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1962-03-05 第40回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月五日(月曜日)    午前十一時十八分開会   —————————————   委員異動 二月十五日委員徳永正利辞任につ き、その補欠として古池信三君を議長 において指名した。 二月二十日委員川上為治君辞任につ き、その補欠として塩見俊二君を議長 において指名した。 二月二十一日委員石原幹市郎辞任に つき、その補欠として川上為治君を議 長において指名した。 二月二十二日委員西郷吉之助君、高橋 衞君及び阿具根登辞任につき、その 補欠として小林英三君、前田佳都男君 及び矢嶋三義君を議長において指名し た。 三月二日委員戸叶武辞任につき、そ の補欠として坂本昭君を議長において 指名した。 本日委員松澤兼人君、山本伊三郎君、 羽生三七君、赤松常子君、田上松衞 君、基政七君、石田次男君及び森八三 一君辞任につき、その補欠として戸叶 武君、占部秀男君、千葉信君、山田節 男君、田畑金光君、東隆君、白木義一 郎君及び大谷瑩潤君議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田畑 金光君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            古池 信三君            小林 英三君            櫻井 志郎君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            前田佳都男君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            占部 秀男君            亀田 得治君            木村禧八郎君            坂本  昭君            高田なほ子君            千葉  信君            戸叶  武君            矢嶋 三義君            東   隆君            山田 節男君            市川 房枝君            白木義一郎君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁保安局長 木村 行蔵君    警察庁警備局長 三輪 良雄君    防衛庁参事官  麻生  茂君    防衛庁防衛局長 海原  治君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済局経    済協力部長   甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省銀行局長 大月  高君    大蔵省為替局長 福田 久男君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省社会局長 大山  正君    農林政務次官  中野 文門君    食糧庁長官   大沢  融君    水産庁次長   村田 豊三君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    建設省道路局長 河北 正治君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。  昨日までの異動につきましては、お手元にお配りをしてありまするからごらんを願います。  本日赤松常子君、田上松衞君、森八三一君、松澤兼人君、基政七君、山本伊三郎君及び羽生三七君が辞任をせられ、その補欠として山田節男君、田畑金光君、大谷瑩潤君戸叶武君、東隆君、占部秀男君及び千葉信君が選任をせられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、理事補欠互選を行ないます。  現在当委員会におきましては、理事が二名欠員になっております。互選は先例によりまして、委員長指名をもって行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。それでは理事川上為治君及び田畑金光君を指名をいたします。   —————————————
  5. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 先日来理事会におきまして昭和三十七年度総予算の取り扱いについて協議を行なって参りましたので、その内容について報告をいたします。  まず、総括質疑は本日より開始いたしまして、日曜日を除き十二日月曜日まで七日間行ないます。次いで十三日、十四日は一般質疑、十五日、十六日公聴会を行ないます。この後、再び一般質疑に入るわけでございまするが、その日程等につきましては、後日協議を行なうことになっております。  総括質疑時間の各会派への割当は、次のとおりでございます。自由民主党三百七十分、社会党三百七十分、民主社会党百十分、無所属クラブ百十分、同志会八十分、共産党四十分、合計千八十分でございます。  質疑順位は、第一回目におきましては、社会自民民社社会無所属クラブ同志会社会、共産、こういう順位でございまして、第二回目以降は、社会自民社会自民民社無所属クラブ同志会順序で、これを繰り返して行ないます。この質疑順位につきましては、これを前例としないということになっております。  以上報告をいたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  なお、公聴会につきましては十五日、十六日の両日これを行なうことに決定をいたしましたが、公述人の選定その他につきましては、これを委員長に御一任を願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  なお、この際、議事進行についてちょっと申し上げますが、去る二月十四日、当委員会におきまして、岩間委員要求日本国アメリカ合衆国政府間の余剰協定に関する資料につきましては、外務省において印刷中でありまするので、でき次第に提出するとのことでございまするから、御了承を願っておきます。
  8. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより総括質疑に入ります。坂本昭君。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行委員会冒頭委員長要望もし、意見を伺いたいのです。従来、予算委員会では、ともすると政府側の人数がそろわない、こういうことで時間がおくれる等の事態がよくありまして、そういうことが逆にまた質疑を終わる夕方の時間がおくれるといったようなことにもなるわけでして、これはたいへんだらしないと思うのです。こういう点は今回は絶対ないように、きちんと政府側の各大臣がそろう、こういうことに委員長としては努力をしてもらいたい。また、そろわぬ場合には、したがって審議を始めないと、こういうことも明確にしておいてほしい。よく持ち時間——たとえば三十分、四十分ある。その中で数名の大臣をわれわれのほうから要求している場合がある。そうすると、ある大臣は、あなたの質問は前か、あとか、まん中か、あとのほうなら、初めのほう、ちょっとおくれてくる、了承してくれといったようなことも間々あるわけですが、そういうやり方はたいへんいけないことだと思います。質問者はある程度質問順序ということは考えておりますが、やはり質問の都合で、途中で質問順序が変わる場合もあるわけです。そういうわけですから、質問者要求しておる大臣というものは、その時間だけはきちんとやはりいる、こういうことも非常に大事なことなんです。で、要求大臣をきちんと時間にそろえることと、それから、その質問者持ち時間の中で、前かあとかというようなことで、その時間をはずすといったようなことをしない、この二つは私は非常に大事だと思います。従来、そういう問題が起きますと、政府側の意向というものを尊重して、そうして質問者のほうに何とか了承してくれ、こういうふうな行き方がややもするとあった場合もあります。これははなはだ遺憾であります。どうか、委員長はそういうことのないように、きちんと政府側にこの点はひとつ委員長の決意を披瀝しておいてほしいと思います。かたがた、これは要望ですが、この点に関する委員長のひとつ考え方を冒頭に承っておきたいのです。
  10. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長より申し上げます。ただいま亀田得治君の御発言は、参議院の権威の上において、議事の円満なる進行をはかるがために、質問者質問政府側大臣答弁ができまするように出席要求された趣旨でありまするので、私はもちろん、当然委員長としてごもっともと存じております。政府側におかれましても、議事の円満なる進行のために十分御協力を願いたいと存じます。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 議事進行。第一に申し上げたいのは、議事進行を私が先に要求しておりますのにあとになったというやり方は、してもらいたくない。  問題は、ただいま委員長から報告がありました資料の問題ですが、当然これはこの前の予算の、二月十四日までに出すのがあたりまえだと思う。ところが、本日になって、本予算になって今、印刷中だということでは、どうも折り目がつかないと思うのです。したがって、この点については、外務当局に対して委員長から注意をして、こういうことのないようにはっきり、権威というお話がありましたから、権威確立の上からも非常に大切なことだと思いますので、私は、そのように取り計らっていただきたいと思います。
  12. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 政府側にちょっと申し上げますが、委員要求せられました資料については、できるだけ要求の期日に合うように御提出を願いたいと存じます。ただいまの問題は、委員長まで、そのおくれました理由を承っておりまするから、将来十分に御注意を願いまして、できるだけ早く御準備を願うようにいたしたいと思います。  坂本昭君。
  13. 坂本昭

    坂本昭君 国際情勢が、昨年は、ベルリンを中心としてきわめて切迫した状態でございました。ところが、ことしは舞台は回って、アジア、特に極東の地域がきわめて切迫した危険な状態になっております。私は、こういう点から、この切迫した国際情勢の中でも、特に軍事的に緊迫したアジアの外交諸問題を中心としてお尋ねをしていきたい。  まず最初にお伺いしたい点は、三月三日ケネディ大統領の行なった大気圏内核実験再開決定の放送の問題であります。大統領実験再開発表の前に、池田総理事前通知を受けるべきであったことは、昨年六月の共同声明の中にも盛られております。しかし、それは、単によその国よりも一日か二日早く通告を受けるという、そういうことではなかったはずだと思う。どこで実験をするか、またその実験によって日本国民がどういう災害を受けるか、そうしたことについてあらかじめ協議が行なわれるべきであったとわれわれは考える。しかも、ワシントンから伝えられてきたところによりますと、形の上では日本に対してきわめて慎重な考慮を払っているが、実際には日本抗議は初めから問題にしていなかったと伝えられているではございませんか。こういうふうなアメリカの基本的な態度が重大な問題を私は含んでいると思うのですが、まずこの点について総理の御意見を承りたい。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 核実験停止の問題につきましては、昨年六月、ワシントンにおきまして、ケネディ大統領十分話をし、日本はその理由のいかんを問わず反対であるということは、前から言っております。また、機会あるごとに言っております。向こうは、日本気持はよくわかるということを言っております。しかし、わかるけれども、やむにやまれずやるんだというような通知が来ております。私は、さっそくこれに対して自分意見を申し出ておるのであります。今後におきましても、機会あるごとに、われわれの主張は、アメリカのみならず、他の保有国に対しても、私は強く要求するつもりであります。
  15. 坂本昭

    坂本昭君 総理は、昨年六月、ワシントンにおける共同声明の中で、実効的な、あるいは有効な査察と管理を伴う核実験停止協定が必要であり、全面軍縮に新たな努力が行なわれるべきである、そういう確信を表明しております。が一体、この半年間にどういう努力を、少なくとも核実験停止協定を進めて全面軍縮に向かう、こういうために努力をしたのであるか。私は、むしろこの六月の共同声明は完全にほごにされたのではないかと思うのであります。特に、昨年の九月二十日の軍縮交渉に関する米ソ共同宣言では、八原則米ソによって合意されて、特にその第一原則の中で、軍縮が全般的に完全に行なわれ、戦争がもはや国際的問題解決手段とはなり得ないということが確認されている。そして、全面的完全軍縮交渉に移りつつある時代であります。私は、総理米ソ共同宣言原則を率先して体すべき立場にあるのではないかと思う。われわれは、総理が真剣にこの立場を支持し、全面的完全軍縮のために諸国間の間を回って努力をされるとするならば、われわれも総理を支持するについて何らやぶさかなことはないのであります。ただいまの総理の御答弁では、はなはだ国民としても不満であるので、あらためて、再度今の点について御答弁いただきたい。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) わが国としては、あらゆる機会をとらえ、たとえば国連におきましても、あるいは世界議員会議におきましても、また私自身といたしましては、東南アジアを歴訪いたしましても、その行くところにおいて、この点は強く主張し、共同声明にも述べているのであります。また、ケネディ大統領との会談の結果から申しましても、今回も言っておりますように、アメリカとしても、核実験停止保有禁止等に向かって非常に努力を払っている。したがいまして、今後において核兵器実験停止共同意見が一致すれば、アメリカ実験停止してもいいというところまできていることは、私は昨年六月自分からの気持を強く訴えた一つの現われであると思うのであります。日本といたしましては、唯一被爆国でございますので、世界各国日本立場は十分了解してくれていると考えているのであります。
  17. 坂本昭

    坂本昭君 大統領の演説によりますと、来たる十四日からジュネーブで開かれる十八カ国軍縮委員会に対して、平和に貢献する一連の具体的提案提出し、核実験を恒久的に停止する提案も行なうだろうということであります。が、一体日本がこの十八カ国の中に加入していないということは、国民としてもきわめて不可解であると考えている。一体政府当局は、加入に対して積極的に努力をされたのか、あるいはまた、どういう努力をしたが、しかし加入できなかった理由は那辺にあるか、これについて御説明いただきたい。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 西側といたしましては、アメリカイギリス、フランス、カナダ、イタリー、五カ国であったと思います。東側が、ソ連並びポーランド等ヨーロッパの国五カ国、十カ国であったのが、十八カ国に相なったのであります。私の聞くところによりますと、西側日本の参加を強く要求したようでございますが、東側から日本は入れられないと言ってまた反対したということを聞き及んでおります。詳しくは外務大臣から答弁いたします。
  19. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 総理が言われましたとおりでございますが、西側は米、英、仏、伊、カナダ東側ソ連ポーランドチェコスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、さらにインド、ビルマ、アラブ連合、ナイジェリア、エチオピア、メキシコ、ブラジル、スエーデン、この八カ国が入っております。わが国の場合は、総理の言われましたような事情で加入しておりませんけれども、しかし、この外側にありましても、軍縮交渉のために、これを成功させるために、またこれを通じて核実験停止の有効な協定ができますように、大いに努力したいという考えを持っております。
  20. 坂本昭

    坂本昭君 今のようなおざなりな答弁では、国民は納得できません。もう少し誠意を持って、われわれがほんとうに核実験禁止の問題に全世界に率先して努力をしているという、その気持のほどをもう少し懇切丁寧に披瀝すべきだと思う。総理大臣、もう一ぺん説明して下さい。何もしてないならしてないと言って下さい。
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま申し上げたとおりでございます。私からは、自分考えていることを率直に全部申しております。
  22. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、御答弁を承った範囲内では、政府は何もしておらぬというふうにわれわれとしては判断せざるを得ない。そして、そのことは、さらに大統領説明によると、ジュネーブ軍縮交渉一カ月間に核実験停止条約ソ連が受諾しないときには、四月の後半以後南太平洋のクリスマス周辺実験を再開する。一体クリスマス周辺海域は、わが国関係がないイギリス国民でさえも非常な反対が行なわれている。しかも、日本の場合は、われわれの大事な漁場であります。したがって、こういうことについてケネディ大統領から相談を受け、われわれはマグロを食えなくなる、日本漁師さんが困る、そういうことについて意見を言う、反対も言う、しかしやむを得ないという結論になったのかどうか、総理のその交渉の経過をひとつ説明していただきたい。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣より答弁いたさせます。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 核実験というものに対して、わが国世界唯一被爆国であるという立場から、この問題を絶対に停止させるように、われわれとしては、国連の場においても、幾つかの決議案提案者となり、あるいはこれを強力に推進する立場をとっておったのでございます。また、国別にいたしましても、ソ連核実験を五十数回も行ないまするにつきましても、強くそれに抗議をしておったことは、御承知のとおりでございます。今般のアメリカの問題につきましても、あるいはイギリスの問題につきましても、総理からも話を直接こちらにおりまするライシャワー大使に伝えまして、あるいは朝海大使ケネディ大統領に直接会って日本気持というものを十分強く訴えまして、その交換書簡はすでに公表されておりますことは、御承知のとおりでございます。また、いろいろこういう声明がなされましたので、私といたしまして、日本政府を代表いたしまして抗議文を本日手交することにいたしております。これは、米英ともに、両国の大使を招致いたしまして、強くこのことに抗議することにいたしております。いずれにいたしましても、アメリカの言い分は、「このソ連の五十数回にわたる核実験というものに対して、自分らのほうとしても、これは座視するに忍びない状態に追い込まれておる。であるから、日本気持はよくわかるけれども、その日本気持ソ連にも通じて、四月十八日からのジュネーブにおける核実験停止の有効な協定軍縮会議を通じてできまするならば、自分のほうとしてもこの実験はやめてもいい。」、こう言っておる。ですから、私どもとしては、ぜひそれが実を実らせますように、あらゆる手段を尽して各国に働きかけておる次第でございます。  以上お答えいたします。
  25. 坂本昭

    坂本昭君 われわれが実験反対しているゆえんのものは、体験を通じ、またわれわれの生活を通じて、切実なものがあるのです。総理に伺っておきますけれども、今度クリスマス周辺実験される、その実験海域における日本漁師漁業労働者実態について調べられたことがありますか。実態を知っておられますか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) クリスマス島付近には、日本漁船が、年によって違いますが、三百隻前後一年に行っておることを知っております。まあ一月、三月が一番最盛期でございます。春から夏にかけても、四、五十隻くらい出ております。しかし、いよいよ実験が行なわれるという以前におきましても、先ほど外務大臣が言っておりますように、抗議することは当然でございます。また、私といたしましては、十八カ国の軍縮会議が成功するよう、そしてアメリカの希望しておるようにソ連がやらないということになれば、実験は行なわれないことになるのでございます。ソ連のほうに対しましても、私は一つの文書なりを出す計画でおります。いずれにしても、これを阻止することがただいまの問題であります。そしてまた、万一行なわれるようなことがありました場合、それにつきましての損害賠償、そうしてまた、賠償のみならず、その以前において、日本漁船が放射能その他による被害を未然に防ぐよう、いろいろな措置を講ずる考えでおります。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 総理は、クリスマス周辺漁業は一ないし三月が最盛期だ、だから四月実験をやったってたいした被害がないような御説明をされましたが、それは事実と非常に違う。大体カツオ、マグロにこの方面に行かれる人たちは、三月から十月までですよ。そうしてその間に、各県の人たちが、全部で労働者関係で一万名以上に及ぶ。また水揚高も、二十五、六億から三十億近いだろうと思う。そうした莫大な日本漁業というものが、この実験によって全部水泡に帰す。私は、そのためにも、総理大臣がもっと真剣にこの問題を取り上げていただきたい。しかも、この水域実験が始まると、どこへ行くか。大体この水域でやっておる人たちは、百トンないし二百トンの零細漁業であります。ほかに行き場所がないのです。しかも、ここはマグロ産卵地であります。池田総理はいつもライスカレーを食っておるからいいかもしれないけれども、マグロのトロの握りを食べておるととろの江戸っ子、東京の人たちは、今後非常に私は困ることになると思う。したがって、そういう人たち生活のことも考えて、真剣に私は反対していただきたかったと思う。それをただばく然と、国民反対するからわしも反対しなくてはなるまいというような、そんななまぬるいことでは、国民全体ががまんできません。私は、少なくとも、この漁業労働者漁船に乗り組んでおる零細な人たち、この人たち生活と生命の安全に対してどういう保障をされるつもりか、もう一度正確なお答えをいただきたい。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何も人が言うから自分も言っているんだと、そういう意味にとられることは、私は心外でございます。私は、旅行いたしまして外国に行きましても、共同声明でも常にこの問題を言っておるのであります。しかも、けさもオランダの外務大臣がこちらの外務大臣に会いまして、この問題についての意見を小坂君から聞かれまして、日本立場は十分わかると、けさもオランダの外務大臣が言っておる。人が言うからついていくというようなことを言われては、私は心外だと思う。  なお、もし行なわれた場合におきまするいろんな対策につきましては、外務省あるいは農林省で検討してもらうことになっております。私は、大体三百数十隻が行く、一−三月が最盛期、四、五月ごろも四十隻、五十隻が行っておるということを答えたのであって、何も知らぬというふうにとられてもらっては因る。こういう問題につきましては、総理としては、十分関係閣僚に申しまして、対策を講ずるようにいたしておるのであります。だから、放射能の検査器を各漁船が持つとか、いろいろな方法を講ずることは、これは二の次といいますか、とにかくやめてもらうことが第一でございます。そうして、もしやまらぬ場合においてはどういう措置をとるか、その被害を受けないような方法を考える。受けた場合におきましては、これが対策を、賠償その他のことも、従来も言っておりますが、それを早くからやっぱりアメリカイギリスのほうへ言っておく、こういうことをいたしておるのであります。私の答弁をあまり曲解なさらぬようにひとつお願いいたします。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 広島出身の総理が、この問題に不熱心なはずはないんです。だから私は、今までの発言をお聞きしまして、総理としては、当然この核実験の禁止については全面的の努力をされて、そういう決意を十分お持ちになっているというふうに、われわれとしても理解いたしました。また、その決意を、われわれは国民の名において、また国会において、これを十分支持し、全世界にこれを訴えてきた。そういう点についても、総理が私は賛意を表したものと理解しているんです。さらに、不幸にして核実験が再開された場合の漁民に対する生活と生命の保障、これについても万全の策を講ずるであろうということを私は理解いたしました。われわれとしては、実験の再開されぬことを、これは衷心から期待しておりますが、不幸そうした実験再開という場合の適切なる処置、それについて総理から責任のある御答弁をこの際伺い、また、先ほど申し上げましたが、実験禁止についてのわれわれの決意を全世界に対して訴えることについて、この際特に総理の所信を承っておきたいのであります。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 対策の具体的問題につきましては、関係閣僚から申し上げますが、私は従来から、今申し上げましたように、あらゆる機会をとらえて、この問題につきましては、発言をし、考慮をいたしておるのであります。もし万一行なわれた場合につきましての漁民に対しまする処置につきましては、関係閣僚から答弁します。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず、われわれとしては、もうこの核実験の再開をぜひやめてもらうようにということに全力を尽くす考えでございます。なお、万一行なわれました場合には、これは当然のことでございますと思いますが、米英に対してその補償を要求するという、漁民の、漁業に従事される諸君に対して、その受けまする被害に対して補償を要求する考えであります。これは実は、本日まだ国会の関係で会う時間ございませんので、国会終わりましたら、直ちに米英の大使を招致いたしまして、その考えを明らかにいたします。
  32. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。なるべくこういうことのないようには十分政府で、総理初め交渉していただかなければならぬのでございますが、万々一、どうしてもそういう事態が起こるとすれば、私のほうとしましては、早目にこれを承りまして、そうしてこれに準備をしなければならないと思っております。しかし、あきらめるということはありません。まだ準備していないのでありますから、あきらめておりませんが、どうしてもそういうことでありますれば、そういう方法をとる以外にないというだけでございまして、何らその対策といたしましても、準備をいたす以外にないのであります。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 総理答弁漏れの点、核実験禁止の決意をいかにして表明するかの点についてです。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 申し上げております。外務大臣からきょう英米のあれに抗議を申し込む。そうしてまた、私は、ソ連にも先ほど申し上げましたように、核保有国に対しましても、実験禁止の協力方を求めると申し上げておるわけであります。ずっと私の気持は言ってある。速記をごらん下すったらわかる。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、次の問題に質問を移します。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 重大ですから、関連して。外務大臣は、これからあとで英国なりアメリカ大使館に抗議すると言いますが、笑って抗議したのではだめなんです。あなたは、外交権に基づいて、国民にかわってその執行に携わっておられるわけですが、国民のこの反対の批判ですね。これを正しくあなた方の外交ルートを通して外部に反映させているかどうかということが問題です。私は、日本政府並びに日本国民のほんとうのこの問題に対する実験禁止、実験反対であるということが十分通じていないのではないか。その点、私は問題だと思う。あなた方外交権を持っておるだけに、それだけ責任重大だと思う。なぜそういうことを私が言うかというと、日本のあらゆる新聞が書いておりますが、私、ここに朝日新聞の松山ワシントン特派員の記事だけを披露して答弁を求めます。この松山特派員二日発ワシントン電によると、こういうことが書いてある。「米政府全体の空気をみると、初めから日本政府反対はそれほど強腰のものでなく、強行すれば、一応抗議しながらもついてくる、との認識が強かったようだ。」さらに、「ロバート・ケネディ司法長官の大統領に対する報告の中でも、「沖縄問題や綿製品賦課金問題に対する日本政府の心配は米政府の想像以上強い。しかし核実験については基本的には反対しているとはいうものの、同時に自由世界が共産圏に比べて軍事的に押されることをも心配している」と強調したといわれる。」「松山特派員の会った感じでも、ロバート・ケネディ司法長官は、「核実験に対する反対は沖縄や綿製品に対する反対とはみずから次元が違うように見受けられた」との印象を持って帰ったようだ。」こういうことが報ぜられている。これは朝日新聞だけでなくて、日本の各新聞に報ぜられている。私は、今朝日の松山特派員の記事を引用したわけですが、このことからわかるように、表面では一応反対と言いましても、日本政府は、ほんとうに腹の中から核実験はやってはならない、アメリカはしてくれるな、こういう強腰であるとは取っていないわけです。ケネディ司法長官は、そういう印象を受けて帰って大統領に相談をしている。その間に大統領が結論を出している。このことが重要ですよ。あなた方は国民にかわって外交権を執行している。正しく国民気持が外国に通ずるようにするところの責任があるわけです。だから、ただ形式的に書面を送り抗議文を渡した、笑いながら、握手しながら渡したからといって、核実験禁止なんかできるものではない。この点が問題ですよ。総理、しっかり答弁して下さい。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 新聞記者の方がどういう報告をしたかわかりませんが、私は私の信念で外交を行なっております。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理にそれじゃお伺いします。日本政府の真意が、私が今国民にかわって申し上げた発言内容と同じものであるとするならば、私は次の点をお尋ねします。  アメリカ側は、日本政府を通じて表明された内容を正しく把握していないということが明確になった。しからば、日本国民の総意を代表する形において日本国内並びに日本国民があげて核実験禁止を主張しているということを、正しく明確にアメリカ政府並びにアメリカ国民にわかっていただくために、国民を代表する日本の国会がそういう決議を早急にするということは、きわめて私は適切だと思いますが、総理であり、かつ、自民党総裁である池田さん、あなたの明確なる御答弁要求いたします。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会において、各政党が、国会がどういう措置をお取りになるかということにつきましては、私はここで申し上げられません。
  40. 藤田進

    ○藤田進君 関連して……。池田総理に申し上げたいのですが、どうも従来の予算委員会における御答弁の態度と、どうもあなたもそう感じると思うのですが、つっけんどんのようなことのように思うのです。これでは質疑が終局をしない、この問題だけについてもここでは答えられないという結論であるならば、なぜ答えられないのか、政府みずからが今抗議しようとされること自体がマンネリズムに陥っているし、これでは米ソその他の核実験というものが、それ自体が競争関係を持ってきているし、党派をこえてこの問題については日本人としては考えなければならぬという熱意からの質疑であります。したがって、自民党の総裁でありかつ総理である池田さんとしては、議会なりあるいは国民なりのできるだけの協力はひとつ要請をして、ほんとうにこの核実験というものを未然に防いでいきたいという気持がおありならば、その辺の所信があるはずであります。答えられないではなくて、どういう所信なのかということはこの際明確にしていただきたいと思います。議事進行をかねて指摘いたします。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 藤田さん、私は、非常につっけんどんだとおっしゃいますが、きょうの初めからの質疑応答をひとつもう一ぺんごらんいただければ、私は誠意をもって言っておるのであります。それをどうも曲解されたのか、誤解されたのか、非常に私の気持より違うようなことを坂本さんからおっしゃるので、私が言ったわけであります。  ただいまの核実験停止に関する国会の議決等を総裁としてここで直ちに答えろとおっしゃっても、党の運営というものはそういうものではございません。私は、ここには総裁としてでなしに内閣総理大臣としてお答えをするあれがあるのであります。党の運営につきまして、私はここで責任をもってお答えすることは差し控えたいと思う。党は党としての、やっぱり党議をきめる形式をとる必要がありますから。
  42. 藤田進

