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1962-08-30 第41回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       植木庚子郎君    浦野 幸男君       加藤鐐五郎君    倉石 忠雄君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       中野 四郎君    中山 マサ君       楢橋  渡君    早川  崇君       松山千惠子君    森田重次郎君       米田 吉盛君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席政府委員         厚生政務次官  渡海元三郎君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         保安課長)   中原 英典君         検     事         (刑事局青少年         課長)    荻野かく一郎君         大蔵事務官         (主計局総務課         長)      岩尾  一君         参  考  人         (福岡麻薬禍         対策推進のため         の会委員)   大村 重人君         参  考  人         (神奈川麻薬         相談員)    中田 志郎君         参  考  人         (神戸市番町地         区麻薬撲滅協議         会代表)    近藤  猛君         参  考  人 木下サカエ君         参  考  人 中村 八大君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 八月二十九日  公衆浴場法の一部改正に関する請願阿部五郎  君紹介)(第五三四号)  失業対策事業打切り及び療養費払い反対等に関  する請願大原亨紹介)(第五三五号)  同(五島虎雄紹介)(第五三六号)  同外十八件(高津正道紹介)(第五三七号)  同(堂森芳夫紹介)(第五三八号)  同外一件(川上貫一紹介)(第六二五号)  同外一件(志賀義雄紹介)(第六二六号)  同(滝井義高紹介)(第六二七号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第六二八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第六二九号)  同(島上善五郎紹介)(第七〇一号)  同外三件(川上貫一紹介)(第七六四号)  同外三件(志賀義雄紹介)(第七六五号)  同外三件(谷口善太郎紹介)(第七六六号)  戦没者妻等特別加給金支給に関する請願(  前田正男紹介)(第五三九号)  同(田中龍夫紹介)(第五四〇号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願山崎始男紹介)(第五四一号)  失業対策事業打切り反対及び雇用安定等に関  する請願内海清紹介)(第六三〇号)  同外一件(門司亮紹介)(第六三一号)  栄養士法等の一部改正に関する請願綱島正興  君紹介)(第六三二号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(永  山忠則紹介)(第六三三号)  薬種商取扱医薬品に関する厚生省令撤廃の請  願外一件(宇野宗佑紹介)(第七〇〇号)  戦争犯罪関係者の補償に関する請願外一件(保  利茂紹介)(第七〇七号) は本委員会に付託された。 八月二十九日  千島、歯舞諸島への墓参実現に関する陳情書  (第三四八号)  麻薬撲滅に関する陳情書  (第三五  三号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の一部を改正する法律案成立促進に関する陳  情書  (第三五  四号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の適用業種より食肉販売業除外反対に関する陳  情書  (第三五五  号)  清掃施設整備費国庫補助増額に関する陳情書  (第三五六号)  簡易水道設費国庫補助率引上げに関する陳情  書  (第三五七号)  へき地住民保健福祉対策確立に関する陳情書  (第三五八号)  国民年金保険料納付に用いる国民年金印紙代金  を後納制改正陳情書  (第三七四  号)  失業対策事業打切り反対等に関する陳情書外六  件  (第三七八号)  公立病院経営改善に関する陳情書  (第三七九号)  積雪厳寒地域療養費に冬期暖房費加算に関す  る陳情書  (第三八〇号)  外傷性せき髄障害者長期傷病給付及び休業補  償費の給付率引上げ等に関する陳情書  (第三九八号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件(麻薬対策に関  する問題)      ――――◇―――――
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  先日の委員会におきまして、麻薬対策に関する件について調査のため、参考人出頭要求に関し、その人選等委員長に御一任願いましたが、本日、福岡麻薬禍対策推進のための会委員大村重人君、神奈川麻薬相談員中田志郎君、神戸市番町地区麻薬撲滅協議会代表近藤猛君、木下サカエ君及び中村八大君の五名の方々参考人として当委員会に御出席いただいております。  参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。参考人には御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。本問題につきましては各方面に広く関心が持たれておりますが、当委員会におきましてもこの機会に、本問題に直接御関係をお持ちになられますあなた方から忌憚のない御意見を伺い、調査参考といたしたいと存じます。  なお、議事規則の定めるところによりまして、参考人が発言さないます際には、委員長の許可を得ていただくことになっております。また参考人の方方は、委員に対して質疑することは、できないことになっておりますので、以上お含みおき願いたいと存じます。  なお、議事の整理上、御意見をお述べ願う時間はお一人十分以内とし、御意見の開陳のあと委員の質疑にお答え願いたいと存じます。参考人大村重人君。
  3. 大村重人

    大村参考人 私は麻薬中毒患者治療担当者の立場から一言申し上げます。  麻薬中毒患者治療はまことに困難をきわめるものでございまして、入院当初において麻薬中毒のおそろしさを説明し、治療必要性をじゅんじゅんとして説いて、納得づくめで入院せしめた者でも、さて入院治療を始めますと、禁断症状の激しさに医師、看護職員を困らせ、あるいは他の患者治療の妨げをするなどのことがありまして、これが治療にはなみなみならぬ努力を必要とするのであります。もしそれ患者において治療意欲なくしてこれを強制的に入院せしめましたときには、治療を最後までやり抜くということはほとんど不可能でございます。とは申しましても、戦後直後までの患者は、最近の患者に比較しますと扱いよかったのではないかと思います。最近の例を申しますと、ある病院における例は、職員をおどす、他の患者を扇動する、入れ墨男面会に来る、面会を拒絶するとすごむ、しかのみならず退院後に他の入院患者の家庭を尋ね歩いて金品を強要するというようなことがありまして、大へん当該病院は困ったということでございます。またある病院では患者空手何段かでありまして、職員に暴力をふるう、そのために職員空手即席練習をやったというようなこともございます。そういうふうなことで、他の本質的な精神障害者治療支障を来たしたということもございます。最近の患者がしごく悪質になった原因についての考察は長くなりますので省略しますが、上述のような事情でございますので、麻薬中毒患者を他の善良な一般障害者と同じ病院入院せしめますことは、善良な一般障害者治療に重大な支障を来たすのみならず、前者の治療を不徹底ならしめ、たとい禁断症状の時期は通り抜けたといたしましても、長期収容が困難なために、麻薬慣用から抜け出させまして第二の人生に更生させるということははなはだ困難だと存ずるのであります。かかる理由から、麻薬中毒患者治療には従来の精神病者とは異なった別個の施設を必要とすると断定いたします。もちろんかかる施設を設営しますのには、相当莫大な費用を要するとは思いますが、少なくとも麻薬中毒患者中特殊の者、すなわち精神病院での適合性のない者の収容所は、国家百年の計のために、早急に設備する心要があろうと存ずるのであります。(拍手
  4. 秋田大助

    秋田委員長 次に、中田志郎君。
  5. 中田志郎

    中田参考人 横浜の、神奈川県の麻薬相談員中田志郎でございます。  麻薬の問題に関しましては、昭和二十九年からスラム街の方に入りまして、現在までやってきておったのでございますが、麻薬相談については、私設麻薬相談の当時と、それから県で委嘱された後の麻薬相談、この二つに分けられると思います。  麻薬の時代になりましたのは昭和三十一年当時からでございますが、その当時は、世間では麻薬という問題に対しては全然関心を寄せませんでした。そのために警察あるいは厚生省、お役所あたりでも、何をやっておるか、あるいは患者を利用して一もうけするつもりだろうというふうな色めがねで見られた当時もあったわけであります。しかし細々と私費をもってやって参りましたけれども、絶対に個人の力ではやり抜けるものではない、こういうふうになってしまいまして、実は去年の暮れにはあきらめかけておったわけです。ところが県の方でそういう麻薬相談員の制度をつくったということで委嘱されました後は、まあ多少の効果はあるだろうというふうに考えておったわけです。その後、ことしの七月七日でございますか、例の御承知の麻薬禁断症状の騒ぎが、いわゆる横浜麻薬銀座と称せられておる黄金町のガード下で起こりまして、自来今日まで、ほとんど毎日が麻薬患者との応対、それから立ち上がらせよう、立ち上がってもらいたいのだというところのささやかな相談、これに明け暮れておる状態でございます。  しかし先般の四十一名措置入院させましたうち、今日現在でもってわずか十名しか立ち直っていない。これは従来の統計から見ますと相当に飛躍されたものではありますけれども、相当努力をしまして、警察を初め、厚生省あるいは県、みんなが力を合わせてやってみたところで、二割四分の更生率しか示されていない。これはどこに原因をするかということを考えてみますと、退院をさせた後にその患者を置く足場がない。これが一番の原因のようでございます。しかもああいうふうな麻薬中毒患者になるというふうな人たちは、根本的にまず無知であるということです。薬に対する無知というよりも、人生そのものを誤って考えておるのじゃないか、こういうふうに感ぜられます。そこで、そこにアフター・ケアといたしまして、まず足場を作ってやって、あるいは低家賃の収容施設をつくってやる。それから職業の補導、これらが必要になってくるわけでございます。  それから入院中にやっておいていただきたいという希望、これは精神的な面と肉体的な面の訓練、これを入院中にやっていただきたい。それには生産的な作業療法をやっていただきたいということです。それから精神的な面におきましては、今さら尋常一年生から再教育をするというわけにはいきません。そこでまず私たちの考えとしまして、原始人に帰らせるということです。人生を初めからやってもらいたい、そういうふうに考えております。なまじっかなお説教では、これは絶対になおりっこありません。  こういうふうなことをやりますためには、単なる県とか警察の力ではできませんので、国の力でやっていただきたい。現状から見ますと、麻薬中毒患者階層一般社会に浸透してきております。五年、六年前の当時は、売春婦とか麻薬愚連隊密売団、そういうふうな人たちに限られておったものが、最近では一般社会の各階層にしみ込んできておるという事実から見まして、これは一つの市あるいは県あたりでやったところで間に合いっこないわけでございます。横浜に置けば、退院させたあとでも、いつでも麻薬のそばにおるわけでございますから、すぐに打ってしまいます。しまったと思ったときにはもうおそい。ですから退院後はできるだけ地方に疎開させるように仕向けておりますけれども、現在では青森、北海道函館、そういうふうなところにまで麻薬が入り込んでおる。そうすると、では日本全国どこへやったらいいだろうということになってしまいまして、安心して疎開させることもできない、そういう実情でございます。そのためにはどうしても集団で隔離をしておく、理想的なところでは離れ島、そこに鉄格子のない収容施設、これが精神の面においても、心理学的な面から見ましても、一番よい方法でないかと考えております。  もう一つ、私たちは日常その麻薬銀座を歩いておりますけれども、一年あるいは十カ月たちますと、古い顔が見えてきます。ははあ、あれが出てきたからもう一年だなというふうに感じさせられます。現在の刑法は次第に重くはなってきつつありますけれども、まだまだ軽いわけでございます。今の麻薬密売団あるいは中毒患者、この人たちは、打つそのどきから、あるいは密売に従事するそのときから、逮捕されることを覚悟してかかっているわけでございます。たかが一年や十カ月だからというので、たかをくくってかかっているわけでございます。ですから麻薬密売をする、あるいは麻薬を打つということは間尺に合わないのだ、患者あるいは密売従事者たちがそういうふうに感ずるまでの重い刑罰、これが絶対に必要であると思っております。それをやりますためには、やはり警察取り締まりの力に依存するしかないわけでございます。麻薬相談員たちは、そういうふうな愚連隊密売団の中を歩いておるわけででございますが、現在までのところでは、まだ麻薬相談員に対する迫害というふうなものは出ておりません。一度、夜明け方に戸をたたかれたことはありました。け飛ばされたことはありましたが、それ以外にはございません。しかし今後取り締まりが強化されて、麻薬密売団資金源がなくなってきた場合どうなるかということは、一応心配はしております。しかし神奈川県の場合、十三人の麻薬相談員のうち、現実に今動いておりますのは二人だけでございますけれども、麻薬相談員の一人や二人、と申すと語弊があるかもしれませんが、からだを張って、それでなお効果があれば喜んで倒れると思うのです。すべて人間は平等であるということから麻薬の問題に携わったわけでございますが、今後国におきまして強力な措置を絶対にお願いいたしたいと思っております。  それから先般中山先生初め、皆様横浜市においで下さいましたときに、七百億円というものが国外に流されている、こういうことでございましたが、国といたしましてはこの七百億、一年分を麻薬の問題に即時に注ぎ込んでやっていただきたい、そういうふうに考えております。そうでもして思い切った方法をとらなければ、この麻薬問題に対する短期決戦はできないと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  6. 秋田大助

    秋田委員長 次に、近藤猛君。
  7. 近藤猛

    近藤参考人 私は、神戸市の番町地区麻薬撲滅運動をやっておるものでございます。まず参考意見を述べる前に、きのう参議院の本会議麻薬をなくするための決議がなされておりまして、またさき国会では衆議院麻薬をなくするための決議がなされました。これで国会全体がわが国から麻薬をなくするための決議をなされたわけでございます。われわれ地域麻薬撲滅運動をやっておる者といたしまして、また麻薬災いのために苦しんでおる父兄といたしまして、この上ない喜びでございます。この席をかりて厚くお礼を申し上げます。と申し上げるのは、本衆議院社労委員会がその突破口を開かれたからでございます。さき国会衆議院の本会議にかける前に、本委員会決議をなされて突破口を開かれたということに対して、深く敬意を表するものでございます。このことは皆様方が、さき参考人も申し上げましたように、日本の国に現在麻薬災いがどのような状態になっておるのか、日本の宝が七百億円、毎年三国人の手によって国外に持ち去られております。その代償としてわれわれの血肉を分けた日本の兄弟、青年諸子が二十万人、廃人同様になりましてちまたにうろついております。こういう惨状を御認識なされました委員先生方が深く心を痛められて、決議なされたものとわれわれは信じております。その点、再び厚くお礼を申し上げたいと思うわけでございます。  神戸市における麻薬密売状態、それから患者状態、そういう問題についてお話し申し上げたいと思うわけです。麻薬密売業者——昭和三十三年にわれわれの会が発足いたしまして撲滅運動にとりかかったわけでございますが、その当時の模様を申し上げますと、二つ麻薬密売の暴力団が家の前で拳銃を撃ち合ってけんかをいたしました。そのためにわれわれの町民が二人、ふとももに貫銃創を負うという事件が三十三年にできたわけでございます。われわれ町民といたしまして、こういう状態をほっておけないということで立ち上がったわけでございます。その後、警察当局取り締まりの強化に基づきまして、密売者はことごとく検挙されるという状態になったわけです。われわれはほっと一安心いたしました。しかしこれら密売業者裁判所送りになりますと、大体一年、重い者で二年というような軽い刑が判決されるわけでございます。大体求刑がその倍の四年あるいは二年、判決がその半分くらいという状態でございます。われわれ、町内で密売業者の悪らつな状態を目に見ている者として、この裁判は納得できないというようなことを裁判所に抗議に行くというようなことも起きたわけでございます。これら密売業者は、軽い刑で済みますと、またその刑がきまりましても、すぐに保釈あるいは最近では刑の執行停止というような手を使って、どんどん出てきます。そうしてまた密売をやるというのが通例でございます。三国人陳呉玉英という者を例にとってみますと、これは兵庫県警に六百グラムの麻薬を持ってつかまりました。そうして裁判の結果、二年という刑に処せられ、刑に服しましたが、直ちにその刑の前に保釈ということで出所しております。直ちに大阪密売を始める、そして大阪府警につかまる、また保釈をきかして出る、そして香港へ逃亡する、こういうのが麻薬密売に対する現行法取り締まり状態でございます。このような状態でございますから、なかなかやめようといたしません。密売業者は暴利をむさぼるために新しい患者を探してどんどん麻薬密売を広げていこうという形が現状ではないかと思うわけです。今のような現状でいきますと、この推定二十万人の患者がどんどんふえていくのではないか。また国外に持ち去られるお金がどんどんふえていくのではないかということを、一国民として心配するものであります。  それと麻薬患者の問題でございますが、麻薬患者は、さき専門病院関係の方が述べられましたように、現在の法律でございますと、人権を尊重するという意味で本人の自主的な意思でないと、入院治療ができないという状態でございます。またその費用も、本人が勝手にやったのだから、本人が負担せよというようなやり方でございます。そこで病院に入りましてもすぐ、こんなえらい目でなおすのはいややということで、出てくるわけでございます。何とか二カ月でも三カ月でも置いて、薬を切ってやって更生させてやろうという病院側、あるいは地方自治体、あるいはわれわれ撲滅協力議会援護の手がありましても、なかなか聞かないというような状態でございます。そこで強制収容というような形を取りきめていく必要があるのではないか。それと、麻薬患者につきましては、もうとことんお金を使い果した上で入院したい、もう薬を打つ金がないので何とかどこかに逃避したい、体力を回復したいというような面からの治療があるのではないか。そういうことで麻薬患者は無一物であるというような状態から、国費で入院治療させるという施策をお願いしたい。そのために、病院建設の問題につきまして、麻薬密売の根拠地である東京、横浜、名古屋、大阪神戸福岡、これに対して早急に県立の麻薬専門病院を一カ所大体五百ベッドぐらいで建設するような方法を講じてほしい、こう思うわけでございます。  それから三点といたしまして、こういう二つ施策を講じながら、国全体の国民一人々々が麻薬を憎むという考え方を植えつけていく。先生方のお気持が一人々々の国民に食い入るような宣伝の方法をやっていく。国民的に麻薬を憎むという思想を植えつけていく、そういう必要があるのではないか。失礼な話でございますが、内閣総理大臣から以下一国民に至るまで、わが国からは麻薬を追放していくという心がまえを持っていく。そのために国是として、また国策として麻薬密売をやらせない。日本の国ではそういうものは禁止していくというような強い方法を講じていかない限り、昔の中国の二の舞になるのではないかと、そういう心配もするものでございます。  以上、非常に卒爾でございましたが、参考意見として述べさせていただきました。(拍手
  8. 秋田大助

