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1962-03-13 第40回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十三日(火曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員井川伊平君、久保等君及び白 木義一郎君辞任につき、その補欠とし て村山道雄君、成瀬幡治君及び牛田寛 君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            加賀山之雄君    委員            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            古池 信三君            小林 英三君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            野本 品吉君            村山 道雄君            山本  杉君            亀田 得治君            木村禧八郎君            高田なほ子君            戸叶  武君            成瀬 幡治君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            赤松 常子君            田畑 金光君            市川 房枝君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    法制局第一部長 山内 一夫君    憲法調査会事務    局長      武岡 憲一君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省経済局経    済協力部長   甲斐文比古君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省銀行局長 大月  高君    大蔵省為替局長 福田 久男君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房予    算課長     檜垣徳太郎君    農林省振興局長 斎藤  誠君    通商産業大臣官    房長      塚本 敏夫君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    憲法調査会会長 高柳 賢三君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更につきまして報告をいたします。本日井川伊平君が辞任せられ、その補欠として村山道雄君が選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。戸叶武君。
  4. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣池田さんにお尋ねいたします。  今一般で問題になっているのは、物価値上がりして池田内閣値下がりしたという問題でありますが、物価値上がり池田内閣値下がりについて最初にお尋ねする次第であります。これは昨日の毎日新聞世論調査を見てもわかりまするように、池田内閣値下がりというものは、究極するところ、物価値上がり原因があるのではないかという結論が出ておりますが、この物価値上がり池田内閣値下がりについて御所見を承りたいと思います。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物価値上がりにつきましては、たびたび申し上げておりますように、経済高度成長の場合によくあることであります。したがいまして、これを上がるのを押えようというのがわれわれの政策でございます。
  6. 戸叶武

    戸叶武君 池田内閣値下がり説明をお願いします。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうものは説明の限りでないと思います。
  8. 戸叶武

    戸叶武君 政府においても値下がりという言葉がちょっとかんにさわったようですが、毎日新聞のきのうの新聞でこれだけ大きく発表してあるので、これを見ないはずはないし、きょうの論文にも毎日だけでなく、ほかにも、この問題を若干取り扱っておりまするが、やはり、この国民生活に大きな影響を与えたという点が問題になっているのでありまして、今まで池田さんの人気というものは、池田個人の魅力でもなければ、経済政策外交政策がすぐれていたからというのでもなくて、要するに、自民党というものに対する信頼と言っては度が過ぎるかもしれないけれども、要するに、まだ反対党が育っていない、だから仕方がないからというような形で来たんだが、この物価値上がりによって著しく自民党信頼というものが国民から失われてきたという問題に対しては、まじめにやっぱり総理大臣世論を聞かなければならないと思うのですが、それを高度成長過程においては、このくらい仕方がないという形において、あなたは中小企業なりあるいは農民なり、労働者にしわ寄せしても一向かまわないという御見解でしょうか。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物価値上がり影響を受けられた方々がおられます。また、所得増加によって楽になったという人もおります。いろいろございますが、全体といたしまして、日本経済は、私はよいほうに向かって行っておる。ただ、その間におきまして、一時的物価値上がりでお困りの方がある。したがって、こういう面につきまして、全力をあげてその値上がりを押え、また、上がり方を少なくする、そうして片一方では所得の増によって生活水準の向上をはかる、これがわれわれの考え方であります。いろいろ評判もございましょうが、もちろん、民の声は聞かなければいけません。それを聞きながら施策の万全を期するというのが、これが政治であると思っております。
  10. 戸叶武

    戸叶武君 ものの見方には、同じものでも、楽観的な見方と、悲観的な見方と、その間に位する慎重論とがあるようですが、自民党の中においても藤山さんあたりはかなりこの物価値上がりに対して心配をしている向きであって、河野さんあたりもおとといからきのう、関西の市場をかけめぐって国会に飛び込むというほど、大体、官僚出身でない政治家は、民の声というものを率直に聞かないとたいへんだという点において、池田さんよりやや切実なものを感じているようですが、この問題に関して、ひとつ藤山さん、河野さんの御所見を承りたい。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価の問題が現在の状況において非常に重要な問題であることは、たびたびこの委員会でも申し上げたとおりでございまして、私どもといたしましては、それに十分対処していかなければならない、こういうふうに考えております。
  12. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 閣議におきまして、特に農林省関係生鮮食料品に対して注意をするようにということになっておりますので、せっかく努力いたしておるわけでございます。
  13. 戸叶武

    戸叶武君 努力していると言うだけで、努力敢闘賞は上げられないので、努力は認めているが、具体的な成果がどれだけ出ているかということを藤山さんに、試験の採点じゃありませんが、ひとつお聞きしたいと思います。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨年来御承知のとおり、物価が次第に高騰して参りまして、御承知のとおり、年末には、前年度に比べまして約一割近い高騰を見たわけであります。年間にいたしますれば五・八%程度値上がりであろうかと思いますけれども、しかし、その月をとりますと、相当高くなっている傾向がございます。したがって、このままの状態で放置しておきますことは適当でないと思います。また、このことは、国民生活の上の影響も非常に重大でございますし、同時に、将来の経済発展を阻害する原因にもなりますので、十分その点は総理にもお話を申し上げ、総理もまた同じ考えでもって、総合政策を作れということでございまして、私どもにおきましては、総合政策を作ったわけでございます。したがって、総理の指示によって作りました総合政策によりまして、各省から具体的にそれぞれの案を出していただきまして、そうしてそれを実施して、そうしていわゆる木村さんの言われる当面の価格対策、そうして将来にわたる物価対策というものをあわせて進めて参りたいと、こういうふうに存じているのでございます。
  15. 戸叶武

    戸叶武君 藤山さんのは、五・八%程度値上がりにすぎないというのは一般のことを言っているのでしょうが、問題は、庶民が苦しんでいるのは生活必需物資です。その中で一番値上がりが激しいのは食料品であります。食料品値上がりは今どのくらいになっているか。それから問題は、河野さんの施政演説の中においても、流通過程に問題があるので、流通機構の抜本的な改革をやらなければならない、市場その他にメスを入れなければならぬというお考えのようですが、その点はどうなっておりますか。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価の問題で、一番直接に国民生活影響を及ぼしておりますのは、食料と住宅だと思います、特に昨年度におきましては。したがって、そういう面についての十分な施策を講じて参らなければならないことは当然でございまして、この点については、農林大臣もその意味において、先ほどお話のような、各流通機構改善、あるいは農業基本法による農産物の転換その他についての御努力をなさっておられるわけであります。なお詳しい数字については、調整局長から、もし御必要がございますれば申し上げます。
  17. 戸叶武

    戸叶武君 詳しい数字を承りたいと思います。
  18. 中野正一

    政府委員中野正一君) 数字を申し上げます。食料品につきましては、昨年の十二月で、全都市の数字でございますが、一一・三%上がっております。
  19. 戸叶武

    戸叶武君 河野農林大臣にお尋ねします。具体的な例として、たとえば生産者から消費者に渡るまでの流通過程におけるもろもろの矛盾でありますが、牛乳一合にたとえて言うならば、今私らのいなかでは、牛乳をお百姓さんは一合六円ぐらい、一升六十円から六十五円ぐらいで買われております。ところが、数日前の牛乳配達さんは、今度二十一円に値上げするのだと言ってきました。これは末端消費者は二十一円で買わせられるのでありますが、どこの国の統計を見ても、生産者の手から、農民の手から買い取られた値の三倍以上の値で、末端消費者牛乳が渡っているという国はないと思うのです。大体二倍以内でありましょう。二十円で牛乳消費者に売り渡すときには、十円の手取りがお百姓になければならないのに、お百姓さんのほうは買いたたかれて、六円ないし、東北なんかでは五円程度のところがあるでしょう、そういうところにたたかれてしまって、その中間におけるところの、私は流通機構の中におけるいろいろな矛盾があると思うのですが、具体的な一つ牛乳の例でありますが、こういう点はどういうふうに、河野さん、これからやっていくつもりですか。
  20. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 牛乳お話でございますが、牛乳は、大体今お話のとおり、生産者から、何と申しますか、明治、森永というような処理するものに渡ります場合に六円前後、土地によってもむろん違います。これが消費地たる東京に参りまして小売の手に渡る場合に十一円前後、それを小売業者が配達いたしましてこれが十六円ということにいたしておるようでございます。今二十何円というお話でございましたけれども、これはどういうものか、そういう例を聞いたことがないのでありますが、実は十六円にいたします場合に、全部東京都のほうに、小売業者から、今後値上げをいたします場合には、東京都の了解を得ていたしますという一札をちょうだいいたしまして、十六円ということにいたしました。したがって、そういう数字はちょっと御説明をいたしかねます。
  21. 戸叶武

    戸叶武君 時間がありませんから、具体的データを持っておりませんから出しませんが、今後やはり池田内閣経済のことはまかせていてくれと言うからには、具体的なデータを全部そろえて、そして問題点がどこにあるかというこの点をはっきりして、流通機構改善の問題も入ってもらいたいと思うのです。  きょうの新聞社会面を見ると、とにかく参議院選挙買収牛乳関係のある人が五千万円以上使ったんじゃないかという選挙違反の話が出ております。これは市川さんが心配するように、政府ではやっていないのだ、やっていないのだというけれども、事実上において衆議院選挙でも一億円以上の金を使い、参議院選挙においても、おそらくは保守党においては二千万円以下の人はないのじゃないかと取りざたされておるような、こんなばかな、権力を握っておる者には金が入り、金を使って選挙をやれば勝つ。そういう形において健全な世論というものを吸い上げるということはできないと思うのでありますが、とにかく皆さん方が当面しておる際においても、私たちがほんとうユーモア賞をやりたいような気持のするのは、前の警視総監が東京でとにかく一番ひどい買収選挙をやるし、それから司法関係のえらい人が大阪ではさらにその上の日本一の記録を作るし、とにかく官僚という者は取り締まりに対しては冷酷むざんだが、法の裏をくぐって世の中の道義を踏みにじっていくという点においては天才的なものがあるので、この官僚と、金で何とでもできるという財閥で日本政治がじゅうりんせられ、その上にあぐらをかいている池田内閣に対しては、やはり国民物価値上がりとともに、池田内閣値下がりとともに憤りを私は持っておると思うのですが、池田さん、この金のかかる選挙生活が暮らしにくくなった物価値上がり、こういう問題に対してどういう責任をあなたは持とうとしておりますか。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろんな批判もありましょうが、私は全体としては、日本経済は、非常にうまいとは言いませんが、大体順調なたどりをたどっておると考えております。  それから選挙に金がかかるということでは、きのうもお話し申し上げましたように、金のかからないようにしなければならない。これはもう当然のことで、われわれは、その方向で選挙法の改正その他をやっておるのであります。
  23. 戸叶武

