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1962-03-19 第40回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十九日(月曜日)    午前十時十九分開会   —————————————    委員の異動 本日委員青田源太郎君、大和与一君、 片岡文重君及び赤松常子君辞任につ き、その補欠として、苫米地英俊君、 小柳勇君、田畑金光君及び基政七君を 議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            上林 忠次君            小林 英三君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            野本 品吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            木村禧八郎君            小柳  勇君            佐多 忠隆君            高田なほ子君            成瀬 幡治君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            田畑 金光君            基  政七君            市川 房枝君            牛田  寛君            奥 むめお君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    自 治 大 臣 安井  謙君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    経済企画政務次    官       菅  太郎君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省移住局長 高木 広一君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省為替局長 福田 久男君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省管理局長 杉江  清君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省環境衛生    局長      五十嵐義明君    厚生省薬務局長 牛丸 義留君    厚生省社会局長 大山  正君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房予    算課長     檜垣徳太郎君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    通商産業省公益    事業局長    樋詰 誠明君    中小企業庁長官 大堀  弘君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    経済企画庁調整    局参事官    羽柴 忠雄君    大蔵省銀行局特    別金融課長   橋口  收君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  質疑に入る前に御報告を申し上げます。  一昨日の委員会におきまして、国務大臣の当委員会への出席に関し、委員長から厳重なる警告を発しましたが、その後委員長及び理事打合会におきましても、この問題について協議いたしました結果、理事会総意に基づいて、次のような申し入れ政府に対して行なうことに決定いたしました。  これより申し入れの文書を読み上げます。   去る八日池田内閣総理大臣は当委員会において、国務大臣出席方に関し、予算委員会優先趣旨に基き、同閣僚にも責任を以て十分留意させる旨誓約したにもかかわらず、依然として一部の閣僚においてはなお改めることなく、予算審議に重大な支障を来たしている事実は誠に遺憾の極みである。   よつて政府に今後かかる事態を起さざるよう深甚なる反省を要求する。   右当委員会理事会総意に基き申し入れる。   昭和三十七年三月十七日         参議院予算委員長
  3. 大平正芳

    政府委員大平正芳君) 政府といたしましては、御案内のように、去年の夏以来、国会の御審議に御支障がないように、予算案法律案を初め、早期に御提出申し上げることに最善の努力をして参りました。また、御審議にあたりまして、閣僚出席その他につきまして御支障がないようにできるだけの配慮をいたしたのでございますけれども、ただいま委員長から、本委員会総意として御注意を受けなければならないような事態に立ち至りましたことを、まことに申しわけないと思っております。  御案内のように、政府国会に対して責任を持っておりますので、行政の渋滞のないようにも心がけねばならない関係上、一部の閣僚におかれまして行き違いがあったこと等もございますけれども、ただいまの申し入れ趣旨に沿いまして、十分戒心いたしまして、御審議支障のないように今後一そう留意して参る所存でございます。   —————————————
  4. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を行ないます。牛田貴君。
  5. 牛田寛

    牛田寛君 初めに、このたび行なわれました日韓外相会談は事実上決裂の形に終わったようでございますが、日韓会談は、特にわが国の政治上、経済上、あらゆる角度から国民の注視のまとになっておる問題でございます。この際外務大臣から、その経過並びに今後どのようにこれを打開していくか、その基本的な考え方をまず承っておきたいと思います。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 崔韓国外務部長官が、先週日曜日に来日されまして、月曜日から数回会談を開きました。主として請求権問題、この中には船舶の問題、文化財の問題ということも入りますわけでございます。それから在日韓国人法的地位の問題、さらに李ライン、漁業の問題、これらの問題について意見を交換いたしました。意見は交換に終わりました。別に取り立てて報告すべきような内容はございません。  次は、現在駐日代表部で大使ということで来ておりまする表氏とわがほうの杉代表との間に今後の点について打ち合わせて、双方の同意があればまた会談を開くということになっておりますが、時日とかその場所というものはまだきまっておりません。
  7. 牛田寛

    牛田寛君 この点についてもう一点だけお尋ねしておきたいと思いますが、先日、外務大臣お話として報道されました竹島の問題でありますが、竹島の問題が解決の見通しがつくことが一つ会談の打開の条件であるというふうに了解されますが、私ども竹島はあくまでも当然日本の領土であり、竹島がああいう状態になっているということは、日韓一つの大きな障壁、ガンになっている。その点についてどのようにこれを打開しておいでになるか、その点だけもう一点この際承っておきます。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来、日韓会談は、先ほど申し上げた三つの議題についてやると、こういうことになっております。しかしながら、竹島の問題は、これは私も牛田さんと同じ考えを持っておりまして、非常に重要だと考えております。したがって、会談そのものでなくても、要するに国交が正常化されるまでの間にはこの問題が何らかの形で解決するということが望ましいと考えております。これは直接に話し合って、先方日本のものであるということに同意すれば、これは一番けっこうでございますが、そうでない場合には、第三者である非常に公正な国際司法裁判所に提訴して、先方もこれに応訴して、その審決を仰ぐということが適当と考えまして、そのようなことを考えておりますので、そのような点をおりに触れて申しておるわけでございますが、会談内容でいつ幾日言ったということは言わないでくれ、よろしいと、こう言っておりますから、その報道については申し上げられませんが、私の考えというものはさようなものでありまして、これは十分韓国側に通じておると思います。ただそれについての先方の反応というものは、まだはっきりは御報告するような点はございません。
  9. 牛田寛

    牛田寛君 この問題についてはまた委員会等で質問いたします。本日はこの程度にとどめておきます。  次に、ガリオアエロア返済問題に関連いたしまして、その支払い、返還の財源になる産業投資特別会計を中心として伺いたいと思うのでありますが、これまでガリオアエロア返済問題については、いろいろと論議が行なわれて参りました。かなり問題が出てきたのでありまして、まだ正式な審議の段階には入っていないようでありますけれども、かなり問題が煮詰まってきたのではないかと思いますが、しかし、これまでの政府の御説明を伺いますと、どうしてもあいまいもことした、割り切れないものが残っているわけであります。非常に理論的にはうまく御説明になっております。しかし、国民感情として、何かそこにからくりがあるのではないかというような一まつの疑いというものが残っているのが私は現状だと思います。また、これが一般国民感情だと思うわけであります。で、まあ政府説明債務としての根拠というようなこともあるのでありますが、国民納得できるような明瞭な根拠というものも全くございません。それから二重払いという問題についても、非常に議論がめんどうになりまして、国民が腹の底から納得できるような結論までに至っておらないのであります。で、私はこの返済自体が、返済するにせよあるいは返済反対議論がありましょうけれども返済するしないの問題よりもむしろこの根拠があいまいである、何かからくりがあるのじゃないかという印象を与えておるような行き方に対して納得ができないのでございます。アメリカがいかなる意図であるにせよ、また、初めは贈与であると思っておったのが、あとから債務だというような態度に変わったとかりに仮定いたしましても、いずれにいたしましても、終戦当時、日本アメリカ物資によって生き返ったことは間違いないことでありますから、そういう大きな立場で必ずしも返済に反対するという立場を私はとらない、しかし、このまま根拠が不明瞭なままで返済協定を承認することはこれは私は承認できない、こう思うわけであります。そういう立場でひとつ返済のいろいろ問題になっております点の二、三の要点について、今までの議論と重複する点があるかもしれませんけれども、この際、大蔵大臣並びに外務大臣のお考えを明瞭に承っておきたい、こう思うわけであります。その点について、二、三お伺いいたします。  ガリオア見返り資金を受け継いだのが産業投資特別会計ということになっております。その産業投資特別会計が設定されます以前は、昭和二十四年に設定されました見返り資金特別会計であると称しておりますが、その見返り資金特別会計設定の以前の援助物資に関する勘定がどういうふうになっていたかを整理して、まずお答えいただきたいと思います。
  10. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 政府側はだれがお答えになりますか。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 所管外でございますけれども、便宜私からお答えいたします。  これはアメリカ側といたしましては、物資日本によこしたわけでございますが、一九四五年すなわち昭和二十年十二月二十一日に貿易資金用の法案を作りました。貿易資金設置に関する法律というのがございます。それから貿易資金特別会計法という法律がございます。それから貿易特別会計というのが昭和二十四年四月一日にできまして、ここで見返り資金特別会計というものができてきた、こういうことでございます。で、事業費勘定あるいは援助物資勘定というものが、昭和二十四年の四月一日に見返り資金特別会計というものができてそれに受け入れられた、その金額が二千九百十九億円と、こういうことでございます。それ以前のものはどうなっていたかと申しますと、今申し上げたような貿易資金あるいは貿易資金特別会計、そういうものに受け入れられまして、その当時、日本貿易為替の面では御承知のように、複数レートというものをとっておりまして、商品によって一ドルが三百円のものもあるし、七百円のものもあるし、いろいろな商品それ自身によってレートが変わっておったわけでございます。したがいまして、それをこの資金から埋めまして、そうして日本国民に不当な高い品物が入らぬでいいように、いわゆる補給的な、平衡補給金的な役割を果たしておった、こういうことでございます。ですから、この金はやはり日本経済を安定し、日本国民経済を安定する、こういうことのために使われたわけでございます。それ以後は、御承知のように、見返り資金なり、これが産投に繰り入れられて、それが鉄道であるとか、住宅であるとか、あるいは電信電話というものに使われましたし、また、開銀に入りまして開銀のほうからいろいろな日本の大きな産業等への資金というものに使われておりまして、大蔵大臣衆議院における御説明を伺いますと、この金額は四千億円になっておる、こういうことでございます。したがいまして、今度二千八十五億円、金利二分五厘として十五カ年間に返すわけでございますが、さらにこれらの会計から利息が生まれて参り、それから今まで貸し付けておったものの貸付先から回収金納付金という形でまた入って参ります。そういうものの利息だけで払っていける、こういうことでございます。二千九百十九億円というその貿易資金等で使った残りの金ですね、その金がそのまま現在産投に残りまして、これがさらに運営されて利息利子等を生んでいく、こういうことでございます。
  12. 牛田寛

    牛田寛君 見返り資金特別会計設置前の概略の御説明をいただいたわけでありますが、見返り資金特別会計が出発したときは、資産幾らで出発されたのですか。
  13. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 見返り資金を設定いたしましたときには、資産ゼロから出発いたしております。
  14. 牛田寛

    牛田寛君 そういたしますと、それ以前の、見返り資金設定以前がやはり八億数千万ドル資産があった勘定になると承っておるわけでございますが、その八億数千万ドルはどういうふうになった勘定になるのか。
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今、外務大臣が言われましたように、それ以前は司令部管理でございまして、この普通の貿易勘定援助物資勘定の区分もできていなかったということでございますので、日本側にはわからない。ただし、その期間にどれだけの物資日本に来たかというものは、御承知のように、通産省の残された資料で今日まで何年かかかってようやくそれの検討をして数字を出しておりますが、そういうことでございましたので、今後その勘定を明確にするという目的で二十四年に見返り資金勘定ができましたので、これ以後ははっきりしておる、こういうことでございます。
  16. 牛田寛

    牛田寛君 そういたしますと、見返り資金設定以前の勘定は明確にできないというふうに理解するのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 結局そういうことでございます。
  18. 牛田寛

    牛田寛君 先ほど外務大臣から、見返り資金設定以前の積立金はすべて輸入物資補給金に充てた、価格調整の原資に充てて、それが全部国民を潤したのだというお話がございましたけれども、すべてそのような用途に使われたかどうかというはっきりした証拠もないように今のお話では伺うわけでありますが、その点はいかがですか。
  19. 石野信一

    政府委員石野信一君) ただいまのお尋ねでございますが、輸入物資価格差補給に充てられたものと、それから当時、ただいま大蔵大臣からお答えがございましたように、外貨管理司令部のほうにあったわけでございます。したがいまして、輸入物資輸出物資関係経理と、それから外貨経理が、つながっておりません。したがいまして、そこのところが、はっきり幾らその部分が外貨にかわっておるかということは、関連がはっきりいたしませんけれども、そのとき残りました外貨というものは、やはり、その輸入物資援助で受けました関係で、外貨というものが司令部勘定に残っておる、こういうことになっております。
  20. 牛田寛

    牛田寛君 ちょっと今のお答えでは理解しがたいのですが、司令部勘定に残っておるというお話でありますが、もし残っておれば、当然見返り資金特別会計に引き継がれるべきだと思う。それが、見返り資金特別会計はゼロで出発したとなれば、それ以前の外貨は全部あいまいになっておる、こういうことになりやしないか。通産省で概略伺ったところによりますと、GESの計算では、それまでに輸入が、商業ベースで五億ドル、援助が十二億ドル、十七億四千万ドルは輸入輸出が六億五千万ドル、そうすれば、その計算でいけば十一億ドルくらいは残るわけである。それが価格差補給金になったとしても、十七億四千万ドルの輸入に対して、十一億ドルがそれに使われるというような問題が残るわけであります。その点について、どうも不明確だ。どこまで明瞭にできるのか。ここまで明瞭にできるけれども、この点はどうしても不明瞭であるという点があると思う。先ほども外務大臣からお話がありましたように、物資の出入りははっきりしておるけれども、その当時の、複数レートとか、あるいは、通産省で伺いますれば、品物品質等も不明瞭であるというふうな、資料の不足から、とうてい計算が不可能であるということを伺っておりますけれども、その点について、もう少し、国民のだれが聞いても、なるほどこの点はどうしてもわからないけれども、ここまではわかるのだという、納得のいく誠意あるお答えが私どもほしいわけなんです。その点について、もう一度お願いします。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それ以前の勘定は、通産省が管轄しておって、詳しいことは向こうから聞けばおわかりと思います。問題は、見返り資金勘定が設定されて以後の経理はきわめて明瞭であるということと、それ以前に入った品物は、大体通産省検討によって、どのぐらいのものが援助物資として入ったかという検討も一応済みました。そうして、そのときその物資がどういうふうに使われたかということは、今説明しましたように、価格補給金的なものに使われて、直接には結びつかないのですが、その勘定の中で運営された期間外貨というものが二億ドルたまったということは事実であります。その当時の外貨は、そっくり政府が引き継いでおって、外為会計の中にこれが入っております。それで運用は、いろいろのことに運用され、そうしてその間に外貨として蓄積されたものが二億ドルということだけがはっきりしておるのでございまして、そのほかのものは全部司令部管轄下の中にありましたので、日本側には十分わからないと、こういうことになります。
  22. 牛田寛

    牛田寛君 一番疑いを持たれているのは、その間における見返り資金の積み立てた金の使い道になるわけです。当時は輸出入が円とドルとの直接結びつきがないという先ほどのお話がございました。また輸出も、これは民間の手で行なわれておらないで、みな米国の手で行なわれておった。そういたしますと、輸出値段等向こうで勝手にきめたというような形も当然出てくるわけです。そういう、日本人が日本輸出品物値段がきめられない。それはその当時の経済変動の影響もあったと思いますが、結論として日本品物が非常に安く売られた面がある。それが国内には補給金になって出たのじゃないか。となれば、事実上もうすでに一部の積立金見返り資金というものはアメリカに流れ出ておるのじゃないかというようなわれわれは感じを持つのであります。そういうところから、やはり二重払いという根拠が生まれてくると思うのですが、そういう可能性が絶対ないのか、あるいは絶対ないという証拠もないのか、あるいは可能性もあるとお考えになるのか、その点をひとつ承りたい。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 見返り資金勘定以前は、さっき外務大臣が言われましたように、複数レートでございましたので、これは複雑になっておりますが、見返り資金勘定が設定されましてからは、二十四、五年が三百三十円の換算率、それ以後は全部一ドル三百六十円の換算率でやっておりますので、二十四年以後はもう明確になっております。
  24. 牛田寛

    牛田寛君 今私が伺っておりますのは、二十四年以前の問題であります。当然これは通産省の方に伺わなければならないと思うのであります。あるいは通産大臣お答え願わなければならぬところでありますけれども、当然大蔵大臣として毛日本財政責任を持っておいでになるわけでありますし、外務大臣もこの返済協定については責任立場でございますし、当然その問題は明確にしておられることと思ってお伺いしておるわけでありますけれども、今お伺いしておるのは、二十四年以前のことであります。二十四年以前にそういうふうな資金使い道可能性があったかなかったか、どのようにお考えになるかということを伺います。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申し上げたように、貿易資金というものを二十年十二月に作りまして、翌年の一月に貿易資金特別会計というものを作りまして、そうして先方物資を受け入れて、それを国民に売却し、その金が入ってきているわけです。  そこで、その金をどう使ったかと、こういう点については、大蔵大臣お話しのように、司令部管理しておりまして、一々のことは、これは通産省からお答えになると思います。私ども権限外のことでいかがかと思いますから、詳細はそちらから申し上げまするが、まあさもなくば日本外貨が欠乏しておったのでございますから、その外貨をそれによって獲得し、輸入に充てる。ただ、為替が非常に複数レートでまちまちであったものを、日本国民に妥当なる価格でもってその物資が入るような操作に使われておった、こういうことでございます。  ところが、どのくらいのものが来たかということは、これはある受け入れたバウチャーがあるわけですね、それを通産省のほうで司令部が残置して参りました貿易庁に置き、それが日銀に保管されておりましたのですが、それをたんねんに調べまして、そして金額をはじき出した。それを全部返すということでございますと、全部の一々の取引について当たらなければならぬと思いますけれども向こうの言っている四分の一返すと、こういうことにいたしましたので、まあ私ども外交交渉をやる立場からいたしますれば、全部返すなら、まさにこれを精細に一つ一つ当たらなければならない。そういう程度に、四分の三は向こうが言っているのを棒を引いてしまったわけでありますから、これはそれでいいんじゃないかというふうに考えております。また、当時おのずから国際価格というものがあるわけでございますから、これについては、通産省のほう、あるいは大蔵省でもって十分計算をされまして、そうしてこの金額を出していきたい。要するに、全然根拠がないというわけじゃなくて、これだけのものをもらったという数字はあるわけでございます。だから、先方の言うのを認めないで、確かにこちらがそういうものをもらったというものを集めまして、こちらの数字ではじき出した、こういうわけでございます。これは西独等の場合も同じでございまして、西独は十五億三千万ドルというのがガリオアで受けたことになっております。しかし、その当時、西独の場合には、これはイギリスが占領しておる地区もあり、フランスが占領しておる地区もあり、アメリカの占領しておる地区もある。それぞれの地区にアメリカガリオアがいっておる、そういうことでございますから、日本の場合と同様に、その点がわからないという点から見ますれば、やはり同様なものがあったのじゃないかと想像されるのでございます。したがって、西独はその場合三分の二で棒を引いた、こういうことになっておるかと思います。
  26. 牛田寛

    牛田寛君 きょうは、通産大臣の御出席をお願いしておりませんから、具体的に詳細なことはお伺いできませんけれども、今お伺いしたところによりますと、二十四年以前の資金の動き方についてはつかみどころがない、結論としては、そういうふうにうかがわれるわけであります。この点については……。
  27. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の問題に関連して。今のことでちょっとわからぬことを伺いますが、こまかいことはいずれ正式の外務委員会で伺いますけれども、その二十四年以前の場合、アメリカから受けた援助物資を配給所に流して、配給所がそれの金を支払ったわけですね。その金を管理したところはどこでありますか。それは日本政府ですか、それをアメリカに渡したからわからないというのですか、その辺はどうですか。つまり、配給所にアメリカ援助物資を流しますね、その金が上がってくるわけです。その金は政府に入ったのですか、それがアメリカに行ったのですか、政府に入ったならば、わからぬということはないと思うのですが、その辺はどうなっておりますか。
  28. 石野信一

    政府委員石野信一君) お尋ねの輸入援助物資の国内における売り払い代金、これは貿易資金特別会計に入って、日本政府管理でございます。日本輸出品を国内で買うのは、日本政府の特別会計の金でございます。しかし、それが外国に売られます場合のドルの収入、それからコマーシャル・ベースの輸入のためのドルの支出、このドルの関係管理司令部のほうにあったわけでございます。御承知のとおり、当時戦後で、日本の国際関係がまだ敵国関係にあるというようなことで、日本外貨を持つということになりますと、すぐ差し押さえられるというような関係がございまして、その管理が全部司令部だけで行なわれたわけでございます。そういう意味において、外貨管理と、それから国内の物資の円の受け払いとが、全然分離されておりまして、円のほうの勘定政府関係でございまして、その場合、結局、価格差補給金のような関係が今の輸入物資輸出物資の売買を一緒に行なわれておりました関係で、どの分が幾ら価格差補給金に充てられたかということはわかりません。また、外貨日本の円の関係と結びついていないという意味でもわからない点があると、こういうことでございます。
  29. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ……。くどいようですが、外貨日本の国内円との関係の区分がこれで別々になったことはわかりますが、日本円として政府の手にきた金は、その場合は、国内の価格差補給金にしても何でも、政府が自由に繰作したのでしょう。つまり、円として日本に入ってきた金を処理するその権限は日本にあった、その点は全部明白になっておるわけですね。
  30. 石野信一

    政府委員石野信一君) 通産省の所管でございますが、貿易資金特別会計での売買の収支ははっきりしておるわけでございます。ただ、それが、援助物資も一緒にみな売り買いされたわけでございますから、したがって、安いものもあり、高いものもあり、幾ら価格差補給金的役割を果たしたかということになりますと、その点はわからない、こういうことでございます。
  31. 牛田寛

    牛田寛君 ただいまのお話を伺っておりましても、どうも二十四年以前の趣旨は不明瞭であります。これはくどいようでありますが、別の機会に明らかにしたいと思います。  次に、今度の返還の支払いの財源になります産業投資特別会計の問題であります。この開銀の投資の中で、見返り分約二千億円、その中の納付金及び貸付金の回収分、これで返済は十分できる、したがって二重払いではないという政府の論理のように伺っておるわけでありますが、理論としては成り立つかもしれませんが、このように非常に持って回った言い方は、どうも数字からくりでごまかされておるのじゃないかという、国民に印象を与えるわけです。ことさらにこのような一つの言い回し方、理屈のつけ方で、二重払いという非難を避けようという、そういう言い方は、私はどうかと思うのです。むしろこの産投会計の中から返済するということが、ただ開銀資金納付金回収金の中から返すのだから影響がないというような、そういう理論的な言い方でなくて、現実にやはり二千億近い金を抜くわけでありますから、影響がないわけはないと思います。あるいは二重払いというような感じを持つ人があるかもしれませんが、もう少し大きい立場に立って、事実上ただ産投会計の中から返していく形になるわけでありますから、そのような小手先細工を抜いて、そうして返済の計画を明示されたほうが、私は国民政府説明に対して納得できると思うのでありますが、その点について外務大臣あるいは大蔵大臣のお考えを明瞭に伺っておきたいと思います。
  32. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 無理に二重払いでないという理屈をつけているわけではございません。仰せの御説明をいたしますと、見返り資金勘定、御承知のように三千六十五億円でございますが、このうちさっき外務大臣が言われましたように、債務償還は、電電とか国鉄、住宅公庫への出資、この見返り資金勘定の中で使用として経理区分されておったものが約千五十億円ぐらいございますが、この千五十億円は全部死んでしまっている金ではございませんで、現在住宅公庫とか、国鉄とか、そのほか政府関係機関の資産として生きている金でございます。しかしそれは一切もう除外しまして、産業投資特別会計は、この一千五十億円を引いた二千二百九十四億円というものだけを産投会計が引き継いでおります。で、二千二百九十四億円は、これは全部見返り資金関係から継承した分でございますが、そのほかにも今言ったように、千五十億円というものが、相当部分が資産として残っている。かりにこの残っているものを一切計算しないでおきましても、産投の引き継いだのが二千二百九十四億円、それから一般会計から産投が引き継いだ分が千百八十七億円ございますが、そのうちで開発銀行の出資になっておる分が千五十二億円ある。この千五十二億円の中には六百二十五億円という、見返り資金からの金でその債務償還をやった六百二十五億円というものが入っておりますので、これははっきりしているものですから、開銀の中にその六百二十五億円が入っておりますから、それらを加えますというと、産投会計の中には二千九百十九億円というはっきりした見返り資金財産の引き継ぎがございます。この二千九百十九億円の資産は、今日までの運用において産投会計には約一千四百億円の運用利益を出して積み立てられておりますので、このうちの見返り分を入れますというと、現在約四千億円見返り資金からの資産があるということになります。この四千億円のほかに、まださっき申しましたような住宅公庫そのほかいろいろのところに資産がございますが、産投会計の中にはっきりしているものだけで今約四千億円になっている。こういうことでございますから、この四千億円の中から二千八十五億円の債務を払おうとしても、約半分で払えるということになりますから、もう一般会計の金を使う使わないは問題でなくて、今援助物資積立金からできた資産だけでも四千億円あるのですから、この四千億円で半分を払おうというのなら、もうこれは即時にも払える。理屈の上ではそういうふうになりますが、しかしこの産投会計の中を見ますというと、この見返り資金開銀だけの出資金になっているわけじゃございませんで、貸付金にもなっておりますし、輸銀への出資金にもなっておりますし、電発そのほか十六の政府機関の出資金にもなっておる。いろいろなっておりますので、そういうものの資本をくずして払うということは、これはいろいろなところに支障を来たしますから、最も支障を来たさないように払おうとするのでしたら、開発銀行への出資から上がってくる運用益納付金というものだけでもしこれを払おうとすればどうなるかという計算をしますというと、千七百五十七億円十五年間に納付金が期待される。そうするとほとんどこれは二千億に近い大部分これで払えることになりますが、まだ少し少ないので、そのほか影響のないので払おうとするのでしたら、今貸付金がございますので、これは順次回収されていく金でございますが、その回収が三百五十四億円期待できますので、この回収金を充てよう。この貸付金の金利が九十一億円ありますので、この三つだけで返すという方針を立てたらどうかと申しますと、これで二千二百二億円ということになりますから、二千八十五億円を払ってもまだ百十七億円残るという勘定になりますので、なるたけ影響を少なく、元をくずさないで、いわば利息だけで払う方法がないかということを考えて私どもがこの返済の計画を立てたということでございまして、ごくわずかなところへしぼって、ここの運用益だけで返そうということをしましたから、数字がぎりぎりのようになっておりますが、そうじゃなくて、今申しましたように、資産全体は四千億円以上あるのですから、そのうちから二千億円を払うという限りにおいては、二重払いも何もそういう問題は消えておって問題はないと思うのです。こういう払い方をしましたら、十五年間たってほとんど金利だけで払ってしまったということで、あとは元はそっくり全部残るという計算になるわけでございますから、そういうもう疑いとかなんとかというものは今度の返済計画で一切私どもはないと思っております。
  33. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) このガリオア援助は払わなくてもいいじゃないか、こういう前提があって、それを政府はよけいなことをして払うから二重払い、こういう議論もあるようでございますから、その点について私から申し上げておきます。  これは最初にもらったものだと観念することが、どうもわがほうにおいては観念的にそう言うだけで、どうも先方にそれを納得させる資料がないということでございます。すなわち、一番最初に占領後間もなくあちこちに軍が駐屯しておりまして、その軍の隊長の考え方で物資払い下げる、こういうことが行なわれておったわけです。これは昭和二十一年の三月二十二日にQMというのが出ておりまして、その中にやはり支払い条件等は追って決定する、これはセールだ、売ったものだ、こういうことが書いてあるのでございます。この資料国会に御提出申し上げております。それからアメリカのほうではそれに対して陸軍省の予算からこの物資の代金を出して、そうして援助物資を送っておったわけでございます。それに対して二十一年六月二十九日に国務次官補が証言しております。日本とドイツの輸出が究極的には援助物資代金を支払うに十分なることを希望する——この援助物資の代金は日本、ドイツの輸出でもって払ってもらうのだ、すなわちいずれこれは払ってもらうのだ、こういうことを言っているわけでございます。それから昭和二十二年の二月の二十日マッカーサー元帥がアメリカの議会にメッセージを出しまして、アメリカ予算からの支出は日本国民債務となる、こういうことを言っております。それから二十一年七月に、これも資料提出申し上げておりますが、覚書一八四四のAというのがガリオア全体について触れておりまして、これは支払い条件等については後日決定される、支払いを前提とするというのが書いてございます。なお二十二年の四月十一日に国防次官補がまた証言を議会でいたしまして、援助返済を要するというただし書をつけますと一銭一厘まで取り立てなければならないことになる、こう言っております。それから六月に極東委員会が決定いたしました降伏後の対日基本政策というのには、日本輸出代金は非軍事的輸入の費用に対して支払うために使用することができる、すなわち輸出代金なんだ、こういうことを言っておりまして、無償でないということを言っておるのでございます。その年の七月に両院で食糧放出に関して最高司令官に対する感謝決議をいたしておるわけでございますが、こういうことを知っての上で感謝決議をしているのでございます。この間にちょうど極東委員会の決定が出ましたのは片山内閣の当時でございまして、その後の芦田内閣のときにも先方の陸軍次官が、ガリオア資金は他日返済されるとの原則を前提に計画しかつ記録しているということを議会で証言しております。そんなことで、わがほうはただもらったものじゃないかと、こう言いましても、アメリカ予算からこの金額を支出しているのでありまして、この予算審議するに際して、これは後日取り立てるものだ、ただし全部取り立てるということにはしないで、それは敗戦国の経済復興の事情等も考慮して、全部ということは言わないけれども、何がしかは取り立てるという前提でこの予算を出しておる。したがって、われわれとしてはアメリカに何がしかを払わなければならない、こういうことでございます。それをまだ一度も払っていない。したがって、一度は払わなければならない、したがって二重払いでない、こういう関係でございます。
  34. 牛田寛

    牛田寛君 今外務大臣の話にございましたが、二重払いでないという根拠お話でございますが、同時に二重払いであるという根拠になるような問題も幾つかあるわけでございます。ですから、今までもこの点はたびたび議論になっておりまして、結局は水かけ論の形になっております。今この点についてこまかくお伺いする時間がございませんから、きょうは概括にとどめておきますが、私が先ほど申し上げているように、二重払いということを理論的にどこまでも否定しようとするところに行き方の間違いがあるのじゃないか。とにかく戦後の混乱期において何が何だかわからぬ。また米軍当局の間でもはたして債務であるか、返済させるか、あるいは贈与であるかという意見の統一があったかどうかも疑わしい。そういうような性質のものではないかと私は思うのです。ですから、そういう前提に立って、大きな立場からむしろ返済問題を提起されるべきだと私はそう思うのです。今までのお話を伺った上でも、やはり今までと同じような一つの水かけ論的な並行線が残っていくというふうに私は感ずるわけであります。  それで、大蔵大臣お答えの中ですが、こまかい問題は省略いたしまして、私が申し上げたいのは、今大蔵大臣お話のようなこまかい問題を一々検討する時間がございません。しかし、産投会計そのものは一つのプールの中で動いている水のようなものである。その中からくみ出して返済するという形になっておると思うのです。ですから、返済を行なえば必ず影響があるわけです。それについて一つ伺っておきたいのは、産投会計一般会計からこれまで幾らかずつでも資金が繰り入れられているという問題がございます。その点についてお伺いしたいのですが、これまで一般会計から産投会計へ繰り入れられた金額はどのくらいになりますか。
  35. 石野信一

    政府委員石野信一君) 三十六年度末で八百二十億でございます。今度二百三十億三十七年度の予算で予定されているわけでございます。
  36. 牛田寛

    牛田寛君 そういたしますと、今年度末で八百二十億の二百三十億で千五十億の金が一般会計から産投会計に繰り入れられているわけです。結局その中から二千億余の資金が抜かれるわけであります。産投会計の規模を縮小するお考えがあれば別でありますが、事実上縮小はできない。今後ますます産業投資の規模は大きくなってくるわけでありますから、それならば、必ずそのプールの水をくみ出した場合にその波紋は結局一般会計へ響くわけであります。そうすれば、国民感情として、どうしても返済の影響は一般会計が受けてくる、そういうことになる。それが二十年以前の不明瞭な金のもらい方と関係して、どうも二重払いではないかという議論が起こってくる。それを非常にうまく御説明になるようでありますが、結局、結論としては一般会計に影響してくるということは、これは事実だと私は思うのですが、この点についてお伺いします。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 産投会計からかりに年々百五十億支払うといたすといたしますというと、従来産投会計から出しておったいろいろな出資金の原資がそれだけ減るということは確かでございます。もし今後別に産投会計から各機関への出資をしないということでございましたら、これはこのままやっていけるわけでございますが、ほかの政策的な理由から、この会計に対する出資要求が多くて適当な出資をするということになって不足するという場合には、これは一般会計から繰り入れることになるわけでございますが、それと今のこの問題は全然別でございまして、新しい政策的な要求から一般会計からここへ入れる必要が起こったとき入れるということと、この見返り資金資産を受け継いでこの中から今度の債務を償還していくということは、これは全然別のことでございまして、りっぱに償還し得る財源を持っているのだから、その中から返して、必要がなければもうそれでやっていけますし、特別に政策的な必要が出て一般会計から入れる必要があったときには入れるということは、この問題とは無関係の問題ですから、これを結びつけるのは、これは少し妥当じゃないだろうと思います。
  38. 牛田寛

