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1962-03-08 第40回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月八日(木曜日)    午前十一時七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員秋山俊一郎君辞任につき、そ の補欠として近藤鶴代君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松野 孝一君    理事      青田源太郎君            井川 伊平君            亀田 得治君            大谷 瑩潤君    委員      大川 光三君            近藤 鶴代君            野上  進君            加瀬  完君            高田なほ子君            赤松 常子君            辻  武寿君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君   政府委員    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君    法務省矯正局長 大沢 一郎君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総長      石田 和外君    最高裁判所事務    総局総務局長  桑原 正憲君    最高裁判所事務    総局総務局第一    課長      長井  澄君    最高裁判所事務    総局家庭局長  市川 四郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省民事局参    事官      上田 明信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○商法の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○平和条約第十一条による刑の執行及  び赦免等に関する法律を廃止する法  律案内閣提出)   —————————————
  2. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案については、一昨日の委員会において提案理由説明を聴取しておりますので、本日は上田民事局参事官より補足説明を聴取いたします。
  3. 上田明信

    説明員上田明信君) 商法の一部を改正する法律案の条文について、御説明申し上げます。  株式会社計算規定で改正されました部分は、第二百八十三条第一項、第二百八十五条、第二百八十五条ノニから第二百八十五条ノ七、第二百八十六条ノニ、第二百八十六条ノ三、第二百八十六条ノ五、第二百八十七条ノニ、第二百八十八条、第二百八十八条ノニ第一項第三号、第二項、第二百九十条第一項、第二百九十三条ノ五であります。  まず、株式会社の計算に関しまして、流動資産固定資産金銭債権、社債その他の債券、株式その他の出資及びのれんの各評価、並びに繰り延べ資産準備金引当金、利益の配当、財産目録及び付属明細書について、現行の規定を改め、または新たに規定を設けることにいたしました。なお、同じく物的会社である有限会社についてもこれらの規定を準用するのが適当でありますので、この法律案の附則で有限会社法の一部を改正して、そのことを規定いたしました。  以下説明の便宜上、必ずしも条文の順序を追わず、まず株式会社計算関係から始めて、各項目ごと該当条文を読み上げまして御説明申し上げることといたします。  まず流動資産の評価について御説明申し上げます。これは第二百八十五条ノ二の規定でございます。現行法では、流動資産の評価について、決算期における価額、いわゆる時価をこえることができないこととする時価以下主義の立場をとっているのであります。そのため、広く評価益の計上を認めることとなり、また恣意に多額の評価損を計上することも可能となる結果になっているのであります。そこで、この法律案においては、流動資産の評価は、原則として、取得価額または製作価額によることとし、いまだ実現しない利益、すなわち評価益の計上を禁じて、いわゆる原価主義を採用することとしました。しかし、時価が原価より著しく低くなった場合においても、なお、原価主義を貫くことは、資本維持の原則上妥当ではないので、時価が取得価額または製作価額より著しく低いときは、価額が取得価額または製作価額まで回復する見込みがある場合を除き、時価を付さねばならないことにしました。なお、同時に、時価が取得価額または製作価額より低いときは、時価によるものとする低価主義をも認めたのでありますが、これは、低価主義が、慣行として行なわれているからであります。したがって、流動資産の評価については、結局、原価主義と低価主義との選択を認めたことになるわけであります。  次に、固定資産の評価について御説明申し上げます。これは第二百八十五条ノ三の規定でございます。固定資産の評価については、現行法の解釈には疑義がありまして、見解が分かれております。そこで、この法律案では、会計の理論及び実際に合わせて、固定資産の評価は、原則として取得価額または製作価額によることとし、毎決算期に相当の減価償却をしなければならないこととし、固定資産については、評価益の計上を禁止することにしました。これは、固定資産は、元来売却を予定しない資産であるからであります。  次に、金銭債権の評価について御説明申し上げます。第二百八十五条ノ四の規定であります。現行法では、金銭債権の評価についても解釈上疑義があります。この法律案では、金銭債権の評価は、原則として、債権金額によることにしました。取得価額によらないことにしたのは、会計実務の慣行を尊重したのであります。しかし、債権を債権金額より低い代金で買い入れた場合、その他相当の理由がある場合、たとえば、無利息債権のような場合には、債権金額から相当の減額をした価額によることができることとして、債権の実質的な価額によることができる道を講じたのであります。なお、金銭債権について取り立て不能のおそれがあるときは、現行法の解釈としても、取り立てることができない見込み額を減額しなければならないのであるが、この法律案ではこのことを明文で明らかにしたのであります。  次に、社債等の評価について御説明申し上げます。これは第二百八十五条ノ五でございます。現行法では、社債の評価については、時価をこえることができないとし、取引所の相場のある社債については、その決算期前一月の平均価額をこえてはならないこととしています。この法律案では、社債の評価についても、原則として、取得価額によることにいたしました。ただ、社債の価額は、通常、償還期限が近づくに従い高くなり、あるいは低くなるもでありますから、取得価額と社債の金額が異なるときは、相当の増額または減額をすることができることとしました。取引所の相場のある社債の評価については、この相当の増額または減額をすることができる点以外は、流動資産の評価と同様であります。取引所の相場のない社債の評価については、その時価が明らかでないので、取り立て不能のおそれがあるときは、金銭債権と同様、取り立てることができない見込み額取得価額から減額しなければならないことにしました。なお、国債、地方債その他の債券、たとえば、電電債などの評価については、当然のことでありますが、社債の評価と同様にいたしました。  次に、株式その他の出資の評価について御説明申し上げます。これは第二百八十五条ノ六の規定でございます。現行法では、株式の評価については、社債の評価と全く同様に定められております。この法律案では、株式の評価についても、原則として取得価額によることにいたしました。株式のうち、取引所の相場のある株式の評価は、流動資産の評価と全く同様にいたしましたが、取引所の相場のない株式及び有限会社の社員の持ち分、その他出資による持ち分の評価については、その時価が明らかでないので、債権者及び企業の保護のために、発行会社財産状態が著しく悪化したときは、相当の減額をした価額によることにいたしました。  次に、のれんの評価について御説明申し上げます。これは第二百八十五条ノ七の規定でございます。現行法では、のれんの評価については、明文の規定がなく、解釈上疑義があります。のれんは、財産としての価値があるのであるが、この法律案では、これを有償で譲り受け、または合併によって取得した場合に限り、その取得価額を付すことができることといたしました。みずから有償で創設したとき、あるいは無償で取得したときは、通常合理的な評価額を付することは困難であり、また、恣意に評価する危険も多いので、これらの場合には、資産としての計上を認めないことといたしました。なお、のれんは、資産としては、不確実なものでありますから、その取得後五年内に毎決算期において均等額以上を償却しなければならないものといたしました。  次に、繰り延べ資産について御説明申し上げます。これは第二百八十六条ノニ、第二百八十六条ノ三、第二百八十六条ノ五、第二百九十条第一項の規定であります。現行法では、繰り延べ資産として、設立費用社債発行差金建設利息及び新株発行費用の四種だけを資産として認めているにすぎませんが、現在の企業会計の理論上から、あるいは会計実務の必要から、繰り延べ資産の範囲を拡張すべきであるという要望が多かったのであります。そこで、この法律案では、これらの要望にこたえまして、開業準備のために支出した金額、新製品または新技術の研究、新技術または新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出した金額及び社債発行のために支出した金額を貸借対照表の資産の部に計上することができるものといたしました。しかし、社債発行費用以外のこれらの費用を何らの制限なしに、資産とすることは、その金額が巨額になることもあるので、不確実な巨額の資産を認めることになり、また、会社が恣意に多額の繰り延べ資産を計上する危険もありますから、資本維持の原則との調整が必要になるのであります。そこで、これらの繰り延べ資産を計上することを認めるとともに、配当の制限をする規定を設けました。すなわち、これらの繰り延べ資産合計額資本準備金及び利益準備金合計額をこえる場合においては、その超過額は、配当可能利益の計算の上では、これを資産としないことにいたしました。さらに、この法律案では、これらの繰り延べ資産は、不確実な資産であるので、開業後またはその費用の支出後五年内に、毎決算期において、均等額以上を償却しなければならないものといたしました。また、社債発行費用は、新株発行費用に準じ、原則として、社債発行後三年内に、毎決算期において均等額以上を償却しなければならないものといたしました。  次に、準備金について御説明申し上げます。まず評価益についてでありますが、これは第二百八十八条ノ二第三号の規定であります。現行法では、一営業年度における財産評価益よりその評価損を控除した額を資本準備金とし、資産に対する控除項目として配当を制限しておりますが、この法律案のもとにおいては、評価益は生じないことになるので、右の規定を整理したのであります。  合併差益についてでありますが、これは第二百八十八条ノ二第二項の規定であります。現行法では、合併により消滅した会社より承継した財産の価額が、その会社より承継した債務の額、その会社の株主に支払った金額及び合併後存続する会社の増加した資本の額または合併により設立した会社の資本の額をこえるときは、その超過額は、資本準備金となります。そのために、合併後は、利益準備金積み立て必要額の増加または任意準備金の減少を来たし、配当可能利益が減少することになり、また契約に基づいて積み立てられた任意準備金が消滅することになって、実際上不都合が生じております。そこで、この法律案では、この実際上の不都合を除くために、合併差益のうち、消滅会社利益準備金及び任意準備金に相当する額は、これを資本準備金とせず、これを存続会社または新設会社利益準備金または任意準備金とすることができる道を開いたのであります。  利益準備金についてでありますが、これは第二百八十八条の規定であります。現行法では、資本の四分の一に達するまで毎決算期の利益の二十分の一以上を利益準備金として積み立てなければならないことになっておりますが、この毎決算期の利益の意義については疑義があり、見解が分かれております。そこで、この法律案では、利益準備金として資本の四分の一に達するまで、株主に対する現金による配当額の十分の一以上を積み立てなければならないものとし、疑義が生ずることを避けたのであります。  次に、引当金について御説明申し上げます。これは第二百八十七条ノ二の規定でございます。現行法では、いわゆる負債性引当金について規定を設けていないのであります。負債性引当金というのは、将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるものというように説明されていますが、その内容は、必ずしも明確とは言えないのであります。また、法律上債務でない見越し費用を負債とすることについては、理論上疑義がないわけではないのであります。しかし、会計の理論及び実際の面から、負債性引当金を認めるべきであるという要望が多いのであります。そこで、この法律案では、この要望をいれ、特定の支出または損失に備えて引当金貸借対照表上の負債として計上するこができる道を開いたのであります。しかし、この引当金は、その範囲が広く、また経理操作に利用されやすい項目でもあるので、株主総会計算書類の承認をする際に、引当金の目的を明らかにしておく必要上、その目的を貸借対照表において明らかにしなければならないこととし、また、この引当金を目的外に使用するときは、損益計算書において、その理由を明らかにしなければならないことにいたしました。この引当金の項目は、株主の利益に関することでありますから、この項目の内容を株主に知らしめることによって株主の保護をはかる趣旨であります。  次に、利益の配当について御説明申し上げます。これは第二百九十条第一項の規定であります。現行法では、配当可能利益につき、損失を填補し、かつ準備金を控除した後でなければ利益の配当をすることができないと規定していますが、規定の表現が明確を欠くので、この法律案においては、株主に配当し得べき利益は、貸借対照表上の純資産額から資本の額、その決算期までに積み立てられた資本準備金及び利益準備金合計額並びにその決算期に積み立てなければならない利益準備金を控除した額とし、さらにこれにさきに説明いたしました繰り延べ資産を計上した場合の配当の制限の規定を加えたのであります。  次に、財産目録の除外について御説明申し上げます。これは第二百八十三条第一項の規定でございます。現行法では、財産目録株主総会に提出してその承認を得なければならないことになっていますが、財産目録は、非常に大部なものであり、またこれを総会に提出させる実益も少ないので、この法律案では、財産目録株主総会に提出すべき計算書類から除くことといたしました。しかし、財産目録を作成しなければならないことは、従前どおりであります。  次に、付属明細書記載事項について御説明申し上げます。これは第二百九十三条ノ五でございます。現行法では、取締役及び監査役に対する報酬は、定款または株主総会の決議で定めることになっていますが、定款または株主総会で定められた報酬額の支払いに関する報告規定がないので、この法律案においては、これを附属明細表に記載せしめることにいたしました。  以上は、株式会社の計算に関する改正規定の説明であります。  以下、株式会社の計算に関する規定以外の部分について御説明申し上げます。  まず、合名会社の社員等の出資の登記について御説明申し上げます。これは第六十四条第一項第四号の規定でございます。現行法では、合名会社の社員及び合資会社無限責任社員の出資の目的、その価格及び履行部分登記事項としているが、これらの社員は、会社の債務につき連帯無限の責任を負うのみならず、出資の払い戻しも自由にできるのであるから、右の事項を登記する実益が乏しいので、この法律案においては、登記事項としないことにいたしました。  次に、合併財産目録等について御説明申し上げます。これは第九十九条の規定でございます。現行法では、合併または資本減少の決議後二週間内に財産目録及び貸借対照表を作成しなければならないことになっています。これは、債権者を保護するための規定と思われるのでありますが、二週間内に作成することは事実上困難であり、また債権者には強力な異議を申し立てる権利があるので、この法律案においては、この作成義務を強制しないことにいたしました。  次に、合併等に対する異議申し出期間について御説明申し上げます。これは第百条第一項の規定であります。現行法では、合併または資本減少の場合における債権者異議申し出期間は、二月を下ることを得ないとしていますが、二月以上というのは長きに過ぎるので、この法律案では、これを一月以上と改めることにいたしました。  次に、合名会社等清算結了の登記について御説明申し上げます。第百十九条ノ二の規定であります。現行法では、合名会社及び合資会社任意清算の場合に、清算結了の登記をする規定がないから、登記簿上清算が結了しているかどうかが明らかでないので、この法律案においては、清算結了の登記をすることにいたしました。  次に、支店の所在地について御説明申し上げます。これは第百六十六条第一項第八号、第二百六十条の規定であります。現行法では、株式会社の支店の所在地は定款の記載事項となっているが、支店の設置、移転及び廃止等は、現段階においては、会社の業務執行として取締役会決議事項とするのが妥当であると考えられるので、そのように改めたのであります。  次に、払い込み取り扱い場所について御説明申し上げます。これは第百七十五条第二項第十号、第四項の規定であります。現行法では、株式の払い込みを取り扱うべき銀行または信託会社払い込み取り扱いの場所は株式申込証記載事項になっているが、株式申込証の小型化に伴い取り扱いの場所を記載することが無理になってきたので、これを改めることにし、この法律案においては、取り扱いの場所を株式申込証に記載しない場合には、株式申込証を交付する際に、払い込み取り扱い場所を記載した書面を交付しなければならないことにいたしました。  次に、取締役等の登記について御説明申し上げます。これは第百八十八条第二項第七号、第八号の規定であります。現行法では、株式会社代表取締役以外の取締役及び監査役についても、その氏名及び住所が登記事項になっているが、この登記はさしたる実益がない。しかし、代表取締役以外の取締役及び監査役の登記を全く廃止するのも行き過ぎであるので、この法律案においては、登記事務の簡素化及び登記申請人負担軽減のため、代表取締役以外の取締役及び監査役については、氏名だけで、住所の登記はしないことにいたしました。  次に、所在不明の株主について御説明申し上げます。第二百二十四条ノ二の規定であります。現行法では、会社が株主または質権者に対してする通知または催告が株主または質権者の所在不明により長期間にわたって到達しない場合でも、通知または催告を省略することができないことになっています。この法律案においては、株式事務の合理化の必要から、株主名簿に記載した株主または質権者の住所またはその者が会社に通知した住所にあてて発した通知及び催告が引き続き五年間到達しないときは、会社は、その者に対する通知及び催告をしないことができることとし、また配当金の支払いその他その者に対する会社の義務の履行の場所を会社の本店とすることにした。しかし、これがために、株主または質権者権利自体が消滅するわけではありません。  次に、新株の効力発生日について御説明申し上げます。これは第二百八十条ノ九第一項、第二項の規定であります。現行法では、払い込みまたは現物出資の給付をした新株の引受人は、払込期日から株主となることになっているが、この「払込期日から」という意味について疑義があるので、これを「払込期日の翌日から」と改め、新株引受人が株主となる時期を明確にいたしました。  次に、社債の登記について御説明申し上げます。これは第三百五条、第三百四十一条ノ三、第三百四十一条ノ四の規定であります。転換社債以外の社債の登記はしないものとしたが、その理由は、社債の登記をすることが会社及び登記所にとって非常に大きな負担となっているにかかわらず、実際上の必要性がきわめて乏しいからであります。  次に株式併合等の場合の株券提供期間について御説明申し上げます。これは第三百七十七条第一項の規定であります。株式の併合または分割の場合において、株券を会社に提出すべき期間は、現行法では三月以上となっているが、長きに過ぎるので、一月以上ということに改めました。合併等に対する異議申立期間を短縮したのと同様の趣旨であります。  次に、合併の場合の貸借対照表の備え置きについて御説明申し上げます。これは第四百八条ノ二、第四百九十八条第一項第二十号の規定であります。現行法では、合併契約書承認のため株主総会の決議に加わろうとする株主が、合併の相手方会社貸借対照表を閲覧しようとしても、相手方会社の株主または債権者でなければ、相手方会社において閲覧することができないことになっているので、自己の会社において、相手方会社貸借対照表をも閲覧できるようにするため、合併当事会社は、合併契約書承認のための株主総会の会日の二週間前から相手方会社貸借対照表をも本店に備えて置かなければならないこととし、株主及び債権者は、その貸借対照表の閲覧及びその謄本または抄本の交付を請求することができることにしたわけであります。なお、この規定に違反して貸借対照表を備え置かないときは、過料の罰則があります。  次に、その他の規定について御説明申し上げます。まず、第百二十三条第二項、第百三十四条の規定についてであります。合名会社及び合資会社の清算人の登記及び清算結了の登記の登記義務者は、非訟事件手続法で定めることにしたための整理であります。  第百四十三条については、合名会社任意清算の場合に清算結了の登記に関する規定第百十九条ノ二を設けたことに伴い、会社の帳簿及び清算に関する重要書類保存期間の始期を清算結了の登記の後と改めたのであります。  以上のほか、この法律案で改正をした規定が若干ありますが、いずれも、以上で述べた改正に伴う条文の字句の整理でございます。  次に、附則について申し上げます。この法律は、あらかじめその内容を国民に十分周知させるとともに、施行前から新法に改めるための準備をする余裕をも与えておくことが望ましいので、第一条で、施行期日を昭和三十八年四月一日と定め、また、旧法から新法への移行を円滑にするため、第二条から第十二条までにおいて所要の経過規定を置いたのであります。  なお、この法律の施行の際現に存する株式会社の計算について、この法律の施行後直ちに改正法を適用することは、一定の手続を経て行なわれる会社の計算という事務の性質からみて適当ではないので、この法律の施行の際現に存する株式会社のこの法律の施行後最初に到来する決算期及びその以前の決算期に関する計算関係は、なお従前の例によることといたしました。したがって、たとえば、決算期を三月末日と九月末日とする年二期の決算期の会社では、この法律の施行後最初に到来する決算期は昭和三十八年九月末日でありますが、この九月末日の決算期に関する計算についてはなお改正前の法律に従うこととなり、改正法の規定は昭和三十九年三月末の決算期に関する計算について適用されることとなるのであります。  第十三条から第四十九条までは、いずれも商法の改正に伴って関係法律に必要な整理を加えたものであります。
  4. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 以上で説明は終了いたしました。本案に対する質疑は後日あらためて行なうこととし、本案については本日はこの程度にとどめます。
  5. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  去る三月一日に引き続き、質疑を続行いたします。ただいま出席中の当局側は、法務省津田司法法制調査部長、石田最高裁事務総長、最高裁桑原総務局長、長井総務局第一課長、市川家庭局長であります。御質疑のおありの方は順次御発言下さい。
  6. 辻武寿

