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1962-01-24 第40回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年一月二十四日(水曜日)    午前十時二十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和三十七年一月二十四日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、特別委員会を設置するの件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。      内閣委員長 大谷藤之助君    地方行政委員長 小幡 治和君      外務委員長 近藤 鶴代君      大蔵委員長 大竹平八郎君      文教委員長 平林  剛君    社会労働委員長 谷口弥三郎君    農林水産委員長 仲原 善一君      商工委員長 山本 米治君      運輸委員長 前田佳都男君      逓信委員長 白井  勇君      建設委員長 後藤 義隆君      予算委員長 小山邦太郎君      決算委員長 岸田 幸雄君      懲罰委員長 大泉 寛三君  から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。      ——————————
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、  常任委員長選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  7. 鍋島直紹

    鍋島直紹君 常任委員長選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
  8. 米田勲

    米田勲君 私はただいまの鍋島君の動議に賛成をいたします。
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 鍋島君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  よって議長は、内閣委員長河野謙三君を指名いたします。   〔拍手〕  地方行政委員長小林武治君を指名いたします。   〔拍手〕  外務委員長井上清一君を指名いたします。   〔拍手〕  大蔵委員長に棚橋小虎君を指名いたします。   〔拍手〕  文教委員長大矢正君を指名いたします。   〔拍手〕  社会労働委員長高野一夫君を指名いたします。   〔拍手〕  農林水産委員長梶原茂嘉君を指名いたします。   〔拍手〕  商工委員長に武藤常介君を指名いたします。   〔拍手〕  運輸委員長村松久義君を指名いたします。   〔拍手〕  逓信委員長安部清美君を指名いたします。   〔拍手〕  建設委員長大河原一次君を指名いたします。   〔拍手〕  予算委員長湯澤三千男君を指名いたします。   〔拍手〕  決算委員長相澤重明君を指名いたします。   〔拍手〕  懲罰委員長辻武寿君を指名いたします。   〔拍手〕      ——————————
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。  科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる特別委員会を、またオリンピック東京大会に関する諸問題を調査し、その準備促進をはかるため、委員二十名からなる特別委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって科学技術振興対策特別委員会及びオリンピック準備促進特別委員会を設置することに決しました。  本院規則第三十条により、議長特別委員を指名いたします。その氏名を参事朗読させます。   〔参事朗読〕      ——————————
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)。  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。藤田藤太郎君。   〔藤田藤太郎登壇拍手
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、日本社会党を代表して、政府施政方針に関し、総理以下関係閣僚質疑を行なうものであります。  池田内閣は、組閣以来、大資本中心高度経済成長政策を掲げ、所得倍増論のムードを振りまき、いかにも国民所得が急速に拡大するごとく宣伝してきたのであります。しかし、民間設備投資行き過ぎ物価上昇を来たし、国際収支は危機を招くに立ち至ったのであります。この責任はだれが負うべきか、池田内閣責任であります。しかるに、池田内閣は、この責任民間に転嫁し、デフレ緊縮政策にその方針を切りかえようとしております。この政治政策の欠陥によって犠牲になるのはだれか——であります。それは、中小企業、農民、労働者であります。物価値上がり勤労国民生活を圧迫し、それも低所得者ほどその圧迫は大きいのであります。政府物価引き下げ用意があるのかどうか。また設備投資行き過ぎ経済安定の立場から規制する用意があるのかどうか、国際収支均衡回復はいつにめどを置いているのか、またこのための処置をどのようにしてとるのか、総理見解をお聞きしたいのであります。  第二は、岩戸景気と言われた過程において民間設備投資は十兆円にも達しようとし、これが生産力化しつつあり、過剰生産要因となりつつあります。生産消費とのバランスをとって経済変動を防いでいく、これは近代国家政治基本であります。OEECは、労働生産性賃金上昇率を同じにして、物価横ばい、これにプラスして社会保障制度拡大を、政治基本としております。今日のイタリアが一九五五年以来この方式によってヴァノーニ・プランと言われる経済計画を立て、今日の経済力を打ち立ててきたのであります。池田内閣経済政策は、労働生産性向上には力を入れるが、国民消費向上には力を入れないのであります。昭和三十年を一〇〇とした製造業労働生産性は、昭和三十六年十月には一六七・一となっております。しかし、同期の製造業実質賃金上昇率は一〇九・一であります。不安定な期末手当は加わるとしても、一二〇%余りでありましょう。なお物価値上がり上昇線をたどっているのであります。西欧諸国サービス事業経費国民負担分だけ賃金上昇率を高めているのと比べてみるとき、いかに日本労働者が低賃金であるかがわかるのであります。これでは国民所得拡大にもなりません。国民購買力を押えて、経済発展繁栄はあり得ません。最低賃金制内容改善を含めて総理の所見を伺いたいのであります。  第三は、雇用の問題であります。先ほど述べましたOEEC関係して各国完全雇用実施しております。人間の手工力にかわって機械化の発達は急速度に生産増強線をたどっております。労働時間は完全雇用政策実施する限り短縮され、人生を楽しむ方途が講じられることは必然でありましょう。各国が週四十時間労働制を採用し、機械の進歩と見合ってなお労働時間の短縮を研究実施する段階にあります。日本は、昭和三十六年九月現在、週六十時間以上働いている人が千二百万人、四十九時間以上は二千五百万人もおるのであり、顕在、潜在失業者八百万人もおるということは、何を物語るのでありましょう。不況原因も、ガット三十五条援用も、このよう政治の構えに主因しているのではなかろうか。政府完全雇用をやると言ってこられたが、不安定な雇用関係でなく、労働時間の短縮完全雇用をどう具体的に実施されるか、お示しを願いたいのであります。  第四は、社会保障の問題であります。わが国社会保障制度はおくれていることは申すまでもありません。憲法二十五条が示すように、人たるに値する生活維持、これを保障する義務が政府に課せられているのであります。生活保護法適用者生活水準経済発展と比べてこれでよいのかと言いたいのであります。五人世帯地方では一万円水準であります。一人二千円で一カ月の生計維持せよとは、あまりにも酷と言わざるを得ません。わが党の五〇%値上げ要求に対して一三%値上げに押えた政府は、これで人たるに値する生活維持ができると判断された理由を聞かしてもらいたいのであります。  所得保障年金制度についてであります。国民年金は昨年四月より発足しました。四十五年後月三千五百円支給とは、あまりにも低いのであります。年間四百億円の国民積立金を利用するところに本旨があったといわれてもやむを得ないでありましょう。五年ごとに調整することに法はなっておりまするが、政府は、今日の経済との関係で期限内においても改善する意思があるかどうか、お聞きしたいのであります。また、厚生年金は、政府関係事業共済年金と比較して、あまりにも低過ぎるのであります。これを同じ労働者民間事業に働いているからという理由で低額に押えている。これについて政府はどう説明されるのか、改正する意思があるかどうか、お聞きしたいのであります。  福祉施設関係職員給与であります。この仕事に携わっておられる方々の苦労はなみなみならぬものがあります。公務員給与と同じにすべきであると思うが、政府見解を聞きたいのであります。  日本医療制度多岐にわたっております。これを統一する意思政府にあるかどうか。また、国保国庫負担を五%引き上げられたのでありますが、これだけでは貧乏と病気の根を断つことはできないのであります。政府は、将来、国保給付内容向上する計画があるかどうか、お伺いしたいのであります。  失対労務者賃金は四百二十五円に値上げされております。しかし、一世帯一人に限定された労務者の登録では、労務者平均家族三・五人世帯生計維持は困難であります。二十五日稼働が保障され、六百円に賃金を引き上げることによって、ようやく月一万五千円であります。少なくとも、最低これくらいは必要であると思うが、政府見解を聞きたいのであります。  次は住宅問題であります。今日住宅不足によって勤労国民生活を圧迫していることは、申し上げるまでもないのであります。三十六年度建設白書によれば、なお住宅不足数は三百六万戸もあるというのであります。これは政府責任と言わざるを得ません。元来、衣食住の保障憲法の示すところであるにもかかわらず、政府は、民間自力建設に多くをたよってきたのでありました。この態度を根本的に改め、三百六万戸の不足住宅は、国の責任において解消するという計画を立てるべきであると考えます。来年度予算との関連において、政府住宅計画の占める位置について、次の事項について質問したいのであります。  一つは、公営住宅についてであります。地価高騰建築資材値上がりのため、建設単価値上がり政府資金基準となる標準建設費実施建設費との格差がますます増大しており、これが地方財政を圧迫している。これが地方公共団体公営住宅建設意欲を阻害している。憲法の精神からいっても、住宅建設は国の責任において実施するものである以上、少なくとも国の補助実施建設費基準とすべきであると思うが、どうです。  二番目は、地価高騰についてであります。地価の異常な高騰を規制する考えがあるかどうか。地価高騰住宅建設の隘路になっております。政府の無計画住宅政策のため、たとえば住宅公団団地造成がなされると、付近の地価をつり上げ、公団の業務が阻害されるといった悪循環が行なわれ、団地は遠くへ遠くへと拡大し、これが交通地獄を招来し、遠距離通勤となり、実質的な住宅困窮原因となっている。また、投機的な土地の買い占めは何ら規制されず、粗悪な土地造成が行なわれているのが現状だが、その対策はあるのかどうか。  第三は、ILO労働者住宅についての勧告をどのよう考えているかということであります。社宅は企業内福祉という形で巧妙なヒューマン・リレーションによる労務管理の一法に利用されています。労働者大衆は、私生活についてまで資本家に売り渡したのではないのであります。ILO勧告は、労働者住宅は国の責任においてなされるべきであって、使用者による住宅供給は好ましいものでないと言っておりますが、この点はどうお考えになりますか。  第四でありますが、三十七年度予算案における住宅関係予算を見ますと、公庫住宅が大きな比率を占めております。ところが、公庫住宅を利用する場合、公庫住宅標準建設費が低いことはもちろんのこと、低所得者にとって最も困難なことは頭金制度であります。この点を改正する準備があるかどうかであります。  第五は、農漁村住宅についてであります。農漁村住宅はきわめて非近代的であり、近代化ようにも、生産性の低い農漁村にとっては、とうてい独自に改善することは期待できないのであります。また、農業、漁業の共同化に伴い、早急に住宅近代化が必要とされているが、この点、政府の強力な補助なくして達成できないが、どのよう政府考えているか、お聞きしたいのであります。  次は農業問題であります。  農業基本法は、何よりも農業従事者と他産業従事者との所得格差を解消する、このことを目標にすべきであると言っております。ところが、政府が今国会報告するためにまとめた昭和三十六年度農業年次報告によって見ますと、昭和三十五年度の農業外部的条件がよかった時期においてさえ、生産性においても、従事者生活水準においても、他産業との格差は縮小するどころか、逆に拡大していることが明らかになっております。これは、経済高度成長を進めることによって産業二重構造をなくしていくという池田総理の意図とは、全く逆な事実を示しているのであるが、総理はどう考えておられるか。  農業従事者と他産業従事者との所得均衡をはかるためには、主要農産物について生産費所得を補償する価格での価格支持政策が重要な柱となるべきであります。総理は、食糧管理制度を堅持し、生産者米価生産費所得補償方式によって価格安定法による全量買い上げを確実に行なうため、十分な予算措置を講ずべきであるが、この点の対策はどうお考えですか。  農業生産性を高めるためには、土地改良、農地の集団化草地造成等生産基盤強化拡充が第一の前提であります。総理は、公共投資に重点を置くとしばしば言明しているが、農業に対する公共投資にはどのよう対策を講ずるのか。また、現在全国の土地改良区の中には固定負債に悩む不振土地改良区が多く、その総額は五十億円をこえております。この現状をどう考え、どう対処するのか、お聞きしたいのであります。  最近、農村の若年労働力が都市へ激しく流出しつつあります。移動先雇用条件や、あるいは多数の短期の出かせぎの実情は、不安定なのが多いのであります。これらについて、政府は具体的にどのような調査を行なっているか。そして、どのよう対策考えているか。お聞かせを願いたいのであります。  次の質問は、中小企業関係の問題であります。  政府中小企業対策を見ると、しんから中小企業を保護育成していこうというかまえがないと言わざるを得ないのであります。さきに述べましたように、大企業中心経済成長所得倍増政策でありまして、この方針にじゃまにならない中小企業だけはめんどうを見てやろうとしております。これも、恩恵的にやっていこうというかまえであります。貿易自由化の面から見ても、国際競争力に耐え得るのだという名目のもとに、設備投資は押えない、金融を引き締めていくというのであります。実力のある大企業だけが設備拡大をするという答えになるでありましょう。大企業は、独占価格で、国民のめいわくも顧みず、資金調達をするでありましょう。社債にしても、今日のよう自由主義自由経済では、大企業だけは資金は集まるでありましょう。これに比べて、中小企業は、今日、金融引き締めのために、非常に困難な状態に置かれております。年度末に向かって、金融の逼迫、長期手形不渡り手形等増大によって、企業の倒産が各所に起こっております。政府は、中小企業に対する資金の手当の用意があるかどうか。また、緊急に第二次補正を組む必要があるのではないか。このよう金融逼迫の時期に徴税を猶予する措置をとるべきだと思うが、政府所信はいかがですか。  第二は、中小企業は万年不況ということは、常に指摘されております。その原因は、政府中小企業対策が場当たり的で、一貫した総合的なものがないことにあります。この際、政府抜本的対策を講じ、中小企業のあるべき姿というものを明示する必要があると思うのであります。