    牛田寛君 その別だとおっしゃるところに意見が分かれるわけでありますが、それは私は先ほど繰り返し繰り返し申し上げたとおりで、国民としては、返済の影響を現実に一般会計で受けるという事実はこれはあるわけであります。それを別だというお考え方には納得できないわけでございます。しかし、現状ではなかなか大蔵大臣もそこまでは言い切るのはむずかしい立場であろうと思いますが、しかし、私は国民の前に、むしろそのような理論的な小細工はやめて、二重払いであるかもしれないけれども、しかも現実の上に立ってこのような返済をすべきだという、もう少し二重払いによる反対論に対して理論的に武装するというような行き方ではなくして、政府国民の前にもっと誠意を披瀝して、この返済問題を解決すべきであると、私はこう思うわけであります。時間もございませんので、本日はこの程度にとどめておきます。  次に、文教政策について文部大臣にお伺いしたいと思いますが、昭和三十八年度から四十年度にかけて高等学校の生徒が急増する、それに対する対策が今当面の問題になっているわけでありますが、それについての計画及び見通し、これをまずお伺いしておきたい。
  39. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。三十八、三十九、四十と三カ年間がいわゆる生徒急増の一番顕著な時期でございますが、この三年間に合計百二十三万人ばかり生徒がふえるという見通しを立てております。この百二十三万人のうちの八十万人を公立学校で引き受ける、残りの四十三万人を私立学校で引き受けてもらう、そういう考え方のもとに対策を講じておる次第でございます。その予算措置につきましては、公立高等学校に対する部分は合計百五十四億円見当の財政資金手当をいたしており、それは学校の校舎に対応する分でございますが、そのほかに新設高校の用地の財源としまして、全額は確定はいたしておりませんけれども、推定四十億円ばかり、それを起債でまかなおう。さらに私学の四十三万人の引き受けに対します財源措置としましては、推定これも約四十億円見当だと考えられますが、これに対しましては国の補助金と、あるいは交付税等の引き当て合計三十億円見当のものを財源措置をいたして対処しようというわけであります。
  40. 牛田寛

    牛田寛君 ただいまの私立学校の事業量がちょっと不明瞭だったのですが、私立学校についてはどれくらいですか。もう一度。
  41. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻お答え申し上げましたとおり、百二十三万人と推定されます生徒増加数量に対しまして、公立の八十万人を差し引きました残り四十三万人を私学の引き受けに待って対処したいと思っております。
  42. 牛田寛

    牛田寛君 私立学校の全体の事業量の見込みです。
  43. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私立学校の四十三万人を引き受けてもらうにつきましての必要資金は、推定四十億円と計算されます。その四十億円と推定しました金額に対して約三十億円見当のものを補助金ないしは交付金等で援助しよう、協力しよう、こういう考え方でおります。
  44. 牛田寛

    牛田寛君 今伺いますと、公立が八十万、私立が四十三万、それで事業総額としては公立が百五十四億円、私立が四十億ということでありますから、人数の増加比率に対して事業費の推定は、私立のほうが少ないように思うのですが、その点は、どういう計算の基礎から出てきたのですか。
  45. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。その前に事業の量をお尋ねのようでございましたが、先ほど来お答えしておりますのは、三十七年度に対処しまするその対象は、三十八年度で増加するであろうところの生徒の増加分に対処することを申し上げておったわけであります。全体の仕事の量からいいますと、百二十三万人につきましては、約五百五十億円見当の資金が要ると推定されます。さっき申し落としましたから申し上げます。私学の四十三万人に対して四十億円と推定いたしておりますのは、私学では新しく高校を新設するというやり方でなしに、既存の高等学校につきまして増築するという考え方に立っておりますので、したがって敷地の入手等が要りません、また校舎の増築でございますから、新設の場合よりも比較的少なくて済むというそういうことが、今申し上げました推定の数字の基礎になっております。
  46. 牛田寛

    牛田寛君 そうしますと、私学の推定の全体事業費は、どのくらいになりますか。
  47. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。四十三万人全体に対して百八十億円余でございます。
  48. 牛田寛

    牛田寛君 私学の事業計画については、またあとで伺いますが、本年度の建設計画では、国庫の補助もほとんどなくて、大部分は地方財政でまかなうという方針を立てられている。初めは文部大臣もお話ありましたように、この急増対策は国家的な問題であるから、国庫で大幅にめんどうを見ていくというお考えがあったわけであります。それが方向転換して、地方財政一本でまかなっていくという方針に変わられた理由はどこにあるのですか、それをお伺いしたい。
  49. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。初めの考えが最終結論と違いましたのは、予算折衝で政府部内で話が原案どおりまとまり得なかったからであります。たまたま三分の一くらいの補助金を提供することによって高校急増に対処したいという考え方でいたのでありますが、その意味は元来資金さえあれば、財源の裏づけさえあれば、都道府県が高等学校の設置責任者でございますから、それでやれる道理でございますけれども、何分にも生徒急増の分量が一挙に非常に多いものでございますから、国家的な立場においても協力する必要があり、その協力するやり方は、政府部内のことを申し上げてどうかと思いますが、自治省の立場で地方財政的な見地に立って財源の裏づけを考えるということが本来の姿だと思います。すなわち言いかえますれば、教育の立場に立って生徒急増に対処するという建前は、本来は当然にはない。そういうところに幾分生徒急増に対します自治省に対して文部省の立場から申しますと恐縮の気持もするわけでありますから、したがって、三分の一の補助金の裏打ちをしたほうが適切であろうと考えたまででありますけれども、総合的な財源の配分等の立場からその案は消えました。しかし、その次の考え方としては、もし自治省の立場においても生徒急増——全機関を通じて急増の実態を把握し、それに対する国家的立場からの財源措置をやる計画を十分念頭に置いて年次計画に従って地方財政措置をするということができるならば、それも一つ考え方であるわけでございますから、その考え方に落ちついたわけであります。そこで、その財源としましては産業教育関係でもって十三億の国庫補助のほかは五十億円の特別の起債のワク並びに九十一億円の交付税をもって裏打ちをしよう、そして先刻申し上げましたとおり百八十万坪ばかり高校新設のための敷地が要ると推定されますと、その資金四十億につきましても起債財源でもって財源措置をしよう、締めて百五十四億円プラスアルファの資金手当はできておりますから、都道府県が本来の設置義務者の立場に立って、自分の行政区域内における高校急増対策に万全を期する積極的な意図があればできるはずだということを期待しておるわけであります。
  50. 牛田寛

    牛田寛君 この問題は、下手をすれば犠牲者が出るわけであります。もし、その計画どおりにいろいろな支障でいかなかった場合に、中学浪人が出たり、あるいは同じような結果に——次代の国を背負う青年が被害を受けるということは、これは当面の三年間の問題でなくして、今後十数年間その影響を受けるわけであります。大きな社会的問題であると思うのでありますが、したがって、やはり私は文部省で財源的にも責任を持って推進すべき問題だと考えるわけでありますが、そうでなくても地方財政が、いわゆる地方公共団体が設置者の立場でそれをやっていくというのであればよろしいのでありますが、はたしてそれがうまくいくかどうか、そこに懸念を持つわけであります。その点について自治大臣。
  51. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと私の立場からも申し添えさしていただきますが、先刻も申し上げましたとおりの考え方に立っておるわけでありますが、御指摘のような高校急増時期に対して、これを収容する学校施設等が一応予定どおりにいきませんときには、児童生徒がお気の毒だ、御説ごもっともだと思います。そういうことを自治省の立場においても文部省と相談の上仕事量全体の見通しを立て、それに対する年次計画を十分に理解をして財源措置を講じ、たとえば起債の認可等にいたしましても、当然高校急増に必要なりとして都道府県が申請しました場合には、その事業計画、事業量を念頭に置いて認可をする。それがまた交付税の配分にしましても、今申し上げたような立場に立って配分されるわけでございますから、先刻も申しましたとおり、都道府県が誠実にこれを実行し、それから国の立場におきましょうとも、都道府県の立場におきましょうとも、急増生徒に対する万全の措置をする責任は当然のことでございますから、そういう誠実な態度で臨んでもらえば御心配のようなことはないはずだ、こう考えて期待しておるわけであります。
  52. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 高校急増に対する財源措置のいきさつにつきましては、今の文部大臣のお話のとおりでございます。そこでこれは、この高校の急増というのが都道府県——地方が本来設置責任を負うべきものになっておるという建前から、結論としては地方財政面でこれをやっていくというような計画を立てたわけであります。全体の計画から申しまするならば、ただいまのところ、こういった文部省の立てられました高校急増対策に対する財源措置は、これは十分に可能であるというふうに私どもは計数的に毛確信を持っております。ただ、個々の県につきましては、それぞれ財政事情が異なります。これにつきまして、今の百五十四億円についても九十一億円は交付税で配付するわけであります。それにつきましては、年度に入りまして交付税を配付いたします際、さらによくそれぞれの個々の府県を検討いたしまして、実際計画にそごのないように措置をいたしたいと思っておる次第でございます。
  53. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。この前も自治大臣も大蔵大臣も、財源措置は万全を期してあるから支障がないというお話であった。そこで私は数字について伺いますが、政府の高校急増対策案と府県の予算がすでに提出されておるわけですから、都道府県の高校急増対策予算案と比べて数字が合いますか。これが一点。  それから、交付税と起債でまかなうということをおっしゃっておりますけれども、小さい数字を取り上げます。土地購入について起債と交付税でまかなえますか、寄付を仰いでいませんか、この二点。
  54. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ただいま各府県で予算を作っておるのはお話のとおりでございます。この予算と、今文部省が立てておられますこの計画とどういうふうにマッチしておるか、これは現在、文部省のほうで調査中でございまして、これは結論を待ってそれぞれ善処すべきものと思っております。  それから、土地の問題につきましては、まだいろいろ事情が確実になっておりません。したがいまして、この分については別個に起債で措置をとるという弾力を残しておるわけであります。個々にきまり次第、これはきめていくつもりでございます。
  55. 加瀬完

    ○加瀬完君 文部省が個々に集めているというのはおかしいですよ。地方財政計画を出したのは自治省、したがいまして、その地方財政計画のうちの高校急増対策が地方の予算に見合っているか、見合っていないかということは、これは自治大臣の責任です。私の調べでは、都道府県予算政府計画との違いは坪数で十一万七千七十坪、金額で百四十七億六千五百万円であります。さらに、一般施設費と産振を含めますと、金額で百九十一億三千九百万円、土地は百八十万坪のうち五十四万坪を、金額で五十七億円のうち三十九億円も寄付に求めております。府県予算を。そのパーセントは六八・四%で、これを寄付に求めるという想定で府県の予算の大体ができておる。これで交付税でまかなうの、起債でまかなうのといったらおかしいじゃありませんか。これは大蔵大臣にも伺いますが、財源は万全を期しておるといいますが、その万全という中には、土地については六八%の寄付を仰ぐということを前提にしておりますかどうですか、伺います。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 土地については、これは新規に購入するという県もございましょうし、そうじゃなくて、県有地を使用するという県もございますし、そうじゃなく、地元の誘致運動があって、地元がある程度負担をするからここに学校を作ってくれということで、地方的な折衝をいろいろやっている県もございますので、事情が違いますから、その最終のものを見なければわからない。いずれにしてもこれが実施できるだけの起債措置は見る、こういうことになっておりますので、各県とも事情がみな違うと思います。県できまった方針に基づいて、そうして起債の措置をとってやるということになろうと思いますので、一律にいきませんから、方針としては、できるような措置は政府はとるということについて、敷地の選定、実際に土地の費用はどのくらいかかるということはへ各地方々々で検討することにこれはなっております。
  57. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話のように、今教育施設につきましては、一般の改造あるいは急増対策その他全般のものをそれぞれ各都道府県の教育委員会が出しておるわけであります。これをもう一回整理してまとめてみませんと、そうしてさらに区分けして、急増対策なり、一般改築なり、そういったものは区分けして、これから整理した上で、それぞれの交付税なり、起債の措置はやろう、こういうことでございます。
  58. 牛田寛

    牛田寛君 都道府県の計画案も出ております。見ますというと、今もお話が出ましたが、政府案に対して二割五分あるいは三割増しという面があると思います。で、聞いてみると、単価の違いだ、坪数の違いであるというようなところから大幅な差が出ておるわけです。先ほど伺うと、その辺の調整はこれから始めるところだ、あるいはやっておるところだという今お話がございましたが、すでにもう本年度から、この急増対策を実際に実施しなきゃならない、すでに予算が出ておるわけです。その予算が出ておるにもかかわらず、これから調整するというのであれば、政府の案が一体どこまで実現性を持っているかということを、これは当然疑わなきゃならない。これでは初めに私が心配しましたことがすでに現実になって現われている、こう考えざるを得ない。そうすると、先ほどの文部大臣のお話も、これではどこまで信用していいのかわからなくなるということになるわけです。もう少し明確にこの点を、どのようにして都道府県と打ち合わせ、それでスケジュールを立てて、そうして計画を一致さしていくか。それで予算の不足の場合には、この次はどこで持って埋め合わせしていくか、そういうふうな基本的な計画をお持ちであると思うが、もう少し具体的に、明確にお示し願いたいと思います。
  59. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 急増対策の三十七年度分につきましては、土地を別にすれば百五十四億である、こういう文部省と各団体との間の話し合いができておるわけであります。この計画が立っておりますがゆえに、これに対する手当を完全に今のところやっておるわけであります。一般の改築費というようなものにつきましては、毎年これは百億前後のものが別個に交付税等でまた措置されておるわけであります。そこのところはもう少しよく検討してみまして、個々の団体についてはこれでまだでこぼこがあることは、これは事実でありますから、そのでこぼこについては実際に支給をする際に十分に考慮して、個々の問題で因ることがないように全体のワク内で措置をしたい。土地につきましては、御承知のように三十六年度につきましても、すでに三十数億のものを追加されて起債を広げておるわけであります。そういうようなことによって三十七年度の分につきましても、そういった市町村の負担になることが極力ないように、十分な措置をできるだけ今後やっていきたい、こういうことであります。
  60. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。質問に答えていないから。自治大臣、ちょっと認識を誤まっていると思うのですよ。急増対策が二口に分かれているのです、大きくいえば三口。大きく取り上げられたのは、学校の新設、それから一般校舎の増築、それから産振の拡充。ですから、一般設備は例年のとおり普通の予算に盛られて、普通の交付税の算定でまかなうということでは、今度の高校急増対策のための校舎の増築分には見合わないわけです。それらもあわせてお答えいただかなければ、お答えにならない。この点だけ何かの機会に牛田さんのあとの御質問のときにつけ加えて下さい。
  61. 牛田寛

    牛田寛君 今、自治大臣のお答えがございましたけれども、都道府県との打ち合わせが、完全でないということに対して、今後どのようになさるかという私の質問でございますが、明確なお答えになっていないように思います。  時間がございませんから先へ進みますが、都道府県の公立の学校についても、そのような食い違いがあるわけであります。このたびの計画を見ますと、私立の学校に依存する度合いが大きい。人数でいきますと、公立が収容人員の現在数の三六%くらいの増加であり、それから私立は五三%増という計算に概算でなるのであります。そうしますと、私立に対するウエートがかかり過ぎている。これは非常に大きな問題になるのではないか。このような私立に対する計画が、どのような基盤の上に立てられたか。文部省からいただいた計画を見ますというと、私立のほうは試算であるというようなことになっておりますが、すでにやはりもう計画が実施されている段階において、しかもウエートのよけいかかっている私立の計画が、試算というような状況では非常に心もとないと思います。この点についてまず文部大臣から。
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。都道府県立であれ、市立でありましょうとも、今御指摘のような一々の都道府県、もしくは市などの実態は、文部省は今把握いたしかねております。先刻申し上げたような財源措置のもとに、誠実な態度でやってもらっているはずだという立場に立っております。さりとて、これは自治省と都道府県にまかせっぱなしでよろしいとはむろん思っておりませんが、幾らか間接的になりますので、今の現状を十分把握しておりませんので、必要であれば後ほどお答えさしていただきます。
  63. 牛田寛

    牛田寛君 どうも先ほどからお答えを伺っておりますと、今度の高校急増対策については、次第に不安の度が高まってくるように思います。つかみどころのある公立であってすら、今のような状況、ましてや私立において、お話のように、これからというのであれば、どこまでこの四十三万が実現できるかということになるわけであります。もう少しこの大事な問題について、当局の真剣なひとつ対策推進が望ましいように私は考えます。時間がございませんからこの程度でとどめます。  次の問題に移ります。私立の予算の問題でありますが、私立が少なくとも現在数の五〇%程度まで施設を拡充するということになりますと、部分的な補助ではとても実現はむずかしい。この三年間の波が過ぎれば、最もその影響を受けて、今度は定員が減少する影響を受けるのは私立学校である。そうすると、それを見越してよほど政府の補償がない限りは私立は施設を拡充できない。公立と違って私立は一つの企業でありますから、そのように政府の計画どおりにはとてもいきっこない。その私立にウエートがかかっている。私はむしろ今度の増設分については、国家が百パーセント近い補助を与えるべきではないか、そのように考えるわけであまりす。その点について。
  64. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。私立——私立学校のお尋ねかと思いますが、私立学校は、元来、民間浄財に財源を求めて、みずから自主的に経営する、運営するという立場にあると思います。それに対しまして、国としてどういう協力援助をするかというのは、なかなかむずかしい問題ではございますが、私ども今まで考えておりますことは、いつかもここでお答えしたことを繰り返しますけれども、今申し上げたとおり、民間浄財でまかなって国の財政的干渉を受けない、その上に立って自主独立の独特の学風を持っていくところに私立学校の特色があり、これを基本線として堅持することがほんとうではないか、こう思うわけであります。ただし、高校の生徒急増に対して私学に依存し協力を求めるというのであれば、公立と同様、国の立場においても何がしかの協力をすることも当然なことと理解いたします。これは高校の生徒急増に関する特例的な考え方としてそういうことが許されるのじゃなかろうか、こう思うのでございまして、そういう立場から、先刻御議論申し上げましたように、当面四十億に対しまして三十億見当の財源措置を国の立場においてとれば、一応納得してもらえるはずと、かように考えておるのであります。  さらにまた、御指摘のとおり、私立に四十三万人も期待することは、将来ピークが過ぎました後に生徒が減る、減ってきたならば、一つの企業体として考えた場合には私学が非常に困難に陥りはしないかという御指摘でございますが、そういう傾向は公立の場合は、理論的には別ではございますが、そういう姿は同様に起こってくるかと思いますが、当面私学に四十三万人を期待しておりますことも、実際問題としますと、私学側からの強い要請もございまして、百二十三万人中四十三万人を期待する結果になったわけであります。だから、自分たちが言い出したからあとはどうでもよろしいとはむろん考えておりませんが、御指摘のようなことが結果的に起こりまして、そのために何らか国として考えねばならぬことありとせば、その後のこととして考えたいと思っております。
  65. 牛田寛

    牛田寛君 四十三万は私学側からの強い要請であった、こういうお話でありますが、では、今度の四十三万並びに私立学校に対する計画が出ておりますが、その計画はどのようにして私学の計画が積み上げられているか、その具体的な経過はどうですか。
  66. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今即座にお答えいたしかねますので、政府委員からお答えいたさせます。
  67. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私学につきましても、各県の計画を徴しまして、それを公立と同様に基準とそれから計画とを比較いたしまして、いずれか少ないほうをとる、こういう方法をとって積み上げているわけでございます。総経資の比較的少ないのは、私立学校におきましては新設校が少なく、多くは学級増で処理する、こういう計画になっておりますので、総経費は比較的少ない結果を見ておるのでございます。
  68. 牛田寛

    牛田寛君 時間がないので詳しいことはお伺いできませんが、そうなりますと、すし詰めの起こる可能性がある、これが一つ。それからもう一点は、私学にウエートがかかっておるということは、今度は入学者に負担がかかる。公立学校と違いまして、私学は教育費の負担が大きいので、今度の高校生の急増の問題は、これは国家的に解決していただかなければならない問題で、だから、できるだけそういう個人的な負担を避けなければならない。そういう意味でのそのような危険のある私学重点を避けて、むしろ公立へ重点を置くべきではないかと私は思うのですが、その点……。
  69. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。生徒急増について、公立と私学とどういう分担割合にするかは、きちんとした目安があるわけではございませんが、なかなかデリケートでございますが、概念的に申し上げれば、御指摘のような意味を含めまして、公立になるべく多くを収容できるようにという考え方であるべきことは私宅同感でございます。当面四十三万人の分担を願いましたのは、先刻来申し上げているとおりでございます。
  70. 牛田寛

    牛田寛君 これからあと二年間あるわけです。二年間の計画があるわけですが、三十八年、三十九年、四十年ですね、その計画において公立にウエートをかけていく御意思があるかどうか。承りたい。
  71. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一応ピーク時を考え合せまして、八十万対四十三万という振り分けにいたしておりますが、今御指摘のようなこともあると考えまして、今後再検討することはあり得ると思います。
  72. 牛田寛

    牛田寛君 文部大臣の御意思を伺っているのです、あり得るかあり得ないかではなく。
  73. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) あり得ると申し上げるよりほかに今としては申し上げようがございませんが、私学で積極的な意欲を持っておられる限りにおいては、今御指摘の不当なすし詰め等は起こらないであろう、また先刻御披露申し上げた国の協力とあわせて、自分自身の力等でもってまともな教育施設等が整備されるであろうという期待のもとに、振り分けを一応いたしておりますので、今後の具体的な現われ方を見まして再検討することがあり得るであろうという意味で申し上げた次第であります。
  74. 牛田寛

    牛田寛君 文部大臣から確信のあるお答えが承れなかったのは、非常に残念であります。この重要な問題に対して手落ちのないように、強力な推進を願いたいと思います。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。私立学校の問題に今触れられたわけですが、当局の説明によると、各県の計画をとってこれを積み重ねて予算化したい、こういう説明がございました。しかし、これは公聴会でも指摘されたことですが、私立学校に対する特別助成、あるいはまた私立学校振興会の出資金等、これらを含めても、本年度の予算増は大体十二、三億。それで、この四十三万人を吸収するという計画を持ちながら、予算化された分は非常に少ない。そこで、本年度予算化されたものは、私立学校の四十三万人吸収計画のこれはどういう部分に該当するのか。これは牛田委員も追及されたところでありますが、まだ私ども納得がいかない点である。本年度組まれた私立学校に対する予算と四十三万人吸収の計画というものが、もう少し具体的にお話しいただかなければ、十分でないと思います。この点……。
  76. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。四十三万人を算術平均しますれば十数万人の見当ですか、三十八年に特に多く入って参りますので、計画しましての数字でありますが、一応具体的な正確な数字は後ほど政府委員から申し上げますが、十数億円とおっしゃいましたが、産業教育振興関係等約三億円、私学振興会からの貸付金が約十六億円、地方交付税で二十億近いものが措置される見込みでございますから、四十億円の推定に対しましては相当十分な財源の裏づけというものができておると考えております。
  77. 福田繁

    政府委員福田繁君) 大臣の言われたことと多少重複するかもしれませんが、まず三十七年度の財源措置としましては、私立学校振興会からの融資が十六億円、国庫補助が三億円、それから地方交付税の基本財政需要額への算入が十億円、そのほかなお私学に対する一般助成分におきましても約十億の増が認められておりますから、その中の相当部分は高校急増のほうに回ると考えられます。  なお、私学に対する総事業量の年度割について簡単に申し上げますと、三十七年度は四十億でございますが、三十八年度五十一億、三十九年度五十億、四十年度三十億、大体こういうふうな計画をもって総事業量を考えております。
  78. 牛田寛

    牛田寛君 次に、教科書の問題でお伺いしたいと思います。  教科書が非常に現在、地域的にも、あるいは学校別にも、違った教科書を使っておるというふうに不統一な現状であると思うのです。これを何らかの形で変えていかれるお考えはないかどうか。
  79. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。現在教科書は、全部合わせますると千種類余に上っておるわけでございますが、このことは教科書発行会社がいわば自由企業であり、かつまた地方分権の建前に立って教育が行なわれるということからいたしまして、教科書は多種類あることが望ましいという建て方になっておるわけでありまして、ただし、その基準となるべき毛のは、文部大臣の責任において指導要領なるものを定めて、その基準に沿ったものが教科書として編さんせられる。さらに、それを合っておるかどうかを検定いたしましたものが使われるわけでございますが、その結果相当の種類に上ります。それを展示会を催しまして、各地域ごとに市町村の教育委員会がそれを選定する、こういう建前でございますから、ことさららしく、これを作意を加えて少なくしぼっていこう、こういう考えはございません。
  80. 牛田寛

    牛田寛君 現在のような、学校別にも異なっておる、あるいは東京ならば同じ区内の学校でも全部ばらばら、あるいは隣の町へ行けば教科書が変わるというような状況が、いろいろ不合理な弊害も起こしておると私は思う。その点、文部大臣はどういうふうに認識されておるか。
  81. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 学校ごとに採択される教科書が違うということは、これは建前上望ましい姿ではないと思います。市町村の教育委員会が選定するという大前提に立ちまするならば、その行政区域内においては一種であってしかるべきものだ、本来の建前は私はそういうものであるべきだと思いますが、市町村によりましては何種類か、三種類なり四種類というものを採択いたして、その中で学校ごとに選んでよいということにしておるところもあるやに聞いたが、これは本来の建前から私は逸脱しておるのじゃないかと考えます。
  82. 牛田寛

    牛田寛君 採択の実際のやり方、そういうものについてはどういうふうになっておるのか、ひとつ具体的に……。
  83. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今お答えしましたように、教育委員会が採択権限を持っておるわけでございます。したがって、教育委員会の良識に待つわけでございますが、採択するにつきましては、むろん現場の教師等の意見が尊重されることは当然といたしまして、採択の責任は教育委員会が持っている。その建前はくずすべきことではないと考えております。
  84. 牛田寛

    牛田寛君 採択の権限を持っておる市町村の教育委員会が採択する教科書は一種類ですか、それとも数種類ですか。
  85. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻お答えしたつもりでおりましたが、市町村の教育委員会が採択します教科書は、各教科ごとには一種類、同じものを使うという結論になることが本来の制度上の建前であります。ただし、例外的には、三種類か四種類というふうなことを採択いたしまして、その中から具体的には各学校で選んでよろしいとしているところもあるようですけれども、それは建前を逸脱しておるのであろう、かように申し上げたような次第でございます。
  86. 牛田寛

    牛田寛君 実情と食い違いがあるように思うんですが、実情は、各学校ごとに採択したものを選定する、それできまっておるように思う。
  87. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。東京都とほか一、二の県が、今御指摘のようなことになっておると私は承知いたしております。大多数の府県におきましては、教育委員会が選定しましたものを各学校とも使っておる。採択の責任と権限は教育委員会にありますから、それが当然のことであると思いますが、東京都は、どういうものか、各学校ごとに選定するなどということが行なおれている区があると承知しております。
  88. 牛田寛

    牛田寛君 そういう実情をそのまま放任しておかれるのか、あるいはこの建前を直すお考えなのか。
  89. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。今までも私が申し上げたような建前に直すように指導はいたしております。今後もそれは続けていきたいと思います。
  90. 牛田寛

    牛田寛君 指導によってそのような建前に修正されていく。ある区ならば区で、統一されるという見込みがおありなんでしょうか。
  91. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ございます。
  92. 牛田寛

    牛田寛君 ところが、事実そのように行なわれていないわけです。文部大臣が見込みがございますとおっしゃいますが、これはもう東京都内では常識でありまして、そうなっておらない。しかも弊害、不合理な点があるわけです。東京都内でも、私が調べたところでは、一年間に六万人くらい児童が動くわけです。そうすると、学校が変わるたびに、これは都内全部含めてですが、全部教科書を変えなければならない。この数は四月の学期初めの移動は抜いてあります。ですから、実質上それだけの者が教科書を買わなければならない。非常に大きなむだがある。それから、教育上の大きなマイナスがある、これが一つ。それから、学校ごとの教科書の選定に対しては、汚職の温床になると思います。そういうふうな弊害に対して、文部大臣は認識なさっておるかどうか。
  93. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。聞いております。ただ、学校ごとに選んだほうが汚職の心配がないなどと日教組の人々は言っております。地域的になるべく広い範囲で一括採択したほうがいいんだという説もむろん聞いております。すなわち、市町村だけじゃなしに、郡市くらいはまとめて採択をしたほうが……。教科書の選定というものは、何も日教組のためのものじゃないはずですから、学ぶ生徒側の立場に立って考える限り、それから、また、地方分権の建前だという建前は、学校ごとということではないはずですから、したがって、東京都のやり方のごときは間違っておる。指導して本来の建前に返すべきだ。これは当然そうなるべきものであって、現状が御指摘のようなことがあることは間違っておりますから、指導を続けていきたいと思います。
  94. 牛田寛

    牛田寛君 文部大臣のお答えでありますが、現状では統一の見込みがないように私は思います。もう少し弊害を認められたならば、統一される具体的な方策のお考えを承りたいと思います。
  95. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。具体的には、教育委員会に対する指導ないし助言を通じてしかできないと思います。それはあくまでも制度の解釈の問題、趣旨を踏み違えておるのを是正させるというやり方以外に具体的方法はないわけですから、今申し上げましたような指導を続けることによって、ばらばらになっておるのをきちんとしたい、かように考えております。
  96. 牛田寛

    牛田寛君 この教科書統一の問題は、生徒自身の口から、その不合理、そのマイナスが述べられておる。また、現場担当の教師の意見も出ております。また、汚職の温床である事実も、私は現場担当の教師から聞いて知っております。ですから、そういう点で、ひとつ今後このような不合理をなくなす方向に進めていただきたいと思うわけです。  次に、PTA会費の問題で伺います。現在PTA会費のうち、大きい割合が学校教育費、給食調理人等の給与の補助であるとか、職員の旅費、備品費、食糧費、通信費、印刷費、光熱費というようなものに多くさかれているのが実情でありますが、これは全廃させなければならないと思うのですが、これについてお考えを伺います。
  97. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。本来、国費もしくは公費をもってまかなわれるものが、事実上父兄負担になっておるものが相当あると承知いたしております。昭和三十五年に実態調査をいたしました結果によりますと、小中学校でもって、今申し上げた意味の父兄負担が約百七十億円見当ございます。三十五年度と六年度、特に三十六年度において、そのうちの半分近いものを財源措置によって解消することにいたしました。三十七年度また七十億円余りの財源措置をすることによって、それから、また、地方交付税法の改正等によりまして父兄負担の解消を努力し続けております。三十五年の調査の結果発見しました百七十億円見当の父兄負担の数字は、三十七年度措置までで大体解消できる。十数億円残る勘定かと思いますけれども、大体解消できるというめどで進んでおるわけであります。
  98. 牛田寛

