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1962-03-06 第40回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月六日(火曜日)    午後零時五十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員千葉信君及び山田節男君辞任 につき、その補欠として羽生三七君及 び赤松常子君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田畑 金光君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            櫻井 志郎君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            亀田 得治君            木村禧八郎君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            矢嶋 三義君            赤松 常子君            東   隆君            市川 房枝君            白木義一郎君            大谷 瑩潤君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    総理府総務長官 小平 久雄君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁長官    官房長     村上  一君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省為替局長 福田 久男君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省社会局長 大山  正君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    通商産業省企業 佐橋  滋君    局長    建設省営繕局長 川合 貞夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。  本日千葉信君及び山田節男君が辞任せられ、その補欠として羽生三七君及び赤松常子君が選任せられました。
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続けます。木村禧八郎君。(拍手)
  4. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は三十七年度予算の編成の前提条件及びその特徴、内容等について政府質問いたしたいと思うのですが、まだ総理に最初に伺いたいのですが、所得倍増計画ないしは高度成長政策はおとりやめになったのかどうか。まずこの点を伺いたいと思います。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やめてはおりません。やはりこの基本方針で進めていっておるのであります。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならば、総理の今回の施政方針演説大蔵大臣財政演説藤山経済企画庁長官経済演説、これを見ますると、一言高度成長政策ないしは所得倍増計画という言葉が出ていないのであります。全然これに触れていないのであります。ただ非常にふしぎなのは、小坂外務大臣外交演説の中で、健全経済成長政策という言葉一言述べているだけなんです。私は健全経済成長政策という言葉は初めて聞くわけなんです。これはどういうわけなんですか。総理の昨年の施政方針演説を拝見しますと、日本経済勃興期にあるのだ、そして高度成長政策を強調しています。特に当時の経済企画庁長官だった迫水氏は、その経済演説の中で、高度の経済成長の達成と、充実した国民生活の実現に向かって邁進せられんことを切望してやまない、こう言っておったのですよ。高度成長政策に邁進せよということを言っておる。総理も、また三十六年度の予算は、この所得倍増計画の第一年目の予算である、それを織り込んだものであるということをはっきり言われておる。今年は倍増計画の第二年目になる。しかも第一年目に、すでに国際収支の大幅の赤字物価の値上がり、その他民間の設備拡張と、いわゆる経済基盤、道路とかあるいは港湾、工業用水等の間に非常な不均衡が出ております。ですから、なおさら所得倍増計画の第二年目の三十七年度予算においては倍増計画に触れなければならぬわけなんです。なおさら触れなければならぬ。ところが一言倍増計画高度成長政策に、施政方針演説において触れていないわけですよ。大蔵大臣財政演説でも触れていない。経済企画庁長官経済演説でも触れていないのです。ですから、私はこれをおとりやめになったかと聞いておるのです。なぜ触れないのでございますか。総理に伺います。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) わが党内閣基本的の問題でございますから、もう触れなくてもわかり切ったことでありますから、それをもとにいたしまして現実の施策をしておるのでございます。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは愚弄したものです。わが党の政策基本方針は、三十六年度の施政方針に強調されているんじゃないですか。しかもその倍増計画失敗したのですよ。非常に大きな矛盾をはらんでおりますから、なおさらここで倍増計画と三十七年度の予算との関係について、あるいは倍増計画失敗と、今後の財政経済政策の運用について特に触れなければならぬのであります。どうしてお触れにならないのですか。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今度の予算は、倍増計画に基づいてやっておるのであります。常に私は高度成長基本方針は変わりないということを言っております。今さら施政演説にないからといってやめた、……それから失敗とおっしゃいますが、それは意見の相違でございます。私は着々進んでおると考えております。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 倍増計画失敗であるかないか、これはまたあとで具体的に伺いますが、藤山企画庁長官に伺いますが、これは巷間伝うるところによりますと、藤山長官倍増計画ないし高度成長政策に今度経済演説で触れる予定であったけれども、その点を削られたということを聞いておるのであります。で、経済企画庁長官は、なぜ、この倍増計画なりあるいは高度成長政策には経済演説で触れておいでにならないのですか。これは総合官庁として、それから倍増計画立案官庁としてこれは非常な責任があるわけですね、この点についてお伺いしたいのです。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 高度成長が望ましいことはこれは申すまでもございませんし、また所得を十年間に倍増していくということは、これは七・二%の成長でいくわけでございます。しかしその過程におきまして、やはり安定的な成長を遂げていくことが必要でございますし、今の状況は、やはりそういう意味において政府が指導していくことが必要じゃないかと、こう思っております。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なぜ触れなかったかということを聞いているのです。(「なぜ原案から削ったか」と呼ぶ者あり)
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いや、別に原案から削ったわけではございませんが、そういう私の考え方原案を作成いたしたわけでございます。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 長官は、倍増計画ということをこれは正しいと思っておるのですか、正しくないと思っているのですか。倍増計画ですね。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 倍増計画が望ましいことは当然でございまして、国民所得を上げていくということが必要であり、そうして七・二%の成長で参りますれば参るわけでございます。ですから、そういうことが望ましいことはむろんでございまして、それに私は反対をしているわけではないわけなんでございます。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今、企画庁長官は、七・二%でいけば順調にいくと言われたのですね。そこで総理は、九%の成長率ということを言われたのですね。それがもとで行き過ぎになったと思うのです。それだけじゃありませんが、それも一つの大きな原因でありますが、これについてはどういうお考えを持っていますか。総理が九%に前に経済審議会が答申した七・二%を修正したのですね。そこに問題が私はまずあったと思うのです。この点についてはいかがですか。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やはり政治をやります場合に、できるだけ成長を達成するように努力しようということは、これは当然内閣が考うべきことだと思います。また当時の事情から申しましても、一般的に世間においてもそういうような、過去の状況から見ると、かなり高度の成長をするのじゃないかということも、一般的には言われておったわけでございます。それから十年間にやりますにしても、初めにできるだけ成長の高いことは望ましいことであるということもあったと思います。したがいまして、そういう意味において、九%の成長ということを目標にされたのだと私どもは理解し、それは決して間違っていることではなかったのじゃないかと、こう思っております。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 間違っていないとおっしゃるのですね。これは私はまたあとで伺いますが、非常に問題だと思うのです。これはもっと率直に御答弁していただきたいですね。単に総理がおられるから、それとつじつまを合わせるというような意味答弁するのじゃなく、ほんとうに大きな失敗をしているのですから、これは国民が迷惑するのです。それで私は何も攻撃するために攻撃しているのじゃないのです。国民ほんとうにしあわせになるような正しい経済政策を求めて質問しているのでありますから、ただ非難じゃないのです。コンデムネーションでもないのです。批判をしているのです。それは積極性を持っているクリティックであるのですから、その点誤解のないようにお願いいたします。総理失敗されていない、高度成長政策あるいは倍増計画失敗でないと言われていますが、しかしながら総理は今度の施政方針演説の中でこう述べているのですね、「あらかじめ起こるべき事態の的確な予見と、これを回避すべき事前応急策に十分でなかったことは、これを認めるにやぶさかではありませんが、」、こう述べておるのですね。この点は失敗を認めているお言葉じゃないんでありますか。
  19. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのあとに私は、所得倍増基本方針は変えない、現にこう言っておる。その枕言葉であります。そうお読み下さればおわかりのように、起こり得べきことを相当予見いたしました、そしてその対策もいたしました。しかしその対策が十分でなかった、というところに力があるのであります。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 神様じゃありませんから、それは予想のはずれることもあります。しかし今度の場合はそういう神様でないからといって逃れることができないのです。われわれはすでに失敗であるということをあらゆる機会に事前に述べたのであります。そのとおりになったのであります。また予測の違いも一億ドルや二億ドルの国際収支相違じゃないのであります。三十六年度の国際収支も結局は経常において十億ドルぐらいになると思います。総合収支においては政府は七億二千万ドルと言っておりますが、八億ドルぐらいになる見通しであります。二億ドルの黒字を予想したのでしょう。八億ドルの赤字ですよ。十億ドルの相違です。こんな大きな見込み違いをしているわけです。これはあらかじめ起こるべき事態の的確な予見、これを回避すべき事前対応策に十分でなかった、だから遺憾であるというふうに簡単には済まされない問題なんです。われわれがすでに指摘したのでありますから、指摘しなければ別でありますよ、それをこういう大きな間違いを起こして物価は上がる、国際収支は大幅の赤字、昨年九月から金融引き締めにより黒字倒産が起こる、あるいは設備投資経済基盤の間に非常な不均衡が生じているでありましょう。これに対して当然私は責任をとるべきだと思うのですが、この点いかがですか。
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 発展途上にあり、しかも非常な高度の発展をしておるときに、いろいろ国際収支なんかで見通しが違うことはこれはやむを得ぬことでございます。どこの国にでもございます。わが国におきましても過去においてたびたびございました。しかしそれが経済実態がどうなっておるか、これを見ていかなければならない。昭和三十二年には、これは暦年でなしに、年度でいきますと、五億五、六千万ドルの赤字であります。これも予定とうんと違っておる。その赤字が何によってできたかということになると、思惑輸入であった、在庫輸入であった。その後三十三年、三十四年、三十五年と非常によくいったじゃありませんか。だから一時的現象を見て、とやかく十年間全部失敗だというのは少し気が早過ぎるんじゃございませんか。だからいろいろしわが寄ったり、伸びたりいたします。それに対していろいろな施策を講じまして、経済実態が破局にならない、そうしてそのしわができるだけ少ないようにしていってどんどん経済が伸びてゆくのであります。ことに原材料とかあるいは設備等相当外国に依存しなければならないわが国状態におきましては、私はそういう事態が起こらないにこしたことはございません、起こったからといって日本経済は大失敗だというふうな考え方は持っておりません。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理はこれまで短期間現象をとらえて悲観したり楽観したりしては誤りだと長い目で見てくれと言っておる。長い目で見たらこれから非常な大きな失敗が出てきますよ。このことはあとで私は質問いたします。  日銀を中心とする信用インフレについて伺いますが、私こそ言いたいです、長い目で見れば今よさそうでありますけれども、本年の下期なり来年になってごらんなさい、もう少し長期的に見れば、私は非常な大きな破綻がくるのではないかと思うんです。長い目で見ればことし非常な大きな日本経済に対するマイナスが出てくる、こう思う。逆なんです。私たちのほうで短い期間におけるその好現象を見て長期予測を誤っちゃいけないのであります。このことを総理に申し上げたい。いかがですか。総理と私は逆なんです。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 長い目で見てゆくべきだと思います。それであなたもそのつもりなら私はけっこうでございます。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 答弁じゃない。外務大臣おられませんか。ちょっと呼んで下さい。ちょうど今これと関連して……。外務大臣がお見えになりませんから、続いて総理質問いたします。  総理は、先ほど私の質問に対して、長期的に私が見るなら幸いだと言われたんでありますが、長期的に見た場合、総理立場と私は同じ長期的に見ても逆なわけですね、総理短期間における悲観的現象を見て、そうして即断するのは間違いだと言うんですが、私は短期間における好況ですね、あるいは繁栄、そういうものを見て長期を楽観してはいけないと言うんですね、そのことはこれからあと質問して参りますが、こういう繁栄は何に基づいているか、その基本インフレの問題があると思うんです。国際収支の大幅な赤字、これは簡単に出てきたものじゃないと思う。また物価の騰貴も簡単に出てきたものじゃないと思う。財政金融政策誤りがあるからこういう状態になったと私は思うんですが、そこで総理に伺いたい。総理はあくまでも倍増計画高度成長政策は間違ってないというんですね。それを撤回する意思はないと、こうおっしゃるんですね。もう一度念を押して伺っておきます。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのとおりでございます。高度成長政策を私は続けていく、これがわが党の基本方針でございます。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣外交演説の中でただ一カ所、健全経済成長政策という言葉を使っておられる。経済成長という点に触れたのは皮肉にも外務大臣外交演説一カ所なんですよ、今度は。総理施政方針演説も、大蔵大臣企画庁長官も、みな全然触れていない。高度成長政策にも触れてない。外務大臣演説の中に一カ所だけ健全経済成長政策という言葉を使っておられるんです。これは池田内閣の新しい方針なのかどうか、これはどういう意味でお使いになったのか、この点を伺いたい。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申します。私、あちらこちら外国等を歩いたり、あるいは外国の要人と話をいたしまする際に、先方は非常に池田内閣経済成長政策というものに対して興味を持ち、また、言葉をきわめて申す者は、非常な賞賛の辞を呈するのでございます。私といたしましては、やはりこの経済成長政策はぜひ成功させたいと考えておる池田内閣の一員といたしまして、これに言及することは適当だと思います。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことを質問してるんじゃない。質問に合った答弁をしてもらわないと困るんですよ。演説をごらんになってるんですか。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちょっと拝見させて下さい。——質問の点は健全という字にあるように承りましたが、さようでございますか。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 議事進行。今、外務大臣は、質問がわからないで答弁をなさったようだけど、そういう御発言があったが、そんなばかなことありますか。委員長から十分注意して下さい。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が健全成長政策というものをここに入れたのはどういう意味かということでございまするので、私の立場からいたしましてこれを言うことが、外国に対しても言うべきことであると、こう考えて申したのでございますが、しからば御質問は、健全ということを特にうたっているのはどういう意味か、こういうことでございますようでございます。さような意味でお答えを申し上げまするが、健全というのは、非常にバランスのとれた、そして成長する政策と、かような意味でこれを出したのでございます。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 バランスのとれたというのは、今まではバランスがとれてないということなんです。それと、なぜ外務大臣だけが特に成長政策に触れて、ほかの大臣は全部なぜ触れなかったんですか。
  33. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申し上げます。バランスのとれたものでなければならぬと私は思っておりますし、従来もさような気持で政策が行なわれておりましたんでしょうが、今後ともさような政策基本に立つべきものである、こう考えておるわけでございます。  で、なぜ外務大臣だけが触れたかということでございまするが、これは冒頭にお答えいたしましたように、私は外国において非常にこの政策について関心を持つ国が多いし、またこれに対して尊敬をしておる国もあると、こういうことで申し上げたということでございます。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外国にあったからといって、何も外国に対して演説しているわけじゃないでしょう。まあこの点は、私はほかの大臣が触れないで皮肉にも外交演説の中で外務大臣だけが触れてるんで、非常な奇異を感じたので質問したわけです、何か特殊の意味があるのかと思って……。特殊の意味はないというのでありますから、それじゃ全然触れなかったと言っていいと思う。  そこで次に伺います。総理倍増計画ないし高度成長政策は間違ってない、今後もこれを推進すると言われております。ところが私は、倍増計画はまだ基本方針として間違っているばかりでなく、そのスタートがまず間違っていると思いますが、どうです。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は間違っていないと思って進んでおるのであります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なぜ間違ってないですか。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十二、三年ごろから四年、五年にかけまして非常な高度成長、その余波を受けましてまだ想像以上の高度成長をいたしております。こういう点を調整しながら進んでいきつつあるのであります。間違っておりません。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことでは私は答弁にならぬと思うのです。大体倍増政策スタートさせるときの考え方自体がまず間違っていると思うんです。というのは、総理日本経済勃興期にある——勃興期にあるということは景気変動はないということを前提にしているわけですよ、これは。それは下村理論でもはっきり言っているのです。ところが景気変動が起こってきているでしょう。景気変動を無視ないしは軽視しているんです。これがまず間違いです。それから成長率にばかりとらわれているんです。そうして成長が大きくなれば、不均衡とか格差が自然に解消されるという考え方なんですね。自然に解消されたか、どうかです。これも解消されていない。むしろ拡大しつつあるのです。そういう考え方がまずスタートにおいて間違いであります。第三の間違いは、国民のための経済成長ではないのです。大資本のための経済成長なんです。ここに間違いがあるんです。国民から非常に不満があるのです。この三つ、特にこの三つについて間違っている。  それからもう一つ総理に伺いたい。前に私が成長率について伺ったとき、総理は、自由企業の原則のもとにおける経済成長率の高さは、共産主義における経済成長よりはすぐれているということを示すんだ、こういうことを言っておられたのですね。この言葉をやはりそういうふうにお考えかどうか。この点伺いたいのです。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度成長目的は、所得格差、いろいろな不均衡を直すということが一つの大きい目的でございます。しかし、それは過程におきましてはいろいろなひずみも残りましょう。しかし目的は十年後高度成長した暁のことをわれわれは念願して言っているのであります。目的を達成する途中におきまして、いろいろの予定以外のことも起こりましょう。しかし、これはいつも言うように、長い目で見てもらわなければいかぬ、こういうことでございます。高度成長だから、そうしてそれが格差をなくするんだからといって、初年度からすぐぴしっと格差がなくなる、こういうものじゃない。経済というものはそんなに短期でいくものじゃございません。しかし施策としては、それをできるだけ早くからやっていこうという施策はやっておりますが、結果がそのとおりすぐ出るものではないということを長い目で見てもらいたい、こういうのであります。  それから自由主義経済のほうが、共産主義経済よりも成長が早いのだということは、世界の人が日本の例を引いて言っております。私も、日本におきましては非常にそれが証明できていると思います。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、この成長政策によって急によくなる、その目標にすぐに達するというように理解しては間違いだと言う。そんなことを私は言っているのじゃない。成長政策あるいは倍増政策をとってから、国民生活が苦しくなっているのは、どういうわけなんですか。私は、その格差が解消される程度が少ないということよりも、むしろ格差が拡大している、国民生活が苦しくなっているということが、倍増政策の間違いであるということを最も端的に示していると思う。総理府で経済問題に関する世論調査を発表しております。これによりますと、お宅の暮らし向きはどうでしょうか、去年の今ごろと比べてお宅の暮らし向きは楽になっておりますか、苦しくなっておりますか、それとも変わりありませんかという問に対して「楽になっている」が一四%、「苦しくなっている」が三二%、「変わりがない」が五一%、これはどういうわけですか。倍増政策を実施して、それから逆に苦しくなっているのが多い。これはどういうわけか、何かどこか間違っているに違いない。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、その調査を見ました。しかし、これは民情の機微の表われもあることでございます。大体同じことであると言う場合におきましては、私は、まあまあよくなったほうじゃないかぐらいに——人は言うかもしれませんが、私はそう思う。よほどよくなった。まあまあ同じことだと言うのは、私はどちらかというと——それが五十何パーセント、非常にいいことだと、人がよ過ぎるくらいにそう思うのであります。そうして私は、今あなた方の言っております最低賃金の問題等々も、この高度成長によって予想以上に最低賃金も上がってきておる。そうして昨年なんかの、春闘なんかの賃金の上がりようというものは、これは世界にちょっと例がないほど上がっておるのであります。だからそういうことを基盤としながら、これはやって参りますから、もうしばらく見ていっていただければ、そのうち、まあまあというのが八〇%ぐらい、よくなったというのが一〇%ぐらい、そうしてまた、悪くなったというのが、一〇%ぐらいというような状況が出てくると思います。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際いいかげんな答弁、無責任きわまるものです。この前の調査では「苦しくなっている」が少なかった。この次の調査では「苦しくなっている」が多くなっている。総理府のこういう調査は何のためにおやりになるのですか。五一%から、まあまあ楽になっているというなら、なぜそういうふうに注釈をつけないのですか。「変わりがない」が五一%——まあまあ楽になっているのは、なぜそういうふうに正しく発表しないのですか。これは国民を惑わすようなものですよ。実に無責任きわまると思います。  それからソ連との比較の問題ですが、成長率はソ連のほうが低くても、社会保障はどうですか。総理、御存じだと思います。国民年金は最低三十ルーブルですよ。日本金にして一万二千円、掛金がないのです。学校は小学校から大学までただです。医療費についても掛金なしでただであります。私は、昨年ソ連に行きまして住宅費について調査をいたしました。住宅費は、家賃、電気、ガス、水道、電話を入れまして生活費の五%ですよ。なるほど成長率日本より低いかもしれません。日本は、成長率がソ連より高いかもしれません。しかしながら、国民年金は掛金なしで最低三十ルーブル−一万二千円から最高百二十ルーブル−四万八千円ですよ。五十五才から支給ですよ、婦人は。男子は六十才。しかも労働者は——婦人は二十年勤めると、やめるときの賃金が年金になる。労働者は二十五年勤めると、そのときの賃金が年金になるのですよ。ですから成長率の高いばかりを自慢すべきじゃないと思います。問題は何のために成長率を高くするかということであります。国民の生活水準の安定向上と比例してやらなければ全く意味がないと思う。山高きをもって尊しとせず。成長率の高いことのみを誇るべきでないと思いますが、この点どうですか。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は成長率の問題を言っている。ソ連の社会保障がどうとか、こうとか、そういう問題じゃありません。それならソ連の社会保障関係とイギリスあるいはスウェーデンの例をお比べになったらどうです。問題が違う。成長率を言っている。そうして予算の使い方、その他の実態がどうなるかということを言っているのじゃございません。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう認識だから間違っている。何のための成長率ですか。何のために総生産をふやすのか、国民所得をふやすのか。総理は前に言われた。高度成長政策は手段であって、目的でないと言われた。国民生活をよくし、向上させる手段なんです。それがよくならないで成長率ばかり高くした。だから国民のための高度成長じゃない。大資本のための高度成長なんだ。そこに違いがある。ソ連と自由主義、資本主義の経済との間にはそこに違いがある。根本的な違いですよ。ですから成長率が高いと自慢すべきじゃないと思います。  それから総理は間違っていないとおっしゃいますが、大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣財政演説でこう述べております。「本年は、国際収支均衡を回復するという当面喫緊の課題にこたえるため、引き締めの政策を堅持しつつ、経済成長に伴い顕在化するに至った各面における不均衡の是正をはかり、長期にわたる国力発展の基礎を充実すべき年であります。」と述べております。この財政演説の中では「経済成長に伴い顕在化するに至った各面における不均衡の是正をはかり、」と言っておる。経済成長に伴って不均衡が顕在化するに至ったとはっきり財政演説で述べておるのであります。そこで私は伺いたいのであります。各方面に現われた不均衡の内容です。これは問題だと思う。高度成長政策については、成長率そのものは問題でありますけれども、もう一つ倍増計画の大きな目的格差の解消、二重構造の解消、是正、こういうものが大きなねらいだったと思うのであります。ところが、成長政策をやったら不均衡がむしろ顕在化するに至った。これは大蔵大臣が述べておる。それではこの不均衡を直さなければならんですが、それじゃどういう状態に不均衡が現われてきたか。  まず第一に、地域格差の問題について自治大臣に伺います。各府県間の、自治体間の不均衡。これによって私は拡大されておると思うのです。また今後拡大されるのじゃないかと思います。それで自治大臣に伺いますのは、これまでの施策によって各自治体間の不均衡格差の問題はどうなったか。その点が一つ。それから今度の税制改正によりまして税源配分の関係で、これはまた不均衡が拡大すると思う。実際にそろばんをあたって見れば拡大します。この点をどうするか。第三は、新産業都市建設に伴って、これはまた拡大されていくと思う。この三点について伺いたい。  それから経済基盤の問題について、これは道路、港湾、工業用水等と運輸交通、そういうものと設備拡張との関係、これは不均衡が拡大されておると思う。この点について関係大臣から御答弁をいただきたい。  それから物価の問題。これは経済企画庁長官に伺います。所得階層別に物価はどういう影響をされておるか。格差は拡大しておると思う。それからこの前にも質問いたしまして五分位階層別の可処分所得はどうなっておるか、これは経済企画庁長官に伺います。それから賃金格差はどうなっておるか。この六点について、関係大臣から具体的に内容を説明していただきたいのであります。
  45. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お答えします。地域格差の解消につきましては、政府はずっと格差の解消という問題について具体的に今までも取り上げてきております。御承知のとおり三十六年度の予算におきましても、公共事業費に関して財政力の弱い府県については補助率のかさ上げをやっておる。これによりまして、三十七年度の予算は、いわゆる補助事業につきまして、約百二億、直轄事業につきましても八十億といったような従来より補助額の増加をいたしております。さらに今の新産業都市促進計画におきましても、各地域の中心となるべき都市を中心に総合的な開発計画を進める。さらに工業開発につきましても、それぞれの地域が——小都市において——地域がいろいろな財政上必要な場合には、起債あるいは減税に対する措置をやるといったような具体的な計画を立てまして、地域格差の解消は漸次はかりつつあるわけであります。さらに地方税につきましては、今回は、大体減税額で申しますと、平年度四百二十二億、初年度が二百七十三億といったような減税をやりますと同時に、国と地方との税源配分をやりまして、国の財源を地方へ移すということをやります結果、実際の減税額は、初年度が百九十一億、平年度が三百十七億といった程度のものに相なります。しかも、この場合に、いわゆる地方の税源配分も今度は同様に取り上げまして、たばこ消費税の配分あるいは事業税の分割配分あるいは府県民税の配分といったようなものが、それぞれ地方のいわゆる貧弱団体というものに対して、十分な配慮と増収のできるような措置をいたしているわけであります。(「減らしたものがあるじゃないか、減らしたものを言わなきゃだめだ」と呼ぶ者あり)ただいまのは減らしたものとの差引を言っているわけであります。減らしたほうは、いわゆる地方譲与税、入場税の百七十億は、これは国へ譲渡した形でございます。(「事業税も遊興飲食税も減っているよ」と呼ぶ者あり)これは地方税の減税をやったのでありますから、全体として、これは地方住民の税負担を減すために減税はそれぞれの部門にわたって適当にやっているわけです。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 格差を問題にしているのだ。各府県別の今度の税制改正による差引の結果をひとつ府県別に、そうすればわかります。
  47. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 府県別の計算はまだできておりません。御承知のとおりに、普通交付税の配分が八月にございます。それまでに府県別の計算はやりまして、総体的な計算なら今でもございます。もしなんでしたら数字で申し上げてもよろしいです。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 述べて下さい、重要ですから。
  49. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 今申し上げましたように、減税によります初年度は二百七十三億、そのうち府県の分は百四十九億、市町村が百二十四億、平年度におきましては、四百二十二億のうち、府県分が百八十九億、市町村が二百三十三億、そして、これが国との税源調整によりまして、地方がふえる分が、初年度が二百五十二億、平年度二百七十五億、そのうちの府県分は初年度が二百十六億、平年度が二百三十六億、これだけふえますが、そのうち百七十億の入場税の譲与税廃止をやりまして、差し引きまして初年度が八十二億、平年度が百五億、これだけの財源移管を差引やっているわけです。したがいまして、その分で影響をするのが、府県で初年度で四十六億、平年度で六十六億、したがいまして、この財源の差引をやりますと、さっき申しました初年度が全体で百九十一億のうち府県は百三億、それから平年度が三百十七億のうち百二十三億、しかし、そのうちで一番大きな減税になっておりますものは不交付団体であります。不交付団体のほうの財源を、さらに地方のいわゆる貧弱団体へ配分する、その方法は、今のたばこの消費税が、従来、従価制度になっておりましたものを、本数制度に直して、いわゆる分轄法人税といいますものの大都市集中を避けて、支店に重点を置いて支店にも配分を考える。府県民税につきましても、税率の配分を考えまして、そして、これが所得税との組み合わせでやっておりますが、それぞれ地方の団体で増収のできるというような措置をとっております。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お答えいたします。最近におきます五分位階層別の所得増加でございますが、三十五年は平均一〇・五%でありまして、低所得者層の第一階層は一一・二%と平均を上回っているのであります。ところが、三十六年の一−七月の第一階層の所得増加率は六・五%になっております。平均の一〇・五%を下回っております。ただ八月、九月における第一階層の増加率はそれぞれ八・八%、七・八%と上昇しておるのでございまして、その後十、十一、十二という数字がまだ現われませんので、年間通じましてどういうふうになるか、三十五年度より悪くなるかよくなるかということを今にわかに申し上げられませんけれども、例年の例から申しますと、下半期が非常に改善されることになっておるようでございますから、そう悲観すべきではないと考えております。  それから高度成長下における賃金格差の推移でございまするけれども、大体五百人以上の大規模事業所の賃金を一〇〇とした場合、中規模事業所——と申しますと百人から四百九十九人、三十三年は六九・七%まで拡大する傾向にございましたが、三十四年になりますと格差拡大の傾向が伴ってきておったのでございます。三十五年になりますと七〇・七%と前年に比べまして一・一%の縮小を示しております。また、小規模事業所で三十人から九十九人、三十四年における一・四の格差縮小を示しておったのでございますが、三十五年には五八・九%と、前年に比べまして二・八%の大幅の格差縮小を示しております。さらに三十六年一月から十月まででございますが、中規模では七四・五%、前年度に比べまして三・五%格差が縮小しておりますが、小規模では六三・〇%で前年度に比べまして二・八%の格差が縮小いたしております。  また、消費者物価等の階層別の問題でございますが、この三十年以降の消費者物価の動向を五分位階層別に見ますと、三十六年を一〇〇と見まして、三十五年では、各階層とも前年度に比べまして三・六ないし三・七%の上昇をいたしておるのでありまして、階層間の差というものはほとんど見られなかったのでございます。三十六年一−七月でございますが、各階層とも一一三となっておって、階層間の差はやはり同じようにあまり認められないのでございます。三十六年度は一−七月におきまして、低所得者におきます物価の上昇は四・九%程度、高所得者におきます物価の上昇は五・二%、若干低所得者のほうが少なくなっております。まあそういうようなことでございます。しかし、生活の実態に触れますと、やはり相当低所得者の感じは強いのじゃないかと、こう思います。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 経済基盤のほうはどうです。設備と道路と港湾と、不均衡は。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 道路港湾等輸送関係のいわゆる産業基盤というものは、必ずしも一様の発展をいたしておりません。ことに今日では東京とか大阪とかというような都市に人口が集中いたしておりまして、その方面におきます施設の改善ということが相当急を要しますのですから、問題はその方面に相当集中されておりますけれども、財政の上におきまして、御承知のとおり低開発地域の開発促進法もできましたし、また、離島振興法等の法案もできましたし、今後新産業都市等を作りまして、そして各方面における地方の整備をいたして参るわけでございまして、たとえば開発銀行におきます融資ワクと地方ワクというものの拡大も本年度ははかりつつあるわけでございます。そういう点について格差の是正ということをできるだけやって参りたい、こう存じております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自治大臣それから経済企画庁長官格差問題について伺いましたが、格差を縮小するように施策を講ずるということであって、格差実態がどうなっているかという具体的な説明がないのです。しかし、実際は格差が拡大しているのです。そこで、具体的に伺いますが、今、五分位階層別の可処分所得の増加率について御説明があったのですが、前に総理に伺ったときに、総理は、下期はよくなるのだから、格差は拡大しないというお話なんです。今まで作成されている資料は九月までですね。これが非常におそいと思うんですけれども、しかし、九月を見ましても、拡大しているのです。今、長官は、三十五年低所得者一一・二%と言いました。これが三十六年一−九月が六・八%です。それから高額所得層、これは三十五年が一一・八%が三十六年一−九月は一二丁二%なんです。こっちのほう、高額所得層の方が多くなっているのですよ。低額所得層の方が下がっているのですよ。そうして三十六年一−九月が低額所得層の増加率が六・八%、高額所得層はその約倍です、一二・二%なんです。依然として格差は拡大しているのです。これで格差が縮小したとは言えないんじゃないですか。ですから、総理府のこの調査でも、苦しくなったという人が多くなってきているのです。社会生活でありますから、相対的なんです。経済が大きくなれば生活水準が高いのは当然であります。しかし、生活水準が上がっても、格差が拡大すれば、社会生活は相対的でありますから、苦しくなったという感じが出てくるわけです。具体的に総理府統計局で調査した五分位の可処分所得格差が拡大しているのです、はっきりと。これでも格差が縮小していると言えますか。総理いかがですか。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題につきまして、木村さんと常に毎国会で議論しておるのですが、昨年の例でも十、十一、十二とぐっと上がりまして、一昨年はあなたの議論でいったら格差が縮小している。下の可処分所得が去年は多かったのでございますよ、伸び率が。この内閣統計局の可処分所得五分位の問題を御議論なさるときに、この統計局の実態をひとつお考え願いたい。勤労者と一般と合わしてやっております。五分位に分けまして、一番下の人は大体一万五千円ぐらいでございますから、収入が、それで六分の一ずつ毎月変わるわけなんです。それで一万五千円の人がこの月は月給の遅払いだとか、あるいは翌月に回ったという人はその人がゼロになりますよ。そうして今度その次の月にこの前の分まで一緒にもらったという人は、今度は第五分位に入ることもあるわけです。二カ月分もらいますと、三万何ぼになりますから、これは第一分位ではなくて、第三分位か第四分位に入るのですよ。私はこれをちゃんと係の者を呼びまして、ずっと聞いている。その証拠をごらんに入れますと、この実収収入五分位階級別の可処分比、対前年比率を各月で見ますと、第一分位といいますか、一番下でございますね、お書き取り下すってもよろしゅうございます。平均が一一・二です。一番下のが一二・二です。一月、二月は平均が八・六、いわゆる第一分位のものは一・八になっております。そして三月は平均が二二・五です。これが一一・九になっている。四月、五月、六月抜かしまして、七月は一一です、平均が。しかし、このときの第一分位の人は〇・三しかふえていない。どこに原因があるか。やっぱりそれなんです。私はいつも議論いたします。それで毎月六分の一ずつ変わって六カ月でなくなってくる。しかし、一月に調べられた人は二月になってゼロになる。一万五千円が、まあ家族の家内収入で三千円とか五千円、収入が翌月あったというときには、これは三千円なり五千円の収入になってくる、全体の収入が。そういう議論の点があるわけです。そういう点を十分きわめてでないと、私はこの五分位の可処分所得で議論するということは、なかなか実態に沿わぬ点があるのじゃないかと思う。詳しくはまた別の機会に……。私は内閣統計局の人と十回ぐらいにわたりまして会っています。この月に一・八しかふえない第一分位の五百世帯を自分一人で見ようというところまでいっているのですが、こういうことは、この平均だけで議論はなかなかいかない。私はあなたに、統計局の実際の統計をやっている人にこの問題を掘り下げて聞き、一々カードをごらん願ってから、議論してみたいと思います。  私は参考に、こういう見方をしております。所得がどうなるかということにつきまして、一番権威のある調査は大蔵省の国税庁の調査でございます。そうすると、三十年と三十七年の減税、三十六年をとってもよろしゅうございますが、三十万円以下の人、御参考に、これを私、常にふところに入れて持っておるのですが、三十年は三十万円以下の所得者が七百三十万人おりました。それから三十万円から七十万円までの間が三百三十四万人、それから七十万円を超える者が二十九万三千人、納税者が千九十三万人。三十七年は、予算でいっております減税前、三十七年度分でいきますと——三十六年の実績でいきましょうか、三十六年になりますと、七百三十万人の三十万円以下の人が五百二十四万人、三十万円から七十万円の中産階級は三百三十四万人が七百二十四万人にふえている。それから七十万円超の分が百九十六万人。そういたしますと、人口の分布その他から申しまして、そう人口はふえておりませんが、所得が非常にふえている。しかも三十万円以下の人が、七百三十万人が二百二十万人、中産階級の三百三十万人の人が倍以上の七百二十万人になっている。七十万円以上の人が百九十六万人、そうして千九百四十五万人、これは各階級別のパーセンテージを申し上げませんが、これも一つ所得増加によりますいわゆる中産階級が非常にふえている、上の人もふえているわけです。今の五分位の分は、平均が、一番下で一万五千円、一番上が七万円になっている。上の七万円以上の人——平均七万円ですが、との重役をとるかということによってだいぶ違ってくる。これは常に議会の問題になりますので、ひとつ、適当な機会に十分内閣統計局の実態をごらんいただきまして、そうして次の機会にこれで議論していきたいと思います。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は非常に御熱心に御答弁して下さいましたが、どうもまだ納得いかないのです。ですから、今後、もっと具体的に私は統計局の人から聞いて調べたいと思います。しかし、この大局の趨勢的な傾向、数字としてはこれでいいと思うのです、趨勢としては。このように、その程度はいろいろ違いましょうが、趨勢としては、倍増計画を行なってきてから格差は拡大したという趨勢になっている。それからもう一つ、その上に物価騰貴の階層別の影響が低所得者がどうしても大きいと思うのです。経済企画庁でどういう……、階層別の影響として、低所得者も高額所得者も同じである、あるいは高額所得者の影響が大きいという実数が出てくるのは、私はどうもおかしいと思うのです。何かそこに欠陥があるのじゃないか。ほかの学者でも、高額所得層と低額所得層について物価騰貴の影響を調べたものもありますが、これは高額所得層のほうが低くて、低額所得層のほうが大きいのですね。この点については私は納得できないです。可処分所得は低額所得層より高額所得層のほうが大きい。物価騰貴の影響は低額所得層に大きく、高額所得層に小さいというのでは、格差はますます広がる。この実態はわれわれの調査したもの、たとえば主婦の家計簿から見ますと、それは明らかに違っているのですよ。長官も主婦の方々からたえずいろいろな陳情とか意見を聞かされていると思うのです。だから、どうしても、さっき長官が言われたように、実感として合わないと言っておられるでしょう。何かこの調査に欠陥があるのじゃないでしょうか、その点いかがですか。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この消費者物価の家計簿に対する影響というのは、全体の収入のうちで家計に使う費用というようなものとの割合の関係があろうと思いますが、われわれとしては、そういう点についてもう少し慎重にする必要がございますので、お話のように、主婦連等にもお願いいたしまして、若干の補助金を出して、そうしてそういうものの正確な調査をしていただくということをただいま実行に移しておるのでありまして、こういうような統計につきましては十分注意して参りたいと、こう思っております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 また、物価につきましても、昨年九月から卸売物価あるいは消費者物価について作成の仕方等変えておるわけです。その結果として、物価騰貴の大きい生鮮食料品とか、そういうものをはずして、騰貴の少ない、あるいは下がるような高級耐久消費財みたいなものを入れているわけですから、物価指数についても、これは新指数と旧指数と両方発表していただきたいと思うのです。そうでないと、ずっと連続的にみんな調査しておりますから、非常に違うと思います。  時間がありませんから、次に……。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。政府がさきに発表された所得倍増計画については、あの立案の当初から、私はこの委員会ですでに三回くらいにわたって名称を変えられたらどうかということを申し上げておったのです。これは社会主義経済の体制下においては別でありますが、今の自由主義経済の体制のもとにおいては、所得倍増計画というのは非常に野心的であり、また、キャッチ・フレーズとしては非常におもしろいものでありましょうが、経済実態からいうと、なかなかむずかしい。ある一つのほうが達成されようとすれば、必ず別のところにひずみが起こる。そのひずみを直そうとすると、また他のところに波及してくるということで困難であるし、そればかりでなく、国民に与えておる影響は、実質所得が簡単に倍になるということから、物価騰貴にも相当な影響を与えておるので、私はこの名称を、所得倍増計画というのを改めて、経済成長十カ年計画と称したらどうかということを過去何回も申し上げておりますが、総理は別に名称にこだわることはないということをこの前申されておりましたが、この機会に、私は、政府が率直に名称を長期経済、あるいは経済成長十カ年計画と改められたらどうかと思いますが、総理の御見解を承りたい。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府の意図するところは国民もだいぶわかっていただいたと思います。で、あの計画という言葉も、常に申し上げておりますとおり、まず一応の計画で、概算と申しますか、前もって書いたもので、私はこれを今変えたりすると、かえって混乱するのじゃないかと思います。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それに関連して、それでは倍増計画というものの名称等について変えたらどうかということですね、企画庁長官いかがです、あるいは大蔵大臣、お二方に伺いたい。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 所得を算術的に倍にしていけば、格差はそれはふえるわけなんでして、それは成長過程におきまして政治的にいろいろな政策の上でそれが縮まるような政策をとらなければ、算術的に倍にしていけば、十万円の人は二十万円になり、三十万円の人は六十万円になるというようなことなんですから、そこらはやはり考え政策の上でやっていかなければならないというふうに私は考えておるのでございます。したがって、今後そういうような施策を十分政府としてもやっていくのは必要であろうというのでございます。  そこで、倍増計画と申しますけれども、それに特にこだわって名前を変えるほどのことはないのじゃないかと思っておりますし、まあ通例そう言われておりますが、ただあまり非常な誤解があれば、そういう点について十分国民の理解を得ることが必要だと思います。
  62. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 正確な名前をつけるとすれば、国民総生産倍増計画という名前をつけるのが正しかったと思うのですが、これがいわゆる所得倍増計画と俗にこう言われてしまったのですから、この意味の持つ誤解を解くことがやはり必要だと思いますが、所得倍増計画というのはわかりいい名前にしたつもりのはずですが、これはほんとうの私どもの考えておるものとだいぶ誤解された質問も現に多いことを見ても、名前は正確な用語じゃないと思いますが、直す必要は、もうここにきたら別にないのじゃないかと思っております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、総理は前に私の質問に対して、これは個々の所得の倍増を意味するような答弁をされておるのです。低額所得層に対しては三倍、四倍もふやす必要があるということを言われておるのです。高額所得層はそんなにふえなくてもいいのだ、こういう御答弁をなさっておるのです。ですから総理は、所得倍増は、総生産の倍増、あるいは国民所得全体の倍増とともに、選挙にあたって個々の人の所得が倍になるような印象を与えてきておるのです。しかも、低額所得層は倍じゃ済まないということを言っておるのです。これは速記にあります。低額所得層は三倍、四倍にふやさなければならぬのだということを言っておるのです。ですから、単なる倍増だけではないのであります。総生産あるいは総国民所得の倍増だけでないように総理は言っておるのでありますから、もしこの際、誤解を解くならば、国民に対してはっきりと、所得倍増政策というものは、国民一人々々の所得の倍増を意味しておるのじゃないのだ、自由企業の原則のもとでは、金持ちのほうがよけい所得がふえるということは、さっきの五分位の階層別の調査によって明らかなんです。強いもの勝ちの自由経済もとでは、金持ちのほうがたくさんふえるのであって、所得の、経済力の少ない人はあまりふえないのだということを、はっきりここで言明されたいと思うのです。それでないと誤解を受けます。いつまでも国民にそういう間違った期待を抱かせることは——これはこの前の選挙対策としてあなたは言われたのです——これは非常に無責任でありますから、ここではっきりと国民が誤解しないように、貧乏人はあまりふえないのだ、貧乏人は麦を食うのだ、金持ちは米を食うのだ、前の池田さんの言われたことと所信はちっとも変わらないのだ、貧乏人は麦を食えということと変わりないのだということをはっきりここで説明されたほうが誠実であると思うのです。
  64. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増計画は、国全体の所得を倍にするのであります。個人の所得を一々倍増するという意味じゃございません。しかし、十年間に倍以上になれば、平均して一人当たりも倍増になるようにいたしたい。しかし、そういうことは全体の問題であって、観念的には所得のうんと上の人は倍にする必要はない、下の人を三倍、四倍にしたいというのが実質の考え方でございます。そうして貧乏な人は……それは金持ちも生活が苦しいことは当然のことであります。麦とか米かとかという問題は今はもうなくなってしまいました。これはやはり日本経済の伸長によってできたことであります。あの当時は、私も所得の少ない人は麦でがまんしてもらわなければならなかったのでございます。国民の努力によりまして、この私どもの念願しているように、ほとんど米が食えるようになったということは言えると思う。ただ、中にはまだ米も十分食えない人がおられるので、社会保障でこれを拡大していく。現に三十五年に比べれば、生活保護を受ける人は四割ふえることになるのであります。これをますますふやしていって、そうして十年たつ前に生活保護というものは倍にしなければいかぬ。こういうことで、私どもの所得倍増というものはおわかりと思います。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その十年たつ前というのはいつごろですか、生活保護。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それはやはり国民の努力と国の施策によるのでございます。だから、それはできるだけ早いときにいたしたい。少なくとも十年たって、全体の所得が倍になる——生活保護を受ける人が十年たって三十五年の倍の、東京の五人世帯で一万円の人が二万円になるようなことではいけません。それは十年たつ前にうんとふえるようにしなければならない。私は五年くらいで倍になることを期待しているのですが、これは一に国民の努力によって達成できることと考えております。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に重要なことを伺ったので、それでは生活保護費は、今後の予算の編成の過程において、必ず五年以内に倍になるくらいの生活保護の引き上げを行ないますか。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前提といたしまして、国民の努力によって国の経済があれすれば、五年まで待つことも要らぬじゃないでしょうか。来年度くらいまでにできればやったほうがいい。そういうことの気持は、私は従来のように、生活保護というものを、一番多いときは五、六%が一番多かったと思います。あるいは二、三%、こういうような状態であったのを一躍一八%、そうして五%ふやす、それをまた一三%ふやす——三十五年に比べて三十七年は四割ふえます。この気持は国民はわかっていただけると思います。それでは、なぜこういうことができたかといったら、それは高度国民経済成長の結果であります。あれがしみったれに、非常に臆病にしていったならばこんなにはできません。私は、これは高度成長の結果であると思います。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、三十六年度の自然増収二千億あるんですよ。それを三十八年度に繰り越すんでしょう。財源はうんとあるのです。そういう気持だったら、なぜ三十六年度に生活保護をもっと厚生省の要求したとおりに引き上げなかったのですか。財源はありますよ。国民の努力々々と言いますけれども、政府施策に待つところ大です。出す意思がなければ出ないんですよ。出す意思があれば出せるんでしょう。財源はないわけじゃないんです。二千億円も自然増収が三十六年度あるじゃありませんか。ですから、今の総理のお言葉は言いのがれですよ。財源はあるじゃないですか。実際に示されていないんですよ。言うことと行動が違いますよ。
  70. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財政政策というものは、やはりゆとりを持ち、長い目で見ていかなければならない。あなたが、今度の予算は非常に大型予算とかなんとか言われますが、大蔵大臣は、租税の自然増収千七百億円ばかりを翌年度に繰り越す、こういうふうにゆとりのある財政経済政策をとっているのであります。これは五年、十年のことを考えながらいろいろやるべきものだと思います。それは三十六年度におきましても剰余金はございました。しかし、剰余金があるから、すぐ翌年度使うということではなしに、いろいろまた、社会保障関係も生活保護ばかりではございません。ほかの点もあります。文教政策とかいろいろな関係がございますので、私は、その程度のゆとりはとっておき、三十七年、三十八年あるいは三十九年の施策考えていく、こう思っているのであります。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 財源というものは作るものなんです。非常に政治的なものですよ。ですから、出す意思がなければ、幾ら財源があっても予算に計上されません。この点は議論になりますから……。社会党がもっと力がついてくれば社会党がやりますから。
  72. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連、総理に。あなたのさっきの答弁の中で理解できない点があるので、ひとつ御説明、お教えいただきたいと思うのですがね。生活保護者が昨年より四割ふえたと胸を張って答弁されておりますが、これは社会保障政策の抜本的推進のもとに非常に保護基準を上げることによって、そうしてふえるのならば、それはそれなりに見方があると思うのです。しかし、日本の社会保障政策実態、保護基準等からいって、四割ふえたということは、それだけ所得倍増計画経済成長政策の結果、均衡が破れて、そこに経済のゆがみというものが大きく現われてきて、その結果として格差が広がってきた。その犠牲者といいますか、こぼれた方といいますか、そういう方々が対象人員の中に入ってきたという点にウエートを持って、私はこの四という数字は見るべきであると思うのですがね。そうなれば、その四割ふえたということをもって、そう胸を張って答弁されるのはむしろ逆ではないかと、私は理解できないのですが、あなたのお考えのほどをお示しいただきたい。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四割ふえたという前に、それは今までは、最高は、六、七%前後ふえたのが最高だった。二%とか三%くらいしかふえなかった。それを三十六年度におきましては、当初で一八%ふやした、こういうことを言っているのであります。そうして格差がひどくなったから、生活保護を受ける人が多くなったからと、こういう御質問ならば、数の点においてはそう多くなっておりません。かりに今の一万円から上へ上げますと、東京で一万二千円近くにしますと、一万二千円階級の人が保護階級にずうっと落ちてくるのじゃないか、保護対象が非常に数が多くなるのではないかということを一応考えておったのですが、数が非常にふえましたという統計はないようでございます。大体、数はあまりふえておりません。したがって、今まで受けている方々の分が三十五年度に比べて四割ふえた。しこうして、そのふえ方は、従来のときのように、一、二%とか四、五%、五、六%のふえ方じゃありません。急激にふえたと申し上げているのであります。そうして景気の非常によかったときには、やはり三十三年、三十四年、三十五年も相当所得は伸びている、そのときからいって、生活保護の対象人員はそうふえておりません。
  74. 加瀬完

