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1962-04-04 第40回国会 参議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月四日(水曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————    委員の異動 本日委員西田隆男君辞任につき、その 補欠として大谷藤之助君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松野 孝一君    理事            青田源太郎君            井川 伊平君            亀田 得治君            大谷 瑩潤君    委員            大谷藤之助君            加藤 武徳君            野上  進君            赤松 常子君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君   政府委員    法務省民事局長 平賀 健太君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   参考人    東京大学教授  鈴木 竹雄君    一橋大学教授  番場嘉一郎君    日本公認会計士    協会会長    辻   真君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○商法の一部を改正する法律案(内閣  提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  商法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案については、去る三月六日に提案理由説明を聴取し、三月八日に補足説明を聞いております。  本日は、まず参考人意見を聴取いたします。本日の御出席参考人は、東京大学教授鈴木竹雄君、一橋大学教授番場嘉一郎君、日本公認会計士協会会長辻真君の諸君でございます。最初に参考人各位にごあいさつ申し上げます。御承知のとおり、本法律案は、株式会社等計算を合理化し、また事務簡素化等をはかるための改正を行なうものでありまして、各方面の関心も大きく、重要な法律案でございます。つきましては、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を伺いまして、本法案審査参考に資したいと存じ、委員会の決議により御出席をお願い申し上げた次第であります。参考人各位には、御多忙のところ、わざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございます。委員会を代表し、厚く御礼を申し上げます。  それでは、これより御意見を伺いますが、時間の関係で、御意見の開陳はお一人二十分程度にお願いしたいと存じます。  なお、委員方々に申し上げますが、御質疑は、三人の参考人方々の御陳述が全部終了してからこれを行ないますから、御了承願います。  それでは、まず、鈴木参考人にお願いいたします。
  3. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 今度の商法改正は、ただいまお話のありましたように、株式会社計算関係内容を改めるということと、株式会社事務簡素化をはかるという趣旨改正をその内容としているものでございますが、まず第一の、計算内容に関する点について若干私の考えを申し述べます。  現在の商法規定というものは、この株式会社計算関係におきましては、非常におくれた規定でございまして、会計の実際と非常に離れております。ことに、企業会計原則あるいは財務諸表規則と、非常に矛盾をしている点が多々ございますので、これをそのような会計実務、正常な慣行というものに近づけていくということが非常に必要な点と考えられるわけでございます。そういう意味におきまして、今度の改正というものは非常に大きな意味を持っていると存じます。ただ、このようにいたしますと、商法は、今までの立場を捨てて、ただ会計の要求というものにそのまま従ったものであるかというふうにお考えになるかもしれませんけれども、やはり商法立場といたしましても、それを正しく考えました場合には、 このような改正を行なって少しも差しつかえかないと考えるわけでございます。  今までの商法におきましては、会計について商法規定をするということは、もちろん企業の勝手の問題じゃないので、それは企業関係者というものがある。その関係者利益考えるものであるということがポイントであることは申すまでもないのでありますが、その場合に、債権者利益というものを非常に考えていく、それももちろんけっこうでありますが、そのときに、企業がかりにつぶれたならば、債権者はどれだけの満足を得るかというような、そういう考え方をいたしまして、そしてたとえば評価につきましては、時価による評価というものを基準にしていたのでありますけれども、しかし、企業というものが、決算の場合を考えますれば、継続をしている企業であって、決してつぶれる企業ではないわけでございます。そこで、問題になりますことは、やはりどれだけの営業成績が上がっているか、損益計算はどうであるかというところがポイントであって、解体したならばどれだけの時価があるかというような問題をそこで取り上げるということがそもそも間違いだと言って差しつかえないじゃないかと思います。そこで、このような損益計算立場からやっておりますのが会計実務であり、会計の正常な慣行なのでありまして、そのようなことを考えるということがむしろ当然のことだったんじゃないかと思われます。そして会社債権者立場などを考えましても、そのような営業成績がどういう形になっているかということを知りますことによって、やはり債権者利益というものは十分はかられているということになるわけであります。このような点から、商法が自分の立場を曲げて会計に屈服をしたというのではなくて、やはり正しい形において商法がその姿を改めたということであろうと考えるわけでございます。その立場におきまして見て参りますと、評価基準について、商法が今まで時価主義を基調にしておりましたけれども、原価主義に徹底していくという立場をとりましたことも、あるいは繰り延べ勘定について、今まで認められておりました範囲を非常に拡大をいたしまして、実際に合わせ、また引当金計上を明文で認めたというようなことも、みな妥当と思われると存じます。  なお、この改正法におきましては、直接、計算様式についての規定を置いておりませんけれども、これは、商法施行法の現在の規定によりまして、省令でもって貸借対照表損益計算書様式を定めるということにしておりますが、これも、様式の点になりますと、法律に書きますことよりは、省令に書いたほうが実際的であるということを考えますと、やはり妥当の策と考えられるわけでございます。ただ、このようにいたしましても、やはり会計の側から、まだ十分でないというふうなあるいは批判があろうかと思われるわけでございます。しかし商法規定会計方面で要求いたしますことよりもいわばゆるやかであるというふうな場合には、企業会計原則なり、あるいは財務諸表規制なりでそれをもっと狭めていけばいいわけでございますから、別にその点については差しつかえないんじゃないかと思われます。これに対しまして、会計がそれを認めようとしても、商法規定がじゃまになってできないというふうな点で、会計のほうからもしこれに対する批判がありといたしますれば、それはもとより考えなければならぬものと存じます。そしてそのようなものとして考えられますのは、先ほど申しました繰り延べ勘定というものを、今度開業費であるとかあるいは試験研究費であるとかいうようなものに拡大をして参りましたけれども、その場合に、配当制限を行なっているということを会計立場としては一貫しないものであるというふうに言われるかもしれないと思います。しかしこれは、田中耕太郎博士の言われておりますことに、法律妥協的性質ということを言っておられるのであります。つまりそれは、ある一つの事項がいろいろな目的というものにつながっていくというふうな場合に、ある一つ目的を貫いていけば、それは非常に徹底した形になりますけれども、もう一つのそれと矛盾する、あるいはそれと衝突をする利益というふうなものを考えなければならぬときに、一つのものだけに貫いていくわけにいかないで、そこに妥協というものが出てくるほかはないわけなんだという議論をされておるのでありますが、この繰り延べ勘定の問題におきましても、期間計算という立場からすれば、なるほどこのような配当制限というふうなものは要らないと言われるだろうと思いますが、他方会社財産というものを確保していく、資本の充実を守っていくというふうな立場から申しますと、必ずしもそう簡単に無制限に認めるというわけにはいかない。そのためには、あるいはそのような繰り延べ勘定を認めます場合あるいは範囲というものを非常に正確に限定することができるのなら、それでも差しつかえないでありましょうけれども、それは立法技術的にとうてい不可能であるということになりますと、乱用が行なわれるかもしれない。乱用が行なわれたらば、会社財産というふうなものの確保がはかられないという心配がある。そういう二つの目的というようなものがここでぶつかって参りますと、おのずからそこに一つのものに徹底できないで、妥協をした形のものになってくるわけでございます。これは、立案の過程におきましても、ある人は一方を重視し、他の者は他のほうを強調いたしました結果として、結局妥協の産物として現われてきたものでございまして、この点は、やはりやむを得ない立法ではないかと私は考える次第でございます。  さらに問題になります点としては、この改正法規定解釈というふうなものについて、いずれの点においても疑問が全然ないようなものではございません。多くの点におきまして、あるいは少なくとも幾つかの点におきまして解釈が分かれる余地というふうなものが出てくるかと存じます。しかしこの点も、やはり立法というものの一つの宿命とも言っていいかと存じますが、いろいろな考え方というふうなものをそこに持って参りまして、そしてそのいろいろな立場からの主張というふうなものが、そこに結局、何と申しますか、凝結をした形のものというふうなものがこういうものであり、そしてまた、法律でもってそうこまかいことまでは書けないというようなことから出てくる点でありまして、これまたやむを得ない点ではないかと存ずるのでございます。  株式会社事務簡素化あるいは登記簡素化というものを期しました第二の部分でございますが、これらは、いずれもこれを改めれば会社のほうにとっては非常に都合がいい。しかもまた、そのように改めたところで、利害関係人、たとえば株主あるいは会社と取引をする者にとりましてその利益を害するというような心配もないものがそこにあげられているのでございまして、それらはいずれも妥当なものであることと考えるのでありまして、細目の点については、御質問があればそれにお答えをするというふうにさせていただきたいと存じます。  このように考えますと、私は、今度の法律案というようなものは妥当なものであって、これが早急に立法として実現することを希望するものでございますが、ただ、この法律案につきまして遺憾な点が二、三ございます。  第一は、このような計算内容を定め、あるいは計算様式を先ほど申しましたように省令をもって定めるというふうなことにしておりますが、このような計算書類株主総会を通りましたときに、公告をされるということが起こってくるわけでございます。現行法によりますと、それは、定款の定めました公告の方法、すなわち官報かあるいは日刊新聞紙の中から出款が選びましたものに公告をしなければならないということになっておるのでございますが、これは、大会社では大体行なっておりますけれども、中小の会社の中には、このような公告をしないものが非常に多々あるわけでございます。しかも、その公告をしたかしないかということについて、これを追究していくということが困難なために、罰則の定めがあるのにかかわらず、これを実際においては制裁を課するというようなことがなく、言いかえれば、法がじゅうりんされたままで済んでいるという状態があることは、きわめて遺憾に存ずるわけでございます。そこで、法制審議会商法部会におきましては、このような計算書類というふうなものは、登記所にこれを配備させまして、そしてだれでもそれを見ることができるという形にしたらどうか。そうすれば、登記所においてそのような提出があったかないかということはきわめて簡単にチェックできるわけだから、したがって、制裁を課するというふうなこと、言いかえれば、そのような形において計算書類を公示させることが可能である。こういうふうに考えたのでございます。しかしそのためには、登記所の人的、物的の設備もしなければならない、予算も要るというふうなことで、折衝いたしたらしいのでございますが、それができなかったために、この法律案の中には結局姿を見ないで終わってしまったわけでございますが、しかし、株式会社というふうな有限責任会社というものが、それがその財産だけしか債権者のカタになるものはない。こういうものである以上は、やはり経理内容というものを公開をするということが必要でございますし、またそうすることが、この改正案の定めておりまする計算内容に関する規定を順守する、様式を順守するということの保証にもなるわけなんでございまして、したがって、このような形における立法がやはり早急にできなければならない。それが盛られていないということについて私は遺憾を感ずるのでございます。  もう一つポイントは、この法律案は相当大きな内容を持っているように見えますけれども、しかし、商法全体から見ますれば、株式会社法に関するものにすぎない。しかも、株式会社法の中の一つ計算関係規定、そうしてまた、他方におきまして事務簡素化登記簡素化というふうなものが盛られておりまするけれども、いずれもそれはきわめて簡単な事柄にすぎないのでございます。で、商法全体にいたしますれば、もちろん株式会社にいたしましても、もっと改めなければならないところが多々あるわけでございますが、その点から考えますと、きわめて小規模の改正にとどまっているということは遺憾なことだと存ずるのでございます。  商法が終戦後、昭和二十五年に改正をされ、さらに昭和三十年に小さな改正がございましてから、すでに七年たったわけでございます。その間、この立案に当たっておりまするのは、法制審議会商法部会でございますが、商法部会としては、三十年の改正あとで、三十二年に制定になりました国際海上物品運送法立案というものをやって、それが終わるとともにこの問題にかかりましたのでございますが、結局、それから以後四年を費しております。四年の間にこれだけのことしかできなかったかというふうに思われるかもしれませんけれども、それは現在の立案機構というものがはなはだ徹底していないということによるのではないかと思います。法制審議会商法部会というふうなものも、結局、委員はみんな臨時に集まってくるものでありまして、それを専門としているものではございません。もちろん、法務省に優秀なスタッフを備えて、若干の人が当たっておるのでございますけれども、何といっても人が非常に足りないということから、大規模の立法というものをやるにふさわしくないのでございます。しかし、このようなことをしておりますと、ほかのところをいじっておりまするうちに、一ぺん改めたものがまた時期おくれになってしまうというふうなことで、やはりこの点におきましては、政府あるいは国会におかれましても非常に思いをいたされまして、やはり立案機構というふうなものについて、もっとしっかりした形のものをお作りになるというふうなことが必要なのではないかというふうに考えるのでございます。  結局、そのような点におきまして、今度の法律案というふうなものが、先ほど申しました計算書類の公示というふうな具体的な提案があるものを盛ることができなかったという遺憾、あるいは大きな目から見ればやはり小規模の改正にすぎないのじゃないかというふうな遺憾はあるわけでございますが、この法律案自体にいたしましては、先ほどから申し上げましたように、このように商法改正していただくならば、それは非常に大きな改善というものがそこにあるということは申すまでもないわけでございますので、そういう意味におきまして、今度の改正法律案に対しては、私は賛成したいと存ずるのでございます。
  4. 松野孝一

