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1962-05-06 第40回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月六日(日曜日)    午後七時五十四分開議   ━━━━━━━━━━━━━ 議事日程 第二十号  昭和三十七年五月六日   午前十時開議 第一 近畿圏整備に関する決議案  (西川甚五郎君外三十三名発議)  (委員会審査省略要求事件) 第二 鉄道敷設法の一部を改正す  る法律案内閣提出、衆議院送  付) 第三 船員法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) 第四 栄養士法等の一部を改正す  る法律案社会労働委員長提出) 第五 農地法の一部を改正する法  律案(第三十九回国会内閣提出、  第四十回国会衆議院送付) 第六 農業協同組合法の一部を改  正する法律案(第三十九回国会  内閣提出、第四十回国会衆議院  送付) 第七 昭和三十四年度一般会計歳  入歳出決算昭和三十四年度特  別会計歳入歳出決算昭和三十  四年度国税収納金整理資金受払  計算書昭和三十四年度政府関  係機関決算書 第八 昭和三十四年度国有財産増  減及び現在額総計算書 第九 昭和三十四年度国有財産無  償貸付状況計算書 第一〇 昭和三十四年度物品増減  及び現在額総計算書 第一一 産炭地振興に関する請願 第一二 石炭政策確立に関する請  願 第一三 放射能対策に関する請願 第一四 商工会等経営改善普及  員の身分保障等に関する請願 第一五 小規模事業対策予算増額  に関する請願(二件) 第一六 茨城県に火力発電所誘致  に関する請願 第一七 産炭地振興措置に関する  請願(二件) 第一八 天然ガス及び石油資源開  発に関する請願 第一九 石炭政策樹立に関する請  願 第二〇 産炭地域振興に関する請  願(二件) 第二一 産炭地振興対策に関する  請願(二件) 第二二 産炭地振興対策早期確  立に関する請願 第二三 産炭地域振興対策予算に  関する請願 第二四 産炭地市町村振興に関  する請願 第二五 鉱害復旧事業団融資機  能強化等に関する請願 第二六 産炭地域振興対策に関す  る請願 第二七 宮崎県都城地区を低開発  地域工業開発促進法に基づく開  発地区に指定するの請願(二件) 第二八 水道事業用電力料金軽減  に関する請願 第二九 石炭対策に関する請願 第三〇 産炭地振興対策確立等に  関する請願 第三一 産炭地市町村振興対策確  立等に関する請願 第三二 産炭地域振興に伴う関係  法律等整備に関する請願(二件) 第三三 福岡県添田町に筑豊縫工  場設置のための融資に関する請願 第三四 福岡嘉飯山地区産炭  地振興事業推進に関する請願 第三五 鹿児島県大隅中部地区を  低開発地域工業開発促進法に基  づく開発地区に指定するの請願 第三六 福岡県山田市に合理化事  業団所有の硬山払下げに関する  請願 第三七 公共料金等引下げに関す  る請願(六十二件) 第三八 石油輸入自由化対策に関  する請願(二件) 第三九 石炭政策転換に関する請  願(二件) 第四〇 産炭地域振興臨時措置法  の一部改正等に関する請願 第四一 石炭産業長期安定化に  関する請願(十七件) 第四二 金属鉱業保護政策確立に  関する請願 第四三 鉱業政策確立に関する請  願 第四四 石炭政策転換促進に関す  る請願   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、常磐線河島構内における列   車衝突事故に関する斎藤運輸大臣   の報告  一、日程第一 近畿圏整備に関する   決議案 一、日程第二 鉄道敷設法の一部を  改正する法律案 一、日程第三 船員法の一部を改正  する法律案 一、日程第四 栄養士法等の一部を  改正する法律案 一、日程第五 農地法の一部を改正  する法律案 一、日程第六 農業協同組合法の一  部を改正する法律案 一、日程第七 昭和三十四年度一般  会計歳入歳出決算昭和三十四年  度特別会計歳入歳出決算昭和三  十四年度国税収納金整理資金受払  計算書昭和三十四年度政府関係  機関決算書 一、日程第八 昭和三十四年度国有  財産増減及び現在額総計算書 一、日程第九 昭和三十四年度国有  財産無償貸付状況計算書 一、日程第十 昭和三十四年度物品  増減及び現在額総計算書   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————・————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  運輸大臣から、常磐線河島構内における列車衝突事故について、発言を求められております。この際、発言を許します。斎藤運輸大臣。   〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  4. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) このたび、常磐線河島構内におきまして重大な列車衝突事故を惹起いたし、多数の尊い人命を失い、多くの重軽傷者を出すに至りましたことは、まことに申しわけなく、衷心から遺憾の意を表する次第でございます。つつしんで、なくなられました方々の御冥福をお祈りいたし、遺族方々には心からお見舞いを申し上げますとともに、負傷せられた方々が一日もすみやかに快癒せられるよう念ずるものであります。  まず、事故概況について申し上げます。発生の日時は五月三日二十一時三十七分、発生場所常磐線河島構内であります。下り第二八七貨物列車田端操車場を定時に発車いたしましたが、三河島駅では、下り第二一一七H電車(六両編成)を所定どおり先行させるために、同貨物列車に対して停止措置をとっておりました。しかるに、同貨物列車は、停止することなく、三河島駅の出発信号機停止信号を越えて行きどまり線に突入し、機関車及びこれに続く貨車一両が脱線し、下り本線を支障いたしました。たまたま、三河島駅を四分おくれて出発いたしました下り第二一一七H電車がこれに接触し、前から二両目までの電車が脱線して、上り本線を支障しました。このとき、この電車の多くの乗客上り線側に下車して歩行を開始したのであります。折柄、三河島駅に二分おくれて到着する予定で進行して参りました上り第二〇〇〇H電車(九両編成)が、前に申しました下り電車に接触し、前から四両目まで脱線大破し、うち二両目と三両目が築堤下に転落いたしたのであります。なお、このとき、下り電車の前から二両目までが大破いたしたのであります。  このために両電車乗客多数が死傷いたしまして、ただいま現在判明いたしました死傷者は、死亡百五十五名、負傷二百五十一名、計四百六名となりました。なお、負傷者うち重傷は六十六名、中傷は九十名、軽傷は九十五名であります。重傷中傷方々は入院中でございまして、できる限りの治療を申し上げておる次第でございます。  次に、事故原因について申し上げますと、詳細は取り調べ中でありますが、下り貨物列車機関車乗務員出発信号機停止信号を確認しなかったためと、下り電車脱線の際、上り電車に対する防護が適切を欠いたためと思われます。この事故に直接関係ありと思われます職員は、目下のところ、列車電車機関士機関助士、車掌、運転士及び三河島駅の助役、信号掛三輪信号扱所信号掛等十二名でございますが、このうち五名がただいま逮捕されて、司直のもとに取り調べを受けている次第でございます。  次に、国鉄の行ないました当座処置といたしましては、事故発生と同時に、東京鉄道管理局幹部及び鉄道病院救護班現場に急行し、三河島駅に現場対策本部を設け、職員約二千七百名を動員いたしますとともに、警視庁約千五百名、消防庁約九百三十名及び地元各位の誠意あふれる応援を得まして、死傷者を付近の病院等収容救護に当たったのでございます。これらの関係各庁及び地元方々の熱誠なる応援に対しましては、この機会を借りまして、衷心から感謝を申し上げる次第でございます。一方、本社及び東京鉄道管理局対策本部を設けまして、事故処置に遺憾なきを期した次第でございます。なお、当座御見舞金被災者に贈りますとともに、御遺族に対する慰謝金は、できるだけのことをいたすことを目途といたしまして、話し合いを行なわせておる次第でございます。  以上で概況報告を終わりますが、私といたしましても、事の重大性にかんがみまして、四日早朝、国鉄総裁に口頭をもちまして厳重な警告を発しまするとともに、同日夕刻には、国鉄監査委員長あてに、今回の事故に関する特別監査命令を発しまして、特に国鉄管理体制あり方につきまして徹底的に究明をいたさせまして、再びかかる重大事故を起こさないように、万全の措置を講じたい決意でございます。  以上申し上げまして、御了承をいただきたいと存じます。(拍手
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの発言に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。金丸冨夫君。   〔金丸冨夫登壇拍手
  6. 金丸冨夫

    金丸冨夫君 私は、ただいま運輸大臣より報告せられました鉄道事故に対し、自由民主党を代表して、総理並びに運輸大臣に若干の質問をいたしたいと存じます。  去る三日、憲法記念日に、国鉄常磐線河島構内において発生いたしました列車の二重衝突事故は、近来まれに見る惨事となりまして、まことに遺憾にたえません。とこに、百五十五名の犠牲者に対し、つつしんで哀悼の意を表し、また二百五十一名の重軽傷方々に、心から御見舞を申し上げる次第でございます。  顧みるに、昭和二年以来、国鉄において、重大事故として記録せられておりますものは、三百四十三件を数えているのでありまするが、その死傷者の数において最大なるものは、昭和二十二年二月、八高線東飯能−高麗川間における列車脱線事故でございまして、当時の死傷者は六百八十一名ということになっておりまして、これに次ぐものが今回の事故となるのでございまして、まことに希有の事故と申さねばならないのであります。今回の事故原因は、ただいまの調査の過程におきましては、国鉄従業員の重大なる過失に基因するものと判断せられますが、国鉄は、今後調査の完了を待って、原因並びにその責任の所在を国民の前に明らかにすることはもちろん、今後の国鉄経営上、かかる惨事の再び発生することのないように、その防止対策を樹立し、国民の信頼を回復すべく、最善の努力を払うべきであると存ずるのであります。  以下、具体的に、個々問題点について質疑をいたしたいと存じます。  第一に、国鉄は最近経営近代化を進めているのでありまするが、近代化を極力進めようとするのあまり、その安全管理について欠けるところはないかということでございます。国鉄がここ数年来、鋭意、設備運営近代化を推進し、その成果は見るべきものがあることは、認むるにやぶさかではありません。特に旅客輸送については、スピードアップ列車の増発、車両の近代化サービス施設改善等、着々実行に移し、東海道新幹線完成の暁には、夢の超特急列車を走らせ、東京−大阪間を三時間をもって結ぶ、いわび飛行機にも対抗し得る列車の実現を計画しているのでございます。しかし、汽車を利用して旅行がいかに早くとも、また、いかにサービスが行き届いても、その根本において輸送安全性を欠くようなことがあっては、国民は安心してこれを利用することができないのであります。私が心配いたしておりまするのは、たとえば列車スピードアップ、あるいは列車回数増加にあたって、施設の安全圏すれすれのところまで計画しているのではないかということであります。もし、しかりとするならば、平常スムーズに運行している場合はよしといたしましても、一たんその運行に若干なりとも乱れの生じた場合には、今回のごとく不測の災害を招くことになるからであります。科学の進歩によりまして、人間のカンであるとか視力であるとか聴力というものは、次第に機械によって是正せられる時代になって参りました。