  9. 木下サカエ

    木下参考人 私は麻薬患者の母でございます。このたび紹介にあずかりました木下サカエでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私はもう根っから無学で、ちょっとも何事もわかりませんのですが、直接自分の感じたことだけ、また自分の目から私のような境遇の人を見たことだけを一応述べたいと思います。  私は麻薬患者の母として十二年このかた、長い間子供についていろいろ苦労をしてきました。こういう子供社会に送ったということも私の不徳のいたすところでございます。恥ずかしいものですから、自分を犠牲にしていろいろと苦労をいたしましたのですが、初めは少しでございましたが、どうしても一日々々と量が多くなりまして、家のものを持ち出す。しまいには親戚にいろいろ御迷惑をかけました。そして、親戚にいろいろと借りたものは催促せられましたが、私としては家に何にもないので断わりをします。またその次に隣から来られる。もうしまいのあげく、行くところがありませんので、私は警察に行きました。一番悲しいと思いましたのは、患者を持って相談相手のないのは私はほんとうに困りまして、警察に行ってもあかんということはよくわかっておりますが、警察にお願いすれば何とかならないかと思って警察の方に行きました。警察に行きましたところが、警察では、とにかくとったのではない、親戚のものを借りたのだから、これはどうしても体刑にはなりません。どうしてもこの子を入れるとするのでしたら、薬の現品を持ってきなさい。私も子供をこういうような前科者にしたくないのですけれども、本人にもよく言い聞かせまして、寒い時分でしたが、一月の十三日に、私は子供を連れて警察に二回ほど自首させました。最初は一年ほどおりました。それですが、帰りますと、やはり打っています。早い話が、暑い時分にそこらに冷やし水がある、ああ飲みましょうかというような調子で、軽軽とやってしまいます。なかなかこの中毒というものはなおらないものでございます。  それで、私の思いますのは、えらい勝手な願いかわかりませんけれども、結局は売るところがなければ打たないように思います。普通の方でもたばこや酒をやめて下さいと言ってもなかなかやまらない。それ以上、二十倍もきつい薬でございますから、どんなに言いましても、とうていこの薬はやめないと思います。結局こうなりますと、あっても打たなかったからいいじゃないかと言われるかもしれませんが、どうしても薬のある限りは中毒患者としては打ちますので、それですから何とかこの密売者を取り締まっていただきたいと思います。  それですが、密売者も、行きましても罪があまりにも軽いと私は思います。行きまして二年ほど入ったかしらんと思うと出てきます。また二、三カ月おって保釈で出る人もおられます。それですけれども、打つ人は行っても金がないから保釈もできない。結局金もうけできない人は罪に落ちて、大きな金もうけした人は保釈で出てきます。そうしてしまいには執行停止というようなことで、入らずにそのまま過ごしている人もたくさんございます。密売者の方の生活をながめておりますと、金づくめで、たいがい自家用の一台や二台は置いております。立場変わって私たちは日雇に行ってわずか四百円、五百円の金をもらってきて、きょうはこれで帰って、五百円の金で米を一升買いましょう、残りのお金でおかずも買いましょう、ふろ銭にもしましょうと思って帰ってきたところが、麻薬患者から、お母さん金をくれ。この金はどうしても今晩家内が寄って食べなければならぬ金だから困ると言っても、言い出したらなかなか聞きません。それは親が甘いから出すと言われるかもしれませんが、この禁断症状というものは親兄弟、肉親としてはなかなか見られない。禁断症状が出て参りましたら、そこらに出刃でも何でもあれば殺してでもとっていきたいということが、麻薬患者の常日ごろのことでございます。そんなことですから、もしかのことがあればこわいし、よそのものをとってもいけませんので、まあまあしょうがない、今晩食べるものがなくても、今晩塩を添えて食べてもいいから、この金を二百円やれば一服買えるからというような気持で、肉親は出している状態でございますので、密売者は一日も早くなくしたいと思います。  なぜそれを言うかといいますと、この六月、七月ごろに薬が全然ないときがありました。そのときには薬が一服千円、二千円というような時期もございました。しかしそのときには金がないし、一服千円では買えないと思うと、苦しくても三日でもしんぼうしているようなこともございました。ですから、私は薬さえなければ絶対に中毒患者もなおると思います。これをなくするということは無理だと思いますから、私の思いますのには、一時病院も望んでおりましたけれども、病院は、入れていただきましても全然なおる人がないのです。それだから、いっそ強制収容をするような施設をこしらえていただきまして、そこへ患者を一時収容していただく。今の病院は、何十人入れていただいて、国家が幾ら金を使っても、なおる人がないのですから、結局こういうばからしいことは私はせぬ方がいいと思います。そして施設をこしらえてもらってそこに収容していただきまして、ここへ病人で入る人はありませんから、一、二カ月すれば禁断症状がとれて、また自分におのおの手に持った職がございますので、それを生かして、その中で自分の食べるくらいをさせていただく。  そして、密売者には三国人というものがついております。日本人が百万をもうけると、このシナ人は一億、二億というようなぼろいもうけをしております。私は無学で三国人をこちらの罪に落とせるかどうか、そのことは私はわかりません。それですけれども、できることでしたらこの三国人日本の刑の最高を打っていただきまして、そのときにはあるだけの財産は全部没収する。それで今度施設をこしらえて、その施設に入れていただくというようにして、三国人日本の刑を勤めたら向こうの方に送還するというようなことを私は望んでおります。  これは昭和何年ですか、この前始まってからでしたら約二十年ぐらいになると思います。ですから、今までこのままになっておったということは私はよくわかりません。しかし警察が悪いともお国の人が悪いとも思いません。これは至るところにあるのです。私は姫路にあるということは聞いております。しかしそれから向こう、約十里も離れておりますところに行きましてこの薬のことを言いましたら、だれも知りません。それだけに、これはある部落のちっとしたところに密集しております。その密集しているところにどれだけの悲惨さがあるかということを私は考えていただきたいと思います。私の願いは収容施設をこしらえていただくことと、そして密売者を取り締まっていただくこと、三国人もついでになにしていただくこと、全部持っているものは取り上げていただくというふうに、法で縛っていただけば、打つ人もなくなる、また売る人もそれでなくなるように思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  まだいろいろ話がありますが、私は家庭の方の苦しんでいるのを見てみましても、ここで一ぺんにお話しできないです。それは気の毒な方もございます。三人ぐらいお子さんをかかえて、その三人の息子さんが打っています。そのお母さんが何をしているかというとくず屋さんをしています。そのくず屋さんが帰ってきて、二百円くらいしかもうけてないのに、三人の息子が薬代に持っていってしまう。くず屋さんですからあすの買入れをしなければならないのに、その金もないような状態の方もあります。こんなお話をここで私が三時間しましても、とてもできないと思いますので、そういうような境遇にある人のことをよく考えていただきたいと思います。一日も早くこれをなくしていただきたいと思いますので、皆さんの努力でどうぞよろしく法律で縛っていただきたいと思います。(拍手
  10. 秋田大助

  11. 中村八大

    中村参考人 麻薬の経験者といたしまして、きょういろいろ話を聞いていただきたいと思います。  麻薬を最初に目のあたりに見たり、そういうものがあると知り出したのは、大体十年ぐらい前です。当時のジャズ・プレーヤーとしての私の環境には、全般というわけではないのですけれども、ほんの一部にそういうルートを持っている線がありまして、必ず楽屋にはだれかそういうルートを持ち込んできたケースがありました。最初のうちは麻薬がどういうものであるか、あるいは打ってみるとどうなるということは、ほとんど興味もないし、もちろんそういった感覚からだけでもおそろしいものという感じで、全然手出しはいたしませんでした。しかし二年、三年、周囲に麻薬患者の方がいたり、あるいはそういう環境がいつもあると、つい手を出してみたくなる。そういう環境を二、三年経まして、ちょうど今から五年くらい前に、もちろんいろいろ仕事も忙しくなったし、あらゆることで精神的に大へん疲労しておりましたときに、手を出すようなことになって参りました。それから一週間、半月、なかなか中毒になるまで大へんに期間もかかるし、あるいは最初に打ったときなどは、すぐ食べたものは全部あげてしまうし、こんな苦しい思いをするものはないほどばかげたものなんですけれども、それを三回、五回、あるいは三日、一週間続けるうちに、今度はそういう苦しい状態から、普通の状態、何かいい気持になって、やっていくものだと思います。私の場合は、それから約一カ月くらい常用しまして、完全な中毒に陥りました。それで、ちょうど何かすばらしいリサイタルをやろうというようなことを私が一生懸命決心しまして、自分でできることと、それから世間で見る評価というものは、こんなに違うということのギャップだったと思うのですが、それでその不安を何とか打ち消すために麻薬を用いたならばいいことができるのだろう、そういう判断で、半年続けました。大へんな重症の中毒になりまして、そういうリサイタルなんかも大へん不成功に終わり、それからもう金銭的にも、朝から晩まで仕事は非常に順調にかせいでいるのですけれども、一銭も残らないくらいの浪費が加わってきたわけです。それでそろそろ半年目くらいから、やめなくちゃいけない。もちろん周囲も大へん心配しまして、じゃあどこかで、薬のない環境でやめなくちゃいけない。それでなおすときのからだの苦痛というものは、やはりおふろに入ったり、温泉に行けばその方が抜けるだろう、まあ普通の常識的な判断なんですが、そういうわけで二回か三回、箱根とか熱海とかいったところへ一週間仕事を休んで出かけたのですけれども、三日目にはもう自分一人で抜け出して、大阪あるいは神戸へ薬を求めて行っています。だから、どうしてやめなければいけないか、あるいはやめなければどうなるかということが考えつかないくらいの禁断症状になるわけです。  それで約一年たちまして、どうしてもやめられない。そのころになりますと、いろいろ実際に一年間薬を打って経験、体験したこと、あるいはそういうことじゃないことを非常に冷静に判断しまして、これはもうやめるという唯一の方法しか残っていない、あるいはやめられなければこのまま命なんかなくなってもいい、どっちか選ばなくちゃならない。私自身そういうふうに自分自身の気持を追い詰められまして、それで絶対やめるという方に一度全部努力をかけてみようということになりまして、それから私は、ちょうどアパート住まいだったのですけれども、ドアが一つしかないアパートで、見張りを二人置きまして、玄関と電話口とそれから一切の人の面会謝絶、それからも全部謝絶、それから電話も全部謝絶、そういう状態を約二週間続けて、禁断状態は二週間で回復することになったわけです。しかし三週間日にはもう神戸から、麻薬を買いに来ないからどうしているのだという人が東京駅まで来ておりました。そういった環境にあまり深入りはしていないのですけれども、一通り環境も知っているし、そういうこわさが気になりましたので、そういうときにはちゃんと絶対に会わなくて済むような手段をとってそれは全部避けることができました。  それから麻薬を目の前に見たら、どうしても打ちたくなるというような環境にございますから、二カ月間くらいの間は、もし目の前にあって、だれもいなかったら手を出すだろうという感じがいたしました。やめてから三月目になってから——二カ月日から仕事は順調にやっていたのですけれども、ちょうど三月目くらいに現物を持っている人と会ったときには、何の興味も誘惑もなかったわけです。それで麻薬経験中に強制的につかまって、強制的にどこかに入れられて、強制的になおされたら、多分なおらなかったのではないかと思います。麻薬患者が、自分がなおるということについては、自分自身に全責任を自分が持つより何とも言いようのない覚悟が要るのではないかと思います。  しあわせに、私はそうやって四年前の二月に完全に断ち切ることができ、それから音楽の仕事もその後は大へん順調にきているのです。ただ、やめましてから一年八カ月たってから、突然麻薬捜査事務所から家宅捜査を受けました。もちろんやめたあとだから何でもないし、また事実あったことは全部こういう状態だとお話し申し上げたのです。その捜査のときに最初から、中村八大は今も麻薬を使用しているはずだという前提で、NHKの報道班、それから共同通信、あらゆる機関の方が一緒にお見えになって取材なさいました。私はそういうことを夢にも知らないものですから、ただ昔のことだったら知っているだけの知識は披露して協力申し上げましょうと、捜査事務所へ参ったのですけれども、翌日の新聞には全部——もちろん報道されたことは仕方ないと思いましたけれども、中村八大麻薬密売の疑いというタイトルで、ある新聞に出ましたりして、私大へん驚きまして、——もちろんそういった普通の報道関係麻薬に対する知識がそれほど深くないとは思っておりましても、そういう扱い超麻薬についてやっているということは信じはられないくらいびっくりいたしました。  それから個人的な問題ですけれども、私もいろいろショックが大きかったものですから、厚生省の知っているある方に、こういう状態でこうなっているのですけれども、どうなんですかとお聞きしましたところ、そうは言っても、麻薬経験者はやめたと言ってもやめていないのだから、中村八大さん、あなたもやめていないとしか見られないというお答えをいただきました。だからそういうことに対しても、こちらから逆に言いますと、厚生省とか麻薬捜査事務官にそれだけの疑いをかけられただけ、私も大へん疑うような気持になって、一時とても怒ったものです。しかし僕自身はもちろん完全になおっていることだし、あるいはこれからなおす人、あるいはこれから入っていく人がどういうふうになっていくかということに、何かお手伝いできればという気持をまた持ち直しまして、それからずっと何かの機会には、厚生省あるいは麻薬捜査事務官の方と協力しているような状態でございます。  私の体験はそれくらいですけれども、麻薬患者の方の話題はあとにしまして、さっきの患者のお母さんがおっしゃったように、麻薬のある環境があるということは致命的に麻薬をやる人が絶対やめられない環境だと思います。現在は知りませんが、五年ほど前に私が使用しておりましたころは、どんな環境でも麻薬は見つけにいくことができる仕組みです。こういうおそろしい麻薬がどこかにあって、それからあるルートをたぐれば必ずあるという環境を持っていて、麻薬はいけない麻薬はいけない、麻薬患者はどうするこうするなんと言っても、ほとんど麻薬患者のなおる見込み、あるいは更生する見込みはないと思います。ことに強制収容とかあるいはいろいろな、だれかがしてやる、精神的にはこうすべきだ、肉体的にはこうすべきだということは、もうすべて麻薬患者にとっては無関係、大へんに片寄った精神病者みたいになるのだと思いますけれども、非常になおりにくいことだと思います。もう患者がどうしてなおるかということよりも、とにかく麻薬のある環境というものを、あらゆる方面から絶対なくすことをどうすればいいかということだけです。とにかくそこからスタートしてもらわなくては、もう麻薬患者の方は何とも考えることはできないと思います。珍しいそういったあれといたしましては、麻薬患者自身が、どうしても麻薬はやめなくちゃいけないのだと考えて、そのためにあらゆる努力をしたときだけ、麻薬患者がやめることができるのじゃないかと思います。ささやかな知識ですけれども、これだけ御報告申し上げます。(拍手
  12. 秋田大助