    委員長松野孝一君) どうもありがとうございました。  次に、番場参考人にお願いいたします。
  5. 番場嘉一郎

    参考人番場嘉一郎君) 私は、会計学立場から多少こまかい批判的な意見を述べさせていただきたいと思います。したがって、お手元にございます商法の一部を改正する法律案要綱というこのプリント及び商法の一部を改正する法律案というこのプリント、これを御参照願いましてお聞き取り願いたいと思います。  改正法律案のほうでは、五ページの二百八十五条ノ二という条文でございますが、ここに流動資産についての評価規定が盛られておるわけでございます。その第一項は原価主義を打ち出しておる。それから第二項は定価主義を打ち出しておるのだと、こういうことでございます。流動資産評価につきましては、原価主義という評価原則、それから定価主義という評価原則、こう二通りございます。そのいずれが現在実務上広く行なわれておるかと申しませば、第二項に規定されておるところの定価主義のほうであるということがいえると思います。ただし、理論といたしましては、原価主義を徹底的に採用するということのほうがすぐれておるのだ、こういう考え方が最近次第にまあ勢力を占めつつあるというわけであります。そこで、改正法におきましては、原価主義定価主義を選択的に適用させると、こういう趣旨規定立案されたわけであります。ところで、定価主義を選択するという会社の場合には問題ございませんですが、原価主義のほうを選択したという場合におきまして、時価低落が著しくて、そうして時価の回復が認められないという場合におきましては、原価主義をとりましても時価まで評価を下げる必要がある。こういうことがただし書きでもって明らかにされておるわけです、この点につきまして、原価主義と申せばあくまでも原価を押し通していくと、こういう考え方であるわけでございます。したがって、時価低落がはなはだしい場合におきましても原価主義を押し通すということが理論的には望ましい、こう考えます。したがって、時価低落が著しい場合におきましても、評価時価まで下げないということが徹底した行き方ではないか、こう考えます。そこで、それでは資本の維持ということができないじゃないかという反論があると思いますが、その点につきましては、あとに出て参ります繰り延べ資産ですが、ここにありますように、配当制限をもってそこのところを縛っていくということでよろしいのじゃないか、評価を下げるべき金額相当額配当をさせないということで行ったらいかがか、こう考えるわけであります。それが第一点であります。  第二点は、要綱の第七、それから条文では二百八十五条ノ七というところでありますが、のれんというものは、性質といたしましては無形の固定資産である。こういうことであります。したがって、評価原則は、二百八十五条ノ三を原則として適用するという趣旨のほうが妥当ではないか。つまり償却を何年間でするかということは、自主的に会社がきめて償却をしていくということでよろしいのではないか。案では、五年以内に償却をすべしと、こういう案になっておりますが、一般の固定資産と同様の扱いをしてよろしいのじゃないか。これが第二点。  それから要綱の第八でございますが、そこをごらんになりますと、何年以内に償却すべしという表現が用いられておりますが、これは、以内ということでありませんで、何年をもって償却をせよ、以内という、これを削除したほうが損益計算という立場から妥当ではないか、こう考えるわけであります。  それから要綱の第八の3でありますが、社債発行費用償却を三年以内、こういっておりますけれども、これを社債償還期限でもって償却期間をきめるということでいくほうが妥当ではないか、こう考えるわけであります。  それからもう一つは、企業会計原則というものがございますので、商法におきましても、企業会計原則によって会社経理をすべしという一つの大きな原則規定を置いてほしいという点、これが第四、  以上が私の批判的意見でございます。
  6. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ありがとうございました。  続いて辻参考人にお願いいたします。
  7. 辻真

    参考人辻真君) 私は、この改正案の中の合名会社合資会社の条項と附則につきましてはしばらく留保いたしまして、本案の冊子であります株式会社計算規定改正につきましてだけ、ここで意見を申し上げたいと思います。  結論を先に申し上げますと、まず、本案に盛られております改正のうちで、企業会計の面から見ました基本的な主要点を一応ここであげることにいたしますが、第一に、現行商法は、会社財産のうち、流動資産評価基準といたしまして、いわゆる時価以下主義を採用しておりましたが、この基準を捨てまして、本案は、原則として原価主義を採用せられております。第二は、繰り延べ資産範囲を大幅に拡大をされまして、同時にまた、いわゆる負債性引当金に関する規定を設けられておりますが、これらは、前に述べました流動資産原価主義を採用せられたことと相待ちまして、従来の財産計算順守考え方を改めまして、収益と費用を対応させた会社経営成績を表現するという、会計実務のほうでいわゆる期間損益計算に重点を置かれたのが基本になっているように思われます。  これらのことは、本案の基本的な改正上の思想と見られると考えます。これは、近代企業会計理論会計実務界の現実的な要請にこたえたものであると考えられるので、まことに画期的な改正と思われます。そしてその考え方はまことに適切なものであると存じます。本案には、この他いろいろな思想が織り込まれていると思いますが、私は、企業会計実務者といたしましての立場から見て、この基本的な考え方による改正は時宜に適したものとして、本案全体に対しまして賛成の意を表し、今国会におきましてぜひとも本案が成立されまして、できるだけ早く実施せられることを望むのであります。  この点に関しまして少しく詳細に申し上げてみますと、現行商法は、流動資産評価につきましては時価以下主義をとっております。流動資産につきまして、現行商法の三十四条は、「財産目録調製ノトキニオケル価格ヲ超ユルコトヲ得ズ」とございますから、時価取得価額を下回ったときは、時価まで評価下げをしなければならない。ところが、時価取得価額を上回りましたときは、時価まで評価益計上することが許される。こういう建前でございますが、時価取得価額を上回った場合は、会計上いわゆる技術面利益計上することができることとなります。そもそも時価と申します概念の中には、いろいろあると思います。たとえば、再調達価額とか、処分価額とかいう概念があるわけだと思いますが、具体的にある物の時価をきめるということは、必ずしも明確ではございません。その価格のきめ方は、したがって恣意的になる危険を含んでおりまして、時価であればいいという考え方は、多分に配当可能利益を減少させて、株主利益を阻害する結果となる危険も多いと思います。近代会計原価主義を採用していることは、実は別の観点からするものでありまして、将来回収をしなければならない価額という会計観に立っているものであります。本案原価主義を採用せられましたことは、そういう意味における会計学の通説に従ったことと思われます。  次に、現行商法におきまして繰り延べ資産として計上を認めておりますものは、設立の費用その他でございますが、改正案は、さらにこの上に、新製品または新技術研究、新技術または新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓、これらのために特別に支出したものを加えております。会計実務上は、試験研究費とか、あるいは開発費とか呼ばれておりますものの範疇に入ると思います。これらは、会計慣行としまして、実務上はもうすでに広く行なわれておりますところでありまして、財務諸表規則の三十一条によりまして、すでにこの慣行が認められているところのものでございます。  なお、本案が将来における特定の支出または損失に備えて引当金を負債の部に計上することを許したということは、期間損益計算の適正を期したと考えられると思います。現行法は、この種の引当金法律上の債務でないという理由で、これを貸借対照表の負債の部に計上して、同時に、その年度の費用に落とすことにつきましては、否定的な解釈がとられているといえるのでございますが、しかし、決算期現在におきまして、その金額や債務の確定の時期が必ずしも明らかでないものでありましても、その金額を合理的に算出することが可能であるものは、期間損益計算におきましては、当期の費用計上するとともに負債に計上しなければならないはずのものだと思います。その典型的なものに、従業員の退職給与引当金のごときものがあると思われます。この種の引当金貸借対照表計上せられることが許されることは、会計理論にも適合し、かつ、会計実務において最も望まれているところのものでございます。  以上が、この改正の基本的な思想から見て、本案に賛意を表するゆえんを述べたものでございますが、しかし、この改正案のみによって、現存の会社会計に関する幾多の未解決の問題が全部解決せられると考えているものではございません。本案につきましては、関係方面からこの改正に関しましてのいろいろの希望が申し述べられていることを伺っております。しかし、この改正が意図するところのものはまさに適切であると考えられますので、自余の問題はしばらく後日に譲りまして、少なくともこの改正だけでも、商法における大きな進歩となるという意味におきまして、本案全部について私は賛意を表したいと思うものでございます。  ところで私は、この改正案に関連いたしまして、ぜひこの機会に申し上げておきたい一点がございます。それは、改正案と監査制度との関係でございます。本案内容の若干に触れながらこの点を申し上げてみたいと思います。  この改正案には、私は一つの大きな特徴があると思います。現行商法三十三条には、財産目録及び貸借対照表内容といたしまして、「動産、不動産、債権、債務其ノ他ノ財産」と規定されております。すなわち、具体的な財産のみを考えているようでございます。ところが、この改正案によりますと、これらのほかに、計算せられた数個、言葉をかえて申しますと、ある計算上の大きさが資産としてあるいは負債として計上せられることが許されることになります。もっともこれは、現行法におきましても、例外的に若干許されてはおりますが、本案によりますれば、その範囲は大幅に拡大せられることとなるのでございます。これは一つの大きな特徴と認めることができると思います。現行法のもとにおきまして、貸借対照表計上せられる資産負債は、動産とか不動雄とか債権とか債務とか具体的なもの、あるいは権利義務とかが対象でございましたが、改正案によりますれば、このほかに、単なる計算上の大きさというものが資産や負債に計上せられることとなるのであります。会社経理は、その結果が貸借対照表とか損益計算書の形で公表せられまして、一般社会特に株主とか、将来の株主とか、あるいは債権者、従業員その他の利害関係者に情報を提供することとなっております。資産負債の中で、その内容に具体性のあるものをしばらく除きまして、単なる計算上の結果としての資産負債の計上額の正確性とか妥当性とかをどうして保証することができるのでございましょう。これは、歴史的に考えましても、会社と利害関係のない、独立不順の立場にあり、かつ、経理専門知識を持った監査人の監査証明による以外にはないとされているところのものであります。この点につきまして、なお若干敷衍させていただきたいと思います。  流動資産評価は、取得価額または製作価額によることとなっております。時価取得価額または製作価額より著しく低いときは、時価の回復が予見できる場合を除くほかは時価評価を行なわなければならないこととなっております。この場合、取得価額は別にいたしまして、製作価額とは一体何を意味するものでありましょうか。会計上の言葉をもっていたしますれば、製造原価意味することとなるのだと考えます。しからば一体、製造原価とは何であるかと考えますと、これは、直接原材料費、直接労務費、直接経費あるいは間接諸経費の配賦額、そういうものから構成されている計算上の概念でございます。その算定は決して簡単なものではございませんで、完全でかつ組織的な計算の結果によって算定のできる一つの数個でございます。  それから、固定資産評価は、取得価額または製作価額により毎決算期に相当の償却をすることになります。この場合の製作価額の算出がまた複雑であることは、流動資産の場合と同様であろうと思います。なお、一体「相当の償却」とはどういう基準によるべきでありましょうか。かりにその基準が定まりましたとしても、その計算が非常に複雑であることは、経理の実際界ではもうすでに経験済みのことでございます。これもまた計算上の一つの大きさであって、この計算数個が取得価額または製作価額から控除せられることとなるのでございます。繰り延べ資産として計上を許されます開業準備費というものがございます。この範囲を実際的にどう決定すべきであるか。期間経費と繰り延べ経費の限界をどういう基準によって分けるか、これも一つの問題でございます。試験研究費、開発費もまた同様でございます。試験研究費、開発費につきましては、本案の二百八十六条ノ三に、「特別ニ支出シタル金額」とございますが、これはいろいろ議論がございますようでございますが、この支出というものの解釈は、現に単に現金を出した、その現金そのものを対象として考えるものではなくて、ある特定の試験あるいは開発のために費消せられた一切の価値を意味するものだと、こう解釈しなければならないと思います。もしそう解釈しないとすれば、それは現在の会計慣行に矛盾するところが出てくると思います。したがって、たとえば試験研究費の中には、試験設備の修繕費、償却費、一般経費の割掛配賦額まで入るといたしますれば、それは計算上の一つの大きさとして把握されなければならないものであると思います。特定の支出または損失に備えるための引当金を債務として計上することが許されますが、その額は、本来予想せられる数値によることとなりますが、この予想は、合理的に計算せられることが可能であることが必要条件となるわけだろうと思います。合理的であることが前提となる計算上の大きさがそれを求めているものだろうと考えます。  以上申し述べましたことは、本案によりまして計算上の大きさというものが求められるものの若干の例でございますが、これらの計算の正確性とか妥当性とかを保証する制度が、会社の公共性から見てぜひとも必要なものと考えるわけでございます。本案の段階では、まだそれに触れられておりませんことは非常に残念でございます。このことは、前に述べましたように、会計に関する専門の知識を持って、かつ会社と利害関係のない第三者をして会社経理について監査を行なわしめ、その証明書を会社の財務諸表とともに公表する制度を採用すべきであろうと存じます。この制度は、外国の立法例や慣行において多く見られるところでありまして、わが国におきましては、すでに昭和二十四年に、この目的のために公認会計士法の制定を見ております。現にその資格を有する者が二千人に近からんとしております。また、株式会社におきましては、株式が公開せられております千七、八百社のおもなる会社は、証券取引法によりまして、公認会計士の監査を受けて、その監査証明書が公表せられている現況でございます。株式会社には現在も監査役という機関がありまして、会社会計監査を行なっておりますが、監査役が総会において選任せられる場合には、会計の専用の能力を持っていることを条件としておりません。したがいまして、前に述べたような監査を行なうに必ずしも適格の人々のみが選任せられているとは言いきれない現状であると思います。ここに監査役制度の再検討を要する必要を感ずるものでありまして、この再検討は、公認会計士監査の実施を前提としたものでなければ本来の意味を失うと思います。近代会計は、真実の原則とか、継続性の原則とか、いろいろの原則の上に組み立てられております一つの仕組であります。かつ、これらの原則によって会計せられた結果が財務諸表の形式によりまして明瞭に表示せられて、一般に公表されて、利害関係者に正確な情報を提供するものであります。それで、ここに特に御留意を願いたいことは、この意味におきます近代会計は、会社と利害関係のない職業的専門家による公正な監査を受けるということを前提としたものでございます。監査によって保証せられていないところに近代会計原則は成り立たないという前提だと思います。そこで、この改正案原価主義を採用いたしまして、財産計算から収支計算考え方に転換せられたことは、近代会計と歩調を合わせられたということにおいて、私は本案に賛成であることは、前に申し述べたとおりであります。さらに、これに加えまして、独立不満の立場からする監査制度をこの中に織り込んでいただけますなら、画龍点睛と申すことができると思います。しかし、この制度を商法の中に取り入れることには、監査役制度との調整、株式会社資本金額の制限等幾多関連する事項の解決を必要といたしましょうし、立法技術上からも、今直ちに本案改正に織り込むことは困難な事情もあると思われますが、できるだけ早く、次回の改正におきまして、公認会計士監査、つまり外部監査の実施につきまして適当な措置をとられんことを切望するものでございます。  以上で私の意見を終わります。
  8. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  9. 亀田得治

