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1962-08-30 第41回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 津雲 國利君    理事 荒舩清十郎君 理事 木村 公平君    理事 鈴木 仙八君 理事 小川 豊明君    理事 勝澤 芳雄君 理事 西村 力弥君       久保田藤麿君    鈴木 正吾君       藤井 勝志君    久保 三郎君       芳賀  貢君    森本  靖君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         行政管理政務次         官       宇田 國榮君         北海道開発政務         次官      小西 英雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         内閣調査官         (内閣官房内閣         調査室長)   石岡  実君         法務事務官         (矯正局作業課         長)      菅野 勘六君         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君         会計検査院事務         官         (第一局長)  秋山 昌平君         会計検査院事務         官         (第二局長)  樺山ただ夫君         会計検査院事務         官         (第三局長)  中島 尚文君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  昭和三十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十五年度政府関係機関決算書  昭和三十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十五年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和三十五年度物品増減及び現在額総計算書(  内閣所管内閣官房総理府所管行政管理庁  及び北海道開発庁法務省所管)      ————◇—————
  2. 津雲國利

    津雲委員長 これより会議を開きます。  閉会審査申し出し出の件についてお諮りをいたします。  会期も切迫いたして参りましたので、この際、委員各位のお手元に配付いたしました印刷物の通り昭和三十五年度決算外九件について、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 津雲國利

    津雲委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。     ————————————— 閉会審査すべき事件  一、昭和三十五年度一般会計歳入歳出決算    昭和三十五年度特別会計歳入歳出決算    昭和三十五年度国税収納金整理資金受払計算書    昭和三十五年度政府関係機関決算書  二、昭和三十五年度国有財産増減及び現在額総計算書  三、昭和三十五年度国有財産無償貸付状況計算書  四、昭和三十五年度物品増減及び現在額総計算書  五、歳入歳出の実況に関する件  六、国有財産増減及び現況に関する件  七、政府関係機関経理に関する件  八、公団等国資本金の二分の一以上を出資している法人の会計に関する件  九、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する件 一〇、国会決算審査に関する件     —————————————
  4. 津雲國利

    津雲委員長 なお、ただいま決定いたしました閉会審査申し出の各件が、本委員会に付託になり、調査のため現地委員を派遣する必要を生じました際には、議院運営委員会決定基準範囲内におきまして、委員長において適宜取り計らうことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 津雲國利

    津雲委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。      ————◇—————
  6. 津雲國利

    津雲委員長 昭和三十五年度決算外三件を一括して議題といたします。  まず、総理府所管行政管理庁関係決算及び北海道開発庁関係決算について審査を行ないます。  行政管理庁関係決算につきまして、概要説明を求めます。宇田政務次官
  7. 宇田國榮

    宇田政府委員 昭和三十五年度における行政管理庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  行政管理庁歳出予算現額は、十八億七千百九十八万円でありまして、支出済歳出額は、十八億五千七百五十八万円、不用額は、一千四百四十万円であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額十八億七千百二十三万円、経済企画庁から移用額五十万円、科学技術庁から移用額二十五万円であります。  支出済歳出額のおもなものは、人件費八億七千六百四十九万一千円、事務費一億二千四百二十七万六千円、うち、行政監察旅費三千九百七万一千円、統計調査事務地方公共団体委託費八億五千六百八十一万三千円であります。  不用額を生じましたおもな理由は、職員欠員を生じましたので、職員俸給等を要することが少なかったためであります。  以上、昭和三十五年度の行政管理庁関係決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
  8. 津雲國利

  9. 小西英雄

    小西政府委員 昭和三十五年度北海道開発庁経費決算概要について御説明いたします。  昭和三十五年度当初歳出予算額は、三百七十億千七百三十七万円でありましたが、これに昭和三十五年十月以降の政府職員給与を改善するための予算補正追加額一億七千六百五十八万円がありまして、その結果、三百七十一億九千三百九十五万円となりました。  これに原子力試験研究のため科学技術庁から移しかえを受けた額八百二十四万円と、予備費使用額八百五十五万円並びに科学技術庁から移用を受けた額四百八十七万円を加えますと、総額は三百七十二億千五百六十一万円であります。  以上の予算移しかえ及び支出状況を御説明いたします。  まず、移しかえについて申し上げます。  厚生省所管厚生本省移しかえた額三千万円、農林省所管農林本省移しかえた額八十億四千百二十四万円、農林省所管の林野庁へ移しかえた額六億五千百三十九万円、農林省所管の水産庁へ移しかえた額十三億二千二百五十万円、運輸省所管運輸本省移しかえた額十六億三千三百四十万円、建設省所管建設本省移しかえた額十一億三千八百八十八万円、合計百二十八億千七百四十一万円となっております。  次に、移しかえ額を差し引きましたあとの、歳出予算現額、二百四十三億九千八百二十万円の支出内訳は次の通りであります。  開発事業費では、建設省所管治水特別会計繰り入れで三十七億千五百三十一万円、建設省所管道路整備特別会計繰り入れで百五十七億千二百五十万円、農林省所管国有林野特別会計繰り入れで三億三千三百二十万円、運輸省所管特定港湾施設工事特別会計繰り入れで五億八千五百六十万円、工事事務費では、開発事業工事事務費で二十六億三千八百三十万円、雑件では、一般行政費で十二億八千五百四十万円、開発計画費で八千二百五十五万円、開発事業付帯事務費で二億千八百九十三万円、原子力試験研究費で八百二十四万円、  以上合計二百四十三億八千五万円でありまして、これを歳出予算現額に比較いたしますと千八百十五万円の減少となっております。  右の減少額のうち、翌年度へ繰り越した額は、財政法第四十二条ただし書の規定による事故繰り越しのもの百二十一万円でありまして、不用となった額は千六百九十四万円であり、その内訳とおもな理由は次の通りであります。  特定港湾施設工事特別会計繰り入れで百五十万円、開発事業工事事務費で八百四十六万円、一般行政費で六百四十六万円、開発計画費で二十万円、開発事業付帯事務費で三十二万円、この不用額を生じました理由は、特定港湾施設工事特別会計では苫小牧港航路浚渫工事費を要することが少なかったためであり、開発事業工事事務費一般行政費及び開発事業工事事務費では、職員欠員を生じ、給与が予定より必要でなくなったものであり、また開発計画費では、諸謝金等において多少の整理残を生じた結果によるものであります。  なお、前述の予算実施内容を概略説明申し上げますと次の通りであります。  北海道開発事業工事事務費は、北海道において河川道路港湾及び農業等直轄事業実施するため、北海道開発局の施行する工事に直接必要とした人件費三千五百六十名及び事務費であります。  北海道開発庁経費は、その大部分が職員二千三百十四名に必要とした人件事務費でありますが、その他に北海道開発基本施設である建設事業を進める上において必要な各種試験研究のために設置された土木試験所経費として旅費庁費及び施設費として三千二十九万円、河川道路、漁港、開拓、土地改良等北海道開発事業に従事する北海道職員七百三十八名に要する人件費の一部を、北海道に補助するために支出した経費九千二百十五万円がおもなものであります。  北海道開発計画費は、北海道開発法に基づいて、北海道における土地、水面、山林、鉱物、電力その他資源を総合的に開発するための基本的の計画調査実施に要した経費であって、支出総額八千二百五十五万円のうち直轄実施した経費は六千二百四十五万円、他に委託した経費は二千十万円であります。  北海道開発事業付帯事務費は、北海道河川農業等直轄事業実施するため北海道開発局において必要な旅費庁費等に要した事務費であります。  なお、会計検査院昭和三十五年度決算検査報告におきまして、御指摘を受けました件はありませんが、予算執行にあたっては、今後とも十分な注意のもとに、工事実施あるいは事務の処理を行なうよう厳正に指導して参る所存であります。  以上、昭和三十五年度北海道開発庁決算概要と御説明を申し上げましたが、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  10. 津雲國利

    津雲委員長 次に、会計検査院当局より検査概要について説明を求めます。秋山第一局長
  11. 秋山昌平

    秋山会計検査院説明員 昭和三十五年度の行政管理庁関係歳入歳出決算につき、書面並びに実地検査をいたしましたが、不当として特に申し上げる事項はございません。
  12. 津雲國利

    津雲委員長 次に、中島第三局長
  13. 中島尚文

    中島会計検査院説明員 北海道開発庁関係昭和三十五年度決算につきまして、検査をいたしました概況について御説明申し上げます。  北海道開発庁現地機関でありますところの北海道開発局並びにその下部機構札幌開発建設部外建設部、それから石狩川治水事務所につきまして、主として建設省運輸省農林省事業施行状況につきまして、その設計費積算あるいは工事費経理について重点を置きまして、実地検査をいたしましたが、特に検査報告指摘するような事態は見受けられなくて、当局是正改善あとが著しいように見受けられました。以上で説明を終わります。     —————————————
  14. 津雲國利

    津雲委員長 これより内閣所管内閣官房関係決算について審査を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。勝澤芳雄君。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 官房長官にまずお尋ねいたしますが、官房長官所管内閣官房情報調査委託費というのがあるわけであります。三十三年度を見ますと、十二の団体に対しまして約一億、三十四年度が一億八千万、三十五年度が十四の団体に対しまして二億六千万、三十六年度が三億二千万、三十七年度が三億六千万、年次ふえているわけでありますが、前回四月二十四日に、前の古屋調査室長からいろいろと御説明を聞いてみますと、一体この情報調査委託費なるものが、その目的に沿った団体支出されているかどうかという点について、少し疑問を持つのであります。たとえば、日本放送協会のようなものは別といたしまして、任意団体にたくさん出されておる。そしてその任意団体は、一体長い歴史、伝統のあるものであろうかという点を調査してみますと、この調査委託費をもらうためにつくられた団体のように見えるわけであります。一番露骨な例は、調査委託費収入支出、何らのほかの収入もない、こういう状態になっておるわけでありまして、しかもまた、その内容を見てみますと、新聞、雑誌の切り抜き協会だ、こういうところに三千万の金が出ている、こういうように見えるわけです。私の手元に御報告を受けた資料から推察いたしますと。最近補助金とか委託費というものをもっと効果的に使えということが盛んに言われております。そしてまた補助金につきましては、補助金適正化委員会でいろいろ検討されているようであります。りっぱな図書館もあるわけです。図書館の中では使い方によれば相当有効な資料がたくさん出されておるようであります。こういう点も考えてみますと、やはりこの出されている情報調査委託費というものについて、必要なものは別といたしまして、相当検討しなければならぬものがあるのじゃないだろうか。こういう点について、新しくおなりになった官房長官として、再検討して、やはり三十三年から、所得倍増じゃないけれども倍増以上にふくらんでいるわけでありますから、このようなどなたか、整理をするときにはすっきり整理をしないと、しめしがつかなくなって、そのままずるずるにいく、こういうように思うのでありますが、その点についてお考えをまず最初にお聞きしたいと思います。
  16. 黒金泰美