    牛田寛君 ただいまのお話ですと、解消の方向に向かっているわけで、非常に心強いわけでありますが、現実はあまり解消していないわけなんです。現に本年度の三月、東京都内のある区のPTA連合会から区会に対して請願が出ておる。六九%の学校教育費についての費用がさかれておる。それから、これは北海道の札幌でありますが、私が調べましたところでは、六五%がやはり学校のそういう設備その他に使われておる。そのほかに先生の旅費補助、これに一三%、そういうふうなデータがいまだに出ているわけです。これは二つの例をあげましたのですが、これは全国的に私はあると考えなければならぬ。どの程度財政措置の手が打たれれば解消の見込みになるのか、その点を伺いたい。
  99. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻お答えしましたことを繰り返しますが、三十五年度の実態調査によりますると、国または自治体で、公費でもって負担すべき筋合いのものを父兄に負担させておるというのが不当な父兄負担の部分と思います。その調査は、百七十億円弱でございますが、それは特に三十六年度と三十七年度とでもって、大体大部分を解消できるめどであることは今申し上げたとおりであります。御指摘のように、そのほかに父兄負担に現実になっておるものがあろうとむろん推定されます。その辺はなかなかむずかしいことでございまして、たとえば教材費は国なり公費でもってまかなうという建前でありましても、ピアノを一台備え付けるについて、普通のピアノでいいという建前のものをグランドピアノでなければならない、一台でいいという建前になっておるのを二台ほしいというふうなことから、父兄側からの子供を思う一念ではございましょうが、一応共通的に考えれば、ピアノ一台でよろしいと思うときでも二台ほしい、普通のピアノでいいと思ってもグランドピアノということになりまして、そのことが財源措置と見合っては足りないものですから、寄付に待つというふうなことが現実にはあろうかと思います。その限りない親の欲望をどこまでも満たしていくということは、これは国なり公共団体としてもまかないかねるところでございますから、その辺の誤差が今御指摘のようなことになって現われておると思います。これは一般的な父兄側の啓蒙もしくは教師側の指導、そういうこととあわせまして、いわば過剰投資になりませんように、そういうこともあわせ考えて措置していくべきものと一面考えておる次第であります。
  100. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 牛田君、あなたの持ち時間は経過いたしましたが、あなたの御希望があり、また、あなたの会派においてもこれを承認せられ、また、各理事も承認せられておりますから、多少時間を延長いたすことにいたしますが、その程度は五分といたします。
  101. 牛田寛

    牛田寛君 過剰投資というお話がございましたが、財政措置が講じられましても、たとえば東京都であれば、都からその予算が出るという場合に、なかなかその予算の区分で希望の用途に使えないという結果が出てくる。そうすると、しわ寄せが自然にPTAにくる。一番父兄が弱い立場でありますので、自然にPTAで負担しなければならないという結果になる。だから、PTAのそういう会費を全廃するという措置をとられなければ、これは問題は解消しないのではないかと思うのですが、その点について伺いたい。
  102. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。父兄が弱い立場という気持も、私も同感するところが多くあります。さりとて、PTAの会費は取ってはいけないというおふれをかりに出したとして、現実に父兄負担がゼロになるかというほど算術的に私は結論づけられない性質を持っているのじゃなかろうか、先刻来申し上げますように、国なり公共団体が当然持つべきものを持たないでいるならば、それを解消する努力をする半面、父兄みずからも、あるいは教師みずからも、今おっしゃるような気持を十分にそんたくして、自主的に善処していただくということに依存したほうが、より的確な結論が出るのじゃないかと私は思います。
  103. 牛田寛

    牛田寛君 この点についてはこれで終わりたいと思います。
  104. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。文部大臣は事実の認識が非常にあいまいだと思うのです。PTAには限りませんが、一般の父兄の負担、地元負担というものは、今までの一番ひどいのは高等学校、高等学校でも、私はたびたび指摘をしているわけでありますが、昭和三十五年を見ると、土地については府県の負担が四六・二%、それに対して町村と一般の父兄の寄付金を合わせますと四九・五%、こういう比率になっております。今度の高校急増対策でも、ここに表を知事会からもらってありますけれども、十七府県が全然予算に土地の費用を盛ってありません。十七府県のこういうものを前提に、高校急増対策や、あるいはその他のものを組んでいることを是認しておっては、寄付金はいつまでたっても減らないと思う。少なくとも、高校急増対策という、非常に金のかかるものに、十七府県が土地の費用はゼロと、こういう予算を作ることを文部省が黙認しておっては問題の解消にならないと思いますが、この点どうですか。
  105. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。黙認しているわけではございませんが、現実にそういうふうになる傾向はあったことは、私も概略承知いたしております。消防自動車の寄付やら警察の寄付やら、学校の土地の寄付なんというものは当然のものだと思うものの考え方が、明治以来あると思います。それが新憲法になって、いきなり一気にふっ飛んだわけではございませんので、実際問題として、御指摘のようなことがあるのは私も認めますが、これは先刻もお答え申し上げましたとおり、高校急増分に対しまして、今まで校舎の敷地について起債等の措置が特に考えられたということはなかったと思いますが、それは今度起債の対象にするということを自治省の立場においても明確に認めてもらっておりますことは、今おっしゃるような方向がだんだんと是正される糸口になったものと思いまして、今後の努力に待たざるを得ません。先刻来、牛田さんにお答え申し上げているのは、そのこと以外のPTA負担について申し上げておりまして、土地等につきましては、御指摘のようなことが遺憾ながらあると思います。
  106. 牛田寛

    牛田寛君 それでは厚生大臣にお伺いいたします。社会保護及び福祉施設、これが非常に社会保障の面でもおくれているように思います。保護施設について見ますというと、厚生施設、あるいは授産施設、あるいは医療保護施設等々が減少している、そういう数字が出ております。この点についてお答え願います。
  107. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 社会福祉関係の施設につきましては、一般的に申し上げますれば、漸次整備せられつつあるという状況であろうかと思うのでございます。しかし、近ごろ発展して参りましたものにつきましては、特にまだその不足を感ずるものが多いのであります。だんだん力を入れまして、整備に努めて参りたいと存じます。ただいま施設の中に減っているというふうな事例を御指摘になりましたが、あるいは一部にそういうことがあるかと思います。と申しますのは、環境が変化いたしまして、その必要がなくなったとか、そういうふうなものがあるのではないかと思うのでございますが、一般的には逐次整備せられつつある。ただ、そのテンポが、私から考えましても、もっと早めなければならぬと感ずる向きが相当ございますので、この点につきましては、引き続いて努力して参りたいと存じます。
  108. 牛田寛

    牛田寛君 精神薄弱者の福祉施設ですが、成人の場合に、精薄者が三百万から二百五十万といわれております。それに対して収容能力が千八百人という統計の数字が出ております。これではあまりにも貧弱ではないか。それから、身体障害者については九十五万人と伺っておりますが、それに対して、扶助あるいは更生施設、あるいは医療等を望んでいる人たちが大ぜいいますが、そういうものを含めまして、施設が百四十七カ所というふうに、非常にこれも貧弱であります。それから、児童福祉、これも収容人員が——肢体不自由児の施設でありますが、治療教育指導、そういうふうな面で、現在の施設が収容人員三千九百名に対して、肢体不自由児といわれるものが十三万四千人、あるいは白痴、精薄児の重症が十万、これは収容を必要とする者、それに対して施設の定員が九千二百人というふうな状況、このように、福祉施設、保護施設は、社会保障の中でも、日の当たらない場所であるといわれております。このような施設がおくれているということは、やはり財政の問題があると思います。財源をもう少し強力なものを確保していただきたい。そうしてこれを強力に推進する必要があるのじゃないか。これに対してのお考えを伺いたい。
  109. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいま御指摘になりましたような施設は、比較的おくれて発展して参りましたもので、戦後どうやら芽が出まして、逐年若干ずつ増加している、こういう状況でございます。先ほど申しましたように、これらのおくれている方面につきましては、一そう力を入れて整備に努めなければならぬと考えているような次第でございます。御指摘のとおりに、財源的に見まして不十分でございますので、予算の獲得等につきまして、さらに一そうの努力をいたしたいと思います。
  110. 牛田寛

    牛田寛君 厚生年金とか国民年金、そういうものの財源、これは直接使用できるかどうか問題があると思います。そういう運用益金というものをこういう方面に大幅に投入して、そうして本年度の予算は、社会保障の他の面に比べれば率はふえていると思いますが、その程度ではなくて、もう少し大幅に財政措置を講ずる必要があると私は思うのですが、それについて大蔵大臣、厚生大臣、二人のお考えを伺いたい。
  111. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 厚生年金あるいは国民年金の積立金も、年を追うてこれは増加しております。本年度に比べますれば、来年度の積立金はだいぶ増加いたしておりますので、したがって、また、これが還元融資あるいは特別融資として振り向けられる金額も相当増加いたしているわけであります。その還元融資、特別融資等の方途を通じまして、社会福祉施設の方面にもちろん振り向けることができるわけであります。希望に応じて、漸次そういうものについては十分私どもも融資をいたしたいと存じております。  なお、年々これはふえて参りますことでございますので、将来ともに、この方面への融資額をふやしていくということについては、十分考えて参りたいと思います。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 厚生大臣の言われたとおりでございますが、年々この資金がふえるに従って、還元融資的運用、そのほかの運用によって、これがだんだんにそういう施設面を強化できるだろうと思います。
  113. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 牛田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  114. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員の変更について報告をいたします。  本日、大和与一君、片岡文重君及び赤松常子君が辞任せられ、その補欠として、小柳勇君、田畑金光君及び基政七君が選任せられました。  一時三十分に再開することにいたしまして、休憩をいたします。    午後零時三十一分休憩    ————・————    午後一時四十六分開会
  115. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更について報告をいたします。  本日青田源太郎君が辞任せられ、その補欠として苫米地英俊君が選任せられました。   —————————————
  116. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。奥むめお君。
  117. 奥むめお

    ○奥むめお君 まず、農林大臣にお伺いしたいと思います。  この間関西の市場を視察なさいました。東京の市場も御視察になりました。時局柄生鮮食料品などいろいろ高くて困っていることが問題になっております際に、大臣はどういうふうにごらんになっていらして、どういう対策をお考えになったか聞かして下さい。
  118. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 生鮮食料品が非常に値上がりが多うございますので、まず需給の関係はもちろんでございますけれども、取引の機構、制度が適正であるかどうかということを勉強いたしたいと思いまして、東京、大阪等の大市場の視察をいたしました。その結果、これらの機構が非常に旧体制である。われわれが想像しておったものとはよほど遠いものである。この点に十分に改善を加える必要があるということから目下部内におきまして、農林省内部におきましてどういうふうにしたらよかろうかということを検討すると同時に、幸いにこれが改善の委員会ができておりますので、その委員の諸君にもお願いいたしまして、当面どうしたらよろしいかということを研究していただくことにいたしまして、明年度までには解決いたしたいと考えておるわけでございます。
  119. 奥むめお

    ○奥むめお君 役所仕事というものは一体に非常に時間がかかるのでございますけれども、来年になればどんな風が吹くかわからないとわれわれはそう考える。だから、まずさしあたり年内の方向を見せてほしい、こう考えるのでございますが、業者筋では大臣は国営にして支配権を一本にまとめるのだ、けしからぬと言っている声も聞こえておりますが、私ども消費者のために大臣はどういうふうにさしあたり考えているか聞かして下さい。
  120. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり政府がやります仕事は、議会の協賛を得て御決定をいただきました法律に基づきまして、さらにまたその予算に基づいて仕事をいたすのでございます。したがって、調査をいたしまして、その結果どういうふうに直す必要がある、どういうふうに直したらよかろうということは法律の改正と、もし金が要るようならば予算の編成をいたしまして、それを議会の御承認を得なければ実は何もできません。したがって、現行におきましては、現在の中央市場、つまり都道府県を通じて都道府県の監督下にありまする市場、農林大臣としてこういうふうにしてもらいたい、ああいうふうにしたらどうだということでやる以外に方法はないのでございます。したがって、今お話しのように年内にどうやるか、まず私として考えられますことは、すみやかに案ができますれば、この国会もしくは臨時国会に中央市場法の改正案を議会に出しまして、そうしてその改正案を議会の御承認を得まして、そうしてそれに必要な予算をいただいて、仕事をするということ以外にはいたし方がございません。
  121. 奥むめお

    ○奥むめお君 中央市場を通ります生鮮食料品は大体三割と申しますが、あといろいろなルートから入って参りますが、このごろの東京の生活をみておりますと、かつぎ屋なり、車を引いて行商をして歩く人が新しくて安い物を売りますので、非常に評判がよろしいのです。大臣いかがお考えですか。
  122. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私もそういうふうに見ないことはございません。と申しますのは、東京都内の八百屋にいたしましても、魚屋にいたしましても、肉屋にいたしましても、店を一軒持つということは容易なことではございません。相当の多額の資本がなければ店が出せません。したがって従来の店舗を通じてこれが流れていくということにはおのずから限界がある。したがいまして、これは今お話のありましたような、かつぎ屋さん、もしくは車を引いてきて角に八百屋の店が出るというようなことが相当に多いということは、これは事実だと思います。
  123. 奥むめお

    ○奥むめお君 それはまた一面からいえば、市場に対する不信任ということにもなりますね、私そのようにみておりますが、いかがですか。
  124. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 不信任というてよろしいかどうかは知りませんが、われわれが調査いたしましたところでは、こういう人たち、つまり大都市の近郊からの品物は直接今のお話のようなルートで入って参りますので、近郊の野菜物、生鮮食料品につきましては非常に格差が少ないのでございます。したがって、店で売られておる物でも、今お話のようなものでもあまり値段が違わない。ところが、遠距離のものになりますと、非常に格差が大きいというような点は、確かに今のお話のようなことの影響、刺激があるのだろうと思っております。
  125. 奥むめお

    ○奥むめお君 そこで大臣は大衆市場と申しますか、消費者市場を作るというふうな構想をしていらっしゃるのじゃないかと私どもは思っておったのでございますが、そうではございませんでしょうか。またそれは法律がなくても国民に作らせればできるわけじゃありませんか。
  126. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話のとおり、一部業者の中で直売所を作るというようなことを相談しておるようであります。大へんけっこうなことで、ぜひおやりなさいというてはおきましたけれども、さてとなりますと、これはやはり東京の場合でございましたならば、東京都と各区というようなものの影響は非常に多うございます。これらの監督下にあるわけでございます。したがって、東京都知事さんに対して直売所の制度を一つやってもらいたい、もしくは政府がやるか、業界にやらせたらどうかということを申し上げましたところが、東京都のほうから、各区に相談をして各区で公設市場を作ることにするからというような今お話し合いになっておる。もし各区がやらなければ東京都自身がやるということにいたしますから、農林省のほうではしばらく都、区におまかせを願いたいというお話でございますので、その進行を待っておるわけであります。
  127. 奥むめお

    ○奥むめお君 重ねて。——たとえば団地が非常にたくさんできますが、団地の回りに自営的な市場を作る、あるいは生活協同組合の店を市場として拡大する、こういう方法ならば、東京都の了解は要ると思いますけれども、大いに推進なさりたらいかがでしょうか。
  128. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私大へんけっこうだと思います。実はこういう話を申し上げてどうかと思いますが、私の友人に映画をやる人がありますので、今の映画館をつぶして共同市場をやったらどうだ、映画館は今数が多う過ぎる、東京都内で少なくとも三分の一ぐらい場末の映画館をつぶして、これを共同市場に直せば一番手っとり早くて一番大衆のためになる、いいことであるから、これをぜひやるように推奨いたしておるわけでございます。私はそういうことをやることには大いに賛成で、できるだけ協力する立場をとっておるわけでございます。
  129. 奥むめお

    ○奥むめお君 ただいま大臣が、近郊の生鮮食料品は販売価格とそう違わないとおっしゃいましたが、これは大へんなお見込み違いじゃないか。実際は百姓が東京へかついで持ってきて、東京の値段の高いのに驚いています。自分はそのいい値段で買ってもらえることがうれしいものですから、よけい東京へかついでくるわけです。私はこう思いますが、別にこれは御答弁をいただこうと思いません。  で、それでは角度を変えて、大臣がすぐにお考えいただきたいこと、また、できそうなものだと思うことがございます。たとえて申しますと、お砂糖でございますが、お砂糖は世界で二番目の高いお砂糖を日本ではなめさせられておる。消費者の使いますお砂糖は一割ぐらいものだと聞きましても、お砂糖の高いということは大へんに国民の不満になっている。お砂糖を下げたらどうか。それからバターの輸入をするとかいうて企画庁も書いておりますけれども、これはおくれている。だから、その間が上ってしまう。バターをどんどん輸入したらいいじゃないか、これは輸入せざるを得ないのだから輸入したらどうか、なぜおくれさせておるのか、最近また入るようですが。それからえさを安くする。これは肉でも乳でもあるいは卵でも、えさ高で非常に困っておると思いますが、それについてその三つの問題で、大臣価格を下げていただく道はないでしょうか。
  130. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 砂糖が非常に高い、これは私はどうお答えしたらよろしいか、税金の高いこともお認めいただかなければいかぬと思います。おそらく私は、大蔵大臣からしかられますが、関税と砂糖消費税と二つでとっておる税金というものは莫大なものである。したがってたばことか、お酒とかいうものが高いと同じように、砂糖に対しては相当の税金をとっている。とっているのは、むしろこれは農業関係にも関係がございます。しかし、最近御指摘になっておりますように、外国の原糖が非常に下ったのに高いじゃないか、これはそのとおりだと思います。原糖とわれわれがあらかじめ予定いたしておりまする原料糖価格との間の差益については、できればこの国会法律を出して、そうしてその差益を政府のほうに公正に取り上げるという法律の改正を出したいと思って、せっかく今検討いたしておりますが、ただ砂糖が高い安いということで議論すれば、今申し上げますように、一面において砂糖の自給自足を国内でいたしたいというようなことから、それはある程度政策的に砂糖の値が上げてあるということは御了承いただきたいと思うのであります。  それから第二のバターの問題であります。バターにつきましては、実は数日前でございましたが、全国の酪農大会がございまして、ここでは乳価が安いから上げろ上げろという農民の非常に強い要望がございます。そこで、私は現在の値段ならば牛乳の価格は、あとから奥さんからお小言が出るかもしれませんが、原料乳としてはこのくらいの値段を維持することが適当である、こう考えております。したがって、さらに原料乳が不足して、これから夏場にかけて乳製品が高騰するということは適当でございませんから、これについては遅滞なく輸入してこの程度で安定させるように畜産事業団に指示いたしておるようなわけでございます。  第三のえさの問題でございますが、えさの価格は、ふすまの値段が実は世界的に高うございます。日本の国内でも御承知のとおり家畜の頭数が非常にふえましたが、国内の主食が米でございますから、そこで米ぬかのほうは油の原料にする。一部麦の製品が割合に少のうございますから、そこでふすまの国内生産が少ない。それを上回って家畜の頭数が、鶏にしろふえている。そこで原料を輸入いたさなければなりませんが、ふすまに関する限り外国は割合に高いのでございます。したがって、海外から安いふすまを入れるという手もございません。そこで私といたしましては、むしろわが国の畜産がふすまに依存する度合いが高過ぎる。ふすまを他の飼料をもってかえるということを奨励すべきであると考えておるのでございますが、なかなかそこまでいっておりません。他の飼料原料については高いということは言えない。むしろ私はアメリカあたりよりも安いタイのトウモロコシが入っているとか、国際価格でいずれも飼料原料が入っておりますので、これをもって高いということは当たらないと思うのでございます。しいて申せば、国内でできる麦を安く家畜に払い下げせよ、ふすまの代替を早くせよというような要望がございますが、これは適当に麦を食管の赤字がむやみに出てもかまわぬ、払い下げてもよろしいというわけにいきませんから、なるべく国際的に勘案しつつ飼料対策を講じて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  131. 奥むめお

    ○奥むめお君 お米の食管会計で七百億もお使いになる農林省が、いい草を作らせる草地の対策とか、あるいは畜産に向くように土地を整理する、こういうことの予算は、この食生活が変わってきますときに足りない。しているぞとおっしゃるのに違いないけれども、比べて非常に足りない、だから消費に追いつかなくっていろいろ変動が起こるのじゃないか、私これを一つ考える。  いま一つは、どうも砂糖でもあるいは肉でも牛乳でも、農林行政は、これは一番国民の営養につながるものですけれども、これは農林省だけではない、ほかの役所でもそうですが、とかく農民は消費者と密接に関係するので、われわれは決して農民と消費者と対立している利害のもとにあると思っておりません。しかし、かわいそうなことにわれわれ消費者の立場もそうですが、今のこの役所というものは、企業資本家と申しますか、業界にお役に立つことは熱心になさるけれども、零細な組織なきものに対してなさることが非常に欠けていると思うのです。私ども牛乳があの値段で農民が売っては間尺に合うと思いません。気の毒なことと思っております。だけれども、その割にわれわれの買うのが高い。その間はどこにいくのか。野菜でも決して農民は高く売っていると思っておりません。そして、その問われわれの買うのと比べたら非常に格差が大きい。こういう点を整理するのに、やはり企業資本家といいますか、とにかくそういう方面には割合に熱心になさるけれども、農民や消費者のためにははかるところがきわめて薄い。こう思うので、私はこの際、農民のためにもえさを安くする、これは私国際価格——今資料をいただきたいと思ってまだ申し上げないでいたのですが、麦の小売のことや卸売のこといろいろ考えまして。米のことになると目が狂うほど一生懸命になさるのに、米も安定生活の上に必要でございますけれども、さらに必要なのは今伸びつつある産業の手当だと思う。だから、そういう点で大臣の御抱負を伺いたい。
  132. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 最初に、酪農に草が入り用である、それに対しての施策が不十分だということでございます。たびたびそういうお小言をちょうだいするのでございますが、私は実は現に今年は十億くらいの予算を組みました。むろん十億という金は少のうございます。少のうございますが、それじゃこれを非常にふやしたらどうなる、ふやして直ちにこれに食いつく農民がないだろう、予算だけ取ればいいというのじゃない。すぐにそれで原野を開墾してその予算を十分消費するだけの、農民がその方向に経営を改善するとか——私はそのこなしがつかぬだろうという意味で、まずことしは十億という予算でよろしいということで、私自身が大蔵大臣に多く要求いたしませんでした。そして一応、しいて申せば、公共事業費の中にかえて、そうして全国的にそういう方向、そういう仕事でおやりになるとけっこうですよという構造改善の仕事とあわせて明年度あたりから飛躍的にふやしていく必要があるだろう。初年度におきましては、そうむやみに金額をふやしたところで、従来の牧野改良費と同じように、ただどこに消えてしまったかわからぬような金では仕方がない。完全に開墾した牧草地というものを作りますということになりますと、そう使えるものじゃない、一ぺんにそういかないという意味で実は予算を多くいたしていないのでございます。幸いにしてお小言が出るほど各方面から要望があって、私はどうも見当を違えて相すみませんということになるということを私は期待いたします。なかなかそう簡単に私はいかぬと考えておるのでございます。その次には、そういう適当な地所を得るという問題があります。これらにつきましては、計画的に明年度はやりたい、明後年はやりたい、こう考えておるのでございまして、今までの酪農のあり方からして、急に牧草地をふやして、そうして少なくとも三分の二までは草、三分の一を濃厚飼料というようなことで、基本的に外国のような広い所で、北海道ではやるような所がある。しかし、たとえば北海道の例をとりましても、あれだけテンサイを原料にして、そうして大いに家畜を入れると言いましても、テンサイと家畜が離れてしまって、テンサイ糖の工場を作りましても、その地帯に決して酪農が入っていない現状でございます。しかしながら、これらについてはむろん奨励の方法にも欠点がございましょう。また、やり方にも欠陥がございましょうと思いますから、十分反省もし、ひとつうまくやっていきたいものだと思っているのでございます。  次に牛乳の値が安過ぎるじゃないか。これは農家の手取りは、まず私は、今そろばんをはじいたならば四円四、五十銭から六円五、六十銭というようなところでもって、場所によっておのずから違いますけれども何とかいくのじゃないか、こう思っているわけですが、それじゃ目一ぱいだ、それにプラス・アルファがいるようだ、こう実は考えております。したがって、これを今後どういうふうに奨励していくか、主産地の形成をどうしていくかということが今後の課題だと思うのですが、幸いなことに非常に道路がよくなりまして輸送費が非常に安くなりまして、したがって今東京にきている、東北のほうで言えば白河辺までは市乳の範囲に入れると思います。そういうことでございますから、したがって、東京の市乳についても原料に事欠かぬというようなことに順次なりつつあるわけでございまして、そういう際に、根本的に実は何とか考え方を変えていくことができるのじゃないかと思いますが、さしあたりましては、何さま地方の指導方法、それからこれらの農家の形成がどうなるかというようなことが十分にいっておりません。販売にいたしましても酪農組合があり、その酪農組合は明治、森永の出店の酪農組合であるというものもあるわけでございます。自主的に農家自身が作っていないものもございます。そういう関係でございますので、そういう点についても今後大いに啓蒙して参る必要もあると思います。  最後に、大きな企業に対してのみ注意しているじゃないか。決してそんなこと考えておりません。ただ遺憾なことには、御承知のとおり生産者と消費者、この間の中間層、いずれも零細なものばかりでございます。したがいまして、しいて申せば、これらの零細な中間商人、取扱業者というようなものに対して、従来通産関係といわず農林関係といわず、両方の谷間にあったような格好にありますので、むしろ私はここらのところに十分調査をして、そして合理的な取引を推進して参りたい。また農林省自身といたしましても、従来の協同組合の三段階の販売組織の方法が、はたしていいか悪いかということについても、今後研究課題として勉強する必要があるだろうと考えている次第であります。
  133. 奥むめお

    ○奥むめお君 ちょっと角度を変えて伺いますけれども、今農村では非常に人手不足になりまして、婦人、老人の手に農耕が移りつつありますことは数字がはっきり示しているところであります。これだけ構造改革を遂げつつある農村に対しまして、今度社会から求めることは、畜産の奨励であり、増産であり、あるいは果樹の増産であるとか、いろいろ新しい事業がどんどん要望されておりますね。こういう問題に対して、私ども日本の農業構造の上から言いまして、婦人労働、老人の労働というものがどの程度役割を果たしているのか、これを農林省じゃお見通しをお立てになっていらっしゃるかどうかということが一つ。どういう指導をしておるかが一つ。大臣はそういう問題で、こういうふうに行くんだというところをひとつ教えていただきたい。
  134. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、農村は一口に曲がり角にきている、農業経営自身にいたしましても、指導方針にいたしましても、今までの適正規模というものが一番そろばんが悪いというので、全面的に角度を変えなきゃいかんというところに来ておりますので、動揺いたしております。そこへもって参りまして、私は産業設備が、つまり思わぬところに工場ができるというようなことで、工場の分散というようなことから工場ができてくる。しいてさらに申せば道路交通の事業が、全国的にあれだけの大きな予算で道路工事をやっております。したがって、臨時的な労力を非常に私は多く農村から吸収しておると思います。そういうものにつきましては、農村の平均した労働賃金ということより以上に高低が農村の労務にあるわけであります。したがって、現在の農村の労力をもってこれを常時の農村の労力というわけにいかないだろうという見方も、実は考え方もしていかなきゃならぬだろうというような意味で、さらに農村の青年にしますれば、とりわけ戦後の状態からして、農村にとどまるという者は非常に少ないというようなこと、これをどうするかというようなこと、農村の労力を今お話のとおり、婦人とか老人とか、青年とか、どういうふうに今後持っていくかということにつきましては、異常な状態に置かれているものが地域的にも多いということでございますから、私といたしましては、農業の経営のあり方としては、まず一応は経営規模を拡大して、安定した自立農家を育成することに第一を置き、第二といたしましては、どうしても経営規模、つまり耕地の拡大することの困難な地方におきましては、経営規模を拡大することよりも経営内容を充実して、たとえばビニールのハウスを作るとか、温室を作るとか、要するに土地に資本を投下して、そして土地と資本を合わせたその中で農業を経営するというようなことを考え、さらにまた都市周辺におきましては兼業農家の育成もこれもけっこうだというようなことで、これらをあわせて農村の構造改善をして参りまして、そこに将来の農村を労力とあわせて考えていくということで、全然別の方向から地方の実情に合うように農村政策を持っていこうと考えておるのでございまして、今、奥さんのお話のように、労力がどうなっており、婦人についてどう考えるかというようなことも、全然むとんちゃくであるわけには参りませんけれども、今申し上げたような角度で、農村の構造改善をして参り、将来の村作りをしていきたいと考えておる次第でございます。
  135. 奥むめお

    ○奥むめお君 十カ年計画とか五カ年計画という長期計画で、農村に働く人の質的変化に対して、農林省として何か推算をしていらっしゃるのでございませんか。
  136. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 実は御承知のとおり農業基本法の成立を見まして、これを基調にして、私は昨年の八月から全国の農村をひとつ今申し上げたような角度で構造の改善をしていくことが必要だろうと考えて、今予算をお願いいたしておりますものは、初年度においては、まずそう手広くいたしましても、なかなかそうは参りませんので、まず三百カ町村くらいを今申し上げたような角度でひとつ経営の改善を企画し、そしてこれを地方の人と十分話し合って村作りをしよう。そしてこれを全国で十カ年計画で三千二、三百カ町村くらいにするつもりでいたしております。うまくこの村作りが進めば、年限を短縮するように、またあらためてお願いしなければならぬのじゃなかろうかというつもりでいるのでございまして、その間にいろいろ農村の事情も安定して参りましょうし、日本経済成長の度合い、方向も安定して参りましょうし、国際情勢等の見合い等もかねまして、そこに農村の改善をしていきたいと考えているわけであります。
  137. 奥むめお

    ○奥むめお君 今大蔵大臣おいでになりますが、よろしゅうございますか——。お砂糖でございますが、国際的に非常に価格が下がってきているわけでありまして、一トン九十ドルだったのが五十ドルになった。これを日本で売り渡しをなさる価格は、そのままの金だというふうに聞いていたけれども、安くなったときどうなさいますか。国際価格の安くなっただけ、もうけはどこにいくかということを伺います。
  138. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 輸入の超過利得というものがあることは事実でございますので、これは今農林省としまして、国内甘味の振興のために一つの機関を作って、そこに製糖業者から寄付をさせるという形で解決しようという方向に今なっております。砂糖は私ども消費者のためには安いほどいいのですから、ほんとうなら、これはもう自由化をやって割当制というものをなくするのでしたら、超過利得は出ませんし、砂糖は当然今より安くなりましょうが、問題は国内産業の保護との関係で、日本のたとえばイモの値段が下がれば日本の農民は困るので、との値段をどの程度に維持することが農民の保護政策になるかという、そういういろいろな計算から割り出して、一定の高さにするように関税を置き、消費税をかけるというととで、わざわざ国内産業保護の立場から高くしているというのが実情でございますので、この観点が不要であるということでございましたら、砂糖はもう割当制というものをやめれば、今よりもはかるに安くなるということは、これははっきりしております。
  139. 奥むめお

