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1962-03-31 第40回国会 参議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月三十一日(土曜日)    午後一時二分開会   ―――――――――――――   委員異動 三月三十日委員宮澤喜一君、泉山三六 君及び黒川武雄君辞任につき、その補 欠として徳永正利君、天埜良吉君及び 谷村貞治君を議長において指名した。 本日委員片岡文重君及び常岡一郎君辞 任につき、その補欠として相馬助治君 及び加賀山之雄君を議長において指名 した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     大矢  正君    理事            北畠 教真君            近藤 鶴代君            野本 品吉君            豊瀬 禎一君    委員            天埜 良吉君            井川 伊平君            下條 康麿君            杉浦 武雄君            田中 啓一君            徳永 正利君            温水 三郎君            谷村 貞治君           小笠原二三男君            千葉千代世君            米田  勲君            相馬 助治君            柏原 ヤス君            加賀山之雄君            岩間 正男君   衆議院議員    文教委員長代理    理事      八木 徹雄君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   政府委員    文部政務次官  長谷川 峻君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (義務教育学校における養護教諭  並びに事務職員充実に関する件) ○義務教育学校教科用図書の無償  に関する法律案内閣提出衆議院  送付) ○著作権法の一部を改正する法律案  (衆議院提出)   ―――――――――――――
  2. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動につき御報告いたします。  昨三月三十日、黒川武雄君、宮澤喜一君及び泉山三六君が委員を辞任され、その補欠として谷村貞治君、徳永正利君及び天埜良吉君がそれぞれ委員に選任されました。また、本日、常岡一郎君及び片岡文重君が委員を辞任され、その補欠として加賀山之雄君及び相馬助治君が委員に選任されました。以上であります。   ―――――――――――――
  3. 大矢正

    委員長大矢正君) これより養護教諭並びに事務職員充実に関する件等当面の文教政策につき調査を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は学校教育法の二十八条に関連して文部大臣質問いたします。  その第一は、去る三月二十二日の文教委員会におきまして、豊瀬委員並びに米田委員野本委員等質問に対しまして、荒木文部大臣は、養護教諭必要性は痛感する、したがって、学校教育法百三条の、いわゆる特別の事情ある限りは当分の間養護教諭を置かないことができるというのを解消する努力を続けてきた、その具体的な一つとして、来年度から国立養成所設置に踏み切った、こう答弁されました。私どもは、この百三条をすみやかに削除して、まず義務制学校養護教諭を必置してもらいたい、こういう要望を続けて参りました。政府においては、現段階におきまして、養護教諭充足計画についてどのように考えていらっしゃるか、考えていたらば、それを具体的に述べていただきたいと思います。
  5. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。この前お答えしましたとおりでございます。必置制学校教育法は建前としておると理解いたします。ただ、やむを得ない事情があることは千葉さんも御承知のところであり、われわれも努力はしますものの、容易に簡単に実現ができないということを遺憾に思っておったわけでありますが、しかし、なるべく早く本来の姿に持っていくことは、これは文教の府といたしましては当然の国民に対する責務と心得ます。その努力は今後も続けて参りたいと思っております。具体的な今後の見通し等につきましては、一応、政府委員よりお答えを申します。
  6. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまの養護教諭の問題でございますが、現在は大体小学校児童千五百人に一人、それから中学校の場合は生徒二千人に一人の割合で置いておることは御承知のとおりでございますが、文部省といたしましては、今後、昭和三十八年度以降四十二年度までに、逐次その充足をはかって参りたいと考えておりますが、四十二年におきましては、大体、小学校児童九百人につき一人、中学校生徒千二百人に一人というような割合に置くことを目標にいたしまして、養護教諭充実整備をはかって参りたい、かようなことを考えているわけでございます。
  7. 千葉千代世

    千葉千代世君 今の答弁の中に、中学校千二百人について一人、小学校九百名について一名、こういう目的を持っていらっしゃる。これはそれまでの年次的の計画とか、そういうものがおありでしょうか、ありましたらその年次的な計画を述べていただきたいと思います。
  8. 福田繁

    政府委員福田繁君) 今申しました小学校児童九百人、中学校生徒千二百人ということを目標にいたしまして、毎年計画的にこれを充実していきたい、こういうことでございまして、ただ、さしあたり三十八年におきましては、現在、養護教諭正規養護教諭になっていない市町村負担のものがおりますので、こういう人たちのためには、資格を得たものについては正規養護教諭としてこれを措置できるように、できるだけそういう措置をすみやかに講じまして、三十九年以降におきましては、大体一定数を、養成数とにらみ合わせて毎年大体七百五十人程度増加をはかっていきたい、こういうような考え方でおるわけでございます。
  9. 千葉千代世

    千葉千代世君 今の答弁の中で、年次計画内容が示されたわけですけれども、これは養成計画と相待って実行していくつもりでしょうか。
  10. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろん文部省といたしましては、昭和三十七年度から新しく百五十人程度増加養成をやる計画をいたしておりますが、将来の養成も、今申し上げました充足数を補うためには、若干増員もしなければならぬと考えておりますので、三十八年以降におきましては、今申しましたような年次的な計画にあわせまして養成増加していきたい、こう考えております。
  11. 千葉千代世

    千葉千代世君 ことしの予算書を見ますというと、昭和三十七年度の内容の中に、国立養成所五カ所とございますね、そうすると、来年は、とりあえずどのくらいにしていきたいとお考えになっていらっしゃいますか。
  12. 福田繁

    政府委員福田繁君) 今の計画を進めますにつきましては、五カ所にさらに三カ所程度は、これをふやさないと間に合わないような計算になりますので、そういうことについて増加することを努力したいと考えております。
  13. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど述べられました充足年次計画については、政府責任をもってこの計画を実行していくと確信がおありになりましょうか、大臣質問いたします。
  14. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ただいま政府委員から申し上げましたことは、良心的な気持を申し上げたのでありまして、あらゆる努力をいたしたいと思っております。
  15. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど述べられたのには具体性がございましたね。大体これこれの人数をふやしたいとか、養成所計画についてはこうしたいと、こうおっしゃいましたが、良心的という言葉はけっこうですけれども責任をもってこれを実行していくと、こういう御確信を述べていただきたいと思います。
  16. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それと同じ気持で申し上げたのですが、今おっしゃるとおりの言葉で言い直してもむろんけっこうでございます。国会の委員会の席上におきまして、私の意を受けて政府委員が申し上げましたことは、むろん政府側として文部省として責任を感じることは当然でございます。そのつもりで申し上げたのでございます。
  17. 千葉千代世

    千葉千代世君 初中局長答弁の中に、とりあえず、正規の免状を持っている者、これを、市町村支弁で今までいた、こういう者を任用がえしていくと、こういうふうな御意見が述べられたわけです。具体的にはこの前の委員会で申し上げましたのですけれども、県によって非常にまちまちである、多いところですというと、一番多いところは広島の三百十二名、鹿児島の同じく三百十二名、兵庫の二百九名、それから神奈川の百五十三名、新潟の百二十四名、三重の百二十五名、宮城の百四十名と、こういうふうに、多いところは市町村支弁がたくさんあるわけです。少ないところは、まあ東京であるとか、千葉であるとか、これは解消されつつあるわけですけれども、これは政府としては、ぜひ責任を持って、これは行政指導の面で各県の教育長会議なり、あるいは主管課長会議なり、あらゆる面でこれは政府責任を持って行政指導をしていただきたい、この責任をお持ちいただけますでしょうか。
  18. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま申し上げましたように、四十二年度までにだんだん養護教諭充実していきたいという計画を進めます以上は、当然にそういう現在おりますところにつきましても、いろいろおっしゃるようなことも努力しなければならぬと考えております。したがって私どもとしては、そういう面についてできる限りの努力をして参りたいと考えております。
  19. 千葉千代世

    千葉千代世君 それからもう一つ伺いたいことは、現在一人の養護教諭が二校ないし多いところは六校かけ持っている、いわゆる兼務しているところがございますのですが、この兼務状態を調べていきますというと、非常に労働過重になる問題から、教育の円滑な運営に支障を来たす点から、いろんな方面で述べられておりますが、きょうは時間の制約もございますので詳しく申し上げませんが、とにかく兼務をなくしていくと、こういう行政指導を行なっていただきたいと思いますが、例がここにたくさんございますが省略いたします。これは大臣答弁していただきたいと思います。
  20. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 兼務しております状態は、養成も十分にいかない、したがって、具体的な充足方法がない結果が兼務たらざるを得ない状態かと思います。だんだん、先ほど来申し上げましたように養成もいたしますし、あるいは資格を持っている人を登用していくというにつれて、兼務というものは当然なくなっていくものと心得まして努力したいと思います。
  21. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは兼務ということは、やはり支障を来たすと、こういうことでございますね。
  22. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これは一番最初にお答え申し上げましたとおり、必置制方向へ向かって努力しますわけですから、その努力が実るにしたがって兼務というものは当然除かるべき性質のものと、こう心得ます。
  23. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほどの充足計画の中で、養成所の件が述べられましたけれども、もう一つ、具体的にこれを解決していただく方法がございます。というのは、各県の教員採用選考基準の中に、年令が定められているわけです。東京ですというと、三十才以下とか、各県それぞれ県の事情によって年令基準がございます。養護教諭という仕事が、再々申し上げましたように、昭和十六年からの発足でございますために、いろんな、養成の面とか、制度の面とかでも不備があったわけです。したがいまして、これを充足していくためには、各県がいろいろな努力をしているこの年令基準をもっと上げていく、たとえば大分県では養護教諭を特に得がたいと、ですから四十五まで採用対象とするとか、それから採用基準を、これは県の内規でございますから、大幅に解釈いたしまして、ある程度年令については拡張解釈をしていると、こういうところもございますわけです。神奈川でも大体そのように伺っています。これはやはり選考していく場合に人を得る、そして充足計画を完全に実施していく一つの手だてとしてもこの点が非常に大事じゃないか、こういう点で各県に行政指導をお願いしたいと思いますけれども、それについてどのようにお考えになりますか、これは局長でけっこうでございますが。
  24. 福田繁

    政府委員福田繁君) これは各任命権者である都道府県のことでございますけれども、おっしゃるように、養護教諭がなかなか得にくいというような事情もございますので、あまり窮屈な年令にこだわらず、適任者はこれを採用していくというような方向指導していきたいと考えております。
  25. 千葉千代世

    千葉千代世君 そのような行政指導をしていただけると解釈してよろしゅうございますか。
  26. 福田繁

    政府委員福田繁君) そうしたいと思っております。
  27. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから先ほどの年次計画並びに現在配置されておりますところでも基準を上回っておるところがございます。東京その他の四、五県のように、そういうところは配置の率を下回らないように、つまり現在員が維持されて、しかもなおかつ基準より少ないところを上げていくと、こういう指導をいただきたいと思いますけれども、これも初中局長にお伺いします。
  28. 福田繁

    政府委員福田繁君) 先ほどちょっとその点に触れたつもりでおったのでございますが、まあ現在よけい置いているところは、これは熱意のあるところでございましょうから、一応の基準がきまりましても、それを引き下げないという努力はしていきたいと考えております。したがって、おっしゃるような意味において、私どもとしては小学校九百人、中学校千二百人というような基準で、これは一応平均でございますから、そういうことにいたしましても、よけい置けるような、熱意があり、また処置のできるところは、できる限りやはりそういう指導をして参りたいと思います。
  29. 千葉千代世

    千葉千代世君 まあ既得権が守られていくというような行政指導について特にお願いしておきましたけれども、これは養護教諭配置率が、今から十年前に一番よかった県が佐賀県でございましたが、これはほとんど百パーセント配置で、あすこは高等学校までずっと配置されておったわけです。ところが財政の逼迫という事情によりまして定員が削減されて、そのやり玉に一番先に上がったのが養護教諭であった。そしてどんどん切りくずされていってしまったわけです。当時はやはり特に養護教諭特殊性ということも考えられて行政指導をしてもらいたいという要望をしたときには、確かにするとおっしゃっていたけれども最後にいったら、地方の実情だからやむを得ないということで、これが消されてしまった実例がございます。それが非常に気になりますので、今、初中局長の答えられた既得権を守っていくような御指導を重ねてお願いしておきます。今、昭和四十二年度までの充足計画が示されたわけですけれども昭和四十二年度以降この充足対策についてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。たとえば養護教諭必置百三条の削除とか、こういう方向への道を十分に開いていただけるかどうかという見通しでございますが、お考えございましたらお示しいただきたいと思います。これは大臣にひとつ答えていただきます。
  30. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は元来、できますことならば、四十二年度までにでも必置制に持っていくことは望ましいとむろん思っておりますが、現実問題、養成が進まなければその人材が得られないという現実問題に直面しておることが、一番大きな今日まで本則にのっとってやれなかった原因だと思うのであります。したがって、四十三年以降につきましても、むろん養成充実しつつ、必置性が一年でも早く実現できるようにという心がまえでいくことは当然だと心得ております。
  31. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、事務職員配置について伺いますけれども養護職員については、先ほど年次計画が示されたわけなんですが、事務職員については、現在どのようなお考えをお持ちになっているでしょうか。たとえば、養護職員のように年次計画がおありになるかどうか、おありになりましたら、その内容を示していただきたいと思います。
  32. 福田繁

    政府委員福田繁君) 事務職員につきましても、これは学校運営上必要な職員でございますので、養護教諭と同じような大体歩調で、年次的にこれを充実していきたい、こういうように考えておりますが、ただいま文部省で一応考えておりますのは、三十八年以降四十二年度までに、小学校につきましては、大体十二学級中学校につきましては、大体九学級以上の学校に一人を置けるような、これを目標にいたしまして、毎年、年次的にこれを充実していきたいというような考え方で進んでおるわけでございます。
  33. 千葉千代世

    千葉千代世君 養護教諭のときには、たとえば、年に七百名ふやすとか、こういうように具体的におっしゃられたわけですけれども、その年次計画内容の数字を、もう少し具体的に答えていただきたいと思います。
  34. 福田繁

    政府委員福田繁君) 事務職員につきましては、大体、四十二年度までに、今の小学校十二学級中学校学級というようなことで、それを目標にして参りますと、約六千人ぐらい要ると思いますが、その六千人ぐらいの職員を、三十八年度は、大体これはすし詰め学級解消の年でありますので、若干、前向きに、よけい充実したいと思っております。三十九年以降は、大体、年千人程度職員を毎年充実していきたい、こういうふうに考えております。
  35. 千葉千代世

    千葉千代世君 やはり、年次計画文部省のほうにおありでございましょうが、これが実行に移されなければ何にもならないわけで、政府として責任を持って、この事務職員に対する増員年次計画を実行していく確信がおありでしょうか。
  36. 福田繁

    政府委員福田繁君) 従来、文部省におきましては、事務職員一般教員と同様に年次的に増員して参りました。で、今申し上げましたような、四十二年度までの一応の計画は、これはぜひ必要なものでございますので、最大の努力をしてこれを充足していきたい、こういうふうに考えております。
  37. 千葉千代世

    千葉千代世君 大臣お尋ねいたしますが、先ほど、養護教諭の場合に、配置基準を上回っているところ、これはくずさないように維持していくと、こういうお答えでございましたが、この事務職員の場合にも、同様に、責任を持って、行政指導をしていただきたいと思います。たとえば、これは文部省指定統計でございますけれども基準を上回っているところが、現在、青森、山形、宮城、福島、茨城、千葉東京、長野、石川、三重、和歌山、兵庫、鳥取、福岡、長崎、大分、熊本、鹿児島と、十八県でございます。中学においても同様でございますが、これは省略いたします。この十八県が現在員を上回っておって、しかもこれから学級基準が下げられましても、幾らか上回るところが出てくると思いますが、その点について、特に年度末になりますというと、基準を上回っているからといろ理由で、退職勧告対象にされているという実例も伺いました。したがいまして、この現在員を上回っているところ、新しい基準によっても、なお上回ると予想されるところ、その他についても、責任を持ってこれを行政指導していくと、こういう確信がおありでしょうか。
  38. 福田繁

    政府委員福田繁君) その点につきましては、これは養護教諭の場合と同様でございますが、私どもとしては、全国平均あるいは県全体として考えての定数でございますので、個々の学校については、やはりいろいろ事情があると思いますから、したがって、現在たくさん基準以上に置いているような学校がございますれば、それはやはり特殊事情として、できる限りそれを維持していきたいというような方向努力していきたいと思っております。
  39. 千葉千代世