    ○辻武寿君 この定員法一部改正ですが、第一審における訴訟の適正迅速な処理をはかるため、さしあたり判事の人数を十五人増員しようとするのですが、さしあたり十五人という標準はどこからこれは割り出したのですか。
  7. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 判事の増員につきましては、これを充員する見通しとの関係によって、人数がおのずからわれわれの理想としておりますような増員と必ずしも一致しない点がございますわけでございます。で、三十七年度におきまして、判事十五人を増員いたすことにいたしましたのは、本年度内における判事の欠員、それから今回増員になることになりました十五名、合わせて約五十七名になるわけでございます。その五十七名が、新しい年度に判事補から判事になります資格を取得いたす者の数と大体見合うことになりますので、そういった点を勘案いたしまして、十五名の増員ということにいたした次第でございます。
  8. 辻武寿

    ○辻武寿君 そうすると、この十五人はどういうふうに配分するわけですか。
  9. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 判事の増員を要求いたしました理由につきましては、全国の事件の輻湊いたしております八つの大都会の裁判所の裁判官を充員するという計画のもとに増員を要求して参った次第でございます。この裁判官を、ただいま申し上げましたような八つの裁判所、すなわち、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡、そういったような事件の輻湊しております裁判所に配置することによって、訴訟の迅速な処理をはかりたいというふうに考えておる次第でございます。
  10. 辻武寿

