○帆足
委員 ただいままで
日韓会談につきましていろいろの御議論を承りましたが、私は、
外交というものは、双方において、よき思い、よき行ないが裏づけになっていなければ、なかなか急ごしらえでは困難なことであろうと思っております。
日本と
韓国の間では、よき思い、よき行ないが双方ともに少なかったように思うのです。どこの国に対してもそうでありますが、たとえば朝鮮人民
民主主義共和国に対しましても、私
どもはやはり、よき思い、よき行ないをもって努力するならば、また将来の
外交上
日本の国益に寄与するところあらんと、
外交委員として
考えておるわけであります。幸いにして与党の諸君もその趣旨を御了解下さいまして、朝鮮人帰国のことにつきましては、やや困難はありますけれ
ども、そのつど円満な
解決を見、大きな実績を見つつありますことは、御同慶の至りでありまして、当初この問題が取り上げられましたときに、
内閣調査室あたりの諸公は、まあ三千人ぐらい朝鮮に帰ったらよほど事業としてはスムーズにいった方ではあるまいかというお話もあり、また、当
委員会におきましても、三万人をこえたら山本君、帆足君にもごちそうしてあげようというような
委員長並びに同僚諸君の御激励の言葉もあったのですが、まだごちそうをしていただきませんうちに頂くも八万人に達しました。平時における八万人の人の移動ということは、やはり歴史上大きな仕事でありまして、これに御
協力下さったそれぞれ
関係の方々、また、特に
政府当局の現場の方々の御理解と御苦労に深く感謝する次第でございます。
ただいまちょっと起こっておる問題は、コレラが流行いたしました。ちょうど私が中学一年のころ、朝鮮の平壌でコレラの大流行がありまして、惨たんたる風景でありましたことを記憶しております。そのために、コレラに対しては、私
どもが
考える以上に朝鮮の諸君は敏感であるようでございまして、波打ちぎわ作戦どころか、コレラの報道を聞いただけで早くも予防措置を講じておるというような状況で、そのため、ただいま赤十字センターで約百九十数名の帰国朝鮮人の諸君が
カン詰生活になっておる状況でございます。こういうことを思いますと、一部の
政府当局の人がお
考えになったように、朝鮮人の帰国も一段落ついたから旅館な
ども適当なところに泊まればよかろうなどという御議論では、たとえばこういうコレラの問題なんかがあったときに、旅館から追い出しを食ったら路頭に迷うわけであります。幸いにして厚生省当局の御苦労によりまして赤十字センターという人道的宿舎がありまして、そこで行き届いた人道的待遇がなされておりますことは、まことに時宜を得たものであると、私は一そう痛感する次第でございます。
ところで、この宿舎は大体三泊四日滞留ぐらいの見当でできておる諸設備でございますので、こうして滞留時間が長くなって参りますると、自然いろいろ支障が起こりまして、このことはすでに前回インフルエンザ流行のときにもあったことでございますから厚生省当局では御経験のことでございましょうけれ
ども、実情を視察して参りました私
どもの代表から注意事項を申して参っておりますので、これを御参考までに差し上げました次第でございます。
その中で、食事につきまして、私は前のときも御注意申し上げたのですけれ
ども、朝鮮と
日本との
関係は長い歴史の宿命
関係にありまして、
日本におる
在日朝鮮人の諸君は、とにかく歴史的事実としては流離の民として歴史のしわ寄せの中で非常な苦労をしておる民族であることは皆様御承知の
通りであります。私
どもは自国
国民のことに追われて隣邦の友を遇することが十分にできていない状況でありますから、できるだけのことを
一つしていただきたい。そういう気持が、
請求権の問題とか領海問題において
両国の間に不幸なる衝突が起こるというようなことを防ぐ、また、自然な人情としてそういうことを避ける
一つのよすがにもなるわけでございますから、わずかばかりの金額を惜しんで、別れるに臨んで朝鮮の友に悪い感情をそれ以上残すようなことのないように、一そう親切な措置を私はお願いしたいと思うのでございます。これは
国民の気持だと思うのです。今困っておりますのは、子供連れの者が非常に多いものですから、食事で米が悪くて困っておるのです。私はこれは外米の配給と思っておりましたが、近ごろは
日本米に振りかえておるということです。越後は米どころでありまして、新潟の米はまずいはずはないのでございますけれ