この点について、社会党中小企業基本法を発表したが、政府はそれをどう考えているか。また政府は、今国会中小企業法案を出すのかどうか、伺いたいのであります。  第三は、税金の面であります。大企業に比して、中小企業実効税率が重くのしかかっております。また、徴税面でも強化に苦しんでおるのが事実であります。徴税民主化、税の大幅軽減要求されている最中に、国税通則法という悪法を政府は提案すると聞くが、こういう法律を提案するには、中小企業者の率直な意見を聞いて、その意見を十分に取り入れる必要があると思うが、国税通則法国会提案を見合わせるつもりはないかどうか、お伺いしたいのであります。  第四は、中小企業経営近代化としての指導育成、機構の確立が要求されている。これに基づいてわが党は、中小企業センターの設置の実現を求めたのでありますが、この要求政府によって全く抹殺されてしまった。中小企業の経営の近代化共同化集団化についての中小企業者切望要求は取り入れられず、これらについての必要な予算は削られている。これで近代化をやる意思があるとは思えないのであります。この点について政府所信を明らかにすべきであります。  第五は、中小企業金融に関してであります。中小企業金融に関して中小企業金融公庫があります。この貸付を見ますと、昭和三十六年は千五百十二億円であります。しかし、地方に支店を持たない同公庫は、多くを代理貸しにしているのであります。その額も千百七十四億円もあります。この代理貸付はどうして行なわれているか、政府は知っておられるかと言いたいのであります。この代理貸付をやる市中金融機関は、公庫より三分二厘という手数料をもらっておきながら、具体的に貸し出すときになりますと、担保は取る、積み立てばさす、このよう方法をとっておるのであります。金を市中金融機関に積み金しておる人でなければ全額借りられないというのが現状であります。たとえば公庫より百万円借りたいとすれば、市中金融機関を通ずるとすると、市中金融機関は、まず不動産担保を取る。そして、一律ではありませんが三分の一の定期預金をまずさす。それから、三年返済であれば、三十六分の一の利息を含めた分を毎月返済さす方法が多くとられております。このようなことでは、百万円借りたい人は、頭から三分の二しか借りることができなくなるのであります。これでは、中小企業者の金を借りたい人は、百万円の事業をしようとすれば、その三分の一分は他で借りてこなければならぬ。高い利子やみ金融機関でこの分だけ調達することになるのであります。本来、政府は、中小企業金融公庫を通じて、中小企業にできるだけ安い利子で金を貸すのだといっておられるが、実際は金のある人がこの金を借りられる仕組みになっているのであります。困っている中小企業者にこの公庫の金を貸すというのが本質であるなら、まず直接貸しにすることである。また、最後の危険負担八O%を市中金融機関に課しているのを改めるべきである。そして、代理貸しでも不動産担保の必要ある場合もあるが、市中金融機関のとっている積立金をさすことをやめさすべきである。これなくしては、公庫の金を借りたくても中小企業者は手が出ないという状態にあります。政府は、中小企業金融公庫貸し出し方法を以上のよう方法に改める決意があるかどうか、お伺いしたいのであります。  私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  昭和三十七年度の予算あるいは金融政策につきまして、緊縮に切りかえたというお話でございますが、これは見方によりまして、まだ放漫だという言葉も聞いております。私は、金融につきましては引き締め強化を続けて参りますが、財政面では特に非常な緊縮をしたと考えておりません。適正な政策をとっております。  なお、そのうちに物価引き下げの問題、これは昨日もお答えいたしましたように、政府といたしましては、極力物価引き下げについて努力いたしますと同時に、上昇の傾向にありまする消費者物価につきましては、できるだけ上昇を押えていく各種方法をとるつもりでございます。  なお、設備投資につきましては、民間行き過ぎ投資を極力押え、適正な設備投資に進むよう助長しております。  国際収支につきましては、昨年申し上げましたごとく、今年の秋ごろまでには均衡の態勢がとれると確信いたしておりまして、その方向に向かってあらゆる処置を講じておるのであります。  次に、労働生産性向上賃金上昇。私は、各国の例に比べまして、わが国生産性向上は非常に上がっておるし、また賃金上昇もそれに伴って適正な上昇過程にあると考えておるのであります。  なお、国民購買力を押えているかという御質問でございますが、私は健全な国民購買力を無理に押えようといたしておりません。これに対しましても行き過ぎではないかという説もございまするが、私は、国民が将来の生活考え、片方にはできるだけ貯蓄し、また国内生産考えて、健全な消費はこれを押うべきではないと考えておるのであります。  また、労働時間の短縮完全雇用の問題でございまするが、われわれは労働時間の短縮は、これを望むところであります。完全雇用も強くわれわれ希求するところでございますが、これを国際貿易その他の国内事情等々を考えまして、その短縮完全雇用実現が適当に行なわれるよう努力いたしておるのであります。  なお、大蔵大臣の答弁がないようでございますから、かわりましてお答えいたしまするが、国税通則法は何も徴税強化するという意味ではございません。非常に複雑多岐になっておりまする徴税の規定を簡明にし、わかりやすくしようとしておるのであります。徴税強化の気持は全然ございません。  また、農業と他産業との格差増大は、御承知のとおり農業以外の産業が急速に伸びた関係上、また農業基本法実施かまだその緒につかんとしておるよう関係から、ただいまのところは格差の縮小を望んでおりましても、それがそのとおりにいっていないことは事実でございます。しかし、農業と他産業との格差をなくするということは大事業でございます。相当長い目で見ていただかなければならぬと考えておるのであります。  生活保護費上昇あるいは各種年金制度福祉関係職員の待遇、国民健康保険の充実、住宅問題等々につきましては、政府は重要な施策として極力努力しておりまするが、具体的な問題につきましては、各省大臣よりお答えさすことにいたします。(拍手)   〔国務大臣福永健司登壇拍手
  16. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 近時わが国賃金は、経済成長とともに年々顕著な改善を示して、その上昇率は、西ドイツと並んで最も高いグループに属しております。労働生産性賃金関係につきましては、長期的にほぼ並行して上昇いたしております。ただいま藤田さんが、最低賃金制も含めて、賃金政策について政府施策を展開すべしというよう意味においてのお言葉があったのであります。現在政府は、最低賃金制につきましては、普及拡大政策推進中でありますが、この推進過程におきまして、一つには最低賃金制の理解を一そう深めるとともに、他方では、すでに決定されておりまするものの改定問題も含めまして、法施行上の問題を拾い上げて、漸次これを理想的なものに改めていきたい、かように存じている次第でございます。  失業対策事業就労者の賃金は、法律の定めるところの趣旨によりまして定めておりますが、御指摘のごとく十分とは申しがたいのでありまして、逐次改善しているところは御承知のとおりでございます。賃金につきましても、就業日数につきましても、そういう措置をとっているところであります。  ILO労働者住宅に関する勧告につきましては、内容はおおむね妥当なものと考えますが、住宅につきましては各国それぞれの事情を異にいたしておりまするし、わが国といたしましても、直ちに全面的にこのとおりにするのがいいかどうかということにつきましては、いろいろ問題がございます。藤田さんが例をあげられました労務者の社宅等につきましては、にわかにこういうことにすることによって、かえって労働者のためにならぬようなこともあるのであります。こういうような実情をよく検討いたしまして、漸進的に実情に即した方途をとっていくことが適当であろうと、かように存じます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  17. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。  生活保護の問題でございますが、政府といたしましては、経済成長国民所得増大、財政収入の増加と、かような道を通じまして生活保護基準の引き上げを行なって参りたい、という基本的な態度を持っておるわけでございます。本年度の当初予算におきましても一八%の引き上げを行ない、さらにまた、秋の臨時国会において五%の引き上げを行ない、また、この基礎の上に立って明年度は一三%の引き上げを行なおうとするものでございまして、この二カ年を通じまするというと四割以上の引き上げと相なるのでございます。これによりまして消費物価が上がりますことに対しましても耐え得ると思いますし、また、生活内容についても相当の改善が行なわれるものと期待をいたしておる次第でございます。  また、国民年金あるいは厚生年金の年金額の問題でございますが、現在の国民年金につきましては御承知のとおりに、内容の改善に鋭意努めておるわけでございます。この国民年金の年金額並びに厚生年金の年金額につきましては、私どもも決してこれが十分とは考えておりません。この引き上げについて今後努力して参りたいと考えている次第でございまして、支給の要件、保険料額、あるいは年金額等につきまして、関係各方面の意見も聴取し、鋭意検討いたしているところでございます。  次に社会福祉関係職員の待遇改善の問題でございますが、苦労の多いこういう仕事に従事している人々の待遇、必ずしもよくないわけでございまして、これが改善につきましては、政府といたしましても努力をいたしているところであります。本年度におきましても、当初予算並びに補正予算におきまして、二回にわたって待遇改善を行なっているわけであります。明年度はさらにまた七億五千万円を予算案に計上いたしまして、との待遇を改善いたしたいと思います。そのそれぞれの職種の特質に応じまして、給与の引き上げを行なって参りたいと思うのでありまして、相なるべくはすみやかに公務員の程度までは持って参りたいという考え方でもって努力をいたしております。  次に医療保険の問題でございますが、各種の医療保険がございましてその給付がまちまちである。この点につきましては、今後これが総合調整というようなことをやりまして、改善をいたして参りたいと思いまするが、とりあえずは、現在かなり違っております低い方の給付につきまして、これが引き上げを行なっていく、底上げをやっていくという方途で持って参りたいと考えている次第であります。最も現在の医療給付で劣っておりますのが、御指摘の国民健康保険の給付でございます。これにつきましても、われわれといたしましては、今後の問題といたしまして、給付内容改善もはかり、また給付率の引き上げも行なって参りたいと考えておりますが、とりあえずの問題といたしましては、何さま国民健康保険の財政状態が薄弱でございます、この国民健康保険の財政基盤を強化したい、こういう考えのもとに、明年度は療養給付に対する国庫負担率を五分引き上げるというようなことをいたしますと同時に、今日あります療養給付に対する各種制限のごときは、だんだんとこれを撤廃してもらうように進めて参りたいと考えておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣中村梅吉君登壇拍手
  18. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。御指摘のよう住宅不足現状にかんがみまして、政府といたしましては、逐年、住宅の増強の道を講じてきておるのでありますが、まだまだ現在の住宅事情にかんがみまして、十分でないととは承知いたしておりますが、累年、これは予算、財政上の関係等もございまして、一挙に十分の域に達することができないことは遺憾でございますが、われわれ今後も十分努力して参りたいと思います。  公営住宅に関する単価の問題でございますが、これは補助単価と実際の建設単価との間に確かに開きがありますことは、御指摘のとおりでございます。昨年九月、補正予算の際に相当部分の単価是正をいたしまして、今回もいろいろ検討いたしました結果、用地費について約一九%ほどの単価是正をいたしました次第でございますが、これによりまして地方公共団体による公営住宅の建設を、ぜひひとつ推進をして参りたいと思うのであります。  地価高騰の問題でございます。これはいろいろ多くの問題を含んでおりまする次第で、今日まで、われわれといたしましては、住宅金融公庫の融資によって、できるだけ地方公共団体に、利潤を伴わない適正な宅地造成をすることによって、一般地価高騰を牽制をしようという措置をとりまして、今日まで参ったのであります。現在も地方公共団体による宅地造成は非常に効を奏しておりますので、明年度におきましても、住宅金融公庫のこの方面の資金をふやしておるような次第でございます。ただ、この地価高騰そのものは、いろいろ需給の関係もあり、あるいは産業伸展の問題もあり、いろいろ関係するところが複雑でございまするので、今国会に宅地対策に関する審議会を設ける道を講じまして、そうして、学識経験者その他識者の方々の御意向等を十分にくみ取りまして、地価高騰の抑制対策について万全を期する措置をとって参りたいと思うのであります。  それからILO勧告については、ただいま労働大臣からお答えがございましたから、簡単に申し上げておきますが、このILO勧告は、国情に応じてできるだけ実施するようにという御趣旨でございまして、日本現状から見ますると、公営住宅によりまして、政府施策住宅によりまして住宅の充足を期するということと、現状からいえば確かに各企業が産労住宅を持つということの必要性に迫られておりまするので、目下のところは併用主義をとるような形になっておりますが、ILO勧告は、われわれとしては、今後国の実情に応じて尊重して参るようにいたしたいと思います。  なお、公庫住宅の融資についての頭金の問題がございましたが、公庫住宅をみずから融資を受けて建てようという方は、とにかく何がしかの準備のあるということを前提といたしております。したがいまして、災害復興住宅ような場合には、頭金なしで全額融資をいたすわけでございますが、一般の場合におきましては、自己資金を若干持っておられて、そうして住宅を建設いたしたいという人に、住宅金融公庫から融資する制度でございますから、この頭金を全廃するということは、住宅金融公庫の融資の制度の精神から見まして困難であろうかと思います。  農漁村住宅につきましては、厚生省の還元融資の問題と相並行いたしまして、農漁村向けの住宅資金の融通につきましては、逐次増強をはかっておる次第でございます。三十七年度におきましても、四千五百戸ほどの融資の道を講ずるよう用意をいたしておるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  19. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  土地制度につきまして、これを改良し、もしくは耕地を増大して参ることが、農業基盤を拡充する上におきまして最も重要なことであるという見地に立ちまして、明年度の予算におきましても、これまでにない多額の予算をもって、十分にやって参りたいと考えておる次第でございます。  また、農村青年が都会に出ていくこと、このことにつきましては、ひとりわが国だけでなしに、各国におきましても、農業労力が都市の労力に、産業労力との間に交流がありますことは、御承知のとおりでございます。ただ、わが国におきましては、御承知のとおりに、一般農業が今曲がり角に来ておると申しますか、農業経営構造の改善というような際でございますので、将来の目安について多少疑問を持っておりまする青年諸君が、都市に流れ出るというようなこともございますので、遺憾に思いまして、すみやかに全農村に向かって構造の改善を行ない、将来に希望を持って農村にとどまって農業に従事するように、せっかく努力をいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 中小企業についてのお尋ねに対してお答え申し上げます。  