    ○亀田得治君 三人の方々から、たいへん専門的な、大事なポイントについてのお教えを受けたわけですが、まあ私たちもなかなかこういう方面には暗いわけでして、あるいは質問がたいへんわかりきったことじゃないかというようなことになるかもしれませんが、若干ひとつ補足して御説明をいただきたいと思います。  最初に、鈴木さんにお尋ねいたしたいのは、貸借対照表公告の問題でありますが、まあ現行法を変えまして、御説明がありましたように、登記所提出をする、一般の人がいつでも見れるようにする、現在の制度でありますと、新聞などうっかり見過ごしておるとわからない、こういうわけでして、これを改めるという点は確かに必要だし、また、法制審議会でもそういうふうな結論であったようであります。ところが、何か法務当局と折衝をされたのでありますか、予算措置等が急につけにくいといったようなことで、このことが法案になってこなかったようでありますが、これは、次の国会あたりには必ずこの点は改正するといったようなことにでもなっておるのかどうか、その辺のいきさつをもう少し御説明をいただきたいと思います。  それと、もう一つは、そういう登記所提出をして閲覧をさせるということであれば、現在の新聞等に公告する、あんなことはほとんど要らないようになると思いますが、やはりそういうことも残しておくといったようなことになるのかどうか。また、その辺についての諸外国の最近の実例はどのようになっているのかという、その点についてお話をいただきたい。  それからもう一つは、これは全般の問題だと思いますが、現在の法制審議会機構がどうも立案機関としては不徹底だと、こういう御指摘があったわけですが、これは、私たちとしても、商法だけじゃなしに、いろんな点で大事な問題点の一つだろうと思います。どういうふうなそういう立案機関というものがいいのか、こういう点について具体的な、もう少しざっくばらんな御意見を聞かしてもらいたいと思います。まあ私の見解では、ちょっと今の法制審議会というのは時間がかかり過ぎるようにも思いますが、しかし、それだけに、いろんな専門家の方が長時間かけてやっているものですから、その過程において、いろんな方面意見が入ってくる、この時間というものも、ある意味では相当値打ちがあるんじゃないかという感じもいたしております。どうしても、専門的にだれかがやるとなると、やはりこう視野がややもすると小さくなったり、そして専門的にやるものですから、どうして毛自分の意見考え方、主観にこだわりやすいといったようなこともあったりいたしまして、そこら辺、私たちもどういうものがいいのか、こういう機会はめったにありませんので、ひとつお話を聞かしてほしい。全部一通り私の疑問を申し上げましょう。  それから番場先生は、会計専門家でおられるようですので、ちょっとこまかいことを質問いたしますが、今度新たに引当金というものが正式に貸借対照表の中に載ってくる。こういうことが法律上認められるわけですが、この改正案の程度の表現の仕方で、はたして適正なのかどうかですね。まあ引当金自体がいろんな種類のものが考えられるわけですから、そう特定的に書くわけにもいかないかもしれないわけですが、しかし、大よそ普通考えられるものはむしろ例示的にでも書いたほうがいいのじゃないかといったような感じがするわけでして、あまりこういうものがルーズに使われるということになりましても、また問題が多少別個の角度から起こるんじゃないかというふうな気持がするのでお聞きするわけです。それからなお、「特定ノ支出又ハ損失」とこう言っているのですが、この特定といったようなことも、この程度の表現でいいのかどうかですね。それからもう一点は、流動資産評価のところで、一項と二項とありまして、第一項が強行的な規定になっております。ただし書きのほうですね。したがいまして、一項では著しく低いとき、二項では低いとき、こうなっておるわけですが、一項が強行規定であるだけに、そこの限界が間違うと、やはり違法ということになるわけでして、ちょっと会社によって非常なアンバランスができたりするようなことも考えられますが、しかしまあ法律の表現としてはこれしか仕方がないんだというふうなことも考えられるわけですが、そこら辺のところをもうちょっと会計学立場から……。  それから辻先生に。先ほど先生が御指摘になりました、計算上の資産とか、負債とか、こういったようなものが今回大きく認められてきた、これは非常に現状に合ういい点だということを強調されたわけですが、それだけに、会社内部における扱い方が非常なアンバランスが生ずることも考えられる。しかし、そういうことがあるから、公認会計士制度とか、こういうものの改正なり、保証ですね、そういう点についてのしっかりした制度があるんだというふうなお話があったわけですが、そのとおりだと思いますが、しかし公認会計士の人の意見自身の中でも相当な開きが出てくるんじゃないかというふうなことが心配されるわけですが、いやそんなことは心配要らぬのだ、大体公認会計士の中で、そういう点は一定の水準というものが出てきておるから、そこへまかせばいいということなら、それでもいいわけですが、そこら辺のところをもう少し御説明をいただきたいと思います。
  10. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) ただいま御質問がございました第一の計算書類公告の問題でございますが、これは実は私法制審議会商法部会の部会長をしておりますので、法制審議会商法部会あるいはその小委員会で、いろいろとこの問題につきまして審議をいたしました結果、先ほど申し上げましたような要綱を作成したのでございますが、やはり登記所の整備についての予算というものは直ちに認めがたいといったようなことで——と言っては語弊がございましょう。物的設備のほうは出してもよろしい、しかし人的設備は出せないというようなお話だったと私は仄聞しております。その結果、とにかく人手が足りなくてはどうにもできませんので、一方、この商法改正案にございますように、登記をできるだけ簡素化いたしまして、その人手を分けるとともに、何とかしたいと思ったようでございますが、それでもやはり、これをやるとなれば、人はどうしても要るということになります。それはできないというふうなことで、できない形のものを法律の中に入れるというようなことはやはり困難であるということから、今度は落としたというふうに聞いておるのでございます。この法制審議会要綱の附帯決議のところで、できるだけ早い機会にこれを実施してほしいということは、そういう立場におきまして法務当局にぜひ努力してほしいということをお願いをしたような形でございますが、一体来年になったらそれができるものかどうか、そういうことも、おそらく法務当局といえども確信は持っておられないだろうと思いますが、私といたしましては、法務当局も大いに折衝していただきたいと思いますし、また、そういう形になりました場合には、国会におかれましても、十二分の御理解を持っていただきたいということを考えましたために、先ほどのようなことを申し上げた次第でございます。  なお、その点につきましては、御列席の法務当局の方から直接お聞き遊ばしたほうが、なお正確であろうかと存じます。  それからなお、公告、公示につきまして、登記所提出してファイルするということになったら、今の公告はどうするのだというようなお話でございましたが、これにつきましても、いろいろの考え方がございますが、やはり大きな会社——その大きいという点をどこに置くかの問題でございますが、たとえば、資本金五千万円以上とするか、一億円以上にするか、論がございましょうが、かりに五千万円以上の会社というものは、やはり登記所へ出すだけでなくて、印刷物に載っけて、みんながいつでも見れるような形のものにするということが必要だろうと私は考えております。その場合に、一体そのやり方で今のような官報か新聞紙をそれぞれの会社が自由に選んで載せればいいというような形にすべきかどうか、それも相当問題でございまして、これはまだ法制審議会としての結論が出ているわけではございませんけれども、私だけの考え方を申せば、やはり一つの特定の刊行物というようなものが出まして、それに載るというふうなことが、一番確実に見ることができる方法ではないかというふうな感じを持っております。ただ、官報のようなものでございますと、これはもう見られなくなりますので、官報とは違ったような、何かそういう会社公報的なものができたらいいじゃないかということを私個人としては考えておりまするが、しかし、法制審議会の議としてそういうふうなものが有力であるかどうかというようなことは、私としてここで申し上げることはできません。  なお、外国の公告についての様子はどうなっているかというようなことでございますが、新聞に公告をさせるというふうな例はないようでございます。あるいはイギリスなどでは官庁へ提出をさせるとか、ドイツでは登記所提出させるとか、あるいは会社公報に載せるとか、こういうふうな場合でも、ドイツなどではやはり資本金の制限がございまして、先ほど辻参考人からもお話がありましたが、株式会社の最低資本金というものを制限して、言いかえれば、小さな株式会社はないという建前のもとでやっておりますので、先ほど申し上げましたように、日本で、将来の問題としても、全部の会社について公告を要求するか、ある規模以上のものだけ要求するかと、こういう問題になってくるわけでございます。  それから法制審議会でございますが、もちろん、先ほどお話もございましたように、各方面の方が入っているということに非常な長所がございます。しかし、先ほど申し上げましたように、やはりそれぞれの仕事を持った方がお集まりになるわけですから、どんなことをしても月に何回というふうな形で、そして常住坐臥その問題を考えていただくというわけにはいかないわけで、お集まりになったときに、言いかえれば、持ち合わせの知識——もちろん相当な方ばかりでございますから、持ち合わせの知識といっても相当のものでございますし、それをその場で働かせてお考えになることも十分値打はあるわけでございますけれども、何と申しましても、そういう形でやって参りましたのでは、とにかく非常に時間がかかるわけでございます。したがって、やはり一つ立法機構というふうなものがありませんと、いわゆる六法と言っているような大法典になりますと、とうていこれはいつできるかわからないようなことではないかと存じます。私も常々考えておりますことは、実際自分もずいぶんこの問題について関心を持ち、何とかしなければならない責任を学問的な立場から感じているわけでございますけれども、一体株式会社法というふうなものが全般にわたって再検討され、改正が行なわれるというのはいつのことなんだろうかということを考えますと、これはもうとても予想がつかない。言いかえれば、私が働ける間にはできないのじゃないかという感じを持つわけでございます。したがって、やはり優秀な陣容というものが整いました機構というものができなければならない。そこには、もちろん数が少なくては困りますから、相当の人数がおって、そうして、先ほど御懸念がありましたように、その人たちが自分たちの見解だけでやらないように、調査もするし、出かけて行っていろいろな意見を聞いてくるというようなこともやるし、またでき上がったものはどんどん公表いたしまして、それに対して批判を仰いでいくというふうな形をとっていくならば、そうした片寄った意見でやらないで済むというようなことになるのじゃないか、こういうふうな考え方を私としては大体持っております。そういうものができますことを希望をする。ただしこれは、そういうものができるとなったところで、その陣容をどうするのだということになると、なかなか実際にはむずかしい問題もございましょう。よほど給与をよくしていただいてお迎えにならなければ、とうてい優秀な人たちをここへそろえるというようなことは困難だろうとは思いますが、そういうふうな配慮もしていただいた上での機構というふうなものができることがどうしても望ましいのじゃないかということを考えるわけです。
  11. 番場嘉一郎

