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1962-03-28 第40回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十八日(水曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      亀田 得治君    副主査     植垣弥一郎君    委員            小沢久太郎君            小柳 牧衞君            一松 定吉君            湯澤三千男君            高田なほ子君            藤田  進君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    総理府総務長官 小平 久雄君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    警察庁保安局長 木村 行蔵君    警察庁警備局長 三輪 良雄君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省矯正局長 大沢 一郎君    法務省保護局長 武内 孝之君    公安調査庁次長 関   之君    大蔵省主計局給    与課長     平井 廸郎君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総長      下村 三郎君    最高裁判所事務    総局総務局長  桑原 正憲君    最高裁判所事務    総局人事局給与    課長      牧  圭次君    最高裁判所事務    総局経理局長  栗本 一夫君   説明員    警察庁保安局防    犯課長     綱井 輝夫君    法務大臣官房経    理部主計課長  安田 道夫君    (心得)    法務大臣官房経    理部営繕課長  住吉 君彦君    (心得)    大蔵省主計局主    計官      赤羽  桂君    会計検査院事務    総長      大沢  実君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 植垣弥一郎

    ○副主査植垣弥一郎君) これから予算委員会第一分科会を開催いたします。  昭和三十七年度予算のうちで、裁判所所管について説明を求めます。下村最高裁判所総長さん。
  3. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 昭和三十七年度裁判所所管予定経費要求額について、ご説明申し上げます。  第一は昭和三十七年度裁判所所管予定経費要求額総額は、百八十六億三千六百二十万五千円でありまして、これを前年度予算総額百七十三億八千五百三十九万千円に比較いたしますと、差引十二億五千八十一万四千円の増加になっております。この増加額内訳を大別して申し上げますと、一、人件費において十二億三百五万九千円二、裁判に直接必要な経費すなわち裁判費において一億三千百六十七万六千円、三、その他、一般司法行政事務を行うために必要な旅費庁費等において一億千三百六十万八千円、合計十四億四千八百三十四万三千円が増加しましたが、反面営繕に必要な経費において一億九千七百五十二万九千円が減額になりましたので、差引前述増加となるのであります。  第二、次に、昭和三十七年度予定経費要求額のうち主な事項について、御説明申し上げます。  一、裁判の適正迅速処理に必要な経費、これは近時、事件増加複雑化の著しい東京・大阪その他の大都市の裁判の適正と迅速化をはかるための判事等増員と、裁判事務処理能率向上のための機械化に要する経費として(一)判事十五人を増員するために必要な人件費二千五百五十一万三千円、(二)裁判所書記官三十二人を増員するに必要な人件費千百八十四万四千円、(三)検証用自動車十台の購入費七百九十六万九千円、(四)事務能率器具購入費五千六百五十六万二千円、合計一億百八十八万八千円が計上されました。  二、として、補助機構充実に必要な経費でありまして、これは裁判所書記官等の適格を有する裁判所書記官補等裁判所書記官等に昇任させ、裁判官の補助機構充実事務能率化をはかるため、裁判所書記官補等定員九百三十四人を裁判所書記官定員へ、また、家庭裁判所調査官補定員六十六人を家庭裁判所調査官定員へ、それぞれ組みかえるのに必要な経費として三千六百九万八千円が計上されました。  三、少年事件処理適正化に必要な経費、これは家庭裁判所における少年保護事件の激増に伴い、その処理適正円滑化をはかるための家庭裁判所調査官三十人の増員に要する人件費でありまして、千二百三十五万二千円が計上されました。  四、裁判費、これは裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人報酬証人鑑定人調停委員等旅費日当、その他裁判に直接必要な旅費庁費等として十五億五千百二十六万六千円が計上されました。  五、証人調停委員国選弁護人等待遇改善、それが三つに分かれておりますが、(一)証人日当三百円を最高千円(平均五百円)まで支給できるようにするために必要な経費千五百五十一万九千円、(二)調停委員司法委員参与員等日当六百円を七百円に増額するに必要な経費七千百十九万五千円、(三)国選弁護人報酬、これは現行基準は例えば地裁は一件五千二百円となっておりますが、これを約一割、例えば地裁は五千七百円に増額するに必要な経費千六百八十七万二千円が計上されました。  六、営繕に必要な経費、これは三つに大別されまして、(一)裁判所庁舎継続工事二十二庁、新規工事二十庁の新営工事費として十五億二千五百四十五万七千円、(二)その他法廷の増築、裁判所庁舎補修等施設整備費として二億三千十八万円、(三)営繕事務費として四千六十四万三千円が計上されました。  以上の合計は十七億九千六百二十八万円となり、副年度予算に比較して二億四千二百四十一万五千円の増加となっております。右のほか、営繕に必要な経費としては(四)庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費二千四十一万六千円が計上されております。  なお、新営工事費等前述のように増加しておりますが、営繕費全体としましては、当初ご説明申し上げましたとおり減少しております。これは、前年度計上されました庁舎等特別取得費四億五千万円の減額によるものであります。  以上が、昭和三十七年度裁判所所管予定経費要求額大要でございます。  なにとぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 植垣弥一郎

    ○副主査植垣弥一郎君) 引き続きまして、法務省所管について説明を求めます。植木法務大臣
  5. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 昭和三十七年度法務省所管予算内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和三十七年度予定経費要求額は三百六十九億六千九百八万七千円であります。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に三億六千八百十三万九千円が計上されております。  前年度当初予算額三百三十一億八千六百七十八万一千円に比して、法務省所管分は三十七億八千二百三十万六千円の増額となっております。なお、補正予算額三百三十八億二千六百三十六万六千円に比較して三十一億四千二百七十二万一千円の増額となっております。  増額分内訳を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の二十九億四千三百八十六万二千円であります。これは、昨年実施されました公務員給与ベースの改定に伴う増額分及び昇給等原資としての職員俸給等増額分がおもなものでありますが、そのほかに副検事、検察事務官公安調査官登記関係職員等三百二十四名の増員及び常勤的賃金職員等百五名の定員化に伴う所要人件費が含まれております。  第二に、営繕施設費の九千七百六十七万三千円であります。なお、建設省所管計上官庁営繕費についても二十五万九千円が増額されております。  第三に、その他一般事務費としての七億四千七十七万一千円であります。これは、事務量増加に伴い増額されたもののほか、積算単価の是正及び事務能率器具等備品整備または矯正関係収容者処遇改善等に伴う増額分であります。  次に、昭和三十七年度新たに予算に計上された事項経費について申し上げますと、第一に、来年度は、外国人登録法に基づく在日外国人登録証明書の大量切りかえを行なう年度にあたりますので、これに要する経費として八千四百六万四千円が計上されております。  第二に、本年七月に実施を予定されている参議院議員の選挙の公正を期するため、適正な検察を行なう必要がありますので、これに要する経費として六千五百七十一万七千円が計上されております。  第三に、本年五月東京において開催を予定されている家族法における婦人の地位に関するアジア地域セミナー国際連合に協力して行なうために要する経費として二百四十万四千円が計上されております。  第四に、建物の区分所有に関する法律の施行の暁は、現行登記簿より区分所有に関する登記を移記する必要がありますので、これに要する経費として百九十一万六千円が計上されております。  次に、増員三百二十四名の内容といたしましては、  一 暴力犯罪対策等治安対策の一環   として破壊活動調査機能充実す   るため調査官八十七名、守衛十六   名、合わせて百三名、  二 公判審理迅速化するため検察   事務官十名、  三 交通事件増加に対処して事務   処理機能充実強化するため副検   事二十名、検察事務官四十名、合   わせて六十名、  四 非行青少年対策を強化するため   四十名、その内訳は、少年院補導   力の強化のための教官三十名、次   に、少年鑑別所鑑別業務充実の   ための鑑別技官十名、  五 登記台帳事件増加に対処し   て、その事務処理を円滑適正化す   るため事務官百名、  六 羽田入国管理事務所における出   入国者増加に対処して、その出   入国審査業務処理を適正、迅速   化するため入国審査官九名、  七 東京検察合同庁舎管理要員とし   て電工、機械工、各一名、合わせ   て二名、となっております。  次におもなる事項経費について、概略を御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基づき、在日外国人登録及び指紋採取事務処理するために要する経費として一億八百六十三万二千円  第二に、法務局地方法務局等において登記台帳、供託、戸籍等事務処理するために要する経費として四億八千三百四十三万一千円、  第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種の犯罪事件の直接検察活動に要する経費として五億三千二百六十四万三千円、  第四に、拘置所刑務所少年刑務所少年院少年鑑別所及び婦人補導院昭和三十七年度一日平均収容予定人員合計八万七千五百八十人の衣食医療及び就労等に要する経費として五十三億七百四十九万一千円、  第五に、犯罪者予防更生法更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき、刑余者及び執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費として五億七百九十九万円、  第六に、出入国管理令に基づき、不法入国者等調査及び審査事務処理し、また退去を強制される者の護送、収容、送還に必要な衣食医療等に要する経費として八千二百十六万四千円、  第七に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として六億六千三百九十九万四千円、  第八に、検察庁等庁舎及び刑務所少年院等収容施設の新営、整備等に要する経費として十五億二千八百六十六万五千円が、それぞれ前年度に引き続き計上されております。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求大要であります。  最後に、当省主管歳入予算について、一言説明申し上げます。  昭和三十七年度法務省主管歳入予算額は七十九億二千二百五十九万九千円でありまして、前年度予算額七十六億八千六十六万三千円に比し二億四千百九十三万六千円の増額となっております。  これは、過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、刑務所作業収入であります。  以上、法務省所管昭和三十七年度予算について、その概要を御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  6. 植垣弥一郎

    ○副主査植垣弥一郎君) 議事を進めて参りまする便宜上、裁判所及び法務省所管を一括して質疑を行なうことにいたします。  なお、警察庁関係につきましても、ただいま警備局長及び保安局長が出席しておりますので、関連して質疑のある方は、この際、御発言を願いたいと存じます。  ところで、主査から一言下村裁判所事務総長に申し上げますが、ただいまの説明のうちで、裁判の適正迅速処理に必要な経費として一億百八十万円が計上されていることを述べられたのですが、この一億百万円は、予算内訳の中で、裁判費百五十五億あるわけであります。この百五十五億の一%に満たない一億そこそこの金で、御説明になりました裁判の適正迅速処理というものの目的を達するということには、あまりにも費用が少なくて、効果が大きいわけです。こんなに大きな効果は、一見しまして誇大な効果説明といったような感じを受けたわけであります。それで、質問が始まります前に、この点について、説明緩和の御意思があらば、御発言をなさってよろしいと思います。しいて申し上げるわけではありません。御説明がなければ続けて参ります。
  7. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判費のほうは十五億五千百二十六万六千円でございまして、そのうちの一億百八十八万八千円ということになります。
  8. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) ただいま委員長御指摘になりました百五十五億とおっしゃいましたのは、ちょっと一けた違っておるように思われまして、うしろについております明細書の十五億五千百二十六万六千円というのをお読みになったかと思うのでありますが、裁判費は正確に申しますと、一番最後に書いてございますが、その紙に、昭和三十七年度予算案がございますが、これが十六億四千八百四十二万三千円でございまして、したがいまして、十六億という数字から比べますと、裁判の適正迅速なる処理に必要な経費一億百八十八万という数字は、必ずしも小さい数字じゃないわけでございますので、決してこれで十分だとは申しかねると思いますけれども、一応この程度で来年度やっていこうと、こういうつもりであったわけであります。
  9. 植垣弥一郎

    ○副主査植垣弥一郎君) それでは、説明どおりの適正と迅速を一億ほどの予算増加で期していく考えだったという説明に変更はございませんですね。
  10. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) それでけっこうでございます。
  11. 植垣弥一郎

    ○副主査植垣弥一郎君) わかりました。  それでは、順次御質疑をお願いします。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 私は、まず、主として右翼に対する取り締まり関係等についてお聞きするわけですが、最初に、法務大臣並びに警察のほうから、基本的なこの問題に対する態度を伺いたいのでして、こまかい点は関係局長にまたお聞きしますが、ともかく、警備警察なり公安調査庁としては、世論の要望に沿うために、もっともっと右の勢力に対するかまえというものに力を入れるべきではないか、こういうふうに根本的な大まかな立場から考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  13. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御質問にお答えいたしますが、御承知のように、私のほうの公安調査庁におきましての受け持ちの部分は、破壊活動防止法運用励行にあるわけでございます。そして万一に備える、事なきを期したいというところにあるのでありますが、公安調査庁発足の当時以来、初めのうちは、まだ右翼のほうのばっこがさほどでもなかったやに感ぜられるのでございます。したがって、初めから右も左も、いやしくも、破壊活動にわたりますものについては、十分留意して参る建前でおりましたが、どうしても比較的現われた事実が少なかったために、右翼に対する人員配分、あるいは経費使い方というようなものも、やや少な目にあったのでございます。ところが、御承知のように、近年、右翼人たちの忌まわしい事件が頻発いたしまして、これではならぬというので、今日までも、既存活動費並び既存定員を、できる限り、左翼方面を調べておった者も配置がえをする、あるいは移しがえをするというようなことで努力をいたして参りました。また、実際の配置がえ、職務がえをいたしませんでも、兼務をどんどん命じまして、そして右翼に対しての観察の誤りなきを期したわけであります。しかしながら、どうしても全体の要員が足りない、あるいは活動費が足りないというので、昭和三十六年度におきましては、調査活動費増額を希望いたしましたけれども、実現できませんでした。どうかこうか、やりくりをして参りましたけれども、三十七年度では、なかなかそれではやっていけないということが明らかになりましたので、定員増加並びに経費増加においても、必ずしも事務当局希望どおりじゃありません、また、私の考えどおりじゃありませんけれども、最小限度ということでその充実を期した、こういうことでございます。したがいまして、一言にして申せば、右も左もなく、いやしくも破壊活動にわたるような団体につきましては、御承知のとおり、特定の団体指定して、その指定団体については、十分気をつけることはもちろんのこと、指定以外のものについても、注目を怠らずにやって参って、あやまちなきを期したい、これが根本的な考え方でございます。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 若干こまかい点につきまして、公安調査庁のほうに一応お聞きいたします。公安調査庁における公安調査官の数ですね、昭和三十六年現在における数、並びに、その左右勢力に対する配置状況ですね。
  15. 関之

    政府委員(関之君) 全体の公安調査庁における調査をなし得る公安調査官の総数は、千三百八十五ということになっているわけであります。その中で、左右の振り分けでございますが、大体二百五十九名というものが右のほうになっておりまして、それであとのほうは左のほうになっている、一応こういうことになっているわけであります。ところで、一昨年、昨年以来の事態にかんがみまして、大臣の先ほどのお話にもございましたように、どうもやはり右翼の問題が、何が起こるかわからぬという緊迫性の問題との関連で、左のほうの者も、できるだけ、これらの職場でもしそういうような情報を入手したような場合には、そこに注意をいたして、そしてその場合には右のほうに移し、本格的な調べをする、一応こういうふうな態勢で、できるだけ全庁をあげて右の問題については努力させていくと、一応こういう態勢をとっておる次第であります。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 これはパーセンテージにいたしますと、どうなりますか。千三百八十五名の右と左のパーセンテージ
  17. 関之

    政府委員(関之君) 右翼が一八%ということになっておるようでございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 一八%と八二%、そういうことになりますね。そこで、昭和三十七年度には、八十七名、今回の予算増額要求が出ておるわけですが、この八十七名は、同じように左右というふうに分けますと、どういうふうな予定をされておるか。
  19. 関之

    政府委員(関之君) 今の予定におきましては、そのうち三十五名を右のほうに回す、残りの五十二名を左のほうに回す、こういうふうに考えておる次第でございます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それから、公安調査官が使用いたします調査活動費ですね。この点につきまして、現状はどうなっておるか、そのおおよその比率ですね。その点をまず明らかにしてほしい。調査活動費総額並びに比率ですね。
  21. 関之

    政府委員(関之君) 昭和三十六年度におきまする調査活動費総額は、五億三千一百万円でありまして、左のほうが八七%、右のほうが十三%となっておるわけであります。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 昭和三十七年度調査活動費は三千六百万ふえるわけですが、この増加分左右に対する配分というものはどういう予定でしょうか。
  23. 関之

    政府委員(関之君) この三千六百万円の配分でありまするが、今年度の八七名の増員分は、一八%で、従来にない比率をもって右のほうにさいているわけでありまして、大体その比率に従ってこれを配分いたそうかと、こう今考えているところであります。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 まあ私は今具体的に調査官のこの配置状況と、調査官の使う調査活動費左右への使い方というものをお尋ねしたわけですが、先ほどの法務大臣の御答弁と、多少矛盾があるのではないかという感じを持つわけです。つまり、破防法ができた当初においては、主として左ということがその当時の事態として考えられた、したがって、最近の状況とはマッチしない点がある、そこで、マッチするように右のほうにも比重を置きかえていきつつある、こういう御説明があったわけです。だから、そういう状態でありますれば、今回その増加される分は、少なくとも全部これを右のほうに、人も、調査活動費もぶち込んでいく、まあそれで私は十分かどうかを言うのじゃありませんが、現在までに、人の関係予算関係から言っても、非常な左右のアンバランスがあるわけですね。数字の上でこれははっきり出ておるわけです。非常に右のほうに対する関係が少ない。で、今度増加されるものも、相かわらずこの右の関係が少ない。こういうことでは法務大臣の先ほどの気持にも必ずしもマッチしないし、私はまた最初に申し上げたように、現在のこの世論の動向にもふさわしくないのじゃないかというふうに考えるわけでして、この点は基本的な、大まかな、大きな予算使い方の問題になるものとして、法務大臣のひとつ御見解を承りたいと思います。
  25. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 先ほどの私の説明があるいは不十分なために誤解をお与えしたかもしれませんが、私の申し上げております趣旨は左のほうに対する人員配置あるいは経費使い方というものの、その重点を右にすっかり置きかえる。かりに一〇〇といたしますなら、左に対して八〇の力を尽くしておったものを、今度は逆に右に対して八〇を使うというふうに、重点を置きかえるのだというふうにお取り下さったとしますと、私の説明が不十分だったかもしれません。私の申し上げておる趣旨は、従来右翼に対しての定員配置あるいは活動費使い方というものが、右翼ばっことともに対象もだんだん——指定団体もふえて参りましたし、したがってそちらのほうに重点を大いに置かなきゃならんということを申し上げた意味は、今まで左翼に対して尽くしておったパーセンテージ的なそのウエートの一部を割いて、右翼へ持っていって、そして右翼に対しても取り調べ不十分だ、調査不十分だというようなことのないようにして参りたい、こういう意味に実は申し上げたつもりでございます。何しろ右と左の両方面に対して、十分厳正公平に取り締まりをしなくちゃならんことはもちろんでありますけれども、何分にも左系統団体は、数におきましては、今指定しておりますのは右左同様五団体ずつでありますけれども、しかし、その対象組織内容というものが、左のほうにつきましては非常に範囲も大きい、人数も多い。しかも、その勢力伸び方といいますか、今後のいろいろ気をつけなきゃならん部分について、対象にすべき調査事項も非常に多い。それがありますので、三十七年度予算使い方は、ただいま政府委員から申し上げましたように、全然ウエートが半分以上も左より右へ移るというわけには参らない。やはり格好としましては、三十七年度左翼のほうに定員配置あるいは経費使い方相当額を回さざるを得ないだろう、この意味趣旨を申し上げたのでございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 もちろん私も決して右と左の配置比率を逆転させるという意味で申し上げたわけでもこれはないわけです。ただ現状調査官の数の点だけをとってみましても、一八%と八二%というふうに非常な開きがあるわけなんですね。左のほうの団体の組織なり数も多いといったような点もありましても、ともかくこの数は非常な開きがすでに出ておるわけなんです。今回増員になるのは結局八十七名なわけでして、全体の総数からいいますと一割にもならないわけですから、その程度のものであれば、現在の社会情勢としては八十七名全部を少なくとも右のほうに注入する、このことのほうが筋が通るんじゃないか、まあそういう意味で申し上げておる。これ全部を右へ注入したところで、総数の比率というものはそんなにまだ変わってこないわけなんですね。そういう意味なんでして、その程度のことは、非常に右翼テロなどが問題になっておるわけでして、そういうときですから、そのほうが適切な予算措置ということになるように思うのですが、もう一ぺんその点大臣から見解を聞きたいと思います。
  27. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) よく御意見の筋はわかりました。私のほうのやり方といたしましても、あるいは率直に内部で計画しておりますところを申し上げましたので、ただいまのような御批判を承るかもしれませんが、実際問題としましては、御承知のように、一昨年来の右方面におけるいまわしい事件の頻発、この問題にかんがみまして、先ほど私が答弁の中にも申し上げましたように、相当左のほうの定員配置等から兼務をさしておるのがあるのであります。私たちの今考え方としては、せっかく右のほうをだんだん調査をして、そして調査の熟練をだんだん重ねてきたものを、それをむしろそのままその兼任を解いて、そして本務に右のほうをやらせる、そして新しく出た人員増加八十七名でございましたか、その人員については全体として両方へどんなふうに配分していくかということで、三十五人とあとの残りというふうな分け方にしたのでありまして、決してここに申し上げましたような数字がそのまま実際問題として行なわれるかといいますと、実質的には兼務を解いて右のほうにやらせるというものも相当数ございますから、比率としては先ほど来申し上げました予想の比率よりも、若干右のほうへ回るほうが多くなろうかとかように考える次第でございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 関連いたしまして、警察関係配置状況をお聞きしたいのですが、結局警備警察というものがいわゆる左右に対するいろいろな動向の調査なり内偵等をやっているわけですが、それについてのこれは人員の面だけでいいですが、現状並びに来年度予算ではどのようにそれが変わるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  29. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 私のほうは御承知のように今御指摘の左右に対する調査ということをやるわけでございますが、これが表に現われますと警備実施に移る、さらにこれを刑事事件が起こりますると一般の事件として捜査、検挙に至るわけでございます。したがいましてこの警備警察のものが、あらかじめ右に何名、左に何名ということを分けておりますのは、県本部におりますいわゆる専門家でございまして、大部分の署におりますものは、そのときのいわば重点的に指向された方向に命令によって動くということになっておるのであります。したがいまして、右と左というふうに厳格に分けてみますというと、大体左専門といわれますものはただいまのところ七百三十名でございまして、右専門というのが約二百四十名いるのでございます。二百四十名のうちには、今度警視庁で三十名——もう発令になっておるかもしれませんが、四月一日から専門の課に三十名増員するのでありますが、そういうものを含んでおりますが、ざっとの比率が四月一日になりまして三対一くらいになるのであります。しかしこれは全体の警察官の中ではきわめて少ない数でございますので、第一線の専門を分けておりません。警察官というものがそのときの情勢に応じて重点的に指向して活動いたすことになるわけでございます。先ほど来法務大臣のお述べになりましたような情勢でございますので、第一線のほうといたしましても、右の視察取り締まりに力を入れていることは御理解いただけるかと思います。ただこれは全国的に見まして、平等にその対象があるということはございませんので、東京都でございますとか、主として大都市でございますので、ふえた人間はそういうところへ回したのであります。警視庁が昨年新たに三十名ほどの係からただいま六十数名の課になっておるわけですが、これにさらに三十名加えるわけですが、その他の大府県におきましては、ここ一年間あるいは来年を含めまして、ごくふやしました数というものは三人四人という数に過ぎませんけれども、そういった専門家をふやしてやっておるところでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 今全国の総数をお聞きしたわけですが、警視庁と大阪ですね、これは今度の新しい毎度で増員を含めて左右専門の担当者は何名になるのですか。
  31. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 警視庁は左専門と申しますのが二百、右専門が九十人でございます。大阪は三十八と十五ということになっております。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 公安調査庁の場合と若干やはりものの見方に違いがあるような感じがするのですね。警察を大いにほめるわけではないが、警察のほうが若干実際の事態にふさわしいような配置をやっておるんじゃないか、総数としては警察のほうは、三対一、しかし東京とか大阪とかというふうなところをとってみますと、その比率が右のほうがもっと多くなっておるわけですね。だから私は右に対する対策としては現状やはり少なくとも公安調査庁よりは適切なんじゃないか、公安調査庁のほうは、今度の増員を含めて考えてみましても、四対一にすらちょっとまだ欠けるくらいな数字になっていますね。これは関次長はいろいろこまかい検討をされて配置されていることだと思いますが、今の三輪警備局長の御説明をお聞きになって、どうもおれのほうは少し右に対する手当が薄いかなというふうな感じをお持ちになっているんじゃないかと推測するわけですが、どうです。
  33. 関之

    政府委員(関之君) 三輪局長のお話を聞いて、確かに貴重な参考と存じておるのであります。ただ、ここで申し上げたい点は、全体の問題として右翼の問題でございますが、公安調査庁は、根拠は破防法でありまして、破壊的容疑団体ということが中心となって調査を進めることに相なるわけでございます。ところが、警察のほうは、これはその団体というよりは、むしろ広い意味においての警察の警備活動、犯罪活動というようなことで、ちょっと私のほうの部面よりも範囲が広くなってくる、実際の取り締まり面において私はそう実は思っておるわけであります。そこで、現実の犯罪の検挙、捜査ということになりまするから、私どものほうよりも、どうもやはり危険な事態が多ければ多いだけ、そこに人を多く置くというような面が多いのではないか、実はこう思っておることが一つあるわけなんであります。その他といたしまして、これは前に御説明にも申し上げましたとおり、一応今の一八%ということを申し上げましたが、昨年来の事態にかんがみまして、たとえてみますと、公安調査庁は全職員千七百でございまして、それを全国の五十局に配っているわけであります。中には十人局というのが三十ぐらいあるわけであります。そういたしますと、特定の人に専門家というふうになってくることは、その人員配置上なかなかむずかしいことになる。おのずから兼務という形で調査官の注意する面を進めていく以外に方法はないわけでございます。そこで大臣のお話にもございましたように、昨年来の事態にかんがみまして、従来左だけをやっていた者にも、とにかく事態がこうであるからして右にも注意しなさいというて、その左の者もとにかく一応右も注意すると、こういう体制を昨年からずっととってきておりまして、実際は今申し上げた一八%でございますが、その注意する者はそれよりはるか上回った者を全国において一応とにかく右側も注意する、そしてそのそれぞれの調査官の広い、これより何倍かの、ちょっと数字はわかりませんですが、相当の数が右も一応注意している。そこで、そういう兼務的な者の耳に入ったこと、あるいは調査上現われたことが今の右のほうの二百数十名のところに行く、こういう体制をとっておりますから、配置といたしましては、どうもそういうような形でやっていく以外にはないのではないか。そうして、それは今申し上げたように兼務という形で相当広い範囲に職員の注意力をそちらに向けるという体制をとって処置しているわけであります。右翼の最近の事態からかんがみまして、亀田委員のお説のとおり、どういう配置体制をもってこれに備えて役所としてできるだけのことをいたすかという点については、私ども苦心している点でございまして、大臣からもしばしばその方面充実しろというお達しもございまして、今のところは大体そういうような考え方で左のものをやっている者に対する兼務の形で、できるだけたくさんの者が注意をすると、こういう体制を整備しているところでございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 もう少し問題を前進させることにします。そこで、先ほど大臣のお答えの中にもちょっとあったわけですが、現在の公安調査庁調査活動の対象団体ですね、これは左右五つずつあるとさっき大臣がおっしゃったわけですが、具体的にちょっと名前を明らかにしてほしい。
  35. 関之

    政府委員(関之君) 左のほうから申しますと、日本共産党、その次が在日朝鮮人総連合、その次が日本学生自治会総連合、これを全学連と称するのであります。その次が日本社会主義学生同盟、これが社学同、その次が共産主義者同盟、以上五つが左の対象に相成るわけであります。  それから右のほうについて申しますと、護国団、大日本愛国党、治安確立同志会、日本青年連盟、全アジア反共青年連盟、この五つが今までのところ、一応当国会の各委員会におきまして、調べている、こういうふうに申し上げている、正式に破防法上調べておる団体なのであります。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 三無事件に関連して、三無塾なんというものはどういうふうになるんでしょうか。
  37. 関之

    政府委員(関之君) 三無事件に関連して、三無塾とそうしてその他二つばかりの団体がその中に一応名前が出てきておるのでありまして、今その関係は刑事事件の進展との関連でよく資料を拝借いたしまして、その関係を検討しているところでございますが、今までのところから申しますと、関連はどうも影が薄いような感じがいたしておる次第であります。団体としての活動であったかどうかという点については。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 関連して警察のほうにちょっとお聞きしますが、警察では、根拠法規がこれは違いますから、もちろん対象の選び方も違うわけでしょうが、右のほうの係の諸君がいわゆる観察対象としておる団体の数なり、あるいは右のほうでは個人的な一人々々というものがやはり問題にどうしてもなるわけでしょうが、その個人の数なり、そういう点はどの程度を考えておるわけですか。
  39. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは申すまでもないことですが、私どもの見ておりますのは、団体そのものの処置をどうするということでございませんので、これがテロ行為その他の刑罰法規に触れますおそれのあるなしによって見るわけでございますが、右翼団体といちがいに申しましても、実は一人一党的なものがきわめて多いのでございます。今おあげになりましたような団体を含めまして大体団体の体をなしているものといえば二十数団体が特に行動性のあるものと見ておるわけでございますが、その中に入りますものばかりでございませんで、実は一人一党的なものがありますものを含めまして、またそういうものが飛び上がった危険性を侵すおそれもあるわけでございますので、見ておりますものは、大体千四、五百見当に及ぶかと思っておるのでございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 これはあなたのほうの警備活動の御都合があるでしょうから、まあ個人の名前まではここでは聞かんことにしておきますが、公安調査官のほうの調査活動の方法ですね、これはどういうことですか、端的におっしゃって下さい。
  41. 関之

