○首藤
委員 ゴムはきものに対して、六月以降、香港からの輸出がどういう状態になっているかということは、私もまだつまびらかにしておりません。従って、ここではっきりしたことは申し上げかねますが、ただこの春注目すべき状態にあるのは、クリスマス・ツリーであります。これは現地品の七割までが実は日本で製造されておったのであります。そうして輸出されておったのであります。ところがこの春以来、この輸出が急激に減少して参ったのであります。その
原因を
調査いたしましたところが、香港からの輸出が、日本の減った分以上にふえておるのであります。そうしてその香港のふえた
原因は、いわゆる難民を使って、労銀は必要なし、食券だけで十分だという、この
方法によって香港で多量な製品が製造されるようになってきた。しかも食券だけでございますから原価は安い、日本とは反対に。日本は労銀が高くなった、あるいは資材が高くなったということで、コストは非常に上がってきた。向こうは逆に、一番大きな要素である労銀が食券だけで済むということから、この面でコストが非常に安くなってきた。そこでアメリカのバイヤーはほとんど日本を避けて、香港に実は行っておるのであります。私はゴム製品がさようになるとは申し上げませんが、しかし経済でありますから、そういうこともまたないとは断定しかねるのです。多分にあると思うのであります。そういう点を
一つ外務省は特に留意してもらいたい。今
経済局長が非常に努力されておることはよく了とします。しかし、
現実にかような不安な材料がたくさんある。しかも非常に強い競争相手ができておるということと、業界自身がいわゆる見込み生産をたくさん抱えておる。そうしてこの労務者、中小
企業の労務者の獲得が非常に困難に現在なっておる。仕事がひまになったからといって解雇できない。もし解雇すれば、
あとの補充が困難になってくる。それが経営に全部影響してきておるのが現状の素顔であります。こういう点もまた
経済局長よく
一つ認識されて、今後のカナダ交渉に対しては、先ほど申した日本が入超国であるという
建前から、強く、そうして特にゴム工場が最もその打撃が大きいという点を強調されて、せめてはこの分だけでも特別の
措置を講ずるような交渉をしてもらいたいということを、私はこの際、
通商局長にもあわせて要望しておきたいと思うのであります。
そこで、カナダの問題はその程度にしますが、もう
一つ米国の関税の問題、その関税問題の前の問題として、アメリカには今から三十二年ほど前に、ASP課税方式というものが突然できておるのであります。これは極端な
保護貿易時代の遺物でありますが、現在なおかつそれが存続いたしておる。そうして、それがために日本のゴムはきものの輸出に大きな
支障を来たしておるという実は
現実であります。ASPのこの課税方式と申しますのは、いわゆる「米国産品の生産原価と外国製品の生産原価が、所定の税率によっては均等化しないときは、所定税率の五〇%以内において関税を引上げ又引下げることができる。」という
権限と、あわして今申し上げた「
規定の
適用によって生産原価の格差を均等化することができないときは、関税
委員会ASP課税を必要とする旨を大統領に報告する。」大統領は、その報告を適当と
認めた場合には、ASP関税という特殊な高率の関税を課することができるということに実はなっておるのでございます。政府は、実は三十年前にさかのぼりますが、昭和五年に浜口内閣が組織されて、井上準之助さんが大蔵大臣になった。そうして当時金の解禁を実は断行したのでございます。この金の解禁を動機として、日本の経済は急転直下、非常な実は不況に襲われたのであります。同時に、いわゆる弱いゴム製品の工場は、わずか一年の間に百何十工場が倒産するというような状態に陥ったのであります。その倒産する前において、全く名状しがたい海外に対するダンピングが行なわれた。それでアメリカにも当然不当きわまる価格で輸出された。当時日本の大使が新しく更迭しまして、その大使がフーヴァー大統領に信認状を奉呈した。そのときにフーヴァー大統領は、日本のキャンバス・シューズを持っておった。日本ではこのくつがどうしてこんなに安くできるかと言われるほど、実は日本のキャンバス・シューズというものは、そのときには極端な投げ売りが行なわれたのであります。これにおそれて、アメリカは何らかの対策を講ずる必要ありということで、非常手段として、このASP関税法というものを実は
設定いたしたのであります。率直に言えば、ゴム製品のダンピングによってこれができた。そしてそれが今日ゴム製品輸出の非常に大きなガンになっている。
自分のまいた種を
自分が掘り起こさねばならぬというような状態になっておりますが、とにかくもそういう経緯で今から三十年前に非常手段としてこういう対策がとられておる。そして今日それが存続しておる。それがために、ゴム製品の新しい製品を作って、それが非常な勢いで輸出が振興すると、アメリカの
業者が直ちに政府に陳情してASPの
適用を迫る。それでアメリカ政府もASPを
適用するというところから、今日まで、この三、四年間だけでもこのASPを
適用されたことによって輸出が中絶いたしました。東洋クロス・スニーカー、レーヨン・クロス・スニーカー、底の材質が天然ゴム以外のスニーカー、チーフ・バリュー合成ゴムの総ゴムぐつ、こういう製品を非常に苦心惨たんして
業者が生産され、そうしてアメリカの需要家の歓迎を受けて大量に輸出されたのでありますが、それがこのASP
制度によって跡形もなく輸出がとまってしまった。そしてそのつど業界では多量の製品と仕掛品と原材料手持ちを全部ただ同様に他の方に処分しなければならぬということで、不測の損害をかけられてきておるのであります。そこで、このASP
制度は何といっても不合理きわまる
制度でありますから、ことに自由化のやかましくなった今日、自由貿易を強調される今日、かような特殊な
制度はこの際外務省が、また
通産省の
通商局もこれに真剣に協力して、これを撤廃するというところに進んでもらいたいと思いますが、外務省あるいは
通商局がこの問題について今日まで何らか関与した事実があるかどうか、もしあればその点を回答してもらいたいと思うわけであります。