    戸叶武君 経済政治の問題ですが、これに関連して大きな問題は、やはり外交の問題だと思います。日本の今までの外交の方向づけに対して、池田さんや小坂さんは、中立外交というものは一個の幻想だと言ってやゆし、攻撃しておりましたが、今度の世界危機にあたってのジュネーブ会議を盛り上げてきたところの力は、中立八カ国の力だということを世界があげて称讃しております。中立外交幻想にあらずして、現実世界危機を救いつつあるのでありますが、幻想外交であるというふうに断じきめたこの独断的な行き方に対して、これは池田総理小坂さんも率直に私は反省しなければならないと思いますが、お二人の御所見をお伺いいたします。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の施政演説をお読み下さればわかると思いますが、わが国においてはこうなっている。よその国を言っておりません。日本中立外交をとらないのだ。これを言っているのであります。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その国の外交政策は、その国の置かれている国際的な環境によってそれぞれ定められるものでありまして、私ども日本外交について申します場合、中立外交というものはとり得ない、かように考えております。
  26. 戸叶武

    戸叶武君 お説は若干ごもっともでありますが、みずからの姿勢が正しくなければ他に向かっても私は正しい外交は出てこないと思うのです。  それでは具体的に、日本の行なっている外交の実践の面をお聞きいたしますが、アジアと申しましても、この間エカフェで池田さんがなかなか大演説を打って、アジア繁栄なくして日本繁栄はないという演説ですが、そのとおりです。なかなかいい演説だと思いますが、しかし、アジアの中に六億の人口を持っているところの中国を除いてアジア問題の解決ができるという考えですか。池田さんの言っているアジアというのは、中国を除いたアジアですか。中国をも含めたアジアですか。それから承りたい。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アジアは、アジア全体を言っているのであります。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 これも名答弁です。それではアジアの中に中国があり、また、モンゴールがあります、外蒙がありますが、アジアの中において中立外交を堅持している国と、SEATOなりあるいは韓国台湾のような反共軍事政権を堅持している国とがありますが、池田内閣外交は、反共的なものであれば、タイなりあるいは韓国なりには甘いが、中立外交のためにビルマインドに対しては冷たいという批判もありますが、よその国に対してはそういう区分けはしておらないかどうか、同じアジアですから、承りたい。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、そういう区分けはいたしておりません。自由国家陣でありますタイや中華民国、あるいは中立主義を標榜しておりますインドパキスタン、こういうものは何ら区別しておりません。ことに経済援助なんかにつきましては、インドパキスタンに一番たくさん出ているのであります。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤通産大臣にお尋ねいたしますが、経済協力白書に盛られている点は、なかなか結論なんか、きびしいものを出しておりますが、あの白書を通じて、政府は、このアジアにおける経済協力の実態を知り、日本は何を重点的にやらなければならないかということをお感じになりましたか。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アジア諸国繁栄、それに日本が協力することでございます。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤さんにお聞きします。アジア諸国繁栄の中には、中国ビルマインドも入っておりますか。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ビルマインドももちろん入っております。これは経済的に、そういう意味で貿易の拡大あるいは経済協力、同じようにやっております。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 どうも中国を除いてしまうのが好きのようでありますが、アジアの中において一番ウエートがあるのは、私は中国だと思います。中国日本インドというものが——物量的にも人口的にも中国は大きいのです。それから先進国として日本は進んでおります。インドにはやはり高い知性と哲学があります。この三つがささえとなってアジアほんとう復興というものを考えなければアジア復興はあり得ないと思うのですが、先ほど池田さんにお尋ねしたのは、ビルマタイ韓国に差別があるのじゃないかという印象についてですが、具体的な事例をあげてお尋ねします。  今、日本ビルマに毎年二千万ドルの賠償を払っているということになっておりますが、それを何によってあがなっているか、向こう側とのバランスをどうやって保っているかを、まず通産大臣からお聞きしたいと思います。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ビルマは御承知のように発電所の計画が非常に進んで参りまして、したがいまして、賠償の実施の状況も、たとえばベトナムなどに比べると非常に進んでおる、こういう状況でございます。また農産物等日本への輸出、日本輸入はなかなか旺盛でございます。また日本側からビルマに対して工場建設なり、その他経済提携なり、それぞれ進んでおります。経済の面においては非常に順調に参っておると、かように考えております。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 ビルマの問題では、昨年東南アジアを旅行したときに池田さんは、ビルマにはかなり手きびしい批判を与えたということですが、そのことはかえってビルマでは評判がよかったと言われております。池田さんの悪口ばかり言っていては悪いと思いますから、いいところもあげなければならないと思いますが、それはやはり新興国家にありがちの、段階的に積み上げていかなければ経済建設ができないということも、ビルマも行きつ戻りつわかってきたことでありますが、日本の発電なり、あるいはケーブルというものは非常に成果を上げたが、電力が余っているのは結局他の工業がこれに追いついていないということだと思いますが、今度のビルマ政権の目ざしているのは、もとに戻ってまず第一にビルマが今持っているところの農業生産物をどうやってこれを外国に吐いていくかということに主目的を置くということをうたっておりますが、日本は現にタイからトウモロコシを四十六万トンも買っているが、こういうものをタイからだけ買わないで、ビルマトウモロコシのほうがむしろよいくらいで、今、日本においては畜産の発達によって飼料というものが非常に重要になってきたのですが、このビルマからトウモロコシタイ程度あるいはタイ以上に買うという考え方があるかないか、その点を通産大臣農林大臣から承りたい。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、従前ビルマタイからは米がたくさん来ておりまして、しかし米のかわりの農産物とすれば、ただいま御指摘のトウモロコシなどは有望な代替品目だと、かように考えますので、これは商売といいますか、コマーシャル・ベースに乗ればもちろん輸入も可能であります。
  38. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、トウモロコシはその主たる産地がアメリカ、アルゼンチン、一部アフリカであるわけでございますが、最近とみに東南アジア、ことにタイにおいて非常に増産されまして、品質もよし、しかも運賃も安いということで、わが国においてはすでに五、六十万トンの輸入をいたしております。ビルマのほうは多少運賃関係、それからまた国内生産もそこまでいっておりませんので、まだそれを買う段階になっておりませんが、将来は相当に買うようになるだろうと思います。
  39. 戸叶武

    戸叶武君 一つの小さなトウモロコシの例ですが、三十二年には五十一万トン日本輸入し、昨年には百八十三万トンを輸入して、四年間に四倍も伸びておるのですが、この間においてタイからは三万トン買っていたのが、たちまちのうちにその十倍以上も買うというようなやり方をしておりますが、ビルマからはさっぱりたんと買っていないというところに、ビルマとの不均衡があるのだと思いますが、実際的なこまかい数字をあげてやることはまた後日に譲りますが、こういう差別的なことをやはりやってはいけない。タイの問題でもやはりガリオア・エロアとともに問題になっていますから、それはあとでまた別の機会にやってもよいと思うのですが、タイに対しては非常に寛大だ、これからまた韓国に対しても寛大なんじゃないか、あの調子でいくんじゃないかというところに問題が、韓国問題の騒ぎもあるので、日本新聞社会面には騒ぎは出ていませんが、英字新聞にはこれほど警察官が動員せられて日韓会談反対に対して同じ朝鮮人が戦っている姿というものが写真に載って、外人はみな知っているのです。こういうところに、今の日韓会談というものが簡単にはいかないと思うのですが、韓国の問題において賠償請求権北鮮にまで及ぶなんという議論は、これは現実において統治もしていないので暴論であるし、日華関係外交文書においても、台湾政府台湾統治している地域以外の点に対する文字は使わないようにして議定書もできているようでありますが、この日韓会談に対して日本がそういう誤解を受けているのに対して、池田さん、小坂さんはどういう見解を持っておりますか。
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) タイお話が出まして、ビルマとの間に差等があるじゃないか、こういうことでございましたが、ビルマはこれは賠償を支払っております。それにまた再検討を要求してきておりまして、前政権当時からその交渉に応じております。  タイの場合は、御承知のように、戦争中同盟国でございまして、その関係で特別円の協定がございました。戦後タイ側はこれは廃棄して参りました。しかし、その廃棄するについては、日本は降伏をするからタイのほうも自由になってくれということを日本側は言って、それに応じてタイは廃棄してきたわけであります。ところが、十五億円の残高が日銀の帳簿にありまして、金を引き渡すという約束をしていないもの、あるいは売却をするという約束をしていてしかもこれを実行していないもの、そういうものをいろいろ計算をして百五十億円相当のものを考えまして、そうして五十四億円をポンドで払い、あと九十六億円をクレジットあるいは投資の形において供給する、こういうことをしておりまして、それについて今度その一部を改める協定をやっているわけでございますが、問題は、このタイの場合は十五億円という  ものを、金約款がもしございますれば、特別円協定がございますれば、千二百六十七億円という膨大なものになるわけでございまして、それを百五十億円まで切っていたものをどうするかという問題でございまして、これは性質が非常に違うのでございます。  ビルマの要求については再検討に応じておりまするが、妥結はしなかったというだけで、その要求がわれわれの希望と合致すれば、これは当然妥結しているわけでございます。  韓国の問題につきましては、これは私ども交渉をしておる最中でございますから、内容について一々これは申し上げることはできませんけれども、私どもの基本的な考え方は、昨日申し上げたように、韓国現実の支配が三十八度から北に及んでいないという事実を頭に入れて交渉しておりまするし、韓国はまた平和条約の当事国ではございませんから、平和条約第十四条にいうところの賠償請求権というものは持たない。これは当然なことであると考えておる次第であります。
  41. 戸叶武