    参考人番場嘉一郎君) 引当金があまり野放し的であるという御質問でありますが、これは、条文の中に列挙をすれば、ある程度列挙も可能だと思います。しかし、「特定ノ」というふうな文句を置きまして、その引当金が、会計目的といいますか、損益計算という目的にとりまして合目的引当金である——引当金というものと未払金というものとは紙一重の差でありますが、未払金のほうは、まあ法律的に申しますと、債権債務の関係が確立しておるという未払いなんでありますが、引当金のほうは、まだその段階に至っていない、しかし損益計算をやる必要上未払金的なものを計上する必要があるのじゃないか、費用を立てませんと損益計算というものが合理的でなくなるという意味で、いずれ未払金になるものを事前に計上すると、これが引当金の性格なんであります。そこで、列挙をいたしますと、具体的な場合に何か漏れるという可能性もあるわけであります。その漏れる辺につきましては、どうしても会計専門家の適正な判断でもって引当金計上するかいなかということを決定すべきである、こう考えます。たとえば、会計専門家として公認会計士というものがおりますし、それから大きな会社では、相当の会計専門家が会社経理部にいるということであります。専門家の適正な判断で引受金を設定するということを決定すべきであります。利益操作の意味でいいかげんな引当金をどかどか設けるとか、あるいは不景気のときには引当金を設ける程度を少なくするとかというふうなことをしてはいけないということは、もうもちろんのことであります。そこで、いいかげんなことをさせないという意味で、ひとつ大きな会計原則の線に沿って引当金を設定せよとか、あるいは資産の評価会計原則の線に沿って行なえというふうな、大きな根本規定一つ置くことが必要でないか、こう考えるわけです。  それから、流動資産の第一項でありますけれども、時価低落が著しいかいなか、この判断が人によって違う可能性も生じてくると思います。著しい時価低落と著しくないやつをどの辺で見分けるか、そこがまた一つの判断の問題でございますので、むずかしいと思います。それから、時価が回復するかいなか、この見通しも非常にむずかしいと思うのであります。そこで、こういう規定はできておりますけれども、これの実行、実際的適用という段階になりますと、非常にむずかしい問題になるのではないか、こう考えます。したがって、評価を下げなくてもいい、ある程度配当の抑制をするというふうな線でいくほうがベターではないか、こう考えます。
  12. 辻真

    参考人辻真君) 御質問ございました点を、ちょっと裏側から考えてみますと、この改正案によりまして一つ計算のやり方がきまっても、会社側のいろいろな意見があるし、それによって扱い方が違ってくる面が出るのじゃないか、かりに公認会計士に監査をさせてみても、公認会計士の中でも同じようなことがあるのじゃないか、こういうふうな御趣旨だと思います。たとえば、一つの例といたしまして、試験研究費というものを考えてみますと、これは抽象的に試験研究費考えられるものであって、具体的にその中に入れるものは、これは非常にまちまちでございまして、問題が多いと思います。そこで、会社考え方によりまして、試験研究費の中に入れるものと入れないものとの区分が必ずしも明確でないものだから、会社が恣意的に試験研究費として入れて繰り延べをする、こういうことも考えられるわけでございます。これをもうちょっと具体的に申しますと、かりに、当期の費用に落とすべきものも、当期は利益が少ないから、一ぺん試験研究費の中に入れておいて、試験研究費の中に入れておけば五年間のなしくずしで償却すればいいのだからということで、試験研究費の中に織り込む、逆に、当期は利益が予想以上に出たから、本来試験研究費であるものだけれども、その年度の費用に全額落としてしまうというような、恣意的な考え方会社で行なわれ得る形でございます。そこで、公認会計士の監査を受けたなら、そういうことはどうなるのかというのが、次の問題でございます。公認会計士でございましても、それは意見の分かれる場合もあり得るだろうとは思いますが、少なくとも、公認会計士というものは、会社と利害関係のない、独立不覊の立場にあるものという、この基本的な立場がございます。そうして、公認会計士の監査は、企業会計原則のとおり会社経理が行なわれているかどうかということを見ることが主眼でございます。そうして、監査のやり方といたしましては、企業会計審議会から公表されております監査基準という一つ基準がございまして、それを忠実に行なっていることでございます。一番御記憶願いたいと思いますことは、会社に全然利害関係のない、利害関係があっては監査をすることができないという公認会計士法の規定でございます。全然関係のない独立不覊の立場という立場を持っている公認会計士が監査をするというところが一番重点でございます。したがって、いろいろ公認会計士の中でも考え方が違うかもしれません。少なくとも、会社考えのような恣意的に流れるおそれはないということでございます。
  13. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体了解いたしましたが、最初の貸借対照表登記所への提出の制度、こういう点は法制審議会等でもきちっと意見が統一されたのであれば、むしろこの際法律だけは作っておきまして、ただこのためには、国だけじゃなしに、会社自体にも協力をさせなくちゃいかぬ。現在の公告制度のように、まるっきり有名無実、こういったことになっては、これまたたいへんみっともないわけでありまして、だから、そういう国のほうの受け入れ準備があるとしても、現在の公告制度から見ますと、一年なり、相当の実施上の猶予期間を置いて、その間に十分法律改正になったことを知らしていくということが、この法律の完全実施のために必要じゃないか。だから、ちょうどそういう点もあるわけですから、むしろ法律自体としても、この条文の施行だけは特に附則で延ばしていきまして、法律自身は立法していいんじゃないか、こういう感じを持つわけですが、そのことは、単に国の準備だけじゃなしに、一般の株式会社立場からいっても、そうしたほうが客観的にいいんじゃないか、実情からいって。これは、辻さんがいろいろ実務にタッチされておられるでしょうから、そういう点もひとつ実際の立場からお聞きしてみたいと思います。そうしませんと、登記制度を、たとえば来年なら来年立法化するという場合に、実務関係のほうから急にやられては、やはり混乱もするし、混乱させないとすれば、有名無実になるおそれがあるというふうなことで、延ばされるのであれば、むしろ早い目に立法だけはして、早く世間に知らす、こういうことでいいんじゃないかと思うのですが、そこら辺の感じをひとつ承りたいと思います。  それからもう一つは、今度合併の際における債権者の異議の申し立て、これも現行法二カ月というのを一カ月にしたのですが、特に二カ月を一カ月にしなければならないというほどのこともないのじゃないかというふうに思うのですが、これが現行法が六カ月とかいったような期間であると、ちょっと長過ぎるという感じもしますが、一カ月に幾分縮めるといったようなことが、もう少しほかの部分の改正等もあるようですから、この際はそこまでやらぬでいいじゃないか。それで、決してそんな迷惑を受けるものはないだろうというふうにお考えかどうか、その辺も実情から。  もう一つ、総会に提出すべき計算書類の中から財産目録を省いたわけですね。しかし、総会の前に財産目録を会社自体としては作るわけですから、したがって、印刷の部数が多くなるというだけの違いじゃないかと思うのでして、こういうものもやはり、株主の中には、自分たちもほしいという人たちが相当あるのじゃないか。おそらくそんなものの見ない人も相当あるだろうけれども、やはり関心を持って見る人もあるのじゃないか。会社へ行けば見れるわけでしょうが、自分の手元に一つ置いておきたいというような人もあるのじゃないかと思うわけでして、出席した株主くらいには全部配付できるというくらいにしておくべきじゃないかと思うのですが、どんなものでしょう。三点ひとつ。
  14. 辻真

    参考人辻真君) 今の公告制度にかえまして、登記所へ届出をして、そうしてファイルされていくという、会社側の手続から考えますれば、これは会社は非常に助かると思います。と申しますのは、御承知のとおり、官報へ公告したり、日刊紙に公告いたしますれば、これまた、官報は非常に原稿が幅湊しておりますので、原稿を持って参りましても、実際はなかなか出して下さらないということが一つございます。それから日刊紙は、これまた、非常に費用がかさみ、高いものでございます。現状から申しますと、できるだけ行数を少なくして費用を安く上げたいために、総会で承認を受けました貸借対照表の形でなく、それをさらに要約いたしました形がたくさん出ております。これが法律上いいかどうかということは、ちょっと疑問でございます。そういう実情になっておりまして、手数もかかりますし、費用もかかっております。大きな会社は別でございますが、今の株式会社は小さいものがたくさんございますので、自然公告を出さないということがおそらく大部分になってしまっているのじゃないか。
  15. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、会社自体の負担にならないということですね、登記制度にしても。
  16. 辻真

    参考人辻真君) 登記制度にすれば、会社側は非常に助かるということであります。それから、第二点の債権届出の期間でございますが、これはちょっと私よくわからないことでありますが、一カ月にいたしましても、もちろん支障がないと思いますが、一カ月にしたほうがいいということは、ちょっと私にはわかりません。一カ月にしても、届出のほうの手続にはさしつかえがない、支障は来たさないと思います。  それから財産目録は、これは非常に問題でございまして、現状を申しますと、本来の財産目録というのが総会にかかっているという例はないと思います。と申しますのは、財産目録は、資産、負債その他を個々に列記いたさなければなりませんので、非常に大部なものになります。ところで、現行商法では、財産目録を総会に出さなければなりませんが、総会に提出されたる原案を見ますと、貸借対照表資産の部に同じとか、貸借対照表から資本の部を除いたものに同じとか、はなはだしいのは、財産目録を省略するというようなことが書いてございます。これは、財産目録というのを総会に提出しないほうが、会社のためにも手数が省けますし、非常にいい改正じゃないかと考えます。
  17. 亀田得治