    ○奥むめお君 農林大臣に伺いますが、一トン九十ドルのものが今五十ドルに安くなっている。それでどういうふうに売り渡ししておいでになりますか。それからその値下げの差益はどうなっているか、それをまず聞きたい。どこで扱っているか知りませんが。
  140. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、今大蔵大臣からもお答えがありましたが、政府は砂糖につきましては輸入税をとる、消費税をとるというだけで、別に原糖は上がっても下がっても、それについてさしあたり法律上は手をつけることにいたしてございません。ただ大蔵大臣からもお話ございましたが、重ねて申しますが、農林大臣といたしましては、国内のサツマイモの値段をどのくらいに維持するかということから、食管法で、下がった場合に澱粉もしくはこの原料のサツマイモを買い上げることにいたしております。そこで澱粉の価格、サツマイモの価格を指定することにしております。そうして農村の経済を維持することに協力するということになっております。そういう関係から砂糖の値段があまり下がりますと、あめの値段が下がる、あめの値段が下がると澱粉の値段が下がる、イモの値が下がるということになりますことをおそれて、あらかじめ砂糖については百二十二円ですか——という程度の目標価格をきめてこれを基準にして、消費税もしくは関税をきめてある。そのときの値段が今お話のように原料糖がおおむね九十何がしということを目標にしてやっておりますので、それより下がれば砂糖屋がもうかり過ぎるということになるわけであります。砂糖屋のもうかるのは、今までの例から言うと、その差額を寄付するということでありましたが、これでは適当でないと考えまして、今度はこの原糖の値下がりを政府において取り上げて、そうして今お話のとおり適当な相当の値段で砂糖会社に売り渡すということにしたらどうだろうかということで、どの案が一番いいかということで、今差額を政府に吸収するように、その案について研究しておる。これはこの国会に間に合うように出して一日も早く解決したいと考えております。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。——大蔵大臣は先ほど、一応今のところ砂糖会社の超過利潤については寄付をさせると、そういう建前である、それで三十七年度はどのくらいの超過利潤を寄付として見込んでいるか、今農林大臣は寄付として徴収するについて、これまではそうだったけれども、これからは政府が取り上げて、まあ政府が取り上げるということにお話がありましたが、それならばどのくらいの金額を予想しているのか。従来超過利潤をとる法律が前に出ましたね、あのときに反対運動によってつぶれちゃって、寄付に切りかえたらほとんど寄付が集まらない、財源欠陥が生じて砂糖の関税を引き上げてこの財源を埋めたことがありますね、砂糖関税を引き上げて。四円を八円に引き上げて、消費者負担によって砂糖業者からとるべき超過利潤のとれない財源欠陥を国民の負担において埋めたことがあるんです。今度またそういうことになるおそれもあるんですが、どの程度超過利潤を見込んでいるか、その点を伺いたい。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十四年、五年の超過利得は関係省でいろいろ計画しておりますが、大体三十六億……。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一カ年ですか。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 二カ年で。——という計算になっておりまして、そのうちで税金が大体半分払われておりますから、十八億くらいという計算に落ちついておりますが、来年度の見込みというようなものはまだ私のほうではわかりません。あるいは農林省で計算しておるかもしれませんが、私のほうではわかりません。
  145. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私のほうが大体所管にしておりますが、三十四年度、五年度の過去の分につきましては、昨年の六、七月ごろ政府と業者との間で十八億何がしかの寄付をいたそうということで話がまとまりまして、その寄付金をどういう形で受け入れるかということで、受け入れ機関を最近作りまして受け入れることにいたしているのでございます。それの使途については、国内の甘味資源の奨励費に使おうというようなことでやっているのでございます。しかしこの方法は必ずしも適当でないと私は考えまして、すみやかに原糖の値下がりを合理的に政府にこれを収入する道を講ずべきであるということで、法律の改正をして、これを今国会提出して御討議を願いたいということで今研究をいたしているというのが農林省としてやっていることでございます。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうちょっと。ただいま三十七年度の超過利潤を寄付させる額は十八億ぐらいとおっしゃいましたが、そうなんでしょうか。そんなものですかね。前に一ぺん超過利潤の問題が起こったときに七十億ぐらいありましたですね。七十億ちょっと下回ったと思うんです。それは結局だめになってしまった過去の経過があるわけですが、これは原価計算をしてみなければわかりませんが、まだ非常に少ないように思うのです。まあもう一度確認したいのですが、三十七年度は十八億と大体推定して寄付をさせることにしておったのかどうか、その金額、それから寄付では適当でないというので、これを政府が取り上げる、それはどういう方法で取り上げるのかですね。今その案を練っておられるというふうに言いましたが、一ころ河野さんは砂糖の専売を主張されたことがあるように聞いているのです。思い切ってこの際砂糖を専売にしたらどうだろうか。国内のテンサイ糖の保護は別途にやるべきじゃないか。そうすれば一番合理的になるんじゃないかと思うのです。あるいは奥さんがこれから先に御質問なさるのかもしれませんでしたが、この点を伺っておきたい。
  147. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) それはちょっと誤解があります。十八億というのはすでに過去の分でございます。それでこれはもう確定しておりまして、もう寄付が進行中と私は心得ます。それで三十七年度の分につきましては計算をいたしておりません。計算いたしておりませんが、御指摘のように非常に原料糖が暴落いたしておりますので、これを将来の問題として、また寄付をするのかしないのか、超過利潤をどうするかということは、非常に私はこれを行政的に法律根拠を持たずに扱うことは不適当だと考えまして、そうしてこの国会になるべく間に合うように砂糖の超過利潤を、まあどういう言葉で言うのか知りませんが、吸い上げる道を講じたい。少なくとも原糖の輸入は、まあ今一番簡単な道を考えますれば、政府において輸入する、そうしてこれを一定の価格で製糖業者に売り渡して、それから先はもう自由にするというようなことも一案であろうと考えておりますが、まだ最終案については今せっかく検討中でございます。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 専売についてはどうですか。
  149. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 専売については、ちょっとまだそこまで行くことは政府部内で話し合っておりません。まだ私はそれをお答えする段階に至っておりません。
  150. 奥むめお

    ○奥むめお君 砂糖の国際価格が下がっても消費者はこの物価高のときに下げてもらえないという現状はなぜかといえば、サツマイモ、あめやテンサイのためだ、こういうお話でございますが、せめて国際価格が下がった分だけぐらいは、まあ、私は今の物価高というのは、ことに農林関係物資、それから官営関係物資、それから公共料金、この三本の柱で消費者は困っているのですから、これをその一つである消費物資の生鮮食料品に対して、農林大臣が、国会できめてもらったら、市場も改正したいと思う、ああもしたいと思うとおっしゃるけれども、それは来年か再来年でしょう。現在できることならば、それは消費者に還元すべきじゃないでしょうか。これが一つ。  それからいま一つは、テンサイ糖なりサツマイモというふうなものの、あめの製品というものは、これからもずっとやっていくお見込みでいらっしゃいますか。またテンサイ糖はそろばんに合っていて、将来見込みのある産業になりましたですか、伺いたいと思います。
  151. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、現在におきましては、四国から九州地区の農家経済から考えますと、サツマイモの価額というのは非常に重大でございます。したがって、これは一般貿易が自由化いたしましても、農産物に関する限り、簡単に自由化できないのが日本の農業経営の現状でございます。そういう意味におきまして、砂糖についても、にわかにこれについて国際価格が下がったからといって下げられたのでは、農家経済は持たないという現状にあることは御理解いただきたいと思います。  それからテンサイについてのお尋ねでございますが、テンサイにつきましては、北海道の寒いところのテンサイは一応軌道に乗りました。しかし暖地のテンサイにつきましては、なお検討中でございまして、私は少なくも明年度内におきましては、イタリアの暖地のビートを十分に研究いたしまして、明年の予算編成までには、すなわちことしの年末までには、日本の暖地ビートに対する根本方針を確定いたしまして、そうして日本国内は、少なくともイタリアの方向に、自給自足の方向に持って参りたい、しかも御承知のとおり、イタリアでは日本よりも砂糖の価額が安くて自給自足で、むしろ生産過剰の域までいっておりますから、わが国内でどういうことになるか、まだ結論は申し上げるのは少し早いと思います。今年におきましては、少なくともこの予算の中で全国的に試験田を作って全国的に試験をして、その試験の結果によって明年度以降の方針を立てよう、またイタリアについても、十分にさらに第二回、三回の調査団を出そうということにいたしておりますから、農業経営の上においてサツマイモもしくは麦、これに置きかえて、テンサイの地位を高くきめることが、畜産と相待ちまして、日本の農業経営の大きなものに幸いにしてなればけっこうだと、せっかく研究いたしておるのが今日の現状であります。
  152. 奥むめお

    ○奥むめお君 それでは今までのやり方は日本式だったのでございますか。そしてイタリア式のほうがいいということを発見なさったわけでございますか。それは大へん今までしてきたことが行き違いになって、それを御破算にして新しくおやりになりますか。費用がたくさん要るのでございますか。それをちょっとお聞きしたいと思います。
  153. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、テンサイに、寒いところでやるテンサイと寒いところでなくてもできるというものと二通りあります。イタリアにおきましても、やはり寒いところでやるほうが先にできまして、そうしてあとから南部イタリアの暖かいところでもりっぱにとれる、りっぱにこれを製造できるというところで成功いたしておるわけでございます。したがって、わが国におきましても、北海道においてはすでにある程度の効果を上げておりますが、これが長野を初めとして岡山、九州方面まで、今試験的にこれが耕作されておりますが、政府としてこれを奨励して、全国的に暖かいところのテンサイを奨励して適当であるかどうかというところに踏み切れずにおったのでございますが、それをイタリアのほうを十分に昨年の夏、私は二回にわたって調査団を出しまして、製造過程もしくはこれの規模、苗種等について研究した結果、イタリアの暖地のビートが日本のそれと多少違いがある、考え方にも向こうのほうが大規模であるというふうな点について大いに参考にする点がある。もしそういうふうにしたらば、日本でいけるかどうかということで、また、その品種を、日本で全国的に作れるかどうかという点について、なお、研究する必要があるのでございますから、目下研究しておる。別に、たいした金がかかるといっても、それはあとの製造工場は民間においてやっていただけるのでありますから、政府自身としては、どういうふうに、奨励して、失敗をしないように十分研究するということを今研究中であるとお答え申し上げたわけであります。
  154. 奥むめお

    ○奥むめお君 私ども、テンサイ糖の育成につきましては反対でございます。これは国策であるかもしれないけれども、私ども一同、専門の人、事務的方面から聞きたいと思っておりますが、あとからあとからと道楽息子に金をつぐようにして、そのしわ寄せば消費者の価格にいつまでも待つ。テンサイを育成するにしても、砂糖の価格幾ら下がっても下げないというふうな、そういう制度のもとで、消費者価格をきめるべきものではない。もし育成するのだったら、別の予算を立てて育成すべきだ、こう考えておりますので、大臣に砂糖を値下げできるのじゃないかと、ほかにもいろいろ方法あるでしょうけれども、まず砂糖はどうだと、こう伺ったわけです。これは私資料を持っていませんから……、大臣いかがでございますか。
  155. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほど来申し上げますように、イモの耕地面積、サツマイモの農家経済に及ぼす影響というのは、日本としては相当大きいのでございます。したがって、これをすぐ砂糖の値を下げて、サツマイモの価格が下がってよろしいというわけには、農林大臣としては同意いたしかねます。これにかわるべき耕作、かわるべきものがあればけっこうでございますが、それはまだなかなか発見に苦しんでおるというのが現状でございますから、サツマイモの値は下がりてもかまわぬ、砂糖の値を下げろ——消費者のほうからそういう声が出ましても、農林大臣としては、それに同意をいたしかねます。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。砂糖の問題について、もう一度確認しておきたいのですが、大蔵大臣、三十七年度の歳入の中に超過利潤をどのくらい見込んでおるか。今までは、この三十七年度予算を編成したときには、超過利潤を調整するという建前になっておったわけですから、当然三十七年度の歳入には超過利潤がそこに含まれているはずであります。ですから超過利潤を幾らとして三十七年度の歳入を見込んでいるかということが一つと、農林大臣に伺いますが、前に、超過利潤調整の法律国会に出されたことがあるのですが、ところが業者の反対運動にあってつぶれちゃっているんですね。葬られちゃっている。ですから、今度もこの国会に出されるというようなお話でございますが、また業界の運動によってつぶされるというようなことがあったら、これは私は、また非常に疑惑を持たれると思うのですね。ことに参議院選挙を控えておりますし、非常に疑惑を持たれる。そこでその見通しですね。それからどういう方法で、もうすでに本国会に出されるとすれば、大体の構想はわかっていなければならぬはずです。大体その構想等を伺っておきたい。そうでないと、また業者の運動でつぶされちゃうのじゃないかという懸念もあるのですから、その点は、農林大臣はどのくらいの決意で、どうしてもこの国会でそれを通す決意があるのかどうか、その点もお伺いしたいと思います。
  157. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 砂糖の超過利潤は、別に国が吸い上げるという建前になっておりませんので、三十七年度も、これを見込んでありませんし、三十六年度も同様で、今まで予算の中に見込んだことはありません。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 超過利潤はないとおっしゃるのですか、三十六年度は……。
  159. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一応ない建前にはなっておりますが、別に国の予算とは、一切この問題は関係ございません。
  160. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私から御説明申し上げます。実は先ほど申し上げましたとおりに、砂糖の国内販売の目標価格をきめまして、それから原糖の価格が大体この辺だろうということを見込みまして、その中間のものを消費税、輸入税、砂糖の加工処理費というもので見込んでおりますから、大蔵大臣から言われましたように、一応超過利潤は見込まれないわけであります。それが今お話しのように、異常に原糖の値が下がってきたということでございますから、その下がってきたときに、この価格は適当でないというので、私は急遽この原糖の下がったものについてこれを政府に徴収する道を考えなければならぬというようなことから、先ほど申し上げましたように、一応政府で買い上げて、そうして常に砂糖製造業者には一定の価格で売り渡たすということにしたらどうだろうかということの案を持っておる、こういうことを申し上げたのであります。  最終案はなぜ示さぬかということでございますが、実はわが党におきましても、甘味対策の特別委員会がございまして、せっかくそのほうでも勉強は進んでおりまして、ある程度の案を持つ段階までいっております。それと私の考えておりますいわゆる瞬間タッチとの案を比較いたしまして、そして取捨選択の上でいずれを取るかということで、この国会に法案を作成して出したい、こう考えて今党との間に調整をしようという段階になっておるのでございます。
  161. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大村君いいですか。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一応関連ですから……。
  163. 奥むめお

    ○奥むめお君 重ねて私の意見を申し上げておきますならば、大蔵大臣に伺いたいのですが、砂糖、輸入糖を中心にして関税を五百二十一億ですか、それから消費税をまた三百八億とたくさんお取りになっていらっしゃいまして、それの安くなった分を超過利得としてまた政府に吸い上げる、消費者をそんな目にあわせてよろしいもんでしょうか。正しい政治のあり方として取るものを十分表向き取っているんですかち、超過利得というものはこれは還元すべきものじゃないか、そう思いますが、いかがですか。
  164. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 問題は全く政策的な私は問題だと思います。さっきから農林大臣が言われておりますように、この砂糖の関税率も消費税も、国内産業保護という立場から割り出したものでございますので、この国内産業の保護という観点から離れるということでしたら、関税も下げられますし、消費税も当然下げられますし、施策もその均衡からきまっている問題でございますから、私どものほうとしては、これは消費者のために関税は安いほどいいし、消費税は安いほど、これはいいんだ、ときまったことはございませんが、国内産業との関係でそうなっておるという問題でございますので、そのいずれを取るかの問題だろうと思います。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。参考までに聞いておきたいのですが、これは非常に素朴な質問ですけれども大蔵大臣は砂糖というのは、これは生活必需品と考えておられますか、それとも奢侈品と考えておられますか。この考え方で今のこの政策というものは非常に私は違ってくると思います。これは、あなたのその考え方をはっきりさせておいてもらいたい、国民の生活必需品だったら、今のようなあいまいな態度は許されない、こういうふうに思うのです。砂糖の消費量というのは、これは文明の度合いとも関係すると言われているのですが、そういう点からはっきり答えてもらいたい。
  166. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 砂糖はおそらく生活の必需品だろうと考えているわけであります。ただ、この必需食料品、そのほかいわゆる生活費の中に占める砂糖の比重というものは、そうただいまのところ多くはございませんが、必需品であることは間違いない。
  167. 奥むめお

    ○奥むめお君 今の政治というものは、とかく国策に名をかりて消費者物価を値上げする方向にいっているということが大衆の一番の怒りであろうと思います。たとえばバターでございますが、先ほど農林大臣の御答弁は、私、満足できませんでしたけれども、あれを農林当局が、今バターが値上げになっているのは、雪印とクローバーが独占企業に改編したことが原因になっております。全国で利用しておるバターの七割が雪印で占領している、そしてあとの小部分のバターを作っているものは右へならえしてしまう。雪印から値上げを要望してきている、そしてその値上げのとおりに市販のバターがみんな上がりまして、これなどは農林省が——河野さんだとは申しません。前の大臣ですが、農林省が指導して、させて、そして今日バターの値上がりの原因を作っている、こういうことがいろんな場合にあるのです。バターは、だからどんどん輸入したらいいのに、輸入をしようとするとまた業界が押える、業界に押えられると何もできない、ですからバターがどうしても高くなる。たとえば牛乳の問題でもそうです。百姓は決して、今は五円五十銭、六円では間尺に合いません、やっていけません。それをえさを安くすればやっていけると百姓はいつも言っている。高く買わせれば高く消費者に、牛乳が高くなるわけですから、えさを安くするということは、だれも痛まない、ところが飼料の企業というものは政治によって守られている、ですから弱い者はいつまでもあふりを食って、そして高いものを飲まなければならないし、高いえさで養わなければならない、増産を奨励されるが、豚は一生懸命しますけれども、作った豚は今度は出過ぎて安くて困る、最近また卸値が下がっているようですが、農林大臣の親心にも似合わず豚は下がっていっております。下がっていっているからわれわれ安くなっているかというと、かえって小売物価は上がっております。こういうようなことは、一貫した御方針というものがないと思うのでございますが、先ごろ、きのうの新聞ですか、アメリカのケネディ大統領が消費者についての教書を出している、もう日本に今すぐほしいものなんです。ところが日本の大臣はそういうこと考えてくれない。この間も総理大臣が私の、またそのほかの皆さんの御質問に対しましても、とにかく強気一本で押していらっしゃる。国民の生活というこの苦しみを、あたたかい目で見ていない、ケネディはこれを、私が申し上げるまでもなく、新聞にごらんのとおりでございますが、健康や生命に有害な商品の販売から消費者を守る。これを第一にしている。第二に、偽りの、もしくは大いに人をまどわせる情報、広告、レッテル等から消費者を守る特別教書を出したわけでございますが、第三に、競争的な価格で各種の商品やサービスに接する機会をできるだけ保証する。第四に、消費者の利益が政府の政策を作るにあたって十分同情的に考慮され、行政の場で公正、敏速に処理されることを保証する。きわめて常識的な政治の倫理でありますけれども日本にはこれがとかく忘れられている、バターにしても牛乳にしましても、農民は作って安きに泣き、消費者は、今度市乳が十八円に値上げになった、非常に痛い話でございますが、しかも農林大臣御存じかどうか、町では市乳は四割出ていて、あとは高い牛乳、ホモとかビタとか何とかいって、高い牛乳が六割、しかも東京は二割しか出ていない、地方には市乳はまだあるけれども。農林省はそれに対して市乳の値上げを指導なすったわけです。しかも農民に五十銭、小売商人に五十銭、山分けしろ、こういう指導もなさったと聞いておる。ほんとうでございますか。それではお客さんあっての牛乳であるのにお客さんはどうなるのだ、上げたら上げっ放しで、あとみんなおっかぶさってくるものでございましょう。伺いたいものでございます。
  168. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 奥さんからそういうふうなお話がありましたので、私も一言言いたいことがあります。私は先日も大阪の市場を拝見してみまして、一体もう少し消費者においても安いものをお買いになったらどうだ。たとえて言えば今ごろ野菜もので何が売れるか、私調べましたらやはりキュウリが売れる。普通に自然にできるものより目先のものをお買いになる。こういうことは私はもっと野菜ものなら野菜ものでも……アメリカお話が出ましたけれどもアメリカのように、すべてがカン詰めになっているとか何になっているなら非常に楽ですけれども日本のように、ちっとも加工したものでなしに、生鮮、生鮮と言って、生鮮のものにほとんど消費が食いついてくるということでございますから、政府が施策するといっても施策をする余地がない。冷蔵庫だって冷蔵庫に入れれば品物は安くなるが金がかかるというようなことになります。それはいろいろいい知恵があれば、お教えいただければ、何でもやりますけれども、今のところどうやったらいいのか、私も実はとほうにくれている。どうしたらいいか。そうしてしかも高いものがどんどん売れております。というようなことでございますので、できるだけのことはやるつもりでございますけれども、一方において労賃も実は上がらないじゃないか。たとえば今牛乳の話が出ましたが、私は昨年の秋から牛乳は上がっていくのではなかろうかというようなことを考えましたから、原料乳が不足するのではないかというようなことを考えましたから、一部にはだいぶ非難がありましたけれども、学童用の牛乳を私は押えて、そして牛乳の消費がそのほうに回る、原料乳のほうに回るように実は努力しました。そしてできるだけ努力をやっているつもりでございます。今、そういう指導をしたのがけしからぬというお話でございますけれども、何しろ小売のほうにしても、これを取り締まる方法がございません。そこで、やむを得ませんから、小売の業者等に対してどんどんどんどん上げるのは困ると、いろいろと話し合いをいたしました結果、現に十六円になっているけれども、これ以上は絶対に上げてくれるな、それで十六円の分のうち五十銭だけ生産者のほうにくれ、そうして十六円でひとつ小売業者がやれるようにしてくれ。東京都のほうも取り締まってもらいたい。取り締まりという言葉は当たらないかもしれませんけれども法律がないのですからよく指導してもらいたいということで、東京都に対して、小売業者がこれから値上げする場合には、都の了解なしには上げないという一札を取りまして、それでそこまではいたしましょう、そういうことで、そこで、大いに話し合ってやろうということでいたしたのでございます。ただむやみに、小売業者がどんどんやるからということでやっているわけではない。牛乳にしても、牛乳のほうをもっと御利用になるようにしていただければいいのですけれども、今言うとおり、業者が作るものを、これがいいいいと言えばその方面にいく。配達をされるものを飲むということになっておりますので、これは、どうしても消費者の方がもう少し御協力になっていただかなければ、実は中に入るものだけで、法律でこれを取り締まるわけには参りませんし、指導の面だけでやるだけでは今以上にやることは困難ではないかと、せっかく苦慮しておるのでございまして、いい方法がありますならば、どんどん御注意をしていただけば、できるだけのことは私はやるつもりでおります。どうかひとつ御協力を願います。
  169. 奥むめお

    ○奥むめお君 いろいろ問題はございますけれども、私が伺った面をもう一度考えていただきまして、ただ私は質問いたしましたのですから、こういうふうにしていく、いくつもりだというふうな御方針で聞かしてもらいたいと思います。  それから、これは河野農林大臣だけじゃないのですね、池田総理大臣もいつもおっしゃいます。国民が悪いのだ、国民が消費ブームに浮かれて、うんと物を買うからだ、こういうお話でございますけれども、牛乳、野菜にしても、高いものを買うお客さんもございます。それはふえたかもしれません。しかし、それはきっと高級品を扱う市場にお出でになったに違いない。もっと安物を探して買いあさっている人、時間をかけて二つも三つも市場を見回っている人、小さい野菜屋で買いものをしている人、こういういわゆる大衆の買いものぶりというものを見ているのは私らでございまして、高い品物を並べているようなところは、私寡聞にしてまだ知らないのでございます。この前も大臣が主婦連にお出でになったときに、温室のキュウリやらトマトやらお話しになった。そんなものは大臣しか食べないでしょう。料理屋で食べる人しか食べないと言って、だいぶヤジが入りましたことを覚えていらっしゃると思いますけれども一般の人はそうじゃないということをお考えいただいて付け加えておきまして、どうぞ牛乳の問題を、消費者が高いものを買うから悪いのだと言わないで、高いものしかないのでございますよ。二割しか東京に出回っていない。どこに行っているのですか。みんなこれは加工乳になってしまって、あるいはちょっとくるくると回して攪拌機を通したら二円、三円高くなるのでございますから、こういうところに回さないようにするという政治の手は私はできる。ちょっと御答弁願います。
  170. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) どうも、何と言って御答弁申し上げてよろしいか、私も困るのですが、できるだけ御趣旨に沿って努力をいたします。実は、いろいろお笑いになりますけれども、私もあれこれ苦慮いたしております。しかし、今奥さんのおっしゃるように、牛乳は高い牛乳にして売っている。そのとおりに私も思います。思いますが、これはやっぱり消費者のほうでもお考えいただいて、たとえば、駅で売っているコーヒー牛乳、あんなものは栄養も何もないのだというぐらいのことは ないとは申しません、栄養が少ないのだということはよくおわかりになって、そうしてこういうものを赤ちゃんに飲ませているということは、もうちょっとお考えいただく。そうすれば、ああいうものは作らなくなる。ところが、そういうものが依然として売れますから作るということじゃなかろうかと思う。どうもそっちに行ってしまうから困る。高く売れるものに行きますから、高く売れるものを買わないようにしていただくよりほかに方法はないのじゃないか、こう思うのです。いろいろ野菜物についても、お前の言うのは上等ばかりとおっしゃいますけれども一つお願いがあります。たとえば大根でも、今一番困っているのは、大根をきれいに洗って出さなければならない。手間賃がかかる。それでかかって困る。もうちょっと、きれいでなくてもどんどん買っていただけるようになれば、高く売れるようになれば、非常に農家は助かる。いろいろな点を調べた結果出て参りますけれども、何と言っても消費者の方が、八百屋さんのほうが、そうして市場に持っていかなければ高く買ってくれないということが農村の悩みでございます。これは決して責任を転嫁するということではございません。御協力が願いまして、お互いに啓蒙していくほかにないのではないか。そういう意味においてひとつ御協力いただきたいとお願い申しておるのでございます。
  171. 奥むめお

    ○奥むめお君 それには、やはり農林省もPRをもう少しお使いになりませんと、JASマーク——大へん省内ではお得意さんの仕事でございますけれども、JASマークがほんとうに出回っておりませんのね。知られておりませんのね。予算がないのならば、そういう予算をお取りになったらいいと思うのですね。われわれも頼まれもしないのにJASマークの宣伝をずっとやっておりますが、私ども微力でできませんが、政府ならば、各保健所を通じて、あるいは組合を通じていろいろおやりになれると思うのですが、そういう予算がほんとうに足りないのですね。だから、この牛乳の問題でもほんとうにそうでございます。大臣がそうおっしゃる気持、よくわかるのですが、PRの予算なんて、一体池田内閣国民生活向上のこの潮どきにどれだけ使っているか、私はほんとうにそういう点を考えますから、ぜひ農林省においても、そういう予算を取って働いてもらわなければ困ると思います。いかがでございますか。
  172. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その点は全く同感でございます。ラジオ、テレビ等を使ってなるべくやりたいと考えております。
  173. 奥むめお

    ○奥むめお君 通産大臣にお伺いしたいと思いますが、おいででございますか。  第一に、国産品愛用運動について伺いたいと思います。今大へん御熱意を持っていらっしゃいます国際品愛用運動でございますが、大臣はなかなかスマートな風をしていらっしゃいますけれども、舶来品を身につけていらっしゃらないかどうか、いかがですか。これをまず伺いたい。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 相当私も外国品を使っております。
  175. 奥むめお

    ○奥むめお君 ありがとうございます。お互いに注意しなければならない。で、どういうお考えで国産品愛用運動をお始めになったかということを伺いたい。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 国産品愛用運動は、今始めたわけじゃございませんが、私どももできるだけ国産を使いたい。間に合うものは使いたいし、また国産もいいものがございますから、いいものはひとつ勧めることが必要じゃないか。御承知のように、日本製品がどんどん外国へ行きまして、外国の市場へフラッドすると、いろいろ差別待遇を受けたり、関税の引き上げを受けたりするほどりっぱな競争力を持っておるのであります。そういう点を国民に正しく理解していただく、そういう事柄が国産品愛用の主たる目的でございます。
  177. 奥むめお

    ○奥むめお君 国産愛用で、今通産省は二千八百三十四万三千円の予算をお取りになった。私どもも、日本の産業が発展して、そうして国際収支がよくなることを願い、また日本のいろいろな企業が充実することを願っておることでは、決して負けるわけでございませんけれども、国産愛用が、とかく比較して悪いものでも、国産という動きに利用されやすいのでございますね。こういう点でよほどお考えいただかないと、このごろの国会は、とにかく消費者教育と申しますか、消費者問題に非常に活発な議論が展開されておる。これは、消費者に目をはっきりしてもらって、いいものはいいと見、悪いものは悪いと見る消費者の目を育てること、それよりほかに日本の産業は発展していかない。ところが、国産品と申しましても、子供の鉛筆削り一つ見ましても、あるいはナイフでも安全ピンでも、刃物に近いようなものは全部、何としても日本品はだんち劣ります。どうして日本品がそんなに劣るのかしら。石油ストーブによる火事がずいぶん多うございますが、日本の石油ストーブを買うと火事を出すから、残念だけれども、五、六千円か一万円くらい高いけれども、火事になる危険を考えると外国品のほうがいい、こういうことで売れておりますね。私自身も今、冬を過ぎたから助かったけれども、迷っておった、火事になったら大へんだからと思って。そういうふうな意味の、日本が外国から輸入していても、よほどそういうものを買うよりほかにないところは別として、日本輸入していても信用を落としているものもあるし、また、よりいいものにとってかわられることがあることは、御存じのとおりだと思います。ですから私は、そういう点で国産品愛用運動というものが行き過ぎたり、舶来品を使う者は国賊だと言いかねまじき戦時中のムードがありはせぬかと非常におそれておるわけであります。それが私の心配でございますが、それから今度は、輸出を盛んにして外貨をかせぐのだと今おっしゃっておりますが、それで、国民は消費ムードに浮かれて買いものをするから困る困るというお話を、この予算委員会を通じても聞いておりますが、そうすると、今度国産愛用で国民にいろいろ買うことを奨励する、国内品を奨励する、一つには国民の、いい物はいいと見定める目が見えなくなるのじゃないか、大いに比較してくれたらいいのじゃないか。それから今度は、悪い物でも国内品を買えという運動が盛んになれば、今度は国内で物が売れるから、売れさえずればいいのが業者ですから、そうすると、今度は外へ売れなくなるのじゃないか、これはどういうふうにお考えですか。
  178. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま奥さんが御指摘になりましたように、国産愛用という言葉、これは非常にありふれた考え方で御理解いただきますとおわかりがいただげると思います。しかし、これがそういうムードが度を過ぎますと、ただいま御指摘のような幾つもの弊害が出て参ると思います。たとえば、戦時中の問題を引き合いに出されましたが、そういう意味で、外国品を使うと、これは国賊だ、こういうような感じは、今はそういう点まで運動を展開する必要はないだろうと思いますけれども、ときにはそういうようなこともあるかもわかりません。しかし、もう一つの問題で、国産品愛用運動をし、それに徹底した場合に、そういう産業、そういう企業自身が合理化がおくれて、あるいは国際的競争から立ちおくれる、こういうような事態もままあるのでございますから、やはり程度が実は非常にむずかしいことだと思います。たとえば、私ども非常によく目につくことでございますが、自動車なども、国産自動車なら大体事足りるわけでございます。政府自身、官庁自身がみずから国産自動車を使うようにする、これなどは、そういう意味ではりっぱに役立ってきていると思います。またこれは、産業もそういう意味で育成され、国際競争力をやはりつちかいつつあると思います。あるいはまた、時計がよく例に出されますが、ただいま日本の時計などは外国からも非常に所望され、あるいはカメラ、これまた外国の品物に比べてりっぱに、優秀でございます。私は、こういうものはいわゆる正しい意味の愛用運動として、もちろん展開されてしかるべきであろう、かように思いますので、その他幾つもそういう意味のものがございます。ただ問題は、奥さんのお話の中にもありましたように、消費者が品物についてその比較を十分理解し、あるいは品質を十分理解するような処置がとられているかどうか。今日までいろいろ通産省もとって参りましたが、それらの点ではなお抜かっているものがあるように思われます。だから、せっかく正しい意味の国産愛用、これは別に消費を奨励するつもりではございませんが、同じ使うなら品質優良な国産品を使ったらどうだ、こういうことを実は申し上げて、そういう意味で、その品質、性能等を十分理解してもらう、そういう方法がほしいわけであります。そういう意味から通産省考えましたのが、もうすでに御審議をいただいた日本工業規格制度でございます。先ほどお話しになりましたJISマーク、こういうものはやはり一定の規格を制定して、その規格に合うものについてマークをつけさせる、そういうことで、これは十分信用の置けるもの、こういうことを実は裏書きしている制度で、またあるいは、電気器具等につきましても、そういう意味の規格を勧めているわけであります。ただ、いろいろ問題がございまして、JISマーク等についても、その後の変化で相当不良のものも作っているところがありますから、取り消したり、あるいは工場の指定の辞退などをしていただかなければならないこともあります。電気器具なども、私どものやっていることが間違いだとは思いませんけれども、火災等も、あるいは電気器具が原因じゃないかというようなことを言われているようなものもしばしばある。しかし、これもいろいろ調べて見ますと、多くは電気工事自身の工法が十分でなかった、あるいは器具の取り扱い方が十分理解されていない。私は、器具そのものよりも、そういう点についての原因も多分にあるのじゃないかと思います。最近この国会に家庭用品についての品質表示法を提案いたしまして、御審議いただいているのも消費者に十分理解していただき、その用途等も十分知っていただきたい。こういうことを実はねらいにいたしておるわけでございます。最近国際収支がまずい。そういう意味で、その一助にもなろう。もちろんその一助にもなるだろうと思いますが、本筋は、どこまでも消費者保護といいますか、消費者の利益のために、ただいま申し上げるような制度を設け、そして普及徹底方を実ははかっておるわけでございます。
  179. 奥むめお

