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1962-02-13 第40回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十三日(火曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————    委員の異動 一月二十九日委員森中守義君及び大矢 正君辞任につき、その補欠として亀田 得治君及び矢嶋三義君を議長において 指名した。 一月三十日委員野上進辞任につき、 その補欠として太田正孝君を議長にお いて指名した。 二月六日委員武藤常介君及び手島栄辞任につき、その補欠として鈴木恭一 君及び川上為治君を議長において指名 した。 二月九日委員佐多忠隆辞任につき、 その補欠として高田なほ子君を議長に おいて指名した。 二月十二日委員苫米地英俊君及び矢嶋 三義辞任につき、その補欠として高 橋進太郎君及び阿具根登君を議長にお いて指名した。 本日委員高橋進太郎辞任につき、そ の補欠として苫米地英俊君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            加賀山之雄君    委員            小沢久太郎君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            一松 定吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            阿具根 登君            亀田 得治君            木村禧八郎君            羽生 三七君            松澤 兼人君            山本伊三郎君            相馬 助治君            石田 次男君            市川 房枝君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    公正取引委員会    委員長     佐藤  基君    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省経済局長 関 守三郎君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省為替局長 福田 久男君    厚生省保険局長 高田 浩運君    通商産業大臣官    房長      塚本 敏夫君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    通商産業省石炭    局長      今井  博君    中小企業庁長官 大堀  弘君    労働省職業安定    局長      三治 重信君    建設省河川局長 山内 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    通商産業省企業    局次長     伊藤 三郎君    自治省財政局財    政課長     松島 五郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和三十六年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度特別会計予算補正  (特第3号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。一月二十九日、森中守義君及び大矢正君、一月三十日野上進君、二月六日武藤常介君及び手島栄君、二月九日佐多忠隆君、二月十二日矢嶋三義君が辞任せられまして、その補欠として亀田得治君、矢嶋三義君、太田正孝君、鈴木恭一君、川上為治君、高田なほ子君及び阿具根登君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、理事補欠互選を行ないます。現在当委員会には理事が二名欠員になっております。互選は、先例により、委員長指名をもって行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。それでは理事川上為治君及び鈴木恭一君を指名いたします。   —————————————
  5. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十六年度補正予算の取り扱いにつきまして、委員長及び理事打合会で協議いたしましたので、その内容について報告いたします。  一、補正予算は、本日及び明日の二日間で大体議了する。  二、質疑時間は三百六十分とし、その各会派への割当は自由民主党百三十五分、社会党百三十分、民主社会党及び無所属クラブおのおの三十分、同志会二十分、共産党十五分とすることに相なっております。  三、質疑順序は、社会党自由民主党民主社会党社会党無所属クラブ同志会共産党といたします。  以上でございます。ただいま報告をいたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。
  6. 藤田進

    藤田進君 議事進行についてですが、ただいま委員長から報告のありました理事会決定は、前回の理事会決定内容だと承知いたすのであります。本日の理事会決定は、以上報告された内容に若干の修正があったと私は承知いたしておるわけでありまして、その点も付加せられたほうが至当であろうと思うのであります。議事進行委員長に要望いたすわけであります。
  7. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長は、大体補正予算はと、大体という言葉で表現したつもりでおります。本日及び明日の二日間で大体議了するというつもりでありまして、藤田さんのお考えの点も含めていたしましたつもりであります。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 藤田進

    藤田進君 いや、私は理事会理事でありますから、事情承知しておりますから、私自身としては先ほどの理事会決定が含まれておるということで支障はないと思いますが、しかしこの委員会皆様方は、委員の諸君は先ほどの理事会事情承知ないと思うわけです。その点についての考慮を払われる必要があるだろうと思う。
  9. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) ただいま藤田委員からのお話の点は、委員長理事打合会におきまして、藤山企画庁長官かぜを引かれまして三、四日療養を要するので、欠席をいたさなければならぬという点でございまするが、かぜのことでありまするから、あるいは進行中に経過がよくなる場合もあり得るということも一つございまするし、また質疑者のほうで、かぜのためにやむを得ないという企画庁長官事情を了とせられ、また他の大臣が御答弁になりましたことを了承いたしまして、別に藤山国務大臣出席を得ないでもよい場合もあるかもしれないが、しかし議事進行上、場合によっては両日間に事が決定しない場合においては、十五日の日に延ばして、そのときに藤山長官が出られまするような場合には、その際に取りまとめて質疑を行ないたいということで、要するに本日、明日の議事進行によって、場合によっては十五日に延ばすことがあるかもしれぬ、こういうふうな含みをもちまして委員長理事の打合会を済ました点でございまして、ただいま藤田委員お話はその点であります。委員長といたしましては、大体本日、明日の二日間に議事を終了いたしたい、こういうふうに御報告申し上げたわけであります。よろしゅうございますか。……それじゃそういうようなことで御異議ございませんでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと存じます。   —————————————
  11. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第3号)、以上両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。木村禧八郎君。(拍手)
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず質問に入る前に、ただいま委員長から御報告ございましたように、藤山企画庁長官が病気で欠席されているようでありますが、私要求大臣として連絡してございましたが、御欠席のようでございますから、藤山長官に対する質問は他日に留保をさしていただきたいと思います。その上で質問をいたしたいと思います。  私は、これまでのこの当委員会におきまして三十六年度予算を中心といたしまして、池田内閣財政経済政策について総理と論議を戦わせてきたわけであります。しかし、重要なこの論点は、将来の見通しに関するものでございましたので、見解の違いとか、あるいは水かけ論に終わった感があったわけです。結局いずれが正しいかは事実の裏づけによって判定するより道はなかったわけであります。そこで、私しばらく事実の推移を見守ってきたわけであります。ところで、現在は三十六年度会計年度もすでに終わりに近づきました。事実の裏づけによって池田内閣の一カ年の財教経済政策を点検、検討することが可能となったわけであります。そこで私は三十六年度予算第二次補正を審議するにあたりまして、この機会に、池田内閣の三十六年度一カ年の財政経済政策について締めくくり的な、総決算的な質問をいたしまして、池田総理の責任をただしておきたいと思うのであります。  質問は、国際収支の問題に焦点をしぼって行ないたいと思います。と申しますのは、いわゆる高度成長政策を破綻せしめたのも結局国際収支の問題でありまして、さらに政府の三十七年度財政経済政策国際収支の均衡を至上命令といたしております。短期的に見ましても、長期的に見ても、国際収支の問題は日本の経済、ひいて国民生活の動向をきめる最も重要なかなめとなっているからであります。また今後の国際収支の成り行きは、池田内閣の運命にもかかわる重大な問題となっているからであります。  そこで、まず総理に初めに伺いたいのは、昨年の九月二十六日、閣議了解事項としまして、国際収支改善対策として財政措置決定しているわけであります。それは、内需抑制措置の一環として財政面において、一般会計特別会計政府関係機関を通じ、官庁営繕系統工事については新規着工抑制工事施工期間調整等措置を講じ、原則としてその経費の一割を繰り延べる。また財政投融資及び公共事業費等についても、その一部を繰り延べる。この措置については関係各省大蔵省との間で十月十日までに実施計画を作成する。地方公共団体に対しても上記の趣旨に沿い積極的に協力することを要請する。これが国際収支改善対策としての財政面施策として閣議了解を得たと発表されておるわけです。この施策に基づいて、実際にどの程度の予算繰り延べになるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣答弁いたさせます。
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 各省と相談して繰り延べをきめたものは、財政投融資を入れて大体七百億前後と思います。これが実際にどれだけ繰り延べになるかという見込みは、まだ今のところはっきりいたしませんが、と申しますのは、一般会計及び政府機関関係の全体における繰り延べというのは毎年相当ございますので、今度の繰り延べ措置をやったものとの関連で、いろいろ見通しのむずかしい問題がございますが、大体あのときにきめた額だけは今のところ繰り越される見込みでございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 約七百億、財政投融資も含めてですか。
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはどういう手続によって行なわれるんですか。財政法上の何条に基づいてこういうことをされるのか。
  18. 石野信一

    政府委員石野信一君) お答えいたします。手続閣議できめられたわけでございます。それは予算執行の問題として、そういう事業を相談をするという意味における繰り延べ決定いたしました。その繰り越しになるというのは、繰越明許費というものについて繰り越し執行上起こるということでありまして、それを承認すれば繰り越しが行われる、こういうことになるわけでございます。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっき大蔵大臣のお述べになった約七百億、そのうち財政投融資も含まれているんですが、これは繰越明許費としてちゃんと予算総則に書いてありますか。
  20. 石野信一

    政府委員石野信一君) 繰越明許費としては予算総則にございまして、その事業繰り越しになりますのは、明許費のものについて繰り越しが行われる、こういうことになるわけでございます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいじゃないですか。特に九月二十六日の閣議了解して一割を繰り延べるということになっておるわけですが、これは繰越明許費財政法第十四条の三ですね。それ以外のものじゃないですか。それじゃ何もこれをこういう決定をする必要ないじゃないですか。
  22. 石野信一

    政府委員石野信一君) その繰越明許費というものは、御承知のとおり、財政法十四条の三で、その事業性質等関係、気象の関係とか、設計の関係とか、そういったもので公共事業費等につきましては繰り越しということが必要になるという性格を持っているものでございまして、それは繰越明許費として総則規定されているわけでございます。それで、予算執行上、そういう事業について時期的な調整が行なわれます結果、それが繰り越しになる、繰越明許費であるものについて繰り越しが認められると、こういうことになるわけでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 繰越明許費は、この九月二十六日の閣議了解のような、景気調整措置としての予算繰り延べ規定ですね、そういうものを規定したものじゃないのです。これは非常にはっきりしているわけです。「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会議決を経て、翌年度繰り越して使用することができる。」となっているのです。景気調整措置として一割繰り延べというのは、これは繰越明許費規定以外ですよ。財政法の四十二条で、「繰越明許費金額を除く外、毎会計年度歳出予算経費金額は、これを翌年度において使用することができない。」と、こうなっておるのです。財政法十四条の三によってこれを説明しようといたしましてもそれは無理であります。この点いかがでございますか。
  24. 石野信一

    政府委員石野信一君) 繰越明許費は、十四条の三で「その性質上」ということ、それからもう一つは、その「予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会議決を経て、翌年度繰り越して使用することができる。」ということで、繰越明許費になるわけでございます。繰越明許費になっておりますものにつきましては、その予算執行権執行に関する政府の任務といたしまして、予算執行調整を加えていく。その結果、それが繰り越しの必要を生じた場合に、繰越明許費である限りは、それを繰り越していいということでございます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんないいかげんな答弁をされては困ります、どうも。繰越明許費として繰り越されるものもあるでありましょうし、そうでないものもあるはずであります。そうでなければ、さっき私が説明しました昨年九月二十六日の閣議景気調整政策としての繰り延べですね、それの趣旨に合わぬですよ。最初大蔵省は、この予算の編成の過程において、景気調整措置としてこの繰り延べ額を使用しようとしたのでありましょう。ところが、それがいろいろな過程でできなくなった。それで景気調整措置として、これは三十七年度予算でありますけれども、それと同じようなことをこの三十六年度予算においても行なわれようとすることなんです。ですから、これは財政法違反していると思うのです。さっき言いました四十二条にすでに違反するわけです。繰越明許費以外のものも含まれているはずであります。そうでないならば、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
  26. 石野信一

    政府委員石野信一君) 繰越明許費以外のものについて、景気調整上やっておるというお話は、そういうことではございません。公共事業費とか営繕関係経費というものは、これは事業性質上、そういう意味で、その年度間に必ずしも実行ができないということで繰越明許費になっているわけでございます。それで、ちょうどそういう意味での景気調整という観点から、そういう措置をとる必要がある経費というものが、やはり公共事業費とか営繕費とか、そういった事業性質等から、必ずしも年度内に一度に支出が済んでしまうという性質のものでない。そういうものが、ちょうど景気調整のために調整することが必要だ、こういうことになるわけでございまして、それは繰越明許費について、それが景気調整措置が行なわれる、こういうことになっておるわけでございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 繰越明許費とかりにしましても、それは十四条三に書いてあるように、どうしても事業性質——例年これはやっていることなんでありますが、繰り越さざるを得ない、こういうものについて繰越明許費を認めているが、ところが今回は、景気調整として特にその一割を繰り延べることになっているのです。そこが問題なんです。ですからそういう場合には、財政法二十九条の二項に基づいて、修正予算を私は出さなければならないと思うのですが、その点総理いかがですか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 繰り越し明許の明文のあるものにつきましては、私は昨年のような場合、今までの慣例でもございますし、別に財政法違反とは思いません。特に昔やっておりますように、予算を大規模に削減するなんとかというのは、これは昔の旧憲法時代には予算修正を出した場合も一、二回あると思うのですが、今回は今度の財政法で出しております。修正というのは前は規定なしにやった修正でありまして、今はそういう規定がございますけれども、昨年やりました九月の措置は、私は修正という手続をとらなくてもできる措置と考えております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなると、私は新憲法及びこの財政法において、旧憲法と違って国会はその増額修正ができるのですね。予算増額修正ができますね。国会増額修正したときに、政府が二十九条の二項の修正予算を出さないで勝手に政府繰り延べたりなんかすることがかりにできるとしたら、国会増額修正というものは意味をなさなくなると思うのです。その点いかがですか。
  30. 林修三

    政府委員林修三君) ただいまの第一点の増額修正の点でございますが、これはもちろん旧憲法時代とは違うわけでございまして、増額修正権が旧憲法時代は全然なかったのですが、ただいまではこれはいろいろ解釈上の問題がございますけれども、少なくともいわゆる予算発案権を害せざる限りにおいては、その範囲内においてはあるというふうに私ども解釈しておるわけであります。一方の予算修正でございますが、これはもちろん旧憲法時代と違いまして、予算修正国会議決を経るということは二十九条にあるわけであります。しかし一方に今問題になっております繰り延べ、あるいは繰り越しの問題ですが、これは三十六年度において行なわれましたものは、ただいま説明がありましたとおりに、いわゆる繰越明許費についての問題でございます。繰越明許費は、事業性質上、あるいは予算成立後の事由によってあらかじめそういう繰り越しの必要が起こるものについては繰越明許費になっているわけであります。その繰越明許費の費目についての予算執行するということは、これは大蔵大臣権限——年度内にとういうふうに配分していって使っていくかということは、これは大蔵大臣の実は権限でございます。その結果、まあ繰り越す必要の起こったものについては、財政法四十三条で繰越明許費についてはできるわけであります。そこの繰越明許費の四十三条の三をごらんになりますと、予算執行上必要が生じた場合には繰越明許費については繰り越しすることができるとなっています。したがいまして、年度間の予算執行上、九月の閣議決定等の結果、事業繰り延べになりまして繰り越しの必要が起こった、そういうものにつきましては、繰越明許費については四十三条で行なわれる、かように考えます。こういう措置は、今総理からもお答えがございますとおりに、従来からも同じような措置が行なわれている。財政法違反するとは思いません。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おかしいですね。繰越明許費規定は、これは今まで従来どおりそれをやってきているのですよ。ところが今度は景気調整措置として一割繰り延べることになるのであって、繰越明許費事業性質上これまでどうしても、景気調整としてでなく、事業性質上どうしても繰り延べなければならぬものについて、規定してあるわけですよ。これはその工事進行を円滑にやるために、そういうことになっておる。あるいは天候のかげんとか、いろいろなことからどうしても繰り越さざるを得ない、そういう規定なんでしょう。今度の一割節約の問題をこれで説明することは私は無理だと思うのですよ。これははっきりしておかなければならないのは、今後景気調整措置その他で昔のような実行予算的な予算執行をやられたのでは、これは国会を軽視するものでありますよ。行政立法に対するこれは侵犯ですよ。われわれ増額修正したときに、政府は気にいらない、そうしてこれを繰り延べ節約したらどうなります。われわれの増額修正権というものは全く行政によって無視されることになるのじゃないですか。今度の措置について十四条の三の規定説明をしようと思っても常識として無理ですよ。そうでしょう。九月二十六日の景気調整措置としての繰り延べについてはこれは実行予算的なものですよ。なぜ修正予算を出さないのですか。ですから二十九条二項の違反ですよ。財政法四十二条の明許費繰り越し以外これを繰り越すことはできないことになっている。こういう点を明確にしておかないと、最近ではだんだんこの立法に対する行政の、特に財政措置においては行政というものが非常に強くなってきている。この点ははっきりしておかなければならぬと思うのです。その点いかがですか。
  32. 林修三

