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1962-09-01 第41回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年九月一日(土曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 有田 喜一君 理事 岡本  茂君    理事 神田  博君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 中村 重光君       藏内 修治君    白浜 仁吉君       中村 幸八君    井手 以誠君       田中 武夫君    滝井 義高君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君         通商産業事務官         (公益事業局次         長)      生駒  勇君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      松島 五郎君     ————————————— 八月三十日  炭鉱労働者雇用及び生活安定に関する請願外  九十三件(岡田利春紹介)(第八九二号)  同外三百五十九件(多賀谷真稔紹介)(第八  九三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  石炭対策に関する件  請願  一 炭鉱労働者雇用及び生活安定に関する請   願外九十三件(岡田利春紹介)(第八九二   号)  二 同外三百五十九件(多賀谷真稔紹介)(   第八九三号)      ————◇—————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより会議を開きます。  まず、閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  井手以誠君外四十九名提出鉱山保安法の一部を改正する法律案及びぼた山崩壊防止法案並びに石炭対策に関する件については、閉会中も審査をいたす必要がありますので、議長に閉会審査の申し出をいたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、閉会中の審査案件が付託されました後、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました場合の手続等に関しましては、あらかじめ、すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  5. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 次に、本日の請願日程二件を一括して議題とし、審査を進めます。  今国会、本委員会に付託になりました請願は、本日の日程となっております二件であります。  以上の請願は、文書表等により委員各位二心内容は御承知のことと存じます。また、理事会におきましても内容等を十分検討いたしましたので、紹介議員説明等を省略し、直ちに採決いたしたいと存じます。  本日の請願日程第一及び第二の両請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認めます。よって、以上の両請願はいずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました両請願に関する本委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  8. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 なお、今国会、本委員会参考送付になっております陳情書は、産炭地振興対策推進に関する陳情書一件でございます。      ————◇—————
  9. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。
  10. 岡田利春

    岡田(利)委員 ちょっと資料要求について。前回の石炭対策特別委員会で、私の方から資料要求を実はいたしておるわけです。資料提出を求めたのでありますが、その後その資料がなかなか出て参らないのです。すでに委員長も御存じの通り、私の要求しました資料は、現在の電力会社各社別に、一体石炭専焼火力石炭マキシマムにたいた場合にはどの程度石炭がたけるのかというのが、第一点の資料なわけです。それから第二点の資料は、現在石炭専焼火力実績という本のはどの程度になっておるのか、油と石炭割合というものは、一体現実の問題としてどうなっておるのか、実績出してもらいたいというのが第二点の資料です。第三点の資料は、今日電力会社向け石炭価格というものは、各社別にずいぶん差がある。しかも、産炭地においては適正価格を割るがごとき傾向も今日出ておるわけです。従ってその大手中小それぞれの電力会社では、現在千二百円のコストダウンの中で引き取っておる炭価は一体どういう実績になっておるのか、という三点の資料要求したわけです。しかしこれは各社機密に関するので、なかなか出せぬというような話を私は聞くわけなんですが、少なくとも今私が申し上げました資料というのは、決してその電力会社機密事項に該当すべき問題ではないし、これが資料として出せない性質の問題でないということは、これは皆さんの御了解が得られるところではないかと思うのです。特に石炭調査団が今日石炭需要想定をして、需要の面から石炭生産規模がきまってくる、こういう非常に大事な問題でもございますので、特に石炭対策特別委員会という特別委員会が設置された以上は、その程度資料はすみやかにどんどん出してもらうようでなければ、実際いろいろ審査をする場合に問題が出てくるのではなかろうか、こういうように私は考えるのですが、この点特に委員長においてしかるべく資料提出について、重ねて早急にされるようにお取り計らいを願いたいということを要請するわけです。
  11. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ただいまの岡田委員資料要求について、その可能性ないしは時期等について、政府委員の方で何かお答えがございますれば、参考に承っておきたいと思います。
  12. 生駒勇

    生駒説明員 今お話しの資料に関しましては、実はそういう問題は、現在石炭局との間でいろいろ検討を重ねておる最中でございます。従いまして御趣旨の点、なるべく沿える限りにおきまして資料提出したいと考えておりますが、ただ、石炭重油と比べての価格差という問題になりますと、岡田先生承知のように、電力需給計画全体との関連の問題がございます。従いまして一番最初にどの発電所でたくか、またその場合にはピークをどういうふうにとるか、それから需要趨勢によりましては、御承知のように発電所負荷率が変わって参るわけでございまして、その点でいろいろなめんどうな前提があるわけでございます。従いまして、その前提その他を石炭局とも十分調整いたしました上で、できる限りすみやかに資料提出いたしたいと考えておる次第でございます。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 実は私はきのう委員部を通じて、委員会で正式に要求した資料について提出方を催促したわけです。委員部の方の回答としては、これは各電力会社機密事項に属するから、大臣の許可でも得なければ出せぬというような話なわけです。どう考えても、私の今要求した資料は、電力会社機密に関する事項じゃないと思うのです。一体石炭専焼火力で、いわゆるスタートで油を使うのであれば、あとマキシマム石炭を使った場合にどれくらいの石炭を使える容量があるか、各社別に見たい。これは九分化されている以上は、各社別に見なければならない問題なわけです。  それから第二の問題というのは、現在の実績は、石炭専焼火力で油と石炭割合は、昨年なら昨年一年間、あるいは近くの実績はどういう実績になっておるのかという資料要求内容なんです。  それから第三に要求する問題は、それぞれ各社別に実は石炭を引き取っているわけですね。千二百円の炭価引き下げということで、石炭会社はずっと千二百円下げてきているわけです。産炭地、あるいは関東、関西、あるいは四国等においてそれぞれ差が出てきておるのではないか、やはり千二百円のコスト引き下げ、特に産炭地においては油との関係適正価格というものがあるのじゃないか、大手中小炭価が違うわけですね。これからの石炭政策考える場合にこれらを一体どう見るかという点について、どういう趨勢になっているのかというのが第三番目です。それで特に私は、もしできるならば、石炭が、一応マキシマムにたいた場合、もちろんあなたが言われるように、ピークの問題とか負荷の問題もありますけれども、一応一年間の実績に基づいて想定すれば大体出てくるんじゃないか、そう厳密に考えなくても、そういう点についての資料はもう大体できておるんじゃないか、あるんじゃないかと私は思うのです。それがなかなか出せぬというのはどうも合点がいかないわけですが、これは次長としてすぐ出していただけるんじゃないですか。別にむずかしい問題じゃないと思うのですが、いかがですか。
  14. 生駒勇

    生駒説明員 今お話がございました点もいろいろ総合いたしまして、石炭局とも十分御相談いたしました上でなるべく資料出したいと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、正確な資料ということになりますと、需給状況がまず前提になっておりますし、それに伴いまして負荷関係、従いまして火力発電所稼働率というような問題もございまして、いろいろめんどうな点もございます。そこのところをある一定前提を置いてということでございますならば、資料はできないことはございませんが、一定前提を置いての資料ということになりますと、これまたいろいろ議論がわき起こる可能性もございますので、その点十分石炭局とも調整いたしました上で、なるべく早く出したいと思うわけでございます。
  15. 神田博

    神田委員 ちょっと関連して。  今の同僚岡田君からの資料要求、私もちょうだいしたいと思っておりますが、今生駒君の答弁を聞いていると、ばかにもったいをつけたような、何というか、すみやかに出ないようなふうに聞こえるのですが、私ははなはだおかしなことじゃないかと思う。もうきのうきょう石炭たいているわけじゃないのですから、今十分実績があるわけなんで、そういうのをあわせて、そうして将来の予想を勘案して出せ、こういうことなんでしょう。もちろんこれは石炭局と打ち合わせしてお出しになることはあたりまえなことですが、何か奥歯に物の挾まったような、出すことを渋るような、長くかかるようなふうに私感ずるのですが、私の聞き方が悪いのかもしれませんよ。このくらいの資料を、そんな、あまり理屈をつけないで、そういう想定でやったんだということを備考でお書きになればいいわけだし、前提条件出してお出しになればいいわけなんだから。今石炭問題というのは、御承知のように焦眉の急なんです。しかも、来年度の予算に織り込もうかというようなことも考えているわけなんで、そうだとするならなおさら、やはりある一つ想定のもとで資料をおまとめになって、しかも各社別にお出しになる、これは当然なことじゃないかと思うのです。私の聞き方が下手だったかもしれぬが、ちょっと気になったものですから重ねて聞くわけなんですが、石炭局長もおるわけでございますから、至急お出しになっていただきたい。われわれ与党としても、当然問題になっていることだから知りたい、こういうふうに委員長から言うていただきたいと思います。
  16. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 委員長から政府委員に申し上げます。ただいま要求資料は、本委員会審議の重要な資料と認められますので、できるならば四日の本委員会開催までに御提出願いたいと思います。もしそれができない場合は、また適当に御連絡をいただきたいと思います。  石炭対策について質疑の通告がありますので、これを許します。藏内修治君。
  17. 藏内修治

    藏内委員 私はごく基本的な問題だけについて石炭局側の御意見を聞いておきたいと思うのであります。  それは合理化政策の基本についてであります。日本石炭政策が大きな曲がりかどというか、転換期にきておることは御承知通りであります。そういうことのために今回調査団もつくられて、その調査もだんだんまとまるという時期にきております。そこで伺いたいと申しますのは、日本石炭政策が非常に急激に変転をして、需給の面からだけ考えてみましても、ことしの一月の出炭実勢からいうと六千万トンを百万トンくらいこえる程度の非常に大きな伸びがあった。五千五百万トンというベースに対して、六千万トンをこえるベースになった。これは確かに合理化政策効果が上がったという面と、コストダウンによる不採算を増産によってカバーしていったという、この両面がもちろんあるわけでありますが、そのように出炭実勢が六千万トンをこえ、しかもほとんど貯炭らしい貯炭がない時期がことしの三月ごろであった。ところが、それから三、四カ月後の今日になりますと、三池争議の前の千三百万トンをこえるような貯炭ができておる。こういうふうに変転を来たしておる。一体日本石炭産業というものは、産業の基礎となるエネルギー産業でありながら、どうしてこのような大きな変化がいつもあるのであるか。この日本石炭産業需給の不安定ということが、やはり石炭産業の消長に非常に大きな影響をもたらしておると思う。従って、石炭産業のこのような不安定な様相がどこから出てきておるか。こういう点に関する見解を、大臣でも局長でもけっこうでございますから承りたい。
  18. 中野正一