    千葉千代世君 今の初中局長答弁と、大臣、同じ考えでございますね。
  40. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) もちろんでございます。
  41. 千葉千代世

    千葉千代世君 四十二年度までの充足計画が示されましたが、これもやはり四十二年度以降について、たとえば学校教育法の二十八条のただし書きをなくしていく、こういうほうへの道を開くというお考えはございましょうか。
  42. 福田繁

    政府委員福田繁君) 四十三年以降については、これはまたかなり先のことでございますので、今、ここでただちにどうするということも申し上げかねますけれども、要するに、学校教員定数なり、あるいは事務職員定数、それらの全体としての問題として再検討しなければならない時期になりますので、関係法令の検討についても、十分、これをその時期までに検討して参りたい、そうしてできる限り充足して参りたい、こういう考え方でございます。
  43. 千葉千代世

    千葉千代世君 大臣お尋ねいたしますが、今、初中局長から、できるだけの行政指導をしていくとおっしゃったのですが、これはできるだけという言葉で、言葉じりをとらえるわけではございませんが、先ほど申し上げた佐賀県の例のように、各県に行きますというと、できるだけのことをやったけれどもだめであったと、今までこういう答弁が多いわけなんです。したがいまして、大臣責任におきまして、行政措置は必ずすると、このように御答弁をいただきたいと思います。
  44. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現実に必ずすると言えとおっしゃいますと、少し、そのお尋ねに対して、断言することははばかりがあると思います。申すまでもなく、内閣全体としては、閣議があって、しかもそれ以前に、予算措置としては、査定権を持つ大蔵省がございますから、何が何でもこれを征服してみせるのだという気持はございますけれども、必ずそうしろというお尋ねではないと思います。できるだけと申し上げます以上のことは、うそになることをおそれますから、ベストを尽くすと、そういうふうに御理解を願いたいと思います。
  45. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣責任をもって行政指導をすると、このことはよろしゅうございますか。
  46. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これまた同じでございます。全力を尽くします。
  47. 千葉千代世

    千葉千代世君 最後に、今、政府の見解を伺いましたのですけれども一つだけ、養護教諭の場合には、文部省においては、免許状養成計画に関しましては大学局、それからその他の問題については初中局、それから実際、各県にいきまして、講習会を開いたり、いろいろ講師に来ていただくとか、保健の面については、保健課がこれを担当していらっしゃるようでございますけれども、今まで、私どもが今日に至るまで保健課に行っていろいろ伺いますと、それは大学局だから、そちらへ行って聞け、それは初中局だ、自分のほうは保健指導面だと、こういうふうになっているわけです。なかなかなわ張りがきついらしくて、みこしを上げていらっしゃらなかった。ここ二、三年、これは非常に連係をとっていられるようですけれども。私はやはり養護教諭が、各県においても、保健課指導部とあとは職員課ですか、このようにまたがっていて、ともすると、まま子扱いのような立場になることがままございます。そういうふうな意味におきまして、中央におきましても、地方におきましても、緊密な連係をとって学校保健の発展のために御努力をいただきたいと、この点を要望いたしまして質問を終わります。
  48. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私も簡単に大臣に、何か決議が出るらしいので御所見を承りたいと思います。  今の質疑の過程を承っておると、文部省として、まあ従来かつてないようないろいろな前向きの御努力が願えることは、これは日本の少年、児童にとって非常にしあわせなことだと考えます。ところが養護教諭の場合についても、一つ計画の最終的に仕上がる時期というものは、小学校では十二学級中学校では十学級、そうなれば、小学の定員から考えると六百名内外を一人の養護教諭が扱って、健康管理から保健教育からやるんだということです。ですから、これについてはやはり文部当局としてはそれで十分だというふうには考えられないだろうと思いますが、私のお尋ねしたいのは、文部省自身も力を入れてやってもらいたい。ということは、一般の教室で教壇に立つ教諭養護教諭というものとは、戦前における学校看護婦なり養護婦なり、それらの経過からして養護教諭となってきておる関係から、世間一般が軽視しておる。また、その目的を十分一般的に熟知しないという向きがあるので、地方公共団体においても、あるいは国の文部省以外の関係当局においても、この点についての熱意というものが薄れてないかと思う。今日においてもそうだと思います。で、財源的な措置をする基準まで達成せしむることと同時に、学校教育における養護教諭の地位なりその使命なり、これらについては、やはり文部当局教育委員会等を通じてもっともっと周知徹底させる。そうしてまた、養護教諭というものの地位が、一般教諭との関係においていささかも差別されないというような、そういう気風を学校内外に持たせる必要があることだ。これらについては特段の御努力を願っておかなければならぬ。また、事務職員の問題でございますが、財政の都合でいろいろ出入りが起こってきておる。また今日においてもそうであり、将来もそうである。このことは根本的に間違っている。私は間違いだと思います。戦前における旧制中等学校以上に事務職員を置き、小学校あるいは高等小学校にはそういうものを置かなかったという悪例、慣習がいまだ脱却できない。そして教師にあらゆる雑用、雑務をおっかぶせて、そのことによって学校教育の成果を上げる、戦前におけるあの義務制の非常に悪いところがまだ残滓として残っておる。かまえ方、受けとめ方が各方面にそういうものが残っておる。この点を文部当局においては十分今後排除せられるように、やはり啓蒙していただかなければならぬと思う。文部大臣は口を開けば、教育なり、学力の向上なりおっしゃいますが、少なくとも文部大臣のきらっておらるる社会主義国のようなところでさえ、小中学校事務職員を置かないという学校はない。あの中国においてさえ、ほんとうに僻村の新しくできておる小学校であれ、中学校であれ、あらゆる部門を担当する事務職員が設置せられて初めて学校であるといわれるのです。教師だけがいるのは学校だなどとはいわぬのです。たとえば学校内外を清掃する用務員が専門に何人かおる。日本の小中学校のように児童生徒に、これも教育上の必要があるというふうにして、学校の掃除、便所掃除、こういうことをやらせておる国はどこの国にもない。社会主義国にもない。自分たちの使った便所だから自分たちがそれを始末しろという、何か過去の需教の精神に基づいた塾制度、そういうようなことを学校教育の中に持ちきたしておる国はどこにもない。あんなおくれておるといわれるような中国においてもない。あるいは外回りの用を足す用務員は用務員、あるいは学校を警備、管理する用務員は用務員、日本の日宿直にかわって専門の用務員がいます。あるいは一切の学校の事務を扱う事務職員もいます。その事務職員も一人や二人でないのです。そうして日本の学校教育法が、教師は「教育を掌る。」と明示しておるように、よその国では、教師は教壇上における教育だけを本務として仕事をしておる。それが済めば勤務上の時間の制約がない。どこにおいて研究しておってもよろしい。どこでもそういうのが例です。日本だけです、学校教育といえば、校長と教師をそろえさえすれば、あとの教材、教具等がどうであろうが、それを充足せしむるための用務員なり、事務職員がどうであろうが、学校教育は完璧にいくものという錯覚を持っておる。これは旧来の陋習というべきです。これを打開して、そして教育諸条件を整備する、そのことから教師は教師で教壇上の本務に専念し得る、雑用、雑務から解放される、こういうことはやはり基本原則として行政として全力をあげて努力をしてもらうべき筋であろうと思います。したがって、今回、養護教諭あるいは事務職員の拡充ということで文部当局の積極的な計画なり、文部大臣の全力を尽くすという意向は、これは大きく関係者に共感をもって、また好感をもって迎えられるでしょう。しかし、その計画だけで甘んずるわけのものではないのです。少なくとも、自由主義国であれ、共産国であれ、日本が教育の問題についてはひけをとらないという態勢をとるためには、教師を配置、整備するのと同じ条件のもとに、養護教諭事務職員というものが考えられる、そういうことを強く期待いたします。文部大臣も閣議がどうであれ、政府がどうであれ、どういう政府ができ上がろうと、教育基本法なり、学校教育法の精神を生かし、そして日本の教育を伸ばすためには、こうした諸条件を全力を上げて伸ばすのだということで、非常に大きな理想と決意とを持っていただきたいということを重ね重ね切望しまして、今、現実的にはこれしかできない、あるいはそれができたらりっぱなものだということでなく、もっともっと次の行政にこの方面が拡充せられることを切望する、そういう御意見を大臣から承わりたいと思います。
  49. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 養護教諭及び事務職員についてのお説でございますが、考え方は私も同じに考えます。今の法律もまさにそれを指向しておるものと考えます。あとは具体的な実行あるのみと心得ます。その実行は、先刻申し上げましたようになかなか一挙動ではいかないことを残念に思いますが、なるべくすみやかに、法律が本則として、建前として期待しております状態を作り上げたい、かように思います。養護教諭が今まで十分にいかなかったことも、先刻申し上げましたように、実際問題としてなかなか女子の職場も拡がりましたし、看護婦の実力を持っておってその上にプラス・アルファの能力がなければならないという厳粛な要請もあるわけなんですから、養成に事を欠いておった、看護婦そのものすらも社会的要請にはこたえていないという実情のゆえに、遅々として進まない点があったろうと想像されるわけであります。それゆえに、三十七年度におきましては、ともかく養成に着手しないことには実現はいつの日かわからぬという現状ですから、乏しいながらも養成に着手するということから始めておるわけですが、先刻お答え申したような考え方で着々実現をはかる努力をすることが、われわれの当然の使命であると心得ます。
  50. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今の答弁でも意は尽くされておると思うのですが、私が先ほど申し上げた点は二点ある。一つは、日本の学校というのはその種のものを軽視しておる、それが置かれなきゃ学校としての全機能は果たせないのだという大前提をほうったらかしにしておると申しますか、蔑視しておる、したがって、学校というものはこれらが備わってこそ十全の機能が果たせるものであるということを、行政の方も、あるいは社会一般もそれをはっきりと考える、そういうことから、幾多の問題を思索するにも、スタートしていただきたい、その根性がない、ある場合はあってもよし、都合によってはなくてもよろしいという程度のものに、この種のものを扱かってきたところに、いまだこの面の人の配置が十分でない、養成の問題も十分でないという点が指摘されると思う。何学級以上は置くとか、何学級以下は置かないとか、こういうことがあたりまえでいいのだということではなくて、これはいかなる学校でも養護教諭事務職員というものが配置されて学校の機能が果たせるのだ、こういうことをふんまえて行政の問題を考えていただきたい、こういうことなんです。その上で漸進的にでも漸次的にでも御努力を願いたい。もう日本の国力なり財政上から、何学級以下はなくてもやむを得ないのだ、こういう思想が行政当局にあったら、これはなることもならない、停帯します。そのためには地方公共団体であれ、あるいは教育委員会であれ、これを指導するのはどこか、それは文部省当局しかない。ところが文部省当局自身が何か機械的に、人間が少なかったら健康管理も要らぬし、健康教育も要らぬというような結果になるような、そういうことで考えるとして甘んじておるというなれば、これは間違いだ。何年かかろうが、全校へこれが配置せらるる努力をする中で、過程的には現時点における計画はここまでだ。こういうお示し方を願うということ、だから、大臣のお考えとしては、大臣の時代にならぬとしても、日本の教育行政はそういくものと、私と同感だろうと存じますが、かまえ方がそういうところになければ、日本の全体の学校教育というものが伸びないのだ。また、児童生徒健康管理、この問題はおろそかになるんだ。こういう意味で申し上げている、基本的には。ですから、一つはこの部面においてもっと学校というもののあり方について、世間一般に対しても指導――世論的にそういうものの必要性をお考えになるように世論を喚起してもらいたい。一つは、行政そのものが全校配置という建前のもとに、現時点においてこういう計画があるのだという姿勢を常にお示しになり、行政を伸ばしていく、この二点を申し上げた。
  51. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻お答えしたとおりでありまして、千葉さんにお答えしたのも、今おっしゃるような気持も含めて申し上げたつもりであります。
  52. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでけっこうです。
  53. 相馬助治

    相馬助治君 この際、文部大臣に二点だけ伺って、所見並びにその心がまえをただしておきたいと思うのです。第一点は、今、同僚議員も触れられた問題ですが、この児童保健管理ということの重大だということがわかっていても、通例的に養護教諭というものが教育の主体的なにない手ではなくて、何かそういう、もの的な、そうして付属物的な、あればないよりましなんだというような考え方が、長きにわたって教育界を、一般社会を支配してきたと思うので、これを直すことが文部省としても第一の責務で、今、小笠原委員が触れられたとおりですから、このことを法制的に具体的に一つ果たすように、積極的な具体案をより押し進めていく必要があると思うのです。事務職員というのも、学校経営というものがあれば、経営があれば、事務が当然あるのであって、家庭教育とは違うのですから、事務ということもそういうものではなくて、教育のこれは本質的なものだと思うので、事務職員もまた教育の本質的な主体的なにない手だと、こういうように思いますが、それをあわせて姿勢を正すように、積極的に手を打つように希望します。このことについての答弁は、同僚議員に対するお答えで尽きているので重ねては要求いたしません。  第二点は、ないが意見の総じまいで、どんないい考え方を持っていても、ぜにがないからだめなんだということで、まずこの養護教諭、それから事務職員というような問題が削られてきておることが通例です。そうして私は、文部省の善意の意思を疑わないが、残念ながら、日本の機構の中では大蔵官僚のほうが強い。それで、この財政的な理由でせっかくの文部省の良識あるものの考え方もけ飛ばされてきておることは、事例をあげることにむずかしくないのです。今後の給食の費用の問題でも明らかだと思うのです。主食を小さくして副食でもって見てやるんだというので、文部省が主食を小さくして、費用を削って、副食費のほうを要求したところが、副食費が削られて、そうして文部省の主食費を小さくした分が今度は認められて、何のことはない、笑い話にもならぬような、パン百グラムが八十五グラムになったというのが話の落ちです。これじゃどうにもならぬと思うのです。私は文部大臣は非常に政治力のある人だと考えてはいましたが、この給食の財政措置を見て、私は率直に言って荒木文部大臣に失望したのです。どうかひとつ、この養護教諭事務職員の問題について、財政的にもっと基礎を正すように、そうして、ひもつきでなく金が出ていくようなこの仕組み、それをひとつあなたの時代に作り上げるように、そうして後に決議されるであろうところの本院の意思に合致するように、ひとつやっていただきたいと思うのです。大蔵省との交渉についての何か御見解と気がまえがあったら承っておきたいと思います。
  54. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申します。これはどうもベストを尽くすと申し上げるより手がないと思います。ベストを尽くしたつもりだが、どうも国民側から見て、まだ努力が足りないといっては国会でしかられるというようなことを繰り返しながら、だんだんよくなっていく以外に手がない、良心的にという言葉で先刻も申し上げましたが、文部省全体として良心的な努力をしていく、その積み重ねによって御期待にこたえたいと思います。
  55. 大矢正

    委員長大矢正君) 他に御質疑のおありの方はございませんか。――他に御発言もないようでありますので、質疑は一応尽きたものと認めます。  この際、お諮りいたします。養護教諭並びに事務職員充実に関しまして、ただいま各派共同提出になります決議案が委員長の手元に提出されておりますので、これを議題といたします。  本決議案は、各派共同提出でありますので、便宜、私より案文を御紹介いたします。  ただいま朗読いたしました決議案を本委員会の決議といたすことに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  56. 大矢正

