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1962-03-27 第40回国会 参議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十七日(火曜日)    午後二時十七分開会   —————————————   委員異動 本日委員堀本宜実君、泉山三六君、宮 澤喜一君及び東隆君辞任につき、その 補欠として温水三郎君、横山フク君、 山本杉君及び片岡文重君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大矢  正君    理事            北畠 教真君            野本 品吉君            近藤 鶴代君            豊瀬 禎一君    委員            井川 伊平君            横山 フク君            下條 康麿君            杉浦 武雄君            田中 啓一君            山本  杉君            千葉千代世君            米田  勲君            柏原 ヤス君            片岡 文重君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   政府委員    文部政務次官  長谷川 峻君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省管理局長 杉江  清君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○学校法人紛争調停等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○義務教育学校教科用図書無償  に関する法律案内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動につき御報告いたします。  本日、東隆君及び堀本宜実君が辞任され、その補欠として片岡文重君及び温水三郎君がそれぞれ委員に選任されました。   —————————————
  3. 大矢正

    委員長大矢正君) この際、参考人出席要求に関する件につきお諮りいたします。  義務教育学校教科用図書無償に関する法律案審査のため、明後日、参考人を招致し、意見を聴取いたすことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。なお、参考人の人選及びその他の手続につきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。
  6. 大矢正

    委員長大矢正君) それでは、学校法人紛争調停等に関する法律案を議題として審査を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は学校法人紛争調停等に関する法律案について質問いたしますが、この法律案の第一条に、「この法律は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理及び運営が行なわれなくなり、かつ、そのため当該学校法人が法令の規定に違反するに至った場合において、当該紛争の処理に関し調停その他の措置を定めることにより、学校法人の正常な管理及び運営を図り、もって私立学校における教育の円滑な実施に資することを目的とする。」とございますけれども、正常な管理及び運営ができなくなり、かつ教育の円滑な実施を欠いている、こういう具体的な例があって、それに適用させるためにこの法律を作ったと、こういうわけでございましょうか。
  8. 杉江清

    政府委員杉江清君) この法律そのものは、現にそのような事実があるということを前提としているわけではございませんが、しかし、この法律を作る原因の実態は、ただいまお話しのような事実が名城大学に存じておる。そのことのためにこの法律を制定するに至ったという事実があるわけでございます。
  9. 千葉千代世

    千葉千代世君 そういたしますと、その具体的な対象というのは、現在、名城大学一校だけでございましょうか。
  10. 杉江清

    政府委員杉江清君) さようでございます。
  11. 千葉千代世

    千葉千代世君 聞くところによりますと、名城大学では今授業料労働金庫に供託しておいて、そこから借入金で学校管理運営をしているということを聞いたわけですけれども、その実態について政府で把握している点を述べていただきたいと思います。概略でけっこうでございます。これは前国会委員会でもその点が述べられたわけですが、その後の状況でけっこうでございますけれども
  12. 杉江清

    政府委員杉江清君) 現状におきましては、学校管理運営は三者審議会というものによって行なわれているわけでありますが、その三者といいますのは、教授会教職員組合学生会代表者、この三者で構成されておるわけであります。この三者審議会による学校管理は三十四年の十一月に開始されたものでありまして、教職員の給料、大学維持に必要な経費は、学生労働金庫に預金した授業料相当額から借用形式によって支弁して現在に至っておるのであります。このこと自体は、学校はその設置者管理をするという原則に違反しているわけで、今までもいろいろ実質的な調停が行なわれて、このような事態を解消し、正常な管理に移すような努力が行なわれたのでありますけれども、この紛争は継続して、そのような改善がなされず現在に至っておる状況でございます。
  13. 千葉千代世

    千葉千代世君 授業料労働金庫に供託してそこでまかなっていると、こうございましたけれども、実際において年度末、昨年度末でけっこうですが、収支決算はどんなになっていますでしょうか。たとえば借りた中で十分学校がまかなえておったかどうか、あるいは足りなくて学校運営について何か方法を講じられておったかどうか、寄付金等その他について伺いたい。
  14. 杉江清

    政府委員杉江清君) ただいまその詳細な収支決算書は持ち合わせておりませんが。
  15. 千葉千代世

    千葉千代世君 大体でけっこうです。何とか運営できて……。
  16. 杉江清

    政府委員杉江清君) 労働金庫授業料を預金して、それからいろいろな必要経費を支弁しておるのでありますけれども、それはいわゆる学校を維持する、最低限度現状を維持運営するに必要欠くべからざる経費をそこから支出している、こういう現状でございます。たとえば先生の俸給もそこから支払っておるわけでありますけれども、それはいわゆる生活費を支給するということであって、俸給の金額を必ずしも支弁しておりませんし、また、増俸、給与引き上げ等もずっと行なわれておりません。なお、その学校施設運営につきましても、また設備補修増強等についても、ほんとうに現状を維持するに必要な経費の支弁はここから行なわれておりますけれども、新しく施設を建て、または設備を充実するというような積極的な利用は行なわれておりません。で、そういった最低限度必要経費をまかなうという範囲においてはどうにかやっておるというのが現状でございます。
  17. 千葉千代世

    千葉千代世君 教職員俸給については最低必要限度をこれからまかなっていると、正式に俸給表どおりいただいていないわけですね。そうすると、教職員学校に対して貸しがあるわけですね、平たい言葉で申しますと。大体一人平均どのくらいの貸しがあるのでしょうか。
  18. 杉江清

    政府委員杉江清君) ちょっと正確な数字は把握しておりませんが。
  19. 千葉千代世

    千葉千代世君 というのは、御承知のように国家公務員地方公務員、その他についてベースアップがありましたし、民間産業でもそれぞれベースアップがあったわけです。すると、名城大学では長い間紛争の中におりましたために、教職員方々生活も非常に逼迫している。そういう中で、今ぎりぎり限度耐えて、何とか学校がよい運営がされていったならば、自分たち生活もそれに沿って明るくなって、教育の効果も十分あげられるのではないか、こういう希望を抱いて長いことおったわけです。そうしますと、今の公務員あるいは民間給与に比べて、非常な低い生活でごしんぼうなさったわけですから、この借財が相当にあると思うのです。そうすると、この法案ができて、よい運営がされていけば、当然これは教職員がそこへ貸したものとして、これは早急にそういう支払い関係等も円満にいくようなお考えでございましょうか。
  20. 杉江清

    政府委員杉江清君) その解決については、場合によっては調停内容にも、そういう点が含まれるかもしれませんし、また、もし調停内容にそのことが含まれません場合においては、学校法人がその正常な管理及び運営を行なうようになりました暁には、その紛争期間中のいろいろな不備を補正し、ただいまのような問題についても適切な解決がなされるものと、私ども考えております。
  21. 千葉千代世

    千葉千代世君 重ねて伺いますけれども、円滑な教育実施とか、それから学校法人の正常な管理とか運営とか、こういう中には当然教職員方々、それから職員の方々ですね。これが非常なしんぼうの中に力を結集して、そうして何とか盛り上げたいとしんぼうしたわけですから、やはり調停内容の中に、そういうふうな、盛られる用意が十分されていなければならないと思いますが、今、局長の御答弁の中には、あるいは調停の中にその項目が入るかもしれない、こういうお話でございましたが、あらためて伺いますけれども調停内容の中に、やはりきちんとしたそういう項目を入れられる用意があるかどうか、そういう点伺います。
  22. 杉江清

    政府委員杉江清君) この法律建前は、学校紛争解決するということにあるわけでありますが、その学校紛争というものは、学校紛争一般をさしているのではなくして、いわゆる学校法人役員相互の間の紛争をさしているのであります。そうしてその学校法人役員の間の紛争そのもの解決することが、この法律の主たるねらいであるわけなんです。その学校法人役員相互紛争解決されて、いわゆる学校法人学校管理する機能が回復いたしますならば、その機能に信頼して、他の問題は適切な解決をはかっていこうというのが基本的なかまえでございます。しかし学校紛争内容には、単に理事者相互の争いというだけでなくて、いろんな要素がからんでおりますから、その学校紛争の重要な事項は調停内容に含まれる可能性は多いと思います。しかし、今のような問題は、調停内容に入ってこなければならないという性質のものでも必ずしもないと思います。その辺の判断は、調停員がよく実態に即していけば、いろいろ調査もされ、研究もされた結果によりまして、そこまで調停内容として含むか、またはそれは自後の解決にゆだねるかは、判断さるべき性格のものだと考えております。
  23. 千葉千代世

    千葉千代世君 誤解があるといけままんので申し上げたいと思いますが、私は、この法案が教員の給与とか、人事の面に適用されてはいけないという見解を持っているわけです。させてはならない。その点で、今の局長さんの御説明のとおりなんです。しかしながら、現在お勤めになっている方々が、この紛争のために俸給をもらえないわけでしょう、結局は。そうすると、非常な損失をこうむっているわけですから、その点だけの損失の回復について調停内容に盛ってしかるべきではないかと、こういうことで御質問申し上げたわけで、くれぐれも、この法案が普通の人事とか、給与とかに波及されることは、これは厳に慎しまなければならないんで、これは極力排除していく、こういう点については同感でございます。  続いてお尋ねいたしますけれども私立学校については文部大臣解散権を持っているわけですね、学校解散権。そうすると、この解散権というのは、今まで文部大臣が行使したことがあるんでしょうか。
  24. 杉江清

    政府委員杉江清君) ございません。
  25. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、解散権と申しましても、学校そのもの解散してしまう、この法律はそうではなくて、理事者の首のすげかえ、という言葉は何ですが、その入れかえを主とした法案でございますね。
  26. 杉江清

