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並川参考人 私は、
日本バナナ輸入団体協議会の副
会長をいたしております。
会長はただいま他方に出張中であります。私、かわりまして
参考人として出て参りましたような次第でございます。特に今回の
バナナと
コレラの
関係につきましては、皆さんにも非常に御心配をかけました。さようなことで、これに対して一応われわれの話を聞いていただき、
補償の問題等についても御努力をお願いいたしたいと思う次第でございます。
台湾の
バナナが積んでこられました船は四船ございます。入港日は七月二十九日にイサルコ号というのが横浜へ入っております。それから僑果輪というのが七月三十一日に横浜へ入っております。玉山丸は八月一日に神戸の港に入っております。それから八月一日に台運輸というのが横浜へ入っております。イサルコ号の積荷は一万二千八百二十二かご、僑果輪は二万八千三百九十三かご積んでおりました。玉山丸は一万一千八百七かご、台運輸は九千四百五十八かご、これを合計いたしまして六万二千四百八十かごが輸入されて、これが廃棄処分を受けたような結果になっております。
この輸入
禁止措置に伴う
損害といたしましては、輸入貨物の原価をまず考えて計算いたさなければならぬと思います。イサルコ号は輸入
禁止処分の出ます前に横浜へ到着いたしておりまして、仮通関をして荷物は東京、横浜等の加工室に保管をされておって、これを移動を
禁止され、販売を
禁止されておったものでございます。その後大臣の輸入
禁止の
措置に伴う廃棄命令によりまして、イサルコ号を初め四船ともの各荷物が全部廃棄処分に処せられたのでございます。イサルコ号は、原価がどれくらいかかっておるかと申しますると七千四十三万二千七百五十円、それから僑果輪は二万八千かごも積んでおりまするから一億三千六百二十二万一千三百十円、玉山丸は五千六百六十四万三千九百二十五円、台運輸は四千五百四十万三千六百七十九円、これらを合計いたしますると三億八百七十万一千六百六十円、こういう金額に達するのでございます。これは
政府の認められました
台湾の輸入原価と、それから
政府が特別利益金を徴収する際に認めておりますところの諸掛り、それらの費用を合わしたもので、特別に自分らで非常に
損失の計算を拡大しておるという事実はございません。ところが、この三億八百七十万のうちに
政府の特別利益金というものが一億円以上入っております。この特別利益金というのは、
政府が外貨割当をいたしまするごとに、銀行保証状をもって四カ月後においてはそれを決済するということで、
政府へ担保として入れているものでございます。ところが今回は、まるで陸揚げをしても売れず廃棄になり、陸揚げしないものはそのままで廃棄になるというようなことで、全く何の利益も私たちはないのでございまして、そのために特別利益金を取り上げられるということは、とうていあり得べからざることでございまするから、通産省の方におきましても、これはできるだけ控除するという建前で考えておられます。それからイサルコ号は仮通関をいたしまして、関税の方はまだ決済になっておりませんが、税関といたしましても、この問題については大蔵省も大体非常に好意を持っておられると思います。いずれも
決定はいたしておりませんけれども、好意を持っておられると思います。そういうことで、
政府に対して納めるべき負担となっておる特別利益金と関税を引いてしまいますると、一億七千七百万円くらいの純
損失になります。それでありまするから、三億八百七十万という数字は大体一億七千七百万くらいの数字で
損失は終わるものと思います。
それから私たちは、これらの
バナナが陸揚げいたしまして、平常
通りに販売されたといたしますれば、それに対する幾らかの手数料を見てほしいということで、得べかりし利益とでも申しまするか、これらを各船ごとに原価の六%ずつをつけて
損失補償を要求いたしますると、千八百三十八万円くらいのものになるのでございます。
それからイサルコ号その他の三船の貨物廃棄のために、私たちは廃棄処分に
協力したわけでございますが、これは私たちがこの廃棄処分の金を払うということでなければ、船会社はそれをだれが払ってくれるかわからぬということでは処分をがえんじませんから、私たち
団体協議会が、各荷主にかわりまして責任を持って船会社に命令して、廃棄処分をさしたものでございます。これらの費用は、今正確な計算書は出ておりませんが、ほぼ出たところによって計算いたしますと千七百六万二千九百四十一円、こういう数字になるのでございまして、これはいずれば船会社その他廃棄に要するいろいろな費用を含めて払わなければならない数字でございます。
それから
台湾に送りました信用状によって、輸入
禁止になりましたために入らない輸入予定分というものが二十三万一千余かごもありまして、これは当分全然入る見込みもございませんし、その他こういう
状態でまるで八月中遊び、これから先も
台湾バナナを扱えないものは遊びになる。あるいはほかの
地域から持ってくるものは、できるだけそういうことによって
営業を続けることにいたしまするけれども、まだ自由化するか、外貨割当をやるか、十月一日からどういう
