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1962-02-23 第40回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十三日(金曜日)    午前十一時二十七分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和三十七年二月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件  第二 港域法の一部を改正する法   律案内閣提出)  第三 公共企業体職員等共済組合   法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第四 離島振興法の一部を改正す   る法律案衆議院提出)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、国会法第三十九条但書規定に   よる議決に関する件(蚕糸業振興   審議会委員)  一、原子力委員会委員任命に関す   る件  一、公正取引委員会委員任命に関   する件  一、日本銀行政策委員会委員任命   に関する件  一、文化財保護委員会委員任命に   関する件  一、漁港審議会委員任命に関する   件  一、中央更生保護審査会委員任命   に関する件  一、鉄道建設審議会委員任命に関   する件  一、運輸審議会委員任命に関する   件  一、米国綿製品輸入賦課金問題に   関する決議案  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件  一、日程第二 港域法の一部を改正   する法律案  一、日程第三 公共企業体職員等共   済組合法の一部を改正する法律案  一、日程第四 離島振興法の一部を   改正する法律案   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議開きます。  この際、日程に追加して、  国会法第三十九条但書規定による議決に関する件(蚕糸業振興審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、本院議員小山邦太郎君を蚕糸業振興審議会委員任命することについで、本院の議決を求めて参りました。  同君が同委員につくことができると議決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。    ————————
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  原子力委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、原子力委員会設置法第八条第一項の規定により、石川一郎君、兼重寛九郎君、西村熊雄君を原子力委員会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  公正取引委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律第二十九条第二項の規定により、佐久間虎雄君を公正取引委員会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  日本銀行政策委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、日本銀行法第十三条ノ四第三項の規定により、大屋敦君を日本銀行政策委員会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  文化財保護委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、文化財保護法第九条第一項の規定により、川北禎一君、細川護立君を文化財保護委員会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  漁港審議会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、漁港法第九条第一項の規定により、小田賢郎君、鮫島茂君、井出正孝君、斎藤静脩君、井内光虎君、奥田憲太郎君、川上善次君、坂本庄三郎君を漁港審議会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  中央更生保護審査会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、犯罪者予防更生法第五条第一項の規定により、神田多恵子君を中央更生保護審査会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  23. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  鉄道建設審議会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、鉄道敷設法第六条第二項の規定により、鈴木清秀君、根津嘉一郎君、小島新一君、佐々部晩穂君、清井正君、柳満珠雄君、今野源八郎君、加藤閲男君鉄道建設審議会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、  運輸審議会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、運輸省設置法第九条第一項の規定により、菊川孝夫君を運輸審議会委員任命することについて、本院の同意を求めて参りました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。  米国綿製品輸入賦課金問題に関する決議案武藤常介君外六名発議×委員会審査省略要求事件)  本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加して、これを議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって本案議題といたします。  まず、発議者趣旨説明を求めます。武藤常介君。   —————————————   〔武藤常介君登壇拍手
  32. 武藤常介

    武藤常介君 ただいま議題となりました各派共同提案米国綿製品輸入賦課金問題に関する決議案につきまして、提案者を代表し、提案趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    米国綿製品輸入賦課金問題に関する決議(案)   現在米国関税委員会で問題とされている綿製品輸入賦課金については、同国貿易自由化を強く提唱推進している建前からして、すごぶる遺憾とするところである。もしこれが実現すれば、わが国の対米綿製品輸出に重大なる影響を与え、関連産業とこれに従事する多数労働者に大なる不安と動揺をもたらし、日米親善関係にも悪影響を及ぼすことになり兼ねない。   よつて政府は、すみやかに米国政府に対し、わが国の実情を深く認識し、かつ対米貿易が常に我が方の著しき入超であることを考慮の上、賦課金課徴方針を直ちにとりやめ、日米貿易の均衡ある発展拡大を図るよう、強力に要請すべきである。   右決議する。  以上であります。  この問題は、ケネディ大統領が昨年五月に発表した繊維産業対策項目一つとして、「米国綿業界原綿の二重価格で受けているコストの上の不利益を除こう」とする方策に基づき、去る十一月に関税委員会に対して、農事調整法第二十二条によって、輸入綿製品に、使用綿花一ポンド当たり八・五セントの賦課金をかけることの可否について、調査を命じたことに始まるのであります。もし、この賦課金制度が実施されると、同国における輸入綿製品関税率が約一〇%も上昇すると同じ結果となり、わが国の対米綿製品輸出高は、とたんに約六〇%も減少すると推算されています。こうなりますと、日本綿工業及び関連産業はまことに容易ならぬ打撃をこうむることになります。御承知のとおり、関税委員会ではすでに調査を開始し、公聴会もほぼ終わりの段階にあります。成り行きは決して楽観を許さず、私どもといたしましては、ぜひともこの政策は断念してほしいので、本決議案提出となったのであります。  その趣旨は、まず第一に、今回の賦課金問題が、貿易自由化に逆行し、国際取引に不当な制限を加え、国際経済を萎縮させるということであります。申すまでもなく、米国は、過般来、貿易自由化を率先唱道し、さらに最近は、EEC諸国関税引き下げの交渉を熱心に行なっております。わが国もまた貿易自由化に真剣な努力を続けています。この趨勢は今や世界的なものであります。しかるに当の米国綿製品輸入賦課金をかけようとすることは、全く時代に逆行して、自国のみ保護貿易主義をとろうとする矛盾した不当な方策であり、各輸出国ともこぞってそれに反対し、米国反省を求めておるのであります。  第二は、賦課金構想が、ガット綿製品委員会、いわゆる国際繊維会議の取りきめを無視するという点であります。国際繊維会議もまた繊維産業対策項目一つとしてケネディ大統領の提唱によるもので、去る九日に妥結したばかりでありますが、その主目的は、「綿製品輸入国は現在以上に輸入制限を行なわず、また輸出国市場撹乱を行なわぬこと」にあります。しかるに、米国が、この会議の途中から、自国だけの都合で賦課金により新しい輸入制限を企図することは、全く不可解と言うほかありません。  