    ○奥むめお君 今JISマークのお話が出ましたけれども、今度品質表示法案ができますにあたりまして非常におそれておりますことは、通産省の花形であるJISマークが、今、六十点満点になっておりますのですよ。これを八十点満点と六十点満点にしてくれれば、八十点なら、これはいいだろうと思えますけれども、六十点満点で大ざらいをしているものですから、責任をもって作っている大メーカーは、そんな六十点満点ぐらいのJISマークをもらったってしようがないといって顧みません。買いますほうは、JISマークというのはいいんだと言いたいところだけれども、六十点ぐらいで満点をつけるのですから、そうよくないものもある。ですから、そういうことをいろいろな面にわたってお調べ下すって、そして間違いのない品質表示マークをお作りになりませんと、今のJISマークが、どれだけ国民に信頼されておりますか。私はこの法案の出発にあたって、十分御注意なされなければいけないと思うのですが、そういう点で御意見を聞かしておいてもらいたいと思います。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘のように、十分効果をあげないという批判もあろうかと思います。しかし、私はやはり、こういう事柄も、消費者保護の一助には必ずなる。また、そういうことで制度をもり立てていかなければならぬと、かように思います。  ただ私どもも、経済といたしまして、なるべく統制的あるいは強制的な規定は排除したいというような気持で、業界の自主的な方法で効果をあげるように実は臨んで参っております。最後に残りますものが、さらに国の権力によって強制的な措置を要求するようなところまで発展するかどうか。そういうところが、今言われる八十点だとか、あるいは七十点だとかいうような点がつくゆえんだろうと思います。しかし少なくとも、こういう点は望ましい制度だと思いますので、せっかくあります制度ですから、十分効果があがるように工夫をして参りたいものだと、かように思います。
  181. 奥むめお

    ○奥むめお君 この家庭用品品質表示法案と不当景品防止法案が出ようとしています。今お出しになりました不当景品防止法案は、不当顧客誘引防止法案を急に名称を改められたものですが、どちらも業界から反対陳情はございませんでしたか。すぐに反対運動があったと聞いていますが。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 不当顧客誘引防止法案、これはただいま公正取引委員会のほうで、いろいろ工夫しておるように伺っております。通産省直接のものではございません。
  183. 奥むめお

    ○奥むめお君 家庭用品品質表示法案につきましても、これは業界の自主規制でやるから、そういう法律は要らないじゃないかという声がだいぶ強いと聞いております。それが一つ。  それから表示をさせるについて、現在繊維製品には、繊維の品質表示法が、強制じゃないけれども法律がありまして、罰則までできております。ところが、いかにインチキなものであるかということは、十分お調べいただいたらばおわかりでございましょう。私どもの代表がしょっちゅう通産省へ行って申しておることでございますけれども、あれは、品質を表示すべき法律であるにもかかわらず、ラベルに品質を表示しないものが非常に多くて、そうして自分の会社のマークを、あるいは自分の会社のものはいいのだ、いいのだということを書いたラベルだけが張られているものが非常に多いのでございます。また先ごろ一宮で起こりましたことなんかは、西陣純毛として出していた安い二、三千円の織物ですけれども、これは全然毛の入っていない、絹も入っていないナイロン製品で、西陣純毛として売っている。ちゃんとそうラベルに書いてある。こういうように今の日本の商業道徳が非常に低うございますから、いろいろなインチキが行なわれております。ですから、こういうことを十分お調べいただいて、こういう法案を推進なさらないと、消費者こそいい迷惑だと、こう申し上げるよりほかはないと思う。いかがでございますか。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの法規は、いわゆる任意表示になっております。あるがままの事実を伝えるということでございます。いろいろ批判等もございますので、これは必要によれば強制表示というようなことも、法規にはあるわけでございますが、どうしても自主で十分の実をあげるような表示がされないということでございますると、これは、さらに政府考えていかなければならぬ、かように思います。  で、今、家庭用品品質表示法案という法案を御審議いただいておりますが、この法案が成立いたしますれば、今日実施しております繊維製品についての法律は、新しいほうへ吸収される、かように私ども考えておりますので、この新しい家庭用品の品質表示法案、これが成立しましたら、もう少し実態に合うように業界を指導していかなければならぬ、かように考えております。
  185. 奥むめお

    ○奥むめお君 その一つでも、長い間運用していて、ほとんどその実をあげていないから、新しい法律幾ら作っても心配じゃないか、こういうふうに御質問しているわけです。これは任意法だから、しない人はそれで罰しられないのだ、している人が、自分の宣伝をしたり、あるいは書くべきことを書かないということがいけないわけでございます。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今までのものに相当、効果があがらないものもございます。で、今回家庭用品の表示法を考えました場合は、もう少し消費者にわかりやすく——たとえば先ほど純毛だとかいうようなお話が出ておりましたけれども、交織の割合なども表示いたしますけれども、さらに洗剤等の使い方も、酸性は困るとか無効だとかいうようなことまでも表示すれば、繊維製品などについての利用も、もっと徹底するのじゃないかというように考えます。ただ業界に対する行政指導は、非常に私どもも注意はいたしておりますけれども、なかなか多数の業者のことでございますし、また今日までのものが、表示のあるもののほうが信用があるというように考えて、かようなことを考えまして、この法律によらないで表示して、先ほど御指摘のような、マークをみずから使っておるというようなこともあるようです。なかなか制度自身が、混淆といいますか、悪用されがちというような点も、十分注意しなければならない事柄でございます。
  187. 奥むめお

    ○奥むめお君 不当景品防止法案は、公取にも関係がありますけれども、通産関係から出てくるわけでございますか。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは公取のほうから出ております。
  189. 奥むめお

    ○奥むめお君 そうですか。ちょっと伺いますが、この問題は、懸賞販売あるいは景品販売あるいは誇大広告なんかを取り締まろうとする法律でございますけれども、大臣はこれについて、いかがでございますか。
  190. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、ただいま御指摘になりますような誇大広告あるいは景品につき、これらのものが度を越しますと非常な弊害が多いと思います。そういう意味から公正取引委員会で、かような法律を作る、これはやむを得ないものじゃないかと、かように思うのでありまして、私は賛成するつもりでございます。
  191. 奥むめお

    ○奥むめお君 推薦して下さいますか、消費者側として大事な問題ですから。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まだ中身を十分検討いたしておりませんが、名前を聞いただけでも推進したいと、かように考えます。
  193. 奥むめお

    ○奥むめお君 通産省としては非常に必要な——今の時局柄、先ごろケネディが教書に言うておりますように、私はほんとうに必要だと思いますので、ぜひ推薦していただきたい。  まだ御質問したいことがたくさんございますけれども、時間もございませんので、これでやめます。
  194. 藤田進

    ○藤田進君 関連して一つだけ。これまた建設省でも同じ、どうも現在、法制上困っている問題、ただ通産大臣にお伺いしたいのは、商取引には違いないのですが、最近郊外なとに不動産——土地の宅地造成などしたということで、大臣自身も経験されているでしょうが、朝、新聞を開いて見ると、どさっと土曜日あたりは広告が出ておりますね、これは警視庁が調べてみると、毎日のように相当に膨大な件数、苦情で上がってきております、取り締まりのどうも方法がない。かなり大きな会社が兼業といったようなものもあって、たとえば西武新宿線で鷺宮辺に案内所があって、そうして行ってみると、大ぜい寄ってたかって、この車に乗れ、すぐその辺だというわけで、乗ってみるというと、かなり長時間経過したのに、まだまだ向こうの辺にその土地がある、なかなか現地で契約しなければきげんが悪いということで、契約するしないは自由意思としましても、なるほど付近にあるのだろうと、自動車でちょっとちょっとと言うものだから、乗って行って見れば、途中でおろしてくれないしというような、ひどいものです。それは。こういうものが、どうもどこの省も手をつけなかったわけですが、今、公取なり何なりの法案の問題もありますけれども、どうもこれは、そのものずばりで適用されないようにも思う。通産大臣あたりが、むしろ非常な弊害が各地方都市にもあります。東京ももちろんです。国会の中の議員さんでも聞いてごらんなさい。かなり被害者がありますから。こういうような実態は、どう見られ、またどういうふうに対策としては考えられるのか、かなりおそきに失するけれども、しかし、まだまだこれから問題は、東京並びに地方各都市で起こってくる問題だと思う。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今政府が、物価問題と取っ組んでおりますが、そのうちの一つに、最も大きなものとして、不動産取得価格の高騰といいますか、土地の高騰、こういう問題があるわけでございます。ことにただいま藤田さん御指摘のように、土地会社等の営利については、過去においても、時に刑事問題まで起こしておるものがございます。  そういうことを考えますと、これが住宅対策上から申しましても、これが適正でなければならない、また、できるだけ安く提供されなければならない。こういう意味で、もちろん政府も、いろいろ工夫をいたしております。私は、先ほどの公正取引委員会から提案されるものが、どういう内容を持つかと思いますが、もちろん土地なども、その対象としてしかるべきものと、かように考えております。ことに誇大広告等、実際に合わないような点については、もちろんその指導をして直してやらないと非常な迷惑を受けられるのじゃないか、とにかく、土地は非常に近いような表示はしてあるけれども、出かけて見ると非常に遠い、またその土地は、容易に地ならしもできるように考えて行って見ると、たいへんな土地であるとか、そういうようなことは、もう非常に多いようでございます。そういう意味の指導も十分しなければならぬと思います。ただ、現実の問題で、どの程度以上ならどうだということは、なかなか表現もむずかしいだろうと思いますけれども、しかしこの種の事柄が行なわれないと、価格の安定はなかなかできないのであります。  ただいま御承知のように物価統制令はもうございませんし、価格を押えるというものは、公共料金だけと申してもいいような状況でございます。その他は全部が自由取引の建前になっております。行政官庁として、今の物価騰貴による諸物価の高騰というものを放任しておるつもりは毛頭ございませんけれども、やはり法制的なものがないというと、そういう意味において、時に行政指導だけでは目的を達しない、こういうものも出て参ったようでございます。こういうことは一般の社会秩序といいますか、経済秩序のあり方から申しまして、私はたいへん残念なことだと思う。むしろ業界の自主的な、また倫理的な観点に立っての物価のあり方というのが、まず第一には望みやすい——望みたいことだと、かように実は考えておる次第でございますが、必要な法律等が出て参りました場合に、これは十分審議して参りたいものだと、かように考えております。
  196. 奥むめお

    ○奥むめお君 一つ言い忘れましたが、今までの品質表示法でJISマークの問題で、あれは何年間ごとに直す、改めるということがあったと思いますが、今までの業績はいかがでございましたか、ちょっと事務当局に聞きたいと思います。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは工業標準化法によれば、御承知のように三年ごとに改めるということになっております。ところで、今日までのJISマークを表示いたしましたものが約五千三百件ございます。
  198. 奥むめお

    ○奥むめお君 五千三百件は何でございますか。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは日本工業の規格で作ったもの五千三百件、そのうち標準品目九百品目に達しております。家庭用品に該当するものが、このうち約百五十品目でございます。この百五十品目のうちにはワイシャツとか、かや等の繊維製品、ホームラバー等の合成樹脂の加工品ですね。電球、螢光灯、電気機械器具、なべ、湯沸かし等のアルミ製品などの雑貨工業品のようなものがございます。  そうして、もう一つお尋ねに関係すると思いますので申し上げておきたいのは、ただいま申すような件数になっておりますが、今日まで、どういう成績になっているかとかように申しますと、これは品目とぴったり合うわけじゃございませんが、件数といたしましては、八千五百の許可件数がございます。で、もうすでに十三年たっております。その間に不合格になったものを申しますと、これが大体今日までのところ、JISマークの表示停止を現在命じているものが約二百件、これは二・三%、それからまた、表示停止を命じたのではなくて、工場に対して辞退勧告をいたしました件数が約三百件、三・五%というようなものがございます。この中におもなものは鉛筆だとか、セメントがわら、あるいはクレヨン及びパス、水彩絵の具、こういうような学用品等もございますので、こういう意味では、JISマークが相当大事なものだと、かように私ども考えますので、一そうその適正化をはかり、不良品の出ないように検査も十分厳密に行なうつもりでございます。
  200. 奥むめお

    ○奥むめお君 表示マークで、もう一つ伺っておきたいのは、これは、どういうふうに使ったらいいのかとか、これは、こういう使い方をしたら間違うとか、破れるとか、焦げるとかいうふうな、消費者に対するPRをかねた表示の義務づけがないんですね。今まで繊維品の表示法にもなかったわけなんです。これはつけ加えて下さいますが、どうでしょう。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今度の家庭用品品質表示法では、ただいま御指示のありましたような点も、できるだけ簡便に、わかりやすくひとつ考えてみようというので、いろいろ工夫しておる最中でございます。
  202. 奥むめお

    ○奥むめお君 もう一つ通産大臣おいでになるところで、ちょっと伺いたいんですが、法制局長官いらっしゃいますか。
  203. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 今いないです。
  204. 奥むめお

    ○奥むめお君 それじゃ、その次の方、だれかいないですか。
  205. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) いないようです。
  206. 奥むめお

    ○奥むめお君 それじゃ、通産大臣に伺います。中小企業等協同組合は、価格協定をできるもののごとく、この前通産大臣がおっしゃっております。これはできるのであるか、できないのであるか。また、できるようにしたいと思っていらっしゃるのか、この三つのうちどちらでございますか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 協同組合の法律関係いたしまして、通産省関係のものに、計量器の小売業をやっているもの、あるいは石油関係のもの、いろいろ協同組合があるわけでございます。今日まで協同組合が、その他の事業も行ない得るということで、価格協定をやる。これは物価協定が、値段を上げるということになる場合があるのではないか。で、この前奥さんからお尋ねをいただきまして、商工組合が、そういうことができるんじゃないか、今度団体法を作った結果は、価格が上がるんじゃないかというお尋ねでございましたが、これは商工組合の団体結成方法は——作りますけれども、商工組合の行なう価格の問題は、輸出品を除いては、在来と変わりはございませんから、御懸念の問題はなくなったと思います。  ところで、この協同組合の価格協定の場合は、行政庁の認可を受けないで、協同組合法第九条の二に規定するところの——これはとう書いてあるかというと、「その他組合員の事業に関する共同施設」として実施しているものがあるのでございます、これが、いわゆる独禁法の立場から、一体どういうふうに扱われるか。これはやはり、公取が監視する建前になっておるそうでございます。これは私は、自由にできてはおらない、かように思います。だから、協同組合が価格協定を実施した場合には、所管の行政庁というものは、県通産局、また本省に関係ございますので、それに届けさせて、不適当なものは、これを是正または取りやめさせておったのでございますが、今回、さらにその指導強化をすることとなり、協定を実施する場合には、その二十日前までに所管行政庁に届けさせることとし、協定実施前に、その内容を十分調査して、不適当なもののないようにするということでございます。  したがいまして、協同組合によりまして、自由なことはいたさない、在来は実施の後の届け出でございますが、今回は、実施前にひとつ連絡をすることになっておりますので、十分取り締まりができる、かようにこれは考えております。
  208. 奥むめお

    ○奥むめお君 重ねて伺いますが、現に中小企業協同組合法によって値上げをしているところが少なくありませんが、今大目に見ていらっしゃるものが多いと思うのですが……。それは、私が今申し上げたことは、違法であるとお認めになりますか、そんなことはないとお考えになるでしょうか、それとも……。
  209. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 協同組合法ができました当時から、組合員の共同事業として、たとえば共同購入、共同販売ということもできるようになっておりますが、価格の協定も協同組合で一応やるということが認められている、こういう扱いに相なっておりますので、先ほど大臣から申し上げました商工組合のほうは、一種の調整行為という、調整的な事業をやりますが、これにつきましては、正式の認可を経てやらなきゃならんことになっておりますし、価格協定についても、相当むずかしい条件をつけております。これは、一定地域の同業者が相当多数入ってやる場合でございますので、取り締まりが厳重になっておりますが、協同組合は、二十人あるいは三十人の同業者が寄りまして、そしてお互いの販売条件について協定をするということが、組合の共同事業として認められておるわけでございます。しかしながら、これは法律的には、不当に、一定の取引分野における競争を自主的に制限して価格を引き上げるというような措置をとりました場合は、独禁法の本来の規定が適用になるわけでございますので、独禁法の監督を受ける。  したがいまして、公正取引委員会を通して監督をいたしておりますが、私どもといたしましても、行政面から、不当な価格協定をしないように、届け出をさせまして、十分行政指導面で監督をしていく、こういう建前をとっておるわけであります。
  210. 奥むめお

    ○奥むめお君 厚生大臣にお伺いいたします。先ほど厚生大臣に——この前の質問でも申し上げたわけでございますが、現在行なわれております環衛法が、物価値上げの大きな一つなんです。で、環衛法について、どう改めなきゃならないか。お考えがありましたら、まず聞かしていただきたい。
  211. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 環衛法につきましては、奥さん、十分御承知のことと思うのでありますが、私はこの環衛法が、物価引き上げの大きな原動力となっておるようには考えないのでございます。
  212. 奥むめお

    ○奥むめお君 そんな御答弁あるでしょうか。私どもから言えば、むしろ役所が発表しているものでも、それを言うて、それから世間は、なおそう感じる。実際を御存じでございますか。今床屋は幾らでございますか。それから基準価格幾らでございますか。パーマは幾らでございますか。聞かしていただきたい。
  213. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 一々のことはよく存じませんので、政府委員からお答えいたします。
  214. 奥むめお

    ○奥むめお君 政府委員からですか、はい。
  215. 五十嵐義明

    政府委員五十嵐義明君) ただいまお尋ねの基準料金や価格についてお答え申し上げます。適正化規程によりまして定められております基準料金は、府県によりまして事情が違いますが、大体理髪につきましては、おとなの理髪料金が百六十円で……。
  216. 奥むめお

    ○奥むめお君 百四十九円じゃないですか。
  217. 五十嵐義明

    政府委員五十嵐義明君) 県によって違います。それからパーマにつきましては五百玉十円程度承知いたしております。
  218. 奥むめお

    ○奥むめお君 それの中に含められている数字を出して下さい。
  219. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 政府委員、質問の趣旨がおわかりですか。
  220. 五十嵐義明

    政府委員五十嵐義明君) はい。
  221. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) それじゃお答え下さい。
  222. 五十嵐義明

    政府委員五十嵐義明君) ただいま手元に資料がございませんので……。
  223. 奥むめお

    ○奥むめお君 私がじゃ教えてあげます。ちょっと聞いていて下さい。これは私のほうが適正化審議会の委員に入っておりまして、法律ができますときには、非常に私、苦労いたしました。ですから、資料として作っております。床屋さんが労務費として六二・九%使っております、計上しております。直接材料費として一一・三%、間接費、つまり店主のもうけでございます。いろんな雑費もありましょうが、二五・八%ですから、これによりまして労賃というものは六二・九%に勘定して適正化料金をきめてある。美容で申しますと、五百十九円二十八銭、私のほうできめたのと、厚生省でその後お改めになったなら、その事情を、またあとで別に聞きたいと思いますが、五百十九円。そこで直接労務費が五三、八%、材料費が二二・六%、間接費が二三・六%、こういうふうに、そのほかいろいろ労務賃も入れて、いろいろやっておきながら、その数字がちっとも利用されないで、ずっと高きに及んで、床屋さんは今二百五十円、あるいは二百円、二百二十円、三百円、そうすると百四十九円九十一銭ときめたものは、何にも顧みられていない。パーマネントでも、五百十九円二十八銭ときめておきながら、今行なわれているのは七百円、八百円、九百円、こういうふうに、人がたくさん集まって、厚生省の予算審議会を作りながら、実行されていない。これは私は、消費者の暮らしを楽にするために、ほんとうに心配して、これをにらんでおりますのですから、厚生大臣も、そんなに何か腹立っているような、そういう問題を聞かれることは気に入らぬという顔をなさいますけれども、これはお互い国民の厚生のためにしていると思いますから、どうぞ。
  224. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 決して腹立っているわけじゃございません。むしろ私が、一々存じませんということを、恐縮しているようなわけでございますので、よろしくお願いいたします。  適正化法に基きまして、適正な規程を作って、いろいろの基準を定めているわけでございますが、これは奥さんも御承知のように、これ以上——これ以下になったら、衛生上おもしろくないというような意味合いにおきましての、いわば最低基準を定めているものでございます。現実の料金ということになりますれば、これを上回るということはありましても、これを下回ることを避けていると、こういうような形になっております点は、これは私から申し上げるまでもなく、よく御承知のことと思うのです。最近と申しますか、近来この種のサービス料金が上がって参っているということも事実でございます。  これは私も、先ほどのお答えが、あまりぶっきらぼうであったかと思うのでありますが、適正化法があるために上がったというふうには考えないと、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。御承知のように、この種の仕事は、いろいろの公共料金が値上げにもなっておりますし、また労賃等がだんだん上がって参っていることで、自然ある程度値上がりするということは、これはやむを得ぬかと思うのであります。ただし、あまりにも時局便乗、値上がり便乗、値上がり便乗と申しますか、そういうふうなことで、大幅に引き上げると、こういうようなことは避けなければならぬ。格別の権力を持っているわけでもございませんけれども関係の当局あるいは関係の団体等と連絡いたしまして、便乗的な値上げというものについては、抑制する方針で、指導をいたして参っているわけであります。何と申しましても、業態が業態でございますので、今日のような状態になりますというと、ある程度値上げをするということもやむを得ないかと存じている次第であります。
  225. 奥むめお

    ○奥むめお君 それじゃ適正な直接労務費という、計上してありますものは、不当だとお考えになりますか。あんなものだろうとお考えになりますか。
  226. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどお述べになりましたようなことでもって、料金が決定せられるということになるわけでございますが、決してこれを不適当だとかいうようなことは直ちに言い切ることはできぬと思いますけれども、しかし、これ以下になると、むしろ保健衛生の見地から申しまして心配だと、こういうふうな意味で基準が設けられているように、私は承知いたしているわけでございまして、したがいまして、だんだん一般の労賃も上がってくる、生活費も上がってくる、こういうことになりますれば、自然この種のサービス料金の内容につきましても、上がって参るということは、これはやむを得ない、かように考えている次第であります。
  227. 奥むめお

    ○奥むめお君 私、持ち時間がなくなりつつあるので、環境衛生法のことでは、またあらためて直接厚生省のほうへ申し上げたいと思います。  で、今度は先ほどお読みになりましたように、ケネディのあの消費者教書の一番初めが衛生管理のこと、それくらいに、私もそうありたいと思っている人間でございますが、日本で、先ほど一千何件とおっしゃいましたが、管理のことで摘発したというふうなお話がありましたですね。幾つあったかしら。非常に衛生監視員が少ないとお考えになりませんか。こういう大事なときに、どれくらい問題にして指摘なすっていらっしゃいましたか。
  228. 五十嵐義明

    政府委員五十嵐義明君) 食品衛生の関係からの御質問かと思いますが、食品衛生に関しましては、食品衛生監視員制度がございまして、保健所を中心にして食品の管理に当たっております。全国の保健所に約二千名の専任の職員がございます。それにほぼ見合う二千人ほどの兼務の職員がいるわけでございます。人数は必ずしも十分とは申せない状況でございます。なお、これを補う意味で、昨年度から食品衛生指導員制度というものを設けまして、民間の業界の方に一定の講習を受けていただきまして、業界の自主的な御協力によって食品衛生の確保を期する、こういう制度も兼ね合わせて行なっているわけでございます。
  229. 奥むめお

    ○奥むめお君 それにつきまして厚生大臣にとくとお考えいただきたいのは、このごろ私は衛生監視員は非常に足りないと思うのです。環境衛生だって幾つ一体摘発したかということを聞きたいのだけれども、非常にいかがわしいお菓子や薬が売られている、大事なときでございます。子供が睡眠薬を買う、あるいはアンプル製剤の女王蜂からとったという天然ローヤル・ゼリーを入れたと称するローゼリー、または強肝——肝臓を強くする、栄養を補給するというガム、グロンサン・ガム、アミノ酸ガム、それからミネビタール・ドリンク、これは錠剤でございますが、成分も不明であろうと思うし、そうして、これは薬品であるか嗜好品であるか、厚生大臣、どちらでございましょう。
  230. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 例としておあげになりましたものにつきましては、あるいは薬であるものもございましょうし、薬でないものもあるのではないかと思いますが、その辺につきましては事務当局からお答えいたすことになりますが、ただ、私といたしましても、いろいろまあ科学が進歩したと申しますか、技術が進歩したと申しますか、いろいろな薬がいろいろな方面に使われているように思います。その中には、お話にもございましたけれども、あるいは広告の面から見てもいかがであろうか、あるいはまた内容、実体の表示の面からいたしましてもどうであろうかというようなものもなきにしもあらずと思うのでありまして、こういうものなどが、乱用と申しますか、あまりにも用いられ過ぎますというと、あるいは知らず知らずのうちに国民の体質にも影響してくるというふうなおそれも私はあるような気がするのでございます。その意味で薬品その他についての取り締まりにつきましても、もっとこれを強化し、もっと徹底する必要があるように感じまして、従来どちらかといえば指導的な意味でいろいろ取り扱っておりましたようなものにつきましても、ある程度の時期が過ぎますれば、むしろそれを取り締まりを強化していく、こういう考え方でもって今後に処して参りたい、ある意味においては非常に便利な薬ができた、と同時に、それが扱い方いかんによると人体に有害だ、こういう場合もしばしば指摘されるところでございますから、特に注意して参りたいと存じております。
  231. 奥むめお