    政府委員林修三君) 純粋に法律論としてお答えいたしますが、御承知のように、いわゆる繰り越し規定は四十二条以下に規定があるわけでございます。それで十四条の三はいわゆる性質上の繰越明許で、繰り越しをあらかじめ必要とするようなものについてのいわゆる明許繰越規定でございます。明許繰越規定についての繰り越しの問題については御承知の四十二条でございます。したがいまして、そこの問題になるわけでございまして、結局予算年度内にいかに配分して使うかということは、これは実は大蔵大臣——財政当局権限でございます。いわゆる第一四半期に使うか第二四半期に使うか、これはもちろん行政当局において当然やり得るものであります。そういうようなところへ景気調整上いろいろな必要がございまして予算支出をあとに移すことも、これは必要が起こるわけであります。その結果として、押せ押せになって年度中に使い切れなかったというものが起こるわけであります。これを、繰越明許費につきましては、当然四十三条によって予算執行上いわゆるやむを得ないものについては繰り越しができるということであるわけでございます。そこにその明許、繰越明許の出口の規定が書いてございます。この規定によって行なわれるわけでございまして、従来も、この予算の実行にあたっては、この考えによりて行なわれたことは何回かあるわけでございます。で、まあ、これは実は問題として特に申し上げるまでもないかと思いますが、国会の御議決は、もちろんこれは究極にいえば、法律的にいえば、予算執行金額の限度をきめたものでありまして、その範囲内においてもちろん国会の御意思に反するような使用方法はできませんけれども、それを全部使わなければならないという性質のものでもないわけで、それは予算実行上、そこに問題があれば、場合によっては不用に立てる、あるいは繰り越す、これは起こり得ることだ、かように考えます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 林長官は旧憲法的思想ですよ。それは旧憲法の時代においては、国会の承認した予算は、しかも最高限度を承認したのだ、だから執行面までも承認しておるのじゃないのだ、それは行政府で採用できるという考えでしょう。これは旧憲法的思想ですよ。憲法八十三条は、はっきりこれは、執行面においてはやはり国会の承認を得なければならぬと、そこまで解釈しなければ新憲法財政法の精神を正しく理解したものじゃないと思うのです。最近、また今後、だんだん立法府に対して財政について行政府の力が非常に強くなってきておるのは、これは財政民主主義に反するものですよ。ことに池田総理経済池田にまかしてくれなんという言い方は、こういうことなんかはそういうことの現われですよ、端的に。まかせるもまかせないも、憲法なり財政法なり国会できめた予算、そういうものに沿うて財政経済政策をやるのであって、池田個人にまかせよなんて、そんな不見識な考え方は官僚的な考え方ですよ。不見識きわまると思うのですよ。まだ私は次に重要な質問がございますから、この点は、十分政府もこれは研究していただきたい。私も、今後も、——時間ございませんから、大蔵委員会等でもりと突っ込んで質問いたしたいと思います。今後もあることですし、これは重大な問題です。国民の税金の使い方であってこれは重大な問題ですよ。あいまいにすることはいけないと思うわけです。  次に、池田総理にお伺いいたしますが、三十六年度国際収支の赤字は結局どのくらいになるのでありましょうか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣答弁させます。
  35. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今のところ、政府見込んでおります国際収支の赤字は、経常収支において約九億二千万ドル、資本収支において二億ドルの黒字、総合収支で大体七億二千万ドル程度の赤字ということを見込んでおります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この間、十六日の閣議できめたのと大体同じですね。そのうち貿易の赤字はどのくらいですか。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 貿易の赤字は七億八千万ドル、貿易外の赤字は一億四千万ドルと見ております。さっき申しました七億二千万ドルの赤字という中には、米国の市銀の借り入れその他のものは見ておりません。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その貿易の赤字のうち対米貿易の赤字はどのくらいですか。
  39. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体八億五千万ドルでございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 貿易の赤字が七億八千万ドル、これに対して対米貿易の赤字が八億幾らでありますか、八億五千万でしょう。対米貿易の赤字のほうが大きいのです。そうしますると、この国際収支の赤字の大きな部分は対米貿易の赤字にあるといっていいと思うのですね。そういうふうに認めていいわけでしょう。
  41. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりでございます。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうして、こういうふうに対米貿易の赤字が大きくなったのか、どうしてこんな大きな片貿易になったのか、その原因は一体どこにあるのですか。
  43. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは前からもたびたび御説明しましたとおり、対米輸入が非常にふえたということと、一面、対米輸出が米国の景気その他の事情によって伸びなかったという両面からきております。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 対米貿易が伸びなくて、対米輸入が非常に大きかった原因はどうなんですか。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 対米貿易の伸びなかった原因は、アメリカの景気が非常に悪かったということでございますし、対米輸入の非常にふえたということは、私ども最初から想像していたより以上に設備投資の伸びが多かったということからきていると思います。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう、何というのですか、表面的なお考えをしておったのでは、なるほど見通しが間違うわけです。  総理に伺いたいのですが、総理はドル防衛協力ということを前に言われました。ドルに対する防衛協力、ドル防衛協力の結果がこういうことになったと思うのですが、いかがですか、総理
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ドル防衛ということのアメリカの立場につきましては、私は大体了解しています、アメリカの置かれた世界的地位において。しかし、ドル防衛にアメリカがあまりに狂奔するために、自由貿易が非常にそこなわれるということは、これはまた角をためて牛を殺すのたぐいでございますから、これにも程度があるでしょう。それからアメリカとの貿易が、もう宿命的に、日本はスクラップを入れるとか、綿花を入れるとか、石炭を輸入するとか、日本がいい品物を安く買うのは——買い得るのはアメリカだ、だから宿命的にそういう輸入超過になります。これは戦前も戦後もそうでございます。おととし、ようやくとんとんになりましたが、やはり昨年は今言ったように八億五、六千万ドルの輸入超過になりました。これは原因は、やはり日本が非常にアメリカのものを輸入したほうが、ほかの地方よりもいいという立場にあるということと、そうしてアメリカの海外からの輸入が国内景気の状況によって伸びなかったという、この二つの理由によってきておるのであります。最近アメリカの景気もよくなって参りましたので、昨年の十一月あるいは十二月、十月もそうでしたが、大体二割前後、あるいは三割近く、対米輸出は前年同期に比べまして昨年の暮はふえていっておるのであります。だから一時の現象でなしに、私は長い目で見ていけば、アメリカの景気の上昇によりまして対米輸出は、今の現況から申しますと相当伸びていくのではないか、こう考えております。そうしてまた、輸入のほうもわれわれとしては、できるだけグローバルに、ほかのほうから買えれば買いたいという気持を持って、できるだけ低開発国からの輸入を促進するようにいたしておりまするが、昨年あるいは一昨年の輸入の相当の部分は機械輸入でございます。これはやはりアメリカあるいはドイツからの輸入で、ことにアメリカからの輸入が多いものでありますから、そういう問題がこんがらかって、昨年は八億五、六千万ドルの輸入超過になったのであります。今後は、これが是正されていくと思います。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、ドル防衛政策というものの日本に対する影響ですね、どの程度にあったか、それで今後ドル防衛政策というものはどういう推移を示していくであろうか、こういう点について御意見を承りたい。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカのドル防衛の問題が起こったときに、一番先に問題になったのは、たとえば日本におけるアメリカの軍人軍属が非常に減ると大へんなことだということが一番先に問題になりました。私はそのときに答えたのですが、それもさることながらドル・ドライブによる輸出競争が実は心配だ、こういうことをここで言ったと思う。そのとおりになって参りました。特需というものは、アメリカの軍人が日本で使います金は大体おととしが三億五千万ドル、去年は、三億七千万ドルでふえている、減っておりません。ただドル・ドライブによりまして、今のAID——AIDというものは、私が心配したようにおととしは一億五千万ドル、去年は七千五百万ドル、半分になっております。こういうことを私は前から心配しておった、それが出て参りましたが、このAIDの問題につきましては、関係閣僚がAIDの長官のハミルトンに強くその是正方を要求しております。で、私は大体この問題は、今後の問題として七千五百万ドルがずっとゼロになるというふうな風評もありますが、そういうことがあっては大へんだというので、アメリカ関係当局に強く要求いたしております。そうして次のドル・ドライブの問題は、これはアメリカとEECとの関税協定その他アメリカの関税政策等々、非常にまあ、これからきめなきゃならぬ問題が多々ありますが、私は一部にドル・ドライブがあって、日本と競争して第三国に向かって——苦しい立場になっても、アメリカ自体が全体として日本のものを相当に輸入してくれるならば、国際収支全体としてはやっていけるのじゃないか。そこでアメリカの当局者、あるいは日本におけるアメリカの大使等が、アメリカの輸入制限についてあまり神経過敏にならずに、日本とアメリカの貿易が非常に増大して、全体が増大することを考えてくれということを言っております。まあ、これも一つの理屈でしょう、私もそれはわかりますが、しかし、全体がふえるからといって特定のものにあまり制限を加えるということも国交上よくないのではないか、こういうことを言っておるのでありますが、大体今のAIDの問題はそうふえることはございませんが、ゼロということはないでしょう。アメリカとの貿易は、相当私は今年はふえていくのじゃないかと思う。しかし、私は今の問題はアメリカもそうですが、アメリカがこれから伸びていく上におきましては、EECと特別の関税協定を結んで一つの工業地帯になろう、これがアメリカのおかれた今一番重大な問題でございます。これに向かって進んでおります。そこでわれわれが、アメリカとEECとの間の関税協定をそのまま日本に均霑さすべきだ、日本もそれに割り込むという格好で、いわゆる関税の引き上げとか、そうして片一方の建前は自由貿易主義にしていくとか、そうしてEECとの交渉は強く進めていくという方法でいくならば、アメリカのドル・ドライブ、ドル防衛という問題もさることながら、私は、いろんな外交交渉によって、そう悲観する必要はないと考えております。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、総理は対米貿易について、特にまたドル防衛政策について非常に過小評価してきたと思うのです。ドル・ドライブについては、確かに総理は前にこれは警戒しなきゃならぬということを言われました。しかし、結果において三十六年度の貿易、さっき聞きましたら貿易の赤字七億八千万ドルに対して対米貿易の赤字が八億五千万ドル、それを上回るということになった。この非常に大きな片貿易ですね、これが国際収支の大幅赤字の一番大きな部分を占めておるのですよ。これは何といっても私は対米貿易、特にドル防衛政策に対する認識が非常に足りなかったのじゃないかと思うのですね。特に総理は、前に私が、このドル防衛協力ということは高度成長政策と相いれない矛盾するものであって、二律背反だ、こういうことを私は申しました。ところが、総理はこういうふうにお答えになっています。「今の相反するものだと言っても、相反するところがどうか。これは卑近な例でございますが、ワサビのようなものです。それだけ食べたら大へんなことになる、しかしある程度そういうようなドル・ドライブというような・そういうことがあることが長い目で見たら日本の経済のために役立つ、だから災いを福に返すというつもりで私はいくべきだと思う。それが非常に大きいものならば、あなたの言う相反して成長政策も変えていかなければならないというようなことになるかもわからない。私は、これはつまのようなものである。」と、刺身のつまのようなもの、ところが、刺身のつまどころかですよ。日本の国際収支七億八千万ドルの赤字を上回る対米貿易の八億五千万ドルという赤字をもたらしてきておるのは、このドル防衛政策に対する協力なんですよ。この点は、私は非常な大きな誤りだったと思うのです。この点について、総理はどういうふうにお考えですか。刺身のつまのようだと言っておったのですよ。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世界経済、ことに自由諸国の立場から申しますると、ポンドの安定性も必要でございますが、ドルの安定性ということは、自由国家群には絶対命令と言ってもいいぐらい重要なのでございます。したがいましてアメリカは、輸出入貿易におきましては、おおむね三十億ドルないし多いときには五十億ドルの黒字を出しております。しかし、経済援助その他で国際収支が赤字、これがために、アメリカ自身がドルを防衛するということに対しては、自由国家群として、私は当然これに協力すべきだと考えております。これが前提でございます。そこで、アメリカと日本との貿易収支じりが、昨年八億数千万ドルの赤字が出たということは、日本の高度成長ということが非常に影響しております。先ほど申し上げましたように、機械類あるいはくず鉄の輸入とか、綿花の輸入等が非常に原因したのでございます。だから、それがおさまってくるならば、そういうことはございますまい。それから、最近のアメリカの景気は、去年のリセッションから脱しまして、最近は非常に伸びてきております。ドル防衛といいながら、十月には、前年同期に比べて二割、十一月、十二月も二割五分から三割近く伸びております。こういうことを考えますと、私は、アメリカのドル防衛の立場はよくわかるが、しかし、それを行き過ぎて、日本との貿易が常にそういう多額の片貿易ということは、アメリカにも改めてもらわなければならない。そしてAIDの問題は、先ほど申し上げました通りでございます。ですから、片貿易になったのはアメリカのドル防衛のためだと、こうおっしゃるよりも、日本の置かれた経済状況というのが輪をかけておるということをお考えになるのが至当だと思います。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、池田内閣高度成長政策が原因であったということになるのですか。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度成長政策ではない。高度成長的なものが行き過ぎたのが原因だと思うのであります。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 行き過ぎるようにしたのは、経済調査会で答申した七・二%をあなたが訂正されたんです。一一%ぐらいいくであろう、しかし腹八分目というので、あなたは九%、三カ年と言われたのです。七・二%をあなたが修正したから、財界では、これは大きな成長がやってくるというので行き過ぎたわけです。行き過ぎさした原因は、あなたがあれを修正した点にあるわけです。それを総理は御反省にならなきゃならぬと思うのです。総理に責任があるのです。それを何か、財界とか国民のほうにあなたは責任を転嫁されてばかりいる。七・二%を九%、あなたはあのとき、一一%ぐらい行くんだと言ったのですよ。これは財界を大きく刺激している。これはやはり、その点は総理は率直にお認めにならなければいけないんじゃないですか。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増計画も、毎年七・二%でいけという答申ではないと思います。しこうして私は、先ほどあなたの言葉にもあったように、名目で申しますると、おととしは二八・六%、その前の年は二一%、だから私は、うっかりしておると一一、二%に行くんだと、だから、それは行ってはいけないから、九%程度で三年間平均で行くと、その三年間平均ということは、今の雇用の関係等と貿易の自由化とを控えて、ここで相当程度の設備の合理化等をやる必要がある、こう考えたのであります。しこうして私が心配しておった一一、二%、名目で一四・数%も行く、一四・数%も行った。私が心配した以上に行ったということにつきましては、これは、私の責任がないとは言いません。施政演説に言っております。とにかくそういうことのないように、いろいろ努力はいたしました。しかし、起こり得べきあらゆる現象に対して、これが万全の対策をとることができない。正確な文句で申し上げますと、これが対策については十分でなかったことは認めます。こういうことを私は言っているのです。だから、私は責任はございますけれども、私が言い出したからたいへんなことになったと言うのはですね。そこで、そういうムードになっている。それを私は抑えるために、腹八分目で、九%で行こう、こう言ったら、一四・五、六%になる。こういうことで、私はここであえて名目を言いますが、実際の経済の実情は、実質よりも名目のほうがよく答えると思いますから、名目で私の心配した以上に行く、その責任はどこにあるか。それは私も負いましょう。しかし、財界も行き過ぎたことを認めておる。しかし、行き過ぎたことが絶対に悪であるかということは、まだ次の問題、行き過ぎたのを正常化にうまく帰していけば、過去の歴史が示すように、これは非常に取り返しのつかない悪いことでなしに、よくあることで、取り返しのつくことだと私は考え、努力いたしておるのであります。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどの数字についてちょっと御説明申し上げておきます。  八億五千万ドルの対米の赤字は、これは、三十六年の暦年の数字でございます。暦年で見ましたから、一月から十二月までは、貿易の赤字が九億三千万、九億三千万ドルに対して対米の赤字が八億五千万ドル。それから、先ほど年度で見ました予想を七億八千万ドルの赤字と見ましたが、これに対応する対米の赤字は七億五千万ドル、大体その程度だろうと思います。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今、大蔵大臣から御説明があったが、しかし、大体その性格は変わらないわけです。大体九割くらいですよ。さっきはそれ以上だと言ったが、これは九割くらいだから、問題の本質は同じだと思う。  そこで、さらに総理に伺いたいのですが、ドル防衛に協力するのはあたりまえと言われた。それは、自由主義陣営の国として、総理の立場として、これは当然だと思うわけです。しかし問題は、ものすごく片貿易なんです。こういう国がちょっとございましょうか。世界にこんなに大きな片貿易、こういうことは、これは、私はよいとは考えておらない。ですから、箱根会談でアメリカにいろいろ折衝されたと思う。そこで、箱根会談の会議の内容ですが、これは発表できないものも、いわゆる秘密会談と、新聞では言っておりましたが、この片貿易について、アメリカにどういうことを要請し、アメリカからどういうふうに答えられたか。そうしてこの片貿易の是正についてどういう成果を得られたのか。その経過を、これは外務大臣にお伺いしたらよろしいのですか。外務大臣にお伺いしたいと思う。
  58. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 箱根会談につきましては、当初から、この両国の関係というものを相互に理解して、アメリカの考えもわれわれは聞きますし、アメリカ側においても、日本の経済の実態というものをよく認識する、その上に立って、今後長きにわたってこの政策を考えていく、こういうことでございますから、われわれとしましては、今、木村さんの言われたような片貿易の実情、これは日本は伝統的に、総理の言われたように、おとどしを除いては片貿易になっておるわけです。ただ、アメリカとして見れば、日本の輸入が十億ドルになったということは去年からです。ことしも、これは今、木村さんは片貿易という点を強調されましたけれども、日本のアメリカに対する輸出は減っているわけではございません。しかも、非常に輸入がふえている。この実情にかんがみて、アメリカのほうにおいても、保護貿易主義者もドル防衛に籍口して出ておるかもしれないけれども、それは、大所高所に立って好ましくないという実情をよく言いまして、先方も理解を深めたはずであります。ただ、先ほどお話のあったAIDの問題、これなども、いろいろその後において先方の弁解などを聞きますと、御承知のように、ICAというものがAIDというものに昨年の六月になったわけでございまして、このAID発足の早々でございましたので、いわゆるきめのこまかい具体的なそれぞれに対応した施策というものをとることについて、若干配慮が足りなかった。今後は大いに改めましょう。こういうようなことになっておりますので、総理がお答えになりましたように、この問題については、好転していくであろうというふうに私どもは考えておるわけであります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあこちら側だけで、アメリカが日本の貿易に対して非常に好意的に考えてくれるだろうということを希望的に観測しているようでありますが、いろいろなものを見ますると、アメリカは、対日貿易について大きな関心を持っていない、ヨーロッパのほうに非常に大きな関心を持っている。ことにEECの問題ですね。だから、こちら側でいろいろずいぶん期待を持っているようでありますが、アメリカ側のほうは、そんなに日本との貿易の問題について大きな関心を持っていない。ですから、非常にそこにズレがあると思うのです。  そこで、具体的にひとつ伺いたいんですが、ロバート・ケネディ氏が参りまして、あの綿製品の賦課金の問題について、日本国民には、何か、かりにアメリカの委員会できまっても、大統領は拒否するかもしれないと、はっきりとは言いませんけれども、そういうようなムードをまいて行ったと思うのです。まいて行きましたよ。それで、ケネディ氏と話し合ったときには、一体どういうことであったか。そうしてそれが新聞に伝えられて、アメリカでは、これが非常に大きな問題になっており、結局、中間選挙もあり、大統領はこれを拒否することはできないのではないかという観測が行なわれておるのです。こういう見通しについてもお伺いしたいのです。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ケネディ氏が日本に参りましての個人的ないろいろな話し合い、これは交渉に来たわけではございませんし、それについてとかく申し上げることは、私は差し控えたいと思いまするが、まあこの問題に対する、綿製品の賦課金問題に対する日本の各界各層の人の考え方というものは十分に述べられたということだけは言えると思うのでございます。ただ、その結果どうするか。これは、先方のことでありまするから、何とも言うべき筋合いではございません。ことに本日、十三日から公聴会がこの問題について開かれておる際でございますので、この微妙な問題について、私からちょうちょういたすことはいたしたくないと思います。これはお許し願いたい。ただ、御承知のように、綿製品の長期協定がジュネーブで妥結いたしました。この点について、御質問ございますれば申し上げたいと存じまするが、まあ一方において賦課金問題というものができてきた。その根拠は、要するに、この綿製品というものの生産費が安い国からその製品がフラッドをする。それに対する措置として考えられたものでございますが、長期的にこの綿製品の輸出に対して国際的なとりきめができたということは、一方において、アメリカのそうした制限を考える人たちにとってある種の将来への考え方の基準というものは、国際的な協定によって与えられたものではないかというふうに思われるわけであります。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国際収支の赤字の打開策の一番の焦点は、やはり何といっても、対米貿易の関係にあると思うのであります。一番重大でありますから、さらに続けて伺いますが、この自由化ですね。自由化は、やはりドル防衛協力の一環として、アメリカから私は要請されてきたのではないかと思うのです。自由化をやれば、自由化に備えるための合理化機械を買わなければならない。その合理化機械をアメリカから輸入する。ですから、アメリカから自由化をやれやれと言ってどんどん促進すれば、アメリカの合理化機械を日本の業者が買って、そうしてそれによって設備をどんどん拡張して、それが高度成長の原因になっている。こういう見方も私は成り立つと思うのです。ですから、自由化による影響ですね。そういうのは、私はこのドル防衛の政策の一環だと、こう思うのでありますが、そうしてアメリカのある学者は、アメリカのドルの危機ですか、国際収支の危機を打開する一つとして、日本あるいは西ドイツにどんどん高度成長をやらせる。それによってアメリカの病気がなおるということを言っている人もあるように聞いたことがあるのですが、この自由化の影響について、どういうふうにお考えになっておりますか。これは通産大臣に、今後原料の自由化の段階から製品の自由化の段階になるのですし、十分私は態勢ができていないと思うのですが、これは、今後非常に大きな影響を及ぼしてくることと思いますが、この点について、どうお考えになりますか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ドル防衛と自由化、いろいろうがった御質問をなさいますが、私どもは、そういううがった考え方はいたしておりません。貿易、為替の自由化は、もうすでに専門家であられる木村さんですから、私どもが今日までとってきた態度、これはもうあらゆる機会に説明いたしておりますので、その点、重ねては申し上げる要はないだろうと思います。この今後の問題といたしまして、今御指摘になりましたように、自由化を進めるために生産設備の整備というものは、ただこれは相当影響があったことは、確かに影響があったと私も思います。今日持っております自由化計画、これをしからば変更するような考えになるのかといいますと、私は、この貿易、為替の自由化が国際的趨勢である、その立場を十分認識すれば、国内においてそれぞれの産業が国際競争力を十分つちかう、国際競争に負けないような素地を作る、これはもう当然のことと思いますので、その意味においての事柄は進めて参るし、また、過去におきまして、そういう意味の国際競争力の増強は、相当各部門においてできたように思います。特殊の産業を除いては、そういう状況になっていると思います。したがいまして、自由化は従前どおりの方針で進めて参る方針でございます。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あとで、それに関連して、独禁法について伺いたいと思うのですが、今、労働大臣お見えになりましたから、箱根会談のことについて御質問することを連絡してございましたので、箱根の会談で、労働大臣は、日本の低賃金の問題について委員会を設けるという話があったわけですね。これが委員会を設けないことになったようであります。そのいきさつは、どういうわけで委員会を設けなくなったのか。また労働大臣は、日本の低賃金についてそういうふうにお考えか。また、低賃金に関する委員会を設けなくなったそうですが、それに対してどういうふうに今後措置されていくのか。  それからもうひとつ、これは、もし私の聞いたことが間違いであったら訂正しなければなりませんが、労働大臣は、アメリカ側の人に対して、日本をアメリカのエージェントにしたらどうかということを言われたそうであります。ところが、アメリカのほうでは、それはあまり、何というのですか、好ましくないという答弁だったかどうか知りませんが、ちょっとこれは、田中発言と似ているところがあるのですね。こちらから、日本をアメリカのエージェントにしたらどうかというような、そういう発言をされたように伝えられているのですが、そんな不見識なことは発言されないと思うのですが、そういう説も伝わっているのです。どうもああいう会議に行きますと、非常に自主性のない発言がなされているように思われますので、この点も伺っておきたいと思う。
  64. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まず、賃金の点でありますが、私は、労働大臣といたしまして、日本の経済全体の中で適当な均衡を保ちつつ、また一面、生産性の向上等々と見合いつつ、適当に日本の労働者の賃金が上がっていくことは望ましいと考え、また、そういう措置もとっているわけであります。したがって、今御質問の場合に、日本の賃金を抑制していく、上がらないようにしていくというような頭から話をし、また、そういうことからの交渉等があったということでは毛頭ございません。ただ御承知のように、アメリカでは一部、ことに繊維製品等についてそういうことの議論が行なわれる場合があるのでありますが、日本のほうは非常な低賃金で製品を作っている、そういうようなものが入ってきちゃ困るという意味で、日本の製品を輸入することを制限したらどうかという議論が起こり、ないしは起こるようなことが伝わるわけであります。そこで、あの日米貿易経済合同委員会の際に、向こうから、日本の賃金について、まあ私が今申しましたような具体的な表現はいたしておりませんでしたけれども、日本の賃金について誤解等も支配的云々というような表現があったかと思いますが、そういうようなことであるので、今お話のような委員会等を設けて研究してはどうかという、一応の提案があったわけであります。それをやめろとかなんとか言ったわけではありませんけれども、私どもは、頭から日本の賃金は安いんだというような先入観に立ち、しかも、そういうことを前提として日本からの輸入が制限されるというようなことについては、私どもは非常に不本意であります。よって、われわれは決して事実をおおい隠そうとすることは毛頭ありません。正しく理解されることは、もとより望ましいところでありますが、頭から日本の賃金について、そういう先入観を持って臨まれることは、そしてまた、そう先入観を持つことは、やがて日本のそういう製品に対してのアメリカの輸入の施策について影響を及ぼすことがあり、得るわけであります。そういうことは望ましくありませんので、事態を正しく認識させること、これ自体はたいへんけっこうでございますが、むしろ、日米間にあっては、経済的に大いに協力しようという建前において、この貿易経済合同委員会があったわけでありますから、そういう観点から貿易を拡大する、ことに日本から向こうへ行くのを促進するというような意味において、広い範囲において——もちろん賃金も含んでおりますが、いろいろ情報の交換をしようということに置きかえたわけであります。これはむしろ向こうから積極的に申しまして、そういう措置になった。  後段のエージェント論は、私はさようなことを言った覚えはございません。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、やはりドル防衛協力の問題でありますが、ドル防衛協力としましては、さっきの自由化の問題は、通産大臣はそういうふうには解しないというお話だったが、われわれはそれと関連があると解釈しておる。さらに、アメリカがドル防衛政策として、日本に後進国の援助の肩がわり、あるいはまた、アメリカの防衛費を節約する意味において、日本に再軍備をさせていく——これは漸進的であってもですね。日本の防衛五カ年計画はやはりアメリカの、これは安保体制のもとにおいてのアメリカの要請もある。それはやはりアメリカとして、アメリカ自身の防衛費を節約する——結局、ドルの危機の根本の原因は、アメリカが対ソ防衛のために軍事援助費をたくさん使う。あるいはまた経済援助をたくさん使う。年に七十億ドルぐらい使う。ここに問題があると思うんです。それは輸出貿易の黒字によってカバーしている。それがカバーし切れなくて赤字になって、ドルが不安定である。それで金が流れていく。ここに問題があると思うんです。ですから、アメリカはなるべく軍事援助とか経済援助をアメリカ以外の国に肩がわりさしたいと、これはアメリカのドル防衛政策の一つの面であると思う。そこで、ガリオアやエロアの返済の問題も、私はそういう立場から考えられると思うんです。アメリカのドル防衛政策の一環として、そうして日本にこれを返済さして、これを韓国に対する援助に振り向ける。アメリカは腹は痛まない。あるいはタイの特別円の問題もそうです。今まで有償であったのを無償にさして、そうしてそのかわり、アメリカの腹は痛まないという側面を持っているんじゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。これもドル防衛協力の一環ではないか。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろお話がございましたが、すべておあげになりましたような問題は、日本自体の考え方に基づいて行なっているわけであります。たとえば東南アジアの貿易にいたしましても、これは逐年ふえております。今わが国の貿易の三二%ぐらいは東南アジア貿易になっております。しかしながら、御指摘のように、この地帯はモノカルチュアでございまして、われわれのほうから、やはり何らかの市場を開拓する努力をしなければ、輸出は伸びていかないわけであります。また、それと同時に、アジアの一員としまして、アジア全体の繁栄を考える立場からも、これは必要でございます。したがって、われわれのほうといたしましては、この東南アジアに関する経済援助を強化していく、これはもうわれわれ自身の政策として必要なわけでございます。タイの特別円の問題もその一環として考えられるわけでございます。ガリオアの返済の問題も、これはどうも非常に違うのでございまして、あれはもう西独と日本は同じ性格のものでございますが、西独のほうは、九年前にすでに返還する協定を結び、大部分返還してしまっているのであります。日本のほうにおいても、当然この協定を作る必要を感じているのでございまして、その全体の援助額——アメリカのいう援助額の四分の一程度のものをこの際払う。しかし払っても、この行く先については、日本とも相談して、アジア地区の開発に向けてもらうということを要望している。これだけのことでございます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点はまあ見解は違うわけですが、西独と同じと言いますけれども、なぜこういう際にガリオア・エロアの返済が具体的になってきたか。それは韓国に対する援助の問題とも関連して私はそういうふうに考える。そういうふうに全体のアメリカのドル防衛政策の一環としてそう見るような見方も必要だと思うのであります。そういう見方もできるんです。これは必ずしも一面的じゃないと思うんです。それは外務大臣としては、そういう見方はお立場上困難でしょうけれども、そういうふうに見なければ、ほんとうの意味で日本の利益を守ることにならないのじゃないか。だから、こういう見方は私はなくてはならないんだと思うんですが、そこで、ガリオアにつき資料をいただいているのですが、アメリカの対日援助額の中で、見返り資金積み立て以前の額として八億四千七百二十七万六千五百五十七ドル、これは国内的にはどういうふうに処理されたのですか。見返り資金積み立て以後については、見返り資金に積み立てるそれ以前についてはどういうふうに処理されたのですか、国内的に。これは返済の問題とも関連してくると思うんですね。どういうふうに処理されたのですか。具体的にそれは経理は明確になっていなければならないわけですね、日本の国民の税金で返済する以上は。
  68. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村委員、だれにお尋ねですか。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは通産大臣にお願いいたします。
  70. 伊藤三郎

    説明員(伊藤三郎君) 二十四年の三月以前におきましては、輸出入は、当時の連合軍総司令部が管理しておりまして、援助物資と商業物資と一緒になっております。貿易資金、それからその後の貿易資金特別会計でこういう物資を受け入れて、それぞれの、食糧でありますれば食糧管理特別会計というふうに、それぞれのところへ売り渡しをいたしておるわけでございます。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 僕の言うのは、国内的な資金はどういうふうに処理したのかということなんです。あるいは価格差補給金とか、いろいろな形に使われたと思うのですよ。その経緯を明らかにして下さい。
  72. 伊藤三郎