なおまた、賦課金は、ガット第十一条による義務免除事項として是認せられていると米国主張していますが、これは加工度の低い農水産物に適用されるもので、加工度の高い綿製品に対しては認めがたいという見解が有力でありまして、この点からも今般の構想ガットの精神に違反する懸念が濃厚であります。  第三に、賦課金問題は、日本綿業自主規制の誠意を無視し、国際信義にもとる行為であると訴えたいのであります。すなわち、日本側は、過去五年にわたり、米国綿業の立場を考慮して、当然増加すべき綿製品の対米輸出を正直に自制し、その結果として日本以外の輸出が急速に伸び、日本からの輸出割合が減少して参りましたが、そこへ今度賦課金をかけるのでは、ますます正直者はばかをみることになります。このような制度を実現しようとすることは、日米両国友好関係を傷つけ、国際信義にそむく行為ではないかと考えられます。  最後に、第四といたしまして、米国はむしろ進んで日米間の著しき片貿易を是正し、両国貿易の均衡ある発展をはかるべきであるということであります。申すまでもなく、日本米綿最大のお得意先であり、しかも、現在日米間の貿易収支は約九億ドルのわが方の入超でありますので、一部では原綿買付先なども再検討すべきだとさえ言われています。したがって、米国政府は、この部面にも配慮を加えて、かかる賦課金制度構想を取りやめるとともに、進んで日米貿易の真に均衡のとれた発展をこそはかるべきであると信じます。  かかる趣旨からいたしまして、わが国政府においても、この国民的世論を尊重し、すみやかに適切有効な対策を講ずるよう強力に要求するものであります。  以上が本決議案提出した理由であります。何とぞ各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。(拍手
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。  ただいまの決議に対し、外務大臣及び通商産業大臣から発言を求められました。順次発言を許します。小坂外務大臣。   〔医務大臣小坂善太郎登壇拍手
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまの御決議に対しまして、政府の所信を申し述べます。  米国綿製品輸入賦課金問題につきましては、政府といたしましても、これをきわめて重視し、終始反対を続けております。昨年十一月二十一日、ケネディアメリカ大統領関税委員会に対し調査を指令いたしましてから、在米大使館及び在京米国大使館を通じまして、直接米国政府に対し、機会あるごとに繰り返しこれを実施しないよう要望いたしまするとともに、ガット国際綿花諮問委員会等の国際的な場におきましても、わが国の正当なる主張を述べ、諸国の支持を得るよう、国際的なる背景から、米国賦課金を実施しないよう努力いたしております。また、去る九日、ジュネーブにおいて、綿製品に関する長期国際取りきめが妥結いたしましたが、この取りきめの成立によりまして、米国としても、綿製品輸入の急増を防止する方途が得られましたので、同取りきめによって、賦課金を実施する必要は全く消滅したものと考えております。  以上の次第はございまするが、政府といたしましては、今後とも引き続き、わが国の正当な主張アメリカ側に申し入れ、御要望に沿いまするよう最善を尽くしたいと考えております。(拍手
  36. 松野鶴平

  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米国綿製品輸入賦課金構想、これはわが国繊維産業にとりまして重大な措置でございます。そればかりではなく、わが国対外貿易にも大きな影響を及ぼす問題でございます。したがいまして、政府といたしましても、従来からその阻止のために最大努力を払って参ったのでございまするが、ただいま満場一致の議決を見ました御趣旨を尊重いたしまして、所期の目的を達するよう、今後ともあらゆる機会をとらえ、一そうの努力を払う所存でございます。(拍手)    ─────・─────
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。  河野農林大臣から、農業基本法に基づく昭和三十六年度年次報告及び昭和三十七年度農業施策について、発言を求められております。発言を許します。河野農林大臣。   〔国務大臣河野一郎登壇拍手
  39. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先般国会提出いたしました「昭和三十六年度農業動向に関する年次報告」及び「昭和三十七年度において講じようとする農業施策」について、その概要を御説明いたします。まず「昭和三十六年度農業動向に関する年次報告」について申し述べます。  この年次報告は、「第一部農業動向」と、「第二部農業に関して講じた施策」に分かれておりますが、「第一部農業動向」においては、農業生産性及び農家生活水準中心課題として農業動向を分析し、経済高度成長のもとで農業経済はどのように発展したか、その間、農業と他産業との生産性及び農業従事者と他産業従事者との生活水準動向がどのようになっているか、その動向背景は何か、また、その中で農業経営はどう変化しているかの四点について記述しております。  この報告は、できるだけ客観的に実態を把握し、これについての政府所見を明らかにするという方針のもとに、検討分析の対象は三十五年度を中心とし、統計的に可能なものについては、一部三十六年度にも及んでおります。  その概要を申し述べますと、昭和三十五年度には農業生産は引き続き堅実な伸張を示し、生産性かなり向上を来たし、また、農業経営をめぐる価格関係農業に有利に推移したこと等もあって、農業所得かなり増加を見ました。一方また、農外所得も著しく増加しましたので、農業所得の伸びは目ざましく、その結果、農業従事者生活水準も相当な上昇を見たのであります。それにもかかわらず、同年度には農業と他産業との生産性開きは拡大し、農業従事者と他産業従事者との生活水準開きもなお縮小するに至っておりません。  これは一言で申せば、他産業成長がきわめて急速であったため、農業がこれに歩調を合わせ得なかったことによるものでありますが、生産性開きが拡大した背景には、農業資本装備相対的低下農業と他産業間の労働力移動の不円滑、農産物需要高度化に対する農業生産適応体制のおくれという諸現象が見られたのであります。すなわち、農業におきましても設備投資増加したのでありますが、他産業のそれに比べ、はるかに及ばなかったばかりでなく、農業資本効率は概して低く、農業と他産業との資本装備率開きは拡大しております。このことの根底には、農業経営規模零細という問題があり、したがって、農業資本装備の増大のためには、生産技術向上農業構造改善が強く要請されるのであります。  労働力移動につきましては、三十五年度には農業適応体制が十分整わないうちに農家人口の急速な移動を見ましたため、農業就業者老齢化女性化の傾向、農繁期の労働力不足等、種々の摩擦現象を生じたのでありますが、これに対処するためには、一般労働施策の進展はもちろんのこと、農業内部でも構造改善機械化技術体系確立等生産技術の革新をはかることが特に重要であります。  需要生産関係につきましては、経済の急速な成長に伴い、三十五年度には畜産物果実等成長農産物中心として需要が急増し、それらの価格の高騰を招きましたが、これは需要高度化に対する生産適応体制整備がおくれていることによる面もあると考えられます。また、これらの成長農産物につきましては、投資の効果が現われるまでにやや長期を要しますだけに、需要価格の大幅な変動がそれらの生産安定的発展を乱す要因として作用しがちであることも無視できません。したがいまして、なお一そう選択的拡大を進めるための諸条件整備し、そのための構造改善価格安定をはかることが必要であります。  以上申し述べましたことは、個々の農業経営動向においても同様でありまして、近年優秀な専業農家増加や協業の増加等動きが見られますが、これはいまだ全般的現象とは言えません。この動きを一般化するためには、資本の不足、経営耕地零細性機械化技術体系の未確立等制約条件を克服することが必要であります。以上が第一部の概要であります。  次に、第二部農業に関して講じた施策について申し上げますと、これは第一部と同様、昭和三十五年度を中心としてこれまでに政府が講じた諸施策をできるだけ客観的に記述したものであります。申すまでもなく、この間の農業施策農業基本法制定以前のものが大部分でありますが、農業基本法に掲げる施策事項に従って記述いたしております。  次に、昭和三十七年度において講じようとする農業施策について申し述べます。これは、ただいま御説明いたしました農業動向と、政府経済運営基本的態度に基づいて、来年度において講じようとする農業施策を明らかにしたものであります。農業基本法はその第二条において、国が総合的に講じなければならない施策として八つの事項を掲げておりますので、おおむね、この八項目の柱に即して記述いたしておりますが、その重点とするところは、次のとおりであります。  第一に、農業生産選択的拡大を一そう促進することであります。まず畜産については、家畜資源改良増殖畜産経営確立向上を主眼とし、草地改良事業拡充、多頭飼育経営育成等を推進することにしております。次に、果樹についても、適地における主産地の形成を目途として、果樹園集団化経営合理化優良種苗確保等措置を充実することにしております。  第二に、生産性向上を促進するため、その基礎条件として、試験研究拡充強化土地改良事業等生産基盤整備を積極的に行なうことにしております。  第三に、米麦を初め重要農産物等価格安定措置は引き続き現行制度を堅持し、畜産物及び青果物については、特にその流通の合理化価格安定対策を強化することにしております。  第四に、農業構造改善を推進することであります。このため農地法農業協同組合法等制度改正、農用地の集団化農業機械化促進等施策と相待って、おおむね十カ年にわたり総合的な農業構造改善事業を強力に推進することにしております。  以上の重点施策を初め、農業基本法具体化のための諸施策適確に推進するため、農林本省農政局及び園芸局を新設するほか、新たに地方農林局を設けて、地域の特性に適合した行政を総合的に行なうことといたしております。また、農林関係予算の充実、農業近代化資金を初めとする各種制度金融拡充、その他必要な法制上の措置をとることにしております。  以上、年次報告及び三十七年度農業施策について、その概要を御説明した次第であります。(拍手
