○久保田(豊)
委員 二、三
宮澤長官にお伺いいたしたいと思います。新
産業都市建設実施の
段階になるわけですから、それに連関した問題についておもな点だけを、あまり時間もないようですから、簡単にお伺いいたしたいと思います。
第一番の基本の問題として、
政府として、特に
長官としてこの
事業をやられる上で一番問題になるのは、いわゆる池田内閣の高度成長政策というものとこの新
産業都市の
指定なり
建設というものをどう調和させるかということであると思うのです。と申しますのは、この新
産業都市の
政府の構想は一体どこから発想したかといえば、いろいろの要因があります。ありますが、いわゆる高度成長政策によって独占資本の合理化なり拡大がどんどんできてしまった。しかし、それを裏づけていく社会的施設、つまり社会資本の立ちおくれというアンバランスができた。これを全般的な立場から
調整しよう、これは
政府が何と政治的に言われようと、経済的に見れば結局そういうことになろうと思う。そこで、問題になってくるのは、池田さんの
考え方は、
政府の高度成長政策で民間が行き過ぎてしまった、その景気の行き過ぎを
調整するのだ、この
調整がつけばまた池田さんの
考えておられるいわゆる所得倍増
計画のベースへ戻ってくるのだ、こういうふうなことだろうと思う。そういうことを前提として実施せられるのだと思います。ところが、私の理解では違ってきていると思う。今までの高度成長政策というのは、これは私が言うまでもなく、あなたは専門家であるからよく御承知の
通り、つまり設備
投資を中心にした指導力のないもので、それで今行き詰まってきておる。単なる一時的行き過ぎではなくて、根本的に行き詰まってきた。つまり、国内においてはこれによって生産能力が
工業を中心にして非常に大きくなってきた。それと同時に市場との
関係で非常なアンバランスができおるというところに問題があろうと思う。市場でこれから伸びていくという点は、何といっても、従来のような設備
投資を中心にしたいわゆる高度成長政策、これから先どうこの
調整過程がおさまろうと、長期的にここに大きな矛盾が出てきている。従って、結論的にいえば、今後とも伸びていく面は、輸出の面なり、あるいは個人消費の面なり、つまり広い意味の
政府の財政による消費の拡大、そして市場を拡大する、この三つしかないと思う。ないと思うが、拡大をした生産能力ということから
考えてみれば、このいずれもそこに非常な困難があると思います。従って、結論として私申し上げたいのは、池田さんの
考えておられるような七・二%、こういうような高度成長政策、つまりその
内容は従来は少なくとも設備
投資中心です。そういう設備
投資というものは今後持続は困難になる、できなくなる。この設備
投資がいわゆる工場になり、その工場が中心になって町づくりをやろうというのが、大体において今度の案です。この設備
投資中心の高度成長政策というものと、それを裏づけるためのいわゆる新
産業都市計画というものであると理解をせざるを得ないのです。その設備
投資を今後
政府の
計画ないしは財界の希望のようには伸ばし得ないという客観
情勢が出ている限り、設備
投資は相当下回らざるを得ない。この
事態の内部にはいろいろ矛盾はありますけれ
ども、それはあとで順序を追ってお聞きしますけれ
ども、この新
産業都市計画そのものは、一応出発して、そういう前提に立っておるそれと見合ったものとして発展していくということになる。いわゆる
先行投資です。多少のでこぼこはありましても、そういう設備
投資が
計画通り高度成長政策でいく。つまり設備
投資がいくという前提に立ってそれを裏づけていくためのいわゆる
先行投資、こういう
考え方はそこに基本的に大きな食い違いが当然出てくると思うんです。これは出てこざるを得ない。この
計画そのものにもいろいろの問題はありますけれ
ども、その基本の問題が私は必ず狂ってくると思う。現に私
どもの方あたりもそうなんです。たとえば石油コンビナートができるというので、もう三年も四年も一生懸命でいろいろな準備でがたがたやっている。ところが今になってくると、いわゆる石油コンビナートができるかできないかわからない。こういうことになります。まだ金を出しておりませんからいいです。ところが農民その他の連中は、そういうことを三年も前から言われておりますから、農業の
計画が立たない。みんな土地が取られるのだということから百姓がでなくなるということで、農業の