    説明員(伊藤三郎君) 二十年から昭和二十三年度末、二十四年の三月末までにおきましては、その会計の収入が三千七十億、支出が三千六十二億となっております。一般会計から約十億円を入れておりますので、現金面では約一億八千万ばかりの赤字になるわけであります。実際の資産としましては、貿易資金特別会計廃止のときにおきましては、約三百八十億円の資産を持っております。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもそういうことじゃ納得できないのです。この八億四千七百なんぼ、これが見返り資金積み立て以前においては、総理は、本会議で、その場合にははっきりと表面にどう使われたんだかわからぬ、だから、ドッジさんが来て、それ以後においてははっきりとあの特別会計に積み立てて、これだけアメリカは援助してやったのだと、そういうことをはっきり表面に出すべきだというので、積み立ててきたわけですね。だから、これはもうはっきりするわけです。その前はどういうふうにこれは処理されておるか。一体、財政的にどういうふうに処理されているかですね。そういうことを聞いているわけです。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 通産省の調べでは、昭和二十年から二十四年三月末までに八億ドル余りの向うの物資が来たわけであります。この物資が貿易会計あるいは後に貿易資金特別会計というふうなものに入れられたのですが、その八億ドルの金を何に使ったかということになりますると、御承知のとおり、こちらには安定帯物資というのもがございまして、価格を安定さしております。そのために、外国から入れてきました石炭にしましても、肥料にしましても、安く売ります。安定帯物資できめておりますから安く売る。そのときの損金というものはだれが負担したかといったならば、この八億ドルの品物を国民に売ったお金でその損金を埋めたわけでございます。それから物を輸出いたしますのに、その当時は複数為替レートで三百六十円ときまっておりません。私の記憶では、綿製品を輸出いたしますと、二百七十円の綿製品で一ドルかせぎました。生糸は四百二十円で一ドル、医薬品その他の化学製品は六百円余りで一ドルしかかせげない。国内で六百円のものを買いましても一ドルしかしない。じゃ、国内ではもっとそれ以上の金を出さなければならない。いわゆる輸出補助金、こういうものに使われたと聞いております。また、向うの連合軍がこの経理をやっておりまして、日本人はタッチいたしておりません。そういうふうなことで、いつまでもこういうふうにやっておってはいかぬ、こういうので、昭和二十四年に対日援助見返り資金特別会計というものを設けまして、そうして向うで買ってきたものを安く売るのならば、これは政府で補助金を出す、売った金はためまして、その差額は政府で補助金を出すというのが、多分昭和二十四年の一般会計のときには、当初予算で二千二十億円組んだと思います、この補助金を。輸入補給金、輸出補助金二千二十億円を組みまして、そうしてその後、私は、たとえば銅にいたしましても、肥料にいたしましても、鉄にいたしましても、補給金をだんだん値を上げていきました。その二千二十億円組んだのが、決算では千六、七百億円で済んだと思います。翌二十五年には補給金は七百億円で済んだ。二十六年にほとんどなくなった。こういうことでございまして、昭和二十四年に二千億円の補助金を組まなければならないのは何かというと、それまでは援助物資でそのつじつまを合わしておったような状況でございます。で、貿易会計、貿易資金特別会計等々でこれを処理しておったのでございます。で、この貿易会計、貿易資金特別会計内容は、そういうことでなかなかわかりません。わかりませんが、後に貿易資金特別会計の別のものをこしらえたときに、残余財産を引き継いでおります。その引き継いだのが、多分七百三十億、正確に覚えておりませんが、二億ドル近くのものが引き継がれたと思います。そしてまた一般会計からそのほうへ初め九億五千万円、十億円ぐらい入れたと思います。その後一般会計から四百億円ぐらいも入れております。貿易資金特別会計へ。そのやりくりは昭和二十五年以後の分ははっきりわかりますが、それ以前の分は、今申し上げたような状況でこちらが管理しておりません。大体来たものはわかっております。使ったものは総理府のほうで使っております。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと伺いますが、ただいまの見返り資金特別会計設定以前の八億四千七百万ドル、これはアメリカの資料でこうなっておるのですか、日本に何かこれに相当する資料があったのですか、その辺はどうですか。それでアメリカとしては、この八億四千七百万ドルは正確な資料を持っておるのか、どんぶり勘定といわれるものなのか、その辺承っておきたい。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは以前に問題になっておりますように、アメリカの予算面では十九億ドル、こう全体で言っております。こちらのほうで、通産省では向こうが置いて帰りました資料を克明に調べた。そういたしますと、こちらに来たものは十七億九千万ドルだったと思いますが、それだけ来た、そして見返り資金設置以前の分が八億なんぼ、それからその後が八億なんぼ、こうなっておるようでございます。十七億九千万ドルの中には、よそへ移したやつもございます。日本でもらったのは八億なんぼずつでございます。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連ですから簡単に、関連しますが、その場合の日本にあった資料を詳細に克明にお調べになったと言いますが、それは現存しておるのでありますか。
  78. 伊藤三郎

    説明員(伊藤三郎君) 通産省に保管しております。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その見返り資金積み立て以前の使途ですね、これは占領軍が管理しておったのでわからない、こういう意味なのですか。
  80. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 占領軍が管理しておりました。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今はアメリカと折衝してわからないものですかね。どうもそういう、この金額も大きいですし、何かやはり納得いくように、大体項目としてはわかりますね。今、安定帯物資の補助金とか、それから為替の複数レートのときの補助金ですか、わかるのですけれどもね、それは。だけれども、何か計数的にわからぬものなのでしょうかね。これは責める意味じゃないのですけれども、経理をやはり明らかにしておく、そういう意味で、わかるものだったらわかりたいと思うのですが、どうなのですか。むずかしいですか、これは。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今、総理からお答えしたように、当時の資料は当方にございません。しかし、司令部自身が持っておるJES統計というのがございます。これは日本経済統計集、こういうものは、一応つかめるものはございます。しかし、先ほど総理がお答えいたしましたように、当時は複数レートでございますので、その計算はたいへんむずかしくなっております。そういう事情でございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは出せないのですか、要するに資料として出せないかどうか。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このJES統計の数字はございます。これは終戦後昭和二十四年三月までの数字ですね。これは一応、輸出としては六億五千三百七十二万ドル、それから輸入が十七億四千四十二万ドルですね。この輸入の中で、商業物資が五億四千二百九十六万ドル、援助物資が十一億九千七百四十五万ドル、こういうことになっております。そうして、向こうから入っているものはそのままのドルでございますけれども、こちらから出ました輸出は、先ほど総理が御指摘になりましたように、陶磁器なら六百円だとか、綿糸なら二百六、七十円だとか、それから生糸が四百二十円、こういうふうな複数レートでございますので、これはなかなか計算がややこしくなっております。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 出せたらそういう資料を今後の審議の参考のために何とか出していただきたいと思うのですが、これはまた他の機会にお伺いします。  時間もあまりありませんので、次にもう一つ、ドル防衛との関連なんですが、直接の関連ではありませんが、アメリカの互恵通商法の改正の問題、これはさっきちょっと総理もお触れになりましたが、アメリカがEECと協力するようになる場合、関税引き下げを行なう、そうすると、ある特定品目において、アメリカとEECの分を寄せた分が八〇%になるものについては一〇〇%関税を引き下げる、その他については五〇%ですか引き下げる、これについては日本はあまり関係ないのじゃないですか。日本のいろいろな商品としてはそういうふうに言われているのです。だから、一応最恵国待遇を受ける、均帯するように見えますけれども、実際は均霑ないのではないか、こういうふうに言われるのでありますが、この点どうなんですか。
  86. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカと日本の間には最恵国約款があるのですから、今お話しのように、EECとアメリカと両方の輸出額を足したものが世界の輸出額の八〇%を占めるような主たる工業品について一〇〇%の関税引き下げが行なわれることになる場合には、日本もそういうものにむろん均霑するはずでございます。ただ問題は、ただ乗りができるかどうかということでございます。フリー・ライドができるかどうか。たとえば日本の非常に得意とするエレクトロニクス、こういうようなものも、そういうものに無条件に均霑していくということになりますと、これはEECのほうで非常にいやがるという問題がございますので、そういう問題についても、やはり日本としては、そういうことについて応分の考え方をEECに対してもしていく、それについて特別の交渉をしていくという問題ができようかと思うわけでございます。しかし、いずれにしても、通商拡大法の考え方というものは、世界全体の貿易拡大ということでございまして、工業国であります日本としても、全体の貿易が拡大する方向に向かうということは望ましいし、アメリカも当然日本の工業力というものを強く頭に置いてEECとの接近を考えているということは、ケネディ氏の言っていることにたびたび現われているのでありますから、そういうふうに考えております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アメリカの互恵通商法改正、それからこれが五年間延期ですかされるとして、関税が引き下げられても、たとえば政府ガードが存続されるということになると、エスケープ・クローズとか、あるいはぺリル・ポイント、あるいは国防条項というものが存続されたら、実質的にはあまり利益がないんじゃないか。何かあまりに過大に評価することは、私は間違いじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  88. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカとしては、ペリル・ポイント、あるいは国防条項、あるいはエスケープ・クローズというものを関税委員会を通して考えておられる。これはアメリカの国内産業を考える場合、アメリカとしては当然のことだと思います。日本としても、その種のことは、やはり将来のこととして研究すべきものだと考えております。日本国内自体として常にさように考えております。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、結局、対米貿易については、締めくくりとして今後の見通しですが、三十七年の経済見通しですね、輸出四十七億、輸入四十八億、あの計画に基づいた対米輸出ですか、あれは一体可能であるとお考えになりますか。大体アメリカに対して二〇%増ですかね。三十六年度八%増くらいでしょう。それだけの増加が一体期待できるのかどうか、その点。それで片貿易というもの、この片貿易を直すことは、私は非常に大きな問題だと思う。これが日米の間で直るのか直らないのか。直らないとしたら、これをどういうふうにして片貿易という問題を調整していくのか、この点を伺いたいんです。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この対米貿易を均衡を得さすというか、これは非常に大事なことであります。四十七億ドルの輸出を進め、あるいは四十八億ドルの輸入、そういうふうな場合におきましても、日米貿易が改善されることがこれはもう前提でございます。先ほど来御指摘のとおりであります。ところで、対米貿易について、基本的に三年前のような状態、これはなかなかできにくいように思いますし、あるいは四年前のAIDの資金などで、これがまあ大体パーになる、あるいはやや黒字になる、こういうことがございましたが、最近の状態ではそういうこともなかなか望めないと思います。しかし、私どもこの日米間の貿易を見ました場合に、先ほどお話がありましたような原材料、粗原料、こういうようなものがアメリカに多く依存しておる日本の産業でありますから、輸入を減らすというほうにもあまり大きなものが期待できません。そこで、こちらの品物をもう少しアメリカに買ってもらう、そういう意味で、在来の考え方からやや工夫も必要じゃないのか。先ほど外務大臣がお答えいたしましたような外交上の交渉で、より日本商品についての関税障壁その他のものを緩和し、あるいは撤廃するという努力もしてもらいたいと思います。同時にまた、日本商品にいたしましても、広いアメリカ国内の問題でございますから、問題をしばしば起しておる東部の市場に集中しないような方法、これなども一つの方法であろうと思います。そうして私どもは、今の輸入、輸出がどのくらいまでいくことが可能だろうか。六割、あるいは七割、あるいは輸入の八割までも出ていけば、これはたいへん大成功だと思います。ただ、半分とか、あるいはその半分をちょっとこしておるというような程度では、どうしても満足ができないので、そういう意味の努力をひとつ実はやりたい、かように思います。同時に、市場並びに商品も多様化していく。そういう意味の官民協力の布陣をしかないと、なかなか改善を見ないのではないか、なかなか容易なことではないと、かように実は考えておる次第でございます。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、日本の輸出市場として最近特に重要視されているヨーロッパ市場、特にEECの問題について伺いたいんです。今後国際収支を改善し、輸出振興をしていく場合に、国内で輸出ドライブをかける——国内的な条件というものも重要だと思うんですね。租税の措置とか、関税とか、いろいろあると思うんです。あるいは、あとで御質問したいと思うんですが、新産業体制としてのコンビナート化とか、それに関連する独禁法の改正の問題があると思うんです。しかし、それに劣らず、やはり海外市場の条件というものが非常に重要だと思うんですよ。それに劣らないと思うんです。そこで、これまでアメリカの市場の問題について質問してきたんですが、次にEECですよ。この点については、第一に伺いたいのは、もしイギリスがEECに参加した場合に、東南アジアにおけるスターリング地域、そういうところの動向というものが非常に重大だと思うんです。これをどういうふうにお考えか。その向背いかんによっては、ヨーロッパ輸出に非常に重点を置いていますけれども、私は、ヨーロッパに進出するというよりも、むしろ受け身になるんじゃないか、防衛の立場に立たされるんじゃないか、進出どころの騒ぎじゃなく、そういうふうに私には思われるんです。そうすると、対ヨーロッパ貿易というものも、今後そんなに私は期待できないんじゃないか、イギリスのEEC参加によって東南アジアにおけるスターリング・ブロックがそれに参加するようになったら。それをどういうふうにお見通しになるか、その点を伺いたいんです。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) イギリスがEEC参加に踏み切ったときに、旧英連邦諸国の考え方というものは、これはイギリスが入られることは随意だと、しかしわれわれの持っている特恵的な地位をどうしてくれるんですかということが、異口同音に言われていることなんです。で、大体貿易額として、やはりイギリスからこれらの地域へ五〇%、これらの地域からイギリスに四七%ぐらい出しておる。非常に密接なる関係を持っておるわけでございます。そこで、いろいろ将来の問題について、これはイギリスあるいは英連邦諸国との間の今後の推移を見ないとわかりませんけれども、少なくともわれわれが現在において努力すべきことは、このEECの諸国がわれわれに対して持っている差別待遇の撤廃、これは非常に大きなことで、われわれとしては努力しなければならぬことだと思います。この点について、各国それぞれに対して努力をいたしております。昨年の暮れにフランスとの間に、あるいはまたイタリアとの間にも、あるいはクオータの拡大により、あるいは差別品目の撤廃によって、相当な貿易額が伸びるということになっておることは、御承知のとおりでございます。これらの諸国が今日本から買っているのは非常に少ないのでございまして、旧ベネルックス諸国がまあ二・三ドルぐらい日本の品物を買っておるのでございます。アメリカは、これは六・四ドルぐらい買っておるのでございます。イタリアあたりは〇・六八ぐらいしか買っておらない。あるいはフランスに至りますると〇・三六ドルぐらいしか一人当たり買っていない。こういう点から考えまして、だいぶ昨年の暮れの貿易協定によって修正はされております。しかし、われわれとしては、ぜひその差別待遇を撤廃するように強力に呼びかけて、相当な反応もあるわけでございます。一方EEC自体に対して、われわれとしては強力に接近を呼びかけております。先般もレイという外務担当閣僚が日本へ参りまして、非常に相互の理解を深めております。まあわれわれといたしましては、EEC自体に対しまして、あるいはEECを構成する各国に対して、それぞれ強力に経済外交を展開するということに目下重点を置いておる次第でございます。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このEEC委員会というのは、まあ何というのですか、実際的な力はあまりないのだと言われているのですが、三十五条の問題にしても、アメリカと同じように三十五条を撤回されても、それにかわるやはり政府側のいろいろな措置が残されれば、私は実質はあまり期待できないのではないかと思うのですが、この点はこの程度にしておきまして、やはりEECと関連しまして、最近日本の企業体制についての論議が非常に盛んになってきて、それで独禁法の改正の問題がクローズアップされてきているわけです。ヨーロッパでは、御承知のように、西ドイツは非常な大コンビナート化が進んで、大体完了している。今度は、フランスとか、イタリアとか、その他の西ドイツをのけた六つの中の国が非常に急速にコンビナート化を進めていこうとしていると伝えられている。日本でもやはり、これに対応する形、あるいは自由化にも備えるという意味もあり、それから金融引き締めによる景気調整に対処するという意味もあると思うのですが、独禁法の改正が問題になってきています。この点、佐藤公取委員長に、たいへんお待たせして恐縮でございましたが、要求してありますので、この独禁法の改正について公取委員長はどういうふうにお考えか、改正する必要があるとお考えか、あるいは改正すべきでないのか、承りたいと思います。
  94. 佐藤基

    政府委員佐藤基君) 最近、EECに対する接近とか、あるいは貿易の自由化というものが進んでくると、どうしても日本の企業の対外競争力を高めなければならぬ。そこで、その方法としていろいろありますが、ことに小さい企業が乱立して過当競争しておるというようなことは、いろいろの点から批判されるので、対外競争力を高めるために、企業単位を大きくする、いわゆる合併というようなことが言われておるのであります。これは日本の対外競争力を高める上におきましてもっともなことでありますが、この点に関して独禁法との関係で問題になるのは、合併に関する制限の規定であります。御承知のとおり、独禁法におきましては、いわゆる独占力の非常に強くなるような競争は認めないのであります。独禁法の言葉を使いますと、一定の取引分野における競争を実質的に制限するような合併はいかぬということになっております。そこで、その規定と、日本の経済、個々の事業の対外経済力を高めるための合併と、どういう関係になるかということが、私のほうの問題になってくるのでありますが、私のほうといたしましては、企業の合併ということは、そういう見地からいって決して反対すべきものではない。ただし、いわゆる独占的になるような合併はいかぬ、こういう建前をとっております。そこで、実際問題といたしまして、独占的にならぬような合併をやる余地は十分あると思う。もし独占するような合併が行なわれるというと、経済自由化によって外国と戦っていくという意欲が鈍りはしないか、自由公正な競争ということが鈍りやしないかという心配があるのです。これは、統制経済時代におきまして、各企業が統制されているもので、創意工夫をこらすということがだんだん弱ってきたのでありますが、それと同じようなことになるのじゃないかと思うのでありまして、そういう意味におきましては、独禁法の合併制限の規定は何も直す必要はない、こういうふうに考えております。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産大臣はどういうふうにお考えですか。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 独禁法は、私が申すまでもなく、経済のあり方の基本的な法律でございます。したがいまして、簡単にこれが改正など考うべきではない。ただいまお尋ねのうちにもありましたように、ただいま経済の変動期でございますので、いろいろの事態が起こると思います。いろいろの事態が起こって参りますが、その実情を十分勘案して、そうして改正の要ありやいなや、これの結論を出したいと、かように存じております。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産省としては、大コンビナート化ですか、これを所得倍増計画の一環としてもそういうことを進めていると思うのですが、それで独禁法自身は改正しないとしましても、独禁法の適用除外の法律を出されようとしているのじゃないかと思うのです。自動車に関する法律とか、あるいはまた輸出入取引法の改正を今度の国会へ出されるかどうか。そういう適用除外の法律を出されるのではないか。あるいは今までの適用除外の法律の改正ですね、そういうものを出されるのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 独禁法自身は、先ほど答えたとおりであります。輸出入取引法は、前国会に御審議を得まして、これは成立を見ております。今回さらにそれに改正を加えるというところまでは研究は積んでおりません。ただ、これから私ども御審議を願おうと考えておりますものに石油事業法というのがございますが、いわゆる独禁法の基本的精神に抵触すると、かようには私は考えておりません。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自動車工業の合理化法、そういうようなものは出されますか。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私はまだ十分伺っておりませんが、ただいま申し上げるように、いろいろの産業の改編といいますか、変動期にあたっておりますので、事業別にはいろいろ工夫を要するものがあるだろうと思います。それらのものは、それぞれについては将来考えていくことがございます。しかし、全般についての独禁法そのものの取り扱いは、なお慎重にいたす考えでおります。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 独禁法自体は改正しないとしても、さっき公取委員長お話しのように、拡張解釈によって処理される余地がだいぶあるようであります。だから、独禁法の十五条の「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」と、「実質的」というのはどういうものか。そういうものの解釈によって独占化は進められていくのじゃないかと思うのです。大体この独禁法は、昭和二十八年の改正で、われわれから見れば骨抜きになったような形になっていると思うのです。今後やはり公取委員会の存在理由、レーゾン・デートルにも影響してくると思うのです。これは、もし公取委員会で、今後のEECに対処するためとか、それから自由化に対処するためとか、今後合併集中、大コンビナート化が非常に進んでいくと思うのです。そういう状況にあると思うのです。そういうときに、よほど公取のほうで独禁法の精神を堅持して、これに対処しませんと、二重構造が非常に激化するのですね。あるいはそのために産業カルテルが結成されて独占価格が形成されたり、そのためにかえって海外競争力が、さっき委員長が言われたように、合理化を怠って海外競争力がかえって鈍る、あるいは国際カルテルとの関連というものが出てくると思うのです。重大な問題がひそんでいると思うのですね。こういう問題について、公取委員長としての御所見を承っておきたい。将来どういう立場でこれに対処していかれようとしているか。われわれのほうはこの成り行きを非常に重視しているわけです。独禁法を改正しなくても拡張解釈とか適用除外とか、そういうものが出てくると思うのです。その点いかがお考えですか。
  102. 佐藤基

    政府委員佐藤基君) 最近の国際情勢、ことに経済情勢から考えまして、日本の企業が国際的に働く、また外国の企業というものが日本にどんどん入ってくる、こういう事態が起こることは当然予想しなければなりませんので、われわれの委員会といたしましても、そういう事態を特に注目しておるわけであります。  そこで、その場合においても、先ほど申しますとおり、独禁法を改正しなければ対処できないというようなことは現在考えておらないのであります。独禁法は、御承知のとおり、自由公正な競争というものを根本原理としておるのでありますから、自由化ということは、結局同じような製品で行なわれるものと思うのでありますからして、経済情勢が変わっても独禁法を変えなければならぬというようなことは、ただいま考えておりません。もちろん輸出入取引法というような特殊な立法ということは、これは私どもの所管ではありませんが、所管大臣においてお考えであると思います。そういう際には、従来におきましても十分私どもの委員会と意見の交換をし、十分調整を行なっておりますし、また法律ができた後において、いわゆるカルテル行為を認める場合にも公取のほうに協議がありますので、われわれのほうといたしましては、独禁法の精神にかんがみまして、十分善処していけるものと考えております。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がなくなりましたので、最後にお伺いしますが、日本の重要市場である東南アジア市場、これについては二月七日の閣議ですか、OAECの問題が話し合いされたように新聞で見たわけです。池田さんは、東南アジアの共同市場の問題について話された、あちらに行きましてお話されておるように伝えられておりますが、このOAECについての考え、総理はどういうふうにお考えになっているのか、この見通しです。それがまあ第一点です。  それから最後に、今後の経済見通しについて伺っておきたいと思うのです。経済企画庁長官はおりませんので、これはまたあとで伺いますが、政府は大体今後、本年の六月、七月ごろまでは生産は下がっていく、七月ごろ底をついて、そうして回復過程に転ずるというような見通しのようであります、三十七年度経済見通しによりますと。私は逆に見ておるんですが、この点政府と非常に違うのでございますが、特に総理の御所見を承っておきたいと思うのです。これは重大な問題だと思うのです。三十七年度の大型予算を組んだ結果として、それから選挙対策もあって、私は金融を締めるったって、そんなに締められないんじゃないかと思う。これから買いオペもやって参りますが、私は一−三月は危機は起こらないと思います、手当をしますから。参議院議員選挙前はあまり政府は金融面において引き締めはできない。予算面においても大型予算を組んでおるわけです。国民所得に対して一六・九%、一七%予算を組んでおる。そこで上期において私はそんなに不景気にならない。三月決算はそんなに悪くはない。そのかわりに下期に行ってこの反動が来るんではないか。下期に行って国際収支政府の予想するように、私は一億ドルなんという赤字にとどまらぬのじゃないか。もちろんこれは在庫の問題もあるわけでありますけれども、そうして結局私は下期において、七月、八月ころになると、三十七年度国際収支は予想よりもかなり悪化してくる見通しになり、したがって金融をうんと締めなければならない、予算も大型予算を組んだけれども、千億くらいはこれは繰り延べなければならない、こういう事態が私は来るのではないか。ですから、私はむしろ逆に下期に非常なデフレ政策をとらなければならない事態が来るのではないか。そして池田内閣は借金政策、ボロウイング政策で一応つないでいく。しかし、ボロウイング政策でつないでいっても、アメリカの借金によってつないでいっても限界がありますから、私は下期になってかなり強いデフレ政策をとらざるを得なくなる。そうなると日本の経済自体は非常に深刻な事態になるのではないか。またIMFから借金をするとしても、その借金を返さなければならないのでございますから、三億五千万ドル借金をするのなら、それだけ輸出をふやさなければなりませんから、昭和三十四、五年と違って、そんなに私は貿易の黒字は急速に生じないと思うのです。輸出をふやそうと思うならば、輸入をふやさなければならない。そんなに急速に私は黒字はふえない。また国際収支の赤字もかなり長期的に続くのではないか、そういうふうに私は見るのでありますが、この点私は政府の見方と逆なんです。政府は上期において景気はずっと下がって、鉱工業生産も下がっていくと言っております。私はむしろ下期に問題があるのじゃないか。参議院選挙のために、参議院選挙対策としてそんなに引き締め政策はとれない、そして放漫予算を組んだ、その反動は下期に来るのではないか、こう思うのでありますが、この点について総理の御所見を最後に伺いまして、私の質問を終わります。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東南アジア開発機構と申しますか、今インドとタイと日本のまあスリー・ワイズ・メンと申しますか、そういう計画のなれた人が案をこしらえまして、SEATO関係十八カ国の意見をまとめておるようであります。しかし、まだ各国とも意見はきまっていないし、日本もどういう態度に出るか見ておる。御承知のとおり、まあ今木村さんはアメリカとの貿易が片貿易だ、東南アジアは、またパキスタンにしましても、ビルマにいたしましても、タイにいたしましても、アメリカと日本以上なんです。片貿易なんです。日本の輸出は向こうからの輸入の倍くらいであります。アメリカも倍になっております。これは去年であって、さきおととしはとんとんであるというようなことで、とにかく日本の東南アジアにおける経済的地位というものは非常に重要なんです。しかも各国は、今どちらかと言ったら国家主義に燃えまして、非常に鎖国経済、関税障壁、資金の障壁、為替管理で相当やっております。これは理想としては実はいいことなんですが、実際問題としては非常に厄介な問題でございます。私はまあ政府としての結論は出ておりません。各閣僚の意見を十分練ってから、そしてまたSEATO関係の各国の意向打診などいうものを今検討させております。非常な熱意を持っておる国もありますし、またそう熱意を持たぬ、どちらかというとまだ早いじゃないか、またもっとあれで、そんなことはできっこないという意見もあるようであります。もうしばらく様子を見たいと思います。  それから次の三十七年の景気。どうも生産が少し下がるとすぐ不景気だと、こういうふうにお考えになる。それからまあ木村さんも今度の上半期は不景気は来ないという、こういうお話でございます。そして下半期に非常なデフレ政策をとる、デフレ傾向になるのではなくしてデフレ政策をとると、こうおっしゃる。デフレ政策は私はとりません。行き過ぎたのを調整することはいたします。今の時代にデフレ政策ということは、私はやはり五・四%の伸びを見ること自体はデフレ政策ではないのです。下期になりますと、企画庁で言っておるように、生産は私はある程度上がってくる、こう見ておるのでございます。そういう関係で、とにかく国際収支なんかにつきましても、非常にきつくものをお考えになるようですが、あなた御承知のとおり、三十二年のときの分は国際収支ゼロととんとんと言っておったが、三億ドルの赤字、それから三十三年になりますと、一億五千万ドルの黒字が五億四千万ドルで四倍近くの黒字。三十四年は一億六千万ドルが四億六百万ドルの黒字です。国際収支というものは非常に動くのですから、そして日本が伸びていくときは、よく話をするのですが、外国から借金しても国の経済基盤が強化して将来をはかれるという態勢をとることがいいのです。私は少し長い目で、上期はどうだ、下期はどうだと言ってこれで神経質になるよりも、やはり先進工業国ですから、世界を見ながら、とにかく非常に不景気にはしない、デフレ政策はとらない、行き過ぎたのを調節しながら国民全体の生活水準が上がる方法をとっていくのがいいのであって、上期はどうだ、下期はどうだと言って、私はあまり神経質にならずに、その堵に安んじて努力することが一番のあれだと思います。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで終わりますが、総理は長期的に考えてあれですが、政策としては……
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今SEATOと申し上げましたが、エカフェの意味でございます。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やはり短期的な政策も政策の中に入るのであって、何も私は短期的にばかりものを見ておるわけではないのです。その点しょっちゅう総理答弁に困ってくると、長期的に長期的にと言う、長期的、いつまで、棺に入るまでか、これは最後ですから、そこまで長期に考えるということになるのですか。これは議論にならないと思いますが、私の質問時間が切れましたから、これをもって質問を終わります。
  108. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 暫時休憩をいたしまして、午後の二時から再開をいたします。    午後一時十七分休憩    ————・————    午後二時三十一分開会
  109. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。米田正文君。(拍手)
  110. 米田正文