    政府委員杉江清君) 解散のような、学校のいわば死刑処分にも当たるような処分は、これは万やむを得ざる最後の手段としてとらるべきものであって、それに至るまでにあらゆる措置を講じて、そのような最悪事態は避けるべき性質のものでございます。ところが、現在の法律建前は、その解散に至るまでの法的な手続、法的な制度が欠けておるわけでございますから、それをこのような制度によって補いまして、解散のような最悪事態を避けようというのがこの法律建前だと考えております。
  27. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、先ほど御指摘になったこの名城大学は、非常に学校全体が協力一致して、よい学校に育てていこうと一生懸命になっている最中だと。しかしながら、理事者紛争のために円滑な運営を欠いているんだから、それさえ除いていけばこの学校は隆々発展さしていけると、こういう見通しのもとにこの法案ができたわけですか。
  28. 杉江清

    政府委員杉江清君) 基本的にはそう考えてよろしい、また考えたいのでありますけれども、率直に申し上げますならば、私はその理事者紛争だけが名城大学の現在の問題であるというふうに断定できるかどうかについては、一まつの疑念を持っております。それは率直に言いますならば、理事者相互の間の紛争のみならず、学校全体がこの紛争について反省し、全部が今後力を合わせて、この学校を再建するというかまえを一そう強く持ち、一そう努力することが必要である、かように考えております。しかし、このことは、私、紛争実態について十分調査した結果の発言ではないのでありますが、ただいまの御発言に関連して、ただ単に役員相互だけの問題だとこの実態を把握することには、やや疑念を持っておるわけでございます。
  29. 千葉千代世

    千葉千代世君 この問題に関しては、前国会等において、地元杉浦委員初め衆参両院の皆さんが、実際の立場から、どうしても早くこの紛争を処理しなければならないからということで、法案用意がなされておったわけです。私も昨年学校に行ってみまして、なるほどこれは早く解決して、そして学生たちも安心して、希望を持って、そして勉強できると、こういう安定した環境を作っていかなければいけないなということを感じたわけです。そこで、この法案については、時限立法でもあるし、それから特定な学校適用される、こういうことで、あとはほかに適用考えもないように伺っておりますので、やむを得ない処置であると思って賛成しているわけなんですが、ほかの私立学校関係の方にそれぞれ意見を聞いてみたわけです。そうしましたらば、なるほど、名城大学の問題はわかるけども、これが一般私学関係が波及されてきては困るのだから、つまり乱用されると困るのだ、こういうふうな御意見があったわけで、私しこれはたしか二年でございましたね、二年の時限立法ですから、そういう心配はないように十分配慮されているのじゃないかというようにお話ししたのですけれども、その点が非常に心配だと、こう言っておりましたが、それについて政府のほうではどのような見解を持っていらっしゃいますか。
  30. 杉江清

    政府委員杉江清君) この点については、先般、衆議院のほうでも、大臣からの御説明もあったわけでありますけれども、私どもはこの法律の乱用というようなことは毛頭考えておりません。この法律が制定されなければならなくなったこと自体が遺憾なことであると考えておるわけでありますが、この法律適用については、今のところ名城大学以外は考えておりません。
  31. 千葉千代世

    千葉千代世君 この第四条に、「調停委員は、三人以上五人以下とし、事件ごとに、審議会委員その他の者で学識経験を有するもののうちから所轄庁が任命する。」と、こうございます。これは数は三人以上五人以下というように規定してございますのですけれども、それについて、どういう根拠で三人以下五人となさったのでしょうか。
  32. 杉江清

    政府委員杉江清君) まあ常識的に、三人以下というのもどうか、また、あまり人数が多いということも、こういった紛争解決、立ち入った問題を審議し、結論を出していく場合に、あまり人数が多いということもどうかというような観点、そして、他の多くのこの種の制度においては、大体この人数がとられているわけです。そういった常識的な判断に基づいて、この程度を妥当と考えたわけでございます。
  33. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは人数でございますけれども、三人以上五人とございますが、四人の場合もございましょうし、五人の場合もございましょう。で、常識的に奇数の数でいろいろな調停員の場合にされておるわけなんです。で、これは全会一致という方式をとっておりますから、何人でもいいわけでございますけれども、やはりそれが全会一致に通るまでに、いろいろな小さい委員会が開かれるだろうし、いろいろなこまかい問題もあるだろうと思います。そういう場合に、大まかに全体が全会一致になるまでの過程では、やはりいろいろな意見の相違もあると思う。そういうふうな場合に、これは奇数のほうが私はいいのではないかと思いますが、衆議院のほうでちょっと聞いてみましたら、偶数でも差しつかえないというような御答弁があったようですけれども、重ねて伺います。
  34. 杉江清

    政府委員杉江清君) まあ今のような、実際問題としましては三人または五人ということが私は適当だと考えております。ただ、まあ法的に、四人の場合では処理できないのだということになりますと、必ずしもそう考えないのであります。で、要するにその辺の、まあ議事をどういうふうに進めるかということは実は政令段階で書くつもりにしております。それは、実際問題としては三人ないし五人ということになると思いますけれども、しかし、いずれにいたしましても、政令段階でその辺の問題は処理して、支障のないようにいたしたいと考えております。
  35. 千葉千代世

    千葉千代世君 その政令ですけれども政令用意は何か一カ月以内で政令用意をするとかと聞いておったのですけれども、これは用意はできているのでしょうか。
  36. 杉江清

    政府委員杉江清君) 今研究いたしておりますが、まだ最終的な案はまだ用意いたしておりません。
  37. 千葉千代世

    千葉千代世君 政令の中のおもな点ですね。さっそくにこの法案に付随して実施しなければならない問題のおもな点を述べていただけませんか。
  38. 杉江清

    政府委員杉江清君) 素案でございますけれども調停申し出方法、それから調停開始通知、それから調停をしない場合の通知、それから会議、それから当事者の変更、議事手続の公開、調停の記録、合意による調停成立報告等、または調停案所轄庁への報告とか、調停打ち切りの場合の通知とか、調停の取り下げとか、調停委員の解任、調停委員の選任、その他調停委員義務とか、そういうふうな項目を一応予定して研究を進めております。
  39. 千葉千代世

    千葉千代世君 もう一つ、戻りますが、調停委員の件ですが、これはやはり地元方々事情のわかった方を加える必要があるのじゃないかと思いますが、これは調停委員の任命は所轄庁となっておりますから、今ここで審議する段階ではないと思いますけれども、あそこに行って事情を聞いてみますと、非常に複雑な要素があるように伺ったのです。前理事長さん、前々の方、その他学校を御創立になった方々等の間に、これは非常に裏の裏のほうまで込み入った事情があるように見たわけです。そういたしますと、形式的に所轄庁が任令した調停委員であっては、なかなかこれが解決には困難ではないかと、こういう私は見通しを持ったわけです。そこで、まあ調停委員学識経験者の中からとかと、こうでございますね。その中に、お地元事情のよくわかった、たとえば知事という言葉はいいかどうかわかりませんが、ずっと長い間この経過を見ておって、そして常時、調停委員会その他に出られるような、これは知事という言葉は抜きますよ、抜きますけれども、お地元の方で、そういうふうな方が入られるようなやはり行政指導ということですか、この法案権限ではございませんけれども、そういう点の御用意はございますでしょうか。
  40. 杉江清

    政府委員杉江清君) まあ常識的には、おっしゃる意味は十分わかりますが、具体的にそれを入れるかどうかということについては、なお今後十分検討して、最善の調停委員を選ぶように努めたいと考えます。
  41. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから十条のところですけれども、同意しなかったものには調停は成立しなかったと見るのでしょうか。
  42. 杉江清

    政府委員杉江清君) さようでございます。
  43. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから、あとに戻って恐縮ですが、二条の三項でございますが、学校法人役員または理事評議員の間の紛争以外の教職員役員との紛争適用外である、これは労働法とか、労働関係調整法など、この法案以外の法律適用を受けると思うのですが、いかがでしょうか。
  44. 杉江清

    政府委員杉江清君) さようでございます。
  45. 千葉千代世

    千葉千代世君 この法案は、条文を見ていきますと、別に憲法に違反したものにはならないと思うのですが、その点について御論議なさったことがありますか。
  46. 杉江清

    政府委員杉江清君) 私ども、もちろんこの法律憲法に違法するという点は毛頭ございませんし、また、そのおそれすらもないと私どもは確信しておるわけなんですが、ただ、今までの審議過程におきまして、一体この法律憲法に規定するところの裁判を受ける権利と抵触するものではないかと、こういうふうな御疑問があったようでありますけれども裁判を受ける権利は何らこれはこの法律と矛盾するようなところはございません。これは、この法律調停は進められましても、それは裁判所裁判を求めることは可能であります。もちろん望ましくはありません。で、調停が開始された以上、みだりに訴えを起こすというようなことはやめていただきたいのでありますけれども、しかし、この法律は、不可能にしているわけではございません。そういうふうな裁判を受ける権利を何ら制限しているわけではございません。この法律憲法に違反するというようなことは、毛頭考えられないものだと考えております。
  47. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、道義的には、この調停委員会にかかっている間は、他の裁判所にかけないというのは道義的にね。ただその場合に、調停したものが同意を得られなかった場合がございますね、そういうときには、これは無効でございましょう、得れなければ。だから、そのときには裁判にかけても争うということになる場合には、やむを得ないわけですね。
  48. 杉江清

