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1962-04-25 第40回国会 参議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十五日(水曜日)    午前十時四十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程第十八号   昭和三十七年四月二十五日    午前十時開議  第一 中小企業基本法案(衆第四   二号)、中小企業基本法案(衆第   二四号)及び中小企業基本法案   (参第一〇号)(趣旨説明)  第二 電波法の一部を改正する法   律案(第三十九回国会内閣提出)  第三 原子力委員会設置法の一部   を改正する法律案内閣提出、   衆議院送付)  第四 国民年金法の一部を改正す   る法律案内閣提出、衆議院送   付)  第五 石炭鉱業合理化臨時措置法   の一部を改正する法律案内閣   提出衆議院送付)  第六 産炭地域振興事業団法案   (内閣提出衆議院送付)  第七 鉱山保安法の一部を改正す   る法律案内閣提出、衆議院送   付)  第八 首都圏既成市街地におけ   る工業等制限に関する法律の   一部を改正する法律案内閣提   出)  第九 首都圏市街地開発区域整備   法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第一〇 船舶職員法の一部を改正   する法律案(第三十九回国会内   閣提出)  第一一 国際観光ホテル整備法の   一部を改正する法律案内閣提   出、衆議院送付)  第一二 大蔵省設置法の一部を改   正する法律案内閣提出、衆議   院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 中小企業基本法案  (衆第四二号)、中小企業基本法案  (衆第二四号)及び中小企業基本法   案(参第一〇号)(趣旨説明)  一、日程第二 電波法の一部を改正   する法律案  一、日程第三 原子力委員会設置法   の一部を改正する法律案  一、日程第四 国民年金法の一部を   改正する法律案  一、日程第五 石炭鉱業合理化臨時   措置法の一部を改正する法律案  一、日程第六 産炭地域振興事業団   法案  一、日程第七 鉱山保安法の一部を   改正する法律案  一、日程第八 首都圏既成市街地   における工業等制限に関する法   律の一部を改正する法律案  一、日程第九 首都圏市街地開発区    域整備法の一部を改正する法律   案  一、日程第十 船舶職員法の一部を   改正する法律案  一、日程第十一 国際観光ホテル整   備法の一部を改正する法律案  一、日程第十二 大蔵省設置法の一   部を改正する法律案     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 諸般報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、中小企業基本法案(衆第四二号)、中小企業基本法案(衆第二四号)及び中小企業基本法案(参第一〇号)(趣旨説明)  三案について、国会法第五十六条の二の規定により、発議者から順次趣旨説明を求めます。衆議院議員首藤新八君。   〔衆議院議員首藤新八登壇拍手
  4. 首藤新八

    衆議院議員首藤新八君) 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました中小企業基本法案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  わが国中小企業者が、鉱工業生産拡大商品流通円滑化海外市場拡大等を通じ、国民経済発展国民生活の安定とに寄与して来た事情については、今ここにあらためて申し上げるまでもなくすでに各位の十二分にご承知のことと存じます。私は、このような中小企業者が、今後も、自由にして公正な競争原理を前提とする近代自由経済の中にあって、変わることなくその重要性を維持し、かつ施策のよろしきを得るときは、旧に倍する成長を記録することもさして難事ではないと確信するものであります。  しかるに、わが国中小企業者の多くは、その成長過程において、諸般事情から、資本蓄積は進まず、経営基盤は弱く、機械設備等老朽化にもおおいがたいものがあります。このような中小企業者をこのままに放置するときは、中小企業者と大規模事業者との間の生産性所得格差は、今日以上に拡大するばかりでなく、わが国経済高度成長計画にも多大の支障を来たすものと、深く憂慮いたしておる次第であります。いわゆる生産性格差の存在に代表される中小企業問題をこの際早急に解決することは、まさに、公共福祉を増進し、国民経済の健全な発展を招来するために、きわめて重要な課題であると信ずるゆえんであります。  このため、第一には、中小企業者の一そうの自覚と創意工夫を期待するとともに、中小企業者経済的存立条件の不利を是正し、その事業体質改善して、その経済活動を促進すること。第二には、自由にして公正な競争原理を確認するとともに、大規模事業者との間における経済活動調整して公正な経済秩序確立に努め、中小企業者事業の安定と発展を期すること。この二つ課題国民経済的立場に立って解決するための基本的方策を示すものとして、ここに中小企業基本法案提案した次第であります。  次に、本基本法案内容につきまして、その概略を申し上げます。  第一は、本法案の対象となる中小企業者範囲を、製造業等にあっては、資本金五千万円以下、または従業員数三百人以下、商業サービス業にあっては従業員数五十人以下としたことであります。これは、現行制度の多くが、中小企業定義を、製造業については、資本金は一千万円以下、商業サービス業については従業員数を三十人以下としている点を、今日の実態に合致するよう改め、諸般施策が一そう浸透するよう意図したものであります。  第二は、生産及び取引について、大規模事業者との間に事業分野調整その他必要な調整措置を講ずるよう規定したことであります。これは、現行憲法の許容する範囲内において、事業分野等調整を行ない、中小企業者事業の安定と振興をはかるよう意図したものであります。  第三は、中小企業者事業経営近代化推進し、生産性向上のための施策を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者にあっては、生産性向上格差是正の最捷径であり、このため設備更新経営改善技術向上等、積極的に事業体質改善を促進することが必要であるという趣旨に基づくものであります。  第四は、中小企業者組織拡充に必要な助成その他の措置を講ずるとともに、国の中小企業に関する施策組織に関する施策を妨げるものであってはならないと規定したことであります。これは、経済事業調整事業における中小企業者による組織重要性にかんがみ、その拡充をはかり、もって中小企業者事業の安定と発展を招来するよう意図したものであります。  第五は、系列関係におきまして中小企業者自主性を失わしめず、下請関係において、その公正な利益を保護するため、必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者事業の多くが、大規模事業者系列ないしは下請関係に立って存在し、しかも親事業者経済的優位性のゆえに、不当に従属的支配下に置かれており、このことが中小企業者の健全な発展を著しく阻害している実情にかんがみ、その適正な関係確立をはかるよう意図したものであります。  第六は、特に小売商業について、大規模事業者等との間に事業調整を講ずる道を開いたことであります。これは、わが国中小企業者の中で、最も数が多く、かつ零細である小売商業者の正常な事業活動が、往々にして、大規模事業者または協同組合等の進出によって阻害されている実情を矯正するための手段として特に規定したものであります。  第七は、官公需発注につき、その一定割合中小企業者確保するよう必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、米国等の先例に範をとり、中小企業者に対する需要を拡大して、その事業活動を促進するための手段として規定したものであります。  第八は、金融円滑化をはかるため、中小企業者のための専門金融機関を育成強化すること、財政投融資の充実に努めること、中小企業者に対する貸付条件適正化をはかること等の諸措置を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者設備更新、健全な商業活動等に必要とされる資金を、潤沢に、かつ適正な貸付条件確保するための手段として規定したものであります。  第九は、国税、地方税を通じて、中小企業者税負担を適正にし、その税負担が大規模事業者等に比し不均衡となることのないよう必要な施策を講ずるよう規定したことであります。これは、資本蓄積の弱い中小企業者に対し、極力税負担を軽減し、その事業経営合理化と安定をはかるという趣旨に基づくものであります。  第十は、中小企業者に対し、資本調達円滑化をはかるため必要な施策を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者資本の増額、社債の発行を容易ならしめる措置を講じ、所要資金確保に資するとともに、その資本構成を是正して、中小企業者事業の安定と成長をはかることを意図するものであります。  第十一は、小規模事業者に対しては、諸般施策を講ずるにあたり、特別の考慮を払うよう規定したことであります。これは、製造業等にあっては従業員数二十人以下、商業サービス業にあっては五人以下程度の事業者については、一般中小企業者と異なり、特に手厚い施策を必要とするのが多いことから、かような規定を置くこととしたものであります。  第十二は、経済事情変化により存立の困難となった中小企業者事業について、他の事業または職業への転換を容易にするため、必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、経済事情変化等から他の業種または他の職業へ転換することを希望する中小企業者及びその従業員について助成措置を講じようとの趣旨であります。  以上のほか、政府に対しては、中小企業者実態を常時適確に把握するため、総合基本調査及び動態調査を実施し、また中小企業施策効率的実施確保いたすため、国会に対し、中小企業者の動向、施策概要等に関する年次報告を実施するよう義務づける規定を設けた次第であります。  なお、中小企業に関する重要施策審議し、かつ意見を具申するため、総理府に中小企業審議会設置することにいたしました。  本案については、わが党は慎重に調査立案をいたしましたので、中小企業者現下実情にかんがみ、取り急ぎ御審議、御賛成下さいますよう、切に御願い申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  5. 松野鶴平

  6. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) ただいま議題となりました中小企業基本法案について、日本社会党を代表し、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  今さら言うまでもなく、中小企業は、わが国経済の中で圧倒的多数を占めており、かつまた、生産流通等の面においてもきわめて重要な役割を果たしているのであります。しかるに、今日、中小企業と大企業との間に大きな格差が存在し、中小企業経営は不安定な、困窮した状態にあります。そして、絶えず大企業からの圧迫中小企業相互過当競争に悩まされているのであります。こうした現状にもかかわらず、政府は依然として大企業に有利な財政金融政策推進し、また独占禁止法有名無実のものとして、不当な独占支配を黙認し、さらに、最近は、自由化を口実に、大企業による吸収合併並びに系列支配を容認し、中小企業者を弱肉強食の冷酷な経済競争の中にほうり出したままであります。このように、政府中小企業対策は、場当たりの措置に終始して、一時を糊塗してきたにすぎず、一貫した方針が今日にいたるまで一度も示されたことがありません。さらにまた、先ほど提案説明がありました自民党の基本法、案も、中小企業相互過当競争を防止するだけで、大企業からの圧迫に対しては、何ら具体的な解決策を持ち合わせていないのであります。  そこで、中小企業をこのような窮状から救い出し、大企業との間の格差を是正して、安定した、将来に希望の持てる近代的な経営に引き上げるためには、この際、まず第一に、大企業からの圧迫を排除し、さらに中小企業相互間の過当競争を防止することを中心とした抜本的な基本政策の樹立が必要であります。一元化された強力な行政機関のもとで、このような基本政策推進されることが、今日ほど緊急を要することはないのであります。わが日本社会党は、かかる観点から、中小企業組織法案並びに中小企業省設置法案とあわせて本法律案提出いたしたのであります。  次に、そのおもなる内容を御説明申し上げます。  まず最初に、本案は、中小企業政策基本となるべき方針について明確に提示しているのであります。すなわち、基本方針として次の五つ目標をうたっております。すなわち、  いわゆる国民経済の二重構造を解消して、経済民主化を実現する。  中小企業者の自主的な協同化を促進する。  個々の中小企業者についても、その維持発展のため、直接必要な指導助成を活発に行なう。  中小企業とともにその労働者所得増大をはかり、あわせて近代的な労使関係確立に努める。  中小企業者労働者農民相互間の調和を絶えず考慮しつつ、中小企業政策推進する。  以上五つ基本方針に基づいて、以下具体的な政策、機構の内容に及んでいるのであります。  その第一は、本案規定される抜本的な総合政策を実施するためには、従来の中小企業庁ではとうてい不可能でありますので、新たに中小企業省設置し、強力に中小企業者利益を擁護推進していく考えであります。  第二は、中小企業者定義するにあたって、特に零細な勤労事業者を分離し、政策の恩恵が勤労事業者にも十分に浸透するように考慮しているのであります。  第三は、中小企業組織についてであります。中小企業経営近代化し、発展させて、大企業と対等の地位に引き上げるには、協同化が必要であることは今さら言うまでもありません。本案は、この協同化にあたって、自主的協同原則として、あくまで強制や統制の考えを排除しているのであります。すなわち、加入、脱退は自由で、組合員の権利があくまで平等な協同組合組織基本としております。そして協同組合設立を簡易にし、これに国が積極的な援助を与えることによって、協同組合に入ったほうが中小企業者にとってより有利になるような条件を作り上げていくべきであると考えております。これまでのように、法律に基づいて組合を作ってみても、何ら見るべき助成がないために、魅力がなくなり、せっかく目ざめた協同化精神を上からぶちこわしていく、こういったあり方をこの際根本的に是正していかねばなりません。この協同組合は、互いに協同して経済事業を営むのほか、調整事業や大企業との団体交渉もあわせ行なうことができるように規定しております。  第四は、具体的な中小企業政策内容についてであります。まず、中小企業に適切と認められる事業分野確保して、大企業がむやみに進出することを規制し、国、地方公共団体公共企業体などが外部に発注をする場合にも、現在の大企業偏重を改め、中小企業一定割合以上の発注を優先的にするよう義務づけておるのであります。  次に、経営近代化のための政策として、機械化推進経営専門化規模適正化設備更新共同施設の新増設、経営管理改善技能者訓練の徹底、試験研究機関拡充などに努め、さらに、中小企業センターを全国に配置し、中小企業者に対する相談、診断、指導を積極的に行なう方針であります。また、中小企業貿易振興するために、海外市場調査、開拓の機関を整備し、かつ貿易金融円滑化をはかり、さらには、中小企業海外において行なう技術協力その他経済協力活動に対しても、指導援助の手を差し伸べて参る考えであります。  具体的な政策内容の第二といたしましては、産業別にきめのこまかい振興政策をとるべきこととし、鉱工業商業について、それぞれ具体的に定めているのであります。本法案では特に、従来の政府中小企業施策工業に偏していた傾向を是正し、商業部門についても明確な政策を打ち出しているのであります。  第三は、零細な勤労事業者に対する政策についてであります。初めにも触れましたように、零細な勤労事業者に対する施策は、従来中小企業政策一般の陰に隠れて、全く顧みられなかったのであります。そこで、この際、勤労事業者に対する施策は、中小企業政策一般から切り離して、別ワクのものとして、特に十分な政策的配慮を払って参る方針であります。  第四に、金融政策につきましては、集中融資を排除し、中小企業者資金確保するとともに、信用補完制度拡充、強化、災害、景気変動等、不慮の事態に備え、中小企業緊急救済資金設置考えているのであります。  次に税制につきましては、協同組合に対する法人税軽減税率の適用、設備近代化促進のための特別償却制積立資金に対する税の特別措置などを実施する方針であります。  第五は、労働福祉及び社会保障政策についてであります。最近の求人難を打開していくためにも、中小企業に働く労働者福祉厚生を真剣に考慮して参らなければなりません。このため、特に労働者福祉に関する諸施設の建設並びに事業活動を積極的に指導し、助成するとともに、五人未満の事業所にも社会保険を全面的に強制適用する方針であります。  次は、中小企業と大企業等との間の紛争処理の問題についてであります。今日、中小企業は、大企業による一方的な、不公正な取引に対し、全く泣き寝入りの状態であります。そこで、労働者労働委員会があるごとく、中小企業にも中小企業調整委員会設置し、中小企業と大企業等との間に生ずる一切の紛争について、公正にあっせん、調停、裁定を行なわんとするものであります。この点が他党と大いに異なる点であります。  その他、実態に即した適切な中小企業政策を実施するため、総合的な実施調査中小企業政策に関する基本計画実施計画の策定、国会への年次報告中小企業審議会設置等本法運用に万遺憾なきを期しておるのであります。  以上が本法律案提出理由並びにその内容概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げまして、私の提案説明を終わりたいと存じます。(拍手)     —————————————
  7. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 永末英一君。   〔永末英一登壇拍手
  8. 永末英一