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。仲原善一君。  、〔仲原善一登壇拍手
  41. 仲原善一

    仲原善一君 ただいま問題となっておりまする年次報告農業施策に対し、自由民主党を代表して、政府に質問し、内閣総理大臣及び農林大臣所見を承りたいと存じます。  もっとも、現行農基法は、その裏づけとなる関連法律がわずかに二、三成立した程度にとどまって、その多くは今後に残されたままの現状でございます。この段階で、この報告をもとに農基法の功罪を論ずるのは、いささか早計であるとは思われるのでありまするけれども、農基法もいよいよ本格的実施段階に入り、また、本法制定当時はいまだ関心の薄かった欧州共同市場の著しい発展や、アジア経済協力機構の新しい問題など、国際情勢も急変しつつありますので、国内の農業体制もすみやかに整備強化する必要に迫られる状況でございます。かような重要な時局に当面いたしまして、私は、政府に対しては、農基法の執行を通じ農政の成果を十分にあげられることを期待し、また関係方面に対してはその協力をお願いするため、あえて質問を行なわんとするものでございます。  第一は、この報告書の内容についてでございます。  農基法によりますと、まず、年次報告において農業動向が究明され、その論理的な帰着として、農業に関して講じた施策を評価し、その反省の上に立って今後講じようとする施策が述べられなければならないと存じます。しかるに、今回の報告においては、第一部の農業動向と第二部の講じた農業施策との関連について、論理的なつながりが稀薄で、平面的な説明に終始したうらみがございます。今後報告を価値あるものとするためには、過去の政策を謙虚に反省評価し、動向施策の因果関係を明らかにして、今後の対策を確立する態度が望ましいと思います。  たとえば、報告書は、わが国経済の高度な成長のもとで農業も一段と発展を遂げたが、しかし、他産業との生産性の開差はかえって拡大し、農業従事者と他産業従事者との生活水準開きも縮小するに至っていないことを指摘し、その原因は、他産業成長があまりにも急速であったため、農業がそれに歩調を合わせられなかったことによるものであるとし、その背景には、農業資本装備相対的低下農業と他産業間の労働力移動の不円滑、農産物需要高度化に対する農業生産適応体制のおくれなどの阻害条件をあげておるのであります。しかし、この阻害条件をどうすれば排除できるのか、施策としては、この所得と生活水準の開差をどのようにして是正するのか、理論的に解明されていないように受け取られるのでございます。  しかも、農基法はその第二条において、国は、農業構造改善を初め、広く農村における交通、衛生、文化等の環境の整備農業従事者の福祉増進等の施策を総合的に講じなければならないことを規定しております。このためには、農林当局ばかりでなく、財政、通産、労働、厚生、建設、運輸、文部、郵政、その他各当局が連絡協調して、これを総合的に実施しなければならない義務があると思うのでございます、農政審議会が総理府に設置されたゆえんもここにあるはずでございます。しかるに、施策を見ますると、農林省の施策の解説にすぎないのでありまして、他省において実施しなければならない幾多の政策についてはほとんど述べられることなく、内閣の責任がまことにあいまいになっておるのでございます。  私は、ここで、労作であるこの報告書に対しまして敬意を表するものではございますが、この際、農基法を誠実に執行するについて、内閣の首班たる内閣総理大臣に対し、国際経済動向日本経済のあり方をいかに認識され、そのうちにおいて日本農業をいかに位置づけされるのか、そうして農基法の成果を完璧ならしめるためにいかなる決意と態度をもってこれが執行に当たられようとするのかについて、特にまた重要な農業教育問題についても、文部大臣御不在でございますので、この問題も含めて御答弁をわずらわしたいと存じます。  次に、今回の報告書を起草するにあたって関係各省と十分協議されたかどうかについて、農林大臣の御答弁を願います。また、協議を受けられたとすれば、関係各省はそれぞれの立場においていかに対処されたか、そしてまた、今後いかに積極的に協力される所存なのか、その辺の事情についても、所管大臣がお見えになっていないので、農林大臣から御答弁をいただきたいと思います。  第二に、最近の国際経済情勢と日本農業との関係、特に貿易自由化に関する点についてお伺いいたします。  私は、昨年、本院から、、ジュネーブで開催されました列国議会同盟春季会議に派遣されまして、経済社会委員会に属し出席したのでありますが、その際、経済共同体のとる政策が世界貿易にいかなる影響を及ぼすか、ということが重大な議題一つでありました。この問題につき、委員会といたしましては、その申し合わせには、一般的には、関税の障壁の撤廃であるとか、国内消費税の軽減がありましたけれども、事、農産物に関しては例外であることを認め、各国の農業保護政策をしばらく温存することに意見の一致を見たのでございます。各国の農業生産方式の伝統なり秩序なり特殊性を一度に混乱に陥らしめない意図からでございました。農基法第十三条も、この国際世論の趣旨に沿うものであると私は考えております。しかるに、本年に入って、欧州共同市場は第二段階に移行し、農業政策についてもフランスと西ドイツとの間の対立が解消し、欧州自由貿易連合の指導的立場にあった英国の加入もその実現が伝えられております。かくして、欧州経済統合の強化に伴って、対日貿易制限緩和も関係者の関心を引くに至り、ここにわが国農業への影響も問題となっております、また一方、アジア経済協力機構の設立が日程に上っており、アジア諸国間の貿易の拡大が議論され、これまたわが国農業の重大関心事たらざるを得ないのであります。これらの諸情勢は、基本法制定当時から見ますれば、そのきびしさをいよいよ鋭くして、現実の問題としてのいろいろな問題が展開されつつあるのでございます。  思うに、農基法は、対内的には、日本農業をして他の産業と均衡のとれた成長を所期するものでありますが、対外的には、貿易自由化に対処して国際競争力を高め、貿易自由化に耐え、国際経済に参加することができる体力を養うためのものであると考えます。しかるに、一方、農基法は、アメリカ帝国主義の手先となって、日本の独占資本家たちが貿易自由化を通じて農民を搾取するための法律であると、驚くべき悪意に満ちた宣伝をする政党員もございます。中には、これに迷わされる善良な農民もある現状でございます。農林大臣は、この際、正確な国際経済の判断のもとに、貿易自由化農業保護との調和ある対策を用意され、確固たる信念のもとに誤解の一掃に努力さるべきであると思いますが、所見はいかがでございますか。  第三に、構造改善事業についてでございます。  農基法は、農業構造改善事業を重要な課題として取り上げていますが、これが実現のためには、経営規模の拡大と近代化をねらいとし、一方、自立経世の育成と、他方、協業の助長をはからねばなりません。さて、報告の中には、農業構造改善事業推進に関連する幾多の事項が含まれておりますが、その一つに、農業経営規模構成の変化がございます。すなわち、一町歩以上の農家増加と、一町歩以下の農家の減少という事実でありまして、特に五反と一町との間の中間階層が減少し、一町以上の層の自立農家と、一方、三反程度のもっぱら賃金収入を中心とする第二種兼業農家への階層に分化しつつあることであります。農家の所得も生活水準も、この経営規模に照応していることが明らかにされています。そこで、農林大臣は、この中間階層分化の事実を、どのように把握されて、構造改善事業に寄与せしめようとされておるのか、お伺いいたしたいのであります。  これらの問題の中には、農地制度上重要な課題も含まれていることになります。たとえば、農地を細分化する要因である均分相続制についても、農業基本法第十六条のような微温的条項では不十分でございまして、もっと抜本的なメスを入れねばならぬと考えまするし、農地法改正して、農地の信託制度も積極的に活用することが必要であるとも考えまするし、また、農業法人の法的基盤を整備することも必要でありましょう。  次に、協業に関する動向報告によれば、全国でわずか三千四百ケースがあげられておりまして、そのうち全面協業は一割にも満たぬ二百六十九ケースにすぎません状態であります。合理的でしかも利益のあがる協業については、さらに一段の助成に努力されるべきでありましょうが、しかし、協業化はどこまでも農家の積極的意欲を基礎とすべきものでありまして、単なるイデオロギーの幻影にまどわされることなく、行き過ぎがあってはなりません。この協業化の問題は、取り扱いいかんによっては、直ちに農政の根幹である農地制度にも関連し、ひいては、広く社会制度経済体制、政治体制に波及する問題であります。