    ○米田正文君 前国会におきまして、災害対策特別委員会では決議が行なわれました。「最近の風水害頻発の事態にかんがみ国土保全の基本である治山治水の早期完成を図るため、現行治山治水十ケ年計画の繰り上げ実施を図るとともに、特に治山砂防等水源地帯の整備に特段の努力をすること。」という決議をいたしたのであります。その繰り上げ実施の状況については、この決議の趣旨を取り入れて、昭和三十七年度予算から行なわれるようになっておるようであります。三十七年度予算案には、事業費について八百十七億円が計上をせられておりますが、その結果、どういうことになるかというと、治山治水前期五カ年計画の残存期間が三十八、三十九と二年残っておるわけですが、その間の事業の保留しておる分が減少してくるという結果になっておると思うのです。こういう状態ですが、治山治水の事業の要請は、むしろ全国各地に非常に強くなってきておる現状でございますので、繰り上げ施行を三十七年にはやったが、その後の残存の、二カ年あるわけですが、その二カ年ある間の計画を、今後どう是正をしていくかという点について、建設大臣に所見をお伺いいたします。
  111. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知のとおり、残事業量を均等に割りますと、今年度の治水事業費八百十七億以下になっていくという数字に相なっております。われわれとしましては、災害の現状にかんがみまして、できるでけ治山治水事業を活発に推進することが、国土保全の上から非常に重要であると思っておりますので、この残事業量が、均等に割りましても、今年度減っていくという姿は、どうしてもこれを改善することに努力をしなければならない。とにかく、現在の長期計画は、まだまだわれわれとしては十分と言えない現状と思っておりますので、今後、将来の、明年度以降の対策につきましては、十分検討いたしたいと考えております。
  112. 米田正文

    ○米田正文君 次に、今回の補正予算で要求されている災害復旧事業費としては、公共土木施設及び農林水帳業施設を合わせて二百七十三億であって、そのうち三十六年災害の分としては、百四十七億円を計上しておりますが、これは補正一号及び予備費支出を合わせて総額三百六十億となることになりますが、そのうち補助事業分は、三百二十億となっております。これは大蔵省の提出の資料によってそうなっておりますが、この金額は国費総見込額千六十四億円に対して、ちょうど三〇%に相当いたしております。当年災を三〇%進捗をはかるということは、私どもの長い間の念願でございまして、三・五・二制に相当するものでございまして、大蔵省の今回の処置には大いに敬意を表します。そこで第二年度である昭和三十七年度予算では、今の三・五・二制でいきますと、五割に相当するものが計上をされるものと期待をいたしておったのでありますが、現実には三十七年度予算を見ますと、これをはるかに下回って三七%程度が計上されております。従来災害の第二年度は、四〇%程度を計上いたしておったので、今回は従来の例を下回る結果となっております。これから見ますと、三十六年災害は、初年度は従来よりもやや高率になっているが、第二年度は従来より低率になっているという結果になります。災害復旧は、第二年度は最も重要な年でございまして、工事も計画的に大幅に進捗させる必要がある時期でございます。で、第一年度に着手したもの及び緊要なものが、第二年度で実施できないということになっては、全体の復旧工程として適当でないと思いますので、今後についても、第一年度三〇%、第二年度五〇%のこの率を、実現をしていだだいて、ぜひ三カ年完成復旧の制度を確立する必要があると思いますが、これは大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  113. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この災害復旧のいわゆる比率は、全国的に平均した比率で、原則率でございまして、ただ財政上からこういう比率をきめたということではございませんで、過去の経験に徴して、実際に工事の進捗状況が、一年、二年でこれを全部完成するわけには参りませんで、過去の実績に見て自然な、これが大体妥当な比率だということをきめたわけでございますが、本年度のような特に災害が早かったというような年には、この初年度の復旧の進捗率は、もう少し伸びてもいいという事情が出て参りましたので、私どもは本年度はできるだけこの進捗率を繰り上げて進めたいという考慮をして、今度の、今御審議願っております補正予算につきましても、そういう意味で計上したわけでございますが、やはりこれは実際の能力の問題もございますので、それに対応した、実情に合った率で進められる場合には進めるというようなことで、今後は運用していきたいと思っております。ですから私どもは、特にこの比率を厳格に守るというような方針では今やっておりませんが、できるだけやはり三・五・二というような、過去から妥当とされている比率を確保していくというような方針でやっていきたいと思います。
  114. 米田正文

    ○米田正文君 総理大臣にひとつお伺いをいたしますが、災害対策基本法が昨年の十一月に公布されております。しかし、その実施は、公布の日から一年以内となっておるのですが、いつごろから実施をされる予定であるかという点をお伺いしたい。その答弁は、あとのとき一緒に願います。  そこで、この基本法で最も重要なことは、基本法第九十七条から百条にわたってうたわれておることですが、激甚災害の応急措置及び災害復旧に関する経費負担区分の問題でございます。従来のように、災害発生のつど特例法を出すということは時日を要するし、復旧の時期を失するおそれがあり、多数の国民の苦難を早急に解決することこそ絶対の要件でございますので、新たに法律の制定によってあらかじめ重要事項を決定しておくことが必要であると思います。政府は、いつごろこの法案を提出する予定であるか、この国会に提出をして成立させるという考えがあるかどうか、お伺いをいたします。
  115. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お説のとおり、災害のつど激甚災害に対する特例法を作っていくというよりも、固定的にそういった場合の基準を作りまして高率補助の制度を設けるほうがわかりやすくもあり、また、都合がいいような感じもいたすわけでございますが、これにつきましては両論ございまして、激甚災害等が起こりますと、当然それに対する高率補助の問題だけではなしに、予算措置が必要になって参りますので、どうしても予算補正追加等のために国会をわずらわさなければならないような事態になるので、災害の姿というものはいろいろ多種多様でございます。ことに公共土木関係は、一定の固定した基準を設けることはむずかしくないのでありますが、農林災害、商工災害あるいは厚生関係の災害等多種多様になりますので、そういった災害の姿から見て、やはりそのつど適用の立法指貫を講じたほうがいいという議論も一部にございます。したがいまして、これらともかね合って私どもとしては、努めて基本的な法律を制定したいという意欲に向かって十分検討をして参りたい、こう思っておるような次第でございます。
  116. 米田正文

    ○米田正文君 それについては私もいろいろ意見はございますが、またこれは次の機会にいたします。  次に、全国総合開発計画についてお伺いをいたします。これは主として企画庁にお願いをいたします。  昨年七月に作成をされました全国総合開発計画草案は、昭和二十五年施行の国土総合開発法に基づいたものでございまして、法律制定以来十年以上も成案を得なかったこの計画が、ようやくにして確立しようといたしておることは、私どもの待望久しかったものだけに喜びにたえませんが、政府としては、予定どおり本年三月一ぱいに決定できる見込みかどうか、お尋ねをいたします。
  117. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) お答えいたします。  全国総合開発計画は、お説のごとく、いろいろな事情がございまして、たいへん作成がおくれておりまして申しわけございませんが、昨年の夏に総合開発審議会の議を経まして、また、閣議の御了解を得まして、一応草案ができ上がって参りましたことは御承知のとおりでございますが、本案は関係するところがすこぶる複雑多岐でございまするし、また、なお内容について若干の問題点も含んでおりますので、それを草案としてただいま各省各方面に提示をいたしまして、いろいろ御意見を求めておる最中でございまして、それに対する御返答を集めて、目下計数の調整その他を練りつつあるところでございまして、本年の、三十六年度末を目標にいたしまして内容を確定いたし、来年度四月早々にはこれを正式決定に持ち込みたいと、こういうふうに存じておる次第でございます。
  118. 米田正文

    ○米田正文君 そこで、この計画では拠点開発方式を採用しておって、開発効果を最大にするような配置をする、将来の資本、労働、技術、生産過程、流通過程などの地域内及び地域相互間の発展的連結関係を有効ならしむる産業配置を考えるということになっておりますが、これを具体的にその拠点地点を言うと、どういうところをお考えになっておりますか。
  119. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) ただいま検討中の開発拠点を内示しろというお話でございますが、これはもとより開発計画の最も中心をなすものでございまして、重要かつ微妙でございまするので、ただいま検討中でございますから、しばらく発表は差し控えさしていただきたいと思う次第でございますが、たとえば一ブロックに一つ二つのものを慎重に今検討中でございます。
  120. 米田正文

    ○米田正文君 それなら、その問題はまた次の機会にいたします。  本国会に提案をされております新産業都市建設促進法というのがございますが、そのねらいとするところは、全国総合開発計画でいうところの拠点都市の建設であると当初は思われておりましたが、新産業都市建設促進法では、区域指定の申請や建設基本計画の承認は、原則的に都道府県知事が提出をするということになっておりますので、全国の各都道府県知事がみな申請をしてくるおそれなきにしもあらずだと思うのですが、そうなると、非常に多くの拠点都市ができることになり、結局は大拠点都市の実現が困難になってくるというようなこともおそれられるのでございますが、この両者の関係をどういうようにお考えでございますか。
  121. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) お説のごとく、新産業都市の建設は、この全国総合開発計画の拠点開発方式を実施に移しまする最も重要な方法の一つだと考えておる次第でございます。もとより拠点開発は、必ずしも産業都市建設のみに限るものではございませんので、あるいは学園都市とか観光文化都市というような意味の拠点もございましょうが、しかし、その主たるものは、やはり新産業都市の建設となってくると思いますので、お説のとおりであります。したがいまして、新産業都市の建設にあたりましては、この法案の第五条の二項に、全国総合開発計画を尊重して地域の指定をいたすことに相なっておる次第でございます。  さて、今お話のように、この指定の申請を知事がいたすことに相なっております。したがいまして、知事としましては、なるべく自分の管轄内にこういうものを育成したいと思いますから、御申請の御希望が相当あると思うのでございますが、しかし、この法にもありますように、新産業都市の要件はかなり厳重に規定してございます。個々のいろいろな条件がありますほかに、将来、相当大規模の産業都市として発達の見込みあるものということにしぼられておりまするから、おのずから限度があると思うのでございます。ことに、あまり総花的にやりますと、効果があがりません。ことに、国が力を入れまして公共事業を集中するとか、あるいは資金の導入を集中するということがありますので、指定に当たりましては、この新産業都市のことを審議いたしまする中央の審議会の意見を十分聞きながら、やはり厳選主義でもって出発をせなければならぬのではないかと思うのでございます。したがいまして、当初におきましては、まだ何個とも申し上げかねますが、比較的制限された、つまり四大工業センターに次ぐいわばBクラスの産業中心都市を若干指定することを手始めにいたしたいのでございます。しかし、指定は当初の一回にとどまるのではございませんので、逐次大きなものから指定が済みまして、これは永久立法でございまするから、年次を追いまして、そういう大きいものから指定が済み、建設が済むに従いまして、逐次もう少し程度の低いものに及ぼしていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  122. 米田正文

    ○米田正文君 今もちょっと話がございましたが、都市の過大化防止は、産業の過度集中はその集積利益以上に密集の弊害を生じて生産面や生活面に弊害を生じておる現状を改善しようとするものでありまして、当面の重大問題になっておりますが、過大都市とは、既成四大工業地帯といわれるものと同意語に使われておることが多いように思いますが、これは私はいかがなものかと思っております。東京は人口一千万をこえておるのに対して、北九州のごときは今度五市を合併いたしましても百万そこそこでありまして、人口だけの面から申しますならば非常な差があるわけで、北九州五市は近く合併しようとしておりますが、そうしてそこに新しい転機を迎えて発展をしていこう、開発をしていこうというのが一つのねらいであって、目的になっておるのであります。で、これが過大都市ということになって、合併はした、すぐお前のほうは過大都市だからこれはむしろもうこれから改造をして整備していくんだというようなことを言われると、私は地元の今の五大市の合併の人たちの気持と非常に相反することになるのじゃないかと思うんですが、まあそういうこともありますが、私はこの四大工業地帯と過大都市というのは別じゃないか、名古屋等はまだまだこれから開発の余地が十分あるところだと思います。これを過大都市と呼ぶわけにいかぬのじゃないかとも思います。そういう点で、企画庁では、過大都市と既成四大工業地帯とをどういうふうな結びつきでお考えになっておるか、お伺いしたい。
  123. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) お話のように、四大工業センターの中で京浜、阪神の両地区は、これはもう明らかに過大都市現象と考えられまして、特に交通とか、水の問題等につきましては、もはや病的現象に入っておると思うのでございますが、名古屋、それから北九州につきましては、工業の集積度は相当でございますけれども、過大都市の弊害はまださまで顕著に現われておらぬように思うのでございますから、四大工業センターと過大都市と即全部同じとは考えておらぬのでございますが、ただし、名古屋や北九州につきましても、これからのいろいろな都市計画その他におきましては十分慎重な対策をとっていきませんと、逐次また京浜やあるいは阪神のような弊害が現われるおそれもありますから、その処置だけは十分する必要があると考えておる次第でございます。
  124. 米田正文

    ○米田正文君 最後に、東京の問題ですが、最近人口も一千万人をこしてしまって、そして今なお毎年三十万の人口がふえつつあるという状況で、十年後には千四百万人にもなろうといわれております。東京の現状は、もう説明するまでもなく、交通難にあえぎ、隅田川初め各河川は濁って臭気がはなはだしい、水道は断水する、下水は一向に進捗をしない、煤煙は空をおおっておる、まさに不健康そのもので、都市機能も麻痺状態になっておると私は言えると思います。三年前から大工場や学校の新設については一部制限をしてきておるのですが、ほとんど見るべき効果はないようにも思います。それから高速道路計画も実行に移されておりますけれども、これもまだオリンピックごろまでは全体の効用を発揮するには至らないと思います。全都民が毎日何とかならないものかと焦燥にかられておるのですけれども、いまだ確たる対策はきまっておらないのでございます。東京分散の声は民間にもいろいろと論議をせられております。ある者は東京湾埋立計画を提唱し、ある者は富士山ろく移転説を唱え、ある者は房総半島移転説を主張しております。個人としてはすでに東京からの移転を実行しておる人もありますが、ひとり政府当局者はこの問題については慎重にかまえておるようにも見られます。このマンモス東京改造の時期はすでに私は失しておると思うんですけれども、それだけに一日も早く総合的有力な実行に移らねばならぬ時期だと思います。強力な人口の流入規制を行ない、流入産業には重税を課するとか、流出産業には助成をするとかいうような措置を行なっていかねばならぬのではないかと思います。政府機関の一部、文教施設等の移転を断行して、東京の現状に大改造を加えて、立体化を行なって都の健康を取り戻さなければならぬと思いますが、これは首都圏の整備委員長を兼ねられております建設大臣に、今までの委員会としてとった措置及び今後とろうとしておる対策についてお伺いをいたします。
  125. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答え申し上げます。  東京の過大都市の姿を改善いたしますということは、なかなか一服で効き目のあるということがむずかしいのでありまして、いろいろな措置をとっていかなければならないと私は考えております。現在も首都圏整備委員会としましては、その周辺に約十カ所の新産業都市といいますか、工業都市の衛星都市指定をいたしまして、その育成をはかっておりますが、これにつきましても、片一方で既成市街地内における工業等の制限に関する立法をいたしまして、これも今まで初めての試みでございますから、ややゆるかったのでございますが、今国会にさらにこれを強化する立法措置を講ずるようにいたしたいと思いまして、目下せっかく努力をいたしておるのでございまするが、かたがた衛星都市における工場団地等の造成にあたりましても、ただ、今までのように募集をいたしますと、ほかの地区にある工業が東京周辺の衛星都市に集まってくる。一そう過大化の様相に付加される姿が、傾向がなきにしもありませんので、私就任いたしまして以来、衛星都市の工業団地の分譲等は、東京から出ていく産業、そして東京から完全に移転をする、あるいはまたその跡地を首都圏整備の構想に合うように使用させるもの、こういうものを優先的に誘致するように基準を実はぎめまして、この基準に基づいて既成市街地内の住宅地や商業地域に散乱しております工業を衛星都市のほうへ吸収していく、こういうような方法も実はとっておるわけでございます。いろいろそのほか、既成市街地の再開発の問題も近くわれわれとしては本格的に取り組みたいと思っておるわけでございますが、そのほかにも、今度の新産業都市開発促進法の精神によりまするように、できるだけ各地方に魅力ある都市をこれから作っていくということが必要だと思うのです。魅力ある都市が東京とか、大阪にきまっておれば、全国の国民は、人間心理として自然にそこへ集中してくる。ですから、直接流れ込まないように、他の地方々々に魅力ある都市ができれば、まず、都会に出たい、工場に働きたいという人たちがそのほうにまず第一段に吸いつけられる。その結果うまくいかないような人は東京へ出てくる、あるいは大阪へくるというようなことにいたしませんと、過大化防止ということはとうてい目的を達することができないと思いますので、こういう意味におきましても、各地方にできるだけ魅力ある拠点都市を作るようにいたしたいという念願から、われわれとしましても新産業都市建設促進法の趣旨に大いに期待をいたし、この推進に当たっていきたい、こう思っております次第で、あらゆる手段を尽くして、御説のような趣旨に沿うように最善を尽くして参りたいと思っております。
  126. 米田正文

    ○米田正文君 一つ最後に総理にお伺いいたしますが、今日、政治と経済とが密接不可分な関係になっておりまして、これらが一体となって東京の人口が膨張をいたしておると思うのです。で、近く全国総合開発計画及び新産業都市建設促進法が決定をせられようとしておるこの時期に、提案したいことがあります。それは、産業の地方分散、人口の地方分散を行なうならば、これと同時に行政権限の地方分散をやる必要があるのではないかと思います。今日多くの会社が東京に進出をしてくる理由は、純経済的な関連というよりも、行政的関連のほうが強いとも思われる節がございます。行政権限を相当大幅に地方庁に委譲することによって大きな効果を私は期待できるのではないかと思うのでございますが、総理の御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済的に産業を地方に分散することも必要でございますが、他面、お話のような、政治的の機構を変える、行政機構を変えるということも必要だと思うのです。したがいまして、御承知のとおり、臨時行政制度調査会を設けまして、調査会におきましてはこういう点についても御審議を願うことにいたしておるのであります。私は今、最も重要な国の施策として、産業、人口の分散、適正配置ということは絶対必要なものと考えまして、努力いたしたいと思っております。
  128. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行。米田委員から災害復旧の施行期日等のことについて質問がありまして、あと回しになって政府答弁がない。これを行なっていただきたい。
  129. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) ごもっともですが、これは……林法制局長官
  130. 林修三

    政府委員林修三君) 御承知のように、災害対策基本法は公布の日から一年の範囲内で政令で定める日から施行されることになっております。しこうして御承知のように、この災害対策基本法に伴う関係法律の整備でなお必要な点がございます。これについては今国会においてまた提案されることにも予定されているはずでございます。そういうわけで、今関係当局で施行準備をやっておるところで、まだ確定した日にちはきまっておらない状況でございます。(「そんな中途半端なことじゃいかぬよ、一年以内ということでわかっているから、大体いつごろ実施できるのかということを聞いたのでしょう、与党の質問だからというので、そんななれ合いではいかぬよ」と呼ぶ者あり)
  131. 米田正文

    ○米田正文君 今答弁ができなければ、あとでいいです。
  132. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行。与党の一人の委員が単に政府に聞いているわけじゃないのです。この委員会を代表して聞いているわけです。われわれ委員は全部その答弁を待っているのです。それをあとでいいの、適当にやるのと、そういうことでは委員会を軽視することになりませんか。そんな方法で審議を続けるというならば、われわれも考えがある、委員長どうします。
  133. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これは、政府の方のお答えができますか。
  134. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 災害対策基本法の施行につきましては、法制局長官がただいまお答えしたとおりでございます。しこうして、これの関係法規を今国会に出す予定で今案を練っておるので、これはたまたまきょう欠席しております自治省所管の関係上、いつごろというお答えはできませんが、今のところお答えできるのは法制局長官のお答えしたとおり審議調査中でございます。また、何日ごろ提出できるかという問題につきましては、自治大臣のほうからお答えすることになります。
  135. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) それでは、ただいまのその問題については、政府のほうで時日がはっきり言明し得る時期になったならば、もう一度はっきり言明していただくということにして、これを打ち切りたいと思います。   —————————————
  136. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) それじゃ、次の質疑に入りたいと思います。相馬助治君。
  137. 相馬助治