信号誤認からくる事故を防止する対策といたしまして、現在国鉄の一部で採用されている車内自動警報機、かようなものを広く採用することや、さらにまた進んで、目下地下鉄で採用されておりまする自動停止装置というようなものが一般に設けられるようになるならば、従業員信号誤認がかりにあっても、これを機械力によって補い得て、事故を未然に防止することができるようになると思うのであります。要するに、現在の状態では、近代化に見合った高度な安全性を確保する必要があるのでありまするが、遺憾ながら現状におきましては、近代化に急なるのあまり、この点に欠くるところがあるのではないかということを心配するものであります。  質問の第二は、国鉄人事管理は、今回の事故にかんがみまして、不十分な点があるのではないかということでございます。今度の事故の経緯から見ますと、第一の衝突の直接原因というものは信号誤認と見られ、また第二の衝突事故現場防護措置を怠った結果であり、さらに第三には、上り電車乗務員が青信号を確認しても、前方線路上に当時相当多数の群衆がおったにもかかわらず、何らこれに注意を払わなかったという、この三つの不注意が重なり合って生まれた事故であるとも言い得るのであります。もし、しかりといたしまするならば、乗務員側におきましても駅員側におきましても、怠慢のそしりは免れることはできないと存ずるのでありまして、単に、人間であるから間違いはあるというような言葉で片づけるには、あまりにも重大過ぎることと存ずるのであります。私は、ここでは従業員諸君個々を責めるという意味ではございません。運転従業員につきましては、御承知のように、こういうものが平素訓練されておるのでありまするが、この程度のいわゆる防護措置は、全く「いろは」の程度現場訓練でございます。にもかかわらず、かくのごときものがおろそかにされているということは、国鉄人事管理上心配すべき点があるということを、私は指摘いたしたいと存ずるのであります。私は、国鉄教育重点を置きまして、学園を一カ所、教習所七、その他各種の養成所数十カ所を設置いたしまして、年間二十四億円の経費を投じて従業員教育訓練に当たっておることも承知をいたしております。しかしながら、現場第一線における具体的な実地訓練という点においては、いまだ欠くるところが多いのではないかと疑うものでございます。もし国鉄が、現場における実地訓練、再教育というものを徹底せられておりましたならば、今回のごとき大惨事は、あるいは避け得られたのではないかと思うのでございます。  以上二点につきまして運輸大臣の御所見をお示し願いたいと思うのであります。  第三に、国鉄施設は行き詰まっている。一そうの輸送力の拡充をはかるべきであると思うのでございます。政府は、いわゆる所得倍増経済成長政策をとっており、過去一年間のごとき、その成長率は目標をはるかに上回っていることは御承知のとおりであります。鉄道に限らず、道路、港湾、船舶等、いずれも経済流通の根幹をなすものでありますが、現在の年次計画をもってしては、とうてい需給のバランスをとることはできないと存ずるのであります。何となれば、わが国のこれらの施設は、いずれも諸外国に比較いたしまして著しく立ちおくれているという過去を持っておるからであります。日本鉄道は世界に冠たる能率をあげているということを自慢されたことは、裏を返せば、貧乏人のやりくりがうまかったというだけで、持てる力に余力があったということではないということでございます。ものの言に、目八分、腹八合という言葉がありますが、日本鉄道も腹八合の能率をあげて間に合うような余裕ある施設を希望したいのであります。都市交通打開の上からも、大都市周辺線区はすみやかに線路増設を促進しなければ、重大事故発生の心配は解消しないでありましょう。電車旅客列車貨物列車等、速度の異なる寄り合い世帯線区では、三河島、南千住に限らず、非常な危険性を保有するものといわねばならないのであります。事故災害について、国鉄責任は同時にまた政府責任であると存じます。政府は、今後交通行政重要性を認識せられ、さらに資金措置等を講じ、輸送力増強し、あわせて事故の不安を解消すべきであると考えるのでありまして、総理並びに運輸大臣の御所見を承りたいと存じます。  最後に、第四点といたしまして、国鉄労組幹部のこのたびの事故に対する態度を取り上げたいと存じます。国鉄労働組合員は総数四十万に達し、わが国の最大の組合であり、しかも、国家の公共企業体組合でございます。また、その個々組合員は公務員の地位が与えられ、民間諸会社の組合員とは性質を異にするものでございます。したがって、終戦後十七年を経過いたしまして、わが国組合運動も大いにその成長を期待せられている今日におきまして、国鉄労組は、わが国労働組合の師表となり、法律を守り、信義を重んずるりっぱな組合となって、真に国民の期待に沿うべきものであるにもかかわらず、新聞の報道するところによりますれば、今回の大事件発生に際して、組合指導的地位にある責任者が、何らの反省自粛の色もなく、信号誤認防護措置の失念、さては当日東北本線古河駅における居眠り運転による列車衝突事故については、当局ダイヤ改正労働条件過重のための当然の結果であるとして、惨事発生責任はあげて経営者にありとの意見を表明したことは、まことに不遜の態度といわねばなりません。大いに心すべきことではないかと思うのでございます。これは苦言を呈する意味ではありませんが、……
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が参りました。
  8. 金丸冨夫

    金丸冨夫君(続) 運輸大臣のこれに対する御所見をあわせて伺っておきたいと、かように存じます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般の三河島駅におきまする惨事につきましては、まことに申しわけないことでありまして、私は政府を代表して衷心より遺憾の意を表します。多数の犠牲者に対しましては心から敬弔の意を表し、遺家族の方々並びに負傷者方々に対しまして御同情申し上げると同時に、一日も早き御全快を心からお祈り申し上げる次第でございます。  私は、今回の事件に対しまして、今後再びかかることの起こらないよう関係当局を督励いたしまして、今後あらゆる措置を講じたいと思います。  御質問の、設備の安全をはかるということにつきましては、輸送力増強と同時に考えなければならぬ問題でございます。経済の進展に伴いまして、得てして輸送力がこれに追っつかない状況でございます。昭和三十二年の予算におきまして五カ年計画を立てましたが、これまた及びません。今回さらに新五カ年計画を立てました。私は、これによりまして、輸送力増強輸送の安全とをはかっていきたいと考えております。つきましては、お話のように政府といたしまして、この新計画に対しましてできるだけの財政的措置をいたしたい考えであります。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  10. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 最近の国鉄運営近代化、ことに独立採算制等国鉄輸送安全性を阻害していはしないか、ことにスピードアップ輸送回数増加が安全の諸設備を無視しておりはしないかというお尋ねでございまするが、国鉄輸送は、何といっても第一義的に人命の安全ということを第一にいたして参らなければなりません。先般のスピードアップ等におきましても、特にこの点に留意をいたしまして、支障なしという判定のもとにスピードアップをいたしておるようなわけでございます。このたびの事件につきましては、国鉄のいわゆる安全性に関する設備の不備、あるいはまた、そういったような事柄が特に大きな原因とは存じておりませんが、しかしながら、今申しまする人命の安全という点は、幾ら手厚くいたしましても、きりのないことではございまするが、今後ますますこの点に重点を注ぎまして、おっしゃいました自動警報機でありまするとか自動制御装置のごときものも、今日まず三分の一程度しか設備をいたしておりませんが、できるだけこういうものを早く普及させるようにいたして参りまして、この上とも、設備の面からも、かような事故の将来起こらないことを期して参りたいと存じます。  なお、最近の頻発いたしまする輸送事故は、人事管理、特に安全管理に不十分な点があるのではないかというお尋ねでございますが、私もこの点につきましては必ずしも十分とは存じておりません。国鉄におきましては、元来、従事員安全管理について適性考査を行ないまするとか、あるいは異常事態における実地訓練等について相当留意をいたしておりますが、しかし、なお十分でない点も認められます。今後これらの訓練につきましては、さらに一そう力を注ぐように国鉄に指示をいたしたいと存じております。  なお、この事件に関連をいたしまして、国鉄労組方々意見等についての御批判がございまして、私の意見を求められましたが、国鉄労組方々も、この際やはり謙虚な態度でこの事件を検討をしてもらっておると考えるわけでございます。私は、事故発生の現地に参りまして、弔問をいたしました際に、闘争第一主義のああいう労働争議のやり方をやめて、ほんとうに管理者従業員と一致した考え方で国鉄の安全を守ってもらいたいという、遺族関係者の悲痛な声もございました。私も、この点は、まことに素朴な御意見ではあるが、しかし、労使ともよくかみ分けて考えていかなければならぬ事柄であろうと痛感をいたしたわけでございまして、今後労使あり方につきましても、そういう面から十分の配慮を加えて参りたいと、かように考えております。  なお、経済成長に伴う輸送力増強需要に対しまして、設備を完全にいたして参らなければなりません。これに対しましても、十分に安全性運輸の安全ということを考慮に入れながら、十分に輸送需要に対処して参りたい、かように考えておるわけであります。(拍手)   —————————————
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 中村順造君。   〔中村順造登壇拍手
  12. 中村順造

    中村順造君 私は、去る五月の三日、国鉄常磐線河島駅ににおける国鉄事故に対しまして、日本社会党を代表して政府質問をいたすものでありますが、質問に先だちまして、この事故により遭難された犠牲者の霊に心から哀悼の意を表すとともに、御遺族に対し深くお悔やみを申し上げ、また、負傷された方々の一日も早く御回復されることをお祈りいたす次第であります。  およそ、物事を結果から見て批判をし、その責任を追及することは、情においてはまことに忍びないものがあるのであります。しかし、この際は、一私情の問題でなく、事態国鉄輸送使命に関する問題であり、しかも、一刻を争う急を要する問題でありますので、私はこの際、この質問を通じまして、国民の総意にかわり、政府及び国鉄当局無策無能、怠慢について、その責任を追及するとともに、厳重に抗議をし、警告を発するものであります。  そこで、総理お尋ねをいたしますが、本来、国鉄使命は、国の産業経済発展動脈的役割を果たすとともに、その運送に関しましては、安全、正確、迅速でなければならぬことは、今さら申すまでもないことであります。最近の国鉄経営方針は、一方で公共性による経営上の負担をしいられ、一方では企業からくる採算性の強調という、本来両立し得ない二つの条件の調和に苦しみ、ついに、その第一要件であり、かつ、必要欠くべからざる安全正確の要件を無視して、いたずらに外観を整えることにきゅうきゅうとして、その能力の限界を越えたスピードアップ、すなわち、迅速にのみとらわれた結果が、本件重大事故の遠因と思われますが、この点、国鉄公共企業体として独立採算を強調される政府の方策に、本件事故によって立証されたように、重大な欠陥と責任があると考えられますが、これについて総理のお答えを願います。  