たとえばソ連の集団農場、中共の人民公社農地が、共産主義の基礎であるごとく、また、かつてナチス・ドイツ政権が、民族と土地の結びつきをスローガンとして採用した農地の一子相続制、いわゆる世襲農地制が、全体主義の背骨であったように、直ちに社会体制の存立興亡につながる重大問題であります。協業化にあたり、あまりに急であって、事態を無視した公式主義であってはなりませんが、社会党案の農基法第九条、その後段に、「農地に関する権利は、自主的に共同保有に移行させるよう指導するものとする」、と規定していますが、これは社会主義計画経済の片りんを現わしたものでありまして、所有権を基盤として、自由経済をよりどころにして、人類の福祉を希求する、そうしてこれこそが人類の幸福につながるただ一つの道であるとの確信を持っておるわが党といたしましては、絶対に容認できないところであります。農地制度改正を通じて協業化に寄与できる限界も、おのずからきまるところがあると思います。これらの協業化に関連する諸点について、農林大臣所見をお伺いいたします。  第四に、農村労働力の問題でございます。報告書によれば、農村労働力は、他産業高度成長に伴って急速に移動しつつあることが指摘されています。また、最近総理府の発表した調査によりましても、農林就業者の割合は、全体の三割を割って二九%となったと伝えております。この傾向は、産業経済の進歩発達する自然の帰結でありまして、ここに、従来過剰人口をかかえて失業に悩んだ暗い過去の農村に新しい光明を与え、農政飛躍の契機がひそんでおるものと考えます。ただ問題は、この人口移動が、現状では、若い労働力中心として行なわれる結果、農業労働が老人と婦人によって行なわれ、将来の農業生産を停滞させるおそれがあることでございます。これでは農業生産性の向上も容易でないと思われまするので、基本的には人口流出を是認しながら、しかも、有能な農村青年が夢を持って農村にとどまり、資本の増投、技術の進歩、機械化等の省力経営のにない手として生産性向上努力せしめるべきであると思います。これらについて効果的な抜本的な総合対策を用意されておりますか、農林大臣のお答えをお願いいたします。
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 仲原君、時間ですから、結論を急いで下さい。
  43. 仲原善一

    仲原善一君(続) 第五に、農山漁村僻地対策についてでございますが、時間がございませんので、ただ、農業基本法でも日の当たらぬ僻地がございますので、この僻地対策について農林大臣はいかなる対策をお持ちでございますか、お伺いいたします。  以上、問題を当面する主要なものに限定して、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  44. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 農業のあり方についての御質問でございますが、私は、戦後の日本経済が、統制のもとから自由な経済に変わり、そして自由経済のもとにいろいろの産業が伸びて参りましたが、日本経済を強化するためには、どうしても自由貿易でなければならぬということで、三年前から貿易・為替の自由化を唱えて参りました。そうすると当然起こってくるのは、農業問題であるのであります。一番むずかしい、そして最も重要な農業問題でございます。私は二年前、農業に対しましての私の考えを言ったならば、非常な衝撃を与えましたが、好むと好まざるにかかわらず、仲原君のおっしゃったような状態になってきているのであります。私は、農業を民族の苗しろとしてりっぱなものに築き上げるためには、相当思い切った措置を講じなければいけないというので、農業基本法を出したのであります。しこうして、まだ農業基本法に対しまする関係法案が実施に移っていませんので、その効果は十分あげ得ることはできなかったのでございまするが、本国会におきまして関係法案の通過を見て、ほんとうに農業基本法の所期していることを実現さしたい。今の農業動向に関する年次報告とか、あるいは講じようとする農業政策等が十分でないことは認めまするが、十分でなくても、ここまでわれわれが思いをいたしておるということは、国民にもわかっていただいておると思います。今後十分御期待に沿うようにいたして参りたいと思います。  ことに、お話のEECの問題、ヨーロッパ共同体の問題との関係は、これは当然起こることでございます。自由貿易主義の次に来ることは、農業自由化ということでございます。しかし、各国の例が示しまするがごとく、農業自由化ということは、これはなかなかむずかしいのでございます。しかし、日本経済が世界の経済につながっていく場合に、そしてまた、農村がりっぱな農村として立つ場合におきましては、自由化せられても大丈夫だという基盤を作ることが必要であります。これが農業構造の問題であるのであります。私は今後農業構造につきまして、特段の努力をいたしてやっていきたい。そしてりっぱな農村を作り、またこのためには、お話の農業教育問題につきましても、一般の産業教育と同等、あるいはそれ以上の関心をもって進まなければ、りっぱな農村はできないことは当然であります。私は、教育問題を中心といたしまして、労働あるいは一般産業、あるいは財政金融各般にわたりまして、りっぱな農村を作り上げるよう、今までの努力以上の努力をいたしたいと考えておるのであります。(拍手)   〔国務大臣河野一郎登壇拍手
  45. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 第一は、この報告書を作るにあたって各省の連絡をどういうふうにしたかということでございますが、これは最初のことでございますから、いろいろ苦心もございました。困難もございましたが、十分連絡をとりまして、御協力を得て作ったものでございます。また、今後の施策につきましても、各省の十分な御協力を得てやって参りたいと考えております。  次に、農業貿易自由化等につきましては、総理からお答えがございましたから、私は省略いたします。  次に、構造改善経営の拡大という問題についてお尋ねがございました。私は、農業基本法の示すように、この施策を実行いたしまする基盤は、あくまでも経営規模の拡大であり、構造改善の基盤となりますものもそこに置かなければならないと考えております。しかしながら、何と申しましても、非常に過小経営日本の現在の農業におきまして、直ちにこれを拡大するということには、いろいろな困難が伴います。そこで、これももちろん基盤としてやらなければなりませんけれども、これのできるのを待って他の施策を講ずるということでは非常におくれますので、あわせて、きめのこまかな改善政策を行なうことが必要であろう、そういうような意味合いからいたしまして、協業化も必要でございます。共同経営も必要でございましょう。私は、これを一つの理論として片づけるわけには参らぬと思います。すなわち、適地適作、北海道から九州まで、いろいろ農業のあり方について千差万別でございます。人情風俗が違います。その中に、どれがどの地方に一番適しているか、いわゆる適地適産、地域農業の確立というような意味において、きめのこまかな農業を打ち立てて、そこに自立農業の確立を期待することこそ、私は、農民諸君の要望にこたえるものであると確信いたす次第でございます。その方向によってわれわれはこれから構造改善を行ない、農村の自立を目ざして参ろうと考えておるのでございます。  次に、農業人口の問題についてお話がございました。この点は、何さま農村の現状が、他産業との関係もございまするし、終戦後、一時に国際性を、わが国産業農業等が帯びて参りました関係から、農村青年に一部において非常な不安を与え、さらに、また帰農せられた方も非常にあり、さらにまた、そこに機械化の事実もあり、労力が余っておる場合があり、また、一部においては足りない場合があるというようなことで、構造の面におきまして非常に混乱を来たしております。その原因は多々ございます。今申し上げますように、将来に対する不安もございましょう。また一部には、そこに新たに工場等が興こり、他産業等に労力を持って参るいわゆる兼業農家もできて参ったこともございます。農村事情が非常に変わってきておる今日の実情でございますから、これをいかに安定し、固定し、自立農家を育成して参るかというところに私は問題があると思うのでございます。ただいま前段申し上げましたような意味合いにおきまして、そこに全農村を通じて、構造改善し、いわゆる拡大規模の経営ももちろん望むところでありまするし、また、中には兼業農家も必要でございましょうし、耕地は比較的少なくても、そこの施設に十分な意を用いた自立農家も、私は日本の場合にはあり得ると考えます。これら諸般の点を取り入れて、農村における農業人口の問題は結着のつくようにいたして参りたいと考えておるのでございます。  最後に、僻地の対策についてお尋ねでございましたが、これは総じて申しますれば、今回の構造改善は、三千数百の全農村に向かってわれわれは実施するつもりでございまして、僻地には僻地についての施策を地元の方々と御相談申し上げましてやって参りたい。いずれ他の機会においてお尋ねがありました際に、具体的にはお答えを申し上げることにいたします。(拍手)   —————————————
  46. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 北村暢君。   〔北村暢君登壇拍手
  47. 北村暢