    中野説明員 今、先生から御指摘がありましたように、過去の石炭生産なり需給計画等を見てみますと、非常に不安定な要素が相当ある。これはもちろん御承知のように、一般産業につきましても、いわゆる景気循環というようなものがございまして、過去におきましても三、四年ごとに大体好況不況という波が来ておるわけであります。そういう景気循環といいますか、好況不況の波に、石炭産業資源産業の特質といたしまして、非常に順応性が強い。これはしかし、外国におきましても同じようなことだろうと思います。ただ、最近におきましては、固体燃料から液体燃料への移り変わり、いわゆる世界的なエネルギー革命といいますか、そういうものの波が日本の場合は非常に急激に押し寄せてきたというところで、石炭産業は非常に苦難の道を歩まされてきたわけであります。ただ、過去のいろいろの経過を見てみますと、御指摘がありましたように、確かにいろいろ計画が変わっております。私は過去の数字をちょっと調べたことがあるのですが、たとえば三十三年でございましたかにつくりました新経済五カ年計画、こういうものを見ましても、そのときに二十カ年展望というようなものをエネルギー審議会でやっておったようでありますが、たしか三十七年でございましたか、五カ年計画最終年度には六千四百万トン、二十カ年展望におきましては七千二百万トンくらい石炭は掘れ、また需要があるのじゃないか。これは三十一年、二年の情勢をもとにしてそういうような計画が立てられたようでございます。しかし、すでに昭和三十年ぐらいから重油海外からの功勢が相当激しくなっておりまして、またその当時、石炭側にも非常な責任があるではないかと思いますが、いわゆる供給の不安定というふうな要素から、値段の安いということだけでなしに、日本需要産業方面において石炭から油への転換ということが相当行なわれたわけであります。そういう情勢下に、昭和三十年には御承知のように、重油ボイラー規制法というようなものをつくり、また石炭鉱業合理化法というようなものをつくり、合理化計画というものを立てて油に対抗できるような価格に持っていく、また、供給につきましても不安がないような態勢をつくろうということで出発したわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在の生産量なり計画からいうと相当楽観的というか、過大な需要の見通し、あるいはそれに基づく生産計画というようなものが立てられたこともございました。しかし、そういうものは一年ぐらいたつとすぐ崩壊せざるを得ないので、今度は現実の事態の上に立った、しっかりした合理化計画を立てようということで、三十四年の終わりに現在あります、昭和三十八年度を目標といたします五千五百万トン、千二百円引き下げという、石炭業界にとりまして相当きびしい合理化路線というものが打ち立てられたわけであります。たしか昭和三十三年には四千八百万トンちょっとくらいの出炭ベースであったと思いますか、それから申しますと、相当合理化をやって需要をふやしていこう、少なくとも五千五百万トンの線は維持していうという決心を政府も持ちまして、そのかわりコストも下げ、能率を上げていくということで、設備資金等につきまして政府も応援をするという態勢で今日まで参りまして、これは大体計画通りいきまして、昨年すでに五千五百万トンの出炭ベースになった。ところが今年になりますと、合理化効果も上がるし、また労使協調態勢というようなものもだんだん整って参りまして、非常に能率が上がり、五千九百万トンベースというようなことになってきたわけであります。一方、重油値段の方は、御承知のように、合理化計画を立てましたときにはC重油につきまして九千円を割る程度値段で、これに対抗できるように合理化をやっていこうという計画であったわけでありますが、その後また急激に重油値段が下がって参りまして、最近では七千円あるいは六千円台、最近聞く話によりますと、電力向け等六千円を割っているということで、これでは幾ら石炭鉱業の方で合理化をやり、コストを下げましてもとても対抗できない、こういう状況でございます。日本石炭鉱業外国と違いまして、いろいろ特殊性がございます。たとえば北海道、九州というふうに消費地に非常に離れたところにあり、ドイツ、アメリカ、イギリスあたりとは非常に情勢が違うのでございます。これはまたこれで日本特有態勢をつくって石炭需要確保方法もあると思いますが、そういう状況下で、日本石炭鉱業というものは、需給面について国内的な問題、対外的なそういう油の攻勢、いろいろな要素が重なり合いまして、今日のような非常にむずかしい情勢になってきておるというふうに私は判断しております。
  19. 藏内修治

    藏内委員 概括して、今局長お話のようなことであろうと思います。そこで、これは非常に重大な問題を含んでいると思うのでありますが、三十五年と六年、七年に経済変動がございまして多少経済伸び率あたりも押えられておりますが、三十五年度、三十六年度、この一年の石炭需給数字によってとらえてみますと、三十五年度は五千二百六十万トンであった、三十六年度は五千四百八十万トンであった。この間に大体二百二十万トンほど伸びております。これを率にいたしますと四%伸びておる。ところが御承知通り、三十五年、三十六年度というのはいわゆる高度成長が緒についたときであって、鉱工業生産伸びというものは実質的には十三%ないし一七%というような非常に大きな伸び率を示しておる。この鉱工業生産伸び率とこの原動力となるエネルギーの一部を占めておる石炭伸び率が、このようにアンバランスでいいのか、もしこの経済伸び特に鉱工業生産伸び石炭実勢を合わしていくということになれば、石炭消費もさらにふえるのじゃないか、いわゆる石炭位置づけということがここに確立されるのじゃないか——位置づけという言葉がわかったようでちっともわからない言葉でございますが、要するに具体的にはエネルギー消費量の中に占める石炭消費量をいかにして維持ないし向上さしていくかということに帰着するだろう、ところがこのような実態にありながら、生産伸び率というものはちっとも合っていかない。これは逆に言えば、要するに鉱工業生産伸びに応じて石炭消費を伸ばしていく行政というものが、一つも行なわれていないという結論になります。こういう点についてもし何らかの政治力がこれを指導することができるならば、もっと石炭消費、いわゆる安定した需要を確保することができるのではないか、私はこういう気がするのでありますが、これについてできれば大臣から御答弁をいただきたい。
  20. 福田一

    福田国務大臣 三十五年、三十六年の伸び率はお示しの通りでございまして、そういう場合において三十五年の石炭産業の姿と、三十五年の初めにスタートを起こしたときのほかの産業の姿とは、一応バランスがとれていた数字であるというところを基準として、一年間に伸びが一七%あったということになれば、それに応じて石炭産業消費も伸ばしていく、伸びるのが普通である、それが伸びなかったというのは、行政面において、あるいは施策の面において間違いがあったからこういう結果が起きたのじゃないか、こういうお考えであると思うのであります。考え方として一つ考えでございますが、実際問題としてどういうわけでこうなったかということを考えれば、やはりほかのエネルギーになるもの、今は油でございますが、油の消費が飛躍的に伸びるという形である。なぜ油が伸びたかということになりますと、エネルギー源として安いということになるわけであります。そこで今度、問題は返ってきまして、安いエネルギーだったら幾らでも使っていいのか、これはどうか。安いエネルギーといっても、たとえば油というものは、今は安くても将来は安くなくなる場合もあるかもしれない。あるいは、今は油は国内でできるものじゃありません、海外から船でくる。そうすると、何かいろいろな問題が起きて、たとえば大災害が起きたとか、天変地異があったというようなことで、油がこなくなった場合の日本産業が一体どうなるのだというようなことを考えてみると、安いというだけでそのエネルギーにたよるということは、少し危険性がありはしないか、こういうことになろうかと思うのであります。  そこで、国内にあるエネルギーと国外からくるエネルギーとのバランスをどれくらいにとっておくかという一つめどを立てまして、そのめどだけは私は維持しなければいけないのだ、こういう立場から問題の処理をしていかなければならないのだ、かように考えるのでございまして、その点からいって施策において間違いがあったかどうかということになりますと、実は私まだその点まで究明いたしておりませんので、ここで率直にお答えすることはできませんが、今後の対策として考えるということになりますならば、今仰せになった点を十分考える必要がある。たとえば同じ油にいたしましても、いわゆるソ連系の油と、そうじゃない民主主義国家群の油の比率がどうなっているか、あるいはカフジ原油だとかスマトラからの油がどうなるか、または国内産の油がどうなるか、こういうふうなことを全部総合的に見た上で油というものの供給の姿をまずここで見ていく、一方においては石炭産業経済界における位置づけというものを考えてみて、大体どこいら辺までにしなければならないか、その場合において、急激にこれをどういうふうにしてやるか、あるいはまたこのやり方をどういうふうにするかという問題もあるでしょう。また、これを社会問題の立場からもう一ぺん見直してみるという考え方もあり得ると思うのでありまして、その方法論の問題はまた別に出てこようかと思いますが、確かに今先生がおっしゃった点に目を転ずるといいますか、目をつけて、その観点から石炭産業を見ていくということについては、われわれは同感の気持を持っておるものであります。
  21. 藏内修治

    藏内委員 今の石炭需給の問題につきましては、私いつも考えるのでありますが、どうも石炭局における需給計画の立て方自体に非常に問題があるのじゃないかという気がするのであります。もちろん石炭局年度需給計画をお立てになるには、現下の実績調査した上で、それを大体適当なところで押えておられるようでありますが、こういう生産の段階で数量を把握していくということが非常に間違いのもとになるのではないか。これは実は前国会でも私例を引いたのでありますが、たとえば農産物の場合にも同じような例があるわけです。たとえばことしはキャベツがいいとか、白菜がいいということになると、農家が非常にそれをつくる。従って価格が下落して、結局つくったけれどもあまりもうからなかったという現象になる。こういう日本の実情を見てみますと、この農産物というのは要するに市場を通して一般国民が消費をしているわけでありますが、この市場にもいわゆる中央卸売市場と類似市場というのがあって、中央卸売市場を通過する品物は、消費が全部正確に政府に把握される。ところが類似市場を通るものは政府がこれを把握することができない。しかも類似市場と中央卸売市場と比較してみますと、中央卸売市場の方が少ないのです。半分以下であります。従って消費の段階において的確に数字を把握するということは困難になってくる。これと同じように、石炭生産の段階で、ことしの石炭は大体この辺だということを把握するということにまず重点が置かれ過ぎておって、消費の段階で一体原料炭をどのくらい使われるか、無煙炭はどのくらい使われるか、一般炭はどのくらい使われるか、それの再検討、再確認ということが非常になされていないのじゃないか、私はそういう考えを持っております。こういう日本石炭需給バランス考える上において、消費を的確に把握する、そうして消費の少ない面については積極的に石炭消費を指導していくという行政のあり方が必要じゃないかと思うのであります。従ってこの需給バランスで、結局国内エネルギーの不足の分を、どんどん海外からの輸入エネルギーで間に合わしていくという政策がとられておる限り、どうしてもやはり輸入エネルギーの圧倒的な攻勢は避けることができないのじゃないかという気がいたしております。こういう点についてもう一回御答弁を願いたい。
  22. 福田一

    福田国務大臣 御説の通り生産数字については大体把握しております。今度は、それでは消費の部面においてどうかということになりますと、今の経済組織では強制するというわけにはいかないことは御承知通りであります。こういう場合におきましても、通産大臣としては、やはり石炭をできるだけ使ってもらいたいという立場から、あるいは電力に対しても、あるいは鉄鋼に対しましても、あるいはセメントに対しましても、その他の部面に対しましても、できるだけこれを使うようにということを言っておるわけですが、たとえばセメントなどにいたしましても、石炭ボイラーよりは重油でやる方が品質のいいのができる、こういう特殊な事情が出てきたりしまして、だんだんこれが移り変わる傾向があるのであります。そういうわけで、ほかにもいろいろあります。それからまた文化生活ということがよく言われるのでありますが、今までは石炭をたいておったのが、暖房用にしたしましても、電気コンロの方が工合がいいとか便利だとかいうようになって変わっていく、いろいろそういう家庭の関係からいっても、実は年度の中において移り変わるわけです。どうしてもそこに移り変わりがあるので、そういうことをしてはいかぬとは言えないものですから、供給よりは消費の方がむしろ少な目になりつつあるというのが実態ではなかろうかと思うのであります。その場合に石炭消費をできるだけ維持していくということになりますと、ここに何らかの施策というものが今後は特に必要になってくるのではないかということは感ずるのでありますけれども、いかに奨励をいたしましても、便利だとか安いとかいうことには、単に今のままの姿においてはなかなか対抗しにくいものがある、こういうふうに考えておるのであります。
  23. 藏内修治

