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1962-08-29 第41回国会 衆議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十九日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 津雲 國利君    理事 荒舩清十郎君 理事 木村 公平君    理事 鈴木 仙八君 理事 小川 豊明君    理事 勝澤 芳雄君 理事 西村 力弥君       久保田藤麿君    濱田 正信君       藤井 勝志君   山口喜久一郎君       久保 三郎君    森本  靖君  出席政府委員         人事院総裁職務         代行      神田 五雄君         宮内庁次長   瓜生 順良君  委員外出席者         人事院事務総長 吉岡 惠一君         総理府事務官         (宮内庁管理部         長)      三井 安弥君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和十五年度政府関係機関決算書  昭和三十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十五年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和三十五年度物品増減及び現在額総計算書(  内閣所管人事院総理府所管宮内庁)      ————◇—————
  2. 津雲國利

    津雲委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度決算外三件を一括して議題といたします。  まず内閣所管人事院関係決算について審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。木村公平君。
  3. 木村公平

    木村(公)委員 内閣所管のうち、人事院関係について若干お伺いをいたしたいと思います。  まず、人事院性格でありますが、これは国家公務員法の三条に明らかでありますように、国家公務員法完全実施を確保するために、さらにその目的を達成するため人事院を設け、この法律実施の責に任ぜしめるというのが、そもそも人事院の発足の基調であろうかと思うのでございます。しこうしてきょうお尋ねいたしたいと思いますのは、そのうちで二十八条に該当する諸問題であります。二十八条は御承知通り「この法律に基いて定められる給与勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」これに基づいて人事院給与勧告がおおむね毎年出ておりますことは、すでに御承知通りであります。ただ、昭和二十四年十二月四日に人事院勧告がありました七千八百七十七円ペース、これに対して当時の吉田内閣は、この勧告拒否しておるわけでございますが、もしも勧告内閣拒否いたした場合には、人事院はこれに対してどのような措置をとられるのか、あるいはただ手をこまぬいて、拒否をされればやむを得ないというのでありますか。法律上の見解、並びに慣例がありとすれば慣例上の御見解等を伺わしてもらいたいと思います。
  4. 神田五雄

    神田政府委員 昭和二十四年に勧告いたしましたいわゆる七千八百七十七円ベースにつきましては、政府を代表して当時の増田甲子七大臣が国会で、国家公務法の規定により出された人事院勧告は、できる限り尊重したいと思って研究したが、経済安定政策の強力な遂行が、現下の産業経済、その他国家復興の諸般の情勢にかんがみ、絶対必要な国家的要請であるとの結論に達し、あの勧告の受諾ができなかったのであるという態度表明されました。  一方、当時の浅井人事院総裁は、次のように人事院態度表明したのであります。勧告を受けられた国会の方で、勧告を認めるための何らかの措置をとられることが、勧告制度基礎であると考えます。また、政府に対しては、ただいまの政府のやり方に非常に不満であります。勧告制度を設けたということは、それを尊重していくことが建前であると考えます。従って、人事院勧告内閣が取り上げて検討し、財政その他の立場考えて研究されるのが至当であろうと考えます。なお、人事院としては、国家公務員法第二十八条に従ってなすべきことはしたわけでありますから、最終的には国会においてしかるべくお考え願うほか、制度上はやむを従ないのではないかと考えます。当時このように浅井総裁から言われております。
  5. 木村公平

    木村(公)委員 そこで、続いてお伺いいたしたいのは、やはり国家公務員法の二十八条でありますが、「この法律に基いて定められる給与勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」とありますが、「その変更に関しては、」というのはどういう意味ですか。
  6. 吉岡惠一

    吉岡説明員 これはやはり一定のそれまでの法律その他できまったおります。それの現状を変更することだと思います。
  7. 木村公平

    木村(公)委員 そうすると、国会変更をする意思のない場合には、勧告をすることが違法であるかどうかという問題が出てくるわけですが、いかがですか。
  8. 吉岡惠一

    吉岡説明員 やはり国会は国の最高機関でございますから、もし国会としてそういう意思をはっきり御表明になった場合には、勧告はやらないのが適当だと考えております。
  9. 木村公平

    木村(公)委員 そういう意思というのは、このいわゆる国家公務員法二十八条で、「この法律に基いて定められる給与勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般情勢に適応するように、随時これを変更することができる。」、そこで国会が、この基礎事項社会情勢に適応するようにみずからこれを変更しようとしておるにもかかわらず、それとは別に人事院勧告というものがあり得るのかどうかという点を、もう一ぺんお聞かせいただきたい。
  10. 吉岡惠一

    吉岡説明員 ただいまの第一項のお話は、一般的な変更の問題でございますが、今まで人事院がやっております勧告は、第二項による勧告でございます。そこは多少意味が違うと考えております。
  11. 木村公平

    木村(公)委員 二項といいますのは、「人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与決定する諸条件変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」とあるわけです。  そこで、私のお伺いしたいのは、毎年少なくとも一回は、俸給表が適当であるかどうかの報告をしなければならないということは了解できるけれども給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるとき、この解釈の問題がいろいろ誤解を生ずる点もあろうかと思いますので、人事院のお考え一つこの際承っておきたいと思います。
  12. 吉岡惠一

    吉岡説明員 この第二項の勧告は、毎年人事院においては、俸給表に定める給与、つまり国家公務員給与が、いろいろな給与決定する諸条件から見ました適当であるかどうかを調査しておるわけであります。それに基づきまして、その出てきました調査の結果を判断して、勧告するかどうかは、毎年大体調査を定期的にやっております関係上、定期的に意見表明し、場合によっては報告だけにとどめ、もし変更の必要があれば勧告をいたしておるわけであります。
  13. 木村公平

    木村(公)委員 そうしますと、これは、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院勧告するというのですから、たとえば物価等が非常に安くなって、百分の五以上減少すべき必要があるという場合には、給与の減額を勧告されるということもあり得るわけですか。
  14. 吉岡惠一

    吉岡説明員 理論的にはそういうことも考えられるわけであります。
  15. 木村公平

    木村(公)委員 理論的には、もちろんこの法律表面解釈からいきましても、あるいは立法解釈からいっても、そういう場合は減俸勧告ができるはずなんですが、今までは減俸勧告ということは一ぺんもやられたことがないわけです。  そこで、これに関連して私どもの心配しますのは、国家財政勧告とのかね合いですね。来年度予算を今編成をしておるやさきですが、国家財政をどの程度まで把握しながら、減の場合も増の場合も勧告をされておるか。その点を一つ伺っておきたい。
  16. 神田五雄

    神田政府委員 一般職国家公務員給与の改定は、国家公務員法二十八条の情勢適応の原則に基づいて行なうこととされており、同条によりますと、「給与決定する諸条件変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、」適当な勧告をしなければならないと義務づけられております。  次に、給与決定する諸条件に関しましては、同法の六十四条において、「生計費民間における賃金その他人事院決定する適当な事情を考慮して」定めなければならないと規定されておるのであります。そこで、その他の適当な事情ということが問題だろうかと思うのでありますが、これにつきましては、かつて昭和二十九年と三十年の給与報告の際に、失業者の増大、賃金支払い状況の悪化、経営の不振等の事実を現出に勧告を留保したことがございます。財政的な面につきましては、給与の改善を行なうにはそれ相当の経費が必要となりますので、昭和二十一年の勧告以降、勧告中に年間の所要経費について、その見込み額を明記することにしており、そういう意味におきまして、予算面に対する考慮を払っているということにもなりますが、国家財政全般という観点から見てどうなるかという点につきましては、財政当面としての政府、並びに国の最高機関としての国会の御判断によるほかはないと考えております。
  17. 木村公平

    木村(公)委員 さよういたしますと、ただいまは六十四条の二にあります「俸給表は、生計費民間における賃金その他人事院決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」というこの法文解釈からただいまの御答弁がされたのでありますが、従って、自分の方では国家財政とは別に一応こういう基準をもって勧告をするんだ、従って、その勧告を受けた内閣並びに国会は、国の財政を勘案して、その結果この勧告をどの程度まで消化するか、受け入れるか、あるいは拒否するかということをおきめになればよろしい。勧告を必ず勧告通りにそのまま実行しなくてもよろしいという思想のようですが、それでよろしゅうございますか。  財政上のことは、国会並びに政府判断すべきであって、国家財政から勧告を対照して、その勧告国家財政と見合って妥当性があるかないかということを判断なさればよろしいので、その判断の結果、妥当性なしとすれば、拒否も御自由であるし、勧告を無視されることもよろしいし、あるいは勧告の半分をいれることもあり得るだろう。これは御自由だというふうに承ってよろしいのですか。
  18. 吉岡惠一

    吉岡説明員 神田人事官の御答弁を少し補足を申し上げますが、ただいま財政上困れば勧告を実施しないでもいいかというお話のようであります。ただ人事院勧告と申しますのは、先ほども冒頭にお話がございましたように、人事院設置本旨等から考えまして、国家公務員一般労働者とは違うと思いますが、しかし、これはそれぞれ勤労を提供して生活をしておる。それを国家公務員立場から争議権その他を禁止しまして、俗な言葉で申しますれば相当制約を受けた立場にある。従って、そういうものの給与人事院として調査する責任があるのでございますから、それに基づいて出て参りました勧告は、やはり国家的には相当尊重していただくのが私は建前だと考えますので、そういう点を考えられての上の財政上の理由からどうしてものめない、政府もそうお考えになるし、国会の方もそうお考えになれば、これはやむを得ないことであろうと考えます。
  19. 木村公平

    木村(公)委員 これは、くどいようですが、二十八条に、「この法律に基いて定められる給与勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般情勢に適応するように、随時これを変更することができる。」国家がこれを独自にやれる、けれども、「その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」という法文でございますから、できれば国会みずから率先して、あるいは政府みずからが率先して、給与体系が矛盾しておるとか、あるいは社会条件に合致しないという場合には、勧告以前に、国会みずから、政府みずからが発案して、賃金値上げなりあるいは値下げなりするような場合に、国会あるいは政府考えました考え人事院考えが、もしも違った場合はどのような方法でこれを調整されるのですか。これによれば、国会みずからできるわけでしょう。政府みずからもできるわけです。それで、政府みずから発案者だ、たとえば賃金値下げの場合をとると誤解を生じやすいので、値上げの場合でけっこうです。大幅の値上げ決定した。ところが人事院から見ると、その値上げが多過ぎるような場合には、国会値上げに対して値下げ勧告をなさることもあり得るわけですか、ちょっとその点を一つ……。
  20. 吉岡惠一

