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1962-03-30 第40回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月三十日(金曜日)    午後二時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小林英三君、野本品吉君、安 田敏雄君及び柏原ヤス君辞任につき、 その補欠として谷村貞治君、鹿島俊雄 君、小柳勇君及び石田次男君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            米田 正文君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            鹿島 俊雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            古池 信三君            小柳 牧衞君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            一松 定吉君            村山 道雄君            谷村 貞治君            山本  杉君            横山 フク君            相馬 助治君            田畑 金光君            石田 次男君            市川 房枝君            大谷 瑩潤君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    国 務 大 臣 川島正次郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    文部政務次官  長谷川 峻君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省管理局長 杉江  清君    厚生省環境衛生    局長      五十嵐義明君    厚生省保険局長 高田 浩運君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    水産庁長官   伊東 正義君    通商産業省軽工    業局長     倉八  正君    通商産業省鉱山    局長      川出 千速君    中小企業庁長官 大堀  弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告いたします。  本日、柏原ヤス君及び安田敏雄君が辞任せられ、その補欠として石田次男君及び小柳勇君が選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。相馬助治君。
  4. 相馬助治

    相馬助治君 この際、私は池田内閣総理大臣並びに荒木文部大臣に対して以下の質問をいたします。  まず第一に、学校給食の問題についてでございまするが、従来ややもすれば、この学校給食の問題はごく小さな区々たる問題として、予算編成の中においても重大なポイントを占めたことはなかったように思います。しかし、この問題に熱意を持つかどうかということが、そのときの内閣の基本的な性格を知る意味においても重大な内容を持つものであると私は考えます。義務教育学校完全給食を実施して、児童生徒の栄養を確保し、国民体位の向上をはかるということは、この際何にも増して必要であると、かように存ずるのでございまするが、現在学校給食の問題がどのような状態に置かれ、しこうして、荒木文部大臣は、この問題に対して将来どのような方途をもってこれを発展せしめんとするのであるか。この際、担当大臣としての御所見を承っておきたいと思います。
  5. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。昨年の夏、給食制度調査会答申を出していただきました。その答申の線に沿って今後充実して参りたいと存じております。答申の要旨は、御案内のとおり小、中学校完全給食を目ざしまして、給食費につきましては、食費そのものにつきましては国庫費で半分、保護者負担が半分という考え方で、その他の施設設備費人件費等現行法律の趣旨に従いまして国庫費で持つ、そういう考え方小学校五年、中学校十年の見当でもって完全給食をしたらどうだという答申でございますから、その線に沿って逐次充実して参りたいと存じております。
  6. 相馬助治

    相馬助治君 現在の学校給食は、学校給食法によって進められておりますが、率直に申しまして、その責任体制が明確化していないと思うのです。これは現行法不備に基づくものでございますか、それとも運営の点において遺憾な点があるというふうにお考えでございますか。具体的な例をあげて私が聞きたい焦点を説明いたしておきますと、たとえば、給食用物資購入に関する仕事、これも現行制度ではだれがどのような責任において購入関係の最終的な責任任ずるかということが明瞭を欠いております。したがいまして、年間約四百億といわれるところの関係の諸会計が全く私会計的に各学校において思いのままに処理されておりまするし、かつ各府県にありまする給食会等についても、その運営実態はまことに区々たるものでありますが、この点について担当大臣いかような所見をお持ちですか。
  7. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御案内のとおり、学校給食法に基づいて給食が行なわれつつありますが、責任の点が明確でないという仰せは私もいささかそのきらいありと考えております。全国的な立場に立ちましては、特殊法人としての日本学校給食会担当いたしておりますが、末端に参りますると、都道府県給食会公益法人として担当はいたしておりますものの、その相互の関係が有機的な立場において責任分界点が明確でないというきらいがあろうかと思います。現行法そのものも、むしろ終戦直後食糧が足りないという立場に立って学童の健康状態が憂えられて立法せられた経緯等にかんがみまして、ぼつぼつ学校給食法それ自体を、給食の問題についても先ほど申し上げました制度調査会答申の線に沿った法律改正の検討をすべき課題ではなかろうかと、かように思っておる次第でございます。そういう意味合いにおいて今後の改善を立法的にも考慮して参りたいと存じております。
  8. 相馬助治

    相馬助治君 学校給食の問題が、逐年改善方向に向いている事実は私も認めます。ただ、その速度がきわめておそいということを指摘し、同時に早急に解決されなければならない不備が法制的にも、その運用の面においても、国がこれに対する基本的な見解の点においても問題があるということを私は指摘しておるのです。実態をごらんになるとおわかりでございまするが、給食費の徴収の問題についても、施設設備整備等の問題についても、実質的にはPTAの責任で最終的に解決されておるのでありまして、これはきわめて問題であるとしなければなりません。しかも、いまだに栄養士を設置していない学校が多いのであって、食事内容改善の点についても、しさいにこれを調べれば不備だらけであるということも指摘できると思うのです。もっとも、熱意を持って非常な成績を上げている実例のあることをも知っておりますが、一般的に見れば、きわめて問題であると指摘しなければなりません。したがって、施設設備費、それから準要保護児童生徒に対する給食の問題、都道府県給食会業務費の問題、それから給食関係従業員問題等について、政府はこの際より公費負担を増額し、父兄負担軽減をはかる方向に出なければならないと存じまするが、本年度予算編成の中において、文部大臣はどのような態度をとられたか。そして目途とするところがかりに達せられなかったとするならば、それはどのような政治的抵抗の中において問題が解決されなかったか。これらについてひとつ忌憚なき御意見を承っておきたいと思います。
  9. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御案内のとおり、百グラム一円の補助を出しておったわけでございまするが、それが幾分減りました。減りましたのは一食百グラムというパンの量目を八十五グラムという立て方で、副食物カロリーを補うという考え方のほうがより合理的だという線に立って、同時に副食物のほうの問題としましては、牛乳を飲ませるということで補う考え方に立って予算措置をしたいと思ったわけでございますが、努力足らずして、その副食物のほうは成立を見ませんでございました。ただし、まあそれにかわるものではございませんけれども、金額的には、定時制高等学校生徒に対しまして、ミルクのほかにパンを支給するということで、全体としては補いはついておりますものの、小中学校それ自体としては、ある程度欠陥が生じておるということは言えないことはございません。これは遺憾に思っております。今後の努力によって給食そのもの食糧不足からくる余儀ない飢えをしのぐためという角度から、児童生徒体位を向上せしめ、あるいは心身とも教育的効果を上げるという角度からとらえまして、先ほどもお答え申し上げましたように、また御指摘もありましたように、制度そのものも検討いたしましようし、また運営につきましても、至らぬところは改善をしていく、こういう考え方で臨みたいと思います。なお施設設備につきましては、現年度よりは来年度はいささか増額を見ております。合計しまして十三億円見当かと心得ますが、前年度よりも約四億円の増加はいたしております。それでもむろん十分といえないことは申し上げるまでもございません。いずれにしましても総合的な判断のもとに、改善すべき幾多の点があることを承知いたしておりますので、今後努力に待ちたいと思っております。
  10. 相馬助治

    相馬助治君 今文部大臣説明にもあったように、働きながら学んでいる勤労青年定時制学校に関しては、パン牛乳とを今度進んで与えるということは、現内閣がやったこの種の仕事の中では一つの私はヒットであろうと思います。それには十分敬意を表します。ところが、肝心の学校給食の問題の予算に至っては、文部大臣の今度とった態度というものは、結果的にまことに私は情ないと思うのです。一昨年の予算折衝のときから問題になっていたのだそうであって、実は昨年度の暮ごろから、十月ごろから一食一円補助予算昭和三十六年度限りで打ち切るのだというような大蔵省の強い要望がなされて、全国の関係者が陳情を大蔵大臣文部大臣のところに寄せられたのであって、それは御承知のとおりであります。したがって、この一食一円の補助を全額削るということになれば、私は、これは実に重大問題であると注意をしておりましたが、さすがにそうはしなかったのですが、今お話のように、文部省としては食糧改善、栄養的な立場から、主食の量を減らして、その分だけ副食内容を充実させる方針をとって、そのためにミルク代国庫補助として十六億四千万円を要求いたして、大蔵省と交渉があったことはわれわれも承知をいたしております。ところが、何たることですか、いろいろ議論したあげくの果てには、文部省が百グラムを八十五グラムに減らして、その分だけ金のかからなくなったということだけが大蔵省から採用になって、そして副食のほうでバランスをとるんだといって、十六億四千万のミルク代のほうは一銭も出ない。さんざん交渉して、結果としてはパンが百グラムから八十五グラムになり下がったということで、まるでこれでは話にならないと思うのです。そして、このこと自体が非常に私は大きな意味を持っていると思うのですが、このことについて、あなたはどういうふうに考えていらっしゃるか。私は、文部省が要求した脱脂粉乳補助予算を一銭も取れなかったということは、全くあなたの責任であり、それが取れなかったなら、なぜ百グラムのパンを八十五グラムに減らす必要があったのか。百グラムだ、八十五グラムだと、ずいぶん小さい問題のように思うでしょうけれども、この問題は、私は実に重大な政治的な意味を持っていると思うのです。文部大臣の御所見はいかがですか。
  11. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。私もまずいと思っております。百グラムを八十五グラムにして、含水炭素としてはそれで合理的だ、ただし全体のカロリーとしては、他の副食物によって補う総合計算において合理的になるという建前のものを要求したわけでございますが、八十五グラムだけでは合理的じゃないのです。パンで十五グラム減りました。そして副食のほうはお預けになったという状態は、はなはだ残念に思っております。ただし、そのことが、その分量だけ父兄負担になるおそれを感じまして、その意味で政治的にも重大であり、おしかりを受ける意味があろうかと重々存じておるのであります。捲土重来を期するほかにこれは措置のしようがないと思って、がんばりたいと思っております。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 私は、これは笑いごとでなく、実感を込めて申し上げているのです。私は貧しい農家の育ちですから、みそ汁つけもの青年時代まで過ごしてきました。そのときに、この食べものの状態は悪いから、今度は肉を食わせるから、今まで米の飯三ばい食っていたのを二はいにしろと、こう言った。それで肉を食わせてもらえると思って、米の飯二はい食ってやめていたところが、依然として副食物は前と同じようにみそ汁つけものであった。それなら何をか言わんやであって、飯を三ばい食っていたほうがよかったわけです。例はまあまずいかどうかしりませんけれども、これは非常に重大だと思うのです。荒木文相が申したように、これは全くまずかった、一食一円補助が十分とれなかったことは全くまずかったとおっしゃっている。大蔵大臣にすれば、全額やめるつもりだったものをこれだけでも出したのだから、大できだとおっしゃるのかどうかしりませんけれども、ひとつ大蔵大臣の御見解をこの際聞かして下さい
  13. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 百グラムについて一円の補助は、これは最後は食糧管理特別会計へ繰り入れるものでございますので、昨年と変わりまして、さっきお話がありましたように、八十五グラムになりましたから、その計算食管会計補助として繰り入れればよろしいものでありますから、その金額は自然に減っているということでございます。それからもう一つは一方今、文部大臣からもお話がございましたが、御承知のようにそれにかわるミルクの問題も問題になっておりましたが、これはミルクの今の需給の関係で最初から全部の児童ミルクをどうするという予定が立ちませんので、これは農林省のほうの予算助成費の中で事情に応じてやれる道を開いてあって、この全部を、これをやるということにはなっておりませんが、ここで減った分、百グラムに対しての補助の減った分は今回の場合はできるだけこれは準要保護児童給食費を増して、そうして人数をふやしていく、こういう方向に使うことがいいだろうというようなことで、学校給食施設補助とか、あるいはその児童の数をふやし補助を多くするというような、単価増に充てるというような方向予算を使っておりますので、このためにそれだけ国の負担が減った分を減らしたままにするというような措置はとっておりません。
  14. 相馬助治