    秋田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。中野四郎君。
  13. 中野四郎

    ○中野委員 本日のこの委員会に遠方から、しかも御多忙中を御出席願いまして、貴重な体験談、実地の事情等をば御説明いただきまして慎んでお礼を申し上げます。  私は少し時間を拝借いたしまして、各参考人に伺うと同時に、関係各方面の麻薬禍を撲滅するための対策確立のために御質問をいたしたいと存じます。  最初に福岡大村さんにお伺いをいたしたいと思いますが、私ら国民を代表する国会におきましては、すでに御承知のように衆議院においては本年の五月七日にこの問題を取り上げまして、衆議院の院議といたしまして撲滅対策を確立すべしと政府に要求し、国民の中に世論を起こしつつあるわけであります。先ほどお話しのように、参議院におきましても社会労働委員会において議決され、おそらく今国会中にこの問題は院議として取り上げられるものと信じておりますが、ゆえに私は先日社会労働委員会の小林、五島理事とともに福岡県下に参りまして、つぶさにその事情を拝見もし、また拝聴もいたしました。私のまず大村さんに伺いたいのは、現段階において福岡から北九州にかけましての麻薬禍というものは近時非常に盛んになりますと同時に、これが将来を非常に憂うるような状態にあるのでありますが、先刻時間の関係もございまして詳細を伺うことができませんでしたが、博多方面の金平団地といいまするか、博多駅前におきますところの集団的三国人と申しますか、韓国人、あるいは朝鮮人と申しますか、これらの人々が相当一つの集団をつくって、麻薬の販売あるいは中毒患者に対する施薬等々の悪事が平然と行なわれておるように考えますが、この点に関するあなたの実地の御経験を、短時間でけっこうでございますから例をあげて御説明を願いたいと存じます。
  14. 大村重人

    大村参考人 金平団地あるいは博多駅前の状況というふうなお話でございますけれども、それにつきまして私、実際に接触した例はまだございません。ただ数量的にはいろいろ報告されております。たとえば金平団地は二十五名あるいは博多の団地には約六十名というような者が推定でおるのだというような話は、麻薬禍対策を推進する上において報告されておりますけれども、実際に接触したことはございません。御了承願います。
  15. 中野四郎

    ○中野委員 先日私らが伺いまして現地を拝見いたしますと、あそこには中央を流れる川がありますが、その川の周辺に旧団地の連中が相当たくさん結集しておりましたが、新しく福岡の方で金平団地にこの人たちを収容するような施設をおつくりになりました。しかし実際上にどうなんですか、あそこの用っぷちの連中は全部金平団地に越したのですか。いまだにあそこに残っているのですか。残っておるとするなれば、その人たちの実情というものは現実にどういうふうになっておるか、御存じでございましょうか。
  16. 大村重人

    大村参考人 そういう麻薬ということで、その方面でなくて、精神病院と生活保護というのは非常に関係が深うございますので、そういう方面からちょくちょく移ったか移らないかというニュースは入りますけれども、大体向こうに入っている。しかしまた石堂川の周辺に残っているけれども、これもやがて移すことになっておるのではございませんでしょうか。それでまた石堂川を含めて築港のあたりまで、ここをまた一つの大浜集団として、おられるようでございます。密集濃厚地帯の大浜集団というふうにしておられます。福岡地区では金平と大浜地区、それから博多駅周辺、それから春吉地帯というのが濃厚地帯ということになっております。
  17. 中野四郎

    ○中野委員 そこで警察庁の保安課長が御出席のようでありますが、私らは現地を実地に視察いたしまして痛切に感じましたことは、なるほど厚生省麻薬取締官事務所と、あるいは警察庁との御協力によって、相当な成果を上げておるとは考えますが、率直に申し上げて警察がもう一歩強く、ひとり麻薬だけでなく、暴力に関する一切の取り締まりをもっと厳重にしたなれば、北九州地区の根拠といわれる福岡と博多方面の麻薬販売のルートは、相当減殺されるものと考えるのですが、どういうような処置をおとりになっていらっしゃるのか、御説明を願いたいと思います。
  18. 中原英典

    ○中原説明員 ただいまのお話でございますが、ちょうど七月の末にそうした麻薬の事犯の多い主管の防犯部長が参りました節に、福岡の防犯部長から、先生がただいま御指摘の地区の状況についていろいろ聞いたことがございますので、私も割合印象を強くしておるのであります。福岡県は御案内のように、東京、大阪、兵庫、神奈川に次ぎまして、最近非常に麻薬の事犯の多いところでありまして、御指摘のように濃厚地区と申しますか、当該地区麻薬密売網を解明いたしまして、その根元をつく。同時に、建築物その他の問題について主管の部局とも連絡をして、一そう力を注いで参りたいということを主管部長は申しておりました。私もその成果に期待をしておるのでありますが、さらに御指摘もございましたので、十分に努力をいたしたいと思います。
  19. 中野四郎

    ○中野委員 個々に伺いますると時間もかかりまするし、他の御質問者もありましょうから、抜粋して参考人の方に伺います。  神戸近藤さんにお伺いいたしたいのですが、先日八木、早川両先生が御地の方の調査に行かれましたとき、私も参画いたしまして、いささか現地の実情も存じておりますが、先ほどからの皆さん方の御説明の中の結論といたしましてのお話はよくわかります。総括して私は後ほど政府側に向かって質問をするつもりでおりまするが、本日はなまなましい中毒患者の取り扱いあるいは経験について、率直に申し上げると、麻薬患者というものに対するお互いの国民的世論の起こってこない最大の原因は何ぞやといえば、どうせあれはやくざと売春婦のやっておることで、われわれ一般社会人には用事がないのだというような考え方に、私は大きな間違いがあるのだと思うのです。潜在数が何十万あるといわれておりますのは、それらの的確を欠く最大の原因はそういうところにあると思う。先ほど中村君からもお話がありました麻薬のおそろしいということをみずから自覚する人は偉い人です。しかしながら、悪いとは知りながらこれをなかなか——やめるという強い志をもって当たる方はまれに見る方なんです。ただ私がこのことをこの国会を通じて全国民にも知っていただき、今後の麻薬禍を撲滅する上において大事な問題は、なまなましいそれらの被害と、それら販売人との非常な関係を明らかにしておきたいと思います。あなたは番町会の副会長さんでもいらっしゃるし、なお番町会というのは神戸のいわゆる麻薬の発祥地といわれるような中で、多数やくざ、暴力団に囲まれておる中で、勇気をふるって、町会の有志の方方があげてこれが撲滅運動関係をしておいでになる方で、非常に敬意を表しておる。先ほど木下さんのおっしゃったように、自分子供の恥、自分の恥も打ち捨てて、これを撲滅するにあらずんば社会悪はなくならないというこの勇気も、全く私は敬意を表するのであります。しかし私は残念ながら聞き漏らしましたが、神戸のあれだけのいわゆる暴力団の組織の中にあって、番町会の皆さん方が現在こういう運動をしておられることについて、相当な迫害があるであろうと思うのです。今日は相当警察関心を持ち、あるいは国をあげて麻薬禍の撲滅の推進を試みておるときでありますから、おそらくちょっと手は出せないと思いまするが、過去においては相当激しいいわゆる圧迫を受けたのであろうと思います。その実例がありましたら、ここで御発言になることについては決して御迷惑をかけないだけの責任を国会においても持つつもりでおりますから、御遠慮なく御発言を願いたいと思います。
  20. 近藤猛

    近藤参考人 お答え申し上げます。迫害と申しますと、一件だけでございました。それは昭和三十四年に神戸新聞社が「白い粉の恐怖」という映画を、われわれ濃厚地区の中で撮影されるという映画のロケがございました。それで町民大会をやったような状況とか、あるいは密売所を警察が襲撃した状態、そういうようなことを写したわけですが、そのときに麻薬密売業者の方が来られまして、お前らいいかげんにしておけ、この映画を請け負うて何ぼくらいもうかるんや、お前らは映画を請け負うて金をもろておるんやないか、おれらも麻薬のやみをやってもかまへんやないか、こういうようなことで一応いやがらせ——脅迫じみたことはございませんでしたが、一応映画のロケ地へ来ましていろいろといやがらせをやるというようなことがございました。そのほかは脅迫じみたことはただいままで一度もございません。  それは私の方もよくわからないわけなんですが、実際われわれとしてもよく警戒をしております。なるべく暗いところを歩かぬようにしている。そういうようなことで麻薬密売業者の面体をよくわれわれとしては覚えているようにしている。会が一致結束して——われわれの会としてもだれかが足の一本でも折られれば、壊滅状態になる状態がくると思うのです。そういうことがわれわれとしてもこの運動を進める上で一番困ると思いますので、できるだけ警戒心を旺盛にしております。  それで、なぜ脅迫に来ないかということにつきましては、われわれは麻薬患者入院のお世話をしているわけです。麻薬密売業者はわれわれを健康保険組合のような気持で見ておるのではないか。自分らがいろいろ利益を上げていくネタ、商品である人間が、われわれの会のお世話で入院治療できる。そのために寿命がだんだん延びていく、体質を改善して自分の体力を回復してまたお客さんになってくれる、そういうことでわれわれの会自体を非常にありがたく密売業者は思っているのではないか。そういう観点で、われわれは撲滅の方向でやっておるわけですが、実際その面を考えてみますと、麻薬密売業者の後援会というような団体になり下がっておるぞというようなことも、最近反省をしておるわけです。そういう関係がありまして迫害が今のところないのではないか。また迫害があれば、現在のように国会も議決された、警察力もこれに対して強化をやっておる、そういうときにもし運動者に対する迫害をやれば、われわれの方がえらい目にあわされるというようなことを考えておるのではないか。これは推察なんですが、そういうことしか述べられません。
  21. 中野四郎

    ○中野委員 横浜中田さんにちょっと伺いたいのですが、無法地帯という言葉がよくあるのですが、日本の国は御承知のような法治国でありながら、横浜の黄金町あるいは日ノ出町方面の特殊地帯へ参りますと、夕方五時半、六時ごろから八時ごろまでは、全くの法律のない国と同じのようであります。私は先日皆さん方の現状を視察したあとで、さらに進んで麻薬をつくって売る国、すなわちビルマ、タイ、あるいはこれらを経由して日本、アメリカに参りますシンガポール、香港という方面を調べて参りましたが、香港には、九龍城内には依然として黄金町、日ノ出町のような状態を呈しているところがあります。しかし私のお尋ねしたいのは、この国会におきまして議決をし、最近のごとく国をあげて麻薬禍対策というものが強く叫ばれて参りました現段階において、伝え聞くところによりますと、最近の黄金町、日ノ出町は、旧態依然として、減るどころか、むしろ通行人に対して最近は石等を投げて乱暴を働くというような事態を、二、三耳にしておるのです。あなたは現に横浜でこれらの者に対する相談をして、いろいろとお骨折りをしておいでになる一人でありますが、その後の黄金町とか日ノ出町等の実情について、御存じの点を一つ御説明願いたいと思うのです。
  22. 中田志郎

    中田参考人 私たちの目の前では、今中野先生がおっしゃったような麻薬密売者たちの暴力行為は見られません。陰ではやっておるということは聞いております。ただいま神戸近藤さんがおっしゃいましたように、麻薬相談員に対しましては、やはり自分たちもいずれはお世話になる。だから、というふうなことなので、むしろ先生扱いでございます。結局近藤さんのおっしゃったことに尽きると思いますが、身分を隠しまして自分たちも来ておるわけでございます。あと退院してから、ざっくばらんな話だということで聞きますと、実は稲川一家の幹部なんですというふうなことなのでして、遠慮しておる関係でしょうか、自分たちの目の前では、そういうことはあまり見せません。ただあそこにいる売春婦たち、この人たち相当密売団、暴力団に対しましては遠慮、気がねをしておる。何か羽目をはずしますと、やはりリンチを加えられております。  無法地帯という言葉でございますが、かつてはゼロ番地ともいわれました。あそこに、すぐ隣のところに大岡川がございます。その大岡川のまわりに百六十戸ばかりバラックがあって、その中に約八軒の密売小屋があったわけでございます。昭和三十四年の四月からあそこの調査を始めまして、実はこういうふうな実態調査をしたわけでございます。この一センチ角が一坪に当たるわけです。ここに入っている人たちを全部シラミつぶしに調べました。残念ながら密売団の中の方までは調べられませんでしたけれども、完全にこれでマークされたわけでございます。それでその後、バラックをあのままにしておきますと暴力団の根源地になっていかぬということなので、福祉的な移転ということを提唱いたしまして、そのバラックをどんどん取りのけております。現在までに四年かかっておりますが、あと三十戸ばかりこわしますとなくなってしまいます。それでそのついでに密売小屋もどんどんこわしてしまったわけでございます。その結果が、今の黄金町のカード下に集まってしまったわけでございます。そうして現在無法地帯というふうにいわれているわけでございますが、これに対しまして地元は何ら力がない。どうすることもできない。もっと大きな力でなければだめなんだというふうにあきらめ切っております。それであの地区に校外補導員とか、それから青少年活動をやっておるような人もございますけれども、あのいわゆる麻薬銀座といわれておる場所に直面して建っておるおうちの方々は、むしろ門を締め切ってしまいまして、内かぎをかけております。そういう状態でございますから、町内会としても沈黙を守っておる。何ともしょうがないというふうなことでございます。従って麻薬の暴力団にしてみれば、わが世の春というようなところでございましょう。だれに気がねすることなくやっております。実に堂々たるものであります。
  23. 中野四郎

