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猪俣委員 われわれの立案したときは、そういう指揮命令系統は、ちょうど検事総長、検事長、検事正というような
段階に分けて全国的に大がかりな組織をつくるようなことは
考えておらなかった。だから、一人の公安官が列車に乗り込み、ホームの中に立っても、公安官それ自体が普通の乗務員よりは捜査権を持っているというような趣旨のもとに立案したものである。それが結局におきましていろいろの方面に利用されちゃって、ことに現在では労働組合運動なんぞにこれが強力に活動して、まるで
国鉄の私兵みたいな役割を果たしている。各企業体がみんな私兵を擁するようになったらとんでもないことになる。そういう私どものつくりましたときと違った方向が出てきてしまっておりますが、とにかく
鉄道の
公安本部長という一公社の職員が全国的な捜査指揮権を持っているというようなことは、もう少しよくお
考え願いたい。わが国の捜査権の系統を非常に乱したものである。こういうことはほかにないと思います。国家機関にあらざるものが捜査権を持って全国的に指揮命令をする。しかも、それを
運輸省告示なんといういかなる法的地位にあるものかわからぬものがきめている。その必要があるならば立法化されなければならぬはずである。さようなわれわれのつくりました単純なこの公安官の制度を徹底的な捜査網の制度に組み上げちゃって、そうして
公安本部長などというその地位、権限のはなはだ明らかでないものが捜査権を持っている。これは今すぐ御答弁願わぬでも、もう少しよく
政府は研究して、そしてわれわれの納得のいくような答弁をしてもらいたい。そして、
運輸省告示などというものによって権限を与えるということが一体許されるところかどうか、これは研究を願いたい。皆さんの答弁はさっぱり私は納得できない。これは研究宿題として出しておきまして、次に、今回
石田君が
質問いたしました問題につきましては、はなはだ遺憾でありますが、私は竹内さんも来ておりますから言いますが、近ごろ検察庁はないが、警察
段階なんかにおいて、自分の調べがうまくいってぶち込みができないようなことになると、新聞発表によって社会的制裁を加えるということをよくやる。最近ある時計商が密輸の疑いでもって逮捕された。そうしたところが、何にも密輸品というものがないということが明らかになった。その明らかになった後において新聞発表をやって全国の新聞に出ちゃった。そこでその時計商は非常に憤慨いたしまして、私のところに泣き込んできました。その警察署長以下捜査部長その他を名誉棄損で告訴いたしました。そうしたら、先般新潟の検事がきて、何とか
一つ穏便にしてくれぬだろうかということをその告訴人に申し込んできたという話です。実にらんぼうなことを言うのです。その調べられる
人間が態度がよくなかったとか、なまいきだとか、そういうことがあると、そうしてしかも見込みが違って犯罪があったと思ったら、何だかむだ骨を折ったのがしゃくにさわるというようなことで新聞発表をやる。あり得べからざることをやる。人の名誉ということに対する観念が実に希薄だ。今の場合、おそらくその公安官に何か乗り込みの人たちが身に覚えのないことをお前たちはやったのじゃないかと言われ、非常にかっとして売り言葉に買い言葉でやったのだろう、それが腹にあったので直ちに大それた発表をやっちゃった。発表ということはいろいろありましょう。しかし新聞記者の取材に対して、はっきりした証拠もなく事実も明瞭ならざるものを、いや集団的な万引だとか、いやこれこれのものを万引したとかいうようなことを発表する。これは私は悪意ある発表だと思う。名誉棄損です。悪意があると思うのです。たとえば早慶戦の時分に慶応なり早稲田の生徒が、慶応の生徒が勝ったとなると銀座
通りを集団を組んでみんな飲み歩く。金なんて一銭も払わない。しかし学校の当事者が来て全部金勘定してしりぬぐいして歩くというのが例でありましたから、無銭飲食したとか、
計画的万引をやるなんということは一ぺんも出ておらぬ。これはいいことではなかったと思いますが、そういう慣例があった。いわんや今回はとにかく臨時列車であって、それにはちゃんと団体もわかれば統率者もわかっておるはずだ。それが二千円や三千円のことで直ちに、幾ら新聞記者が聞いたというても、そういう三千何百円かの金額を明らかにしてこれを新聞に伝えるということは、新聞社にいうならば、直ちに新聞に報道されることは予期しておらなければならぬのであるから、名誉棄損の悪意あることは明瞭であります。これに対して、いやもうあれは荒ら立てませんなんということじゃない、もう荒ら立てることで名誉棄損させられたのだから、荒ら立てないということじゃない、こういう名誉を救済することについて、一体
鉄道当局は何か
考えておられるのか、それについてお答え願いたい。