    ○相馬助治君 先般来、オランダ軍人らしい外人がKLM機でわが羽田を経由して、現在紛争中の西イリアン地方へ多数旅行しているという事実が伝えられております。これに関連して、政府もその取り扱いに関して苦慮していると新聞が報じておりまするが、これに関してその経緯をまず外務大臣より承りたいと存じます。
  138. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように、KLMは、日蘭航空協定に基づきまして現在週二回、DC7C機によりまして北回り東京経由ビアク行き航路を通航しておるのでございます。本年一月末、アムステルダムからの外電は、KLMが兵員を私服で羽田経由ビアク島へ向け送出するという情報を伝えましたところ、一月三十日、KLMはわがほうの運輸大臣に対し、オランダ政府のチャーターしたKLM三機がビアク島へ参りますので、羽田にそのテクニカル・ランディングをしたいという旨を通告してきましたので、直ちに運輸省からKLM日本総支配人に対しまして、今回のチャーター機は、シカゴ条約第三条にいう国の飛行機とみなされる、したがって、通告のみでは足りない。日本の許可を必要とする。また許可を申請しても今回はこれを与えないという旨を通告いたしました。  二月二日のアムステルダムからの外電は、KLMの定期便によって約三十名の兵員が東京経由ビアクに向かったと報じましたので、三日、法眼欧亜局長から在京オランダ大使館のマクレンポント参事官に対しまして、大使がおりませんで、代理大使をやっておったわけでございます。チャーター機が拒否されたからといって、定期便によって兵員を輸送することは趣味が悪い、パッド・テーストである、こういうことを言って差し控えられたい旨を申し入れたのであります。  この定期便は、二月四日羽田に到着いたしましたので、係官が機内立ち入り検査をいたしましたが、軍需品、武器は発見されませんでした。乗客は合計四十二名、そのうち三名は羽田で降り、残り三十九名はそのままビアクへ向けて出発いたしました。  二月七日に至りまして、再び外電は、オランダ兵約七十名がDC8によって東京経由ビアクに向かう旨を伝えて参りました。よってKLMの日本支社に対しまして、事実の有無を調査回答するように命ずるとともに、法眼局長からオランダの代理大使に対しまして、DC7CをDC8に変更した上、このように多量の兵員を輸送することが事実とするならば、このようなやり方は趣味が悪いという以上のものがあって、当方きわめて迷惑であるから取りやめられたいということを申し入れました。一方KLMは五時になりまして、定期便のDC7Cを、八日DC8に機種変更したいという事業計画変更認可申請を提出いたしましたので、わがほうは直ちに認可を拒否いたしました。なおマクレンポント参事官は、法眼局長に対しまして、電話で事業計画変更を許可するよう申し出ましたが、私並びに総理大臣の決裁を得ました後、当方拒否の方針に変わりないという旨を通告いたしました。翌日八日、法眼局長から再びマクレンポント参事官を招致いたしましてDC8の拒否についてわがほうの見解を説明し、今後このように見てくれがしなやり方で兵員の輸送を行なわないように、民間航空の精神を守ってもらいたいということを申し入れた次第でございます。  その後KLMは日本の拒否のため、アンカレッジに滞在いたしておりましたDC8の乗客八十名を、今度はDC7Cに乗りかえまして羽田経由輸送せんとしているという外電がございましたので、法眼局長は二月十日午前、朝鮮に行っておりましたのですが、帰って参りましたので、フォーフト駐日オランダ大使を招致いたしまして、現在西ニューギニア問題の平和的解決の努力が国連の事務総長を中心としてなされておる際でもありまするし、こういう際にいかに定期便といえども、先週来のようなやり方で兵員の羽田経由ビアク向け輸送を行なわないように申し入れて覚書を手交いたしました。先方の申しますには、これは現在ビアク経由して濠州へ行く移民も相当おるということなので、兵員が輸送されておるような印象を与えるけれども実はそうではないんだ、こういうような答弁もやっておったようでございます。以上です。
  139. 相馬助治

    ○相馬助治君 従前の経緯について、今外務大臣から報告を聞きましたが、おおむねその処置は正しかったと思うのです。しかし問題はオランダ政府が西イリアンにおける兵士の交替であるというような説明、あるいはまた、それは兵員の増員ではないからというような弁解めいたこと、そしてまた事実問題としては定期便を使って、いわゆる兵士風の若者が送られていると新聞が伝えているというようなこういう状況を見まするときに、羽田というものが極東の空路の非常に中心地として世界に認められている現在としては、この種の問題は、対KLMだけの問題でなくて、将来にやはり重大な問題として、日本がとんでもない飛ばっちりを受ける気づかいのある問題だと思うので、基本的な問題として私は姿勢を正してこのケースは片づけておくべきであると、こういうふうに考えて以下質問をいたすのでございます。  わが国とオランダとの間の航空業務協定の中で、この種問題に関して断固として定期航空便でもその種の輸送はやめてもらいたい、やめないならば、定期便といえどもその乗り入れを拒否することがあるかもしれないというような断固たる通牒をすることは法的に不可能でございますか、どうですかお尋ねします。
  140. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府がチャーターして参りました場合には、先ほど御説明申し上げたように、国の飛行機でございますから、わがほうの許可を必要とするということで、これは断わり得るわけです。不定期飛行の民間機は、シカゴ条約の第五条によって、事前の許可なく締約国の上空通過及び技術着陸を行ない得ることになっております。したがって、KLMがこのような兵員輸送を通常の不定期飛行の扱いで羽田に技術着陸する場合には、法的にこれを阻止する手段はございません。しかし、KLMがこの飛行機について政府のチャーター機に準ずるものと考えてこれを許可を求めてくれば、これを拒否することができる、こういうことでございます。法的には現在の航空協定の建前から、一般の旅客が通過していくことを断わることはできないのでございますが、政治的には非常にわれわれを困らせることであるというので、政治的な配慮のためということは当然やるべきことでございます。
  141. 相馬助治

    ○相馬助治君 政治的な問題を次のこととして、法的に尋ねているのですが、そうすると現在の段階では、シカゴ条約及び航空法は軍人について定期便を利用した場合にかくかくというような積極的な規定のないことを私も承知しております。したがって、非武装ならば軍人の輸送は法的には拒み得ないものだ、かように外務大臣了解しているのですか。
  142. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 組織的に計画的に大量の軍人を輸送しておるということが明らかであります場合には、これは民間航空法の精神によりましても、これは私どもは拒否し得るものだと思います。しかし、一般旅客として行くという一般的な基準において特にどうこうというのはこれはできないわけでございます。しかしながら、われわれとしては機内に立ち入り検査をいたしまして、十分その武器弾薬のごときものがないということを確かめるだけのことはいたしておる次第でございます。
  143. 相馬助治

    ○相馬助治君 その認定が非常にむずかしいと思うのですが、今度の場合、やはり組織的には非武装の軍人が輸送されていると外務省は認識しないのですか、しているのですか。
  144. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまのような輸送の仕方では、これは大規模に、かつ体系的にやって、その結果これを軍隊輸送と認められるという程度のものではないと解釈しておるわけでございます。
  145. 相馬助治

    ○相馬助治君 朝日新聞の「天声人語」におもしろいことにこういうことが書いてある。「GIガリのたくましい私服軍人が普通の旅客のようにしている。旅券には大工、ペンキ屋と書いたのも多いそうだ。まさか軍人をペンキで塗り変えたわけでもあるまいが」こう書いてある。私はこれは明らかに計画的に軍人が定期便を使って送られていると認定すべきものだと思うわけです。さような認定に立てば、国際民間条約の第四条に「各締約国は、この条約の目的と両立しない目的のために民間航空を使用しないことに同意する。」と明記してあって、それからこの条約の前文には「明らかに国際民間航空の濫用は、一般的安全に対する脅威となることがあるので、また、各国及び各国民の間における摩擦を避け、且つ世界平和の基礎である各国及び各国民の間における協力を促進することが望ましい」これに協力しなければならないと、こう書いてある。この第四条の精神からいえば、これは明らかにかようなことは明白だからやめろ、やめないならば定期便の乗り入れも拒否する、こういう態度に出るのが至当のように思うが、そういう見解にまでは達し得ない現在の政府の立場、それをひとつ外務大臣から納得いくように説明してもらいたい。将来の問題としてこれはどう取り扱うか。
  146. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 二月十日の乗客でございますが、これは全部で四十七名乗っておったわけです。そのうち羽田どまりが二名、あと婦女子が五名、男子四十名、二月十一日の便では四十五名、うち羽田どまり六名、女子一名、男子三十八名。この程度のものでございますので、法眼局長から申し上げましたように、組織的に大量の軍隊輸送ということはちょっと言いにくいと思います。
  147. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はこれを政治的な問題としてこの問題を考えるほかない段階だと思うのです。それでまずインドネシアの国内事情を考えてみるときに、西イリアン解放というのは、インドネシア民族過去十二カ年にわたる国民一致した民族的悲願であるようです。新興国における民族主義的な感情というものは、われわれの予想以上に強烈なものがありまするし、伝え聞くところによれば、スカルノ大統領はこの問題に関して全生命をかけていると言われておる。また事態はまさにさようであろうと思います。しかも、日本としては同じアジアの民族として、経済的にも協力し合う民族として、それから日本からの賠償提供によってあの国は非常に復興が進んでおって、日本に対する感情というものもたいへんに好転しておると伝えられておる。幾多の留学生も送られておる。近くは皇太子殿下が訪問して非常なる歓迎を受け、天皇がまたこれに対して懇篤なる謝礼の電文を送ったと伝えられておる。こういうときに、オランダが西イリアンの紛争の問題に関して羽田を使うというこのことは、日本にとって迷惑きわまりないことだけでなくて、将来のインドネシアと日本との国際親善の上にもこれは微妙なしかも重大な影響を持つように私は思う。しかも、この種の問題は、羽田の地理的条件を考えるというと、対インドネシアの問題だけでなくて、頻発する傾向が将来予想されなくはない。そこでわが国としては、この種紛争には一切関係しないというのが建前でなければならない。こういう意味合いからいたしまして、ひとつ内閣総理大臣のこの問題に対する所見、今後の見通し、そういうものについて御所見あらば、ぜひ承っておきたいと存じます。
  148. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、西イリアンの問題につきましては、国連事務総長が中心になりまして、インドネシアとオランダとの平和的な解決をやっておるときでございます。そういう際におきまして、羽田を軍事目的に使われるということは、政治的に非常に困りますので、外務大臣がお答えしたような措置をとっていったのであります。今後におきましてもそういうふうなことのないように、特にオランダのほうには覚書を出してやめてもらうよう努力いたしておるのでございます。
  149. 相馬助治

    ○相馬助治君 内閣総理大臣答弁は、私は了といたします。そうして、どうかこの種の問題の将来の問題をも展望的に考えられまして、法的に許す限りにおいて政治的、高い視野に立つ判断に立って、この問題に対しましては断固たる措置をとって、かりそめにも同じアジア民族であるところのインドネシア等から誤解されることのないように強く期待をいたしまして、この質問を終わります。  次に、私は日韓問題について承りたいと存じます。  現在、日韓の交渉の問題は、微妙な段階に到達しております。政党間においては絶対反対を呼号する政党もある。これを強力に推し進めるべきものであると主張する政党もある。私ども民社党といたしては、先般来申し上げておりますように、一日も早く正式な国交回復がなされて、しかも、懸案でありますところの季ラインの問題、漁夫の拿捕の問題、竹島問題等が抜本的に解決されることを基本的には期待をいたし、しかし、実際問題としては、それぞれデリケートな問題もあり、かつまた日本といたしましては、北鮮の所在の問題、南北統一の問題等についても、これはある程度の展望を持たなければならない問題でありますから、この種の問題を中心として慎重にこれを進めていくように期待をして今日まで参ったのでありますが、現在、これがどのような段階にあり、今後の見通しがいかがなものであるか、まず外務大臣より承っておきたいと思います。
  150. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 朴最高会議議長がこちらに参りまして、池田総理大臣との間にひざを交えて懇談されまして、双方の考え方というのはよく理解されたように私どもも承知いたしております。現在、杉全権が先方の表首席との間にいろいろ話をいたしておりますが、この話を進めるに際しまして、事務的な会談と政治的な会談、それぞれ並行して進めていこう、こういうような考え方に立っておりますが、まあ何といいましても請求権の問題、講和条約第四条によって、日本が請求権の問題の解決ということを各国に約束しているわけでございますから、この問題が一番大きな中心になっているわけでございます。一方、漁業の問題、李ラインを撤廃して、そうしてそこに双方の漁民の繁栄、それに漁業者の繁栄、それから漁業の安定ということをめざして漁業協定を作っていく、こういうことも一方において進められつつございます。その他在日韓国人の法的地位の問題とあわせて、こういう問題を同時に解決していこうじゃないか、こういうような段階でいろいろ話が進められている次第でございます。
  151. 相馬助治

    ○相馬助治君 この問題に関しては、池田、朴会談を頂上として、かなり急速にこの問題が、しかも円満に進むのではないかという印象を与えたけれども、その後はさようなうまいわけにも参らないようで、何か政府部内においてももたついた、いろいろ判断の食い違いがあるやに聞いておりますが、韓国側では、どうも日本側の態度が明らかでない。これはどうも不誠意なのだ。こういうふうなことで、また若干話が行きつ戻りつしているということも、われわれは聞いているのでありますが、問題はやはり誠意と誠意をもって、かけ引きなしに抜本的な解決をする熱情を持ってこの問題に取り組まなかったならば、これは両国間にとってもきわめて不幸なことだと思います。朴政権が合法的であるとか非合法的であるとかいうような論もある。しかし日本としては、これは相手の政権であることには間違いないと私は思います。そういうふうな形からしてくるというと、一体、代表に杉さんがいいとか、岸さんを送るべきだとかいうようなことは、私は基本的問題のようであって、実は基本的問題でないと思う。日本としてはどれだけの賠償なら賠償に応じられるか、それから経済復興に対しては、どれだけの協力ができるかということを、池田内閣自身が腹をきめて、かけ引きなしに対応するところの段階に至らなければ、本問題は解決しないように思う。したがって、これは最高の政治的判断に基づく問題でありますので、この際、池田内閣総理大臣の御所見を基本的な立場から承わっておきたいと思います。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、われわれは一日も早く韓国との国交の正常化をいたしたいと、この念願で進んでおるのであります。御承知のとおり、過去十年近くいろいろやって参りましたが、その実を結ぶ機会がなかった。朴最高会議議長は、親しく面接いたしましたが、非常にりっぱな誠意のある人と私は感じました。お互いに建設的考えで正常化に向かっていこう、こういう話し合いをいたしました。そうして今の両国代表がただいま折衝中であるのであります。私は今お話がございましたが、賠償という観念でなしに、平和条約の請求権、この問題をはっきり片づけて、そうしてそれが済んでから後に経済協力ということがあり得ることなんです。これは朴議長も言っております。今までの関係を建設的に解決して、しかる後に両者提携の段取りにしよう、こういう気持で意見一致しております。向こうも今後のことがありますので、経済再建計画等につきまして、まだ直接私のところに言って参っておりませんが、今後正常化とともに、そういう次の段階に進んでいくことも予想して今後話し合いをいたしたいと考えて、今両国の代表の間では請求権の問題、漁業問題、そうして法的地位の問題と、この三点に主としてしぼって交渉をいたしておるのであります。
  153. 相馬助治

    ○相馬助治君 池田総理のおっしゃるように、基本的な国交正常化が先行して、その後経済協力の問題が進むのだということは正しいし、また将来そうしなければ悔いを千載に残すというようなことがあり得ると思うのです。そこで私は、通産大臣並びに外務大臣に聞きたいと思うのですが、最近、韓国保税加工調査団と称するもので、内容は、私の調査では松下電器、明電舎、富士電機、明治鉱業、森永乳業、三井物産、三菱商事、兼松、郡是及び大洋漁業、日本水産、こういう幹部がまじって韓国にごく最近に出発するということを聞いておりまするが、通商業務的な観点から通産大臣はこういうことをお知りであるかどうか、知っているとすれば、それに対してどのような見解をお持ちか。それから外務大臣は、今の調査団が出発するとなると、総理が考えていることとは順序が逆になると思うのですが、このためにデリケートな外交上の予測せざる困難な状況等が起きる心配はないかどうか。これらについて御答弁を願いたい。両相どちらが先でもよろしい。
  154. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 誤解があっては何でございますから。経済協力の関係は、国と国との経済協力関係を申上しげておるのであります。
  155. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は私も申し上げようと思っていたのですが、総理からお答えになりました。外務省としてはそういうふうに考えております。民間の関係の方だけと考えております。
  156. 相馬助治

    ○相馬助治君 外務大臣、民間の調査団が国の基本的な方針がきまらないうちにこういうところへ出かけて行ってよろしいのですか、外務大臣として。
  157. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 民間の方が行かれて調査をなさるということの範囲までは、私はこれは御随意だと思います。しかし、それが何らかの形で国に関係を持つようになりますと、外務大臣としては意見を申し述べなければならぬと思う次第でございます。現在の段階では私は意見を差しはさむことを遠慮すべきかと思っております。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 新聞に出ているのは私も記事を読みました。また、財界の方から直接お話を聞いたことはございません。しかし、さような調査団が出かけるやの話は間接的には聞いたわけであります。
  159. 相馬助治

    ○相馬助治君 私がこれを尋ねるのは、単に調査団が行くという問題だけでなくて、従前、政府並びに自民党は中共の問題に対しましても、社会党の代表が行って通商上のあれこれのことに立ち入った話をすることは、外交権を持っていない野党としてはおかしいとか、あるいはまた労働団体等が行っていろいろの取引をするということは、将来の日本の貿易の全般的な見通しに立つというと、はなはだ国の利益という段階からとるべきものではないというような批判を加えてきていると思うのです。それを私はまず第一の前提として、これが今の政府のものの考え方なのだということを一つ聞いている。  それから第二の問題は、韓国がすでに昨年十一月、関税法改正によって、外国人に対する保税工場の設置許可という条例を出して、受け入れ態勢を法律的に完備した。しかも保税加工収入に対する奨励金制度というものも条例できめて、積極的な行政措置によるところのわが国よりの調査団の受け入れ態度をきめておる。そのときに、通産大臣が新聞紙で見たが話を聞いていないというようなことでは、何ともこれはたよりにならない話であって、なぜ新聞を見たときに、これはどういうことなのだといって下僚官僚をして調査せしめないのか、私にはこれが不思議でたまらない。しかもまた外務大臣としては、今ここで意見を言うべきでないと、こういうふうなことをおっしゃるが、私はむげにこういう調査団が行ってならないなどと言っておるのではない。私はいつでも日本の利益ということを考え、韓国と日本の正常な国交回復という将来の展望に立って、この種のことは裏話くらいでは、今の政府首脳と話し合いがついてのことだと考えていたのですが、このことについて再度両大臣の所見を承りたい。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、ただいま日韓間でも通商をやっております。また日中間にも同様な事柄がございます。いわゆる経済的交流は今日も行なわれておるわけであります。したがいまして、ただいま新聞に出ておるような問題が具体化すれば、これは無為替輸出の問題などには関係を持つわけであります。そういう点だけをただいまも一通りは検討はしておりますが、しかし、いわゆる財界の方から直接お話を聞いておらない、こういうことを実は申し上げておるのであります。計画の内容がどうなっているかというようなことは全然知らないということを申し上げたわけであります。
  161. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 興味を持たれる民間の方が韓国に行って調査をされるということについて、私はとやかく言うべきものではないと、こう考えておるのでございます。ただ、その調査の結果が何らか国との関係においてこれについての関連、たとえば税の問題であるとか、あるいは為替の問題であるとか、あるいはまた極端にいえば将来損失補償の問題であるとか、そういう問題が出てくれば、これは私として意見を申し述べなければならない、こう思っておるわけでございますが、私も実は直接何にも聞いておりませんので、それ以上申し上げられない。
  162. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は現在の政府のやり口を皮肉ったり、これを批判するためにどうのと聞いているのではないのです。私はやはりこういう具体的な経済交渉というものがあまりにも先行してしまうというと、日韓交渉の陰でこういうものがあまり進んでしまうというと、一体、日本と韓国側との本格的な国交回復の調整を含めた話し合いの上で、逆に暗い影をさしてはきないか、こういうことをおそれるのです。きわめて与党的な立場で、民社党の私が与党的な立場と言っちゃ恐縮ですが、与党的な立場でこの問題を心配する余り言うのです。それならばもう一言つけ加えますと、この調査団のうしろには池田内閣の跡目をねらうほどの大物がいて、糸を引いていると伝えられております。これは確証ありませんよ。私はそういう意味で、やはりデリケートな日韓の問題については朴・池田会談も行なわれて、その線に沿って進んでいくというこの段階において、やはり若干懸念されるところがあるからこのことをお尋ねしたのです。したがって、この種の問題については、ひとつ慎重を期すことはもちろんだが、ある問題に関しましては、積極的にこの問題について日本が誠意をもって取り組むべきだと思うのですが、それらを総括して再度池田首相の見解があらば承っておきたいと思います。
  163. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今韓国におきましては、経済再建につきまして非常な熱意を入れております。聞くところによりますと、ドイツから大体二億ドルの経済開発の契約ができたと承っております。なお、その後に四億ないし五億の追加の話もあるようでございます。朴議長を初め経済再建計画の実施に非常に熱心になっておることは私も承知いたしておるのであります。したがって、ドイツのそういう問題があるから、日本のほうにも来て調査したらどうかというふうな話があるやにも聞いております、新聞などで。また日本の財界の人も、韓国と日本の将来のことを考えて、よそに負けないようにという気持も私はあるのじゃないかと想像できるのであります。しかし、これはあくまで民間の方々のおやりになることで、私はそういうことを新聞で見まして、これもさもありなん、こう思っておりますが、政府政府との関係ではございません。そうして民間の人が調査いたしまして、さあ今度貿易を始めるとか、開発資材を送ってどうこう、経済復興にもう具体的に入るということにつきましては、これは貿易為替管理の問題が起こりまして、通産省、大蔵省との話し合いになってくると思いますが、いずれにいたしましても、韓国経済復興ということは、われわれ隣国として望むところでございます。したがって、こういう機会に民間の方々が行って調査なさることはけっこうだ。そして調査して、具体的にどういう事業に着手するかということになりますと、今度は為替貿易のほうの問題が出てくる。政府はこれに関係するわけであります。しかし、その関係は、あくまで日韓会談でうわさされております経済協力の関係とは別個のカテゴリーに入るものだと私は考えております。
  164. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に、私は内閣総理大臣並びに厚生大臣に対して社会保障の基本的な問題について一、二お尋ねをしたいと思います。その基本的問題を首相にお尋ねする前に、その前提として厚生大臣に一応伺っておきたいのは、今国会に医療報酬調査会法案を提案するやに承っておりまするが、それを提案するかどうか。するとすれば、その経緯並びにその法律のねらう効果は何であるか、概略承りたいと思います。
  165. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。お尋ねの医療報酬に関する調査会法案は、政府といたしましては、この国会に提案いたしたいと存じまして、いろいろ準備をいたしておるのでございます。この経過と申しますか、これを申し上げますれば、御承知のように、昨年の三月一日に社会保障制度審議会から政府は答申を受けたのでございます。逆に申すようでございますが、政府といたしましては、従来から医療協議会の審議の状況というものがとかく混乱しがちである、またはなはだ正常性を欠いておる、こういうようなことにかんがみまして、社会保障制度審議会に社会保険等の適正な診療報酬を求める方策はないかという、方策いかんというようなことで諮問をいたしましたわけでございます。その際、審議会のほうから答申せられましたことは、一つには医療報酬を算定するのに、何かルールがあったほうがよろしいのじゃないか、そのルールに従って具体的に医療協議会でいろいろ審議するということにすれば、医療協議会の正常性も復活するでありましょうし、混乱もまた排除せられるであろう、こういうようなことで、一つは医療報酬調査会を内閣のほうに設置すると同時に、中央医療協議会の構成を改めまして、支払い者側、療養担当者側並びに公益を代表する側の三者構成にしたらよかろう、こういう答申をいただいたわけでございます。その答申に基づきまして、前の通常国会にこの両法案を国会に提案いたしたのでございますが、結局この両法案ともに成立しないままに終わったのでございます。そこで、昨年の秋の臨時国会政府は医療協議会法の、協議会の改組法案を提出して御審議のお願いを申し上げたわけでございます。調査会法案のほうは、まだ党内等におきましても意見の未調整のものもございましたし、臨時国会の会期も短いことでございましたので、これを見送ろうということにいたしまして、協議会の改組法案だけの御審議をお願いを申し上げたわけでございますが、この通常国会におきましては、答申の趣旨に基づきまして、臨時医療報酬調査会、この法案を提案いたしまして御賛成をいただきたいと思いまして、いろいろ内部において意見の調整を行なっておるところでございますが、まとまり次第国会に提案いたしたいと存じておる次第であります。との調査会は先ほど申しましたように、適正な診療報酬を求めるのに何か基準があったほうがよろしいのじゃないか。そこで中立的な少数の学者の方を中心といたしまして、その御調査をお願い申し上げたい、その結論を具体的に社会保障等の診療報酬を決定する場合の参考にいたしたい、こういう趣旨のものでございます。
  166. 相馬助治

    ○相馬助治君 臨時医療報酬調査会法案については、いずれ国会に提案されてから委員会において精査いたしたいと思いますが、この際、内閣総理大臣にひとつ承っておきたいと思いますことは、国民皆保険下における社会保険診療報酬の問題というものは、国民負担の観点からも、また開業医を中心とする医者の立場からも、近代医学の進歩という観点からも、また保険料を出すところの被保険者の立場からも、きわめて重要な問題でありまするがゆえに、厚生大臣がその諮問機関であるところの中央社会保険医療協議会の意見を聞いて定めることになっておることは当然なことでございます。ところが、この問題は、関係者の利害に深く関係するものですから、いつでも激しい論争の場となって、円満な運営ができない。厚生大臣は就任当時はいずれも名厚生大臣だが、しまいのころになると、この問題でもみくちゃにされて、両方からぼろくそに悪口を言われるということが繰り返されて今日まで参ったと思うのです。それで、さきの臨時国会において中央医療協の改組法案は通った。ところが、一体その措置が正しかったかどうか。今日、医療協改組の前提条件として今言った調査会法案を作らなければだめだというような意見が一部から出て、そうして一方支払い者側がこの医療協には協力しないというようなことと相なって、厚生大臣はいたく苦慮しているということは内閣総理大臣承知のとおりでありまするが、もとをただせば、その日暮らしの、現在における社会保障問題に対する認識の欠除というものが、厚生大臣に対する不信任の形となって両方から現われて、こういうふうになっているんだと私は考えるのでありまするが、この問題に対しまして、支払い者側も、それから医療担当者も納得するような、そういう姿というものを早急に正さなければならないと、かように考えるのでございまするが、医療保険制度の円満な運営と発展のために、この際、総理大臣はどのようにお考えであるか、きわめて重大な基本的な問題でございまするので、承っておきたいと思います。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一昨年来、中央医療協議会の問題は、お話のとおり、いろいろ難問題が山積してきておるのでございます。今の状態では、中央医療協議会の構成、そうしてまたそれの任務達成のための前提となるべき調査会等につきまして、今問題が起きておるのでございますが、重要な問題でございますので、厚生大臣を中心に関係者がただいま案を練っておるのでございます。いずれにいたしましても、保険者の側も、また医療関係の方々も、重大な国民の生命、健康に関係することでございますので、私は、大所高所からひとつ円満な解決ができることを望んで、努力いたしておる次第でございます。
  168. 相馬助治

