○
参考人(
大内義夫君) 私は
船舶通信士協会の
大内でございます。
ただいまの
電波法の
改正案に対しまして、私
どもは
意見を述べさしてもらいまして、なるべく
現状における
実例をあげまして
改正案に対する
反対点を、また
問題点となるような点を申し上げたいと思います。
電波法の
改正案の
内容をなすものは、
現行の第五十条の規定でございまして、その五十条は、
通信長の配置をきめる、そういう条項でございますが、
内容におきまして
船舶局の
局種別を変更することによって
執務時間あるいは
聴守時間の
削減をはかり、そうして
通信の
定員を
削減することにあるわけでございますが、第一番に、
現行の
状態の中で
船舶局の
執務時間が減ることによって起こる大きな
支障は、
現状から見ますというと、直ちに
公衆通信の
疎通が甚大な
障害を受ける、こういう点を私
どもは日常の中で強く見ておりますので、非常に不安にたえない。
実情を申し上げますと、現在
内航——日本の
近海を走っておる船、これの特に
中波通信——中波の
周波数で
通信を行なうのでございますが、これがほとんど
太平洋沿岸の
海岸局軒並みに、
順序通信と申しまして、
海岸局に対する
航行中の
船舶から
電波がくる、
呼び出しが多数ありますために、それぞれ順番をきめて並ばせる、こういうふうな
通信システムが行なわれておる。これはつい一年前までは想像もできなかったような範囲まで及んでおる。
電電公社は、かつて数年前に、
大分にございます
大分海岸局を廃止しようという案があった。その局においてすら、現在においては多数の
船舶局の
通信に応ずるために
順序通信を行なう、こういうふうな
状態でございます。それから特に最近九州から
東京芝浦方面にくるほとんど定期的に航海しておる船が、ずっと
海岸局を
呼び出して
電報を打とうと思っても、なかなか相手にしてくれない。それがために、
中波の
周波数で
通信ができませんので、
短波の
周波数を用いて、
日本の沿海を走っていながら、遠距離から
通信するために使用する
短波の
周波数でもって辛うじて
通信しておる、これが
現状でございます。さらに
外航船舶の場合は、さらに大きな
混信状態がございまして、当
委員会においても検討されたと思いますけれ
ども、なるほど現在
日本の
船舶が一日に扱う
公衆通信の
通数というものは、わずかに四通とか五通ないしは六通
程度でございますけれ
ども、これを
疎通するためには非常に大きな
障害がある。たとえば一通の
電報を
疎通するためには、
海岸局をとっつかまえて送り込ませるには、わずか三分または五分以内で送ることができる。したがいまして、一日わずか五通か六通の
電報はわずかに二十分か三十分の時間で
疎通できる。これは表面上の計算であって、遠くからあるいは近くから
海岸局を呼んで手持ちの
電報を送ったり受けたりする、そうするための
連絡設定をはかるための時間が、現在のような
混信状態では相当の時間がかかる。私
どもが取りあえず各船からの報告によりまして調査いたしましたところ、ほとんど
短波通信による
疎通の状況は、その半分以上は一通の
電報を
疎通するために一時間以上かかっている、一時間ないし三時間、これが一番多いわけです。それから一時間以内に
疎通できるのも、これも二分の一以下がこれは
実情です。はなはだしいのは五時間、六時間とかかる、こういう
状態が最近ますますひどくなってきておる。これによる
通信秩序の混乱というものも一部に見られまして、たとえばわれわれにとって非常に不名誉なことではございますけれ
ども、
日本船の
呼び出し過度という点が問題になりまして、
アメリカあたりから
違反通信の通告が
日本にくる、こういう
実例がたびたび今でもあるわけでございます。こういうような
公衆通信の
疎通におきましても、
現状を見て参った場合、これが
電波法の
改正によって
限定の
執務時間になる。一日八時間でよろしいということになった場合、相当大きな問題が出てくるのではないかという点を私
どもは深く心配しているわけでございます。たとえば
電報を送る場合には四通、五通で済むといいますけれ
ども、いつ、どういうところから
自分の
船あてに重要な
電報がくるかわからない。そうするために、たとえ一日一通もないときであっても、
船舶の
通信士は
聴守を続けなければならない。これが二時間に一ぺん各
海岸局から
船あての
電報がある場合には、その船を一括して呼び出すわけでございますが、二時間に一ぺんに、
呼び出し時間が一ぺんに二十分ないし三十分以上かかる。この時間はどうしても聞かなければいかぬ。