    ○亀田得治君 合併の際における債権者の異議申し立てについて、お答えが多少不明確であったわけですが、鈴木先生は法制審議会でこういうように改正されたわけですが、これはどうしてもこういうふうにしなければならないということですか。
  18. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 合併というのは、現在の商法規定でございますと、非常に時間がかかるものでございます。それで、今の債権者に対する異議もございますし、それから合併手続をいたしますとなおたいへんになる、大体半年やそこらではなかなかできない、八カ月ぐらいかかるという例もございます。とにかく一ぺん合併しようということになって、私がかりに隣りの会社に入るということになったら、ちょっと宙ぶらりんのものでございますから、これはなるべく早く片づけなければ、一緒になるならば早くなってしまわないと、商売をするのに、吸収しても困るのです。だから、なるべく早くしたいということは、これは一致した希望だろうと思います。ただ、そのために債権者なり株主なりの利益をひどく害しては困るということでございますが、しかし、先ほど辻参考人も言われましたように、これを短くしたからといって、おそらく害されるということはないだろうと思います。むしろ、あんまり長いと、かえって忘れちゃうといったようなこともあるかもしれないくらいのことで、適当なところで却って早くしたほうがすべてのために工合がいいと、そういう意味から変えたのでございます。
  19. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうもありがとうございました。
  20. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと簡単に一、二点教えていただきたいと思います。私ほんとにしろうとでございますから、なかなか、こういう会社経理、あるいはこういう問題に対して、まことに知らないことばかりでございまして、一番私どもがこういう問題について関心を持ちますのは、非常に一般が、会社の発表する経理内容と申しましょうか、そういうものに不信を抱いているんじゃないかと、こう思うのです。たとえば、私どもがそういう問題に関連いたしますのは、従業員の賃金値上げの問題が起きた場合に、会社はあまり出したがらない。純益がないんだ、最初口でそう申しておりますが、証拠を見せてほしいと言うと、帳簿を見せられる。けれども、しろうとは、そういう複雑な数理になると、また専門的な経理内容を読み取るほど知識を持っておりません。そういう場合に、私非常にいい意意見を伺いましたのは、外部からの監査の証明というものがはっきりあれば、これは信用できると思うんです。普通一般に言われておりますことは、会社というものは、その経理内容は、株主向けの経理内容を一冊持って、従業員向けの経理内容を一冊持っている。二つも三つも帳簿を持って、そのときどきに都合のいいような説明をしているということを私ども聞かされるのであります。それで、今、内部だけの監査でなくて、外部から公認的なものの専門監査を受けたものが出されるとなると、私どももなるほどと納得いくのでございます。こういう監査制度の必要性というものが、法制審議会で取り上げられたのでございましょうか。辻参考人は、ここまでこの改正が及ばなかったことは非常に遺憾だとおっしゃっております。法制審議会で、この問題についてどういう程度の討議がなされたのでございましょうか。鈴木参考人から御意見を伺いたいと思います。
  21. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) ただいま出されておりまする改正案というものは、計算規定内容の面を中心とするものでございますが、このほかにいろいろな問題が連なっているわけでございます。それはまた、ただいまの監査というふうな問題がつながっておるのでございますが、しかし、監査という問題は、やはり会社の機関の問題になって参りますと、一体株式会社における株主総会はどうするんだ、取締役はどうするんだ、監査役というものはそれとどういう関係になるのかという、非常に大きな問題になるわけでございます。実は、この計算規定の問題に入ります前に、株式会社の機関の問題に私ども取り組んだのでございますが、こうなって参りますと、いろいろの方の考え方が非常に変わっておりまして、なかなか意見の一致を見ることができなかった。つまり、それぞれの方々のおっしゃることにも、それぞれの理由がございます。しかし、何とかして妥協の線を考えたいと思ったんですが、急にはそれがつきませんものでしたので、それでとにかく、この問題を一ぺん——先ほどからのお話がありますように、会計の実際と商法と違っておって、どちらかといえば企業会計原則で認めているのだ、財務諸表規則で認めているのだ、商法で認められてなくてもそんなものは知らぬという形で突っ走っていることについては、商法立場として一体どうこれを考えるのか、どういう態度をとるかということをまずきめる必要があるし、これならば簡単にいくだろうと考えたわけなんです。それがやはり四年間かかったので、私は非常に慨嘆にたえないということを申し上げたのですが、したがって、このあとにすぐ続いて出て参ります問題は、今申しました監査の問題をどうするか。一体監査役という制度は、今のような会計に関するただ権限だけ持ったものでいいだろうか。それとも、業務全般について監督をする権限というものをもっと強いものにしていく必要があるのではないか。その監査役と今度公認会計士との問題をどうするかという非常にむずかしい問題がございますので、これもやらなければならないわけでございます。それとともに、先ほどお話のありました公告の問題とか、あるいはなお、これに漏れました株式の譲渡の方式をどうするか、つまり、今ありますような裏書きをしないでただ渡せばいいという形にしたほうがいいのか、あるいは新株引き受けの譲渡を認めるのがいいかという、非常に差し迫ったいろいろな問題がございますので、一体どれからどう片づけていくのかという今後の問題になると思うのでございますが、私の大体の感じといたしましては、今まで商法というものは、五年に一度とか六年に一度とかいうような形でもって改正案が出ておる形でございますけれども、いいほうによく直すというものだったら、案がまとまったらどんどん直していく以外に方法はないんじゃないか。そのためには、毎年御審議を願うという形、あるいは政府のほうからすれば、立案をしていただくということになってもいいんじゃないか。何も、法典だからといって、そんなに数年に一回ということにいたしませんで、それこそいいものができたらどんどん直していくということをやらなければ、これはとても追っつかないという感じがしておるのでございまして、ただいまの御質問にありますように、その問題につきましても、やはり法制審議会としては一応やったんですが、うまくいかなかったので、横へそれましたけれども、もう一回それに帰っていくということをしなければならないと感じております。
  22. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御質疑もございませんようですので、参考人各位に対する質疑はこれをもって終了いたします。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会の審査のために、きわめて有意義なる御意見を拝聴いたしましたことを、深く御礼申し上げます。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩    ————・————    午後一時四十五分開会
  23. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。ただいま出席中の政府側は、平賀民事局長、上田民事局参事官の諸君であります。御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  24. 井川伊平

    ○井川伊平君 お伺いいたしますが、主として株式会社計算関係その他二、三の点につきましてお伺いいたします。  法案の二百八十五条ノ二、流動資産評価の問題、これについてお伺いいたします。法案の二百八十五条ノ二の規定でいう流動資産というのは、固定資産、金銭債権、社債、株式、こういうものを除いた資産を指さすものと思われ、いわゆるたなおろし資産を意味するように思われますが、そうであるとするならば、たなおろし資産という言葉を用いないで、特に流動資産ということにいたしましたについては、何か理由があるのでしょうか、お伺いいたします。
  25. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま井川委員仰せのとおり、いわゆるたなおろし資産のことをここでいっておるわけでありますが、たなおろし資産という用語は、会計実務なんかでは使われておりますけれども、まだ法律用語としては熟していないのではないか、ことに、商法の総則の規定、三十三条、三十四条なんかにおきましては、どうもこういう用語が出ておりません関係で、商法条文の中にいきなり出すということをちゅうちょいたしたわけでございます。ただし、流動資産と申しますと、非常に範囲が広うございまして、株式だとか債券なんかでも流動資産性質を持ったものもございますので、そういうものを含むかのような誤解を招くおそれもないではないのでございますが、今度の改正案では、金銭債権だとか、株式、社債なんかにつきましては、それぞれ特別の規定を置いております関係で、この二百八十五条ノ二にいうところの流動資産の中にはそういうものを除いたものという趣旨がはっきり出るのではないか、結局いわゆるたなおろし資産をさすのだということがはっきり出るだろうということで、流動資産という字句を使った次第でございます。
  26. 井川伊平

    ○井川伊平君 同じ条文のうちで、第一項のただし書に、「時価取得価額又ハ製作価額ヨリ著シク低キトキハ」と、こうございますが、この著しく低いというようなことは、非常に抽象的でありまして、わかりにくい。取得価額、製作価額の何割安くなるのかというようなのならばはっきりしますが、「著シク」という言葉は非常にわかりにくい言葉でありますが、これはどの程度安くなれば著しく安くなった、低くなったと言えるのか。基本的に考える標準といったようなものがありますれば、お示しを願いたいと、こう思います。
  27. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この「著シク低キトキ」という用語につきましては、私どもといたしましても、ただいま井川委員の仰せのような事情を考慮いたしまして、もっと具体的にできないものかと思いまして、いろいろ工夫したのでございますけれども、どうも数量的に、たとえば何%という工合にどうもいけないのではないか。やはり、たなおろし資産の種類によりまして、通常の値幅というものが、非常に幅の広いものもございますし、狭いものもございますし、いろいろさまざまでございまして、どうも何%という工合に数量的にこれを明示するということが非常に困難だと思われるのでございます。そういう関係で、非常に抽象的な用語を使いましたけれども、趣旨としますところは、要するに、その流動資産の通常の値幅をこえる価額の下落があった場合、言いかえますと、そういうことになろうかと思うのでございます。これは、言葉自体は非常に抽象的でございますけれども、経営者の立場としましては、健全な良識で判断すれば、実際問題としてはさほどむずかしい問題ではないだろうというふうに考えられる次第でございます。
  28. 井川伊平

    ○井川伊平君 同じただし書きの「取得価額又ハ製作価額迄回復スルト認メラルル場合ヲ除クノ外」、この「回復スルト認メラルル」、裏を返せば、回復しないと思われるということにもなりましょうが、そういう見方は、会社なり担当者なりの主観でいいものか、あるいは何か客観的な標準があるものか、さらに、この回復する期間というのが、会社の次の決算期までとかいったような目安があるのか、あるいは半年、一年たってもというような見方なのか、何らかそこに目安になる時間的な標準がないと、非常にわかりにくい言葉でございますが、これについて何かの基準となるべき考え方があるのであるとすれば、承っておきたいと思います。
  29. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この回復すると認められるかどうか。これは、実際問題としては、経営者が判断するということになるわけでございますけれども、ただ、経営者が主観的にそう判断したということではなしに、やはり客観性がなくてはならぬ。だれが見ても、普通の良識でもって判断すれば、そう認められるという場合であることが必要であると思うのでございます。  それから、一体いつまでに回復すると認められるか、時期というものの目安がなくちゃいけないのではないか。これも、お説のとおりでございますが、これはたなおろし資産の種類によりまして違ってくるかと思うのでございますが、通常の企業の過程においてそのたなおろし資産が処分されるであろう予定の時期、まあ普通の商品なんかでございますと、次の期なんかには処分される予定のものが非常に多いと思いますが、ものによりましては、やはり二年後、三年後処分される予定のものもこれはあり得るわけでございまして、通常の企業の過程におきましてそれが処分されるであろう予定の時期ということになろうかと思うのでございます。
  30. 井川伊平