    永末英一君 ただいま議題となりました私ども提出にかかる中小企業基本法案について、提案理由の御説明を行ないます。  中小企業基本法成立がどうして必要であるかということは、私から今さら申し上げるまでもないことだと存じます。私どもを初めといたしまして、与野党三党ともにそれぞれの中小企業基本法案提出しております事実が、何よりも雄弁に本案重要性並びに一日も早く成立をはかるべき緊要性を立証いたしておると考えるものであります。  わが国中小企業は、雇用面では全労働者の約七割を占め、生産におきましては全生産額の約六割を生産いたしております。輸出面では輸出総額の五割強を受け持っております。わが国経済におきまして、中小企業が実際に果たしている役割の大きさは、何人といえども認めざるを得ないと思います。ところが、中小企業の置かれております実態を見ますと、資本労働技術経営それぞれの面におきまして、まだまだ近代化が進んでおりません。大企業に比べて競争条件が著しく劣っているばかりか、企業規模も、零細企業を底辺といたしまして、その大きさに格差があり過ぎるという状態であります。現在の中小企業は、大企業中小企業という、いわゆる経済の二重構造の桎梏に縛られているばかりではございません。お互いの間で激しい過当競争を繰り返しているという、二重、三重の不利な条件のもとに置かれております。このような条件にある中小企業をどのようにして振興し育成していくか、その生産性をどうして高め、また近代化を進めていくか、これらにつきまして、その基本策を定め、それに基づいて具体策の体系的計画的な推進をはからない限り、わが国経済から、二つ経営構造二つ労働条件が存在するという根本欠陥を取り除くことはできません。  中小企業基本法こそは、このような意味におきまして、中小企業者が自分の正しい創意を生かして、企業発展従業員労働条件向上をはかろうとする努力を高く評価し、この努力が生かされるよう保障していく中小企業の進むべき大道を示すものでなくてはなりません。中小企業日本経済において現実に果たしております重要度に相応した待遇を、国の施策の上において与えられるということが、何よりも肝要であると私ども考えます。このような観点に立って本法案を立法し、提案をいたした次第でございます。  本案は、前文及び十二章二十八条よりなる本文によって構成をいたしました。  まず、前文におきましては、ただいま述べましたような本法の本質を明らかにいたしました。特に前文の最後にありますように、「国の将来の理想像は、全国民中産階級化福祉国家の実現にあり、この目標にむかって、中小企業の安定と振興をはかるため、ここに新たなる中小企業政策基本原則を指向し、この法律を制定する。」という点に、私ども理想が集約されておるのであります。  本文の「第一章総則」におきましては、本法が目的といたしております中小企業政策基本目標をまず明らかにいたしまして、この政策を実現する国、地方公共団体責任を明らかにいたしました。特に私どもは、国の政策実施機関として中小企業省設置すべきである旨の規定をいたしました。なお、中小企業定義につきましては、最近の経済発展実態にかんがみまして、資本額は最高五千万円といたしました。また、中小企業のうち、特に小規模事業定義を明らかにして、小規模事業対策確立に便なるようにいたしました。  「第二章調査及び計画」につきましては、国が政策実施するにあたりまして、調査基本計画実施計画の三案、国会に対する報告義務等について規定をいたしました。  「第三章中小企業者協力組織」におきましては、今後の中小企業者基本組織は、業種別地域別に自主的に組織され、民主的に運営される同業組合である旨を規定をいたしました。従来の協同組合は、もちろん活発に活動していくわけでありますが、さまざまな産業分野を担当していく社会的責任体制確立し、大企業に対抗していく実力を備え、かつお互い過当競争を自主的に調整していくためには、同業組合設立こそが、中小企業発展の土台となるべきであると考えます。なお、協同組合組織として商店街組合を新たに加えて、小売業者については、地域組織確立することによって、その利益を守り、あわせて、新しい町作りを行なうことにいたしました。  「第四章中小企業者産業分野確保」におきましては、今後のわが国産業構造の中にあって、中小企業者による経営が、経済的、社会的に適切であると認められる業種確保し、大企業をしてここに不当侵入せしめないような方向を明らかにいたしました。  「第五章中小企業者事業活動の保護」におきましては、現在並びに将来にわたって起こる中小企業と大企業との間の紛争を処理し、中小企業事業活動をこの面から保護する基本規定であります。  「第六章中小企業者に対する官公需確保」におきましては、政府並びに政府関係機関としての公企業体、公団、公庫及び地方公共団体などが、わが国における最も大きな購買力を持つ団体である事実にかんがみまして、これらの諸団体が、できるだけ中小企業者より物資やサービスを購入するよう、その基本方針規定いたしました。これによって、中小企業者に対する安定した発注先確保しようとするものであります。  第七章から第十一章までは、「設備技術及び経営近代化施策」、「貿易上の施策」、「財政金融上の施策」、「税制上の施策」、「労務上の施策」の五つの面の基本施策規定し、それぞれ中小企業発展のために不可欠な各般にわたる措置の方向づけを行ないました。  「第十二章中小企業政策審議会」におきましては、中小企業行政の民主化をはかる当然の措置として、国が中小企業政策の立案実施にあたりましては、民間から選ばれた総理府附属の本機関に諮問すべき旨を規定いたしました。  以上が本案概要でありますが、私どもは、本案の関連法規、関連政策として、すでに六十件をこえる法案や要綱案を立案いたしております。これらが整備されて初めて基本法にエンジンがつき、そのエンジンにガソリンが入り、始動することになります。これらの用意のない基本法案は、命の抜けたミイラのようなものであろうと私どもは思うのでございます。そのうち、すでに本国会に、会社更生法改正案、百貨店法改正案、下請代金支払遅延等防止法改正案、小売商業調整特別措置改正案の四件については、すでに提出済みでございまして、また今後、商店街組合法案中小企業者に対する資金確保等に関する特別措置法案官公需中小企業に対する発注確保に関する法律案中小企業同業組合法案等につきましては、本国会提出いたすよう手続中でございます。  何とぞ本案につきまして慎重御審議の上、御賛同あらんことを希望いたします。(拍手
  9. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。上原正吉君。   〔上原正吉君登壇拍手
  10. 上原正吉

