○
福田参考人 私、
国際観光旅館連盟の
福田でございます。
本日は、
観光施設に関する諸問題ということでございますけれ
ども、御
承知のように、
旅館が
外人客を
対象として営業の政策を取り上げてきたというのは戦後のことでございまして、戦前まではあまり
外人客を
対象とはしなかった。そういう点で、
施設という面よりも、むしろ私
どもの
立場から参りますと、
旅館へ来た
外客をいかに接遇するかということの方が、従来大きな問題であったわけでございます。
外人客を
対象として
国際観光旅館連盟が発足いたしましたのが、
昭和二十三年十二月でございますので、ちょうど十四年になるわけでございます。その間、
運輸省観光局の御尽力、御指導によって、
日本座敷の
外人向けの改造その他、いわゆる
施設というものの根本的な
考え方については、大体
一つの線ができたと思います。また、事実十年間を経まして、まあこれならば
外人の方が見えてもそう不自由は感ぜられないだろうというふうな
施設の面までは参ったと思います。その第一回のテスト・ケースと申しますか、その第一回の大きな会合が昨年の
ロータリーの大会でございまして、このときは、われわれとしても非常に自重といいますか、
外人客に対する、特に大勢の
外人客を扱う第一回の試みでもありましたので、あまり手を広げずに、できる範囲のことで十分にやりたいという
考え方から、昨年の実績から申しまけと、約四百名の
外人の方が、平均滞在日数五・三日ぐらいだったと思いますが、そういう実績によって、
日本旅館というものが、いわゆる
ホテルとは違った
宿泊施設だという印象を非常に強く与えたことは、御
承知の通りでございます。これによって私
どもとしては、現在の
施設状況で
日本座敷を
外人に使用するということは、決して間違っておらない、むしろ中に見えた
外人の方の御
意見としては、せっかく
日本へ来た以上は、
日本の家庭に最も近い
日本旅館に泊まるべきだと思う、自分は、そういう意味において多少の不便はあるけれ
ども、
日本滞在中は全部
日本旅館で通すのだというふうな御
意見をはっきりおっしゃっておられる
外人客の方もおられました。そういった意味において、私
どもとしては、
ホテルとは全然別の
考え方——まあ発足当時は、御
承知のように
ホテルも
進駐軍に取られ、いわゆる一般
外人客の
宿泊施設というものが非常に不足しておりましたので、発足当時の
考え方といたしましては、
旅館は
ホテルの代用という意味でこれができたのでございますけれ
ども、昨年の
ロータリーの経験から考えまして、代用ではなくて、
日本独自の
宿泊施設だという
考え方に変わって参ったわけでございます。もちろん、その軒数は
全国で九百軒、今度の
オリンピック宿泊に出す地区としまして、
東京、横浜、
箱根、
熱海、その辺まで入れましても、百十軒余りでございます。従って、いわゆる一般的な
考え方の
旅館、つまり私
どもの連盟九百軒のほかに、きょうもお見えいただいておりますが、
日本観光旅館連盟というのがございます。これはいわゆる
外客を
宿泊せしめることを主たる目的とするのではなくて、いわゆる国内客の
宿泊が主体でありますが、これが
全国で約六千軒ございます。
東京都内だけでも三百軒近い会員がございます。ですから、そういった数から申しますと、非常に比率は少なうございますけれ
ども、われわれとしては、少ない
立場であっても、一応来た
外客に対しては満足していただこうという
考え方を主体にして参ったわけでございます。従って、昨年の
ロータリーもそうでございましたし、一九六四年に行なわれる
オリンピックの
外客宿泊についても、あまり無理なキャパシティの増強ははかる必要はない。それはそれとして
ホテルなりその他の
施設におまかせして、われわれとしてはできるだけの
室数を出していただくけれ
ども、しかし、経営者の
考え方によっては、必ずしも全面的に協力するとは限りません、中には
外客のために
部屋を出すという
考え方に非常に消極的な方もございますけれ
ども、そういった方に対しても、あまり強制的には出していただいておりません。しかし、
一つの例として申し上げますと、
東京から伊東までの間約百十軒の
旅館のうち、御
承知かと存じますが、
政府登録
旅館については八割、それからわれわれ一般会員については一応六割の客室を出していただくようにお願いしたわけでございます。その結果が、客
室数二千百十一というものが
オリンピックに提供されることになったのでございます。これとても、われわれとしては決して強制したわけではございません。しかし、われわれとしてはできるだけ出していただくという
考え方を
皆さんに徹底した結果が、こういう数字になったわけでございます。