    ○井川伊平君 先ほどの著しいと認められる場合、あるいは回復するかいなかということの判断をする場合、非常にこれは見る人の主観、あるいは、別に法的に基準が示されていないけれども、何か客観によらなければならぬ、いろいろむずかしい問題がありますが、こうした問題については、午前中の参考人の辻さんがいろいろお話しになっておりましたが、こういうことの判断を、会社の従業員、あるいは会社の担当者、そういう者の判断だけできめるのではなしに、会社に直接の利害のない者が専門的な知識をもって見た場合に、今の通常の世間の見方として、これらは著しく安い、これらは回復しないと認むべきだと、こういうふうにすれば、ここにおのずから専門家の意見によって大体統一されてくるだろうと考えられる。なお、こうした問題につきましては、他にも幾つも例がある。この改正条文中にもたくさん例があると存じますが、かような意味合いにおきまして、何らか考えておられる点がありますか、ありましたら承っておきたいと思います。
  31. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまの点、非常にごもっともでございまして、今度の計算関係規定——現行法でもその問題があるわけでございますが、株式会社計算関係規定が、この案のように非常に詳細になる。しかも、ただいま御指摘のように、「著シク」とか、あるいは「回復スルト認メラルル」とか、あるいはほかにも「相当ノ償却」とか——「相当」というふうな文句が出て参ります。かなり一般条項的な、抽象的な用語が用いられておりまして、この計算規定がほんとうに確実に守られるという何らかの保証が要るのではないか。それを担保するものが考えられなくちゃならぬということは、当然なのであります。現行法の建前からいいますと、監査役というものがある、それから総会においてこれを審査する株主がいる、あるいは場合によりましては、裁判所に検査役の選任を請求しまして、検査役の検査を求める、そういうような制度が現行法でもございますけれども、必ずしもこれが運用がうまくいっているとは限らない。そこで考えられますのが、公認会計士の監査ということを要件にしたらどうか。たとえば、総会にこの計算書類提出いたします前に公認会計士の監査を受けて、その監査証明というものをつけて総会に提出することにしてはどうかという問題が、これは当然出てくるわけでございます。ところが、この公認会計士の制度につきましても、実はいろいろ問題がございまして、監査をする人は、どうしてもやはり、会社と利害関係のない公正な第三者ということにならなくちゃならぬわけでございますが、現在の制度のもとにおきましても、やはり、公認会計士が会社経理を監査しますには、会社から報酬を受けてやるわけでございまして、その関係は、あたかも弁護士が依頼先から依頼を受けて事件を処理するのと似たような関係にある。やはり会社と利害共通する面がその面では出てくるのではないか。公認会計士というものに、ほんとうに厳正な中立的な第三者の立場による監査というものをはたして完全に要求できるであろうか。それからさらにまた、御承知のとおり、現在動いております株式会社というものが、二十数万、三十万前後くらい全国的にあるわけで、非常に規模の大きいものから、小さいのになりますと、個人企業とあまり変わらないような、実質的には個人企業と変わらぬような、そういう小株式会社というものもある。そういうようなものにまでやはり公認会計士の監査を要求することは、はたして適当であろうか、そういうような問題が実はございまして、その点、計算規定をせっかく改正しましても、これが守られるという実質的な担保が実はほしいわけでございますが、公認会計士の問題につきましても、やはりなお問題がございまして、この点は後日さらに引き続いて検討するということで、今回の改正にはその点は織り込んでいないのでございます。それで、これは、この改正案が御承認いただけましたならば、さらに引き続いてこれらの問題は今後の課題として検討いたしたいと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  32. 井川伊平

    ○井川伊平君 二百八十五条ノ二の一項のただし書き、あるいは第二項によりまして、収得価額、製作価額以外の価額をもちまして計算をしなくてはならぬという、そういうような場合におきまして、何か法的な規制を財務諸表上に設けることが必要ではないか。たとえば、二百八十七条ノ二の二項を見ますと、「其ノ理由ヲ損益計算書ニ記載スルコトヲ要ス」といったような規制があるわけですね。で、その規制と同様というわけではないが、何らかの規制を設ける必要があるのではないか、この点はいかがでございますか。
  33. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) その点ごもっともでございますが、この法律案の中にはその点を明示しておりませんが、実は、この貸借対照表損益計算書様式、これは商法の施行法でもちまして省令に委任をしてございまして、その省令の中で様式規定いたしますので、そこの中でこの点を明らかにしたいと、たとえば原価によらずに時価によったという場合には、時価によったという旨を注記させる。それから二百八十五条ノ二の一項のただし書の関係でございますと、時価が著しく下がったにかかわらずなお原価によったという場合でありますと、これは、価額の回復が可能と認められるので、原価によったという工合に、その理由を貸借対照表に注記をさせまして、この点を明らかにしたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  34. 井川伊平

    ○井川伊平君 次は、固定資産評価に関しまして、法案の二百八十五条ノ三についてお伺いいたします。  これの一項によりますと、「固定資産ニ付テハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ附シ毎決算期ニ相当ノ償却ヲ為スコトヲ要ス」と、「相当ノ償却」というのは、これも非常に抽象的でありまして、どれだけが「相当」であるか、理解しにくい。それで、その固定資産の種類等によりまして、使用の年限というものが大かたものによってはきまるのだろうと存じますが、何らか、それに関連をしまして、使用に耐えられる期間から割り出して、相当の償却をする金額というものを計算をする方法を明示することが親切ではないかというようなふうにも考えられますが、そうしたことがないこの法案につきましては、どういうように考えたらいいか、基準をお示し願いたいと思います。
  35. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この「相当ノ償却」と申しますのは、ただいま井川委員仰せになりましたように、企業会計理論で申しておりまするところの固定資産の減価償却のことをいったわけでございます。減価償却というのは、御承知のとおり、会計理論では、定額法とか定率法とか、いろいろ方法があるようでございます。そういう一定の方法によりまして規則的に償却をしていく、しかも、これは個々の固定資産につきまして耐用年数というものを定めまして、その耐用期間にわたって定額的あるいは定率的に償却をしていく、それが減価償却なのでございますが、その減価償却をやらなくてはならないということを「相当ノ償却」というふうに申したわけでございます。この耐用年数の定め方なんかにつきましては、これは、たとえば法人税法の施行規則なんかでは、税法の立場から耐用年数が定めてございますが、これなんかも一応の参考にはなると思うのでございますが、ただ、商法規定といたしましては、法人税法なんかに規定しておりますような、そういう具体的な数字まで出して、これを画一化するということは、これは非常に困難でございまして、やはり固定資産の種類、それから企業の種類なんかによりまして、同じようなものでもやはり耐用年数が違うということがあり得ると考えられますので、商法規定といたしましては、非常に抽象的でございますけれども、「相当ノ償却」ということにいたしまして、あと会計理論並びに実務で合理的と認められるところに従ってやってもらうと、相当これは幅を持たせたわけでございます。あとは要するに健全なと申しますか、合理的な会計理論及び実際というものにまかせる、そういう趣旨なんでございます。
  36. 井川伊平

    ○井川伊平君 「相当」という言葉が、この会社計算の表を作る人なり、あるいは会社のその仕事を担当する人なりの主観に流れるおそれがある。そうなったのでは価値がない。どこまでもやはり客観性を持たせなければならない。こう考えて入ますると、ただこれだけでは、それがうまくいかないのじゃないかという心配があるわけですが、その点はうまくいくというお見通しですか。
  37. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 規定解釈としては、ただいま私が申し上げたようなことになるわけで、解釈としては疑問の余地がないと思いますが、ただ、この解釈どおりにこの規定が実施されるかどうかということになりますと、先ほどのやはり監査の問題になって参りまして、何か裏づけがほしい。公認会計士の制度あるいは監査役の問題をどうするかという問題につながって参りますので、これもやはり、先ほど申し上げましたように、今後の課題として検討いたしたいと思っておる次第でございます。
  38. 井川伊平

    ○井川伊平君 固定資産のうちに、長く使用する土地等も含まれるのだろうと任じますが、日本の工場地帯であるとか、都会、そうでない地方におきましても、土地の価格は年々に上昇して参り、そうして値下がりをするという不安は持たれない。こういうときに出たりまして、やはりもと買うた原価価格をもって評価とするということを固く維持するということは、実際上会社財産がふえておるのに低く見ておるということにもなり、また、納税の関係等もいろいろあるのじゃないかとも考えますが、こうしたような土地その他特殊のものにつきましては、例外的に何か考えてみるという必要はなかったですか。
  39. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま土地の話が出たのでございますが、一般の場合、土地は固定資産に属するわけでございます。ただいま仰せのとおり、どんどん地価というものが上がって参りますけれども、固定資産であるその土地というのは、会社にとりまして、これは処分をして、換価をして、それで利潤を上げるということを目的としておるわけではないのでございます。流動資産でございますと、ただいま仰せのようなことも考えられないではございませんけれども、固定資産であります関係で、これは換価を予定していないものでございます。それであるのに、地価が上がったからというので、評価益を出すということになりまして、それを配当するということになって参りますと、これは要するに、資本を食いつぶすということになってくるわけでございまして、実現しない利益というもの、実現の可能性のない利益というものを計上いたしまして、それで利益配当するということになるわけで、それはやはり企業会計の大原則に反する。そういう関係でもって評価益は出してはいけないという原則を貫いたのでございます。ただ、御承知のとおり、戦後非常にインフレが進行いたしまして、戦前の非常に安い価格で取得した固定資産の帳簿価額というものをそのまま据え置くということになりますと、これは、ただいま仰せのような税法の関係の問題になりますし、それから、減価償却というものが適正に行なわれないというようなことになりますと、そういう特別の場合には、これは何らかの措置が必要だ、現行制度のもとでは、資産再評価法というものが別に制定せられまして、資産の評価がえをする道を開いたわけでございます。しかし、そういう特別の場合以外には、固定資産たるものの性質上、これは売却ということを予定しない財産でございますので、その評価益計上するということは、これはやはり企業の健全性を害することになりますので、商法の大原則といたしましては、二百八十五条ノ三のような規定にすべきものだと思う次第でございます。
  40. 井川伊平

    ○井川伊平君 次に、二百八十五条ノ五、社債等の評価につきましてお伺いいたします。二百八十五条の一項の規定、これは転換社債評価についても適用が当然あると考えますが、そうですか。
  41. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 仰せのとおりでございます。
  42. 井川伊平

    ○井川伊平君 ここでわかりにくい、理解しにくいところが一つあるわけでありますが、二百八十五条ノ五の一項のただし書きによりますと、「其ノ取得価額社債ノ金額ト異ナルトキハ相当ノ増額又は減額ヲ為スコトヲ得」と、こう規定されておる。第二項によりますと、二百八十五条ノ二の第一項ただし書き及び第二項の規定が取引所の相場のある社債に準用されておるわけでありますが、そうした考えからいたしますると、第一項で「相当ノ増額」という観念は、ちょっと理解しにくい、ただ、ここで社債の金額という事柄は、二百八十五条ノ二のほうにはこの金額というようなものはないようでございますけれども、ここがちょっとのみ込みにくいのでありますが、わかりやすいように、例をあげまして御説明をちょうだいいたしたいと思います。
  43. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 二百八十五条ノ五の社債規定でございますが、例をあげて申しますと、社債は、額面百円のがまあ普通でございますが、割引発行で、たとえば額面百円の社債を九十円で買ったと、ところが社債は、普通そういう割引発行の場合でございますと、償還期が近づくに従いまして、利息相当分だけ高く値上がりして参りまして、償還期には百円になるのが普通でございます。でありますから、取得後の経過年数に応じまして少しづつ値が上がって、百円に近づいていく。これはまあ利息相当分が加わるわけで、その関係で、「相当ノ増額」、これは利息相当分を加える、五円上がっていれば、九十五円という評価をしてよろしいと、これは、いわば取得価額の修正ということにもなろうかと思うのでございます。そういうふうに見ていいのじゃないかと思うのであります。でありますから、この第二項で流動資産規定を準用いたしておりますが、その場合には、九十五円に上がったのだということで、九十五円と評価いたしますと、その九十五円を基準にいたしまして、もしその取引所の相場のある社債が、決算期当日における相場が、たとえば九十三円というようなことになっておりますれば、九十三円に下げてもよろしいと、それは二百八十五条ノ二の第二項を準用する関係で、たまたま決算期の相場が九十三円だったからというので、九十三円に下げて評価してもよろしいと。それから、二百八十五条の一項ただし書きの関係でありますと、何かの事情で取引所の相場が非常に下落したと、たとえば九十五円——利息相当分を加えまして九十五円とすべきところだが、たとえばその社債の発行会社の資産状態が非常に悪化いたしまして、今後どうも回復しそうもないということで、社債が著しく下がった、たとえば八十円とか七十円とかいうふうに下がったというような場合を考えまして、その場合には、二百八十五条ノ二のただし書きの規定を準用いたします関係で、そのときの八十円とか七十円とかいう、その時価をつけなくちゃならぬ、そういうことになるのでございます。で、この二百八十五条ノ五の二項の準用規定関係でちょっとわかりにくいかと思うのでございますが、二百八十五条ノ二の流動資産規定を準用する関係におきましては、この社債取得価額に相当の増額または減額をした価額、それを基準にしてその社債時価との比較をする、そういう趣旨でございます。少しややこしゅうございますけれども、そういう趣旨なのでございます。
  44. 井川伊平