    ○北村暢君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明のありました農業年次報告並びにこれに関する農業施策について質問をいたします。  質問の第一は、格差の解消の可能性についでであります。年次報告は、「一般経済高度成長の中にあって、農業生産と所得は堅実な伸びを示したにもかかわらず、他産業成長があまりにも急速であったために、生産性の開差は拡大し、生活水準の差も縮小されるに至らなかった」としております。わが党は、さきに、大資本中心とする経済高度成長のもとにあっては、産業の二重構造は激化し、農業はその底辺から脱することは困難であろうことを指摘し、政府反省を促してきたところであります。今日の報告の事態は、まさにわが党の主張を裏づけるものであり、多年にわたる支配層の農村収奪の結果として、日本農業の立ちおくれが決定的であることの証明にほかなりません。一体、政府は、農業基本法の目標とする生産性の格差を是正し、所得を増大して、他産業従事者と均衡する生活を営むことができるようにすることは可能であると考えておられるのかどうか、自信のほどを承りたいのであります。また、可能であるならば、格差が縮小の方向に転ずるのはいつごろになるのか、その時期的見通しを明らかにしていただきたいのであります。  質問の第二は、格差の解消の基本的態度についてであります。三十五年度における生産指数を就業人口で割った物的生産性指数は、農業では前年比四・一%増で、製造業では二一%増と、その伸び率には、はなはだしい差があり、また、農業の製造業に対する比較生産性は、三十五年度には二三%で、前年度の二六・九%に比べて低下しており、二十六年度以降の最低に落ちておるのであります。農家の家計費の水準も、また、各種の勤労世帯に比べ、六三−八三%に過ぎない。以上のように、年次報告は、基本法の目標とは逆の方向に進んでいる事実を指摘しております。政府はいかなる方策をもって基本法の目標を達成しようとするのか、その基本的態度についてお伺いいたします。農業の他産業に対する決定的立ちおくれを認め、国の保護政策を強化する方策をとるのか、他産業と同様に、自由競争による資本主義的経済合理主義の方策をとるのか、その態度を明らかにされたい。  質問の第三は、農業資本装備についてお尋ねいたします。その一は農業機械の導入についてであります。農業の固定資本投資については、土地投資の比重は低下し、農機具投資が一段と活発化した。しかし動力耕耘機は利用効率が低く、結果的には過剰投資になっているものと思われる。今後の施策として大型機械の導入促進をうたっているが、動力耕耘機がようやく普及し、その減価償却もまだ終わらないうちに、指導方針を変えられては、農民はいつまでたっても過剰投資の下敷きになり、動きがとれないということにはならないのか。この間の調整はどのようにするのか、承りたい。また大型トラクターの導入は、必然的に零細農耕を脱皮し、共同経営発展しなければ、投資効率をあげ得ないと思うが、その導入体制は整備されているのかどうか、お伺いします。  その二は、肥料と飼料対策についてであります。政府は肥料二法を廃止し、新たに肥料工業振興法案を準備しているようであるが、現行肥料二法は三十九年七月までの時限立法であり、特に肥料工業の合理化目的が達成せられていない今日、何もあわててこれを廃止しなければならない理由はないと考えるが、政府の見解を明らかにしていただきたい。  次に、畜産振興に重大なる影響のある購入飼料価格の推移について何ら触れていないことは、意識的に回避したとしか考えられません。今日、畜産農家は原料高の製品安で不安動揺しているではありませんか。一体、政府はこの事態をどのように解しているのか。昨年に引き続き本年もまた飼料値上がりに対し緊急対策で糊塗しようとしているが、農民の不安一掃のためにも、すみやかに飼料需給安定法の抜本的改正による恒久対策を立てるべきであると思うが、その準備があるのかどうか承りたい。  その三は、農林金融についてであります。三十六年度における財政投融資計画七千二百九十二億円のうち、農林公庫資金は五百六十四億円で、わずかに全体の七・七%にすぎず、一方、農民自身の貯蓄による系統資金の総額は一兆円を突破しようとする段階にあり、系統外貸出額も一千五百億円に上っている。しかるに農家借入金の構成は、総額わずかに四万五千円のうち、公庫と組合からの借入金が五五%で、地銀その他個人からの借入金が四五%の比率となっている。そのうち低利資金はわずかに二六・八%で、残余の大部分は九分から一割以上の高利資金を利用している実情であります。以上によっても明らかなように、系統の資金源は豊富にありながら、実際に資金の必要な農民でも、このような高利では、活用したくてもで ないのであって、農業資本装備が低位になることはむしろ当然のことでしょう。政府はかかる現実を直視し、従来から農林金融の問題点とされている金利水準の低下、組合系統の金融の資金コストと貸出金利の割高の是正、農林金融の交通整理等についていかに対処するのか、その方針を明らかにしていただきたい。また系統金融の余剰金を公庫に吸い上げ、これに利子補給をして、貸付条件を原則として、三分五厘、三十年償還とする有利な制度資金の拡大をはかることは、あえて困難ではないと思うが、政府にその意思ありや、見解を承りたい。  質問の第四は、農業就業構造の質的低下についてであります。農業就業人口は、倍増計画で予定した線に沿うて順調に減少しているものといえましょう。しかし、これは表面的数の減少であって、労働力移動は想定したように直ちに所得の上昇に結びつかず、減少の対象が若い優秀な労働力に集中し、かつ急速であったために、農業労働力老齢化女性化をもたらし、農業就業構造の質的低下が顕著になっていると同時に、農繁期の労力不足を生じ、農業労賃の高騰を招いている。しこうして、この傾向はますます激化するものと判断せられる。一体、政府はこの農業就業構造の質的低下に対し、低下をいかに克服して農業の近代化を達成しようとするのか、その具体策を示していただきたい。  質問の第五は、農産物の価格対策についてであります。農産物価格安定制度の対象となっているもののうち、米のみが生産費及び所得補償方式をとっているだけで、その他は政府の支持する標準価格すら守られないのが実態である。今後の成長農産物である畜産物の増産を期待するならば、価格安定の基準は少なくとも生産費を補償するものでなければならないと思うが、政府の見解を承りたい。また、価格安定制度のない青果物については、異常な価格変動によって選択的拡大の支障になっていることを認めているが、農相は、その対策として、青果物にも標準価格を設けて、これを中心価格の運営を行ないたいといっておられるようであるが、国の買い入れ、保管も困難であり、完全な自由価格制度をとっている青果物に対して、何をもって標準価格を決定するのか、またどのような効果が期待できるのか承りたい。また青果物の値上がりの際には、直ちに騒ぎ立てられるが、豊作貧乏の際には何ら顧みられない現状に対し、どのように措置されようとするのか。その方策についてお尋ねいたしたいのであります。  質問の第六は、農業構造改善についてであります。わが国農業構造の特質である零細農耕は、今日もなお基本的に変化がない。しかし、傾向としては、経営規模一町歩を境として、農家の階層分化が進行し、兼業化による他産業への労働力移動が急速に進んでいる反面、経営規模の大きい専業農家発展動きも見られる。このように、経営高度化、近代化は依然として困難な事態にあり、その阻害要因として、資本の不足、経営耕地零細性農業技術と経営担当者の資質の問題をあげている。しかしこの阻害要因は、今後講じようとする施策でどのように改善しようとするのか、農業動向の分析と農業施策のつながりが一向にはっきりしないのである。農業と他産業生産性の格差が、農業資本装備相対的低下が原因であり、その基底に零細農耕の構造問題があると明確に分析されているのであるから、施策重点もまた、当然零細農耕の解消におかなければならないはずである。しかるに、基本法制定当時、構造改善施策の第一着手として、全国九十二カ所の構造改善モデル地区、いわゆるパイロット地域を設け、実験的に事業を試み、これを拠点として自立経営の育成に発展せしめようとしたのであるが、この方針は、はなはだしく後退し、実質的には第二次新農村建設ともいうべき構造改善一般地域に置きかえられたのである。すなわち、この名目だけの農業構造改善事業は、全国の市町村三千四百七十一のうち三千百市町村に対し、十年間に適地適産による主産地形成の一般地域の事業を実施しようとするものであり、三十七年度に二百カ所の事業に着手するとともに、三百カ所の予備調査をすることになっている。一方、本体のパイロット地域は、三十七年度は新規一指定は行なわず、九十二カ所を三カ年計画で実施し、終了するものと解されるのである。このことからも、本筋の構造改善のパイロット地域が主客からすべり落ちて、主産地形成がこれに変わったことが明らかである。構造改善事業は、あくまでも経営主体である農家並びにその共同体を対象とする土地政策に関連する事業を主体とすべきであって、市町村単位に、生産政策中心とし、主産地形成を目的とする農村計画とは直接には結びつかないのである。したがって、主産地が形成せられれば直ちに生産性向上し、農家所得が増大するということにはならないのである。選択的拡大のため、多頭羽飼養の普及、主産地形成は有効であり、それ自体に反対するものではない。しかしながら、構造改善に名を借りて、基本法の施策にも見当たらない第二次新農村建設事業が、河野農相の実現により突如として頭を持ち上げ、たちまち本年度の重点施策にのし上がったところに、何か割り切れないものを感ずるのであります。自民党の参議院選挙対策と、同党農山村組織強化のため、近く全国各市町村単位に設置せられる農政協議会(仮称)が、この構造改善事業にからませて発足することが、新聞に報道せられているのであります。もしそれが事実とするならば、十年間事業費総額三千七百億円に及び、一町村当たり九千万円の補助事業と、二千万円の融資事業とをもって行なう農業構造改善事業は、国費による自民党組織の主産地形成となり、農民を冒涜するもはなはだしいものと言わなければなりません。