    政府委員(関之君) 調査活動の方法でございますが、これは端的に申しますと、強制権がなくて、いわば、法律の審査のとき申し上げましたが、新聞記者の皆さんと同じような方法で調べるのですというような御説明をその当時申し上げましたが、結局相手方の御理解のもとにその協力を得て調べていくと、こういうことに相なるわけでございます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、結局、協力者というものをあっちこっちにたくさんつくると、こういうことですか。
  43. 関之

    政府委員(関之君) 協力者をつくり、そうして調査官が現実に自分の目をもち、あるいは足をもって見聞したりというようなことに相なるわけであります。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 調査官自体がいろいろやるのはこれは当然でしょうが、その調査官を離れての点を聞くわけです。そうすると、あなたのほうの言葉としては、協力者、こういうわけでしょうが、これは現在何名くらいあるわけでしょうか。
  45. 関之

    政府委員(関之君) 相当数、全体的にあると思っておりますが、どうもその詳しい数字は、実はここでちょっと申し上げにくい次第でございます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 その年令とか、職業とか、氏名とか、そういうところまで聞くわけじゃないわけでして、何名くらい協力願っておるかという程度は、明らかにこれは予算にやはり関係が出てくるわけですね、協力者にちゃんと資料を出すわけですから。これは、午後、会計検査院にも若干そこら辺の扱いを聞いてみるつもりですが、その前にあなたのほうにちょっと確めておきませんといかんと思いましてお聞きするわけです。総数何名くらいということは別にさしつかえないのじゃないですか。
  47. 関之

    政府委員(関之君) これもその事態の動き方によって多くなったり少なくなったりも実はするわけであります。ある特定のときに何名といっても、その次はもうすでに違っているかもしれませんし、団体その他の動きがいろいろなことになりますと、どうしてもたくさんの人に調査官がお目にかかっていろいろ話を聞いて情報を入手するということになりますし、数は、不特定と申しましょうか、何名というふうに申し上げかねる事情に実はあるわけであります。大体それだけのことで御了承をいただきたいと思います。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 それは不特定ということはないでしょう。あなたのほうでちゃんとそれは一々依頼をされて、そうしてやっておられるわけですから。何も十何名とか、そういうこまかい数字を聞いているわけじゃないわけでしてね。十名や二十名はどうでもいいわけです。大体どの程度の規模のものが動いているのか。われわれとしては、調査官が千何百ある。それに協力者がどの程度くっついておるというふうなことは、当然これは国会としては知りておくべきことなんですから、そういう意味で聞くわけですから、そんなにかたくならんで、大まかなところでお答え願います。
  49. 関之

    政府委員(関之君) 今申し上げたような次第で、あるときはこれだけの数字、また次のときは変化してこうということになりまして、ごく大ざっぱに申しまして、結局、数千名というようなところに相なろうかと、こう思っております。それでひとつ御想像をいただきたいと思います。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 普通、数千名と言いますと、はなはだばく然としすぎるわけです。大体五、六千というふうな理解でいいわけでしょうか。
  51. 関之

    政府委員(関之君) その言葉の意味で御了解いただきたい、こう思います。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 もう一点、絶えず問題になることなんですが、無電等を使っての盗聴ですね、こういったものはやはり活動の手段としてお使いになっているわけでしょうか。
  53. 関之

    政府委員(関之君) 現在はやっておりません。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 警察はどうでしょうか。
  55. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 一般的な活動の手段として使っているかというお尋ねならば、使っておりませんとお答えするわけですが、犯罪捜査——先ほど申しましたように、私どものほうは犯罪捜査から検挙に至るわけでございまして、その必要の段階で他に手段がない場合には用いることもございます。判例でそういうふうに示されておりますので、その範囲で使うことはまれにございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 警察のほうは、いわゆる内偵という段階では使わない、犯罪捜査というような範疇に入ってきた場合には使う。公安調査庁は全然使っておりませんか。
  57. 関之

    政府委員(関之君) いつか、広島におきまして、やむを得ない手段として使用したことがございますが、その後においては使っておりません。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 そういう器具は、調査庁としては何台ぐらいあるわけでしょう。
  59. 関之

    政府委員(関之君) 現在のところはいたしておりませんから、何台といいましょうか、まあ特にすぐ使えるようなものは一台も持ってない、こういうようなことになろうかと思います。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、前にお使いになったこともあるわけですし、それを別に捨てたわけでもないのでしょうから、ちょっと直せばもちろんお使いになれるものでしょうし、それはあることはあるわけなんですか。ちゃんと財産の目録にも載っているわけでしょう。そういう調査は別にしてないわけですか。
  61. 関之

    政府委員(関之君) 廃品的なものならば、かつてそういうことがありましたから、調査局には一台——今の広島に一台、二台はあるかと思いますが、要するにその程度の問題でございまして、正確にここで何台と、そういう廃品的なものを加えた記憶はございません。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 まあお答えにくいような点があるようですから、この程度にしておきますが、数千名の協力者に対する報酬ですね、謝礼、これは現在はどういう基準でお支払いになっておりますか。
  63. 関之

    政府委員(関之君) 報酬は結局協力者の物心両面における労苦に対する実費謝礼でありまして、そのときどきの協力者のそのような労苦を勘案いたしまして決定、支払っているわけでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 大体の、もう少し具体的な基準というものがあるわけでしょうが、それを聞いているわけです。そのときどきの労苦といったような程度では非常な、やっぱりアンバランスができたりしておかしなことになる。これは国費の使い方としてはアンバランスができて、おかしなことになるのですが、もう少し具体的な基準ですね。
  65. 関之

    政府委員(関之君) この額は、もう千変万化、ピンからキリまであるというような次第でありまして、ごく低額のことになりますと、数百円から、高いのになりますと数万円のものがある、大体そういうような範囲で行なわれております。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 高いもの、数万円なんというのは、抽象的に説明していただくと、どんなような場合に出るわけでしょうか。
  67. 関之

    政府委員(関之君) 結局それらは情報調査の必要上の——情報の重要ということはまた一つ問題になるわけであります。またそれと同時に、その協力者の労苦、物心両面のいろいろな労苦、それらを勘案をいたしまして決定するわけであります。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、まあ三十六年度はまだ全部はっきりわからないでしょうが、昭和三十五年度をとってみた場合に、そういう大口の謝礼をもらったのは何人くらいあるのでしょうか。
  69. 関之

    政府委員(関之君) 今のお尋ねの大口の点でありまするが、ちょっとここで全体の数字がどうなっているかというふうには、材料を持ち合わしてありませんので申し上げかねる次第であります。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 こういう費用の清算といいますか、地方で使って上へ報告がくるわけですが、これはきちんと内輪でははっきりしておるわけでしょう、本省では。外部に対する発表等についてはそのまま発表する性質のものかどうかわかりませんが、まあそこら辺の扱いはどういうふうになっているのでしょう。
  71. 関之

    政府委員(関之君) 経理上の整理につきましては、きちんとできていると考えているわけであります。で、実際のこの取り扱いのやり方になりますと、中央におきましては私、そして地方におきましては管区の八人の局長が経理責任者に相なります。そうしてその金を渡しますと一々正確に受け取りを取りまして、その受け取りを保存いたしそれによって各局のものを整理し、そうして本庁においても同じような文書整理をいたしまして、それらによりましてそのときどきの会計検査院の検査を受ける、こういうことに相なっているわけであります。会計検査院の検査も本庁においては毎年受けているわけでございます。そうして地方局におきましてもすでに十数カ所、一年の間に二カ所から三カ所というふうに受けて今日まで至ってきておるわけであります。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 これは一々協力者から領収書などは取っているわけでしょうか。
  73. 関之

    政府委員(関之君) 原則として領収書を取っているわけであります。お金を渡したらその者からは領収書を取っております。ただ領収書が取れない場合が実はあるわけであります。調査官自体がある尾行をする場合に自動車に乗るとかいろいろな問題がありまして、調査官でなければ書けないような場合もあり得るわけであります。そういうような場合におきましては、調査官自体の氏名に、事情を説明して、各責任者、たとえば公安局長、地方局長がそれに保証をして、これはこういう金に使ったという意味を付記いたしまして領収書を明らかにいたしておる、こういうふうにいたしておるわけでございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 領収書の金額と実際に協力者に渡した金額との違いですね、こういうものは多少あるのじゃないですか、どうなんですか。昨年でしたか岡山で問題があったときに、あの中の一つの問題としてそういう問題も提起されておりましたが、まあその違いがあるということが、すぐ調査官が横領したということに結びつくものではないかもしれません。まあほかの調査活動費説明の仕方がむずかしいのでそういう領収書にしておるといったようなことですね。そういうようなことは絶対ないのでしょうか、どうでしょうか。
  75. 関之

    政府委員(関之君) 領収書の受取りの金額と実際渡した金額とは一致するものと、こう私は思っておりましたが、この間の岡山県の事件でございましたか、実際に渡した金と、そうして本人と連絡する場合にあるところを借りた、借りた金を含んでの受取書を取った。こういうことがあすこで明らかになったわけであります。そしてそれはむしろ本人に実際渡した金額を本人に書かせる。そういうふうに使った金は使った金で別個に書くのがよろしい。こう思いまして、そういうようなふうに処置するように全体に指示いたしたのでございます。まあ今のお疑いのような点もございまして、できるだけ——できるだけじゃない、やっぱり実際に渡した金は渡した金で正確に、その他の金はその他の金で正確に、こういうふうに区別すべきものと考えて、そういうふうに指導いたしておる次第でございます。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 次に公安調査官による人権侵犯事件について、資料をいただいているわけですが、結局これは盗聴器の問題なり、あるいは調査依頼をする場合に無理に押しつけたといった中身のものではないかと思うのですが、一々の件数だけしかここには書いてありませんから。ところがこの表を見て不思議に感ずることは、該当しないというのが相当出ております。人権侵犯に該当しない。ところが該当するけれども処分を猶予する、あとのものは全部こうなってしまっているのですね。また多少疑わしいというようなやつは全部控えている。それから事実が認められたやつは全部処分猶予になっておりますね。それでともかく非常に軽い勧告とか、そういうことすらも一つもされておらないのですね。これは多少私は調査官の人権侵犯事件の扱いとしては甘いのじゃないか。この表を見て感ずるわけです。  それからもう一つは未処理の数が一番多いのですね。しかも古いのは昭和三十年度のものが一件まだ未処理になっている。昭和三十一年度のものが二件、三十二年度のものが二件、これが未処理の中に入っているわけですね。人権侵犯事件なんかについて未処理のものをそんな古くまで放っておくということは私はおかしいと思うのですね。だからこれは推測をたくましゅうして、はなはだ恐縮ですが、おそらくこの未処理というのは事実はある、そしてこれは処理するとしたら、やはり何らかの処分はしなければならないというものに該当するやつじゃないかと思うのですね。だからそこでこの未処理という格好でいつの間にかたな上げにしてしまう。まあ悪く推測すると、この表から以上申し上げたような感じを受けるわけですが、どうですか、当たっておりますか、私の推測が。
  77. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねのこの表は人権擁護局からの表でありまして、このただいまのいいかげん時間をほったらかして未処理で、まあやみの中に葬ってしまう、こういう態度ではないか、こういうお尋ねでありまするが、私の公安調査庁といたしましては決してそんなことは考えているわけではございません。事件が起きます、起きますと、まあおおむねは外のいろいろな調査をした対象の人であるとか、あるいは団体のほうから抗議を受け、あるいは抗議を受けなくてもみずからの方法で私どもは問題に取り上げるわけであります。そしてそれに対しまして中央の責任の部局においてこれを検討し、そして幹部会にかけてそれぞれの措置を実はとっているわけであります。部内においてはいいものはいい、悪いものは悪い、特に調査権の限界その他の問題でいつも苦労いたしまして、ここは行き過ぎだ、ここはよろしい、こういうふうに区別して指示いたしております。そしてそれによって行政、法律上の戒告、訓告、あるいは各種の処分をいたす場合にいたしておるわけであります。今日までの例といたしましては、これを別にその団体のほうからえらい告訴するというふうに叱られたわけでもございませんが、ある団体の中の共産党の様子を調べる、そのときにその団体の中の団体自体の情報をもらいたいと、こういうようなことを言った調査官がおりますが、共産党の情報のほかに、調査対象でない団体の情報をもらうというのは、これは法律の二条、三条に反するからといって、戒告をしポストを変えたといういろいろな処置をとったわけであります。そうしていろいろ庁内で検討いたしまして、一応法律上はよかろう、二条、三条の趣旨からみてもこの程度はやむを得なかろう、こういう結論を出して、その次の問題として私の役所だけにとどまっておらず、検察庁検察審査会、それから裁判所あるいは人権擁護局、こういうふうに発展していくわけであります。人権擁護局にはそういう意味事件がここにきたかと思うのであります。それで、まあ告訴をして検察庁あるいは人権擁護局、検察審査会には、私どもはむしろ事件がそういうふうになるならばしていただきたい、そうして、そこで第三者的機関をもって公安調査官の行動がどこまでがいいか、どこまでが悪いかという筋道を一応第三者と申しましょうか、相当の国家の権限を持つ機関できめていただきたい、という実は気持でおるわけでありまして、そんなわけで人権擁護局の御判断も聞きたいし、あるいは検察庁及び検察審査会の御意見も聞きたいとこう思っておるのでございます。人権擁護局のほうの問題は別といたしまして、今日までその種の事件検察庁検察審査会にもかかりましたが、いずれも犯罪の告訴の嫌疑なしというようなものが大多数でありまして、積極的に公安調査官はこれは違法であるという御判断をいただいたことは一ぺんもなかったかと、こう思っております。全体の件数はたしか十数件に上るかと思っております。  大体そんな事情でありまして、そうかといって、それによって私ども安心しておるわけではないのでありまして、立法当時の趣旨にかんがみまして、とにかく自由人権の擁護という点については、まあ調べ方いかんによっては言葉だとか、あるいは連絡の仕方だとか、さまざまの問題でいろいろな問題を起こすからといって、私どもとしては機会あるごとにいろいろの説明をし、訓示を与えておる次第なのであります。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 人権擁護局長は来ておりませんか。——局長がいないようですが、法務大臣どうでしょうか、人権擁護局で扱っておる事件の表なんですが、昭和三十年、三十一年、三十二年あたりのものをいまだに未処理にしておく、こういうことは非常な疑惑を与えるわけですがね、あなたの所管の一局として、はなはだまずいと思うわけですが、突然にお聞きして、さあ中身もわからぬでお答えはしにくいかもわかりませんが、とにかく適当でないということははっきりしていると思うのですが、どうなんでしょうか。
  79. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま御指摘のこの人権擁護局から出しました資料を実は私見ておりませんでした。今初めて見まして、なるほどここに掲げられておりまする事件の未処理状況を見ますと、非常に古いものがあるので、今私ども見て驚くような感じであります。別途私が手元に持っています破防法四十五条の、いわゆる公安調査官が職権を乱用した場合に、それをどういうふうに処理したかという表を持っておりますが、これによりますと、昭和三十年、三十一年、三十二年、新しいものでは三十四年のもの、そういうものまでもすでに裁判所当局によって、はっきりと調査審議の結果、それぞれ処理が済んでおります。私はむしろこんな古い三十年のものにまだこんなものがある、三十一年、三十二年にあるというのはちょっと意外に感じます。つきましては、どういう事情でこういう未処理が残っておりますか、早急に人権擁護局当局について取り調べまして、適当な機会にお答えさしていただきたいと思います。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 ぜひそうしてもらいたいと思います。おそらくこの五件は人権侵害に該当するのじゃないかというふうにまあ想像するわけでして、個々の中身が明らかになるようにひとつ御報告を適当な機会にお願いいたしておきます。  それから最後に一点お伺いいたしますが、警察関係で、警備活動は警察法第二条ということでおやりになっているようです。第二条の解釈等についてはいろいろありますが、まあ本日はそれは抜きにいたしまして、この公安調査庁関係の破防法二十七条の調査については、なかなか微妙な点があろうと思うのですね。私のお聞きしたい点は、ある団体破壊活動をした、将来もそれをするおそれがあると、で、したがって、その程度がどの程度のものかということを明確にしないと、団体規制をするかしないかという判断がきちんとせぬわけですね。そのためにお調べになると、こういう概念だと私は思うのです。そうすれば当然そこで考えられることは、過去においてなるほど破壊活動があったかもしれぬ、ありましても、ある程度の大よそ調査対象になる期間というものが、そこで常識的に予定されるもんじゃないか。一ぺんありますと、それがともかく何年たってもそれを理由にしてやれるのだということにはならない、当然な論理としてですね。で、そういうふうに考えますと、今十団体左右対象にされておるようですが、必ずしもそれで合法的かどうかということが相当問題があるのじゃないか。私は事実関係は皆さんが知っているほどよくわかりませんが、ただまあわれわれが見たり聞いたり、いろいろ政治活動やっている間に経験するわけですが、そこら辺の感じからみまして、相変わらずそれだけのものを対象にしてやっているということに多少無理があるのじゃないか、というふうなことを感ずる場合もあるわけですが、その点どういうふうに理解しておりますか。
  81. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの問題はいわば全くの法律上の解釈の問題にこれはなるかと思うのであります。私ども亀田委員と同じようなふうの考え方に結局はなると思います。結局継続または反覆してという言葉の解釈に相なろうかと思います。団体がありまして、まず破壊活動を行ない、これに継続または反覆して破壊活動を行なう可能性がある場合には、規制処分の請求をし、委員会は何らかの処分をする、こういうことに相なるわけであります。で、継続とはどういうことかと申しますと、結局意思を継続しておる、こういうふうに一応法律の審議においてお答えしております。それでここにある団体があって、何がしかの破壊活動をなしたと、その後なるほど破壊活動は現実の行動に出なかったけれども、その綱領であるとか、あるいはいろいろのものであるとか、あるいは団体構成員の日常の若干の行動で、そういうものを幾らかやる可能性があると、おれたちは必要があればそういうことをやるのだ、そういうものが客観的にありますれば、やはりこれは継続と、こういうふうに見てよろしかろうかと考えておるわけであります。ところがそれらの団体が、もうわれわれはすっかりこういうことはやめたと、綱領その他もすっかり変え、あるいは人事の基本構成もすっかり変え、従来の性格が全く異なるとどうもそこからは継続ということは出てこないことになると思われます。  次に反覆ということはどういうことなのか、これは実は破防法の審議におきましても非常に問題になりまして、反覆というのも、まあそれは一回と二回との間に継続の意思は必要ないけれども、いわば繰り返しということに相なるでございましょうか。そうなると、十五年も二十年もたって繰り返すということも、これは常識的におかしい次第でありまして、その間におのずから客観的に反覆といういろいろの意味から見て、あるいはいろんな法律上の解釈としてあるものがそこにあると、したがってそれらの要件に合わないときにおいては、やはりこれは調査対象から落とすべきものに相なると私は思っておるわけであります。そこでそういうような調査指定し、一回指定した限りは永久にこれをやるというふうなものでは実はないのでございまして、そこには申し上げたような継続、反覆の解釈から、当然これは調査対象ではないというものが生じると私は考えております。  さて現在の左五つ右五つの団体でございますが、これらにつきましては、今のところは私はどちらかによってまだ調査をしなければならないものであろうと、こう考えておる次第であります。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば日本共産党の場合ですと、この破防法の五条の継続または反覆のどちらのほうに該当すると考えられますか。
  83. 関之

    政府委員(関之君) 一応の私どもの認定といたしましては、日本共産党が過去において破防法第四条第一項第一号の内乱類型の行為をいたさんとした疑いがあると、これが第一の前提になる。これは二十六、七年にそういう疑いがあった。それにその後その動向を見ておりますと、まあ党の立場からいうと、共産主義による革命ということに相なるわけでございまして、その革命も暴力を使っての革命と、こういうふうなことに相なると思います。そういうことが党の基本的な性格から考えられるかどうかという問題でありますが、これは最近出された綱領その他を見ておりましても、要するにそういう問題は相手の出方いかんだということが公式的な一応の主張に相なっておるのであります。これは国際共産主義においても常に同じような主張をいたしておりまして、それと軌を一にして、日本共産党においてもそういう態度をとっているわけであります。そういたしますと依然としてそういう意図がそこに蔵せられているというように私どもは考うべき問題だと、継続してそういうことを考えている、こういうふうに考えてみるべきものかと考えておる次第でございます。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 この日本共産党に破壊活動の事実がなければいかぬでしょう。どの事実をあなたのほうとしては前提とされているのですか。今内乱類似の行為があったとおっしゃいましたが、類似の行為とかそういうことではちょっとおかしいわけでして、事実はどれなんです。
  85. 関之

    政府委員(関之君) 私は例の共産党の武装綱領と称する、われわれは革命の準備と行動を開始しなければならない、こういうような文章を中心といたしまして四件ほど裁判所事件に係属いたしましたのがあるわけです。その中の裁判所の認定によってもすでに明らかにされたわけでありますが、そういうものが全般的に見まして、内乱の正当性、必要性の主張の文書になろうし、またそれらの暴挙があれば陰謀ということも考えられるということが出てくるわけであります。当時行なわれたのは、そういうような点において少なくともそういう疑いがある、こういうふうに考えられるのであります。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 破防法違反で起訴されたのは全部第一審は無罪になっていますね、ちょっとおかしいじゃないですか。
  87. 関之

    政府委員(関之君) 無罪になりましたのは、その文書自体の評価と違ったいろいろな理由によって無罪と相なったのでありまして、その文書自体の評価というのはまた別個の問題かと思うのであります。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 聞きのがしましたのでもう一ぺん……。
  89. 関之

    政府委員(関之君) 破防法のそれらの文書、破防法を中心の課題としての事件がたしか三件あるわけであります。第一審はたしか無罪になりました。しかしこれはその文書自体の内容的評価というより、むしろほかの理由によって無罪となったと、こういうことに相なるわけであります。   〔副主査退席、主査着席〕
  90. 亀田得治

    主査亀田得治君) ほかの理由かもしれませんが、結局無罪になっていると、そういう程度のことを根拠にして、ただ規制の前提になる事実があったのだと、これはばく然とそういう感じがするというようなことじゃ相当問題があろうと思うのですね。  だいぶん時間がたちましたから、これは私は常に疑問に思っている日本共産党だけでなしに各団体について、あなたのほうからこの団体についてはこういう事実なんだ、そうしてその団体はさらにこういう根拠があって継続または反覆のおそれがあると考えている、そこらの辺のちゃんとした説明を一つ書いて出してほしいと思うのです。できますね。
  91. 関之

    政府委員(関之君) どの程度のことが書けるか実は中にはここで御説明申し上げた分もございますし、あとでまだ調査の進行中なものもございまして、御期待に沿い得る程度がどの程度かわかりませんが、一応検討してみたいと存じております。
  92. 亀田得治

    主査亀田得治君) これは予算分科会でやっているわけですが、あるいは急には間に合わぬかもしれませんが、関係委員会等もあるわけですから、これは単に左だけでなしに右につきましてもお願いしたいのです。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。今の問題に関連して一点大臣にお伺いしたいと思いますが、今亀田委員は治安対策についていろいろ全貌をお聞きになったわけですが、最近私ども非常に遺憾な記事が一部新聞に出ておったわけです。池田内閣批判の声が最近たいへんに強まって、右翼団体のテロ事件が政府要人に対して行なわれようとする傾向かあるので、当局は池田首相を初め政府要人の身辺護衛を固めた、というような新聞の報道であったのでありますが、これは浅沼刺殺事件以来非常に私ども心痛めておった問題でございますので、この際本問題についての真相を大臣に一応お尋ねしたいと思います。
  94. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御質問につきましては、私の承知している範囲では、一、二の右翼団体と称する団体の構成員の一部の人たちが、池田内閣の施政の方針なりあるいは総理の演説の中のある個条を指摘しまして、そうして非常な攻撃の批判を加えておるということは実は報告も受けておりますし、新聞でも見たことがございます。しかしながら、それが不穏な行動に出るおそれがあるというようなただいまの御質問のようなことにつきましては、当局から何らの報告も受けておりませんし、また私もそうしたことについて何ら関知しておらないのが実情でございまして、どういうどころからそういうような憶測が生まれるか、新聞の一部にはそういうことを書いてあったのがあったことは承知しますけれども、どうもそんなことがどこにあったのだろうか、どこにあるのだろうかという程度の私の知識しかないのが実情でございます。
  95. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、この一部新聞の報道というのは想像に基づく報道であって、あまり信憑性のない報道であったと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  96. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 少なくとも私はただいま御質問のような趣旨に解してその新聞を読みました。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 警察当局にお尋ねをいたしますが、法務大臣御存じないというわけですけれども、何か政府要人に対する身辺護衛の線を強めたというようなことはないのでしょうか。
  98. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 今お触れになりましたことは、各地でやっております演説会に関連することかと思いますが、そういうことにからみまして直接警備を強めたということはございません。しかしテロ行為というのは、ある契機がございますとそれに刺激されて起るということがございますので、特に話題になったというような際には、関係の向き向きの方には、これは与党といわず野党といわずでございますけれども御連絡をいたしまして、御理解いただける範囲で警備を強めるということはございますけれども、今回のこの問題について、特に警備能勢を強めたということは私は聞いておりません。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 公安調査庁にお尋ねいたしますが、先ほどの警察当局からの説明では、右翼の激しい行動をするようなものは、大体一人一党であるというような御説明があったわけです。しかし現に公安調査庁のほうでは五つの右翼団体を危険な団体として指定されており、それぞれ調査をされておるようですが、これもまた一部新聞の報道でありますが、全国愛国者団体という全国に約四十八の団体を網羅する、街頭に激しい行動をする団体、最近何か危険団体として指定されたようなうわさも聞いておりますが、先ほど五つの危険な団体をあげられましたが、全国に四十八も団体を持つというような、しかもかつては浜口首相をピストルで狙撃した佐郷屋氏が会長になっておるようでありますが、こういうような団体内容についても、公安調査庁等ではお調べになっておるのでしょうか、この点いかがでしょうか。
  100. 関之

    政府委員(関之君) これは俗に全愛会議と称する四十八あるいは五十ぐらいかと思いますが、そういう個々の右翼団体の連合体、協議会的な組織でございまして、三年ほど前にそういう協議会、連合体として結成されて今日まで運動してきておるのであります。そういう連合体的な組織があるということは私どもも承知はいたしておりますし、一応動向としては私ども注意しているわけでございます。先ほど申し上げた団体もこの中に加わっているものもありまするから、私どもはそれらのものはそれで一応調査していく、こういうことに相なっております。
  101. 高田なほ子

    高田なほ子君 先ほど指定をした危険な団体もこの四十八団体に加わって、そして全国組織にそれが連なっているとするなら、当然この全愛会議等についてもこれは調査対象にすべきであると私は思うのですが、公安調査庁はそういう点をかご抜けにしているのではないですか。
  102. 関之

    政府委員(関之君) これは破防法から申しますと、やはりこの第四条を中心とした暴力主義的破壊活動というものに関連する何がしかの行動がそこに見える、陰に陽にどこかにそういうところが見えるということが、調査をいたす第一の前提になるわけでありまして、ただいまのところ全愛会議というその連合体自体がそれに触れるような行為があるかどうかと申しますと、どうもそれが見当たらないのであります。しかしながら一応その中に指定した一、二の団体も入っているようでありますから、その団体にも影響があろうと一応は注意をしておりますが、今指定して正式に調べるという段階にはまだ至っていないかと、こう考える次第でございます。
  103. 高田なほ子

    高田なほ子君 左の場合は日本共産党が破防法で指定された団体です。日本共産党の関係していると思われるような団体もまた危険な団体としてこれは破防法によって指定されている団体であります。そうだとするならば、右のほうも、この全愛会議の中には公安調査庁が危険な団体として指定をしたものは一つのみならず二つも三つも入っている。それなのになぜこれが公安審査会のお調べになって、処分規制の申請をされないか、私は非常に疑問に思う。左の運動にはむしろ非常にきびし過ぎるほどのきびしさ、先ほど亀田委員が指摘したとおりであります。しかし右のほうには現にそういう動きがあって私どももかなり注目しているのに、この公安審査会の調査の結果について、さっぱりその規制の申請をなさるような動きも見えない。これでは野放しではありませんか。そういうわけだからこの政府要人にテロがあるのではないかなどというふうな新聞報道も出てくるのではないか、こういうふうに考えます。これはもっと御調査になる必要があると思いますがどうでしょう。
  104. 関之