    ○井川伊平君 今のお話の、九十円で買った社債が利息の意味が加わって九十五円になっておるときに、その五円上があっているところを取得価額の是正というような考え方でと言うけれども、それはおかしいのじゃないかと私思うのですね。これで取得価額の是正を認めるなら、他のものでも、そういうような取得価額の是正を認めるべきです。だから、取得価額の是正というような意味の観念が二百八十五条ノ五の二項と相いれない考えでないか。二百八十五条ノ二の一項のただし書き等によりますれば、取得価額を固く守って、そうして安くなった場合に処置ができるが、高くなった場合には、高いほうの処置ができないのが原則でしょう。それであるのに、その条文を準用しながら、取得価額の是正というような観念でその評価を高めていくというのはちょっとおかしいので、ちょっとのみ込めないのですがね。
  45. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 取得価額の是正という説明がちょっと適当でなかったかもしれないのでございますが、普通のたなおろし資産あるいは株式などと違いまして、社債というものは、経済的に非常にこれは価額というものが安定しているものなんでございます。割引発行の場合でございますと、償還期が近づきますと、これはだんだん社債の金額に近くなっていく。これは実価がふえるわけで、単に評価益計上するというものではない。たまたま時価が取得の価額よりも上がったから、その時価によって評価益を出すというのとは非常に違うわけなんです。まあこの改正案の骨子が評価益計上を禁止するという大原則を貫いております関係で、何かこれが評価益計上を認めたようなふうにとれるようにも解せられますので、そうではない、評価益を出すのじゃないぞということを申しますために、取得価額の修正というような表現を私用いたわけでございますけれども、これは、やはりあくまで社債というものは、価額が非常に安定しておる。償還期限が近づきますと、社債の金額に一致してくるものである、そういう社債の経済的な性質から特別にこれは認められたものであるというふうに私どもとしては解釈する次第でございます。
  46. 井川伊平

    ○井川伊平君 社債の堅実性に基づいて、一項の、金額と異なる場合相当の増額、減額が認められるのだとするならば、そういうように堅実なものであるとするならば、二項の流動資産規定の準用は必要がなくなるのではありませんか。
  47. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただ、取引所の相場のある社債でございますと、やはりまあ現在の日本では、社債というのは、取引所に上場されるというような例はほとんどないように私承知いたしているのでございますが、実際問題としまして、もし取引所に上場されるということになりますと、相場の変動というものは株式ほど大きくはないにしても、わずかであってもあり得るということは、観念的に考えられるわけでございます。そういう関係で、やはり流動資産規定を準用いたしておく必要があるわけでございますが、現在の日本の状態では、取引所に上場される社債、電電債なんかは上場されておるようでございますけれども、一般の社債というものは取引所に上場されない。のみならず、かりに上場されるにいたしましても、この社債というものは非常に安定しております関係で、二百八十五条ノ二の一項のただし書きの規定が実際準用になるというようなことは、まあ非常に希有な場合ではないかと思うのでございますけれども、観念的にはやはり問題になることで、実際問題としてこれがほんとうに動くということは、きわめてまれな場合しか考えられませんけれども、どうも観念的にはやはりこの規定が適用になる場合が考えられます関係で、二百八十五条ノ二の規定を準用するということにいたしたのでございます。
  48. 井川伊平

    ○井川伊平君 社債の場合も、それから、次の株式の場合につきましても、共通する問題としてひとつお伺いしておきたいと思いますが、これらにつきましても、取得価額評価の基本にするということは、それはよいことであると私も考えますが、しかし、長くそういうものを持っておるという気持ではなしに、もうかるから一時的に保有しておろうという、そういう社債とか株式、こういうものの価額評価は、評価するときにおきましてある程度時価によって評価するほうが現実に合うのではないかということをお伺いするわけであります。もしそれをそうでないということにいたしましても、実際上は安く買いましたものが高く売れるのだ、そのときに、高いほうの価格評価価額に加えることができないとすれば、目的を達しようとすれば、それを売って、同時にまた新しいものを買えば、当然にもうかったという計算が出てくるわけですから、それは法律の禁ずるところではないわけですから、そういうことから考えれば、そういうような金額によって目的を達せられるという道がある。しかしなお持っていたいというので、記帳だけは新しく買うたやつを記帳しておくということになりますと、繁雑が伴うだけでありまして、本質的には何も大きな変化はない。それであるのに、そういう売って買わねばならぬといったようなことになるということは、評価価額によることを許さないという基本観念がじゃまをするからであって、そしてその法のねらったところはきれいに裏切られておる、そして繁雑さだけ残る、こういうことはどうでございましょうか。そういうようなことはあり得ないことでございますか。あり得るとするならば、そこにこの法案はどういうような注意を用いておるのでありますか。お伺いいたしておきます。
  49. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまは、短期保有の株式とか社債についてのお尋ねでございますが、これは、たなおろし資産につきましても、程度の差はございますけれども、やはり同じことなのでございまして、時価取得価額以上に上がっておる。ところが、またそれを実際売却して利益が現実に上がったわけではない。まだ利益が実現されてないわけでございます。その実現されてない利益計上いたしまして、その期の利益配当の基礎とするということは、これは危険である。実際それを換価しますのは、その期には換価しないで、次の期あたりで換価します場合に、株式なんかではことに顕著でございますが、今は時価が上がっているが、次の期に、実際処分するときには、ずっと下がっているかもしれない危険が非常にあるわけで、まだ実現しない利益計上いたしまして、それを配当の基礎にしたのに、実際次の期でそれを換価したら、非常にそれが下落したということになりますと、これはやはり会社の資産の健全性というものを害することになるわけでございます。そういうことは、資本の充実という見地からもそれは好ましくないと思われますし、それから、今度の改正法原価主義というものを原則として採用したということは、要するに、期間損益を出す、会計学のほうで損益法ということがいわれておりますが、損益法の精神を採用したわけで、まだ実現していない利益というものをその期の利益として計上するということは、これは会計の根本原則に反するというのが現在の会計理論の大原則なのでございます。やはり利益がほんとうに実現したときに、初めてその利益利益として計上すべきである。そういう二つの理由をもちまして、現に時価が上がっているからといって、まだそれを実際処分をして利益が実現していないのにこれを計上する。いわゆる評価益計上ということは、これはいけないという、その原則をこの改正案では貫いたのでございます。
  50. 井川伊平

    ○井川伊平君 株式その他の出資に関しまする問題、法案の二百八十五条ノ六の三項、「取引所ノ相場ナキ株式ニ付テハ其ノ発行会社財産状態が著シク悪化シタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ要ス」、こういう場合に、減額することの必要性はわかりますが、「著シク悪化シタルトキハ」、先にもこれと類似のことが「著しく」ということであったのでありますが、ここの場合における「著シク」ということについては、どういう程度をいうのでありましょうか。たとえば、小切手の不渡りができたとか、店を閉鎖したといえばはっきりしましょうが、そこまでは至らない、しかし、あいつは警戒しなければいかぬぞというような場合もあろうと存じますが、どういう状況に至ったとき著しく財産状況が悪化したと、こういうのでありましょうか。お伺いいたします。
  51. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これも非常に抽象的なのでございますが、要するに、その会社の株式を取得した当時の発行会社の資産の状態、それから、現在の資産状態を比較しまして、非常に実質的な資産が減っておる。そういうふうに言いかえるよりほかないのでございますが、これも要するに健全な良識でもって、常識で判断をする、その裏づけには、やはり先ほどのまた監査の問題に立ち返っていくわけでありますが、資産の内容が非常に悪化している、減少している、まあさらに具体的にちょっと言いかえようもないのでございますが、半面から申しまして、たとえば、たまたまある期に会社に欠損が出た、あるいは収益が減った、それだけでは資産状態が悪化したとは言えない。たとえば、減資をしなければならぬような状態になったとか、あるいは会社更正法の発動を促さなくちゃならぬという、そういうような事態なんであります。申し上げたいと思いますのは、ただたまたまある期の決算で欠損が出た、それだけでは、これは資産状態の悪化とは言えない、そういう趣旨なのでございます。
  52. 井川伊平

    ○井川伊平君 それでは、まだ手形の不渡りも出さぬけれども、だいぶ高利の金を使っているらしいぞといったようなときにはどうですか。ほんとうに使っているかどうかはわからぬが、使っているらしいぞといった場合でも……。
  53. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これもケース・バイ・ケースの問題だと思いますが、たまたま一回手形の不渡りが出たからといって、それで直ちにもって資産状態が著しく悪化したとは言えないだろうと思うのでございます。
  54. 井川伊平

    ○井川伊平君 繰り延べ資産評価についての問題で少しお伺いいたしますが、二百八十六条ノ三の二号ですか。「新技術又ハ新経営組織ノ採用」とありますが、「新経営組織ノ採用」というのはどういう場合をいうのか、これを一、二具体的な例をあげまして、簡単な御説明をちょうだいいたしたい。
  55. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは、まあ企業を合理化いたしまして、新しい経営組織を採用する、その関係でよくある例でございますが、たとえば、工場の配置をかえるとか、それから機械の移転を行なうとか、あるいは人員の配置がえを行なうというようなことの必要が起こってくるわけでございます。その場合に要する費用、工場の移転費用であるとか、機械を移転しまして、それを新しく据え付けなくちゃならぬ、機械の移転費用、運搬費用、据え付け費用、それから、人員の配置がえを行ないますと、これは、そのための人員の移転費用が要るわけでございまして、まあそういうようなものが繰り延べ資産として計上できる。例をあげますと、そういうものが考えられるのでございます。
  56. 井川伊平

    ○井川伊平君 開発費ないし試験研究費の繰り延べについて、繰り延べをいたしまして、償却が続けられていると仮定いたしまして、その間経済上の効果を実現することが困難であるということがはっきりしてきた、こういう場合におきまして、なお未償却部分が残っておる場合は、会計上どういうような処理をするのが相当であるか、お伺いいたします。
  57. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この二百八十六条ノ三の規定趣旨から申しますと、その場合におきましても、なお、ここにございますように、五年内に均等額以上の償却をすればよろしい、効果が実現しないということがわかったからといって、その期に未償却分を全部償却してしまわなければならぬということにはならないというのがこの規定趣旨でございます。たとえば、ある新しい製品を作ろうというので研究を始めた。特別の研究を始めて多額の費用が要った。五年内に償却するつもりで、毎年均等額償却の計画を立てて償却してきたら、三年目になってみたらもうだめだ。その研究の結果は全然使えない。むだであったということがわかりましても、なお残り二年ございますが、その三年目に全部償却してしまうということももちろん禁じておりませんけれども、そうしなければならぬものではなくて、なお二年残りの期間がございますので、二年内に償却をしてもよろしいというのが、この二百八十六条ノ三の趣旨でございます。
  58. 井川伊平

    ○井川伊平君 今のお話を聞いていますと、ちょっとのみ込みにくいのでありますが、せっかくの研究の新たなるそういう方面のことが全然もう見込みがない、水泡だということになりますと、投資したものは全部価値を失うのですね。全然見込みがない。家が火事で焼けたと同じことですね。そういう場合に、償却のほうだけを年次計画でずっと押していって平気で配当しておるということは、好ましい姿でないように考えるのですが、いかがですか。
  59. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 繰り延べ資産につきましては、仰せのような問題があるわけで、厳密に言いますと、繰り延べ資産というのは、もちろんこれは実質的な資産ではない、こういう特別の費用が要った場合に、その費用を支出した年度において全部償却してしまうというのじゃなくて、五年間に割り当てて、徐々に償却してよろしいという趣旨でこれを設けました関係で、たとえ途中におきまして効果が上がらぬ、むだであったということがわかりましても、この繰り延べ資産というものが認められました趣旨からいいまして、五年内にやはり償却をすればいいのではないか。ただ、この繰り延べ資産が実質的な資産ではございませんために、あとで二百九十条の利益配当規定におきまして、配当制限規定を実は置いておるわけでございます。そういう手当をしてございます関係もありますので、ただいま仰せのような場合におきましても、効果が出ないということがわかったときに、残りの未償却分を全部その期で償却してしまわなくてはならぬということにはならないように考えるのであります。
  60. 井川伊平

