○多賀谷
委員 混焼率は、われわれの調べたところによると、
昭和三十年が九三%、これは
石炭ですね。それから三十一年が八七%、三十二年が八一%、三十三年か八二・五%、三十四年が八二%、三十五年からずっと下がって六三・三%、三十六年が六二%、こういうようになっております。今日まだ、
重油専焼というのはごく一部にしか稼働していない。ほとんどが石油と
石炭をたいておる。これがもう六二%になっているのですよ。ですから
価格の問題が起きるのですが、これを五百万トンふやそうと思えば、混焼率を八〇%にすれば五百万トンになる。混焼率を
石炭八〇%、石油を二〇%にすれば五百万トンふえる、こういう計算になるのです。ですから
エネルギー全体の
消費が非常に
伸びないというなら別として、ここは政治であり政策である、かように
考える。そこで問題は、それは安全保障の面もあるでしょう、国際収支の面もあるでしょうけれども、問題は
雇用だと思うのです。要するに
雇用情勢が、労働者を解雇しても他に転職ができるというような
情勢であるならば、何も好んであの坑内に入れる必要はないと思うのです。ですから問題は
雇用問題です。その
雇用問題が全然解決してないのですね。いずれ労働省から見ると思いますからお尋ねをしますが、皆さん方に非常に骨を折っていただいて、そうしてこの就職に努力をしていただいて、
雇用促進事業団ができ、炭鉱離職者臨時措置法ができ、それから昨年の
国会末に膨大な決議をしていただいて、かなりいろいろな制度ができました。できましたけれども、残念ながら炭鉱離職者を吸収する状態は必ずしも芳しくない。すなわち広域職業
紹介、これはかなり宣伝をされ、各企業も非常に努力をいたしましたが、これは労働省調べで
昭和三十五
年度において四千八百四名、三十六
年度が七千三百十八名、三十七
年度が四月から六月までで千二百名、こういう状態です。そこで問題は、最近における
不況問題が影響しまして、今申しました
数字の諸君がまた逆流をしてきておるということです。ことに福岡県の場合は鉄鋼
関係、八幡製鉄を中心とする下請あるいは臨時工という形で入っております。これが臨時工なるがために、社外工なるがために、あるいは下請なるがために解雇をされておる。あるいは北海道の場合は、富士製鉄を中心として室蘭の工場に行きました連中がまた下請、臨時工の形で解雇されていく、こういう状態で非常に
雇用市場が悪い。
調査団がどううい
考え方で進まれるかわかりませんが、
政府においてはこの
雇用市場の悪いときにどういう
雇用対策をするか、離職者の吸収をどうするか、これが一番大きい問題ではないかと思う。今までは
中小炭鉱が相当多くありましたから、これが
一つのクッションになっておるわけです。
中小炭鉱はたしか八万四、五千名現在一でも在籍人員がおると思いますけれども、
昭和三十六
年度あるいは五
年度におきましても約半数、四万数千名が解雇されて、四万数千名を雇い入れておる。こういう珍現象を呈しておる。ちょっと常識では
考えられない。とにかく在籍の従業員のうち、半分を雇ってきて半分解雇しておる、こういう形です。要するにものすごい移動がある。もっとも、一年間に二回くらい移動した連中もおるわけですが、こういう形です。ですから、今までまだ
中小炭鉱のあるうちは首を切られても、
大手から切られると
中小へまず行くわけです。そして日雇い登録者に出てこない。これで今までの解雇が比較的よくいった。今後スクラップ炭鉱と指定をされる
中小炭鉱がほとんど淘汰されるとしますと、そのクッションがなくなる。ですから、
政府が政策をしなければならない離職者の対象はものすごく膨大なものになる。たとえば
三池争議の批判をいろいろ言われる。三池の組合はどうして頑強だろうか。あるいはいろいろイデオロギーの問題もあるでしょう。しかし私は、あの大牟田という地域性の問題が
一つあると思う。大牟田というところは、呉の次に
日本では失業者が多い。どういうことかというと、日雇い労働者はほとんど三井財閥から出ています。三井鉱山、東洋高圧、三井化学、三池精練、こういうところから出た失業者です。要するに
中小企業がほとんどない。ですから三井から首を切られると、失業保険をもらったらすぐ日雇い労働に行かざるを得ないという宿命がある。その点が筑豊炭田には今までなかった。首を切られてもどこか
中小鉱山に行って、
中小鉱山で切られた者が日雇い労働に行くというクッションがあったけれども、そのクッションがなくなるというと、これは今までの
数字の計算ではいかない
雇用問題というのが起こる。そこで
産炭地政策、しかも
産炭地を広域に見て政策をしなければならぬという問題があるでしょう。これはぜひやってもらわなければならぬ。しかし、残念ながら炭鉱の離職者と、新しく来た工場に吸収する労働者とは質が違うのです。しかしこのことは、自分の子弟やあるいは弟が就職場を求めるのですから、非常にけっこうです。これはやっていただかなければならぬけれども、離職者
対策即新工場による吸収にならぬというところに問題がある。現在直方の地区に鉄工場がずいぶんあり、そうして若い労働力が足りない。筑豊炭田は一方において失業者がものすごく余っているけれども、失業者の中には工場に行く適格性の者がいないという事実です。ですからこれは容易ならぬことで、結局は炭鉱でかかえる以外に