    戸叶武君 アジアの中における重要な地位を占めている中国との問題は、いろいろな問題が今まで起きておりまするけれども総理大臣がこの国会で力説するように、大所高所に立ってものを考えていくならば、やはり日中国交正常化の促進という努力と並行して、今の変則的な友好商社貿易というものから政府間協定にまで持っていって、貿易を正式ルートに乗せていかなけりやならないと思いますが、これに対して池田さんはどういう考えを持っておられますか。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共問題は国連の大問題として今討議されておるのであります。われわれは、これは世界の舞台においてこれをきめるべきだと考えております。したがいまして、それまでにおきましては、えてして承認の形に考えられるような政府間協定というものは差し控えて実質的の貿易をやっていきたいと、こういうことでございます。したがって、日中の間における個人商社間での貿易が本体でございまするが、向こうさんの考えがございまして、今のような変態的と申しますか、一つの組合を通じてやるようになっておるのでございますが、これは必ずしも日本の意思ではございません。向こうさんの考え方によるところでございます。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 先般池田さんは、中国が三、四年来の災害で非常に苦しんでいるんで、これを救ってやろうと思って、食糧の援助を申し出たら断られたと言いますが、どういう手を通じて援助の申し出を行なったんでしょうか。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 赤十字社を通じて申し込んだと思います。
  45. 戸叶武

    戸叶武君 中国の問題は、なるほどむずかしい問題でありまして、やはり国際的、世界的な舞台でこれを最終的にはきめなけりゃならないと思いますが、隣に火事が起きたときに、これは世界的な問題だからといって、この火を消しとめないでいるというようなことをやっていてはいけないので、韓国台湾政治性格は違いますけれども、おのおのの立場を尊重しながら、私は日中関係の友好というものはできるものだと思うのでございます。やはり私たちが行って率直にお話ししても、革命は輸出すべからず、革命は輸入すべからざるものである、革命はその国の人民の意思により、革命はその国の国民の責任において生み出すべきである、こういう私たちの主張を率直に受け入れて、紅旗の論文にもなったし、また、ほんとうに腹を割って話しすれば、私は、中国人ほど、四千年の文化伝統を持っているので人間的にしっかりしたものはないと思うんですが、今の池田内閣なり、保守党は、マッカーシズム的な病的な考え方で、偏見を持って中国を見ておりますが、どうぞ、アジア繁栄ということを考えるならば、この中国問題に対してもっと責任を持ち、熱意を持っていただきたいと思いますが、池田さんは、あくまでも世界の舞台にという形で、遠くのほうの舞台にいつまでも逃げているつもりでしょうか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連の舞台におきましてきめるべき問題と思っておりまするが、しかし、お話しのように、長い間の歴史を持ち、そして文化的にもいろいろな点で共通しておる中共でございます。われわれはこれまでにおきましても、有無相通ずる、いわゆる貿易、あるいは気象その他の具体的の問題につきましては、手を握っていきたいという気持に変わりはございません。
  47. 戸叶武

    戸叶武君 インドのネールさんが、ジュネーヴの会議に際しまして、核実験停止協定の成立を目標に、査察と管理の問題で具体的には東西の歩み寄りをはからなけりゃならない、それがためには、最終的には妥協になるかもしれないけれども、そのときの具体的な案を提出する用意を持っているというようなことを言われているようでありますが、このことに対しては、日本の外務省関係では、情報をキゃッチするなり、あるいは接触するなり、あるいは連絡をとっていることはないですか。
  48. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題に関しまして、特に連絡を受けておりません。
  49. 戸叶武

    戸叶武君 それでは次に、この憲法改正の問題をめぐって池田総理大臣にお尋ねしたいと思います。  それは、外交について、外交の主体性を説かれた池田さんは、みずからも日本政治姿勢というものを正しくしなければならないという点においては人後に落ちないと思うのですが、最近日本に来ておられる比較憲法学の権威のカール・レーヴェンシュタイン教授が、憲法改正の本質、技術及び限界という論文を発表しまして、その中で、憲法改正はすべて生命ある有機体に対する外科手術であり、最大の慎重と、極度の自制をもって行なわなければならない、憲法改正によって国民感情を減退させるなという警告を発しておりますが、これに対して池田さんはどういうお考えですか。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は前々からこの憲法改正につきましては慎重で、国民の盛り上がる気持を十分キャッチしなければ、軽々しく行なうべきことでないという考えを持っております。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 高柳憲法調査会の会長にお尋ねいたしますが、あなたは憲法学者としては非常に良心的な学者だということになっておりますが、事実上憲法調査会の会長で、憲法九条改正には反対論者であるようでありますが、憲法改正を今自民党なり池田内閣が企てていると思われる点は、この憲法九条を改正するところがねらいだと思うのですが、その問題とこの憲法改正の動きに対して、あなたはどういうふうな配慮を持っておりますか。
  52. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) ただいまの御質問は、憲法調査会を代表する会長という資格でお答えすべきかと思いますが、まあ九条につきまして、これは解釈でもって、現在のままでよい、改正することはいけない、こういう意見と、それから、やはり自衛のためには軍隊を持てるというようなことをはっきりさせるほうがいいという、まあ二つの意見がございまして、調査会といたしましては、そういう問題をじっくりと検討しておる最中でございます。
  53. 戸叶武

    戸叶武君 池田総理が衆議院の予算委員会で二月一日に答弁された内容と、先般の内容とは、検討してみましたが、だいぶ違いますけれども池田総理の、憲法改正の発議権が内閣にありというところに重点を置いている御見解について、もっと納得のいくように御説明願います。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般衆議院の予算委員会において私が答弁いたしましたことも、先般ここで答弁したことも、私は同じであると思っております。違っておりません。すなわち、憲法七十二条によりまして、内閣総理大臣内閣を代表して国会に議案を出し得る、こういうことになっておるのであります。したがって、私は法律案、予算案のみならず、憲法の改正案も憲法上は出し得る。そしてこれを出すか出さないか。政治問題とは違う、憲法論としては、私はそういう解釈を持っておるのであります。で、九十六条の「国会が、これを発議し、」ということは、三分二の賛成を得て国民に発議するのであって、憲法改正案の発案を言っておるのじゃないということであります。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 あなたの二月一日の衆議院の予算委員会における答弁は、憲法改正をするときに、発案者がだれになるか議論があるが、私は国会議員も、内閣も、双方とも出せるのではないかと思っておりますと、なかなか謙虚なものです。ところが、先般三月九日の参議院予算委員会における答弁は、「私は、憲法改正の発議は国会並びに内閣にあるという確信を持っております。」、だいぶ進んだきびしい考え方であります。  ここで高柳先生にお尋ねいたしますが、高柳先生は、先般は倉皇の中の答弁だから整理されていなかったのかもしれませんが、発案を発議が違うというような御説明がありましたが、速記はとってありますけれども、幾ら読んでみても納得がいきませんから、もう一度納得のいくように合理的な御説明を願います。
  56. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 発議、発案という……、これは憲法調査会の会長としての資格でなく、個人の資格で申し上げたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 よろしゅうございます。
  58. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 今の憲法に関連いたしまして、発議という言葉と、発案という言葉がありまして、これが一般の人には、何が何だかわからない、区別があるように考えられておりますが、それから、この発議という文字も、憲法でいう発議ということと、それから国会法でいう発議というのは、意味が違う、こういうことから、相当混乱が起こっておるのじゃないかと思います。そこで、発案、発案権という言葉は、憲法に関する限りは法令上の言葉ではない。これらの言葉が、いつごろから、だれによって使われるようになったかということは、十分明らかではございません。そこで、憲法改正の場合に国会の発議というのは、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で憲法改正の可決があった後、これを国民に向かって提案し、国民投票を求めるという段階の行為をいうのでありまして、この議決にあたって、原案とされる憲法改正案を、国会議員あるいは内閣が国会に提出することを、これを発案といって、区別するようになったのではないかと思います。このうちで、憲法改正案を国会議員が国会に提出する場合は、国会法の第五十六条にいう議案の提出という意味の発議に当たるものと思われますが、そこで政府もまたこの五十六条にいう発議に相当する発案を行なうことができる。だから、発議々々と言うけれども、国会法でいう発議と憲法でいう発議というのは全然意味が違うということを区別して考えることが必要だと思います。以上は、憲法調査会の見解ではなく、私個人の見解でありますが……。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 学者はさまざまに物事を解釈する名人でありますが、この問題は最終的にしぼることにいたしまして、私は、池田さんを誤まっているのは、私の私見かもしれませんが、林法制局長官の解釈だと思うのです。林法制局長官に憲法九十六条をひとつ読んでもらいたいと思うのです、区切りをつけて。
  60. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法九十六条の一項でございますが、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」、第二項は、「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」、こういうものでございます。
  61. 戸叶武