さらに続けて総理お尋ねをいたしますが、日本国有鉄道は、法律の定めるところによりまして、理事会監査委員会等機関を持ち、総裁の任命を内閣が行ない、運輸大臣監督下運営されておるのでありますが、国鉄現状は、うちに汚職容疑の続発を見、経営近代化、合理化をめぐり、いたずらに労使の対立を激化し、さらに重大運転事故の続発といった状態にありますが、もし機構上問題がないという前提に立ちますならば、運輸大臣監督下にあるとは言いながら、国鉄総裁であると同時に理事会の会長である総裁理事会運営の点、さらに運輸大臣が任命をいたします監査委員で構成をする監査委員会の人選、留任期間等、あまりにも慢性化し、責任体制の確立の面から、国鉄経営運営の面に十分検討を加えるべきであると思いますが、総理のお答えを願います。  次に、運輸大臣お尋ねをいたします。あなたも御承知のごとく、私は、本院運輸委員会におきまして、今日この事態のあることを憂慮して、しばしば国鉄経営上のことについて、政府並びに国鉄当局意見を申し上げ、その改善を要求してきたところであります。国鉄首脳部は、国会におけるこうした建設的な意見を無視し、常に一方的合理化による人減らし、低賃金、長時間労働を押しつけ、もっぱら国鉄経営の合理化は画一的労働生産性向上の一つ覚えに終始し、いたずらに労使の相剋を増すといった、きわめて無為無策の中で、不幸今日の事態を招いたのでありますが、一体この責任はだれが負うのでありますか。国鉄総裁は、その就任にあたって、レールをまくらに討ち死にの覚悟と言われたそうでありますが、ほんとうにレールをまくらに死についたのは、かつての参宮線事故における四十数名のいたいけな修学旅行中の高校生であり、さらには本件百六十名に及ぶ善良な国民でありました。また、その間にもございました大小幾つかの尊い犠牲者であったのであります。私は、かつての参宮線事故といい、また、本件事故といい、いずれもが国鉄現場職員の過失であることは否定いたしません。決して天災ではございません。しかし、国鉄現場に働く個々職員は、その過失を再び繰り返しておらないのであります。また、繰り返してはならないのであります。さらに、それがたとい業務上の過失であっても、現行刑法に基づきまして厳重な処断をされますし、また、されておるのであります。しかるに、国鉄首脳部は、運転事故にいたしましても、汚職にしても、同じ誤りを二度も三度も繰り返しておるのでありますが、かりに、刑法上の責任はないといたしましても、道義上の責任は当然考えられるのでありますが、この点についてのお答えを願います。  さらにお尋ねをいたしますが、重大事故発生原因の究明と対策の問題であります。私は昨日、三河島の現地調査に参りましたが、私の知り得た範囲では、本件事故は、かつて昭和三十一年、参宮線六軒駅に発生したあの悲惨な事故と、あまりにも全く同じ条件下に起こったことを知って、驚いたのであります。第一、列車の遅延によりダイヤが正常でなかった点、第二は、機関士信号誤認の容疑が持たれた点、第三に、安全側線に突入をし、本線を支障した点、第四に、本線を支障した車両に対向列車すなわち反対側から来た列車衝突し、重大事故に発展をした点、第五に、反対側から進行して来る列車に対する停止手配のしてなかった点、以上あげました五つの点について、汽車と電車の相違はありますが、その他は完全に条件が一致いたしておるのであります。あのときも国鉄総裁は現地を訪問をされ、声涙下る慰問をされましたし、今回もまた現地で遭難遺家族に声涙下るあいさつをされました。総裁の心情まことにお察しするものがありますが、近代科学は、残念ながら、人間の感情や誠意で左右されるほど甘いものではないのであります。機関士信号誤認といえば、あるいはダイヤが乱れたからといえば、当面の責任回避にはなったかもしれません。しかし、さらに、なぜ一歩進めて、明治三十四年に制定をされ、大正末期の実情に合わせて考えられた安全側線が、現代の列車速度、列車密度にいかなる結果を及ぼすかを考えられなかったのでありますか。すでに大所高所よりいたしますれば、参宮線事故の尊い経験を有しておるのでありますから、その際、抜本的に事故原因が究明をされ、その対策措置が講ぜられておったなら、少なくとも全く同じケースの本件事故は起こらなかったのであります。それを、機関士信号誤認信号取り扱いの不的確などと、部下職員に一切の責任を転嫁し、裁判所に重大事故真相の究明を今なお依存しておりますが、裁判所は、科学者でも技術者でもありません。こうした多くの犠牲を伴った重大事故について、真相究明と抜本的対策を、日本国有鉄道がそのすぐれた科学陣をあげて行なったことを、国民は全然聞いたこともないのであります。なおかつ、私の調査によりますと、こうした本線と並行した安全側線、すなわち、その立地条件からする重大事故発生原因ともなる状態が全国至るところにあります。東鉄管内のきわめて列車密度の高い線区におきましても、現在五十数カ所あると聞き、これに対する何らの処置も手配もなく、ただ一片の人間の注意力にたよる以外にないことを、私は怠慢と指摘したいのであります。(拍手経営者として、管理者として再び誤りを繰り返したと指摘したことは、こうした重大事故発生の経験を生かし、その真相を究明することなく、漫然と一片の事故警報を発し、みずからの責任を回避し、部下の職員にその責任を転嫁するその卑劣さを指摘したのであります。  そこで、斎藤運輸大臣質問点を明確にいたしますが、新聞の報ずるところによりますと、大臣は、四日、「事故原因従業員の重大な過失であることは明白だ。現象面だけでなく、不十分な管理体制あり方も追及する。」との談話を発表されたとのことでありますが、従業員とは、この際、現場職員のみをさすのか、あるいは国鉄首脳部の役員を含むのか、さらに、不十分な管理体制とは何を指摘されているのか、お尋ねをいたします。  さらに続けてお尋ねいたしますが、吾孫子国鉄総裁は、大臣の命令された日本国有鉄道監査委員会に対する特別監査により、査問委員会が設置されることを言明いたしておりますが、このような措置は、私が先ほど来述べました三十一年の参宮線事故にもとられたそうであります。前例があります。結果的に見て、何らの効果も成果もあがっておらないのであります。再び同種の事故が起こった事実からも、このことは立証されるわけでありますが、何ら期待の持てないものを、あえてそのことを命令された根拠はどこにあるか、お伺いをいたしたいと思うのであります。さらに、このことについて、当時の特別監査、または査問委員会の答申内容の適否、あるいは国鉄当局の答申に対する態度等はどのようなものであったか、あわせてお答えを願います。  次に、植木法務大臣にお尋ねをいたしますが、検察当局は、本件のような重大事故に限らず、少なくとも業務上過失刑事事件の容疑者に対しましては、間髪を入れず、逮捕、拘留、起訴、こういう措置をとられておるのでありますが、公判になりましてからは裁判は遅々として進まず、たとえば参宮線事故のごとく、五年の年月を経過して、今なお一審の判決も出されない状態にありますが、このことは、本人の精神的苦痛もさることながら、重大事故の真相究明と責任回避といった面から、重大な支障を来たしておることは、申し上げるまでもないことであります。現実の問題として、こうした特殊な科学的、技術的解明を要する裁判につきましては、裁判の公正とそのスピード化のために、特別の配慮が必要と思われるのでありますが、この点についてのお答えを願います。  最後に、総理並びに運輸大臣お尋ねをいたしますが、今回の不祥事故によって遭難された方々の御遺族並びに負傷された方々への補償の問題であります。あるいは一家の柱石を失なわれ、あるいは最愛の夫を、妻を、子を、その実情については千差万別、内容は異なることと思いますが、そのいずれも、瞬時にして悲しみのどん底に落とされたことを考えるとき、国鉄を利用する国民の側から見ますと、深い悲しみと激しい憤りをさえ感ずるのであります。とうていこのことは物質によって償い得るものでないことは明らかでありますが、この際、政府及び国鉄当局は、そのすべてをあげて、誠心誠意、これらの方々に万全の措置をとるべきであると考えますが、これに対する考え方をお答えを願いたいと思います。  以上で私の質問を終わりますが、要するに、急速に進歩発展を遂げる近代文明の中で、いたずらに限りある人間の能力の限界を過信することなく、近代科学に即応した科学的列車保安の設備増強し、国鉄本来の使命達成に励むとともに、忠実に、その安全、正確、迅速の大前提に立ち、謙虚にそれぞれの職責を自覚し、国鉄四十数万の職員がおのれの職責に熱意と誇りを持てる体制をすみやかに確立し、本件事故を契機に、国民国鉄として、国民の負託にこたえ得る国鉄たらしめることこそ、今は亡き尊い犠牲者の霊に報いるただ一つの道であることを銘記し、政府及び国鉄当局、さらに各関係者の一段の奮起を強く望んで、私の代表質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  国鉄の基本的使命は、あくまで公共性を発揮いたしまして、そうして安全第一でなければならぬことは、何人も認むるところでございます。私は、企業性にあせるあまり、この基本的目的をなくしてはいけないと考えているのであります。  次に、国鉄運営につきましては、人事管理、機構その他各般の施策につきまして再検討を加え、今回のごとき不祥事を起こさないよう、十分注意を加えて行きたいと考えております。  なお、犠牲者に対しましては、先ほど申し上げましたごとく、まことに申しわけないことでございます。私は、犠牲者の御遺族並びに負傷者方々に対しましては、誠意をもって早急に善処いたしたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  14. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 国鉄経営の合理化が、いわゆる国鉄の運転の不安全というととろにしわ寄せが来ておるのじゃないかというお尋ねでございまするが、あるいはスピードアップにいたしましても、また運転回数の増加等にいたしましても、あるいはまた、その他の経営合理化にいたしましても、総理もおっしゃいましたように、運転の安全、人命の保安という点には特に重点を置きまして、それに支障がないということを確かめた上でやっているわけでございます。しかしながら、時にあやまちもないとは保しがたいと存じます。十分今後さらに監査をいたしまして、さような点があれば改めるにやぶさかではない、かように考えております。  このたびの三河島事件は、おっしゃいますように、参宮線の事件と非常によく似ておると私も思います。私は、参宮線事件は、特に私の郷里でございまするので、よく承知をいたしております。三河島事件を聞き、また実地を見ました際に、私もその感を深くいたしました。そして、その当面の責任現場の処理の従業員にあることはもちろんでございまするけれども、しかし、参宮線の問題にいたしましても、今度の問題にいたしましても、これはただ、直接その衝に当たっていた従業員が不注意であったとか、あるいは当意即妙の機転がきかなかったとかいうことだけではなくて、やはり管理体制全体に考えるべき点があるのじゃなかろうか、私はかように考えるわけであります。参宮線の事件の事後処理にいたしましても、あの経験をどうしてその後に生かしたかという点も、私はまだ十分「ふ」に落ちておりません。これらもあわせてこのたびの監査委員会に監査を依頼いたしたゆえんが、そこにあるわけでございまして、当面の現場責任者のみならず、これを指導し監督をしている管理体制全体に、もし反省する点があるならばメスも入れ、また責任を負うべきものについては当然の責任を負うという態勢をとらなければ、こういった事件は改まらないであろう、かように考えまして監査命令を出したわけでございまして、その結果に従いまして、必ず実効のあがるように、私は責任をもって国民の皆様方におこたえをいたしたい、こう考えておるわけでございます。  なお、弔慰金あるいは補償問題についてはどう考えているかというお尋ねでございまするが、全くこれは国鉄責任でございまして、無過失とは言い得ない問題でございまするから、したがって、十分の弔慰あるいは補償を誠心誠意をもっていたしまして、手厚くお報いをいたしたい、さように国鉄に対しても申し入れておるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇拍手
