○近藤信一君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました自民、社会、民社三党各
提案の
中小企業基本法案について、若干の質問をいたすものであります。
まず、自民党
提出の
法案でありますが、
前文と二十二条からなる、まことに簡素な
法案であります。私は、簡素であるからといって、お粗末な
法案だとは申しません。簡素でしかもよい
法案のあることは承知しているのでありますが、この
法案に至りましては、まことにお粗末で、月足らずの感を免れないものと思うのであります。わが社会党におきましては、かねがね
中小企業問題に関しては熱心に研究もいたし、対策の立法にも心がけて参りました。
中小企業庁を
設置したのも、ほかならぬわが党
内閣の時でありました。自民党でも、もちろん
中小企業をないがしろにして今日の
経済政策を談ずることはできないので、それ相応の研究をしてこられたとは思います。これを認めるに決してやぶさかではありませんが、何と申しましても、自民党が意を向けているのは大
企業であり、それだけに、
中小企業対策は二の次にならざるを得ないのでありまして、今回の
基本法案にいたしましても、わが社会党がいち早く三月の十九日に
提案して、やむを得ず自民党でも、月足らずではあるが、四月十三日の金曜日にこの
法案を
提出されたようなわけであります。
中小企業対策について、自民党がわが党に追随してきている事実は、
中小企業庁
設置法しかり、また百貨店法しかり、下請代金支払遅延等防止法しかりで、数え上げればきりがありません。自民党は、いやいやながらついてきたと言っても過言ではないのであります。そのきわめてよい実例がここに示されたわけで、
基本法案についても、今回は
提出を見合わせたかったというのが本意であったと思いますが、それでは
中小企業の諸君に対し申しわけない仕儀となるし、参議院選にも不利となるという判断から、何とか形だけでも
提出しておこうという
考えから
提出されたものと思います。したがって、はたして通過
成立を望んでいるのかどうか、その真意はすこぶる怪しいのでありまして、この点をまず自民党の総裁である池田総理に伺いたいのであります。総理の御心底の中には、
提出しておけばよいのであって、万が一にもこれが
成立するようなことがあっては困る、そういうようなお
考えでおられるのじゃないかと思います。総理のこの
法案に対する愛着のほどを知りたいと思うが、この点はいかがですか。
同時にまた、総理にお伺いいたしたいのは、自民党の
法案の中にも、社会党、民社党のそれにも、
政府は
中小企業対策に関し
年次報告を
提出しなければならないと書いてあります。これに対して、閣僚の中には、そんな義務を課すると、
中小企業を所管する大臣にはなり手がないといって、反対した者があると聞いております。ところが、また別の方面では、
中小企業審議会の答申及び意見を尊重しなければならないという条文があるので、こんな条文があると、先般の選挙制度
審議会の二の舞をするから、これは入れることができないと主張した者があるということであります。ところが、これも今度の
法案では生きています。この二点だけでも、この
法案は
政府や党の幹部の意に沿わないという意味で、鬼っ子であると思いますが、それでも総理はこの
法案の
成立を希望されるのか。社会党案では意見尊重という言葉がありません。その点では社会党案に御賛成なさったほうがよろしいかと思いますが、この点をお伺いいたします。
次に、通産大臣にお伺いしたいと思います。通産大臣は、
基本法案を
政府提出となすべき直接の
責任者でありまして、この
国会に
提出しようとしてすでに検討を進めております。
中小企業基本政策審議会室を作って研究していると聞いているのであります。その進展状況はどのように進んでいるのか。現に自民党案が
提出され、社会党案も民社党案も
提出され、そのいずれが
成立しても、もはや
政府案
提出の余地がないのではないかと思います。したがって、
政府のなすべきことは、この
基本法案に関連する諸
法案の立法に精力を集中すべきであると思いますが、この点はどうか。それとも、これら各党の案はいずれも日の目を見ないものとして、
政府の
基本法案を作ろうとしておられるのか。それでは全くばかにした話で、同じ自民党に属しながら、同僚議員の苦心のほどは——実はあまり苦心したとは思わないが、その御苦心の
法律案をみずから月足らずの
法案であると認定するようなものであります。通産大臣は、この
法案の
提出前と
提出後とで、省内の立案作業に対しどんな指示を与えてこられたか。これが実は大臣の自民党案に対する熱意を示す尺度ともなるので、お伺いしたいのであります。
次に、自民党案の
提出者に御答弁をわずらわしたいのでありますが、その第一点は、自民党案では大
企業の偏重の伝統がぬぐい切れないのではないかということであります。その一つは、
中小企業の
定義であります。自民党案でも民社党案でも、
工業を例にとって申しますと、
資本金五千万円以下の会社並びに常時使用する
従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、
資本金五千万円以下であれば
従業員がどんなに多くてもよいし、また、
従業員が三百人以下であれば
資本金は一億でも十億でもかまわないという建前であります。最近の
日本経済の
成長につれて
中小企業も相当に大きくなっていることは事実でありますが、そこまで
中小企業の
範囲を拡張するのはどうかと思う次第であります。私
どもも
中小企業の
成長を認めないわけではなく、
成長していくことは大いにけっこうですが、ある程度大きくなりましたならば、
中小企業という特別のワクの中でなく、別個の対策を講ずべきものと
考えているわけでございまして、したがって、社会党案が、
資本金三千万円以下で、しかも
従業員三百人以下としている。すなわち、三千万円以下と三百人以下という
二つの
条件を兼ねていなければ
一般に
中小企業とはみなさないというのは、