    加瀬完君 関連。総理はただいま御説明の中で、低所得層には特別の救済あるいは優遇の方針を貫いた、こういう概要の御説明があったわけでございますが、たとえば減税方針の中にそういう点が現われているかどうか。たとえば所得年収十五万の者の間接税の影響を調べてみると、一二・五%が酒、一二・四%がたばこ、物品税に関する関係は二・四%、物品税についてはいろいろ減税方針を打ち出しましたけれども、問題の一番大きいうちの一つであるたばこの減税というもの、あるいはたばこの何といいますか、値下がりということについては、何ら努力を払っておらない。ですから、低所得層に対する重点施策というものは怠られているということがこの点からすれば言い得ると思う。  それから自治省大臣に伺いますが、あなたは先ほどいろいろ御説明されましたけれども、格差を今まで是正しておった一つの補完財源は、入場譲与税でありました。ところが、この入場譲与税というものがなくなりましたので、北海道は十億、その他でも少ないところでも一億五千万円以上ほど減収になっている。さらに、事業税が減収になる、遊興飲食税が減収になる、交付税は、当然これは自然増があればその地方団体に入るものですから、交付税でまかなう、こういう説明は当たりません。そうすると、補完財源であったものを全部取り去って、しかも、固有財源の減税を考えましては、一体貧弱団体はどういうことになりますか。貧弱団体は非常に減収になります。この点をどう考えるか、ひとつ。格差はますます大きくなるのではないか。  それからもう一つは、所得税を減税をして府県民税を引き上げたと言いますけれども、その引き上げ額が、今日年収十五万の者は一五〇%県民税がふえている。年収二千万の者は〇・七%減っておる、これは二段階の比例方式をとったからです。そうすると所得の大きい者には減税は厚く、所得の少ない者には減税の恩典がほとんどなくてむしろ増税の傾向を呈しておる。これでも政府方針が下に厚いと言い得るかどうか。それから地方税は第一課税方式というものをやめて本文方式にした。ここに茨城県の水戸市の試算がありますけれども、第一方式を本文方式に改めると三〇%の増税になる。しかもただし書きを許しております。ただし書きを許されておりますと、どういうことになりますかといいますと、月収二万一千円の者は本文方式ですと三百円のものが二千二百九十円になります。これは常陸太田市の例です、七六三%の増税です。四万八千円の者は一八〇%の増税、これも下のほうに非常に、本文方式を一本にしませんから、ただし書きを許しておりますから、下に税は過酷であります。所得税を減らしたところで、所得税のかからない者には地方税がうんとかかってくる。低所得層に優遇するとか、低所得層の救済に努力するという点は、少しも地方税に限っては現われておらない、こう思いますけれども、この点についてお答えをいただきたい。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たばこの問題からお答えします。たばこは、今まで直接税は毎年減税しておりましたが、間接税の減税はやっておりません。したがって、今回はそれらの均衡から間接税の減税に私どもは手をつけましたが、何から手をつけるかという問題で税制調査会でもずいぶん検討しましたが、たばこはここ数年間値上げはしておりませんし、価格の据え置きを続けておりますし、また諸外国のたばこに対する税と比べて日本はそう高くない。戦前の負担と比べても、そう大きい負担増にはなっていないというようなことから、それよりももっと緊急な物品税、入場税、そういうものに先に手をつけることがいいということで今回のような減税をやって、たばこの問題は次に検討する題目にしようということで今度は取り上げなかった次第でございます。
  76. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 地方のほうが割が悪いじゃないかというお問いのように存じますが、たとえばさっき申しました百三億の税率上の減税、府県分の減税百三億になっております。そのうちで東京都あたりが六十二億ぐらいの減税になっております。したがいまして、他の府県へ及ぼす影響というものは非常にこれは少なくなっておる、全体を相殺いたしまして。なお全体で千七百億程度の増税がございます。さらに交付税で八百億の増額がございます。その他、国の補助金の千何百億、これの配分計画は、それぞれ先ほど申し上げましたように、この税源で、税率の調整によって地方に及んでいく。さらに補助費あるいは交付税の配分につきましても地方に傾斜がいくものをやる。こういうようなことでそういった地方格差は解消していく。むろんこれで全部片がつくというわけのものじゃございません。相当程度今度の財政計画では直していっているということは、これは言えると思うのです。北海道のたとえば入場譲与税にしましても、これは住民税の所得税からの振りかえにおいて十分にこれは消化できるというふうに考えております。
  77. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加瀬君、なるべく簡単に願います。
  78. 加瀬完