    藏内委員 消費の実態を把握してそれに適応した生産計画を立てていただきたい、こういう希望を持っておるでありますが、今後の合理化政策の大きな流れといたしましても、やはり五千五百万トンの線は維持していく、コストダウンはできるだけ続けていく、こういう姿に——結局は調査団の答申は、出てみなければ細部のことはわかりませんし、しかもこれに付属したいろいろな姿が伴ってくるわけで、ただそれ、だけというわけではありませんが、要するに石炭生産の大きな流れというものは、そのような方向で進むのだろうと思うわけです。そういう段階に今後進んでいった場合に、将来の石炭産業というものがはたしてどういう形のものになるか、この点についてはやはりみんな非常に不安を持っておると思います。商社にしても、石炭企業にしても、消費者にしても、これは調査団の答申の結果が出て、日本石炭産業は一体将来どういう形のものになっていくのかという点が非常に不安があるだろうと思うのです。要するに液体燃料の出現によって合理化政策というものが開始せられたけれども、すでに、石油と石炭と裸の形で競争はさせないということは、前佐藤通産大臣もおっしゃっておられましたが、そうすると今後の合理化政策一つの目標というのは、一体エネルギー産業としての石炭をどういう形の産業に持っていくのか、合理化政策の理想といいますか目標というものは、一体今後どういう点に置かれていくのか、この点についてちょっと御説明を願いたいと思います。
  24. 福田一

    福田国務大臣 その点について申し上げますことは、ただいま、御承知のように調査団に、どういうふうにして持っていったらいいか、一つ公正な立場で案を出してもらいたい、こういって依頼をしておる段階でありますから、なるべくそういうことはこの際は差し控えたいという感じでありますが、しかし、そういう数字とか何とかということに触れないで考えていくとすれば、やはり一応経済の原則というものに乗ってやっていく場合には、どの程度までが合理的にできるだろうかということをまず考えてみる必要がある。それからもう一つは、とはいうものの国内産業でありますから、国内エネルギーを使うということによって、海外からエネルギーが輸入されることをその分だけ防ぐことになります。こういう面から見て、いわゆる純経済のプラス、マイナスだけの点ではなくて、大きな国際収支という点から見た場合にどういうふうな観点をとって考えられるかということが一つあると思います。もう一つは、その産業に従事しておられる人たちの雇用の問題、これもまた大きく取り上げていかなければならないと思います。この人たちが失業をし、職を失ったという場合には、当然国としてもある程度の金を必要とするわけでありますが、そればかりではなくて、ほかに転職をしてもらうような工夫があるかないか、あらせる努力としてどういうことがあり得るか、こういう問題も十分研究していかなければならないと思うのであります。こういうようないろいろな要素を結びつけて一応考えていくということになるのでありますが、今まで一応の基準としては、四・六の閣議では五千五百万トンという基準を出しておるわけであります。これがやはりおそらくは大きな一つめどにはなって出てくるのではないかと思いますが、しかし、その五千五百万トンという数字のとり方にしても、もうきちっと五千五百万トンを一歩も出ないということになるか、まあ原料炭の関係で、五千五百五十万トンとっておっても、五十万トンが原料炭に回ったということなら、それでもいいじゃないかという、これは私の浅い知識で申し上げておるので、そうなるかどうかはわかりませんが、そういうやり方というようなものも中に含めることがあるいはできるかもしれない。ほかの雑炭はエネルギーに使うというようなことにすれば、それはできるのではないか。要するに、こういうような場合でも石炭消費先といいますか、そういうもののめどをきめることが一番問題になろうかと考えるのでありまして、石炭政策に対する大きな政府考え方を言えとおっしゃれば、大体ここの段階においては、われわれとしてはそれ以上申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思うのであります。
  25. 藏内修治

    藏内委員 どうも私の質問が舌足らずで、ちょっと違ったお答えをいただいてしまったわけでございますが、私が伺いたかったのは、こういうような形で合理化政策が進められていく、  ニュー・スクラップ方式で六百二十万トンの買いつぶしが行なわれており、調査団の答申では、さらに千万トンとか千二百万トンというような大きな合理化が答申されるかもしれぬ、こういううわさがあるわけであります。いずれにしてもこの合理化計画の中には、離職者問題にしても、新鉱開発の設備投資の問題にしても、非常に多額な国家資金を必要として参ります。そういう形で国の資金がどんどん投入されていった石炭産業、それが将来において平均能率四十トン程度の線で企業として安定するかもしれないけれども、その際にいわゆる私企業という形での石炭産業というものがあり得るかという、そういう意味の私の質問でございます。いわゆる石炭産業の性格が、これだけ多くの国家財政資金が投入されていくという形になって参りますと、いわゆる産業としての性格がだいぶ変わってくるのではないか。要するにこれだけたくさんの金が石炭産業の中に投入されてきた場合には、その金の使途その他について、相当厳重な、国家の統制という言葉は適当じゃありませんが、監視というか規制を受けるべき産業になってくるのではないか、そういう形においては将来の石炭産業と現在の石炭産業とは相当企業として異質のものがここにでき上がってくるのではないか、こういう点については大臣のお考えはいかがでございますか。
  26. 福田一

    福田国務大臣 お説のようなことでございますならば、われわれの考えとしてはやはりそれだけのいろいろな国家的な財政援助を与えてやるということになれば、そのあとでたとえば一時的に、五年なり十年後に、もう景気がよくなったから、もうかったからといってどんどん使ってしまうわけにはいかぬ。もちろん金を借りておれば、年々の償還の問題もあるでしょうが、やはりお説の通りいささか質を変えてくる、公共性が今よりは非常に強くなるということだけは事実だと思います。
  27. 藏内修治

    藏内委員 そういうことで関連した疑問にわれわれは逢着するわけでありますが、調査団の答申がある形で出てくる、その骨子はやはり合理化を急テンポで推進するということになっていくだろうと思うのであります。その際に、今のような面から考えていわゆる石炭企業に関連する立法措置としてどういう面が今後考えていかれるか、この点について、将来答申が出た場合に予測される立法措置がいろいろあるだろうと思うのであります。私はやはりこれらの資金関係の規制に関する立法というものが、絶対に必要になってくると思うのであります。そういう点で今後答申に付随してどういう面において、どういう種類の立法が必要になってくるであろうか、将来の予測でありますけれども、お考えられ得るところだけ伺いたい。
  28. 中野正一

    中野説明員 今先生の御指摘になりました問題は、実は正確に言えば全部調査団の答申待ち、政府の今の態度といたしましてはそういうことになっておるわけでございます。どういう答申が出てくるかわかりませんが、今までわれわれが調査団の御審議をいろいろ拝聴いたしておりましたところから、おぼろげながら申し上げる程度でごかんべん願いたいと思いますが、今先生の御指摘になりました国家資金を、一般会計あるるいは財政投融資というような形で、四十二年ぐらいまでに相当投入しなければならないという形になると思います。これは結局整備資金と退職金の金融の問題、これは非常に困っておりますから。それから鉱害賠償の資金、これも非常に不足しておる。これはどっちかというと終閉山といいますか、整備の方、うしろ向きの金、今度は前向きのビルドのためにも相当金が要る、これについてもいろいろ議論が、どういう形で金を出したらいいかという形はありますが、いずれにしても市中金融機関だけにまかせてはおけませんので、相当従来もやっておりますが、政府資金も財投あるいは一般会計を通じまして、現在出されておりますベース以上にわれわれとしては出さなければいかぬじゃないかというように考えております。そういう形になりますと、確かに御指摘のように、もちろんこれは四十二年から四十五年くらいにかけまして、相当な山はいわゆる経営としてもすっきりした形に持っていきたいというふうなことで、調査団もいろいろ御苦心をなさっておられまして、これは一部新聞にも報道されましたが、過去の債務の一部をたな上げするというような議論も、議論としては出ておるわけであります。どういう形にしますれば国家資金が一番少なくて、能率が上がって、効果が十分発揮されて、四十二、三年ごろから会社の経営の姿もすっきりした形に持っていけるかというような観点からいろいろ研究しておられますが、相当な国家資金も投入するということになれば、ある程度会社の経理その他に対して監督を厳重にするとか、いろいろなこともあわせて考えなければいかぬのじゃないか、かりにの話でありますが、そういうふうな答申が出てそれを政府もやるべきだということになれば、その面ではある種の立法措置というものが必要になるのじゃないかというふうに考えております。  それから現在の合理化促進法、石炭鉱業合理化臨時措置法というものも、今の資金の出し方等によりまして、たとえば——たとえの話でありますか、鉱害の処理の金というものを、現在の法律の建前では合理化事業団から貸し得るような形になっておりますが、これは予算がついておりませんので現実には金が出ておりませんが、法律はできております。そういう形でやるのがいいのか、あるいは、これは事務当局でも考えておりますが、たとえば鉱害賠償につきましては、それの所要の資金を一種の積立金制度のようなものをつくってやったらどうか、これは政府も実施をいたしますし、業界からも今まで供託金という形でとっておりますものを少し額を上げまして積立金制度というような形にしまして、政府と業界と両方で金を出し合って、これを非常にむずかしい問題になっております鉱害処理の低利の融資に充てるというような構想もあるわけでありまして、そういうような関係もございます。  それからまた鉱害処理等について、従来通りの補助金の率でいいのかどうか。これは御承知のように鉱害復旧のベースでは、大体半分国が持って半分業者が負担する、もちろん無資力の場合には全額国と地方公共団体が持つ、こういう形になっておりますが、そういう形のままでいいのか。その中間的な、もう少し補助率を上げるとかというような形はありはせぬかというようなことで、いずれにしましても、臨時鉱害復旧法等の関係につきましても別途にいろいろ答申が出ておりますから、こういう法律も改正をしたいというふうに考えております。まだ調査団の議論自身が今途中の段階でありますので、どういう立法措置が出てくるかということははっきりいたしませんが、ごく事務的に考えて、そんなようなところはいずれにしても問題になってくるのじゃないかと考えております。
  29. 藏内修治

    藏内委員 石炭局長にちょっと伺いたいのですが、今日本の全部の炭鉱を四つのグループに分けて、新鉱群と増強群、維持群、スクラップ群、この四つに分けて指導しておられるわけでありますが、今度の調査団の答申の中に、いわゆるスクラップにしていくのは大がいスクラップ群の中に入るわけでありますが、維持群の中でどの程度のパーセンテージが合理化の対象になっていくのか、その数字を、概略でけっこうです、何割くらいがつぶされていくか。
  30. 中野正一