長崎で
電報があるかもしれないと思って、二時間置きに
長崎のあれを聞く。あわせて銚子も聞かなければならぬ。それで
外国に行く場合に、
行き先地の
外国の
海岸局あての
呼び出し時間も聞かなければいかぬ。そうしますと一時間ごと、結局毎時間ずっと聞いて、
電報がおくれないように、
自分の
航行に
支障を来たさないように、そういう態勢でもって
執務していませんと、
日本の
無線通信というものはうまくいかない。そういう
実情でもってわれわれは
仕事をしているわけでございます。これを一日八時間の
限定執務になった場合には、そういう完全な
通信はできない。特定の
通信時間に集中いたしますために、この
混信がますます増大いたします。これをどうやって防ぐかという点について、
改正案の
内容におきましては、一日八時間の
執務時間の時間割を集中させないように、もう
一つの裏時間というものを用いて平均するような
方法を考えるということを言われております。しかし、いずれにいたしましても、八時間の時間の振り当てを変えるだけでもって、結局は昼間を中心といたします時間に全部が集中するわけでございます。ほとんど
夜間、未明にかけての時間というものは
無線通信の
疎通をはかるためには利用できない、こういう結果を来たしている。そういうような案であっては、当然いかなる
措置を講じても
公衆通信の
疎通はうまくいかない。したがって、何らかの
方法によって
公衆通信の
抑制をはかる。これは
強制力をもって
抑制をはかることはできませんでしょうけれ
ども、重要な
電報は言うまでもなく、現在においては遠く離れて働いている
乗組員の
私信——家族との
通信、こういうものが非常に
通数が多い。ほとんど
公衆通信の半分に達している。そういう
家族の
通信というものをここで完全に絶たれてしまう。そういうような
乗組員全体に対する士気に影響を及ぼすような弊害が直ちに現われてくる、こういうような点も、私
どもだけではなくて、
乗組員全体の関心の的になっている、こういう
現状でございます。
次に、
聴守時間の
削減でございまするが、現在においては、いわゆる
義務船舶局と申しまして、
近海航路以上の、千六百トン以上の船は全部
無休で
聴守を行なっている。この場合、この
改正案によりますというと、今後
航行中
無休で
聴守しなければならない船は、
国際航海に従事する
船舶に
限定されます。この場合、
国際航路に従事しない
日本の
近海を走っている船は、全部一日八時間の
執務時間の中で
聴守を続けるだけでよろしい。そういうことになります。そういたしますと、
日本の
内地周辺を走っている船は、ほとんど
夜間においては
聴守する必要がない。そういう
現状が出てくるわけでございます。こういたしますと、
日本の
近海は非常に
気象の変化が激しく、また
海岸の入り組みも非常に多い。
船舶が一
たん危急の際、危険な目にあいまして他船の
救助を求めるような場合は、やはり
夜間にかけて多いわけであります。そうした一番重要な時間に船の耳が奪われるということが直ちに現われるわけでございます。この場合、よる
夜中船舶が
遭難しましてSOSを発信する。こうした場合、だれも聞いてくれない。助ける船もこの場合助けないというような事例が起きてくるわけでございます。したがってそうした場合に、二十四時間の
聴守義務を持っている
国際航海に従事する
日本の
船舶と、それからたまたま
日本にやってくる
外国船とによってそういうブランクの時間が守られるというようなことになる。しかもそれが人間の耳によらずして
オート・アラームというような
機械によって
聴守される。こういうような重大な、まことに決定的な変革がこの
電波法改正によって行なわれる。こういうことは、
ひとり通信士ばかりではなくて、今、
現行法が
改正されるという話は、単に私
ども無線通信士だけではなく、
船長以下
乗組員全員を含めてその
内容がだんだんわかって参りまして、一体
電波法の
改正というものは三人の
通信士を一人に減らすというだけに理解されておったものが、その
内容がわかるに従って、これは非常に不安であるという点が最近でも私
ども強く言われまして、よる
夜中これじゃ安心して走っておられない。こういう不安がやっぱり出てきている。これはまことに私
どもは重大なことだと思っておるのでございます。こういう点は、なるほど
国際水準並みにする、
海上人命安全条約に規定している線まで下げて、いわゆる
国際水準並みにするという方針のもとに、条約においては可能であります。しかし、はたしてこういうような
改正によって来たされる
状態が