    吉岡説明員 国会が二十八条の第一項に基づいていろいろ意見を御決定になる、ただ、その意見を御決定になる場合は、それぞれの形式があるわけです。そういう非常事態であるとかいう場合に、国家公務員給与を上げることは困るというような状況、たとえば金がなくて国家公務員自体についても遅配をしなければならぬというような場合に、国家公務員給与をなお上げろということは、はなはだ穏当を欠く場合もある。そういう場合は、国会がいろいろ御活動になる場合には、結局法律か何かの形で意思を御表明になることが私は必要ではないかと思う。その場合は、やはり俸給を上げる勧告をしてはいかぬというような法律が出ておれば、それに基づいてやはり人事院が動かなければならぬと思います。
  21. 木村公平

    木村(公)委員 しかし、この二十八条を素朴に読みますと「この法律に基いて定められる給与勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般情勢に適応するように、随時これを変更することができる。」国会というのは、先ほどあなたがおっしゃったように、国権最高機関だ、従って国会は、独自にこれを発案することができる、給与値上げというようなこと、たとえば国会委員会並びに本会議場において、給与をこれぐらい上ぐべしという決議をした、そうすると、これは国会意思ですから、そういう発意をあなた方と関係なくした場合に、しかしながら、あなた方はその変更に対しては勧告を怠ってはならないというのは、どういうふうな勧告をなさるのですか。今かりにあなた方が勧告される以上の値上げ国会がやった場合には、あなた方はまだそれに対して勧告なさるのですか。国会発案権があるのですから……。
  22. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今のようなお話の場合は、理論的には私は人事院勧告できると思います。ただ、事実上その基礎になっております社会事象その他を見ないと、これはできるとかできぬとか、やるとかやらぬとかいうことは、ちょっと申し上げられないのじゃないかと私は思います。
  23. 木村公平

    木村(公)委員 そこで、今度その人事院を廃止し、法案を出して内閣人事局をつくるという作業が今進められておるようでありますが、一体なぜそういうようなことになってくるのだろうということを、実は私はこの間うちから私なりに考えておるのですが、会計検査院人事院というものは、どうも国会あるいは政府というものと平仄が合わないことが従来多い。会計検査院というものは、検査の役柄ですから、必ずしも内閣が喜ぶ存在ではないかもしれぬけれども、これはこれなりに、憲法においても、法律においても、必要性を認めておるのです。人事院国家公務員法においてこれが認められておる。しかも、どうも同じ内閣の中にありながら、あなたの方と内閣とは平仄が合わないようなことがあり得る。会計検査院においてもいろいろあって、かつては院長をここでつるし上げをいたしまして、結局、その結果かどうか知らぬがおやめになった。何か人事院というもの、会計検査院というものは、天皇陛下の直属のようにでも思っているのじゃないですか。その根本的な考え方から一つ伺っておかないと——だいぶ行き過ぎておるのではないか。人事官なんというものは、そう別にわれわれは偉いとも思っちゃいない。吹けば飛ぶほどでもなかろうが、大したことはないと思っているが、人事官とか会計検査院検査官というと、何か国会議員とはよほどレベルが違う、天皇陛下の次ぐらいのつもりでおられるようですが、一体、人事院そのもの性格というものを把握しておられるかどうかという問題、この問題について、私はあなた方の素朴な、偽りのない——誇りは十分お持ちになることもけっこうですが、権限法律でおのずからわかっている。権限はこれだけの権限なんです。存在価値もわれわれにはわかっているんだ。われわれは、国民を代表する意味において、あなた方に対して、国会においてものも言わなければならぬ場合も幾らでもあるわけだ。われわれは、あなた方の非をただす固有の権利も持っておるわけだ。しかしながら、あなた方は国会とか政府とかいうものに関係なく独立の存在のようにも思っているのじゃないですか。どうもあなた方の態度を見ておると、会計検査院とさも似ておる。会計検査院検査官というものが、何か全国の公務員と遊離して、そういうものを全部手下に従えておるようなこう然たる気持でかつては出てきた。それでわれわれはつるし上げて、根本的に会計検査院というものがどのようなものであるかということがここにきて初めてわかったのです。あなた方人事院は、今までへいこらへいこらと、総評あたりからおだてられておるかしらぬ、こちらの方からいっておだてられておるかしらぬが、だんだんつけ上がってきて、このころでは、人事院というのは、何か内閣と独立しておるような感じを与えておる。それは私はまことに残念だと思う。あなた方は公務員に対するところの責任があって、いわば奉仕機関だと思う。それを、取り違えて、天皇陛下の次くらいの気持でおられたんじゃ、公務員はたまらないし、国権最高機関であるところの国会に対しても、はなはだしく礼を欠くと私は思う。その点の御所感神田さんから一つはっきりと伺いたい。
  24. 神田五雄

    神田政府委員 御答弁申し上げます。  天皇陛下の次だとかなんとかいう、そういうことはわれわれは思ったこともありません。  それから、会計検査院のことはよくわかりませんが、私どもは、とにかく謙虚な気持で、公務員生活保護ということを考えております。それだけに、あるいはあなた方のお考えに沿わない点も確かに出てくるだろうと思いますが、私どもはそれ以外に何ら野心も何もありません。それだけ御答弁申し上げます。
  25. 木村公平

    木村(公)委員 そんな問題についていろいろ議論をいたしておることは、結局、いろいろどんな角度からでも議論ができますから、水かけ論になりますが、そこで一つ別角度からお伺いしておきたいと思います。  それは、昭和二十四年十二月四日のあなた方の勧告吉田内閣拒否した。このときは、私もよく知っておりますが、その間の事情は、浅井君を呼んで、拒否した場面に立ち会っておるのでありますが、しかしその後は拒否という事実はないようです。ところが、今拒否されたときの、当時の人事院総裁御所感といったものを聞いてみると、どうもわれわれには納得がいかない。拒否をされたということには理由を付して拒否しておるわけですが、いろいろあなた方からこの理由に対する疑義をただすというようなことがいささかもされておらぬのですが、そうすると、あなた方の勧告拒否する場合には、何ら理由を付することなく、そんな勧告拒否するのだ、無視するのだという態度で、政府並びに国会が、あなた方の勧告というものを、一言の弁解理由というものを示すことなく拒否したというような場合には、あなた方はこれに対してどういうようなお考えを持っておられるのですか、そういうことがあったならば。理由を付することなく拒否だけした場合、そういうことだってあり得るわけだ。法律には何もそういう定めがありませんから……。そうすると、あなた方人事院存在価値が否定されるようなことになってしまう。勧告というものの必要性が否定されることになる。こういうような場合に、あなた方はどういうような措置がとれるか。
  26. 神田五雄

    神田政府委員 国が拒否する場合には、やはりちゃんとした資料が当然出てこなくちゃならぬと思うのです。だから、そういうことは私あり得ないと思います。
  27. 木村公平

    木村(公)委員 ところが、事実現実的には拒否をしておることはありますね。その場合に一言述べておるけれども、その拒否理由に対して、当時の浅井総裁が、その拒否に対する疑義というものをはっきりただしておらないようなのです。拒否されたことは残念だ。しかし、浅井さんの御所見を伺うと、結局拒否されたのだからやむを得ないということに尽きるわけですよ。  そこで、今は過去のことですけれども、もしも将来において、政府がこれを拒否したいというような——理由を述べる必要があるという義務づけがありませんから、あなた方の勧告を全面的に理由を示すことなく拒否したという場合には、あなた方はその理由政府に聞く権限があるのかどうか。どういう理由拒否されたかということを、当然あなた方は政府に対してお聞きになる権利と申しますか、権限と申しますか、それが法律の上においては見当たらないのですが、何かそういうような、あなた方の内規でもありますか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  28. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今お話表面上は理由なしで拒否という問題があると思いますが、ただ、今のようなお話の場合は、結局、政府一つの案を出す、それに対して国会がいろいろ議論をする、そういうことになりますと、結局、拒否をしました場合に、いろいろ理由というものが大体私はわかってくるのじゃないかと考えます。もちろんこの勧告は、政府だけにするのではございませんで、政府国会と両方にやるわけでございます。政府政府国会国会として、それぞれ議論があると思います。従って、具体的の場合に、ただ、たださなかったということであったのではないかと私考えますが、実際はやはりたださなくても大体わかっておったのではないかと考える次第であります。
  29. 木村公平

    木村(公)委員 そこで、六十四条の二の問題にまた返りますが、俸給表の内容の問題です。「生計費民間における賃金その他人事院決定する適当な事情を考慮して定められ、」とあるのですが、これは先ほどの神田人事官からの御説明によると、適当な事情を考慮して定められるということに対するお答えがまだ釈然としておらない。「適当な」というのはどういう意味かということと、それから、最終決定をされるときには、三人の人事官によって協議がなされなければならぬと私は考えておるのですが、それは、もしもやむを得ざる欠員であるとか、病気であるとかいう場合には、一人でもよろしいのかどうか。最終決定は合議でなくて一人で、たとえば神田さん一人でもよろしいのかどうかということも、あわせて伺っておきたい。  まず、六十四条の二項のうちの「適当な」というものの基準一つ伺っておきたい。
  30. 神田五雄

    神田政府委員 六十四条の問題は、これはいろいろの事情でありまして、これは非常に広範囲に解釈しております。  それから、もう一つの三人の人事官をもって構成をしておるものが、協議により事を決定するものであると考えるが、二人でもいいか、あるいは一人でもいいか、そういう御質問に対してお答えいたします。  人事院権限とされておる給与勧告のような重要な事項決定は、国家公務員法第十二条によりまして、人事院会議の議決を経なければならないということになっております。人事院会議は、人事官の過半数をもって会議の定足数として、議事は人事官の多数決をもって決定することをされております。従いまして、一人の人事官が欠けた場合におきましても、所定の手続を経て適法に人事院としての意思決定することができるとされております。従いまして、二人の人事官が欠けた場合は、会議を開くことは不可能であります。これは申し上げるまでもないことでございます。
  31. 木村公平

