○古池信三君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
池田内閣総理大臣並びに
関係閣僚に対して若干の
質問をいたしたいと存じます。
戦後、特に最近の
わが国の
経済は、
世界の注目のうちに目ざましい
発展を遂げ、
国民の
生活水準も漸次向上して参るとともに、
わが国の
世界的信用は増大し、国際的地位もおのずから高まって参りましたことは、まことに御同慶にたえないと存ずるのであります。しかしながら、この狭隘な国土のうちに膨大な人口を擁する
わが国といたしまして、今後、真に平和国家、文化国家として健全な発達を遂げ、わが民族の輝かしい繁栄を期すると同時に、広く
世界の平和と人類の幸福のために偉大な貢献をなさんとするならば、目前に横たわっておる内外幾多の困難を克服して、この大理想を実現せんとする、不退転の勇気と確固不抜の信念がなければならぬと思うのであります。
私は、まず第一に、国政担当の最高
責任者として指導的
立場にあられる
池田総理大臣に対し、かかる崇高なる理想のもとに
わが国に課せられた使命を達成するために、今後いかなる決意を持って国政遂行の任に当たられるか、
総理の御決意のほどをお伺いいたしたいのであります。
次に、第二といたしまして、政治運営の正しいあり方について御
所見をお伺いいたします。近来、
わが国内の
情勢を見ますると、極左、極右を問わず、その勢力の中に破壊的暴力主義が台頭して、法秩序を無視する集団あるいは個人の暴力行為、あるいは犯罪等の
社会悪が
増加する傾向にありますることは、まことに遺憾にたえないところであります。このままに放置するならば、
わが国の
民主主義は脅かされ、やがては議会政治の危機が訪れないとは、何人も保証し得ないのであります。かような破壊的暴力行為を初めとする各種の
社会悪の一掃のために、
政府は一そう適切な
措置を講ずべきことはもちろんでありまするが、一方において、政治の正しい
姿勢を確立して、
国民が真に信頼し安心することのできる民主政治を築き上げることが、今日の急務であると私は
考えるものであります。しからば、議会政治の正しいあり方とは何か。
池田総理が常に申されておりまする、寛容と忍耐の精神をもってお互いに話し合う、この話し合いによって事を解決していく、まことにけっこうであります。与党たると野党たるとを問わず、虚心たんかいに誠意を披瀝し合って論議を進めていく、このことはまことに望ましいことであります。しかしながら、論議を尽くしてもなおかつ意見の一致を見ないような場合には、民主的に多数決の原理によって事を決して、やがて世論の判断を待つ、こうあるべきであろうと私は
考えるものであります。話し合いの場合におきましては、多数党は常に少数党の意見に耳を傾けるべきは当然でありまするが、これと同様に、少数党の方も、採決にあたりましては謙虚に多数意見に従うということを忘れてはならないのであります。結論に至る過程における話し合い精神の発揮と、最後は多数決原理の尊重こそ、議会民主政治の正しい姿であると私は
考えるのでありまするが、この点に関しまして、
総理大臣の率直な御
見解をお伺いいたしたいのであります。
次に第三は、
外交政策においてであります。現下の
世界情勢は、自由、共産両陣営のきびしい対立下にあることは申すまでもありません。しかし実体は、むしろ
民主主義と独裁主義との対立であると思うのであります。今や人類は、自由かあるいは隷属か、この二者択一を迫られているのでございます。今日一応の平和を保ち得ているのは、
世界の力の均衡であります。昨年ソ連は、東西間の均衡を打破せんとして、
世界をあげての反対にもかかわらず、五十メガトンの核爆発を行なうという暴挙をあえていたしました。また理不尽にもベルリンの東西境界線を閉鎖するに至ったのであります。かように、
世界の各地においてきわめて困難なる問題が続々と発生しつつある かような事実はまことに重大であります。わが自由陣営におきましては、物心両面にわたる実力を高めると同時に、この危機打開のために、すみやかに
問題解決のめどを見出す
努力を尽くさねばならぬと思うのでありますが、かような重大な国際
情勢に対処すべき基本的
態度において、
総理の所信を明らかにしていただきたいのであります。
最近、われわれの最も遺憾といたしまするところは、鈴木氏を団長とする
社会党訪中使節団の日中
共同声明であります。この