中小企業は申すまでもなく、御指摘のとおりわが国産業において重要な地位を占め、かつまた今後、対策と育成強化をいたすために、私どもが手を打たなければならない多くの部面を持っておる産業でございます。したがいまして、先ほど来のお尋ねも、今日当面している困難に対していかに対処するかという、また実際的な問題等から詳細のお尋ねがございました。で、まず第一の金融の問題でございますが、昨年来景気の調整に入りまして以来、金融引き締め中小企業等弱者にしわ寄せされることのないようにという特別な配慮をいたしたつもりであります。御承知のように、昨年は大企業を中心にしての設備投資の抑制をいたしまして、金融もそういう意味では大企業は非常な困難に当面して参りましたが、中小企業には逆に、金額として十分と申すわけではありませんが、八百億の年末融資をいたしたのでございます。これは、ただいま申し上げるように、中小企業に対して特別の配慮をいたしたその考慮でございます。また一−三月につきましても、第四・四半期の金融等について、中小企業が困難な状態に立ち至らないよう、もうすでに大蔵省と話を進めておりまするので、お尋ねになりましたような第二次的な手当をもちろんいたす考えでございます。御指摘のよう自由化を進めて参らなければなりませんし、その意味においての中小企業の設備の近代化、あるいは団体の結成等強化方法、これは今後の問題といたしまして、また予算等におきましても、それらの点を計上したつもりでございます。金額はもちろん十分と申すわけではございません。  また基本法制定の要を問われましたが、私どもも中小企業基本法の必要を痛感いたしております。ただいま調査審議している段階でございます。できればこの国会に提案いたしたいと、かよう考えておりますが、申すまでもなく、中小企業はその業態から申しましてもたいへん複雑でございますし、共通の問題等を抽出すること、また、これに対する対策を立てることも、まことに容易ではないのであります。十分調査を遂げまして、そうして時期を失せないように、できるだけ早目に基本法を制定したい、かように心がけて、ただいま努力しておる最中でございます。社会党のすでに提案されました中小企業基本法案に対してどう考えるかというお尋ねでございまするが、いずれは国会におきまして十分御審議をいただくことだと思います。私ども、一番問題になり、また非常に困難だと思いますのは、中小企業が千差万別の業態をしておりますその立場から、まず中小企業の定義をいたすこと——どういうようにこれを区分けするかという、それ自身が最初から問題の一つでございます。さらにまた、最も先ほどから指摘されました大企業中小企業との分野の調整の問題、これもまた非常に複雑な問題でございますので、これには十分の資料をもってこれと取り組むことが必要だと、かよう考えて、私ども慎重に取り組んでおる次第でございます。  また、税についてのお尋ねがございましたが、減税は、あらゆる機会に中小企業の負担を軽くする、こういう意味で私どもも主張し、今回の減税におきましても、もちろん中小企業もこの減税の恩典に浴するよう措置がとられると思います。徴税の実際の処置につきましては、るるその複雑さなり、あるいは非常なきびしさ等を訴えられましたが、大蔵大臣がこのお尋ねはよく伺っておると思いますので、そのほうに譲らしていただきたいと思います。  また中小企業近代化あるいは機構の整備等について、中小企業センターのお話がございました。私どもは組合の強化なり、あるいは集団化なり、あるいは設備の近代化等、わずかながらも予算に計上して参りましたので、今後はそういう方向でさらに内容を充実するように努めて参りたい、かように思います。  最後に中小企業金融公庫代理貸付についての御意見がございました。もちろん金融は金額並びにその円滑さを確保しなければならないと思います。そういう意味におきまして、今後私どももこの円滑化に一そうの努力をするつもりでおります。(拍手)     —————————————
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 辻武寿君。   〔辻武寿登壇拍手
  22. 辻武寿

    辻武寿君 私は、去る十九日に行なわれました政府施政演説に対して、総理並びに関係各大臣に数点の質問をいたしたいと思います。  最初に施政の大本についてお聞きいたしますが、池田総理は、真の繁栄は、豊かな経済を基礎としつつ、これを貫くに高い精神、美しい感情、すぐれた能力をもってして、初めて実現されるのであると言われておりますが、犯罪白書を見ても明らかなように、年々犯罪が増加しつつある。終戦後十七年を経た今日、日本経済、文化の復興ぶりは、世界の国々の目をみはらせるものがあるにもかかわらず、人心は決して泰平に向かってはいないのであります。総理は、所得倍増政策が着々と進みつつあると確信されておるようでありますが、同時に、犯罪、特に次代を背負って立つべき青少年の犯罪が倍増しつつあることは、ゆゆしき大問題であると思います。しかも、見のがすことのできないことは、これら青少年の犯罪が恵まれた良家の子女も多くなってきたこと、また犯罪が集団化してきたことであります。総理や文相がいかに道徳教育を推進してみても、この傾向は、肺結核にばんそうこうを張ったごとくで、さっぱりきき目がない現状であります。衣食足って礼節を知らず、教養あれどもなおかつ犯罪を犯す。総理は、この実情を何と判断されますか。あなたの主張される高い精神とは、どんな根本理念によるのか。また文相は、それをどのような形で具体化していくつもりであるか。総理並びに文部大臣にお伺いいたします。  次に、文教政策について質問いたします。  初めに、教育制度の問題でありますが、政府は現在、目前の急務として、高等学校の増設に大わらわであります。いわゆる終戦直後のベビー・ブームの波が、三十八年から四十年にかけて高校段階に及ぶのでありますが、もし高校の収容力を現在のままに放置すれば、その間、毎年四十万人づつの生徒が入学不能になってしまうのであります。あわてた文部省は、普通高校三分の一、工業高校二分の一の国庫補助を含む新増設費百二十六億円の予算要求をしたが、大なたをふるわれて、実際に認められた予算は、わずか十五億七千万円にすぎない。それも、大部分は工業高校の分だけである。全高校生の半数を占める普通高校分は、国庫補助は完全にゼロであり、わずか五十億円の地方起債にまかされるようであるが、これでは、新たに増設できるのはせいぜい十万坪、必要坪数の三分の一にも足らないのであります。そのために、どんなにすし詰めをしても、年間二十万人以上の中学浪人を出さなければならないという状態であります。池田内閣の四本の柱とうたわれる文教政策の中でも大事な高校に対する政策がこれでよいのか。青少年こそ祖国の生命力の聖なる源泉であると主張される総理にして、二十万の中学浪人が必然的に生まれようとしている高校問題をいかに考えられようとするのか。具体的な解決の方法を披瀝していただきたいと思います。  一体、高校問題の解決は、学校を急増しなければ解決できないものでありましょうか。普通高校も実業高校もおしなべて、全国の高等学校を二部制ないし三部制にして、半日学校制度を実施して、半日は学問、半日は職場あるいは工場あるいは家庭において、それぞれ農業、工業、商業等の技術を身につける教育制度にするならば、立ちどころに解決がつく問題であると思うのであります。また、高校や大学には、入学試験地獄がつきものであり、本人はもちろんのこと、親たちまでがやせる思いをするのが当然の常識になっているのでありますが、すべての学校を半日学校制度にするならば、無試験で高校も大学も入学することができ、高校並びに大学の試験地獄を解放し、技術を修得せしめ、優秀な青年技術者を各国に派遣し、技術移民につなげるならば、日本の国策にも沿い、一挙三得の効をもたらすことも夢ではないと思うものでありますが、総理並びに文部大臣は、私の主張する半日学校の政策に対してどのようにお考えになるか、御所見をお伺いいたしたいと思います。  次に、教科書の問題でありますが、教科書無償配付の声は今や世論になってきているときに、逆に政府は一四%の値上げをして、国民を悲嘆の底に突き落とした。義務教育の教科書を無償にすることは、教育の機会均等と義務教育費無償を明記する憲法二十六条の精神に沿うことであり、池田内閣唯一の善政かと楽しんでいたのでありますが、わずか三十八年度の一年生だけにちょっぴり実行するというお預けを食って、せっかくの国民の期待も、むなしく派閥政治のかなたに消え去ったのであります。新聞紙上には、文相初め自民党のおえら方が、教科書無償配布を出したり引っ込めたりして、結局は絵にかいたぼたもちのような結末に立ち至ったことに対して、文相はその間の実情を国民に納得のいくように説明していただきたいと思うものであります。  教科書にはもう一つ問題があります。現在、教科書選定は各学校の自主性にまかせてあるが、これは不合理な点があるのであります。転居により隣の町に学校が変わっても、もうすでに教科書が違ってくる。小学校で平均六百八十三円、中学校で平均千百九円、兄弟三人もおれば、教科書代だけで二千円以上も出費する。それも教科書があればよいが、ない場合が往々にしてある。そのために父兄児童の心をどれほど痛めるかわからない現状であります。私は国定教科書を主張するものではない。しかし、教科書は府県単位でもよい、地域的に統一すべきであると思うのでありますが、文部大臣はどう考えられるか、御意見をお伺いいたしたいと思います。  質問の第三点は、政府の海外移住政策であります。日本の国にとって、海外に発展し、海外移住を促進することが重要であることは、歴代の内閣が認めてきたところであります。終戦後、日本は満州を手放し、朝鮮、台湾を返し、樺太をもぎ取られた狭い島国に、一億の国民がひしめいているのであります。しかし、この一億の日本民族は、世界一器用で、技術の面においても頭脳の面においても優秀民族であることは、その戦後の復興ぶりを見ても明々瞭々なのであります。中南米諸国においても、東南アジアの後進国も、日本民族を尊敬し、優秀な技術移民を歓迎する国はたくさんあります。しかるに、政府は年々わずか一万名そこそこの海外移住も満足にでき得ない現状であります。予算面においても、三十六年度十三億七千九百万円、三十七年度が十四億四千万円、渡航費貸付が八千万円、今年度の繰越金を合わせてもわずかに一億二千万円の実質増加にすぎないのであります。そのため、三十六年度は六千人程度の見通しで、減少の傾向が見えてきているのである。これでは政府が海外移住に本腰を入れているとはおせじにも言えないが、本年度の見通しはどうか。施政方針の中にも、海外移住を推進する政府の気魄が少しも感じられないのであるが、総理並びに外相の海外移住に対する根本方針と今後における見通しをお聞かせ願いたいと思います。  また、ドミニカにおける移住の大失敗は、政府の重大責任であります。外相はドミニカに移住した引揚者の切実な叫びをお聞きになりましたか。五年前に当局の公募を信じてドミニカに移住したのに、与えられた土地は石ころだらけの畑であり、換地は与えられず、外人部隊の雇われ兵にされて軍事教練を強制され、結局生活することができず、こじき同様になって帰国せざるを得なかったこれらの引揚者に対して、大使館の役人や海協連がとった態度は、あまりにも無責任ではなかったか。移住者が石ころでは営農できないと訴えたのに対し、外務省の出先のお役人は、石は三年ぐらいたったら砕けて肥料になると、冷然と答えたというではありませんか。しかも、帰国後も、おとな一万円、子供五千円の涙金で泣き寝入りさせている。このような、ふらちな官僚に対して、政府はどんな指導と処置をとったのか。無責任かつ不親切きわまる外務省の長として、今後これらの引揚者にどのような保護の手を差し伸べるつもりか。外務大臣の明快なる答弁を要求するものであります。   〔議長退席、副議長着席〕  ブラジルの移住政策も決してほめられたものではないのであります。移住者が悪戦苦闘している割合には幸福が報われていないのであります。移住者の大部分は、農園の使用人、メイヤーとして、家族ぐるみ雇われ、のち小作人となり、十年、十五年するうちに、こつこつためた資金で新しい土地を買い、初めて自営独立していくのであります。南米の同胞は、五十万円あれば土地を買って独立できるのにと、悲哀をかこっているのであります。  現在の日本の移住政策は船に乗せるまでの移住政策で、あとは各自で責任をとれという態度である。イタリアでもドイツでも、移民後三年間は国家で保障しているのである。日本政府はわずかな渡航貸付金を補助してはいるが、移住してからの先の保護をしないのでは、移民ではなくて棄民だと言われても仕方がないではありませんか。また、海外移住基本法が三十二年以来論じられているのに、いまだ日の目を見ないのでありますが、これはいかなる理由によるのか。これは農林省と外務省の海外移住に対する考え方の違いやなわ張り争いから統一見解がいまだにできないということでありますが、これに対する外務大臣と農林大臣の御所見、どんなところに食い違いがあるのか教えていただきたいと思います。  もう一つ、移住政策のスムーズな進行を妨げているものに、手続の繁雑が問題視されるのであります。現況では、外務省のほか、農林省、労働省、通産省、大蔵省、運輸省等が関係している。そして失敗があればお互いによその省のせいにして責任のなすり合いをする。だからこそ海外移住基本法が四年後になっても実施されないのではありませんか。政府は真に移住政策を重要視するならば、すみやかに移住省を設置して、現在のばらばら行政を統一し、もって日本民族に海外発展の道を大きく開くべきであると思いますが、これに対する総理並びに外務大臣の決意はどうか、明快にお答え願いたいと思います。  次に、私は、池田内閣の財政経済について、総理並びに大蔵大臣質問いたしたいと思います。減税は池田内閣の重点施策であります。しかし、それが国民の期待どおりに実現したことは一度もないのであります。三十七年度も五千億に近い自然増収が見込まれながら、実質は九百八十七億円の減税にすぎないのであります。そのうち直接税の減税額は四百五十九億円で、残りはほとんど間接税であるところが、明年度減税の特徴である。大体税金の取り過ぎが五千億近くもあって、その五分の一しか割り戻ししていないのでありますから、政府は減税々々と恩に着せたがるけれども、真実は巧妙な数字のからくりであって、税金倍増になっているのである。現に税制調査会は、国民の税負担率は二〇%以下が適当であると発表しているのに、来年度の負担率は二二・三%の高率であります。また、間接税の減税もよいが、それよりも、常に重税で泣いている勤労者の所得税をもっと減額すべきではないか。酒代が下がっても家計簿にはそんなに影響しない。また、減税したらバーや料亭の料金が下がるかというと、必ずしもそうではない。だが、勤労者の所得税を軽くすれば直ちに家計に響く、貯金にも影響するのである。池田さんは、外国人の料理や飲食費は非課税にして、勤労者からは重税を取っているが、また、大企業やぜいたく品にも減税をして特別に保護しているけれども、こういうところからはもっと税金を取ってもよいのである。そのかわり思い切って勤労所得税を全廃すべきであると思いますが、総理並びに大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  最後に、池田総理にお伺いいたしますが、あなたは口を開けば政治の姿勢を正すと言いますが、それはどういうことなのですか。池田さんは一昨年の十一月、社会党の江田書記長、民社党の西尾委員長とともに、テレビ会談を通じて国会正常化を公約しました。だが、不幸にして政防法が登場するや、半年ももたずして不正常になってしまった。これは池田さんばかりの罪ではないが、国民は三党首とも大うそつきだと悲しんでおります。また、所得倍増をうたい文句にしておりますが、所得がふえても、物価が二倍になったのでは何にもならない。