それから、先ほど
近藤さんから、ことしに入って
飲食税の
関係か、あるいはその他の
関係も多少はございましょうけれ
ども、私
どもも
飲食税の
関係ではないかと思いますが、
ホテルにおいてすら若干の減少を来たしておるというお話がございましたが、これが
旅館に参りますと、若干どころではないわけでございます。昨年に比べますと、非常に減っております。はなはだしい月においては、半減しておる月もあります。というのは、結局一般
外客の観念としては、一応
ホテルという
考え方になるのは当然でございまして、まあ
ホテルが
相当込んでいるから
旅館へ行こうという方もおったのが、
ホテルがすいておれば、
旅館はやめて
ホテルへ行こうかという方が多くなる、しわ寄せが
旅館へ全部集まってくるというような格好ではないかと思いますが、ことしに入っての
外客の減少は、
ホテルにおけるよりも
旅館における方が非常に多いように思っております。これはこまかい数字を調べたわけではございませんが、まだ集計されておりませんからわかりませんが、大体上半期の動きから見ても、減少度が
旅館においてははなはだしい、こういうふうに思っております。それでそういった
関係で、通常の
外客に対する
宿泊施設の増強という問題については、われわれの
考え方としては、先ほ
ども申し上げましたように、それほど積極的ではございません。しかし、たとえば今度の
オリンピックに対して七千も八千も
部屋が足りないというような場合については、これをどうするかということについて、
旅館の
立場から、これは連盟としての
考え方でもございませんし、あるいは
日本観光旅館連盟の方と御相談したわけでもございませんが、私の
一つの
考え方としては、たとえば先ほど申し上げました六千軒の
日本観光旅館連盟の会員の
方々の中でも、特にハイクラスと言っては語弊がありますが、やや
外人を扱ってもよろしいという
意欲のあるお宅も
相当ございます。そういう
方々が、この際何らか
施設の改良を行なって、
外人の方も扱ってみたいという
考え方になっておるのではありますが、御
承知のように、
外客のみならず、
オリンピック当時においては、国内旅客の問題も、これは現在何ら検討はされておりませんけれ
ども、大へん大きな問題だと思います。従って、黙っておっても
日本国内の旅客で一ぱいになることは間違いない。従って、ざっくばらんに申し上げて、何も好んでむずかしい問題にぶつからなくてもいいじゃないかという
考え方の経営者も、
相当おられると思います。しかし、一方、この際せっかくいいチャンスだから、
施設を改良して、いわゆる
政府登録の
旅館にまで持っていきたいという
意欲の経営者も、
相当ございます。しかし、これをどうするかということになりますと、現在そういった
旅館に対して、まずさしあたって
金融の道として開かれておりますのは、中小企業
金融公庫のお金でございますが、これは昨年われわれに対しては多少増額
——二千万までの増額になっておりますが、
日本観光旅館連盟の
方々の場合は、一千万円で押えられておるのではないかと思います。しかも、これが九分四厘の
利率でございます。そうしますと、こういった
程度の
融資では、改良してまでという条件にはならないのではないか。昔の不動産銀行のように、四分ないし五分
程度のしかも二十年くらいの非常に有利な
金融の道が開ければ、そういった
方々もここで思い切って改造をしようというふうな
考え方に徹するのではなかろうか。そうしますと、現在五千名ないし七千名の
宿泊容量が不足しておるという問題も、かりに五億の金をそういった条件で貸し出すということにしますと、一
部屋五十万の改造費用を充当いたしましても、千室の
部屋ができるわけであります。それからもし三十万で切り上げるとすれば、千五百室の客室ができるというふうなことで、いわゆる
外客向けのキャパシティの増強という問題は、金の出どころさえあれば、必ずしも不可能なことではないのではないか、こういうふうに思っております。また、これは考えようによっては、先日もある会合でちょっと冗談話に申し上げたのですが、何もこういった金を、
政府だとか都にばかり依存する
考え方をやめて、たとえば大企業の旅行あっせん業者が、今
部屋がないから困るというお話だけれ
ども、もし一社が一千万の金を出して
一つの
旅館を買い占めしたらどうか
——買い占めというわけじゃないですが、その
オリンピック期間中独占的に使用する。一千万で五十万の改造資金を出せば、二十室がそのエージェントの自由になる。そういう
考え方も必ずしもできないことはないのではないか、こういうふうな
考え方を私
どもとしてはしております。しかし、われわれ
国際観光旅館連盟の
立場から申しまして、必ずしもそういった無理な