    ○中野委員 もう一点だけ、中村参考人に伺いたい。あなたは麻薬がほんとうにおそろしいということを自覚なすったのですが、率直に言えば、あなたの打っていらっしゃった期間はきわめて短い方でしょう。先ほどの御説明によると、最初は気持が悪いぐらいだとおっしゃったのだが、最盛期——と言っては失礼ですが、一番たくさん打ったときは、一日どのくらい打ったのですか。そしてまた大体——その名前でなくてよろしいから、横浜なら横浜、東京なら東京で、それぞれ薬の値が違いますから、大体金額でどのくらいずつ一日に打ったのか、どういうような悪い症状を起こしたからこれをやめる気になったか、一つ体験談——と言ってはあるいは失礼ですが、お話し下さいませんか。
  24. 中村八大

    中村参考人 一日の打つ量ですけれども、大体三カ月ぐらいで完全な中毒になった場合——具体的なグラムということは、僕は実際にはわからないのですけれども、大体回数にして二時間置き。寝ているときは別ですけれども、寝ているときでも、六時間寝たらまた打つかもしれない。大へんな量でございます。それから金額にしますと、大体一日五千円から一万円。それも全部、私は神戸に——どういう意味のルートということではないのですけれども、結局全部暴力団がその先端的に扱っております。そのほか航空便で毎日送っておる、そういう状態であります。
  25. 早川崇

    ○早川委員 関連して、一問だけ中村さんにお伺いしたいのです。私たち阪神地区を視察しまして痛感したことは、麻薬中毒になったら絶対になおらぬという印象を受けて参ったのですが、あなたのように、相当深い症状になりながらなおったというお話を聞きまして、実は私も非常に驚いたし、希望も持った。そこであなたのお話の中に、病院なんか入ってもだめだ——事実、神戸麻薬病院があるのです。院長にいろいろ聞きますと、数カ月入って出ても、ほとんどまた中毒者になる。そこで今後の麻薬対策を考える場合には、あのような自由に入退院できる病院を幾ら、何十億とかけても、一時のしのぎにすぎない。むしろ最高死刑ぐらいにして、供給者の根を絶やすというところに政策の重点があるのじゃないか。アメリカの占領軍は、終戦後、麻薬になった者はなおらぬ、取り締まり一本で行けということになって、施設のおくれてきた経緯もあるわけです。そこでどうなんですか。あなたのお話で非常な希望も持てたのだが、むしろ刑務所的な——シンガポールや何かのような、別の島なり何なりで、数年間、なおっても作業をやらしていくとか、こうでもしなければならぬというようなことを、お話を聞きながら感じたのですが、その点はいかがでしょうか。
  26. 中村八大

    中村参考人 今おっしゃったなおりにくいという点ですが、これはまた私の友人で、三年間も五年間も強制収容で完全になおった方が、出てきてまた必ずやっている事実が幾つもあるわけです。私自身がどうしてなおったかということの唯一のよりどころは、絶対自分でこれはやっていけないのだということの判断と覚悟よりほかには、理由が見つからなかったような状態だったと思います。それから私自身どうして判断したかと申しますと結局麻薬をやっているときは普通よりもっといい気持だ、もっと何かすばらしいことがあるという常識になっているらしいのですけれども、私にはちっともそういうことがなかった。ただ肉体的な苦痛、麻薬が切れたときの苦痛をもとに回復するという反復された作業以外になかったので、私としてはそれを断ち切るということに非常に簡単な理由が見つかった。しかもなおすのは自分だし、なおってあれするのも全部自分の責任のあれだし、自分のことはやはり自分でやらなければどうにもならないという自覚を非常に持ちまして、こういうようにやめられたのだと思います。ですから、もちろん強制収容をしなければ患者にとってはなおることはできないのですが、強制収容したときに肉体的なそういう回復はもちろん三月もたてば完全になおるわけですから、あと精神的に、どうしても麻薬は二度とやるものじゃない、麻薬以外のその人の人間的な生き方に絶対的の魅力のある仕事なり環境なりが見つかった場合には、なおる見込はずいぶん出てくるのじゃないかと思います。
  27. 中野四郎

    ○中野委員 そこでそれぞれ関係当局にこの際お伺いをいたしたいのですが、先ほどから各参考人意見を総合いたしますと、実際上に中毒患者を持ち、あるいは中毒患者を扱ってその体験から得た結論は、政府をあげてこれら中毒患者に対して隔離をする施設を持たなければだめだということと、それからもう一つは、これを販売するところの俗にいうバイ人に対しては厳罰主義をもって臨む以外に、これらのものを根絶せしめる道は考えられないという意見には全く同感であります。率直に申し上げて、一体日本麻薬に対する政府の今日までの取り扱い方というものは、全く無知にひとしいような行為をとった、と申してはせっかくの警察官や麻薬取締官の御努力に対して失礼ではあると思います。けれども、この実地を私は外国において見て参ってまず生産地であるビルマ、タイというような国の生産額と、それらのアヘンをもととするヘロインというような高価なしかも猛毒のある薬——この売る先は日本とアメリカしかないのです。アメリカでは御承知のように注射器一本持っても罰則を受けるというようなさなかであって、日本ではそういうようなことが全然等閑視されておりますか、従ってこの注射器をもっていわゆる麻酔状態に入る。特にヘロインというようなものは世界のどこの国でも、日本とアメリカしか利用していないのです。現地の方では、アヘンの吸引とかあるいはこれをもう少し俗化した方法でいわゆる麻酔状態に入っておるという国はあるが、しかしいずれの国といえども麻薬災いというものは民族の興廃にかかわる問題であるというので、国法をもって厳罰にしております。アメリカにおいては大統領を首班とするところの麻薬対策委員会ができております。後進国といわれるところのタイにおきしまても、サリット総理大臣が首班となって麻薬中央対策委員会というものができて、もし麻薬関係してこれを販売し、あるいはこれを注射し、あるいは自分みずからが薬を打っても、あるいは金を麻薬のために使ったと目されただけでも、厳罰に処せられます。特に前年の九月には、タイ国におきましてはサリット総理大臣みずからが陣頭に立って、四人の麻薬製造業者を逮捕して、憲法十七条のいわゆを戒厳令下でありますから、政府の命令に反する行動をとった者というので、三人の青年を懲役十年、その首犯の中国人を即刻死刑ということで、その場で銃殺をしております。このくらいの強い意思表示をするということによって、初めて麻薬の国といわれるようなタイにおいては、これはうっかり麻薬をなぶると大へんだ、命にかかわるというので、それらのボスどもを中心とする麻薬製造業者や中毒患者は、たちまち国境近くに逃げてしまったという例があるのです。現地の実情を見ますと、ビルマ、タイの北方の山岳地帯においては、麦や米をつくることができませんから、勢いあの辺では山間の谷間を利用してケシをたくさん密植いたします。これらのものの数量というものは、はかり知れないほど莫大なものであります。これが中心になって、タイ、ビルマ、あるいは香港、シンガポールという方面に運ばれて、ひそかにこれがヘロインに化けるわけです。先年逮捕されたものの現状を見に参りましたが、十四キロというのですから貫目に直して四貫五百、約五貫目近いところのヘロインを日本に向けて発送しようとした直前につかまったわけです。日本麻薬取締官や警察官の方々が丹精して一生懸命努力した結果逮捕した者の持っているものは、何グラム、何匁という九牛の一毛にも値しない現状であります。シーンガポールあるいは香港に参りましてその経由の船あるいは飛行機等で運びますその仕かけの非常に大きな組織には驚くべきものがあるのであります。  しかし第一番に、これらのものを扱うことによってもうかるという考え方を、日本国民あるいはそういうような販売業者に与えた場合には、これは先ほど参考人の諸君からいろいろと御心配になり苦慮していただいているような悲しい実情が、国の中に蔓延してくるのです。これを根絶せしめる道としては、第一番に国際的情報をはっきりつかむ必要がある。それから取り締まりを厳重にする。しかしただ取り締まっただけではだめです。先ほど木下さんのおっしゃったようにつかまえても一年や二年の刑にしてはだめなんです。保釈金を山ほど積んですぐ出てきて、すぐその場で商売になって、元を引いてまだもうかるという、こういう矛盾を放任しておくことは間違いであります。従って法体系を改める必要がある。しかし麻薬取締法というものは単独立法なんですから、罰金五十万、懲役七年というようないわゆる取り締まり罰則を持っておったのでは、このことは百年河清を待っても私はとうてい直らぬと思います。だから率直に言えば、世界的な情報をまず緊密につかむ方法をとり、第二段階は厳重な取り締まりを行ない、これによって逮捕された者は厳罰に処するということにする。単独法の中に死刑という前例がなければ、最高の無期刑くらいに持っていくのは当然だと思う。最低をもっと考えなければいかぬです。一年や二年や三年くらいの懲役だから元はとれるのだ、うまくやれば保釈になって出てこられるのだ、執行猶予になるのだという考え方をこれらバイ人に与えることが、根本的な誤りだろうと思うのであります。  同時に先ほど参考人の諸君から御心配になっておりますように、国民の中で不幸中毒に陥った人々があるならば、国はこれらに対してどう処置するかといえば、日本の国には全然ないじゃありませんか。大蔵省の岩尾君がおいでになりますが、先日横浜に御同道願ってよく御存じの通りであります。町のまん中に蔓延して、法治国と称する日本の国の中で、善良なる市民が町を歩くことができないというような無法地帯を現存せしめて、これらのものを処置することができない。処置をすることができない最大の原因は何ぞやといえば、これらを隔離する国の施設がないということに尽きるのです。わずか精神病院の一部をば借りて、国がけちな補助金を与えて、これによって事なれりというような考え方は、根本的に誤りなんです。今日日本じゅうのこの麻薬禍を根絶せしめる唯一の道は、上は総理大臣からすべての行政にタッチする諸君と、われわれ国民すべてのものが打って一丸となって——先ほどのどなたかの発言にあったじゃありませんか。七、八百億円ずつ毎年とられるなら、その七、八百億円を今年度にかけて完璧を期すというような決意がなければ、私はこの問題は解決せぬと思うのです。  後刻総理のかわりに官房長官も来られますでしょうから、政府みずからの決意も伺うつもりでありますが、これら患者をば完全に隔離する方法は、各国によって違います。しかしタイ国なんかの方法と香港の方法は、あるいはシンガポールの隔離の方法は、日本は学ぶべきところが多々あると思います。タイ国では、実際上の麻薬患者をば収容する刑務所と、先ほど中村八大君の言われましたように、みずからなおしたいという考えの方、あるいは木下参考人の言われたような、お子さんを持って、自分子供を罪にはしたくないけれども、何とかしてこの中毒から解放してやりたいという親心を満たすために、別途にもう一つ病院を持っております。みずからがなおしたいという人に対しては、親切なあたたかい思いやりを持って、病院でもってなおしてやっておるのです。香港はもっと違うのです。香港は厳罰主義ですから、いやしくも麻薬患者に対しては、二年から下のものは、今のタイラムの刑務所、また二年以上の徴役に処されたものは別の刑務所、女は女というふうに区別をいたしまして、完全な、医療刑務所という言葉は悪いかもしれませんが、医療刑務所であります。  同時に中毒患者に対して憎しみを持つよりも、あたたかい思いやりを持って処置すべきものだと思いますことは、これらの国々の例を見て、私は痛切に感じたのです。それは刑務所の中で、禁断症状が離れますと、一定の期間を置いて、これらの患者に対しては、職業の補導を行なっております。小さい鉄工所をやる者もあります。あるいはミシンを使って裁縫する者もあります。あるいはこういういすをつくっておるところもありますし、機を織っておるところもあるというふうに、千差万別にわたって職業の補導をすると同時に、もう一つその中毒患者は、みずから犯した行為ですからやむを得ません。刑務所に入れますけれども、その家族というものは、それがために——いい家庭の者はよろしいのですが、大体低い家庭の者が多いのです。中村君の言われたように一日一万円も六千円も払うということがとうてい困難な人々に対しては、その刑務所でできた品物を販売した金をもって、これら中毒患者の困窮しておる家庭の家族の生活費に与えるというくらいまで親切な、いわゆる徹底した処置をとっておるところに、私は敬意を表したのであります。  恥ずかしながら、これらの例一々申し上げる時間もございませんけれども、一、二の者の例を申し上げただけでも、現在の日本のやっておるいわゆる麻薬対策などというものは、ちゃんちゃらおかしくて話にならぬじゃありませんか。政府側はどうしようというのでしょう。  私は厚生省の方に伺いたいのですが、厚生省は、この次の通常国会には、少なくとも麻薬条約の調印の結果によって、批准を求めなければならぬでありましょう。同時にまたこの麻薬取締法の改正を当然なさなければならぬと思いますが、先旧来かすかに伺っておりますあなた方の対策なんというものは、私が現地を見、また皆さん方の、実情をつぶさに身につけた方々から見れば、こっけいにひとしい予算であります。私は、この際百尺竿頭一歩を進めて、厚生大臣は閣議にこのことを出して、そして日本の政府としていかにすべきやという根本問題を相談すると同時に、厚生省は予算を遠慮することはない。先ほど申し上げたような七、八百億円を一ぺんに出すことはできぬかもしれないが、少なくともこれらの施設をまず完璧を期し、国民の中から麻薬禍をばすっかり撲滅するという決意に燃えたれば——燃えなければ別ですよ。その意思があるなれば、この次の国会に、一体どういうような仕組みで、どういうような予算を要求せんとするものか、この機会に明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  28. 渡海元三郎

    ○渡海政府委員 お答え申し上げます。政府全般の決意は、後刻官房長官が参られましてお答えになると思いますので、私が申し上げるのもいかがとも思いますが、ただいま中野委員の御指摘の通り、現在の日本麻薬対策は無にひとしいというお言葉でございましたが、いかんながらご指摘になりました通りの状態でなかろうかと、汗顔の至りでございますが、私自身もそうお答えせざるを得ないと思います。先般の国会におきまして、衆議院において決議もなされました。参議院においても委員会においては決議され、本国会において参議院の院議をもって決議されるのではないかと考えておりますが、厚生省といたしましては、本問題を扱いますところの中心官庁として、ぜひとも今言われました抜本的にこの問題と取り組む、日本から麻薬を追放するのだという決意に燃えて進んで参りたい所存でございます。従いまして今中野委員御指摘の通り、閣議等に持ち出しまして、関係各省に対しましても御協力を願い、政府一本となってこの推進に当たるよう、推進力となって働いていきたいと思います。  なお厚生省関係の現在計画しております予算その他につきましては、関係当局から詳細お答えさせていただきたいと思います。
  29. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 来年度の予算の概算要求は、省としてはまだきまっておりませんけれども、私ども事務当局といたしましては、第一には麻薬取締官事務所を中心にしました麻薬取り締まり対策の強化、第二には麻薬中毒患者対策と、両面におきまして予算の要求をいたしたいと思います。  まず取り締まり対策の強化につきましては、現在薬務局にあります麻薬課の機構を、これは衆議院の社労委員会の御決議の中にもございましたように、機構の強化という意味におきまして、麻薬部に昇格したい。それから全国百五十名の取締官を少なくとも倍に増員したい。それから情報の収集ということが非常に重要な事項でございますので、海外に、特に東南アジア地区に海外の情報を収集するための駐在員を設置したい。そういうものを中核にいたしまして、約三億円程度の予算要求を考えているわけでございます。  それから中毒患者対策といたしましては、中毒患者収容施設の拡大ということが焦眉の急でございますので、これに対しまして、ベッドの増強として百床の国の経営する収容施設をつくっていきたい。それから一昨年、昨年、今年と実施しておりますが、各都道府県なり法人の設置する収容施設に対する補助金を出していきたい。そのほか国民に対する麻薬禍のPRその他の経費も加算いたしまして、大体七億近くの予算を現在考慮しているわけでございます。  それから法律改正につきましては、この次の通常国会麻薬取締法その他関連法規の全面的な改正をただいま検討中でございます。
  30. 中野四郎

