければなりません。そういう面を考慮するということになりますと、私ども調査団は、どうしても現実の需要の分析から出発していって、その需要の分析を土台にして、さらに技術的進歩を阻害しない、その限度一ぱいの需要一つつけてみよう、こういう考え方になったのであります。ですから、少なくとも私は、今の私ども考えましたこの需要のつけ方は、現在の段階において総合エネルギー政策が作られたとしましても、今の経済性と技術的進歩を無視しないこの原理、これは私、国民経済的な立場からいってもどうしても必要な措置だと考えますが、そういう措置をあわせて考えましたときには、現段階において総合エネルギー政策考えましても、やはり私どもと結論においては同じようなことになるのではなかろうかと実は考えております。それでそのもとにおいて、とりあえず、と言っては決定版でないというおしかりを受けますけれども、私の決定版と言いましたのは、この現実のもとにおいて石炭産業を自立させる、それから後は需要が減るということは私は考えません、また減らすということも考えませんが、それから後は少なくともその線、または事情によりましてはそれ以上、先ほどもちょっと触れましたように、原料炭が少し少なくなれば、供給力が足りないというならば、もう少し原料炭について開発をはかろう、こういう考え方をとっておりますから、それから後になりますればさらにもっと出炭量がふえるということも考えられますが、しかし四十二、三年ごろ、というわれわれの石炭鉱業の自立の構想につきましては、私は別に変わりがないと実は考えております。その自立の構想を立てること、これが私の言う決定版でございます。ですから決定版というものは、五千五百万トン・ベースでいって、将来永久に五千五百万トン以上には出ないという決定版ではないのであります。石炭鉱業の自立のための決定版である、こういうふうに御了承を願いたいと存ずる次第であります。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今総合エネルギー、ことにセキュリティの問題に触れられたわけですが、この問題を論議するとかなり時間がかかりますので、簡単に触れてみますると、石炭は御存じのように、昭和三十年度には四〇%を占めていたのが、今日においては三〇%を割らんとしておるという状態だ。四十五年度におきましては、一八%程度になるわけです。もし五十五年まで五千五百万トンでいくならば、わずかに一一%。それからセキュリティの問題も、私は各国との比較においてやはり論ぜられる面があるのではないかと思うのです。そういたしますと、一九五九年の西欧各国の状態を見ますると、イギリスにおいて、御存じのように大体二億トン石炭を生産しておる。これが七六%。フランスにおいては日本とあまり違いませんで、五千五、六百万トン出しておりますが、これは国内炭において五六%。西ドイツにおいて一億二千万トンから四千万トン出しておりますが、これが褐炭を含めて七六%程度。日本は一九五九年では三一・九%という程度になるわけです。ですから、今石炭需要がこれだけ拡大を叫ばれているときに、はたしてこれでいいだろうか、こういう問題に遭遇するわけです。さらにまた石油の問題も、何を申しましても日本が今世界じゅうのダンピング市場になっておるということは否定できない状態です。石油会社がそれでももうかっておるというなら私はとやかく言いませんけれども、石油会社自体は、御存じのように赤字決算である。精製会社を除きましては全部が赤字決算であるわけですから、石油会社も赤字、そういう状態のダンピングが行なわれている中で、石炭問題を幾ら解決しようとしても、そこにはおのずから限界があるのではないか。今電力については、先般からのお話によりますと、技術的に見て最大限というような表現をお使いになりましたけれども、私は、はたして技術的に見て最大限であるかどうか、これは非常に疑問であると思います。少なくとも昭和四十二年度におきましては、火力のキャパシティは二千八百万キロワット、そうして今からあるいは廃止をする老朽火力設備もあるでしょうけれども、それを七十万キロワット程度と換算をいたしましても、少なくとも昭和四十二年においては六千五百万トン程度の石炭換算の火力の燃料が要るわけです。昭和四十五年度になりますと、九千三百万トン程度、全部石炭を消費するといたしますと、それだけの需要があるわけです。ですから、この点を考えますと、どうも技術的な面だけではないのじゃないか。問題は、やはり価格という問題が入るから、それだけ需要が伸びないのではないか。その価格の問題は、先ほど有田委員がおっしゃいましたように、裏づけの問題である、そうしてここには何らの政府に対する示唆がない。かつて、御存じのように、水火力調整金というのがございまして、これで昭和二十六年の再編成から五カ年間、三百七十億の調整金が動いた。ですから、今イタリアがやっておりますように、高い発電コストと安い発電コスト、この燃料の差による発電コストの調整金を考えるという点も、やはり制度として考えてやらないと、ただ今の私企業のままである電力会社に対して、いかに権威ある調査団といっても、おのずからそこに限界があるのじゃないか。ですから、私は、これはやはり三千万トンしか四十五年に引き取れないというのは、価格の面が出ておるからじゃないか、こう率直に思うわけです。ですから、この点については、これは技術的に最大限度引き取らしておるとお考えであるのかどうか、お聞かせ願いたい。
  85. 有沢広巳

    有沢参考人 私が技術的に最大限というふうに申し上げましたのは、四十二年度についてのことでございまして、四十五年度に三千万トンと申しましたときには、これは全部の火力発電を石炭専焼のための発電所建設していけば、今御指摘のように、石炭を一そうより多く食わせることはできると思います。ただ先ほど来申しましたように、重油の価格を七千円として見ましたときにも、なお石炭の場合は、千二百円引きでございますけれども、千二百円引きで大体二割程度燃料費が高い、建設費は二割ないし二割五分くらい高い、こういうふうなことになると思います。ですから、それを政府が何らかの形で補給するという形でございましたならば、むろん石炭をたくというととも技術的には可能になってくると思います。ただしかし、そうなって参りますと、今後は、石炭の方の価格が上がれば、あるいは生産費が上がれば上がるほど補給金をよけい出していかなければいかぬ、こういう形になってくるわけです。ですから、さっきもちょっと申しましたように、石炭産業の大きな規模をそのまま維持していく、補給金を出しても維持していく、こういう考え方になろうと思います。それが何でそういう補給金を出して石炭確保していくのか、撤収作戦ならばこれはわかります、だんだん石炭産業というものは小さくし、減らしていくというのですから、これならわかりますが、防衛作戦として補給金を出していく、これはある意味からいえば、永久に出さなければいかぬし、ますます大きく出さなければならぬ。こういう作戦を何でとらなければならないのかということになりますと、総合エネルギー政策の見地から申しますならば、これはやはり安全保障という問題に帰着するのではなかろうか、こういう趣旨の御説明を申し上げたわけであります。ですから、技術的に可能であるかどうかという問題は四十二年までの問題であって、それから以後の問題は、今申しましたように、補給金をどうつけるか、ふえていく補給金をいつまでもつけていく、そういうかまえをとることは、私どもは、これは国民経済全体の上からいって好ましくない、こう判断したわけでございます。
  86. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四十二年度は、石炭、重油ともにたける発電所では、何%くらいの混焼率になるわけですか。
  87. 有沢広巳

    有沢参考人 石炭をたく混焼率は一〇%くらいでございます。大体一〇%ぎりぎりのところまで混焼率は上げてあります。
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私ども九電力における現有火力発電設備の石炭消費の試算表を公益事業局からとったわけですが、これによりますと、昭和三十六年度は石炭が千五百六十万トン程度使われているわけですが、これは四三%の重油が混焼されているわけです。石炭は五七%であります。昭和三十四年度は石炭が八二%、重油が一八%ですから、まあ三十四年度の後期ぐらいをとりまして、約二〇%の重油混焼をいたすならば、二千百三十万トン、すなわち昭和三十六年度においてすら五百七十万トン程度の需要の増加になると算定されるわけです。それが四十二年度において、技術的に見て最大限一〇%程度の混焼率ということは、私たちはどうもふに落ちないわけですが、これを再度お聞かせ願いたい。
  89. 有沢広巳

    有沢参考人 私どもの方の試算でございますが、石炭昭和四十五年度で三千万トンにするというペースで参りますと、先ほども申しましたように、四十二年が二千五百五十万トンになります。それまでの間石炭をたく火力においての混焼率は、三十七年度が四三——端数がありますけれども端数はとりまして四三、三十八年が三一、三十九年が一〇・六、四十年も一〇・六、四十一年が一〇・八、四十二年が一〇・八、四十五年が一一%という混焼率になっておりまして、しかも三十九年度からは石油専焼の火力のロードを幾らか落とさなければなりません。四十年度について申しますと、燃料消費で申しまして約百六十万トンばかりロードを落としております。ロードを落とすということは、先ほども申しましたように、石油専焼火力、新鋭火力といわれているものでございますが、その新鋭火力の稼働を落とし、そして一方石炭専焼の混焼率を引き上げると申しますか、石炭の方を引き上げる、重油の方の混焼率を落としておるわけです。石油の混焼率を落とす、そして石炭をたく量をふやしておる、そういうことをしておるわけです。ですから、先ほど申しましたように、石油専焼の新鋭火力の稼働率を下げてまで、石炭火力の方によけい混焼率を引き上げるといいましょうか、石炭をよけいたけるように引き上げて、突っ込んで今言ったような数字になるのであります。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 有沢団長の意図されている点がよくわかりました。技術的に見て最大限に使うようにということでありますから、私たち個々の作業にあたっては、われわれの手元に各地域別の計画書が電力について出ておりますので、これを一つずつ当たって五千五百万トン、実トン数でいきますと五千七百万トンというのが、電力については技術的に見てその最大限だという言葉をわれわれは信じて、この石炭需要の問題は精査してみたいと思います。精査してその五千五百万トン、すなわち実数で五千七百万トンがオーバーするなら、趣旨は最大限使うということであると思いますので、そのように政府の方も処置してもらいたい、かように考えておるわけです。  さらに質問を展開したいと思いますけれども、各委員ずっと待っておられますので、私は最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。  今度の答申というのは、私は制度的な解決というものがなされていない、要するにわれわれからいいますと、現行制度のもとで何か非常に御苦心をなさっておられるという感じを強くするものです。それはあらゆる点に感ずることができるわけですが、今エネルギー総合対策といいましても、率直に言いまして、現在日本のエネルギーの企業形態というのは、全く資本主義でもよくないし、社会主義の方向にはもちろんいってないのです。資本主義の強靱さというものがない。それは、イギリスのように電力も国営、あるいは石炭も国営、あるいは石油はそういう事情ですから行政指導だけで十分コントロールがきくという情勢にもないし、またフランスのように電力、石炭ともに公社である、そして石油は一手買い取りであるという制度でもない。そして西ドイツのように、石炭会社というのは本来鉄鋼会社が経営をしておる、その石炭会社はまた電力の卸売をしておるというような状態でもない。石炭だけが財閥会社で、その最も大きな需要先である鉄鋼にしても、それから電力にしても、いわゆる財閥会社の系列にない。これは国有鉄道、あるいは日本発送電、あるいは日本製鉄株式会社、こういうような国家の資本の導入によって一本化された特殊の形態である。ですからここがこのほかの、たとえば、同じようなものですが、地下産業であるメタル・マインの場合とは非常に異なるので、メタル・マインの場合には、これは今度、ここにおられました青山さんが非常に御尽力なさって、鉱業審議会から答申が出ておる。その答申は、安い外国の鉱石と高い国内の鉱石とのいわゆるプールをするという答申が出ておるのですよ。こういう画期的なものがなぜこの石炭の場合には出ないのか。安いエネルギーと、幾ら努力しても一定限よりも安くならない国内のエネルギーとをなぜプールをするというような抜本的な対策ができないのか。ここがわれわれが調査団に期待したものだろうと思うのです。それができないというところに私は、調査団は決定版とおっしゃるけれども、むしろ当面の政策という感じを持つ。当面の政策なら当面の政策で、先ほどドイツの例は撤収作戦だとおっしゃいましたけれども、私は必ずしもドイツは撤収作戦ではないと思う。雇用問題をかかえて、その社会問題をかかえながら撤収作戦でいく反面、やはり防衛作戦あるいは積極的な作戦というものが行なわれておるのだろうと思うのです。これは両面の問題だと思うのですね。ですからドイツの場合でも、能率が御存じのように飛躍的に最近上がっておるでしょう。それでドイツは逆にコストを上げております。ですから、これはただ撤収作戦だけではない。撤収作戦であるものがコストを上げるということもないし、あるいは価格を上げることもないわけです。そこにはやはり積極的な意欲があるのではないか。かように考えますと、やはり制度としての問題の考慮があまりにもなかったのではないか、こういうように感ずるわけですが、その点御答弁を願いたい。
  91. 有沢広巳

    有沢参考人 ただいまの制度の問題として考える点がなかったんじゃないかという御指摘でございます。なるほど制度的な問題としてこれを考えますと、それは確かに問題は大きくあると思います。けれどもども考えましたのは、今の企業形態でやっていくのにどういうふうに考えるか。それで私が決定版というふうなことを申し上げましたのは、これだけのことをやってなお石炭業が自立しない、ほかのエネルギー産業との関連におきまして石炭産業が安定しない、こういうことでありますならば、その際こそ別に考え直さなければいかぬのではないかと私は思うのです。しかし今の段階におきましては、やはりたとえば石炭業の国有化ということを考えてみましても、これは国有化という問題だけにつきまして実は非常に大きないろいろの問題があります。第一、石炭企業が持っておる一千億円以上の負債をどう考えるか、赤字の累積、五百億の実質赤字をどうするか、いわんやそれの国有化のための措置としてそういう問題をどう考えるか。それを国有化したからといって、すぐさま企業がよくなるというものでもない。ですから私たち団としての考え方としましては、とにかく今の業態でこれが自立ができるぎりぎりのところまで一つやってみる、それが最終決定版、そういうふうに考えたわけです。それがどうしてもできない、自立しない——私はできると思っておりますが自立しない、こういう暁にはそれはもう一度考え直さなければいかぬ、制度的に考えなければならぬ、こういうふうに私は思っております。これは団の見解ではありません、私個人の考えでございますが、団の考え方といたしましては、今申しましたように、現在の企業形態をもって石炭産業を自立させる、その最終版として考える、こういうふうな考え方に立っておるわけです。それから、では、それで自立しなかったらどうだという場合には、私の個人的な見解ですけれども、今言ったように、制度的に考え直さなければならなくなるのではないか、こういうふうに考えております。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は国有ということだけを言っておるんじゃないのです。制度的といいますと、たとえば鉱区の調整ということが盛んに言われる。これは私企業で、しかも出願主義である日本の鉱区の調整というものは、口では言いますけれども、実際には非常に困難でだれも行なわない。ですから今度の答申でも、ただ文章だけ「これを積極的に推進するものとする。」としか書いてないのです。それに対する制度的な解決というものが、一つも書いてない。あるいは、流通機構の問題でもそうですよ。流通機構の問題は共販機関を設けることが必要だがと書いてある。せっかく必要だがとお書きになるなら、必要である、かくしろとお書きになればいいけれども、必要だがというので、やはり私企業であるからうまくいかぬというので、そういうそういうところへ逃げられておるのですね。ですから私は、これだけの答申を出されるならば、あまり現在の制度にこだわらずに、もう少し抜本的におやりになったらどうですか、こういうことを聞いておるわけです。これは同僚から質問があると思いますので、これで終わります。
  93. 有沢広巳