    戸叶武君 やはり、時間を節約する以上、ときどきこれからも読んでもらいますから……。  林法制局長官の朗読した九十六条の第一項のほうですが、そのままはっきりこれを分解してすなおに読んでみて下さい。第一項の、「この憲法の改正は、」、一つ、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、」、二つ、「国会が、これを発議し、」、三つ、「国民に提案して」、四つ、「その承認を経なければならない。」。そして、「この承認には、」、五つ、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、」、六つ、「その過半数の賛成を必要とする。」。こういうふうにずっと明確に書いてあるのでありまして、イギリス憲法と違って、日本憲法は成文法であるところが特徴であります。憲法の問題は、一般法律とは違い、国の基本法であり、きわめて重要なもので、特殊な取り扱いをしなければならないというので、この憲法においては——現行日本憲法においては、憲法前文並びにあとのほうの最高法規で押えてこの憲法九十六条というのを守っているのが、日本の憲法のあるがままの姿であります。この姿をくずして、あなたはどちらかといえば、イギリス憲法——この間委員長よりおこられましたが、よその国の憲法であるイギリス憲法のほうを借りてきて説明しているようですが、その論拠を承わりたい。
  62. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法九十六条でございますが、これはお読みいただけばわかりますように、国会が総議員の三分の二以上の同意でこれを発議し、国民に提案する——私が読み上げたとおりでございます。この意味は、結局憲法改正の手続を規定したものでございますが、この「国会が、これを発議し、」という意味、これを、あるいは国会において国会議員が憲法改正の原案を、いわゆる国会法にいう意味の発議、提案する意味にとる学者もございますけれども、それはどうも、分離解釈上は、私はそうは出てこないと思います。これはどう考えましても、その解釈をとりますと、憲法改正の議案を国会議員が国会に出すのにも、両院の三分の二以上の賛成を得なければならない、承認がなければ出せない、こういうことになるわけでございます。そういう趣旨をこれは書いたものではないと私は思うのでございます。これはどうしても、国会が国会の意思を決定するについては、両院のそれぞれの総議員の三分の二以上の同意をもって決定しなければならない、その国会の意思決定した憲法改正の案を国民に向かって提案して、国民投票にかける、これが憲法改正の手続を規定している条文だと思うわけであります。したがいまして、その以前において国会がその憲法改正の議案を審議される場合における素材となるべき原案、これをだれが出すかということを九十六条は直接うたっていないと、かように考えるわけでございます。それは結局、憲法の他の条章から——だれが国会に、いわゆる発案と申しますか、国会法でいう発議でございますが、要するに提案できるかということは、憲法のほかの規定から解釈すべきではないか。この場合において、国会議員がこれを持たれることは、憲法四十一条に、国会は、最高の、唯一の立法機関だということがあることから、これは明らかだろうと思います。いわゆる憲法制定権力というようなことを特別にいう学者もございますけれども、これは特に今の憲法ではそこは書いておりませんから、これは国会議員が持たれることは当然であります。しかし、内閣がそれを持つか持たないかについては、この日本の憲法は、いわゆるイギリス流の議院内閣制をとっておるわけでございます。七十二条で、総理大臣内閣を代表して議案を国会に出すという権限が、規定があるわけでございます。これについては、いわゆる議院内閣制の建前から、七十三条で内閣の権限として書いてあること以外に、たとえば法律案を出すこと等も当然含まれると、かように解釈しておるわけであります。それと同じ理屈で、憲法改正の議案を出すこともこの憲法は否定はしておらない、七十二条の中に含んで、これはできるものだと、かようにわれわれは解釈しておるわけでございます。繰り返すようでございますが、憲法九十六条は、要するに、国会が意思決定をするについては三分の二の特別多数が要る、それからもう一つ国民投票が要る、この二つのことを書いてあるわけであります。その前における、国会が憲法改正の案を審議する素材となるべき議案、これをだれが出すかは、憲法九十六条が直接いってはおらないのでありまして、他の条章から解釈すべきものである、かように考えるわけでございます。
  63. 戸叶武

    戸叶武君 憲法調査会事務局が昭和三十二年四月に出した「憲法改正に関する賛否の論点」という書がありますが、その中において、「憲法改正の発議に関する問題」の項で、「第九十六条第一項の憲法改正の発議に関しては、」、一、「国会の発議権に加えて、」、二、「これを国民にも認めよという意見がある。」、三、「なお、内閣にも発案権を認めよという意見がある。」と報告しております。こういう御意見を憲法調査会でまとめ上げたのは、事実でしょうか、高柳先生。
  64. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) ただいまお読みになったものは、序文の中に書いてありまするように、これは憲法調査会が発足前に、事務局の人が、学者の意見、その他世上に現われた意見をただ編集しただけでありまして、憲法調査会それ自身の発足前のこれは文献で、憲法調査会としては責任がないような関係になっているわけでございます。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 この問題をめぐっての議論も若干あるようですが、まだ憲法調査会でも議論は尽くされていないと思いますが、あるいはこの中間段階において、それを整理して、憲法改正の問題を、あんたのやり方というのは、この三つの問題を、この場合、あの場合、この場合というふうに並べてこの資料を出すんだと思いますが、それはできておりますか。
  66. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 憲法調査会で従来やりましたのは、今の憲法はどういうふうにしてでき上がったかという問題と、それから今の憲法がどういうふうに運用されておるのかということ、こういうことを主として検討いたしましたので、したがって、憲法改正に関する問題は、実は今までやっておらなかったので、しかし、今の段階では、今の憲法というものを改正する必要があるのかないのかという問題を検討しておりますので、これから憲法改正に関する問題も検討するという段階になっております。
  67. 戸叶武

    戸叶武君 池田総理の憲法改正に対して内閣にも発議権を認めよという意見が、いつの間にか内閣にも発議権があるというふうに発展したのですが、この池田さんの一種の放言ですが、この放言と憲法調査会は何らかかわり合いはありませんか。
  68. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 先ほど申し上げましたように、発議ということは二つの意味があって、国会法でいう発議、これは通常発案というふうに今では言われておる。それと、それから憲法でいう発議と、この二つが混乱されておることがよくあるので、内閣に憲法でいう発議権がある、こういうふうに言われるのは、これは私の考えでは完全に憲法違反だと思います。しかし、国会法でいう発議権がある、すなわち発案権がある、こういう意味なら、正しい解釈だと考えております。
  69. 戸叶武

    戸叶武君 学者としての高柳さん個人の良心の判定によると、池田さんの言ったことは憲法違反だ。林さんが助けてもいいのです。林さん説明して。
  70. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は、これは前からでございますが、内閣が憲法九十六条にいういわゆる憲法改正の発議権を持っておるというようなことを一ぺんも言ったことはございません。これは、いわゆる憲法九十六条でいう発議、つまり国民に対して発議する、国民投票に内閣が改正案を作って直接に発議する、こういう権限があるということを言ったことはないわけでございます。要するに、国会において審議される、国会が発議される原案となる議案を内閣も出す権限がある、国会議員にあることは当然であるけれども内閣に議案を出す権限がある、そういう意味で、申し上げたので、今高柳先生が申されたことと何も違いはございません。
  71. 戸叶武

    戸叶武君 高柳先生の言うのは、発案は権限があるが、発議は問題だという点で、そういう混乱が世上に往々にあるがという——一国の総理大臣が、高柳論理からするならば、みずからが混乱しているんじゃ、ほかの人が混乱するのはあたりまえだと思いますが、それをひとつ整理して、池田さん御発言を願いたい。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会法にいう発議と、私の言う発案とは、同じ。しかし、憲法九十六条の発議というのは、三分の二以上の賛成で発議でございます。こういうものは、内閣に発議権はない。その発議権は、内閣にないことははっきりしております。問題はございません。ただ、そういう憲法改正を審議する素案といいますか、案は、国会議員が出せることは当然でございますが、内閣でもその案を出すことができる、こう私は言っておるのであります。したがって、あなたのような考え方でいくと、今法制局長官も言ったように、憲法を改正しようかすまいかという提案も三分の二以上要ることになりますから、私は九十六条からそうとれぬと思います。
  73. 戸叶武

    戸叶武君 それが、あなたたちには都合が悪いが、日本憲法の特徴です。三分の二を得なければ容易に改正ができないようにしたのが、この九十六条の特徴なんで、日本憲法の特徴は、あんたたちが発議だ、発案だ……、(発言する者あり)うるさい、黙っていろ。  自由党の憲法調査会は、昭和二十九年十一月五日に作った日本憲法改正法案要綱では、「憲法改正の規定」の項において、「発議権を内閣に認めること(に改正すべきであるが)、現行憲法の改正手続については、特別に考慮するものとする」と書いてあります。二、そしてその要綱の説明書においては、「憲法改正は両院の三分の二多数決と国民投票と二つを必要とするというのは、外国にも例のない厳重な規定で、改正を困難にしている」と嘆いています。それが今のあんたたちの心境です。三、憲法改正の具体的手続を二段階に分け、特別の一つとして、「形式的には現行第九十六条を第一段階としてそのものを改めて、国民投票制度を廃し、第二段として内容の全面的改正を行う」と言い、「国民に白紙委任を求める方法をとらねばならない」、この二段階改正の戦術が昭和二十九年度の戦術です。このごろになると、今度は発案だ、発議だという言葉で非常に混乱さしておりますが、改進党の報告書も、その段階においては、あれほど憲法改正というように、芦田さんを初めとして、熱心な方であったのが、憲法改正の法規は、日本国憲法では第九章第九十六条に明文化されておるのでありまして、これ以外の条項に憲法改正の理論的根拠を求めるのはできないということを書いております。  そういうふうに、憲法改正の問題の動きというものは、戦後いろいろにありましたけれども、自由党でありながら、改進党でありながらも、過去においてそれだけのすなおな形において現行日本憲法というものを理解していたんですが、池田さんに承りますが、いつから心境がお変わりになって今のような御意見に変わりましたか。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何も変わっておりません。憲法調査会法を提案いたし、憲法調査会を設置いたしましたときの政府の見解も、私の見解と同じであったと記憶いたしております。
  75. 林修三

    政府委員(林修三君) 要するに、第九十六条で規定のございます、国会が憲法改正の案を議決するには総議員の三分の二以上の同意が要るということ、それから国民投票にかける、この二つの要件は憲法九十六条にはっきりしております。これをとやかく言う議論は、もちろん憲法解釈としてはないわけでございます。問題は、その以前において国会にかかる憲法改正の議案と申しますか、原案と申しますか、それの提案権と申しますか、発案権と申しますか、それの問題でございます。それは今の憲法改正手続を改正するかどうかという問題とは別問題だと私は思います。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 林法制局長官に、憲法七十二条のその他の議案というものと七十三条との関連をもう少し説明してもらいます。
  77. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法七十二条は、お言葉を返すようですが、これはその他の議案ではないので、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、」云々と書いてあるわけでございます。それで、その「議案」に何が含まれるかということになるわけでございますが、これはいわゆる議院内閣制をとっておりますことから、法律案が含まれるという解釈になっております。もちろん、これについても一部憲法学者には異論がございます。現行憲法下においては、憲法四十一条に国会が唯一の立法機関であると書いてあることを理由として、内閣には法律案の提案権もないのだという説も一部にはございますけれども、しかし、これは学界の大多数の説は、議院内閣制をとる現行憲法においては法律案の提案権ありという解釈でございます。それを立法的に、一応それに従って内閣法もできておるわけでございます。  そこで、憲法七十三条でございますが、七十三条は、内閣の行なうべき行政上の職務権限について、一号から七号まで書いてございます。予算の決定、提案、あるいは政令の制定、あるいは外交関係の処理、条約の締結、あるいは恩赦等の決定等について規定しております。それで、ここに書いてないようなことについては内閣に議案の提案権がないのではないかという御質問かと思いますが、今の法律案の問題についても七十三条には書いてないわけです。これは結局、議院内閣制という建前からの解釈で出てきているわけでございます。したがいまして、憲法改正の議案につきましても、七十三条にそのことが書いてないから直ちに七十二条に含まれない、こういうことにはならないと、私はかように考えます。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 林法制局長官に、念のため、憲法七十三条を正確に読んでいただきたいと思います。
  79. 林修三