    ○上原正吉君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました社会党提出中小企業基本法案外二案について、若干の質疑を行なわんとするものであります。  まず第一に承わりたいことは、社会主義と中小企業とはいかなる関係に立つものであるかということであります。  昭和二十九年、左派社会党の大会における綱領には、「中央に於て、安定した絶対多数の上に立って、社会主義の原則に従い、憲法を改正し、基本的な産業の国有化または公有化を確立し、行政、司法の諸機関や、教育、新聞、出版、放送などの諸機構を、社会主義の方向に適応させる」と、明確に書かれております。そして今回、社会党が提案した中小企業基本法案の中には、中小企業重要性が繰り返し繰り返し述べられておりますが、それほど重要な中小企業は、この綱領に述べられた「社会主義国家に於ける基本的な産業」であるのかどうか。基本的な産業であるならば、国有化されなければならないし、国有化の必要がないとすれば、重要な産業ではあり得ないと思うのであります。業種によって、基本的な産業と、しからざるものがあるというならば、いかなる業種基本的な産業であり、いかなる業種がしからざるものであるかを、大体でよいから列挙していただきたいのであります。  また、この綱領から「基本的な」という形容詞を取り去って読むと、「中央に於て、安定した絶対多数の上に立って、社会主義の原則に従い、憲法を改正し、産業の国有化または公有化を確立し、行政、司法の諸機関や、教育、新聞、出版、放送などの諸機構を、社会主義の方向に適応させる」と、こうなります。これこそ、われわれが日常目のあたりに見聞きしている社会主義国家の姿ではないか。社会党の願望もまたここにあるのではないか。「基本的な」という形容詞は、社会党のほんとうの姿を衆人の目からおおい隠すための擬装網ではないのか。これを取り除けば、その下から、自由主義者、民主主義者を掃滅するための戦車が現われ、爆撃機、ミサイルが飛び出すのではないか。これは国民のだれもが持っている疑惑、疑念であります。なるほど、社会党は、その後しばしば綱領を書き改め、次第に微温的なあいまいなものとなってきて、政策にも、農村の振興中小企業の育成などを呼号するように変わって参りましたが、これらはいずれも選挙に際して投票をかき集めようとするための擬態ではないのか。(拍手)ほんとうの目標は、ソ連のような、中共のような、教条的な社会主義国家を建設することにあるのではないのかという疑念は、ほとんどすべての国民が持っているのであります。  さきに発せられた浅沼稲次郎氏と中国共産党との共同声明といい、後にこれを確認した鈴木声明といい、前後二回にわたる大分裂の姿といい、現在の社会党を動かすものは、古典的な社会主義を信奉する極左勢力であるという強烈な印象は、国民の脳裏から容易にぬぐい去ることはできないのでありまして、社会党が今日なお政権に近づくことができないのは、全くこのためであろうと推察されるのであります。(拍手提案者は、この絶好の機会に、社会主義と中小企業との関係を、思想的にも、理論的にも、余すところなく解明して、われわれの、中小企業者の、また全国民の疑惑を解いてほしいのであります。  質問の第二点は、社会党がいうところの独占資本中小企業との関係についてであります。  社会党は、口を開けば、独占資本を論難攻撃して、うむことを知りません。しかしながら、現今の大企業資本は、極度に細分化された、何千円、何万円、何十万円という零細な個人出資の集積でありまして、往年の、一握りの資本家が巨大な富を抱えて、産業界、財界を壟断しておった時代とは、すこぶる趣きを異にしておるのであります。これをしも独占資本と言うならば、個人の私有に属する資本はことごとく独占資本なりということになろうかと思うのでございます。そうなれば、社会党案の規定する中小企業者資本は、憎みても余りある独占資本ということになりそうですが、いかがでしょうか。社会党案は、資本金三千万円以下、従業員三百人以下を中小企業規定しております。中小企業は、ほとんどが個人経営であり、たとえ会社と名乗るものがあっても、それは名目だけであります。したがって、社会党の規定する中小企業とは、三千万円の巨資を擁し、三百人の労働者を搾取しながら、その上に成り立つ独占資本である、こういうことになるわけですが、いかがでしょうか。もし、そうだとすれば、これに奉仕しようとする社会党の基本法案は、その所論と撞着することになります。  それとも、社会党は、迷妄から目ざめ、変貌に変貌を重ね、ついに私有財産制度を賛美し、私企業の繁栄を謳歌するに至った結果、中小企業基本法提出するに至ったのでありましょうか。社会党は、私有財産制度という畑に、私企業の種をまき、苗を植え、肥料を施し、水をくれ、日光を当て、風をよけて、千紫万紅、百花繚乱と咲き誇る中小企業の花園を作り上げようとしているのでありましょうか。どうもキツネにつままれたようで、何べんひざをつねってみても、眉毛につばをつけてみても、一向にはっきりしないのであります。(拍手)どうぞこの点も、思想的に、理論的に、明確に答えて、われわれが化かされているのではないということを証明していただきたいのであります。  質問の第三点は、社会党が企図されている中小企業協同化についてであります。  わが党も、中小企業者の協同事業に関しましては、従来から、国費をもって、あるいは財政資金を投入して、熱心に保護助成を行なってきております。今後ともこの方針を貫く覚悟でありまして、このことは今般提案いたしました基本法の中にも明らかに示されております。そして、わが党の考え方は、あくまで中小企業者の独立性を尊重し、独立の業者が集まって組合を結成し、各個独立した経営のための協同事業を行なう場合、それに対して保護助成を行なわんとするものであります。社会党が趣旨説明で、あるいは法案の中で、力説、強調されております協同化とは、これと同一のものでありましょうか。資本をも、事業をも、従業員をも含めての協同化、すなわち企業統合を遠くおもんぱかっておられるのではないかという疑念を、われわれは、社会主義の本質から考えまして、払拭するととができないのでありますが、この際この点をも明らかにしていただきたいと思います。  質問の第四点は、事業の分野を指定することは憲法第二十二条の違反ではないかという点であります。同条の規定は、公共福祉、すなわち一般国民福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する旨を規定したもので、この案のごとく、公共福祉に反するおそれなきにかかわらず、広範囲にわたる分野に職業選択の自由を剥奪することは、憲法に違反するものと言わざるを得ません。単に同業者の利益に反するというだけで禁止措置を合憲なりと断ずるのは、憲法の精神に沿うゆえんではないと考えるが、提案者の見解を明らかにしていただきたいのであります。  質問の第五点は、中小企業定義を改めようとすることについてであります。中小企業金融公庫法その他の法律、慣行などによりまして、資本金が一千万円以下であるか、あるいは従業員が三百人以下であるか、いずれかであれば、中小企業と認められ、金融、税制その他について優遇措置がとられておりますことは、御承知のとおりであります。しかるに、今にわかに、資本金が三千万円以下であり、かつ従業員が三百人以下でなければ中小企業と認めないということに改められますと、たとえば陶磁器の製造業者、染色加工業者その他のように、資本は小さいが従業員はたくさん抱えているという、いわば手間賃を稼ぐための集団事業場、ほんとうの意味の零細、中小企業が、たちまち中小企業のらち外に投げ出されて、塗炭の苦しみをなめることになるのでありますが、この点についてはどうお考えになっておいでか。お答えを願いたいのであります。  第六番目に承りたいことは、事業分野確保についてであります。社会党案によりますと、——自民党案は、従業員が三百人以下であるか、あるいは資本金五千万円以下であるか。どちらかであればいいのですが、(「五千万円と三百人だよ」と呼ぶ者あり)いや、どちらかであればいいのです。社会党の案は、両方でなければいけないのです。  第六に承りたいことは、事業分野確保についてであります。社会党案によりますと、中小企業に適当であると認める事業政府が指定する、大企業者はこの事業に立ち入ることができないと定められておりますが、中小企業が、与えられた事業の分野で幸いに成功して、資本金が三千万円をこえ、かつ従業員が三百人をこえるに至ったら、どうなるのか。これを定めた十八条、十九条を何べん読み返してみましても、この場合は、廃業するか、転業するかしか道がない。しいて事業を継続しようとするなら、資本金を減らし、従業員を首切るよりほか、方法が残されていないのであります。中小企業者は、未来永劫、中小企業者でなければならないのか。昔のインド民族のように、階級を背負って生まれて、子々孫々、その階級から抜けられない、そういう考え方が社会党流の考え方なのでありましょうか。そうだとしたら、なぜそうでなければならないのか、説明していただきたのであります。  第七に承りたいことは、社会党案が企図しております中小企業への金融についてであります。国が政令をもって、市中一般の銀行に対し、融資の一定割合中小企業に振り向けよと命令するのは、明らかに金融統制でありますが、これを金融統制とお認めになるかどうか、お答えを願いたいのであります。また、かかる命令を発するのは、憲法第十四条及び第二十九条に違反すると思われるが、この点はいかがお考えか。その一定割合の金を借りる業者が少なくて余ってしまったらどうなるのか。この案によりますと、是が非でも貸ささなければならぬように思われる。提案趣旨はそのとおりでありますか。また、回収不能に陥った金額はどうなるのか。金融機関の損失になるのか、あるいは国が弁償するのか。どちらにしても、不合理、不可解な処置になると思われます。また、金融機関が損失をこうむるということがあれば、それは預金者の損失になるわけであります。預金者保護の見地からも問題を生ずると思われますが、これらの件について、提案者はどんな御見解をお持ちなのか、明確にお示し願いたいのであります。  最後に、いま一つお尋ねいたします。今回は、三党三様の基本法提案いたしておりますが、その中では、わが党の案が、憲法違反のおそれもない、国民から危惧される心配もない、最もすぐれた案であると確信いたします。(拍手、笑声)本法制定は刻下の急務であります。社会党も、この際、大悟一番、この案を撤回され、わが党の案に同調されて、基本法の早期成立に協力なさる御意思はないかということであります。このお尋ねに、胸のすくような御答弁を心から期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔衆議院議員田中武夫登壇拍手
  11. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) 上原議員の御質問に対して答弁をいたします。先ほど上原さんは、故意に社会党の政策を曲解し、いろいろと批判をされましたが、逐次御答弁をいたします。  まず第一点の社会主義と中小企業との関係、すなわち、社会党は将来中小企業をどう考えていくか、こういうことであったと思いますが、十分わが党の綱領を見ていただきたいと思います。その綱領には、日本社会党は、労働者、農民、中小企業者、自由業者の結合体であるという立場をとっておるのであります。したがって、わが党の政権下におきましても、中小企業国民経済における重要地位を尊重して、その発展を期して参りますことは言うまでもありません。したがって、どうぞ御安心を願いたいと思います。一部の者が、社会党政権では中小企業はなくなる、あるいは衰微するといったようなデマを飛ばしておりますが、とんでもないことで、このこと自体が人心を惑わすものであります。わが党は、基幹重要産業についての国営ないし公営については発表いたしましたが、おっしゃるようなことについて、断じて中小企業に対して党の政策を発表したこともなく、考えたこともございませんので、御了承願いたいと思います。  第二点につきましては、第一点とほぼ同様であると思いますが、社会党の考えている協同化は、いわゆる中国あるいはソ連のような合作社的なものではないか、こういうことであったと思いますが、どうか上原さん、わが党の基本法案第五条後段の規定をごらんいただきたいのであります。すなわち、そこには「個個の中小企業者についても直接必要な指導助成を行なわなければならない。」、協同の組織化は個々の中小企業をなくするのではないのであります。したがって、今申しました五条の後段をじっくり読んでいただきたいと思います。また、第十三条の(組織)の項で明確に規定いたしておるように、組織は、中小企業者事業者といたしまして主体性を持ちながら組織するものであって、企業合同を行なうものではありません。そのことは、わが党案第十条第一項及び同項第二号に規定いたしておりますように、われわれの考えている中小企業組織は、構成員が相互扶助の精神に基づき自主的に団結し、任意に加入または脱退ができるようにしているのであります。中小企業者組織に強制加盟の方式を考えている自民党こそ、むしろ自主性を失わせるものであろうと考えます。(拍手)  次に、独占企業あるいは独占資本、こういうことについての御質問でありますが、残念ながら、上原さんとわれわれの言う「独占」とは、意見が、解釈が違うのであります。上原さん、独占禁止法第二条第五項の規定を御承知でしょうか。そこには、「単独に、又は他の事業者と結合し、……他の事業者事業活動を排除し、又は支配することにより、公共利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」とうたってあります。われわれの言う「独占」は、このように市場の独占、こういうことを意味しているのであります。したがいまして、上原さんのように、現在大企業の株主が大衆化せられているのだから独占ではないとおっしゃいますが、意味が違います。さらに、そうおっしゃっておりますが、大企業資本が大衆に持たれることによって独占しない、こういうことでありますけれども、大衆株主、これらの人は、本質的に実際の面において会社経営に対して発言権を持たないのであります。この種の表現は、資本主義経済の欠陥を隠蔽すべく企図せられているところの詭弁であると考えているのであります。さらに、中小企業、特に個人的な資本が強いではないか、こういうことでありますが、今申し上げましたような観点で、われわれの言う「独占」は、市場の独占、価格の支配、こういうことを申していることを御了解願いたいのであります。  第四点の、中小企業事業分野を定める、こういうことは憲法第二十二条の違反ではないか、こういうことでございますが、これも、もう一度憲法第二十二条をとっくりと読んでいただきたいと思います。そこには、「公共福祉に反しない限り、」という条件がつけられているのであります。国民の多くの層を占めており、国民経済に重要な役割を果たしておる中小企業を保護することは、まさに憲法二十二条のいう公共福祉に合致するものであって、憲法違反とは断じて考えておりません。むしろ、政府がとっておられることこそ憲法違反の疑いがあるものが多いのでございます。(拍手)  次に、中小企業者定義についてでありますが、現在、従業員が三百人以下であれば、資本金が一億でも中小企業となっておるのでありますが、資本設備が高度化して参りました今日、従業員が少なくとも、優に市場を独占するような企業もあり得るのであります。したがいまして、われわれは、人数を三百人とし、かつ三千万円といたしたのであって、われわれの問題とする、いわゆる手厚い、きめのこまかい政策を必要とするのは、われわれのいう中小企業であって、三百人以下であるならば何十億円の資本を持っておってもいいというような考え方こそ、むしろ中小企業に対して親切な規定ではないと考えておりますので、御了解を願いたいと思います。  さらに、この中小企業事業分野確保に関連をして、中小企業がいつまでも中小企業であらねばならないではないか、こういうような御質問でございましたが、私は、中小企業が行なうことがよりよいということで指定いたしました業種の中にあって、それがだんだんと発展をいたしまして、現在の三千万円あるいは三百人のワクを越えると、こういうように一般的になりましたときには、法を改正してそのワクを上へ上げていく。われわれは一般的に中小企業がレベル・アップしていくことを念願いたしておりまして、その中の特別なものについては考えておりません。なお、そのことにつきましては、十九条二項によって、新増設の規制もできるようになっておりますので、御心配のようなことはないと考えておるのであります。  さらに、わが党案四十八条及び五十一条の規定について、金融統制あるいは憲法二十九条の違反ではないかという御質問でございますが、現に、御承知のように、大銀行は大企業に対して集中融資をしておりまして、中小企業に対する融資はあまり考えられていないことは御承知のとおりであります。したがって、この規定は、いわゆる金融統制のための措置ではなく、国民経済発展に重要な役割を果たしておる中小企業に必要な資金確保するためのものであります。したがって、まず第一に、国の行政措置によってそのような融資がとられるならばけっこう。さらに、もし、とられないとするならば、特別の法措置も必要かと考えております。しかも、預金者云々と申されますが、その預金者こと国民大衆の金であることを御了解願いたいのであります。したがいまして、憲法違反でもなく、金融統制のためのものでもないことを、明確に御答弁申し上げておきます。  さらに、最後に上原さんは、自画自賛の言葉をもって、わが党案——すなわち自民党案が一番いい、だからわれわれに撤回をして、直ちに自民党案に賛成をして通したらどうかと、こうおっしゃる。こういう考えこそがイージー・ゴーイングな考え方であろうと思っておるのであります。われわれといたしましては、幸いにして、ここに三党の中小企業に対する基本的な考え方が表われて参りましたので、このそれぞれの案をもって、中小企業者の意見を、いずれの党がどのように中小企業に対して考えているのか、十分意見を聞いた上で、慎重審議をしていきたいと考えております。したがいまして、三党案について、できるならば全国各地において公聴会等も開いていくべきではないかと考えておるのでありまして、撤回なり、そのようなことは断じて考えておらぬことを、明確に、胸のすくような御答弁を申し上げておきます。(拍手)     —————————————
  12. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 近藤信一君。   〔近藤信一君登壇拍手
  13. 近藤信一