国際水準並みかどうかは非常に疑問である。たとえば
海上人命安全条約において
国際航海に従事する船に
無線電信の
聴守義務というものをきめている。それだけで十分な場合がある。たとえば欧州各国においては、国と国とは隣接しておりますから、沿海を走っておっても
国際航海になる。そういう点で、条約並みであってもあるいは安全が守れるかもしれない。ところが
アメリカのように非常に
海岸線が長い国、そういう国は国内だけを走っている場合は
無線電信を強制されませんというと、非常に大きなブランクが出てくる。したがって、
アメリカはすでに三十年前から条約の規定を上回って国内だけに
航行する船についても千六百トン総トン以上の船には
無線電信を強制している。
日本の場合においては地理的な環境が相当異りますので、
国際航海に従事するものは相当遠距離の、いわゆる国外のことを想定するわけです。その場合に、条約においては
国際航海に従事する船に限って
無休聴守の義務を課しておりますけれ
ども、
日本の場合はその条約の規定どおりによりますと相当大きな不安が生じてくる。これが第一番目の
電波法改正に対する私
たちが一番不安に思っている点でございます。
また、
無休聴守を人間にかわって補うために
オート・アラームの採用、これがまたきわめて重要なことでございまして、たびたび当
委員会においても
オート・アラームの
信頼性あるいは性能について御検討があったというように承っておりますけれ
ども、私
どもは
オート・アラームの性能が
外国製品と比べて
日本は劣っている。こういう点について反対しているのではございません。あるいは
外国船並み、同様である。場合によっては
外国船よりか優秀である。たとえそういうことであった場合でも、実際の場合には
オート・アラームというこの制度が、はたして有効なものであるかどうかという点について大きな不安を持っているわけでございます。昨年以来いわゆる合理主義に従いまして
電波法が
改正される、これを前提にいたしまして、わずか一年か半年の間に
日本船におきましても非常にたくさんの
オート・アラームが
日本船に今付けられております。実際におきましては
電波法改正後でありませんと全面的な使用、あるいは価値を発揮いたしませんけれ
ども、それでもなお現在五十何隻という船が一名減員されまして、その時間を
オート・アラームの使用にまかしておる。そうした実際に使用している船の報告によりますというと、わずか半年しか使用経験がございませんので、はっきりした決定的なことは言えませんけれ
ども、そうした短い期間においても五十数隻の船の報告によりますと、約半数に近い二十一隻がこの
オート・アラームが直ちに故障があった、故障の種類、
内容、条件、そうしたことが私
どもの報告に寄せられておる。停泊中
機能テストをしようと思ってテスト・ボタンを押しても鳴らないというようなこと、室内の温度が三十五度以上になればもう
機械が働かないというようなこと、たとえば誤作動におきましても、
日本の
近海でも特殊の事例がございます。空電五百KCが常時行なわれ、それがために
オート・アラームが
混信の妨害を受け、誤作動を生ずる、たとえば、こまかいことを申し上げて恐縮でございますけれ
ども、
日本の
海岸局のコール・サインというものは全部Jという符号がついております。JOS、JSM、この符号を連続して
航行している船がたたきますというと、これがいわゆる警急信号に似たようなものになりまして、
オート・アラームを作動させる、これが空電、
混信と重なりまして、
外国船から従来私
どもたびたび聞いておる。南シナ海を走っておって、
日本船が、よくコール・サインによって警急信号がおのずから形成されて鳴った、そういう話を聞いておったのでございますけれ
ども、最近
日本船の使用
実例を見ますと、潮岬の沖を船が走っておった、その
呼び出しによって他船の
オート・アラームが鳴った、こういうような
実例。
日本の
近海、特に五百KCによる非常に大きいものでございますから、そういう事例がたびたび起こる。したがって
オート・アラームの現在の技術
水準からいって
外国製と比べて遜色はないといわれても、実際に使用した場合にはそういうような特殊的な環境によって誤作動が起きるという例は、これはどうしても防ぎようはないわけであります。
電波法の規定におきましては、
通信中は
オート・アラームを付けた以上は作動しておかなくてはならない、この規定を忠実に守って他の
周波数で
通信を行なっている場合は、五百KCの
通信がおろそかになりますから、その間は作動させておきます。そういたしますというと、
