運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-04-12 第40回国会 参議院 逓信委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)    午後一時五十六分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     安部 清美君    理事            手島  栄君            寺尾  豊君            野上  元君    委員            白井  勇君            新谷寅三郎君            最上 英子君            谷村 貞治君            山田 節男君            奥 むめお君   国務大臣    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君   政府委員    運輸省海運局長 辻  章男君    運輸省船員局長 若狭 得治君    気象庁長官   和達 清夫君    郵政省電波監理    局長      西崎 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       倉沢 岩雄君   説明員    海上保安庁警備    救難部長    樋野 忠樹君    日本電信電話公    社運用局長   山下  武君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○電波法の一部を改正する法律案(第  三十九回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 安部清美

    委員長安部清美君) ただいまより開会いたします。  この際、一言申し上げます。運輸委員会との連合審査開会日時の件につきましては、去る十日、十一日の両日にわたって運輸委員会並びに当委員会委員長及び理事が集まりまして、種種協議を重ねたのでございますが、遺憾ながら協議決定を見るに至りませんでした。右御報告申し上げます。     —————————————
  3. 安部清美

    委員長安部清美君) 参考人出席要求の件についてお諮りいたします。  電波法の一部を改正する法律案について意見を聴取するため、四月十七日十時より参考人出席を要求いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安部清美

    委員長安部清美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、参考人人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安部清美

    委員長安部清美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
  6. 安部清美

    委員長安部清美君) 電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続いて質疑の通告がございますので、順次これを許します。
  7. 山田節男

    山田節男君 きょう質問しまするについては、運輸大臣郵政大臣それから気象庁長官、その他政府委員の御出席をお願いしたのでありますが、順序としては運輸大臣出席を待ってしたほうがいいと思いますけれども、時間の都合上、郵政大臣並びに気象庁長官も御都合があるそうでございますので、多少質問が前後しまするけれども郵政大臣並びに気象庁長官の御便宜のために、順序を変更いたしまして質問いたしたいと思います。なお、質問の前にちょっとお断わり申し上げたいことは、私やはり個人的事情で近来委員会にとかく欠席がちでありまして、ただいま上程になっておる電波法の一部改正案についての各委員質問もすでに十分尽くされていることでありますから、私が今から申し上げる質問が、これまでの各委員の御質問並びに政府委員の御答弁によって重複している部面は、これは私は重複を避ける意味において御答弁がなくてもいいと、かようにお願い申し上げたいと思います。  それで、第一に、気象庁長官が見えておりますので、気象庁和達長官に御質問申し上げたいと思います。先般、久保委員から海洋気象について、るる詳細な質問があり、また長官からも詳細な答弁があったわけでありますが、ただいま私ども手元に配られましたいわゆる「気象業務整備5ヵ年計画」というものを実は今拝見したわけでありますけれども、まず第一にお伺いしたいことは、今回の電波法の一部改正並びに船舶職員法の一部改正によりまして、従来の無線通信士のいわゆる無休執務体制というものが、限定執務体制になるわけです。その限定執務体制になって以後の、ことにこの海洋気象について、従来のままでいくのと、限定執務になった後のいわゆる船舶、ことに外航船気象通報というものが、何と申しますか、通信疎通が著しく妨害といいますか、遅延する、遅延のみならず、その気象通報というものが、気象台に到達しないということも考えられるのじゃないか。こういう意味におきまして、この電波法の一部改正船舶職員法の一部改正によって生ずる気象台海上気象通報の障害というものがあるかどうか。あれば、どの程度なのかということをまずお伺いしたいと思います。
  8. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 今回、電波法及び船舶職員法の一部が改正されるといたしますと、船舶気象通報を収集するために従来入手しておりましたものが、何らかの処置を講じなければ、特に夜間において、その通報が減少する次第でございます。現在は一日四回、日本時間にいたしまして三時、九時、十五時、二十一時の各時刻ごと気象通報が行なわれております。今回の改正によりまして、経過期間三年を終了いたしますと、船舶の大部分は第二種局乙船舶無線電信局となりますために、夜間気象通報、特に午前三時の気象通報が非常に少なくなる次第でございます。海上気象は、御承知のように広い海上で、たまたまありまするところの船舶からの通報によって気象業務を行なっておりますので、現在におきましても、船舶気象通報はこの業務をいたすのに十分とは言いかねる点がございますが、現在におきましては、各通報ごとに百ないし百五十通の通報がある次第でございます。今般、電波法及び船舶職員法改正されるといたしましても、午前三時を除く部分は、船を適当に指定する等の処置によりまして、従来と変わらないような通報を得る道が考えられるのでありますが、午前三時におきましては、特に処置を講じて気象業務に差しつかえないようにいたしたいと存じておる次第でございます。
  9. 山田節男