    ○近藤信一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました自民、社会、民社三党各提案中小企業基本法案について、若干の質問をいたすものであります。  まず、自民党提出法案でありますが、前文と二十二条からなる、まことに簡素な法案であります。私は、簡素であるからといって、お粗末な法案だとは申しません。簡素でしかもよい法案のあることは承知しているのでありますが、この法案に至りましては、まことにお粗末で、月足らずの感を免れないものと思うのであります。わが社会党におきましては、かねがね中小企業問題に関しては熱心に研究もいたし、対策の立法にも心がけて参りました。中小企業庁を設置したのも、ほかならぬわが党内閣の時でありました。自民党でも、もちろん中小企業をないがしろにして今日の経済政策を談ずることはできないので、それ相応の研究をしてこられたとは思います。これを認めるに決してやぶさかではありませんが、何と申しましても、自民党が意を向けているのは大企業であり、それだけに、中小企業対策は二の次にならざるを得ないのでありまして、今回の基本法案にいたしましても、わが社会党がいち早く三月の十九日に提案して、やむを得ず自民党でも、月足らずではあるが、四月十三日の金曜日にこの法案提出されたようなわけであります。中小企業対策について、自民党がわが党に追随してきている事実は、中小企業設置法しかり、また百貨店法しかり、下請代金支払遅延等防止法しかりで、数え上げればきりがありません。自民党は、いやいやながらついてきたと言っても過言ではないのであります。そのきわめてよい実例がここに示されたわけで、基本法案についても、今回は提出を見合わせたかったというのが本意であったと思いますが、それでは中小企業の諸君に対し申しわけない仕儀となるし、参議院選にも不利となるという判断から、何とか形だけでも提出しておこうという考えから提出されたものと思います。したがって、はたして通過成立を望んでいるのかどうか、その真意はすこぶる怪しいのでありまして、この点をまず自民党の総裁である池田総理に伺いたいのであります。総理の御心底の中には、提出しておけばよいのであって、万が一にもこれが成立するようなことがあっては困る、そういうようなお考えでおられるのじゃないかと思います。総理のこの法案に対する愛着のほどを知りたいと思うが、この点はいかがですか。  同時にまた、総理にお伺いいたしたいのは、自民党の法案の中にも、社会党、民社党のそれにも、政府中小企業対策に関し年次報告提出しなければならないと書いてあります。これに対して、閣僚の中には、そんな義務を課すると、中小企業を所管する大臣にはなり手がないといって、反対した者があると聞いております。ところが、また別の方面では、中小企業審議会の答申及び意見を尊重しなければならないという条文があるので、こんな条文があると、先般の選挙制度審議会の二の舞をするから、これは入れることができないと主張した者があるということであります。ところが、これも今度の法案では生きています。この二点だけでも、この法案政府や党の幹部の意に沿わないという意味で、鬼っ子であると思いますが、それでも総理はこの法案成立を希望されるのか。社会党案では意見尊重という言葉がありません。その点では社会党案に御賛成なさったほうがよろしいかと思いますが、この点をお伺いいたします。  次に、通産大臣にお伺いしたいと思います。通産大臣は、基本法案政府提出となすべき直接の責任者でありまして、この国会提出しようとしてすでに検討を進めております。中小企業基本政策審議会室を作って研究していると聞いているのであります。その進展状況はどのように進んでいるのか。現に自民党案が提出され、社会党案も民社党案も提出され、そのいずれが成立しても、もはや政府提出の余地がないのではないかと思います。したがって、政府のなすべきことは、この基本法案に関連する諸法案の立法に精力を集中すべきであると思いますが、この点はどうか。それとも、これら各党の案はいずれも日の目を見ないものとして、政府基本法案を作ろうとしておられるのか。それでは全くばかにした話で、同じ自民党に属しながら、同僚議員の苦心のほどは——実はあまり苦心したとは思わないが、その御苦心の法律案をみずから月足らずの法案であると認定するようなものであります。通産大臣は、この法案提出前と提出後とで、省内の立案作業に対しどんな指示を与えてこられたか。これが実は大臣の自民党案に対する熱意を示す尺度ともなるので、お伺いしたいのであります。  次に、自民党案の提出者に御答弁をわずらわしたいのでありますが、その第一点は、自民党案では大企業の偏重の伝統がぬぐい切れないのではないかということであります。その一つは、中小企業定義であります。自民党案でも民社党案でも、工業を例にとって申しますと、資本金五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、資本金五千万円以下であれば従業員がどんなに多くてもよいし、また、従業員が三百人以下であれば資本金は一億でも十億でもかまわないという建前であります。最近の日本経済成長につれて中小企業も相当に大きくなっていることは事実でありますが、そこまで中小企業範囲を拡張するのはどうかと思う次第であります。私ども中小企業成長を認めないわけではなく、成長していくことは大いにけっこうですが、ある程度大きくなりましたならば、中小企業という特別のワクの中でなく、別個の対策を講ずべきものと考えているわけでございまして、したがって、社会党案が、資本金三千万円以下で、しかも従業員三百人以下としている。すなわち、三千万円以下と三百人以下という二つ条件を兼ねていなければ一般中小企業とはみなさないというのは、中小企業対策をできるだけ小さいほうに厚くしようとするからであります。ここに三百人以下、かつ三千万円以下としたところは、たとい三百人以下であっても、資本金が五億にも十億にもなっていて、優に大企業と見てよいような企業もあります。ことに最近のようにオートメーションの工業が多くなると、資本は膨大だが従業員はきわめて少ない企業があります。そういう企業は大企業と見ないほうが適当であるという考えに基づいていると思うのであります。私の見るところでは、資本金が少なくてそれだけに従業員を多くしている企業、そういうところのほうがかえって中小企業的な性格を持っているので、そこで資本金額を少なく規定したのだろうと思います。ところが、大きな企業もできるだけこれを中小企業として扱うような建前になっているのが自民党案であります。こういう考え方は、事業分野調整についても出ております。自民党案では、調整に関する施策を講ずるだけであります。これではたして大企業の不当なる進出を押えることができるかどうか、まことに疑問でありまして、その調整手段はいずれ関連法案において処置するというのでありましょうが、もし真に調整の目的を達しようとするならば、社会党案にある中小企業調整委員会のような機関考えなければなりません。そこまで徹底するだけの御用意があるかどうか。ここでも中小企業育成の意図が希薄であるという非難は免れないと思う次第であります。これは自民党が、従来から大企業に偏重し、それの保護助長と矛盾しない範囲中小企業対策考える伝統的な思想の一端を露呈していると見られるのであります。この点をどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。  第二点として伺いたいのは、法案そのものがあまりに抽象的で具体性が乏しいことであります。簡素なことはけっこうですが、このように単なる宣言規定だけですと、いかに政府に義務を課しても、政府は表面だけかしこまって拝聴して、実際には何もしないことが多い。これは国会で幾たびも経験していることであります。中小企業対策ほど国会で決議の行なわれたものは例が少ないと思うのでありますが、それが抽象的であるためにいつも決議倒れになって、政府はたいした施策をいたしません。だからこそ社会党案は、一々具体的に政府のなすべきことを義務づけているのだと思うのであります。自民党としては、月足らずの法案に具体性を盛ることは間に合わなかったのだと思いますが、それともそういう具体策をお持ちなのかどうか。その具体策はどんなもので、どう実現していこうとするのか。この点をお伺いいたします。  第三点は、自民党案には中小企業省設置がぼかしてありますが、自民党の提出者は、法案の附則第三項がどんな形で実現することを希望されておられるのかということであります。わが党は、すでに中小企業庁を設置した、これを省に昇格させようとしています。やはり専任の大臣がいないと、閣議での発言力もないし、中小企業対策は置き去りにされる危険があります。私どもは、決して大臣や役人の増加を望むものではありませんが、中小企業者労働者のように、資本主義経済で弱い地位に置かれる者を代弁する機関は絶対必要でありまして、中小企業省設置を重要な政策として、別に設置法案を用意したわけであります。聞くところによれば、通産大臣は中小企業省案に賛意を表しておられないとのことでありますが、この点、提出者並びに通産大臣はどういうお考えをお持ちになっているのかお伺いいたします。  次に、社会党提出基本法案でありますが、これは自民党案と反対にすこぶる膨大なもので、しかも、中小企業組織法案中小企業省設置法案二つが三位一体として提案されており、内容も具体的にできているので、ここでは簡単に三点ばかり質問しておきたいと存じます。  その第一点は、この大きな法案に対して前文がない。自民党案も民社党案も、農業基本法のまねをして、美文調の前文なるものをつけております。これは単なるお飾りにすぎないと思いますが、あえてこれを省いた理由は何ゆえでございますか、お尋ねいたします。  第二点は、社会党案は、国民経済の二重構造を解消することを目的としております。第一条にも第二条にも出ています。ただ、今の提案理由では「いわゆる国民経済の二重構造を解消して、経済民主化を実現する」と申されましたが、二重構造という文字はまだ熟さない言葉でもあり、人によってその解釈がまちまちでありますから、この際、二重構造の解消ということについて提出者はどのように考えておられるのか、御説明願いたいのであります。  第三点は、法案の第四条であります。これは二重構造とも関係があるとも思われますが、第四条では、中小企業者労働者及び農民の三者を「対立させるようなものであってはならず、これらの者をともに向上させるように」と書いてありますが、私どもは、これら三者を対立させるように仕向けてはならないことは、あまりにも当然過ぎるほどのことであると思います。けれども、特にこの条文を入れなければならないような事情があるのかどうか。実はこのような一条は、他の二つ法案には全くないので、社会党案を特に特徴づけているのではないかと存じて、この点をお伺いいたします。  最後に、民社党案であります。これは自民党案ほど簡素でもなく、社会党案ほど具体性を持たない、いわゆる中間的なものでありまして、しいて申しますれば、同業組合なる構想を持ち出していることが変わっていますが、この同業組合事業を見ますると、大体、今度改正される団体組織法の商工組合と似たり寄ったりのもののように思われます。そこで、はたして商工組合の名称を変えただけのものかどうか。そしてまた、昔わが国にあった重要物産同業組合とどう違うのか、この点をお伺いします。  以上のほか、問題点は幾つかございますが、いずれ詳細は委員会に譲ることにいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  14. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  中小企業対策は、われわれの最も重要視している問題であるのであります。したがいまして、従来から中小企業基本法につきましていろいろ検討を重ねております。また、中小企業基本法提案いたしますにつきましては、関連法規もあわせて提案すべく、目下検討中であったのであります。しかるところ、わが党より非常にりっぱな基本法案提案されましたので、私はこれがすみやかなる通過を念願いたしております。そうして、法案のうちに、年次報告とかあるいは審議会の意見尊重等、重要な点を含んでおります。そういう問題についていろいろ意見はございまするが、わが党といたしましては、また私といたしましては、自民党の案が一番いい、こういう結論でいっているのであります。どうぞ御審議、早急の通過をお願いしておきます。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 中小企業基本対策、その意味におきまして基本法を制定する、これは私が就任当初に実は発言もいたし、ただいま総理からお答えもありましたように、池田内閣としては、この問題と真剣に取り組んでいるわけでございます。したがいまして、通産省といたしましては、この線に沿って、中小企業実態の把握並びに問題の所在を明確にする、そういう意味で審議調査を続けている次第でございます。これはお話のとおり、昨年の秋以来その作業を進めております。今なお進めております。関係法案が非常に膨大でございます。また、各省間にまたがっていますために、それらの準備が十分できないということで、政府提案ができなかったのを、私どもは遺憾に思っております。しかし、ただいま総理がお答えいたしましたように、わが与党から提案されておりまして、基本法としては望ましい法律案提案されている、かように実は考えております。したがいまして、この法律案ができ上がって参りますると、御意見のうちにもありましたように、関連法規を整備するということ、これは当然必要なことでございますし、それを私どもは今まで準備を進めているような次第でございますから、成立した暁におきましては、もちろんこの関連法規の整備、これについて基本法に従ってその努力をいたすべきでございます。したがいまして、今日この種の法律案についての審議が行なわれることは不要ではないかと言われたのでございますが、私どもはさようには考えません。中小企業の問題が重要であればあるだけに、法律案成立、不成立にかかわらず、あらゆる機会に審議さるべきものと、かように実は考えている次第でございます。  また、社会党案の中小企業省設置について通産大臣は反対だ、賛成していない、こういうことだというので、私の所見をお尋ねでございます。これは私、誤解はないだろうと思いますが、いわゆる中小企業というものは、これは産業における一つの企業形態、それから出てきている層でございます。いわゆる産業の業種ではない。これは誤解があろうとは思いません。そういうような一つの産業部門内の層である。一つの層であり、業種でない。かように考えてみますると、これは中小企業は各産業部門においてそれぞれあるわけでございます。いわゆる産業政策というものを立てます場合に、大企業中小企業、同じように考慮を置いて産業政策を立てていくわけであります。また、産業行政といわれる行政を遂行いたします場合におきましても、これは産業自身との関連において、内部の問題である中小企業についての考慮を払っていくわけであります。かように考えて参りますと、いわゆる中小企業基本問題を解決するという場合においては、産業政策あるいは産業行政、これと離れてそういうものが解決されるとは実は考えない。そういうことを考えてみますると、産業政策あるいは産業行政を遂行しておるその場所にあることが最も望ましい形ではないか、かように実は思うわけであります。現状においては、私は中小企業省設置というものはまだもちろん早いし、ただいま申し上げるような観点に立つと、これは容易に賛成いたしかねるというのが私の考えでございます。(拍手)   〔衆議院議員首藤新八登壇拍手
  16. 首藤新八

    衆議院議員首藤新八君) 近藤議員にお答えいたします。  近藤さんのただいまの御質問によりますと、自民党の基本法はわずかに二十二条の簡易なもので、月足らずであるということでありまするが、私たちの考え方は、基本法中小企業の今後おもむく大道をはっきりさせる。したがって、それは一つの憲法でありまして、一たび決定いたしました以上は、簡単に改正すべきではない。ところが、経済は、御承知のとおり日々変動いたしております。したがって、基本法を中心といたして、そのときの経済情勢にマッチするような関連法をたくさん設置いたしたい。それによって目的を達成しようという考え方で、したがって、社会党のほうにおいて非常にきめのこまかい内容であるということを誇りとされておるようでありますが、きめのこまかいほど、経済情勢の変化にあいましては、たびたび基本法を変えなければならぬということが発生するのでありまして、基本法の性格から見て、さようなことが妥当であるかどうか。私たちはそれには反対せざるを得ないのであります。  なおまた、社会党は三月に提案したが、自民党は四月に社会党の提案に追従してやった。しかも、それは参議院選挙あるいは宣伝のためにやったということを言われておりますが、これは私たちは、社会党案は、その宣伝なりあるいは参議院選挙を当てにした効果をねらっておるんじゃないかと思われるのであります。御承知のとおり、自民党は内閣を担当いたしておりまするがゆえに、ことに中小企業はまことに複雑多岐でありまして、これの対策を立法いたしまするには、慎重の上に慎重を期し、また実行可能なものでなければ、責任ある自民党としては内容に盛り上げかねるのでありまして、その点は、社会党は、宣伝とはったりはお家芸でございまするから、まことに簡単にできるかもしれませんが、(発言する者多し)自民党の立場はさようにはいかぬのでありますから、この点は御承知願っておきたいと思うのであります。  そこで、今の中小企業定義と、それから産業分野についての御意見がありましたが、定義は、従来が御承知のとおり一千万円または三百人、今度は五千万円または三百人に上げたわけでありまして、一見それは大幅に広げ過ぎたというお考えがあるかと思います。これはごもっともと思います。私たちも、この問題についてはいろいろ検討いたし、また業界各方面の意見を徴しまして、その結果、現在の経済情勢にマッチいたしまするためには五千万円程度が適当であるという結論から、実は五千万円にいたしたのでありまして、民社党も五千万円にしておりまして、三千万円は社会党さんだけであります。そういうことから、私たちは、やはりこの定義は五千万円が妥当であるという考え方に立つものであります。  そこで、分野の問題でありますが、社会党の案を見ますると、いかにも国家権力、統制経済のにおいがいたします。自民党はいわゆる自由経済を基調とした考え方に立っておるのでありまして、業界の創意工夫向上の意欲、これに政府施設を待って手を引っぱって上げていこう。社会党は上から押えて、そうしてやっていこうという、考え方に相違があるのであります。いわゆる国家権力なり統制経済の結果がどういう結果であったかということは、今さら私が申し上げるまでもないと思う。社会党とは御関係の深い中共なりソ連が、終戦後、三年経済計画、五年経済計画、七年経済計画、何回もやっておりまするが、その結果が一体どうであったか。特に中共は、今や六億の国民が餓死寸前にあるという、言語に絶する悲惨な状態に追い込まれておることを、一体原因は何とお考えになりますか。むろん、天災ということも一つの原因には間違いありませんけれども、いわゆる統制経済の誤った政策、これが今日の中共経済を行き詰まらした一番大きな原因だと私たちは考えておるのであります。そういう点からも、社会党の考え方には同調できない。そこで、この分野の調整も、どうも国家権力が介入したにおいがありますので、わが党は、あくまでも業者の納得のいく調整で、そうしてこの問題を解決していこうという実は考え方に立っておるのであります。  そこで、もう一つは、この中小企業省設置に賛成するかどうか。これはただいま通産大臣が詳しく御答弁いたしましたから、私は省略いたしまするが、しかし、結論的には、やはりいろいろやってみて、その組織が強化した暁においてはそういうこともあり得るであろうという考え方で、基本法の附則の末尾にこういうことを実は書いてあるのでありまして、これをお読み願ったならば、自民党がこの問題についてどういう考え方を持っておるかということが御了承願えると存ずるのであります。  以上であります。(拍手)   〔衆議院議員田中武夫登壇拍手
  17. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) 近藤先輩の私に対する御質問に対しましてお答えいたします。  まず、その第一点でありますが、社会党案には前文を設けていないがどういうわけか、こういう御質問であります。実は、われわれ、わが党の中小企業基本法案を立案するに際しましては、この点につきまして、前文を設けるべきかいなかを十分に慎重な検討を加えたのであります。その結果、長文にわたる前文を置く形式をとらず、通常の法形式をとることといたしたのでございます。  それでは、一体前文とはどのようなものであるかと申し上げますと、前文も確かに法律の一部を構成するものであるには相違ございません。しかし、いずれも本則の各条項のように具体的な内容を定めた規定ではなく、むしろ、その法律制定の由来、理由、あるいはその法律の理念とか趣旨とかといった事柄をうたっておるのであります。また、その法律の各条項が、前文に示された立場なり原理に従って解釈されることによって、初めてその正しい解釈が可能であろうと考えておりますが、現在、日本の憲法の前文に従って政府は解釈しているか、いや、そうでもなさそうです。したがって、このような前文を置かず、われわれは具体的に規定するほうがより明確であると考えまして、第一条に、簡潔にして明確な、この立法におけるわれわれの基本的理念と、この法律の目的とするところを規定し、第二条から第六条までの間で基本方針について、さらにこれに連なる各条項の中において、われわれの中小企業政策についての基本的態度を、より一そう具体的な政策の方向とともに明らかにしておるのであります。最近の基本法の中で、それでは前文を置かなかった例はあるか。昭和三十年成立いたしました原子力基本法には前文はございません。むしろ飾りといえば大へん言い過ぎかもしれませんが、書いてあっても、そのことを十分に会得しないような解釈をさせるような前文でなく、具体的な条文のほうがより明確であり、具体的にものを処理できると考えておるわけでございます。  第二点は、二重構造とは一体何か、こういう御質問でございましたが、御承知のように、二重構造という言葉はいわゆる俗語として現在では常識化せられておると思います。しかし、法律用語として取り入れたのはわが党が最初でございます。この法案でいう二重構造とは、国民経済の中に大きな断層が存在しておる。わが国企業を巨大規模企業と中小規模企業とに分けてみますと、その間には、賃金、生産性等に予想以上の格差が見られ、かつ、雇用形態、労働条件等にも質的な差が常に存在しておるのでございます。しかも、この二重性は、巨大規模企業、すなわち独占資本による支配、その支配下で絶えず再生産せられる低賃金の労働に依存する小企業過当競争、独占によるその利用という、相互関係にあると見られるのであります。このような観点から見たわが国資本主義の特殊性から招来されておる産業の構造を二重構造といっておるのでございます。  第三点は、第四条はほかには例を見ないような規定だが、特にこれを入れた理由は——こういう御質問でございますが、この条文を入れなければならないというのが現在の日本の実情であります。わが国経済における国民生産について見ますると、その圧倒的大部分は、みずからもまた勤労する中小企業者、大企業及び中小企業に働く労働者、並びに農業生産に従事する農民によって生産されたものであることは、すでに御承知のとおりであります。現在及び将来において、国民経済発展のためには、この三者が最も重要なにない手となり、これらの者を除いて国民経済発展考えられないのであります。しかしながら、先ほども説明申し上げましたように、日本資本主義経済の特異性から招来されております経済の二重構造によりまして、巨大独占資本国民経済を支配し、その支配下において、中小企業者が独占の圧力に対抗し得ないで、相互に過当競争を行なわされておること、そうしてまた、そのしわ寄せを労働者に転嫁し、低賃金を押しつけておる結果になっております。国民経済の矛盾を糊塗しているこのような状態に対しまして、さらに支配者は、支配せられる者に対して、分裂の、目に見えない政策をもって臨んできておるのであります。そのことは、労働者と農民と対立させるような方向に宣伝することによって、農民には低米価政策を押しつけていく、これが現状であります。独占は、このような関係を利用し、国民経済における悪循環を再生産しながら、その過程で搾取を行ない、みずからは太ってきておるのであります。  われわれは、国民経済が、全国民利益のために正常な運営が行なわれるためには、国の経済政策基本的方向が、二重構造の解消のために指向せられなければならないと考えておるのであります。そうして、二重構造のもとにおいて、資本なき者を対立させ、これを利用しながら搾取するという関係を断ち切り、国民生産の中心的にない手であるこれらの三者を、ともに向上させるような政策を樹立し、実施することが、最も大切であると考えておるのであります。これは単に、中小企業政策基本であるにとどまらず、経済政策全般に通ずる基本でなくてはならないと考えております。このような考え方のもとに、特に第四条を設けたことを御了解願いたいと思うのであります。  なお、この際、一言申し加えておくことをお許し願いたいと思いますが、先ほど、自民党の提案者首藤代議士が、わが党の案につきまして、とかくの批判をされましたが、われわれは、この基本法は二年かかって検討し研究した結果でありまして、ためにするための宣伝、こう言うことはやめていただきたいことをお願いを申し上げます。(拍手)   〔永末英一登壇拍手
  18. 永末英一

