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1962-05-02 第40回国会 参議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月二日(水曜日)    午前十時四十三分開会     —————————————   委員異動 本日委員石谷憲男辞任につき、その 補欠として柴田栄君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            櫻井 志郎君            仲原 善一君            安田 敏雄君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            柴田  栄君            田中 啓一君            谷口 慶吉君            温水 三郎君            藤野 繁雄君            大森 創造君            清澤 俊英君            天田 勝正君   政府委員    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    農林政務次官  中野 文門君    農林省農林経済    局長      坂村 吉正君    農林省農地局長 庄野五一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農林経済    局農業協同組合    部長      酒折 武弘君     —————————————   本日の会議に付した案件農地法の一部を改正する法律案(第  三十九回国会内閣提出、衆議院送  付)  (継続案件) ○農業協同組合法の一部を改正する法  律案(第三十九回国会内閣提出、衆  議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、石谷憲男君が辞任、その補欠として柴田栄君が選任せられました。     —————————————
  3. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) この際、委員異動に伴い理事が欠員となりましたので、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は、便宜委員長から指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。理事仲原善一君を指名いたします。     —————————————
  5. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 農地法の一部を改正する法律案(第三十九回国会閣法第六六号)、農業協同組合法の一部を改正する法律案(第三十九回国会閣法第六七号)(以上いずれも衆議院送付)の二案を一括議題とし、両案の質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 二十七日の委員会で、農業協同組合法の一部改正に関連いたしまして農事組合法人設立を認めるということになるわけでありますので、その問題にしぼって質問をいたしまして中断いたしておるわけでありますので、このことにつきまして、さらに引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。  で、農事組合事業範囲について質問の中途で小笠原委員質問に入ったわけでありますが、規定によりますると、農事組合の行なう事業は一応三つに区分をされておるわけでありますが、第三号に規定しておる「附帯する事業」ということについてある程度の質疑は行なわれましたけれども、その付帯事業の進行に伴って、農事組合のまあ親組合ともいうべき農業協同組合との間にいろいろの事業摩擦を生ずる危険があるのではないかということを非常に懸念をするわけであります。  そこで、「前二項の事業に附帯する事業」ということについて組合部長から一応の説明はございましたが、今申し上げまするような趣旨からいたしまして、御説明を願いました程度では、まだ非常に心配が残ると思うのであります。つきましては、この際、さらに明確に農事組合法人の行なう事業につきまして、再度御説明をいただきたいと思います。
  7. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 先般の委員会で、農事組合法人の行なう事業については、農協部長からお答えを申し上げたところでございますが、第七十二条の八で、一、二、三と三号書いてあるわけでございまするが、一は、「農業に係る共同利用施設設置又は農作業共同化に関する事業」、二は「農業経営」、三は「前二号の事業に附帯する事業」ということになっておるのでございます。「附帯する事業」というのはどういうことかということは、この間御答弁申し上げたとおりでございます。で、結局こういうようなことで、農事組合法人がいろいろ農業経営をやりあるいは共同利用施設をやるという場合に、既存の農業協同組合と非常に事業上問題があるのじゃないかという御心配は、これは前々からもいろいろそういう問題がございまして、十分まあ検討いたしましたわけでございます。  そこで、農事組合といいまするのは、先般来もお話し申し上げておりまするように、いわゆる農業協同組合組織の中に実際問題としては取り込んで、そうして末端におきまするところのほんとう人的結合の強いところの小さなグループとして、このグループほんとうにあるいはその直接経営をやるとか、あるいは農機具一緒に所有するとか、そういうようなことをまあやっていこうと、こういうようなことで考えたわけでございまするので、ですからこれらは本筋といたしましては、農業協同組合正会員となって、そうして正会員になれないような資格のものは准会員でもけっこうでございまするけれども、農業協同組合会員となって、そうして協同組合一環として活動していく、こういう工合に考えるべきものであろうと思うのでございます。で、建前といたしまして、農業協同組合のほうの法律の全体の体系任意加入です。加入脱退自由というこういう建前をとっておりまするので、そこで協同組合に対する加入関係等も、あるいは強制加入というようなこともひとつも考えてはおりませんけれども、建前としてはそういう法体系でありまするので、そういう点は考えておりませんが、全体としてはやはり協同組合一環としてやると、こういうようなことで、政府もそういう考え方指導いたしまするし、それから農業協同組合自体もそういう考え方でこれを育成をして、自分体系の中で育てていくと、こういう考え方で今後やらなければいかぬじゃないかと、こういうふうに考えておるのでございまして、この点は法律の問題といいまするよりも、むしろ現実問題であり、指導の問題であり、それから農業協同組合ほんとうの熱意があるかどうか、そういう一つの問題になるのじゃないかと思っております。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 今局長の御説明のことは、当然なことなんで、そういうような方針指導をし、育成をし、また農業協同組合も、同様の感覚に立って農事組合に接していくということは当然であって、好ましいとは思いまするけれども、法律的には、必ずしもそういうことにならない場合も存在しておるのだということなんです。そこで、その農事組合法人の行なう事業が非常に拡大されてくると、そういうことを通して、農業協同組合との間に事業上の摩擦を惹起する危険が非常に多くなるわけでありますので、そういう趣旨のものといたしましては、農事組合法人の行なう事業というものについて、法律解釈がまちまちになったり、あるいはその受ける人によって、拡大して解釈することも可能であったりというようなことを避くべきであると、こう思うのです。ついては、農事組合法人の行なう事業というものは、一体どういうものだということをはっきりさせておきたいということが、私のお尋ねをしておる趣旨なんです。第二号にあります農業経営ということは、一体それじゃどういう範囲をさすんだと、それに付帯する事業とは一体どういうことをいうんだということを具体的にしていただけますれば、私の今申し上げておるようなことが杞憂に終わるのか、あるいは杞憂でなくて、さらにこの際そういう点について明確を保持するような内容規定するなり、あるいはそういう方針というものを明確にしておく必要があると思う。でございますから、そういう趣旨は私はよくわかります。そのとおりでなければならぬと思うのです。思うが、法律行為としては、そうはならない場合も存在しておるというのですから、そこで、そういう場合を心配いたしますると、この法の規定しておる事業範囲というものを明確にしておくことによって問題の処理ができると、こう思いますので、第一号の共同利用施設設置だとか、農作業共同化ということは、そう議論はございませんけれども、農業経営というこの広範なる規定ですね、この範囲は一体どういうことにお考えになっておりますか。
  9. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 御質問農業経営というのは、文字どおり農業経営でございまして、農事組合法人経営の主体となって農業を、農業といいますのは要するに協同組合法にございまするように一つの定義がございますから、この農業をやるということがその農業経営でございます。ですから、例を申し上げますれば、土地を提供し合って、そして農業一緒に、経営を一本にいたしまして、まあ耕作をし、販売をし、それから資材を買うとか、こういうことが当然農業経営の中に入るわけでございます。それに付帯する事業と、こういうことで考えられる問題といたしましては、まあたとえばくだものを作りました場合には、それに対しまして簡単な加工をやって、それで売るというようなこともございましょうし、そういう作りました農産物の加工というようなものは、非常にいい例じゃないかと思うのでございます。そういうようなものもございまするし、たとえば農事組合法人で非常に大きな農機具を持って経営をやる、しかしその農機具があいておるときがございますから、その場合に、これは人にたとえば貸して使わせるというようなこともございましょうし、まあそういうようなものを例として考えられる場合には、これはいわゆる付帯する事業として考えていいんじゃないかというふうな関係がございます。で、問題は、組合員経営ほんとうに溶け込んでいない部分がある場合もございまするので、そういうようなことについての共同販売とか共同購買とか、そういう農業協同組合と同じような仕事がやれるかどうか、こういうような問題であろうと思いまするけれども、これは組合員以外のものについて、そういうたとえば共同販売共同購買、あるいは販売購買あっせんというようなことをやることは、これは非常に農事組合法人としては行き過ぎでございまして、そういうようなことはここでは考えておりませんけれども、実際問題として、五人なら五人の組合員農事組合法人を作りまして、それで米なら米の共同経営をやっている。しかし、その他に果樹とか畜産とかいうようなものは別の経営体で、別の、独立して組合員はやっているのだというような場合に、そういう場合に、そういう果樹のための資材購入のための世話をするかしないかというような問題が、非常に微妙な問題であろうかと思うのでございますが、そういうような問題も、実際問題といたしましては、そういう小さな集まりでございますので、そういうようなものが農業協同組合につながりまして、それでその組合員資材購入等世話をしてやるというようなことは、これは場合によったら、たとえば農業経営についての付帯する事業範囲で考えてもいいという場合もあるのではないかというふうに考えられるのでございまして、あまりにも窮屈にそこを、制限を厳格に考えますると、組合法人自体活動にも支障があるのではないかというような感じもしますので、そこら辺の点は、そういう場合も起こってくるだろうと思っております。いずれにいたしましても、そこら辺が非常に微妙な問題でございまするので、そういう点は十分ひとつ今後の運用上の問題といたしましては、協同組合事業と混淆しないように、それから農事組合法人を何とかうまくやっていけるように、緊密なるまとまりとしてやっていけるように、そういうような意味で、そういう考え方のもとに、この事業についてのやり方、あるいは範囲というものについては、十分御趣旨に沿うような形で、指導の基準なり通牒なり、そういうようなものをひとつ出しまして、そうして問題のないようにしていきたいというふうに考えております。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 おっしゃる趣旨は、私もよくわかりますが、今お話にあったように、非常に微妙であって、そういう点については、運用の妙を発揮しなければ、農事組合の発達を阻害する場合もある。だから農業協同組合との間を十分調整しながら善処をするというような趣旨の御発言だと思いまするけれども、引例されました農業経営に付帯する事業という中で、全部のものが協業されている場合には、問題は起きないと思いますが、部分協業というような場合にはおきましては、自立部分として残っている農業経営部分が相当にある。その農業経営にも、資材その他のものを必要とするという場合に、本来の農事組合法人農業経営入り用部分と、残されている自立経営部分に必要なものとが同一体である場合、あるいはその生産物が同一である場合もあろう思うのですが、そこでその付帯事業として、残されている部分を、これは農事組合法人からいえば、自然人としては一緒組合員たる資格を持っておりますけれども、これは事業内容からいえば、組合員外事業に属する事業であるわけですから、そういう部分まで一緒にやってやるということが、農事組合の発展のために好ましいという場合には、それを認めるんだということになりますると、そのことが拡大をされていって、結局農業協同組合との間に摩擦を起こす危険がある、こう思うんです。で、前段にお述べになりました、あくまでも農業協同組合正会員とならないものは認めないというならば別ですけれども、加入、脱退自由だしいたしますので、私の心配するようなことはそういうような事業範囲を拡大することによって生じてくると思うんですが、そういう場合は規制するという態度に出るべきではないか。農業協同組合はどうなってもいいというなら別ですよ。けれども、これは農基法の実施上、農協というものが一番中核になっていかなければならぬということは明確になっておる。その農業協同組合員事業の運行に支障を来たすようなおそれのあることを、農事組合法人設立によって誘発するということは厳に私は避くべきだと思うのです。そういう趣旨ではないような御説明ですから、くどくお尋ねするわけなんです。趣旨としてはわかっております。実際行為としては出てくる場合があるのか、こういうことなんですね。
  11. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃいますとおり、協同組合の全体の運動運動といいますか活動とあわせてこの農事組合法人活動というものは考えていきたいというふうに考えておるのでございます。ですからしたがいまして、いろいろそういう共同利用や、共同販売共同購入というような行為が起こりました場合においても、私たちの考え方からすれば、前提として協同組合とこれは異質のものではございませんで、協同組合運動の中で行なわれ、協同組合法体系の中で生まれた法人である、こういう考え方でおるものでございまするから、そういう問題は現実問題としては起こさないような指導もできますし、それからそういうようなことが万々起こりましても、これは問題としては非常に片づきやすい問題だというふうに考えておるのでございまするが、もし、かりにこの農事組合法人活動が、農協全体の活動に非常に大きな支障を来たすというようなことがございますれば、それはその際にはいろいろ付帯事業等についての制限なり規制なり、そういうものも考えなければいかぬと思っております。で、まあ、いずれにいたしましても、両々相待ちまして一緒になって一つ協同組合活動として伸びていきますように、こういう考え方指導いたしたいと思っております。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 そんなことできるのですか。進行していく過程で、付帯事業として認められる事業が行なわれておる段階で、それが協同組合との間に摩擦を生ずるという事態が発生した場合には、付帯事業を行なうことについて禁止をするというような措置ができますか、そんなことが。ただ、指導して、希望することは自由ですよ。けれども、そのために法律上、法律行為としてそういうような農事組合については、事業の一部を禁止するとか制限するとかいうような法律上の行動が起こせますか。
  13. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) ここにいいます付帯する事業というのは、法律では、ほかの法律でも同じようでございます。同じでございまするけれども、付帯する事業というふうに書いてあって、付帯する事業というものの解釈は、これはまあ実情によって、ある程度解釈の幅があると思うのであります。ですから、私は、かりに先ほど申し上げましたように、農業協同組合の全体の組織の中でこれは活動をすべきものだ、こういう根本観念のもとにいろいろ指導して参りまして、そういうことをやって参りましても、農業協同組合摩擦が起こって非常に問題だというようなことが起こるような事業は、それは場合によったら付帯事業範囲を逸脱しているようなことをやっているんじゃないかというふうにも考えられるのでございまして、かりにそういうような事態がありますれば、これは事実をよく調査をいたしますれば、付帯事業としてはちょっと行き過ぎじゃないかというようなものがあろうかと思います。そうでなくて、一般の場合には農事組合法人というやつは、大体性格としては協同組合会員として活動するんだ、こういう末端まとまりでございまするので、これらのものがかりに自分経営に属していないところのほかの部分共同購買なり、共同販売なりというものが行はわれまして、これが場合には協同組合としてはかえってプラスになる。まとまりやすい方法でできるわけでございますから、末端が強化されて参るのでございますから、プラスになるという面が非常に多いのではないかと思う。そういう、いろいろ心配をすれば、新しい制度でございますから、心配はいろいろあろう。あろうとは思いますが、根本観念はそういう観念指導して参りますれば、特別に心配をしなくてもいいのではないか。事態によってはそれはいろいろと問題もございますし、あるいはどうしてもそういう重大問題になるようなことがほんとうに起こるのであれば、そのときになって考えれば、いい方法もあるのではないかと思っております。
  14. 森八三一

    ○森八三一君 一体、農業経営をやっている個々人は、農業協同組合組合員たる資格をおおむね持っておると思うのですよ。加入、脱退自由ですから、全部入っているということは言えませんけれども、実態として入っている。個人で組合員たる資格を持っている人が、全部かあるいは部分か知りませんけれども、この農事組合法人設立によって、もっと生産性を上げていこうということをし得るわけですが、その農事組合法人の直接の農業経営入り用事業というものはやっていっていいのですよ。けれどもそれに付帯する事業は、個々組合員たる資格において農協としてつながればいいので、クッションを一つ入れて、農事組合がやるということを認めること自体に問題がある。組合員たる資格を持っておらない者であれば、便宜農事組合のほうで扱ってやるという必要がある。農業生産の進展のために入り用ということもこれは考えられる場合があると思うけれども、二重に加入しているのですから、そういうような付帯事業として行なうことが必要であるという場合には、別の組合員たる資格において事業をやるという、組合事業を利用するということで事は足りるのではないか。ただ具体的な行為として、直接組合法人の所要する肥料を運搬するのに、今度は協業されていない部分肥料組合員が別の資格において求める、そのつど別々にこれはしておく必要がないから、一緒に運んでいくということは、これは組合が考えればいいわけで、農事組合法人が考えなくてもいいことだと思う。今お話しのような、農事組合法人農業経営に直接する部分以外の流通過程の問題について一緒にやっていったほうが便宜だということは、私は起きないと思うのですが、そういうことを考えられること自体が、すでに両者間の摩擦を誘発するひとつの問題を提起しているのではないか。
  15. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおりでございます。そういう問題が起きなければ、それはけっこうでございます。
  16. 森八三一

    ○森八三一君 そうすれば、付帯事業というようなことについて、今御説明のようなことをこれは考えるべきではないのではないか。
  17. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 起きなければけっこうでございまするが、いろいろ昔の例を見ましても、現在の末端の状態を見ましても、協同組合は非常に大規模化をいたしまして、末端組織というものを非常に要望しておるわけでございます。そういう姿になっておるのでございますので、たとえば協同組合はもちろん個々人間加入をいたしまして会員になっておりますから、個々人間共同買購共同販売で利用してけっこうでございますけれども、まとめてこれはやってもらったほうが、それが協同組合につながるならば、そのほうが便利だ、だから何とかしてそうしてやってほしいという私は末端の姿が相当あるのじゃないかと思うのでございます。その場合に、お前、農事組合法人はそういうことを絶対やってはいけないのだということを、はたして現実問題として言い切れるかどうか、これは非常に疑問だと思います。ですから、その事態心々に応じて、農事組合法人自分組合員のものについては協同組合とつながって共同利用事業共同販売事業をやってやるのだという、それが協同組合とも摩擦も起きないし、実際協同組合もそのほうがスムーズに仕事ができるのだという実態がありますれば、それは何か付帯する事業という解釈にすんなり何して救済してやるという、そういう点を考えてやるというほうが、現実問題としては私は親切なんじゃないかというふうに考えておるわけなんでございます。
  18. 森八三一

    ○森八三一君 どうもそこが、幾ら議論しても平行線だと思いますがね。農事組合農業協同組合個々組合員における事業において便宜をはかってやるとか、あっせんをするとかいうような場合は、僕は事実行為としてはあると思うのですけれども、農事組合法人事業としてそこまで拡大していくということはいけない、事業としてやることはいけない。もし、事業としてこれをやるということになれば、その農事組合が必ずしも農業協同組合下部機構でなければならぬという強行規定はないのですから、ときによって今言うような問題を誘発する。ですから、どこまでも農事組合の行なう事業というものは、農事組合本来の農業経営に直接のものであって、その他の部分事業としてやらぬでもいいじゃないか。
  19. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、まあ共同販売とか共同購買とかいう、そういうもののあっせんをするということもございましょうし、それからあっせんをすることもやっぱり事業でございまして、それじゃそれもできないと非常に厳格に法律適用を考えていきますと、それもできないということになるわけでございまして、ですから、それは実情に応じまして、協同組合の全体の活動の中で動くという、そういう根本的な指導理念で動いておるのでございますから、そこら辺は実情に合わせてなるべく動きやすいように考えてやるのが親切じゃないかという感じがいたしておるのであります。ですから、それはそういうことは実情に合わないのだから、絶対にこれは農事組合法人はそういうことをやっちゃいけないのだ、それで組合人間は全部農協と直接ならなければいけないのだと、こういうようなことを考えるのは、また一つ考え方でございますけれども、そういうどちらにも割り切れる問題じゃないと思うのです。で、末端要望は、前からの要望は、農業協同組合が非常に規模が拡大化いたしておりますから、末端組織がぜひとも必要だ、こういう要望が現実にございます。しかし、農業協同組合法の全体の法体系からいたしまして、たとえば昔の農事実行組合というものに近い農事組合という考え方でございますけれども、こういうようなものを農協強制加入だというような、そういう制度はなかなかとりにくいものでございますから、指導としてそういう方向でやっていくという考え方のもとにやっておるのでございますから、一面では事業体になるという問題と、もう一面では農協下部機構としての機能も相当やっぱり持つんだ、そういう両方の面が農事組合にあろうと思います。だからそこら辺の調和をよく考えまして、事業についても指導して参らなければならぬじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  20. 森八三一

    ○森八三一君 この問題は一応その程度にしておきまして、その次に農事組合規模は一体どういうことをお考えになっておるのか。先般の御説明では、きわめて小人数の結合体であるというような御説明であったと思いますが、法律にはどこにもそういうことが出てこないので、新たに生まれる農事組合法人規模についてお伺いいたします。
  21. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 五人以上と、こういうことで法律は最低限だけを規定をしておるのでございまするが、先ほど申し上げましたように、農業協同組合全体の組織の中で、農協下部機構としての機能を、そしてやはり実態も考えていかなければならない、こういうこともございまするし、それから農業経営をやる経営体によって経営をやる、それから共同利用、共同作業をやる、こういう性質から考えまして、当然そう大規模なものは実際問題としてはできないのじゃないかと思っております。それでは法律上二十人以内だとか、三十人以内だとか、そういうことを規定することが、はたして実情に合うかどうかと、こういうことになりますと、これは非常にぎこちなくなりまして、非常に問題でございますので、法律上としては五人以上ということ、だけを押えまして、あとは実際の動きに応じて、いろいろ指導していったらどうかというふうに考えておるわけでございます。
  22. 森八三一

    ○森八三一君 その問題に関連して、もう少し個別にそれではお伺いしますが、農事組合規模については最低の五人という人数の制限は一応置いておる。それ以外については農事組合を認めようとする趣旨にのっとって指導育成をしていくのだということですけれども、その法律上の規定がないということになりまするというと、五人以上であればその農事組合の設けられる地域と申しまするか、組合員の存在する地点ですね、というものについては何らの制限がないということになりますると、甲の村の農業者が一人と乙の村の農業者が一人というように、点々と組合員が五人以上できまして、養豚なら養豚の多頭飼育を計画したという場合には、それは組合の存在として認めるということになりますか。
  23. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そのとおりでございます。
  24. 森八三一