    相馬助治君 この際内閣総理大臣に御所見を承りますが、今大蔵大臣が申されたことでも明瞭でありますように、大蔵省としては、これを農林省の所管に待つところの特別会計予算としての観点からこの予算というものを措置してきているようです。今度の予算書を見ましても、文部省予算説明を見ると、小麦粉補助父兄負担軽減だと書いてあるのです。同じその金を受け入れる農林省のほうを見ますと、食生活改善のためだと説明してあるのです。私はこれはどっちもほんとうだと思うのです。しかし一方で父兄負担軽減、一方で食生活改善、こういう状態、それから牛乳の問題でもなま牛乳を子供に飲ませるか飲ませないかのところに実は中心がなくて、農林省酪農対策から、なま牛乳がたくさん出るところではひとつ牛乳を飲ませてやろうじゃないかというて、学校給食の面から見れば考え方がさか立ちをしておる、こういうふうなところに問題がある。それから一食一円の補助でもこれは零細補助なんだ、だから裕福な家庭には必要ないのだ、こういう考え方政府にあるやに考えております。学校給食の問題は、体質改善の問題とそれから食生活改善の問題とあわせて、学校の教師をやった私などの経験からいたしますと、これを機会として、訓練の場としての重大な教育的意義を持っていると思うのです。したがいまして、池田内閣総理大臣学校給食の現在をどのように把握し、将来あなたはどのような方向へこれを進めんとされるか、御見解あらば承っておきたいと思います。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 学校給食は十年になりますが、前から私もいろいろ問題にぶつかっておったのでございます。しかし、今相馬委員のおっしゃるように、この問題は話題にはなりますけれども、ほんとうに真剣にどうしたらいいかというところまで突っ込んで研究する場合がなかったのであります。したがって、先ほど文部大臣がお答えしたように、委員会を設けまして今後の方針をきめたわけであります。これからというところでございます。そこで今までのお話でいえば、全国的にしさいにずっと見れば、支離滅裂とまではいきませんけれども、種々雑多で、よくいっているところも、あまりよくいっていないところも、いろいろな点がございます。これを再スタートしようという気持が、私は文部省にも大蔵省にもあると思うのであります。今後の問題は、やはりまず学校給食といたしましては、その給食設備改善普及が第一だと思います。そうして次には、何と申しますか、要保護児童への救済の増加ということがあります。こういう問題を推進していって、何年でありますか、小学校五年、中学校は十年という計画、その計画の線に沿って拡大していかなければならぬと私も考えておるのでございます。ちょうど今年の予算が端境期の状況じゃないかと思います。新しいほうに進んでいっておる点もあります。また今までのパンのほうの補給金は切りかえよう、切りかえが十分いかなかったことは、ほかの施設とか、要保護児童のほうとか、あるいは夜間の定時制学校のほうにお金を取られたということで万全でなかった点は私は認めざるを得ません。しかし、新しいスタートを切ったということは私は言い得ると思うのであります。したがいまして、今お話しの国民の体育の問題、食生活の問題、そうして最も重要な共同でいろいろなことをやっていくというその教育上の問題等々から考えまして、今後この点には一そう力を入れていきたいと考えております。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 現在のまずい点を率直に認められた答弁で、そのこと自身はよく了解をいたします。ただ学校給食に関する国の財政負担があまりに少な過ぎるということは私の不満とするところですから、今後の積極的な改善をこの際内閣総理大臣文部大臣にお願いをしておきます。  次に、私は私学の問題について、特に父兄負担の問題を中心にして文部大臣お尋ねをいたしたいと思いますが、私学と一口に申しましても、幼稚園から大学まであります。私は議論の都合上、この際大学に限って大臣にものを尋ねます。私立大学というのは、学校数においても、学生数から見ても、日本のこの種のものの総数の三分の二を占めております。大学教育の上にきわめて重要な存在であり、私学の犠牲において日本教育もここまで進んできたという批評をしてもよい面もあろうと思うのです。ところが最近かなり改善方向に向いているとはいうものの、制度的、財政的にあまりにも私立大学が恵まれないものですから、その政府私立大学冷遇の政策によって私学が財政的に困難な立場に追い込まれ、直ちにこれがはね返って父兄負担となっている面が多いのです。入学試験のこの時期において、いろいろな父兄の嘆きを大臣も耳にしていらっしゃると思いますが、この私立大学入学に関する寄付金の問題について現実をどのように把握していらっしゃるか、それをどのように批判し、どのように、これを問題があるとすれば救済せんとするものであるか、御所見を承っておきたいと思います。
  17. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えを申し上げます。具体的に当面の入学に際しての父兄負担が多いというお話中心お尋ねがございましたが、そのことにお答えいたします前に、国立の学校があり、公立学校があり、私立学校がある。私立学校私立学校法に基づいて国の立場あるいは私学あり方等を定めておると承知いたしますが、私学私立学校法にも言っておりますように、その自主性を認めておる。独自の境地を開拓するところに特色がある。そうしてまた教育という公共性の高い使命を持っておる。そういう心がまえで私学が円満に正常に運営されねばならないことを要求しておりますが、そこで、その特色を持っておる私学に対する国の助成といいますか、協力の限度がどういうものであろうかということについては、必ずしも明確な線がないと思いますが、少なくとも今日までのものの考え方は、私学がもし国からの財政的援助というものを受けるとするならば、私立学校法に言うところの自主性に影響をもたらすであろう、したがって、そのことにはおのずから限界があらねばならないという考え方に立ちまして、御案内のごとく、私学振興会という特殊法人を通じまして、長期低利の資金を融通するということを基本的な建前として国家的立場協力をいたしきたっておると思います。ただ特に科学技術教育に、理工系教育設備費がかかる。これは私学だけでは当面の技術革新の国家的、民族的要請にこたえ得ないという角度からだと存じますが、何がしかの助成金をそういう面には出しておる。言いかえれば、経常費の一部を支弁する意味合いにおいての国の助成が行なわれておる。そういうやり方でもって今日まで来ておると思います。しかし、私学経営財政面かいいまするならば、それはりょうりょうたるものであろうと思います、その効果は。そこに悩みがあるというのが現状だと把握するわけでございます。それで、もっともっと自主性を尊重し、しかも公共性を伸ばしていくという私学あり方に対しましては、経費の問題だけをとらえてみますならば、基本的にはやはりあくまでも民間浄財を集めて、それをベースにして私学経営していく、それにプラス長期低利の国のあっせんによる融資によって経営をしていくということが基本線であろうと存じます。経常費の支弁は、授業料もしくは私学の財団それ自体経常収入と合わせて維持せらるべきものという建前ほんとうの姿ではないかと私は思うのであります。ところで、そういたしましても、私学振興会を通じての長期低利融資は必ずしも十分でない、むしろ少な過ぎるという実情にあろと思います。同時にまた、民間浄財を当てにするにいたしましても、これまた外国に比べてきわめて貧弱である。もっとも法人指定寄付ないしは個人の寄付等について税制上の優遇措置が講ぜられましたことは御同慶に存じておりますが、これも分量的に申せば多くを期待できない。将来この窓口がもっと広くなることが期待されるわけであります。さらに外国の話等を聞きますると、個人の贈与にいたしましても、相続財産を、極端に申せば、ごっそり私学に寄付するという道も開かれておるやに伝え聞いておるのでありますが、そういうふうな道もさらに開けるような努力をすべき余地が国としてあるのではなかろうか。それは冒頭に申し上げました私学の本来のあり方を認めるといたしましても、国として協力すべき一つの方法ではなかろうか。そういうことを積み重ねることによって私学公共性に対し国の立場から、また全国民立場から協力を惜しむべきではない、かような考え方でおるわけであります。  そこで、今御指摘の入学金が高い、入学に際して寄付金が要請される等の問題が登場してくるわけでございますが、きわめて冷酷むざんに申し上げれば、先ほど来申し上げる基本線に立つ限り、いたし方のないことだというふうに言えないことはないと思います。だから、それでよろしいとはむろん思いませんが、好ましくない今の状態改善しますためには、先刻来申し上げるやり方をもっと急速度に充実するやり方で矯正していくべき問題ではなかろうか。いかに私学が苦しいからといって、国民の血税を直接、維持費を、経常費を支弁するために提供するということにはおのずから限度があって、そののりを越えるべきじゃないんじゃなかろうか。こえることは、かりに大蔵大臣承知してもらえば容易であると仮定しましても、そのことによって私立学校法の目ざしているところの私学の独自性、自主性というものに現実問題としてゆるぎが来ることがより一そう重大な問題ではなかろうか。そういうふうにとらえまして、これまた今後の努力目標みたいなことを申し上げておそれ入りますが、今申し上げた角度から充実して参りたい、かように存じております。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 私学の基本的な問題について率直な御見解ですが、私もこの問題については文相をただ一方的に責めようとは思っていないのです。ただこの際、置かれている父兄立場からいたしますと、一例をあげますと、国立大学入学する場合には、授業料入学金等合わせて、九千円の千円で一万円です。それから私立大学の場合ですと、平均のところで押えて、日本育英会の資料に基づきますと、授業料のところで二千円から五千円、入学金のところで五千円から三万、寄付金のところで五千円から六万、計九万五千円と、こうなる。正確な表立った資料でもこうなるのです。ところが、ここに一つ問題がありますことは、私立学校入学に際して別途に寄付金を徴収している事実です。お医者さんの学校あるいは工業関係学校等が、明確にその目的を指示して、設備費の特別寄付として集めているところもございます。これはいい悪いはしばらくおいて、若干納得し得るものだと思います。そういう明確なものを示さずして、補欠と称して、入学するかしないかの線上に置かれた生徒を予定して、その父兄と別途交渉によって寄付金の取り扱いが行なわれている実例もございます。推定ではございません、一々学校をあげませんが。こういう事実に対して、私はやはり国として、文教の長として何らかの将来に向かっての措置を考える段階が来てはいないかということを申したいのです。と申しましても、一片の法律をもってそういう寄付金を全部徴収できないようにしろと私は申しておりません。あなたがおっしゃることについては、私もよくわかります。私立学校ですから、自主性を持たせなければならない。それで、民間浄財一つのベースに乗せて私学振興に充てるという慣例が、残念ながら、日本はイギリスのように確立しておりません。そこで問題は、そのむずかしい問題の中において、やはり一国の文教政策として可能な線があろうと思う。それは何かと言えば、一言にして言えば、やはり私学を冷遇し過ぎているということを言いたいのであります。若干問題はあろうけれども、私質問しようと思うことを荒木さんは賢明にも見抜いて先回りをしたのかどうか知りませんが、経常費等人件費について何とかならんかと、こう聞くつもりだったところが、そういうことをかりに言われても問題があると、こうお答えになっておるのです。形式的にはそうでしょう。で、財政的にも、やはり国の財政の建前からすると問題はありましょう。しかし、何とかもう少し私立学校助成のことをやらないと、この父兄負担が非常にふえて寄付金の問題は解決できないと思うのです。何か積極的なひとつ御見解とその見通しがございませんか。
  19. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。当面こうすればずばり問題は解決するという具体案の持ち合わせがないのははなはだ恐縮に思います。先ほど来申し上げたようなことを、もっと大幅にテンポを早めてやるという必要性は痛感いたしております。早い話が、大きな一流大学となれば、年々の予算は数十億に上ると伝え聞いております。このごろの新しい校舎の建築等にいたしましても、ぜいたくと言えばぜいたくと言えないことはありませんが、木造よりは公共施設としては火災の心配がないだけでもいいわけだし、建物がよければいい教育も行なわれそうな気持もする、そういう気持で国民は見ておると思いますから、そのことは非難する必要はないと思います。ただ、そのために施設費が、初度経費が膨大なものが要る。それに応ずべく私学振興会を通じての、先ほど申し上げた長期低利融資はきわめて少ない。名のある大学私学振興会から融資されます金額ぐらいではとてもまかなえないので、民間浄財に非常に多くを期待していると聞いておりますが、少なくとも、ですから、需要量に対して供給量が資金的にも少な過ぎるというところに大きな悩みがあるのじゃなかろうかと思います。それからさらに、先ほどからのことを繰り返すようでおそれ入りますけれども、今の私立学校法によりますれば、昨年来問題になりました科学技術者養成の問題にいたしましても、法律、制度上から明かにされておりますことは、学部の新設等は文部大臣の認可にかからせておりますけれども、学科の新設あるいは入学定員の増加については、単に届け出ればよいという建前をとっておりますことは、とりもなおさず、その増員、その学科の新設に伴う経常費あるいは建設費にいたしましても、原則は私学みずからが国の立場からの援助等にお世話にならないから自由にやるのだということで、文部省立場からは制約を加えるべからずという考え方が盛り込まれていると私は推察するのでございますが、ですから、私学はあくまでも私学みずからの独自性を発揮することに全力を尽す、それをできるだけ妨げないように、消極的という言葉は当たりますまいけれども、先ほど来申し上げましたような心がまえで国はできるだけの協力をする。そのやり方をもっとテンポを早めて大量に実現するような努力が私どもに課せられた課題じゃなかろうか。先ほどのお尋ねの、今すぐ何とかずばりやらないかと仰せになりましても、ちょっと名案が浮ばないので、恐縮でございますが、以上をもってお答えにいたします。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 問題が問題だけに、明快な最終的な解決を示唆するような答弁のないことは遺憾ですが、この問題はひとつ重要な問題として将来にわたって御研究を願わなければならぬと思うのです。  この際大蔵大臣に二点尋ねたいのですが、財政法その他の建前から、私立大学について経常費あるいはその人件費の一部を見るというようなことはとうてい考えられないことですが、前提条件のいかんによってはそのことを財政当局として考慮してもよろしいですか、その点が一点。  第二点は、非常に財政的に不思議な立場に置かれている大学があるのです。これは公立大学というやつです。都道府県だとか市が大学を作っておるのです。東京ですと都立大学というのがそれです。これは都道府県や市が大学を作るのは勝手なんだという考え方政府にあるのかどうか知らないが、この助成というもは、今日私立大学よりもなおひどい立場に置かれているのです。まるっきりまま子なのです。これは聞くところによると、平衡交付金その他にも見ない大蔵省の頑迷なものの考え方から公立大学がこのように冷遇されているのであると私は聞き及んでおるのですが、私の了解は間違うておるでしょうか。またそういう事実であるならば、今後このままではいけないと思うのですが、大蔵大臣どのようにお考えでしょうか。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初の問題は、財政法の上でできないというような問題じゃございません。文部大臣が詳細に答えられましたように、私学というものの建前から、国が私学経常費を持つというようなことの性質上の問題から来ておる問題だと思います。  それから公立の大学でございますが、これはもう設置責任都道府県にございますので、この財源措置都道府県がすべきものというふうになっております。ただし、都道府県の財政力の問題がございますので、地方交付税の計算にある程度の経費を算入してこの調節をはかるという措置をとっておりますが、これは当然財源措置をする直接の責任者が都道府県でございますので、そういう建前によった予算措置をとっているだけでございますので、別にこれは大蔵省の反対でどうこうというようなことではございません。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 私はこれで私学問題について質問を終わりますが、池田内閣総理大臣に対して、答弁は求めませんが、ひとつ御銘記願いたいことは、この私学の問題について父兄が非常に困っていて、もう金のない者でうんと頭のよくできた者は国立に行くから解決するのですが、金もなし、子供のできも上できでないというような場合、そうしてどうしても大学に子供を学ばせたいという場合、全くこれは重大な社会問題になっておるのです。したがいまして、こういう問題は実に重要な問題としてある程度事実を銘記されて、何らかの処置を将来に向かってひとつお考え願えたらよろしいと思うのです。あえて答弁を求めません。  次に、私は内閣総理大臣国民医療保障の問題について尋ねます。政府は今般国民健康保険法の一部を改正して国庫負担引き上げを行なうことに踏み切り、その法案を提出し、それがまだ本院においては委員会通過の段階ですが、成立する見込みです。そのことはたいへんによろしいのですが、これはわずか五%です。で、関係各方面の要望を満たすにははなはだ遠いのです。国保は低所得階層を対象としていて、その財政は非常に苦しく、しかも給付内容が非常に低劣であるということは御承知のとおりなのです。国民皆保険の立場に立つならば、この際国費をもっと弱い面に増額し、同時に僻地、あるいは無医村、こういうふうな問題にまで国民にひとしく医療の恩典を均霑させるべきだと思うのですが、国民皆保険に踏み切った内閣池田内閣なのですから、ただ生みっぱなしではいけないのですから、これをどういうふうに持っていくのか、ひとつ首相の見解をこの際承っておきたいと思います。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民皆保険に踏み切ったのは石橋内閣でございます。それで、私大蔵大臣で、それでいこうというのでいったのであります。たまたまそれが四年目に私の内閣でやっと全部実施されるわけです。この国保の問題は、ずっと思い出しますと、前は事務費全額負担が精一ぱいだった。だんだんここまで参りまして二割から二割五分まで上げ得たのであります。やはりこういう問題は徐々に拡大していくよりほかに方法はないと思います。ただ、国保と他の健康保険とのふつり合い等々、いろいろな改善すべき問題がございます。われわれはこういう問題をもっと社会保障制度審議会に御検討願いまして、今後国保その他非常に給付内容の悪い、また保険料の非常に高い部分をできるだけ是正していきたい。一ぺんにはできませんから、徐々にやっていきたい、こういう考えておるのであります。
  24. 相馬助治