    ○藤田進君 言葉をかえて簡単に申し上げれば、政府とされて、総理大臣の所信の中に、政府にまかしておけと、抗議もするようにしているということなのか、できるだけの国民的な、あるいは立法府としての議会なりの協力を得たいという御所信なのか、この点をやっぱり明確にしておきたいというのが質疑者の本意だと思う。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう質問ならわかるんです。私は、あらゆる機会にあらゆる努力を、内閣総理大臣として、池田内閣としてやっておるのであります。で、自分が個人として言えとか、あるいは総裁として言えとおっしゃっても、今の立場としては言えません。私はあらゆる機会にあらゆる努力をしているということでおわかりいただけるんじゃありますまいか。
  44. 藤田進

    ○藤田進君 国民協力はどうですか。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民協力を求めなければ政治はできない。国民協力は絶対必要でございます。
  46. 藤田進

    ○藤田進君 議会の協力はどうですか。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) したがいまして、国民の代表である議会がどうせられるかということにつきましては、私は、内閣総理大臣としての答えなら自分の責任をもって申し上げられますが、総裁としては、党の運営に関する問題でございまするから、ここで即答はできません。
  48. 藤田進

    ○藤田進君 総理として。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 内閣総理大臣としては、この核実験停止につきましては、あらゆる機会にあらゆる方法をとるべきだ、これを申し上げておるのであります。それを総裁として言えとかなんとかおっしゃっても、これは筋が違うと思います。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連。非常に重要な問題でありますから、ちょっと関連してお聞きします。総理の本件に関するケネディ大統領への返書を見ますると、アメリカ側の実験再開をせざるを得ないという理由、それを認めるような印象を国民に与えておるわけであります。これは国民だけじゃない、全世界の人がやはりそういうふうに私は受け取ると思います。で、日本人のほんとうの気持からいえば、そんなことに触れる必要はない。池田書簡の中にもちゃんと書いてあるわけですね、あとのほうに。理由のいかんを問わず、核兵器の実験はいけない。なぜこの点だけにしぼってやれないか、前のほうに、アメリカの言うような理由というものをあなたが了承するような表現を用いておる。ああいうことは私は弔う要らぬことだと思うんですね。腹の中で思っておっても、あなたはそれは勝手かもしれませんが、日本人のほんとうの気持から言ったら、そんな理由のいかんを問わず——それはアメリカに対してもソ連に対しても——なぜ端的にその一点にしぼってこのケネディに対する返書が書けなかったか、これをもう少し率直にあなたの気持を伺っておきたいと思う。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、アメリカ大統領の手紙を見まして、問題は、ソ連が昨年やったからという理由が主たるものだと考えました。一応の向こうの手紙の文——まだ何と申しますか、やわらかい原案になっておったのを、私はああいうふうに書き変えた。問題は、「理由のいかんを問わず」、これで私ははっきりしておると思うのであります。文書の書き方というものは、これはいろいろな点がありましょうが、向こうの言い分もそのとおりに私書いておりません。あなたのほうはこう言うけれども、こっちはこうだということを書くのが普通でございますが、向こうの言うとおりに私は書いてない。重要な点だけを引用しただけでございます。外交文書としては、私は、これで国際的にわかると思います。
  52. 坂本昭

    坂本昭君 次の問題は、われわれ、特にアジアにおけるわれわれは、今二つの大きな危機を持っている。それは限定原子戦争の危機、人間が作った機械でわれわれ自身が殺戮されるという一つの危機と、もう一つは、相次ぐ軍事クーデターによって民主政治の基盤が殺戮されようとしているこの危機。私はこの点で、このクーデター問題について若干お伺いいたしたい。  その第一は、この現世界における軍事クーデター一般について、総理の見解をお聞きしておきたい。というのは、一部の軍隊あるいは極右翼の者あるいは極端主義者、アメリカで言えば、たとえばジョン・バーチ協会の人たち、こういう人たちの行動は、これは民主主義に対する挑戦であると考える。総理はどういうふうなお考えを持っておられるか、この際承っておきたい。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) クーデター自体は、やはりお話のように、民主主義に対する、何と申しますか、破壊活動であります、それ自体は。しかし、今回のビルマのあれも、やはり今の政治がよくない、もっと民主主義的にやりたいという希望があるのじゃないか。今から二年半前、ちょうどネ・ウィンのクーデターで、一時ネ・ウィンが首相の地位につきましたが、その後政局が安定したという場合におきましては、これを文民政権に、ウー・ヌー政権に渡した。しかし、ウ・ヌー政権の状況を見まして、これでは各州の協力が——独立できる各州の協力がない、ビルマ全体の害になるということを考えたのでしょう、ああいうことをやった。しかし、このクーデターがいつまでも続くとは私は考えません。過去の例から申しまして、また文民政府に移ることを期待いたしておるのであります。また、韓国におきましても、そういう気持があるのじゃないか。パキスタンにおきましても、そういう気持で私はやったと思います。また、タイにおきましても、そういう気持がわれわれに看取できるのであります。で、クーデター自体はわれわれは絶対に排撃しなければならぬ民衆の敵である。しかし、彼らのやっておることは、そういう気持でやっておるように感じられる。しかし、それで私は是認するというわけじゃございません。われわれがクーデターを絶対排撃するということは、国民全体の気持でございます。是認するものではございません。外国のほうではそういうふうな気持でやっておるように見受けられます。
  54. 坂本昭

    坂本昭君 次の点は、去る一月十九日の施政方針演説の中で、アジア外交の推進について、「世界の新しい波に針路を誤り、軽率にも無謀な戦争を強行し、悲惨な敗戦を経験したのであります。」と、率直な反省の上に立ってこのアジア外交、友好諸国との協力を進めていきたいという決意を披瀝されたのである。ところが、日本の一部に、この総理の所信について、これを批判し、非難をしている向きがある。総理は、この過去の誤れる軍国主義戦争政策、これを排除すべきものだという方針を明らかにされたのであるが、当然この方針は微動だにもされるはずがないと思うのですが、この際一応伺っておきます。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 施政方針で申し上げたのは、私の心からなる叫びでございます。
  56. 坂本昭

    坂本昭君 第三点は、日本におけるクーデターの問題であります。  で、われわれは、このクーデターというものをまことに非民主的な、前近代的なもので、いわばわれわれ日本人にとって、一つの恥辱であると考えるのですが、先般の三無事件、これについて総理はどういうふうな理解をしておられるか、どう心得ておられるか、ひとつ承っておきたい。巷間、一部、これはフレーム・アップ、でっち上げの事件であるという意見もある。そしてまた、その背後関係についても、最近、日韓会談を推進するグループの数名の人も、この背後関係にあがってきております。さらにまた、奇妙なことには、最近、台北AFP電として、この三月に左翼クーデター——右翼じゃないですよ、左翼クーデター説というものが流布されておる。私はこういう左翼クーデターなんというような言葉は聞いたことがないのですが、特にこういう日本のクーデターについての総理の見解を、この際承っておきたい。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三無事件のごときはまことに遺憾千万でございまして、お話のとおり、国際的にも私はあまりいい影響があったとは思いません。非常に悪い影響があったと思います。しかし、世界の人は、やはり日本がそういうことをする国だとは私は考えておられぬように思っております。また、日本国内におきましても、一応は驚きましたけれども、非常に無謀な処置で、こういうことは今後あり得ないというぐらいに国民大多数も考えられておると思います。しかし、事が起こりました以上、これに対しましての対策は、破防法によって今首謀者その他の関係者を取り調べ中であるのであります。その結果につきましては、まだ十分承知いたしておりませんが、十分調査を進めておるはずでございます。
  58. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) いわゆる三無事件につきましては、今総理のお話しのとおり、昨年の秋ごろから、この日本の国情に対して、特に共産主義革命に対する危惧を持った一部の人が、それに対する政府の施策に不満を感じて、現政府を転覆して強力な反共政府を作るという意図のもとに計画を進めておったわけでございます。これは事前にその情報をキャッチいたしまして、昨年の十二月十二日にその一味を逮捕し、現在、二十二名を取り調べました結果、十三名が起訴されておる次第でございます。
  59. 坂本昭

    坂本昭君 左翼クーデターはどうなんですか。
  60. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 左翼クーデターがあるというような計画につきましては、政府は全然こういったものを探知しておりません。この三無事件の起こった基礎には、その人方は、三月ごろ左翼のクーデターが起こるのじゃないか、それに対して十分な処置をするのに、政府の施策が手ぬるいという感じから起こったように聞いております。
  61. 坂本昭

    坂本昭君 過去の誤れる戦争政策について、これを否定して、新しい友好のもとにアジアにおける経済的援助、そういったものをしようとするならば、私は当然ここに賠償問題について新しい配慮というものが必要になるであろうと考えるのであります。ところが、例の鶏三羽で二百億というベトナムの問題につきましても、その後ダニムの発電所が逐次工事が進んでおります。ところが、この十六万キロワットのダニムの発電能力は、これはその後われわれの知るところでは、アメリカの持っておる六十カ所の航空基地、あるいは十一カ所の軍港、さらにまた久保田前大使も指摘しておる兵器工廠、こうしたものに使われるのであって、真にこの賠償がその国民の福祉のためにどれだけ使われておるかということは、非常に疑わしいと思います。私は、この賠償の実施にあたり、また今後も行なわれるわけでありますが、こうした賠償が真にその国の国民に、われわれ日本国民の反省の上に立って償いとして送られるところの賠償が、正しく行なわれておるかどうか。それについての総理の見解をこの際承っておきたい。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国々によって違いますが、今ダニムの発電、これはベトナムでございますが、ビルマの例をとりますると、日本賠償でやりました八万五千キロの発電は完了いたしましたが、ビルマ経済はその電力をフルに使うだけの産業もまだ起きていないようであります。私は、向こうに参りまして、そのことを聞いて、経済の復興を急がなければならぬということを、ビルマについて申したのでございます。ベトナムにつきましては、まだ詳しい事情は知りませんが、お話のような点はビルマにおいてあったのは事実でございます。したがいまして、これは発電事業はできたけれども、それに伴う産業の立ちおくれのために、十分電力がフルに利用されていないということは聞いているのであります。ベトナムにつきましては、私は十分承知しておりません。そういうことが全然考えられぬということはないと思います。したがいまして、工事の進捗につれて、これが利用方法はやはり考えていかなければならぬと思います。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 賠償を実施するにあたりまして、われわれはそれが軍事的な目的に使われないようにという配慮を十分にいたしているつもりであります。ただ、賠償の性格上、先方が要求するものをこちらは提供していくわけでございますが、現在までのところ、非常に先方の民生安定に貢献しているというように承知いたしております。総理からお話のございましたビルマのバルーチャン発電所なども、これによりまして先方の電力が二倍になったということでございます。ベトナムのダニム発電所は、現在二〇%ぐらい工事が進行したという段階と承知いたしておりますが、もちろん、この電力というものは、これは工業の基礎でございます。これができますることによりまして、工業が先方の地にできていく、あるいは工業に至らざるまでの間にも、この電力というものを農業水利等の面にも利用いたしますことによりまして、非常に先方の経済の拡大に多く貢献するものと期待いたしているわけであります。
  64. 坂本昭

    坂本昭君 確かに電力は工業の基礎ではあるが、不幸にして、その国民の福祉のために使われなくて、軍事的目的のためにより多く使われているということを、私は伺っているわけであります。たとえば、昨年フィリピンに参りましたが、賠償で送った日本漁船、それがマニラ湾にいたずらに停留されて、動いていない。そうして私が行きますと、漁撈関係者を送ってもらいたい、そういう言葉もあった。またさらに、インドネシアについて申しますならば、あそこは広い海域を持っておって、特に日本の和歌山県の漁業公社がこのインドネシアとの間に漁業協定を結ぼうとしている。しかし、こういった技術協力、経済協力に対して政府当局は干渉をして、十分な協力をさしていない。そうしてかえってアメリカ側が、インドネシアとの漁業協定を先に締結しているというように聞いている。つまり、ほんとうにその国の人たちの幸福になるような賠償あるいは経済協力をやっていないじゃないか、そういうように私は伺っている。もう一ぺん外務大臣の御答弁をいただきたい。
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お話のように、このフィリピン、インドネシア、ともに非常に水域を利用する必要の多い国柄でございますが、フィリピンに対しましては、機械類、電気器具が二十七億円、鉄道車両、船舶、自動車等、運搬用機器が二百四十億円、プラント類九十五億円、鋼材、セメント等五十二億が要求されております。また、インドネシアに対しましては、船舶、自動車等運搬用機器が百十億円、機械類及び電気機器五十三億円、プラント類六十五億円、橋梁十五億円、化学製品十億円などを供給いたしておりますが、その他にも賠償によりまして留学生や研究生の交流もいたしておりますことは、御承知のとおりであります。ただいまお話しの和歌山県の漁業の問題は、非常にその後話が進みまして、円滑に、インドネシア政府との間にも実施についての話し合いが行なわれる段取りになって参りました。アメリカが特にさようなものを推進しているというふうには、私はよく承知いたしておりません次第でございます。
  66. 坂本昭

    坂本昭君 外務大臣は何も知らないのであって、そういうことだから、日本賠償がほんとうにその国の人たちのしあわせに役立っていない。むしろ逆な効果を与えている。今、南ベトナムについては総理は知らないと言うけれども、一番今日世界中心になって、宣戦布告のない戦闘が行なわれている。そういわれている南ベトナムについて、近い日本総理大臣が知らぬとは何事ですか。アメリカの共和党の委員会でさえも、第二の朝鮮戦争だという点で政府に対して強い質問が行なわれている。こういうときに、この日本総理大臣がベトナムのことをよう知らぬ、そういうことは私は極東のこの外交の中心にある日本総理大臣として許されることではないと思う。  さらに私は申し上げたいのは、こうしたベトナムの二百億という協力を含めた賠償金、あるいは今度あなたたちがやろうとするタイの特別円九十六億円、あるいはまた韓国が請求権という言葉で要求している二千億から三千億になろうかといわれている金額、またさらにガリオアの援助による返済金二千八十五億、こうしたものがいずれも、名前は違いますよ、一つは請求権といったり、あるいは特別円といったり、あるいは返済金といったり、いろいろ名前は違うけれども、いずれも自由主義諸国の、しかもアメリカが特に軍事的に関係の深いところ、そういう国々ばかりにやられるではありませんか。そうして日本国民は、いろいろな名前の、結局は国民のふところから出ていくいわば戦争につながったところの賠償の形のもの、また、われわれは戦争は済んでいると思っておったのだけれども、政府のやるところを見ているというと、なかなか戦争は終わっていない。それどころではない。さらにずっと今後の賠償の内客、これをひとつ私はこの際財政的に明らかにしていただきたい。今までに一体日本国民はどれだけ支払ったか、それから今後はどういうふうに支払っていかなければならないか、年次的なその国民の負担、これについてひとつ御説明をいただきたい。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどのインドネシアとの漁業の問題は、これは賠償ではございません。経済協力でやっていこう。ただ、これを賠償の解釈に振りかえるかどうかということは、インドネシア側の話を聞いてみてやる考えでございます。さらに、最近先方の主管庁が、従来軍人復員省というのでやっておりましたが、農林省に移管されまして、そのため若干渋滞のきらいがございましたが、最近、先ほどお話がございましたように、だんだんと円滑にいっております。  それから、タイのことは、これは御承知と存じますが、協定の中にはっきりと、これは軍事物資には使わないということを明記いたしてございます。  それから、最後の点で、賠償の実施の状況でございますが、本年一月末現在では、履行済みの額が一千二百十億円でございます。義務賠償額は三千六百六十八億円、すなわち三分の一を終了しているという状態でございます。
  68. 坂本昭

    坂本昭君 今伺うと、大づかみにいって、日本賠償というものは私は不当に高いと思うのです。今までに千二百十億の支払いが済んだということですが、まだこれからさらに三千六百六十八億ある。さらに、今度はガリオア、エロアの返済金も入ってくる。私はこれらを含めますというと、賠償そのものでも五千億に近かろうと思う。ことにまた、ビルマあたりからは、さらにこの五条の検討要項を振りかざして再要求もある。そうしてきますというと、日本の負担というものは非常なものであります。大体西ドイツの場合は三千億程度だ。イタリーの場合でも千二百九十六億、西ドイツが二千九百八十八億。こういう数からいって、私は日本賠償の負担というものは非常に多過ぎる。こういう点で、やすやすといろいろな国の要求に従うということは、国民生活を破綻させるもとにならざるを得ないと思うのであります。  そこで、今度はタイ特別円の問題について、具体的な点を一点お伺いいたしたい。それは第一に、昭和三十年の八月の日本国とタイ国との間の協定が、これが大体非常にあいまいで、かつ政治的なものであって、当時国会においても金約款の解釈等をめぐって法的な検討も十分されていない面があると私は思うのであります。昭和三十年三月三十一日の参議院予算委員会で、松澤兼人議員の質問に対して当時の重光外相は、過去の協定を離れて両国で合意するより方法がないと答弁をしている。そうして当時のタイ国の外貨の事情が悪いこと、タイの軍事費が大きいこと、旧同盟国であったということ、こういうことの背景から政治的解釈にまかされた気配が非常に強いのであります。で、今回の衆議院段階における政府答弁を読みますというと、外務大臣も、総理大臣も、二人とも大所高所に立ってという言葉が実にひんぱんに出てくる。一体、大所高所とは何でありますか。昭和三十年の非常にあいまいなやりとりを再び繰り返そうとしているのではないかと思う。私は、国民の側の大所高所に立って総理にひとつお尋ねをいたしたい。大所高所とは何ですか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 過去、現在、将来の日本とタイとの関係考えまして、そうしてこういういざこざは、この際できるだけ両国の納得のいくような方法で解決した方がいい、こういうのが私が大所高所からと言う意味でございます。
  70. 坂本昭

    坂本昭君 大所高所になっておらぬですね。字引を引いたら、今の総理答弁が大所高所に当たるかどうかということは一目瞭然だと思う。国民を愚弄するも私ははなはだしいと思う。  さらに、続けて伺います。第一の問題点は、これは国民は信じているように見えます、現段階では。それは、昭和三十年八月の協定自体が、実は非常におかしいのであります。問題点を、非常に微妙な点がありますので整理をしてみますと、まず、昭和十六年の十二月の二十一日に日本とタイ国は同盟条約を結びました。それから、軍費の借款覚書によって、バーツ貨で買い入れるということになりました。そうして昭和十七年の七月一日現在に、未返済残額は金をもって返済するということになっておって、この金支払い分の一部が天引き渡しのままにあったようであります。そうして昭和十七年の四月の二十一日に、日本外務省とタイの大蔵省の了解事項として、貿易外支出は特別円によるということに定められたのであります。それからさらに、昭和二十年の九月十一日に、日タイ同盟条約とそれに付随するすべての協定、もちろん特別円協定を含む協定の破棄の通告がされてきました。そのときの残高は約十五億円あったとされています。一体、この十五億円あったという証拠は、記録として残っているかということも、これはあとで御説明いただきたい。さらに、昭和二十八年にタイは一兆億円の支払いを求めてきたのであります。そうして私はこの点注意を促したいのですが、朝鮮戦争が終わったのが昭和二十八年であって、朝鮮戦争の終わったあとに、この一兆億円の支払いが求められてきておる。そうして二十九年の九月に、問題の米人顧問のサージ・リップスとオーク、この二人が東京に送り込まれて、今度は千三百五十億円の要求が突きつけられてきたのであります。そして、こまかいことを省きますが、千三百五十億円が七百五十億になり、五百億になり、二百七十億になり、二百十六億になり、百八十九億になり、百六十二億となり、いろいろな段階がありますが、さらに百五十億となって、そしてこの百五十億をもととして、外貨五十四億五年払い、それから投資及びクレジットの形式で九十六億ときまったのであります。このときのそもそもの百五十億円のきまり方の基礎がきわめてあいまいだと思う。一説によると、残高十五億あった、十五億を十倍したらちょうど百五十億になった。ずいぶんでたらめな話だと思うんですが、ただ、当時五十四億の支払いということが関心の的であったということだけは私は間違いないと思う。  ところで、この五十四億円の根拠について、条約破棄当時の残高は、約十五億円のうちに金約款部分がある。これは額として四千四百万円、それにイヤマークした金の未引き渡し分〇・五トンを加えて、これを換算しますと五十三億七千四百九十九万円となる。これが五十四億円と言われている額であるように見受けられる。で、この四千四百万円が十五億円の口とは別だと。第一に十五億円と、第二に金売却夫実行分四千四百万円、第三に金イヤマーク未引き渡し分〇・五トン、この三つをあげている人もおります。で、これは三十年の協定の第三条にあげられた三つの請求権に照応していると思う。第一がつまり十五億円そのものですが、第二がこの金売却未実行分、これが三十七億千二百九十四万円、第三の金イヤマークの分二億二百五万円、これを合計しまして五十四億一千四百九十九万円、この見解については一体どうであるか、ひとつお答えをしていただきたい。その当時の三十年協定の第三条にも書いてありますが、内容的には、日銀・タイ特別円勘定残高十五億円は、これは昭和十九年の四月から二十年の七月までの政府日銀借り入れ十二億五千万円の分と、それから次に、それ以前の特別円残高分と、さらに利子追加分との合計からなるものかどうかということについて、政府当局の責任あるひとつ答弁をいただきたい。
  71. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げますが、タイ側では昭和二十年の九月十一日に、先ほどお話のありました日・タイ間の特別円協定を含む条約の破棄を通告してきたわけであります。したがって、この以前の問題についてはこの効力はないわけでございまするが、ところで、日・タイ特別円勘定が設定されましてから、わがほうの日本銀行の帳簿に残高としまして、十五億二百五万三千六十五円五十五銭という残高が記帳されてあるわけでございます。これについて、これをどう評価するか、金約款というのは、もちろんこれはないわけでございまするが、これをどう評価するかという基準が実はないわけでございます。これをこの基準をどこへ求めるかということで、双方が相談をするということしかこの解決の方途はなかったわけでございまするが、結局その中から金を売却するという約束をしておって、まだわがほうが実行していない分が四千四百万円ございます。これを差し引きますると、十四億五千八百五万三千六十五円五十五銭となるわけでございます。そこで、この四千四百万円というものをどう見るかということでございますが、純金一グラム四円八十銭という、当時の戦前の相場で換算をいたしますると、この金は九・一六六六六六六六グラム九トン何がしになるわけでございます。これを現在のわが国の金公定価格で換算いたしますと、すなわち一グラム四百五円の割合で円に換算いたしますと、三十七億一千二百四十九万九千九百九十七円三十銭ということになるわけでございます。そのほか今お話のありました、約〇・五トンの金がございます。これはタイ側の分でございまして、三八・八五トンございましたけれども、三八・二八トン送金をいたしまして、残っているのが〇・五七ミトンあるわけでございます。しかしながら、これは戦争中にタイに渡すべかりしものであったわけでございます。その未引き渡し分につきまして——〇・五七二八六八トン、この約〇・五トンのものを現在わが国の金公定価格、一グラム四百五円ので換算いたしますると、二億三千二百一万一千五百四十円になりまするので、合計いたしまして五十四億二百五十六万四千六百二円八十五銭ということになりまするので、五十四億円ということを出したわけでございます。今申し上げたように、当時の日銀残高というのは、これはもう私どもが約束しておりましたもので、いわば商業勘定に属するもので、特別円協定の破棄とは関係がないということになりまして、これをいかに処理するかということでございましたが、結局この処理の基準というもの、法的基準というものを見出すことに非常に困難を感じまするわけで、当初タイ側は、その当時の、戦前のポンドとタイのバーツとの交換比率、すなわち一ポンド当たり十一バーツ、これで換算して千三百五十億円になるという計算を持ってきて、その後それの四割の五百四十億円を要求したということでございましたが、わがほうはもちろんこれに応じない。そこで、昭和三十年の三月末、ナラティップ外相が来日いたしまして、特別円残高十五億円を十五バーツとみなして、これを当時のバーツとドルの換算比率、すなわち一ドルが二十バーツ、七千五百万ドルになる、すなわち二百七十億円になる。これでこの一部を現金、一部を物で払ってもらいたいという要求をいたしたのでございますが、これをいろいろ交渉いたしまして、結局全体を百五十億円にした。そこで、百五十億円のうち五十四億円をポンドで払い、あと九十六億円を日本人の役務と物資の形でタイ側にクレジットあるいは投資の形において供与する、こういうことにいたしましたわけでございます。そういうようなことで、換算の基準というものが当時から非常に明確なものがなかった。このことが非常にこの交渉を困難にした、こういうことであろうかと思います。
  72. 坂本昭

    坂本昭君 今の四千四百万円は、十五億円の口とは別かどうかということと、さっきの三つの点が照応しているのだが、これについて見解を求めたが、それの返事……。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 十五億円のうちから四千四百万円を引いて、十四億円何がしというものを出して、四千四百万円というのを、これをまた計算して、そしてまたこれを加えたということです。
  74. 坂本昭

    坂本昭君 それからあとの点……。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) あと何でございましたか。
  76. 坂本昭

    坂本昭君 あと三つの請求権が照応して……、ちょっとこまかくなりますが、それをこの際はっきりしておいてもらいたい。
  77. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 条約局長から御答弁いたします。
  78. 中川融

    政府委員(中川融君) お尋ねは、昭和三十年の協定案の第三条に書いてありますカッコの一、カッコの二、カッコの三ということで、タイ側の請求権を放棄する規定がございます。このカッコの一がいわゆる十五億円、特別円勘定の残高、これから四千四百万円を引いたものに相当するわけでございます。カッコの二は、その四千四百万円になる、要するに金売却協定未実行の分、これは三つ、中に細目の区分けがございます。その三つの売却契約に相当する分でございます。第三が〇・五トンの金、タイ名儀の金が日銀にありましたものをタイに渡すというその義務、それに関連するものが第三項でございます。したがって、一、二、三がおのおのお上げになりました三つの項目に対応しているわけでございます。
  79. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、条約第三条の三通の書簡による金売却約束分四千四百万円は、十五億円中に含まれるという見解のもとに計算されているわけですね。
  80. 中川融

