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1962-03-23 第40回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十三日(金曜日)    午後三時五分開会   —————————————    委員の異動 本日委員山本伊三郎君、小柳勇君及び 小平芳平君辞任につき、その補欠とし て占部秀男君、北村暢君及び牛田寛君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            小林 英三君            小柳 牧衞君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            野本 品吉君            一松 定吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            占部 秀男君            大森 創造君            亀田 得治君            木村禧八郎君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            赤松 常子君            市川 房枝君            奥 むめお君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君   政府委員    外務省移住局長 高木 広一君    大蔵省主計局長 石野 信一君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    厚生省社会局長 大山  正君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。  本日、小平芳平君、及び山本伊三郎君が辞任せられ、その補欠として牛田寛君及び占部秀男君が選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。加賀山之雄君。
  4. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 最初に、主として行政管理庁長官に、今回政府が意図されておられますところの行政改革の今後の問題についてお伺いいたしたいと思います。  戦前から戦後にかけて、特に戦後は歴代内閣といってもいいほどこの問題が取り上げられ、そしてまあ失敗をしたというか、そのまま立ち消えになったというか、一向実効をおさめていない。しかし、この問題は非常に重要な問題で、しこうして古くて新しい問題ですが、今度という今度は、先ほど臨時行政調査会を発足させられて、政府も従来にない構想と意気込みで取り組む意欲を示されたわけです。川島長官は非常にこれには熱情を傾けておられるように伺いますが、まず長官から御所信を承りたいと思います。
  5. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 最近の行政機構並びに運営につきましては、国民の間でもいろいろ批判がございまして、行政体質を根本的に改良すべしという各方面の要望に沿いまして、新たに臨時行政調査会を設けまして、七人の委員諸君にお願いし、さらにその下に十五人の専門委員を置きまして、ただいま熱心に検討をお願いしておるわけであります。私ども適当な成案ができましたならば、これを国会に提案して御審議願いまして、実現にひとつ全力を期したい、かように考えております。
  6. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今長官は、体質を改善したいという言葉を使われたのでございますが、ということは、この臨時行政調査会法にもございますように、これはほんとう体質を直さなければいかぬということで、組織だけでもない、運営だけでもない、この両面にわたって根本的にメスを入れなければならぬ。こういう意味臨時行政調査会が設けられた。そして、その規模といい、また心がまえといい、従来にない心がまえが見られるわけですが、しかし、先ほど申しましたように、体質改善はたびたび試みられて、ほとんど体質改善というものは今まで実現を見ていないということでございますが、一体この問題は、行政の本質というものについては非常にむずかしいところがあるようで、これはわが国だけでなくて、世界中がこの問題と取っ組んで非常に苦労している問題のように思われるわけでございます。今日までこれがなお実効を上げなかったという根本的の原因が那辺にあるか、そういう点について、振り返ってそういう失敗あと考えてみないと、今度も同じように、初めは勇ましく出かけ、しかし竜頭蛇尾に終わらないという保証は何もない、その根源というか失敗の理由はどこにあったか、そういうことをどういうように長官は理解しているか伺いたい。
  7. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 日本官僚機構は、長年にわたりまして非常に強い割拠主義に立てこもっておりまして、それらの抵抗が激しいために実現せられなかったことも大きい原因だと、かように考えております。今回は、政府といたしましては特に非常な決意をもちまして、各界方々の御協力を得まして、こうした抵抗を排除して、りっぱな行政機構を作る、あるいはいい運営をするようにしたい、こう考えております。
  8. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 例のフーバー委員会なんかを見ますと、二年でとにかくやっておりますけれども、その前に非常に積み重ねられた調査資料なり、そういうものがあったので、これは長年の積み重ねが役に立ったのだと思うのでありますが、わが国におきましても、行政刷新審議会臨時行政機構改革審議会、あるいは最近までの行政審議会、こういうものの経過を顧みますと、かなり抽象的ではあるが、根本を突いている資料がかなりそろっているように思われます。したがって、今度の調査会を二年の時限立法で、二年間にやれという場合の何と言いますか、もとは私はできているように思うのですが、それが今まで失敗してきた原因は、今ちょっと長官が述べられただけのことでは私はないように思う。なるほど官僚機構というものは非常に大きくて、これがなかなかのいわゆる抵抗を示してきたというようなこともあったと思いますが、私はやはり何と言っても、結局は、最後政府の腰くだけ、こういうふうに論ぜざるを得ない。で、一つはそれであり、それから弔う一つは、やはり科学的調査の裏づけが不足しておったという点ではなかろうかと思うわけでございますが、いかがお考えでございますか。
  9. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 行政管理庁におきましては、戦後数年にわたりまして、各行政部門の監察その他の結果による資料は相当整っております。おりますが、今回の臨時行政調査会におきましては独自の調査権限を与えておりまして、しかも優秀なる専門委員多数を委嘱いたしまして、新しい見地から行政機構全体を監察して成案を得る、こういう立場に立っておるわけでございます。フーバー委員会が成功いたしました主たる原因世論支持でありまして、あの際アメリカ世論がこぞってフーバー委員会の結果を支持してこれが成立を見たのでありまして、私ども今後とも行政機構改革につきまして、国会並びに一般国民世論を喚起しまして支持を得てやりたいと、かように考えております。
  10. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今長官は二つのことを述べられたので、一つ調査研究については従来にないスタッフをもって、調査権を持ってやるのだということと、それから世論支持フーバー委員会の成功のもとであったということに触れられましたが、その第一の問題の委員人選は非常に御苦労されたと思うので、非常に有能な優秀な委員をそろえられたわけでございますが、私は一つ心配になることがあるのは、実はこの調査会法が成立いたしますときに両院附帯決議をつけておるわけで、委員一致意見のないときはできないのだということが両院附帯決議として行なわれております。で、したがってこれは委員の中の一人がヴィトーを持っているようなもので、一人がいやだと言えばどうにもならぬというようなことにもなり得るわけです。そういう点は、一体あの附帯決議について長官はどういうふうに考えておられますか。
  11. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) これを成功させるのには、先ほど申し上げたとおり、世論支持が必要でありまして、委員会だけでなしに、世論全部がまとまってこれを推進するだけの意気に燃えませんと、なかなかこれは実行し得ないのであります。七人の委員方々は、こういうことをよく認識しまして、これまでに六回ほど委員会を開きまして、私も毎回出ておりますが、いずれも協調して会議を進めております。骨格をなすものに対しましては必ず一致点があると、かように私は確信しておるわけでございます。
  12. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 これはお名前を出して非常に何でございますが、委員の中の一人の太田委員が、自分労働階級代表として出ているのだと、私は実は今度の委員はそういうことでなくて、全国民というものから選ばれて、一部の階級あるいは一部の者を代表するという、いわゆる利益代表的な意味であってはならない、政府もそういう意味で私は人選されたと思うのでございますが、これは新聞紙上だけで拝見したわけでございますから真意はわかりませんが、そういうような御発言があったように思う。で、これは私は非常にお考え違いじゃないかと思うのですが、今度の委員会について長官はどういうふうにそれを理解しておられますか。
  13. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 先ほどから加賀山委員のおっしゃるとおり、この委員会の成功するしないは委員の顔ぶれか非常に重大でございまして、七人の委員の選任にあたりましては、特に私は配慮をいたしまして、一切ひもつきでなしに、各界代表というのでなしに、それぞれ個人の人の知識経験というものを活用してもらうためによったのでございます。したがいまして、ただいま御指摘太田委員にしましても他の委員にしましても、ある特殊の団体の代表という意味ではございません。また政党代表でないのであります。独自の考えで、いろいろと御協力を願うわけであります。太田委員新聞で、自分労働代表だという発言をしたということは私も読みましたけれども委員会の席上における太田委員発言にはそういうニュアンスは絶対にありません。きわめて協調的でありまして、どうかしてこの委員会目的を達成するようにしたいということを熱心に主張しておるのであります。新聞に出たことと、委員会における太田委員の言動とは全く違っておりまして、高い国家的見地から太田委員はいろいろ考えてもらっているのであります。
  14. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 それを聞いて、たいへん私ども安心をしたわけでありますが、次に、この委員人選の次に大事な役割を持たれるのは専門委員で、すでに十五人が任命されて、これは来年度に入れば二十一人になるということでございますが、こういう方々はどの方を見ても非常に忙しいお仕事の方である。そしてまたいわゆる行政機構やその運営については外から見ておられましょうが、中の工合や実際については割合御経験の浅いお方が多いように思うのでございまして、つまり何といってもこれは常にそれに取っ組んで心血を注ぐということにはなかなか時間的にも御余裕があるまい。そこで非常な重要な役割を持ってくるのは私は調査員ということになろうと思う。これを七十人すでに行政管理庁方々中心にしてすでに半数以上任命されておるようでございますが、この方々は、私は行政管理庁に長くおられる練達たんのう方々で、おそらくこの方々調査検討については非常に重要な役割を持たれると思うのであります。で、委員専門委員調査員を駆使して仕事をされるということになると思いますが、この調査員について他の官庁からも出向を考えておられるということだそうでございますが、はたしてさようでございますか。
  15. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 委員人選にあたりましては、特に行政経験者というあるいは行政学者というところに重点を置きませんで、広く学識の、また経験の豊かな、高い人、をよったのであります。しかし、専門委員調査員になりますと、多少選定の基準が違いまして、ことに調査員のほうは、それぞれある事柄にたんのうな人間をひとつお願いしよう、こう考えております。現在とりあえず行政管理庁から三十人出向させましたが、あとは各官庁から一人ずつと、その他は民間各方面の人をお願いする予定になっております。
  16. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ほかからとられるような場合、行政管理庁でもおそらく最も有能な方がこの任に当たられると思うのでありますが、よそから選ばれる場合は、それこそ今までの役所式のいわゆるなわ張り根性なんか持っていたんじゃ、これはとんでもないことになるので、この調査員人選には、私はこれは主として委員会自体が当たられるのかもしれませんが、行政管理庁とされては非常に重要なポイントとして対処される必要があろうと思う。  で、この問題はその程度にしておきまして、もう一つ触れられた、いわゆる世論支持ということでございますが、この世論支持について何か特に世論支持を受けるためにこういうことをするのだというお考えがございますか。
  17. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) この種の調査会としては異例なやり方なんですが、せんだって特に調査会としての方針を受けまして、調査会みずから国民意見を聞くということを発表いたしました。今相当多数の意見調査会に集まってきております。こういうことを続けまして、これも世論喚起一つ方法であります。広く民意を聞くということでございます。最近の新聞、テレビ、ラジオ等を見ますと、盛んに行政機構改革問題を扱ってもらっております。これらも世論喚起一つ方法になりましょうし、今後ともいろいろ考えていきたいと思うのですが、実は調査会に若干海外の事情を調査する費用を持っております。近くフーバー委員会世論喚起方法調査するために、特に専門委員を派遣することにいたしております。これから二年余にわたります委員会成案を得ると並行いたしまして、世論喚起に努めることをいろいろ考えていきたい、こう思っております。
  18. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 いろいろ書面なんかで意見を聞いておられるということでございますが、まあ佐藤会長お話によると、大半が非常に今の行政について、国民大衆が非常に恨みごとを言ってくるというように私は伺っているのでございまして、つまりそういうことは一面ますます今度の行政改革が必要であるということを裏書きすることになろうと思いますが、たとえば今、そのPRの方法として、たとえば公聴会を順次開くとか、特に民衆の中に出て行って意見を聞くというようなことはお考えになっておらな わけでございますか。
  19. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) これはあくまでも調査会自主的活動にまかしておりますので、私は今そこまで考えておりませんが、まことにいい御議論でありますからして、その趣意は会長並びに委員諸君によくお伝えをして、そうしていただこうと思います。加賀山んがこう言って国会に取り上げて御議論なさることも、これまた世論喚起の非常にいい方法でありまして、これは全く今日の質問は感謝にたえないところであります。
  20. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ただこれは長官に特に申し上げておかなければならぬと思うことは、そういった国民の、非常にまずかった例から国民から恨みごとを言ってくるということもあるし、また、長官が、これはほんとうに言われたかどうか私は知りませんが、ある雑誌長官政党人は非常に甘いから寄生虫である官僚に踊らされているのだというようなことを述べられていることが出ているのですが、まあこれはちょっと私はひどいのじゃないかと、まあ寄生虫というのは一体どういう意味で言われたのか、もし長官が言われたなら、その意味をちょっと伺いたい。
  21. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 何の雑誌に出たか、私読みません、記憶ないのです。官僚寄生虫だと言ったことがあるかないかも記憶いたしておりません。
  22. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 アメリカじゃフーバー委員会のときは各地に、自治体、地方のステーツか何かにリトル・フーバー委員会なり、あるいはまたは市民から自発的なシティズンズ・コミティというか、市民委員会というものができて、そうして支持したように、そうしてその方針と同じことを地方でもやるということをやったようでございますが、これは日本ではなかなかシティズンズ・コミティなんていうものはむずかしいと思いますが、この世論喚起方法については、特にこの世論支持を受けるということに重点を置いていただきたいと思う次第であります。  次にこの内容でございますが、調査して、これをを決定していく、判決をしていくという内容でございますが、予算制度の問題については、今度は触れられることになるのですか、ならないのですか、その点、これは大蔵大臣としてもどういうふうに理解しておられるか、その点お伺いしたい。
  23. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 今度政府としましては、特にある一定の項目を限って諮問をいたしているのじゃありませんで、行政全般について委員会意見を聞く、こういう態度をとっております。したがいまして、委員会として予算編成の問題に触れるか、触れないかということは、委員会自主的考えにまかせておりますから、今日委員会考えをまだ聞いておりません。
  24. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 まあ自主性にまかせられることは非常によろしいのですが、政府としては、そういうことも希望しておられるかどうかという見地から、次にこの予算制度の面、それから地方行政機構にも当然これは触れていく問題があろうと思うのです。これらは自治大臣にも伺いたいのですが、地方行政機構については、かつて地方行政調査会があって、道州制というか、府県をもっと統合するなりして、経済単位を広くすべきだという答申があったと思うのですが、それはその後行方不明になっておりますが、予算の問題は別として、そういう地方行政機構については、自治大臣としてはどういうふうに考えておられるか、あるいはこれを希望しておられるかどうか。
  25. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 地方行政制度そのものにつきましては、御承知のとおり、今、地方制度調査会というものがございまして、またその本来のあり方と今後の事務配分その他についても目下諮問をいたして、この答申をお願いしている最中でございますから、おそらく今度できる行政委員会は、この全般に重複したような御審議ではなかろうという感じもいたします。しかし、国と地方との関係は非常に密接な面がありますから、おのずからこの地方制度の実態へ触れてこられる面もあるのじゃないかというふうに考えております。  なお、かつて道州制というものの答申があったことは御指摘のとおりでありますが、あの際の道州制というものに対する考え方は、将来こういうふうなものを考えていったらよかろうということで、今すぐこれを実施しろというような強い性格のものでもないように私ども解釈しておりまして、これは非常に貴重な御意見として、将来考える際に十分これを検討資料にしておるわけでありますが、今直ちにこれを採用するかということになりますと、ちょっとまだ諸般の情勢が、機が熟していないように思っております。
  26. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 大蔵大臣が、この予算制度については、その編成過程からして、現在のいわゆる省の制度、特に予算を扱う部局の問題について、たびたび問題になっているわけですが、今度取り上げられて、この中に入れて検討されることを望まれるかどうか。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、せっかくできたこの調査会でございますので、できるだけ広く全般検討を願いたいと思っております。で、過去三年にわたって私どもは国税と地方税配分あり方というようなものについて、税制調査会検討を願っておりましたが、ここで壁にぶつかりましたことは税制だけでは解決できない。まず、中央地方事務配分というようなものをどういうふうにするかという問題にぶつかって参りましたし、またもう一つは、地方財政は、結局、地方固有の財源と、国の交付税交付金と、それから国の各種の補助金負担金、この三つ中心になって、地方財政運営されておるものですから、この三つの調整、配分合理化というようなものをやはりここで再検討する必要が出ましたので、このための委員会審議会は、今回内閣に設けることになりました。したがって、その委員会税制調査会と、もう一つ機構の問題に触れたいろいろの審議会ができて、これが三者三様に自分の分担の検討をして、この三つ最後に総合されるということだったら、中央地方の問題の合理化がここでできると思いますので、そういう意味から私どもは、中央地方事務配分というような問題にまで触れて検討してもらいたいと希望しております。  それから今、会計年度をどうこうというような問題が、ときどき国会の中からも出て参りますが、これはなかなかむずかしい問題で、実際にこれをやろうとするのはたいへんなことで、いろいろな問題が起こりますが、現行制度でそういうことは簡単にできないと私ども考えておりますが、こういう問題も、やはり機構を変えるときには、あわせて検討してもらうのもいいことだというふうに考えております。
  28. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 非常にこの委員会に期待しておられるし、大蔵大臣のお考え方は、私は非常に正しいと思うのでございますが、もう一度自治大臣に伺いたいのでずが、たしか前の地方行政調査会からの答申があったときに、これは地方だけでは考えられないから、中央行政機構を直す、あるいはこれの改革をするときに地方分権の問題も考えようということに答申の中でなっていたように思う。私は、そうとすればこの際はまたとない機会であって、先ほどの大臣お話によると、この道州制なんかはまだ簡単にやるべきことじゃないと言われるが、どの点から見ても、今回のような機会に、この問題もしっかりとこの調査会にゆだねて調査をし、そうして国の全体としての行政目的を効果的に達成されるためには、どうしたって中央だけではいかぬ。地方も含めてやらないといけないわけですから、もう一度ひとつ重ねて御答弁をわずらわしたいと思います。
  29. 安井謙