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 北村君、時間が来ました。
  49. 北村暢

    ○北村暢君(続) 自民党総裁たる池田首相に、その中止を警告するとともに、この問題に対する見解を明らかにしていただきたいのであります。  政府は、農業基本法を機軸として同法の定める施策を着実に具体化することを、農業施策基本的態度とすると言いながら、構造改善事業の主柱ともいうべき自立経営の育成については、施策のどこにも見当たらないのであります。
  50. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 北村君、時間が来ました。
  51. 北村暢

    ○北村暢君(続) 政府は、基本法制定第一年にして、早くも重要施策の自立経営の育成をあきらめたのではないでしょうか。わが党は、農民六割削減による二町五反を目標とする自立経営農家では、日本農業構造改善は困難であることを指摘し、積極的な農用地の開発を背景とし、農業の共同経営によって零細農耕を克服するため、農業生産組合の育成を主張して参りました。政府は、自立経営育成の方針を変更したとするならば、ただ漫然として農家の階層分化の進行にまかせておくことは、基本法の精神からいっても許されないことである。零細農耕の構造改善のために、わが党の主張に同調し、積極的に各種共同経営の育成に乗り出すべきではないか、総理の所信を承りたいのであります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  52. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) われわれの念願いたしておりますことは、農業と他産業との生産性の格差を是正しようといたしておるのであります。それに向かって努力いたしております。それが可能なりやという御質問でございます。可能なりやというよりも、可能にするように努力しなけりゃならぬ。私はそれを期待いたしております。可能なりやいなやということは、私は、その問題を出すよりも、可能にすることに全力をそそいでいきたいと思うのであります。しこうして、その是正される時期はどうかという問題は、他産業の伸びもあります。また、農業のこれからの育成策等によって、その時期がきまることでございます。これは今後の努力目標で動くと思います。  また、農業政策に保護政策をとるか。——私は、産業政策は、あくまで個人の創意工夫をもととする自由経済でございます。しかし、農業につきましては、他の産業と違いまして、自然的、社会的あるいは経済的諸条件が非常に違っております。こういう問題につきましては、政府は、全般の産業政策の点からいって、ある程度の保護政策をとることは当然であると考えます。  次に、構造改善の問題でございます。農業基本法が所期しておりますことは、やはり技術の革新とか、あるいは生産基盤整備、いろいろ問題がございます。こういう方向に向かって構造改善するということは、農業基本法の精神に沿うものであって、反するものではございません。詳しくは農林大臣からお答えいたさせます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎登壇拍手
  53. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  最初に御了解願っておきたいと思いますことは、農業基本法は、昨年の国会を通過いたしまして、施行いたしましてまだ半歳でございます。したがいまして、いろいろおっしゃいますけれども、何を申しましても、法律ができて半年でその効果をあげる——あがっておらんじゃないかという議論をされるには、まだ少し早いのじゃないか。努力が足りるとか足りないとかおっしゃるならば、一体何をやるつもりだということであるならば、やる計画、準備につきましては、(「から念仏だ」と呼ぶ者あり)からではございません、予算の裏づけをもって準備いたしております。これをやることがまずかったか、よかったかという御議論は、やってからあとで願うのがほんとうじゃないか、今、せっかく私は、初年度において、こういう予算、こういう方向でやって参りたいと、皆さん方に御審議願っておるのでありまするから、その点を、あたかも農業基本法を実行したところが労働者がどうなった、構造がどうなった、ああなったとおっしゃいますが、これは、それだから早く農業基本法によって、この困難な農村の事情に対して光明を与えよう、安定を与えよう、方向を明示しようというところに、農業基本法を作ったゆえんがあるということを、ひとつ御了解いただきたいと思うのでございます。したがいまして、機械化をしたから云々という御議論がございました。こういうことも、確かに御指摘のような点もございます。ありますから、そこで、機械農業、機械についての研究所、試験所を作って、これからはどういうものがいいかということを、試験し、勉強し、検査していこうということについての施策について、法律案並びに予算案を御審議願うようにいたしておるのであります。  次に、肥料につきましては通産大臣から御説明がございます。「えさ」について御質問がございました。「えさ」につきましては、これまた御承知のとおり、わが国の飼料問題は、国内で作ります飼料と、海外から輸入いたしまする飼料と、二本立てでございます。ところが、海外から輸入いたしまするものは、何といたしましても海外の農産物が下降線をたどっておりまするから、比較的有利に輸入はできます。前途の見通しは、下がる場合はあっても、上がる場合はあまり予想する必要は私はないと思います。それを、いかにして国内の飼料でこれを埋めていくかというところに、今後の施策があると思うのでございますが、それは明年度予算にも一部計上いたしておりまするとおり、原野の開墾等によりまして牧野の改良をいたし、そして畜産に牧野を利用する、そこに国内飼料資源を求める。さらに、ビート産業の奨励等によりまして、ここにも飼料給源を求めていこう。いわゆる日本の飼料は、今後に自給飼料を求める期待が非常に大きいのでございますから、それらについては遅滞なく研究してやって参ろうということを考えておる次第でございます。  次に、農村金融について御質問がございましたが、これもたびたび申し上げますようにすでに、御承知のとおり、わが国の現在の農村金融が、組合金融段階が非常に多いということのために、利息が非常に割高になっております。そのために、この農村金融の制度そのものについて、抜本的に考え直さなければならぬ段階にきておるのではなかろうか。これをよくいたすにあらざれば、現に農村の預金は御承知のとおり六分でございます。六分の預金が農村一般に通用いたしておりまするときに、これ以下の資金を農村が運用するということに困難性がございます。ところが、農村金融の六分、五分の金利は高い、世界的に。どこに比べても高いというところに問題がある。そこに、この問題についての円滑性を欠く点があるのでございますから、抜本的な改善を必要とする段階に至っておりますので、政府としても、十分これについて調査検討いたしたいと考えておるわけでございます。  次に、農業労力に対する問題であります。農村労力の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおりに、現にわが国の農村が、一部においては労力過剰のために、それが都市の労力にかわって、そこに兼業農家の形成になっておる場合もあります。また一部には、農業に対する青年諸君の不安定等から、これが都市の労力にかわっておる場合もございます。したがって、一部には労力が老齢化し、婦人化しておるという地方もございます。また一部には、季節的労力不足の場合も非常に生じております。このように、非常に農村の事情によっていろいろな場合がありますが、これらを総じて、農村構造改善農業経営合理化等をもって、これらを安定固定して参るところに、われわれの所期いたしておりまする目標があるということに御理解を願い、農民諸君の御協力を願って、こういう問題を一挙に解決いたしたいと考えておる次第でございます。  以上お答えいたします。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる肥料二法についてのお尋ねでございます。御承知のように肥料二法を制定いたしました当時は、国内の必要量を確保することすら困難な状況でございました。そこで、肥料二法ができ、生産量を確保するということをいたして参りました。最近におきましては、肥料の約四割程度が外国に輸出されるように、生産の状況はたいへん改善を見ておるわけでございます。同時にまた、国内の肥料価格そのものについて考えてみますると、日本の国内肥料価格は、ただいまのところ、西欧のいわゆる先進工業国における国内肥料価格と比べてみましても、いわゆる安い部類と大体匹敵するような状況に改善を見ております。ただ、この肥料は、ただいまお話しいたしますように、四割が外国へ出て参りますが、貿易の場合におきましては、各国とも非常な激烈な競争をいたしております。肥料価格についてはダンピングが行なわれておるわけでございます。この状態が続いて参りますると、いわゆる肥料工業の事業自体の内容に対しましても非常に悪影響を及ぼすことになるわけでありまして、健全な肥料工業を育成するということが困難な状態になるだろうと思います。それらのことは、ただひとり肥料工業だけが弱体化するばかりでなく、この肥料を、農業生産の面から見まして最も必要な資材と考えておる農業生産に不安を与えることにも実はなるわけであります。これらのことを考えてみますると、現在の実情に即応する新しい法律を作ること、言いかえますならば、肥料工業を今後は輸出産業として育成強化していく、そういう方向に進むことがよろしいのではないか、こういう意味で、ただいま肥料二法を廃止して、新しい法律を考えてみようということで、政府として考案いたしている次第でございます。  で、しからば今後の量は確保できるか、価格決定方式がその法律によってかわることになれば、農民に非常に不利益を与えるのではないかという御心配があろうかと思いますが、ただいま飼料について農林大臣が御指摘になりましたように、今後とも肥料生産における新技術の導入等は積極的になって参ると思いますので、私は現在より以上に肥料の価格が高くなる、こういう心配はなくて、さらに肥料工業自体の内容を充実することによって、積極的にアンモニア・ガス源等のコストを安いものに転換する、そういう方向に育成指導していくべきではないか、かように考えておりますのでございます。(拍手