    ○中野委員 伺えば伺うほど驚くべき少額の金額で、さような金額をもって今日の日本麻薬禍を撲滅しようなどという考え方自体、私は根本的に誤りであろうと思うのです。しかし予算の面については、予算委員会において私は時間を拝借して大いにこれを論議し、その事前に政府に向かってこれらの問題の要求をいたすつもりでおりますから、ここでとやかくは申しません。  そこで一点、私は警察庁に伺っておきたいのです。けさの新聞を拝見しますと、横浜の保安部に麻薬課をつくって、現在麻薬担当の警察官を倍ぐらいに増員してこの撲滅を期すということです。その熱意は私は高く評価いたします。しかし、ここで問題になるのは予算の問題下ありますし。もし次の国会に、今厚生省が指摘されたような、たとえば七億なら七億、この中の四億はアフター・ケア等に使う、あるいは中毒患者収容所というのですから、警察庁の方にはまず関係は薄いと見なければならない。しかし情報の収集とか取り締まりということになれば、ウエートははるかに警察庁の方が高いのです。従って次の国会には相当な予算の増額をしなければならぬと思います。私がここで一点申し上げておきたいのは、麻薬関係の各国を回りまして一番痛切に感じたことは、国と国とのいわゆる情報の交換ということに全く日本は欠けておることです。たとえばシンガポールの税関が担当しております麻薬の取締官のところへ参りますと、りっぱな世界じゅうの麻薬販売者、いわゆる犯人のリストがちゃんとあるのです。そうしてアルファベットでありますから、AならAという頭文字で何の何がとしいう名前が出ますと、そこにおります担当官がはしごをかけ上がっていってそこのところへ行くと同時に、二分間くらいでりっぱにそのリストを持ってきます。そうしてその写真、生国、経歴、それにまた麻薬関係の経歴が全部書いてあります。これはどこ、これはどこという、すぐその手配をするだけの用意ができておる。香港においてもしかりであります。特に私が驚きましたことは、シンガポールに各国に一冊しか出せない麻薬に関する貴重な書籍があります。ところが、日本の方からこれをぜひくれという要求があるのを見ますと、外務省からまずくる。警察庁からくる、法務省からくる、検察庁からくるというのです。一国に一冊しか分けることのできないこの貴重な資料をば五カ所から要求されたのでは、どうしようもないというのが実情だと言っておる。一体どこへ出したらいいのだろう。ついて行かれた領事館の方は、当然日本国を代表する外務省の領事館にこれを下されば一番いいのだと言っていましたが、私らはそうは信じません。外務省へ参ったところで、あなた方の方でこれが五つに分かれていくというような、——まあこれは一例でありますが、つまり国際情報を完全に交換して、そして麻薬の入ってくる道をぴたっと押える一つ方法であるところのそれらのリストすら、日本には完全なものがないのです。おそろしいことです。  もし予算の面からいえば、次の国会厚生省が出すと同時に、警察庁もこの麻薬取り締まりのための増額を相当要求しなければならぬ。きょう大蔵省の担当官に来てもらったのはそれなんです。法務省、検察庁、警察庁、厚生省から、われもわれもこの麻薬取り締まりのための増額をとやれば、そう言っちゃ悪いが、大蔵省の連中は、出す方はずるいですから、得たり賢しとばかり、にんまり笑って、そっちで調整してこい、ばらばらの要求には応じられないと逃げるにきまっているのです。これは私は大事だと思うのです。それからそう言っちゃ悪いのですが、各役所のセクショナリズムというのですか、各役所でお互いに競い合った結果、せっかくのこの根本の撲滅という点に私は大きなひびが入るのではなかろうかと心配しておるのです。あなた方役人の前で申し上げては失礼かもしれないが、どこの国へ行っても、国一本の麻薬取り締まりの対策委員会があるのです。アメリカにおいては大統領が中心になり、タイのような後進国においても総理大臣が中心になっておるのです。かってはヒロポン、覚醒剤をば撲滅するにあたっては、内閣総理大臣がその首班となって、全国にあらゆる力をいたした結果、今日ヒロポン禍というものは私は根滅の状態にあると言っても過言ではないと思うのです。そのあとを追うのではありませんが、日本においてこの麻薬禍をほんとうに根滅しようとするならば、警察庁とか、検察庁とか、法務省とかなんとかいうようなことで予算の争いをしておりますと、実際に最後の段階においてほんとうに総花式でわずかなものしかこなくて、麻薬撲滅のいわゆる実を上げることが不可能な結果になるのです。後ほど官房長官が来たならば、政府の見解を聞かなければならぬことは、内閣総理大臣みずからがその焦点に立って、中央麻薬対策委員会というようなものをつくって、そしてそういうような一切の争いをなくして一本化の強力なる力の上に立って、日本麻薬を殲滅するというような心意気がない限りにおいては、われわれは納得できぬ。  そこで警察庁は、来年度一体どういうような情報収集、あるいは取り締まりに対するところの予算を出そうとしておるのか、あるいはその詳細がまだ明確でなかったならば、大体の構想だけでもよろしいから、この機会に明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  31. 中原英典

    ○中原説明員 お答え申し上げます。ただいまのお話のように、警察警察本来の取り締まりの立場から取り締まるだけでございますが、麻薬の重要性にかんがみて、結局一口で申しますと、これまでの考え方はわれわれも一御して、この問題に取り組みたいという考えを持っております。たとえばこれまでの実績ですと一年間二千数百件、半年でことしこれが若干一〇%くらいふえたとかなんとか申しますけれども、そういう数字はもう問題にならない。今までの数字というのは、私が言うのも変でありますが、いわば氷山の一角のようなもので、潜在しております。その根源をつくという考え方、気がまえを一新いたしまして、今後臨んで参りたいというのが根本の考え方であります。  そこで来年の予算の考え、輪郭でありますが、これまた最終決定に至っておりませんけれども、警察の予算の立て方は、警察官の人件費が別になっておりまして、麻薬関係ですと、麻薬取り締まりの活動旅費と捜査費がその主要部分でございます。活動旅費の分については約四倍程度、捜査費については約六、七倍の額をもって、ただいま警察庁内でまとめておるところでありますが、そのほか装備の基本的な資材が不十分でございますので、これも若干、千数百万円ですか計上をしておりますが、その総額を言いますと、またおしかりを受けるかもしれませんが、そういう意味で、今のめどでは何倍と申しましても、約二億程度のことになっております。これは申し上げましたように、人件費が別になっておりますので、活動費だけの費用というふうにおくみとりいただければ幸いかと存じます。  なお他の官庁との関係等についてはお説の通りでありまして、警察麻薬犯罪は元来自然犯と申しますか、当然に刑法犯と同じようなもので、かつ他の犯罪と結ばれ合ったものを警察官の日常の公務の最重点としてやっていくという建前から予算を請求しておりますので、他の官庁とのなわ張り云々ということは毛頭考えておりません。当面の麻薬犯罪撲滅という目的に対して、警察本来の立場から最善を尽くして参りたいという考えであります。  それから人員増につきましては、昨晩聞きまして、今作業をしているので、私まだ詳細に聞いていないのでありますが、先生の先ほど冒頭に触れました神奈川県、あるいは警視庁におきましては、まだ人員増問題ははっきりいたしませんので、当面は各係の警察官の中から若干配置転換をいたしまして、東京の警視庁、神奈川では課の組織にする。課といっても、別に課にしたからどうとかいう形式でなくて、最高の責任者が私が言うのも変でありますが、警視庁では警視総監、神奈川県では神奈川県本部長がじきじきにこの問題に取り組む、こういう趣旨であります。なお警察庁におきましてもそれで人員がいいだろうか、単なる一部の配置転換では不十分ではないかということを実は最近聞いておるのでありますが、今作業中で、ちょっと私も詳細を存じておりません。官房長とよく打ち合わせをしてみたいと思っております。
  32. 中野四郎

    ○中野委員 他の同僚諸君の御質疑もございましょうから、あと二点だけ。法務省の方の管轄なんですが、情報、取り締まりについてはいずれ内閣の総合的意見を要求いたします。ただ問題は、この中毒患者施設については厚生省側から先ほどの意見が述べられました。私は新たに法務省の見解を伺いたいことは、医療刑務所という式の新しい刑務所を設置する意思が一体あるかどうか、麻薬に関する限り中毒患者に限ってですね。これは先ほど申し上げたシンガポールでも解毒島に隔離をして、これらの人々に対するところの処置をとり、これが看守は刑務所から派遣されてきております。しかし一例をあげたタイにおきましても、香港におきましても、これは中毒患者に対して、犯罪者の中に中毒患者があっても、それらはすべて麻薬刑務所に収容して、そうして完全なる治癒を行ない、同時に先ほど申し上げたようなアフター・ケアを行なっていく、そういう設備が必要なわけです。これはよほど法務省は考えなければいかぬですよ。今までのあなた方の、麻薬の問題は警察庁がやるのだ、厚生省がやるのだという考え方は根本的に誤りです。国をあげて、すべての機関を総動員して、これが解決をはかる努力をしなければだめなんです。私の申し上げんとするのは突然で、あなたの方では御迷惑がられるかは知りませんが、先ほど厚生大臣は閣議にこのことを出すと言うのですから、あなたの方の法務大臣におっしゃって、この医療刑務所というか、麻薬中毒患者専門の刑務所をつくる意思があるかどうか、あるいは現在はなければ、この閣議の話題になった後においてそういうような施設をする考えは持てるかどうか、この点について伺っておきたいと思います。
  33. 荻野かく一郎

    ○荻野説明員 直接の所管でございませんので、責任のあるお答えをいたしかねるのを遺憾とする次第でございますが、ただいま麻薬中毒患者のみの専門の医療刑務所というものはございません。法務省のやっております医療刑務所というのは、犯罪になりまして、その犯罪の刑の執行として収容しております者の病気になっておりますのを治療しておるわけでございます。ただ考え方といたしまして、諸先生御承知だと思いますが、昨年の十二月に刑法の改正準備草案というのを発表いたしましたが、この中にもございますように、麻薬中毒のためにその習癖を除かなければ将来また犯罪を犯すであろう、こういうおそれのある者につきましてはその対策が必要であるというふうに考えておりまして、保安処分の一環として禁断処分という制度を考究すべきではないか、こういう意見でございます。
  34. 中野四郎

    ○中野委員 法務省に今ここで言うてみても仕方がありませんから、この法の改正に伴って、通常国会において当然医療刑務所を設置すべしという、おそらく議会の各委員意見が強くなって参りましょうと思います。  それからのことでけっこうです。そこで最後に私は大蔵省の岩尾君に伺いたいのでありますが、あなたは今度総務課長に御栄転なのです。従来は厚生省関係を全部持っていただいて、いろいろ御尽力を願った一人でありますが、この前の国会にこの麻薬の問題についてあなたの方にお願いしたときに、バンコックの派遣委員について、これはもう予算がないからといって打ち切られてしまったのはまことに残念だった。しかし岩尾さん自身がこの麻薬禍というものをあまり認識していらっしゃらないだろうと思いましたから、先日の横浜視察の際には、わざわざ遠路お気の毒でありましたが、現地に一緒に行っていただきました。あの無法地帯の実情をごらんになって、よく銘記されたことと思うのであります。同時に、全国にこのような問題がだんだんと広がって参りまして、もう今日は、先ほど来再々申し上げるように、国をあげてこの麻薬禍の対策を練る以外に道のない段階にきたわけなんです。従って、これは予算の問題になりますが、今すでに予算計画をお互いに立てております。近い将来にはあなたの方と折衝しなければならぬ。私はさっきの牛丸君の言われた七億とか八億なんというけちな金は、問題にしていないのです。厚生省の役人というのは肝っ玉が一体に小さいのです。そしてお人よしが多い。なぜもっとほんとうに腹をきめて、どんとした予算を出さぬか。けっ飛ばされてもいいじゃないか。けっ飛ばされるものに対しては、国会の者がバックをして、これを通すだけの勇気を持っておるのだから、けちな考え方で七億だの八億だのというものを出して、これで日本麻薬禍が済むなんて思っていたのでは間違いなのです。しかしその予算でもってあなたの方へ行くと、何とかかんとか言うのではなかろうか。ここで一ぺんけじめを聞いておきたい。岩尾さん、この麻薬禍に対してわれわれが熱意を込めて国をあげてこうしておるのですが、大蔵省の方ではこれに対してどういうような考えを持っておいでになるか、一つ意見をこの機会に拝聴しておきたいと思います。
  35. 岩尾一

    ○岩尾説明員 麻薬取り締まりの問題は、先ほどからいろいろと御議論のございますように非常に幅の広い問題でございまして、関連するところが非常に多うございますし、その取り締まりにつきましても、どういうような手段でやった方が一番効果があるのか、あるいは全体として見ました場合にも重複にならないでいくやり方はどういうやり方がいいのかという点、いろいろと問題が多いと思います。ちょうど七、八年前に、先生が先ほど申されましたヒロポンにつきまして非常に強い決意で警視庁が、とにかく二年間というものはヒロポンばかりをやるということでやって、ああいった結果を生んだこともございます。やはり国全体として、あるいは行政全体として、麻薬取り締まりということに重点を置いて、そうして予算等につきましても、そういう配慮のもとに効果のある、実効の上がるような予算を組まないといけない。その意味で申しまして、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、やはり現状取り締まりの経費をそのまま総花的にふやしていくということでは、問題は解決をしないので、実際に効果があるようなやり方はどういうやり方があるのか。これにはもちろん法律の裏づけも必要でございましょうし、警察等の大きな力も必要でございましょうし、そういった点は各省の概算要求を待ちまして、われわれの気持といたしましては、ぜひ麻薬対策の推進をはかりたいという気持を十分持っておりますが、対策につきましては、なおよく検討いたしまして御趣旨に沿いたいと考えております。
  36. 中野四郎