    有沢参考人 鉱区の問題は答申の中には、「生産構造を大規模化、集約化して石炭資源の合理的な開発を行なって行くために必要な鉱区調整は、現行法を改正し、改組される石炭鉱業審議会を活用して、これを積極的に推進する」、こういうことです。(「鉱区ぐらい国有にしなさいよ」と呼ぶ者あり)国有になるかどうか知りませんが、つまり、ただ必要であるというだけではなくて、やはり今御指摘になったように、炭鉱の生産構造を大規模化していく、あるいは集中化していくのに必要な鉱区の統合調整はやるのだ、やらなければならぬ、こういうことを書いてあります。だからその点だけをお答えしたわけです。
  94. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 では、暫時休憩いたします。   午後五時二分休憩   午後五時十一分開議
  95. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。倉成正君。
  96. 倉成正

    倉成委員 私もまず、調査団の皆様が非常に困難な調査に当たられまして、ほんとうに御苦労さまでしたと申し上げます。この調査団の御報告は、すべての問題の核心に触れ、はなはだ示唆に富む傾聴すべき御意見だと思うのでありますが、先ほどから有田、多賀谷両委員から御指摘がございましたように、総合エネルギー対策の中における石炭の位置づけの点については、先ほどの質疑応答の中にもございましたけれども、必ずしも明確でないという点が私も強く感ずるところであります。  そこで、この問題については短時間でいろいろ議論することもできませんので、一点だけお尋ねを申し上げたいと思います。石炭需要確保するために電力にかなりのウエートを置いていることは、これは当然のことでありますけれども、先ほどからの有田委員あるいは多賀谷委員との質疑応答の中で出て参りましたいわゆるエネルギー資源のセキュリティ、安全性の問題と雇用の安定という二つの問題、この問題と関連してお伺いしたいと思います。  それはどういうことかと申しますと、エネルギーの選択の自由の原則だけから考えて参りますと、石炭需要はかなり減ってくるのではないか。それをセキュリティあるいは雇用の安定の面から考えまして、相当大幅の需要確保ということを最終的な結論に出されたと思うのでありますが、私は、安全性のウエートよりもむしろ、雇用の安定という点から調査団は非常に大きな制約と申しますか、いろいろな点をお考えになって、こういう結論を出されたのじゃないか、こういう感じがするわけであります。そこで、雇用の安定という問題を一応抜いて、エネルギー資源の安定性と申しますか、安全性の面からだけ考えた場合に、一体この生産規模なりがどういうことになるかということを、これは的確に何%どうということはあるいはむずかしいかと思うのでありますけれども、大まかの感じでけっこうですから、お伺いしたいと思います。
  97. 有沢広巳

    有沢参考人 石炭需要拡大するという場合には、安全性の問題からどういうふうに考えられるか、こういう御質問であったと思います。石炭昭和四十五年度に三千万トン電力で引き取ってもらうということになりますと、水力をのけて火力発電の点から申しますと、揚地では大体四分の一が石炭で発電しておる。それから山元といいますか、北海道、九州では九九%ぐらい石炭でやっている。そして全国で平均してこれを見ますと、大体三分の一石炭で火力発電が行なわれている、こういう状態になるのであります。これは私、団員とそう話をしたわけではないのですけれども、私は安全性の問題から申しますと、石油の場合でも、先ほどもちょっと申しましたように、石油はほとんどヨーロッパの諸国におきましては国内石油資源というものがありません。あってもほんとうにネグリジブルなものであります。従って、全部海外の石油資源に依存しておるわけでございます。そういう石油につきましてもナショナル・セキュリティという点から考えますと、どの国におきましても——と言いましても、私が昨年秋、石油調査団として調べたところによりますと、大体三割あるいは三分の一というところもあります。石油精製として国のコントロール下に能力の三分の一があればナショナル・セキュリティは、確保し得る、こういうふうな見解であったようであります。イタリアなんかは、シシリー島で少し出ますけれども、もうこれは石炭もない、あるのは天然ガスだけだ。従って、石油はほとんど全部、というよりもエネルギーが全部と言っていいほど海外のエネルギーに依存しているわけです。このイタリアにおきましても、石油につきましては、石油政策としてはENIという公社がやっておりますが、そのENI公社のマネージャーたちの言うところを見ますと、やはりわれわれは三割以上のシェアを獲得しなければならぬということを申しております。私そういろ点から考えてみまして、エネルギーのナショナル・セキュリティという点を考えまして、一つの数値を出して言いますと大体三分の一は必要であろう、こういうふうに実は考えております。これは調査団でそういう見解を一同が持っているというわけじゃなくて、私個人の見解でございます。  調査団といたしましては、先ほど来るる御説明申し上げましたように、なるべくたくさんの雇用確保する、そうして今の総合エネルギー対策の見地、ナショナル・セキュリティという問題を入れた総合エネルギー対策の見地も取り入れて考えた場合には、この場合できるだけ多くの需要確保する、このことが必要であろう、こういう見地から需要をいろいろとつけることに苦心をしたのであります。  お答えになっているかどうかわかりませんが、私の個人の見解と団の考え方と、以上申し上げた通りであります。
  98. 倉成正

    倉成委員 それでは、問題を次に移しまして、調査団答申におきまして、四十二年度において一応炭価を千二百円ダウンして大体石炭企業が自立する、いわゆる黒字になるという御見解を発表されておるのでありますけれども、はたして四十二年度において石炭鉱業が自立するという意味がどういう意義を持つかということについてお尋ねを申し上げたいと思います、それは、おそらく四十二年前後におきまして石油の価格が一体どうなるかという見通し。これは調査団答申から、重油の価格はこれからはもう上がらないというふうな表現が散見できるようであります。しかし、石油につきましては、ダンピング市場になっておることはもちろんでありますけれども、重油のなまだき等が相当研究されて、具体化されようとしておりますし、石油の価格自体毛四十二年以降かなり大きく変動していく可能性があるのではないかという点と関連いたしまして、炭価がやはり石油の価格と見合って参りますから、炭価が千二百円ダウンしたままでずっと横ばいを続けていくかどうかという問題、これが第一点であります。  第二点は、いわゆる四十二年でスクラップ・アンド・ビルドをいたしまして相当炭鉱の若返りが行なわれた場合に、いわゆる炭鉱従事者の年令、これがおそらく四十才以上になるのではないかということが考えられるわけでありまして、若年の優秀な炭鉱労働者を確保するということがやはり非常に喫緊の問題になってくるわけであります。この際の賃金ベースの問題、その他いろいろ関係してくると思いますが、これらの点についてはどのようにお考えになっておるか、自立された姿の石炭鉱業というのが一体どういう意義を持っておるかという点をお伺いしたいと思います。
  99. 有沢広巳

    有沢参考人 二つ御質問がありました。最初の御質問の、石炭の価格あるいは重油の価格の関係でございますが、石炭の価格は三十八年度に既定の千二百円引き、これは揚地における千二百円引きでございますが、これをまず実施いたしますことを答申では申し述べております。それ以降四十二年度までは横ばい、この価格を維持する。炭価が千二百円引きの場合においても、ここでちょっと御説明を申し上げておきたい点は、揚地においての千二百円引きでございまして、山元におきましては九百四十円でございましたか、すなわち流通経費を二百六十円ばかり引き下げる、山元では九百数十円を引き下げる、こういう形になっておるのであります。ところが、この流通経費の二百数十円の引き下げの問題につきましては、大体予定の通り二年ばかり進行して参りましたところ、国鉄運賃の値上げのために、たしかトン当たり八十円ばかり値上げになりました。このことは、せっかく流通経費の節減というところで効果を持って参りましたものが、ここでちょっと一頓座を来たしたのであります。けれども、なお流通機構につきましては、古いものがたくさん残っておるから、それを根本的に整理して、そして先ほど来申しましたように流通機構の合理化を進める。これは専用船を中心にした共同貯炭、共同荷役、共同施設、銘柄の統一、こういうふうなことを通じまして一そう流通経費を引き下げる。国鉄の場合におきましても、運賃の値下げをするということを要求しても、これはこの段階ではなかなかむずかしいかもしれませんけれども、北海道あたりでは運賃の通算制、これは私ども現地を回りましたときに大へん要望が強かったのですが、これも閣議では決定をしておりましたので、先日実施するということになりました。そのほかには、なお石炭専用列車の運賃を割引してもらいたい、こういうことも申してあります。従って、千二百円引きではございますが、その千二百円引きがそのままそっくり山元の価格、送炭原価の引き下げというわけではないのであります。ところが、昨今の状況は、何しろこういう不況のときでございますから、石炭業界ではお金にかえるために石炭をやや投げ売りをしているきらいがある。特に電力みたいな大口の需要者に対して石炭を納める石炭業者は、かなりな値引きをして売り込みをしている。こういうこともありますので、今後はそういうことのないように一手清算の機関、決済をする機関ですが、一手清算の機関を設けまして、そこでそういう安売りをさせないような措置を講じていきたい、そうして揚地における千二百円引きの価格というもので正常な価格——ある意味においての正常な価格で取引をしてもらいたい、こういうふうに実は考えております。  それから、四十二年以降の石炭価格につきましては、われわれは実はそれから後どうなるかということは別に何も指示しておりません。と申しますのは、重油の価格ということもありますけれども、それよりも一応ここでは、先ほど来申しましたように、一般炭はほとんど大部分が電力、それから原料炭のほとんど全部といってもいいものが鉄鋼とガス、そこに需要先がきまってくるわけでございます。従って、この価格を引き下げるということは、原料炭につきましてはなお引き下げる余地があるいは出てくるかもしれません。先ほどもちょっと申しましたように、未開発炭田開発というようなこともやるわけでございますから、そういう面から引き下げることができるかもしれませんが、一般炭につきましては、価格の引き下げということは、まあ大体むずかしいのではないかと私は考えております。場合によりましては、先般ドイツがやりましたように、石炭価格の引き上げというようなことも行なわれるかもしれません。しかしそのときにも電力料金にはね返るとか、あるいは政府が何らかの補助をしなければならぬということには私は必ずしもならないと思います。なぜならば、そのときには相当重油でも専焼火力の分野が広がって参っておりますので、非常に安い発電コストが期待されますので、それに少々くらいの石炭の価格の値上がりがあっても、そう大きく九電力の経理に影響するとは考えられません。それで、とにかく四十三年度以降につきましては、価格の問題は私どもはまだ割合に自由に考えておる次第でございます。重油の価格につきましては、現在のところは六千円台、あるいは六千円を割っておるというものもあるわけでございますが、これも売り込み競争の結果でございます。そこで石油業法に基づきまして、標準価格を政府は指定することができるということになっておりませんので、先般、石油審議会におきましても、この標準価格を一つきめようというふうに議論が動いてきている。私は石油審議会の方には関係がないのですから、よく内容はわかりませんが、そういう話を先ほど円城寺君からお伺いいたしました。でありますから、石油の価格につきましても、もう少し高く、七千円程度のところにまで基準価格といいますか、標準価格が設定されはしないかと考えられます。しかし、石油の価格が一体どうあろうとも、石油が高くなれば割合に石炭の方が楽になることは確かでございますが、石油の価格がどうあろうとも、今後の石炭需要というものは、先ほども申しましたように、電力以外のその他の産業では、もう初めから落ちるべきものは落としてあります。もし石油、重油が非常に高くなってきて、石炭が価格的にも競争できるということになりますれば、また事情は違いましょうが、しかし、石油の価格が一体どうなるかということについての世界的なエキスパートの測定によりますと、一九七五年度くらいまでは大体横ばいであろう、これが上がるというべき積極的な理由を自分は知らない、こういうのが石油の世界的なエキスパートの見通しであります。ですから、私どももその見通しを大体信じておるわけでございます。しかし、石油がどういう形でありましょうとも、石炭需要は大口の需要者としての鉄鋼、それから電力ということになります。それですから、長期引取契約というものがきちんとできておりますれば、これだけの需要は、重油の価格がどうありましょうとも、大体確保することができようと考えております。  それから、もう一つの御質問の、四十二年度ごろになって石炭の産業が自立をしたという場合になると、相当年齢が高くなって、いわゆる炭鉱の老齢化という現象がはっきり——はっきりというよりも、今も現われておりますけれども、それが一そう高まるのではなかろうか、こういう御懸念御質問がありました。確かにそういうふうな懸念があるのであります。これがためには、石炭産業自身が早く安定した産業にならなければならないと私は考えます。安定した産業でございますならば、四十二年度以降におきましては、雇用も安定して参りますし、また、雇用の条件を引き上げることも可能になって参ります。もっとも、この四十二年度までにも、われわれの計算の中には一定の給与水準の引き上げが織り込まれておりますが、四十三年度以降、そのころになりましたならば、それとは別個に雇用条件の引き上げ、向上ということも可能になってくると思います。つまりそこでは安定した職場であって、しかもそこでは、今後は雇用条件も引き上げていくことができる、あるいは、雇用条件の引き上げが産業の安定を害することがない、こういうふうな状況になりましたならば、私は、若い人にもこの産業に入ってくる人がおるのではないかと思います。まあ、いんしん産業とまでは言えませんけれども、しかし職場として安定した職場で、雇用条件も次第に向上していくということであれば、若い人にも入ってくる人があるのではないかと思います。それですから、老齢化の問題は、確かに最も心配される問題でございますが、これにつきましては、今申しましたように、まずとりあえずこの石炭産業の産業としての安定を早く確立しなければならないだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  100. 倉成正

    倉成委員 四十二年の石炭工業の姿を比較的バラ色の姿でお考えになっておるようでありますけれども、ここでこまかい議論は申し上げませんが、私どもまだ、必ずしも今団長のおっしゃったような意味の自立ができないんじゃないか、こういう不安を持っておるわけであります。たとえば、ただいま御説明の中で、長期契約を結べば需要確保される、だから一応心配はないというお話でございましたけれども、現在の価格で、千二百円ダウンした価格で電力企業石炭を使う、また使わなければならない、こういったいろいろな点に無理がなければ、非常に合理性があればおっしゃる通りですけれども、そこにかなり無理をして、その裏づけとして国家の財政資金等を投入していかなければならない。そういうことになって参りますと、四十二年の石炭鉱業の自立ということ自体が、相当膨大な国家資金なり、あるいはその他の裏づけによってこれがささえられている企業であるということになりはしないかという心配をするわけでありますけれども、その点については一応意見を申し上げておくだけで、次の問題に移りたいと思います。  産炭地振興の問題について、非常にきめのこまかいいろいろな項目を掲げられまして、特にボタ山対策等についても一項目掲げられておるのには、心から敬意を表するわけであります。ただ、有田委員との質疑応答の中で、現地における商工業者その他のことに若干お触れになりました。ところが、産炭地につきましては、振興対策というよりも、むしろ振興対策以前の問題、いわゆる人心の不安をどうして防いでいくかという問題が、炭鉱のみならず、市町村あるいは中小企業住民においてあるわけであります。特にその中で私が強調して申し上げ、またいろいろ御教示いただきたいと思いますのは、石炭産業に従事しておられる方々はもちろんでありますけれども、これに関係する中小企業その他の方々の現在の売掛金の問題、あるいは撤収作戦をやって参ります炭鉱のそういった中小企業者の方々が転業していく、あるいは他の地域に移っていく、こういう場合に、相当対策を講じておかなければならない。これは石炭企業に従事せられる方々対策にまさるとも劣らぬ重要な意味を持っている。炭鉱とともに生きてきた人々でありますから、これらの零細な中小企業者に対する対策をやはり答申の中に一項目うたわれるべきでなかったか。また、かりにうたわれてないにしても、調査団としてやはり政府にそういう強い要請をされておくだけの値打ちのあることではないかと思いますので、この点について何か具体的な御見解があればお伺いしたいと思います。
  101. 有沢広巳