    ○井川伊平君 次に、別のことをお伺いいたしますが、きょうの午前中にも多少問題になっておったようでありますが、改正計算規定の適用の問題です。商法改正法律施行法昭和十三年四月五日法律第七十三号の四十九条によりまして計算書類様式は命令で定めることになっておる。これは、どういう現在経過になっており、将来どういう見通しであるか。この点の御説明を承ります。
  61. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま仰せの計算書類様式は命令で定めるということに商法の施行法で規定があるのでございますが、実は、その命令が今日まで出てないのでございます。私ども、その間の事情を詳細に存じないのでございますが、おそらくは、商法計算関係規定というものが、現行法時価以下主義で、非常に古めかしいものでございますために、まず商法規定自体を——計算関係規定を改めること自体が問題で、現行法のもとでこういう様式を定めましても無意味だということで、まず商法の実体規定改正ということが先だということで延び延びになっていたのではないかと、私は想像いたすのでございます。私どもといたしましては、計算規定がこういうふうに改まりました以上、この命令をそのまま制定もしないでほうっておくことはむろんできません。この法律案が来年四月一日から施行ということになっておりますので、できる限り早い機会にこの命令を立案し、公布いたしたい、そういうことで目下準備を進めておる状況でございます。
  62. 井川伊平

    ○井川伊平君 この点、了承できるのでありますが、そうした様式が、すべての会社に同一の様式で押しつけるという仕方と、そうではなしに、大企業会社と中小企業のものといったようなふうに二様に区別して、あるいは三様に区別して設け得ることもあると思いますが、現在のこれを設けようとする気持については、その点に関してどういうふうな考え方をしているか、これをひとつ承っておきます。
  63. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま、仰せの点につきましては、私どももそういう考えでおりまして、この改正計算規定は、株式会社であります以上は、いかなる規模の株式会社についても一律に適用になるわけでございます。中小の小さい株式会社にとっては、少しこれは、何と申しますか、鶏頭を裂くに牛刀をもってするという感じがなきにしもあらずでございますけれども、様式のところで、やはりほんとうに株式会社らしい大会社というものと小規模の株式会社というものを区別いたしまして、大規模の株式会社については、これは利害関係者範囲も非常に広いことでありますので、様式はかなり詳細なものにする、しかし、中小の小さい株式会社につきましては、これの簡略化されたものを認めるというような方法で、省令案を立案いたしたいと考えておる次第でございます。
  64. 井川伊平

    ○井川伊平君 様式を一様ではなく数様に作って、会社資本の量の関係において適用を定めていきたいと思うという御趣旨のようでございます。その点、了承いたすわけであります。なお、この適用の問題につきまして、今申しました構想のほかに、相当大きな会社でありましても、公認会計士の監査を義務づけられているものと、いないものと、そういうような区別によりまして幾様かに分けるとか、あるいは分けたものの適用を二、三にするとかという構想はいかがでございますか。
  65. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま申し上げましたように、計算書類様式につきまして、詳細なもの、簡略なものと分けたいと思っておるのでございますが、基準をどこに置くかということにつきましては、ただいま仰せのような意見も実はあるわけでございます。証券取引法の関係で、公認会計士の監査証明を必要とする会社と、そうでない会社と、そういう分け方も考えられると思います。それからまた、資本の額によりまして、たとえば五千万円以上とか一億円以上というような場合で、資本の額で分ける分け方もございます。私どもの目下の考え方では、資本の額によって分けたらどうであろうかというふうに一応考えておりますが、なお、ただいま井川委員の仰せのような、そういう区別の基準ということも考えられますので、その点もなお検討いたしてみたいと考える次第でございます。
  66. 井川伊平

    ○井川伊平君 きょう午前中いろいろ論議されまして、相当明白になったことでありますが、なお法務当局の御意見というものを確かめておきたいと思いますので聞くまでのことでございますが、貸借対照表等を登記役場に提出するという問題、この問題は、午前中の応答によっても、大体は一般的に理解されてきたと存じますが、当局はこの問題をどういうように取り扱い、実施していこうという考えをお持ちになっておりますのか、お伺いいたしたいと存じます。  なお、加えまして、先般の建物の区分所有の問題につきまして、私の質問のうちにもこの問題はあったわけでありますが、この区分所有の規約を戸籍謄本や一般の不動産の登記簿のように謄本を閲覧し謄本の下付ができるようにしたならば便利ではないかということを申し上げて、そういうことができないという趣旨のお答えをちょうだいしておるわけでありますが、それをも加えまして、もう一度ここでひとつあらためてお答えをあわせて願っておきたいと存じます。
  67. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまの点につきましては、実は法制審議会におきまして、答申の第十三項でございますが、「株式会社は、貸借対照表及び損益計算書登記所提出するものとし、何人もこれらの書類を閲覧することができるものとする。」という項目が一項ございまして、附帯決議といたしまして、「要綱第13については、できるだけ早い機会にこれを実現し、その実をあげるよう要望する。なお、計算書類公告については、今後さらに検討する。」という附帯決議がなされておるのでございます。で、私といたしましては、昨年末三十七年度の予算案がきまります際に、実はこの登記所株式会社計算書というものを備え置いてこれを閲覧に供する、この要綱第十三の趣旨を実現いたしますために、大蔵省と折衝いたしたのでございます。大蔵省としましても、たとえば備品を調達するために必要な経費なんかある程度認めてくれたのでありますが、何しろ全国的に非常に多数の株式会社がございまして、この計算書類提出がありますと、やはり登記所におきましてこれを審査しなければいけません。ただ黙って受け取って登記所に置いておいていいというものではございません。やはり、株式が合っているかどうか、記載の内容が正確であるかどうか、内容の審査をいたしまして、不備があればそれを是正してもらう、そういうような手続もございまして、どうしてもやはり人手が要るわけでございます。増員の要求もいたしたのでございますが、前回の建物の区分所有の御審議の際にも申し上げましたように、現在の登記所というのは、非常に事件増で、在来の仕事自体に非常に追われておりまして、そのための人手不足がかなり著しいものがあるのでありまして、そちらのほうの増員が先決問題だということで、計算書類の備え置きということのための増員はついに認められなかった次第でございます。ところが、実際問題といたしましては、現在の貸借対照表公告の方法というのは非常に不備がございます。必ずしも励行されていない。そういう実情にございますので、私どもといたしましても、この登記所計算書類提出されてこれを公告する制度は、できるだけ早い機会に実現をいたしたい、いたすべきものだと考えておる次第でございます。そういうわけで、できれば来年度の予算ででもこれは実現したい、今後さらに強くこの点は大蔵省と折衝し、実現について努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  68. 井川伊平

    ○井川伊平君 ただいまのお話のうちに、内容の審査のために人手が要るという話がありましたが、これは内容の審査といっても、記載が適合しているかどうかの審査ではなく、形式上の要件を満たしているかどうかの審査でございましょう。もしそうだとすれば、大して手間もかからぬのじゃございませんか。
  69. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは仰せのとおりでございまして、公認会計士が監査をするような、そういうものじゃございませんが、そういう実質的にはとてもわたり得ませんので、やはり様式に合っているかどうか、数字が並べてあるわけでございますが、計算が合っているかどうか、そういういわば形式的な審査になるわけでございますけれども、それでありましても、やはりこれは、大きい会社貸借対照表損益計算書となりますと、相当膨大なものでございます。一件を審査するには、やはり相当の時間がかかると思うのでございます。現在の人員ではとてもこれはやり切れませんので、相当の人数がやはり必要になってくるわけでございます。
  70. 井川伊平

    ○井川伊平君 私の質問は以上に尽きるわけでありますが、商法改正を見ましても、相当に個々の会社で主観的な見方でいろいろ評価なども変わってくることがあるように、あるいは著しいというようなものの見方であるとか、相当であるというような見方が、数字的に非常に変わって、まちまちになるおそれがあると存じますので、こういう点に客観性を持たせるような何か制度の上に御注意をいただきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  71. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ちょっと私関連してお尋ねしたいのですが、今民事局長のお話によりますと、この貸借対照表登記所提出するということについて大蔵省に交渉したところ、大蔵省のほうでは備品の何かは認めると言ったというのですが、それは予算上現実に認めたものですか、そういう何かただ話であったものか。そうしてまた、これを三十七年度の予算編成にあたって、大蔵省に要求したのですか、部内だけでそういう話があったが、大蔵省には要求しなかったのですか、どっちですか。その点、ちょっとはっきりしなかったように思いますので、お聞きしたいのですが。
  72. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは、大蔵省に要求いたしまして、備品なんかの帳簿関係の経費と、それから人件費でございますね——増員のための人件費と両方要求したのでございます。それで、備品関係につきましては、たとえば計算書類提出されますと、それを保管するためのキャビネットなんかが必要になってくるわけでございます。大蔵省は、予算折衝の過程で、このキャビネットの経費なんかは認めてくれたのでございます。数百万円認めてくれたのでございます。ところが、キャビネットだけもらいましても、これは仕事になりませんので、これではもう仕事にならぬ。今度の改正案にはこの点は盛らないから、キャビネットの経費として大蔵省が一応はじき出してくれた経費は、ほかの経費に回そうということにいたしまして、予算の中にはこのキャビネットの経費というものは計上になっておりません。折衝の過程でそういうことがございました。そういう関係で、計算書類の備え置きの関係では、来年度以降の予算で実現について努力する、大蔵省にお願いするということになるわけでございます。
  73. 松野孝一

    委員長松野孝一君) もう一つついでにお聞きしたいのですが、私もこれは予算は見たつもりでいるのですけれども、ちょっとわかりませんが、予算要求の際に、いわゆる貸借対照表とか損益計算書登記所提出するため、それを整理するため、閲覧に備えるための人件費というものを、どの程度要求してやったのですか。
  74. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この商業登記を扱っております登記所というのは、全国の登記所全部で扱っているわけじゃございませんので、大体大まかな見当では登記所の三分の一くらいになると思います。全体で二千カ所ございますが、その三分の一くらいの登記所が商業登記を扱っております。まあ事件数の非常に少ないところは、そのための増員は要りませんけれども、大都市なんかは、これはもう非常にたくさん、会社が多い関係で、やはり相当の増員が要る。今数字を持ち合わしておりませんでしたが、百四、五十名——百五十名前後の増員要求であったと思います。
  75. 松野孝一

    委員長松野孝一君) もう一つ。こういうまあたくさんの会社から貸借対照表損益計算書登記所に出す、そうすると、それはいつまで保管するという考え方を持っているのでございますか。
  76. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 大体三年間くらい保管したらいいのではないか。貸借対照表損益計算書というものは、やはり前の期の、いわゆるその前年、前々年くらいのものをやはり対照しまして見ませんと、会社の経営状態というものがわからぬものでございますから、三年を保管したらいいのではないか。四年目には廃棄する。そうして、次々新しいものを備えて置く。保存期間は三年くらいでよくはないかということを、私どもとしてはまあ考えておった次第でございます。
  77. 松野孝一

    委員長松野孝一君) もう一つ。大蔵省ではそういうファイルとか何かを認めたというような話ですが、倉庫なんかは増設の必要はないのですか。
  78. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ほんとうからいうと、倉庫なんかも拡張の必要が実はあるわけでございます。さしあたっては、発足当初でございますので、キャビネットを備えまして、そこに保管をする。これは、倉庫の問題は、現在でも、こういう新しい仕事を始めませんでも、倉庫が狭くなっているところは相当ございまして、これはそちらのほうで、営繕関係の経費である程度まかなえますので、その計算書類の保管ということも考慮に入れて、営繕費を実は要求したわけでございます。仰せのとおり、営繕関係のほうにも、やはり多少響いてくるわけでございます。その金額は、このためだけの金額は、営繕関係がどれだけ増額になったかということは、ちょっと今全然数字を持ってきておりませんので、お答え申しかねますが、人件費、それから庁費、それから営繕関係というのを合わせますと、やはりかなりの額になるわけでございます。
  79. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は次回に続行することとし、本案については本日はこの程度にとどめます。  次回は四月十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十六分散会