    山田節男君 現行法によって、今おっしゃるように、大体一日に百ないし百五十の気象通報を洋上の船舶から受けられておるのですが、かりにこれが今法律案が通りまして、暫定期間において二十四時間が十六時間になり、さらに八時間ということになりますと、気象通報を受ける度合い——今あなたは午前三時が抜けると言われたが、これが非常に心配である、それに対して適当な対策を講じたい、こういうことをおっしゃっておりますが、これも現在のままでの百ないし百五十通の気象通報によって、あるいは各海上気象観測船等によって得られる情報、これによりましての天気図といいますか、この海洋気象観測精度といいますか、正確度といいますか、そういったようなものを期待されて今日やっておられる、これがかりに三年後に、あらゆる船がオート・アラームの設置によって、八時間の限定になる、そうしますと、あとの十六時間というものは、全然、無線通信士のアテンダンスもないのです。そういたしますと、気象通報データは、一体現在の百通ないし百五十通、かりにこれの三分の一になった場合、あなたたちは良心的な——従来船舶から受けておられる気象通信が三分の一に減じた、そういった場合に、あなたは、天気図並びに海洋気象観測精度現状どおりに維持するというのには、どういうふうにしたらいいかということですね。これは今お示しになっておる五ヵ年計画にありますように、特に南方定点観測、これは五年先のことですが、少なくとも従来の無休執務規定が、十六時間が八時間になるということ、この法律案が通ればそういう事態が生ずるのですから、それに対処しての海洋気象観測の粘度を、せめて現状程度に維持するという自信があるかどうか、そのためには、具体的にどういうようにするのだというあなたのほうに対策がなくちゃならぬと思うのですが、この点についてひとつお示し願いたい。
  10. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 私ども技術検討いたしまして、午前三時の気象通報は、諸般事情から減ることもやむを得ない。また、何とか技術上でこれをカバーするという考えに立って検討をいたしまして、他の九時、十五時、三十一時は百四十通を目標とし、三時は八十通を目標とし、これで気象業務遂行し得るという結果を得たのであります。三時に気象通報が少ないのは残念でありますけれども、   〔委員長退席理事寺尾豊君着席〕 実際上諸般の情勢から、他の時間と同通数を得るのは非常に困難でありますので、他の時間の通数をできるだけ増し、正確なる天気図を作ることによってカバーするという趣旨であります。まあこういたしましても、海洋気象重要性から、さらにこれを強化することは望ましいことでございますので、その強化策としては、一つ定点観測を再開するなり新設するようなことも考えられます。この点は、定点観測には観測船を必要といたしますので、多額の経費を必要といたしますために、それだけの経費の有効なる使い方というものを勘案いたしまして、はたして定点観測の再開を早急にいたすべきか、あるいは他の方法を優先いたしますか、目下検討中であります。
  11. 山田節男

    山田節男君 これはあなたは専門家ですから御承知だと思っておりますが、日本はこういう細長い島であって、北には日本海、東南には太平洋という海を持っております。日本海なり太平洋気象現象というものは、かなり激しいものである、毎年定期的に台風現象東南方からくる、これもほとんど暦のごとく正確にくるわけですね。そういったような場合、そういう地理的に気象が激しいというこの日本の、並びに日本を取り巻く両海洋気象現象から申しまして、午前三時から午前九時までの気象の変化といいますか、それについて、大体今日まで何十年かおやりになっておって一つデータがあるんじゃないかと思います。データと申しますのは、気象観測のためのデータ、それがあると思います。しかし、これはあなたのほうで良心的な、ことに海上人命安全という見地から、できるだけ精確な研究なり、気象観測通報を行なうということでありますから、午前三時から九時までがブランクであった場合に、従来のデータでもって、およそ、それまでの気象通報を総合して、一〇〇%まではいかなくても、少なくも八〇%の正確な天気図を作成することができるかどうか、これは技術的問題です。それはあなたは今までに多年にわたる日本海太平洋の各月にわたる大体の気象現象というものはつかんでおられるのじゃないかと思います。そうすれば、それでもって責任のある天気図の作成なり観測の予報が、あなたのほうでできるかどうかという問題ですね、これはひとつ良心的に考えて、あなたは最高の責任者として、できるかどうかの問題についてお述べを願いたいと思います。
  12. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 先ほど申し上げましたことは、一応技術的に検討いたしたのでございますから、これが満足されれば、一応今と同程度責任を負えるわけであります。  なお、災害防止に関しましては、特に気象庁としても全力を注いでおりまして、船舶からの通報におきましても、そういう異常気象時における臨時気象通報については、これ以外に、できるだけ御協力を願うということを前からもいたしておりますけれども、今後もこの点については関係の方々と協議いたしまして、さらに有効円滑に行なわれるように努力いたします。
  13. 山田節男

    山田節男君 日本海は別といたしまして、太平洋上を常時日本船舶の大体何%ぐらいが遊回しておるかということになれば、まあ大体六〇%から七〇%というものが太平洋を遊回しておる。そうなりました場合、その六〇%ないし七〇%、何百隻になりますか、数字は別問題といたしまして、これが今申し上げたように減ずるということのために、海岸局を通じてあなたの手元にいわゆる通信疎通が非常に混雑して不円滑になってくる。そうすると、今まで百ないし百五十通来たものが百通こないかもしれない。これは想像ですけれども、普通常識的に考えてみてそうなる。無休執務体制であって百であった。それがかりに三分の一になったら、非常にその影響というものは、これは私は算術的に考えても、三分の一にはならないかもしれぬけれども、少なくとも五〇%、六〇%減るのじゃないか。そういたしますと、あなたは責任上、それに対してカバーする方法、すなわち南方定点観測船増加であるとか、あるいは外国船による気象通報の応援を得るとか、何かそういったものがないと、これはあなた良心的な責任のある仕事ができないのじゃないか、技術的にですね。ですから、今これを見るというと、四十年度には千二百トンの船を作って南方定点観測を充実するといいますが、これはこれからまたまだ昭和四十年のことですからね。ですから、何か利用し得るすべてのものを利用して、あなたのほうとして海上気象観測をスムーズに行なう他に打つ手があるのじゃないか。今度、電波法改正なり、船舶職員法改正になった後に、あなたのほうの責任ある仕事をしようということになりますと、先ほど申し上げたように、ことに午前三時以後の問題ですね。これは私は日本気象条件からいって、重要な時間じゃないかと思いますので、従来の多年のあなたのほうで持っているデータによって、大体正確な予想ができるのじゃないか、こういうことなんですね。そこはどうでしょうね。
  14. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 今回の改正によりまして、第二種局乙になりましても、船舶の数及び船舶から気象通報を打つということをよく気象庁船舶側とが協議して、その業務が円滑確実に行なわれまするならば、三時を除く以外は、従来と同じに確保できるのであります。ただ、三時だけの問題をわれわれとしては大いに努力したいと申し上げておるのであります。もちろん仰せのように、これがございませんでも、海上気象ということは私どもとしては現在十分と考えておりませんので、場合によりましては定点あるいは海岸に近い所では、できるだけデータを活用するとか、まあ新しい技術等の開発によりまして、できるだけ海洋気象の十分なる運営について努力いたしたいと思います。
  15. 山田節男