    国務大臣安井謙君) お話通りだろうと思います。今度の委員会がそういった問題も含めて、国の行政事務をお考えになる際に、地方との関連は十分出てくるわけでございます。そういう上でそういった答申が出てくるということに相なりますれば、私どもも十分またそれに沿って考えたいと思います。
  30. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に、今度の調査会が取り上げられる内容としては、人事管理ということをあげられておりますが、私は、公務員制度全般について、やはりこれは真剣に検討をしなければならぬ段階に来ているというように思うのでございますが、また、自民党内でも、これはぜひ調査会に扱わせるべきだという意見がかなり強く出ておるように伺っておりますが、この点については川島長官いかがでございますか。
  31. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 委員の方方のいろいろ御意見を聞いていますと、やはり人事管理の面についても考究すべきだという含みが多いようでありますから、当然これを取り上げるのではないかと思います。行政管理庁におきましても、昨年人事管理の点におきまして、行政監察をいたしまして、各省庁間で人事管理方法がまちまちであるというようないろんな点が出ております。これらのことは一切、資料として調査会に報告いたしまして参考にするつもりでおります。
  32. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に、歴代の取りかかった経過を見ていますと、どの調査会も、あるいは審議会も、行政規模の簡素化、規模の縮小ということをやはり考えているようでございます。一方、公務員が非常にふくれているということは、数字的に見ても明らかでございまして、これはいろんな事情があってふくれているわけでございますが、ところで、今度の調査会の法律ができますときには、人員整理ということは目的としないのだということを附帯決議でわれわれが言っておりますから、もちろんそれを目的として出発するのはよくないと思うが、何としてもこれはやはり国の財政に非常に関係の深いもので、また、国民の福祉に非常に関係の深いことでございますから、より小さい、リトル・ガバメントがいいということは明らかなんです。そういう点から大蔵大臣としては、この調査会に、財政規模の点から大いに期待しておられるのじゃないかと思うのですが、これはいかがにお考えになりますか、御意見を伺いたい。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今の予算を見まして、私どもは、これは社会生活が複雑になっていくに従って、国の行政も当然複雑になっていきますから、人員は必要になって参りますので、毎年四万、五万という公務員の増加の仕方、現実に増加しておるわけでありますが、こういう形でずっと行くということを考えますと、先行きこの人件費の過重というものが、相当国家予算の弾力性をなくする大きい原因になると私ども考えますので、やはりこれは無制限にふえるべきものじゃなくて、必要な行政はどんどん増加するかわりに、そう効果のないものは、仕事において廃止するというようなこともやって、これは適当な調節をすべきものだと考えますので、やはりそういう面からの検討も、私はこの行政委員会に期待したいと思っております。
  34. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今までの関係を総括しまして、答申に対しては政府がこれを尊重しなければならないということが明らかに規定されておる。これは当然なことでございますが、どうもたびたび問題になりますように、選挙制度調査会の例を見ても、政府がせっかくの権威を無視してかかるという傾向がなくもなかったと思うので、これは一にかかって政府心がまえの問題になってくるわけでございますが、川島長官の熱意から見て間違いなかろうと思うが、しかし、これは二年の間のことでもございますので、この点については、私は確たる政府の決意を、今の内閣はもちろん、今後できょうとする内閣に対しても、これは法律でございますから当然でございましょうが、単なる形式的尊重であってはならぬと思いますが、この点についていかがにお考えになるか、御所信を承りたい。
  35. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 今度の臨時行政調査会等については、答申政府が尊重するというだけでなしに、政府を通じてこれを国会に報告するという特に文句を入れてございます。これは、内閣がかわりましても答申を尊重させる一つ方法として、そういう字句をはさんだわけであります。なお、私といたしましては、自由民主党に行政改革委員会を作ってもらいまして、答申のときに内閣がかわっておりましても、自由民主党としては責任を持って国会に報告するような行動で処するように、そういう措置もとっておるわけでございまして、できました案は、ぜひこれを実現するように、あらゆる方法をもちまして努力いたしたいと、かように考えております。
  36. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 そこで、私一つ気になることがあるのですが、今長官が触れられた、国会に報告するように内閣総理大臣に申し出ることができるという規定になっているのです。非常にこれは私は、何といいますか、弱い規定であると思う。この調査会調査して決定したことを、内閣総理大臣国会に報告しなければならぬと、こういうのならばいいが、内閣総理大臣に申し出ることができる、国会に報告してくれ、こういうことに法律はなっておるわけですが、非常に弱いと思いますが、いかがにお考えになりますか。
  37. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 文句はどうでありましょうとも、政治的に政府はやはり国会に報告する責任を負っておるわけでありますから、答申が出ますれば、当然これは政府の政治責任として、報告することになろうと、こう考えております。
  38. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ともかく、この結果を成功させますためには、調査会はもちろん、政府——これはまあ公務員も含めて国全体、国民全体——これはもちろん国会が非常に代表として役割が重いわけでございますが、この三つが一体になって、真剣にほんとうにやるのだという熱意と誠意を持たなければ、私はできないと思うので、いずれ、国政調査権に基づきまして、国会内にもこれに対応する常任委員会みたいなものが必要になって参ろうと思います。総合的にこの結果を診断し、そしてこれを法律化して実効をあげる方法検討する必要が、国会自体にできてくると思いますが、これはまあわれわれ国会の問題でございますが、今言われた、この法律の文言はどうなっておろうと、これは政府は権限とし、義務としてやるのだというお考えは、非常に私はごりっぱであるし、そうあらなければならぬと思いまして、この問題についてはこれでとどめますが、ひとつ、川島長官だけでなくて、今申しましたように、政府あげて、まずその意気込みを強く維持し、これを続けていただくことをお願いして、こり問題はこの程度にしておきたいと思います。
  39. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。川島長官にこの際伺っておきたいと思うのですが、歴代の行管長官がずいぶんやられたわけですが、しかし、人にもよるのですが、行管長官でまとまったことをやられた長官というのは、ほとんど終戦後の行管長官でなかったという私は感じを持っております。私もこの前総括質問のときにちょっと伺ったのですが、今度これが発足して、川島さんの所管下でやられたということは、非常に意義があるし、国民の期待というものは非常に大きいと思うのですよ。それで、大いにひとつやっていただきたいことを特に要望申し上げますが、同時に私は、今適切な質問がありましたから、一言聞いておきたいのですけれども、ともかく役所があって、それに公社、公団というような半官半民のようなものをずいぶん作ってしまって、中心的な責任官庁というものがぼけてきてしまう。これを地方——都道府県がまた最近まねしだして、そういう半官半民みたいなものを作っていきつつありますが、こういう傾向というものは、あるところでチェックしなければ、私は非常に大きな問題になる、かような感じを持っているのが、これが一点。  それから御所見を承りたい点は、公務員の給与をよくするとか、それから職場環境をよくするということは、当然お互い努力しなければならぬのですが、同時に、私はこの際、ちょっと失礼になるかもしれぬけれども、申し上げておきたい点は、私ども国会議員で、朝九時過ぎには国会に出るのですが、九時半ごろお役所に電話をかけても、とのお役所でも——全部とは言いませんが、課長級の人で九時半ごろ電話に出て下さる方は、僕がかけた範囲では少ないですね。これは、予算編成の際に、大蔵省の担当調査官の人とかで、夜おそくまで仕事をされて、そうして朝出勤がおそくなるというようなことは、これは私はもうやむを得ないことだと思いますが、春夏秋冬を通じて、九時半ごろになっても、各官庁の職場の責任者である課長級がおいでになっていないというようなことは、これは民間の会社だったらつぶれてしまうと思うのです。こういう点は、やっぱり綱紀を締めるところは締めていただかなければならぬと思います。と同時に、私は各官庁を回って見て、建物は近代式のと旧式のとあって条件が違う。しかし、官庁によると、非常に整備して、きれいにしてあって、われわれが行っても、感じがいい、雰囲気のいい官庁があると思うと、中には、とにかく管理にどのくらい努力しているのか、ネズミが巣を作りはせんかと思うほどに感じるところもあります。同時に、公務員の仕事は、非常にこれは、ある課は多くてむずかしい、それからあるところはしろうとが見てもあまりにこれは仕事が多くないのじゃないかというような、アンバラがある。こういう点は、今度の調査会ができた機会に、十分科学的に合理的に調査されて善処していただきたいという感じを持っておりますので、今加賀山委員が質問されましたから、関連して長官の御所見を伺っておきたい。
  40. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 公社、公団、事業団のあり方については、世間にもいろいろの批判が出てきております。この調査会調査の当然の対象になるわけでございます。  それから、人事管理の面につきましては、先ほどもお話し申し上げましたが、先般私どもが監察した結果、非常に人事管理の悪い、矢嶋さんがおっしゃるように、きわめて出勤時間が乱れておってふつつかなところが幾つかありました。そういうところには、自省するように勧告を発することにいたしておりますが、そういうこと並びに人員配置のアンバランスなどは、当然今度の調査会で取り上げられるでしょうし、また取り上げてもらうつもりでおります。
  41. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に、文部大臣にお伺い申し上げたいのでありますが、この委員会で、経済成長の問題については、これはもう各委員から非常にひんぱんに取り上げられて、論争が行なわれたわけであります。しかし、経済が成長してきたことは疑いないことで、これはまた非常に容易でなかったことと思います。われわれ国民は、大いに自分たちの資質について自信と誇りを持っていいことだと思うわけでございますが、非常に心配なことは、それに反して、国民の精神面、精神生活の面では一向成長がない——成長がないというよりは、むしろ私は低下しているんじゃないか。明治、大正、昭和と顧みてみまして、そういう面がありはしないか。われわれの同僚議員である大谷委員からも、この点については文部大臣に質疑を申し上げたわけでございますが、この世相は私は非常にみんなが憂えなければならない状態にあると思うのでございますが、文部大臣はいかにこれを御理解になっているか、まず承っておきたいと思います。
  42. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  終戦前とあととの教育制度の違いはいろいろあろうと思うのでございますが、今御指摘の、教育法を通じての国民の精神面の充実と申しましょうか、その点がいささか心配だというふうなお話でございますが、私もさように感じております。このことは、私はいろいろと考えねばならない課題であろうかと思います。単に教育プロパーの面以外にも、考えかつ協力せねばならないことだろうと思いますが、教育そのものにつきましてまず申し上げれば、私は何としても、何度も申し上げたことではございますが、アメリカの教育使節団の示唆によって新しい制度ができました、六・三・三といわゆる通称されます制度そのものを、私は必ずしも悪いとは思いませんけれども、一番の失敗は、学校教育面において、特に義務教育の課程におきまして、道徳教育がなおざりにされたということだろうと思います。これは、当時の進駐軍の人人が積極的に悪意を持っておったとも必ずしも言い切れないとは思いますが、少なくとも、彼らの母国のアメリカにおきましては、子供のときからクリスチャンとしての、宗教・情操を通じてのいわば道徳教育が相当徹底しておる。また、その雰囲気の中において、家庭教育も徹底しておると承知いたします。であればこそ、アメリカにおきましては、小中学校等におきまして特別に道徳教育をしない慣習で今日に至っておると聞きますが、その自分たちのアメリカの教育内容、教育制度そのままを算術的に移し植えて能事終われりとしておったのではないか。また、それを、いわばやむを得ないことでございますけれども、無批判に受け入れっぱなしで最近まできていたのではなかろうかと思うのでございます。その原因、経過等を別といたしましても、事実そういうことであった。そのことのために、児童生徒が学校の先生を通じてもののよしあしの判断も組織的には教えられなかったということが、私は一大欠陥であったろうと思うのであります。終戦当時子供であった者たちが、今ティーン・エイジャーとなり、あるいは二十才前後の青少年となっておると思いますが、そういうことのために、本人の意思によらず、また社会的ないろいろな害悪を誘発するようなことがありましょうとも、基本的に、本人みずからにその心がまえが与えられなかったために、いろいろな社会的悲劇を生んでおると私は推察するのであります。そういう見地から申しますと、新しい教育課程が、ともかく曲がりなりにも小中学校ないしは高等学校において道徳倫理を特設し教え込むということにしましたこと、そのことは、私が今申し上げた一つのギャップを埋める意味においては、きわめて有意義であろうと考えております。同時に、家庭におきましても、あるいは一般社会におきましても、そういう教育をやらざるを得ない制度上の欠陥、それを補うための意識的な協力が必要であろう。今後にわたりましては、学校における教員諸君ほんとうに情熱をこめた、使命感に立った徹底した教育を期待する次第でございます。
  43. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今じゅんじゅんと文部大臣お話を伺いまして、私はそのとおりだろうと思いますが、申すまでもなく、いわゆる物質文明と申しますか、経済成長のいい面ばかりを強調して、こればかりにとらわれて、精神面がおくれますと、これは私はかえって国民を堕落に導くのであろう。したがって、私は、この精神面の取り上げ方が、先ほど——これは言葉じりをつかまえるわけじゃありませんが、文部大臣はいささか心配であると言われましたが、私などから見ると、いささかどころじゃなくて、これは非常な政治をやる者として関心事でなければならぬと思うわけでございますが、これは何と申しますか、今の池田内閣は実力者内閣、こう言われておるのですが、どうもこう言ってはたいへん失礼に当たりますが、実力者といわれる方々は比較的この面にはかえって弱いのじゃないか。適格者でないとは言えないかかもしれませんが、弱いのじゃないか。そこで私は、文部大臣がこれはもう職責上もこの面を代表されて、担当されて、そして文部大臣に非常な大きな期待をかけておるわけでございますが、私は何といってもやはり青少年に目標がなくなったということが最大の原因ではなかろうか。まあ根源は非常に深いし、また原因とも思われるものは非常に外岐にわたっておりましょうが、何よりも青少年に目標がなくなったことが非常に大きなあれになっておるように思いますが、この点についていかにお考えになりますか。