池田さんは、物価が上がっても所得がそれ以上になればかまわないとおっしゃるが、所得はすべての階層の人々に一律に上がるものではないのですから、必ず格差が出てきます。それを国民が心配しているのです。あなたは、大根一本が去年からどれだけ値上がりしたか奥さんに聞いたことがありますか。「こんにゃく」や「とうふ」が幾ら値上がりしたか御存じですか。こういう台所に直結する生活必需品は二倍にも三倍にもなっているものがたくさんあるのです。大体、所得倍増は十年先のことなのに、あなたはわざわざ所得倍増ムードを作り、国民をしてすぐにも月給が倍になるような錯覚を起こさせた。もし池田内閣経済政策がほんとうに正しければ、土地が急に高くなったり、木材が急騰したり、交通麻痺も起こらないで済んだはずであります。何よりもまず国際収支の危機にもっと早目に手が打たれ、現在のような醜い引き締め政策はとらなくて済んだでありましょう。そして、金詰まりに四苦八苦する業者ももっと少なくて済んだはずであります。池田さんの政治の姿勢を正すということは、こうした不合理、矛盾を正すことではないのですか。総理大臣の政治の姿勢を正すという意味を、国民の納得のいくように説明を要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  わが国経済発展に伴いまして、精神方面、道徳方面がこれに非常におくれている、お話のとおりでございます。したがいまして、私は、先般の施政演説におきましても、人間形成の問題を強く国民に訴え、国民とともにこの足らざるところを補っていこうとしておるのであります。  次に、高等学校の急増の問題でございます。昭和三十七年度から相当ふえて参りますが、三十八年、三十九年がピークと相なるのであります。したがいまして、これが対策といたしまして、予算上、また政府の起債に対する認許可につきまして、相当の拡充をいたしております。私は、三十七年度中に相当の準備をすると同時に、その経過を見ながら、三十八年、三十九年に対しましての対策考えたいと思います。  半日学校の問題につきましては、専門的でございますので、文部大臣からお答えすることにいたしまするが、教科書問題につきましては、無償交付と値上げの問題を混同されておるようでございますが、教科書の値上げの問題は、無償交付と全然別個の問題であります。そして、無償交付の問題につきましては、教科書配付その他いろんな点を、委員会を設けまして検討の上に、徐々にこれを拡充していこうというのが、われわれの政策でございます。  なお、移民問題につきましていろいろお話がございました。われわれは、国策の一つといたしまして、この移民問題について十分各国と話をいたしておるのであります。ことに、お話のように、南米方面におきましては、アルゼンチンを初め、画期的な移民政策ができるような協定もできました。今後十分移民の増加と発展をはかっていきたいと考えます。  また、勤労所得税を全免したらどうかというお話でございます。税金は軽いにこしたことはございませんが、勤労所得税を全免して農民や中小企業等からだけとるという税制は、世界のどこにもないと考えております。  なお、政治の姿を正すということは、心がまえの問題です。私はたびたび申し上げておりますように、単に闘争を事とするという態勢はよくない。民主主義、議会制度を発達さして、お互いに手をつないで建設的な議論をして、多数決の原則によってきめていこうというのが、私の政治に対する姿でございます。  物価の問題につきましていろいろお話がございましたが、長い目で全体を見てお考え願いたいと思います。ことに、個々の物価につきまして、それが倍になるとか何とかということを頭に入れるよりも、日本経済がどういう動き方をしておるか、日本経済がどういうふうに行っているかということを、実態と、内容と、過去と、将来を見て、御議論願いたいと思います。私は、こういう意味におきまして、経済成長をしながら、われわれの生活向上していくように、広い、長い目で経済施策をやっているのであります。(拍手)   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍   手〕
  24. 荒木萬壽夫

    国務大臣(荒木萬壽夫君) 私に対する御質問の第一点は、近来青少年の犯罪が非常に増加しておるのが心配だ、教育を頂かる立場においてどう考えるかという御趣旨であったと拝聴いたします。昨日もお答え申し上げたとおり、まさしく御指摘のとおりの状況でございまして、私どもも非常に心配でございます。その原因はいろいろございましょう。現にあるところの青少年の犯罪に対しましては、単に教育の面のみならず、警察の補導の面もございましょうし、司法的な立場からの援護の手を差し伸べる課題もございましょうし、いろいろございましょうが、それはそれといたしまして、将来にわたって青少年犯罪をなくしようという意味においては、教育の持つ責任は重大であろうと思います。それは結局、教育の場における青少年に対する道徳理念の涵養、道義頽廃しないような教育を授けるということにあろうかと思うのであります。そういう意味では、小中学校から大学に至るまで、先生方が良識を持って、情熱を持って誘導してもらっておるとはむろん思いますけれども、しかし、昨日も申し上げたとおり、残念ながら終戦に基づくところの教育制度そのものの欠陥のゆえに、青少年に対する是非善悪の弁別力なしに社会に送り出したという欠陥は、おおうべくもございません。それに対しましては、新教育課程をもって誠実に今後実施する限りにおいては、相当防ぎ得るものと考えております。   〔副議長退席、議長着席〕 要は、教職員の青少年に対する人間形成の情熱と使命感に私は期待するものでございます。さらに社会教育の面でも、学校教育にあらざる意味において、学校を出まして働く青少年に対しましては、たとえば定時制ないしは青年学級、あるいは通信教育、公民館活動、青少年団体の活動等を通じて、協力して参るべき面があろうかと思います。のみならず、私は昨日も申し上げましたが、家庭におきましても、子供の親御さん方が十分に自分の子供に対する情熱を傾けて、愛の手を差し伸べていただきたい。さらには宗教家も、もっと現実に即した御協力をいただけないものか。あるいはマス・コミないしはラジオ、テレビのスポンサーも十分に御協力いただく面がありはしないだろうか。あるいは職場において、職業訓練所におきましても、青少年の犯罪防遏の角度から御協力いただく意味がありはしないかと思います。国民的な協力によって十分御質問の御趣旨にこたえたいと思う次第でございます。  第二点は、高校急増対策でございますが、御指摘のとおり、文部省としては、できることならば、いわば終戦処理の問題でもございますから、地方公共団体、都道府県に高校の責任があるからといって、まかせっぱなしはできまい。(発言する者多し)何らかの国家的な協力の手を差し伸べるべきであるという角度からも三分の一ぐらいの一般高校に対しまする国庫補助考え方で臨んで参りました。ところが、大蔵省との折衝におきまして、その本来の建前にいわばたてつく角度からの補助政策でございますので撃退されまして、負けました。このことは遺憾であると思いますが、問題は、子供の親の側に立って、国民の側に立って御心配になるのは、生徒が急増するのにこれを収容する施設、設備が十分でないから、高校浪人がふえてたいへんだという御心配が焦点だったと思います。ですから、それに応じまする方法としては、従来の起債ないしは交付税の一般的な措置では、はっきりとした、いわば、ひもがつかないから不安だという点が関心の焦点だったと思います。そこで、それに応じまするところの補助金を出すことによって、いわば、ひもつきにする、そうすれば生徒の急増に対する具体的な施策が行なわれるであろうということを期待した点が、従来の要求の態度であったのであります。不幸にして、その主張はいれられませんでしたが、これを機会に、いわば補助金によらざるひもをつけて、着実に生徒急増に応ずる施設、設備ができるならば、それでいいではなかろうかという線に話が到達いたしまして、具体的に話をつめました結果は、進学率は従来の率を保持していく、三十八年度六〇%、百五十万人の生徒現在数と押えまして、四十年度のピークの現在の増員は、公立で八十万人を収容する、私立で四十三万人を収容するということを見通しを立てまして、地方財政計画の中にきちっと盛り込む。そして、当面これが収容計画としましては、公立八十万人分については、毎年二十万五千人分に相当するものを新設する。さらに現在の施設に、すでに過ぐる国会で御審議をいただきました法律によって、一割ぐらいのすし詰めは、この際がまんしていただくという制度が立てられましたから、そのがまんしていただくことでもって約二十万二千人を収容し、増設分として、既存の学校に学級数を増設するやり方で三十九万六千人を収容する。私立の学校におきまして四十三万人を協力してもらう。そのうち新設十万人、増設二十五万二千人、現有施設のすし詰めも私立の学校も同じく忍んでいただきまして八万三千人、そういうことで、このピーク時を切り抜けることによって子供の親御さん方の御心配のないようにいたしたい。そのために必要なる起債及び交付税の措置を具体的に講ずることによりまして、この実現をはかりたいということに意見の一致を見ておるような次第でございますので、御了承をいただきたいと思います。  なお、私に対しまする御質問の第三点は、高校、大学を通じて、半日は学校教育、あとは職場におるというやり方はどうだというお尋ねであったかと思います。一応のお説だとは思いますが、大学、高校、それぞれ現在の制度のもとに教育内容を計画的に教授することになっておりまするので、実験、実習を行ない、その他の教育を受けるという建前上、御質問ようなことは、当面直ちには実際問題として困難かと思います。ただ、定時制の教育や通信による教育によって、勤労青少年の教育の普及に努めるほか、科学技術教育の振興をはかる意味において、いわゆる産学協同の課題として、お説のよう意味合いのことを考慮する余地はあろうかと思います。検討さしていただきたいと思います。  第四番目の御質問は、教科書無償の問題でございます。ずいぶん世間で喧伝されたけれども、結果は大したことないじゃないか、経過を話せというお話でございます。教科書無償は、御指摘のとおり、憲法にいうところの義務教育を無償とする線につながる一つ政治課題だと存じます。本来、義務教育無償は、授業料は取らないということでもって、一応今日まで処理されて参りましたが、その次に位する第二の問題として、教育上必然的に必要なるところの教科書を無償とする課題に取りかかろうということとして、政府与党において考えられたのであります。特に、与党自由民主党の情熱と総理大臣の見識が一致いたしまして、ともかく三十八年度から、まず小学校の一年生を無償として出発するという建前が確立されましたことは、日本の義務教育の歴史上、私は一つの時期を画するところの重要な政治課題がスタートを切った意味において、御同慶に存ずるところであります。(拍手)そのやり方につきましては、たとえば教科書会社のあり方あるいは配給の方法等、もっと具体的に効率的に考うべき課題もあろうかと思われますので、それらのことは調査会を通じて検討を待って実施よう、こういうことでスタートをすることに相なりました次第であります。御了承をいただきたいと思います。  さらに、これに関連しまして、教科書の採択の問題、もっと地域的に広く採択したらどうかという御趣旨の御質問でございますが、この問題も、なかなか本質的には重大な問題と関連を持つことでございますから、調査会での検討に譲らしていただきたいと思いますけれども、御指摘の各学校ごとに採択というお話でございましたが、制度としましては、市町村の教育委員会が採択するという建前に相なっております。また、現実は郡なり市なりを中心にかなり広い範囲で採択するということが実行上行なわれております。でございますから、御指摘のとおり、もっと広い範囲の採択方法ありやなしやは、現実に即して考慮すべき価値のある課題かと心得ます。いずれにいたしましても、今後の検討に譲らしていただきたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  25. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 移民の問題移住政策に関する問題につきまして、外務省と農林省との間にいざこざがあるがどうだということでございましたが、私は、最近の国際情勢下におきましては、あくまでも、移民、移住の問題は、受け入れ態勢が優先すべきものでございまして、移住政策がまず優先いたしまして、それに、われわれ国内の移住の問題を扱いまする農林省といたしましては、あとからこれを裏づけをして参るという立場でやることが、一番適切であるという考えのもとに、現に政府におきましては、外務省をこの移住の問題における主たる官庁といたしまして、われわれはこの外務省の行ないまする移住政策に補強すると申しますか、応援すると申しますか、協力するという立場をとってやって参ることにいたしますから、少しもその間におきまして対立とか混淆とかいうととがないということで、御了承いただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍   手〕
  26. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 海外移住の方針につきましては、移住者自身の福祉のみならず、受け入れ国の経済発展に貢献する、こういう方針で臨んで参る所存でございます。したがいまして、移住者の数もさることながら、その質を重視して参りたい、かよう方針でおるわけでございます。従来この雇用移住のみお話のごとく行なわれておりましたのでありますが、今後は自営開拓移住並びに技術者移住ということもあわせ行ない、後者に重点を置いて参りたい、かようなことで考えております。現在、御承知のように、計画数は一万一千人でございまするが、お話のように、国内が非常に好況でございまするので、そういう関係からもこの移住者数の伸び悩みは若干あるわけでございます。しかし、御協力をいただきましてこの数を全うして参りたいというふうに考えておるわけでございます。なお、総理からお話がございましたように、アルゼンチンその他とも非常にいい移住協定が結ばれまして、移住の面につきまして明るい面があるわけでございます。  そこで、お話のドミニカの問題でございまするが、これは御承知のように、昭和二十九年に話を始めて、当時の状況として、参りました者が先方に三百家族あるわけでございます。そのうちの百五十家族がこちらへ帰り、あるいは南米へ転住をする、かようなことになっております。どうしてこうなったかということでございますが、この一番大きな原因は、何と申しましても一昨年の八月以降、カリブ海をめぐりましての国際情勢の変化、並びにドミ二カ国内自身の政治経済、財政上の変化ということが一番大きいと思われます。しかし、せっかく志を立てて移住された方々が、志半ばにして内地へ帰らなきゃならぬということについては、十分その心情をお察し申し上げまして、あたたかくこれを迎えるという方針のもとに、国援法を適用し、また出身の県においては、あるいは住宅を、あるいは職業をいろいろごあっせん申し上げるというようなことで、いろいろ骨を折っておる次第でございます。また、農林大臣からもお話がございましたように、各省間の意見がいろいろまちまちではないかということにつきましては、現内閣に関する限り、さようなことはございませんので、非常に円滑にこの問題がいっておるわけでございます。今後もこの方針を進めまして、移住行政ということを成果あしらめたい、かよう考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  27. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。勤労所得につきましては、特に勤労所得控除制度を作っておりまして、他の種類の所得との負担の均衡考えるという制度になっております。したがって、もし勤労所得の負担を軽減しようとするなら、将来、控除額を引き上げるとか、税率を下げるという考慮はしたい。毎年、税制の改革のときに行なって来ましたが、今後も引き続いてそういう方向に努力したいとは思いますが、現行所得税法の建前から、特定の所得者の非課税措置ということは、私ども現在とり得ないものであると考えております。(拍手)  〔「議長、さっきの答弁を直せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者あり〕