    中野説明員 今御指摘になりました新鉱群、増強群、維持群、その他、これはだいぶ昔の分類でございまして、ただわれわれいろいろ資料をつくっております際には、まだ調査団の結論が出ておりませんので、一応昔つくった四つのグループ別のものをもとにしていろいろやっております。その結果、維持群の中に入ったものでもこれは増強群に値するのではないか——これは技術班の先生方が十分検討していただいておりますが、そういうものもあるし、また維持群だというふうに前の計画考えたものが、将来閉山せざるを得ないというような形になってくるのもありますし、実は今調査団から資料要求されておりまして、いろいろな観点から一次案、二次案、三次案というようなことでいろいろな資料をつくっておりまして、実は私も今ここで返事せいと言われても、覚えてもおりませんし、これは調査団資料でございますので、役所から出し資料をもとにして、主として技術班の先生方に、現地もごらんになりましたし、いろいろな資料をもとにして最終的な大体のグループ分け——新しいグループ分けは発表するかどうかは別問題といたしまして、特にどういう山がやめなければいかぬというようなことは、調査団としてはきっと答申なさらぬだろうと思います。基礎資料としてはそういうものをつくっていくというような段階でございまして、維持群のうちでどの程度が残り、どの程度がつぶれなければならぬかというようなことは、今ちょっとまだ申し上げにくい段階でございます。
  31. 藏内修治

    藏内委員 最後に一問だけ、これは大臣にお伺いしたいと思うのでありますけれども、このような形で合理化が相当急テンポで進展をしていく、結局合理化が達成されるということが将来にあります場合には、非常に優秀な、生産性の高い炭鉱だけが残っていくわけでありますが、それにしても一応五千五百万トンのベースというものを確保していく上には、やはり鉱員職員の充実という点が非常に問題になってくるだろうと思うのであります。それから今の三十六才とか、中小においては三十八才というような炭鉱労務者の高年令層を若年層によって充足をしていくという方法について、これはやはり将来の石炭産業のあり方を考えますと、非常に重大な問題であろうと思うのであります。そういう点について調査団の御答申以外に、答申の中にそういう問題に触れられてくるかもしれませんが、政府として積極的な御指導をなさらぬと、山はあるけれども、山で働く人間がいなくなったというような事態にだんだんなってくると思うのであります。実はことしの三月に秋田高専を出た、いわゆる採鉱冶金の学生で、山に入ったのはたった一人であります。それも、三菱金属という金属鉱山に入っております。金国の大学の工学部を出た連中を全部総計しますれば、相当数の者がやはり炭鉱に入っていると思いますが、それにしても昔のようにいわゆる技術職員、若い、しかも素質のいい人が進んで入っていかなくなるのではないか。そういう点については、石炭産業の命脈を維持していくこういう技術者、労務者を確保していく上について、これは相当大きな問題があるだろうと私は思います。単にこれを経営者まかせという形では、私はこれは将来の石炭産業にとって重要な問題になってくるだろうと思います。こういう点について、いわゆる行政の段階でお考えになっていることがあればお伺いしたい。
  32. 福田一

    福田国務大臣 お説のように従業員、職員の高齢化ということ、若い人が交代に入らないということは大へんな問題でございまして、われわれとしても特に気をつけなければならないことと存じております。ただ、そういうふうにいたしますには、やはり石炭産業合理化され、そしていわゆる経営内容も非常に充実してくるといいますか、どこから見ても安心だという安心感がそこに出てこないと、人間というものはやはりそこで働けといって無理に就職させる化けには、きませんから、そこにむずかしさがあるわけでありまして、われわれとしては一応そういうような合理的な案が出てくれば、今度は、それならば一つ大丈夫だから石炭の方に行こう、こう考えられる人が一応自然発生的に本出てくるものだと思っております。しかし自然発生的な面だけでいいかどうか、強制してでもということになりますと、これはなかなか私はむずかしかろうと思うのでありますが、しかしそういう場合には、PRその他の方法考えてみてもいいと思うのです。私は今までの経験でみると、大体不景気のときに入った人が、業界においても一番成功している。そんなときに入るような人がほんとうはうまくいくので、非常に景気のいいときに入ったというのは、大体みんなうまくいっていないのか、どうも私は例のように思うのです。そういう意味のことも、これは人情論というか、処世訓というか、やはりPRの値打があると私は思っています。事実、今これだけ悪いところに入って、一つ石炭産業を建て直してやろうというような覇気があったら、その人は必ず私は将来石炭産業の中心をなしていかれる、幹部にまでなっていかれる、また、りっぱな工員になっていかれる人たちであろうと感ずるのであります。しかし、これは私の感想と相なるわけで、施策というわけには参りません。しかしそういうように案ができた後においても、どうしても若い世代の人、あるいは若い労務者の人が入らないということであれば、またそのときに処して、何らかの方途を考えるという必要も起きて参ろうかと考えておる次第でございます。
  33. 上林山榮吉

  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず私は、日本石炭産業が置かれておる周辺の自然条件について考えてみたいと思うのです。  まず、日本石炭産業が今日のような状態になったという一つの問題は、何を申しましても、今盛んに言われておる石油が供給過剰の状態を示し、しかも日本の市場に殺到をしてきておる、いわばダンピング市場になりつつある、これが一つの問題ではないかと思うのです。それでこれについて先般六%の関税を一〇%に上げたわけです。これによって石油の価格はどういうように変化をしたか、これをお尋ねしたいと思います。  時間がございませんから、続いてさらに質問を重ねて、御答弁を一括してお願いしたいと思いますが、おそらく関税を上げたけれども、値段は下がる一方だ、こういうう情勢にあるのではないか、こういうように想像されるわけです。これは各国の事情を見ましても、各国ともやはりこれに対する十分なコントロールのシステムが確立をしておる。フランスのような、一手買い取りという方式によって政府がコントロールをしておるところもありますし、また、イギリスのように行政指導によって適正な価格を維持しておるというところもありますし、いろいろその国によって違うわけでありますけれども、とにかく今の日本のような現状にはないということは事実であります。これが問題の第一ではないかと思います。  第一の問題は、これは石炭企業区部に長いことありました病根が依然として解決をされていない、明治以来の形がそのまま今日続行しておる、ここに問題があるのではないかと思うわけです。それは、第一次大戦後の合理化は主としてドイツにおいて行なわれましたが、ドイツの合理化というのは機械の合理化であり、切羽集中の合理化であるといわれました。そして今日のドイツの石炭の基盤を築いてきたわけですが、第二次世界大戦後の合理化の形態というのは、適正規模の炭鉱造成の合理化である。これはイギリスにおいて見られるような国有の姿であり、あるいはフランスにおいて見られるような公社制度の姿である。これはともに、イデオロギーの問題は別にして、石炭産業そのものを解決するために鉱区の適正化というところからきておる。大臣も御存じのように、イギリスの鉱区は土地所有権に属しておりましたから、非常に小さな鉱区が分立しておった。その鉱区を統合するために国有という網をかぶせて、そうして適正規模の炭鉱につくったわけです。フランスの場合はナチスが占領しておったという事情があり、比較的やりやすかったという面もありますけれども、これもやはり適正規模炭鉱のために公社ができた、こういう事情にあって、おのおのその産業立場からも社会化が行われ、それが今日保守党内閣になってももとに返らないという理由なんです。ただイデオロギー的に政策の変更だけしておりますと、政権が変わればまた政策が変わりますから、もとへ返る可能性がある。返らないというのは、やはり石炭産業という産業の性格からきておる、こうわれわれは理解する面が多い。それからドイツは、これは私企業であると盛んにいわれますけれども、ドイツの私企業は日本の炭鉱の私企業とば非常に違うわけです。ドイツの場合は、いわゆる資本主義の非常にいい面、すなわちコンビナート・システムになっておる。ですから、鉄鋼会社が石炭を経営しておるという形であり、その石炭会社は電力を経営しておるという形になっておる。ですから資本主義の非常に強靱な面を有しておるわけです。振り返って日本の炭鉱を見ると、明治時代に出願をいたしました鉱区がそのまま今日において存続をされておる。幾ら鉱区調整と言われましても、言うだけですね。現実に鉱区調整は行なわれていない。ほとんど行なわれていないと言ってもいい。ですから、当時から現在まで行なわれております先願主義がそのまま行なわれ、それが維持せられて、そうして早い者勝ちという制度がそのまま現在現われている。これがいまだに全然解決されていない。それからよくいわれる販売機構にいたしましても、これは二千もの銘柄を持ち、そうして各社おのおのその需要地に出張所を設けて争っておるけれども、プラスがないわけです。プラスがなくて、マイナスの面だけが多い。ですから、何とか販売の共同化をと言っておりますけれども、これがまた一度だって行なわれた例がない。もっとも国の機関によって行なわれた例はあります。これは昭和石炭株式会社というのが昭和初年の例の不況時代に行なわれ、あるいは日本石炭株式会社というのがあり、それから戦後には配炭公団ができました。こういった調整機関は行なわれましたけれども、現在においては野放図の状態であり、中小企業の何か販売会社をつくったらどうかという声はあるけれども、一向行なわれない。これも一つも解決をされていない問題だ。だから石炭自体の問題が全然解決をしない。しかもその周囲の状態が、解決をしないというままで放置されておる。  さらに問題は電力にもあるわけです。あるいは鉄鋼の姿にもある。今申しましたように、資本主義自由経済でやるならば、西ドイツのような方式がとられておるとするならば、別の意味で石炭企業は今日のような不況の状態はきていない。日本の場合は、エネルギー革命のほかに、石炭企業自体の問題もあるわけです。単なるエネルギー革命だけの問題ではない。だからよそよりも非常に苦しんでおる。それはすなわち電力は、御存じのように今最も石炭のお得意先ですが、この電力は、三井の電力、三菱の電力ではない。これは日本発送電株式会社というのが御存じのように政府機関によって管理をされ、その後に九分断をされましたけれども、資本系統は全然別個の国家資本である。それから鉄鋼も同じく日本製鉄株式会社というのができて、そうして富士、八幡に引き継いで、三井、三菱の資本はその後若干入りましたけれども、これもまた今日炭鉱と全然関係のない姿で発達をしている。国有鉄道もまたしかり。ですから、需要側と供給側が、石炭においては常に相争って、協力をするという経済形態になっていない。ここにまた問題があると思う。ですから、私はこういう問題を考えますと、今石炭対策特別委員会の皆さん方がいろいろ御検討なさっておるけれども、どうも石炭の範囲内において何とかしようということで御苦心なさっておるようだけれども、石炭の範囲ではとうていできない多くの問題点をかかえておるのじゃないか。だから、これはエネルギー全体としてどう見るかという問題を解決しないと、石炭だけ幾らがんばってみても、解決の方向にいかないのじゃないかと思うのです。  そこで、一体これらの点についてどういうようにお考えであるか、これをまず大臣からお答えを願うと同時に、また政府委員の方々から、今申しました点について具体的に答弁を願いたい。
  35. 福田一