    加瀬完君 財政計画では当然トータルを出したところで、決算期はまるきり違ったものが出ておるのは、大臣御承知のとおり。財政計画で百何十億余ろうとも、実際本文方針をとらないで、ただし書き方式をとれば、一銭もかからなかったところが、千七百円もかかるということになるわけです。県にしても、ふえてくる県民税の増分と、減ってくる入場譲与税、事業税、あるいは法人税、遊興飲食税、こういうものの差引を比べますと、減ってくる県が相当ありますよ。しかも、特に市町村はほとんどが本文方式一本にしませんから、ただし書きを用いています。したがいまして、ただし書きは、今言ったようにひどいのになりますと七倍ぐらいの金額を取る町村が出てくる。これでは低所得層に地方税は非常に重くかかってくる。どこにもそれをとめる根拠というものは、今度の国の方針にも地方の方針にも出ておらないじゃないか。こういうことが例年ではありますが、来年度の予算においても、地方財政計画においても言えるのじゃないか、この点をお聞きをしておる。
  79. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 今の住民税の関係につきましては、大蔵大臣が御答弁なさったと思います。(「あなたの担当だよ、大蔵大臣関係がないよ」と呼ぶ者あり)そこで今度は所得税と結びついた法案になっておりますから……、(「それは県民税」と呼ぶ者あり)いや、県民税につきましても……。そこで今のなににつきましては、所得税との関係におきまして増減を全部きめておりますから、事業税は三十八年度から百八十億の減税をやるつもりでおります。ただし書き云々の問題につきましては、これは税額控除、扶養控除というもので従来より負担のふえるということはないような形をとって、そういうように措置をいたしております。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点はまた実際に税額を計算してみますと、増税になる人もあるのです。これはまたあとで具体的に地方行政委員会、あるいは大蔵委員会等で質問いたします。  それから次に質問したいのですが、その前に総理にひとつ伺っておきたいのですが、総理は、経済のことは池田にまかせよということをたびたび言われたのですが、これから私質問する前に特に総理に伺っておきたいのですが、依然としてやはり経済のことは池田にまかせろという、そういうお気持でやっていかれるつもりですか。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済のみならず、政治の全般につきまして私は責任を持ってやっております。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その経済池田にまかせろという言葉は、これは総理であるから何でもできるという意味じゃないので、選挙の公約というものがあります。またむやみにできるのじゃなくて、憲法もあり、財政法もあり、予算というものも通る、それから政党の公約もあるわけです。まあ国民の意思というものを謙虚に聞き、また倍増計画につきましても各方面の意見があったのです、いろいろ。そういう意見も謙虚に聞いて、そうして経済のことは池田にまかせろという思い上がったような気持じゃなくて、やはりいい意見はいい意見として、それを謙虚に国民の声を聞いてやる、そういうお気持になぜなれないのですか。経済のことは池田にまかせろという言葉は、倍増政策失敗の少なくとも一つの大きな原因であったと私は思うのです。それは世論に聞いてごらんなさい。財界にしたってそういうことを言っている人もあるのです。この点、これからの質問にあたって、特にもう一度総理に伺っておきたいのです。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 議会政治、政党政治、民主主義のあれでございますから、万能ではもちろんございません。そういう前提もとに、そうしてまた民主政治でございまするから、国民の声を聞きながら運営をやっていこうと、こういう意味でございます。何も万能で、思ったことはみなやるのだ、そういうふうにおとりになることは、前提が違います。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあよく泳ぐ者はよくおぼれるといいますから、おぼれないように、よくその点は過去の失敗を反省をされましてやっていかれる必要があると思います。  それでは伺いますが、やはり三十七年度予算の編成の前提条件として、三十七年度の経済見通しを立てております。この見通しは変更をしておりませんかどうか。で、輸出は四十七億ドル、輸入四十八億ドル、総合収支において一億ドルの赤字、そうして総理は、大体本年は、本年秋ごろまでには国際収支均衡をとると言っておりますが、成長率は五・四%、これは変える必要はないわけですね。変えられないかどうか、このとおりに、この目標どおりに政策をやっていかれるつもりかどうか、この点伺います。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済の動向につきましては、経済閣僚間で常に会って、定期的には月末にずっと会ってやっております。私も努めてそれに参加いたしておりまするが、三十七年度経済運営の基本方針は変えません。これは絶対に変えないかというと、今のところ変えずにずっとやっておる状況でございます。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 経済企当庁長官に伺います、経済企画庁の見方、景気について。大体これから六、七月ごろまでは鉱工業生産は落ちていく、七月ごろを底にして上昇過程にいく、そういうやはり見方を変えておられませんか。
  87. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済のことは動いておりますので、むろん最初に立てました予想は相当慎重に立てたわけでありますが、予想を立てましたものを努力目標として、われわれは政策をそこに集中して、できるだけその線でやって参りたいと思いますが、いろいろ途中で検算をして参ることが私は必要だと思いますので、ときどき十分な検算をして、そうして努力目標を維持できるように政策を集中していきたい、こう考えております。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の見方は政府と逆なんですが、これから具体的に質問して参ります。そうして成長率五・四%の場合鉱工業生産は五・五%になっておりますけれども、これはいつをピークにして、そうして年率九%の率で下がっていくというわけですが、これは生産指数をもとにして五・五%にきめたその根拠、これを具体的にひとつ御説明願いたいと思います。
  89. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こまかい数字になりますから中野調整局長のほうから。
  90. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 今御質問の点は、先般お配りしてございます「昭和三十七年度の経済見通し」のほうに数字が載っておりますので、その数字を申し上げますと、三十六年度の実績見込みといたしまして、鉱工業生産は二八四・二、三十七年度は二九九・八ということで五・五%、これは今御指摘がありましたように、五、六月というか、六、七月といいますか、そのくらいまでは生産が落ちまして、それから年率一一、二%の程度で上昇する。これはそうなるというのではなしに、五・五はじくときの根拠としてはそういうふうな計算でやっております。ただいまのところ一月の生産が、御承知のように、われわれの予想よりもややまあ高いのじゃないか。これはもちろん通産省の言っておりますように、季節修正でいろいろ問題がございますが、大体十一月、十二月、一月くらいまでは高水準の横ばい、実態はそうではないかと思っております。二月から下がりますか、三月から下がりますか、だんだん調整策が浸透して参っております。現に、けさの新聞に出ておりましたように、消費者物価はようやく東京で先月に比して下がる、いろいろの面に幾分効果も出ておるように思いますが、幾分われわれの調整策、当初予想したものより少しずれておるということは確かに言える。それは今長官がお答えになったように、慎重に事態の推移を見て政策を実行しております。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっとそこにいて下さい。ピークをいつに見ており、指数は幾ら。
  92. 中野正一

    政府委員(中野正一君) ピークはわれわれは十一月がピークじゃないかというふうに見ておったのです。と言いますのは、これは数字のことでよく御承知かと思いますが、十一月が二九九・三、それに対してこれはもちろん季節修正後でございますが、十二月が二九六・七、これは確報でございますが、こういう数字になりまして、約一%下がったわけでございます。それが一月には大体われわれは少なくとも十一月がピークで横ばい程度と見ておったものが、これは季節修正のことを余り申し上げると議論が混乱するかと思いますが、大体横ばい程度、通産省の数字を見ますというと三%以上上がっておりますが、季節修正の問題がございますので、各産業界あたりの話をわれわれ聞いてみますと、大体横ばいというようなことで、その意味である程度調整の、生産についての数字はずれておるということは、これははっきり申し上げることができると思います。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十六年の十月−十二月の平均と、それから三十七年の一−三月、四−六月、七−九月、十−十二月、三十八年一−三月、これは五・五%の基礎になっていると思うのです。ですから、この鉱工業生産指数。
  94. 中野正一