  44. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問に対しましては、私もお答えすることが心さびしいくらいでございまして、恐縮でございますが、先日どなたかの御質問に対しまして、私は私なりの乏しい私見を申し上げた覚えがございます。それは、一体人間というものは何のために生まれたのだろうか、これを哲学的に宗教的にいろいろとむずかしく解き、かつ言っておる先哲がたくさんあられることを私も知っておりますが、受け売りもできません。私なりに考えますことは、動物と違うのは、自分以外の人間のために、人類のために、一人でも多くのためになって一生を終わるということが終局の一つの少なくとも心がまえであってしかるべきであるという気持がするわけですが、ほんの一斑を指摘するにすぎないことを万々承知いたしますけれども、さような一つの人生観というようなものが、子供のときから、学校教育を通じ、あるいは家庭を通じまして、理屈抜きに浸み通っておるものがないならば、青少年の将来に対する希望というものは私は期待できないと根本的には思うのであります。昔は大臣宰相を目指すという希望があったとよく言われますが、それは一つ自分以外の人に対する奉仕の手段にしかすぎないのであって、目的そのものではないと私は思うのであります。その点につきましても、学校教育の大事さを思いますと同時に、先刻も申し上げたような意味合において、日本における宗教家が、宗教・情操を通じての青少年に対する将来の希望、理念、目標というものを与えてほしいものだ。学校教育と相ともに、それが協力が充実し、初めて本質的に青少年の希望の源泉がつちかわれるものと思うのであります。それ以上まとまったことを申し上げ得ませんので、まことに恐縮ですけれども、おざなりでおそれ入りますが、お許しをいただきたいと思います。
  45. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今の大臣の、やはり宗教、信仰がないか、あるいは不足しているということに持ってこられたことは、私は非常にこれは卓見でおろうと思うのでございます。私どもいわゆる低開発国として、どちらかというと、われわれは先進国だというあれをしておりますが、たとえば南米とか、東南アジアへ行きますと、なるほど経済的に低開発国かもしれないが、東南アジアは小乗仏教ながらやはり仏陀の精神を一つつかんで、これに、何といいますか、非常に献身する姿が見られますし、南米諸国はこぞってこれはカソリックで、こういうものがやはり支柱になっている。そこにいくと、日本はどうもそういう点でうらさびしい、こういうことがやはり何というか、足りない、一番足りない点じゃなかろうかと思うわけでございますが、そういうことで文部大臣は宗教家なんかと懇談会を持たれたようなことはございますか。
  46. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私自身自分みずからの信仰はございません。ただ教育の場を与えられまして、責任の場を与えられまして、先ほど来申し上げたようなことを見聞きしながら、以上御披露したような気持を持ったことを率直に申し上げたことにとどまるのであります。
  47. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 私がお伺いしたのは、やはり精神生活の中心として、これをあずかる文部大臣とされて、宗教が非常に足りないということであれば、宗教家に立ち上がってもらわなければならない、そういうことで既存の宗教家なり、そういう方に立ち上がってもらわなければならぬと思うのでございますが、そういうことについて懇談をされたり、お話をされたことがあるかどうかということを伺ったので、大臣が何かを信仰しておられるかどうかを伺ったわけではないのですが、その点を一点、もしまだならば、これはぜひお願いしなければならぬと思うわけでございます。まあ新興宗教が非常に盛んになって、これも一つのけっこうなことでございましょうが、新興宗教がやはりこんなに盛んになって参るという根源は、やはり国民としては何かを求めている、信仰を求めているということの表われでなかろうか。そこで旧来の宗教が国民の生活の中に、もう何といいますか、非常に影が薄くなってきている。したがって、新しい宗教、これは何であっても国民はこれを追い求めている、かように私は解釈をいたすのでございますが、もう一度大臣から、その問題について懇談をされたか、あるいは今後そういうことも考えてみようと考えられるかどうか、お伺いいたします。
  48. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。考えてみようとは思っております。今まで一年ばかりの間、偶然の機会にたまたまそういうことを宗教関係者と談じたことでございますが、文部大臣という立場で文教の府をあずかるという意味合いにおいて、今御質問のような系統的な考え方で懇談をしたことはございません。今後必要であろうと思っております。
  49. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 私はこの問題について非常に大きな責任を持つのは、やはり政治家が、政治と教育は二本の柱として、二つの柱としてこの問題に大きな責任を持つものであると思いますが、政治の問題になって参りますと、これは特に国会というものは非常に大事な役割を持つことになってきているわけでございますが、その国会の中で、国会の正常化という問題ですらまだ実はもやもやしておるような状態で、これはもう政治家がほんとうに強く反省を私はまずしなければなるまい点であろうと思います。しかし、これはさておきまして、教育の問題でございますが、教育については、今の宗教の問題以外にやはり中心をなすものは学校の教育であろうと思います。もちろん宗教あるいは家庭あるいは学校の関係でない社会教育なり、いろいろな面がございましょうが、やはり学校教育というものは非常に大事な面を持つので、この点で教科課程を今度直されたことは非常に適切であったと思いますが、今度のこの予算の中で、一体そういった経費につきまして、文部省ではまだまだ私は考えておられたと思うのでございますが、今度の予算で文部大臣は満足されておるか、十分と考えておられますか、どうですか。
  50. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。むろん山ほどあるなすべき課題を前にしまして、毛頭満足はいたしておりません。ただ現実の力の不足を感じると同時に、また、国家財政そのものも緩急軽重それぞれ総合的に判断されて配分され、運営される筋合いでございますので、一挙にはできないけれども一つの目標を定めて、徐徐にではあっても着実に前進する態勢を作り上げて、その線に沿って努力を積み重ねていくべきものと心得ております。
  51. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今の文部大臣のお答えで、力の足りないものを感じさせたのはどなたかというと、どうも大蔵大臣じゃないかと思うのですが、大蔵大臣、いかがでございますか、文部関係の、あるいは教育関係予算については力一ぱい、精一ぱい見たのだ、こういうお考えでございますが、いかがでございますか。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 精一ぱいということは言えないと思いますが、昨年と今年度にかけて予算編成の大きい柱として文教、科学の振興、刷新というようなものは予算編成の柱に昨年からなっておる問題でございますので、他の諸政策との振り合いから見ましたら、相当文教関係予算の強化を私どもはしておるというふうに考えております。
  53. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 先ほど申し上げましたように、今の世相は、たとえば自動車交通の面から事故が非常にふえている。この事故が非常にふえているということだけでも忌まわしいことでございますが、私はそれはそれとして、ひき逃げというようなことが行なわれる。これに至っては、私はいかに国民の責任あるいは順法あるいはこれは人道といったことに対するむとんちゃくがひどいかという適例のように考えられるのでございまして、単に事故死ということ以上に、このひき逃げという事態に対しては強く、これは何というか、ふんまんを覚えるわけでございます。しかし、まあこういうことは、大体見ておりますと、戦後の教育を受けた人たち、二十才代までの人たちがその大体の中心のようでございます。したがいまして、やはり教育ということは非常に大事な責任を感じなければならぬと思うわけでございますが、それについて、今回高校生徒の急増、これは前からわかり切ったことでございますが、そこを見ますと、高校生徒急増対策本部というものが麗々しく書いてあって、私は今さらこれにあわてて対策本部でもないと思うのでございますが、施設その他についての応答は前にもございましたが、私はこの急増する高校生に対して、これはあとにもございますが、たとえば大学の理工系をふやす場合、あるいは今回のこの教科課程の変更の問題、これについて質、それから人員ともにこれを教える人たちの態勢は大丈夫なのかどうか、その点を文部大臣に伺いたい。
  54. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一番の当面しますお話しの中での悩みは高校生の急増の対策でございます。財政面につきましては、一再ならず質問に応じまして数字的にもお答え申し上げておりますので、一応省略させていただきますが、御指摘のように、建物はできた、中身もどうやらできたのだが先生がはたして十分であるかという点の御懸念のようなお話でございますが、高等学校について申し上げれば、普通高校につきましては大体心配は要らないと見ております。ただ数学や理科の一般教育課程の先生、これは幾分窮屈でございますが、しかし、普通高校に関する限りは、何とかなるというめどがついております。一番の問題は、特に重点を置いてやっていこうとしております約四十四万人の、十年後の、今から申せば九年後の中級技術者といいますか、技能者といいますか、高等学校卒業程度の技能者を期待するとしますれば、それに対しまする工業高校の先生を供給することが容易じゃないと思います。推定しますと、高校関係で公、私立合わせまして三万人くらいの先生が必要だと考えますが、その中でも工業高校の先生につきましては何とも具体的なめどがつきかねる状態でございますので、昨年、前通常国会におきまして御決定をいただきました高校教職員の定数法、これに基づいて各都道府県には自治省と御相談申して財政措置は普通高校ともどもいたしておりますから、財政措置は十分であると申し上げられると思います。ただ、具体的な足りるかどうかが悩みでございますが、これまた、以前から御指摘のように、推定できる、予測できる事柄でございましたので、九つの大学に臨時工業教員養成所を設けまして、本格的な養成は困難ではございますが、応急臨時の次善の策として法律制度も作っていただきましたので、その御決定に基づきまして、昨年から養成を開始いたしておりますが、それによって出てきます工業教員及び中学校の先生で高等学校の工業高校の先生の免状を持っている人、もしくは持ち得る人、さらには小学校の先生にもそういう人がおります。そういう人々にいわば現職教育いたしまして、その不足を補う努力もいたしたい。さらに民間企業内におりまして、本人の考えによりましてむしろ教職員を希望する人も絶無ではございません。そういう人々に対しましても免状の取得条件を便宜一部緩和いたしまして、供給源をそこにも求めておるわけでございまして、大体急増期間中、普通高校及び今申し上げた工業高校が一番むずかしゅうございますが、合せまして何とかできそうだ、こういう見当で歩いておるところであります。
  55. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 工業高校のみならず、私がお伺い申し上げたのは、ついでと言っちゃあれでございますけれども、大学の理工系を今後ふやしていかなければならない。また非常にふやす計画で進んでおるということがございますし、それから、これは中学でございますが、教科課程が変えられまして、今度の教科課目は、私が拝見いたしましたところによると、非常に適切に配分されておるように思われますが、要は人員並びに質、これがそろいませんと、せっかくいい教科課程を作られても、これを教師諸君がよく理解し、これを納得して、そうしてほんとうによく教えてくれなければ意味のないことになると思うので、その点についてもお答えいただきたいと思います。
  56. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 中学の教科課程の変更、改善、特に理科教育を重視しようという線で歩き始めるわけでございますが、この方面の先生もさっき申し上げましたように、困難な職種でございますが、先ほども申し上げましたように、小学校の先生で理科の先生等に中学の先生にかわっていただく資格のある方もたくさんおられるようであります。それで、新しく大学を卒業する人々をもって中学の先生は大体高等学校よりもめどは具体的につき得ると考えておるのであります。さらに中学、高等学校がそうだとしますと、高校急増の分のピークが大学に移っていくことが当然考えられるわけでございますが、一面、所得倍増なり、あるいは技術革新の国家的な要請にこたえるべく、科学技術者養成という角度から、大学教育に、特に理工系に重点を置きながら数年来やっておりますことは、すでに御案内のとおりでございますが、これもなかなか教員組織を整備する点で難色がありますために、推定十年後の十七万人の必要を満たすに足りない。そこで三十七年度、今まで入学定員一万五、六千人を目ざして昨年来発足をいたしましたが、これではなかなか容易でございませんので、容易でないということは、大学における教員組織の充足が具体的なめどがつきませんためということが一番大きな原因でございましたけれども、それも幾らか見当がつけられそうでございますので、要すれば入学定員を二万人まで持っていきたい、こういう意図を私どもは持っております。このことは大蔵当局とも相談して確立した線ではむろんございませんけれども、しかし、当面できるだけたくさん養成する必要はあるということでは一致いたしまして、三十七年度では私どもの側から言う二万人増員計画を予定よりも繰り上げて実施するということで、国立、公立、私立を合わせまして約六千名近い者を養成できるようにというめどのもとに三十七年度予算では予定しておるわけであります。三十八年度、その後に続きまして各年度におきましても、今申し上げるような繰り上げ的に考慮をしまして、可能な限り定員をふやす努力をしていきたい。それにいたしましても、今の高校のピークが大学に移る時期になりまして、おそらく推定しますると七、八万人大学の入学定員がふえるのでなければ、今までの高校卒業生の大学に行く進学率と申しましょうか、それを確保することは困難だ、数字的には一応そういうふうに考えられるのであります。このことはほとんど不可能に近いということではございますが、先ほど来申し上げておりますようなやり方の積み重ねによって、まだ数年後ではありますのを、幸いにあらゆる努力をして迎え入れる体制を作る考えでおるわけでございます。それにしましても、特に大蔵大臣が金は幾らでも出して下さるとしましても、教員組織そのものが、七、八万人の入学定員を大学においてふやす、特に理工系においてその相当の数をふやすということになってきますると、容易ならざる、不可能に近い感じを抱くのであります。ただ努力あるのみということ以外に今としては申し上げかねるのをはなはだ恐縮に思っております。
  57. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今高校入学者、進学率もふえたせいもありましょうが、児童そのものがふえて高校へなかなか入れない。一体、中学から高校の間でどうしても入れないで、いわゆるこの辺で浪人をしなければならぬという事態が現われているようですが、これは全国で一体どれくらいの数字になりますか。また高校から大学、これもまあ特定の大学でございましょうが、これもたいへんなことで、私立学校等の話を聞きますと、まあこれはほんとうかどうか知りませんが、たくさんのお金でも出さなけりゃなかなか入学が困難になってきている、こういう話も聞くわけであります。六三三四といいましても、これは実際には非常にそういうただいまの浪人期間というのが入りますと、教育期間が延びているわけです。それらの数字がもしおわかりでございましたら、政府委員でもよろしゅうございます。
  58. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。高等学校に入れない、いわゆる中学浪人と言われる人々がどのくらいいるかというお話かと思いますが、三十六年度の実績におきまして九十二万人の入学者でございます。その中で三十六年に中学を卒業した者が八十七万人と推定されるわけでありまして、五万人ばかりがいわば前年度から待機しておる者、もしくは一応就職をいたしまして、そしてさらに全日制の高等学校に入りたいということで受験した者、五万人ばかりが前年度からの繰り越し的な数でございますから、それが一応物語っておると思います。全国的な統計によりますると、大体入学希望者の九六、七%はどこかの高等学校に入学している。残りの四%かそこら辺がその年に入れないでおるという状態を示しておるのであります。したがいまして、よく高校入学がたいへんだからということが言われますけれども、全国的に見て、しかもどこかに入り込んだ、こういうことを是なりとすれば、世間で騒がれるほどのことはない。ほとんど全員に近い者が高等学校に入っておる。もっとも全日制、定時制も含めてのことであります。そこで急増期間中が一番心配なわけでございますが、これは毎々お答え申し上げておりますように、当面中学卒業者に対しまして六〇%の入学率を堅持する、一%ないし一・五%の進学率が高まるであろうということもその次々の年度には考慮をいたしまして、その数を想定して、それを収容するに必要な学校施設設備をやるに必要なる財政的裏づけは一応いたしておりますということを従来申し上げておりますが、そういうことによりまして、都道府県の努力に待たねばならぬ要素が多分にございますけれども、確実にそういう目標が実現でき得るとしまするならば、今までの入学率は保持していける、こういうふうに考えている次第でございます。
