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政府委員(
津田實君) この
証人日当の問題につきましては、
前回の当
委員会におきましても問題になりましたところであり、
前回におきましては、二百三十円を三百円以内というふうに引き上げた
改正をお願いしたわけでありますが、その際に、
法務省といたしましても、あまりに安過ぎるじゃないかという問題がございまして、
最高裁判所とともにいろいろ
検討をしてきたわけでございます。しかし、今回の
立案の
趣旨は、まさにそれら
検討してきた結果に基づいて出てきたのでございまして、この
立案の
趣旨を簡単に申し上げますると、千円以内ということに一躍三百円からなったわけであります。その
理由は、その内訳はどういうふうに考えておるかというわけでございますが、まず
一般に、
証人が
日常生活を離れまして
裁判所その他の場所に
出頭するという場合には、だれでも
雑費を要することは間違いない。その
雑費の尤たるものは、昼にかかれば弁当が要るというふうなことであります。従来これは、
国家公務員が出張いたします場合におきましても、
雑費を要するという
考え方のもとに
日当が
支給されておるわけであります。そこで、
証人につきましても、
国家公務員の
日当の少なくも
最低額程度のものは
雑費として要るということを予想するのが相当である、その
意味におきまして、今次におきましては、
国家公務員の六等級以下の者につきましては三百円の
日当を
支給するという
改正法律案を国会に出しておりますのて、少なくとも
証人に対しましては
最低三百円の
出頭雑費を与えることは当然だ。しかしながら、その上に、それじゃ
証人に対していかなる
補償をすべきかという問題でございますが、いかなるものを与えるべきかということであるのですが、
証人に
報酬あるいはお礼を与えるという
考え方は、これは外国の
法制にもございませんし、わが国においてもこれはとるべきではないと思う。したがいまして、そうなれば、
証人に与えるものは、やはり
自分の
生活を犠牲にして出てきたことに対する
損失があれば、
損失を
補償するという
考え方で行かなければならないと思います。現に今回の
提案理由におきましても、
損失補償的性質を充実するということを
説明いたしておりますが、これはまさにその
意味でございまして、
あとは結局
損失補償に移るべきだという
考え方であります。
そこで、今の三百円
最低の
出頭雑費を与え、ほかにいかなる
程度の
損失補償をすべきかという問題になるのでありますが、これは
損失補償である限り、
損失がある限りは、全部
補償するのが理想的でありますけれ
ども、しかしこれは、
国家財政の
見地から、さようなことができないということも考えられますし、また、非常に莫大な
損失をこうむった人について一々
損失を
補償するということも、これはいかがなものかというようなことがありまして、やはりそこにある
程度の
平均ということを考えざるを得ない。そとで、一応の
考え方といたしましては、
全国勤労者の
世帯の
世帯主一カ月
当たりの
定期収入を考えた。その
定期収入は、
昭和三十四年の
全国消費実態調査報告によりますると、一カ月二万七千百五十六円ということになります。これを実際稼働する日二十五日で割りますと、千八十六円という
数字が出たわけです。そこで、千八十六円なんでありますが、それに、現在におきましては、
国家公務員の
最低日当は二百三十円でございますから、それを加えますと、千三百十六円という
数字になる。そこで、千三百十六円という
数字を
基礎といたしまして、千三百円くらいが相当であるというふうに、私
どもはこの
法律を
立案する前に結論をつけたわけであります。しかしながら、その線で
最高裁とも折衝いたし、あるいは大蔵省とも
最高裁側が
予算の面で折衝いたしたわけでありますが、
全国の
勤労世帯の
平均まで
補償を拡張するということは一挙には参らないということも考えられまして、
最高千円くらいまではいい、いわば
平均世帯より若干下回った
世帯の人については
完全補償ができるという
程度にまで今回は改めるということが、ほかの
財政的見地その他の比較から適当であるということになりまして、千円という
最高額をきめた。したがいまして、
損失補償の要らない人については、
出頭雑費のみを
支給するのが相当であるというふうに考えられるわけでありまして、たとえば、
国家公務員が
証人として
裁判所に呼ばれました場合は、その日は
特別休暇になるわけであります。
特別休暇になれば、当然その日の給料は差し引かれないわけでありますので、ほかに
損失は何らこうむらないわけです。ただ単に
公務員が日帰りで出張したと同じ理屈になるわけでありまして、その人に対しましては、三百円の
出頭雑費を与えるような方式をとればいいんじゃないか。これに反しまして、現在
失業対策の
就労者、
労務者の
就労一人
当たりの
予算単価が、本年、三十七年度は四百二十五円になる予定でございますが、かりにそういう
失業対策事業に出る
労務者が一日
出頭した場合には、当然
出頭によりまして四百二十五円の
損失をこうむるわけでございます。したがいまして、その人に対しましては、
出頭雑費三百円プラス四百二士五円を与えれば、これは完全にその人は
補償されるということになる。そういう
余地が当然与え得るのであって、そういう方に対しては七百二十五円を与えるべきだという
考え方に立っておるわけであります。そういう
根拠のもとに今回の
立案をいたした次第でございますので、私
どもの考えておる
立案の
趣旨はそのようでありますので、そのような
趣旨で運用されるのが私は相当であるというように考えておる次第でございます。