    政府委員(中野正一君) これは一応やはりわれわれのほうで数字を出すものですから、やはりそのもとの数字というものは作っております。しかし、これは四半期別に生産の数字がどうなってどうなるというようなことを世間に発表することはかえってまずいじゃないか、まずい結果を与えるということで発表しないことにしております。ただ御承知と思いますが、昨年の十月ぐらいからの数字を見ますと、その前月に比べまして、生産が二四、五%アップ、二〇%アップ、それから一九・五%、これは一月の数字でございますが、そういうふうに相当の生産の伸びは明らかに鈍化をいたしておりますので、方向としては、先ほど申し上げたようなことでいくのじゃないか。ただし四半期別に国際収支がどうなるか、生産がどうなるかということは一応いろいろわれわれ事務レベルでは研究はしておりますが、ちょっとその数字を発表することは差し控えさしていただきたいと思います。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十一月をピークとして、その後年率九%で下がっていくということを予定して、それで鉱工業生産の五・五%をはじく、それを基礎にして五・四%の成長率前提として国際収支一億ドルの赤字というものを出してきているのですね。ところが十二月下がったけれども、一月は上がっているわけですね。それから二月も、これは電力消費等を考えればやはり横ばい、こう見られると思うのですが、そうなると、もうすでに、ピークで非常な相違が出てきているわけです。ピークで大体私の計算でも十七ポイントぐらいの相違が出てくるわけです。そうしますと、政府が言うように、今後年率九%の率でずっと下がっていくとしましても、すでにもうピークで違っているのですから、そうしますと、そのとおりに下がっていくとしても六ポイント違うのですね。これを鉱工業生産に見ますと二%違いますよ。こういうことを基礎にして六ポイント、二%違いますよ。二%違いますと、この輸入はふえてくると思う。成長率で七%以上になりますよ。五・四%じゃありません。政府の言うとおりにして、言うとおりに下がるとして、もし今後横ばいでいってごらんなさい。七%どころじゃありません。八%以上になるです。そうなったら輸入はもっとうんとふえます。私の計算では、これまで成長率が七、八%のときは、原料及び燃料の輸入は横ばいです。横ばいとしますと、三十七年度は三十六年度に対して原料及び燃料は二億五千万ドル減ることになっているのでしょう。減ることになっている。横ばいですと、それだけ輸入はふえます。そうすると国際収支赤字は三億五千万ドルぐらいになります。それは政府の言うとおりに今後九%のダウンをするとしてそうなるのです。もし横ばいが続くとなったら、三億や四億の赤字じゃ済みませんよ。私はもっと非常な大きな赤字が出てくると思う。ちょうど三十六年度の状態を繰り返すような可能性があると思うのですが、そうしますると、政府の見方も、今後の景気の見方が違うじゃありませんか。上期はダウンをするんじゃなく、かりにダウンをしても、もう最初の予想と違うのですから、下期において非常な引き締め政策をとらなければ、国際収支も一億ドルの赤字にとどめられないと思うのです。そうなった場合、非常な金融引き締め政策か、あるいは予算の面で大型予算を組んだけれども、また繰り延べ等の緊縮政策をとらざるを得なくなるのではないか。この点政府の見方と全く私は違うんでありますが、この点どういうふうにお考えになりますか。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど調整局長の申しましたように、十一月をピークとして逐次下がっていく、あるいは横ばいになっていくというようなふうに見ておりましたところが、ただいま申し上げましたように、季節修正の問題がございますけれども、三・八、一月に上がりましたことは、われわれ実は予想と違ってやや大きい行き方ではないかと思うので、ここで、したがいまして、相当のやはり警戒をして参らなければならぬ。従来の引き締め政策も、何かゆるんだような気持になってはいけないのではないか。そうして十分に従来の政策を堅持しながら参っていく。しかし、なおそれでもというようなことが起こってはたいへんでございますから、われわれとしても十分二、三月の状況を検算しながら、努力目標が達成できるようにやって参らなければならぬので、一度作りました見通しができるだけできますようにということは、つまりあらゆる政策がそれに随行して参らなければならぬ。何となくただいま気がゆるんだような感じもございまするので、私としてはできるだけ引き締めの基調を続けて、そうして気のゆるまないようにして参りますが、その後の状況を見ながら監視していくことになろうと思います。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 かりに、今後引き締め政策を続けるとしても、もうすでにピークのところが違っているのですから、政府の予想するように、今までの予想したとおりに生産を落とすとしても、弔う相違が出てくるのですよ、大きな。もし政府の当初の計画どおりやるとすれば、今後うんと落とさなければいけませんよ。そうしたら、うんと引き締め政策をとらなければならないでしょう。その点はどうなんですか。
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、現在の政策がやっぱし十分に浸透されなければ、まず第一にはならぬと思うのでありまして、今急に新しい引き締め政策をやる。何となく安易感がご一ざいます。そういうものを引き締めて、従来どおりのことをまず第一にやっていく。そうして、それでもなおいろいろわれわれの予想と違うような状況が現出するようでございますれば、その点は考えて参らなければならぬ。そういう意味においてやはり二、三月の状況を見て、十分検算——先ほど来たびたび申し上げますように、検算をしながら参る必要があろうというふうに考えております。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この生産が政府の予想したものよりも落ちない原因を、どういうようにごらんになっておりますか。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ何か若干の安易感もあることだと思います。また、金融の引き締めがございますと、業者というものはとかく金の面からいいまして、原材料で持ちますよりも、製品に早くして、そうして製品ならば換金の方法がございます。そういう流れも一面にはあろうと思います。そういうような諸般のいろいろな状況が重なり合いまして、ある意味から言えば、安易感と申しますか、そういうものもあり、あるいは金融問題の解決もございましょうし、そういうものが重なって、なお生産が思ったように落ちないのではないかと思いますが、しかし、頭をついて、そうして横ばい傾向になりつつあることは見られることではないかと思うのであります。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は政府の見方が少し甘いと思うのですね。この根本原因は、財政、金融政策の間違いにあると思う。それはいろいろ業者が自由化に備えてマーケットの視野を拡大しようという競争もあるでしょう。その他生産を落とすと、銀行から金を借りるのに困る。あるいは非常に設備を拡大をしたから落としたくないというのもあるでしょうが、根本は財政、金融政策が間違いだと思うのです。財政、金融政策両方を総合してですよ。  そこで伺いたいのですが、最近の物価騰貴は私はインフレによるものだと思うのですが、企画庁長官はどうお考えですか。
  102. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済が急激に成長いたしましたので、いろいろなひずみが出ております。そのひずみの一つが貿易バランスの面、物価の面にも表われてきておるのでありまして、そういう意味において物価騰貴が起こってきた。そこでその形がいいのかどうかということでありますけれども、まだ今までの過程ですぐにインフレとまで私は断定はできない。しかし放置しておきますと、そういう勢いが助長されれば、インフレ的な傾向にならざるを得ない。特に御指摘のようなインフレの方向に急激に進んではたいへんだと、こういうふうに思って、物価政策というものを十分に考えなければならぬというふうに思っているのであります。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点重大ですから総理にも伺いたいのですが、今も土地なんか非常に上がっている、べらぼうに上がっております。あるいはまた生鮮食料品あるいは消費者物価が上がっておりますが、こういう事態は、財政、金融政策を含めて、これはインフレ状態ではないかと、こう思うのですが、そうでないと、これは物価対策だと言ったって非常に甘いと思う。最近経済企画庁を中心に、いろいろ物価対策が発表されておりますが、あれは物価対策じゃありません、価格対策である。物価政策の根本は、財政、金融政策にあると思うのです。総合的な財政、金融政策を立てなければ、個々の価格体系を立てられても、物価の騰貴は押えられないと思う。この点総理はどうですか。今の現状はインフレですし、三十七年度予算は大型予算で、やはりインフレは非常にひどくなるし、あるいはまた今の日銀の金融引き締め政策を続けていったならばさらにインフレはひどくなると思うのです。この点どうなんですか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) インフレがひどくなるということになると、今がインフレとお考えになっている。私はそういうふうには考えておりません。成長過程における一つ状態だと思う。インフレというものはそういうものじゃない。どちらかといったらデフレになる場合もあるということを言われておるのであります。私は今インフレだとかデフレだとかいう刻印を押す状態ではないと思うのであります。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう認識ですから、非常に私は間違いだと思うのです。私は今の状態信用インフレの段階だと思う。それでわざわざ私は日銀総裁にお忙しいところでしたが来ていただいたわけです。最近の日銀——これは政策委員としても責任があると思うのですが、最近の日銀の貸し出しの増加の状況は、昨年に比べてものすごい増加です。最近は一兆円をこえております。こういう状態信用インフレをもたらしているのではないか、そういう点が一つと、それから最近市中銀行の内容が非常に悪化していると思うのです。たとえば市中銀行の外部負債が非常にふえてきているのですね。昨年十一月を現在にしまして、日銀借入金一兆六百二十億、金融機関の借り入れ千三百五十二億、コール・マネー二千八百五億、それに政府関係の預金あるいは公金預金三千二百七十三億、これを入れまして一兆八千五十億、これに対して担保として国債が三百四十八億、地方債が九百十六億、金融債が三千七百三十九億、公社債が千四百五十七億、普通社債が二千七百十五億、合計九千百七十五億、担保は外部負債の半分ぐらいしかないのですね。それから最近土地を担保とする貸し出しが非常にふえてきているのですね。私もここに統計を持っておりますが、一兆円以上になってきて、非常にふえてきております。土地がうんと値上がりする、それを担保にして貸し出しする、土地の売買が行なわれる、非常に値段が上がる、それを担保にして貸し出す——設備が行き過ぎた根本の原因は、日本銀行の貸し出しが放漫であったからではないんでしょうか、私は根本はここにあると思う。総理は、設備の行き過ぎは国民の非常な旺盛な意欲によったものだと言いますけれども、設備拡張の意欲があっても、金融をつけなければ拡張できないんであります。非常な金融インフレですよ。信用インフレです。そこで、最近の銀行の預金と貸出率、これについても日銀総裁において御説明願いたいと思うのです。私は最近の状態信用インフレだと思うのです。したがって、日銀のこの金融政策というものは、私は非常に重大な問題であると思うのでありますが、この点総裁に伺いたい。ことに担保につきましては、最近では担保のあれが非常に劣悪化しつつあるのじゃないか、こういうふうに考えますが、この点いかがでしよう。
  106. 山際正道

    参考人(山際正道君) お答えをいたします。  ただいま木村委員から、最近における状況信用インフレとも称すべき段階に入っていると思うが、その原因は日本銀行の貸し出しが意外に巨大に増加したせいではないかというような御質問かと思うのです。この点につきましては、日本銀行の貸し出しが非常に増加いたしておりますことは、御指摘のとおりであります。また、これに対して、私どもといたしましては極力それを圧縮するように努力いたしておりますことも、御存じのとおりかと思います。ただ、一面においてやはり経済の拡大に伴いますところの所要通貨の増大に対して必要な通貨は供給をする、同時にまた一面においては信用の秩序は維持しなきゃならぬという使命を負わされております銀行といたしましては、最小限度にしぼりながらも、その両点を維持するに足るだけの通貨供給をやらざるを得ぬ立場でございます。いわば、いろいろな経済発展の、何と申しますか、結果がこの貸し出しに現われてきておるような気がいたすのでございまして、そのために、市中その他からは非常に金融の逼迫を訴えられまして、私どもはしばしば追及を受けるのでございまするけれども、まあこれだけあればとにかく信用の秩序を維持しながら経済が運行し得るという最小限度をしぼりまして目下やっておるところでございます。で、最近の企業家の意欲というものが非常にこれは旺盛でございまして、これにはいろいろな原因があろうと思います。たとえばシェアーの問題もございましょうし、合理化その他技術革新が日ごとに進行いたしております。あるいはまた、やがては貿易自由化に対処する方策というものもとらねばならない。方策としては、すぐ増産をしてコストを下げるということで、設備の必要があるというようなさまざまな計算から、結局資金需要として現われて参るわけでございます。これに対しまして、今申し上げましたように、最小限度必要と思われるところに従いまして実は資金の供給をいたしておりますので、それでもなお現状は非常に窮迫をいたしておりまするので、いろいろと好ましからざる現象も生ずることがあり得るわけでございます。しかし、これはおっしゃるとおり、現在の経済体制のもとにおきましては、最小限度やむを得ざる点と思いまして、極力その方針で今後も進んでいきたい。先ほど経済企画庁長官が、金融引き締め態度を堅持すると仰せられましたが、同じような意味合いでございまするが、できるだけかたくしぼって、それから生ずる悪い結果を見ませんように極力いたしたいと考えております。  また、市中銀行の外部負債が非常に増加しているということも、これまた御指摘のとおりでございまして、この点私も非常に残念に存じておりますが、大体今の経済機構の現状は、御承知のとおり、系列産業などと申しまして、金融機関と産業との関係が非常に密着をいたしております。で、結局、引き締めも程度によりまするが、ぎりぎりまで参りまして、産業が行き詰まるか、銀行が行き詰まるかというところで、泣く泣く今申し上げましたような前提だけは達成するような最小限度の通貨は供給するということの現われが今日参っておるわけでございます。まあそれらの要求の中には、自由化に対処する問題であるとか、産業合理化に対処する道であるとか、いろいろ要求がありましたけれども、大体ここへ来て、今はちょっと企業家の心理状態は私は気迷い状態と見ております。気迷い状態というのは、判断がつかぬということであります。ここでしっかり前途の見通しを立てまして、この辺でそういう拡張意欲はストップするように、さもなければオーバー・プロダクションになってしまうというような点をはっきりさせまして、これは三十七年度の事業計画といたしまして安全な道をとらせたいと考えております。で、方策として一番有効に考えられておりますのは、御承知の産業合理化審議会であります。昨年もそれを催しまして、ただ産業界の事業計画そのものと資金計画がマッチしないままに時を経過いたしましたけれども、今度こそはそういうことのないように、これは過般の経済閣僚懇談会に私が出席をいたしまして、よく通産大臣企画庁長官にお願いをいたしましたが、今度こそは事業計画と資金計画とがぴちっと裏づけのできるように計画をお立て願いたいということを申し上げまして、今せっかくその作業は進行いたしております。要するに、この資金の点につきましては、需給が均衡していないわけなんであります。要するに、需要を減らすか、供給をふやすか、その道しかございません。その両方について、どっちかと申しますと、私は今まで需要のほうが強過ぎるという気がいたしておりましたけれども、両者にわたって適当な方策を講じまして、需給をバランスしたというところでもって新しい産業年度が始まるということに持っていきたいというふうに考えております。そういう次第で、日本銀行といたしましても、担保としてとりますものにつきましては、これは発券の準備でございまするから、できるだけ厳正に査定をいたしまして、不動産担保の貸し出しが市中において非常にふえているということを仰せられましたが、日本銀行の発券準備としてとります場合におきましては、十分にそれは審査をいたしまして、その本旨にたがわぬようにいたしておるような次第でございます。  なお、ここで一つ御了解を願わなければならぬことは、最近におきまして、資金需給のルートがよほど変わって参りました。資金の需要が集まるのは、都市銀行その他市中銀行でございます。その供給が割合に豊富に集まりますのは、地方銀行、信用組合、その他の農村団体というようなふうでございますので、この資金源と資金の需要者とどうパイプで結びつけるかということが、新しく起こりつつある問題でございます。現在はコール方式でだいぶまかなわれておりますが、はたしてそれだけでいいのかどうか、これらの点につきましては、今後の改善問題として、私どもは真剣に検討を重ねておる次第でございます。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総裁にもう一つ伺いたいのですが、必要なる資金は供給しなければならぬというのは、何が必要か、その限界がやはり問題であります。日銀券の発行の限度というものを三十七年度は幾らに置いておるか。それをきめても、いつも超過すると思う。超過すれば、大蔵大臣が認可すればいい。そうすれば、限界をどこに置くかということが問題です。  それからもう一つは、笠信太郎氏の「花見酒の経済」、これは総裁もよくお読みだろうと思うけれども、土地がものすごく高くなるのです。そうすると、それを担保にして金融していく。ますます膨張するのですよ。それを必要資金として供給すれば、信用インフレになるでしょう。その点をどうお考えか。最近の土地の問題、土地を担保とする貸付、それから不換銀行券と不換政府紙幣との相違はどこにあると思いますか、総裁この点伺いたい。
  108. 山際正道

    参考人(山際正道君) お尋ねの第一点の不動産関係に対する金融問題、この点は、私どもは、御承知のように、銀行に対する資金の貸し出しをいたしております。直接には、不動産担保の関係は銀行の窓口で起こっておりまして、それが日本銀行へ持ち込まれるということは、今申しましたような担保厳選主義をとっておりまして、流動性のないものは排除することにいたしております。比較的少いと考えておりますが、いずれにいたしましても、必要最小限度の通貨量をどう決定するかという問題は、かつて通貨発行審議会というものがございまして、いろいろ学者方もお集まりになって、衆知を集めて検討されましたが、非常に変化に富んだ経済界において、取引の様相の変わる場合において、それを金額で固定することは非常にむずかしいという結論で、今は大蔵大臣の認可で、その範囲で供給をするということにいたしております。ただ、そのぎりぎりの線はどこにあるかと申しますと、今、実際はもう需要超過でございます。御承知のとおり、需要超過、それを供給しなければ銀行が倒れるか、企業が倒れるかというようなぎりぎりのところまで追い詰められて実はやっております。まあ、企業も銀行も、それは倒れてもいいじゃないかということも考えられるかもしれませんけれども、信用維持の、つまり信用秩序を阻害しないという点においては、どうしてもそれらのものに対しては将来のことはいろいろするといたしましても、当面持ち込まれた手形勘定のしりというものを見ざるを得ない立場に追い込まれているというのが実情でございまして、さらにさかのぼりまして、今申しました産業計画に修正を加えて資金の需要自体を減していく、一面においては消費の抑制その他によりまして、その面からする需要を減していく、一面においては資金に対してできるだけの優遇なり勉強をいたしまして、その修正に努力をする。需給相待っていくということ以外に、数量的にこれを決定するということは全体の円滑なる金融流動性を保つ上において、なかなかこれは困難だと思っておるのでございます。以上、そのような気持で現在運営をいたしております。もう一つは……。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ、不換銀行券と……。
  110. 山際正道

    参考人(山際正道君) 第二点の不換紙幣と銀行券との関係でございますが、要するに、これは現在の通貨体制は管理通貨体制になっております。要するに、これが為替管理ではございまするけれども、外貨にかえ得るかどうかということ——まあ不換紙幣ではないということになっております。それからまた物価が安定しておって、常に大体きまった価値を保持しているということが、やはり国内的に申しましても不換紙幣ではないだろうというふうに考えております。で、物価関係国際収支関係が、つまり不換紙幣になるのか、あるいはりっぱな銀行券として通用するのかという境目ということで、私どもは最も関心を寄せておる問題でございます。で、私は現在のところでは為替の管理もされておりまするし、発行されておる通貨に対する兌換性については疑いを持っておりませんし、何年となく貯蓄奨励を呼びかけまして、巨大なる資金の蓄積を要求いたしておりますものといたしまして、物価が騰貴した結果、その購買力が減退する、銀行券の価値が減少するということは私どもとしても絶対に避けなければならないところであり、これはもちろん政府施策によってよくなることが多いのでございますので、よく御連絡をし、お願いいたしまして、対内価値の保持ということについては十分に気をつけて参りたい。かような考え方を持っております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま日銀総裁は、対内価値が下がることを防ぐのに十分意を用いていると言われましたが、現に対内価値は下がってきているのですよ。土地の価格をごらんなさい。三十六年一カ年で四割二分も上がっているのですよ。市街地においては四割二分、しかもこの土地不動産担保の貸付は昭和二十七年は二千六百五十七億だった。ところが三十五年九月、一兆二千七百八十四億ですね。ものすごい不動産担保貸し出しになっておるのですが、これがひいて、日銀は不動産担保貸付はやりませんけれども、市中銀行は、これは間接にそちらのほうに貸し出せば、これは日銀の貸し出しに仰ぐと思うのです。間接的に影響があると思う。しかも日銀からの借り入れば昭和三十年は八百五十九億ですよ。ところが三十六年十二月は一兆二千四百四十七億、十五倍だ。しかもすでに土地価格はものすごく上がっています。しかも生鮮食料品等消費者物価は上がっております。通貨価値は消費者物価においてこれははかるべきものだと思うのです。もう減価しておるのです。ですから、この点について私はインフレである。このままの状態でいきましたら適正通貨量といいましても、需要があればどんどんふやしていく。それともう一つ伺いたい。政府は、信用インフレによって国民所得がふえますね。生産を拡張して、そうして政府の自然増収が非常に多くなるわけです。そうしてその自然増収が多くなると、税金を取り過ぎて引き揚げ超過になるから、日銀の貸し出しをふやして調整しているでしょう。そうすると、また貸し出し超過になるわけです。信用が膨張します。そうしてまた国民所得がふえて自然増収がふえます。税金を取り過ぎると日銀がしりをぬぐう。こういう悪循環がありはしませんか。そういうことになれば結局これはインフレになってくる。ですから、今の状態では貨幣価値が下がらないといっても下がっておりますよ。消費者物価において見るべきでしょう。土地の値段をごらんなさい。ものすごい減価です。通貨の面から言いますれば非常な減価ですよ。この点は私は通貨価値の維持の責任をとられておる日銀総裁としては、重大な責任があると思うのですよ。いかがですか。
  112. 山際正道