    黒金政府委員 今のお尋ね、いろいろと御批判を賜わって恐縮なんですが、私どもといたしましては、根本的な考え方は、やはり国民税金でちょうだいしておる金の使い方でありますから、できる限り有効に、そうして重点的に使用方法考えなければいけない。もしお説のように、惰性に流れて、必要がなくなったものをなお続けておるとか、あるいは必要性の少ないところに、あるいはほかの方法でもっと安く効果を達するのに、特に多くの金を用いておるというようなことがあれば、非常に申しわけないことでありますので、私どもとしても十分に慎重な態度で検討して参りたいと思いますけれども、さしあたり今までのところの委託その他を見て見ますと、まあ当初と多少意味が違ってきたりしておるものもあるかもしれませんが、いずれも、現在におきましても必要なものであり、今おっしゃるようなそうひどい使い方とは思いません。ただ、今のお話のありました点は、十分に考慮いたしまして、この上ともに注意をして、ほんとうに重点的に、有効な使い方ができるように、努力して参りたいと思っております。
  17. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 官房長官、私、この前中をずっと検討させていただいたのです。そうしますと、やはりこれはいいかげんによしたらいいじゃないかというのがあるのですよ。それから、ここから出版されておる資料を見せていただきました。国から委託費を出す、その委託費を出したところが任意団体だ、その任意団体がいろいろの人が集まってつくられて、その出てくる中の記事を見てみますと、役人が一生懸命記事を書いておる。税金をこっちから移して、今度記事を書いて、原稿料をもらっておるかどうか知りません、そこまで調べていませんが、またはね返っておるのではないか。ぐるぐるまわっておるようにも思うのです。そうしますと、この前の調査室長、大へんりっぱな答弁をここではしているわけです。団体を指定するときにはいろいろ検討して、そして目的に沿ったものをやるのだと言われておるのですけれども、実際はそうでないのです。何かこの人をどうかしなければならぬ、それじゃ一つつくろうじゃないか、それじゃここで委託をやれ——これが専業の人ばかりがおればいいのですけれども、そんなにそこでは専業でおる人はあまりりっぱでない。りっぱな人は三つも四つもやっているわけです。ですから、別にこれがなくなったからといってどうということはないと思います。ただ全体を見てみますと、やはり補助金委託費というものは、官房だけではないのです。各省全部にわたって調べてみますと、そういうものが幾らでもあるわけです。それがからみ合って今の政治がつくられておるのでしょうけれども、やはりすっきりするところはすっきりしなければならぬというふうに思うのです。ですから、今、官房長官が言われているのを見ていると、検討して善処すると言われているのですが、たとえば国民出版協会というのがあるのですね。三十五年度で約三千二百八十五万ばかり出ておるわけです。役員が七人おって常勤が二人、職員が十八人だそうです。収入を見てみますと、寄付金が二十万ちとょっと、会費が二十万とちょっと、あとは三千二百八十六万ばかりが唯一の財源だ。これでやっているわけですね。やっている仕事が、ほかでやっていないことならいいと思うのですけれども、ほかでやられていることであって、別にわざわざつくらなくてもいいじゃないかと思われる。私が調査した範囲内ではそう思うのです。機密事項で、まだあるのかもしれませんけれども……。それは一つの例です。あと、この前は三千万以上のものばかり見ましたけれども、それ以下の三百万台、五百万台を見てみますと、存在価値があるのかというような点について私も相当疑問を持つわけです。一つこういう点は、あなたは、なられたばかりですから、なられたときに見て統合整理をするというのが一番いいと思うのです。日がたてばできないのです。ですから三十八年度の予算が次の通常国会に出てきますので、それで検討されているのかどうかという点を私はあずけておいて、この問題については十分善処していただきたいと思います。
  18. 黒金泰美

    黒金政府委員 今のお話、御質問というよりも非常にいい御忠言で、私どもも、さっき申し上げた通りに、せっかくの金でありますから、できるだけ有効に使わなければ申しわけないので、よく検討いたしまして、その実績でもって御批判願うということにいたしたいと思います。
  19. 津雲國利

    津雲委員長 内閣官房関係決算についての本日の質疑は、この程度にとどめます。
  20. 津雲國利

    津雲委員長 次に、法務省所管決算について審査を行ないます。     —————————————  質疑通告がありますので、順次これを許します。勝澤芳雄君。
  21. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、最近週刊朝日に連載されております水上勉さんの書いております「飢餓海峡」という推理小説の中で、大へん興味深く読んだところがあるのです。その点で、実情などについてお聞かせ願いたいと思うのですが、これは小説のことですから、真偽はよくわかりませんけれども網走刑務所を出た、仮釈放された木島沼田、犬飼というのが、小説によると、出てきてからほんのわずかの間に犯罪をしておるわけであります。  そこで、少し読ましていただきますと、岩幌署田島という刑事網走刑務所巣本看守部長というのが話しながら行くのですが、その中で、網走看守部長が、刑余者更生方法をやはり犯罪についても考慮すべきじゃないだろうか。   「沼田木島も五年近く刑務所で働いて、シャバへ出たが、汽車賃もふくめて二十七円五十銭しかなかった。これじゃ、罪を重ねて生きろというようなもんじゃありませんか」田島は誰にともなくぶっつけようのない憤りをしゃくれた顔に現わしていた。「わたしは、あれから、いろいろ考えてみました。二十七円というと、闇市の屋台でたべるスイトンが一杯七円。ジャガイモ一皿が五円。一日分の食糧代じゃありませんか。刑務所は、早く帰住地にさえ帰れば公定価格配給食が待っているとでもお考えですか。……本人にしてみると、刑務所を出たその日に飢えの思いがするんじゃないでしょうかね。きくところによると、刑余者の誰もがシャバへ出た日は、女を買うことと、腹いっぱい飯を喰うこと以外にないといいます……」  こういうような会話が出ているわけです。そのあとで、   「巣本さん。あんたも網走へお帰りになったら、よく刑余者更生について、所長さんに進言して下さい。血のついた領置品を着せて帰らせないで、せめて小ざっぱりした帰住衣ぐらい着せてやってくれと、岩幌署田島がいっていたと仰ってもかまいませんよ」  こういうような会話が載っているわけです。これから私は、実はこういう人たちに対する帰るときのお金がどうなっておるだろうかということで予算書を見てみますと、刑務所作業賞与金という項がありまして、ここで働いた賞与という形で出している。しかし、それも私が調べてみますと、一日十円程度、月に約二百四十円、刑余が平均して十四カ月で、出所のとき二千円程度、差引しておる、こういうようなことらしいです。この小説に出てくる時代は、これは終戦の昭和二十二年ごろの情景ですから、二十七円五十銭という金額が出ているのでしょうけれども、しかし、それから比べて今も状態があまり変わっていない。そして片方ではちゃんと、やったのは収入として上げている。そしてこの刑務所に入っている人たちの働いた金、そして今度賞与として出したもの、これを差し引いてみると、やはりもう少しあたたかいやり方というものを、二度の犯罪をさせないために考えてやるべきじゃないだろうか、こういう点を感じたわけでありまして、そういう点から、この作業賞与金というものが今どんなふうになっているか。そしてどういうような計算をされているのか。そして今度は逆に、刑務所に働いた人たちのそういう収入といいますか、そういうものは、どういうふうにされているのか。その辺についてお聞かせ願いたい。
  22. 菅野勘六

    菅野説明員 今、先生が御指摘になりましたように、今ちょうど平均二千円というところ、大体その程度が事実でございますが、刑務作業賞与金関係を申し上げますと、刑務所作業はいろいろありますが、大体業種別に、合わせまして二十五業種に分けておるのですが、これをまた一類と二類とに分けまして、それをさらに見習工、四等工、三等工、二等工、一等工の五階級に分けて、一類、二類で大体十階級に分かれております。それに対して現行一時間当たり一類一等工は、この四月に改正しまして、一時間三円、それから二等工が二円、三等工が一円十銭、四等工が五十五銭、見習工が三十銭、それから二類の一等工は二円二十銭、二等工は一円二十銭、三等工が六十五銭、四等工は四十銭、それから見習いは二十五銭、これが各一時間当たり基準でありまして、受刑者は一日八時間働くことになっておりますので、これに大体八倍したものがその日の作業賞与金ということになるわけでございます。  それで、刑務所に入りますと、規定では見習いから始めるということになっておりますので、各等級にそれぞれ昇等期間があります。ですから、一等工になるためには、二年から二年半ぐらいかかるわけで、大体、今、先生から御指摘になりましたように、十五カ月ぐらいの刑の執行ということになりますと、大体二千二百円程度しかいかないわけです。われわれといたしましては、今御指摘になりましたように、更生資金としては、現在の貨幣価値からしてあまりにも少ないので、相当値上げを努力して参りましたが、昭和三十三年には二割、それからまた、この四月に二割、そうしてまた来年というふうなことでやっておりますけれども、なかなか十分なところまでいかないで、目下努力中ということでございます。  それから、先ほどの、作業収入はどうなるのかというのは、これは全部国庫に帰属するわけであります。この作業賞与金という言葉は、字に書いてありますように、恩恵的に更生資金としての一部としてやるということになっておるわけであります。作業収入の割合から申し上げますと、大体四・八%ぐらい、まだ五%ぐらいですから、もう少しやってもいいじゃないかとわれわれは考えているわけですけれども、まだそこまでいっていないわけであります。
  23. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、今作業収入の四・八%ないし五%が作業賞与金になっている、こういうことですか。
  24. 菅野勘六

    菅野説明員 そうでございます。
  25. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、驚いたのですけれども、そうすると、入ったばかしが一時間三十銭、一日八時間働いて二円四十銭、まだ銭なんという計算があるのを初めて知ったのですが、これはどういう基準でこういうものがつくられているのでしょうか。それで、一日八時間働いて二円四十銭というのは、これはどう考えてみても合わないと思うのですが、これは何かこの基準があるでしょうし、また、これをもう少し上げてくれと言っているにかかわらず、許可しないのでしょうから、また大蔵省の方の関係にも何かあるのでしょうが、これはどういうふうになっておるのでしょうか。
  26. 菅野勘六