    ○森八三一君 なりますね。
  25. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そのとおりでございます。
  26. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、その組合組合員は、それぞれ自分の所在する地域の農業協同組合正会員としての資格を持っておりますね。そうして農事組合会員としては、農事組合の事務所の所在する地点の農業協同組合正会員なり准会員資格を得るということになりますね。その農事組合付帯事業を行なう場合はどうなりますか。その場合にそれぞれ組合員としては別の農業協同組合正会員たる資格を持っておる。農事組合としては別の農業協同組合正会員なり准会員たる資格を持っておる。そうして付帯事業が行なえるのだということになると、その農事組合の所属する農業協同組合を利用するということにならざるを得ないと思うのですね、建前上は。そういう場合が発生するのじゃありませんか。
  27. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおりの例もあろうかと思います。しかし、ですから、そういう場合には、たとえば甲の組合の地区の人間と乙の組合の地区の人間とが一緒になって農事組合法人を作ります。そして所在地は乙のほうにございますというような場合に、それでは付帯といいまするか、経営以外のものについての共同販売とか、共同購買をそれじゃやってやろうじゃないかという相談がおそらく整わないのじゃないか。たとえば甲のほうでは、おれはこっちの組合員だからこっちのほうの協同組合を利用するということになれば、それはそうやればいいし、おれはこっちの協同組合を利用しない、こっちで農事組合法人一緒に利用してもらおうじゃないかという、こういう話に農事組合でなれば、それを利用したらいいじゃないか。実際問題としてはそういう話し合いの上でいろいろ問題は片づくのじゃあるまいかというふうに考えております。これをいろいろ法律で縛る。あそこに入っちゃいかぬ、ここを使っちゃいかぬということは、末端組合でやるべきかということは、非常に疑問じゃなかろうかというふうに私は考えるのです。
  28. 森八三一

    ○森八三一君 非常に何といいますか、常識的にというか、好意的といいますかにお考えになっておる。私はその気持がいけないというのじゃありませんが、そういうようにおおらかに考えておるということが、実際問題としては問題を惹起するのだ。ということは、農業協同組合も自己の組合経営に、職員としては非常に忠実に一生懸命にやっておるといたしますと、今のような設例の場合に、付帯事業としてやれるのだということになりますと、手数料だとか何とかいうものがおれのほうにくればこうだとかいう、非常に醜いことでございますが、事実行為としては起きるでしょう、それは。そういうことが農業協同組合の発展を阻害したり、農業協同組合間に摩擦を起こしたり、農業協同組合農業組合との間に摩擦を起こしたりする危険を感ずるということなんですから、ただそういう場合はないでしょうとか、ないことを希望するというだけでは、私は現実には即さないと思うのです。そんなことはもう私がかれこれ申し上げませんでも、現実の姿としては、今農事組合ができぬときでも現にあるでしょう、そういうことが。それをさらに多数の農事組合設立によって、より一そう激化せしめていくという危険を感ずるのですが、そうお思いになりませんか。
  29. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 他人ではございませんで、同じ農協の陣営内の問題でございますので、そういう点は、私は農協運動としてはおおらかにやはり考えるべきものではあるまいかというふうな感じがいたしております。そこで、末端のいわゆる農事組合というようなものをいろいろ検討しております段階でも、農協ほんとう末端要望はおおらかなもので、あまりぎすぎす法律で縛らないもので、そうしていろいろな姿の活動ができるようなものを、とにかく政府として考えてほしい、こういうのが実態だろうと思います。いろいろ協業を進めているといいます場合も、こういうものでなければだめだということを縛られたのでは、非常に窮屈なものですから、ここでは農事組合といいましても、法人格を持っておるものも持ってないものも自由だし、非出資のものも、出資しているものも自由、そして全体の農協の陣営内の末端農事組合としての一つ組織として考えていく、こういうことを日常考えておりますので、そういう実態からいいまして、あまりそこら辺はぎすぎすしないで、実際に応じて農協の内部の問題としておおらかに考えていくべきじゃないかというふうな、非常にお言葉を返すようでございますけれども、私はそういう考えのもとにいろいろ検討して参りましたし、今後も指導して、摩擦やなんかが起こらぬように指導して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  30. 森八三一

    ○森八三一君 それは農協が漸次規模が拡大されて参りますに従って、その下部機構としての農事組合的なものの育成なり、そういうものを法的にも認めていくような制度を希望しておることは、私はそのとおりだと思う。しかし、そういう感覚の中には、農事組合農業協同組合の地域性というものを私は考えておると思うのです。今度の農事組合法人では地域性はないのです。かつての産業組合当時の実行組合には、おおむね地域性というものが前提になっておったのですよ。その協同組合の区域内における部落を区域とするというような、地域性というのが非常に強く出ておった。今度の場合は、ただ人数の五人以上ということだけで、今私が設例いたしましたように、地域性は全然考えておらぬ。ただ生産を増強していくための協業、共同化ということに重点がしぼられていくということになりますと問題が起きる。お話のことはわからぬわけじゃありませんけれども、農協関係者が希望しておるのは、どこまでも地域性というものを考えておるから、そういう希望が非常に強く出ておるのであって、地域性を無視して、今お話しのようなことを希望するということは私はないと思う。その点はどうなんですか。
  31. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 戦争前の農事実行組合はおっしゃるように地域性がございましたが、しかし、あの当時は完全な農協下部機構としての考え方でございましたが、しかし今度の場合におきましては、一面においては農協の下部組織という考え方もございますが、また他の一面においては、協業化、農業の近代化、こういう面が強く浮かんでいるわけでございます。そういう意味から申しますると、たとえば農協の地域の両方にまたがって、地帯としては、地帯の実際の自然条件としては、これは両方のまたがったところが一緒にならなければ、協業というものができないのだという地帯もございますので、そういうものもございますから、地域性というものを一応はずしたのであります。今の現実はそういうことが要望になっているのでございますので、その要望にこたえて地域性をはずしたわけでございますが、ただそのために農業協同組合とのつながりの問題、事業の問題というようなことにつきましては、前とは違いまして、よほどその農業というものの考え方を自主性を十分持ちまして、そうして農協活動というものでもって今後の農業の近代化を進めていくのだということが、非常に農協陣営、農協の人たちがそういう気持でやっていかないと、おっしゃるようないろいろ問題もあろうと思いますが、これは農協考え方もだいぶ進んで参っているのでありますので、そういう問題を起こさないように、やはり農協の内部でも問題はありましょうけれども、政府としてもそういう考え方指導して参りますれば、そう心配をしなくてもいいのじゃあるまいかというように考えているわけであります。
  32. 森八三一

    ○森八三一君 結果はたいした心配をしなくてもいいという結果になるでしょうし、そういうことになることを私も強く希望いたします。いたしまするが、農事組合設立の目的が、農業生産性を向上せしめるために、協業だとか共同化というひとつの新しい方向を強く推進することに意味があると思うのです。そうなりますと、そういうような組織が、私の設例いたしましたようにいろいろの農業協同組合の地域にまたがって作られ、しかもそれが付帯事業をやれるのだ、その付帯事業についてはあいまい模糊としているというその中にいろいろ問題が起こる。だから窮屈に縛りつけてどうしようこうしようということを考えるものではございません。農事組合の所期する目的が十分達成されるように考えなければならないことは当然でございますが、それと付帯事業等によって、本来の農業協同組合、あるいは農業組合農事組合との間にいろいろ問題を起こすようなことは避けていくべきではないか、それを避けるために、農事組合の本来の目的をゆがめたり、その発展を阻害するということであってはならぬと思うのであります。がしかし、私は付帯事業というものについて、ある程度の制限を設ける、ある程度というよりは、むしろ厳格にしたほうが農事組合の発展のためにも好ましいし、農事組合農業協同組合あるいは農業協同組合間に起こるであろう摩擦というものを未然に防止するゆえんになると思うのであります。こういうことは、私のような感覚で整理されずに法律が出ちまったものだから、どこまでもこの法律をお作りになったときの趣旨の御説明を繰り返されるだけで、ちっとも反省されませんから、もうこれ以上やったって平行線ですが、これは将来農事組合ができまして事実が証明します。証明したときは間違ったと言っても、これはあとの祭りなんですから、たいへんな私は問題が起きてくると思うのです。このことははっきり私は申し上げておきたいと思うのです。農事組合付帯事業というものについて明確にしておかなければ、農事組合組織について地域制というものがここに一つ欠けておりますから、事業は重点的に施行されておる。そうするというと、設立される農事組合というものは、理論的には数カ町村なり、数農業協同組合の地域にまたがって設立される場合があり得る。そういう場合に、農業協同組合間に一つ問題がおきてくると思うのです。それから農事組合農業協同組合間にも問題が起きてくる。そのことが結果的には農業協同組合の発達を阻害する。農事組合はそれでいいかもしれませんけれども、その大元の農業協同組合事業の推進を阻害されるということは、これはゆゆしき問題だとこう思うのです。そのことは、これは平行線ですから、これ以上は申し上げません。  そこで、その農事組合農業協同組合正会員となりあるいは准会員となるまたならぬでもよろしいということは、自由の選択が認められておる。私はそれでいいと思うのですが、しかし、その農事組合が、農事組合だけで農業協同組合法に基づく連合会の結成はこれは認めておりませんから、その限りではよろしいけれども、他の法律、手段によって農事組合の連合体を作ろうとする場合に、それは否定されるのか、肯定されるのか、どうなんですか。
  33. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 非常に御質問が抽象的でございまするので、ちょっと事態がわかりかねるのでございますが、他の法律によってどうこうという場合は、どういうようなことをお考えになっておるのかお聞かせいただければ幸いだと思うのです。
  34. 森八三一

    ○森八三一君 私は法律家じゃございませんから、あるいは私が思い違いをしておるのかもしれませんけれども、民法なりその他の規定に基づいて農事組合間の横の連絡を持つというような組織を作ることが可能か不可能かということなんです。
  35. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) それは当然そういう法律によって団体や何かを作ろうということは、やろうと思えば可能でございます。
  36. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、また一つ問題が起きてくるのです。農事組合間の横の連絡機構というものができるということになりますると、いわゆる実質的には農事組合連合会になると思うのです、実質的には。形式的にはどういう経過をとるか知りませんけれども、実質的には農事組合連合会。その農事組合連合会は、農業協同組合会員になろうとなるまいとこれは自由ですから、そこで農事組合連合会がその農事組合の行なう事業の発達をはかりまするために、農業協同組合から離脱をしていくという行為に出ます危険を感ずるわけです。そのことは結局極端な例をとりますると、一つの県に農事組合が三百か四百できまして、その農事組合の横の連絡機関を作った、そしてそれが農協を離れて万般の必要な事業というものを別の資格でやっていくということになると、実質的には県の経済連合会が二つできたというような姿になると思うのです。そういう危険は起きないと言えますか、起きると言えますか、どっちですか。
  37. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) ただいまの御指摘でございまするけれども、たとえば、かりに農事組合法人といえば、つまり経営を行なう場合には農民と同じ扱いを行なうという考え方でございますので、農民がそれでは協同組合と別に、一緒になって別の何か組合を作ることが禁じられておるかどうか。それから一緒になって会社を作ることが禁じられておるかどうか、法律論としてはそういう問題になろうと思うのでございます。そういうことで考えますれば、当然そういう組織を別に作ったって法律的に違法といってどうこうするわけには参らぬと思います。ただ観点が、いろいろ御質問を伺っておりまして、森委員と私どもの観点が根本的に違うんじゃあるまいかという感じがいたします。といいますのは、私どもは、農協というものは、農民の自主的な組織であって、あくまで農協活動を通じて農民の生活を向上し、それから生産性の向上というものをはかっていくんだ、農民はそういう観念であり、農協はそういう考え方で農民を会員にして指導していく、これは当然のことであるという前提で私はお話をしておるのでございまして、森委員のお話を伺っておりますと、はなはだ失礼でございますけれども、農民はみんな農協を離れていくという考え方に立っているという感じで、この問題を考えておられるようでございますが、私は、現在農協が相当経済力もだんだん強くなって参りますし、農民もついて参っておりますので、いわゆる昔のような、終戦直後のような状態とは違いまして、農民を相当引っ張っていける。ですから農事組合法人ができましても、それは農協を離れていくんではないんだ、かりに千に一つや二つのそういう違反者がありましても、全体としては農民の一つ組織としての農協と同じ行をともにしていくんだという、こういう観点からいろいろの問題を指導し考えていかなければ、非常に罪人のことばかり考えてこういう問題を考えるべきじゃないじゃないかという感じがするのでございますので、その点はなはだ失礼でございまするが、根本的に立脚点が違うような感じがいたすのでございまするので、申し上げておきたいと思います。
  38. 森八三一

    ○森八三一君 今の局長の話は、あまり現実離れをした話を言っておられるのでね。私はそういうふうにあるべきものだということについては、ちっとも異存はありません。しかし現実はそうではないのです。そうでしょう。ほんとうに農民の行なう農業経営を発展せしめていく、そしてその生産を合理的に向上せしめていこうとすることは、いかなる団体でもこれは考えておる形式的なことです。現実はそうではないでしょう。現実は、そういう建前に立って組織されておるもろもろの農業団体というものが、表面にはそういうことを言っておっても、実態はそうではないでしょう。今この委員会でも非常に混乱しておる問題を一つ考えてみたってはっきりしておるのですよ。そんな形式論を私は言っておるのではないのです。形式論なら、これはお釈迦様の世界で、何も問題じゃないのです。そんな形式を言っておるのではない。こういう組織を作って、そういう問題が誘発される。だからそういう現実をとらえて誘発されないようにわれわれとしては考えていくべきであると、こういうことを言っておるのですよ。そんな極楽のことを言っておるならこれは議論をする必要はない。私は現実を直視してものを言っておるのです。そういうことが起きる危険がある、現実は。だからそういうことにならないように、政府としても、われわれ政治を行なうものとしても、少し行き過ぎておるかもしれません、このことは。けれどもそこまで考えてやるのが、今の現実の農村における実態ではないか。私は、少し問題が飛躍しますけれども、農業基本法のときにも、農業協同組合だ、漁業組合だ、森林組合だ、こんなことにわざわざ分けてする必要はない。地域々々によって農林漁業組合一本でいいといえば一本に自由選択を認めたらどうだというふうな議論をしたことがあるのです。三本建てになっておるのだから、森林組合は貯蓄の取り扱いはできませんけれども、貯金を、同じ財布の中の貯金をとりあってやっておる。そして上のほうでは、水産庁と経済局と両方でどんどんとけつつべたをたたくものだから、ぼんやりしておられないから一生懸命やり出す。何のことはない、迷惑するのは組合員だ。ところが、漁業協同組合でも農業協同組合でも、組合に迷惑させるようなことはちっとも法律上ありませんよ。それぞれの発達をはかるということがはっきり書いてある。書いてありながら、やっておる仕事は、お互いに経済力を分散させてみたり、摩擦を起こしてみたりすることを現に今やっておるでしょう。そのやっている事実をほおかむりして、そしてお釈迦様みたいな話をされても、こいつは私は納得できない。
  39. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、現実は法律どおりにはなかなかいっていないと思うのでございまするが、そういう問題は結局法律はありましても、現実問題としては、行政指導なり、農協なら農協の中央会の自主的な指導なり、そういうような問題であろうと思うのでございます。ですから、おっしゃるように現実がそのとおりでないのだからということであれば、農協自体がもう根本的に間違っておるのでございまして、農協自体を現実に合わせれば、農協法が加入脱退、こういう自由な法律において農協というものを認めておくこと自体もおかしくなるのじゃないかという感じもするのでございます。ですから、そこでそういう農協法の中で農民の自主性を持ち、それから農協の自主性をもったそういう団体の活動によって農民の生活向上、経済の向上をはかっていこうというそういう法体系でございますので、ですから現実問題としてその法律の精神に合わないような面がありましても、そういう問題は団体の指導としてそれをできるだけそのほうに合わせるように、その活動が農民のプラスになるように持っていかなければならぬと思うのでございまして、私どもはこれは行政指導の問題であり、それから農業協同組合中央会あるいはその他の協同組合自体の全体の指導精神の問題が非常に重要な問題になるのじゃなかろうかと思うのでございますので、御趣旨に沿うように、法律と現実とが合わないような面が起こらないように十分全体を指導していかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  40. 森八三一

    ○森八三一君 またきれいなお話しですが、この自主的に民主的にということ、それから法の目的に従って誠意をもって指導するということはそのとおりでございまして、それに異議を私は差しはさむものではございませんけれども、そういうことだけでは現実は処理されておらないという現実を見ると、ここで農事組合ができた、その農事組合の横のまた連合体を作るということによって、本来のあるべき農業協同組合との間に摩擦を生じたり、また農業協同組合の発展を阻害するような行動に出ることは禁止したっていいじゃないか。なぜ禁止ができないか。農事組合の発達をはかるということは、何も抑止するわけじゃないですよ。それはそのままで生かしていきましょう、そのものが本来の農業組合摩擦を起こしたり、その事業の進行に支障を来たすようなことをしでかすような場合には、それをためるということは目的に沿わぬことじゃないですから、それを自主的にだとか民主的にだとかいったって、現実はそういう方向に向かない事態というものがあるのだ。あるとすれば、その事態を直視してそういうことにならぬように考えていくということは、あたりまえのことじゃないですか。
  41. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) ですから、先ほど申し上げましたように、おっしゃるとおり現実はそういう事態もあろうと思うのでございまするので、そこでまあ、法律上としては協同組合法の中では連合会を作ることはできない、こういうようなことで、その点はいわゆる協同組合の法体糸の中では禁止しておるのでございますけれども、その他の法律でそのことがあります。そういうようなものを禁止をしなければならぬような状態で、法律上そういう姿で置くことは、協同組合の発展の上からいっても協同組合法の精神からいいましても、私はかえって邪道になるのじゃないかという感じが率直に申し上げましてするのでございまして、これはやはり協同組合法というもので、農民の共同組織としての協同組合ということでいく以上は、そういう手段をとらないで、協同組合自体の自主性や良識によってそういうものが片づいていく、そういう姿に、もう全力を尽くして関係の者が指導をしてそういう姿に持っていくという努力をすべきじゃないかと思うのでございます。そういう努力をしないで、法律で禁止をし、あるいは法律で縛るということは、共同組合の自主的な発達をかえって将来においては阻害するという結果が起らないとも限らないと思うのでございますので、その点もよく私どもも御質問趣旨は肝に銘じまして十分ひとつ指導に遺憾のないようにやっていきたいと思っております。
  42. 森八三一

    ○森八三一君 法律上そういうことを規制すると、農業協同組合の発達に悪影響を来たすようなおそれがないわけでもないというようなお話しでしたが、どういう場合でしょうか。農事組合というものは農業協同組合の下部組織として認めよう、そのことは私も賛成なんですよ。ただ行なう事業について問題がある。まあこれもひとつ除外をして、できた農事組合がそのあるべき本来の姿だけにずっといく場合には問題はない。ないけれども、万が一間違うと変なことになるという危険を感ずるから、そのことを法律上規制することによって、農業協同組合の発達を阻害する場合がないとはいえないというお話は、私はわかりませんがね。
  43. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) あるいは言葉が適切ではなかったかもしれませんが、たとえば今度の農事組合といいますものは、農業協同組合正会員としてとにかく協同組合運動一環として活動していこう、こういう基本方針のもとに考えられているものでございまするから、農協ほんとうにその努力をいたしまして、たとえば農協から離れていくような者がありましても、努力とサービスによって非常に農民に奉仕をして参りますれば、離れるようなことは起こらないと思うのでございます。ですから、そういうものをこれは農協と離れるから法律で禁止するというようなことで、一々全部そういうものを法律で縛っていくという考え方をとりますと、農協自体があぐらをかく、こういう現実が起こるのじゃないかと思うのです。そういう意味からいいまして、私どもは自由な自主的な、こういう団体ということを考える場合に、あくまで自主的な団体の努力が生きるようなそういう法制を考えるほうが、将来のためにもいいのじゃないかという考え方をとっておるのでございます。ですから、何から何まで縛ってしまうというような考え方ではございませんで、そうして農協も努力をする、農民もあの農協だから、とにかく法律で縛らなくても会員になって利用するのだ、農事組合法人農協ですから、法律で禁止をされなくても、これは会員になって農協活動を一本にしていくのだというふうなものに持っていく必要があろうと思うのでございます。そうでないと、せっかく農協で農民の自主的な農業協同組合組織というものを考えているものが死んでしまうのじゃないかという感じがするのでございますので、その点は私どもの協同組合指導精神は、そういう指導政府はやっておるのでございまするので、御理解をいただきたいと思っております。
  44. 森八三一

    ○森八三一君 まあくどいからやめてもいいのですが、農事組合というものが農業協同組合に離反するというような場合の起きることを、法律で禁止をしようということでは私はないのです。その農事組合が実質的な連合体等を作るということを、農協法ではなくても、他の行為によって認められておるということでありますると、世間の実態はそういうものを作りましょうというまた話が持ち上がってくることは、私は必至だと思うのですね。それは農業協同組合の発達を好まない人もおるのですよ、現実には。それから組合員であっても、いろいろな役員関係とか等のことで、自分が思うままに振るまえないという立場に置かれるという場合も現実にあるのです。そういう人が必ずしもまっすぐにものを見ていく場合だけではないのですから、いろいろなことを考え出すということが、現実にはあるのですわ。だからそういうものを排除をしていくための措置というものはあっていいのじゃないか。だから何も農事組合が横に連絡をとらなければ、農事組合の発達ができぬということじゃないはずなんですから、そういうものを作るという必要は私どもは認めておらぬ。認めておらぬなら、その認めておらぬという趣旨が実現されるような法律行為をとっても、それは何も民主的とか自主性を阻害するものだとは私は思いません。そういうものを作らなければ農事組合の発展ができぬというものをふさいだらこれはいかぬけれども、ほかに行く道はあるのですから、ほかの道が農事組合の発達を阻害するようなことをやっておる。端的に言えば農事組合のために不利なことをやっておる。だからほかのものを作りたいというのだったら、その場合にこそ自主的な組織として組合員たるものは、その農業協同組合の本来の姿において、本来の仕事を行なうように是正すべきである。だから横っちょに行くというようなことを考えてはいかぬのですよ。農業協同組合農事組合のためによろしくない行為をするというなら、組合員たる立場において、これを農業協同組合を本来の姿に戻していくという行為が優先すべきであって、そうだからほかのものを作るという方向にいくことはいけない。これがおわかりになっていないと思う。だからほかの方へいかなければ、横の連絡をとるような組織を作らなければ、農事組合の発達ができないということがあるならば、私はこれは当然そういう場合を認めてよろしいと思う。けれども、今の建前では、そういうことをしなくてもいいという建前になっておるから、認めることによって、ちょっと先刻申し上げましたような、いろいろな私的な関係その他から問題をまき起こすということが当然起きてくると思う。そういうことを防いでいくということは当たりまえじゃないですか。
  45. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) すべての活動、経済活動につきまして、農協という、こういうりっぱな組織があるのでございますから、連合会もあり、全国連合会もあるのでございますから、かりに農事組合法人がいろいろ仕事をやっていきます場合にも、私は農協さえほんとうにサービスがきちっと行き届いてしっかりして参りますれば、農協に対する不満はなくなると思うのでございます。そうすれば当然別の農事組合としての連合体、横の連合体を作ろうなどということは起こってこないだろうと思う。それは起こってこないように、農協が本気になって仕事をやっていかなければ、政府もそういう考え方指導しなければいかぬ。それが農協法の根本的な自主的な農民組織の姿であろう、こういう工合に考えるのでございまするので、それをただ法律で禁止とか何とかいうことを言わないで、現実にそういう姿に持っていくように農協ほんとうに腹をきめて、そういう指導に当たっていただくように、指導していかなければならぬと思うのでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思うのです。
  46. 青田源太郎