  15. 植木庚子郎

    国務大臣(植木庚子郎君) 今回の三河島におきましての列車衝突事件に関しましては、そのために死亡された方方に対しまして心からなる弔意を表しますとともに、遺族方々並びに負傷者の各位に対して深く同情の意を表するものでございます。  私に対する御質問は、こうした交通事件については直ちに捜査を発動して、その原因を明らかにし、責任の所在を明らかにするのでなければ、将来に対する備えにもならない、また適切なる措置とも言えないのではないかという御趣旨と拝承いたしました。私ども法務当局といたしましては、あの事件の起こりました翌早朝未明のうちから、連絡を受けますと、直ちに検察当局現場に出動いたしまして、警察当局と一緒に協力いたしまして、そうして現場の検証並びに関係者の取り調べ等に協力をいたしておるわけでございます。事件原因は、今回の事件が、何人かの人たちの過失が競合したために、こうした大きな事件になったのではないかと想像せられるのでありますが、これについても、十分その事態を明らかにして参りたい、さらに、そうした過失の起こった原因がどこにあるか、いわゆる過労にあるか、あるいは施設の不十分等にあるか、いろいろな問題があろうと思います。こうした問題につきましても、十二分にその真相を突きとめて参りたいと考えておる次第であります。こうした交通等の事件におけるような場合には、仰せのごとく、科学的な、また専門的な知識を捜査上必要とすることも仰せのとおりであります。したがいまして、われわれといたしましては、こうした問題については、十分こうした専門家を証人に呼ぶとか、あるいは関係公務所に対する照会等等によりまして、その真相を明らかにして参りまして、そうして判断の誤りなきを期して参りたい。そうして一日も早く裁判の進行をいたしますためには、当局としての十分の調査をいたしますとともに、裁判所当局にも十分意のあるところを申し出て、その裁判判決の促進をはかりたい、かように考える次第でございます。(拍手)   〔「答弁漏れがあります」「裁判の公正とスピード化をどうするかということを聞いている」と呼ぶ者あり〕
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 法務大臣から答弁の補足があります。   〔国務大臣植木庚子郎君登壇拍手
  17. 植木庚子郎

    国務大臣(植木庚子郎君) 説明を補足いたします。  私が、検察当局といたしまして、十分に事の真相を明らかにするために手を尽くしますことを申しましたのは、それがすなわち裁判の公正、適正化をはかる一番の方法であるからでございます。私が申し上げました趣旨は、いわゆる捜査の敏速適切をはかりまして、それを裁判所当局に対して、十分にわれわれの主張の存するところ、調査結果の存するところを明らかにすることによりまして、裁判の公正適切化がはかれる、かように考えている次第であります。(拍手)   —————————————
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 天田勝正君。   〔天田勝正君登壇拍手
  19. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、民主社会党を代表して、ただいま報告のありました常磐線列車事故について、総理並びに運輸大臣に対し、数点にわたって質問をいたします。  質問に先立ちまして、今回の事故によって遭難死亡されました百五十六名の方々と御遺族に対し、つつしんで弔意を表し、三百二十五名の負傷者方々の一日もすみやかに回復せられるよう祈るものでございます。また、今回の事故発生後、遭難者救出等に協力せられました現場住民各位に、深く敬意を表するものでございます。  今回の事故の場合、普通と違いますのは、ただ一つ、とかくこの種の事故がありますると、関係者間において責任のなすり合いをしがちであるのであります。しかし、今回は、直接関係者七名中、死亡、重傷二名を除く五名が、各自お互いに手落ちを認められていると伝えられているのでありまして、このことは犠牲者に対するせめてもの慰めであると思うのであります。  まず、運輸大臣に伺いますが、近年、人命軽視の風潮はますます強まりつつあると思いますが、それだけに、多くの人命を預かる職務の者には、周囲のこれらの風潮に影響されない教育と、とっさの事態に反射的に対応し得る訓練、これに伴って自己の職務に誇りを持ち得るような待遇をあわせ行なうことが、事故防止の根本だと思うのでありますが、これについて欠けた点がありはしないかと思うのであります。この点について、まず運輸大臣所見を承りたいと思うのであります。きびしい訓練と、これに対応する尊敬と待遇こそが、責任感を不動のものにすると思うのでありまして、あえてお伺いする次第であります。  質問の第二点は、職制に乱れがあったかいなかということであります。私は、かりに国鉄において争議が起こった場合に労使激しい主張を繰り返されようとも、日常においては、安全運転のために一致結束して努力せられていると信ずるのでございますけれども、一方において国鉄幹部の中には、かつて職員の間から職制打破が叫ばれたなどといいますために、世間では、これが尾を引いて、そのために命令や訓練が徹底しないのじゃないかと心配する向きが確かにあるのであります。そこで、この際、この国民の不安を一掃する所見がありますならば承りたいと存じます。  質問の第三点は、昨日の読売新聞に現われた記事でありますが、同紙の質問に対する答えの形で、吾孫子国鉄総裁、山田国労書記長の両氏が所説を載せられております。この中で、両氏とも、職員訓練は十分であるという点において一致いたしております。ところが、勤務の時間については、吾孫子氏は、一日五時間半の勤務で、昔よりずっと楽になっていると言われている。山田氏は、国鉄職員で夜勤の者は週五十四時間、特殊勤務の者は六十二時間であって、一般公務員の四十二時間、民間の四十ないし四十八時間と比べれば、長時間勤務をしいられているという食い違いを示しており、また吾孫子氏は、国鉄職員の士気がゆるんでいるという言葉には返す言葉がないと言い、山田氏は注意の限界だと語っているのであります。ここでわれわれは、二つの点について心配になるのであります。すなわち、両氏が一致して認めておられます十分な訓練が施されながら、なぜ古河の衝突事故や今回の大惨事が起こるのであろうか。訓練が十分で事故が起こるとすれば、もはや救いがたいのではないかと思うのであります。また、五時間半の乗務がその仕事の性質上無理なのか、週六十二時間という勤務がしいられて注意力が限界にきているのか。特に今回の場合、第一衝突と第二衝突においては相当時間があったと新聞で伝えておりますけれども、今回の場合その真相は調査されたと思うのでありまして、この点を明らかにしていただきたいと思うのでございます。  質問の第四点は、これにつきましては、答弁の便宜上、表を差し上げてございます。戦後国鉄によるおもなる事故は、二十年八月、八高線小宮−拝島間脱線、死者百五名、二十二年二月、八高線東飯能−高麗川間脱線、死者百八十四名、信越線熊ノ平の埋没事故、死者五十名、桜木町事件、死者百八名、参宮線衝突事故、死者四十名、五件合計死者四百八十七名、負傷者七百七十五名を出しているのでありますが、このうち熊ノ平の事故は、地すべり、土砂くずれでありますから、不可抗力でありますが、八高線の場合は二回ともスピードの出し過ぎによるものであります。桜木町事故信号怠慢、開扉不能、参宮線事故信号無視でありまして、今回の惨事発生も、最初は信号無視か、誤認か、いずれかであると言われておりますが、かように見て参りますると、スピードの出し過ぎとか、信号関係事故とか、同じ理由によって繰り返し事故が起きているのであります。一つの事故が起きた場合、その原因を徹底的に究明して対策を講ずるならば、同一理由による事故が防ぎ得たと思うのでありますが、この点、国鉄並びに運輸当局の熱意は足らなかったと言わざるを得ません。以上申し述べました各事故について、その原因に基づく対策が講じられたのかどうか、この際お示し願いたいと思うのであります。  これと同様に、戦後の海難事故もありますが、そのおもなるものをあげますと十五件、死者、行方不明者が二千五百二十五名ある。このうち国鉄連絡船による事故が、洞爺丸、十勝丸、日高丸、第十一青函丸、紫雲丸等七件、死者千五百五十八名であり、民間旅客船による事故は、これも七件、死者五百七十名であります。こうして、海難事故に関する限り、国鉄の安全運転とは迷信のごときものであると思うのであります。この事実に対しまして、政府はどう見られておるのでありますか。これらに対する対策が講ぜられ、これが成功しているのであるかどうか、この際、承っておきたいと思うのでございます。  また、海陸を問わず、学童旅行中の事故は、その惨害を大きくいたしておるようであります。相模湖の沈没、あるいは参宮線の衝突、紫雲丸などがその例でございます。この例にかんがみまして、学童旅行における措置、あるいは普通の国電等に対する学童の集団乗車に際して、特別の配慮が払われなければならぬと思うのでありますが、これに対する対策があれば承りたいと思うのであります。  次に、二点だけ総理にお伺いいたします。  わが国は、元来、士農工商という階級制度がありましたために、それが尾を引きまして、官庁においては技術者よりも法科万能という形になり、作業服の人よりもホワイト・カラーを尊しとする弊風が、知らず知らずにびまんしていると思うのであります。こういう状態でありますから、人命を預かる国鉄乗務員のごときが、自己の職務に誇りを持ち、責任感を高揚するどころか、あべこべに卑屈感さえ持つかもしれないのであります。私は、ここで評論家秋山ちえ子氏の言葉を引例することを許していただきますならば、同氏がアメリカで、ある子供に、そのお父さんの職業を聞いたときに、「たくさんの人の命を預かっているのである」と誇らしげに語ったといいます。その子の父は線路工夫であったというのであります。額に汗することもなく、虚栄にうき身をやつす有閑婦人よりも、作業服で働く人々がどれほど尊いか知れないのであります。労働を卑しむ弊風は徐々に改まるでありましょうが、自然に改まることを待つのではなく、人種偏見を改める努力あるいは同和対策に努力を重ねるがごとく、人命を預かる職種の人々を尊敬し、有能な人々が喜んで作業服を着る気風を馴致する啓蒙を、積極的に行なうべきであると思うのでありますが、これに対する政府所見を承りたいと思うのであります。  また、一口に三公社五現業と言って、これらの職員は、年令、学歴、勤務年限によって同等な待遇が与えられているようでありますが、これは単なる形式主義にすぎないと思います。他のことならばやり直しがききますけれども、人命を預かる職種は、あやまったらやり直しがきかないのであります。でありまするから、これらの職種の人たちに対しては、公務員たると政府関係機関職員たるとを問わず、総合的な訓練機関を設けるとともに、責任ときびしい訓練に値する待遇をなすべきであると思うのでありますが、これについて見解を承りたいのであります。
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 天田君、時間が超過しました、
  21. 天田勝正