    福田国務大臣 ただいま非常に広範な、しかも根本的な問題について、日本石炭産業と他国の石炭産業との比較論をお述べになり、しかも日本石炭産業が今日の悲況を招いておる理由について詳しく御説明があったわけであります。私たちとしても、そのお述べになった考えといいますか、事実につきましては、これはその通り、そういう面があろうと考えております。しかしそれについて一つ一つ申し上げてみますと、これは結局考え方の相違に帰着するようになると思うのであります。まず油の問題から申されまして、油がどんどん入ってきて、そして安いエネルギーに変わってきたということを放置しておる、しかも油の乱売あるいは投げ売りを認めておるというところに、石炭問題の今日の問題が起きておるのだ、こういうお話でございます。確かに油が燃料界といいますか、エネルギー界における一つの寵児というか非常に尊重されるような立場になってきておりますが、これは多賀谷さんも外国のことをよくお調べだからおわかりと思いますけれども、EECあたりでも今非常に困り出したのです。それは西独にいたしましても、フランスにいたしましても石炭産業を持っておる地域と、EECとしてみんなが共同化して仕事をしていこうという場合においても、それを持っておらないところとでは、石炭に対する認識がだんだん違ってきております。そして事実問題としても油の消費がどんどん石炭に取ってかわるような傾向にございまして、この点は、実を言うと、EEC自体内でも今問題が起きつつあるやに私は聞いておるわけであります。いずれにいたしましても、日本の今の油に対する問題、また石油化学の問題ということは、これは非常に大きな問題でありますから、この前石油業法というものをつくっていただきまして、これに対する対策等も一応はスタートを切ったのでありますが、はたしてこれで完璧であるかどうかということは、今後この法律を適用してやってみなければなかなかわからないところであります。しかしこの油がそういうふうな形において日本国内に入ってきて、安くなっておる。乱売といいますか、ダンピングの市場になっておる大きな理由は、よそでは日本ほど経済の成長がございません、従って、エネルギー消費量というものもそれほど大きく伸びておりません。その伸びる姿を見て、非常によそよりは伸びるものですから、すなわち新しい市場が開拓できるという点で、世界じゅうの石油会社が日本に目をつけて、そして何とか自分のシェアをふやそうという形から、いろいろの投資の姿が現われて、今日のような過当競争的なことが行なわれつつあるということは事実でありますが、しかし一面そういうことになるのも、もし石炭と油を比較して、エネルギーとしてどっちが安いかということになって、石炭がほとんど同じだということであれば、それほど石炭はその分野を荒らされないで済んだと思う。何といっても日本では、御承知のように人口が多くて、これだけの小さなところへこんなにたくさんの人が住んでおるのですから、そこで何か仕事をして、輸出をする、ものを売ってもうける、つくってもうける、つくって売ってもうける、こういう姿以外に日本の生活を向上させる道がないということになると、やはり安いエネルギーをできるだけ取り入れようとすることは、これを否定することができないのでありまして、こんなところからも実は油の今日のような過当競争が起きてきておるのであるとわれわれは考えておるわけであります。しかし、これをこのままに放置していいかどうかということになりますと、ここに問題が多くあるのであります。しかしこれはまた油の問題として御調査を願い、またわれわれとともに御研究を願いたいと思うわけであります。  次に、形態から見まして、お説のように、日本においては鉱区が非常に小さ過ぎます。大きいのもありますけれども、非常に規模が小さい。規模の小さいことがいろいろの問題を起こしておるということも、お説の通り考えるのであります。ただ、イギリスのようにこれを国有にしておくという形態がいいか、日本の場合のように先願主義でやるのがいいかということになりますと、日本は明治維新のとき以来、どちらかといえばこういうような自由競争的なやり方をとって参りまして今日に及んでおりますので、なかなかこれを調整することがむずかしくて今日の形をとっておりますが、しかしわれわれはこの姿がいいとは考えておりません。鉱区調整ということは非常に大きな問題で、何としても考えてみなければならないことだということについては、多賀谷さんと同じような考え方を持っておるものであります。  次に、西独等について見ますように、電気と石炭というものをうんと強く結びつけておくというと、これは確かにやりようが——いろいろの面において石炭産業をあまり急迫した形でなくて、電気の方で補っていくとか、あるいは電気の方の姿でもって何か持っていく場合もあるし、あるいは料金の問題等についても石炭だけという形で露骨に現わすよりは、これを電力化し、あるいは水力と合わした場合、あるいから、これも一つのやり方としておもしろい考え方と思います。五千五百万トンというような数字が出ておりますが、五千五百万トンのうちでおそらく半数以上は将来電気で消化しなければならぬ、すなわち今お説のように、電気と石炭というものはもっと強く結びつけていく政策をとらざるを得ないであろうということをわれわれも考えておる者の一人であります。  なお販売機構の問題がございましたが、これもお説の通りに、小さい鉱山でも全部が販売網を持っているのはおかしいじゃないかということ等もございますが、これらの問題も将来大いに研究いたすべきことかと思っております。なお、鉄鋼とか、その他電力、国鉄とか、今まで電気を使っておったものがあります。今日でも電力あるいは鉄鋼というものの姿が石炭の場合にも大きく響いてくるわけでありますから、こういうものの姿から正していかないというと、石炭需要というものが安定しない。こういう意味から見ても、鉄鋼の姿を考え、電力の姿をもう一ぺん見直すべきだというお考えかと思いますが、これは一つ考えとして承らしていただきますけれども、しかし今の姿でも、結びつけ工合によってはかなり効果のある措置ができるのじゃないかとわれわれは一応考えておるわけでございます。
  36. 中野正一

    中野説明員 大臣の御答弁で尽きておると思いますが、今鉱業法の改正案を通産省で練っておりまして、石炭、亜炭につきましてはいわゆる先願主義だけではいかぬので、それにプラス能力主義といいますか、そういうものを加えるべきじゃないかというようなことで、今案を練っておるわけであります。  それから鉱区調整につきましても、現行の鉱区調整の制度は非常に限定をされておりまして、もちろんこれは通産局長の勧告なり決定という制度がございますが、それが適用される場合には非常に限定をされ過ぎておるということで、最近の事態に合わないのじゃないか、また石炭調査団でも先般来現地を調査されまして、鉱区調整の必要性は認めておられまして、しからばどういう仕組みでこれをやった方が実際問題としてうまくいくか、もちろん鉱業法の方で法律改正を要するようなことは、それはそれでやる。あるいはそれ以上に、実際これを行政指導でやっていかなければならない面が相当多いものでありますから、それをうまく処理する仕組みも考えたらいいじゃないかという議論も出ておりまして、鉱区調整の問題については調査団にも現に取り上げていただいておるわけでありますが、その答申を待ちまして処理をしたいというふうに考えております。  それから原油関税がこの前の関税法の改正で、御承知のように、原油につきましては一キロリットル当たり三百二十円が五百三十円というふうに上がったわけでありますが、その影響は一体どうか。もちろんこれは電力、鉄鋼等の長期取引協定を結んでおるものについては四%の増税分を戻すということになっておりますが、その後の状況を見ますと、たとえば石炭に一番関係の深いC重油でございますが、三十七年三月以降大体七千二、三百円で横ばい、結局関税を上げても上がっていないという数字になっております。これは日銀の調べでいっておるわけであります。それから電力用については戻し税をしておるわけでありますが、これはちょっと情報程度で、はっきり私がつかんだわけではございませんが、大体この電力向けは三十六年度が一キロリットル当たりC重油で六千七百円程度ということになっておりますが、これが最近は非常に下がって、一部では六千円を割るオファーが出ておるというようなことも聞いておりまして、相当値下がり傾向にあることは確かでございます。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず、大臣から冒頭に、考え方の相違だ、こうおっしゃいましたが、今あなた方自由経済を標榜して立っておる政党に私どもの考え方を押しつけようという意味で言ったわけではありません。それは考え方の相違ではなくて、産業自体のあり方としてそういう問題が出てきたのじゃないか。だから今なら今の経済機構の中で、そういう方面に沿うような政策が必要ではないか。ですから、鉱区の問題については国有にせよというのではなくて、その群小の鉱区を統合する方法が必要ではないか。あなた方の経済体制の中に、あなた方の考えておられる考え方に立って、より合理的にするためには今のままではいかぬのではないか、もう少し方法があるのではないか、こういうことを言ったつもりであったわけであります。それに、今申しましたように各国が国有化とか公社化をするについては、単にイデオロギー的な問題だけではなくて、その産業の性格からきた問題が相当多いのだ、だから政権がかわってもそれを維持し存続しておるのだ、こういうことを私は話したのです。ですから経済に合わないような国有化をしたり社会化をしたりすれば、それは国家権力がぐっと強いところでないとこわれていくわけです。ですからそれは国家権力によってやっておるだけではなくて、経済の合理性からもきておるのだ、こういう意味で申し上げたわけでありまして、誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。  そこで、今お話の中で安いエネルギーを買うということが必要である、私もそう思います。外国の石油が日本に来てどんどん安くする、その意味においては、安いエネルギーを使うという面からいえば、逆にいえば歓迎する面があるかもしれない。しかし、それには国内産業を破壊しないという条件がつかなければならぬ。だから安いエネルギーは買いたい、国内産業は保護したいというなら、一体どういう方法があるかというのが問題です。それは私は関税をかけて、そこに障壁だけを設けるということではあまり能がないと思う。そこで安いエネルギー外国から入れ、しかも国内産業を維持する方法は別にあるのじゃないか、またその方法が全然考えられないこともないだろう、こう考えるわけですが、まずこれについて大臣答弁を願いたい。  それから今石炭局長から七千二、三百円程度というC重油お話がありましたが、やはり英国は、今お話がありましたけれども、一万二千四百円程度という数字が出ている。これはあなたの方の資料に基づいて私が話しておるわけですが、フランスが九千九百円ないし九千六百円ですから、一番ダンピングをされているのは日本です。ダンピングもいいじゃないか、外国がダンピングすることはけっこうだというならそれでいいのです。しかしそれは調整方法が必要だろう、こういうことを申しておるので、この点についてお聞かせを願いたい。  次に、電力に対する結びつけですね、これは企業形態を云々するという意味ではありません。要するに、石炭の長期取引の問題であろうと思うのです。これについては考えなければならぬという問題ですが、一体現在においてどのくらい石油と石炭を——石油専焼はごくわずかで、ほとんどが今は石炭、石油混焼ですから、その混焼率をお示し願いたい。これは公益事業局の次長でけっこうですから、お示しを願いたいと思います。さらに、それは最近数年間の趨勢についてお示し願いたいと思うわけです。  さらに昭和三十七年度における石油関税はどのくらいとられるのか。それから電力並びに鉄鋼あるいはガスにおける還付金はどのくらいあるのか、今後の政策を立てる意味の財源的な問題もありますので、お聞かせ願いたいと思います。
  38. 福田一