    永末英一君 御答弁申し上げます。  第一に、われわれが提案いたしました基本法の性格が中間的であるという御批評がございました。条文の数から言えばまん中でございますが、そういう意味合いで中間的と言われたのではないと思います。私たちは、中小企業の位置づけをはっきりさせるということが、中小企業基本法の一番大きな問題であると考えまして、御承知だと思いますが、私どもの党の綱領では、「社会主義経済のもとでは、創意にとみ、努力を傾ける中小企業経営を保障し、大企業中小企業に対する支配関係を解消する。国家は中小企業発展のために積極的な施策をおこない、協同経営化等を促進することによって、その近代化をはかる。」、これを建前にしながら、中小企業経営内部の問題、その経済の問題やあるいは雇用の問題、あるいはまた中小企業相互間の問題、中小企業と大企業との問題、さらにまた、中小企業と、国、公共団体経済単位として相関連しあう問題、さらに施策の面において、国及び公共団体中小企業にどのようにしてきたかという現在の法令のすべてを検討しまして、そうして現在の法令を改正すべき方法によってわれわれの目的が実現するならば、現在の法律改正、さらにまた、法律が足らないならば法律を新しく定める、この諸般の手続を全部終えまして、終えたあとで、それならばこういう考え方をどのように運営していくかという、その基本的な道をはっきり指し示す必要があるというので、二十八カ条にまとめたものでございまして、全く独自の案でございまして、中間的といわれている批評は当たらないと存じます。  また私どもは、中小企業組織基本といたしまして、同業組合を作ることにいたしました。この同業組合は、現在の中小企業団体組織法における商工組合とあまり変わらぬのではないか、こういうような御質問でございましたが、そうではございません。現在の団体組織法における商工組合は、すでに法律のできましたときに明らかになっておりますように、非常に消極的な面で規定がされております。すなわち中小企業者のそれぞれの行動を建前にしながら、それが組織を作る場合に非常にいろいろな面で制限を加えていく、こういうようなことが建前となっておりまするがために、たとえば、その目的が組合自体としては営利は目的としないとか、あるいは設立要件といたしましても、過当競争や正常経営ができ得ない場合というようなものを要件といたし、あるいはまた、事業につきましても、その組織の内部における生産販売等に対する制限というものを主軸にしてその事業内容規定をせられておるわけでございます。私どもは、そういうようなかまえの商工組合ではだめだ、もっと積極的に、現在の日本経済の中で中小企業者が果たしている経済上の役割を十分に実現するためには、もっと一つの単位として積極的な活動ができるようにしなくてはならない。そのためには、地域別、業種別に同業組合という新たな一つの理念に導かれる団体を作って、これを単位にして積極的な活動を行なうべきだ、こういう意味合いを、私どもはこの同業組合を主張することによって明らかにいたそうといたしたものでございまして、質問者の言われる団体組織法における商工組合とは全く異質のものであるということを御了解願いたいと存じます。さらにまた、かつてございました重要物産同業組合、これはもう、あの同業組合法ができた当時の条件あるいはまた重要物産に指定された同業組合であったという法律の建前と比べていただければ、おのずからに異質のものであることが御了解いただけると存じます。(拍手)     —————————————
  19. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 片岡文重君。   〔片岡文重君登壇拍手
  20. 片岡文重

    ○片岡文重君 私は、民主社会党を代表いたしまして、自民党、社会党並びにわが党から提案されておりまする中小企業基本法案につきまして、各提案者並びに池田総理大臣及び佐藤通産大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  時間の都合もありますから、まず自由民主党の提案者の方にお伺いをいたします。  中小企業が、わが国経済構造上きわめて重要な地位を占め、常に国民経済発展に多大の貢献をして参りましたことも、今後における理想社会において果たすべき社会的、経済的使命の重要性につきましても、あるいはまた、中小企業が、自己の創意と工夫を傾けて、企業発展従業員の生活水準の向上をはかりつつありますことも、あるいはまた、中小企業が、経済変動と産業構造の高度化等、大企業の重圧を受け、加えて政府資本主義的諸政策のしわ寄せを受けている経営苦難の姿も、表面ではともかくとして、腹の中では十分御承知になっておられることと存じます。さればこそ、政府並びに与党の各位は、業者の団体や大会等に御出席の際はもちろんのこと、あらゆる機会を通じて、政府並びに自民党が、いかにも中小企業者の要望にこたえて積極的施策を行なっているかのごとき言動をもって、拍手を呼び、支持を得て、今日に至ったのであります。しかし、中小企業基本法の制定も、すでに十分なる検討と用意を整え、今国会には必ず成立せしめるなどという約束もしばしばなさっておられたのにもかかわらず、わが党並びに社会党の提案を見まするや、まさに倉皇として提出されたのが本法案である。そればかりではなく、御提出になられた法案を拝見いたしますると、重要な問題点を巧みに羅列し、その希望対策を抽象的に述べているのみであって、具体的措置は何一つ規定されておらないように見受けます。このことは、とりもなおさず、政府与党いずれも実効ある基本法成立を用意しておらなかったか、もしくは希望しておらなかったことを、如実に物語るものであると思うのであります。  もちろん私どもは、資本主義政権である池田内閣が、一方では大資本に気がねをしなければならず、一方では中小企業にも、つれないそぶりを見せられない身のつらさに苦労をしておられるお立場は、了解できないでもありません。おそらく良識ある中小企業者は、池田内閣や自民党の手によって実効の上がる基本法が制定されるとは、期待されておらないでありましよう。  そこでお尋ねいたしますが、(「民社党はどっちを向いているんだ」と呼ぶ者あり)まん中を向いております。——先ほど提案者は、基本法は憲法であり、経済発展過程に即応させるためにも、こまかい規定は要らないとのことでありますが、発展過程に即応させるということは、その発展過程の程度の推移に応じ得るということでありますから、基本的方向と対策の根幹とは、基本法の必須的条件であって、これがために基本法具体策が要らないという言いわけにはならないと思うのであります。そこで、提案者みずから認めておられるように、何一つ具体的措置のない本法案をして、ほんとうに効果あらしめるようにいたしますならば、どうしても具体的措置法を必要とするはずであります。この具体的措置法案を今後御提出になられるのかどうか。また御提出になられるとするならば、いつごろになるのか。さらに、同時提案されなかった理由は何であるか。これをまず第一に伺っておきたいのであります。  第二にお尋ねいたしたい点は、大企業との格差是正について確信がおありになるのかということであります。自民党案の前文には、明らかに、「近代自由経済における自由にして公正な競争の原理を確認するとともに中小企業者と大規模事業者との間の経済活動調整して」云々とありますが、このことは、申すまでもなく、大企業中小企業との間の生産、利潤、金融等の格差を是正することを意味すると思うのであります。弱肉強食を原理とする資本主義体制下にあって、ことに、競争試験は本人のためであるなどと放言してはばからない閣僚もおられる現内閣にあって、はたしてこのような格差是正が行なわれ、公正な経済秩序確立ができると真剣にお考えになっておられるのかどうか。資本主義経済を是認しておられる自民党案としては不見識にすぎるのではないかと思いますが、お考えはいかがでありましょうか。伺いたいのであります。  第三にお尋ねいたしたい点は、組織整備拡充についていかにお考えになっておられるかであります。資本力の弱い中小企業が個々の力をもって解決し得ない困難な問題は、今日あまりにも多過ぎ、かつ基本的なるところに存在するのでありますが、わが党は、法案第三章において、この組織の整備拡充について、一つには組織化の積極的な指導助成二つには組織基本体制としての同業組合の制定、三つには、相互扶助、協同化のための中小企業協同組合の育成強化、四つには、商店街、下請企業小規模事業者の法人化等々、組織化の方向と国の責任等を具体的に明確にいたしておりますが、なお、不十分な点については、別途に個別立法を提出し、または準備を整えております。自民党案にはこれらの点についてほとんど何もないと思うのでありますが、お考えを具体的にお聞かせいただきたいのであります。  第四に伺いたい点は、産業分野確保と大企業との調整対策についてであります。大資本圧迫は、今や中小企業のみにとどまらず、農漁村をまで脅かしております。ジェット機を作りながら一方では鶏を追いかけ、鯨を追っかけている一方では豚の子を飼っているような現状であります。日本経済の跛行的な格差は、政府の言明とは全然逆な方向をたどって、ますます増長する一途であります。もし今日、中小企業産業分野確保され、大企業との間に有機的な関連が確立されることに相なりますれば、中小企業問題の大半はもはや解決されたも同様に相なるはずです。わが党は、この基本的な問題を解決するために、中小企業による適切業種の指定、大企業の進出禁止及び圧迫行為の排除、公正な下請関係確立と積極的施策、下請企業協同化促進、大企業との調停、裁定、行政機関の整備拡充官公需一定割合確保し、実績を国会報告する等々、具体策をこれまた明確にいたしておりますが、自民党案には、このような大資本圧迫に対して中小企業をいかに防衛していくか、具体的な基本政策を何ら示されておりませんので、そのお考えを明確にしていただきたいのであります。  第五点としてお伺いしたいのは、金融措置についてであります。金融問題が中小企業にとっていかに重要性、困難性のある問題であるかは、今さらいうまでもありません。ことに昨年秋以来の金融引き締め政策がいかに深刻なものであり、前途に重大な危険を内包しているかは、一昨日の本会議において、藤山企画庁長官も率直に認めておられるところであります。コネクションと資本力を持つ大企業にして、なおこの例外たらずといたしますれば、中小企業の困難たるや推して知るべきである。すなわち、一つには、金融機関の貸し出し制限を厳重に押しつけられ、一つには大企業からのしわ寄せを受けなければなりません。この金融難と金利負担の加重とは、中小企業の根底をゆるがす重要問題でありますから、これまた、わが党におきましては、資金確保のために、財政投融資の三〇%以上の確保、民間金融機関の一定率以上の貸付措置、貸付利率に関する措置等、明確にいたしておりますが、自由民主党案においては、最も肝心のところが抜け落ちておるように思われるのですけれども、お考えのほどを伺っておきたいのであります。  さらに、池田総理にお伺いをいたしますが、時間がありませんので要点だけを簡単に申し上げます。  議員立法といえども成立の暁は、政府は法実施の義務を負うことはもちろんでありますが、今回の与党提出法案は、お聞きのとおり何ら具体的な内容がないと思います。したがって、基本法の精神を生かすためには、別途に立法措置を必要とすることは明白であります。この場合の立法措置ないしは既存の関係法の改廃は、政府がおやりになるのか、また議員立法におまかせになるつもりか。これが第一点であります。  さらに、予算関係も膨張してくることは必至であります。先ほど同僚近藤議員も指摘をしておられましたが、今日のこの困難な中小企業春の対策を明確に閣内において積極的に検討して参りますためには、どうしても中小企業省設置が必要になると思うのであります。佐藤通産大臣の御意見もさることながら、総理としてはどうお考えになっておられるのか。設置するとすれば、その時期はいつになるか。大体の見通しをお伺いいたしたいのであります。  さらに通産大臣にお伺いをいたします。第一点は中小企業関係所管大臣として、野党側からはともかくとして、与党からこのような重大な議員提案をされたことは、その責任まことに重大であると思いますが、政府提案できなかった理由はどこにあるのか。これが第一点であります。  第二は、一般会計の中に占める中小企業対策が大企業に比しあまりにも見劣りすると思うのでありますが、所管大臣として今後いかに対処せんとされるか。これが第二点であります。さらに、池田内閣経済政策が失敗しているということはもはや何人も認めているところであると思いますが、中小企業に及ぼすそのしわ寄せを最小限に食いとめるために、今後いかなる対策をとらんとされるのか。御所見を伺いたいのであります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔衆議院議員首藤新八登壇拍手
  21. 首藤新八