    政府委員(関之君) 私ども調査の態度でございますが、たとえば今の全愛会議の中に一、二の指定した団体が入っているから、全愛会議全体も調査の正式な対象として取り上げてみろと、こういうふうなお話でありますが、これは左も右も実は私どもとしては同じ法律上、一応平等として考える、そしてすべての措置を取るのが正しいことだと考えるのであります。したがって共産党自体が他の共闘組織に参加しているということもある場合もあるわけです。たとえば安保共闘とか、あるいはさまざまな問題についての共闘組織というものがありまして、共産党も正式に参加しているわけでありますが、そうかといって破防法でその共闘組織自体を調査対象とするかというと、これはその組織が破防法に触れるかどうかという点からきめるべきであって、共産党が共闘組織の中に入っているからというだけではどうにも問題にならないのであります。ただしその中における党の動きというものはこれは見る必要がもちろんありますが、大体そういう考え方でありまして、これは左も右も同じであります。なるほど指定団体が一、二そこに入っておりましても、全愛会議自体はまた別個の問題で、その団体自体がどうか、こういうふうにこれは考えてみなければならない問題なのでありまして、そういう考え方からこの組織に対する調査考えていきたい、こう考えております。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 警察当局にお尋ねしますが、やくざの右翼団体の中に佐藤榮作親衛隊と称するものがあるそうですけれども、これは同じ国政に参与する者として、私は社会党ですから佐藤榮作が何言われたってかまわないという気持はありませんので、はなはだ不明朗なことです。一体やくざの右翼団体というものは今どのくらいあって、どういうお取り締まりをしているのか。特にこれは暴力を使ったり脅迫をやったり、最近の新聞の社会面をにぎわす背景にはこういうものがいつでも出てきておりますね。一体佐藤榮作親衛隊というものはどういうものなのか。やくざの右翼団体というものは今どういう動きをしているのか。これは警察当局からお答えいただきたい。
  106. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 佐藤榮作親衛隊というものについては私もつまびらかにいたしませんが、いわゆる博徒、テキ屋、興行師というものの団体が幾つかありまして、そのうち特にいわば右翼的なと申しますか、反共的あるいは国を建て直すのだという意味の政治的な綱領を掲げまして、みずから右翼団体と見られる団体になることを望んでおると思われる団体もあるわけでございますが、そういう団体の中で、あるいは従来の関係で個人的に政治家に便のある方もあるかと思いますが、特にだれだれ親衛隊ということで公の行動をするということももちろんございませんし、そういう意味で別段特定の人と関係はございましても、警察的な取り締まり対象になるということはないわけでございます。
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後法務大臣にお尋ねをしておきますが、これも一部の新聞の報道するところによると、最近憲法改正に対して弱腰である池田内閣、あるいはまた政防法についてもどうもしっかりしない池田内閣というようなことで、いろいろ右翼の動きがいろいろの形で出ていることは新聞紙上でも、右翼の持たれた右翼の会合の席上でもそういう空気は察することができるのですが、直接最近の近く行なわれる自民党総裁選挙にからんでの派閥争いが、一そうこの動きを活発にさせているという報道もあるし、また全国的な右翼の動きの陰に、やはりこの自民党の派閥争いというものがいろいろな作用をしている、というようなことも伝えられている。私はこういうことは信じたくありませんけれども、新聞が必ずしもうそだけを報道しているとは思わないのです。何かそこに暗い陰のあるがゆえにこういう報道になって現われてくるのじゃないかと思うのです。で、これは法務大臣だけの責任ではないけれども、池田内閣の閣僚として、特に総裁選挙にからむ派閥争い等が国論を二分するような動きになることについては、相当やはり政治的な責任をお感じにならなければならないと思います。法務大臣は特に治安の責任を負われる閣僚の一人として、本問題についてどういう御態度をお取りになっていこうとなさるのか、御所信を承りたいと思います。
  108. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御質問の要点は、自民党内における派閥間の争いがいろいろ外部を刺激し、そのためにかえって不祥な事件を起こすような心配はないか、それに対する考えはということでございますが、私自身は、党内におのずから政策的にあるいは思想的に、同じ保守党の中におきましても、同気相求める者はおのずから交際が深くなる、あるいは一緒に研究をするという機会があり得ることは、これは私は自然の勢いで押さえることのできない問題だと思っております。しかしそれがいわゆるそれぞれ幾つかの派に分かれて、そうして党内で大きな見地から志を同じゅうしておりながら、ある部分について考えがたまたま幾つかに分かれたからといって、それが党内で派閥争いをするというようなことは、あってもならないし、私はないと思っているのです。むしろ私はあるいは寡聞か、あるいはのんき過ぎるのかもしれませんが、なるほどいろいろなグループのようなものがあることは、これは承知しております。しかしそれがお互いに自分たちの派と他の派との間に猛烈ないわゆる派閥争いというようなものがあって、そうして事々に国政の上にまずい影響を及ぼすというようなここは全然ない、むしろお互いに大ぜいの人が寄り合って公論を尽くし議論を戦かわしていくことによって、党全体としての行くべき道がなるべく間違わないように、互いに意見を述べて相牽制し合ってそうして中庸を得た結論を出していくためには、まあ好ましいことではありませんけれども、ある程度のグループがあることはこれはやむを得ないのじゃないかしらと、こういうふうに私は考えておるのであります。したがいまして、今後この問題がいろいろな方面に悪い影響を及ぼすということについては、そういうこともなるほど火のないところには煙も立たぬという言葉もありますから、十分われわれはその党に属する者としては注意をして、そうして誤まりなきを期していかなければならぬと、自分みずから考えるのみならず、なるべく自分の話し合える人たちにはそうした考えでいくように話し合いをしていきたいと、こう思います。のみならず新聞その他にときどきこうした批判もあるようでありますが、これはあえて自民党だけじゃないので、社会党さんの中にもやはりどういう派がある、ああいう派があるということは、やはり新聞紙上伝えられるところであり、また巷間にも、うわさされるところであります。それまた同様にほんとうに大所高所から国政を論ずる場合には、公論を尽くし十分議論を尽くして、そうして最終的には皆が同じ党に属する者は同じような方針に従って行動をする、これが私は政治のあるべき姿じゃあるまいか、ただそれが行き過ぎになって、そうして非難をこうむるようなことがあってはならない、かように考えておる次第であります。
  109. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の質問に対して今私の党の御批判をいただいてたいへんありがとうございましたが、法務大臣はたいへん善良な方ですから、私の質問がちょっと婉曲だったものですから、御理解がつかなかったと思うのですが、世間では反池田勢力の背後にはやはり右翼というものの大手筋がつながっていると見ているわけだ、これは世間の見方です。その見方について、これはほんとうだとかうそだとかいうことは、これは私大臣から回答を求める必要はないのですけれども、反池田の勢力がそういうところにつながっているおそれがあると世間では見ている。だからかつて法務委員会でも非常に問題にされたように、時の法務大臣がやくざの葬式に花輪を贈ったり、今日でもなおかついなかあたりでは平気でそういうことがやられている。政界とそういうやくざ、右翼とのつながりというのはなお今日断たれない。反池田勢力がそういう筋とつながっている、こういう派閥なんです。私は政策で議論することはどうじゃこうじゃなんということはちっとも考えない。またそのことについては大臣と同感です。だがしかし、今こうした右翼の問題が質問に出ているので、私は失礼だと思いましたけれども、総裁選挙にからんだ派閥争いがむしろ右翼勢力を助けるような、そういうことを招くことがないようにということを申し上げた。だから私の質問の要点とちょっと違ったふうにお答えになったのですが、けっこうです。私は何も自民党を非難しようと思って言っているわけじゃないのですから。ただしかし今日政界がやくざの右翼団体とただ一人でも手が切れないというふうなことは、これはやはり事実だろうと思う。そういうことについて法務大臣は断固としてやはり主張なさるところは主張なさるべきではないか、という私は趣旨であったということをあらためて申し上げます。
  110. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 反池田の勢力といいますかそういうものがあって、それが右翼のやくざの団体関係が非常に深いということを前提としての御質問でありますが、私はそういうような事実を全然存じません。また一体そういうことがいえるものかどうか、そんな事実があるのだろうか、むしろ不思議にさえ感じられるのが私の心境でございます。
  111. 亀田得治

    主査亀田得治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 亀田得治

    主査亀田得治君) 速記をつけて。
  113. 藤田進

    ○藤田進君 この機会にいろいろなことを言っても、皆さんのほうで適当に答弁をされ、廊下に出ればあとはもう知らぬということを私十年ばかり見て、質問すること自体があほらしくてという気もする。やめたらいいということなんですが、やめないで今度こそと思って申し上げるわけですが、一般の住民が直接接触を持って不愉快に思うし、かといってなかなか警察なんかにも後難をおそれて行かないという事件が数々あり、私自身も体験があります。直接警察庁としてやりにくい面もあるでしょうが、ここでそれぞれの警察署長をお呼びする繁雑なこともできないし、ぜひひとつやっていただきたいと思うので申し上げるのでございますが、これは私自身が経験していますが、二、三日前にあるお寺に行ってみますと奥さんが訴えている。これは実例を申し上げるわけですが、それはシャベルを持って球根を植えてあげますといってきた。十五円か二十円のものを、そんな断わらぬでもいいじゃないかと言ってそこらへ勝手に植え始めた。それじゃ一つだけですよと言ったけれどもそこらを掘ってやった。たまたまアパートの家賃かなんかを一万円ばかりそこへ持ってきた。持ってきた人は懇意な庭師だと思ってお金を出した。結局八千五百円くれと言ったそうですが、命が危いと思って八千円出した。すぐ電話があるので警察へかけた。しばらくして警察が来て何だかんだと事情を聞く間に相手は逃げてしまって、むすこにオートバイで追いかけさせたけれどもどうにもならない。結論としては、今度こういうことがありましても警察へ言おうとは思いませんと言うのですよ。それだけあれこれ調べて一向犯人を調べようとはしない、こういうことを言っております。  それから、警察もほんとうにやるつもりならやれると思うのですが、ここにおられる皆さんでも経験されるでしょうが、たとえば日比谷劇場付近に、スカラ座なんかのあの辺に、ひけどきに行ってごらんなさい。駐車してはならぬという看板を向こう側へ向けてしまって、暴力的白タクがずっとやってきます。毎晩です。どこにも一向に警察が一人いるわけじゃない。やみくもに乗せられて行っておりますが、それがあとを断たない。  それから、皆さんのような高官であられますと、地方へ行かれても駅に出迎えに出られて、ちゃんと自動車が待っていて、案外知られていないと思いますが、これも一つの例ですが、大阪の駅へおりてごらんなさい。タクシーがずいぶん並んでいます。二カ所に並んでいて、タクシーに乗って行くのだが、そこへ行きますまでに必ず客引きがやってきます。タクシーですか、そうだ、それじゃ安く行きますと言うから私は、タクシーに安い高いはないはずだと言うと、それでは普通で行きます、僕は白タクはいやだ、白タクではないと言うから、行ってみると、ずらりとたむろしている。これは白タクなんです。しかし、婦人なんか気の弱い人は乗っています。そこで私は公安官がいるので、これは駅の構内だから何とかしてくれと言ったら、これは管轄が違う、これは警察のほうなんだと、いつもこういうことなんですが、警察のほうも手をつけてくれないし、暴力団が背後に実はいるのです。あなたも投書されたらどうですか、こういうわけですね。これ見てごらんなさい。依然として消えていない。車のナンバーなんか、私なんかしろうとでも手帳につけていますよ。  こういう市民に直接接触しているところというのが、何というか、一つの団体みたいなことになっているとなかなか警察が手がつけにくいという実態はどういうところにあるのだろうか。まことにああいうものこそ、それじゃ申告して、あとおそれないで届けてくれ、裁判所にも証人として出てくれということにもなるものですから、だれでも少々損をしたって金を出しておけば済むのだということに相なります。私も大阪へ行って徹底的にやってやろうかと思うが、時々大阪へ行くのだから、暗闇でやられるのもいかぬから、こんなこと警察で知らぬはずはないからと思って期待する。なかなか顔見知られてつけられても因る、こういうこと、私自身の経験ですが、大きい問題なんです。手も足りないでしょうが、市民としては現実に今日現在でもあります、そういうことをもっとスピーディにやれないものか、時々一せい検挙もあるように思うのですが、あとを断たないですね。  警察だけ責めてもいけませんが、そろそろ春になると押し売りも相当来ます。皆さんの家庭にも来るし、われわれのところにも来ます。もう一つの例は、渋谷あたりで、これは常習犯らしいのですが、千円くらいの毛布をとにかく押し売りです、とうとう家までつけてくるというような状態、これはあとあと火でもつけられたり、事件なんかあったりするといけませんし、一たん金を出そうとすると、五千円か一万円くらい言うのですよ、それを四、五千円くらいでこらえてもらう。それからすぐ警察へ行く。それから徹底的に調べようと思って当該交番へ行くと、ああ毛布なんでしょう、だめなんですよ、こういうことです。てんで取り合わない。向こうではよく知っています。こういうようなことが世の中に、はびこっているのに、どうしてもっとできないものだろうかと思うのですね。小さい問題のようで、案外被害者も多いし手のつけようがない。警察でもできないことを自警団作ってやったってとてもできるものじゃない。ここだけで話を聞いて調べさせまして十分検討させて云々ということでなしに、苦情もあれば聞きたいし、もっと私の気持としては、こういうものもやってもらいたいというふうに思うので、御答弁いただきたい。
  114. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 実は今私の仕事としては所管でございませんけれども、しかしながら私も実は一年半前に神奈川県の本部長で、第一線の経験をいたしまして、ほんとうに今お話のようなことを承ると、いても立ってもいたたまれない気がいたすくらいでございます。実は私も第一線の本部長といたしましては、小さい事態を軽視してはいけないということを、私は着任の第一に要望いたしまして、そういうつもりでやったのでございます。したがって決して警察がこういうものを取り合わないという態度でやっているとは思いませんし、一生懸命やっているのであります。ただいまお言葉の中に言いわけもあるだろうということもございまして、決して言いわけのつもりではございませんけれども、私はその当時この問題について感じましたことでございますが、一つはこれは検挙いたしまして、まず裁判に送るわけでございますけれども、そういう際にただいまの裁判の手続が御承知のように公判中心でございますので、そこへ被害を受けた方々が行っていただくということが、これきわめて大事なことでございます。実は例はこの球根のような場合とは違いますけれども、どうしてもそういう話を聞いて、やりたいという事件で、一人やってくれるといいますか、公判に出て述べてくれるという方がありました。そして裁判までいきましたところが、どうしてもその証人尋問の日に出てこない、やはり考えてみたらどうもやめておこうという話になるということで、実はなかなかこういう事件としてけりがつかないことが実情でございまして、よく新聞にも最近出てございますけれども、終電車で何人かが一人の酔った人をなぐっているのを、五十人も六十人もいる人が見て何にも手を出さないというような状態が、実は事件を立てようといたしましても、ぜひやってもらいたいがおれは出ない、だれかほかの方で事件をひとつやってくれないかということを皆さんおっしゃるのでございます。これはしかし警察の立場では、被害者が協力してくれないから、こういうささいな暴力事件というものがあとを断たないと言う、被害者のほうでは警察が十分やってくれない、保護してくれないからこわくて言えないじゃないかという悪循環になっておりまして、これもどちらが立つかというと警察が立つほかないのであります。したがって、当時一生懸命やりましたことは、出ていただくということとともに、いわゆるお礼参りその他の被害者あるいは証人などの保護という点についても、できるだけ具体的に言いまして、地元の交番から必ず毎日そこに御連絡に行って、何か変わったことがないかということを必ず言いなさいというようなことまで言って、全県とはいきませんが、所によっては、それじゃあひとつ今までやられたことを話そうかというようなところが、ぼちぼち地区によっては出てきていただいたことを記憶いたしておるのであります。  それから第二の白タクの問題でございますけれども、これも実は神奈川で手をやいた問題でございます。一部には実は白タクのほうがかえって安くていいじゃないかとか、普通の円タクが乗車を拒んだりするのに白タクはやってくれるから、ああいうものは何も一生懸命やらなくてもいいのじゃないかというようなことを言う向きもむしろありました。それより何より、実はあれを検挙いたしましてもこれは事件として立てることはきわめてむずかしいことでございます。あのときおりましても、実は尾行し、乗り込んだところに行ってそのお客さんに、——実はあそこは共済組合という形でやっておりましたが、ほんとうにあなたは組合員なんですか、ただ円タクのかわりに乗ったんですかということを確かめて、実は何百人もの方をそうやってお調べをして、これまた出ていただくことを皆さん御迷惑がっておりましたけれども、その一つの組織の何人かの運転手を送りましたけれども、これがなかなか裁判で、はかが参りません。そのものズバリでいける取り締まり法規が実はきわめて不備なわけでございます。しかしながらそうは言いましても、根気強くそういうところに警察官が出張って、少なくとも無理やりに乗せるというお言葉がございましたが、そういうことがあってはならないし、できる限りやはりそういうところには、手が足りないとはいいながら、外勤警察官を派遣をいたしまして、制服警察官がいるということで予防できるという、せめてそういう効果はねらうべきだと私も思います。決して口頭でここでいいかげんなことを申すというつもりではなくて、私自身も警察官の一員として、そういうことを何とかしてなくしたいという念願で常時おるのでございます。ただいまのお言葉につきましては、私も誠意を持ってなおこれが実効が上がりますように、関係当局にも働きかけるつもりでおるのであります。
  115. 藤田進

    ○藤田進君 それは確かに人権の擁護ということもやかましいときですし、よくわかるのですが、といって今の球根の例をとっても、来てからすぐ来ればいいけれども、それは人手が足りないので、きわめて迅速に来たつもりでしょうが、その来方がおそいのは仕方がないとして、来てから、いつごろどんな人相で何だかんだ調書みたいなものをとっておるよりも、とりあえず目撃した人と一緒にすぐ手配するなりして、それからあとでも交番でこの人だったかどうか聞けそうなものだと私は思う。それから駅とかそういう劇場その他のところは一台や二台じゃない、時たまにじゃないんだから、一人ぐらい交通巡査だって来ていればそういうことも防げるんじゃ、ないだろうか、というように私ども感ずるんですけれども、一向に、ほおってあるから、公安官も言うように、あれはあとに暴力団がいてなかなか警察も手を焼いていてどうにもならぬのです、投書でもされたらと、こういうようなことになってしまっている。公然とやっておる。少しやり方がありそうなものだと思います。
  116. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お言葉のとおりでございまして、私ども、手が足りない、人が足りないというのはすぐに言うことでございますけれども、しかしながら今のわが国において、そういう意味でたよれるのは口はばったいようでございますけれども、市民の方々は警察をたよっていただくほかないのでございますから、なおそういう意味ではひとつ駑馬にむち打って努力をいたすつもりでございます。
  117. 亀田得治

    主査亀田得治君) 暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会
  118. 亀田得治

    主査亀田得治君) 委員会を再開いたします。
  119. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは裁判所にお尋ねをいたします。  裁判所予算は例年予算委員会、あるいは分科会等でも問題にしてきたところですが、御承知のように裁判所予算というのはたいへん少ない、新長官はこの予算の推移についてまだお詳しくないだろうと思いますから、私のほうから煩瑣を避けるために数字を申し上げて、今後の対策を伺いたいと思います。  司法権の独立ということをよく叫んでおるわけですが、裁判所予算はたいへんに、日本は一流の国だというけれども、少ないわけです。数字的にいうと、昭和三十年には全予算の〇・九二%です。三十一年はこの数字よりは下回っています。三十三年は一番これは事件の数の多かった年ですが、この年にはさらに下がって〇・八四八という数字です。それから三十四年、五年と下降を続けながら昨年は〇・八六八、こういう数字が出ています。ことしの裁判所の占める予算を先般委員会で伺いましたら、数字をあげることができなかったようでございますが、私が計算すると〇・七六八という数字が出てくるのです。予算面では若干ふえているようですが、国の全体の予算の中で占める裁判所予算というのは非常に少ない、一%に満たない。これは世界各国でも例のないところだと私は、思います。この原因はどういうところにあるのか、いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、一体この下降線をたどっていく予算について、新長官はどういう御感想をお持ちになっていらっしゃいますか。
  120. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判所予算が国の全予算のうちに占めるパーセンテージが非常に少ないということは、御指摘のとおりでございまして、私たちも年々その向上に努力をいたしておるわけでございます。しかしこれは古いことから考えてみますと、なかなか予算的の措置が従来思ったとおりにできなかったということが、順次尾を引いているというようなことにもなるかもしれませんでございますが、まあ国の裁判の仕事そのものが人あるいは物というようなものについておりまして、そのほか非常にこれを飛躍的に増加するというようなことも少ない庁であるというようにも私は感じておるわけなんであります。まあ一番裁判所として根幹になりますのは裁判官でありますが、その裁判官もこれは非常に増員いたしまして、事件処理に対処する必要があるわけでございますが、裁判所からも年来御説明申し上げておりますように、なかなか裁判官を得るということも困難な状況にありますので、最小限度これが充足できるような見込みのもとに予算の請求をしておるような次第でございまして、裁判所としてはこれで決して満足しておるわけではないんでございます。庁舎にいたしましても非常に老朽のものがありまして、われわれ裁判所におります者としては、ぜひこれを新しい使いよい合理的なものにしたいというふうに考えておるわけでございますが、これはやはりいろいろ営繕のほうの予算関係でありますか、これもまた飛躍的に短い期間に多くを望むということができないような現状であるようであります。これからこれをどういうふうにして順次増大さしていくかというようなことにつきましては、根本的にもいろいろ考えるべき問題がありますので、幸い当院のほうに内閣のほうから御審議を願っております臨時司法制度調査会等におきまして、そういう根本的な問題も御討議願えるようなことになれば、あるいは飛躍的な予算増額ということも考えられるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  簡略でございますが、その程度で一応お答えといたします。
  121. 高田なほ子

    高田なほ子君 調査会の設置に大へん期待を寄せておられるようですが、この調査会法がかりに通って実現するということには大体二年くらいの歳月が費やされる。それから調査をしてそれから費用を、ということになるとこれは必ずしも長官が御安心していらっしゃるというわけにもいかないと思う。この苦慮はしておられるようですけれども、どうも裁判所予算のとり方というのは何といいましようか、二重予算の請求権もあるわけですね、財政法の十七条、十九条で。それほど司法権の独立ということについては予算もまた独立して請求できるだけの権能を持っているにかかわらず、このような予算の後退をみたということは、これはおそらく私は最高裁の腰の弱さがこういう禍根を残してきているんだろうと思うのです。非常にこの点については残念なことで、新長官はこういう点を調査会ができればというのではなしに、来年はどういうふうにするかという今から御覚悟を示されるべきではないかと思います。  それから事務当局にお尋ねをいたしますが、問題の裁判費です。今裁判官の充足にいろいろ隘路があることを言われましたけれども、そのことも認めます。しかし裁判費そのものが予算が減ってきているわけです。裁判をするその構成自体についても問題がある。裁判費の場合は、これも長官に私のほうから御説明しますと、三十年には裁判総額の一三・一%、それから三十三年は事件がふえておりますので一二・四%、三十四年はぐっと減って一一・五%、三十五年度はさらに減って一一%、それから昨年はさらに減って九・五%になっている。三十七年度は一体何パーセントに裁判費がなるのか。こういうわけですから、裁判官の労働は戦争前の約三・七倍の過重労働を強いられている、事件数が多いから。実にこの下降する数字というものは容易ならざる数字です。あわせて旅費等についても、これも三十年以降あとでひとつお尋ねいたしたいのですが、非常に減ってきております。驚異的な下降数字をたどっております。おそらく各省でこういうようなばかげた予算が平気で素通りしているということはあり得ないと思います。こういう点でひとつ三十七年度裁判費はどういう率になっておりますか、事務当局から……。
  122. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 三十七年度裁判費総額が十六億四千八百四十二万三千円でございまして、裁判所予算全体に対します比率は八・八%ということになっております。
  123. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の説明のように昨年はどうにか九・五%で食いとめたわけです。今度は今説明されたとおりの八・八%、このように下降線をたどっておる。こういう状態でございますから、問題のあるときには、事務総長としては二重予算というものについても、ときには腹を固めなければならぬときもあるんじゃないかと思います。この点についてどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  124. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判所は、財政法によりまして御指摘のように、いわゆる二重予算の権限を与えられておるわけでございますので、従来とても裁判所はその点を全然看過しておったわけではないわけでございます。将来についても同様でございますが、これはいわば例外的なものというふうに一応法律の上では解されますので、われわれとしては常に慎重を期しておるわけでございます。したがって御指摘のように将来そういうことがどうしても必要ならば、決してこういう措置に出ることをちゅうちょするものではないのでございます。
  125. 高田なほ子

    高田なほ子君 たとえば最近の交通事件の例を見ましても、たいへんに取り扱いそのものについても問題のある点が多いようでございますが、昨年度交通事件の案件等を見ましても、六十三万件というのが交通事件として新しく取り上げられた数字ですが、裁判所はこれに対して既裁件数をやはり六十三万件というふうにあげまして、かなり裁判のスピードは進んでいるように数字の上では見られるわけです。しかし東京家庭裁判所の交通違反事件処理状況を見ますと、わずか室長を含めて十五名の調査官交通事件を担当しているようです。昭和三十六年度東京家裁が受理した交通違反件数は十一万四千二百九十六件、過失致死、それから傷害事件が約二千件、非常に多い。こういうのをわずか十五名の調査官が担当してそうしてこれを処理している。ですから一人の調査官は一日に六百三十五件の件数を扱う。一件について取り扱う時間はわずかに四十秒という驚異的な数字を出しております。しかしこの審判部での審判を私はこれがいいとか悪いとか申し上げませんけれども、少年事件そのものの性格からいっても、このようなスピード判決が少年の将来にどういうような影響を及ぼすかということを考えたとき、これはまた裁判所予算の少なさが、こういう少年に対する裁判所残酷物語を現出している。できればこの少年事件等の激増にかんがみましても、本年度予算は三十名の調査官をふやしたようなところでお茶を濁しておるようですけれども、それでは裁判所のお役目が果たせないのではないか。こういう非常事態に直面しているのですから、私はくどいようですけれども、二重予算というものによって請求権を発動されるべきだ、必要があればでなくて、現に必要であるという認識を持つわけです。裁判所のほうは必要はないという御認識に立たれておるのじゃないかと思われますけれども、こういう事態は非常事態というふうにはお感じにならないでしょうか。
  126. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 交通事件が非常に激増いたしまして、したがってまた裁判官、調査官等の非常な手不足が生じ、その結果としてあるいは裁判、審判等に十分でないものがあるのではないかということも十分考えられるのでございますが、先ほど申しましたように、裁判所といたしましては、裁判官の充足ということが一番根幹でございまして、これが充足されませんことには、最後の決断をする場所がないわけでございますから、もちろんその補助機関となる職員をふやすことも必要でありますけれども、またそれには一定の割合があるわけでありまして、そういうことは十分考慮いたしまして、この予算を請求しておるわけでございます。  この機会に申し上げるのは適当ではないかもしれませんですが、裁判官の不足というものは非常なものでございまして、私もずっと古うございますが、前の東京高等裁判所昭和二十年からおりましたのですが、一人の裁判官が転任をしあるいは退職するというようなことになると、なかなかあとが埋まらないというような実情なんでございます。これは全国的に見ましても程度の差はあるかと思いますが、同一の状況と思われるのであります。ですから私たちといたしましては、非常にたくさんの裁判官を増員して、それに伴ったいろいろ補助の職員、さらにまた庁舎整備等も十分考えたいと思うのでございますが、何分そこに非常な隘路があるわけでございます。で、裁判官がどうしてそういうふうに少ないかというふうな問題につきましても、従来裁判所から御説明申し上げておることと思いますが、やはり給与の問題、任用資格の問題等について、抜本的にこれをやはり考慮する必要があるというふうに考えられるのであります。国にはいろいろその給与の体系があるわけでありまして、裁判官は他の行政職員に比してよい待遇を与えられておりますが、それとてもやはり限度があるのでありまして、なかなか優秀な人材を裁判官に集めるということが困難な実情であるわけであります。私の考えておりますのは、そこが一番原因ではないかと思うのです。ですから、先ほど高田委員のおっしゃいましたように、臨時司法制度調査会などというものは、二年先にならなければその調査の結果が出ないかもしれないから、それを待っておってはというようなお話もございましたが、なかなか裁判官に対する給与、任用の問題は非常に影響するところが多いものですから、従来とても、まあ法務省の法制審議会等においても議論されておったように聞いておりますが、なかなか解決がつかないわけでございます。ですからそういう抜本的なものにつきましては、臨時司法制度調査会に非常な私たちは期待を持っているわけでございますが、しかし、それに並行いたしまして、まあできる限りのことはいたしたいと存じているわけでございます。
  127. 高田なほ子

    高田なほ子君 いろいろ隘路はそれはあるわけですが、その隘路について、ここでまたいろいろ質問する煩を避けたいと思います。ただ具体的に本年度の、今の御説明に従って、一つだけ具体的な解決の方法について、事務的なことになるかもしれませんが、お尋ねしておきます。  墨田の交通裁判所の混雑状態はこれは申し上げるまでもありませんが、三十六年度は三十六万件の交通事犯を処理したようです。この裁判所には裁判官が七名、それから書記官が十八名、こういうような構成でありますが、お一人の裁判官は月に四千五百件の事件を取り扱っておる。ですから一月に百五十件の事件処理されているわけです。これは早急に改善すべきであるという声があるわけですが、何名ここに増員されることになりますか具体的に。
  128. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 墨田の簡易裁判所事件が輻湊しているということは、ただいま御指摘のとおりでございます。したがって、裁判所といたしましても、こういう交通事件の輻湊しているところに重点的に人を配分していくということは、十分考えられるわけでございます。ただ、最近世上にやかましくなっておりますとおり、交通事犯の処理については根本的にその手続を改革しなければならないという声が高まりまして、関係方面において着々その作業が進められているように考えている次第でございます。そういった手続の改正面というものも考慮に入れつつ、適正な人員配置したいというふうに考えているわけでございますけれども、ただいまのところそういったペンディングの問題もございますので、そういった点の見通しをある程度つけまして、こういった方面重点的に人を配分いたしたいというふうに考えている次第であります。
  129. 高田なほ子