    木村(公)委員 現在の場合は、あなたが総裁代行といいますか、代理をなさっておられる。総裁が死亡されたあとの補充がまだされておらない現実の姿でありますが、その場合に、後任総裁が急遽きまりそうだという一つの雰囲気があり、これは新聞、雑誌、ラジオ等、いわゆるマスコミによって大いに広く伝わっておったのですが、そういう際に、後任総裁が近くきまる、後任人事官が近くきまるという判断が、常識上十分されるというときに、急いでわざわざ二人だけで最終決定協議されなければならなかったということは、けだし年に一回勧告しなければならないというところに根拠があろうと思いますが、一年に一回というのは、三百六十五日ということにそれほど執着しなければならないのか。一月や半月おくれても、年に一回勧告すればよろしいのか。その点、慣例ではない、法規上に何かありますれば、法規上のお答えを願いたい。単なるあなた方の慣例とおっしゃればそれまでです。三百六十五日目に必ず勧告しなければならないという狭い解釈をしていらっしゃるのか。それとも年に一回であれば、去年は六月にやったが、ことしは諸般の事情で八月になることもある、そういう幅があるのかどうかという点について、法規に基づいて一つ答弁が願いたいと思います。
  32. 神田五雄

    神田政府委員 人事院は、国家公務員法第二十八条及び一般給与法第二条の規定に基づきまして、毎年、少なくとも一回、国会及び内閣に対し給与についての勧告をしなければならないということになっております。また、給与を改善する必要が認められたときは、その報告にあわせて適当な勧告をしなければならない、そういうふうに規定されております。国家公務員法第二十八条第二項に「人事院は、毎年、少なくとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。」となっております。それで、報告から翌年報告までの期間とされておる一年につきましては、正確に三百六十五日という意味には解しておりません。人事院は前年の報告期間から一年目に行なうということをおおむね慣例としてきております。前年に比してあまりおくれることは、国家公務員に対する適正な給与を保証する役割りを持つ人事院としては、好ましくないと考えておるのでございます。
  33. 木村公平

    木村(公)委員 そこの点が少し私の腹に入らない。毎年一回ということは、たとえば昨年六月に勧告をお出しになったとする、そうするとことしは——それが六月の二十六日であったと仮定いたしますと、六月二十六日ないしは二十七日でなければならないというような、あなた方は非常にがんこな考え方のように私どもは仄聞しておりますから伺っておるのですが、私ども解釈で言えば、公務員の利益のためにあなた方は勧告をされるとするならば、たとえば去年の六月に勧告をした、ところが、社会の諸情勢が急変したという場合には、かりにことしの一月に勧告なさっても、事情が変わっておるのですから、一月ということがもしも会計年度に触れますならば、四月に勧告をかりにされることがあっても、去年六月でことし四月にされることがあっても、違法ではないのじゃないか。六月であったのが七月、一カ月おくれたというような場合、しかも、なぜおくれるかといえば、現在欠員がある、欠員が補充されるには、二、三日して補充されるという情勢だけれども、せめて一カ月も見ておけば補充されるだろうという段階にあった場合には、一カ月くらい延ばすということは、別に私はそう国家公務員諸君に甚大な迷惑をかけるわけでもない。一カ月の間に社会情勢に急変があったならまた別の勧告をなさるべきだと思う。どうです。その幅をもう少し伺っておきたい。去年六月二十六日だったから必ずことしの六月二十五日にやらなければならぬというような考え方は、われわれにはわからない。その幅を一つ聞かしておいて下さい。法律には何もないです。
  34. 神田五雄

    神田政府委員 幅は確かにございません。従って、過去におきましても、一日くらいおくれたり早まったりしたことがあります。それから、一昨年でありましたが、これは国会等の要請によりまして、三月調査では給与が低く出るからということで四月調査にいたしました。従って、このときの勧告は二十日以上おくれたという事実がある。しかし、これは全くやむを得ない事情でございまして、幅といっても別に規定はありませんが、一つ慣例——慣例といっていいでしょうが、できるだけ昨年から一年目、それを中心に考えてこれをやっておるわけであります。
  35. 木村公平

    木村(公)委員 あなたは少し誤解をなさっているのじゃないですか。二十八条の二項では、「人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。」ということなんです。これが一つ。それから勧告ということは、「給与決定する諸条件変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」ということです。あなたは、「報告にあわせて」とあるから、一年三百六十五日目に少なくとも勧告しなければならないというようにお考えですが、報告というのはそういうふうに義務づけられておる。勧告というのは、こういう条件についてはあなた方と国会判断と違うことがあるかもしれませんが、条件が百分の五以上の変動があったという場合に勧告をしなければならない。だから、必ずしも勧告というものは、年に一回しなければならないとは限らない。報告はしなければならぬけれども情勢が変わらなければ勧告はしなくていい場合もある。報告しなければならぬということと、勧告は一年ごとにしなければならぬということを混同しているのじゃないか。報告は一年ごとにしなければならぬけれども勧告というものは、ときによってはしなくてもいい場合もあり得るわけです。情勢変化がなかったら。どうですか、その点。
  36. 神田五雄

    神田政府委員 確かに仰せの通りで、過去におきましても、報告だけにとどまった例は何回かあります。勧告をしなかったという例もあります。ただ、今度の場合は、最初、今すぐもう一人の人事官がきまるからという仰せでありますが、これは過去の例に見ましても、後任の人事官がきまるのは大体一カ月以上かかっております。ところが、総裁がなくなったのは、勧告の日が非常に切迫した時期でありました。ですから、私どもとしましては、非常に苦慮したわけでありますけれども、新聞等におきましてはいろいろ書き立てております。しかし、とにかくすでに半年もかかって調査研究したこの勧告案を、このまま維持していくということは、これはちょっとむずかしい問題になってくるわけであります。それで過去の例に見ましても、一カ月以上人事官の後任に時間をとるということを考えまして、これはぐずぐずしていると勧告の時期を失する、そういうことをおそれましたので、私どもは八月八日にはできませんでした。これは入江総裁の死によって実際上事務が渋滞した関係です。それで二日間延ばして十日ということにしたような状態であります。
  37. 木村公平

    木村(公)委員 くどいようですが、たとえば新しい人事官がきまる、そうして互選の結果、それがもしも総裁にでもなるというような場合には、新総裁のイデオロギーというものが給与勧告の内容に影響を及ぼすとかえってまずい。今まで自分たちが半年もかかって大いに調査をして結論を出しておるのだ、しかるにもしも新人事官がきまり、それが互選の結果、総裁というようなことになって、その人はいわばしろうとなんだ、その人が、われわれの今までの調査内容に容喙をして、そうして協議がなかなかととのわない、あるいはととのっても、今出そうとする勧告が、あなた方からいえば歪曲されるというようなことがあってはならないからというので、急いだというようなことがあるのじゃございませんか。
  38. 神田五雄

    神田政府委員 三人の人事官というのは同格でございます。かりにその人が総裁になったところで、多数決できめればどうでもきまることなんです。それで、一人の総裁が、えらい人がかりに来ましたとして、短期間に、われわれが半年かかってやったというものを、そんな三日や四日で頭の中に入れることはおそらく不可能だと思います。それで今度の勧告案は、半年にわたって、ほとんど大半は入江前総裁が入っているのでございます。最終的な、つまり何%低いというふうな数字は出てはおりませんでしたけれども、そのほかのことは毎日のように会議を開いて三人で協議してきている問題であります。ですから、私どもとしては、二人でやったというのは、最後の段階は二人で確かにやりましたけれども、その過去の数カ月間というものは、三人でやっておったという事実もございます。先ほど申し上げたような事情で二日間はおくれましたけれども、十日に勧告したというような状態であります。
  39. 木村公平

    木村(公)委員 多数決ということをおっしゃる、その通りです。会計検査院と同じ制度なんですから。三人で総裁を互選して、総裁の意見と他の二人の意見が異なった場合には、総裁といえども同格ですから、二人の多数の意見に従わなければならぬことは、私だって十分承知しております。問題はその実態なんですよ。総裁を互選される、ところが、今みずから総裁代行といっておられるのだから、おそらくもう一人の人事官より上位におられるようなことだろうと思うのですが、そういう場合に、二人の間で協議がととのわなければ、おそらくあなたの言う通りになると思うのですが、かりにもう一人入ってくる。そうすると、新しい人事官考え方とあなた方お二人の考え方と違うという場合に、総裁を互選しておきながら、多数決でもって総裁の言い分を葬ったというような例は今までありますか。あなた方が互選されるのでしょう。入江さんの場合もそうだが、互選された総裁の言い分が、少々間違っておるからというので、あとの二人の人事官が総裁の言い分を葬った。これは協議機関であるけれども、事実上は総裁がリードをするのじゃありませんか。
  40. 神田五雄

    神田政府委員 三人の人事官がやっておって、それが葬られたという例はございませんが、しかし拒否した例はあります。しかし、総裁はやはり総裁でありますから、総裁の権威は認めてやりますし、今度の勧告も三人の人事官がそろった上でということは、理想的なことでありましたが、しかし、御承知通り、まだ今日に至ってもきまっていない。こういう状態でありますから、私どもとしては、当時勧告してよかったと思っております。
  41. 木村公平

    木村(公)委員 人事官国会の承認事項なんですが、もしもわれわれ二人じゃ困るのだ、もう一人欠員の人事官というものがなければ、最終的の勧告案の協議ができないというようなあなた方の御要望があれば、おそらく政府ももっと急いだろうと思うのだが、そういう御要望はなくして、むしろ二人で、おれたちは十分できるのだというようなことが、いつの間にやら政府に知れたので、すでに勧告は終わったんだから、そうあわてる必要もなかろうというようなことで、じんぜん今日まで多忙にまぎれて遷延しておるのじゃなかろうかと私は想像するのですが、あの当時から人事院内部においては、新総裁が、新人事官がきまって、三名の協議機関が充当されなければこの勧告は出せないというムードはなかった。入江さんがなくなったから二人でやりましょうというムード、それでそんなにあわてる必要はなかったということになったのじゃないかと思います。もう一人入江さんの補充を入れてもらわなければ、二人ではできませんよ、勧告最終決定はできないぞというあなた方の熾烈な御要望があれば、政府でもほっておくわけにいかないと思います。国会も、政府から出してくるならば承認するのにやぶさかでないけれども、あなた方自身は、すでに二人でやろうということでおきめになっていたのじゃありませんか。
  42. 神田五雄

    神田政府委員 今だいぶ誤解されておるようでございますが、私どもとしては、入江総裁のなくなられた直後から、新しい人事官を至急つくってほしいということを政府に申し入れ、それから私の方はこういう人を推薦するということまでちゃんと言ってあるのです。しかし、その推薦した人は取り上げられない。これは別として、私どもは何も新総裁、新人事官の就任を結果的に妨げるようななにをした覚えはありません。これは政府に幾ら要求しても、もう少し待ってくれ、もう少し待ってくれという状態で、そういうことでは勧告せざるを得ませんぞということをはっきり申し上げておったわけであります。
  43. 木村公平