    相馬助治君 皆保険に関係して社会保険の基本的な態度を今首相に尋ねましたし、さきの予算委員会でも私は同趣旨の質問をいたしておりますので、このことの具体的なことについては以上をもって打ち切って触れませんが、この際、厚生大臣にきわめて具体的な問題について二、三日本の医療行政の基本に関連のある問題をお尋ねいたします。私は医療行政に対しましては、広く患者の立場に立って以下の質問をいたします。  貧富の差を乗り越えて絶対なものは、私は人間の持つ生命を大切にするということだと思います。今日の皆保険行政は、その実、人間の生命の尊重に欠けるような点が二、三、特に専門医学会等から指摘されておる事実を見て、私は非常に残念に思っておるのです。その一つが制限診療の撤廃の問題です。保険というワクがある限りにおいては、その診療に当然のごとく制限があり得ることは形式論理的に認めますけれども、事生命に関するこの問題については、やはり私は形式論でなくて、積極的に厚生大臣熱意を持つべきだと思うのですが、この問題についてどのようなお考えでございますか。
  25. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 制限診療の撤廃の問題でございますが、この制限診療ということにつきまして私は二つの場合があるのじゃないかと思いますが、一つは、たとえば健康保険で、いわゆる十割給付をやる、こういう建前になっております保険におけるいわゆる制限診療の問題、それからいま一つ国民健康保険で見るがごとく、いわゆる十割給付でない、また、その給付の内容につきましても、たとえば往診を制限するとか、あるいは歯科のほうを制限するとかいうようなことをやっておるところがあるわけです。この二つの場合についてお答えを申し上げたいと思うのです。  まず一般的に申しまして、国民皆医療保険ということを考えます以上、国民全般が必要とする医療を受け得るような状態になければならぬ。これは当然のことだと思うのでございます。われわれといたしましても、その目標のもとに努力をいたしておるところでございますが、いわゆる十割給付をやります健康保険におきましても、現物給付を建前といたしておるのであります。現物給付を建前といたします以上、どうしてもそこに何らかの規格と申しますか、基準というものがなければならないかと存ずるのであります。無制限な自由診療というわけには参るまいと思うのでございます。それにいたしましても、考え方としましては、進んだ医療、進んだ技術というものを積極的に取り入れまして、できるだけいい医療を給付するということを心がけていかなければならぬと思うのでございますが、そういう考えを持っておりましても、現実にはどうしてもズレが生じてくるわけであります。そのズレにつきまして、これは制限診療であるというふうに言われておる点があるわけでありますが、こういう問題につきましては、漸次解消して参りたい。建前といたしましては、新しい医学、新しい技術というものを保障のうちに進んで取り入れるという考え方に立って進みたいと思っておるわけでございます。それから国民健康保険の場合には、これはもう相馬さん御承知のように、一般の健康保険等に比べてみますと、給付内容においてかなり劣っているところがあるわけであります。今申しましたように、ある種の制限を行なっておる保険者も少なからずあるわけでありますが、これにつきましては、私ども指導でもって漸次その制限撤廃に向かって進むようにいたしておるわけでございます。今度の予算が御賛成を得まするならば、また、この機会にさような制限の撤廃に向かって積極的に指導をいたしたいと存じておるような次第でございます。なお、国民健康保険につきましては、いろいろ御心配をおかけいたしておるわけでございます。給付内容等の改善充実ということが今後の大きな課題でございまして、それにいたしましても財政基盤があまりにも薄弱であるというようなことから、今回医療給付率に対する五分の引き上げをこの前いたしまして、いわゆる調整金等を合わせますというと、三割程度の国が援助をすることにもなっておるわけでございますので、この段階におきまして、私どもはさらに腰を据えまして、今後の国民健康保険の財政をいかにするかという問題について掘り下げた検討をいたしまして、財政基盤の強化について一段と努力をいたしたいと思う次第でございます。
  26. 相馬助治

    相馬助治君 制限診療の具体的な問題について一点ただします。現在ガン治療その他に関して日医その他からの要求によって学会の責任において改定した緊急を要する治療方針というものを確立して、これを何らかの方法で一日も早く治療の実際のところに取り入れてほしいという要求があるやに聞いております。これに対して大臣は、中央医療協議会を開くことに努力をすると同時に、それが何らかの事情で不可能な場合には、何らかの緊急対策を立てて治療指針の改定をすべきだと思うのですが、いかがですか。
  27. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。新しい薬につきまして、これを健康保険の療養の内容の中に入れるということについては、ただいまお答え申し上げたとおりに、私どもも決してこれをちゅうちょするものではございません。ただいま御指摘になりました問題につきましては、部内におきましていろいろ検討をいたしております。その検討の結果によって善処したいと思っております。
  28. 相馬助治

    相馬助治君 この近代社会でわれわれがよい生活を望むのは、進みつつある近代医学を一日も早く治療の中に取り入れるということだと思うのです。私を含めて同僚諸君のところにもガンの死神が一歩々々近づいているかもしれないと思うのです。おどかしでもなんでもない。こういう事実を考えると、私は厚生大臣が可能な限り形式にとらわれずに、この治療指針の改定については責任をもって急いでほしいと思うのです。その前提をなす中央医療協議会の問題についてただします。先般この法律は与野党の一致した法律として成立をいたしております。私の見るところでは、前の法律に比べて医療担当者を重視したものであって、その限りにおいてはやはり一つの正しい方向を示唆したものだと思います。ところが、今日これがいまだに発足をしていないというのは、いかなる理由によるのか、現況はどうなっておるのか、それに対して大臣としてはいかに考えていらっしゃるのか、この際念のために承っておきたいと思います。
  29. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまの御質問でございますが、実は私最も苦慮いたしておる問題でございます。これにつきましては、相馬さん御承知のように、昨年の早春であったと思いますが、厚生省のほうから社会保障制度審議会に適正な医療費を決定することについての方策について諮問をいたしたのであります。御承知のように、診療報酬を決定するのに最も重要な役割を果たしております中央医療協議会がなかなか円滑な運用がむずかしい状態なんです。近年さような状態が続いておりました関係上、適正な医療費をきめるのはどうしたらよいかという意味の諮問をいたしたわけであります。その答申といたしまして今度の国会に御審議をお願いいたしておりますところの医療報酬調査会というふうな考え方、つまり適正な医療報酬を決定するのに必要な基準を中立的な立場において調査する機関を設ける、そのルールに従って、あるいはルールに基づいて具体的な診療報酬というものを医療協議会に諮問するように、こういう二つの考え方で出されたわけであります。そうしてその医療協議会につきましては、支払い者側と、それからこれを受け取る療養担当者側と、それからいわゆる公益を代表する側、この三者の構成にしたほうがいいのではないか、こういうふうな考え方が示されたわけであります。それを昨年の通常国会に御審議をお願いいたしましたところ、両案とも不成立に終わったわけであります。続きまして秋の臨時国会におきまして医療協議会につきましては、社会保障制度審議会の答申とは若干違っておりましたけれども、私は本質的には変わりはないと思ったわけでございますが、この法案を出しました。それから医療報酬に関する基準を審議する機関に関する法案につきましては、いろいろまだ議論も残っておりますし、また、臨時国会のことでもございますので、両法案を一緒に出すことは多分無理だろう、かように考えまして、とりあえず今お話しになりましたようないろいろ診療報酬等を相談する必要性というものが随時起こってくるわけでございますので、医療協議会法案のほうだけを国会に提案いたしたわけでございます。これはおかげさまで通過いたしましたが、この間におきまして主として支払い者側あるいは政府関係の諮問機関側におきまして答申どおりにやらないのはおかしいじゃないか、また、医療報酬の基準をきめる調査会法案を一緒に提出しないのはけしからぬじゃないかというおしかりをこうむったわけであります。そういうようなことで、こういう問題を主たる契機といたしまして、せっかく御賛成を得て作りました医療協議会に対しまして、これは中央と地方とございまして、地方につきましては問題は解決いたしまして、先般発足をいたしておるわけでございますが、中央の医療協議会についてまだ快い御協力をいただくということにまで至っていないのであります。私は非常に残念に存じておる次第でございますが、しかし、なかなか長い間のしこりと申しますか、行きがかりと申しますか、いろいろございまして、にわかに賛成していただけない状態にあり、また、まことに遺憾とするものであります。しかし、この問題につきましては、多少日にちがかかりましても、私はあくまで努力いたしまして御了解を得て、中央医療協議会の発足を見るように、あくまで努力する所存でございます。
  30. 相馬助治

    相馬助治君 社会保障制度審議会というものは内閣総理大臣の諮問機関であって、私はきわめて権威あるものだと思っているのです。その審議会が、真実、医療協議会と、それから医療保障の基準をきめる今度の調査会法案のようなものと並列して出さなければならないのだという一致した見解で、その答申があったとするならば、これは並列して出さなかった厚生大臣のやはり手落ちというものが責められると思うのです。しかし、あの答申をしさいに読んだときに、必ずしもそうは理解されない。いわば、基本的には中央医療協の改組をまず急いで、そこで姿勢を正して、医療報酬の問題に進めというふうに、いわばこういうふうに順位をつけて法律を出したことも私はむしろ妥当ではなかったかと当時も今も考えているのです。で、具体的な問題としては、中央医療協議会が出発できない楽屋裏はもうすでにみなわかっております。これは支払い団体がだめだというので、厚生大臣も手を焼いているということは、これはよくわかっておりますが、一体しかし、国民医療の問題の基本を正す中央医療協が、しかも国会において全会一致で通った、これが発足できないなんというところに——私は、厚生大臣の政治的な力が足らないなどというような形式的な批判をいたしません——もっとより基本的な問題があろうと、こういうふうに思うのです。  それで率直に申してどうなんでしょうかね。この支払い団体だとか日経連というのは、直接国民の生命にタッチしておりません。これは私、話が若干違うと思うのです。ですから、こういう方々をより積極的に説得をして、そうして何とか国民の健康を守るという正義感を灘尾さんが見せて、一日も早くこの中央医療協議会を出発させて、正規のルートに乗せるべきだと思うのですが、そういう努力を現在重ねておるのですか。そうして重ねているとするならば、その見込みはどうなっておりますか。
  31. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ものの筋合いといたしましては、相馬さんのおっしゃるとおりだと私も思うのです。ことに国会で成立いたしました法律でございますので、これが実施についてはいろいろ御意見もありましょうけれども、その実施についてはぜひ協力してもらいたいという気持を私は持っているわけでございます。また、医療協議会が必要な機関でありますから、これが発足についてもぜひ協力してもらいたいという心持でいろいろお話をいたしているところでございますが、今日までのところ、まだそこまでそれが解決するまでに至っていないということをまことに残念に思っておりますけれども、まあ長い間のいろいろな問題もありまして、にわかに解決するというところまでは至らぬと思いますけれども、ここのところは私もしんほう強くよく話をいたしまして、ぜひとも御理解を得て再出発できるようにしたい、この努力を続けながら今やっているところでございます。
  32. 相馬助治

    相馬助治君 物事にはしんぼう強くやれば解決できる問題もありますが、しんぼう強くやっていると、いよいよもって焼きついてしまって、どうしようもこうしようもなくなる問題もある。この問題は、私は後者に類すると思う。歴代の厚生大臣が医療関係者からかっさいされると、支払い団体からたたかれる。支払い団体のほうから良識ある厚生大臣だと言われる人は、医療団体から突き上げを食う。それで厚生省の中でも、歴代の保険局長というのは官僚の悪玉の標本みたいに突き上げられて、その人の人格を越えてその役目が突き上げの材料になっている。事実、これは私はゆゆしい問題だと考えているのです。  そこで特にこの際、厚生大臣お尋ねしておきたいことは、この問題についてひとつ積極的に解決してもらうと同時に、差しあたりやっていただかなければならぬことが二、三あるのですが、地域を考えない公的医療機関が、最近乱立をしている。無医村とか僻地にはこれは必要でしょうが、そのために厚生省は、それを窓口として国立病院、それから今度は保険局は厚生団体であるとか、あるいは全社連という名のもとに、どんどん大病院を建設している。このことは、日本の医療行政の前進と密接な問題がある。医者が大都会に集中して、大規模の、いいものはみな都会に集中して、無医村は相変わらずほされている、こういうことを考えるときに、この際厚生大臣は、むしろ公的医療機関の乱立を押えて、姿勢を正すべきだと思う。そして全体的な計画をすべきだと思うのですが、いかがですか。
  33. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまのお尋ねに対するお答えをする前に、先ほどのお答えについてちょっと補足いたします。私は、現在の医療行政につきまして、現状まことに憂慮すべきものがあると思うのであります。と申しますのは、いわゆる国民皆保険の形になってきているわけでございます。これから完成、充実をお互いにはかっていかなければならない段階でございます。その場合におきまして、あるいは支払者側、あるいは療養担当者側、あるいはその中にはさまれている政府側というようなものの間がうまく疎通しないで、始終何か争いをやっているというような姿は最も遺憾な事態ではないかと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、各関係者が、ときに意見が違い、利害が違いましても、基本におきましては、国民皆保険の改善充実をはかっていく。その線においてはお互いに協力する、こういうような心持がぜひ必要だと思うのです。さような心持で、お話しになりましたような問題につきましても対処して参りたいと思っているということをつけ加えさしていただきたいと思います。  なお、ただいまのお尋ねでございますが、医療機関の適正な分布ということは、厚生省としても十分考えなければならぬ問題だと思います。現実の問題といたしまして、ところどころで公的な医療機関と、私的な医療機関との間に衝突が、摩擦があるというような事態もございます。これにつきましては、国立病院のあり方、その他いわゆる公的機関のあり方や、また、一般開業医との間の調整、調和というような問題について、十分配慮しなければならぬと思う次第でございます。われわれといたしましても検討もいたしておりますし、現にまた、医療制度調査会等におきましても、この問題について慎重な検討を加えているところであります。お話の御趣旨につきましては私も同感でございます。
  34. 相馬助治

    相馬助治君 もう一点は、医療費支払いの中にある地域差の問題、これはもう早急に撤廃すべき筋のものだと思うのです。今この地域差を設けている理論的な、また、実質的な根拠は何一つ私はないように思うのです。ですから、これはもう早急におやりになるべきである。こういう問題をおやりにならずして、一方では医療関係団体と十分話し合いもつかぬままに、今度臨時医療報酬調査会法案というものが国会で審議されているところに問題の混淆があるように思うのです。そしてこれは厚生省のワクからはみ出て、あるいは立法府である国会の審議の向こうで、またまた紛争が起きると、党の三役というような人が出て来て、そしてこの話し合いをつけて、何とかその局面を糊塗するというふうなことに今までなって参りましたが、今後もそういうことが十分予想されるような今情勢があるのではないかということを私は考え、そのことをおそれるのでありまして、ひとつこの問題については、特に医療関係諸団体との話し合いを緊密にされて、支払い団体についても十分な了解をとりつけて、厚生大臣は姿勢を正して、抜本的な解決に当たられることを私は強く希望しておくものでございます。最近、ある筋の情報によれば、健康保険問題に関連して、支払い側と意を通じ、保険局が相当政治的策動をしているというようなことが伝えられています。これは出ない化けものにおそれて言説をなすものだという向きがあるかも知れないが、関係者に流布されておることは事実です。実例としては、全日病の小沢凱夫博士及びこれと同じ立場をとる良識派に対して、越権にも、厚生省保険局は、医療従事者の統一的団結をはばむ意図をもって、健保連とか労災事業団を通じて、公的医療機関の院長をやめろという政治圧力を加えたということが言われております。私はさようなことを信じたくないのでありまするが、火のないところに煙は立たず、こんなうわさ話が出てくるところに、今日厚生省の持つ悲劇的な性格が象徴されていると見るべきです。今後の正しい医療行政の発展のために、この種のことがあるなら、根絶を期し、医療界の民主化を守るために、特段この問題について積極的な御配慮をお願いしたいと思うのです。これに関し何かおっしゃることございますか、あらば承りたいと思います。
  35. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 医療保障に関する地域差の問題でございますが、これは私は、方向といたしましては、漸次撤廃すべきものではないか、かように考えておる次第でございます。影響するところもございまするし、また地域的ないろいろな差を認めている他の部面もございますので、それらとにらみ合わせまして解決いたしたいと思いますが、方向としましては、私は漸次撤廃すべきものと、かように考えております。なお、医療行政全般にわたっての御注意は、これから医療行政をますます発展させなければなりません、ことに医療保険の改善充実というようなものを考えます場合において、検討すべき事項は実にたくさんあると思います。それが、今のような状態で、筋合いも何も離れたような議論が行なわれてくる、あるいはまた、今お話にもございましたが、厚生省の全く関知しないようなことについてまでいろいろな取りざたが行なわれるというようなことは、まことに遺憾なことだと思います。今後私は、このままの状態でいきまして、私自身が思いますのに、厚生省は何だかいわゆる関係団体の中に埋没してしまっておるというような憂いもなしとしない、こう存じますので、われわれといたしましては、厚生省の主体性をもって、問題の解決に誠意を持って当たりたいと、かように考えておる次第であります。
  36. 相馬助治