    委員長大矢正君) 全会一致であります。よって本決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  本決議に対し、文部大臣の所信を求めます。
  57. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ただいまの御決議につきましては、学校教育法第二十八条の趣旨にのっとり、文部省といたしましても十分決議の趣旨を尊重し、これが実現については誠意をもって努力したいと存じます。  この際、文部省において現在考えております計画について、その概要を申し上げれば次のとおりであります。  第一に、養護教諭につきましては、昭和三十八年度から昭和四十二年度までに順次その充足をはかり、昭和四十二年度においては、小学校児童九百人、中学校生徒千二百人について一人の養護教諭を置くことを目標とし、約五千人の増員をはかって参りたいと考えております。なお、この場合に、現在、市町村がその給与を負担している養護職員資格を得た者につきましては、できるだけすみやかに正規養護教諭に切りかえるよう配慮をいたしたいと考えます。また、養護教諭養成につきましても、以上の計画に即応して遺憾のないように措置いたしたい所存であります。  第二に、事務職員につきましては、養護教諭充足とほぼ同様の歩調で、これを充実するよう努力したいと思います。すなわち、昭和三十八年度から昭和四十二年度までに順次その充足をはかり、昭和四十二年度においては、小学校十二学級中学校学級以上の学校事務職員一人を置くことを目標とし、約六千人の増員をはかりたいと存じます。  第三に、現在、文部省において検討いたしております計画は以上のとおりでありますが、昭和四十三年度以降の充足につきましても、以上の充実計画の進行、状況等を勘案しつつ、学校教育法第二十八条及び第百三条の規定等関係法令の整備について十分検討を加え、学校教育法第二十八条の趣旨の実現に向かって努力いたしたいと考えます。     ―――――――――――――
  58. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、義務教育学校教科用図書の無償に関する法律案を議題といたし審査を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  59. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先月から本法律案について、いろいろ主として教科用図書無償の問題の経緯、無償の原則について質問して参りましたが、なお、大臣答弁に明らかでないところがありますので進めていきたいと思います。御承知のように、憲法二十六条には、国民はひとしくその能力に応じて教育を受ける権利を明記し、同時に義務教育の無償を宣言いたしております。教育基本法第三条にも同様のことを掲げておりますが、この憲法にいうところの無償の原則と教育の機会均等とについて大臣の所見を承ります。
  60. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今指摘されましたように、国民はひとしく能力に応じて教育を受ける権利を有するというのは、読んで字のごとくそのとおりだと思います。義務教育無償――二十六条二項の趣旨は、義務教育として保護者が自分の子女を学校に通わせねばならないとする制度のもとにおいては代償を求めないということと了解をいたします。しからば、その義務教育無償の具体的内容は何だとなりますと、いろいろ学説も分かれていると承知いたします。しかし、日本では少なくとも、従来、教育基本法でもって、社会的通念として、義務教育については授業料は徴収しないという最小限度の規定をもって、憲法二十六条第二項にこたえてきて、今日に至っていると思います。ただし、学校施設設備ないしは教職員の俸給等についての措置は、別途の法体系であることは申すまでもございません。直接憲法で、二十六条二項との関連で申し上げますれば、教育基本法の授業料を取らないということであったと承知いたします。そこで、今度教科書を無償とするということにしようというわけでございますが、これはまた授業料を取らないという、従来の建前の次に位する包括的な憲法二十六条二項にこたえる内容だと承知いたします。その他具体的に何があるか、プラス・アルファを憲法の理想として期待しているということだけは明瞭でございますが、教科書の次はそれでは何だということになりますと、学説も分かれ、具体的にそれを実現するという角度で申し上げるのには、いささか私も検討が足りませんので、抽象的に申し上げるだけで一応とどめさしてもらいます。
  61. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 御承知のように、憲法二十六条は、教育の機会均等の権利を先に宣言し、続いて就学の義務をうたい、最後に無償の原則を宣言しております。したがって、まず、教育の機会均等が優先して確立されなければならない。その確立の権利のあり方の一つとして就学の義務ということと無償という概念は、これは基本的なねらいとして一致すべきものだと私は考えますが、大臣はどう考えますか。
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど申し上げましたとおり、義務教育は無償とするということであって、それはそれなりの独立したものだと思います。教育の機会均等ということの理念は、義務教育であれ、何であれ、ことごとくについて憲法に規定されておるはずだ、こう理解しております。
  63. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、教育の機会均等は全般にわたってある問題であることは御指摘のとおりです。しかし、次に普通教育を受ける義務を強制し、このことを受けて同条の中に、「義務教育は、これを無償とする。」したがって、少なくとも義務教育という制度の中では、機会均等の条件確立、あるいは権利の享受ということが優先確立されて、そのことをふまえて国家が義務を負わせておる、そのためには当然の結果として無償でなければならない、こういう論理構成だと思いますが、   〔委員長退席、理事北畠教真君着席〕 大臣のただいまの答弁では別個のものだ、こういうふうに受け取れるのですが、そうですが。
  64. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻申し上げたとおり、教育全般にわたって機会は均等に与えねばならない、能力に応じて受ける権利を保障されねばならない、少なくともそれを目標努力されねばならない、こういう理想を掲げておると思います。その教育のうちの義務教育とされておる部分については無償とする建前を宣言しておる、そういう関係だろうと私は思います。
  65. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先日も長時間、大臣答弁をめぐって論議をしましたんですが、少なくとも九カ年間の義務教育という制度の中では、機会均等、しかもそれは能力に応じてあらゆる教育を受けていくという原則が確立され、このことをふまえて、教育基本法の十条の教育行政は諸条件の確立に努めなければならない。こういうふまえ方をしておると私は解するのですが、大臣の御見解は。
  66. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘のとおりと思います。
  67. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、まず教育諸条件が、憲法二十六条の機会均等の権利の享受のために、諸条件が当然整備されてくる。その整備を待ってと言うと、やや語弊がありますけれども、その諸条件確立、権利の享受の前提として、親はその子女の普通教育を義務化されておる。このようにふまえてきますと、基本法の、教科書を無償とするという定めは、当時の日本の政治、経済情勢の中で、憲法のほんの一部を実現するというやむを得ない措置であって、当然、教育機会均等の権利と就学の義務とが相待った場合には、義務教育に関する限りは、昭和二十六年法律第四十九号にあったように、当然のこととして、教科書だけでなくして、広範囲に義務教育が、もっと積極的に言うならば、完全に近いほど義務教育は無償の中で享受されていく、このことが憲法二十六条、教育基本法第三条並びに第三条の精神である、このように大臣は理解しておられますか。
  68. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御質問の趣旨を明確にとらえませんけれども教育の機会を均等に与える、能力に応じて教育を受ける権利を行使するに必要な諸条件を整備するということを理想とし、政府に対しては要求している。これはまあ疑いのないことだと思います。まあ義務としますことは、一面、国民の当然の基本的な要素としての一定度の教育は、いやとは言わせないで、子女を小中学校に通わせる、具体的に言えば。という建前を宣明している、それと教育の機会均等の場を与える努力目標との相互関係は、理想的に言えば、絶対的な条件が整備した状態を憲法は期待しておることも当然だと思います、理想としては。それから義務教育は無償とするということも、単なる授業料をとらないということだけではない、プラス・アルファがあるということを考えて、二十六条二項は、その理想状態を宣言している、こういうことと思います。教育基本法が授業料をとらないのだということを定めて、憲法二十六条と相照応してスタートをしたその状態が、憲法二十六条二項の期待する状態ではむろんない。プラス・アルファが何であるかも客観的に検討を加えつつ、その時点における、財政的その他の諸条件が許す限りにおいて、次々に努力が重ねられて、プラス・アルファが増大していくということを憲法も期待し、教育基本法も期待している、そういう趣旨のものであろうと思います。
  69. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 その意味において大臣の見解と一致いたします。  続いて同条についてもう一つだけ尋ねておきますが、憲法二十六条には、教育の義務化をうたう前に、機会均等の権利をうたっております。この法律の同じ条章の中の、いずれが優先するかという論議になってきますと、問題はきわめて本質的、あるいは多角的になってくると思いますが、少なくとも国民に教育の義務化を憲法がうたう以上は、前段の機会均等の権利を享受するに足るだけの条件が確立されることまた確立することを、私は約束づけられている、このように理解してよろしいですか。
  70. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻申し上げたとおり、そういう理想状態の具現を期待している、憲法の趣旨はそういうものと思います。
  71. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうしますと、ただいまも大臣の御答弁にありましたように、それを受けて、ここで論議しますならば文部省――全般的に見ますと、教育行政はこの自覚のもとに、すなわち国民全体に対して直接に責任を負って行なうべきものである。この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行なわれなければならない。これが法律に定めるところの、教育行政の基本的なかまえである。このように理解するのですが、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標とするという教育行政の任務というものは、これまた論じ始めると非常に多角的にわたりますが、事、教科書無償、これだけにとってみますと、単に今回の法律のごとき教科書を無償とするということでなくして、教育行政の十条の精神としては、先日から論議しております給食の問題にいたしましても、設備、施設の問題にしても、事、義務教育に関する限りは、直ちに国とは断定できませんけれども、国または公共団体が完全に近く整備して、憲法二十六条にいう教育を受ける権利が完全に享受されるように努めなければならない、このように理解してよろしいですか。
  72. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 無償の限度いかんという具体的な問題となりますと、先刻申し上げましたように、私は自信のある答弁を今すぐ持ち合わせません。乏しいながら学説等も調べたり聞いたりしたんでございますが、一定したものはないようであります。ないのが当然だと思います。その内容は、あくまでも時代の進展、社会的、経済的、政治的諸条件の変動、進展によって変動がある、あり得るもの、しかしながら、抽象的に申せば義務教育というものは、言うがごとく無償でやっていくことを理想とするということでありまして、さらに通俗に常識的に申し上げれば、まず第一には、授業料をとらないということから始まった。その次は教科書を無償とすることに着手した。その次は何だということとなると思います。何を取り上げ、どこまでで終わるかということは、今ちょっと責任ある答弁はいたしかねる課題だと思います。
  73. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 昭和二十六年並びに二十七年の教科書一部無償の法律案は、前回もただしましたように、二十六年法律は、国民の自覚云々という言葉で法律の目的が定めてあります。二十七年法律はお祝いである、こういうことなんです。ところが今回の法律は、大臣が再々答弁の中に憲法二十六条の無償の宣言を受けた法律である、こういう御説明があっておるし、提案理由にも同様のことが書いてあります。そうすると、従来の教科書を無償で配布された措置と、今回の法律の中には明確に憲法二十六条の義務教育無償の宣言を受けた法律として、はなはだしく意味が異なってきておると思う。したがって、文部省としては、当然、単に教科書を無償として給付するということだけに限定して立案さるべきでなくして、無償の原則の内容、あるいはその施策を検討されてやるべきであったと思うのです。大臣は学説が一致していないとおっしゃるのですが、どの学説をお読みになってどう書いてありましたかというやぼな質問はいたしませんけれども、憲法二十六条並びに教育基本法第三条並びに十条について、私の知っている限りは学説は一致しておるけれども、現段階の措置として何を優先無償とするかについての意見は区々である、当然、憲法の建前からして義務教育は完全に無償であるべきであるという議論に反対の学説は私は聞いたことがありません。したがって、本日ないとするならば、今回の法律を出された建前からして、憲法二十六条の早急なる実現に対して、当然、文部省としては早急に検討すべき段階にきておると考えますが、大臣の見解は。
  74. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御質問がいろいろにわたっておるように心得ますが、以前に一部の教科書を無償とするという措置が二回にわたって行なわれて、それはこの前も申し上げましたように消えてなくなったわけでありますが、この前のときの教科書に関する立法措置と、今度とは基本的な趣旨においては格別の差異はないと私は心得ます。ただ、内容的に程度の問題というか、分量の問題で差異がある。以前の教科書無償の措置は、小学校第一学年だけに限り、しかも一部の教育課程に使用される教科書に限り無償とするという建前で始まったと思います。したがって、その法律そのものが予定しております分量の問題からして、提案理由等もある程度のニュアンスの違いはあったかと思います。しかし、部分的ながら憲法二十六条二項の趣旨に沿わんとする努力の現われであったことには間違いない。今度は義務教育学校の教科書はすべて無償とするという建前をとることによって、憲法二十六条二項にこたえたいということでございまして、その表現の差異はその点から出てきておる、こう考えるわけであります。そこで、しからば当然、政府は憲法二十六条二項に言うところの義務教育無償の範囲を具体的にきめるということにならねばならぬという仰せのようでございますが、それは今度の法律案を立案するといなとにかかわらず検討を加えていくべき課題と思います。ですけれども、はたしてどういうところまでが憲法二十六条二項に言うところの具体的課題であるかということは、もっと十分検討を加えてからでないと責任ある答えはできないであろうと私が考えますので、先ほど来の御答弁を申し上げておるのであります。しいて私見でございますが、抽象的に言わしていただけば、この前の委員会でもどなたかにお答え申し上げましたように、憲法二十六条二項の義務教育は無償とするという具体的内容の共通要素というものは、少なくともそれが普遍的であり、そして平等であるという要素だけは持っていなければ、憲法二十六条二項に言う無償の具体的内容とはなり得ないではなかろうか、そのものさしをあてがいながら、しからば具体的には次に何だろうということでは、これこそ具体的に検討を始めねばならないとむろん思っておりますが、これだけがすべてであります、二十六条二項の対象のすべてでございますという意味でのお答えはちょっとできかねることを遺憾といたします。
  75. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 最後のことは了としますが、できるだけ早い時期に、二十六条の広範囲、完全な実施について検討する必要がある、このようにお考えだと理解してよろしいですか。
  76. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのとおりであります。
  77. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 法案に入ります前にもう一つだけお尋ねいたしておきます。先ほどお聞きしました憲法二十六条に言う、国民はひとしく能力に応じて教育を受ける権利、これに対して、大臣は先委員会におきまして、極端に表現するならば、能力の悪い者は高等学校、大学等で落ちていくのは当然のことだと、こういう趣旨の理解をされているようですが、憲法二十六条に言う能力に応じてというのは、それぞれ持って生まれた個性に応じてそれを伸ばしていく教育を受ける権利を持っている、このことについても私は異論がある学説を見ないのですが、大臣の御見解はいかがですか。
  78. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これはまあ一般論として申し上げれば、読んで字のごとく解するのが当然だと思います。すなわち能力に応じて教育を受ける権利を実施できるような条件を整備する責任政府の立場においてもベストを尽くしてやらねばならぬ、そういう宣言だと思います。
  79. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 次に、提案理由について若干ただしておきたいと思います。今までの大臣との質疑応答の中で、やはり教科書無償の法律案を提案されたということ、あるいは政策的に教科書の無償に踏み切られたということは、単に義務教育無償という憲法の規定ということではなくして、同条の前段の教育の機会均等の権利をより与えていく、これが最も大きなねらいの一つであるというふうに答弁されたと私は理解するのですが、提案理由を見ますと、今回の教科書無償の法律の目的というか、理由は、教科書を与えることによって国民的な自覚が深まってきたり、あるいはそのことによって祖国の繁栄と人類の福祉に貢献してくれるような人間ができ上がるかのごとき印象を受ける表現がなされておりますが、教科書無償と国民的自覚を深めるということはどういう関係がございますか。
  80. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そういうような表現は、前の法律制定のときの提案理由その他にもあった言葉と思いますが、全国民の血税によって直接にあがなわれたものが無償で児童生徒の教科書として与えられるという、その形は、直接法で言いまして、児童生徒に全国民的な立場で考えてもらっておるという考えを呼び起こす一つのようすがであることは疑いないと思います。そういう考え方を涵養することも、義務教育課程において特に重視されねばならぬし、されつつある事柄でありますから、それにいささかでもプラスを加える方法として考えられる意味合いを述べたつもりでございます。
  81. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 国または地方公共団体が教科書を給与する、そのことによって子供たちがありがたいという気持を持つ、こういうことを法律あるいは地方公共団体が期待することは、現行の教育の目的、目標と相反するものである。児童生徒が、義務教育に関する限りは憲法の定めによって教育機会均等の権利を定められ、国がこれを義務化する以上は無償とするとなっている。当然の措置である。そのことをどう判断するかは児童生徒、父兄の基本的な思想、人生観にまかせらるべきものであると思いますが、大臣は、教科書を無償で与えたことによって、国民的自覚そのものの内容もきわめて不明確ですが、そういう一つの国に対する特定の意識、自覚を強要するというか、求めることが、どこから権利として出てくると考えておるか、この提案理由に書いてあるのですよ。前の提案理由じゃないですよ、今回の提案理由に書いてあるんですから。
  82. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) この点は、いわば法律以前の問題とも言い得ると思います。教育はすべてそうでもありますが、特に義務教育、がんぜない子供たちを育てる場所である義務教育の場において、日本の教育である限り、また日本人が血税を出してまかなっておる義務教育の場において、児童生徒たちが、がんぜない子供のころの意識ではあるにいたしましても、自分は日本人だという意識を持つことは、これは当然のことであって、望ましいことであって、強制されるとかせぬとか、権利とか義務とかいう以前の必然的な課題であろうと思います。例外なしに、何人といえども、自分の子供が日本人であるという意識を持ってスタートしてくれることを念願しておるわけであります。その点をとらえまして教科書無償ということの一つの効果が期待できるであろう、そのことを述べたつもりであります。
  83. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 基本論争ですので、できるだけ簡単に進めたいと思っているのですけれども、非常に今の大臣答弁は重要ですよ。教育基本法の第一条に、教育の目的を掲げております。また学校教育法の、小学校の場合は、十八条に教育目標を明記いたしております。これはいろいろの把握の差はありましょうけれども、いわゆる日本人としての自覚という概念の養成というのが主たる目的でなくして、私が読み上げるまでもなく、人格の完成とは何ぞや、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、国際的な協力を、協調性を持っていく、いわゆるそれが日本人的な自覚のある人間となるか、コスモポリタン的になるか、あるいはもっと別の角度を持つかは法律の求めないところである。したがって、同時に義務教育学校において、国、公共団体が何らかのものを無料で給付する、それが恩恵的に児童生徒に与えられていく、あるいは恩恵的な措置に対する感謝の気持を求めていく、これは現行教育基本法の教育の目的並びに学校教育目標の強く否定するところですよ。感謝の念を養うことが教育の目的に相反するというのじゃない。国、公共団体が義務教育に対して何らかの無償の措置をやる、このことが即恩恵であり、したがって、道徳的には感謝の気持となっていく、あるいは教科書をもらったから、われ日本人なりという自覚を養成していく、こういう個人と国のつながりを、義務教育においてそういう形で求めていくことは、私は少なくとも新教育の、あるいは学校教育基本法の禁じておるところと信じておりますが、大臣は、常識的に、日本人であるから、血液的に日本人であるから、日本の国土の中で日本の税金で教育を受けるから、即教育目標あるいは目的が日本人としての自覚を必然的に求めておる、養成する義務がある、こういうふうに判断されておるとすると、はなはだしく問題があると思いますが、再度今のところを御答弁願います。
  84. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は、この教科書無償が、文部省とか政府とかいうものから児童生徒に下されものだから感謝されるであろうということを申し上げているのではないのであります。あくまでも主権在民、いわば子供たちの親たちである主権者たる国民が血税を出して、国権の最高機関たる国会において予算も法律も審議され、言いかえれば、主権者の代表としての立場においてみずから定めたものを、全国民の名において児童生徒に与える、いわば自分の金で買ったものを自分の子供に与えるのと同断だと思うのであります。感謝すべしとか、するなという概念は一つも私は連想いたしません。ただ、そういう今申し上げたような仕組みで、今までおっかさんやおとっつぁんのがまぐちからもらった金で買っておった、それを全国民的立場において、もともとは自分たちの金ではあるけれども、ただで手に入れることができて、それで学び得るというその機会を与えるということは、憲法二十六条二項の趣旨によって無償とする必然的な効果として、そういうこともあるであろうということを申し上げているのであって、感謝させるためにとかいう考えは全然その背後にはございません。
  85. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、提案理由の三ページですかにあるところの、この今回の政府措置が、「父兄負担の軽減として最も普遍的な効果を持ち、」、これはすぐ理解することができます。しかし、「児童生徒が将来の日本をになう国民的自覚を深めることにも大いに役立つ」と、この際教科書を無償で与えることによって、国民的自覚を深めることも期待してある、少なくとも期待してある。求めてはないとしても期待してある。このように、当然この文章から理解すべきだと思うのですが、そのことを国民的な自覚を深めていくか、憲法二十六条の当然の帰結として享受すべきものとして受けていくか、それは児童生徒の持って生まれた基本的な権限に属する問題で、行政としては父兄の負担の軽減とか、あるいはその他の効果を持つとしても、少なくとも児童生徒の精神作用の中に、国民的自覚であれ、感謝の気持であれ、別個のものを期待することはあやまちではないですかと、こう言っているのです。いかがですか。
  86. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それは、そういう期待が持てるであろうということでありまして、そのこと、その期待それ自身が、文部省の期待とか、文部省の役人の期待ということでなしに、日本人である限りは、例外なしにそういう期待を持っておられるであろうという推測に立って、無償ということから導き出されるであろうところの一種の効果、副次的効果があるであろうという推測なり、期待を申したところでございます。これは、憲法それ自体が日本国憲法というがごとく、憲法のあらゆる条章、それに基づいての教育基本法であれ、学校教育法であれ、凡百もろもろの法制というものは、これはすべて国民の意思によってきまることでありますから、教科書無償そのことが、日本人としての自覚を呼びさます、あるいは誘導するのにいささかでも役立つとするならば、日本人である限り、それをけしからぬと言う人はないであろう。その副次的効果もあるなれば、なおさら一日も早く無償実施が完成されることが望ましいであろうと、そういう期待を込めて、提案理由の一節に追加して申し上げたにとどまるのであります。
  87. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が何がゆえにこれにこだわるかといいますと、提案理由の中に、「教育目標は、わが国土と民族と文化に対する愛情をつちかい、」云々ということがあるのです。なるほど私も、個人の性情が国土と民族と文化に対する愛情を持っていくことに対して何らの否定的な諸論をなすものではありません。しかし、先ほどから言っておるように、教育の目的の中には、日本人としての自覚とか、国民としての自覚を持たせることを意図しておりません。個人として真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、自主的精神に満ちた心身ともに健康な個人を養成すること、こういう教育基本法の目的、学校教育法十八条に定めるところの教育目標の根幹の幾つかが達成されてくると、こういう表現を提案理由の中にされておれば、それが期待であろうと、要望であろうと、もっと強い意思であろうと、私は何ら反論はしません。しかし、ここに掲げられている教育目標なるもの、あるいは教科書無償によって将来国民的自覚を深めるという全国民の必然的期待ということを大臣考えるとするならば、それは教育基本法の教育の目的という条項と相反するし、国土と民族と文化に対する愛情をつちかうということが目標ではなくして、個人としてこういう人間になるように育てなさいというのが学校教育法十八条に列記されておる目標ですよ。この法律に定められておる教育の目的並びに目標を掲げず、勝手な用語を持ってきて、しかも極論していくと、基本法の教育の目的並びに方針、学校教育法十八条の教育目標と相反するかのごとき、少なくとも優先順序のあるべき概念を先に打ち出してきて、教科書無償の目的である、理由である、ここに問題があるのです。どこに国民的自覚を深める、あるいは民族と文化と国土に対する愛情を養いなさいということが法律に書いてございますか、基本法並びに学校教育法の。まずそれからお尋ねいたします。
  88. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) その御指摘のような言葉はむろん入ってございませんが、教育の目的は教育基本法にもいいますように、一つの人間形成を目標としなければならないという趣旨のことが書いてあると思います。その人間像をどういうふうに表現するかは種々雑多な、憲法、法律の範囲内においての表現の仕方であろうかと思います。お説のように、万遺漏なき表現をするとなれば、憲法の関係ある全文から、条章から、あるいは教育基本法から、あるいは学校教育法等もろもろの憲法以下の法律について表現しておるものすべて並べ立てなければ十分でないことはもちろんわかりますけれども、現実問題としてそういうことはできませんので、最も基本的な教育基本法の基盤をなす、前提条件をなすことをとらえて表現するのもひとつの人間形成という具体性をある程度現わし得るところの方法であろう、そういう考え方のもとに提案理由には書いてあるのでありまして、よしんば提案理由が今御指摘のようであるとしましても、何も憲法の趣旨を無視したり、教育基本法を無視したり、その他の法令を無視したりして表現さるべき筋合いのものではないことは万々承知をいたしております。私はこの表現は、ひとつの基本的な、いわば法令以前のというか、その基盤をなす要素を取り上げることによって趣旨の一端を宣明したい、こういう考え方に立って提案理由を編んだ次第でございます。
  89. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それで、編み方、立て方としては、何も私は教育基本法の第一条の教育は云々という目的の用語をそのまま取りなさいとか、あるいは学校教育法の十八条の目標を入れなさいと、こういう言い方をしているのではない。だから、ここのことが幾つの概念に包括されるかということはいろいろあるでしょうけれども、少なくとも、今、大臣がおっしゃったことで最も重要な問題は、教育基本法第一条の目的、あるいは学校教育法第十八条の目標はそれぞれ別の条章になりますが、教育目標のねらいと、少なくともここにあげられておる教育目標と称するあなた方の所論が根底となるとおっしゃるならば、これから私はもっと反論しなければなりませんけれども、根底に相反するものですよ。なるほど大臣に、今、国民学校令を思い出しなさいと言っても無理なことでしょう。私どもは国民学校令に基づいて戦時教育を続けてきた苦い経験を持っておりますから、よくわかるのですが、当時の国民学校令の中には、ここに書いてあるような国土とか、民族とか、文化に対する優先感情というか、これを強く強調しています。ところがアメリカ教育使節団の五つの勧告に基づき、また国会でも論議されて、そういったねらいじゃなくて、世界人権宣言や、あるいは児童憲章等の精神もそうですが、憲法の条章を受けて、人は生まれながらにして自由である。そして基本的人権を持っている。この基本的人権と同時に持っているところの個性をどう伸ばしていくか、その一つの現われとして平和的な国家及び社会の形成者になりなさい、信義と正義を愛するような人間になりなさい、個人の価値を尊びなさい、こういう個性尊重、持って生まれた基本的な個性を伸ばしていくというところに目標があるのであって、かりにその人がわが国土よりも国際的な協調をより優先して、たとえば戦前、日本が戦う際に徴兵を忌避して牢獄に入れられようとも、そういう主張をし得る人間を作りなさいというのが今度の教育の目的ですよ。国土、民族、文化に対する愛情をつちかうということは、少なくとも教育基本法第一条の直接にねらっておるところでもなく、ましてや大臣の御答弁のように根底ではないですよ。大臣はどうしてこの第一条からこのことが法律以前の基本法の根底の精神をなすものだという所論が出てくるか、再度伺いたい。
  90. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は日本人に限らず、どこの民族といえども、その国の国土、その民族の一人であること及びその民族の持つ文化というものに取り巻かれて存在しておると思います。いわゆる運命共同体の一員である民族国家なるものは、すべてそうであると思いますし、そういうことは、憲法とか教育基本法ではことさら言わないでも自明のことだと思います。具体的な文言等ではうたっていないと思います。その上に立って個人の尊厳があり、個人の自由があり、もろもろの基本的人権、自由権等があって、初めてその憲法の基本的人権、自由権も生きてくるものだ、これは憲法以前の課題だと思うのでございます。
  91. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 自然現象だ。
  92. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そういうことを一応とらえまして、少なくとも一つの重要な目標であるという考え方に立って、むろん先ほども申し上げましたように、憲法なり教育基本法にいうところの、述べておるところのもの、それと総合されて初めて一本になるとむろん思いますが、憲法、教育基本法の欠陥ということでなしに、それ以前の基本的な課題として、それをとらえることによって人間形成の比較的具体的な姿を現わそうという意味で表現をしたのでございます。
  93. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が求めずして、また意図せずして、日本人の両親を持ち、日本の国土に生まれ、日本の自然、文化環境の中に育っておるこのことは、これは何人も持って生まれた基本的人権で否定することのできない、これは発生的な条件です。このことは教育の目的や目標ではない。したがって、たとえば私が日本古来の音楽よりも、日本古来の文化よりも、ドイツの音楽やドイツの文化に対する愛情を持っておってもよろしい。日本の国土よりもアメリカの国土のほうがはるかにりっぱである、こういう愛情を持っておってもよろしい。そんなことは各自の基本的な問題に自由に委任されておって、ただ教育という人間の作用が求めるのは、少なくとも平和的文化国家の形成者になるために信義と正義とか、個人の価値を尊びなさいと、こういうことなんですよ。だから日本に生まれておるというこの現実が、教育の作用の中にまで当然結果として、あるいはその果実として求められるべきものであるというふうに考えられるならば、これは憲法上の大きな問題であるし、教育基本法にいうところの第一条の精神とは明らかに反することですよ。影響を受けるということ、そこに生まれついておるということ、このことは教育の作用とは全く切り離して現行教育法は立てられている。立てられているけれども、自然的な影響として日本を愛するようになるということ、日本民族と文化に対する愛情を持っているということは、これはあり得ることであるし、あり得ないことでもある。このことは教育が求めていることではない。自然作用としての問題は教育対象としては一切なっていないのですよ。それをあなたは国土と民族と文化に対する愛情をつちかうということが教育目標の根底をなすものであるかのごとき表現をしておられるじゃないですか。明らかにあなたの考え方は現行教育法の教育の目的、目標と相反しておりますよ。あなたは自然にそこにおるから自然的な影響を受けてくる。だから自動的にそれができるだろう。このことは私は否定しない。しかし、教育の目的がそれに対する愛情を養成し、つちかっていくのだと表現してあるじゃないですか。教育目標はその愛情をつちかうことを目標としない。自然作用としてそうなることはあり得る、これは別の問題ですよ。あなたのここに出されている本法律の提案理由の教育目標並びに教科書を無償とすることによって国民的自覚を深めていくのだということは、全く基本法の教育の目的、目標に相反するものと断ぜざるを得ません。その考え方に、基本的にあなたに誤謬があるから、教育の機会均等、能力に応じて教育を受けるという問題についても、あなたは優勝劣敗のほうが優秀者を作っていくだろう、こういう現状の肯定が憲法二十六条の前段の否定となるような答弁をなさるのです。   〔理事北畠教真君退席、委員長着席〕 もう一度だけお尋ねいたしておきますが、やはりあなたは国土と民族と文化に対する愛情をつちかうというのが、基本法の第一条あるいは学校教育法の十八条等の精神の根底をなすものであるということを本席上で断言し得ますか。
  94. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 豊瀬さんも私が今申し上げた提案理由等に書いておるような事柄は自然的な意識だ、あるいは条件だというふうに言われましたが、それと似たような気持であります。表面切って、憲法ないしは教育基本法の趣旨に反する課題ではない、むしろそれ以前の問題である、そういうふうに心得るわけであります。繰り返し申し上げますが、教育基本法なり憲法の趣旨に異なったことを、ことさら言おうなどという大それた考えはむろんございません。学校教育法等を見ましても、そういうふうな趣旨の規定がないでもございませんが、法律論に対して直接法ではお答えになりませんけれども、たとえば、小学校の学習指導要領におきましても、「人間尊重の精神を一貫して失わず」云々ということはむろん書いてありますが、特に、「国土や文化などに対して理解と愛情を育てて、あるいは郷土や国土に対する愛情を養う」というがごときことは、目標として社会科で掲げておるわけであります。そういう意味合いにおいて表現をしたのでございまして、繰り返し申し上げれば、法律なり教育基本法なりの、それ以前の何と申しますか、この豊瀬さんの言葉でいけば、自然的な意識であり、条件であると考えて、このことをとらえて表現したにとどまるのであります。
  95. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 あなたの今言われたのは指導要領ですよ。教育基本法や、学校教育法教育目標と異なった指導要領を作るために、今日まで文部省はたびたび法律を、いろいろな法律を出してこようとしたし、教育委員会法を改正したし、いろいろ紆余曲折があってきております。少なくともあなたがここに教育目標はというねらいをあげる以上は、学校教育法教育基本法の用語をそのままにあげる必要はいささかも認めません。その精神、骨格とするところを表現すべきですよ。ところがここにあげられておる、あなたの言う教育目標は云々というのは、第一条をどなたがお読みになっても、また十八条をどなたが読んでも、そういうものをねらいとしておりません。それで、最後お尋ねしますが、少なくともあなたの書いておる教育目標並びに国民的自覚というのは、教育基本法や学校教育法教育の目的、目標とは異なるものでありますけれども、私が憂慮するように教科書を無償にすることによって、その結果の果実として、国土、民族、文化に対する愛情を教育作用の中で強制をしていく、あるいは国民的自覚が必然的に要請されるように文部省行政指導をやる、他日、指導要領等を改変していくところの意思はない、このように判断してよろしいのですか。
  96. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 指導要領、教科書はもちろん憲法、教育基本法、学校教育法を主として、そういうものにのっとって、そのらち内において定められ、実施さるべきことは当然と心得ております。
  97. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一つ憲法二十六条の無償の原則を広げていく結果として、将来ともに文部省としては、何らかの恩恵的な観念あるいは感謝的な観念、国、地方公共団体いずれを問わず、そういう一つの個人の価値判断に属する問題を教育の中に求めていく、あるいは要請をしていく、こういう考え方はないのですね。
  98. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そういうことは考える必要もないことだと思います。
  99. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 必要がないのでしたら、提案理由を書き直しなさい。提案理由の中には、そういうことをするために本法律案を出しますと書いてある。特に大臣にもう一度こういうことを要請しては恐縮と思いますけれども教育基本法の第一条の問題と、学校教育法の十八条数項は、それぞれ別の条項に掲げられておりますが、それを再検討して、提案理由の中に掲げられておる教育目標というもの、あるいは意図しておるものを再度検討してごらんなさい。私が指摘しておる基本法違反の疑いのある精神が必ずこの中ににじみ出ておるはずです。  次にお尋ねいたします。昭和二十六年並びに二十七年の教科書給付の法律の中には、たしか第二条であったと思いますが、市町村には半分持たせるとか、あるいは国が全額持つとか、あるいは第何年生にやるということが具体的に明記してありました。今回は無償とするけれども、無償の内容は別に定めるとなっておりますが、これはどういう意図で、この法律の中に無償の措置に対して定めがなかったわけですか。
  100. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これは無償ということは共通でありましょうとも、具体的な方法としては、経費の分担の方法として、国が全部持つ方法地方公共団体も分担する方法考えられるわけでございます。それも調査会待ちで検討してもらったほうが妥当であろうということで、調査会に対する諮問事項の一つに予定しているような次第であります。
  101. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 少なくとも大臣は、憲法二十六条をふまえて今回の法律を出した、こうおっしゃるんですね。そうすると、前回の経緯がなければ、これだけしつこく追及しませんけれども、前回は二分の一を国が持ちましたね。その次には全額持ちましたね。こういう経緯がありながら、文部省自身としては、国が全額持つがよろしいか、市町村が半額持つがよろしいか、あるいは三分の一、五分の一になるのがよろしいか。このことの理想像がないのですか。ないとすれば、なぜそれがないんですか。
  102. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 文部省の立場でこれもありたいということはございます。それはむろん全額国費で持ったほうが望ましい、こう思います。ただ、それを調査会待ちにいたしましたのは、政府内部におきましても議論があり、また一般的にも議論がないわけではない。外国の例を見ましても、そういうふうな例があるとも聞きます。そういうことに論議を費やすことによって、時間的にも遷延して、またいつのことかわからないようになることをおそれまして、そうして文部省としては、今も申し上げますような望ましい姿は念頭にございますけれども調査会で十分検討を願って、賛否大いに戦わしてもらって、議論の帰するところに従いたいものだということにいたしたのであります。なお追加して申し上げさしていただけば、御指摘のとおり、この前のときに国費と公費で半々持ちであったこともございました。その当時の建前は、市町村が無償に踏み切ったならば、それに対して政府が補助するという建前でありましたために、これこそ教育の機会均等的な立場においてもいかがであろうかということも起こった。さらにその経費の決算につきまして、とてつもない時間がかかって、そのことからくるトラブルもあって、この前の制度が解消するに至る一つの理由にもなったと伝え聞いておりますが、今度はそういうことでなしに、国が責任をもって無償とするという建前をとります以上は、万一私どもの望ましい姿と思うのと違って、国費と地方費で半々持つとなったと仮定しましても、たとえば義務教育学校の教職員の給与を精算負担で国が半分持つ、地方が半分持つということが何ら支障がないということも考え合わせますと、賛否いろいろございましたので、一応、調査会待ちで、そういうこともあわせて、過去の失敗というか、トラブルがありましたことも、当然話題に出るはずでございますから、あわせて検討してもらった線に従いたい、かように考えた次第であります。
  103. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 第一条無償が第二条によってやや不明確になっておるという理由は、政府部内の意思が統一できなかった。したがって、法案提出に間に合いそうになかった。この二は、そのことを議題として調査会にきめてもらいたい、しかし建前は国が持つのが妥当である、また、前回の措置の失敗から、当然今回も全学年に及ぼしてくるとなると、めんどうな事務が生じてくるから、いろいろな理由はあったけれども政府部内の意見が統一できないためにこういう措置をしたけれども、ねらいは、今最後大臣がおっしゃった、義務教育学校教科用図書は国が無償で給付しますと、こういうことが好ましいと、こういうふうにお考えになっておる、こういうふうに理解してよろしいですね。
  104. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのとおりでございます。
  105. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 法律を国会に提出されるについては、これは私が申し上げるまでもなく、憲法の定めによって内閣全体の責任ですが、その内閣全体の責任であるところの法律案の中に、無償とする――その内容について政府部内が不一致で、国が持つか、地方で持つかきまらなかった。それではお出しになることのほうがおかしくはないですか。
  106. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻も申し上げましたように、義務教育学校の教職員の俸給の分担のやり方もございます。そのことが全然無価値だと言いかねる意味合いもございます。全部国が持つが、分担の方法だけを、この前の失敗に顧みて、失敗しないようなやり方の一種でもあろうと思われる教職員の俸給の分担のやり方ということとの比較考量を調査会待ちにしたほうが妥当である、こう判断しまして調査会待ちにいたしたのであります。しかし、できることならば、先刻申し上げましたとおり、全部国費で負担しましたほうがより適切であろうとは思っております。
  107. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ますますわからないんですが、そうだとすると、教科書無償の措置を促進していくために臨時義務教育教科用図書無償制度調査会を設置する、その調査会はこれこれであるという法律案なら、政府としては自信を持てますね。それをお作りになって、この法律に書いてあるように、本年の十一月三十日までが適当と思われるなら、それまでに答申しなさい、その結論を待って、政府部内で、全額持つか、三分の一持つかきめて、それから、義務教育学校教科用図書は無償とする、その措置はこれこれとするという法律をお出しになるほうが、だれが考えても当然ですよ。私が本会議で、この法案は調査会設置法案ではないかと、あなた並びに総理大臣に聞いたのはそこですよ。そんなに、最も重要な無償とするという無償の分担の内容も、その無償とするところの措置についても、政府部内の意見不統一で、調査会を待ってきめたいとおっしゃるのに、第一条をお作りになったということは、まことに羊頭を掲げて狗肉を売るという政府部内の不統一カバー法案じゃないですか。
  108. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 調査会は、関係各省の者も委員になりますが、大多数は民間の学識経験者によって構成されます。そういう構成の二十名の良識を待って判断してもらったほうが妥当であろうし、早道だろうとも思われぬじゃございません。そういうことでございまして、無償とするということはむろん微動だにもいたしません。これはもう法律の建前からいって当然でもございますが、ただ、方法だけに論議を尽くしたほうがより妥当だ、少なくとも方法論としてそのほうが妥当だと考えましたので、調査会待ちに期待しておるわけでございます。
  109. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そのあなたの答弁には破綻があるでしょうが。どこに破綻があるか。なるほど調査会の結論を待ったがよろしい。しかし、無償だけは断固として動きません。それならば、昭和三十八年度実施の予算の中に全学年組むべきで、一年生だけをぽつんと一つのみ組んでおるでしょう。調査会の結論を待ちましたか。調査会は、一年生だけやるべきでなくて、全義務教育で全教科書実施するべきであるという答申をするかもしれない。そのときには、あなたの言う、無償は確固不動のものですと、こうおっしゃったって、その具体的内容は変動せざるを得んじゃないですか。一年生だけを三十八年度から組むことが妥当であるという結論があるから、予算を組まれて、きょう予算の最終段階になっておる。ところが、調査会を設置してそれから意見を聞きたい、こういうところにあなたの答弁の矛盾がありますよ。だから当然、義務教育教科用図書の無償を実施するために調査会を設置したい、そして調査会の結論をもってやっていく、これだけだったら、この法律はりっぱな法律ですよ。何とあなたが強弁されようと、第一条の、無償とする、予算は七億円程度だ。あとのことはその次の法律できめるのですよ。こんなむちゃな法律がありますか。再度、その無償の予算措置の問題と、調査会の意見、建議、諮問の結論との関係を答弁して下さい。
  110. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 予算措置は、これは量的な問題だと思います。緩急軽重それぞれあります。庶政百般の中から、教科書無償については、三十八年度、第一学年に入学する児童に対する教科書を対象として予算措置をしようということにならざるを得なかったということであって、あえて調査会待ちを必要としない、政府部内だけで結論を出し得る範囲でございます。調査会は、単に今申し上げたことだけでなしに、毎々申し上げておるように、教科書会社のあり方、配給方法も、今のままでいいかどうか。あるいは児童生徒に交付してしまうやり方もあれば、諸外国の例を見れば、学校備付等の貸与方法もある。そのどちらを選ぶべきかということも、調査会でひとつ検討してもらった結論に従おう。そのことがより民主的であり、妥当な結論が出るであろうという趣旨の調査会でございます。で、もし十一月三十日までに何らかの理由で答申ができないということも、万一を考えれば想像できないわけではない。したがって、三十八年度、第一学年分を予算措置をしておりますことも、予算執行上不可能になっては困りますから、政令をもってそのとき応急的な措置をして実行してよろしいというお許しも得て臨みたい、こういうことにしているゆえんでもございます。   〔野本品吉君「議事進行」と述ぶ〕
  111. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連。まあ、野本さん、急ぐなら、ここだけやれば大体もう筋が立つ。ここがみそなんです。最も大切なことなんです。淡々とお尋ねしますから、事務的にお答え願いたい。  この第一条では、全額無償とするということをきめてほしいと国会に要請している。その内容調査会で審議して、その建議に待つとありますが、調査会の建議は、内閣としてこれを全面的に受け入れますか。
  112. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 法律に基づいて作られました調査会であります限り、尊重することは当然と心得えます。
  113. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、年次計画があるなしはあとで尋ねますが、年次的な計画であろうとなかろうと、全学年、小中学校通して、財源が国なり、地方なり、あるいは国だけで必要になってくるわけです。で、調査会の建議が、小中全学年の教科書を国費で負担すべきである、こう決定になったら、それものみ入れるということが前提となって、この第一条の無償の原則というものが成案になっておるのですか。
  114. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのとおりでございます。
  115. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そのことは、文部大臣の先ほどの質疑に対する答弁としては、政府部内に議論もあり、こういう形になっておる、文部省としては国が全額負担するのがベターであると思うと御答弁になっておる。けれども、私の聞いておるのは、内閣としてこの提案をするにあたっては、調査会の建議が全額国が持つべきであるとなったら、全額を持つことに踏み切り、地方公共団体にしわ寄せしない、いかような答申が起こっても民主的にそれを尊重してやるという建前でこそこの無償の原則が貫かれるはずなんです。したがって、閣議と申しますか、池田内閣としましてはそういう答申が出た場合にはそのとおり実施する、全額国で持ってよろしい、そういう建前のもとに便宜地方にも持たすことがベターだという調査会案が出たらそれにも従う。基本は国が全部持ってもよろしいという建前がなきゃならぬと思う。今の御答弁でそれがはっきりしましたが、重ねてそういうことで幾多の論議の中で政府はこの提案に踏み切ったのである、こういう御答弁がいただければしあわせです。
  116. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 調査会は御案内のとおり、文部大臣の諮問機関という性格を持たしてあります。したがって、文部大臣の諮問に応じてこたえてもらうわけでございます。文部大臣の立場においては答申をできるだけそのとおりに実施する、尊重しなければならぬ、尊重すべきことは当然であります。概念論だけから言いますと、内閣全体としては、文部大臣が答申を受けたことだから、答申を答申どおりには文部大臣の立場では主張いたしましても、そうでないことがあり得る、概念的にはそう言えると思います。ただし、いやしくも法律で定められました調査会の結論と違ったことを内閣できめるということについては、政治的には責任がある筋合いであろうと思います。ただ、概念論だけ申し上げれば、文部大臣の諮問機関ですから、文部大臣責任で一段階区切られる、ただし、政治的には内閣全体が国会に対する関係において責任がある、そういう関係に立つ調査会と心得ております。
  117. 大矢正