共同声明の中において、
アメリカに対して悪意に満ちた中傷を繰り返し、さらにまた、「米帝国主義は日中両国人民の共同の敵である」という、いわゆる浅沼発言を再確認しているのみならず、これを称揚さえしているのであります。
社会党は、かねて「
中共、ソ連とも、
アメリカとも仲よくするのだ」と、かように称して、これを
国民に訴えてきたのであります。しかるに、この
共同声明に現われた
社会党の
態度は、全くこの言辞を裏切り、容共反米をもって一貫しているのであります。(
拍手)
社会党のいうところの積極
中立政策の本質は、ここに完全に暴露されたものと言わざるを得ないのであります。
国民は、
社会党のかかる
態度に強い反感を抱き、きびしくこれを非難しておることは、御承知のとおりであります。かような事態に対して、
総理大臣並びに
外務大臣の御
所見を承りたいのであります。さらにまた、
政府においては、すみやかに国論の帰趨を洞察して、
国民大多数の意見に基づいて、強力な自主
外交を展開さるべきであると
考えますが、
政府の所信をお伺いいたしたいのであります。
次に、第四といたしまして、私は
政府の財政
経済政策について、若干ただしたいのであります。
その第一点は、
経済成長政策の遂行に関する基本的
態度についてであります。
経済成長政策は
池田内閣の重要
政策の
一つであり、これが成否は
池田内閣の試金石であるとさえ言われておるのであります。しかるに、
昭和三十六
年度の
経済の
成長は予想以上に急速なテンポをもって進行し、
民間設備投資の行き過ぎによりまして、
国際収支に
赤字が累積するに至ったのであります。
政府としましては、これがために一連の
引き締め措置を講ずるに至ったのでありまするけれども、世間の一部におきましては、この際
政策の転換をはかるべきであるというような声も聞かれるのであります。また一部においては三月危機などということも口にされておるのでありまするが、かような点について
政府はいかにお
考えでありましょう。思うに、
経済成長政策の実施にあたって何よりも大切なことは、安定した
成長を確保するということであります。
昭和三十七
年度に予想されておる五・四%の
成長率は、これを
アメリカやイギリスに比較いたしますると、なおかつ相当に高度の
成長率であります。しかしながら、
わが国の前
年度あるいは前々
年度の
成長率に比べますると、かなり低い数字になっておるのであります。もちろん、
経済は生きものでありますから、長い間には山もあり谷もある、これはやむを得ない現象であると思いまするけれども、
経済の
成長に伴って生ずるかような波乱は、極力なくするような
努力が必要であると思うのであります。そこで私は、
経済成長政策は
政府の基本的な重要
政策として、あくまでこれを推進するという、その
方針に、もちろん変わりはないと思いまするけれども、この点をはっきりと言明していただきたいと思うのであります。それと同時に、
経済の
成長が今後安定した順調なコースをたどることについて、
政府ははたして十分な成算があるかどうか、この点もはっきりとお答えをいただきたいのであります。
次に、第二点といたしまして伺いたいのは、明
年度予算の
規模と景気の動向についてであります。
昭和三十七
年度一般会計
予算の
規模は、前
年度に比して二四・三%、
財政投融資計画は一七・九%の
増加となるのであります。ともにかなりの膨張を来たしております。明
年度の
経済についての
政府の
見通しといたしましては、同
年度下期中に
国際収支の均衡が回復されるもの、かように予想されておるのでありますが、
昭和三十七
年度予算は、この
経済の
見通しと完全に一致しておるかどうか。膨張した
予算が
国内消費を増大させ、刺激しまして、そのために
国際収支が一そう危険な状態になって、今よりも、さらにきびしい
引き締めの
措置をとらねばならぬというようなことはないかどうか。この点について、ひとつはっきりと御
答弁をお願いしたいのであります。私は、これは単なる杞憂に終わるということを確信いたしまするけれども、この点についての
政府の
自信のほどをお示し願いたいのであります。
第三点は、
輸出並びに
輸入の動向についてお伺いをいたします。高度の
経済成長政策を進める上において、
国内の健全な消費を伸ばすということもある
程度は必要であるということは認めます。しかしながら、基本的には、
国内の消費の