  55. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 天田勝正君。   〔天田勝正君登壇拍手
  56. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は民主社会党を代表して、ただいま報告のありました農業年次報告並びに三十七年度の農林施策について、総理並びに農林大臣に御質問いたしますが、すでに、ただいま自民、社会両党の代表から質問がありましたので、その重複を避けながら、四点にしぼってお伺いいたします。  まず、総理に伺いますが、農林大臣報告を聞きましても、農業の状態は、いかに初年度とはいいながら、一向にその困難が改善されておらないのであります。農林大臣はただいまの御答弁で、まだ功罪を論ずるのは早過ぎるということを言われました。しかし私は、効果があがらない一つは、池田内閣農政に対する姿勢に誤りがあるのではないかと思うのであります。つまり池田内閣は、農業者の税負担が少ないから、その施策も手加減をするという経済合理主義に立っているのではないかと思うのであります。そこで、画期的な施策が講ぜられないのだろうと存じます。そもそも日本の工業が今日のごとく発展して参ったのは、昨今の施策によってではないのであります。実に明治維新以来の政府が、殖産振興、富国強兵の旗じるしのもとに、当時、財政のまかないは、地租を中心とする農民負担に七五%を依存しながら、一方、官業の払い下げ、土地、鉱山の払い下げ、あるいは資金の無条件融通など、工業の育成ひいては財閥形成に力を注いで参ったからであります。一方、農村は、農畜産物の供給者としてのみならず、低賃金労働者の供給源、下級兵士の供給源として、近代産業形成に動員されて参ったのであります。この歴史的事実を考えるならば、農民は貧しいから救ってやるなどという思い上がった態度を一擲いたしまして、農民の長い間の犠牲に対し、この際、国は償いをするという謙虚な態度をもって、農政に臨まなければならないと存じます。池田内閣農政の姿勢は一体いかなるものであるか、この際、その見解を明らかにされたいのであります。  次に、農林大臣に伺います。  政府は口を開けば選択的拡大と言うて、いかにも農業従事者の自由意思を尊重するがごとくに宣伝をされておりますけれども、今日のごとく拡大された経済、こういう広範囲経済におきましては、農産物といえども、あるいは国際的な視野に立ち、あるいは全国的な視野に立って、その量と質と、生産の時と所を洞察し、対処しなければ、豊作貧乏に陥ることは避けることができないのであります。この広い視野と洞察を農民に求めることは無理であります。したがって、お前らが勝手に選択をしたのであるから、豊作貧乏もその責任はお前らだという転嫁の仕方は、通用しないと思います。国際的にあるいは全国的に、需給の責任を政府が持ち、選択的拡大の指導をなさなければ、農民の所得向上は期し得ないと思うのでありますが、政府のこれに対する所信を承りたいのでございます。  質問の第三点は、流通機構、市場の問題についてであります。私はこれを抜本的に改善しなければならない必要性を、具体的な例をもってここに申し上げたいと存じます。  一昨秋から昨年にかけまして野菜が大暴落をいたしました。その際、埼玉の主産地では、大根が野積みにされまして、ただでございます。高くても貫当たり五円の相場でございました。ところが、これを資金のある業者が買い集めまして、加工費と貯蔵費を十五円かけて、二、三カ月たちますと、これが生産地においても、たくあんが貫当たり百円になったのでございます。つまり農民の不利益が一向に消費者の利益とはなっておらないところに問題があるのであります。値段が持ち直ったときにはもはや品物は生産者の手にないのであります。昨今の豚肉暴落もこれと同様でありまして、農家の庭先におきましてはすでに半値以下に下がっておりますが、さて消費者が買う場合にはキロ当たり五円安程度であります。農家は依然として豚を飼っているように見えておりますけれども、実はすでに買いたたかれて、所有権は仲買人の手に移ってしまい、今後太っただけをあとで精算するという豚小作が現出いたしているのであります。こういうことでありますから、今ごろ政府が、やれ審議会だの、やれ適正な価格だのといって、ようやく支持価格ができたときには、農民はもう自分の豚も自由にならないということになって、他の者がもうける結果に相なるのであります。こういう状態でありますから、昔、江戸の庶民は、幕府の政治を諷刺して、辰ノロの評定所前に落首をしたそうでありますが、それに類する諷刺が近ごろ流行して参りました。つまり、「牛を飼ったらモウからん、豚を飼ったらトントンで、鶏を飼ったらもとがケイラン」というのでありますが、(笑声)ところが、その豚も今申し上げたように一向トントンでなくて、一日一頭飼えば四十円ずつの損であります。これでは豚もブゥブゥ言うし、鶏はもうケッコウだと鳴くばかりであります。(笑声)ここに農民が機動性のある対策を望んでいる理由があるのであります。農相は、この機動性ある対策についていかなるお考えを持っておられますか、お伺いいたしたいと思います。  さらに、生産者と消費者の利害がつながらないのは、市場のあり方に問題があると存じます。近ごろ生産地市場はだんだん仲買人支配に変わりつつあります。また一方、消費地市場においては、生産者の意見も消費者の意見も一向反映されない仕組みになっているのであります。しかも、袖の下取引などという前時代的な商慣行がいまだ残っているのが問題であります。これについて、私は生産地市場の運営は、農業従事者のみの管理とするように法的保障を行ない、消費地市場については、生産者、消費者それぞれの代表を、出資の条件などをつけないで運営に参加せしむる法的規定を行ない、また六大都市には国営モデル市場を作って、生産者、消費者と直結させる状態を馴致しなければならないと思うのであります。これに対する農相の所見を承りたいと存じます。なお、申し添えますけれども、生産者、消費者の無条件市場運営参加は、何か乱暴のようにお聞きになるかもしれません。しかし一方、利潤追求を主眼とする株式会社でさえも、もうすでに昭和初頭の商法改正以来は、持ち株とは無関係経営権が行使できるようになっておるのであります。それを考えるならば、農畜産物のごとき、大衆の台所に毎日響いておりまする取引に、生産者、消費者の発言権が持たされておらないことこそ、不思議といわなければならないと思うのであります。(拍手)  最後に、質問の第四点は、農業近代化資金についてでございます。農業近代化のためには、通常支出をさらに豊富にするということは当然でございます。しかしこのほかに、融資についても抜本的に考えを改めてもらわなければならないと存じます。政府は、系統金融をもってわずかな利子補給を考えておるようでございます。ところが、系統金融はコスト高で、わずかな利子補給くらいでは、むしろ農業者負担が増大しまして、近代化資金貧乏にさえ陥ると思うのであります。そこで、系統金融のほうはむしろ農家の所得保障的の意味からそのまま存置をいたして、別に低利資金供給の基金を設けなければならないと思うのでございます。すなわち、年間三千億円の資金を累積させまして、最高金利三分五厘、農業資産相続については無利子でこれを貸すようにしなければならないと思います。三千億といいますと非常に大きく聞こえるかもしれませんけれども、冒頭に申し述べましたように、明治以来の財閥育成の歴史的事実を見るならば当然であります。また本年度の産業投資を見ましても、アラスカ・パルプという一会社に対しまして、実に資本金の六倍に及ぶ百十八億という金をば四分の低利で貸したのは皆さんも御承知だと思いますが、
  57. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が超過しております。
  58. 天田勝正

    ○天田勝正君(続) はい。こういうことでありまするから、融資は結局使いじまいでなくして、やがて返されるものであります。したがって、他の納税者には迷惑をかけないで、しかも国の資産を積み立てている結果になるのでありまするから、このくらいの施策は急速にする必要があると存じますが、政府のお考えはいかがでありますか、承りたいと存じます。  以上をもって質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  59. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 政府の農村対策についての御質問でございまするが、われわれは明治、大正、昭和を比較してみますると、最近の農業政策は格段の進歩があると私は考えておるのであります。しかも、農業基本法制定いたしまして、今後外国にも負けない、そうして他産業との格差もなくしよう、こういうことで進んでおるのでございまして、決して農村対策をおろそかにしておるわけでは絶対にないのであります。(拍手)   〔国務大臣河野一郎登壇拍手