    委員長大矢正君) 小笠原委員に申し上げますが、野本委員から議事進行の発言がありますし、それから、小笠原委員に発言を許しましたのは、豊瀬委員質問に対する関連質問でやっておりますので、やはり私の立場としては議事進行の発言を先に取り上げなければならぬ立場にありますので、できる限りひとつ簡潔に御質問いただきたいと存じます。
  118. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 大臣は聞き直すと文部大臣の立場ということをおっしゃる。そうしてまた概念的にはとおっしゃるけれども、これは政治的に問題があって、なお踏み切って提案した法案でしょう。そうして、この法案の中身は第一条にしかない。この第一条の原則というものは、国なり公共団体がこれを負担するということを幅広げて考える場合もあるし、国だけという場合もあり得る。したがって、それは調査会の終論待ちというならば、調査会からその建議が出たらそれをのむという前提があって、閣議の決定がなくとも、池田内閣としましてはそれが了解せられておって、この提案がなければ、法律第一条は生きない、生きてこない。そういう立場からお尋ねしておるので、文部大臣としてというよりは、私は池田内閣の一員たる国務大臣として、内閣が提案しているのですから、提案者の立場としてあなたに再度調査会の終論が、全額国庫で無償措置をとるべきであるという建議が出たら、そのとおり池田内閣としていたしますかいなか。簡単な御答弁でけっこうなんです。そのことがまだはっきりしておらぬというようなことならば、この法案はこりゃ引っ込められて、ものをお考えいただきたい。
  119. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻、調査会の答申は当然尊重せねばならないと、こうお答え申し上げました。それに関連してまた念を押したお尋ねがございましたから、かりに調査会が国と地方で分担するという答申があったといたしましても、なおかつ文部大臣という立場においては、できることならば国一本でやることに努力する政治的な責任というか、意識を持っておりますから、そのことを追加して申し上げるつもりで以上のことを申したのであります。結論を尊重すべきことは池田内閣としては当然と考える、政府として当然と思います。
  120. 野本品吉