    衆議院議員首藤新八君) 片岡議員にお答えいたします。  片岡議員の御質問の要旨は、自民党の案はまことに簡素である、抽象的である、そこで、もう少しこの関連法規や具体的な法規を必要とするが、それをいつ出すのであるか、こういうことが第一問だと思うのでありますが、先ほども申し上げましたごとく、基本法中小企業の憲法でありまして、私たちはたびたび改正すべきものではないという考え方に立っております。したがって、この際は根本的な対策だけを明確にいたしまして、そうしてこの実体法は今後できるだけすみやかにこれを出したいという考え方でありまして、お説のごとく、できるならば基本法と同時に出すことが一番いいと私たちも考えておりますが、中小企業内容がきわめて複雑多岐である点から、この国会には間に合わなかったことを、実は遺憾といたしますると同時に、関連法案は性格上やはり政府提案するのが妥当であるという考え方に立ちまして、今後政府のほうで、党と連絡の上、なるべく御希望に沿うように、すみやかにこれを提案いたされたいというふうに考えておる次第であります。  第二は、中小企業と大企業との格差是正の問題でありまして、この是正がはなはだ困難ではないかという御意見でありますが、私たちは、格差の是正あるいは経済活動調整は、さまで困難ではないというふうに考えておるのでありまして、この法規で最も重点を置いておりまする生産性向上近代化、こういう面を強く推進いたしまするならば、やがてはこの格差は解消するものであるという考え方に立っておるのでありまして、同時にまた、経済成長の過程におきましては、金融、税制等の措置を手厚く講じていきたい。金融問題について先ほど御意見がありましたが、現に自民党政府は、昨年秋以来、強度の金融引き締めによりまして中小企業にそのしわ寄せがきた、これを防止しなければならぬという考え方から、昨年十月から本年一月までにおいて、政府資金を一千億円、都市銀行、地方銀行、信用金庫、相互銀行、この四つの民間銀行に連絡いたし、協力を求めまして、その方面から四千億、合計五千億の資金中小企業に融資されたことによって、非常に心配された中小企業の年末金融も無事にこれが通過できた事実があるのでありまして、こういうことも今後そういう方針によって、そのつどそのつど問題が起こった場合に、これを打開していくという方法が一番適切であるという考え方を持っておるのであります。同時に、中小企業を大企業圧迫から守る——それがためには国家保護によって中小企業の分野を確保することが必要ではないかという御意見でありますが、これは先ほども申し上げましたとおり、わが党はどこまでも自由経済を主張するものであります。そして、その上に立って自由競争——それは創意工夫であります。意欲であります。これをあくまでも尊重いたして、そうしてその上に立って中小企業者の生々発展を期待する、これが最も適当な方法だと感じておるのでありまして、いたずらに権力あるいは統制的な方法でやるべきでない。また、このわが党の考え方で十二分に中小企業発展向上が期待されるという実は確信を持っておる次第であります。  そういうことでありまして、組織の問題もありましたが、組織はわが党もこれを非常に重要視いたしております。したがって、組織の強化のためには中小企業に関するほかの対策も組織強化を妨げてはならないとまで実は明記してあるのでありまして、いかに組織強化が中小企業発展向上のために重要であるかということは、私たちも特にこれを考慮いたしまして、その対策を実は講じておる次第であります。御了承願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  22. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほどお答え申し上げましたごとく、中小企業問題は非常に重要な問題でございます。基本法案が通過いたしましたならば、われわれは関連法案につきましても、早急に研究を重ねまして成案を得たいと考えております。  なお中小企業省につきましては、先ほど通産大臣がお答えしたとおりでございます。中小企業というのは一つの特定の業種ではございません。各種産業の一つの層をなすものでございますから、産業政策、産業行政の上から私は一体として考えなければならぬ。したがって、ただいまのところ中小企業省を設ける考えは持っておりません。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  23. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 中小企業基本法案を今回提出することができなかったその経緯でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、実態を把握し、そして問題の所在を明確にし、関係省の協力を得て関係法案を整備する、いわゆる基本法体系を整備する、こういうことに取りかかったのでございますが、それらの準備がおくれた結果でございます。  第二の問題といたしまして、中小企業対策の予算の関係、この予算についてのお尋ねであったと思います。企業間の規模別の格差を是正する、これが経済政策上の最重点施策の一つだ、最重点問題の一つだと、かように私ども考えておりますので、予算編成にあたりましても、もちろんそういう点の是正に役立つような予算を編成したつもりであります。もちろん、金額といたしましては、総予算から見ればわずか九十一億程度でございますから、十分だとは申しません。しかし、予算の増額されました伸び率は前年に比べまして二倍以上になっております。また、この金融の面における財政関係の投融資では、三公庫の計画も前年の三割四分増というものでございますので、相当拡大したつもりでございます。ただ、御指摘になりましたが、大企業向け、あるいは中小企業向けと、この二つに予算を分けることはなかなか困難でございます。また中小企業の性格等から申しまして、その産業内部の問題として見ますると、これを二つに分けるということは必ずしも適当な方法じゃないのじゃないかと、かように思います。また中小企業の対策として、どういう育成の基本考えるかということでありますが、ただいま申すまでもなく、経済成長、この拡大成長をいたす、その政策の遂行のもとで、これは中小企業がいわゆる痛めつけられないような工夫をいろいろいたしておるわけでございます。私は、本来、経済成長政策そのもののうちにおいて初めてこの中小企業生産性向上し、高度成長において中小企業も救わるべきものだ、こういう理念を実は持っております。もちろん、この高度成長経済活動の期間においては、あるいは初期においてはしばしば格差拡大する場合もあると思いますが、これは究極においては、経済成長し、そして活発な活動をするようになれば、いわゆる中小企業と大企業格差は、これは解消していくものだと思います。また真の経済拡大成長、これはやはり中小企業の基礎が強固になって初めてその目的を達するものだと、かように考えます。そういうことを考えて参りますと、何と申しましても中小企業生産性向上していくこと、これに最善の効力を払う、これが最も必要なことではないかと思うのであります。今日までの中小企業と大企業生産性を比べてみますると、中小企業は非常に劣っておる、こういうことが言えるのでありますが、外国の事例等を見ましても、いわゆる付加価値額を比較してみて、アメリカなどでは、中小企業のほうが大企業よりも大きい、あるいはイギリスなどでは、その付加価値額は大体大企業に匹敵する、こういうような実情でございます。わが国中小企業におきましても、生産性向上、こういう点に特に意を用いまして、設備近代化等その他の諸施策を遂行して参りたい、かように考えております。(拍手)     —————————————
  24. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 大竹平八郎君。   〔大竹平八郎君登壇拍手
  25. 大竹平八郎

    ○大竹平八郎君 私は、参議院同志会を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする中小企業基本法案について、関係大臣並びに提出者に対しまして、簡単に質問をいたすものでございます。  まず第一に、与党の総裁でございまする池田総理大臣に対しましてお尋ねをいたします。  与党自由民主党の議員提出法案に対しまして、去る二十二日の日本経済新聞の報ずるところによりますと、「継続審議にとどめる、中小企業基本法案政府・自民の意向」という見出しのもとに、「自民党としてはもともと参議院選挙の一環として基本法案提出したものであって、初めから今国会成立させる考えはなかった。」「将来十分練り直した上、政府案の形で出し直すことに政府、与党の了解がついている。」と書かれてあります。最初から通す意思のない法案を衆参両院で絶対多数を擁する与党自民党から提出するというのは、全く「ふ」に落ちない話でございます。自民党の二百六十三名が提出者となり、ほとんど全部の議員で提出されている法律案であってみれば、多数決の支配する正常な形の国会ならば、衆議院を通過することは全く疑いをいれないところでございます。それにもかかわらず、これを継続審査にするつもりであったというのは、実に国会を愚弄するものであると断ぜざるを得ないのであります。しかも、前尾幹事長は、「国会の会期も残りわずかなので、結局、今国会では継続審査にせざるを得ないだろう。」と言っております。しかし、今までの慣例でいけば、自民党案を一体だれが審査をするか。ほとんど自民党員が提出者として署名しておるのでありまするから、野党がもし質問しなければ、与党では質問する者がないのであります。署名をしなかった閣僚諸公がまさか質問者になるということも考えられません。おそらく自民党から質問もできず、修正もできまい。そして直ちに討論採決ということになると、いかがな結果になるのでございましょうか。しかも、会期が少ないという理由というものは、この際は認められないのであります。私は、国会の権威を保つために、議員提案、ことに与党提案重要性を保持したいために、この辺の事情について、与党総裁でありまする池田総理の誠意ある答弁をお願いする次第であります。  次に、法案そのものにつきまして二、三お尋ねをいたします。  まず、自民党の提案者にお伺いいたします。  この法律案は、宣言規定集とも称すべく、広範にわたって国の義務を規定しておるように見受けられますが、実は、その具体性に乏しいように感ぜられるので、その内容をお伺いいたします。現在中小企業が困っておりますることは、せっかく苦心して市場を広げ、量産的に商売ができるような段階になると、大企業が出てきて、大資本にものをいわせて、中小企業の活動を奪ってしまうことです。大企業はもっと節度を守るべきであります。そこで、野党の案では、いずれも中小企業の分野を確保するための手段を講じております。自民党の案では、調整するといっておりますが、ここで問題になるのは、調整というのは、多く大企業が進出したために中小企業が困った場合、すなわち、事が起こってしまってから、そのあとの処置として調整が行なわれるのであります。それでは、中小企業がいじめられてから、あとで頭をなでてもらうようなものでございまして、実際の役には立たないのであります。そうして、多くの場合は実績ができてしまうから、大企業を引っ込ませることは実際問題としてむずかしいのであります。しいて引っ込ませようといたしまするならば、民社党案のように、国が賠償する措置までを講じなければならない。したがいまして、この問題には、事前の予防措置が必要と思うのでありますが、それはいかように考えるか。また、もし予防措置をとるといたしまするならば、勢い分野の確保ということが必要になると思うのでございますが、いかがでございましょうか。この点について御答弁願いたいと思います。  次は、これと同様のことが金融などでも起こります。金融中小企業にとって苦手のことでございますが、自民党案では、民間金融機関指導して、中小金融の不利益性を除去するというのが建前のようでございます。これは今まででも実施してきたことであって、何ら変わったことではないのであります。今まで、幾たびかそういう政府方針を聞き、金融機関の申し合わせをわれわれは聞いておるのでございますが、実際には、中小企業は少しも楽になっていないのが実情でございます。現に、三月危機を何とか切り抜けた各企業も、金融逼迫の山と見られまする五月から六月を乗り越えるだけの余力はすでに限界に達しておると見られるのでございます。全国銀行協会の調査によりますと、全国銀行の総貸し出し中に占める中小企業の割合は、昨年末にはかえって上昇いたしたのでございまするが、本年になると、全く様相が一変いたしまして、一月の総貸し出し増加額は全体で百五十八億円も増しましたが、中小向けは五百六億円の減少でございます。このように金融が行き詰まると、一部企業には、資金繰りのいかぬまま黒字倒産という事態が懸念されるのであります。単なる指導ではだめであります。野党案は、いずれも、一定割合の融資を中小企業のために確保しようという案になっているわけですが、自民党案はいかなる指導を行なうか、その具体策をお持ちかどうか、お伺いいたします。  また、右に関しまして、大蔵大臣の御経験をお持ちの佐藤通産大臣は、自民党案のような指導だけで効果が上がるものと思うかどうか、この際お答えを願いたいと思うのであります。  次に、社会党の提案者に一点お伺いいたします。社会党案の特徴の一つは組織化にあります。中小企業組織協同組合中心に考えることは、民社党が同業組合中心であるのと違って、いかにも民主的であるかのように思われまするが、協同組合で、はたして調整事業を完全に行なえるかどうか。協同組合は、中小企業者が、同業者であろうと異なる業種事業者であろうと、任意に結成できるところがよいのでございます。同業者だけが集まって作る組合ならば、自主的に組合員を規制すること、すなわち調整事業をやることができるのでありますけれども、異なった業種事業者組織している組合、たとえば商工協同組合のようなものでは、調整事業は実際上困難であります。それならば、同業者だけの協同組合を作って調整すればよいではないかと仰せられるかもしれませんが、調整のために同業者だけの組合を作るならば、これは現在の団体組織法の商工組合と同系統のものになります。事実、社会党案では、今までの事業協同組合と商工組合二つを認め、それをしいて事業協同組合の名に統一したようでありますが、それでは、協同組合主義を貫くと称しながら、異種類のものを名前だけで統一したのであって、再び両者を何らかの形で分離しないと、いたずらに混乱を招くように思われるのでございますが、いかがでございましょうか。この点をお伺いいたします。  最後にあたりまして、各党それぞれの立場からの法案内容ではございまするが、各三党で、そろって中小企業の危機打開のために本法案提出せられましたことについて、深甚の敬意を表しまして、私の質問を終了いたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  26. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) わが党提案中小企業基本法案が今国会成立することを私は強く念願いたしております。したがいまして、新聞の予測記事につきましては、われわれはそういうことを言ったこともございませんし、われわれの本意ではございません。何とぞ早急に御審議下さいまして、可決せられんことを希望いたします。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  27. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 金融につきまして、政府指導だけで十分かというお尋ねだったと思います。御承知のように、ただいま政府中小企業向け三公庫等の資本の充実もはかっております。しかし、これだけでは十分ではございません。民間金融機関の協力を得ることが望ましいのは申すまでもないのでございまして、昨年来の金融引き締めにあたりまして、中小企業に対しては特に協力していただくように、あるいは貸出条件等が悪化しないように、その協力方を各金融機関団体にお願いをいたしまして、たいへん順調に推移しておるようでございます。相当の効果を上げたと、かように考えておるのでございます。なお、それらの点については、具体的な問題としてその効果など十分考えてみたいと、かように思います。(拍手)   〔衆議院議員首藤新八登壇拍手
  28. 首藤新八

    衆議院議員首藤新八君) お答えいたします。  大竹議員の御質問も、社会党、民社党の御質問と同じように、大企業側の中小企業に対する圧迫をどうして排除するか、社会党あるいは民社の規制ということのほうがいいのではないかという御意見であります。なるほど、とくと考えますると、ごもっともだという感じがいたしまするが、こういう国の権力あるいは統制的なことは、一つのアヘンの吸飲と同じようで、その当時は非常に気持がいいのでありまするが、結局はその体質をゼロにしてしまうということになって、一番必要な創意工夫、情熱、意欲、これがなくなったならば、中小企業全部が私は結局においては絶望のほかはないという考え方に立ちますから、あくまでも創意工夫を助長する政策をとっていくことが妥当だという考え方に立ちまして、したがって、それがためには、規制でなく、あくまでも行政措置による調整でいきたいという考え方であります。  なお、金融の問題は、ただいま通産大臣からお答えいたしましたが、昨年来の金融の逼迫に際しまして、党並びに政府は、これが対策を講じまして、着々としてその効果を上げたことによって、非常に不安がられた中小企業金融が、とにもかくにも平穏に今日まで来ておるこの事実が、明確に立証しておるのでありまして、私たちは、今後もこの実際に即した施策を進めることが適当であるという考え方に立っておる次第であります。以上であります。(拍手)   〔衆議院議員田中武夫登壇拍手
  29. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) 大竹議員にお答えを申し上げます。  現在では、御承知のように、共同事業をやるためには中小企業協同組合法による、あるいは調整事業をやるためには中小企業団体組織法でやる、その他いろいろの法律による組合がたくさんあります。この繁雑を避けまして、われわれはすべてを協同組合というものに整理をいたしまして、その協同組合が共同事業及び調整事業、そしてわが党特有の団体交渉、こういうことができるようにしたのであります。そのことは、わが党案の十三条の組織、十四条の事業の両規定を見ていただきますとともに、ともに提案をいたしております中小企業組織法をあわせ御検討いただくならば、御了解をいただけるものと思います。(拍手
  30. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  31. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第二、電波法の一部を改正する法律案(第三十九回国会内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。逓信委員会理事松平勇雄君。     ━━━━━━━━━━━━━   〔松平勇雄登壇拍手
  32. 松平勇雄