    ○相馬助治君 この法律案に対して医師会が強く反発の態度を見せておることは、厚生大臣承知のとおりだと思います。それで、医師会の主張を、また聞きでありますけれども聞いてみますというと、昨年の七月三十一日のいわゆる自民党三役と厚生大臣並びに両医師会長との間で取りかわした合意書によってやれば万事うまくいく、にもかかわらず、その合意書にも載っていないこういう調査会法案を突如として出してくることはおかしいじゃないか、こういうことが医師会の言い分のようなので、私もこの合意書なるものを見せてもらいました。ところが、なるほどそういうことは書いてない。しかも、「自由経済社会における診療報酬制度の確立」とこういうふうに書いてある。自由経済社会における診療報酬制度の確立、こういうような抽象的な言い方ではあるけれども、今突如としてこの調査会法案を国会に提案するということは、むしろ事態を混乱に陥れるのではないかということを私はおそれるわけなんです。したがって、七月三十一日の合意書というものに対して、厚生大臣はその効果に対してどのように認識をし七いるか、また本法に関して医師会との話し合いをどのように行ない、かつまたどのように今後解決せんとするものであるか、これを念のために承っておきたい。
  169. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 昨年の七月三十一日のいわゆる合意書なるものは、四項目ばかりの事項を掲げておるのでございます。いずれも抽象的な字句でございます。私は、この項目につきましては、それぞれ文字どおりに受け取っておるのでありまして、具体的にどういう約束とか、こういう了解とかいうことはございません。自由経済社会における診療報酬制度の確立という項目につきましては、そのとおりに実は受け取っておるわけでございます。当時具体的なお約束とかなんとかいうものはございません。大事な問題でございますので、私は重要な問題として今後お互いに検討していこうというふうな気持でこれを受け取っておるわけでございます。その心持は、当時医師会長にも私は申し上げておることでございます。  社会保険等が行なわれておる今日の時代でございますので、自由経済社会という言葉によって直ちに自由診療をやるとかなんとかいうふうなことはちょっと考えられない問題であります。しかし、自由経済社会の中における社会保険の診療報酬でございますので、経済社会の変動等につれまして、やはりこの診療報酬についても適当な配慮を加えなければならない。そういう意味におきましては、今日、適正な医療報酬を求めようということと、自由経済社会における診療報酬制度の確立ということとは、私は何も矛盾するところはないものと考えておるのであります。
  170. 相馬助治

    ○相馬助治君 厚生大臣は、この際は、せっかく法律化された中央医療協議会の改組案によってできたこの会を早急に開いて、やるだけのことをやってみて、それがうまくいかない場合に、仲裁裁定機関というような意味合いから、この種法案を考慮するという政治的な過程をたどったほうがよかったのではないかと思うのですが、違いますか。
  171. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまのお尋ねの御趣旨も私は一つの考え方であろうかとは思います。しかし、現在の制度は、御承知のように、社会保険の診療報酬は厚生大臣決定することになっておるのでございます。その厚生大臣決定するのにつきまして、従来、中央医療協議会に諮問をするという形に相なっておるわけでございます。したがって、何か利害関係者が相互に主張し合って、そうして話がつかなければ仲裁裁定というふうなことは、少なくとも現行法では予想せられないところであります。  今回の医療報酬調査会毛、厚生大臣が医療報酬の問題を扱います場合に、一つのものさしと申しますか、目安と申しますか、そういうふうなものがあったほうがよろしいではないかという考え方のもとに、この調査会を作って、中立的な立場にある学識のある人によって御検討を願って、何かそこにいいものさしをこしらえてもらうのだという気持のもとにやっているわけでございます。今お話しになりましたような、双方が利害対立しておって、それがいろいろ主張し合った結果話がつかなければ仲裁裁定というような考え方は、少なくとも現行法ではとっていないわけでございます。私としましては、現行法の建前の上に立って、さらに適正な医療報酬を求めるために努力したい、こういうような考え方をいたしておるわけであります。
  172. 相馬助治

    ○相馬助治君 法律が示す基本的な見解としては、私も厚生大臣の説と同意見なんです。中央医療協議会には支払い者側と受け取る側が同数で、しかも中立委員国会承認という、こういう階段をつけたのですから、これは強力に両者のあっせんが可能なはずですから、私はこの中央医療協と厚生大臣が真剣になって、若干の困難があるやに聞いておりますが、これを納得せしめて、開けば、問題はスムーズに解決するのではないかと思う。今、突如としてこの調査会法案を出すことによって、医師会側の意見を聞くというと、これじゃまたもとに戻ってしまう、また一斉休診もあるということをおっしゃることを聞いております。私は、国民医療の立場から、この問題は一患者の感覚からいいましても看過するわけには参らないので、このことを質問しておるのでありまするが、厚生大臣は医師会側の説得については自信をお持ちですか。
  173. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御承知のような状況でございまして、なかなか医療報酬の問題をめぐる空気というものはむずかしいのでございます。医療協議会にいたしましても、せっかく昨年臨時国会におきまして皆様方の御賛成をいただいたのでありまするが、これに対しましては今度は医師会の諸君が不満があって、なかなか容易にその不満が解けないということにせっかく苦労をいたしておるのでございます。今度の医療報酬調査会につきましては、昨年以来医師会側にやはり反対の意見があるわけであります。今回も政府といたしましては、医師会にそのお話をいたしましたけれども、まだ賛成をいただくところまで参っておりません。しかし、私は、医師会側で言われておりますいろいろな事項がございますけれども、その事項につきましては、少なくとも私は、政府としましてそれによってどうしなければならぬというだけのものはないように実は私は思うのであります。したがって、国会等の審議を通じまして十分御説明を申し上げ、また医師会に対しましても適当な方法によって御理解をいただくとともに、努力はいたしたいと存じております。医師会側の反対があるからというので今回提案を見合わせるというふうなことはいたさない、さような考え方で進んで参りたいと存じております。
  174. 相馬助治

    ○相馬助治君 りっぱなお手並みを発揮して、この問題はうまくやって下さい。しかし、私が想像するには、今のような状態ではなかなかうまくいかないのではないかということをおそれます。  次に、内閣総理大臣並びに厚生大臣にお聞きしたいことは、今の医療保険の中で国民健康保険というのは、一番大きな問題だと思うのです。約四千八百五十万人を擁して、全国民の五二%を占める人がこれに入っております。ところが、それは給付の状態も悪いし、しかも保険税は高いし、そしてそのしわ寄せというものは、いつでも政府に金出せ、金出せという形になっておる。私なんかも同じことを何回も池田首相に対して演説をしてきた。しかし、よく考えてみると、政府に金を出せというだけではこの問題は解決しない。もう今となっては、抜本的に組合管掌の保険やその他有利な保険というものも全部統合をして解決しなければならないと私は考えております。私の調査したところによりますと、組合管掌の保険の給付を三〇〇と見ますと、政府管掌のものは一〇〇、国保は五四と、こういう非常に低い保障です。しかも、逆に標準報酬月額と被保険者負担の保険料の分担率というものは、日雇いの場合には保険料金が、四八・四料金に対してかけておる。政府管掌の場合には三二・五、組合管掌の平均は二四。一つの例をあげますと、日本銀行の場合には、自分の取っておる月給に対してわずかに五だけ保険金をかけておる。そして十分病気その他については保護されておる。この姿を見るときに、大企業の労働組合の人やあるいは官僚筋からは大反対を食らうかもしれないけれども、国家的な見地に立つならば、乏しきを憂えずにひとしからざるを憂えるという立場から、私はどうあっても国民健康保険をさしあたりは財政的に国が積極的に援助していく。そして将来の展望としては、全部社会保険というものを統合していくべきだと思うのでありまするが、ひとつこの際、賢明な池田内閣総理大臣の本問題に対する所見を承っておきたいと思います。
  175. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 健康保険の問題につきましては、お話のとおりに、健康保険組合、特にそのうちでも一般の健康保険、組合管掌国民健康保険、日雇い労務者の問題、また政府関係の共済組合等、ほんとうにその間の不均衡というものは目に余るといってはなんでございますが、お話のとおりでございます。これは日本の健康保険、国民健康保険の発生の段階からいってやむを得ぬ姿でございますが、今つぶさに見ますと、お話のような点がございます。お話のありましたように、利害関係相対立しております重要な問題でございますので、社会保障審議会におきましても、この問題につきましてせっかく研究を重ねておられるのであります。われわれといたしましても、今後十分この検討をいたしまして、ほんとうに名実ともに国民全般の社会保険という格好に進むべきものだと私は考えております。いろいろ問題はございますので、今後掘り下げて研究してみたいと思います。
  176. 相馬助治

    ○相馬助治君 最後に一点、時間もないのでいろいろな問題を割愛して、一つにしぼってお尋ねを、大蔵大臣に尋ねておきたいと思うのです。それは買いオペレーションの問題にからんで、中小企業者に対する金融政策というものを大幅に推し進めてほしいということを強く要求したかったのでありますが、この問題については時間がございません。私は非常に民族的な立場から憂える問題が一つ株の問題についてありますので、大蔵大臣に尋ねておきたいと思うのです。  株が昨年度どんどんと上がったときには、四大証券が中心になって、株というものが有利で確実で貯蓄にかわるというような宣伝をやった。株というものは、やはりその底を流れるものはギャンブルです。それを政府がだまって見ていた。そこでみんなが、一家の主婦であるような人も、貯蓄のつもりで投資信託その他を買って、そしてあの暴落によって幾多の悲劇を生んだことは御承知のとおりです。ところが、今回はまたこれとは別な角度から、株を中心として日本の民族的資本の擁護という点から、私は見るにたえない問題を一つ承ったのであります。  というのは、今日香港において四大証券の株式会社がそれぞれ支店を設けて、そうして外人を相手に株の売買をやり、それで株資金導入のほうに狂奔しておりまして、これに対して心ある日本人及び外人の間では、これは売国的競争だと言われておることを聞いております。この問題について大蔵大臣はよもや知らないとはおっしゃらないと思うのでありますが、要するに、この問題をもうちょっと掘り下げて調べてみますと、株が暴落をした、で、何とか政府の力、日銀等から金を出して底入れをしたいと考えたが、それがどうもうまくいかない。そこで政府の、大蔵省局長級の高級官僚あたりが裏で糸を引いて、そしてその四大証券、特に野村証券が先頭に立って、そして野村証券の命を受けた玉塚証券が先般香港にまず支店を開き、そして外国資本をどんどん入れる。それが普通の外資導入の形ではなくて、かなり将来問題を起こす形で入っているというふうに聞かせられております。それに影響されて四大証券が全部今日支店を設け、派遣員を送って、一種の香港騒動というものが起きているというふうに私は聞かせられておるのであります。そこへもってきて、国内的にはやはり外資を入れるという形か、この証券会社が入れ知恵をして、中国人あるいは朝鮮の人、こういう人がどんどん今日本国籍を取得して、株関係の三国人その他の人がどんどん日本人の国籍を取得しているという問題を聞いている。私は、民族的な立場に立って、日本の資本を守るという意味合いから、外資を適法に入れるならば、経営とは別でありますから、借金としてそれはよいことだと思いまするが、形を変えて今の株式の中にそれが微妙な形で外国の資本が入るということは将来大きな問題を残すと思うのでありまするが、そしてまた私はもう少し具体的な実例をここに提示する用意があるかどうか、これに対して大蔵大臣はお知りであるかどうか、知っているとすれば、この問題をどのようにお考えであるか、ひとつとくと承りたいと思います。
  177. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 外国人が株式市場を通じて日本の株式を取得するという現象は、最近確かに多くなって参りまして、三十六年度中は四月から今日まで大体三千八百万ドル程度でございますから、三月までにはもう少し、五千万ドル程度にはなると思います。そうしますというと、過去十年間に外国人の取得した額とやや同じという、一年でそういう現象が出てきたのですから、これはある程度注目していいことだろうと思いますが、しかし、株式界にこういう外国の安定した資金が入るということは、別に弊害がないことでございますし、また日本の株式のふえ方から見ましても、ごくこれはわずかなものでございますし、今後こういう外資が市場を通じて入ってくるということは、私はそうおそれることでもないし、民族資本を脅かすというような問題には私はならぬと思っております。株式の取得制限の問題もございますし、そうおそれる問題ではございません。必要な歓迎すべきものは、私はどんどん入ってくれてもけっこうじゃないかと思っております。で、今お尋ねの香港の問題でございますが、まだ香港に支店を設置している証券会社は今のところございません。
  178. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 相馬君……。
  179. 相馬助治

    ○相馬助治君 時間のないのは知っております。香港に支店を設置しているところがないとおっしゃりますが、形を変えて、支店程度の営業所を設けて、派遣員が行っていることは事実です。この問題について大蔵大臣答弁は至って気楽ですが、私は問題は重要だと思います。残念ながら時間がありません。いずれか委員会の機会を選んでこの問題を追及し、見解を承りたいと思います。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。簡単に資料要求です。大蔵省の方に資料の要求なんですが、今相馬君が買いオペのことにつきまして質問されるやに聞いたんですが、その買いオペの資金としまして、歳計剰余金の使用状況について資料をいただきたいのですが、それは最近の時点における歳計剰余金の振りかえ使用ですね。それがどのぐらいで、その残りとして預金部の短期資金の運用分はどのぐらいか、これは資料としていただきたいのですが、この点わかりますか。お願いします。
  181. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 政府委員、よろしゅうございますか。
  182. 石野信一

    政府委員石野信一君) 大体わかりましたつもりですが、あとでなお詳しく伺いました上で資料を提出いたします。   —————————————
  183. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) さらに質疑を継続いたします。阿具根登君。
  184. 阿具根登

    ○阿具根登君 総理が工合が悪くて急いでおられるようですから、総理質問を先にしたいと思います。  私は補正予算の中の炭鉱問題を主にして御質問申し上げたいと思います。これは衆参両議院で前国会において炭鉱の問題を決議いたしておりますが、その中で総合エネルギー対策をまず樹立すべきだということが決議されております。ところが、総理の衆議院での答弁を見てみますと、総合エネルギー対策も大切だが、まず各企業の実態、あるいは民間の状態等を見るべきだというような答弁がされておるようでございます。もちろんそれも大切であろうと思いますが、私はそれよりも、長期政策で四十五年度までの総エネルギーの量も出してある、だからまず総合エネルギー対策を立てるべきである、そうしなければ、たとえば石油業法案等も問題になって、業者の反対が非常に強いようでございますし、石炭は石炭で、今度は逆に合理化法案でぐんぐんと締めつけられておる。こういう状態が続いて、そのあとで総合エネルギー対策を考えるのだというのは、私は逆じゃなかろうか、こう思うのですが、総合エネルギー対策についての総理の所信をお伺いいたします。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは前から議論のあるところでございまして、総合エネルギー対策につきましては、産業計画会議のエネルギー部門で一応調査は続けておるようでございます。それから所得倍増計画におきましても、そういう総合的な調査もいたしております。しかし、今総合エネルギー対策をやります上におきまして、やはりその前提となる石炭なら石炭の問題、電気の問題、そうして石油の問題等々、総合エネルギー対策のうらはらになるものが焦眉の急になっておると思います。私は総合エネルギー対策というものを何もおろそかにしておるわけではございません。この研究はしていかなければなりませんが、総合エネルギー対策をやる前におきまして、焦眉の電気、石油の問題、また石炭の問題等もあるのでございます。まずとりあえずそちらのほうを先にして、そうして総合エネルギー対策の下づもりということで進んでいくのがいいのではないか。民間のほうでは総合エネルギー対策について、関係学者等が集まってやっております。政府としてはやっぱり焦眉の問題の各産業種別のエネルギーをまずやっていきたい。そういうので、石炭審議会とか電気事業審議会とか石油審議会等を今回設けるべく、今立案中であるのであります。
  186. 阿具根登

    ○阿具根登君 その答弁は衆議院でもされておりますので、私は知っておるのです。私はそれと逆な私の考えから質問をしておるわけなんです。各民間の企業の状態をまず先にするということを言われますが、それでは貿易の自由化になって、そして油は無制限に入ってくる、その準備をじゃんじゃんとしていく、電気は電気で、その油に対する見通しから電気の対策を立てていくでしょう。そうなってきてから総合対策を立てるというのではもうおそいのじゃないか。それもやはり為政者としてどれだけの、たとえば昭和四十五年には三億トンなら三億トンの総エネルギーが要るのだと、そうしましてその中の油がどのくらい、電気がどのくらい、ガスがどのくらい、石炭がどのくらいということをまず計画を立てなければ、私は自分の企業のみをどんどん進めていく、どんどん投資していく、そうなってくれば私は収捨がつかぬようになるんじゃなかろうか、こう思うわけなのですが、それは何でもないですか。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由化になると、それじゃ石油が自由に幾らでも入ってくるかと、こういう問題が起こりますから、まず石油につきましても自由化されてふんだんに入ってくることのないように、やはり国内での需給のバランスがとれるような方法を講じようというのが、今通産省で考えております石油事業法だと聞いております。まだ内容を詳しく知りません。で、石油のあり方、それで片一方は、たとえば電力につきましても、石炭との関係、重油との関係、これも自由化いたしましても、そうむちゃくちゃに発電設備ができるわけのものでもございませんし、資金関係から申しまして。個々のいわゆる態勢を整え、片一方で経済の高度成長が続いていくときにどうやっていこうか、まず土台をきめて、そうして総合的の考えはあとから——もちろん総合的な考えが全然ないわけじゃございません。石炭の大体の今の見通しは五千五百万トン、そして石油はどうだ、電気はどうだ、こういうあれはやっております。しかし、電気、石油、天然ガス等ができました後に再度振り返って見て、しからば石炭の五千五百万トンはこれでいいか、あるいは国内資源保護の上において六千五百万トンいけるか七千万トンという計画が立たぬかということは、各産業が一応でき上がった後に、これからの動きを見て総合的に考えることが私は実地に合うのじゃないかと思います。もとをせずに、石油をどういうふうにするかということをせずに総合対策をやろうといっても、そういうことはなかなかできることではありません。
  188. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは同じエネルギー問題で非常に悩んでおる西ドイツのエネルギーの消費構成を、これでちょっと読んでみますから、通産大臣のほうで日本の数字に合わしてもらいたいと思うのです。西ドイツでは石炭が一億一千万トン使われております。褐炭が二千八百万トンですね。石油が三千六百万トンです。一億八千四百万トン、石炭に換算して総エネルギーの中で石油は三千六百万トンしか使っておらないのです。しかもその西ドイツではスエズ運河の問題以来石油の供給源の分散ということを非常に強く考えておられるわけです。日本ではそういうことはなかなかむずかしい。日本の国内でできるのはわずかなものですから、むずかしい。そういう場合に、ただ土台だということだけで総合エネルギー対策がうしろに回されていいのかどうか。通産大臣、まず日本の現在の総エネルギーと、それに占める油、石炭、ガス、電気等をひとつ教えていただきたいと思います。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 西独及び日本におけるエネルギーの消費構成を申し上げます。最初に申し上げる数字が一九五〇年、それからその次に申し上げるのが一九五九年、二通り申し上げます。西独一九五〇年、石炭、これは一億一千四百万トン、構成比率九一%、石油五百五十九万四千トン、これは四%、水力三百二十五万五千トン、これは三%、天然ガスは六万七千トンですから、問題になりませんが。それから薪炭等が二百八十万トン、二%、輸入電力が十五万トン、こういうことで一億二千五百八十七万トン、これは石炭換算であります。それから一九五九年は、順に申し上げますと、石炭は一億四千三十八万トン、七六%、石油は三千六百六十六万トン、二〇%、水力が四百八万トン、これは二%、それから天然ガスは大体六十四万七千トンですから、大した問題ございません。薪炭が二百四万トン、一%、輸入電力が四十九万トン、総体で一億八千四百三十二万トン。それから日本、一九五〇年は石炭三千六百八万トン、五二%、石油四百三十三万トン、六%、水力二千二百六十七万トン、三三%、天然ガスは八十二万トン、これは一%程度です。薪炭が六百十七万トン、これで九%、合計して六千九百三十五万トンですか。五九年、石炭が五千百三十五万トン、三八%、石油が三千九百七万トン、二九%、水力が三千七百二万トン、二八%、天然ガスが八十三万トン、一%、薪炭が五百三十九万トン、四%、合計して一億三千三百六十九万トン、こういう数字になっております。これは国内資源の関係が主たる相違でございます。
  190. 阿具根登

    ○阿具根登君 今お聞きのように、西独は一億八千四百三十二万四千トンのうちに七六%は石炭と褐炭、どっちも石炭ですが、石炭を使っているわけなんです、現在ですね。日本は一億三千万トンのうち石炭は三八%なんです。そうして油が二九%になっておる。もちろん水力の問題ではドイツと日本は比較になりませんが、この比率から見ていっても、日本の急激なエネルギーの変革といいますか、非常に急激に変わってきておる。ドイツはそう変わっておらない。おらないどころか、石炭の需要が逆にふえてきておる。一九五〇年に五二%、現在七六%、もうこういう日本は非常に世界に例のない急激な油の使用をやってきた。だから、石炭業界が混乱に陥ってしまってきた。こういうことが言えると思うのですが、こういう状態である。これを今のままで置いておったならば、土屋さんとか稲葉さんの書かれた本を見ましても、もうすぐ一億トン油が入ってくるだろうということを言われているわけなんです。そういうことが現実出てきておって、総合対策を立てられないということは、実際の実績を作ってしまってその上でやる以外にはないということになると思って、私は先ほどの議論を出したわけですが、いかがでしょうか。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ドイツと日本の場合これは阿具根さん御承知だと思いますが、資源の状態がすっかり違っておるわけです。それでドイツと日本とで最もはっきりした相違は、産炭地と消費地である工業地帯がドイツにおいては密接しておる。日本においてはこれが離れておる。また石炭と鉄鋼との資本的結合がある。また石炭資本による発電事業もやっておる。こういうところに西独は石炭の需要が確保されているという点であります。  第三点といたしましては、ただいま褐炭の話が出ておりましたが、褐炭は重油に比べましても大体経済性があり、こういう意味で褐炭の使用は依然としてドイツでは続いておる。こういうところが日本と違うわけでございます。  先ほど来総理からお答えになりましたように、こういう西独と日本の事情の相違がございますから、同様には申し上げるわけにはいかぬと思いますが、日本におけるいわゆる五千五百万トンあるいは千二百円下げというものが、総合的な観点に立って一応きめた数字であることには間違いございません。だからこの五千五百万トン、あるいは千二百円下げという合理化を推進して参りまして、さらに情勢の変化によりまして必要があれば、総合的な工夫をして差しつかえないというか、当然そこにいくのだと思います。総理もそれまで断わっておられるとは私も考えておりませんし、ただいまの段階ではどうするのかといえば各産業部門別のものを一つ立てていく、こういう考えでございます。
  192. 阿具根登