  59. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 高等学校課程は、言葉をかえて言えば、義務教育期間の延長と言うか、準義務教育期間と言ってもいいくらいで、そこに進学を希望する者がすでにそこで足踏みをしなきゃならぬという事態は、これは絶対に私は避けなけりゃならぬ。国の施策としては、あるいは地方公共団体に対して国がよほどのことをしまして、そういうことのないようにしなけりゃならぬと思います。それから私は大学へ入る場合の非常ないろんなケースを聞いておるわけでございますが、先ほど文部大臣が目標を青年に与えなきゃいかぬ、希望を与えなきゃいかぬと言ったが、一番これに反するものは、この進学しようとせっかくの希望を持ちながら相当の力があるが入れない。まあ場合によってはお金のある人は入っていく人もあるが、入れない。そこで非常な失意を起こさせるということはいけないので、これは大学の選定とか、特定の大学に集まるとか、いろいろな弊害はございましょう。そういう問題も何とかあれして、そうしてそこのところにそういったこぶができないように、これをひとつ文部大臣としては、大学制度の問題については、まだ御就任後あまり触れられていないと思うのでございますが、ぜひともお考えいただきたいと思うのでございます。  次に、私はもう一つ、青年に希望を持たせる意味で、社会に出た青年、これに対してはやはり社会教育の面が担当すると思うのでございますが、これは何といっても私は健全なレクリエーションを与え、教養の場所を与えるということであろうと思います。地方に行きますと、公民館あるいは図書館等かなり設備的に充実して参ったのでありますが、単に体育だけでなくて、何といいますか、非常にこういうことを熱心にやっている協会などに対しては、公共団体あるいは国が補助をされて、そしてこれを活用して青少年に希望と夢を持たせる。これはやはり健全なレクリエーションにあると思うのでございますが、社会教育関係のこういった補助について、今後大臣は大いに見ていこう、こういうお考えでございますか、この点について伺います。
  60. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お説のとおり、社会教育の重要さを感ずるのでございますが、率直に申し上げまして、文部省における社会教育に対する努力は不十分だと自覚しております。予算そのものも前年度より一千万円ふやした三十七年度予算案を御審議願っておりますが、それ自体の絶対数もきわめて僅少でございまして、申し上げるのもちょっと恐縮なくらいでございます。これにつきましては、文部省としましても、事務当局ともども大いに反省し、前向きの態勢を整備すべく寄り寄り話し合っているところでありますが、社会教育の課題として何をとらえるか、その課題そのものに密着いたしまして、現状認識の上に立って、反省の上に立って、将来できることならば、段階的にならざるを得ないとしましても、一応の見通しを実現する年次計画的な一つの青写真と申しましょうか、そういうものを持ちまして前進していく、そういう考え方と努力が足りないことを自覚いたしております。あげて今後の努力に待たなければならぬことを遺憾としますが、文部省はあげて努力をしたいと考えます。
  61. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 その問題について私は昨年ニューヨークで、そういう勤労青少年のレクリエーションの場を視察する機会を得たわけでございますが、あの膨大なビルの並んでいる中で青少年がどういうふうにレクリェーションを実現しているか。各区に非常にまんべんなくと言っていいほど、プールあるいは屋外、屋内体育場があり、そういったところで勤労青少年は休みの日、あるいは商店が休みとなれば出かけて行って、楽しみながらお互いにまた切磋琢磨をいたしている。非常に明るい気持でレクリエーションをしながら社会生活を楽しんでいる。こういうことを見て非常にうらやましかった。もっともこれは金持ちの国でございますけれども、私はそういう方向に、国としては、何も文部省だけでやれということでなく、文部大臣だけにやれと言うわけではないが、公共団体あるいはそういったことを手がけてやっている健全な協会もあるわけですから、そういうものを活用されて、そして国もこれに対して十分めんどうを見る。そういう方向で、勤労青少年の社会教育なんと言うと大へんかたくなりますが、そういう健全な楽しみの場を作ってやる。こういうようなことをお考えになるべきだと思います。これをもう一つ
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。ただいま御指摘の具体的な課題ともども、民間団体の育成ということを初めとして、民間団体、ともども懸命の努力をしたいと思います。
  63. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に、私は教育委員会のことについて文部大臣に最近の実情を伺いたいと思うのでございます。実はこの地方教育行政の組織及び運営に関する法律につきましては、わが参議院といたしましては非常に苦い経験を持っておるわけでございまして、この法律ができ上がる過程において非常な不幸な事態に遭遇したことは、まだ記憶に新しいところでございますが、当時非常にこういった——その中心は、教育委員会が従来選挙制であった、公選をされておったのが、任命制になるということが一番骨子であったわけですが、当時の反対の大きな原因、理由というものは、こうすると非常に教育がゆがめられる、教育の民主化に反する、こういうことであったと思うのでありますが、その後教育委員会が任命制になって以来、もうすでに数年を経過しておりますが、その後はたして教育委員会は公選当時とどんな違いがあって、どんな運営をされて、そうしてあの改正はよかったと考えておられるか、またやっぱり悪かったと考えておられるか、そういう御認識について文部大臣のお考えを伺いたい。
  64. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 結論から先に申し上げれば、よかったと考えております。むろん、全国万に上るたくさんの教育委員会でございますから、一々具体的にしさいに検討すれば、長短おのずから出てくるとは思いますけれども、一般的に申しまして、任命制になってよくなりつつあるということだけは言えようかと思います。民主的ということが、選挙そのものであるとも思われないわけでございます。少なくとも直接公選されました地方の首長が推薦をし、当該議会の承認を得て任命するという手はずでございますから、その手はずに非民主性は私はないと考えます。問題はその運用にあると思いますが、運用面におきましても、特にこれといった非難すべき一般的な要素はないように見受けております。
  65. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 重ねて、このよくない点は認められないと言われましたが、あれを改正する当時としては、こうして改正することによって、かえって適当な、適切な教育委員が得られ、そうして地方教育、地方教育行政はこれがもちろん中心で、今は前と違いまして文部省の役割よりも重要なのはこの地方の教育委員会であると言っても過言ではないと思うわけでありますが、この人選、人を得るということや、あるいは運営についてまずい点、こういう点はまだ足りないという点があればその点、こういう点が非常によくなったということがあればこの点、具体的に大臣から毀誉褒貶を承りたい。
  66. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御質問にぴったりお答えできるかどうか疑問でございますが、大体選挙によりますやり方から任命制になりました特色は、平均年令が高くなりました。それ自身いいことだとは言い切れないとむろん思いますけれども、選挙制度で発足しました当時は、きわめて若い人が、言いかえれば、教育の面には人生経験を相当積んだ人が私は適当だと思うのですけれども、そういう前提が成り立ちます限りにおいては、平均年令が上がってきたというととは私は一応よくなりつつあることの一つの現われであるとは言えると思います。さらに、そのせいでもございましょうが、一般的に学歴が高くなっておりまして、教養の高い人がだんだん多く出るようになってきているということは言えるようでございます。一面また、これまたいい傾向だと言うべきだと思いますが、政党所属者が若干減って参りました。圧倒的多数はむろん政党的に中立な人でございますけれども、政党に明確に所属しておる人というものは数が減りつつあります。減ってきております。そのことも教育の本来の中立性を堅持すべき立場からは、私は歓迎すべき現象じゃなかろうかと思います。ただ、末端の教育行政の担当者である教育委員会あるいは教育長でございますから、先生も勉強してもらわなければいかぬが、教育委員会も勉強してもらいたい。勉強するというのは、何も日教組対策を申し上げるのじゃない。教育はいかにあるべきか、何が正しいかということについての明確な認識を持ちつつ、自信を持って住民に教育行政を通じて完全に奉仕することを念頭に置いてやってもらいたい、もっと積極的に努力してもらいたいということは、希望したいと思います。一般的な現われた結果だけを申しますと、今申し上げたような変化、特色が現われているのであります。
  67. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 特にその中で政党関係者が少なくなったということは、私は教育の中立性から見て非常にいいことだと思います。  その問題はその程度にしまして、これは矢嶋委員から提示された問題でございますが、オリンピックの戸田コースの問題について、もう一度文部大臣大蔵大臣に私はぜひとも御所見をただしたいと思います。これはいろいろのいきさつもございましょうが、私どももオリンピック準備委員としてあそこの場所をしさいに視察検討いたしました。しかし、われわれの結論は、あげて、これはあのままではいけない、やはりあの入り口であり、またゴールであるあの民家をどけてもらわないと、ただボートをこぐ場所だけであっては、国際競技場としては特によくない。その上に、これはオリンピックだけではなくて、隅田川が今のような状態になりますと、今後学生のボートレース、あるいはそういったことはあげて戸田に持っていかれるだろう。つまり、あそこは水上の学生のメッカになるわけで、これは東京から行く人がおもでございます。したがって、これを埼玉県、埼玉県といって、埼玉県だけに負わせることは私はいけない。また、オリンピックだけを考えるのもあまり短見過ぎるので、たまたまオリンピックのために国際競技場として恥ずかしくないものを作るのが主であるけれども、しかし、今後長年にわたってあそこを、幾万の学生があそこで水上、ことにボートがこげるということは非常に大きなことなんでございますから、先ほどの文部大臣の学生に夢を持たせるということからいっても、私はあのまま放置できない問題で、これは文部大臣も組織委員会もさような見解に立っておるというように承知しておりますが、もう一度文部大臣から御所見を伺いたい。
  68. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加賀山君の持ち時間は、先刻終了いたしました。文部大臣
  69. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。ボートコースは戸田にきめ、進行中でございます。いろいろ論議がないではございませんけれども、これは変更すべきではないと信じます。そこで、その意味において、文部省として担当しておりますのは、先日も申し上げましたが、戸田コースの七十メーターを九十メーターに拡幅するということ、護岸を作り、のりをつけるということ、そのことを担当しまして、予算もすでにつけてもらって、年度がわり早々から着手する予定であるわけでありまして、必ず完成をし得ると存じております。  問題は、今御指摘のように周辺の整備の問題でございますが、埼玉県側で一応担当してやるということになっておりますけれども、建設省としても関連を持ってきましょうし、あるいは自治省としても財政裏づけ等の関係で関連を持って参りましょうが、その辺の取捨につきましてはもっと検討すべき課題が残っておるとは思いますが、今御指摘のように、何としても、これは日本の面目にかけてもきちんとしたものを、一応国際的に恥ずかしからざるものに仕上げるという責任をこれは負わねばならぬ、当然なさねばならぬ課題だと思います。そうするについてはどういうところにむずかしさがあり、どんなふうに解決すべきかは今後に残された問題でありますが、結論は私はそうしなければ国際オリンピックはできない。できないような羽目に持っていくべきではない。そういう気持で関係者一同努力すべきものと考えておる次第であります。
  70. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 委員長、今の問題でもう一度大蔵大臣に……。  今の文部大臣お話は私はまことにごもっともだと思うので、事柄はきわめて簡単でございます。で、この六億かかる中で国が二億を見てくれれば、あとの四億は埼玉県がきれいに予算を課してやると、こういっているわけでございますから、これはいろいろのいきさつもございましょうし、大蔵省としてはいろいろな関係も出てきて、それはなかなか大蔵大臣としてはひもをゆるめにくいお気持もよくわかりますが、今文部大臣からお話がありましたような事情、それから私が申し上げたような事情で、これは何としても二億は国に見てもらうのがいい。これがなければ、埼玉県としては民家の土地収用というか、これを移転させることもなかなかむずかしいという事情もあるようでございます。これは大蔵大臣からこの際色よい御返事を承りたいと思うのでございます。
  71. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 実はもう色悪い返事をしてしまっているわけでございまして、私は金は出しません。したがって、それをふらふらしないでその方針に基づいて国際的に恥ずかしくないものをやろうじゃないかということで、今関係者もそういう気持でいろいろ相談しておりますので、そうきたない競技場にはしないでやれる方法ができると思いますので、これはしばらくおまかせ願いたいと思います。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。オリンピックの問題でありませんで、加賀山委員の文部大臣に対する質問について三点関連をして伺います。  一つは、生活指導の問題でありますが、教科課程の対象とした一学級の人員というものは四十人なり四十五人なりというものであったはずです。それが五十人、五十五人、六十人というものを詰め込んで、生活指導を中心に道徳教育もあわせてやれといったってできません。この学級定員の問題を文部省は全然反省しておらないのかどうか。  第二点は、理工科の振興策について加賀山委員から質問ありましたけれども、理科の設備基準というものは、あるいは職業科の設備基準というものは、文部省は定めてありますが、この設備基準に達しておる学校というものは数少ない、財源措置というものが全然行なわれておらないからであります。この点はどう反省されておるか。  第三点は、教育委員会法のときには、教育長というのは有資格者だ。勤務評定というふうな大事なものをさせるのに今の教育長は無資格者だ。教職員というものは厳格なる検定を通って、適格検査というものを通って教職につける、これを評定するのは無資格者です。ここに矛盾を感じないか。  以上、三点を伺います。
  73. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 学級の定数は少ないほどいいと思います。少ないほどいいと申しましても、五名や六名というわけではもちろんございませんが、四十名かそこらに持っていくべきものと私は思います。ただ現実の問題といたしますと、中学校でもまあピークはどうやら終わる年次にきましたけれども、それが高等学校に移って参ります場合、理想的に一挙にやるについて、金さえあればできないことはないわけですけれども、そとにはおのずから限度があろうかと思います。そこでやむを得ず、昨年法律で定めていただきました一割すし詰めこれまたやむなしと、好ましいところではむろんございませんけれども、納税者たる国民の立場も当然考えつつ、ともに先生たちと一緒になってこの急場と申しますか、やむを得ざる困難な時期を乗り越えて、そして行く行くは四十名なりそこらに持っていく努力が積み重ねられなければならぬと当然思いますけれども、当面はやむを得ないと、かんべんしてもらいたいという気持がなければならない。また教職員側も、そのことを十分理解して、無理ではあろうけれども努力していただくという以外に方法はないと思いますので、やむを得ず従来申し上げておるような、現にやっておるような方向をたどっておるような次第でございます。  それから、何でございましたか。
  74. 加瀬完