    政府委員(中川融君) これは売却契約に基づきまして、金を向こうに売る際には、その代価として十五億円の中から特別円勘定を差し引くわけでございます。この三つの分は十五億円の中に含まれるわけでございます。
  81. 坂本昭

    坂本昭君 金塊の天引き渡し分〇・五トンというのが昭和十六年十二月の八千万円軍費借款の未払い残額に対する積立の未引き渡し分と思われるのでありますが、大蔵省発行の国の予算昭和二十四年版、これの貴金属特別会計の項を見ると、インドシナ、タイ等、この等というのには他の国を含むかどうかの問題も残っておりますが、とにかくインドシナ、タイ等のイヤマーク金七十二・七トン、ちょうど八千百八十四万ドルになりますが、これが米占領軍に接収されたとしてあり、国の予算の二十七年版、これを見ますと、これらは占領軍が当該国すなわちフランス、タイ等に引き渡したとしてあります。このインドシナの分はフランスが三十ミトン引き取ったといわれていますから、残り三十九・七トンがタイなどのものとなるわけでありますが、これが全部タイのものとなっていると、金一グラム四円八十銭で一億八千万円となり、現行レートで計算しますと百六十億八千万円ということになるわけですが、この天引き渡し確認〇・五トンの金塊、この〇・五トンの金塊は、日本が積み立てなかったために生じたものか、これは条約局長でけっこうです。当局の見解を伺いたい。あるいは積み立ててあったのが、占領軍が正確に引き渡さずに紛失したものであるか、これも明確な当局の見解を伺いたい。もし紛失したということになれば、これはたいへんなことになろうと思うのです。で、今度の九十六億円どころの問題ではなくなってくる。今の点について明確な御答弁をいただきたい。
  82. 中川融

    政府委員(中川融君) お尋ねの点でございますが、大蔵省の資料、実は私、直接承知いたしませんが、タイに渡しました金塊、これはタイの金といたしまして戦争中に日本銀行の倉庫にありました金の中で、タイにイヤマークしたものがあったわけでございます。そのうちこのタイに戦後に引き渡したわけでございますが、その引き渡し分、すなわちタイにイヤマークしておるうちの〇・五トンが連合軍からの指令によりまして、それは日本の戦争中の占領地域、つまりタイ以外の占領地域、具体的に申せば英国の領土から持ってきた金である、したがって、イギリスに引き渡せという指令が参りました。〇・五トン分はタイにイヤマークしておりましたけれども、その分はタイにはいかずに、この分だけは英連邦に引き渡すように指令を受けたのであります。したがって〇・五トンは戦後イギリスに渡したのでありますが、その際、このタイ側はこの〇・五トンのイヤマークされた金がイギリスにいくことは認めたけれども、それと同量の金を将来自分のほうに渡してもらう権利を留保したのであります。その留保の分が〇・五トン残っておりまして、これを三十年協定の際にポンドで渡したわけでございます。
  83. 坂本昭

    坂本昭君 それはおかしい。それでは日本としては〇・五トンの金塊は、この占領軍の、当時、命令によって引渡した、引渡したが、それはタイへいかないでよそへいった。場合によれば紛失したかもしれない、そうしておいて、あとの責任をわれわれ日本がこれを負わなくちゃならない、これはどういう理屈ですか、これは総理大臣から……。
  84. 中川融

    政府委員(中川融君) これは戦争中に日本銀行の中でタイにすでに売り渡しまして、その金、具体的な金にこのイヤマーク、タイに対して渡しているもので、すなわちタイの財産としてイヤマークしておったのでありますが、その金自体は別にタイから来たのではなく日本の金でございます。日本の金として、これをどこから日本が入手したかということが問題になったわけでございますが、戦後に、これはそのときの連合軍の調べによりますと、日本が英連邦の領土から戦争中に取ってきたものである、そういう金であるから、これはタイのものに一応なっておるけれども、その金塊自体は英連邦のものであるから、戦領後、英連邦のほうに引き渡すべし、日本人が戦争中略奪してきた財産であるということで、引渡命令が来たわけでございます。したがって、日本はタイに金塊を売り渡す契約をして、すでにそれは実行して、金をイヤマークして日銀に持っていったのでありますが、その金自体は連合国軍のほうから、いわばクレームがつきまして、これをそちらのほうに略奪財産として渡さなければならないわけでございます。したがって、日本としてはそれにかわるものをタイに将来引き渡せという義務が出ておったのであります。したがってその分を今度はポンドで引き渡したわけでございます。
  85. 坂本昭

    坂本昭君 この金の未引渡分〇・五トンは、最終協定文では、タイ外務省の経済局長とタイ銀行総務部長が一九五〇年一月に、日本の占領中になりますが、署名した金の引渡確認書に掲げられている未引渡分とされているのですが、この彼らの行なった確認書はアメリカ占領軍と行なったものであって、いわば日本としては関知しない。しかし日本としては関知しないが、タイの外務省では、これは占領軍との間に今の引き渡しの確認書を受け取っているのだから、その点は文書によって日本の責任が明らかになっているのではないか。
  86. 中川融

    政府委員(中川融君) この三十年の協定の第三条の中に、第三項に、今御指摘になりましたような引き渡しの確認書ということが書いてあるのでありますが、一九五〇年一月四日に署名した金の引渡確認書、これは結局〇・五トン分だけは渡っていない、それ以外の分が渡っている。そういう意味の確認書でございます。この際、これはしかもこの分はイギリスに渡すことになるのであるから、将来引渡分の〇・五トンについては、タイ側は同等のものを日本からもらう権利を留保するのだということを書いた確認書でございます。したがってこのとき司令部の、いわば司令部が仲立ちいたしまして、日本一つには、タイに対し未引渡分のタイのイヤマークした金塊を渡しますと同時に、〇・五トンはタイに渡さないということをこのときタイ側と約束したのであります。渡さなかった〇・五トンについては、タイは、そのとき同じものを将来日本からもらう権利を留保するということをはっきり書いたものがここに書いてある金の引き渡し確認書でございます。これに基づきまして請求権を持っておる、この三条の三項で、タイ側はこの三十年協定の結果といたしましてこれを放棄するということをここに確認したのがこの三条三項の規定でございます。
  87. 坂本昭

    坂本昭君 今の確認書の写しをひとつ資料として提出していただきたい。
  88. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 条約局長、出せますか。
  89. 中川融

    政府委員(中川融君) はい、承知いたしました。
  90. 坂本昭

    坂本昭君 まだこの点はさらに追及したいと思いますが、さらにほかの点にわたって非常に疑問の点が多いのであります。で、たとえば戦争中の同盟国間の債権債務関係は、敗戦の場合に一体どうなるのか。
  91. 中川融

    政府委員(中川融君) 戦争中の同盟国相互間の債権債務が戦後どうなるかということについては、国際法上きまった原則というものはないわけでございます。しかし、前例はいろいろあるのでございまして、たとえばドイツとイタリア、あるいは日本とドイツというような関係におきましては、条約におきましてお互いに相互主義を条件として放棄するということを書いた事例があるのでございまして、タイの特別円協定の際にもこのようなことをする例があるから、日タイ間は同じようにしたらどうか、こういうことを日本側はいったのでありますが、タイが承知しなくて三十年の特別円協定ができたわけであります。
  92. 坂本昭

    坂本昭君 特に、タイは同盟条約とこれに付随する協定の廃棄通告を行なってきておる。したがって、タイの対日債権というのは私は無効ではないかと思う。この点はどうですか。
  93. 中川融

    政府委員(中川融君) 今の点は外務大臣からお答えになったのでありますが、廃棄通告をして参りました。したがってその日以後、この戦争中の特別円設定に関する日タイ間の覚書は失効したわけであります。しかしながら、そのとき現在で日本銀行の帳簿に残っておりました十五億特別円というこの日本側への債権、これは依然として有効であるわけでありまして、その点でこれをやはり何とか解決しなければいけないということが三十年の特別円協定の一番のもとになったわけでございます。
  94. 坂本昭

    坂本昭君 この前も、三十年協定というもの自体が非常に私は疑義に満ちておると思う。当時もちろん審議もされたのですが、いろいろの資料提出などの関係で十分されていない。あいまいの中で政治的解決が行なわれ、さらにまた今度再び大所高所から政治的解決が行なわれておる、そういう大きな疑点が私はあると思う。さらに、日タイ同盟を結んだのは昭和十六年、そうして昭和十七年一月にタイは英米に対して宣戦布告をしておる。昭和二十年に日本が降伏するとともに、二十年八月十六日、米英に宣戦布告の無効通告をタイのほうから出しておる。そして二十一年一月に英国とは戦争妥結の条約を結び、米国は宣戦布告無効通告を認めて戦争しなかったことにして、今度はアメリカはタイを戦力拠点としてつまり利用するようになり、そして御承知のように昭和二十五年には米タイ軍事援助協定ができ、二十九年にはSEATOの中心がバンコックに置かれる。そうして、二十九年の九月に米人顧問が東京に来て、三十年八月にタイ特別円の協定ができる。非常におかしい経緯をわれわれは歴史的に認めざるを得ない。私は明らかにこれはアメリカの示唆によるものだと思うのです。当時、一体昭和二十八年か二十九年、池田さん何をしておられましたか。そうして今のこのタイ特別円の協定をめぐってあなたはどういうふうにお考えになられますか。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は昭和二十七年の十一月に通産大臣をやめまして、二十八年の五月に自民党の政調会長になったと記憶しております。それで二十九年のいつごろでございましたか、春か夏の初めに政調会長をやめまして幹事長になったと思います。二十八年の中ごろから二十九年の中ごろまで政調会長、それからその次、幹事長をやっておったと思います。
  96. 坂本昭

    坂本昭君 あとでまたその点はお尋ねいたします。  それで、このタイの場合の九十六億の扱い、こういうところで経済協力の問題が出てくるのであります。それで御案内のとおり、賠償は最初ビルマとの賠償から始まったのですが、これが二十九年の十一月に調印されて、三十年の四月に発効しています。ところが、南ベトナムの賠償が大詰めにきたときに、ビルマはおこって例の第五条の再検討条項の時限爆弾の爆発をさせてきた。そうして協定発効、これ四年たっても経済協力というものが実施されていない。先ほどこまかい点について外務大臣は落とされたと思うのですが、このビルマの経済協力について昨年少し方針を変えたように伺っておる。が、この経済協力というもの、この扱い方が私は非常に問題点を含み、紛糾のもとになってきていると思う。たとえばこのタイの三十年協定の場合にも、あと九十六億残っておる。これは投資並びにクレジットというつもりでおったのですが、その間に九十六億円を利用して日本鋼管あるいは丸善石油、またあるときには富士車輛と丸善石油、こういう人たちによる石油精製の建設プランができておったと聞いておる。しかし、これは海外石油資本と結びついたタイ国の内部政治事情のために妨害を受けて成立しなかった。私はこの経済協力がきわめて不首尾であるということ、これは政府当局の責任であろうと思う。そうして、こういう経済協力が不首尾でうまくいかないために、国民はいわばつんぼさじきにほうり上げられておいて、今度こうしたタイ特別円の九十六億というような問題が出てくる。しかも、今回こうしたことで九十六億円がきまれば、こういう日本とタイ、つまりこの前の三十年協定のときもずいぶん日本はがんばって、そのがんばった立場というものを全部放棄してしまうということは、今後の、まだ賠償問題は終わっておりません、あと引き続いてビルマやその他、あるいはシンガポールあたりからも虐殺された人の補償の問題も出ている。また、太平洋の旧委任統治等についても出ておったはずであります。今後の賠償に大きな影響を与えると思うのですが、総理大臣の御意見を承りたい。
  97. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今経済協力の問題は、賠償を払っておるフィリピンあるいはインドネシアとは非常に円滑にいっております。それから、ビルマとは五千万ドルの経済協力がほとんど行なわれていないのであります。これはやはりその国によることでございまするが、こういう経済協力と、それからタイとのこの事情、関係全然そのもとが違っています、性質が全然変わっているものでございまして、こういうことについて他の国への影響は私は全然ないと思います。
  98. 坂本昭

    坂本昭君 さらにタイ特別円の九十六億無償支払いという場合に、タイの国民がほんとうに喜ぶかということ。向こうからの情報によれば確かにこの旧タイ貿易の赤字の穴埋めには一応なるかもしれんが、現在日本のいろんな製品、特に紡績関係のダンピングによって、日本品は二五%ぐらいダンピングしているようです。そのために向こうでは相当な倒産も相次いでいる。タイとしては、農産物を買い付けてもらいたい希望のようですが、これさえ、米も、昨年と一昨々年比べると四四%ぐらいタイ側の輸出が減っている。こういうことでは、タイの一般国民としても非常な迷惑だといってこれを歓迎していない。これでほんとうの賠償になるか、いかがですか。
  99. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは全然賠償の観念じゃないのでございます。そしてタイの国民感情はどうかとおっしゃいますが、私が参りましたときに、在留邦人の意見も聞きました。そしてきめたあとの在留邦人の喜びようもたいへんであります。そして政府要路の方のみならず、国民全般が非常に喜んでおるということを、この目で見てきたのであります。  御承知のように、タイと日本との関係は、最近の統計では、日本の輸出が一億一、二千万ドル、向こうからの、日本の輸入は六、七千万ドル、五千万ドル程度の差があるのであります。一昨年なんか、もっとひどかったと思います。ただ米が入らないようになった関係上、われわれとしては日本に必要としたトウモロコシを向こうで栽培して、今五、六十万トン、六、七十万トンのトウモロコシが日本に来ている。そういう状態でも、なおかつ二対一というような状況でございます。だから昨年なんかは、五千万ドル日本の輸出超過、百八十億円の輸出超過である。そこで十億円払いましたからといっても、百八十億円の輸出超過、向こうは輸入超過、十億円分日本が徴発物資のかわりに出すからといって、そう貿易上の赤字が非常に減るというわけのものでもございません。また、サリットと私の話では、福祉国家、とにかく社会保障的なものに使いたい、こういうふうな関係でございまして、私は日タイ関係には非常に好影響を与えておると見て参りました。  またその後の状況におきましても、日本の商社の方々が、あれで非常にタイにおきましても日本人の肩身が広くなった。そして今後の日タイ貿易は、非常に不安であったけれども、よほどよくなってくるという情報も聞いておるのでございます。
  100. 坂本昭

    坂本昭君 この九十六億円が預託された場合に、これがどこの銀行に預託されるのか。さらに預託された場合に利子はどうなっているのか、これについて御説明をいただきたい。
  101. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は五月に支払うということをきめた気持は、向こうは当初現金即時払い、あるいは二年間に払ってくれ、こういうあれでおったのであります。われわれは十年間、こういうことでがんばって、結局八年になったのですが、向こうの予算が十月から九月で、なるべく早く使いたいということがありますので、五月ということにいたしました。当初の十億円は五月に出したとすれば、すぐそれが使われずに、銀行に預けられるかもしれない。しかし原則として、私は昭和三十八年度に支払うべきものは、三十八年の五月に支払う場合におきまして、もう日本からの資本財や役務の買付が済んで銀行預金にならずにすっと支払われるということが望ましいことであろうと思います。初年度におきましては、まだアイテムがきまっておりませんから、一時預かりということもありましょうが、原則としては私はもう前から約束いたしまして引き渡し済みで、すぐ現金が日本の商社、いわゆる輸出社に払われると思っておるのであります。預金というものが主体ではないことははっきりしております。ただ、初年度において、たまたま預金するというような場合のときに、金利を、定期預金になる方法ではいかないというので、通知とか普通預金とか、あるいは当座ということにいたしております。当座であれば無利子でございます。普通預金、定期預金にいたしましても日歩六厘とか七厘程度で、これは貯蓄という意味のものではないと思います。銀行をどこにするかということにつきましては、まだ聞いておりませんが、タイの銀行もありましょうし、日本の内地本店の銀行もあると思います。その点は今外務省、大蔵省で相談しておると思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。
  103. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 関連ですか。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。総理は今支払いの場合、物資とか役務にすっと向こうのほうへ支払われていくと、こういう御答弁があったのですが、最初総理は、たとえば七十一億を七年間七分の利子でころがしていくと九十六億くらいになると、そういうふうに総理考えていたやに聞いておるのであります。もし、この支払いの場合、預金した場合、利子がつくわけですが、総理は預金をされないであろうという、すっと向こうへ物資とか役務で支払われるのだ、こういうふうに言われておるのですが、それはこちらの考えであって、総理はそう考えるのです。しかし、これが預金された場合はどうなりますか。はたして預金されないということは、私ははっきりしないと思うのです。ですから、たとえば普通預金の利子でもって返すことになると、百億以上のことになる場合もあるわけです。こういう点はどうなっておるのですか、預金は拒否するのか。あるいは金利をさっき当座なら無利子であると、こういうことを言われましたが、そういう利子のつかない預金になると、そういうはっきり確認をされたのか、あるいは預金というものを拒否するのか、その点がどうもはっきりしてないわけです。こちら側はそういうことを望んでないと言われますが、あちら側との話し合いがあるのかどうか。また実際にはどうなのか。その点は九十六億では済まなくなってくるのじゃないかと思うのですね。その点はどういうことですか。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的にサリット首相と私との話をいたしますと、あそこに大きい水道管がずっと並んでおります。私は、あの水道管を見るとフランスのものじゃないかと言ったら、いや、実は日本とフランスが水道計画を競争したところが、フランスが勝った。自分としては日本に落とさせたかったのだけれどもと、こういうような話です。ああいうものを即座にやらなければいかぬ、それで早く金を回せと、こういうことからきまして、そういうことなら年数を君らの一年とか二年というのを八年まで延ばす、しかもおしまいに二十六億となにしたのだから初年度を早くやりましょうと、君らの会計年度に一つ出そうというので、五月ということにいたしたのであります。私とサリットとの関係におきましては、もう来年から注文がきまして、日本から船積みするというところくらいをずっとやらなければ私はいかぬ。この気持はわかるけれども……、私は初め金利の問題なんかあまり考えずに、預金なんか起こらぬだろう、こう思ったところが、交渉中で、とにかく全部使うわけじゃない、少し残ったらどうかというので定期預金というような話が起こった。それはいけない、当座かあるいはとにかく預金して利殖するという考え方は、僕とサリットとの間には原則としてないのだということで、当座あるいは普通、通知ということに相なったと思います。で、この問題は両者の誠意の問題でございます。私はタイが復興を急ぎ、社会保障の拡充を急いでやろうとすれば、早くからどんどん注文がくることを私は考え、またサリットもそう思っておると思います。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は今誠意の問題と言われましたが、預金をさせる意思がないというならば、協定の中にはっきりこれはさせる必要があるのじゃないですか。ただ、すっとほかの物資、役務でいっちゃうというのでは、こちらがそういうふうに期待している。で、話し合いでは預金にならないような話し合いになっているといいますけれども、それははっきりしてないわけですね。ですから、そのくらいはっきりさせる御意思があるのならば、協定ではっきりこれをうたったらどうですか、それはうたえないですか。
  107. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点は合意議事録の第十三項に書いてございます。ただ預金といいましても、これは利殖を目的とするものではなくて、保管を目的とするものであるという趣旨で、これはやっぱり銀行に預けたほうがいい、こういうことでございます。財政資金としては九十六億より出ないわけでございます。銀行に入っておりますればある程度の利子がつくことは、これは仕方のないことでございます。そういう利子がつく問題も起こらないようにしよう。どんどん金を使い切るようにしようということに双方で合意いたしまして、議事録にさような約束がうたってあるわけでございます。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連質問ですから簡単に。一問だけでやめます。合意議事録では内客はどうなっていますか。もしはっきりと、利息のつく預金はしないと、こういう合意になっているのですか、それならこの問題は起こるはずはない。ただこちらが、さっき総理は誠意の問題だと言われておるのですけれども、しかし、そんなにはっきりしているなら預金の問題が、利子の問題は起こるはずがないのですよ。合意議事録でははっきり利子のつく預金をしない、こういう合意になっているのですか。
  109. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) でございますから、利殖を目的とする定期預金はしない、少なくとも当座預金、普通預金、あるいは通知預金までであるということにしたわけでございます。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後です。利殖を目的とするとか、しないとか、それは判断になるわけです。結果として利殖になる、金利がつけば。その点もっとなぜはっきり協定にうたえないのですか、これは問題になりますよ、今後。今後そういう問題が起こったときにどうするかということを、あらかじめ協定の審議をするときは、やはりそこまで考えておかなければならないわけですね、もう一度念を押して伺っておきます。
  111. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま申し上げましたように、合意議事録の十三項に「協定第四条1に関連し、毎年すみやかに協定に定める調達契約を締結し、実施し、及びこのための特別勘定からの支払を行ない、毎年支払われる金額ができる限り短期間に費消され、特別勘定の残高が最小限度にとどまることとなるようにすることがタイ政府の意向である。」ということを先方から約束しておるわけでございます。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連。
  113. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 関連ですか、簡単にひとつ。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの合意議事録は資料として出してもらいたい。その上で関連質問をいたします。
  115. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 政府委員に申しますが、資料として出せますか。
  116. 中川融

    政府委員(中川融君) 資料として、まだ出してなければ至急出します。
  117. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 出すそうですから。
  118. 坂本昭

    坂本昭君 次に、ガリオア援助の問題について、簡単に時間の関係上申し上げますが、第一点は債務の問題について、これは十分お尋ねする時間的余裕がありませんので、一点だけ申し上げたいのは、池田総理の従来からの御答弁をずっと聞いており、またさらに政府答弁を通じてわれわれの理解する範囲内では、少なくとも池田総理がかつて大蔵大臣としてロバートソンと会ったとき、あのときの池田・ロバートソン会談以来、いろいろな問題が私は変わってきておると思う。このガリオア援助についての方針もあのときから変わってきておると思う。私はこの際、この当初の池田・ロバートソン会談の内容について御説明いただきたいと思います。
  119. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十八年に私がワシントンでロバートソンと話をした前から、私は債務と心得ておるということを言っております。その以前にも内輪での外務大臣との話はあったと思います。私がロバートソンと会ったときの問題は、このガリオア、エロアの問題を早急に解決しよう。ドイツのほうも解決できた、直ちにこの交渉を開始しよう、こういう原案であったのであります。しかし、ドイツと日本とは違う。直ちにというわけにはいかないというので、結局近い将来にしよう。こういうことは東京で会談しよう、こういうことに相なったのであります。以上がロバートソンと私の会談の内容であります。
  120. 坂本昭

    坂本昭君 それだけでしたか、その他にあったと思うのですがね。ガリオア援助の返済金の使途についてお伺いしたい。使途についてのいろいろな取りきめがありますが、そのうちで、まず教育文化のための二千五百万ドル、これは何に使う予定であるのか。
  121. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはその後アメリカ側が、日本が返済いたします金の中から、千二百五十万ドルずつ二回にわたって、最初の分から円に積み立てよう、こう言って参っております。したがいまして、これが円貨として日本に残留する、滞留するわけでございますが、これをどういうふうに使うかということでございます。この点については、教育文化関係に役立つように、十分日本側の気持も聞いて使いたいということのようでございますが、最終的な決定はいまだいたしておりません。
  122. 坂本昭

    坂本昭君 ライシャワー駐日米国大使の通報、これが資料としてありますが、この通報は何を意味するか、特に非常に急いでおる。第一回第二回の支払いの中で、日本円を要求しているわけです。急ぐ理由はどういうことですか。
  123. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは第一回、第二回で二千五百万ドルの円貨相当額の約百億円の円貨が積み立てられるということで、これがまた利殖といいますか、これこそ銀行預金になります。これが利子を生んでいくとすれば、よけい使える。これはみんな円貨でございますから、外貨資金によらざる日本の留学生の渡航にも一そう利益するところである、こういうことではないかと思います。
  124. 坂本昭

    坂本昭君 昭和三十七年一月三十一日に文化及び教育の交流に関する日米合同会議の最終コミュニケが発表されておる、これとの関係はどうですか。
  125. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これとの関係は別に今のところはございませんわけです。教育文化に関する合同会議は、双方の、この問題に対して識見を持ち、興味を有する人たちが集まって、フリー・ディスカッションをしたということでございまして、これと直接の関係はございません。
  126. 坂本昭

    坂本昭君 しかし、このコミュニケの中で重点が置かれているのは、勧告が政府及び民間の機関によって検討されることを希望する。つまり勧告を十分に聞いてもらいたいということ、さらに民間資金の獲得に役立つような機関が作られなければならない、そういう特に二カ国間の機関を創設する必要がある、そういうことが非常に強く主張せられておる。これがこのコミュニケの中を通じて機関を作ること、さらには資金をかまえること。非常に強くたびたびこれで指摘されております。これは、このことと今の返済金の使途とは密接な関係があろうかと思います。重ねて外務大臣意見をお聞きいたします。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この合同会議の勧告は、要するに勧告でございまして、そういう意見を強く参会者一同が持った。しこうして、政府においても十分これを尊重してもらいたい。こういう気持の表明でございまして、拘束力のあるものではございません。しかしながら、日米双方において、教育文化に関する双方の理解を深めようといいます場合には、そこにやはり資金が要るということを考えることも当然でありましょうし、そういう気持の表明ということは十分私どもも承っております。しかし、さればと言って、今の二千五百万ドルと、これが直接関係がつくのか、あるいは将来つくのかということになりますと、今お答えいたしたように、まだその点はきまっておらない、こういうことでございます。
  128. 坂本昭

    坂本昭君 さらに支払金の使途に関する交換公文の中に、適当な立法措置を経ることを条件とする、これはどういうことですか。
  129. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは日本の返済金は、アメリカに返されるわけでございますから、アメリカのほうの議会において、これに対して適当な承諾を与える、こういうことだと思います。
  130. 坂本昭

    坂本昭君 さらに、このうちで、低開発国における経済援助に関する合衆国の計画、こういう言葉がありますが、この合衆国の計画については、どういうような協議をしてありますか。また、さらに今のような立法措置がとられる場合の事前の協議については、どういうような相談がしてありますか。
  131. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカにおきましては、対外援助法というものを昨年の六月に通したわけでございますが、その際の予算措置として七十二億ドルを五カ年間で支出するということに議会の協賛を経たようでございます。そのうちで毎年三億ドルずつガリオアその他の返済金をもってこの七十二億ドルの基金の財源に充てる。すなわち、初年度は十二億ドル、あとは十五億ドルになっておったと思いますが、その五カ年間に毎年度約三億ドルの返済金をこれに充てたい、こういうことで決定しておるようでございます。さらにいわゆる低開発国援助、これをアメリカはどういう計画を持っておるかということにつきましては、いまだ私どもも詳しく聞いておりません。このガリオアの返済金が国会において御協賛をいただきましたら、私ども十分この点を討議していきたいと考えております。
  132. 坂本昭