  60. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  選択的拡大を農民諸君におまかせしておくのは無責任ではないかということでございますが、もちろん、これにつきましては、官民相話し合いまして、十分御指導を申し上げて構造改善をいたしたい。その中に選択的拡大を取り入れて主産地形成をいたして参りたいという所存でございます。  次に、いろいろおもしろいお話がございまして、流通過程が適当でないからこういうことになっておるんじゃないかというお話でございます。私もこの点につきましては深く留意をいたしまして、昨年来相当に調査を掘り下げていたしております。これを要するに、当面最も考えなければならないと思いますことは、小売機構において、卸と消費の中間の流通が詰まっておるのではなかろうかという事実でございます。この点に十分な設備の改善もしくは制度の強化等をいたしますことが、最も喫緊の急務ではなかろうか。たとえば、お話のように、芝浦の屠場には豚が道路にはい出しておるにもかかわらず、東京都内の豚肉の値段は下落しない。消費者の消費意欲はあるにもかかわらず、また生産地からの十分なる輸送もあるにもかかわらず、これが中間の取引において不円滑な点があるという点に、最も重大な配慮をいたさなければならぬ点があると思うのでございまして、政府におきましても、すみやかにこれらの中央卸売市場法を抜本的に検討いたしまして、これについて所要の改正を加えたい。いろいろ御意見でございますが、御承知のとおり、所管は東京都においてやっております。私が直接に指導監督いたす立場に立っておりません。そこに立法的な処置等につきましても十分勘案いたしまして、皆様方の御意見も拝聴して、善処いたしたいと考えておるのでございます。  次には、農業金融、農村資金の点についてお話がございましたが、これらにつきましては、前の御質問に対してお答え申し上げましたとおり、何分現在の農業金融は、協同組合等におきまする金融の制度が少々古くなっておる、現代に適用するには適当でないというような傾向もございますので、これについてよく農村の方面の諸君とも談合いたしまして、すみやかに適当なる改善を加える必要があると思いますので、この道をよくするにあらざれば——現在のままにおきましては、どなたがおやりになっても私は困難だろうと思います。どうか、せっかく社会党の諸君におかれましても、この現在の農村金融改善について御協力下さいますことを切にお願い申し上げる次第であります。(拍手
  61. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  62. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、港域法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長村松久義君。   〔村松久義君登壇拍手
  63. 村松久義

    ○村松久義君 ただいま議題となりました港域法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、この法案の要旨について申し上げます。  港域法は港の区域を定めたものでありまして、その区域は別表で規定されているものであります。今回の改正法律案は、この別表を改正しようとするものでありまして、そのおもなる理由は、政府の説明によりますと、次のとおりであります。すなわち、背後地の経済活動発展による港湾事情の変化、船舶交通量の増加により、田子の浦港ほか一港について港則法を施行する等のため、新たに港域を設定するほか、港湾建設工事の進展にかんがみ、港域を実情に沿うよう変更し、また臨海工業地帯の造成等に伴い、たとえば大阪港及び堺港のように隣接した港湾が一体として港湾の機能を発揮しているものについては、港域法上、港域を一つに併合するなど、網走港ほか十五港の港域を変更しようとするものであります。  委員会におきましては、質疑の後、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決を行なった結果、本法案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  64. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  65. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————————
  66. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第三、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長河野謙三君。   〔河野謙三君登壇拍手
  67. 河野謙三

    ○河野謙三君 ただいま議題となりました公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法律案の要旨を申し上げますと、第一に、第三十八国会において・健康保険法・恩給法及び国家公務員共済組合法等の一部改正が行なわれましたので、これらに関連する規定改正をいたしております。第二に、退職者が、もとの公社に再就職した場合に、前後の組合員期間を通算することといたしております。第三に、更新組合員等の旧令共済組合の組合員であった期間は、すべて実期間として組合員期間に算入することといたしております。そのほか、本法施行後五カ年半の運営の状況にかんがみ、所要の規定整備をいたしております。  当委員会における質疑のおもなるものを申し上げますと、三公社の所管大臣間における法案担当大臣の決定方法、法律案改正にあたって組合員の意向を反映するための機関の設置、三公社における積立金の運用方法、旧満鉄職員等の通算問題等でありまして、斎藤運輸大臣及び政府委員よりそれぞれ答弁がありましたが、その詳細は委員会議録に譲りたいと思います。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、山本委員より、日本社会党を代表して、次の自民、社会両党共同提案の附帯決議案を付して原案に賛成する旨の発言がありました。附帯決議案を朗読いたします。    附帯決議(案)   今回、本法の改正により、日本医療団及び外国政府の職員であった者の期間の通算措置が行なわれたが、なお、外地にあつた南満州鉄道株式会社等に勤務していた職員については、通算措置が未解決である。政府並びに公共企業体当局は南満州鉄道株式会社等に勤務していた者についても通算措置を検討してその実現に努められたい。   右決議する。  次いで採決の結果、本法律案全会一致をもって可決すべきものと決定し、また、附帯決議案についても全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、右の附帯決議に対し、斎藤運輸大臣より、関係各省庁と協議して、その趣旨に沿うよう努力する旨の発言がありました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  68. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  69. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————————
  70. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第四、離島振興法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長小林武治君。   —————————————   〔小林武治君登壇拍手
  71. 小林武治

    ○小林武治君 ただいま議題となりました離島振興法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。  本法案は、衆議院の提出にかかるものでありまして、その要旨は、離島振興法に基づく事業計画の実施の状況にかんがみ、同法の有効期間を昭和四十八年三月末日まで、十年延長するというのであります。  地方行政委員会におきましては、衆議院議員綱島正興君から提案理由の説明を聞いた後、提出者並びに政府との間に、離島振興法に基づく事業の実績はどらか。今後の事業計画の重点は何か。各省庁にまたがる予算を一本化する必要はないか。等の問題点をめぐって質疑応答を重ね、慎重審査を行ないましたが、その詳細については、会議録によってごらんを願いたいと存じます。  かくて、二月二十二日、質疑を終局し、討論に入りましたところ、格別の発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  72. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  73. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十五分散会