    ○加瀬完君 理科の設備基準が行なわれておるかどうか。
  75. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 基準は行なわれておりません。完全にはむろん行なわれておりません。これも努力する問題として残っておりますが、しかし、三年の計画をもってぜひ基準まで持っていきたいという誠意だけは持ち合わしておるつもりでございます。その誠意を現実化する努力をしてお見せしないことにはおしかりを受けることも万々承知しておりますから努力します。  もう一つは何でしたか。
  76. 加瀬完

    ○加瀬完君 無資格者を教育長にして反省がないか。
  77. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) その点は概念論としてはいろいろございましょう。ございましょうけれども、しかし、教育委員として、あるいは教育長として任命され、選定された以上は、勉強して足らんところを補って努力する、選ばれた者の、任命された者の当然の責任だと思います。形の上の資格はかりにないといたしましても、その使命感と申すか、努力によって補う責任がある、そういうことに期待する次第でございます。
  78. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加賀山君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  79. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員の変更について御報告をいたします。  本日、小柳勇君が辞任せられ、その補欠として北村暢君が選任せられました。   —————————————
  80. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、占部秀男君。
  81. 占部秀男

    占部秀男君 私は地方政治上の二、三の問題点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず区長選任にかかわる違憲判決の問題に関連をして、安井自治大臣にお伺いをしたいと思います。御存じのように、去る二月二十六日、東京地裁で、渋谷区議会で行なわれました区長選任問題にからむ贈収賄罪の問題に関連をして、特別区の区長公選を廃止して、間接選挙制をとっておる現行の地方自治法は、憲法に違反して無効であると、かような判決がお呈して——全員が無罪になったということはまた別の問題でありますけれども、とにかくも地方自治法の規定がまっこうから違憲ときめつけられたのは、私はおそらくこれが初めてであったと思うのであります。この問題は、わが国の首都であり、しかも人口の十分の一を占める都民の大きな問題というだけでなくて、地方自治のあり方の問題についてこれは大きな、何というか、問題点を投げかけておると思うのであります。安井自治大臣は、この違憲判決をどういうふうにお考えになっておりますか、所見を承りたいと思います。
  82. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 区長の選任につきまして、区議会がこれを選任するということは違憲であるという判決が下級裁判所で出たことは、私も承知いたしております。これは御承知のとおり、昭和二十七年にこの法律改正か行なわれました際、相当憲法上にも議論され、検討もされたわけであります。その当時大部分の、多数の人がこれは違憲でない、こういう見解をとっておるわけでありまして、政府といたしましても、現在のところ、それは違憲問題になる性質のものではないという確信があります。これはせっかく上級裁判所に何といいますか、非常上告といいますか、最高裁の判決を待つということにしておるようでありまするから、その結果を見なければ確定的なことは言えませんが、今のところ違憲じゃないという確信をわれわれは持っております。
  83. 占部秀男

    占部秀男君 安井大臣は、今のところ違憲ではないという確信を持っておられるというのでありますが、この違憲判決の及ぼす影響というものは、相当深いものがあると思うのであります。というのは、御存じのように、区長公選の問題・特に区長が区議会で選任されるということに対する反対の問題は、二十七年の自治法の改正以来今日まで続けられておる、東京都民にとっては非常に大きな問題点であって、このためには各区議会も年ごとに非常に大きな問題をそれぞれ論議されておる、かような状態になっておる。しかも今回の、東京地裁の判決とはいいながら、かような違憲判決が下ったということは、相当区民及び区議会については動揺を与えておることは事実でありまして、このためにいろいろな形の運動、いろいろな形の混乱が起きつつあるというふうに思っております。自治省としては、この判決があったことについて、都及び区に対して何らかの行政指導のような処置をとったことがあるかないか、また、もしもそうした処置をとったとしたならば、どんなことをしたか、その点をひとつお伺いをいたします。
  84. 安井謙

    国務大臣安井謙君) この問題は、自治省としましても十分関心を持っておる次第でございまして、これは別個の見地から今いろいろ検討もいたしておりますが、とりあえず現在の段階におきましての措置としては、これは自治省と、都とも打ち合わせまして、この現行制度のもとにおいては従来どおりこの選任制を施行するようにという通牒が東京都からも出ておるようでございます。
  85. 占部秀男

    占部秀男君 現行どおり選任制を厳守するというような通牒を自治省は東京都とも打ち合わして、東京都から出されておる。こういうようなお話でございますが、この問題の将来の発展を考えますと、それだけで自治省のいわゆる行政指導がいいのであるか悪いのであるか、私はここのところに一つの大きな問題点があると思うのであります。というのは、先ほど申しましたように、各区議会を中心に区民の間の区長公選運動というものが、これはもう日を追うて非常に熾烈になっておりますし、特にこれは自民党のいわゆる推薦したところの東京都の現在の知事である東さんが知事選挙に際しては区長公選の問題を選挙の公約に掲げておるような事実もございます。こういうような事実の中で、今区長公選の問題は単なるこの言葉だけの情勢ではなくて、区の行政面にも相当大きな影響を与えておることは自治大臣も御存じのとおりであると思うのであります。つい最近では、この問題に関連をして、渋谷区の区議会が区長公選制が復活するまでは区長を選任しない、かような問題が起こりまして、いわゆるボイコット戦術というふうな形で六カ月ももみにもんで、その間渋谷の区政が空白状態を作ったことは御存じのとおりであります。また、杉並区でも同じような理由のもとに、区民、区議会の間で相当この問題は混乱をいたしまして、二カ月間も区長のいすが空席となって、しかも区政の上に大きなしこりを残したことも御存じのとおりであります。かような事実上の問題点があちらこちらに起こっておりますおりから、この判決を機会に、かような都民の公選運動についての勢いが強くなると同時に、かような問題点は相当多くなると見なければなりませんし、したがって、区政の渋滞、都政の困難が今後も相当考えられてくると思うのであります。こうした困難を防ぐにはどうしたらいいかといえば、これは単に政府が現在違憲でないと確信しておる、かような一片の考え方でこれを言い切るのではなくて、都民の要望をいれて、この際、区長選任制の問題について正式に再検討をしていくべきである。同時にこれは、できるならばやはりもとの区長公選制に踏み切るのが、いわゆるもとに戻して踏み切るのが、この事態を収拾する一番正しい道ではないか、特に都民の要望にこたえ得る道ではないか、かように私は考えるのであります。特にこの区長を公選にするということが憲法違反になるというならとにかく、私はそういうことにはならないと思う。そういうようなことから考えても、私は、この際、区長公選に踏み切るべきであると考えるのでありますけれども、そうした点についての自治大臣の御意見を伺いたいと思います。
  86. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 区長公選が違憲になるということは毛頭なかろうと思います。この問題は、非常に、占部さんも御承知のとおりに、相当長い間いろいろ議論もされてきておる問題でございますし、われわれも単に解釈一方で、このあれは違憲じゃないというだけをたよりにやっておるわけじゃないのでございまして、たとえば今御指摘の東知事が選挙のときに公約になったと言われますが、これは正式の公約であるとは聞いておりませんが、しかし、そういった意向を漏らされたということも聞いております。そういった意向の那辺にあるかも、よく確かめております。確かめておりますが、東知事は、自分は建前としてそうあるべきものだというふうに一般論として考えておるのであって、従来いろいろないきさつがあって一度改正された法律を、そのままもとへ返すのがいいというふうには自分考えてない、こういうことも公式の席で明確に言ってもおるようでございます。しかし、この問題は、今言われますように、ただ違憲であるとかないとかでほっぽらかしておく問題じゃございません。昨年の秋から私どもこれは非常に重要な問題だと思いまして、地方制度調査会でもできるだけ急いでひとつ答申を出していただきたいということをお願いをしております。これはそう長くならぬ期間で答申もあるのじゃなかろうか。  ただ、ついでと言ってはあれですが申し上げれば、私どもただ公選さえすればいいという性質のものじゃないので、今までも、かつての公選によってもそれ相当の弊害といいますか、という点もあったものであります。私どもはもっと打ち割って言えば、東京都の持っておる行政事務というものをもっと区へ移管して、名実ともに区がそういったような力を持つ、同時に、選挙制度あり方についてもそういうものと合わせて検討されるべきものじゃないかというふうに考えておるわけで、私自身としても公選を頭から決して否定しておるものでも何でもないのであります。そういうものを慎重に考え、かつてわざわざ大騒ぎをして法律を改正したものでもありますし、また、今の選任の方法がなるほど買収とかいろいろな弊害が多いとはいわれますが、これも区民の代表である区議会が選ぶことでありまするから、決して天下り的な任命といった形式のものじゃない。方法がやりきれないから、すぐ変えればよろしいんだという方法にまずさがあるということと、それをすぐ取り上げてもとへ返すかどうかという問題には、なかなかこれは複雑な問題もあろうと思いまして、慎重にしかも前向きの姿勢でこれは検討いたしたいと思っておる次第であります。
  87. 占部秀男