    ○奥むめお君 医者の処方がなければ買えないとか、あるいは医者からちゃんと手続を踏まなければ買えないようなものが、今どんどん買えるのですね、睡眠薬でも、あるいはスルファミン剤でも、いろいろ耐性が……。こういうふうなことは、今すぐにでも強化をなさらなければならないことだと思うけれども、いかがでございますか。なぜなさらなかったのですか。
  232. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 奥君の持ち時間は終了いたしました。
  233. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) その点については、実は私も心配をいたしております。したがって、近ごろ新聞にも見えておるところでございますけれども、本来、医者の指示によって手に入るべきものが、ルーズに自由な形において入る、こういう点は、はっきりと指導もし、監督もしていかなければならぬ、かように考えまして、関係業者にも特にその旨を伝えまして自粛もさせておりますが、法令に違反したものに対しましては、私どもは徹底的に取り締まって参りたい、こういう考え方をいたしておるような次第でございます。決して放任をいたしておるわけではございません。
  234. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) よろしゅうございますか。  奥君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  235. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、成瀬幡治君。(拍手)
  236. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最初に、外務大臣に沖縄のことについて伺いたいと思いますが、発表はあすだと思うのですが、あす何時ごろ、同時発表かどうか。
  237. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本時間にいたしまして、あすの午前六時にアメリカ側で発表いたします。アメリカ側の発表ということでございます。
  238. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 外務省にすでに内容が報知されておると思います。御承知のように、もう新聞も声明も、それから六項目等についても報じておるわけですが、内容について御説明願えませんか。
  239. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは発表まで極秘にしてくれ、こういうことでございますので、ただいまの段階では御遠慮させていただきたいと思います。
  240. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実は、新聞のこれは情報なんですが、発表がおくれたのは、日本が、内示されたものに対して検討を加え、そうして申し込むためにおくれたということですが、その間の事情を御説明願いたい。
  241. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どももその考え方を一応持って参ってきましたので、日本政府としての考え方を申しておきました。その関係で多少日が過ぎたということはあるいはあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、日本側考え方を言うておいた次第でございます。
  242. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 日本側の基本的な態度なんですがね、国会の議決等もございましたが、施政権の返還というのが主点だと思うわけでございますが、どんなふうにお考えになりますか。
  243. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 施政権の返還につきましては、われわれ事あるごとにこのことを強くアメリカ側に要望いたしております。ただアメリカ側としては、この日本の要望を、この時点で聞き入れるわけにはいかない理由は、極東における脅威と緊張が続いておるからということでございます。したがって、聞き入れられない場合においては、とにかく沖縄における同胞の福祉を増進しなければいかぬ、自治権も拡大しなければいかぬ、こういうふうな点をわれわれ申し入れてございまして、さような線でケイセン報告が考えられ、大統領の発表になるということかと考えるのであります。
  244. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 極東のその緊迫と、いわゆる軍事情勢というものと施政権というものは全然無関係なものである、そういう見解ですかどうですか。われわれはその見解をとりたいと思うのですが、政府の見解はどうですか。
  245. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 極東におきます緊張の状態あるいは脅威の状態、これがやはり沖縄をアメリカが軍事基地として使っておる、このことと切り離せないということであります。したがって、施政権というものはアメリカが講和条約の第三条の規定に従いまして持っておるということは必要だというのがアメリカの見解でございます。したがいまして、この問題については、施政権を一日も早く日本へ返すということを要望しておる政府の態度ですね、これとは並行線をたどっております。こういうことであります。
  246. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや、僕が聞いておるのは、軍事基地の問題として極東の緊張の問題と施政権は別個な問題ではないかと、政府の見解を聞いておるわけです。アメリカの態度を聞いておるわけじゃございません。
  247. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題は別個と言い切ることもあるいはできぬのではないかというふうに思います。要するに、基地としての重要性を確保するという立場から見ますると、やはり施政権との関連ももちろんあるわけでありましょうと思います。
  248. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや、日本政府の態度はそういう態度だと、こういうことなんですか。
  249. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本政府としては、施政権を返してもらいたい、こういう態度をとっております。しかし先方は、施政権を返すとその基地の問題との関連があって、これはできない、こういうことであります。
  250. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 だから、極東の緊張の問題と施政権とは別個だと、こういうふうに承ってよろしいですか、政府の態度は。このことを承っているんです。
  251. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうもそこまではっきりと割り切るのは、私のほうとしてはまだ結論を出しかねています。
  252. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連。言葉を返して成瀬委員質疑されているんです、外務大臣。この間も問題にこの委員会でなって、池田総理はもう了承したように、極東の緊張が緩和されるまではやむを得ぬだろうと、こういうふうにキャラウェー発言があったといったようなことに関連しても、総理は、いやそんなことはないんだと、今の時点においても施政権の返還を迫っているんだということであったわけですね。相手のほうは極東の今のような緊張だとかなんとかおっしゃるわけですが、わがほうとされては、それとは関係なく施政権を返還してもらいたい、それは極東が緩和あるいは安定するというのを待つまでもなく返せというふうに従来答弁されてきているように私は理解するのであります。ところが、そこまではまだ検討済みでないので、極東のそういったような、情勢が緊迫しといったようなことであれば、わがほうとしてもそれはやむを得ないことなのかどうか。その結論は出ていない、こう今言われるわけですが、そうなると、従来と若干違うふうに私は思う。
  253. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 要するに、われわれは施政権を返してもらいたい、こう言っているわけです。ところが、アメリカのほうは、緊張の状態と施政権を返すという状態というものを一つにして考えているわけです。そこで論理的にどうかということでございまするが、まあ以上の答弁をもって現状においては答弁にさしていただきたいと考えております。
  254. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。どうも今の答弁ですね、明らかに矛盾があると思うんですよ。この前からのここの応答を聞いていますと、あくまでも自由主義国家群に加入して、そして極東の今緊張がある、そういうことを認めているわけです。そういう中で施政権の問題だけ返せという要求をまあしていると、こういうことを言っているんですが、政府は、あくまでもそのような自由主義国家群の一員としての任務を果たせば、返せという要求は非常にこれはおかしいことになる。また、そういう事態を認識しないで、返すことができるんだ、こういうような判定のもとに施政権を返せ、こう迫っているなら、これは極東情勢の認識は基本的に違っていると、こういうことになるんで、今の問題言葉のあやの問題でなく、事実日本政府はほんとうにこれを返せと迫っているのかどうか、真剣にそう考えているのかどうか、この点をはっきりしないといけないと思う。今のような答弁じゃいけないと思うのです。この矛盾の点をはっきりしてほしいと思います。
  255. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 極東における脅威と緊張はあるということは、私ども立場からしてもぜひこれをなくしたいと考えております。そういう状態をなくすとともに施政権を返すことができるんだと考えております。われわれの立場からそういう極東における緊張状態というものをなくなすように努むべきだと考えております。
  256. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 国会の議決は施政権の返還なんですよ。現状は、自民党も含めてそういう情勢は私は把握していると思うのですよ。したがって政府の態度は——現時点でも返してもらいたいというのが国会の議決なんですよ。ですから政府はどういう態度かということを承りたいと思っている。
  257. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府といたしましては、すでにしばしばこの施政権返還の要求は行なっております。国会の御決議もこの政府に対する御鞭撻と考えております。極力そのほうに努力したいと思っております。そこで、この際これに対する二、三の影響報道がございますので、それを申し上げておきたいと思います。  たいしてそうたくさんはございませんわけでございますが、日本のこの国会の御決議に対するモスクワ放送の要旨では、日本国会は、隷属状態に置かれている沖縄の日本人の正しい要求を支持した。ただ残念ながら沖縄、小笠原の返還を要求する決議の趣旨は、北方領土問題に関する決議とからませられていることによって本質的に弱められている。これが一つです。  それからもう一つは、国民政府沈外交部長が立法院でこの問題に触れまして次のごとく述べ七おります。日本の琉球に対する潜在主権の主張は、国際法上及び条約関係根拠がない。世界各国は琉球住民の自主達成を援助すべきである。こんなような影響が出ております。しかし、御承知のように御決議によってわれわれこの問題についてアメリカと折衝しておりますので、さらにこの施政権返還要求に対する折衝を続けたいと考えております。
  258. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 外務大臣、おっしゃっていることと腹の中は違うのじゃないですか。ほんとうに返還されたら、あなた方は困るのじゃないですか。沖縄はすでに核武装しているのですよ、核武装を。ナイキ・ジュースはある、核武装している。第七艦隊も核武装しています、海上、陸上部隊とも。沖縄にある米航空部隊はすでに核弾頭を積んで訓練をやっております。待機しております。ところがあなた方は、国会では核武装はいたしませんということを答弁している、これは信念であるということを答弁している。それが今沖縄の施政権を返還されたら、それと矛盾するじゃありませんか、お困りになるのじゃありませんか。だから国会の決議は国民感情で、施政権を強く要求しておる、絶えず要求していると言うけれども、これは国民に対するゼスチャーであって、ほんとうに返還されたら、あなた方今お困りになるのじゃありませんか。直ちに内閣を投げ出さなければならぬのじゃないですか。だから国会を通じておっしゃっていることと、あなた方が日米間で合意していること、あなた方のほんとうの腹とは違うのじゃないですか。もっと正直にお答えいただきたい。
  259. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げます。われわれは沖縄における施政権が日本に返りまするように、一切にとどまらず、累次にわたって申し上げておるように、アメリカ政府に要求しております。これがアメリカが返すということになりますれば、少しも困りませんのみならず、われわれとしては非常に喜ばしいことだと考えております。
  260. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 論理的に別個に切り離してということについて、明確なお答えがございませんが、少なくともこういうふうに受け取っていいでしょうか。もしアメリカの言い分の、極東の緊張が続く限りにおいては、施政権の返還がないのだということになってしまったらたいへんだと思うのです。そこで、政府は要求すると、国会の議決のとおりに鞭撻を受けてやるのだということになれば、論理的には別個にというふうになるのですが、あまり深追いしても小坂さんもどうもいけないわけですが、私は大体わかりましたが、別個なものだと、そして今後も努力すると、こういうことを御答弁願えますか。努力するという点で、今の問題を含めて御答弁を願いたい、時間がなくなってしまいますから。どうでしょう、その辺のところで。
  261. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 施政権の返還については努力をいたしております。との時点においてはその程度でひとつお引き取り願いたいと思います。
  262. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 少なくとも国会予算委員会でまじめに私たちは議論をし、そうして日本の態度はアメリカといえども遠慮なく主張するというのが、私は日本政府の態度であってしかるべきだと思う。それを何か遠慮するという、日本政府が何かアメリカに隷属をしているようで見苦しいと思う。国民のために嘆かわしいと思う。国会の権威のためからいっても残念なことだと思いますので、重ねて私は外務大臣の御答弁をお願いします。
  263. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども日本政府といたしまして、日本立場また日本の利益ということを十分に五与えて行動をいたしたいと考えております。そのことが、交渉の過程にお手まして、この段階なら言える、この段階なら言えないというようなこともいろいろあるわけでございますので、今のような御答弁を申し上げておる次第でございます。
  264. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連して。施政権の返還を要求するというからには、現在の米軍の占領状態と何か調整できるというめどを持って施政権の返還というものを要求したのじゃないですか。そうでなければ、前の委員方の御指摘のように、ただ国民の目をごまかすゼスチュアで、解決点は初めから見出すことを捨てて、ゼスチュアで国民にアピールだけのねらいでおやりになっておるとしか受け取れない。私ども政府を信じたいと思いますが、何か現在の状態と調整ができるめどを持って施政権の返還を要求しただろうと考えますが、この点はどうですか。
  265. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれは施政権の返還を要求しておるわけでございますが、さて、この返還要求が実現した暁には、どう現状に対処すべきであるか、こういう問題があるわけでございます。この対処の仕方につきましては、奄美大島を返還さした例もございますし、そのように返還に踏み切る、アメリカ側が踏み切るという段階においてこの対処策を考えればよろしい、今はとにかく施政権の返還を要求する、こういうことで徹して参りたい、こう思っておるわけでございます。
  266. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。この前私は南ベトナムの問題を質問しました。そのときに、沖縄は今米軍基地として使われて、アメリカの海兵隊その他どんどん入ってきて、あそこで三、四日訓練をして、すぐベトナムに向かっておる、こういう事実がある、あるいは西表島等が実はゲリラの訓練所として使われておる、こういうふうな問題を指摘して、日本としてはどうするかといったら、それに対して池田総理は、あなたもそう言ったと思いますが、あくまでアメリカのこの政策には協力するのだということを、ここで大みえを切ったわけです。そうしますとどうですか、今緊張が続く限りはさ返ないと言っているのがアメリカの態度なんです。それに対してあなたは、施政権返還をあくまで要求しているのだ。この問題は明らかに矛盾しますよ、現実論争の答弁の中で。そういう観念じゃ困るのであって、あなたの今の矛盾の態度を明確にやはりしなきゃならぬと思います。具体的な事実をあげて私は言っておる。この前の追及に対して、南ベトナムとの関連において、この問題をあなたは明らかにする必要があると思います。
  267. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 南ベトナムの問題は、御承知のように、北からするところの脅威、ベトコンの脅威に対して、自衛上、南越政府アメリカ側に、一九五〇年協定に基づきまして、援助を要求している。それに対する対処策というふうにわれわれ理解いたしておるのでありまして、この態度を是認するということを総理大臣も言われておるわけでございます。そういうふうに防諜政策といいますか、そういうことがなくなるようにするということは非常に望ましいことでありまして、まさに極東における平和と安定ということを、われわれにおいてはできる限りわれわれの立場から期していきたい、こう思っておる。
  268. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、先ほどの台湾のほうで、潜在主権がない、根拠がないと、あるいは、何かモーニングスターというのですか、向こうの新聞が、渡航が自由になったら、日本の技術者が行って向こうを圧迫するとかなんとかいうことをPRしているということを聞いておりますが、こういうものに対する御所見ですね、間違っていやしないか。
  269. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これらの問題については、今大使館を通じて詳報を求めております。詳しい報告を求めております。それがございましてから対処いたしたいと思いまするけれども、われわれのほうからしては、この沖縄住民が日本国民であり、われわれが潜在主権を持っており、現に条約上、三権を持っておりまするが、アメリカにおいても、その極東の緊張、脅威の状態が終わったら必ずこれは日本に返すと、こう言っているのでございまするから、これはあまりたいした問題ではないというふうに思っております。
  270. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は委員長にお願いしたいのですが、たとえば、この間新聞を見ましたら、日本で強盗をやったのが沖縄へ行って、日本で強盗をやっておいて沖縄で自首したら、警察権がないというので沖縄で釈放してしまった、こういうような問題もあり、それから立法院の代表あるいは自民党の代表等が本土に来て政府に陳情したいというようなことを言っていたように思います。ところが、これは取りやめになったわけですが、そこで承りますと、あすの六時に発表になるということであれば、ひとつ発表になったら、沖縄の現地の声を当委員会で聞いて、そうして国会の議決もああいうことでありますから、私は参考人として沖縄の代表とかいうのを呼ぶというようなことにしていただきたいと思います。
  271. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 今の成瀬君の御要求は、よく理事に相談をしまして決定いたします。
  272. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 では沖縄の問題は以上にしまして、次に日韓の問題についてお尋ねしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいと思いますのは、日本の基本的な態度なんですが、日本側のベースからすれば、日韓の正常化は竹島、いわゆる領土の問題、李ラインの問題に重点があると思いますが、この見解についてはどういうふうでしょう。
  273. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれのほうといたしますれば、そうでございます。
  274. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、具体的に、たとえば竹島の問題はどう解決したら日韓の正常化になるというふうにお考えになるのか。司法裁判所に提訴する、それに応訴するのだということがきまれば、それでいいというふうに問題を解決して前へ進まれようとするのかどうか、その点をひとつ。
  275. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 話し合いをいたしまして、竹島日本の領土であるということを韓国側が承認いたしますれば、これが一番よろしいと思います。しかし、あくまでもこれを承認いたして参らない場合には、国際司法裁判所に提訴して、公正なる国際裁判機関の判決にゆだねる、これがよろしい、そういうことで前へ進むほうがよろしい、そう考えております。  李ラインは国際法上認められないものでございますから、これは先方が撤回するのがあたりまえだと思います。
  276. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、今のようなことがもしかなえられないという前提があるなら、日韓会談というものは前進しないのだと、決裂なんだと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  277. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国交が正常化いたしまするということは、両国民が問題を持たない、係争の問題を持たないということが正常化に必要なことだと思っておりますので、ぜひ国交正常化の前には、そういう問題にけりをつけていきたい、こう思います。それが非常に必要なことだと思います。
  278. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 どうも大臣、私はもっと割り切った答弁を承りたいと思います。必要とかなんとかということではなくて、それがなければ日韓会談は御破算じゃないか。それが日本の態度ですかどうですかということを聞いているわけですよ。
  279. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はそういうふうに思っておりますけれども、これはいろいろ話し合いをしていく段階でございますので、まあ私の口から条件とかなんとかいうことはどうかと思いますが、実態はそう思っております。
  280. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 次に、平和条約の第四条の解釈ですが、これは御承知のように、ヘーグの陸戦協定違反までして、私有財産を日本の国が放棄しております。したがって、韓国から一切の賠償と申しますか、あるいは請求権と申しますか、そういうようなことにあうと予想されて当時講和条約に調印をされたものかどうかということについて承りたいと思います。
  281. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 講和条約の締結の相手方には韓国は含まれておりません。したがって、韓国は賠償請求権というものがないというのが、われわれの考えであります。ただ四条の解釈でございますが、四条の(b)項におきまして、この軍令三十三号の効力を承認しておるわけでございます。そこで、これが私有財産と考えるかどうかということは、長く係争いたしておったのでございますが、御承知のように、一九五七年十二月三十一日にアメリカの解釈というものが出まして、これが双方において考慮されるということでございます。
  282. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、私の質問の仕方が悪いのか、どうも答弁が省けてしまうのですが、日本は朝鮮から、当時者とかなんとかということは承知しておりますが、そうじゃなくて、そういう要求が出るということは、私は予測しておいでにならなかったのじゃないか。政府は予測しておらなかったのじゃないか。また、そういうふうに私有財産を、ヘーグの陸戦協定まで違反したものを、日本が屈伏して調印するのですから、そういうことは万々一も起こらない、こういうふうにお考えになったのではないか、こう尋ねております。
  283. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はお答えのつもりで申したのでありますが、言い方が悪うございましたから……。私どもはそういうことは、もちろん条約締結の相手方でもないものから、賠償のごときものが出るということは、これは当然考えないわけでございます。
  284. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、請求権というものは、寝耳に水で出てきた不当な要求であるというふうに、大体政府にお考えになっておるというふうに了無し、次に、朴政権の領土の点についてと申しますか、権威の及ぶ範囲について、南三十八度線だということを、衆議院のほうで表明されておりますが、そのことは逆に言いますと、三十八度線から北には、何かのオーソリティと申しますか、そういうものが存在するということを認めたことになりますが、お認めになるかどうか。
  285. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 平和条約の第四条に、請求権は、朝鮮の独立をわれわれ二条で認めて、そうして、それとの話し合いをするときの対象になるということを書いてございますから、請求権そのものは、これは対象になる。しかし、それは賠償ではないということを申し上げるわけであります。  それから三十八度から北にはオーソリティがあるということは、われわれ認めております。ただ、一国に二つの政府はないと、こういう観点からいたしまして、われわれは、国連の決議でもいっておりまする韓国政府を相手にしている、こういうことであります。ただ、その支配権は三十八度から北に及んでいない、こういう事実を頭に置いて推し進めておるわけであります。
  286. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それから次期会談の予定について若干お伺いしたいのですが、これが四月とか、あるいは五月といわれているのであります。あるいは岸前総理のことを朝鮮が要求していると申しますか、希望しているようであります。そういうものに対する御見解を伺っておきたいと思います。
  287. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この次いつ会談するか、また、どこでやるかというふうなことは、一切今後相談することになっております。今のところ、私ども実はここで申し上げるような腹案は持っておりません次第でございます。  それから岸前総理の問題につきましては、ああいうりっぱな方においで願えればいいという韓国側の希望は、昨年暮れからあったようでございますが、現在ではさようなことは特に申しておりません。
  288. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 京城でということを向こうが要求し、それに対して日本側は、代表部の設置がなければやらないということが一つの条件になっているのかどうか、その辺のところをひとつ。
  289. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 条件と申しますか、実際上できないということを申しておるわけです。いやしくも会談をいたしまするには、政府に請訓いたさなければなりません。そういう施設のないところでは、実質的な会談はできないというふうに私ども考えております。
  290. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、かりに代表部が今度の会談開始前に京城に設置されれば、京城で会談もあり得る、こういうふうに了承していいわけですか。
  291. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、現在全く仮定の問題でございまして、先方はそういうことをしないと言っておりますから、今ここでそういう条件みたいなことにして御答弁申し上げることはいかがかと存じますから、差し控えさしていただきます。
  292. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 じゃ、外務大臣、私はけっこうです。  最初に、これは通産大臣になりますか、あるいは経企、どこになるかちょっとよくわかりませんが、輸出総額を三十七年度は四十七億ドル予定しておられますが、対米、対欧州、対東南アジアですね、そういうものに対してどのくらいずつ予定しているか、地域別の内訳。それから商品別にどういうふうにお見になるのか、数字で。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 四十七億ドルの輸出目標、ただいままでのところ、一応この四十七億ドルを算定いたしました地域別のものがございますが、なお、年度がかわりましたら、できるだけ早目に輸出最高会議を開きまして、関係業界に内容をひとつ理解してもらい、知っていただきたい。そうしてそれを推進するという措置をとるつもりでございます。ところで、ただいまお尋ねの数字等、ただいま発表し得るものは、事務当局からお答えさしたいと思います。
  294. 今井善衛

    政府委員(今井善衛君) お答えいたします。私ども検討しておりますのは、まだ部内で検討した程度でございまして、この輸出会議等を経まして正式に決定したものではございません。さような意味で御了承願いたいと思いますが、四十七億ドルと申しますと、三十六年度の輸出を四十一億ドルと見まして、平均の伸び率は一四・五%ということになっております。この十四・五%が平均でございまして、それを上回る地域といたしましては、北米あるいは欧州、大洋州、こういう先進国がいずれもこの平均値を上回っておりまして、それを下回るものといたしましては、アジアなり中近東、アフリカ、こういったところが下回りまして、それの平均が一四・五%ということになっております。アメリカにつきましては、大体本年度より二〇%、つまり十四億ドル、十四億四千万ドル程度になるのじゃないか。欧州につきましては、本年よりも二八%程度伸びまして、七億八千万ドル程度になるのじゃないか。アジアにつきましては、伸び率は五・三%程度と見まして、十三億二千万ドル程度というふうに考えております。  それから商品別に見ますると、やはり平均が一四・五%でございまして、それを上回るものといたしましては、機械関係、鉄鋼、化学関係ということでございまして、これを下回るものといたしまして、繊維製品、農水産物等が下回りまして、平均いたしまして、さようなことになるわけでございます。
  295. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまのを資料として提出していただけませんか。
  296. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 資料として出せますか。
  297. 今井善衛

    政府委員(今井善衛君) 御提出いたします。
  298. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 鉱工業生産の伸び率、政府は五・五%と押えておるのでありますが、ちょっとお聞きしたいのは、三十七年の一月からですから、三十七年の一月から三月まで何%、あるいは四月から六月まで、七月から九月まで、十月から十二月まで、昭和三十八年一月から三月までは何%という数字でちょっと御説明願えないでしょうか。
  299. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 一年度全般のはございますが、四半期別のものは、きちんとしたものは出さないことになっております。一年を通じての見通しを持っておりますので……。
  300. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 出さない。国会に出さないということですか。
  301. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はおかしいと思うのです。五・五%の鉱工業生産の伸び率をきめるとき、十一月をピークにして年率九%ずつ下がる、六月ごろまで。そうしますと、ポイントとしては大体わかってくるわけです。大体二・〇、二・五くらい下がるわけでしょう。それから六月から、六、七月ごろ底として今度は上がるということになっているでしょう。そうして平均五・五%伸びになっているのですから、四半期別にできていなければ出ないのですよ。ただ五・五%、総平均ではないのですから、これまでの御説明を伺うと、上半期においては下がっていくんだと、それから下期に行ってからこれが上昇するということになっているのですから、ただ総平均だけでは意味がないのですよ。そういう作業ができていなければならないはずでありますし、また、そういう内容を聞かなければ、これまでのこの経済見通しに基づく予算の編成をわれわれが検討する場合、現実に即した質疑ができないわけです。前に私質問したときも、それはちょっと出せない、出せないという法はないと思うのです。五・五%をはじいた根拠国会ですから、そういう具体的にやはり政府のほうから資料を出していただかなければ論議は進まないのですよ。われわれは、いたずらに政府を攻撃するために資料を出せと言っているのではない。事態を明らかにするために、それくらいの資料がなければ、具体的に審議できませんよ。ぜひそれはなければならぬはずでありますし、出していただきたい。それを出さなければ、成瀬君のこれからの質問も発展できないと思うのです。具体的にですね。抽象論でやってもだめですから、政府資料を出すということをひとつ……。
  302. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 企画庁でいろいろ数字をまとめたわけでございます。その際、もちろん通産省大蔵省も、関係省相談してきめたものでございます。で、ただいま月別あるいは期別にそういうことをしたかということでございますが、実は、そこまでの作業はいたしておりません。ただ、一応のカーブは描いております。ことに、木村さん御承知のように、三十六年度が三十五年度に比べまして、大体一九%の伸び率だということを言っておりますが、実勢は大体二〇%の伸びになっております。そういたしますと、当初予定いたしました経済見通しの際の予定の三十六年度の鉱工業の生産伸び率というものは二八四・二でございます。それを三十七年度は二九九・八にする。こういう数字を立てますと、伸び率が五・五、こういうことになるわけです。ただいままでの、三十六年度までの実勢を見ますと、一九%の伸び率が二〇%という形になっておりますので、これは、二八八という数字からスタートして参ります。そこでただいま、これは数字計算でございますが、二八八でスタートして参りますと、三十七年度は二九九・八、これにおさめるといたしますと、伸び率は三・八、こういうふうに数は下がってくるというのが現在の実情でございます。ただいま私どもが持っております数字は、この数字だけでございまして、これを、いろいろのちほどお尋ね等があるのではないかと思いますのは、十一月以降の、あるいは一月、二月等の実勢等でどういうようなことを判断するかというようなお話でもあるのかと思いますが、ただいま持っているような数字は、ただいま申すようなカーブの数字でございます。
  303. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、御説明はわかりましたけれども、私が鉱工業生産の伸び率あるいは経済成長率をこの予算と関連して検討していく場合に、総平均だけで見るわけにいかないわけです。ことに三十七年度は、上期と下期で違う想定になっているのですよ。ですから、そこに違うような作業がなされていなければならぬはずなんです。総平均だけで見たのでは意味がないのです。ですから、そういう作業はなされているはずなんですよ。なされていなければおかしいと思うのです、内容について。ただ総平均だけで論議したのではおかしいのですよ、上期と下期が違うことになっているのですから。こうなるならこうなるところを具体的に通産省において検討されているのですから、そこを成瀬君がこれから質問をしようとしているのですから、そこを明らかにしなければ、質問が前に進まないと思う。総平均はわかりました。内容が問題なんです。
  304. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは、実は幾つもの作業の形がございます。一応十一月をピークにおいて、あるいは十二月はその横ばいだ、こういうことを前提として考えて参って、ピークの期間が短いとなると、あるいは下がり方がどうなる、そういう幾つも想定をしたものがございますが、そのスタートを、その作業だけは実は押えられておるわけでございまして、そういう形の想定の数字でございますから、あまり効果がないというと、おしかりを受けますが、その変化によりまして、その数字の出し方といいますか、カーブの描き方が実は変わってくるわけであります。それを先ほど来申し上げているので、そのカーブを一々の月別に押えて、そうしてやるというのではございません。この点を御了承願いたいと思います。
  305. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連質問ですから、簡単にしますが、どうも政府は、この点は非常によろしくないと思う。最初の想定と実際が非常に狂ってきているから出したくないんですよ。そうだと思う、実際問題は。だからわれわれは、最初の想定を出せと言っているんですよ。これは、何も政府を困らせようというのではなくて、やはりはっきり事態を明らかにしなければ、われわれの国会での質問の責任が果たせないわけですよ。しかし、あるわけですよ。出したらいいじゃありませんか、そうしていかに実際と最初の想定とが違ったかということを議論の焦点にしなければ、それは、実のある議論はできませんよ。ないとは言わせませんよ。なかったらおかしいんですよ。だから、それをここで出されたらどうですか、あるんですから。
  306. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 四半期別のはやっておりませんが、大体の想定といたしまして、一月から五月までが年率九%でずっとダウンをしていく、それから六月から三十八年の三月まで年率一二%の割で今度はアップの線をたどる、こういう大まかな想定でございまして、四半期別にきちんと数字を出したわけではございません。カーブを描いた趨勢を見ましてこういうふうに出したわけでございます。詳細は事務当局のほうから御説明いたします。
  307. 木村禧八郎

