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参考人(山際正道君) お答えをいたします。
ただいま木村
委員から、最近における
状況は
信用インフレとも称すべき段階に入っていると思うが、その原因は
日本銀行の貸し出しが意外に巨大に増加したせいではないかというような御
質問かと思うのです。この点につきましては、
日本銀行の貸し出しが非常に増加いたしておりますことは、御指摘のとおりであります。また、これに対して、私ど
もといたしましては極力それを圧縮するように努力いたしておりますことも、御存じのとおりかと思います。ただ、一面においてやはり
経済の拡大に伴いますところの所要通貨の増大に対して必要な通貨は供給をする、同時にまた一面においては信用の秩序は維持しなきゃならぬという使命を負わされております銀行といたしましては、最小限度にしぼりながらも、その両点を維持するに足るだけの通貨供給をやらざるを得ぬ
立場でございます。いわば、いろいろな
経済発展の、何と申しますか、結果がこの貸し出しに現われてきておるような気がいたすのでございまして、そのために、市中その他からは非常に金融の逼迫を訴えられまして、私どもはしばしば追及を受けるのでございまするけれども、まあこれだけあればとにかく信用の秩序を維持しながら
経済が運行し得るという最小限度をしぼりまして目下やっておるところでございます。で、最近の企業家の意欲というものが非常にこれは旺盛でございまして、これにはいろいろな原因があろうと思います。たとえばシェアーの問題もございましょうし、合理化その他技術革新が日ごとに進行いたしております。あるいはまた、やがては貿易自由化に対処する方策というもの
もとらねばならない。方策としては、すぐ増産をしてコストを下げるということで、設備の必要があるというようなさまざまな計算から、結局資金需要として現われて参るわけでございます。これに対しまして、今申し上げましたように、最小限度必要と思われるところに従いまして実は資金の供給をいたしておりますので、それでもなお現状は非常に窮迫をいたしておりまするので、いろいろと好ましからざる
現象も生ずることがあり得るわけでございます。しかし、これはおっしゃるとおり、現在の
経済体制の
もとにおきましては、最小限度やむを得ざる点と思いまして、極力その
方針で今後も進んでいきたい。先ほど
経済企画庁長官が、
金融引き締め態度を堅持すると仰せられましたが、同じような
意味合いでございまするが、できるだけかたくしぼって、それから生ずる悪い結果を見ませんように極力いたしたいと
考えております。
また、市中銀行の外部負債が非常に増加しているということも、これまた御指摘のとおりでございまして、この点私も非常に残念に存じておりますが、大体今の
経済機構の現状は、御承知のとおり、系列産業などと申しまして、金融機関と産業との
関係が非常に密着をいたしております。で、結局、引き締めも程度によりまするが、ぎりぎりまで参りまして、産業が行き詰まるか、銀行が行き詰まるかというところで、泣く泣く今申し上げましたような
前提だけは達成するような最小限度の通貨は供給するということの現われが今日参っておるわけでございます。まあそれらの要求の中には、自由化に対処する問題であるとか、産業合理化に対処する道であるとか、いろいろ要求がありましたけれども、大体ここへ来て、今はちょっと企業家の心理
状態は私は気迷い
状態と見ております。気迷い
状態というのは、判断がつかぬということであります。ここでしっかり前途の
見通しを立てまして、この辺でそういう拡張意欲はストップするように、さもなければオーバー・プロダクションになってしまうというような点をはっきりさせまして、これは三十七年度の事業計画といたしまして安全な道をとらせたいと
考えております。で、方策として一番有効に
考えられておりますのは、御承知の産業合理化審議会であります。昨年もそれを催しまして、ただ産業界の事業計画そのものと資金計画がマッチしないままに時を経過いたしましたけれども、今度こそはそういうことのないように、これは過般の
経済閣僚懇談会に私が出席をいたしまして、よく通産
大臣、
企画庁長官にお願いをいたしましたが、今度こそは事業計画と資金計画とがぴちっと裏づけのできるように計画をお立て願いたいということを申し上げまして、今せっかくその作業は進行いたしております。要するに、この資金の点につきましては、需給が
均衡していないわけなんであります。要するに、需要を減らすか、供給をふやすか、その道しかございません。その両方について、どっちかと申しますと、私は今まで需要のほうが強過ぎるという気がいたしておりましたけれども、両者にわたって適当な方策を講じまして、需給を
バランスしたというところでもって新しい産業年度が始まるということに持っていきたいというふうに
考えております。そういう次第で、
日本銀行といたしましても、担保としてとりますものにつきましては、これは発券の準備でございまするから、できるだけ厳正に査定をいたしまして、不動産担保の貸し出しが市中において非常にふえているということを仰せられましたが、
日本銀行の発券準備としてとります場合におきましては、十分にそれは審査をいたしまして、その本旨にたがわぬようにいたしておるような次第でございます。
なお、ここで
一つ御了解を願わなければならぬことは、最近におきまして、資金需給のルートがよほど変わって参りました。資金の需要が集まるのは、都市銀行その他市中銀行でございます。その供給が割合に豊富に集まりますのは、地方銀行、信用組合、その他の農村団体というようなふうでございますので、この資金源と資金の需要者とどうパイプで結びつけるかということが、新しく起こりつつある問題でございます。現在はコール方式でだいぶまかなわれておりますが、はたしてそれだけでいいのかどうか、これらの点につきましては、今後の改善問題として、私どもは真剣に検討を重ねておる次第でございます。