    占部秀男君 慎重に前向きの姿勢で検討をされるという自治大臣のお答えについては、私も了解をいたしますけれども、特にこの問題を早急にやはり踏み切って、いずれにかしてもらいたいと思うことは、この問題が長引けば長引くほど、もちろん最高裁の判決というものがあれば、それはまあ終局でありますが、その間いろいろな問題点が起こると思うのであります。たとえば、具体的に言いますと、今ある区では、当面区長選挙を控えておって、区民の選挙によって一応区長というものの候補者をきめてそうして当選した者を知事が承諾して区議会で選任する、かような方法をとろうという運動が非常に大きくなっておることは、御存じのとおりであります。もしかりに、こういうような問題がこういうような形で区議会なりあるいは関係々々で区の関係でやろうと、こういうようなことになりましたときには、自治省は一体どういう態度をとりますか。これも認めますか。あるいはまた自治法二百四十六条の二にありますところの適切な事務処理の確保の措置をするような考えも出てきますか。こういう点について具体的に起こっておる問題でありますから、御答弁を願いたいと思います。
  88. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 今の、たいへん恐縮ですが、途中のどういう場合だったんでございましょうか、ちょっと。
  89. 占部秀男

    占部秀男君 はい、わかりました。ではもう一ぺん言います。区民が区長を選挙をしてそうして当選した。その当選した者を知事が承諾をして区議会へかける、こういう方式の運動が起こっておるわけであります。この運動は、法律上の問題点はあるとしても、事実問題としては、決してばかにならない勢いで今区議会方面もそういうようなことをやろうじゃないかとこういうような勢いもある。こういう事実が私は出てくるのじゃないかと思うのでありますが、そういうことがかりにあったとしたならば、これはまあゆゆしき問題になるのであって、かりにこういうことがあったならば、自治省としてはこれを認めるようにするのか、それともまた適切な措置のあれによってこれを押えようとするか、そういう点についてお伺いをいたしたい。
  90. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 現在の法律制度では、今の区長を区民が直接選挙するということは認められておらぬわけでありまするから、そういう事実行為が起こったとしても、そのこと自身有効とか無効とかいう問題は起こらぬと思います。まあそういうような事情が、どういう方式で行なわれるか、それが行なわれるところまでは、ちょっとこれは正式の議題に現在のところはなるまいという感じがいたしております。
  91. 占部秀男

    占部秀男君 私は特にこういろことをお伺いするのは、そういうような運動自体が今大臣考えられているような何というか現行法ではどうこうであると、そういうような法律的な解釈だけでは問題の解決ができないような深刻な問題になっておるから、心配をして言っておるわけであります。特に大臣からのそういう御答弁でありますから、私はそれでは根本的に問題をお伺いしたいと思うのでありますが、一体こういうような問題が起こる原因は、特別区が憲法上規定された地方公共団体であるかどうかと、こういう点に私は非常に問題があると思うのであります。大臣は先ほど現在の区長選任制というものは憲法違反ではないという確信がある、かように仰せられましたけれども、その確信があるというところの理由は一体どこにあるのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  92. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 私は憲法の専門家でございませんので、非常な理論的なことは、あるいは申し上げにくいかもしれませんが、御納得いくようには御説明できないかもしれませんが、あの法律を改正いたします当時、それぞれの憲法学者あるいは法律学者の御意見を多数徴したわけでありまして、大多数の人は、これは違憲にあらずという見解を持っておられたことは、事実でございます。なお、今の現実の解釈にいたしますと、憲法は、地方公共団体の長及び議員はこれを直接選挙しなきゃならんと、こうなっておりますが、地方公共団体がいかなるものであるかをきめるのは、これは自治省にまかせられておるというふうに考えられます。特別区という形のものでございますし、これをどういうふうに解釈するかは、自治法がこれをきめればいいんだというふうには、私ども考えておるわけであります。
  93. 占部秀男

    占部秀男君 大臣の今の御答弁では、私は納得できがたいのでありますが、この際憲法論に問題を発展させることを控えたいと思いますが、いずれにしても、憲法上規定された地方団体であるかどうかというこの点については、自治法によって解釈すればいいんだ、こういう考え方は私は逆ではないかと思うのであります。なぜかというと、この自治法が施行され、その前に憲法が作られたときに、すでに事実上都制が改正されて区長は公選になっておった、こういう事実がございます。しかも、この事実の上に立って、憲法は、特別区というものの問題をいわゆる地方公共団体そのものについての首長公選、こういう点をはっきりさせておるのでありまして、したがって、これは憲法の規定するところの地方公共団体に特別区が当たるかどうかと、こういうことをやっぱり憲法上判定するのが正しい行き方ではないか、かように考えるのでありますが、特に今回の違憲判決につきましては、判決の理由の中にこういうことが書いてあります。合憲論の大半は都と区との事務調整という行政方面に論議が集中し、憲法解釈の立場からの合憲主張は少なかった。憲法は時の施政の必要からほしいままに解釈されることは許されないことであって、もともと新憲法が地方自治に関する条文を設けたのは、中央集権の害をなくして、地方に関することは地方住民の自治にまかせるという精神を貫くためであって、九十三条の地方公共団体の解釈も、この精神を離れては意味はないと、かように今度の地裁の判決は言っておるわけであります。私はこの判決に対する自治大臣の見解については、自治省としての見解はあると思うのでありますが、やはり憲法上の規定は憲法の建前からこれを判断する、こういうことをこの東京地裁の何と申しますか、判決があった新事態に対して、やはり自治省大臣としてはそうする方向に向かうのが私は正しいのではないか。旧の、もとの地裁判決のあった以前の状態を何らか固執するような形は、現在の都政あるいは区政の動きの上からいって、ふさわしくないのではないかとかように考えるのでありますが、もう一度この点をひとつお願いいたします。
  94. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 区長の公選が行なわれましたのは、昭和二十二年の四月でございます。憲法が施行されましたのは、五月からであります。事実上の解釈としましても、この地方自治法がむしろ地方自治のあり方というような建前から、公選を先に実施をしているというような経緯もありまして、憲法上の問題につきましては、必ずしもこの今の違憲判決というものにこだわらなければならぬとは、私ども考えておりません。もちろん、これは非常上告ということがやられておりますから、早晩最高裁の判決も出ると思います。出ればむろん私どももそれに従わざるを得ないと思いますが、現在のところ、しかしそういう問題を別にいたしまして、今御指摘のように非常に大事な問題でございますが、私どもはこれは考え方としては今申し上げましたように、ただ公選さえすればいいのだ、今の事務配分あるいは財政状況の切り盛りの仕方というものは、どうもこういう膨大な東京都というものをかかえておる全体のやり方を見て、必ずしも適当なものとは思われませんし、東京都全体が将来いろいろと考えなければならぬ問題もありますので、そういう問題を総合的に考えて、ひとつこの結論を出したい、こういうふうに思っておるわけでありまして、単に憲法違反でないから、法律上あれだからといって何ら、手をこまねいているというものじゃむろんないわけであります。地方制度調査会へも、その答申はなるべく急いでいただくように、しかし同時に、そういった事務配分といった問題も合わせて考えてもらいたい、こういう依頼をしているわけであります。現行法のもとではとにかくも、しかしこれは区長が空席になれば現行のとおりですぐ埋めて、いつまでも空席にしておくことは好ましくない。これは将来どうあるということは別にしまして、現行法のもとでは、なるべく早く現在の選任方式できめていただきたい、こういうふうに思っております。
  95. 占部秀男

    占部秀男君 私の質問したのは、聞き取り方が自治大臣が誤まったような言い方をしておられるようですが、そうではないのです。つまり、憲法の規定に従って地方自治法ができたわけですね、憲法から地方自治法ができた。その地方自治法ができる以前に二十二年、仰せのとおり区長公選はもう都政が改正されてできていた。したがって、憲法の規定した地方自治の条項から発する地方自治法の中にすでに、公選制というものを含まれたところの考え方がとられておった。これは憲法の規定したところのいわゆる普通地方公共団体の首長は公選による、こういうことを認めたことである。そのこと自体はつまり区というものの、特別区というものの性格を憲法上の地方公共団体であると、こういうふうに考えたことになるのではないかと思う。そのことを私はお尋ねをしたわけなんです。  まあしかし、この問題は憲法上の問題ですから、一応ここで切っておきますが、いずれにしても今の問題は具体的な問題になってくると思うのでありますが、一体自治法の中で、これはまあ東京都だけは特別区制というものを認めておるわけであります。他の五大都市にもそれぞれ区はありますが、これは御存じのように行政区、特別区を認めたというところに、私はこの特別区がいわゆる憲法上の地方公共団体であるかどうか、こういうことについての私は問題点が含まれておると思うのであります。一体特別区を東京都だけに認めた、こういうことの理由はどこにありますか、お伺いをいたしたいと思います。
  96. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは御承知のように、従来東京府を東京市とあったわけでございますが、あれが戦争中東京都というものになりまして、そこで市というものは消えてしまって、そこで二十三区という——当時は三十五区でございますか、一木の一つの特別の行政区域というようなものをきめたんで、そういった名前ができておるんだと思います。
  97. 占部秀男

    占部秀男君 私は単にそれだけではないんではないかと思うのであります。それは府と市とが一緒になったからというだけではなくて、東京都の区の、いわゆる区の行政というか、区の行政内容というか、区の実体というか、そうしたものが、人口の上でも御存じのように一つの大きな市に匹敵するような区がほとんどであります。世田谷のごときは、六十万か七十万といわれておる、小さな区でも二十二、三万の区がある、これは地方へゆけば大都市であります。しかも仕事の上からいっても、これは自治法の規定にも明らかになっておりますように、国と都との仕事以外の仕事についてこの問題をやるというように、いわゆる市がちょうど地方自治法で規定された事務、この事務のうち県の扱う事務以外の事務について行なうというのと、ちょうど同格のような形でこの事務、事業の処理の問題についても規定されておる。この規定によってもわかるように、これはもう一つの自治団体、一つ地方公共団体として認め得るような内容仕事の上では持っておる。人口の上でもそうだし、仕事の上でもそうだ。こういうような実態に基づいて、いわゆる住民自治、地方自治、この建前からこの特別区が認められたと私は考えるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  98. 安井謙

    国務大臣安井謙君) まあ、人口等も一応の参考にはなりますか、私は自治体の資格をきめるのは人口ではないと思います、これは三千でも五千でも、あるいは五万でも自治体は自治体としてなっておるものもあるし、こういったような数十万というたようなものをかかえておるが、きわめて制限をされたまあいわば自治体、仕事の上から申しましても、これは占部さん御承知のとおりに、福祉事務から税の事務、保健あるいは清掃、交通はむろん、水道、上下水、そういったものはすべて都が直轄しております。きわめて業務内容的には制限をされた区でございます。同時に、人の配属につきましても、これは御承知のように都の職員ということに特に区の職員はなっております。そういうようなことからゆきまして、これはなるほどできるだけ独立の権限を与えて発展させたほうがいいという議論は、確かに私は根拠もあるし、これについてはわれわれは十分考えなければならぬと思いますが、同時に、普通の自治体一般と同じに直ちにこれを扱っていいかどうかということについては、まだまだ相当問題が多いというふうに考えておるわけでございます。
  99. 占部秀男

    占部秀男君 それではお伺いいたしますが、戦争前にも区は区議会というものを持っておりました、そしてそれを区長は、御存じのように市長あるいは都のいわゆる都長官という場合もありましたけれども、いわゆる行政的に任命されていたわけであります。それが戦後やはり区長公選をとったというのは、特別区の実体内容というものが、やはり地方公共団体としての内容を備えておる、こういうところに、私は地方自治法で公選制をとった一つの具体的な理由ではなかったかと思うのでありますが、あの当時の理由としてはいかがでございますか。
  100. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 当時、占領政策の下にあったことでありますし、占領政策でいろいろそういった問題を扱っておったようなこともあります。したがって、特別区あるいは区を、そういうようなことで、ひとつ区長は選任したらいいじゃないかと、自治行政運営上の政策的見地から、そういうものは生まれてきた、こういうふうに思っております。
  101. 占部秀男

    占部秀男君 それでは、この問題に関しての話題をちょっと変えまして、一体、本年中に区長選挙が行なわれるところはどのくらいございますか、お伺いをいたします。
  102. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ただいま杉並区が空席になっておるわけであります。これは早晩選任されるのじゃないかという期待を持っておりますが、あと四カ所ばかり、ことし中に空席になるようになっております。
  103. 占部秀男