    福田国務大臣 まず、石炭産業というものは、統制的なものの考え方でやるにふさわしい産業である、その性格からして、外国においても石炭産業は国営にしておるのだ、いわゆる自由主義経済の姿に置いておくにはどうも適当でないじゃないかという御質問であったと思うのです。確かに多賀谷さんの考えておられる考え方もりっぱな考えだと思いますが、われわれといたしましては、一応私企業の形でやらしておく、それによって私企業の一つのメリットと申しますか、公営にいたす場合の弊害——私企業にいたす場合の弊害ももちろんないとは言いません。それが今日現われてきておるのだというお説だと思うのですが、同時に、私企業にしておく場合のメリットも全然ないとは言えないとわれわれは考えておるのでありまして、その意味から一応私企業の姿をとらしてきておるわけであります。しかし今日このような姿になって参りまして、どうしても国の力をもってしなければこれは立ち上がれないというような事態になってきますと、同じ私企業にはしておいても、そこにやはり公共性というものをよほど入れていかなければならぬということに相なろうかと存ずるのでありまして、私は実は、自由民主党でございますが、決して私は統制に何でもみんな反対という考えは持っておりません。もとより自由党時代だって、保守党の内閣がずいぶん続いておりますけれども、いろいろな意味で統制をやっておることは御承知通りでありまして、決して統制というイデオロギーに反対するのではなくて、この場合は統制をやった方がいい、この場合は自由でやった方がいい、こういうような考え方でわれわれはやっておるわけであります。おそらく社会党の皆さんも、統制の方がいいと思うけれども、急にやらぬでもいい、順々にやった方がいいというお考えをお持ちになる方もあろうかと思うのでありまして、これは要するに事態をどういうふうに把握して、政治の姿をどう焦点を合わしていくかということできめていかなければいけないと思いますので、その意味において、意見がそこで食い違ってくるのじゃないかということを私は冒頭に述べたつもりでありますが、私の言い方がまずいために誤解を招いたといたしますならば、一つお許しを願いたい思うのであります。  それから、こういうような油の問題あるいは石炭の問題等、いずれにも非常に関連性があって、そして両方とも野放しにしておくようなやり方ではいかぬじゃないか、これはどうしてもここら辺である程度の国家権力を用いるような工夫をする。たとえば油の場合だったら、国営の買い取り機関をつくる。そうしてこれが石炭と競合する場合においても、あまり石炭の値を圧迫しないような工夫をしてみる。あるいはまた、石炭と油をまぜて使うような場合でも、そこをうまく調整してやる工夫をする。電力会社に対してこういうふうに使ったらいいだろうというようなことも勧奨する。そういうようなやり方もあり得るじゃないかというようなお考えかと存ずるのでありますが、そういうことでございますれば、私はあえて頭から否定するつもりはございません。これはしかし、油の問題となりますと、なかなか問題が多い。石炭の問題になりますと、御承知のように今一応——言いのがれのつもりじゃなくて、調査団でどういうふうにしたらいいかということを考えてもらっているときなものですから、これ以上はお答えを差し控えさしていただきたい、かように考えるわけであります。
  39. 中野正一

    中野説明員 御質問の、原油関税が上がって、それの長期取引の鉄鋼とか電力とかに対して四%の戻し税が幾らになるかということですが、今私手元に資料がございません。正確にお答えしたいと思いますので、調べましてから後ほどお答えいたします。
  40. 生駒勇

    生駒説明員 混焼率の問題でございますが、これもちょっと正確な資料はございませんが、私の大体記憶しておりますところでは、三〇%ぐらいなところだというふうに考えておるわけでございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 混焼率は、われわれの調べたところによると、昭和三十年が九三%、これは石炭ですね。それから三十一年が八七%、三十二年が八一%、三十三年か八二・五%、三十四年が八二%、三十五年からずっと下がって六三・三%、三十六年が六二%、こういうようになっております。今日まだ、重油専焼というのはごく一部にしか稼働していない。ほとんどが石油と石炭をたいておる。これがもう六二%になっているのですよ。ですから価格の問題が起きるのですが、これを五百万トンふやそうと思えば、混焼率を八〇%にすれば五百万トンになる。混焼率を石炭八〇%、石油を二〇%にすれば五百万トンふえる、こういう計算になるのです。ですからエネルギー全体の消費が非常に伸びないというなら別として、ここは政治であり政策である、かように考える。そこで問題は、それは安全保障の面もあるでしょう、国際収支の面もあるでしょうけれども、問題は雇用だと思うのです。要するに雇用情勢が、労働者を解雇しても他に転職ができるというような情勢であるならば、何も好んであの坑内に入れる必要はないと思うのです。ですから問題は雇用問題です。その雇用問題が全然解決してないのですね。いずれ労働省から見ると思いますからお尋ねをしますが、皆さん方に非常に骨を折っていただいて、そうしてこの就職に努力をしていただいて、雇用促進事業団ができ、炭鉱離職者臨時措置法ができ、それから昨年の国会末に膨大な決議をしていただいて、かなりいろいろな制度ができました。できましたけれども、残念ながら炭鉱離職者を吸収する状態は必ずしも芳しくない。すなわち広域職業紹介、これはかなり宣伝をされ、各企業も非常に努力をいたしましたが、これは労働省調べで昭和三十五年度において四千八百四名、三十六年度が七千三百十八名、三十七年度が四月から六月までで千二百名、こういう状態です。そこで問題は、最近における不況問題が影響しまして、今申しました数字の諸君がまた逆流をしてきておるということです。ことに福岡県の場合は鉄鋼関係、八幡製鉄を中心とする下請あるいは臨時工という形で入っております。これが臨時工なるがために、社外工なるがために、あるいは下請なるがために解雇をされておる。あるいは北海道の場合は、富士製鉄を中心として室蘭の工場に行きました連中がまた下請、臨時工の形で解雇されていく、こういう状態で非常に雇用市場が悪い。調査団がどううい考え方で進まれるかわかりませんが、政府においてはこの雇用市場の悪いときにどういう雇用対策をするか、離職者の吸収をどうするか、これが一番大きい問題ではないかと思う。今までは中小炭鉱が相当多くありましたから、これが一つのクッションになっておるわけです。中小炭鉱はたしか八万四、五千名現在一でも在籍人員がおると思いますけれども、昭和三十六年度あるいは五年度におきましても約半数、四万数千名が解雇されて、四万数千名を雇い入れておる。こういう珍現象を呈しておる。ちょっと常識では考えられない。とにかく在籍の従業員のうち、半分を雇ってきて半分解雇しておる、こういう形です。要するにものすごい移動がある。もっとも、一年間に二回くらい移動した連中もおるわけですが、こういう形です。ですから、今までまだ中小炭鉱のあるうちは首を切られても、大手から切られると中小へまず行くわけです。そして日雇い登録者に出てこない。これで今までの解雇が比較的よくいった。今後スクラップ炭鉱と指定をされる中小炭鉱がほとんど淘汰されるとしますと、そのクッションがなくなる。ですから、政府が政策をしなければならない離職者の対象はものすごく膨大なものになる。たとえば三池争議の批判をいろいろ言われる。三池の組合はどうして頑強だろうか。あるいはいろいろイデオロギーの問題もあるでしょう。しかし私は、あの大牟田という地域性の問題が一つあると思う。大牟田というところは、呉の次に日本では失業者が多い。どういうことかというと、日雇い労働者はほとんど三井財閥から出ています。三井鉱山、東洋高圧、三井化学、三池精練、こういうところから出た失業者です。要するに中小企業がほとんどない。ですから三井から首を切られると、失業保険をもらったらすぐ日雇い労働に行かざるを得ないという宿命がある。その点が筑豊炭田には今までなかった。首を切られてもどこか中小鉱山に行って、中小鉱山で切られた者が日雇い労働に行くというクッションがあったけれども、そのクッションがなくなるというと、これは今までの数字の計算ではいかない雇用問題というのが起こる。そこで産炭地政策、しかも産炭地を広域に見て政策をしなければならぬという問題があるでしょう。これはぜひやってもらわなければならぬ。しかし、残念ながら炭鉱の離職者と、新しく来た工場に吸収する労働者とは質が違うのです。しかしこのことは、自分の子弟やあるいは弟が就職場を求めるのですから、非常にけっこうです。これはやっていただかなければならぬけれども、離職者対策即新工場による吸収にならぬというところに問題がある。現在直方の地区に鉄工場がずいぶんあり、そうして若い労働力が足りない。筑豊炭田は一方において失業者がものすごく余っているけれども、失業者の中には工場に行く適格性の者がいないという事実です。ですからこれは容易ならぬことで、結局は炭鉱でかかえる以外に方法がない。その炭鉱でいかにしてかかえるかという方法については、今後いろいろ検討してみたいと思います。炭鉱でどうしてかかえるか。炭鉱でかかえるということになると、考えればいろいろ方法があるでしょうけれども、労働時間を短縮する。しかし、短縮すればコストが上がり、いよいよ経営が行き詰まる、こういう問題があるでしょう。ですから、ドイツがやったように、一週一日休ませて政府が賃金の補償をする。ドイツは御承知のように、一九五九年のあの関税の引き上げ、あるいはまた離職者が次の就職先に行った場合、賃金の差額補給と一緒に三つの方式の一つとして出したのが、出炭制限による有給休日制、国家補償。それからさらに、公益事業法がありましても、重油価格にメリットを引いただけの金額で電力に石炭を別ワクで引き取らせる。その重油価格石炭価格の差額はどうするか。これは政府が見る。雇用対策としていわゆる調整炭鉱のようなものをつくる。本来ならばスクラップにするのだけれども、資源は十分ある。ただ経済維持的に高くつく。しかし、失業対策をやるよりもずっとこれがよい。こういうものが出てくると思うのです。炭鉱で雇用しておった方が一番安上がりである。私は数字も持っておりますが、それは申し上げません。とにかくその分は別ワクにして、石炭重油価格の差は政府で補てんする方法だってあるではないか。だから、こういった問題を政府においては十分考えていただきたいと思うのです。  そこで、時間がないそうですからもう一点。鉱害についての認識を、今石炭局長が話しておりましたから、大臣に聞いていただきたいのですが、実は名前を言うと問題ですけれども、ある大きな炭鉱で閉山式をしようとした。ところが鉱害の被害者が集まって、その閉山式が円滑に行なわれなくなったという事実がある。この鉱害の被害者というのは、あなた方が言われる革新陣営でも何でもない。むしろ町の商店の人々、これが押しかけて行って閉山式が円滑にできなくなって、けが人が出て警察官が出たという事件があった。これは今後筑豊の閉山する山においておそらく起こるであろう事例です。そこで、なぜ大炭鉱が鉱害を残しておくか。これは最初一層、二層石炭を掘っても鉱害は出ない。累積の炭層をずっと掘った場合にどんどんと出る。終掘時に近いときにぐっと出る。そこに問題がある。ですから、三井鉱山でも、三菱鉱業でも、かつて三井合名や三菱合資会社であった場合に、各社はその三分の一の益金は全部合名や合資に返している。要するに戦前大部分の益金を会社に返し、これが出資金となって社外投資をし、有価証券の形になって、そうして新しい会社を作ることに一生縣命になった。このことはけっこうである。しかし残念ながら積立金というものを全然してなかったわけですから、一層、二層掘っていたときには出なかった鉱害というものが、終掘時に近づくに従って、今までの分が一緒に出てきたという形になっておる。だからこれを当該炭鉱だけに、しかも終掘時だけに負担をさせるということは、事実問題として支払い能力もないし、そうして日本経済の発展の面からいっても、責任の分担を他の産業でしてやる必要があるのじゃないか。しかし個々の産業で負担をせいといいましてもなかなか困難ですから、政府が見なければならぬという問題があるのではないか、こういうように思います。これは一つ事実問題として鉱害の問題については十分検討を願いたい。大臣には就任早々非常に大きな問題が山積しておりましてはなはだ恐縮ですけれども、問題未解決のままここにきており、前の通産大臣のときも非常に骨を折っていただきました大正鉱業において、次のような事例が、この九月五日以降に起ころうとしておる。それは新しい社長がきまして、賃金の値下げと首切り案を出した。組合はやむを得ないというのでそれをのんだ。そうして退職金もわずかしか支払われないという協定でありましたが、その退職金もいまだに一銭も支払わない。そこで退職者は退職者連盟をつくって炭労に押しかけた。炭労の事務所は毎日のように占領された。しかも今度は地方労働委員会に提訴をして、労働組合としての資格をとった。その組合資格をとった退職者連盟は、労働者の入坑を阻止するという戦術に出んとしておる。労働組合の方は入坑する、退職者連盟は退職金を払わないから入坑させないという事態が起こりそうなんです。一体こういうような同じ仲間のもので、やれば必ず血を見ます。しかも退職協定をするかどうかというので、非常に摩擦があって大会で決定したような状態ですから、これは大暴動になる可能性がある。労働者同士でやる。退職者と在籍鉱員とでやるわけです。こういった悲惨な問題を一体どういうように解決するか。この問題は調査団の答申と実行が悪ければ、どこにも起こってくる問題であるし、鉱害の問題と同じように、今後の多くの炭田において見受けられる非常に悲惨な、しかも日本エネルギーの悲劇を全部引き受けたような問題が起こると思うのです。これらについて一つ簡略でいいですが、基本的な問題だけ御答弁を願いたい。
  42. 福田一