    有沢参考人 産炭地域における中小商工業者の問題につきましては、先ほどこれは産炭地振興ということが根本的な対策になるのだということを申し上げました。それでは、根本的であるかもしれぬけれども、当面の問題としてはなかなかそんなことでは解決がつかないのではないか、何か移転または転職される方に対する配慮がないか、こういう御質問だったかと思います。それにつきましては、答申の中では、転職または移転を余儀なくされる中小商工業者につきましては、国民金融公庫からの融資の確保をはかる。まあそれだけでと言っては悪いですけれども、それだけの配慮はしておるつもりでございます。これもなかなか具体的な事例になりますと、売上金その他のことになりますが、それをこまかくわれわれが、こうすべきだ、ああすべきだと指示するわけにも参りませんで、結局融資の問題だと思います。それにつきましては、国民金融公庫でその分を融資するように資金確保しろ、こういうふうに申しておるわけでございます。
  102. 倉成正

    倉成委員 こまかい議論になりますから、さらには申し上げませんけれども、国民金融公庫等につきましても、すでに借りておるその人々がかりに他の地域に移っていくということになりますと、従来の国民金融公庫の融資の制度では絶対にと言っていいくらい救えません。その点、このエネルギー革命に基づく、こういう関連する転職者については、やはり相当施策考えていくことが大事な点であるということを、現地実情に照らしても私ども感じておりますので、申し上げたのであります。  それから、ボタ山対策につきまして、これは江迎等でございました惨事をまた繰り返さないようにするためにも、また産炭地振興の点からも、これが結びついていくことは非常に私ども賛成でありますけれども、問題は、従来許されておりましたボタ山の基準を相当厳格にこれからある程度やっていくということに結果的にはなりますので、うっかりすると、このボタ山対策を全額国でやるということになれば別でありますけれども石炭企業がかなりの負担をしなければならないということになると、それだけコストにはね返ってくるということになります。これらの点について、一応ここには産炭地振興事業団でやらせるというふうに書いてございますけれども、やはりボタ山対策については、もう少し根本的な対策を講じておかなければならないんじゃないか、こういうふうに考えますけれども、何かそれについて御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  103. 有沢広巳

    有沢参考人 ボタ山の整理事業につきましては、これは産炭地振興事業団が計画を立てまして、そして事業主体を——いろいろ事業主体は考えられます。企業組合というようなものも考えられましょうし、新しい会社というものも考えられましょうが、その会社なり事業主体をしてこの整理事業を行なわしめるわけです。ですから、その場合に、これは鉱害復旧とも結びついて計画が立てられておりますから、特別に石炭企業の方に負担をかけるというふうな考え方はとっておりません。ですから、その事業主体が赤字にならない程度の経営ができるような経費を、ボタ山の整理ですね、それによって鉱害復旧に充てるとか、あるいは宅地以外の工業用地の造成とかいうふうに持っていって、それで収支バランスがとれるように考えておるわけであります。
  104. 倉成正

    倉成委員 ただいまの点は、たとえば長崎県の北松だけをとりましても、危険なボタ山が百以上ある。一つボタ山、江迎でくずれたボタ山をどうするかというだけでも実は大へんなことなんです。そして、これはえらい金がかかることで、産炭地事業団は多々ますます弁ずで、これを産炭地振興でやれればけっこうですけれども、実際問題としましては、今の団長のお考えは非常にけっこうなんですが、私は現実的にはむずかしいと思う。一部分はできるけれどもボタ山の根本対策にはならない。ごく一部分をそういう適地においてやれる程度じゃないかと思います。この点も議論になりますので、一応さらに御検討いただいて、政府といろいろお話しになるときには一つお含みいただければけっこうと思います。  時間がございませんので、最後に重要な点を一点お尋ね申し上げます。答申のきめのこまかいいろいろな対策を忠実に実行して参り、また、資金の裏づけ等についても十二分に行なわれたとしましても、やはり石炭企業が自立し安定するための根本の問題は、労使の関係が安定していくということが中心になるのではないかと思います。もしスクラップ山に指定された山において、労使の話し合いが不幸にしてつかない、それがかりに争議になってくるということになりますと、ビルドをかかえ、スクラップをかかえている山で、おそらくそのスクラップ山だけの問題ではなくして、一企業の中においてのビルドの山の計画自体にもすぐ響いて参りまして、四十二年というような目安等についても一ぺんで吹き飛んでしまうということになります。もちろん計画が完全であり、労使に完全に理解されるということが前提条件になるわけでありますけれども、ある程度合理性を持って、万人が納得する計画であるならば、その期間における争議等について、現在の労働法その他の関係の規定のみならず、特別な措置というようなものが考えられないかどうか。そういった点について、やはり調査団としていろいろ御検討になったことと思いますので、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  105. 有沢広巳

    有沢参考人 御指摘になった点は、確かに最も重要な点でございまして、私どもが一応四十二年度に石炭産業の自立した姿を描いておりますが、これが一年延びるということになりますと、実際は石炭産業の自立は二年ぐらい延びることになります。けれども、今度はその労使の関係でございますが、労使の関係は、これは今の方式から申しましたら、炭田別のところでは、スクラップ・アンド・ビルドの基準と、それからその規模と申しましょうか、計画と、それから雇用計画と、これだけのものは石炭鉱業審議会の方で審議、決定して、原案が政府決定ということになるのでありましょうが、さてその炭田の中にある山についてスクラップ・アンド・ビルトを問題にするときには、これは労使にまかせてあります。ですから、労使の間で話がつかないというような事態も起こり得るということを、私ども団員の中でもいろいろ検討いたしました。で、その場合には、石炭鉱業審議会の何か部会あたりで調停案を出してみたらどうだ、こういうふうな意見もありました。いや、そういうことは石炭鉱業審議会はすべきでなくて、やっぱり労使の関係のものは中労委に持っていくべきである、こういう意見もありまして、なかなかそこで意見の統一が見られなかったわけです。まあ私どもは、結局これは石炭鉱業審議会の運営にかかわっておるのであるから、そういう事例につきまして、そういう労使紛争でなかなか解決がつかないというふうな事例が起こった場合には、一つ石炭鉱業審議会あたりで、これは何も制度的ではないのですけれども、調停に乗り出したらどうか、こういうふうな考え方になっておりまして、新しく労使の関係を規制するといいましょうか、何か秩序をつけるというふうな制度なり法制化をとるのはこの際よくなかろう、こういう見解に相なったのであります。しかし、そのために、もし四十二年度ごろに実現すると考えておる私ども石炭産業の安定の姿が、四十二年度までにできなくて、それが三年度というふうに一年もずれるということになりますと、実際は石炭産業の自立という状態が実現するのが二年くらいおくれるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  106. 倉成正

    倉成委員 同僚議員の御質問があるようでございますので、これで一応質問を終わります。ありがとうございました。
  107. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 岡田利春君。
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭調査団が半歳の間わが国の石炭産業の方向をきめるために努力されましたことに対して、心から敬意を表します。  まず、十三日の日に石炭鉱業調査団が、池田総理大臣に答申大綱を示されたわけです。これはあくまでも答申大綱でありますから、大綱の次には要綱があり、要綱の次には詳細があるものと承知しておるわけです。従って、いわゆる要綱が出、詳細が出なければ、調査団の任務は完遂したとは思わないわけです。従って、調査団としては、その要綱なり詳細というものは、いつまでに池田総理大臣にお出しになる予定なのか。そういう用意があるのかどうか。そういう点について公表する用意があるのかどうか、こういう点について承りたいと思うわけです。
  109. 有沢広巳

    有沢参考人 調査団答申、これは調査団ですから、報告書という形の答申になるかと思いますが、その報告書は、われわれの使いました資料も全部含めて、そして私ども考え方をきちんと書いたものとして完成いたしたいと考えております。これは今月初めには大体二十日ごろまでにはつくろうというふうに考えておりましたが、答申がだんだんおくれて参りましたので、二週間かもう少しかかると思います。整理をしなければなりません。それを今団員諸君が、みな本業を持っておるもので、幾ら石炭調査団といっても、今度はいよいよ調査団報告だからしっかり頼むと言っても、なかなか集まりが悪いし、仕事が思うように進みません。しかし、私どもできるだけ近い機会に、調査団報告書という形で、むろん総理にもそれを答申いたしますが、公表するつもりでおります。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は石炭鉱業調査団は、いわゆる四・六の閣議決定、あるいは四・五の炭労と政府との話し合いで発足したのでありますから、調査団報告についてはきわめて重大な関心があるわけです。大綱を読みますと、一応指向する方向についてはわかるわけですが、その具体的内容については想定もなかなかつきかねるという面が非常に多いと私は思うのです。従って、それらの報告が全部なされなければ、おそらく政府といえども、この調査団の方向の具体的な内容を精査するわけには実はいかぬのではなかろうか。こういう考え方を持っております。従って今の団長の答弁では、調査団の任務は、その報告が全部終了するまでは任務があり、結局調査団報告というものは、そういうものが全部そろったときに完了するのだ、こういうことに私は理解するのですが、そういう理解でよろしゅうございますか。
  111. 有沢広巳

    有沢参考人 大綱として掲げましたのは、確かにまだ綱目を並べたというふうな形で、考え方までは実は十分書く余裕がなかったのです。しかし、私どもとしましては、答申をなるべく早くしたい、また早くしなければいくまい、こういうふうに考えましたので、大綱の形で答申をいたしたわけです。しかし、これで骨子はもうこれから動くことはないので、ただ考え方そのものが十分説明をされていない点もあります。そういう点を書いたものを報告書として答申をいたしたいと考えております。ですから、正式に申しますならば、答申は今の考え方を入れたきちんとした報告書が出たとき、これで終わると思いますけれども、しかし、政府が措置をされるにつきましては、大綱によって措置をされてみても差しつかえないのじゃないかと思います。むろん考え方について、これだけではわからないという点があったときには、私どもいつでも説明に上がるつもりでおります。しかし、それだからといって、報告書をおくらせるというつもりはごうもない。そういうつもりで、急いで大綱の形で答申を出したわけでございます。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど多賀谷委員から基本的な問題の質問がありましたから、私は若干質問がこまかくなりますけれども、具体的な点についてお尋ねをしたいと思います。需要の想定は、先ほど団長からいろいろ説明を受けたわけでありますが、需要は、昭和四十二年ないし昭和四十五年においてそのときの炭種別の構成は一体どうなるのか。このことがなくしていわゆる需要の想定はなかなか出て参らないと思う。結局需要の想定をつけて、それに合わせて、たとえば四十二年度ないし昭和四十五年度の炭種別の想定は一体どのようになされておるのか。この点は、非常に未開発炭田開発の問題にも関連がありますし、さらにまた、原料炭といいますけれども、無煙炭並びに煽石等の市場性のある石炭もあるわけでありますから、この点もし資料があればお聞かせ願いたいと思います。
  113. 平田敬一郎

    ○平田参考人 まず、こういう資料は、先ほど団長からお話がありましたように、むしろ参考といたしまして整理しまして——正式報告は、私ともこの大綱で済んだと思ったのですが、あと全部こういうものにつきまして整理していただきまして、御参考にするという考えでございます。その一部になるわけでございますけれども、大体一般炭の精炭で申しますと、三十六年度の実績が四千九十二万トンでございましたのが、四十二年度におきましては三千五百万トン程度になる。それからさらに、原料炭におきましては、三十六年度は実績が約一千八十六万トンくらいでございますが、四十二年度におきましては約五百万トン増加いたしまして千五百五十八万トン程度になる。それから、無煙、煽石の方は三十六年度の実績が約二百三十七万トンくらいでございますが、四十二年度におきましては百六十四万トン程度になろう、こういう一応の想定と申しますか、見通しを立てておるようなわけでございます。
  114. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、一応原料炭は優先的に引き取る、あるいは無煙炭、煽石については市場性がある、こう考えますと、結局昭和四十二年度で一般炭が電力に対して二千五百五十万トン、さらにこの報告書を見ますと、九電力以外については、同様に三百八十五万トン昭和四十二年度に石炭をたくことが予想される。自家発を含んで二千八百八十五万トンというのが電力に使われることになると私は思います。それに加えて、今の御説明によりますと、原料炭が一千五百五十八万トン、それ以外に百六十四万トンですから、大体一千七百二十万トンという数字が出てくるわけです。そうなって参りますと、私どもの想定では、需要の想定は非常にむずかしいのでありますが、いわゆるそれ以外の一般炭の需要は想定できないのだという点については、この報告書に関連して、たとえばボイラー規制法についてある程度考えてはどうか。あるいはまた、一方電力について、国鉄が直接自家発電所をつくるという点について調査団が示唆されておる。あるいはまた炭鉱自体において、いわゆる共同火力発電所をつくるということも示唆されておるわけです。これだけ積み重なって、いわゆる限度としての昭和四十二年度五千五百七十万トンという点について、私どものいろいろ調べた結果では、これは示唆された通り実施をするならば、この数字を上回るのではなかろうかという判断を私はいたしておるわけなんです。この点は、今申し上げました点と関連して、どのように検討されておるのですか。
  115. 平田敬一郎

    ○平田参考人 先ほどから団長お話しになりますように、実は私どもは原料炭は増加する、それから電力用炭は、さっき申しましたように、著しい不合理がない限りは極力需要確保するということなんですが、その他の一般炭の需要につきましては、暖房用炭はまだ四十二年くらいまでは何とかかんとか、技術の合理化とか、価格の引き下げ、あるいはサービスの提供というものをよくしたりすることによって、ほぼ確保し得るだろう。その先はちょっとこれも問題ではないかと思っておりますが、それ以外の一般産業用の需要というのは、率直に申し上げまして、最近までの動向等から個別に当たった資料によって検討してみますと、どうも大へんなことになりそうでございます。鉄道でも御承知の通り、ほとんど近い機会に電力か、間に合わぬのはやはりディーゼル化せざるを得ない。これは先ほど先生のお話しになった値段の問題だけではなくて、経済の進歩と申しますか、それでなければ鉄道に対して一般の消費者なり国民が満足できない、こういう状態にある結果だと思います。従いまして、国鉄の需要なんかは、かつては一般炭の非常な大口需要者であったのが、もう四、五年先にはほんとうにわずかしか依存できないような状態になる。その他セメントにつきましても、実はだいぶ研究いたしまして、何とか維持できぬだろうかというので、一例といたしまして、途中で、法律をもって、公共事業用のセメントは、政府が調達する際に石炭を使っているセメント工場のセメントを使うというふうにやれないか、実はこれも相当研究してみたのです。しかし、これはやはり、そこまでいきますと、大へんな無理を生じますし、値段の上でも、先ほど話しましたように、どうもコストの上において二割くらい違うということになりますと、どうしたってなかなか徹底した維持策を講じられない。講ずるとなりますと、大へんないわゆる不合理を産業に強制することになる。それではやはり行き過ぎだ。しかし、それにもかかわらず、セメントにつきましては行政勧告なり、あるいは通産大臣等の御指導なり、あるいは実際の公共事業につきましてもできる限りの実行上の配意を加えまして、維持していくことにしようという考えを盛り込んでおるわけです。  それから、その他の一般のものにつきましては、これも結局最近の動向から見ますと、石油にどんどん転換している。ボイラー規制法も私どもはもう一ぺん延ばすことを検討してほしいと言っているのですが、実際の運用は、遺憾ながらやはり重油を使うことが目に見えて合理的な面が多いものですから、運用上はこれはやはり認めざるを得ないという実情になりまして、この面でそれほど大きな期待をするのは、今のエネルギー需要の大勢からいたしまして無理じゃあるまいか。しかし、若干無理な措置でも、場合によっては残すことにして、私ども考えている一般炭の需要の減退を少しでも食いとめられぬか。結局減少の速度を若干でも緩和するというくらいの効果しか期待できないのじゃないか。こういうものにあまり期待をかけて需要を過大見積もりしておきますと、逆に計画自体が非常に非現実的なものになって、先ほどから出ていますように、ほんとうの自立という目標が達成できなくなってくる。従いまして、鉄鋼と電力については、これは相当集中的に力を入れまして需要確保をはかりますが、その他のものにつきましては、でき得る限りの措置を講じて需要の減少の速度を少しでもゆるめよう。  石油消費税の問題でも同様です。これは非常に高率な消費税を課税すれば別ですが、そこまで課税しますと、やはり一般産業に及ぼす影響が大きくて、大へんなことになるので、やるにしましても、ある程度そう重くない、軽度のものになるかと思うのです。しかしこれも、そういうことを考えますと、若干速度の減退には役立つのじゃないか。なお、石油消費税や、そのほかに、先ほどから議論がございますように、相当大きな政府の財政支出を伴いますので、そういう財源との関係考えて結論を出してほしいということを言っているのです。  そういうふうに考えますと、結局一般産業向けの一般炭の需要というのは、今の体制からいきまして相当減らざるを得ない。これはある意味におきましては、先ほど申し上げましたように、四十二年度から四十五年度におきまして減退の速度をゆるめましても相当減りますから、減ってしまったあとは、今度はかえってふわふわした需要の不安定な分子が少なくなって、むしろ一般炭は電力に七、八割くらい、あとの原料炭はできるだけ将来さらに一そうコスト引き下げ等にも努力しますれば、外国炭とも競争がほぼできる体制で需要確保できるし、そうなってきますと、四十二年あるいは四十五年以後は再び大きな需要の変化を来たして、その面からまた石炭業が大きくゆすぶられるということも、よほど今日の事態と違った状態になるのではないか。しかし、これは私は完全にそうなるとは申し上げかねるのですが、そういうようなことも考えまして必要な措置をとっていく、こういうことにいたした次第でございます。今ここにあまり期待的な需要を見ることは、実はかえって正しい結論を得るゆえんじゃない、私はそう感じておるわけでございます。
  116. 岡田利春