計画を本気に立てるのがいいのか、農業の再編成をするのがいいのか。どうせ農業がだめになるから、どうしたらいいかわからぬ。町村もそうです。県もそうです。こういう問題が出てきます。予定
通りやると、私のところあたりは三千四百億くらいの設備
投資が行なわれる
計画ですが、これがどう変わってくるかによって、これを含めて
都市計画なり何なりが変わってこなければならぬ。
計画が立たぬですよ。個々によって非常に違いがあると思うけれ
ども、その間のずれが出ますと
計画が過大になってしかもそれは
地方財政としては非常な財政負担をした上で、その財政負担は返ってこないということになる。今
政府としては、政治的な立場からは池田さんは高度成長政策を続けると言わざるを得ないでしょう。その立場はよくわかります。私
どもはそれを肯定するわけではありませんけれ
ども、今の池田さんの立場としては、一応今回のいわゆる景気
調整が終われば、普通の成長ベースになれば、当初のようなことをせずに、
企画庁が本来立てた例の七・二%なら七・二%を中心にしたものをやっていく。しかもその中心もやはり設備
投資が中心です。ところが内外の環境というものは、そういう意味での設備
投資を主動力とするいわゆる高度成長政策というものはすっかり行き詰まりだ。そうすると、これはいや応なしに設備
投資というものをダウンさせざるを得ないと思うんです。ところがダウンしないという前提でこういう新
産業都市計画をやったら、この負担は国としても私は大へんむだなことになるし、ある意味においては、国全体とするれば三重の
投資になるわけです。今でもすでに二重
投資があり、いわゆる過剰
投資が盛んに行なわれている上に持ってきて、今度は社会資本の方でもまたさらに非常な過剰
投資、いわゆるむだな
投資をせざるを得ないということになるのは必然だと思うのです。そこで、
法律の
基準や何かの適用はいろいろありましょう。ありましょうけれ
ども、内閣として一番
考えなければならぬ問題は、特に
企画庁として
考えなければならぬ問題は、正直に今後の日本の経済の持っていき方——もちろん私は全然これからの経済成長がないと言っているわけじゃありません。もちろんいろいろな要因がありますから、ある
程度の成長というものは当然あり得ると思います。それを国としてどういうところに重点を置いてやっていくかということが政策の問題になろうと思うのですが、いずれにしても、その根本の点はもう少し反省してから
各省の
考え方なり何なりの
調整にかからないと、非常に変なものになるというふうに思う。その点を心配するわけです。それはなぜかといいますと、それがことし一年だけの問題ではないわけです。あるいは来年一年だけの問題ではなくて、今後一カ所ができ上がるのには少なくとも十年近くかかる。その間の経済の見通し、経済の動向というものを間違ったら、その結果は十年たたないうちに非常に大きなガンになるということは明らかです。私はそういう点において、
政府が的確なこれからの見通しを立てることはなかなか困難であろうと思いますけれ
ども、しかし、当面の内閣のいわゆる政治的立場というものにとらわれてこういう問題が扱われておったら、将来において大きな禍根を国全体に残すという観点から、
企画庁としてはそういうことをやる役所ですから、政治上のいろいろの立場もありましょう、当面の短期の立場もありましょうけれ
ども、これから後の日本経済の成長率がどうなるのか、そしてそういう場合におきます指導的な役割をするものがどういうものになるのか、従来
通り設備
投資を中心にしたもの、つまり工場の新設、増設ということが中心になったものでいけるのかいけないのか、こういう点を一度基本的に反省して、それと見合って、過去にできた、たとえば
都市におきますこういう工場の過剰集中といいいますか、こういう問題の
修正に重点を置いてやるのか、あるいは中小
企業その他そういうものに重点を置いた設備
投資なり、そういうものに重点を置いてやるのか、あるいは大
企業を中心とした従来と同じ式のものをやるのか、そういうものが
地域的にどのような配置になった場合において初めて日本のこの高度成長政策によってできた
地域的アンバランスの是正に役立つのか、こういう点をもう一度再
検討をしつつこの実施を
考えなければならぬ
段階となってきたように私は思うのであります。こういう点で、
長官としてはどういうふうに基本的に御認識を持っておられるのか、これを
一つお伺いしたい。