    福田国務大臣 まず、石炭と電気との関係でございますが、今後ある程度、二千万トン前後のものについては電気に引き取らせる工夫がありますけれども、それ以上、重油と比べてみても相当高い石炭を使わせるということになっては、電力料金の問題にはね返ってくるおそれがございますから、これは何らかの措置と講じなければ、これを使わすことができないということになるでありましょう。これはあなたもそうお考えになっておるようでありますから、われわれとしても今後研究をいたしていきたいと思っております。  それから離職者対策が非常に重要である、その困難性についてるる御説明がありました。私も傾聴をいたしておったのでありまして、さもあろうかと存じておるのであります。また、鉱害の問題もお説の迫りかと存ずるのでありまして、これらについては、実を言うと今調査団が一番頭を悩ましておる問題ではなかろうかと考えております。そういうようなわけでございますので、一つ十分われわれとしても研究をさしていただきたいと思っておるのであります。  最後の大正鉱業の問題ですが、実は私今ちょっと石炭局長に事情を聞いておったところのようなわけでありまして、なかなか深刻なようでございます。十分事情を聞いた上でできるだけの措置をとってみたい、かように考えておるわけでございます。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 答弁についてはさらに質問したいと思いますが、本日は時間がありませんから、一応基本的な問題だけを提言をして、今後細部について質問をしたい、かように思っております。
  44. 上林山榮吉

  45. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ちょっと委員長に伺いますが、私の質問時間はどのくらいありますか。
  46. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 二、三十分ではだめですか。一時ごろまでが人道的だろうと思います。
  47. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 では、余った問題はいずれまた後日にします。  先ほどから政府側の答弁を伺っておりますと、石炭調査団の結論とその報告ということのみに最後の答弁をしておられる。これは私はどうも奇怪千万に考えておる。それほど重要な政府の積極策すべてをそれによってやろうとしておられるように受け取るわけであります。そうすると政府は、石炭対策については無策、お手上げ、何も持ってしない。こういうことを言われても私は弁解の余地はなかろう、こう思うのです。そこで政府は、石炭調査団の結論をそのまま政府の今後の石炭国策として、全部受け取ろうとしておられるのか。私はそうじゃなかろうと思うのです。やはり政府は従来から、また今日の段階において、将来の見通しの上に立って政府としての石炭政策、国策のあり方についてはそれぞれ私は案を持っておられるはずだと思う。その上に立って、石炭調査団調査結論というものを貴重な資料一つにする、私はそう思う。そうでないなら、たとえば炭鉱労働組合にしても、寄り寄り新聞に調査団の中間的なものが出ておるのを見て、あれでは困るという非常な反対の意見が起こっております。そうすると、政府はこの中に立って、一体どういうように調査団の結論、報告を扱おうとしておられるのか。聞くところによると池田総理は、調査団の報告は、政府に報告される前にそれをひそかに自分に見せてくれ、それによって自分の手を加えてからでなければ発表してもらっちゃ困ると言ったといううわさも伝わっておる。私はどうもそうあるような気がする。というのは、従来から大蔵省において税制調査審議会のときに、学者諸君に依頼してやって、今度は大蔵省側が何のかんのと言って横やりを入れた。そこで学者諸君は憤慨してやめてしまったということもあるわけです。しばしばそういうことが起こっております。今度もどうも調査団の報告を発表される前にそういうことがやられる可能性があるということを、たとえば経営者側もそう見ておる、あるいは労働組合側などもそう見ておる。また私などもそう見ておる。そういう場合に問題が当然引き起こってくるわけです。福田通産大臣は、この調査団調査報告に対する考え方、扱い方について一体どういう気持をお持ちになっておるか、それを一つお聞かせ願いたい。
  48. 福田一

    福田国務大臣 政府といたしましては、四月六日の閣議の決定に基づきまして、大体五千五百万トンの出炭ということ、それから千二百円のぺ−スダウンという一つの基準だけは持って、一応そういう基準を出しておりますが、しかしこれについて適当であるかどうか十分一つ審議してもらいたい、こういって調査団に案を出しておるわけでございまして、何ら案がない、考え方が全然なくてすべてこれをまかし切りにしたという形でいっておるわけではないと思っておるわけでございます。  なお、しからば調査団の答申が出たならば、すべてこれを調査団の答申に待つのか、こういうことでございますが、調査団の答申がございましても、答申でございまして決定ではないので、われわれといたしましては、これを尊重する考え方は持っておりますけれども、すべてその答申の通りにやる、一字一句も違わないでやる、こういうような考え方調査団の答申を見ておるわけではございません。
  49. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その調査団に不愉快なものを持たすような圧力をかけて、報告される前にひそかに、その調査内容等を総理大臣なりあなたなりが見て、手を加えるというようなことは、どんなことがあってもされませんか。それを一つはっきりしておいて下さい。
  50. 福田一

    福田国務大臣 そのようなことは断じていたしません。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 答弁はそうされると言われるだろうと思っておりましたけれども、それだけ伺っておけば、いずれこれはわかることでございますから、ここで私は今福田通産大臣の言われたことをまずまず信用しておきまして、後日そのようなことがあったら、これは証拠物件にして取り上げることにします。お含み置きを願います。  それから今大臣は、五千五百万トンの数量の問題、それから炭価千二百円引き下げの問題、この案は政府が持っておると言われましたが、それは従来からずっと言われてきておる一つ政府の方針でございましょう。そこでこの五千五百万トンの数量、この安定の問題です。今石炭問題の一番重要な問題は、数量の安定と価格の安定、これにあるわけです。そこでこの数量の安定、どういうようにして五千五百万トンの維持をされるか、それを一つお聞かせ願いたい。
  52. 福田一

    福田国務大臣 五千五百万トンの数字の安定とおっしゃるのは、消費先の問題と心得て御答弁してよろしゅうございますか。生産はもうできるにきまっていると思うのです。やればやれるわけであります。そこで消費ということになりますと、一応四十二年を基準にいたしましたときには、鉄鋼において千二百万トン、電力において二千三百万トン、これにセメントで、これは見込みでありますが、大体百五十万トンから二百万トン、そうしますと、合計いたしまして三千七百万トンというのが大口需要になります。大体こういう数字を今までは考えておったわけでありますが、私は今後の重油というか油との競合、あるいはまた、一般のお方が石炭を使われるいわゆる家庭用の石炭というようなものは、ぐんぐん減っていく段階にどうしてもなると思う。そのほか工業用に使う場合においても、どうしても重油、油の方に食われる面が多いと思うのでありまして、五千五百万トンを維持して、必ずこれを消費していくというのには、まだ相当量を電気にかえて使うのでなければ困難ではないか、こういう考え方を持っておるわけであります。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 炭価を千二百円五カ年間に引き下げるということと、五千五百万トンの出炭の数量については、この二つについては、政府が強力に指示しておるのですから、従ってその五千五百万トンの出炭数量については、これを消化することについて政府は当然責任を持たなければならぬわけです。そこでその五千五百万トンをどのようにして消費をさすかということについて、政府側ではなかなかこれを明らかにいたしません。たとえば大口需要家に長期契約を、そのうちの七割ぐらいをやらせれば大体できるのではないかというようなこと等、さきの佐藤通産大臣も言われておりました。ところが大口需要家の電力にしても、鉄鋼にしてもセメントにしても——セメントのごときはすでに油にほとんど切りかえております。大口需要家の一人であるセメントは、石炭をほとんど使わないで、油に切りかえておるわけであります。それから電力会社にしても、出水量が多ければ、石炭に対して貯炭場がないから待ったということもいわれております。鉄鋼の方も油にだんだん切りかえておる。国鉄の方もしかり。そこで大口需要家と契約をやらしてみたところで、大口需要家が自分の立場から見て石炭を買いたくない、あるいは油に切りかえたい、あるいは出水量が多いから水力を動員したい、こういうようなことで契約を破棄しても、これを罰するものは何もない。政府はまたこれをどうすることもできないでしょう。そういうような自由主義経済のもとにおいて、その五千五百万トンを政府は指示して出炭をさせて、その需要先について政府はどう責任を持つのかということを明らかにせない限りは、五千五百万トンを政府は指示する資格がない、また安定さすこともできないと思うが、これはどうお考えですか。
  54. 福田一