    ○辻武寿君 この表ですね、下級裁判所の裁判官の定員、現在員という表を見ると、欠員が非常に多いんですね。これはどういう原因ですか。病気で欠員なのか、それとも給与が安いからか、それともほかの原因ですか。
  11. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 定員に比して現在員が少ない、すなわち、結局裁判官になる人が、定年退職、死亡その他によって欠員を生ずるのに必ずしも見合わないという原因は、いろいろ考えられると思うのでございますが、ただいま御指摘のございましたような俸給の点もございますし、また、必ずしもそれだけに限らないで、裁判官を十分に充員いたしますためには、勢いどうしても弁護士のほうから大ぜいの人に来ていただかないことには、十分な充員ができないわけでございますけれども、これが必ずしも十分に行なわれない。その原因といたしましては、いろいろ考えられると思いますけれども、自由職業でございます弁護士から裁判官になるということが必ずしも十分に行なわれない。それからまた、裁判官の仕事は、多年の修練を要しまして、相当技術的な面も多々あるわけでございますので、そういった面について、弁護士から裁判官になる候補者が少ない。そういった各種の事情がからまってくるというふうに考えるわけでございます。
  12. 辻武寿

    ○辻武寿君 そうすると、弁護士から判事になるのが少ない、それが一番の原因ですか、この判事が足りないという。
  13. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 定員をわれわれが理想的だと考えておる数まで増加いたしました場合には、どうしても従来のような任命の給源形式からでは補充が困難なわけでございます。したがって、やかましく言われております法曹一元化というものが完全な形で実現されなければ、そういう理想的な定員というものに充足いたしますためには困難があるというふうに考えるわけでございますが、ただいま本国会で御審議いただいております臨時司法制度調査会がもし設けられました場合においては、そういった点についても十分審議検討が行なわれるというふうに考えられますので、その点にわれわれは非常な希望をつないでおる次第でございます。
  14. 辻武寿

    ○辻武寿君 この表を見ると、判事だけが十五人増員になってますが、簡易裁判所の判事がやっぱり七百人、判事補も五百十二人で、変わっておりません。判事だけが十五人増員すれば、判事補や簡易裁判所の判事は今までどおりで足りるわけですか。
  15. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) まず判事補から申し上げますが、先ほどもお答えいたしましたように、三十七年度におきましては、判事補——この中には簡易裁判所判事を本務といたしております者を含んでおりますけれども、それらの人の中から判事の任命資格を取得いたす者が五十七名と見込まれておるわけでござます。したがって、先ほど申し上げましたように、これらの数と見合うために十五名の判事の増員を行なう要求をいたしてきたわけでございますけれども、これに伴います判事補の欠員は、司法修習生の修了者のうちから裁判官を志望する数と比較いたしますと、大体これと見合う程度でございますので、そういった判事補の給源という点からいたしまして、この際判事補を増員するということは困難だというふうな見通しのもとに、今回は判事の定員にとどめた次第でございます。  それから次に、簡易裁判所判事の増員をはからなかった理由につきましては、簡易裁判所判事は、封事、弁護士等のいわゆる有資格者、それから特別の選考任用者から充員されるということになるわけでございますけれども、これには、特別選考任用するにいたしましても、簡易裁判所判事に要求される資格ということはある程度厳格に守っていかなければならないわけでございまして、にわかにこれを緩和するということは、裁判官の性質上、簡易裁判所判事といえども、十分に考えていかなければならない点でございまして、そういった点からいって、簡易裁判所判事の充員ということも必ずしも容易でないという現況であるわけでございます。最近では、昨年の十月に十七名の欠員の補充を行なうことができたわけでございますが、その余の欠員につきましても、これを真剣に努力して充員をしていきたいという考えでおりますけれども、ともかくもそういった簡易裁判所判事の任命の補給源に隘路があるという点からいたしまして、今回は簡裁判事の増員ということを差し控えた次第でございます。
  16. 辻武寿

    ○辻武寿君 私は、この前鳥取のほうに行きましたときに、裁判所のほうから聞いたけれども、非常に裁判官が足りない。で、裁判官がみな大都市のほうへとられてしまう。それで、かけ持ちでやっているんですね、簡易裁判所も。それで、こんなに渋滞しちゃってとてもしようがないと言ってこぼしておりましたが、地方のほうから大都市のほうへ集中してしまって、そのために地方の裁判が渋滞する、そういうことに対して、当局ではどういうふうに配慮して手を打っているのか、それをお伺いしたいですね。
  17. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 裁判官の定員の配置につきましては、原則として、各庁の過去二カ年間の平均審理件数を基礎にして、裁判官の総数を各庁に割り当てていくという方法をとっているわけでございます。したがって、定員の配置そのものにつきましは、事件数に比例した配置が行なわれているわけでございます。
  18. 辻武寿

    ○辻武寿君 私はこれでけっこうです。
  19. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御質疑がございませんか。
  20. 高田なほ子

    高田なほ子君 今辻委員から御質問があった点について、ちょっと疑問の点が三、三ありますから、その点伺っておきたいと思います。今回判事を十五名増員された、その根拠について今質問がありましたが、当局は、本年度の欠員四十二名、それに新規十五名採用して、五十七名がつまり本年度の判事増員という計算になる、こういう説明をされたわけです。そのとおりですか。
  21. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 大体御趣旨のとおりでございますが、判事の増員を十五名要求いたしましたその数と、それから三十六年四月までに判事の現在員について生じます予想の欠員を四十二名というふうに見たわけでございます。したがって、今回の増員十五名と、欠員の予想数四十二名、合計五十七名という数が、今回判事補の中から判事の任命資格を取得いたします予想数五十七名というものと見合う数であるという趣旨を先ほどお答えした次第でございます。
  22. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは法務省から出た資料に基づいた数字ですけれども、この二ぺ−ジの中に、下級裁判所の裁判官の定員、現在員等の調査、現在員は、昭和三十六年の七月一日現在によるということで、欠員の数字が出ております。集計的にいうと、高裁長官、判事二十一名の欠員、判事補が七名、簡裁判事が三十六名、こういう欠員の数字が出ております。これを合計すると、六十四名の欠員という数字が出ておるわけです。今の御説明だと、本年度の欠員予想が四十二と、こういうふうに説明されておりますが、実際は数字的に見ると六十四名、なかんずく簡裁判事の欠員が圧倒的に多くの数を占めておりますが、今の御説明の数字と、それから私どもの手元にちょうだいいたしましたこの数字とは、だいぶ違うように思いますけれども、これで欠員が充当できますか。
  23. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 今御指摘の表は、三十六年七月一日現在の数でございますが、私が先ほどから答弁の中に使いました数字は、三十六年十二月現在の数字でございますので、この表と多少違うところが出て参っておると思います。
  24. 高田なほ子

    高田なほ子君 まあ月日等のズレで私の指摘が誤っていたかもしれませんが、これで本年度の欠員は完全に充当できるということになるわけですね。
  25. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま高田委員の御指摘のとおりに、私たちも考えております。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 先年度定員法の改正があって、そのときの改正では、判事二十八名が増員になりました。それから職員が二百九十四名−書記官、調査官を含めて増員になった。こういう昨年度改正がございました。昨年は二十八名ありまして、胸をなでおろした次第でありますが、本年度は、国の予算も相当に膨張しておるわけですから、もう少し増員ができるのではないかという私は希望を持ったわけです。なぜかならば、参議院法務委員会は、この裁判の、特に第一審の強化という問題については、与野党を問わず、熱心に議論をしてきました。政府当局も、この議論は相当響いているものだと私は確信をしておりましたから、今度の定員法の改正では、前年度の判事二十八名の増員よりさらに上回って増員されるものではないかという希望を実は持っておったのですが、ふたをあけてみると、どうも欠員を充足するほうが主になってしまって、新規増員という数字が予想に反して少なかった。この点について非常に残念に思うわけですが、今の御説明によると、この十五名増員でぎりぎり一ぱいの増員であって、あとはどうも補強が困難だというような説明があったのですけれども、その点の経過等について、あるいはまたこの増員の困難であるという理由、こういう理由等について、つまびらかに事由を述べてもらいたいと思います。お述べいただけますか。
  27. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 今回の判事の増員十五名にとどまったということは、補給源の関係からと申しながら、われわれとしても非常に残念に存じておるわけでございまして、何とかして判事その他裁判官の増員の補給源の獲得に努力を続けて参らなければならないというふうに考えておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、臨時司法制度調査会の発足にわれわれが大きな期待と希望を持っておるという点も、そういう点から出てくるわけでございます。裁判官の補充の困難な事情につきましては、先ほど辻委員の質問に対してある程度お答えしたわけでございますが、まず裁判官の給源の一番根本でありますのは、司法修習生から判事補になった人、これが中心になるわけでございます。なお弁護士の中から適当な数を裁判官に採用する、こういう二本建が一番理想的なわけでございますが、前者の司法修習生から判事補を任用する関係につきましては、司法修習生の終了者全体の数が必ずしも理想的な数に達していない、それよりも幾分下回っていくということも事実かと考えるわけであります。長い将来にわたる計画として、裁判官の給源となるべき法曹人口の増加について、修習生の数をまだまだ増加していくべきだという議論もあるわけでございます。現在におきましても、修習生を終わりました後、弁護士となる者の数が非常に多くて、判事補の志望者がその比率において少ないといううらみがあるわけでございます。こういう原因につきましては、いろいろ考えられると思うのでありますが、弁護士に比べて判事補を含めました裁判官一般の報酬その他の待遇は必ずしも十分でないという点及び、裁判官になりますと、どうしても転勤ということを免れませんので、自分の希望する土地に長く住んでおることができないというような点も大きな原因になっておると考えられる次第でございます。で、右の二つの点は、弁護士から裁判官を任用する場合においても大きな障害になっておる、こういうことに考えられるわけでございますが、さらにこの場合には、途中から裁判官に任用された場合におきまして、定年まで勤務しても恩給年限に達しないために、弁護士としての今まで築いてきた地盤を失うということから考えまして、退官後の生活の不安というようなことも大きな原因になっておるわけだと思うのであります。これらの対策につきましては、たとえば人事交流に伴います転勤は、職業裁判官の制度をとる以上はどうしても避けがたいものでありますので、むしろ物的設備の方面からこれを解決すべく、宿舎の完備その他について鋭意努力を続けて参っておるわけでございます。そのほか、恩給、年金等の点につきましても特別的な措置を認めるかどうかというような点について、なお検討すべき問題を含んでおると考えるわけでございます。たびたび申し上げるようでございますけれども、臨時司法制度調査会が発足いたした暁においては、こういった根本的な問題について、総合的な立場から御検討をいただくことだと存じておりますので、私たちもその点について大きな期待をつないでおるのでございます。
  28. 高田なほ子

    高田なほ子君 いろいろ御説明いただいて、たいへん私ども参考になると思います。  重ねて伺いますが、本年度十五人増員というのは、十五人以外に判事になることのできる資格を持たないので、十五人きりできなかったのか、十五人より以上判事になる資格を持っている者があるけれども、予算の都合上十五人というところのワクになったのか、こういうところを伺いたい。
  29. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいまお尋ねの問題につきましては、欠員の状況、それからそれとあわせまして増員すべき数、こういう数と、現在補充を行ない得るすなわち判事の資格を取得することが予測し得る人数とが、大体見合うという点から考えまして、すなわち判事補から判事の資格を取得いたします者の数が五十七名というふうに予測されるわけでございます。そういたしますと、欠員の予想数が四十二名ということになりますので、それを差し引きますと十五名、この十五名を増員することによって、その増員分と欠員を予測される数との合計と、判事の資格を取得し得る判事補の数というものが、大体見合うということになるわけでございます。したがって、判事の資格を取得する判事補が判事になれないというようなことはないわけでございます。
  30. 高田なほ子