    高田なほ子君 伺うところによると交通事件増加に伴って、最近警察、法務省、最高裁判所が打ち合わせをされて、伝えられているチケット制による処罰、こういう問題が巷間伝えられております。このことはどろぼうを見てなわをよじるのたぐいのような気がしないでもございませんが、さてその議論は別としても、憲法によって保障された国民の基本的な権利ですから、事実上裁判官によって裁判を受けなければならないのに、科料だって罰金だってこれは刑罰ですわね、そういう刑罰をチケット制という形で裁判を受けないでこれをやるということについては、私たちとしては疑問なしとしない。こういうようなチケット制が実施されるということになると、裁判というものがほんとうの意味での人権を擁護する建前に立ち得なくなるという問題も含まれておるような気がします。こういう問題が今出てきましたから伺いますけれども、最高裁としてはこのチケット制による、裁判をしない科料や罰金、こういうような処分というものについてはどうお考えになるか。また法務省竹内刑事局長は法的にこういうことはどう考えられるか。法務大臣はこのチケット制についてどういうお考えをお持ちになっておるのか。どうぞお三人からそれぞれ伺います。
  130. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 交通事件処理のチケット制というようなことがいろいろ新聞紙上にも出ておりますけれども、私たちもその内容をある程度存じておるんでございますが、このチケット制というものはいろいろの意味があるらしいんでございまして、詳細に御説明することはできませんが、裁判所としてはあくまでも刑罰は最終的には裁判官によってなされるものだという建前をくずすつもりは全然ございません。現在交通事件処理等につきましては御承知と思いますが、刑事訴訟法に規定されております略式手続と交通事件即決裁判手続法によって、その主要なものがなされておるわけでございますが、ですから裁判所といたしましては、さらに事件処理の書類の形式その他について、できるだけ簡略な方法をとって迅速化をはかることはもちろんでございますが、先ほど申しましたように裁判によらずして刑罰を課するというようなことは全然考えておらないわけでございます。  ただ現在は警察庁あるいは法務省のほうの考えもいろいろございまして、私たちのほうにも御教示にあずかっております。内容等については今ここではっきり申し上げる段階でないと思いますけれども、私のほうの意見と根本的には、現在の段階ではあまり違った御意見は持っておいでにならないように聞いております。
  131. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 交通違反事件処理迅速化をはかりますために、現在の制度に何らかの改善を加えたらどうかというので、実は御承知と思いますが、政府の中で関係閣僚の懇談会、及び関係各省の事務当局が寄りましていろいろな広範にわたる研究をいたしております。そのうちの一つに今御指摘になりましたチケット制、あるいは切符制と申しますか、そういうような制度を取り入れてそれでもって簡易化、迅速化ができないかということを研究いたしております。今日までに新聞等に伝えられました案でおおむねは御承知と思いますが、詳細なことは御必要でしたらここに専門家の竹内政府委員もおりますから、後ほど御説明いたさせますが、大体の考え方警察庁案と文部省案と二つあったというふうにお考え願いますが、その場合に警察庁案で考えておりましたのは、われわれ必ずしもそれに同調できない点がありまして、その点の一番大きな難点はどこにあるかと申しますと、第一線の警察官が、軽易な交通事犯を起こしました場合に、これに対して直ちに、罰金ではない、これはあくまでも警告をしたその警告の手数料であるという名前のもとに、一種の罰金的なものがそこできまってしまって、それを納めればそれでその違反に対しての責任が済む、というような考え方の案が骨子になっているのであります。われわれは、それで参りますとただいま高田委員も御心配になり御指摘になりましたように、裁判官にあらざる者が裁判官と同じような結果になるような処理をする、というふうに思います。なるほど警告手数料を取るんであって、それは罰科金ではないんだと申しますけれども、それではどういう性質の手数料かと考えてみますと、どうもその内容は多分に制裁金である。どんな制裁金かといえば、間違いを起こしたから警告をした、その警告をしたのについて手数料を取るんだと、こういうのですが、どうもそれは制裁金、言いかえれば罰科金に実質的には類似するものではないか、こう思いますので、これは日本の現行司法制度のもとにおきましては、適当ではない、こういうふうに考えます。  そこで法務省案で考えておりましたのは、数年前からこの問題についてやはり研究しておりましたが、いよいよ問題が緊急性を帯びて参りましたので、アメリカでやっております制度をこちらに転用して、それに準じたものを作ってみたいというふうに考えました。この考え方で参りますと、現行の刑事訴訟手続なり刑法なり、あるいは当該特別法の罰科金の問題等々に何らの改正も加えないで、しかもやはり違反者の人権も擁護し、裁判を受ける権利も十分認めることができるという建前の方法があるものでございますから、それじゃそれでやってみたらどうかというので考えたのがいわゆる法務省案であります。これはいずれも、一方警察のほうはチケット制といい、一方われわれのほうは切符制と言っておりますが、両方とも切符と言えば切符、チケットと言えばチケットであることには間違いないのでございます。これらについて、いろいろ懇談会等で研究いたしまして、いろいろ相談の結果、さしあたっては現行法制に何らの変更も加えないでやっていけるように思える。法務省案のほうをとりあえず採用してやってみよう、どうしてもそれでもなお違反処理に不都合を来たす場合には、さらに新しい制度として警察庁でお考えになっている案もまた将来考究しようじゃないか、こういう態度に今決定いたしておるわけであります。間もなく事務当局間で、そのチケットの内容、切符の内容を相談の上決定いたしまして、これによってやって参りたい。この法務省案によりますれば、裁判所御当局も、現行の司法制度には根本的に何らの変更も加えないという建前でございますから、おおむね御賛成していただけるやにわれわれは今考えておる次第でございます。以上簡単でございますが……。
  132. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ただいま大臣から詳細に趣旨を御説明いただきましたので、つけ加えることも必要ないわけでございますが、ただ高田委員の御心配になっております裁判を経ないで罰金を取るんじゃないかという点は、さようなことは絶対ございません。ただいま制度としてございます即決裁判手続、または略式手続、この二つに乗せて使うのでございまして、ただ切符制をとるということになりますと、おそらく私どもの想像では、現在の手続に要する時間の五分の一程度に、非常に時間が少なくなるんではないか、こういうふうに思うのでございます。そうしてそれだけの余裕ができますために、事件処理もずっと円滑になりますし、またもっと多くの処理も可能になるというふうに考える。そこで、非常に時間が少なくなることは、違反者側の犠牲において、少なくなるんじゃないかという御懸念が同時にあろうかと思うのでございますが、そこで切符制というのが意味を持ってくるわけであります。切符制というのは、そういうふうに人権の点につきましてはさらに一寸を減らすことなくして、しかもその切符制の持つ合理性と迅速性とが加わることによって、つまり一々一件ごとに手で書いている手数を、切符によってその点代弁させるというだけでございまして、人権を全うしつつ現行の手続に乗せて、しかも五分の一の時間で事件処理していく、ちょっと申し上げますと非常によく聞こえると思いますが、事実そのとおりでございまして、この切符制度はアメリカ全州で認めておりまして、現に千百の都市で実施をいたしております。その実施済みのものをモディファイ、修正をしまして、日本の制度に乗せ得る案を今考究しておる次第であります。
  133. 藤田進

    ○藤田進君 それで今のでは、第一線の警官等がかりに駐車違反を摘発する、警察のほうへ行く、それから検察のほうへ回る、半日か一日かかって三千円か何か払って帰ってくるということだったのですね。訴訟すれば別です。それが今度、駐車違反をやったという場合にはどういうふうな態様になるのか、それを聞いておきたい。新聞に若干出ておりますけれども不確実ですから。
  134. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 機会がありましたならばくわしく御説明することもできますが、ただいま御質問の点だけに限定いたしましてお答えを申し上げます。  ただいまではそうでございますが、将来の切符制におきましても同じことで、まず取り締まり警察官が今の駐車違反でも、あるいは信号無視の違反でも事件を現行犯で認めます。そういたしますとその事件検察庁へ送致して参ります。検察庁では罰金が相当であるという考えになりますと、罰金相当というその罰金額を指定しまして、裁判所に略式命令の請求あるいは即決裁判の起訴をいたすわけでございます。そうすると裁判所が略式命令を出す、あるいは即決裁判手続によって裁判して刑を言い渡す、この順序は現在も将来も少しも変わらないのでございます。ただ現認をいたしました警察官が切符を持っておりまして、その違反の態様のところヘチェックをいたします。そうするとそれが四枚綴りの切符になっておりまして、四枚とも同じように下まで炭酸紙の複写紙で写るようになっている。そのうちの一枚は呼び出し状のような形で何月何日の何時までに墨田簡裁、検察庁に出よという通知になっておる。それを持って被疑者は来るわけであります。その切符にもうすでに書いてありますのですが、検察官は略式命令とはどういうものであるかという、それについている説明書きを読んで聞かせて、異議がなければそれに名前だけ書いて検察官に見せますと、検察官はだれかが勝手に書いてきたんじゃないかどうか、自分の字で書いたということを確かめて、人違いでないかどうかを確かめまして、異議がないということであれば、検察官のほうは、駐車違反とそれからその駐車のときの状況についてチェックして条件が書いてございます、そのチェックの条件を見て、これは罰金三千円が相当であるとか、千五百円が相当であるとかいう判断をいたします。それからさらにその人は過去において、最近の同種の違反について罰を受けたことがあるかどうかというような点も調査をいたしまして、そしてその求刑をきめるわけであります。その書類、それもやはり切符でございまして、検察官が署名をして判を押しますと、つまり略式命令請求書にかわるわけです。裁判官は、まあ略式命令でございましたならば、人違いその他犯罪事実を点検されまして、刑としては検事の求刑どおりがいいか、あるいは自分はもう少し上げたほうがいいかということを判断して、その金額だけを書き込み、それから罰金でございますと、もし金が払えなければ労役場留置という制度がありますので、一日を幾らに換算するという金額をそれに書き込みまして裁判官が署名をして判をする。そうすると書記官がそれも同じ切符に書くわけであります。そうすると書記官が別の切符、被疑者が持って参りました切符のうしろのほうに裁判の結果を告知したという欄がございまして、そこで君は幾らの罰金だということを知らせて、書記官がちゃんと署名捺印をいたします。そうすると、被疑者はその切符を持って検察庁の窓口へ参りますと、私は五千円持って来ているからこの中から今の罰金三千円を納めて参りますということになれば、そこで検察官が受け取りまして、そして仮納付済という大きな判こを書面に押しまして、それを持って被疑者が帰りますと、それで責任が明らかになって終わる、こういうことでございます。それらが今の切符で全部いく、こういうところに切符制度の効果があるといいますか、迅速性そして正確性、合理性というふうなことがある。かように考える次第でございます。
  135. 高田なほ子

    高田なほ子君 この切符制の問題については、もうちょっとお聞きしたいこともあるのですけれども、長官がお帰りになる時間が迫っておりますので、ぜひ長官に伺いたいことだけ先に伺います。今のチケット制の問題で、ひとつ長官に聞いておいていただきたいことは、少年の交通違反事件について……。このチケット制の採用もこれは一応認めますよ。しかし少年事件処理はケースワーク的な処置がされなければならない。ですから、チケット制をとるにしても、少年の交通違反事件については単に書類でもってどんどんどんどん処理をするということだけでは済まない。ですから、少年の交通違反事件とチケット制との調和をどういうふうにとるかということは、これは相当裁判所としても考えなければならない点だと思いますが、お考えになっておられますか。
  136. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 少年につきましては、大体裁判所といたしましては切符制にはのせないつもりで現在おるのでございますが、御了承いただきたいと思います。  それからよけいなことでございますが、私も初め切符制ということを聞きまして、どういうものかちょっとよくわからなかったものですから、皆さん方にもあるいは御理解困難な点もあるかと思うのですけれども、切符というのは、要するにそれを人に渡すという、そういう形を考えて切符といっておりまして、本来はカード式といったほうがもっとわかりいいのではないかと思うのです。カード式で、それをある程度切り離せるようになっておって、切り離して渡すというと切符というふうな性質が出るのじゃないかと思いますので、初めから切符々々といいましても非常にわかりにくいので、裁判所の立場からいたしますと、先ほど刑事局長から御説明のありましたように、検事のほうから略式命令請求、それから略式の手続の審理というようなことから、今度は略式命令が出て、それを告知するというような手続、それが全部一つのカードにおさめられているというふうに御理解願ったらわかりがいいのじゃないかと思います。
  137. 高田なほ子

    高田なほ子君 御記憶願いたいことは、今までも家庭裁判所で少年交通事件の審判をやられるのですが、面接審理をして、いわゆるケースワーク的な処理をされるケースははなはだ少ないと聞いておる。これでは家庭裁判所の値打がなくなってしまう。問題は、調査官が足りないところにこのような欠陥が出ているので、私はこれを指摘しているわけで、これをひとつ御記憶にとどめておいていただきたい。
  138. 藤田進

    ○藤田進君 私の調査なり体験では、他でもそうですが、墨田錦糸町公園の中にあります、東京の場合には。これは、検事さんが罰金二千円とか三千円とかきめて、これは判事がきめたのと同じように……。およそ判事さんは見ていない。常識的に。およそ四秒に一件ということに計算上なりますが、裁判所の書記官か何かの人が出て来て、流れ作業、オートメーションですが、おそらく裁判官の目を通したとは思えない。検事が三千円と言ったのを、それを情状酌量されて二千円になったという例があれば出していただきたい。とても今は——形式上は一応裁判官が罪刑を判定したということになるかもしれないけれども、実態はそうでないのですね。それは人手の関係もあるかもしれないが、交通事犯の中には、実際争えば当然その人が勝訴しなければならぬものもかなりあります。私の見た中にもあります。たとえば一時停止の所で警察官が陰に隠れておってそれを摘発している、オートバイに乗った人がそこを通りかかる、とめた。これはいなかの例で、横断はないけれども、一時停止の立て札が立っている以上とめなければならない、陰に隠れておって出てきて、とめたことは認めるが、足をつかなかったということで摘発される。それは右側に隠れていたので右側を見たので、左足をついている。ところが二千円来た。その人は非常に正義感が強いので、がまんできないというので、いろいろ異議を申し立てたところ、警察及び検察官のほうでは、それは訴訟される道がありますよと。法律にあまり詳しくない人で、調べてみたところが、二千円払えば済むところを、国を相手にするということになると、最終的には五万円も十万円もかかるかもしれないということで、それで二千円払ったほうが結局得だということで払った実例があります。これは一つや二つではない、私の知っている限りでも、こういうことで事犯を犯した人が——もっと悪い引き逃げとかいろいろなものがありますが、これはもう少し裁判所がしっかりしないと、裁判所まで持っていっても仕方がない、金もかかるしということで、弱い者いじめになっている。税金にもそれはありますが、駐車違反にそれが非常に多いのです。ひとつ今後、ああいうふうに流れ作業をせざるを得ないのでしょうけれども、予算折衝なり取り締まり当局とのいろいろな会議、会合があった場合には、裁判所がもっと国民から信頼されるような体制を作っていただきませんと、弱い者いじめになっているのが現状です。この交通違反につきましてお願いしておきます。  それから高田委員が言われた点で、実は私もきのう裁判所証人に参りました。一時半から三十分だということで行ったのですが、また午前中のが残っておりまして、私の証人に立ちましたのはたった十五分でございますが、帰って参りましたら分科会が済んでおりました。四時ちょっと過ぎから始まりまして、在廷証人ということで交通違反の証人に立ちましたが、これは国会も時間がルーズだけれども、裁判所もこれでは困ると思うのですね、実際に。これはあなた予算を取るように努力されているのでしょうが、ときには二重予算の請求をされる心がまえなり何なり……。また、今官庁なんかに人材の来ないこともよくわかる、行く人はよほどの人です。行く人はない。これは特に技術関係の人はそうです。これは国家試験の関係もありましょうし、生活に追われているからあたりまえだと思います。私どもも協力いたしますが、今度十五人ふやされるということが資料に出ておりますが、とてもそんなことじゃどうにもなりません裁判所は弱くて、植木さんのほうでひとつ適当にやろうという考え方があるかもしれないけれども、何かここにあなた国務大臣の一人として、もっとこれは考えられなければ困ると思うのです。強く要望しておきます。
  139. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) ただいまお尋ねの、ほとんど検察官の求刑どおりの裁判をやっているのじゃないかというような御意見がございました。しかも、ほとんど書類は裁判官が見ておらないのじゃないかというような話がございましたけれども、裁判官としては、いろいろな補助機関を使いまして、略式命令書の作成その他はいたしますけれども、略式命令をいたします場合におきましても、その証拠となるものは検察官から送られて参るわけでございますから、それと対照して見て、その事実が認められないということになれば、普通の公判手続に回すということになるわけでございまして、全く見ずにやっているような裁判官はないと思うのでございます。ただ、交通事件につきまして、そもそもチケット制とかというようなものを考え出されましたのは、犯罪の形がいろいろな定型的というふうに申し上げていいかと思うのですが、型がきまっておりますために、したがって、また特別の事情がなければ、大体こういう違反はどのくらいの罰金にしたらいいかというような、そういう裁判官の裁量の基準が大体きまっておりますので、そういう早い処理もできるということであろうと思うのでございます。ですから、もちろん慎重にやることは必要でございますが、現在が非常に粗雑になれているということは、必ずしも言えないのではないかと思います。  それから、証人に非常に時間を待たせるというようなお話でございまして、これは裁判所としては、もう年来と申しますより、数十年来の問題かもしれませんでございますが、これには裁判所にももちろん一半の責任もございますが、当事者も、あるいは証人あるいは代理人、弁護人というような方の協力も十分に得なければならないわけでございまして、先ほど御指摘のありました非常に長い間待たせるというのも、裁判所がもう少し余裕を持っておりまして、午前中に大体二件とか、午後に二件というようにして、少なくとも事件の間が三十分か一時間くらいあるくらいの余裕がありますれば、そういう御迷惑をおかけしないと思うのでございますけれども、ともかく入れられるだけ事件を入れるということでございますので、少し証言が長引いたりなんかしますと、午前のものが午後に回ったり、さらにまたそれがだんだんおくれて夕方になるというようなことも絶無と言いかねるわけでございます。裁判官としては、そういうものについて非常に気を使っているわけでございまして、非常に無神経にやっているわけではないのでございます。
  140. 高田なほ子

    高田なほ子君 裁判官の管理職手当の問題は、前にも触れた問題ですが、新総長に特に伺っておきます。  私は、裁判官というのは、一人々々の裁判官が絶対な権限を持って公平に人権を守るという特殊なものだと思います。それにもかかわらず、裁判官に、特定の人に管理職手当なるものが支給されております。これは裁判官の待遇が悪いので、おそらくそういう意味で管理職手当というような一般官庁の部課長のような形のものをつけているのではないかと思うので、これは裁判官の本質から考えると、裁判官全体の待遇をよくするということから考えて、管理職手当というものについては縮小していかなければならない。現在あるものはこれは既得権を奪うわけにはいきませんけれども、これを拡大する方向に持っていくということは私は本質的に間違っているのではないかと思う。そこで、管理職手当について、今後これをもっと拡大していこうとするのか、そうではなしに、待遇を全部よくするというそういう方向にいこうとするのか、まあ御方針だけ伺っておきたいと思います。
  141. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 管理職手当の問題につきましては、御指摘のように裁判官の性質につきまして適当ではないのではないかという御意見もごもっともな点もございます。ただ、現在の給与の体系は、行政職員とある程度バランスをとっているような形になっておりますので、そういう問題がやはり裁判官のほうにも順次待遇改善というような意味において入ってきたんだろうと思うのであります。ただ、これはあるいは私の私見ということにお聞き取り願ってもいいかと思うのでございますが、まあ裁判官の中でも、もちろん裁判そのものは独立でございますけれども、多少司法行政というような面もありますので、そういう管理職的なものが全然ないということは言えないと思うのでございます。ただそれを、現在の管理職手当をそこにつけることが適当かどうかということは問題であろうかと思います。まあすぐこれを減少して待遇改善のほうの向上、俸給一本のほうへ方針をとるかどうかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろまあ部内にも問題もありますし、それから他の公務員との関係もいろいろございますので、裁判官の先ほど申しました任用資格とか給与の問題ともにらみ合わせて十分考慮いたしたいと思います。
  142. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間もありませんから、この数字的のことはまたあとで事務当局から伺います。ただ基本的に、今度調査会が設置されるわけですから、たぶんこういう問題も出ると思いますが、調査会の結論が出るまでこれを拡大する方向に持っていかないということだけは言えますか。管理職手当を支給する数をどんどんふやしていかないで、ここで一応慎重に見守るという態度をおとりになられますかという、こういう質問です。
  143. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 先ほどもお話しいたしましたように、まあ調査会が発足いたしましても、それぞれ調査には相当の時間がかかりますし、現在の制度、実際というものをそのままとめておくというわけにもいきませんので、その点はなお十分考慮はいたしますが、全然とめておくというわけにもいかないかと思いますので、従来の方針で当分の間はやっていくというより仕方がないと思うのです。
  144. 高田なほ子

    高田なほ子君 次は、裁判所の一般職員の待遇問題ですが、裁判所の一般職員の待遇は、たとえば書記官とか調査官とか、こういう方の人件費は一人当たりの額がよその省庁と同じくなっているわけです。よその省庁で三等級の場合の者は裁判所も三等級、四等級の者は四等級、こういうふうに同額になっております。ところが、総長御存じでしょうと思いますけれども、一昨年たいへんここの国会でも議論になりまして、一週間五十二時間に時間を延長したのです。ただ時間も延長できないというので一六%の調整をしたわけです。けれども、その一六%の調整をしたといっても、それは四十四時間のものを五十二時間に延長をしたので、それでもってその若干の額をふやしたという形になっている。しかし、それは実質はよその省庁と一人当たりのなにが同じことになっている。ふやした、ふやしたといっても、よその省庁と比べてちっとも実質はふやされていない。だから、逆をひっくり返してみると、裁判所の一般職員の待遇というものは、よその省の職員よりも冷遇されていると、こういう結論が出るわけなんです。この裁判所の職員の他省庁に劣る待遇は、これは是正されなければならないと思いますが、この点をどういうふうにお考えになるか、これが一つ。それから、時間がありませんから続けて申し上げますが、国家公務員でも、地方公務員でも、大体公務員の最低賃金は、本俸と暫定給与と合わせて、最低が一万二千円になっているわけですね。そしてまた一万二千円にしてもらいたいと、こういう要求もあるわけです。だがしかし、裁判所の職員の中には一万二千円に満たない、勤続年数も年令もきちっと基準に合っておりながら、なおかつ最低に満たないという職員が約千二百名ほどいると聞いている。これは非常な冷遇だと私は思います。この数字等の説明はあとで事務当局から伺いますけれども、要すれば、裁判官の待遇もさりながら、裁判所の一般職員の待遇も、他の省庁に比べて、はなはだしく見劣りがしておるわけです。この待遇をどういうふうに新総長はなさろうとするか、この点伺いたい。
  145. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判官の待遇をよくいたしますことも、結局におきましては、よい裁判をするための一つの方法であります。裁判官のいろいろの補助の職員の待遇をよくすることも、また間接に裁判をよくするためのものでございますから、私たちは裁判所一般職員の給与をよくするということにつきましては、十分な関心を持っておるわけでございます。で、ただいま御指摘のように、特に他の官庁に比べて劣っているということでありますけれども、私たちとしては特に劣っているというふうには考えておりませんのですけれども、まあ、ところによりましてはそういうところもあるかと存じますので、なおよく検討いたしまして、待遇の是正に努力いたしたいと思います。
  146. 高田なほ子

    高田なほ子君 新年度予算は、御案内のとおりほとんど増額分人件費だけです。したがって、庁費の節約あるいは燃料費等も相当に節約しなければならないと思いますが、従来これらが不足だったために調停委員から寄付をさせたり、一般の職員がうちから火ばちの炭を持ってきたりして間に合わせているという悲惨な状態だと聞いております。実際そのとおりだと思います。こういうような弊風は、これは皆さんの御努力によって直されるべき筋合いのものだろうと思いますが、この点、御所見を伺います。
  147. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 高田委員御指摘の点は、裁判所の庁費の問題だと思いますが、裁判所の庁費が決して十分だとはわれわれもちろん考えておりませんが、一応今年度裁判所の庁費は、これは行政庁費と裁判庁費に分かれておりますが……
  148. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと、御発言中ですけれども、こまごまのことは時間がないから、御方針だけ承っておきます。そういうことをさせてはいけないのじゃないかと、こういうことです。
  149. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 何分にも庁費の点が潤沢でないということは否定できないかと思いますけれども、ただいまお話のような点は、ことに困ったような事態でありますので、そういうことはぜひないようにわれわれとしては努力をいたしたいと思うのであります。ただ、全国的に見まするというと、なかなか必要とそれに対する予算というものの配分が十分にいかずに、御指摘のような事態ができたかと思うのでありますけれども、そういう事態は当該の裁判所等においても十分気をつけて避けさせるようにいたしたいと思います。
  150. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後に一つだけ。最近、東京地裁の管内で起こった事件ですが、執行吏と競売屋がぐるになって汚職事件が摘発されたようです。これは単に執行吏の制度の問題ではなくて、やはり人の問題だろうと思います。直接の監督権は、これは地裁にあると思いますが、現在の地裁は、これらの汚職にかんがみて、どういうような監督指導をされておったのか、また監督指導の責めというものは、ああいう新聞などに載ったような段階で、その責任者はどういうような責任をおとりになるつもりなのか。これは裁判所としてかなり私は重要な問題だろうと考えますが、事務総長から御答弁を願います。
  151. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 過日、新聞紙上で問題になりました執行吏のいろいろの刑事事件につきましては、直接の関係庁であります東京地方裁判所において十分調査をいたしておりますので、その結果によりましていずれ責任の所在等も決定されることになろうかと思います。ただ、ただいまはそういう調査の段階でございますので、決定的な点を申し上げることができないわけでございます。執行吏の問題につきましては、最近いろいろ問題になりましたが、これは相当古い問題でございまして、裁判所としては十分こういうような事態の生じないように注意を従来ともいたしておったわけでございます。あるいは執行吏の制度そのものについても問題があるのではなかろうかと思います。いずれにいたしましても、今回起こりました事件につきましては、十分調査いたしました上でその処置をとりたいと思います。
  152. 高田なほ子

    高田なほ子君 お約束の時間がきましたので、これであなたに対する質問はやめたいと思いますが、最終的に強く要望することは、今二、三の問題を取り上げても、予算が少ないために起こってくる事柄ばかりです。二重予算の問題等についても、今度は新事務総長に期待するところきわめて大きいと思います。裁判所は独立した機関でもありますので、大いばりで予算をお取りになるようにがんばっていただきたいと思います。
  153. 亀田得治

    主査亀田得治君) 裁判所関係をひとつ続けて、それを済ませて法務省に移りたいと思います。
  154. 高田なほ子

    高田なほ子君 裁判官の数が少ないということが今指摘されておりまして、また、従来からも指摘していましたが、資料をここにお持ちになりましたが、この際、裁判官の配置されていない裁判所裁判所といっても裁判官がいない裁判所があります。その庁名を明らかにしてもらいたい。それから裁判官のいない裁判所に今後裁判官を増員して配置しようとされておるのか。あるいはまた統合してしまおうという措置をおとりになろうとするのか。これはたいへん大切な問題ですから、注意してお答え下さい。
  155. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 裁判官の配置のない裁判所は、主として地方裁判所家庭裁判所の支部のうち乙号支部、それから若干の簡易裁判所にあるわけでございます。これは定員の不足等の関係もございますし、また事件の数等も勘案いたしまして、必ずしも全国の裁判所全部に裁判官を配置し得ないという状況でございます。ただ、こういった裁判官の配置のない裁判所を統合するかということに関しましては、これは裁判所の廃止統合ということについては非常に大きな問題でございまして、国民の人権の保障というような観点から申しまして、そう軽々に結論を出す問題ではないというふうに考えておるわけでございます。われわれといたしましては、今廃止統合というようなことについて具体的な案を持っておるわけではないわけでございます。むしろ裁判官の充実を一そうはかることによって、そういった裁判官の配置のない裁判所をなるべく少なくしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  156. 高田なほ子

    高田なほ子君 乙号支部だけですか、裁判官がいないというのは。甲号支部にも裁判官のいないところはありませんか。
  157. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 甲号支部で裁判官の全然配置のないというところはございません。
  158. 高田なほ子

    高田なほ子君 この際、乙号支部あるいは簡易裁判所裁判官のいない裁判所の庁名、こういうのを資料として分科会でなくてけっこうですから、御提出いただきたいと思いますが、できますか。
  159. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいまこの席でお答えする資料を持ち合わしておりませんが、調査いたしまして、適当な機会に御報告いたしたいと思います。
  160. 高田なほ子

    高田なほ子君 新年度予算では訴訟の迅速適正をはかるということのために検証用の自動車を十台買う予算が計上してあります。ただし少年の護送用自動車については、先年の分科会で私はこのことをずいぶん申し上げたつもりですが、遺憾ながらいただいた資料には、少年の護送用自動車が何台かということがさっぱり書かれておりません。新予算ではどのくらい……。
  161. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) お手元の書類には書いてございませんでしたが、少年護送用自動車は三十七年度におきまして少年護送用自動車四台、それから検証用のバスが一台というふうに入っております。
  162. 高田なほ子

    高田なほ子君 わずかでもこれだけ入ったようですが、この少年事件のいろいろのお調べの途中で逃走した、そういう事件が起こっておることはままあることです。また、人権問題もあるわけですから、特に少年の護送用の自動車、こういうものは予算にもう少し多く計上されなければならないと私は思います。わずか四台の少年護送用の自動車ですが、全国の家庭裁判所の本所それから大きな甲号支部程度には配置されるようになると思いますが、この四台はどこに配置されるわけですか。
  163. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 毎年新しく入りました自動車配付は、四月の末か五月の初めごろに決定いたしますので、ただいまのところ、まだ決定はいたしておりませんが、なるべく必要の高いところを重点に配付いたしたいと考えております。
  164. 高田なほ子

    高田なほ子君 四台というのは、予算上こういうふうになったのだろうと思いますが、大体当初の要求は何台とお組みになられましたか。
  165. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 当初の要求は十台でございます。
  166. 高田なほ子

    高田なほ子君 半分にも満たないくらいの購入しかできなかったのは、返す返すも残念ですが、これは全国の家庭裁判所に配付できるようにひとつ計画をお立てになって、これはいち早く購入なさるようにしていただきたい、こういうふうに思います。  次に、きわめて事務的なことでございますが、毎年三月に行なわれている勧奨退職ですが、これは既定予算の範囲内で勧奨退職をおやりになるつもりか、それとも、さらにまた裁判所の中で勧奨退職のワクを広げようとしておられるのか、ここらの経過をお聞かせいただきたい。あわせて何名くらいその勧奨退職をなさるつもりか、大体予算に見合っての御答弁をお願いいたします。
  167. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 人事局長がただいま来ておりませんが、主管の課長がおりますので、恐縮でございますが、それに答えさせてよろしゅうございますか。
  168. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうぞ。
  169. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 勧奨退職は既定予算の範囲内で行なっております。本年度で大体五十人ないし六十人だったと考えております。ちょっと詳細な人員は今手元に持ち合わせてございません。
  170. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは三十七年度予定の勧奨退職者の数を今おっしゃったわけですか。
  171. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いや、三十七年度はまだきまっておりませんので、三十六年度の、本年度で大体その程度の人員が勧奨退職を受けているということでございます。
  172. 高田なほ子

