○鈴木壽君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
公職選挙法等の一部を
改正する
法律案につきまして、総理並びに
安井自治大臣に若干の質問をいたしたいと思います。
最近の
選挙における腐敗堕落、特に保守党側の違反の悪質化は、まことに世人の自をおおわしめるものがある。三十三年の
衆議院選挙、三十四年の参議院
選挙、三十五年秋の
衆議院選挙は、その違反件数において、さらに違反内容の醜悪さにおいて、まさに憂うべき様相を呈しておったのであります。(
拍手)買収、供応等の悪質違反が、あの手この手と、半ば公然と行なわれ、当然多額の資金が流れ、数千万円の金をばらまき、中には億に近い金を使った者すらあると言われておるのであります。二当一落は昔のこと、今は三当二落、いな、五当四落が保守党側の相場だと言われておるのであります。現に、昨十三日の新聞紙上に載った某議員の
選挙違反の裁判記事によると、買収資金が何と四千七百五十万円、あばき出された金だけで、これであります。おびただしい違反件数にしましても、くろうと筋は、これらは氷山の一角にすぎないと言う。あげられた者は運の悪いやつ、ヘマなやつだ、ということにされているのであります。
選挙の
公明化を口にされる
池田さんが、総裁となり、総理になっての最初の
選挙が、三十五年秋の
選挙であり、あなたの時代になっての
選挙が、一番金のかかる
選挙、一番悪質違反の多かった
選挙であったのであります。そうして、そういう
選挙をして当選してきた議員が、あなたの党にたくさんおって、大きな顔をして国政を論議いたしておるのであります。(
拍手)総理がこのような事実を知らないはずはございません。一体、これをどういうふうにお考えになっておられるでありましょうか。
選挙公明化を誓う総理は、
選挙の浄化粛正のためにどのような
努力をなされてきたのか。
公明選挙のためにどのような具体策をお持ちになっておるのか。真剣にこの問題に取っ組んで、熱意が示されなければならないのでありますが、単に
公明選挙を推進するとか、あるいは
選挙制度審議会を作ったなどというようなことではなしに、具体的に、あなたのお考えと対策を示していただきたいのであります。特に、近く参議院
選挙を控えておるこの
機会に、
国民のすべてがこれを知りたいと願っておるのであります。
先ほどの
提案理由の説明に、「今回の
改正案は、
選挙法の全般に及ぶところの、かつて見ない大
改正であり、
公明選挙の
実現に大きな寄与をするものと信じている」と述べております。ほんとうに総理は、この
改正案が、
選挙公明化のために大きな寄与をするものと信じておられるでありましょうか。これで、はたして汚れた
選挙の浄化粛正を期し得るとお考えになっておられるのかどうか。したがって、あなたの言う
民主政治の確立、政治に対する信用を高めることができるものであるとお考えになっておられるかどうか。あとで指摘をいたしますが、このような抜け穴だらけのごまかし案をもってしては、とうてい
選挙の
公明化は
期待できないのであります。あなたがもし、これをもってして
選挙公明化に大きな寄与をなし得るものと信じておられるとすれば、あなたは、あまりにも人がよすぎるのか、あるいは
国民を欺くための言葉でしかないと言わざるを得ないのであります。(
拍手)われわれは、金をかけすぎる
選挙、金で汚された
選挙を追放する一つの手段として、政治資金、
選挙資金の規制がぜひ必要であると思うのであります。悪質な違反をなくする手段として、罰則の強化、特に連座制の強化を取り入れなければならないと思います。その地位を利用して、国、地方の行政機構を使い、公の費用すら使っているといわれる
選挙運動を公然と行なってきました高級公務員のそれに対しては、その立候補の制限もやむを得ないものがあると思うのであります。
審議会の
答申においても、これらの点につきまして、適切かつ明確な指摘をいたしておるのであります。ところが、
政府、与党は、この
答申に対して不当な取り扱いをあえてし、
答申の
趣旨を完全に骨抜きし、大きな抜け穴を作り、あるいは全くのすりかえを行なったのであります。このようなごまかし案をもってして、なおかつ有効適切なりとするがごときは、詭弁もはなはだしいと言わなければなりません。(
拍手)総理並びに自治大臣の責任あるお答えを求めるものであります。
さらに私は、いま少しく具体的にこれらの点についてお尋ねいたしたいと思います。
審議会は、その
答申において、「国又は公共企業体と請負その他特別の利益を伴なう契約の当事者であるものは、
選挙に関するもののほか、政治活動に関しても寄附をしてはならないものとすること。」としております。また、「国から補助金等の交付金又は出資金を受けている会社その他の法人」及び「国から利子補給金の交付を受けている会社その他の法人は、
選挙または政治活動に関しては寄附をしてはならない。」と
答申をいたしておるのであります。しかるに
政府案には、このいずれについても、「政治活動に関して」というところをカットして、
答申を無視し、いわゆるほおかむりをいたしておるのであります。前者については、現行公職
選挙法第百九十九条に、「国又は公共企業体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該
選挙に関し、寄附をしてはならない」とあるが、これだけでは不徹底であり、不十分であるとして、
審議会では、「政治活動に関しても」ということを特につけ加えたのであります。後者のそれは、これらの会社その他の法人の性質上、
選挙に関してのみならず、広く政治活動に関しても寄附をすることは不合理であり、当然禁止すべきであるとして、新たに条文化して、現行法の不備を補うべきものであるといたしたのであります。一体、
選挙に関する資金と政治活動に要する金とを、だれがどのように明確に区別し得るものであるのか。確かに、概念上は一応区別されるでありましょう。しかし、実際においては、寄附をするものも寄附を受けるものも、名目はどうにでもなるのであります。その使い方においてもまた、どうにでもなるのであります。政治活動という名の