    青田源太郎君 関連して。今森さんが言われる心配は、十分にあると思うのです。たとえば最近にできました基金協会が、今度の法によってできるという、いわば全国的には基金協会は自主的の任意組合であるけれども、協会というものを作って、それでその趣旨は基金協会の発展研究をするというような名目であるけれども、作れば農協の傘下にやはりそういう団体ができる。最近は有線放送協会とか、あるいは酪農があり、養鶏がある。あらゆる農業団体の農業協同組合の傘下におって、それぞれこういうふうな法人格を持ったものがあれば、研究あるいは発展という名目でできるのは、出発はそうだけれども、結果的においてそういう団体ができる場合は、やはり農民全体的の発展というような大きな気持でなしに、やはりその会自体というような小さい面から、農業協同組合指導方針に反するものが現実的にたくさんできてくる、今までそういうことで困っておるのですからね。それだから、こういうような農事組合法人というものができれば、やはりこれの組織ができたら、組織でやはりひとつ会を開くとかいうようなこと、それが全部ただ単に任意組合組織するというだけでなしに、会になればやはりそれが賦課金をかけるとか、あるいはいろいろ会費を徴収するとか、末端組合員が連合会の会費だとか、あるいは賦課金という重圧にもう非常に困っておるというようなことだから、農業協同組合組合員でやるなら、これは何も農事組合法人はそういう協会を作らなくてもいいというようなひとつ行政指導をやるというなら、私はいっそ森さんのような意見に踏み切ってもらったらいんじゃないか、こういうふうに思いますがね。
  47. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、現実問題としてはいろいろの問題があろうと思いますけれども、その協同組合法という協同組合考え方を十分生かし、この点現実に指導していかなければならないと思うのでございますが、十分ひとつ御趣旨の点は考えまして、今後の指導については、遺憾のないようにしたいと思っております。
  48. 森八三一

    ○森八三一君 御趣旨の点はよくわかりますから指導すると言っても、法律上そういう行為が認られるのだから、認められている行為をやれば、それは禁止する手段というものはないでしょう。農業協同組合から組合員が離反していくというようなことは、これは農業協同組合がぼんやりしているから離反する、こう思うのです。その農業協同組合がぼんやりしている。だれがぼんやりしているかというと、これは組合がぼんやりしておる。農業協同組合がしっかりしておれば、農業協同組合組合員の希望する方向にいくべき民主的な自主的な組織ですから、当然組合員組合員たるその立場に立って自分組合を、しっかり組合組織していくという行為がなさるべきじゃないですか、そうでしょう。そういう行為がなされれば、ほかのものを作る必要はないと思うわけです。だけれども現実はそうはいっておらないということなんですよ。今青田さんが言ったような、いろいろなものができてくる。これは農事組合ができますと、やはり事をかまえる連中が出てくる。ほんとう末端組合員は知りませんよ、そんなことは知りません。ほんとう個々一人々々農民が目ざめてしっかりしておれば、農業協同組合というものは、今のような弱体であるべきではないはずなんです。もっとしっかりしたものになってもらわなければならぬが、事実そうなっておらぬというところに、個々組合員に対する認識なり自覚というものが非常に薄いということを証明しておるんですね。そういう現実に立脚して物を考えて参りますると、非常な危険がある、危険を冒すことは避けたらいいじゃないか。それが民主的だとか、自主的だとかいうものを阻害するものではないと私は思うんです。それを非常に固執されることは、そういうものが出てくることを要求しておられるんじゃないですか。それで出てくると、そこでまた何々理事だとか、はまり役の場所ができて都合がいいから、極端な批判ですけれども、そういうことを考えながら、そうしてなるべく農業団体というものは摩擦抵抗をやって、圧力団体にならぬように分散さしておくほうが、農林行政をやるには都合がいい、これは邪推ですが、どうもそういうことになってしまうんです。あまりがっちりしたものになるとたまらないから、なるべくずっと分けておいて、たずなを引っぱりやすいようにすることが、農林行政の秘訣である。まさか信頼する経済局長そんなことをお考えになっておらないと思うけれども、あまり固執されますと、どうもそういうことまで言いたくなっちゃうんです。何もそういう組織のできることをふさぐからといって、農事組合の発展を阻害するものではないですよ。弊害こそあれ、農事組合の発展に不利益を生ずることはないと思うんです。ただ民主的だとか、自主的ときれいな言葉で濁していちゃいかぬというのが原因じゃないですか。
  49. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) お言葉ではございまするけれども、後段におっしゃったようなそういう気持は毛頭ございません。先ほどからいろいろ農業協同組合についてお答え申し上げております点は、ほんとうにこれは率直に私申し上げておるのでございまするので、そういう工合にお聞き取りいただきたいと思うのでございます。いろいろ御意見がございますでしょうけれども、私も戦争前の産業組合仕事も少しはやっておりましたものでございますが、あの当時のようにほんとうに何といいますか、熱をもって農業協同組合運動というものが動いて参りますれば、おそらくそういう問題はないと思うのでございます。そういう今森委員のような御心配はおそらくあるまいと思います。で、かりに、万一、千に一にでもあったといたしましても、そういうような問題は大体片づくというふうにお考えがいたただけるのじゃないかと思うのでございまするが、その後、いろいろ戦争中の統制経済を通じまして、戦争前にはまあ法律上何をここから買わなければならぬ、産業組合を通じなければならぬ、産業組合には強制しなければならぬというものは一つもございませんので、ほんとう協同組合精神で動いて参っておると思うのでございまするが、いろいろ統制経済を通じて法律上買わなければならぬ、産業組合を通じなければならぬというようなことがありまして、それがまた農業会になり、それがそのままの姿で終戦後また農業協同組合というような、こういうような姿になっておるところに、私はいろいろ問題があるのじゃないかと思うのでございますが、そこで、法律できまらなければもう自分たちの運動としてはやれないのだというような頭に農協の幹部がなったんでは、これは非常に農業協同組合としては大問題でございまするので、将来としてもそういうことではなくて、ほんとうに自主的な活動が生きていくんだという姿に私はできるだけ持っていかなければならぬのじゃないかという感じがするのであります。最近だんだんいろいろと自由経済になって参りまして、いろいろのそういう統制や何かがはずれて参っておりまするので、農協の心がまえもだいぶ違ってきております。ですけれども、現実問題としては、農協の終戦後の非常にごたごたしておる状況の中で、農協の整備促進の事業等もやりまして、だんだんと強化をいたしまするし、また最近におきましては合併促進というものをやりまして、農協の強化をはかっておるのでございまして、これが農民をほんとうに引っぱっていくという態勢がだんだんできつつあると思うのでございますので、そういうせっかくできる自主的な芽を、あまり法律でつまないように、自主的な活動を生かしていく、こういう考え方で今後とも指導して参るのが、農業協同組合の発展の一番大事な方向じゃあるまいかというふうに、私は非常にまじめにそういう問題を考えておるわけでございます。
  50. 森八三一

    ○森八三一君 何だか私が不まじめに考えているようで、(笑声)困っているのですが、私もまじめに考えているつもりです。私も、今局長のおっしゃる趣旨は全く同感なんですよ、同感です。では、方向を変えてお尋ねしますが、農事組合ができて、この法律に基づく種々の事業を行なうという場合に、そのものを横に連絡する組織を持たなければ、農事組合事業発展を阻害するという場合が考えられますか。
  51. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 農協がどれだけ農民を把握し、農事組合指導していけるかという問題にかかっていると思います。農協に不満があれば、もちろんそういう動きも起こって参ろうと思うのでございますが、そこで、私は今度の農事組合法人というものは、農協ほんとうにふんどしを締めて、農協運動へ立ち帰るという、こういう一つのきっかけになるのじゃないかと思うのでございます。非常に将来については、農協運動としては明るい契機を作るのじゃないかというふうに実は考えておるわけでございます。
  52. 森八三一

    ○森八三一君 私の質問にまだお答えになっておりませんけれども、逆なまた説明をされているのですが、逆なら逆でいいんですよ。農業協同組合が、組織する組合員のために忠実にその仕事を行なわなければならないということは当然のことなんです。行なっていない場合がもしありとすれば、それは組合員が矯正すべきものである、役員の農業協同組合ではないはずですから。そういう場合には、農業協同組合員がその組合を誠実なものにするということじゃないですか。そういうことは別にして、そういう場合があったとすれば、離れていくのはやむを得ぬことだというような感覚で、私は、あなたのおっしゃる趣旨とは違うと思うのです。農業協同組合というのは、あくまでも自主的な、民主的な組織だ、それをよくするのも悪くするのも、組合員の力によるのだと、組合員がしっかりしておれば、そういうのはなくなるのですよ、変なやつは。そうでしょう。そういうことになることをわれわれは期待しているのですよ。そのとき農事組合は横の組織を持ち得るという余地を与えておくことは、組合員がそういう努力をしなければならぬにかかわらず安易に考えて、努力を放棄して、別のものを作ろうという方向にいく危険がある。だからだ、組合の本来の任務を遂行することに忠実であるように仕向けてやるということが親切じゃないですか。
  53. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおりですね、組合が、農協が非常にしっかりしていないような場合には、もちろんその組合員の問題であると思います。ですから農事組合組合員といえども、農協組合員でありますから、組合員ほんとうに目ざめて、そうして農協を立て直そう、そういうことがありますれば、当然それは組合員としてのいろいろな発言権を、一票ずつ持っておるわけでございますので、おっしゃるとおり農協の再建なり、あるいは何なりについて、いろいろ相談が行なわれることであろうと思っております。
  54. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連質問。今の問題に関連しまして、私は、農業生産法人と申しますか、法人成りの気運といいますか、非常に今はだいぶ下火になってしまいましたけれども、二、三年前、非常に全国ほうはいとして起きてきた時代を回想するわけです。そのときに今の農地法農協法のままでも、何とかその農協組合のような素質を持ったもので、そこで別段有限会社や何らかを作らないでも、ひとつ農協が中心になってそういうような、まあ実質は共同経営であるのですが、そういうことをやってはいけないかと、こういうことを私は愛媛県に行って、その事情を調査したときに聞いたわけなんです。そういうことで、大いに県の農協、農林部農協課あたりに相談いたしましたが、それはどうもいけない、やれば有限会社でやったらよかろう、こういうようなことであったものですから、農協下部機構の有限会社にするということもしたくないので、そういうようにしたと思いますが、どうも御指導はそうは参らぬものですからやむを得ません。そうしていってみると、全くその有限会社は農協傘下の組合と同じように、農協が全部事務をやっておる、世話も一切しておる、こういうことで今もおそらくそうだろうと思うのですが、ですからあれは、まあどうしてもその当時の農協法並びに農地法等の解釈上、そういうことをやらしてはいけないのだということからきているのでありましょうか。それとも農協の中に組合を作ってやってはいけないのだというような点からきておったものでありましょうか。私は組合を作ることはいいのだけれども、どうもそいつが土地を持つとか、あるいは土地は持たぬ格好にしても、実質は結局共同形態になってしまうので、農協のいう共同作業とか共同施設利用というのにはどうも入りかねる、どうも現行法としては無理で、もし認めるとすれば、やはり法律を改正しなければいかぬというような、だから、それまでは認めがたい、こういうことでありましょうか、その辺の事情を一ぺん、今できるところでございますから、明らかにしていただくと、森さんの御議論にも何らかの参考になるんじゃないか、こういうような気がいたしますので、私関連質問いたします。
  55. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) あの当時は、いろいろ考えてみますと、一つ農業協同組合法解釈上も、農業協同組合農業経営をやることができるか、できないかという問題がだいぶありましたわけでございます。そこで今までの考え方といたしましては、できないという考え方のほうが大体支配的でございまして、そういう関係で今度そういう法律を改正をいたしまして、農業協同組合でやるのでなくて、農協下部機構としてやるのだというような考え方をとりましたわけでございます。その中途の過程におきましては、そこで農業協同組合もひとつ五人以上の者が集まった場合には、農業協同組合として農業経営ができるんだという法律案を一度作ったことがございます。非常に苦肉の策でいろいろそういうことを考えたわけでございますけれども、それともう一つは、農地の特例の問題、農地を持てるか持てないか、農地を持って経営ができるかできないか、そういう問題がありましたものですから、非常に問題があったわけでございまするが、末端要望は、できれば農協下部機構のような農家組合あるいは実行組合というようなもので、とにかく農業経営、共同作業というものをやりたいと、こういう要望が支配的でございましたので、そこで、そういう法律論からいたしまして、しょうがないから有限会社でやるとかいろいろやっておったと思うのでございます。そういう問題は今後農協法でも農地法でもきちんと解決いたしまして、農事組合法人というものを考えたわけでございまするが、ですからその場合に農事組合法人を考えまする場合にも、先ほどからお話し申し上げておりまするように、非常にこれを画一的な、型にはまったものにしてしまうことは、農村の実態に現状では合わないだろう、協業の姿もいろいろの段階がございます。そういう関係でございまするので、たとえば、完全に経営をやるんだというようなものについては、きちんと法人格を持って出資をしなければこいつはできません。しかし共同利用をやるとか、共同作業をやるということは非出資でもかまいませんし、あるいは任意で法人格を持たないものでも農事組合という名前でこれはやっていってもいいんだということで、いろいろバラィエティを持たして、農村の実態に合わせるようにしておるのでございまして、これができますれば、有限会社でやろうとか、あるいは合資会社でやろうということはだんだんこちらに向いてくる、こういうことを期待してやっておるわけでございます。
  56. 森八三一

    ○森八三一君 先段私が質問しました農事組合が、横に連絡するような組織を持たなければ農事組合事業を進展せしめることができないというようなことが考えられますかという質問に、まだお答えがございませんがね。
  57. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) その問題は、先ほどからお答え申し上げておりまするように、いろいろの農村の実情によっていろいろの場合があると思います。それから農協実情にもよろうと思います。ですから、それと、外に連絡機関を置くという連絡機関の作り方もあろうと思うのでございまするが、たとえば、人格を持たないで、同じ農事組合法人として酪農なら酪農をやっておるものがたまに会っていろいろ実績の報告等し合うというようなことだってあり得るんじゃないかと思うのでございますが、そういうような何から何まで禁止をすると、いわゆる農協法の外の問題まで法律で禁止をするということが、はたして私は農事組合の今後の発展にも、それから農協の発展にも適当であるかどうかという点については、非常な疑問を持っております。したがいまして、そういう問題については、農事組合法人組合員も大体農協組合員でございまするから、ですから、そういう農民の自覚に待つということと、それから農協の自覚と努力に待つ、こういうことで指導して参るべき問題であろうというふうに考えておるわけでございます。
  58. 森八三一

    ○森八三一君 そのあとの、農協の自覚と努力に待つということはあとにしておきましょう。その前段のほうの、農事組合農業協同組合ではない、あるいは農業協同組合連合会ではない他の、横の、あるいは縦のつながりを持つような組織を持たなければ、農事組合本来の任務を十分に遂行し得ないという場合があるかどうかと、私はそういう場合はないという前提に立っておるのです。そこでお話しの酪農等について技術上の研究なり練磨をするためにという一つの設例があったのですけれども、そういう場合もあり得ると思いますが、その場合といえども、農事組合の横の連絡をとらえなければならぬという筋合いではなくて、そういうようなことについては酪農農業協同組合連合会なり、あるいは総合農業協同組合連合会なりという、個々農民の直接間接に参加をしておる協同組合があるのですからね。それを通してやれば目的は達するのじゃないか、別のものをあえてこういうふうに作るという必要はないと私は思うのです。あるというなら、そのある場合という場合をもっと具体的にひとつ御説明願うと、私はないと思うのと、あるというのとこれは方向が違うのですから、こういう場合はありますよということを言っていただきますれば、私の蒙が開かれるわけですがね。私はそういう場合はまずないというように断じてもよろしいと思っております。
  59. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 私も農協のこういう大きな力のある組織の中でこれは動いておるのでありまするから、そういう特別な組織を作らなければならない、農事組合だけが特別な組織を作らなければならないという必要はあるまいと思います。ですから、この法律でも連合会を作るとかいうようなことは、法律の上でも禁止をしておるわけでございます。
  60. 森八三一

    ○森八三一君 そういう場合がないと思考されるから、本法の改正においては連合会等を認めないという措置をしたと、だとすれば、その趣旨は本法以外の場合においても同様の措置がなされてしかるべきではないかと、農業協同組合の改正の部分については、お前の言うとおりだから認めなかったよ、けれども抜け穴を作っておいて、ほかのほうではやってもいいよというのでは、これは趣旨が一貫しませんよ。必要を認めるならば認めたらいいと思います。けれども認めないと言いながら、ほかのほうでは御自由だということは、これはちゃんと抜け穴を作っておる。それでは趣旨が一貫しませんよ。
  61. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) どうもいろいろ御質問趣旨がよくわからないのでございまするけれども、たとえば農民が出資をしてほかのものと一緒になって会社を作る、こういうことを法律上禁止ができるかどうか。これはまあ非常に、やはり憲法論まである問題じゃないかと思います。ですからほかの法律でいろいろ自由が認められておりますものまで、農協法で禁止をするということは、これは非常に大きな問題があろうと思います。ですから農協法の体系の中では、第一条の目的に沿いましていろいろ法律規定は整備をいたしておりまするけれども、その他万般にわたる法律のいろいろの体系がございまするから、その中でどういうものがありますか、そいつは私も今頭に浮かびませんけれども、具体的には、まあたとえば任意に集まって協会みたいなものを作るということは、法律で禁止ができるかどうかということ、これは憲法論までくるのじゃないかと思いますので、そういう点には触れないでおるわけでございます。問題は、農協の全体の組織の中で農事組合法人というものは動くのだ、そういう指導をするのだ、そういう自覚で農協指導し、農民もそういう自覚を持ってもらうように指導するのだ、こういうことでいくよりほかしようがないのじゃあるまいか、率直に申しましてそういう感じがいたすのでございます。
  62. 森八三一

    ○森八三一君 もうこれもくどくなりますからこの辺で切り上げますが、私は農業協同組合が、その下部機構として設立される農事組合が離れていくような行為はやらぬと思います。またなさしむべきではないと思います。同時に、もし万が一にもそういう場合があったといたしますれば、それは組合員たる立場において、農事組合農業協同組合の運営を軌道に乗せる努力をすべきである。その限りにおいては農事組合農業協同組合を離れていくということは起き得ないと思うのです。起き得ないということであるなれば、万が一離れていくような場合に、別の組織を作るという道を作っておく必要はないではないか、その道をふさぐことは決して私は憲法違反でもないし、常識論ですから間違っておれば修正しますが、私はそういう必要がないというものであれば、その道を閉ざしておくことは、これは違法行為ではないと思うのです。そういう必要があるというんならこれはたいへんなんだ。必要がないというなら、自分組合員たる本来の任務を放棄して、組合をしっかりさせる努力を自分が放棄してしまって、そうしてこっちにいくというようなことを考えせしむべきではないのであって、組合員本来の任務を忠実に遂行していけば、農業協同組合は民主的な自主的な組織ですから、希望どおりの農協になると思うんです。なれば離れていく必要がない。そういう組合員自身が自分の努力と権利を放棄してよそへ行くという場合がないとすれば、別のものを組織させるということをふさぐことが、決して何も権利を剥奪するものでもなければ抑止することでもないと思うんです。その道を開いておくことによって、むしろ本来のそういうあるべき姿の努力を放棄する機会を与えておくということに私は逆に言うとなると思うんです。そういうことはつんでおいたほうがいい。
  63. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、そういう別のものを作るようなことが万々起こるまい、それからそういう必要もないと、こういう事態であれば、法律でこれを禁止する必要は、お言葉でございまするけれども、ないんじゃないか。万々起こった場合には、これは先ほども申し上げましたように、農業協同組合の基本方針、基本精神に従いまして、そういうようなものは事実問題として指導で解決すべき問題であって、法律上これを強制しなければ組織に戻ってこないというようなものであれば、農業協同組合の精神自体が根本からくずれてしまうというふうに、私は農業協同組合についてはそういう確信を抱いておるのでございます。
  64. 森八三一

    ○森八三一君 どうも局長また逆におっしゃっていますけれども、私はそういうことであれば、別の組織を作る必要はない。が、しかし、現実はそうでない。だから、道を開くことによっていろいろな問題が起きるということを申し上げているんですよ。
  65. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 協同組合の精神にのっとりまして、協同組合法の運営、それから協同組合活動政府指導、そういうようなものは協同組合法の第一条にありますところの根本精神に従いましていろいろ十分指導して参ります。
  66. 森八三一