    高田なほ子君 この五十人、六十人という概数をあげられましたけれども、この適用者の数、判事、書記官というように、そういう職種別にした数字というものは、ここでお述べになれませんか。
  173. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 今手元に資料がございませんので、その職種別の内訳はちょっとわかりませんので、調査いたしまして御報告させていただきたいと思います。
  174. 亀田得治

    主査亀田得治君) 資料として出して下さい。
  175. 高田なほ子

    高田なほ子君 その次に、庁費をもって支弁される臨時職員の数は何人あるでしょうか。その臨時職員は一日に幾ら給与をもらっておるのか、一日の給与が。——資料がありませんか。そこにあるのならゆっくり探して下さい。  それでは、先ほど長官に御方針をお伺いしたのですが、新長官なのではっきりしたこともおっしゃれなかった点も一応理解はできますが、さっき問題が出たのですが、国家公務員、地方公務員の最低一万二千円、この一万二千円に満たないような低い給与の方々が裁判所に千二百名おると聞いておるわけですが、この数はおわかりでしょうか。聞いておるだけではわかりませんから……。
  176. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほどお述べになった数字、大体それに近いかと思いますが、正確な数字は、今手元に持ち合わせはございません。
  177. 高田なほ子

    高田なほ子君 正確な数字がお持ち合わせにならないということでございますが、国会職員の中にも臨時職員というのがありまして、現に十二年も勤めておる臨時職員の方もおるわけです。ですから裁判所でも、臨時職員の勤務年数というのは、相当長い人もおられるのじゃないかと思いますからついでに正確な数とそれから勤務年数、年令の平均、こういったようなものをひとつ資料としておまとめいただいて御提出下さることはできましょうか。
  178. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 臨時臨員は昭和三十六年度予算で大体全部定員内に組み入れられましたので、現在のところは日々雇い入れのほんとうに純粋の賃金支弁の者だけでございます。十年以上に長くわたるような経験年数のある者はございません。
  179. 高田なほ子

    高田なほ子君 資料として出して下さるのですね。
  180. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) お出しできますけれども、現在はございませんです。長く勤務しております臨時職員というのは、現在はございません。
  181. 高田なほ子

    高田なほ子君 最低にある方は、やはりいつでも冷遇されておりますが、そういう方の苦情をあなたはお聞きになったことがありますか。
  182. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 日々雇いということで、賃金支弁の者は若干ございますけれども、それの期間というものは、そう長く継続しておるものはございませんので、ほんとうに純粋のアルバイト的な業務だけの者でございますが、特にそういう不満ということは聞いておりません。
  183. 高田なほ子

    高田なほ子君 あなたはそういう裁判所の一番土台石におられるような方の声を聞こうとは思いませんか。
  184. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) そういう臨時職員の給与というものが、現在非常に低いということは私どもも十分考えて、本人たちの意向にできるだけ沿うように予算的には考えて参りたいと思っております。
  185. 高田なほ子

    高田なほ子君 政府は日雇い労務者に対して、今度は賃金が低いので、従来までの三百六十何円が低いので、今度値上げをいたしましたですね。こういう問題は、やはり裁判所にお勤めになっていて、一番最下低に働いておる方にもこれは考えてやらなければならないことだと思うので、あなたのようなお立場にある方は、あなたはお若い方なんですから、できればそういう実態に耳をおかしになることも、また今の裁判所というものをもっと民主化させる方法じゃないかと思うのです。私は自分でそういう考え方を持っておるのです。あなたは特にたいへんお若い方ですから——私は年取った方に申し上げてもあまり効果がないのですけれども、お若い方ですから、この臨時職員の対遇、一番陰にある人の声を聞くという、そういう謙虚なお気持をお持ちになってもらいたいと思うから伺っているわけです——それはあなたの御自由です。  次に、これは前に法務委員会で亀田委員の御発言があったことですから、この御答弁も私承知しておりますが、速記者はたいへん数が少ない。それで朝から晩まで裁判所は速記者が速記をしなければならない。国会の速記さんは何分かごとにチンとかねが鳴って、ちゃんと速記の労働がおきまりになっているが、裁判所は朝から晩まで緊張した時間をお過ごしになる。こういうことから職業病ということで、腱鞘炎という職業病にかかっておられる速記者があるということを伺って、実はこの前の委員会でもたいへん私胸を暗くしたわけです。その後いろいろ亀田議員の発言から調べましたところが、職業病であるかどうかということで、たぶん最高裁のほうで労働科学研究所で、速記官の労働について何かお調べになったという事実を実は聞いたわけです。しかし、その結果について私は承知しない。せっかく裁判所が速記官の職業病について何らかの対策を施されたのではないかと思う節があるので、この労働科学研究所の速記官の労働の結果を職業病とごらんになられるのかどうなのか。それらの結果について、もし公表できれば公表していただきたいと思います。いかがですか。
  186. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 御指摘のように、裁判所の速記官の中に腱鞘炎の疑いのある者が若干出ております。相当まとまった数になっておるところもございますので、まとめて医師の診断等を受けさしておりますが、実はその結果がはっきりいたしませんので、関係の専門家に委嘱いたしまして、現在その取り扱いその他について検討中でございます。今までの結論がまだ出ておりません。
  187. 高田なほ子

    高田なほ子君 速記官の腱鞘炎について、労働科学研究所に研究を御依頼になりましたことは事実でしょう。
  188. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 腱鞘炎ということではありませんが、書痙も含めまして一般に速記者に現われる疾病一般にわたりまして検討をお願いし、あるいは御協力をお願いしておることはございますが……。
  189. 高田なほ子

    高田なほ子君 御依頼になったのはいつごろ御依頼になり、また、その結果はいいつごろ出る見通しですか。
  190. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 書痙の疑いのある者が出ましたのが、だいぶ古うございますので、それに関連して随次連絡をとっておりますので、ここ二、三年来いろいろ御依頼申し上げております。
  191. 高田なほ子

    高田なほ子君 質問を私が通告しておらないので、どうも明快なる御答弁が出てこないようですが、おやりになっていないのじゃないですか、あまり。
  192. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 書痙と疑われるものが今までに三件ほど出ておるのでございます。それらの個々的な分につきまして、一応そちらの専門医師の御協力を願っております。それは発生いたしましたのは古うございますが、お願いしましたのは三十五年ぐらいになるかと思います。それらの個々的なケースにつきましてはお願いをし、さような件数が若干ほかにも出ておりましたので、全般的な健康診断その他に関連して、御検討をそちらにお願いを今いたしておる状況でございます。
  193. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう少しこれを一生懸命におやりになって下さい。学者の研究は長いのですけれども、そう二年も三年も五年もかかるわけはないと思いますから、ひとつ結果を十分に御検討になっていただきたいと思いますが、法務大臣、これは直接大臣にお伺いすることも……、タイピストの方が裁判所は朝から晩までこれをやらせているでしょう、それでもって何か腱鞘炎という特殊な病気になっている。これは職業病と呼ばれるんじゃないかということを研究さしているらしいのですが、こういう職業病が出るということについては、単に裁判所だけでなく、法務大臣として、もしこれが職業病であるというようなことになれば、また特別の手当をしてあげなければならない問題だろうと思いますが、突然の質問ですから、構想等もおありにならないかとは思いますけれども、何かひとつ取り扱いについてお考えいただけないでしょうか。
  194. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) よく研究調査をいたしまして、対策がないか、また、これは裁判所のみならず私のほうもそうですし、官庁全般、会社にも関する問題で、ぜひともこれは実態を明らかにしていく必要がこれからの世界においてますます必要だと思いますから、留意いたします。
  195. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務大臣裁判所は特別なんですよ。もうこうやって速記の方、時間あるでしょう、普通は。たいがい朝から晩まではやらせないのです。ところが裁判所の場合は、朝から晩まで一人の人がやっているでしょう。ああいうことをやっているから病気になるのです。ですから、この場合は特にひとつ御考慮を願いたいと思うのです。  それからこの速記官をたいへん数が足りないということで外部から速記官を入れて訴訟の促進に役立てていたようですけれども、新年度の、外部速記官を使用する場合に、予算はどのくらいお取りになるのか。この間の亀田委員が法務委員会で御質問になったときには、あまりはっきりお答えになっておらなかったようですが、外部速記官の予算というものはどのくらい組まれておるのかということ。
  196. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 外部速記の金は、支出するといたしますれば裁判庁費から支出いたすわけでございますが、特別に今外部速記の金というものが裁判庁費の中に積算の根拠としては入ってきておりません。しかし裁判費は御承知のとおり実績で大体きめられて参りますので、過去に実績があれば、それは実質的には積算の根拠に入ってきている、かようなのが実情でございます。
  197. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは前年度に出されたぐらいの額は裁判庁費の中から出していけるということですね。
  198. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 理屈から申しますれば不可能ではございません。
  199. 高田なほ子

    高田なほ子君 理屈からではないのです。私は現実問題を言っているわけです。今速記官が、こういう何ですか特殊な病気におなりになっているというような場合もあるわけですね。そういう場合には、速記官が足りないから他の速記官をまた流用するとオーバー・ワークになるわけです。それで、非常に訴訟件数が今多いですから、どうしても外部速記を使わなければうまく運用ができない面があるだろうと思うのです。それでお尋ねをしているので、そういう現状にかんがみて、特に職業病であるという結論は出ないまでにしても、支障のあった場合には外部速記というものをお雇いになるべきではないかという観点から伺っているのです。
  200. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 外部速記を現実に使いますかどうかは、その各、裁判所が自分のほうの事件の進行状況、あるいは繁閑等をにらみ合わせて決定するわけでございまして、私のほうからそれを使えとか、あるいは使うなというようなことは、ちょっと言いにくい立場にある。ただ予算——裁判庁費と申しましても無限にあるのではございませんので、与えられた予算の範囲内において事件数がふえない限りはそれでまかなっていかなければなりませんので、さような観点をにらみ合わせて各裁判所が決定をいたすことだと存じております。
  201. 高田なほ子

    高田なほ子君 さっきこの御説明をあなたに途中までしていただいたんですけれども、それを続けてひとつ御説明下さいませんか。
  202. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 先ほど裁判所の庁費のことにつきまして途中までお話ししかけた次第でございますが、裁判所の庁費は、いわゆる行政庁費というものと裁判費の中の庁費、これは裁判庁費と呼んでおりますが、かような二種類に分かれておりまして、行政庁費というほうは、要するに裁判所の機構の維持運営に必要な庁費でございまして、これは昭和三十七年度におきましては七億六千八百万ほど計上されておりまして、本年度予算に比べますと約七千円百万ほど増加になっております。なおこのほかに、先ほど申し上げました裁判庁費というのがございまして、これが約三億七千七百万ほど計上されておりまして、これも前年度に比べますと六千百万円ほどの増加になっておるわけでございます。
  203. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは行政庁費の中に入るかもしれませんが、超過勤務手当の予算は、最高裁、高裁、地裁、家裁、簡裁、こういうふうに超勤の一時間割の単価が違っているようです。私はしろうとですけれども、高裁と地裁の一時間の超勤の単価に差があるということに非常な不審を覚える。どういうふうな違いがあるんでしょうか。この点はいたへん職員も御不満に思っておる点ですから、御説明いただきたい。
  204. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 超過勤務予算は略しますれば超勤と申しておりますが、超勤の予算人件費の中に入っておりまして、庁費ではございませんのでございますが、それが最高裁、高裁、地裁、簡裁等に差等があるではないかという御質問でございますが、その点は御指摘のとおりでございます。やはり最高裁が高くてその次が高裁、その次が地裁、簡裁というようになってきておりますが、これは大体各省庁の統一査定のようでございまして、ひとり裁判所だけが最高裁の分と地裁、簡裁の分と同一にするということは、さしあたり困難なようでございまして、ただ裁判所だけの立場から申しますと、第一線のほうがむしろ忙しい、つらい場合も考えられますので、裁判所だけの立場から申しますれば、超過勤務予算というのは同一にして変わらないほうがいいんではないかということも考えられるんでございますけれども、しかしいろいろの観点から、各省庁の問題もございますので、さしあたりはさような段階がつけられておるという状況でございます。
  205. 亀田得治

    主査亀田得治君) ちょっとお尋ねしたいのですが、大蔵省の主計官が来ておりますが、同じ予算を使うのに、関係者もそれから当該の官庁も同額でやってくれと、こういう考え方を持っておるということがはっきりしたわけですが、それを認めて何か差しつかえがあるわけでしょうか。
  206. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 先ほども申し上げましたが、裁判所だけの裁判事務という観点だけから申し上げたんでございまして、差等がありますのは、各行政官庁いろいろの考えからさようにしておられるので、まあ裁判所のほうでも差等がありますのを理由づけますれば、やはり最高裁の事務は高裁、地裁に比べて、何と申しますか、多少のそこに職務上差等があるということを言えないわけではないわけでございますが、われわれのほうといたしましては、さしあたりはやむを得ない措置だというふうに考えておるわけでございます。
  207. 亀田得治

    主査亀田得治君) 裁判所の場合、裁判自体が本質的に他の行政事務と違うわけですね。したがって、当然そこに関係しておられる人などについてもそういう考え方裁判官の俸給にしてもみんな流れておるわけですね。それであれば、当然今問題になっておるような超勤などについては、これはもう平等にしていくと、他の官庁が違ったやり方をやっているからそれにならう、そんなことは私は必要ないと思うのですね。最高裁としてのちゃんと独立の性格というものもあるわけですし、これはどうも筋が通らぬように思いますがね。他の官庁がやっているからそれにならうのだ、筋としては平等のほうがよさそうだと、こんな程度のことすら他の官庁に引きずられているようじゃ、ちょっと心もとないですね。それは再検討していいんじゃないですか。総額予算をふやせという問題と違うわけですから。もちろんそういうふうにやれば、今までたくさんもらっておる人が少なくなる、そういう問題は起こるでしょうけれども、やはり最高裁のほうがよけいもらっているから、皆さんは最高裁におられるから、多少そういうひいき目をするのと違いますか。
  208. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 超過勤務予算裁判官はもらっておりませんが、一般職、書記官以下の問題でございますが、裁判事務の場合と行政事務の場合と必ずしも分けられておりませんので、先ほど申し上げましたように、今直ちに行政官庁と違えと、裁判所だけ独自の立場をとれというのも、もう少し検討の余地があるかと思いますけれども、しかし裁判自体だけに見て参りますと、差等はないではないかということも考えられますので、まあもう少しよくわれわれのほうとしても検討いたしたいと思っております。
  209. 亀田得治

    主査亀田得治君) これはよく研究して下さい。
  210. 高田なほ子

    高田なほ子君 研究しておくということでお切りになったのをまた蒸し返して済まないのですけれども、裁判所は方針としては第一審を強化すると、これはもう大上段に振りかぶっていつでもここでおっしゃっていることですが、今のようなやり方では、これは第一審強化にはならぬと私思うのですが、最高裁とそれから簡裁あたりの超勤の一時間の差額というのは、どういう開きがあるのですか。その単価をずっと示していただきたい。一時間当たりの単価を。  なお、さっきの宿題ができましたらお答え下さい。
  211. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 来年度予算におきましては、本年度とそう変わりはございませんが、最高裁におきましては一時間単価が百六十九円四十五銭ということになっております。高等裁判所におきましては百六十九円十六銭、ちょっと下がっておる程度でございます。それから地裁、簡裁で百五十四円六十八銭、それから家裁が百七十二円八十八銭、かような数字になっております。  それからなお、先ほどの高田委員から御質問がございました賃金予算、賃金で、いわゆる庁費でございますが、賃金予算がどの程度かという御質問がごいざましたが、三十七年度におきましては三百五万五千円という金が入っております。
  212. 高田なほ子

    高田なほ子君 超過勤務手当の予算の中で、夜間調停、それから家事相談、こういった夜間調停等についてこれは特別の超勤予算が組まれる必要があると考えますけれども、それはどのくらいの額が計上されて、適用される職種はどういう職種が適用されるのか。
  213. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者栗本一夫君) 夜間調停の予算家庭裁判所関係で入っておりまして、総額にいたしまして五百四十一万八千円というものが入っております。これが適用されます職種は、裁判官はもちろん除かれますので、調査官、書記官、事務官というあたりが対象になるわけでございます。
  214. 高田なほ子

    高田なほ子君 大蔵省からおいでになっている方にお尋ねしておきたいのですが、どなたでございましょうか……。  大蔵省は裁判所予算に対してたいへん財布のひもを締め過ぎているんじゃないでしょうか。先ほど私が——あなたお見えになりましたでしょうか、裁判所の年次予算について、下降線をたどっているということについて申し上げたのを、あなたお聞きになっておられましたか。
  215. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 拝聴いたしております。
  216. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうお思いになられますか。
  217. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 先ほど先生から裁判所予算が非常に低過ぎるんじゃないか、だんだん減ってきておるじゃないか、全予算に占めますところの比率が非常に低いんじゃないかというお話がございました。それにつきまして、裁判所が腰が弱過ぎるというようなおしかりがあったようでございますが、しかし、大蔵省で予算でもって痛感いたしたわけでございますが、非常に裁判所は腰が強いようでございまして、決して大蔵省は腰が弱いからといって予算を削るとかなんとかということは全くございません。全予算比率が下がるというような点につきましても、裁判所予算は御存じのとおり構造といたしましては、どっちかと申しますと、割合と簡単なようでございまして、いろいろ事業予算というものがございません。先ほど先生のおっしゃった中にもございましたが、人件費が非常に多いわけでございます。そのほか裁判費を中心といたしますところの庁費それからあと一つ施設費、大体三つの大きな柱みたようなものがあるわけでございます。大体人件費の伸びでございますとか、それから事件数の伸びでありますとかそういうものにつきましては、毎年心々概算要求のときに、予算編成の過程におきまして、裁判所は、予算の最終段階におきましては、このくらいでいいという意見の一致を見るわけでございます。決して私どものほうといたしましては低いというようなことはないと考えているわけでございます。
  218. 高田なほ子

    高田なほ子君 低いとは思わないというのは、何を基準にして低いとは思わないとお考えになっておりますか。とにかく民事事件にしても刑事事件にしても少年犯罪の件数にしても飛躍的なこれはもう激増です。裁判官の労働というのは戦後の件数から、労働量から、比べると三・七倍のオーバー・ワーク、そういうような現状から考えてみると、たいへん私は裁判所予算というものは低いと思う。ボロ庁舎が一番多いのは裁判所です。それは悪いことをした人を裁判する所であるから何でもいいという考え方は当たらないので、そのために司法権というのは他の行政権とは独立した権限を持っている現状から見ると、この裁判所予算が、だんだん件数がふえて、下降してきておるということは、現状に合わないということを指摘している。ところがあなたは妥当でありますと言うけれども、どういう基準で低過ぎないというふうにおっしゃったのか、そこらの魂胆をお尋ねしておきたい。
  219. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 何と比較いたしまして低いとか高いとかいうことを申し上げたわけではございませんで、まあ先生の先ほどお話にございましたとおり、特に腰が低い、その態度が弱いから、まあ損をしているんじゃないかというようなお話がございましたので、私としましては、そういった感じは持っておりませんという意味のことを申したまでのことでございます。低くないと申しますと、しからば十分であるかというお尋ねがございますれば、先ほどるる御質問裁判所からの答弁の中で明らかになりましたように、いろいろと不満足、不完全な点があるわけでございまして、これは今後さらに裁判所側ともよく検討いたしまして完全なものに持っていきたいという工合に考えております。
  220. 高田なほ子

    高田なほ子君 大蔵省は圧力団体にはずいぶん弱いですがね。裁判所は特別の事業がないというようなことをいいますけれども、裁判所に事業があったら、これはたいへんな堕落だと思う。裁判所は人権を守る府である。その国の文明の程度を探るためには、どういうふうに人権が守られているかというところにやっぱり今基準を当てておりますよ。日本は、藤田委員がさっきもしみじみと言われたように、人手が足りないというようなことから、裁判所に行っても三時間も四時間も待たされる。墨田の交通の即決裁判のところなんかに行くと、これはもう地獄ですね。あれは外国の人になんかお目にかけたら、ずいぶん軽蔑される日本の裁判現状だと思います。私は、少なくとも国費の一%ぐらいは司法権のためにさくべきではないかという主張を持っているんです。幾らでも出せなんということは言わない。少なくともよその国に比べてみて一%ぐらいはさくべきではないだろうかという考え方を持っているわけなんです。裁判所は皆ゼントルマンがそろっておりまして、非常に予算の取り方が従来下手だった。あなたは強いと言われますけれども、どうも裁判官は下手です。そういう点で、大蔵省は財布を締め過ぎないで、日本の三権分立の一つの司法権の確立ということからいうと、たいへんにひどい立場にあるわけですから、これはひとつ大蔵省も御勉強いただいて、ぜひ裁判所の要求するところを満たして上げるように、ひとつ御勉強願いたいと思う。給与の問題等についても、一つ一つあなたに伺っていくと、おそらくあなたは御答弁にお困りになる点もあると思うほど不合理です。時間の関係上私はその煩を避けたいと思いますが、どうかひとつ、きょうここに来ていただいたのは、儀礼的にあなたにおいでになっていただいたのではなくて、どうか私どもの現在の司法権というものの立場から、いろいろの角度から裁判所が要望しているわけですから、これをひとつ十分にあなたが御記憶になって協力してあげてほしいと思います。司法権の確立ということについてお答え下さい。
  221. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 先生がおっしゃいましたとおり、さらに勉強を続けまして、よき予算を作るようにしたいと思います。
  222. 藤田進

    ○藤田進君 主計官、まあわれわれも各年度国会のこととかなんとかでよく折衝することもあって、あなた方の立場というものがわからないでもないんですね。しかし、裁判所が弱くないのだという意味の言葉もあったようですけれども、裁判所は強いのだけれども大蔵省はそれ以上に強いのだという表現でもけっこうですが、結局、あなたは裁判所とどこをお持ちになっておるか。やっぱり担当の主計官がありますね、それぞれ。その辺が弱いとまただめなんですよ、実際やってみて。それはまたあなたが言われるとおり、要求どおりな、あるいはある程度の担当の査定をされても、それがあなた自身がこれだけはというものがまた削られているかもしれないです、実際問題としてはね。ここではそういう職責をどうこうというのではないので、やっぱりあなたの担当が裁判所だけでもないのじゃないかとも思うのですけれどもね。今、高田さんも言われましたように、まず国際的な背景を持ったものは、案外予算を主計官等は抜きにしてでも取っていく、自衛隊関係とかその他。それから国内的には、それぞれの院外の、少なくともこれは弊害がもうすでに出ておるけれども、何党がどうとかは別として、かなり強い団体背景があれば、言いかえればそれが選挙の死命を制するようになればなるほどその団体は強いし、予算に現われてくる。農地被買収者の問題等も私はそういうふうに見ざるを得ないのですがね。ところが、裁判所等については、なかなかそういうものがなさそうに思う。これが検察庁といったようなことになると、何しろ有力な植木大臣が閣内でもがんばるというようなことになるわけです。そういったようなことで、実際にあなたにお願いをして、今後高田さんの言われるように努力なさるそうでありますけれども、あなたの今おられる大蔵省の内部事情として、私はある意味では不安に思うわけです。はたして裁判所が腰が強いし、かなり手を焼いたとまではいかないにしても、要求額はそれでのまされたというなら話はわかるが、これはまあおよそ遠いですね。ことに職員なり裁判官の増員といったようなことも庁舎その他営繕と同時に必要だけれども、それすら実にスズメの涙ほどという程度ですね。こういうことですから、もっと具体的にあなたの答弁のできる限りでけっこうですが、非常にむつかしかったというあるいはネックというか障害といったようなことをひとつぜひ聞いてみたい。なぜこういうようになったかということをですね。
  223. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) ただいま、たとえば国際的な背景がある経費でございますとか、それから圧力団体のあるものでございますとか、そういったものが予算が非常につきやすいことはよくわかる、逆に裁判所のようなところは、なかなか取りにくいのではないかというようなお話があったのでございます。一応予算を編成いたします場合は、主計局内ではいろいろ所管に分かれておるわけであります。私の持っておりますのは、ちょっと今先生からお尋ねがございましたけれども、裁判所のほかに、皇室費でございますとか、国会でございますとか、総理府でございますとか、警察でございますとか、まあそういった関係を私持っておるわけでございます。率直に申し上げまして、そういった事務的な経費が取りにくいというようなことはございません。主計局の内部におきましては、全体の経費の均衡、平衡と申しますか、つり合いを一番の念頭に置いて編成をいたして参るわけでございます。特にほかに持っていかれたからこっちが少なくなったということはないと私は信じております。私の持っております範囲は限定されておりますし、全体の問題ではございませんで、あるいは先生方からごらんになりますればそういった点があるのじゃないかというようなお疑いも出るのじゃないかと思いますが、私といたしましてはそういった点はないと信じております。
  224. 亀田得治

    主査亀田得治君) じゃちょっと裁判所関係で私速記関係だけ付加してお尋ねしておきます。この速記者の一カ月における速記時間ですね、これは標準をどこに置いておられますか。
  225. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 速記官の職務の主要なものは、法廷に立ち会って証人の供述等を速記して、その速記原本に基づいてこれを反訳して速記録を作成するということが中心の任務になるわけでございます。それで、速記官の法廷の立会時間は、私たちの考えておりますところは、週三時間ぐらいは十分可能であろうというふうに考えておるわけでございます。そういたしまして、その週三時間の立会時間に加えますのに、これを反訳いたしますために、約その十倍、三十時間が必要なわけであるわけであります。したがいまして、立ち会いの三時間、反訳の三十時間というものを加えますと、これに三十三時間というものを要するわけでございます。そういたしまして、一週の勤務時間が四十四時間でございますので、その差の十一時間というものがあるわけでございますが、この関係は、速記官として記録の照合、閲読をする、そういった一般的な仕事に使うというふうな関係で、ただいま申し上げましたように三時間の立会時間、反訳に三十時間、その他の仕事に十一時間というふうなものを当てておるわけであります。
  226. 亀田得治

    主査亀田得治君) 最高裁から前に出されました東京地裁刑事部の速記官の立合時間調べというのがありますが、これでいきますと、結論的にどういうふうにお考えになりますか。
  227. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 法務委員会の際に提出いたしました資料は、東京地方裁判所の刑事部におきます裁判所速記官の立会時間等を調査いたしまして資料として御提出いたしたわけでございますが、この裁判所速記官の立会時間につきましては、昭和三十五年度までは各速記官の報告によりまして立会時間を集計いたし、これを調査しておったのでございますけれども、この報告のためには、毎回その報告にかなり繁雑な手続を必要といたしますばかりでなく、速記官にもそのためにかなりの負担をかけることになりますし、かつまた毎年の集計結果を検討いたしてみますと、各人の立会時間というものの間にほとんど差異がないわけでございますので、そういった結果が判明いたしましたために、調査を継続するということについてあまり実益がないという判断のもとに、この調査は、三十五年度限りで打ち切ったわけでございます。ただ、東京地方裁判所の刑事部におきましては、日報等の資料にいたしますために、三十六年度分につきましても調査の結果がたまたまございましたので、それに基づきまして、三十五年度、三十六年度、両年度の立会時間数を対比して御提出いたしたわけでございますが、その資料によってもおわかりになりますように、大体三十五年度は一人当たり二時間六分、三十六年度は一時間四十六分という数字が出て参った次第でございます。
  228. 亀田得治

    主査亀田得治君) この表を見て直ちに感じますことは、非常に長時間立ち合いをしておる人と、非常に短時間の人と、違いが非常に大きいのですね。この表によりますと、ある人は十八時間、ある人は十時間、まん中辺が六時間、短いのは一時間、こういう数字が出ているわけです。で私は、これは裁判の立ち合いのやはり特殊性から来ておると思うのですね、こういうふうに不平均になるのは。だから、全体の立会時間が一つの標準的な数字が出てくればそれでいいのだということには、これはやはり私はならないと思うのですね、個々の人についてよく検討していきませんと。だから、そういう点の調整がうまくいっておらないと、非常に負担の過重になっている人に対してはずっと過労が重なって、職業病に発展してくる、そういうことだろうと思うのですね。そこら辺の調整といったようなことは、相当検討されておるわけですか。これは一月の立会時間の一人々々についての表ですからね、ほとんどこういうことはむとんちゃくでおやりになっているような感じがするわけですね、一対十八になっている。こんなべらぼうなことないじゃないですか。この一時間というのは特殊な人、病気で休んだか何かしたか、特別なんでしょうが、これをのけても非常な違いがあるのですね、これはどういうことでこういうふうになっているのですか。
  229. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 今御指摘になりました表は、三十七年の一月分の各人別の——各人別といいますか、各部別でその所属しています速記官の数で割った平均値が出ておるわけでございます。なるほど、ただいま御指摘になりましたような各人の平均時間がかなり不均衡があるわけでございますが、特にこの十八時間というような点につきまして事情を聞き合わせてみましたところが、たまたまこの部におりました人が、何か産休をとりました関係上、ほかの人に負担がかかってこういう数字が出ていったというふうに聞いておる次第でございます。確かに私が先ほど申し上げましたように、一カ月の平均時間が二時間六分であるとか、一時間四十六分であるとか、そういった数だけには必ずしも満足できないわけであります。各人がそれぞれ適正な労働時間というものを働くということに十分な配慮をしなければならないことは当然でございますが、その点につきましては、各裁判官がそれぞれの速記官の状況等を勘案いたしまして、負担の過重にならないように努力してもらうというふうに最高裁判所当局といたしましても十分な指導を続けて参っておるわけでございます。今後ともそういった方向に続けて参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  230. 亀田得治