    参考人(山際正道君) お尋ねの第一点の政府の引き揚げ超過ということが非常に日銀貸し出しに関連があるではないかということ、これはその通りだと思います。これは国庫制度を何とかそういうことにならないように、大体財政の揚げ超と支払いをなるべく均分させたい。また、それが直ちに金融市場を圧迫して、日銀が銀行に貸し出しをしなければならないということのないように改善策を今研究しておりますが、何分にも数年間にわたる経済界の好況で、国庫のほうは非常な増収でございます。その結果として、あるいは自然増収、減税等の問題が起こっていると思いますが、そのしりが日本銀行にくることは、実は私どもとして非常に困ります。なるべく将来そういうことが減りますように、制度をひとつ改めていただきたいと思っております。  それからまた、土地その他の問題につきましては、これは私どもの問題と申しますよりは、物価政策の根本義だと思います。政府のほうでは、御承知のように今物価対策を至急立てられつつあられまして、私もしばしばこの会議に呼ばれておりますけれども、ひとつ何とかいい方策が講じられまして、物価の騰貴を防ぐ、いわゆる、われわれの使命とする通貨の対内価値の維持ということに万全を期したいということで努力いたしております。今まで御指摘のようなことが起こっておりますが、インフレとは、循環的には考えておりませんけれども、非常に困ったことでございます。政府物価対策として、十分な措置が講ぜられまして、通貨の安全を期したいと思います。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は政府紙幣と銀行券の違いは、銀行券の場合は貸し付けに使われるから還流がある。政府紙幣は還流がない。支払いっぱなし、この違いが私は一番大きいと思う。日本銀行が貸し出しを非常にふやしていく、それが一兆何千億の貸し出しが恒常化した場合、こういう状態が恒常化してくれば、不換政府紙幣と同じような影響を及ぼしてくるのではないかと思う。還流がなくなるということですね。銀行券の特色は貸し出したものは還ってくるということです。ところが不換政府紙幣の場合は出しっぱなしですね。還流がない。税金でとる場合には還流がありますけれども。だから、政府紙幣と銀行券の違いは私はここにあると思うのですよ。ところが今のような日銀の貸し出しの状態では、非常に貸し出しが多くなって恒常化してくる、還流してこない。還流しないということになれば同じことになりますから、相当私は不換紙幣にインフレのような影響が出てくるし、今出つつあると思う。ただ卸売物価が上がらないのは輸入をふやしているからで、そのかわりに外貨危機という問題で調整しているわけです。輸入のきかない土地は、輸入がきかないから暴騰しているわけです。また、輸入のきかない程度に応じて物価が上がっております。輸入のきくものは物を輸入するから物価が上がってないのです。そのかわりものすごい外貨危機です。ですから、卸売物価は上がらないからインフレでないとも言えないと思うのです。土地の騰貴を見れば明かにインフレなんです。これは代替がきかないわけです。増産もできないし、輸入もできないからものすごく上がっているでしょう。この点私は注意しないと、今後倍増政策をやっていく、どんどん土地を買うでしょう。設備拡張、そうすると土地が値上がりをする、担保になる、金融をする、そうして国民所得がふえる。そして政府は自然増収をうんと吸い上げる、その穴を日銀貸し出しで埋めていく、そうすれば、ますますインフレが高進していくと思うのです。もちろん終戦直後のように孤立経済じゃございませんから、終戦直後のようなああいうようなインフレは起こりっこありません。しかしながら、信用インフレ的なものは徐々に起こってきておるし、最近の物価騰貴は私は軽視できないと思う。私は政府に伺いたい。政府物価対策、ことに土地対策をどうするのか、これは緊急な問題ですよ。土地の問題を放棄して物価対策はありません。土地対策を含めた物価対策をどうするか。  それからもう一つ大蔵大臣に伺いたいのですが、大蔵大臣は三十七年度予算は健全財政であると言っておられます。その根拠を示してもらいたい。どうして健全財政ですか、私はインフレ財政だと思うのです。ただ、大型であるからそれだけでインフレといっているのじゃないのです。四千七百二十七億の自然増収というものは、前年度よりよけい上げておりますね。四千七百二十七億、これは信用インフレによって増大した国民所得もととしておる自然増収なんです。それが税金をもとにして大型予算を組んでおるのですから、この基本インフレ的な財源をもとにしているわけなんです。全部とはいいませんが、そういう面があるわけです。ですから、インフレの問題を軽視したのでは、物価対策も、個々の価格対策を立てたって押さえることはできないと思うのです。それこそ総理の言う言いぐさじゃございませんが、長期的に見て、私が長期的に見てますます問題がたいへんだというのは、この点を言っておるのです。もうすでに私は来年下期はさっき話したように問題が起こってくると思う。この点非常に重大でございますから、物価対策財政金融政策を総合して、インフレにならないように運営していかなければ、物価対策といったって、個々の対策を立てても意味がないと思う。この点筋が一つ抜けているのじゃないか、政府は。この点、企画庁長官大蔵大臣に伺いたい。
  114. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村君にちょっと申し上げますが、あなたの御発言中、時間が切れまして、もう二、三分経過しておりますから、御注意までに申し上げます。
  115. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価対策のうちで土地問題というのは非常に重要でございまして、実は私ども企画庁としましても、昨年の秋以来、非常な急激な最近の土地高騰という問題につきまして心配をいたしております。したがって、これに対する対策というものを立てなければいかぬ。ところが、ただ単に宅地の造成であるとか、あるいは工場用地、埋立地等をやるとかいうことでは、これはなかなか日本の土地問題というもの、今日の急騰している土地問題というものは解決しないのじゃないか。そしてやはり投機的な対象になっておる形を何らか押えていく方法を考えて参らなければいかぬと思っております。現在、企画庁としましても、この問題について十分な基礎的な調査をいたしまして、そうして問題点をはっきりつかみまして、将来審議会等で基本的な対策を立てていかないと、長期にわたってこれは問題が起こるのじゃないかと思うのであります。そういうような今準備をしている段階でございますから、物価対策につきましては、金融財政の引き締めということが基調になりますことは当然でありますから、その点は大蔵大臣からもお答えいたすかもしれませんが、私はそういうように考えております。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 見込み得る普通財源を歳入していくということ、それからさらに初年度一千億円に及ぶ大幅な減税をしているということ、この歳入の中における支出を予定した予算でございますので、私はこの予算は不健全ではないと思っております。それからもう一つ国民経済計算の中におきまして、私どもがこの予算前提とした政府のサービス、購入というものを入れ込んで、今年の総生産の伸びを五・四%という予想を立てているのでございます。この予算は、この経済予想の中にこの数字は織り込んであるものということでございますから、経済の伸びとこの予算とは無関係ではございません。問題は、国民消費がどうなるか、輸出入がどうなるか、在庫投資がもし見込みが狂うとすれば、どういうふうに狂ってくるか、設備投資がどうなるか、他の国民経済計算上の要素が狂ってくるという事態には、この予算自体に対する執行についての弾力性という問題は考えなければならぬと思いますが、この予算自体は私は決して不健全な予算であるとは思っておりません。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が終わりましたが、ただ最後に、総理に、財政引き揚げ超過を金融で埋めるということがインフレの悪循環になっている。今私が質問いたしました信用インフレという問題、そういう問題を含めて、それから土地対策、これはもうほんとうに重大な問題である、長期的に見て。最後に総理の所見を伺いまして私の質問はこれで終わりたいと思います。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 土地の問題につきましては、企画庁長官からお答えをしたとおりであります。われわれといたしましても少し実態を調べてみたい。一般の土地の売買が、対象がどういうふうになっているか、私は相当会社の寮その他があれしているのじゃないかと思います。それから担保の一兆円というのも少し調べてみたいと思います。この問題につきましては、かなり厄介な問題でございますから、ぜひ何とか措置しなければならぬというので検討したいと思います。  それから先ほど日銀総裁その他にお聞きになりましたが、お話のとおり、最近は日銀の貸付は一兆三千億円をこえている、去年の今ごろが五千五百億、本年は七千億円ばかりふえているのでございます。この原因を見ますと、大体過去三年間くらいの日本の金融状況は輸出超過、いわゆる外貨のたまっていくのにつれまして、昭和三十五年におきましては二千五百億の散布超過、その前は千五百億、その前は千九百億、大体三年間で六千億の散布超過、三十五年は二千五百億の散布超過でございます。三十六年はどうかと申しますと、私は、二千五百億の散布超過が、反対に二千億の引き揚げ超過になる。そうすると、合わせて四千五百億違うわけですね、四千五百億入れ出しが、外為勘定で。そうして租税収入はお話しのとおり相当上がるということでございますのと、もう一つは、今七千億円ふえたということ、外為で差し引きが四千五百億、租税収入の引き揚げ超過、こういうことから考えて、そして一方では経済の伸び、生産の伸びということがあれば、今の問題は、一兆三千億は、私は安心はしておりませんが、非常に不健全なものともいえない。で、問題はその原因を調べて、これが還流することを考え、ちょうど昭和二十八年から二十九年にかけまして還流しております。昭和二十八年、二十九年のあの輸入超過に相当出ておりましたが、三十年はどうです。三十年は三百億前後の貸し出しです。これは還流の証拠です。三十年はそうなっている。あなたも記憶があると思います。貸し出しが非常に多く、三百億台になったために、そして銀行がどんどん貸し出しをまた勧誘し始めたのはその例なんであります。私は、問題は、これが適正に還流するということに努めなければならない。それには、輸出増加によって外為の四千五百億の入り来たりが少なくなる、そして租税収入の今の国庫金の運用が、国庫の制度をどうするかという問題がございますけれども、そういう問題を変えられなければ、財政運用によりまして、引き揚げ部分を何とか使う道を講ずる。今のように、外為とか、あるいは食管だけに使うというのじゃなくて、ほかの方法はないかということを、国庫制度の改正とあわせて考えなければならぬ。私は、一兆三千億の貸し出しはとても多いと言っておりますが、原因はそこにある。将来は還流ということがある。還流は、やはり輸出の増加、あるいは設備投資の行き過ぎをあれする、あるいは動産担保貸付について特に目を光らせるとか、いろいろな方法があると思うのでありまして、高度経済成長の場合におきましては、こういうことは避けたいのでございまするが、やはりある程度の現象としてはやむを得ない、早くこれを解消するように努力することによって健全な歩みを続けていきたいと考えておるのであります。私は、今の財政というのは、きのうも山田さんの質問に答えましたが、財政の規模は小なることがいいんだということですが、税金は軽いほうがよろしい、財政の規模は、現代の福祉国家建設の場合におきまして、昔のように、財政規模が小さければいいんだというような考え方は、私はいかがなものかと考えるのであります。
  119. 羽生三七

    羽生三七君 関連。総理に一問だけ簡単に質問いたします。今の木村さんの御質問に関連してですが、今、日本経済の基調がインフレであるかデフレであるかという根本議論は私はいたしません。ただ、インフレになれば物価はもちろん上がります。デフレになれば物価は下がります。これは今までの経済の原則でありますが、私は、政府の弁護をするわけではないが、つい数カ月前までは、今の物価の値上がりは、公共部門、あるいは若干のサービス部門におけるやむを得ざる騰貴で、経済の基調としてのインフレーションではあるまいと言って、むしろ政府の弁護をするようなことを今まで言ってきたのです。ところが、最近の情勢を見ておると、必ずしも今申し上げましたサービス部門、若干の公共部門等だけでなしに、全般的に波及する趨勢になっております。ですから、たとえばオーバー・プロダクションになった場合でも、輸出がこれに伴えばもちろん問題はありません。しかし、総理は、木村さんはインフレと言われるが、デフレの様相もあると言われたけれども、かりに、もしデフレになった場合でも、物価が下がり、あるいは、ある部門において引き締め的な基調になるのは限られた部門であります。今問題になっている消費者に影響のある、家庭生活に影響のあるこれについての物価については、もし、かりにデフレ的な傾向が出てきたとしても、全然影響ありません。それじゃサービス部門を、急に俸給を値下げして物価の値下げに影響するようなことができるかといえば、これもできない。だから、私はこれを見ておると、非常な若干の限られた部門におけるインフレ——経済の基調としてのインフレーションと関係のない、単なる派生的現象と見るには、あまりにもこの問題が大きい。その波及するところは漸次拡大しております。ですから、真剣にこの問題を検討しないと、それが信用インフレーションであるか、あるいは経済の基調としてのインフレーションであるか等々の論議は別としても、国民経済生活に与える影響はすこぶる甚大と思いますので、この物価対策についてはいろいろ政府施策を練っておられるのでありますけれども、もっと真剣に根本的なひとつ検討を加えられんことを特に要望して、所見があれば総理の見解を承りたい。
  120. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 率直に申しまして、インフレ論をする人もありますし、あるいはデフレを心配する議論もありますが、私は心配なのは、もしインフレとすればコスト・インフレ。問題は、卸売価格は、これは下降の傾向にありますが、日本の消費というものが、生産の増強にマッチするほどの消費の増強が行なわれたのであります、昨年におきまして。これは三十四年とか三十五年は、生産はあのとおり伸びましたが、国民の消費というものは、生産の伸びの半分から六、七割程度のものであったのであります。しかして昨年度におきましては——昨年度と申しますと、三十六年度におきましては、生産の伸びに匹敵するような、国民所得の伸びに匹敵するような消費が行なわれたのであります。その原因はどこにあるか、これは叱られるかもわかりませんが、給料の急激な増加が一つの原因と思います。そして、やっぱり消費ムードの起こったのも一つの原因。問題は、私はここにある、この点が心配なんです。私は、個人消費の伸びることは前から言っております。個人消費の伸びることが生産の増強のもとになるのだ。しかし、伸び過ぎると、これがコスト・インフレになる。そして賃金がどんどん上がれば、片一方の生産増加によるコスト・ダウンということも行なわれる。しかして、それがまた輸出にも影響するということになる。私は、今のところ気をつけなければならぬのはその点と考えておるのであります。そこで、それをやるのには、やはり消費者物価が上がるのをできるだけ押えるようにしなければならぬ、こういうのが私の今の考えでございます。全体的な経済インフレとか何とかということまでは私は言っていないと思います。心配は、いわゆるコスト・インフレということにつきましては、十分の注意を要するということであります。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一分だけやります。
  122. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) きわめて簡単にお願いします。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今、総理がああいう答弁をしたから、私は終わりにしたいと思ったのですが、コスト・インフレということを心配して言われたのですが、非常に需要が伸びたのは、なるほど三十六年度において需要は伸びましたけれども、これは投資需要ですよ、投資需要が中心ですよ。個人消費のこの需要は、むしろ総体的に下がっているのでしょう。三十六年度は五二・三%ですよ。ずっと下がって、投資需要がうんとふえている。ですから投資インフレですよ。インフレを御心配になればこれが問題であって、コスト・インフレを口実に、賃金の抑制とか、国民生活の抑制によって国際収支を改善しようということは筋違いでしょう。そういうほうに持っていこうとする危険が非常にあるのです、今の総理の見解には。これは間違いです。  最後に私はこのことを申し上げまして終わります。
  124. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) それは答弁を要求しているのではないのですね。答弁要求しているのですか。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ、総理答弁要求しているのです。
  126. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御批判は御批判として受けますが、私はそういう考えで言っているということを申し上げておきます。
  127. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村禧八郎君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  128. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、千田正君。(拍手)
  129. 千田正

    ○千田正君 今まで同僚木村君の非常にいい御質問がありましたが、私は角度を変えまして、別な経済外交その他についてお尋ねしたいと思います。  まず最初に伺いたいのは、国会議員の身分の保護の問題についてであります。これは経済問題とは関係ありませんけれども、国会議員の身分の保護についてお伺いしたいのであります。日本の憲法は、国会議員であるとなしにかかわらず、政府は十分にそのことは保護しなければならないことが規定されておりまするが、特に私がお伺いしたいのは、われわれの、同僚議員であるところの辻政信君が昨年の四月旅行したきり行方不明になっておる。この問題は、ひとり辻君の問題のみならず、われわれとしては、国民一人々々が海外の旅行をした場合において、行方不明になるということは、まことに痛恨事である、こう思っております。ただ、当人の自発的な行動によって出て行ったのだから、それはどうもできないという答弁だけでは、われわれは済まされないと思うのでありまして、政府としまして、この問題についてはどういうお考えを持っておられるか。特に内閣総理大臣政府の最高責任者としまして、立法機関の国会議員が行方不明になった、こういう問題に対しての総理大臣考えをお伺いしたいと思います。
  130. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 同僚辻君が南方に行かれまして、そしてベトナム、ラオス、カンボジア、そしてハノイ等を視察に行かれたということを聞いております。その後行方がわからないというので、外務当局をしまして、随時様子を調べるように、こういう指令をいたしておるのであります。結果はまだ不明だということになっておりますが、この外務省で調べられましたことにつきましては、事務当局より詳しく御報告さすことにいたします。
  131. 千田正

    ○千田正君 外務大臣から……。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。辻君の行方につきましては、外務省といたしましては、出先公館を通じて、引き続き調査中でございます。それにつきまして、昨年九月及び十月の参議院の外務委員会において、また、衆議院におきましても、昨年十月の外務委員会、また、今国会におきましては、二月の衆議院予算委員会第二分科会におきまして御報告申し上げたとおりでございまして、また、昨年九月二十五日付千田委員からの文書による御照会がございましたので、九月三十日付で、私から書面によりまして御回答申し上げた次第でございまするが、昨年の十月、私が参議院の外務委員会におきまして申し上げましたように、ラオスのシエンクアンにございまする最高権威筋から得ました昨年十月三日付の情報によると、御報告申し上げましたように、辻議員と直接会見した事実は、最高権威筋ではないけれども、この最高権威筋に達した情報によりますと、辻議員は六月にヴァンヴィエインにおられた。しかし、その後のことはわからないが、情報によりますと、シエンクアンに来られた後、ハノイを経て中共に向かわれたらしい、こういうことでございました。そこで、その後、昨年十二月二日付の書簡をもちまして、日本赤十字社を通じて、中国紅十字会に、同議員が中共地区に入ったかいなか、また、同議員の安否の状況等について照会をいたしました。これに対しまして、中国紅十字会より、十二月二十五日付の書簡をもちまして、辻議員は中共に入国した可能性があるとの日本側の消息は全く根拠がなく、したがって、同議員の行方調査に協力する方法がないという回答をして参った次第でございます。私どももこの点心痛いたしております。また、辻議員の寄られましたベトナムの大使館において、あるいはラオスの大使館において、当時の久保田大使あるいは別府大使が、この旅行の意図を漏らされましたる際、極力御翻意方を説得したわけでございまするが、御翻意はお聞き入れいただけなかったと、こう申しておるのでございます。はなはだ遺憾なことでございますが、現在まで辻議員の正確な消息は依然不明のままでございます。しかしながら、今後とも外務省の出先機関はもちろん、その他調査ルートによる調査を一そう強化いたしまして、同議員の消息の確認に全力をあげておる次第でございます。以上お答え申し上げます。
  133. 千田正