選挙資金がどのように動いておるのか、ほかならぬ総理初め与党の方々が一番よく知っているはずであります。だからこそ、故意に「当該
選挙に関して」とだけ限定いたしたのでありましょう。自分たちに不利であり、都合が悪いから、これには触れないこととしたのではないか。それを、今回のは
選挙法の
改正だから、
選挙に関するもののみを
規定し、いずれ政治資金の点については、政治資金規正
法等の全面的検討の際に、などと言っておられますが、これはごまかしであります。逃げ口上であります。
答申は、とりあえず、これだけは今すぐ必要なものとしておりますし、
国民もまた、これを望んでおるはずであります。
政府与党が、ほんとうに政治資金の規正、特定の寄附の禁止を必要とするならば、今
提案されたこの
改正案の中には、政治資金規正法の一部を
改正する
法律案も含まれておるのであります。だから、当然その中に織り込まれてしかるべきであるにもかかわらず、そしてまた、織り込み得るのにもかかわらず、あえてこれをいたしておらないのであります。やはり政治資金という名の
選挙資金を自由に寄附させよう、自由にちょうだいするようにしておこうという考えであると解するしかないのであります。まことに大きな抜け穴であります。
しかも、問題はこれのみではありません。
改正案において、第百九十九条に、新たに二項、三項、四項がつけ加えられておりますが、この二項と四項では、これらの会社、法人は、「国からの交付金、補給金の交付を受けた日から起算して一年を経過した日までの間、当該
選挙に関し、寄附をしてはならない。」としております。そうしますと、一年を経過すれば、その翌日からは、政治資金に関してはもちろん、当該
選挙に関しても自由に寄附できるということになるのであります。とすれば、ここにもまた、大きな抜け穴が作られておるのであります。よく、
選挙法はザル法だといわれておりますが、ザルは、水は漏れても、何か固形物は残ります。この
改正案では、ザルにさらに大穴を幾つもあけてありますから、何も残らなくなります。ザル法というより、抜け穴法、底なし法とでもいうべきものであろうと思います。これで、
答申を尊重し、これに基づいた案といえるでありましょうか。これが実効をあげ得るとお考えなのでありますか。両大臣は、私に答えるというよりも、
国民のために、はっきりお答えをいただきたいと思います。
連座の問題について申し上げますならば、
答申では、候補者の父母、配偶者、子及び兄弟姉妹を連座の対象とすべきであるとし、連座による当選人の失格は、刑事判決の確定により直ちに効力を生ずるものといたしたのであります。ところが、
改正案の第二百五十一条の二を見ますと、「候補者と同居している親族で、候補者または総括主宰者等と意思を通じて
選挙運動をしたものが、悪質な
選挙違反を犯して、禁錮以上の刑に処せられ、その刑について
執行猶予とならなかったとき」となっておりまして、さらに、当選無効の訴訟は検察官が提起しなければならないものといたしたのであります。
答申のどこに、同居とか、意思を通じてとか、禁錮以上の刑とか、
執行猶予とか、検察官の当選無効訴訟というようなことが書かれてあるのか。なぜこのような改変をあえてしたのか。その理由を承りたいのであります。これまでの
選挙違反の裁判の状況からいたしまして、これによって連座にひっかかるのは、わずか一%ぐらいだといわれている。これでは全く無意味な
規定になってしまうのであります。しかるに自民党の
諸君は、この案にすら、これでは
選挙ができない、おれたちに不利であると言って反対をし、
国会において修正をさえしようとして、いきまいているのであります。罪九族に及ぶという、封建的な時代錯誤的な思想であるとか、法の前にはすべて平等でなければならないのに、親族だからといって、などという迷論を振り回し、大野副総裁のように、「筋が通らない」、「しろうとの理想案だ」というおしかりも出ておるのであります。はては大平官房長官は、「評論家のような偉い人たちならともかく、われわれのような凡人は、これでは
選挙ができない」と、はっきり言っておるのであります。与党にごねられ、横車を押されて、
政府は後退に後退を重ねて、このような見るもむざんなものに作りかえてしまったのでありますが、総理は、これをもってして、なお、
答申を十分尊重した最良の案と信じておられるのかどうか、はっきりお答え願いたいのであります。
また、高級公務員の立候補制限の点につきましても、これは、いつの間にやら全公務員の
選挙運動の規制にすりかえられている。
答申は、参議院全国区への立候補制限であります。もし
答申に問題があるならば、法案
審議の
国会でそれが取り上げられなければならない。立法技術上あるいは憲法とどうのこうのという、そういうことで、この問題は勝手に改ざんを許されないのであります、この点についても、総理並びに自治大臣は、かかる案となるまでの経緯及び理由について、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
次に私は、
政府の
答申尊重ということと、
審議会に対する態度についてお尋ねいたさなければなりません。
政府は、今回の
改正案において、
審議会の
答申は十分尊重したし、その精神も生かされていると言明をいたしておりますが、以上見たところによって、
答申は尊重されたと見ることはとうていできないのであります。なるほど、
答申の項目の数からいえば、相当数取り入れられてありますから、この点から言えば、
答申は尊重したとも言えるでしょう。しかし、最も重要な事項の、最も肝心な点が無視されているのであります。尊重というならば、
答申の重要な部分について、その
趣旨を殺し、そのねらいをそらすことはできないはずであります。骨を抜き、大きな抜け穴を幾つもこしらえて、不正な
選挙を行ないやすくし、違反を犯しても助かる道を作ることではないはずであります。自分たちに不利にならぬように改変をすることではないはずであります。総理は、しばしば
審議会の
答申は十分尊重すると言ってきました。