    菅野説明員 基準と申しますと、大体ずっと昭和、大正から一つ基準額がありまして、それに例の物価のスライドとか、あるいはわれわれ公務員の給与ベースのスライドというものをかけ上げてきたものが、大体こういうことになっております。本来ならば、基準額というものにもう少し根拠を持ったものがあるべきはずなんですが、大体はそういうことからでき上がってきたので、三十銭というのは一体何かというと、あまりはっきりした根拠がないので、それは従来の率にかけ上げてきたものである、こういうことになっておるわけであります。
  27. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それで、食事とか被服とか、これは貸与されるように聞いておるのですが、この金から——たとえば一日八時間働いて二円四十銭もらった、この二円四十銭もらったものは積み立てておいて、その中から日常品は差し引くのだそうですか、やはりそうなっておるのでしょうか。
  28. 菅野勘六

    菅野説明員 日用品を差し引くという御質問の趣旨がちょっとわかりませんですが、これから差し引く制度というものは今ないわけです。ただ、行刑をやっていく段階において、だんだん本人たちが釈放間近になりますと、官が許したもののほかに、自分の金で自弁できる制度がありますのでへそういう場合に、その金から買うことを許してはおりますけれども、強制的に差し引くという制度はありません。
  29. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 これで作業賞与金として出ているのは一億三千八百三十三万円、それから、作業収入として入っているのは二十八億四千三百六十六万、これはもうけ過ぎているじゃないですか。
  30. 菅野勘六

    菅野説明員 先生から御指摘のありましたのは三十五年だと思います。その率からいきますと、ちょっともうけ過ぎているような気がしますが、一応制度はそういうことになっております。われわれとしては、もう少し上げたいという努力はしておりますけれども、これはあくまでも恩恵的だということからでもありましょうが、どれだけ受刑者にやるべきだというはっきりした根拠もありません。釈放の資金というものは、三千円が適当なのか五千円が適当なのか非常にむずかしいという点で、なかなか多い少ないの議論が並行するのですけれども、われわれとしては、少なくとも将来は、生活保護法の一・五カ月程度、四、五千円程度のものは出してやりたいというふうに努力しております。
  31. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで私は、さっきの小説の中で思い出すのです。これは小説ですから、いろいろフィクションもあるでしょうけれども、最近における推理小説の作家としては、水上さんもいろいろお調べになった結果でしょうが、その小説の中で釧路の監視部長が、刑余者が出ても更生できるようにしてあげなければいけないじゃないか、こう言われているわけです。そしてまた、刑務所を出た人の心理として、出た日には腹一ぱい飯を食うことだ、女を買うことだというようなことが書かれておるわけです。結局、そういうことでなかったために、途中でつっかかって、そしてまた二度の犯罪を犯したのだ。小説の結論は、まだこれからどういう形で続くか、作者に聞いてみなければわかりませんけれども、私は一つの大へんいい参考になると思うのです。  今あなたから聞いてみても、入ったばかりで三十銭だ、一日二円四十銭だ、それで、刑務所の方では、何か相当莫大にもうけている、二十倍ももうけているわけです。入っておるわけですから、そんなにたくさんとは言わないけれども、刑期が終わって出てくるときには、せめて子供さんのある人だったら子供にみやげでも持って帰れる、新しいものも着れるというくらいのことはしてあげなければ、更生せよ、更生せよといっても、無理じゃないかと思うのです。こういう点については、一つのものの中だけに入っていますと、これがあたりまえだ、とにかく相手が罪人だからいいのだ、こういうことではいけないと思うのです。新しい目で見て、仕事をしない人は、これはもうかかりっぱなしです。それは全部税金でまかなわれておるのですが、仕事をしているために二十八億も一応収入になっておるわけですから、やはり直接的にその人たちが働いたわけですから、相当部分というものは、その人たちの福利更生といういい面の善導をすべきだと思います。また、してくれという要望がこの仕事に携わっている人からの声だと私は思うのです。そういう点で少し積極的な意見を伺いたいと思うのです。
  32. 菅野勘六

    菅野説明員 ごもっともな御指摘で、われわれとしては一昨年、昨年からずっと増額を要求しておりますし、昭和三十八年度予算にも——帰りのみやげという程度まではいきませんけれども、せめて就職して歩く期間中だけでも、一カ月くらい自分の金で何とか回れるくらいのものを差し上げたい。しかも最低三十銭というようなものはできるだけ不公平がないように、下の方に厚くするよう努力していくつもりです。
  33. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 来年度はどんなふうにお考えになっておるのですか。
  34. 菅野勘六

    菅野説明員 来年度のわれわれの構想としては、刑務所の刑期の平均は十五カ月くらいと踏んでおりますので、十五カ月服役した者が多少所内で、先ほど御指摘の自己用度品などを買った分を差し引いて五千円程度のものを持たせていきたい。それがもし実現すると、現行の三・二倍くらいの値上げで、その目標に努力するつもりでおります。
  35. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 三・三倍といっても、一時間三十銭で働いておるのが九十銭、下を厚くというと一円くらいになるので一日八円。やはり刑務所というものは常識の外のところですね。もう少し常識的な扱いをしてあげないといけないと思いますよ。きょうはあなただけですから、一つこれは、大臣にでも、政務次官にでも、よくもう一回話をしていただきたいと思います。これは知らないと思うんですよ。私も実はこの小説を見るまでは知らなかった。そうしてこの間の説明を聞いてもまだよくわからなかった。きょうよく聞いてみたら、最高の一番優秀なものが一日二十四円だ、入ったばかりの者は一日働いて二円四十銭だ、何の仕事をするのか知りませんが、二円四十銭では子供だって肩をたたきませんよ。ちょっと肩をたたいてくれと言っても、十円か二十円では子供は肩をたたきませんね。やはりその辺はもう少しお考えになっていただいて、そうして刑余者が出てきても、自分も新しいものを着て更生できるのだというふうにあたたかくしてやらなければいけないと思います。でなければ、罪人が出るのは、課長、あなたが悪いのだということに結論的に言うとなる。やはりその点はもう少しお考えになっていただいて、今の三・三倍なんというようなけちなことを言わずに、二十八億ももうけておるのですから、その中で一億しか出していないというようなけちなことをせずに、半分くらいは出して、直接お金をやるのがいろいろ問題があるとすれば、検討されて、もっとあたたかい目で更生させるように私は要望しておきます。特にこの問題は、きょうは局長が見えないようですから、一つ伝えて、三・三倍ではだめだ、もっと考えるべきだという点を言っていただきたいと思います。また、来年の予算がどんなふうにできるか。これは別に私が入ったときの用意にしておくわけではありませんから、まあ一つ常識に合った政治のやり方というものを、ぜひつくっていきたいと思いますので、そういう要望をして質問を終わります。
  36. 津雲國利

    津雲委員長 引き続き質疑を行ないます。木村公平君。
  37. 木村公平

    ○木村(公)委員 私は、出入国管理の面について苦干の御教示を得たいと思います。  まず、外国人が日本に入ってくる場合、正当に入ってくる場合は、これは問題になりませんが、不正に入国する、いわゆる密入国でありますが、密入国の大体年間の概数はどのくらいあるものか、そうしてその国籍、韓国あるいは中共、アメリカその他いろいろあるでございましょうが、その国籍別の密入国者の概数等を一つ局長から御答弁を願います。
  38. 小川清四郎

    小川説明員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。  まず、不法入国者の数字と国籍についてお尋ねでございますが、御承知の通り、この不法入国者の大半は韓国人でございます。しかも、密航して参ります場合に、最近の状況におきましては、なかなか巧妙と申しますか、手段もいろいと考え計画的にやっておりますので、全不法入国者の数字は、ただいまのところちょっとつかめておりませんので、手元にございます不法入国者の検挙した数字につきまして申し上げたいと存じます。  この不法入国者の数字は、大体昭和三十二年度がほとんどピークのようになっておりまして、昭和三十二年度におきましては、韓国人が二千六十名、中国人その他を合わせまして十七名で、総計二千七十七名という検挙数になっております。その後一長一短がございまして、昨年、三十六年度におきましては、韓国人が千七百五十三名、中国その他が二十名で、合わせまして千七百七十三名になっております。本年におきましては、一月から三月まで総計三百七名程度でございます。この数字も最初申し上げましたように、検挙した数字でございますので、そのほかにも、いわゆる不法入国をいたしまして引き続き滞在しておると申しますか、不法滞在になって潜在的に表に出てない数がございますので、全体の数字はちょっとわかりかねますが、とりあえずお答え申し上げます。
  39. 木村公平

    ○木村(公)委員 この入国管理局と申しますか、あなたの方の検挙に当たるいわゆる検査官といいますか、そういうような人でなく、出入国動勢とでもいう面から見て、韓国人が年間多いときは二千名、あるいは平時において千数百名が不法入国する、日本へあこがれてくる、しかも手段は巧妙をきわめておる、この事実が起きてくる素因、原因というものを、あなた方はどのようにお考えになっておるのか。この原因はどこにあるか。向こう側の政治が悪いとか、あるいは韓国の食糧が不足しておるとか、何かあなた方の大体の観察によると、どういうわけでこのような多数の不法入国者があるのか、お考えになっておるのですか。
  40. 小川清四郎

    小川説明員 ただいま御指摘になりましたように、われわれといたしましても、この不法入国者を検挙いたしました場合に、各人につきまして、不法入国の動機、目的等々を一応調べておるのでございますが、もちろん不法入国者の数は、出入国管理令ができてからずっと千名台を下らない数字を継続しておりますが、やはり彼らを調べました結果から察しまして、直接的には、韓国における政情の不安あるいは経済状態の非常な悪化、またすでにわが国におります韓国人の親とか兄弟とかいうものの要請によりまして、成規の手続がなかなかとれないために、やむを得ず不法入国して参るというふうなケースもあるようでございます。もちろん終戦の前に相当多数の者が強制疎開的に韓国に帰っておりますが、帰ってみましても、なかなかうまく参りませんので、日本に出てくる。それから、日本の戦後の経済的な勃興というものをまのあたり見ておりまして、これが誘因となる。原因として大きく取り上げてみますれば、大体韓国側の情勢に加えまして、日本側の誘因の状況というものがあるように思います。
  41. 木村公平

    ○木村(公)委員 いろいろの事情がありましょうが、この韓国から日本に不法入国してくる者を通じて、韓国の政治のあり方あるいは大きくいえば行政のあり方その他のことが、アウト・ラインだけでも何かわかってくると思うのです。そこで、私は平時千名以上に及ぶ韓国からの密入国の原因というものを、さらに十分お調べをいただきたいということをまず御要望申し上げておきます。  次に、一たび不法に入ってきたあとの処置の問題です。千名くらいの、あるいは多いときには二千名になんなんとするほどの数ではありますが、出入国管理令に伴うてこれを取り締まる仕事をしておられる方は現在どのくらいおるのですか。
  42. 小川清四郎