    政府委員杉江清君) 今の御質問がはっきりしなかった点がありますが、調停が成立しなかったときには、これは必要に応じては、所轄庁がその役員の解職を勧告し、または、最終的には解職する権限を与えているわけであります。しかし、そういうことと、いわゆる裁判所訴えを起こすこととは、これとは別個の問題でありまして、調停が成立せずに、そのような所轄庁の、ただいま申し上ごましたような処分が行なわれた後において、なお、地方裁判所訴えを提起し、または行政裁判所訴えを提起することは可能であります。ただ、ただいま申されたように、調停が開始された以上は、同時に、またその調停手続の進行中、訴えを起こすというようなことは、これは道義的に避けるべきことであるし、調停の円滑な実施のためには、むしろ現在提起されております訴えすら取り下げるくらいの関係者の御配慮があれば、非常にうまくいくと考えているわけであります。
  49. 千葉千代世

    千葉千代世君 まだこまかいことを質問したいと思いますが、今審議の中で明らかになったことは、この法案が乱用されないということと、教職員人事とか、給与とかの面について、紛争内容以外のことについてはこれは関係しない、こういうふうな大まかなことが明らかになりましたので、こまかい質問もしたいと思いますが、これで質問を終わります。
  50. 米田勲

    米田勲君 関連質問文部大臣にお尋ねしますが、私学紛争解決するために、しかも現在においては、ただ一つ私学紛争解決するためにこの法案を出してきているわけです。現行法規でこの私学紛争をなぜ解決できないのか。今までいろいろ対策が講ぜられたと思うが、なぜ現行法規範囲内で、この紛争解決できなくて、新しく法律案を提案しなければならなくなったのか、大臣見解をお聞きします。
  51. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 現行法では、いやしくも学校を設置することを目的として設立され、認可された学校法人内部において、本来の学校運営それ自体が困難に陥って、学生に迷惑をかけ、学校の信用を落とすなどという運営の仕方をする理事者は、あるはずがないという前提に立っていると思います。したがって、そういう前提のゆえに、類例のない、おそらく前古未曾有の紛争の具体的な事例をここに展開しておる例というものは、今後に向かってゼロになってほしいと思うわけですが、現在の法律が、今申し上げたようなことを大前提としておりますがゆえに、異例のかような紛争に対しましては無力である。裁判ざたに訴えて、お互いが、いわば泥試合的な相互訴えを提起するということにまかされるということ自体、あり得ざることが起こっておる現象と思うわけであります。したがって、現行法では処置ができない。このような場合に現行法をもし最終的に適用すると仮定しますならば、私立学校法六十二条でございますか、解散を命ずるというほかにはないと思います。これまた先ほど来、政府委員が申し上げたとおり、解散権限は文部大臣に与えておりますけれども、その具体的な手続あるいは事後処理等につきましては何らの規定がない。一種の法の不備だろうと思うのでありますが、このことは、その解散権限の行使すらもがほとんど想像されないくらいの期待を持って規定されていると想像されるのであります。それで、かりにその伝家の宝刀を抜いてみましても、何ら学校法人そのものの紛争解決にならない。特に在学しておる学生教育を受ける立場をどう処理するかという具体問題の解決には何らならないということのために、解散権限がありながら行使できなかった状態で今日まできておるわけであります。したがいまして、ほとんど法が予想しなかったような事態も現に起こっておるわけでございますから、この当面の難問題を処理するのに、最小限度に必要な規定を整備いたしまして、この法案を立案し、御審議を願っておるような次第であります。
  52. 米田勲

    米田勲君 この法律案を成立させることによって私学紛争、現在起こっておる紛争解決できるという見通しに立っておるのかどうか、 これが一点。もう一つは、こういう法案を出すと、大学の自治との関係がなかなか問題になってくるわけです。そこでこの法案は、大学の自治との関係、大学の自治を侵すというようなことに乱用されないという配慮が条文のどこにされているのか、この二点をお聞きします。
  53. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) この法律案を決定していただけば解決できると思います。できると思いますと言いぱなしでは十分でないようですけれども法案に盛られておる内容が着実に実行されます限り、調停委員の誠実な調停が効を奏します限り、解決はできると存じます。大学の自治との矛盾撞着は全然ないと私ども思っております。大学の自治というのは、もともと学問の自由、研究の自由という立場を基本線といたしまして、大学の自治が主張される。そのことには一点の変わりもないことであります。学校法人学校を経営するための手段としてとられました制度であって、学校法人それ自体に学問の自由的な自治権というものは何らないわけなんで、むしろ学校を円満に正常な姿で運営する責任こそあれ、今の名城大学紛争みたような、学校本来の事業を没却したようなことにする自由はないわけで、徹底的に間違っておる面だけしか存在してないということと私は理解します。繰り返しますれば、大学の自治ということが、本来学問の自由、研究の自由に根ざしておる限りにおいては、この法案は、具体的に申せば名城大学の大学の自治とは何らかかわりがない、こういうように思っております。
  54. 米田勲

    米田勲君 私は今の文部大臣答弁で、この法案を成立させて、この法律に基づいて措置が進むことによって名城大学紛争解決できると文部大臣が明確に答弁したことを確認しておきます。さらにもう一つは、大学の自治を、この法律が発効になって、措置がとられていっても全く侵されるものではない、こういうふうに大臣答弁をしたということを確認しておきます。  次に、この法律の第四条に調停委員を、先ほどの質問にもありましたように、三人以上、五人以下の調停委員所轄庁は任命するのですが、これは法案を読んでみると、調停委員会のようなものを設けるようになっておらないように理解をされるが、調停委員会というものを持つのか、持たないのか。持つとすれば法律のどこにそれをうたっておるのかという疑問が一つ。それからこの調停委員はかりに五人で構成するとすれば、委員長というふうなものを法律の上か、政令の上で特に責任者としての職権を持たせて設けるのかどうか、こういう疑問がもう一つ。それに関連して第六条に、冒頭に、「調停委員は、」と書いてある。そうすると、これは調停委員が五人いる場合には、委員会ではないから、調停委員となれば五人のうちの特定の一人ということにも解釈される。その五人の中の特定の一人の調停委員が、個人の判断でこの六条に規定されておるような行為をとれるのかどうか、この点についてひとつ御説明をお願いします。
  55. 杉江清

    政府委員杉江清君) この調停委員調停は、あくまでもこれは個々の調停委員それぞれが独自の権能を持って調停に当たるというのではございません。調停委員調停委員全体として調停を行なうのであります。そのことは、調停案の作成には全員の一致を必要とするということは法文にはっきりと明示しておりますが、その他の場合において法律にははっきり明示してございませんが、その点は政令で明らかにしていくつもりでございます。政令におきましては、実質上、調停委員会というようなものを作りまして、そこで委員長もやはり必要になると思いますし、そこでいわゆる会議の形をとっていくことも実際上行なわれるわけでございます。しかし、建前は全員の一致が建前で、しかし、調停案の作成以外において必ずすべての場合に全員一致ということを法的には求めておりません。その辺のことは政令で規定して出す考えでございます。
  56. 米田勲

    米田勲君 私はどうもあなたの説明では納得ができないのですが、本法の中に調停委員会という性格をうたわないで、政令に持っていってうたおうとしていたり、本法にはこの調停委員の中の代表者というか、責任者というか、そういうものを設けることを法的には規定しておらぬのに、政令に持っていってそれを定めようとしておるということは、法案そのものが不備なのではないか。特に第六条と第八条を比べてみると、第六条は「調停委員は、」となって、明らかにこれは個人である。ところが第八条は、「調停委員の全員の一致をもって」とわざわざ断わってある。第八条の場合は、したがって、そのうちの数人が合意しても、調停委員会の全員の一致がなければ、この八条の法律にあてはまる行動はとれない。ところが六条には調停委員の全員の一致をもってとかいうようなことはないし、もちろん調停委員会云々ということはないわけです。これはどうも六条と八条を対照してみても、今の本法と政令との関係からみても、どうも調停委員が個人として行動できるようなふうに法案は見受けられるし、そういう懸念がありそうに思われる。しかも、本法の中に調停委員会というものがなく、この委員会委員長というものは法定されていないのですから、政令でそれをきめるといっても、法律上の権限委員長になった者には与えられないのではないか、本法にうたっていないから。こういう懸念がありますが、その点はどうですか。
  57. 杉江清

    政府委員杉江清君) この調停制度におきます他の例も、通常、同様の形を持っておるのでありまして、この具体的なことは政令に十三条で委任しておりますので、そこで規定するわけでございます。この調停委員というものを、調停委員とあるから直ちに個人でこのようなことができるというふうには必ずしも読めないと考えます。その辺の明確さは、だから政令で明らかにすれば足りるという考えであります。
  58. 米田勲

    米田勲君 文部大臣法律というのは、できるだけ国民に理解されるように作るべきでないか、しかも、まぎらわしいところをできるだけ避けるように法律は作るべきでないかと思うのです、常識的に。今の局長答弁だと、今まで大体の例がこういうことになっておるという答弁だが、私はそういうことは理由にならぬ、まぎらわしいところがあったり、不備があれば、やはり新しく作る法律案の中では、きちっとその不備を補うとか、まぎらわしい点がないように法案を作り上げるという必要があるのじゃないか。特に私は第六条と第八条の関係について見ても、一方は「調停委員の全員の一致」だ、一方は「調停委員は、」としておる、これは私のような疑義を持つことは、この法律を国民が見た場合、当然起こるのじゃないか。少なくともこういうむずかしい調停紛争に当たる場合には、調停委員個人としての活動があることは一そう紛争をむずかしくしてしまうおそれがある、特にこういう場合には調停委員全員の合意によって常に行動されるということが望ましいし、そうなければならぬのではないか。そのことをなぜ法案の上にきちっと体裁をとらないのだ。政令にみんなそれをゆだねてしまうというような考え方は本来是正すべきでないか、法案を作成する際に。特に本法にうたっていないような権限だとか、性格を政令によってうたうということは、これは逆転していないかと思う、考え方が。これらの点について文部大臣見解をお尋ねします。
  59. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘のとおり、法律調停委員の職能、権限が定められておる以上のものを政令で規定するということはあり得ないと思います。もし政令で事実上——先刻、政府委員が事実上の措置として委員会というような構成についても政令で定める予定であると申しましたが、それはあくまでも調停委員三人ないし五人の調停を進めるにあたっての便宜上の手段として委員会的な運営をする事柄が政令で定められることがありましょうとも、それによって調停委員が持っている権限以上のものを、委員会として、もしくは委員長として権限を持つというような内容政令というものはあり得ないと思っております。
  60. 米田勲