    山田節男君 重ねて確かめておきますけれども、午前三時の時点におけるデータはなくとも、従来の持っているデータ、あるいは利用し得るたとえば他の気象通報を得られるような方便を講じてやれば、大体大過なく自分責任を果たせる、こういう意味ですか。これはひとつ、あなたは長官として、はっきり御答弁を願いたい。
  16. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 午前三時以外は、特別の措置をしなくても、この仕事気象庁及び船舶側の十分なる打ち合わせと励行によって、今後も従前とそう変わりなく、場合によってはそれ以上にやる道も、船舶増加その他いろいろな点から考えられます。ただ、午前三時の分につきましては、船舶の側にも十分御了解をいただきまして、特定地域特定船舶、そういうようなものに対して協定を十分いたしまして、少なくとも八十通は送れるように努力をいたしたいと思います。
  17. 山田節男

    山田節男君 最後にもう一つ伺っておきたいのですが、海上人命安全条約というのがありますが、これは私こまかく調べておりませんけれども、おそらくその中に、海上気象観測国際協力といいますか、協定といいますか、これは重大なことですから、もちろんその中にあるんだろうと思うのですが、こういうような建前にあれば、今申し上げますように無休執務体制無線通信士仕事が、限定化してきた、これがいわゆる国際的になってきた、おそらく外国と同じようになってきた。外国におきましてはやはり気象観測については、これはきわめて鋭敏であることは申し上げるまでもない。そういたしますと、今あなたがおっしゃったように、大体責任が持てるとおっしゃいますけれども、なおそういう精度を向上するためには、たとえば太平洋なり日本海、ことにソ連船等日本海を遊よくしているのではないかと思いますがね、そういったような国際的な協力ということ、この気象に関する国際協力——太平洋地域あるいは日本の周辺、ウエーキ島とかミッドウエーまで、あるいは日本海ならば沿海州に至るまで、北鮮、中共、台湾、こういったような、いわゆる気象観測に関する、今申し上げているかなり気象現象の激しい地域におきましての国際協力というものを、何か具体的に実現するような方法があるのか、あるいはまた、そういうことをお考えになってやられたことがあるのかどうか。またそれは、いわゆる海上人命安全の条約精神にのっとってそういうことができるのかどうか、そのことをひとつ伺いたいと思います。
  18. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 国際的には、ただいまお話の海上における人命の安全のための国際条約におきまして、次の措置をとるために、各国協力することが約束されている。すなわち特定船舶気象測器を備えて、定められた時刻——その時刻とは状況が許すときはいつでも、少なくとも日に四回——気象観測を行なわせる。そうしてこれを無線通信によって通報させる。さらに熱帯暴風雨つまり台風などがある付近では、可能なときはいつでも一そうひんぱんに観測をして通報する。これは海上における人命の安全のための国際条約、その精神を受けまして、世界気象機関は一日四回海上観測し、これを通報するということをきめております。しかし実際におきましては、各国におきましても、船の上の観測船舶にたよっておりまして、自分で運営しているわけではございませんで、乗組員都合によっては、午前三時は非常にむずかしい。御承知のように外国船舶には通信士もそう多く乗っておりませんので、午前三時に実際に打つということは非常に少ない。そのために、たとえば米国では、太平洋域においては補助金を出しまして、それを打たせるようにする。フランスにおきましては、一通幾らと政府からお金を出しまして、そして気象通報を打つ、あるいは報奨金を出す制度とか、そういうようなことをして、各国ができるだけ日に四回打つということの励行に努める。また世界気象機関では、常にそれの励行を勧奨している次第でございます。それでございますから、日本はその点におきましては、従来は国際的に外国よりサービスしておった次第でありますが、今回改正になりますと、いよいよ外国と同じ状態になり、外国と同じ措置によってできるだけ努力をするということになろうと思います。
  19. 山田節男

    山田節男君 もう一つ確かめておきます。たとえばアメリカとかあるいは英連邦諸国は、これは七つの海を全部とは言いませんが、たとえば英連邦ごときは、ほとんど地球上の海洋をカバーするだけの観測中心点といいますか、基点を持っている。しかも言葉は同じです。アメリカも大体南米とか東洋におきまして、同じような基点を持っている。日本にはそれがないわけです。今、国際協力云々ということをおっしゃいますが、かりに、たとえば太平洋におる観測についての精度を増すためウエーキ島、ミッドウエー島あるいはハワイ、こういう所に日本からそういう基点を設けることはできないでしょう。少なくともあなたのほうで、これを一つ気象観測基点として利用しようということで、アメリカ協力を願う。ウエーキ島、ミッドウエー島は、おそらく米軍が全島を支配しているのでしょう。そういった場合、日本としてそういうものを一つ観測基点として、利用するというと語弊がありますが、少なくともそこからの情報をこちらのほうに、軍の秘密に関すること以外のものは、自由にあなたのほうで受け入れるべきじゃないですか。その態勢はどうなっておりますか。
  20. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) ただいまの問題は、現在世界気象機関におきまして、世界気象観測網というものを設定いたしまして、そして利用できるあらゆる資料を互いに所定の方法をもって交換し合う、その交換し合う方法等もこまかく規定しております。それに従って各国気象業務をいたしております。もちろん各国がさらに他の国あるいは世界気象業務に関しまして希望があれば申し出て、これができるだけ行なわれるというように努力をすることができる次第であります。
  21. 山田節男

    山田節男君 気象庁長官に対する質問はこれで打ち切ります。
  22. 野上元

    野上元君 気象庁長官にお尋ねいたしたいのですが、気象庁長官は純粋に技術者の立場から見て、今次の電波法改正されるのは好ましいと思われるか、好ましくないと思うか、いずれですか。
  23. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 気象業務からいいますと、率直に申して通信士がたくさんおって気象通報観測時にできるだけ多く行なわれることを望みます。私は、この海上気象業務という問題が、現在では国の気象業務に役立つものである、ひいては国際的に重要なものであるから、単に船主側にのみ負わせるということを、できるだけ国の費用をもって行なうのが、初期の航海の時代と現在の変遷にもかんがみまして、また一方、気象業務というものは地球全体にわたる現在にかんがみまして、そういう方向に進むべきことも、この際考えなければならないと思っております。
  24. 野上元