    小川説明員 ただいまの御質問でございますが、実はいろいろ予算上の関係等がございまして、案外少ない数字を申し上げざるを得ないのでございますが、本局を合わせまして約千五百名でございますが、そのうち地方の出先機関、すなわち、事務所あるいは港の出張所等に勤務しております人数は、千三百名程度でございます。
  43. 木村公平

    ○木村(公)委員 これは出入国管理の本質からくることなんですが、外務省系のあなたを頭にして、法務省系の取り締まりの方々、あるいは検察をされる方々がおられて、そうしてそういうような人で出入国のお役所ができているように思うのですが、これは歴史から見ればまことに無理もないわけなんですが、あなた方としては、外務省から来られた方は、取り締まりの面においては、みずからいろいろ発案をされて、事態に即応してこういう取り締まりをすべきである、あるいは検挙の方針あるいは収容の方針、もちろん法律に基づいておやりになるには違いないが、たとえば収容令書をお出しになるような場合でも、大体は局長自身が最終的に責任の判をお持ちになるけれども、実際おやりになっているのはどなたですか。
  44. 小川清四郎

    小川説明員 出入国管理行政全般を担当しておりまするのは局長でございますが、もちろん次長、課長、地方事務所長等々には多くの法務省の方々もおられまするし、また、地方の出先におきましては、そのほか語学の関係等もございまして、外務省にもと勤めておりました者も数々入っておるような実情でございます。最終的には局長の指示に従いまして、すなわち、出入国管理令等の関係法令の規定に従った局長の指示に従って、地方でもおおむねそのラインに沿ってやっておるように存じております。
  45. 木村公平

    ○木村(公)委員 相手が韓国人が多いものですから、どうも日本人は、韓国人に対しては体質的に嫌悪の情を持っておるようなんです。日本の国民からいうと、韓国人というのはあまり好きじゃないんですよ。従って、今度の日韓会談なんかにも、いろいろな障害というものは、日本人の一種の韓国ぎらいということが、いろいろの面に影響しておると思っておりますが、それはそれとしまして、不法に入国した、それが千人以上ある、しかし具体的にいろいろ事実をお調べになると、まことに無知にしてかわいそうな個々の事情もあろうかと思う。ところが、あなたの方の検事だとか、あるいはその他法務省から来ておられる取り締まり官憲と申しますか、情け容赦がないわけですね。情け容赦がないということも、韓国人に対してですから、日本国民はあまり韓国人に同情を持っておりませんから、ほとんど問題にならないような状態でしょうけれども、今しかし日韓会談が行なわれる直前に、いろいろ聞き捨てならぬような問題がある。たとえばこういうようなことはどういうように御解釈なさるのですか。不法入国をしたというので起訴をされて、裁判が係属しておる。最終判決の前に、一応身柄は収容されておったけれども、釈放した。保釈と同時に今度は行政権によって収容しておる。裁判所は逃亡、証拠隠滅等のおそれがないというので、法規に従って一応保護釈放する。ところが、出てくると、迎えておって、今度は行政権によって管理令によって収容する。裁判所の解釈と行政官の解釈と違うのか、それとも、そういうことは他の場合にもあり得るのか、私ども法律上のしろうとですからよくわからないのですが、これはどうでしょう。刑事局長さんもここにおられますし、最高の解釈をなさり得ると思うのですが、裁判所が裁判所の判断によって保護釈放した。そうすると、すぐ門外で待ち受けておって、裁判所は保護釈放したけれども、おれの方は行政権によって別の方に収容するということを、公然とそういう解釈に従ってやっておられるようなんですが、そういう解釈がいいのですかどうですか、一ぺん御教示をいただきたい。
  46. 小川清四郎

    小川説明員 ただいまの御質問の点でございますが、入国管理令に基づきまして、保釈中の刑……(木村(公)委員「同じ事件ですよ」と呼ぶ)同じ事件で、一応われわれといたしましては、刑事手続の優先という建前に立っておりまして、まず刑事事件として扱っていただいた上で、私どもの出入国管理令の目的といたしますところは、不法入国者に退去してもらうという建前になっておりますために、一応強制退去という手続にわたります関係で、刑事当局の方から私どもの方へ受け入れておるというふうに私は存じております。
  47. 木村公平

    ○木村(公)委員 今の御答弁でよくわかりました。  そこで、次にお伺いしたいのは、今は、大体韓国民が大部分ですから、韓国の場合ですが、その他アメリカあたりからも、ちょうど例の堀江君が帆前船で密出国をした、あれと同じように、たまに来ることがあるのですが、それを予想して、密出国をしたアメリカ人を保護された場合には、これに対する食費その他のものを支給してくれというので、日本政府はアメリカ政府から若干のそういうものを予想した費用を預かっておるかどうか。
  48. 小川清四郎

    小川説明員 ただいまの御質問の点でございますが、私どもといたしましては、米国政府からのそういった種類の費用は受けておりませんが、ただ、それに関連しまして、たとえば脱船船員と申しますか、そういうものが一応収容所に収容されました場合にどういうふうな処遇をするか。これは実情を申し上げますと、御承知のように、川崎の収容所に欧米人と中国人を収容しております。大村の方には韓国人だけを従来収容しております。そこで、川崎に収容しでおりまする欧米人に対しまして、法令に基づきますと、物品その他の差し入れば一応できるようになっておりますが、そのほかにもやはり彼らの生活環境と申しますか、西洋人特有の生活環境をできるだけ尊重するという意味合いにおきまして、特別食という形で支給をしておる事実はございます。しかしながら、それはアメリカ政府からでございませんので、多くの場合船員でございますので、日本にありまする船会社のエージェントが一定の金額を出す。そしてわれわれといたしましては、何しろ川崎の収容所は全収容能力が五十四名で、ほんのわずかなものでございますから、これに直営の食堂を経営させるのはやや不経済と存じまして、一応差し入れ業者と収容所長との間に契約を結びまして、そうして請負をやらしておる次第でございます。そこで、先ほど申しました船舶のエージェントの方は、その請負業者の方に一定の金を渡しまして、そうしていわゆる特別食をつくらせるというふうにやっておりますので、ただいまの木村先生の御質問がそういう種類の差し入れ的な給食という意味でございましたら、私どもはそういうふうにやっております。
  49. 木村公平

    ○木村(公)委員 私もこういうことはまことに研究が足りませんので、いろいろ教えていただきたいと思うのですが、そのエージェントから一時立てかえ払いというのか、特別食の金を払う、そういうものが積み立て形式になって、ある程度川崎の収容所長の手元に置かれておったようなことがありますか。
  50. 小川清四郎

    小川説明員 ただいまの御質問でございますが、私がこれまでいろいろ聞いておるところによりますと、そういう事実はないように思います。
  51. 木村公平

    ○木村(公)委員 多分アメリカだと思いますが、アメリカのエージェントでありましたか、自分の方の国籍人が不法に入国した場合にお世話にならなければならぬというので、特別食の費用というような意味でもありましょうし、あるいはその他の差し入れの可能なものを購入してやってくれというような意味でもあるかもしれませんが、金をそこへ預託しておった。その金が使い込まれた。金といっても大した金じゃなくて、日本の円に換算しますと数百万円程度です。その金が使い込みをされて、一時何かスキャンダルのようなことになりかけたけれども、結局はなることなく、そのまま終わった。弁済されたのかされないのか、内部的なことはわかりませんが、そういうようなことはまだ御報告を受けておられませんか。
  52. 小川清四郎

    小川説明員 川崎の収容所におきまして、そういった金が使い込みというふうになっておるという事実は、私まだ報告を受けていないのでございますが、ただ、私が聞いておるところによりますと、二、三年前にたしかほかのところだったと思いますが、使い込みがあったように聞いております。本日までのところ、川崎収容所に関連いたしましてそういう事実をまだ聞いておりません。
  53. 木村公平

    ○木村(公)委員 私が特にこれを申し上げるのは、意地悪で言うわけじゃないのですけれども、韓国から密入国をした者でも、アメリカ、中共、いずこの国からでも、密入国をした者は、日本の法律によって除去すべきものは除去しなければならないし、責任をとらすべきものは責任をとらさなければならないことは、これは私ども国民代表として賛成なんです。ただ、そういう者を収容しておりながら、もしも、そういう収容者から金品などの頭をはねるとか、国がそういう密入国者に親切にしようとやっておる事柄を、直接現地においては歪曲して、どこの収容所であったか知らぬが、使い込みの事実があった。何を使い込んだかということが問題になってくるのです。使い込みはいいが、職員の給料を使い込んだのか、あるいは収容された者の食費を使い込んだのか、これはなお悪質なんですが、私が心配なのは、収容所において収容した者に迷惑をかける、収容しておる者にはからざる被害を及ぼすような使い込みというのがありはしないか、なかったかどうかたまたまアメリカ・エージェントの問題、川崎の問題を申し上げましたが、これがないとすればけっこうですが、それなら他の使い込み——私どもは使い込みを追及するわけじゃありませんよ。しかし、給料の使い込みならまだ許せるけれども、かわいそうなこういう密入国者の、たとえば食費を使い込んだとか、あるいは厚生施設をやろうと思った金を使い込んだということがあって、これがために密入国者が一種の被害者のような立場に立っておるというような使い込みはありますかどうかということも、ちょっとお漏らしをいただきたい。
  54. 小川清四郎

    小川説明員 ただいま重ねての御質問でございますが、私の存じております限りにおきましては、被収容者、密入国者もしくは不法滞在者というようなものの金を、職員が使い込んでおるというふうな事実は聞いておりませんし、また、将来にわたりましても、そういう点につきましては、十分に注意をいたしまして、常に会計の面におきましては監査をいたして参りたいというふうに考えます。
  55. 木村公平

    ○木村(公)委員 韓国、中共その他からの密入国と麻薬との関係は、あなたの方でおわかりになりますかどうですか。韓国が千名以上も密入国がいる、これに対する日本の顕著な実害がありとすれば、まずそれを承りたい。入ってきたがためにどのような実害を受けておるかということ、それから、麻薬関係などはあるかどうかということをもうちょっと伺いたい。
  56. 小川清四郎