    政府委員(林修三君) 七十三条でございますが、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。二外交関係を処理すること。三条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。五 予算を作成して国会に提出すること。六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。」、これでございます。  ただ、引き続いて御説明いたしますが、先ほど申し上げたように、七十二条で議案の国会提出ということがあるわけで、この議案は、ここの七十三条に書いてありますのは、条約と予算しか書いてございませんが、これ以外に法律案を当然に今出しております。いろいろの、法律に基づいてのたとえば人事の案件とかいろいろのことについても、国会に議案を出しております。今、内閣が国会にいろいろ議案を出している内容は、この憲法七十三条に書かれていることに限らないということは先ほど申したとおりでございます。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 憲法七十二条のその他の議案というものを明確化するために、憲法七十二条を受けて七十三条においては具体的に列挙してあるのです。その中に憲法改正のことは書いてないじゃないですか。書いてないのに対してあなたは衆議院で何と答えましたか。否定する趣旨がないから、それは肯定と認めると。否定する趣旨がそこに書いてないから肯定とするというのは、お前、私を好きかと言ったときに、いやだとも言わないからといって、勝手に今度はお前は好きなはずだといってそれを拉致していくというようなことは許されますか。少なくとも憲法解釈の中において否定するような趣旨がないから、これを肯定すると認めるというような論理で、あなたのああいう衆議院の答弁がありますが、今でもあの考えと変わりはありませんか。
  81. 林修三

    政府委員(林修三君) 衆議院で答弁したときは、七十三条の関係で申したわけでございません。七十二条について申しております。それから、内閣法のことも申したわけでございますが、要するに、七十二条は、内閣総理大臣内閣を代表して議案を提出する。その他の議案とおっしゃいましたが、七十二条にはその他の議案という言葉はございません。つまり、ただ「議案」としか書いてないわけでございます。その議案は何を意味するかということは憲法解釈の問題でございまして、七十三条に具体的に書いてあることのみに限られるかどうかということになりますと、これはいわゆる日本の憲法が英国流のいわゆる議院内閣制をとっております建前から、たとえば法律案につきましてあるかないかという議論もあるわけでございますが、これは法律案についても内閣に提案権ありというのが従来の解釈でございます。それと同様な意味におきまして、憲法改正の議案につきましても、議案を出すという権限につきましては、特に他の憲法の条章からそれを否定する理由がない限り、ある、かように考えるのが私は当然だと思います。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 日本の憲法学者が、戦いに敗れた後において、非常に進んだ人民主権の憲法を作ろうというときに、だれも作れなかったのは、これは憲法解釈学に終始して、国家学なり政治学なり近代社会科学における方法論的な学的基礎を持たなかったということが、松本さんのような人格者でも、SCAPへ行って笑うべき時代おくれの憲法学者というふうに笑殺されたのですが、それが私は、今あなたはすぐイギリスのことを言ってごまかそうとしますが、イギリスの国家性格と日本の国家性格は同じだと思いますか。イギリスは立憲君主国のモナーキーな国家です。日本は人民主権の、国民主権の国です。同じ国家性格を持たない国における憲法並びに憲法の運営というものはおのずから異なるということは、あなたはどういうふうに見ておりますか。
  83. 林修三

    政府委員(林修三君) それぞれ国はその国の制度が違うことは当然でございまして、イギリスがいわゆる立憲君主制でございますし、いわゆる制度的には国王の権限が非常に大きいことはおっしゃるとおりでございます。しかし、実際の運用は十九世紀の末以来そうなっておらないことも、戸叶先生よく御承知のことだと思うわけでございます。また、英国が議院内閣制の建前をとっておるということも、これは言うまでもないことでございます。日本の憲法はいわゆる議院内閣制、国会に信任の基礎を置く内閣というものが行政権の首長となるといういわゆる議院内閣制をとっておることは、大体英国流の考え方だと思うわけでございます。それから、いわゆる憲法改正の提案の手続の問題につきまして、これはたとえばフランス、あるいはスイス、スエーデン等の例を見ましても、これは内閣あるいは国会議員両方に認めている例は幾らでもあるわけでございまして、必ずしもこの提案権を、国会に出す提案権をだれが持つかということについては、その国の政治体制がそう根本的に変わるという問題では私はないと思うのでございます。つまり、議院内閣制である以上は、内閣は国会の多数の信任のもとに立っているわけでございます。その多数党の議員ができることと、あるいは内閣がそれを出すことと、これは私は法律的にも政治的にもそんな大きな差はない、かように考えるわけでございます。
  84. 戸叶武

    戸叶武君 法制局長官日本憲法において一番大切なところをちっとも大切でないという感覚の上に立っているのですが、そこに問題があります。ひとつ、法制局長官に、はなはだ恐縮ですが、日本国憲法の前文を御朗読を願います。
  85. 林修三

    政府委員(林修三君) これは全部読むわけでございますか……。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使しその福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」。
  86. 戸叶武

    戸叶武君 どうもまことに済みませんでした。その中で一番大切なことは、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、この憲法を確定したんです。政府に間違いを起こさせないために、主権者としての人民が政府にワクを与えたんです。その次が、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し」、ここに国会の責務の重大さがうたわれているんです。そして、「この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」。ここでもって、「一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」という非常にきびしい言葉が使われておりますが、高柳先生から学者的な立場からそのことについて御説明を願います。
  87. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) ただいまの御質問は、はっきりどういう点を申し上げていいんだか、ちょっとわからないんですけれども、先ほどイギリスと日本は非常に違うという御意見がありましたけれども、私の見るところでは、イギリスの法制というものは、表面は非常に古いけれど、実体は非常に新しい。イギリス人は、形式はこれを変えることをしないが、実体はどんどん変えておる。ほかの国民は形式だけ変えて実体はちっとも変えておらぬ、こういうことをいうので、私はそういう見方は正しいと思っております。そこで、今のイギリスは、法律だけを読みますというと、ある人は、ルイ十四世を思わせる、レタ・セ・モアというあの言葉を思わせる、こういう人もありますが、これは極端でありましょうが、法律だけから見ると、非常に古い君主制のように見えますけれども、実体は国民、イギリス人は国民主権ということを避けていますけれども、つまり選挙民、エレクトレート、これが政治的主権を持つ。だから、つまりどういう内閣を作るかどうかということは、これは国民がきめる。そういう意味では、いわゆる暗黙のうちに国民主権を認めておる。こういう意味で、イギリスの制度と日本の制度、今の憲法の制度というものは非常によく似ているように私は思っておるわけであります。その意味で、今の前文に書いてある趣旨は、イギリス人の、イギリスの憲法を解説したものとして、そういうふうにも解釈してもいいのじゃないかと思います。国民主権ということを、非常にこれはルソーの使った抽象的な文句ですけれども、イギリス人はそういう抽象的な文句を使うことをきらって、選挙民に政治的主権があるのだ、こういうふうに言葉を使っていますけれども、同じ趣旨だろうと思います。実際的には。  そこで、この先ほどから問題になっております議院内閣制なのかどうか、日本の憲法というものは議院内閣制と言えるのかどうかということが、背後に問題となっておったようでありますけれども、これにつきましては、大体やはり閣員は、半数はまあ国会議員でなきゃならない。つまり、超越的な、国会と切り離された内閣は許されない、こういう趣旨を非常に強く出しておるので、やはりその点から、議院内閣制的の性格を非常に濃厚に持っておるのだ、こういうふうに思います。だから、その意味は、国会と内閣というものは、全然別個の存在であると、こういう考え方でなく、やはり国会内の国会議員の意向によって内閣総理大臣がきまるというのですから、やはり議院内閣制的の性格を非常に持っているのであろうと思います。  そこで、先ほどの提案権になりますけれども、まあ国会のみがこういう提案権は持つのだ、内閣は持てないのだというのは、相当他人行儀じゃないか。そこでやはり、たとえば池田さんが国会議員としての資格において憲法改正を提案する、まあこれは必要なる賛成者がありまして、そしてそれを提案する、こうなれば、議員が提案したという形になるけれども内閣が提案したとしても、それは実質的にはたいしてかわりはないのじゃないか。だから、かりに発案権は内閣になしという解除がとられるとしても、やはり同じようなふうになっていくのじゃないだろうか。この前申し上げたように、この問題はいわば学府の論といいますか、ということであって、実質的には同じで、たいして重要性がない問題である、こういうふうに私自身は感じております。ただいま申し上げたのは、これは私個人の意見でありまして、憲法調査会とは何らの関係がないことを申し上げておきます。
  88. 戸叶武

    戸叶武君 質問したところだけを答えて下さい、前文のところ。私は、今、高柳さんの講演を頼んだのじゃないので、私はちゃんと日本の憲法学者がこの憲法前文を理解できないのは、国家学的な、政治学的な、ひとつの謙虚さが足りないのです。憲法条文を言うのでなくこの憲法にある骨格というものが、この前文に織り込まれておるのでありまして、それを私は尋ねたので、その中において、特にこの前文の最高法規の規定と関連のある、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」、こういうきびしい規定があるが、これをどう解釈するかということをお聞きしておるのです。最高法規と、憲法学者ですから、それと引き比べて一緒に説明して下すってもけっこうです。
  89. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 今の憲法の最高法規に関する条項、これは今の憲法というものに反するあらゆる国会の活動というものは許されない。これはみな為政者は全部守らなきゃならん。こういう趣旨であることは、憲法学者だれも疑う人はないだろうと思います。
  90. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連質問。
  91. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、いいですか。
  92. 戸叶武