日本船の使用する電力は
外国船と比べて非常に大きい、五百ワット、一キロというような大きな電力を使う、これは
日本船としてどうしても必要な電力でございますので、そういう大きな電力を使って発信いたしますと、作動中の
オート・アラームのコイルに誘導いたしまして燃えてしまう、こういうようなケースがある。
外国船にはそういうようなことはあまり聞きませんけれ
ども、そういう事例も最近聞くわけでございます。そういうような
機械的な設備の不十分さ、
オート・アラームという
機械そのものの性能はどうであろうか、設備条件というものがそういう点非常に不完全である、そういうために生ずるいろいろなこまかい点の
障害というものはたくさんあるわけであります。そういうものはわずか半年かそこらあたりの使用経験しかないのにかかわらず、たくさんの問題がわれわれの仲間の中で話に出ているというのが、これが
現状でございます。それからもう
一つ私
どもは
無線通信でございますので、この
電波法が
改正になった場合、どういうふうにわれわれの立場が変わっていくかという点がまた強い関心の的になっているわけでございます。特に五十条は、先ほど申し上げたとおり、
通信長の配置条件をきめる条項でございます。これが
局種別の変更によりまして相当大きな変革を来たす、たとえば
現行におきましては、第一種局の船、五千五百トン以上の貨物船はこれに該当いたしますけれ
ども、この船がもう六百隻近くある、この船の
通信長になるためには、
現行電波法においては、一級
通信士として四年以上の
業務経歴がないと従事できない。法規は四年の
業務経歴を要求しているわけでございますから、実際においては十年、二十年、三十年というような長い経験を打つベテランの熟練した
通信士が実際に専任されている。さらに五千五百トン未満の第二種局乙の
局種別においては一級
通信士として二年以上の
業務経歴がないと認めない。したがって、これについても相当のベテランの
通信士が乗っている。これも今度全部三年後には、いわゆる最低の第二種局乙というような
局種別になります。そういたしますというと、第二種局乙の一日八時間でよろしいという
局種別になりますと、
通信長の条件は全然
業務経歴を要求しておらない。学校を出まして、一級
通信士の資格を取れば、そのままでも一万トンの船であろうと、何万トンの船であろうと、どこへ行こうと、
通信長になれるというような、そういうふうな
改正の
内容でございます。したがいまして、これによって生ずるいろいろな問題がたくさん出て参りまして、これがまた職場がなくなるという問題が出てくる。現在人を減らして、失業の
状態は生じないというような点、一般的な数字の上から見て、需給が逼迫しているために、新造船によって就職することができるということを一般的にいわれているわけでございますけれ
ども、今過剰となる
通信士の二級の資格を持った者を新造船に充てるといってもできない。そういうようなものは資格の上からアンバランスがございまして、足りない部分を補うという点においては不十分である、そういうことから考えまして、
船舶通信士として一級の免状を持っておっても、二級の免状を持っておっても、いろいろな形で不安が生じている、これが
現状でございます。
時間がないので、あと簡単に申し上げますけれ
ども、私
どもはいろいろなところで説明いたしますけれ
ども、私
どもの話を聞いても、現実に
外国船が一名でやっているのに、なぜ
日本は三人でなければやれないのかということを言われるわけでございます。それはよくわかっているのでございますが、これを聞かれる人に納得できるような説明をしても、なかなかわかってくれない、そういう点がございます。その場合に、なぜわが国は
電波法という
法律をお作りになって、そうして
無休の
聴守、
無休の
執務が必要であると、それが
日本の
海運あるいは公共的な
航行の安全からいっても必要であるとおきめになったその動機自体が、無言で証明していると思う。これは理屈にわたりますけれ
ども、私
ども承知している範囲におきましては、
外国船では一名でもできるという条件があるわけです。それは
日本と向こうと
通信体制が相当違う。卑近な例で言えば、われわれはモールス信号をかたかなとアルファベットと両方覚えなければならぬ。かたかなのモールス信号を用いますと、
外国船と自由に
通信はできない。そういう実際的の
障害、
航行安全におきましてもだいぶ
日本と
外国では
事情が違う。そういう点、こまかく言えば限りがございませんけれ
ども、そういう相違がたくさんございます。それから決定的に違うのは、
船舶における