    ○中野委員 官房長官がまだ来ぬようでありますから、ほかの委員に席を譲りますが、後ほど来られたときに、さらに関連でけっこうですから質問をさせていただきますけれども、最後に一点申し上げておきます。  これは警察庁の方と厚生省の方に私は要求をしたいのです。先ほども話したように、実際この麻薬中毒のおそろしいことを国民にしみ通らせる必要があるのです。それは中村参考人のように、例をあげて勇気をふるってここへ出てきて、私は打っておったのだがこうだったと言ってくれる人があれば、それがだんだん広がっていってけっこうだが、なかなかそういうことは言わないものなんです。人間は都合の悪いことは隠すものなんです。そこでそういうことを浸透せしめる方法として、PRの方法として、いろいろな方法が各国においてとられております。たとえばこれなんかはタイのいわゆるビラなのです。お前はそういうアヘンを吸ったりヒロポンを吸ったりヒロポンをやっていると、だんだん死ぬ方に急ぐぞというので、棺おけの横っちょに何かあるのです。あるいはまた別なPRの方法もとっております。そうすると、こういうものを見ると、善良な家庭では、アヘンとかヒロポンに対するおそろしさというものをだんだん感じてくることになるのです。神戸で聞くところによりますと、こういうようなビラを相当配られたという例を聞きました。しかし保安課長か何かの話ですが、いつもやっておるとこれはかえって麻痺してしまうから、週間をきめて麻薬中毒撲滅期間とかいうて、一カ月なら一カ月ビラを張るようにしておるという話でありました。厚生省の方においても、警察庁の方におきましても、こういう問題を徹底的に、いわゆる濃厚地区というところに張らして、あるいはこれらの人々が、もし自発的に自分みずからがやめたいという人があるなればここへ来い、どんな相談でも応じるといういわゆる相談員の諸君もおいでになることですから、かけ込めるような道を開いてやることは必要だと思うのです。そういうような準備をしておいでになるかどうか。また、しておいでにならぬとするなら、すみやかにこれをおやりになるように要望したいと思うので、この点が伺っておきたい。  それから、立ったついでですから、最後に参考人方々に、これは後ほどどうぞ御自由にごらん下さればわかりますが、これは外国における中毒患者収容施設あるいは死刑になっておる現状です。タイで中国人が死刑になっておる現状等の写真が、麻薬取締官によって撮影されたものが詳細ありますから、どうぞ後ほど御一見下されば、なお参考になると思います。  一応厚生省警察庁から伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  37. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 お答えいたします。本年度は来月の第二週に麻薬禍の強調週間を実施する計画でございまして、ポスター等も用意しております。大体年二回ないし三回にわたって適当な時期を限りまして、そういうふうなPRの週間をやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  38. 中原英典

    ○中原説明員 お答えいたします。警察は、御案内の外勤警察官というのがございまして、濃厚地区その他にも派出所が数多いわけでございます。また、全国に駐在所があることも御案内の通りでございますが、そういうところで現場の連絡係員というものが、麻薬の問題に関心を持ち、平素の執行のうちに自分の受け持ちます管内にそういうPRをしていくということを計画いたしまして、濃厚地区を中心にやるつもりでおります。なお、先ほどの課あるいは課に準じます機構ができます県では、そういう要員も養成いたしまして、いろいろ専門家の御意見も聞いてPRの施策をつくり、その実行は第一線の外勤警察官全員が関心を持ってやりたい、こう考えております。
  39. 中野四郎

    ○中野委員 警察官にも、麻薬取締事務所の方にも、特にお願いしておきたいことは、先ほど申し上げたような販売人に対しては徹底した取り締まりを行なうべきだと私は思うのです。これが根源なんですから、麻薬であろうと、暴力であろうと、民主国家に反するような行動は徹底的に取り締まる必要があると思うのです。ですからこの機会に国をあげて、国会が議決をしておるときなんです。従って関係当局である皆さん方はここに意を用いて、必ずその成果を上げるように御尽力を願いたいと思います。私の質問を終わります。(拍手
  40. 秋田大助

    秋田委員長 河野正君。
  41. 河野正

    ○河野(正)委員 午前中来の論議の中で、いろいろと平面的にはかなり論議が展開されたと私は思いますけれども、しかし次の国会ではこの麻薬に関します法律改正なり、あるいはまた法改正に伴います予算審議なり、そういう点がいろいろと検討されるということでございますので、私はそういう検討にできるだけ役立つような貴重な意見を、それぞれの参考人方々から承って参りたい、かように存ずるのでございます。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕  と申しますのは、なるほど今までの論議の中で、麻薬中毒者に対します施設をたくさんつくれ、あるいは麻薬相談員の強化をはかれ、またバイ人あるいはその他に対します犯罪につきましては重罰をもって当たれ、こういうような御意見等がいろいろございました。しかしながら実際にそれらの効果を上げて参るためには、今私が二、三指摘をいたしましたが、施設の問題につきましても、あるいは相談員の問題につきましても、さらには重罰の問題につきましても、そのあり方、考え方というものがより一そうの効果を上げるかどうかということに、私は非常に大きな影響をもたらすであろうというふうに考えるわけでございます。  そこでまず最初にお伺いを申し上げておきたいと思います点は、いろいろ抜本的な方策を樹立せよという意見等もございますが、しかしすぐやらなければならぬ問題もありますし、またすぐやれる問題もございます。しかしかなり時間をかけなければやれない問題等もございましょう。そこで当面してまずこの問題だけはぜひやってほしいというような重点的な意見を、実際に中毒者に対します処置を行なわれます大村参考人、それから実際に麻薬犯罪と直接接触されます中田相談員、この御両人から両面にわたります重点的な御意見というものをあらかじめ承っておきたい、かように考えます。
  42. 大村重人

    大村参考人 ただいますぐ直面して、どういうことをやらなければならぬかという御意見を求められましたけれども、すぐといいましても、そのすぐというのがちょっと私には十分のみ込めませんけれども、とにかく先ほどヒロポンの話が出ましたが、あのヒロポン禍が退治されましたのは、ヒロポン中毒になった人がかなり善良な家庭に多かったように思います。高校の生徒の家庭とか、そういうふうなものに多かった。もちろん遊び人のようなのもなりましたけれども、そういう部面に浸透した。それでそういう方は家庭に直結しておりますので、その家庭自身が今のままではどうにもならぬというふうな非常なろうばいをせられまして、家族ぐるみのヒロポン退治の運動が起こったように私は認識しております。そのことが非常に力があったのではないかと思います。  それで麻薬中毒に対しましても、先ほどから何度も繰り返されましたように、早急にPRをいたしまして、そして国民全体が麻薬中毒というもののおそろしさを認識する。またそこに、麻薬中毒につきましても最初の間はわかりませんので、皆さん方が全部そういう知識があれば、あの人はこのごろ少し麻薬中毒になりよるのではないか、あるいは再発しつつあるのではないかというようなことがわかると思いますので、そういう点を大いにやった方がいいのではないかと思います。  なおかつ、先ほども単に収容して治療しただけではだめだ、本人になおす意思がないとそれは不徹底であるというようなことを言われましたが、まことにしかりでございまして、意欲のない者を幾ら治療いたしましても、結果的にはむだでございます。私どもいろいろ治療してみますけれども、意欲のある方はきれいになおりますけれども、ない方は、せっかく治療いたしましても、歯医者さんをだまして歯が痛いから、あるいは内科に行っておなかが痛いからというようなことを言いながら、もう帰りがけにやっておるというような状態でございます。それもある程度、そういうものの知識の涵養あるいは麻薬のおそろしさというものを浸透させるということの証拠になるではなかろうかと思っております。
  43. 中田志郎

    中田参考人 一番最初に申し上げましたように、さしあたって一番ほしいということでございますが、これは患者退院して参りましたときに、安心して自分の今後の生活をじっくりと考えて踏み切れる場所がほしいということでございます。現在の横浜の状況を見ますと、一日二百円ないし四百円の簡易宿泊所を借りてやっている。そのために、退院して帰りますとすぐ働かなければならないわけでございますが、ほとんどが十日や二十日の入院では、からだが参ってしまって役に立ちません。その間の生活の保障がないものですから、結局女であれば、商売と称しておりますが、売春をやらなければならない。男であれば多少は働ける余地はあるのでございますけれども、退院後少なくともトレーニングをいたしまして、二十日間くらいいたしませんと体力が出て参りません。前に試験をしてみたところ、二十日で約一貫五百匁の体重がふえてきた、そういうふうなデータもございますので、最低二十日間ないし一カ月間ぐらいの余裕を持って自分たちの生活を立て直しをする場所を与えてやらなければならない。  それからもう一つは、麻薬によって自分のいろいろな病気を押えております。麻薬でなおっているのだというふうに患者たちは言いますけれども、それは決してなおっているのではなくて、単に押えているだけでありますから、麻薬を禁断いたしますと、その病気が当然出てくるわけでございます。それに対する治療、それから治療しなくてもいい程度の者をまず置く場所です。これがありません、先日みたいに——病院から退院させて参りました。伊勢佐木町を通り、若葉町を通って参りますと、だんだん頭がはっきりして参りまして、電気ショックでぼうっとしておったものが、だんだんあたりの景色を見て、わかってきたわけです。そうしてその三、四人の患者がいわく何だ、また黄金町に連れてきたのか——これは嘆声でございます。喜びの声ではなかった。何だ、またこんなところへ連れてきてくれたのかということは、麻薬相談員に対し、自分たちを何とか立ち上がらせるようにうまくやってくれるのだろうという期待を込めておる声だと思って、非常に自分の心をかきむしられるような気がいたしました。その女の人たちは、それから二日目はすでに薬を打っております。そういうことですから、必ず麻薬から多少でも遠く離れた場所、安心しておられる場所、これをまずつくっていただきたいと思います。  その次に、現在のところ一般精神患者が非常に多いので、ベッドが足りないということなので麻薬患者に対するベッドの割当というものは、現在神奈川県においてすら十分にとられていないのでございますが、それを強制措置入院という場合には、この間のように相当に用意されましたけれども、それが期間を過ぎますと、あっちこっち病院に交渉いたしましても、麻薬患者というものがあばれますので、他の患者に与える影響が大きいというので、なかなか快く引き受けてくれる病院はございません。たくさんある中に、現在お願いをして、どうにか確保されておる病院が三つぐらいしかございません。しかもそれの保護室に制限がございますので、一ぺんに二人、三人入れるということはできませんので、二人連れて参りましても、一人は三、四日ずらせて入院させるというふうな措置がとられているわけでございますが、少なくとも麻薬相談を受けましたならば、あの人たちは、あの人たちは待てない——そういう人たちが多いのですが、思い立ったが吉日ということで、直ちに入院させることができるぐらいのベッドを確保していただきたい、こういうふうに思っております。  それから入院の期間でございますが、この問の例からとりましても、一週間日にはもう暴動を起こしそうな形勢になりまして、逆に看護婦さんが部屋の中に閉じ込められて、麻薬中毒者の方が外へ出てしまったというふうな事例もあったぐらいでございます。そういうふうに、一週間ぐらいで飛び出す、あるいは幾らがんばっても二十日おれないというふうな状態、それを病院の方でどう押えるすべもないわけでございます。かつて私より一尺も大きい男で、海賊寺田と異名をとったようなすごい男でございますが、そういうあばれん坊なものだから、精神病院の方へお願いをした。ところが精神病院の中で看護人——男でございますが、それを夜中に呼び出して、ふとんをかぶしてげたでぶんなぐってしまった。そういうような大きなからだで体当たりされますと、病院の出入口はこわれてしまう。そこでとてもそういう者は置けないのだというので、強制退院せられた。それをどこにもやる場がないものですから、やむを得ず自分の部屋へ引き取りまして、二カ月半抱いて寝ました。そういうふうな状態で、現在の病院としては強制力はないわけです。ですから、何らかの法的な根拠とか、それから施設を持ち、少なくとも三カ月は押えておれる。そういうふうな力を病院にも与えるような方法をとっていただきたい。そうでなければとても押えることはできません。  それから更生への道場といいますか、退院後のアフター・ケア、これにつきましてはいろいろな作業療法がございましょうけれども——、最近では一般の知識層にまで麻薬が伸びておりますけれども、知識層の人たちは何とか自分で就職してやっていけます。ところがそうでない人たちは、労働者になるか、そうでなければ道がないわけでございます。ところが体力がないものですから、労働することもできない。そこで退院後適当に働いて最低の生活をし得るものを与えなければならぬわけでございます。いろいろ考えておりますが、その一番理想的なものは、精神的な陶冶と肉体的な訓練、それに先ほど中野先生がおっしゃったような国の例を聞いて、非常にうらやましく思ったのが、そのアフター・ケアの場所で働いて、自分の生活費を得るほかに、家族の者に対しても送金ができるのだという程度の生産的なアフター・ケアの方法、こういうものがつくられてほしい。具体的に申しますと、山の中に牧場をつくる。これはあまりお金がかからないと思います。それに伴っていろいろな、牧場経営をするについては、みんなが力を合わせてやらなければならぬことですから、いろいろな仕事の分担がきめられるはずでございます。それをおのおの強制することなく、各自の意思によってやれるように仕向けていく。そこには鶏も飼われましょうし、豚も飼われましょう。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕  それからウサギを飼うとか、花をつくるとか、それから農耕もあることでしょう。そういうふうなことで、肉体と精神を同時に陶冶、訓練する場所がほしい。少なくとも関東に一つ、関西に一つぐらいは必要であろう、こう考えております。それから前に、麻薬、アルコール中毒患者専用の拘束舎をつくりたい、こういうふうに考えまして、三十一年から二年あたりにかけてお役所へ日参したわけでございましたが、これはついに実現できませんでした。そこで、市の民生局の方へ交渉いたしまして、患者入院させてほしいのだ、医療保護を加えてほしいのだということをお願いいたしましたところが、最初の十人ぐらいはやっていただけました。ところが幾らやっても、帰ってくるとすぐ薬を打ってしまうので、そんなものにかけるのだったら、もっと困っている人たちがあるのだからもったいない。その人たちお金をやろう。だから麻薬中毒患者はもうだめだというふうなことになりましたので、やむを得ず、今度市内の曙町でございましたが、そこへ神経科の診療所をつくり、その二階に、わずか十二坪しかございませんでしたが、アパートをつくりまして、そのアパートを実際は拘束舎にしよう。拘束する場所に使いたい、こういうことで計画したのですが、これも市内の中央に精神病舎みたいなものをつくることはいかぬということで、おじゃんになってしまいました。やむを得ず自宅を開放しまして、自宅で療養させるというふうなことになってしまっているわけです。  それから退院後の職業補導、これはお役所の方に交渉いたしますが、何とかできるかと思っておりまして、これはぜひやっていただきたいと思います。  それからもう一つ麻薬密売自分たちの商売であるのだ、売春が一つの商売であるのだというふうにしか考えていない人たちが多いそのことのために、先ほど申し上げたようにもとへ帰して、初めからやり直しをしなければならないのだということでございましたが、去年あたりにあきらめ切りまして、これではとてもだめだ、急がば回れだということで、青少年活動を始めているわけでございます。子供会、健民青少年、ボーイ・スカウトその他の青少年育成活動、これらも非常に迂遠なものでございますけれども、この麻薬の撲滅にあたっては相当効果のあるものだということを認識しております。そういう点に対しての御援助もお願いいたしたい、こんなふうに考えております。
  44. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから、今までいろいろ述べられました意見を取りまとめ、整理しつつ具体的にお尋ね申し上げたい、かように存じ上げます。  そこで二通りに整理をいたしますが、一つ密売を中心といたします違反行為、これは皆さんの意見が一致す通り、徹底的に捕捉殲滅する以外には何ものもない。それについては重罰の問題その他あると思いますけれども、これはそういうことで大体意見も出尽くしておりますし、またやるべき方向というものも明確でございますから、私はむしろ中毒者の処置についてしぼって具体的にお尋ね申し上げたい、かように存じ上げます。この点も大体意見を集約いたしますと、予防措置としてPRの徹底をはかるべきだ、それから起こったものについては収容施設の強化拡充を行なうべきだ、さらに、収容所を通って回復したもので、再発その他特徴ある傾向がございますものについてはアフター・ケア、さらに私の持論を言わしてもらうならば、ワークコロニーというところまで発展すると思いますけれども、そういうふうに一応取りまとめられると考えられます。  そこでPRの問題につきましては、中野先生からいろいろ貴重な御意見等もございました。私はまず最初に収容施設の点について若干御意見を承りたいと考えます。これにつきましては大村参考人から、経費等の問題があるけれどもたくさんの収容所をつくってほしいという意見があり、これは当然なことだと思います。ところが今までの観念に基づいて収容所をつくることが、ほんとうに効果を上げる条件になるかどうかということにつきましては、若干問題があろうかと考えます。その点については今中田参考人からも、収容施設内におきます麻薬中毒患者の現況について、若干具体的に御披瀝がございました。全くその通りだと思います。そこでそういう収容施設内におきます麻薬中毒患者の現況に対して、実際にどういう方法で取り組むべきか、これは若干法律とも関係があると思いますので、大村参考人から御意見等承れれば幸いと考えます。
  45. 大村重人