    戸叶武君 いいです。
  93. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 質疑の趣旨を明確にして、意見をあまり述べずにお問いを願いたいと思います。
  94. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理並びに高柳会長にお伺いしたいのでありますが、ことに高柳会長の今の御説明は私は納得いかないところあると思うのです。それは、国会議員として内閣総理大臣が提案権を行使すること、そのことは何も差しつかえないことですが、内閣総理大臣としてやるかどうかということが問題になっておるわけですよ。  そこで私はお聞きしますけれども、特に憲法改正の問題については、この憲法の中で第九章という新しい項を起こしているのですね。そうして、そこで、その手続についてはっきり規定しておるというのは、私は非常にこれは意味があると思うのです。つまり、憲法改正についての独自の手続について規定しておるのであって、この問題をそれ以外の方法は、この九章以外にあるというふうにこれは解釈できるという拡大解釈をやっていったとしたら、第九章という新しい項を起こして特にこの問題を私はここで規定しておる意味というものは非常に薄らぐだろうと思う。ですから、もしも内閣総理大臣に憲法改正の提案権があるとするならば、第九章の中で同時にそのことをもうたわなければならぬ。議員のほうは、発議権があって云々と書いてありますが、さらにもしも内閣総理大臣にあるとするならば、内閣総理大臣にもそのような提案権があるのだということをこの九章の中で明確にうたわなければ、私は、このような憲法改正の独自の手続について規定した条文というものははなはだ不明瞭なものになる、意味のないものになるということになると思うのです。そういう点から、あくまで憲法を守る立場からいえば、私は総理大臣の解釈というものは拡大解釈であって、非常にあいまいである。さらにこれに対する高柳会長の説明は、半分は肯定されておるようであり、あとのほうはどうも非常にあやふやになってきます。これは私は、高柳さんのような学者に期待するところは、あくまでも学的信念に従って堂々とその筋を通されるところにあるので、そのことを私は要して、何ものをもはばからず権力の前に堂々とあなたの意思を開陳してほしい。この点から総理並びに高柳会長にお伺いします。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この憲法改正の発案権につきましては、もうたびたび申し上げたとおりでございます。繰り返すことは要らないと思います。内閣には発案権がある、七十二条からございます。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 九十六条になぜ書いてないのです。そのことを書いてあるはずだ。
  97. 林修三

    政府委員(林修三君) 総理の答弁を補足いたしますが、ただいまおっしゃった第九章でございますが九十六条には、いわゆる国会が審議すべき原案の憲法改正の議案をだれが出すかということは書いてないわけでございます。いわゆる国会議員が出すこともここには書いてないわけであります。要するに国会が国民に向かって発議する手続を書いてある。国会がその決議をするのには三分の二の特別多数が要るということが書いてある。つまりその素材となる議案をだれが出すかということは、九十六条には直接にはうたっておりません。その点は内閣の問題についても国会議員の問題についても同じことでございまして、どちらも憲法のほかの条章から解釈すべきものと、かような解釈でございます。
  98. 戸叶武

    戸叶武君 林法制局長官に、憲法九十六条の御朗読を願います。(「何べん読むんだ」と呼ぶ者あり)いや、憲法は大切だから、一言でも間違ったらたいへんだ、私が言ったんじゃ……。
  99. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、たびたび……。
  100. 戸叶武

    戸叶武君 それでは今度は違うところを読んでもらいます。
  101. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、ちょっとお待ち下さい。
  102. 戸叶武

    戸叶武君 委員長、黙ってて下さい。
  103. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、お聞き下さい。私の言うことをおすわりになってお聞き下さい。なるべくですね、質疑をされるべきであって、各種の条文を読ませるということはこれはどうも私は感心しないのですよ。あなた自身がお読みになって、そうして質疑をせられたらどうですか。
  104. 戸叶武

    戸叶武君 そうではないのです。私が読んだんだと、一言でも間違うと——憲法条文以外に読めと言ったことがありますか。しかも大臣に言っておりませんよ。法制局長官に、法制の技術者に、専門家に、一言でも間違いないように——それではしませんけれども、今度は、あなたは帝国憲法のほうにだいぶ近寄っているようですから、大日本帝国憲法第七十三条、これをどう——朗読と言っちゃ悪いでしょうから、その条文をどう解釈していますか。
  105. 林修三

    政府委員(林修三君) 大日本帝国憲法の七十三条でございますが、これは御承知だと思いますが、「将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ。此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス」、いわゆる旧憲法の改正手続を規定した条文でございまして、この七十三条は、憲法の改正のいわゆる議案を議会に出される、帝国議会に出されるのは勅命をもって出されるということが一つ。それの帝国議会における議決は三分の二の特別多数によるという、この二つでございます。旧憲法から新憲法に対する移り変わりはこれによって行なわれたわけでございます。
  106. 戸叶武

    戸叶武君 その点を高柳先生にお尋ねします。古いところの大日本帝国憲法はこの第七十三条以外のところでもって憲法改正する条項がありますか。
  107. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 別にそのほかに憲法改正の手続の規定はないだろうと思います。
  108. 戸叶武

  109. 林修三

    政府委員(林修三君) 別にございませんで、これは要するにいわゆる議案、帝国議会が審議すべき議案を勅命をもって出されるということまでこれは書いてある。そういう意味においてほかの条文とは関係なくこの条文だけで憲法改正の手続はあるわけであります。
  110. 戸叶武

    戸叶武君 旧憲法のもとにおけるイギリスの議院内閣制との関連においてどういうふうにそれを説明できますか。
  111. 林修三

    政府委員(林修三君) まあ、旧憲法の規定そのものがいわゆるイギリスの議院内閣制的かどうかということは、これは異論のあるところと思います。御承知のように、いわゆる天皇大権事項も非常にまあ多いわけでございますし、また国務大臣につきましても、いわゆる内閣の制度はもう憲法には直接うたってございません。それから国務大臣それぞれの補弼責任、これは天皇に対する補弼責任であると、まあ公定解釈はそう解釈されておったと思います。で、議会に対して直接の責任は負わない。そういう解釈だと思います。したがいまして、いわゆる現在の憲法のような意味の議院内閣制というこのことは、まあ憲法の条章は違う。だから、さっき高柳先生のおっしゃったような、いわゆるこの制度の問題は、運用の問題は別ですが、この憲法のもとにおいても議院内閣制的な運用はそれはできたかもしれません。まあ、一時できつつあった時代もございました。しかし、憲法の規定そのものからいえば、いわゆる議院内閣制的のものではないわけでございます。
  112. 戸叶武

    戸叶武君 私はあなたには、政治家でないから運用の問題は論じてない。池田総理が運用の問題やったんで、それに合うように議論をくっつけなければならないところにあなたのソフィスト的な論議の展開があるのですが、古い日本の国とイギリスの今の国とは若干似ているのです。その上に立っての議院内閣制の論議なら別ですが、国民主権の日本の国において、日本の成文法は、旧憲法においても——帝国憲法におきましても、第七十三条という成文法でできておりますから、七十三条以外には憲法改正はできない規定がされているのです。それを受けて復活——この亡霊が浮かんできてはいけないので、この現行日本憲法の前文並びに最高法規の中において、この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅、こういうものをも無効だというふうに言っているのは、いまだに消えない明治憲法で習った憲法学者によって、その亡霊が復活してはならない、それを人民から、国民から委託されているところの国会がしっかりして、戦争のほうに再び政府が持っていくような憲法改正をしてはいけないというのが憲法前文によって規定されているのです。それなのに、なぜイギリスのほうの議員内閣制というものに逃げ場を持っていくのですか。イギリスと違う点は、日本の国家構造の違う点は国民主権であって、内閣、国会、国民のそのファンクションというものは、特に内閣と国会の機能というものは明確化しておるのであって、それをあいまいにしてしまったならば、私は形式的な三権分立主義を説くのではありませんが、権力を握っている内閣がいつでも優位に立って、人民をないがしろにし、国会を軽視していくという風潮というものができていく、主権者としての人民は名ばかりで、すべての権力が国会に集中し、憲法を守って、これを実施すべきところの行政の機関としての内閣が、自分の意思によって、その自分を拘束している憲法を勝手に改正するというような放逸な状態が生まれたならば、どうしてこの国の新しい憲法というものが守れますか。高柳さん、これは大切な問題です。良心的にひとつあなたの見解を承っておきたい。
  113. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) お説のように、内閣が国会を無視して、そうして国民に直接訴えて憲法改正をやるというようなことをやったら憲法違反、問題は、九十六条の趣旨は、つまり各議院の総議員の三分の二以上の賛成を経なければ、憲法改正を国民に対して提案するということができない、つまりここに重点があるわけです。だれがこういうふうに変えてほしいという提案を、議員が出そうが、あるいは議院内閣制のもとで、多数党のバックを得た内閣が出そうとも、そこはちっとも問題じゃない。問題は、国会の各議院の総議員の三分の二以上の賛成を経なければ改正がどうしたってできない、そこに重点があるので、発案上の問題というのは第二次的な問題であって、それが非常に重要なように考えられるのは、私、個人的見解によれば、一つの概念法学だと思います。
  114. 戸叶武