    相馬助治君 私は、最後にあと一点だけ、内閣総理大臣並びに厚生大臣に質問いたし、明快な答弁を期待するものです。池田内閣は、組閣以来、中小企業対策という意味で、金融上、財政上、また法律的にいろいろの施策をとってこられました。そのことにつき、必ずしも効果があったとは言いがたいけれども、そういう方向努力をされたことを私は認め、これに敬意を表するにやぶさかでありません。ところが、ここに一つ問題があります。中小企業のワクの中に入るべき性質のもので、別途環衛法によって守られている理容、パーマ、クリーニングなどの環境衛生業者があります。これらの業者は、現在の経済界の中に素裸でほうり出され、かつ過当競争に苦しんでいます。ところが、政府はこれを看過している。これはきわめて冷酷ではなかったかと思うのです。今申したように、環境衛生業者というのは、御承知のように、床屋さんであるとか、パーマネント屋さん、クリーニング屋さんなどの零細な業者から成り立っております。これが法によって連合会を作っています。この人たちを守る保護立法として、環衛法というのが三十二年に議員提案をもって成立をして、今日施行されております。この法律は、一面には国民の健康に関係する重大な職種であるからというので、設備、従業員の教養やその他について相当きつい義務づけをいたしております。一方では、アウトサイダーを規制して、過当競争を排除して、健全な営業が守られるように保護をする使命を法自身が持っております。この二面の作用を持った法律なのに、今日半身不随となって、厚生省がこの関係業者を取り締まり面においてのみこの法律が効果を発揮している感がないでもないのでございます。業者を保護する面は一向に実効が上がらず、むしろアウトサイダー保護法となっていることは、皮肉です。こういう事実について、池田内閣総理大臣はお知りでございましょうか。そうしてまた、この重大な責任を持つ環衛業者に対して、将来首相は積極的に善処する意思はありませんか、これにつき首相はどのように基本的にお考えですか、この際御見解を承りたいと存じます。
  37. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 相馬君の持時間は終了いたしました。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 環境衛生関係の業者につきましては、今お話のあったとおり、法律でとにかくいろいろ制限、監督をいたしております。そうしてまた、仕事の性質上、重要な問題、重要な仕事でございますので、政府といたしましても、今後十分気をつけていきたいと考えております。
  39. 相馬助治

    相馬助治君 内閣総理大臣の基本的な見解がわかりました。首相がこの零細業者たる環衛業者保護について御見解を披瀝されたことは初めてのことであり、政治的意義を持つものであることを確認します。この際、厚生大臣に承ります。首相の言明で明らかであるように、環衛法において許された範囲内において業者を救済するという立場池田内閣はとっていると思います。ところが、厚生省のやっていることは、全くこれとうらはらです。怠慢と言おうか、不誠意と言おうか、重大な責任問題だと思います。具体的な一例をあげますと、東京都の理容連合会が、その理事長たる柾田松五郎の名義をもって、営業方法の制限について、具体的に申請書を提出しています。内容は、営業時間を十一時間以内としたい、午後九時をこえてはならない、それに景品付営業などをしないように、こういうきわめて簡単な、妥当な規制命令を営業方法の規制について出してほしい、そうしてアウトサイダーを規制したい、こういう趣旨のものです。十月二日、厚生省はこれを受け付けております。ところが、すでに半年たつのに、これに対して何らの回答を与えていない。さきに、社労委員会において、私は環境衛生局長に質問をいたしたところが、東京都に対して今書類の整備について資料の提出を求めているからしばらく待ってほしいというような答弁でした。その後事実を調べたところが、全くでたらめである、そういう事実がないことを東京都は言明しておる。こういうふうな一つの具体的な事情を見ただけでもわかるように、この重大な国民の健康に関係のある環衛業者に対する厚生大臣熱意を疑わざるを得ない。その不誠意に対し、私は責任を追及せざるを得ない。これは単なる環衛業者のみの問題ではない。営業時間を十一時間に押さえる、午後九時をこえてはならないというのは、労働基準法から申しましても当然なんです。労働力の確保の面から申しましても、人権の尊重の点から申しましても、当然なんです。したがって、この規制命令についての申入書に対する、厚生大臣は正しく事態をお知りであるかどうか、知っているとすれば、なぜこういうふうに命令を出すのを遅延せしめておるのか、その事情並びに理由、将来に対する見通しを承りたい。答弁によっては、場所をかえて私はあくまでこれを追究する。明快なる御答弁を要求いたします。
  40. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 相馬さんも御承知のように、環境衛生の適正化法によるいわゆる規制命令を出す場合には、厳重な条件があるわけでございます。その条件に合致いたしておれば、もちろん規制命令を出すにやぶさかではございません。厚生省といたしまして、東京都から−東京都の理容業でございましたが、規制命令を出すようにという要求があるということは、私も承知いたしております。厚生省当局といたしましては、この法律の要求しておりますところの条件に合致しておるか、していないかということにつきましては、厳正なやはり審査をする必要があると思うのでございます。その意味におきまして、いろいろ検討をしているものと、私は承知いたしておるわけでございます。万一検討を怠っておるということでありますならば、督励いたしまして、十分検討をとげた上で結論を出したいと考えております。
  41. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 相馬君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  42. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員の変更について報告をいたします。  本日、小林英三君及び野本品吉君が辞任せられ、その補欠として谷村貞治君及び鹿島俊雄君が選任されました。     —————————————
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行。きょうの運営を見ますと、野党第一党の社会党が出席をしていません。こういう中で審議を進めるということは、非常にまずいと思うのです。それから第一に、今度順番になっておる加瀬君がどうするかわかりませんが、こういうような順序を変更する場合には、当然これは理事会を開いて協議しなければならぬ、これは当然の慣例です。この慣例を破ってまで強行するということは、非常に私はまずいと思います。さっそく理事会の開催を要求したいと思います。これは当然のことだ。意思は表明されている。社会党の声明で、これは意思は表明されておる。こういう申し出を無視してはいけないと思う。
  44. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) あなたの御意見はわかりました。  お答えいたします。各派の理事の意見も徴しまして、委員長は理事会を開催する必要なしと認めまして、本日の会議を開いた次第であります。  次は加瀬委員が質疑を行なうことになっておりまするが、都合により同君の質疑は明日に回すことにいたしました。  次は千田正君。
  45. 千田正

    ○千田正君 委員長、議事運営について一応お伺いいたします。  ただいま共産党の岩間君から議事運営について質問がありましたし、その後委員長から申し渡しがありましたが、ただいまの私に対する御指名は、委員長の職権で御指名になったとすれば、私は従わざるを得ないのでありますが、いかがでございますか。
  46. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加瀬君が本日は質疑をいたされませんことの事情を認めまして、私は委員長として千田君にお願いをいたします。
  47. 岩間正男

    ○岩間正男君 加瀬君からそういう申し出があったのですか。これは、あまり独断過ぎる運営をやってはまずい。そういうことをやってはまずいですよ。そういう独断的なことを一方的にやってはいかぬよ。予算委員会の民主的運営はできませんよ。
  48. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 私語はしないようにお願いをいたします。     —————————————
  49. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 千田君。
  50. 千田正

    ○千田正君 ただいま私は、参議院の議員として、また予算委員会委員としまして、野党第一党の社会党の諸君が出席していないのにもかかわらず、委員長の御指名によって質問をしなくてはならないということは、まことに私も遺憾でありまするが、委員長の命令に従うのが議員の立場でありますから、これからお尋ねをいたします。  まず第一に総理大臣お尋ねいたしたいのでありますが、昨日の衆議院の外務委員会におけるところの、参考人を招致しての審議中に、突然動議が打ち切りになって、そうしてあのようなまことに遺憾な終末を告げた。その結果、国会正常化を常にわれわれも願っており、おそらく総理大臣もそう願っておられると思いまするが、さらにもっと大きな問題は、国民が最近ややともすれば、国会に対して、どうも真剣になって国民のための政治をやっているのではないのじゃないかというような不審なり批判さえも起きておる今日、かような事態のままにこの国会が運営されるとするならば、国民に対するところのわれわれの責任も非常に重いし、また慎重に考えなければならぬと思うのであります。昨日以来衆議院に起こったこの問題を中心としまして、第二院であるところの参議院に至るまで、かような状況のもとにわれわれは予算を審議しなければならないということは、はなはだ遺憾きわまりない点でありますので、与党の総裁として、かつまた内閣責任者としての池田内閣総理大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 内閣総理大臣としてお答えいたします。  われわれは、外務委員会に、政府の外交権によりまして協定を結びまして案を御審議願っておるのであります。外務委員会におきましていかなることが起こったか、御承知のとおり、私は昨日こちらにおりましたので、存じておりません。新聞その他では聞いております。あくまで審議は国会自身のおやりになることと私は考えております。
  52. 千田正

    ○千田正君 ただいま総理大臣としてのお答えはわかりました。しかしながら、これは、政党政治を中心として行なわれておるところの衆議院におきましては、やはり与野党ともに国会は話し合いの場であり、お互いに論議を尽くして、十分に納得のいくところまで審議をして、しこうして後に行動をとられるのが至当だと思うのでありますが、従来も、池田総理は、寛容と忍耐が必要である、ほとんうに国会の運営をスムーズにして、国民に対して期待を裏切らないような政治を行ないたいということを常に声明されておる総理としましては、今の総理大臣としての御意見はわかりましたけれども、今度は与党の総裁としての立場からは、このようなことを何回も繰り返されるのであっては、政党政治に対する信頼が国民からだんだんと薄れていくという非常な遺憾な方向に向かわれると思いますので、総裁としての立場からも一言お答えをいただきたいと思います。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総裁としてこういう席で申し上げることはいかがかと思いますが、たっての御質問であり、また事柄が重要な問題と心得ますので、異例の答弁としてお答え申し上げます。  昨日の外務委員会におきまするああいう場面は、私は非常に遺憾であると存じております。したがいまして、あの外務委員会の散会後、各党の理事懇談会を昨夜も開き、また今日も二時から懇談会を開いておると承っております。したがいまして、やはりお互いに話し合って、ああいうことの起こらないように、また結末をつけることを強く私は期待いたしておるのであります。しこうして、これは衆議院の外務委員会における問題で、これが参議院のほうに影響をして、そうして参議院の審議に対して支障があることは、これまた私は非常によくないことだと考えて、今日予算委員会が続行されることは、まあ社会党の方々が御出席にならないことはまことに遺憾でございます。しかし、参議院のほうの予算委員会が正常な運営をされることは、私は喜びにたえないと考えております。
  54. 千田正

    ○千田正君 本日の新聞並びにその後の経過によりますというと、なかなかこの問題は、衆議院においては相当今後混迷を続けるように考えられるのでありまするが、けさの新聞によるというと、混迷するようなことがあるならば、やむを得ないから、衆議院の本会議において中間報告を企図して強行突破するというような新聞も報道をされております。しかし、こういうことのないようなことを、われわれ国民としては望みたい。特にそういう点につきましては、重ねて私は総理にお伺いするのでありますが、この事態を収拾するような方向に対して、もっと積極的にひとつやっていただきたい。この点については、今からでも決しておそくないし、おそらく絶えずそういうことは続けておられると思いまするけれども、もう一つ特段のお力を出されるかどうか、この点についてもう一度お答えをいただきたいと思います。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会運営の正常化は、われわれの強く望むところでございます。私はその線に沿って努力いたしたいと考えております。
  56. 千田正

    ○千田正君 今度はひとつ、昨日の新聞でありまするから、新聞情報が確実であるかどうかということは、しばしば総理は、必ずしも確実ではないということをおっしゃいますけれども、われわれは新聞の報道を信頼しまして申し上げたいと思いますし、お答えをいただきたいと思います。  米政府が二十八日明らかにしたところによるというと、米政府は、グレン中佐の衛星船飛行の成功後間もなく、日本政府に対して、日本にも衛星船の追跡観測ステーションを数カ所建設したい旨を極秘裏に通告してきた、その意向を打診した模様である。これに対し日本側はいろいろな点において慎重に考えておるというような報道がありましたが、これが確実であるとすれば、よほど日本としても考えなければならない問題であり、この点につきまして総理並びに外務大臣からのお答えをいただきたいと思います。
  57. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 二週間、あるいは少しそれより先だったかもしれませんが、米政府から、人工衛星の観測所を極東地域にも設けたい、もし日本側において異存がなければ、専門家を派遣して協議したいということを、非公式に言って参ったのでございます。しかしながら、事柄は非常に技術的な問題を多く含んでおりますので、わが政府としましては、関係各官庁間でこの問題について打ち合わせ中でございます。
  58. 千田正

    ○千田正君 これは実際問題になってくると技術士の問題があると思いますが、もっと私は広い意味からいえば政治上の問題があると思います。そういう観点に立たれて、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はまだ詳細な報告を受けておりませんので、外務省におきまして、ただいま外務大臣が申しましたように、関係各省間で問題を検討中だと、それによってから私の考え方をきめたいと思います。
  60. 千田正

    ○千田正君 ヨーロッパ共同市場がすばらしい発達を遂げつつあるということは、私の申し上げるまでもありません。最近、EEC中心の国際経済になりつつあるという報道が、各方面から報道されております。そして、イギリス等においても、参加を一つの既定の事実として産業構造の改造に取りかかったようでありますし、またアメリカも慎重な態度でEECへの接近のための工作を進め始めたようであります。EEC内部では、この一月、計画の第二段階に移行してきて、七月一日からは域内関税率を一〇%引き下げて、合計五〇%引き下げを断行しようとしている。このような状況下にあって、日本としては、今秋貿易自由化に踏み切ろうとすれば、総合的に一貫した方策を考えなければならないと思うのでありますが、この前総理にお伺いした場合に、確答を私はいただけなかったと思いますので、こうした面に対しても、聡明な総理のことでありまするから、相当の準備をされるという御所信があると思いますので、この際その角度においての総理の御所信を承りたいと思います。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問がちょっとはっきりいたしませんが、EECの最近の経済的発展に対して、わが国はどういう態度をとるか、こういう御質問でよろしゅうございますか。
  62. 千田正

    ○千田正君 よろしゅうございます。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおり、非常な発展ぶりでございます。しこうして、われわれは、対アメリカ地区、あるいは東南アジアに対しましては、相当の貿易が見られておるのでございますが、ヨーロッパ方面におきましては、それと比較にならぬほどいわゆる貿易は微々たるものでございます。たとえばアメリカにおきましては、一人当たり五、六ドルの日本品を輸入しております。フランスなんかは、二分の一ドルぐらいでございます。こういう点から考えまして、われわれはEECに対しての貿易の拡大に十分の力を入れなくちゃいかぬ。最近、EECの発展等に伴いまして、日本との貿易がふえてきております。たとえばオランダなんかについて見ますと、一昨年に比べて、昨年は五割程度の日本からの輸入増です。ドイツもそういうことでございます。最近、フランスとの関係におきましては、相当向こうも自由化に踏み切ってくれる。貿易協定で日本の品物を相当買い得るような制度になって参りました。問題のイタリアは、今いろいろ話をしておるのでございますが、これも私は、相当業者との間に合意が成り立って、四月からうまくいくのではないか。イタリアは非常にむずかしいのでございますが、そういうことで、今後ヨーロッパに対しての貿易の進展は期待し得る状態にあります。また、これに相当力を入れていかなければならぬと考えております。
  64. 千田正