    占部秀男君 本年中に区長選挙がある、これが四カ所あって、杉並が選任されたとしても五カ所、こういうことになるわけでありますが、かりに、最高裁で違憲の判決がそのまま下ったとしたならば、それらの区長の身分は一体どういうふうなことになりますか。なおもう一つ、この地裁の判決前に、やはり同じような形で任命され、選任されておった区長の身分はどういうことになりますか。
  104. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 実は私ども、たいへんうかつと言われるかもしれませんが、違憲判決が最高裁に出るというような感じがいたしませんので、その、いざというときの具体的な処理についてまだ十分考えておりませんか、これは何か、今すらっと考えますと、従来の任期のものはそのまま行くのじゃないかというふうにも考えられております。
  105. 占部秀男

    占部秀男君 私もそういうふうなことになるのではないかと、こう考えたのですが、そこで私は問題があると思うのです。というのは、今度この区長の選任に伴っていわゆる贈収賄が行なわれた。その贈収賄の行なわれたものが違憲である、区長選任そのものが違憲であるということから、公職選挙法にはかからないということで、そのこと自体については無罪になっているわけです。もしこの四つの新しい選挙といいますか、選任といいますか、この場合に違憲がおりて、無罪になるということになれば、これはどんどんやってもいいじゃないか、こういうことで、私は前回のような、いわゆる渋谷のような例が相当行なわれるのじゃないかということを心配するわけであります。こういうような問題が、あちらこちらで起こる心配が私はないとは言い切れないと思うのであります。そういうような意味合いからも、何らかやはりこの問題については、先に先手を打っておくということが私は必要なんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。そこで、そうした面について、自治省として、そういうような問題が起こらないような形の何らかの行政指導というか、あるいはまた都に対する技術的な勧告というか、何らかをやっぱりすべきじゃないかというふうに考えるのですが、その点はいかがでございますか。
  106. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ごもっともなようにも思いますが、私はこういった違憲判決というものが、ほかの裁判所でもどんどん出ていくというふうにも実は考えておらぬわけでありますが、それはそれといたしまして、ああいった区長選挙をめぐって、いろいろ忌まわしいこともあるということはなかなか遺憾なことでございます。最近はそういった問題について各区もかなり自粛をされておるようでございまして、最近行なった区長の選任等では、そういったうわさも聞きませんし、相当自粛されておるようでございまして、今後とも、そういうものについては十分留意するように、行政指導も十分やっていきたいというように思っております。
  107. 占部秀男

    占部秀男君 区長選任の違憲問題については、またあとで問題は発展してくるわけですから、そこでとめておきたいと思います。ただ、私の希望するところは、いろいろこの問題は事実問題として現に運動が行なわれ、現にいろいろトラブルが出ておる、こういうところから、必ずしもゆっくりしていられるような問題ではないというように考えるわけです。そこで、できるならば、この問題についてやはり都民の要望を入れた区長公選のほうに踏み切るように、前向きでひとつ御検討を願いたいと思います。  次の問題は、安井大臣と厚生大臣と、それから外務大臣にひとつお伺いしておきます。私は最近問題となっておるドミニカ移民の問題についてお伺いをしたいのであります。この問題は、なぜドミニカの移民がかような傷心な形で帰国をしたかということについてはいろいろ問題点があると思います。外務省のほうの調査あるいは移民計画がずさんであったとか、いろいろな問題点かだいぶ伝えられておるわけでありますが、それはそれとして本委員会でも、また外務委員会でも相当その点については論議されておると思いますから、私はドミニカ移民帰国者の生活上の問題について、これはもう外務省も厚生省も、そして自治省関係もやはり関係があると思うのでありますが、お伺いをいたしたいと思います。  で、まず外務大臣にお伺いをいしたしますが、一体このドミニカ移民というものは全体でどのくらい行ったか。そうして現在までに何回にわたって何家族、何人ぐらいが帰国をしているのか。また残っている者はどのくらいであって、しかも帰国をしたい、かような希望の者はどのくらいいるのか。こういう点をまずお伺いをいたしたいと思います。また外務大臣でなくても政府委員でもけっこうであります。
  108. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ドミニカの移住者は全体で現在約三百家族おりますわけでございます。このうち百二十家族帰国を予定しているのでございます。で、まあこの事情等については当委員会でもいろいろお話ございましたわけですが、私は実はせんだってダハボンというところから帰って参られた山下さんという方にお会いしましたのですが、非常に成功しておられまして、服装その他も非常に隆とした服装で、自分で飛行機に乗って、娘さんが病気だというので帰ってこられました。この方は実に意気軒昂として自分はどんどん土地を開発していくつもりである。政府もいろいろな事情もあるだろうけれども、行った人にも、帰国された人のめんどうをみるのもいいけれども、いる人に対してもあたたかい気持を持ってもっと援助してくれというようなお話がございました。その方のお話を伺いますると、ドミニカの中で、たとえばネイベとかあるいはハラバコアとか、そういうところに何も義務づけておられるわけじゃないのでございますから、どんどんダハボンあたりはいいところだから来てくれればよかったというようなお話もございまして、なかなか複雑なる事情のように、お話を伺って感じたのでございます。いずれにいたしましても、非常にネイバ、ハラバコア地区の方々は困っておられますので、従来、移民は棄民なり、と言われまして、出してしまったらもうあとは知らぬというようなことで、今非常に成功しておりまするブラジルの移住等においても、マラリヤである一部落が全滅したというようなこともあって、その当時も政府は知らぬ顔しておったわけでございます。これではいかぬというので、国援法を初めて適用いたしまして帰国をされたい方を受け入れることにいたしたのであります。現在十二月、一月分の方々が五十七名来ておりますが、そのうち生活保護適用の方が三十六名、申請中が七名、生活保護の適用の資格のない方が十四名というようなことでございます。その住宅状況は住宅または借家に入られた方が十四名、親戚に同居の方が四十名、社会福祉会館に宿泊された方が三名。それから就職状況でございますが、この五十七名のうち十八名は就職され、三十九名の方はまだ就職がきまらない、こういう状況でございます。結局就職がきまらないというのは、やはりまだほんとうにこちらについてどうという気持がきまらないという関係も多いように承っております。いずれにいたしましても郷里のほうではあたたかくこれを迎えて、そして大いにこの就職、住居等を世話しよう、こう言っている次第でございます。  それから三月の五日に、あるぜんちな丸で最近また帰ってこられました。これは二十一家族、九十九名でございます。この方々についてもいろいろと心配をしているわけでございまするが、これはまだ帰国後日が浅いものでございますから、ほんとうに落ち着いておられないようでございます。そのうち生活保護を適用されましたのは五世帯、申請中が一世帯ということでございます。住宅状況は親戚に同居されている。それから就職状況は、就職済みの方が六家族、就職の予定がほぼきまりかけているのが二家族、かような状況になっております。一応御報告申し上げます。
  109. 占部秀男

    占部秀男君 今外務大臣は、私の質問の以外のことでだいぶ成功されているという、何か暁の明星でも見たようなまれなお話をされているわけですが、ところが私、現に帰られた方々を相当訪問して調べたのですけれども、異口同音に、今のあなたのその答弁とは違って、結局まる裸で帰ってしまって、こちらからいった条件とは全く違っている。こういうようなところで親戚にも顔を合わせることはできない、ほとんど故郷に行っても受け入れられないのじゃないか、こういうような考え方で帰ってきて、相当生活が、全く窮迫して逼塞したような生活状態を送っているのが大部分なのであります。時間がかかりますから私は一々例を申し上げませんが、そういう中で、今大臣のお調べになった一応の生活状態の中でも生活保護を受けている者が非常に多い。こういうことは結局今度の帰国者の生活というものが、帰ってきた人たちというのはいかにみじめな状態に置かれているかということを私は物語っておると思うのであります。しかも、その生活保護を受けておる方々をずっと調べてみますと、ほとんど丸裸であって、おかま一つから買い直さなければならぬ、こういうような実態が相当多いのであります。金もない、家もないという形、これは生活保護だけを受けたのではどうにもならないという状態が私は相当あるのじゃないかと思うのですが、そういう点について何かもっと詳しい調査はまだ行なわれてはおりませんか。
  110. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもお帰りになった方々に対しまして、非常にお気の毒な事情のある方があられることもよく承知をいたしておるつもりでございまして、できるだけひとつ明るい面で前向きにこの支えになるようにしたいと思いまして、大蔵省ともいろいろ御相談申し上げて国民金融公庫からの借り入れであるとかということについてもいろいろ御心配を願っておるわけでございます。また、住宅が問題でございますので、住宅をドミニカ帰国者に限って約百戸、二種の公営住宅を割り当てていただくというような話もつきましたようなわけでございまするが、なお、詳細にわたりまして移住局長からお聞き取り願いたいと思います。
  111. 高木広一

    政府委員(高木広一君) お答え申します。ただいま大臣からお話しになりましたように、われわれといたしましては帰国せられました移住者、引揚者をあたたかく迎えて、そうしてこれらの人が日本において更生し得るように、前向きにいろいろの援助をしたいという考えで各省協議いたしまして、これらの移住者が横浜に上陸せられましたときに、まず労働省関係で帰国移住者の就職についての希望をお伺いいたし、できればその場でできるだけ就職についてきめる。なおそれできまらない場合には、郷里に落ちつかれた上においてその土地の職安で就職についてのお世話をする。これは労働省は非常によくやっていただいておりまして、われわれ外務省関係者としては非常に感謝している次第であります。それから農林省も帰国移住者につきましては外務省と同様に大きな責任を感じておりまして、農業に定着する人に対して農林省としてはできる限りの援助をするということで、国内開拓入植についての融資制度がございますが、これの適用、さらには従来農業拓殖基金というのがございまして、海外に移住するための金融あるいは保証をしておったのでありますが、これを、帰った人に対しても一家族三十万円まで必要な融資に対する保証をする、その他農林省の力の範囲における各種の移住者協力措置を講じるということになっておりまして、個々には農林関係等にすでに御相談になっている向きもございます。また、国民金融公庫の活用につきましても大蔵省とも相談いたしまして、銀行局長から国民金融公庫総裁に、ドミニカ移住者に対しては特別に好意的に取り計らうようにという指令も出ました。これにつきましては関係県及び地方海外協会が移住者を手引きしながら各地の商工会議所あるいは県の商工課、これらのところで御相談にあずかりながら必要な融資について協力する。これは法律上は一応百万円ということになっておりますが、大体炭鉱離職者並みの扱いがされる。そういう点でまあ人為的保証だけで融資されるということになると、三十万円以下というように伺っております。これは実際その具体的な計画の指導、そして確実な計画を作り出すことの御協力は大事なことだろうと思います。  そのほか労働省関係では雇用促進公団、就職がきまった場合に、これに対する職業訓練、あるいは訓練を受けるための手当、あるいはそれらのための手当というようなものが与えられるということになっております。  それからさっき大臣がちょっと申されました住居の件でございますが、さしあたっては、あるいは親戚にあるいは県の住宅にお入れするということもございますが、大体百二十家族くらい帰ってくるということでございますので、われわれのほうといたしましては建設省にお願いいたしまして、三十七年度の第二種公営住宅の中からドミニカからの帰国者のために百軒イヤマークをしていただくということになりまして、建設省からも各地方にそのことが通達されております。すでに神奈川、静岡、福島その他の県からドミニカ移住者のための第二種公営住宅の割当につきまして、現在伺っているところでは二十二件ばかり申し出があるというふうに聞いております。  それから、その他われわれといたしましては、海外から帰った移住者の手を引きながら前向きで更生にできるだけ御協力したいと思っておるのでありますが、帰られて早々でもございますし、気分の転換という点で、なかなかいろろい就職の問題なんかを申し上げましても、それに決断がつかない、あるいは長崎の例でございますが、就職がきまって、最初でございますから給料も大したことはございません、二万一千円の口があったところが、それで自分は満足できないものだから、病気というようなことで東京までおいでになって、またうろうろしておられるというようなケースもございます。帰られた方の気持からすれば、それもやむを得ないことだと思います。われわれといたしましては、できる限り移住者の気分を尊重しながら、更生について御協力したい、こう思っておる次第であります。
  112. 占部秀男

    占部秀男君 今いろいろと外務省としてドミニカ帰国者の生活面についての措置について心配しておる、かように言われるわけでありますが、これは確かに心配していただかなければならぬ問題であります。ところが、その現実問題として今おっしゃったいろいろな点についても、相当現地では外務省の考えているほどうまくいっていない面があるわけです。たとえば住宅の問題でも、今公営住宅の問題が出ましたが、確かに建設省関係から県を通じ、あるいは県に対し、市に対し、いわゆるドミニカ帰国者については優先して公営住宅を貸してやれ、こういうような通牒が流れていることは事実です。流れていることは事実でありますけれども、実際問題としては、それだけの余裕のある公営住宅が都会にないのであります。またドミニカ帰国者の多くというもの、やはり農村地帯から出ておる。そこで、農村地帯に帰られる人が、農村地帯ではほとんど公営住宅なんというものはないのであって、現実に帰国された方々が住宅の中に入っておるというのは、これはきわめて——さっきも統計がありましたが、十二月に帰られた五十何家族のうち、わずか十四戸というのですが、こういうような状態だ。その大部分はこの統計にもあるように、親戚のうちに同居しておって、そうして同居しておるということから、御存じのような、家族関係からいろいろな問題を引き起こしておる。今あなたのお話では、三十七年度には、第二種公営から百戸だけはイヤマークをする、このイヤマークというのは、どういうことになるか具体的にはわかりませんけれども、この程度では、これから帰ってくる方々やなんかの問題として、これは住宅を確保するということにはならぬと思う。これをもう少し何とか具体的に、住宅なら住宅の問題だけは、とにかく緊急に帰る人、帰ってくる家族の数ぐらいは何とか作り上げて、これをやっていかれるぐらいの私は努力が必要じゃないかと思う。この点はいかがなものですか。
  113. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 住宅の点につきましては、仰せのとおりなかなか右から左に思うようにいかないのは事実でございます。そういう点でわれわれも心配しておるのでございますが、建設省が第二種公営住宅百戸だけイヤマークしておりますというのは、そのワクは三十七年度五万戸でございますが、その中からドミニカ移住者のために百戸分だけワクを作ってくれまして、それだけドミニカ分として残してくれということでございます。  親戚に同居しておられることが、いろいろ不自由なことは、われわれ十分わかります。それがためには、就職の場合にも、なるべくその家族を入れるような住宅の便利な所、あるいは住宅のある所へ世話をするということを各県では心配しております。具体的なケースですが、福島県あたりでは、いなかの地帯で公営住宅は確かにむずかしい。そういう意味において、県で計画している公営住宅地帯になるべく就職をお世話するということでやっているという報告もございます。  それからドミニカ移住者は農業移住者でございますが、実際上それは自分の親が農業をやっていたとか、あるいは子供の時代には農村地帯にいたんだということで行っておられる方がかなり多くございまして、帰られた方々も農村に落ちつくよりも、都市の仕事のほうに就職される、あるいはまた希望せられる方のほうが実際上多いように見ております。
  114. 占部秀男