    米田勲君 それでは、この第六条の法案の文章は、「調停委員は、」と書かれであるけれども、これは個人として調停委員が行動できることではなく、調停委員全員の意見の一致によって行動されることを、表現としては「調停委員は、」としたのだ、こういう解釈をすることが正しいと考えますか、文部大臣どうですか。
  61. 杉江清

    政府委員杉江清君) この種の調停制度においては、先ほども申し上げましたように、全員の一致を建前とするものでございます。しかし、いろいろすべてにわたって常に全員一致を要するかどうかということは、これはその問題の軽重による場合があるわけであります。この調停委員のなすべきことの最も重要なことは、第八条に規定する調停案の作成でございます。このような場合には全員一致ということを明示してある。建前としては全員一致でございます。しかし、実際上この調停を行ないます場合に、事実問題として、調停委員が常に一緒になって行動するということは必ずしも期待されない。個々に手分けして人に会い、また個々の事件を担当するというようなこともあります。その限りにおいて個人々々の行動の幅を認めていくというようなことが実際にも起こる。しかし、また非常に事務的な問題においてよく相談してやるというような場合がある。その場合も建前は全員一致の建前でありますけれども、しかし、すべてをそれによらなければならないということにする必要はないのではないか。そういうふうな実際上の事務処理といいますか、この調停の進行において起こるいろいろなことを予想して、その場合の必要なことは政令において規定する、こういう意味において、そういう問題の処理について事実上委員会のようなものを作っていくということは、私は法律の予定していないことではない、実施に必要な細則である、かように考えております。
  62. 米田勲

    米田勲君 あなたの御答弁の中に、私の聞いていることを誤解して答弁している個所があるようです。それは「調停委員の全員の一致をもって」という言葉を、直ちに調停委員が五人じゅずつなぎになって歩くこと、行動することを僕が言っているようにあなた解釈しているようだ。調停委員の五人が、何も東のほうに歩いたら全部五人東に歩いていけということを言っているのではなくて、少なくもこの調停委員の人たちが紛争解決するために行動する場合には、調停委員全員の了解のもとに行動をしていくという必要があるのじゃないかという角度から、調停委員個人としての行動というものではなく、調停委員全員の意見の一致をもって特定の調停委員が行動をとる。その行動については調停委員の全員は常に知っておる、何のためにあの行動をしているのか、そうして行動したあと、その委員は他の人たちには当然報告し、了解を求める。こういうことが法律上はつきりしておらないと、紛争解決するために、こういう法律を作っていよいよもって個人プレーが行なわれて紛争を拡大してしまうという懸念だってないわけではないので、私はこの第六条のようなうたい方というのは、これは調停委員全員の意見の一致を得て調停委員が行動するというふうに解釈することが正しいのではないか。あなたの答弁を聞いていると、調停委員の他の委員が何ら了解していない、知らないことも、この法律では行動を個人的にとれるということも若干許しておる。私は少なくも所轄庁がこういう紛争解決するために調停委員を任命する場合には、少なくもそういうような配慮が必要である、個人プレーを封じておく、そのことが大事なことではないかと思うが、あえてその個人プレーの余地を残しておるような答弁をしておるのはどういうわけですか。
  63. 杉江清

    政府委員杉江清君) 重要なことにおいては、全員一致を建前とする趣旨でございます。ただ私の申し上げるのは、そうしてその前に、ただいまの私が申し上げた一斉にじゅずつなぎになってやるということを、そういうふうな御趣旨にとった答弁というふうにお考えになった点については、私もそうは考えないのであります。実際問題として個々別々にやるものも、それは全員の了解のもとにやるということを私も考えておるのであります。ただ、そういうことでありますけれども、非常に事務的な処理を要する問題が起こってくるわけなんです。たとえばこの問題はひとつこういう手続でやろうじゃないか、また、その日程はこういうふうにしようじゃないかという、いろいろな事務的な問題の処理はあると思う。そういう場合には私はやはり会議のようなものを持って話し合って処理をしていく、こういう場合もあり得ると考えておるのであります。
  64. 米田勲

    米田勲君 あなたの答弁を聞いていると、私の言っていることと同じことじゃないですか。会議を持ってこういう事務的なことを処理する必要があるということをみんなで話し合って、ある特定の調停委員が行動する、それは全員の意見の一致をもって行動していることじゃないですか。いわゆる個人プレーではない。だから第六条にいうような表現は、調停委員個人が他の委員と何ら諮ることなく、拘束することなく行動できるのだということではないというふうに解釈すべきではないか。特に私こういうことを大切に思って聞いておる意味は、調停委員会というものが法定されている場合、あるいは委員長が法定されている場合はこの懸念は相当なくなる。しかし、これは五人選ばれれば五人が調停委員という同資格ですよ、法律の上では。そうであるがゆえに、一そう調停委員が単独で行動をし、ほかの委員には何らその行動の内容が示されないということではいかぬのではないかということですよ。この点はあなたも何だか私の意見を入れてうなずいておる個所もあるかと思うと、重要なことについては全員の意見の一致を云々といって、大した重要でない作業があるようなことを言っておるが、紛争調停するのに、この調停委員が重要でない行動をとるはずがないのですよ。皆すべて紛争解決するために必要な重要な行動をとるはずなんです。だから、その行動の中でこれは重要でない、これは重要だという区別はつけるべきでないと私は思うのです。だから、あなたの言うように、重要なことについては意見の一致を云々という、そういう特定する必要ないんじゃないですか。調停委員は常にこの紛争解決にあたり、行動については全員の意見の一致を見て行動する、そしてその行動は報告するというような、そういう運営によって紛争解決に当たるべきだという私は主張をしているのです。それをすっきりしておいて下さい。この法案を検討するときに、あとからになって問題が起こったときに、おれは調停委員として他のものと独立して権限を持っているのだ、自分の行動は自由なんだ、他のものにそんなことを報告する必要はない、こういうことになりかねないので、私はあえてここを問題にしているのです。大臣どうですか。これ局長と議論してもしようがないから。
  65. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私も大体、米田さんのお説のとおりに解釈をすべきものと思います。御指摘の第八条の「調停委員の全員の一致をもって」云々と特に書いておりますのは、少くともこのことについては法律上全員が一致したという具体的な表示を必要とするぐらいに解釈すべきものであって、その他のところでは事実上調停委員が一人で、たとえば第六条の場合でも、「必要な勧告をすることができる。」、一人の調停委員が勧告する、その名前で勧告することができるというふうにもむろん読めます。甲という調停委員が勧告をしたのに、乙、丙、丁は不同意でござる、勧告することは相ならぬという姿においてある一人が勧告するのでなしに、調停委員全員が実際問題としては勧告する必要を認めたときに、調停委員のある人の名によって勧告をするということもあり得るということには読めましょうけれども、そのときといえども、丁重に扱うならば調停委員全員の名前を連ねて勧告するという形式が望ましいかもしそない。それはあくまでも全員一致で行動する場合の運用の方法であって、それは政令によってもいいだろうという意味で、最後の条文の政令に委任しておる意味が初めて明瞭になると思います。繰り返し申し上げますが、第八条の場合は特に全員一致ということが法律上明示される必要が、法律上の必要要件として特に規定してある。その他の場合といえども、一人々々がおのおのが全然逆の反対の見解をとっておっても、ある行為ができるということではむろんない、調停委員の名において勧告をし、あるいは第八条にもいろいろ出ていますけれども、それらの行為ができるということであろうと思います。
  66. 米田勲