    大村参考人 麻薬患者治療につきましては、私終戦後二、三年ぐらいまである程度扱っておりましたが、その後は二例くらい患者治療した程度でございます。それから先ほどからいろいろ言われましたように、病院におきましては一応禁断症状が抜けます。そうしてその後は説得に移りまして、そういうことをやるのはいけない、さらに希望を持たなければいけないということを言っております。結局そういうものに耽溺しているような状態でなく、麻薬患者というものは非常に意思薄弱症になっておりますし、また自分自身を劣等視して、つまらぬものだというふうに考えておるのが多うございますので、そういうふうな劣等感から脱却する。そうするのには、まず何でもよいから一つやれ、何か始めることに一歩踏み出すことは百歩につながるのであるから、何かをおやりなさい、非常に簡単なことでよいから患者にやり抜くようにしなさいと、そういうふうなことから麻薬中毒によって起こりました意思薄弱というものを更生させるように努めております。一人は芸者で売娼婦でしたけれども、この方があとどうなったかということはわかりません。一人はお医者さんでございましたけれども、これは軽うございましたので、その後はやっていないのではなかろうかと思います。その人も二回目でございましたので、あるいはその後やっているかもしれません。しかしそういう人は陥ってはいなかろうと思っております。なお、なおらぬ程度は、その人の教養ともかなり関係があるようでございます。つまり教養というのは、結局やめなければならないということ。教養がない、あるいは生活保護階級というふうになりますと、教養のない上に希望がないというようなことで、麻薬なんかをして楽しむよりほかに、人生の楽しみがないというふうな状態でございますので、非常に再発しやすいというふうな状況でございます。これらのことを知っておりまして、その逆をいくというような務めをやっております。その後のアフター・ケアというようなものにつきましては、現在のところ特別に施設がございませんので、病院の方もそこまででおしまいというふうな情けない状態でございます。
  46. 河野正

    ○河野(正)委員 中毒患者の特性とも言うべき意志薄弱、あるいはまた中毒後の性格の変化、こういう面に対しまする貴重な意見を承ったのでございますが、実際問題として、私どもが次の法改正で特に考えなければならぬ問題は、現在の収容施設の中で、いろいろ管理上重大な問題がしばしば起こってくると思うわけです。と申し上げますのは、先ほどの中田参考人意見の中にもございましたように、性格異常的な面が出て参りまするし、あるいはまた集団暴力を行なうような事態も出て参りまするし、そういう面から実際現在の収容施設に入れましても、この麻薬中毒患者の処理にはもてあます。従って将来に対しまする再発の可能性というふうな点について、十二分な処置をすることができない。とにかく一刻も早く収容施設から出して、そしていろいろ管理上起こって参りまする問題から回避しようというようなことで、今日までいろいろとこれらの面に対しまする処置というものが終始をいたして参ったというふうに理解をいたします。そこで将来意見が出て参っておりますように、中毒患者のみを多数収容するという専門収容施設ができた場合に、実際に今のような管理のもとで管理ができるのかどうか、この点については先ほど中田参考人から御意見がございましたが、ある程度法的な強制力を管理上付与せしめなければ、なかなか管理することが困難ではなかろうか、それが少し強化されますと、さっき中野委員の医療刑務所という問題が出てきましたけれども、それらについてももっと慎重な態度で臨まなければならない。犯罪者でございますればそうでございますけれども、そうではない中毒患者に対しては、やはり病人として処置しなければならぬ。ところが、そうであるからといって、今の管理状態のままで管理すると、なかなか管理上むずかしい面が出てくる。極端に言いますと集団で暴力的に施設の破壊をはかっていくというふうな極端な例も出てくる可能性が実際にあると思うのです。そこで、やはり収容施設をたくさんつくるということ、それと同時にその収容施設のあり方について具体的に検討する必要があろうと思う。これは特に法的強制力を持つということになりますと、私は法改正の場合に十二分に織り込んでいかなければならない、そういう点が出て参ると思います。ところが、これが少し行き過ぎますと、人権上の問題が出てくると思うのです。そこで人権上の問題と管理上の非常に困難性の面から考えていかなければならぬのでなかなかむずかしい面が出てくるかと思いますけれども、そういう点について貴重な御意見等がございますならば、一つ大村参考人から承っておきたい。
  47. 大村重人

    大村参考人 ただいまのお話のように、実際麻薬中毒治療というものは、その治療の本筋以外のことでいろいろ悩まされるわけでございます。それで今医療刑務所式のもののお話もございましたが、実際背後に暴力があるとか、あるいは高度の精神病質を伴ったところの人が麻薬中毒になっているというようなときには、平素の精神病質というものが麻薬中毒によって情操を麻痺させるので、ますます平素の粗暴な行為が出てくるというふうになれば、とうてい普通の病院ではできない。しかも精神病院には冒頭にも申し上げましたように、他に普通の内因性の精神病障害者を扱っております。他の精神障害者というものは非常に善良な方でありまして、それこそ頭をなでてやっても、あるいはキャラメル一個上げても喜んでくれる。どうかといって肩をたたいてやるだけでも喜んでくれるというような、善良な患者が多うございまして、その人たちだけだったら実際精神病院の中は和気あいあいとしておるわけでございますけれども、そこにそういう人が一人入りますと、それこそ一犬ほえて万犬ほえるで、特殊施設が要ると思うのでございます。しかし冒頭にも申し上げましたように、現在そういうものを入れる特殊の施設を全体的につくろうといたしましても、とてもこれは望むべきことではございません。それで麻薬中毒者の全部がそうであるかと申しますと、そうではございません。中毒者のある部分の人は、やはり自分でなおしたいというふうに考えておられます。また背後にそういうふうな暴力団とかいうことがなくて、家族の人まで本人をなおしたい、周囲の全部の人がなおしたいというふうに思っておられるような患者の方はやはり本人もそれに巻き込まれて、自分はなおさなくてはならないというふうに考えております。そういうふうな人は病院内でもちろん苦しくなりますので、いろいろわれわれも困る場面もありますけれども、いろいろ工夫し、骨折ってなおしてあげますと、あとはわれわれも感謝されますし、本人治療成績が非常にようございます。そういう場合は現在の段階としてわれわれも喜んでとは言えませんけれども、とにかく引き受けて治療してやろうという意欲は持っておりますけれども、先ほどのようなものはどうも病院も、他の患者との関係上引き受けかねる。先ほど病床百床というようなお話がございましたけれども、もしそういう百床を一カ所に集めるのではなくて——五十床以下というものはあり得ませんでしょうから、もし百床しか許されないものでありますならば、もっとたくさんのものがほしゅうございますけれども、五十床くらいのものをどこかに分散さしておきまして、そしてその地区の特別の精神病院に、どうもみんなと一緒に入れるのは無理だと思われるような者を収容していただくようにしたなら、その百床というものがもっと有効に使えるのではなかろうかと思っております。  そういう方に対するところの中の管理面でございますが、これはかなり強力なものがありませんと、現在のような精神病院というものは医療法によってやっておりますので、いわゆる三類看護でありますから、患者六人に一人の看護婦がおる。二類なら五人に一人おるのですが、そういう面、あるいはその中でその三分の二は女の看護婦さんがやるのでございます。そういうふうなあり方ではとてもやっていけない。もちろん上から弾圧するだけでは患者はなおりません。やはり恩威並び行なわれるという状況ではなくてはなりませんが、しかし患者といいますものは、相手が弱いと見ると非常に抵抗いたします。たとえばこれは別な患者の場合でもでございますが、注射をしたくないというふうな患者がおります。そういうときはもちろん説得もいたしますけれども、同時にどうしてもお前は注射をしなければならないぞ、幾ら抵抗してもだめだぞというふうな状況に置く。つまり別にどうもいたしませんけれども、男の人が二、三人ついておってやるということになると、本人も興奮しないで、そのまますっとおさまる、そういう感覚というのは、やはり麻薬患者においてもあるのではなかろうかと思います。結局施設が弱いと患者は抵抗する。むろんそこで弾圧する必要はないのです。その施設が強い場面というものを持っておれば、あまりその中でいざこざは起こらなくて済むのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。しかしただ強いものがあるからといって、強い力で押えても患者はなおりません。そこのところを誤解のないようにしていただきたいと思います。
  48. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんので、いろいろ貴重な御意見も承りたいと思いますけれども、それが不可能になりましたから、特に私は最後に一点だけお尋ねをしておかなければならぬと思いますが、それは次の国会で政府が本法案の改正を意図されておるようでございます。その中で若干大村参考人から貴重な意見をお尋ねしておきたいと思います点は、今度の法改正の中で、治療方法一つとして、漸減療法を認めていこう、こういう方針が示されるやに承っておるわけでございます。そのことがいいか悪いかということは学界でも両論でございますことは、大村参考人御存じの通りでございます。部の人々はむしろ全断の方が、将来の再発を防止するためにも非常によろしいということで、好んで全断方法をとっておられますし、現在の法律のもとではそういう方法がとられておるということでございます。逆にそのために禁断症状で非常に苦痛を味わわせますので、なかなか中毒患者がみずから進んで治療をしようとしない、そういう意欲がわいてこないというような面から言いますと、なるべく漸減療法によって苦痛を少なくして治療するという方法もございましょう。いずれもございますことはもう御承知の通りでございますけれども、実際問題として今申し上げますように学界におきましても両方の意見があることでございますし、特に政府が次の国会でそういう面の改正をいたしたいというような意図も私ども承っておりますので、この点は次の国会におきまする審議の参考にもなると思いますので、最後にその点に対します御所見をさらに承りますれば幸いと思います。
  49. 大村重人

    大村参考人 全断療法がいいか、漸減療法がいいか、これは今の河野先生の言われた通りで、学界でも問題になるところでございますが、実際面におきまして、われわれがやります上において、やはり全断でいけばよろしゅうございますけれども、いろいろな禁断症状——ただ苦しいというだけの禁断症状ならしんぼうさせますけれども、非常な下痢をするとか、何かそういうふうな生命を脅かすのではなかろうかというふうな症状が出る場合がございます。そういう場合には、ある程度やってやらぬことには仕方がないのではなかろうかと思っております。ただ漸減がいいということになりますと、患者の方は薬があるのだからさしてくれと言って、病院側に無理を言うという点も出てきまして、いろいろそこのところはややこしい問題がございますが、漸減療法もある程度認めるという程度くらいでいいのではないかと思っております。全然これを拒否しますと、また患者入院意欲もなくなりますし、今言いますような困った場面、何とかしてやらなければ仕方がないというふうな場面もございます。戦時前は私もかなりの治療をいたしましたけれども、全部漸減療法でやっておりました。ただ現在は電気ショックとか、あるいはいわゆる自律神経遮断剤、そういうふうないろいろなものの新薬が出ておりますので、前よりも多少はやりやすいのではないかと思いますけれども、あるいは禁断症状をごまかしやすいのではないかと思いますけれども、しかしやはりモヒにまさる薬はないわけでございますので、いろいろな点で支障が起こる。だからそういうふうなこともあり得るというくらいな程度でいいのではないかと思っております。
  50. 秋田大助

  51. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま両先生から詳しく御質問がありましたので、重複することを避けまして、ただ過日衆参婦人議員で横浜地区へ視察に参りまして、全くあの地域は無法地帯だということをこの目で見て参り、驚いて参ったわけなんです。ということは、私ども視察をいたしますときは、前もってわかっておりましたし、マスコミの方々もおいでになっておりましたから、患者の方を見るということも困難であったわけなんです。食後私は淺沼先生と御一緒に別個に回ってみたときには、すでにもう何人かの患者が来ておりまして、ただバイ人らしき人がきょうはあっちだと言っているのです。きょうはあっちだという言葉は、おそらくこの場所では売らないで、ほかにどこかわかっておる場所があるのでしょう。きょうはあっちだというその言葉を聞いたときに、私りつ然としたわけです。従ってこれは無法地帯だ。現に売ることがわかっておっても、そこへ踏み込んで押えていくこともできないという状態が、あのわずかな視察の中でくみ取れたわけなんです。そこで私ども帰って参りまして、政府から改正案が提出される前に、議員提出でも、一つきつい案を出してみたいと考えて、民社党としてはいその原案らしきものをつくって発表いたしたわけでありますが、その操作をいたします過程におきまして、私が疑問に思いました点を二、三点お聞きしたいと思います。もうお昼の時間も過ぎておりますので、私も簡単に申し上げますが、御答弁の方も簡単でけっこうでございますのでお願いいたします。  まず第一番に木下さんに伺いとうございますが、大体この患者になっておる人の四五%は、興味からだといわれておりますけれども、その興味でこられた方々と、別にあなたの御経験、またそういう方々をお知り合いになっていらっしゃるでしょうか。どういう経過でこうした注射を打つようになってきたか、その点二、三お聞かせ願いたいと思います。
  52. 木下サカエ

    木下参考人 私のところの子供は最初座骨神経痛があって、とても痛みましたのです。そうして先生を呼んで注射もしていただきました。そうしておる間に中毒患者の人が見えまして、これは私の子供も知りませんし、私も知りませんでしたが、とてもいい薬があるから、一服これを打ちなさいと言うていただいた。それはきかなかったのですが、その次の薬がきいたわけです。その薬を打っている間はよかったのです。が、二、三時間するとまた痛む。その痛みがとても激しいのです。そうしますと、またお願いしますということになる。それがちょうど私の向かいなんです。それであとで聞きましたら、そういうおそろしい薬だったのです。それでもやはり痛むものですから、次々と打っていたら、しまいに中毒になった。何回も何回もやめさせようと思って病院にも入れましたし、いろいろいたしましたが、結局やめていたのは刑務所にお世話になっている間だけでございます。
  53. 本島百合子