    戸叶武君 日本の憲法学者が、戦争の終わったあとでもって、私の恩師の大山郁夫先生が、ノース・ウイスタン大学でコール・グローブ教授なんかに頼まれて、美濃部先生の憲法を一応翻訳させられた。これほど悲しいことはなかった。憲法学じゃないのです。天皇制のもとにおけるどうして憲法学らしいものを作るかという折衷学で、学問としての科学的価値がないのです。この上杉慎吉氏から美濃部先生のような良心的な人に至るまで、今日の高柳さんに至るまで、何と日本の憲法学者というのは権力に弱いのでしょう。この憲法というものは政府のために守るのじゃないのです。国民のために守るのです。この日本の憲法をわれわれが守らないで、だれが守るんでしょう。これは今、日本に来ている比較憲法学者というものは、やはりワイマール憲法の悲劇をドイツで見てきて、アメリカに行き、さらに日本の現状を見て、その人が日本に訴えておる。この言葉を高柳先生もひとつ耳を澄まして聞いて下さい。「憲法の改正に際しては、原則として、最大限の慎重と自制が肝要である」というところからきまして、この憲法改正を強行すると、少数派の憲法感情を破壊するだけにとどまらないということを力説、「改正を必要とする不完全な憲法を持っていたために滅んだ国はいまだかつて存しないが、多数党または連立多数党による権力の過大行使のために失脚した政権は数多くある。政党的恣意の玩弄物となった憲法よりも、まだしも欠陥のある憲法の下に生活する方がましである。最後に、憲法改正に国民が参加することは、技術的にどのような方法がとられても、常に国民政治教育に実際上の貢献をなし、政治的統合の一要素ともなる点を指摘しておこう。」これは憲法改正というものは、今まで憲法調査会でも四年かかったというけれども、まだ私は来年あたりで高柳さんあたりは仕上げようとするなら、これも荒仕事で、まだほぼあと四、五年じっくり勉強してもらいたい。国会もあと十年くらいかかって、じっくりこの問題と取り組んでいきますから、国民が納得しないような形において発案すると、発議の問題が、また別のところで論議の対象といたします。こういう形においてこの日本憲法というものがだんだんのなしくずしの方式、憲法九条に反するような実際上の軍隊ができてしまったから、格好ができないから、この私生児を認知してもらいたいというのが憲法改正の動機だと思いますが、実際上において私生児的な自衛隊ができ上がって、この法律を曲げて、今度はそれに合わせていこうという、大きなこの憲法の改正論者の理由はこれにあるんだと思うのでありますが、私は、内閣総理大臣池田さんに若干尊敬しておる点は、今まで低姿勢という、あるいは慎重にやるという形できておるが、うしろから吹め上げられて、総裁選挙も間近なんで、池田さんも、やはりこういうふうに物価が上がり、池田内閣の値段が下がったりしたら吹き上げられてしまうのではないかという心配で、やはり憲法改正なんかを急ぐ一つのムードを作っておるんではないかと思いますが、池田さんの心境を伺っておきます。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま憲法改正につきまして私の所信を申し上げたのであります。この所信は、前も今も変わりございません。
  116. 藤田進

    ○藤田進君 関連。今本質論をやっておられるときに、やや技術論のようですが、私は、国会法制定並びに累次の改正に参画して参りました。法制局長官に技術的な問題ですからお伺いしておきたいのですが、七十二条、憲法に言う議案は、従来扱ってきた条約あるいは予算並びに一般の法律という以外に、憲法改正に関する内閣提案にかかる問題も含まれるという解釈のように思われる。七十三条にはそれが書いてないけれども、いや、なし得るんだ、こう言われておるわけです。しかし、立法府として、多年今日まで新憲法のもとに運用いたしました範囲では、憲法改正に関する内閣の提案——一つの腰だめかどうか知らないが、案で出された場合の議事としては予想しておりません。予想してないのであります。憲法の五十九条においては、法律案について参議院において否決した場合にはどうなる、あるいは国会法では両院協議会がどうであるかというふうに書かれていて、われわれの従来各党派が会合し、委員会等を持って検討した限りでは、こういうことは、あなたの言われるようなことは予想もしていなかったわけであります。そこで、お伺いをいたしたいのは、憲法の改正に関する発案というものが一般行政事務と考えられるのか。また、憲法の七十二条にいう「議案」の中に含まれるとするならば、国会法あるいは憲法を通じて、その発案を内閣がされた場合の取り扱いというものは、私の従来手がけてきた立場からすれば、何ら規定はない。  そこで、国会とは両院をさすのでありましょうから、両院の議決が異なる場合、あるいは一方において議決がない場合、いろいろな場合が予想されます。そういうことについては、現行憲法を受けて国会が運営するルールであるところの基本となっている国会法並びに憲法、なかんずく国会法については、その発案があった場合に対処して、補充し、あるいは国会法の改正というものが当然必要になってくるようにも思われる。発案された後における法律的な運用の根拠を、どういうふうに展開していくかという法規を示しつつ説明をしていただきたい。
  117. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法九十六条の改正手続に関しての法制的の整備がなお整っていないことはお説のとおりでございます。今、国会法の問題は別といたしまして、たとえば投票法のことも、実は今ないわけであります。国会がかなりに三分の二の多数で憲法改正の発議の案を作られた場合も、それを国民の投票に付する手続、これはかつて政府部内の選挙制度調査会において答申の出たことがたしかあったと思いますが、もちろんまだ国会に出されたこともないような状況でございます。  それから国会法に関する問題でございますが、国会法には今おっしゃったような問題についての規定はございません。で、これは結局国会がおきめになることでございますが、憲法解釈の問題とつながる問題でございますが、つまり憲法の九十六条で、おのおの三分の二といっている場合に、たとえば一院が否決した場合に、それがもうだめになるのか、あるいは両院協議会を開く余地があるのかというようなことがございましょうけれども、これはおそらく私はないんじゃないかと考えております。したがってそういう意味においての国会法の整備の問題はむしろないのではないか、大体今の国会法で運用できる範囲でやっていくべきじゃなかろうかと思います。  ただ問題は、これはお言葉を返すようでございますが、実は国会議員が憲法改正の議案をお出しになる規定は、直接には今ないわけであります。これは今の規定でやれば、第五十六条のいわゆる法律案その他の議案ということで読むほかはないだろうと思います。これについては多少異説もございます。一部に異説もあることは藤田先生御承知だと思いますが、今の五十六条には含まれないのだ、国会議員が憲法改正の議案を出す場合には、特別の法律が必要だということも一部にはございます。現行規定のもとにおいては、あの五十六条等を読むべきであろう、あるいはその他の、国会法の今の規定で、国会議員の議案提出権、衆議院の場合には二十人、参議院の場合は十人という賛成で読んでいいのではないかというふうに、われわれは思っておりますが、そういうふうな点で国会法自体についても、いろいろ今後整備すべき問題はあると思います。  しかしそれと憲法上、国会議員が憲法改正の提案権を持っておられることは別問題で、憲法上は、当然国会法にそういう規定がないからないということにはなりません。その点は、内閣についても私は同じことだと思っております。
  118. 藤田進

    ○藤田進君 そこで憲法七十二条についての議案というのは、憲法改正にかかる内閣の提案も含まれると言われていると思いますね。そうだとすれば、憲法には、それぞれ予算案について衆議院が議決した後三十日云々、その次の項には条約案については前二項をこれを適用するとかいう自然成立なり、それぞれ憲法の中には書かれてあるわけであります。法律案についても同様に、参議院が否決した場合には、衆議院に送れば三分の二だとか、それぞれ行き届いた憲法に定めがありますけれども、憲法の発議の前段の発案と言われているものについては、憲法自身、そういうものは規定もない、予想もしていないと私は解するのが正しい。どこにもない、ないということが、そういう扱いを予想していない。ほかの案件は、すべて憲法にそういう場合が書かれていることは御承知のとおりです。そのとおりです。必要があれば、憲法をずっと読めばわかりますが。  そこで「国会が発議し」という改正の章でもって規定してあるのですから、学者がいろいろなことを言われるでしょうが、内閣もいろいろなことを言われるでしょうが、われわれ立法府にいるものとしては、素直にこれを解釈すれば、内閣が発案なり、これは腰だめで、こんなものでどうだろうかといったような、従来の法律案その他の通常出されている、提案されているものとは質の変ったもの、これをぜひ国会は三分の二で議決せよという、内閣総理大臣の責任において立法府に提出されるというものよりは、若干憲法の発案については、質の変ったものを出されるのかもしれません。しかしそれに対する憲法上の規定は、扱いは、予算、条約、法律案については明定されておるけれども、この問題に関する限りは予想していないことですし、規定はどこにもない。あるとすれば、憲法の何条にその場合の扱いは、こういうふうに、特別な議決だとか扱いが書いてあるということならば、ひとつ教えていただきたい。
  119. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の国会法にございます予算、法律案、あるいは条約について両院の議決の違った場合の手続、これはそのとおり憲法に直接条文があるわけでございます。五十九条、六十条、六十一条にあるわけでございます。それを受けて、国会法の規定はできておるわけであります。ところが憲法改正の手続につきましては、国会につきまして九十六条しかないわけであります。  結局これは、国会が憲法改正のいわゆる国民に発議する案を議決されるには、それぞれの両院の総議員の三分の二という特別多数、これを取るほかないのであります。その場合に、一院でも三分の二取れなかったら、これは成立しないと、こういうことだと思います。これについて、国会法で両院協議会の規定を置く等のことは、やっぱりこれは憲法上できないだろうと思います。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長
  121. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、簡単に願います。
  122. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、高柳会長に一言お尋ねいたします。  それは発案権はどこにあるかという問題につきまして、私たちは国会議員に発案権がある、政府にはない、こういう考え方を持っております。これはいろいろ論争されておるわけですが、われわれのような考え方を、それは概念法学だ、こういうきめつけをなされたことだけは、これは少し行き過ぎじゃないかと私は考えております。双方いろいろな学説が対立しておることも知っております。しかし双方の学説を検討してみましても、いずれが概念法学に近いかといえば、私は政府側の考え方がむしろ近いというふうに考えております。  そういうふうに考えているときに、逆にこの高柳会長ともあろう学者が、相手のほうに対して、そういう言葉を投げつけるということは、はなはだ学問的じゃないと思うのです。こういう公の席上でありますから、高柳会長から、そういうことが吐かれたということになりますと、概念法学をきらっておるたくさんの憲法学者、しかも発案権については、私たちと同じような立場をとっておる学者がたくさんあるわけです。そういう人たちが、一体どう考えるか、なかなか私は、ちょっと了承しないと思います。私たちの立場というものは、あくまでも直接の憲法改正に関する九十六条の解釈、これに対して国民主権という立場というものを貫く、その点を強くやはりふんまえていくという立場をとるならば、われわれのような解釈が正しいのだ、こういう立場からきておるわけなんです。決してそういう単なる世上言われるような概念法学という狭い角度から出ておるのじゃ断じてない。むしろ政府説明こそ、いや憲法七十二条の提案権の解釈がどうだとか、ある場合によっては、内閣法の規定まで引っぱり出されて字句的な説明をされているわけでして、そのほうが無理があり、形式論理であり、概念法学だ。この点だけ、私は少し先ほどの戸叶君に対するあなたの言い方は、何か感情的になり過ぎているといいますか、多少論理的でないと思いますので、ひとつ訂正してほしい。
  123. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 概念法学と言ったのは、発案権が議院だけに限るか、あるいは政府にも、内閣にも認めるかということは、どちらになっても結局実質的には違いないんだ、そういう実質的に同じようなことを理論的に論争するという、そういう態度を、私は、これは政府がやろうが、あるいは野党がやろうが、そういう区別は何もないので、つまり実質において、どちらになっても大した問題じゃないのじゃないか、大切なのは、発案じゃなくて発議だ、憲法にいう発議、ここに重点があるので、発案の問題というものを、そうやかましく言うことは、どちらが言っても、政府側が言っても、野党側から言っても、その点は学者は、これは大いに学究的に検討していただきたいが、しかし、実際は、結果は大して違いないじゃないか。私らの考え方は、そういう実質的に同じようなことを理論的に論争するということをきらうのです。  そういう意味で言ったので、非難的な意味で、ある一方を非難するというような意味はもちろんないのです。実質的に同じことになるのじゃないか。先ほど申し上げたように、内閣には、そういうものがないといっても、議員立法としてできるんだ。それから内閣が出しても、国会がそれを否決してしまう力を完全に持っている。政府が出したからどうとか、議員立法でしているからどうとか、憲法の問題についてはおそらく違いがないだろうと思います。  そういう意味で、概念法学と言ったのは、先ほど特に申しましたように、それは個人的意見、私の考え方を先ほど良心的に言え、こういうふうに言われた、それに答えて、良心的に申し上げた個人の意見でありまして……。
  124. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、もう一ぺん。
  125. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、簡単にひとつ願います。
  126. 亀田得治