    高田なほ子君 突き詰めて言うと、これは給源の問題になるわけですね。ですから、最高裁当局としては、今年度の十五人というのはぎりぎり一ぱいの増員であって、実はもっと増員をしたいのだという希望はお持ちになっておられるのだろうと思いますが、この点はひとつ石田さんのほうからお答えいただきたい。
  31. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) いろいろ先刻来、裁判官の増員、充員等のことにつきまして御質問を受けまして、まさに裁判所当局者も非常に苦慮している問題でございまして、ありがたく感じておるわけでございますが、実を申せば、先刻来お話がありますように、裁判官の手不足と、またそのために裁判が非常に遅延する原因になっていると、何とかしてこれを除去いたしたいという念願でございまして機会あるごとに裁判官の増員を当分の間ははかっていきたいというふうに考えております。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 あわせて伺うわけですが、この司法修習生の卒業見込み、卒業者というのは、現状に・合致しない、下回っているという御説明がありましたが、これも容易ならざる私は大問題だろうと思いますが、最高裁当局としては、今度調査会ができることにたいへんな期待をお持ちになっていらっしゃるようですけれども、しかし現下の急務として、この司法修習生をより多く収容し得るような対策というものは早く講じておかなければならない問題ではないでしょうか。これは、調査会の結論を待たなくても、日本の裁判官が足りないというようなことは、これは常識でわかっている問題です。常識でわからないというのは、政府当局です。政府当局がまごまごしているから、こういうことになってくる。あわせて、最高裁の主張もたいへん上品過ぎて弱かったというようなことは、かねがね私残念に思っておる点でございますが、本年度の司法修習生の応募状況というのはどういう状況でございますか。なおまた、本年度に収容し得る定員と応募者というものがどういう関係に今なっているのでしょうか。
  33. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判官のみならず、検察官、弁護士等、いわゆる法律実務家の数が、諸外国に比べまして、日本におきましては非常に少ない。でございますから、その給源でございます司法修習生採用の数が多くなることは、われわれが相当期待しておる次第でございます。それで、最近の経過を申しますと、司法修習生の予算定数というものは漸次増加いたしまして、それに伴いまして採用人員は昭和三十年度以降逐年増加して参りまして、特に、昭和三十三年度二百九十一名に対しまして、昭和三十五年度は三百十九名、同三十六年度は三百四十五名、同三十七年度は大体三百八十名採用を予定しておるわけでございまして、さような関係で逐年ふえて参りますが、一方、司法修習生になりますには、御承知のように、いわゆる国家試験、司法科試験を受けるわけでございまして、これは法務省の御所管になりますが、大体概略申しますと、司法科試験の受験希望者も逐年ふえておりまして、昨年度あたりは約一万人足らずの志願者がありました。その中から試験をするわけでありますが、試験は法務省にございます司法試験管理委員会というところで管理しておりますが、いわゆる学術その他の考試をする考試委員会というのがありまして、これがいわゆる試験委員でございますが、最近は八十名以上の試験委員がおります。その試験委員会の会議によりまして合格者数をきめるわけでありますが、いわゆる試験の成績その他によりまして、なかなか思うような人数はとれない。私どもの気持から申しますと、試験の合格者を大体五百名ぐらい毎年とれるようになり、大体その程度の修習生が採用できるようになることを希望しておりますが、さような機構でありますので、私どもが希望いたしましても、なかなかそれが早急には実現しない。しかしまあ、先刻来御説明いたしましたような関係で、逐次修習生もふえてくる。それに伴って、司法研修所の設備等も早急に整備していく必要があるというふうに考えておるのが現状であります。
  34. 高田なほ子

    高田なほ子君 この経過は大体わかりまして、法務委員会でも、司法試験がむずかし過ぎるのじゃないかということで、だいぶ最近ではやさしくなったというような一やさしくして、できるだけ合格のできるようにするという政府当局の御答弁をいただいておったわけですが、お説のように、確かに合格者五百名ぐらいになったなら、この補給源についても相当の躍進をみるように考えられるわけですが、しかし、質の悪い方をよけい入れても困る問題ですから、そこが若干いろいろ議論の余地もあろうかと思いますが、私は、この合格者五百名という最高裁当局の意見というものが早く実現できるように、何をもってしても、判事、判事補、裁判官の待遇という問題はからんでおる問題ですから、これは政府当局、国会としても、十二分に配慮していかなければならない問題である、こう思っております。  今お尋ねして、ちょっと驚いたことは、定年まで勤めても恩給に達しない、こういうことでは裁判官になり手がないと思うのですね。これはまあ人権問題に属する問題ですね。裁判官がこういう人権じゅうりんされるような形になっているということは、私は今初めて知りました。定年まで勤めて恩給に達しない者のために、裁判所は別途またいろいろの方法を考慮されておられるだろうと思うのですが、これは御説明いただかなくても大体わかりますが、これは原則として定年まで勤めたら恩給に達するような方策を講じなければならないと思いますけれども、従来これについて対策を何かお考えになっておりましたですか。
  35. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) 恩給がつきますのは、いわゆる一般の公務員と同じ年限でつくわけでございますが、たとえば弁護士等から相当年配の方が来られました場合、定年まで勤められましても恩給年限が来ないという事実がございますが、これは弁護士から裁判官を志望するという場合に、非常な障害になるわけであります。それで、まず手初めといたしまして、最高裁判所の裁判官、これもなるべく弁護士会側から有能な方、優秀な方が来られることが期待されるわけでございますが、そういうことのために、まず最高裁判所の裁判官に弁護士からなられた方に対しまして、いわゆる国務大臣はたしか七年か八年で恩給がつくような制度があったと思いますけれども、最高裁判所の裁判官につきましても、同じような制度をやってもらうように非常に希望したわけです。しかし、最近は、それよりもむしろ、さような点を考えて、退職金を相当多く支給するようにするのも一つの方法ではないかというので、昨年度も、本年度も、その予算化に相当努力したのでございますが、今のところは実を結んでおらないというのが現状であります。
  36. 高田なほ子

    高田なほ子君 定年まで勤めて恩給に達されないという裁判官は、公証人等におなりになれば、月に数十万円も収入があるという、高額の収入の道もおありのようですから、御心配申し上げることもないと思いますけれども、しかしみんながみんなそうなるとは限らない。原則は、定年まで勤めて退職する場合には、恩給がつかなければならない。教員の場合なんかは、これは話が横にそれるのですけれども、教員の資格を持って三年勤めて、結婚したために五年間家庭にあった、教員の道を離れた、また事情があって教員として勤めた、こういうようになる場合に、この五年の年間というものは恩給通算の中に従来入らなかったわけです。ところが、当局と交渉しまして、五年の年月全部を通算するわけにはいかないけれども、五年の八掛とか、五年の七掛というものを恩給通算の中に入れる、そうして恩給の年限を是正している例はあるわけなんです。したがって、弁護士から裁判官におなりになるというのは、よほどの決断を持っておなりになる方だろうと思いますし、また当局としてもそのことをお望みになっておられることだろうと思うのです、現在の状況ではね。しかし、なかなかこれがお入りいただけないということについては、弁護士をおやりになった年月と、裁判官におなりになった年月を恩給通算の中に繰り入れる、こういうような考え方についても、これはひとつ御研究いただきたい問題だと思います。今の御説明でもいろいろわかりますけれども、下級裁判所の裁判官に適用しないような道というものは選ぶべきではなくて、すべての裁判官が定年後に生活の保障を得られる道を、今のように弁護士の期間を恩給年限の中に通算していくという、こういう今の常識的な考え方は、これは通用するはずです。これはひとつぜひこの点、隘路を開いていただけるように、御努力、御研究をいただきたいと思います。  それで、第二点にお伺いしたいことは、書記官の問題ですが、たいへん今度は当局もがんばって下すって、書記官補から九百三十四名の組みかえをしていただいた。たいへんこれは書記官補の方々も喜び、かつ仕事に非常な励みを持つようになった。この点たいへんに私感謝しています。書記官補新規三十二名の増員、こういうことになっておりますが、現在書記官補として書記官になれない、そういう人物は人物と言っては申しわけないが、そういう資格の者は、今何人残っておるか、こういうことです。数字です。
  37. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 書記官補で、選考試験その他の所要の手続を経まして、書記官に昇進し得る人間の数というのは、約二千七百名あるわけでございます。そのうち、今回のいわゆる組みかえにおきまして、約千名、正確に申し上げますと、九百三十四名でございます。約千名あるわけでございます。したがって、今回の組みかえによりましても、なお千七百名ばかりの者が残るという計算になる次第でございます。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 千七百名の残余の中に、事務官と書記官補を兼ねている者が何人かあると思いますが、千七百名の中に事務官と書記官補を兼ねている者があるのですか。それからまた、別個に事務官と書記官補を兼ねている者があるのですか。
  39. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御質問の点につきましては、事務官で書記官をいわゆる兼務いたしておる者の数が含まれておる次第であります。
  40. 高田なほ子