    坂本昭君 さらに、この交換公文の中に「東アジアの諸国」と書いてありますが、この言葉は、これはたしかケネディ大統領が新しく使い始めた言葉だと思うのですが、あるいは池田さんが行って教えた言葉かもしれませんが、この「東アジア」とは一体どこを含むのか。さらに「深い関心を有する同地域」、この「地域」ということはどういうことを指すのか。具体的に一つお示しいただきたい。
  133. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この協定を作ります前に覚書に署名したわけでございますが、覚書の中では「アジア」というふうに言っております。今度の協定になりまして「束アジア」ということになったわけでございますが、従来、われわれ東南アジアと言っておりまするのが通例でございまするが、東南アジアと言いましても北東アジアもある。そこで、アジア全体を含めたらどうか。ところが、アジアを西と東に分けて、インド、パキスタンというものについては例の債権国会議によりまして相当な援助が行なわれておる。そこで、そういう対象になっていない地域の計画というものを考えたらどうかという趣旨のようでございます。しかし、非常に厳密に地区を限定して、これに入っていなければどうこうというような非常なビビッドなものではない。ばく然と東アジアアジア全体と、こういう意味にとっても差しつかえないのじゃないかというふうに考えております。
  134. 坂本昭

    坂本昭君 いや、あなたのほうでは簡単に言われるけれども、この「東アジア」という言葉には非常に私は重大な問題点があると思う。さらにまた、日米が「深い関心を有する同地域の安定と平和」、これは「安定と平和」とはどういうことを指しているのか。その地域の国民の福祉ということではなしに、「同地域の安定と平和に不可欠であること、」というような条件が書いてある。さらにもう一つ不可解なことは、「この目的に寄与する開発援助が緊要であること」、この「緊要」という言葉、これは本文では「アージェント・ニード」という言葉を使っておる。一体、経済開発にアージェント・ニードということがあるのか。この交換公文の中で示されている東アジア、また同地域の安定、さらに開発援助の緊要性——アージェント・ニード、これらを通じて、この支払金の使途というものが、今朝来たびたび指摘して参りましたように、普通の経済協力ではないのじゃないか。非常に軍事的な目的を多分に持っているのではないか。現に南ベトナムの状況など、総理大臣は、宣戦布告された戦闘の状態だということもよく知っておられないようです。しかし、今日アメリカの司令部が南ベトナムにおって、五千人の兵力が行っている。そうして五十人に一人はアメリカの兵隊が指揮を取っている。そういうふうな、これこそきわめて切迫した状況にある。私は、そういうことに対応されて、このガリオア資金というものをわれわれ国民が債務を持っていなかったにもかかわらず強行して、そうしてこういうことにつくろおうとするのではないか。特に今のアジアの地域の問題とさらにアージェント・ニードという言葉について釈明を求めます。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この交換公文は二つございまして、御承知のように、第一項については低開発国地域に対する経済援助をしたいということ。ところが、その低開発国といいましても非常に範囲が広いので、日本が非常に関心を持っているアジア中心考えてくれ。これはこちらの要望でかような言葉が第二項に入ったわけでございます。しかし、これは、開発援助について大いにお互いに協議しようということでございまして、第一項は援助するということ。これは二つ分かれておるのでございます。アジアの問題については大いに日本の知恵をかりたい、また日本の知識によって教わりたい、こういうアメリカ側の気持を出したわけでございます。そこで、東アジアの地域の安定と平和はなぜこう書いてあるか。これはもうこの地域が経済が交流に赴き、その経済が安定することによって平和がくる、こういう意味でございます。  それから「開発援助が緊要である」というのは、これはアジア地区における貧困というものが早く芟除されねばならない、それによって世界の平和、アジアの平和というものもぜひ招来しなければならない問題であるという気持を、これは日本側としても大いに主張いたしまして、かような字句が入ったわけでございます。本来、この支払基金というものは、これはアメリカに入るわけでございますので、この使途について日本が注文をつけるということは、これは普通の考え方からいいますと、若干わがほうの考え方というものは、金を払っておいてその金の払い先まで言うことでございますから、普通の考え方からいいますと、よくそこまで聞いてくれたのじゃないかという気もするのでございますが、西独の場合はさようなことがございませんわけです。西独は別にその資金の使途等については何も申しておりませんことは御承知のとおりでございます。
  136. 坂本昭

    坂本昭君 大体ガリオアの援助に対する債務はわれわれは持っていないと思う。時間の関係でその点今日ここで議論できなかったのだけれども、大体、債務のないものをむちゃくちゃに勘定書を突きつけられて払う段階になって、それはあたりまえですよ。せめてそのぐらいまであなたが注文をつけるのはこれはあたりまえのことで、勘定書に応じないというのが私は基本的な態度だと思う。  次に、日韓会談の問題について若干お尋ねしたい。総理は日韓会談の政治的折衝を非常に急いでおられる。なぜこんなに急がれるのか。しかも、新聞の報ずるところを見ますというと、向こうのペースに乗せられてこの政治折衝を急いでいるふうに多分に見られる。昨年秋十一月に池田・朴会談をされたときに何か特別な約束をしているのではないかと思われる節がある。昨年の池田・朴会談の内容、また、なぜ急がれるか、その理由をひとつ御説明いただきたい。
  137. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国と日本との歴史的、また文化的、地理的その他過去の状況から申しまして、私はできるだけ早く国交を正常化したいという気持を持っておるのであります。これは多数の国民が私は共感されると思います。そうしてその前提に立ちまして、私はこの前朴議長と、平和条約四条の請求権の問題、これはやっぱり法律的根拠のあるものでなければならない、こういうことを申し合わせたのでございます。
  138. 坂本昭

    坂本昭君 今の韓国の経済の実態はどうであるか。たとえば新しい朴政権が五カ年計画を立て、また経済成長率を、これはどうも池田さんにならったのかもしれませんですね、計画期間中平均七・一%。そうして一九六二年を五・七%。これはもう総理としては指摘されたことだと思いますけれども、韓国の実績を見るというと、一九六一年が六〇年に比して〇・一%成長率が落ちている。しかも、これは人口増加率から計算し直すと、二・九八%の減少。大体三%減少している。これは公式の発表なんですよ。別にわれわれが作った発表じゃなくて、公式な発表を通してでもこういうふうに経済成長率というものは悪い。こういう悪いところへもっていって今度保税加工の調査団が行って、そうしてその調査団は向こうで韓国側のいわば言いなりほうだいの条件をのんでいるように伝え聞いておる。たとえば無為替、延べ払いにする、あるいはあとの保証は政府としてしない、それから工場の製品は再輸出する、非常に条件の悪い相談を進め、かつまた、経済の実態は非常によくない。こういうふうなことを十分に御理解になっておられるかどうか。その点が一点。  それからもう一つは、それは、あらゆる国と国交を結ぶことはけっこうですが、結ばなくちゃいけないところと結ばないでおって、何を好んで現在戒厳令下にあるところの軍事政権、戒厳令下にある軍事政権と急いで手を結ばなければならぬ、そういう理由がわからない。この点についての御説明をいただきたい。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国の経済成長率は存じませんが、大体一人当たりの所得が日本の十分の一程度ではないかと思っております。しかし、五カ年計画によりまして急速に経済成長を企図していることも聞き及んでおるのであります。  第二段の戒厳令下の何で何ですが、私は向こうの政治の状況いかんにかかわらず早く正常化したいということで、パキスタンなんかももう過去三、四年、戒厳令下でございます。安定への基礎固めの状態と認めておるのでございまするから、できるだけ早く正常化いたしたいと思います。  ただ今の加工貿易とか延べ払いとか、こういうことにつきましては、私は何も聞いておりません。政府としてそういう約束——経済協力という段階にはまだいっていないのであります。
  140. 坂本昭

    坂本昭君 向こうの政治状況はどうであろうとも一刻も早く手を結びたいというのは、われわれ国民としては受け取れない。もし政変が起こった場合、そうした場合に一体総理としては責任をどうとられますか。
  141. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先方の経済の状況でございまするが、先方で昨年クーデターがありまして以来、不正腐敗ということを非常に強く排撃いたしまして、民生安定のための諸施策を強力に実行して参りました。その結果、まあだいぶ経済状況がよくなったというふうに言われております。韓国の産業の中心は、御承知のように農業でございまして、農家人口は総人口の約六割を占め、食糧生産は年々増加しておりまするが、昨年の米作が一千八百九十万石という大豊作であった。このことはかなり軍部政権ではありまするが、農村対策が奏功したという面で、必ずしも暗い見通しではないということが言われております。それから工業面におきましては、現在のところ軽工業が中心でございまして、重工業はようやく建設の緒についたという程度でございます。物価問題につきましては、著しい上昇傾向は現在認められておりませんけれども、インフレの潜在的な危険性についても、韓国政府も十分に認識いたしまして、その対策を講じているようでございます。韓国の国民経済としましては、一九六一年の国民総生産が約一兆二千二百二十二億ホワン、邦貨換算では三千四百億円でございます。この経済成長率は、過去五年平均をとりますと、年平均五%というふうに言われております。  政権が安定しないのにと言われまするが、今申しましたような状況で、非常に経済状況は前よりよくなっておる。韓国の軍事政権は明年の八月には民政に移管するということを公約しておりますので、私どもはこの韓国との関係を改善するには非常に、現在よい時期であるというふうに考えております。
  142. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問……。
  143. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君。坂本君の持ち時間も切れておりますから、きわめて簡単にお願いします。
  144. 戸叶武

    戸叶武君 先ほどから池田総理答弁を聞いておりますと、この韓国の軍事政権の問題ばかりでなく、池田総理がビルマにおいて、あるいはタイにおいて、パキスタンにおいて、東南アジア一帯における異常なクーデター及び軍事政権に対して、クーデターというものは排撃するがという前置きをしているが、これはやむを得ないものであるというような形で、目的のためには手段を選ばずというような論理で、これを肯定しているような向きの答弁がありますけれども、これは私はゆゆしき問題だと思うのです。韓国の軍事政権に対しても、韓国のことであるから、われわれは内政には干渉いたしたくはありませんけれども、こういうアジアをめぐる反共を名とするところの軍事政権が、すべての国においてクーデターによって異常な政治状態をかもしているというのに対して、これはやむを得ないことであるという形において、これを受け取っているやり方というものは、先ほどの三無事件に対する総理大臣答弁もそうですが、これは軽視できません。昭和四年に山木宣治氏が殺され、五年に浜口総理大臣がピストルで撃たれ、六年にいわゆる三月事件、十月事件という錦旗革命のクーデターなるものが未然に発覚して、そのあとにおいていわゆる昭和七年の血盟団事件、五・一五事件、満州事変二・二六事件というふうに、このテロとファッシズムは、一個の軍事政権と戦争への道を切り開いて来たのです。三十五年におけるわが党の河上顧問の刺殺未遂、浅沼委員長の刺殺、昨年におけるところの中央公論社長宅におけるこの殺傷及びこの三無事件、あの一九二九年の世界経済恐慌の波濤の中から、テロとファッシズムが台頭してきたときの足どりとやや似ているような無気味なものを感じているのです。そのときに際して一国の総理大臣が、このアジアにおけるところの異常な空気の中に立って、これに消極的にしろ賛意を表するような言動を行なうということは、日本をテロとファッシズムの波濤の中に巻き込んでいく危険性というものがあると思うので、このあとで速記録を十分に調べますけれども、私は一国の総理大臣の言動というものは非常に注意深くやらないと、核実験に対する問題でも、クーデターに対する問題でも、三無事件に対する問題でも、反共を名とするならば、いかなることでもよろしいかと思われるような印象を国民に与えるときにおいては、日本の政治姿勢というものがくずれると思うのでありまして、この点に対する池田総理大臣の弁解、答弁をお願いいたします。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 速記をお調べ下さればわかると思いますが、戸叶さんのあれは誤解であると思う。私は先ほど申しましたように、クーデターは民主主義の敵である、私は目的のために手段を選ばない、そういう考え方は毛頭持っておりません。これは絶対に排撃すべきものでございます。しかしクーデターは排撃すべきものであるが、ほかの国がクーデターをやったら、そういう国は相手にしないというわけのものではございますまい。これは私は今言ったようにクーデターが必ずしも反共の線であるとは言えない。ビルマの二年前のクーデター等は、必ずしも反共から出たものばかりとは言えないので、ただ問題は、そういうことは民主主義にのっとり、自由を尊ぶわれわれとしては、絶対に排撃すべきものである、目的のために手段を選ばない、そういう問題のものではございません。ただ外国において、そういうことが起こった場合に、われわれはクーデターはきらいだからその国は相手にしないのだということも、これはいかがかと思うのであります。その国が文民政権に移るという前提で努力しているのならば、それは一応認めていくのが、国際の常識じゃないかと思うのであります。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して……簡単です。
  147. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) きわめて簡単に願いたい。木村君。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど外務大臣から韓国の経済に対する御説明がございましたが、これは資料として御要求しますが、先ほどの説明では、非常に楽観的な御説明でした。しかし、これでは、客観的にもっと実態をつかまなければいけないと思うのです。われわれが韓国関係の新聞で読んでいるところとたいへん違うのですよ。なるほど農産物は豊作でした。しかし、鉱工業生産はどうですか。それで、鉱工業生産のマイナスの成長率を農産物のこの非常な豊作の成長率でカバーしているのでありまして、過去五%の成長率は最近はどうなんですか。昨年あたり一%ぐらいじゃないですか。成長率は非常に低いのですよ。もっと実態を……。インフレにつきましても、為替の切り下げをやりましてから非常なインフレの状態にあるのですよ。韓国経済が非常に安定しているというようなことは、今の御説明ではあまり無責任であると思う。もう少し客観的に、資料は十分あるわけですよ、外務省の経済局か何かでお調べになったかしりませんが、もう少し客観的に、そのプラスの面もあるでしょう、マイナスの面もあるでしょう、そういうものはもっと正確に、この国会でございますから、先ほどのようなあまり無責任な、私も黙っていようと思ったのですが、あまり無責任ですからね、もう少し具体的な資料として、韓国の経済の実態について御報告していただきたいと思うのです。答弁を願います。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもの役所において作りました資料について申し上げた次第でございますが、なお御要求ございますからそのようにいたしたいと思います。
  150. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長から申し上げますが、外務大臣はなおよく調査してお答えをするという……。(「資料です。」と呼ぶ者あり)資料ですか、資料は別に出しますね。
  151. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ええ出します。
  152. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 別に出しますそうですから。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 資料は結論的なものでなしに、その資料を作った根拠まで揃えて出していただきたい。
  154. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) できるだけさようにいたしたいと思いますが、何分にも外国のことでございますから、一定の限度はあるかと思います。
  155. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど来の外務大臣説明を聞いていると、ほんとうに的確に韓国の実態をつかんでないと思う。韓国の実態をつかんでないところで、まあそのために調査団を派遣する必要があるかもしれませんが、しかしそういう安易な気持国民に対してこの日韓会談を進めろというような、そういう指導の仕方、訴えの仕方をすることは、はなはだ私どもとしては許すことはできない。特によその国の内政のことはとやかく言いたくありません。言いたくないけれども、とにかく軍事クーデターという、最も非民主的な方法で成り立っている政権をわれわれは認めることができない。かつ、今日イデオロギーを離れた報道関係の説くところでも、朴政権の明日の運命というものは私ははかり知れないものがあると思う。いろいろなあれを見ますというと、たくさんのクーデター計画が相ついで起っているようだ。そして多数の人が逮捕されている。私はこのことは経済的な不安並びに政治的な不安という点でこの朴政権というものの民主的な基礎というものはきわめて危険ではないか。この危険なところへもって、何をもって火中のクリを拾うのに急いでいられるのか。だから私はその点を追及しているのです。聞くところによると、池田・朴会談の中で密約がかわされたということも聞いている。この際明らかにしていただきたい。そういう勝手なことをあなた方おきめになって、しかもこういう経済の不安があり、民心の不安があり、政治が乱れている中で、日本国民に対しては十分な説明もしないで勝手な会談を進めるということについては、われわれとして許すことができない。今の点についてこの朴政権の民主的な基礎、さらにあなたと朴議長との密約という、そういうゆゆしい問題についての御答弁をいただきたい。
  156. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の見るところでは、朝鮮は、先ほど申し上げましたように、一人当たり年五十ドル程度ではないかと思います、もっといっておるか……まあ日本の大体十分の一ぐらいの一人当たりの所得ではないか、これが私の考えでございます。動きにつきましても、私はある程度はわかっておりますが、総理としてあまり詳しくしないほうがいいと思って大体の御答弁をしているわけであります。それからこれからの伸びにつきましては、やはり五カ年計画でいろいろやっておられるようでございます。私はその努力は見るべきものがあり、そうして来年の文民政権への移行を心から願い、努力していることを朴氏と会ったときにも感じるのであります。隣邦といたしまして、できるだけ早く正常化し、韓国人民の生活、福祉の向上はわれわれとして願うところであります。そういう意味におきまして正常化を急いでおるのであります。  朴氏との密約、全然ございません。ただ今申し上げましたように、請求権の問題は法的根拠のあるもの、そうして経済協力というものは請求権とは別である、こういうことでございます。密約があるとか何とかいろいろな御想像はあるようでございますが、この池田はそういうことはいたしておりません。
  157. 坂本昭

    坂本昭君 もちろん密約の内容を言うような人はあろうはずがありませんが、それほど疑惑の目をもって見られているという事実だけは、総理としては心にとめておかれる必要がある。そうしてまた、民政移管についてもあなたのほうでは率直にいろいろと意見を言っているそうですが、私たちの見るところでは非常な確実性がない。そういう点ではもっとわれわれとしてはこの国の問題については見てあげるというか、協力をする別の方法もあるのではないか。今のような行き方では非常に危険だということをわれわれとしては心配をしている。特に最近これは第七艦隊の司令官が二月の二十八日に記者会見で韓国の鎮海、ここにアメリカの基地がありますが、この領海で記者会見をして、韓国水域に核装備をした原子力潜水艦の配置を公表いたしております。私はこうした問題は、われわれとして韓国水域とは一体どこまでをいうのか。さらにこの問題について仄聞するところによると、小坂外務大臣が、これは去年アメリカへ行かれたときに、横須賀外五つ、日本の六つの港に原子力潜水艦の入港を黙認をする。これは従来原子力潜水艦の入港を断わると政府声明しておったのに反して、黙認をするという極秘の返答をしていると私は聞いている。これらのことは全然無関係ではないと思う。この韓国の場合といい、あるいはまた小坂外務大臣はおそらくあなたは否定されるでしょう、否定されるでしょうが、そういう話が伝わってきている。私はそういう点ではこの韓国の問題は、今のような安易な経済の見方で、この日韓会談を進めたりしている時期ではないと思う。そういう点について小坂大臣の釈明もおありでしょう、が、総理みずからひとつ御答弁をいただきたい。
  158. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私に関することですから、私にお答えさしていただきますが、さような事実は全然ございません。
  159. 坂本昭

    坂本昭君 もうこれで終わります。答弁が全くぬかにくぎで、われわれがほんとうに求めていることについての誠意のある答弁を得られない。韓国問題についてもこれをごまかそうとしている。そういう様子が見られるし、あるいはまた私たちが非常に今心配しているベトナムの問題についても総理並びに外務大臣からは、この取り上げ方について一言の説明もない。あなたたちは国民の目をおおい、耳をふさいで、そうして勝手なことをなされているようにしか受け取れない。で、特に先ほど来クーデターの問題も出ました。で最近皆さんも、総理も、あるいはまた情報関係を担当しておられる方々は御承知だと思うのでありますが、ラオスの問題やベトナムの扱いについては、アメリカの外交を扱っている人たちで相当危惧の念、というよりも非常な心配をして、たとえば昨年の八月の八日の下院におきまして、民主党のマルターという人が、これが、フレッド・クックという新聞記者がアメリカの情報局の内幕を書いたベストセラーがあります、これを取り上げて、そしてこれが現在アメリカの国会の議事録にそのまま載っておるのであります。余分がありますから総理に進呈いたしますが、これらの中に書かれていることは、もうキューバの政策が情報局としてのあやまちであったということ、さらにキューバだけではありません、イランだとかあるいはラオス、それらを事こまかに書いてあるし、またアメリカの国会自体で問題として取り上げている。私たちは、こうしたことを一体日本政府は十分に理解しているのかどうか。また理解しようと努めておるのか。そういう中から、たとえばラオスにも日本の軍人が現われている、そういうような新聞報道も出ている。またベトナムについては日本の新聞には出ないが、再三英文の新聞には出ている。英文の新聞には、金子某あるいは富岡某、そういった人の問題も出ている。まあたまたま山加電業の深井茂之助氏の逮捕された問題は、これは日本の新聞や週刊誌にも出ておりますが、しかしそういう点で、極東の事態というものは、謀略を伴って、非常に私はゆゆしい問題点を含んでいると思う。したがって、こうしたこととの関連性の中で、たとえばベトナムの問題も韓国の問題も、われわれとしては慎重に対処すべきではないかと思う。ところが、皆さんのほうでは積極的に事態を説明している。こういう状態であり、われわれは、だからこの極東の平和を守るために、また未開発の地域の経済援助のためにこうしなければならない、そういった積極的な意思表示ではなくて、こっちが聞けばそれに対してしぶしぶ答える、そういうことではわれわれはあなた方を信頼するわけにいかない。私はこの際特に今のクーデター論に関連して、この情報関係について、これはアメリカの場合は大統領が直接こうした国家安全保障会議にも出ております。で、総理大臣の最近のアメリカ外交における情報の取り扱いの問題、さらに工作の問題、こうしたことについての御見解を承って、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  160. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 当初の御質問で、ベトナムのダニム・ダムの問題をお聞きになりましたから、私はこれらについて詳しいことは存じていないと申し上げたのであります。しかしラオス、ベトナムのこの状況につきましては、私はもう昨年末、ことに内閣組織以来深甚の注意を払っておるのであります。最近のゴ・ディエンディエムの爆撃の問題、そうしてベトコンと南ベトナムの二十数万の陸軍、その間の確執の問題等、十分検討いたしております。またお話のアメリカ情報局の報告が国会の問題になったことも知っております。世論の的になったことも聞いておりますが、私はできるだけの資料を集め、外交に間違いのないように外務省その他を督励いたして注意いたしておるのであります。ただ問題は、アメリカの外交政策がどうだとか、アメリカの情報がどうだとかということを一々私が申し上げることは差し控えたいと思ってやっておるのであります。   —————————————
  161. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際委員の変更につきまして御報告をいたします。   石田次男君が辞任せられ、その補欠  として白木義一郎君が選任せられまし  た。   三時に再開いたすことといたしまし  て、暫時休憩をいたします。    午後一時五十五分休憩    ————・————    午後三時十四分開会
  162. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。杉原荒太君。
  163. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 総理大臣並びに関係大臣質問いたします。  第一は、地域間の所得格差の是正の問題についてであります。  まず、政府昭和三十七年度予算及び財政投融資計画等において、地域格差の是正のために特にどういう配慮をしておられるかお尋ねいたします。まず、大蔵大臣の御答弁を求めます。
  164. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いわゆる地域格差の是正の問題は、政府として特に重要な施策に考えておりまして、すでに北海道、東北、九州、四国、離島というような未開発の後進地域につきましては、御承知のように特別の地域開発法ができておりまして、それに基づいての長期開発計画を決定して開発投資を進めております。また産業の地方分散についても、各種の施策を講じてきたところでございますが、三十七年度の予算で申しますと、この方針に基づいて、北海道、東北、九州、四国、離島等の地域については、重点的な予算の増額をはかったつもりですし、たとえば北海道は三十七年度の予算で五百三十二億、昨年より八十二億円ふやしておりますし、離島は昨年の四十一億に対して二割五分以上の五十一億円以上、それからそのほかの特定地域に対しては五百三十二億、昨年に比べて約百億円地域開発関係予算は増額となっております。それから企画庁の管轄にございます国土総合開発事業の調整費も、本年は中国及び北陸を加えまして、昨年より大幅な増加をはかっております。また三十六年に作りました未開発後進地域の公共事業費の国庫負担特例法、いわゆる未開発地域に国の補助を傾斜配分するという、この法律に基づきまして三十六年度の予算に比べまして今年は五十三億円増の百八十億円の大幅な増額を行なっておる。それから本国会へ提出しております新産業都市建設促進法案、これに伴う所要の経費を計上してございます。  それから財政投融関係でございますが、これは北海道、東北開発のために公庫の融資ワクを前年よりも相当大きく増額しましたし、それ以外の地域は開発銀行の地方開発資金を百七十億から今年は二百億円に拡大してございます。また、今度の予算で問題になっております産炭地域の振興をはかるために産炭地振興事業団というものを作りましたので、予算措置と同時に財政投融資の措置も取ることにいたしております。そのほかやはり地方格差の問題で重要なことは工業用水とか下水とか、あるいは地方の電気開発関係というようなものに対する地方債のワクも今年は昨年に比べて二百億円以上増額しておるというようなことで、全体から見ますというと、投融資においても、この予算計上においても地域格差というような問題には相当考慮を払ったつもりでございます。
  165. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 地方開発のための資金の供給を目的とする公庫等特殊の金融機構の今後のあり方について政府はどういうふうにお考えであるか。現存の機構でよい、あるいは十分と考えておられるのか、あるいは改正の必要を認めておられるのか、まだ決定という方針でなくてもいいから、その辺の考え方について……。
  166. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 地方開発のための特別の公庫は東北開発公庫しかございませんが、この公庫を通じて特に北海道、東北の開発のために必要な資金を供給する。そのほかの地域は今のところ開発銀行を通じて融資することになっておりますので、やはり今後も開発銀行を通じてやることがいいんではないかと考えております。特にこのために統一した投融資の機構というようなものを作るよりは、従来の機構を活用してこの資金量を強化していくという方法がやはり一番いいんじゃないかと思っております。
  167. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、日タイ特別円協定に関してお尋ねいたします。このたび政府が国会の承認を求めておられる日タイ特別円協定によると、わが国は新たに九十六億円の財政負担を負うことになり、三十七年度から四十四年度に至る予算関係を持ってくるわけでありますから、国民はその理由について政府から納得のいく説明を求めておると思う。こまかいことは外務委員会における質問に譲りますが、ここには本件の骨格をなすと思われる要点についてお尋ねいたします。  まず最初に、戦時中に結ばれた特別円決済に関する日本の大蔵省とタイの大蔵省との間の協定覚書なるもの、及び特別円の金への振りかえに関する了解事項なるものが、いつからいつまで法的効力があったと政府はみておられるのか、その点をお尋ねいたします。
  168. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) タイは、終戦以後昭和二十年九月十一日、同盟条約及びそれに連なる一切の条約及び協定は、特別円決済に関する両国大蔵省間協定、覚書をも含め終止したものとみなす、という旨を日本に通告して参りました。したがいまして、この日以後の戦時中に締結されました特別円に関する協定は一切無効となったと存じます。しかしながら、協定が有効に存続しておりました当時生じました特別円の残高については、このタイ側の通告以後においてもタイの有効な証券として存続したものと考えておる次第であります。
  169. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の通告ですね、通告の性質効果ですが、今ここにあげております協定、覚書及び了解事項についていえば、その通告なるものは、どういう法的の性質のものであって、またどういう法律効果を持つと政府は解しておるか。
  170. 中川融