    野本品吉君 議事進行。いろいろだんだん時間もたってきましたので、予算委員会等の関係もあり、かたがた自民党といたしましては社会党との話し合いにおいて最短時間においてこの問題を処理しようということのお話し合いがございましたので、それに大きな期待をかけまして十時から全員ここに待っておるわけです。したがって、いろいろと議論すればいろいろの問題がございましょうが、この際懇談の形でこの採決の時間についての話し合いの機会を持っていただきたいと思います。
  121. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  122. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をつけて下さい。
  123. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 関連質問に出てきたところですが、先ほどから言っておりますように、無償とする内容が七億である。調査会が全学年に実施せよという建議または答申を出した場合には、当然三十八年度についても百六十億程度の必要とされる経費については補正予算が組まれる、このように理解してよろしいですね。
  124. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それは物理的に不可能でございますから、そういうことはあり得ないと思います。
  125. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 小笠原委員に対する答弁では、建議を尊重していきたい。そして調査会が十一月三十日に答申をする、その結論が三十八年度から全学年実施の結論を出せば、当然しかるべき時期に臨時国会または通常国会に、三十七年度の予算の中に三十八年度実施の分として予算を組むべきじゃないですか。
  126. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今私が申し上げましたのは、臨時国会を私どもの立場で当然予定するわけに参りませんので、通常国会は制度上予定されますから、それを念頭に置いて申し上げれば、時間的に不可能でございますから、補正予算を組むことはあり得ないと一応考えますので、申し上げました。
  127. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 通常国会の際に、三十七年度の予算の補正として予算補正をやったことは例がないわけじゃないけれども、それは三十八年度分については一切行なわない。どういう建議を行なおうとも、無視して、七億程度で押し切っていく、こういう御答弁ですか。
  128. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) もしそういう答申が出ました場合に、また間に合うとしますならば、あり得ることではございます。当然に予定はできないと思います。
  129. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、調査会の最も重要な無償とする内容についての答申については、事態いかんによっては完全に無視する場合もあり得る、こういうことですね。
  130. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 無視する考えはございませんが、通常国会に立法措置を必要とすることが当然予想されるわけでございますが、その立法措置なりあるいは予算措置なりができます時期に、また法内容において答申が出されました場合に、補正予算は絶対やり得ないとは申し上げかねますけれども、通常の推定から申し上げると、そういうことはまずないであろう、こう考えましたので、先ほど来のお答えをしました。
  131. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 自民党が数字として出されて強く政府に要求されておったやに聞く百六十億程度の全員無償の予算に対して、文部省は予算要求はされましたか。
  132. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 予算要求はいたしました。
  133. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、調査会の答申を重視するという先ほどの答弁からすると、調査会が三十八年度は全学年実施すべきであるという答申をしてくると、当然通常国会においても三十七年度の補正予算について文部大臣としては努力する、こうおっしゃらないと、うそじゃないですか。
  134. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 努力する意思はむろんございます。ただ調査会という制度を根拠に通常国会しか期待できないという前提に立って申し上げました場合には、先ほどのお答え以外になかろう、こう思って申し上げたのであります。
  135. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 他の事項は尊重するけれども、事無償の内容、すなわち国庫の負担額については、三十七年度予算においては、答申がいかようにあろうとも、変更のことはむずかしい、こういうことですね。
  136. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 繰り返し申し上げますが、臨時国会を当然予想してお答えも申し上げかねます。通常国会だけを念頭に置いて考えます場合、時間的になかなかむずかしかろう、こう推定いたしましてお答えをいたしました。
  137. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、法律の建前からいうと、教育基本法の第四条、「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」、これと同じように、義務教育学校教科用図書は無償とする、ここに改正を出されて、やはり先ほどから言っておるように、調査会設置法として出されるのが法の建前としては至当じゃないですか。
  138. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 第一項でもって無償とすることは微動だもしないということを明確に宣言し、具体的には、第二項でもって調査会でいろいろなことを検討してもらった結論に従って、立法措置もし、予算措置もする、こういう建前でございます。ただし、具体的な着手の内容は、三十八年四月に入学する第一学年の生徒に対する教科書だけは予算措置をして必ず実行いたします。その後の年次計画等については調査会待ちにしたい、こういうことでございます。
  139. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 だから、無償とするというのは宣言規定で、もしあなたが予算と、具体的な行政施策に忠実ならば、義務教育学校教科用図書は、二十六年、二十七年の法律と同様に、第一学年のみ無償とする、これのほうが忠実じゃないですか。ほらだけはたくさん吹いておいて、実際の予算は七億、建議をし、答申をしても予算をふやす見込みはございません、調査会も踏んだりけったりであるし、文部省の政策としても支離滅裂じゃないですか。
  140. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 第一項で無償とすることを宣言いたしましたのは、憲法の趣旨を体して全部無償にするということを具体化しようという意思表示でございます。具体化するスタートラインは第一学年からであります。こういうことでございまして、調査会を無視するという趣旨でもなければ、憲法の趣旨にもとることでもない、必ず実施するという全責任は当然第一条第一項から出て参る。政府としてはこれを無視するわけに参らないということを国会できめていただきたい、こういうことであります。
  141. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 可能の場合には、全学年実施を答申してきた場合には実施に努力する、こういうふうに理解してよろしいですね。
  142. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのことは当然と思います。ただ、三十七年度予算を御審議願っておりますときに、政府側からそのことを自発的に申し上げることが適当でないとも思いますのみならず、先刻来お話し申し上げておるように、臨時国会を当然予想できない前提においてはやむを得ない限度のことをお答え申し上げております。
  143. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 十一月三十日までに、調査会は大体何回程度開けば文部省の諮問に答えられるという予測を持っておられますか。
  144. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと予測できません。なるべく慎重に、しかも迅速に御審議願いたいと思っております。
  145. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 専従的にというか、能率的に、あるいは精力的に運営をしていくと回数も多く持てるし、文部省が予算編成する時期までには間に合わせるようにする、そうすると次年度予算の中でも当然補正をしたり、あるいはこれを加えていくことができるわけです。それを三十七年の十一月三十日まで引き延ばしておるところに、表には調査会が慎重審議をしてくれるようにというかまえをしながら、実質は七億という予算を変更できないような時期に答申を待とう、こういう意図のように見受けられますが、そうですか。
  146. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) むしろ逆でございまして、御案内のとおり概算要求は八月末日までというのが慣例でございます。八月末日までにでき得べくんば答申をしていただきたいと内心希望をいたしております。ですけれども、現実問題といたしまして、八月末日までに不可能なこともあり得るであろう、そういう場合にはおそくとも十一月末日までに答申を出していただけば、三十八年度予算につきましても、現実に間に合う慣例を破って十一月末までは大蔵省といえども待たざるを得ない、法律上そういうことを予定するようにしていただきたいということでございますから、御質問とは逆の考え方であります。
  147. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 意図として一応善意に了解いたします。答申と建議の取り扱いについて相違がありますか。
  148. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ないと思います。
  149. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 国が全額持つ場合に、教科書の価格がそれぞれ発行所によって異なっておる場合にも、それを統一することが望ましいという意図は、現在も将来も持っていないし、持たない、このように御答弁できますか。
  150. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現在最高価格を認可する建前になっておりますが、そのやり方で進みたいと思います。
  151. 大矢正