ども、帰っていく朝鮮の人たちにせめてうまい地元の越後米でも差し上げて、そして、よい思い出、最後の赤十字センターの
日本の米はなかなかおいしかったというふうにでもしてあげたらどうか。金額から言っても数量から言っても大したことはございませんから、
一つもう一度お調べ下さいまして、おいしい内地米に切りかえていただいたらいかがでしょうか。
それから、野菜類が不足して、副食物も不足しておると申しております。ただいま幾らの予算かと聞いてみますと、一日、大人百五十円、子供百十円。三日滞在のときならそれでよかろうと思いますけれ
ども、こう滞在期間が長くなりますと、食事だけがただ
一つの楽しみということにもなりますので、この前のインフルエンザのときのことも考慮いたしまして、当時は三百人からでありましたけれ
ども、今度はわずか二百名のお客様でありますから、
一つ格別の御配慮を願いたいと思います。
それから、なま水を飲んでおるようでございますが、これも麦茶くらいに切りかえていただいた方がよくはなかろうか。入浴は従来一日置きと記憶しておりますけれ
ども、このような暑さで、そして毎日退屈な生活が続くわけですから、毎日入浴したいという申し出が非常に強いのでございます。これは私は不可能なことであるまいと存じますから、この暑さを思いますと、入浴はまことにすがすがしい大和風の習慣でありますから、これもよいことであるまいかと思います。
それから、センターのまわりが御承知のように草ぼうぼうの場所でありますから、長く滞在することになりますと、蚊に刺される、ブヨに刺されるということになりますので、DDTとか適当な薬の散布な
どもしていただいたらどうであろうか。それから、宿舎の換気扇が故障しておって困る、また、騒音が激しいということも言っておりますから、特に御留意願いたい。
それから、診療所の問題がいつも問題になるのですが、三泊の予定で東京から看護婦さんなりお医者さんが見えますが、まだやはり朝鮮の友に対する一種の偏見があるのでしょうか、また、臨時ですから、つい暑さのために不親切になるのでしょうが、必ずしも十分な感謝の言葉が聞けないような状況でございます。従いまして、病気のときなど、心持も弱くなっておりますときはだれしもそうです。今は外科のお医者さんが来て内科のことをやっておる。一人だけです。しかし、大部分は腹痛などの内科
関係だそうでございますが、これも御考慮下さいまして、
一つ親切な看護婦さんとお医者さんを御配置下さいますようお願いいたします。
それから、最後に、紙が不足しておるようにも聞いております。こういうことも小さなことですが、中には多少の小づかいを持っておる人もおりますけれ
ども、ほとんど一文なしの、赤貧洗うがごとく、生活保護を受けておったような貧しい人たちも相当数おりますから、その人たちはきょうのちり紙に困っておるということも聞きました。私
どもも有志から少し醵金を集めて見舞いをいたそうと存じておりますけれ
ども、すべてが必ずしも裕福な人でございませんから、そういう
事情も御賢察の上、適切な御配慮をお願いする次第でございます。
厚生省当局の地元のセンターの方々は、お目にかかりましても大へん理解が厚く、仕事にもなれておりまして、よくして下さっておることは、平素朝鮮の諸君も感謝いたしております。私
どももその点感謝いたしておりますが、どうかそれらの点もお取り上げ下さいまして、こういう小さなことでありますが、世界のどこの国に対しても、よき思い、よき行ないをもって進むということが、やがて世界平和の源にもなるわけでありますし、また、私は、
アジア局長の、予算上の措置でやはり窮屈で大したこともできないがと言われることもよく理解しておりますけれ
ども、朝鮮と
日本との過去の、どちらかといえば悲しみの方が多かったような歴史を振り返ってみますると、この帰国する諸君に対する援助費のごときは幾らの金額でもありません。そういうことにおいて発露された
日本国民の友情や
政府の手厚い理解というものが、やがて将来
外交交渉の問題などが起きましたときによい
関係をつくり、またよいムードをつくるいしずえになる次第でございまして、人は平素の行ない、平素の思いがいかに大切であるかということを十分お
考え下さいますようにお願いする次第でございます。帰国
協力会という機関もありまして、与党、野党の別なく一緒に相談いたしておりますが、これは与党の皆さんもそういう心持とそういうことには御賛成も得ておることでございますから、どうかよろしくお願いをいたします。