    高田なほ子君 そんな少ないんですか。
  41. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 数でございますか。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 お調べになってお答えいただきたいと思うのですが、事務官というのは今二千三百一名ほどあると私は記憶しておりますが。
  43. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 裁判所事務官に対しまして、裁判所書記官または書記官補の併任を命じております数が、ただいま御指摘ございました千三百一人ということになっております。
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、書記官補がまだ組みかえられない者が千七百名、それから事務官の中で、この書記官補を兼ねている者の数が今御答弁になった二千三百一名ということになると、近い将来当然これは書記官に組みかえられる性格を持つものだと思うし、また組みかえなければならないのではないかというふうに考えますが、この点総長のお考えはいかがですか。
  45. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) 詳しい数字は私失念しておりますが、大体予算折衝をいたしましたときの私の記憶から申しますと、全国の裁判を運営していくのに必要な書記官の数を大体六千百七十五名ぐらいと裁判所のほうは見たわけでございます。それで、それを基準にいたしまして大蔵省と折衝したわけでありますが、大蔵省はその数は必ずしも了承しないわけで、そこに一つの食い違いがあるわけです。それで、裁判所のほうは、書記官の数を一これは書記官補を廃止した場合の数でありますが、六千百七十五をとりましたのは、全国の裁判主体である合議部、単独部、そういうものの数を、各、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所等の単位で勘案して出した数字でありますけれども、これは大蔵省は必ずしもこれを認めてはおらないわけです。で、六千幾らから現在の書記官の定員を差し引きまして出した数が大体二千七百ぐらい。二千七百ぐらいあれば、この組みかえをプラスすれば、書記官の数が裁判所の期待するような数になる。それで、そのうち千名——調査官を入れましてですが、千名足らず書記官の組みかえができたわけであります。ですから、あと千七百名ぐらいを、書記官補等の定員を減らしまして、それで書記官に組みかえれば、いわゆる裁判所の理想的な体系になるというわけでございますが、その千七百名につきましては、その基本の数が大蔵省と裁判所とが食い違っておりますから、これは将来の問題として、裁判所としてはできるだけ裁判所の主張を貫くべく努力したいというふうに考えておる次第でございます。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間もありませんから端折りますが、この六千百七十五名の増員を要求せられたということですが、たいへんけっこうなことですが、ぜひ私どもにも、この六千百七十五名という数字をお出しになった基礎というものについてお示しいただければ、たいへんけっこうだと思いますので、資料としてこれをちょうだいできますか。
  47. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) 六千百七十五名を増員要求したのじゃなく、全国の必要数を六千百七十五名と見まして、それで現在の定員数を抜きまして、その残りが二千七百、そのうち約千ばかり実現して、その残りが千七百名と。今の全国の裁判を維持していくのに必要な書記官の数として六千百七十五名を出しました根拠につきましては、ここにその当時の資料がございますので、お目にかけていいと思います。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 これも、時間を端折りましておりますから、質問を避けたいと思いますが、民事事件、刑事事件、家事事件、少年事件、交通事件、こういうものの、三十四年度からどういうふうに増減されているかという数字をちょっと調べてもらったのがありますけれども、ずいぶん民事、刑事すべての事件が激増の一途をたどっているようですね。で、こういう激増の数字に見合うような算定をなさらないと、工合が悪い問題がたくさん出てくるのではないかと思いますが、もちろん最近の事件増に対する六千百七十五名であるだろうと思いますけれども、それはそのとおりですか、この数字から割り出したものですか。
  49. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあ将来のそのようなことまでは見通さず、現在におきます裁判所の裁判主体、つまり、合議部が幾つ、単独部が幾つというふうに、そういうものを基準にして出した数字であります。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 それも一理はあるかもしれませんが、問題はこの事件数の問題だろうと思う。そうでないと、やはり科学的なこの増員計画とちょっと離れてくるのじゃないかという気が私はする。これは私のしろうと考えですから、あなたのようなくろうと考えとは若干違うのですけれども、どうもそこらは議論の余地のあるところではないかと思いますから、答弁を必要といたしません。  続いて、調査官の問題をちょっと伺わしてもらいますが、この家庭裁判所調査官、これは六十六名が組みかえになって、三十名が増員になって、結局九十六名が増員になったという数字になっておるようですが、これはそのとおりでしょうか。
  51. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) そのとおりでございます。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは、調査官補−調査官になれない者、そういう者は一体何人おられるわけですか。
  53. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 現在、御承知のとおり、調査官になりますためには、調査官補の試験を受けまして、その合格した者が、現地で調査官の実務をやりました後に、一年間研修所に入らなければなりませんので、その研修所を出ますと、大体採用されましてから三年ないし四年ぐらいたちませんと、官になる資格を持ちません。で、そういう資格を持った者と、それから、従来書記官とか、あるいは事務官とか、そういう職についておりながら、官の昇任試験というのが——現在はやめておりますけれども、従来ございました、それを受かった者がおるわけでございます。こういう者が官の資格を持った者ということになりますが、これは現在のところでは約八十四名ぐらいおるわけでございます。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 その資格を持った者が、当然その調査官になれるのに、なぜ今度は六十六名きり増加できなかったのか。これは最高裁のほうにお尋ねしたいのですけれども、どうも家庭裁判所というと、冷飯食いみたいに考えるのは、どういうわけですか。
  55. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 八十四名は、先ほ高田委員からお話のありました三十名の増員と、それから六十六名の組みかえ、これが実現いたしますと、その人たちは全部官になれるわけでございます。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 すると、官になれるというのは、いつからこれは官になれるわけですか。
  57. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 予算の関係で、増員の分は四月、それから組みかえは七月からということになっております。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは、八十四名の方も、すると七月から官になれるのですか。
  59. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) ちょっと、今私の申し上げましたのは逆でございまして、組みかえの分が四月からで、増員の分が七月から、こういうことになっております。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 すると、八十四名の方は、この七月から調査官としての待遇がちゃんとされるわけですか。
  61. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 七月以降には、この資格を持っておる者は、定員の関係上、何どきでもできることになるわけでございます。
  62. 高田なほ子

    高田なほ子君 何どきでもできるというのは、七月以前にもできるということですか。
  63. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) いや、その定員で増員になりました分は、その予算の始まります以後、それから組みかえになりましたものにつきましても、それ以後でなければ増員の資格を与えることはできない、こういう趣旨でございます。
  64. 高田なほ子

    高田なほ子君 私はこの家庭裁判所の仕事というものはたいへん大切な仕事だと思っておるわけなんですけれども、どうも上層部の方では家庭裁判所・というものについてあまり熱を入れないのじゃないかという節はあるのですね。まあそういうことを言うと怒られるかもしれませんが、事実問題としてお尋ねいたしますが、昭和三十六年度中に受理した交通違反事件というのは、この間、私ども見に行きました墨田の裁判所で伺うと、一年に三十六万件だそうですね。
  65. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 御質問は少年事件のほうでございますか。
  66. 高田なほ子

    高田なほ子君 少年事件を含めて聞いております。
  67. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 墨田のほうに参りますのは成人の事犯でして、少年のほうは全部、東京で申しますと東京の家庭裁判所でございますね。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 墨田のほうは交通事件が三十六万件、これはまあ驚きました。少年事件のほうは東京家裁で十一万件、それに対して調査官が十五名で当たっていられる。こういうことを伺っておるのですが、それはほんとうでしょうか。
  69. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 東京の現在の少年事件の処理態勢は、今御質問のありましたとおりにやっております。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 東京家裁が三十六年度中に受理した交通違反が十一万四千二百九十六件、それから業務上の過失致死、同傷害事件が二千件、これを十五名の調査官で担当をした。こういうことは最高裁の方は数字的に御存じになっておりますか。これはもう残酷物語ですよ。
  71. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 数字の点から申し上げますと、私どもといたしましては、非常に、御指摘のとおり、大へんなことだと考えておるわけでございます。  ただ御注意をいただきたいと申しますのは、家庭裁判所の少年事件ももとよりそうでございますけれども、一般に家庭裁判所へ参ります事件と申しますのは、これは一般の成人の場合と違いまして、何でもかんでも非行事実があれば全部参るわけでございまして、それは検察庁を通して来るものもありますし、それから警察から直接検察庁を通さないで来るものもございます。そういう関係で、成人の場合で申しますと、警察で、非常に微罪であるということから無罪放免ということになるものもあるわけでございます。又検察庁で起訴猶予あるいは不起訴、こういう処分で裁判所に参らないものもあるわけでございます。そういうものが全部除外された残りのものが裁判所に起訴されて参るわけでございます。ところが、家庭裁判所はそうじゃございませんので、警察に検挙されたものは一切がっさい全部どんなものでも家庭裁判所に来る、こういう建前になっております。でありますから、警察で無罪放免したり、あるいは検察庁で起訴猶予あるいは不起訴にする、そういうものもございますので、件数は非常に多うございますけれども、その処理の仕方いかんによっては、ほんとうに身を入れてやらなければならないものはそのうちの何パーセントか、こういうことになる。こういうことも言えるわけでございます。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 確かに私もそのとおりだと思うのです。ですから、この処理の内容について私は批判しようとは思わないのです。ただしかし、家庭裁判所の最近の累増する事件、それに対してこの調査官の割当というものがあまりに非科学的過ぎる。一切がっさい見たとしても、書類だけでも判定していかなければならないわけでしょう。知らぬふりをするわけにいかぬ。これは私今計算してみたのですが、一人の調査官は六百三十何件のものに目を通さなければならない。これは重軽を問わず一日六百三十何件のものに目を通すということになると、一件四十何秒で目を通さなければならぬ。四十何秒で調査官が朝から晩まで八時間ぶつ通し労働をするということは、昭和残酷物語以上の残酷物語である。私はこの判定の内容を批判しようとは思いません。思いませんが、この累増する交通違反事件の中で、十五名の調査官にこれを当たらせるというようなことは、これはいけませんよ。こういう事実をやはり金のひもを握っている大蔵当局に示して、これはもうこの調査官の増員というものは緊急の問題として当たっていかなければならない。特に少年の交通違反事件というものは、取り扱い方いかんによっては累犯に陥るおそれなじとしない。そうしてまた累犯ならいいけれども、取り扱いいかんによっては、反社会性をつちかうというような原因をはらまないでもない。だからこそ、この少年事件の取り扱いというものについては、すべての人が注意しなければならない。わけて調査官の注意しなければならないということについては、私はもういろいろ推察に余りあるものがある。いかがでしょうか、この調査官を増員するということについて、これは少し本腰を入れていただくわけにいきませんでしょうか。総長、いかがですか。これは直接責任のある方より、少し偉い人から聞きたいですね
  73. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) 調査官も相当高い資格を要望されておりますので、これも志願者の数とかいろいろなことで制約を受ける隘路があることはあるわけでございます。たとえば、相当大学を出て優秀な方も来ますけれども、御婦人の方が非常に多い。御婦人もちろんけっこうなんでございますけれども、男の人なんか必ずしも多くないというふうな現象等もありまして、相当給源に隘路はあることはありますけれども、まあ御趣旨のような線に沿いまして、漸次増強していきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 御答弁は御自由でしょうけれども、私は調査官の待遇そのものについて、当局がもう少し真剣にならなければ、男の方だって来手がありませんですよ。私は婦人の調査官の使命というものは大へんりっぱなものだし、現在の調査官の一人々々の方に会ってみると、それはとても頭の上がらないりっぱな方ですね。そういう方の待遇問題ということについても、これはもう少し再検討しなければならない問題ではないでしょうか。そこに男子の方もお入りになる余地といいますか、お気持というものも沸くのではないでしょうか。ここでは時間がありませんから、待遇問題の詳細に触れることを避けますけれども、これはもう緊急の問題としてひとつ調査官の待遇と増員の方途ということについて、もっと積極的におやりいただきたいと思いますが、市川さんのほうで何か増員計画等がございましたら、ひとつこれをお話いただきたい。
  75. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 先ほど来、高田委員から東京の少年交通事件の取り扱いについて、非常に理解のあるお言葉をいただきまして、私どもとしては非常にありがたく思っております。私どもといたしましても、現在の調査官の負担がかなり重いものがある。こういうことは十分認めております。特に交通事件等におきましては、東京、大阪、名古屋、こういう大都市におきまして、これが非常にはなはだしいわけでございますので、今度の増員になりました調査官につきましても、できる限り、そういう大都市に重点的に配置いたしまして、その事務の処理をできるだけ緩和するように努めていきたい、こう考えております。なお、現在認められております増員程度でも、もちろん私どもは満足しているわけではございませんので、今後ともでき得る限りの増員の要求をしてそれを実現に持っていきたい、こういう努力をしたいと、こう考えておる次第でございます。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後にもう一点伺いますが、この調査官の研修所を拝見いたしましたが、非常にお粗末、狭隘きわまるもののように拝見して参りました。最高裁当局では、これが対策等についてお考えになっておりますか。
  77. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) この前この委員会におきまして経理局長から御説明をしたと思いますが、例の切り通しの敷地がうまく処理されれば、この調査官研修所も当然新築をなし得た状況でございましたが、この前申し上げましたような事情で、今のところその当てはなくなりましたが、構想を新たにいたしましてこの調査官の研修所を設置していきたいというふうに、建物を作っていきたいというふうに考えております。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねて伺いますけれども、なかなかそれは建てるといっても、今のようなありさまでは、そう早急にはいかないと思いますが、せめて床のぼこぼこぐらいは画せないものですか、あの研修所の床の。私は太っていますから、あまりぼこぼこの床では床をこわすおそれがある。あのくらいの修理は、もっと営繕費を取ってもっとしっかりしたらどうですか。
  79. 石田和外