    岡田(利)委員 調査団報告書で検討して参りますと、大体四十二年度で、報告書の指摘しているところでも、電力は九電力その他で二千九百三十五万トン、鉄鋼、ガスには千二百七十万トンの引き取りを要望しておる。これに加えて無煙炭、煽石の生産が見込まれておる。こういうことになりますと、これを除く需要見込みは昭和四十二年度で概算八百四十万トンしかない、計算しますとこういう見方になると思う。私はこの数字について、ずいぶんそういう数字をはじき出して検討したのでありますが、この数字についてはどうも理解ができない。特にそれ以外に需要確保についてずいぶん示唆を与えておるわけでありますから、そういう判断からいきますと、まず需要想定について若干問題があるのではないか、こういう一つの判断を持っています。  それと同時に、問題は、電力に石炭をたくという傾向が強まって参ると思います。そこで、ここにあるように、たとえば国鉄が自家発をつくる、あるいは国鉄と石炭が政府の指導に基づいて共同で自家発電所をつくるということが実現すれば、させるならば、いわゆるワク外でも火力発電所建設をさせるという示唆をされているわけですから、それを一歩進めて、昭和四十一年末ないし四十二年に百万キロなら百万キロ程度の発電所をつくれば、これは大体六千万トンの需要はつく、こういう想定がついてくるのではないか、こういう見方を私はいたしておるわけです。特に今日の電源開発調整審議会で昭和四十年度まで一応きまっているわけです。昭和四十一年度についてはいわゆる石炭混焼火力一カ所だけであって、四十一年度についてはこれから審議するわけです。四十二年度についても同様なわけです。しかも、油と石炭の比率から考えて、四十二年度に油と石炭を混焼、五〇%、五〇%に見るということも、今日修正は可能であると、私は資料で見ているわけです。ですから、問題のポイントは、需要を見てぎりぎりの需要をつけて石炭の生産規模をきめるというのですから、その需要の想定というものは非常に問題があると思う。ですから今示唆されたような施策が伴い、しかも現在の重油専焼を昭和四十一年、四十二年以降きめる点については、石炭火力に重点を置く、こういう施策が伴えば、大体六千万トンの石炭は四十二年度でも消化できる、実はこういう数字が、検討の結果最低限の数字として出ているわけです。調査団もむしろそのことを期待しておるのですから、そういう意味ではそういう施策を伴って六千万トンにした場合、一体この答申の本筋として、これからのビルド・アップあるいはスクラップの計画というものは、私は相当修正されるものと思うのです。その場合、答申について相当見方が変わってくるという工合に判断されるのですが、この点について調査団は一体どこまで政府に期待をしておるのか、それからそうなった場合には当然それは修正さるべきものと御理解されておるか、お伺いしたいと思います。
  117. 平田敬一郎

    ○平田参考人 趣旨は先ほど団長から御説明願った通りでございますが、先ほども技術的とかなんとかいう話がございましたが、四十一年度、二年度の分が一応きまっているのにまだ着工していない、あるいは本ぎまりになっている度合いが違うということがあることは事実です。従いまして、調査団の勧告しましたあの数量を消化していただくのには、そのころの発電所の計画につきまして若干変更をする必要が出てくると私ども思っております。ただその際、御承知の通り産炭地におきましては、これは従来ともほとんど全部石炭専焼でいく。ところが、揚地でできております発電所、あるいは今後つくらなければならぬ発電所の性格をごらんになりますとわかりますように、石油とのコンビナートを形成するための発電所の計画というものが、やはり一番大きなウエートを占めておるのでございます。これをまた変更するということになりますと、コンビナート計画自体を変更しなければならぬといったようないろいろな問題もございまして、その辺もちろん通産省に専門的に適当な機会にお尋ね願うのがけっこうだと思いますが、そういう点を私ども総合して判断した上で、まずこの辺のところが妥当な限界だろう、こう考えておるわけでございまして、電力のものも単に価格の問題だけでなくて、そういう問題が大きくからまってくる。それからまた、遠き将来の問題になりますと、価格の問題がまた出てくると思います。これはまた膨大な補給金を出し、他に問題を転嫁するということになって、それこそ問題の解決にならないので、その辺を総合してどう判断してきめるか。その点実は調査団といたしましても一番御苦心を願ってきめていただいている点ではないかと私は存じておりますので、御参考までに申し上げておきます。
  118. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、やはり石炭産業近代化されていくということは好ましいことであり、当然これは進められていかなければならぬと思うのです。ただ問題は、昭和三十四年度から合理化を実施して、この合理化計画が根本的に狂ってしまって、千二百円の炭価引き下げだけは動かないで、あとは全部コスト・アップしたという中で、今日のいわゆる炭鉱の悲惨な状態が現出しておると思うのです。しかも、ヨーロッパの例をとるまでもなく、ヨーロッパの場合には第一次世界大戦から第二次大戦、今日にかけて、長い間近代化を進めておるわけです。日本の本格的な炭鉱近代化というものはごく最近取り上げられておるわけですから、合理化が非常に鋭角的にできておる。それが労働者に極端にしわ寄せされておるわけです。ですから、石炭産業の自立を早急に達成することも大切でしょうけれども、それに伴う合理化の面についても、これが十分納得できる形で解決されるためには、ある程度自立がおくれてもやむを得ぬのではないか。それが私企業として無理ならば、石炭産業が今日私企業としてはほんとうに近代化を進めていくということが問題であるなら、問題であるという方向を私は何らかの形で示唆してほしかった。実はこういう気持を持つわけです。特に今日、日本の火力発電所は重油専焼の方向にずいぶん偏向しつつあるわけです。どんどん重油専焼の許可がおりておる。その建設は最近特に進んでおる。ところが、ヨーロッパでは、日本のように六十万キロあるいは八十万キロ、八十九万キロというような大容量の重油専焼火力の建設はあまり聞かない。むしろ今日相当技術的な面で研究しておるという話を私は聞いておるわけです。これは、石油が安いのだから石油専焼をどんどんやったらいいじゃないかというそれ以前の問題として、今日、石油専焼には、結局それだけの大容量の石油をたくことによって起こる、いわゆる亜硫酸ガスによる鉱害の問題が解決されていないから、重油専焼火力発電の建設に政府としても非常に慎重を期しておる。あるいはOEECの人々でもそういう見解を述べておることは、私は明らかだと思うのです。私は非常に心配するのですが、もちろん石炭も亜硫酸ガスがあります。アメリカの統計では、三千万トンの石炭をたけば百四十万トンの亜硫酸ガスが出る。石炭と油の亜硫酸ガスの発生率は、比較にならないわけです。特に、日本の一般炭はサルファが少ない。しかし、日本のこれからの重油ではどんどんサルファが高くなるわけです。このサルファをもし抜いて火力発電所で電力をつくるとすれば、一キロリットル二千円の費用がかかるといわれておるわけです。国際的にこれだけ問題があるこの重油専焼火力発電所が、日本の場合安いからということで、無神経に急速にどんどん建設されていいものであるかどうか。この点国際的な常識の面からいっても、ある程度慎重を期していくという配慮が必要ではなかろうか。そういうためにも、今日重油並びに石炭の専焼火力の建設ということは、そういう面も加味して——やはり総合的なエネルギー政策の面もあるでしょうし、当面石炭政策の立場もあるでしょうが——当面はある程度加味して、結局火力発電所建設考えていかなければならぬのではなかろうか、このように私は考えるのです。これらの問題について、いろいろ言われておるのでありますが、どういう御見解を持っておるか、承りたいと思うのです。
  119. 有沢広巳

    有沢参考人 重油専焼火力は日本では非常に盛んに行なわれておる、これは確かに事実でございまして、外国に昨年の秋、石油調査団として参りましたときに、同じく電力業界の代表者も一緒に参って、先方の事情をいろいろ調査いたして参ったわけです。その場合に問題になりましたのは、今の空気汚染の問題でございます。ドイツあたりでも、かなりやかましくこの問題を考えておるようでございまして、日本におきましても、重油専焼による空気汚染は、もうそろそろある程度限界に近いところへきつつあるということもいえると思います。それがために、電力会社の方も亜硫酸ガスをなるべく少なくするように配慮せざるを得ない状態になってきていることは確かだと思います。しかし、日本の場合におきましては、これは電力業者を別に弁護するわけではないのですけれども、私たちが先般エネルギー懇談会で電力事業を調べた場合の数字によって見ますと、やはり電気料金はコスト主義で決定をしているということになっておりますけれども、昨今の電力業界の必要とする資金は非常に膨大なものがあり、供給義務を引き受けている電力業界から見ますと、発電能力がないから配電しないというわけには参りません。供給義務がある限り、今たとえば電解炉の工場をつくる、その工場は一億円の建設資金があればできるのですけれども、さてそれに自家発電をやるとなると、十億円かかる。ところが供給義務があるがために、この十億円の発電設備を電力業者がつくらなければならぬ。こういう形になるものでありますから、従って、その建設資金需要というものが非常に大きくふくれ上がってきておるわけでございます。その建設資金の調達とその元利払いが今できないような関係になっておるのでありますから、電力業界といたしましてはもっぱらコストの安い、つまり燃料費の安い重油に移っていくということ。それからもう一つは、大消費地域の近くに発電所を設けるということになっておりますので、先般も東電の方のお話では、石炭をたけたけというけれどももうその石炭がらの捨て場所がないじゃないかというお話もありました。そういうことも敷地の関係からいって言えるかと思います。もう一つは、今平田さんのお話にありましたように、石油コンビナートの関係での発電、つまり石油ガスといいましょうか、そういうガスを使っての発電、あるいは鉄鋼の廃ガスを使っての発電、こういうものが行なわれるようになってきておるわけでございます。それですから、まあ外国の場合におきましてもだんだん容量は大きくなっていることは確かでありますが、日本の方が非常に容量が大きくなってきている。といいますのは、一つは敷地の問題、それから容量が大きければ大きいほどコストが安くなる、こういう関係であろうと思うのであります。それで、やはり石油発電といいましょうか、重油専焼の発電所の方が経済的に有利であるということも、これは疑いがないところであります。ですから、だんだん石油専焼の方へ片寄ってきているという傾向がはっきりと現われてきておるわけでございます。しかし、それには私はある必然性があるように思います。技術的な進歩としても必然性があるように思われるわけであります。ですから、一つは会社の経理の問題がある。もう一つ技術的進歩の必然性がある。  ただ、先ほど御指摘にありました空気汚染の問題は、確かに問題としてあるわけでございます。これをどういうふうにして除去するかということが、一つ問題になっておると思います。今やっているのは、ブレンドをして、サルファの少ない油をまぜて、そしてサルファの含有量を引き下げてたく、そういう方法をとっているように思います。しかし、もともと石油専焼火力が大きくなって参りますれば、この問題はどうしても一つの社会衛生といいましょうか、社会環境の問題として十分問題になる問題だと考えております。  なお、ついででございますが、先ほどあげられました九電力以外のその他の電力となっておりますものは、主として共同火力であります。自家発電も入っておると思いますが、共同火力が主たるものでありまして、その共同火力の計画のあるものは大体それに取り入れてあります。これはいずれも雑炭でございまして、低品位の石炭を使うのでありますから、それは別建にしております。たしか四十五年度にはその所要量が七百万トンばかりにふえるということを答申の中では書いてあると思いますが、精炭五千五百七十万トンという場合には、その雑炭は別建になっておるのであります。そのことを念のために申し上げておきます。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 雑炭の方は別に出ているのですが、今のその他電力というのは四十二年度三百八十五万トンなんです。一応ここに出ておるその他電力というのは、これは大体電力にはなっていないのですね。統計ではその他か何かに入っていると思う。九電力以外はそうなっていると思うのです。それが八百五十万トンになりますから、需要は安定しているのではないか。石炭専焼火力で間違いないんじゃないですか。そういうことで申し上げたわけでありまして、むしろこれは若松あるいは苅田、常磐その他の低品位炭がふえているので、たとえばそのほかの火力ができれば七百万トン以上になると私は見ておるわけでありまして、だから実は指摘をいたしたわけです。  そこで、今団長から言われたように、あまり無神経に大容量の重油専焼をつくって、事故でもなければよいのですが、石炭の専焼火力でも相当大きな問題があって、長い間この問題は検討を加えられているわけであります。特に一九五二年、ロンドンにおいては、四千名の人が逆風のために亜硫酸ガスによって死亡しているという事件が起きているわけです。それだけにヨーロッパの方が慎重だと思うのです。従って、その点を特に注意を喚起する意味において、重油専焼火力に安ければたよるというのではなしに、そういう点についても特にわが国としても考えていかなければならぬのではなかろうか、こういう立場で実はお話を申し上げたわけです。  そこで、先ほど石炭電力の問題で多賀谷委員の質問にお答えになったわけですが、九電力の場合、ずっと調べて参りますと、昭和四十年度で一千百九十八万キロワットの石炭並びに石炭重油混焼の、石炭のたける火力発電所建設されるわけです。団長が言われましたように、三十九年はなるほど従来の古い火力のものの廃止があります。これが三十二万キロあるわけです。従って、三十八年、三十九年に停滞をするという意味は、私はよくわかる。ただ四十年以降については、これはまだきまっていないと、敷地の問題を言われましたけれども、この点はやはり、もしたかせるとすれば、もちろん金の問題もあるでしょうけれども、思い切って政策でやるとすれば、これは四十二年の初めには間に合うわけです。これは決定されていないわけですから。われわれはそういう見解を持っておりますから、いわゆるぎりぎりの技術的な限度ということについては、決して理解できないことはない。しかも、この休廃止は、これは石炭専焼火力だけですが、昭和四十二年度までに大体七十三万キロ廃止され、昭和四十五年度までの、その後の三年間には三十二万キロ廃止される。これを全部検討してみましても、私ども昭和四十二年度にあと若干の石炭、専焼の火力を強化すれば——言いかえるならば、当初二千万トン・プラス・三百万トンを引き取る。これはいわゆる産炭地で火力発電所をつくるのではなくて、東京電力、関西電力で三百万トンの石炭火力をつくるということで、電力会社は二千三百万トンを認めたわけです。ところが、今の長期計画を見て参りますと、五十万キロの石炭専焼火力をその後つくるという計画は全然出ていないわけです。ですから、そういう点まで考えていくならば、私どもの見解でも二千九百万トン程度の石炭は九電力で消化できる、実はこういう見解を持っているわけでありますが、この点は今ここでさらに詳しい数字で議論することはどうかと思いますので、そういう見解だけを述べておきたいと思います。  次に、電力会社との長期引取契約の問題で、供給機関を設けてやるべきだ、あるいはまた炭価を清算する場合については、いわゆる一手清算機関ですか、これを設けるべきであるということを示唆されているわけでありますが、これはどういう機関であるか、御説明願いたいと思うわけです。
  121. 平田敬一郎