    米田勲君 大臣答弁は結局あれでしょう。六条のようなことを、調停委員個人が勧告や行動をとる、それが望ましい、しかし、そういうことはこの際は避けるべきだと思う。この法案審議過程において望ましいとならば、その逆がある。少なくもこの法律を出した建前法律審議したときの状態においての解釈では、八条の場合は特にこういうふうに厳密に法定したが、他の条文の中にある調停委員は、六条のようなことを、調停委員個人が勧告したり行動したりする、そういうことができるということではないと解釈、これは少なくともそうでないと、第六条のようなことが個人でできるとすれば、Aはある問題について勧告をする、Bはそれと全く別の勧告をするということもあり得る。こんなことでは法律を作る建前がくずれてしまう。この法律を作れば紛争解決できると文部大臣は言っているが、それには、この調停委員になった何人かの人が、必ずそのお互いの了解のもとに、意見の一致をもって常に行動するというふうに、法律建前は、われわれはそういうことを確認して審議したのであるというふうにしておいてもらわないと、それが望ましいなんと言われると、これはまた問題があとに残ってくる。
  67. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) あなたのようなことと同じような意味のことを申しておるわけですが、政令に譲っておりますが、政令でかりに六条の場合あるいは八条の四項等の場合、調停委員という表現だけで、ある行為ができることを書いておるようですが、第八条の調停委員の全員の一致をもって云々ということは、法律上の要件として全員、いわば連名で一致したことを表示する必要性を特にうたっておる。その他の場合に調停委員と言いっ放しておることは、むろん調停委員たる甲なら甲という人の名において勧告をしましようとも、他の残りの調停委員が全部同じ考え方であるから、その一人の調停委員の何の何がしが勧告をすることもあり得ると、そういうふうなことを、いかなる場合にどんなふうにやるかということを政令で定めるということでございます。また、政府委員が申し上げましたように、三人、五人という複数の調停委員がいるのだけれども、その相互間の意思疎通という便宜のためだけでも、事実上の、法律上の問題ではないけれども政令の立場における委員会的な運営の仕方をきめておかないことには、にっちもさっちもいかないであろうという部分があると思います。で、政令でもって、こういう場合は便宜、政令上の委員長なら委員長という職名を書いたならば、その名前で勧告をしようじゃないかとか、あるいは委員長にあらずとも、調停委員何がしの名前で勧告とかその他の行為ができるようにしようじゃないかというふうなことが便宜的にきめられることはあり得るであろう。法律上は、御指摘のとおり全員一致と明記した場合は、明らかに全員一致の連名によって行動すべく、調停委員と書きっ放しのときは、全員の場合もあり得るだろうし、一人の場合もあり得るだろう。そのことは、制度上はっきりさせておかなければならない必要があるならば政令で定める、そういうことと理解いたします。
  68. 米田勲

    米田勲君 その点は了解いたします。ところで、第四条に、事件ごと調停委員を任命することになっておるのだが、一つの事件の最中に調停委員をやめていただいて、ほかの人を任命するということを考えておるのかどうか、そういうこともあり得るということにこの法律はなっておるのか、どうか。一つの事件、「事件ごとに」となっておるが、この事件ごとが任期ですね、私はそう解釈している。「事件ごとに」と書いてあるから、この問が任期だ、だから、この任期中に死んだとか、あるいはもう全然活動のできないような状態になったとか、病気とか、けがとか、そういう場合を除いての話ですが、調停委員になってもらったが、都合が悪いので途中でやめてもらう、また新たなものを追加補充する、こういうことでこの法律考えているのかどうか、局長にお伺いいたします。
  69. 杉江清

    政府委員杉江清君) 一般的にそういうことは考えられないことでありますが、ただ私ども考えなければならぬことは、その調停委員学校紛争に利害関係を持つに至った場合はこれはやめていただいたほうがいい。で、その趣旨のことは政令に規定することは適当であると考えております。
  70. 米田勲

    米田勲君 そうすると、これは「事件ごとに」というのは任期を表わしておるんで、一つ紛争については大体その途中で更迭をするということはあり得ない。ただし、その紛争に対してて利害関係を持つに至った場合はこの限りではないと、こういう解釈をしておいていいのですか。
  71. 杉江清

    政府委員杉江清君) さようでございます。
  72. 米田勲

    米田勲君 この第四条の第二項ですが、「調停委員は、非常勤とする。」、これは、私この際、文部大臣によく話しておきますが、政府、あるいはその他の人事案件で、よく審議をしておって気がつくことは、政府関係のこういう審議委員を任命すると、非常勤の人に日当を出すわけですね、出勤——仕事をした人、その日当が、これは官房長官にもよく言っておるんだが、まだ是正しない。千円台で違うならいいけれども、百円台でもうばらばらに違っているわけですよ。だからこのことを、この法律が発動する時期になれば当然そういうことを考えるんだが、特に文部大臣は、いいかげんな金を当てずっぽうにきめることなく、よく今度は統一をすると官房長官のほうでも言っているのですから、その点は間違いのないように、一つぜひ考慮をしてほしいということと、現在のこういう委員を任命したときの手当の仕方が非常にひどいんです。このこともいつでも人事案件を審議する際に問題になりますので、念のためによく検討して下さいということを要望しておきます。時間の関係もありますので、関連質問でもあるし、以上で終わります。   —————————————
  73. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいま委員異動がありましたので御報告いたします。  泉山三六君及び宮沢喜一君が委員を辞任され、その補欠として横山フク君及び山本杉君が委員に選任されました。   —————————————
  74. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  75. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をつけて下さい。  他に質疑のおありの方はございませんか。——他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  77. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は日本社会党を代表しまして、この法律案に対して賛成の意見を述べたいと存じます。  まず第一に、法案の提案理由にもありましたとおり、学校法人理事評議員が長期にわたって深刻な紛争を続けておりますことは、それがいかなる理由があるにせよ、いやしくも教育の仕事に携わる者が、学校機能を麻痺させ、停滞させる結果を招くことはゆゆしい問題でありますから、一日もすみやかにそのような状態から離脱させ、正常な管理運営をはかるためにはやむを得ない措置であると存じます。  次に、この法案が可決成立を見ましても、法の有効期間を二カ年と限定して、当面する問題の処理を目標とすることにとどまり、私学全般に対する不当な干渉や圧力が所轄庁から加えられることのないように配慮されなくちゃならないことは当然でありますが、この点くれぐれも注意しなくてはならないと思います。私は当面の事態が早急に解決されることと、将来にわたってこのような法律が必要でなくなることを心から念願して賛成の討論といたします。
  78. 大矢正

    委員長大矢正君) 他に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認めます。よって討論は終局いたしました。  それではこれより採決に入ります。学校法人紛争調停等に関する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  80. 大矢正

    委員長大矢正君) 全会一致であります。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則によります報告書の作成等諸般の手続は、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 大矢正

    委員長大矢正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  82. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をつけて下さい。   —————————————
  83. 大矢正

    委員長大矢正君) 次に、義務教育学校教科用図書無償に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  御発言のおありの方は順次御発言を願います。
  84. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣に伺いますけれども文部大臣は先般の本会議の席上で、憲法二十六条の義務教育無償の精神というのは、授業料だけではなくて、義務教育全般にわたってだと、こういうような意味の所信を述べられましたんですが、そのとおりでございましょうか。
  85. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 「全般にわたって」という気持ではございませんが、憲法二十六条がいいますことは、義務教育という以上、代償なしに義務教育が行なわれるような条件を整備することを意図しておると思います。そこで、代償なしにという事柄でございますが、私のただいまのところ理解しておりますことは、無償にすべき、取扱うべき対象は普遍的であって、公平無私な性質を帯びたものでないならば憲法二十六条のいう趣旨には合致しないであろう、こういうふうに私としては理解しております。その意味で申し上げれば、義務教育全般にわたるということを申し上げてもよろしいかと思うのであります。したがって、地域により、あるいは個人的な好みによって当然差異が出てくるであろうという性質のものは少なくとも適当ではないであろう。私の考えによりますれば、教育基本法が取り上げておりますように、授業料無償とするということが一番典型的なものであろう、その次に位するものは教科書であろう、むろん教科書は数種類ございますから、甲の種類を選び乙の種類を選ぶ、相互間には甲乙がございますが、しかし、それは値段とか、外見上の形ではなくして、それを使わなければならないとされておる教科書の建前からいきまして、しかも国民に責任を負う立場で選定する、あるいは指導要領にのっとっておるという共通性が普遍的であり、甲乙なしという本質を表わすものと理解いたしまして、教科書が、授業料を取らないんだというそのすぐ次に位する性質を持つであろう。その他何があるかということまでいきますと、考えが具体的に整理されておりませんので、はばかりがありますから申し上げかねますけれども、抽象的に申し上げれば以上のように私は理解いたしております。  〔委員長退席、理事北畠教真君着席〕
  86. 千葉千代世