    最高裁判所長官代理者(石田和外君) ただいまの施設につきましては、今この席で申し上げていいかどうかわかりませんが、法務省から割譲していただく余地もありますので、さようなことが実現いたしますと、そういうことも考慮に入れまして、もっとりっぱに、できるだけりっぱに修理していきたいと考えます。
  80. 赤松常子

    ○赤松常子君 関連して。昨年の暮れでございましたけれども、婦人調査官の方々、それから相当国家公務員の上級クラスにいらっしゃる婦人の方々との懇談会がございまして、ほんとうに私ども皆様のごりっぱなお姿を拝見して力強く思ったのです。今お話伺ってみますと、この供給源に非常な隘路があるとおっしゃっていますが、婦人がそういう志願をする、そうして試験にパスするその割合というものは一体最近どのようになっておるでしょうか。たいへんりっぱな方がいらっしゃることはうれしく思うのでございますが、この供給源の培養と申しましょうか、養成と申しましょうか、その辺のところを。
  81. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 大体この調査官補の試験を受ける人数が、昨年あたりの例で申しますと大体六百人余りでございますが、そのうちまあ婦人の官補を志願される方、これが大体半数以上占めております。それから現実に家庭裁判所に採用される人数は、定員等の関係がありまして非常に少ないわけでございますけれども、しかしその約半数はやはり婦人で占められております。ですから、現在のところでは、まあ御婦人のことを非常に御関心をお持ちでございましょうけれども、婦人にとっては非常にまあいい職場ということに一般から見られているのじゃないかと私ども考えております。
  82. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一点。たいへん御本人たちも誇りを持ってやっていらしていただいておりますが、今のこの試験にパスする割合というものはどのくらいになっておりましょうか。
  83. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 試験にパスする割合も、大体先ほど申しましたように、男と女とは半々ぐらいの割合でパスされております。
  84. 赤松常子

    ○赤松常子君 男と女はあまり違わず、ハスの率も違わないわけでござますね。
  85. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) ほとんど差異はございません。むしろ年によっては婦人のほうがパス率が高い場合もございます。
  86. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ。どうぞこの培養源と申しましようか、そういうところにも十分予算とそれから心づかいもしていただきたいと思うのでございますが、今までいろいろ御質問の中で、非常に事務量が多いんですが、定員をふやすということに対しての隘路というのは、予算の面あるいは供給源の面とおっしゃいますが、そのどちらに大きな原因がございますか。予算を要求してもその定員を満たすほど予算が取れないということに重点が置かれるのですか。人がないということになるのですか。
  87. 市川四郎

    最高裁判所長官代理者(市川四郎君) 先ほども申しましたように、私どもといたしましては調査官の増員を要求して、ほんとうにすべての事件がやれるという態勢の人をまあ充実していきたい、こういう考えでおりますので、この官をふやすためには、どうしても先ほど事務総長から申しましたように、一定の資格を得た人、まあ研修と実務の修習、そういうものを経た一定の基準に合った人を充てる、こういうことを考えておりますので、無制限に多くの人を、定員を増員いたしましても、それに当てはめる人が得られない、こういう面がございます。そういう関係で本年も百名程度増員できればと、こういうことであったんですけれども、これが六十六名の振りかえと三十名の増員でちょうど百名くらい、こういう状態でございます。
  88. 赤松常子

    ○赤松常子君 どうぞこの点に関して、私非常に婦人の人が関心を持ってやっていらっしゃいますから、そういう点、婦人の供給と申しましょうか、採用と申しましょうか、十分お気をつかっていただきたいということを要望いたしておきます。
  89. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御質疑ございませんか。——なければ、本案に対する質疑は終了したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本案については一応この程度にとどめます。   —————————————
  91. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本件について出席中の当局側は、法務省津田司法法制調査部長、最高裁石田事務総長、桑原総務局長、長井総務局第一課長でございます。  これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  92. 井川伊平

    ○井川伊平君 ちょっと一、二点簡単にお伺いを申しますが、簡易裁判所を開庁することにさきのいずれかの国会できまっておるのにかかわりませず、なお今日まで開庁しないでそのままになっておるものがあるかないか。あるとすればどこどこであるか、それをお伺いいたします。
  93. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいままで開庁に至りません簡易裁判所が全国で八カ所ある次第でございます。それを順次申し上げますと、韮崎簡易裁判所、これは甲府の管内でございます。それから東淀川、西成両簡易裁判所、これは大阪地方裁判所の管内でございます。それから灘、宝塚、これはいずれも神戸地方裁判所の管内でございます。それから柳生簡易裁判所、十津川簡易裁判所、いずれも奈良地方裁判所の管内でございます。それから最後に鹿野簡易裁判所、これは山口地方裁判所の管内でございます。
  94. 井川伊平

    ○井川伊平君 開庁にきまっておりますのが、その後長い月日そのままに未開庁にしておかれる理由はどこにあるのですか。
  95. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) いずれも開庁できません理由といたしましては、適当な敷地がなくて庁舎の新築ができない、それからまた庁舎の借り上げ等も非常に困難な事情、そういった施設面の関係から開庁に至らない次第でございます。
  96. 井川伊平

    ○井川伊平君 今開庁に至らないところの地名を承りましたが、そう非常な大きな繁華な大都会とも考えられないが、敷地が得られぬというようなことはどういうわけですか。敷地をロハで、あるいはもっとずっと安い価格で得ようとするような向きがあるから得られないのでありまして、言いかえれば、得ることの努力が足りないということになるんではありませんか。
  97. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいままでに開庁に至りません地域の中には、ただいま申し上げましたように、大阪、神戸奈良等、比較的大きな都会の点もござますし、それからまた柳生簡易裁判所とか、十津川簡易裁判所というようなものは非常な僻地でございますので、土地の関係が非常に狭いというような関係で敷地の入手困難、それからまた適当な建物を調達することもできないというような事情があるわけでございます。
  98. 井川伊平

    ○井川伊平君 そうしますと、土地の問題は、これは急に広くも狭くもなる見込みがありませんから、今日までの御努力でその土地が求められぬということであるとするならば、開庁の見込みは将来ないということに承ってよろしいですか。
  99. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) われわれといたしましては、何とかして法律に定められております簡易裁判所全庁について開庁の運びに至りたいというふうに考えて努力をして参った次第でございます。なお今後とも十分努力は続けて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 井川伊平

    ○井川伊平君 今日まで努力なさったけれども土地を得られないんだとすれば、同じ努力を繰り返しても土地を今後も得られないんじゃないかと思うのです、同じような御努力では。つきましては、これは私も、調べりやわかることでございましょうが、開庁にきまりましてから今日までの期間、どのくらい期間を経過しているか、これをずっと大ざっぱなところで何年間といったような程度でよろしゅうございますから、おっしゃってみて下さい。私わからないのです。
  101. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律施行以来開庁できません庁が、韮崎、灘、柳生、十津川、それから鹿野でございます。それから東淀川簡易裁判所につきましては二十二年の七月十九日、西成簡易裁判所についても同様でございます。それから宝塚につきましては、これは一たん良元村という役場で開設をいたしたのでありますが、その後この建物が使えなくなりましたので未開庁ということになったわけでございますが、これが二十四年の四月十一日以降開庁に至っておりません。
  102. 井川伊平

    ○井川伊平君 今承りますと、ずいぶん長い間御努力をなすったことになるわけですが、そういう努力をなすっても今日までには土地が得られないんだということとすれば、今後そういう同じ場所において土地を得るということは可能なんですか。わずかの、六カ月や一年ならいざ知らず、長年月にわたりまして土地が得られないんだといったような、そういう所であるとするならば、そういう所に開庁しょうとしたことがそもそもの間違いなんじゃないですか、いかがですか。
  103. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 土地の入手困難、建物の調達困難という状況が相当長く続いておりますことは、ただいま御指摘になりましたとおりでございます。したがいまして、尋常一様の努力ではなかなか困難であるというふうに考えるわけでございますけれども、われ一われといたしましては、法律によって制定されておる簡易裁判所である以上、できる限りの努力を続け開庁の運びに至りたいというふうに考えておる次第でございます。
  104. 井川伊平

    ○井川伊平君 その土地を求めるのについて、村なり町なりその他の地方公共団体、あるいはその他の団体から無償で提供を受けるというような気持もあって、相当時価を出せば求められるのであるけれども、時価は出したくないという、そういうところに土地を求める困難性があるのとは違いますか。
  105. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御指摘のような事情ではございませんので、要するに、土地を入手することが価格の点よりも、むしろ適当な敷地がないという関係が開庁に至りません大きな原因になっておる次第でございます。
  106. 井川伊平

    ○井川伊平君 適当な敷地がないから数年たってもだめだというんだとすれば、今後敷地が造成されるという見込みがあるわけですか。
  107. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 敷地が造成されるということは、敷地は限られた土地でございますので、新たな土地を見出すということについては非常に困難であることは事実でございますけれども、われわれといたしましては、先ほど来たびたび申し上げますように、今後とも努力を続けて参りたいというふうに申し上げておる次第でございます。
  108. 井川伊平

    ○井川伊平君 もし敷地を求め、建物を建てるということが不可能であるという事実ならば、そういうものを、書類をすみのほうに押しやっておくというのではなしに、法を改正して置かないことにするという処置をとることが事務整理していく賢明な方法ではございませんか。
  109. 津田実

    政府委員(津田実君) ただいま最高裁判所から御説明申し上げました事情のように法務省は承知しておるのでございますが、一般簡易裁判所につきまして、開設当時とかなり交通事情その他の都市の形成の状況等が変わっておりますので、簡易裁判所の再配置については十分検討を要すると考えられるわけでございまして、数年来その検討を続けておるわけでございます。で、ある程度の案もあるわけでございますが、この点につきましては、最高裁判所とも連絡いたしまして、最高裁判所のほうの考え方の取りまとめも依頼してあるわけでございまするが、いまだそれについての結論は得ていないようです。この未開庁簡易裁判所の処理の問題は、それらの簡易裁判所の統合と申しますか、整理と申しますか、あるいは再配置と申しますか、そういうものとの関連においてその際にぜひ行なうべき問題だというふうに考えておる次第でございます。
  110. 井川伊平