    ○千田正君 ヨーロッパとの関係は、今総理のおっしゃったとおりでありましょう。ただ、私が非常に心配するのは、東南アジアの市場並びに——従来日本は国交の回復しておらなかった関係上、中国との貿易は、いわゆる民間貿易にまかしているのでありますが、最近相当、中国等における、いわゆる共産圏内における貿易にも踏み切って進む傾向が現われてきておる。こういうような現況にありまして、私は今までのようなことからもう一歩進める必要があるのではないだろうか。  中ソが経済計画のうちに、自由諸国との貿易の計画を織り込もうとしていることは、私が申し上げるまでもありません。たとえば、シベリア開発計画は、すでに自由諸国との間の計画も織り込んでおる。それから、西欧の共産圏への新しい市場としての開拓を始めておる。こういうときに、私はやはり、イデオロギーが違う、思想が違うのだ、国交も回復しておらない、これだけで、漫然として隣国に大きな市場というものがあるのに放置する手はないんじゃないか、傍観することはないんじゃないか、もっと積極的に方向を変える必要があるんじゃないか、こういうふうに思うのでありますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび、この問題につきましては、私の意見を申し上げておりますし、昨日も羽生委員に対しまして申し上げたとおり、われわれは政治的理念が違うからこれと貿易をしないというような考えは毛頭持っておりません。ソ連との関係において示すがごとく、経済交流を進めていくことは何らやぶさかではございません。ただ、国交が正常化しておりませんときには、政府間のあれということはむずかしゅうございますが、具体的に民間とのあれは望むところでございまして、こういうことにつきましての態勢はこちらではとっておるつもりでございます。
  66. 千田正

    ○千田正君 もう一つ。輸出問題にからんで一つお伺いしたいのですが、三十七年度の見通しとして、四十七億ドル輸出可能説が出ているのでありますが、最近の状況から見て、四十七億ドルという大きな目標が達成せられるかどうか、あるいは少し甘いんじゃないか、そういう説も出ているのですが、この点は総理はどういうふうにお考えですか。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、そういう四十七億ドルを目標として努力いたしているのであります。ただ、最近の状況から申しますると、昨年の暮れは輸出信用状は近年にない状況でございまして、一月、二月におきましても、前年に対しましてあるいは二割あるいは一割五分ぐらいずつふえてきております。私は達成しなければならない、こういう考え方で着々努力をいたしておるのであります。
  68. 千田正

    ○千田正君 もう一点だけ、総理にお伺いをいたしたいのであります。それは、最近相当日本の経済が確立してきて、十分にいろいろの施策が行なわれている。たとえば外交の面から言いますると、今までの戦争の問題のあと始末として、それぞれの相手国に対する賠償問題等が解決してきておるという一面において、国内におきましても相当の、たとえば遺族であるとか、あるいは傷病兵士あるいは留守家族、あるいは最近に至っては地主に対する、補償という意味ではないが、一応の金融措置等をそれぞれの格好でやっておる。ところが、この終戦処理のうちで、最後に残っておる問題として、在外資産の遺留の問題が起きておるのであります。それは日韓問題等におきましても、当然そういう問題が起きてくると思いまするが、海外に残して強制帰還した人たちの財産がどうなのか。あるいはこれは相手国はそういうことに対しては、お互いの賠償は請求しないのだということにおいて解決をしておる点もあります。しかし、現実においては、個人々々の財産というものは、ある程度そういうことで国との間の方針がきまったとすれば、国内のそうした引揚者に対する遺留財産に対する一応の補償方式というものはとらなければならないのじゃないか。一昨年五百億の一応の交付金が渡されましたが、これは当時は補償ではなく、これは一応の見舞である、こういう意味での受け取り方を引揚者の諸君はやっておるようであります。ところが、最近に至りまして遺留財産に対するととろの問題は、別個の問題として当然これは請求すべき権利がある。たとえば戦前、戦時の間においても、国の、国民の一人として海外にとどまって幾多の資産を積んだものもあります。あるいは終戦と同時に、政府にかわって、在外公館の借り入れ資金等を出して、その証拠書類を持って帰ってきたけれども、これは返されない。あるいは郵便貯金、あるいは保険金、いろいろな問題が積み重なって、この遺留財産の請求という問題は、当然日本の経済が確立したならばやるべき問題である。われわれはそう思うし、またそうであらねばならないと、私は考えておるのですが、総理は、この点どういうふうにお考えになっておりますか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、憲法上の補償の問題につきましては疑義があると考えております。たとえば今まではっきりしたことでは、韓国における日本同胞の財産、これはもう平和条約のあれによりまして放棄しております。しかも、アメリカ軍のとった措置はわれわれは認めておるわけであります。しこうして、アメリカ軍の措置に対して日本政府が引揚者に補償する義務があるか、法律上ないと考えておるのであります。また、平和条約によりまして放棄しておるところもございます。また台湾のごとく、今後両国で話をするというところもあります。非常にまちまちになっておりまするが、根本的に、憲法上政府は補償の義務があるとは考えておりません。したがいまして、今から三年ばかり前、三、四年前に引揚者給付金というので、一応引揚者に対しての財政的措置はとったのでございます。私は、憲法上は補償の義務は政府にはないという考え方で進んでおります。
  70. 千田正

    ○千田正君 これは外務大臣にお伺いしたいのですが、今のようなことであるとすれば、たとえば在外に、主として中国でありまするが、当時の在外公館というものは全部連合軍において封鎖された。金庫もすべて、銀行もすべて封鎖されておった。しかしながら、奥地からどんどん避難してくるところの引揚者に対して、何らか邦人がこれをめんどうを見なければならない。ところが、日本政府の力では及ばない。そこで、当時の在留していた居留民から金品を醸出さして、それを日本政府が借り受けるのだ、あなた方から借金するという一札を当時の外務省の出先の官憲は出して、そうして居留民から金を集めて、奥地からの引き揚げてきた避難民の苦しい立場の人たちを救って日本に送還した。そういうときも、政府がやるべきことであるのだけれどもできない、現実には金がない。仕方がないから、在留の邦人から金を借りて、それを日本へ帰ったならば返す、政府責任において返しますという一札を入れて帰してよこした、こういう問題が相当あるのであります。こういう問題に対しては、これは責任ないと私は言えないと思います。これに対して見解は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  71. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の御趣旨は、いわゆる在外公館借入金の問題だと思います。これは満州あるいは中国本土、あるいは朝鮮等においても行なわれたようでございまして、これにつきましては御承知だと思いますが、あれはたしか昭和二十四、五年以来、外務省にいろいろの調査会を設けまして資料を収集いたしまして、それでその調査会等のあれは、二つ調査会がたしかできたと思います。その調査会の結論に基づきまして、たとえば朝鮮はたしか一対一だったと思いますが、中国本土等は当時法幣でございましたので、法幣の換算率等を使いまして一定の換算をやりまして、これは御当人に大体わかったものについて返還する措置をとっているわけであります。ただ、いろいろの財政問題等の都合もございまして、あのときは最高で五万円ということに切っておりまして、それ以上については、まだその借入金の返還を一応打ち切った格好になっております。これについては、またこれも御承知と思いますが、実は訴訟が起こっております。その五万円以上の分についての国を相手とする訴訟がございまして、私の承知している範囲では、まだたしか第一審の判決が出た程度だと思っておりますが、そういう状況になっております。
  72. 千田正

    ○千田正君 引揚者が引き揚げてきた当時、日本の祖国に上がったときは持ち返り品というものはほとんどなくて、一応一千円というものは政府に出していただいています。そのと声、遺留財産の申告というものをさしておる、遺留財産の各自の申告というものを各人から徴収しております。そうしてその申告書に基づいて、将来いろいろこの問題に対しての解決の資料にしよう。これは大蔵省が預っておると思いますが、大蔵省で預っておるのじゃありませんか。大蔵大臣、御存じですか。たとえば送金小切手未払い分とか、そういうふうな問題が起こっておるはずであります。
  73. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 当時、在外財産調査会というのがありまして、そこでそれらの報告を集めたと思いますけれども、何分ああいう時期のものでございますから、そうしっかりした資料ではございません。
  74. 千田正

    ○千田正君 その当時の預かったものとしましては、戦時公債、簡易保険、郵便貯金、それから送金小切手の未払金一部、こういうようなものが大体金に見積もって十億をこしておる。まあ、そういうようなものは当時の引揚者から一応預かるというので預かっておりますんで、こういうような解決も先ほどの総理のお話しのように何も補償しないんだということでは、これは国として、文化国家としてはなすべき方途じゃないと思います。私は、そういうような、今経済力が回復して、どうやら一つ一つ解決する段階でありますので、こういう問題も慎重に調査の上に処置をとっていただきたい。この点を重ねて総理にお伺いいたしたいと思います。
  75. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま御質問の、当時中国あるいは満州等から、いわゆる送金小切手等を持ち帰ったもの、あるいは預金通帳、特に内地の店等についての支払いする預金通帳、あるいは保険金の受領の問題、あるいは公債とか、そういうものは、当時のたしかポツダム省令の大蔵省省令第八十八号だったと思いますが、全部一応あれは税関等で預かったはずでございます。ただ、これは、その後、これもたしか占領が済んであとだったと思いますが、当時在外財産調査会ができまして、そういうような権利関係のはっきりしているものは漸次返還するようにしたらいいじゃないかということで、漸次返還をしておるはずでございます。また、送金為替等については、たしか一定の換算率を用いてお返しした。銀行の支払いが、たとえば内地が支払い地になっているというようなものについては問題はないわけでありますが、そういうものは大体解決しておるはずであります。それから戦時公債等につきましては、戦時公債と申しますか、これはもちろん額面のままは残っておるわけでありまして、そういうものについても利子の支払い等はしてあるはずでございます。
  76. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、二年前に出されました五百億という給付金ですか、これでまあ一応引揚者に対する政府としての対処方針は、それで一応済んだというお考えですか。当時、大平官房長官は、これは一応の見舞金であるから、これでがまんせよと、こういうお話しのように私は承っておりますが、これで済んだのですか、それともまた将来日本の経済がより以上確立した場合において、十分調査の上に何かの方途を講ずるというお考えがおありになるんですか、その点はどういうふうにお考えになっていますか。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戦によりましていろいろの犠牲を受けられた方方は、非常に多いのであります。軍人遺家族の方々を初めとして、引揚者、あるいは、われわれは何ともしておりませんけれども、国内において戦災でなくなられた方々等々、非常に多いのでございます。私は、今の引揚者の方方に対しましては、先般の引揚者の給付金によって一応片づいたものと心得ております。
  78. 千田正

    ○千田正君 引揚者の諸君は、そういうように考えておらないようでありますから、それはあとはいろいろ総理のほうで十分にそういう人たちの要求、請求等に対しては、納得のいくような方途を考えなくちゃならないと思いますので、慎重に考えていただきたい。これだけを要請しておきます。  次に、通産大臣にお伺いいたしますが、今度のEECの問題で、あるいはそれに引き続いて国内の産業に及ぼす影響のおもなものとしては、どういうものが一体主であるかという点についてお伺いしたいと思います。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) EECがわが国産業に及ぼす影響と、こういうお尋ねかと思います……。
  80. 千田正

    ○千田正君 産業のうちに、特に将来通産省管轄のものについてです。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) EECとわが国経済との関係におきましては、EECの経済活動が進めば進むほど、対EEC向け輸出といいますか、貿易はこれは拡大する、かように考えております。これは過去の実績はそのとおりであります。ところが、他の地域におけるEEC経済とわが国の経済との競争というものは、各地において出てくるだろうと思います。そういう観点に立ちますと、わが国の産業が国際競争力というものを持つように内容を整備することが必要でございます。また、EEC自身に対しましては、いわゆる貿易が拡大されると申しますが、EECを形成しておる国によりましていろいろの事情がございます。その関係からまだ差別的な待遇等も相当しておりますし、あるいは混合関税率の計画などもございますし、そういうことを考えますると、これまたそういう意味の経済外交を推進していくということが必要だろうと思います。また、わが国の産業自体で貿易の面で競争、あるいはEECへ出かけますものは、雑貨、繊維等が主でございます。しかし、最近はまたいわゆる機械等も漸次出ていくようでございますから、産業といたしましてどの産業、かように申されると、特にただいま申すような点が強く関係を持つと、かように思います。
  82. 千田正

    ○千田正君 今のおっしゃったうちで、私は特に考えなくちゃならないのは、雑貨の輸出の面だろうと思うんです。通産大臣は御承知のとおり、日本の雑貨というのは、最近非常に世界的声価を浴びて相当輸出されております。ところが、最近に至って香港等においてはもっと生産コストの安い、労働力が安いから生産コストも安くなる、そういうので、相当競争が出てくる、そういう状況にあるのでありますが、日本の雑貨の輸出に対する生産部門を担当しているのは、たいてい中小企業のうちの小企業、小企業のうちの最も零細な家庭内職のような仕事が多い。ゆうべもラジオで聞いておりましたが、養老院等においてさえも、そういう仕事をやっておる。一日の収入はわずかに二十五円。それでも七十才、八十才に近い老人がせっせと輸出に対するそういう玩具等の製作をやっておる。ところが、こういう問題を考えてみまするというと、この中小企業に対する、しかも、零細企業の雑貨生産のほうに対するところの政府助成なり保護なりというものは、きわめて薄いのじゃないか、こういうふうに考えられますが、その点はどうでありますか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお話しのとおり、雑貨輸出、この面を担当しておりますものは、御指摘のとおり中小企業が主でございます。しかし、この中小企業に対しましての金融措置は、特に輸出産業であるという立場におきまして、特別に私ども昨年来めんどうをみております。私もつい最近江東地区における玩具製造の工場を見ました。これは文芸春秋の方が現地報告というような形でついて行かれて、そうして業者についていろいろ具体的に金融で困りゃしないかという話を聞かれましたが、実は金融にはあまり困っておりません。大臣の前だから特にそういうことを言うのじゃないかとまで言われて、比較的輸出産業については特に私どもめんどうをみたつもりでございます。そういう点は比較的ないようでございます。ただ、御承知のように、アメリカにおきましても、あるいはEECにおきましても、しばしば関税等の問題を引き起こしております。最近、御承知のように、ニュートーン・カーペットが問題になって、あるいは板ガラスも問題になったりいたしておりますが、これなどはいわゆる経済外交の面でそれぞれ交渉を持っております。また、ただいま御指摘になりました香港の技術が最近相当進んできた、こういうことで、多分ただいまの御指摘の点に触れるのかと思いますが、造花なども、日本よりも香港のほうが安くて品質がいいという話も実は聞くわけでございます。そういう点から、いわゆる技術の指導等もいろいろいたしておるのであります。それぞれ雑貨と一言に申しますけれども、品種は相当多くございますので、それぞれの業種別についてこまかな注意をしないと十分伸びていかない。したがいまして、私どもは業種別の振興の処置をいろいろとり、それぞれの雑貨センターにおいての指導ももちろんでございますが、組合の結成等によっての技術指導もいたしておるのでございます。ただいまのところは、比較的順調に雑貨の輸出は伸びておるのではないか、かように私は考えます。
  84. 千田正