    政府委員(中川融君) お答えいたします。ただいま外務大臣からお答えいたしましたとおり、向こうから廃棄通告があったのでございますが、その廃棄通告がありました日以後、この戦争中の日タイの同盟条約及びこれに付属する諸協定は、その日以後効力を失ったということでございまして、したがってその日以後、これに基づく一切の日タイ間の権利義務関係は、この日以後の分、もしこの日以後この協定を援用していろいろな要件がありました場合には、その日以後はこれは効力がない、その日以後、これの効力を、日本もタイも双方ともこれを認めることができない、こういう事態と考えるわけであります。
  171. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは政府の解釈はそうだとおっしゃいますが、今のここで問題にしておりますもの、これをかりに取りきめという簡単な言葉でいいますが、この関係の取りきめでいえば、そうすると、これはどうなるのです。取りきめの中にきめてある効力の発生の期日は、「昭和十七年五月二日より実施せらるべきものとし、両国政府の何れか一方が他方に対し終了の予告を為したる日より三カ月の期間の満了するまで効力を有するものとす」。私はさっきこの通告のこの取りきめに当てはめていうとどういう性質を持っているかと聞きましたのは、そこなんです。ここの、いわゆるこの取りきめにいう終了の予告という性質を持っているのか。そうして法律効果を聞きましたのは、つまり通告予告の日から三カ月間の満了の日まで効力を持つ、それ以後は効力を失う、そういう法律効果を持つのか、それを聞いているのですから、そこのところはどうなんですか。
  172. 中川融

    政府委員(中川融君) この戦争中にできました日タイ間の大蔵省の覚書、これはただいま杉原先生が御指摘になりましたとおり、その第四項というので、両国政府のいずれか一方が他方に対し終了の予告をなしたる日より三カ月の期間を満了するまで効力を有するものとする、一応このときの覚書は終了せしめる際には、あらかじめ三カ月のゆとりをもってこれを終了せしめるということを通告し、その三カ月がたったときにこの効力を失う。その間にいろいろその終了したあとの取り扱いについて双方で協議して扱いをきめて、いわば円満に終了させるということを予測していたのでございますが、しかし終戦という新しい事態に際しまして、タイ国側はいわば一方的に日タイ同盟条約及びそれに付属するこの特別円協定も含めまして、これに関連する協定を一方的にいわば廃棄して参りました。したがって、通常のやり方による終了の方法ではなくて、いわば非常事態、あるいは情勢の変化と申しますか、そういうものを根拠にしての廃棄通告であるのでありまして、したがって、この廃棄通告は即刻効力を発生いたしまして、廃棄の日以後、これら一切の同盟条約及びこれに関連する協定は効力を失ったと、こういうように解釈せざるを得ないと考えるものでございます。
  173. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 まあ今の点は、実際の問題としては、それから三カ月ふえるかどうかという点だけでありますし、私そう問題にもいたしませんが、いずれにいたしましても、そうしますというと、この戦時中の金売却取りきめの分を別といたしますと、昭和三十年の特別円協定締結の際には、特別円残高処理の法的の基準、ことに評価基準、換算率を定める基準について、日タイ間にあらかじめ約束した合意は法律的には存在していなかったということになるわけでございますか。
  174. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お説の通りでありまして、この特別円残高をいかに処理するかという問題につきましては、日タイ間の合意と申しますか、双方において合意した法的基準というものは存在しなかったということだと思います。
  175. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 では、そういうところがら、この昭和三十年の協定締結前にタイ国が要求しておった要求金額の計算の基礎となった換算率というのは、わがほうとしてはのむわけにいかぬという立場をとられたのですか。
  176. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  177. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 三十年の協定締結当時、わがほうでは特別円一円は現行円一円であるとの立場はくずさないで、ただ戦時中の金売却取りきめは、特別円取りきめの金振りかえ条項とは別個に有効とする建前を基礎として、前の協定第一条の支払い金額五十四億円というものを算定されたと了解しております。それに違いありませんか。
  178. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま杉原委員御指摘のとおり算定いたしたのでございます。
  179. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 前にあげた協定覚書及び了解事項が、かりに三十年の協定締結当時生きておって、そうして、その中の金振りかえ条項の発動条件が満たされていたとすれば、わがほうの支払うべかりし金額は幾らになったはずでしょうか。
  180. 中川融

    政府委員(中川融君) これを前の協定がそのまま生きていたと仮定いたしまして換算いたしますと、千二百六十七億三千五百七十二万七千円になっております。
  181. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 以上の質疑を通じて、特別円問題処理の法的の基準、ことに評価基準、換算率の基準については、三十年の協定締結当時、日タイ間にあらかじめ約束した合意なるものは存在しなかったということがはっきりした。その当然の帰結として、タイ側が計算の基礎とした換算率も、またわがほうが特別円一円を現行円一円の立場をくずさずとしたことも、ともに日タイ間にあらかじめ合意された約束という法的の根拠はなかったことが明らかになったのですね。また、前にあげた協定覚書及び了解事項は、わがほうの敗戦に伴う特殊事情のもとに廃棄されたものの、それがもし生きておって、その中の金振りかえ条項の発動条件が満たされていたとするならば、わが国は、今、条約局長が言ったように、千二百六十七億余円を支払わざるを得なかったことが明らかになったわけですね。  そこで、さらにお尋ねいたしますが、先ほどの政府の解釈によると、さきにあげた取りきめは、昭和二十年の九月十一日まで効力があったというが、その中には金振りかえ条項が含まれていたけれども、その日以後は法的の拘束力がなくなったから、それだから、特別円の処理に当たっては、その点を全然考慮する必要なしという立場をとっておられたのか。それとも、法的の拘束力はないけれども、初めから金振りかえ条項というものが、当事者間の合意として全然なかった場合とは事実上の事情が違うから、また、わが国の敗戦という特別の事情によってタイ側の廃棄通告がなされたのであるから、特別円問題の処理にあたっては、それらの事情も実際上しんしゃくしてやらねばならないという考慮も払われたわけですか、これはどっちですか。
  182. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 条約局長から答弁いたします。
  183. 中川融

    政府委員(中川融君) その当時の経緯でございますので、私かわりましてお答えいたしますが、その当時やはり法的な基礎がない、換算率についての法的な基礎が一つも日タイ間にはないということで、一特別円はやはり一円として計算するのが至当であるというのが基本的な考え方であったわけでございます。しかしながら、契約いたしまして未実行に終わりました別個の金売却契約はこれをそのまま有効と認める。そのほかタイの名義として日本銀行に保管しました金塊〇・五トンはこれをそのままその時の価格において、公定価格でポンドに換算して支払う、この三つをきめまして、五十四億円を払う。しかしながら、他方タイ側の要求、これは初めの千三百五十億から漸次下がりまして百五十億に下がったのでございますが、この百五十億は、タイ側の数字をも考えまして、それとの差額、これは経済協力でその差額を埋めよう、こういうのが考え方の基礎であったわけでございます。
  184. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 特別円の問題の性格は、もともとこれは債権債務の関係の処理という点では、これはもちろん法律的の性格の面があるけれども、以上の政府答弁を総合してみましても、この問題の処理について、日タイ双方があらかじめ合意した法的の基準、評価基準、換算基準などは存在しないために、この問題は解決方法の上から見るというと、単純に法律的に処理するわけにいかず、日タイそれぞれ各自の主観的に合理的だとも思うところと現実の事情というものを考慮に入れて、そして実際的に処理するよりほかないという性質のものなんです。すなわち、その意味においては政治的妥協の対象とならざるを得ない性格のものであったわけですね。そうしてタイ側の言い分も、法律的にはともかくですよ、実際的にみるというと無理からぬ面も、少なくともなきにしもあらずといったようなところがつきまとっていたことは、これまでの質疑を通じてみても率直にこれは認めざるを得ないところではありませんか。そうであったればこそ、結局今度の協定にまで尾を引いてきている実質的の根源は、実はそこにひそんでおるわけではありませんか。第二条の解釈問題については私はあと質問しますが、まずこの第二条の解釈問題が出てくる実質的の根源の所在点について、政府はどうみておられますか。
  185. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仰せの通りでございまして、とにかく日本銀行の帳じりを見まして十五億円何がしある。ところが金の売却未実行分がある。また、金の引き渡し未実行分がある。これらについては当時の金価格において換算し直すというようなことで、この帳じりで出しまして、今の二点と、帳じりから当時の四千四百億円のものを引いたものを出しまして、三十四億円というものを出したわけであります。  一方タイ側としても、金約款がありせば一千二百六十七億円というものが出てくる。そこで当時のポンドとバーツの比率で換算してくれば千三百五十億円程度のものが出る。あるいは今度はそれをドルとバーツの換算でやってくれば二百七十億円余のものが出るというようなことで、いろいろ政治的な、何と言いますか、妥協への努力をしたわけでございます。そういう点から、非常に法的基準がおっしゃいますように明確な双方に合意したものがなく、結局その当時歩み寄ってきめたものであるというところから、いろいろな今日まで解決を迫られる問題が出てきた。全額百五十億円というものから五十億を引いたものが、これが投資あるいはクレジットの形式において供給されることになっておって、そのことはやはりタイ側としては何か若干割り切れぬものを、協定文の上では言われれば一言もなしと言いながら、若干割り切れぬものを残こしてきたということではなかったかと存ずる次第でございます。
  186. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に前の協定第二条の解釈について、日・タイ間でずっと意見の対立があったことはよく承知しておりますが、私がちょっと奇異に感ずることは、政府提案理由説明の中に「タイ側は、協定の解釈に関する日本側の立場は正しいことを認めざるを得ない」という態度に出てきたということが言ってありますが、ほんとうにタイ側との間に、第二条の解釈に関して意見の一致ができたのであれば、何を苦しんでこれを変更する必要があるか。もっとも政府提案理由説明の中には、今の言葉を受けて、「日本側の立場は正しいことを認めざるを得ないが、」と「が」というのが入っている。「そもそも戦時中の日本の債務であった特別円問題を解決する協定を実施した結果、逆にタイ側が債務者となるような解決方法は、タイの国民感情として納得できないので、何とかこれをもらえるような形で解決してもらえないかと要請して参りました。」こう提案理由の中に書いてあります。これを法律的に見ますと、この前後の関係は必ずしもはっきりしませんが、この後段のところは法律的に見ても、あるいはそういう条件がついておるようにもうかがわれる、はっきりしない。しかし条件づきの同意であって、無条件同意ではないともとれる、平たく言えば表面の文字解釈は日本側の言うておるとおりかもしれぬけれども、実質的には自分のほうはこのままではどうしても納得できないのだ、こういう趣旨とも解されるようなんです。果たしてしからば、法律的には条件づきの同意は同意じゃないから、厳密な条約解釈論としては、結局最後まで前の協定第二条の解釈適用については、日・タイ間に意見の一致が得られなかったことが真相ではないか、だからこそ新協定の必要が生じたというのが、条約論的には正確な言い方であり、またかえってそれが筋が通るではありませんか。実際上、このむずかしい問題であった第二条の問題をほぐしていくにあたって、政治家同士の話としてはこれは政治家らしいものの見方をするのがむしろ当然ですから、それはそれとしてよいのでありますけれども、条約改定の筋道を法律論的に、条約論的に立てていく場合には、私の今申したような言い方が真相をより的確に表現しているのではありませんか。別に私の説を押しつけるわけじゃありませんが、政府の率直な御答弁を求めます。
  187. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 条約について非常に通暁せられ、また政治家でもあられるあなたの御意見は、私としてはまことにそのとおりの感じがするのであります。しかしながら私どもとして交渉いたしまする際には、あくまで第二条の協定をたてにとって、こう書いてあるではないか、君のほうもそれに承知をしたのではないかということを強く言わざるを得ないという立場交渉いたしました、そう思いましたのでその立場交渉いたしました。先方の最高首脳者は、しばしばこの点につきまして意見を述べたものでございますが、たとえば歴代の政府政府部内でしばしば討議しながらも、民衆に対して本問題につき沈黙を守らざるを得なかったのは、政府としては現に存在する協定と民衆の感情の板ばさみになっていたからである、ということも申しましたし、あるいは協定をたてにとって言われれば一言もない、しかしながら日本は現協定を守ろうというなら、タイ側としては何とも仕方のないようなことであるけれども、こういうような失敗があったということを、教訓としてタイ国の青史に残すものであるということも言っておるのでございます。すなわち協定をたてにとって言われればこれは日本の主張のとおりであろう。しかしながら何としても自分らのほうとしては、先ほど御引用になりましたように、自分が貸したと思っていたものが、判をついてみたら自分が借りたものになっていたというのは何としても納得し得ない、しかし協定をたてにとって無理押しをするならば、すなわちこのことは青史に残るであろう、日本に対するタイの友好感情に非常に暗いものが出る。すなわち日本とタイの貿易関係等についても、十分のわれわれは覚悟があると言わぬばかりのことがあったということであろうと思います。しかしながらそういう問題について政治的にやはり大所高所に立って、日・タイ双方の間でこの問題を清算すべき時期になった。かような判断においてこの協定第二条について新協定を結びました次第でございます。
  188. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は今外務大臣の言っておられることも考慮に入れて質問したつもりですが、私は今最後に申しましたような第二条の問題の解釈適用についても、双方の立場を法律的、政治的に見て、その場合、一体これは私の申しましたようなことと同じ見解かどうかという点だけをひとつ聞きたいのです。そこのところが大事だと思います。こういうことが大所高所につながっていくことだと思う。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 杉原さんのお話のとおりでございます。私は前からずっと聞いておりましたが、今の特別円の問題は御承知のとおり金約款がついて、金で払うという建前になっているのであります。当初は、日本の徴発物資その他の貿易帳じりは大体半分くらいは金で払うということでいっておったのであります。しかし戦争遂行上いろいろな徴発物資に対して金で払うのだが、とりあえず半分を払うというので、半分でやっておった。だんだんこれが少なくなりまして、金約款のありますものの、タイと日本との間で十分の一くらいしか金で払えぬあるいは十五分の一ということになったのが、今の残りの四千四百万円の分であります。全部払うというのが、だんだん半分から少なくなって、取り残された分だけを金で払う。こういうことはタイもよく知っております。日本もよく知っております。ただ幸か不幸かと申しますると、どっちとも私は言えませんが、昭和二十年九月十五日に日本とタイとの条約並びに協定を全部破棄したから、われわれはその効力はない、こういうことで条約上の金約款というものを全部捨ててしまった。タイとしてはそうは言っても前の精神は守ろうじゃないかというので、十一バーツーポンドこれで千二百数十億あるいは千三百五十億、こうやってきたのでございます。タイはやはりもともと金約款があったのであるから、しかも日本は金約款で初めは半分、しまいには十分の一ぐらいしかやってくれなかった。しかももともと金約款だから金の換算で払うべきだ。これがタイには強かった。しかし日本は、タイが幸か不幸か捨ててしまったのだから、昔の一円も今の一円も同じだ、戦争中の円も今の円も同じだと、こういう経済的にはどうかと思いますが、条約を破棄したものだから、昔の一円が今の一円だと経済的には少し無理なような気がいたしますが、そういう二つの状態が続いていたわけであります。そうして三十年にまあまあというので、昔の一円が今の一円だという日本の主張を通しながら、昔約束した一部の、十五億円のうちの一部の四千四百万円だけを金でやろう、別の〇・五トンはイヤマークがございますが、こういうふうにした関係上、なかなか日本人の気持ばかりではいかぬし、タイの気持ばかりでもいかぬ。ところが三十年のときに五十四億円の現金払いも、九十六億円の投資、またはクレジットの形式で資本財または労務を供給する、こういうことになっているわけであります。そこがいいかげんだとは申しませんが、両方の代表であれしたのであります。そういう点がずっと今もなお残っておるのであります。そこで外務大臣が答えたように、日本に昔の金で十五億徴発されて、その決済として九十六億円の借金を負うということは、いかにしてもできないということが向こうの感情でありますが、そうして法律的に申しますと、二条で「供給する」ということがきまっておりますが、四条では「両国は、この協定の円滑な実施を確保する目的のため、協議及び両政府への勧告のための機関として、両政府の代表者から構成されるべき合同委員会を東京に設置する」。二条の履行については四条の合同委員会というのが前提となっておる。合同委員会ができない、そういう関係にあります。これをそのままやっていきますと、合同委員会ができないから二条のほうがきまらぬということになりますと、いつまでもこの問題が尾を引きまして、両国間の信頼のみならず、この実際のことを考えてみたときに、私はこういうところで手を打つことが両国のために、もしそれ向こうが昭和二十年九月十五日にあの条約並びに協定を破棄しなかったならば、千三百五十億円あるいは千二百五十億円を要求をしたときに日本はどう出るかという、非常に苦しい立場になることはお説のとおりであります。そういう点を考えまして四条の規定もあることだし、いつまでもこれをほおっておくわけにはいかぬというのが、われわれ政府の今回の協定を結ぶに至った理由でございます。
  190. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、今まで政府説明を聞くだけではどうも疑問としていた点がありますが、ただいまも総理の御説明で、私の疑問としておった点はよくわかりました。そうしてまた、ずっと従来の取りきめなどの効力関係その他も、政府答弁でよくわかりました。そこで、どうも外務委員会で聞いた政府提案理由説明だけでは釈然としないものがあったので、きょう実は質問いたしましたが、本日の説明で私はよくわかりました。  次に、日韓問題、特にいわゆる請求権問題についてお尋ねいたします。私のお尋ねいたしたい点は、交渉内容や請求権の内容の具体的問題ではありません。請求権問題の処理の仕方に対する政府の基本的の態度であります。政府は、請求権問題の処理の仕方について、これを法律的に処理せんとしておられるのか、政治的に処理せんとしておられるのか。つまり一定の法律的基準に照らして法的根拠の明確なるものを取り上げて法律関係の整備として取り扱うというような、そういう態度に出ようとしておられるのか。あるいは両国の間にいわゆる請求権問題として事実上問題となっているものを、いろいろの事情を考慮に入れて実際的に処理せんとしておられるのか。問題のこなし方に対する政府の基本的な態度は、そのいずれにあるか、その点をお伺いいたします。
  191. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日韓会談の請求権問題につきましては、従来から種々法律論を戦わしたり、あるいは請求権の裏づけとなりまする事実関係資料検討等を行なって参りましたけれども、しかし双方の法律的主張の中には並行線をたどるものもございまするし、また、従来の事務的折衝のみではなかなか事実関係等の突き合わせにおいても至難である面も出て参りましたので、これをより高いレベルで折衝するということにいたしまして、漁業の問題等も含めて大局的な見地に立った解決を試みるということが、この時期としては必要となってきたのではないかと、かように考えているわけでございます。いわゆる法律的、事務的という言葉を使いますれば、法律的にも事務的にも両問題は並行して考えて行く、かようなことで解決をはかって行くということでございます。
  192. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の外務大臣説明、実際そういうふうだと私少しわからなくなったのですが、このいわゆる法律的処理をするというものについては、私は非常に疑問を持っているから質問しているのです。法律的に処理するためには、その前提として、言うまでもなくまず問題解決の基準となるべき日韓双方の認め合った共通の法的基準がなければならない。また、その法的基準に照らして法的根拠を証明する証拠事実もそろわなければならない。少なくともそれらがなくしては法律的の解決ということは成り立ち得ないわけでしょう。平時通常の場合においてすら、国家と国家との間の請求権問題の処理については、当事国双方を拘束する共通の法的基準が具体的に確立していない場合が多いために、単純に法律的に解決するわけに行かない。結局いわゆる政治的妥協によるほかない場合が多いでしょう。いわんや戦時関係のものになるとなおさらです。それに日韓の請求権問題になると、戦前の内地と朝鮮との特殊な関係が加わって、さらにその上に母国からの分離独立という国際法の分野でも一番実定法上の確立を欠いている関係が伴ってくる。そればかりでなく、朝鮮における南北の分裂という事情が追加されてくるというふうに、幾重にも重なり合った複雑きわまる関係の中にあって、日韓の間のいわゆる請求権の問題を法的に解決しようとしても、その前提となる国際間に確立している法的基準が一体充足しているでしょうか。また、特定の問題に限って見ても、日韓双方が承認し合う、また受諾し得るような共通の法的基準あるいは評価基準、その証拠事実が完備しているものでしょうか。日韓請求権問題の処理基準となっているサンフランシスコ対日平和条約の規定もばく然としておって、いわゆる請求権の範囲や具体的な内容を決定する基準を示していないでしょう。まずその基準を示し得ないのは、むしろ無理からぬことではないでしょうか。先ほどのタイの特別円問題一つにしてもそうであります。典型的な請求権問題でありながら、法律的に解決する基準が充足されていないために、結局政治的解決によるほかないわけでしょう。特別円問題の幾層倍あるかもしれない日韓の請求権問題に対するアプローチの仕方は、よく考えないと、解決の道を発見し得ないのみか、かえって大きな紛糾を来たす結果に私はなりはしないかと思う。法律的に処理すると言うと、理論上からすると筋が通っているように聞こえるけれども、実際上の実行可能性に多大の疑いなきを得ない。私はそういった疑いを持つがゆえにただすのですが、政府は、以上の点について基本的にいかなる考え方をしておられるか、その基本的の考え方いかんによってその解決の方式も違ってくるし、また協定の作り方も違ってくるのだが、これはしかし事務的にきめ得ない。政府の最高決定に待たなければならぬ性質のものであると思うから、その点、池田総理のお考えをお伺いいたします。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全くお話のとおりでございます。で、私と朴議長との間におきまして、請求権の問題も法的根拠のあるものという原則はきめましたが、その法は何法かという問題があるわけでございます。たとえば日本の国籍を持ち日本の恩給請求権があった前の日本人、今の韓国人、国籍喪失によりまして権利を喪失することは当然のこと。しかし、それだといって全然やらずにおけるか、問題がある。何かにつきましで、こうなんです。そして在籍財産、在韓国財産といたしましても、これは属地主義かどうかというようないろいろな点があるわけです。こういう点を考えますると、今までのように、自分のところの法律だけをがんばって日本はいく、韓国は韓国で設けられた法律ばかりでやる。それから属地主義なりや属人主義なりやと、こういう国際法的な問題等々をやりますと、法律的根拠のあるものといいましても、なかなかお話のとおりむずかしいのです。そこで、一応の事務の折衝はやりまするけれども、すべてそういう国際法的なもの、そして国内法的のもの、両方違いますから、そういう問題の妥協をどうしていくかということは、事務の折衝をやると同時に、やはり大所から別の政治的考え方から話し合いをする必要があると私は感じておるのでございます。なかなかむずかしい問題でございます。ことに日本の国であったものが分かれていったような場合には、なかなかこれはむずかしいことも私よく承知いたしまして、十分その点を考えながら進めておるのであります。
  194. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 時間がありませんから、先のほうに進みますが、国連問題について少しお尋ねいたします。  一昨年の七月以来コンゴに派遣されている国連軍の経費は、今日までの総額は幾らになっておりますか。
  195. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一昨年七月から本年六月までのコンゴ派遣の国連軍経費の総計は二億四千万ドルでございます。
  196. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そういった莫大な経費に対し、加盟国の分担率はどうなっておるか。また、わが国の今日まで分担、支払った額は幾らですか。
  197. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) お答えいたします。わが国の負担率は二・二七%でございますが、この経費につきましては、わが国国連の拡大技術援助計画の被援助国であるという理由で、今までの二・二七%によって算出された負担額は半額免除されております。一昨年の七月から昨年の十月まで本件経費としてわが国が支払いました分担額は百六十一万五千ドル余、約五億八千万円になっております。十一月から本年の六月までの分担額は九十万六千ドル余、三億二千六百万円余になって、これは明年度の、今御審議になっております予算案に予算措置が講じてございます。
  198. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 とにかく今言われたように、コンゴ派遣の国連軍経費というものは、非常な莫大な額に上っておる。それに対して、ソ連やフランスなどは、これの負担に応じないという態度に出ておるようだし、また中南米とかAA諸国の大部分は、実際上まだ支払っていないように聞いておるのでありますが、こういう経費は一体支払わないでもいいものですか。
  199. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この経費の払い込み率は、本年一月末では、加盟国の、一九六〇年七月から十二月までの分について六一・一四%……
  200. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私の質問しているのはそうじゃない。
  201. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それで、一九六一年一月から十月までの分については、六六・八七%という払い込み率でございます。これについて払い込まぬでもいいかということでございますが、これは総会の決議によって割り当てられるということになっておりますが、ソ連その他は、この本件経費は安保理事会の審議議題である。こういうことを言っておりまして、総会でこれを審議するのは憲章違反だという主張から、現在この経費の法的性格の問題については、国際司法裁判所の意見を求めておる。こういうふうに承知しております。なお詳しくは国連局長から……。
  202. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 国連は財政危機に直面して一億ドルの公債を発行するようになったようですが、これは満足に消化されておりますか。また日本も引き受けるのですか。
  203. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) お答え申します。わが国がこの公債を引き受けるかどうか目下関係当局において検討中でございます。今まで各国がどのくらい引き受けの意思を表明したかにつきましては、ただいまアメリカにおきましては一億ドル、二億ドルのうちの半額の引き受けについて、議会でも議題になって討議が行なわれております。その他、引き受けの意向を表明したもの全部、現在までのところで一億三千万ドル余になっております。
  204. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今、国連財政の赤字は幾らくらいですか。
  205. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) お答えいたします。ただいま五千三百万ドル余でございます。
  206. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 何だか少し少な過ぎるようだけれども……。
  207. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) ことしの未払い分がまた加わりますので、ことしの六、七月ごろには一億六、七千万ドルくらいになるのじゃないかと推定されております。
  208. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 コンゴ派遣の国連軍の経費は、月額どのくらいのものとなっておりますか。
  209. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) ただいまのところ、月額一千万ドル大体予定されております。
  210. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 国連の財政状態はとにかく非常に悪くなって、ほとんど事実上破綻に瀕しておるようにも思われるのですが、国連財政の改善の見込みはありますか。
  211. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) ただいま国連が非常な財政の危機に面しておりますことはきわめて遺憾でございますが、今度の公債発行によりまして一応打開はできるのではないかと思います。それから、コンゴの現地における情勢も、最近ようやく問題が解決の方向に向かっておりますので、国連軍の維持費も減らされる、そういうようなことで、財政状況も今後はだんだんによくなるのではないかと一応考えております。
  212. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 コンゴ派遣の国連軍の目的は何ですか。
  213. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) お答え申します。コンゴに派遣されております国連軍は、一昨年の七月の安全保障理事会の決議に基づくものであります。この決議は、「ベルギー政府に対し、コンゴ領域から軍隊を撤退させるよう要請し、事務総長に対し、コンゴ政府国連の技術援助を受けて同国国家保安隊が十分その任務を達成し得ると同国政府が認めるに至るまで、必要な軍事援助を提供するため同国政府協議の上必要な措置をとる権限を与える」、こういうふうになっておりまして、ベルギー軍が撤退したあとに、コンゴに治安維持その他のために役に立つ暫定的な保安的な性格を有するものと考えられております。
  214. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私はかねて疑問を持っている点は、コンゴ政府が最初国連に軍事援助を要請したとき、その援助要請の目的は、コンゴにおける治安回復のためではなくして、ベルギー軍の侵略に対して領土を保全するためだということをはっきりうたっていたのに、安全保障理事会の決議の内容や、実際の国連軍の活動状況を見ると、これと符合しない点があるように思われるんですが、それは一体どういうわけですか。
  215. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) ただいま杉原先生のおっしゃいましたように、コンゴ政府の要請というものは、最初、ベルギー軍隊を排除しろという要請でございました。しかし事務総長は、ベルギー軍隊の撤退のあとに、そのコンゴの国家保安隊が任務を達成し得るまでに必要な措置をとればよろしいということで、このコンゴ政府の要請と安保理事会の決議というものの内容が食い違っているわけでございます。
  216. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 このコンゴにおける派遣国連軍の行動の実際と、国連憲章の内政不干渉の原則との関係について、政府はどう見ておられますか。
  217. 高橋覚