    野上元君 あなたのほうから出された資料をただいま受け取ったのですが、「気象業務整備五ヵ年計画」、「昭和三十六年九月改訂」、こういうふうになっておりますが、これは電波法改正されることを見通して改定されたのかどうか、その点をお聞きしたいのです。
  25. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 電波法改正が現在問題になっておるということを知って、これをこしらえたのでございます。
  26. 野上元

    野上元君 まず最初にお聞きしたいのですが、一ページの中ほどに、「気象庁は、その使命である気象業務遂行努力をはらってきたが、社会の気象業務に対する要望は、ますます増大しており、現在の施設、業務体制では、これらの要望を満たすには十分とはいい得ないので、」こう書いてあるわけですが、今日の状態においても、なおかつ不十分であるということをあなたはお認めになりますか。
  27. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 私は不十分だと思います。
  28. 野上元

    野上元君 それから一番最後のページにございますが、四の項に書いてありますが、「わが国は四面海に囲まれている関係上、船舶からの気象観測報告業務遂行上欠くことのできないものである。近く、電波法および船舶職員法の一部改正が行なわれた場合は、船舶からの気象観測報告が激減することが予想されるが、これが対策については気象業務支障をきたさないよう別途計画する。」こういうふうになっておりますが、この電波法並びに船舶職員法の一部が改正されることによって船舶からの気象報告は激減するというようにお認めになりますか。
  29. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 船舶職員法改正の仕方にもよりますが、少なくとも午前三時の気象観測報告は激減するという意味でございます。
  30. 野上元

    野上元君 「これが対策については気象業務支障をきたさないよう別途計画する。」となっておりますが、どういう計画をお持ちですか。
  31. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) この点は、先ほどからも申し上げましたように、特定海域において特定船舶と、夜間気象通報が円滑にできるように関係方面とよく協力しまして、契約を締結する。そのほかできますことがあるならば、それらも考えて、できるだけ業務支障を来たさないようにいたしたいと考えております。
  32. 野上元

    野上元君 そうしますと、気象庁としては、現在のところ対策としては、特定船舶特別契約によってそのギャップを埋める。その他のことについては現在のところ考えられない、こういうわけですね。
  33. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 大体おっしゃるとおりでありますが、その他のことは考えていないというのでなくて、現在ここでその他の方法があると言い切れる技術的段階、あるいはそういうふうに言い切れるような段階でありませんので、それで一つだけ申し上げたのであります。
  34. 野上元

    野上元君 そうすると、もう一度お聞きしますが、特定船舶との契約以外に必要な手はある、さらに必要な手を打たなければならないというふうにお考えですか。
  35. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 現在ここで、はっきり申し上げるような手はございませんが、先ほどからお話のような、定点観測も確かに一つ方法でございます。その他新しい気象技術、たとえば海上に浮遊する自動観測所を設置するとかいうような点も、今後技術が開発されるかもしれません。その他新しい、現在開発されておる技術もございます。まあそれらは、しかし三年という時間の経過期間では、ここではっきりお答えすることはできません。
  36. 野上元

    野上元君 今日の段階においても、気象観測は、気象庁長官として十分でないと言われておるわけです。しかも電波法改正されれば、さらに気象通報は激減すると言われておる。それに対する対策というものは、ほとんどないと見なければなりません。この状態では、あなたは三年間にそういうお約束はできない、こう言っておられるのですが、それでもなおかっこの電波法改正することが正しいと思われますか。
  37. 和達清夫

    政府委員和達清夫君) 私は、気象業務の上から、できるだけ気象業務を完全に遂行したいと願っておりますが、もし気象業務のほうをできるだけいろいろ考え処置をすれば——別の、国としての重要な計画遂行するために、それに協力するという場合には、そういうふうにいたそうと努力いたしておる次第でございます。
  38. 野上元

    野上元君 私はあなたの立場はよくわかります。よくわかって努力されるだろうと思いますが、少なくともこの法案を成立させれば直ちに障害が起きることは事実なんですね。それに対する対策は全くないままに行なわれているというところに私は問題があると思います。それは気象庁長官責任があるわけじゃなくて、他に私はおそらく責任があるだろうと思います。ただいま気象庁長官からお答えをいただいたのですが、私も関連質問ですから、この程度にとどめておきます。
  39. 山田節男

    山田節男君 先ほど申し上げましたように、順次私は運輸大臣から質問を始める順序ですが、郵政大臣がお急ぎのようですから、順序を変更して郵政大臣に……。実は郵政大臣に各論によって質問をし、政治的責任においての回答を求めたいと思ったのだけれども郵政大臣にそういったこまかいことは質問して御答弁を求めるのはあれだと思いますから、概括的なことだけ質問申し上げます。  まず第一に、今回の電波法の一部改正法案が出るについて、運輸省のほうでいわゆる航行安全審議会というのがあるわけです。昨年の九月ですか、それによって船舶職員法改正すべし、したがってそれに関連のある電波法改正もしなければならぬ、こういうことになっているわけです。まずお伺いしますけれども、迫水大臣は、航行安全、審議会の審議の経過を御存じかどうか、そのことをまずお聞かせいただきたい。
  40. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 郵政省のほうからもこれには参加をいたしておりまして、その参加した者が賛成をしてきたのですから、私も承知をしているはずです。   〔理事寺尾豊君退席、委員長着席〕
  41. 山田節男