    木村(公)委員 大体私の質疑はこの程度でよろしいですが、最後に一つお伺いしておきたいと思います。  人事院というものは、内閣の一翼なんです。従って、常に内閣意思の疎通をなさる必要があるのかないのか。これは内閣の中にあるのですから、その内閣と大体考え方の疎通をやられるのか、独自におやりになるのか、その辺がどうも私所管関係から言って不思議なんですが、どういうことですか。
  44. 神田五雄

    神田政府委員 勧告のごとき問題については、これは内閣と全然没交渉でやっております。意思疎通ということも、その意味からいけばないでありましょうが、とにかく私の方は独自の立場でこれをやっておるわけでありまして、あとの御批判は政府なり国会でおきめ願うという立場をとっております。
  45. 木村公平

    木村(公)委員 人事院というのは内閣の一機関でしょう。総理府ですか。これは全然独立のものですか。内閣とは関係ないのですか。人事院というものは内閣の中にあるのじゃないですか。
  46. 神田五雄

    神田政府委員 私はそう解釈しております。
  47. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今の点を法制的に申し上げますと、人事院内閣の所轄になっております。従って、内閣の監督を受けることになるのですが、仕事によりまして、ただいま神田人事官お話のように、勧告については事実上内閣と連絡をとらないけれども、その他の仕事については、内閣と十分連絡をとってやっております。
  48. 木村公平

    木村(公)委員 この勧告というものは、国家公務員の利害に重大な関係があるものですが、しかし、内閣だって国家公務員のための不利益機関じゃないと思うんですよ。国家公務員のためによいと思われることは、内閣もみずから率先してやるべきもので、その内閣の監督を受けておられる内閣の一機関のように思っておるのですが、それを全然内閣と没交渉でやるということは、これは裁判と違うのです。行政の中でしょう。行政の中だから、立法でもなければ司法でもない。そうすると、内閣の長と勧告の内容を御相談なさらなくともよろしいのですか。今までなさらなかったことは認めますが、そういうことは独立して勝手にやっていいのかどうか。この点、法規上何かありませんか、一ぺん伺っておきたい。
  49. 吉岡惠一

    吉岡説明員 勧告の性質上、やはり内閣の意向を聞いてということはなかなかむずかしいのです。たとえば人事院公平判定の問題があります。たとえばある省で不利益な処分を公務員として受けた場合に、それを判定するについて内閣の意向を聞いておってはやはり公平機関として適当でない。従って、ものによりまして内閣との連絡ということは考えるべき問題であろうと私は考えております。
  50. 木村公平

    木村(公)委員 国家公務員法の「完全な実施を確保し、その目的を達成するため人事院を設け、この法律実施の責に任ぜしめる。」ということが三条の一項にあることはわかりますが、といって、内閣と独立しておるという機関ではないでしょう。内閣と独立しておるのですか。これは人事院の根本の性格ですから……。
  51. 吉岡惠一

    吉岡説明員 独立とは申しませんが、国家公務員法の三条の二項関係、その他いろいろな条文を拝見いたしますと、やはり勧告作業というものについてこれを受ける立場にあるのが政府国会であります。国会は別といたしまして、政府についてたとえて申しますれば、財政状態はどうかということを聞いて、財政上こういうふうに苦しいから勧告はやめてくれ、こうかりに言われた場合に、それではやめるかとか、こういうことでやっていったのでは、勧告という意味をなさないのではないか。そういうことで、ものによって判断すべき問題だと思います。
  52. 木村公平

    木村(公)委員 勧告を受けるのは政府国会だけれども、これを実行するのもまた政府でしょう。実行機関と全く没交渉に勧告というものが行なわれることが本筋か。実行をさせるための勧告なんですから、あらかじめ実行機関であるところの政府、承認機関であるところの国会に対して、一応事前の——とにかく政府のいやがることをやるわけじゃないのですよ。国家公務員の利益のためにあなた方は勧告されるんだから、国家公務員内閣との関係は、内閣の子供じゃないですか。内閣が実施機関なんだから、なるほど勧告は受ける方ですけれども、実行するのは政府だから、勧告役であるところのあなた方が、実行役であるところの内閣と没交渉で、内閣はどうでもよい、おれの方はおれの方で勝手にやるということをやらなければならない法律上の根拠がありますか。従来の慣行はわかっておりますよ。浅井さん以来内閣と仲が悪いこともわかっている。そういうことじゃなく、内閣とは意思疎通できないのかということです。
  53. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今のお話、いろいろ給与勧告をやる機関としての立場、地位というものがあると思います。たとえばアメリカの人事委員会の場合は、もう少し内閣に寄っておる立場であります。従って、今のお話のような点が国家公務員法の中にあるのかどうかというお話でございますが、はっきり書いたものはございません。結局今までの慣習法といってもいい程度にできてきたルートじゃないかと私は思います。
  54. 木村公平

    木村(公)委員 わかりました。私の質問はこれでよろしゅうございます。
  55. 津雲國利

    津雲委員長 小川豊明君。
  56. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私も今の木村先生の質問に関連して少しくお尋ねをいたしたいのですが、まず私は、今、木村先生の御所論を聞いておって考えられることは、人事院内閣に所属している機関であるから、内閣の意向を尊重するのが当然ではないか、こういうような考え方に立っての御質問であったと思うのです。そこで、人事院というものがつくられる経緯からいって、今回人事院がいろいろ勧告されたことについても、労働組合あたりでは、これでは上に厚く下に薄いのだと言っておるし、経団連等では、こういう勧告をされたのでは、またわれわれ民間給与が上がるから困る。これは双方から批判があることは当然であると思うのですが、ただ、それよりも人事院がつくられる経緯から判断していくときに、人事院の持つ権威を逆にもっと高めなければならぬのではないか、私はこう考えるのです。というのは、労働三法が成立した経緯を考えれば当然わかってくるわけで、特に日本国憲法では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」ということが二十八条に規定されています。にもかかわらず、一方では、昭和二十三年七月二十二日に、マッカーサー書簡に基づいて公務員に対する団体交渉権を制限しております。さらに公務員の争議行為を禁止している。そういう事情のもとに公務員の採用、任用、給与等に関しては、国家行政組織法に基づいて設置される各省庁の機関とは別個に、公平立場に立つ機関として国家公務員法第三条によって人事院というものが設置された。こういう経緯で人事院が設置されたと考えておりますが、この点御見解を伺いたいと同時に、同法の四条並びに五条においては、人事院の最高組織としての人事官三人を認証官として任命しております。これらの人事官によって国家公務員の職階とか給与、任用等の基準が画一的に管理されることになっております。今回の公務員給与勧告の原因となった条文、すなわち、国家公務員法二十八条第二項並びに第六十四条によって毎年一回公務員俸給表が適当かどうかについて民間給与生計費の指数等を根拠として、俸給表の百分の五以上増減の必要ありと判断したときは、国会内閣に適当な勧告をしなければならない、こういう規定がされておって、勧告がなされたわけです。このように、人事院が設けられるまでの過去の歴史を無視し、国家公務員法の精神に反するような態度をもってこの給与勧告が無視されるということはあり得ないのではないか、それは道義的に批判さるべきではないかと思うのですが、この点について人事院のお考えをまず承ってみたいと思うのです。
  57. 神田五雄

    神田政府委員 人事院の成り立ちについては、マッカーサー書簡その他の経緯がある通りであります。  それから第二番目の問題でありますが……。
  58. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 ちょっと質問がくどくて御答弁しにくいかと思いますが、第一点は、人事院の設立される経緯が、私の記憶の範囲ではこういう経緯で人事院はつくられたのではないかということであり、第二番目は、従って、これは内閣に属してはいるけれども勧告等は内閣とは別個にされるべきであり、同時に、その勧告というものは、法律的にはその規定はありませんが、道義的に内閣は尊重しなければならぬのじゃないか、こういうことをお聞きしているわけです。
  59. 神田五雄

    神田政府委員 第二点でありますが、道義的という言葉は当たるかどうか知りませんが、私どもとしましては、勧告通り実行してもらいたい、それだけでございます。
  60. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私は、今、木村先生のお話を聞いていてお尋ねするわけなんですが、御答弁によると、勧告を実施しなければならない法律的な根拠はないんだ、こういう御質問に対して、あなた方もそれを肯定なさったのです。また、なるほど見ますと、勧告をそのまま実施しなければならない法律的な根拠はないようであります。しかし、こういう経緯のもとに、公務員の団結権あるいは争議行為というものは禁止せられているわけです。公務員の利益、立場を守るために人事院というものはつくられている。従って、人事院はそういう趣旨に基づいてあくまでも公正妥当な勧告をなされておることと私は思うのであります。従って、その勧告というものは、たとい法律の規定がなかろうとも、それを重んずることによって法を尊重する精神というものがそこから出てくるのじゃないか、こう思うのですが、今、総裁代行が、道義的という言葉は当たらないと思うが、勧告は重んずべきだと言ったのですが、道義的でないとするならば、それでは何によって勧告を重んじなければならないわけでしょうか。
  61. 吉岡惠一

    吉岡説明員 私からお答えしてなんでありますが、今お話しの、先ほどの木村委員とのお話の中で、勧告は尊重しなければならぬという法律の規定はないという結論のお話になりましたが、私は必ずしもそうは考えていないので、やはり勧告制度をつくりましてやっている以上は、勧告は尊重されるのが当然だと考えます。ただ、過去の実際の事例におきまして、勧告がその通り行なわれなかった事例は、これはございます。それに対しまして、私ども内閣並びに国会、ことに国権最高機関である国会決定をなさったことについては、やはりそれを尊重していきたいというつもりでおるわけでございます。
  62. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私は尊重したいと思うというようなことではなく、あなた方は人事院の仕事をなすっておられるのだから、われわれが虚心たんかい、しかも公平無私の立場でこういう勧告をした以上、その勧告というものは完全実施されることが最もわれわれの望ましいことであるという確信というものがない限り、もし、勧告してもそれはどうであってもいいんだ、われわれは勧告しさえすればいいんだというような態度でおありになるとすれば、人事院というもの自身の不要論さえ出てくる非常に重大な問題じゃないか、こう思うのであって、公務員は憲法に保障されている団結権、争議権も禁止せられているのです。ですから、それを何かによって守ってやらなかったならば、公務員の地位というものは安定しないと思うのです。それを守るのは、ただ一つあなた方人事院だと私は思うのです。従って、私は、人事院の持つ任務、権限というものは、非常に重大に考えているわけですが、そう考えているにもかかわらず、今、木村先生への御答弁では、あなた方自身、いささか人事院の持つ権限というものに対して、希薄ではないか、もっと確信を持ってしかるべきではないか、もっと確信を持ってしかるべきではないか、逆な意見を持つわけですが、御見解を伺いたいと思います。
  63. 神田五雄