    ○平田参考人 要点だけを御説明申し上げます。  御承知の通り、将来は非常に一般炭は電力に依存することになる。従いまして、電力業界と石炭業界との取引関係をできるだけ正しい秩序で、そう石炭側に不利にならないで供給できるような体制をつくることが、私どもやはり一つの重要な問題ではないかと考えてみたわけでございます。現在は御承知の通り、いろいろな状況になっているようでございます。それにつきまして、場合によっては共販会社まで考えてみようかと思ったのですが、そこまでいくのには、まだどうも率直に申し上げまして取引関係が錯綜し過ぎてむずかしいので、さしあたりといたしまして、清算機構を設けますと、その面から間接に取引関係の公正を期し得るということにいき得るのではなかろうか。従いまして、これは一種の業界としての指導力を持った組織になると思いますが、そういうことで極力一つやってみよう。さらにあわせまして、御承知の通り銘柄が非常にたくさんになっております。それから流通関係も複雑になっております。そういうことを、こういう機関ができるに際しまして、できるだけ徹底した銘柄等の整理統一をはかる。そういうことも、こういう機関をつくることによって初めて有効な措置がとり得るのではなかろうか。その他必要に応じましていろいろな共同行為ができるような制度、構成にしておきまして、必要に応じてやっていくということになりますと、将来一般炭としまして最も大事な需要先の確保、並びにそれに関連した不合理の是正、取引関係の公正化、あるいは対等化と申し上げてもいいかと思いますが、そういう関係ができるようになるのではないか、そういうことになるように、政府も必要な育成はやってほしい、こういう考えでございます。すでに通産省で具体構想を研究しておられるようでございますから、遠からず、業界の発意によるべきだと思いますが、案ができ上がるのではないかと期待しておるわけでございます。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、次に雇用の問題についてお聞きします。調査団答申によりますと、昭和四十二年には十二万台である、ですから約七万人の常用労務者を雇用転換しなければならない、こういう答申を出されておるわけであります。しかし私に言わせると、この答申案というものは十万人の労働者の首切りである、こういう理解を持っておるわけです。というのは、昭和三十六年度末に従業員数は二十六万九千八十一人おるわけです。これは常用労務者並びに職員、臨時夫、請負夫、この総計が二十六万九千八十一人になるわけであります。まず職員を考えてみますと、現在の職員、鉱員把握率は大体七人から七・二人です。おそらくこれが、答申案の方向でビルド・アップするとすれば、十人以上の把握率を想定せざるを得ないだろうと思うわけです。そうしますと、職員だけで一万七千人程度の人間がやめなければならない。職員が三十六年度末で二万八千五百十六人おったわけですから、これが当然プラスされて参るわけであります。それから臨時夫で申し上げますと、六千七十三人おるわけです。これも相変わらず微増を続けております。当然十二万台ということを想定する限りにおいて、臨時夫というものは特殊なものに限られる、こう私は言わざるを得ないと思うのです。あるいは組夫については二万九千百八十一人おります。直轄夫がやるべき経常的な仕事を組夫がやっておる、これは切りかえなければならぬ。これはいろいろ数字のとり方もありますけれども、少なくて五千人、多く見積もれば七千人の人間は、新しい法的措置に基づいてこれを常用労務者に切りかえる。しかし、これは切りかえても依然として十二万台は間違いがないわけです。切りかえても、これは結局この数年の間に解雇される人員になるわけです。しかも、組夫については、これは調査団答申の精神からいっても、むしろこれはできるだけ減らして安定雇用にすべきだと私は思うのです。そうしますと、ざっと九万四千人程度の人員ができるわけです。これがさらにその他のものでふえてくるとすれば、直接炭鉱に働いておる従業員が約十万人やめねばならぬというのがこの答申の内容である、こう私は理解するのですが、いかがでしょうか。
  123. 有沢広巳

    有沢参考人 今の御計算でございますが、十二万台の在籍人員になる。これは計算の仕方によりましていろいろ人数が変わって参りますので、大体十二万何千人というふうなことになろうと思いますけれども、そこがはっきり計算ができない面もあります。それで十二万台というふうな言い方をいたしたわけでございます。今御指摘になりました組夫の問題でございますが、組夫は確かに今御指摘になったような数字を私ども考えております。今採炭、掘進仕繰りの方で組夫を使っておる数字が、五千人から七千人ぐらいであろう、大体私たちもその程度のものではなかろうかと思っております。それから、これは一般の正規な、炭鉱におる労務者が離職をするというふうな場合でございますので、これはやはり組夫と置きかえていただかなくてはならないと思います。そのかわり組夫はそれだけ失業する、こういうことになろうと思いますが、この組夫の場合につきましても、私どもいろいろ考えたわけでございます。組夫は、それぞれ組で雇っておる人が多いでしょうから、この組の人々は、ほかの、たとえば産炭地振興で道路の建設をやる、あるいは工業用地の造成をやる、あるいは鉱害復旧をやる、その他産炭地振興と関連いたしましてやるべき仕事がたくさんあります。そういう面で十分の仕事を与えることができるのではなかろうか、こういうふうに考えております。  それから、職員につきましては、今御指摘になりましたような形になるかならぬかは私にはまだよくはっきりいたしませんけれども、しかし、職員の方も相当出てくることは確かでございます。しかし、この職員につきましては、炭鉱離職者がその他の産業に転職をされる場合には、できれば職員もやはりあわせて再就職をしてもらう。そうたくさんの事例ではないのですが、私ども聞いております例では、たとえば東京に出てきておる炭鉱離職者が、いろいろな会社に就職をしておる場合において、割合にうまく定住しておる再就職者の場合には、やはり炭鉱離職者の職員も一緒に採用しておる、こういう形のようでございます。なお、今後は雇用促進事業団であるとか、あるいは先ほども申し上げましたように離職者のアフターケアであるとか、あるいは就職相談であるとか、そういう面におきましても、できるだけ職員の方は採用いたしたい、こういうふうに実は考えております。会社が別会社を立てる場合には、むろん職員も要るのでありますから、そっちの方へもいくことになりましょうけれども、どうも私ども考え方といたしましては、炭鉱離職者が再就職をした場合には、その職場に定住するというか、定着をするのには、やはり職員もあわせて一緒に採用してもらった方が非常に成果を上げておるように思われますので、その方面の配慮をいたしておるわけでございます。  私どもが十二万台というふうに申しまして、離職者といいますか、雇用転換の必要のあるものは何人というふうに申しませんでしたのは、実はもう相当の勢いで在籍者が減ってきておるのであります。先ほども申しましたように、四月ごろの調査では、これは労務者でございましょうが、十九万六千人ぐらいの在籍者があったのでありますが、この九月末の調査では十七万九千人というふうに減ってきておるのであります。この減り方がかなり激しいので、私どもは驚いておるわけでございます。この減る人々の中には定年退職の人もありましょうし、また、もう炭鉱に見切りをつけて去っていった人もおるかと思います。それらの数字は実際のところなかなかつかみにくい数字でございます。将来、四十二年度ごろですけれども石炭産業が自立するということになれば、炭鉱を去らないでわれわれは残りたい、こう希望する方もいられるかと思います。その間の差引の数字をすぐ私どもが利用しなかったのは、そのためなのでございます。ですから、現実に離職する方は、結局は先ほどの方式にのっとりまして、毎年々々のスクラップ・アンド・ビルドの方針と、それからそのときのスクラップ・アンド・ビルドの計画と、こういうものの大きさのいかんによって、その計画の内容のいかんによって、その年その年、離職者が何人というふうに出てくることになろうと思います。そういう形で事柄が進行して参りますので、私どもは四十二年度ごろにこういう姿になる、自立の姿になるということを描いておりますけれども、それはしかし構想でございます。実際の進行は、その構想通りいけば大へん好都合でございますけれども、必ずその構想通りに事柄が進行しなければならない、こういうふうに考えておるわけではありませんし、またそう考えてみましても、先ほども申しましたように、経済の変動いかんによりましては事柄はそう進まないということが考えられるのであります。でありますから、その計算はいろいろできると思いますが、実際重要なことは、毎年毎年の計画とスクラップ・アンド・ビルドの方針、このことが最も重要なことになろうと思うのであります。その点をどうぞ一つよく御理解願いたいと私は考える次第であります。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱雇用構造というものを検討して参りますと、特に組夫の場合、実際は労務供給業といっていいほどの非常に力のない、ただ人だけ集めてきて差し出すという形態が多いわけです。ですから、山がなくなりますと、よそに行って土建業などで自分みずからが仕事をするというのはごく限られておるわけです。従って、炭鉱と運命をともにする。それは経常的な仕事もやっておる。しかも、それはある程度長い期間にわたってやっておるという形態がずいぶんあるわけでず。ですから、これは雇用形態は違いますけれども、私に言わしめると炭鉱労働者である、こういわれる面が非常に多いと思うのです。こういう人々産炭地周辺に滞留をする。炭鉱労働者だけは何とか雇用転換をしようとしても、そういう客観的な条件というものがある。概して組夫に入っておるのは、前に炭鉱をやめて、再び中小炭鉱に戻るとか、組夫に戻っておる、こういう傾向も非常に強いわけです。ですから、こういう条件を無視して、いわゆる常用労務者だけの雇用転換を雇用計画で考えるといっても、これは非常に問題が出てくるのではないか、実はこういう考えを私は持っておるので、この点に関する配慮がほしかったと思うのです。これは今度の炭鉱労働者について調査団答申されておる条項は適用されないわけですから、その点どういう見解か聞いておきたいと思います。
  125. 有沢広巳

    有沢参考人 その点につきましては、答申の方でははっきりと書いてないかと思いますが、実は一応今回のこの近代化、スクラップ・アンド・ビルドで出てくる労務者を対象に考えております。しかし、従来も石炭鉱業の合理化で離職されて、まだ常用的な職場を持っていない方もいるわけでございます。そういう方も、再就職といいましょうか、就職を希望する、就職の意思のある者につきましては、なお検討するということになっております。ですから、今御指摘になりました組夫、前は炭鉱労務者であって今は組夫になっておるというような人も、今回の措置で、自分は別の産業でもいいから就職をしたいという希望を持っている場合には、やはり手帳の交付ということも考えられる。そういう余地は残されておると私は考えております。
  126. 岡田利春

    岡田(利)委員 需要想定と生産規模とは相対的な関係を持つわけですが、雇用量からいえば、能率の問題は無視できないわけです。そこで、能率の出し方も実はいろいろあるわけです。ヨーロッパの炭鉱で使っておる坑内夫一人当たりという方法もあるでしょうし、あるいはまた引き直して、普通日本で使っておるように、在籍一カ月一人当たりという方法もあるでしょう。私は通産省統計で出している数字で、ずっとヨーロッパ諸国を検討してみたわけです。そうすると、日本の、昭和三十五年ですかの能率は、イギリス、フランスの能率に対して五五%である、こういう数字が出るわけです。ところが、坑内夫一人当たりの一年間の採炭量ではどうか、こういう数字を出して参りますと、西ドイツ四百九十三トン、イギリス四百三十六トン、フランス四百三十五トン、オランダ四百六十三トン、ベルギー三百二十八トン、日本では三百六十五トン。これは五千四百万トンにして、坑内夫十四万八千人で見て三百六十五トン。ベルギーよりもこれは高いわけです。一年間坑内夫一人当たりの採炭量はベルギーよりも高いわけです。これをイギリス、フランスに対する比率に直してみますと、八三・六%、こういう数字が出て参るわけです。ですから、普通使っておる在籍一カ月一人当たりの能率で比較すると、ものすごく日本の比率が低いといわれますけれども、もちろん労働態様が違うのですから、一人当たりの採炭量はそう悲観したほどのものでないと私は思う。ですから、能率の問題は非常にむずかしい問題だと思うのです。  しかも、石炭価格の問題になると、ヨーロッパの場合でも重油とはなかなか競争ができない。しかも最近は炭価が上がっておる。日本の今日の炭価というものは、ヨーロッパに比べてそう高いというほどのものではないと私は思うわけです。しかも、賃金は日本の場合には安いということなんですから、結局そういうエネルギー価格のバランスということは、石炭政策を進める場合には相当慎重に検討しなければならぬという面が出てくるのではないかという感じがするのです。ですから、調査団が思い切ってビルド・アップをするとするならば、この際、昭和四十二年ごろにはヨーロッパ並みの能率にするならば、労働時間もいつヨーロッパ並みにするかという検討が、石炭産業石炭政策の決定版であるならば、こういう面についての配慮、検討がなされてしかるべきではなかったか。  それから、私は特に炭労の諸君が要求しております調整炭鉱を、長期に温存しておくなどという考えはないわけですが、今の答申に基づいて実行するとするならば、昭和三十八年は二百五十円ダウンしなければならぬという至上命令があるわけですから、昭和三十八年、三十九年の二カ年にわたって集中的に出るので、雇用計画については非常に不安だ。三年間の保障という問題もありますから、遊んでいて、さらに雇用転換することが非常に困難である、こういう面があるのですから、結局その部面をある程度スロー・ダウンしてはどうなのか。そのためには、雇用調整炭鉱というワク外で切り離した制度的なものをつくって、五年なら五年、六年なら六年、そういう中でこの面は雇用計画と見合って解決をしていく。こうなれば、との答申に対して労働者側も理解ができると思うのです。これがないものですから、労働者側はなかなか理解ができないわけです。労働者側でも理解ができないとなりますと、どういう答申を出しても、この青写真の通り実行ができないわけです。この面については、どれだけ議論をされたのか。こういうことは実際問題として、すべての中小炭鉱を残すというのではなくして、ある程度地域的に、あまり投資を必要としないものは若干残す。ほかに行く人は行ってもいいわけです。高年令層の人はそこに来て働く。こういうことでもいいわけですね。そういう措置が、今まで四年間やってきて、また五年間に先ほど言ったように九万何人も出るのですから、鋭角的な人員淘汰をする場合には、そのくらいのあたたかい配慮があってもよかったのではなかろうか、この二点を考えるのですが、どのように検討されたのでしょうか。
  127. 有沢広巳