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 静粛に。     —————————————
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 大竹平八郎君。(「待て待て、その前に文部大臣の言葉を直さなければならない、終戦処理とは何事か」と呼ぶ者あり)大竹平八郎君。   〔大竹平八郎登壇拍手
  30. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、参議院同志会を代表いたしまして、池田総理を初め関係各大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一は外交の問題でございますが、先般の総理並びに外相の演説を拝聴いたしておりますと、世界情勢に対する政府の大局的展望について触れるところまことに貧弱であることでございます。両大臣の演説は、それぞれ、自由陣営、AA諸国並びに中ソ両共産主義国について言及されておられますが、自由、共産両陣営に対する大所高所に立っての見通しについては、何ら触れるところはないのであります。自由主義諸国の動向は比較的知り得る機会が多いのでございますが、いわゆる鉄のカーテンの向かい側、すなわち中ソ両国並びに東欧衛星諸国の動静に関しましては、われわれの把握し得る知識はまことに微々たるものがございます。私、もとより寡聞にして、おこがましく申し述べるほどの知識はございませんが、伝えられるところによりますれば、今や共産陣営は、かつての強固を誇った一枚岩の団結ではなくなっておるのであります。かつては、モスクワの命令一下、手足のごとく動いた共産諸国も、今や二分されようとしております。トリアッチ・イタリア共産党書記長の指摘のごとく、東側はまさに複数指導制に変貌しりつあります。すなわち、一方はモスクワであり、他は北京であることは、言うをまちません。こうした共産陣営の複雑さの中に、旧臘十三日、日本社会党の第三次訪中使節団の鈴木団長が、中共外交学会会長張奚若氏と共同声明を発表されましたことは、すでに御承知のとおりであります。そこで、われわれの疑問とするところは、日本憲法第七十三条二号に規定する外交権と、いわゆる国民外交との関連でございます。七十三条二号の「外交関係を処理する」とは、おそらく外交関係の事務をつかさどることが行政権の一部であるという意味でありましょう。内閣が外交方針を強力に推進するには、国論が大体一致しておることが不可欠の要件であります。しかるに、わが国における最も有力なる野党の日本社会党が、国民外交の名において、いまだ国交が回復されていない国と、政府の外交方針に全く背馳する共同声明を発表せられたる事実にかんがみまして、池田首相より、憲法第七十三条二号といわゆる国民外交の限界について、明快なる御答弁を願いたいと思います。また、小坂外相よりは、共産陣営の近状につきまして、そのごく概要を御説明を得たいと思います。  次に、日韓会談につきまして、私はきわめて率直にお尋ねいたします。聞くところによりますと、総理は、最近早急に本問題を片づけるべく焦慮しておるとのことでございますが、問題の請求権は、ただいま大蔵、外務両当局の間ですら、数字に相当の懸隔があって、まとまっておりません。いわんや韓国側の数字とは、およそ、けたはずれの状況にあるとき、かようなうわさが飛ぶことは、先般、総理の東南アジア歴訪の際、タイ国の特別円処理にとられた電撃的な措置を危惧をしてのことと思うのでありますが、予備会談開設以来、まさに本年で十一年であります本会談は、きわめて複雑にして、一方、わがほうの請求権放棄による国民感情の微妙なものがありますときに、総理政治的感覚だけによる解決は、影響するところがまこととに多いのでございます。この際、本問題について率直なる御所信を承わっておきたいと思います。  続いて、予算案並びに金融等の問題につきましてお尋ねいたします。  昭和三十七年度予算は、経済成長率を五・四%と見込み、明年度下期中に国際収支均衡を達成することを第一義的目標といたし、その線に沿い、財政金融政策も、内需の抑制と輸入の鎮静をはかり、引き締め基調を堅持することを主眼として編成されております。しかしながら、所得倍増計画の二年目を迎えるにあたりまして、六千億円に近い自然増収をささえに、予算規模や財政投融資計画は著しく大型化しております。また、その内容は、既定経費の当然増に財源の大半を費消されてしまい、新規政策は極力圧縮され、新鮮味に乏しいものになっております。私は、予算内容の個々の施策に触れることはしばらくおきまして、まず、予算編成の基本的な考え方という点から、総理並びに関係大臣にお伺いいたしたいと思います。明年度一般会計予算規模の国民生産に占めるウエートは一三・七%となっており、三十六年度の一二・六%をも上回り、財政が民間経済に与える影響はますます顕著となることが予想されます。明年度予算編成に際しては、当初特に景気調整との関連が重視されまして、いわゆる繰り延べ予約という構想を織り込んだ緊縮予算とすることが真剣に取り上げられ、財界等からもそれを要請されていたのでございますが、この構想は姿を没しております。閣議決定された経済運営の基本的態度では、引き締め基調を堅指する精神綱領がうたわれておりますが、その具体的な手がかりは、緊縮政策を集中的に表現する努力目標として、経済成長率を低めに五・四%とした意図と、健全財政主義を貫き、予算運用を弾力的に実施ようとする心がまえ以外に見当たらないのでございます。景気調整のためには積極的な手段を講ずるということは、経済の過熱やアンバランスの是正のためのみでなく、国際収支改善を早め、さらにIMF借款を期待しようとする対外的効果からも必要であることは、申すまでもないところであります。三十七年度予算は、このよう基本的な配慮をいかに織り込んだものであるか、その所信をお伺いいたしたいのであります。  次にこの際、財政制度の問題について所見をただしておきたいと思います。現在の財政制度は、戦後二十二年に確立されたものでありまして、経済背景が全く異なる現状では、その不合理がしばしば指摘されております。今国会でも、財政法の若干の改正が予定されておるようでありますが、経済成長し、財政規模が拡大されるに従い、財政機能の変化が要請されることは当然のことであります。したがってこの際、財政制度の合理化と近代化をはかり、その弾力的な運用ができるよう改正する意思があるかどうか伺いたいのであります。  次に、減税問題についてお尋ねいたします。三十七年度の国税、地方税の減税規模が、わずかに一千二百五十九億円にすぎない結果、国民所得に対する租税負担率は、今年度当初予算では二〇・七%のものが、三十七年度二二・二%と、一・五%重くなったことになります。昨秋、水田大蔵大臣は、本院大蔵委員会において、国民所得に対する税負担率は、必ずしも税制調査会の答申どおり二〇%程度に押えることに拘泥しないと発言をされましたことは、二二%台に突入することを察知して、あらかじめ予防線を張られたものと思われますが、施政者の態度といたしましてまことに遺憾にたえないのであります。政府は、今後現状の二二%を堅持される意思があるかどうか、言いかえれば、経済成長のテンポに見合う減税を毎年実施される決意を持っておられるかどうか、また今後減税が予算の奪い合いの犠牲にならないよう、減税資金の設置など減税計画を制度化する構想を検討される用意があるかどうか、御所見を伺いたいのであります。  さらにまた、明年度税制改正の中心である間接税の減税に際しては、減税分がはたして確実に価格引き下げに結びつくかどうかの問題は、国民の最も関心の深いところでありまして、このためには政府の強力かつ円滑な行政指導が望まれているのでありまするが、昨日、藤山企画庁長官がこの点に触れておられるのでございますけれども、この際、明らかにしていただきたいと思います。  次に、通貨、金融政策基本問題について、政府所信を御披瀝願いたいと思います。安定した経済成長をはかるためには、貯蓄の増強が最も重要であり、そのためには通貨価値の安定維持が前提であることは、申すまでもありません。しかるに、現実には通貨価値の低下すなわち物価騰貴という、思わしくない方途をたどっているのでありまして、勢い貯蓄性向が阻害されております。政府物価の安定維持についてどのような配慮をなされているか、まずお伺いいたしたい。  わが国金融構造は、資本蓄積が乏しいため、これまで経済成長をまかなう資金は日銀の貸し出しに依存してきたことは御承知のとおりであります。銀行は旺盛な資金需要をまかなうために、流通通貨量以上のオーバー・ローンを現出するというような、異常な金融状況を示しているのであります。この金融現象は、現在の通貨供給方式が日銀の信用創造という安易な供給方式に基因しているのでありまして、通貨金融政策の欠陥を暴露しているものでございます。このような通貨供給方式に対して、根本的な改善措置をどのよう考えているか、この際、明らかにしていただきたい。  また、財政と金融との調整についてでありますが、わが国の財政資金民間収支は、その振幅が大きく、経済の変動と密接な関連を持つものでありまして、特に金融梗塞の段階において、財政と金融の調整が問題となるのであります。そこで、その調整の一方法として、政府余裕金の民間還元すなわち国庫金の預託制度について、政府はいかなる所見をお持ちでございまするか、お伺いいたしたいのでございます。  次に、証券問題についてお尋ねいたします。証券業界では、当面の緊急対策として、手持ち公社債の買オペレーションを強く要望をしておりますが、問題は、現在なお債券の流通市場が確立されていないことに端を発しているのでありまして、この点、政府の証券行政についての努力に欠けるところがあったと思うのであります。池田総理も昨年末、当局にその促進方を指令したと伝えられておりまするが、今後の見通しについての御見解を承りたいのであります。  最後に、貿易政策についてお伺いいたします。わが国経済の最も大きな課題は、輸出振興によって国際収支均衡回復をはかることであり、これが今後における景気調整のキー・ポイントであります。国際収支の早期回復を期待しているようでありますが、高度成長政策貿易自由化率九〇%達成を目標とする現状からして、輸入を目標額に押さえることはきわめて困難と思われます。また輸出におきましては、対米輸出の伸び悩み、国内需要の好調に伴う輸出意欲の減退等により、その拡大伸張をはかることは容易なものではないと思うのであります。加うるに、EECブロックの強化、米国の貿易政策の修正等、世界貿易の趨勢は、三十七年度予算策定当時には想像もしなかった変貌を来たしておるのであります。こういう意味におきまして、私は貿易政策の積極的展開を政府に強く要望いたすとともに、新情勢に対処するところの基本方針をお伺いいたしまして、私の質問を終了いたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の、憲法第七十三条と今回の社会党の中国視察団の声明との関係につきまして、まずお答え申し上げます。  お話のとおり、国の外交は、われわれ政府がその責任を持って行なうことは当然でございます。しこうして、われわれの政策に対しましていろいろの批判もございましょう。これは私は甘んじて受けて、そうして意見のとるべきものは十分とります。ただ、今回のごとく、わが国の外交の基本方針につきまして、それと異なる意見を外国政府と共同声明なさることは、わが国の外交政策上、また、わが国の利益のために、まことに遺憾とするところでございます。(拍手)今後はこういうことのないようにしてもらうことが、わが国を愛することなのであると考えます。  次に、日韓会談におきましては、私は従来第六次会談まで続けて参りました。向こうの政変がございまして、韓国側におきましても早く日本と外交の正常化をしたい、こういう話でございますので、平和条約第四条の規定によりまして、今、交渉を重ねておるのであります。私は、慎重な、しかも十分検討の上に、すみやかな正常化の関係を打ち立てたいと努力いたしておるのであります。  今、タイの特別円の問題も言われておりましたが、これは何も政府が早急にやったことではございません。昭和三十年にきめました協定が五、六年たっても一つも動かない。今までたびたび交渉を重ねておったのを今回結末をつけたのでございます。  財政問題、あるいは金融問題につきましては、所管の大臣よりお答えさせることにいたします。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍   手〕
  32. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 東側陣営の内側においては何が行なわれているであろうかということでございますが、これはなかなか十分に外部に発表されないことが多いのでございまして、あるいは十分でないかもしれませんが、一応私どもの考え方を申し上げたいと思います。  お言葉にもありましたように、マルクス・レーニン主義というものを強いきずなにいたしまして、一枚岩の団結を誇っておった共産陣営側におきまして、昨年の共産党大会において、フルシチョフ・ソ連首相が公然とアルバニアを非難した、そして外交断絶の挙に出たということは、御承知のとおりでありますし、また一方、中共においても公然とアルバニアを支持してこれに対立したということも、これは新しい共産陣営側の動きとして知られておるところであります。また、イタリアの共産党において、御承知のトリアッチが、構造改革論をもって自分ら自身の共産党のあり方というものを打ち出しておる。そしてユーゴ等とも連絡をとっておるということもいわれておりまするが、過般の昨年十二月のストックホルムにおいて行なわれました平和評議会でも、中共の代表が、全面軍縮と民族解放というものは同次元の問題であるということを主張したといわれております。すなわち、民族を解放するという建前からすると、どうしても武力を使わなければならないのだ、したがってソ連の言う全面軍縮というものには同調しがたいという意見を述べたともいわれておるのでございまして、こういう意味から、いろいろな考え方が共産陣営の中に起こってきた。そうしてトリアッチなどは、いわゆるポリセントラリズム、多元的ないろいろな指導方針が東側陣営の中にあってもいいのじゃないかというようなことを言い出したとも伝えられているのであります。しかし、経済的には御承知のように、一九四九年、マーシャルプランに対抗してできましたいわゆるコメコン、東欧八カ国と、それに中共、北越、北鮮、外蒙というふうなものがオブザーバーになってできておりますが、このコメコンを中心にいたしまして、経済的な靱帯を強めるという努力をしておると思われております。また、ソ連自身の予算について見ましても、過般の予算では、消費財の生産を押えて、軍事予算の大幅な増額を行なっておるということも事実でございますから、こうしたソ連中心に経済的にも固まり、力を強めていこうという動きは、これは一つの今までの動きとして、その動きを増大していくということになろうかと考えております。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男登壇、拍   手〕