    ○千田正君 通産大臣も、おそらくしょっちゅう海外にいらしておるからおわかりだろうと思いますが、日本の雑貨は安いということが定評である。そういうのでありますけれども、現実に、たとえば日本で十円するおもちゃは、アメリカなり、あるいはイギリスあたりでは、これはもう百円ぐらいしておる。その間におけるところのマージンというものは、中間の商人に相当吸収されてしまっておる。最近の状況から見まするというと、実際そういうものを買い付ける外人というのは、外人商社——りっぱな商社じゃなくて、いわゆる渡り鳥のようなブローカー的な外人が相当入り込んで来て買いたたきをやる、こういう情勢が現実なんですが、こういうものに対するやはりある程度の防衛態勢を整えないというと、日本の中小企業というものは、さっき申しましたように、わずかに二十五円だとか、一日働いてもせいぜい百円か二百円の家内工業の収入しかないというような、苦労してやって、そして外国ではその何倍かで売るという、そしてその中間は、あまりかんばしくないところの外人の商社に吸収されているというような現状なんですね。そういう状況に対して、これは通産大臣にも外務大臣にもお伺いいたしますが、そういうことを十分警戒しておられるかどうか。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ、たとえば玩具について申し上げますと、一口に玩具と申しますが、金属玩具、あるいは繊維玩具、あるいはゴムだとか、それぞれでそれぞれの趣きがあるようであります。金属玩具などは、かつては百円から二百円ぐらいのものが出ていたといわれておりますが、最近出ておりますものは七ドルだとか、あるいは五ドル以上のものが主体になっているということでありますから、これはよほど模様が変わりつつあります。また、外国のほうから特別な形式、型などを注文してきて、日本国内では販売しないが、日本で作ったものが外国へ売れておるというようなものもございます。ただ、今言われますように、とかくこの業種は非常に弱いものですから、お互いの競争もなかなか熾烈だ。そのお互いの競争につけ込まれて、悪徳なバイヤー等に自由に振り回されるということもあるようでございます。最近は業者相互の間の競争も、防止すると申しますか、それぞれの意匠などもお互いに侵さないようにいたしております。そういうことで業者相互間の協調もとれるようになりましたし、また、組合などもできるようになりました。そういう意味から申しまして、比較的バイヤーなどに対する警戒も十分できつつあるようでございます。しかし、いずれにしても弱い業種でありますから、私ども、業界相互が過当競争に陥らないように特に注意し、指導しておるような次第でございます。
  86. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御質問は、主として家内工業あるいは家内工業的な製品の輸出に関しての問題でございましたが、私ども、国内的には通産省あるいは労働省の御指導によりまして、ややそういう面が組織化されて参りました。私どもの面からしますると、悪徳なバイヤーというものにこういう業種が食い荒らされないように注意いたしておるつもりでございます。いろいろ御照会等あれば、十分われわれのほうで調べまして、適当なるアドヴァイスを与えるというように努力しております。
  87. 千田正

    ○千田正君 通産大臣にもう一点だけお伺いします。最近石油業法が提案された、これに引き続きまして相当の競争が惹起されるものとわれわれは考えるのでありますが、そうした場合に、衆議院の委員会等においても質問があったようでありますけれども、アラブの石油、あるいはこちらのスマトラ等の石油に対して、民族資本のある程度の導入をやって日本の産業の発展を期して今日まで至っておるのであります。貿易の自由化と同時に、こうした石油あるいは原油等がどんどん入ってくる今までと競争して、ソ連からも相当安いものが入ってくる。そういうよような工合になってきますというと、当然日本が開拓した石油資源の日本への導入ということに対して、相当のショックになるのではないか。こういうことに対しては相当の保護をやられるのかどうか、こういう点はどうでありますか。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 石油業法をただいま御審議をいただいておりますが、これは申すまでもなく、十月に原油については自由化をする、しかし、石油製品はいましばらくあと回しにするつもりでございます。そういうことを考えますると、総合エネルギーの見地に立ちまして、やはり一つの業法を設けることが必要だと思います。これによりまして安定的な供給を確保したいというのが実は主眼でございます。そこで、ただいま御指摘になりますように、純国産の原油、あるいはガスがございます。また、資本系統としての民族資本とでも申しますか、いわゆるスマトラ、あるいはアラビア原油というものがございます。また、国内にはこの石油と競争の立場にある石炭という問題がございます。あるいは水力等の問題もございます。そういうエネルギー総体の観点に立ちまして、いわゆる外国石油業者の競争の場に日本をしたくないという、そういう意味からこの業法を作りまして、そうして石油業界に一つの秩序を与えたい、かように実は考えておるわけでございます。大体ただいまの石油自身、原油、石油として依存いたしておりますのは、九〇%に近いものが外国の原油、石油でございます。そういう立場からただいまのようなことを考えるわけでございます。もちろんこの業法によりまして差別的待遇はするつもりは毛頭ございません。国内の原油についての補助育成のほうは、別途の仕組みでいたすべきものだと、かように考えております。また、この業法で、アメリカ系、あるいはイギリス系、あるいはソ連系等の間に区別をつける、こういう考えは毛頭ございません。
  89. 千田正

    ○千田正君 その自由化によって、たとえば農業、あるいは漁業等に対するところの漁業用、農業用の重油等に対しては影響がないかどうか、この点はどうですか。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは在来の取り扱い方を変える考えはございません。
  91. 千田正

    ○千田正君 大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、これは農林大臣とも関係があり、外務大臣とも関係があるのであります。それはオットセイの条約によって捕獲しましたところの皮の生産、販売価格の一五%を日本によこす、そうして国際漁業条約に基づいて、日本の国内において規制されたオットセイの密猟であるとか、あるいは捕獲、そういうことをしないように、国際条約に協力するように日本側に要請する、そのかわり一五%の金を日本とカナダによこす、こういう約束のはずでありますが、その金は一体ほんとう日本にきておるのかどうか。大蔵大臣は、もしきておるとすれば、それはどの勘定の中に入れておられるかどうか。また、現実においてその金は、これは農林大臣にお伺いいたしますが、そういうふうな国際条約によって、日本の漁民が、ラッコ、オットセイ等の国際条約の対象になり、そうして海上捕獲等をやらないようなための保護費にそういうものを使っているかどうか、こういう点であります。大蔵大臣は、一体幾らアメリカ側からその金がきて、どういう項目に入って、それが予算の際においては、ほんとう農林省にその金が回っていって、水産の面においてラッコ、オットセイの密猟をしないように、国際条約に協力するような方向にその金が使われるものかどうか、その点について大蔵大臣のお答えをまず第一にいただきたい。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この一五%日本が譲り受けたものは民間に払い下げ、この代金は一般会計の歳入の中に計上してございます。で、三十六年は一億七千七百万円、三十七年が一億六千五百万円というふうになっておりますが、一般財源として使用されておりまして、特にこのものをオットセイ関係費として全額使っているということじゃございませんで、オットセイ関係費として三十七年度予算に計上しておる金額は、調査費、取り締まり費として一千九百万円でございます。
  93. 千田正

    ○千田正君 これは非常におかしい話でありまして、これは外務大臣にお伺いしたいと思います。  それから農林大臣にお伺いしたい。ラッコ、オットセイの国際条約を結ばれて、そうしてアメリカ側の当時の約束は、今申し上げましたように、そうした漁民が密猟しないように、そうしてラッコ、オットセイの資源を保護するためにそういう金をあげるのだ、だから十分に日本協力してほしいという意味でそういう金をよこしているはずなんです。私はそういう解釈であるし、また、当時の資料もそうあるはずだ。ところが、今千数百万円しか出ていない。片方においては、その漁民たちは、自分たちの魚類を食い荒されている害獣だから殺したいけれども、日本の国の法律は、殺してはいけない、国際条約に協力しなければならないというので、がまんして貧しい生活を相変わらず続けている、やむを得なければ密猟をするかもしれない、こういう状況下にあるのに、そういう方向にはその金は使わずに、一般財政の中に繰り入れられて使われているというのは、それはアメリカ側の意図にも反するし、また、国内の行政面においての国際的な条約に協力するという面からいっても、はなはだ違うと、私はそう考えるのですが、外務大臣どう思いますか。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) オットセイ条約は、要するにオットセイの乱獲を防ぐという趣旨できめたものでございまして、日本側としては、これはとらぬということは、何も国内法によって禁止されているからとらないというのではなくして、たまたま会議の結果、アメリカやソ連のとったものの一五%を現金でもらうということによってそのシェアをもらっている、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、その一五%に相当する一億何千万円というものは、そのまま全部密猟防止というものに使われないからといって、おかしいということには条約の建前上ならないと思っております。
  95. 千田正

    ○千田正君 外務大臣ほんとうに研究しておられるかどうか、私は、この問題に対しては、十五年来相当研究しておるのですよ。大体日本が外国の獣に対して、日本の国内でとっちゃいけないなんという法律を作ることが一体国辱法なんです。しかも、そういう害獣が三陸沖から北海道へ回って、日本の魚族の資源を食い荒すものに対して、日本の漁民が防衛措置としてこれをぶち殺したって差しつかえない。しかしながら、それを協力しなければならない、国内法でそういう協力の法律が出ているから、やむを得ず自粛しておるわけです。そういうこともあり得るだろう、そういうことの起きないようにできるだけ密猟してくれるな、そうして協約した範囲におけるところの話し合いをしようじゃないかというのでやったので、いかにもそれが今のお話だと、皮算用みたいな話をしておる。とらぬタヌキの皮算用じゃありませんよ、それはしっかり国際条約上において、その内側の話し合いは、そういう密猟や何かしないようにしてくれ、こういう意図を含んでいたはずであります。条約の表現は別として、向こう側の意図はそういうはずである。この点については農林大臣はどうお考えになりますか。
  96. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたしますが、これは御承知のように、千田さん詳しいことですが、三十三年か何かに五億ほど出して、イルカをとっておった連中に補償金をやって、元来話が済んでおる。聞けば四十五年からオットセイをとっちゃいかぬということになっておる、あらためて今急にオットセイをとれぬようになったわけじゃなくて、イルカとオットセイと間違えて、オットセイをとっておったものもあったから、これからそういうことをしないようにしようじゃないか、これを保護して育てようじゃないかということで日本側で条約を作った。しかし、最近では少しオットセイがふえ過ぎているから、もう一ぺん考え直したらどうかという話もありますが、この点は少しおっしゃることが違いやしないかと思うのです。私は農林大臣として、別に今やっておりますことで少しもお小言をちょうだいするようなことになっているとは思っておりません。
  97. 千田正

    ○千田正君 農林大臣は、私が小言を言ったように思うのですが、小言じゃありませんよ。これは今の北洋のサケ・マスにも関係してくる。資源論を中心にしてソ連側はあくまで押してくる。資源論のうち、害獣によって食い荒らされるところの資源のデータというものに対して、日ソ条約のこの漁業条約においては、そういう問題は出てこない。しかしながら、三陸から北海道の漁民は、実際においては、ある場合には、その時期によっても違うのでありますけれども、サケもマスも食い荒らされておる。そういうようなことを考えまするというと、私は、やはり日ソ漁業条約などで、今資源論を中心にして、資源はある程度保護しなければならぬ、日本協力しなければならない、こういう立場に立っておるのだから、それはそういう意味において考えるというと、これは逆に矛盾した方向に向かっておる。一体、お伺いしますが、ラッコ、オットセイは日本に住むところの動物ですか、どうなんですか。外務大臣にお伺いしてもいいし、だれでもいいですが、ラッコ、オットセイは日本の領土に住んでいますか。
  98. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは答えるより、千田君のほうがよく御承知のはずでございます。沖合いまで出てくるから、あのように猟師さんが出て行って、イルカをとるのだといってオットセイをとっておったのは事実でございまして、住んでいるか住んでいないか、あの辺まできて海の上を遊んでおることは間違いないのであります。
  99. 千田正

    ○千田正君 どうもそういうお答えを得ると、はなはだ残念なのでありますが、そういうふうな状況で、私は何回もここで言いますけれども、もう一頭のオットセイが、大体動物園なんかにいますと、一貫目の魚類を食べる。三陸沖を通過するところのオットセイ、ラッコ等の群は大体どれくらいですか。水産庁に伺います。
  100. 伊東正義

    政府委員(伊東正義君) 御質問でございますが、現在大体オットセイの生息の推定でございますが、アメリカのプリビロフ沖には大体二百万頭くらい、ソ連のコマンドルスキー、それからロベン島に、おのおの十五万頭くらいじゃないかということが言われております。それで、三陸に来ますのは、そのうちどれくらいかという推定は、実はまだはっきりしたものはできておりませんが、大体アメリカ系のものが六割くらいが来ているのじゃないか。ソ連のほうは少ないというようなことを、科学者では今言っておりますが、はっきりした数字は今調査中でございます。
  101. 千田正

    ○千田正君 どうもアメリカ系だとか、ロシア系だとかというのは、どこで区別するかということは、なかなかむずかしい。サケにしろ、これはアメリカ系のサケであるとか、これはソ連のサケであるとか、いろいろ科学者は言いますけれども、とる漁師のほうからいえば、アメリカ系のサケであろうが、ソ連系のサケであろうが、自分の網に引っかかったものは、自分たちの一つの収穫だと思っている。そこで、今のオットセイは少なくとも六十万頭近くのものは、金華山沖から北海道の東南海域を回って回避している。その間にとるところのえさの量というものは相当の量であります。資源保護、資源保護と日本側は言っているけれども、一体それに対するところの、そういうのに食い荒らされる魚族資源保護は何でやっているか、何をもってそういうものに対する保護を考えておられるか、その点を。
  102. 伊東正義

    政府委員(伊東正義君) 資源保護の問題でございますが、先生がおっしゃいましたオットセイがどういうものを食っているかということにつきまして、いろいろ調査をいたしております。これは日ソの関係もございますので、いろいろ調査をしておりますが、実は今の段階の調査では、まあイカでございますとかイワシというようなものが多くて、実はサケ等につきましては、案外少ないんじゃないかという実は調査になっております。しかし、これは調査の場所その他いろいろございますので、まだ確定的なことは申し上げかねますが、そういうような調査が現在においては出ております。で、この保護の問題でございますが、これは私どもとしましては、一体どこでオットセイをとりまして、そういうほかの有用な魚に与える被害を減らしたらいいかというようなことも考えているわけでございますが、現在の段階では、これは三陸とかそういうところでとるのではなくて、陸上で猟獲するのが一番いいんだというような、現在の条約のもとではそういうやり方で、そこである程度のオットセイの猟獲をするということで、資源保護をはかることが必要ではないかというような、現在はやり方をしておりますが、これにつきましては、実はこの条約が大体今年一ぱいで、その次の段階をどうするかというようなことがございますので、将来の問題としていろいろ検討する必要があろうかと思っております。
  103. 千田正

