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政府委員(
伊東正義君) ことしの、三十七年度の日ソ交渉の問題でございますが、御承知のように、昨年ミコヤン副首相が参ったおりでございますが、農林大臣に会われまして
お話になりました要点二つわれわれは聞いております。
一つは、規制区域の問題、これは
先生方御承知のように、北緯四十五度以北が条約上の規制区域ということになっておりますが、これらの拡大がいつも問題になります、日ソ交渉の過程におきまして。それで、
日本としては規制区域の拡大ということはどうしてものめないので、しかし、規制区域以外のところでは何もしないというのじゃなくて、これは自主規制といいものは、どういう
方法かは別にして、自主規制をやっていくという
お話をされましたことと、もう
一つはいつも日ソ交渉というものは非常に長くなるというようなことで、その前にひとつ資源の問題については
両方の科学者の間でよく討議をしておいて、交渉はそう長くならぬで、効率的といいますか、能率的といいますか、そういう交渉にしようじゃないかというような話をされたということを、会見後われわれ承ったわけでございます。それで、昨年の十一月から十二月一ぱいにかけまして日ソの間で、いわゆる科学者同士の資源につきましての
話し合いがございました。
両方の科学者の間で三十七年度の資源についての見通しにつきまして、大体了解点に達したものがございます。ただ了解点に達したといいましても、原因等につきましては
両方でまだ見解が一致しておらぬという問題がございます。昨年は紅ザケでございますとか、あるいは白ザケ、マスというように魚種別につきましておのおの資源がどうだろうということをお互いが
意見の交換をし合ったわけでございます。その中で特に昨年マスにつきまして非常に議論になりまして、といいますのは紅、白につきましては、これはソ連側でもそう再生産機構が破壌されるというようなことにはなっておらぬ。これにつきましてはそうたいした資源的に今のところは、そう心配はない、再生産が縮小再生産になっていくというようなことはない、ということを認め合ったのでございますが、マスにつきましては、これは非常に悪いのじゃないか。特に来年度のマスにつきましては例年の、これば偶数年が大体不漁年でございますが、それを下回るというような悪い資源の
状態じゃないかということにつきましては
意見の一致を見たわけでございます。ただ、これは原因につきましては、ソ連側はこれば一切
日本の沖取りが、これが原因だということを主張しておるわけでございますが、
日本側の主張としましては、それは沖取りということもこれは多少影響があるということは認めるが、そのほかに自然環境要因等が非常に水産資源については影響するのじゃないかということで、この原因につきましては
両方合意に達してはおりませんが、資源が悪いということにつきましては、実はマスにつきましては
両方が認めたわけでございます。そういうようなことで十二月一ぱいかかりまして資源の
状態につきまして
両方が合意に達して、一応
専門家
会議は一ぺんも過去においてやったことがございませんが、ことしはやったわけでございます。その後二月二十六日から本
会議が始まっております。その前の予定では二月上旬から科学小
委員会を開催するということになっていたのでございますが、それを省きまして二月二十六日から交渉に入っております。その前に
議題等につきましていろいろやりとりをしたのでございますが、特にソ連側としましては、今年度の
議題の中にいろいろな問題の追加の要求がございました。その中で
話し合いのついたもの、つかぬものがございますが、
議題として追加されました点が四点ございまして、一点は、規制区域内の漁獲その他の管理手続、これはどういうふうにとって、とったものをどういうふうに通報するという点、これは非常に事務的な問題でたいした問題ではございません。そのほかに、マス資源につきまして、マス資源の回復についてということがこれに加えましで、新しく
一つ入っております。それから規制区域内の紅ザケについてということで
議題が
一つ入っております。それからもう
一つは、
日本の陸上基地を根拠とします船、これは特に以南の流し網を考えておるのでございますが、これの規制区域の規制
措置についてということで、これは規制区域内の規制でございますので、当然のようでございますが、これにつきましては従来のように、必ず規制区域をどうするかということが問題になってくるだろうと思いますが、そういう
議題が追加されております。こちらで向こうの要望がありまして、断わりました
議題の中には、
一つは規制区域を拡大するという
意味の
議題が、それと読める
議題があったのでございますがこれは
議題からは落としております。ただ
議題から落としましても交渉の過程においては当然議論になるだろうと思っておりますが、その
議題を落としましたことと、現在の条約で対象になっております魚は鮭鱒、カニ、ニシンでございますが、そのほかの漁業資源についても話し合おうじゃないかというような