    ○本島委員 ほかの方はいかがですか。
  54. 木下サカエ

    木下参考人 ほかの方は、家庭の境遇にもよりますし、これはどっちかといいますと、意思の弱い方がやるように思います。そうしてこれは一番多いのはバイ人が多いです。バイ人と暴力団の方とが大がいひもになっています。それだからバイ人の主人についているのは暴力団の人が多いのです。そうして昼は主人が遊んでいて、女の人が、バイ人が働いて、その金で薬を仕入れて主人もするというようなことが多いのです。
  55. 大村重人

    大村参考人 中毒になる原因についてついでにお答えいたしますと、これは福岡県の調査でございますけれども、約五百人の調査でありまして、その大部分を占めるのは好奇心でございます。それから疾病鎮痛、病気のためあの鎮痛と、そのあとは誘惑、模倣、それから不明、それから覚醒剤からの移行ということになっております。好奇心の中にも、単に好奇心と申しますけれども、好奇心というものを盛り上がらせるような誘惑があると思います。露骨に誘惑したのではなくて、こういうことをやろうとか、間接的に好奇心をつのらせて、そうしてやった誘惑というのがかなりあるのではないかと思います。
  56. 本島百合子

    ○本島委員 実は私も東京に帰って参りましてから間もなく電話がかかってきて、ばあさん、麻薬々々と言うなというのです。あなたはだれだと聞いたら、名前を言う必要はないといってがしゃんと切ってしまったのですが、そういう点から判断いたしまして、大へん皆さん方が御苦労されることはよくわかるわけです。そこでこうして勇気をもって中村さんに自分のことをおっしゃっていただいたわけですが、ずっとなおしておいでになる過程において、暴力団とかあるいはバイ人というのですか、そういう者からの何らかの示唆というものがあった。ではなかろうか、それを通報したり何かすることによって、そうした人たちを減らしていくということができなかったものか、またできないものかということなんでございますが、その点いかがでございましょう。
  57. 中村八大

    中村参考人 当然やめる過程に、直接暴力団の売っていた人たちから電話がかかって、やめてからあと半年ないし一年間にわたって、ときどき電話で脅迫してきました。でもそれをもってすぐこっちが通報するとかそういうことよりも、自分自身がやめることだけで半年か一年間は一生懸命だったものですから、そういうルートをすぐ連絡して取り締まりの対象にいろいろ協力するというところまでは、私は協力しなかったわけです。ただやめるということで一年間専念して、その努力が実りまして、一年たった後にはどこからも電話はかかってこないし、そういう方たちとの接触はだれとも全然なくなったわけです。ちょうどそのころになりますと、そういった方々たちは次々と全部つかまっていった過程になったと思います。  ちょっと御質問からはずれますけれども、麻薬をやる動機というものは、先ほどおっしゃった好奇心、ほんとうに好奇心しかないのですけれども、特にそれをもり立てるものに、最近麻薬に関する週刊誌とか、あらゆる記事が本質をつくのではなくて、興味本位に記事自体がつくられているわけです。麻薬をやってどういう気持になったとか、その誘惑に巻き込まれてしまう。われわれ実際に打ってみたときには、ちっともそういうすばらしいものでもないけれども、記事を見ると大へん興味を呼んで、では自分も目の前にあったらやってみたらどうなんだろうという好奇心が、麻薬関係のない人たちにも非常に影響を及ぼしていると思います。ですからそういう麻薬の記事を扱う関係の人は、十分そういうところを気をつけてやっていただかないと、また新しく麻薬をやりたいという気持をつくる原因になりかねないと思います。そういう考えも持っております。
  58. 本島百合子

    ○本島委員 興味本位でかなりの人が麻薬患者になっていく悲惨な経緯ということをしみじみ思うわけですが、先ほどのあなたのお話で、私、警察庁の方に承りたいのですが、これは売春の場合にもあるのです。知らずに行きまして、もうそれをやっていないのですが、行くと、お前はやっているのだ、現にこうじゃないかというふうに持っていかれて、もう非常にくやしがって私のところに来る人もあるわけだし、またいろいろの雑誌等を見ましてもあるわけでございます。中村さんのお話の中でもそういうことがあって、患者なんというものはやめられないものだからやっているのだろう、こういうことであったということでありますが、そういう場合の取り締まりというか、調査というものが、非常に人道的にはずれたやり方で、しかも更生する人をむしろ突き落とすような結果になることが多いように思うのです。こういうのは現地にいらっしゃる皆さん方として御経験があるのではなかろうかと思いますが、そういう調べ方に対して何か効果がより盛り上がっていくという方法はないか、そういう点で今日どういうふうに警察庁の方ではお考えになっておるか、簡単でけっこうですから……。
  59. 中原英典

    ○中原説明員 お答えいたします。結局法律の執行でございますので、事実と申しますか、証拠によって事案を処理するわけでありますが、目的はその人の真の更生が目的なんでありまして、その趣旨によりまして、御指摘のような、いずれの意味でも行き過ぎがないように十分注意いたしておるのでありますが、証拠に基づくということ、その目的はその本人の更生を期待する、その線でやっております。
  60. 本島百合子

    ○本島委員 証拠に基づくのですが、麻薬を撲滅しようとしたときは、証拠だけで撲滅はできないと思います。むしろ更生されていこうとする方々、そうした方々との緊密な連携の上に立って、捜査というものは十二分な効果が出てくるのではないか、こう思うのですが、逆効果の形で、脅迫を受けさせたり、あるいはまたそのことによって自分の生活が成り立たないというような形に追い込められていく人が多いということなんです。その事実を十二分に認識していただいて、今後の法改正調査等もやりよくおなりになるとは思いますが、そういう点についてよほど注意していただきたい。聞くところによると、近くそうした警察官の訓練とか何かなさるように聞いておりますが、特に今日は法改正がなされていない段階において行なわれることですから、そういう点は十二分の注意を払っていただきたいことを要望いたします。  次にもう一点お聞きいたしたいのですが、先ほどから繰り返し聞かれておるようですが、病院のことであります。この病院のことで先ほど中野委員が言われたように、私ども、中山マサエさんも現地におきまして、何といっても医療刑務所的な考え方に立たなければ、なおすことができないのではないかということをしきりにおっしゃっておったし、私ども婦人議員もそういう気持を強く持って帰ってきたわけであります。それでその後法改正と取り組んでみると、これが非常に疑点があるということをいわれております。その中でたとえば一カ所に集中的にそういう百床なら百床、五百床なら五百床というふうに収容して治療させるということよりも、むしろ分散して各病院に委託をした方が効果が上がるのではないか、また暴力団等の襲撃もお礼参りもなくなるだろうし、またそのことの方が、本人のために世間に知らせずになおすことができるからいいのではないかという意見も、かなり強く出ておるわけであります。先ほどからの質疑応答を聞いておりまして、どちらがいいかということは今後の問題といたしましても、私どもの気持としては、むしろその看護に当たるあるいはお医者さんになる人たちが、身の危険を感ずるので引き受け手がないというので、分散は困難だ、もしそういう点の十二分の措置ができるなら分散の方がいいのではないか、こういうふうな意見もかなり出ておりますが、その点どなたからもでけっこうですが、一カ所に収容してやるという形がいいか、あるいは指定医の方々に特にそういう設備等十二分にしていただけるようなところがあるならば、そういうふうに分散してやった方が将来本人のためにいいか、どちらがいいかという点を、御経験の上から一つ聞かしていただきたいと思います。
  61. 大村重人

    大村参考人 先ほども申し上げましたように、麻薬中毒患者というのは全部同じ水準のものではございません。ほんとうに刑務所にでも入った方がいいのじゃないかと思われるようなのもございますし、それから精神病院でもいいし、あるいは場合によったら内科でもいいのじゃないかというようなものもあります。また受ける方の立場からしましても、もし一たんそういうところに入りますれば、ある程度そういう烙印を押されるようになりますので、かえってその後のやけくそというような気分が出てくるのではなかろうかということも考えられるわけでございます。それでやさしいところに入れた方がいいと思うのでございますけれども、しかし反面、今の治療意欲のない者、悪い者は、どうしても精神病院では治療することができません。われわれは単に医者の立場としての身の危険とか、あるいは職員の危険ということだけを言うのでございませんで、結局たくさんの患者を収容しておりますので、その中にその方が入ったために、ほかの患者治療は留守になってしまうわけなんです。
  62. 本島百合子

    ○本島委員 だから先ほど言ったように、軽い人と重い人があるから、重い人だけは一カ所に集めた方がいいかどうか。
  63. 大村重人

    大村参考人 そういうふうな意味で、先ほどせっかく百床ができるなら——もっと多い方がいいけれども、百床しかできないなら、地域を分けて東の方に五十床、西の方に五十床というようにして、その五十床の中に、どうしてもやれないというのをそこに押し込む。一カ所に集めておきますと、悪いのがおるのをわざわざ東京まで持ってくるわけにいきませんから、なるべく近く近いところがよろしゅうございますから、なるべく手軽に持っていけるような距離のところに置いて、自余のどうにかやれるものは精神病院の方で何とかこなそうじゃないか、こなしたらいいのじゃないか、これは私個人の意見でございますけれども、やった方がいいのじゃないか。その五十床というのは、将来もっともっと大きくしていただきまして収容する。それでいろいろな段階が必要だと思います。一様に全部を取り扱いますことは間違いでございます。
  64. 中田志郎

    中田参考人 今大村先生の病院からの、立場のようにお伺いいたしましたが、今度は麻薬患者の方からの見方を一つ実例をあげまして……。  実は麻薬を禁断しようというので、自分の指を自宅の便所の中で詰めまして、卒倒するくらい苦しんで今回措置入院をした患者がありましたのですが、その患者が現在の一般精神病院に入ったわけです。そうしましたところが、男女一緒でございますから、ちょっとしたすきに、一般のちょうどいかれた御婦人の患者がかみついたという情報なんです。そこであわてて行ってみたところが、いろいろ調べてみたら、かみつかれたのでなくて、キスをされた。それで今度は患者の方が心配して、精神病、気違いが伝染するのじゃないかという心配をしたわけです。家族の者もそれは一大事というので、麻薬をなおすために、気違いになったのでは大へんだということで騒ぎ出したというふうに、現在の一般精神病院に一緒にさせるということは、病院側としても大へんでしょうし、麻薬患者しても安心できない。というのは、自分は禁断した以上は正常な人間なんだ、気違いじゃないのだ、だから気違いと一緒にされては困るといふうに訴えます。それでやはり専門病院にした方がいいのじゃないかと考えておるわけなんですが、いろいろ問題が出てくるかと思いますけれども……。
  65. 本島百合子

    ○本島委員 まだお聞きしたいことがございましたけれども、時間も過ぎておりますので、参考人方々は、ほんとうにいろいろと、これから私どもが活動いたします場合における非常に貴重な御意見を聞かせていただいて、大へんありがたかったと思います。  最後に警察庁の方に伺いますけれども、麻薬のバイ人に対する刑法上の罪が非常に軽いわけなんですが、たとえば放火犯人の場合は五年ですか、殺人の場合には三年、そうすると麻薬の場合におきましては先ほどからいろいろ言われておるように、簡単に出てきてしまう。保釈金でも積んだらさっさと出て来られる。どうしてこういうふうに区分があるのか。こういう麻薬というものは正常ルートでない限りにおいては脱法ですから、法律を犯しているのだし、それを使うことにきまっている、使わせているのですから、明らかに十人か何百人かを廃人に導いておるのですから、何でこんなに簡単に今まで処置されておったのか。現行法がそうなっておるので、しょうがありませんではなくて、麻薬に対する考え方があまりにも甘いと思うので、その点一つ聞かしていただきたい。
  66. 中原英典

    ○中原説明員 ほかの法律の量刑との関係は、法務省の課長さんにお願いするのが適当かと思いますが、警察庁といたしましては、現在の状況からは罰則が低いのじゃないかという点は、先生御指摘の通り同感に存じております。いろいろ制定当時の事情があったと思いますが、御専門の法務省からその点お願いいたしたいと思います。
  67. 荻野かく一郎

    ○荻野説明員 御指摘のように、このような麻薬事犯につきましては、特に徹底的な検挙と厳正な処分、これが必要であることは申すまでもないところでございまして、検察庁におきましても事案の処理については従来から厳重な方針を、厳罰方針をとっておるわけでございます。昭和三十六年における麻薬法違反事件の起訴率をちょっと申し上げますと、八三・三%でございます。これは全刑法犯の起訴率は五六・二%でございまして、兇悪犯といわれます殺人が六六・九%、放火が六五・一%、強盗が八一・三%、かようになっておりまして、麻薬事犯に対しましては、処分は厳重にやっておるわけでございます。検察官の方でも非常に重い刑を求刑するわけでございますが、これは裁判官の方で独自の判断で、あるいは十年求刑いたしましても五年であるとか四年であるとかいう裁判が間々あることがございます。かような場合、検察官といたしましては十年の求刑に対して七年というような判決でも、直ちに控訴いたしまして、控訴審でさらに立証してもっと重くする、こういう方針でやっておるわけでございます。しかしながらこれらの事件の処理を通じて考えてみましても、まだまだ軽いのじゃないか、こういう意見もございますし、また先国会衆議院麻薬対策の強化に関する決議の中にも、不正取引者に対する罰則の強化という点があげられておるのでございます。法務省といたしましても、現行の法定刑が軽過ぎるのではないかというふうに考えまして、これは実にさっきお話のございましたように、ほかの法令とのバランスとでも申しますか、均衡もございますけれども、しかし麻薬事犯というのは御案内の通り国際性を持っておる犯罪でございまして、わが国だけ軽過ぎるというようなことはおかしいじゃないかという議論もございまして、私どもの方ではただいま罰則につきまして大幅に画期的な強化という方針のもとで、外国の立法例でございますとか、外国で実際どのような事例があったか、こういうようなものを調べておる最中でございます。
  68. 本島百合子

    ○本島委員 法改正がなされないまでも、そうした態度をもって厳罰に処していくような形をとっていただいて、この麻薬を取り扱うことは人道的に許されないのだということを、判例の中でも打ち立てていただきたいというような気持が私どもするわけです。どうかそういう点がんばっていただきたいと思います。今後の法改正にあたりましても、今までのようなゆるやかな、金さえ積めばいいのだというようなことのないようにしていただきたい。ただいまもちょっと聞きましたが、横浜の暴力団は一日に百五十万円の金をもうけておる。年間七千万円になってくる。こういう莫大な金をもうけておる者がある。それをしぼっていく親方があるし、金を貸してくれるのがあるわけなんでしょう。こういう者は現在つかまりづらいものであっても。これを徹底的に究明していけば、私は小さな注射液程度のものはどんどんなくなっていく、こう思うわけですが、そういうことをお調べになっていらっしゃるだけに、今後は徹底的な捜査と徹底的な罰則をもって麻薬撲滅に一応当たっていただく。患者につきましては今後私どもも研究いたしまして、できるだけ早い期間にそうした治療機関もできるし、更生ができるような形をとっていただくために努力をするつもりでございまので、これをもちまして私の質問を終わらせていただきます。
  69. 秋田大助

    秋田委員長 参考人方々には長時間にわたり種々有意義な参考意見をお述べいただき、本問題の調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。     —————————————
  70. 秋田大助

    秋田委員長 去る七月二十日より各地に委員を派遣し、麻薬対策に関する件を調査したのでありますが、その報告書が各派遣委員より提出されております。これを本日の会議録に参考として掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる九月一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十三分散会      ————◇—————