  308. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 成瀬君、いいですか。
  309. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 事務当局からもう一回聞かなければ……。
  310. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) ただいま政務次官からもお話がございましたように、一月から五月まで九%でダウンいたしまして、それ以後は一二%でアップする、こういう想定をいたしまして五・五%に押えたのでございまするが、しかし、実勢におきましては、若干一月の鉱工業生産というものが初めの推定よりは上回っております。これはもちろん季節修正前におきましてはこれは二八一・二%でございまして、季節修正を施しますると三〇七.九になる、こういうことでございます。ところが、その季節修正の数字そのものにつきましてもいろいろな算定方法がございまして、これが三〇〇幾つになったり、また、三〇七という数字になって参る。ただ、問題は、一月は非常に休みの多い月でございましたので、したがって、非常に実勢におきましては十二月に対しまして下がりまして、二八一・二という指数を示しておったのでございまするが、これを休み等を捨象いたしまして、そうして普通の季節修正を施した数字にいたしますと、三〇七・九になる。ところが、三〇七・九という数字も、これもいろいろな方法によりまして算定いたしますると、いろいろな数字が出てくるわけでございますが、これは今までのやり方の一つの方法をとってみまするとそういう数字になるということで、とにかく季節修正後は今までの鉱工業生産指数の算定よりも若干上回っておるというようなところが一月におきましては数字が出たわけでございます。したがいまして、これは二月、三月の動向等をもっと見なければ今後の鉱工業生産というものの見通しもはっきりつかないわけでございまするが、二月の数字は、これは今月の二十四日ごろに大体わかるわけでございまして、これもやはり季節修正をしてみなければわからないわけであります。したがって、本日はまだ十九日でございますので、今鉱工業生産指数がどのようにどうなるかということにつきましては、これは大体二月、三月の数字を合わせましてそうして来年度の見通しをどうするかということを考えていかなければならないのでございまして、その点は御了承願いたいと思っております。
  311. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重要な問題ですから、この点明らかにしてくれなければ、成瀬さんが聞いているのは五・五%の基礎を聞いていられるわけです。それがさっき大ざっぱに一−五月と六−十二月ですか、六−三月ですね、大ざっぱに分けて言われましたが、これは計算できないはずないですよ。われわれだってしろうとで計算できるでしょう。十一月の鉱工業の生産をピークとするというのだから、十一月が二九九・七ぐらいですよ。それから九%ずつ低下していくと、こういうことに直すとどのくらい。そうしていけばできるはずでしょう。またなきゃならぬはずでしょう。そこをまずきちんとしておいてもらうと、それからあとは一月は幾ら幾らというのでその相違が出てくるので、それから問題は発展するわけですよ。これは予算を作る前提となった大きな問題なんです。そこが狂ってくると、今後の国際収支の見方、それから経済のあり方、予算のあり方がみな狂ってくるんですよ、あるいは予算ばかりでなくて、金融のあり方も。そこで、成瀬氏のは、一番最初のスタートの肝心なところですよ。ここのところをいいかげんにごまかされちゃったら、また、今までのようにあいまいなままで過ごしていく。これはきちんとしておかなければならぬ問題です、その点は。ですから、あるんですし、ないとは言わせません。四半期別に一−三月から昨年の十月から十二月、四半期別に一応あるわけです。これを出されれば、もう何でもないんですよ。とにかく国民の前へこういう点は明らかにしませんと、今後国会が終わってからも今後一カ年間の経済の推移については非常に大きな変化がくると思われますので、一応最初の数字的な基礎だけは明らかにしておいていただきませんと、政策論争が、正しい意味での政策論争が進まないのですよ。ないとは言わせません。どうしても出していただきたいですね。
  312. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、木村さんのおっしゃること、一応もっとものように聞けますけれども、私どもが今の目標数字、これはスタートと最後をつかまえる、その間にいろいろの想定が実はあるわけでございます。で、ただいまのお話のうちにもありましたように、あるいは十二月をピークにし、それが九%で下がってそうして五月時分から上昇する、そういうときの状況、カーブというもの、あるいは相当高水準で続いてそうしてあまり落ちないでそうして最後の三〇〇幾らに持っていくというそういう場合のカーブと、これはいろいろあるわけでございます。で、いわゆる計画経済で計画に載せておれば、その数字がきちんと引けるでございましょう。しかしながら、一応の想定をいたしまして数字を作るといいますかのときは、スタートと終わりが合うというそういう形のものでなきゃならない。だから、先ほども申しましたように、ただいまの五・五の上昇率というようなカーブの引き方もございますし、あるいはそれが横ばいの期間等から見ると、今度は三・八というような上昇カーブになることもあるし、あるいはもっとゆるやかなカーブで最終目的に達すると、こういう場合もあるわけでございます。で、そこらのいろいろのデータを作っていく、これが実は大事でございます。私は、この予算編成当初のスタート、それがもう一月になればすでに下降しておると、こういうような見方をしたものの、事実がそのとおりになっていない。これを無理やりにカーブに合わして説明ができないというのが今の現状でございますから、ただいま申し上げるように、これから先の数字の狂いといいますか、季節的な修正と申しますか、それは一応政府としては考えざるを得ないのであります。だから、今の期間にその中間の数字を出せと言われてもあまり意味がないことになりゃしないかというのでございます。で、私、現状の狂っておることを否定するつもりで数字を出さないと申しているわけじゃございません。これはもうすでにしばしば御説明したとおりでございます。ただ、今申し上げるような将来のカーブを想定した場合に、ただいまの二月の鉱工業生産の実数というものはつかめない状況でございますから、先ほど事務当局が申しますように、今月の末でなければ出てこないだろう、こういう状況でございますから、ただいま企画庁が予算編成当時にこしらえました中間の狂いというものをあえて出すということには政府としてはあまり自信がない。これはもう当然のことだと、かように私は思います。(「それじゃあるじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、だから、先ほど企画庁の数字そのものは御説明したとおりでございまして、九%で下がり、それから五月から上がっていく。しかし、その最終的な目標数字は別に変えておるわけじゃございません。
  313. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その今後の趨勢を聞いているのじゃないんですよ。三十七年度の予算を編成する基礎になった鉱工業生産五・五%の伸びですね、これの内容を聞いているんですよ。それが政府としては確信が持てなくなった。まあ今になったら持てなくなったんでしょう。しかし、それは、そのことを聞くわけじゃないのです。確信が持てなくなろうがなるまいが、一応基礎としてそういう作業をされたのですから、それが間違っていたか間違っていなかったかということは、これはまたわれわれが判定するのでありまして、ただ材料だけを——それがいいか悪いかは、また政府としての立場上の、政府の主張もあるでしょう。神様じゃないから見通しがつかぬとか、いろいろそれは御説明はあるでしょうけれども、まず正しい政策論争をする前提として、三十七年度予算を編成する基礎になった鉱工業生産五・五%の伸びのその資料がなければならぬはずですし、今おありになると言った。ただ、政府としては確信が持てないと言ったけれども、それは実態と合わなくなったからそうおっしゃるのであって、この際、やはりその点は明らかにされることがまあ国会に対する政府としての、何というか、誠意のあることではないかと、こう思うのですがね。出されれば、すぐそれは……。
  314. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今の程度お話は、先ほどの企画庁の担当官から御説明したことで御了承がいただけるだろうと思います。(「了承ができない」と呼ぶ者あり)
  315. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) それじゃ、もう少し敷衍いたします。  先ほど申し上げましたとおりに、大綱の方針といたしまして九%の下落、次に一二%の上昇という線につきましては、今日のところ、まだ線は変わっておりません。と申しますのは、先ほどから申し上げまするように、一月の生産だけを見まして、二月、三月の生産を見なければ、来年度の見通しというものはそう今すぐ算定するということはなかなか困難かと思うのでございます。  それからもう一つは、一月の生産がかりに——かりにと申しますか、これは実勢におきまして下がっておりまするので、まあ季節修正の済んだあとにおきましてまあ上がっておるといたしましても、国家の政策によりまして、たとえば金融引き締めを強化するとか、いろいろな手を強化いたしまするならば、さらにこの二月において必ずしも一月よりまた上がるか、それからあと下がるかということは予断を許さないと思います。  それから今の——われわれが十二月におきまして想定いたしましたように、おそらく一月からずっと下がっていくだろう、こういうような想定をいたしたのでございますが、まあ季節修正前の数字は下がっております。これは大いに下がっておりますが、後の数字は遺憾ながら上がっておる。そうすれば、二月においてたとえ、かりにこれが横ばいといたしましても、三月においては今までの政策の効果というものがどんどんと浸透して参りまして下がっていくのじゃないか、おそらく下がっていくだろう、こういうような推定がされるわけでございます。したがいまして、今直ちに九%とかあるいは一二%の見通しが違うとかというようなことは、まだまだ時期尚早ではないかと思うのでございますが、試みに指数をとって見てみますると、まあ来年度のこれも予定の指数でございますので、これは神様じゃございませんのでこのとおりいくかどうかは、これはちょっとまだわかりませんが、私のほうで三十七年度の四−六の鉱工業生産の指数をかりにはじいてみますると、これはわれわれの事務当局の算定、推定でございますが、まあ二八七というような数字が出たわけでございます。それから、これが大体一−三月になりますと、これは三十八年の一−三月でございますが、三一三。これを年平均いたしますると、三十七年平均が二九九。先ほど通産大臣お話しされましたとおりの数字でございます。それで、三十六年の平均が二八四という指数でございまするから、これを三十七年度の平均と比較いたしますと五・五%のアップになる。ところが、現在におきまして三十七年の実勢というものは二八四より若干これはふえておりまして、今のところでは二八八程度になっております。したがいまして、それでいきますると、五・五%以下になるというような推定になっておりまして、しかしながら、この推定が今後におきまして、どの程度まで企画庁の推定が当たるかどうかということにつきましては、これは問題はあるかと思いますが、いろいろな政策の効果が逐次逐次波及いたしまして、そうして大体その効果が浸透してくるということを前提といたしまして、かような数字を試算いたしたような次第でございます。ただ先ほども申し上げましたように、二月、三月の生産いかんによりまして、この数字がまたあるいは多少変わってくるのじゃないかと思いますが、今のところでは事務当局といたしましては、かような推定、算定をいたしておるわけでございます。
  316. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長ちょっと関連して……簡単にしますが、四半期別は試算していないと言いますが、やっているじゃありませんか。四−六月は、二八七・四であると今報告された、じゃ事実一−三月は出ているはずじゃありませんか。昨年の十月−十二月も出ているはずじゃありませんか。四半期別はやっていないと言いながら、やっているじゃありませんか。そういうごまかしをしてもらいたくないのです。正直に、ここに資料を出してもらいたい。やっているのにやっていないなんて、そんなことじゃ困るのです。そういうことは。
  317. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) これは私のほうの事務当局におきまして、一応試算はいたしておりますけれども、しかしながら、四半期全部につきましてはっきりした数字がまだ——私は今二つばかり申し上げたのでございますが、これが全部正式に確信をもって、これでもう大体ぴしゃっと当たるというような試算ではございませんので、事務当局の推算、試算ということで御了承願いたいと思います。
  318. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは何も、確信があるないということは、当たるか当たらぬかということは、それは神様じゃないんですから、そこまで責めようとは思っていないのです。五・五%の伸び率をきめるときには、一応こういう試算に基づいてやったのだ——資料があれば、それをこうだということを説明してくれれば何でもないんですよ、それを何か隠そう隠そう——最初の想定と実績が非常に狂ったものですから、そこでそういうあいまいもこの……事務当局のほうはそんな政治的考慮をされる必要はないと思うんですがね。ですから四−六月が出ているのなら一−三月もきめているのでしょうから、一−三月は幾らと言えばすぐ進行するのです。(「企画庁の助け舟だけれども、なかなか助け舟にならないんだ」と呼ぶ者あり)
  319. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) なかなか助け舟になりませんが、木村さん御存じのように、事務当局の試算の数字というものは、こういう権威のある席にはあまり出しておらない、そういうことでございます。だからただいま申し上げましたような——よほどお尋ねが巧妙ですから、事務当局の試算程度のものを申し上げました。何か御参考になればたいへんしあわせだと存じます。ただ試算程度のものを、政府側として発表するということは差し控えさしていただきたいと思います。この点どうぞ御了承願いたいと思います。
  320. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それじゃ次にお尋ねしたいのは、実際予算編成されるときに、九月の金融引き締め、そうして大体十一月ごろまではダウンされるだろうと私は予定されたのじゃないかと思うのです。ところが、これを見ると、十二月は伸びた。一月は今言ったように、私はいろいろなことがあるが、伸びておると思いますが、二月もやはり伸びている。三月も実態は伸びておる。だから通産省があわてていろいろな手をお打ちになっていると思う。この食い違いはどの程度に食い違っておるというふうに踏んでお見えになるのか、私はこれは輸入とのことに関連して参るし、あとの施策にも非常に影響があるから、その点をどういうふうに組んでお見えになるのか、ちょっと企画庁のほうからお答え願いたいと思うのです。
  321. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) 先ほどのお尋ねにつきましては、大体一月の生産が初めの見通しよりも伸びておるということは言い得るのでございますが、それに伴いまして輸入との関連になってくるわけでございますが、大体われわれの推定におきましては、本年度の輸入額の中で、まあこれははっきりとした算定はもちろん困難でございますが、通関ベースにおきまして一億ドル程度はふえていくのじゃなかろうかというような推定はいたしておりますが、しかし、これにつきましても、まだ二月、三月の——先ほど成瀬先生がおっしゃいましたように、あるいは三月は下降ラインをたどるかもしれないのでございまして、これがずっと上昇していくというような想定で参りますと、まあ一億ドル近くのものがまあこれは厳密に何千万ドルというところまではわからないのでございますが、ずっと上昇していくというようなことになりますと、一億ドル程度のものが、あるいはふえていくのじゃなかろうかと思いますが、また、これが政策のよろしきを得まして下降線をたどっていくということになりますと、また前の線に近く戻る、こういうことになりますので、今のところではっきりとどのくらいふえるかということにつきましては、これはやはり二、三月の鉱工業生産指数、こういうものを見てからじゃないとお答えができないのじゃないか、かように考えます。
  322. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大体そういうふうに、輸入関係でいうと、今の実情からいって、輸入関係でもう一億ドルぐらいの狂いがくるだろうということは予測される。そしてこれが三月も下向かないとかりにしていきますと、私は輸入に相当な狂いが出てくると思うのですよ。そこでそういうふうになった場合に対する通産省のいろいろな私は対策が出てくると思うのですが、そういうことについての大まかな、穴があったらあけっ放しでいくのか、これを詰めるように努力されるのか、その辺のところについて大綱の対策を承りたい。
  323. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ先ほど来いろいろお尋ねがございましたが、私ども経済見通しについて、十一月ピークだとかように考えたものが、その後も引き続き依然として鉱工業生産が強い。そこでいろいろ私どもも対策を立てているわけでございます。その対策の大要をひとつ述べろということでございますので、非常に要点だけを申し上げますと、一月の季節修正をいたしました鉱工業生産が三・八%増、そういう数字が出ております。また二月の実績はわかりませんが、電力の消費量等を見ると、どうもあまり下がっておるようには考えられません。ただ前年度同期に比べてみますと、十一月以降これは下降線をたどっておることはこれはもう確かでございます。前年ですね。だから、三十六年の一月に比べてみると、三十七年の一月はやや下目でございます。この一月あるいはおそらく二月もそういうことで下がっておるだろうと思いますが、そういうことを考えてみると、鉱工業生産は依然として高水準とは言いながらやはり引き締めの効果は漸次現われつつあるのではないか、こういう実は見方をいたしております。一面製品在庫もやや積み重ねはふえておるという形をたどっております。これなども、ただいま申し上げる金融引き締め、それと関連がある、かように思います。また、輸入は、ただいま企画庁で説明いたしましたように、担保率の引き上げなりその他の点でいろいろ抑制処置をとって参りましたものの、なかなか強い。で、これは原材料の在庫のあり方等を見ると、これまたあまり輸入が下がっておらないということも影響しておるのでございましょうが、いわゆる私どもが当初予定したような原材料の食いつぶしという形は十分現われておるとは思えないのでございます。そういう形で参っておりますので、通産省といたしましては大蔵当局にもお話して、在来からの金融引き締めは一切変えていただかない。やはりその強化の方向で進んでいただくように、また私どものほうで、機械の受注等につきましても推移を十分注意しておりますが、機械の受注などはやや下火といいますか、やや弱含みの方向に参っております。そういうことを考えると、これは将来漸次私どもが計画したような引き締め方向に出てくるのじゃないか、これは計画に沿うというほうから申せば好材料にもとれる、実はかように考えておるのでございます。そこで輸出につきましては、できるだけ早く最高輸出会議を開いて、そして三十七年度の輸出目標を各業界に指示しよう、かように考えております。また国内の設備抑制にいたしましても、これもまた例年より一カ月ばかり早目に設備投資の実際の指示もしてみたい、かように思っております。もう一つ生産の面で見のがすことのできないのは、繊維や鉄鋼等においては本格的な操短の形が出て参ります。こういうこともこの金融引き締めの基本方針と合わせお考え願う。必ずしも——ただいままでここに二、三カ月の狂いは生じておりますが、今後どういう形になるだろうか、それを十分ひとつ見きわめたいというのがただいまの態度でございます。
  324. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はざっくばらんに申しまして、伸び率等いろいろな点で相当な国家統制というようなことがある程度考えられなければ、自主調整、自主調整と言いましても、なかなか容易じゃないと思うんです。そこで政府としてほんとうにやられるのは金融引き締めの問題ですが、大蔵大臣にお聞きしたいことは、予算のたな上げと言うんですか、繰り延べと言うんですか、そういうことを実際おやりになるだろうと思うんですね。最終の問題として財投の問題とからんでくるから、それは実際どのくらいやろうと考えておられるのか。全然それをやらないと考えておられるのか。やろうとすればどのくらいの額をお考えになっていますか。
  325. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは経済の推移を見なければ考えられないことでございまして、今のところは私どもそういう繰り延べを別に——今の政府の見通しの線を経済が動いてゆく限りは、そう繰り上げなくてもいいという考えでおります。と申しますのは、政府予算の規模というようなものも全部国民経済計算の中へ入って、これが要素として国民総生産の伸び率というものもきまっておるものですから、大体今政府が描いている見通しどおりの動き方をするということでしたら、この予算の繰り上げというような問題にはならないというのが私ども立場でございます。
  326. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。大蔵大臣は今後の経済の見通しどおりになればと言いますけれども、かりに政府が予想したような鉱工業生産のダウンをたどるとしても、もう最初のピークが狂っちゃっているんでしょう。ですから、今後の見通しだと言ってももうすでに狂っているんですよ。一月は三〇七・幾らでしょう、今度はそこがピークになるんでしょう、そこが。だから、もうすでに狂っちゃっているんですね。で、今後政府が予想したように年率九%で下がるとしても、もう狂っちゃうわけですね。すでにピークが、スタートが狂っちゃっているんですからね、そこが問題ですよ。今後の見通しいかん——もしピークが狂っちゃっているのに一億ドルの赤字程度にとどめたい、あるいは政府の最初の予想どおりにしようとすれば、下期においてうんと引き締め政策をとらなければならぬということになるんですよ、すでにもう狂っちゃっているんですから。だから、今後政府が見通した予想どおりにゆくとしても、スタートがもう狂っちゃっている。予算審議過程において、この予算の前提になった経済条件がもう狂っちゃっているんですよ。ですから、今後の見通し、見通しと言われますけれども、もうすでに狂っちゃっているんですから。そうしますと、そこを成瀬さんも問題視されているわけですね。どうしても今の予算についてはやはり繰り延べとか節約という問題が起こってくるんじゃないか、こういう質問をされていると思うんです。
  327. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 狂っていると言いますが、問題は一月の見通しが少し私ども考えたこととは狂っているということでございますが、二月、三月はまだわかりません。で、今の感じでは少し見通しの線がずれているのではないかと思っております。で、この製品在庫がこれだけふえて参りましたし、そうして機械受注のほうから見ます先行き指標の工合を見まして毛、これはおそくとも三月、四月、五月いって私どもの予想したようなこの生産のダウンが始まる。これが始まらないで済む方向ではございませんので、こういう点はずれているとは思いますが、大体傾向線としては私どもの予想した方向を踏んでいるのだ、その方向に沿って今進んでいると私は考えています。で、在庫の食いつぶしも最初の私どもの予想とは違っておるように見えますが、しかし金融引き締めというものがあるために、在庫をいたずらに寝せておくか、操業率を下げないでやはり作るだけ作ってこれを金融の種にするほうがいいかというようなことで、企業家は相当生産を落とさないで製品在庫をふやしているという傾向もはっきりございますので、そうすると、その中においてどれだけ予想在庫が食いつぶされているかどうかということもどれだけずれているかという見通し——見通しじゃなくて判定が、今一月だけでははっきりしませんので、私はこの二月、三月の動向を見てからその点ははっきりしていくと思います。したがいまして、最初の予想が狂っているかどうかをまだここで断定するのは少し早いのじゃないかと思っています。
  328. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうするとね、大蔵大臣、言葉は別ですがね、もし狂ってきたら、財政投融資のほうのそういう公共事業のほうの関係は節約をされる用意があるのかないのか。
  329. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは三十六年度においてもやりましたが、経済情勢いかんによってはこの予算支出をずらせるという調整措置が必要だと思いますが、今のところはまだそういう問題を考えていない段階でございます。そういう事態が、推移が起こったというときには、これは弾力的な執行をすべきものだと考えています。
  330. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もっといろいろな点で議論がしたいですが、私はいろいろな質問がしたいですから、これは今省略しまして、通産大臣のほうにお伺いいたしますが、輸出振興策について、特にメーカー——といってもまあ中小メーカーです。御承知のように、商社金融はついていますが、メーカー金融はないわけです。そこで何かメーカー金融について特別な対策というようなことをお考えになっているのかどうか。その点が私は大事な点だろうと思うのです。輸出対策。
  331. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。輸出金融について特に円滑化をはからなければならない、資金の量においても特にめんどうを見なければなりません。そこで、ただいま特に中小企業のメーカーについてのお話でございますが、かねてから中小企業金融公庫でそういう意味の別ワクを持っております。そうして金融の措置をとって参っております。まあ大体五十億程度のものが予定されておる、かように御了承いただきたいと思います。
  332. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、それは別ワクなんですか。私は別ワクを設けてくれれば非常にありがたい。別ワクなんですか。
  333. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、中小企業公庫の関係でございます……
  334. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうです。
  335. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) はい、別ワクでございます。
  336. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それは、私が承知しておるのはワクではなくて、輸出関係をやっておる者に対して、二〇%やっておる者に対しては長期貸しをするのだと、できるのだということになっておる。他にもそれが流用されておる。あるいは転用されておると申しますか、もし別ワクであると申しますならば、他に転用されておることになりますか。これはよろしいですか。
  337. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま二〇%、輸出比率ですかおおむね二〇%以上の者について、以上の実績ある者に対して代理貸しによる輸出別ワク制度が設けてございます。で、これの実績を申しますと、三十三年以来、三十三年は二十七億七千万円、三十四年は三十九億四千九百万円、三十五年が四十九億五千六百万円、三十六年四月から十二月が四十三億四千二百万円、かような数字になっております。三十四年の数字が小さいのは、これは伊勢湾台風の関係でやや圧縮したということでございます。
  338. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これちょっと大蔵省の銀行局関係の方に承りたいのですが、別ワクとして……。
  339. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 成瀬君、発言を求めてやって下さい。
  340. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 失礼いたしました。  大蔵省の銀行局に伺いますが、これ別ワクと通産大臣は言い切っておられますが、さように了承してよろしゅうございましょうか。
  341. 橋口收

    説明員(橋口收君) お答え申し上げます。  ただいま通産大臣からお話がございましたように、まあこれは言葉の問題になるか思いますが、正確に申し上げますと、中小公庫の貸し出しには直接貸付と代理貸付とがあるわけでございます。代理貸付は代理金融機関を通じて中小企業者に貸し出しをする。で、その場合、代理貸付の資金として代理金融機関に配付をいたすわけでございますが、その場合、中小公庫の本店におきまして輸出関係資金につきましては留保しておりまして、一般の代理貸付のほかに輸出関係、ただいま御説明ございました輸出実績二〇%以上の者につきましては資金を留保いたしておりまして、いわば別ワク的な資金の配分をする、こういう融資のやり方をしておるわけでございます。
  342. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、具体的に、たとえば中小企業金融公庫に四十億行くという場合に、三十億は代理貸しをする。十億は直接貸しにするのだと、こういうふうに明確にこれを分けてそうして配分をされておるのかどうか。事務当局のほうからお答え願いたいと思います。
  343. 橋口收

    説明員(橋口收君) 中小公庫が貸し出しをいたします場合に、先ほど申し上げましたように、直接貸付と代理貸付とあるわけでございますが、大体の見込みといたしまして、三十七年度におきましては直接貸付を三割、代理貸付を七割予想しておるわけでございます。で、先ほど御説明申し上げましたように、その七割の代理貸付につきまして輸出関係資金は一定の留保をいたしまして、その分につきましては別ワクとしての配分を予定いたしておるわけでございます。
  344. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、あなたが言われるように、その直接貸しが必ずしも輸出だけじゃないということを認めておいでになりますが、輸出だけじゃない。だから、私は輸出だけの別ワクを設けてもらえないかと、それがあるかと、こう言ったら、あるとこう言われたので、おかしいじゃないかと思って聞いておるわけですが、そのほうはどうですか。
  345. 橋口收