    ○森八三一君 その協同組合精神を振りかざされますというと、議論の余地がなくなりますがね。やはり浮世離れした議論をしていらっしゃるという一語でこれは尽きると思うんです。現実はそういうものではないので、協同組合法の第一条が忠実に守られ、それを一貫して流れておる精神が貫かれておれば、協同組合農事組合下部機構として作らなければならぬというようなことまで私は解消すると思うんですよ。こんなことは何も考えぬでも、組合員が部落別に任意に集まってやっておりさえすればいいので、こんな法人化してどうこうなんということはいわないで、ただ、農地を所有するということは、農地法関係一つ問題はありましょう。ありましょうけれども、たいしたことじゃないと思う。そういうことが行なわれておらぬというところに問題があると思うんですよ。そのことをここで幾ら議論しておっても平行線ですから、最後に本法を結論するときのことでどうなりますか、もうこの問題はこの辺でひとつ一応の質疑を打ち切っておきたいと思います。
  67. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 ちょっと関連して。経済局長、今森委員から出ておりますが、あなたは農業協同組合の本来の建前を根本に考えて御答弁なさっておるわけです。しかし、実際農協というものを見ますと、農民のほんとうに自主的な組織として組合員である農民に奉仕の考え方でもって運営しているものと、現実には組合経営安定に主を置いているという、こう二つありゃしないかと思うわけですよ。ですから、本来の建前だけで問題が将来ないとは言えないと思うんですね。むしろ、農協経営安定のほうへ第一の目的を置いてやっているところは、必ず将来私は農事組合との間に摩擦が生じてくるという場合が考えられるわけです。これを私は森先生が盛んに聞いているんじゃないかと思うわけですがね。どうもそこのところが、あなたは農業本来の建前ばかりとらえて答弁しておるようですけれども、現実問題としてはそうじゃない。まあこういうように私は考えているわけですが、どういうことですかね。
  68. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、現実問題としてはいろいろ問題があろうと思います。ただ、お言葉でございまするけれども、農協経営安定のために仕事をやっていく、こういうような場合におきましても、それはそれがひいて農民の利益になるんだ、組合員の利益の増進になるんだということでなければそれはやれないと思います、実際問題として。私は、そういう農協経営組合員を離れて農協を離れて農協経営安定のために仕事をやるというようなことは、現実に今進歩して参りました農民が許さんと思います。それが現実に両方が一致をすべきものがほんとう農協でございまするので、そういう点は、そういうことで農民の不満が非常にありまする場合には、そういうものをやはり指導によって、農協の基本方針、基本精神に従って指導によって直していくべきものじゃないかというふうに考えておるのでございます。いろいろまあなんでございまするけれども、たとえば子供をしかる場合にも、なんか悪いことをした場合に、縛りつけてしかるか、あるいはほんとうにまわりから薫陶をして育て上げていくかという問題と同じ問題じゃないかというふうに私は考えておるのでございまして、農協というものは縛りつけて指導して参るべき問題じゃない、あくまでも自主性を生かしてそこで指導によってりっぱなものに育てていく、こういうことが農協法の根本観念だろうと思うのであります。
  69. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 その農協根本観念はわかっているわけですよ。農民の自主的組織でもって農民が資金を出し合ってそれから流通から製作の問題ですね、それで共同の利益を享受しようというこういう組織だということはわかっておるわけです。しかし、これは学者の間でさえ農協というものが資本主義における上からの吸い上げパイプの機関だというように解している人もあるし、あるいは、農民の大衆団体としての民主的自主的な運営をするんだ、それで奉仕していくんだという、こういう考え方が二つあるわけです。現実にそういう意向が国内でもなされているわけですね。ですから、やはり将来農協のそういう二面的な性格が地域によってありとするならば、当然それは農事組合に対してのいわば摩擦は必ず出てくるだろうと思うんですよ。この間も、あそこに部長がいますけれども、たとえば将来共同利用施設について農協農事組合との間において問題が出てくる、こういう場合が想定せられる。ところが、それは自分の資金でやるならいいですけれども、たとえば小さい村で農事組合共同利用施設を村の補助金でやりたいという場合が出てくる。ところが、農協は、本来のおれのほうの仕事だから農事組合はやっちゃいかんといういざこざが村で出てくるのはあたりまえですよ。そういう問題だって考えたときに、あまり農業協同組合本来の建前ばかり主張して問題をとらえるということは、私はこれは相当慎重にかまえなきゃいかんだろう、こういうように思うわけです。
  70. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 私がお答え申し上げておりまするのも、抽象論で考えておるわけじゃございませんで、現実の問題としては私ども承知をいたしておりまするけれども、それを矯正し、りっぱに育てていく場合に、法律で縛る手段をとるか、現実に指導という面で農協精神にのっとって指導してそれを直していくようにして、農協をりっぱにしていくかどっちかという問題であろうと思うんです。ですから、そこで私どもの考え方としては、農協法の建前からいいましても、これを何もかも法律で縛らなきゃ農協というものは農民のために動かないんだと、こういう考え方でこれは指導したくないというつもりで考えておるわけでございます。
  71. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) それでは、暫時休憩いたしまして、午後は一時半から再開をいたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後二時三十八分開会
  72. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案衆議院送付の二案を一括議題とし、両案の質疑を続行いたします。  御質疑の方は、順次御発言を願います。
  73. 森八三一

    ○森八三一君 午前中に農事組合組織上の規模の問題について質疑を申し上げましたが、規模については一応五人以上という制限はあるが、その他に制限はないということに関連して、農業協同組合と農人組合との事業の混淆と申しまするか摩擦と申しますか、そういうことが非常に心配になるので、農事組合の行なうべき事業について、何らかの制限を加えておくべきではないかというようなことがありましたが、それは建前上、自由に、自主的にきめさせる、同時に、農業協同組合ほんとう組合員の信頼を集めるような組織になれば、そういうようなことは解消するであろう、またそういう方向に持っていくべきであるというようなお答えでありました。私の現実に見ておりまする農村の実態とは非常に違うと思いますので、これ以上平行線の論議を繰り返しましても、同じことを往復するだけですから、その問題は一応その程度にいたしておきます。  そこで、農事組合組織については県とか町とかいうような区域を離れて意思の疎通する者だけが五人以上集まって作ればどういう姿のものも認めるということでありますが、それを形式的に飛躍して考えますと、一村なら一村、あるいは一郡なら一郡というような農民が全部会員となり農事組合設立ができるということになるんじゃないかと思うのですが、そういう場合は一体どうなるのか。
  74. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 御指摘のとおりですけれども、法律論としてはいろいろの議論があろうと思いますけれども、ここに農事組合法人は次の事業を行なう。農業にかかる共同利用施設設置または農作業共同化農業経営、こういう事業事業としては考えておりまするし、それから一応機構といたしましては農業協同組合正会員として入れる、あるいは准会員として入れる、こういう考えをしておる、そういう全体の性格から考えますれば、そういうことはこれは法律論としていろいろ理屈を言えば当然全国のものを作ったっていいじゃないかという議論も出るかと思いますけれども、実態としてはそういうものはあり得ないと考えます。
  75. 森八三一

    ○森八三一君 私も農事組合の行なう事業のうちの農業経営に関する事業につきましては、非出資組合にはこれは認めておりませんから、出資組合農事組合でありますればお話のように実態としてそういうようなものも生まれてくることはなかろうとは思いますけれども、非出資組合にして設備の共同利用だとか共同作業だとかいうことは非出資組合でもやれますので、そうなりますと一郡なら一郡を区域とする非出資の農事組合を作って、それが脱穀なり調製なり、あるいはトラクターなりというような作業の一部を共同化するという意味において実態としては農民の利益なり農業経営の発展をはかるという考え方ではなくて、一つの業ですね、営利事業のような形を農事組合組織に求めてくるというような危険が起きるのではないか、現に農村では個人が脱穀調製等の設備をいたしまして賃びきをやるとかいうような実態が存在しておるのですね。今度は非出資組合であれば組合員としては何も直接に利害関係が結びつくというわけでもありませんから、一応判こをついて下さいといえば判こをついて組合になってしまう。そうしてその組合農事組合を運営する衝に当たる人が今申し上げたようなことをやり出す、そうすると農業協同組合との間に非常な摩擦が起きるという感じを持つのです。それは農業協同組合のほうが組合のためにしっかりやっておるのだからそんなことは起きぬとおっしゃるかもしれませんが、そういうような仕組みになりますると比較的能率の上げやすい地点だけをちょいちょいとつまみ食いしてその仕事を遂行することが可能なのですね。組合員からいえばけしからぬと言ったって、出資もしておらぬのだし、別にたいした関係はないというようなことで問題が提起されるおそれがあると思いますが、そういうことはお考えになりませんか。
  76. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) いろいろそれはそういう場合を無理に考えればそういう場合もあるかと思いますが、御承知のように、農村の実態から言いますれば、協業をやろうとか共同利用施設をやろうとか、そういうようなことを考えるのに、先ほどどなたかの委員からも御質問ございましたように有限会社とか何とか、そういう格好じゃまずいから何とか組合とかそういう格好でいけるようにやってほしいという要望実態でございます。そういうあれからいえば、県単位にもみすりをやるとか精米をやるとかというようなものがあり得るとは現実としては私どもは考えられないと思います。かりにそういうことができましても、たとえば農事組合法人にはいわゆる農協のように共同販売とかそれから共同購買とか、そういうようなものは禁じてありますから、そういうことはできないことになっておりますから、ですから、組合員の一部についてはある程度やれるかやれぬかという問題につきましては、午前中にいろいろ御意見がございましたけれども、一般的に組合員以外のものについてはそういうことをやることは考えられませんので、非常に広範囲にそういうことを考えましても現実問題としてはできないのじゃないかと思います。そもそもの考え方農業協同組合員の下部組織というようなつもりで考えているのでございまするし、そういう意味で今後も指導して参るのでございますから、そういうことを無理に考えて考えられないことはないと思います、おっしゃるとおり。しかし、現実問題としてそういう問題が起こるというふうに考えること自体が非常に何といいますか、農村の実態から離れた考え方になって参るのじゃないかというふうに私どもは自分でも反省をしているのでございまして、現実の姿で考えていって、そして実態に合うように指導も加えていく、こういうことで進めていく問題ではあるまいかというふうに考えているわけでございます。
  77. 森八三一

    ○森八三一君 私の見方がひがんで逆の場合だけを取り上げて言っておりますから、まっ正面からこの農事組合を作らせようとする純心な意図から考えますると、非常に毛色の変わったことを申し上げているようにもお聞きになると思うのです。また局長のお答えもよく理解できます。できますが、戦後における農村の実態というものはわれわれが今ここで議論をしているような姿のものではないのだ。現にそういうような営業的な存在というものもあちこちに存在をしている。しかも農事組合組合員だけを対象とするのじゃなくて、その設備が遊休している場合にはこれを他に貸付するということも認めているわけですね。だから、農業協同組合の場合でありまするというと、今引例いたしましたような設備などについては原則として組合員だけの利用に供しなければならぬという制約がある。もちろん農事組合の場合も原則はそうでありましょうけれども、その辺の解釈が今までの御説明どうかというと、かなりゆるやかに解釈されているようにも思う。そういうことから今の営業的な施設の共同利用農事組合の形において行なうというものが私はかなり考えられてくるのじゃないか。だから、そういうような農事組合にしても出資の形をとれば、その点は相当矯正されると思いますが、なぜ農事組合の中に出資組合と非出資組合を考えなくちゃならぬか、その二様の形を考えなければならぬ理由は一体どこに存在しているのですか。
  78. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) その点は先ほどからもお答え申し上げておりますように、出資をしても出資をしなくても、法人格を持っても持たなくてもとにかく農村の実態に応じて共同化といいまするか、協業の実態に応じましてすぐ組織が作れて、そうして農業の協業にも資すというように、こういう建前で考えたわけでございまして、これを全部出資でなければいかぬとか、あるいは全部法人格を持たなければいかぬとか、こういうようなことで縛ってしまうことは農村の実態と遊離をするのではあるまいかというふうに考えております。
  79. 森八三一

    ○森八三一君 おっしゃることがわからぬわけでもありませんがね。今私がここで例示をして質問をいたしておりまするような心配が実際問題として発生してくるのじゃないかと思うのです。現にそういう事例が農村には相当行なわれております。もみすりなんかはある一つの業者が施設をして、そうしてずっと巡回をしてやっているという例はありますわね。それから耕作にいたしましても、特定の人が相当大型のトラクターを自分で施設をして、そうして他人の求めに応じて耕作をしておるというような、賃耕作といいますか、そういう事例が農村には現実の存在としてありますね。それが今度農事組合の仮面をかぶれば、農事組合の形においてそういうことができる。組合員は、非常にその認識が足りないといえば認識が足りないということでありますけれども、ただ判を押しさえずれば、農協をいつも利用してもいいし、こういうような業者を利用してもいいし、どっちでも自分の選択でやれるというので、安易にそういうような組織というものが生まれてくる危険がある。その場合に出資——施設をするような場合に資金が要るんですからね。そういうような資金を要する施設をするような農事組合については、これは出資組合でなければならぬ、こういうようにしておきますれば、そういう形を変えた農事組合というものが生まれてくることを防ぎ得ると思うのです。その辺をやはり考えてやったほうがいいんじゃないんでしょうか。
  80. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、共同利用施設、あるいは農作業共同化というようなことをやります場合においては金がかかる、あるいは施設を入れるためにどうしても金が相当要るんだから、出資しようという場合には、これはもちろん出資組合でやってもいいわけであります。ですが、金がかからない場合もありますので、そういうような場合にはしいて出資組合にしなくてもいい、こういう法律上はどちらでもやれるようにしてあるわけでございます。しかし、御指摘のような、たとえば賃貸しをやってずっと料金を取って歩いているというようなものは、それが営利的なというお話がございましたけれども、かりに営利的なものをそういうような形でやるということでありますれば、これは農事組合でございません。ですから、これは農協法にもありまするように、農事組合法人農協一環として非営利法人であり、いゆわる中正の法人でございまするので、これについては税法上の特例とか、そういうものを、みんな恩典を与えておるのでありまして、それが営利のために、そういう実際営利に当たるようなそういうようなことが行なわれるようなことができれば、これは農協法にいう農事組合ではないと思うのでございます。しかし、現実問題として、農協のいわゆる精神に沿いまして、そうしていろいろな共同利用施設をやって参ります場合に、農協なら農協の手が回らないものが、手の回らないところを農事組合法人のような姿で共同利用施設が行なわれるというようなことがありますれば、これは実際には非常に農村のためには有利に——有利というか、利益になってくることじゃあるまいかというふうに私は考えるのでございます。
  81. 森八三一

    ○森八三一君 非常にすんなり考えますと、お話のとおりだと思うのです。けれども、現在の農村の実態なり、農民の心理の実態を考えますると、申し上げましたように、個人の営利事業と目されるようなものを形式的には農事組合に仕組む。そうしてその組合員中から労務をもちろん提供させるのですから、本来であればそれは雇い人ですわね。そいつが今度は組合員たる立場で労務を提供して、その労務の提供に対して賃金を払うということは、これは農事組合で認めておるのですから、形をかえた労働者ということになるのですね。そうして実態的にはその専業の仕事をやっていくというものが出てくる。それが農協との間に事業上の摩擦をきっと起こすという感じを私は持ちます。が、これはそういうことにならぬように指導をしていきたいということで逃げられておれば、これはいつまでたっても平行線ですから、時間の関係もありますので、そのことはその程度にしておきましょう。  それで、大体農事組合に関しまして今までずっと質疑をして参りましたことで、私の杞憂いたしておりまする、心配しておることが現実の問題として現われてこなければ非常にしあわせではありまするし、そういうように指導を願いたいと思いまするが、農事組合がいよいよ生まれてくるということになりまするというと、今まで二日にわたって私が質疑いたしましたような問題が現実の姿として出てこようと思いますので、これにつきましては、どういう方法で御指導なさるのか、非常にむずかしい問題ではあろうと思います。指導したってきかないやつを縛りつけるわけにいかぬのですから、非常にむずかしい問題はあろうと思いますが、しかし、趣旨がどこまでも農業協同組合の下部組織としての存在であるという実態を失うことのないように十分注意をしてひとつ御指導を願いたいと思います。
  82. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 再々いろいろ御指摘になったようなものは、実態としては私どもはよくわかっている問題でございます。ですが、この法律を作りまする場合におきましても、農業協同組合ほんとう指導機関でありますところの全国農業協同組合中央会の幹部の方々とも十分いろいろ話し合いをいたしまして、中央会の幹部の方々は、初めのうちは森委員のおっしゃるような非常な不安を抱いておりました。そうして何とか農事組合を強制的に農業協同組合強制加入にしろということを盛んに言っておったのであります。しかし、それでは農業協同組合としては邪道ということをよく説明をいたしましたら、全国中央会の人々もその精神がはっきりよくのみ込めまして、それでとにかくその気になって、自主的な団体として指導を充実していこう、こういうことで全面的に理解を得まして、その態勢をとっておるのでございまするので、十分私どもといたしましても協力をいたしまして、指導に万全を期したいと思っております。
  83. 森八三一

    ○森八三一君 その次に農協法の改正に関連いたしまして、信託制度が農地の問題を目途として新しく行なわれるという改正が行なわれるわけであります。そこで、農協の行なう信託の問題に関連いたしましてお伺いをいたしたいと思います。で、この農協が信託を受けました農地を組合員に貸し付ける場合と、売り渡しをする場合と、二つがあるわけですが、貸付をする期間は法律で六年ですか、ということに一応最低年次が規定されておると思います。この期間の設定はどういうような意図から結論せられたのか、そのことをまずひとつお伺いいたしたいのです。
  84. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農地の信託につきましては、御指摘のように、売り渡し目的の信託と、貸付目的の信託がございます。それでこの貸付目的の信託は、所有権を所有者から農協に移しまして、そうして農協がその組合員の構造改善に資するようにこれを貸し付ける、こういうふうなことに相なるわけであります。それで、結局やはり組合員たる農民の構造改善に資するように貸し付けていく場合におきまして、短期間では、経営の安定が、貸付を受けまして農業経営を営む組合員たる農民の農業経営が安定しない、こういうことになりますので、信託期間は一定の期間以上にいたしたい、こういうふうに考えまして、ただいま御質問では法律とこう御指摘になりましたのですけれども、われわれの考えておりますところでは、組合の信託規程で大体六年以上ということにその信託期間をしたい、そうして、少なくともその信託期間六年以上に信託規程で定めるようにいたしまして、それで引き受けまして、そして、その信託を受けました農地を組合員たる農民に農協から貸し付ける場合は五年以上、こういうふうにいたしていきたい。こういうふうに考えておる次第でございます。
  85. 森八三一

    ○森八三一君 その法律で、六年以上の期間で信託規程の中に信託期間は規定をせしめるということでありますが、その以上の、六年以上というところの制限は、これは自由にして、信託をする土地の所有者と引き受け組合との相互の話し合いで別に期間の最高限は押えておらないということに理解してよろしいかどうか。それから最短の六年以上といたしましたのは、私の考えでは、六年というのは少し短いのじゃないかという実は感じを持つものです。信託を受けまして農業構造の改善に資する、利用をするという場合に、六年では、施設をし、生産の計画を立てて、振興の実がまだあがらぬうちに信託契約の期間が満了してしまうということになるので、おのずから略奪農業のようになってしまうのじゃないか、土地を荒廃せしめるという結果が生まれるのではないかという感じを持っておるのでありますが、最短を六年としたことが妥当だという感じはどっから得たのか。上のほうは押えておらぬということは、そのとおり契約ですから無制限だというふうに理解してよろしいのかどうかという問題です。
  86. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 信託規程は農協が定めまして行政庁の認可を得て定める、こういうことになるわけでありますから、貸付目的の信託につきましては最短を六年以上、こういうふうにいたしたいと考えております。で、これから最長のほうは制限ございませんので、この信託規程の中におきまして六年以上ならば任意に定め得る、こういうことに相なります。それから、大体信託期間を六年といたしますと、先ほど申しましたように、今度農協がそれを組合員たる農民に構造改善に資するように貸し付けていきます場合は、大体最短五年ということにいたしたい。これは特に六年以上、五年以上とこう最短をいたしましたについては、これでなくちゃならぬということはございませんが、従来のいわゆる賃貸借契約の実情を見ますと、期限の定めのない小作とか、期限の定めのある賃貸借の期限はおおむね五年というのが大体の実情でございますので、最短五年以上にいたしたい、こういうように考えております。
  87. 森八三一

    ○森八三一君 私のお尋ねいたしましたのは、信託規程を作ります場合に、法律的には最高の制限はないから自由だ。が、しかし、規程は認可を受けるということになるわけですから、その認可にあたって何らかの制約はお考えになっておらぬのか。上のほうは野放しになっているけれども、非常に長期なものはこれを認めないというような、認可行為において制限をお考えになっているのかおらぬのかということであったわけです。それからあとのほうの、過去における賃貸契約等が無期限であったとか、あるいはおおむね有期限なものについては五年程度であったから、過去の実績というか、実情を一応採用したのだということですけれども、ここで行なわれようとしておる農業構造の改善の実をあげしめて参りまするためには、五年あるいは六年という期間は短きに失するのではないか。といたしますると、自然それは農地の改良とかいうことを放棄して、その土地から略奪的に生産を上げていくというようなことになる危険があるのではないか、もしそういう危険が感じられますると、なかなか信託制度というものによって農協に信託をしようとする人が不安を感ずるということにつながってくると思うのですね。荒廃するようになりますると、そこに問題が残るような気がするのですが、そういうことにも十分考慮が払われた結果、五年程度であればそう農業経営実態から見て支障がないのだというような、何か過去の実態からでなしに、構造改善から発する農業経営というものをずばり見て、その程度であれば生産を上げていくのに何も心配はないのだというような別の角度からの認定が行なわれておるのかどうかということなのです。
  88. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) これは信託規程の模範例でございますので、大体最短は六年以上、こういうふうにいたしたいということでございますから、その農協実情によりまして七年とかあるいは十年ということはできると思います。ただ御質問のように、農業改善のあるいは農業経営の上からの五年とかあるいは十年とかというそういう計算ができるか、こういうお話でございますが、これはちょっと、やはりその地帯によって実情が違ってくるかと思います。それでわれわれといたしましては、やはり農協がその組合員の状況あるいはその地帯の状況というものを勘案して、最短は六年以上、こういうふうに定めたらいいのじゃないか、十年でもけっこうだというふうにわれわれ考えておるわけでございまして、先ほど申しました、従来の期間のある賃貸借というのは大体五年ということで更新いたしておりますが、ここの信託契約におきましてもやはり六年ということにいたしまして、信託農地を貸すほうは信託期間を五年にするほうが非常に法律関係はスムーズにいくというふうに考えた次第でございますが、さらに信託期間を実情によっては更新するという道も考えられておりますので、それによって、この農地を実際に賃借しまして農業経営を営む者の経営の安定には支障ないようになったと思います。なお、農地の流動化ということを促進するという意味でございますので、これをあまり、最短を十年とか十五年とか一挙に上のほうに上げていくということになりますと、今度は貸付信託に出すほうの側で非常に困るのじゃないかという事情もございます。一応模範例では六年以上ということにいたしまして、農協実情によっては、これを上げていくことが可能なようにいたしたいというふうに考えております。
  89. 森八三一

