○小平
委員 大谷石採掘による災害の
実情を
調査する
目的をもって、去る九月四日、宇都宮市に派遣されました
委員を代表して、簡単に御
報告を申し上げます。
現地に参りました
委員は、私、
田中武夫君及び板川正吾君の三名であります。なお、
現地において、広瀬秀吉議員が
調査に参加されました。
当日は衆議院出発、宇都宮市到着、栃木県庁において、大谷石採掘危険防止対策
協議会より
説明聴取及び懇談、大谷石採掘坑内視察、立岩
地区陥没現場視察、帰京の行程で
調査を行なったのであります。
まず、大谷石採石業とこれに伴う災害発生の概況を申し上げますと、大谷石採石業は、
昭和三十一年の採掘量が二十三万トン、出荷額が四億五千万円で、逐年増加の一途をたどり、
昭和三十六年には採掘量五十五万トン、出荷額十億七千万円に達し、需要の安定、増大のため、概して好況を続けて参りました。しかし、
企業規模は小さく、労働
基準法適用事業場九十九のうち、従業員数五十人ないし九十人のものはわずか三、大部分は従業員数三十人以下のものであります。また、業務災害の非常に多い業種でありまして、災害発生千人率では、全産業の三七に対し、大谷石採石業は一三二を示しております。災害発生状況は、最近七年間毎年百六十ないし二百二十の事故件数があり、
昭和二十七年以降の大きな事故は約四十件、うち落盤事故が二十一件、死者三十人となっております。
最近におきましては、本年七月三十日に立岩
地区で大
規模な陥没事故があり、通行人一人と採石従業員二人の死者を出しております。また翌三十一日にも隣接した
地区に陥没事故が発生いたしました。
このような災害に対処し、現在宇都宮市が中心となって、県、市・警察、労働
基準局、
通商産業局、業界等を構成員とする大谷石採掘危険防止対策
協議会が設けられ、これに関係法規、災害発生時の処理方法及び安全採掘
基準に関する三小
委員会が置かれて
検討を続けております。これより先に
関係者が通産省地質
調査所に委嘱して地下の状況を
調査したところによりますと、立岩、瓦作
地区では家屋所在の地下が空洞になっており、今後陥没事故の起こり得る
可能性が十分ありと
指摘されましたので、
協議会より、事故の事前察知、徴候のあった場合の処置、廃坑または危険個所の表示、家屋の移転、安全採掘
基準等について勧告が出されております。
次に、栃木県庁における
関係者からの
説明並びに視察現場の模様を概略申し上げます。
最初に、栃木労働
基準局長より、大谷石採石業の概況、災害の状況等の
説明があり、また従来は法的取り締まり、すなわち採石法及び労働
基準法による取り締まりが不十分なきらいがあったので、今後は坑内外の安全法規を
整備する必要がある、また
行政庁間の連絡を密にし、業者の協力を得て実態
調査を行ない、これに基づいた安全
基準を
確立する必要があるとの意見が述べられました。続いて、同局安全衛生課長より、坑内の構造、陥没
地区の地形等について
説明がありました。
次に、宇都宮市厚生部長より、当面の危険区域である立岩、瓦作
地区内の四十七世帯に立ちのき勧告を出しており、うち四世帯がすでに立ちのいたとの
説明及び
協議会と小
委員会の構成、議題等について
説明がありました。
次に、通産省工業技術院地質
調査所の中沢技官より、陥没事故は自然的断裂系に採掘という人工が加えられてバランスがくずれることによって起こる、断裂系を
調査すると、次の陥没は人家の下で起こると予想されるので、まず人家の立ちのきが焦眉の急である、従来の陥没は必ず断裂系に沿って起きているので、今後の災害を予知し、予防するためには、断裂系の
調査と坑内測量に基づいた千分の一の地形図をつくることが必要である、この地形図は施業案の認可にあたってもぜひ必要であるとの意見が述べられました。
次に、東京通産局鉱政課長より、採石法に基づく
行政指導を
検討しつつあるが、とりあえず旧廃坑の補強は行なわず、その上の建物の立ちのき等を行なうことと、採石操業は続行しつつ坑内外の安全を
確保することとを基本
方針として指導し、将来は採石施業案の通産局長による認可制を
確立することと、保安
地区を設定し、業者からの情報収集を徹底することとを実現したいとの意見がありました。
最後に、栃木県知事より、大きな災害が連続して起こらなかったためもあって、対策が不十分であったが、今後は人命尊重を根本に対策を
考えたい、また従来の対策は業界が中心となっていたが、これからは市が中心となり、県がこれに協力する体制をとるとの意見がありました。
続いて、市内の採石場におもむき、抗内における側壁、柱、天井盤、運搬路等の状況を視察し、さらに立岩
地区の陥没現場に参りましたが、一千余坪の広範囲にわたって地面が一挙に陥没し、到るところに亀裂を生じ、諸所にすりばち状の大穴を生じている惨状を目撃して、私
どもも恐怖の念を禁じ得なかったのであります。この
地区は陥没後一カ月を経た当時、なお少しずつ崩壊を続けているとのことでありました。
以上、
調査結果の概要を申し上げましたが、大谷石採石業のような特に危険の多い業種については、関係
行政庁間の密接な連絡のもとに完璧な安全操業対策を
確立し、法規の
整備をはかり、指導監督の万全を期することはもちろん、地質
調査所技官が
指摘した地形図の作成についても、当局において十分善処されんことを特に
要望いたすものであります。
以上、簡単でございますが、御
報告といたします。