    神田政府委員 仰せの通り人事院は確信を持ってこれはやっております。ただ、最終的決定は、これは国会決定することでありまして、これについては、やはりそれに従うのがわれわれとしては当然じゃないかと思っております。
  64. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 それは仰せられるまでもなく、あなた方は一つの権威を持ち、確信を持って勧告なさった。それをどうとるかということは、政府並びに国会意思であって、それに従わなければならぬということは、私もわかるのです。ただ、私のお聞きしたいことは、それは当然そうであるが、あなた方としては、自分の勧告したものに対する権威というものを考えて、国会並びに政府にこれの完全実施を強く望む態度というものがおありでなければならない。国会決定に対して、政府決定に対して、従わなければならぬことは、これは私は当然だと思います。けれども、あなた方はそういう勧告はどうでもいいという考え方で勧告するならば、勧告というものはむしろ非常に権威のないものになるわけです。こういう事情であるから、ぜひこの人事院勧告というものは完全実施してほしい、実施できないとするならば、その理由というものを明確に人事院に対して回答してもらわなければならないという態度がとられなければならぬと思うのですが、どうお考えなんでしょうか。ただ、勧告で、受けても受けなくても、勧告すればいいのだという態度であってはならぬと私は思うのですが、いかがでしょう。
  65. 神田五雄

    神田政府委員 決して私どもは、ただ勧告すればいいのだというふうな単純な考えではやっておりません。あくまでもあれを実現してほしいということは、国会等においてもそのつど申し上げております。決して私たちは、先ほど申し上げたように、どうでもいいという態度はとっておりません。
  66. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 もう一点お尋ねしますが、人事院勧告政府決定の変遷というのを見ますと、昭和三十三年の十一月から三十七年の八月まで数回勧告はされているわけですが、総計では十二回ですか、その中で勧告拒否されたのが一回、勧告を留保されたのが三回、それから勧告よりも低い形で引き上げられているのが三回ですか、それから、ここに勧告よりも高く実施されているのが一回あるのですが、どうなんですか、私の今申し上げたことはその通りなんですか。
  67. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今のお話、どうも私どもの調べもまだ十分突き合わせてみませんとわからないのでありますが、あとでもし資料が必要であれば届けたいと思います。
  68. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 こういうふうにせっかく御努力なすって勧告をなさっている。しかも、勧告した日時、それからその内容、これを実施した日時と内容がはなはだ異なっておる例が非常に多いのです。これはある程度やむを得ないところもあるかと思いますが、こういうことを続けて、あなた方の勧告に一体無理があるのか、それとも、私はあなた方の勧告政府が実施しなければならない任務があると思うのだが、政府がそれを実施し得ない事情があるのか、それとも政府の怠慢なのか、この点をあなた方は人事院として究明なさる必要があるのではないか、こういう点を明確になさったことがございますか。
  69. 神田五雄

    神田政府委員 その問題につきましては、常に検討し、最善の政策だと思ってやっております。
  70. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 ちょっと御答弁がわからない。常に検討して最善の政策だと思っておられる、最善の政策をとっておられるとおっしゃったのだが、ちょっとわからないのです。これは三十三年から十何回か勧告をして、ほとんどはその勧告拒否されたり留保されたり、勧告通りにいかなかったりということなのです。  そこで、さっき御答弁になりましたように、総力をあげて公正妥当な見地に立って、勧告案というものはつくられていくのだ。従って、この勧告案というものは、完全に実施されることが望ましいのだ、こういう御答弁があったわけです。そこで、せっかく御努力なすってこういう勧告をしながら、その勧告のほとんどが勧告通りにいっていることがないということならば、人事院としては、なぜわれわれの勧告というものがそう完全に実施されないのか、一体それは、あなた方として、われわれの勧告に無理があったのかどうだろうか、こういう御反省をなさることがあり得るだろう。また、政府の怠慢でやらなかったのか、やろうと思ってもできない事情があったからやれなかったのか、この点もあり得ると思うのです。そういうことを人事院としては、勧告した以上、その実施がなぜできなかったかということに対して、御検討なすったことがあるか、政府からその回答を求めたことがおありか、こういうことを私はお尋ねしておるわけです。
  71. 吉岡惠一

    吉岡説明員 今のお話は、われわれとしては、勧告が実施されなかった場合に、特に政府に対して、なぜ実施されなかったかという形式的な回答は求めてはおりません。しかしながら、それぞれの理由はわかることでございますから、私どもは検討して最善の勧告をすることに常に努力しております。
  72. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 それはおかしな話ですね。それは形式的じゃないでしょう。あなた方が勧告したものを、なぜ実施しなかったかということの政府の回答は、形式的じゃなくて、全く実質的なものです。その回答を求めないで、何か御答弁では、今わかっているからと言うか、そうなってくると、あなたの勧告とその実施については、せっかく努力して勧告しながら、それが実施されなくても、それについてはわかっているからというと、何か最後になってぼやけてきてヤミ取引みたいになる。この点を私は明確にすることによって、これに対する期待をしたり、あるいは失望したりする階層というものが出てきたりする。それをもっと明確にすることが、そういう疑義を解く大きな要素になるのではないか。これを形式的なものだといって放置しておくところに、私は人事院勧告というものが無視されても仕方がない、あるいは人事院が幾ら骨折って勧告しても、それは無視されるものだ、また、してもいいのだというような考え方というものを植え付けていくことになるのではないか、むしろそれは人事院そのものの存立に非常に重大なことではないかと思いますが、お考えどうですか。
  73. 神田五雄

    神田政府委員 これは結局は勧告制度というものの性格からきておると思うのであります。勧告は原則として必ずしもそのまま実行されないということはあり得る問題です。最終的にはこれは国会できめることになっておりますし、それに対してなぜ意見を言わぬかというお話でありますが、これはやはり勧告制度というものの限界がそこにあるのだということで御解釈願いたいと思います。
  74. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私は、意見をなぜ言わないのかというのではなくて、勧告を、国会あるいは政府当局がこうするといって勧告と異なったものをきめても、それは、決定する権限政府側にあるでしょうから、それに対して、あなた方はそれはいかぬということが言えないことは、これは勧告制度からして当然だと思います。思ってはおるが、自分の出した勧告がなぜ無視されたかということ、あるいはその実施されなかったということに対するあなた方の疑問なりを政府に対して回答を求める任務がおありになるのじゃないですか。そういう権限があるのかないのか、そういうことをなさった例があるのかないのか、そのことによって勧告が完全に実施されることになるだろうと思うのですが、そういうことをなさったことはありませんか。
  75. 吉岡惠一

    吉岡説明員 そういう回答を求める権限がないということではないのでございますが、ただ、勧告につきましては、内閣国会両方へ出すわけであります。内閣につきましては、あるいは勧告について回答を求めればあるいは返事がくるかもわかりませんが、等については求めるすべもない。結局私はそういうものは、結果は国会における論議でなされ、また、新聞紙上その他でもいろいろ議論がされますから、そこで大体のことはわかってくる問題ではないか、特に形式的にどういうことだからということでつき詰めて政府から聞くようなことはいたしておりません。
  76. 津雲國利

    津雲委員長 小川君、ちょっと申し上げますが、御承知のようにあなたの宮内庁関係の質疑はきょうになっておりますので、時間の関係がありますから、人事院関係の御質問はなるべく一つ御簡潔に願いたいと思います。
  77. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私は、今、委員長が言ったように、時間のこともあるし、この一点で終わろうと思って断わろうと思っておったのです。  あなた方が勧告したものに対して、自分で勧告した責任を持たなければならないわけです。勧告した以上は、勧告に対する責任を持たなければならない。責任を持つからには、それが拒否されたり、無視されたりした場合には、自分らの勧告が正しかったのか、正しくなかったのか、正しかったけれども、こういう事情でできなかったということを明確にすることは——今あなたは国会の論議は新聞紙上でやるだろうと言う。私はそういう筋合いのものでないと思う。あなた方は勧告する権限がある、任務がある、完全実施することが望ましいにもかかわらず、完全実施されなかった場合においては、自分らの勧告にあやまちがあったのか、情勢判断、いろいろな推移に対する判断にあやまちがあったのか、なし得ない別の事情があったのかということを人事院は明確にする必要がある、それが人事院勧告というものに権威を持たせるゆえんでないかと私は思う。にもかかわらず、あなたの方では、そういうことは形式的なことだ、それは国会論議を通じて、新聞等を通じて見ればわかることだと言うが、そういう態度では、今後人事院勧告は続けざまに無視されていくのではないか。人事院というものが、せっかくつくられて、しかも公務員の利益を守る唯一の機関であるというならば、もっとその点についての確信と権威とを持って、自分らの出した勧告に対して、それが実施されない場合には、どういう事情で実施されなかったのかということを、もっと明確に突き詰める必要が私はあると思います。これを今後おやりになるつもりかおやりにならないつもりか、ほうっておくつもりか、この点だけをお尋ねして私は質問を終わります。
  78. 神田五雄

    神田政府委員 ただいまのお話でございますが、やはりこれは勧告制度というものの限界がそこにあるということが一つの大きな原因だと思います。それで、私どもといたしましては、拒否されたり何かした場合には、いろいろ研究いたしまして、そして今後の勧告を行なうときの方向をきめるあるいは示唆としておるわけであります。
  79. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 そういう答弁では、私は納得しないのですが、私は、これで終わると言ったから、この点は終わりますが、そういうような勧告制度に問題があるんだというのでは、勧告制度をあなたの方で、これは改むべきだというくらいの意見があるべきだと思うのです。その点にわたると時間がたってあれでありますから、委員長との約束がありますから終わりますが、その点あなた方はもっと真剣にやってもらいたい。
  80. 津雲國利