    ○亀田得治君 終着駅は、衆参のおのおの三分の二ということでありますから、そういう点では同じことだというふうに、それは考えることもできるでしょう。しかし、そういうことであれば、それはどちらからいっても、同じ道を通るんだ、こういうふうに、それだけのことでいいわけですね、説明としては。  ところが、私たちが発案権というものを、やはり国会ということに執着するのは、決して、そんなどちらからいっても同じことだとは、これは考えておらないのです。憲法に対する私たちの立ち向かい方ですね、このことを実は非常に重視しているわけなんです。どっちからいっても、三分の二の関門さえ通れば、それで同じなんだ、それこそ私は形式的だと考えている。これはそうではない。そういう意味で私たちは主張しているわけでして、ところが、そういうふうに最後に通る関門が同じであっても、そこを違うと見るか見ないか、これもひとつのやはり見方によって違うわけでして、そこの見方の相違というものは、そのままにしておくべきなんです。一方に対して、そういう概念にとらわれ過ぎているとか、そういう非難めいたものの言い方は、私は少し学者らしくない。先ほど多少訂正されたような感じは受けましたが、はっきり訂正もされないようですから、再度、その点をお答え願いたい。
  127. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これは十分に、概念法学的と私が、個人が感ずる理由は、相当に詳しく申し上げたと思います。学問的に見て、非常に片方を、提案権というものを内閣に認めるということは非民主的だと、そういうふうに私は考えない理由を先ほど申し上げたわけです。つまりこれは、議院内閣制でもっている場合には、内閣と国会の関係というものは、モンテスキューが言ったような三権分立ではないのです。だからそこで非常に近寄っている。国会と内閣が緊密に結びついている。そういう制度のもとにおいては、たとえば多数党の人がそろって提案したという場合と、それから内閣がそれにかわって提案したという場合とは、たいして差異がないのじゃないか、だからそういう意味で、実質的にはどっちになってもたいした問題ではないのじゃないか。どっちに解釈がころんでも、実質的には同じことじゃないか、こういう意味で私は概念法学という言葉を使ったのですが、この言葉は、先ほど申しましたように、完全に学問的な感想から申し上げたのであって、これは個人的の意見であることはもちろんであります。それに対する批判は幾らでもなさってけっこうであります。
  128. 戸叶武

    戸叶武君 私はきょうは、高柳先生に敬意を表して、日本の憲法学者が往々に概念法学から出てないから、その武器で戦ったのです。私は、元来国家学と政治学の追求者ですが、その武器は、坂本龍馬が、剣で戦った時代にピストル、ピストルから憲法だというふうに言っているように、あなたたちを相手にピストルではやりようがないから、仕方がなしに不得手だけれども、剣で戦った。剣で戦ったらまずいから、今度はピストルというのは、あなたの論法です。私は憲法をピストルで戦わないが、政治論で戦います。あなたが憲法学者として簡単だといっているところが、政治学的には一番重要なんです。あなたは発案とか発議とかいう言葉のマジックで、ごまかそうとしていますが、時間がないからこれはあとで、この問題は学問的に戦いましょう。  こういう憲法作成における解釈の技術や職人芸でもって、概念法学の牙城にこもって、時には政治権力と結び、時には学問的粉飾の中で非科学的方式によって日本の憲法改正の道を開こうという態度、私たちは、こういうことを許しがたい。委員長、あなたはいつか私に、憲法論議を日本のことでやろうと言いましたが、林法制局長官委員長に聖徳太子の憲法十七条を読んでやって下さい。これは大切なことです。最終のところだけを、読むというと失礼ですが、読むのがいやならば、とにかくあなたたちは、骨の髄までビスマーク憲法的な、全く日本のゆがめられた法治国という中における権力主義と結んだ法学の中にあぐらをかいているから、聖徳太子の憲法、あのような古い時代においてすら、憲法第一条の中において、聖徳太子は、和をもってとうとしとなすということを中心に書かれても、その最終の十七条において、大事は衆とともに議すべしということをぴしっと言っているのです。  だから、憲法改正なんかは簡単にできないように、この現行憲法はできているのです。それを簡単に、何か抜け道はないか、ここが通れます、という式のところを探りあてているのが、今の憲法学者の一つの抜け道憲法改正論です。これは国の大事を議するのにあたって、衆とともに議すべし、しかも、内閣総理大臣が憲法改正の問題において、高柳さんですら間違っているというような、発議と発案の問題を、堂々と国会で、ちゃらんぽらんな答弁をして、しかも、内閣の憲法改正の発案権なり発議権というものは憲法に書いてない。憲法九十六条以外に成文法においては書いてない。発議権のないところに発案権はない。このわかりきったことに対して言葉のマジックでもって、学問的な粉飾によって国会に挑戦しようとしておりますけれども、名誉ある国会の反対党に挑戦しようとしているけれども、これは重大な問題です。あの憲法の十七条の軽視の中から、閥族政治が生まれて、それが改革され、大化の改新が生まれたのじゃないですか。権力者によって自分の思いどおりに、憲法を軽視して解釈し、これをゆがめようとしたときに、それに失望した人民の暴動が起きるのです。  イギリス憲法だって、なまやさしくできたのではない。バラ戦争の前百十年間に九人のキングがいたが、そのうち六人追放され、五人殺されているという戦いのうちに、流血のうちに、一つの憲法改正といわれておるような大事が決せられたので、ノーマルな姿に、ビクトリア王朝時代に若干なってきたのです。日本の今当面しているような憲法改正というような重大な問題が、国会で対象にならないから、成文法でないイギリスにおいては、一般法規と同じように……
  129. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君に御注意申し上げますが、持ち時間が来ましたから、簡単に願います。
  130. 戸叶武

    戸叶武君 いや、答弁がきわめて、われわれにおいては満足いかないのです。国会におけるわれわれの審議権というものは、一人だけでしゃべるのじゃないのです。今まで私は遠慮深くいろいろのことを聞こうと思っても、自分たちのベースで走っているだけでもって、ほんとうに正確のものを答えてくれないじゃないですか。憲法改正は国の重大な問題です。これは今、自民党で発表しておるような憲法改正というのは、反革命的な一つの意図のもとに行なわれている、少なくとも現行憲法から。国の大事です。こういう問題が国民の中に広がって、ほんとうに対決を迫られるときにおいては、容易ならぬ事態が、私はあなた方が想像するよりは起こるかもしれない。私はそれを憂えているのです。われわれが守らないで、だれが守るのだ、この憲法はだれが守るのだ、あなた方は守られません。
  131. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君……
  132. 戸叶武

    戸叶武君 結論は急ぎます。委員長にも、よく憲法十七条を読んでもらいたいのですが、そういうふうにわれわれが今よぎっている時代は、戦争、そのあとには革命、経済恐慌、戦争、革命の悪循環の中に六十年間重ねてきたのです。今これを止めなければならないのが政治の力です。どうぞ池田さん、低姿勢をもっと続けて、謙虚な形において国際政治の中に役割を果たすとともに、近隣と友好関係を結んで、憲法改正のようなものを、この取り巻きにまどわされないで、簡単に憲法改正ができると思うようなことを思い込んだら、あなたの命取りだけでなく、日本の命取りになる危険性がありますから、その点池田さん、この点、ちょくちょく慎重にとは言っておりますが、このごろ総裁選挙を前にして、だいぶ急ピッチになりましたから、慎重にあなたは憲法改正の問題に取り組むかどうか、その決意を承りたい。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申し上げておりますように、重大問題でございますから、憲法調査会を設けまして、いろいろ検討を加えていただいておるのでございます。しこうして、その結果が出ましたならば、私はその内容を十分慎重に検討いたしますとともに、国民の気持を十分くみまして、最後の決定をいたしたいと思います。
  134. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、総括質疑通告者の発言は全部終了いたしましたので、総括質疑は終了したものと認めます。   —————————————
  135. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員の変更について御報告いたします。  本日久保等君が辞任せられ、その補欠として成瀬幡治君が選任せられました。  明日の委員会の開会時刻につきましては、追って公報をもって通知いたします。本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会