    山田節男君 この海上航行安全審議会は、それぞれの関係方野からの代表者でもって構成されておるわけです。この審議会が途中において、これはまあ海員組合その他職場代表の審議委員のうち、五名はこの審議に参加しない。そういう当然の職場の代表が欠席のままで結論を出して、それが今回の船舶職員法改正であり、電波法の一部改正である、こういうことになりますと、これは単独審議ではないというけれども、少なくとも航行安全審議会の設立の建前からいえば、非常に傷のある、瑕瑾のある審議会の結論ではないかと思うのです。これは郵政大臣、どういうようにお考えになっておりますか。
  42. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) これは所管の役所のほうで——運輸省ですか、それは適法に決定せられたものとして取り扱っているわけですから、私どものほうとしては、これはそのままこれを受けるというわけでございます。
  43. 山田節男

    山田節男君 まあ大臣はそうおっしゃいますけれども、少なくとも実際の無線通信士の利害代表であるべき審議会の委員出席していないのに、一つの結論がそこで出たと、そして、こういう法改正を行なうことに、これはあなたの下には電波監理局というのがあり、電波の行政に関するあなたは最高の責任者ですから、そういうオペレーターの代表が出ていない審議会の結論によってこの改正を行なうというのは、これは民主的ではないと思うのです。
  44. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 電波法改正案は、運輸省の所管の委員会の決議によって出したということではございませんで、電波法の見地から考えまして、今まで日本がよその国に比べれば特に手厚い措置をしていたのを、もう時勢も変わったのであるから、世界各国並みでいこうということにしようという、こちらの考え方から改正案を提案した次第でございます。
  45. 山田節男

    山田節男君 そういうことは、少なくとも電波監理、電波行政の最高責任者として、そういうオペレーターの意見はなくても、郵政省としては、もう当然こういう無線通信体制というものを国際的レベルにするために、前提として、こういう電波法改正をすべきである。これはほんとうに自発的な郵政大臣としての腹であるのかどうか。ひとつもう一ぺん確かめておきたい。
  46. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 諸外国が三十年前からオート・アラームを使って機械化した状態にあるのに、わが国だけが人間によって聴守し運用していくという義務時間を設定しておりましたのは、基本的にいうと、私は雇用の状態に根拠を置いたものであったと思います。諸外国に対して日本の雇用慕情が違っていた。したがって、従来三十年もおくれて手厚い措置をしておったのは、いわばその方面に従事している方々の雇用を確保するという経済的な見地というものが相当強く働いておったと思います。  それからもう一点は、日本の電電公社その他の海岸局の能力の問題に関連があるわけですが、通信疎通という点からいって、通信を二十四時間にばらまいておくほうがいいという、そういう二つの見地から、あの法律が今まで改正せられずに残ってきたわけだと私は解釈しているのですが、それが雇用の状態が非常に逼迫してきたという点と、それから海岸局の整備も若干できましたし、通信疎通ということについては、いろいろ協力するにおいてはそう支障がないという見解が成り立つに至りましたので、それで国際的にしてもいいのではないかということで、自発的にわれわれの立場からそういう結論を出して提案をいたした次第であります。
  47. 山田節男

    山田節男君 これは先ほど申し上げましたように、たとえば日本海岸局の現状はどうであるか。外国に比べていかに貧弱であるか、こういうことを実はいろいろ事実を究明した後に、私は新たに最後的な質問を申し上げて……。今申し上げたのは、あなたさっきお出かけになられて、おらぬからそういうことになった。今あなたそういうことをおっしゃいますけれども、一体電波行政の最高責任者として、あるいは電電公社の最高の監督者として、今あなたそんなことをおっしゃるけれども海岸局は、後ほど言いますけれども、きわめて原始的な状態にある。これは運輸大臣質問を申し上げるのだが、少なくともあなた郵政の最高責任者として、特に電電公社の海岸局制度なんというのは、きわめて単純で原始的な状態にあると思う。これはあなたはほぼ整備されたとおっしゃいますけれども、これはとんでもない認識です。この一事は、これは後ほど究明しますけれども、少なくとも今日の運輸省は、船舶通信に関する監督者であるとおっしゃいますが、無線のオペレーターに関しては、これは電波法に基づくあなたの責任があるわけですね。そうすれば、オペレーターが実際現在船上において、船内で船舶無線通信の労働条件なり労働の内容がどうであるかということは、これはやはりよく御存じであろうと思うのです。今の御答弁によると、そういう無線通信日本で言う特殊の従来の慣行といいますか、あるいは封建性といいますか、いろいろな雑務や単なるヨーロッパ式のただ八時間の限定執務というものと内容が非常に違っているという状況から見て、あなたもそういう認識で、この海上航行安全審議会の結論は出ない、あるいはまた、運輸大臣が言われるような国際競争にたえる、あるいは国際的レベルにする、これは非常に形式的なことなんですね。ですから、どうも私は、ことに電波の行政に携っておる人からいいますと、これは必ずしも大臣のおっしゃるような意見じゃないと思うのです。それでは聞きますが、直接の電波監理の責任者である西崎監理局長はどう思いますか、この問題について郵政大臣と同じような考えで、同じような認識でおられるのですか。
  48. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 大臣と大体同じ考えでありますが、ただちょっと、さっき大臣はそう言われたんですが、あるいは先生のとり方が多少その真意が伝わっていないのではないかと申す点は、公社の海岸局の設備の整備の問題ですが、これは現在十分整備されておる、この受け入れ態勢ができているのだとおっしゃったのではなくて、この三ヵ年間に、すなわちこの経過期間中にさらに今よりも整備しようということをおっしゃっておるので、この点だけ、もし間違っておられれば訂正させていただきたいということです。
  49. 山田節男

    山田節男君 そうすると、これは三年間で十六時間が八時間になる、三年後に国際水準になるといいますが、かりにこれが実施されて、従来のわれわれの知っておるこの無線通信士日本船舶上における彼らの労働条件なり労働の内容というものは、外国のようにただ通信のウォッチをやって、時間がくればかぎをかけて、オート・アラームにしかけしておいて、あとは何をしてもいいという、こういうのと同じような仕事の内容であるということは、いかに考えてもそういうことは言えないと思うのですが、これはどうですか、郵政大臣あるいは電波監理局長
  50. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) どうも不親切な答弁をするようですけれども、その問題は運輸省の所管の船舶職員に関する法律のほうの問題であって、無線通信士がどういう仕事をしておるかというような問題と、この電波法改正の問題とは、直接の関連は私はないと思うのです。
  51. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) まあこれも今、大臣が言われたとおり、確かに現在の船舶通信士の方々は、相当雑務とかその他で忙しいと思います。この点につきましては、先般運輸省の船員局長ですかの御答弁にもありましたとおり、そういう点は整備する、こういうことを申しておられるので、それを信用いたしたいと思います。
  52. 山田節男