    ○天田勝正君(続) 最後に、今回の事故に、国鉄当局が謙虚な態度をもって犠牲者処置に万全を期せられるよう、そうして運輸大臣におかれても十分配慮せられますよう希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  私は、事務員であると、現業員あるいは技術者であると、その職業に軽重はないと思います。お互いに自己の職責を十分自覚しまして、そうして社会的使命を遂行することに誇りを持っていただきたいのでございます。今お話のような考え方は、時代とともにだんだん薄れていきまして、最近では技術者のほうが非常に尊敬されるような傾向も現われつつあるのであります。私は、いずれを問わず、お互いにその職業に誇りを持って邁進していただきたいと念願いたします。  次に、訓練と待遇でございまするが、政府及び政府関係機関は、いずれも特別の教育訓練をただいま行なっております。鉄道におきましても、御承知のとおり、教習所、養成所あるいは最近では中央学園を設けられまして、いろいろ訓練をいたしておられるのであります。私は、この訓練により、また職員がその職務に精励されるに対しましては、これに相当する待遇を与えることは当然のことでございます。最近におきましても、公務員の給与あるいは現業官庁給与につきましては、特段の努力をいたしておる考えでございます。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  23. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 人命の尊重に関する教育訓練、これは幾らやってもやり過ぎることはないと存じます。ことに、戦後の一般の風潮といたしまして、ややもすれば人命を軽んずるというような風潮がなきにしもあらずであったと存じます。また、個人の自由を尊重するという立場から、いろいろな訓練教育をやる場合にも、困った事例も多かったようでございまするが、最近は漸次これらの点が是正せられて参りまして、相当の成果をあげつつあるように存じまするけれども、しかし、まだこれでは十分でないと存じております。待遇を十分いたしますることは、責任のある仕事を遂行させる一つの重要な要件でもございます。したがいまして、仕事の内容と待遇というものは常に関連を持ちまして十分留意をいたして、そういった処遇をいたさせるように、今後も留意をいたしたいと存じております。  職制の乱れはないかというお話でございますが、この点につきましても、今日まだ十分とは言えないと存じまするが、しかし、一時に比べまして最近はだいぶ立ち直ってきたというように私も見ているわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、素朴な一般国民感情といたしましては、従業員と、職制といいますか、管理の立場にある者との間に、しょっちゅう闘争第一主義をもって何かと闘争をしているというような感じを与えておりますことは、やはりこれは両者とも反省をいたして参らなければ、国民に対して相済まぬのではなかろうかという感じを、私も痛切に感じておるわけでございます。先ほども申しましたように、国鉄の管理当局も、あるいは労組の方々も、この事態に対しまして、十分謙虚に反省をいたし合おうという空気の出て参っておりますることは、私はまことにけっこうなことだと存じております。こういう契機をつかまえまして、あるいは安全運転の問題、安全装置の問題等につきましても、心を一にしてお互いに話し合い、そして目標を一つにして進んでいくという態勢を整えていただきたいと、かように考えております。  国鉄の副総裁は、訓練は十分である、こう言っておられるがどうか。また労働時間については、総裁の言うのと国労の書記長の言うのと時間が違うというお尋ねでございますが、訓練はこれまた幾らやっても十分とは言えないと存じます。今日の特殊の状況等から見ますならば、まだまだ訓練を十分に施す余地があるようにも考えておりまするし、また労働時間につきましては、副総裁は、一日の運転手、機関手等の実労働時間を言っているのでありますが、国労の書記長の言っておりまするのは、全体の職種についての一週間の労働時間を平均したものを言っておられまするので、対象としている点が違っているのじゃなかろうかと、かように考えております。  大体、昨今の責任事故と申しまするものは、実は順次漸減して参っておりまして、昭和二十三年度は今までにない最高の事故を示した年でございましたが、その後大幅に減少いたして参りまして、昭和二十六年度には戦前の成績よりもよくなって参りました。昭和三十五年度には、戦前の昭和十一年から十五年当時と比較いたしまして、列車の走行キロ当たりの責任事故件数は三分の一に実は減少をいたしておるわけでございます。しかるに、今般この大事故を引き起こしましたことは、まことに遺憾のきわみでございまするが、今後一そう事故の減少をいたして参りますように、先ほど申しました諸般の施策を十分講じて参りたいと、かように考えておるわけでございます。  学童の修学旅行等につきましては、かつての例もあることでございます。ことさらに安全運転という点には留意をいたさせまして、かよわい児童に不幸なことの起こらないよう十分に注意をいたさせたいと存じております。信号無視のような、いわゆる責任事故は、なかなか絶無を期しがたいのが遺憾でございます。事案によりましては、あるいは懲戒免職あるいは停職その他適当な措置を、そのつど国鉄当局が講じておるわけでございますけれども、先ほど申しまするように、職制あるいは管理体制の強化と相待ちまして、今後一そうこういう事故の減少をはかって参りたいと考えております。国鉄当局も、先ほども申しましたように、労組も入れまして、また運輸省、政府も入れまして、一体になりまして、謙虚な気持でこういう事故の再発しないように十全を期して参りたいと、かように存ずるわけでございます。(拍手)   —————————————
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 白木義一郎君。   〔白木義一郎君登壇拍手
  25. 白木義一郎

    ○白木義一郎君 去る五月三日未明、東北本線古河構内で、旅客列車居眠り運転貨物列車が追突、四十人の重軽傷者を出して、わずか二十時間余たって起きたこのたびの大惨事は、十年前の桜木町事件を思い出さずにいられないほどの大悲劇で、犠牲者方々、御遺族方々には、お慰めの言葉もないほどの大事件であり、衷心よりつつしんで弔意を表する次第であります。  昭和三十七年五月三日、憲法記念日の夜は、一億国民をゴールデン・ウィークの泰平の夢から一瞬にして地獄のどん底へ突き落としてしまった日でありました。国民の生命、自由、幸福追求を保障するわが国憲法の、しかもその記念日に、百数十名の死者、二百数十名の重軽傷者を出したということは、生命及び自由を保障せよとの憲法を踏みにじった政府国鉄が、その宿命的な証拠を国民の前にさらけ出し、その審判を求められていることであると思うものであります。遭難者の御冥福のためにも、再びこのような大不祥事件を繰り返さぬよう、関係者の強い反省を促すと同時に、責任の所在について総理及び運輸大臣に若干の質問をいたします。  きめのこまかい運行と無類の正確さを全世界に誇っていた国鉄ダイヤが、どこかで歯車が狂っていたのでありましょう。機関士信号無視、緊急事態に際しまして緊急措置を怠る等の原因が、次第に明らかにされて参っております。まさにそれは油断と気のゆるみでありまして、十河総裁国鉄職員の士気のゆるみを認めております。戦前の国鉄は、規律と責任の点においては軍隊に次ぐものでありました。戦後は、八高線、桜木町事件以来、ひんぴんと大事故を起こしております。日常接する駅員の不親切さ、小役人的態度など、事は小さいが、実はこのようなサービス精神の不足が大事故につながっていると思うものであります。たび重なるストライキ、運賃値上げ、すし詰め電車に次ぐ今次三河島惨事は、ついに来たるべきものがきたと、このような感じを持つものであります。国民の前にその実体を解剖して病根を現わし、大手術をせねばならぬときがきたものと思うものであります。  私は、本件の原因がどこにあるか、運転手や車掌がどうすれば事故防止ができたか、駅側あるいは信号係がどうすればよかったかという問題等については、すでに述べられておりますので、人命軽視の点から、総理運輸大臣に若干の質問をいたしたいのであります。  質問の第一点は、国鉄はたっとい人命を預かる重大な事業に従事しておりながら、全国鉄職員の油断であり、気のゆるみから起きたところの風潮から、このような大不祥事件を起こしたと断ずるものでございます。このたびほどの大失態に際して、ろうばいの極に達した国鉄職員の混乱ぶりと、絶えず国鉄の将来を説いてうむことなく、東海道新幹線建設に一生を託した老総裁が、涙を流してむざんな遺体の前にひれ伏す姿を見るにつけて、なぜ小さな人身事故についても同様な態度を示さなかったのであろうか。鉄道監督局の資料によれば、国鉄事故による年間の死者の数は、昭和三十五年度には千八百九十名、三十六年度上期には八百五十一名、計二千七百四十一名と発表されております。これらの事故による死亡者の一人々々に対して、今回の衝突事故に見せたような、総裁初め最高幹部の真剣かつ謙虚な気持と行動があったならば、事故の絶滅のための指導、教育訓練、保安設備の強化等に万全を期することが可能であり、大事件に至らなかったのであろうと思えば、はなはだ残念なことであります。人身事故があれば、簡単な報告を取り、その報告だけで処理し、あとは落度がないから責任なしという、まことに事務的であり、官僚的な取り扱いをしているのであります。  昨年十二月、東海道線のある駅で、子供が列車事故で死亡した事件がありましたが、駅長はその報告一本だけで実情調査もしていなかった。被害者のほうから追及され、問題が大きくなってから、初めて乗務員やホームにいた係員を調査するという状態でありました。一人ぐらい子供が死んでも、子供のほうの不注意で死んだのだから仕方がないというのが、初めの態度であったのであります。最高責任者が、乗客人命について、何を差しおいても第一義にするという真剣さがあれば、下部の者は、おのずから日常業務について真剣になってくるはずであります。  ところが、国鉄はこれとは反対に、最高責任者にこの真剣さがないから、ついに総合集約されて、今回のごとき大不祥事が起きたのであります。大きな事故がない間は関心を持たない、大きな事故にぶつかって初めて動き出す。このような人命無視の風潮が国鉄にみなぎっていることは、まことに遺憾なきわみでございます。世間では、桜木町の丸焼き事件、洞爺丸のカン詰事件といって、人命を軽視する政治のあり方について、弱い民衆の諦観的感情から諷刺をしていることを、総理運輸大臣は知っているのでしょうか。一体、これまで人身事故に対して、国鉄人命を重んずるいかなる措置をとったのでありましょうか。その点、運輸大臣に伺いたいのであります。  次に、犠牲者に対する補償の問題につきましては、先ほど総理からお話がございましたが、社会を瞠目せしめる事故とそうでないものを区別して、差をつけて支給する態度は、はなはだ非民主的であると思うものであります。いかなる事故をも通じて、公平に人命を尊重する対策を立ててもらいたいものでありますが、今回の事故に対しては、いつまでに補償を履行するのか、今後の補償に対して国鉄はどういう処置をとっていくのか、運輸大臣に明確にお答えいただきたいと思います。  最後に、私が総理に伺いたいことは、責任の問題であります。政府は、かつては浅沼刺殺事件に対しましても、ついに責任の所在を明らかにせず、うやむやに糊塗してしまったのであります。口に民主主義を唱え、いかに道義国家建設を叫んでも、最高責任者が断固として責任をとる政治が行なわれずして、何の道義国家でありましょう。民主主義の確立があり得ましょうか。恋々として、いたずらにその地位の去就に迷うことなく、失なわれた道義精神をみごとに生かしていくものこそ、真の政治家の歩むべき道であると考えます。「根深ければ枝茂し」のたとえを借りるまでもなく、責任者の一念は全体に強い影響があることを思えば、今回の責任政府及び総裁にあらねばならないと思うものでございます。国鉄総裁責任は、桜木町事件の加賀山総裁、紫雲丸事件の長崎総裁の辞任に次ぐ宿命的な問題であり、同じく責任を高齢の十河総裁に求めなければならないとすることは、あまりにも運命的かつ宿命的な悲しみを感ずるものであります。政府当局は、レールをまくらに討ち死にをする覚悟のこの総裁に、最後の責任事件処理に全力を払わせ、犠牲者遺族に対する十二分な補償を、この総裁の最後の仕事として、思う存分に果たさせてやれという人もありますが、総理に、この点及び今事件責任の所在についての明らかな態度、所信を、遺族方々の立場に立ってお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 人命を尊重すべきことは申すまでもございません。したがいまして、鉄道におきましては、従来はもちろんでございますが、今後とも安全第一でいかなければならぬと考えております。  なお、補償の問題につきましては、今回は鉄道側に過失があったことは、はっきりしておるのであります。不可抗力ではございません。こういうことから考えまして、私は、早急に誠意をもってでき得るだけのことをしなければならぬと考えております。  また、責任の所在につきましては、先ほど申し上げましたごとく、政府といたしましても痛感いたしております。具体的の事柄につきましては、事故原因を究明した後に私は善処いたしたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  27. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 総理からお答えがございましたから、私からさらに補う必要はないと思いますが、人命は、数が多くても少なくても、あるいはその地位の高下いかんを問わず、いやしくも、事、人命、人権に関する限りは、これは最高度の尊重を払わなければならないと存じます。今までの国鉄当局の扱い方は必ずしも十全とは考えられませんが、今後も一そうこの点に留意をさせて参りたい、かように存じます。  補償は、なるべく早く片づけさせたい、かように考えております。特に総理の御注意もございまするので、手厚く、そうして手落ちのないように、迅速に解決をいたすように取り計らいたいと存じております。(拍手