    ○千田正君 外務大臣からただいま御報告がありましたが、その後千葉三郎議員ですか、海外旅行の途次、香港島に寄って聞いたところによると、あるいは吉林に辻議員がおられたというような情報も入っておるように聞いておるのであります。これはわれわれとしては確証を得るわけにはいきませんので、その点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  134. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 何でも吉林省琿春において、学校の教員をしておられるというふうなお話があったということでございまして、どうもこの点について確認方を努力はいたしておりまするのでございまするが、いまだにこれといった御報告を申し上げるような情報を得ておりません。
  135. 千田正

    ○千田正君 出先の外務省のほうでは説得したのだけれども、どうにも言うことを聞かなかったということだけでは、私は、在外邦人の旅行をする場合に保護する目的には沿わないのじゃないか。むしろ危険であればあるほど、外務省の出先官憲としては、それを押えなければならないのじゃないか。いろいろな報告によるというと、防衛庁のアタッシェが途中まで同行したように聞いておるのでありますが、そういうようなことがあったとすればなおさらのこと、辻議員は、どうあろうとも国境外に、旅行の目的以外に行くものであるとするならば、外務省の出先官憲としては、極力それはとどむべきではないか、われわれはそう思うのですが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  136. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点につきましては、現地から別府君あるいは久保田君が帰って参りました際にも私からも聞いたのでございますが、何分にも議員さんのことでございまするので、いろいろ申し上げても、お前は何を言うかと言われれば、どうもそれ以上身柄を拘束するような手だても持ちませんわけでございまして、どうも残念ながらこういうようなことになってしまった、非常に残念に思っておると言っておりました。
  137. 千田正

    ○千田正君 とにかく世界の各法治国において、一国の議員が行方不明になったなんということは、おそらく日本においてのみ、今度のあれが長期において失踪したような評判を立っておるのは、辻君の場合だけであると私は思うのであります。で、それは個人の自由意思はとにかくとしまして、やはり日本国民の一人であり、いやしくも最高機関の一人が行方不明であるそのままであってはならないと思いますので、これは外務大臣に、特に出先を督励されて、さらに確証を握られることを要請いたしておきます。  次に、私は総理大臣にお伺いしたいのですが、先般総理大臣が東南アジアを旅行されてお帰りのとき、ビルマにおいでになられた。そうしてビルマの賠償問題については、三人委員会等において相当話し合いをされたようでありますが、帰られて間もなく、今度いわゆるクーデターが起きた。クーデターがこの二十日に起きて、ネ・ウィン将軍が軍隊の力をもってウ・ヌー内閣を倒した。今おそらく軍部の手にビルマの実権が移ったろうと思うのでありますが、これが革命の後におけるところのビルマというものと、それから今まで交渉してきておられましたビルマ賠償の交渉過程と、今後日本側が、こういう問題が起きた相手国に対してどういうふうに考えていかねばならないか。たとえば賠償問題等については、相手のウ・ヌー氏はすでに逮捕されている。今後は新しい内閣がおそらく出るでありましょうが、それを相手にいたしますにしても、相当慎重を期さなければならないと思いますので、総理大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三年ほど前に、やはり今の将軍が実権を取られて政変をし、そうしてネ・ウィンからウ・ヌー首相になったわけでございます。で、私が向こうへ参りましたのは短期間、三日間でございますが、こういう事実はございました。今のウ・ヌー派のほうにおきまして、その党の総裁を選ぶのに、ウ・ヌーと大蔵大臣のタキン・ティンとが総裁の争いをした。そうしてタキン・ティンのほうが非常に優勢であったということは聞いておりました。クーデターなんということは、そういう要素も何もありませんでした。ただ、今後賠償問題につきましてどうするかという問題は、新聞の報道では、やはり続けていくんだというふうになっておるようであります。正式にはまだ参っておりません。私は軍部のほうにも知った人がおりますが、やはり無血で、しかもほんとうにビルマの政治をよくしていこう、統一をうまくやっていこう、いわゆる各州に独立に近いような権限を与えて、全体としてまとめていこうという考えでいっておられるので、外交方針には、そう変わってくるとは私は考えておりません。
  139. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、先般総理が向こうの首相との間に相談した賠償問題の、いろいろそれに付随しまして経済協力等の問題は、一応それはストップして、当然新しい内閣が出て、あるいは今の軍部内閣にしろ、いずれ新しい内閣によってこれが継承されるものだ、こう解釈してよろしいのでございますか。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が参りましたときに、ウ・ヌー首相より賠償の問題が出ましたが、これは私は賠償をお考えになる前に、前提として経済の再建が先じゃないか、こういうことで、経済の再建についての話をしたのであります。賠償をどうするかというところまで入りませんでした。あと外務大臣が残りまして交渉をしかけたのですが、うまくまとまらない。私は三人委員会というものをあれして、ビルマの経済の復興ということを考え、そうして、それに必要な経済協力というものをやったほうがいいんじゃないか、こういうことで賠償の問題にはあまり深く入らなかった。ネ・ウィン将軍は御承知のとおり賠償再建ということを言い出した人であります。今後ネ・ウィン政府と賠償再建等の話があれば、われわれは誠意を持って交渉を続けていきたいと考えております。
  141. 千田正

    ○千田正君 今、日ソ漁業条約に基づくところの、本年からの漁獲の問題について、日本の代表者がソ連に行って相談しておりますが、この問題と関連しまして総理大臣にお伺いしたい点があるのでありますが、それは総理大臣は北方領土の問題につきましては、すでに何回となくソ連に対しては歯舞、色丹ばかりでなく、択捉、国後等は日本の領土であるということをすでに宣言されております。ただ、漁業の問題が現実の問題になってくると、日本の領土であるにもかかわらず、日本の漁民はそこで操業ができない、こういう矛盾が出ておるのでありますが、日本の領土権を主張する点からいえば、日本の漁業の操業権も当然主張しなければならないと私は思うのでありますが、そこの点については、従来と変わった立場において私は日ソ間の漁業問題は進むべきではないか、こう思うのでありますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 歯舞、色丹のみならず、択捉、国後は日本固有の領土でございます。しかし、遺憾ながら今日本が施政をいたしておりません。私は戦前に択捉、国後、歯舞、色丹におられまして、そうして漁業を営んでおった方々に対しまして、まことにお気の毒でございますから、昨年の暮れですか、特別措置といたした次第でございます。
  143. 千田正

    ○千田正君 それは一応の当時の中部千島におられた人たちに対する漁業権の補償の意味もあるでしょうし、あるいは生活保護の面の考え方もあると思います。そうしますというと、北千島、中部千島以北にあるものは、もう日本の領土ではないのだから、かつてそこで操業し、そこに居住しておった者に対しては、何ら措置を講じなくてもいいというふうにも見られるし、現実においてそういう措置は講じてないようでございますが、実際日本の領土であると思って、かつては、戦前はあそこで働いておった者に対しては、何らの補償も何らの処遇も考えられておらない。これは非常に遺憾なことでありますので、日本の領土を離れれば離れるほど、われわれ国民としては、そうした人たちに対して、当然政府はあたたかい手を伸べていくべきであると私は思うのでありますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  144. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平和条約によって放棄したのでございますから、ウルップ島以北の島に居住された方々につきましては、朝鮮台湾と同様に引き揚げられた方々に対しての、あの引揚者に対する特別措置をとったと私は聞いております。ほかの土地と同じような取り扱いをいたしておると思うのであります。
  145. 千田正

    ○千田正君 それと関連しますが、今総理は、日本の領土だと主張しておるのだけれども、現実においてはどうにも手を打てないというのが、中部千島の問題である。日韓会談におきましても同じような問題が起きてくるのじゃないか。ということは、李ラインにおいて働いておった過去のいわゆる日本の漁民の漁業権の問題、あるいはゆえなくして拿捕されて向こうで刑に処せられた者、こういう者に対しての補償は、日韓会談の進むにつれてこの問題は提起される問題であると思いますが、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  146. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 李ラインの問題は、われわれ認めていないのでございますから、補償の問題はないように解決いたしたいと考えます。ただ、今までにおきまして拿捕された方々に対しての特別の措置をそのつどある程度とったと記憶いたしております。詳しくは関係閣僚から御説明いたします。
  147. 千田正

    ○千田正君 関連しまして、これは外務大臣、農林大臣にお伺いしたいのですが、今、総理大臣のおっしゃるのは、公海の面等から李ラインというのは日本は認めていないのだ、認めていないのだから、日韓会談の上に出てきましても、この問題は別に考えるべきであるという観点のようであります。しからば、日韓会談が解決した場合において、その問題は解決しないようなことがある場合、特に向こうで刑を受けたり、いわゆる日本としては犯罪とみなさないところの人たちが、向こうで終身刑を受けたり、あるいは三年の刑を受けたりして非常な苦しみを受けて来た。こういう者に対しては、国内においては、留守家族に対して農林大臣は御存じのとおりある程度の金融、あるいは生活保護の面ではめんどうは見ました。しかしながら、この日韓会談がかりに成立した場合において、そういう問題に対しては、やはり賠償問題と連なる問題であるかどうか、当然個人の請求権というものはあるのじゃないか、こういう問題。もう一つは、朝鮮に遺留してきたいわゆる日本人の財産、法人の財産及び個人の財産が、今度の会談において一応それが話し合いがついたという場合においては、これに対する国内の処置というものも変わってくるんじゃないか、こういう面につきまして、外務大臣及び農林大臣のお考えを承りたいと思います。
  148. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほど総理からお答えがありましたように、李ラインは認めていないのでございまして、拿捕いたしましたのは、先方の不法な拿捕でございます。御承知のとおりにわがほうといたしましては、従来も保険をやっておりますし、保険をいたしておりません諸君につきましては、別途について処置を講じて対策を講じておるということで、処理いたしておるということでよろしいかと思います。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 在韓財産の点につきましては、御承知のとおりに、軍令三十三号によりまして、日本の在韓財産は米軍に接収されました。その後米韓協定によりまして韓国側に引き渡され、日本は平和条約の際において、四条(b)項においてこの米軍の行為を承認しておるわけであります。したがいまして、これは米軍の行為によってその財産を措置されたということでございまして、わがほうとしては補償の方法というものはないと認めざるを得ないと思います。ただ一部全く裸一貫で帰って来られましたお気の毒な方々に対しましては、引揚者給付金その他の方法を講じておる次第でございます。これは日韓会談の問題とは関係なく、平和条約の際に処置をいたしておる問題である、かように思います。
  150. 千田正

    ○千田正君 私は経済外交の面について、今度はただしたいと思います。  昨日は、同僚山田議員からいろいろお尋ねしておったようでありますし、またお答えもあったと思います。私は観点を変えまして総理大臣にお伺いをしたいのですが、共同市場の台頭によって、国際経済はさらに変化せざるを得なくなってきておるということは、私が申し上げるまでもありません。ただこのEECの問題は、一つ経済を基礎として政治への移行を目途としておるようにわれわれは考える。たとえば、従来のソ連とアメリカ、戦後における二つの二大勢力に対抗してヨーロッパが新しい立場に立って統合あるいは連合して、この二大勢力に均等の力を持っていこう、そういうことによって将来起こるであろうと、あるいは起こるならば、ぜひそれは回避しなければならない第三次世界大戦への移行するあるいは過熱する状況を、政治と経済の力をもってこれを防ごう、こういうのがEECの最終の目的のようにわれわれは考えられるし、またヨーロッパを旅行しても、そういう声が強いのでありますが、この点については総理大臣のお考えはどういうふうにお考えになっておりますか。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 単に関税同盟という域を越えまして、ほんとう経済一国という形に進んで参っております。そうしてその方向をますます進めて、政治的の連結を強くしておるということに進んでおるようであります。具体的には委員会を設けてそういう方面の検討を加えておるやに聞いております。私はそういう方向に進んで行くんではないかと思っております。
  152. 千田正

    ○千田正君 そこで考えられるのは、そういうふうな一つのヨーロッパを中心とした新しいブロックが生まれる、あるいは南米あるいはその他の国々がおのおのブロック経済あるいはブロックの政治連合をやっていくということになるというと、東洋における日本立場というものは、非常に考えなければならない段階に入ってきておるんじゃないか。先般アメリカの雑誌やあるいはヨーロッパの新聞等に伝えられるように、アメリカ及びカナダ、日本、豪州、太平洋を中心とした新しい経済ブロックを作ることによってEECに対抗し、あるいはEECと同様の力を持つほどの方向へ方向づけよう、こういうふうに一部考えられておったようでありますけれども、、EECの力が非常に急速に伸びてきた。こういうので、アメリカ側はむしろEECに近づく方向へ転向していって、日本が結局アメリカにも寄れない、あるいはEECにも近づいていけないという段階にあるのが、今日の姿ではないかとわれわれは考えるのでありますが、太平洋を中心としたアメリカ、カナダ、豪州等の新しいブロックの形成ということに対して、総理大臣は先般アメリカにもおいでになったのでありますし、また、いろいろな面においてそういう情報が当然キャッチされておられると思いますが、これに対処される方向としての、いわゆる日本の孤立化を防ぐための方向はどうするかという面において、総理大臣の御所信があれば承っておきたいと思います。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカとカナダ、豪州、ニュージーランド、日本経済共同体を考えておったところ、EECが非常に発展したから向こうへいった、こういう意味ではないと思います。私は太平洋を中心としている今のコロンボ会議とか、あるいはそういうエカフェ等の機構がございますが、これはまだそういうところまではいっていないと思います。それよりも、EECが非常によくなったのでイギリスがこれに近寄る、そうしてその状態を見てアメリカがこれと特別の関係を持とうとしておるのがあれだと思います。これは経済力の点からいっても、人口の点からいっても、日本とニュージーランド、豪州は欧州に匹敵するようなものじゃございません。私はEECの発展を喜びます。そうしてイギリスがそれに向かっていくことも、私はやむを得ぬことだと、当然のことだと思います。しかして、これとの特別の連携をつけようというアメリカの態度も私にはわかる。そこで、日本が孤立するということに考えるが、そういう大きいものに日本が進んでいって関係をつけるということ、どういう考え方からかというと、孤立ということよりも、やはりアメリカ等の関係も強化しそうしてEECとの関係も強化する、この方向に向かっていかなければならない。私は日本の為替・貿易を自由化し、そうして国際分業への立場に立って、そうして輸出入をふやしていこうということを、三、四年前から考えておる、こういうことでいくよりほかにない。孤立というようにこれを考え、排他的に考えるよりも、そういう大きい、いいものに乗っかっていこう、橋渡しをしようということが、私は考え方の筋だと思います。問題は英連邦の問題になって参ります。私はカナダ、あるいは今来ておりますニュージーランドの副首相等と、英連邦はイギリスがEECに入った場合の結果どうなるかということを、やっぱりいろいろ一応聞いております。インドでも聞きました。これはイギリスの参加によりまして一つの大きな問題が出てくる。で、この問題が出たときに、いわゆるイギリス以外の英連邦と日本がどういうようにつながりを持つかということなんかは、以前から私は検討しておるのでございます。何といたしましても、やっぱり日本が自由貿易主義、為替の自由化ということをはかって、彼らと同じ立場で話ができるようにしていきたいと考える、こういう気持で進んでおるのであります。
  154. 千田正

    ○千田正君 きょうエカフェの総会が日本に開かれて、総理も祝辞を述べられたようでありますが、きょうのエカフェの会合のやはり最大限目とするのは、アジアの経済機構というものをもう少し確立したい、やはりエカフェとしては、一応の経済進展の勧告機関であるから、これに裏づけするようなはっきりしたものを作っていきたいというのが、むしろきょう集まってきたアジア全体の声ではないかと思うのでありますが、それに対しては、日本も率直にそういう声を聞いて、はっきりとそうした方向へ経済の動向を打ち立てるべきではないかと私は思うのでありますけれども、日本考え方としてはどういうふうに考えておられますか。エカフェに対する、いわゆるそれに裏づけとしての新しいOAECのいき方というものに対してもっと積極的に日本が動くべきではないか、こういうふうに思いますが、総理はどうお考えになりますか。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) エカフェ参加国、二十五カ国だと思いますが、アジア極東各国の方々が非常に熱心に審議しようという気がまえが見られます。私は、このエカフェ各国の繁栄がなければ日本繁栄はないのですから、われわれはあなた方の繁栄のためにできるだけの努力をいたします、こう話をいたしたわけであります。しかし、そういたしましたからといって、OAECですか、あれがすぐここででき上がるということにつきましては、なかなか問題がある。それは今言ったように、エカフェの各国がほんとうに手を握り合う前提として、為替、貿易の自由化をやるということが前提でございます。それがほとんどできていない。これがもう根本的なあれです。そしてまた経済提携をEECと同じようにやろうとすれば、貿易の面、生活水準の面、産業の面である程度似通ったものがなければならないということ、これは発生の過程から見ても、ベネルックス三カ国から始まったわけでございます。そういう状態から見ても違ってきております。考え方としてはいろいろあるでしょうが、具体的にどうなるかといいますと、まず第一に為替、貿易の自由化をどうするか、これがすぐあれしてくるわけでございます。したがいまして、タイ、フィリピンあるいははマラヤ、この三国が経済協力という関係でずっと進んでおりますが、一国の単位を大きくしようとしてやっておりますが、このくらいのことならできるかもわかりませんけれども、エカフェ全体がEECの状況に向かって具体的に歩を進めるという段階にはまだ時日を要する。しかし、その方向に向かって基礎作りをするということは、われわれとしても考えていかなければならぬと思っております。
  156. 千田正

    ○千田正君 それは、後進国が相当多く入っておるというと、日本責任も相当増大するのは当然だろうと思いますが、ただいま総理から自由化の問題がありましたから、総理あるいは大蔵大臣からお伺いしたいのでありますが、それは国際通貨基金に対して十月からいわゆる自由化率を九〇%にするということを公約しておるのであります。今回の借款にあたって国際通貨基金から重ねて自由化の促進を要望されてきておるということは、今も総理からお答えがあったようでありますけれども、日本はこの外貨基金対策として借りた外貨の借款の返済に備えておるということと、アメリカの市中銀行から二億ドル、米輸出入銀行の保証を得て農産物の借款として一億二千五百万ドルを借りておりますが、これもやはりさしあたりのところはどうやらそれで済みますが、いずれはこれは返さなければならない。そういうことも、やはり財政政策立場から今後の見通し、明年度の大型予算の実施にあたりまして、こうしたアメリカ側の資金の借り入れ等に対しての返済の見込みは予定どおり立てられるかどうか、こういう点の見通しはどうでありますか、この点を一つ
  157. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のとおり、私どもは国際収支の改善をことしの秋ごろまでに改善して、下半期においては収支の回復をはかろうという政策でもって現在やっております。したがって、この私どもの政策に沿った運営がうまくいくのでございましたら、これは今米国の市銀あるいは輸出銀の保証の借款というようなものの返済は、これは別に心配はないと思いますが、しかし、本年度の見通しで、国際収支均衡を回復するといいましても、まだ年度間を通じて若干の赤字というものは見越したこの計画でございますので、そこで私どもはIMFのスタンドバイ取りきめもやっているという状態でございます。でき得るならばこの金を使わなくて済ませる事態にしたいと考えております。
  158. 千田正

    ○千田正君 総理からいろいろ今までお話のありましたとおり、為替の自由化、貿易の自由化、こういう問題と相関連しまして、共同市場の問題は、今も総理からお話のあったように、単にヨーロッパの問題のみならず、イギリスあるいはその他に関連する各国の問題になってきている。そこで日本で一番この影響の強く及ぶのは、おそらく国内におけるところの原始産業である農業であると思う。われわれはそういうふうにも考えるのであります。そこで農林大臣から、この共同市場及び為替の自由化あるいは貿易の自由化によって国内の農業生産に及ぼす重点というものは何かということに対して、さらにそれに対して保護政策あるいは何らかの手を打つべき時期にはもうとうにきているのではないか、農業基本法だけでは間に合わないのではないか。そういうふうに考えられるのですが、農林大臣としての所信を承っておきたいと思います。
  159. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は、国際情勢、もしくは国際経済の変化がわが国の農業にどういう影響を及ぼしてくるか、これはまあいろいろな考え方があると思いますが、いずれにしましても日本の農業の根本的な構造を改善いたしまして、今までの世界農業の一環としてこれらと全く正面から対立、競争の形にありまする日本農業を、しいて申し上げますならば、技術を刷新し、さらに農業の中に、経営の上におきまして日本の特殊性を生かすような意味において、あえて申せば東南アジア方面の農業よりも一歩前進した農業というような意味において構造の改善をすみやかに作り上げるということが必要じゃないか。そうして、なるべくこれらと競合しないような農業経営のあり方を作り上げることが必要であろうというところを目標としてせっかく構造改善に尽瘁いたしたいと考えている次第でございます。
  160. 千田正