    主査亀田得治君) 産休ということは、休む人にとっては、これは当然許されておることですし、そういう場合に直ちにほかの部から回すなり、あるいは部外者の応援を求めるなり、そういう費用があるようですからして、そこら辺の運営がどうもこの表から見ると、はなはだスムーズに行ってない、こういう感じをするわけですね、で、こういう十八時間というような特別なこういう数字が二番目に出ておるわけですが、これは東京地裁の何部ですか、そうしてまたこういう数字を発見されて以後、こういう場合にはほかからの応援を求めるなりするから、こういう無理なことはやっぱりせぬほうがよろしいといったような御注意でも最高裁としてされたでしょうか。
  231. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御指摘になりましたような十八時間というものは、特別の事情がありましたにいたしましても、現実にこれだけの時間を働いた人につきましては、非常な負担であることは間違いないのは事実でございまして、先ほどもお答えいたしましたように、適正な労働時間を働かせるという方向に十分な努力を続けなければならないことは当然でございます。いろいろ考え方はあると思うのでございますけれども、ある程度の人数を、たとえば各部に所属する人でなくて、地裁の刑事部なら刑事部に、全体に適宜に応援し得るような人数をある程度プールしておき、そういった特別の事態が起こって参った場合に適宜応援させるというような方法も考えられるわけでございます。そういった点につきまして、現地の裁判所といろいろ協議折衝等も続けて参っておるわけでございますけれども、今後ともそういったことについて十分な努力をして参りたいというふうに考えておる次第でございます。そして、ただいま十八時間という平均時間が出て参りましたのは、この表をごらんいただくとわかりますように、刑事第二部でございます。
  232. 亀田得治

    主査亀田得治君) そうして御注意されましたか。
  233. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 特に注意というふうなことではございませんで、こういった事態ができておる場合について、一体どういうふうに考えていくべきかということについて、最高裁判所当局と現地の裁判所と一緒になってその打開策を考えていきたいというふうな協議をいたして参っておるわけでございます。
  234. 亀田得治

    主査亀田得治君) ともかく週何時間が一番正しいのかといったようなことになると、これはわれわれとしてはちょっとしろうとで、なかなかわかりません。ただ、この表をいただいて驚いたのは、非常なアンバランスのあること、しかも裁判所の場合には非常に人権に関係する記録をやっているわけですね。しかも立ち会いは一人々々ですから、非学にやはり気も使うわけでしょう。だからそういったような点から、ひとつ十分これは今後とも御注意を願いたいと思います。
  235. 藤田進

    ○藤田進君 今の速記のことですが、今善処するようにと言われるわけで、今の予算なり人員なりのワク内で、はたしてできるかという私は危惧を持つのですけれどもね。これは予算関係もあろうけれども、当面は、まあ緊急に部内のプールなり何なりで処理をされる必要があるでしょう。しかし、これも予算関係でしょうが、大体われわれの経験している公判では、速記というものはつかないので、公判記録が取れない。検事側の同意を得て、被告側が速記者を二名程度同伴をして、そうして速記を取る。虫のいいことに、速記が反訳されたら裁判所にもひとつ何部下さいというわけで、印刷をいたしまして出している。かなり多いのですよ、こういうようなのが。それで、まあ判決は有罪をいただくというようなことで、被告のほうはさっぱり……。これは実例が幾らでもありますからね。今ここに何の何ということは申し上げませんが、これはやっぱりもう少し裁判所らしくおやりいただきたいと思うのですが、それができますか。
  236. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 裁判所事件について、一体どの程度まで裁判所の速記官をつけて速記を取るかということについては、いろいろ検討を要すべき問題があろうかと思うのであります。私たちのただいままでのところ考えておりますところは、高裁、地裁を通じまして、少なくとも合議事件については原則として速記をつける、それから単独事件についても大体四分の一程度の事件というものはかなり複雑困難な事件考えられますので、その程度のものについても速記をつけたい、そういったことで考えていきますと、現在の速記官の定員では必ずしも十分でないわけでございまして、今後その増強について努力を続けて参らなければならないというわけでございます。さしあたり当面の問題といたしまして、ただいま御指摘のありましたようなこと、これは裁判所としてまことに遺憾なことで、おもしろくないことでございます。ただ、裁判所としては速記をつける必要はないというような考えのもとで速記をつけなかった事件について、当事者のほうで特に御要望がございまして、その費用において速記をつけるというようなこともあるというふうなことは聞いておりますけれども、まあただいま申し上げましたように、裁判所としては必要な事件については裁判所の速記官をつけて、法廷の審理の促進をはかっていくという方針を今後とも貫いて、そのための努力を続けて参りたいと考えているわけでございます。
  237. 藤田進

    ○藤田進君 何か被告側のほうで速記をつけるという場合は、裁判所が速記を必要としないと、はなから認めたからそうなったように言われますけれども、合議制であって、もちろん速記を弁護士を通じて要請をして、その結論は裁判所として予算がないので、できればひとつそっちのほうでやってもらえぬだろうか。ほとんどそうなんですよ。何件も私は経験しております。ですから、これはやはり予算の問題になりますけれども、もっと充実される必要があります。あなたが言われるように、原則としてしかじかのものはと言われましても、裁判所が必要と認める認めないではなくて、必要と認めても、なおかつ予算がないためにそれが実施できない。ほとんどこれです。
  238. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御指摘になったような事実もあるかと思いますが、先ほど来から申し上げておりますように、ただいまの速記官の陳営では、必ずしも私たちが考えております理想的な速記体制というものはとれておりませんので、ただいま御指摘がありましたような、そういうことのないように今後とも努力を続けて、速記官の充実というものをはかっていきたいというように考えておる次第でございます。
  239. 亀田得治

    主査亀田得治君) ちょっと主計官に念を押しておきますが、少なくともこの速記に関する費用は足らない。こういう認識をお持ちになりましたか。
  240. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 速記官につきましては、ただいまいろいろ御質疑、御答弁がございましたとおりいろいろ問題点があろうかと存じております。もちろん十分であるというふうなことは決して申し上げないつもりであります。いろいろと不完全な点が多いのじゃないかと存じております。この点につきましては、さらに検討を続けたいと考えております。
  241. 亀田得治

    主査亀田得治君) じゃちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  242. 亀田得治

    主査亀田得治君) じゃ速記をつけて。
  243. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは時間もあまりありませんから、かいつまんでまず法務大臣にお尋ねいたします。これは先年の予算委員会で問題にした点について、さらにその後どういうふうに進んでいるかということでお尋ねをするわけです。  問題の一つは、児童の福祉を害するおとなの行為はきわめて反社会的なものである。これはもう厳重に制裁されなければならない。こういうようなことで当局からの御答弁もいただいたわけでありますが、現在は子供の福祉を害するいろいろの犯罪があって、それぞれ法律は整備されているようですけれども、実際には最近のこの頽廃的風潮とともに、四月のお花見どきを控えて、子供の福祉を阻害するような犯罪が必ずしも防げるようには考えておらないのです。具体的にいろいろ内容を申し上げてもどうかと思いますが、青少年の家出人の問題もありますが、四月になると家出人が増加をして、しかも網を張っているブローカーの、平気で人身売買に似たような行為が跡を絶たない。四月を控えてこういうような点、それから禁煙、それから禁酒、青少年に対する法律はあるけれども、現在はそれも十分に守られておらない。それから少女たちがお酒の席にはべって、法の網をくぐるような場面が今日跡を断たない、あるいはまた少女の淫行勧誘など、これもまた私どもの耳にするところです。一連の子供たちを悪の道に追い込むような、この反社会的なおとなの行為というものを制裁するために、当局は総合的な対策を練られているやに伺っておるわけで、この点について法務大臣から、あらためて総合的な対策をどういうふうにお立てになっておるのか、お伺いするわけです。  それから、もしこまかい点の補足の御説明があれば、それもまた伺わしていただきたいと思います。
  244. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 少年の福祉を保護する意味におきまして、既存のいろいろな福祉を保護する、児童の福祉を保護するための法制がございますが、これらの法制の運用の実際の問題について十分研究をし、留意をしていくようにという昨年の委員会での御質問もございましたが、この問題につきましては、われわれ適時会合をいたしまして、検察官の会合の際に青少年問題を取り上げまして議題に供し、その実際の運用について遺憾なきを期するとともに、さらに現行法について改善の余地があるのではないか、改善の必要があるのではないかということについては、いつも研さんを怠らないでおるつもりでございます。  それでは昨年一カ年間におきましてどんなことをやったかと言われますと、事あまりに詳細にわたりますから、必要ならば係官から説明申し上げますが、われわれは既存の法律をまず運用する、それをフルに活用してやっていくという点に重点を置いて、それでなおどうしても不十分であるという場合に新しい法制を考えるとか、あるいは既存の法律制度の改正をはかるというようなふうに考えておるのでございます。  近年の青少年の不良化に対しての大きな影響のある問題といたしましては、児童福祉法のあの法律違反の問題は、むしろ近年非常に少なくなって参りました。これはある意味におきましては法律の効果とも言えましょうし、一般成人の諸君が、あるいはこれらに関係する者がそういう点に留意するようになった結果であるというふうにも考えられます。あるいはまた皮肉に考えますと、取り締まりの手が十分に及んでいるかいないかということにも関係が起こりやしないかということも反省しておるのであります。事件数が少なくなったから、それですぐ安心するのはいけないのでありまして、それは取り締まりなり何なりのやり方が、手の尽くし方が十分でなかったから、ついに違反が摘発されないで済んでいるというような点もあり得るのでありますから、そういう点もいつも留意いたしております。ただ、非常に遺憾に存じますのは、いろいろ悪い影響を青少年に与えますところの風俗営業等取締法等の問題、これに対する違反は近年非常な増加を示しております。   〔主査退席、副主査着席〕  一例を申し上げますと、昭和三十一年でこの法律違反は五千八百件ぐらいでございます。これが年々増加をいたしまして、ちょっと古うございますが、三十五年の統計ではその倍に及んで一万件をこえております。こういう実情でありますので、こうした風俗営業等取締法違反等の問題につきましては、警察当局から送致を受けました場合に、われわれの畑におきましても厳正な態度で取り調べをし、そうして十分法律の目的を達するようにという精神で裁判、公判に臨んでおるということを申し上げ得ると思うのであります。交通関係等におきましても同様でありまして、交通関係は、御承知のように非常に少年そのものにもたくさんありますし、あるいはまた成人の交通違反のために青少年、ことに少年が犠牲になっておるということもだんだんふえていく傾向にありますから、こうした問題につきましても十分留意をいたしまして、検察当局において捜査並びに公判の際に求刑いたします場合でも厳重な態度で臨む。そうして一罰百戒の実を上げるということを目標として進んでおるというのが実情でございます。また、未成年者の喫煙の禁止の問題、あるいは飲酒の禁止の問題等につきましては、これまた非常に古い法律でありまして、責任の当局と、これは警察庁のほうでございますが、一緒に御相談しながら、むしろ警察当局に主になっていただいて、現行法の改正についても成案を得べく、努力を関係当局においてしておって下さるということであります。それを今回のこの通常国会に提出し得るかどうかにつきましては、まだ私のほうはそこまでは来ておりませんが、その間の研究をやっておっていただいておることを承っております。かような次第でございます。
  245. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣から今御説明がありましたが、この警察のほうで未成年者に対する禁煙禁酒法、これらの改正等についてどういうようなお考えをお持ちになっていらっしゃいますか。
  246. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 未成年者飲酒禁止法及び未成年者喫煙禁止法、ともに非常に古い法律でございますので、これを現状に即応するように改正すべきかどうかという点について研究いたしておる次第ですが、現在のところ、まだ結論は出しておりません。関係当局とも十分協議して検討いたしたいと思います。
  247. 高田なほ子

    高田なほ子君 家出する青少年をあやつるブローカーについて、この取り締まりはどういう程度になっているのかどうか。それからこれは法務大臣にお尋ねをするのですが、ブローカーの処罰というのは実際には放任されているような形ではないでしょうか。職安法の六十四条の三項ですか、三十六条の違反ということで、一年以下または一万円以下の罰金。青少年を変な所に売り込むようなことをしておるこういうような悪魔が、きわめて軽微なところでおしまいになっているようですが、私はブローカーの、何といいますか、制裁というものはもう少し厳重にすべきものではないかと思いますけれども、これについて当局の御答弁をお願いいたします。
  248. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの点については政府委員から答弁させます。
  249. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 少年を売りものにするブローカー自体の数字というのは、数は出ないのでありますが、警察におきましては、少年の福祉を害するようないろんな犯罪ということで、これの取り締まりの促進をはかり、かつ毎年統計を取っておるわけでありますが、昭和三十五年度におきまして、被疑者の総数が九千二百二十八名、昭和三十六年度、昨年は一万一千七十一名、三十五年に比して二一・八%の増加ということに相なっております。それでお話のブローカーのことに関係するような項目といたしましては、刑法の規定にある淫行の勧誘、営利、わいせつ等の目的による略取、誘拐、それから児童福祉法の規定にある淫行をさせるおそれある者に児童を引き渡す行為、売春防止法におきます困惑等により売春させる行為、ないし売春をさせる契約をした行為、職業定定法にございます公衆衛生上有害なる業務に児童を紹介したり使ったりする行為。その他労働基準法及び地方条例中風俗営業等取締法の規定に基づく条例違反、ないし青少年の保護育成に関する条例等がございますが、今申し上げたような、それぞれの規定の違反として検挙いたしておる次第であります。ブローカーだけという数字は現在持ち合わせておりません。
  250. 高田なほ子

    高田なほ子君 それらの検挙率というのは、現状どんなふうですか。今あなたは、刑法とか児童福祉法とか職安法違反というところで検挙しているのだと、こういうふうに言われましたが、児童の福祉を害するそれらのものは、なかなかつかみにくいということですね。検挙率も少ないんじゃないかと思いますね。おわかりでしょうか。
  251. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) おおむね法網をくぐっている連中が多いわけで、必ずしもすべてが検挙されておるとは考えられないわけでございますが、警察といたしましても、この点、そういったブローカーの検挙には、十分力を尽くしておると思います。  それから、今申し上げたような犯罪が、先生がおっしゃられたような、いわゆるブローカーがタッチしておる場合が、そのほとんどであるというふうに申し上げたいと思います。
  252. 高田なほ子

    高田なほ子君 少年警察は、三十七年度予算で、どのぐらいふえましたでしょうか。
  253. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 少年警察関係予算は、国費と地方費と両方にあるわけでございますが、国費について申し上げますと、昭和三十六年度が三千二百十万二千円、昭和三十七年度が四千三百五十九万五千円、千百四十九万三千円の増でございます。地方費の補助金、おおむねこの二倍が地方費として計上されるわけでございますが、昭和三十六年度が一億七千九百五十一万九千円、昭和三十七年度が一億八千二百九十七万一千円、三百四十五万二千円の増、そのようになっております。
  254. 高田なほ子

    高田なほ子君 警察関係のほうでは、一昨年来、一万人増員ということで、少年警察増員する計画があるという説明があったわけですが、本年度は、今予算をあげられましたが、昨年は千五百人しか少年警察はいなかったですね。今年は、少しはふえたと思いますが、どのくらいふえましたでしょうか。
  255. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 一万人増員計画におきましては、新たに採用となったものが、みな一年間学校に入って訓練を受けるわけでございまして、そういう関係から、最終の配分数字はまだとっていないのでございますが、昨年の末の調査によりますと、専従員約二千、それから専従ではないが、少年警察の仕事をその勤務の相当な部分で行なっている者が約三千五百、合わせて五千五百人という数字になっております。
  256. 高田なほ子

    高田なほ子君 あげ足をとるわけじゃないですが、これは大体交通のほうに回っているのが実情ではないのでしょうか。五千五百人、これがフルに青少年を守るというための主目的にお働きになっているようには考えられないのですが、これを御説明いただきます。  それから法務大臣にお尋ねするわけですが、ただいまの御方針でよくわかりますが、青少年警察充実強化ということをうたっておられる項目は、前年度は千二百六十九万円であったと思いますが、本年度は六百二十九万円になって予算が減っています。六百四十万円減額しているわけですから、約半分だけ青少年警察充実強化という項目の費用が減っているわけです。私はこれはふに落ちない措置と思いますが、この点、どうお考えになられますか。
  257. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 御疑念ごもっともでございますが、前年度は少年警察のために増員が認められまして、その経費が新たに計上されたものですからふえたわけでございますが、本年度はその分は一般の人件費の中に組み入れられてしまっておりまして、少年警察として書き出しますその増員分が今度はございませんので、その部分は落ちまして、実際の事業費といたしましては、差引勘定いたしますと百十三万八千円の増ということに落ちついておるわけでございます。
  258. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 先ほど青少年警察の従事員の数について御質問がございました。もちろん交通警察官も相当大幅に増員されたと考えております。先ほど申し上げました数字は、大都市警察におきましては、少年係とかあるいは風紀係、そういうふうに係がはっきり分かれておるわけでありますが、地方へ参りまして、また小さい警察署になりますと、一つ一つ、係員一人々々に専門の係を割り当てる余裕がございませんので、ただいま申し上げました三千五百ほどの人たちは、そういった保安関係、防犯関係、こういうようなものにもタッチしながら、なおその一面において少年係として活動しておるという数字でございます。したがいまして、交通警察と重複しておるというふうには考えておりません。
  259. 高田なほ子

    高田なほ子君 風俗営業取り締まり違反がたいへん増加しておる、こういう御説明でございますが、これは営業停止などの、あるいはまた許可取り消しというような処分ができることになっておりますが、三十六年度の実績はどういうふうになっておりますか、御存じですか。
  260. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 風俗営業関係につきましては、三十六年度数字の整理が全部まだできておりませんので、三十六年度の上半期について申し上げますと、つまり半年、三十六年の一月から六月に至る半年分で参りますが、措置人員は三十五年の上半期が四千六百十三、三十六年の上半期は五千十八、そういう数字になっております。  行政処分の状況といたしましては、許可の取り消しが六十一、営業停止が千九十、これは半年分でございます。そういう数字になっております。
  261. 高田なほ子

    高田なほ子君 最近はやっておるツイスト、そうして深夜営業、あれを法務大臣は、どういうふうにごらんになっておられますか、ツイスト、お尻を振ってダンスを、麻布の六本木あたりでは夜中の三時、四時まで、ナイト・クラブではないような深夜喫茶でもってやっているわけですが、あのしびれるようなセクシーなムードとして楽しむ気持もわからないではないのですけれども、必ずしもあれが健康な方法ではないような気もするわけです。これを取り締まれというのじゃないのですけれども、法務大臣として、あの風俗をどういうふうにお感じになっておられますか。
  262. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私、実は見たことがございませんので、正真正銘、見たことがございませんので、何とも言えませんが、新聞等でときどき手入れというのですか、調べられて、そして云々ということの記事を見ましてつくづく感じますことは、どうしてそんなにおそくまでの営業が許されているのだろうかなというのが、それがむしろ私には不思議なんです。特殊の会員組織かなんかで、特別に個人がお互いに自由に数名の者がある家に寄って、おそくまでおるということは、これはあり得ることかもしれませんけれども、営業として二時までも三時までも許されているということがおかしいのではないかというような感じがしておりますけれども、それを特に、それでは法律上どうなっているかということを実は調べたこともございませんで、嘆かわしいことだなという感じを持って過しているようなありさまで、気をつけたほうがいいと思います。
  263. 高田なほ子

    高田なほ子君 警察当局は、六本木あたりに、何か手入れをなさったように聞いておりますけれども、あれはどういう法律に基づいて手入れをなさったのですか。
  264. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 六本木付近で行なわれている営業につきましては、風俗営業取締法違反、つまり無許可営業で取り締まっておる、かように考えております。いわゆる普通に深夜喫茶と考えられるものに二つございまして、つまり風俗営業の許可を受けるべきものが、受けるべき要件を備えているものが受けないでやっている場合と、風俗営業の要件には当たらないで、いわば普通の喫茶店としてやっておる、その限りでは時間制限等がないわけでございますが、まあ深夜喫茶には二つあって、無許可のものとして現在取り締まりを実施いたしておるのでございます。
  265. 高田なほ子

    高田なほ子君 若い者のやることを、一から十まで取り締まるということについても、若干問題はあろうかと思いますけれども、あのムードというのは、必ずしも健康ではないようですね。あのお尻を振って、手足を動かしている分にはまだいいのですけれども、三時、四時ごろまで若い者が友だちに連れられて、ついあそこの雰囲気の中で遊んで、また悪い者に誘われていくというひとつの温床になっているようですね。できれば、これは子供が悪いというよりは、そういうことを平気でさしておる業者というものが制裁されなければならないと思うのです。  ですから、あそこに来ている子供ばかり、お前はどこそこのだれそれだというように、みんなあそこに来る子供を犯罪者、被疑者扱いにするのじゃなくて、それを許す業者に対するきびしい制裁というものは、当局としておやりになるべきだと思うのですが、おやりになっておられるのですか。
  266. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) いわゆる深夜喫茶につきましても、先年法律の改正がございまして、深夜における営業については条例で一定の事項が規制されるということに相なっております。各地それぞれ若干ずつ異にはいたしておりますが、大筋といたしまして、照度の問題、あるいは静穏の問題、年令的に申しますと十八才以下の少年は立ち入らせないことというのがおおむね規定されている条例でございます。警察としては、その条例の規定を守るように、違反者がないように、また違反が行なわれている場合には、検挙いたすように努めている次第でございます。
  267. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間を急ぎますので、先に問題を進めていきましょう。今度、交通事故の問題について若干法務大臣、当局から伺いたいと思います。  警察庁の最近の調査によると、全国的に見て昭和三十五年、六年とも事故を起こした運転者の年令が十六才、十九才、二十才、二十四才というのが圧倒的に多い。この対策については、今寄り寄りそれぞれの機関で御検討になっている模様でございますが、運転者の年令引き上げについて、どういうような御方針であるのか、またそれを実施するのはいつごろから実施しようとなさるのか、こういう点についてお尋ねをいたします。
  268. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) まだ、今盛んにその問題については、関係閣僚懇談会及び関係当局におきまして研究の余上でありまして、まだはっきりした結論は出ておりませんが、大体の方向といたしましては、免許を与える年令を引き上げよう、しかしながら、それは全分についてではございませんで、特殊の大型車でありますとか、免許のある部分について、特にそれを年令引き上げの必要があるということを主張せられておるのであります。  そうしますと、その場合によって特定の免許についての引き上げをいたしますと、その他のものは放置していいのか、その他のものも、それに準じて引き上げるがいいかというようなことが、ただいまいろいろ研究をいたしております途上におりますので、結論はまだ、ちょっと出ておりません。さような状態でございます。
  269. 高田なほ子

    高田なほ子君 防衛庁の自衛隊のほうでは、この年令引き上げに大反対していると聞いておるわけですが、どういうわけで自衛隊がそういう反対をするのでしょうか。世論はやはり実際の事故の実績から見ても、年令を引き上げるべきであるという世論のほうが強いように思われます。どういうわけで自衛隊がそれに反対するのか根拠がわからないのです。
  270. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私も、防衛庁当局におきまして、そうした意見があり、またいかなる理由があるかということについては承知をいたしておりませんが、懇談会等におきまして、いろいろ出る議論等から推測をいたしますというと、やはり世の中が進歩するに従いまして、こうした機械いじりといいますか、機械の知識、あるいはこれに対しての経験等を積むのに必ずしも一定年令以上、たとえば二十才以上、二十一才以上という者に限るよりも、むしろ十七才、十八才ぐらいからそうした機械に慣熟させるということが必要である、それがほんとうに優秀な技術者を得られるというような反面もあるようでございます。その適例といたしましては、御承知のように、戦時中の例の少年航空兵といったような制度もありますが、新しく設けられて、これで、はたして適性さえ得られるならば、やはり優秀な操縦者になれるということは経験したことがございますが、こうした自動車について、それがぴったり当てはまる例かどうかは存じませんけれども、考えようによれば、これも考えられぬことはない。  要は、私の一番大事だと思いますのは、その人その人に先天的な性格もあれば、あるいは能力の差異もございますから、こういう点等について、もっともっと十分免許を与える際に技能テスト等をやって、そうしてきめられぬものかということから、これは単なる私の個人的考えでございますが、ということを一点感じます。あるいは教養の点等におきましても、十分免許のときの条件として、試験をするとか、あるいはそうした方面の習得をさせるというようなことをして資格をきめるということも必要であろうと思います。一がいに年令を引き上げれば、それで……、ただ相当年令さえ達しておれば、無謀な運転をしないのだとは必ずしも限りません。だから、私はやはり、そういう点にいろいろむずかしい問題があるから、十分検討を加えて、今日一番弊害が起こっている部分についての、とりあえずの応急策だけでも急ぎ、その他の全面の問題については慎重に考慮を加えてやるがいいのではあるまいか、かように考えておる次第であります。
  271. 高田なほ子

    高田なほ子君 無資格運転をしている者にも若年層の者が多いようですが、無資格運転をしている人物というのは、どのような人物でしょうか。これは省が違うからお答えにくいかもしれませんが、もしお答えになれれば……。
  272. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 直接の所管事項でございませんので、詳しい数字ないしデータは持ち合わせておらないのでございますが、私の感じといたしましては、中小企業の従業員に相当多いような感じを持っております。
  273. 高田なほ子

    高田なほ子君 無資格運転をしている人物は、大体中小企業に雇われているような方だと、大まかなあれでございますが、要するに、これは雇い主が無資格であるということを知っていても、忙しいので、ついその者を使ったりする場合もあると思うのです。私はこの場合は、雇い主に対する制裁というものを、年令引き上げとともに考えなければならない問題だというふうに理解をしているわけですが、雇い主に対する制裁というものについては、今どういうふうになっているのですか。
  274. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 道路交通法におきまして「車両等の運転者を雇用する者は、その雇用する車両等の運転者に、この法律又はこの法律に基づく命令に規定する車両等の安全な運転に関する事項を遵守させるようにつとめなければならない。」と、なお、そのほかの規定もございますが、スピード違反等を誘発するように時間を拘束した業務を課してはならないと、これらの違反については罰則もついておるわけでございまして、警察といたしましては、こういった雇用者の責任、はっきり言えば違反でございますが、違反についての注意を払い検挙するように努めております。まあ立証上の問題で、多少問題が残るのでございますが、いずれにいたしましても努力はいたしております。
  275. 高田なほ子

    高田なほ子君 次にお尋ねしたいことは、ひき逃げの問題ですが、これは当局からいただいた資料でも、三十六年度に一万八千六百六十五件のひき逃げがある。なくなった人が六百三十七人、それから負傷者が一万八百六十三人と、たいへんひき逃げが多いようです。このひき逃げについて、どういうような処罰をするかということは、ずいぶんこれは問題になる点だろうと思いますので、法務大臣からひき逃げに対する当局の取り扱い方、その方針、こういうものについてお尋ねをしたいと思います。
  276. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ひき逃げの問題につきましては、われわれも特にその悪質な状況にかんがみまして留意をしておったのでございます。すでに昨年の正月時分に、特に検察官を会同いたしまして、その当時どうもひき逃げの事件については、厳正なる態度をもって臨む必要があるということをお互いに会同におきまして申し合わせをいたしまして、これに対して、いかなる罰則を適用して参るかということを検討を自来いたしております。その後だんだんに研究の結果、あるいは実例等も参酌いたしまして、昨年の夏の終わり、秋の初めごろから、ついにその決意をいたしまして、場合によってはひき逃げの場合には、これを放置すれば死んでしまうということがわかっておりながら、そういう事案を起こしておることについては、いわゆる法律上の言葉で、私どもまだ十二分にわかりませんが、未必的な故意がある、人殺しをするという未必的な悪意があったというふうに認め得るのじゃないかというような考え方のもとに、これをその法条を適用し殺人罪をもって臨むというような考え方の結論を出しまして、そうして悪質なもの、その状況に応じまして、これを実際に適用して調べをし、公判に付する手続をいたしております。全国的に、昨年来新潟県にありました事件、大阪にありました事件等々におきまして、当時新聞紙上でも伝えられましたように、この実際の運用を試みておるわけであります。今後におきましても情状のいかんによりましては、十分この点に留意して厳正な態度をもって臨む。しかしながら人権を尊重すべきことは、いかに違反者といえども当然でございますから、われわれはそうした場合にも、十分慎重な調べの上で臨んでいこうという態度はもちろん失わないようにしておりますけれども、これをやってみようということに踏み切りましたことは御承知のとおりであります。私は今後も、この方針をもって臨むべきもの、こういうふうにただいまのところ考えております。
  277. 高田なほ子