  33. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 予算編成に関して、景気調整ということを考慮したかという御質問でございましたが、私どもは十分考慮いたしました。まず、三十六年度の相当大きいと見込まれている自然増収をできるだけ使わないで後年度に持ち越す、実質的にたな上げをするということをいたすわけでございますが、これは相当大きい景気調整策であると考えております。三十七年度予算におきましても、昨日お話ししましたような考慮をいたしたほかに、また三十七年度の予算の内容を見ますと、すぐにこれは消費にならない基金的な経費も一千億円以上含ませてございます。そういう点を考え、ことしから来年にかけた二カ年度の合わせた財政政策というふうに考えてごらんになれば、非常に大きい景気調整の諸施策が、考え方が考慮されていると言えると思います。  それから財政制度の問題についてのお尋ねでございましたが、ただいまの財政法はもう制定してから十数年になります。またその内容も、大正十年の旧会計法、そのときの規定を継承している部分が非常に多いということでございますので、合理的に運営をするためには、この会計法については相当改正を加えたいという意思を持って、ただいまいろいろ検討しているところでございます。この国会には間に合わないかもしれませんが、さしあたりは、この参議院でも問題になりました二十九条の問題、これは疑義をなくするような改正措置だけは今国会で御審議を願いたいと考えております。  それから日銀の通貨供給方式の問題についてのお尋ねでございますが、これは御指摘のように、従来日銀貸出という形で通貨の供給を行なってきましたが、今後は資本市場を育成し、この育成と相待って通貨供給についても各般の方式をとって、合理的な運営をしたいと考えております。  財政と金融との調整問題でございますが、ことしの財政資金民間収支は非常に大きい揚超基調でございまして、第四・四半期には四千五六百億円程度の揚超が見込まれております。しかし、この揚超、散超の中には、単なる季節的な波動だけでなくて、最近見られるような外為収支に基づくもの、租税の自然増収に基づくもの等、景気の動向に対して自然調節機能を営む部分も多くございますので、揚超部分が必ずしも市中に還元さるべきものであるということはできないと思います。ただ財政収支の時期的季節的な波動が過度にわたって市中金融に無用の混乱を与えるというような場合には、当然調整をはかる必要があると考えられますので、日本銀行が市中金融機関から買い入れる政府保証債を揚超資金をもって国が買い上げるという、いわゆる日銀を通ずる買いオペの方法によって、第四・四半期中は相当額の買いオペを行なう。また中小向け貸出のためにこの十二月まで行ないました預金部資金による買いオペというようなものもあわせて行なって、この調整をはかっていくつもりでございます。  それから公社債の流通問題について御質問がございましたが、長期の安定した産業資金調達の場として公社債の発行市場を発展させることは、日本経済にとってきわめて肝要でありますので、そのためには公社債の流通市場を育成することが必要であるということは、過日の財政演説で申し述べたところでございますが、三十四年に政府はこの問題について証券取引審議会に諮問をいたしました。「社債市場育成のための当面の問題について」という諮問をいたしましたところが、この答申が出て参りまして、一つは、社債の個人または金融機関以外のものへの消化を促進するための措置一つは、社債の流通を容易にするための措置、それから社債の発行に対してとるべき措置という、大きく三つに分けた措置についての答申が出てきましたので、その答申に基づいて社債発行市場の育成ということを中心にする措置は順次とって参りましたが、この流通市場育成の問題についてはまだ十分な措置をわれわれはとっておりませんので、今年度の問題はこの流通市場育成の問題を解決することが一つの課題であると思っておりますので、この点について十分私どもは工夫考慮をしたいと考えております。  税の負担率の問題でございますが、これは負担率が何%でなければならぬということはどこにもございません。先進国ほど税の負担率は多いということになっております。(「税制調査会の答申はどうした」と呼ぶ者あり)税制調査会は去年この程度のものが妥当であると答申しましたが、これは去年の現状にかんがみてそうだと答申を出しただけであって、何%でなければならぬということを言っておるのではないと、また、あとからそういう解釈を申し述べたくらいでございまして、この率をどこに押えなければならぬという基準はございません。国民生活が高度化してくればくるほど、この社会保障費その他の経費が多く要るために、各国とも先進国ほど税の負担率はだんだんに上がっております。しかし、それは国民所得が多いから、税率が多くなっても、納税者にはこのつらさが割合に少ないということになりますが、まだ日本現状から見ましたら、国民所得それ自身がそう多くございません。所得が多くなければ、税率は同じであっても、これは生活のつらさは多いのでございますから、そういう点を勘案しまして、私どもは、日本所得現状程度であったら、まだ税の負担率はそうすぐに上げてはいかぬというふうに考えて、この三年間にわたって、税制調査会の答申を待って減税を逐次やってきたという次第でございまして、今後もまだまだ減税ということは十分にやっていかなければならぬ施策だとは考えますが、何%でなければいかぬというこの率には一切こだわらないということは、前回申したとおりでございます。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  34. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  国際収支改善、これは私どもにとりまして重大なる本年の課題でもございます。また、その立場から、貿易拡大し、国際収支改善をはかっていく、これはぜひとも真剣に積極的に取り組まなければならない問題でございます。申すまでもないことでございますが、ただいまの当面する国際収支改善をはかりました後に、さらにわが国経済が高度に成長発展していく、そういう基盤、これはもちろん国際収支改善をしながらも、つちかっていかなければならないのであります。先ほど来、EECの強化なり、あるいはアメリカのバイ・アメリカン政策等が出てくるので、日本貿易拡大する、ことに輸出を伸ばすことは、非常に困難である、そういう意味で真剣に積極的に取り組め、こういう御注意があったように思います。確かにそういう面もございますが、EECにいたしましても、アメリカにいたしましても、当然自国の産業発展並びに貿易拡大をはからなければならない立場にあるのであります。そういうことを考えますると、私どもの貿易拡大する、輸出を進めていく、そういう余地は多分にあることだと思います。そういう意味において、私どもは積極的に経済外交も展開して参りまするし、また、国際貿易環境の推移等にも十分注意をいたしまして、そうしてそれぞれの市場の特殊性に対しての特殊的な対策を講じて参りたい。たとえば、アメリカに対して、ただいまいろいろ綿製品の賦課金の問題があるとか、あるいはバイ・アメリカンという考え方で、AIDから日本商品の締め出しを食うとか、こういうものに対しての外交的な展開、交渉を続けるとか、あるいはEEC等につきましては、すでに昨年来外交交渉によりまして、わがほうにとりましても貿易拡大の素地ができたように思いまするが、これは、さらにその素地を続けていきたいとか、あるいはまた、低開発国の地域に対しましては、この経済開発に積極的に技術あるいは資本的に協力することによって市場を開拓してゆくというよう措置をとりたいと思っております。もちろん、これらの対外的な諸施策も、国内におきましての必要なる資金の確保が第一の問題になるのでございますので、今回は、輸出入銀行の資金をふやすとか、あるいは協力基金を増額するとか、あるいはまた、輸出金融についての特別な考慮を金融機関考えていただくとか、あるいはまた、輸出保険等の強化拡充等、それぞれの必要なる具体的措置を講じて参る考えでございます。問題は、政府のこれらの施策と業界の積極的な立ち上がり、協力、これが最も望ましいことであると思いますので、この点も付け加えさしていただきまして答弁といたします。(拍手)     —————————————
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 中村順造君。   〔中村順造君登壇拍手
  36. 中村順造

    ○中村順造君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る十九日に行なわれました池田総理大臣の施政方針演説を中心にいたしまして、総理大臣並びに関係各大臣に対し質問いたすものであります。  本論に入ります前に、先ほどの高校急増対策に対する文部大臣の答弁の中で、「いわば終戦処理」という言葉が使われておりますが、これは、私は非常に穏当を欠いた発言だと考えます。いずれ私の質問の中で高校急増対策質問もございますから、私としては、この不穏当な字句を、言葉を取り消してもらいたい、こういう考え方に立っておりますから、文部大臣のお答えをいただきたいと思います。  それでは本論に入りますが、まず、「諸君とともに新しい年を迎え」に始まり、「国民諸君に対しても一そうの御奮発を期待する」に終わりました池田総理演説の中で、小成に安んじ、安逸をむさほり、放縦に流れ、闘争を事として、さらには、集団を頼み、誤れる海外の思潮におぼれ、民主的秩序を無視した脅迫的政治活動を云々され、法秩序の維持に籍口して、厳正な処断を加えることを表明されたのにとどまらず、さらにまた、労働関係に例をとられて、同胞間の不信と憎悪をかり立てながら、いたずらに平和を呼号することは、自他を欺く矛盾と指摘されたのであります。私は、今日、日本労働運動に対する官憲の介入、国家権力による不当弾圧の実情からいたしまして、同胞間の不信と憎悪をかり立てる者は一体だれかと、そのままこの言葉総理にお返ししたいのであります。(拍手)なるほど池田内閣は、国会内の多数党である自民党を背景に成立し、総理大臣みずからもまた、きわめて強大な国家権力の座にあることは、私も十分知っております。しかし、だからといって、戦後押し寄せる生活苦と戦いながら、ひたすらに国家の繁栄と再建に努力をした日本国民の大多数を占める労働者に対し、安逸をむさぼり、放縦に流れ、闘争を事としたかのごとき表現を用い、「断固として処断する」に至っては、まさに言語道断、私は池田総理の時代感覚を疑わざるを得ないのであります。(拍手)古来、政治の定説の中で、自信のない政治ほど強権を用いやすいといわれております。さらに、多数と少数の関係におきましても、多数は決して全体ではないのであります。総理は昨日の答弁にも多数決を強調されておりますが、多数といえども、決して万能の力を有するものではないのであります。そこには従わねばならない自然のおきてのあることを知らねばなりません。多数党を背景に国家権力の最高の座にある池田総理に、まず労働運動に対する弾圧、官憲の介入についてお尋ねをいたします。  最近わが国産業機構の中で、官民を問わず、激しく推し進められておる一連の合理化、近代化の中で、総理も指摘されたように、その利害の対立が、ときに先鋭化し、事案の解決が困難な状況にあるとき、政府並びに関係当局は、しばしば違法行為と称して首切りその他の行政処分を行ない、同時に、検察官、警察官の介入による刑事罰を加え、その実情につきましては、まことに目に余るものがあるのであります。本来こうした労働問題に関しましては、労働組合法第一条二項により、刑法三十五条の適用による刑事免責があるにもかかわらず、でっち上げによる暴力行為の名のもとに、多数の善良な労働者が国家権力の不当な弾圧に苦しむ実態について、総理は一体いかにお考えになっておるのか。私が先ほど申し上げた、自信のない政治から来る強権の乱用と解釈してよろしいのか。それとも、いみじくも総理演説の中にある「厳正な処断」と解釈してよろしいのか。もし後者だといたしますなら、三井三池の弾圧のごとく、経営者と検察当局とのなれ合いによる検察当局の綱紀の紊乱については、いかなる処断をとられるおつもりか。あわせて総理大臣並びに植木法務大臣にお尋ねをいたします。  次に、労働基本権の問題といたしまして、特にILO八十七号条約批准についてお尋ねをいたします。ILO八十七号条約の問題は、遠く昭和三十二年から三年にかけて起こった国鉄労使の紛争に端を発し、政府及び国鉄当局は、公労法四条三項をたてにとりまして、国鉄の労働者で組織をされておる二つの組合に対し、理不尽にも団交拒否の通告を行ない、その団結権と結社の自由を侵害したのであります。当時、私はその当事者として、憲法第二十八条によって保障されたこの団結権の侵害を東京地裁で争ったのでありますが、東京地裁は、明らかに憲法違反の疑いのある公労法ではありますが、法の実在することを理由に、憲法上の組合とは認めるが、公労法上の組合とは認めがたいという、まことに奇々怪々なる判決を出しまして、裁判は敗訴いたしました。そこで私は、政府の組合に対する結社の自由、団結権の侵害の非を鳴らし、その事実を国際労働憲章の定めるところに基づきましてILOに提訴したのであります。さらに、このことは、約一年後、全逓の労働組合にも同じような事実の発生を見たのでありますが、その後、本問題をめぐりましてILO事務局長及び結社の自由委員会、国際自由労連、国際運輸労連等が、ことごとく日本政府労働基本権侵害の事実に対しまして、あるときは調査団を派遣し、あるいは日本政府にその事実の報告を求め、ついにILO理事会及び条約勧告適用委員会から、日本政府は国際慣行上異例の勧告を受け、特に、現行日本の公労法は、日本がすでに批准をいたしておりますILO九十八号条約に違反しておる点を強く指摘をされるなど、全く国際的な醜態をさらしながら今日に及んでおる問題であります。  さらにまた、小坂外務大臣は、その演説の中で、国際連合憲章の目的と原則を尊重するとともに、政府は率先、国際連合に協力すると言われておりますが、ILOすなわち国際労働機構は、一九四六年以降、国連との協定により、国連傘下の経済的社会的事項について専門機関であることを、よもやお忘れではないと思います。また、十九日の演説の中で、ガット三十五条援用を初めとするわが国通商上の差別撤廃から、さらには、欧州諸国の業界においてわが国の実情にうとく、そのために対日不信と根強い猜疑心のあることを述べられましたが、私は、はたして実情にうといのか、それとも、この労働基本権侵害の例に見るごとく、事実を知り過ぎているのか、外務大臣の認識の点については、多分に疑義を持つものであります。日本は、かつて戦前、ダンピングによる国際競争の前科を持ち、戦後、今なお、政府資本家擁護の方針から、経営者と強く結託をして、日本労働者労働基本権を剥奪をし、労働者に低賃金労働強化をしいておりますが、もしこの実態を欧州諸国の業界が知ったとき、彼らは、労働者の権利を剥奪し、低賃金労働強化によって生産をされる日本製品に対し、単なる不信感や猜疑心にとどまることなく、むしろ高い関税の障壁を設けて自国の製品を保護することは、当然のことであります。また、このことは外務大臣として十分御承知と思います。もし御承知ないとするなら、ILO理事会、総会等に幾たびか出席をいたしました日本政府代表が、その真相を報告してないという点において、怠慢もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。  以上の観点から、ILO八十七号条約の批准や、九十八号条約の順守の問題は、単に日本労働者労働基本権の問題ばかりでなく、国際信用の回復、ひいては輸出貿易の振興等、問題はきわめて重要かつ深刻であります。この際、池田総理は、日本労働者労働基本権をすみやかに欧米諸国の水準改善をし、もって国際的な信用を高めるため、懸案のILO条約を、従来の行きがかりを捨てて、この際批准をされる御意思があるかどうか、お尋ねをいたします。また、小坂外務大臣に対しましては、ILO条約批准の問題等をめぐりまして、ILO理事会も近く開会されることでありますので、今までの経過を含めて、その見通しについてお答えを願います。  さらに、ILO条約批准に関連をいたしまして労働大臣にお尋ねいたしますが、政府は、従来この条約批准に関しまして、関係国内法の整備と称しまして、公労法四条三項、地公労法五条三項以外に、鉄道営業法を初め、国公法、地公法などの改悪を意図し、さきに第三十八国会に提案をいたしました。