    委員長大矢正君) 豊瀬委員に申し上げますが、そろそろ申し合わせの時間になりましたのでよろしくお願いいたします。
  152. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 前回の配付の措置の失敗にかんがみて、教科書の内容、すなわち百近い発行会社がありますが、それをどこのをとっても検定を通っておればよろしいということになっておりますが、事務上の便宜のために広地域採択、すなわち県一本、ブロック一本、やがては国一本というような――第一段階として広地域教科書採択を文部省の事務簡素という点、あるいは別に配給公団等が設置された場合には、そういう点から行政的に広地域採択が望ましい、あるいは指導されるということは全然ないと考えてよろしいですか。
  153. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 配給公団などを作る意思はございません。採択につきましては、この無償措置を契機として、ことさららしいことをやろうとは思っておりません。
  154. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、採択権は現行のように学校が選択して、地方教育委員会が採択する、この制度は正しいあり方であるし、そのとおりやっていく、こういうふうにお考えですか。
  155. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現行制度どおりにやっていきたいと思います。採択権限、責任地方教育委員会にあるという現行法に基づいてやっていきたいと思います。
  156. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教育基本法並びに学校教育法の建前から、教科用図書の採択権は当然教師にある。Aの国語の先生と、Bの国語の先生と教科書の異なることは法的には当然である、このようにお考えでしょうか。
  157. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現行法は採択権は教育委員会にありと予定しておると解釈いたします。
  158. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 現行教育法というのは採択の問題じゃなくて、学校教育法の教師の、児童教育をつかさどるという職務権限からすると、教師にあると判断すべきと思うのですが、どうお考えですか。
  159. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 教師は教育をつかさどることはそのとおりでありますが、教科書の採択ということは行政行為であって、教育をつかさどるという教育活動それ自体ではないと、かように考えます。
  160. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教育内容を教科書が規制していく、このようにお考えになりませんか。
  161. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 文部大臣が教科に関することを定める、それを受けまして教育指導要領によって教育内容が、基本線が定まり、それに基づいて教科書の検定が行なわれるというその考え、規定どおりにやっていく考えでありまして、特別にこれを変える意思はございません。
  162. 大矢正

    委員長大矢正君) どうです、そろそろこの程度でいかがでしょうか。
  163. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一つあります。
  164. 大矢正

    委員長大矢正君) じゃ、もう一問だけでごかんべん願います。
  165. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 調査会のメンバーは、従来の文部省が設置されておる諮問機関等の構成のごとく、文部省のお気に入りの学者、文化人、団体代表等を当該団体、あるいは学術会議とか、あるいは職員団体とか、もし父兄を入れられるとするならPTAという、こういう団体の推薦を待って任命することが民主的であると考えますか。そういう意図ありますか。
  166. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) だれが見ても学識経験者と思われる人を選びたいと思います。
  167. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それでは答弁になりませんが……。
  168. 大矢正

    委員長大矢正君) 豊瀬君。
  169. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 任命の手続、民主的な方法として、大臣の御答弁はそういう団体の意向を聞かないで、だれが見ても望ましいと思う人を荒木萬壽夫が選ぶんだと、こういう非常に独裁的なニュアンスを持つのですが、そうですか。
  170. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 独裁ということは日本の政治形態の中であり得ないと思います。この法律によってこのとおり定めていただければ、文部大臣が任命する責任を負いますから、国民に責任を負うという立場に立って、だれが見ても学識経験者と思われる方にお願いを申し上げたいと思います。
  171. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 諸団体の意向は聞かないという意味ですか。
  172. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 聞くこともあり、聞かないこともあり得ます。
  173. 大矢正

  174. 相馬助治

    相馬助治君 政府部内の意見がまとまらないままに、こういう法案を提出してですね、提案者としてまことに苦しい答弁をしている大臣に対してお気の毒だと思います。しかし、全くこの法案はわけがわからない。正しくは無償制度調査会設置法案とも私はいうべきものだとどうしても考えざるを得ない。そこで今問題になったのですが、調査会の内容ですね、二十人の良識と、こういいますが、そうして学識経験者と、こういいますが、これは何ですか、教科書発行業者もあれば、供給業者もある、教育関係諸団体の代表もある、それから教科書を手に持つ子供の気持を代表するであろうと思われる家庭の主婦もある、そういうような人たちの意見を網羅して、この調査会に盛るという意図があると思うのですが、何かこの調査会の委員の選抜に、大臣は今日腹案をお持ちですか。かなり具体的な腹案をお持ちですか。
  175. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 具体案までは、まだ腹案ございませんが、言論界、経済界、あるいは学者関係、あるいは教科書にも関係のある団体、そういうような方面から選んだらいかがと今思っております。
  176. 相馬助治

    相馬助治君 前段の学識経験のある者及び関係行政機関という、これの割合はどのくらいなことを考えておりますか。
  177. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 関係行政機関は三つか四つくらいと考えられます、それ以上になることはあり得ません。
  178. 相馬助治

    相馬助治君 これはなるべく圧縮して、前段のいわゆる良識ある人というのに力を入れていくというふうに了解いたしますが、先ほどの質問で、関係諸団体なんかに意見を聞くこともある、聞かないこともあるというのは答弁になっていないと思うのです。私はこれは必要があらば積極的にそういう業界なり関係団体の意見を聞くお気持だけは持っていらっしゃるという意味ですか。
  179. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 調査会の運用にあたりましては、調査会みずからがきめることではございますが、関係ある団体等の意見は当然聞いて判断していただけるものと思います。  委員の人選にあたりましては、団体の意見を聞いてきめるということにきめているわけではございません。あるいは推薦をしていただいてきめることがあるかもしれませんけれども一般的に申し上げて、さっきのとおり、だれが見ても学識経験者と思っていただけそうな方にお願いを申し上げたいと、かように思っております。
  180. 相馬助治

    相馬助治君 この間参考人の意見を聞いて、たいへんに勉強になったのですが、供給業者が下手をやると完全配給ができない、その自信なし、こう申しておりましたが、たとえば現場の経験を持つ供給業者のような方も委員の中に入れますか。
  181. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 当然入れねばならないと予定しているわけではございませんが、十分そういうことも念頭に置いて選考をしたいと思っております。
  182. 相馬助治

    相馬助治君 日本の教科書の配給の問題は長い歴史的な過程があるわけです。で、一部に配給公団でも作って統制を強化するのじゃないかという心配があったのですが、先ほど豊瀬委員質問に答えて、配給公団を作る意思はない、こういうことですから、そのこと自体はよくわかりましたが、米の配給のときに、最初はやはり、その地域社会の米屋の条件を守りながら配給をしようとしたが、とどのつまりは、それではだめだというので、途中から配給公団ができてきた歴史的事実を私は今思い起こすのです。この配給業者の持っている条件などというものも、十分考慮する御予定ですか。というのは、調査会がこれをきめるという性格のものでなくて、中小企業者としての、やはり業者としての立場も考えてやらなくちゃいかぬと思うのですが、その条件擁護というようなことについてはお考えですか。それとも、問題は別だから具体的には何も考えないということですか、いずれですか。
  183. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 仰せの事柄は調査会で当然考慮される事柄だと期待しております。
  184. 相馬助治

    相馬助治君 どうかその調査会を指導してという言葉は変ですが、調査会に各界の意見が漏れなく反映するような委員の組み立て方をやって、関係機関からの委員は極力押えてほしいと、こういうふうに思います。  最後に一点だけ聞きます。どうもこれがわからないのですが、この調査会は教科書無償という原則については論難する資格を持っていないのですね。
  185. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 第一条第一項でも明確になっておりますから、その事態を再検討する余地はゼロでございます。
  186. 相馬助治

    相馬助治君 わかりました。そうすると、具体的にいつどのような方向で無償制度というものを持っていくか、財政区分を国と地方とでどういうふうに分けるか、そういうようなことは調査会でいずれもきまって参るわけですね。
  187. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのとおりでございます。
  188. 相馬助治

    相馬助治君 こういう調査会を作っても委員の人はかり集められて集まってくるのですから、結局文部省の中で事務局のようなものができて、文部省の意図というものが相当強く反映すると思うので、これはいい悪いではなくて、そうならざるを得ないと思うので、その現実を認めます。ところで、その事務局はどの部をどんな方向で設置していくか、具体案をお持ちですか。
  189. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 初中局が担当いたします。そうして調査会の委員が審査されるのに必要な資料を提供するという立場に立つと思います。
  190. 相馬助治

    相馬助治君 当然大蔵省も顔を出してきますか。
  191. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 自治省、大蔵省、当然入れぬばなるまいと思っております。
  192. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、これは大蔵省と自治省と文部省と、この三省の役人のがん首を並べただけでももう意見がほとんど統一できない運命的な私は性格を持っている法律案だと思うので、もしそういう予測がするならば、もう金は国で出すんだ、ただ無償といっただけではなくて、国で出すのだ、地方公共団体にも迷惑をかけないのだ。こういう腹づもりが文部省自体の中に高まってこなければならないと思うのですが、その点はいかがですか。
  193. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) その腹づもりをあまりはっきりさっき申し上げ過ぎたんで話がこんがらがった意味もございますが、私はこの調査会を作っていただくことによって憲法二十六条二項の趣旨に早くよりいい条件で近づく調査会の性格であることを期待いたしております。
  194. 相馬助治

    相馬助治君 荒木文部大臣責任ではないが、前にも入学のお祝いだというので教科書をただでやるということで天下の世論を沸かせ、人々を喜ばせ、いつの間にやらやめてしまったという歴史を持っておりますから、どうかそういう国民の期待に反しないように大臣がっちりと財政的な面を確保して、この法律が羊頭狗肉でないようにしていただきたいと思います。何か御所見ありますか。
  195. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) この法案をきめていただきますれば、おっしゃったとおりになると思います。
  196. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 もうすわったままでようございますから、まあどっちでもいいから、十分しかないからどんどんお答えいただきたい。この法律の附則の第二、これは何を意図してこういう「政令の定めるところによる」としたのですか。
  197. 福田繁

    政府委員福田繁君) 附則の第二項でございますが、これにつきましては、三十七年度予算の執行にかかるものについての実施のための事項について、これは法律の第一条の二項でございますが、「前項に規定する措置に関し必要な事項は、別に法律で定める。」と、こう書いてございますので、この規定にかかわらずこの調査会において三十七年度予算の執行にかかる部分について答申が万一おくれるというようなことがございました場合には、政令によって執行するというやり方でございます。
  198. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この法律の建前では、予算の執行というのは、翌々年度の必要な教科書を予算は前年に作るということになりますね、将来とも。
  199. 福田繁

    政府委員福田繁君) 御承知のように、予算としては三十八年に入学する一年生のための教科書のための経費でございまして、それを三十七年度予算に計上しておりますので、したがって、今後のやり方としましては、希望としてはやはり前年度に経費を計上するほうが工合がいいと、こういうように考えております。
  200. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、これは便宜の措置であるということですね。
  201. 福田繁

    政府委員福田繁君) 附則第二項はそういう、おっしゃるような意味でございます。
  202. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 いや、予算の計上の仕方は……。
  203. 福田繁

    政府委員福田繁君) 予算の仕方は、これは御承知のように、この四月に入学します子供に渡るべき教科書を購入をします場合には、従来のやり方としましては少なくとも十一月、十二月に発行の指示をいたしまして、教科書会社でこれを製造するわけでございますから、したがって、その製造するときに契約する関係もございまして、前年度の予算に計上するほうが工合がいいと、こういうことを申し上げたのでございまして、将来もこういう方向でやることを希望しているわけでございます。
  204. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは金繰りの問題に関係があると思いますが、そういうことをやることによって教科書業者は金繰りの点については心配ないのですか。過去にこの無償問題が起こったときに、将来金融公庫というようなもので教科書金融に万遺憾なきを期したいということで説明があったんですね。それがおじゃんになっているんです。そういう必要を認めませんか。
  205. 福田繁