    ○森八三一君 最高の場合の指導方針はどうですか。
  90. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 数字的には、これを何年というふうにはしないで、できるだけ長くということで、別に限定はいたさないつもりでございます。
  91. 森八三一

    ○森八三一君 農地の問題に触れて参りましたから、もう一ぺんもとへ戻りまして、農事組合法人が、出資について現物出資として農地を受けるという場合が存在すると思うのです。その場合の評価ですね、出資を現物で出すという場合に、一応金銭的に見積もりをしなきやならぬと思いますので、その場合の評価については、どういうような方法で御指導なさるのか。
  92. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農事組合法人にいたしましても、その他の会社法人にいたしましても、現物出資ということが認められているわけでございまして、農地を出資する、これは通例の場合は所有権を出資するということに相なろうかと存じます。でその場合に、その農地を評価いたしまして、何日の出資口数を割り当てるか、こういうことになるわけでございますが、その評価は、組合員の評価方法については定款でも定められることができましょうし、それから組合員の協議によって評価額を決定する、こういうことに相なります。それでわれわれといたしましてこの農地を出資いたしまして評価する場合の評価額について、農地の価格というむずかしい問題に逢着するわけでございますが、農事組合法人その他の農業生産法人にいたしましても、農業経営を営んでいくということがその目的でございますので、その評価というものについては、われわれが考えております指導方針といたしましては、やはり農業の収益を中心にした価格で評価さるべきじゃないか、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。なお、先般も御指摘がありましたように、時価で評価するか、収益還元の価格で評価するかという問題があろうかと思いますが、農業経営をやっていくという法人経営の立場からいうと、収益価格で評価するのがいいのじゃないかというふうにわれわれは考えております。しかし、これはどこまでも、やはり組合員あるいは社員を中心にした協議によって決定さるべきものだ、こういうふうに考えております。
  93. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、今お話で、現物出資の場合にその農地が金銭的に換価される、その換価される場合の措置としては、収益換算価格を採用する場合と、その地方における農地の売買の実態をとる場合と、それはいずれの場合といえども、定款に規定するなり、あるいは組合員間の協議に基づいて計算をさせるということで、一応問題はその限りにおいては解決すると思うのです。それと今度は、その農地の評価価格というものが、農事組合法人設立に伴って明確になってくるという関係から、固定資産税の評価その他にどういうような関係を持ってくるのか、私は法律的には何ら関係はないものと思うのです。けれども、実態的には、そういう税の問題がここにからみ合ってくる危険を感ずるのですけれども、そういうことについてはどうなりましょうか。
  94. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 固定資産税のほうの問題は、固定資産税の評価方法によってこれはやって参りまするから、それは出資の場合にどういうように評価をしていくかということとは関係なく扱われると思います。
  95. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げるように建前が違うのですから、そこに因果関係はないということは、現在の税法上その他の建前からよく理解しておりますが、農事組合というものが、全国的に全部落なりに設立されてくると、そうしてその農事組合の大部分というものが、おそらくわれわれが考えておるようなものである場合には、現物出資のものが多くなると思います。その場合に、その現物の農地の評価が、時価で行なわれるというようなことになりますると、おのずから直接の関係はなくても、何とはなしに固定資産税の評価、固定資産税の基準となる農地の評価方法等に、それが自然にしわ寄せをされてくるというような感じが出てくるのですが、そういう危険は絶対にありませんというところをどこで押えられるかということなんです。
  96. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そういう危険は絶対にないようにしたいと思います。で、固定資産税の評価は、別の建前でいろいろな評価をいたしておりますから、この点は、もしそういう問題があるようであれば、大蔵省と農林省と一緒になって、税務署のほうにそういう扱いをはっきりさせるように通牒を出して、税務署を指導するようにきちんといたします。税務署といいますか、固定資産税でございますから一応地方公共団体でございますので、これは自治省ともいろいろ話をして、きちんとそういうことのないように行ないたいと思います。
  97. 森八三一

    ○森八三一君 お話のとおりだと思いますが、実態は、固定資産税についての評価が、漸次固定資産税率そのものは軽減される方向にあるとしても、評価基準については、漸次、時価主義といいますか、時価に近づけていこうという方向が、これは僕は現実の姿だと思うのです。ところが、今言ったように、農事組合を作るときには、もともと零細農家ですから、現物を出すといったって、そうたくさん出す余裕があるわけはないのです。それが外部に金銭的な信用を確保いたしまするためには、出資の多きを望むというか、多い出資を確保したいという気持になると思うのです。自然そこで評価についても、最高の評価が行なわれてくると、それがその時価だ、地方の売買の実態だ——それで組合員も全部納得しておる、それが通例である、こういうことになりますと、今の固定資産税のほうで、建前は違います、これははっきり承知しておりますが、そういう事例というものが全国的にずっとこう出てきてしまうと、税務当局というか、地方公共団体のほうでは、そっちのほうへ漸次引っぱっていくという傾向というものが出てくると私は思うのです。その場合に抵抗するといいましても、建前は別だといっても、お前たち自身が評価しているのはそうじゃないか。で、時価主義ということを採用していこうとするなれば、だれも他人が評価したのじゃなくて、お前たち自身が評価したものがそうだというのなら、それにするのがどこに異議があるのだと、こう言われると、どうも建前上それを拒否する手段というものが、私はないのだと思うのです。そこが非常にむずかしい問題なので、これはお尋ねいたしましても、それを法律でどうするこうするというわけにいかぬと思うのです。あとは農林省と地方庁なり自治省の税務関係のほうでの話し合いということになりまして、苛斂誅求はしないということでおさめる以外に手はないと思うのですけれども、その辺が実際のところ問題になってくると思うのですよ。他人が評価したのじゃなくて農民自身が評価したのですから、それだけの価値のものだということになると、その価値を評価の対象にするということが一番すらっと考えると正しい方法なんですね、それを話し合いでやるとおっしゃっているけれども、それ以上お答えを願うといってもお答えは願えぬと思いますが、何かその辺のことについて自治省との間に農林省で何らかの取りきめをしていただくことが、現物出資をもって農事組合を作る場合に、農民諸君に安心を与える大きなあれになると思うのですが、どうでしょうか。
  98. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおりであろうと思いまして、そういう誤解の起こりませんように、十分自治省のほうとは話をしてはっきり取り扱いができるようにしたいと思います。ただ、お話の中に、現物出資の評価の場合に、時価の最高限に評価するだろう、こういうお話でございますけれども、これには出資配当と従事分量配当、利用分量配当、こういうようなものがございまして、それらをいろいろ考えまして、出資配当におきましてはいろいろこれは制限もございまするし、それからその場合には税金の関係等もございましょう。従事分量配当というのは非常にはっきりいたしまして、これは農協のほうでも同じように全部税金をかけない、こういうようにしておる関係もございますし、それから農業経営関係等も考えまして、どういう工合に評価するかというと、必ずしも時価で評価するとは限らぬと思います。いろいろ益をどういう工合に配当するかという問題との関連において考えるというのが実態じゃないかと思います。そういう性格のものでございますから、これはもう全然固定資産税の評価とは性格が違う、この点をはっきりといたしたいと思います。
  99. 森八三一

    ○森八三一君 今、局長は出資配当と利用分量配当なり労務の提供に対して配当するというその農事組合法人の剰余金の配分についてはいろいろの場合が想定されるわけであるので、必ずしも出資を最高限にするために評価を高くするということはなかろうと、こうおつしゃいましたけれども、実際問題として現物出資をして、それが金に換算されて出資証券を受け取ったその組合員加入、脱退自由ですね。農事組合加入、脱退自由だ。そうすると、他日組合を脱退しようとする場合には、換価されておる出資額というものが払い戻しの対象になる、こう思いますが、そうだとすれば、農地の評価というものを内輪にやっておいて、そうしてもし万が一の場合には、脱退しなければならぬというときには参っちゃうんで、そんな甘いものじゃないと、こういう感じを持つんですが。
  100. 酒折武弘

    説明員(酒折武弘君) ただいまの点御説明申し上げます。脱退の場合等の払い戻しの方法につきましては、定款によりまして現物の払い戻し、あるいは金による払い戻し、両方きめることができますので、したがいまして、御質問のような場合におきまして評価をよくしなければ、現金払い戻しですれば結局損をするというようなケースもあり得ると思います。そこで、そういうことをやるのであれば、現物払い戻しということにしたいというのが土地の所有者の希望になるわけであります。現物払い戻しいたしますと、これは残るほうの農事組合法人経営の不安定という問題が起こるという若干ジレンマがあるわけです。そこで、われわれ現実の問題としては、そういう問題がございますから、土地出資という形よりも土地貸付という格好で行なわれるのじゃないか、大部分のものが。そういうような予想も立っております。しかし、そういった点につきましてお互いの話し合いで、これは前々から申しておりますように、非常に人的結合の強い団体でございますから、お互いの話し合いで現物出資というふうな形態もないことはないのじゃなかろうかというようなことを想像しているのであります。
  101. 森八三一

    ○森八三一君 今部長のお話のように、必ずしも農事組合設立して農業経営をする場合には土地の現物出資の場合ばかりじゃない、貸付の場合もあるということは、まあ法律規定にありまするから私も了承はいたしておりまするが、私が今質問しているのは、現物出資を換価した場合にそういう事態が起きる。その場合、組合員が脱退した場合には、換価しているときはその出資額を限度として、もちろん定款の規定事項ではありまするが、出資については行なわれると思いますね。そうすると、今言ったような問題が起きてくるということになるので、脱退組合員が出た場合にはこれは評価を変えて特別にやるなんというわけにはいかぬでしょうし、非常に困った問題が事実上は発生してくる、こう思いますがね。
  102. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、末端で数人の者が集まって非常に人的結合の強いそういう団体でございますので、場合によっては物の評価の問題でございますから困った問題もいろいろあろうと思いますが、しかし、そういうものはお互いの話し合いで片づくというようなことを期待して考えているわけでございまして、もちろんそれは現実の評価をして、評価した形で出資証券をもらっておれば、脱退のときにはもちろんそれはそのままの、評価だけしかもらえませんけれども、その場合には損する場合もありましょうし、あるいは得する場合もありましょうし、そういう点をいろいろ考えて、実際みんながうまく気心があって気持よく協業できるように、そうして自分たちの組合を作ってやっていく、そういうふうに実際に合うように指導をしてやっていく、こういう考え方でやって参りたいと思います。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 その場合に農地の権利を移転する行為が出資の場合にも行なわれますね。それから脱退の場合もまた発生しますね、現物であった場合。そういう場合に税法上の取り扱いは一体どうなりますかという問題ですが。
  104. 酒折武弘

    説明員(酒折武弘君) その場合の税法上の問題といいますと、おそらく譲渡所得税の問題だと思います。これは結論的に申しますと、その場合はかかるということになるわけでございます。
  105. 森八三一

    ○森八三一君 かかるということになるのは現行法ではそのとおりですが、かかることになると思いますだけでは、この農事組合農業構造改善のために進めていこうとする趣旨には沿わないのじゃないか。何かそこに、そういうような事実上の売買をするわけじゃないのですね、形式的にそういう手段を講ずるということなんですから、その場合に何らかの税法上の特典が付与されてしかるべきではないか。それは非常に大きい、農業基本法に基づく農業構造改善という非常に大きな国家目的を遂行する場合なんですから、何かそこに思いやりのある措置というものがあってもしかるべきではないか。ただ現行税法でかかると思いますというつっけんどんなやりっぱなしじゃ、何か情けないような気がするのですがね。
  106. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおりでございまして、この問題は税法の全体の建前を申し上げますると、たとえば固定資産の評価については、先般でございますか、二十八年でございますか、このときに全体の評価をいたしまして、それが一応の基準になっておるわけでございます。相続税の場合なんかにおきましては、それで譲渡いたしました場合に、今の全体の建前からいたしまして、その評価額をこえた部分については、これも譲渡所得税というものをかけませんと全体の税制の体制がくずれてしまう、こういうことでございまして、この点はずいぶん税務当局のほうとも話をして詰めてみたのでございますが、現行の全体の税制の体系からいいますと、これはやむを得ない、どうしてもその点は壁がなかなか破れないものですから、そういうふうなことで考えているわけでございまして、今後の問題といたしましては、十分もっとその問題の実態を見ました上で、よくひとつ検討いたしたいと思います。
  107. 森八三一

    ○森八三一君 私がこの質疑を始めまする最初に、農事組合の責任体制をどうするかということでいろいろ論議をいたしましたときに、何といたしましても農事組合は零細な人を集めて組織される非常に大切な存在である、その存在が目途とする事業を完全に遂行していくために一番大切なものは何といっても資金だ、その資金を確保することについて適切な措置が講ぜられておりませんと、仏作って魂を入れないという結果になる危険があるわけで、有限か無限か保証かという論議を酒折部長といたしたのでありますが、これは平行線で終わっておるのです。が、今税法上の問題から私の希望するような問題が解明されておらないということから、自然姿としては現物出資ではなくて貸付ということになろうと思うのです。そうならざるを得ないと思うのです。ただ形式上所有権が移転するだけで、その移転したことによって生ずる売却代金でほかの仕事をやるとかいう目的じゃないのですからね。ほんとうに離農をして農地を売ってしまってよそへ行って別の仕事をやるというのならそれでいいのですけれども、ただ農事組合共同経営をするために一応所有権を移転するということなのですから、そうすると税法上の問題がそこへくれば自然現物出資になる。現物出資になれば、組合としても形式的な資産というものはございませんから、外部に対する信用力というのはやはり薄いのですね。そこでやはり問題が起きる。せっかく組合を作ったけれども外部からの資金の供給を十分に仰ぐことはできないというところへまた戻ってくるのです。できれば私は将来ともほんとうに結束をしてやっていくためには、農地それ自体を現物出資の形で新しく生まれてくる組合法人に帰属せしめるということが、今後の農事組合農業経営を確実に推進させていくためにも、一つの有力なあれになると思うのです。それが税法上の問題ではばまれるということになっては非常に残念だと思います。今までの過程では税体系上云々ということですけれども、農業基本法を出発として非常に画期的な農村の構造改善についての大事業をやろうというのですから、それくらいのことは、踏み切らなければいかぬのじゃないか。農業基本法の四条でしたか、税法上あるいは法制上、財政上ですか、措置を講じなければならぬなんていうえらい宣言をしておいて、その目的を達するための措置はほかとの並びのことでどうもやれぬということでは、農業基本法の四条か何かの、条章は忘れましたけれども、この目的を達成するためには、税法上、財政上何かの措置を講じなければならないとか、講ずるものとするということをうたっている趣旨からいって、どうも私は平仄が合わないという感じを持つのですがね。これは早急に解決さるべきであると思うのですが、いかがですか。
  108. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 基本法の趣旨に沿いましておっしゃるとおり格別の措置を講じたのでございまするけれども、これは不十分であった、こういうことであろうかと思うのでございます。で、ただこの問題は、譲渡所得税の問題は、御指摘のように、税制全般的の問題ということを私申し上げましたけれども、そればかりの問題でもございません、実際問題といたしましては。たとえば二十八年の評価というものは、たとえば水田で平均的に見ますと三万円くらいの評価になっておりますけれども、それじゃ一反歩の土地を持っている者が、二十八年の評価が三万円であるものを出資する場合に、これを現金でほかの人に十五万円で売って、その金で出資をした場合には、これは当然譲渡所得税がかかるわけです。それから現物を出資した場合に、やはり十五万円の評価をすれば、やはりその差額についての譲渡所得税がかかる。そういうことでございまするので、同じたんぽを持っている者が、金でほかの人に売って現金をもらって、そして現金で出資をした場合と、現物出資をした場合とのバランスも考えてやらなければならぬのですから、ほかの人に売って自分で換価してやった場合には当然譲渡所得税は免れないわけでございまして、そこら辺とのバランの問題がございまして、税制一般論だけではなかなか押し切れない問題もあるわけでございます。実際の運用状況をもう少し見た上で、もっと積極的な解決方法を考えたいと思っております。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、今一つの例を示してお話ありましたが、局長のお話しになったような、農地を他に売却しちゃって、その売却代金で現金出資をしてという場合は、私の申し上げておる農事組合設立趣旨とはちょっと意味が違う場合を引例されておると思うのです。そのことは、いずれにいたしましても、非常に税法上の措置は不十分であるということは言えると思いますので、これは早急にひとつ税全体の問題もありまするし、農林省と大蔵省との関係、あるいは自治省との関係、いろいろございましょうけれども、これを申し上げますような趣旨が実現されるように努力を願いたいと思うのであります。
  110. 清澤俊英

    清澤俊英君 議事進行で……。今の問題、先般私も出して、そこで大蔵省の解釈、非常にどうかと思いまするので、ひとつ大蔵省を呼んでもらえませんか。
  111. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) かしこまりました。手配いたします。
  112. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちょっと来てもらってやったらいいんじゃないかと思うが、農林省からも折衝してもらうが、われわれも意見を聞いたほうがいいと思います。
  113. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) わかりました。御質疑を願います。
  114. 清澤俊英

    清澤俊英君 今の問題、大蔵省が来るでしょうけれども、実は、きょうは、大体小笠原君がお伺いしたい、こう言っておりました。ということは、かりに農地をひとつ投資対象にして、それを実際は今森君が言うとおりに、実際は売るのじゃないが、法人の形成上一応売ったという形をとる、そういう場合のことが非常に問題にこの間からなっている。そこで農地価格というものをどういうふうに見ていかれるか、今聞いていると十九万だとか、十三万だとかいう話になっておりますけれども、どういうような評価をするのか、こういう問題なんです。
  115. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農地価格につきましては、御質問のように、いわゆる流通する場合の時価と、それからわれわれが農地を買収する場合に算定をいたしておりまする収益を中心にした、国が農地法上買収する場合の収益を中心とした価格というものがございます。それで御承知のように、農地法になりましてから地価の統制というものがなくなっておるわけでございます。それで結局流通価格というものがあるわけでございまして、これをもって出資の価格にするか、あるいは国が買収の際、今算定しております収益還元方式でもって算定している、いわゆる収益価格というものでもって出資の評価をする、こういう問題があったわけでございますが、それについては先ほど森先生からも御質問がありましたように、これについては定款で評価額をきめる、定款で評価額をきめて、そしてそれによって出資口数を与える、こういうことになるわけでございますが、定款できめる場合には組合員あるいは社員がよく協議しまして、実情に合った評価をいたしまして、それによって出資口数を幾ら与えるかということが定款に載せられる、こういうことになるわけでございます。
  116. 清澤俊英

    清澤俊英君 実情に合ったというのはどういうことなんですか、実情に合ったというのは。
  117. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) その農業生産法人経営の問題も考え、それから先ほど議論になっておりまする税金等の問題もあろうかと存じます。そういった問題等も考えながら、最も適正なところで相談ずくできめていく、こういうことになると思います。
  118. 清澤俊英

    清澤俊英君 一般的に農地の価格というものを考えますときに、それを収益中心の価格と、それからいろいろ時価の価格とありますが、私は投資している場合には収益だけの価格でいいんじゃないかと思っている、収益価格だけで。一と申しますのは、大体収益価格のほかにいろいろの価格の構成があるということは、まあ土地を売る場合に小作権というものを相当強く見ている、小作権を、耕作権ですね、こういうものを含んでいる。場合によりますと自分の持つ耕作地に、割合において、売り払います割合において自分経営権と関係が出てくる、こういう場合には生活権ともまた結んでくる。だから、最近の工場ができる、あるいは工場敷地で土地が入り用だというようなときの交渉になりますと、同じ土地を売る場合も、甲の人は全耕地、全体がなくなる、乙の人は一部分である、こういう場合にやはり価格がみんな少し違ってきておる。まあ組合等ができておって、強い体系のできておる農民間には、そういうものがはっきり出てきておる、そういうものからいうと、実情に即してどうとかいうことはおかしい話と思うのです。私は最低限の、農林省がきめた最低価格でやはり出資額とすべきだと思う。ということは、自分が持って、耕作権を持って、それをやはり耕作していくんだから、利用していくんですから、何も利用権を形に出す必要はない、そこに残っているから、そういう点はやはりはっきりしてやっていったほうがいいのではないか、こう思われます。
  119. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のとおりだと思います。農地価格につきましては、農業経営を目的として、農民から農民に移る場合の価格と、それから農地が農地以外のものに転用される場合の価格と、それからその中にも、工場とか宅地になる場合と、工業用地になる、いろいろ提出いたしました資料にございます。それからもう一つ、先ほど申しましたように、政府が買収するときの土地収益を還元した収益価格というものがあるのです。先ほど森先生の御質問にもお答えしましたように、農業の生産法人はやはり農業経営を目的とする、そういった関係から、土地の評価につきましても、経営の安定等を期するという意味においては、収益還元で評価されるのが妥当ではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。これについてこうあるべきだということについては、農民間のいわゆる農業生産法人法人を構成いたしまする農民の協議によって決定さるべきだとわれわれは考えておるわけでございます。そこのところは非常にむずかしいところでございます。
  120. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは実際そういう形でいけばいいでしょうけれども、事実問題はそう問題はうまくいかない、そこへまかしてしまう、あなたのように、その作るべき団体によって、そこのところは定款でもって作るというのは、上手にやったらいいではないかということは、こういうものをやるとき非常に注意が私は要ると思うのです。これは先日の私のあなたに対する質問で、構成員が制限せられているとか、あるいはそれを中心にした持ち口数が制限されているとか、そういうものが中心になって大体がきまるのだと、こうおっしゃるけれども、実態はなかなかそうはいかない、実態の現実の動きはなかなかそうはいかない、まだそれでも、農業協同組合方式による事業組合である場合には、現に耕作する農民が構成員になるのですから、これはそうひどい間違いはないと思いますが、これがひとつ会社法人のほうになりますと、私は非常に間違いを起こすと思う、それがおそろしくて、農地局長先ほどもお話があったように、まだ管理部長でおられた時分からこの問題が出たのです。私が三浦さんに質問したときは、どうも農業法人というものをやると、今の自作農の精神がくずれる、こういうことで反対しておられた、それからその考え方が、今のところ見ると非常に後退して危険性が増大していると思うのです。ただ構成員の実態、構成員の実態と言われるけれども、現実はそう簡単にはいかぬ、こういうものは。
  121. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のように、農業生産法人法人形態で農業経営を営む場合の農地法上の取り扱いについては、一昨年ごろから非常に問題になりまして、法律制度の問題として考え、また第一回の農地法の改正等も暫定的に農業生産法人を認める場合の要件、適格法人というような名前で考えたわけでございます。今日農業基本法ができました段階におきまして、その基本法を具体化していくための農業生産法人というものにつきまして、御指摘のように農地法の基本理念でございまするこの農業の労働に従事するいわゆる労働の成果の公正な協議ができるように確保する、こういう点。それから、農地改革の時代のいわゆる古い型の地主の発生を防止する、あるいは法定小作料を脱法するようなことにならないように、そういった法人についてのおそれがある、そういう点を先ほどから御説明いたしておりますように、農業生産法人の六つにわたる要件、こういうものがそろったときに初めて農業生産法人農地法上の権利主体たることを認める、こういうふうに考えておりまして、こういうふうに非常に厳格な要件を付して、そして農業生産法人農地法上の権利主体たることを認める、こういうことにいたして、いわゆる古い型の地主制度の復活というような農地法が最も基本的に抑制いたしております地主の発生を押えるということにいたしまして、今度農業生産法人の制度を開いた、こういうことに相なると思います。それで農地価格の問題等についても、望ましいのはやはり農業経営を中心とする法人であるから、農業収益を中心にした価格であるべきであろうとわれわれは考えるわけです。しかし、これについても先ほどから藤野先生からも御指摘がありましたように、出資した場合に、脱退する場合、あるいは換算した場合の今度は現物出資の場合でございますが、現物出資の場合は返るという保証はない。これは定款等にいろいろきめなければならない、そういう問題とのからみ合わせにおいて農地の価格をいかに評価するかということが、やはり組合員の自主的な相談によって決定さるべきではないか、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。一々それらをみんな政令できめずに、ほんとうによく組合員が相談してきめたい、こういうふうに考えております。
  122. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうすれば、今小作料の問題が出ましたね。かりに信託、貸付信託を契約して、そしてその際に取りきめられる小作料というものは農地法上の小作料ですか。貸付信託に提供しますでしょう。そうすると、それを貸し付ける場合に、だれかに貸し付ける場合に、小作料というものは当然入るだろう、貸付料というものは当然入るだろう。それは現行農地法上の制限小作料になりますか。
  123. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のとおりでございます。
  124. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは、その法律基準はどこにありますか。
  125. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農地法上の基本でございまして、農協が貸付信託によりまして所有権を取得した農地を組合員に貸し付けるわけでございますので、賃貸借になるわけでございます。賃貸借は農地法の二十一条によって定める公定小作料の範囲ということに相なっております。
  126. 清澤俊英