    千葉千代世君 まあ授業料の次に位するということをおっしゃったんですが、私はこれはやはり授業料と並んで無償としていくべき第一番のものではないだろうか、このように考えておりますが、たしか昭和二十七年だったと思いますが、小学一年に入る子供に無償にしたときがございました。まず当面、小学校一年生を無償にしておいて、順々に二年生、三年と続いて義務教育全部を無償にする、こういうお考えのもとに昭和二十七年かに無償になったことがありますが、その後、それがゼロになってしまったわけです。それについて話し合ったときに、やはりこれは義務教育の中で一番大事なことなんだから、こういうことが話の中に再三あったように記憶しておりますけれども、当時の事情は、文部大臣は当時大臣ではございませんでしたけれども、そのことと、今度三十八年度、とりあえず一年生から実施していこうという考えとどのように違っておりましょうか。
  87. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。その前に、「次に位する」と申し上げたのは、時間的な順序で次に位すると申し上げたのであって、質の問題ではないつもりでございます。  昭和二十七年でございましたか、小学校の一年生に対する一定の教科書を無償にしましたとき、むろん当時の政府としましては、憲法第二十六条の趣旨にのっとって、この理想を実現する考え方のもとにスタートしたことは間違いございません。当時の記録等を見、あるいは聞かしてもらいましても、それには間違いないようでございます。ただ、今度の御審議願っておる法案との違いは、この前の制度では、法律そのものに、小学校一年だけ、そして一定の、算数二科目だけということで、法律そのものが具体的に限定いたしておりました。したがって、その他の科目の教科書、あるいは二年、三年、四年あるいは中学という問題は、あげてその後の政治的努力いかんに依存する立場であったわけであります。そのために、法律そのものはまさしく二十六条の趣旨にのっとってスタートはしましたものの、中身がそうでなかったために、その後の情勢の変化、経済状況の変化等のために惜しくもアウトになった、こういう関係だろうと思います。そこで、この前のそういういわば失敗にかんがみまして、法律そのものに小中学校全部の教科書を無償とするのだということを明記いたしまして、その建前を確立して、その中の第一着手として、差しあたり三十八年に入学する小学校の一年生に与えるところの教科書を無償とすることから始めます、あとは予算措置だけが残りますというやり方でスタートするならば、これは万間違いないやり方であろう、そういう考え方というか、法律の根本の立て方自体の相違があろうと思っております。
  88. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は昭和二十七年の当時、一年生から始まって、だんだん六年生あるいは中学まで義務学校無償にする、こんな方法だと思いましたから非常に喜んでおりましたけれども、それが廃止になった。ところが今回、昨年の予算の編成の前に、文部大臣が記者会見での新聞発表あるいは地方に行っての談話の中に、百五十億の予算をとって、どうしても教科書を無償にする、今度の国会の予算の編成の柱をそこにまず置いていく、こういう発表をなさったので、私は非常に喜んで、そうして婦人会とか、いろいろな会合に出るたびに、教科書無償については政府も今度本腰を入れたし、特に荒木大臣については、私ども意見の相違がたくさんあるけれども、この教科書無償について非常に熱心に努力しているから、きっとあの強引さで通していくんじゃないだろうかといって、そういう話をしていたわけです。ところが、日がたつにつれて、押され押されて、三十八年度にはとにかく一年生だけだ、こういうことになって非常にがっかりしてしまった。そこで、何とか挽回して、予算に組んでいかなければならないじゃないですか、予算の折衝過程で、私は文部省の出した予算の編成書を見たわけですけれども、これにありませんけれども、どういうわけでしょうかといってみんなに聞いたらば、これは文部省の一般予算の中ではなくて、別にとるんだから、これは十分とれるんではないかというような非常に安易な考え方があった。ところが、それも全然だめになってしまって、出てきたものは何だかといいますと、この問、大臣が御提案になりました義務教育学校教科用図書無償に関する法律案、こうございます。無償に関する法律なんですから、たとえば、三十八年度は一年生だけだけれども、その次には全部にやるとか、あるいは三十九年までには全般にわたってやるとか、そういうような計画のあるものであって、実質的に法律の題名に示すような内容であるかと思ってずっと見ていきますと、これは本会議の社会党の質問にも明らかにされたわけですけれども、これは調査会を作っていくための法案だと、こういうふうに私ども了承したわけなんです。そのとおりでございましょうか。
  89. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 三十七年度の予算案に七億円ちょっとの予算措置が付してあります。それを執行しますために法律が必要であるというためのものでございまして、この法案の焦点は第一条第一項、二項にございます。分量が予算として少なく計上されましたことは私としては遺憾でございますけれども、これは量の問題であって本質的な問題ではないと考えております。本質的な問題は、先刻お答え申し上げましたように、小中学校全部の教科書を無償とするという建前で、具体的に進行し始めるのだという方針はこの法律案第一条によって確立されておる。あとはそのやり方について立法事項が当然予想されますので、あらためて法律案を御審議願わねば実行できない点がありますけれども、それは実施する方法の問題であって、無償にするかいなかという問題は、第一条をお認め願うことによって一〇〇パーセント解決済みである。そういう点で御理解をいただきたいし、国民も一応納得してもらっておるであろう。予算としての分量が少のうございましたのは、自分の微力をかこつだけでございます。せめて基本方針の具体的な確立を見ましたことを喜んでおるところであります。
  90. 千葉千代世

    千葉千代世君 今、大臣は本質的な問題ではなくて、量の問題とおっしゃったのですけれども、やはりこの量と質というものは並行して進んで行かなければ、かたわになって、ちんばになってしまうと、こういうふうに思うわけです。ですから、一時の言いのがれとしては、それはわかりますけれども、今、大臣のおっしゃった第一条は普通は「目的」でございますね。今、学校紛争処理法案を見ましても、目的これこれと、かくうたってあるわけです。ところが教科書法案のほうでは、「趣旨」としてございますね、そういう趣旨だけだということでございますね。だから趣旨が生かされていくためには、やはりこの法律内容の中に量的なものもきちっとうたっていかなければならない。いわゆるこの趣旨は質になっているわけでしょう。こういうことをしたいという考えを持っているというだけなんですね。考えを持っていることは、今始まったことではなくて、憲法のできたときから義務教育無償だと、さっき御答弁にあったように、昭和二十七年のときもそうであったろうし、今度もまたそうだと。それで、しかも授業料と教科書は時間的に次だと言ったけれども、実質的には同じだと、ここまで言明なさっているわけですから、そうすると、この法律の中にきちっと、無償にするにはこれこれという計画だということがなければ、調査会を作り、それで無償にするかしないかは調査会で審議する、別に法律を作ると、こういうふうに段階を追っていきますと、逃げ道があるように考えるわけなんです。「趣旨」と「目的」とどのように違っていると大臣はおっしゃったのですか。大臣答弁では、同じように伺ったわけですけけども
  91. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 目的は憲法にも明記されておりまして、疑う余地はないと思います。あと残るところは具体的な段取り、どういう順序で、どんなふうなやり方で、また関連したいろいろの立法措置を必要とすることはどんなふうな内容でやるかという立法方法だけが残されておるだけであります。したがって、第一条第一項は憲法にすでに規定しているから要らぬじゃないかとおっしゃれば、そう言えないこともない。ただし、憲法義務教育無償とすると宣言をいたしておりますが、教育基本法は、具体的に授業料は取らないのだと法律で書くことによって憲法の趣旨が具体化してきた。それと同じ趣旨におきまして、本法案の第一条で、憲法にいうところの義務教育無償のその一つとして、義務教育学校の教科書を無償といたしますということを御審議願った法律を通じて全国民に政府はお約束をしたいということであります。お約束をして、しかし、しっぱなし、ほうったらかしておくということならば、第一条一項だけでいいわけでございますけれども、第二項によってその具体的なやり方を、政令ですべてやれるものなら政令でいけるわけですけれども、いろいろ法律に規定しなければ処理できない具体的な事項があるようだから、それをあらためて法律案として御審議願って、そうして具体的に進行いたします。そこで、それだけでもまだいささか抽象的の非難は免れ得ないかもしれませんので、三十八年度に入学する第一学年の生徒から始めます。そのための予算は七億円を計上いたしておりますということでもって、全国民の御信頼を願っておるという構成になっておるわけでございまして、繰り返し申し上げれば、目的、趣旨そのものは憲法で一応明らかだと言えないことはない、少なくとも疑念はないわけでございます。あと残された具体的な着手の段階におきまして、目的と書く方法もございましょうが、趣旨と書くことによって、第一項、第二項でもって合わせて一本で具体的に進行するのだという意味合いを表わしたつもりでございます。
  92. 千葉千代世

    千葉千代世君 まあ、この法案が出れば全国民が信頼しておるというお話だったのですけれども、やはり無償とするとなれば、その具体的な案がきちっとうたわれて、そうして年次計画なりその他の総予算の問題が出されて、そこで初めて安心するわけなんですけれども、ただ説明だけであってはまずいのじゃないか。特に調査会を作るというからには、調査会の任務の中にどういうことが大体規定づけられておるのでしょうか、それを聞かしていただきたいと思います。
  93. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) この調査会にどういうことを諮問するかというお尋ねだと思います。今予定しております事柄は、年次計画をどんなふうにしてやっていくか、さらに、無償とすると申しましても、外国の例を聞いてみますると、貸与というやり方で無償としておる国も相当多いと承知いたします。給与——やりっぱなし、与えっぱなしというやり方と、貸与のやり方の二つが考えられる。そのことも、どっちがいいであろう。このことは教科書それ自体の体裁なり質なりにも関係をいたしてきましょうし、教科書の定価にも関係するかとも思いますが、そういうふうなこともひとつ検討してもらいたい。さらに現在の教科書会社のあり方は今のままでよろしいであろうか、どうであろうか。今のままでよろしいとなればそれでいきますし、もっと前向きに、義務教育教科書発行を担当する団体としてはかくありたいということがあるならば、そういうこともひとつ検討してもらって、検討の結論に待って、必要ならば立法措置も講じたい。さらに、無償とするとしまして、全部国費でやるというやり方もございますし、義務教育学校教職員給与負担のやり方のように、無償ではあるけれども、国費半分、あるいは地方費半分という分担の仕方も考えられるわけであります。そのこともいずれがいいか、このことは文部省だけの立場からいいますと、全部国費がすっきりしてよろしいとむろん思っておりますけれども一つの検討さるべき課題ではありますから、そうしてあとで混乱をなくする意味において調査会で十分に検討してもらって、その結論に従ってやろうという、課題としての費用の分担の問題というがごときものを諮問して検討していただこうと思っております。
  94. 千葉千代世

    千葉千代世君 今伺いました中に、教科書の無償の年次計画の問題とか、あるいは教科書会社の問題とか、それから費用の支弁配分機構等々、相談されるとあったわけですが、私は教科書会社についても、配給機構についても、あるいは採択の問題についても、検定の問題についても、いろいろ質問したいことがございますが、きょうはあとに譲りまして、それだけのたくさんの任務を持った調査会というものが一体いつごろまでに答申できると思うのでしょうか、また、出してもらう予定でおるのでしょうか。
  95. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) いつまでと諮問する側で具体的に予定するわけにはむろん参りませんが、いずれにしましても、十一月末日までには三十七年度の予算の執行ないしは三十八年度の予算要求に関連のある事柄は結論を出していただきたいという内容の条文を整備しておるわけであります。実際問題としましては、例年、概算要求は制度上八月末日までに大蔵省に提出するというならわしで来ておりますが、できれば、それに問に合うように出してもらえば一番望ましいと思っております。しかしながら、問題はむずかしい問題もございましょうし、時間がかかってやむを得なければ十一月末日まではやむを得ない、法律でそう定めておいていただけば、三十八年度の予算要求にいたしましても、大蔵省はその法律の定めた最終期限はのまざるを得ない道理でございますから、最悪の場合として考えて、そういう場合には十一月までは待ってもらえるという余裕はございますものの、できれば八月一ぱいまでには結論を出していただきたいものだという希望はいたしております。
  96. 千葉千代世