    ○阿具根登君 ドイツの事情は私も知っておりますが、ドイツのように日本をやらねばできないというような考えでないのです。そういうことをいっておるわけじゃないのです。しかし一方では一億四千万トンからの石炭を守るために、油に対して三十マルクの税金までかけておることは御承知のとおりなんです。日本はわずか五千五百万トンの石炭を守るために、あまりにも手ぬるいではないか。こういうことを言っておるわけなんです。  それから総理大臣にお尋ねいたしますが、一九六〇年に英国では七万人の炭鉱の失業者が出た。ところが年末に残ったのはわずか千七百人であった。これはこの本ごらんになっておるからわかると思うのですよ。これを私見たのですから。西ドイツでは一年間で十一万人減少しておる。その九五%は安全なほかの産業に移動した。日本はちょうど同じときに三池で血で血を洗うような大争議が起きたではないか。一体この原因は何なのか。同じ一年間でドイツでは十一万人の人がやめて、九五%は何の問題もなくして仕事についた。何のトラブルもない。英国は千七百名しか残らなかった。こういうことなんです。日本はそれと逆に非常に大きな労使の紛争になってきた。一体同じようなエネルギーの変革がきたされておる欧州の状態、日本となぜこんなに違うかという問題になって参りますと、いろいろと原因はあげられるかもしれませんが、欧州では完全雇用が実施されておるのが私は第一の原因だと思うのです。そうすると日本はそういう手段もとっておられなくて、先ほどから言っておりますように急激な油の輸入によって首切られた労働者は行き先がないではないか。そのためにこういう大問題が起こったと思っておりますが、総理どういうように御解釈願っておるでしょうか。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知のとおりイギリスにおきましては完全雇用の状況がずっと依然から続いておりまして、労働市場なんかも非常に発達いたしております。そうしてドイツのほうにおきましても最近はほとんど完全就労という状態、ことに今では労働者が不足ということに相なっておるのであります。日本は昭和三十一年ごろから炭鉱離職者がありましたけれども、失業者は相当多いし、ことに潜在失業者等がありまして、アメリカ、イギリス、ドイツとは違って参っております。そこで、私は高度成長でひとつ完全雇用に向かって進もうという計画を立てていっております。事柄が進んでいっております。しかしいかんせん労働市場というものがございません。労働の流動性という施策について欠けておる、これを打ち立てていかなければいかぬというので、今度の予算におきましてもそういう措置をとるようにいたしたいのであります。長い間完全雇用で労働市場の発達しているイギリスと、最近かけ出しで高度成長でいっているところと比較になりません。したがって、おくれているところはこれをよくしていこう、こういうことでこれが石炭に対しても努力が足らぬからというわけのものじゃない。ドイツにいたしましても、石炭の政策には、御承知のとおり二十五マルクか三十マルクかけている、従価にしたらどうしても三五%か四〇%くらいになる、そういうふうなことをやって石炭の保護をいたしておるのであります。ドイツの経済の根本というのは、石炭も日本よりは安く、そうして今通産大臣が言っておったような特殊な産炭地の問題、工場地帯が近くて非常に経費が安い。いろいろの事情がございまするが、ドイツだって、ベルギーだって、イギリスだって相当の石炭失業者が出ているわけです。それだから今労働の流通性を持たせ、炭鉱離職者のはけ口をこっちでみるようにすることが問題であって、石炭の五千五百万トンについてどうということは私は二の次、と言っちゃいけませんけれども別の問題として考えるべきことだ、こう思っております。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこが私はわからないのです。それは日本の実情が英国やドイツと違うことは、これはわかっております。しかし、違っておるからやむを得ぬのだというなら政治はないのです。それじゃ自治大臣も見えておりますから、これをお聞きしましょうか。ごらんになったか知りませんが、今度の週刊本ですけれども、「破産を宣言した失業都市、貧困と犯罪の渦巻く炭都・田川市役所の苦悩」というのが出ております。この中身はここで読むのも避けたいほど深刻なものです。そういうのが一方に出ているのです。一方は今度一ページめくれば、「一泊三万五千円也の温泉宿」が出ている。一晩泊って三万五千円、そうしてその部屋は予約で一ぱいで入れぬというのです。一方は外国でも見れないようなぜいたくのできるようなことをやっている。一方では九万の都市ぐるに全部飢餓のどん底に追い込まれている、黒い谷間だ、地獄だということを言われておるわけなんです。こういうアンバランスが出てくるのは一体どういうことなんだ、都市そのものですよ、市が市の職員にさえも給料を分割しなければならなくなっているわけなんです。これは一体どういうことなのか。だれが責任があるのか。私はこれを聞きたいのです。お尋ねいたします。
  195. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 阿具根さん、どなたに。
  196. 阿具根登

    ○阿具根登君 総理大臣に、あと……。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今のそういう事情をほうっておくというのじゃないのです。労働の流通性を持たして、離職者に対しましてできるだけの再就職への方法を講じよう、こういうことなんでございます。ほうっておくというわけではございません。それから世の中には非常にお困りの方もあるし、またむちゃくちゃにぜいたくする人もあります。これは政治として直さなければいけません。いろいろの方法ございましょうが、ぜいたくをする人が力があってやるのなら、これはやむを得ませんが、私はそれよりも今のお困りの方々に再就職の道を講じていって、そうして楽な生活とは申しませんが、普通の貧しいながらも健康である生活をしていくように努力することは当然のことでございます。それだからといって、石炭の五千五百万トンをすぐ七千万トンというわけのものじゃない。私は、離職者の方々の再就職の道を講ずると同時に、残った石炭業を健全なものにしていこう、これで徐々に石炭問題を解決していこうというので、ほっておくというわけじゃございません。
  198. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、ほっておかれないからこの補正予算にも少し出ているわけなんですよ。それに関連して私は質問しているのですけれども、諸外国と実情が違うからやむを得ぬのだというのが底流にあると私は思うのです。それでなかったら、あるいはこの補正予算に出ておりますので、幾分助かります。しかし実際問題として、これだけの人が飢餓の線上にいるというのを、こういうのを出しながら、今のような政策でよろしいか。五千五百万トン今出ないから、五千五百万トンでもいいとして、これだけの合理化を急がしていいのかであります。一方ではそんなに楽になっている人がいる。これは所得倍増どころじゃない。これはもう笑いがとまらぬでいるでしょう。ところが、一方では人妻が何百円か千円かかせぐために、毎晩々々からだを売っているということが出ている。実際出ている。そういう現象が起こるほど締めつけなければいかぬのか。それだけ早く油を一挙に入れて、そうして石炭をつぶさなければいかぬのか。これにはもっと対策があるはずだということを私はお尋ねしているわけなんです。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことで石炭対策を講じているのであります。で、十分でなかった点はありましょう。しかし、私は昭和三十七年度につきましては、相当政府としても力を入れていると考えます。
  200. 阿具根登

    ○阿具根登君 政府もこれだけの失業者が出てくれば力を入れなければならないことはわかっております。力を入れてもらっていることもわかっておりますけれども、それ以上に進んでいるという事実なんですね。  それでは自治大臣にお尋ねいたしますが、田川の市の財政の実態と、大牟田の市の財政の実態をひとつここで知らしていただきます。だれかほかの人でもいいですが、なぜこういう実態が出てきているのか。財政状況はどういうふうになっているのか。
  201. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 田川、大牟田につきましては、石炭の影響を伴っている団体の行なう財政的な影響は相当こうむっていると思いますが、その具体的な数字につきましては事務当局から……。
  202. 松島五郎

    説明員(松島五郎君) 田川市並びに大牟田市の財政の状況についてのお尋ねでございますが、私どもで県からいただいております資料によって御説明を申し上げたいと思います。  昭和三十五年度の田川市の歳入歳出決算は、歳入歳出差引で五百八十五万六千円の黒字でございます。大牟田市は一億二千六百六十一万円の赤字でございます。  なお、昭和三十六年度見込みは、もちろんこれは見込みでございまするので、今後、数字に変動があり得ると思いますが、田川市が歳入総額十三億七百万円、歳出総額も同額でございますが、前年度の黒字が五百八十五万六千円ございましたので、歳入歳出同額となりますことは、単年度といたしましては五百八十万円の赤字になるということになろうかと存じます。大牟田市は歳入総額が二十五億二千四百万円の見込みでございます。これに対しまして歳出総額が二十六億三千三百万円で、歳入歳出差引一億九百万円の赤字が予定されておりますが、前年からの赤字の持ち越しを相殺して考えますと、この三十六年度年度としては一千七百六十万円の黒字になるという見込みでございます。もちろん、これは一応の報告を基礎といたしました見込みでございますので、何度も繰り返して申し上げますが、数字には今後変動があろうかと思います。
  203. 阿具根登

    ○阿具根登君 自治大臣にお尋ねいたしますが、ただいまお聞きしましたように、たとえば大牟田を見てみますと、二十五億何がしの収入のうちで、七億何がしが生活保護費ですね、人件費が六億何がし、失対が二億くらいと私はまあ考えております。こういう状態が正常であるかどうか。田川市の問題は、もっとこれには詳しく出ておりますけれども、これはうそじゃないと思うのです。再建団体からやっとこさ立ち上がったところが、すでに一億の赤字を出している。そして市役所全部さらけて、出てきた紙くずまで売ってやっている。こういうことなんです。こういう場合にひとつ、一体自治大臣としてはどういう対策をお考えになっているかということなんですね。
  204. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 石炭事情の変化に伴いましての直接の対策につきましては、今総理初め各関係大臣から御答弁のとおり、それぞれやるわけでございます。自治省自身がそれを取り上げてどうこうというわけには参りません。しかし、その影響が地方団体の財政的なものに相当大きく響いて参ります。これは主として失業対策、生活保護あるいは鉱産税の減少、こういったものがございます。これにつきましては、一応は年度当初に交付税の計算に入れまして、経費について入れてやりますが、これが年度中途からの状況によりまして、さらにそれをオーバーするといった場合には、ただいま計算をいたしておりまするが、特別交付税でこれをさらに補給してやっていく、あるいは起債といったような面で全体の財政を見る場合もございます。なお、一般に自治体としても石炭対策を黙っているわけにもいくまいということで、私どものほうでは県知事に対しましても、ひとつ自治体が自主的にこれに対応した失業対策の施設が要るなら施設、あるいは対策が要るなら総合的なものを至急出してほしい。それに必要な措置はまた財政的にもできるだけ考える、こういうことをやっております。
  205. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。自治大臣は状況の認識が欠けているのじゃないかと思う。昭和三十五年の大牟田市の失業登録人員は五千五十五名、三十六年には五千四百名が見込まれる。で、財源は国の方でめんどうを見ているとおっしゃいますけれども、昭和三十五年の国庫負担の失業対策費は、二億四百十八万五千円、一般財源の持ち出しが一億八千四百十五万、三十六年度見込みは国庫負担は概算二億七千万、一般財源の持ち出しが一億六千万、一般財源を少なくも予算の一〇%に近いものを持ち出さなければ失業対策ができない。その失業対策の原因は、大牟田市の市政の欠陥によるものではないわけなんです。これに国の援助というものは織り込まれておらない。阿具根委員の指摘しました田川市の例をとりますと、本年の一月の支出計は三千四百六万、生活保護費が千六百万円、千四百万円が職員の俸給です。職員の俸給をオーバーして生活保護を出さなければならない。これが地方の健全財政といえますか。これを地方だけで解決しろといったって、解決できますか。  そこで、本補正に交付税並びに臨時地方特別交付金が出ておるわけでございますが、この臨時地方特別交付金の算定の中には、大牟田や田川の財政事情は、ある程度国の交付金の援助によりまして解決できる、このように了解してよろしゅうございますか。
  206. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 最初の失対、あるいは緊急就労に対します交付税の配賦は、前年度を基準にいたしまして、そうして全体の平均値をもってやりますので、お説のように予定が足りないという分もあろうと思います。その分は十分に計算いたしまして、この特別交付税でこれは補うつもりでございます。しかし、いろんな事情が入り込んでおりまするから、さらにそれだけでも足りない、計算上それだけでも足りないという分は、全体の財政を見まして、この元利補給付の起債というものでやる場合も出てくるわけであります。
  207. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。もう一つ。その田川の例を出せば、一カ月の統計でございますが千六百万、千四百万の職員の俸給よりも上回る生活保護費、それから大牟田の場合も一億八千万、一億六千万という、こういう多額の持ち出しをしなければ失業対策が立たないということであっては、これは炭鉱離職者援護対策として、当然地方財政の問題も織り込んで解決をしてもらわなければ、市当局としては、どうにもやりくりのつかないことになるだろうと思うわけであります。これを十二分に計算をされて、今後措置をされるかどうか、この点を念のため、もう一度お答えを願います。
  208. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 失対あるいは緊急就労によりまして、この失業者の対策は十分にとっていかなければならぬと思いますが、労働省のほうで、その計算の基準になります場合には、前年度の実績を中心にやはり算定しております場合が多いと思いますので、その場合には、実情に合わない面もあろうけれども、その点は、特別交付税や起債等でカバーしていくというふうにやって、年度末に、そういったような全体の数字をながめまして、さらにそれを再査定をしていくという方針でやっております。
  209. 阿具根登

    ○阿具根登君 総理が工合が悪いようですから、もう一点だけ総理にお尋ねしておきます。  炭鉱の離職者の問題で、今度も住宅奨励金とか、あるいはその他の金が出ておりますが、雇用奨励金とか技能手当金とかというものが出ておりますが、その一番もとになるのは、中高年令層の人を雇うところが少ない、それはそのとおりだと思うわけです。そのために、こういう法案も出ておると思うのですが、私は考え方が間違いだと思うのです。これは、こういう会社の責任とか、組合の責任とかという前に、これは政治の責任だと思うのです、こういう事態になっておるのは。  そうした場合に、三十五才から五十才前後の人は、非常に雇用に限界がある。だから、何とかしてこれに少しでも補助をしてやって、そして民間に使ってもらおうということがこの考え方だろうと思っておりますが、この前、社労委員会で労働大臣にも質問し、要望もしておきましたので、閣議で出ておるようでございますが、私は考え方としては、こういう多量の失業者が出、しかもその人たちの雇用先が非常に不安定である、非常に困難である、こういう場合は、まず政府の所管しておる各省に、何とかこれを吸収すべきではなかろうかと私は思うのです。  毎年暮れになれば郵便の遅配欠配とか、ことしも四万人足る足らぬで、郵政大臣ずいぶん交渉されておったようでございますが、一方では人が足らないから、国民がえらい迷惑をして、郵便も着かない、こういうことにいっているかと思うと、一方では、この政策の不備からたくさん首切られて、そうしてその妻がからだを売らなければいかぬ、こういう実態が出ておるわけなんです。私は総理大臣としては、政府の機関あるいは自治体の機関等に、この民間で吸収のなかなかできないその中高年令層というものは、これをまず吸収しなさい、補助金も出しましょう、あるいは交付金も出しましょう、そうしてそこで吸収してやって、若い元気のある人を民間の方に、どうぞこういう若い人を使ってくれというくらいの考えがなくて、こういう法律案を出しても、私は決してこれで安定だとは思わないのです。  だから、閣議でもきまったようですから、ひとつ総理大臣から、一体どういう考えなのか、どのくらい、たとえば郵政省なら郵政省で雇っていただくのか、雇うつもりなのか、あるいは自治体その他で吸収するのか、そういう機関で吸収しなければ、中高年令層というのは、子供を抱えて、そうして年をとっておる、なかなか民間で五千円くらいの金をつけたところで、おいそれと雇ってくれないと私は思う。また非常に不安定だ、これは一年だけです。一年たったあとは保障はないのです。そうすると自分が長年住み慣れたところを出て行く者の身になって考えていただくならば、おいそれとそこへ飛びつくのは、なかなかむずかしいと私は思うのです。そういうととろにこそ、私は総理大臣が自分の所管しておる政府の機関に、こういうものを吸い上げてやるというくらいのお考えが、なぜ先に出てこないかと私は思うのですが、この閣議できまった線と、それからどういうお考えなのか、中高年令層は、ほとんどこういうもので吸収したいというお考えなのか、お聞きいたします。
  210. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 離職者に対しまする再就職につきましての措置は、十分ではございませんが一応つけておるのであります。しこうして、ことに炭鉱離職者の方々につきましての再就職につきましては、労働大臣より閣議で善処方を要望されております。したがいまして、各所管省はできるだけこれを雇い入れるようにという気持で進んでおります。しかし何といたしましても、役所によって定員の関係もございます。そしてまた、離職者を全部というわけにもなかなかいかない。やはり民間のほうにも、できるだけやってもらわなければならぬことは当然でございます。  われわれといたしましては、民間、政府ともどもに、離職者の再就職につきましては、単にお金を出すということではなしに、気持の上からいっても、これをできるだけ早くやるように処置することは当然でございます。閣議のほうでも申し合せばいたしております。
  211. 阿具根登

    ○阿具根登君 閣議でそういうばく然と申し合わせをされるということで、実際動くでしょうか、そういうことなんです。郵政大臣、そういう話があったか。あなたは、それじゃどのくらい採用するつもりですか。それは炭鉱労働者であれ、あるいは鉱山労働者であれ、駐留軍の労働者であれ、これは政府の責任、非常に重大だと私は思っておる。それを全部政府機関にそっくり使え、こういうことを言っておるわけではない。しかし定員があるから、これはできない、予算関係でできないとかいうならば、これは政府機関では雇わないということなんです。ただ、気持の方で雇いたいというだけなんですか、それじゃなにもならぬと思うのですが、どういうお考えですか。
  212. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私のほうには若干の定員の余裕がこれから採用し得る若干の余裕がございますので、炭鉱離職者の中で、そちらのほうに適当な人がいたらぜひ雇い入れたいと考えまして、労働省とも今話をしておるわけなんですが、一番の難点というのは、実は初任給の問題でございます。現在組合との労働協約上、途中から入ってくる人は、最初から学校新卒から、ずっと役所部内におります人のあるべき、たとえば三十五才なら三十五才というところにきたときにあるべき俸給の五割とか六割とかというところに初任給はおくのだということに協定になっておるのであります。その協定でいきますというと、非常に安い給料になるわけであります。  そこで組合との間にその協定を変えて、炭鉱離職者に限りとか、まあ何かそこら辺のところで、組合とその協定をし変えなければならぬという問題がありまして、これが具体的に言いますと、一番障害になっているといいますか、大きな問題でございますので、その点も目下検討をいたしております。
  213. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は熱意の問題だと思うのです。それじゃ民間だって、そのとおりなんです。民間だって、若い時からどんどんたたき上げた人の中に、三十五才の人をぽこりと入れて、三万円くれ、二万五千円くれと言っても、それはあげられないでしょう。だから、五千円なり七千五百円なりの金をつけて、一年間であるけれども民間雇ってくれないかというのが、この法案の趣旨でしょう。民間にそれだけやるほどなら、政府の所管している各省に、熱意さえあれば私はできると思う。総理大臣、これ以上くどいことは申しませんが、そういう実態なんです。三十五才以上の人を雇ってくれと言っても、民間だって喜んで雇いやしませんよ。四十五才、五十才になってから、家族を養うだけの給料で雇ってくれと言っても、それはなかなか困難で、困難だから、一年間ではあるけれども、五千円から七千五百円の金をつけて雇ってくれ、家を作ってくれ、補助金を出す、こういうことをやっておるわけです。  それならば、もっと熱意をもって、政府関係の機関に雇うようにするのが私は正しいのじゃなかろうか。そして民間にはなるべく、元気のある若い人なら、民間も喜んで受け入れるでしょうし、働く人も喜んでいける、こういうことをするのが政治じゃないでしょうか。もう一つお尋ねしておきます。
  214. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物事を一点にしぼりまして、右か左かということになりますと非常にむずかしい問題だと思います。私は、そういう離職者を役所に雇うことはしなければいけません。そういうふうに努力しなければいけません。しかし、役所ばかり当てにすべきではないと思います。だから、職業訓練その他について、多方面に向けるようにしなければなりません。  しこうして役所の問題になりますと、今郵政大臣が言っているように組合との協定がございます。そのときに、あなた、足らぬところは政府の補助を出す、こういうことでございますが、やはり組合のほうも、そういう離職者に対しましては、今までの組合と役所との協定を変えて、そうして相当のところまで、もちろん技能によりますけれども、相当のところまでお互いに助け合うという気持が必要だと思います。聞くところによれば、三十五才で高等学校を出ている人は一万四千円くらいですか、それが家族手当その他入れると一万六千円、八千円三十五才の人にやって、そしてあとの八千円は国ということは、とてもいきませんので、私は、そういう点につきましては、やはり組合と役所とで、どういうふうにしていこうかという相談をして、そうして十分ではございませんが、希望を持ち、だんだん従来の人とつり合いのとれるような方向に向かっていくのが至当だと思います。
  215. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう論争は何ぼやっても、これはだめなんです。私は熱意の問題だと思う。  それじゃ民間で、そういう協定を持っておったら雇えぬじゃありませんか。年功給というのがありますから、当然そういう問題は起こってくる。そういう契約をしておるものが民間でもあると思う。年功給はあるんです。そんなら、一体どこで雇いますか。あなた方五千円出しても、雇うところがないような結果になるじゃありませんか。民間よりも、政府の機関のほうが話もしよいし、できると思うのです。民間はまず何といっても、これは経営の問題を考えるわけです。民間だって労働組合はあります。民間だって、そういうことを約束しておったら、民間と役所のどっちが雇いにくいかという問題になってくるから、私はこれは、熱意の問題だと思うのです。労働大臣いかがです。
  216. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいま問題点の指摘があって、そういうこともあるので容易ではないが、なおかつ努力するという意味においての答弁がされておるわけであります。  私どもといたしますれば、そうした難関を克服してお説のような成果をあげたいと強く希望いたしておる次第でございます。関係各省においても、そういうことで御協力を願うよう、あとう限りの労働省といたしましての努力をいたしたいと存じます。
  217. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは、今度は通産大臣質問いたします。  通産省の考えでは、従来やっておる事業団で六十七万四千トン、保安整理時四十五万トン、自然閉鎖といいますか、それで六十五万九千トン、六百二十万トン買い取り時の一端として百二十万トン、計二百九十八万三千トンの石炭を今度買い上げるわけですね。そうして千トン当たり七人の人の首を切る、こういうことになっているわけですね。これは一体、どこどこの炭鉱をお買い上げになるのか。こういう数字が出てきた以上は、どこの炭鉱を買い上げるんだということが一応基礎になって出てきた数字だと思うのです。だから、どこどこの炭鉱をお買い上げになるのか。そうしなければ、頭は五千五百万トンに押えられておる。そうして二十六・二トンの個人能率を出せとおっしゃっておるわけです。ところが、二十六・二トン以下のやつは、全部この対象になるのかどうか、あるいはもう現在では二十六・二トンでは間に合わない、三十トンも四十トンも出るわけです、そうすると二十六・二トン出しておる山でも整理になるのかどうか。  だから、この対象はどこどこかということを教えていただきたいと思います。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階で、どこそこの山というのを申し上げることは非常に困難かと思いますが、一応局長から説明させます。
  219. 今井博

    政府委員今井博君) ただいま御質問になりました非能率炭鉱の買い上げの予定の問題でございますが、現在までのところは一応地域別に、三十六年度と七年度は予定いたしておりますが、非常に大ざっぱに申しますと、九州に大体集中いたしておりまして、九州が七割から七割五分の間、その他の地域がそれ以下の割合になっております。三十七年度の予定では、現在のところは買収の予定だけが決定いたしておりまして、三十六年度は、全国で四十五炭鉱でございまして、そのうちで九州が二十一、それから東部地区が二十一、西部地区が二つ、それから北海道が一、合わせて四十五の炭鉱を一応買い上げる。それから三十七年度は、現在の買い上げのワクの中で、一応考えておりますので、先ほど申しましたように六十七万トン予定いたしております。それは全国では十八の炭鉱でございまして、九州が十、東部が五、西部が二、北海道が一、合計いたしまして十八、六十七万トン、こういう予定で現在おります。  それから先ほど御指摘になりました、このほかに六百二十万トンの、新しい買い上げのワクの百二十万トンについてはどのくらい予定しているか、この点は、先ほど大臣がお答えになりましたように、一応これは全国の炭鉱業者の希望によって買い上げを——買い上げといいますか、整理を実行して参る予定でありますので、現在のところは、まだ地域別にどの程度の数字かということは出ておりません。もう少し時間をかしていただきたいと思います。
  220. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の数字は、三十六年、三十七年のは、すでに買い上げの申請がされておる。そうして三十六年度のは決定してある。これはそういうものをお聞きしているのじゃない。それはもう申請をして決定したのだから、今後の百二十万トンはどこどこだということをお聞きしているわけです。そうしなければ百二十万トンは一体どこを買い上げるか、百二十万トン出ているのですが、人もどのくらいということは出ているわけです。これを聞いてみると、皆さんここじゃお答えにくいようですけれども、社労でお聞きしますと、これはきまっておりますと、しかし、発表すれば債権債務の関係でたいへんだ、だから発表できないということを言われておるわけなんです。ちゃんとそれは数字があるはずです、どこどこだと、あるはずなんです。で、それを発表して下さいと私は言っている。そうしなければ、あの山はこれはつぶすのだ、これもつぶすのだ、九州で五十なら五十つぶすんだと、皆さん大体考えている。ところが働いておる者は、自分のとこはつぶれぬように、つぶれぬようにと思って一生懸命働いておるわけなんです。何ぼ働いても二年後にはこれはつぶすのだ、一年後にはこれは買い上げるのだということを、皆さんのところじゃぴしゃっときまっている、きまっているからこういう数字が出てくる。ところが、知らないのは山で働いておる人ばかりなんです。働いておる人だけなんです。だからそういうヘビのなま殺しのような、今度は隣だった、来年はうちにくるかもしれない、再来年はどこかもしれぬというような、いつもまあ戦々きょうきょうとしているような今のあり方じゃなくて、もうどこどこはだめだというのを、はっきり全般にわたって言ってもらったほうが、かえって私は親切じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申し上げましたように、いろいろな問題がございますから、私ども発表を差し控えさしていただきたい。先ほど冒頭に申し上げましたのはその意味でございます。社会問題が起こるとかいうような問題に実は発展するだろうと思います。また一面、一応の予定目標は出ておりますが、いわゆる計画では、計画というか、強力にその計画を実施するという趣旨のものでもございません。強行するというものではございません。で、御承知のように、まあことしなど毛約七十万トンばかり予定したものが実施されてないというのが実情でございます。そういうことで、まあたいへんなむずかしい問題を実施するのでございますから、これ各界の協力を得たい、こういう意味で、特に数字、場所を申し上げることだけは差し控えさしていただきたいということを申し上げます。
  222. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあこういう公開の場所ですから、そういう問題があるようでしたらば、あとでまたお伺いいたしますが、時間があまりないので、進みますが、それでは現在炭鉱で整理になった人と、今度は炭鉱で採用する人があるわけですね。私が申し上げる数字が間違っていたら御指摘願いたいと思うのですが、三十二年には、炭鉱に雇ったのが八万八千九百人、解雇したのが七万六千人だった。三十三年には、雇い入れた人が五万三千人だった。解雇した人が六万七千人だった。三十五年が、四万五千二百人雇い入れて、七万人首を切っておる、こういうことですが、こういう数字は正しいですか。
  223. 今井博