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————・————
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、近畿圏整備に関する決議案西川甚五郎君外三十三名発議)(委員会審査省略要求案件)、  本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって本案を議題といたします。  まず、発議者の趣旨説明を求めます。西川甚五郎君。   〔西川甚五郎登壇拍手
  31. 西川甚五郎

    西川甚五郎君 ただいま上程になりました近畿圏整備に関する決議案について申し上げます。   近畿は、西日本経済の中枢であり、広くわが国産業活動の枢要な一翼をになって、経済の進展にきわめて大きな役割を演じている。ことに、これが中核たる阪神工業地帯は、近年来、わが国経済の伸長発展とともに、ますますその重要性を加えている。   他方、近畿圏一円の外郭諸地域は、今なお多くの低開発地域をかかえ、これが開発活用について、積極的建設の方途が講ぜられていないことは、まことに遺憾とするところである。   更に又、古来わが国文化の中心たる京都・奈良・滋賀・和歌山等、文化観光都市等の整備と、これを中心とする近畿観光圏の総合的開発についても、緊急の施策を必要とするものである。   したがって阪神工業地帯の健全にして秩序ある発展を図り、これを中軸として周辺地域の一体的開発を行ない、広域経済文化圏としての近畿圏の建設を促進することは、本地方における産業文化の助長振興と住民の福祉増進をもたらすのみならず、広くわが国経済民生の発展向上に寄与するところ、けだしきわめて大なるものがあると確信する。   よって政府は、叙上の趣旨にかんがみ、この際、すみやかに近畿圏整備に関する画期的方策を確立し、これが強力な実施推進を図るため、行・財政上必要な立法その他特段の措置を講じ、もって施策の万全を期すべきである。   右決議する。  この決議につきまして趣旨説明を申し上げます。  ただいま決議案の冒頭において申しましたとおり、近畿は関東と並んでわが国経済の中枢的地位を占め、今後の産業経済の発展にきわめて重要なる役割をになっておるのであります。特に阪神工業地帯は近畿経済の中核的拠点にありまするが、近年来、わが国経済情勢の進展に伴いまして、産業、人口が集中的に激増し、用地、用水、交通、住宅、都市環境等、あらゆる面において行き詰まりを来たしつつあるのであります。この際、すみやかに都市の再開発による都市機能の正常化と、産業構造の改善等の打開策を講ずることが、きわめて緊要なる課題であります。しかるに、近畿の外郭地帯は、今なお低開発の分野が多く、いわゆるびっこ経済の様相を呈しておるのであります。今後、道路交通その他関連施設を整備し、工場等の受け入れ体制を確立いたしまするならば、阪神地区の産業人口を分散して過大都市化の弊害を除き、これが阪神工業の大なる培養源ともなり、近畿全体の総合的な開発の実をあげ得ると思うのであります。  ひるがえってわが国経済を見ましても、産業活動が大都市集中的となり、ここに人口が偏在し、地方の開発は停滞いたしておるのであります。このような経済の不均衡を打破して、均整のとれた安定経済の発展を期するため、首都圏においては首都圏整備法、その他低開発地域においても、それぞれ単独に地域開発促進法が行なわれております。ひとり近畿圏におきましては、今なお特別の立法措置がとられておりません。よって近畿圏においても独自の基本方策を確立し、総合的な施策を実施することはきわめて重要な急務であります。  さらに、京都、奈良、滋賀、和歌山等を含む近畿には、貴重な文化財、自然の景勝等、わが国屈指の文化、観光資源があります。この際、これが整備を促進することも、観光国策上、特に緊要であると思うのであります。  幸いに本年度より懸案の阪神高速道路公団の新設、水資源開発公団による淀川水系の開発、地盤沈下、高潮対策の強化等、緊急の諸事業が実施されることになりました。しかしながら、これらの事業は、近畿全体にわたる産業立地の整備、観光資源の開発の具体化と相待って初めて十分な効果をもたらすものであります。すなわち、この際、近畿住民の合言葉となっておりまする「近畿は一つ」という年来の念願にこたえ、国の施策として強力にこれを打ち出していかねばならないと思うのであります。  以上のような従来の経緯によりまして、政府は、昭和三十八年度を契機として、近畿圏整備に関する行政機構の確立、整備計画の策定、実施等につき、立法上、予算上、特別の措置を講じ、もって総合的な近畿経済圏の建設に資するとともに、広くわが国全体としての経済の発展、民生の向上に寄与するよう、万全の配慮が行われることを特に要請し、ここに院議をもって決議を行なわんとするものであります。何とぞ満堂の御賛成をお願いいたします。(拍手
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。椿繁夫君。   〔椿繁夫君登壇拍手
  33. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました近畿圏整備に関する決議案に賛成するものであります。  御説明にもありましたとおり、近畿圏は関東と並んでわが国経済の中枢的地位を占めておりますが、この地位は最近におきましては若干ゆらぎつつあるのであります。関西におきましては、現在の地盤沈下が大問題となっていますが、これには二つの意味がございます。一つは関東に対して関西の経済的地盤が衰えつつあるという心配であり、他の一つは、大阪、尼ケ崎等に見られるように、商工業中心地の地面が低下して、その立地を危うくしてきているということであります。  この地盤沈下の原因を考えまするに、関西の経済が古くから発達していたにもかかわらず、その発達が全く無計画、無方針でありまして、それが近代的な技術革新にそぐわないものがあったからと思われ、ここにただいまの決議案に見られるように、近畿圏の整備を必要とするに至ったわけであります。  とりわけ、阪神地帯は近畿圏産業の中核をなすにもかかわらず、その地面が年々沈下して、商工業の地盤をなくすかもしれない状態にあり、このまま放置すれば近畿圏そのものの地盤が失われるのであります。したがって、この地帯への豊富な工業用水を供給することが何よりも先決条件でありまして、さきに成立した工業用水改正法、建築用地下水採取規制法を運用して地下水のくみ上げを強く抑制し、現在大阪だけでも年間一億トンもくみ上げているのをすみやかにやめさせ、そのかわりに工業用水道を急いで増強すること、そのためには、淀川水系のみでなく、保津川、木津川、紀ノ川等の河川を総合的に開拓して、十分なる水を供給することが焦眉の急というべく、今後の阪神の工業発達を考えますと、その用水供給目標は二億数千万トンにならねば十分でないと思うのであります。すなわち、近畿圏は、既成の都市に豊富なる水を与えて、高潮にも豪雨にも安心して住め、安心して産業に従事できる都市とすることにあります。  次には、近畿圏一帯が、日本のみならず、世界に冠たる一大観光地帯であるにもかかわらず、これがいたずらに歴史上の名所古蹟に限られているということであります。奈良、京都、滋賀、和歌山の文化財、景勝の地を見て、阪神へ参りますと、そこには雑然たる産業都市が地盤沈下に悩んでいるのが現状でありますから、これを前にも申しましたとおり、美しい、りっぱな都市に更生させることがまず必要であります。また、近畿には幾多の自然美がありながら、それが分断されておりまして、裏日本と表日本、山岳地方と海岸地帯、すべて連絡がつかない状態にあります。これを連絡するためにも、前に申し述べました水資源開発は大きな貢献となるのでありまして、自然美と人工の美とを融合開発するところに近畿圏の将来がかかって存すると思うのであります。それはまた、近畿圏にある低開発地域の開発にもつながるものであると確信するものであります。  世間には、近畿圏は先進地帯であるとの考えがございますが、事実は全く錯覚でありまして、このまま放置するときは荒廃地帯になりかねないので、この際、その整備に関する決議案が上程されたこと、まことに機宜を得たるものと存じ、ここに衷心より賛成するとともに、政府は、この機会に近畿圏の現状を見直して、特に水を中心とする近畿の総合計画に断固たる処置をとることを要請して、賛成討論とする次第であります。(拍手
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  ただいまの決議に対し、藤山国務大臣から発言を求められました。藤山国務大臣。   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御可決になりました近畿圏整備に関する決議につきましては、政府といたしましても、その御趣旨に沿いまして、その御趣旨の実現に至るよう努力して参りたいと存じております。(拍手)    ————・————
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、鉄道敷設法の一部を改正する法律案、  日程第三、船員法の一部を改正する法律案、   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長村松久義君。   〔村松久義君登壇拍手
  39. 村松久義