——大へん飛躍いたしますが、実はことし都内で開発の
融資をお願いして、それがうまくいかなかったために
オリンピックに
部屋が間に合わないというのが、
部屋数にいたしまして約六十室ございます。これはことし提出した都内のわれわれメンバーの中で、規模が小さいとかいろいろな理由があったのだろうと思いますが、開発の
融資がだめになった例があります。ですから、われわれの範囲においても、そういったものがスムーズにいけば、自然増的な増加は当然考えられるわけでございますが、それはそれといたしまして、私
どもとしては、設備
受け入れキャパシティを無理に増強するということよりも、この際われわれとして考えるべきことは、つまり先ほ
ども申し上げましたように、
旅館というものの特異性が、いわゆる一般
外客にはなじんでおらない。従って、
旅館へ泊るということに対して非常に不安の念を抱いている面はあるのではなかろうか。たとえばわれわれがメキシコへ行った場合に
——アメリカは別ですが、メキシコへ行った場合には、メキシコ人の
ホテル、純粋のメキシコ風の
ホテル——そういった形のものはあまり見かけませんが、そういったところに泊るよりは、やはり
アメリカ風の
ホテルへ泊ろう、これは人情として当然だと思います。しかし、一度泊ってみるとということによって、その
日本へ見えた
外客の方に
日本旅館を認識してもらうことによって、この人たちがまた国へ帰った場合に、宣伝効果と申しますか、そういった面で非常に大きな役割をなしていただく、そういった
考え方から、われわれとしては、できるだけ来た
外客に対しては十分な
サービスをしたい。つまり
旅館へ泊ってよかったという気持を持って帰ってもらいたいというふうな
考え方を持って、現在のところ
外客の
宿泊に対する対策を立てておるわけでございます。
従って、こういった観点から
オリンピックに対する
受け入れ態勢をどうしておるか、簡単に申し上げますと、まず、
日本旅館の
料金問題が非常にあいまいであるということが、
一つ取り上げられるだろうと思います。従来一泊二食付
料金のみで行なわれておりましたが、この問題については、かねて数年前から
観光局の
皆さん方から、何とかすっきりした線を出せないものかということでいろいろ研究して参ったわけでございますが、なかなか従来の習慣というものがございまして、これを一気に改正するということは非常に困難がございまして、また、根本的に室料制度と一泊二食付制度というものは成り立ちが違いますので、これを関連させようとすると、そこにいろいろな矛盾を生ずるわけでございます。今度
オリンピックに際して取り上げました問題は、一泊二食付
料金も併用する。つまり
ホテルと同じように室料制度を採用するけれ
ども、
お客の好みによっては一泊二食付の
料金制度も併用する。これは
アメリカなどでも、長期滞在等の場合には一泊二食付制度というものが行なわれておるわけでございますから、一応納得していただく範囲においては、別に制度としてあっても一向差しつかえないと存じます。その室料制度そのものも、従来、
ホテルとは異なりまして、横の連絡と申しますか非常に組織的な連絡がございませんので、お店によってまちまちな
料金がつけられておったうらみがございます。従って、同じような
部屋の設備でありながら、Aの
旅館、Bの
旅館で大へんな相違があるというふうなことがあっては、やはり
一つのこういう催しに対してまずいのではなかろうかということから、大体のワクをきめて、つまり
一つの例を申し上げますと、バス付で二人の場合には四千五百円から五千四百円の室料だ、それからバスなしの場合には三千二百円から四千三百円だ、この範囲内で
——まあお店によって多少の差はやむを得ないけれ
ども、この範囲内でやってもらいたいというふうなことで、
料金の統一というわけではございませんけれ
ども、大体の目安をつけてもらうということが
一つでございます。
なお、この際これに関連して申し上げますと、この四月に
チップ制の問題が非常にやかましく言われたわけでございますが、今回の
オリンピックに関しては、
宿泊料金の一割五分を
サービス料としていただく。これは現在、
日本旅館の場合に、
サービス料として一割ないし一割五分、
熱海は、御
承知のように一割五分取っております。都内でも一割五分のうちが二、三軒あります。そういった点から、これを統一いたしまして一割五分にする。そのかわり
チップは一切いただかないということを徹底さしたわけでございます。こういったことは、せんだって
発表になりました
東京都のサーキュラーの中にはっきりと記入してございます。
それから第二に考えられますことは、海外事務と申しますか、私