    清澤俊英君 ところが、これは先般NHK教育テレビの座談会がちょっと新聞の「波」に出ているのです。それを見ますと、二十三日夜八時に教育テレビで農地法の改正の問題について小倉さんと磯辺秀俊さん、それと大島清先生と三人の座談会が出ている。ここで農地法改正の要点、農村に与える影響、農地移動の見通しなどが中心に話し合われた。その際大島さんの「土地を農協へ預けて農村を出るものへの土地使用料はどうなるか」という問に、小倉さんが「小作料の制限があるので、その範囲になるだろうが、検討すべきでしょうね」と、こう言っているわけですね。磯辺さんも「経済の動いている時に小作料だけは押えているので、いろんなアンバランスが出てくるんですね」と相づちを打っているのが気にかかった。これでは農民は小作するのが建前のようにも聞こえる。小倉さんも磯辺さんも、農地改革のときは農林省の役人として、それが推進の衝に当たったんだが、当時の考え方は寄生地主の一掃と自作農の育成で貫かれていたはずである。大島さんが案じるように逆戻りの危険があっても、たやすく寄生地主が発生するとは考えられないが、それを防ぐ法的措置の必要なことなど三人一致した意見として出てきてもよかったと思ったことである。こうなっているのですね。だから、非常な危険性がある、この点で。何かそれを考え違いしているかどうか知りませんが、もう実際に問題として小作料二石ぐらいでやみ取引でどんどん土地が売れている、動いているのです、現実に。そういう問題が出てきている。これはきょうも農民関係の人がいろいろな関係で陳情に見えております。だから、農地法にそういうようなことがかりに規定してあるとしましても、これはやはり法律の上なりなんなりの上において、農民の中でもう一度はっきりしておく必要があるのですね。信託制度に対する貸付小作料はこうなんだ、これをこうしてはならないならならないとはっきりさせておく。ここでやはりそれがはっきりすれば、信託する人も考えるだろう、貸付信託をやる人も……。
  127. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 法律二十一条で、公定小作料は省令で定めると、定めるその範囲でなくちゃならぬということに明確になっているわけでありまして、農協組合員に賃貸する場合も賃貸借であることには間違いないわけでありまして、それが公定小作料が適用されるのは法律上の原則でございますから、これ以上明確なものはないと私は考えております。   〔委員長退席、理事仲原善一君着   席〕
  128. 清澤俊英

    清澤俊英君 その場合、農地信託でなければ相対での貸付は許可しないのですね。農民間の相対的の貸付をする話し合いが成立して、そうして僕のうちの土地を君に作ってもらおう、こういうような話で移動することは、いろいろの条件がくっついてきてできないわけですな。
  129. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) この信託制度は、新しい制度として農協を仲介といたしまして、貸付の目的の信託と、売り渡しの目的の信託という制度を開いたわけでございまして、相対でやる場合は、賃貸借の場合もありましょうし、あるいはその他の場合もありましょうし、それは従来どおり、相対でやる場合は三条の許可が要る、こういうことになるわけでございます。今度の信託制度は、農協を仲介にいたしまして、農協に預けて、そうしてそれを農協組合員に売り渡すかあるいは貸し付ける、こういうことに相なるわけであります。従来の相対でやる場合とは根本的に違うわけであります。
  130. 清澤俊英

    清澤俊英君 それでさっきから問題になっておるのは、大体は、その信託の期限は六カ年くらいを基準にしてやると、森さんに答えているように、そうですが。
  131. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 信託期間は信託規程できめるということにいたしております。それで信託規程は、監督官庁の認可を受けて農協が決定する、こういうことになるわけでございますが、その信託目的の農地を借り受けて耕作する農民の経営の安定の上から申しますと、あまり短いのでは経営が安定しないということもありまして、信託期間は最短——一番短い期間、最短六年以上、こういうふうにしたい、こういうことでございます。で、その範囲でそれ以上ならば組合実情によってきめる、こういうことになります。   〔理事仲原善一君退席、委員長着   席〕
  132. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは信託を契約するときの、一件ごとに期限はきめていいのですか。農協が信託契約をするとき、事情によって一件ごとに大体六年以上という目安できめていいのですか。
  133. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 甲の農民が自分の農地を信託する場合に、何筆かあります農地を一括して信託に付する場合に、一括してこれを六年以上ときめる場合もございましょうし、それからA、B、Cと三筆ある場合の農地を、Aについては六年以上、Bについては十年と、そういうふうに信託契約できめ得る場合もあると、こういうふうに考えております。
  134. 清澤俊英

    清澤俊英君 そういうことを一件ごとにという考え方は、かりに実際耕作農家が労働力が欠けてきた場合がありますね、大事な労働をやる人が欠けてきた、だから子供が大きくなるまで六年なら六年、七年なら七年、途中だれかに預かってもらいたい、あるいは考えられる筋としては、多分六年くらいにしておくが、実はこういう仕事があって、東京のほうへ出かせぎに出る口があるのだから、当分の間ひとつ預かってくれ、そのうちに、まあ筋を変えて売り払いをお願いするかもしれないがと、いろいろ筋がありますから、だから信託契約を、一件ごとに、一つの土地ごとに全部そうするなら期限は変えていいのですね。大体六カ年以上とは書いてありますが、場合によっては三ヵ年でもいいわけですね。
  135. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 最短六年以上と、こういうふうにきめたいと、こう思っております。だから、その最短六年以上ならば甲の農民が持っておりまする土地について、先ほど申しましたように、A、B、Cと三筆あれば、Aについては六年、Bの土地については十年、こういうふうなことは決定できる。ただし、その三年以上というような、六年から下がることはできないようにいたしたいというふうに考えております。
  136. 清澤俊英

    清澤俊英君 それはしかし無理じゃないんですか。たとえばせがれが今、中学に出ている、高等学校へ入っている、二、三年後には十八、九になりますから、大体一番いい働き手になる、それまでの間といったら、三年くらいですが、そういうような事情の場合、六年というふうになったら、これはたいへん不自由を感ずると思うのです。一方において六年以上、十年の場合もいいという何がありまするならば、これは実情に即してまず大体の基本は、六年以上とはするが、特例として事情によってはそれ以下の場合も認められるということが私はいいんじゃないかと思う。これは政令で定められるのでしょう。信託契約というものは、政令でお定めになるのですから、その際のとき、そういうことをちょっと入れていただければ、非常に便利じゃないか、こう思うのです。実情に即するのじゃないかと思いますが、その点、どうなんですか。
  137. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 信託契約は政令、省令の規定じゃなしに、農協が定める信託規程に定める、こういうことになって、それは行政官庁の認可を受けて農協が信託規程を定める、その中に信託契約期間を定める、こういうことになります。それの模範例として六年以上といたしたいということを申し上げました。六年ということについては、先ほどは短いじゃないかという御指摘が当委員会であったわけでございますが、今はこれは長いという御指摘もあるわけです。これは相手方の農業経営の安定ということも考えなくちゃならぬ、こういうことに相なりますので、そこら辺のかね合いで、大体ただいまの農地の賃貸借の実勢が、五年程度が期限になっているわけです。期限のない賃貸借か、あるいは期限のあるものは大体五年というのが文書化されている実勢でございます。五年の賃貸借を最短にいたしたい。それは借り受けて経営をする農家の経営の安定も考えなくちゃならぬ、そういう立場から考えたわけであります。五年の賃貸借期間を確保する場合には、信託期間を六年以内としなければならない、こういうふうに考えた次第であります。
  138. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 清澤君に申し上げます。財務調査官の松井政府委員が出席されましたから、先ほどの税の問題ですね、その他関係官庁が見えておりますから。
  139. 清澤俊英

    清澤俊英君 大蔵省の関係の方に、税金の関係の方に一つお尋ねしたいのです。ということは、この間から問題になっているのですが、農業法人をやるために、一つの、土地の投資体型を作るというのですな、その際に元来ならば貸し付けていいんですね。土地をただ提供して、貸し付けの形で、法人に貸し付けた形で一応いってもいいんですが、それではどうも危険があるというのですね。危険があるということは、途中で脱退でもされたり、あるいは都市近郊においてそういう農業法人等を作りました際に、他から誘惑があって、そうしてひとつその土地を、現在投資している、貸し付けて、そして自分も中に入って、農業法人仕事に従事している、そういう形でやっておりますと、いろいろな、あるいは個人の構成員の一人の利益の関係でプィとやめられるというのです。やめて、貸し付けたのだから持っていかれる、土地を持っていかれる。こういう場合が実際ありますね。そこには、施設投資をやっていろいろのことを計画しているのだから、それがなくなることによって、農業法人全体がきめた計画がくずれてくる。そういう脱退によって基本になる土地がくずれてこないようにするために、かりにこの所有権を譲渡の形で法人に移そうというのです。こういう問題が出てくるのです。だから、これは利益があって売るわけでもなければ、何するわけでもないのです。それにあなたのほうでは、何かその法人に対して譲渡税を課せられる。こういう話が、今出ているのです。これは神奈川県の一つの例ですが、三十万坪ですかの土地を、そういう譲渡形式で法人を作ろう、ブドウ園をひとつ共同で経営していこう、こういう一つの形が出たのです。ところが、これを譲渡税でやられますと、一千万円取られるのだそうです、あなた方のほうへ相談にいったら。これでは全くできないじゃないかというのが、今、問題なんです。そこでわれわれの考えとしては、譲るということは実際は譲渡というのじゃないけれども、一つ法人組織を作って、構造改善をやっていま一歩出ていこうというものが、そんな税金を取られたら、構造改善も何もできやせぬじゃないか、こういうことが今、ここの大問題になっているのです。だれしも考えているのです。それじゃできぬじゃないか、それなら借りてたらいいじゃないか、それじゃ借りていたものを、やめて返してくれと言われたら、これもどうしょうもない、今の法律からいいますと。その危険を防いで健全な構造改善の発達を期するためには、どうしても安全にやるには、一応所有権を移した形が一番安全だ、それに税金を取られる。何もそこにもうけたり損したりする何ものもないのです。これはひとつ、あなたにどうもできるわけじゃないでしょうけれども、税法上どうなっているか。取ると言われるからには、そういう規則があるのだろうと思うけれども、何かそこに問題が残ってやしないかと、こう思うのです。
  140. 松井直行

    政府委員(松井直行君) お答え申し上げます。農業の協業化と申しますか、中小農家が集まりまして農業生産法人を作って、それで生産性を上げていく。こういうときに、現物出資として出します田畑についての譲渡所得税の課税があるときに、そういう育成を阻害するじゃないか。こういう御質問かと存じますが、御存じのように、出資いたしまして新しい法人格の財産になるわけでございます。おっしゃるとおりの農業政策上の要請といいますか、政策というものは、われわれ十分承知いたしておるところではございますが、個人が財産権を出資いたしまして持分権を持つという形は、単に農業法人のみならず、農業法人もちろんそうでございますが、一般の育成を要請されております民間の中小企業、工業、商業の場合におきましても、すべて個人が現物出資いたしますときには、財産権を処分して、かわりに持分権というものの形で財産を持つわけでございまして、そのときに、一ぺん土地なりそういう不動産の清算をいたして、譲渡所得税を取るということが、今の税体系上の原則になっております。で、これは今の農業生産法人の場合には、私、どういう形で具体的になるのか、そこまで構図を描く能力を持っておりませんが、おそらく金銭出資とかいう部分もあるのかと思います。で、金銭で出資をするその場合には、金銭がなければ、持っている財産を処分して、そこで一たん譲渡所得税がかかりまして、税金を払ったあとの金銭で、金銭の形で出資するということになろうかと思います。で、金銭出資者でない人は、現物のままで出資するというときには、今申し上げましたように、金銭で出資する人と負担の公平という概念からいたしまして、そこで一たん持っておった不動産を処分したものとみなしまして、そこで譲渡所得税を取って清算をするということが、金銭出資者あるいは現物出資者、もっと広く都会地におきます中小の商工業法人設立の場合におきましても、同じようなやはり租税負担の公平という概念から、そういう措置をとるということに、税法上の建前はなっております。そこで今おっしゃいましたとおり、この農業政策上の必要性というものは、われわれ十分わかるところでございますが、一たんでき上がった法人につきまして、その法人税の課税等につきましては、特殊な扱いを従来からいたしておりますし、これもそういう扱いを受けるということに予定されておると承知いたしておりますが、そういう法人を作る段階の過程におきましては、一般の大ぜいの納税者とやはり負担の権衡、公平という概念から、従来どおりのわれわれのこういう税制上の立場というものは、やはりくずすわけにはいかない、こういうふうに存じておるわけでございます。
  141. 森八三一

    ○森八三一君 ちょっと用事があって中座しましたので、今の質疑につきましては最初から承っておりませんからわかりませんが、農業基本法ができて非常に所得の格差の存在しておる農業者の経済的な地位、社会的な地位を引き上げるために、農業構造の改善ということが非常に強く指摘されておる、このことはよく理解しておる。理解しておるが、現行の税法上の建前からいって、公平の原則に照らしてさような措置はいたしかねる、御答弁はこういう結論であると思うのです。そういう考え方が、結局私に言わしめますれば、きわめて形式的な理論であって、農村、農業実態を全く把握しておらぬというように、少し極端な表現かもしれませんが申し上げたいのです。ということは、ここに農事組合法人というものを作ろう、そうして農業構造の改善を強力に推進しよう、そのために持っておる農地を一応形式的に換価をして、出資の形に改めるというだけなんですね。実際それを処分してどうこうというのじゃないですね、実態は。ただ形式的にそういう手段を講ずるというだけなんですよ。それがその不動産の処分によって所得があったから課税するという感覚がおかしいと思うのです。そういう必要があるから農業基本法の第四条かにこの農業構造改善という非常な重要な目的を達するために税法上なり財政上なり法制上の措置をとらなければならぬと命じておるのですよ。あなた方が勝手に考えるというのじゃないのです。もう命じておるのです、法律は。そうして予算委員会でも、あの法律を作った当時のこの委員会でも水田大臣も来られて、この趣旨を達成するために必要なことは全面的に協力して推進いたしますということを繰り返し答弁されておるのですよ。もし農業基本法ができても、各省ばらばらで、いいかげんであったのではちっとも達しゃせぬ、ほんとうにこれは政府をあげて協力をすべきだという趣旨から、そういうような質疑が繰り返し各委員から行なわれて、そういう答弁がされておるのですよ。だから、確かにあなたのおっしゃるとおり、税法上の現行建前ではそのとおりなんですわ。疑義なしなんだ。疑義なしだが、それを改めるところに問題があるということなんですよ。改めようとしない態度は結局農村の実態を形式的には知っておるが、ほんとうに眼光紙背に徹するような実態把握をしておらぬ、こういう判断をしても、少し言い過ぎかもしれぬけれども、当たっておらぬというわけじゃないと思うのですね。農林省もそういうことであれば交渉したでしょう、ちっとも話し合いになったわけではないでしょう。あなたのほうで受け付けておらぬというだけだ。農林省がそういう交渉をするということは、農林省では主管官庁として一番よく農村の実態を知っておるから、そういう交渉をしておるのであって、何も筋の通らぬ話を持ち込んだものじゃないはずなんですよ。そうでしょう。これは官庁は違っても立場は同じ国家公務員という立場で、国政の進展に非常な協力をされておるのですからね、そうでしょう。だから、それは主管官庁がかくあるべきであるという主張をした場合には、当然考えていただくことが私はあたりまえだと思うのですよ。あまり公平の原則をがちゃがちゃ言ってるというと、農業基本法が死んじまう、こうなるのですよ。今あなたにこれを追い詰めてみたって、ここでそれはしますなんというあなたに権限もないし、ここですぐずばりごもっともです、この次、やりますと御答弁をいただこうと思いません。そんなこと言える立場でもないのすでね。どうですか、気持は。
  142. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 今おしかりを受けましたが、われわれ主管官庁の農林省を通じまして今おっしゃいましたこの法律の基本的な精神、これが円滑に運用されるために必要な措置等、詳しく検討もいたしました。単に主税局の事務当局の考え方ではなしに、今回の税法改正におきましては、御存じのように税制調査会というので三年間基本的な問題をいろいろ検討して参ったわけでございますが、税制調査会におきましても慎重審議されました、むろんおっしゃるとおりそういう政策を最初からもうむげにけるという態度ではなしに、深くかつまた理解力を持って、こういう問題を考えるという態度で真剣に各委員の中でも論議があったところでございます。しかし、今おっしゃったとおり、この趣旨を生かすために、何はおいてもこのものだけをそういう扱いをしろというお話のように伺いますが、まことに恐縮なんですが、これは税法といいますのは、広く農業者のみならず、商工業者、それから月給取りも、あらゆる勤労所得課税、それから資産が生むインカムにつきましての課税、あらゆる課税原因につきまして、やはり公平を期するというところに税法の根本的な生命があるわけでございまして、そういう広い観点から税制調査会におきましても、大いなる理解力を持って討議をいたしたところだろうと思います。しかしながら、残念ながら現在の段階におきましては、先ほど申し上げましたとおり、その他の資産所得に対する課税の現状と公平の概念から見て、このものだけ特に今回今すぐに、こういう特別措置をとるということは、適当でないという結論に達したわけでございまして、むろんおっしゃること、全然わからぬという、無視するという態度ではございません。こういう立法ができます以上は、理想的な形ができた上、その後の運用のみならず、そういう形を作る過程におきましても今おっしゃいましたとおり、課税上、その他いろいろな問題があると存じます。こういう新しい農業形態を作る過程、それからできてからあとの運営の問題、両方に問題があるかと思いますが、あとの問題につきましては、すでに税法上の手当もございますところでありますが、作る過程の段階におきます資産の譲渡につきましては、今申し上げましたとおり、いろいろ万々の場合、他の、比較におきまして、負担の公平という点から、今にわかにこういう措置をとりがたいという、これは税制調査会におきましても、そういう結論を得たわけでございまして、単にわれわれの偏狭な事務当局の考え方だけから申し上げておるわけではないということを十分お含みおきを願いたいと思います。
  143. 森八三一