    ○村松久義君 ただいま上程になりました鉄道敷設法の一部を改正する法律案ほか一件に関する運輸委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、鉄道敷設法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本改正法律案は、わが国経済の発展に寄与するため、別表予定の鉄道線路に栃木県上三依より西那須野に至る鉄道ほか十一を追加しようとするものであります。  委員会の審議内容については、会議録により御承知願いたいと思います。  質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。   —————————————  次に、船員法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本改正法律案のおもなる点は、政府の説明によりますと、船員法適用範囲の拡大、船舶の航行の安全確保、並びに労働条件の適正化に関する規定の整備の三点でありまして、労働条件の適正化につきましては、衛生管理者制度、行方不明手当制度、予備船員に対する解雇の予告制度の創設を初め、労働時間、解雇制限等について規定の整備を行なおうとするものであり、いずれも船員中央労働委員会の答申の趣旨に沿うものであるとのことであります。  委員会におきましては、本法適用範囲及び船員の労働時間等について質疑が行なわれましたが、詳細は会議録について御承知を願います。  質疑を終局し、討論に入りましたところ、大倉委員より、総トン数二十トン以上の漁船にも原則として船員法を適用すること、ほか、船員の労働時間等、労働条件の整備改善に関する五項目について、各派共同提案として、附帯決議を付し、本法案に賛成の旨の発言がありました。続いて、中村委員、天埜委員及び加賀山委員より、それぞれ大倉委員提案の附帯決議案を共同提案として付し、本法案に賛成の旨の意見の開陳がありました。  討論を終わり、直ちに採決の結果、本法律案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。なお、大倉委員提案の附帯決議案も、全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  41. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。    ————・————
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第四、栄養士法等の一部を改正する法律案社会労働委員長提出)を議題といたします。  まず、提出者の趣旨説明を求めます。社会労働委員長高野一夫君。   〔高野一夫君登壇拍手
  43. 高野一夫

    ○高野一夫君 ただいま議題となりましたる栄養士法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由を説明いたします。  まず、栄養士法の一部改正について説明いたします。  栄養士法の改正につきましては、現行の栄養士の免許についてはそのままといたし、新たに管理栄養士の制度を設けることといたしたことがそのおもなる内容であります。  最近、社会生活の発展向上に伴いまして、栄養の指導に関する業務であって複雑または困難なものがますます増加の傾向を示しているのでありますが、このような業務につきましては、栄養士のうちでも、特に多年の経験を有する者とか、または高度の知識と技能を修得した者が、よくその職責を全うして参ったのが実情であります。この点にかんがみ、かかる業務を行なう適格性を有する栄養士を管理栄養士として登録する制度を設けますことは、まさに社会の要求にこたえるものと考えられるのであります。したがいまして、この際、管理栄養士制度を設けることといたし、これに伴いまして、これが登録資格、管理栄養士試験制度の実施及びその受験資格等につきまして、所要の規定を設けることといたしたのであります。  管理栄養士の登録資格を有する栄養士といたしましては、厚生大臣の行なう管理栄養士試験に合格した者であるか、または修業年限が四年である栄養士養成施設うち、学校にあっては文部大臣及び厚生大臣が、その他の養成施設にあっては厚生大臣が、それぞれ指定したものを卒業した者といたしたのであります。これらの施設の指定は、管理栄養士たるに必要な知識及び技能を修得するに必要な課目と修習時間を有するものとして政令で定める基準によって行なうものとしているのであります。  管理栄養士試験は、毎年少なくとも一回、栄養の指導に関する高度の専門的知識及び技能について行なうこととし、その受験資格は、栄養士にして修業年限が二年である栄養施設を卒業した者にあっては、厚生省令で定める施設において二年以上栄養の指導に従事した者、修業年限が三年である養成施設を卒業した者にあっては、同様の施設において一年以上栄養の指導に従事した者、修業年限が三年である養成施設であって、学校にあっては文部大臣及び厚生大臣が、その他の養成施設にあっては厚生大臣が、前述の基準に準じて政令で定める基準により指定したものを卒業した者または修業年限が四年である養成施設を卒業した者といたしたのであります。これは、栄養士が、その卒業した栄養施設について、修業年限の長短または同一の年限であっても、その課目と修習時間に差があることにかんがみ、これに対応して実務経験年数につき多少の差を設け、相互の均衡をはかることといたしたからであります。   —————————————  次に、栄養改善法の一部改正について説明いたします。  現行の栄養改善法では、栄養士を置いていない集団給食施設におきましては、その給食につき都道府県等に置かれる栄養指導員の指導を受けなければならないこととなっているのであります。ここに集団給食施設と申しますのは、特定かつ多数の者に対して継続的に一定数以上の給食を行なう施設をいうのでありますが、国民の栄養改善が強く要望される今日は、かかる集団給食施設には、単に栄養指導員の指導を受けるべしという段階を一歩進めて、その施設に栄養士を置き、また、集団給食施設中でも特に多数の給食を行なう施設に、これらの栄養士のうち少なくとも一人は管理栄養士でなければならないようにすることが望まれるのであります。この場合、これら集団給食施設について栄養士の必置を規定することが望ましいのでありますが、学校給食関係等における栄養士の設置状況等から見ても、必置を規定するについては、なお多少の時日をかすことが妥当と認め、この際においては、一応集団給食施設における栄養士の設置及び特定規模の当該施設における管理栄養士の設置につき努力規定とするにとどめたのであります。  次に、都道府県等に置かれる栄養指導員たるべき者の資格につきましても、管理栄養士の制度が設けられたことに伴い、従来、栄養士の資格とあった部分を管理栄養士の資格と改めました。ただし、すでに栄養指導員であった者については、直ちにその地位を失うものではないとの救済規定を設けております。  最後に、今回の改正前の制度によってすでに栄養士となっている者等が五年の実務経験を有することとなったときは、管理栄養士試験の全部または一部を免除することができること等の経過措置を講じました。  なお、栄養士法の改正部分は昭和三十八年四月一日から施行し、栄養改善法の改正部分は昭和三十九年四月一日から施行することといたしました。  終わりに、本法案は予算を伴いますので、委員会において、国会法第五十七条の三により、内閣意見を求めましたるところ、厚生大臣より、政府としてもやむを得ないものと認めるとの意見の開陳がありましたことを申し添えます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。(拍手
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————・————
  46. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第五、農地法の一部を改正する法律案、  日程第六、農業協同組合法の一部を改正する法律案、   (いずれも第三十九回国会内閣提   出、第四十回国会衆議院送付)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長梶原茂嘉君。   —————————————   —————————————   〔梶原茂嘉君登壇拍手
  48. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ただいま議題となりました二つの法律案について、委員会におきまする審議の経過と結果を報告いたします。  まず、農地法の一部を改正する法律案は、第一に、主として自家労力で経営ができる農家に対し、農地の権利を取得することのできる最高面積の制限を緩和し、第二に、農業生産法人を法制化し、農業生産法人に農地の権利の取得を認め、あわせて創設農地の貸付並びに小作地の転貸及び保有限度について特例を設け、第三に、農業協同組合が行なう農地の信託事業に関し、これが権利の移動について許可を要しないこととすることをその骨子とし、このほか、国が所有する開拓不要地の売り戻しの対象を一般承継人にも及ぼすこととし、また、農業生産法人の法制化に伴い、関係法律に所要の改正を加えたものであります。   —————————————  次に農業協同組合法の一部を改正する法律案は、第一に、農事組合法人を制度化し、農業協同組合の正組合員の資格を与え、これが事業、役員、設立、運営、管理等について規定し、第二に、信用事業を行なう農業協同組合が、組合員の委託によって農地の貸付または売り渡しについて信託の引き受けを行なうことができることとし、第三に、農業協同組合及び連合会について、組合員の資格に関する規定の整備、員外利用の制限の緩和、剰余金の配当方法の改正、総会における議決権及び選挙権の代理議決の制限の緩和をはかることとした等であります。   —————————————  委員会におきましては、これらの両法律案を一括して審議し、農事組合法人の性格、組織、構成員、指導方針、農業協同組合活動に及ぼす影響、農協の現状及びそのあり方、農協及び農業生産法人に対する課税、農地の価格とその評価基準、農業資産の相続による細分化防止、農業の自立経営と協業、農業構造改善事業の基本方針、農業生産法人の適格要件、農地信託制度の実施方法等、諸般の事項にわたって質疑、検討が行なわれたのでありますが、これが詳細は会議録に譲ることを御了承願いたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入り、両法律案に対し、安田委員から反対の意見が述べられ、櫻井委員から賛成の意見が述べられ、あわせて、農地の流動化を促進するための金融措置、並びに農事組合法人の育成と農協との調整、及び、両者に対する法人税等の減免と融資に関し、政府の善処を求める趣旨の附帯決議案が提案せられ、続いて天田、千田及び森の各委員から、それぞれ賛成の意見が述べられました。  討論を終わり、両法律案を順次採決の結果、いずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定されました。  また、櫻井委員提案の附帯決議案も多数をもって委員会の決議とすることに決定され、三木農林大臣臨時代理から、その趣旨に沿って十分検討を加え、目的達成に遺憾なきを期したい旨発言がありました。  右報告いたします。(拍手
  49. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 両案に対し討論の通告がございます。発言を許します。大森創造君。   〔大森創造君登壇拍手
  50. 大森創造