    有沢参考人 調整炭鉱とか、帰休制といいましょうか、そういう問題についてもある程度われわれの方も検討は加えました。いずれにしましても、そういうものは、われわれの考え方から申しますと、いわば政府が造出する雇用の場であろうというふうに実は考えておるわけです。政府がつくる雇用の場は、自分でいろんな機関に入れるということもありましょうが、また、そうでなく考えようによってはできるという点もありましよう。  なお、この際申し上げておきたい点は、広域職業紹介でここ一、二年とか一年半くらいの間にどれくらいの人が実際に吸収されるであろうか、その問題につきましても実は相当調べてみました。そうしますと、これは私個人から申しますとかなり意外な結果でございますけれども炭鉱離職者自分の方で雇おうという求人の会社がかなりたくさんあります。ただし、そのためには、これこれの技能は持っていてもらわなければ困る、技能を身につけておるならばこれだけの人を雇いましょうという実際の数字を集めてみますと、これは相当の数に上っております。何万という数に上っております。しかし、それは実際ぶつかってみると、先ほどのお話にありましたように、ちょっと条件が違うじゃないかというふうなことも考えられますけれども、全部が全部うそだというわけじゃない。実際の調査をしてみると、そういう数字も出ておるわけです。  それから、政府のつくる職場といたしましては、公共事業の土木建築といいましょうか、道路の建設その他が産炭地振興との関連におきましても、かなり大規模に行なわれるわけでございます。それですから、その土木事業に常用雇用として使うような場をつくりたいと実は考えたわけでございます。この点もなお検討をしてもらうことになっておりますけれども、何しろ土木建築といいますか、建設事業における雇用形態といいますか、事業の組織といいましょうか、そういうものが非常に複雑でございまして、これもどうも、われわれが一方的にこうするというふうに申し上げることができなかったわけでございますが、しかし、そういう面も今度は政府において十分検討してもらえると思います。そのために、政府の策定する雇用計画の中には建設大臣にも一つお入りを願っておるわけです。  ですから、そういう面で考えますならば、具体的には、先ほど来しばしば申し上げますように、毎年々々石炭鉱業審議会に提示される政策、計画と雇用計画の突き合わせでそれが審議されていくのでございますから、そしてその石炭鉱業審議会には労働組合の代表者も入っていらっしゃいますし、また学識の中立の人もおるわけでございますから、そこで検討して、もし雇用計画がこれでは不十分だというならば、雇用計画をもっと大きくしてもらうか、そうでなければスクラップ・アンド・ビルドをもう少しスロー・ダウンしてもらうか、いずれかになってくると思います。ですから、先ほど来私がしばしば申し上げておりますように、四十二年度に想定しておる構想は確かにあるのでありますが、その構想にまっしぐらに何が何でも進んでいくというわけのものじゃなくて、毎年々々の経済状況に即した形でいく、こういうことになろうと思います。  以上でお答えといたします。
  128. 岡田利春

    岡田(利)委員 残念ながら時間がありませんから、結論に入ります。私は、今資本主義諸国における石炭政策というものは、どこの国を見ても社会化の方向を強めておると思うのです。自立できないから、すでにヨーロッパの諸国においても社会化を進めておる。これが資本主義諸国における傾向だと思う。ところが、日本の石炭産業の危機を打開するという立場に立って石炭産業を自立させる、いわゆる石炭産業自立の決定版だ、こう言われているわけですが、そこに私は非常に無理があって、無理のしわ寄せがいろいろな面に出てきているのではないかという感じが実はするわけです。ですから、需要の想定についても、さらに政策的に需要拡大する、しかし、拡大しても、それに伴う石炭を生産するためにはどうしても能率の低い山が残る、残して生産をさせなければならぬ、こういう面が伴う。だから、これは切り捨てなければならない。二百五十円の来年度のスロー・ダウンについては、団長は当初九州に行かれて、炭価引き下げの合理化というものが現地に来てみて非常に問題がある、このスロー・ダウンについては考えなければならぬ、こういう発言を若松でされたのです。私どもはその意見について非常に調査団の活動を期待したのですが、残念ながらその問題も立ち消えで、答申案では来年度二百五十円下げる。なぜこれは、たとえば半分にして、昭和三十八年、九年に延ばすことができないのか。二百五十円下げなければ、中小炭鉱やある程度何とかやっていける山が生き残る。だから、これはむしろ経済合理性の面を強く出して、二百五十円をそのまま強硬に引き下げさせる、しかも石炭は引き取ってやるんだから政府はめんどうを見なさい。どうも私は、この点についてぴんと来ないものが実はあるわけなのです。私は、それぞれの産業が日本の国の経済の基盤を確立していくという場合には、やはりそれぞれある程度の犠牲を負わなければならぬという面がどうしても出てくると思うのです。今日各産業間あるいは企業間において、新しく産業新秩序、協調方式などということが強く言われておるのも、そういういろいろな面からこういう議論が出てきておると私は思うのです。そういう総合判断から考えますと、とにかく高能率の山をつくる、国際収支を考えて原料炭を開発すれば、金がかかる。だから一般炭についてはある程度能率を上げて、経営が黒字に転換できるということになると、どうしてもつぶさなければならぬというものが相対関係にあってこの答申案が出されているのではないか。ですから、非常に政策的な面がこれを読むとにじみ出ているのではなかろうか。実はこう私自身受け取っているわけです。そういう意味で、今日の日本の石炭産業を国有国営にしても問題は解決しません。もちろん近代化しなければならぬ。しかしやはり社会化という展望の上に立って、もう一歩進めるべきではなかったか。そういう一つの高い次元に立って答申を進めるべきでなかったのか。こういうことを特に私は強く感ずるわけです。日本の石炭産業は、中野先生もおいでですが、立地条件からいっても、炭層の状況からいっても、どこを探しても、そうヨーロッパより有利だという条件はないと私は思うのです。なければないほど、私はやはり日本の石炭産業というものは、無理のない形で合理化していくとすれば、やはり大胆な社会化の展望を明らかにするのが今日の時点ではないか。これは思想以前の問題ではないか。資本主義社会でも当然そこまで踏み切らなければならない問題ではないかという感じがするのですが、こういう点について基本的に調査団として御論議されましたかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
  129. 有沢広巳

    有沢参考人 社会化といいましょうか、炭鉱業の企業形態というふうなものにつきましては、多少議論もいたしましたけれども、しかし、社会化につきましては、むしろ今度のスクラップ・アンド・ビルドの方式、これはもうある意味から石炭会社は、自前でといいましょうか、気まま勝手には何事もできない、こういう状態にあるのであります。なおそのほかに、資金その他の面からいいまして、経理上の規則とか監督を受けるのはむろんのことでありますけれども、そればかりでなくて、実際のスクラップ・アンド・ビルドをするにいたしましても、一定のワク、一定の方式を通ってでなければできないという点からいいますと、もはや、ある意味から言えば、この石炭産業が自立するまでの間というものは、実はこの産業はある意味の社会化の形になっておるというふうに私ども考えたわけでございます。ですから、すぐ国有国営とかいう問題にまでは飛躍はいたしませんでしたけれども、しかし、石炭産業というものは、ある意味から言えば、これは国家管理と似たような形のものじゃないか、こういうふうに実は考えます。しかし、国家管理そのものじゃむろんないのですから、あくまでも企業の責任とそれから労使の関係というものはそのままに残っておる。確かに、これが何といいましょうか、社会化ということになって、国家管理とかなんとかいろいろな形が考えられますが、そういう意味では、場合によりましては今度は労働組合の問題についてもわれわれは考えざるを得なくなる。そこまで考えるのは石炭調査団としては行き過ぎだ、むしろ今のような形、間接的な形でございますけれども一つの方式をもって推進をしていく、これがいわば社会の監視のもとにおいて行なわれていく、そうして国がそれについて責務を持ってこれを遂行していく、こういう形に置くのがこの際は適当でなかろうか、こういうふうに考えたわけでございます。
  130. 上林山榮吉

  131. 滝井義高

    滝井委員 有沢先生初め先生方お疲れのところ、非常におそくなって恐縮ですが、今まで質問をした方と違った観点から、きわめて具体的な問題について質問をさしていただきたいと思います。  この答申は、需要の計画、生産の計画、雇用の計画、これらの計画がどれ一つうまくいかなくても、これは全部だめになる要素を含んでおると思います。これらのものはきわめて有機的な連関を持っております。そこで私は、特に問題なのは、雇用計画というものが、どうもこの答申の中にいろいろ流れておる考え、今まで先生方から説明のあったものからはうまくいかないという断定をせざるを得ないのです。これは私自身が産炭地の失業者の中にあって、はだでそういうことを感ずるわけです。従って、それを具体的にいろいろと証明をしながら先生方の御見解を聞かしてもらいたいと思うのです。  その前に、この答申の中で非常に私、字句でわからないところがあるのです。それは雇用関係する部面で、まず第一に、整備増強計画という計画があるわけです。それから、生産構造計画というのがあるわけです。もう一つ、合理化整備計画というのがあるわけです。それから雇用計画、資金計画、こうあるわけです。今の先生の御説明によると、スクラップ・アンド・ビルドの方針、それからスクラップ・アンド・ビルドの計画、そしてそれに見合う雇用計画、こういうように、きわめて単純な割り切り方で御説明をいただいたので、それの方が何かわかるような感じがするのです。ところが、この答申を見ますと、まず第一に、この整備増強計画というものは一体どういうものかということがはっきりしない。それから、今度その整備増強計画から出てくるらしい合理化整備計画というものは、炭田別、地域別におつくりになるようである。そしてそれに見合った雇用計画というものができるようにあるのです。私はそういうように解釈をしたのですが、そういう解釈でよろしゅうございましょうか。
  132. 有沢広巳

    有沢参考人 確かに御指摘の通りに、ちょっと言葉がおかしいと思いますが、増強というのはビルドのことで、整備というのはスクラップ、こういうことでございます。整備増強計画というのは、スクラップ・アンド・ビルドを訳したというのはおかしいですが、日本語で言うときにはそういうことになります。それから合理化整備計画は、スクラップ・アンド・ビルドから出てくる人員の整理の形になる計画でございます。構造計画というのは、それの総合した、全国的に、炭種別も入れて、炭田別、地方別全部を、つまり石炭の構造といいますか、生産構造を表示した計画です。計画といっても、そういうテーブルが、構造計画といわれているものでございます。非常にわかりにくい言葉が盛んに使われておりますのは、これは従来ともそういう使い方を石炭鉱業審議会がやってきているそうでございまして、私はそれにとらわれずにここでは一括してスクラップ・アンド・ビルド計画、こう申し上げたわけであります。むろんそれには人員整理の計画も伴ってくるわけです。
  133. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この答申によりますと、たとえば十一ページに、「本調査団は、政府がそのために新方式を制定することを要望する。」こういうことになっておるわけです。この新方式というのが、いわゆる整備増強計画、こういうことになるわけですか。
  134. 有沢広巳

    有沢参考人 スクラップ・アンド・ビルドをする、それを実施していく方式です。スクラップ・アンド・ビルドを実施していく方式でございますから、今の石炭鉱業審議会を改組して、それにスクラップ・アンド・ビルドの方針と、それからスクラップ・アンド・ビルドの計画と、それから雇用計画と、そういうものをかけてそこで審議をして、その上で政府の案として政府がそれを実施していく、こういう形になるわけです。その方式を新方式と申しておるわけです。
  135. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、現在石炭鉱業合理化法の改正でできております。いわゆるわれわれの言うニュー・スクラップ方式との関係というものは、一体どういうことになるのですか。
  136. 有沢広巳

    有沢参考人 ニュー・スクラップ方式というのは、買い上げの方式でございますか。
  137. 滝井義高

    滝井委員 石炭山を買い上げる方式は二つあるわけです。一つは、いわゆる旧方式といいまして、私の山を売りますということで、石炭鉱業の合理化事業団と、売った鉱業権者とが連帯責任を持つ方式、それから、われわれが今言うニュー・スクラップ方式というのは、私は鉱業権を抹消いたしますといって鉱業権をみずから抹消して、抹消したものに対して交付金をやるわけです。従って、それは合理化事業団が連帯責任を持たないわけです。こういう二つの方式があるわけです。もう一つ保安で買い上げる方式と、こうあるわけです。その場合に、旧方式というのは、今年六十七万トンやったら、もうこれで終わりで、今後の方式は全部ニュー・スクラップ方式、いわゆる交付金方式でやるわけです。その交付金の方式と、先生方のいわゆる新しい方式との関係というものはどうなりますか。
  138. 有沢広巳

    有沢参考人 こういうふうになるべきではないかと私は考えます。今の新しい方式でスクラップ・アンド・ビルドの方式がきまる。そういたしますと、スクラップ・アンド・ビルドの方針もあわせてきまる。スクラップ・アンド・ビルドの計画が炭田別にもきまるわけです。そこで、山を持っておる会社は、スクラップするときには今のニュー・スクラップ方式、それに出すわけですね。しかし、その出すにあたっては、結局組合と話がついていなければいかぬわけですから、まず組合との間で話をする、そこでついたときにはそのニュー・スクラップ方式に乗る、こういうことになろうと思います。
  139. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ことしはすでに政府はニュー・スクラップ方式として六百二十万トンのワクを一応設定して、そして当初予算においては本年度の百二十万トンをニュー・スクラップにかけます。しかし、申し込みが多いので、さらに二百万トンを増加して、三百二十万トンかけます。こういうことになったわけです。そうしますと、今年度は、前の旧方式で残っている六十七万トンと、それから保安の四十五万トンと、このニュー・スクラップ方式の三百二十万トン、これだけのものが、いわゆるこの大綱における合理化整備計画の中に入ってくるわけですか。
  140. 有沢広巳

    有沢参考人 ことしはまだはっきりいたしませんけれども、しかしむろんそれも入ってくるかと思います。どういうふうにことしの計画を立てるかということは、まだ実は私自身も知らぬわけでございますが、いずれこれが答申の線に沿って動き始めるということになりますれば、そういうことになろうかと思います。
  141. 滝井義高

    滝井委員 すでに政府が国会等で答弁をしておったのは、今年度百二十万トン、ニュー・スクラップをいたします、それから六十七万トン旧方式のものが残っております。それから四十五万トンは保安で殺していきます。二百三十二万トンというのがことしの当初予算を審議するときの政府の答弁であったわけです。その後、四月六日のあの閣議決定の後に政府はさらに二百万トンを追加したわけです。従って、四百三十二万トンというものが今年スクラップ化されるということに、すでにこれは進行中のものなんですね。そういう形になるわけです。そこで、先生方のこの新しい大綱がもし実施せられるということになれば、四百三十二万トンの上にまた新しく何ものかが加わるのか、それとも、四百三十二万トンだけが進行をしていくのかという、ここが現実問題として非常に重要なところなんです。
  142. 有沢広巳

    有沢参考人 今後、三十七年度にもし何かこの方式で行なわれるということになりますれば、その新しい分がスクラップ・アンド・ビルドの計画に乗ってくると思います。今までのものはもうきまっておるわけでございますから、申し込みをしてそれを事業団の方で受け入れているものでございますから、それはそれとしてもう確定的なものなんですが、そのほかにこれからやるということになりますれば、三十七年度の計画として新しく出てくる、こういうことでございます。
  143. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、問題が今度は二つ出てくるわけですが、四百三十二万トンについては、この答申を見ますと、最後に、四月六日以降のものについては離職金の引き上げの恩典に浴させてあげましょうとだけしか書いてないわけですね。そうすると、四百三十二万トンについては雇用計画というものはつくらないわけですか。それが一つ。さらに、今有沢団長としては、四百三十二万トン、そのほかにさらにスクラップ化を今度この答申によってやるというつもりで答申をしているのか、今年度は四百三十二万トンだけに限るのか、こういう二点について明らかにしておいていただきたい。
  144. 有沢広巳