    政府委員今井博君) ただいまの御質問の、離職者とさらに雇い入れた就職者の数字につきましては、ただいまその関係の資料を持ち合わせておりませんが、三十五年度をとりまして、七万人が離職しそれから再就職したのは四万五千人、そういたしますと約二万五千人の純減ということになりますが、われわれの手元でも三十五年度は純減としまして二万五千人というように考えておりますので、おおむね、先生の言われたような数字に適合しております。
  224. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 労働省で把握しておりまする数字、大体お説のようなものでございます。
  225. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、一方ではどんどん首を切って、一方ではどんどん雇っているわけですね。これを労働省で調べてみると、炭鉱で首を切られた人を、その人を炭鉱で雇うのが七〇%、これはおかしいと思いませんか。これだけ首を切っておって、そうして新しい若い人を採用したというならまだわからなぬでもないと思う。首を切っておって、その首を切られた人をまた雇うのです。それが七〇%くらいになっている。これは一体どういうことか、こういうことになるわけですね。そうすると、少し給料が高くなると首を切るとか、そうして首を切られた人は今度は非常に悪い条件でまた炭鉱に雇われる、こういうことを循環しておるわけなんです。一方では整理しておる、合理化だとかなんとか言ってどんどん整理しておる。整理しておるけれども、その陰では、今度はまた採用しておる、こういうことが許せるでしょうか、通産大臣いかがでしょうか。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、炭鉱労働者くらい移動の激しい労務はないように私どもは見ております。ただいま離職者——これは全部整理者と、こう片づけられるのも少し言い過ぎじゃないかと思います。また同時に、炭鉱労務者、このくらい山というか、自分たちの職場に非常な魅力を感じておる人も少ないのじゃないかと思います。したがいまして、甲の山から乙の山に変わる、それが整理であったりあるいはいろいろのスカウトもあるだろうと思いますが、いろいろな理由で甲の山をやめて乙の山へ行く、また乙から甲に入る、こういうのがありますので、いわゆる完全退職、離職、それから再就職、こういう考え方で今の数字を見ますと非常に不思議にお考えになるだろうと思いますが、大へん移動の多い職種のように私どもは実は見ております。同時にまた、山というものに対して非常な魅力を感じておるのじゃないか。他の場所に参りましても長続きはしない、山においてはそういうことがある。  もう一つは、経営者自身も、御承知のように第二会社ができるとかあるいは下請けになる。大きい山をやめて小さい山になるとか、そういう場合に在来の労務者が一たんやめるが、引き続いて次の職場でやる、こういうことでございますので、今の割合だけでは実態はなかなかつかめないのじゃないか、かように思います。
  227. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣答弁を聞いておると、私は悪いようなことばかり言っておるし、通産大臣はいいほうのことばかり取っておるということになるのですが、私も山育ちですから山のことは一番詳しく知っておるつもりなんです。これは中小炭鉱等においては退職金も完全に支払われないし、賃金だって分割になったり遅配になったりいろいろしますから、そういう移動もします。これは認めます。そういう移動も確かにやっている。これは根本的な問題、社労でやりましたからやりませんけれども、根本的な問題があるから、そういうことになっておるのです。しかし、あとで言われたように、大体大きな炭鉱から首を切られた人は、中小炭鉱に大体行っておるわけなんです。  それからもう一つの問題は、大きな炭鉱が、先ほど言われましたように炭をたくさん掘って、炭層が薄くなったと、あるいは距離が遠くなった、だからこれを租鉱権に落とす、あるいは第二会社でやる、こういうことが行なわれておるわけですね。ところが衆議院での通産大臣答弁を見ておると、その租鉱権なり、第二会社になった炭鉱が石炭がうんと出る、大会社のよりもたくさん出るという御答弁があっておったように私は思っておるが、それは間違いですか。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全部が成績がよくなったというわけでもございませんので、成績がよくなった山もある、こういうことを実は申したのでございます。
  229. 阿具根登

    ○阿具根登君 私にはそれがわからないのです。大きな炭鉱で金をうんと注ぎ込んで、資材をうんと入れて、技術はりっぱな技術を持っておって、炭層はりっぱな炭層であって、それでやっていけないように掘って、少なくなってから第二会社にやったと、出ないようになって第二会社に落とすのですから、租鉱権にやったものがどうして石炭が出るかですね、理由ないでしょう。炭層もいい、技術屋もいる、金もかけておる、保安設備もいい、そこでやれないようになったのを、租鉱権に落としたら炭が出るというのは、私にはどうしても考えられぬが、どういうところがそういうところがありますか。
  230. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 阿具根さんは専門家ですから、専門家のお話が筋だと思います。私は、その御意見のようなお話を、しろうとである私はまず感じたのでございます。ところが、第二会社にして、事実それまでは一人当たり二十トンぐらいのものが三十トン台になったと、こういう会社があるわけなんです。それがそれじゃ非常に労働時間を長くし、労働の強化が行なわれておるか、かように聞いてみますと、労働者も非常に喜んで掘っておる、それからまた、これはまあいろいろやりくりがあるのだろうと思いますが、第一会社のほうで退職金をもらったと、その退職金は預金されて金利等も入ってきておる。そういう意味で収入自身も、いわゆる過去の退職金の利子なども入ってきて、少なくとも楽になっておる、こういうような話も実例で実は聞いたのでございます。ただいま御指摘のとおり、そんなに成績がいいのなら山を続けていきそうなものだ、これはもうお話のとおりでございます。おそらく経営者が変わるとか、そういう意味で新しい気分でまた生産に従事する、そういう実例が生まれてきたと、かように私は思います。
  231. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういうような解釈は私は当たらないと思う。事実租鉱権に落とされたり第二会社に落とされたら、賃金はずっと下がるのです。下がらなければやれないのですよ、実際問題として。下がるでしょう、下がれば生活ができない、だから自分からでも好んで長時間やってノルマを上げなければ生活ができない。その表面だけを見て、租鉱権になったら石炭がうんと出るとか、あるいは第二会社になったらば石炭が出てきたというのは、これは当たらないので、そういう無理がきているのです。だからしょっちゅうけが人や死人が絶えないのです。私が二、三年前に質問したときでも、租鉱権山は少なくとも十年ぐらいは租鉱権を持っておる山じゃなくちゃできない、それがだんだんひどくなってきたので、もう租鉱権はできないというところまで個人的には話をされるわけなんです。ところが、実際問題として合理化がこれだけになって二十六・二トン以上出さなければいかぬ、三十トン以上出さなければいかぬというようになっても、依然として租鉱権とか、第二会社とかを認めておられる、そうすると、これは労働者にすれば、首を切られて職のないより、なれた仕事で少々賃金が下がっても、少々職場の条件が悪くても、食うためにはやむを得ないというところが現実だと私は思うのです。そういうことを繰り返しておっていいかどうか、私はそういう点を非常に懸念するわけです。  それで、さきの問題、いわゆる首を切ったら中小炭鉱に回しておる、あるいは第二会社に落としておる、租鉱権に落としておると、そうしてその租鉱権なり、第二会社からは、大会社はずっと吸い上げておるわけなんですね、組夫も入れておるわけなんですが、そういう問題を一体どういうようにお考えになるでしょうか。これは今リバイバル・ブームだけれども、合理化のリバイバルはけしからぬと私は思うのです。三十年ぐらい前は炭鉱は組夫がだいぶおりました。どこの炭鉱でも半数ぐらいは組夫が入っておりました。女の子も入っておりました。しかし、それは三十年ばかり前ですね、女の子が入っておったり、組夫がたくさん入っておったのは。そしてそういうことができないということになって、組夫もはずされ、あるいは女の子も入らぬようになってきた。ところが、いつの間にかだんだん炭鉱が整理されていくと、租鉱権会社ができてきて、第二会社ができてきて、今度は組夫という名で労働者がどんどん入っておる。これは整理になっておるのじゃなくて、労働者の賃金を整理しておるだけのことなんです。こういう矛盾を一体どうお考えになるか、これに関連して労働大臣、これは簡単でいいのです、社労でも質問しましたが、まだし足らぬのですが、そういうことがなぜ行なわれるかというと、炭鉱に最低賃金がないからです。炭鉱の坑内に下がる場合に、炭鉱はこのぐらいの賃金をやらなければできないということをきめておれば、そういうたらい回しで、きょうはこの炭鉱、あしたはあの炭鉱と、だんだんだんだん下の炭鉱にいくと、こういうことが出るのです。また租鉱権炭鉱でもどんどんどんどんやっていくということもできないのです。その点ひとつお伺いしておきます。通産大臣と両方ですよ。
  232. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私もまた御指摘のような憂いをともにするものでございます。したがって、基準法上の監督指導等も当然やらなければなりませんが、御指摘の最低賃金制ということについても、ますます真剣に考えなければならないわけでございまして、すでにして政府は中央最低賃金審議会で御検討をいただいておるところでございます。御承知のような経過で、ただいまも鋭意作業を進めてもらっておるわけでございます。したがって、この国会での御論議等も適切に伝わるような方途等も講じまして、われわれはこれが促進をはかりたいと存じておるのでございます。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一会社から租鉱権会社に移る、こういう問題については、これは簡単な問題ではございませんし、経営者はもちろんのことですが、そこで働いておられる組合の諸君も重大な関心を持っておられるわけでございます。関係者一同の了解を得て山を閉山するという処置をとっております。またそういう場合に、閉山後の就職先はどうするとかということが、いわゆる第二会社になるわけでございます。これは私が先ほど申しましたように、山を愛する、あるいはその土地に非常な魅力を持つ、あるいは転業が非常に困難だ、こういうようなところから、やや条件が悪くなってもその場所で働くということになるのだろうと思います。しかし、全部の方がそのままそっくり第二会社へ勤務するというわけのものではないのであると思います。私どもといたしましては、そういう事柄は、経営者と組合側でよく相談されてきめられることでございますから、第二会社になりました場合に、保安の面で手抜かりがあるとか、あるいは給与の支払いなどが十分にできているか、できていないか、こういう点は特に注意をいたすつもりでありますし、ことにその保安関係については、経営者が変わってから急に悪くなるとか、それを見のがすということは絶対にさせないつもりでございまして、安全な操業、そういうことを第一に置いて、そうして租鉱権者の経営規模もある程度認めていっておるというのが実情でございます。
  234. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう時間がなくなりましたので急いで質問を進めますが、事故が起こらないときは、通産大臣のその答弁もいいかもしれません。しかし、事故が起こった場合は、どういうお気持になりますか。西ドイツでさえも二百八十九名の人が一ぺんに死んでいる、爆発して。それは特に西ドイツでも、表彰された山なんです。これが、現在起こっておる。日本では、大臣は坑内へ下がられたかどうかしらぬけれども、私どもはこわくて下がれぬような炭鉱がたくさんある。実際保安上、これがいいか悪いかという問題は、もう論議にもならないような炭鉱が私はあると思うんです。そういうところで事故が起こった場合のことを私は非常に憂えるものでございます。  で、大蔵大臣にも、長い間お待たせしましたから、早く質問してお帰り願いたいと思うんですけれども、これは補正予算で出されたのは、雇用奨励金と技能習得手当、訓練別居手当というのがあるんですがね。訓練手当は三百円で据え置きですね。そうすると、生活保護でさえ——さえと言っちゃいかぬですけれども——生活保護はもっと上げにゃいかぬのですけれども、一三%上がっておる。訓練手当は三百円の据え置きというのは、一体どういうことなのか。それから技能習得手当が七十円というんですな、一日に。これは大蔵大臣、一体どういうお考えでしょうか。これはいろいろはじかれて出されたに違いありませんけれども、七十円、一方は三百円。この問題が一点と、先を急ぎますが、大正鉱業、これは衆議院でも質問があっておるようですから、私はくどく質問いたしませんが、通産大臣も、これは聞いていただきたいと思うんです。大正鉱業は、通産省も、あるいは経営者、石炭協会、あるいは組合も、すべて石炭に関係しておる人は、これは有望な山で、りっぱな山だから、これはつぶしはできないということが一致した意見で、そして政府も、非常に力を入れていただいたことを私は知っております。また、石炭協会も、今まで、あんな手をとったことはないと思うくらいに、保証人その他も、りっぱな方々が立たれた。ところが、福岡銀行はこれに一切応じなくて、そして、福岡銀行の思うとおりのことをしなければ金を貸さないということで、今この紛争が続いておると思うのですが、その後一体どうなったか。大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるか。通産大臣はどういう処理をしようと思っておられるのか。  このままでいくなら、だれが何と言おうと、一つの銀行がいやだと言えば、山はつぶれてしまうし、銀行が、思うとおりの山を銀行が勝手に作れる、こういうことになるわけですね。  労使とも、これはやっていきましょう、一切の争議行為も、しばらくやめます、石炭も言われるとおりに出しますと言うのですね。協会のほうでも、この銀行から借りる金については、協会が責任を持ちましょうと、判を押した。石炭局のほうも、局長、ずいぶん御苦労していただいたのです。これ以上手の打ちようはないくらいに、皆から一つの炭鉱に対して手を伸べていただいたと私は思っている。それでさえも、一つの銀行がいやだと言えば、炭鉱が立ち行かんということは、もう銀行だけが炭鉱を左右することができるし、銀行の思うとおりになる炭鉱だ、こうなると思うのです。働いておる者とか、その石炭山の将来とか、そういうものは一切抜きで、銀行の頭取の勘定ひとつで、一つの炭鉱が死んだり、生きたりすることもあると思うのですが、二千人からおる炭鉱労働者の問題ですから、この際ひとつ、御説明をお伺いしておきたいと思います。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 阿具根さんは、大正鉱業をよく御承知だと思います。私どもも、炭層その他から見まして、非常に有望な山で、つぶしたくないと、こういう気持で取り組んで参りましたし、いろいろあっせんもして参りました。経理の話をあまり、私どもとくと伺わなかったのですけれども、会社の経理内容は相当悪い。これはだれの責任というわけじゃございませんが、相当のもののようです。ここらに金融機関として、コマーシャル・ベースになかなか踏み切れないものがあるのだろうと思います。  ところで、先月二十六日ですか、社長が新しくかわりました。この新しい社長が新経営方針を樹立すると、こういうことで、今日まで、いろいろ内部の帳簿その他の監査をし、調査をし、新計画樹立という段階になっておったようでございます。経営者はそれでよろしいのですが、その間、賃金がストップされている。未払いの状況であります。組合側からも、私どものほうのところに陳情がありました。これは人道上の問題から申しましても、会社が賃金を払わないということは困るということで、再三再四にわたりまして、会社経営者に、賃金の未払いを整理するようにということを強く申し渡し、そして会社側も賃金未払いということは、まことに相済まないという状況で、そして銀行が貸さないものについては、みずから資金を調達したと、こういうことで、二回か、あるいは三回かにわたって、全部ではないと思いますが、賃金を支払ってきたようであります。  そこで今後の問題として、どういうことになりますか、この賃金がある程度払われ、生活がある程度確保できた今日は、おそらく組合側と経営者と交渉を持ち、山の再建の話し合いを続けているだろうと思います。  で、私ども監督官庁といたしましては、ただいまのような賃金の未払いについて、その支払いを強く会社に要請するというようなことは、今まで例のないことであります。同時に、この保安の面に、特に私ども気をつけなければならないということで、大正鉱業には特別な保安の増員までして、詳細に坑内をくまなく調べさして、そうして会社側に対して注意をしているというのが現状でございます。で、事柄が事柄でございますけれども、山が、労使一致すれば、必ず再建のできる山だ、かように考えますので、そういう方向で、労使双方が一日も早く話し合いが妥結して、そうして再建の方向にいくようにさしたいものであります。かように考えている次第であります。  特に私どもが注意し、力を入れておりますのは、ただいまのその保安の問題、これに特に力を入れておることを、つけ加えて御報告しておきます。
  236. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 技能習得手当でございますが、これは失業保険金を今もらっているものに、訓練中の経費をカバーするという意味で、上乗せして支給する費用でございますので、一日七十円というような、少ないようでございますが、保険金をもらっている人への上乗せであるということで、やむを得ないのじゃないかということで、この間も石炭対策委員会で、一応御了解は願った事項でございます。  それから訓練手当の三百円でございます。これは失業保険に入っていない離職者、あるいは失業保険がすでに切れてしまったという離職者に支給しているものでございますが、これは今、たとえば駐留軍の離職者とか、あるいは一般失業者の転職訓練というような、他の同種類の人たちに対しても全部三百円ということになっておりますので、石炭離職者だけにこれを特に厚くすることはやはり問題だろうということで、この二つは、先般の対策委員会でも一応やむを得ないことだろう、石炭の離職者に対しては別個の、ほかのいろいろなものを考えておりますので、この点は他への波及というような問題があるということから、一応御了承を願ったわけでございます。
  237. 阿具根登

    ○阿具根登君 訓練手当は石炭だけという考えじゃないのです、私も。それは失業保険と併給になっておるならば、これは三百円ということもわからぬじゃないのです。ところが、ほかに生活の道がないのですね。失業保険も何もないのです。そうすると、せっかくの訓練所も生活ができないから行けないではないか、だから三百円というものは、これは前々回ですか、きまったのですが、もう物価がこれだけ上がってきたなら三百円ではとてもやっていけないということで、三百円は上げるべきじゃないかということをお願いしておるわけなんです。それから通産大臣の保安の問題は私は全く同感。そうしてもらわなければ、現在まで保安の設備なんかというものは、もう古い材料、使えない材料を使ってやっておる、そうして犠牲者も出ておるということを聞いておりますので、そうやっていただきたいのですが、まず考え方として、すでに半年以上この問題は生きるか死ぬか、非常な暗い気持で二千の従業員というものはやってきたわけなんです。そうしてもう最後の最後になってきてから、社長はこれをしなければできないというような銀行のあり方が正しいかと言うわけなんです。それだったらば人事問題について自分はこういう意見があるということを、なぜ一等最初から言わないかということなんです。あらゆる方面に手を伸ばして、あらゆる方面から援助を受けて、そうしてこれでもかこれでもか、これでもだめ、それでもだめ、これでもだめと言って引き延ばしてまで、そうしてお互いに塗炭の苦しみに追い込んで、きょうは電気が切れるだろうか、あしたは水道がとまるだろうかといって、皆生活の不安におののいている。そうして、ややもすれば大阪の二の舞どころではない、福岡銀行に押しかけるというのをみんなで押えつけてきて、あしたは何かの返事が出るだろう、あさっては何かいい考えが出てくるぞということを言っているけれども、一切これに首を横に振っておいて、そうしていよいよにっちもさっちもいかなくなってから、人物はこれを持ってくれば何とかするのだ、そういうようなあり方がいいか悪いかという私は言い方なんです。こんなことが許されるとするなら、銀行はどういうことでもできる。あまりにも横暴だ。しかも地場銀行です。しかも、大正鉱業は始まって以来福岡銀行の一番上得意だったわけです。ほかの銀行から一銭も金を借りておらない。そういう、しかも、ほかの銀行にも全然つながりのないところを、まるでたたっ切るみたいなことをしてやる福岡銀行のやり方が正しいかどうか、私はこれが言いたいんですよ。いかがでしょうか。
  238. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大正鉱業では、御承知のように銀行との間にいろいろないきさつがございますし、最初銀行に対して約束した整理案が履行されなかったとか、いろいろな問題がございましたが、結局最後に、融資するためには、やはりこれがりっぱに再建されるという見通しがなければ融資ができないというようなことで、一時融資がとめられておったわけでございますが、その後、石炭協会も中へ入りますし、通産省の現地当局もこれを指導する、そうして会社の再建案を作るということに非常に努力したのでございますが、再建案がやはりできない限り、銀行としてもこれにめどのつかない融資をするということも実施できない事情もあったと思いますが、ようやく一応そういう案ができて、手形の割り引きも再開されているという状態になったのでございますから、今後それによって再建していただけばいいので、従来のいきさつから見ますと、あながち銀行だけがこの問題は悪かったということもいえないような事情にあるんじゃないかと、私たちはそう思っています。ですから、銀行に対しては再三私どもも東京まで呼び出して、再建案ができるのなら、必ずこれに協力してつぶさぬようにしろということを、再三私どもも福岡銀行には要請を何回もしているような事情でございますので、やはり今まではっきりした再建案ができなかったことが、この問題の今日までこういう経過をたどった一番大きい原因だろうと思います。
  239. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はやめようと思ったんですけれども、そういう御答弁ならまだ言わなければならない。それは再建案を何回も出しておるわけなんです。ただ銀行のお気に入る再建案がなかったというだけなんです。それなら銀行がなぜそれを言わないかというんです。それなら、大蔵省にも何回も来ておる。大蔵省、つかむことができましたか。大蔵省にも、銀行はこういう再建案を持っている、これでどうだと言われるなら、それを早く審議できるわけなんです。銀行は一切そんなことを言わない。最後に言うくらいなら、なぜ半年も幾らもこんな塗炭の苦しみに苦しめるかというんです。再建案ができないというなら、自分の再建案を持っているんですから、自分が言えばいい。ところが自分はひた隠しに隠している。大蔵省にもそれを言っていないでしょう。通産省にも言っていない。石炭協会も知らない。組合ももちろん知らない。自分だけの腹の中に入れておいて、あれでもいけない、これでもいけない——まるでやり方が卑怯じゃありませんか。卑劣じゃありませんか。それなら大蔵省に来た場合でも、実はあすこの山はこうだから、こうしなければできないと、この人を入れてくれなければできないというのが最初から出ておったか、出ていないんですよ。最初からたくさんの人間を、今日まで一体どうなるかというような、苦しみに苦しめ抜いて、そのあとで自分の思う通りの人事をやって、にこっと笑っているというのは、これは私はやり方じゃないと思うのですよ。あまり非道だと思うのですよ。そういう点、何か銀行のほうにも言い分があるそうだとおっしゃるけれども、言い分があるのを私は言うなと言っているわけじゃない。言い分があるなら、なぜ早くから言わないかと言うのです。大蔵省がそういう点もう少し目を光らして、なぜ言い分があるなら言わぬかと、前に聞いていればいいんです。大蔵省も知らないでしょう、一番最後になってからでしょう。そういう一人の独裁みたいなやり方を続けていかれるとするならば、これは大問題が起こる。私はこういうふうに思うのです。監督の責任ある大蔵省は、ひとつそういうところを十分目を光らしてもらいたいと思うのです。  以上で終わります。(拍手)   —————————————
  240. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 先ほど米田委員の災害対策基本法に関しまする質疑に対しまして、自治大臣答弁が残っておりましたので、この際、自治大臣の発言を求めたいと思います。
  241. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 災害対策基本法につきましては、おおむね関係法案の成案を今急いでおりまして、この成案を得次第提出をする予定もございます。しかしこれと同時に、実施の時期は大体六月の末を目途に実施いたしたいと考えております。
  242. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 明日は午前十時に開会をいたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後五時四十九分散会    ————・————