    津雲委員長 関連質疑の通告があります。これを許します。勝澤芳雄君。
  81. 勝澤芳雄

    勝澤委員 人事院のあり方についていろいろ論議をされました。これはやはり働く人たちの権利を保護する立場からつくられたのでありますから、また、それが、所管としては内閣に所属している立場でやりにくい点もいろいろあると思うのですけれども、やはり基本的に、人事院というものがなぜできてきたかという歴史的な背景を十分お考えになって、お取り扱いになっていただきたいと思う。今、私が記憶すそ範囲内におきましては、人事院勧告が出されて勧告通り実施をされたということは、いまだかつて一度もなかったと思います。今、総裁代行が勧告通り実施してもらいたいという御要望を持たれていることはわかりますし、政府も最近は勧告を尊重するという立場になってきたことは大へん好ましいと思うのです。勧告通り実施してもらいたい、政府は尊重する、そこで、どこまで尊重するかということになるのですが、やはり勧告通り実施されたいという立場から考えるならば、政府が尊重する範囲にも問題があろうと思う。たとえば、今度の勧告なんかを見ましても、今やって、実際は五月から実施をせよ、こういう勧告の仕方をされているのですが、こういう点かからいきますと、勧告する瞬間において五月から実施をされるのが好ましいことは事実でしょうけれども、それが実施をされるという確信を持ってこの勧告をされているのですか、あるいは勧告をするという今までの論争の中の勧告という考え方によってのみ考えられておるのですか、その点どうなんでしょうか。
  82. 神田五雄

    神田政府委員 五月実施ということは、四月調査でありますから五月から必ずやってもらいたいという意向で勧告しておるわけであります。
  83. 勝澤芳雄

    勝澤委員 私は今までの、ここ二、三年の例を見ればおわかりになると思うのです。八月に勧告をしておるが、実際には十月になったり、十一月になったり翌年になったりしているわけです。そうすると、八月に勧告することができるならば、五月勧告で五月一日から実施をする、時期的にさかのぼって勧告することは絵にかいたぼたもちを国家公務員の人たちに与えるだけであって、実質的な効果は何もないじゃありませんか。そういうことを繰り返しておったら、人事院存在というものはますます国家公務員の人たちから浮き上がった存在になる。やはり憲法に保障されたものである以上、五月からやるのだったら五月に政治的といいますか、予算編成期に間に合う、こういうことにしなければいけないんじゃないだろうかと思う。今の政府は、八月に勧告をして五月にさかのぼってやるというような政府じゃないですから、せめて八月から実施をせよといってもしないでしょうから、やはりその辺のことはもう少し事務的といいますか、政治的といいますか、勧告を実施させたいという人事院考え方がもっと強く勧告の中ににじみ出なければいけないと思う。それを、自分で勧告というものをただ単に希望事項にあげてしまっておるように思うのですが、政府はようやくこのごろになって尊重するという態度になったのですから、もう一歩踏み出して、勧告を完全に実施する、こういう方向に指導していかなければいけないと思う。その点どうでしょうか。
  84. 神田五雄

    神田政府委員 ただいまのお話だと勧告の時期をずらせというお話ですか。
  85. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そういうことではないのです。八月に勧告しているが、五月にさかのぼってやりなさいというなら五月になぜ勧告しないのですか。あるいは予算編成期にそれが実際効果があるような勧告をなぜしないのでしょうか。今、八月に勧告しましたが、五月にさかのぼってやる政府だとあなたは思っていないでしょう。今の調子ですと八月にもやらないのですから。また、現実には、今まで大体ずらされてきたのですから、そうしていつも完全には実施をされずに、少しずつ割引されて実施されているのですから、それだったら、人事院勧告というものは、私は極端に言うならば、どうも尊重はされているけれども、まだ好ましくない状態だ、それならやはり完全に実施されるようにするにはどうしたらいいかという検討をこの際すべきじゃないか。それをここ三年か四年ぐらい同じことを繰り返しているように私は思うのです。その点をもう少し人事院人事院の存立の意味からいって考えるべきときに来ているのじゃないか、こういうことなのです。
  86. 神田五雄

    神田政府委員 非常に御親切なお話でございますが、ただ、勧告時期の変更ということは非常に困難なことなのです。とにかく半年にわたって調査、研究、分析をしなくてはなりませんし、そういう点になると、これは非常に問題でありますが、いずれ研究して……。
  87. 木村公平

    木村(公)委員 関連して……。さっきも小川委員から問題がありましたが、三十一年の七月十六日には人事院俸給制度の合理化に伴い六%程度給与改善を勧告したときに、国会はその勧告を上回って俸給制度の合理化に伴い約六・二%程度、〇・二%よけい上げているわけです。そういう事例もあるのですよ。そういう場合には、勧告通りに下げたらよかろうということだが、下げれば公務員諸君に不利益です。だからこれは国会決定の方がいいとおそらく諸君も言われると思うが、必ず値上げの場合以外にはないということを前提にすると、勧告通りやれるとおっしゃるが、時によっては勧告国会決定より下回ることがあるのだ。そうすると、そんな場合はおそらく全国の国家公務員諸君は、勧告を無視してでも国会できめてくれと言うに違いない。これはなかなかむずかしい問題だから、よほど言論を慎重にしてもらわないといけませんよ。これは御答弁要りません。
  88. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それは中身の問題なんです。上が厚くて下が薄いという問題、それは中身をやはり十分検討していただきたいと思います。  そこで私が要望しておきたいことは、勧告通り実施してもらうという立場で、いろいろなことを考えながら人事院勧告するわけですから、その勧告は、最近政府は尊重という形でやられてきたけれども、やはりまだ少しずつ割引されているわけですから、割引されないような勧告の仕方あるいは予算の時期、こういうものを考慮すべきじゃないだろうか。それが技術的、事務的に時期をずらすことは困難だと言われても、少しは勧告の時期というのが変わってきているわけですから、そういう点はやはり検討すべきじゃないだろうか。検討されるという御答弁もありましたので、一応その点を要望いたして私の質問を終わります。
  89. 津雲國利

    津雲委員長 人事院関係決算についての本日の質疑は、この程度にとどめます。     —————————————
  90. 津雲國利

    津雲委員長 次に、総理府所管宮内庁関係決算について審査を行ないます。  質疑の通告があります。これを許します。小川豊明君。
  91. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 それではごく簡単に質問しますが、皇室財産というものは、私自身もあまり詳しく触れたくないと思っているのですが、ただ、いろいろ問題になっている点もあるのです。そこで、皇室用の財産というものは、総額はちょっとわからないだろうと思いますが、どう運営、管理されているのか。そしてその管理、運営はどんな機構でなされているのか。これをまず第一にお尋ねしたいと思います。
  92. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室用財産の運営の方法並びに機構でございますが、皇室財産の管理は、宮内庁に管理部という部がございます。その宮内庁の管理部が管理の一応の責任部局であります。なお、その出先に、たとえていいますと、京都方面ですと、京都御所ですとか桂離宮とかいろいろありますが、さらに関西の方面を管理部長の指揮のもとに管理をする機関として、宮内庁の京都事務所というものがあって、これがやって参っておるわけであります。さらに、その個々のたとえば御陵とかそういうところになりますと、御陵にもまた陵墓監というのがおりまして、それが担当の部門を管理するというふうになりますが、全体の組織としての部局といいますと、管理部というところが責任の部局として、さらにその出先がずっとあって管理をしておるということでございます。
  93. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 そうすると、宮内庁のいわゆる皇室用財産ですから、建物もある、土地もある、いろいろの施設もあるだろう。そういういろいろな細密な管理をなすっているわけなんですが、全体としての土地面積はどれくらいあり、建坪はどれくらいあり、その他の施設ではどれくらいあり、それに対して管理に当たる方々の人員はどれくらいおありなんですか。
  94. 三井安弥

    ○三井説明員 総計で申し上げてみますが、平方メートルでお答えした方がいいのかもしれませんが、一応坪数でお答え申し上げます。  土地は、今お答えしましたように、東京で申しますと皇居とか赤坂御用地というようなものを初めとしてございます。それから西の方にも各地方に散在しておるのであります。土地の坪数で申し上げますと、樹林地などもみんな坪数になるものですから、だいぶ数字が大きくなるのでございますが、七百八十七万坪でございます。  それから、建物で申し上げますと、これも坪数で申し上げますが、三万九千坪でございます。  それから、管理の人員といたしましては、算定方法でいろいろに申し上げのを入れまして三百人ばかりおります。各地方にも、もちろん管理だけということではありませんで、いろいろ兼務しておるものですから、各地方に散在しておるものもございますので、今、管理だけというふうにしぼって簡単にはちょっと申し上げられませんが、たとえば葉山御用邸みたいなところを例にとりますと、平生いらっしゃらないときで本邸、付属邸合わせて四、五人くらいです。那須の御用邸なんかもそういうわけでございます。それで広いところには、すっかりへいができて厳重になっておるわけでもありませんので、いろいろ人がかなり自由に出入りする部分もありますので、そう完全に管理のできない面もあるかと思います。
  95. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 その土地の坪数、建物の坪数というものは、一カ所にあるわけではなくて、各地に散在してあるのですね。今お聞きすると、那須の御用邸あたりでも四人か五人だとすると、管理に手が届かないということはないですか。いらっしゃる、いらっしゃらないは別として、とにかくそれを管理するのに、そこに管理上の問題が出てきはしませんか。
  96. 三井安弥

    ○三井説明員 那須の御用邸の問題が今出ましたが、ほんとうに御用邸の建物とお庭を入れた部分はへいで囲まれておりまして、その中に人は自由に入らないことになっておりますので、平素ああいうところでもありますので、四、五人おれば、まあ一応事なきを得ております。平生のお掃除とか、あらしがあったときにいろいろ片づけるとか、その程度のことはできているわけであります。その他付属地がずっとございまして、ここは御承知のああいう観光の土地でございまして、樹林地が大部分でございます。相当人も自由に出入りしておりますけれども、たまにたばこの火の捨てたので山火事ということもございますけれども、地元民の御協力もありまして、大体事なきを得ておりますので、今、管理が全然届かないということではない状態にあります。
  97. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 今、御答弁の中に、那須の問題が出ましたので、私、今お聞きしてちょっと思い出したのですが、これは私の記憶違いかもしれませんけれども、那須の御用邸は、一部だろうと思うが、国有地に返還されたところがありますか。私はなぜこういうことを聞くかというと、いわゆる皇室用財産の中に旅館が建っているという話をちょっと聞いたので、これは国有財産かなんかに所管がえをしなければ、そういうことはまさかないだろうと思うのですけれども、かなり古くからそういうものが建っているんだ、かつては皇室用の土地であったということを聞いたのですが、今、那須の御答弁でちょっと思い出してお聞きするが、そういうことはありますか。
  98. 三井安弥