措置をとられるかということがわかりませんから、今では五里霧中でございます。そういうことで、こういうことによって
営業上の
損失を受けることは多大であろうと思いまするけれども、これを今計算して出すということはとてもできません。そういうことで、こういうものについてもお考えを願いたい、こういう考え方でございます。
そこで、これらの品物の原価は一体だれが持つのか、出荷の方の
損害になるのかわれわれの
損害になるのか、こういう問題でございますが、これにつきましてはCIF契約ということで、原価と保険料と船運賃とを加えて売買契約が成立しております。そしてこの契約によりますと、国際貿易の手続上から申しますれば、
台湾で品物を船の上に積み上げれば、その後の危険負担はこちらになるのでございます。それでこちらへ船が着きますると、船荷証券その他の
関係書類を出しまするから、これを銀行に提出すれば、直ちに
台湾に向かって決済をしなければならぬ。私たちは原価は全部
台湾に対して支払ってしまっておるわけです。そういうことで、いろいろと現実の
損害を大きく受けておるわけでございまするが、ただいま申しましたように、関税の返還とか、あるいは特別輸入利益金の返還であるとか、そういうものについても努力いたしております。るし、海上保険の契約ができておりますから、その保険会社に対しても保険金を受け取るために非常に努力いたしております。しかしながら、
バナナというものは非常に腐敗しやすいものでございまするから、これが一部汚損したからとかなんとかということでは保険金は払いません。海難にあって、そして船が沈んで全損したという場合にのみ保険が払われることになっておりますから、この問題については、保険会社としても払う必要なしという
意見を持っておるのが今の
状況でございます。また保険の条項の中に、戦争条項とか戦争のために輸入
禁止になったとか、あるいは拿捕されたとかなんとかいうことで全損になりますれば、これは支払いを受けることができるのでありまするけれども、そういうことが今日の保険の
状態におきましては大体においてむずかしい。もちろん私たちとしては、自分のことでありまするから、いたずらに
補償の要求を
政府にするばかりでなく、みずから保険契約の履行についてもただいませっかく努力をいたしておる次第でございます。
さようなことで、だんだんと
損失の
状況につきましては明らかにいたしたわけでございまするけれども
政府——
所管庁といたしましては
厚生省でございまするけれども、
厚生省といたしましてはできるだけほかの役所の方でいろいろな便宜をはかって
損失を少なくさすようにしようというようなことで、ただいまのところでは食品衛生法に
補償の規定がないということが根拠だろうと思いまするけれども、この
補償の必要を現在ではまだ認めておられない、せっかく研究していただいておりますと思いまするけれども、現状においてははっきりしたお答えはない、こういうことでございます。
われわれといたしましてもこれだけの
損害を受けており、われわれの責任に帰すべき理由は一つもないのでありまするから、やはり国家賠償法の根本理念から申しますれば、こういうときに
政府が私たちの条理を十分おくみ取り下さって、
補償してしかるべきだというつもりはいたしておりまするが、どうしても
補償ができないということになりますると、結局は憲法二十九条ですか、その三項にでもよりまして、憲法上の問題として私たちはこれを
法律的に争わなければならないような立場に追い込められるのかということも考えるのでございます。御承知の
通りに今日の憲法は明治憲法と違いますから、
政府の行動によって
国民が
損害を受けました場合においては、あるいは賠償責任とか刑事責任とか憲法にもいろいろ規定があり、また財産権の侵害についても憲法には規定があるのでございます。それらの規定を根拠にしてわれわれが
法律的にこれらを
補償してもらうことができるのではないか。これは
法律論として、私たちの専門のことでもございませんので、よくいろいろな
方面の
意見を聞いて進めたいと思いますが、今日のところでは
厚生省に事情を具申して御
協力をお願いする、こういう考え方でございます。
それから農林省がこの問題について一番心配しておりまするのは、大体この
バナナの輸入をして卸販売をしておるものは、これは中央市場の卸売会社あるいは加工会社が非常に多いのでございます。また中央市場の卸売会社や加工会社がつくった
バナナ輸入専門の業者が非常に多いのでございます。そういうことで、中央市場の業者が非常に困るということについては農林省は非常に心配をして、自分では何とかうまくいけばいいと思っておられまするだろうと思いまするが、
厚生省とどの程度のお話し合いができているかということは、私にはよくわかりません。
そういうことで、各
方面から御同情を願っておりまするけれども、現在は目的は十分達せられておりませんので、そういう点を今後努力して解決に向かいたいと考えておるところであります。どうもありがとうございました。
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