    小川説明員 実際問題といたしまして、麻薬関係の人間が密入国をして参っておるかどうか、それから、すでに滞在しております韓国人における麻薬事犯と申しますか、そういうものがあるかどうかということの御質問を受けたのでありますが、密入国者の中に直接麻薬を運んでいると申しますか、現行犯的に麻薬を搬入した者を取り押えたというケースはあまりなかったように存じております。それから、その目的のためにだけ密入国をして参るというふうな者は、今まで取り調べました結果では、それほど顕著な事実はないように承知しております。  それから、そのほかの点で、密入国者が日本人と申しますか、われわれに対して、非常に有害であるかどうかという御質問でございますが、これは率直に申し上げまして、やはり密入国をする目的一つが、日本の経済状態もいい、それから近親者もおるというわけで、そういった扶養を受けたいために入ってくる。ことに最近は、非常に年少者も多うございます。そういう場合につきましては、できるだけ人道的な見地からいたしまして、調査審査にあたりましては、十分な配慮をいたす、こういうふうにしております。
  57. 木村公平

    ○木村(公)委員 大村の収容所などの内容を聞いてみますと、ずいぶん収容者に対する——先ほどは日本の刑務所の中の諸問題が質問されたようですが、川崎のことは特別食までお考えになっておるのですから、おそらく言い分はなかろうと思いますが、主として韓国人を収容されておるところの収容所内の食事だとかあるいはその他の厚生施設といいますか、日本の刑務所と同じようないろいろな問題についてちょっと伺っておきたいと思います。  まず、食事の予算は一人当たりどんなふうですか。
  58. 小川清四郎

    小川説明員 先ほど川崎のところで申し上げるのを忘れておりましたのですが、東洋人につきましては、大体一日の食費を九十円と見ておるようでございます。外国人の場合にはややこれよりか多うございまして、大体百四十円程度と聞いております。
  59. 木村公平

    ○木村(公)委員 東洋人というのは何ですか。
  60. 小川清四郎

    小川説明員 これは中国人と韓国人であります。
  61. 木村公平

    ○木村(公)委員 この出入国管理令第六条第一項の「本邦に上陸しようとする外国人」という中に東洋人が入っておるのですか。東洋人と外国人と特に食費の面において差別されておるということですが、東洋人というのは法律上の用語ですか、俗語ですか。——これはいわゆる六条一項にいうところの「外国人」の中に東洋人も包含されておる。同じ外国人であるけれども、東洋人の食費というものは九十円だけれども、他の東洋人ならざるところの外国人というものは、たとえばインドネシアにいたしましても、タイにしても、これは特別食ですか。
  62. 小川清四郎

    小川説明員 はなはだ遺憾でございますが、東洋人の中には、御指摘のようなインドネシアなども入っております。
  63. 木村公平

    ○木村(公)委員 ちょっと東洋人の内容をおっしゃって下さい。
  64. 小川清四郎

    小川説明員 ちょっとただいまのお答え誤解しておりましたのですが、東洋人とわれわれ通称して扱っておりますのは、やはり韓国人とそれから中国人でございます。そのほかの外国人は一括いたしまして外国人というふうになっております。
  65. 木村公平

    ○木村(公)委員 これは局長さんに責任があるわけじゃないから、決して非難をする意味で申し上げておるのではないのですが、東洋人というものは中国人——中国人の中にも東西二つありますから、台湾人といわゆる中共人と両方あるわけでしょうが、それに韓国人といえば南の方と北の方と両方あるわけですが、これを同じアジアでも、タイもあればインドネシアもある、いろいろありますが、それと食費の上においても区別をする。文明度の高いアメリカとかイギリスとかいうところの者は、とてもこの九十円の食費ではよう食べ得ない、そして風習も全く違う、食事の嗜好も違う、だから特別食の差し入れを許すということなら、これは合理的でわかりますが、ただ初めから、東洋人とはこれだ、同じ外国人の中にも東洋人という範疇をおつくりになって、特にそれは食費なんかも低くやるという考え方、この管理令はわれわれの時代につくったものだから戦前なのですが、こういうこまかいことは私も知らなかったのですが、これはずっと戦前からの習慣なんですか。東洋人と分けることはどうです。いつからこういうことになったのですか。
  66. 小川清四郎

    小川説明員 木村先生の御指摘の点はよくわかるのでございますが、従来いわゆる欧米人といわゆる東洋人との間に食事代の差別をしておりますのは、やはり前からのように存じておりまするし、また、この献立をつくります場合に、白人と申してはあれですが、白人などの献立には、どうしてもその嗜好を幾分か考えてやらなければなりませんし、また、東洋人には麺類と申しますか、そういったものも考慮されておるようでありますし、実際の問題といたしましても、給養規則にあります三千カロリーという熱量その他につきましても、十分に考慮しておりますので、金額だけを見ますと、いかにも不当な待遇のように見えますけれども、実際問題といたしましては、食事のために非常なめんどうな騒ぎを起こすとかいうふうなことはなかったように聞いておるのでございます。
  67. 木村公平

    ○木村(公)委員 はからずもこの公の席上で、日本の何か恥ずかしいところが出てきたような格好になりましたが、こんなことがラジオや新聞やテレビで公にされて韓国や中国にわかると、やはりいやな気持になるのではなかろうかと思うのです。こういうちょっとしたことで、九十円と百四十円の違い——相当大きな違いであるかどうか知りませんが、こんなことで何か日本人というものは偏狭で、中国人を相変らず支那人といってばかにする、大韓国人といって本人たちは言っておるけれども、陰では昔流の呼び方をする。それの一つの現われのようなことが、収容所においても行なわれておるということになると、小さなことのようですが、気が悪いというやつなんですね。だから、こういうことは、一つ局長さんは優秀な方、有名な人なんですから、あなたの御在任中に、こういう面も一応御研究いただいて、予算の面はまたわれわれいつでもお骨折りいたしますから、一応御研究おき願ったらどんなものかと思うのです。今初めて私ども気がついたから申し上げるのですが、これが新聞にでも出ると見苦しい話で、東洋人が九十円、外国人が百四十円というような差別待遇がわかりますとおこりますよ。  それから、続いて御質疑を申し上げるわけでございますが、一体出入国管理令に基づいて今不法な出入国を取り締まっておるわけですが、出入国が韓国と日本との間にかりに自由になったような場合、管理令が改正あるいは撤廃されて——撤廃はできますまいが、改正をされて、韓国と日本との間の出入国が自由になった場合に、想像されることは、一体どの程度韓国から日本に——今は千五百人とか、ピークで二千人というような数字が出ておるわけなんですが、あなた方の長年の御経験によると、これを撤廃した場合は、どの程度日本に逃げ出してくるか、渡航してくるか、今度は堂々と渡航してくるとした場合に、それの大体のめどはつきますか。
  68. 小川清四郎

    小川説明員 日韓関係が正常化と申しますか、そういった暁において、出入国者の動向がどういうふうに変わるであろうか、どういうふうに考えておるかという御質問でございますが、正常化することによりまして、不法出国が減ると申しますか、成規の手続で出国が許される人間の数は相当ふえるのじゃないかと思いますが、密入国の動向、傾向がどういうふうに変わるかにつきましては、はっきりした見通しはもちろん立て得ないのでございますけれども、やはり現在の韓国政権の方針一つにもかかっておりますし、それから、御承知のように一衣帯水と申しますか、非常に距離的にも近いところでございまして、小さな帆船で暗夜沿岸に上陸してくる可能性は、依然として残っておりますので、はたして密入国者の数が、つまり検挙数プラス潜在数を加えました数がどの程度減るかにつきましては、むしろ懐疑的に見なければいけないのではないかというふうに存じておるのでございます。
  69. 木村公平

    ○木村(公)委員 大村収容所その他の韓国の不法入国者の収容所の中には、先ほどのお言葉の中にもありましたように、わざと小さい子供をつれてくるようなことをやっている場合もあります。親がこちらにおるのか知りませんが、五つ、六つの子供だけを送ってくるような場合もずいぶん多いように聞いておるのですが、子供だけの場合も相当ありますか。
  70. 小川清四郎

    小川説明員 非常に小さい幼児だけ送ってくるという例はあまりございませんで、やはり親と一緒に密入国してくる場合の方が多いように聞いております。
  71. 木村公平

    ○木村(公)委員 これはだんだん伺っておると際限がありませんので、ほかの方もあるいはまだ質疑通告があるのかもしれませんから、最後に一つ、疑問点がございますので伺います。  これはあなたの方の所管かどうか存じませんが、先ほど申しました例のヨットで逃げ出した堀江という青年の場合に、あれは私の方の運輸委員でむしろ賞賛したような格好をとっておったのですが、法律上はもちろん密出国で、アメリカからいえば密入国なんですが、アメリカの新聞等の伝えるところによると、なかなかものわかりのいいようなことをやっておるのです。日本へ帰ってきた場合に——来月帰ってくるというのですが、これを取り締まるのはあなたの方ですか、どこですか。
  72. 小川清四郎

    小川説明員 出入国管理令の建前といたしましては、日本人の出入国につきましては、本人であるかどうか、それから成規の旅券を持っておるかどうかにつきまして、確認の意味で証印を押すことになっておりますが、本件の堀江青年の場合には、帰って直ちに刑事関係の方へ引き渡されるように聞いておるのでございます。
  73. 木村公平

    ○木村(公)委員 あなたの方では、密出国という事実があるのですが、これに対してノータッチなのですか。
  74. 小川清四郎

    小川説明員 密出国の点につきましても、日本に帰って参りましたならば、その場で管理令違反の問題があるかないか等につきましては、直ちに検察当局の方へお渡しするということになっております。
  75. 木村公平

    ○木村(公)委員 そうすると検察当局は、何の犯罪容疑でもって検挙するのですか。
  76. 小川清四郎

    小川説明員 出入国管理令違反です。
  77. 木村公平

    ○木村(公)委員 出入国管理令違反だけより今のところ想像できないのですが、そうすると、それは検察庁が直接タッチをするのか、あなたの方で一応その事実をお確かめになって、従来の例によれば、あなたの方がこれに対して何分の処置をなさるんじゃないですか。これは有名な事件だから、いきなり検察庁がやるというのですか。
  78. 小川清四郎

    小川説明員 たとえば日本の港とか——今回はおそらく羽田だろうと存じますが、そこで、密出国をしたということがわかりましたら、出国の証印が押してない場合には、一応管理令違反の容疑といたしまして検察当局に引き渡す、こういうことになっております。
  79. 木村公平

    ○木村(公)委員 出入国管理令の第七章の六十条以下に出国のことが書いてあるわけですが、当然密出国であるということは疑いがないと思うのです。だから、これを検察当局が密出国違反の犯罪人として御調査になることも一応わかりますが、普通のケースは、あなたの方におられるところの、検事とか、法務省のいろいろな方がおられますね、そういう方たちが一応その事実を確認して、大村の収容所に入れる、あるいは入れる必要がない場合には釈放するとか、いろいろのいわゆる行政をやっておられるのはあなたの方ですが、これは管理令違反だというので、司法処分だからあなたの方の手を離れて直ちに検察庁が動くのですか。普通の場合とちょっとケースが違うのです。韓国人なんかそういうことをやらないでしょう。
  80. 小川清四郎

