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大谷瑩潤君 それでは、
質問の題を変えまして、次には領土問題を少し伺いたいと思います。
終戦このかた十七年、平和条約締結以来十一年を経過いたしましたが、わが国の領土問題に関しては、南北ともに未解決でございます。近く衆議院におきまして、南は沖縄、小笠原における施政権の返還、北は南千島たる択捉、国後及び歯舞、色丹の原状復帰に関する要求決議案が上程されるということでございますが、これはまことにけっこうなことと存ずる次第でございます。ただ、私が日ごろ痛感いたしておりますることは、南と北を問わず、わが国領土の返還を要求する前に、ただいま現状のままにおいても、われわれといたしましては、もっともっと打つ手があるのではないかと思うのでございます。現在においてさえ、南は沖縄、小笠原、北は南北千島、さらには南樺太にあったわが同胞諸子に対し果たすべき義務及び責任が残されておりまして、日ごろわれわれはこれを怠っているのではないかと
反省しておる次第でございます。
ところで、南北の領土問題と、これを並列的に申しましたが、実はこの
二つの領土問題が生起した事情というものは、わが国の悲惨なる敗戦に基づいてこれら
二つの領土問題が生じました経過には、全く異なる、全然対照的な事情がそこにあることを、われわれ
日本国民は深く深く感銘しなければならないと思うのでございます。今日、
政府与党も野党も、ともにこの事情を無視して論議されておるのではないかと思います。
それでは、その事情はどういうことかと申しますと、南の沖縄、小笠原は、わが国が
アメリカに宣戦した結果、
日本側も、
アメリカ側も、ともに莫大な血の犠牲を払って生じた領土問題でございます。苛烈をきわめた沖縄攻防戦においては、日米将兵数十万が互いに三カ月にわたって死闘を続けて、現地住民でさえ死者十六万五千の多きを数えております。しかも、わがほうも沖縄守備隊長以下はことごとく自決し、また
アメリカ側もその軍司令官は戦死をいたしております。かくのごとく日米ともに忘るべからざる悲惨、壮絶なる犠牲を払った結果生じた領土問題でございます。しかるに、北のほうのわが国祖父伝来の領土はいかがであろうかと申しますると、終戦前後、わが国とソ連との間には日ソ不可侵同盟条約が厳存していたにもかかわらず、わが戦力がようやく旦夕に迫ると見るや、突然ソ連は不可侵条約を一方的に破棄してわが国に宣戦し、一兵も失うことなくわが北方領土を略取したのでございます。ソ連が千島に進駐して参りましたのは、すでにわが国が無条件降伏をした後十八日目でございます。まずこの点が、われわれ
日本人の感情といたしまして、南の場合と北の場合が著しく異なるゆえんでございます。
次に、沖縄、小笠原には現在わが同胞が定住しております。しかも、
アメリカは、もとより数々の制約がございまするにせよ、ある程度の自治を許しております。しかるに、ソ連軍の占領下にある北方領土においては、わが同胞はただの一人も居住することが許されず、すべて着のみ着のままで内地に追い返されたのであります。しかのみならず、北方の沿岸漁業はひんぴんとしてソ連側の拿捕するところとなり、現在においては内地漁民までがソ連の圧迫に耐えかねている
状態でございます。
私は、わが国領土問題の解決にあたっては、この冷厳なる
二つの事実を対照的に、正しくかつ公平に認識することが、何よります問題解決の前提であろうと信ずるものでございますが、これに対する
池田総理の御信念をひとつ承りたいと存じます。