中小企業対策をできるだけ小さいほうに厚くしようとするからであります。ここに三百人以下、かつ三千万円以下としたところは、たとい三百人以下であっても、
資本金が五億にも十億にもなっていて、優に大
企業と見てよいような
企業もあります。ことに最近のようにオートメーションの
工業が多くなると、
資本は膨大だが
従業員はきわめて少ない
企業があります。そういう
企業は大
企業と見ないほうが適当であるという
考えに基づいていると思うのであります。私の見るところでは、
資本金が少なくてそれだけに
従業員を多くしている
企業、そういうところのほうがかえって
中小企業的な性格を持っているので、そこで
資本金額を少なく
規定したのだろうと思います。ところが、大きな
企業もできるだけこれを
中小企業として扱うような建前になっているのが自民党案であります。こういう
考え方は、
事業分野の
調整についても出ております。自民党案では、
調整に関する
施策を講ずるだけであります。これではたして大
企業の不当なる進出を押えることができるかどうか、まことに疑問でありまして、その
調整の
手段はいずれ関連
法案において処置するというのでありましょうが、もし真に
調整の目的を達しようとするならば、社会党案にある
中小企業調整委員会のような
機関を
考えなければなりません。そこまで徹底するだけの御用意があるかどうか。ここでも
中小企業育成の意図が希薄であるという非難は免れないと思う次第であります。これは自民党が、従来から大
企業に偏重し、それの保護助長と矛盾しない
範囲で
中小企業対策を
考える伝統的な思想の一端を露呈していると見られるのであります。この点をどのように
考えておられるのか、お尋ねいたします。
第二点として伺いたいのは、
法案そのものがあまりに抽象的で具体性が乏しいことであります。簡素なことはけっこうですが、このように単なる宣言
規定だけですと、いかに
政府に義務を課しても、
政府は表面だけかしこまって拝聴して、実際には何もしないことが多い。これは
国会で幾たびも経験していることであります。
中小企業対策ほど
国会で決議の行なわれたものは例が少ないと思うのでありますが、それが抽象的であるためにいつも決議倒れになって、
政府はたいした
施策をいたしません。だからこそ社会党案は、一々具体的に
政府のなすべきことを義務づけているのだと思うのであります。自民党としては、月足らずの
法案に具体性を盛ることは間に合わなかったのだと思いますが、それともそういう
具体策をお持ちなのかどうか。その
具体策はどんなもので、どう実現していこうとするのか。この点をお伺いいたします。
第三点は、自民党案には
中小企業省の
設置がぼかしてありますが、自民党の
提出者は、
法案の附則第三項がどんな形で実現することを希望されておられるのかということであります。わが党は、すでに
中小企業庁を
設置した、これを省に昇格させようとしています。やはり専任の大臣がいないと、閣議での発言力もないし、
中小企業対策は置き去りにされる危険があります。私
どもは、決して大臣や役人の増加を望むものではありませんが、
中小企業者や
労働者のように、
資本主義
経済で弱い地位に置かれる者を代弁する
機関は絶対必要でありまして、
中小企業省の
設置を重要な
政策として、別に
設置法案を用意したわけであります。聞くところによれば、通産大臣は
中小企業省案に賛意を表しておられないとのことでありますが、この点、
提出者並びに通産大臣はどういうお
考えをお持ちになっているのかお伺いいたします。
次に、社会党
提出の
基本法案でありますが、これは自民党案と反対にすこぶる膨大なもので、しかも、
中小企業組織法案と
中小企業省設置法案の
二つが三位一体として
提案されており、
内容も具体的にできているので、ここでは簡単に三点ばかり質問しておきたいと存じます。
その第一点は、この大きな
法案に対して
前文がない。自民党案も民社党案も、農業
基本法のまねをして、美文調の
前文なるものをつけております。これは単なるお飾りにすぎないと思いますが、あえてこれを省いた
理由は何ゆえでございますか、お尋ねいたします。
第二点は、社会党案は、
国民経済の二重
構造を解消することを目的としております。第一条にも第二条にも出ています。ただ、今の
提案理由では「いわゆる
国民経済の二重
構造を解消して、
経済の
民主化を実現する」と申されましたが、二重
構造という文字はまだ熟さない言葉でもあり、人によってその解釈がまちまちでありますから、この際、二重
構造の解消ということについて
提出者はどのように
考えておられるのか、御
説明願いたいのであります。
第三点は、
法案の第四条であります。これは二重
構造とも
関係があるとも思われますが、第四条では、
中小企業者、
労働者及び農民の三者を「対立させるようなものであってはならず、これらの者をともに
向上させるように」と書いてありますが、私
どもは、これら三者を対立させるように仕向けてはならないことは、あまりにも当然過ぎるほどのことであると思います。けれ
ども、特にこの条文を入れなければならないような
事情があるのかどうか。実はこのような一条は、他の
二つの
法案には全くないので、社会党案を特に特徴づけているのではないかと存じて、この点をお伺いいたします。
最後に、民社党案であります。これは自民党案ほど簡素でもなく、社会党案ほど具体性を持たない、いわゆる中間的なものでありまして、しいて申しますれば、
同業組合なる構想を持ち出していることが変わっていますが、この
同業組合の
事業を見ますると、大体、今度
改正される
団体組織法の商工
組合と似たり寄ったりのもののように思われます。そこで、はたして商工
組合の名称を変えただけのものかどうか。そしてまた、昔
わが国にあった重要物産
同業組合とどう違うのか、この点をお伺いします。
以上のほか、問題点は幾つかございますが、いずれ詳細は委員会に譲ることにいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔国務大臣池田勇人君
登壇、
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