○石川
委員 大臣が予定があってゆっくり質問できないのが非常に残念でございますが、所信表明に見合う
程度の大ざっぱな質問を申し上げたいと思います。
大臣の所信表面では、国土保全、
道路、宅地、
住宅、下水道を緊急に整備していかなければならぬという大体五つの柱を立てられました。これは
建設行政としては別に耳新しいことではございませんけれ
ども、それが非常に重量感を持って斬新な響きを与えるというのは、やはり実力者の
大臣としての重みが言葉に響いているのじゃないかというふうに感じる。ぜひ
一つ国民の期待にこたえて、柏戸的な寄り身の早さでこれはどんどん実現をしてもらいたいということを希望するわけです。しかし、われわれといたしましては、こういうふうな五つの柱の前提条件となりましたものは、所信表明の中にも若干触れておりますけれ
ども、先ほど
三宅さんが言われたように、何としても
地価の値上がりというものを抑制するということなくしては、これらの五つの柱というものが完全に立つことはできないのじゃないかというふうに
考えるわけです。この問題についていろいろ申し上げたいことはたくさんありますが、時間がありませんから私は結論的に申し上げますと、
地価の問題というものはいかに重要かという理由を若干申し上げたい。
まず第一に、老後の安住の地としての
住宅を求めるためには、
地価がこのように上がったのでは求めることができないというのが実情でございます。宅地をいかに造成いたしましてもそのバランスをとれないというのが現状であって、この点で何としても
政府の
政策の責任ではないかということを常々
考えておるわけです。
次に、去年とおととしの生産というものを比較いたしますと、相当去年は景気がよい結果生産が上昇いたしております。上昇いたしまして、これは確かな数字ではございませんけれ
ども、増加した付加価値の中で国民の個人所得に所属するものは大体一兆三千億円だというふうにいわれております。ところが一方では、
東京都だけで
土地の値上がりが一兆円、全国的に見れば相当な大幅な値上がりがあったのではないかというふうに
考えられるわけです。
それで、そのことからいろいろな結論が出て参りますけれ
ども、まず第一に、先ほ
ども触れましたように、これから
地方を開発しよう、格差を解消しよう、あるいは
東京都の
対策を何とか
考えなければならぬというような問題につきましても、
土地がこのように値上がりを続け、用地買収費というものが
公共投資の費用の大半を占めるというような
状態がどんどん続いていく限りにおいては、これはとんでもないことになる。
地方開発のガンになる、あるいは
東京都
遷都の問題のガンになるということが、まず第一点として
考えられる。
それから
あと一つ、これも
三宅さんが若干触れられましたけれ
ども、全部が全部二重抵当になって信用造成のもとになるとは
考えられません。しかしながら、少なくとも
政府はよくコスト・インフレの様相があるというようなことを言われております。しかしながら、労賃の値上がりというものは何らかの形で生産を伴っておるという意味で、私はコスト・インフレ的な要素が全然ないとは言いませんけれ
ども、それよりももっと信用インフレ的な要素の方が最近の物価の値上がりについては大きな要素を占めておるのではないか、こう
考えておるわけです。この
土地の値上がりというものは国民所得ではありません。しかも、もちろん貯蓄にはなりません。そういうものを背景として二重抵当として信用が造成されるということになれば、どう
考えても信用インフレの
一つの大きな要因になっているということは否定できないのではないか、こういうふうに
考えるわけです。
それから
あと一つは、株の値上がりが昨年中に三兆円をこしているといわれておりますけれ
ども、この問題は資本主義の当然な現象でありますから、いまさらここに取り上げようとは思いません。しかしながら、ともかく株の値上がりだとか
土地の値上がりだとか、勤労所得に依存しないものの方が勤労所得よりもはるかに大きな利潤を獲得できたのだということになりますと、勤労意欲というものはどうしても低下せざるを得ないのではないか、こういう問題もそれから当然な結論として出てくるのではないかというようなことをわれわれとしてはおそれております。一攫千金あるいは射幸心をあおるということになったのでは、長い目で見た
日本民族の将来のためにはとるべきではない。そういう意味でも
地価を抑制しなければならないという結論が出ます。
それから
あと一つは、現在の
日本の工場用地というものは、他国に比べて十倍
程度になっているというふうな統計が出ておりますけれ
ども、これは先ほどから問題になりますように、国際競争力にどうしても大きな影響を与えるのだ。今のうちはまだよろしい。しかしながら、これからこの調子で
地価が上がるということになりますと、工業製品あるいは農業製品についても当然はね返ってくるということで、国際競争力には相当の影響を与えるということも
考えなければならぬと思います。
それから
あと一つは、これは老婆心かもしれませんけれ
ども、貿易の自由化あるいは為替の自由化に伴って、今度は資本投下というものも自由に入ってくるということになりまして、最も安全で確実な有利な
投資は
土地だということになりますと、非常に膨大な資本というもので
日本の国土を第三国人が占有するという結果になるおそれがなきにしもあらずではないか。これは法的措置やその他で考慮してもらわなければなりませんけれ
ども、そういうようないろいろな事情からいたしまして、何としても私は先ほど
大臣が言われました五つの所信表明の柱というものの前提条件として、この
地価を抑えるのだということだけ
一つ実現をすれば、歴代
建設大臣の中での最も大きな業績になるのではないかということを
考えざるを得ないわけです。若干この点は触れられておりますけれ
ども、私の今申し上げましたように、
地価がいかに
日本の経済にとって、あるいは
日本の国民の道義心にとりましても大きな問題の重点になっておるかということについての御
意見があれば、あるいはもし私の申し上げたことでこういう点は違う、間違っておるという点があれば、
一つ御所信を伺いたいというふうに
考えております。