    占部秀男君 今の住宅の問題でありますが、百戸だけはイヤマークしたというんですが、その百戸を作る所は、ドミニカの方が帰国されているそういう地点をはっきりと把握して、そこへ作る。具体的にはそこの県なりあるいは市なりの公営住宅を作らせる計画の中に入れさして、そうしてそれが具体的にいつごろできるというようなところまで、計画的に打ち合わせが済んでおる問題でありますか。どうですか、それはあとあと大きな問題になりますから、お伺いしておきます。
  115. 高木広一

    政府委員(高木広一君) お答え申し上げます。その点は移住者がどこに定着するかということが非常に大きな問題になりまして、移住者が県に自分はここへ定着するんだということを言っていただかなければいけないんです。さっきちょっと申しましたように、長崎で就職のあれが決定したけれども、本人は東京に来て、まだもっと自分に適したところがあればそこへ来たいというような人は、家の問題もまだ手が講じられないというようなことでございまして、われわれのほうとしては、できるだけ今先生がおっしゃったような計画で措置を進めたいのでございますが、移住者自身のお考えもございます。またその他の事情もございますので、計画どおりということがなかなか思うようにいかない実情でございます。
  116. 占部秀男

    占部秀男君 これはそれ以上私は聞きませんが、移住者の定着のその希望からなんということをやったのでは、当面この問題は私は間に合わぬと思うんですよ。この点について、やっぱり移住者が現在いるという所には、ともかくも家を与えるんだ、しかもこれは第二種なんですから、与えるんだというそのくらいな緊急の措置をとってもらわなければ、このドミニカの人たちは救われません。そういう点をひとつ検討していただきたいと思う。  それからまた、生活資金の問題でありますが、国民金融公庫から百万円ばかり融資するとか、いろいろ融資関係のあれはありますけれども、融資をすれば返さなければならない。借りれば返さなければならない。ところが今、現在置かれておる人は生活保護、ほとんどというものは、これはさっきも冒頭にも出ましたように、生活保護を受けておる人ですね、受けておる人は丸はだかであって、これを当面返すというような当てはないんですよ。あなた現地に行っていただければわかるけれども、かま一つない、着物もない、新しく子供の洋服もこしらえなければならぬ、あるいは学校に行く児童についても、児童を表に出すのに着せてやる金もない、こういうことも相当ある。私、現に見て来たのですが、悲惨なものです。そういう中で百万円のかりに融資があって、融資があったとしても、これを返す能力なんというものはなかなか出てくるものじゃない。生活保護を受けていない人はどうかといえば、これは御存じのように、生活保護は申請しなければやってくれないんですから、苦しくとも申請しない人、あるいはまた一時的な理由で兄弟なり親のところにいられるということで申請しない人も相当あるんです。全然生活保護を申請しないからといって、その人の生活が安定しているとは言えない。  こういうような、いろいろなファクトからして、金融だけでは、これは問題の私は解決にはならぬじゃないかというふうに考えているわけなんです。もっとそれよりも、もう一そう突っ込んだ何らかの措置というものは考えてはおられないのですか。
  117. 高木広一

    政府委員(高木広一君) ただいまの国民金融公庫の融資の件でございますが、これは融資でございますから、やはり返せるような計画を作らないと、返せないことがはっきりしているような仕事をやらして、それに融資するということは考え方としては無理であるというふうに思います。そういう点で実際的な計画を、各県各県におきまして商工会議所なりその他の窓口と十分相談しながらやる、その場合に、せっかくこれなればその仕事はできるのだ、お返しできる成算があるのだけれども担保がない。人的保証、そういう場合に人的保証だけで融資になるといいと思うのですが、その人的保証が、なかなかむずかしいという問題も伺っております。  それで、そういうことについても十分われわれとしては、それがほんとうにむずかしい障害になっておりましたならば、それをどういうふうに解決するかということを具体的なケースに基づいて心配したいと思っております。実際上は、今そのお話を持ち込まれたのは、まだ一件だけでございます。四国で一件あっただけでございまして、このケースは、われわれとしては真剣に解決するようにしたいと、こういうふうに思っている次第であります。  それで、融資だけでは足らぬじゃないか、もう一歩何か援助をしたらというただいまのお話でございますが、現在政府といたしましては、ドミニカから帰られた方々に対しましては、特殊な事情で引き揚げられた方として、共産圏その他の地域から引き揚げた方々と同じ待遇を与えるということになって、わずかでございますが、見舞金を出したり、あるいは郷里へ帰るまでの旅費あるいはお小づかいというものも出します。それから県におきましては、それぞれ落ち着かれた県におきまして、これはまちまちでございますが、大体一家族五万円から十万円程度の見舞金ですかを出している次第でございます。これで移住者が、それで安心してゆっくりできるという金としては、とうてい十分でないということもわかっておりますが、われわれといたしましては、できる限りこれらの人が就職するなりあるいは農業に定着するなり、その他自分で立ち上がっていける態勢に早く導いていくということに全力を尽くすのが実際的であろう、こういうふうに思って指導をしているわけであります。  なお、この移住者に対する援助につきましては、われわれといたしましては、ドミニカに残っている移住者も、非常にこの問題を関心を持って見ております。また南米地域における移住者も非常に関心を持っている次第であります。帰られた一部の移住者が、われわれは非常な損をしたのだから、政府から数百万円の損失補償の補償金を取るのだということを言っておられますが、これは実は、現地のドミニカにも、盛んにそういう連絡がございまして、政府は、ドミニカ移住はもう全部引き揚げることになった、補償金もわれわれ運動しているから、君たちも早く帰れというような誘いすらございます。こういうものの及ぼす影響ということも考えながら慎重な措置をとっていかなければなりません。  これらの人々が立ち直るための援助についても、重点を置いてそれにわれわれの努力を集中してやるという方針でおります。
  118. 占部秀男

    占部秀男君 今の御答弁では、生活関係の問題についても相当援助をされておるような、あるいは見舞金その他で出されておるようなことを言われておりますけれども、私の調べたところでは、これは横浜に着いたある人たちをずっと調べたのですが、横浜に着いたとき政府からもらった見舞金は四万円、これはほとんど、いろいろな自分たちの着いてからの必需品を買うためになくなってしまい、そとから二万五千円、ほかにいろいろな形でもらったけれども、汽車賃が、この人は九州の人なので、帰るのに親子四人で一万八百円かかって、しかも横浜に泊ったホテル代が九千円かかった、こういった経費もなくなって足が出てしまう。県や市から金が出ているというけれども、県や市の金は一万円から一万二、三千円の見舞金が出ているだけであって、それ以上の五万円、十万円という金なんか、これは渡っていないのですよ。こういうような実態で、あなたが言われた内容とは相当食い違いがあるわけなんです。  また就職の問題についても、労働省が非常にあっせんをしておられるというふうに言われますけれども、この点についても、いろいろな各地の福祉事務所関係を私調べてきたんですが、実際問題としては、農村関係から出られたり、あるいは漁民のことは、また振りかえができますけれども、そういうことで技術的な問題もなく、ほんとうに臨時的な、何というか日雇い的な形に扱われている人たちが大部分なんです。しかも、それもその職がないという形なんです。これは一体、こういうようなちりぢりばらばらな形で、こういう問題を置いておくことは、私は大きな問題ではないかと思うのです。  そこで外務大臣一つお伺いをしたいのですが、もっとドミニカの帰国者の生活を立て直す問題について、数は炭鉱労働者のように大きな問題ではありませんけれども、移民計画についての問題点も、私は相当あると思うのですよ。そこで、これらの問題については、もっと総合的な計画をやはり外務省、自治省あるいは厚生省等が寄って立ててやる。少なくとも今、補償の問題でも、何らか補償の問題についての運動が悪質的に行なわれておるんじゃないかということを警戒するようなお話がございますけれども、この問題自体は、この問題の性格からして、当面は生活保護でいいとは思いますが、生活保護法による筋の問題でなく、それ以前の私は問題があるのじゃないかと思うのです。つまり移住されて帰国された人たちは、政府にだまされたという感情を相当持っておる。そこで、こういう問題については、もっと総合的な措置を私は考えるべきじゃないか、緊急に立てるべきじゃないかと、こういうふうに思うのでありますが、外務大臣は、どういうふうにお考えになっておりますか。  これで、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 占部君の持ち時間は終了いたしました。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ドミニカ帰国者につきまして、二日間横浜で、あっせん所で、お泊りになる費用は、もちろん政府の予備費その他から出しております。それから汽車賃を自弁というお話がございましたが、私どもは、帰国の汽車賃のみならず、諸雑費につきましては、一応政府の負担となっておるというふうに心得ておるのでございます。  しかしながらいずれにいたしましても、今後の生活につきましては、せっかく志を立てて移住せられ、志半ばにして帰られたのでございまするから、できるだけ政府といたしましても、ごめんどうはみたいというふうに考えておりまして、関係各省庁とも連絡を密にしておる次第でございますが、なお、一人々々につきまして精細な面もあるわけでございますが、できるだけごあっせんを申し上げるように、今後とも努力いたしたいと考えております。
  121. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。外務省が窓口を一本にするという意味から、農業移民もその他の移民も、全部扱っておるというところに無理があるのじゃないですか。たとえば農業移民ならば農林省にまかせるというのなら、技術指導でも適地の選び方でも、もっとスムーズにできるのじゃないか。技術的な、外務省に関係のないことまでも外務省でまとめてやられるから、今のような問題が起こるのじゃないかというふうに一部にいわれておるが、この点どうお考えになりますか。  それから住宅の問題でも、ほんとうにドミニカの帰国者に住宅を与えようと思うならば、これは便宜な措置で、外務省が作って与えるという方法をとらなければ、さっきの移住局長のようなお話であっては、建てる責任者が地方団体でありますから、地方団体に縁もゆかりもない者がポッと行っても、お前の住宅を建てるのだという手段をスムーズにとられるわけもないし、入るほうの人たちも、いろいろ入りにくいという状態も出てくるのじゃないか。どうも外務省がやっておるところに無理がある。  農林省なら農林省が、地方団体との共同責任で移民をさせるということにすれば、もしもドミニカのような問題が起こっても、もっと処理の方法でも円滑にいくと思いますが、この点はどうです。
  122. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実はその点が、今まではっきりしておりませんでした。そんな関係で、こういう問題が起きたのではないかというふうに、私どもとしては、もちろん思っておるわけであります。最近農林省とも非常にうまく連絡できるようになりまして、外務省が責任を持つということになりましたが、これは、池田内閣になりましてからでございまして、それ以前の状態におきましては、非常にその責任の所在が不明確である。そのために、こういう問題などいろいろございまするけれども、その原因は、いずれにあるといたしましても、どうも、どこの省が一体責任を持つか明らかでなかったということがいけなかったのじゃないか、むしろ私は逆に、そう思っておるのでございます。  したがいまして、今後は、移住ということは、受け入れ地の問題が一番重大でございますから、外務省において全責任をもって、この問題に対処したい、かように考えている次第でございます。  あとの問題につきまして、これも実は外務省といたしまして一括してお願いしている——ただいま農林省におかれましては、営農資金を貸し付ける問題、これらも非常に敏速にやっていただいておるのでございまして、むしろこういう態勢だから、まあこの程度に行っているのじゃないかというくらいに私ども一生懸命にやっておるつもりなのでございますが、なお至らぬ点は、できるだけいたします。  なお、家の問題について、地方海外協会という団体がございますが、この団体が移住者のお世話をしておるわけでございますが、これは大体、県に所属しておることが多いわけでございます。県として非常にその間の連絡を密にいたしておりますので、私は、十分とはもちろん申しておりませんけれども、相当に効果をあげておる、かように思っておる次第であります。
  123. 加瀬完

    ○加瀬完君 移住協会などに責任を転嫁するならば、私も、もう少し言いたいことがある。  移住協会というのは、ほとんど外郭団体で、県の担当の課というものが、ほとんど責任を持っておらない。しかも、その移住協会の資金というのは、どこから流れているかというと、大体農林省。外務省からは流れていきません。そういう自治体としての責任ある担当者のいない外郭団体では、これは移住奨励か、あるいは移住宣伝なら役割を果たすかもしれませんけれども、移住全般の事務を移住協会にまかせるということは、相当無理があるのじゃないか、この点は御研究を願っておきます。時間がありませんから、ひとつ責任を持って……。そういう形では、移住の円滑ははかれないということだけを申し上げておきます。
  124. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 占部君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時九分散会