    ○千田正君 オットセイ談義はこれだけでやめたいと思うのですが、オットセイの皮を獲得しているのはアメリカの一商社にしかすぎません。一商社。世界にルートを持っている、大きな一商社だけが持っていく。そこが皮を販売して、その金の分配を日本の国が受けている。しかも日本の零細漁民の犠牲においてそういうことをやられているということは、われわれ国民として非常に考えなくちゃならない。しかも一資本業者です、アメリカのオットセイの皮を扱うところの商社は。私は、そういうことによって日本の零細漁民が国内法に縛られて、そうしてイワシだのイカを食うのを黙って見ていて、なおかつ資源保護だと言わざるを得ないということは、僕は非常に撞着矛盾していると思う。そういう点については、もう一度ひとつ十分に調査されて、方途を講じていただきたい、こう思うのであります。  それで、大蔵大臣にお伺いしますが、一般会計でもけっこうでありますけれども、実際の問題はそういう内容を含んでおりますので、これは、水産庁あたりからそういう保護の予算の請求があった場合は、思い切って、国際条約に抵触しないような保護政策のほうにも出していただきたい、これは要請しておきます。  最後に、時間がありませんがお伺いしますが、ただいま日ソ漁業条約に高碕代表が行っております。行く前に十分外務大臣、あるいは特に河野農林大臣とは御相談なさって行ったようでありますけれども、この日ソ条約は一体こんなことでいつまで続くのか。こんなことをいつまでもやっていたのでは、日本というものの漁業、ひとり漁業の問題ではなくて、日本の北方における権益というものはゼロじゃないか、ゼロになってしまうのではないか、そう私はひそかに悲しむものであります。たとえば領土という概念からいうというと、しばしば総理大臣もおっしゃるように、歯舞、色丹、国後、択捉、この南千島は日本の領土なりということを、政府は断固としてわれわれに声明している。それならば、その領海だけは少なくとも日本の漁師が行ってとっても差しつかえないはずである。そういう領土問題とからんで、私は、日ソ漁業条約というものはある程度打開をする方法があるのではないか。これは資源保護を、日本側が自主規制という問題で、はっきりしたアイデアを持ってこれこれをやるのだという決意がついたならば、条約などはある程度解放してもいいじゃないか、これは高碕さんも言っているのです。こんなことで毎年々々、規制だ禁止だと、最近に至っては、ほとんど日本の北海道、あるいは三陸の沖に近いところまで、禁止区域だ、規制区域だというて、向こうが盛んに主張してきている、そういうことのないような方法をわれわれは考えていただきたい。オホーツク海などに至っては、もうとうとう入れない。日本の北海道の、領土の目先で、領海でもそういうところを十分通れないということは、これは、日本の外交の敗退であると私は思う。これは、どうしても北方の領土ということを主張するならば、その領土の領海だけは、やはり日本の力において、ある程度十分に漁業ができるように考えなければならない。資源保護は、当然これは各国との共同の資源保護をやりましょう。やりましょうが、無制限に相手から勝手に規制を強要されたり、禁止区域を強要されることは、この際ある程度、日本の国力の今日であっても、堂々と論陣を張って対抗してでも、その方途を考えるべきじゃないかと私は思いますが、外務大臣及び農林大臣のお考えを、この際明瞭にしていただきたいと思います。
  104. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 千田君、持ち時間は終了いたしました。
  105. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。ただいまお話になりましたとおりに、われわれは自主規制を原則にいたしまして、両国の間に資源保護を、協調してやって参るという建前でこの問題に対処する。従来とかくわがほうにも多少の落度がございました。規制すべきものが規制できなかったという事実があるものでございますから、先方からの言いがかりを今回も受けておるようであります。これにつきましては、結論的には、今申しましたように、あくまでも自主規制案をもって、両国において資源保護という建前で解決いたしたいということでございます。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 農林大臣のお答えのとおりでございまして、自主規制の問題は、昭和三十一年に日ソ漁業条約ができましたときの重要なる内容でございます。私は、あくまでもこの自主規制の方針というものは、これは貫いていくべきものと考えております。なお、オホーツク海の解放の問題につきましては、機会あるごとに、先方にこれを了解さすべく努力をしているわけでございます。
  107. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけお伺いしますが、農林大臣も、自主規制をして、いわゆる国際的信頼にこたえよう、これはごもっともですが、そういうあれが確立した場合においては、もう日ソ漁業条約において、今のような規制は一つ一つはずすべきじゃないか、はずしていいじゃないかと思う。資源保護の目的が達せられるならば、もうある程度のそういう条約によって禁止されたり規制されたりというようなことはある程度はずしていいじゃないか、私はそう思うのですが、外務大臣はどうお考えですか。いつまでもこの問題を自主規制ということによって押えられて、条約はそのままで継続されるということはとうてい耐え忍び得ないことでありますので、その点もひとつ外交を積極的に考えた場合は、日本は国内自主規制をしたならば、当然向こうの信頼をかち得たならば、そこでもう条約はある程度解放してもいいじゃないか、こういうふうに思いますが、どうですか。
  108. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは日米間の場合におきましても一つのラインがございます。いろいろなその他の場合から申しましても、国際的にも漁業の場合に一定の線を引きまして、その範囲内、範囲外というようなことはあることでございまして、私はわがほうとして資源を保護していく上から申しましても、日本が強調してやることでございますから、双方合意の上でなすべき規制は当然あったほうがいいのじゃないか、こう考えております。
  109. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どももそのように考えております。むしろ問題は、わがほうが自主規制ということを言いながら、それを守れないようなことがあることのほうにむしろ問題があるのでございまして、あくまで自主規制を言いましたら、それを規制するという努力は一方において大いにしなければならぬ、かように思っております。
  110. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 千田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  111. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、大谷瑩潤君。
  112. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 私は質問に先んじまして、委員長にお願いを申したいと存じます。  今日のこの委員会の席上には社会党の方が一人も見えておりませんが、参議院の自主性と良識とを強調しておる同僚議員が、衆議院の運営による与野党の考えの相違に基づく混乱を本院に持ち込み、当委員会はもちろん、本会議においても欠席して一そう審議を困難に陥れることは、むしろみずから参議院の軽視を意味するものとして、同僚議員の反省を求め、遺憾の意を表したいと存じまするが、委員長におかれましては、一日も早く、一ときも早くこの問題を解決して、正常なる審議の行なわれまするようお取り計らいを願いたいと存じます。  次に、委員長の御指名によりまして質問を継続さしていただきます。
  113. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大谷君、ちょっとお答えを申し上げます。  ただいまの委員長に対するあなたの御発言、私も全然同感でございます。あなたの御趣旨に基づいて善処したいと思います。  どうぞ質疑を御継続願います。
  114. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 農林大臣が、御出席を求めておらなかったので、お急ぎのようですから順序を変えまして、初めに農林大臣にお伺いいたしたいと思いまするが、実は今千田同僚議員の御質問がありましたので、同じようなことが重なりまする点はなるべく私省略いたしたいと存じますので、多少重複いたすような点がありましたならば、よろしくそこを御勘考の上で御省略下されてけっこうでございます。  第六回の日ソ漁業交渉は漁獲量規制措置を定める本格交渉に入りましたが、今年は不漁の年に当たり、またソ連側はサケ、マスの全生息水域を規制区域とするという強硬な提案をしていると私どもは聞いておりますが、今度の日ソ漁業交渉に臨む政府の御決意をまず承っておきたいと思います。
  115. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話のように、だいぶやかましいことを言っておるようでございますけれども、今日までの経過からいたしますと、最初は双方の技術者によるところの意見の交換は割合に円滑に参りまして、ある程度意見の一致を見ているものもあるわけでございます。そういう点からいたしまして、先方もなるべく早く結論に達するようにということで、せっかく努力してきておるようでございますから、今後の推移を見なければわかりませんけれども、またわがほうにおきましても自主規制について万全を期しまして、業者の諸君の理解を得ることに努力をいたしておりますので、その点は先方も非常に好感を持って迎えまして、今日までモスコーから参っております情報によりますと、比較的話は円満にいっているというておりますが、しかし、何分交渉のことでございますから最後まで見ませんと、これから先どういうふうな問題が起こるかわからぬと思います。
  116. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 次に、政府のとられた自主規制の措置は、北洋の資源を保護する上にたいへんけっこうなことであると存じまするが、漁業界の内部では反対運動も起こっており、まだ足並みがそろっておりませんが、こういう状態でありまするのに対しまして、政府としては今後この問題をどういう工合に調整されるおつもりかと承っておきたいと思います。
  117. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 実は最終的にどの程度に規制するかということは結論に至っておりません。ただ昨年少しこちらがとり過ぎたことがございますから、それらを考慮して不漁年でもございますし、あらかじめ業界諸君の御了解を得ようと努力をいたしました。だんだん日の経過に従いまして相当に御理解をいただくように相なっております。が、しかし、まだ結論は私としても求める必要はないと考えまして、これに従事いたしまする漁業者の二つ組合がございます、その二つの組合の組合長が高碕代表と同行してモスコーに参ることになっております。したがって、先方と交渉の過程におきまして、もしくは結論におきまして、すでに二名代表に同行しておりますから、これはひとつうまく話をつけるようにということで行っておりますから、まだ今日の段階では未調整の部分がありますけれども、いずれ結論に達する場合にはすべて円満に話がついて、モスコーにおきまして、一切国内の問題も片がつくということを期待いたしておるわけでございます。
  118. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 北洋漁業の問題は、今後もいろいろと起こり得るものであると存じます。北洋漁業に対し政府として基本的な対策を立てる必要があると思うのでございますが、いかなるお考えをお持ちでございましょうか。
  119. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先方も強く要望いたしておりますとおり、わがほうにおきましても、魚族の保護もしくは資源を維持するという点におきましてどの程度の案が最終的、基本的なものであるかという結論が出ておりません。したがいまして、これまでにだんだん経て参りましたけれども、なおかつ魚族の保護が不十分でございます。そこでなるべく徹底的に調査をいたしまして、そして日本側のとるのはこれくらいが適当、先方もこれくらい、双方合意の上でひとつやりたいと思っておりますが、遺憾ながら今日まではわがほうもたくさんとることに重点を置いて、わがほうがたくさんとるから向こうもとるというようなことで、双方ともとり過ぎておったということで、年々減って参りますから、その経過について私は間違いないと思うのであります。幸い先方も孵化事業等に金を入れて、わが国におきましても官民一体となって孵化事業に力を入れて、そうして一方において孵化事業を盛んにすると同時に、とるものについても合理的にとる。永遠に資源の保護をしてこの漁業を保護して参りたいという点で、話せば一致する点が必ず出るということでございます。
  120. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 先ほど千田委員からお尋ね申されましたとおりに、この海獣の被害というものはサケ、マスでは相当の量に達すると思います。私も海馬島に先年参ったことがございまするが、非常なたくさんの海馬が住んでおりまして、これらのものの食べます量というものは非常なものだと思いますので、こういう被害の点についても日ソ間の交渉の上に、先方の資源枯渇というような口実に対しまして、日本からも相当強くこの海獣の被害ということを申し込んでいただきたいと存じておる次第でございます。これはこれ以上申し上げません。  それから北洋のサケ、マス漁業を永久に保護し、繁栄を保つために関係国である日本、ソ連、アメリカ、カナダ、四カ国で話し合いをすべきものであると思うのでございまするが、日本政府がその会議を開くべくあっせんをし、一日も早く開かれるような努力をすべきではないかと思いまするが、そういうお考えはございませんか。
  121. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今日までの調査によりますれば、ソ連の川から出て参りまするサケ、マスと、アメリカ、カナダ系のサケ、マスと、これが太平洋まで参りました場合に、系統が違っており、主としてわが国において漁獲しておりまするものは、ベニを除きましてはソ連のものをとっておるということで系統がわかる、漁獲の範囲がわかっておりますので、これがかえって、みな一緒になりまして、川で孵化するのは国が三つで、出てきたものをとるのはわが国一つということになりますから、無理に混乱しないで、相手は一つずつ御相談申し上げたほうが話がつきやすいだろうということで、これを一緒にやることには私はあまり賛成いたさない、こういうことでございます。
  122. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 北洋のサケ、マス漁はわが国にとって重大な問題であります。漁業者の死活の問題でもありますので、交渉が難航した場合、農林大臣は訪ソされましてこれの解決に当たられるの心組みがございますか。簡単でけっこうでございます。
  123. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 非常に経験の豊かな、たんのうな高碕さんが行って交渉に当たっていただいておりますし、先ほども申し上げましたように業界の代表者もみな行っておるわけでございます。したがって私が行ったところでそう大したこともございませんので、一応諸君にお願いをいたしておりますが、行く必要があれば、決して行くことについてとやかく言うものじゃございません。
  124. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 ありがとうございました。農林大臣の質問を終わります。  次に外務大臣にお伺い申したいと存じます。三月七日、私の質問以来、ケネディ大統領の沖繩新政策が発表されました。新政策は沖繩の現状を改善し、施政の欠陥を是正し、沖繩住民の不満にこたえ、同時に沖繩の経済的発展の向上を目的とするもので、それ自体当然の措置であるとはいえ、南方領土の問題解決に向かって一歩前進し、施政権の返還はなお急速には望めないとしても、次のことについてなお二、三のお尋ねをいたしたいと存ずるのでございます。  まず第一に、今日の沖繩の地位を規定した平和条約第三条によれば、琉球及び小笠原群島は、将来米国を唯一の施政権者とする国連の信託統治下に置かれることになっておりますが、果して今後アメリカは琉球及び小笠原群島を国連の信託統治とする意思があると思われますか、いかがでございましょうか。
  125. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御指摘のように平和条約の第三条によりますれば、将来アメリカは小笠原、沖繩を信託統治することができるわけでありますが、しかしそれについてそうする義務を負ったわけではございません。したがって、この提案をするという事態になるまでの間は三権をアメリカが保有しておるわけなんです。またそれを日本は承諾をしておるわけでございますが、今回の措置によりまして、アメリカ大統領の声明によりまして、そうした信託統治をする意思というものを放棄して、直接日本に返すということを明らかにしたと考えております。
  126. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 この点は先般、総理がケネディ大統領にお会いになられましたときにお確めになりましたでしょうから、その経過をお伺いいたしたいと存じます。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平和条約の規定によりまして、アメリカが施政権を持っておるということは、これはもう既定の事実でございます。ただ、われわれといたしましては、施政権を持っておるアメリカが早く日本に返してくれる、こういうことだけを強く要望いたしております。
  128. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それでは国連の信託統治のもとに置かれることなしに、日本に施政権が返還されるものと考えてよろしいのでございましょうか。
  129. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 昨年の六月の池田・ケネディ会談の結果、非常にアメリカ側の意思が進みまして、さような国連の信託統治になるという事態はなくなった、かように私どもは了解しております。
  130. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 最近の極東における情勢にかんがみ、近い将来に施政権が返還されるとも思われないのです。またさらに沖繩の米軍の基地が強化されることによって、一そう極東の緊張を招くおそれがあると思われますが、そういうようなお考えはございませんでしょうか。
  131. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今回のこのジュネーブにおきまする軍縮会談の経緯等をみましても、ベルリン問題その他につきまして非常に米ソ間の理解が進んできているという点は、われわれ非常に歓迎をいたしておるわけでございます。極東の情勢につきましても、米ソ間におきまする理解というものが、次第に融和的な方向にいくのではないかと思って期待もいたしまするし、またわれわれの立場からそれを進めたいと考えております。しかし、いわゆる東西の緊張はまあソ連だけでないわけでございまするが、そうした関係につきましてもわれわれの立場からできるだげ緊張を緩和する方向努力をしたい、かように思っておる次第であります。
  132. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 時間の都合でどんどん進みます。  次に、小笠原群島は平和条約第三条によって沖繩と同様な地位に置かれておるのでありまするが、米国のプライス法の効力は小笠原群島にまで及ぶものでありましょうか、いかがでございましょうか。
  133. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは沖繩だけではございます。
  134. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 小笠原群島には現在日本人は一人もいない、みな内地に引き揚げているとしますと、近い将来、これらの人々が小笠原群島に帰島する自由は認められるような処置が講ぜられるでありましょうか、いかがでございましょう。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 米軍の日本占領中のことでございまするが、欧州系、欧米系の住民が百三十五名小笠原に帰島しているのでございます。しかし、わが邦人につきましては、これが認められておりません。この帰島問題につきまして、いろいろアメリカ当局と話をいたしましたのでございますが、これは現在のところは、ちょっとそういう見込みは当分ない、こう判断せざるを得ないわけでございます。しかしながら、その問題もございまするので、先般六百万ドルを見舞金ということでわがほうは受領をいたしたわけでございますが、これは何も将来の問題について邦人が帰れないということではなく、したがって、また、その所有権の移転に対する補償とか、そういう意味はない、こういうことに受け取っている次第であります。
  136. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 沖繩には琉球政府が認められ、かなりの自治権が容認されておりますのに反して、小笠原にはいまだに島民の帰島さえ許されぬということは、まことに理解に苦しむところでございますが、今日までなぜ帰島ができないのか、日米間の交渉の上におきまして、その理由をわれわれに聞かしていただくことができますならば、お話を願いたいと存じます。
  137. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖繩におきましては、終戦当時わが同胞がおったということでございますが。小笠原には同胞がおらなかった、こういう事情から、軍事上の必要ということもございまして、なかなか現在帰島が許されないというふうにアメリカ当局は説明をいたしております。
  138. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それでは北のほうへ移りまして、北千島定住協同組合の方々から、私どものほうへいろいろ請願をされているのでありますが、今後、北方領土の解決にあたっては、歯舞、色丹並びに択捉、国後については、ソ連に対して強硬に返還を求むると同時に、これと並行して南樺太並びに中部、北部両千島については、サンフランシスコ条約調印国、特に米国に対してその最終的決定あるいはそのあっせんを要請すべきものと考えられるのでありますが、いかがなものでございましょうか。
  139. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) はなはだ失礼でございますが、御質問の意味をあるいは取り違えているかもしれませんが、北方の領土につきましては、これは国後、択捉、歯舞、色丹がわが国有の領土であるということは、しばしばソ連側に対して主張いたしているわけでございます。条約上の根拠等も明瞭であるわけでございます。この北方領土の問題について、平和条約で放棄しているというものは、このウルップ島からシュムシュに至る十八島、いわゆるクーリル・アイランズに含まれておらない、こういう主張をいたしているわけでございます。なお、放棄いたしましたものにつきましても、この帰属が決定しておらないわけでございます。当時、ソ連の代表は当然わが主権の及ぶべきことを日本に承認させておらない、この条約の趣旨に反対である、こういうことで、反対をいたしているわけなんでございまして、そういう趣旨からいって、ソ連が、放棄したものもソ連の主権のもとにあるということを言う理由は条約上にはない、こういうふうにわれわれは主張しているわけでございます。しかしながら、これの帰属を決定するためには、別個に国際会議を開くというふうなことが必要なわけでございますが、現在の東西間の緊張の状態からいたしまして、この時点でそのことをやることがいいか悪いかということについては、さらに慎重に検討すべき問題だと思っております。
  140. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 北方領土は中部千島以北の北千島すなわち千島列島全部を含めるということにしてもらいたい。また政府は、南千島及び歯舞、色丹及びその他の島々といっておるんでありますが、このところを北千島と明確にしてもらいたい。こういって陳情を申し上げておる次第でございます。  小坂外務大臣が昨年十月十九日の本委員会で、当時ダレス国務長官も千島、南樺太の帰属については国際間の話し合いによって取り上げることができると言っており、いずれの日にか国際間の話し合いが持たれることと思うから、そのときにわれわれは南樺太や千島は暴力によって略取したものでないから、法理論的に見て返還を要求し得ると思うと発言されておるのでございますが、民社党、社会党の見解も、ウルップ島以北の千島も、一八七五年の樺太、千島交換条約によって取得したものであって、ともに侵略による併合とは全く無縁なわが国本来の領土であるから、当然日本に帰属すべきであるとしておるのでございます。そこで、われわれは北方領土の解決にあたっては、もはや書簡外交の段階は過ぎていると思うのでありまして、それよりも、むしろサンフランシスコ条約関係諸国と、特にアメリカ合衆国に対して、南樺太並びに中北部千島の帰属について至急最終的決定がなされるよう注意を喚起することが、南樺太及び中北千島の問題解決にとどまらず、ひいては領土問題の解決をも促すゆえんではないかと考えるのでございまするが、首相並びに外相のお考えを承らせていただきたいと存じます。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 北方領土の問題につきましては、本会議あるいは委員会でたびたび私の考えを申し述べておるのであります。ただいま外務大臣がお答えしたとおり、サンフランシスコの講和会議におきまして、当時のソ連代表グロムイコは、クーリル・アイランズ、南樺太、これの帰属がきまってないから、こういうことで退場いたしたのであります。こういう事実から見ましても、日本が放棄したものが当然にソ連領土になるということはわれわれは考えられない。調印していない。そこで大谷委員は、これをサンフランシスコ講和会議に調印した国々によって最終決定すべきではないかというお考え、これはわからぬこともございません。私も一時そういうことを考えたことがございます。非公式に相当の人に当たったことがございますが、しかし実際問題といたしまして、たとえば択捉、国後というものは日本の固有の領土であるということを一九五七年にアメリカ政府も言っておる。アメリカ政府が択捉、国後は日本の固有の領土であるということを言っておるにかかわらず、ソ連がこれを占領しているという状況にかんがみますると、日本の放棄した中北千島あるいは南樺太というようなところで国際会議すなわちサンフランシスコ条約に調印した国国が集まってこれを決定しても、単にこれはますます東西関係にまた大きな問題を投げかけるということでございまして、今すぐこれをやることが適当かどうか、私はよほど考慮しなければならない問題だと思っております。考え方といたしましては、択捉、国後は日本の固有の領土である、そしてまた中北千島並びに南樺太をソ連が占領しているということは、われわれの意に反している、こういうことをわれわれは主張し続けることが、今の場合適当ではなかろうかと思っております。
  142. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 しつこいようですが、一九五〇年十一月二十四日に発表されたアメリカ合衆国の講和七原則は、南樺太及び千島列島の地位に関しては、米・英・中・ソ四国による将来の決定を受諾する条約発効後一年以内に決定がなかった場合には、国連総会が決定するということになっておるのでありますが、今年四月二十八日の午後十時で平和条約は発効後満十年目を迎えるわけでございますが、その間、これら北方地域の帰属問題について国際間の話し合いが持たれたということを私はいまだ聞いておりません。そこで外相にお伺いいたしたいのでございまするが、いつの日か話し合いが持たれるであろうなどという、まるで人ごとのようなことを言っておられずに、進んで国連総会に持ち出すなり、国際司法裁判所に提訴するなりの努力を払うべきではないかと思いまするが、外相のお考えをお伺いいたしたい。
  143. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御指摘のような草案にはなっておったわけでございますが、講和会議におきましては、ソ連がこれに加盟いたさなかったものでございますから、その草案の有効性と申しますか、草案の意義と申しますか、というものは薄くなっておるわけでございます。そこで御指摘の、国連総会に持ち出したらどうか、これも確かに御見識だと思うのでございますが、現在の国連は、御承知のようにいろんな利害関係国が寄って集まっておるものでございまして、なかなか領土問題等について主張をいたしましても、三分の二の——重要問題でございますから三分の二の多数を得るということも、なかなか実際問題として困難でございますことは、例の西イリアン問題等がしばしば出まして、いまだに結論を得ていないという点でも御理解いただけると思うのでございます。そういう情勢のもとで国連に持ち出してみて、総理がお答えになりましたような東西関係の現状におきまして、これがはたして日本のためにこの時点でいいかどうかということは、やはりもう少し慎重に考えたいと思います。  それから国際司法裁判所の問題でございますが、ソ連は国際司法裁判所の強制管轄権を受諾しておりませんので、これが応訴するということはきまらないのでございます。したがって、そういう見通し等もつけます必要もございます。何といっても、そういう場所以外にも世界の世論を喚起する場所もございますので、いろいろ国別にもわれわれの衷情を披瀝いたしまして、全世界の世論がわれわれを正当なりというふうに見るように今後努力を続けて参りたい、かように思っておる次第でございます。
  144. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 さきの第三十九国会で成立した北方地域旧漁業権者等に対する特別措置法では、その第二条で、「この法律において「北方地域」とは、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島をいう。」と規定されており、もと北千島並びに南樺太に定住された同胞諸君は全く除外されているのであります。平和条約第二条(c)項の解釈においてこそ、なるほど南千島と中北千島並びに南樺太の取り扱いに差異を生ずるかもしれませんが、北辺の領土で苦労をして、非常な困難をなめた同胞に対しましては、何ら異なるところがないはずであります。何ゆえに両者を区別するのか、その理由をお聞き申し上げたいと存ずるのでございます。
  145. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども平和条約で放棄いたしましたいわゆるクーリル・アイランズという中に四つの島は入っていない、こういう解釈で、国後、択捉、歯舞、色丹、それ以外の中北千島並びに南樺太というものに対するこの問題の扱い方が異なる、かような見解措置をいたした次第でございます。
  146. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 歯舞、色丹及び択捉、国後は日本固有の領土だったから十億円の交付公債を支給するが、北千島や南樺太は帝政ロシアと交換した領土だから、同じ日本人であっても援護の対象にはならぬということは全く納得ができない論理であります。この点をさらに明らかに大蔵大臣から承りたいと存じます。
  147. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 四つの島は、現在でも日本固有の領土である、こういうことでございますが、それ以外のは、何も一八五五年とか七五年の条約に関連があるという意味ではございませんで、要するに放棄をしている、こういう条約上の放棄をしたという根拠に立って差別して扱っておるということでございますが、今法制局長から……。
  148. 林修三