    千葉千代世君 そういたしますと、この法律が通った場合には、四月一日なら四月一日から発足していく、調査会を作って調査会の中でしなければならぬ仕事が非常にたくさんございますね。それが八月までにその案を出すとなると、これは非常に忙しいわけですけれども、十二分にその任にたえられ得るか、調査会として。
  97. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは事柄がまあ法律論その他むずかしいことがございましょうとも、現に具体的に予算措置がとられて、待ったなしの、来年の四年早々に実施できることが具体目標でございますから、委嘱しました委員方々もむろんその趣旨は御理解の上で御協力いただくことと思います。この種の調査会の委員になられた方は御苦労だとはむろん思いますけれども、極力ピッチを上げて御協力を願って、万遺憾のない御答申を期待しておるわけであります。
  98. 千葉千代世

    千葉千代世君 この調査会のメンバーは、たしか文部大臣が委嘱、任命するのでございましたね。この学識経験者とか、一般とか、いろいろいつも各省の審議会とか調査会にはいろんなメンバーが入るわけですけれども、これにはやはり教科書会社とか、そういうふうな業者の代表も入るわけですか。
  99. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ただいまのところ、業者とか、配給関係に携わる人を当然に委員に委嘱するという考えはございません。ただし、それは教科書会社ないしは配給機構の関係者意見も聞かないというのではむろんない。いわば参考人として十分に意見を聞いて、調査会の委員方々が客観的な立場で関係者意見を聞いて判断をしていただくということが適切である。言いかえれば、教科書会社それ自体、あるいは配給機構それ自体も検討する対象であります限り、その利害関係者が当然委員になられるのはいかがであろうという考えが基本に立ちますけれども、しかし、繰り返し申し上げれば、そういう関係の方の意見を無視して、黙っていなさいというやり方でやろうとは毛頭思っておりません。十分、委員方々に聞いていただいて、そうして客観的に判断していただいて、最もよき方法、前向きの方法、既得権を侵害しない、不当な不利益を与えないということは当然の常識でございますから、そういう考え方に立って、かわって参考人という立場で述べられる意見を十分聞いていただきたいということは当然の要請として考えております。
  100. 千葉千代世

    千葉千代世君 たしか前々国会と思いましたけれども、教科書の検定、採択をめぐって教科書会社の汚職問題もあり、それから一つの教科書会社が全体の六割も占める量を作っておるとか、大体百に近い教科書会社があったようでございますね。そういうふうな会社が今度無償制度に切りかえていく場合には、やはり教科書会社が統合とか、いろんなことがあると思うのです。そういうところまでこの調査会の任務が及ぶわけですか、つまり方向を示す。
  101. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 調査会それ自体が具体的な権限を持たないことは申し上げるまでもないのですが、具体的権限というのは行政措置をします立場じゃむろんないので、こうもしたらよりよくなるであろうという意見を期待する意味が調査会の存在理由だと思います。それで、まあそれぞれのなられた調査会の委員のお考えによることではございますが、私どもの立場から今申し上げ得ることは、できることならば現在の教科書会社、あるいは現在の配給機構等は、なるべく経験者ですから、そういう貴重な経験を生かしてもらうということが必要じゃなかろうか、特別に注文しませんでも、委員方々はそういう気持で審査していただけようかと期待をいたしておるのであります。
  102. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、まあ方向を示すだけでも調査会の任務として非常に重大だろうと思うのです。ですから、今までやっております配給関係の方なり、あるいは教科書会社なり、実際にお仕事していらっしゃる方の意見が十二分に反映される方途を講じていくような調査会のあり方については、今、大臣からおっしゃったのですけれども、その点はやはり不公平のないように十分な御配慮をいただきたいと思っております。それから調査会の出しました答申でございますけれども、これが気に入らなければという言葉は何でしょうけれども政府の意図するところと合致しなかった場合でも、これは採用するのか。これは選挙制度調査会というのがございましたね。ところが、答申があまりいれられていないからというので開店休業のようになっている。政府のほうとしては意見は十分くんだはずだという、こういう答弁をして水かけ論みたいになってしまって、非常にもうおかしい存在になっているわけであります。で、せっかく調査会を作って鋭意検討して、それが気に入らなかった場合には、選挙制度調査会みたいなような二の舞を踏むようなことがあってはならないと思うのですが、いかがでしょうか、その点について御所見を伺っておきます。
  103. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 結論から先に申し上げまして、法律に基づく調査会を作ってもらった以上は、その調査会の答申の基本線が尊重されべきことは、これは当然だと心得ます。ただ具体問題として、もし調査会の答申どおりになし得ないことがあったと仮定いたします。答申と違った措置をかりにすることがあるとしますならば、そのことそれ自体が調査会の答申よりももっと客観的に国民的立場で納得のいく場合以外にはあり得ない、そういう尊重の仕方をすべきだと、こう思います。のみならず、まあ選挙制度調査会の選挙法の改正というのは、なかなか概念論だけでは割り切れないものを含んでおりますから、あのほうは必ずしも答申どおりにいかないということがありましても、やむを得ぬ点もあろうかとはむろん思いますけれども、この種の教科書の問題に関する調査会のごときは、そういういわば政治的な利害打算関係というものはないはずでございますから、あくまでもいい教科書がなるべく安くて児童、生徒に安定して提供される、そしてまた汚職だ何だということも起こらないような配慮もされるというふうなこと以外には、特別の私は私ども考えと調査会の方々考えとが、そう隔たりがありそうにも予想もできませんぐらいに考えております。
  104. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣は大へん簡単にお答えになったのですけれども、これはまあ選挙制度調査会が政治的な問題と、なるほど問題はありましょうけれども、こちらのほうはもっとやっぱり利害関係がはっきりしてくると思う。たとえば教科書会社に無償にするために国が融資をすると、そういう場合には一定の条件を備えなければ融資をしないとか、それから現にうわさされておるところによりますというと、このために教科書会社が倒産するというようなこともあり得べきことじゃないか、ですから、教科書会社の統合とか、一つの会社がどういうふうに受け持っていくとか、それに対する政府の融資とか、まあそういう点がからんできますと非常に真剣じゃないか。だから、これが十分納得されるように、そうして処理されていかなければならないと、こういうふうに思っておりますけれども、いかがですか。
  105. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) その意味では別に簡単に考えてはおりません。御指摘のようなことが当然関係事項として念頭に浮かぶわけでございますが、しかし、教科書が無償になるから特別にそのことの理由のために、従来あります教科書会社が不利益をこうむるとか、あるいは倒産するとか、また、教科書無償ということは企業整備法じゃございませんから、教科書無償になるがゆえに特にそのことを理由として統合を強制するとかいうことは起こるはずがない、また起こらしめてはならない、必要性も感じられない事柄だと私は思うのであります。もしそんなことがあるとしまするならば、この教科書無償の有無にかかわらずあり得る。これは千葉さんのお立場からいうのと私どもと少し違うわけですけれども、競争を建前とし、今の資本主義経済と通称される経済のあり方からいきまして、ともすれば優勝劣敗というふうな渋い状態があり得る。度を過ごせば、これは適切じゃないものですから、適切な措置を講ずることは、近代国家の資本主義を奉ずる国といえども、当然そういう国民的立場の利益のために考慮することも一般の例でございますが、まあそういう一般的なことはあり得ましょうが、このことのために特に御指摘のような懸念が新たに生ずるということは、原則としてないものと私は理解しております。
  106. 千葉千代世

    千葉千代世君 徐々にですね、たとえば教科書が大体無償になっていく、そうすると、それでは今まで実績のあった会社は何と何か、そうすると、自分の会社では幅広くいろいろな教科書を全部やっておったけれども、やっぱりこれでは検定制度とからんで自分のほうとしてはとりにくくなるから、縮小していって、特徴のあるもの、たとえば図画であるとか、理科であるとか、特徴のあるものだけをしていく、最後まで残していこう、すでに整備しかかっているところがあるわけなんです。ですから、これができたために倒産ではなくて、こういうような案が示されると、それによって業者自体に、自分たちの経営を切り抜けていくための方法として、そういうふうなことがなされているということを聞いたわけなんです。それを心配して今申し上げたわけなんですけれども、調査会の任務として、教科書会社が実質的にどうするこうするというような、何ですか、命令は出せる権限のものではないのですけれども、やっぱりこの調査会の答申のあり方いかんというものは非常に関係いたしますので、その点はくれぐれもやはり公平を欠いてはならないと思う。したがって、調査委員を任命いたします場合でも、これは従来、ともすれば政府関係の今まで交渉のあった人とか、この人ならば大体こちらの考えにいきそうではないかということが考慮されて委員に任命されておったのを相当私は拝見しておったわけです。たとえば中央教育審議会にしましても、メンバーを見てみますというと、現場の先生の代表を入れてくれというと、なるほど現場の先生ではあるけれども、やはり何といいますか、大体お覚えのめでたい者が選ばれていくという、こういう順序をとったわけです。ですから、このような大事な調査会の任務でございますから、あらゆる意見が網羅されてよい案ができますような委員の任命を特に文部大臣がなさるわけですから、その点についてあらためて大臣見解を伺っておきたいと思います。
  107. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 文部大臣という立場で委員を委嘱するわけでございまして、その人選は、文部大臣が国民に対して責任を負わねばならぬと思います。したがって、その人選については客観性のある、どなたがごらんになってももっともな方であるという方が選ばれるべきであるということは私は当然であると心得ております。
  108. 千葉千代世