    ○三井説明員 那須の付属地の中に、ところどころ温泉がわいておりまして、その温泉を御用邸へ引っぱっておるわけでございますけれども、それの余分な分を、明治時代から貸し付けておるのがございまして、それが戦前は皇室財産だったわけでございますが、新憲法で皇室用財産全部が国有財産になったわけであります。御承知のように、御用邸自身も今日は国有地でございます。それで、今おっしゃったのは、多分いつか新聞かなんかに出たことだと思うのでございますけれども、大きな付属地の中に、そういう旅館のようなものがあるわけでございますから、大蔵省あたりも、それを、いずれ今、先生がおっしゃったように、そういうものならば、いっそはずして大蔵省に返して、払い下げるなり何なりしたらどうかというような話もございまましたけれども、何しろ大きなところで、そういう民地に払い下げますと、孕在地ができまして、それがまた非常に管理上不便なこともございますので、いろいろ行政管理庁や大蔵省なんかとも協議しまして、やはり全体の管理に支障ない範囲ならば、今まで通り一時使用——それが非常に営業的にはなやかになっては悪いかもしれませんが、大衆浴場として維持されて、しかも最小限の土地でいいものならば、従来通り維持されることもやむを得ないのじゃないかという関係者の御了解に達しているようなわけであります。(木村(公)委員「不法占拠だな」と呼ぶ)昔から正式に皇室財産時代に賃貸借でちゃんと貸してあるわけであります。それがずっと続いているわけであります。
  99. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 明治から続いたか、大正から続いたかわからぬが、私も何かで見たのですが、皇室の御用になっておる土地が、旅館に賃貸しておるということはどういうことですか。考え方としてそれは是正すべきではないか。賃貸というのだから料金を取っておるのでしょう。料金を取っておるならば、出ていけというわけにはいかぬでしょう。これはあなた方でなくて、明治からどんな関係でそういうことになったか知らぬが、私が管理、運営を最初にお伺いしたのは、——そういうことさえあり得る。あなたの方でも、好ましいことであると思っておるわけではないでしょう。仕方がないからやっておるんだろうと思う。それならば管理、運営という面にもっと万全を期さないと——たまたま何かに出たから記憶しておりますけれども、膨大な国有地が、いつ関係のない他人に、そういうふうに利用されていって、いつの間にかそれが既定事実とされていくならば、大へんなことになりはしないかと思いますが、そういうものの処理はどういうふうにお考えですか。
  100. 三井安弥

    ○三井説明員 ちょっと言葉が足りませんでしたが、今の那須のは、明治時代には賃貸借であったのでありますけれども、新憲法実施後国有財産になりましてからは、国有財産法によりまして、全体の管理にはそう非常な支障がない範囲は、一定の一時使用料を取って一時使用を許可してもいいという規定がありますので、それによって一年一年の更新で——明治時代からのことでもございますから、すぐ取り上げることも困難な事情にございまして、やっているわけでございます。
  101. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 それは、皇室用の財産ではなくて国有財産なんですか。国有財産のうちの皇室用財産じゃないですか。
  102. 三井安弥

    ○三井説明員 皇室用財産といいましても国有財産でございますが、その皇室財産のうちでございます。
  103. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 ですから、いわゆる皇室用の財産が、旅館に貸し付けられているということでしょう。皇室用財産だって国有地ですけれども、皇室用財産が旅館に貸し付けられておるとうことでしょう。それには間違いなでしょう。
  104. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この皇室用財産も国有財産のうちの一種であって、国有財産であるけれども、皇室の用に供する財産というので指定を受けて宮内庁が管理をしておる。その皇室用財産のうちでも、皇室用財産として使用するのに支障のない場合には、部分的に、一時的に他に貸してもいい、これは国有財産法にもあるわけであります。一部公園の用地とか、あるいは道路用敷地とか、そういうものに貸しておるところもあります。  今お話しになりました旅館の関係は、以前御料地であったころは——まだ那須の御用邸ができる前です。あの辺は帝室林野局が林野として管理をしておるところに温泉が出てきた。それを利用させてもらいたいというので、実際山林を管理するのに支障がないものですから、過去明治から来て現在に及んでおる。最近になって行政管理岸の方でいろいろ調べられて、この問題について再検討したらどうかというお話がございました。われわれの方でもその部分について——那須の山のずっと奥の方の山林のあるところでございます。ふだんあまり行かない、そこに旭温泉という温泉が出ております。その温泉の中で、旅館にも、今出ておる温泉のうちの四分の一くらいを温泉に使わせておる。そのほかは御用邸の方に引っぱってあるわけです。その湯元にあるわけです。御用邸でも御利用になっておる。前からずっとやってきておる人ですし、実際管理上も支障がないし、温泉も両方で利用すればそれもよろしいし、皇室用財産であっても、別に他の方の管理には支障がないし、皇室用財産をあまり閉鎖的に、一歩も人を入れないということは、現在の考え方からいってどうかと思う点もあります。それを払い下げたらどうかという話もあるのです。大蔵省の中に相談しましたら、広い山林の中にはさまっておる。そこだけを別の管理にするということはおもしろくない、大蔵省の普通財産というものがございます。普通財産にしますと、その管理は大蔵省が直接やることになるわけです。ちょっとの部分を大蔵省が管理の責任を持って、そこへ人をやって管理するというわけにはいかない。実際その附近全体を管理している宮内庁でやった方が便利なんです。だから、現在のままで、国有財産法でも、全体を管理するのに支障がなければ一時使用さしてもいいという規定があるから、そういうふうにしようというわけでそういうふうになっているわけです。これは旅館だから、何かここで金もうけしているようにお思いになるかもしれませんけれども一般大衆のレクリエーションの場所とも考えられますから、そう閉鎖的に考えるのもどうか、過去の沿革もあるしというので、そういうふうになっているわけであります。
  105. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 過去の沿革があるということは私は認めますよ。あなたは、閉鎖的になってはどうかとか、非常にその点ではものわかりのいいようなことを言いますが、宮内庁というのは、大体そんなところじゃないのでしょうがね。それを、その場合だけ宮内庁で自分の持ち地を旅館に貸してあるということは、おそらくはかにはないでしょう。やむを得ないからそうしているのでしょう。望ましいことだとあなたの方で思ってやっているわけじゃないでしょう。私はそのことをどうこう言っているのではなくて、私は、管理上の問題としてお聞きしているのですが、旅館が古くからやっているというが、湯を皇室の御用の方でも使うから、わしの方でも損はないんだ、湯はそこから出ているんだから、旅館が使わなくたって、あなたの方でまるまる使ったっていいんだ、そういうのは答弁にならない。そういうことが宮内庁の中で望ましいことがどうか。望ましいことならば、今後方々から、ここはたくさんあき地があるんだ、地所がなくて困るからお貸し願いたい、こういう申請があったら、あなたの方でお貸しするのかどうか、そういう問題が出てきます。だから、そういうことはしない方針だというならば、その問題も私はもっと妥当な形で解決すべきじゃないか、こう思うのです。  それからもう一つは、例の品川の東久邇さんのあれですが、これは裁判になっていますね。裁判になっているものは、その結果を待つのが一番いいと思っていますから、私はその点はあまり深く立ち入ろうとは思いませんが、この問題でただ一つ、これは週刊誌を見ただけで、従って、私もそれを全面的に信用してお聞きするわけではありませんが、宮内庁のあなたかもしくは長官かが、東久邇さんの土地の問題で、たびたびそういう要請があったのに対する回答というものが非常に誠意のない回答だから、やむを得ず訴訟を起こした、こういうことを言われています。そうすると、訴訟を起こした原因をつくったのは、宮内庁のあなたか長官かどちらかの発言が原因になっておるということです。そこで考えられるのは、さっき、あまり閉鎖的なことはしない方がいいと言われたが、あなたの方では、そういう点ではかなり閉鎖的なことをやっているんじゃないか。私は、東久邇さんの土地をやるとかやらないとか、そういうことを言っているのじゃない。問題は、東久邇さんは臣籍に降下されたといっても二重、三重の御姻戚なんですね。その方が国を相手取って、御料地をおれに陛下がくれたんだ、それをくれたのではないんだと言っているのは宮内庁の役人だからといって訴訟を起こした。そうしてまた、雑誌を見ると、東久邇さんの弁護士は、陛下を法廷に呼び出せるかどうか研究中だ、こういうことを言っているので、これは私はあなた方の責任としてかなり重大な問題だと思うのです。その点からも私は冒頭にお聞きしたいのは、管理しているところの管理の仕方に、かなりの疎漏の点があるのじゃないか、それでいて非常に形式にはこだわり過ぎているから事態が動かなくなってきているのじゃないか、こういうことを心配するのですが、いかがですか。
  106. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 高輪南町の東久邇さんの今お住みになっている御用邸の関係は、今ちょうど裁判になっているものですから、いろいろ慎重にお答えしなければならぬ点もございますが、お尋ねの点は、週刊新潮か何かに書いてあったと思います。私も拝見いたしましたが、宮内庁が非常に冷たい、だからこういうふうなことをするのだというふうな記事があったのを拝見いたしました。宮内庁としては、私は直接申し上げに行ったことはありませんけれども、宇佐美長官は直接会ってお話ししているし、今ここにいる管理部長も直接お話ししていることがございます。その場合において、東久邇さんは、昭和三十一、二年くらいまでは、あそこの土地を縁故払い下げをしてほしいというような願い出をしておられたのです。その当時も、大蔵省の方とわれわれの方もいろいろ相談をいたしまして、縁故払い下げができるだろうか、縁故払い下げをする手続といいますと、皇室用財産になっておりますから、皇室用財産を解除して、そして大蔵省所管の普通財産になる。そこで大蔵省が普通財産として縁故がある人に随意契約で縁故払い下げをするということになるのですが、これは大蔵省の見解としては、縁故払い下げの縁故の中へは入らない。といいますのは、以前、終戦前に東久邇さんがお住みになっておりましたのは麻布市兵衛町ですが、そのお屋敷に関して縁故払い下げの願い出があってしておる。その前縁故払い下げは済んでいるのだ。今の場合、お入りになっているのは、戦後の、特に先日おなくなりになられました元の照宮様、東久邇さんのお子さんの御夫妻も、お住居がなくて非常にお困りでそれであそこへお入りになることになった。その当時は、占領下ですから、占領軍は、皇室用財産は凍結しろとむずかしいことを言っていたが、お子さんがお入りになるならよかろうということで、当分の間ということでお入りになった。その後にお父さんの東久邇さんもお入りになったわけです。そのお届けがあってそれを認めておりますから、結局その承認の上でお入りになった。そのあとに、あのところが新しい憲法によって、皇室財産はすべて国有とすというような条文によって国有財産になったわけですが、その後も引き続きお住みになっておったのであります。大蔵省の見解では、どうも一時的にお入りになることを認めたことであって、これはずっと前から住んでおられて、縁故払い下げということを言われるのとちょっと違う、だから、縁故払い下げということに入らないということを言っておられた。そういうようなことも申し上げたのでございますけれども、そういうのも冷たいとお考えになったかもしれませんが、その後主張をお変えになりまして、あそこの土地は終戦後陛下からいただいたものだというふうに主張をお変えになってきたわけです。自分のものだというふうな主張に変えておいでになった。その前には、あそこの御用邸なんかを管理部で管理しておりまして、修繕なんかしておったのですが、その主張をお変えになって、あとからは修繕なんかに行ってもお断わりになるわけです。これは、いろいろ主張される場合に、修繕してもらいますと、自分のものだという主張が弱くなりますから……。非常に荒れていますから、われわれもお気の毒なんですが、特にお断わりになるものだから非常に困りまして、昨年の十一月ごろでしたか、雨が非常に漏るものですから直してほしいということを、そちらの方の世話している人から宮内庁に言ってきましたから、お気持がお変わりになったから直してあげようというので、木のワクを組みましていよいよ直そうとしたときに、友人から、直してもらってはいかぬと言われたから、やめてくれと言って、またワクをはずしたこともあります。また、やれお粗末な住居だといって非難をわれわれ受けたこともありますけれども、お断わりになるものですから、どうもそれができないということで、それも非常に冷たいという例の中に入るのかもしれませんが、けんかするわけにもいきませんし、そう言われれば無理にもできませんものですから……。そういうこともございます。  なお、あの土地は確かにいただいたのだ、宮内庁に何か証拠があるはずだとおっしゃるものですから、一生懸命探しましたけれども、その証拠がないわけです。そして下賜願を出したとおっしゃるのですが、その書面というのは下賜願ではない、下賜願を含んでおりますけれども、ちょうど終戦の翌年の五月ですか、総司令部から、皇室の御料地は皇族に貸してはいけないというきびしい指令がきたものですから、その際に、各宮家でどういうふうに使っておられるかということを相談したわけです。東久邇さんも引き続きあそこにおりたいということで、下賜して下さるか、または何らかの方法で下付——下付というのは縁故払い下げですが、何らかの方法で下付を願いたいという書面が出ております。そのことをおっしゃっておるわけで、それはありますけれども、しかし、これは下賜だけではないので、両方含んでおる。それに対して、それじゃどうしますという書面はいっていないわけです。書面がいっていないのは、下賜または何らかの方法で下付——下賜は、その当時はGHQの方から、皇室財産凍結令が出ておりますからできないわけです。何らかの方法で下付というのは、随意契約の方で払い下げをする、この方が問題として残ったわけですが、しかしこの方も、先ほど申したように、実際問題としてそれを扱う大蔵省の見解は、どうしてもむずかしいというので、そのままになっておる。だから、お答えをしていないのも、どちらも、下賜では実際問題としてできない。何らかの方法で下付というのも、縁故払い下げの方の目安がつかないと、何とも申し上げかねるわけですから、そういうような事情も、宇佐美長官も高輪の御用邸に行かれていろいろ話をされたり、使いの者が長官のところに見えたり、私も会ったこともありますが、いろいろ見えておりまして、最近のある時期においては、宮内庁のこともよくわかったというようなお電話が、何か長官のところへあったりしておったのですが、それからしばらくしてまたああいうふうに急にお変わりになったのですが、いろいろあそこの土地は、場所としてもああいう繁華な土地でありますし、区画にしても相当の区画でありますし、これらについては、いろいろ目をつけておる方もあるかと思います。そういういろんな方のいろいろ横からの話に動かされておられるのではないかと、われわれは想像しております。
  107. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 これは私はこう思うのです。東久邇さんがあそこに黙って住んでおられれば、あなたの方も別に文句はなかった。それがどうしても払い下げなければならないということは、自分の名義にしなければならないということでしょう。住んでおるだけの必要があるものなら、今まで住んでいたのですから、何もあなたの方で文句は言わないであろうと思う。それを自分の名義にしなければならないところにこういう問題が起こってきたわけで、あなたがおっしゃったように、これには場所が場所ですしするから、いろいろ利権がからんできて、あなたの立場で、御自分の名義にしようと思えばできるということから、こういう問題が起こったのではないかと想像するのです。そういうことで、遺憾ながら訴訟になってしまったのですから、それできまりをつける以外にないと思うのですが、私の言いたいことは、何といっても育ちが育ちでしょう。ですから往々にして人に利用されたり、だまされたりすることがありがちなんですね。身分のある人が、そういうことで、結果としては皇室の権威を損ずることになる。この点が僕は遺憾だと思うのです。ですから、こういう点を、今言われたように、大蔵省がそう言うから、何がそう言うからと言われるが、それは那須の話とはてんで違った話になるので、あなたの方はその点では非常に窮屈に考えておられる。それだけの土地を、もしおやりになるならやる方法は合理的にあったと思うのです。初めからやるつもりはなかった、こう考えるほかないのですね。それで御本人は、一方、利権屋その他から、これはあなたが申し出ればもらえるだろうから、やった方がいいと言われると、ああいう方ですから、案外世の中というものを甘く見ておられるから、じゃやろうということで、そうなるんじゃないかと思う。  そこで、最後に私が言いたいのは、こうなった以上、これは一般は、やはり最後はうやむやにきまってしまうのではないか、こういう見方をしておる人が多い。そこで、事皇室だからそういう問題をうやむやに解決したのだということにならないように、あくまでも、どう解決なさろうと、それは国民が納得するように、筋の立った解決をなさらないといかないのじゃないか、こう思うので、何か週刊誌等を見ると、最後はうやむやに解決してしまうのではないか——あなたの方も困った困ったと言っておるのだから、むりやりに解決されるのではないか。そういうことをせずに、やはり筋を立てて解決しておやりになるならいいのですけれども、その点で利権屋に乗ぜられることのないように、宮内庁としてこの問題が訴訟になって——ならなければよかったのですが、なったのですから、それをうやむやに解決して、あとで世上の誤解を受けることのないよう、解決方法をはっきりさせなければならないと思うのですが、お考えはどうですか。
  108. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 今おっしゃるようなことでいくべきだと思っております。やはり筋道は立てていかなければならない。しかし、今訴訟になっておりますから、その方はそれとして、これは普通のやり方で進んでいかなければいけませんけれども、ただ、訴訟一本ということも、これも必ずしも感心しない。いろいろの方等とも相談いたしておりまして、なるほどといういい解決をしたいと思っておりますけれども、しかし、それは結局あの土地をそれでは賜わったことにするのか、先方の主張を入れるのか、そのことは、現在の法制上絶対に不可能でありますので、それ以外のことでやはりあまり冷たくない方法で、納得のいく方法で解決していきたいと思っております。
  109. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 昔は綸言汗のごとしという言葉があったのですが、ただ、安易な解決というか、やはり、陛下はやると言ったのだろう、忘れていたのだろう、こう解釈される。ですから、この点では陛下がそういう覚えはないのだということ、残っておる証拠もないのだということを、あなた方の主張として私は聞いておるのです。従って、その主張は立てなければならないということと、一族としてそれに対する解決はどうするかということは別として立てなければならないと私は考えるのです。  こういう問題は那須にもある。今度身近に起こっている。それから、私は郷里が千葉県なので、しょっちゅう通るわけですが、三里塚の御料牧場がありますね。これはここで批判するあれでもないが、私は、見ていると大へんな欠損をして経営しておられるとしか見られないのだが、こういう経営の仕方も何かもっと改めたならばつじつまの合う経営の仕方があるのじゃないかと思うのです。だんだん減ってきていることだし、この問題はあまり触れたくないと思っていたが、通ってみると大へんな損害でやっているだろうと思わざるを得ないのですが、ああいうものに対する運営の方法、管理の方法というものも、管理部長さんがおられるのですから、私は十分考えなければならぬのじゃないか、念のために聞きます。あれは非常に欠損でしょう。違いますか。
  110. 三井安弥