    政府委員福田繁君) 教科書会社といたしましては、やはり教科書の製作につきましては相当の資金も要しますので、契約する際に国からそれを概算払いでも払ってもらうということが非常に資金繰りに影響があるわけでございます。そういう意味において前年度の予算に計上するほうがいろんな点において工合がいいということを申し上げたのでございます。
  206. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その概算払いというのは、一冊について幾らぐらいの概算ということですか。それともその発行業者が何千万、何億という総体的に注文を受けたと、それの何割という考え方で予算を執行するというのですか。
  207. 福田繁

    政府委員福田繁君) これは教科書の定価は大体この発行の指示をいたします際に大体きまりますので、この教科書の代金の前払いといたしましては、このきまった定価による概算払いのほうが普通であろうと考えております。
  208. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 大臣に伺いますが、この附則第二項は三十八年の入学者に対する予算の執行に関して、法律を待たないで措置するための措置であるというのです。ところがこの法第一条の二項は、「必要な事項は、別に法律で定める。」とありまして、これは調査会の建議を待って法律によって定めるとも何とも規定がないのです。そうして四月一日からこれは発効するのです。義務教育無償は三十七年入学の児童に適用になるのです、法律上は。この予算はどうなる、この法律はいつ出す。それは来年の三十八年の二月ごろ法律が出ても、その法律が三十七年に対して発効しなければならぬようにこの法律はできていると思うのです。条件がないのです、これは。もう発効したら法律をこの年内に定めて年内に満足させなければならぬ。この調査会の云々を待ってなんていう法律じゃないのです。そうでしょう、これは。理屈を聞いているのじゃないのですよ。私は法律の建前を聞いているのです。事務的に答えて下さい。
  209. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お話の点は、第二項によって調査会待ちということに一応なっておるわけでございます。
  210. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 なりますよ、なってますよ。
  211. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そうじゃなしに、お話のように調査会待ちでございますから、調査会の結論が出まして、それが立法措置を必要とする内容ならば、臨時国会または通常国会で御審議を願った、そうしてきまった法律に基づいて、いわば完全に執行するのが建前でございます。ですけれども、すでにして三十七年度予算に七億円見当を提案いたしております。万一調査会の結論が不幸にして出なかったと仮定いたします、そのときには執行不能になるという格好になります。そこで、政令でもってこの場合は三十七年度の予算の執行に関する限りやってよろしいというお許しをいただきたいと、そういうことであります。その場合の教科書発行そのことにつきましては、むろん現行の教科書発行に関する臨時措置法の線に沿って教科書が作られる。無償ということだけが政令によって予算の執行ということになると、そういう関係になります。
  212. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 三十七年度の予算の執行は三十八年入学者のためなんです。私の聞いているのは、三十七年入学者のためにこの法律の原則が生きておるのですから、法律を作って、それに当てはめるというのが義務づけられますよ、と言っている。
  213. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) むろん義務づけられます。られますが、それは調査会を待ってきまるという前提に立っておりますから……。
  214. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 どこにその前提があるのです。
  215. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 万に一つこの調査会の結論が十一月三十日までに出ませんために仰せのようになった場合は、三十七年度予算の執行については政令をもって定めることができるというお許しを得たい、こういうことであります。
  216. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 三十七年度の予算の執行は、三十八年入学者のための執行なんです。私の聞いているのは、この法律は無償とするという法律と別に法律に定めて執行するという、この二つはあすから発効するのです。あす以後三十七年の入学児童があるのです。生徒があるのです。これに対しては法律を作って発効させなければなりませんよ、というのです。附則の2は三十八年の入学者に対してだけいっている。三十七年の入学者に対しは触れないと、何とも書いてない。そうすると、この法律の生きているところ、法律を定めて支給しなければなりません。これはどうなりますかと聞いている。
  217. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 三十七年度の予算の執行と申し上げることは、当然に三十八年四月に入学する第一学年の生徒に対する教科書である、こういうことであります。
  218. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 わかりました。だから、三十七年に入学する児童にはどう手当するかというのです。この法律が生きれば手当しなくちゃいけませんよ、ということです。この法律が生きれば。
  219. 福田繁

    政府委員福田繁君) 第一条におきまして「義務教育学校教科用図書は、無償とする。」という方針ははっきりしておりますが、その方針に従って行ないます具体的な措置に関しては、第二条の調査会で調査いたしまして、その結果に基づいて第一条の二項によって別に法律によってこれを定める、こういうことになるわけでございます。したがって、三十七年四月に入る子供につきましては第一条の無償とするというこの原則は適用ございましても、具体的措置についてはこれは二項によりまして別に法律を定めなければなりませんので、その点ははずれていると解釈いたしております。
  220. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 どこではずれるのです、第二条だって三十八年度以降のものについてやるとも、三十七年度からの入学者について調査会がやるとも書いてないですよ。どこに書いていますか、書いてないですよ。この調査会というものは、皆さんが期待するのは三十八年度以降のことは期待していますよ。期待していますが、三十八年以降に限るのだということは何もないのですよ。
  221. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 明文からいいますと、まさにお説のとおりだと思います。ですけれども調査会の答申を待って実行方法を定めることもまたこの法律案の要請しているところでございます。その答申は十一月末日までに最悪の場合を押えざるを得ませんが、十一月三十日までに答申してもらうという建前が法案そのものに出ております。ところで一方、三十八年度に入学するものに対する教科書というものは、御案内のとおりに三十七年度内から着手いたしまして、現実には十月か十一月ごろに需要数が一応きまりまして、その需要数がきまったという連絡を受けて指示をするということで今の法律上動くことになっておりますから、言外には三十七年度には適用にならないのだということが事実上はっきりしておる、こう解釈しております。
  222. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 事実上はっきりしているなんて政府が手前勝手にいったってだめです。法律が生きる建前は、法律は文部省の都合のいいように解釈してはいけない。この第一条の第二項で別に定める、調査会の建議を待って法律をもって定めるとか何とかというふうにあればきっちりと意が通じますけれども、別に法律を定めるだけのことであって、調査会は何年度からのものをやれということは何もない。ただ、三十八年度については現にこれこれだということしかない、だからおかしいということを申し上げている。これで時間をとってもしようがないからやめます。  それで次に移って、この法律の建前としては、第二の法律の建前としては給与法になるのですか、負担法になるのですか。
  223. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻来御質問に応じてお答えいたしておりますように、国が国の責任において無償とするということははっきりいたしまして、かりに国と地方で経費の分担をするといたしましても、責任者は国でございますから補助金という形にはならない、万一分担することがありましても、たとえば義務教育学校の教職員の給与の負担のごときやり方しかあり得ない、しかしそれも、いずれであるかは答申待ちだと先刻来お答えしておるとおりであります。
  224. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その点は、もう少し事務当局で煮詰められたらいいのじゃないかと思うのです。これが給与法か負担法かということは、私はやはり検討していい値打があると思う。義務制小学校は、これは市町村固有の事務です。行政です。ですから、きのうも聞いたのですが、これが教科書は、教育用図書は広く教材です。今、義務教育国庫負担法における教材は学校運営費なんです。運営費として負担しておる、一部。地方と両建でこの問題をまかなうとなれば、これは市町村固有の事務としてですが、その教科書の代金を支払うか、あるいは現物を給与するか、そういう形になると思うのです。そうなれば国のほうは負担法だと思います。また義務制小学校が市町村固有の事務であれば、この無償の原則というのは国と地方を通じてだということがいわれるならば、やはり国というものは前面におって金銭的な裏づけをする、そういうことにとどまる場合もあり得る。そのことから教科書の発行なりあるいは配給なり、これらの点についても様相が変わってきますよ。文部大臣は何か教科書会社でも何でもみんな金を出すという建前に立って一貫してものを考えたがっておられるようですが、ただ単に児童生徒が買う教科書、その代金を国と市町村が負担してやるという考え方もある、どっちが民主的で正しいか、これは検討を要すると思います。何でもかんでも国がやるのだから、配給も検定も採択も教科書行政一般についてこの際手をつけようなどというお考えがあるということで飛躍です。義務教育無償で教科書無償の原則と、教科書供給の事業や検定や、それらとは別個の問題です。混淆すべきでないと思います。別個の問題だとお考えになりますか。
  225. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) かれこれ混淆しようとは思いません。憲法二十六条二項を実現したいということであります。また、お説のようなこともございますから、調査会待ちで検討していただいた上で具体的な法案を準備したい、かように思います。
  226. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうであるならば、最後に一点……。
  227. 大矢正

    委員長大矢正君) 小笠原委員に申し上げますが、たいへん貴重な御質問で私どもも十分聞きたいところですけれども、先ほどの申し合わせもあることでございますから、十分ひとつお考えの上で御質問願いたいと思います。
  228. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それならば、あんまり都合のいいところ、調査会に待たなければ結論を得られないということをあっちこっちいろいろ構想としてお話になることは、事務当局も文部大臣もおやめになりなさい。これは日本の教育行政の上に非常に大きな影響を及ぼす問題ですぞ。文部省の都合のよいような、そんな行政を考えながら教科書問題を無償の名のもとで考えたら大きく間違う、これは意見ですが。  そこで、この法案の素案というものは調査会の建議によって文部省で作りましたら、この調査会に意見を聞きますか、聞きませんか。これはどうですか。  それからもう一つ、この委員会の構成は、二十人のうち学識経験者、行政関係職員、こうありますが、他の法律にはみんな明記しておる、こっちから何人、こっちから何人と。今の大臣の構想では、それはどちらがどれだけの構想でおやりになるとお考えになっているのか、これが、二番目です。  それから三番目は、教科書の検定の問題、これだって一日尽くしたって尽くされないのですが、教科書検定の問題は文部大臣があくまでも握っておるのが正しいのである、教育責任を持つのである、こういうお考えを堅持せられておるのですか。将来ともに動かないものとお考えになっておりますか。これは、教科書採択の問題を先ほどあなたは教育行政だと言うた、私はこの点は過去の文部大臣はそう言うたとは思いませんよ。教科書は教材なんですから、校務をつかさどる学校長、教育をつかさどる教師みずからがこれが採択し、選択する問題なんです。そして教科書は多量に供給さるべきなのです。この原則は、戦後の新しい教育制度の中で確立しておったのです。私の記憶では、検定制度というものは教育委員会に委譲さるべきものを暫定的に文部大臣が持っておったと思うのです、六三制の建前では。まして採択の問題なども広域採択というようなことは、今の教育の原則にはこれは合わないのです。検定制度を地方に委譲するという考えがずっと歴代の大臣の中にあったのです。文部省もそういう方向で教科書課長は答弁しておったこともあるのですよ。だからこの点も考えられて、教科書行政というものは、今後十分に民主主義に行なわれることを希望します。これはお答え要りません。最初の二点だけ。
  229. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 答申の結果、立法措置を必要とする場合に、法案を準備したときに調査会にまたそれを相談するかという御質問だったと思いますが……。
  230. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 公式にとか何とかということじゃありませんよ。意見を聞くかということですよ。
  231. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 意見を聞くということは、当然には考えておりません。  第二のお尋ねは、教科書の検定の問題だと思います。教科書の検定はいじくろうとは思っておりません。  委員会の構成は、二十名のうち行政官庁のほうから出します委員は三名以上になることはないと考えております。
  232. 大矢正

    委員長大矢正君) 他に質疑のおありの方はございませんか。――他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  233. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終局をいたしました。  速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  234. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記を始めて下さい。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  235. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私は社会党を代表いたしまして本案に対する反対をいたします。  まず、この法案に対する提案理由の際における審議にもありましたように、この法案とは別に、提案理由の精神は現行教育基本法並びに学校教育法の目的並びに目標をはなはだしく歪曲すると思っておるのであります。すなわち教育基本法の第一条には、個人の価値をたっとび、個人の持って生まれた尊厳をそのままの姿で伸ばしていくことをきめているのであります。しかるに質疑応答の際でも明らかになりましたように、文部大臣教育に対する目的、目標の把握はきわめて前近代的といいますか、戦時中の国民学校令の精神をそのまま踏襲したかのごとき観を持っておるのであります。たとえば国土、民族、文化に対する愛情をつちかうのが教育目標であるかのごとくうたい、あるいは教科書を給与することによって国民的自覚が養なわれるかのごとき提案理由をいたしております。児童生徒が教科書を無償として給与されるということは、憲法二十六条に定めるところの、国民はひとしくその能力に応じて教育を受ける権利があるという、この権利の享受に対する当然の措置があって、教科書を無償で給付すること、あるいは学校給食等を給与していくことによって特定の観念、道徳性あるいは人生観といったものを法律が求めるということは、きわめて危険な問題であり、特にその内容が現行教育基本法並びに学校教育法の精神に反しておるに至っては、たとえ法案がよくとも、その意図が本会議でも指摘いたしましたように、昭和二十五年、二十六年あるいは八年以来非常に国民の間で懸念されておるところの現行の平和愛好の教育の目的を是正して、愛国心の養成による国防力の充実という道につながることを思わせるのであります。したがって、この法律案は単に大臣が言っておるがごとく憲法二十六条の無償を受けて、これを画期的に飛躍する第一段階であるかのごとき、あるいは父兄の輿望にこたえるものであるかのごとき表現がありますけれども、このことを私は政府の意図として完全に否定されはいたしませんけれども、その奥に私どもが懸念する教育基本法改正の動き、特に教育の目的の中に愛国心、国土愛の養成を意図しておることを指摘せざるを得ないのであります。  次に第二の問題は、教科書を無償として給付していくという措置は、昭和二十六年、二十七年、二十八年と続けて参りました。しかも、そのつどその法律の目標、目的が異なっております。これは政府が憲法二十六条の精神に対する明確なる把握と、これを守っていくという精神に欠除しており、同時にその施策が糊塗的であるといいますか、きわめて断片的、無系統的であったことを意味しておるものであります。しかも前回における教科書無償の措置に対する失敗をつぶさに検討されずに、この失敗を再度、今回もわずかに一年生に支給する、しかも、その具体的措置は他日法律に譲るというきわめて無計画、無方針の法律案であることであります。大臣答弁なさったように、かつて一年生のみに教科書を給付したことによって、また参考人も陳述したように、その計算だけでも一万人を要し、数カ月の時間をけみしたけれども、収支計算が合わず、最後文部省のほうが教科書発行所に対して収支じりを合わせてくれと依頼した事実等があるわけであります。こういう点から考えて、今回の措置は十分にその具体的措置を検討されて、前回の轍を踏むことなく、完全に無償の実現ができるように法律案の体系を整えて提出されるべきであったにかかわらず、全く調査会一任の形になっていることは、表面では無償と称しながら、実は調査会設置法であることを指摘したいのであります。しかも、この調査会に対する問題は、大臣答弁のごとく、世の人々が学識経験者と認める者を任命します、このように答えております。教科書検定官に対する世間の疑惑、中教審の答申を、必ずしも国民全体の輿望をになっていない点等、幾多の文部省に現存しておる審議機関、諮問機関等の現在までの傾向からして、当然今回は単に各省の諸役人とか学識経験者ということでなくして、この問題を多年にわたって主張して参った教職員団体であるとか、あるいは国民の直接的な代表を選ぶ等、各種団体から民主的な推薦を待って、一方に偏することなく、広くあらゆるイデオロギー、あらゆる階層の人々を網羅して初めて憲法第二十六条にいう義務教育の強制にこたえる無償の原則の確立が期し得ると思います。これら調査会の内容を検討いたしましても、きわめてずさんといいますか、無計画的な法案であります。すなわち、この法案は、無償法案とは申しながら、調査会設置法として、調査会のメンバーの規制、その任務等を規定すべき法案であったものを、取り急いで、選挙に間に合わせるために、無償の原則ということをうたいたいために、こじつけの法案であるにすぎないのであります。これらの諸点から考えまして、私どもとしては、無償を実現したいという文部省の意図を完全に否定し、理解しないものでもありません。大臣答弁にありましたように、これを契機にして、無償に近づきたいという精神は了といたしますけれども、その措置たるや無計画、法案たるや全くずさん、しかも、憲法二十六条の義務教育の無償にこたえるには、単に教科用図書を支給することでなくして、同時に何をなすべきかを検討さるべきであります。本委員会におきましても論議されましたごとく、父兄は一万円に近い一人の児童に対して負担をいたしておるし、その施設、設備の充実に対する父兄負担は、これはあるいは国の予算を上回るほどの高額になっておると推定されます。大臣は朝飯、夕飯あっての昼飯である、こういう名言を吐かれましたけれども、給食をしていくということは、人間が三度飯を食うという生存の最低保障として考えられたのではなくして、学校教育の一環として給食は考えらるべきであります。その他学用品、修学旅行費、これらもすべて教育であり、学習であります。これら全部の憲法二十六条に対する施策が検討は要すると主張されながらも、まだ何らの検討が行なわれていないのであります。私ども日本社会党が提案しております教科書法案は、これらのすべてを網羅し、その委員会の設置あるいは採択権の明確化等も明らかにいたしております。また、私ども日本社会党が多年にわたって主張して参りました教科書無償とは、単に一年生から逐次教科書だけを渡していくというのではなくして、先ほど私が申し上げましたような、すべての義務教育に関する諸政策、父兄の負担の完全解消が同時に計画された青写真の中で初めてその実を結ぶものであります。かりに、教科書を全学年の生徒児童に給与するといたしましても、従来百数十万人無料で与えておった児童は従前と負担においては同じであります。すなわち、貧困家庭は従前も教科書は無償で配付されておった。そのことは、そのままに放置されて、貧富の差を問わず教科書を無償とするならば、このことは、貧富の再生産を意味しているのであります。ここにも文部省の今回の法案が全施策の中で総合的に計画され推進されなかったために、従前の恩典はそのままにされておいて、貧困家庭は従前のままでありながら、金持ちの家庭には教科書が無償で配付されていくという欠陥を持つものであります。  以上の意味から、私ども政府がこの際謙虚に憲法二十六条の内容を、機会均等と義務の強制の二点から、無償は当然の国民の権利であるという憲法の精神を再検討していただき、十分この憲法の精神に沿って総合的な義務教育完全無償の政策を立案されることを強く要望いたしますとともに、以上の諸点からこの法案に対して反対をするものであります。
  236. 北畠教真