    小川説明員 本件は、日本人の場合でございまして、出入国に関しましては、先ほど申しましたように、確認をする。そこで、容疑の事実がございましたならば、本人を検察当局に渡す、こういうふうになっております。
  81. 木村公平

    ○木村(公)委員 そうすると、ちょうどここに刑事局長もおられますが、私がここで堀江君を擁護するような議論をすることが、どのような影響を及ぼすかということには、いろいろ議論もあろうかと思うのです。しかし、この間国会の常任委員会でありまする運輸委員会におきましては、ちょうどそこに来ておりました大臣、次官等までも一緒になって、そこの委員のメンバーは、社会党の諸君も、自民党の者も、罪は罪だ、これは出入国管理令違反に違いないけれども、百日近い間孤独に耐えて行ったという、今の青年の欠点をアウフヘーベンしたような行為だ、この行為は多とすべきではないかということで、拠金までしておるわけです。堀江君に贈ろうということでお金を出し合っている。このことについて、その後ずっと私は新聞等を調べてみますと、新聞等でも喜んでおるようです。これは大臣並びに国会議員のやり方が行き過ぎではないのであって、むしろ全国の青少年に夢を持たせるという意味からも、罪は罪として、一応そのことに対して国家の懲戒権を用いることはもちろん必要であろうけれども、この行為に対しては、壮途という名をもって呼ぶにやぶさかではないというような新聞の論調、マスコミの風潮並びに院内の各党の意見も大よそそこへきておるように私は見ておるわけですが、刑事局長もおられますので、管理令違反の疑いありと見ることは当然でありますが、やはり帰ってきた場合には、こういう人を直ちに実際に収容して取り調べなければならぬというような例が多いのかどうか。多いとするならば、今回の場合は、刑事政策上どんなようなことをお考えになっているかということを、この機会にお漏らしいただければいただきたいと思います。
  82. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 ただいまお話の堀江青年の件につきましては、過般の運輸委員会の模様も、私も出席しておりまして承知をいたしておるのでございます。御指摘通り、入管令の違反に該当するわけでございますが、この違反事実が一応はっきりしておると私ども思いますけれども、なお、それにはそれを犯すに至った事情その他諸般の酌量すべき事情があると思いますが、そのあるかどうかということをやはり確認をいたしまして、それと、青年の壮途、青年の立場、親のこれに対する保護の考え方等、刑事政策的な考慮を加えまして、処理には慎重を期して参りたい、適正な処置、御納得のいく処置をとりたい、こういうふうに考えております。
  83. 木村公平