    ○森八三一君 あなたのおっしゃることがわからぬわけではございませんがね、そういうふうにお答えになりますと、いろいろ申し上げたくなってくる。ということは、国がどういうことを推進するのが一番この時点に立って大切かということでいろいろな政策が進むわけですね。そこで、一面に輸出貿易の振興ということが日本の置かれている現時点できわめて重大だ、だから輸出貿易の振興については、特別な措置法というものがあって、税法上の軽減が行なわれておるでしょう、これは単に公平の原則からいけば、こんなことはやるべきではないでしょう。一つの国家目的を遂行するために大切なことは、必ずしもその公平の原則だけによっているわけではないと思います。事例をあげろとおっしゃれば申し上げますが、専門家ですから申し上げる必要もないと思いますが、そこで今非常な格差ができて、ほうりっぱなしにできないという時点があればこそ、農業基本法というような画期的な法律ができたわけですがね、その法律の志向する目的を達成するために入り用なことについては、おっしゃるような四角四面な原則だけにこだわってはいけない、税制調査会がいろいろな議論をして、そういう結論を得たとおっしゃいまずけれども、形式上はまさにそのとおりと思います。しかしあなた方が、これはこうすべきだという感覚でもお持ちになりますと、税制調査会のほうではすっとそっちのほうに向いてくるという事例はしばしばあります。むしろ税制調査会のほうでこうだと言っても、税務当局のほうでそういうことをやってはたいへんですと言うと、大体そっちへ運んでいってしまうというのが例でしょう。まあ、審議会とか委員会というものはそんなものでしょう。あらかじめ原稿ができておって、その原稿の了承の会というのがおおむねだと思いますけれども、税制調査会は私は委員をやったことはありませんから知りませんけれども、私がしばしば勤めたいろいろの会合では大体そういうことです。そいつをあなた方がそういう気持になってもらうと、すんなりいくような気がしますが、そういう気持になれませんか。言われれば例をあげますよ、国家目的を達成するために、公平の原則でなしに推進してきておる税法上の措置がたくさんある、それがこれと並ぶものであると私は理解している。
  144. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 私の今までのお答えの荒筋を御理解願った上で、私の個人的な感じ、気持はどうかということだろうと思います。なるほど国が重要施策として打ち出しました政策を完遂いたします場合、それ本来の目的を達するためにいろいろな行政上、あるいは立法上の措置を講ぜられることが多うございます。特に税制が大きな障害になっておりまして、やはり税制上も特別な措置が講ぜられるということになることは今おっしゃるとおりでございますが、すべてのもの、何でもかんでもすべて税制で解決するということではないのであって、本来打つべき手を打ちまして、最後に税についてもこういう面で何とかならぬか、こういうことになる場合が私非常に多いと思います。たとえば特に通商政策、貿易政策につきましてはすべて一切がっさい税の特別措置で解決する問題じゃないと思いますが、そういうものとあわせて税法上の特別措置というものが非常に有効に働くということに相なろうかと思います。そこで、今おっしゃいました農業基本法が目ざしております立法の基本的な政策といいますか、これも何べんも私が繰り返しておりますように、今おっしゃったとおり農業と商工業との格差の是正が非常に緊要なところでございまして、われわれ立法あるいは税務行政両方の面におきましてすでに農業者に対する所得税というものがここ十年間の間に非常に軽減される、納税者の数も非常に減っておるということはよく御承知のことかと思います。農業者をほっておいて商工業者を優遇しておるというよりはむしろ農業者の課税上の優遇をはかるという線に今日まで相当進んできておるということは御了解願えると思います。今回の措置につきましてもそれと同じように何といいますか、同情といいますか、理解といいますか、これは十分持っておるところではございますが、今おっしゃいましたように形式論だとは存じますけれども、別個の人格を作りましてそこに出資をするという形態、こういう形態をとることによって協業化といいますか、あるいは生産性の向上をはかるという分野は単に農業のみならず、商工業にもたくさんあるわけでございます。都会地におきますそうした商工業の協業化といいますか、これも非常に大きな問題でございます。企業基盤の強化といいますか、あるいは資本の蓄積といいますか、そういう面で農業法人に劣らず中小企業法人につきましても同じような要請があるところでございまして、今にわかにこのものだけについて特別措置をとるということは、その他のいろんな要請をかかえております現在といたしましては、今にわかに今おっしゃるとおりの線で割り切るということがなかなか困難じゃないか、税制調査会の各委員方の趣旨もそうであったのじゃないかと存じます。決してこの措置が必要でないとか、農業基本法の精神を無視して論議のあったわけではないのでございまして、この趣旨も十分理解しながら、その他の各般の分野にあります大きな数多くの要請との調整をとりながらこの際どう判断するのがいいのかという立場で税制調査会の結論が出たものと存じております。したがって、この法に対する理解といいますか決して失っておるのでないということをまた重ねてお話し申し上げまして御理解いただきたいと存じます。
  145. 清澤俊英

    清澤俊英君 今ちょっとあなたの説明の中にまことに納得しがたいものがあるのです。この問題を御説明なさる上においては二点あると思います。というのは、第一点としましては農業課税の問題で、全体で今非常にパーセンテージが少なくなっている。これは先般大蔵大臣に言いましたときも、戦後は直税総額のうち三六%であった、農業所得を納めたのは全体の三六%であった。現在はそれが六%に落ちている、こういうお話だ。戦後の三六%というのは、皆さんが御承知の家畜一匹から鶏一羽までかかったのだ。三六%というのは、日本の税金を納めることのできる線がほとんど戦後崩壊しておって、農業課税よりなかったのだ、それで三六%とられたのです。私は大蔵大臣に言うたのです。そのまま今日まで推移しておったら農業革命が起きておりますよ。そんなものでがまんができませんよ。そういう過酷なものをとって、今現在それが六%に減ったとかなんとか言うのは言い過ぎじゃないかと思う。どれだけ不合理なまけ方をしていただいているか。  第二点は、もう国会へ出て参りまして十五年、年に一回は必ずやっておるのです。ということは、農業課税をきめますときに労働力というものを見てないのです。労働力というものを、生産費の中から労働力というものを見てないのです。これは大きな間違いだと私は思うのです。なぜかと言いましたら、普通の生産体系からは、労働力はかければ生産が上がる、これは通常の考え方だろうと思う。労働力をかければ生産が上がるというのは、これは普通の考え方だろうと思う、今の生産体系から見ますと。農村には労働力というものはそういう形をとらないのだというのです。自然条件によって収穫のないところほど労働力はかかる、こういうギャップがある。逆があるのです。たとえてみれば非常に湿田であるとか、あるいは耕地整理もろくにできておらぬとか、山間部の土地であるとか、こういうところになって参りますれば労働力はぐんぐんかかるものだ。そういうものに対して労働力というものを見ないで正当な収益というものは出るわけはないのです。それらのことは一つも直してないのだ。だから無理なものが出ているのだ。これは無理じゃないですか。私は無理だと思うのです。そういうものを全部放棄しておいて、ただ農業課税というものが六%に落ちたからという表現だけでもって、せっかくの構造改善に対する一つ考え方としてお伺いしているものをけ上げ——け上げというのは、われわれが一生懸命、いわば課税問題を何とか考えろというやつを、それはだめだといってぽんとはねておられる、そういう考え方は私はちょっと無理なのじゃないかと思います。農業実態をわかったようでいて実際はわからぬのじゃないかと思う。もっと本気に考えてもらいたい。これは現に非常にあなた方は独断的な考え方をしておられると思うのは、電源開発だとか、あるいは土地がつぶれるとか、公共施設などで。そういうときは金が入るのですよ。買収の金が入るのです。それを全部うかうかしていると所得と見られる場合がある。所得じゃないのですよ。全部じゃないのですよ。場合によりましたら全地域の耕地を失うのだから、失った代償として相当の高い報償料をもらっているのだ。これは次の段階にいくいわゆる報償です。生活を償うための報償です。こんなものに税金かけるのはおかしいじゃないかというので横浜におきまして屏風浦の埋立のときこの問題が出ました。大体多額の金が入るのだから、四〇%か五〇%元来なら所得税を取られる。そんなことじゃ何もならない。そこで県庁と市役所を通じてそういう税金を取られるならその分持ってもらわなければ、別に持ってもらわなければわれわれはこれに応じられない、こういうことでいろいろ折衝しました結果、これはそういう事業転換のものであるならば取りまぜん、こういう話がきまった。取りまぜん。そこでそれはきまりましたが、そのあとでいろいろこれはノリの生産をやっているところでありますから、小舟やいろいろなものを持っている。これを正当価格で全部見積もってかけろというから、そこで委員会で私はそういうものまで認めるのはおかしいじゃないか、要らないものを売り払う、こういうことになったら、あなた方のおっしゃるような正当課税なんというものは間違いじゃないか。バッタで売るだけじゃないか。——バッタがわからないで問題になった。バッタとは何だというから、バッタで売ると言ったら、そこがわからないので問題になった。バッタということは、バタ屋というのは、バタ屋というでしょう。かごをかついで古物を集めているのは、あれは一つの一括で投げ売りするやつ、たたき売りする、これをバッタというのです。こういうものを正当な価格で売るのだから、それに税金かけるというのはおかしいじゃないか。これもやめてもらいました。だから、解釈の仕方によってはいま少し色よい返事があってもいいと思うのですよ。他産業との所得の格差をなくするためにいろいろの金をかけて、そうしてめんどうをしてこうこうこういうことをやっているのだ、構造改善もやっていく、なお、それで足らない場合には、社会的な保障もしていかなければならない、税金の面も十分考えていかなければならない、それは今の森さんが言われるとおりなんです。それが全然考えられないのであって、そうして今までより税金は六%に減ったのだからそんなことは要らないというような御答弁じゃ、全くわれわれは不満にたえない。少しぐらいは——われわれだって無理は言うておりません。何もそれは金が入るとか入らないとかという問題ではない。形成上の問題として一応そういう形をとらなければならない。農業法人という形成を作って、そうしてこれから新しく出発しようとするためにはそういう形をとらなければ困るのです。実際の運用ができないからそういう形をとるだけですから、実際は何ら金も入らなければ何にもならないのだ、それを何か金が入るような一つ解釈だけでやっておられちゃ、これは実際問題として構造改善などはできませんよ。私はそういう点についてもう少し御再考を願いたい。
  146. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連してですが、これは先ほど来清澤委員から提出されておる問題はきわめて重大なんですよ。要するに、なるほど農業基本法は成立し、今その裏づけの関連法律をばだんだん整備しつつある段階でございますけれども、しかし、派生的にこれにからまる課税問題について、これが構造改善が不可能に立ち至る、こういうことを指摘しての御質疑なんですね。私はこれを承りつつつくづく考えることは、これは政府側が農業基本法制定当時にいわれた、根本的に農業の問題については各般の施策について考えるということが考えておられないという結果だと思うのです。だから、ここで私は事務当局と甲論乙駁やったってとてもいつまでたってもらちがあかない。そこで、このことについては私も多くを言いたいのです。そもそもの初まりから長い長い物語になるのでありまして、農業基本法自体それは各党で出して、不敏でありますけれども、私もわが党案をこの委員会説明したこともある。私どもの考え方からすれば、まず政府もその後怠慢でありますけれども、事務当局におかれても、今お答えになったような考え方は根本的に改めていただかなければ、この問題はとても解決できない。税金の体系などということをおっしゃるならば、いささか啓蒙の意味で申し上げておきますけれども、そんならば、今確かに農業者の国税として納める所得税はまさに少なくなりました。確かにそれはすんなりかけても十三億ぐらい、予約減税などがありますとそれは七億かそこらである、それはよく存じておる。けれども、今現在を見れば、そうであるけれども、しからば、日本の工業育成の道に入りました明治維新直後の状態を見れば、御案内のとおり、ほとんど農業者の税金なんです。七五%までは地租であったことは間違いありません。それは地租でありますから全部百姓ということではありませんけれども、しかし、地租の中心の税収ということは農業者の納めた税金であるといって過言でないのであって、一方からは全然取らないものに対して、片方の農業者から取り上げたものを持ってきてそうしてつぎ込んだ、つぎ込む一方であった。ですから、日本の財閥形成史を見ればわかるけれども、土地の払い下げですよ、官業の払い下げ、その三本の柱で日本の財閥もできたんだし、工業の育成もできた。そういうことで今日にきてしまって、それで一方兵士なんとかの供給源は農村だ、こういうわけで、富国強兵と殖産振興を一ぺんにやった。こういうわけです。でありまするから、この際かわいそうな百姓などを助けてやるという観念では何にもならないということを強調したいわけです。そういうわけで、今まで国作りの犠牲になってきたのだから、ここに至って国はその犠牲者である農民のほうに償いをしなければならぬ、そういう謙虚な立場に立つのでなければ、とても農業基本法などが示したところの目的などには合致していかない、こういうことを申し上げたわけであります。それをお話するとほかの各委員に迷惑をかけますから、まあこの程度にいたしますけれども、そういうことからしましても、今日平等に扱われるということは、結果において不平等になると思う。確かに所得税等における軽減は私もずっと大蔵委員をやっておりましたからよく知っておりますけれども、それにもかかわらず、しかし、農業者の生活が一番低いということだけは、これもまた間違いない。時間があるならば全部その数字を申し上げてもよろしいのですが、まあやめておきます。従業者一人当たりの所得にしたっても、都会を一〇〇とするならば、農村のほうは三十五年ですでに三一・三%でしょう。間違いない。こういうわけだから、今日においては、明治維新の当時において片方は全然納めないところにどんどん国費を一方的につぎ込んできた。今度はその逆に、農家のほうが納めないでも、今度は国のほうからつぎ込んでいってもいいわけです。国の政策というものは一つ一つとらえるとみんなそういうことなんです。重点政策といえばそういうことなんです。石炭が危機に陥ったといえば、傾斜生産で戦後どんどんそこへつぎ込んだ。そういうことなんです。それでなければ何も政策なんか論じないほうがいいということなのであって、そういうことで、あまり長くなりますと、各委員質疑におじゃましますからやめますけれども、そういうことですから、私はこの点につきましては、事務当局を責め立ててみたところで、どうしても一定のワクのところで答えるほか仕方がないと思いますので、ぜひこの問題は委員長においてお取り上げになりまして、そうして政府の統一見解を承りたい。というのは、無理な注文をしておるのではございません。明後日でも何でもけっこうでございます。で、今日、私どもの要求するのは、法律自体を少し手直ししてもらいたいのがあるのでありますけれども、差し迫った会期の中で、それがなかなか困難であるというならば、せめて政府方針を、これについては今後大筋として、こまかしいことはもう言っても仕方がない。大筋としてかように考えますというようなことにしていただきませんと、農業基本法関連法律は全部死んでしまう、こう思いますから、ひとっこの点を申し上げておいて、これは関連ですからね、清澤委員のほうへお譲りしなければ悪いから……。
  147. 松井直行

    政府委員(松井直行君) お答え申し上げます。二点まず御質問がございましたが、私、農民のために今まで何か政府が税金をまけてきてやったではないかと、こういう意味で決して申し上げたわけじゃございません。農業生産実態というものをつぶさにながめまして、商工業との格差をなくするという線に沿いまして、農業育成ということにやはり税制の上からも十分考慮を払ってきておるところでございまして、この問題につきましても、やはり同じような理解は持ち、かつ持とうとしていることは事実でございますということを申し上げたわけでございます。  第二点の農家労力といいますか、の課税方法に関する問題でございますが、これもまあ御不満でしょうが、一部専従者控除という形である限度において勤労部分の経費控除を認めるということになっておりますが、その他の農業課税の実際の運営につきましても、農業標準率を作りますときできるだけの考慮を払ってきておるものと存じております。農業課税もこれは日進月歩、何年間か苦労して税務署も現税法を築き上げてきておるところでございまして、農民のために公平な適正な課税負担がどうずれば実現可能かということを一生懸命考えながらやってきておるところだと存じます。最後におっしゃいましたとおり、事務当局の限界ということもおっしゃったとおりでございますが、私自身の気持を言えという先ほどのお話でございましたので、繰り返して申し上げますが、こういう問題がはたして重要な基本施策の一つであるということが間違いないという前提に立った場合に、どの程度のどんな形の税法上の措置をとる必要があるか、それがその他の課税の分野においてどういう支障なしに行なわれるかどうかということにつきましては、単にここ三年間の今までの税制調査会の検討のみならず、この基本法自身の生命を生かす上において一体可能かどうかということについては、やはり深くもう一度検討し直す必要のある問題であろうと、私個人的にこれはそういうふうに考えております。何とぞ御了承願います。
  148. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 この今かかっている農地法の一部改正法案と農協法の改正法案は、これは二回国会を流れているのですよ。それはあなた知っているでしょう。ですから、そういうただいま森委員清澤委員から質問になった課税の問題というのは、これは当然今ここで質問があったからこれから考えるということでなくして、当然大蔵省当局として事前にもっと考えなければいけないと思うのです。それと、あなたのお考え聞きたいのだけれども、ただいまのような答弁だとするならば、基本法の精神に従った農業構造の改善が、一体課税するかしないかということによってはたして達成できるかどうかという問題についてどういうお考えを持っておるのか、ひとつその考え方を聞きたいと思うわけなんですがね。  さらにもう一つの問題として、これは飼料でもそうですが、濃厚飼料を輸入した場合に、それを保税工場内で全部配合資料に作り上げた。その場合、これを全部飼料に使うということなら関税が無税になるわけですね。そういう問題もあるわけです、片方には。ですから、そういうような問題考えたときに、当然税の問題というのは私はもっと慎重を期さなければならぬと思う。こういうように思うわけですが、どうですか。
  149. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 先ほど申し上げましたとおり、われわれ準備なしにここに参ったわけではありませんので、先ほど申し上げましたように、今年の税制改正をやります場合に、三年間にわたって税制調査会というのは設けられておりました。そこでも十分論議のあったところではございますが、本件につきましては、これについて特に措置を講ずるというところまで結論を得ておりませんが、しかしながら、この法律を通して、この目的に沿うとおり生かせるか、何が障害になっておるかということにつきましては、私個人といたしましてもう一度深く検討し直す必要があるのじゃないかというふうに私お答え申し上げたわけでございます。
  150. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと申し上げます。松井政府委員はやむを得ない用事で……。
  151. 清澤俊英

    清澤俊英君 まことに御苦労さんでございました。ひとつよろしく今の意気込みで御検討をしてやっていただきたいと思います。
  152. 天田勝正

    ○天田勝正君 これからどかんと下がってこまかしいところから質問をしていくのですが、今のところは、先ほど委員長にもお願いしておきましたけれども、これはすぐ事務当局というのは、何とか審議会とか、何とか調査会の答申云々でございまして云々と、こう言うのです、これはちゃんと判で押したように。私どもわかっておりますが、それだけ、じゃ、審議会や何かの答申を尊重するかというと必ずしもそうでないので、行政委員会としてちゃんとできている人事院の勧告だって、法律で定められていたって、このごろだいぶ守りかけてきたくらいのもので、かつてはちっとも、守らないほうが普通の状態なのです。そういう点から、農業基本法を制定するときにここで各大臣が御答弁なさった趣旨ならば、それはもう税制調査会がいかが答申されようとも、税制調査会としては税だけのことについて筋なのですから、ですから、こちらはこちらの筋がまたあるのですから、筋がまっすぐばかりじゃない、曲がった筋だって幾らでもあるのであって、そういうことでひとつ、農林省のほうは政務次官以下、坂村、庄野君など、とても押しもかなり強そうな局長が並んでおって、そんなことじゃだめですよ。こういうことをいって、こまかしいことから今度だんだん広げていきまずけれども、いつものとおり私はこれで質疑しますからひとつそう御承知願います。五十一ページ一番末尾の行であります。これは大きい項目は「信託の引受け事業の整備」とこれは前に書いてありますけれども、時間が惜しいですからその前のほうはやめます。やめて、そして末尾の行ですが、ここに言う「信託の引受けの事業の利用分量の計算については、当該信託の引受けを行なう際に組合員又はその世帯員であった者は、組合員として取り扱う」、これはあれですか、「あった」ということは、もともと農協組合員であったはずなのであって、そのあったのがここへきても過去形の言葉を使っておるというのは、信託をした瞬間に農協組合員でなくなってしまった、こういうことですか。なくなってしまったから、この分量計算という時点においては過去の組合員だ、こういう意味か。——そうですか、それなら、そうだと言ってくれればいいのです。私の解釈に間違いがなければ、そのとおりと言ってくれればいい。
  153. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そのとおりでございます。
  154. 天田勝正

    ○天田勝正君 次に、(4)番目の「一般承継人」、この一般承継人というのはどういうものをさしますか。わかったようでわからないのですが。
  155. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 一般承継人といいます場合には、一般的には、法律上はそれを相続したような人をさしておるわけであります。
  156. 天田勝正

    ○天田勝正君 それをさしますか。そうでなく、農業の場合は、一般承継人といったって、資産は分割相続になるので、今のところは農業資産相続の特別という法律がないのでありますから、これは相続権者はすべて相続される。それはだれでもという意味ですか。この際はどうなのです、農業に従事する者という限定があって、かつその一般承継人の相続こういう意味じゃないのですか。
  157. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) たとえば甲なら甲という土地を一応信託します場合、その土地を相続するような人、その土地についての一般承継人、こういうことでございます。一般承継人という言葉は、法律上普通使っておるのでございまして、一般承継人というのは、大体相続人と、こういうような形で理解される、そういう法律上の言葉になっておるわけでございます。
  158. 天田勝正

    ○天田勝正君 私が疑点と思いますのは、そうであろうけれども、私もそういう解釈をするのでありますけれども、この場合にABCと、いろいろな、ここに土地なり、あるいは農業資産、宅地というようなものですね、これがある、そのうちのこの分を私なら私という者が相続をする。しかし農業資産については、やはり耕作権が重く見られておるのが農地法関係からいっても当然の筋でありますから、そこでここに耕作をする意思がなかったり、あるいは過去にその実績がなかったり、そういう場合でも、普通言うように、この場合は一般承継人、こういうことに解釈してよろしいのかどうか。
  159. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 先ほどの言葉が足りなかったかもしれませんけれども、たとえば土地を農協に信託に出します、その信託の契約上その信託の契約におきましては、たとえばこれを売った代金をどういう工合にもらうとか、あるいは貸した場合にどうするとか、いついつ返すとかいうような契約があるわけでございます。信託契約、その権利義務を引き継ぐ、そういうものを一般的に引き継ぎます者を、これを一般承継人、こういう工合に言っているわけであります。
  160. 天田勝正

    ○天田勝正君 五十四ページ、(7)ここに信託の終了のことがいろいろ書いてあります。その三行目に「委託者が解任されたとき、」とあるけれども、これはまあ少し舌足らずで、委託者が受託者を解任したときという意味だと思いますが、違っていればあとで直してもらって、そうするとここに心配になることは、今の舌足らずの問題ではございませんで、ある個人がある農業資産を信託をしようという場合でありましても、これは受託者のほうがそれを辞することができるわけですね。そういたしますと農業資産などは金銭ではありませんから、遠くのほうへ持っていって信託するというわけには参りません、現実の問題として。しかし自分の所在の農業協同組合においては受託を辞することができると、ここに書いてあるんでありますから、初めから引き受けることをしないということもあり得るんだろうが、そういうところの救済規定というものはないんですか。もう一つつけ加えますと、そういう場合には、農業協同組合も御承知のとおり合併の指導を行なっておりますよ。農林省もそれから各県におきましても指導を行なっておる。でき得べくんば今日の合併された町村に一農協という形にして経済力をつけたいという指導でございます。そうだとしますと、もうそれ自体が一市町村といっても、非常に広範囲になりまして、なかなか信託をする場合でも容易でない、これが拒否をされたというような場合は、一体どうなるのか、、こういう疑点が出てきますがいかがでしょう。
  161. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 先ほどの五十四ページの(7)の三行目の「委託者」というのは「受託者」のミス・プリントでありまして、委託者では意味がわからないわけであります。「受託者が解任されたとき」、こういうことでございます。まことに申しわけございませんが、ミス・プリントでございます。  それからもう一つの受託者が引き受けなかった場合、これは当然ございますので、そういう場合もございます。たとえば売り渡し信託を頼まれましても、これは売れる見込みがない、そういう場合に、これは信託を引き受くべきじゃないと思うのでございます。そういう場合もございます。そういうようなときには、この信託関係規定には、特に規定はございませんけれども、救済としては、ほかの隣りの農協に持っていって頼むとか、あるいはそのほか便宜そういうことのできそうなところに持っていって頼む、これは実際問題として員外利用のような仕方で行なわれるというふうに指導して参りたいと思っております。
  162. 天田勝正