    高田なほ子君 たいへん断固たる御方針を伺って安心をしたわけです。実は最近の処罰例を当局のほうからいただいたのですけれども、酒を飲んで酔っぱらって三人もひき逃げをしても、懲役六年だ、それから、めいていして運転をし人を殺してしまったというのも、それも禁固十カ月とか罰金とか、実に思いやりのあるといいますか、あまりにも軽過ぎるような判例があるわけです。前判例にかかわらず、今度新たに、そういう御方針でお臨みになる、これは検察もそうでしょうが、地方当局とも、そういう意見は一致されておるわけでしょうか。
  278. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) あらかじめ打ち合わせをして意見の一致というような形はとっておりませんが、検察官としまして、故意犯と認められるもの、今言ったような諸般の状況から、故意ありと認められる事案につきまして証拠をもって立証するわけでございますが、それに対して裁判所も故意犯を認めまして、普通でしたら、業務上過失傷害になるわけでが、傷害罪という判決をした事例もございました。裁判所におきましても、証拠さえ持って明らかにいたしまするならば、裁判所は決してそれに対して拒否的な態度をとってはいないわけであります。そういうふうに悪質なものにつきましては処置できるというふうに考えております。
  279. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後に一問、これは感想も交えてのことですが、読売新聞の中に、「都内初の書類送検」という見出しで、ちょっとのお洗たくのひまに目をはなした、そのわずか十分ばかりのすきに、踏切のさくを、子供ですから、網の目が大きくなっていますから、そこをくぐって踏切ではねられて死んで事件があります。それに対して悲しみのお母さんに、道交法違反として起訴されたという事実があるわけです。私はこの記事を見たときに、非常な同情とともに、峻厳なやはり法に基づく母の責任というものをまざまざと見せつけられたような気がするのです。こういう、書類送検にしても何にしても、悲しみの母に法が追い打ちをかけたということには、それ相当の私は当局の果断な気持があっただろうと思うわけです。それにしてもこの踏切周辺におられたであろう現在の目撃者に対しては、母でなくして目撃者に対しては何の法の制裁もないというところに私は非常な矛盾を感じた。保護する者が保護しなければならないという責任が道交法の十四条にあるわけですけれども、しかしさればといって、この幼児が踏切でちょこちょこしているのを目撃した第三者が、やはり子供を守るための社会的な責任を負うという、そういう面も強調されなければならないのではないだろうか。私はこう考えるわけです。  どういうふうに、この書類送検の結末がなっていきますか、非常に私は注目しているところでありますが、お問いしたいことは第三者に対する、目撃者に対する制裁というものが、ややともすれば放置されるこのごろです。車内における暴力問題なんかも一つのいい例ではないかと思いますが、目撃者に対する責任の追及というものを、当局としてはもう少しお取り上げになる必要がないのだろうかという私の気持なんですが、お答えいただければしあわせです。
  280. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ごもっともな御質問でございまして、大いに敬意をもって傾聴いたしたわけでございますが、具体的な例の事件につきましては道交法違反ということでありますが、おそらくはそうでなくて刑法の過失傷害の事件になるのじゃなかろうかというふうにも思われますが、その成り行きにつきましては、高田委員とともに私もその行く末を注目いたしたいと思っております。  それに関連いたしまして、そばにたまたまい合わせたかどうかわかりませんが、かりに通りがかりの人がい合わせた場合に、その人たちに、どういう責任があるであろうかという点、並びにそういう人たちに、もっと何らかの制裁が課せられていいのじゃないかという点でございますが、これはもう、そのとおり私どもも感ずるのでございます。ただその場合には、刑法において若干規定がありますし、軽犯罪法等にも規定がございます。そういう刑法の規定並びに軽犯罪法の規定、さらにはそのときに見て見ぬふりをしておったことが、みずから手を下して犯罪を犯したと同じように法律上評価される場合もあろうかと思います。それらにつきましてはそれぞれの立場で検討した上で措置をとるべきものでございますが、ただ刑法的な刑罰をもってその場に臨むべきかどうかという点につきまして、一般的に申しますと、全く行きすがりの人が、ただそこでぼう然と見ておったというだけで、すぐ刑事責任に向われるかといいますと、現行法制はその点は刑事責任を追及するというような立場をとっておらないのでございます。その部分につきましては刑法以前の問題として、その人の人間性、道義性、そういったような社会人として、また特に子供であります場合に、年上の者として、その良識をもって処置すべき分野に属する道義的な規律といいますか、そういったようなもので処理をすべきである。法律上刑罰をもって強行するという場合には、その人が行きずりの人ではなくて、法律上救助すべき義務ある場合に、その義務を尽くさなかったとか、あるいは警察官から手助けをしてほしいという要望を受けたにかかわらず、その要望に応じなかったとかというような意味で罰せられることはございますけれども、一般的に申しまして、行きずりの人が、たまたまそこに行きかかって、ただぼう然として見ていたというだけでは、道義の問題として処理して、刑罰の問題として考えるべきではないという建前を現行法はとっておりますということを私は申し上げざるを得ないと思います。   〔副主査退席、主査着席〕
  281. 藤田進

    ○藤田進君 二つお尋ねしますが、交通事故には、いろいろあります。運転者の不注意が相当ありますが、要求しました資料には、その点が出ていないのですが、これは事務当局でけっこうですが、交通機関、特に安全地帯の設備の場所が悪いということで、実例がありますが、私はちょっと昨日参りましたので見ましたが、神奈川県は、資料を特に出してもらったが、割合事故が多いのです。  御承知のように第一、第二国道、交通量が相当ありますが、神奈川の横浜市内に近くなるにつれて、市電があります。これが非常な事故のもとになっております。私どもは別途に地元の議員と、施設改善については私どももやっておりますが、まず、一、二回しか通っていないという人が、その事故をやっている。道が不案内、曲る、そうして上り下りといったところに安全地帯がかなりあります。特に反町停留所というのは、すでに六人死んでいるのです。これは数回にわたって、裁判所検察庁にしても現地検証は、あそこは何回もやるところで、何回も来ているから、現地検証は必要ないという状況なんです。自分も、それを実際夜やってみたが、確かにぽっこり安全地帯が現われてくるわけですが、標識も不完全で、非常に低いものが置いてある。これは一例ですが、そういう施設の関係からもやはり検討されて、事故が多発するといったようなところについては、取り締まり当局で、それぞれの管理者に対して施設の改善をするなり、停留所の場所を少し二、三十メートルでもずらすなり、そういうこともあわせ行なわれなければ私は、必ずしもこれは百人が百人そこで事故を起こしているわけではありませんけれども、もちろん不注意ですが、それには、施設にやはり帰すべきところもある。裁判所でそんなことを言ってみても、なかなか採用されるわけではないでしょうが、こういう点を事故防止の一環として、全部の安全地帯をどうするというのじゃなくて、多発点地帯については、特に勧告というか、どういう形になるか私よく知りませんが、おやりになる必要があるのじゃないだろうか。おやりになっていくとすれば、どういうふうに、従来はおやりになっているか、それが一つ。  それからもう一つは、業務上過失致死といったような交通事故について、司法上の処分はありますが、行政上これは官庁、省庁によってまちまちでしょうが、おおむね行政処分としては、どういうことになっているだろうか。私の調査では、防衛庁あたりでは、大体減給といったような程度で、あるところは懲戒解雇といったような程度、かなりまちまちになっているわけです。これは目的は違うかもしれませんが、もし執行される過程において知っておられれば、およそどういう行政的に処分を受けているか、これは免許証取り消しとか停止とかありますが、それ以外にどういうものがあるだろうか、一つお教えをいただきたい。これは私不勉強ですが。
  282. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) お話の第一点は、道路上の施設の問題でございますが、安全地帯等につきましては、そこに安全地帯があることが、かえって交通事故を多発させたり、あるいは危険感を醸成する。非常に交通量の少ない時代はそれでもよかったわけですが、交通量が非常にふえてきて、そういう状況に立ち至ったという場所が若干あると思います。そういう場所につきましては、交通の当局、市ならば市の交通当局、さらに道路の管理者、県当局とか市当局の場合もございましょうが、それと警察とが話し合って、その安全地帯の移動ということを行なっております。すでに実施されたところもございますし、目下交渉を進めておるところも多々あろうかと思います。それからまた安全地帯のみならず標識の位置だとか、あるいは場所によっては、ほんの道路を広げるとか、あるいは直角をすこし湾曲させるとかいうようことによって、相当な事故防止上の成果を上げ得る場合もございますので、そういう方向に警察当局としては、関係者と話し合って持っていくように努力をいたしておる状況でございます。  第二点は、警察官が業務上、車を運転して事故を起こした場合の処罰、行政上の責任を問われる度合いはどうかという御質問でございますが、先ほども申し上げましたように、直接担当いたしておりませんので、数字等の的確なことは承知しないわけでございますが、私の知っている範囲で申しますれば、一番ひどい場合には懲戒免職、さらに諭旨退職と申しますか依願退職、減給、非常に軽い場合には、戒告その他、結局事故の程度及び違反時における本人の状態、さまざまなケースで、それぞれ違うわけでございますから、そのケースに応じて処分が行なわれておる、さように承知いたしております。  それからちょっと訂正さしていただきたいのでありますが、先ほど雇用者の身分に関しまして、道路交通法の第七十四条の第一項を申し上げましたが、第一項は宣言規定でございまして、これには罰則がございません。後ほどちょっと申し上げました第二項の「雇用者は、雇用運転者が第六十八条の規定に違反することを誘発するように時間を拘束した業務を課し、又はそのような条件を付して雇用運転者に車両等を運転させてはならない。」これについて三カ月以下の懲役、三万以下の罰金、そういう刑罰が課せられておるわけでございます。ちょっと先ほど言葉が足りなかったと思いますので、訂正さしていただきます。
  283. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 この法務省予算数字につきまして、一つだけお伺いをいたしたいと思います。きょう午前中に裁判所予算審議中、けた違いの数字の見間違いをいたしまして、まことに申しわけのないことでありました。重ねてそのようなことがありましたら、どうぞ強く御注意をお願いいたします。  ずっといただきました資料によって出入りを見て参りましたですが、下のほうに参りまして歳入がありますね。その中で作業収入が三十億あります。一見しまして、それはばかに少ないんだなと感じたわけです。直感に過ぎないのですが、これはどういうわけで少ないと思ったかというと、前の歳出の予算の中に八万何千人という人に給食その他なさっておるのが五十何億かありますが、こんなに支出があって、その人たちの大部分を作業に従事させていて、三十億くらいの収入でいいのかと思ったのが、勘の少ないなと思ったところですが、それで基礎が間違っておると何にもなりませんので、法務省でここの八万六千人のうち幾人くらいを作業に従事させているのか、大づかみの数字を伺いたいと思います。
  284. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 正確な数字は今ここに資料がございませんので、申し上げかねますけれども、大体年間七万人くらいが就業している予定でございます。そういうことになっているはずでございます。
  285. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 そこでやはり勘が生きてきておるような気がするわけなんですが、ざっとしたそろばんで、この人出不足の際ですから、一人の人が月に一万円くらいの作業成績は上げるのではあるまいか、そうしますというと七万人と今伺いましたが、一月には七億の作業収入になる。それで年には八十四億円のその分だけの収入になる。そのほかに作業するときの原材料の支出が十五億ありますね。これは作業をするならば、その品物のコストに加わって、やはり法務省の収入になるわけです。そうするというと、百億近い作業収入があるのであるまいかといった事柄がすぐ勘で頭にくるわけです。それで少な過ぎるなと思ったわけですが、私のざっと考える一カ月一万円の作業成績が上がるという、その考え方が実際はどうなんです。そこをお聞きしたい。
  286. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 先ほど作業収入が三十億くらいという御発言がございましたけれども、これは正確に金額を申し上げますと、作業収入としては三十五億二千八百万円余りを歳入として予定しているわけでございます。これは刑務所関係で、そのような作業収入を一応計算しているわけでございますけれども、その計算の根拠は、大体作業費としまして、原材料費が先ほどおっしゃいましたように十五億ほどでございます。これに対する回収率というものを、従来の実績によりまして、大体算定しているわけですが、その回収率が昭和三十六年度において一九七%という数字でございましたのが、それを昭和三十七年度予算では、大体それに見合った一九三%あたりを従来の実績から一応推算いたしまして、その回収率を原材料費等に掛けまして、その収入の見込みを立てたような次第でございます。  それで、月平均一万円程度の収入額というようなのは、これはちょっとあの従来の実績からいいますと、そのようにはなっておりませんで、大体四千円程度になればいいほうというようなところが従来の実績として出ております。
  287. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 その十五億の原材料が回収率が一九〇何%ですか。そうしますというと、その分だけで二十五億円くらいになるのですね。それから今お話の私の勘の月額一万円というのが、実際には四千円だということですから、大体年に五万円ですか。七万人なればその分だけで三十五億、原材料の回収率からそろばんをおけば、その分が二十五億くらいになるのです。両方合わせるというと、五、六十億になりますがね、お話のとおりにしまして。それが三十億にしかなっていない。そうするとやはり納得のいかない点が残るわけです。それは今そういうふうな、説明を聞くとか何とかというのじゃございませんけれども、ざっと勘で計算すると二、三十億円足りないわけで、何かあるのですか、ということを聞く程度です。
  288. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 先ほども申し上げましたように、大体その十五億円という程度のものが、これが作業の原材料費となっております。その原材料費の約一九三%が作業の収入として、従来回収されておったというのが、これが従来の大体の実績になっております。それで、約十五億の原材料費に対して一九三%掛けますと、それで大体三十億ぐらいになるわけでございます。それにまあ前年からの繰り越し製品の売却の収入とか、あるいはその未収金を収入に入れるというようなこと、若干そのほかの歳入がございます。それやこれや合算いたしまして先ほど申しましたような作業収入が歳入として見込まれることになるということでございます。
  289. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 あなた方のその原材料費の回収率一九〇何%というものから出た金額だけになりますよ、三十億といえば。けれども、実際に七万人の人が年に五万円近くの働きをしているわけです。それは何かで収入に上がるはずです。その分が、七万人で、五、七、三十五億ですから、両方で六、七十億なければ勘定が合わぬじゃないかというところを伺ったわけです。
  290. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ちょうど主管の経理部長が、家族に病気されました方がございまして委員会に出席できませんので、係りの者が出ておりますが、私は主管ではございませんが、前に経理部長としまして、会計のことを担当しておりましたものでございますので、はなはだ潜越でございますけれども、今の点の御疑念に、私の知識でお答えを申し上げたいと思います。  作業収入の点につきましては、一般の商業計算のような形でやっておりませんので、予算としましては、原材料費としまして十五億円の予算をいただきまして、それを一年の間に受刑者に作業をさせまして、その売り上げが歳入となってくるわけでございますが、その歳入が三十五億に見積もられておるという趣旨でございます。  それでこれは、非常に一般のあれから申しますと、いわゆるペイしない、能率の悪い成績になるわけでございますけれども、刑務作業と申しますのは歳入を上げるのが目的ではなくて、作業そのものが受刑者の改過遷善をはかる一つの手段としてなされるという考え方に立っておりますので、できるだけ作業収入を上げていきたいという考えは持っておりますけれども、本質的にそちらのほうにのみ重点を置くわけにはいかないのでございます。現実の問題といたしまして七万人の人が作業についておりますけれども、仕事が十分与えられないために、ある者はある時間待っているといったような時間もあるわけでございます。それからなお作業収入を上げますためには、できました製品が一般に市販されるとか、あるいは官庁の用途に供せられるとかいうような道が開けて参りますと非常によろしいのでございますが、この点も民間のいろいろな産業と競合いたしまして、早い話を申しますならば、床屋さんなり髪結いのような仕事をやる作業が女の受刑者に、男の受刑者にもありますが、こういう仕事をやりますと、町のパーマネント屋さんが文句を言う。あるいは剣道具を作る作業をやりますと、剣道具を作る業者から、刑務所でそういうものをやってもらっては因るというようなこともございまして、民間と同種の産業で競合しますために、なかなかこの開拓がむずかしいのでございます。  しかし当局としましては、この原材料費と作業収入とを、できるだけ大きな比率でペイして参りますように工夫をいたしまして、努力をしまして、ここ数年来非常に歳入が上がってきておるのでございますが、しかし関係から申しますと、十五億円で三十五億の歳入になって戻ってくるというふうに御理解いただければ、予算の性格を説明し得るというふうに考える次第でございます。
  291. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 三十五億円で、原材料費は十五億円、それからあとの二十億が労銀になるわけだね。で、七万人が年中どれくらい動くのか知りませんが、それが動いて二十億にしか計算ができぬということは、はなはだ意外に思うわけです。特にこのごろどの仕事でも手が足りなくて、ネコの手でも借りたいといったような状態にあるわけです。作業をもういろいろな方面に、もう全く余るほどあるわけなんです。それで、一般の人が、人を使うときには優遇をしなければ人が集まらぬわけですけれども、刑務所におる人たちは、あなた方の指図次第で、おそらく七時間や八時間は充実した作業ができるだろうと思うんです。それで、僕はさっき、月に一万円と見てもということを申し上げたわけなんです。無理ではないと思う。どうしてもこの法務省の作業収入が百億になるということを目標にして、その人間の活用案を根本的に工夫してみる、研究してみるということを大臣がお考えになってはどうですかという程度まで申し上げて、質問をやめます。
  292. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの点につきましては、ただいま竹内政府委員のお答え申し上げましたような趣旨で今日まで臨んでおります。言いかえますれば、でき得る限り作業収入を上げたいという一つの考えと、そしてまた、刑務作業の本来の性質そのものとの間にも、いろいろ考えなきゃならぬ点がございますので、今日の状態になっておりますが、われわれといたしましては、ただいま仰せになりましたような、百億を目標にして云々というところまでは考えておりませんが、私ども考えておりますのは、せめて——こうした受刑者のための収容費が相当多額に要ります。収容費の関係が五十億円ばかりになると思いますが、せめてその収容費を目標に作業収入が上げられるところまでいきたいものだなというふうに考えているのが、ただいまのわれわれの目標でございます。  しかし、それもやり方で、へたに急激な変革をいたしますと、民間の産業に圧迫を加える云々の問題等も起こりますので、なかなかその辺むずかしい。ことに受刑者でございますから、いろいろ年令の差もございますし、あるいはその職業の差もございますし、そうしたものを有効に作業に従事さして、そしてもっぱら能率を上げてもうけるというふうにはなかなか参らないという実情もあることも、御承知願いたいと思います。
  293. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 百億という注文は撤回いたしますが、この三十七年度予算に、先ほどお話になりました五十二億というのが、医療費、それから食事費用等でありますから、それだけぐらいはこの作業収入でとんとんになるというようなところまでお考えを願って、急にお考えになると、また下手な考えで、かえってまずい結果になるかもわかりませんから、じっくりと年期を入れて研究してもらうということをお願いいたして、質問をやめます。
  294. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ちょっとこの機会に、午前中亀田委員の御質問になりましたところで、研究いたしますと申し上げました、例の公安調査官の人権侵犯事件につきましての先ほどの表の問題、私もうっかり、急いで読んでおりましたので、三十年、三十一年、三十二年、この各年度末に、一件、二件、二件と、五件の未処理がある、こんな古い事件の未処理はおかしいじゃないかというふうに、私も同感でございますとお答え申し上げましたが、よく説明を聞き、また表の見方も研究いたしてみますと、これは当該年度末における未処理の件数がこういうふうにありましたという数字でございまして、いずれも、三十年度末の未処理一件は、三十一年度処理済みになっておりますし、あるいは三十一年、三十二年、同様にいずれもおおむね、その次の年度をもって処理済みでございます。  したがって、この表で申しますと、一番しまいの三十四年、五年がありすが、この三十四年、五年の未処理が三件、三件と、いずれも両年度末が載っておりますが、三十四年度末の三件は、もちろん三十五年度で一件、及び三十五年度におきましては、年度末の三件は、残りましたその三件は、三十六年度で全部処理済みになっております。その処理状況は、あるものは非該当としての決定がなされており、あるものは処分猶予というような格好での結論になっておる状況でございます。以上のような、表の読み方を間違っておりましたので、お答え申し上げまして、もし内容等についての御質疑がございましたら、またあらためての機会にさせていただきたいと思います。
  295. 亀田得治

    主査亀田得治君) じゃ私から二、三点、この予算関係に追加してお聞きいたします。時間がありませんから、一括して−…。  まず一つは、地方の小さな法務局関係の渡し切り経費の問題ですが、これはすでに三年前に人事院の決定がありまして、非常に不足しておるという決定が出ておるわけです。若干その後改善はされておるわけですが、しかし、他方、物価の値上がりとか、そういったようなことを考えますと、実質的にどれだけ改善されておるかわからない。しかも絶対額から見ましても、三年前の人事院の決定、その決定すらが、いまだに実現をしておらない、こういうわけでして、これは非常に私たち、ときどき不平を聞かされる問題です。まあ法務省としては大いに折衝はされているのでしょうが、その間の事情をもう少し明らかにしてほしい。  それからもう一点は、例の宿日直手当に関する問題ですが、これも昨年の十一月に人事院総裁の判定が出ておるわけですね。で、前々から、これはやはり問題になっていたことでありますから、ぜひこの予算で私たち筋の通るように措置をしてほしいというふうに考えていたわけですが、これも実現しておらない。あるいは明年から、そういうふうに人事院の決定を尊重して直すというふうなことにでもなっておるのかどうか。そこらの点も、ひとつもう少し説明をしてほしい。  それから、この法務局関係では、ところどころ非常に悪い建物があるわけですね。しかし、そこに保存してある書類というものは、これは国民の権利義務にとって非常に大事な書類であるわけなんです。で、裁判所についても、この施設のことで問題があるわけですが、法務局関係で、特にそういう目立つものがあちらこちらにあるわけだ。で、たとえば東京などでも、渋谷のある法務局の出張所、これなども非常なこれはやはり悪い見本だと思うのですね。柱が曲がっているわけですね。まあそういうふうな東京のまん中で、そういうものがあるような状況ですが、こういうものは、もう当然いろいろな営繕関係の費用が予算の中に載っておるわけですが、これは何かこの予算の中に入っておるのかどうか。そこら辺の点を、ひとつ一括して、以上三点、御説明願いたいと思います。
  296. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御指摘になりました第一点の渡し切りの問題につきましては、毎年御指摘を受けます。われわれ当局といたしましても、その点従来の積算の不十分なることを痛感いたしまして、三十七年度予算におきましては、財務当局とも十分相談いたしまして、まだわれわれの理想の域には達しませんけれども、だいぶんことしはよくなって計上に相なっております。金額で申し上げますと、三十六年度予算におきましては一庁当たり平均九千円という渡し切り費の計上でございましたが、三十七年度予算におきましては、一庁当たり平均一万三千円ということになっております。ちょうど四千円の増加でございます。しかしわれわれとしては、これで十分だと思っておりません。もちろん行政管理庁当局の指摘いたしましたところでも一万五千数百円になっておったと思います。われわれの最近の物価その他にかんがみましての要望といたしましては、やはり一万七千円余の要求をいたしておったのでありますが、やはりいろいろな財政当局の都合もあり、われわれとしても、一挙にそこまでいくこともあまりぜいたくかというようにも考えられまして、やむを得ずこの程度で、ことしはがまんをして、さらに次の年度でまた直していこう、こういう考えでいる次第であります。  宿日直の手当の問題につきましても、これまたおおむね同様でございます。ことにそのうちの宿直手当の問題につきましては、今回相当大幅に、従来の積算の仕方を改善して参りまして、相当多額の形式上も予算を計上し、それをもって善処して参ろうということに考えております。ただ、半日直手当の問題でございますが、この問題は、まだ各省通じまして、財政当局も一斉にこれを認めるというところまではいきかねる状態でもあり、各省でも、必ずしも半日直手当は励行されておらない状況でございますから、この点はしばらく、ことしはがまんをしてもらおうと、かように考えております。  それから、法務局の出張所その他の出先の役所の庁舎の老朽によって非常に困っておる点は、全く私も同感で、早くこれを直したいと思いまして、いろいろ営繕当局として研究をしておるのでありますが、しかしながら、何分にも出先の官庁が非常に多い法務省のことでございますから、手が回りません。金が足りません。それでことしといたしましては、官庁営繕関係予算全体——国の予算全体といたしまして、できるだけ押えていこうという方針をとってはおりましたが、しかし、われわれのところでは特に要望いたしまして、前年より若干ではございますけれども増額をしてもらい、これによって、急場のしのぎをつけようということで考えておる次第であります。裁判所等におきましても同様な状態でございますが、いよいよ改築をするとなりますと、従来どおりの木造家屋で作ったんでは、ますます参ってしまいますから、どうしても永久建築にしたいという要請が起きます。そうしますと、それでおのずから金額が張ってしまいますので、ついたくさんのものを処理していくのにおくれている。言いかえれば、あとはやはり予算をもっと獲得して、そうしてたくさんの数を永久建築で作り直していくというふうに努力をいたすべきものと考えまして、今後ともなお努力をいたしたい、かように存じておる次第であります。
  297. 亀田得治

    主査亀田得治君) いろいろ詳細なお答えがあったわけですが、渋谷出張所の修繕はおやりになるのでしょうな。柱が曲っているのですからね。
  298. 住吉君彦

    説明員(住吉君彦君) かわってお答え申し上げます。主査御指摘のとおり、渋谷の登記所は、確かに柱も曲っております。たいへん狭隘で老朽状態であります。それで改築契約を検討いたしておりますけれども、現在代官山、東横線のそばで騒音もございますし、敷地も狭まうございます。したがいまして、まあもう少し閑静な、登記所の設置にふさわしい所というわけで、現在法務局を通じまして渋谷区と折衝、あるいは東京都、さらには関東財務局に敷地の物色をさしております。一応予定は渋谷区役所の隣接、ワシントン・ハイツ付近の国有地を利用できないかということで話にはなっておりますけれども、現在まだ敷地は確定いたしておりませんので、三十七年度予算案には新営工事として予定はされておりません。
  299. 亀田得治

    主査亀田得治君) ただいまのお答えですと、あの現状は、やはりきわめて不適当だ、そのかわる土地などの選定がおくれておるということであれば、それはひとつ大いに努力して下さい。法務局へ就職しようと思ったのだが、あそこへ入っていったら、あまりきたないので、それで就職をやめたと、そういう例を私一つ聞いておるくらいに有名な所ですから、ああいうものは、やはり残さぬようにしていただきたい。  それから半日直の問題と渡し切り経費の問題ですね。これは毎年ずっと続いておる問題ですが、まあ先ほど大臣も、ことしはこの程度でがまんしてもらってというふうなお答えがあったわけですが、こういう問題は、あまりちびちびしないでぴしっとやはり筋の通ったように早く直してやると、渡し切り経費にしても、なるほど三年前あるいは昨年に比較すれば相当上がっておりますが、その間の物価の値上がりとか、そういうことを見ますと、せっかく人事院の決定どおりにしたときには、もうすでに相当なまたそこにギャップができているのじゃないかというふうな感じがするわけですね。大蔵省としては、こういう公の費用を公務員個人に持たして知らぬ顔をしておると、あるいは半日直に問題にしたって、実際に働いておるのに、それを知らぬ顔しておるというやはり問題になるわけです。だからこういうことは、もう少し早く手直しすべきじゃないかと、われわれ考えておるわけですが、法務省のほうは、もちろんあなたのほうに要求になっておると思うが、大蔵省は、どういうふうなつもりでずっとこういうのをやれないのか。
  300. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 今回渡し切りにつきましては、従来御要求がございまして、それにつきまして、先ほど法務大臣から御答弁いたしましたとおり、約五割近く値上げしたわけでございます。その五割の値上げが少ないという御不満もあるようでございますが、私らといたしましては、同時に今回渡し切り以外の一般の庁費につきましても、いわゆる人頭庁費的なものの単価を実地調査に基づきまして上げたわけであります。そういったものとの権衡をとりながら、かつまた、この人事院のほうの勧告もあったこともよく承知いたしております。しかしながら人事院の勧告は実地調査約十五庁くらいについてやったと承っておりますが、渡し切り経費平均九千円でございますが、大体六段階くらいに分かれておりまして、九千円の時代におきましても、最高が二万三千円くらいというような割り振りになっておるわけであります。  それから、もうひとつの点は、この渡し切り費の対象庁になっております、いわゆる四人庁以下の出張所は、御存じのとおり生活の本拠と事務をやっておりますところが一緒になっておる、きわめて特殊の官庁であるわけであります。そういったものにつきまして、私ら事務的な、何と申しますか、問題とした点を率直に申し上げますれば、どの程度私的な経費でございますか、あるいはまた、どの程度公的なものとして国が見なければならぬというふうなことにつきまして、まだはっきりと割り切れない点が残っているのではないかというような点を存しながら、今回の値上げにつきましては、ただいま申し上げましたとおり、物価の値上がりでございますとか、一般庁費との値上がりの権衡を見ながら、一万三千円というような数字で話をつけております。  それから同様な問題が、実は宿日直手当についても起きるわけでございます。日直手当につきましては、実は今回六人庁以下のものにつきまして、今までは十日分ぐらいしか入っていなかった。今度はこれを六十四日分、年間の日曜、祭日について計上をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘の半日直の分の問題も、まだ実は残っておりますし、宿直の問題も残っております。この点につきましても、実は一般の官庁の方面と違いまして、その生活の本拠の場所で勤務しておるという特殊の形態を持っておりますから、そうしたものから宿日直手当を完全につけていいのか、やっぱり疑念を持っております。こういった特殊の官庁については、特殊の手当を考えるべきではないかということを、個人的な考えでございますが考えておる次第でございます。決して、今回の予算案に計上いたしました考え方において、これらのものを割り切っておるというようなつもりはございません。今後さらに、こういった特殊な官庁につきましては、特殊の考え方をして検討して参りたいと思っております。
  301. 亀田得治

    主査亀田得治君) 時間がありませんから、この程度にいたしておきますが、ともかく公務員の場合には人事院という機関がありまして、そこで問題をやはりずっと掘り下げて検討して結論を出しているわけですから、渡し切り経費の計算にいたしましても、公費と私費とがごっちゃになっている、そういったような検討なども人事院自体としてもやって、ずっと仕分けをして、やはりこれは足らない、こういう検討の結果、ぎりぎりやはり出しているわけですから、こういう公務員に対する人事院の決定というものは、やはり特に尊重するというふうな格好で扱ってほしいことをここで要望しておきます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  302. 亀田得治

    主査亀田得治君) 速記を始めて。  以上をもちまして、裁判所及び法務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  303. 亀田得治