    ○井川伊平君 先ほどの最高裁のお話のようにすれば、そこには敷地がなくて何年かかっても敷地が見つからぬのだと言う。それをその同じ場所に敷地を求めようとすることは、一応常識から考えれば不可能でありますが、そういう場合には、それにかわるべき適当な場所を選ぶということが相当であろうと存ずるのでありますね。なおこの法律ができるときに、今申したような所が、場所があるかないかということを事前に調べておらなかったということも、その当時の扱い者としては手抜かりであろうが、今度はそういう場所も大体の見当をつけまして、ここなら建て得るのだというような場所に、あらためてこれを創設すべきところの場所を取りかえる、これくらいの努力ならば何年もかからなくてもできそうに思うのですが、必要ならばやったらよかろうと思う。もし必要でないのならば、いろいろ体裁のいいようなことを言わないで、こんなものはやめてしまったほうがいいと思いますが、そういうことについて御決意があれば伺う。また、何かの決意を必要とする時期に突き当たっているのではないかとも考えますが、いかがですか。
  111. 津田実

    政府委員(津田実君) ただいま御指摘の点はまことにごもっともな点でございますが、未開庁になっている簡易裁判所の管轄区域にある住民の方々の問題、利不便というような問題については、かなり検討をいたしてあるわけであります。すでに、未開庁と申しましても、事務を移転されているわけでございまして、韮崎につきましては甲府、東淀川、西成については大阪、宝塚につきましては伊丹、灘につきましては神戸、柳生につきましては奈良、十津川につきましては五条、それから鹿野につきましては徳山というふうに事務移転されているわけであります。現在この事務移転によりましてどの程度の不便があるかという点につきましては、必ずしも絶対にこの不便を地方の方々が忍び得ないというような状況ではないと、私どもは判断いたしております。したがいまして、一応この裁判所1もちろん簡易裁判所は、地方のすみずみにそれがあるのがよろしいわけでありますけれども、これらの裁判所における人員の配置の問題あるいはこれらの費用の問題等を勘案しますと、この程度のものについては、必ずしもその場に設置しなければならぬということもないのではないかというふうに考えられるわけです。したがいまして、そういう問題は、現在開庁中の簡易裁判所についてもすでにあるわけでございまして、年に非常にわずかな件数しか取り扱ってないような裁判所は相当全国にありますので、それらの問題と一括いたしまして考え、それでこの整備案と申しますか、再配置案というものを考えていきたいというふうに考えているわけでありますが、この点につきましては、まだ最高裁判所当局と政府側とは意見の一致を見ていない次第でございます。
  112. 井川伊平

    ○井川伊平君 いろいろな御事情はわかりましたから、私これ以上突っ込んで御質問しようとはしませんですけれどもですね、解決しようという熱意を持って御協定になれば、私はこんなもは朝飯前のものだと思うのですが、先ほどどなたかの御質問にもありましたように、簡易裁判所を軽視して、簡易裁判所のことだからといったことで今まで押しやっておられるところに、数年たちましてもこういう重要な問題が解決されない、こういうようにも考えられますので、こういう問題の解決に御熱意を持っていただきたいということを希望いたします。  次に、災害にかかりました裁判所で事務の移転をしている。で、災害裁判所の復旧をしなければならぬ。こういうものが復旧されずして今日にあるものもあるわけですね、承ります。
  113. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御指摘の簡易裁判所につきましては、名古屋の地方裁判所管内にございます愛知横須賀という簡易裁判所がございますが、これは庁舎が類焼いたしまして、その後建物の復旧が急速にできないために、昭和三十年一月一日以降、半田簡易裁判所に事務移転しているわけでございます。  そのほかに、昭和三十四年十月十六日以来、津の地方裁判所の管内にございます桑名簡易裁判所が台風の関係で、一時事務を他に移転しておりましたが、これは昨年の十二月三十一日限り事務移転を解除いたしましたので、現在災害関係で事務移転しておる簡易裁判所といたしましては、冒頭に申し上げました愛知横須賀簡易裁判所一カ庁ということになるわけでございます。
  114. 井川伊平

    ○井川伊平君 その簡易裁判所の災害はいつごろあったんでしたか。
  115. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 昭和二十九年十一月十九日に庁舎が類焼したわけでございます。
  116. 井川伊平

    ○井川伊平君 そうしますと、そこには復旧工事をしようというお考えは持っておられるのですね。あるいは、どうせ焼けたついでに場所を変えてどこかほかに持っていこうといったようなお考えですか。その地に復旧しようというお考えですか。
  117. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 愛知横須賀簡易裁判所が、ただいま申し上げました災害の結果、半田簡易裁判所に事務を移転しまして以来、地元等においてはそれほど不便は感じておられないような様子でございますが、ただいまのところ、この簡易裁判所を廃止するとか、あるいは他の所に移転するとかというような具体的な点につきましては、まだ結論を得ていない次第でございます。
  118. 井川伊平

    ○井川伊平君 災害がありまして数年たちまして、復旧するかせぬかの意見がきまらぬというようなことは、怠慢とは違いますか。
  119. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 最高裁判所といたしましては、ただいまのところは他に移転するとか廃止するとかということを考えておりませんで、この地に復旧するということについて努力を払っておる次第でございます。
  120. 井川伊平

    ○井川伊平君 その点それで了承いたしましたが、次にもう一点だけお伺いいたしておきます。土地の状況によりまして福岡簡易裁判所ほか五簡易裁判所の管轄区域を変更するということが問題になっておりますが、これは土地の状況ということは、一口に言えばどういうことであるか。各個所につきまして大ざっぱな説明をしていただきたいということと、それから各それらについては地方住民の利害を考えておるかどうかという、これだけ確かめておきたいと思います。
  121. 津田実

    政府委員(津田実君) まず福岡簡易裁判所の管轄区域の一部を前原簡易裁判所に移す問題でございますが、福岡市に前原簡易裁判所の一部に属する字が合併をされましたわけでございます。そのために従来前原簡易裁判所の管轄区域下級裁判所法律によりまして福岡簡易裁判所に編入されておったわけでありますが、ところが、交通の利便、距離の点から申しまして、前原簡易裁判所の管轄に移すほうが地元民にとって便利である。地元民もそのほうを要望しておりますので、これをもとどおり前原簡易裁判所の管轄に移すというの、がこの第一点でございます。  その次は長崎の管内におきますところの大瀬戸簡易裁判所と長崎簡易裁判所との間の管轄の変更でありますが、大瀬戸簡易裁判所の管轄区域にありましたところの旧大串村と、長崎簡易裁判所の管轄区域にありました旧亀岳村、この両村が合併をいたしたわけであります。そこで合併いたしまして西彼村という村になった。そういたしますと、この村の区域によりまして大瀬戸簡易裁判所と長崎簡易裁判所に分属するような形になるわけでございますが、こういう事態は必ずしも地元の方々にとって便利でありませんので、いずれかに統合するというのが大体の建前になっておるわけでございます。ところが、新たにできました西彼村のいろいろな各地域から考えますると、その住民の方々の依存度は非常に長崎に大きいのでありまして、大瀬戸のほうにはほとんど依存度がないと言っても過言でないわけであります。したがいまして、旧大瀬戸簡易裁判所の管轄に属しておりました大串村の分も長崎簡易裁判所の管轄に入れるほうが相当であるという意味におきましてこの変更を行なうわけでございます。  それからその次は、高知県下にあるわけでございますが、赤岡簡易裁判所とそれから高知簡易裁判所の管轄の変更であります。これは旧大宮町大字西又という区域が土佐山田町の区域に入りますために、その区域が従来赤岡簡易裁判所の管轄区域にあったわけでございますが、この土佐山田町の一部といたしまして、やはり高知簡易裁判所の管轄区域にするのが相当である。しかも、距離的に申しましても、依存度の工合から申しましても、高知に移すほうがよろしいということになりまして、これを赤岡簡易裁判所の管轄区域から高知簡易裁判所の管轄区域に変更する。  この六つの簡易裁判所におきまして、それぞれ簡易裁判所の管轄区域に変更があるというのが、この法律の要綱にございます第二の変更でございます。
  122. 井川伊平

    ○井川伊平君 先ほどお尋ねいたしました、こういうように管轄が変わることで、その関係する住民が不平が非常に出る場合もあり、賛成の意見も多い場合もありましょうが、そういう意味合いにおきまして、管轄が変わる場合には、地方民の意向というものを十分確かめておるのかどうかという点につきましてお伺いします。
  123. 津田実

    政府委員(津田実君) その点につきましては、すでに提案理由説明の際にも申し上げましたとおりでございますが、地方の方々の十分利便を考慮いたしますし、意向を考慮いたしますし、また関係地方の書記官の意見を聞きまして決定いたしておるわけでございますが、今回の改正につきましては、全くどこにも反対がないわけでございます。
  124. 井川伊平

    ○井川伊平君 反対がない。たいへんけっこうでございますが、参考までに承っておきたいのですが、そういうときの住民の意向を確かめる方法はどういうことをするのですか。これは全く参考に聞くだけで……。
  125. 津田実

    政府委員(津田実君) これは、まず法務省といたしましては、出先の検察庁によりまして意見を聞きます。それから裁判所は裁判所におきまして、地方裁判所あるいは簡易裁判所等につきまして、地方の方々の意見を聞かれるようになっております。それから特に問題がありそうな点につきましては、法務省から直接係官が参りまして調査をいたしますが、その場合には地方の公共団体の方々、そのほか、かりに公共団体の長、その他の方々と地方住民との間に意見の相違があるという場合におきましては、字あるいは部落を代表する方々に面接するというようなこともやっております。
  126. 井川伊平

    ○井川伊平君 たいへんけっこうです。この点に関しまして質問は私はありません。
  127. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御質疑はございませんか。——なければ、本案に対する質疑は終了したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  129. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律を廃止する法律案を議題といたします。  本案については、去る三月六日に提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  ただいま出席中の政府側は、法務省の大沢矯正局長であります。  質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  130. 井川伊平

    ○井川伊平君 お伺いいたしますが、巣鴨のプリズンができましてから、最後の体刑が終わりますまでの間に、日本で体刑の裁判を受けました者で収容されておりました者の総数はどのくらいいましたか。
  131. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) ただいまの数の中で日本国内で裁判を受けました者は、いわゆる極東国際軍事裁判がそれに該当するかと思いますが、極東国際軍事裁判所で刑を受けました者が二十五名、その他の者は外国でそれぞれ言い渡しを受けまして巣鴨プリズンに移送されてきた者でございます。
  132. 井川伊平

    ○井川伊平君 外国から移送されまして日本で受刑をいたしました者の数はどのくらいございますか。
  133. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 日本に移管せられました当時に在所いたしておりました者が九百二十七名、その後移送されて参りました者が二百六名、千百三十三名でございます。
  134. 井川伊平