    ○松平勇雄君 ただいま議題となりました電波法の一部を改正する法律案について、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、内閣提出にかかるものでありまして、まず、提案理由といたしましては、最近困難な事態に置かれているわが国海運企業改善をはかること、及び、船舶無線通信士の需給状況が近時逼迫を告げている実情からして、船舶無線電信局の運用義務時間の短縮が強く要請されております。これらの情勢にかんがみ、最近における無線機器の性能の向上、並びに、従来のわが国における船舶無線通信の利用状況及び外国の船舶無線通信の実情よりいたしまして、船舶無線電信局の運用義務時間等を、海上における航行の安全の保持及び通信秩序の維持に支障を来たさない限度において、かつ、国際水準並みに軽減しようというのであります。  次に、内容のおもな点を申し上げますと、  第一に、船舶無線電信局の種別の内容を改めようとすることであります。すなわち、常時運用を義務づけられている第一種局は、国際航海に従事する旅客船で二百五十人をこえる旅客定員を有するもののみとし、現在の施設船五百五十七隻のものを七隻となるように、運用義務時間が一日十六時間の第二種局甲は、総トン数五百トン以上の旅客船で第一種局に当該しないものとし、施設船三百八十二隻のものを十一隻となるように、また、右の改正に伴い、運用義務時間が一日八時間の第二種局乙及び第三種局甲は、逆に施設船三百四十五隻のものが千二百六十六隻となるようにいたそうとするものであります。  改正の第二は、聴守義務時間に関するものでありまして、従来無線通信士による常時または十六時間の聴守を要しました非旅客船八百五十五隻の船舶無線電信局を、八時間の聴守をもって足りることといたし、残余の時間はオート・アラームによって聴守することができることとし、通信士の節減をはかろうとするものであります。  その第三は、今回の改正によって、公衆通信の疎通等につき、現状に急激な変化をもたらすことを避けるため、経過措置として、現存する船舶については、改正法施行の日から三年間は、一日八時間運用の第二種局乙となるところを第二種局甲とし、その運用義務時間も十六時間、聴守義務時間を常時といたしております。  逓信委員会におきましては、郵政省、運輸省、日本電信電話公社等に対し質疑を行ない、また、参考人の意見をも聴取する等、慎重に審議いたしましたが、その質疑のおもなるものは、船舶無線通信の利用状況、船舶通信士の需給状況、オート・アラームの性能、船舶局の運用義務時間の軽減に伴い、公衆通信の疎通、海上保安業務、気象業務等に及ぼす影響とその対策等でありますが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて質疑を終え、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して新谷委員より賛成討論を行ない、なお、附則第二項中、「昭和三十六年」を「昭和三十七年」に改めるとの修正動議を述べられ、次いで、日本社会党を代表して永岡委員より、民主社会党を代表して山田委員より、参議院同志会の奥委員より、それぞれ反対意見の発言がありました。  かくて討論を終え、まず新谷委員の修正案につき、次いで、右の部分を除く原案全部について採決いたしましたところ、いずれも多数をもって可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  33. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 本案に対し討論の通告がございます。発言を許します。永岡光治君。   〔永岡光治君登壇拍手
  34. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております電波法の一部を改正する法律案に対し、反対の意を表明し、討論を行なわんとするものであります。  今回、政府提案いたしましたこの電波法の一部改正の問題は、すでに十数年以前から取り上げられておるものでありまして、昭和二十八年から九年にかけて、問題の中心をなすオート・アラームの信頼性につきまして実地試験が行なわれ、その結果は、将来さらに調査検討すべきであるとの報告書の結論となっておったものであります。しかるに政府は、今回オート・アラームの性能が向上したようだし、その信頼性も高まったので、これにより通信士の節減をはかりたいという理由で、今回この提案となったようでありますが、まず、問題のオート・アラームの信頼性についても、私の調査いたしましたところでは、二十八、九年に行なわれた実地試験の後においては一度の実地試験も行なわれず、単に、近代科学の進歩発達に伴い、その性能が向上したという抽象論の域を出ていないのでありまして、したがって、さきの実地試験の結論をくつがえすに足る具体的の証明が得られないのであります。また、逓信委員会審議の過程において、参考人の意見を聴取いたしました際の参考人の意見によって明らかなように、現実には非常に故障の度合いが大きいことを数字的に証明しており、また、誤作動が多いことが明らかにされております。船舶の安全航行に最も重要なこの通信の確保には、単なる抽象論でなくて、具体的に試験検討の結果、現実にその性能に十分の確信が得られた上でなければ軽々に改正すべきではないと思うのであります。  また、本改正に伴って通信士の数を節減する結果、船舶無線局の使命とする船舶航行の安全、公衆通信の疎通、気象業務等につき、現状に急激な変化をもたらすことを避けるため、三年間の経過規定を設け、その間に、通信秩序の確立、海津局の整備、裏時間の利用等の対策を講ずることになっておるのでありますが、三年間に、どのような対策を講ずることによって、その混乱を防ぎ、業務運行に支障を来たさないようにするのか、確たる具体的計画の裏づけが見当たらないのであります。  まず、電電公社の海岸局の整備の問題におきましても、割当周波数の問題、海岸局整備拡充の予算的措置等について具体的な説明が得られず、また、通信秩序の確立の問題にしても、現在の通信士の担当する仕事をどのように減らすのか、船舶と海岸局との通信をどのように規制するか、また、夏時間の利用が言われるようにスムースに行なわれて所期の目的を達することができるものかどうか、全く疑いなきを得ないのであります。  さらに、気象業務におきましても、現に気象庁当局は、船舶からの通報が激減することが予想されるが、これが対策については、気象業務に支障を来たさないよう別途計画すると言っておられますが、経過措置のための三年間で、その実現には自信がないと言っておられますのに、今回のごとき法改正を行なうのは、全くの暴挙と言わざるを得ないのであります。もっとも、現在、船舶無線局が扱っている気象業務等は、本来、船主側の責任において行なわれるべきものではなくして、気象上必要な通報は国の責任において行なわれるべきもので、今日まで長期にわたって、「船舶は移動する観測所である」として果たしてきた機能を、単に通信士の節約だけの理由をもって、気象観測に支障を来たすような改正が、はたして国家的に見て、経済的な妥当な措置として受け入れらるべきものでありましょうか。その反面において、気象情報を得ないことによって生ずる災害と比較したならば、全く比較にならないところと考えられます。  また次に、海運業の建て直しのため、通信士を削減して国際競争力を強化しようとする意図があるようでありますが、海運業の改善には、抜本的に解決しなければならないもっと大きな根本的な問題が山積しておりますのに、この解決をはかることを怠り、微々たる通信士の節減のごとき、害多くして利少なき措置考えることは、あたかも木を見て森を見ない類でありまして、全く本末転倒のそしりを免れないところであります。  これを要するに、本改正案は、改正に踏み切るに足る具体的な証拠による裏づけに乏しく、また、改正に伴う混乱を避けるため三年間の経過規定が設けられていますことは、それ自体がその間に相当の整備を必要とすることを物語っておるにもかかわらず、なお、この三年間の所要の整備に対しても、何らの具体的裏づけがないことが明瞭なただいまの段階におきましては、本改正は時期尚早であり、わが党のとうてい賛成し得ないところであります。  以上をもちまして私の反対討論を終わります。(拍手
  35. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  本案の委員長報告は修正議決報告でございます。本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  36. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は委員会修正どおり議決せられました。      —————・—————
  37. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第三、原子力委員会設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員長森八三一君。   〔森八三一君登壇拍手
  38. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題となりました原子力委員会設置法の一部を改正する法律案につきまして、科学技術振興対策特別委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  本法律案は、最近の核爆発実験による放射性降下物の長期化にかんがみ、原子力委員会の所掌事務に放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関することを加え、放射能障害の防止をはかろうとするものであります。  当委員会におきましては、原子力委員会の性格、機能、放射能対策本部との関係等につきまして熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録に譲ります。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して吉田委員より、政府は放射能対策について十分な対策を講ずるとともに、原爆実験の阻止についても努力されたい旨要望して、賛成意見が述べられました。  討論を終わり、採決に入りましたところ、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  39. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  40. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  41. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第四、国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長高野一夫君。   〔高野一夫君登壇拍手
  42. 高野一夫

    ○高野一夫君 ただいま議題となりました国民年金法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を報告いたします。  国民年金法は、昭和三十五年十月の拠出年金制度の適用をもって全面的に実施せられ、その後、前国会において相当大幅な改正が行なわれたのでありますが、その際における附帯決議の趣旨にかんがみ、さらに改善を加えるために本法案提出された次第であります。  本法律案の要旨は、  まず拠出年金に関しては、第一に、前年度において免除された保険料に対しても、納付された保険料と同様に、国庫は毎年度保険料総額の二分の一相当額を負担すること、第二に、老齢年金の支給要件を緩和して、保険料を一定期間納付した場合に限らず、保険料の納付済み期間、免除期間またはその合計が所定年数以上であることに改め、その年金額は保険料の納付済み期間または免除期間に応じた額の合計とし、かつ七十才以後の年金の最低額を一万二千円とすること。第三に、障害年金、母子年金、準母子年金及び遺児年金についても支給要件を緩和すること。  次に、福祉年金については、第一に、公的年金受給者の一部に対して福祉年金を併給することとし、二万四千円未満の公的年金受給者に対し、福祉年金額の限度で二万四千円と公的年金額との差額を支給し、公的年金が戦争公務による死亡または廃疾に基づくときは二万四千円を七万円とすること。第二に、受給権者の所得による支給制限を緩和し、また受給権者の配偶者に公的年金が支給されても福祉年金を減額しないこと。第三に、母子福祉年金及び準母子福祉年金における加算額を、現行の年二千四百円から四千八百円に増加することなどであります。  委員会においては、厚生大臣及び政府委員に対して質疑を行ないましたが、そのおもなるものとしては、国民年金制度の将来にわたる長期的の見通しはどうか。物価騰貴、諸給与の引き上げ等にかんがみ、福祉年金の額をすみやかに改善すべきではないか。また、老齢福祉年金の支給開始年令を早めるべきではないか。福祉年金と併給する公的年金の限度額を二万四千円または七万円とした根拠はどこにあるのか。今国会地方税改正案で障害者等に対する住民税の非課税範囲を十八万円に引き上げることに応じて、受給権者の所得による福祉年金の支給制限額も、十五万円でなく十八万円まで引き上げるべきではないかなどのほか、社会保障に関する基本方針、年金積立金の運営及び還元融資の状況、各種年金制度の調整というような問題について熱心に質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して阿具根委員から、国民年金制度を実施したといっても、その内容は微々たるものであり、一般の期待を裏切るものである、また各種年金制度の間に考え方の統一性がない、今回の改正もはなはだ不満足で、本法律案には反対である旨、また民主社会党を代表して村尾委員から、年金制度改善趣旨は了とするが、財政の余力、物価の騰貴等を顧みれば、社会保障制度全般にわたり給付額を大幅に改善すべきであり、本法律案は不十分と考えて反対である。また自由民主党を代表して鹿島委員から、本法律案に賛成する旨の討論が、それぞれ行なわれ、次いで採決の結果、本法律案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  以上報告いたします。(拍手
  43. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  44. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  45. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第五、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、  日程第六、産炭地域振興事業団法案、  日程第七、鉱山保安法の一部を改正する法律案、   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。商工委員長武藤常介君。   〔武藤常介君登壇拍手
  47. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま議題となりました三法案について、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、三法案内容について簡単に御説明いたします。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案は、炭鉱整備の迅速化をはかるため、従来の炭鉱買収方式に加えて、交付金による方式を新設すること、石炭鉱業合理化事業団が炭鉱に対し、その整備のための長期運転資金を貸し付ける制度を設けること、石炭運賃の延納債務について、中小炭鉱に対し、事業団による債務保証の措置を講ずること等を規定したのであります。     —————————————  産炭地域振興事業団法案は、産炭地振興のため、新たに特殊法人である産炭地域振興事業団設立し、工業用地の造成、企業資金の貸付等を行なわせることとし、その組織、業務等に関して、所要の規定を定めたものであります。     —————————————  鉱山保安法の一部を改正する法律案は、鉱山における請負作業を届出制として規制を加え、保安委員会の活用、鉱山保安協議会の改組、罰則の強化等の改正を行なおうとするものであります。     —————————————  商工委員会においては、三法案につきましてはもとより、石炭政策全般にわたって、きわめて熱心な質疑応答が行なわれました。すなわち、四月六日に閣議決定になった政府の石炭対策を初め、炭鉱労働者の雇用の安定の問題、産炭地域振興と民生の安定方策、国鉄運賃の軽減措置等の各般にわたったのでありますが、その詳細は、会議録によって御承知を願います。  質疑を終わり、討論に入りましたが、三法案に対し、いずれも討論の発言もなく、次いで採決の結果、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案は多数をもって、産炭地域振興事業団法案鉱山保安法の一部を改正する法律案の二法案は、いずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、これら三法案に対して、商工委員会において、五項目にわたる附帯決議を全会一致をもって行なったことを申し添え、報告を終わります。(拍手
  48. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  49. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  50. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 次に、産炭地域振興事業団法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  51. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  52. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 次に、鉱山保安法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  54. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第八、首都圏既成市街地における工業等制限に関する法律の一部を改正する法律案、  日程第九、首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案、   (いずれも内閣提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。建設委員長大河原一次君。   〔大河原一次君登壇拍手
  56. 大河原一次