    説明員(橋口收君) 直接貸付について輸出関係は別ワクであるかと、端的に申し上げますとこういう御質問じゃないかと思いますが、輸出関係につきましては輸出実績が二〇%以上の者につきましては貸出限度の制限を緩和いたしまして三千万円までは貸し出しを認める、こういう措置をとっております。しかしながら、直接貸付につきましては、正確な意味におきまする別ワクというものは設けておりません。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、正確に申すと、いわゆる別ワクという制度ではございません。しかし、まあ運用上ただいままでのところ支障がないように考えておるという程度でございまして、私の答弁が非常にはっきりしたようにおとりいただいておるようでございますが、少しまだゆとりがある状態でございます。重ねてお答えしておきます。
  347. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 通産大臣、実際ね、中小メーカーというのは、いろいろなことを言うけれども、金融で非常に参っているわけなんですよ。そこで、私は振興政策の一つとして、商社との関係でいえば、やっぱり力関係になって負けちゃうのですね。ですから、どうしてもそういうメーカーに限って別ワクを設けて、そうしてめんどうを見ていくという……。実際それは、通関する場合に、スタンプも、なるほど商社のスタンプも押されるけれども、メーカーのスタンプもあるのですから、実績は明々白々になる。したがって、スタンプを尊重されてやるというのが、私は地についた振興策だと考えますが、大臣の御所見はどうですか。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 理論的にはそのとおりでございます。ひとり中小企業ばかりじゃなく、大のメーカーにおいても、輸出を奨励するという建前に立てば、当然輸出に対する特別ワクがあってしかるべきと、かように考えます。ただ、今までいろいろ折衝いたしておりますが、そこまで話が詰まっておらないというのが現状でございます。
  349. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると大臣は、ワクを設けることに大蔵省等と折衝になると思いますが、あるいは企画庁と折衝になると思いますが、話を詰めようとして、こういうふうに努力しておられますか、どうですか。そしてまたこれは見込みがあるのか、ないのか。
  350. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは、過去におきましても、当然のことだと思いまして、詰めるべくいろいろ努力いたしました。問題は、ただいま、御承知のように、金融引き締めの状況でございますから、この輸出金融についても、別ワクというもの、その文字どおりに、その目的どおりに使われるなら、これはもう別に異存はないことでございます。しかし、総ワクとしてやはり考えざるを得ないというのが今の金融の実情でございます。そこでいろいろ議論があり、結論が出ておらないというのが現状でございます。そういう意味で、なお今後も努力して参るつもりでございます。
  351. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 見込みはどうですか。全然ないのか。
  352. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 全然ないことはございません。しかし、これはもちろん、輸出金融と銘打つ範囲が、片一方では非常に拡大したいという気持がございましょうし、片一方では、それは非常に縮小さしたい気持がございましょうが、いわゆる他に流用させないことでございます。そういう意味で、今のそのスタンプだけではなかなか実情に合わないものがございます。そういう意味の点で、実施上の問題としていろいろ議論がございます。しかし私は、相変わらず輸出業界からも強く要望されておりますし、輸出の目標を達成するために今後残された打つべき手とすれば、輸出金融についての円滑化をはかる、これは大きな問題だと、かように思いますので、ぜひ実現したい、こういう気持でおります。
  353. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは大臣、要望になると思うのですが、実際政府輸出振興策というのはいろいろと出ておりまして、読めばありますが、具体的にこういうメーカーの立場に立って追い上げていきますと、どこかで消えてしまって幽霊になっている。頭がなくなってしまうというのですか、何というのですか、おかしなことになってしまう。ですから私は、もっとそういう点について、じみちなと申しますか、そういうようなことをやっていただくように、これはお願いになると思いますが、努力していただきたいと思います。大蔵大臣のほうも、これは協力して下さい。
  354. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、輸出金融はむしろ優先的な扱いをするということで、日銀を初め各金融機関にも協力を願っておりますし、今お話が出ました中小公庫の代理貸し付けの中に輸出上のワクをとるということも、毎年少しずつずっとふえてきまして、今年度、三十六年度では、もう実績としてこの別ワク的なものが五十五億円をこしておるというところまで来ましたので、輸出金融優先というような傾向から見ますと、三十七年も、この傾向がさらに強化されるということになろうと思いますので、政府機関においてもそうしますし、一般民間の金融機関においてもそういう扱いをする方向へ指導しておりますので、輸出金融は、他の金融に比べて格段に改善されると思っております。
  355. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあわかったようなわからないようなことですが、大蔵大臣、あまりとらわれずに、通産大臣がやると言うなら、輸出振興の問題については、うんと協力してほしいと私は思います。  次に、私は物価の問題についてお尋ねしたいと思いますが、これは、二・八と予定したのが一〇・幾らに上がってしまった。今までの何倍かに狂ってしまった。狂った一番大きな原因というものはどういうふうに把握しておいでになるか、承りたいと思います。
  356. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 二・八の見通しは、今のところまだ狂っておると思いませんのでございますが、この一カ年を通じましての……。
  357. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 三十六年度は何%ですか。実はちょっと間違いましたが、二・八は三十七年度で、三十六年度は一・幾らでしたか、その辺だろうと思うのです。それが実際一年たってみたら、一〇%幾らになってしまったのでしょう、べらぼうに狂っちゃったのですね。だから、その狂った理由は、原因はと、こう言ったのです。
  358. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 三十六年の見通しが、おっしゃいますように、最近は五・七というふうに今見通しを変えましたのでございますが、いろいろ原因はございましょうが、一つは、生鮮食料品などの値上がりが非常に大きな要素でないかと思うのでございます。そのほか、商品全般が非常に上がって参りました。いろいろな意味の文化費的な雑費的なもの、そういうものの需要がかなり多くなっておりまして、全般に生活向上に伴う一つの大きな、何と申しますか、そういうムードがございまして、それも大きな一つの原因じゃないかと考えておるのでございます。卸売物価のほうにつきましては、またそれぞれの問題がございますが、消費につきましては、そういうふうに考えております。
  359. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今、物価の問題を議論するときに、とかく消費者物価が非常に議論されるわけですが、これは非常に大切な点だと思いますが、卸売物価ですね。横ばいだ横ばいだと、こう言っておられるが、実際は少しずつは上がっておるわけですが、これに対してどういうふうな見解を持ってお見えになるのですか。
  360. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 卸売物価は、主として私のほうに関係が深いと思いますので、私のほうの対策をお答えしたいと思います。  御承知のように、ただいま大体卸売物価は横ばいだという数字が出ております。やや弱含み、これが金融の面から来ておるのも一つの理由だと思いますので、そういう形の卸売物価の弱含みがあまり歓迎すべき筋のものではないと思います。むしろ非常に生産性が上がっておる。そのコストも安くなっておる。こういう場合におけるコストの、生産性の利益をやはり最終需要者たる消費者にも均霑さすといいますか、分けるという、そういう意味の指導が必要だろうと思います。これはもう、基本的にそういう考え方でなければならぬ。ただいままでのように、労使双方だけでその利益を分配するという仕方ではなかなか下がっていかないと思います。やはり経営者も、また労働者も、最終需要者にコスト引き下げの利益を分かつという気がまえで取り組んでいくことが必要だと思います。これはもう一般的な問題でございます。ところが、いろいろ産業別に考えてみますと、やはり産業別指導は必要なのでございます。たとえば、ただいま問題になっておりますセメントなどになりますと、これは需給の関係から特別に強含みである。ことに、これが流通機構の面で円滑さを欠いておる。輸送がもう少し迅速でありますならば、こういうような停滞も生じないのではないかと思いますので、そういう点もいろいろ工夫していく。あるいはまた、特殊の産業になりますと、ほとんどコストを下げ、利潤を設備改善の方向へ向けていく、非常に急激な設備改善のほうの投資に向かっている、こういうようなものもございます。こういうものは、できるだけ足踏みしていただくというようなことにならないといかぬのじゃないかと思って、これは行政指導しておるわけでございます。しかし私は、ただいま卸売物価が安くなりましても、それが直ちに消費者物価、小売物価を安くするというような結果になっておらない、かように思いますので、問題は、むしろ卸から小売段階への流通機構の改善といいますか、これが非常な問題になるのじゃないか。もちろん、卸自身が安くならない限り小売も安くなりませんから、流通機構だけの責任だとは申しません。どうも物価のあり方そのものから見ますと、流通機構の未整備ということは、小売価格をつり上げている大きな原因ではないかと思います。申すまでもないことでありますが、賃金の上昇というものが物価に一番影響があるものでございますから、これが生産の面ではうまく吸収されて、コスト、生産性と対応してうまく吸収されておりますけれども、小売の面になって参りますと、この賃金の高騰の吸収方法が、ただいまのところではございません。経済機構の面において、そういたしますと、小売価格は上昇せざるを得ない、こういうので、ただいまのところ消費者物価が一番の問題だと、かように私は考えますので、できるだけ流通機構の整備等によりまして消費者物価の引き下げに協力すべきではないか、かように思います。
  361. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、この価格水準に対する支出要素別影響度というもの、これは日銀が出しております。この表を見ますると、労務費一・三、材料費一・七、減価償却費〇・一、あるいは金融が〇・三、一般管理費〇・一、問題は、純利益が二・二になっているわけです。先ほど、労働者と会社で利益を折半するとか何とか言いまするけれども、労働者のほうの賃金の影響は問題なく低くて、むしろ会社の利潤追求が横ばいといいますか、ちょっと上に上がっている。あなたは弱含みとおっしゃるが、なかなか強含みみたいな形で横ばいになっている。本来なら、財政投融資等の国家資金をつぎ込んでおるのですから、そこで、それが安くなって国民のためになるなら、政府資金を使っているところの意味があると思う。そういう問題について、何かこういう数字で私はお話願えば、今のような少なくともお答えは出ないと思う。どうですか。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの点は、私、数字で申し上げなかったのでございますが、これは、数字で申し上げることは非常に困難ではないかと思います。たとえば、利益を資本に幾ら割り当て、あるいは賃金に幾ら割り当てる、あるいは消費者に幾ら割り当てるということは、非常にむずかしいことだと思います。ただ、経営者なり労働者が最終消費者、それにも利益を均霑さすという気持になって参れば、自然にその数字が落ちつくのだろうと思います。幾らをと、三分の一を消費者に返せという、そういう簡単な議論ではないと思います。また、労使で折半しろというわけにもいかないと思います。順次私は、傾向としては、経営の倫理性とでも申しますか、そういう意味のものが浸透しつつある、かように思いますので、労使だけで利益を分配するという形のものは、結局取り残される産業じゃないか、かように実は考えております。それを数字で示せと言われましても、数字に示すことは非常に困難だ、かように私も思いますし、また、ここで申し上げるわけにも参りません。
  363. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや大臣、私は物価を引き下げる政府の基本的な態度として、大企業と申しましょうか、今私が申し上げましたのは大体日銀の調べであって、そして、それは資本金一億以上の製造業の中の資料をとって大体間違いのない、日銀が出したことであり、およそ肯綮な数字である。その中で利潤率がこれだけあるということは正しいのじゃないか。したがって、政府責任としてなすべきことは、政府資金でめんどうを見ておる、そういう関係にあるから、これこそ私は行政的な指導が最も及びやすいところだと思うから、それに対して努力しなくちゃいかぬじゃないか、目を向けておらなきゃいかぬじゃないか、二重構造のこういう構造問題に対して全然目をふさいだような形で物価対策を議論されてもいかぬじゃないかと、こういう趣旨で私は聞いておるわけです。ですから、それに対して大臣はどういうふうにお考えになるのか、それを承りたい。
  364. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 政府資金が投入されておる産業で非常に利益追求が高いというと、どういう産業を御指摘になりますか、先ほどのは全般的な産業の平均ではないので……、大体政府関係資金の目途から見ますると、特に私は高配当しているというものは見受けません。むしろ非常に苦しい立場にあるんじゃないか。ことに公共料金等、政府が認可するものについては、これは非常に苦しい状況に置かれている、かように企業の実態等から私は感じております。たとえば電力あるいは海連、あるいは鉄道あたりも同様じゃないかと、かように思います。
  365. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、私がお尋ねしているのは、公共料金等の値上げの問題は、物価対策として私は大事は点だと思うんですよ。大事な点だと思いますが、こういう大企業の利潤追求——それは配当を何割に押えるということもありますよ。しかし利潤を上げますと、それを設備の投資の方に回しているのが実際であります。だから物価のほう、あるいは卸値段のほうに少しも影響を及ぼしてこないのだ、したがって、行政指導としては、そういうものも消費者のほうに与える行政指導をやるべきじゃないだろうか、こういうことを主張しているわけです。
  366. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) その基本的方向は私も了承しているから冒頭に申したとおりでございます。ただ、今御指摘になりますように、非常に利潤追求がきつい、大事な政府資金を投入しているのじゃないか、そういうものの指導は一体どうだ、かように仰せになるのでありますから、政府資金が投入されているような事業は、あまり利益追求に熱心でも、そう高いところには参っておりませんということを実は申し上げた。言いかえますならば、行政指導の余地が比較的少ないことを指摘したつもりでございます。もちろんそれらの事業にいたしましても、この設備投資自身がサービスを供給する根源でございますから、必要な設備投資はいたさなければならないのでございます。しかし事実、会社の経理内容等を見ますると非常なやりくりをしている。その実情等から見ますると、今御指摘になりますような観点に立っての指導の余地が非常に少ないということを実は申し上げたつもりでございます。
  367. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それじゃ大臣、私は財政投融資だけに限りましたけれども、市中金融のほうから見ても非常に中小企業が圧迫されて、やはり大企業優先の金融なんですよ。ですから、そういうところを私は含めて実はお話申し上げているわけです。
  368. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この中小企業金融をそれじゃ大企業金融が圧迫しているかどうかという問題でございます。これはたびたび御説明申し上げたと思いますが、昨年来、中小企業については特別な措置をとったつもりであります。その結果は、民間銀行あるいは政府の三公庫等を通じて見ましても、中小企業向けは総融資額の四四%四という数字を示しております。これは、過去の実績等から見ますると、圧迫されたと言われた三十二年程度は四〇%前後になっております。そういうこと等から見ますると、総体の融資金率は、比較的今回は順調に参っておるように思います。また、大企業との系列にある、あるいは関連中小企業というものは、やはり大企業の金融で相互に協力し合う形のものがあるのじゃないかと私は思います。むしろ今日の実情から申すと、独立した中小企業は、総ワクとしてふやしておりますので、比較的円滑な推移を遂げ、年末金融で非常に中小企業が悲鳴をあげたとは実は思いませんが、むしろ、本来なら、安定であるべき大企業の下請産業等は、大企業に対する金融の引き締めから、これは相当の圧迫を受けている、これが実情ではないか、かように私は見ております。
  369. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 こういう資料がございましょうか。たとえば市中金融も政府関係も含めてよろしゅうございますから、一億以上の企業にはこのくらい大体出しておる、一億以下にはこのくらい貸し出しているのだというような総額はつかんでおいでになりませんか。
  370. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 一億となりますと、相当大きいものでございます。先ほど四四・四%と申しましたのは、大体一千万円以下のところで出した数字でございます。
  371. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はこれは今度いつか、資料要求として申し上げておきたいのですが、一億で一ぺん仕切ってみて、一億以上の会社に対してはこのくらい貸している。それから一億以下に対しては、これくらい貸しているという総額の比率を、ひとつお出し願いたいと思います。三、四年間ぐらいのですね。
  372. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金融の中で大企業に貸し出ているものと、中小企業へ貸し出しているものとのいろいろ比率は、常に行政指導の対象になって、見ておりますし、その場合私どもが、中小企業ということについては確かに一つの定義がございますので、資本金一千万円以下、従業員三百人以下というような一つのあれがございますので、そこで押えて、その企業へ貸しているものと、それ以上の企業へ貸しているものというものを分けて統計をとっておりますから、一億で切ってみるというのには、これはすぐにその資料は間に合わないと思います。事実やっておりません、そういうものは。
  373. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私が言いたかったことは、政府がいろいろな点で、物価対策で苦慮されておる点はよくわかりますが、今申しましたように、少なくとも卸売というものが相当数下がってこなくちゃいかぬじゃないか、これだけ設備が高度成長政策の名のもとにおいて進められて、そのものが少しも卸売物価というようなものについてはね返ってこない、あるいは中小企業でいえば、いわゆる原材料になるものなんです。そういうものが少しも下がってこないところに私は問題がありはしないか、こういう点を指摘したいのですがね。政府は、いや、そんなことはかまわぬのだ、そこらあたりはあまり心配ないのだ、こういうふうに見ておられるのか、そうして対策は、消費物価のほうに主点を置いて対策を立てられようとしているのか、その辺の心組みと申しますか、問題の取り組みの姿勢のことについて尋ねているのです。
  374. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 卸売物価と申しますか、その企業の生産コストを下げるということ、これはもう第一でございます。で、現に機械等が輸出向けに相当期待が持てるというのも、これはコストが下がっている結果でございます。だから、その生産コストが下がるということは、それは同時に卸売物価も安くなるということでありまして、大体総体として卸売物価は横ばいと申しておりますが、これはもう品物によりまして千差万様でございますから、いわゆる相当平均よりも高いものもあるわけでございます。そういうものを下げる方向へいかに指導するかということが一つの問題だと思います。特に私どもが気がつきますのは、相当の生産性が向上しているにかかわらず、なかなか価格が下がらない、こういうような品物につきましては、特別にこれを指導するという真剣な態度をとっているわけでございます。この場合に、先ほど一言触れましたように、その生産性は向上しているが、みずからの力によって設備改善をするとか、あるいは設備の拡張をするとかいう設備投資が非常に旺盛な事業がある、そういうものが利益をそちらの方向へ持っていっている、こういうのを、われわれの指導によりましてコストを下げていくようにしたいものだということを実は先ほど申し上げたつもりでございます。で、卸売物価の動向というものが横ばいだからといって安心できる筋のものではございません。それはもう御指摘のとおりでございます。高度成長、それは同時にその生産性を向上さすことでございます。そうして当然その価格は下がらなきゃならない、その方へ指導することが大事でございます。今回特に税制の面では物品税等も安くなりますから、これを小売価格に反映させるように指導しております。これなどは、まあ税制改革におきまして、消費者への利益をはっきり出したものじゃないか、まあ自慢の一つでございます。ただ、卸売物価と簡単に申しますけれども品物によりまして非常に違う性格でございますから、その点を御了承いただきたいこと。それからもう一つ、卸売物価が下がらない、そういうふうな理由に操短をやっておるのじゃないか、本来ならほうっておけばこれは下がるものだ、それを操短までやって維持したりすることはどうだというようなお話があろうかと思います。ついでにつけ加えて説明すれば、輸出品等については、価格を安定することが必要でございます。だが、繊維関係等につきましては、操短等で安定方策をはかっております。しかし、この操短をやった結果、消費者に対する消費者価格が高くなる、こういうようなことはもちろん避けるつもりでございますから、ただいまのところは、操短の結果、消費者に苦痛を生じた、こういう事例はないように私は考えております。
  375. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあいろいろな角度からいって、物価の上昇というものを、政府は横ばい——小売物価ですよ、消費者物価というものは横ばいするとは思っておらなくて、やはり今年度も上がる、こういうふうに想定しておられるか、どのくらい値上がるというふうに想定をしておみえになるか。
  376. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 今お尋ねの点は三十六年度……。
  377. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや、三十七年度。
  378. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 三十七年度でございますか。消費物資のほうが二・八%の上昇をする。それから卸売物価のほうが逆に二・六のダウン、こういうふうに三十七年度は考えておりますし、それから、現在の状況ですぐに変更しなければならないところまできておるとは思っておりませんので、もう少し様子を見ながら、先ずほどのお話のように、二−三月の状況もよくにらみ合わせなければ、これを変更しなければならぬかどうかはまだ考えておりません。これが率直なところでございます。
  379. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、自信もないことだろうと思いますが、大臣、私鉄や電力の問題が新聞に出ております。大臣はえらい賛成だ、河野さんが反対だというのでけんかされたということが出ておりますし、あるいは都市交通も出ておりますが、一体これは値上げを認められますか、どうしますか。
  380. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、鉄道のことは、これは運輸大臣が責任を持ってお答えするだろうと思いますから、これは運輸大臣におまかせしたいと思います。  電力の問題は、ただいまこの委員会でもお答えしたかと思いますが、まだそういう申請が出ておりません。東北電力が料金の改定を申請しておるじゃないか、それに対して通産大臣は賛成なんじゃないかと、こういうような意見を聞くのでございますけれども、この予算委員会でもお答えしたように、まだその種の申請は参っておりません。申請も出ていないうちに、内容も知らないうちに賛成だとか反対だとか申すほど私も軽率ではございません。だから、もちろんよくその実情を調べた上で態度を決定するつもりでございます。ただ、一般的に申し上げ得ることは、ただいま特価が非常にやかましい際でございます。ことに物価を押える力のありますのは、政府が持っておる権能というのは、いわゆる公共料金以外ございません。電力料金や、あるいは鉄道運賃でございます。今消費者物価が非常に高くなる、こういうその実情等を勘案いたしました際に、私どもはこれの改定といいますか、引き上げについては、もちろん慎重でなければならないと、かように考えております。まだ書類の出てこない現状でございますが、電力料金などは当分改定しない、こう実は考えております。(「当分とはいつだ」と呼ぶ者あり)当分とはいつだということでございますが、当分は当分でございます。どうか御了承願います。
  381. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 菅さんにお伺いしますが、あなたのおっしゃる物価の上昇率の中には、今私が指摘いたした私鉄とか電力とか都市交通の関係の値上げは織り込んでおられるのか、これは織り込んでいないのか、どうですか。
  382. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 今お尋ねの点は何でございますか、いろいろそういう公共料金やなんかの……。
  383. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 値上げを見込んできめてあるのか、二・八のうちに入っておるのか。
  384. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) そういう個々のものを正確に見込んではおりませんので、何といいますか、全体の大きな見通しでやっておりますので、一つ一つをこれを認めておるか認めていないかと言われますと、ちょっと返答ができぬように思いますが、公共料金はできるだけ値上げをしないという基本方針には乗っておりますけれども、できるだけという範囲がどの範囲であるかということは、それぞれの場合に判定をいたしまして、若干の公共料金といいますか、そういうものの値上がりが全然ストップという考えではございません。やむを得ざるものの引き上げは認めるという基本方針に乗って今の算出をいたしておりまするから、これからやりまするそういう問題がやむを得ざる範囲にありますかどうかという判定になるわけでございまして、大ざっぱなところ、そういうところでございます。
  385. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この前のときに藤山さんが、私鉄の運賃の値上げは入っていないんだと、公共料金の上昇率についてですね。これは昨年の本会議における質問に対する答弁だと思う。今後は二・八をきめられるときに、私は、私鉄とか電力ということを言いましたが、公共料金の値上げはそれじゃ入っておるのか入っていないのか、値上げを見込んできめておいでになるのかどうか。若干認めておるというのはどの程度認めておるのか。
  386. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 大へんむずかしい問題でございまして、入っているといえば入っているし、入っていないといえば入っていない。つまり何といいますか、数字をはじきます基本の態度は、さっき申しましたように、公共料金はできるだけ押えるという、そういう基本方針のもとに大きな趨勢を見て参りますので、個々のこの料金がどうだと言われますと、ちょっと結びつきかねる……。
  387. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 公共料金は。
  388. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 公共料金全体を、大勢としてはできるだけ押えるという方針に乗っておるわけでございますが、それでは私鉄の分はどうだとか、あるいは国鉄の分はどうだとか、あるいはガスがどうだとか、一つ一つになりますと、この分は入っておる、この分は入っていない、こういうお答えはすこぶるしにくいのが実は率直でございます。
  389. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。この前三十六年度のときに、最初は〇・七%の騰貴率が出ましたね。国鉄運賃が上がったから一・一%に改訂したでしょう。ですから、そういうふうに作業ができておるはずですよ。できているのですよ。非常に政治的な御説明ですけれども、二・八%の騰貴率をはじいた根拠を、これを事務的に説明してもらえばすぐわかるのですよ。簡単なんですよ。
  390. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 率直に申し上げますと、公共料金の値上げ、そういうものは算入しておりませんでした。率直なところはそうでございますが、しかし、公共料金が全部くぎづけという考えではないようでございます。
  391. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 二・八という数字を出しておるときには入っておらぬと、こう言う。それで、それを押し通そうとするのが、私は堅持するのが政府の義務だと思うのです。また、おやりになったことだと思うのです。ところが、片一方には今度上げるようなことをおっしゃるからわけがわからなくなっちゃうのですよ。どっちなんですか、一体。だから今言ったように、予算のいろんなものが狂ってくる。たとえば輸出入も関係して参りますし、いろんな点で狂ってくるから、私らは真剣に聞いておるのに、いや、そのような、入っておるような入っておらぬような、出たり入ったりする議論はどうもならぬと思います。
  392. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 答弁の前に、今のに関連して。政務次官、経済企画庁長官の本会議における演説では、公共料金の値上げは極力抑制する、極力抑制すると書いてありますよ。それを大きいところがら大まかにとか何とか、あなた、からだは大きいけれども、そういうようなことでは、極力抑制するという演説と合わぬじゃないですか。はっきり入っていない。明確にしておきなさい。
  393. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長からちょっと申し上げますが、大体企画庁のお考えは、公共料金は極力値上げを押えると、こういう方針だと思われるのですが、それだけでは足りませんか。
  394. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。私は、先ほど二・八%には公共料金を含んでいないと言われたでしょう、極力とか何とか。入っておらぬでしょう。これはやかましく言うのは、これは予算の積算の基礎になるのです、物価の問題は。予算の積算の基礎になるのが、そんなあいまいでいいのですか。一応三十七年度の予算を編成するときには二・八%で見込んでいるのでしょう。その基礎が非常にそんなあいまいなものでよろしいのでしょうか。そうしたら、予算審議するとき、非常にたよりないんじゃないですか。一応あとで変化はあるとしても、最初の予算の積算のときには、そういう前提でやられておるのですから、そこのところをはっきりしなければいけない。あいまいな、そんな政治的なものじゃいけないわけですよ。今後の推移についてはわからないが、一応予算の積算の基礎については、公共料金の値上げを含まないで積算したものである、そういう作業があるはずじゃありませんか。はっきり御答弁したら何でもない問題ですね。
  395. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどお答えしたように、二・八には直接に公共料金を入れておらない、こういうことでございます。ただ私、二・八%の場合に、これは総体の上昇率二.八%ということでございますから、ものによっては下がるものもありましょうし、ものによっては上がるものもありましょう。その二・八%の上がるというそれについて、公共料金が、今、私鉄運賃を別に私上げるということで説明するわけじゃございませんが、非常な高い率でこれを改定すれば、これは二・八%に非常に狂いを生ずるだろうし、あるいは下がるもの等も考えて、二・八%におさまる程度じゃないか、そういう程度のものであろうと思います。だから、私は、先ほど経企庁の説明を聞いておりまして、それは入っておらないと言われる、そうだろうと思う。だから、しかしその二・八%というものは、各一つ一つの物価が平均して二・八%上がる、こういうものじゃないと思うのです。そこらさへ御了承いただけば、その説明は別に矛盾はないだろうと、かように思います。
  396. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いやいや、通産大臣、二・八どうしても物価を逆に言えば上げなければならぬというあなたの議論になるのですよ、下がったものがあれば、今度は上げるということになるから。そこで、公共料金を上げないのだ、こういう原則なんでしょう。
  397. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 公共料金は一切上げないと政府が声明したことはございません。これは企画庁も先ほど申しておりますように、これは必要なものは特例を認める、こういうことなんです。で、いわゆる原則としてはそういうものは上げない、しかしながら、必要やむを得ないものについての特例がある、これはもうしばしば企画庁長官も説明し、政府の統一見解であることも間違いございません。
  398. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、大臣、公共料金はやはり極力押えるのだ、ときには上がることもあるのだ、こういうような話にもやはりとれてくるわけですよ。だから、そうすると、今言ったように、経済閣僚会議の通産大臣としてお聞きしなければならない。そうしたときに、近々のうちに、たとえば三月くらいまで、あるいは四月くらいまででもいいですが、あるいはもっとはっきり言えば、参議院選挙後に上げるかもしれない、参議院選挙後なら参議院選挙後にひとつ区切ってやったときに、一体緊急に今問題になっているような公共料金を上げなければならない情勢にあると判断をしておみえになるのかどうかということです。
  399. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど通産省所管の電力料金につきましては、当分の間上げる考えはこれはないということを申しました。しかし、まだ書類も出ていないうちにとやかく言う筋でもございませんから、大体の基本線は企画庁の長官が説明したとおりの態度をとっておりますので、閣内一致した意見でございます。ただ、運輸省の関係のものにつきましては、昨年以来の問題でございます。おそらく運輸大臣の気持といいますか、そういう懸案事項であることだけは私どもも了承しております。具体的に閣議に諮られました場合に、納得がいけば賛成をしますね。納得がいかないことには賛成をしない、こういう態度を私はとっております。
  400. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。お話をだんだん承っておると、だんだんわからなくなるのですがね。上昇率を二・八%で押えようとするためには、積算の基礎には公共料金の値上げというものは考えなかった。だから、どこまでも二・八%以内で押えるためには公共料金を上げないという原則は、これは政府においては確認をされておるはずですね。そうですね。ところが、ときによっては公共料金もまた上げる場合があると。こうなって参りますと、公共料金というものの値上げは他の物価にも響きが大きいですから、二・八%というものは押えるわけにいかなくなる。そこで、二・八%以内で押えようということを眼目にしているのか、何とか都合がつけば公共料金の値上げもやむを得ないという便法をお考えになっているのか、この点をもう少し明確にしていただきたい。
  401. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) 非常な重要な問題でございますが、この公共料金、あるいは交通費とか、いろいろな水道料金その他雑費とでも申しますか、こういうものの値上がりというものを全然見込んでいないわけではない。積算いたしますときに、過去の実績を見ましたり、いろいろのことをいたしますときに、過去の交通費とか、雑費とか、いろいろのものが上がっておりますが、そういうものは参考にして一つの趨勢として見ておりますから、そういう意味では若干入っていると言えないこともないわけでございます。ただ、今度私鉄の値上がりが、これは見込んだか見込んでいないかと言われますと、非常に答えにくいわけでございます。過去のずっと実績などをいろいろ計算をいたします際に、過去の交通費や、そういう雑費類の値上がりは一応織り込んでおりますから、それじゃ、その分に、今回の値上がりが入っているのか、入っていないのか、こういうふうに言われますと、私鉄が入るのか、あるいはどれが入るのかと言われますと、ちょっとそこがむずかしいと思います。
  402. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今度の何では、閣議決定で、了解ですが、三月九日、そのうちの第十の項に、「公共料金の値上げ抑制措置は引き続きこれを堅持し、生産性の向上などにより値下げする余地の生じたものについては」、これはもう公共料金ではございませんが、「積極的に値下げを指導する」ということで、在来の態度を堅持するということを申しております。そこで同時に、この決定の中にはこういう問題があります。五の点で「流通過程における」云々として、「輸送力の増強に努める」、こういう一項もございます。これと合わせて考えまして、先ほど来申し上げるような措置をとると申しますか、やむを得ないものについての特例を考えるということでございます。すでに昨年でございますが、これは七月十八日、この閣議決定によりますと、「三月七日の閣議了解による公共料金値上げ抑制措置によって、その後公共料金の値上げは一切抑制されてきたのであるが、閣議了解当時すでに、料金値上げについて行政的な手続が進められていたもののうち、その後の経過から、事業別収支の状況が著しく悪化し、これ以上値上げを抑制することが困難と認められる事例が散見されるに至った」云々と書きまして、「これらのもののうち、その値上げの影響が一地方小都市の範囲内に局限されるもので、しかも影響を受ける地方の住民の大多数がその値上げの必要性について納得しているようなものについては、関係各省によって経済企画庁と協議の上、合理的な範囲内において料金改訂を行なうことを認めるものとする」と、こういうような書き方をいたしておるわけでございます。おそらく最近、東京都電なり、あるいは大阪の地下鉄、あるいは名古屋の地下鉄などを値上げいたしましたのは、この趣旨によるものだと思います。現にそれぞれの市議会等も満場一致それを推進しておる、そういうような実情にあると、やむを得ず、これを抑制しないで、改訂を許しておるという現状でございます。で、この基本的態度は今後も続けていくつもりでございます。問題は、物価について、ただいま御指摘のとおりに、公共料金が諸物価値上がりのムードを作る、だからその先駆をなすものだと、こういうような言い方がしばしばされておりますが、今日まで物価はすでに上がった。公共料金は上がらないでいる。しかも公共事業経営者としては、賃金も上がっておるし、あるいは資材も上がっておるし、あらゆる面で高騰しているけれども、賃金は据え置かれる、しかも非常な混雑を来たしておる。こういうようなものについて、やはり受益者負担の理論も一部私は賛成せざるを得ないのじゃないか、かように私自身は考えますが、もちろん、物価値上げの先端をいくというようなことであっては相ならないと思います。ことに運輸省のほうで所管している地方鉄道の場合でございますと、通勤は一定の区間は大体会社持ちのようでございます。そういたしますと、交通機関を利用する家庭の人たちの交通費というものが、この料金の引き上げによって非常な負担になるかどうか。むしろ逆に、これが非常な負担になれば、その必要最小限の利用ということに実はならざるを得ないのじゃないか。それが非常な国民生活を圧迫するような実情になるかどうか。その辺をやはり考え、事業経営の主体的な立場から経営の必要なことですね、持続性というか、そういうことを考えないと、公共事業のサービス供給という点でもし欠くるところがあれば、これはたいへんなことじゃないか、私はかように考えます。しかし、ただいま審議されておりますものがどういうような率であるか、まだ私も存じません。もちろん率は安いことが望ましい、また上げないで済めば、それに越したことはございません。上げるならば最小限度の引き上げということが望ましいのでございますから、よく実情等を伺いまして、そうして私ども閣僚としての責めを果たしていく、こういう態度で行くつもりでございます。
  403. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう一つ。結局二・八%の上昇率で押さえるという線はくずれてもやむを得ないということに了解してよろしいですね。
  404. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、ただいま、二・八%の引き上げというか、これは引き上げなくて済めばそれでいいじゃないか、二・八%上げなきゃならぬと、かように実は思いませんが、また、これをこわしてまで公共料金を上げるということは、まああらゆる方法を尽くして避けるべきだ、かように思っております。だから、二・八%必ず上げるというのでもございませんし、そこまで行かなきゃたいへんけっこうなんです。また、それをくずしてまで上げるんだというようなことは考えるべきじゃない、かように私は思います。
  405. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 事務当局でけっこうですが、二・八の騰貴を積算されておるんですが、資料でということもさることながら、ここでひとつ積算された数字をそこですっと読み上げていただけませんか。
  406. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) 二・八%の積算につきましては、これは来年度の物価がいろいろ値上がりするものも値下がりするものもいろいろ見込んであるわけでございまするが、一々これはこうだということで、来年度、全体の物価の一つ一つの品目につきましてこれを積算するということは非常に困難ではございまするが、大体傾向的に、たとえば雑費というようなものをとって参りますると、雑費というものが大体今までの傾向ではまあ若干ずつ強含み横ばいに推移しておる。したがって、雑費の趨勢というものは来年度はこうなるであろう、こういうようなものを全体を積み重ねまして一応の積算をいたしたわけでございまして、たとえば——これは全部はとても網羅できませんが、たとえば食料品につきまして、野菜等の今年度の非常な異常乾燥とかあるいは台風とか、いろいろなことがございまして、野菜が非常な値上がりをしております。ところが、そういうものがこれは来年度もそれと同じような値上がりをするというようなふうには積算してございません。これは一時的な季節的な現象であるということを考慮に入れ、また酒類等につきましての減税あるいは物品税の減税、こういうようなものにつきましては、やはり物価下落要因といたしましてもまあ見込むわけでございます。ところが、先ほど言いましたように、上昇要因といたしましては、そういう雑費であるとか、あるいはまた住居費等につきまして上昇要因もございます。だから、そういうようなものを全体を積算いたしたわけでございまするが、しかしながら、その二・八%というようなことにつきましては、あくまでその二・八%は努力目標でございます。でき得る限り二・八%の範囲内にとどめるということがわれわれの目標でございまして、これを上回るということになりますると、またいろいろほかの指標にも響いて参りますので、極力二・八%以内にとどめるべく今後努力する、かような決意を持っておる次第でございます。
  407. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 二・八を積算されるときのたとえば食料品費とか、住居費とか、光熱費だとか、教育費だとか、あるいは交通費だとか、いろいろなそういう区分の仕方があると思うのですが、どういうふうにそれじゃ区分をして積算をしておみえになるのか。
  408. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) これは大体今までの各物価の趨勢——たとえば住居費であるとか、あるいは雑費であるとかというようなものがたどって参りました趨勢というものを勘案しているわけでございますが、この例をとって見ますと、住居費、雑費等はこれは消費内容が上がって参るわけでございます。したがって、その変化によるところの過去のトレンドというものによる値上がりというものを考慮しております。それからまた衣料費でございますが、衣料費につきましては、繊維会社の問題がございまして、最近非常に繊維は暴落したというような問題がございまして、これは弱含み横ばいに推移するであろう、こう考えて間違いないわけでございまして、それにつきましては、弱含み横ばといういように考えております。また食料品につきましても、これは先ほどお話しましたように、三十六年度は異常な高騰を示しております。いろいろな季節的要因によりまして。したがいまして、これはもう今後はさらに強く上がるということはないのでございまして、もう今後においては横ばい、あるいはないし弱含み横ばい、こういうようになりまして、過去の全体の傾向というものをはじきまして積算といたしたわけでございます。
  409. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちょっと、たとえば家計簿も仕分け方があるわけですよ。あなたのほうは、そういう積算をされるとき、どういう品目を言っておみえになるのか、その品目をまず私はお聞きしておるわけです。と同時に、もし、品目が出るとするならば、その品目別に、今度はこれはこのくらい上昇するのだ、そういう積算をやっておみえになるのかならないのか。その辺がよくわかりませんから、説明を承りたいと思います。何が弱含みだとかどうとかということではなくて、たとえば、今、衣料品はどうなるのか、食料品はどうなるのか、あるいはお医者さんの医療費はどうだ、いろんな私は積算されておると思うのですよ。したがって、どういうふうにして積算しておみえになるのか、まず積算の方法をお聞きしたい。次にその方法があるなら、こういうことをやったらこういう数字になったのだと、こういうことを承りたい。
  410. 羽柴忠雄

    説明員(羽柴忠雄君) まあ、大体私のほうの計算方法は、一々のこまかい商品につきましてこれが値上がり、値下がりというものを積み上げるというようなやり方ではございませんが、しかしながら、大分類といたしましては、たとえば住居であるとか、あるいはまた雑費のいろいろな品目もございますが、こういうものにつきましてはいろいろ積算をしております。特に消費内容の変化というようなものは十分考慮をいたしまして、消費内容というものがだんだんと上がって参るわけで、来年度のごときは特に個人消費の需要が非常に強いのでございまして、もちろんことしほどではございませんけれども、やはり八・四%程度上がるだろう、こういうように見ておりますが、そういう点を勘案いたしまして、そして二・八%というこういう数字をはじき出しておるのでございますが、しかしながら、一つ一つの品目につきましては、私どものほうはまあ大分類で算定しておるわけでございますが、一つ一つのものにつきまして、たとえばこれについてはこれぐらい上がるだろう、こういうような発表冒しますと、またこれ、ムードというものによりまして非常に全般の物価がそのムードに押されましてまた上がってくる懸念もございますので、私どものほうの事務の段階におきましては、一応大分類ごとに過去の趨勢をたどり、また現在の消費内容経済情勢を総合勘案いたしまして算定をしておるということだけを申し上げたいと思います。
  411. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は刺激するとか何とかいうことをおっしゃいましたけれども、その点もわかりますが、しかし、一つ差しつかえない程度において二・八%を積算された資料を御提出願いたいと思います。
  412. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) たいへん自信がなさそうでございますが、できるだけ工夫をさしてみますけれども、よほど自信のないことを係で申しております。それだけひとつ御了承おき願いたいと思います。
  413. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、それは物価対策にどうも自信がないようにとれてしょうがないんですがね、おっしゃることを聞いておりますと。私はもう少し物価の問題に真剣に取り組んでいただかなくちゃならぬと思います。しかし、何か検討しておやりになるというお話ですから、それ以上は承りません。  この間ある新聞を読んでおりましたら、内閣不信任というようなものが出ておるわけですね。ということは、物価が上がったので池田内閣いやだと、資料を見ると八〇%以上いやだと。これは完全に内閣不信任なんです。元来こういうものが出たときには、きょうは池田総理はお見えになりませんが、私は経済閣僚としての責任があると思う。しゃあしゃあとしておられるというものではなくて、民主主義の原則に基づけば、私はこういうようなときには国会を解散するとか何とかやはり責任の所在を明らかにすべきときじゃないかと思うんですよ、どうでしょうか。
  414. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) やはり経済の変動、そのときにおいてのいろいろな批判がございますことは、これは当然でございます。ことに先ほど来公共料金その他の物価の変動についてのお話がございました。公共料金については政府自身がひとつ当分の間どういう扱い方をするとか、こういうことをきめ得るだけの権限を持っております。しかしながら、その他の物価につきましてはただいまは権限が与えられておりません。しかし、権限がないからといって、政府は実は手をこまねいておるわけではございません。ただいま政府におきましてはこの月のうちに各省の所管しております事業別、物資別等について、物価対策、これをひとつ持ち寄ることになっております。で、政府も真剣にこの物価対策に取り組んでおりますから、近く、この三月一ぱいということが申してございますので、その期間中に具体案を各省持ち寄りまして対策を十分立てていくつもりでございます。まだ、ただいま新聞に出たというそれだけで、解散ということはもちろん考える筋じゃないと、かように思っております。
  415. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 去年これだけ上がってしまったのを、今から対策を立てるといって、どろぼうを見てなわをなうというけれども、これは逃がしてから、なわをなっているようなものですよ、今からやるということは。  もう一つ。お聞きしておると、政府には責任がなくてよそで上がっちまったんだというような、まことに無責任な態度にもとれるわけです。あるいは政府としては力及ばず無能だということを、逆にそこで証明をしてお見えになるような答弁にも聞こえるわけです。いや何ともしようがないということなら、政府はあってなきがごときものなんですよ、物価の問題に関しては。無能だということですよ。おやめになるのが適当じゃないかと思う。責任をとるべきだと思う。
  416. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、ただいま建前を申したのでございます。で、政府が適切にとり得る処置というものが、法律がないのだ、また制度はないのだ、したがって各業種別、その団体等と話し合いをしておる。これはもう現にやっておりますから、その努力の跡は御承知のとおりでございます。ことに、今回物品税などの減税に際しまして、各業界に小売の値段に直ちにこれを反映さすようにというこれなどは、非常に熱意をもって強力に各業界と相談をいたしております。だから、私は、これらの実情がはっきりわかって下されば、政府は権限に基づかずしてよく行政指導をやっておると必ず国民は支持してくれる、私はかような自信を持っております。
  417. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後に、大臣、国民の生活は、物価の問題等から推しまして、生活は苦しくなっておると判断してお見えになるのか。それとも、いや普通だよと、楽になっておると、逆にいえばそういうことになると思う。どういうふうに現状を把握してお見えになるのか。
  418. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この点につきましては、池田総理からお答えいたしました。政府といたしましては、もちろん苦しんでおる面もあるし、また総体として生活が向上して内容も充実しておる、そういうものも見のがすことはできないと思います。そのほうから申せば、今日の物品値上がり、これは非常な苦痛になっておるという見方ではないだろうと思います。しかし、私は、総体といたしまして、どういう政治的な見方をするにいたしましても、統計の上に物価そのものが異常な高騰を示すというのは、これはまずいことだと思います。経済閣僚といたしましては、非常に責任を感ずる次第でございます。そういう意味において、今日まで卸売物価なりあるいは小売等につきまして、それぞれの高騰した原因を十分探求、追及して、それぞれの対策を立てていくべきじゃないか、かように思います。  で、総体といたしまして、先ほど卸売のお話がございましたが、しばしば賃金の高騰が物価値上がりの一つの大きな要素だと言う人がございますけれども、私どものいわゆる生産面を担当するほうから申せば、十分生産性が向上して、いわゆる賃金高はその面においてはりっぱに吸収されておる、かように実は思いますので、そういう意味から卸売物価等のあり方を指導しておるわけでございます。まあ先ほど来しばしば申し上げますように、誤解のないように願いたいと思いますのは、いわゆる小売物価という場合におきましては、その生産性の向上という点がございませんので、いわゆる賃金の高騰などを吸収する方法がないと思います。こういう点が、いわゆる流通機構の未整備という形で説明されており、小売物価が高くなっておる主たる原因だろう、かように思います。  しかし、今後いわゆる中小企業自身にいたしましても、商いをするほうから見ましても、いろいろの工夫等が行なわれますから、いわゆる賃金高騰が小売物価を上げているという、そういう理屈はだれも賛成しないことになるだろうと思います。その物価のあり方自身にもやはり工夫をしなければならぬことだと思います。しばしば申すことですが、私は、同じそば屋にいたしましても、配達をする場合と、またその家でサービスを提供される場合とは、これは当然違っていいと思います。最近はそういうような意味の価格の変動は行なわれておるようでありまして、あるいはコーヒーだとかそばが、出前の場合は高い。これなどは新しい物価形成だろうと思います。こういうことになると、自然にみんなも納得していくことだろうと思いますから、在来の物価の形だけで今の高騰を論ずることは、現在の経済実情にはなかなかそぐわないのじゃないかと、かように私は思います。  また、中小企業がしばしば指摘されまして、そうして日本の場合においては格差が非常に大きくなる、だから、中小企業の製品等はなかなか安くならないのだということはしばしばいわれますが、もう少し経済界が発展して参れば、いわゆる付加価値額なども、大企業の場合と中小企業の場合とあまり差のないような状態、これを実現することは困難ではないのじゃないか。現にアメリカなどでは、大企業と中小企業との間における付加価値額は、むしろ中小企業のほうが高いとまでいわれておる。イギリスは大体、大が一〇〇に対して中小企業は九六と言っておる。日本の場合はそれがわずかに、大の場合と中小を比べれば一〇〇対四〇幾つと、こういうふうな数字が出ておりますが、こういうような付加価値額等が大企業の場合に接近してくるということになれば、総体の物価体系もまた変わってくるのじゃないか。また、そういうところが経済を発展させ、向上させる内容の問題じゃないか、かように思います。  ただ、今日の段階で、一部の経済発展の過程において賃金が先行した、あるいは流通機構が整備されない、あるいはまた気候その他によりまして食糧等が需給の変動があるとか、こういうようなことである程度価格が変動すること、こはれやむを得ないのじゃないか。だから、それを政治でできるだけ強い負担のかからないようこれを指導することが私ども責任だろう。こういう意味で、いわゆる総理の言葉じゃございませんが、経済の問題はあまり短期な見方をしないで、もう少しじっくりかまえて、そうして経済のあり方をひとつ十分つかんでいただきたい、かように思う次第でございます。
  419. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣のお答えを聞いておって、わからぬわけではないのですが、大臣、今国際的な関係から見ましても、若干国家の権力が、何と申しますか、自由な経済に対して手を加えつつ伸ばしつつある方向にあると思います。そこで、大臣が全体として対策を立てようとされるときに、若干今のままじゃなくて、規制というような点ですね、片一方でいえばそれは国家権力が介入するとかいろいろな言い方があると思いますけれども、方向は、それは今世界の趨勢はそういう方向にあるのです。したがって、そういうような点を意図されて今努力されておるのか、現状のままで努力して、なおかつそれは達成する見込みである、こう言っておられるのか、その辺のところちょっとわかりかねますから、お尋ねしておきます。
  420. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今の成瀬さんのお尋ねは、あるいは非常な基本的な問題に触れるのじゃないかと思います。たとえば、いわゆる公共料金を一切値上げしない、こういうような特段の処置をとります際には、かつてのようにやはり物価の統制ぐらい踏み切らないと、それは不可能なことだと思います。しかし、私は、現在の物価変動の状況がそういう大なたをふるわなければならないような情勢だとは思いませんし、また私どもがとっておる経済に対するいわゆる資本主義自由経済の建前から申しますと、さような処置をとらないように推移していくというのが私どもの念願でもございます。したがいまして、ただいまの段階では、いわゆる大なたをふるうとか、あるいは統制法規に極端に走るとか、こういうことはする考えはございません。できるだけ業界との話し合いなり、あるいは自主的な指導なり、こういうことで、そして順次物価のあり方を直していく、こういうことをしばらく続けるべきじゃないか、かように実は考えております。
  421. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 成瀬君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時に開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十六分散会