ども旅館業者といたしまして、まあ海外事務連絡という点で非常にウィーク・ポイントを持っております。従って、この点は、私
ども宿泊対策
委員会ができましたときにも、
東京都の
オリンピック関係の方にお願いしたことは、都なりあるいは組織
委員なりで、いずれにしろ
東京都にインフォメーション・
センターというものをつくるべきだと思う。そうすると、その一ブロックとして
宿泊関係をコントロールするセクションが要るんではなかろうかというふうにお願いしたわけでございます。そしてわれわれの考えとしては、そこで海外との事務連絡をやっていただこう。われわれとして非常に手薄であり、またふなれであるために、不本意ながらもミスを生じやしないかというふうなことから、そういった
考え方をやったわけでございますけれ
ども、これは、都の方でもそういったものをつくる見通しが当時ございませんでしたので、それではそれにかわるものとして、私
どもとしては、先ほ
どもちょっとお話しいたしましたが、海外の旅客を扱いなれておる
日本の旅行業者、これは
一つの組合ができておりまして、
国際旅行業者協会というのがございます。JATAと称しておりますが、このメンバーの
方々に海外事務を代行していただくというふうなことで、われわれの最も不得意とする点をカバーしていただこうというふうな
考え方でおります。
それから第三番目に問題になりますのは、先ほど
近藤さんからお話のありました通訳の問題でございます。それは現在、われわれの会員になる資格として、少なくとも一人は英語あるいはその他の
外国語がある
程度話せる
従業員を必要とすることになっておりますが、もちろん
東京都内あるいは
熱海あたりでは、
相当この点では大した問題なくやって参っておりますが、現実に二千百室の客室を
外客に提供するということになりますと、現在たとえば一軒二人のそういった人がいるということになりますと、全体で、大体二百名の者が
東京、横浜、
箱根にいるわけでございますが、これが十人を一人で持つということになりましても、なお二百名ほど不足するわけでございます。もちろん、それまでにわれわれとしても
従業員の
語学の講習会その他で十分気をつけて参りますけれ
ども、一気に二百名の
語学のできる人たちを補充するという問題は、
相当大へんな問題でございまして、これは何も
旅館に限った問題ではございません。たとえばタクシーにおいてしかり、あるいはその他の問題においてもそうでございますが、通訳の問題が
相当大きな問題だと存じます。これは現在においても、地方に参りました場合に、
相当いろいろな通訳の数の問題、質の問題その他で、いろいろ問題があるように伺っておりますが、
全国的な問題として、
一つぜひお取り上げいただいて、何らかの手を打っていただかない限りにおいては、せっかく各セクションで十分の
注意を払い、何とか満足していただくように努力をいたしましても、せっかくの効果が半減する、あるいは逆にマイナスになる、こういうようなケースも起きる可能性があるのではなかろうかと思います。
大体、以上三つが、私
どもとして今度の
オリンピックに対して、
日本旅館としていかに対処すべきかという点を重点的に研究して参っておりまして、前の第一、第二の問題については、大体目安もつき、あと事務的な打ち合わせの段階に入っておるわけでございますけれ
ども、第三の通訳の問題については、まだ全然手をつけていない状態でございます。これはまた、われわれだけではちょっと解決しにくい問題でございますので、あわせてこの席上でお願いしておきたいと思います。
それから先ほ
どもちょっとお話しいたしましたが、
外客来訪数の一定の線というものがございまして、それ以上を越した場合には、
日本旅館の利用度というものは非常に急激にふえて参ります。これは当然風俗、習慣その他から、やはり
ホテルを第一というふうな
考え方になるのは当然だと思いますけれ
ども、この一定線以下に落ちた場合に、
日本旅館の利用度というものが比例して落ちない、もっとひどく落ちるという現実をよく認識していただいて、何とか自然増をスムーズな線で上げていただく。それにはやはり道路の問題、その他
飲食税の問題等もございますけれ
ども、やはり
日本旅館というものが、決して
外客がお泊まりになっても不愉快なものではないのだということを
先生方もよく御
承知いただきたい。そのいい証拠が、一度
旅館へ泊まった方は、必ず二度目も来ていただくという実例が多うございますので、こういった点もこの際あらためてお願いしておきたいと思います。
はなはだ雑駁とした話でございますが、
旅館側の
立場としては、現在考えております段階は以上のような点でございます。
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