    ○天田勝正君 私はなぜこの質問するかというと、多分坂村局長もわかっているのだろうと思うのだけれども、今日でもまだ農村には封建性がかなり残っておって、村八分などもときたまあって、人権擁護局等で問題になっております。でありますから、かように「受託者の任務を辞したとき」、こういうことになりますと、一応受託しておいて辞するという、こういうやむを得ない事例はあるかもしれませんけれども、すってっぺんから受託をしない、実際は村八分的に、村の有力者にそうよき感情を持たれておらないというようなことで、農協法や農地法とは全然別個な基礎で、よりどころはこの法律に違いないのだけれども、実を言うと、全然別個な理由に基づいて受託されないというようなことも、私はあり得ると思う。それは法律的根拠がなくてさえ村八分があったりする。その救いは人権擁護局以外にはないというのが今日でありますから、これは受託だけは義務づける必要があるのではないかと思うが、いかがでしょうか。
  163. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、農村の実態におきましては、そういうような実態もないではないと思うのでございますけれども、事が非常に重大な、これは財産を預って運用する信託の問題でもございまするので、ですから、これは非常に経済的には責任のある仕事になりますわけでございます。そういう意味におきまして、受託者の保護というものもいろいろ講じてありますし、受託者が仕事をやっていく場合におきましても、いろいろの規制があります。そういうような関係で、実際問題としてやれもしないものを引き受けて、受託をしまして、そしてそのまま放っておくというわけにはなかなかいかないと思いますが、実際問題としては、やはりほんとうにやれるものを引き受けてそして、やっていかせるということで、指導せざるを得ないと思います。実際の運用としましては、いろいろこまかい問題が起きて参ると思いますが、その点は実情に合うようにひとつ検討して指導して参りたいと思います。
  164. 天田勝正

    ○天田勝正君 実際にやれるものと、そう割り切ってしまうと、やれるものもやれないことになるので、やれないと思ったものが、けっこう努力してみるとやれたという事例は、普通世間一般のもろもろの事柄にあるわけです。政治の問題にしたって、にっちもさっちも、どうにもならない事態が起きても、まあ二日も、三日も努力してみると案外打開の道がある。こういうことだってしょっちゅうみな個々の議員は経験していることでありまして、だからすってっぺんからこれはとても望みはないということでなしに、一応は受託しなければならない。しかしその努力をすることによってなおかつこれは見込みがないこういうときに、「受託者の任務を辞したとき」とここにはめるのが私は親切じゃないか。なぜかというと、最近の法律はとかくわれわれ野党のほうからすれば実効のない訓示規定のような条文が非常にあるんですよ、だから訓示規定とは言いませんけれども、訓示規定的なものであっても、一応の義務は、今度受託という義務が農協に課せられた、しかしこれは義務ばかりでなく権利を持つのだ。その次にすぐ出てきますように、信託法なんかでも都合の悪い部分はこれは適用しない、つまり優遇された権利が与えられておるのですね、他の信託事業よりか。そういうわけで義務だけじゃないんで、権利も農協は取得するんでありますから、それは多少組合員が委託する場合に義務がいささか大きくなっても私は当然だと思う。そうしますと、どう考えても一方の農協の受託義務のほうがどうも軽る過ぎる。そうすると今さらになって、あと二日しかないのに法律を修正して政府が出しなおすということが困難であるとすれば、何か政令なり省令なりで、もっと親切にしなきゃならぬと思いますが、この点どうですか。
  165. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) お言葉でございますけれども、私もやはりあまりこれを義務づけるというような姿でいくのは、こういう非常に大事な財産を預かっていく問題でございますから、非常に問題であろうと思います。それでそこの点を片づけるのが協同組合に信託をやらせる、こういうところで協同組合というものは、組合員実態をよく知っており、それから信用状態も知っております、人間も知っております。そうしてそこでいろいろ実情に応じてこの処理ができる。協同組合というのは、御承知のように今後の農業構造改善についても積極的な意欲を持っておるものであり、持つべきものでありまするから、そういう考え方でこの問題は協同組合にやらせる、こういうところで今のような問題は片づけたほうがいいんじゃないかという趣旨で、協同組合に信託をやらせる、こういうことを考えたわけであります。また「辞したとき」という言葉でありますが、これは信託法のほうに規定がございまして、委託者の承認を得なければ、承諾を得なければ辞することができないと、こういうようなことになっておりまするのでその条文も当然引用されておるのでございまして、勝手に中途でやめるというようなことはできないわけでございます。事務的にはそういうような問題でございますが、全体の精神としては今のような問題は、御指摘のような問題は協同組合がやるというようなところで片づけていきたい、こういうつもりでございます。
  166. 天田勝正

    ○天田勝正君 これだけで時間を取っても仕方がありませんから先に進みますが、ぜひさっき私が心配したように、すってっぺんから受け付けないということについては、農地法農協法等全然別個な原因も確かにあるんでありますから、指導上誤りないように希望しておきます。  それでは今の信託法の関係でありますが、すぐ次に出て参りますこの「信託事業に適しない信託法の規定は適用しない」、これは政令できめますか。あるいはどういうものを適用しないかということをすぐここで御答弁ができますか。
  167. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 十条と十一条で信託法の適用除外の規定がありますけれども、その内容でございますが、まあ、いろいろだくさんありますが、おもなものを申し上げますと、受益者の指定の規定、それから受託者が辞任または解任したとき、裁判所が管理人を選任するというような裁判所の権限に関するもの、これは行政庁にかわっておりますので、適用されないことになります。それから公益信託に関する規定も適用されない、これは農協では公益信託はやっておりませんので適用がない、そういうふうなきわめて技術的な問題であります。
  168. 天田勝正

    ○天田勝正君 五十六ページの「組合員資格の整備」のところを見ていただきます。これには整備のいろいろな要件がしるしてありますが、特に真ん中ほどから言いますと、「地区内に住所を有する農民が主たる構成員となっている団体で協同組織のもとに当該構成員の共同の利益の増進を図ることを目的とするものに准組合員資格があることを明記する等現に農業協同組合の准組合員たる資格を有する当該組合の地区内に住所を有する農民の組織する団体の規定を整備すること。」こうあるのでありますが、この「農民が主たる構成員となっている団体」とは、それはいかなるものでもかまいませんか、いかがです。
  169. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) いかなるものでもという意味ではございませんで、農民が主たる構成員となっている団体で、協同組織のもとに当該構成員の共同の利益の増進をはかることを目的とするものに准組合員資格を与える、こういうことでございます。
  170. 天田勝正

    ○天田勝正君 だからその条件を満たしておしさえずれば、どういうものでも差しつかえありませんか。
  171. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そのとおりでございます。
  172. 天田勝正

    ○天田勝正君 だから言葉をかえて言うならば、株式会社のごときものは協同組織でないからだめだ、こういう解釈でいいのですね。そうですね、当然に。
  173. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) そのとおりでございます。ただし、後段のほうにございますが、「組合員が主たる構成員又は出資者となっている法人に新たに農業協同組合連合会の准組合員たる資格を与えるものとすること。」こういうことでございます。
  174. 天田勝正

    ○天田勝正君 もっと先に進みます。五十八ページ、理事の項ですがね、(5)にあります。組合員でない者でもこの理事になれる。これは過日もちょっと触れたところでありますが、それはどういう理由か。また組合員でない者を理事にするというところに、何かこの新しい法人組織に利益がもたらされるという観点でございます。
  175. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 今までこの問題につきましては、いろいろ長い間議論がありました問題でございますが、実際農業協同組合末端における運用の状態を見ますると、これは何といいまするか、現在では参事とかいろいろな名前でほんとう農協の運営に打ち込んでいる者がございます。ですからそういうような者がいつまでも職員であって、なかなか理事になれないというようなことでは、ほんとうにやはり協同組合を能率的に運営していく場合に、はたしてどうであろうかということも考えなければいかぬと思うのでございまして、ですからそこで今度新しく全体の理事の四分の一をこえない範囲内においては、いわゆる組合員でなくても、そういうことの専門の組合を運営していくためのいろいろな人を理事にもできるのだと、こういう規定を入れておるわけでございます。
  176. 天田勝正

    ○天田勝正君 特段の事由があったわけではなくて、やはり農協専門家というものを入れ得る道を講じたほうがいいんじゃないか、こういうお考えだと察します。そこでおそらくはこの制度を取り入れることによって、さらに農協組織というものが活発というか、そういう言い方ができるというのは、むしろ単協でなくて、県もしくは全国の段階においてその効用がある、こういうことですか。
  177. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 連合会の段階におきましてもそうでございますし、それから単協の場合においても、現実にはやはりそういう問題がございます。ほんとう組合員で百姓をやっている者でなければ理事にはなれないというようなことでございますと、場合によっては組合の運営にも支障があるというような場合もあるのでございまして、全体的にこの問題は考えておいていいんじゃないかというふうに考えております。
  178. 天田勝正

    ○天田勝正君 次に、過日来同僚委員からずいぶん述べられたことでありますが、出資農事組合法人の剰余金の配当ですが、これは出資者に対する配当よりも事業分量、利用分量、こういうものを優先的に扱ったのだというふうに過日来承っておるわけなんです。そこで、出資に対する配分の方法は金銭に換算してそれの六分に押える。こういうことで、いわゆる普通の会社や、そういうものに対する利益配当という分は少なくして、従事配当、利用配当、これのほうを優先にしたというところが、どうも優先というふうには私は考えられないのです。ただ並べてはあるというところなんですが、その点は確かに優先しているのでしょうか。
  179. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり、優先にしているわけではございません。両方どちらでも自由に選べる、こういう考え方でございます。
  180. 天田勝正

    ○天田勝正君 もちろん各種の混合もあり得る、それは農林省のほうで、何ですか、省令みたいなものを明示する考えはあるのですか。
  181. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) おっしゃるとおり混合でございまして、これはいろいろ出資をどういう姿でやるかという問題もございまするし、それから利益がどのくらい出るかというような、そういうこともございますので、これは画一的にきめまして指導するようなことは考えておりません。
  182. 天田勝正

    ○天田勝正君 それから将来は、今回制定さるべき農事組合法人と、それから農地法の土地所有制限の緩和の関連の問題ですがね。農事組合法人に対する貸付のことだけ今限定して聞きますが、貸付の場合には今までの制限、これも議論がややこしゅうなりますから各県に幾らだと言わないで、内地平均一町歩と、こういうまあことに仮定して聞きますがね。一町歩は小作地として現在持てる。これを貸しておくことができる。しかし、今度は一町歩をこえても農事法人に貸付なり出資なりというものはもちろんできる。自分の持っているものを出すのですから、出資もむろんできるが貸付もできる。その場合、一町歩でなくても一町五反でもいいということに今度なるわけです。しかし現行法では一町歩なんですから、貸付の当初は一町歩以上はないわけですね。自分の耕作地の三町歩というのは別ですよ、貸付地です。当初においては一町歩しかない。そうすると、金のある者は一町歩は一応貸しておいて、後に他にどんどん買い込んでこれを貸し付けるということが可能である、こういうことですか。
  183. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業生産法人に対しまする農地の貸付、これは貸し付けるほうの側は、自作地を貸し付けることになるわけでございます。転貸も認められるわけでございますが、その農業生産法人の常時従事する構成員の場合、これは在村一町歩の制限をはずしてございます。それから転貸も認めるわけです。従来は、転貸は認められないわけでございますが、農業生産法人の常時従事する構成員に限りまして、その自作地をその法人に転貸する場合に、在村一町歩という保有制限を撤廃して、それから転貸もできる、こういうことであります。
  184. 天田勝正

    ○天田勝正君 私の説明もこれはちょとややこしいものだから、農地局長の受け取り方のほうも、全部受け取っておられないのじゃないかと思います。つまり、この法律が明日あたりかりに成立して、そうしてその翌日に組合を作る場合を仮定する。その場合に、こういうものに貸す場合には、今までの一町歩の制限をゆるめる。こういうことになっている。ゆるめるけれども、たとえばあした法律が通ってあさって作るという場合には、現実には一町歩以下しか持っていない。そこで新しくできる法人に貸す。そうすると、そこは一町歩で一応釘づけに私はなるのじゃないか。それをはずすということは、それは次々に土地を買ってこれに貸し付けるということができるということじゃななかろうか、こういうことを聞いているのです。
  185. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御質問趣旨でございますが、現在におきまする農地法では、農地を取得する場合の許可の問題といたしまして、農地法第三条の第二項の五号に、内地、都道府県では三反歩に達しない場合はその者が取得することは許可できないということになっておるわけです。北海道では二町歩、都道府県では三反歩に達しない者が農地を取得する場合は許可できない、こういうことになっておるわけでございますが、これは政令では取得の結果三反歩をこす場合はこれは取得できる、これは一般の法人である農民の場合を規定してございますが、それが今現行法では原則でございますが、改正法では、第二号に掲げる権利を取得しようとする者(農業生産法人を除く。)こういうふうに書いてございます。農業生産法人農地法上の権利取得、これは所有権もございますし、賃借権もございまするが、そういう場合にはゼロから出発できる、こういうことに相なっております。
  186. 天田勝正

    ○天田勝正君 個人のほうは、今庄野局長説明されたように、所有権も取得できれば、賃借権も、永小作権ももろもろある、取得できるでしょうが、今度はそれに売るほう、貸すほう、こういうことになりますけれども、この場合は、私は貸すほうだけを伺っておる。貸すほうだけにしますと、当初法律が、つまり作った、成立した直後において法人を作る場合に、その法人に従来持っておる小作地を貸そうという場合は、幾ら貸そうたって、また従来の小作人が返還したっても、一町歩をこえるものは持っているはずがない、こういうまず仮定に立つのです。それは、今まで借りておった者が返さなければ、借りておるほうがそのまま転貸、こういうことになるでしょう、新しい法人に対して、そうでしょう。そうそうでなく、それはとにかくかえってくると仮定して、その場合に、新しい法人に貸すのは一町歩しかない、けれどもこのワクがはずれておるから、あとをどんどん買い込んできて、またその法人に貸すということが、法人の場合は可能なんだというふうに法律では書かれていると思うのです。そのとおりなのかと聞いているのです、いかがです。
  187. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御質問趣旨をもう一ぺん私は言いますから……。農業生産法人に常時従事する構成員が農地を賃借する場合、これは自作地を農業生産法人に貸し付ける場合でございますが、そのときにその常時従事する構成員が二町歩の自作地を持っている場合に一町歩を貸し付けておく。それは在村でございますれば一町歩保有制限、従来ならば保有制限一町歩しか貸し付けられなかった。それを二町歩の保有地を貸し付けるということは、今度の改正法では自作地を貸し付ける場合にはできる、こういうことになるわけであります。それで二町歩が結局常時従事する構成員たる貸し付け農民の保有地になるわけでございますが、その農民がさらにみずから経営することが適正である、みずから経営することが適正であるということの三条の原則によって自作地を、農地の所有権を取得できるかという、こういう御質問ではないかと思うのですが、それは三条によって許可できるわけであります。そして、それをみずから適正に耕作する場合、こういう場合にその保有制限、自作地の保有制限二町歩を持っておりますから、さらに一町歩を借りる、買ってくるということができるわけでございますが、今度はその場合に、その個人が買ってきた小作地をさらに法人に賃貸できるか、こういう問題かと思いますが、この法人に貸し付けるために常時従事する個人が買うということは、おそらく問題であろうかと思います。三条の許可を得るときには、みずから耕作する場合、個人が農地を取得する場合はみずから耕作する場合、自家労力によって適正に耕作するということになっておる。その制限はかかってくる。取得はできます。
  188. 天田勝正

    ○天田勝正君 その小作地の部分は大体わかってきた。関連しまして、このことに触れようと思ってさっきも質問をしたわけですが、今のところ内地の自作地の平均が三町歩、それで北海道が十二町歩、こういうことになっているわけですね。それも県々によって違うのは違うのだけれども、まあ質問するのにめんどうだから三町と仮定して質問します。そうすると、今まで貸しておった小作地の点はあらましわかったような気もしますが、そうすると、今まで三町歩以上持つためには、今まで全然許可がなかったかというとそうじゃない。例外的には、それはそれ以上持っていた。今までも持っていた。ところが、その例外的なものを今度は法則にしよう、原則にしようというわけですよね、今度は。ですから今まで例外規定を今度原則にするというのは、適正に自家労力をもって経営ができる、ここのところが一つの筋だ。これに当てはまれば、原則として今までの制限をこえてどんどん持っていく、こういうことなんです。でありますから、そうしますと、当初においては十分機械も入ったり、自分のところで適正に耕作ができる、その適正に耕作とは何だということになりますれば、少なくとも労働量の過半数、過半数というのはおかしいですが、過半量でしょう、過半量を自家労力をつぎ込んで、あと他の労働に依存する。ここらのところまで適正な経営である、こういうことになるのですね。ですからその基準に適合しさえずれば、制限の面積をこえてどんどん土地をふやすことができる。そこでふやした土地を、説明が中断しますが、私は過日も指摘したとおり、すてっぺんからこの新しい農業生産法人ができる場合に、農民の習性といいますか、習性からして、全部一切がっさいをどんとこう出資するという例のほうが少なかろうということを過日も指摘した。おそらく三町歩持っている人ならば、とりあえずまず一町歩出資しようじゃないか、そしてまずやってみると、こういう自己保存本能が農民というものはずいぶんあるのですよ。だから、そういうことを途中説明を入れるとまた質問がわかりにくくなりますでしょうが、そういうように考えられますので、とにかく一応三町歩以上取得しようという場合には、自家労力で一応ここ一町歩を取得した、そこで前の三町歩の一町歩なり二町歩なりというものは、生産法人のほうにもはや出資した、でもそのとおり自分のところは三町歩だからやはりそれはそれでできる。しかしまた、そのうちの一町歩を出資する、そうしますとこれは無限に繰り返されるようになると思うが、そのとおりですか。
  189. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 第三条の二項の三号の問題かと存じます。個人の場合は今度の改正によりまして、従来は三町歩を原則としてこせない、ただ例外的に自家労力によりまして効率的に耕作できるという場合は三町歩をこせる、こういうことになっておったわけでございますが、これを最近におきまする農業事情あるいは農業技術の発展、そういった点から考えまして、これを「主としてその労働力に依存するだけでは効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行なうことができないと認められる場合」は許可しない。反対にいたしますと原則として、主としてその労働力に依存して効率的な経営ができるという場合は許可する、こういうことにしたわけでございます。それでこれは法人とからめての御質問だと思います。それで法人に賃貸しする場合等をまず原則として考えますれば、一町歩以上の在村地主として賃貸しができるという場合には、法人の業務に常時従事するということが必要になってくるわけでございます。それで御設問のように片一方で法人経営をやり、それからなお残存する農地について個人経営をやっておる、こういうような御質問の場合に、個人の経営について農地が無制限に取得できるか、こういうような御質問だと思いますが、それは三条二項の三号の規定趣旨に照らしまして、その個人としては法人の構成員として常時従事している半面、自己の個別経営農業経営している。それで残りました個別経営の労働力をもって、主としてその労働力をもって、三町歩をこせるかどうかというのが判定の基準になるわけです。そのときにはやはり法人の構成員になっている労働、常時労働に従事する労働というものもあわせ考える、そして残った労働力で、主として個別経営が効率的にできるかどうかという判定をしなければいかぬ。できなければ三町歩をこせない、こういうことになるわけであります。
  190. 天田勝正

    ○天田勝正君 もっと端的に聞きますよ、確かに農業生産法人は常時従事者というものを重く見まして、それが議決権が過半数と、かりに出資したままでちっとも常時従事していないという方は幾らたんと出資しようと、議決権のほうは半分以下だ、こういうふうに常時従事者というものを重く見ているわけです。その趣旨はけっこうなんです。だけれどもその構成の常時従事者だけに限定しているわけじゃない、そうでしょう。依存しているわけではない。五分の一については、構成員以外の労働に依存しても差しつがないことになっている。でありますからこのごろ機械化していれば、私は個別経営のほうではあとどんどん借り入れして、またそれを右から左という言葉が当たるか当たらないか知らぬけれども、逐次に少なくとも五軒集まってかりに三十町歩を経営する、こういう場合にその五分の一である六町歩分については、他の労働に依存して一向差しつかえないんですから、ですから無限に広がるとは言い過ぎでありますけれども、とにかく一戸でかりに六町歩づつ出資するものならば、そんなことはおそらくないから、四軒はかりに二町歩づつ出資をした、四世帯については二町歩づつ出資して合計八町歩だ。そうするとあとの二十二町歩というものは一人の人が出資なり貸与なり、こういうことが可能ではないか、その可能の限度まではやはり買入れ、兼併というものができる。昔のように何千町歩という大地主はないにしても、今現在の農業技術からしても数十町歩の地主というものはそこに派生してくる可能性は確かにあるのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  191. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 今五分の一の従事をやればいいと、こういう御設例をお出しになりましたが、五分の一というのは、農事組合法人の員外雇用をやる場合でございます。それは農地法上の農業生産法人になって参りますためには、農地法の第二条第七項の第五号の要件、「その法人事業を行なうのに必要な労働力のうちその構成員以外の者に依存する部分が省令で定める基準をこえないこと。」ということで、省令で定める基準は二分の一ということに考えております。それで結局その法人の業務を行なうに必要な労働力、必要労働力とこう申しておりますが、それはその構成員が二分の一以上を従事しなくちゃならない、こういうふうな要件が、農業生産法人として農地法上の権利主体になるためにはかぶってくる、こういうことを御承知置き願いたい、こう思います。
  192. 天田勝正

    ○天田勝正君 それは知っておりますよ。
  193. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  194. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記をつけて。  本日は、この程度にいたします。これにて散会いたします。    午後五時五十一分散会