このことは、八十七号条約にいう結社の自由、団結権の擁護といった団体の規制をゆるめる代償として、組合役員及び組合員個々の規制を強化し、処罰規定を設けることを目的としたものでありまして、このこともまた団体の規制以上にILO条約の精神に反し、国際労働憲章に全く逆行する結果を生むこととなり、再び国際的に重大な関心と結果が予想されますので、政府のいう関係五法案とは関係なくILO八十七号条約は批准すべきであると考えますが、この点、副永労働大臣のお答えを願います。  次に、当面する労働問題について重ねて労働大臣にお尋ねをいたしますが、今日あらゆる産業部門におきまして、近代化、合理化が進み、高度な生産性を上げていることは認められます。しかし、この生産性向上の配分については、ひとり資本家のみが独占すべきものではございません。消費者である国民にも、さらに生産に従事した労働者にも還元されなければならないことは当然であります。すなわち、消費者、国民に対しては、コスト低下によるサービス、労働者に対しては賃金向上、または労働時間短縮等、労働条件の改善がなされなければなりませんが、今日の日本資本家は、その基本理念にいささかの配慮もいたしておりません。むしろ、この際は、春闘を中心といたしまして賃金をストップというふうな誤った考え方にも立っておりますが、そういう結果、依然としてわが国労働者は、低賃金、長時間労働をしいられ、特に労働時間の問題については世界的に低水準の位置にありますが、この改善についてお答え願います。  また、最低賃金制の問題についてお尋ねいたしますが、現行日本の業者間協定による最低賃金制は全くその本質からはずれていることは、申し上げるまでもないことで、議論の余地はございませんが、この際あらためて、国際的水準に達する考え方に立つ真の最低賃金制を制度化することについてのお考えについてお答えを願います。特にこの問題に関連をいたしまして、さきに中央審議会に諮問されました炭鉱最低賃金については、最低賃金法第十六条により、審議形態を明確にする必要があると考えますが、この点のお答えも重ねてお願いいたします。  さらに、炭鉱労働者雇用の安定の点については、あなたの前任者である石田労働大臣の公約の実施等の点も十分配慮されて善処すべき当面急を要する問題であると存じますが、この際あらためて福永労働大臣に、その具体的な方策についてお尋ねをいたします。  次に、文教政策についてお尋ねをいたします。池田総理は、その演説の中で、文教の刷新と充実を強調され、池田総理の得意中の得意である経済問題が重大なそごを来たしましたので、それにかわる新しい自民党の表看板にされようといたしております。しかし、この言葉は、戦前、戦中、戦後を通じまして、私たちは歴代首相から聞きあきるほど聞いた言葉であります。特に、日本が軍国主義、ファッショ化への方向をたどればたどるほど、その強調の度合いも強まったものであります。従来自民党政府は、みずからの政治的イデオロギーを若き青年に植えつけ、従順にして退嬰的な青年を社会に送り出すため、国家百年の大計の名のもとに、教育を政治に従属せしめるために、過去十五年の長きにわたりまして、国家権力による大学自治への侵犯、学生と警官の激突を繰り返し、若き青年の自発的創造の活力をつみ取るための方策をとって参られました。さらにまた、最近に至りましては、勤務評定に関する紛争以来、事ごとに日教組に挑発しかけ、ことに先般の学力テスト問題に関連をして、その対立はさらに激化の様相を帯びて参っております。今日すでに、岩手、熊本、東京、鳥取、高知、京都など、全国至るところで大量の行政処分と刑事弾圧が繰り返されておる実情にあります。こうした実情の中では、総理の主張される文教と科学技術の振興はきわめて困難であることは、総理自身も御理解になっておることと存じます。私は、むしろこの際、教育を一党一派によって専有する考え方を捨て去り、現在激化しつつある対立緩和の方策のため、直ちに教師の団体たる日教組に対する挑発と弾圧をやめ、文字どおり総理の言われるように、祖国の生命力たる青年を作るために、憲法第二十三条によって保障された学問の自由の大前提に立って、かつてだれかの言ったように、「人間を完全に教育する問題を解決した国民にして、初めて国家の問題を正しく解決できるという、謙虚な気持に立って、文教問題を処理されるお考え総理にあるかどうか、御所見を承りたいと存じます。  次に荒木文部大臣にお尋ねをいたしますが、あなたの所管事項の中にはきわめて多くの問題が山積をしております。すし詰め教室の問題、学校給食の問題、教科書無償問題、教師の定員不足の問題、教育費の父兄負担増大の問題、さらには来春以降におけるいわゆるベビー・ブームによる高校急増対策の問題等、そのいずれを取り上げましても、総理の言われる「青少年諸君の育成が現下の要務」、これがもし池田内閣の文教政策のまくら言葉でなかったといたしますならば、文部大臣の責任はきわめて重大であると存じます。特にあなたは、昨年暮、三十七年度予算案政府決定にあたりまして、高校急増対策には「みずからの政治生命をかける」とまで言われたそうでありますが、一体その後、高校急増対策はどうなのか。この点、先ほど来答弁がなされましたけれども、内容においては、がまんをしてくれ、忍んでくれ、こう言う一点張りで、私はとうてい納得できません。もし高校の収容力を現在のままだといたしまするならば、毎年四十万人の子供たちが入学不能になる。そこで文部省当局は、普通高校三分の一、工業高校二分の一の国庫補助を含む増設費百二十六億の予算要求をして、あなたの政治生命をかけられたのであります。しかし現実には、認められた金額はわずかに十五億七千万円、それも工業高校だけ。全高校生の半分に及ぶ普通高校の国庫補助は完全にゼロ。わずかに認められたものは五十億の地方起債。しかも、この地方起債を地方で完全に消化したといたしましても、せいぜい十万坪、必要坪数三十七万坪の三分の一にも満たないため、どんなにすし詰め教室に詰め込んでも、まだ年間二十万人の入学不能、中学浪人と、あなたの政治生命が残るのであります。  学校給食の問題はどうです。文部省当局は、ことしから栄養的立場に立って、主食の量を減らし、その分だけ副食の内容を充実させることにして、ミルク代の半額国庫補助十六億四千万円を要求しました。けれども、これは結局だめ。残る結果は、主食の量を減らす案だけが通りまして、パンが十五グラム小さくなった。これでは、次の世代をになう育ち盛りの子供たちや母親の立場は、泣くにも泣けない実情ではないかと思います。(拍手総理の言われる青少年の育成は、ただ一片の言葉に終わってしまうわけであります。  荒木文部大臣は、従来低姿勢と言われました池田内閣の高一点、ただ一人きわめて高い姿勢をとって、口を開けば、やれ政治だ、やれ歴史だ、道徳教育だと言われておりますが、この際、みずからの政治責任を含めて、池田内閣のきわめて多難な文教政策にいかに対処されるか。また、いかなる具体的方策をもって、新しく池田内閣の表看板になりました文教重視の政策を具体化されるか、この際お答えをいただきたいと存じます。  最後に、石炭産業並びにエネルギー政策について佐藤通産大臣にお尋ねをいたします。総理は、その演説の中で、受難期にある石炭産業と言われましたけれども、今日、石炭産業の実態は、まさに人災による受難と断ぜざるを得ないのであります。そのよって来たる原因は、一つには、炭鉱経営者の他力本願的無自覚による放漫な経営、その第二は、歴代政府の一貫性を欠いたエネルギー産業政策とその総合政策のなかったところに大きな原因があるのであります。あるときは石炭産業を保護し、あるときは重油転換を奨励し、次には石炭産業の合理化を強制するなど、全く場当たり的な方策に終始して、その犠牲になっておるのが、今日の石炭産業の実態であります。しかも、この原因の探究と対策を怠り、あたかも石炭産業が斜陽産業であるかのごとく宣伝これ努め、炭鉱労働者の首切りを正当化しようとする炭鉱経営者の卑劣な態度は、断じて許せないところであります。わが国エネルギー資源として、石炭産業は今なお重要な地位にありますが、炭鉱労働者の実数は、かつての二十七万人から二十万人に減少し、このまま推移いたしますなら、将来、年間五千五百万トンの石炭需要の確保にも支障を来たすことも十分考えられるのであります。
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 中村君、時間が来ました。
  38. 中村順造

    ○中村順造君(続) そこで、通産大臣に最後にお尋ねをいたしますが、かつて岸内閣の閣僚として、三年前、池田総理は、石炭産業合理化方策を立てられ、あなたは時の大蔵大臣として、この合理化方策に対し、十分御理解を持っておられることと存じますが、結果的には、この合理化方策は、客観的情勢の変化等もございまして、その影響を受け、成功しておらないのであります。それで、本院は第三十九臨時国会におきまして、石炭産業危機突破に関する決議をいたしました。その後、政府としては、この決議に対しいかなる具体的な措置をとられたか。さらには、今後のエネルギー産業政策の一環として、石炭産業の位置づけをどこにお考えになっておるのか、お答えをお願いをいたしまして、以上をもちまして私の質問を終わらしていただきます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の施政演説のある部分につきまして御批判がございましたが、私は、国民各位の良識によりまして民主的秩序の大本が育成されているということを申し上げたのであります。すなわち、大体においては民主主義的秩序の大本が育成されておる。ただ、一部には民主的秩序を無視する傾向が残っておることはいかぬ、これを直そうじゃありませんか、こう言っておるので、何も私は無理なことを言っているとは考えておりません。十分お読みいただきたいと思います。  次に、労働問題に対しまして政府が強権を発動した、私はそういう覚えはないと思います。労働問題につきましては、労使が民主的に平和的にこれを解決することが望ましい。私は常にそういう方針で見守っているのであります。  なお、労働条件の改善につきましては、私も常に願うところでございます。わが国産業経済の進展に伴いまして、労働条件が逐次改善されることを心から望んでおります。したがいまして、ILO条約の批准も、今国会に私は提出を予定いたしているのであります。  なお、文教につきましていろいろお話がございました。私はいろいろな方法でやっていきたいと思いますが、今の日教組のあの状態では、私はなかなか今この問題を解決するためにどうこうという措置は、自分としては考えておりません。私は、教職員の大多数の者が、私の施政演説で申しましたことを十分おくみ取り下さいますことを念願するものであります。  石炭産業につきましては、お話のように、情勢の変化によりまして、十分ではございません。したがいまして、画期的な措置を今回とることにいたしているのであります。国内の重要資源でございますので、今後も十分育成措置を講じていきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍   手〕
  40. 植木庚子郎

    国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。  労働運動に対する政府の態度につきましては、ただいま総理からもお答えがございましたとおり、政府といたしましては、常に健全な労使関係が早くでき上がることを期待もし、また、そのように念願もしているのでございます。したがいまして、正当な労働運動につきましては、一切これに関与することは避けていくのが当然である、かようにも考えておりますし、いわんや刑事罰をもってこれに臨んで断圧を加えるというようなことは、厳に戒めているところでございます。ただし、われわれといたしましても、ときに、この運動の過程において、行き過ぎのあまり暴力を伴って間違いを起こす場合がなきにしもあらずのよう考えられます。そうした場合に、刑罰法規に触れるような問題のときには、これは厳正に取り締まりをいたす、あるいは暴力を伴わなくても、たとえば公務員の場合におけるがごとき、法令でもって争議行為を禁止せられておる場合がございますが、こうしたものに対して、争議をあおったり、そそのかしたり、あるいはみずからそうした争議行為に及ぶというような場合におきましては、公平に法の精神に従って取り締まりをやって参る、かよう考えておる次第でございます。  三池の問題につきましても、われわれ当局といたしましては、警察関係と常に連絡をとりながら、決して行き過ぎにならぬよう、しかも暴力が行なわれてこれが誤りに陥るようなことがないように注意をして参ったのでありまして、弾圧をするとか、特別の政治的意図で云々するような態度は一切いたしておりません。あるいはまた、ただいまお話の取り締まり当局とさらに会社当局と云々というようなことのお話があったように聞こえましたが、さようなことはなく、労使双方に対して公平に厳正に臨んでおる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍   手〕
  41. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。  ヨーロッパの業界において、ILO八十七号条約批准との関連で対日不信と猜疑心があるというようなことは、もう全然ございません。全く別の問題でございます。問題は、この日本が今日世界第一級の工業製品を作っておる国であるという認識が少ないし、あるいは、日本貿易をすると洪水のように商品が流れ込むというような恐怖心があるという点に、問題があるのでございまして、実は先般イギリスからFBIの事務局長でございますサー・ノーマン・キッピングという人が参りまして、「日本一見」という本を帰って書きました。そういう点などは全く来て見て驚いた、日本は全く自分らが対等につき合う工業国であるという認識を新たにした、ということが書いてあるわけでございます。そういう点を大いに認識させていきたい、こういうことでございます。  ILO八十七号条約を国会提出の方針であるということについては、総理大臣からお答えがございましたとおりでございます。(拍手)   〔国務大臣福永健司登壇拍手
  42. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ILO八十七号条約につきましては、すでに答弁もありましたるごとく、国内法の整備を行なって早期に批准いたしたいという政府方針に変わりはありません。ただ、中村さんがおっしゃるように、条約だけ切り離してほかのものはほっとけとおっしゃいますが、そうは参らないのであります。これは必要な整備を行なうのであります。決して改悪ではございません。  生産性向上の成果を三つの方向へ分けよというお考え、全然同感でございます。労働者事業主、そしてまた消費者たる一般国民へその成果が及ぼされるということは、もとより望ましいことでございます。おおむね着実にそうした傾向を示しておるのでありますが、そのときそのときの国民経済の状況に応じまして、若干その数字の比率等にも差があることは、これはやむを得ないのであります。お話の御趣旨のようなことをよく注意して参りたいと考えておるわけであります。  労働時間の短縮は、産業進歩の段階に応じて適切に行なわれることは、私どもも非常に望ましいことと考えるところであります。ただ、短縮の実際にあたりましては、産業経済の実態に即しまして、強力的かつ漸進的に行なわれなければならない。ことに、日本の大企業や小企業の事情を見ますと、いろいろ事情を異にいたしておりますので、実情に即した措置がとられなければならない、さように存じておる次第であります。  最低賃金制につきましては、先刻藤田さんにもお答え申し上げましたように、その普及拡大計画推進中でございますが、一そう意を用いて参りたいと存じます。なかんずく、石炭産業におけるそれにつきましては、昨年十月以来、中央最低賃金審議会において鋭意御勉強を願っておりまして、私どもも大いにその成果を期待しているところであります。  それから、炭鉱労働者雇用安定につきましては、他の政府の総合的な諸施策と相待ちまして、より一そう力を注いで参りたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍   手〕