抑制、貯蓄の奨励ということが緊要であることは申すまでもないのであります。元来、
所得が
増加すれば、黙っていても消費は自然に伸びて参ります。資源に乏しい
わが国といたしましては、
輸出の
振興こそ何よりもこの際重要なことと申さねばなりません。今日、
世界の
貿易の伸び率が年に五%ないしは六%にとどまっておる際に、
わが国が一五%にも近い
増加を実現しようとする。しかも、単に明
年度一年だけではなく、今後長期にわたって高い
増加率を維持せねばならぬとするならば、そこにはなみなみならぬ
努力が必要であると
考えるのであります。さしあたって、明
年度の
輸出目標四十七億ドルの達成について、
政府としては、はっきりした成算があるかどうか。また同時に、将来にわたって
世界の
貿易拡大率を相当に上回る
程度のこの
日本の
輸出の伸びが続けられるために、
政府はいかなる構想を持っているか。こういう点について、
関係大臣の御
所見を伺いたいのであります。また一方、
輸入につきましても、
わが国経済の
規模が
拡大すれば、これにつれて、特に資源に乏しい
わが国としましては、
輸入に対する依存度が高まって参る傾向を示すことは、これは当然のことであります。しかしながら、この事実はそのままに放置することはできないのであります。きわめて重大な問題であります。今後の
貿易為替の大幅な
自由化に対処いたしまして、
輸出はこれをどんどん伸ばしながら、
輸入に対する依存度は高めない、むしろあるいはこれを下げていこう、こういうことは、非常にこれはむずかしい問題であり、しかもまた、重大なわれわれに課せられた課題であると思うのであります。これらの点につきまして、
関係大臣のお
考えを承りたいのであります。
さらにまた、明
年度の
輸入見込み四十八億ドルのことは、今
年度に比べますると、一・六%の減少になるのであります。
政府とされましては、
中小企業その他に対する影響を考慮し、十分なる配慮を加えて、その
程度に押え得る確信があるかどうか、この点もあわせてお答えを願いたいのであります。
第四点としましては、
物価の問題についてお伺いいたします。
物価の問題が
国会における論議の
対象となりましたことは、すでに今まで二、三にとどまらないのであります。その際の
政府の
答弁を要約いたしますと、卸売
物価は比較的安定した推移をたどっており、消費者
物価はかなりの上昇が見られるけれども、しかし、その一部はサービス料金の値上がりによるものであって、これは人間の労働に対する評価が高まっているのであるから、これはやむを得ないことであるし、また消費者
物価の値上がりは
所得の
増加に吸収されておる、かような趣旨のものでありました。確かに卸売
物価の趨勢は
政府の言われるとおりであり、
昭和三十七
年度には、その低落さえ予想されるのであります。しかしながら、消費者
物価のほうは、本
年度に引き続いて、明
年度にもかなりの上昇が予想されておる。消費者
物価のかような引き続く上昇傾向は、決してこれは安易に見過ごしてはならない現象であると思うのであります。消費者
物価の上昇並びに旺盛な労働力需要は、一面においては
賃金水準の上昇を刺激するものであります。鉱工業
生産におきましては、労働
生産性の向上によって
賃金の上昇分を吸収し、コストの上昇となって現われない場合も多々ありましょう。しかし、それがある一定の限度を越えますと、どうしてもコストを上昇させ、したがって
物価を押し上げるという、悪循環を発生させるおそれがあるのであります。かような事態を発生させないように適切な
措置がとられる必要があると思うのでありまするが、これに対して
政府はいかにお
考えでありましょうか、お尋ねをいたすのであります。また、流通部面におきましては、中間経費の縮小ということが今後ますます大きな問題となってくるでありましょう。この問題については、今のところほとんど大した手がつけられておらぬように思うのであります。私は、
物価問題を今後の重要な課題の
一つとして
政府は真剣にこれが検討を進められるように要望いたす次第であります。以上の点について
総理大臣並びに
経済企画庁長官の明確なる御
所見を承りたいと存ずるのであります。
第五点といたしましてお伺いしたいことは、
所得格差の問題についてであります。
経済成長政策は、
経済成長の過程において、各階層間、業種間、地域間の
所得格差を是正し、漸次縮小させていくということを、