    政府委員(林修三君) これは昨年この法律が国会に提案せられました際にも、関係当局からいろいろ御説明したことだと思います。要するに、考え方は、この四つの島につきましては、わが国がなお領土主権を持っておるという考え方のもとに、まあこの地にありました漁業権の問題あるいはこの地におりました漁民等についての救済措置を特別にやろう、そういうまあ一つの立法政策として行なわれた問題だと考えておるわけでございます。それで、一般のいわゆる外地あるいは海外からの引揚者に対しては、いわゆる引揚者給付金、これは支給されておりました。これはもちろん択捉、国後あるいは北千島、樺太、区別なくやっておるわけでございます。昨年の法律は、それとあわせて、それに加えてのこの四つの島の特殊的な地位ということから、ここにありました漁業権を持っておりました者、あるいはそこで漁業をやっておりました者、こういう者の救済措置を北方協会というものを作ってやろう、そういうことだと考えます。
  149. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 北方協会の主要な業務の一つは、旧漁業権者に対する低利資金の貸付でございますが、北千島に定住した同胞諸君も南千島の諸君と同じく、その漁業許可証は、ここに写真もありますとおりに、北海道庁根室支庁から得たものであります。当然南千島の諸君と同じく北方地域旧漁業権者として取り扱われて何ら差しつかえがないものと思われますが、この点についてお答えを願いたいと存じます。
  150. 林修三

    政府委員(林修三君) これは一つの法律的な差別でもございますが、要するに、立法政策の問題でございまして、結局この四つの島については、まあ日本がいわゆる条約上あるいは過去の沿革上、現在においても当然に主権を主張し得る、そういうような島にあった漁業権を持っておりました者、あるいは漁民というものについては、特殊の扱いをすることが妥当であろう、それはそれ以外の区域について、たとえば北千島あるいは樺太あるいは朝鮮あるいは台湾あるいは南洋群島においても、当然日本政府が許可をした漁業権というものはあったわけでございます。それとはやはり取り扱いを別にすることが妥当であろう、こういう考え方で、できたものと思っております。
  151. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それじゃ領土問題の最後といたしまして、私は北方領土問題解決のために、この際総理府の内部に強力な一つの専門機関を設けて、これが解決の方法、手段について、鋭意研究してそれを政府に推進させる、そういう機関が、特にこの際必要ではないかと思うのでございますが、首相におかれましては、そういうお考えはございませんでしょうか。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題につきましては、私自身も従来から、非常に関心を持っております。外務省におきましてもやっておりますので、特に別の機関を設けることは、かえって混乱するのじゃないか。外務省、内閣、われわれが、十分世界の情勢を見ながら、ひとつこの上ともソ連に対してのみならず、また他の国に対しましても、適当であるという措置は常にとっていきたいと考えております。
  153. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それじゃ、文部大臣に、また前の質問の繰り返しになりますが、お伺いしたいと存じます。宗教法人立の幼稚園、保育園の問題について、重ねてお伺いしたいと思います。文相の御答弁によりますと、宗教法人立の幼稚園、保育園は結局認めないのだ、これらの幼稚園は、いずれの日にか学校法人に切りかえるのだ、当分の間というのは、その切りかえが完了するまでの間であるということに相なっておりまするが、それに間違いがないのでございましょうか。
  154. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えを申し上げます。この前お答えを申し上げたのは、大体お示しの趣旨でお答えを申し上げました。これは御案内のとおり現在の学校教育法の建前を申し上げたわけであります。現実問題といたしますと、またおのずから別でございまして、すでに御案内と思いますが、幼稚園そのものの今までの沿革から申しまして、個人も経営をしておったという実情は厳として存在するんでございまして、したがって宗教法人も、いわば個人と同様の自由の立場において幼稚園を経営しておったわけでございます。その実情は、当分の間認めざるを得ないという意味もむろんございますが、幼稚園そのもののあり方が、今後いかにあるべきか、この前御答弁申し上げたときに、一例として、義務教育にしたらどうだろうという説もございます。しかしそれは、現に行政措置として、そうすべきだと結論を出しているわけではございませんので、各国の実情等も調査研究も必要でございましょうし、その他幼稚園それ自体に考えるべき問題がございます。したがって、その実情を、幼稚園そのもののあり方に対する検討が行なわれていくわけでございますから、当分の間といたしましても、現実問題としては、今予測し得る——いつごろという予測はできないのが実情でございます。繰り返し申し上げます。建前を、この前申し上げました。建前は、現行法に基づきます限り、ああ申し上げるほかないので申し上げたわけであります。
  155. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 もう一問だけ文部大臣にお伺いしたいのでありますが、結論といたしましては、できるなれば学校法人立幼稚園と福祉法人立幼稚園をともに——神、仏、キ五千余の施設から念願いたしております宗教法人立を認めていただきたいと存じまするが、こういうことに対しまする特例の措置をお考えをしていただき、そうして人間形成の根本的な子供の育成の上に対しまする大きな問題としての考慮を払っていただけるかどうかということを、もう一度承っておきたいと存じます。
  156. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えいたします。宗教法人教育的な見地からみましても、人間形成の上に、情操教育の上に非常な貢献をしておることは万人の認めるところと思います。そのことと学校教育法第二条ができまして、学校とはこういうものだということで、幼稚園も含めて申しております建前というものは、全然別個の問題であろうと思うのであります。  そこで、先ほどのお尋ねに対してお答えしましたように、建前論から申し上げまするならば、学校教育は、学校法人という立場において専心やってもらいたいという気持が学校教育法の気持だろうと思います。したがって、それを根本的に変えて、今お話のようなことを公に認めると申しますか、制度づけをするという考えは今政府としては持っていないのでございます。
  157. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 最後に総理にお伺いして終わりたいと思いますが、今月の二十八日に、東大の卒業式で茅学長が学生に対して告辞を与えております。二十八日の東京新聞に出ておりますが、この中で、こういうことが書いてございますが「高度の専門家となることは、社会をさらに発展進歩させるために絶対必要である。核兵器をめぐる米ソの対立はじめ、年々はげしくなっているいろいろな“対立”をどうするかは、現在の人類全体に課せられた重要問題だ。これをどう解くか。確信をもっていえることは、個人一人一人の人間性を高めることが、絶対条件だということだ。そこで、私は諸君の門出に「和而不同」(和して同ぜず)の言葉を贈る。これは二千数百年前、論語に書かれたものだが、和は社会秩序を守ること、不同は、高い教養に基づく総合的判断力を養い、それによって責任ある自己独自の行動をとることを意味する。これこそ、人と人の対立を解き、ひいては戦いのない世界建設を達成する人間形成の指導標である。」こういうことが出ておるのでありますが、これに対しまして、総理はどういうふうにおとりになりますか。これがいわゆる人間形成の根本だとお考えになりますか。その点だけ承りたいと思います。
  158. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、まだそれを自分で見ておりませんが、今お読みになったところ、福沢諭吉先生のお考えとずっと同じようで、全く同感でございます。
  159. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大谷君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時に開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会