  43. 荒木萬壽夫

    国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。その前に、中村さんが最初に言及されましたことにつきまして、釈明さしていただきます。  先ほど辻さんの御質問に対して、高校急増問題の意味をベビー・ブームというのは、まあ、いわば終戦処理の一つの事柄だというふうに申し上げました。これは別に他意があるわけじゃございませんで、ベビー・ブームというのは、高等学校の施設責任という立場では、なるほど都道府県ではあろうけれども、この高校生急増に対処する意味では、府県だけの責任ではあるまい、国もまた責任の一半を負うべき事柄であろう、そういう意味で申し上げたのでございますので、御了承をいただきたいと思います。(「だめだ」「取り消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)もちろん……もちろん、ただいま申し上げました意味は、かよう意味で申し上げた趣旨を御了承の上に、取り消しをしたいことをお許しいただきたいという意味合いでございます。  御質問の第一点についてお答えを申し上げます。(「そんな答弁あるか」「下らぬことを言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)高等学校の生徒急増対策につきましては……(「続けろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御静粛に願います。
  45. 荒木萬壽夫

    国務大臣(荒木萬壽夫君)(続) 先ほどのことを繰り返し申し上げさせていただきます。「終戦処理」という用語は、誤解を招くおそれがございますから、取り消させていただきます。その趣旨は、国も責任の一半をになうべき問題だということと置きかえさせていただきます。  そこで、中村さんの御質問の第一点は、高校急増に対する見解はどうだというお尋ねであったと存じます。御指摘のとおり、また、辻さんにもお答え申し上げましたことでございますが、御指摘のとおり、高校急増に対しましては、子供を持つ親が非常に心配をしておられます。その心配される意味合いは、今までの少なくとも高校進学率の線に沿って、ベビー・ブームの時期に入りましても、進学を確保してもらいたいという気持だと推察するのであります。そういう意味において考えました場合、なるほど高等学校の施設責任者は都道府県であるという制度には間違いございませんけれども、そのままでいきますれば、一般の起債ないしは交付税等で処理するという都道府県の自由の考え方にまかされるという建前になりますから、それではベビー・ブームの処理という、先ほど問題になりましたような趣旨を含めて、透徹した対策は困難であろうと存じまして、いわゆる前向きに、三十六年度予算、三十七年度予算、二カ年を通じて三十八年のピークに備えたい。その備えるやり方は、国が責任を負うという意味合いを出します意味で、三分の一の国庫負担をするやり方でやろう、こういうことで前年度来御審議を願っておきましたことは御案内のとおりであります。三十七年度予算につきましても、文部省という立場におきましては、同じ考え方で進んで参りましたが、さっきも申し上げましたとおり、予算折衝では、この制度上の壁を打ち破ることはできませんでした。負けました。しかし、その機会におきまして、従来単に地方財政の問題として処理されたであろうところの高校急増対策に対して、文部省で推計いたしましたベビー・ブームの実数を計算に入れまして、三十七年度からその具体的年次計画地方財政の面に移し植えまして、これに対する起債及び交付税を、いわば、ひもつきで、きちんと備えるということに政府部内の話がまとまりましたので、実質的には、いわば補助金で、ひもをつけて資金を確保するのと同じような成果を期待できまするので、そのやり方で国民の期待にこたえたいと思っておるのであります。その具体的数字につきましては、先ほど辻さんにお答え申し上げたことで御了承をいただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  46. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) エネルギー産業が現代産業経済間におきまして重要であることは御指摘のとおりでございます。政府におきましては、かねてからエネルギー産業の重要性にかんがみまして、いわゆる総合対策を樹立する、こういう立場で種々考究をしておるわけでございます。ところで、このエネルギーは、私が指摘するまでもなく、国際競争の立場におかれる日本産業といたしましては、できるだけ低廉なエネルギーを使いたい、こういうことにもなるのでございまして、いわゆる消費者の自由選択にまかしておるのでございます。しかし、値段が安いというだけでエネルギー問題が解決されるわけのものではございません。もちろん供給の安定性というものも、また、あるいは外貨の支払いの問題であるとか、あるいは雇用の問題であるとか、いわゆる社会問題としてもこの問題と取り組み、単なる経済問題だけでは実はないのでございます。そういうことを考えて参りますると、わが国産業のうち、この石炭産業のエネルギー産業中において占むる地位、これは御理解がいただけるだろうと思います。もちろん、現在あるがままの姿で石炭産業をそのまま維持するということは、これはまことに困難なことでございますから、石炭産業に従事されます労使双方の御協力を得まして、生産性向上なり合理化なりは推進して参っております。また、そのために必要な政府資金、あるいは税等の処置等も講じて参りまして、わが国の石炭産業を育成すると、こういう立場は堅持して参る考えでございます。中村さんが御指摘になりましたように、ただいまの総理が通産大臣当時、私、大蔵省におりまして、そのときに最初の手がかりをいたしたものでございます。しかし、なかなか当時の情勢だけでは不十分でございますので、前国会におきましても各党の一致した決議を得まして、政府といたしましては、今回の予算編成にあたっては、その決議の趣旨を尊重して、そして石炭対策を積極的に講じて参る考えでございます。で、必要な法案の整備等もいたす考え方でおります。いずれ成案を得ましたら御審議をいただきたいと、かよう考えております。  その趣旨は、私が重ねて申し上げるまでもないのでございますが、いわゆる非能率炭鉱は買いつぶして参りますが、優良炭鉱は積極的に近代化、合理化をはかって、これが維持強化拡大をするという考えでございます。あるいは離職者対策につきましては、これはもうすでに御承知のとおりであります。さらに私どもが行政の面で積極的に骨を折りたいと思いますのは、石炭需要の確保の問題であります。中村さん御承知のように、鉄道なども、もうすでに石炭をなるべく使わなくいたしておりますが、この石炭産業の重要性等を考えますれば、国内におきましても、その需要の拡大はぜひともはかって参りたい、こういうよう意味で、電力関係にも特に呼びかけている次第でございます。産炭地振興の事業団等も作るつもりでございます。(拍手
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 野坂参三君。   〔野坂参三君登壇拍手
  48. 野坂參三

    ○野坂参三君 私は日本共産党を代表して、池田総理大臣に対し、対外政策及び国民生活の問題について、二、三の質問を試みたいと思います。  第一に、今日、南朝鮮では、ファシスト軍事独裁政権が相次ぐ死刑による恐怖政治を行なっており、アメリカ帝国主義は、このかいらい政権をかり立てて、北朝鮮侵略のために大規模な軍事挑発を準備しております。三十八度線は再び戦争の発火点になろうとしております。今、政府の行なっている日韓会談は、このアメリカと朴政権の戦争政策日本を積極的に加担させるものであり、わが国を一そう危険な状態に追い込むものであります。昨日、ここで小坂外務大臣は、「ほうっておいたら朝鮮は統一されるといわれるのか」、こう反問されましたが、私はまさしくそのとおりだと言いたい。外部の干渉さえなければ、朝鮮は必ず統一されます。朝鮮問題の真に正しい解決の道は、何よりもまず、ポツダム宣言と国連憲章に基づく戦後処理として、国連はおろか、第三国が絶対に介入すべきではなく、朝鮮人民自身の手にまかせるという国際的原則に立つことであります。その第一歩は、国連軍の名をかたって朝鮮を侵略しているアメリカ軍を即時撤退させることであり、南北朝鮮の平和的統一を支持することであります。ましてや、積極的にアメリカの共犯者になろうとする日韓会談は即時中止すべきであります。こうして初めて、日朝両国人民の友好親善の道が開け、アジアの緊張緩和に貢献することができると考えるのでありますが、総理所信をお聞きしたい。  第二に、南千島を含む千島列島の帰属問題が、国際協定によってすでに解決済みであることは、アメリカと日本を除く世界の諸国が認めているところであります。しかも現在、安保条約と行政協定によって、アメリカは日本のどこにでも軍事基地を作ることができます。こうした状況のもとで、日本政府が南千島を要求することは、アメリカと日本の軍国主義者が、ソ連の鼻先に新しい反ソ侵略の要塞を作ることを、ソ連に認めさせようとするものにほかなりません。このよう日本政府要求をソ連政府が絶対にいれないことは、あたりまえではないでしょうか。それにもかかわらず、今日、政府、自民党が不当な領土要求を繰り返し主張し、アメリカの応援さえも受けて大きく宣伝しているのは、何のためであるか。それは、この宣伝によって、反ソ復讐と領土拡張の思想を国民の間に広めて、軍国主義の復活に役立てようとする意図から出ていることは申すまでもありません。政府のこのような態度は、日ソ共同宣言をほごにし、戦争以外に解決の方法のないよう状態を作り出しております。総理は結局この問題をどう解決しようとしておられるのか、明確な答弁を願います。この問題に対する正しい解決は、戦後処理の原則に基づく国際協定や取りきめを必ず守るということ、日本が安保条約を破棄して軍事基地を撤廃することであります。この基盤の上に立って、初めて日ソ両国人民に納得のいくような合理的な解決ができるのであります。  第三に、総理は中国問題に関連して、現実に即して処理する、こう申されております。よろしい、私も現実の事実をもって総理質問したい。すなわち、事実はこうであります。台湾が歴史的に中国領土の一部であったこと、これは厳たる事実であります。日本帝国主義が台湾を植民地として一時占領したこと、これも事実であります。カイロ、ポツダム両宣言によって、台湾が中国に返還されるものと規定されたこと、これも事実であります。さらに、これらの国際諸協定に基づいて、台湾が中国の行政下に置かれ、これを全世界が承認し、アメリカも確認していること、これも事実であります。そうして最後に、最も明白な事実は、朝鮮戦争に名をかりて、アメリカが台湾を不法に軍事占領して、蒋介石をアメリカの完全なかいらいとしたという、この事実であります。ところが総理は、これらの厳たる事実を一切抹殺して、ただ、アメリカの不法占領と、かいらい政権の事実だけを現実と称して、二つの中国を作ろうとしているのであります。これが国連でのいわゆる重要事項指定方式であり、総理のいわゆる前向き論の正体であります。こうして池田内閣は、わが国を中国と抜きさしならぬ敵対関係に突き落としているのであります。政府のこの政策に対しては、六億五千万の中国人民が反対しているのはもちろん、わが国民の多数も積極的に反対し、自民党の中からさえも反対や不満の声があがっていることは、皆さん方のよく御承知のとおりであります。私はここで断言します。池田内閣の手では、もはや日中関係の打開、国交の正常化は、絶対にできなくなったということであります。私は、池田総理の重大な責任を問うものであります。  第四に、総理は、民族解放に立ち上がっているアジア諸国人民の正義の闘争に対しても公然と挑戦しておられます。すなわち、総理演説の中で、無暴な戦争を強行した日本の轍を踏むなと称して、インドのゴア解放とインドネシアの西イリアン解放の断固たる闘争に反対されました。また小坂外相のごときは、これを直接世界の平和を脅かすものと非難されている。このよう政府が植民地解放闘争に反対する帝国主義的な態度をとっていて、総理がアジアの一員とかなんとか百万べん繰り返されたところで、アジアのだれが信用しましょうか。ただアジアの諸国民から日本がますます反撃され、孤立していくだけであります。お聞きしたいことは、政府がアジア諸国民の英雄的な植民地解放闘争にあくまで反対する態度をとりながら、これらの諸国民と友好関係を深めることがはたしてできるか、総理は、まじめにこう考えておられるかどうか。  最後に、政府のとっている対米従属、軍国主義、帝国主義復活の政策は、わが経済国民生活の面に最も端的に現われております。すなわち、所得倍増計画の強行によって、国際収支が悪化し、過剰生産が進行しておりますが、その中で、大資本家の利益が擁護され、軍需産業の育成が着々と進められております。他方、国民に対しては、高い税金の取り立て、物価値上げ賃金のストップ、低い生産者米価、金詰まり、社会保障の後退などで、その生活はますます苦しくなってきております。それだけではありません。最近アメリカのとっているドル防衛政策、援助の肩がわり政策、ヨーロッパ共同体への接近政策によって、日本へのしわ寄せが一そう強められております。こうしてアメリカに追従すればするほど、ますます日本に不利になることが明瞭になってきております。この機に乗じてアメリカ資本の日本への進出は驚くべきものがあります。今やわが国産業の中枢がアメリカ資本の手に握られようとしているのであります。このようなアメリカのやらずぶったくり政策で、日本経済的にいよいよ困難に陥れられております。ところが池田内閣は、このアメリカの対日政策に対して反撃に出るのではなくて、その犠牲をわが国民へのしわ寄せによって切り抜けようとしております。その上に、わが国の共同体への接近や、東南アジアヘの進出も、明るい展望は開けておりません。
  49. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 野坂君、時間がきました。
  50. 野坂參三

    ○野坂参三君(続) したがって、こうした政策を続ける限り、経済国民生活は悪化こそすれ、好転する見通しはないのであります。だからこそ、一般国民はもとより、大資本家の中にも不安と不満が広がっており、これに反対する機運も強まっております。総理は、この国民の反対と要求を押えつけて、あくまでもアメリカ追従と、軍国主義、帝国主義復活の経済政策を続けていくつもりであるかどうか、総理見解をただします。  これをもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 南北朝鮮の統一は、私、心から願うところでございます。これが行なわれないのは、外部の干渉があると言っておられまするが、その外部とは何ぞやということを反問いたしたいと思います。国連におきましては、国連監視下におきまして統一の選挙をするということに決議しております。その国連の決議を守らないのはどちらが守らないのか、これをお考えになったらわかると思います。  それから、わが国の北方領土に対しましては、ソ連の占拠は不法でございます。何ら法的根拠はございません。(拍手)しこうして、不法の占拠を認めながら、わが国の根本外交政策を変えさすえさに使うということに協力される人の気持がわかりません。(拍手)  第三に、私は二つの中国を認めたことはございません。重要問題でございますから、国連において十分審議すべしということを主張し、そうして世界の大多数がこれに共鳴しておるのであります。  なお、東南アジアとの親交は年とともに進んでおることを、私は国民とともに喜びたいと思います。また、わが国の外交経済政策は、今までどおりがいいと思います。変える考えはございません。(拍手
  52. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会