    政府委員高橋覚君) 一九六〇年の八月九日の安保理事会決議は、「コンゴにおける国連軍が、いかなる内部紛争の当事者となり、またはこれに介入し、あるいはその結果に影響を与えるため使用されてはならないことを再確認する、」旨決議しておりまして、したがって国連軍はコンゴにおける政治抗争に対しては、中立の立場で内政干渉をしないように細心の注意を払って行動しておると思います。
  218. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 特に一昨年の秋ごろから国連の危機が叫ばれてきておる。また、実際、危機に瀕しておると見られるのでありますが、その最大の原因は、コンゴ問題に関連していると私は思うんです。国連のこの政治的危機ばかりでなく、国連の財政危機のおもなる原因もコンゴ問題ですよ。私はかねてコンゴ問題については、国連は実際上あまりに深入りし過ぎたために、かえって国連自体の弱化を来たした結果になっておるんじゃないかということを疑いを持っておるんですが、政府はその点どう思っておられますか。
  219. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お説のような見方も一方においてございますけれども、コンゴ問題をしからば国連がほおっておいたらどうなるかというと、これはやはり国連の非常な威信を問われる問題だろうとも思われます。いずれにいたしましても、このコンゴ問題はアフリカ全体の問題でもあり、また、世界平和の維持と緊張のためには至大な関係を有する問題でございますので、これは国連としましてはほおっておけない問題であろうと思うのでございます。さようにいたしまして、先ほど政府委員から申し上げましたように、政情安定化の方向に向かっているのでございます。着々その成果を国連軍というものが深めております。ただ、一方において膨大な経費の支出を伴い、またその経費の不払いからする国連危機を招来しているという問題も、これは否定できないことでございまして、そのための二億ドルの国連公債を発行するということをきめて、国連は各構成国へこの基金の国連公債の引き受けを要請しているのでございますが、まあ何と申しましても、われわれとしては、構成国としてこの総会の決議によるところのコンゴ安定化のためにとられる各種の方策、財政支出も含めて、これに協力すべき問題であろうと考えております。また一方、大国が拒否権を乱用するというようなことがないように働きかけ、またあらゆる面でこの国連の基金活動に賛同するということが、やはりわれわれとして国連精神の意義からいたしまして、必要なことだと考えている次第でございます。
  220. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私はこのコンゴの問題をほおっておけという、そんなべらぼうなことを言う趣旨ではちっともないので、ただ、個々のことを言ってもいろいろ始まらぬ話だけれども、私は今後の問題としては非常に考えなければならぬ点があると思います。岡崎国連大使は本年一月、東京のある有力新聞に寄稿して、わが国はややもすれば国連軽視の風潮があるようであるが、国連を役に立たぬかのように見るのは間違いだという趣旨を強調しておられる。しかし、われわれの問題としているところはそんなところにあるのじゃない。国連は特に日本にとっても大事だということをむしろ当然の大前提として、それだからこそ国連は弱化しちゃ困る。しかるに今日の国連は、スエズ事件や中東事件のころの国連と違って、権威がぐっと落ちてきているじゃないか。強化どころか弱化してきているのじゃないか。だからその権威を少しでも高め、弱化を防ぐためには一体どうすればいいか。それこそがわれわれの問題でしょう。この問題は米英の首脳部の間でも深刻に見て、ケネディ、マクミランのバーミューダ会談でもこの問題を取り上げている。そこでこの問題に対して、政府は今後国連対策として一体どういう対策を持って臨まんとしておられるのか。国連の弱化を防ぐためには今後どういう点に注意してやっていくことが必要であると見ておられるのか。お伺いしたいと思います。
  221. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) コンゴ問題に対する御見解は、私の見解と全く同様でございます。しかも今後の国連をいかにしたら強化し得るかということでございますが、私は、やはり国連は利用すべからず、国連を育て上げるべきものなりという気持で、加盟国がみな国連の憲章の定むる精神によって協力することにあると存じます。で、具体的に申し上げますれば、やはり大国が拒否権を乱発したり、あるいは国連をやたらに闘争の場にするような言動をお互いに慎むこと、また基金等についても、財政支出がやはり国連をささえる大きな柱であるということに思いをいたしまして、十分加盟国がこれに協力するということにあると考えております。
  222. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 最後に……。今、外務大臣のおっしゃることはそのとおりだと思うんです。ただ、具体的に見ますと、今までのこの連盟とか、国連の過去の歴史の教訓から見て、国連国連としてどういう問題を取り上げ、どういう問題は取り上げないことにするか。また、取り上げる問題にしても、国連自体として関与するのはどの程度にするか。さらに国連の名においてする軍事行動はいかなる場合に、またいかなる限度においてするか、それらの点について具体的な場合にその選定を誤らないということ、ことに国連が論議の場をこえて行動の分野に入るかどうかという場合には、国際政治の現実から見て、国連が自己の分際を越えるような行動に出ることを、私は、厳に慎んでいくということが、国連の弱化を防ぐためには絶対必要だと実はかねて考えておるのですが、まあ御異存がなければ、その辺のところも考慮に入れられて、私は、政府においてしっかりした国連対策をもって、この国連大使等、出先の心がまえを指導していかれることを希望いたします。あえてこれは質問じゃありません。しかし、もしこの点について、政府において何らか御所見がおありであれば、最後にそれを伺っておきたいと思います。
  223. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御意見のとおりに政府考えております。
  224. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これで私の質問は終わります。(拍手)
  225. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 杉原君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  226. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、山田節男君。(拍手)
  227. 山田節男

    山田節男君 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十七年度の一般会計予算につきまして総括質問をいたしたいと思いまするが、自民社会党の諸君におきましては、問題を局限して深く掘り下げられましたが、私は各大臣お見えになっておりまするし、なるべくトピックを多くいたしまして、この議題になっている三十七年度の一般会計予算の問題点というものをただしたいと思うのであります。  まず第一に、これは総理にお伺い申し上げたいのでありまするが、御承知のように昨年の上半期におきまして、池田総理が積極的ないわゆる経済政策と申しますか、とってこられましたのが、やや足踏みになったのであります。今、いろいろ原因ございまするが、とにかく少し行き過ぎの点を何とか是正しなくちゃいかぬ、そうしていわゆる長期にわたる経済成長の安定の基礎を作る、こういう御趣旨で、今回この二兆四千億というまあ非常に大型な予算が計上されておるわけでございます。私はこの点につきましてまずお伺いしたいと存じますることは、御存じのように、この池田総理の経済成長政策につきましては、すでに内外ともこれに対して、まあ賞賛をする面もありまするし、また批判をする向きもあったのでございます。きょうは、私は日本国民でありますから、日本国民の立場からこの二兆四千億の三十七年度の予算が、ほんとうに政府が今回の予算の編成の基本としてうたわれておるところの、長期にわたっての、安心のいく経済の成長率を今回五・四%としておりまするが、ほんとにこれをもって貫徹し得るんだという、こういう確信をお持ちなのかどうか、これはやはり国民が非常に心配しておる。もちろんこれは税制通であり、財政家であり、経済通の池田総理でありますから自信がおありだろうと思いまするけれども、今までの三十四年以来の景気と昨年の下半期からの景気の動向が非常に違うんじゃないか。これは国際関係もございまするが、そういう点の将来を見通しまするこの大型の予算に対しまして、一まつの不安を感ずるということは、これは国民が、すべてとは申しません、財界、金融界、われわれ国会におる者、あるいは一般の国民も、これは不安に思っておる点と思うのです。ですから、まずこの点につきまして総理の確信のほどをお伺いしたいと思います。
  228. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体十カ年倍増は御承知のとおり七%余りのあれでいいのでございます。ただ私は、当初におきましては三カ年、昭和三十八年、九年、四十年と相当の新規労働人口が出て参りますし、そうしてまた過去の歩みの惰性もございましょう。その歩みと申しますのは一昨々年は二一%の増、一昨年は一六・六%、こういうふうな状況で明けましたから、昨年は名目で一四%余り、こういうことになったのですが、私はずっと以前にも申しましたごとく、このままでいったならば一一%程度のことになるのじゃないか。で、当初の三カ年間はそういう雇用関係その他で、そしてまた歩いて来た惰性からいって、相当上に上がるのだけれども、九%くらい三年平均でいったらどうかという気持でいたところが、名目的には一四%余り、実質的には二%近く、これでは行き過ぎだというので五・四%にいたしておるのでございます。これにいたしましてもわれわれが所得倍増で国民にお約束いたしました昭和三十八年度十七兆五千億でしたか、これには十分達し得る、五・四%でもまだ早過ぎるくらいでございますが、過去のつながりからいいまして、大体五・四%程度の昭和三十七年度の成長でいいんじゃないか。この五・四%が非常にデフレだとか、非常に落ちたと申しまするが、外国の例に比べますと、五・四%でまだ相当なものであるのであります。したがいまして、この程度で進んで今年はやる。そうして今年の様子を見まして三十八年度もまた考える。そうして三年間合わして平均九%程度には私はいくと考えておるのであります。それが日本として大体モデレートの線ではないか、こう考えておるのであります。
  229. 山田節男

    山田節男君 まあ今年度の予算の編成についての総理の確信のほどはわかるのでありますけれども、少なくとも三十六年度の予算の会計年度の経過を見ておりまして、承るところによると、三十六年度の経済成長は、経済懇談会におきましては七・二%くらいでいいんじゃないかというかなり数字的根拠を持っておられたのを、総理は、これは九%でいい、九%にするのだ、今おっしゃるように一二%の成長率があったと申しましたけれども、私も、それから一般国民も、それから外国も、非常に指摘しております点は、そういう設備投資が非常に過大になって参りました。伸びほうだいに伸ばしてしまう。悲しきかな日本は欧米諸国に比べますというと経済的基盤というものが深く根が下りておりません。ことに社会資本的な方面におきましてはきわめて貧弱であります。これは一流国とは申されません。それが池田総理のきわめて積極的な経済成長への助成というものが、社会的資本に対して貧弱であり、不備であるがために、いわゆる社会的な、何と申しますか、弊害と申しますか、たとえば道路にいたしましても非常に混乱をする。そうして工場が建ち、りっぱなビルが建つけれども、一方においては、まことに何と申しますか、原始的なスラム街が存在する。そうして一方におきましては非常にはなやかな消費ブームがある。そこが非常にびっこになっている。いわゆる社会資本というものが、日本がまだきわめて貧弱であるにかかわらず、設備投資にどんどんやる。そこに均衡のとれないところに、私は非常に、何と申しますか、池田総理のきわめて伸びっぱなしでいこうという、意気は壮としまするけれども、それについていけない社会資本というものをどうするか。三十七年度の予算を見ると、なるほどこれにつきましては、社会資本的な道路あるいは港湾、治山治水、技術振興、あわせまして六百億近くのものを増額しておられます。おられまするけれども、しかし、この二兆四千億の予算をもちまして、この予算編成の基本とされる点に到達できる自信があるかどうか。この点をひとつ。過去の経験から申しまして国民は不安に思っておる。この点の総理の御見解を——御見解というよりもむしろ何と申しますか、所信をお伺い申し上げたい。
  230. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本には財政の規模と景気調整ということにつきましていろいろ議論がございます。財政の規模は景気のいいときにはこれをごく縮小すべし。そうして景気の悪いときには非常に財政を膨張する、たとえていえば、昭和六、七年ころの高橋さんのとられた金解禁後における公共事業の積極的のやり方、あの例を引きますと、景気の悪いときには政府が相当積極的である。景気のいいときは政府は手を引くべし、こういう考え方が今もなおあるようです。私は、過去の経験と言われますから申し上げますが、昭和三十二年の予算を作るときに、千億減税、千億施策と、こうやりました。そうすると、千億施策のうちには、道路は一兆円の道路計画でございます、五カ年。そうして鉄道は運賃を上げまして、相当鉄道の電化、拡充をいたしました。そのときに私言ったんでございます。今までの考え方が間違っておる。昭和三十年、三十一年と非常に伸びてきている。景気がよくなってきている。財政が非常に、昭和二十九年の分は一兆円予算ということで、実は私が押えたんです。そのためにつじつまが合わない。昭和三十二年の初めにおきまして、三十一年の暮れには鉄道の滞貨が、普通一日半か二日くらいの滞貨であるのが、五、六日、六、七日になった、年末に。こういうことでは私は鉄道もあれしなければならぬ。道路も一兆円ということでやって、千億施策が非常に積極的でとてもいかぬのだ、これが何と申しますか、三十二年の国際収支の赤字を来たしたのだと、こう言われますが、あのときの計画が今じゃどうか。四年たったとき、もう道路が二兆三千億にしなくちゃいかぬ、こういうふうにふくれてきておるのであります。これは民間の伸びに対して、政府の財政がついていけないところに、お話のような社会資本の不足がある。社会資本の不足によって、どれだけいわゆる正常な経済の運営がじゃまされたかということがわかると思います。それでは片方で行き過ぎじゃないか、民間の設備投資が行き過ぎじゃないか。そのとおり行き過ぎでございます。これはもう一兆五、六千億から二兆三千億、そうして三兆一千億になり三兆八千億か九千億と言われて、三兆七千億になった。こんな設備投資の行き過ぎはない。政府が押えようとしてもなかなか押えられない。だから、われわれとしては、今の現状に沿った社会資本をふやさなくちゃいかぬ。そうしてまた、行き過ぎの設備投資というものを押えなければならない、こういうことできておるのであります。私は、ここでとやかく言うのではございませんが、高度成長政策をやったからこそ、社会保障、文教、社会資本の増加ができるのであります。もしそれ十三兆五千億の三十五年度を基準といたしまして三十六年度十七兆五千億でいったならば、本年の、三十七年の財政規模というものは二兆円くらいになりましょう。二兆円か二兆五百億円くらいになりましょう。それだけの所得が伸びていった。そうすると、社会資本はとてもいきません。社会保障、文教も伸びない。そこで私は、今から考え、ずっとここ二、三年来のあれは誤っていない。ただ行き過ぎの点は民間設備投資、民間設備投資におきましても、何と申しますか、民間の設備投資審議会というのがございますが、これも実を言ったら六月ごろにやっている。六月ごろに各業種が集まって、今年の設備投資はどのくらいということをやったってもうおそい。だから私は、通産大臣あるいは企画庁長官にお願いいたしまして、少なくとも四月の初めにこれをやりなさい、初めにやらなくちゃいかぬ。一たん計画するとなかなか縮めにくいから計画のできそうなときにこれをやらなければならない。こういうようなことをして、私がその調節を合わそう、それで問題はやはり二兆四千億がいい。問題は根本になります国際収支がどうなるか。こういう問題でございます。だから国際収支につきましては、大体二兆四千億、そして設備投資を三兆六、七千億、きつく言ったら私はもっと押えたいという気持があるのですが、これならば大体国際収支も均衡を得るのじゃないか。こういうふうに考えているわけであります。なお、国際収支の問題と外貨の問題につきましては、まだ私の考えているところもございますが、また、いずれ質問があるかと思いますので、そのときにまた私お答えいたします。
  231. 山田節男

    山田節男君 これは池田総理の保守自民党として、資本主義、自由主義経済から申しますと、今総理のお言葉、これは全くオーソドックスで誤っていないと思います。ただ、今私があえて御質問申し上げることは、かりにこれは十九世紀の末、少なくとも二十世紀の初頭において、日本が産業革命をいち早くやりまして、そして国際環境というものが何ら貿易上のライバルのない、またあるいは共同市場、あるいはラテン・アメリカ自由貿易連合とか、こういったような非常に共同体的な世界経済に転移してきている今日におきまして、今の総理のおっしゃったセオリーというものは、はたしてこれが思うようになるかどうか。たとえそれを総理のおっしゃるように推し進めていこうと思っても、今日は国際環境が違います。まず私は、これを認識してかからないことには——これは後ほど申し上げますが、国際収支の問題にいたしましても、貿易の問題にいたしましても、従来の自由主義経済的な貿易経済というものは今日存在し得られない。そういう観点からいたしますと、池田総理の、まあ昨年は一兆九千四百億円の金をもって九%の経済成長をやってみせるのだ、ところが、今年は二兆四千億で、固く踏んで五・四%の成長でいけるんだ、こういう計算をなさっている。しかし、私は予算がふえて、これはまあいろいろなエレメントがございますが、ふえて、そして成長率を少し下目に見る。しかし、実際は設備投資を、繰り延べ等ございまするけれども、しかし、日本の自由貿易化を控え、また、将来の貿易の発展を競うということになれば、技術を導入し、機械を購入しないと——これは絶対的な後進国的な一つの条件があるわけですから、それを満たしながらも、また、社会資本を充実しながら経済成長、均衡がとれた経済成長をするということが、これは私は総理としてあまりに、伸びるということに対してあまり自信をお持ち過ぎになっているのじゃないか。これが内外のいわゆる池田経済成長政策に対しまする共通した批判の部面だと私は思う。この点どうでしょうか。あなたにもう一ぺんお伺いしたいのですが、あまり自信が強過ぎるのじゃないか。もう少し一歩退いて国際環境の将来をお見通しになって、もっと謙虚に、また、日本の経済が伸びていくということを、これは申すまでもありませんが、もう少しテンポをフォックス・トロットでやらないで、せめてワルツぐらいでいくというようなテンポの問題を私はひとつお考えになったらどうか。この点いかがですか。
  232. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民主社会党の方々からは、いろいろ昭和二十八年のとき、三十二年のとき、今度もまた池田が、四年ごとに池田が出てくる。そしていろいろな積極政策をやる。私は、昭和二十四年に私は大蔵大臣でありました。国内経済の自由化をやりまして、たいへんな非難を受けました。非常なあれで、国会でもひどくやられた。昭和二十四年、二十八年、三十二年、そうして三十六、七年と、こう来ているわけです。自信を持ち過ぎるとおっしゃいましたが、日本人の頭、日本人の勤勉さ、そうしてこれを土台にして、政策がよければ、私は伸び得ると思う。昭和二十四年からずっとの歩みほどには参りません。その歩みほど行ったら、たいへんなことになります。そこまでは行きませんが、私は、今後とも、日本人の英知と勤勉さをもって、しかして政策のよろしきを得れば、行けると確信を持っております。私は、政治家というものがこれだけにするのだと言うのではない。あくまでも、国民経済の成長は、国民の盛り上がる気持でございます。そういう気持を作ることが、政治家の仕事であります。私は、今お話しのとおり、欧州共同体とか、あるいは南米の経済連合とか、イギリスの貿易連合とか、こうあるのでありますが、これは好むと好まざるとにかかわらず、世界はどうしても自由化経済へ行かざるを得ない。自由貿易に行かざるを得ぬ。せんだっても、トリフィンがやって参りまして、私は非常に共鳴したのでありますが、またEEC内部の人に聞きましても、貿易の自由化というものが今日のEECの強大さをもたらした、これよりほかにない。アメリカケネディ大統領がやっているのも、やっぱりこの自由貿易主義でやっているのであります。私はこの信念に変わりありません。国内の自由化をやり、三年前から通産大臣をやり、絶対的に国際的の為替・貿易の自由化をしなければ日本は立ちおくれる、こう私は三年前に言って、これまたたいへんな批判を受けた。また、世界はそうなってきている。自由貿易のところへ好むと好まざるとにかかわらず日本の経済は立て直していかなければいかぬという、私は確信を持っておるのであります。そうして、それがあったからこそ世界の人類の幸福をもたらしたのであります。ケネディ氏もこの方向で行っておる。そうして、EECにつきましても、英国にいたしましても、この方向で進んでいっておると、私はこう思うのであります。そこで、そういう場合において、日本の経済の立て方をどうするかということが当面の問題でございます。あるいは大企業主義でいかなければ競争に敗けるなんということもありましょうが、しかし、やはり日本の経済事情がございまして、私は日本人の努力と英知によっていけばいい、これがよりいい方法であると考えておるのであります。自信過剰とかなんとかというのではない。二十四年のときには、人も知る非常なデフレ政策でディス・インフレで、私はいろいろな経済の事情を見ながら進んでいっておるつもりであります。しかし、それでも自信過剰だとおっしゃれば、これは仕方がございません。私は私の信念で、これが日本に一番適し、これは世界のためになるだろうということを考えてやっておるのでございます。批判は出していただきまして、政策の誤りなきを期したいと思います。
  233. 山田節男