    有沢参考人 離職金の方は、四・六ですかにさかのぼります。それは答申に書いてある通りでございます。  それから第二の点は、私ども調査団報告で、この三十七年度の離職者をさらに追加するか、こういうことは私どもはまだ何とも申し上げるわけじゃないので、これは政府の方でスクラップ・アンド・ビルドの計画を出される。むろん雇用計画もあわせて出されることになるわけです。そうして初めてきまる問題でございまして、私たちがどうのこうのと言う筋合いのものじゃない、こういうふうに考えております。  それから雇用計画の場合でございますが、これは先ほども申しましたように、離職者で今後の新しい方式に乗って出てくる離職者のほかの人はどうするかという問題でございますが、これにつきましても、先ほどもちょっとお答えいたしましたように、本人に就職の意思のある者につきましては手帳を交付するというふうなことも、内々は考えられている点である、こういうことでございます。
  145. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四百三十二万トンについては、当然これは政府が雇用計画を出して石炭鉱業審議会にかけられる、こういうことを確認して差しつかえないでしょうか。これは非常に大事な点で、すぐ問題になる点ですから。
  146. 有沢広巳

    有沢参考人 その点は私ども調査団報告には何も書いてないわけですから、政府の措置におまかせしてあるわけです。ですから、これは労働省あたりの方で御検討下されば明らかになろうかと思います。
  147. 滝井義高

    滝井委員 そう逃げられるとちょっと困るのです。というのは、この百二十万トン・プラス二百万トンの三百二十万トンのニュー・スクラップについては、まだ全然申し込んでおるだけで、具体的に交付金を受けたのは、多分一例ぐらいだと思うのですが、そのくらいしかまだないわけです。今まだ申し込んで事務が進行中のものなんです。従って、それは当然この雇用計画というものを先生方出してもらうという、こういう意思表示をしてもらわないと、政府は、それは調査団の方から何も言われませんでしたからといって、ことし雇用計画を何も立てずにほおかぶりできるわけです。今までそうなんですからね。
  148. 平田敬一郎

    ○平田参考人 こういう問題は、政府が報告を受けてよく出る問題でございますので、私の常識でちょっと御説明申し上げますが、調査団としましては、先ほど団長お話のように、この大綱を政府に報告いたしまして、政府はすみやかにこの報告に沿った措置をとってほしい、従いまして、調査団の希望としましては、できるだけ臨時国会等で早くきめ得るものは、あるいはきめる必要があるものは必要な措置をとって、新しい報告の線に沿った実施ができるようにしてほしいということまでは申し入れてあるわけです。その間のまたさらにこまかい経過的な問題になりますと、たとえば先ほど予算について申し上げましたように、補正を幾らするか、あるいは買い上げについても今までの予算措置だけで十分かどうか、不十分な場合には——不十分というとかえってお怒りになるかもしれませんが、もうちょっとできるという場合には追加措置もとってくる、そういうきめのこまかいことを政府でこの趣旨に沿っていろいろ実施細目をきめて実施に移す、これは当然の常識だと私ども実は考えておる。ことに例の閣議決定の問題につきましては、いろいろ聞いてみますと、どうもいろいろないきさつがあるらしくて、これはやはりむしろ政府の責任でそういう問題は処理してしかるべき問題で、あまり調査団がそういう中に入り込みますと、かえって問題を紛糾させるゆえんじゃないかというので、これも実は議論したのですが、結局、そういう方向で政府が適切な措置をとっていくということが、調査団としては一番いい処理の仕方ではないかということでございまして、従いまして、それ以上はちょっと団長に御追及なさっても無理じゃなかろうか、政府がこれを受けましてどういう措置をそういったものについてとるか、政府が適切な措置をとってほしい、こういうふうに私は考えておるわけです。ただ、離職者交付金だけの問題は、いかにも過去のものをどうするかというので、ことに労務者の方に重大な関係がございますので、この点は実は親切にきちっとうたっているということで御了解願いたと思います。
  149. 滝井義高

    滝井委員 答申が砂上の楼閣になってはいかぬ。だから私は、雇用計画と需要と生産というものはやはり一線に並んだ有機的な関係があると思うのです。そこで、あとから首を切られてくる者には雇用計画が立ったけれども、今おる者、あるいは今から首を切られようとする者については、その雇用計画もはっきりしないということでは、これはなかなか私たちが納得できないところなんです。だから私が今、具体的問題について一つお尋ねしますというのはそのためなんです。そこで今のような、これから三十八年の三月三十一日までのこの三十七年度において、四百三十二万トンのスクラップ化される山に対する雇用については、調査団というものはノー・コメントだ、こういう形になってきたわけです。そうしますと、もう一つ前に問題があるのです。それはすでに有沢先生からさいぜんいみじくも御指摘になりました通り、四月六日の閣議決定以後、月に三千人ずつやめていっているのですね。これは全部就職しているわけじゃないのです。停滞しておるわけです。この人々も停滞しておるわけですが、その場合に、まだ先にいっておるものがあるわけです。それはどういう人たちかというと、すでに現実に、たとえば福岡県に例をとつてみても、三万や四万の炭鉱の失業者がおる。現実に、緊就に入りたいといって入れない人が三千人おるのですよ。五千人しかワクがないから、三千人残っておるのですよ。これらの雇用というものを何もやらない。そのままにしておるわけです。三千人の人たちは緊就のワクに入れてくれというけれども入れないから、失業の状態におる。さらに炭鉱離職者拡大すると、三万か四万おる。その上に今年度四百三十万トンばかりのスクラップ化される山の失業者が出てくるわけでしょう。今度、先生も御存じの通り、労働省の山中篤太郎先生を中心とする失業対策問題調査研究会の報告書が出たわけです。これも、三十五万の一般失対に就労している失業者、これらの諸君をA、B、Cの三段階に分けております。Aの諸君、約三十五万の二割程度ですが、この諸君というものは大体広域職業紹介を適用できる人たちです。そうすると、これは六、七万出てくるわけです。集中的に福岡県あるいは筑豊地帯が多いわけです。そのほかに七割八分から八割程度の諸君のBクラスがおるわけです。この上の人もやはり同じように働ける、こうなるわけです。この山中先生たちの出した答申というものを見てみますと、有沢先生たちの答申とみんな同じことを書いておるわけです。それは地域開発の推進、広域職業紹介の実施、転職資金の支給、移転就職者用住宅確保、労働力の流動化をはかる、みんな同じなんです。そうしますと、これが同じように重なってくるわけです。現実に四万、五万おる。そうしてなお緊就その他のワクのもの——先生は特別失対その他には炭鉱離職者をやらぬというのですから、緊就をおやめになるということなんだと思うのです。
  150. 有沢広巳

    有沢参考人 やめるのじゃないです。
  151. 滝井義高

    滝井委員 それじゃその方は別にしておくということにしても、ともかく、この緊就の人たちは永久に緊就に置いておくのじゃないので、この緊就の中にとりあえず、広域職業紹介ができないから置いておくんだということですから、その人たちは雇用計画の中に入ってくる。これはおそらく、今から、ニュー・スクラップされるものより最優先的に入ってくる。この三千から五千が優先的に入ってくる。それから福岡県あたりでは、この一般失対の諸君が入ってきます。これが先です。まだ現実に首を切られずにおる者の雇用計画というものは、あと回しになる。従って私は、先生がせっかく粒々辛苦されたこの計画というものは実施できないと思います。なぜならば、現実のこの一般失対の諸君、緊就の諸君、それから滞留している諸君は、これは雇用計画に入れてもらわなければきかないのです。雇用計画は一体だれがつくるかということになりますが、雇用計画を作る主体がもし労働省であるとするならば、労働省はこの合理化整備計画に基づくその裏づけとなる雇用計画を作る前に、現実の滞留者、現実の失業者を先にやることが、これは失業保険も切れていますから、優先することになる。そうすると、これは失業者をだんだんたらい回しにして、絶えず現実に四、五万の失業者が滞留しなければならぬ、こういう形になる。  もう一つ隘路が出てくるのです。それは炭鉱労働者の諸君の年齢が三十八才を越え始めたということです。これはもう夢の世界のことじゃないですから、現実に足を踏んまえて議論をしていかなければならぬ。現実に見ますと、広域職業紹介で就職可能な者は、三十五才以下です。四十才を越えますと、一割くらいしかないのです。三十七年七月三十一日までの福岡県における今年度の広域職業紹介の実態を見てみますと、五千人のうち炭鉱離職者臨時措置法三条による広域職業紹介と職業安定法十九条二の広域職業紹介、これらの者を合わせても二千五十六人です。大体よく見ても三割か四割しかいかない。大車輪をかけてこれくらいです。昨三十六年は相当いったのです。日本経済が神武景気を謳歌していた。ところが今年になってから、がたりと落ちている。もう、がたり落ちた。同時に、落ちるとともに、だんだん、一年たてばたつほど年をとるのです。そうすると三十七、八になったら広域職業紹介に乗っかってこないのです。こういう隘路が出てくるのです。従って私の体験と私の勉強の限りでいけば、失礼な言い分だけれども、先生の方の雇用計画というものは、二年か三年の後にしか現実に乗る人は乗らない。それはまさか先生たちも今おる四、五千人の緊就の諸君を、雇用計画もせずに、お前らはそこにおれというわけにはいかぬと思うのです。それらの諸君もやはり炭鉱離職者ですから、同じ権利を持っている。だからわれわれは先に乗せてくれ、こうなる。この隘路を一体どう打開するかということが、この炭鉱労働者の諸君が幾分でも先生のこの案に頭をかしげるかどうかの分岐点だと私は思います。これを私は率直に解明をしていただかなければいかぬと思います。
  152. 有沢広巳

    有沢参考人 御指摘になりました滞留の炭鉱離職者といいましょうか、失業者、これがたくさんいることは私どもも知っております。それで労働省の方の計画の中には一応その数字も載っております。雇用計画に乗せる数字として一応載っておるようであります。しかし今おっしゃったような四、五万というふうな数字ではなかったように私は思いますが、しかし一応は載っております。  それでもう一つの点は、新しいわれわれの方式で出てくる離職者ばかりでなく、さかのぼってどうするかという問題につきましては、これは労働省の方で検討してくれておるわけです。新しい職場といいましょうか、転職をしてやっていく、こういう人々に対しては、手帳を交付するということも考えられる、こういうふうに考えておるわけです。手帳の交付を受けた者については、これは雇用計画に乗っていくことになろうと思います。ですから、そこで非常にたくさんの人が雇用計画に乗ってこなければならないということになりますと、その雇用計画が実施できないじゃないか、とてもそんな人は、ただいま御指摘になりましたように、ことしのような経済の不況のもとにおいては、広域職業紹介では乗らないじゃないか、こういう御議論もむろんあろうと思います。それに対しまして、先ほどもちょっと私から紹介いたしましたように、労働省の調査では相当の人が乗るのだ、こういう見解もあります。ですから、そういうところを一つ石炭鉱業審議会の雇用部会で十分検討して、そして妥当な線を打ち出すべきでなかろうかと私は考えております。何しろ御質問が非常にこまかいことでございますので、労働省の所管もあれば、通産省の所管もある。私一つ一つかようなこまかい点についてお答えできないかと思いますけれども考え方としてはそういうふうに考えております。われわれが今雇用計画の問題を論ずる場合におきましても、石炭局の人はむろんのこと、労働省の人も参加しまして、検討を加えたわけでございます。その検討の中から、今申し上げましたようないろいろな議論が出てきておるわけであります。でありますから、御心配の点は確かにある、その点も解明しなければならぬという御趣旨は、私もその通りだと思います。その点につきましては、いずれ労働省の方で考えておる案というものをもっと御検討下さればはっきりすることになるだろうと私は考えております。
  153. 滝井義高

    滝井委員 今先生の口から、労働省のこともあれば通産省のこともあるから、こうおっしゃったのですが、実はそこが一番問題なんです。雇用計画というものは、まず関係各省が連絡をして立案しますね、これが第一。第二番目は、石炭対策連絡会議が次に検討しますね。それから三番目は、石炭鉱業審議会に諮問をします。そして今度は石炭対策関係閣僚会議が決定をするのです。そうすると、一体雇用計画の責任者はだれなのかということがわからないのです。
  154. 有沢広巳

    有沢参考人 今の手続から明らかなように、最後は政府が……。
  155. 滝井義高

    滝井委員 いや、大臣です。どの大臣が責任者か。
  156. 有沢広巳

    有沢参考人 政府じゃないでしょうか。それで、政府の内部では、雇用の問題については労働大臣ということになりましょうが、しかし雇用計画の策定をするものは石炭対策閣僚会議、それで閣議決定ということになると思いますから、政府だ、こう申し上げたわけであります。
  157. 滝井義高

    滝井委員 労働大臣だということがはっきりすればいいわけです。この雇用計画というのは関係各省にまたがりますものですから、従って各省がそれぞれ責任のなすり合いをするとはっきりしなくなるので、それで一体だれだ、そして、それは労働大臣だ、わかりました。  そうすると、できた雇用計画というものを労使双方におろしていくわけですね。おろしますが、おろしたものがまとまらなかったときには一体どうなるのですか。これを先に一つお答え願いたい。
  158. 有沢広巳

    有沢参考人 まとまらなかったらどうするかということは——なるべくまとまってもらいたいのです。まとまらなければどうなりますか……。先ほど申しましたように、まとまらないということになりますと、時日の関係もおくれて参りますので、石炭鉱業審議会の方で場合によっては調停に立つと申しましょうか、そういうようなこともあろうかと思います。しかしそれでもまとまらなかったらどうするか、こういう御質問だと思います。そのときには、どうも……。やっぱりまあ何らかの形でまとめていただきたい、われわれの方からいえば、そう申し上げるより仕方がないと思います。
  159. 滝井義高

    滝井委員 その場合には、労働者のスト権というものがあることは確実ですね。そうしますと、先生の御意見によれば、この答申大綱を政府が実施するにあたって、いよいよ合理化の整備計画をきめる、それによってニュー・スクラップに持っていく、こういう形になるわけです。その場合に、企業者の意思というものは私の山はニュー・スクラップにいたしたいということであっても、先生の方の合理化整備計画に乗らない限りはニュー・スクラップに持っていけないことになるわけですね。
  160. 有沢広巳