    ○千田正君 そのうち特に、まあわれわれは考えますというと、農業の面においては従来の米麦主要作物から、酪農へと転換政策をとってきた。その酪農への転換政策に最も影響を及ぼすのではないかと、こういうふうに考えられるのは、先ほど総理もおっしゃったように、英国あたりが、英国との関連のありました連邦との手を切って、共同市場へ参加するとなるというと、英本国から手を切られた豪州だとか。ニュージーランドとか、そういうような、酪農を中心として国の政策を立ててきた国々は、当然その行き先を、その市場を東洋に求めてくる。東洋のうちでも特に日本を目ざしてくるという傾向があるように見受けられるのであります。そういうような場合に、国内におけるところの産業のうちで、一番影響を及ぼすところの酪農、あるいはビートであるとか、あるいはビール麦とか、あるいは飼料のフィッシュ・ミールとか、そういう問題が相当大きな問題として考えられなければならないと思いますが、これに対しては農林大臣としては今後どういうふうな方針でいかれるかという点を伺いたいと思います。
  161. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 確かに御指摘のように、酪農につきましては相当の広い牧野を必要といたします関係から、わが国はその面においてはあまり適地と申し上げるわけにいきかねると私は思います。しかし、ただ別の意味から考えますと、たとえて申しますと、タイその他比較的近くにありますトウモロコシを初めといたしました飼料用作物、これらのものの輸入の便益等はわが国は非常によろしい立場をもっております。しかも、飼料は一面においてくだらぬことを申し上げるようでございますけれども、ふすまが非常に問題になります。これは食糧の関係わが国はふすまが問題になります。飼料が高い高いという声が立ちますけれども、一般に世界の飼料の選択性を持っておる、どこからでも日本は自由に世界価格で飼料の入手ができるという反面において長所もある。そこに養鶏業が非常にわが国においてはまさっておるというような面もあるわけでございます。したがって、これらは技術の導入もしくは技術の改良等によりまして、畜産においてはまだまだ私は有望なものがたくさん考えられるのではないかと思うのでございます。世界の農業の変遷に相伴うて善処して参る必要があるだろうと、こう考えております。
  162. 千田正

    ○千田正君 もう一つ農林大臣にお伺いしたいのですが、先般来いろいろ問題になっておるのは流通機構と市場の面でありますが、最近、農林大臣が構想を新たにして、国内の流通機構の面の改善をしたいという御趣旨はよくわれわれにもわかりますが、その中でどうも生産価格とそれから消費価格の間に非常な差がある。それはある程度それを是正しなければいかぬというので、農林省の直売ですか、直売場のようなものを東京都内に設けたいという御趣旨があったようでありますが、これと現在ありますところの市場、そういうものとの関連はどういうふうになっておるのか、こういう点について承りたいと思います。
  163. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 生鮮食料品の流通の過程をつぶさに調査いたしますと、一番弱点が中央卸売市場にあることはわかるのであります。そこで、中央卸売市場をにわかにこれを移転すると申しましても、なかなか容易でございませんし、内容の整備改善等につきましてはなかなか容易に実を上げることができない。この東京のような大都市が急に人口が増加したことと、制度、組織のほうが、設備のほうが追いついていかないというような事実がありますので、当面の対策として、一部に今申し上げましたような直売場というようなものを考えることはどうであろうかというので、せっかく検討いたしておるのでございます。これをつけ加えてこの機会に申さしていただきますならば、かねて農林省において職員を派遣いたしまして、蔬菜と果物、一部の魚というものの動きを調査をいたした報告の一応の取りまとめをいたしました。これによりますと、一番難点は貨車輸送である。特殊な、われわれとして新たに注目するのは貨車輸送が非常に難点であるということと、もう一つは近距離の蔬菜につきましては農家の手取りはおおむね五〇%以上になっておるということでございます。遠距離のものが割合悪い。それからミカン、リンゴというような果物類が生産、消費の間に開きが多いというようなことがございまして、これらは一つ一つをつぶさに検討して、これに対するきめのこまかな手当をする必要があるということを発見いたしたのでございます。できるだけ今後も精進いたしまして、こまかくお世話を申し上げるということで、生産、消費の機構を合理的に直していきたい。しいて申せば卸、仲買いの使っております金の金利、あれも高いのです。これが相当な負担になっております。それに小売商の店舗等の改善の金も割合に従来世話していなかったというようなこと等もやはり重荷になっておるようでございます。しかし、いずれにしましても今申し上げますように昨年からことしの春にかけまして蔬菜というものにつきましては農家の手取りは非常に多いので、いずれも五割以上、六割近い農家の手取りになっております。ただ、今申し上げるように魚が一番低い。その次に、ミカンはよろしいけれども、リンゴは悪いというようなふうになっておりまして、これは一がいに申し上げることはできないというようなことでございますから、対策をひとつすみやかに立てまして何とかいたしたいと考えておるわけでございます。
  164. 千田正

    ○千田正君 それじゃ流通機構改善に関しては市場法との問題がありますので、法律を、ある程度市場法の改正と、そういうところまで踏み切っておやりになりますか。
  165. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は当然それまでいかなければいかぬのじゃなかろうかと従来考えておって、中央市場法につきましてはまだ大きな欠陥があるように、だんだん勉強いたしますと結論がそこに参っておるのでございます。たとえて申しますと、仲買人が、たとえば神田の場合にも非常に多い。小売商と仲買いとの数が、その比率が問題にならないほど仲買いが多いというような場合があってみたり、いろんな点で具体的に改善しなければならぬ点が非常に多いということを見受けさせられますので、さらにできれば関西方面も一ぺん調べまして総合的にひとつ何らかの結論を出して法律の改正までいきたいと考えておる次第であります。
  166. 千田正

    ○千田正君 農林大臣は農林省の省内機構改革の一つとして、この各地方の農林省分局を持とうというようにお考えのようでありますが、こういうものは、今までも地方の農地局があるのでありますが、これはどの程度まで一体権限が拡大するのか、あるいは地方の農民、地域の住民が東京まで来なくても、中央まで来なくてもその地方において問題が解決できるだけの権限を与えるだけの分局であるかどうか、そういう点についてお伺いしたいのであります。
  167. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) できるだけ権限は地方農林局に移しまして、私のねらいは、できることならば地域農業の確立というところまでいきたい。それで地域、地域におきまして、たとえば北海道農業が一つの農業としてのモデルを持っておるというように、九州には九州農業というものをひとつつけていくということでなければ、従来のように画一した指導方針でいくことは困難である、適当でないと考えまして、地方農林局をぜひやりたいと考えておるのでございます。現にある農地事務局にしても間に合わないでみんな東京へ来るじゃないかという御意見がよくありますけれども、これはどこの開墾をやれというような要請に東京までおいでになるのでございまして、実際申しますと、技術的に地方の指導その他については、相当に私は地方にありますために効果を上げておる。また災害等がありました際につきましても、直ちに地方においてこれらが活動いたしまして遅滞なく処理ができるということになることは、地方農民にとって非常に稗益するところが大きいのじゃないかと考えておるわけであります。
  168. 千田正

    ○千田正君 とにかく農業問題は、国内産業の大きな骨幹の問題でありますので、ほんとうは農林委員会等でお伺いすればいいのでありますが、実際のこの共同市場、あるいは自由化という問題に相つながって及ぼす影響は大きいので、ここでお伺いしたのであります。特に米価の問題等に関しましては、米価審議会のあり方ということを再検討したい、これは河野農林大臣が御就任になると同時に、そういうお話がありましたが、この国会が終わるとほとんど同時に、明年度産米に対しての価格等に対する新しい考えを持たなければ、毎年のように米審であるいは論議を繰り返し、そうして農林省との間に調整がつかない、こういうことであっては生産農民としても困るし、現実にそういう問題のために、消費価格の問題も当然影響してくる、こういう点からいたしまして、米価審議会というものに対する考え方を、どういうようにお持ちになっているか、その点をお伺いしたいと思います。
  169. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、前年度の米価決定の際に、いろいろ問題がございまして、多数の中立委員の諸君が辞職をせられまして、そういう関係がございまして、今後の米価審議会につきましては、これらの経緯にかんがみて十分委員諸君の御意見を拝聴できるようなことにいたさなければなるまいというように私は考えまして、これらの米審について新たに委員を、実は委員の皆さんの任期がつい最近完了になる、終了いたしまして、新たにすべての委員にお願いをいたさなければならないことになっております。新たに委員にお願いいたすにつきましては、これからの米審をどういうふうに運営して参るかということの基本方針を新たに立てまして御了解を得ませんと、委員に御就任いただくことが、なかなか困難でございます。  その意味におきまして、私は明瞭に、米価の決定は、生産者価格にいたしましても消費者価格にいたしましても、御承知のとおり法律の内容として規定いたしております。でありますから、この法律の内容として規定いたしてありまするものについて、どういう点について考慮する必要があるかということについて御意見を承ることが適当であろう。従来のように米価は、たとえば昨年のように一万一千五十二円五十銭が適当であるかどうかという諮問の仕方を今後は変えまして、そういう数字を出しません、今年度の米価を決定するについて考慮する点は、どういう点を考慮しなければいかぬか、どういう点について、どういうふうに考える必要があるか、たとえば労働賃金はどういうふうにして計算したらよろしいかというような、米価の組み立ての要素になるものについての委員各位の御意見を十分拝聴することができるようなことでいきたいというふうに考えて、それぞれ委員にお願いをいたして参りたいと考えておるのであります。
  170. 千田正

    ○千田正君 審議会の問題でありますが、これは総理大臣にお伺いしたいのですが、審議会は非常に政府の諮問機関として有効に働いている、それからいたずらに紛糾をかもしているものと、あるいは、ほとんど審議会そのものが発足はしたけれども、現実の面において、十分に政府施策に反映しないというような審議会もある。あまり審議会が多過ぎるのじゃないか、この際、実際に審議会の答申に基いて、政府がやれるというようなものを再検討されて、審議会の内容を変えるなり、あるいは審議会のあり方というものに対して、もう一度慎重に考える必要があるのではないか、私はこう思うのでありますが、総理大臣、そういうお考えは持っておられませんかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のような点がございますので、審議会につきまして各省大臣にお願いして、再検討をしてもらうことにいたしております。
  172. 千田正

    ○千田正君 河野農林大臣、また重ねてお伺いするのでありますが、米価審議会と同時に、私は畜産の問題等に対して、やはり現実の問題として国民の台所に直結するところの、たとえば肉であるとか、鶏卵であるとか、野菜であるとかというものの、そういうものの価格の安定政策としての審議会などの、ほんとう意味における審議会が必要じゃないか、こういうふうに考えるわけですが、どうですか。
  173. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、畜産物につきましては、畜産物の審議会がございまして、現に先般、その審議会の議を経まして、ぶたの値の決定をいたしたようなわけでございます。
  174. 千田正

    ○千田正君 農林大臣にお伺いしたいのですが、農業構造改善を先ほどから仰せがありましたが、そのうちで、農業基本法の最も重要な対策一つであるところの林業と漁業という問題が十分に考えられておらない、おそらく、農林省の管轄の中で、林業、漁業というような僻地におけるところの対策は、十分考慮されておらないのじゃないか、こう思いますので、この僻地対策としての林業に従事しているところの農民の諸君、あるいは僻地にいるところの沿岸漁民に対する対策を、この際確立する必要があるのではないか、これに対しての農林大臣のお考えはどうでありますか。
  175. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お示しのように、特にこれらの漁民、それから林業に従事している諸君の対策は考慮いたさなければならぬと考えまして、従来と違って、原野の開墾、これを牧場化する、そこに畜産を入れるというように考えますし、また、沿岸漁民諸君にいたしましても、まず前提は沿岸の魚族の繁殖、これを保護し、もしくはこれを育成して参るということにも力を入れるつもりでございますが、漁民諸君は、漁民ということでなしに、ここにどういうように、経営を多角化して参ったらよろしいかということの立場に立って、沿岸の諸君についても考慮したい。したがって、全国三千有余の町村にわたって、いずれも構造改善をして参りたいと考えておるわけであります。
  176. 千田正

    ○千田正君 農林大臣と、これは外務大臣にお伺いするのでありますが、昨日、この当委員会でも、ほかの議員からお話がありましたように、今度の核実験によって及ぼすところの、漁民に対するところの対策、こういう点においては、一応向こう側の政府に申し入れた程度であるようでありますが、農林大臣は、きのうのお答えによるというと、まだ的確に向こうからのお話が来ないから、農林省としての、そういうような準備まで至っておらないというようなお答えでありますが、そうだとすると、どうも毎年々々この核実験が繰り返されていく、そうして、かつての久保山君のような問題が起きてくる。それからきのうも同僚の坂本議員が指摘しているように、どうも南太平洋等において漁獲をやっている連中は、漁獲物を運んできても、もうそれは商売にならない。ほかに身体にも影響がくる、これは一応この補償については、強く申し入れてあるのでしょうけれども、確かに相手方は、それを了承しているのですか、どうなんですか。  それから、かつてはそういうことはあったのですが、それに対して補償を受けたことがあるかどうか。ビキニ問題のときは、私どもここで論争しましたから、ビキニの補償はとっておりますけれども、ビキニ以後におけるところの太平洋の諸島において行なわれた核実験におけるところの損害等は、非常に軽微であるという理由のもとに十分な補償もできておらない。しかしながら、漁民は、一定の期間内に、そこで実験されるときには、迂回して帰って来なければならない。ガソリンの消費あるいは漁獲の減少、こういうような問題が、当然それは補償されてしかるべき問題であると思いますが、この点については過去において、そういう実例もあまりわれわれは知らないし、今後これに対する方針というものも、きのうのお話では十分立っておらないようでありますが、その点はどうでありますか、伺っておきたいと思います。
  177. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私も、こういうことの絶対にないことを期待いたします。期待いたしますが、万一そういう通告を受けまして、農林大臣としてこれに対する対策を講じなければならぬということになりますれば、なるべく早目に、私はこのことを、十分その地域で操業中の者に対して、善処せしめるような施策を講じなければなるまいと思います。  が、そこでどういう実験をおやりになるのか、それが問題になると思いまするが、御承知のように、ビキニのときのように、下でサンゴ礁が爆発するようなことをやられたのでは、これはもうたいへんなことになる。そうでなしに、非常に高い所で、大気圏の空高くおあげになれば、直ちに死の灰が落ちて来るわけではない。したがって、この実験のやり方によって、その影響というものは全然違うということでございますから、この実験がどういう種類のものであるか、それぞれによって対策も違いますし、また影響も違うというものだろうと思いますが、今何分にも、そういうことをまだ考えておりませんが、そういう連絡もありませんし、損害賠償云々というところまでいっていないということが私自身の感じでございます。
  178. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 昨日、アメリカ、イギリスの大使に会いまして、口上書を渡しまして、万一の場合には補償を要求する権利を留保するということを申し入れておきました。  で、御承知のように、例の福竜丸の事件のときには、二百万ドルの補償をアメリカ側が支払ったわけでありまして、その後においては、さようなことがまだない、そういうことを補償を要求している実例がございますが、まだ解決できていない実情でございます。ソ連の場合も、同様に補償を要求いたしております。  しかしながら、今農林大臣が言われましたように、一体どういう程度のものが、ほんとうにどの程度に人体に害を及ぼすか、これはまあ非常にむずかしい問題であり、またぜひきわめねばならない問題と存じます。したがいまして、国連の特別政治委員会におきまして、日本ほか各国寄りまして、この問題をぜひ至急科学委員会において結論を出せという決議をいたしておりますことは、御承知のとおりでございます。そういう基準が明らかになりましたら、補償の問題も、したがって明瞭になると思いまするが、今の段階では、現実にさような問題が起きるという場合においては、当然それに対する補償を要求しなければなりませんけれども、前もって幾ばくの損害が、こういう事件に対してあるだろうかということは、どうも明瞭になっておらないというのが実情でございます。
  179. 千田正

    ○千田正君 そうしますというと、かりにクリスマス島において実験が行なわれるというような場合には、日本としては、自主的にそれを回避するような方法をとらなければならないのですか。たとえば農林大臣は、クリスマス諸島において、そういうことが行なわれる万一の危険をおもんぱかって、その周辺においては漁業、操業をすることを中止する、あるいはいつからいつまでの期間は、そういう所を迂回して航行しろ、こういうようなことはあると思うのですね。  それから、もう一つ外務大臣に伺っておきますが、いつか数年前、私ここで質問したのですが、領空という問題についての限界ですね、領海、領空というものの限界……。ところが外務省当局としては、国際法として新しく領空問題が問題になってきている、領空問題が国際法の立場からいって、一体領空とは何ぞやということが問題になってきているのだが、この間雑誌やあるいはラジオ、テレビ等でいろいろ報告しているのを見るというと、もう大気圏内においてやった死の灰は、成層圏内にとどまっておって、ある一定の風が吹いてきた場合には、方々へ動いていく、その影響は相当ひどいというので、各国とも騒いでいるのでありますが、かりにそういうものがわれわれの空の上に停滞するとか、あるいは空の上で、知らないうちにやられているというようなことが相当あると思うのでありまして、そこで今もお話しました二つに分けて私はお尋ねするのでありますが、かりに向こうから通告がなくても、クリスマス島周辺でやるというような場合においては、漁業者に対して一応の保護をとる必要があるのじゃないかということ。それから無制限に、どこでもどんどんやられて、そうして気流の関係から言えば、日本の上空が一番そういう死の灰が滞空の期間が長い、こういうような現実的な問題が起きたとなれば、当然、それは国連等において新しい国際法の改正にまで踏み切って要請すべきではないかと、こう思うのであります。  一体領空というものの範囲というのは、どういうふうな外務省では見解を持っておられるか。
  180. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申しましたように、この核実験の問題については、われわれは心から、三月十四日に開かれまする軍縮会議において取り上げられまして、そうして米・ソ両方において、こうしたことをやめるという結論が出ることを、衷心から望んでいるわけでございます。  後段の御質問の領空の問題でございますが、これは法制局長官からお答えをいたします。
  181. 林修三

    政府委員(林修三君) これは御承知のように、現在の国際民間航空条約で参りますと、要するに領海の上空が領空ということになると、まあ解釈されております。その上空、いわゆる空間とたしか書いてございましたが、この英語は、いわゆるエア・スペースでございまして、現在の解釈はいわゆる空気のあるところ、大気のあるところと、こういうふうに解釈されておるのであります。しかし最近のいろいろのロケットの実験あるいはその他そういう問題に関連して、従来の観念でいいかどうかということは、新しい国際法の問題として、今論議されつつあるようでございますが、まだそこまで確立はしていないようでございます。現在は、いわゆる領土及び領海の上空、しかも上空も、大体大気のある区域、こういうふうに考えられておると思います。
  182. 千田正