    山田節男君 郵政大臣無線通信士船舶上における労働条件は関知したところではないというようなことを言われますけれども、そうではない。これは非常に関係のあることであって、あれは無線通信のオペレーションということも、日本特有な、複雑というか、過剰な労働を負わされておるということは、これは電波行政に関係のないことではないと思う。それはあなたはあなたとしてそういう御意見を言われるが、これに対してこれ以上追及しませんけれども、それではお伺いしますが、こういったような改正案運輸大臣から閣議に出して、三十八国会のときに、これは当時あなたが、あるいは斎藤さんが運輸大臣でなかったかもしらぬが、三十八国会に対して、今の政府与党としては電波法の一部改正船舶職員法の一部改正をやるべきだと、こういう閣議の了解があるわけです。迫水大臣としては、斎藤運輸大臣からこういうことを呼びかけられて、そして快く、やはりそれでは、それにミートするように電波法の一部改正をいたしましょう。こういういきさつであるのかどうか。この点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  53. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 率直に申し上げますというと、電波のほうの見地から、郵政省の見地から申しますというと、この法律というものを、どうしてもこの法律があるから困る、この法律を直さなければ、電波監理上非常な支障があるという点はございません。したがって、この法律の改正ということは、何といいますか、その改正をしなければならぬという必要が、電波の見地から申しますれば、私は率直に言って必ずしもないと思います。しかしこの法律が、二十四時間という長時間の執務を規定しておるということが一つ支障になりまして、すなわち諸外国よりも格段に手厚い処置をしているということが一つの障害になりまして、その結果、日本船舶が動かなくなったり、あるいは日本が国際経済競争においておくれをとるというような原因が、もしここにあるとするならば、それはこの法律の本来の目的とするところと違いますから、国際水準並みにまで下げてくるということは当然じゃないか、こう思うのです。したがって、この法律を改正するということの動機というものは、電波の関係から出発したのではなくて、現代日本の置かれている雇用状態あるいは国際経済状態、そのほうから出発しまして日本の経済の伸展に阻害になる、その障害を取り除くということが、この法律改正の眼目だと思っております。したがって今、先生、喜んでとか進んでとおっしゃいましたけれども、そういう意味においては、喜んで進んでやったのでありまして、これをやらなければ電波の見地上障害ありという点からではございません。
  54. 野上元

    野上元君 ちょっと関連質問さして下さい。今、郵政大臣は、電波問題では支障がないというふうに言いますが、この電波法改正することによっていろいろな障害が起こるということは、郵政当局も認めておるのでしょう。だからこそあなたのほうは、運輸大臣に対して、こういう問題に支障が起きるけれども、その点はどうですかという質問をしているんじゃないですか。それをあなたは、この電波法改正することは、電波の監督上、監理上何ら支障がないという言い方はおかしいじゃないですか。だからこそ運輸大臣に、あなたのほうは質問をされて、運輸大臣はそれに対して答弁をされておるのですよ、文書をもって。そういう言い方はおかしいじゃないですか。
  55. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 私の言葉が足りないから誤解があるかもしれませんが、電波の関係上は支障がない、それから出発したのではないと言いましたことは、つまり一つの、海岸局といいますか、通信疎通が、オート・アラームを使って聴守時間を短縮することによって、通信疎通が阻害されるようなことがあれば、これは電波の関係上私どもの所管の上で大きな支障があります。その問題については若干の処置を講じ、さらに経過期間処置を講ずるならば、その問題は解消するという見通しがつきましたので、三年間の経過期間を見つつこの提案をいたしたわけでありますが、私のほうから運輸省に対して、航海安全上いいかとかあるいは気象業務に差しつかえないかということは、老婆心から念のために聞いたことでありまして、それだからこの法律を維持しなければならぬという根拠にはなりません。運輸省のほうでそれでいいのだと、こういうことを申しますれば、私のほうはそれでいいと、こう受け取るだけであります。
  56. 野上元

    野上元君 関連質問ですからこれだけにしておきますが、あなたのほうは運輸大臣質問書を出されて、おおむねやっていけるということがはっきりしたので、電波法改正することに踏み切った、こういうふうに解釈してよろしいですね。
  57. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 運輸省のほうで、そういうことについては心配がないと言ってきたから、責任者のほうでそう言うから、その責任者の見地のとおりに受け取った、こういうことであります。
  58. 山田節男