    山田節男君 私は、池田総理の自信家のことは、頼もしいと思うのでありますが、しかし、何と申しましても、九千三百万全国民の経済に関する問題でありますから、これは悪い言葉を使うようでありますけれども、一部のやはり財政経済評論家等は、どうも池田総理の経済成長のやり方は、何と申しますか、批判がありまするので、先ほど申し上げましたように、経済情勢は世界的に今後ますます急テンポにその性格を変えていきまして、やはり少なくとも、行政の責任者としては、そこのかじとりというものはもっとダイナミックにやる必要があるのじゃないか。二兆四千億にお組みになっても、これが四月−六月にはどういうことになる、これはだれもわからぬ。そこをひとつうまくやっていただきたいと思うのであります。  次に、やはりことしの一般会計予算の基本としては、国際収支を改善するということが、これは強くうたわれておるのであります。これはもちろんのことであります。具体的に申せば、三十七年度の大体輸出が四十六億ドル、輸入が四十七億ドル、大体一億ドルの赤字を見込んでおいでになりますが、はたしてこういったような予想が、見通しがうまくいくかどうかということ、これはだれも、将来のことでありますから、そのことを確言はできないかもしれませんけれども、少なくとも、この過熱的な設備投資というものが、私はやはり過熱の状態をこれは依然として続けていくのじゃないか。そういうことになりますれば、やはり、何と申しますか、輸入はどんどんふやさなければならぬ。今、一月あたり一億ドルくらいはふえたとおっしゃいますが、輸入はやがてはさらにふえてこなければならぬ。バランス上約一億ドルの黒字が出てきたと言いますけれども、しかも宿命的に、経済的な条件からいいまして、現にどうしてもそういう方面における輸入をふやさなければ、総理のおっしゃるような経済成長、あるいは外国に対して競争し得る——ことに貿易自由化を控えて、競争することはできない。そういう宿命的な矛盾ということがあるのだ。それならば輸出をどんどんふやせばいいじゃないかとおっしゃいますけれども、これもおかしいのであります。過去にございました日本の輸出の得意としておるのは、一番はアメリカですが、これは総理自身がケネディにお会いになりました。昨年の箱根会談。続いて日米経済合同委員会。最近に例をとりますれば、綿製品であります。アメリカ政府は、二割か三割か日本の綿製品の輸出をふやしてやろうとしましたけれども、そうなってくると、いろいろ綿製品業者が飛行機で羽田にやってきて、そうしてそれを牽制するという状態。綿製品にしても、関税のみならず、賦課金を課するという状態。こういうことになると、今日の日本の輸出の大きな得意であるアメリカに現状のような輸出の依存をしておるということがいいかどうかという問題。カナダもしかりでありますけれども、このアメリカというもの、これは私は言葉は悪いかもしれませんけれども、依然として日本の輸出貿易はアメリカに依存度を高くしておる。悪く申せば、従属的な貿易関係にあるということが、ことに私は池田内閣として大きな問題じゃないかと思う。ですから、私が申し上げたいのは、こういう現在の貿易政策というものが、アメリカをいわゆる得意としておったものを、こういう政策から言うならば、輸出を振興するためには他に道を求めねばならぬ。他の道を振り返って見ましても、ヨーロッパのEEC、ガット三十四条の問題もありましょうし、なかなかむずかしく、東南アジアも、その貿易という形式ではなかなか輸出は振興し得ない。その次は中共、ソ連の問題。中共等においても、イギリスは非常に伸縮を持たしてやっておる。最近の例を言いますならば、あのバイキングという旅客機を九台、さらに六台追加して注文しておるという状態。それに関連してきわめて多額な輸出をやり、西ドイツもやっておる。そういたしますと、私は中共との政治的な問題はどうこう申しませんけれども、ふん詰まりになっておる対米、あるいはカナダ日本から言えば輸入過剰、こういうものを、国際収支を改善するのならば、どうしても中共、あるいはソ連、政治思想的には反対でありましょうけれども、そういう方面にもう少し融通性を持った貿易の振興をはかるのでありませんと、こういう四十六億の輸出で四十七億の輸入くらいで済ませるということは、これは常識では考えられないと思っておる。この点についての総理の——これはほんとうに重要な問題でありますから、率直なお考えを、ことに対米貿易の問題についてどうするのか、これはひとつはっきりとお伺いいたしたいと思います。
  234. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の置かれた状況といたしましては、やはり対米貿易が一番大きな貿易になることはやむを得ない。それは、たとえば綿花にいたしましても、それからスクラップにいたしましても、綿花もメキシコからも輸入いたしております。しかし日本の綿業自体がパキスタンやインド綿では機械が十分動かない。能率が上がらない。品質等においてもやはり米綿のほうが人気がございます。それからスクラップは東南アジアからも入れますけれども、大量のスクラップはやはりアメリカから入れるよりほかにない。そうして機械にいたしましてもそうである。カナダとも片貿易でございます。しかし、だんだん日本の輸出がふえて参りましたが、やはりカナダの小麦を買うのが一番買いよい、品質その他からも。そしてまた非鉄金属なんかもカナダのほうが一番いい。こうなって向こうから買うことが多いのは宿命的なんです。ただ、今の状態は私はだんだん変えていかなければならない。東南アジアとの貿易も、昨年、一昨年は、一昨々年に比べてよほどよくなって、一昨々年は東南アジアは、全体の二八%ぐらい。昨年、一昨年は三二%ぐらいにふえている。それからまたヨーロッパ方面でも、EEC方面の輸出入もふえておる。去年はアメリカはほとんど三、四%しかふえませんでしたが、ほかの方面ではかなり伸びつつあるのであります。そうして今後われわれの方向としては、アメリカと同じような経済条件で買えるところを育成していこう。これがやはり東南アジアの開発の問題、早い話がトウモロコシなんかはアメリカあるいはカナダから取っておりましたが、タイから六、七十万トンのトウモロコシを取り寄せる。米のかわりにトウモロコシ、こういうような方向でずっといくべきだと思います。そうして、またパキスタンにおきましても、またインドにおきましても、われわれはこの一綿花を非常に……なぜインドは綿花の品質改良をしてアメリカ、メキシコと同じような綿花を作らないのか、そうすれば日本はあなたのほうから買う、こういうことを私はネール首相に直接言ったのですが、東南アジアの開発にはやはりアメリカに依存するのでなしに、東南アジアに向けるような方向を私はとっていかなければいかぬと考えておるのでございますが、ガットの問題等もございますが、私は、外務大臣が今年はガット三十五条撤廃の年だと言っております。その方向でいい方向へ向いつつあることを申し得るのであります。で、日本が貿易、為替を自由化し、それで世界の自由化に乗っていって、ガット三十五条を撤廃し、そうして有無相通じ、世界的な分業的関係を樹立していきたい。そうして特に東南アジア日本の原料産出地としたい、こういう気持で進んでおるのであります。
  235. 山田節男

    山田節男君 アメリカの輸入は宿命的に多い。しかるにアメリカのほうとしては日本からの輸入を漸次ドル防衛の立場から押えつける。こうなりますと、現在の世界各国の貿易状況を見まするというと、やはりたくさん輸入してやればたくさん買ってもらわなくてはいかぬ。これが、今日の私は経済貿易関係から申しますと、たくさん輸出されて参ればたくさん輸入しなくちゃならない、こういうような立場から言えば、これは政治の問題になりますけれども、そういった宿命的な——機械にしても、スクラップにしても、買わなくちゃならない。綿花でもそうだということになりますれば、アメリカにいたしましても非常に喜ぶトランジスターとか、ベニヤ板とか、その他日本の軽工業的なもので、ずいぶんアメリカが喜ぶものがあるのであります。そういうものを政治的にひとつ総理が、これを買ってやるからこれだけ買ってくれという、私はそこにどうも池田内閣アメリカに対する一つの弱さがあるというふうに思うんです。これは特に答弁を求めません。ほかに問題がありますから、これ以上申しませんが、この問題を十分ひとつ御配慮を願いたいと思うのであります。  それから、やはり池田内閣の経済成長政策として私どもが感じますことは、どうも、いわゆるこれも自由主義経済のオーソドックスな考え方でございます低金利政策というものに固執される。金利の上がることを非常にいやがられる。昨年の下半期に入る前に、すでに五月に日銀の総裁はどうしても公定歩合を上げなくちゃいかぬ、二分ぐらい上げなくちゃいかぬという実は日銀意見があったにもかかわらず、とにかくIMF等で問題になるまでほったらかしておかれて、しかもかろうじて一分の公定歩合を上げられた。そうしてさらに昨年の秋になりまして一分二厘お上げになった。こういうような、どうも総理の低金利政策、これもやはり資本主義、自由経済下で申しますれば、なるほど金利は安いほうがいいにきまっておりますけれども、まだ日本の状況は、これはやはり欧米に比べますと、金融、財政というものがそれほど高度に発達していない。事業にいたしましても、ほとんど七、三すなわち七分は借金である。オーバー・ボローイング、銀行はオーバー・ローンである。そういうことになりますれば、私は池田内閣の経済成長政策にとりましては、いわゆる金融政策、特に金利政策について、低金利の原則に固執する。これは私は昨年、この三十六年度で、失敗とまでは申しませんけれども、非常にそごを来たしたこの経済成長政策が、依然として三十七年度も続くのではないかと思うのですが、この点の御見解を承りたい。
  236. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカとの貿易、ことに日本の輸出につきましては、私は非常に関心を持っておるのであります。昨年も参りましたニューヨークで、はっきり日本アメリカから買い過ぎている、アメリカ日本の物を買わなさ過ぎるとはっきり言ったのでありますが、いろいろな好条件が積み重なって参りまして、最近のアメリカへの輸出のLCは去年に比べまして一割ないし一割五分あるいは二割程度ふえております。昨年の十一月からLCで一億一千万ドルあるいは一億一千五、六百万ドル、こういうように二月に出ております。非常に伸びつつあるのであります。問題は、私はアメリカの全消費量から申しまして、綿製品なんかたいした問題じゃない。それから合板の問題もたいしたことはない。あるいは金属食器だとか、こうもりがさの骨、いろいろなものが、問題はフラッドによってやった点が大きいと思うのであります。したがいまして、アメリカへの、またどこの国でもそうでありますが、EECもそうであります。日本の商品は、前は安かろう悪かろう、今は安かろうよかろうというふうにだんだん変わってきております。日本の商品はまだこのままではEECなんかと競争ができない。こういう建前で押えておるのであります。そこで、輸出入取引法につきましても、やはり検討を加えると同時に、商社、ことに輸出業者が不当なフラッドをしないようにしてもらうことが一般の輸出の長い目で見ての一番振興のあれだと考えておるのであります。  もう一つは……−。
  237. 山田節男

    山田節男君 低金利政策。
  238. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 低金利政策、これはいろいろ議論があるところでありますが、今お話にもありましたように、会社の運用資産の七割五分は借入金でございます。そうしてまた最近の状況は、去年は日銀の貸し出しが五千五、六百億円くらいが今は一兆三千億、こういう状態のときに公定歩合を上げて、それが他の国で見られるように借入資本が全体の二割とか二割五分の、ほとんどが自己資金、こういうような八千億も今のようにふえているときにこれで公定歩合の操作というものの実効があるかどうか。私は金利につきましては、昔と違い、外国のそれとは違って、公定歩合の操作は心理的な影響が主であって、実質的の効果はない。大銀行は、御承知と思いますが、一時は五銭五厘のコールを借りておりました。しかも第二種高率適用を受けておる。日歩三銭五厘と思いますが、三銭近い日銀の高率適用を受けておる銀行が何行ございますか。一流の銀行で日銀から千億円以上借りている銀行が相当ございましょう。ここで一厘くらい上げて、二厘上げて、それがどれだけの効果があるか。私はいろんな評論家のあれも聞きますが、日本の金融の実態を見きわめなければならない。いたずらに公定歩合を上げて、産業の金利がそれでふえたなら——大体十兆円の貸し出しになる。十兆円の貸し出し。そしてこれが相互銀行あるいは信用金庫等々にずっと影響してきますと、金利の引き上げは物価にどれだけ影響があるか。これはたいへんなものだと思う。租税収入にも影響がある。物価にも影響がある。労賃にも影響がある。だから心理的影響のみをねらうために私は公定歩合の操作ということにはあまり熱意を実は持っていない。ただ、総理大臣といたしましては、この問題につきまして、この前の国会でも申し上げましたように、一切タッチいたしません。大蔵大臣が相談に来ましたから、私が大蔵大臣のとき総理大臣に相談したことはない。おれに意見を聞くものじゃないと言ったことがありました。ただ、個人の意見を聞かれれば、私は今の金融の実勢からいって、公定歩合を上げたからこれが貸し出しが非常に押えられるという程度の問題じゃない。日本の今の設備投資やオーバー・ロンの状態は、それをずっと私は知っておりますから、それは私は心理的影響で、二度ありましたが、今後も高金利政策ということは私の考えではやるべきでない。この機会に高金利政策をとるよりも、既存の金利で、そして既存の金融のあり方、流通のあり方につきまして、もっと考慮していくことが今の金融政策のもとじゃないかと思います。
  239. 山田節男

    山田節男君 総理のこれは得意な論旨ですから、私はこれに首肯できませんけれども、時間がございませんからこれ以上やりません。  もう一つは、私が総理にこの予算の問題についてお伺い申し上げたいことは、どうも一昨年の選挙で自民党は所得倍増論、国民の所得すなわち月給が二倍になるのだというようなスローガンでとにかく大勝されて池田内閣はできた。しかし私は、この所得倍増論というあなたの経済成長政策が、今のように心理的にも、まだ、実際的にも今日の、破産とは申しませんけれども、行き詰まりが来ている。ですから、私は、国民の心理的に与える悪影響あるいは今の産業の設備投資の過熱、これを抑制するためにも、所得倍増論というのは、私の解するところでは国民所得という意味じゃない、いわゆる個人の所得が倍増になるのだというようなことを総理も言っていらっしゃる。月給倍増論。これが私は、今日の悪くいえばガンになっているのじゃないか。こういうことは再び政府が唱えないように、また、そういうふうなことについて国民をまどわす、そうして経済の成長政策を——そういったような消費のブームを起こすとか、レジャーブームを起こすとか、こういったような非常な社会道徳的に見ましても、こういうスローガンはよくないと思う。これは池田内閣の責任において、所得倍増という誤解のされやすいようなスローガンは、今後絶対に禁止していただきたい。御意見どうですか。
  240. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増とか、五割増とかいうことは、各国のはやり言葉になっているようでございます。各国ばかりじゃない。社会党さんも民社党さんも、やはりそういうことを言っておられたと私は聞いております。ただ、社会党さんなんかは、今の経済機構というものを変えて倍増するのだ、こういうお話。私は、今の自由経済、資本主義経済のもとでやっていこう、こういう態度。これを変える必要はない。わが党の基本方針でございますし、私も同じであります。ただ一人当たりの倍増か、全体の倍増かという問題、これは私は全体の倍増です。しかし、これが所得全体が倍以上になりまして、一人当たり倍になればこれにこしたことはない。目標は全体としての倍増を言っているので、これをやめる気持はございません。
  241. 山田節男

    山田節男君 これにつきまして最後に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、御承知のように、一昨年の暮れには保有外貨が二十億ドルあった。ところが、昨年、ことに下半期に入りまして、輸入超過が激しくなりまして、外貨が十五億ドルになった。さらに十億ドル台になった。現在はどうも政府の確実に持っている保有の外貨というものは、十億ドル内外じゃないかという、これは外紙も伝えているわけです。ですからこの点ひとつ大蔵大臣に、今期の時点において一体どれだけの外貨をわが国は持っているのか。ことにその内容。内容につきまして、貿易の収支から当然取るべき金、もらっていない金、さらにほかに外国からのきわめて短期の預け入れとか、あるいは債権の焦げつき等によって当然入るべき金として計上して、外貨の保有というようになっているのじゃないかと思いますが、そういう点につきまして、現在の時点において大蔵省のいう外貨保有高は幾らであるのか、内容をひとつ御説明願いたい。
  242. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一月末現在の外貨準備高は十五億一千万ドルでございます。そのうち金が二億八千七百万ドル、そのほかは米ドル預金及び米国財務省の証券に運用しているものが十二億二千三百万ドルでございます。
  243. 山田節男

    山田節男君 今のおっしゃったアメリカの財務省の保証の証券、これはたとえば電源開発とかあるいは電電公社、そういったような債券の意味をなさっているのか、その点ちょっと。
  244. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 米国の財務省の出している証券でございます。政府証券でございます。
  245. 山田節男

    山田節男君 ボンドですか。
  246. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  247. 山田節男

    山田節男君 次には、今回の三十七年度の予算におきまして、減税九百七十億円、その中で今回は久しぶりに間接税がかなり多く引き下げになった。酒税において三百九億、物品税で百七十二億、通行税で二十四億、入場税で七十億、合計五百九十億円というかなり政府としては思い切った今度の間接税の引き下げだと思うのでございますが、今日の朝日新聞にも三面記事にちょっと出ておりましたが、一体政府がこのかなり広範な家庭用品からテレビジョンあるいは化粧品に至るまでの税金を下げることになりまして、政府はこれに対して五百九十億円の間接税を下げたといいますけれども、はたしてそれでは五百九十億、全種目の商品にわたりまして、消費者が五百九十億減税されたようになるということは、これは私は、事実けさの新聞も申しておりましたように、たとえばビールとか酒というのは、これは普通の税金の下がっただけ値段を下げるといいますけれども、そうでない多くの種目におきましては、下がった間接税も、下がっただけの値段は下がらない。たとえば映画の入場税等はせいぜい半分くらいしか下がらない。こういうことになりますと、消費者、すなわち物を買い、サービスを受ける者から申しましても、間接税を五百九十億下げたと申しましたけれども、実際の消費者、サービスを受ける者から言えば、なかなか中間におきまして、マージンを中間でいろいろ業者等が取ってしまう、こういうことに対する監督指導がない限りにおきましては、間接税が、未曾有の減税を行なったと言いますけれども、消費的の面から言いますと、この点が私は非常に不安なんじゃないかと思う。したがいまして、この予算が四月に始まりまするが、この予算が間接税の引き下げをやるのだ、やるのだということで、徐々に下げておりまするが、ほんとうに間接税を下げたということを消費者に徹底させるためには、そうして、その利益を守るためには、やはり政府は何かの形で、そういう中間におきまして半分しか下げない、これは私は時間の問題になるのじゃないかと思うのですが、これは大蔵省としてどういうような指導方針をとられて間接税の減税の実際的な効果をあげていくおつもりなのか、この点をお伺いをしたい。
  248. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 減税分だけは必ず消費者に還元するという方針で、今、業界別に私どものほうでは指導を行ない、政府はこの際末端の価格が減税分だけ下げるようにしてほしいという要請を行なって、業種別に相談をしております。で、一般物品税は、これは大体通産省の所管になっておりまずし、飲料そのほか農林省所管のものもございますし、入場税にも、厚生省と文部省の管轄の入場税がございますので、各省間でそれぞれ相談して、各省もこの値下げに協力して下さいまして、今管轄の業界に対する強い指導をやっております。今のところ、各業界ともこのことには協力するという態度でこまかい点までの相談をしておりますが、たとえば酒類のごときは、これは四月一日から減税どおりに実施できる準備ができました。入場税関係も、当初は従業員のサービスとか、あるいは館内のサービス改善をするために一部を保留したいというような意向もございましたが、私どもの要請によりまして、近く業界も議決をして政府の方針に協力するというような態度をとるということを言って参りましたし、また物品によりましては、四月一日から値が下がるのだということがわかっておりますというと、今の瞬間に全く売れなくなった商品がございます。そうしますというと、四月一日には売れない多く税金の入っている商品と、物品税の安くなった商品と、二本立になる商品も一部見られますので、この措置をどうするかについての相談も今業界がやっておりまして、庫出し後二カ月たてば必ず売れてしまうというふうにわかっているものは、六月からは完全に下がると、かりになりますと、四、五月間をどうするかというようなことで、一部の業界は、業界の損で、四月一日から、古い商品があってもこの税金分は損して自分たちは負担すると踏み切った業界もございますし、庫出しのときに、税金を四月一日まで待ってもらう。未納移出を認めてもらうならば、金利の関係もあるから、四月一日にはやはり古い商品を持っておっても、減税しなくてもやろうという業界も出ておりますし、そうでなくて、中間的に大体数量が古いものが幾ら残っておる、新らしいものとの比率がわかっておるようなところは、その一部はそのとおりに下げられないという業界もあるかもしれませんが、いずれにしましても、国民にはその点がわかるように店頭に表示したり、各物品に証紙を張って、減税分——減税がこれだけあったから値をこれだけ下げるということをわかるように表示するというようなことで、国民にははっきりとその点を店頭表示もしくは品物にそれを張りつけるというようなことで、はっきりするというような方向で、各業界もみな協力しておりますので、私はこの点は非常にうまくいくんではないかと今のところは思っております。
  249. 山田節男

    山田節男君 時間がございませんので、これ以上追及しません。  次に国債の償還の問題でありますが、財政法は、御承知のように、終戦直後昭和二十二年に制定されたのでありますが、この第六条によりますいわゆる公債償還、すなわち、会計年度で歳入歳出の決算上の剰余ができた場合には、当該剰余金のうち二分の一を下らない金額は、いわゆるその剰余金を生じた年度の翌々年度に公債または政府の借入金の償還の財源にしなくちゃならんという規定がございます。これは総理並びに大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、三十七年度におきましては国債償還、諸費入れまして六百八十億円計上されておる。御承知のように、年々こうして税の自然増収がある。今年おそらく五千億円くらいあるんじゃないかと思いますが。そういたしますとこの国債の償還額、財政法六条による二分の一を下らないまでに償還しなければならないという規定が、これは昭和二十二年に制定されましたときは、戦争中の遺産である戦時公債等の処理等の問題もございまして、なるほどこれは必要であったかもしれませんが、今日のように、雑駁に申しまして、内国債と外貨債入れまして大体五千億円程度じゃないかと思う。それに対しまして、毎年ではありません、明年度の公債償還約七百億円、これは私は少し現状として多過ぎるんじゃないか。今日の日本の経済力、ことに池田内閣のように、非常に積極的にやって国の総生産高を上げて国民所得が上がっていく。これは池田総理がお考えになっておるように順調にいくかどうかわかりませんが、ともかく伸びるというのは事実だ。そうなりますと、この財政法第六条というものは今日の日本の経済力から見て、非常にきちょうめんにやる必要があるかどうか。これは議論すれば、アカデミックに議論すればもつとめんどうでありまするけれども、私が申し上げたいのは、これは毎年こういうように公債を返していくということは悪いことではありません。しかし今日の事態また将来を見通してこういうような制度でいったほうがいいかどうかということ。それよりも、むしろそういう歳出の部面で、収入がどんどんふえて歳出をふやし得るならば、私はそういう法律を改正しても、やはりある程度の健全な借金があるのは、国でありますから、あっていいとは申しませんが、あってもいいのです。少なくとも、経済力にたえられないような公債を発行するというのは、国が破産するわけであります。政府が破産するわけでありまするけれども、私今後の見通しからいたしますると、むしろこの第六条のいわゆる二分の一を下らない剰余金を借入金あるいは国債償還に充てなくちゃならぬという制度は、少し時代錯誤になっているのじゃないかと、かように感じますが、これは総理並びに大蔵大臣の御所見をお伺いしたい。
  250. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 二分の一ときめた六条の規定が最善であるかどうかについては、これは検討さるべき問題であるかもしれません。しかし、剰余金というものがどれだけ出るかということは、これはあらかじめきまっておるものではございませんで、その半分を入れることが多過ぎることになるのか、少な過ぎることになるのかということも、これはむずかしい問題でございますので、この第六条が最善であるかどうかということについては研究してもよろしゅうございますが、二分の一をやったら多過ぎるというようなことも無条件には言えない問題だろうと思います。  それからさっきの御質問で、外貨準備の運用はボンドですかということでありましたが、長期の証券ではなく米国財務省の短期証券であります。
  251. 山田節男

    山田節男君 これは時間があればもう少し申し上げたいのでありますが、ただ、私の申し上げたいことは、今、大蔵大臣の御意見もわかりますが、昭和三十六年、五年、四年と、こういうようにずっと国債の償還を見ますると、なるほどアップ・アンド・ダウンがありますが、やはり日本の経済力が伸びればどんどん国債償還力がふえてくる。ことに税の自然増収が非常に多いというような、これは例外の場合もあるかもしれませんが、大体伸びてくるのじゃないかと思う。私は国債がからになればもちろんいい、政府の借入金がゼロになればよろしい。これにこしたことはありませんが、それほどきちょうめんに国の財政をやる必要がないのじゃないか。これはルーズな意味で申し上げるのじゃございません。実際問題として、やはり国として借入金があり国債があるということは、体裁じゃありません。そういうことは国の経済活動としてもあり得ることで、決してこれは悪いことじゃないと思う。そういう意味で、言葉が足りませんが、私の意見を申し上げておきます。  次に、ちょっと順序を変えまして、電波の関係について御質問申し上げたいと思います。これは総理にもお伺い申し上げたいのですが、どうも近来電波行政、ことに放送問題、これは総理も御経験だろうと思いますけれども、放送免許ということになれば、これは非常に総理並びに関係大臣を悩ましている問題である。悪く申しますと、今日放送の電波に対す免許が一種の利権運動みたいになってきておる。これはまことに慨嘆にたえないのであります。それから放送に使う周波数、バンドというものがありますが、有限的なもので、しかも国民の共有財産である。これはスペクトラムと申しますか、電波の周波帯というのは国民共有のものです。これに免許を与えて、そうしてこれを使わせる。三年間やってみてどうもうまくやれぬようだったら免許を取り消すということも大臣はできるのです。そういうことにもかかわらず、電波というものが非常に利権化しつつある。この状況が、御承知昭和二十四年に、電波三憲法と申しますか、電波法、電波監理委員会、放送法の三つを作りました。こういうことになっちゃいかぬからということで、アメリカの連邦通信委員会等の例を見まして、そして内閣が責任を負わない、内閣が責任を持たない、いわゆる外郭にした、厳正中立にした電波行政、これをやれば、今のような電波行政を利権扱いすることがなくなるということで、アメリカのあの制度を二十四年から三年やってみたのでありますが、どうも責任の所在がはっきりしないということで、郵政大臣の直属に今のこの電波監理行政を置いたのであります。どうも私見ておりますというと、非常にこの点におきまして電波行政が利権扱いされておる。今日のこの電波行政というものは、やはり前に戻りまして、内閣総理大臣よりももっと別の、これは詳しく申せば長くなりますが、要するに電波行政は免許、これは司法的なもの、立法、行政的なもの、この三つのものを兼ねてやるという特殊な行政でありますから、どうしてもやはりこれは総理府の外局に置くか、そういう関係閣僚の大臣の直属にこれを隷属せしめるということが私はどうもよくないのじゃないか。この点に対して、これは総理として何か改善しなくちゃならぬというお気持があるのじゃないかと私は思うのです。この点お考えがおありになればお示し願いたい。と同時に、この問題ではおそらく悩んでおられるだろう郵政大臣の所信をもひとつ伺いたいと思います。
  252. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話しのように、電波行政の重要さは想像以上なものであるのであります。したがいまして、今政府の責任でやっておるのでございます。また今後波の、FM問題等々ございまして、今郵政大臣はそういう問題について研究いたしておると思いますので、郵政大臣から答弁いたします。
  253. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 電波、ことに放送用の電波の問題が利権的な色彩を帯びているおそれがあるから、その認可を内閣以外の機関に預けたらどうかというような御趣旨でございましたが、御承知の電波行政の歴史は一時そういう時代があったわけでありますけれども、やはり責任内閣関係から申しまして、放送の電波の割当も電気通信行政の一環だということから、責任の所在を明らかにするために郵政大臣にまかされたわけでございます。私考えますけれども、やはり郵政大臣の所管にしておくほうがいいんでして、これを特別な会計検査院というような、そういう特殊な内閣以外の機関にまかせるということは、何といっても責任の所在が明らかでありませんしかえっていけないのじゃないかと思っております。もちろん電波の監理行政が政治的な影響を受けないように、これはそう申しては何ですけれども、郵政大臣の見識でそれはしっかり政治的な影響を受けないように、利権扱いされないように郵政大臣の見識をもって処理していくべき問題だと考えまして、私もその点については十分努力したいと思います。
  254. 山田節男