    千葉千代世君 終わりに。先ほど大臣は、答申が少しおくれても十一月ごろまでに出れば大蔵省との折衝に間に合うのじゃないかと、こうおっしゃったのですね。昨年のまあ各省予算の概算要求は、たしか八月の末に出ておったわけですね。そうすると、そのときにまあかりに文部省が省議をまとめて大蔵省に出す原案の中に盛る予算というのはどうでございますか。八月末に省議をまとめて大蔵省に出しますね、予算の概算要求を。そのときにこの調査会の案がきまっていませんね。いなかった場合には、それは全部抜いて出すのでしょうか、あるいは調査会がもう文部省の言うとおり出してくれるだろうと思って要求を出すのか、ことしのように一般の予算に盛らないで別途予算で教科書予算というものを組むのか、その点のお考えを伺いたい。
  109. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今御指摘のように、八月末日までに概算要求を出すならわしでございますが、それに問に合う時期に答申が出なかったときにどうするのだというお尋ねのようでございますが、間に合うように答申が出ませんければ、概算要求は原則としていたしません。いたしませんけれども、先刻もお答え申し上げたとおり、この法律によって、概算要求の終期は、いわば実質上は十一月末までは待つぞ、待たねばならないぞというがごとき意味合いをきめていただくわけですから、この教科書に関する問題だけは十一月三十日に問に合うようにさして答申を出していただけば、あとから追加概算要求的に要求するということもあり得るわけでございます。
  110. 千葉千代世

    千葉千代世君 この法案に対しましては、まだ質問したい事項はございますが、きょうはこれで私の質問終わっておきます。
  111. 米田勲

    米田勲君 関連質問をさしていただきます。先ほども委員長理事打合会で申し上げましたように、この法案の主たる担当者は豊瀬委員になっておるので、その出席がないので、関連質問の立場でしかない私がきょうは二、三の点についてお伺いするのですが、豊瀬君が再びこの委員会に入って本案について質問する場合に重複することがあり得るかもしれませんが、それはあらかじめ御了解を得ておきたい。  この法案は参議院の本会議で趣旨説明があり、わが党を代表して質問が行なわれましたが、教科書を無償にしようという旗じるしに対してはわが党といえども反対ではない。しかしあの法案、今出されている法案に社会党が双手を上げて賛成できない理由がある。それはこの法案の陰に幾つかの重要な問題があって、その問題の処理の仕方いかんによっては重大なことになるということを懸念しておるわけです。そういう懸念がどうして出てきたかというと、かって、先ほど千葉さんが質問している中にもありましたが、同じ保守党から、一応、一年生の国語、算数の教科書を無償にするということが一年だけ行なわれたことがある。しかし、それはそれなりで終わってしまった。またも同じ保守党からこの法案が出てきておる。ところが、法案がわれわれの前に提示される経過を外側から見ておりますと、与党の中にはなかなか全体が簡単に賛成をして、文部大臣なり、あるいは文部省なりの教科書を一せいに無償にしていこうという大きな考え方にはいろいろの理由があって賛成をしていない。相当これは問題になって、最後には、この六月には参議院選もあるし、その選挙対策もあるので、せっかく上げた看板だから何とか格好をつけなくちゃならぬという狗肉の策である。今日、社会党から、教科書無償法案だといいながら、中身は調査会を作る法案じゃないかと、旗だけは上げておるが中身は調査会設置法案と、こういうふうに言われるのも、私はこの法案が立案される過程政府与党内の動きを見ておると、われわれの考えておることが当たっていないとは言えない。そういう観点から、いろいろこの法案をめぐってわれわれは重大視している問題があります。きょうは時間がありませんから二、三の点についてだけ端的にお伺いしますが、この法案が成立をしたあと、教科書無償という旗じるしに基づいて、文部大臣から諮問を受けた調査会が調査活動に入り、答申をするのであるが、諮問をする側の文部省、また教科書行政について責任を持っておる文部省が、この法案実施していく過程において、当面、ここ数年なりまた十年以内の近い期間に、現在の教科書の検定制度を改正と私は言うよりも、改悪する意思はないのか、現在の教科書の検定制度を改悪する意思はないのか、この点は非常にわれわれの懸念をしておるところであります。このことについて、端的に文部大臣見解をこの法案審議過程で聞いておきたいというのが前々からの私の希望であったので、検定制度を改悪するような考え方は全くないということを明らかに答弁してもらいたい。
  112. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ありません。
  113. 米田勲

    米田勲君 次に、この法案審議をめぐって、やはりもう一つの懸念がある。それは、現在、教科書の採択制度法律上きまっておるわけです。この教科書の採択制度を改悪する意思はないか。
  114. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ありません。
  115. 米田勲

    米田勲君 もう一点は、これは不確実な情報であるが、相当巷間流れている話でありますが、それは文部省は調査会の答申を経て、教科書の配給公団を作る、この配給公団の理事長に某々が就任をする。それは官僚だという噂が流れておる、高級官僚だと噂をされている。こういうふうな噂は私は信じたくありません。そういうばかなことをやるなら徹底的に反対しなきゃならぬので、そのことが起こってからでも、えて事は済むと思いますが、この法案審議過程で、文部大臣から明確に、そういう巷間流布されていることはないのだということを約束してもらいたいという意味で質問をするのです。現在の教科書の供給制度というか、供給の機構があります。これは部分的に是正をしていくということはあっても、それは拒否するものではないが、根本的にこの供給制度なり機構を変えて、巷間伝えられるような配給公団をもって一手に教科書配給をやっていこうとするような企ては文部省内には絶対ない。巷間伝えられているそのことは全く根拠のないことであり、そういうことをする意思は毛頭ないということを、文部大臣の責任において実はこの機会に答弁をいただきたい。
  116. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今のようなお話は私は聞いたこともありませんし、考えたこともありません。今後その必要があろうとも思いません。
  117. 米田勲

    米田勲君 それでは私は端的に三つの質問をしたのですが、検定制度あるいは教科書の採択制度、これは現在の法律規定を改悪するようなことがない、全く考えられていないし、そういうことはないと文部大臣が明言をした、このことはこの法案審議にあたって立法府のわれわれにはっきり約束をしたと判断をいたします。したがって、そのことが後ほどになってから、法案が動き出してから、そういう企てのあることは全力を尽くして阻止してもらいたい、大臣の責任において。それからもう一つの教科書の供給制度ですか、機構ですか、あなたのところにもたくさん業者がこられると思いますが、与党のほうにも行き、われわれのほうにもぞろぞろくるわけです。非常に教科書の配給の仕事をしている人たちにとっては、何になるのか心配で、生活に直接に響くからというので目の色変えてやってきているのであろうが、先ほどの答弁で、これは半官僚支配的な配給公団のような構想は全く考えていない、そういうことはやらぬということで、はっきりいたしましたが、教科書の供給制度なり供給機構のうち、はなはだしくまずい点がある場合には、それを是正することは、行政指導の上で必要であろうとも、現在の、これは法律上既得権になっているかどうかは別にして、相当たくさんの人々がこのことに関係しながら生活をしている実態考えて、むやみな配給機構の早急な改革といいますか、改正というか、そういうことはやらないのだ。現在までの教科書の供給制度、供給機構を維持しながらやっていくのだということを、あらためてここでそういう人たちのためにもはっきりした答弁をもう一度いただきたい。
  118. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど千葉さんの御質問にお答えしたとおりでありまして、教科書会社であれ、配給機構であれ、特に習熟しているいわばベテランぞろいであります。その習熟した体験を活用することが根本の考え方でなければならぬ。ただし、調査会等でいろいろ検討されました結果、皆さんも今言及されましたように、部分的にここをこうすればもっとよくなる。しかし既得権というか、経済的利益を侵害することはしない建前で改善する案が出てきた場合、それはそういうやつを採用するということは当然あり得ると思いますが、一般的に申しまして、特別にめしの食い上げにしてやろうとか、あるいは今までの既得権を全然無視して変なことにしてやろうとか、そういうことは全然考えておりません。
  119. 米田勲

    米田勲君 最後に一つだけで終わります。文部大臣にお尋ねしますが、実は、われわれのほうにはもう回ってこないで、つぶれでしまった社会党の出した法案ですね。衆議院審議段階で否決されましたが、法案審議には文部大臣委員会に出て聞いておられたと思いますが、大臣の立場から、わが党の出した法律案は妥当でないという点があるのかどうか。これは答えたくなければ答えなくてもいいです。大臣は、社会党の出したあの法案のどこが妥当でないと考えるのか。そういう問題があったら、答えたくなければ答えなくてもいいです。それを質問します。
  120. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ことさららしくは答えたくありません。ただ衆議院段階で、政府側の意見を述べろという御要請によって、政府側の考え方は委員会で申し上げました。それを繰り返し申し上げることは、時間の不経済にもなりそうでございますから御遠慮申し上げます。
  121. 米田勲

    米田勲君 私の質問は、きょうはこの程度で終わります。
  122. 北畠教真

    理事(北畠教真君) 速記を止めて。   〔速記中止〕
  123. 北畠教真

    理事(北畠教真君) 速記つけて。  本案に対する自後の審査は後日に譲ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会    ————・————