    山田節男君 今、野上君の質問は、私しようと思ったのですけれども、申すまでもなく、これは電波法の第五十条の改正なんです。そうしますと、あなたは何ら支障ないとおっしゃいますけれども、たちまち問題になっているので、これは海岸局の問題——あなたのお留守の間に質問することになりますけれども、現在、海上における船舶基点としている長崎あるいは銚子、一部神戸、この通信疎通というものが、非常に混雑し、乱脈をきわめておるわけです。そういう整備が全然できていないのです。それであなた、三年のうちに整備される条件だと言われますけれども、現在の時点において、改正された場合にすぐ起こる問題は、通信疎通のいろいろな障害です。これは現にあるわけです。ここにあるように、たとえば銚子あるいは長崎における受信、それと洋上の船舶から、それに対してキャッチして、いよいよ電報がそこに届くまではもう数時間の時間がかかっている。そういう現状のさなかにおいて、こういう第五十条の改正を行なうということは、さらに混乱を来たす、また不便を来たす、損害を来たす、こういう事実があるんです。そういう事態を、あなたは何ら支障ないというふうに言われるけれども、現にこういう事実があるわけですから、あなたのおっしゃることは私はどうもおかしいと思う。こういう現状、通信疎通問題から、あなたはそんなことは言えない状況にある。これは後ほど究明しますがね。
  59. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) この電波法の今度の改正は、日本の国全体の経済上の要請として改正する必要ありと考えてやったわけですが、この要請にもかかわらず、もし電波の通信疎通上どうしてもこれが大きな障害になるということであったならば、おそらく私はこの改正案は出さなかったと思います。しかし、二十四時間に分布するよりも、若干は悪くなるのはさまっておると思いますけれども、もろもろの対策を講ずるにおいては、それが重大な支障となって国全体の大きな雇用上の要請、国際競争上の要請に対して、さらに抵抗するほどこれが大きな障害にならない。そうならない措置を講ずれば、そうにはならないという見解を持ち得るようになりましたものですから、この改正案を提案した次第であります。したがって、現在と全く同じであるとは、私はさっきから申し上げていないのであって、これが重大な支障にならない、そうして三年の間の対策を講ずるにおいては十分疎通し得る、三年の間に対策を講ずることについては、電電公社ともすでに一応の話し合いもいたしておりますし、そういう見地からこれを提案したのでありまして、これをやったから、またこれをやっても一つも現在とは変わりがないのだということは、決してこれは申しておりません。
  60. 山田節男

    山田節男君 どうも今の迫水大臣の御答弁では納得できないのです。と申しますのは、現在の電電公社の海岸局、主たるものは長崎と銚子だけですね。これを後ほどまた私は聞きますが、これを倍の四ヵ所なり六ヵ所なりにする。これは電電公社がどういう計画をしているか知りませんが、少なくとも現在電電公社の海岸局通信疎通能力というものは、ほとんど飽和点に達しておる。それを八時間制にしてしまって、近海ならば、たしか午前九時から十一時、二時間休んでまた十三時から十五時、こうして二十三時までやる。そうしますと、具体的にいえば、ちょうど駅で切符を買う人が行列して待っているようなものです。これが三人や五人ならばいいけれども、これが五十人も百人も待っているということになれば、これは明らかに通信疎通というのは、現在でも飽和点に達しているのに、時間を減じていったらなおさらだ。これが飽和点に達しているものを時間を減じていったら、これは常識で考えてもわかることじゃないですか。それが何ら支障がないということは、これは私はどうしてもわからぬ。魔術であるとしか思えない。そういうことは言えるものじゃないと思うのですがね。
  61. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) その点につきましては、これは私のほうで独断的に判断したのではありませんで、公社のほうともよく相談しました結果、この経過期間の三年間というものは、現状の設備でやっていける。ただし、その三年後につきましては、先ほど大臣も言われましたように、三つの対策をその間にできるように準備しなければならない。その三つと申しますのは、一つは、電電公社の設備の増強でございます。それからもう一つは、これは制度上の問題でありまして、いわゆる裏時間制度——近海区域につきましては、条約によりまして時間割というのがきまっておりますが、まあそれを表時間としますと、その裏の時間を使う、そういうことによって特定時間への通信の集中を緩和する、それが第二の方法であります。第三の方法としましては、これは船主協会その他の御協力を得まして通信の抑制を行なう。まあこれは別に個人電報をどうするということじゃありませんで、社用電報の抑制、それから一部外国海岸局経由という方法を使うことによって支障なく疎通面は処置できる、こういう結論に達した関係でこの電波法改正に踏み切ったわけであります。これは主として疎通面の関係だけであります。
  62. 山田節男

    山田節男君 大臣や電波監理局長の御答弁ですけれども、一体どうしてこういう両法案を出したかといえば、結局合理化して経費を節約して海運の国際競争力を増強しようというのが根本の理由になるわけですね。今申したように、たとえば直ちにこれが実施された場合に、三年の経過後は今あなたの言われたとおりになるかもしれぬけれども、今日のこの時点においてのいろいろな数字的データからいたしますと、先ほどから申しておるように、とてもこの飽和点をオーバーしてやるというよりも、もう余力がないわけです。それで表時間でなくて、裏時間を使うと言われますが、そうなれば、これはやはりオーバー・タイムの問題、それから外国通信基地を使う、国際電報を使うということになれば、これは費用は従来二百円のものが四千円、一通。こういうことで、この法律の趣旨と非常に離れた結果になってくると考えなくちゃならぬ。それからもう一つ、公衆通信船主側でなるべく抑制すると言われますが、少なくともビジネスに関して抑制するといったって、これは抑制するという立場のものでないと私は思う。抑制できると言うけれども、抑制できるというのは口先だけのことであって、これは実際問題としてできるかどうかわからぬ。これはもうみんな商売で、事業としてやっているのですからね。ですから、公衆通信を抑制するなんということは、私は一つの口実であって、実際問題として実現ができるかどうか。それならば具体的にどうすればできるか、どうして公衆通信を従来よりも抑制し得るのかどうか、実際具体的にそういうことが言えますか。
  63. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほど、この第二の対策として申し上げました裏時間の問題ですが、これはちょっと言葉が足りなかったので、あるいは誤解しておられるかもしれませんが、決してこれはオーバー・タイムというのじゃありませんで、これは国際電気通信条約によっても認められておる制度で、いわゆるきまった表時間を使うかわりに、HXというカテゴリーの制度を使おう、結局そうしてこれはトータルでは執務時間は八時間にする、表時間とは違った勤務体制をとる、そういうものを作る、これは国際条約上も認められておるわけであります。現にアメリカにしても英国にしても、その制度を相当大規模に活用いたしております。  それからもう一つ通信の抑制の問題でございますが、まあこの点につきましては、むしろ運輸省のほうから御回答願うのが筋かと思いますが、いわゆる船主側としては、それに協力する用意がある、こういうことを聞いておりますので、その言葉を信用いたしておるわけであります。たとえば、聞くところによりますと、まだ戦時中のなごりと申しますか、いわゆるヌーン・ポジション、正午の位置を通報するということを現在でも行なっておる船が相当ある、こういったものはこの機会にやめたいといったようなことも言っております。なお、そういった点の詳細につきましては、運輸省のほうから御答弁願うのが筋じゃないかと思います。
  64. 山田節男