    有沢参考人 その通りであります。
  161. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、どういうことが起こるか。こういうことが起こってくるわけです。まず今、今年度約五百万トンのニュー・スクラップの申し出があるわけです。その中から三百二十万トンだけをことしは処理しましょう、こうなっておるわけです。従って、あと二百万トンはあと回しになったわけですね。これは予算の関係があるからあと回しになるわけです。あと回しになるということは、先生方の計画にも乗らないことを同時に意味するわけです。その場合に経営者がサボタージュをやる。もうどうせニュー・スクラップを申し出るような山ですから、借金もずいぶん多いのです。銀行も金を貸さないのです。整備資金もないのです。番がきたときでなければ整備資金はこないわけですから。そこでどうやるかというと、未払い賃金を起こすわけです。これは大手でもあるわけですよ。今もうすでに筑豊ではそれが行なわれ始めております。もう三百二十万トンで、三百二十一万トンからの人はだめなのです。申し込んだ順序でいきますから。だからその連中は、ことしはもうだめだからというので、いわゆる企業の経営意欲を失っているのです。だから企業の経営意欲を失った経営者に対しては、何らかの形で拘束をする方法をきめておかないと、番がこないからといって投げ出されてしまう。投げ出してしまったら、私企業だから、拘束する方法はないのです。四月六日に閣議決定をされてから、すでに一月に三千人ずつの労働者が首を切られてやめているという事態がこれを証明しておるわけです。そうでしょう。まだ先生の答申も出もしないうちから、もう投げ出している企業家が出てきたわけです。これは申し込んでおる連中ですよ。今度申し込みはしてはおく。しかしそれは雇用計画なり炭田の年度別の整備計画には、ことしは乗らない。来年か再来年は乗るだろう。しかし、そんなに持たないので投げ出してしまう。投げ出して未払い賃金をやれば、労働者は生活保護法か、四散をするよりしようがない。大手でいえばボーナスの分割払い、賃金の分割払いをやったらいい。これはかつて大手でもやったのですから。そうして希望退職者を募集したらいい。可能なんです。こういう整備計画をおつくりになって、雇用計画がなければだめだ、こうきめたならば、しりの抜けないようにしなければならぬ。こういう企業家についてはまかりならぬ、たとえば罰則を課すとか、まさか罰則を課すわけにはいかぬけれども、労働者は首を切られるのですから、一体このしり抜けをどう防ぐかというのです。これは非常に重要なところなんです。これは大手だってやっているのですからね。たとえば第二会社をつくった。第二会社をつくるまでは、働く希望のある人は全部雇用いたしますといって労働組合と約束をした。ところが、できたとたんに、あいつは社会党であった、あいつは労働運動をよくやったといって、現実には雇わないのです。こういう事態があるのですよ。経営権の方が強いです。だから、このしり抜けを一体どう防ぐかということです。これは非常に重要なところですよ。
  162. 有沢広巳

    有沢参考人 まあ、中小の方の炭鉱の場合は……
  163. 滝井義高

    滝井委員 大手でもやるのです。
  164. 有沢広巳

    有沢参考人 いや、大手の場合におきましては、基準というか、スクラップ・アンド・ビルドのその年の方針がきまっているわけですから、その方針に適合しないものはその年にはやれないわけですね。やらないから会社の経理が困るから、何らかサボをする、こういう御趣旨と思いますけれども、そうでなくて、そのときにはある程度めんどうを見なければいかぬと思います。スクラップ・アンド・ビルド計画に乗っていなくて、それがために非常に会社の経理が悪くなって賃金の未払が起こるという事態でありますから、そういう場合には政府はめんどうを見なければいかぬ。そうでなかったら、会社の経理というものは成り立たないと思います。そのしわが今のように賃金その他に寄ってくる、こういうことになろうと思いますので、そういうことは万々ないと私は考えております。ですから、そういう点につきましても、今の石炭鉱業審議会が計画を立てっぱなしということでなくて、スクラップ・アンド・ビルドにしても、雇用計画にいたしましても、それの実施がどうなっているかということをトレースして、それがうまくいってないときには政府に建議をする、こういうことをやろうというわけなんです。ですから、今のような場合が起これば、むろん石炭鉱業審議会においても問題になりますし、問題になれば、それについて政府に建議をする、政府はそれに対して何らかの適当な措置をとる、こういう手続になると思います。ですから大手の方にはあまり御心配はないと思いますが、中小の場合においては、そういう事態が若干起こるかと思いますが、そういう場合にも、やはり石炭鉱業審議会の機能を非常に拡大してあるものですから、そういう問題についても調査し、そして場合によっては建議もできる、審議もむろんできる、そういうことをやるわけですから、その点である程度防げるのじゃないかと考えております。
  165. 滝井義高

    滝井委員 そういう、いわゆる整備計画に乗らずしてやるような場合には、それは当然救済の手を差し伸べる、私は、その対策があればしり抜けでないと思うのです。そこらあたりを今まではやっていないのです。やっていないために投げ出してしまう。だから四月六日以来、月に三千人もの者が出てきておるわけです。それをやっておれば、そんなものは出ないわけです。だからその点はぜひ一つ厳重に政府に、池田総理以下通産大臣に御説明をしておいていただきたいと思います。  ちょっとあと二点だけ産炭地の問題で、たくさんあるのですが、時間がありませんから、お尋ねしたいのですが、それは、有沢先生は石炭の撤退作戦ではないと言うけれども福岡県の筑豊炭田から見れば、いわば撤退作戦です。これはあるいは日本全体から見れば防衛作戦かもしれません。そこで撤退をする会社というものは、筑豊では三井、三菱、住友、古河、明治というような、日本の資本主義の基礎を確立した大手の会社が撤退をしていくわけです。こういう会社というものは、それぞれ関連会社をたくさん持っておるわけです。政府に、筑豊炭田に大企業、大機械工場をつくらせるということも一つかもしれませんけれども、どうせ炭鉱会社に二千百億程度の金を何とかめんどうをみてやろう、中小を合わせれば二千五百億になりますが、みてやろうというのですから、そこでこの際、財閥会社に、何と申しますか、ちょうど電力に三千万トン四十二年になったら引き取りなさいと言うのと同じように、一つの山を撤退するときには、財閥会社は一つの工場をつくりなさい、これでいいのですよ。これをやってもらうことが必要ではないか。一つ炭鉱を撤退する場合には、その財閥会社に必ず義務的に一つつくらせる。そのかわりに、法人税についても、あるいはそこからできる製品の運賃についても、あるいはその他の金利についても——一番問題は金利だと思うのです。金を貸す金利についても、特別のめんどうをみましょう。炭鉱の用地はたくさんあるのです。炭住もあるのです。働き手もおるのです。炭鉱労働者の子供がおるのですから、若い労働力もあるわけです。それが今ないから、関西その他に出ていっているのですよ。そこで財閥会社がそこに持ってくるという、この義務規定というのですか、ちょうど電力に負わせるように、これは私はできるのじゃないかと思うのです。赤字の経理をうんとみてやろうというのですからね。先生たちは石炭会社をこれほどまでめんどうをみてやろうというのですからね。ただ先生方が石炭会社におきゅうをすえることは、何かといったら、いわば企業の経理を監督する、帳面を見るだけなんですからね。それならば、損なことがあっても、利子を安くするし、運賃もみてやるからやりなさい。これなら、用地もあるのです、住宅もある。これが一番安上がりだと思うのです。ただ、そこはちょっと消費地に遠いという欠陥はあるけれども、これは金利その他をまけるということでカバーできると思うのです。こういうことが一つ。  もう一つは、今までの旧方式で大体五百三十三万トン買い上げています。三十一年から三十七年八月まで総額八十一億、このトン当たりの単価は千五百三十二円です。今度のニュー・スクラップは、千百円なんですね。これでは中小企業者の売掛代金も払うことができなければ、鉱害をやることもできない。中小企業の売掛代金は、福岡県だけでも九十七億ある。炭鉱が店じまいすれば、それらの会社も店じまいです。この千百円を引き上げる方法はないかということです。なるほど可採炭量では千百円と平均計算して出していらっしゃいますから、千五百円のところもあるかもしれませんが、平均千五百円程度にして、そうして今のニュー・スクラップ方式では債権者に三割やって、それから未払い賃金に二割やって、あとの五割を中小企業鉱害が按分比例をすることになる。そこで千百円のうち四百円程度のものは別ワクにして、たとえば中小企業とか鉱害とかなんとかいう、そういう関連のものにひもつきでやるということになれば、相当うまくいくことになるのじゃないかと思うのです。何か別ワクなものをつくってやらぬと、これではとても鉱害と中小企業は救われないのですね。規在、筑豊炭田に二百億の累積鉱害があります。これは撤退作戦をやるならば、二百億が四百億、倍になると思う。これが最後だというので、破断角といって、いわゆる鉱害のちょっと関連のあるところまでみてくれという要求が起こってくる。従ってそういう金というものは、とてもニュー・スクラップにかけた石炭事業主は出すことができない。この千百円というものを引き上げるということと、財閥会社に撤退したときに必ず一つ工場をつくらせるという、こういう点についてどういう意見をお持ちですか。
  166. 有沢広巳

    有沢参考人 二つの問題のうち、最初の財閥会社の雇用の新設という問題でお答えします。ニュー・スクラップの買い上げの問題は、平田さんからお答えしていただきます。もうそのことは会社の方でも責任があると思いまして、そのことを強くわれわれは会社に申し出てありますが、会社の計画の中にも、すでに閉山計画をつくるときは、それと見合いといっては少し言い過ぎかもしれませんけれども、単に一つじゃなくて、二つも三つも産炭地に新しい会社を起こす、こういう計画を現に持っていらっしゃる。それで大体何百人とか千人とかいう人を採用するのだ、こういうふうになっております。先ほど説明申しましたように、雇用計画の中には、会社自身で造出する職場というものが政府の雇用計画に乗るわけですから、政府といえども、あなたの方はもっと雇用計画を増進しなさい、こういうことを言うことができると思います。また現に会社の方からも、今出ているものだけを見ましても、幾つもの新しい会社を新たに起こす。そのためには資金その他について、すでに産炭地振興事業法によりましていろんな恩典がありますが、そのほかなお資金の融資というふうな問題につきましても、調査団の方でちゃんと考え答申の中に盛ってありますから、それは法律で義務づけなくとも、今のようなシステムで、つまり政府の策定する雇用計画に、会社自身がどれくらい自分で職場を造出するか。それが、五千人も解雇する場合にたった百人だというふうなことでは、これは通らないと私は思います。ですから、会社においても十分責任がある。その責任を果たすためには、極力今のような新しい企業を起こす、あるいは会社内部その他子会社に採用するとか、いろいろな方法を考えて職場の造出をすべきである、こう考えております。またそれが今の方式からいけばできる、また現に会社でも計画を立てておる、こういう状態でありますから、その点は一応達成されることは可能ではないかと考えております。  なお、千百円の買い上げ計画を少し上げたらどうかという御質問につきましては、平田さんの方からお答えしていただきます。
  167. 平田敬一郎

    ○平田参考人 現在の買い上げ方式につきましても、今ニュー方式とおっしゃいましたが、ニュー・ニュー方式はないかと実際いろいろ検討してきたわけです。ところがこれは多年長くやっておりまして、ことしから合理化するというので、やっと実施に移ったばかりでございまして、これをさらにこの段階でまた変えるということは、基本的に検討した結果どうも適当ではない。ただよく調べてみますと、今後はニュー方式によりましても、千円の単価は、私どもが大体当ってみますと、千五百円前後にはなるだろう。そうすると平均しましてそれよりも上回るところも出てくるし、もちろん下回るところも出てきますが、その辺の予算の計上並びに実行にあたりまして、資金不足その他で無理な査定なんかしないで、当然のことですけれども実情に応じてできるだけ親切に見てやって、適切なやり方で実行する、これがやはり実際問題としては一番いい解決の方法ではなかろうか。その点は私も大蔵当局にも審議の途中において十分くぎをさしておきました。  それからもう一つは、離職者交付金でございますね、これを相当大幅に引き上げようというので、これも答申に書いております通り、退職金が少ない人には十万円まで現在のほかに出すようにしようというので、実は調査団としましても勉強しておると申しますか、強調いたしているような次第でございます。  それから、先ほどからいろいろ御議論がございましたが、御意見は別としまして、今までのような行き方が今御指摘のような問題がいろいろ出てきておるので、今度実は私ども非常に苦心しまして、まず雇用計画からいろいろなことをやりまして、そういうことがないように今後一生懸命に努めようというのがわれわれのねらいでございますから、現在あるから将来もだめだというふうに御判定願うのはちょっと無理なんで、私どもは現在がそれであるからこそそういうことをやりまして、それで実効を期するようにしようということでございます。それにつきまして、これは私若干私見にわたりますが、会社に対して直接いろいろ法的な制限、拘束を加えるということは、先ほどから御議論がございましたように、私企業、民間企業としての生命を断ってしまうようなことになったらかえって再建に資するゆえんじゃないというので、先ほど団長お話しになりましたように、結局閉山自体も最後の責任ある決定は企業がするというシステムにしておるわけです。だから、その際もちろんストなんか起きないように円滑にやってほしいと願望いたしております。その労働者の権利についても私ども触れていない。その他の点につきましても、調整炭鉱とかいろいろ御意見があるようですが、解雇制限とか会社に法律で義務づけてかわった事業をやらせる、これもやはり私ども、そういう考え方に立ちますと、なかなか一般的に受け入れにくいんじゃないか、しかし実際上非常な問題でございますから、融資その他におきましてできるだけ協力していい事業を起こして、その方で安定した職場を会社がつくり得るようにしよう。単に炭産地だけでなくその他の地域における場合においても、そういう趣旨で極力事業団または開発銀行等も御協力申し上げまして、いい安定職場ができるようにしよう、こういうことでございます。お気持はわかるのですが、ただ法律的に義務づけるところまでいきますのは、私どもどうもやはりちょっと行き過ぎになるんじゃないか、そういう法形式はとらないけれども、極力あの手この手で援助しまして、御趣旨のようなことが実現できるように政府、政府機関、あるいはほかの産業もしかりだと思いますが、協力してやっていく態勢をつくろうじゃないかというところに、実は私ども団長が一番最初お話しになりました点からする苦心があったということをつけ加えさしていただきたいと思っております。
  168. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 滝井君、簡単にお願いいたします。
  169. 滝井義高

    滝井委員 今離職者交付金を十万円程度にする、それは現在のほかにとこうおっしゃいましたが現在の三十日分のほかに、こういう意味ですね。
  170. 平田敬一郎

    ○平田参考人 さようでございます。
  171. 滝井義高

    滝井委員 もう一つ、私の、財閥会社に、撤退したもとの企業のあったところに別の企業をつくらしたらというのは、強制的なものではなく、ちょうど電力長期引き取りと同じように恩典を与える、法人税、金利、それから鉄道運賃等についても、筑豊というのは、ごらんの通り、山の中で非常に便利の悪いところですから、やはりそういう恩典を与えないと、財閥会社の撤退をしたあとは、三井なら三井、三菱なら三菱でやるというわけにはいかぬだろう、そういう恩典に浴するように持っていってくれぬか、こういうことだと思う。そうしますと、その同じ会社があるということになると、鉱害その他の被害者も、目の色を変えて今全部とろうと言わなくなる。その会社でもうけたときに払って下さい。それからやめる労務者も、炭鉱でなくても、もとの同じ会社の炭住から通えるということになれば、非常に気分はやわらいでくるわけです。莫大な二千五百億もの金をつぎ込むのですから、その中の一割を回しても二百五十億もあるわけです。五分回したって大したものです。百億以上なんです。だからそういう点を配慮してもらえば、八十万の筑豊の人口というものが安心ができるのじゃないか、そういう施策をお願いしたい。法律で強制する意味じゃありません。
  172. 平田敬一郎

    ○平田参考人 そういう御趣旨でございましたら、できる限りわれわれも右から左から協力してやっていこう、それから炭産地でございますと、税法上の特別措置もございましょうし、私ども銀行といたしましても、普通の場合と違いまして、そういう計画に対しましてはむしろ積極的に御援助申し上げるというくらいの気持で参りたいと思っております。今いろいろお話しになりました手段の全部について結論を出す、お話を申し上げるわけにいきませんが、趣旨は極力そういう趣旨で参りたいと存じております。御了承いただきたいと思います。
  173. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず、長時間にわたり、答申について御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は来たる二十四日水曜、午前十時より開会することとし、参考人として石炭鉱業調査団団長有沢広巳君、経済部門で稲葉秀三君、技術部門で中野実君、金融部門で平田敬一郎君の御出席をお願いすることといたしました。本日はこれにて散会いたします。   午後七時五十八分散会