    ○木村(公)委員 質疑を終わります。
  84. 津雲國利

    津雲委員長 小川豊明君。
  85. 小川豊明

    小川(豊)委員 刑事局長に伺いたいと思いますが、ここに三十五年度の決算報告に、法務省に関することで一点あげられておるのは御承知だと思います。これは読む必要はないと思いますが、この問題について、世上いろいろな疑惑が流布されておると思います。私は、その点はむしろ信じないのですが、しかし、この機会にこの点をはっきりしておいた方がいいのじゃないか、こういうふうに思うのでお尋ねするわけです。  会計検査院から提出された検査報告によりますと、東京地方検察庁の職員の不正行為によって国に損害を与えた、こうなっています。これは東京地方検察庁の公判部検察事務官の宮田という者が、担当検察官の補助者として証拠品の仮出し及び裁判所に提出の事務に従事中に、昭和三十四年の九月から三十六年三月までの間に、四つの事件について担当検事の印鑑を盗用して、証拠品仮出票を偽造し、領置課に提出して、領置物取扱主任官から刑事事件の証拠品である現金約二百二十五万一千円、それから白金台ダイヤモンド入りの指輪二個、この評価額約二十八万円を詐取し、これを隠蔽するために、東京地方裁判所の刑事部の裁判官の認印のある東京地方検察庁あての証拠物受領用紙を使用し、もしくは認印のない証拠物受領用紙に裁判官の印鑑を偽造し捺印して、所定欄に必要事項を記入の上、東京地方検察庁の総務部の証拠品課に提出して、これらの証拠品が東京地方裁判所に提出されているように装ったものである、こういう経過を聞いています。  そこで、この事件を通じて、私は、疑問に思ってお尋ねしたい点は、領置物の保管並びに運用について、職務牽制組織というものがあるわけですが、お互いに牽制する組織というのはどうなっているのか。それから、約二百八十万くらいになるわけですが、この領置物は一体だれのもので、何年何月のどんな刑事事件で保管されたのか。また、白金台ダイヤモンド入り指輪二個二十八万円と評価されているが、この評価はどういうところで評価されたのか、その評価の方法と年月日。それから、担当検事の印鑑、この点は特に私はお聞きしたいのは、担当検事の印鑑は、このような職務内容については、官印と全く同じような効果があると思うのですが、一体どのように保管されているのか。この原因は、担当検事が自分の印鑑の保管に対して不注意があったのではないのか。さらには、東京地方裁判所発行の証拠物受領用紙というものが、あらかじめ検察庁の係官に交付されていなければこれはできないのじゃないか。そうすると、裁判所と検察庁というのはおのずから機構は別なんだが、内部にはかなりそういう点の取り扱いがルーズな点があるのではないか、こういう点が疑問に思われるのです。それから、これに対して国家公務員法によって処分されているわけで、これは起訴されていますけれども、これに対する監督の責任というものも出てくるだろう、こういうものに対する行政処分なり処置なりというものはどうなされているか。それから、この損害金は法務省の予算科目では、法務本省の賠償償還及払戻金から支払うようになっているけれども、現在決算の上ではどのように処理されているか。時間がありませんから羅列して申し上げましたが、こういう点についてお聞きすると同時に、さらに、三十四年九月から三十六年三月まで一年何カ月、二年近くあるわけですが、この二年近い間にこういう四つの事件で起こっているわけです。そうすると、二年近い間に、これが発見できなかった点についても、私はいささか監督という面で疑問を持たざるを得ないのですが、この点について答弁願いたいと思います。
  86. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 会計検査院から御指摘を受けました、職員の不正行為、それがひいて国に損害を与えました点につきまして、私どもとしましては、まことに申しわけないことでございます。深くおわびを申し上げるのでございますが、おわびを申し上げますことにつきましては、この事件を機会に一そう職員が締まっていくということの実績を上げる以外に、お答えを申し上げる方法はないわけでございまして、鋭意改善に努めておる状況でございます。  ただいま御指摘のありました点、たくさんの点にわたっておりますが、いずれも私ども考え及ぼさなければならぬ諸点でございまして、逐次右の問題点につきまして、私ども考えておりますことを一応御説明申し上げたいと思います。  まず、証拠品の仮出し、それから裁判所に提出をいたします場合の事務でございますが、この事件の犯行の手口は、証拠品の仮出し手続と裁判所へ証拠品を提出する手続を悪用いたしまして犯したものでございますので、手続が一体どうなっておるのかということをまず御説明申し上げたいと思います。  仮出しの手続でございますが、検察官が公判立ち会い準備のために、ぜひ証拠品を見ておかなければならぬという必要を生じました場合には、領置物倉庫に——これは検察庁にあるわけであります。この領置物倉庫というのは、地方に行きますと土蔵がそれでございまして、鉄筋コンクリートの建物でございますと、その中にさらに囲いをいたしまして、完全な施錠がしてあることになっております。そしてそのかぎは、領置物主任及びその補助者だけが持っておりまして、その者の承認がなければとびらはあかぬという建前になっておる。この領置物倉庫に保管してある証拠物を取り寄せようという場合でございますが、本件の発生当時におきましては、検察官みずからやる場合、または立ち会いの検察事務官に命じまして、証拠品仮出票というのがございまして、これは三枚続きのものでございますが、それに仮出物品の品名を書きましたほかに、検察官が印を押した上で立ち会い事務官がそれを領置課の方へ持って参りまして、仮出票を出して、それと引きかえに証拠品の仮出しを受けるわけであります。その際、領置係員は、仮出票の甲乙丙の三つのつながったものがありますが、その三片のうちの丙片、最後の一片をもらいまして、証拠物とともにもらうわけであります。あとの甲乙は領置課の係員が保管しておる。そして丙片のみを立ち会い事務官に交付することになっております。  そうしますと、検察事務官の手元において保管中の仮出証拠品について、今度は返す場合にはどうするかといいますと、現物を事務官が領置課に持って参りまして、これに間違いないということを向こうの領置課の係員から確認を受けた上で返還するわけでありますが、その際に、領置課の方では甲乙の二片があります。で乙片を今度はそれと引きかえにもらい受けるわけであります。そして甲片は、領置課が依然として保存をしておるわけであります。そうすると、乙片をもらい、前にもらいました丙片と突き合わせてみまして、間違いないということになりますと、その両片を適宜廃棄する、こういう手続になっております。  そこで、検察官の手元に仮出しておる期間でございます。が、これもまた非常に長くなりますと、その間に事故を起こすおそれがございますので、原則といたしましては、仮出しの期間は二カ月ということになっておりまして、さらに引き続いて仮出しをしておきたいという必要があります場合には、新規に証拠品仮出票を作って、すでに提出した仮出票と差しかえて更新する。単に口頭で更新するのじゃなくて、仮出票を新たに起こして、そうして前と同じような手続で仮出して継続する、こういうことになっております。  それから裁判所への証拠品の提出の手続でございますが、検察官が公判におきまして裁判所へ証拠品を出して、裁判所が証拠物として領置いたすのでございますが、その場合には、裁判所の書記官が、検察官に対して証拠物受領証というものを送ってくれることになっております。検察官はその受領証を受け取りますと、立ち会い事務官をして検察庁の領置課に持っていって渡して、領置課員はこれを保管するばかりでなく、倉庫の台帳に裁判所提出済みということを表示して、その証拠物がどこにあるかということを明らかにするようになっております。これが証拠品の仮出し、裁判所への提出手続の全体でございます。  ところが、本件は、この手続を悪用いたしたわけであります。御指摘のように、宮田は、証拠品仮出しの手続段階で、検事の印を盗用して文書偽造を犯しております。それから更新手続の段階で、同じく検事の印を偽造して行使しております。それから、これまた検事に無断で裁判所への提出手続の段階におきまして、裁判官の印章のある文書を悪用して文書偽造を犯しておる、こういうことになっておるのでございます。  そこで、出てくる問題は、検察官はそんな盗用されるような印鑑の保管の仕方をしておるのであるかどうかということ。それから、裁判官がどうしてたやすくそのようなにせの文書に判が押されるようなことになるのであろうかという疑問でございます。この点は、はなはだ奇怪ともいうべきでございますが、立ち会い事務官といいますのは、検察官と一緒に終始行動をともにしておるわけでございまして、補佐官であります。いわば女房役と申しますか、そういう関係でおるわけでございまして、検察官は大体机の引き出しの中にちゃんと自分の判は納めてあるわけでありますが、そこに入っていって机の引き出しをあけたり何かするようなことも、ほかの人がやれば別だが、事務官がやるというような場合には、だれも怪しみませんし、検事も信頼しておったというようなところに原因があるようでございますが、そういうことで盗用されたようでございます。  それから、裁判官の判がどうして押されるようなことになったかという点につきましては、これは、詳しいことは私どもの方でも明らかになし得ないのでございますが、検察官から証拠品として裁判所に出しますと、裁判所の書記官が裁判官の判のある受け取りをもらって、それを立ち会い事務官の方に渡す。そうして、本来ならばそれを課に持っていってそれを見せて、先ほど申し上げたように、原票に裁判所に提出済みというように記入されるわけでございますが、裁判官がいないために、品物は受け取ったけれども、受け取りがすぐ出ないというようなこともたびたびあるようでございまして、そういうような便宜のために、書記官が裁判官の判のすわった白紙委任状のようなものを——これまた裁判官が書記官を信頼してのことだと思うのでありますが、そういうようなものを出しておる場合もあるということでございます。そういうようなものをつまり悪用いたしまして——裁判官の判のすわっておる用紙を書記官から検察事務官の方に渡してもらっておる、それが手元にあるのを奇貨として、それに書き込んで出した。しかも検事を経由しないで直接領置課に持っていって、その検事の判は、先ほど申し上げたように盗用して押しておるのですから、領置課の方でも、これは検事が了承しておるものだということで取り扱いをしてしまったというような実情でございます。  それで、なぜ一年半にも長期間にわたってこのことが発見できなかったのであろうかという点でありますが、私どもこの事件を見てみまして、一体このよう事件は——もちろん被告人宮田の悪い心情に発する行為でございますので、被告人自身の人事管理と申しますか、監督上の責任、また監督者の監督上の責任、これはもう否定しがたいのでございます。こういう手続のもとで、現にたくさんの事件が処理されておるわけでございますが、ほとんどそういう事故は起こっておらないわけでございますので、制度そのものを責めるよりも、まず宮田がなぜそういうような金を必要としたのであろうか、そしてまた、そういう悪い手段を、十年も検察庁に勤めておる者がなぜとったか、なぜこういう犯行を犯したであろうかということが、まわりのその監督者にいち早くわからなかったであろうかというような疑問もここに起こってくるのでありますが、同時に、一年半もそうやられておって気がつかないでいるという制度上の問題もありはしないかというような点も、種々検討をしてみたわけでございます。  そこで、私ども考えを今申し上げますと、この被告人の宮田は、非常な乱脈な私生活をしておったようでございまして、監督者が私生活の乱脈さに気づいておれば、犯行があったないは別としまして、その面から十分気を配ることもできたんであろうと思うのでございますが、これが事件になってから、実はこうだったというようなことがあとからわかってくるというような始末で、まことに申しわけないことになっておるのでございます。  仮出しの手続につきましては、これは昭和二十八年に証拠品事務規程というものを法務大臣の訓令で出しておりまして、そして今の三片を使ってやるというようなことも、その後の改正でその点を明らかにしておりますが、それでは、その判を押してやる渡し方、その他のこまかい点につきましては、各庁それぞれ事情がありますので、検事正の訓令にまかしておるのでございます。先ほど私が御説明しましたのは、この事件の発生当時に行なわれておりました東京地検の検事正の訓令に基づく証拠品仮出事務取扱要領というのによって御説明したわけなんでございますが、その後やはり仮出し手続について、今の甲片、乙片、丙片を使ってやるあの手続が、現金その他貴重品と花札、マージャンパイのようなものと同じような票で扱っておるというところに、取り扱い上やや注意を向けるのに足りない点が起こってくるのだろうということが考えられまして、証拠品を特別証拠品と普通証拠品に分けまして、貴重品のようなものは特別証拠品として、伝票の三枚つづりが赤いインクで印刷したものであり、その他のものは緑のインクで印刷した三片の票を使うということに、そういう用紙に変えましたほかに、仮出し期間の二カ月というのが長過ぎるということで、これを五日ということにいたしました。  それから、更新も、今までは更新という形で認めたのでございますが、更新を認めないことにしまして、すべて期間が経過いたしましたならば、現品を添えて領置課へ返してくる、そうして、さらに必要がある場合には、新規の仮出し手続を踏ませて——更新ということでなくて新規の仮出し手続を踏ませてやる、そして五日間たてばまた返すという形を、特別証拠品についてはとるということにいたしました。  それからまた、裁判所との問題点も、先ほど申したようにございますので、裁判所とも協議をいたしまして、証拠品を裁判所に提出した場合におきましても、これは一カ月ごとに裁判所と検察庁の領置課との間で、証拠品があるかないかということを、書類は上げてあることになっておるが、もらっておるかどうかということを相互に突合確認しよう、こういうことに申し合わせができて、そのように実施をいたしておるのでございます。  それからまた、検察官の印が盗印されておるという点につきまして、この保管方法でございますが、検察官の印はずっと登録印といたしまして検事正に印形を届けて、官印はもちろんでございますが、各検事の認め印も登録印をさせておるわけでございますけれども、幾ら登録をいたしましても、机の引き出しがら使われるものを防ぐことはできませんので、さらにこの点の取り扱い方について、厳重な保管方法を講ずることにいたしたのでございます。  それから、今の判を押すという手続があります。検察官の認印が要るという手続があるのですが、これを検察官が事務官まかせにしておった点もあるのではないか。どうしてもこれは、検察官が判を押す際に、ただ形式的に判を押すというのじゃなくて、品物が出た、渡したということを確認した上で判を押すということを励行するようにいたしまして、その趣旨の要領の改正をさせたわけでございます。  一方、本省としましては、大体証拠品を長期にわたって検察庁に保管をしておるということは、将来また控訴審において、あるいはまた最高裁の裁判において、必要があろうというようなところから保管をするのでございますけれども、これもある程度見通しを立てまして、保管の証拠品の判別を検察官みずからして、そうして不要なものはできるだけ早く返せという趣旨で、この趣旨の通牒を私の名前で出しておるような次第でございます。  それぞれその手続を新たにいたしたわけでございますが、先ほどおっしゃいました通り、これには本人の責任はもちろんのこと、関係者の監督責任も重大でございますので、まず本人につきましては、三十六年七月二十七日付で国家公務員法の規定によって懲戒処分として免職処分になりましたことは当然でございますが、さらに同年七月二十八日、公文書偽造行使、詐欺によりまして身柄は拘束のまま東京地方裁判所に起訴され、同年八月十二日、さらに追起訴をいたしまして審理を続けておったのでございますが、過般判決がございまして、懲役五年ということになりました。執行猶予はついておりません。実刑でございます。本人は不服で、ただいま控訴中でございますので、事件は東京高裁に目下係属中、こういうことになっております。  それから、被害につきましては、先ほどおっしゃいました通り、国の弁償金から弁償しなければならぬ筋合いでございますけれども、さらに本人から追及することもこれまた法の命ずるところでございまして、本人からさらに弁償させるということになっておりまして、大体の見通しでございますけれども昭和四十一年から四十七年までの間に完了させるということで、近く和解手続によってその問題を解決する予定にいたしております。  さらに、監督責任といたしましては、本年二月二十三日に、当時の検事正、現在広島高等検察庁検事長野村佐太男、現在最高検の検事であります当時の次席検事岡嵜格、公判部長横井大三、同副部長岡崎悟郎、公判部検事で印鑑を盗用された者であり、かつ監督責任者であった金丸歓雄、平井清作検事、高田秀穂検事、鹿道正和検事、それから公判部の事務課長市瀬恒尾事務官に対しましては、それぞれ一カ月百分の三ないし一の減俸処分に付しました。処分の理由は、申すまでもなく国家公務員法上、職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合というのに該当するものでありまして、特に事務課長の市瀬恒尾事務官につきましては、仮出し証拠品の保管及び処理につきまして、特に検事正訓令に付加して次席検事から詳細な注意が書面によってなされておったにかかわらず、その趣旨徹底を欠いたというような点も責任を問われておる次第でございます。  さらにまた、検察官と検察事務官との間におきまして——非常に大ぜいおります。現に公判部だけで部長検事以下四十数名、検察事務官だけで五十数名という多数の者がおりまして、これを検事が事務官の私生活にまでわたって知悉するということは、なかなか困難でございますけれども事務課長という立場の者は、同じ同僚、部下でありすし、かなり金銭上の——月給の前借りとかなんとかいうようなことも、ある程度はわかる状況でございますので、そういうような点があったならば、上司にも話して、こういう事故の起こる前に十分意を尽くして手当をしていくというようなことも、今後さらに人事管理というような面から考えて意を尽くして参りたいというようなことで、申しわけない事故を起こしましたことの跡始末といたしまして、そういうことを考え事務改善に鋭意努力をいたしておる状況でございます。  ごくあらましでございますが……。
  87. 小川豊明