議題の要請がありましたが、これは実は断わっております。そういうような
議題で二十六日から実は
会議に入りまして、現在までの進行
状況は、大体科学小
委員会でやりました資源の見方につきましてやはりまた蒸し返しましていろいろ議論がございまして、向こうは特にマスの資源につきまして非常に悪い、従来、
専門家
会議でやった以上に悪いのじゃないかということを強く主張いたしましたけれ
ども、またほかの紅、白につきましてもよくないのだという主張があったのでございますが、
結論的にマスは非常に悪いということを認めまして、最近の偶数年よりもことしは下回るのじゃないか、これは紅、白、マス全部入れて考えて、資源的にはマスが非常に悪いということでございますので、向こうでそういう合意ができたのは資源的に見ればやむを得ないのじゃないかというふうに実ば思っております。マスにつきましては、それは
日本の漁獲と向こう
沿岸漁獲と足してみますと、やはり奇数年は奇数年で、偶数年は偶数年でかなり漁獲高は減少している。向こうの河川の遡上量につきましては、これははっきりした数字はございませんが、向こうが飛行機でとったいろいろな
資料でございますとかなんかを
資料にいたしております遡上量も少ないということで、沖合いの漁獲、
沿岸の漁獲、遡上量合わせてみたものが非常に少ないというふうな判断をいたしておるわけでございます。資源についてはそういうような判断をいたしておりまして、現在向こうでは、これから網目の問題でございますとか、そういうような技術的な問題が議論されるだろう。その後に、ちょうど明日から政府
代表としまして高碕
代表が参られますので、行かれますと、これは規制区域の拡大の問題をまた持ち出しましょうし、あるいは規制区域内の禁止区域の問題、あるいは規制区域内の数量の問題というような、四月に入りますれば本題になってくるだろうというふうに考えるわけでございます。
経過はそのようでございますが、そのほかに実は私のほうといいますか、
水産庁で業界に対しまして自主規制案というものを出しております。これは先ほどから申し上げましたような資源の問題、もう
一つは規制区域拡大というものを防止する、規制区域以外のところでは、
日本側が自主的に規制をしてある程度資源と見合った漁獲をやっていくのだという、二つの面から自主規制案を実は出したわけでございます。現在までは母船は十二母船ございますが、母船を一船団減らすという申し出がきております。そのほか日鮭連といいますのは独航船でございますが、四百十隻ございます。これに対して一割ということを言っているのでございますが、まだ最終的なオーケーという返事はもらっておりません。それから、以南業者と言いますのは、四十八度以南の流し網で、陸上基地を根拠とするものでございますが、これが大体四百十四隻ございます。これは従来減船というようなことは言っていないのでございますが、これにつきまして二割の休漁——独航船は一割の休漁、以南は二割の休漁ということを話しましたが、これもまだ実は了解は得ていないような
状況でございます。
関係は母船会社、独航船の日鮭連、以南の流し網の全鮭連でございますが、いろいろ賛成されたところもあり、反対と言われるところもございますが、いろいろニュアンスは実は違っているような
状態でございます。
大体、以上が経過でございますが、ただ三十六年度のことでございますが、三十六年度で
日本側がこれは規制区域内は六万五千トンという、条約できまっております。区域外を大体七万トンにしょうというようなことを向こう側と
話し合いといいますか、ある程度約束したというような事実がございます。これに対しまして三十六年の七月末の統計でございますが、これで約八万トンとっております。十二月の統計が出ておりませんので、まだ十二月はわかりませんが、七月末で八万トンとったというような数字に実はなっております。この七万トンという約束でございますが、これの対象になりますのは以南の流し網
関係、それからはえなわ、これは岩手県、青森県——岩手県が圧倒的に多いのでございますが、このはえなわがことしは一万三千ぐらいとっております。それから、
日本海の流し網というのがございます。これは約九千ぐらいとっております、というようなことで、そのほかに北海道の七トン未満の船でございますとか、定置でございますとかいうようなものが一万トン以上とったというような
状態でございまして、そのほか残ったものが以南がとっているというような
状態でございます、これにつきましては、ソ連側は七万トンという約束をしておきながら非常に約束違反じゃないかというような、
日本に対する不信感は常に述べております。それで先ほど申し上げましたように資源、それから規制区域拡大には絶対に反対するというような趣旨からひとつ
日本側としては自主規制案を示しまして、来年の数量規制区域拡大防止という交渉に臨もうというのが実はわれわれの態度でございます。簡単でございますが、今までの経緯を述べました。