    主査亀田得治君) 次に、昨日残りました内閣及び総理府所管について質疑を行ないます。  それじゃ、一点だけ官房長官にお尋ねいたします。あるいは内閣総理大臣にお尋ねすべきことかもしれませんが、しかし、あなたは大番頭ですから、ひとつ総理大臣のつもりでお答えを願いたい。それは昨日沖繩に対する援助費に関する今年度増額になったこまかい項目等についての質疑があったわけです。私のお聞きしたいのは、それじゃなしに例のケネディの新しい出方によって、今後日米間の折衝が沖繩問題について始まるわけです。それに対する立ち向かい方の問題ですね。私が端的にお聞きしたいのは、日本国民なり沖繩住民の要望に従って、一日も早く施政権を日本に返す、こういうことを推進するためには、今までのような態度では、もう限度があるのじゃないか。今までのような態度では、結局は、多少民生関係、福祉関係の援助をする、しかし、その軍事基地の必要性はこれを認める、こういう立場に一方ではなっておりますが、こちら自体の姿勢というものが、もう前進しないような格好なんですがね。だから問題がここまできた以上は、やはり施政権返還を早くやるためにはどうあるべきか。端的に私が申し上げるのは、やはり原子兵器基地としての沖繩の問題、これをやはり政府として再検討をしてみるべきじゃないか。沖繩は日本の一部だと、こうアメリカ自身が言い切っているわけですね。日本では歴代の内閣は、ともかく表向きは絶対原子兵器は日本では認めない、こういう政策を出しているわけでしょう。それならば、沖繩は日本の一部だという以上、沖繩住民にとってもそうでなければならぬ。だからそのことを、やはり対米折衝の今後は最重点に置くべきじゃないか。そうすれば、アメリカとしては、これは原子兵器の基地として使えるから沖繩というものを保有したいわけなんです。しかし、日本国民の悲願から言うて、日本本土はもちろん、沖繩でもそういうことをされちゃ絶対困るのだ、原爆の洗礼を受けた唯一の国民として困るという問題、本質的な問題に突っ込んでいかなければ、私は施政権返還要求というものは、これはもう一歩も進まぬし、むしろその問題に取り組まない以上は、アメリカにしたって、もう日本も施政権返還なんて、そんなことは腹の中じゃたいして考えていないと、やはりそういうふうな考え方を起こさせると思います。これが一つです。  それからもう一つは、新年度の沖繩援助に対する日本の予算も相当ふえております。ふえておりますが、沖繩は日本の一部だと、そういうことを認める以上は、日米両方折半してその分担率を幾らにするといったような、そういうみみっちいこまかい行き方じゃなしに、これは全部日本政府が責任を持つというふうな出方をすべきじゃないか。もちろんそれは軍事基地なり、そういうことに関連した費用までは持つ必要はありません。事いやしくも沖繩住民の福祉とか、そういう関係のことにつきましては、これは日本政府は全部持つのだ。それはその基準とか標準はどこへ立てるか、これは総理大臣なり外務大臣の今までのお答えでは、内地の県並みといったような標準を出しておられます。だから、標準はまあどこにとるかということは問題であろうが、ともかくそういう面で、要る費用は全部持つのだ、こういう根本的な考え方というものをはっきりさせるべきなんじゃないか。この二点ですね。  こういう点について、これはまあ総理大臣に実際お聞きしたいところなんですが、官房長官のひとつ率直な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  304. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 沖繩における核武装の問題と施政権返還の問題についての御質疑でございますが、この件につきましては、本院におきましても、担当国務大臣からお話があったと思うのでございますが、わが国が核兵器を持たないということは不動の国是でございまして、内外に宣明しておるところでございます。したがいまして、沖繩の施政権が返ってくるという段階におきまして、沖繩の施政権が回復をいたしました暁におきましては、この国是が当然生きてくるものと私どもは考えておるわけでございます。問題は、返還を求める過程におきまして、そういう本質的な問題について触れておかないといけないという御趣旨の御質問でございました。  今私どもの返還に対する姿勢といたしたしては、この間のように、ケネディ大統領の声明がありましても、私どもの返還を求める要請というものには、何ら変改はないのだ、機会あるごとに強く返還を要請して参るという基本の方針に立っております。そこで、それに立ちながら、この間の声明にも見られますように、返還に伴う困難を少なくするという措置として、次のようなことをやるということがうたわれておりますが、あの方向に協力いたしまして、できるだけ困難を少なくして参るということに鋭意精進していくべきものと思っておるわけでございます。現在の沖繩における核武装を取りやめていただかないと云々ということに、今私どもは施政権返還の要請を続けつつ、沖繩における核武装をやめてくれと、こういう要求をすべきだという議論につきましては、沖繩は、現在のところ、もちろんアメリカの施政下にあるわけでございまして、私どもといたしまして、それをどう変改せよということについて、有権的な力はないわけでございます。ただ、冒頭に申しましたように、わが国の不動の国是が内外に宣明されて、アメリカといたしましても、十分これを承知しております以上、施政権返還の前提に、そういった日本国民の願望と日本政府の国是というものが横たわっておるということは、当然先方においても認識されておることでございます。そういう前提に立ちまして、地道に返還への困難をなくし、圧力を少なくするように、しんぼう強く処置して参るということが現実的に実りを豊かにする道じゃないか、このように考えておるわけでございます。  それから、第二点の御質疑につきましては、すでに本分科会におきましても、総務長官から御発言があったと思いまするけれども、二、三週間のうちに、日米両国の間で協議のテーマをきめ、メンバーをきめ、そしてどう日米の協力関係を具体化するかということにつきまして討議が始められるわけでございまして、それに対する用意は、今関係各省の間で進められておりますので、今主査が御発言になりましたような点につきましても、十分検討をいたしまして、日本政府としては、周到な準備をいたしまして臨みたい、こう考えておるわけでございます。今申しました点につきまして、政府としては今こういう決意でおると、ここで私が申し上げる段階にまでなっておりませんけれども、せっかく今関係各省の間で、そういった方途について検討中でございますので、しばらくその検討の結果をお待ちいただきたいと、そう存じております。
  305. 亀田得治

    主査亀田得治君) いろいろお答えがあったわけですが、第二点の点ですね、アメリカの援助がふえることは、ひもつきが強化されはせぬかとか、いろいろな疑念もまた一方では出るわけですね。だから、そういう問題もこれは打ち消していくことになる、日本自体がもう一切責任を持っていくという態度を出していくことが、まあ台湾あたりも何かごちゃごちゃ言っているようだし、だから、こちら自体が、予算を見れば、われわれとしては、使わんでもいいような予算も出たりしている予算ですからね。思い切って、沖繩のような支出については、もうこちらでやる、こういう大きな線というものを、新らしい、多少こう新らしい局面になってくるわけですが、その際に、そういう柱をきちっと立てて、そうしてぶつかるべきじゃないか。アメリカとしても、こっちが金を出すというものを、そんなにむやみに断われないはずですね。  それから第一点は、これはもう、ともかく日本本土には核兵器は置かない、同じ国民だけれど、沖繩のほうは原子兵器で絶えず脅かされた状態にあっていい、こんなことは絶対あり得ないわけですからね、日本人として。だから、その点の政府の決意なり、あるいは国民の世論が盛り上がってくれば、これは、原子兵器の問題については、日本は特殊な立場にあるんだから、したがって、アメリカは、米ソ対立の戦略的な配置からいったら沖繩はほしいところだけれど、あれだけこう政府も民間も、原子兵器という立場からの抵抗があれば、これはやむを得ないという気持に早く追い込むことです。そのことが施政権の完全返還です。アメリカとしても、原子兵器基地として、あそこを使えないということになったら何もそんなものを持っておったって仕方がないわけですから、これは、はっきりケネディの声明自体が、そう言っているわけですから、だから、その問題にひとつ、まっしぐらに直進してほしい。決してこれは、日本政府が現在日米間の協力ということを外交路線として出しておりますがね、これまで変える必要はないのですよ。まあ私たちは、もうちょっと変えてほしいとは思っておりますが、何もそういう基本的な問題、自民党の外交政策に触れなくても、これはできる問題だと思う。原子兵器の基地というものを除外しての日米協力ということは十分考えられるわけだし、現に日本本土では、そういう形の日米協力ということで進んでおられるわけなんですから、だから、まあこの点は、官房長が国会でうっかりした発言などをされると、たいへんこれは重要な問題でしょうが、この間から、ああいうケネディの声明等が出まして、いろいろ私たちは考えて、われわれなりにも考えておるわけですが、そういうことを非常に強く感じているわけです。  で、ぜひ、対米折衝に対する基本的な態度の検討をされるわけでしょうが、そういう際に、こういう意見もあるということで、ひとつ御検討を願いたいと思うのです。
  306. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 承知いたしました。
  307. 藤田進

    ○藤田進君 さすがに大番頭で、なかなか政府の従来答弁された線を出ないわけで、その点を、感心するよりも非常に物足りなく思うのですが、実際問題として沖繩は、現在の極東の軍事事情等から見て、あるいはわがほうの防衛力等から見て、核兵器を持つ軍事基地としてやむを得ないのではないかと、今すぐ核基地を返還するなり、これを取りやめろと言っても、無理ではないかというお気持があるのじゃありませんか。これが一つ。御承知のように、アメリカのほうでは、極東の脅威と緊張が緩和されればということ、言いかえれば、そういう状態では返せないと言っている。そうだとすれば、今御答弁のあった、機会あるごとに返還を迫ると言われてみても、実際問題として、こういう極東の、政府の言われるような事情では、それはちょっと返せと言っても返さぬわいと、返せと言うのも、これは少し無理があるわいと、そういう状態じゃないんでしょうか。
  308. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 現に、沖繩は平和条約のあと、アメリカが支配しておるわけであります。したがって、アメリカがどういう必要に基づいて沖繩の施政権を、施政を続けていくかということは、一にアメリカにかかっておる問題でございます。ただ、私どもといたしましては、国民の願望に基づきまして、一日も早く返してもらいたいという主張を執拗に続けることは、当然なことだと思います。先ほど亀田主査からも言われましたように、核兵器というようなものが要らない世界になれば、当然それは沖繩を保有する必要がなくなるでございましょうし、またアメリカもそういうことを希望しておるのだろうと思いますけれども、まだ事実問題として、アメリカが支配しておると、そうして返還はアメリカから受けなければならぬという立場にあるわけでございまして、私どもといたしましては、沖繩が日本に返還される場合の諸々の困難を克明に一歩々々解消していくような方向に努力しつつ、一方におきまして、終始返還を要求し続けるという態度を持続していくという以外に、いい分別はないわけなんでございます。そういうところから御賢察いただきたいと思うわけでございます。
  309. 藤田進

    ○藤田進君 この点は、予算委員会において、小坂外務大臣との間に取り上げられましたが、時間が足りないために、どうも最終的な、はっきりしたものになっていないわけですが、今言われるように、御賢察ということですが、なかなかこの頭では、いい察しもできないのですが、そういう緊張なり脅威が緩和される、あるいはなくなるということが、だんだんと政府としては、措置をあわせてとりつつ、一方では返還を迫っていくということのようですが、現状認識において、アメリカの言う緊張なり脅威なりといったようなことを、政府としても今感じられているのだろうかどうだろうか。その上で考えたときに、極東の脅威とか緊張が緩和ないしなくならなければ、実際に要求はしてみても、返還はむずかしい。しかし要求は、国民感情であるからする、こういうように私の方は賢察したわけでございます。そのとおりでございますか。
  310. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) アメリカをめぐる軍事情勢というようなことは、私ども十分インフォメーションを持っておりませんし、どういう必要がどの程度にあるかというようなことについて、的確な判断を下す材料はございません。能力もありませんが、ただいま申しましたような態度で前進して参るという段階におきまして今回の声明が出た。それには、初めて日本の本土の一部であるということも認めておりますし、できるだけすみやかに返すのだということが公式の声明として出たということは、私どもが今までとって参りましたことに対する一つの反応でございまして、そういうことを、責任ある大統領が公に言われたということは、私どもを非常に勇気づけるものでございまして、既定の方針によりまして、ますます精力的にやって参らなければならぬと考えております。
  311. 藤田進

    ○藤田進君 くどいようですが、ですから、わがほうとされては、政府の態度としては、腹から返還を迫られることだろうと思います、事あるごとに、ですね。その意味が、極東の緊張なり、あるいは脅威なりが去る去らないということでなくて、できればひとつ即時、すみやかな時期に、そういうことにかかわりなく、返してもらいたい、こういう態度なんですか。
  312. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) そういう態度を終始続けているわけでございます。しかし、先ほど申しましたように、返してもらうのは、アメリカが日本に返還するわけでございます。したがってアメリカ側のわれわれの願望に対する反応というものは、ゴールに行かなければ返らぬわけでございます。その過程を着実に歩んでいる。今度は一つのエポックにいるのだ。これをまた跳躍台にして、さらに進めていこう、こういう態度でございます。
  313. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと答弁がぼけたから、念を押しておきますが、極東の緊張とか、あるいは背威とかということをアメリカのほうは言うわけです。それはインフォメーションを持たないし、そこまでの把握は困難だと言われる。したがってわがほうとしては、そういう極東の軍事情勢ということにかかわりなく、即時、ないし早く返してもらいたい、こういう政府の統一した見解である。相手は相手の主張がありましょう。しかしわがほうとしては、そういう態度だと、こう理解してよろしゅうございますか。
  314. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) さようでございます。
  315. 亀田得治

    主査亀田得治君) 以上をもちまして、内閣及び総理府所管に関する質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  316. 亀田得治

    主査亀田得治君) 次に、会計検査院所管を議題といたします。  まず大沢事務総長から説明を求めます。
  317. 大沢実

    説明員大沢実君) 会計検査院所管の昭和三十七年度歳出予算について御説明いたします。  会計検査院所管昭和三十七年度一般会計歳出予算要求額は、八億十七万一千円でありまして、これは会計検査院が検査を遂行するために必要な人件費、物件費、検査旅費等の経費であります。  今、要求額のおもなものについて申し上げますと、第一に、人件費として、六億七千七百二十六万九千円を計上いたしましたが、これは職員千百八十六人分の給与、手当等でありまして、要求額の八四%に当たっております。  第二に、検査旅費として七千七百二十七万二千円を計上いたしましたが、これは職員を現地に派遣し実地について検査を実施するために必要な経費であります。  第三に、物件費として四千六十四万六千円を計上いたしましたが、これは事務上必要な備品・消耗品費、通信運搬費、印刷、製本費及び光熱水料等の経費であります。  第四に外国旅費として二百五万九千円を計上いたしましたが、これはウイーンにおいて開催されます第四回国際最高会計検査機関会議に出席するとともに、在外公館の会計検査を実施するために必要な経費であります。  なお、出資団体等の検査を拡充するため従来の出資検査第一課、第二課を廃止し、新たに上席調査官五人を配置して検査の徹底をはかることといたしました。  次に、ただいま申し上げました昭和三十七年度歳出予算要求額八億十七万一千円を前年度予算額七億六千六百六十六万三千円に比較いたしますと三千三百五十万八千円の増加となっておりますが、そのおもなものについて申し上げますと、第一に人件費において四千六百九十五万八千円、第二に検査旅費において五百二十四万二千円、第三にその他において六百八十五万七千円計五千九百五万七千円が増加しておりますが、一方第一に庁舎施設整備費において二千四百七十六万四千円、第二にその他において七十八万五千円計二千五百五十四万九千円が減額となりましたので、これを差し引きいたしますと、前に述べましたとおり三千三百五十万八千円の増加となります。  はなはだ簡単でございますが、会計検査院所管昭和三十七年度歳出予算要求額の概要の御説明を終わります。  何とぞ御審議のほどお願いいたします。
  318. 亀田得治

    主査亀田得治君) 質疑のおありの方は、順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  319. 亀田得治

    主査亀田得治君) 速記を始めて。
  320. 藤田進

    ○藤田進君 会計検査院につきまして私ども精査をいたしますと、それでもまあ時間的あるいは資料的に不備ですが、私どもの結論としては、従来大蔵省に対する予算要求も積極的にされていることは認めますが、しかし全国の裁判関係、司法関係とやや似たように、ややもするとその予算が十分でないために、まことに不徹底な、かなり成果をあげられているけれども、もっと調査員なり、そういったような機構、人員充実予算的な強化ということをされていくことにおいて、予算執行の面も、もっと正常なものにもなるしということを感ずるのですが、どうも従来の年度別に見ましても格段の前進を見ていない。これについては、会計検査院にも一半の責任はあるように私は思う。予算折衝の過程における実情なり、今後の会計検査院の事務的なあるいはまた、その運営なりといったような面について強化せられる方針だろうと思うわけでありますので、これをまずお伺いしたい。
  321. 大沢実

    説明員大沢実君) お答えいたします。会計検査院の現在職員千百八十六人という職員で検査の充実が、あるいは期し得られないかという点でございますが、われわれも検査ということの内容から見まして、人が大勢おれば大勢おるほど徹底した検査ができると、こう考えております。しかしまた一面、検査を担当する職員の質の問題、これが相当大きな問題になってくると思います。それで、実は本年度予算におきましても、当初は数十名の増員の要求もいたしたのでございますが、折衝の過程におきまして、まず質の向上のほうを、もう少し充実しようということになりまして、先ほどの説明の中にも申しましたとおり、まず出資団体の検査ということに対して課長相当の上席調査官、これを従来は二人でおったところを五人にして、そして出資団体を個別に、相当十分に把握し、検査を徹底するようにしたい、こういうことにいたしました。これは予算が成立いたしました。そのほかに調査官というのが大体検査を実際に実施する中核の職員であります。これが昨年までは五百七名でありましたが、今回の予算において五百十九名、十二名の増員を認められました。つまり一般職員から、それだけのほうに振り向けたわけです。こうしてまず質の向上をはかったわけであります。  しかしながら、御指摘のように、これで十分かということになりますと、われわれといたしましても、まだ十分とは考えられない。これはまあ検査というものを、どこまで抽出的にやるかということにもからむわけでありますが、現在のところ、書面検査のほうは各方面から提出されて、これは全部やっております。実地検査の面におきますと、大きな部局全体の、郵便局から全部合わせますと、まあ一〇%足らずでありますが、おもな部局につきまして五〇%程度の実地検査を執行しております。これはもう少し執行しなければならないと考えておりますので、将来も、この機構の充実ということに対しては、なお努力いたしたい。こう考えている次第であります。
  322. 藤田進

    ○藤田進君 それで私ども現地調査を休会中等にしまして聞くのは、やはり何といっても、会計検査院が鋭い眼を持っているということは、われわれも力強く感ずるわけですが、ただ会計検査院の機構の中で、各省庁別に調査官等の担当がきまっているために、各省庁間における国費のむだ使いといったようなものについて、案外等閑視されていることを見受けるのです。  たとえば港湾関係でみても、同じ防潮堤を作るとかといったような場合、一方農林省の所轄で漁港としておやりになっている。それから建設省が道路といったようなことでおやりになっている。それから運輸省は港湾一般としておやりになっているというものが、これは東北地域に所々に見られますが、その設計において、全然異なったタイプで作られて、しかも重複した仕事がなされている。これが会計検査院のほうでは、各省庁別におやりになっているために容易にこれが気づかないのか、気づいても調査官としての発言ができないのか、見のがされている事実を私どもも先般見てきた。会計検査院の調査等調べてみても、これは指摘されていないというような、これは一つの事例ですが、したがって、そういった総合的なさらに見地から、会計検査院としての機能をもっと十二分に活用していただけないものだろうかということが、調査に参りましたものの結論でございます。こういう点についての改善の余地があるのかどうか。またそのことがかえって弊害を生ずるのかということについて、ひとつ御見解を承りたい。
  323. 大沢実

    説明員大沢実君) われわれのただいまの検査の分担は、ただいまおっしゃいましたとおりに各省庁別に検査を分担しております。しかし、それでもお互いに連絡をとりまして、ただいま御指摘のありました重複しているというような問題は、これは検査で見のがした点があるかもしれませんですが、たとえば査定は、建設省でも災害復旧の査定をしている、農林省でも災害復旧の査定をしている、これは重複ではないかということを指摘して減額さしたものが、ことしの検査にも相当上がっておりますが、そういった点は十分注意して参っておるつもりであります。  なお、実施しておりますときに、やはり農林省の工事と建設省の工事が、同じような目的で、しかも片方のほうは要らぬのじゃないかというような問題もいろいろな点から検討いたしまして検討報告として出ているのは最近ありませんですが、そういった点は、もちろん検討して参っておるつもりであります。そうした重複の点は、今の検査で十分であろうと思っております。  それからもう一つは、各省によって、たとえば工事の請負の予定価格の積算の方法が、それぞれ違っている、そうした問題につきましては、会計検査院の中に調査課という課がございますが、そこで各省の検査の結果の資料をまとめまして、そしてほかの担当、たとえば建設省の資料を、農林省担当あるいは運輸省担当のほうに、その資料を配布するということによりまして、一応そうした連絡は保ちますと同時に検査で疑問のあったものは、運輸省担当の者が疑問を持ちますれば建設省担当のほうに問い合わして調べるというふうにして、連絡は相当緊密にとっておるつもりであります。でありまして、現在のところ、私の考えといたしましては、各省、各庁別に検査を担当するという制度は、このほうがむしろいいのではないか。これを総括的にやるということになりますと、やはり書面検査との関連がありまして、なかなか一人の人が、各省の書面をまとめて検査するということは非常に困難ではないか、かように考える次第でございます。
  324. 藤田進

    ○藤田進君 私の今の言葉足らずですが、重複したものは必ず調べられていることは、私の調べでもよくわかるのですが、たとえば道路工事として災害復旧をし、一方河川工事として補助を受ける補助工事などもかつてはありましたね。山口県などでも相当大きなものがあった。そういうやつは確かにやられておるのですが、重複と私申し上げた表現よりも、むだなといいますか、防潮堤が建設省で道路に必要だからおやりになっている。その二、三メーター前に、今度は何か護岸工事みたいなものをやって、これは農林省が防風林の保護としてやりましたという説明でした。実は今の例は、松の木は一本もないのです。その後枯れたからなくなりましたというような調子でしたけれども、こういうものは、案外、技術的に見られる必要があるのでしょう。したがって、調査官といったようなところで、建設省、運輸省あるいは農林省を説得し、負けないだけの技術も身につけた調査官といいますかね、そういうものの充実も、だんだんと必要になってくるような気もするのですが、現状はどうなんですか。
  325. 大沢実

    説明員大沢実君) 御指摘のように、単なる事務官では、なかなかこの土木工事とか、その他になりますと、検査が困難でありますので、ただいま課長一人にも土木出身の技術屋がおります。また電気関係もおります。また課長補佐にも土木の——具体的に言いますと、建設省で土木出張所におったというような人も一人おります。そうした点で、専門家がまず中核になって、それが院内で講義をいたしまして、そして事務官もだんだんと、何といいますか、門前の小僧といいますか、それよりもっと熱心に、いろいろと研究いたしまして、まあそのほうの担当している人間は、ある程度は技術屋的な知識も相当持っておる者がたくさんおります。そうした技術的な最も困難な問題になりますと、その技術の問題が影響してくるわけであります。たとえば原子力の問題ということになりますと、実はいろいろな研究費を投じておる内容に対しましても、われわれの知識は不十分だという点が痛感されることもあります。こうした点は逐次勉強して補なっていきたいと思っております。  そうした点で、もちろん技術担当職員があったほうがいいと思いますが、このごろ技術者は、方々の売れ口がいい関係もありまして、なかなか採用も困難であります。できるだけそのほうの努力は続けていきたい、かように考えております。
  326. 藤田進

    ○藤田進君 会計検査院の性質上、現地に、地方庁を含めてですが、相当出張調査というものが多いと思うのです。単に書面にいたしましてもそうですが、こういう場合に、必ずしも十分にその調査ができないという制約の中に、今言われた人的な問題、質の問題、数の問題ありましょうが、旅費といったようなこと、これがひとつやはりネックではないだろうかという私は感じを持っております。  それからもう一つは、こまかいようで大きいのは、行管の地方局でもそうですが、やはり監査、検査といったような立場の人たちには、案外、外郭団体といったようなものがない。これが他の省になると、何々協会というもので、かなり融通を持たしておる。会計検査院はそれを摘発される立場かもしれませんが、かなり合法的におやりになっておる。ところが会計検査院におられる職員等の実情を聞くと、他の省庁同様な待遇であるし、かりに結婚いたしましても、その住宅がない。これが他の官庁であれば——会計検査院は、それを認めるわけにいかないでしょうけれども、かなりコネが多いのです、見ておると。というようなことで、住宅も容易に手に入りにくいけれども、日本住宅公団、東京でいえば、東京住宅協会とか、正面から窓口においでになると、なかなか二十七回も申し込んだけれども、どうにもならないというような、会計検査院なるがゆえに、どうも一般社会情勢、社会悪との関係を断たれる関係もあってでしょう、けっこうなことですが、非常にやりにくい面が予算上、あるいはそういった社会環境上あるように思うのです。これはやはり当局とされては、職員に対しても、十分なる予算措置なり、あるいに指導上の問題として扱われる必要があるのじゃないですか。私も会計検査院の職員の人で困っておる人を知っておりますが、住宅の面とか、その他、今申し上げたような、これらの解決策について、どうお考えになっておりますか。
  327. 大沢実

    説明員大沢実君) まず最初旅費の点でありますが、これは昨年よりも五百万円ほど検査旅費増額いたしました。しかしこれは御承知のように旅費法の改正によりまして日当、宿泊料が相当上がりましたので、鉄道運賃は多少下がることになりますがそういった面を勘案いたしますと、大体検査の施行においては、前年度と同等、あるいはそれを少し上回る程度の検査の旅費になるのじゃないか。それで十分であるかということになると、これは一つには現在の人員の制約がありまして、書面検査をしながら実地に検査をする、そうして一人の職員が年に四回以上はいろいろな準備、調査、あとの始末というようなことで、それ以上の出張は困難だという制約を考えますと、現在のところは、もう少しほしいということを考えて、大蔵省ともいろいろお話をして今年も各省よりは相当認めてもらったけれども、もう少しほしいという感じがいたします。それによって検査を徹底いたしたいと、かように考えております。  次に、職員の問題ですが、これは今御指摘のとおり、会計検査院としては何らの外郭団体もありませんし、また他省の外郭団体との交渉もなかなか困難でありますので、職員の立場というものは、一般公務員として不遇とはもちろん言われませんですが、有利な点がないということは、確かに御指摘のとおりだと思います。これはしかし、予算面におきましては、一般職の公務員として、公務員一般の給与に制約されますので、給与を増すわけには現在のところ参らない。それで結局共済施設、それのほうに相当力を入れて、何とかならないかということで、共済組合の活動には相当力を入れておりますが、これももちろん、十分とは申すわけには参りません。これから共済組合の運営ということで、福利関係はより以上十分にやっていかなければならぬのじゃないかと、かように考えております。根本的な対策としては、実は、私としてはいろいろと苦心しながらも、現在のところ、予算的にこれを云々するというわけにも参りませんので、いろいろと考えながら、そのままになっている、かような状態でございます。
  328. 藤田進

    ○藤田進君 最後に、今これから申し上げることは、法制上、立法上の問題にもなるかと思うんですが、かりに運輸省とか、通産省とか、そういった監査をやられる場合に、これに密接不可分な会社関係、特に独占的なというか、あるいは特殊会社といったようなところにまで、監査がある程度及んでいかなければ、完全な監査はできないというふうに、私ども決算その他の調査を進めてみて思うのです。しかし、これはなかなか立法の困難なもので、特にはずしたりすることも過去にあったわけですが、こういう実態上、今までやってこられて、ある程度までいけば、もう監査権が及ばない、検査権が及ばないというところがあるのじゃないだろうかというふうに、具体的にどこの会社組織とか、法人とかいうことは特に申し上げませんが、かなりそういう面があるように思うのです。そこをやらなければ、実際問題としてすっきりした予算執行の適正化というものははかられないように、私どもは思っているのですが、この点について、法改正等を含め所見を伺いたい。
  329. 大沢実

    説明員大沢実君) この関係会社といいますか、これが契約の相手とする、それから補助金などをもらう相手であるわけでございますが、補助金の点に対しましては、会計検査院法で補助金を受けておる団体の検査ができることになっておりますので、大きな補助金に対しましては、補助金の交付先に対しても検査をいたしております。もちろん都道府県なども、その補助金を受けた対象として、いろいろな検査をいたしておる次第でございます。  それから、今度契約の相手方でございますが、これも会計検査院法では限定はされておりますのですが、物品の購入契約あるいは工事の請負契約の相手方の会計検査もすることができるということになっております。そうして実際問題といたしましても、どうしても、その相手方の説明が疑問を持たれるという場合には検査を指定いたしまして、そのほうに入ったものが従来においてあります。そうして検査の指定をわざわざいたしませんでも、たとえば防衛庁の艦船の建造契約あるいは航空機の製造契約というようなことになりますと、防衛庁の職員が、それぞれ会社に駐在員の事務所があります。この駐在事務所の検査に行きました場合に、会社のほうと話し合いで、会社のいろいろ原価計算の内容、これも相当深く調査、これは検査という言葉があるいは当たらぬかもしれませんが、調査いたしまして、その価格の適否ということの検討をいたしておる次第でございます。
  330. 亀田得治

    主査亀田得治君) 一点だけ。従来会計検査院で公安調査庁調査官が、例の協力者ですね、調査活動に協力するスパイ、別の言葉で言えば。そういう者に対する謝礼を出しております。非常に幅があるらしいんです。きょうも午前にその点の質疑をしたんですが、ああいうものの実地調査というものは、従来おやりになったことがあるんですか。
  331. 大沢実

    説明員大沢実君) 公安調査庁は、東京と地方の部局はあまり、検査にどこまでいっておるか、ちょっとただいま資料を持ち合わせておりませんが、本庁につきましては、毎年検査をいたしまして、そのときにはいわゆる今の調査活動費といいますか、その内容の証拠書類が、たくさん受け取りを整理しております、これを検査しております。その中には、もちろんときによると受取人の判のないのもあります。しかし大体においては、だれに渡した、ただ、何の情報かということに対しましては、われわれとしても遺憾ながらそれを把握できませんでしたが、こういう人に幾らの謝金を渡したということは、証拠書類によって検査の上で検討しております。
  332. 亀田得治

    主査亀田得治君) その際、証拠書類がありましても、はたしてそのとおりに金が配られておるものかどうか、そこまでの何か少し突っ込んだ検討まではなされないわけですか。一応書類として、金額が総額として合うということなら、まあまあというようなところでとめてあるわけですか。どういうことでしょう。
  333. 大沢実

    説明員大沢実君) ただいまの検査としてはその程度で、それ以上それに疑惑を持つ、持っても、そこ以上それがうそではないかということを、こちらとして言い得るだけの資料がありませんので、ただいまのその証拠書類の検査でとどまっているのが実情でございます。
  334. 亀田得治

    主査亀田得治君) 以上をもちまして、会計検査院所管に関する質疑は終了したものと認めます。  明日は、午前十時に開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十四分散会