    小川(豊)委員 非常に詳細に御説明をして下さって、あとの改善について御努力なさったこともよくわかったわけであります。  そこで、重ねてお尋ねするほどのこともないわけですが、三権分立の中でも、司法に対する国民の信頼というものは非常に大切なことだと思う。従って、行政面あるいは立法面でもいろいろ問題が起こりますが、司法関係では、ここにもたった一つ指摘されただけですが、それでもこれの国民に与える影響というのはかなりきついものがあるだろうと思うので、こういう点を憂えておるわけなんです。  そこで、今二カ月であったのが五日に変更された。これはこの事件が起こったから、これではいけない、直そうというのでそうした、こういうことの御説明だったと思います。そこで今の御説明では、仮出しの手続から、それを倉庫に保管するのに三枚もの伝票を使ってやっているということ、これは今度改善されたわけですが、その前でも、そう事件というのは起こるはずはないので、むしろこれはその事件を起こした宮田何がしという人の個人の性格、私生活というようなものからそうなったのだ、制度上としては私は改善されたからけっこうですけれども、その前でもそう事件というものは起こり得るはずはないと思うのです。  そこで、ちょっと疑問に思うのは、検事が判を押すといっても、それを机の引き出しに入れておいて、だれが押してもいい、だれでも押せるようになっているというところに問題がある。自分が完全に保管して、自分が押して初めてその効果というものはあるわけで、そこに一点、判を押すという責任に対する考え方のルーズさがいささかあったのじゃないか、こういうことが考えられるのであります。  それからもう一点は、検察庁内では検事に所属している事務官ですから、これは信頼しなければ仕事はできませんから、そういうあやまちがあったとしても、これはひとり検察庁ばかりでなく、ほかの官庁へいってみたって、よくそういう判の使い方をしていることをわれわれは見かけるから、このことを特に取り上げて言うわけではないが、ただここで、私どもが疑問に思うのは、これは証拠品ですから、それを検察庁が預かり、保管しているものを、今度裁判の必要上裁判所に提出する。それを提出するのだから、これは裁判所の方に移ったのですから、裁判所の方からその書類は持ってこられる。ところが、これを見ると、この事件は、検察庁の方から裁判所の方に移った形になっているように見える。  そうすると、検察庁内では事務官と検事の関係だが、これはある程度信頼し合って仕事をしなければならぬことはわかるが、それを裁判所としては、提出されたという品物を持っていない。品物を見ていないで、提出されたという書類を裁判所は出しているわけですが、これは一体どういうことなんでしょうか。検察庁内ではなしに、今度は裁判所との関係がそこに出て参りますが、この裁判所と検察庁というのは、別個でありながら、内部というものはかなりルーズなような感じを与えるが、これはどうなんですか。
  88. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 先ほどちょっとそこのところを御説明申し上げたのでございますが、裁判所が証拠品を受け取りますと、受け取りましたという領収証を出すことになっております。その領収証をこちらとしてはもらいませんと、品物を預かったものが、裁判所の方の保管に移ったということを証明する方法がないわけです。ですから、どうしてもその証明書が必要でございます。ところでその領収証を出す裁判所は、裁判官がやはり認印をして、確かに裁判所が受け取ったということを証明するわけです。そこで、この事件の場合には、裁判官は知らぬでおりますし、現に受け取っていないわけです。しかるに裁判官名の受け取ったという領収証が検察事務官の宮田の手に入っているということは、一体どういうことかという疑問が、ただいまおっしゃる通りあるわけです。それは調べた結果によりますと、裁判官が品物を検察庁から受け取っても、裁判官がすぐその判を押して出して下さればいいのですが、裁判官が品物は受け取ったが、領収証を出すのが、今席にいなかったとか、あるいはきょうは在宅であるとかいうようなことで、なかなか判がもらえないことが往々にしてあるわけでございます。そういう場合をどういうようにして調和するかということから起こったことだと思いますが、あらかじめ裁判官が判を押した受取証を書記官がもらっておいて、品物が入ってきますと、すぐそれを書いて検事の方に渡すのですが、そのもらっているものを、また検察事務官の方に、君の方で書いてやれというようなことで簡略にしたものらしい。しょっちゅうそうやっているというのではないようでありますが、この事件の場合は、そういうことから宮田が持っているのに、それに書き込んだ、こういうことですから、領置課の方ではすっかり裁判所の方にいっているのだと考えておったようでございます。
  89. 小川豊明

    小川(豊)委員 これは検察庁内の事件なんですが、そうすると、この問題は当然裁判所の問題として出てくるのじゃないですか。というのは、受け取りもしないものを、しかも、ただ金額の問題だけじゃなくて、これは裁判所なり検察庁なりですから、それによっていわゆる刑の問題までが出てくる問題だと思う。そうすると、受け取りもしない証拠品を、裁判所の方の手続がおっくうだからといって、初めからそういう書類や印鑑を預けてしまっているとすると、単に検察庁ばかりでなくて、裁判所もこの問題は問題として検討しなければならぬと思うのですが、どうですか。
  90. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 私も同じように考えるわけであります。それで、今後は裁判官の方も大いに注意しなければいかぬことだということを悟られたわけでありまして、裁判官の方へ証拠物が保管がえになりました場合には、手続だけで、書類の上だけで確認せずに、それとは別に一カ月ごとに全証拠品について検察庁と裁判所とが突合確認をし合う、そういうことで、もし間違って検察庁の方にあるにかかわらず、裁判所の方へいっておるようになっておるものがあれば、その機会に発見されますし、逆に裁判所の方で保管しておったにかかわらず、検察庁の方にあるように書類ができておれば、それもその際に明らかにして、そういうことによって事故を防いでいこうということを裁判所の方も快く申し出をいれまして、裁判所と検察庁の事務当局の間でそういう突合確認という手続をやろうということによって話ができております。
  91. 小川豊明

    小川(豊)委員 時間が非常にあれしたので、私、この問題についてはもっとお聞きしたいことがあるのですけれども、これでやめたいと思いますが、私は、これに対して関係した検事さんやその他の係の人がほんとうに迷惑したということを言っておられますが、それよりも私どもが裁判所なり検察庁なりへ行くと、正直言うとどうしてこう手続が厄介なのかと思うわけですね。しかし、これは人の名誉なり身分なりに重大な関係があることだから、こういうように煩瑣な手続をとらざるを得ないんだと思って、われわれも了解しているわけですが、今御説明を聞いていると、これは内部の問題であるには違いないけれども、かなり書類の取り扱い等についてルーズだということを批判されてもやむを得ないのじゃないかと思うのです。われわれが行っても、きょうは検事さんがいないとか、きょうは判事さんがいないからこうだ、従って、判がもらえないからだめだとか、また幾日か延ばされることがたびたびある。ところが、こういう問題を通じてみると、引き出しをあければ判があった、あるいは裁判所の方の紙も検察庁の方で簡単にもらえるんだということになると、私は今後事務の取り扱いをよほど厳正に注意していかないと——単に私は金額だと思わないのです。たとえば、どろのついた手ぬぐい一本でも、ダイヤモンドであろうと、金であろうと、これはその人の一生を左右する事件と関係のあるものであるから、従って、取り扱いというものは、どういうものであれ、これは厳密に取り扱わなければならぬと思うわけです。にもかかわらず、こういう事件が起こった。しかも、その起こった経過をお聞きすると、この点では本人が悪い。悪かったからこうなったんだ。事実はそうですけれども、本人が悪いにしても、これは事務官として検事にほとんど直属してやっているくらいですし、相当年月たった人で、役所でもそこまで採用し、そこまで信頼しておったわけです。けれどもそれは、その人に対する監督の責任ということでなくて、人そのものを追及するのではなくて、その取り扱いの制度だけ変えても、今の実情を聞いても、検事さんでも、判事さんでも、あるいはほかの役所でも、局長なり課長なりが判を机の中におっぽっておいて、自分の下僚が——それは信頼し募るから勝手に押してもいいのだということでは、幾ら制度を変えても直らない。だからこの場合、検事さんであろうと判事さんであろうと、自分が判を押さなければならぬものは自分で押す、人に押させることならばそんなものは必要ないわけです。この点をもっと厳正に厳密にやる必要があるのではないかと思うわけですが、いかがですか。
  92. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 まことにおっしゃる通りでありまして、形をつくって、魂を入れなければ、いかにこの制度が完璧で——形の上ではお互いに相互抑制という形がとられておるわけでございますが、それだけでは、幾らでもやる気になればできるということは、幾ら厳密にいたしましても、これを細大漏らさず防止することは不可能のように思うわけであります。従いまして、先ほどもちょっと項目的に申し上げましたが、まず、この事務官にしろ、検事にしろ、日々つき合っておれば、今の気持が非常に神経衰弱的になっておるというようなこともおのずからわかるわけで、そういう段階でなぜそうなっておるかというようなことも、お互いに話し合ってめんどうを見ていく。これがほんとうの監督なんで、判を押してあるとかないとかいうことを争って監督するのではなくて、そういうような点に徹底してほしいということが一面言われますとともに、今まで机の中に判を入れておったのに、自分らは盗用するつもりも何にもないのに、近ごろは検事が全部ポケットに判を入れておるぞ、ポケットに入れておるから、押してもらおうと思ったら、ちょうど上着をどこかへ置いてきて押してもらえないということで、かえって不信の念を起こしてもいけないのですが、要は検事が自分で確認してそこへ押すということになりませんと、ほんとうの判を保管する意味が出てこない。そういう点の制度を変えますとともに、そういう点を強調いたしまして、今後こういう事故は再び起こすまいという決意を現場の方でもいたしておる次第でございます。私どももやや煩瑣にわたる改正かとも思いますが、これも証拠品というような、人から預かる大事なものでございますので、念には念を入れてやろうという考え方に賛成をしておるわけでございます。
  93. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は、一年半の間発見ができなかったということをお聞きしながら、どうもそれほど必要な証拠品であったか——相当の金額ですから必要がなければそれを押収するということもないかもしれませんけれども、  一年半もわからないまま放置されるような証拠品というもの、まあ今でもそうですか、かつていろいろな、そういう普通の犯罪でない、思想的な犯罪のときなんかは、とてつもない押収を、書類あるいは書籍、そういうものを勝手ほうだいにやったものです。こっけいなものまで、社会主義批判の本まで証拠品に持っていく、中身が社会主義と書いてあるだけで持っていく、こういうばかなこともありましたが、そういうことではないのか。押収されたところの事案というのは、詐欺か、横領か、窃盗か、それはわかりませんけれども、そんな感じを持つのですが、そういう点について、検事局のやり方について良識のある態度というものを、やはり要請しておく必要があると思う。この事件では必要な証拠品であったかもしれませんけれども、そういうことを感じておるのですよ。  それからもう一つは、個人生活に対しての監督をちょっと漏らされましたが、これは相当警戒してもらわなければならぬのじゃないか、こう思うのです。ただ、月給の前借りなんかから推定するその範囲はいいでしょうが、たとえば事務官のキャップであったにしても、事務官一人々々の個人生活というものをそうとやかくすることは、今のところ許されないのではないかと思われまするし、まあそれは一つの私の希望ですが、前の方はどうですか、それを一つ
  94. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 一般的に不要な証拠品と思われるようなものを、長く保管することはよくないことでございますので、早く返すというような指令を出したことは先ほど明らかにいたしましたが、本件は涜職事件のいわば収賄金であります。それから、その収賄金をもって買った指輪だ、こういうことになっておるわけでございまして、これは証拠品と申しましても、犯罪の証拠品であると同時に、これは刑法上没収される性質の金であり、品物であるわけであります。そういうふうに検事の方は考えておったのでございますが、一審の判決ではこの点を没収しなかった。そこで、事件は没収しないままで固まりましたので、弁護人の方から返還請求があったわけであります。そこで返そうとしたところがない。こういうところから発覚してきたわけでございまして、この事件としましては、押収しておくのが相当な案件でございました。
  95. 津雲國利

    津雲委員長 法務省所管決算に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時十二分散会