    福田国務大臣 今までの見込みといたしまして、大体そういうような数字、先ほど申しました電力、鉄鋼、セメントを大口といたしまして、これを使ってくれれば大体五千五百万トンの消費を維持できるのであろう、こういう考え方に立っておるわけでありますが、お説のように、だんだんセメント等においては需要が減って参ります。それをカバーしていくということになれば、これをエネルギーにかえて、電気にかえて使わせるというような工夫が必要になろうかと考えておるのでありますが、これらにつきましても、調査団においていろいろと研究しておられるようでございますから、その調査団の答申を待って、われわれとしてはあなたのおっしゃられるように、五千五百万トンだけは何としても使わせる、こういう対策は立てるつもりでございます。
  55. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣は責任を持たなければならぬ問題になってくると、調査団の結論、こうおっしゃることは、私がさっき言ったように、石炭国策に対して政府はもうお手上げである。こう断ぜざるを全く得ないわけであります。  そこでさきに私が申してきておりますように、政府石炭炭価を千二百円五カ年間に下げる、在籍一人当たり一カ月二十四トン出せ、その条件のもとに五千五百万トン出すことは政府は責任を持つというような意味において、これを強く指示されておるのです。従って一番の安定は、政府が指示しておる出炭五千五百万トンに対して、もし大口需要家との間に契約が破棄されたり、思うように引き取らなかったり、あるいは、天然の事情によって電力会社などが引き取らぬという場合においては、これは当然国家が責任を持って補償貯炭するだけの腹がまえがなければ、私は五千五百万トンを指示する資格はないと思う。そこで、政府が指示して出炭をさした、その貯炭ができた場合には政府が補償する、安定貯炭にするという考え方がなかったならば、これは掘って出せ、あとは需要がとれなかったらしようがないじゃないかということになると、政府は実に無責任きわまると思うが、もっと政府が責任を持とうとするなら、今秋が言うようにどうしてもいろいろな事情によって引き取られない場合は、国の補償する貯炭にする、こういうものがなければならぬと思うが、その点どうですか。
  56. 福田一

    福田国務大臣 最終的の考え方としてはそういう考え方もございましょうが、われわれとしては山元において貯炭が少しふえてきた、しかも消費がない、そういう場合には山元として一番困るのは金融。売れればそれで回っていくのですから、金融の面で何らかのカバーをしていく、そうして一方においては消費者に対してできるだけこれを使うような方法を講じていく道もあろうかと思うのでありまして、必ずしもその場合において国が買い取って貯炭をする方策のみだとは考えておらないわけでございます。
  57. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも今大臣考え方において答弁されたことでは、五千五百万トンを出せといって指示することは政府がやる、石炭単価を一年間に二百五十円ずつ下げるということは強く指示する、在籍一人当たり一カ月二十四トンの石炭を出せということは指示するが、さてできたものについては政府が責任を持ってこれを解決してやるということはきわめて不明瞭です。そういうことで一体五千五百万トンを指示する資格がありますか。私はこれは無責任きわまると思う。
  58. 福田一

    福田国務大臣 それは石炭産業をいわゆる民営としておくかどうかという問題に連なっていくことでございまして、一応民営の形態をとってやらせていく方がいいという立場をわれわれとしてはとっております以上は、決してそう責任のないやり方でやっておるとわれわれは考えておるわけではございません。
  59. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 同じようなことを繰り返して追及するようですが、それならば政府は五千五百万トン出せということを指示する資格は私はないと思う。指示した以上は、その貯炭に対しては政府が責任を持って——さっき大臣は多賀谷君への答弁に、炭鉱が個々の出炭をばらばらにしておったのではなかなか不安であろうから、それは何らかの形で統一しておくなり何なりしなければならぬ、あるいは大臣はさきに答弁された中で、自由放任主義経済ばかりは考えておらぬ、必要によっては統制ということも当然考えるべきだ、こういうことも言われている。だから大臣のそういう考え方からすれば、当然この指示した出炭に対しては政府がある種の責任を持つということを明確にされなければ、炭鉱経営者にしても、そこに働く労働者にしても、私は安心してやれないと思う。だからそういう点において、大臣答弁されることはなかなか苦しかろうと私は考えるけれども、その点において何らか考えなければ、経営者も労働者も安心感が持てないという問題がある。たとえば山元の貯炭に対して融資をするといっても、山元の貯炭には限度がある。そうむちゃくちゃに置けるものではございません。従ってそれは単なるある時間の食いつなぎにすぎないと思う。根本的な問題にはならぬわけです。これは今答弁されるのはちょっと無理だろうと思うが、こういうことは私は当然お考えにならなければならならない問題であると思う。この問題を考えなければこの石炭問題の根本的な安定ということを解決することはできないということだけは、お含みおきを願いたい。これは大臣に同情の意味において私は言っていることです。  それから千二百円を五年間に下げる、そして在籍一人当たり二十四トン、この指示は、私は相当変更されてこなければならぬのではないか、また変更してくるのではないか、二十四トンぐらいではとうていできないのではないか、あるいは三十トンも三十トン以上も在籍一人当たり石炭を一カ月に掘るようにならなければ、油との競争はできないのじゃないか、こういうように考えられることは、今一応常識になっている。そこでさらに能率を上げていく。それから炭価は千二百円値下げして、これで一応とまるということになっておりますが、しかしこの千二百円の問題で値下げはとまるとしても、能率を二十四トンから三十トン以上にするということになると、結局はそれは山の負担、労働者の負担としては相当大きな負担になってくるわけです。だからこれらに対して、従来の考え方はそのまま維持されるというお考えであるか、相当変更を加えていかなければならぬというふうにお考えになっているかどうか、この点一つお聞かせ願いたい。
  60. 福田一

    福田国務大臣 先ほど私の立場考えてやっているのだというお話もございましたが、誤解を生むといけませんから一言申し述べさせていただきたい。  私たちは決して指示という言葉は使っておりません。五千五百万トン出しなさいという指示という言葉ではないのでありまして、五千五百万トンが適当であろうということを言うているわけでございます。指示という言葉になりますと、これはもうまさしくお説の通り、示して、そして責任を持つことになってこようと思うのでありますが、そういうことではないのでありますから、この点は一つ誤解のないようにお願い申し上げたいと思うのであります。  なお、炭価引き下げの問題でございますが、すでに千二百円のうち九百五十円は従来引き下げが実は行なわれておりまして、来年度に二百五十円やるかどうかということが残っているだけでございます。この場合これをやるかどうかということは、手続の問題としては石炭鉱業審議会の答申を待って、そのときの事情を見てやるということになるのでございますけれども、しかしこの炭価の問題等についても、私は今度の調査団が十分研究していてくれるものと考えますので、その調査団の答申を待って態度をきめるようにして参りたい、そのように考えているわけでございます。
  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 指示の問題については、福田通産大臣が今新たに新しいところの言葉一つ使われたわけですが、従来から歴代の通産大臣が五千五百万トン指示という言葉を、ここでずっと答弁されてきております。速記録にも載っております。それから現に業者との会合を開かれている場合に、指示という言葉を使っておられます。だからそういうことは速記録を見たり、あるいは石炭協会などと話し合いをされた、やはり一応そういうこと等を見ていただきたいと思うのです。それで、つまり指示するということをなぜ強く言われたかということは、私がさきに申したように、在籍一人当たり十四、五トンのときに、二十四トンまで出さなければならぬ、炭価を下げさせなければならぬ、ついては五千五百万トンを政府も指示する、こういうことをその三つのからみ合わせの条件の中において言われたことなんです、だからそれはあなた方が過去におけるそういういきさつ等を御存じないか、あるいは不安になってきたからそういうように言葉をぼかされておるか、いずれかです。その点は何ならば私は証拠物件を持ってきて見せましょう。そういうことばもっと責任のある態度でやってもらいたい。横の方で石炭局長が何か言っておるようだが、石炭局長自身がそれは知らないのだ。あなた自身が最近かわられたのだから、それを御存じないのは無理もない。だから知らないでおって、あまり知らない大臣に言われると、大臣があとで抜き差しならぬことになりますから、やはり十分勉強しておいて耳打ちするならおやりになった方が忠実です。  そこで時間の関係があるのでもう一、二点でとめることにしますが、その千二百円を下げるということに非常に従来から問題が起こっておったのです。というのは、たとえば国鉄運賃が上がる、電力料金を上げておる、あるいは石炭を出すために必要な機材費というものがべらぼうに上がってきておる。もろもろの生産条件が上がってきてしまっておるのに、石炭だけを千二百円下げるということはむちゃじゃないかということ等もあって、それは輸送賃は考えよう、電力賃のことは考える、いろいろそういうことを言われているが、実は実行されてない。具体的にその値下げをカバーしてやろうということについてのもろもろのそういうものは下げられてない。また、下げられてないから補給金でこれを補おうということもやられてない。だからこの辺の扱い方について大臣はどうお考えになるか。
  62. 福田一

    福田国務大臣 先ほどお答えを申し上げた次第でありますが、調査団において価格の問題についても十分今研究をしていただいておると思うのであります。私としてはこの場合、その程度でお許しを願いたいと思います。
  63. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これはあまり専門的に大臣を追及ばかりしても、結局またらちのあかぬことだと私も思うし、時間の関係もありますからもう一点だけで終わります。いずれ調査団の結論が政府に報告され、それによって政府が新たな考え方に立って石炭国策をお立てになって、われわれに審議を求められるだろうと思いますから、その際十分われわれも用意をして質問することにします。  最後に一点だけ伺いたいと思いますのは、御存じのように、非能率炭鉱は徹底的に買いつぶしをする。それで多くの失業者が出るわけです。ところが、それにかわる能率的な新鉱の開発ということについては、それに伴ってやられていないわけです。新鉱開発、能率炭鉱を徹底的に開発されたところに、この買いつぶした非能率炭鉱の労働者を持っていくことができる。そうしてさらに、それを近代化していくところに、あるいは三十トン、四十トン以上の能率を上げるということもできてくるわけです。ところが、非能率炭鉱を買いつぶすということについては力を入れておるが、能率炭鉱を開発する、新鉱を開発する、近代化するということについて政府は一向、これはときどき言葉で言うけれども、具体的に実施しようしない。そこで問題の解決ができないわけです。そのためにはもちろん鉱区の整理統合なり、休眠鉱区の開発なりという問題があります。だから、これは鉱業法の改正に待たなければならぬ点が相当あるわけです。そこで鉱業法改正の委員会を作られてからもうどのくらいになりますかね。七、八年ぐらいになりはせぬか。高碕通産大臣のとき、もう三、四年前になりますか、私が鉱業法改正はいつお出しになりますかと言ったところが、必ず明年の国会には出します、こう言われてからもうまる三年以上になります。一体鉱業法改正委員会というのは何をしているのですか。どこに問題があるのですか。どこに問題があるかということの御答弁と、それから、高碕さんが出すと言ってから三年にもなって出せないでおるが、来たるべき三十八年の通常国会には責任を持って出せるかどうか。この問題が出せないと、今の鉱区問題、新鉱開発、もろもろの問題に影響があるわけです。この点はどうですか。この点を一つ、その審議のいきさつ、出せないで延び延びになっておる経過、それから三十八年の通常国会に責任を持って福田通産大臣が出せるということを言明できるかどうか、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  64. 福田一

    福田国務大臣 鉱業法の改正につきましては、お説の通り、非常にこれは重要な問題でございますが、すでに成案を得まして、ただいま法制局で審議をいたしておりますから、次の国会には必ず提出をいたしますから御安心を願いたい。なお、内容につきましては私つまびらかにいたしておりませんので、石炭局長に……。
  65. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間がきましたから、そこで私も委員長との約束を守ることにいたします。  今の鉱業法改正法律案はきたるべき三十八年度の通常国会に出すという確約を得ましたから、これは正直な福田通産大臣のおっしゃることですから私はかたく信じて、それを期待しております。  以上をもって一応終わります。
  66. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時八分散会