    山田節男君 これは総理並びに郵政大臣のお話ですと、非常に自信ありげに見えますけれども、はなはだ口幅ったい言い方でありますけれども、歴代、少なくとも過去四人の郵政大臣の諸君は、電波の、ことに放送免許についてはもう頭を悩ましておる。これを見ましても、まことに優秀な、政治力もあり、りっぱな見識を備えておりましても、この電波、特に放送の免許に関しましては非常に困っておられる。いかに迫水郵政大臣は見識と良識をもってやるとおっしゃいますが、これは私意見になりますけれども、実際不可能だと私思うのです。一体今日の民間放送が投下しました資本というものは、おそらく今日一千億円近いもんじゃないかと思う。しかも、国民に伝える放送のバンドというものは、国民の教育、文化にとって非常に影響を持っておるのです。この行政が、そういう今日の大臣の責任においてやって大丈夫だというお言葉は、今までの、少なくとも、過去五、五六年間の経験を見まして、私は絶対にこれは誤りだと思います。これは政府でもう一ぺんひとつ謙虚に、公平に考えてもらいたいと思います。  それから次には、これはFM放送の問題、これは超短波放送の問題でありますが、これまた御承知のように、これは総理も郵政大臣も困っておられると思いますが、一体この将来超短波放送というものを、まだ日本としては処女地と申していいんであります。外国からの強力な電波発射におきまする、ことにラジオ放送、中波放送と申しますか、この難聴地区、混信地区が非常にふえております。西部の九州あるいは北日本、北海道の日本海寄り、ソ連、中共、北朝鮮からの強力な電波の発射のためにラジオが一部分聞こえない。これらの対策問題につきましてもつかなければなりませんでしょうし、また今日、もうすでに三百に余る新聞社、あるいは通信社、あるいは超短波放送会社、あるいは民間放送会社、こういうものが、いかにも超短波放送は金がもうかるように考えてか、あるいはもらうものなら早くつばをつけたほうがいいというような、まことに私らから見ますと無政府主義的な、実に乱れたFM放送の申請が政府に御承知のように来ているような実態です。これは一体どう処理するか。総理大臣は技術家じゃありませんし、郵政大臣も技術家じゃないのです。一体これをどうするのか。先ほど申し上げましたように、これが一つの利権化するようになると、最初に申し上げましたように、日本の電波行政というものは、今日の郵政大臣のあの力をもっていかにがんばりましても、これは私は実に乱脈きわまるものになるんじゃないかということを憂えるものであります。これは、総理大臣にそこまでの問題についてお耳に達しておれば御意見を承りたいし、さもなくんば迫水郵政大臣から、ひとつはっきりしたお考え政府の方針をお示し願いたい。
  255. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話しのような点がございます。私も直接陳情を受けたりなんかいたしております。郵政大臣で善処願うように今検討願っておる次第でございます。
  256. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) FMにつきまして、非常に数多くの申請が出ていることは事実でございます。しかし、現在の段階におきましては、目下いかにこれを扱うかということにつきまして、すなわちFM放送をどういうふうに認めるかということについて、時期とか、社会的技術的なあり方を、省内にFM研究会を設け、また電波技術審議会にも諮問をいたしまして、それを検討をいたしておる最中でございます。結局、FMというものは、ラジオ放送として残された最後の媒体でございまするから、現在の標準放送を含めたラジオ放送全体についての長期的なあり方を十分に検討をして、またFM放送を実施している欧米諸国の実情及び国内各界の意見を広く参酌して誤りないことを期したいと存じております。差しあたり省内にFM放送に関する調査会を設けておりますが、その調査会である程度の結論、あるいは結論らしきものを得ましたら、それについて一般の意見を聞き、必要に応じて公聴会を開催し、あるいは有識者を含む調査団を海外に派遣する等の処置によりまして検討いたしたいと存じておりますので、先ほど仰せられましたように、とにかくFMの波を一つの利権としてただ持っていたい、こういうことに対しては厳重に注意をいたしまして、最後の媒体であるFMが最大の効率を上げるような結論を出したいと努力いたすつもりであります。
  257. 山田節男

    山田節男君 今、総理並びに迫水郵政大臣のお言葉でありますが、承りますと、まだ政府もはっきりした方針がないということでありますが、問題の重要性については、もう十分私は御存じだろうと思うのです。そこで、総理並びに郵政大臣の力だけでは、私は今日の電波法の建前から申すと、なかなか公平な分配と申しますか、機能を発揮せしむるような工合に、FMの使用を公正妥当に行なうことはむずかしいのじゃないかと私は思うのです。ですから、ここに超内閣的な、会計検査院的なものを作るのが、まあいやであるとか間に合わぬのでしたら、私はやはりこの処理問題については、何か特別の法的基礎を持つ、こういうことに関しての、今日も電波監理審議会というものがありますが、これは国会の承認によってありますが、そんな弱体じゃなくて、ある特殊の法律に基づく委員会をお作りになって、総理並びに郵政大臣の決裁に持っていくというようなものが、私は一つの、これはこそくな手段かもしれませんけれども、こういう重大問題を現在まで推し進めますと、依然として私は混乱した状態が続くのじゃないかと思いますが、これは希望になりますけれども、この点をひとつ御注意かたがた申し上げておきます。  それから、これも科学技術の関係でありますけれども、宇宙通信の問題、これはすでにもう世界各国ともいろいろ準備をいたしておりまするし、日本のように電子工学等におきまして一流な、各国とも匹敵し得るような地位になった上からは、これは私は宇宙通信ということにつきまして、これを、人工衛星を打ち上げることにつきましては、これは金が要るでありましょう。しかし幸いにいたしまして、アメリカ中心としてのエコー第二号、あるいは続いて第三号、こういう工合に国際的な協力によって宇宙通信をこれを開拓し、完成の域に持っていこうというような、非常に努力各国払われておるわけであります。少なくとも明後年のオリンピックの大会には、この人工衛星を通じまして、ラジオ、テレビジョンの姿を世界各国に電波が伝わるようにしたい、これは決して夢でないのであります。そこで、私は伺いたいことは、今回のこの三十七年度の予算を見ますというと、予算がきわめて僅少であります。科学技術庁関係あるいは郵政省関係等もございますけれども、こういうような貧弱なことでは、茨城県の鹿島にそういったようなパラボラと申しますか、を作っているような程度でありまして、私はこんなことでは、この日本の科学技術のかなり進んだ国としましては、非常にまだ不足だと思うんです。こういう点につきまして、予算上きわめて貧弱な費用しか出していないのでありますけれども、このことは非常に遺憾に思うのでありまするが、私はむしろ補正をいたしましても、少なくとも今回計上されている宇宙通信の研究関係、研究でなくて、実施の段階に入っている今日といたしまして、非常に少な過ぎると思うんです。この点に関して、総理はそういうものに御関心なければ、これは郵政大臣の本予算委員会における御答弁として御所信を承っておきたいと思います。
  258. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 宇宙通信の研究につきましては、現在わが国では郵政省の電波研究所、国際電信電話株式会社及び東京大学生産技術研究所の三つでやっておるんでございまして、私のほうの電波研究所においてやっておりますことは、宇宙電波科学の研究並びに宇宙通信の方式、それに関連のある周波数の問題等、主として基礎的な研究を行なうことを計画しております。また国際電信電話株式会社におきましては、通信衛星を利用して多重電話及びテレビジョン電送を国際的に実験するための可能性について研究をしている。東京大学生産技術研究所では、主として同所で打ち上げるロケットの観測研究を行ない、将来人工衛星の追跡の研究が行なわれることが予定されております。こういうようなことは、相互に密接な関連を保ちながら研究を行なっておるのでございます。郵政省の付属機関であります電波技術審議会は、昭和三十六年度以来、郵政大臣の諮問に応じまして、わが国の宇宙通信に必要な技術基準の検討を始めております。一方、さらに昭和三十六年五月、日本放送協会、日本電信電話公社、国際電信電話株式会社、日本民間放送連盟等の関係者による宇宙通信懇談会を設けまして、わが国の宇宙通信に対して、統一された態勢のもとに慎重に研究を進めていくように努力しておる次第でございます。  また御承知のように、宇宙通信は国際関係を除いては考えられませんので、関係の国際機関とも密接な連絡を保って、遺憾のないようにするつもりでおります。  なお、今回取れました予算が少な過ぎるのではないかというお話がございましたが、見方によりましては、もちろんそういうことも言えますけれども、比較的大蔵省としてはよく認めてくれた部分ではないかと、今年の予算としてはそういうような感じを私としてはいたしております。
  259. 山田節男

    山田節男君 郵政大臣の御時間の都合があるそうでございますから、はなはだ不本意でありますけれども、これで打ち切りまして、次に外交問題の、これは時間がございませんから、一部ですが、先ほど杉原議員の御質問の中で、国連の強化の問題がございました。これは国連局長答弁がありましたけれども、私の得ている資料では、国連はまさしく破産に瀕しているのであります。ことにコンゴにおける国連軍をあそこに派遣したということが、ばく大な、先ほど月間三十六億円と言われましたが、これはもちろんソ連なんか払いっこないのでありまして、そういうことになれば、国連が財政的にまず破産に瀕しているということは、これはもう争うべからざる事実でございます。特に機能的方面におきましても、これまた杉原議員も指摘されましたように、現在の運営上からいえば非常に弱体化している、機能的にも弱体化している、これは事実であります。そこで私のお伺いしたいのは、今日のような国連の状況では、ことにアジア。アフリカのメンバーがもう四十九国をこえるということになりますと、どうしても現行どおりの国連ではうまく運営がいかない。やはり東西のイデオロギーの対立があそこに反映されてくる。と申しますのは、名前は国際連合でありますけれども、まだ各国大臣、それから大使各国立場であそこで論議する、ネゴシエーションするという団体でありますから、これでは国際平和は生まれっこないのであります。これは世界連邦主義者である小坂外務大臣にあれでありますが、一体今日のような国連の状況では、あの憲章の第一条に書いてありますような、世界平和を実現し確立する、維持するということは、これはもうとうてい不可能であります。どうしてもやはり今日の国連というものを何とかもう少し強いものに持っていかなければならない。いわゆる今日の国際連合というものをワールド・オーソリティと申しますか、ワールド・ガバメントと申しますか、世界政府的なものに持っていって、権威を上げて、ことに軍備撤廃に関する問題、核兵器の禁止問題、これはどうしても、今日の各国の持っている国防というものが絶対の主権であるという考えでは、これは絶対に私は戦争は絶えない。昨今のソ連アメリカとの核実験の競争を見てもわかるのです。次元をもう一段こえて各国の軍備撤廃に持っていく、それによって核兵器の戦争を絶滅する、それで軍備の必要もないということ、その次元にどうして持っていくかということがソ連を含めての世界各国の共通の願いだと私は思う。  そこで、これは昨年の九月に、アメリカの弁護士の主催でありましたけれども、世界法を通じての世界平和という弁護士のアジア会議がありました。これは池田総理出席されてメッセージを送っておられます。まことにけっこうでありますけれども、一体昨年の予算委員会でも、外務省に聞いてみますというと、まだ国連の強化ということ、これは小坂大臣が十九日の施政演説にも、日本の外交は国連を育成強化するのだ、こういうことを力強くおっしゃっていますけれども、先ほど来杉原議員の御質問に対する答弁等を見ましても、積極性一つもない。積極性がないと申しますることは、少なくとも先ほど申し上げましたように、国連をどうして強化して、そしてこの目的とする世界平和をここに確保するかというそのためには、国連を開放しなくてはならない、国連憲章を改正しなくちゃならぬ。そうすると、少なくとも外務省国連局ぐらいには、世界連邦と申しますか、世界政府と申しますか、世界各国でも研究している、アイゼンハワーも、一昨年の上下両院で世界法による世界平和という決議をいたしまして、アイゼンハワー大統領が特別のコミッションを作って、国務省の中にそういう研究の委員会を作っておる。外務省にまだそういうものは一つもないということは、私はまことにこれは怠慢というよりも、非常に私はその点は情けないと思うのであります。この点についてのひとつ総理並びに外務大臣のお考えを承りたい。  それから月半ばから始まります例の国連軍縮協議機関十八九国の軍縮委員会が始まります。始まりますが、日本はなるほど憲法によりまして軍備を否定し、戦争を否定しておりますが、われわれは核兵器を禁止し、これを貯蔵しない、生産しないということは、これは今朝社会党坂本議員の質問にございましたように、国民の念願であります。そうすれば、少なくともこういう軍縮委員会に入って、われわれは大いにこの核兵器の禁止、製造、貯蔵ということにつきましても、強力なこれに対する禁止的な方策がとらるべきじゃないかと思うのですが、日本がこれのなぜ委員になれないのか、私は、日本が、はたして、この委員になりたいという希望があったけれども、よそに反対されてなれなかったのかどうか。この点のひとついきさつを総理大臣並びに外務大臣から承りたいと思います。
  260. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連の現状並びに将来につきましての山田さんの御意見同様の意見世界各国に出ているようでございます。われわれももっと強力な国連になることを念願して努力していきたいと思います。具体的の問題につきましては、今後検討いたしたいと思います。  なお、十八カ国の会議日本がなぜ参加できなかったかということにつきましては、今朝お答えをしたと思うのでございますが、実は日本西側のほうでは入るようにという申し出をしたそうでございます。東側のほうでこれを拒否したということを聞いております。詳しくは外務大臣からお答えいたします。
  261. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国連憲章の第一条の目的そのものは、まことにこれを達成することに世界各国努力しなければならない至当なことが書いてあるわけでございます。しかし、これはなかなかその目的どおりにいかない、ここが問題でございますが、さればとて超国家的な世界平和機構を作るには一気にいかない。いずれも私はその目標に向かって各国努力することが必要だと存じます。さしあたっては、現在の国連をいかにすれば世界平和維持機構としての実体を、名実ともに完備することができるかということにございますと存じまして、いろいろな国連の内包する現状における欠陥、そういうものはやはり構成国がお互いに相談し合って解決していかなければならない、こう思っております。現状においても国連は一部に利用されておるではないか、あるいはその利用するものが国連の経費もほとんど支払わないのではないか、こういうような議論毛あるわけでございますが、やはりわれわれはあくまで粘り強く、やはり世界各国の平和を求める気持というものを、国連の中に結集するにはどうしたらいいかということに努力すべきだと思っております。もちろん、世界各国の平和を求める理想というものにはわれわれ賛成でございますが、そこに至るには道程があろうかと思っております。  次に、三月十四日から開かれます軍縮十八国の委員会でございますが、これはすでに総理大臣からお答えがございましたように、従来の東西の両陣営の十カ国に加えまして、主としてインド、アラブ連合、ナイジェリア、エチオピア、メキシコ、ブラジル、スエーデン、ビルマの八カ国というようなそうした国柄ないし性格のものが選ばれました。日本の場合は、東側においてこれに入ることを拒否するというふうなことがあったというふうにわれわれ承知をいたしている次第でございます。
  262. 山田節男

    山田節男君 外務省国連局以外に、ひとつ国連を強化する、国連の憲章の改正問題とか、あるいはワールド・オーソリティという、そういうものを私は日本外務省として特に持つべきだと思うのですが、この点に対する御答弁がない。
  263. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点につきましては、国連局内においても、いろいろ意見をかわしておりますけれども、国連憲章の改正そのものについても、山田さん御承知のようないきさつで、ソ連がどうしてもそのことに賛成いたしておらない。したがって、国連憲章を改正するための委員会を作るという提案などもいたしてみたりいたしておりまするが、もとより私どもとしましては、憲章を改正する場合には、どうしたらいいかというようなことについての研究はいたしておる次第でございます。ただそれに対しての特別の部ないし局を持つほうがいいかどうかという点につきましては、まだ具体的にはなっておりませんけれども、内部でそういう研究は十分いたしております。
  264. 山田節男

    山田節男君 窓口を広げまして、わざわざおいで願った政府委員もおられまするので、はなはだしり切れトンボになりまするが、ひとつ時間の許す限り質問いたしたいと思います。  次に、これもやはり池田内閣の過度な経済成長の副産物と申しますか、社会資本の不足という現象の一つでありますけれども、例の交通難の問題であります。これにつきまして、現在道路交通法というものが三十五年に作られまして、これは自治省の大臣兼公安委員長が行政されておるのでありますけれども、先月でありますか、安井自治大臣が大阪にわざわざ行かれまして、そうして帰って来られて、交通関係の閣僚懇談会を催されたということでありますが、今日の日本の交通の混雑、ことに交通事故が非常に多いということ、交通難ということに対して、この道路交通法でもって解決し得ない幾多の問題が私は今出てきているだろうと思うのでありますが、この懇談会も作られたのでありますから、公安委員長としての自治大臣は、現在のまことに無政府主義的な交通政策、交通難というものをどうするか、何か具体的な研究をされて、ある程度の具体的な線が出ているかどうか、これをひとつ承りたい。
  265. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 交通問題につきましては、御説のように非常に大都市では混乱をいたしておりまして、これについて政府はあげて対策を検討し、また進めておる最中でございます。特に交通の問題は、警察の取り締まりだけでは、これは完全とは申せませんので、何と申しましても入れものに対して中身が膨張し過ぎたということが、一番根本的な原因でもございます。したがいまして、これが建設省、運輸省等の行政と相待って、私のほうはこの取締り面を合理化してやっていきたい、こう思っておるわけであります。警察の方面から申しますれば、何と申しましても路上の整理をやっていきたい。現在ある路上を有効に使い得るようにして、さらに車の流れを合理化して非常にスムーズにしていく、さらに今度は野放図な車両の増加というものをできるだけ取り締まって、ほんとうの必要以外のものについてはできるだけセーブしていくようなことを考え、それでまだ今後混乱がといいますか、混雑が予想されるというような場合には、やむを得ませんから、一種の車種別の規制というものもこれは行なわなければなるまいと、こういうように考えて、今せっかく努力中であります。
  266. 山田節男

    山田節男君 きわめて常識的な御答弁でありますが、問題はそれで解決し得ない程度に私は達しておるのじゃないかと、こう思うのです。換言すると、今日の交通難による交通事故の発生というようなことは、これはむしろ人災であって、根本におきましては、やはり日本国民性を何とか交通道徳を上げていかないというと解決つかないのじゃないかという結論です。同時に、行政的に申しますと、やはり官庁行政が特に交通問題については非常に、何といいますか、能率が低いということを私はあえて申し上げたいと思います。  もう一つ私がお聞きしたいことは、道路交通法の中におきまして、自動車の操縦の免許の規定がありますが、これに関連しまして自動車教習所というのが、全国各地にまるで雨後のタケノコのようにできておる。中国筋に行けば、廃田になった塩田が、いつの間にか二つか、三つの自動車教習所になっている。ちょっと川底に土地があれば、これまたいつの間にか自動車教習所になる。これは操縦技術の練習をするために自動車教習所を設けておる。これは私は決して反対しません。しかし、外国にはこのようなものはございません。なぜああいう自動車教習所を設けるか、技術の方面を研究する、これは趣旨はいいと思いまするけれども、私みずから家族の者の自動車免許を取る実例から申しますと、あえてあそこでもって中型の自動車の免状を取るにしても、いろいろな試験を受けたり、いろいろなことをしますと、どうしても二万五千円とか金が要るという、一体今日の文明国で自動車を操縦するのに二万三千円、五千円の金を使わなければ免許状が取れないというような、こういうばかな方法は世界にないのであります。しかも、それほど苦労して取ったものが交通難で事故を起こしておるということは、一体何を意味するかということであります。私は時間がありませんから、これ以上申し上げませんが、特に公安委員長としては、単なる道路交通法におきますこういったようなものよりも、根本的にはやはり日本人の国民性というものは非常に低下しておる。交通道徳、一般の今日の日本人のモラルを堅持しなければならない。私は三十数年間、自分で自動車を運転しておりますけれども、日本人の、乗用車を自分で運転しておるものの、私の経験したところでは、非常にモラルが低いということです。この点を上げない限りは、私は日本の交通問題というものは決してうまくいかない。時間がありませんから、これ以上申し上げませんが、ここに警察庁の長官並びに保安局長も見えておるかと思いますから、もう少し私は質問してみたいと思いますけれども、一体、今申し上げましたように、日本の交通行政に対して、自分が運転の経験のないものの机上の空論であるから、実に何と申しますか、不親切で、標識あるいは標示等におきましても、非常に運転するものにとりまして、まことに不親切な状態なんです。こういうことを私は痛感しておるから申し上げるのでありますが、一体、警視庁は今日のこの東京における非常な交通難、これに対して一体どういうような対策を具体的に考えておられるのか。ひとつこの点を簡単でよろしゅうございますから、要点的に承りたいと思います。
  267. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) お答え申し上げます。ただいまお話しの、交通道徳の高揚ということが基本であるということについては、全く私ども同感に思います。警視庁におきましても、自動車の現在の状況につきまして、まず規制の方法といたしましては、主要路線についての右折禁止を徹底的にやって参ったわけでございますが、それではなかなかこの渋滞を克服できないということで、近く車種別の、時間別の規制を行なう方針を持って、目下運輸省と打ち合わせをいたしておるわけでございます。  なお、警察官の自動車の運転についての教養程度でございまするが、遺憾ながら幹部等においては警視庁の半数くらいしかいまだ運転免許を持っておりませんが、交通取り締まりの専従者につきまして見ますと、九割程度のものが運転免許を持っているという状況でございまするし、現に全国的な警察官の教養におきましても、初任教育のあと補習教育として四カ月の教育をいたしておりますが、これについても自動車の運転その他構造についての知識をできるだけ得させるように努めておる次第であります。
  268. 山田節男

    山田節男君 今の御説明では、大体交通行政の関係のものが五〇%自分で操縦し得るということでありまするから、この点におきましては、私は、もう少し実際的に、東京都におきまするこの交通行政と申しますか、交通取締役と申しますか、もう少し私は親切にできるのじゃないかと思うのです。具体的に申し上げまするが、道路交通法によりまする言葉を使いますれば、標識あるいは標示等を、これは私はいつも考えることは、今日まだ日本では道路が悪いし、あまりそういう傾向はありませんが、将来日本の道路がよくなれば、外国からの観光客も欧米におけるごとく自動車を持って参ります。あるいはレソト・カーと申しまして、飛行場ですぐ自動車を借りて、それで運転してくるというようなお客さんがふえて参ります。そういうことになれば、一体、少なくとも一級、二級の国道、あるいは東京都内におきまする、あるいはその他の大都市における標識あるいは標示というものは、これは欧米各国、南米もそうでありまするけれども、こういったような交通の標識とか標示というものは、これは国際的に統一されるべきものじゃないか。現に南米におきましても、パンアメリカン道路は全部共通の標識を使っておる。日本ではその標識が、そういう外国人が見てもわけのわからぬような文字をごちゃごちゃ書いている。漢字を書いている。これは自分で運転していると、そんな文字なんか見ることはできないのです。少なくとも五十キロ、四十キロ飛ばしておれば、もうすでにそういうものは見る余裕はないのだ。何かぱっと、こう目に、危険なら危険というだけで、むずかしい漢字を書かないで、かなでもいいのです。それをひらがなでも、いかにも危険らしきような図案でもって書くことができるのじゃないですか。そういう実際的な創意工夫が足りないということです。これを私はぜひひとつ研究してもらいたいということと、それから標識は、道路標示というものは、どうしても国際的にこれは私は同一であるべきだと思うのです。学校、病院その他のことにつきましても、国際標識を標準とするように努力してもらいたい。  それから、もう一つ、これは建設大臣関係ありますが、一体一級、二級の国道のりっぱな道路を運転しまするというと、ますますひどい事故が多いのであります。これもやはり運転する人のモラルの問題でありましょうけれども、やはりパトロールという制度は、これは警視庁は都内でどういうふうにやっているか、ひとつ聞きたいのでありますけれども、少なくとも国道の維持管理並びにパトロールにつきましては、これはやはり県単位じゃなくて、もう山陽道なら山陽道、あるいは東海道なら東海道を一線としてのパトロールをやらなければ、パトロールの何といいますか、任務というものは果たせるものじゃないのです。これがどうも、日本の官庁の画一主義でもって、なわ張り主義でもってやっておる。そこに不徹底があり、不親切があるのですね。ですから、この点に関して私は政府が十分ひとつ意を用いてもらいたいというのが、私の切なるお願いであります。  もう一つ、建設大臣にお願いしたいことは、一級国道、二級国道、ことに二級国道が今最善の道路として長期使えまするが、それを見て感じますることは、やはり道路の修理をしなければならない。道路を修理する場合には、夜間にやるというのが、これは世界と申しちゃ語弊がありますが、欧米の原則なんです。東京なんか見ますと、昼の昼っぱらに道路の修理をやっちゃって、混雑をますますはなはだしくする。これは労働基準法とか、オーバー・タイムの経費の問題があるかもしれませんけれども、これはアメリカのニューヨークにいたしましても、道路の修理は昼間やりません。夜やります。なぜ東京のような大都会におきまして、あの修理、掘り返しを、夜やらないか。昼間の混雑を緩和するということについて、これをやる親切さがない。いわゆる官僚的なやり方しますから、交通の関係に迷惑かけて、昼はごちゃごちゃする。夜はすいておる。そのときには仕事をしない。これは私はぜひ建設大臣考えていただきたいと思います。  それから、もう一つ私感じますことは、東海道や山陽道を走って感じますことは、道路修理中の場所には、特に夜間は螢光灯なり赤ランプの標示がどんなところでもあるのが欧米の現状ですが、わが国ではこの点が非常に不親切で、設備しないので交通事故の生じているのを幾度も見ました。これらのこともパトロールとかそういう制度、何と申しますか、親切にやらないから、こういうことになるのであります。少なくとも道路の整備、維持管理等につきましての責任者の建設大臣として、もう少しあなた方、やはり自動車の経験のある者を実際にプランに当たらせる。現在、ニューヨークの警視総監は、三十年間交通局長をやった男が警視総監をやっておるという状況を見ましても、もう少し私は今日の、これは自治省も建設省も道路交通に関してもっと近代的な、そうしてもっと親切な、そうして運転する者自身の心を心としたような行政をやりませんと、依然として交通禍は絶えないのじゃないか。時間もございませんから、これ以上私は申し上げませんが、どうかひとつ、今後国民が、朝出れば夕べに命の保証がないというようなこういろ交通難は、まことに日本の文化の恥辱であると思います。この点、十分御注意願いたいと思います。  これで終わります。
  269. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 山田君、先ほど、発言中でありましたが、時間が切れました。  それから、ただいまの御質疑に対して御答弁要求するのですか。
  270. 山田節男

    山田節男君 いや、要求しません。
  271. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これにて山田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  272. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、お諮りいたします。  大村君から、明日の同君の質疑に日銀総裁の御出席の御要求がございましたが、明日、参考人として山際日銀総裁の出席を認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  273. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  明日は、午後零時半に開会いたすこととし、本日はこれにて散会をいたします。    午後六時〇八分散会    ————・————