    ○大河原一次君 ただいま議題となりました二件について、建設委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず、首都圏既成市街地における工業等制限に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  現行法は、首都における産業及び人口の過度集中を防止するため、東京都区部及び武蔵野、三鷹両市の区域内においては、一定の規模以上の製造工場と、大学、高等専門学校及び各種学校の施設の新設に対しては、許可を必要とすることを規定しておるのでありまするが、昭和三十四年四月施行以来の実績にかんがみ、との制限を強化する必要があるというのが本改正案の提案理由であります。  その要旨の第一点は、工場の制限規模千六百平方メートルであったものを千平方メートルに、大学及び高等専門学校の教室は二千平方メートルであったものを千五百平方メートルに、各種学校については千平方メートルを八百平方メートルに、それぞれ引き下げること。  第二点として、既存施設については、従来は届出をした場合、その団地内では無制限に拡張ができ、届出をしない場合でも、拡張分が基準面積に達するまでは許可を必要としなかったのでありますが、これを新設の場合と同じように許可を受けなければならないことにしようとするものであります。  第三点といたしましては、学校については、教育の公共性等を勘案して、改正法の施行の日から三年間、また理工科系の大学及び高等専門学校については、当分の間、右の許可を必要としないことにしようとするものであります。     —————————————  次に、首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案について申し上げます。  前述いたしました制限措置を強化する反面、一方これを受け入れる側として積極的な施策を講ずるため、工業都市として発展させることを適当とする市街地開発区域内の一定の地域について、工業団地造成事業を施行することにより、市街地開発区域の開発を促進することを目的とするものが本改正案であります。  その要旨の第一点は、工業団地造成事業は都市計画事業として施行することとし、その施行者は、都県もしくは都県の加入する一部事務組合または日本住宅公団と、しております。  第二は、土地の収用でありまして、施行者は本事業施行のため必要がある場合において、本事業を施行すべき区域内の土地等について、これを収用できることとし、土地収用法の規定を適用することとしております。  第三点は、造成敷地等の処分管理計画、製造工場等の敷地の譲受人の公募及び選考方法、譲受人の義務等の規定であり、また、本事業のための土地提供者等の譲渡所得等に対する所得税または法人税の軽減措置を認める規定を設けております。     —————————————  当委員会におきましては、両法案についてきわめて熱心な質疑が行なわれたのでありましたが、その内容については、会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了、内村委員から日本社会党を代表して、工業等制限改正案に対し、学校についての経過措置を削除する修正案が提出されたのであります。次いで、二法案並びに修正法を一括して討論に入りましたととろ、日本社会党を代表して内村委員から、開発区域整備法改正案について、農地転用等についての全国総合計画が先行すべきである、私企業のために土地収用法を適用するのは不当である、罰則が収用法に比し不均衡であるなどの理由により、原案に反対する旨の発言がありました。次いで、自由民主党を代表して米田委員から、二法案に賛成、修正案に反対の発言があり、なお、工業等制限改正案に対し附帯決議案が提出されました。附帯決議案は次のとおりであります。   附則第三項の学校についての経過措置に関しては、本法制定の趣旨にかんがみ、その経過期間を短縮する等、その運用に万全を期すること。  次いで、民主社会党を代表して田上委員から、二法案に賛成、修正案に反対の発言があり、なお、開発区域整備法改正案に対し附帯決議案が提出されました。附帯決議案は次のとおりであります。   本法律案に基づいて、土地収用を実施する場合においては、左の事項につき特段の配慮をなすこと。一、みだりに私権を侵害するかのごときそしりを招かざるよう万全を尽くすこと。二、土地等の提供者に対する補償等の措置については遺憾なきを期すること。  かくて討論を終わり、採決の結果、首都圏既成市街地における工業等制限に関する法律の一部を改正する法律案については、内村委員提出の修正案は否決、原案を全会一致をもって可決、首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案については、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、米田委員提出の附帯決議案は全会一致をもって、田上委員提出の附帯決議案は多数をもって、それぞれ本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  57. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、首都圏既成市街地における工業等制限に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  58. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  59. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 次に、首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  60. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  61. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第十、船舶職員法の一部を改正する法律案(第三十九回国会内閣提出)、  日程第十一、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長村松久義君。   〔村松久義君登壇拍手
  63. 村松久義

    ○村松久義君 ただいま議題となりました船舶職員法の一部を改正する法律案外一件について、運輸委員会における審議の経過及び結果について御報告いたします。  まず、船舶職員法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この改正法律案の骨子は次の二点からなっております。第一点は、船舶職員として船舶に乗り組ますべき船舶通信士の定員を定めている別表を改正し、旅客船を除き、その法定乗り組みを一名に軽減していることであります。ただし、法施行の際の現存船については、急激な変化を緩和するため三年間の経過措置がとられております。第二点は、当分の間、乙種船舶通信士及び丙種船舶通信士の免許年令が、現在満二十才以上であるのを満十八才以上に改めていることであります。  政府は、この改正案の提案理由として、現行船舶通信士の定員、資格は、太平洋戦争中の特殊事情により定められたものを踏襲しており、その定員は諸外国に比べ相当上回っている。したがって、日本海運の国際競争力を強化し、海運企業合理化を促進するため、航行の安全に支障を来たさない範囲内でこれを諸外国並みに改める必要があり、この改正案を提案したと述べております。  本法律案は、第三十九国会提案され、昭和三十六年九月二十八日、運輸委員会に付託、今国会に継続審査になっておるものでございます。  運輸委員会の審議に際しましては、きわめて慎重な審議を軍ね、前国会からの審議は十数回に及び、運輸大臣、政府委員との間に熱心な質疑が行なわれたほか、特に海運基盤強化と本改正案との関連については、大蔵大臣、経済企画庁長官に対しての質疑を行ない、また、参考人として、船主代表、海員組合代表、学識者及び経験者からの意見を聴取し、審議の参考に資した次第であります。これらの詳細な点については会議録に譲りたいと思いますが、問題になりました重要な点について申し上げます。  第一点は、船舶通信士の定員軽減による通信士の今後の需給見通しについての問題であります。  第二点は、航行の安全上支障は起こらないかという点であります。特にこの観点から、警急自動受信機−通称オート・アラームと言われておりますが、その技術的信頼性の問題及び船舶通信士の執務体制等の問題で質疑がなされました。  第三点は、改正案と政府の海運基盤強化策との関連についての問題であります。そのほか、通信の円滑な疎通に関する点や、気象予報に対する影響等各般の問題についての質疑が行なわれました。  かくて質疑を終局し、討論に入りましたところ、天埜委員より、自由民主党を代表し、附則第二項中、「昭和三十六年」を「昭和三十七年」に改める旨の修正案の提出があり、その理由として、時日の経過による当然の字句の整理である旨の説明がありました。次いで、修正部分を除く原案に賛成の旨の発言がありました。次に、大倉委員より、日本社会党を代表し、本法案は、航行の安全を後退させるものであり、海運合理化に名をかり、現状を無視して人員の削減を行なわんとするものであるとして反対の意見が述べられました。次いで、田上委員より、民主社会党を代表して、海運基盤の強化については、国の保護等海運政策の裏づけが先決であるにもかかわらず、本法案はこれを船舶通信士にしわ寄せせんとするものであり、また、現実を無視し、航行の安全を低下させるものであるとし、反対である旨の発言がありました。  かくて討論を終わり、まず、天埜委員提出の修正案を採決いたしましたところ、多数をもって可決すべきものと決定し、次いで、修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、これまた多数をもって可決すべきものと決定いたしました。よって本案は修正議決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案は、政府説明によりますと、総合的な国際観光振興策の一環として、外国人観光旅客をわが国に誘致し、もってわが国の国際収支の改善に寄与するため、外国人観光旅客に対する接遇の充実をはかろうとするものでありまして、改正のおもな点は、登録ホテル及び登録旅館に対し、その宿泊料金その他業務に関する料金の届出義務を課するとともに、主務大臣は届け出られた料金について不適当と認めるときは、変更を指示することができる等、登録ホテル及び同旅館の料金に関する制度を整備しようとするものであります。  委員会における審議の経過については、会議録により御承知願います。  質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に御発言もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  64. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 船舶職員法の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。大倉精一君。   〔大倉精一君登壇拍手
  65. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました船舶職員法の一部を改正する法律案に反対するものであります。以下反対の理由の要点を申し述べますが、わが国にとってきわめて重大なる意義を有する本法案の討論にあたって、時間をわずか十分間に制限されましたことは、きわめて遺憾とするところであります。  本来、船舶職員法は、法第一条に明記せられておるごとく、海上航行の安全を目的とする法律であります。申すまでもなく、交通の安全は、陸、海、空を問わず、常にその向上のために不断の努力を払うべきであります。断じて後退を許してはなりません。しかるに、この改正案は、日本の海運の国際競争力を強化し、海運企業合理化を促進するためという、ぎょうぎょうしい、うたい文句がついておりまするが、その意図するものは、本法の目的である航行の安全は二の次になり、もっぱら企業の採算のために人を減らそうとする以外の何ものでもありません。提案理由説明で、「海上航行の安全を向上せしめるため」とは言えずに、「海上航行の安全に支障を来たさない範囲で」と、如才ない申しわけをしなければならないところに、おのずから本法案が、改正ではなく、改悪であるということを政府みずからが意識しておる証左であります。さらに、「わが国海運企業の現状は、きわめて困難なる事態に直面している」と前置きしておりますが、はたしてだれがそうさせているのか。船舶職員のせいなのか、船舶通信士が三名乗り組んでいるためなのか。これこそ、膨大なる戦時負担を背負わされているわが国海運に対し、適切なる施策をサボッていた政府の重大なる責任といわなければなりません。低賃金に甘んじ、人命、船舶の安全をもって職務遂行の基準とし、船に乗り込むことを一生の職業としている勤勉なる船舶職員諸君が、その責任を負うべき筋合いは断じてないのであります。政府は、その責任を反省し、積極的なる海運政策推進する努力をいたさず、かえって海運資本家と結託し、もっぱら企業利潤の追求のために、政府みずから勤勉なる船舶職員の犠牲を強要し、海上の安全を後退せしめるがごとき法の改悪を押しつけてくることに対しましては、断じて承服できないところであります。しかも、人減らしのほこ先が、常に抵抗の弱い部門である船舶通信士に真っ先に向けられてくることは、きわめて悪質であるといわなければなりません。  以下、この改悪案が、本法の目的である海上航行の安全を後退せしめる理由を申し述べたいと思うのでありますが、時間がありませんから、要点だけにとどめます。  まず、現行規定は戦時中の特例立法であるといっておりますが、これは合理化論者、すなわち、人減らし論者の、都合のいい、うたい文句にすぎないのであります。船舶に関する幾つかの戦時法令は、終戦とともに当然に廃止されましたが、船舶無線の無休執務制は、当時の内国無線電信法と、船舶職員法という一般法によって制定せられたものでありまして、今日におきましても、なおその必要性に変わりはないゆえに、依然として存続されているのであります。しかるにもかかわらず、すでに電波法の一部を改正する法律案に対する討論において、同僚永岡君が指摘したごとく、いまだ確率不十分なるオート・アラームによって定員を減らし、十六年間にわたり、船舶と人命の安全を守り続けたこの体制をくずそうとするものでありまするから、必然的に航行の安全を後退せしめることは当然であります。  次に、外国船も一名でやっているからということでありまするが、提案理由にいう海上航行の安全に支障を来たさないという保障はどこにもありません。外国船がやっているということだけが唯一の手がかりとなっているのであります。しかしながら、現体制を制定した昭和十九年当時には、すでに外国船は一名の乗り組みであったにもかかわらず、わが国があえて三名の乗り組みをとったのは、外国船と異なった日本船の特殊事情があってのことであります。今日なお変わらないこの特殊事情を無視するこの改悪は、明らかに法本来の目的を後退せしめるものであることは言を待たないところであります。ここで日本の特殊事情について一々申し述べる時間の余裕がないことは残念でありますが、その一つとして、日本は、欧米のように、国際通信網を自己の支配下に持っておりません。したがって、日本の船は、世界のあらゆる海上から、いわゆる遠距離直接通信方法をとっているのであります。しかるに、定員一名に改悪されれば、当然この通信方法は不可能になり、海上航行上、万般の重大なる支障を来たすことになるのであります。  次に一言したいのは、わが国の気象業務についてであります。わが国の気象業務は、広範なる海域における船舶からの気象報告が絶対に必要であります。しかるに、この改悪によって、船舶からの気象報告は重大なる支障を受けることになるのであります。その具体的事例を省略しますが、かくては、たださえ不自由をしているわが国の気象業務はどうなることか、きわめて重大なる問題であり、かつ、このことが船舶の航行安全自体にも重大なる影響を及ぼすととは言を待たないところであります。伊勢湾台風の当時、本院の特別委員会におきまして、運輸大臣は、気象業務を重点施策とすることを言明されたのであります。しかるにもかかわらず、船舶の膨大かつ貴重なる気象報告に重大なる支障を来たすがごとき船舶通信士の削減を政府みずから押しつけてくることは、全く不可解であります。日本の気象事情からすれば、政府はむしろその責任において、積極的に船舶の気象報告を強化すべきであります。  最後に、船舶通信士にとってかわろうとするオート・アラームにつきましては、すでに同僚永岡君から指摘せられたごとく、必ずしも海上の安全を託するに足るものではなく、海員団体の国際組織であるITFにおいては、海上の安全のためには人間による聴守が必要であるとして、三名の通信士の乗り組みを強調しているのであります。しょせんオート・アラームは通信士を一名にする方便に使われているにすぎないのであります。  以上、要約して申し述べましたが、本法改悪によって、本法本来の目的である海上航行の安全は著しく後退し、船舶通信士はもとより、船舶職員諸君に対し、いたずらにその生活を脅かし、不安と動揺を与える以外の何ものでもないことは明らかであります。われわれは、かかる政府の無責任なる暴挙に対しましては、断じて承服できないことを重ねて強調して、反対の討論を終わるものであります。(拍手
  66. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  まず、船舶職員法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  67. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は委員会修正どおり議決せられました。      —————・—————
  68. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 次に、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  69. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      —————・—————
  70. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 日程第十二、大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長河野謙三君。   〔河野謙三君登壇拍手
  71. 河野謙三

    ○河野謙三君 ただいま議題となりました大蔵省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、衆議院において施行期日等について一部修正の上、本院に送付されたものであります。  本法律案改正の要点は、第一に、最近における証券行政の重要性と事務量の増大に顧み、理財局に証券部を設置すること。第二に、最近における補助貨幣の需要増加と工場施設の整備に対応し、造幣局の内部組織を改めること。第三に、最近における税関業務の増加等に顧み、第一線における税関職員を四百人増員するとともに、定員外職員の定員化に伴う増員等の改正を行なうことであります。  本委員会におきましては、証券市場の実情と証券業者に対する監督機構並びに人員、補助貨幣の需給状況と造幣局改組の趣旨、税関業務増加の状況と税関職員増員の問題等のほか、暫定手当に関する人事院勧告、一般公務員に対する年度末の特別手当の支給、その他公務員の給与改善に関する政府の見解等についても質疑応答が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、討論もなく、採決の結果、原案どおり全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  以下御報告申し上げます。(拍手
  72. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  73. 松野鶴平

    ○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十二分散会