    ○三井説明員 御指摘の通り、収支の点の数字を見ますと、やはり千何百万円くらいの赤字になっておるわけであります。御承知のように、あの牧場は、以前には、旧皇室財産時代には、競馬馬サラブレッドの産出を目標にしまして相当の黒字だったわけであります。最近はサラブレッドということでなく、皇室用の乗馬、それから儀式に使います馬車を引く競馬ですね、そういう方面にずっと転換して参っております。それから馬、牛、豚、羊、鶏という工合に——ほとんど今、日本ではああいう総合的な牧場がなくなってきたわけでありまして、総合牧場のモデルとして存置する、それから、外賓の接待もそこでやるということが目的になっておりますので、御指摘の収支状況は、何とかしてとんとんくらいに私どもはいきたいと心がけておるのでございますけれども、やはり戦争から終戦後のあのブランクの時代に、建物がずいぶん腐朽いたしまして、今ちょうどその寿命がきましたのと、それから大農機具なんかもすっと古くなりまして、使用に耐えなくなったものを今買いかえていただいておるものですから、ちょっとその辺の予算もふくれ上がっておるわけであります。もう少したちますと、営繕費とか農機具を買うということも幾らか少なくなります。御指摘の点もありますので、私どもももう少し努力しまして赤字の線ば狭めたいと思っております。先ほど申し上げたほかにも、その他こちらでいろいろの儀式やら何やらあります場合には、こちらの馬や馬車で足りないものですから、向こうから人を応援してもらったり、馬を持ってきたり、数字に出ない効用もあるものでございますから、御批判は十分受け入れますが、もうしばらく……。
  111. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 そんなに批判しているわけじゃないのです。ただ、大へんな赤字を出してやっているだろう、天皇さんだって、かなり苦しい予算でやっておられるわけで、そんなに赤字を出さないでやられることがいいんじゃないかと思って見ているのですが、あれは今あなたのおっしゃった大農機具がどうだじゃないのです。これは結局は今のような運営を続けていくならば、農機具を新しく入れられようと、どうだろうと、あれは年がら年じゅう赤字を出さざるを得ないような格好になってくる。今お聞きしてわかったのは、いろいろな儀式に使ったり何かする馬を生産している——これはそうでしょう。そろばんに合わないことを初めからやらざるを得なくてやっているのだから、これは仕方がない。  これは一例として申し上げたので、膨大な土地の中には、そういう赤字を出さざるを得ないような経営をしておるものもあるんじゃないか。さらには管理の面については、今の品川の東久邇さんの問題のように、あるいは那須の宿屋の問題のような問題がほかにも出ているんじゃないですか。そういうことをなからしめるように、一つ十分な配慮を願いたいということが、私の言わんとするところです。  質問を終わります。
  112. 津雲國利

    津雲委員長 宮内庁関係決算についての本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会