一つの大きな課題としておるのであります。
昭和三十六年版の「
国民生活白書」によりますと、地域間、業種間の
所得格差はなお相当に大きなものがあるのであります。今後、
所得格差の是正という見地から特に重視すべき問題は、申すまでもなく
社会保障政策の
拡充強化、農林漁業対策の推進、また、
中小企業対策の推進であろうと思うのであります。明
年度の
社会保障関係予算は、
生活保護費を初め、その他各般にわたって相当大幅な改善が予想されておるのでありまするが、
所得格差を縮小させる上において、はたしてこれで十分なものであるのかどうか。また、農業基本法はすでに制定されましたけれども、その目的を十分に実現するためには、今後非常な
努力を必要とすると
考えるのであります。ことに、
欧州経済共同体が農業面においてもそのブロック化を進めておりまする現在、
わが国農業の近代化はきわめて喫緊の問題となっておるのであります。
わが国農業の近代化、その国際競争力の強化につきまして、
政府はいかなる構想をお持ちであるか。この問題については、農林大臣の忌憚のない御
所見をお伺いいたしたいのであります。
また、
中小企業につきましても同じような問題が伏在しております。
昭和三十七
年度の
中小企業関係予算は、従来に比して相当大幅な増額が行なわれておるのでありまするが、はたしてこれで
中小企業対策として十分とお
考えであるかどうか。また、業界において多年要望しておる
中小企業基本法については、今
国会において
政府は提案の御用意があるかどうか。これらの点について、通商産業大臣の御
所見を承りたいのであります。
次に、後進地域の総合開発、僻地、離島の
振興、新産業都市の建設、その他、地域間の
所得格差の縮小ないし解消に役立つべき施策は、はたして現在の
程度で十分であるかどうか。総合的な観点に立った産業立地計画を樹立して、強力にこれを推し進めていく用意を
政府はお持ちであるかどうか。これらの点について
政府の御
所見を承りたいのであります。
最後に、私は文教
政策について若干お伺いいたしたいと存じます。
最近における
設備投資の増大、特に高度科学技術産業の伸展によって、産業界における技術者の需要は旺盛をきわめて参りましたことは申すまでもないのでありますが、その結果といたしまして、理工系の学生はもちろんのこと、この系統に属する学校の教職員までも続々と産業界に転身しつつある状況であります。かような事態に対処して、科学技術者の養成について、
政府はいかなる対策をお持ちになっておるか。これをお伺いいたしたいのであります。
最後に、青少年の教育問題については、これは立国の根本に関するきわめて重大なる問題であると
考えまするがゆえに、
総理大臣並びに文部大臣の率直な御意見を伺いたいのであります。
冒頭に述べましたように、戦後
わが国の
経済の
発展はまことに驚異的とさえいわれておるのでありまするが、一歩退いて
国内の現実を注視いたしますと、そこには物の
生産と
経済の
成長のみが重要視されて、民族繁栄の基本である教育問題が実際上はとかく軽視されていたのではなかろうかと、かような
考えすら起こるのであります。今日なお
民主主義の危機が叫ばれ、また一面、青少年の犯罪は実におそるべきものがあります。戦後の
わが国においては、とかく形而下の問題にのみとらわれて、国家の将来をになうべき青少年の訓育については、どこかに大きな抜けたところがあったのではなかろうかとさえ私は思うのであります。このままの状態を続けていきますならば、たとえよき技術者は生まれようとも、真にりっぱなよい
日本人と呼び得るかどうか、りっぱな次代の形成は望むべくもないのであります。国家百年の将来を思うとき、まことに深憂にたえないものがあります。
総理大臣並びに文部大臣から、事教育に関するかたい御信念を承りたいと思うのであります。
以上各般の問題にわたりまして
質問を試みましたが、要するに、国際
社会にあっては、平和の維持に貢献しつつ、
わが国の国際的地位を向上させ、
国内におきましては、安定した
経済の
成長によって、
国民全部がひとしく福祉国家の恵沢に浴するとともに、よき子孫を育成して、民族永遠の繁栄をこいねがうからにほかならないのであります。
総理大臣並びに
関係大臣が腹蔵ない御意見を披瀝せられんことを要望いたしまして、私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