方法がない。その炭鉱でいかにしてかかえるかという
方法については、今後いろいろ検討してみたいと思います。炭鉱でどうしてかかえるか。炭鉱でかかえるということになると、
考えればいろいろ
方法があるでしょうけれども、労働時間を短縮する。しかし、短縮すれば
コストが上がり、いよいよ経営が行き詰まる、こういう問題があるでしょう。ですから、ドイツがやったように、一週一日休ませて
政府が賃金の補償をする。ドイツは御
承知のように、一九五九年のあの関税の引き上げ、あるいはまた離職者が次の就職先に行った場合、賃金の差額補給と一緒に三つの方式の
一つとして
出したのが、
出炭制限による有給休日制、国家補償。それからさらに、公益事業法がありましても、
重油価格にメリットを引いただけの金額で電力に
石炭を別ワクで引き取らせる。その
重油価格と
石炭の
価格の差額はどうするか。これは
政府が見る。
雇用対策としていわゆる調整炭鉱のようなものをつくる。本来ならばスクラップにするのだけれども、資源は十分ある。ただ
経済維持的に高くつく。しかし、失業
対策をやるよりもずっとこれがよい。こういうものが出てくると思うのです。炭鉱で
雇用しておった方が一番安上がりである。私は
数字も持っておりますが、それは申し上げません。とにかくその分は別ワクにして、
石炭と
重油の
価格の差は
政府で補てんする
方法だってあるではないか。だから、こういった問題を
政府においては十分
考えていただきたいと思うのです。
そこで、時間がないそうですからもう一点。鉱害についての認識を、今
石炭局長が話しておりましたから、
大臣に聞いていただきたいのですが、実は名前を言うと問題ですけれども、ある大きな炭鉱で閉山式をしようとした。ところが鉱害の被害者が集まって、その閉山式が円滑に行なわれなくなったという事実がある。この鉱害の被害者というのは、あなた方が言われる革新陣営でも何でもない。むしろ町の商店の人々、これが押しかけて行って閉山式が円滑にできなくなって、けが人が出て警察官が出たという事件があった。これは今後筑豊の閉山する山においておそらく起こるであろう事例です。そこで、なぜ大炭鉱が鉱害を残しておくか。これは最初一層、二層
石炭を掘っても鉱害は出ない。累積の炭層をずっと掘った場合にどんどんと出る。終掘時に近いときにぐっと出る。そこに問題がある。ですから、三井鉱山でも、三菱鉱業でも、かつて三井合名や三菱合資会社であった場合に、
各社はその三分の一の益金は全部合名や合資に返している。要するに戦前大部分の益金を会社に返し、これが出資金となって社外投資をし、有価証券の形になって、そうして新しい会社を作ることに一生縣命になった。このことはけっこうである。しかし残念ながら積立金というものを全然してなかったわけですから、一層、二層掘っていたときには出なかった鉱害というものが、終掘時に近づくに従って、今までの分が一緒に出てきたという形になっておる。だからこれを当該炭鉱だけに、しかも終掘時だけに負担をさせるということは、事実問題として支払い能力もないし、そうして
日本経済の発展の面からいっても、責任の分担を他の
産業でしてやる必要があるのじゃないか。しかし個々の
産業で負担をせいといいましてもなかなか困難ですから、
政府が見なければならぬという問題があるのではないか、こういうように思います。これは
一つ事実問題として鉱害の問題については十分検討を願いたい。
大臣には就任早々非常に大きな問題が山積しておりましてはなはだ恐縮ですけれども、問題未解決のままここにきており、前の通産
大臣のときも非常に骨を折っていただきました大正鉱業において、次のような事例が、この九月五日以降に起ころうとしておる。それは新しい社長がきまして、賃金の値下げと首切り案を
出した。組合はやむを得ないというのでそれをのんだ。そうして退職金もわずかしか支払われないという協定でありましたが、その退職金もいまだに一銭も支払わない。そこで退職者は退職者連盟をつくって炭労に押しかけた。炭労の事務所は毎日のように占領された。しかも今度は地方労働
委員会に提訴をして、労働組合としての資格をとった。その組合資格をとった退職者連盟は、労働者の入坑を阻止するという戦術に出んとしておる。労働組合の方は入坑する、退職者連盟は退職金を払わないから入坑させないという事態が起こりそうなんです。一体こういうような同じ仲間のもので、やれば必ず血を見ます。しかも退職協定をするかどうかというので、非常に摩擦があって大会で決定したような状態ですから、これは大暴動になる
可能性がある。労働者同士でやる。退職者と在籍鉱員とでやるわけです。こういった悲惨な問題を一体どういうように解決するか。この問題は
調査団の答申と実行が悪ければ、どこにも起こってくる問題であるし、鉱害の問題と同じように、今後の多くの炭田において見受けられる非常に悲惨な、しかも
日本の
エネルギーの悲劇を全部引き受けたような問題が起こると思うのです。これらについて
一つ簡略でいいですが、基本的な問題だけ御
答弁を願いたい。