    ○井川伊平君 その受刑をしておりました方々で、受刑中に病気あるいはその他の過失によりまして、なくなりました者が相当あろうかと思いますが、どのくらい受刑中になくなりまして家へ帰れなかった、こういう者が何名ぐらいありますか。
  135. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 極東国際軍事裁判所関係の死刑を除きまして、わが国が巣鴨プリズンとして収容を受け持っております間、ただいまの千百三十三名中不幸にしてなくなりました者が十七名でございます。
  136. 井川伊平

    ○井川伊平君 この十七名の中には、日本で裁判を受けました二十五名の中にもありますか。何名か含んでおりますか。
  137. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 極東国際軍事裁判所の関係の方の死亡者はそのうち一名。
  138. 井川伊平

    ○井川伊平君 なくなりました十七名は、死因はどういう死因であったか、及びその年令を聞かしていただきたい。
  139. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) ただいま詳細な資料がございませんので、後刻書面にして提出いたしたいと存じます。
  140. 井川伊平

    ○井川伊平君 外国で軍事裁判を受けまして、体刑の言い渡しを受けて確定し、巣鴨のほうに引き取りましたことは今承りましたが、まだそれらの外国に、外国で受刑している者が残っておるのではないか、こういう点はいかがでございましょう。
  141. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 本法の関係は、平和条約第十一条関係国だけでございまして、それらの国につきましては、連合国に対しまして、戦犯者名簿を法務省で当時の関係官から入手いたしまして、それとこちらに引き渡された者、また向こうで刑が終了して日本に帰された者等を調査いたしまして、法務省の書類審査におきましては、さような該当者はいないという結論になりました。それに基づきましてさらに外務省当局に調査をお願いいたしまして、法務省の調査結果の確認を得ております。ただいまの調査結果では、さように本法に基づきまして日本で終了するというような事態に立ち至るような対象者はいないという結論に達したわけでございます。
  142. 井川伊平

    ○井川伊平君 平和条約に関係のない共産圏関係につきまして、まだそれらの国で体刑の受刑を受けておる者があるかどうか。あるとすれば全部わかっておるのかどうか。全部わからぬとすれば、現在わかっている範囲ではどうか。こういうことを今度ひとつお伺いしたいと思います。
  143. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 目下条約あるいは共同宣言等の協定のついておりません国は中国の共産圏区域だと存ずる次第でございます。ソビエト関係につきましては、日ソ共同宣言によりまして、戦犯者は全部釈放されるという協定ができて、すべて釈放せられてきているのでございます。ただしかし、日本の調査と食い違う点がございまして、それらの点は向こうとしては行方不明、不明者ということになっておりまして、不明の者については調査してこちらに回答するということになっております。中共関係につきましては、この条約の関係外でございまして、われわれといたしましては、本法についての該当者はいないわけでございますが、実際上まだ拘禁されている方もあろうと思いますが、法務省といたしましては、その数ないしは実情ということについてはつまびらかにできない状態でございます。
  144. 井川伊平

    ○井川伊平君 今の中国の関係につきましては、戦犯者としての体刑を受けている者はいないと思うというのですか。
  145. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 法務省といたしましては、その調査とかその他ができないという状況でございまして、おそらくまだおられるだろうということは想像にかたくないところでございますが、本法関係外でございまして、なおかつ外国のことでございますので、法務省としては調査をつまびらかにすることができないという状態でございます。
  146. 井川伊平

    ○井川伊平君 法務省として調査ができないということは私納得しにくいのですが、そのくらいのことならば、国際赤十字その他にお願いをいたしまして、それくらいの調査は簡単に私はできるのじゃないかと思いますが、そういうことを試みたことがないのですか。
  147. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 現在中共等におられる方の問題につきましては、いわゆる法務省の所管の平和条約第十一条によりまする戦犯者、厳密に申しますれば、この条約による戦犯者ではないのでございます。その調査はむしろ外務省なりその他の省の所管ではないかと、かように存ずる次第でございます。
  148. 井川伊平

    ○井川伊平君 調べたことはないということですな。  巣鴨の刑務所は、そうするとお客さんがないわけでありますが、お客さんがない巣鴨はどういうような状態で保管されておりますか、お伺い申しておきます。
  149. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 巣鴨刑務所の在監者が全部釈放せられました以後、一部修理いたしまして、現在は東京拘置所といたしまして使用しておるわけでございます。
  150. 井川伊平

    ○井川伊平君 東京裁判で絞首台でなくなられました方々ですね、その執行されました場所等の保管は、何か日本国民として記念をすべきような形態において保存されておるものか。そうではない、ただの死刑の執行した場所だというような取り扱いをしおるのか。そういう点につきまして詳細な実情のお話、それから今後、もしそれらについての何かの考え方があるとすれば、あわせて承っておきたいと思います。
  151. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 極東軍事裁判所で死刑の言い渡しを受けられました方々の死刑はあの中で執行されたと聞いておるのでございまして、われわれの想像いたしますところの場所も大体推定はついておりまして、現在、拘置所の敷地内の一部でございます。引き渡しを受けました際の状態そのままで、もちろん清掃も十分いたしまして、一部でございますので、そのまま現場は保管されておるわけでございます。しかし私も現場を見て参りまして、死刑執行場としての建物その他器具等は全然現在のところ残っておりません。ただこの場所がそうだというふうに聞きまして、現在その場所はそのまま保管してございます。なお、その跡を何らかの供養なり、あるいはまた慰霊のための場所に使いたいというような御希望も遺族の方等からも申し入れがございまして、われわれといたしましては、現在のところは拘置所の一部でございますので、御承知のように、東京拘置所の所在地が池袋の繁華街に近接した所でございまして、その移転が強く要望されておりますので、近いうちに移転をしなければならないような状況に立ち至るのではないかと考えられるわけでございます。さような際におきましては、関係機関あるいはまた遺族の方々の御意向等を伺いまして、十分協議の上で妥当な措置を講じたい、かように考えておるわけでございます。まだこれをどうしようかということは、決定いたしておりません。
  152. 井川伊平

    ○井川伊平君 今のあなたのお話、私もよく了解いたしましたが、そういう点について、巣鴨の刑務所を中心とする地域の住民から、こういうようにしてほしいとかなんとかいうような具体的ないろいろの請願、お願いですね、そういうものがあるかどうか。それから死刑を執行されました遺族の方のお話も今ございましたが、それらの意向を取り入れて、巣鴨刑務所が他に移りました跡に、何か記念すべきそこに設備を作り得るような状態のもとにあるかどうか、またそういうことについて適当と思われるような何かお考えを持っておるのかどうか、こういう点に関しまして御意見承ります。
  153. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) その刑場に当たりました場所は、ちょうど刑務所の一番すみでございます。道路に面しました場所でございますので、われわれといたしましても、これが他に移転いたします場合は、遺族の方々、あるいはまた地元関係各位の御意見に従いまして、しかるべき方途でこれを保存していくことにつきまして協力することにやぶさかではございません。今お話を伺っておりますのは、ここに小公園等を設けるとか、あるいは慰霊碑を建てたいというような御希望も出ておるのでございますので、移転の暁には、さような意見を伺いまして、また関係当局とも協議いたしまして、法務省としてもできるだけの御協力をいたしたいと存じておる次第でございます。
  154. 井川伊平

    ○井川伊平君 巣鴨刑務所を他に移転するということになりますと、敷地は何か国の設備の建設のために使うというのであるか、あるいは民間に払い下げる、そして払い下げの代金で他に求めるといったような考えがあるか。こういう点をお聞きするとともに、そういう処置をする時分に、厳然たる態度をもちまして、今申したような御意見を実行しようとしない、処分のときがずらずらと、めんどうくさいから早く処理してしまうといったようなことで、悔いをあとに残すおそれなしとは限らぬと存じますが、今申したような、取り払った後の処置はどうなるのかということとあわせまして、そして今あなたの申されましたような御熱意を、あとの仕事として残しておく。そういうような御熱意、もう一度確かめておきたいと存じます。
  155. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 他に刑務所が移りました場合は、国有財産でございますので、大蔵省に当然引き継ぎになると考えます。しかし、現在われわれといたしまして、その今の拘置所を移す地所につきまして、東京都あるいは首都圏整備委員会等にお願いいたしまして、拘置所移転先の敷地のあっせんをお願いしております。このあとの敷地の利用につきましては、当然東京都ないしは首都圏整備委員会等の御指示があることと思います。しかし、最終決定は大蔵省の管財関係の処になると思いますが、われわれといたしましては、遺族の方々からかような強い悲願に似た御布望のあることは十分関係機関に伝えたいと存じております。
  156. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと関連いたしまして。収容された方で仮出所なされた方々もおると思うのですが、そういう方々の刑期は全部終わっているわけでございますか。
  157. 大沢一郎

    政府委員(大沢一郎君) 仮出所された方々につきましては、この法律保護観察に付するということになっておったわけでございますが、昭和三十三年十二月二十九日、アメリカの関係の戦犯者を最後といたしまして、すべてその日をもって刑を終了する。つまり、その日限りの減刑ということになりました、残刑がなくなったわけでございます。したがって、保護観察もなくなりますし、取り消しによって再び収容するということもなくなったわけでございます。
  158. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は次回に続行することとし、本案については、本日はこの程度にとどめます。  速記をやめて。   〔速記中止〕
  159. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 速記を始めて。   —————————————
  160. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいま委員の異動がございました。三月八日付秋山俊一郎君辞任、近藤鶴代君選任、以上でございます。   —————————————
  161. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を再び議題といたします。  本案については先刻質疑を終局いたしておりますので、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  162. 高田なほ子

    高田なほ子君 日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案せられております定員法について、条件をつけて賛成の意見を述べたいと思います。  裁判の迅速は民衆の望むところであり、裁判の遅延は裁判を拒否するにひとしい行為であると思います。この意味で、現下の司法権確立については、最も重要な段階に来ていると存じます。政府並びに最高裁当局においても格段の努力をせられて、国民の信託にこたえる意味において、司法権確立の意味において、先ほど質疑の段階においても数々の問題点を私どもは指摘いたしましたが、定員の充足、それのみならず、完全に裁判が行ない得るような措置が一日も早く行なわれることを強く希望するものであります。この意味において日本社会党は、本法案を確実かつ迅速な定員の増、これを条件といたしまして賛成をしたいと思います。
  163. 青田源太郎

    青田源太郎君 私は自民党を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表する者であります。  すなわち本法案は近時における裁判事務、なかんずく工業所有権関係訴訟事件、少年保護事件等の漸増傾向にかんがみ、下級裁判所における裁判官並びにその補助機関である書記官、調査官、その他の職員を増加充実し、もって裁判事務を円滑、適正に処理しようとするものであって、おおむね妥当なものと認める次第であります。
  164. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 松野孝一

    委員長松野孝一君) これより採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  166. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 決定いたしました。  次回は三月十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十五分散会