    ○千田正君 領土や領海は、一応のそれは地球ですから、はっきりわかるのですが、領空となるというと、地球が自転するという場合、その天上がいわゆる領空ということになるのですが、はなはだ明快な限界がないわけなんですね、それをどういうふうに規定するかというような問題は、今後の国際法の問題でありましょうが、日本としては真剣に考えてもらわなければならぬ。この前私が質問したところが、天壤無窮だというお答えがあったのです。天壤無窮だといったお答えは、それはもう実に限界がわからんのでありまして、日本のような原爆も持たない、原子力も持たないものが、他国の実験その他によって被害をこうむるというような場合においては、やはりそれを防御するだけのことを考えなければならない、そういう点において外務省は格段のひとつ、国連等においても御検討を願いたいと思います。  時間もありませんから、最後にオリンピックの問題についてお尋ねいたしますが、これはオリンピックの特別委員会等がありまして再三議論しましたけれども、現実を見るというと、非常に政府のお考えになっているのと現状は違っておる。こういう感を深くさせられるのであります。もちろん池田総理は、世紀の祭典でありまするから万遺漏ない対策を立てて、国際的な面子からいっても、日本で開催するオリンピックは十分にその役割を果たしたいという念願のほどはわかりますけれども、財政的においてどうも金が足りない、こういうことを組織委員会あるいは現地の東京都、埼玉県等の現地の人たちが言うのでありますが、これに対しては十分に予算上の処置をやって完成を期すというお考えはお持ちでありましょうが、現実にそういうことをお考えになっておられるかどうか。これはまあ大蔵大臣でもよろしゅうございますが、どうでありますか。
  183. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) オリンピックは大体予定どおりできる予算の計上をしております。ワシントン・ハイツの問題にしましても、三十七年度に予定されておるものは三十七年度の経費として計上してございますし、それでは間に合わないという事態が出ましたので、先般三十六年度の予備費の支出をやっておりますので、これによってワシントン・ハイツ関係の工事は支障がないことと思っております。戸田漕艇揚あるいは射撃場の整備費というようなものも、計画どおりの予算を計上してございます。
  184. 千田正

    ○千田正君 大蔵大臣はそうおっしゃるけれども、現実においてはどうも現状はそうじゃないと、私はそう思うのであります。で、文部大臣それから建設大臣がお見えになっておるし、総務長官もお見えになっておりますが、この間、戸田の漕艇コース並びにワシントン・ハイツ等を現実において踏査しました際に、どうも戸田のコースにしましてもあるいはワシントン・ハイツにしましても、今のままではオリンピックを開催するまで完全にうまく運べるかどうか非常に疑問なんです。たとえば戸田のコースにしましても、埼玉県の主張する点と、それから組織委員会が求めている点と、だいぶ食い違いがある。こういう点についてはどういう調整をされるか。結局金が足りない。今大蔵大臣は幾らでも出すようなお話でありますが、どうなんですかそれ。
  185. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 戸田の漕艇場の問題については、御承知と思いますが、漕艇場をどこへ作るかについて非常に問題がございました。一方、全額地元で持つという相手も出て参りましたが、今までのいきさつからいって、戸田にやはり漕艇場を作るという方針を最後に私どもはきめましたが、そのときに実は地元々々で競争がございまして、地元負担をこれだけ持つからここへ誘致したいというようなことがございましたので、地元が若干負担してくれるということが条件になってきまっているものでございます。したがって漕艇場はできますが、地元負担をするかわりに、その周囲にまた別の付属工事をしてくれという要求もございましたが、当初の約束としては、それは地元負担でやってもらう、国が持つべきものはここというふうにきめて漕艇場ができるだけの予算というものは組んでおりますが、せっかくやるのだから、これに公園の付属施設というようなものも見てくれという要望は出ておりますが、それはオリンピックの競技に差しつかえる程度のものとは私ども今思っておりません。
  186. 千田正

    ○千田正君 これは文部大臣並びに総務長官に伺いたいのですが、オリンピック組織委員会としては、国際的な漕艇場を作るためには、今の大蔵大臣のおっしゃったように、ただレースさえできればいいというのじゃない。やはりその周辺の環境そのものを国際的にきれいなものにして、そうしてやはり恥しくないものを作らなければオリンピックとしての意味はないのだと、こういう要請なんですね。それに対して今大蔵大臣のようなお話では、どうも組織委員会並びに開催の母体であるところの東京都あるいは埼玉県等との話し合いが、だいぶ調子が違うじゃないか、その点はどうなんです。ただボートさえこげればいいんだ、一等二等の差がつきゃいいんだという問題じゃないと思う。
  187. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 今お話のとおり戸田の漕艇場につきましては、漕艇場そのものの予算は三十七年度で計上しているわけですが、いわば環境整備という関係予算がついておりません。この点につきましては、お示しのとおり従来組織委員会と埼玉県当局とで話し合いを願っておったわけでありますが、まだ最終的な結論にも達しておらない、こう承知いたしております。そこで、実は明後日オリンピック準備対策協議会を開きまして、その問題についてもなお検討をいたし、協議をいたしたい、その上で善処いたしたいと考えておるのであります。
  188. 千田正

    ○千田正君 どうも話の食い違いが今のとおりあるわけであります。それで、ことにワシントン・ハイツ等は、一応ワシントン・ハイツは移転することはさまったと、整地はできるでしょうけれども、相手の、受け入れるほうは、今の予算ではごめんこうむると、そういう紛争を続けられていたんでは、いつまでたっても予定どおり進まないじゃないか。そういう点で安井自治大臣にお伺いするのですが、自治省としては、なかなか大蔵省もそういうふうな渋っておるというような場合は、いわゆる自治団体、自治省、東京都なりあるいは近接のそういうレースを行なうようなところで、起債等あるいはその他の方法でまかなうようなことに対しての御協力はやるおつもりなんですか、どうですか。そういう点と、建設大臣、文部大臣にお伺いしたいのですが、今おっしゃるとおり、もうボート・レースはそのとおりさっぱりはっきりしない。それからワシントン・ハイツの移転の問題も、移転のことは決定したが、受け入れるほうはごめんこうむると、今のような予算では。そうなるというと、大蔵大臣のおっしゃるようなことには相ならぬと思うのですが、この点はどうなんですか。
  189. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 今のワシントン・ハイツの問題は、大蔵大臣の御答弁のとおりでございまして、やるという計画は決定いたし、もうすでに一部着工もしておるという状況でございます。ただ、東京都はその分をあとで森林公園に使いたいというようなことから、費用分担の問題はありますが、これはもう原則的には了解がついておるわけであります。ただ三十七年度にその金を東京都は支出は直ちにはようしないというようなことで、今計上しておりませんが、いずれこれが必要になれば、やはりこれは起債といったような形で見なきゃならぬのじゃないかと思っております。ただ戸田のボート・レースのほうは費用もわずかでございます。数億の程度でございまして、これまた確立しますればそのうちの相当額は起債で見るということは、この三十七年度中にも用意できると思っております。
  190. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。屋内総合体育館、屋内プールでございますが、これは文部省で担当することになっておりますが、御指摘のとおりワシントン・ハイツの移転あと予定しておりますので、移転がうまくいきませんと時間的に間に合わないという懸念がございます。しかし、これは先刻もすでに総務長官等からお話がございましたように、また大蔵大臣からもお話し申し上げたとおり、予備費まで支出して、とにかくまずもって屋内総合体育館の敷地の予定のところを早く移転するという提案もいたしておりますし、また地元との話が、お話のごとく簡単に参らぬような格好でございますが、これは極力地元との話し合いを進める以外に手がないわけであります。予算的には、予算外契約等もついておりまして、間に合うと思います。ただ、時間が切迫いたしますと、申すまでもなく突貫工事等の必要に迫られまして、むだな金の要るおそれもありますから、それらの関連も考えて、なるべく早くまず住宅の移転が急がれる必要が、その辺からもあろうと思います。実行できると思っております。戸田のボート・コースは、コースの七十メートルを九十メートルに広げることと、水深を三メートルに深めることと、護岸と、それだけを三十七年度に予定いたしておりますが、八年度との継続事業でございまして、一億円の予算だけではむろんいけませんけれども、三十八年度の予算と合わせまして出与えた場合、予算措置は十分にやらねばならぬと思います。仕事量から申しますと、二年間でやればできると思います。問題はボート・コースの周囲の環境整備が、お話のごとく国際的な常識からいって、はたしてまあ一応りっぱなものであるかどうかという判断の問題もございますが、一応組織委員会で考えました内容に基づいて、埼玉県とも話し合いを進めておるわけであります。これも環境整備の問題は、三千七年度、八年度、九年度には、まあ三年近い期間もございますから、のんびりもできませんけれども、コースそのものは別個に進行できる課題でございますから、ただいまのところ、そう懸念はいたしておりません。
  191. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ワシントン・ハイツの移転に関する経費は、総体で百二億ほどでございますが、これは三十六年度予算及び三十七年度予算、そのほかに債務負担行為が全額ついておりまして、移転に要する経費につきましては全然支障がない状態でございます。ただ、水耕農園のほうの受け入れ場所は、国有地及び都有地でございまして、この土地については問題がございませんが、所在の市町村のほうから、大きな住宅地域や団地ができますと、その排水その他で河川の影響等がある。野川という川につきまして、河川の整備をしろというような若干の附帯をした御要望がございますので、この点は内閣の総務長官が中心になりまして、地元の市及び国の機関で連絡をいたしまして調整を遂げつつありまする段階で、円満に遂行できるだろうとわれわれは考えておるわけでございます。
  192. 千田正

    ○千田正君 それは大体よろしいという御説明でありますが、現実の問題においては、工事の進捗状況からいって、ことしの夏あたり手をつけなければ完成しないのじゃないかね。それまでにそういう問題は解決できるという御予定でございますか。その点はどうですか。
  193. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 工事の進捗状況につきましては、簡単にかいつまんで申し上げますと、屋内競技場を作りまする場所に該当する百九十一戸というのは、これは非常に急ぎますので、この部分につきましてはすでに設計を終わりまして、折衝を終わりまして、発注をいたしております。ことしの九月までにはこの分は移転が完了できまして、その跡に整地を済まして、この屋内競技場を建設することにいたして、期限的には間に合う予定でございます。なお、残りの六百八十戸ほどにつきましては、三十八年の九月までに完成を目途といたしまして、それぞれ予算措置を講じておりますので、支障がなく進行できる。ただ、先ほど申し上げましたように、水耕農園の地域を所管する調布市等におきまして、そういうものが来るならば、地域を流れておる川の整備などをひとつぜひやってほしい。これは大体管轄は東京都の川でございますが、国の方も補助をいたしまして、どういうふうに進めるか、目下検討中でございまして、できるだけ地元の御要望に沿うようにいたしまして、調整をはかって、これらの移転先の環境の整備関係も努力をして参りたいと思っている次第でございます。
  194. 千田正

    ○千田正君 オリンピックの問題は大体これで終わろうと思いますが、今まで各省々々にわたっているので、この窓口を一本にしなければ、どんどん進んでいかないと思うのです。そこで、現在のところは総務長官のところが窓口になっているのですか、どうですか。どこが中心になって最終的にこの問題を進めていかれるのか。
  195. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 総理府にオリンピック準備対策協議会を持っておりますので、総務長官が窓口ということで、あるいはまた連絡調整ということでやっているわけです。そのほかに、御承知のとおりオリンピック関係の閣僚懇談会を持っておりますので、そこでまた御協議を願い、方針を決定していただいておる、こういうことでございます。
  196. 千田正

    ○千田正君 最後に、東北振興の関係のことを聞きたいのですが、私は東北出身議員の立場から……。最近、東北開発の中に起きた汚職事件、こういうものが非常に広がりつつあるのであります。そうしてしかもこの開発の本質からいいますと、これは特殊法人であって、政府が当然監督していかなければならぬ。並びに東北七県における各県がこの株を持っているというような立場からいいましても、東北の住民にとっても相当影響する問題でありますので、ああいう問題の起きるのは監督が十分行き届かないのか、あるいは運営に欠陥があるのか、あるいは組織の中に欠陥があるのか、非常に残念なことだと思いますので、その経過並びにどういうふうに今後はこういうことのないような方向にとっていかれるかという所信を聞いておきたい、こう思うのでございます。
  197. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) まず最初に、監督官庁といたしまして、典型的な国策会社で、多額の国費を注ぎ込んでおりますこの会社にこういうことが起きましたことは、まことに遺憾でございます。  今日までの経過でございますが、問題は、今司直の手にゆだねられて進められておりますので、詳細にわれわれとしては申し上げかねる点もありますが、ごく簡単に要領だけ申し上げますが、二月一日に東北開発株式会社のもとの営業部長、前の会津ハードボード工場長の千葉不二男というのが逮捕されました。これは二月二十三日起訴をされております。次いで二月九日に同会社のもとの営業部長、前の考査役の石田長蔵というのが逮捕され、これまた三月三日に起訴されております。それから二月十九日に同社の現助成課長鈴木精七と申す者が逮捕され、これは勾留取り調べ中であります。もう一人、東山昌美、これは同社の企画調査部員でございますが、二月二十七日逮捕され、目下勾留取り調べ中、会社関係はこれでございます。社外に約十名逮捕をされまして、その十名のうち三名が起訴されております。これは、このセメントの販売関係であります東光物産と称する会社の関係者二名、それから八木商事の関係者一名、この三名が起訴をされたのでございます。今後政府としてはこういういきさつにかんがみてどうするかというお話でございますが、東北開発株式会社ができました当初、実は単純なコマーシャル・ベースと申しますか、営利本位でございましたならば必ずしも適当としないけれども、国策上必要であるというような地点にも無理をして工場をふやし、あるいはまた多少危険がありますような新しい仕事をも先駆的にやらせるということもございましたので、必ずしも短期に成績をあげ黒字を出していくことを期待したのではございません。少し長期に見ていこうという考えでございましたが、しかしそれにもかかわりませず、実際のところそう見ておりましてもなおかつ業績は十分ではございません。ことに当初配置いたしましたこの人の配置のほうにつきましても、事業経営上必ずしも練達堪能の士をそろえたとは思えない節がございます。また人の和という意味におきましても相当遺憾の点があった次第でございます。したがいまして、昨年八月、藤山現長官が御就任の際、前長官からのお引き継ぎを受けまして、どうしてもこれは思い切った人事の刷新を必要とするということになりまして、昨年八月思い切った人事の刷新を断行いたしまして、理事の総入れかえをいたした次第でございまして、その後新しい総裁の伊藤さんを中心として、非常に今度は人の和を得ておりますし、みんな一生懸命に勉強いたしておりまするから着々成績をあげております。そうして今日までのいろいろな意味のうみの出るのもある程度かまわず粛正をするようにという方針で、私どものほうからもそう申しまするし、そのつもりで粛正をいたし再建の実は逐次あがりつつあるのでございますが、たまたまそういたしておりましたら、会計検査院の検査の際、やや会計経理上の年末決算の計上等の不適正が二、三点指摘をされました。もう一つは、セメントの販売につきまして、非常に操作がまずうございまして、滞貨が長く続いた関係上、硬化セメント約三万トンが生じたような、そういう点も指摘をされたのでございまして、この点がただいま衆議院の決算委員会においても指摘をされまして、いろいろもんでおるのでございますが、しかしこれらの点につきましても、現総裁中心の現執行陣は、やはり立て直しのために相当の成績をあげておられることは十分認められるのでございますが、そこにもってきて今回の汚職事件が出てきたわけでございます。主としてセメントの代理店の支店、及びそのそれぞれの代理店にからむ、何と申しますか、売掛金の滞納を主とした問題が起こりまして、その間に何か汚職事件がからんでおるように見受けられるのでございまして、東北開発株式会社第二十九条贈収賄の疑いによって今この事件が進んでおるわけでございます。まことに遺憾でございますが、しかし、今申し上げましたように、新陣容のもとに粛正刷新の実は非常にあがっております。  また私ども監督官庁の建前といたしましても、従来この会社の管理は監理官一名単独にやっておりましたが、今回の予算でさらに二名づけまして、この陣容も強化をいたしておる次第でございます。また従来ここはセメントなどにつきましては設備必ずしもよろしきを得ませんので、たとえばセメントの保存販売のサイロのごときはなかった、というような事実が非常に大きな、ただいま申しましたセメント問題のボロを出しまする原因でございましたが、今回はそういう設備の充足につきましても、かなり本年度は積極的に計画を立てて実行に移そうとしておるのでございます。また従来は運転資金というものを十分見ませんで、設備資金を食っておりましたが、三十七年度には新たに六億五千万の運転資金をはっきり計上をいたしまして、また出資も五億いたしまして金利負担が莫大になることをも防いでおります等々、何と申しますか、監督のほうも厳重にいたしまするし、また尽くすべき手は尽くしつつありますし、新陣容は大いに粛正刷新に立ち上がっておりますし、今後はこういう方向に全力をあげて努力をして遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。
  198. 千田正

    ○千田正君 今の御答弁だけで私は非常に残念だと思うのは、少なくとも特殊法人であって政府が応援している会社でありますから、ことに地域は非常に開発がおくれた東北と、東北の開発のために総合的にポイントをおいたのですから、その点は十分今後とも考えていただきたい。  最後に自治省大臣に、時間がありませんのでまことに恐縮ですが、一点だけお尋ねしておきたいと思います。それは最近たび重なるところの交通事故等に対して、公安委員長立場からいろいろ御心配になっておられると思いますが、新しい法案を盛られるという立場に対して特に私は注文をつけたいと思います。それは何かというと、どうも幾ら次から次へと罰則を作りましてもこの犯罪だけはなかなか失われない。そこで各国の例をみますというと、大体損害保険等とタイアップして、賠償する場合における十分な被害者に対しての補償をする方法を考えるということですね、外国の例におきましては。そこで日本においては、東京で私は知っている事件もたくさんありますが、その中でも実際に運転手が支払わなくちゃならない、裁判所で判決を受けて、そこで金をもらいにいったところがもう一文もない、何もない、運転手さんで、金を取るどころじゃない、何にも取れないのだ。そういう事例が相当多いわけですね。ですから賠償するとしても金がないから払えないというだけで済まされない。そこでやはりそういうところにも何かの欠陥があるのであって、相まって十分に被害を受けた者は補償を受けるように1被害を受けないようにするのが一番けっこうなことでございますけれども、この今度の法の改正のどこに重点をおいておられるかという問題。これは交通事故の問題。  もう一つ時間がありませんから、公職選挙法の問題の一点で、安井自治相は自治省の知能を傾けて新しく公職選挙法を提案されたのでありますが、考えられたのでありますが、それが自民党の内部におけるところのいろいろな問題の結果、だいぶ後退したようにうわさされているのです。公職選挙法にしましても、明朗な選挙をしなければならぬし、参議院の選挙を前に控えてこれは相当筋金の通った行き方をしなければならぬと思うので、どうも自治省の考えた点と、それから自民党に持っていくと、それが筋金がなくなって針金ぐらいになって、新しい法案というふうなことになって出てくるというと、安井さんの名案もどっかへふっとんじゃうのじゃないか。そういう点において、はなはだ遺憾のないように考える必要があると思いますけれども、大臣としてのお答えをいただきたいと思います。
  199. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) ちょっと千田さん、あなたの時間が御発言中に切れまして、三分経過しましたから、どうぞ御了承願います。
  200. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 交通事故の問題につきましては、非常に政府も頭を痛めておるわけであります。今度閣僚懇談会等を中心にしましていろいろな対策をとっております。まあただいまさしあたり警察関係として法律の改正を要するといった点につきましては、今の運転手の年令問題、それから事故に対する処分のいろいろの問題、これはまだ関係法務省等とも検討中であります。そういった問題。  それからこれは私どものほうの直接の問題というより、共同の提案になるだろうと思いますが、個人で持っておる車に対する車庫あるいは駐車場の設置を義務づけるといったような点を近く具体化したい、こう思っておるわけであります。従いまして罰則を特に強化するということは考えておりませんが、迅速に処理をして能率を上げたいということは考えております。  それから損害賠償の問題につきましては、これは今でも車には損害賠償保険というものがついておりまして、これは義務づけられておりまして、限度が五十万円でありますが、標準が……
  201. 千田正

    ○千田正君 小さいやつは。
  202. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 小さいやつは今私よく調べておりませんが、一ぺんこの点は——原則はついておるはずでございますが、さらにそういったような運転手が一文なしになったとか、あるいは行方不明のような場合にはどうなるか、これはまたよく私どものほうで検討いたしてみたいと思っております。  それから選挙法につきましては、これは今まで申しましたとおり、審議会の答申は十分に私どもは尊重するという建前で臨んでおりますが、しかしこれは立法技術の問題あるいは社会通念上の問題、また今の憲法上疑義が残るようなことはなかろうかどうか、そういうような点につきまして、これは政府として責任を持って法律を出します以上は、若干の修正ができたという点につきましては、私はやむを得ないというふろに考えておりますが、できております法律につきましては、私ども相当前向きの体制を持った、新しい時代に即応し得る法律であるというふうな確信を持っておるような次第であります。
  203. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 千田君の質疑はこれをもちまして終了いたしました。  明日は午前十時より開会いたすことといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会