    ○大森創造君 私は、ただいま議題となりました農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案の二法案について、日本社会党を代表し、反対の意思を表明せんとするものであります。  ただいま委員長の報告にもありましたとおり、両法案は、農業構造改善を具体化するための法案でありまして、農業基本法案の内容をなす重要な案件であり、政府経済政策及び農業政策などの基本的心がまえと今後の姿勢を表わしているものでございますが、その内容について見れば、多くの問題点をはらんでいるのであります。  わが党は、昨年農業基本法案の審議にあたって、共同経営の推進、農産物価格支持制度の確立などを骨子とする独自の基本法案を提案いたしましたが、自民党の暴挙によって政府案の強行成立がなされ、今日に至っていることは、御承知のとおりであります。しかし、その政府の農業基本法は、当初企画していた、農業生産性を高め、農業従事者と他産業従事者との所得の均衡を実現するという根本理念とは、およそ無縁のごまかし法であったことが、目来わずか一カ年しかたたない現在ですら自然に暴露され、まさにわれわれの当時指摘したとおりの事態に相なっておりますことは、御承知のとおりであります。今国会に提出されました政府自身の手になる年次報告においてさえも、農業と他産業との所得の格差はいよいよ増大し、農民の多数は暗中模索、政府の言うことを信じていては、ばかを見るだけだという、苦い過去の体験を思い起こしつつ、政治への不信を高めつつあります。このことは、来たる七月一日予定されております参議院選挙において、国民の審判の前に如実にさらされるものと確信する次第であります。  すなわち、わが党が両法案に反対するまず第一の理由は、他産業に転化して生活の安定向上を期し得る何らかの確たる保障もないままに農村からほうり出されるような貧農切り捨て政策は、そのまま人道問題でさえあり、構造改善どころが、無慈悲きわまる悪法でなくて何であろうかということであります。つまり、構造改悪を一そう推し進めるのに役立つための法案にすぎないことが察知されるからであります。  第二の反対理由は、今回の改正案は、戦後わが国経済、文化の基礎をなした農地改革の成果を大きく後退させるのみならず、現にやかましい論議を呼んでいる旧地主に対する農地補償問題と密接に関連している事実を、見のがしてはならないのでありまして、現行農地制度を根底からくつがえす突破口となる危険すらあるのであります。現行農地法は、昭和二十七年、従来の二法及び一政令を改正制定されたものでありまして、農地改革の成果を維持し、さらにこれを発展せしめることをその重要な建前としております。しかるに、ここ数年来、農地の不法転用、やみ小作料などの違反事例は枚挙にいとまなく、農地改革の成果が地すべり的に崩壊しつつあるととは、われわれが最も遺憾とするところであります。ところが、ここに、農地法とともに、農業共同組合法の改正を提案されておりますが、これは新たに農地信託制度を設けることによって、事実上不在地主を容認するほか、一般農地の所有制限を緩和して、行く行くは、またしても大農の発生を認めることの危険性を持つものであります。さらにまた、この両法案の施行は、時間の推移とともに、政府の意図するところとは反対に、結局は農民の階層分化とその格差をさらに増大する結果になるであろうことは、予測にかたくありません。したがって、もし万一この両法案が不幸にして成立するがごときは、歴史的なわが国農地改革の成果が著しくそこなわれ、ひいては他の反動政策と相待って農村の民主化を大きく後退せしめる結果となりましょう。  次に、政府は、昭和三十七年度予算に、農地改革によって買収された旧地主に対して、調査会の結論を待たず、国民金融公庫を通じて融資するために、二十億円を計上したのでありますが、この趣旨たるや、左顧右眄して首尾一貫せず、われわれとともに、良識ある国民のとうてい納得しがたいところであります。さらに、この間の反動的意図の経緯を一そう露骨に端的に証拠づけるものとして、旧地主の被買収農地そのものを補償せんとする策謀があるのであります。これまで政府は、農地補償は一切しないと言明してきました。このことは、天下周知の事実であります。しかるに、選挙を前にして、政府は地主勢力に突き上げられ、よろめきによろめき、ついにその圧力に屈し、今やその実施の決定に迫まられている事実を見るとき、表向きは何とうまいことを言おうとも、一皮はいだ政府、自民党の姿は、結局党利党略であります。万事が露骨な選挙対策でございまして、政治の姿勢を正すなどとは毛頭言えた義理ではないと思われるのであります。(拍手)  しかして、この二法案が、この旧地主の農地補償に新たな根拠を与えることとなった事実を指摘しないわけには参りません。今回の改正によって、政府は農地信託制度を設け、農地の流動化をはかろうと企図しているが、流動化は促進されるどころか、これにも多くの問題を残すことになりそうでございます。政府、自民党が、農村の構造改善のため、農地の流動化と離農促進をまじめに考えているのであれば、そのためのみの金融機関を設置し、低利長期資金の供給の道を講ずるとともに、二重価格制に踏み切るべきものであり、この二法案の改正などによる中途半端な彌縫策などでは、いわゆる自立経営農家の百万戸創設など、単なる口頭禅に終わるであろうことは、火を見るよりも明らかであり、烱眼な河野農林大臣は、この間のいきさつをいみじくも察知して、農業基本法審議のおり、池田総理、周東前農林大臣などが得々と強調していた、いわゆる所得格差の是正、経営規模の拡大による自立経営農家の育成のことなどは、いつの間にかほおかむりいたしまして、口を閉ざし、最近では適地適産による主産地形成にすりかえようとしていることは、国会と農民を欺瞞するもはなはだしく、許しがたき罪悪と言わなければならないのであります。(拍手企業経営による自立経営農家の育成、また、あらしのごとき貿易自由化にも耐え得るための農村の構造改善、その構造改善のもとをなす農地の流動化は、今提案されている農地の農協への信託制度のごとき中途半端なやり方では、とうてい望むべくもありません。農地の信託制度は、決して構造改善のための大局的な施策ではなく、おためごかしの、不徹底な便宜的な立法にすぎないのでございます。経済団体である農協が、純粋な意味での信託をなし得るかどうか、貸付、売り渡し信託のいずれの場合でも、委託者と受託者との調和が農協を媒介にしていかにして可能か、また農事組合法人に土地を出資する場合の農地の評価をいかにするか、また農事組合法人と農協の関係についても、いかなる工合に将来発展するのか予断を許さないなど、わずかな委員会審議を通じても疑点は数々出て参っているのであります。政府みずからも委員会の答弁において、わが国農民にはこの制度は、なじみもなく、政府自体、自信を持ち得ず云々と、率直に認めている場面もあるのでございます。不徹底な内容であるのみならず、旧地主や反動政治家に、被買収農地の補償請求の口実をすら与えるごとき副作用を伴う悪法にすぎぬと申し上げたいのであります。  さらに重大なことは、農業生産法人のそもそもの発生が、農家への過酷な課税問題の解決からなされたはずなのに、農事組合法人に対する課税問題が何も解決されておらず、むしろ重税となることすら予想されるからでございます。さらに一番農村が望んでいるであろう施設法人を作ることができないほか、行く行くは、自立経営企業農業に持ち込まれ、資本支配の方向に行くであろうことが予想されるからでございます。  以上、私は、反対の理由として、主たる点を数点あげましたが、この二法案は、農業の近代化と農民の福祉増進に役立つものではいささかもなく、反対に、農村の民主化を妨げ、農民の窮乏に拍車をかける、似て非なる悪質なる反動立法であって、われわれの断じて容認し得ないところでございます。  最後に一言申し上げたいことは、わが党の農業に対する公開質問状に対する政府並びに自民党の無責任態度についてであります。わが党は、三月三十日、池田総理並びに池田自民党総裁に対して公開質問状を発し、四月五日までに回答を要求したのでございますが、いまだに何ら回答されないことは、まことに遺憾しごくであります。政府、自民党が、参議院選挙を前にして、農政に全く自信を喪失したことをみずから暴露しているというほかはないのでございます。現下の急務は、農政の姿勢を正すことであることを、政府、自民党に警告し、私の両法案に対する反対討論を終わる次第でございます。(拍手
  51. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。    ————・————
  53. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第七、昭和三十四年度一般会計歳入歳出決算昭和三十四年度特別会計歳入歳出決算昭和三十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十四年度政府関係機関決算書、  日程第八、昭和三十四年度国有財産増減及び現在額総計算書、  日程第九、昭和三十四年度国有財産無償貸付状況計算書、  日程第十、昭和三十四年度物品増減及び現在額総計算書、  以上四件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。決算委員長相澤重明君。   〔相澤重明君登壇拍手
  55. 相澤重明

    ○相澤重明君 ただいま議題となりました決算四件につきまして、決算委員会における審議の経過並びに結果の概要を報告申し上げます。  まず、昭和三十四年度一般会計歳入歳出決算昭和三十四年度特別会計歳入歳出決算昭和三十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十四年度政府関係機関決算書について申し上げます。  本件は、昭和三十五年十二月二十七日、国会に提出されまして、今回審査を終えたものであります。本件につきましては、昨年五月十五日から本年五月五日までの間に十一回の委員会を開き、さらに三班の委員派遣によって現地調査を行ない、慎重審議を重ねたものであります。その詳細は会議録によってごらんを願います。  この際、決算の審査方針について一言申し上げます。決算の審査は、予算執行の実績を批判する重大な使命を持っておりますことにかんがみまして、本委員会におきましては、その効果的な審査の方法について検討していたのでありますが、今回、決算の審査方針について結論を得るに至ったのであります。すなわち、決算の審査が、従来、会計検査院の検査報告に傾き過ぎていたのを改めまして、予算及び関係法律が適正にかつ効率的に執行されたか、また、その実績はどうなったかの批判重点を置きますよう、審査の方法を改めるとともに、審査の結果を十分に行政に反映させる方策を講ずることであります。本委員会は、この方針のもとに、一そう審査効果の万全を期するものであります。  次に、本件決算審査の結果につきまして、内閣に対し警告を行ない、財政処理の改善を促すことが必要であると認めた事項は、予算編成の仕方の改善を求めるもの、国庫補助金の合理化に関するもの、食糧管理特別会計の赤字に関するものなど十一項目に及んでおりますが、これは審査報告書に掲げてありますので、ごらんを願いたいと思います。  ただ、特に申し述べたいことは、総理の出席を求めて締めくくりの総括質疑中、「明治憲法制定にあたり、決算提出方式にかかわる論議の経緯、新憲法の財政民主主義強調の精神に基づき、条理の上から報告方式を捨て議案方式を採用すべし」との主張に対し、総理より「議案方式をとることは、現行憲法の解釈の点及び条理の上からは、これを認め得るのでありますが、議決方式をとった場合、両院でどういうふうになっていくかという問題など十分検討したいと思います」との答弁がありました。  委員会は、五月五日質疑を終わり、直ちに討論、採決の結果、全会一致をもって審査報告書のとおり異議がないものと議決した次第でございます。   —————————————  次に、昭和三十四年度国有財産増減及び現在額総計算書、並びに昭和三十四年度国有財産無償貸付状況計算書の二件につきましては、異議がないものと議決いたした次第でございます。   —————————————  次に、昭和三十四年度物品増減及び現在額総計算書につきましても、異議がないものと議決いたした次第であります。  以上をもって報告を終わります。(拍手
  56. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  四件全部を問題に供します。四件は委員長報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  57. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって四件は委員長報告のとおり決せられました。  本日はこれにて延会いたします。  次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時十八分散会