    ○北畠教真君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に対する賛成の意思を表明いたします。  政府並びにわが党は、憲法第二十六条第二項の趣旨にのっとり、義務教育無償の施策を推進すべく、去る昭和二十六年以来、その理想の達成に努力して参ったのでありますが、今回提案されましたこの法案は、第一条において、義務教育教科書を無償とすることをきわめて簡明端的に宣言した画期的措置であります。  第二に、この法案は、教科書無償の実施についての必要な事項は、調査会の答申を待って、別に法律で定めることといたしておりますが、これは当然のことであり、重要施策の実施にあたり慎重を期するためにはぜひとも必要な措置であると申すべきであります。  また、教科書を無償とすることにより、父兄負担の軽減をはかることができるとともに、貧富の差を超越して、児童生徒に国家社会の構成員としての自覚をつちかうゆえんであるとも信ずるものであります。  以上をもちまして、私の賛成討論といたします。
  237. 相馬助治

    相馬助治君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題に供されております本案に対して、反対の意思を表明いたします。  以下、四点にわたってその理由を述べます。  第一点は、私どもは、教科書無償という原則に対して、積極的に賛成をいたすものです。したがって、この重要な内容を持つ法案が、完全な姿において一日も早く本院に提案され、成立することを期待いたしまするがゆえに、今回のようなこの月足らず法案に対しましては、反対せざるを得ないのでございます。本案は、正しく申すならば、義務教育教科書用図書無償制度調査会法案と称すべきものであって、題目に掲げるようなものは、まさに羊頭狗肉の感を持つものでございます。特に、調査会の内容につきましても、大臣答弁にもかかわりませず、われわれは十分に納得する安心感を持ち得ないのであります。その一点は何かと申しますならば、政府部内の意見が統一されないままに、かかる重要な内容を持つものが、一行政委員会の手によって正しく解決の答申がなされるであろうかということを疑うからであります。政府は、積極的に無償の原則を決定し、市町村においてこれを負担せしめるか、あるいは国自体がこれをどのような形において負担するか、その財政区分を明瞭にして、調査会には具体的に無償配付制度、校正、発行、供給について、手落ちなく調査させてこそ、調査会の意味があると、かように考えるものでありまして、若干、意地の悪い見方をするならば、これは足踏み調査会というものであろうと思います。政府は、結論を出し得ずして、あの解放地主の利益を守る調査会というものを作ってお茶を濁し、その後、種々の問題を惹起いたしておりまするが、本調査会は、それと同じ運命をたどることが予見されるからでございます。  第二に、私の反対の理由は、今回の予算の裏づけを見まするというと、来年度の新入児に対して、無償の相当額を予定しておりまするけれども、この調子でいくならば、憲法の示すところの無償の原則がいつ完成するか、全く見込みなしと言わざるを得ないのでありまして、別して申しまするならば、本年度提出の時期にいまだ至っていない、未熟なものであるということを指摘しなければなりません。  第三の反対の理由は、政府の一片の都合と思いつきによって、かかる重要法案が本院に提出されたのでありまするが、その法案作成の過程において、日ごろ熱心に主張いたしておりまする教育諸団体、あるいは本法の実施によって至大な経済的影響を持つであろうところの供給業者、あるいはまた子供を持つところの率直な主婦の意見、これら大多数の意見というようなものを何ら聞くことなく、忽忙のうちに本法案をまとめて提案になったことを、きわめて遺憾とするのでありまして、これが反対の第三の理由です。  反対の第四の理由は、私が特に声を大にして申し上げなければならない点であります。それは、本法提出に至る政治的な状況と、本法の持つ基本的な性格の問題でございます。文部大臣は、今回の予算編成にあたって、学校給食と高校急増と理科技術教育の振興という三本の柱を立てて、大蔵官僚と相当激しくわたり合って予算獲得に努力されたことに対して、われわれは新聞その他の情報を通じて知るものであります。ところが、最終的には、給食の費用も打ち切られ、高校急増も融資にまかせられるというように、地方公共団体にその責任を押しかぶせ、理科技術教育についても、おざなり予算にとどまり、わずかに、願ってもいなかった教科書の無償という、ちょびっとした景品のようなものがこれにつけられて、お茶を濁されたというのが、天下周知の事実であり、これに調子を合わして、このような苦しい法案を文部大臣は提案せざるを得なかったことは、まことに気の毒というよりも、日本の文教発展のために遺憾とするところであります。  私は、以上四点の反対理由を述べまするとともに、不幸にしてこの法案が成立いたした場合には、正しく日本の文教政策が伸展していくように、日本の持つ教科書の歴史というものを、静かに振り返り、これを反省的にくみ取り、しかも、長きにわたってこれに従ってきたところの供給業者等の利益等をも勘案して、遺憾のないようにする必要があろうと思うのであります。  私は、本法案に対して、民社党を代表して反対をするものであります。
  238. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私はただいま議題になりました法律案について賛成をいたします。しかしながら、本法案は、憲法第二十六条に定める義務教育無償の原則を教科用図書の配付まで拡大実施するという、いわゆる宣言法案で、これが内容たる実際の効果は、一に本法案により設置される調査会の答申に基づく別の立法によることになっております。そこで、私は調査会の答申に基づく無償配付に関する法律が、次期国会に提案されることを強く要望して、賛成いたします。
  239. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、本法案に反対するものです。  反対の第一の理由は、憲法二十六条の義務教育無償の精神というものは、この法案では何ら実現されていない。それのきっかけを作るということを言っておりますけれども、これは全くの私はごまかしだろうと思います。もしも真剣に憲法二十六条を実現したいと考えるならば、まずやらなければならないことは、第一に、すし詰め学級の解消の問題。第二には、今非常に大きな問題になっている大衆負担の軽減の問題だろうと思う。戦後の日本教育の改革の思想は、まず第一に戦前の大量生産的方式を改める。大量生産によって真に人格を伸ばす、子供の持っている可能性というものを最大限に伸ばすという民主的教育を実現することはできない。かつて肉弾教室と呼ばれたところのこのすし詰め解消の問題というものは、ほとんど何らくさびが入れられないまま今日まで継続されている。これは日本の教育制度に残されている帝国主義的教育の残滓であります。これをはっきりなくして、真の民主教育を打ち立てるということが、日本の戦後の教育改革の最大の目標であったはずです。第二の大衆負担を解消するということは、教育の機会均等を真に確立して、富める者も貧しい者も平等に教育するという、この大きな戦後の教育改革の目標であります。これがほとんど何ら実現されることなく、年々その負担は強化されている。したがって、働く階級、貧しい階級では、再び教育の権利を遂行することができないという事態が起こっているのであります。こういう点から考えるならば、この点について徹底的な私は努力をしなければならなかったと思うのでありますが、これは何ら考慮されない。  第二に、この法案がここでこのような形で提出されているわけですが、この動機にわれわれは絶対賛成することができないからであります。第一に、この法案の由来は、言うまでもなく当面する参議院選挙対策のこれはにおいが十分にする。第二には国定化の危険が十分にあります。で、もしも真にこれを実現するならば、百五十億以上の予算を組むべきであったのであるけれども、この問題が結局最終的にはほとんど切られて、わずか七億という予算でこれはごまかされております。しかも、来年から小学校の一年生に実施するというやり方で、これは昭和二十六年の天野文部大臣の当時の法案を再現するような結果になります。このような、いわば金のかからないことだけをやって、宣伝に供するような法案というものを、これは国民はよく見定めております。この最初の計画を廃止するときに、どういうことを自民党の中で論議されたかということも、あまねく当時ニュースによって報道されたところであります。つまり、新しい学期がきて、教科書を買ってやるのは、親の最大の喜びだ、したがって、その喜びを奪うのは、どうも人情において忍びない、そういう形で実はやめるというような、そういう理由までつけられて、実は全面的に教科書を無償にする計画というものはだめになった。そのかわりにこのような法案を糊塗的に出してきたと言わなければならない。金のかかる問題は、全部高校急増対策、あるいは給食問題、このようなものは全くこれは切り捨てられて、金のかからないものだけやっております。この点で、私はこのような法案には賛成できない。われわれといたしましては、あくまで教科書無償のこの基本的権利というものを実現するために、今後努力をしなければならないと考えております。しかし、それはあくまでも国定化などという、実は軍国主義復活のねらいが十分にある、このようなものとは完全に切り離した形でこれを実現するために、今後国民の大きな協力によってこの問題を解決したいと考えるわけです。  以上の点から、この法案に対しまして、共産党を代表して反対の意思を表明します。
  240. 大矢正

    委員長大矢正君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって、討論は終局いたしました。  それでは、これより採決に入ります。  義務教育学校教科用図書の無償に関する法律案を問題に供します。  本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  242. 大矢正

    委員長大矢正君) 多数であります。よって本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則によります報告書の作成等諸般の手続は、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  244. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者、衆議院議員文教委員長代理理事八木徹雄君より趣旨説明を聴取いたします。
  245. 八木徹雄

    衆議院議員(八木徹雄君) 著作権法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。  本法案は、衆議院文教委員長提案にかかるものであります。本法律案はお手元に配付してあるとおりなので、朗読を省略いたします。  すでに御承知のとおり現行法は、明治三十二年に制定せられ、以来、数回の部分的改正を見ましたが、基本的な事項はそのままにして現在に至っております。したがって、著作権の保護対象及び保護方法等も再検討すべき時期に到達しており、政府も今国会に文部省設置法の一部改正をはかって、著作権に関する制度審議会を設置して、全面的に検討を加えようとしているようであります。そしてこれが答申には、相当の期間を必要とすることが予想されますので、これが答申がなされるまでの間、著作権保護期間の終了される方々の救済のため、この際暫定的に保護期間を若干延長することが時宜に適するものと考え、本案を立案することとなった次第であります。  次に、本案の要点を申し上げますと、第一は、法第三条の発行または興行した著作物の著作者死後においての著作権、第四条の著作者の死後発行または興行した著作物の著作権、第五条の無名または変名著作物の著作権、これらの著作権の保護期間について、現在は三十年となっているのを当分の間三十三年と改めること。  第二は、通称隣接権と言われている、演奏歌唱の著作権及び録音物の著作権は、前に申し上げた著作権に比すると付随的の性格を持つがために、諸外国ではむしろ三十年よりも短い例が多くなっている実情にかんがみ、この際この保護期間は据え置くこととしたこと。第三は、本法案の施行日を公布の日と規定したことであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその概要でございます。何とぞすみやかに御審議の上御決定あらんことを切望する次第であります。
  246. 大矢正

    委員長大矢正君) 本案に対して質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  247. 野本品吉

    野本品吉君 簡単に一点だけ明らかにしていただきたいと思います。  それは現在は三十年となっているのを当分の間三十三年と改めること。世間ではこれを五十年にしようというような声もありましたし、またそういう案を立案された向きもあるやに聞いております。それを五十年ということにせずしてあえて三十三年と、きわめて短期間の三年間延長されたこのことについて、どういう意味でありますか、御説明を願いたいと思います。
  248. 八木徹雄

    衆議院議員(八木徹雄君) 御承知のとおり、五十年に延長したいという法案が社会党から出ておりまして、しかし、今も提案理由の中で御説明申し上げましたように、この期限だけではなくて全面的に改正する必要性ができて、それがためにこの間文部省設置法の一部を改正して審議会ができた。こういう経緯もあることでございますので、五十年がいいか四十年がいいかということは、これはやはりこの審議会の答申を待つべきではないか。そういうことで、大体この答申が出されるまでの期間を予測いたしまして、まあ大体二年ということでございますけれども、むずかしい著作権のことでございますので、万全を期する意味において三年というふうにいたしまして、その三年の間には多分出てくるだろう、そうすれば、その間に権利を喪失する方々の救済措置ができるだろうということで、本法はその救済措置だけをきめた、そういうことでございます。
  249. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 非常にむずかしい法律だと思うのですが、出ておるものは三年延期だけですからいいですが、これによって救済される向きはようございますけれども、この著作権が切れることによって全く著作権なしに、何と申しますか一般的に社会で利用せられる、こういうような面については何ら障害はないわけですか。そのことを期待している向きからは、著作権が切れることについていろいろ考えておる向きからいって、何の不都合もないわけですか、突然こういうふうに三年延期ということをやっても。私の聞いているのは、くどいようですが、利害関係者はないかということです。
  250. 八木徹雄

    衆議院議員(八木徹雄君) 利害関係者としては、たとえば放送業者あるいは出版業者、そういう方たちは著作権が三年でも延びるということになりますから、必ずしも好ましくないということになるのではないかと思うのでございます。また、そういう向きの反対の陳情もなかったとは言えないのであります。しかし、文部省がこの審議会を設けたという背景の中には、世界的な傾向として、著作権というものが先ほどちょっとお話のありましたように、大多数の国々が五十年以上に延びようとしている、こういう傾向の中でございますから、そこで制度審議会の中では著作権の延長というものが当然議題になるだろう、そういうことを考えて参りますと、おそらくは答申も延びるといろお答えが出てくるだろう。そうすると、せっかく現在発議してから答申なさるまでに二、三年かかる。その間に権利を失う人は気の毒だから、その間に、この際この人たちを救済しようという意味で、そういうことで、全部がこの三年延長するということに賛成だということはあるいは言えぬかもしれませんけれども、しかし良識のある者は、大多数の方々は了承できる課題ではないかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  251. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 経過的な問題として、この種のことから臨時的な争いなんというものは起こらないのですか、三年延長になるというようなことから。
  252. 八木徹雄

    衆議院議員(八木徹雄君) 現在まで三十年であった、それが法律改正によって三年延長するということになるし、そのととが憲法違反だとか何とかいうことになって争いになるということはないのではないか、こう思うのでございます。
  253. 大矢正

    委員長大矢正君) 他に質疑のおありの方はこざいませんか。――他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見はないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって、討論は終局いたしました。  それでは、これより採決に入ります。  著作権法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  256. 大矢正

    委員長大矢正君) 全会一致であります。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則によります報告書の作成等諸般の手続は、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会      ―――――・―――――