無線通信士の
仕事の
内容が全然違うのでございます。なぜかと申しますと、向こうでは、いわゆるマルコーニ・システムとわれわれ呼んでいるのでございますが、
船会社が、
無線通信士に限って、直接雇うのじゃなくして、
無線会社から派遣されてくる、
無線通信機械をつけて持ってくる。したがって、船の
無線通信の
機械の保守、その修理を含めまして、
無線会社が責任を負う、そういう格好になります。
世界の主要
海運国であるイギリスのような国では、そういう雇用形態にあるのがちょうど半分ずつ、
船会社の
船員でないんです。これは全部
船会社の
船員じゃない。つまり
無線会社からやってくる。オランダの場合、全部そうです。そういう影響がありまして、
アメリカにおきましても
仕事の
内容は機器の補修とか、いろいろな
電報料の計算であるとか、
無線通信士でやる、
無線の最低限度の修理であるとか操作運用をはかるだけが向こうの
仕事であります。
それからもう
一つは、ここでも問題になったと思いますけれ
ども、
世界中の
船舶局の局名録を調べた場合に、八時間という
執務時間を持っておる国は非常に少なくて、不定の局を持っておる国が非常に多いわけです。なぜかと申しますと、その理由の一端は、たとえば
アメリカのごときそうですけれ
ども、一日八時間の
執務時間だから一人でできるじゃないか、ところが八時間の
内容は二時間ずつ区切って四回にわたってやるという、こういう時間割です。これが国際上きまっておる。こういうふうに一日四回に分けて、合計すれば八時間である。これは向こうは八時間労働として認めておらない。向こうは一日八時間の労働時間を三回以上に分割してはいけないと、そういうのは八時間労働として認められない、こういう規定があるために、条約上の規定のために、八時間というものはどうしても行なわれない。不定の局にいたしまして連続した時間による二回あるいは三回の当直によって八時間の労働の中に入れる。こういうような労働条件といいますか、
仕事の
内容について根本的に違うわけでございます。したがって、そういう点を考えますと、あるいは一人でも可能であるということが言えましても、
日本の場合は不可能です。そういうような相違点がございますので、どうしても
外国船と比較いたしまして数の上だけの比較においてやられることは心外に思っておるわけでございます。
時間がないので、たくさん申し上げたいことがございますけれ
ども、以下略しますけれ
ども、さらに最後に申し上げたいことは、この
改正法案中に、暫定期間経過
措置というのがございまして、新造船は当初から一名という規定がございますけれ
ども、こういう点は私
どもは理解しがたいものを持っている。片方のほうにおいて、当分の間、暫定的に二人でよろしい、しかし、新造船は一名である。御提案の説明を読みますと、三年間の暫定期間中に、いろいろな
通信機械の整備であるとかそういうことをはかって
支障ないようにする。その期間がまだ終わらないうちに新造船は一名である。その新造船の一名はどうやって
仕事をしていくか、そういうような問題が、すぐわれわれ実務上からきた経験の中で、非常に奇怪な、不合理な制度として私
どもは感ずるのです。
それからもう
一つは、
電報が多いとかなんとかいうことは、法規は最低でいいのだから、もしそういう必要があれば、事業上たくさん人を乗せてもいいのじゃないか、こういう議論がある、これもまことに表面的にはごもっともな点でございますけれ
ども、一体これは商船の場合の
無線通信というものは、漁業の場合と違いまして、いわゆる専用
通信、事業
通信によって行なうのじゃなく、やはり公共性を持った公共
通信というものが中心になっておる。しかも公共
通信というものは、
外国と違いまして独占事業になっておる。その中に割り込んでやるということは、国全体の制度の中で自由に円滑に
疎通できる条件があって初めてそういうことが言えるのでございますけれ
ども、そういう条件がない。ある特定の船だけは、おれのところは
電報が多いのだから三人乗せるといっても、それはおかしい。こういう点からいっても、国の制度といたしまして、やはり公共性を持った公共
通信疎通であるとか、あるいは
航行安全上の
外国と違った地域、環境、そういう条件を勘案されまして、最低の要員を確保することがやはり公共性からいっても必要じゃないか。そういう点からいいましても、
現行の規定が一番最低であり、かつ望ましい制度と私
どもは感ずるわけでございます。
以上でございます。
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