    山田節男君 これはまあこれ以上追及はしませんが、郵政大臣に対してもう一つお伺いしたいことは、従来は海上人命安全条約、こういうものがありますけれども、一九六〇年にロンドンの会議でかなり大幅な改正がなされておるわけです。もちろんこの会議には、運輸省並びに郵政省の代表が参加しておるわけですが、少なくともこの六〇年の条約によりまする大幅な修正、特に海上安全のための、これはまあ電子光学の発達による当然の私は改正だと思うのですけれども、かなり大幅な、かなり広範囲な人命安全のためのオート・アラームを含んでの無線施設あるいは通信士あるいは聴守に対する問題等におきまして、国際基準をかなり上げるということを具体的にいろいろ条項をあげておるわけです。もちろんこれは参加十五ヵ国、少なくとも船舶保有総トン数が百万トン以上の国家が批准しない限りは効果は出ないわけでありまして、すでに一昨年の五月にこういう条約ができておるわけです。これは運輸大臣の所管というよりも、郵政大臣のほうに重大な関係があるわけですけれども、この内容は申しませんけれども、少なくともかなり画期的な改正をした一九六〇年のロンドンにおける海上人命安全の条約、少なくとも無線関係の細目の協定については、これは当然批准されるのですか。批准するかどうか、大臣の御意見を伺いたいのですが、批准した場合に、今回かかっておる電波法の一部改正とは重大な関係があるわけですがね。これについて日本政府としてはこの六〇年の海上人命安全条約を批准することを、池田内閣としてきめられておるのかどうか。日本のような海運国であるからには、当然実施後においてこれに対するかなり大幅な基準の向上ということになりますと、今回の電波法改正船舶職員法改正というものに関連をさせまして影響があると思うか、ないと思うのか、この点は後ほど専門家にも聞きますが、郵政大臣、これは運輸大臣からもあわせて御答弁を願いたいと思います。これに対する政府の所見を伺いたいと思います。
  65. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 条約改正案の電波の施設云々の問題につきましては、郵政省としては異論がございません。したがいまして、その見地だけからすれば、批准をしてもいい問題だと私は考えております。ただこの条約の施行は、一九六四年以降に相なるのでありまして、そのときに当然電波法改正しなければならないから、そのときまで今回の電波法改正を待ってもいいじゃないかというようなかりに御趣旨でありましたならば、これはこの条約改正に伴って電波法改正は当然必要な部分が出て参りまするが、それと今回のとは無関係であり、また、その時期まで待っているわけにはいかないという考え方から、今回電波法改正を提案したわけであります。
  66. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 人命安全条約は、今直ちに批准のできない点は、船の構造、その他等でございますが、この船舶職員法改正ということによって、この批准が困難になるという点は全然ございません。
  67. 山田節男

    山田節男君 斎藤、迫水両大臣がおられるのですが、この条約を批准する用意があるわけですか。政府はそういうふうに腹をきめているわけですか。
  68. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) これは国内法としましては、船舶安全法、これから衝突予防法というようなものの改正を若干する必要がございます。しかしそれはこの船舶職員法とは関係がございません。
  69. 山田節男

    山田節男君 この条約改定の主たるものの一つには、従来たとえば貨物船の場合、無線設備を強制的にやらせているのは、従来五百トンであった。ところが新しい協定によりますと、三百トン以上の貨物船は無線施設を強制的にさせるということになっている。そういたしますと、これはヨーロッパとかアメリカ、カナダなどの国際航行の場合、これは三百トン、五百トン、八百トンあるいは二百トンもあるかもしれない。日本においてもこれはソ連あるいは北鮮、韓国そういったきわめて距離の短い国際航行の船舶もあるわけです。こういった場合に、従来の五百トンであったものが、三百トン以上の貨物船は全部無線施設しなければならぬとなる。こういうものをかりに批准して、これを義務化する場合、こういう法律を出すのは、国際競争力を増強するためにやるのだと言っておられるのですが、これは電波のことは運輸大臣は知らぬというわけにはいかない。これはなるべく合理化して安い経費でもって国際競争力を増強しようというのが、大体、運輸大臣、こういう法案を今回出した根源でしょう。この条約を批准するということは、三年先、四年先だから、今は関係ありませんというようなことでは、これは大臣の答弁にならぬ。三年、五年、十年先を考えて政策を立てるのが大臣の責任じゃないですか。その点どうなのですか。
  70. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 今度国際人命安全条約を批准する際に、今お願いして改正する点を、もう一ぺん改正し直す。たとえば今必要としているのを、その限度を減らしても、しかしながらこの安全条約を批准するために、またもとに戻さなければならぬ、そういうことはないと、申し上げているわけであります。
  71. 山田節男

    山田節男君 この新協定を批准するということは、池田内閣としてはさまっているわけですか。
  72. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) まだきまっておりません。
  73. 山田節男

    山田節男君 郵政大臣どうです。同じ閣内にある郵政大臣の見解はどうですか。これは批准すべきものだと考えているわけですか。そういうような意味質問をしておる。
  74. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 郵政省所管の範囲内において、この条約の批准をして支障なきやというもし照会がありました場合には、郵政省としては、支障なしという答弁をするでありましょう。しかし、国全体、政府全体として、これを批准するかどうかということについては、まだきまっておりません。
  75. 山田節男

    山田節男君 それでは一応郵政大臣に対する質問は打ち切りたいと思いますが、これは関連質問で、もしお残り願えればお残り願って、運輸大臣とあわせて御所見なり答弁を賜わりたいと思います。実は、非常に最初からの質問が前後しましたので、私は質問者として困るのですけれども、それでは今度、運輸大臣にひとつ御質問申し上げる順序にしたいと思います。  斎藤運輸大臣にお伺いしますが、一体、今回の船舶職員法の一部改正というものにつきましては、先ほど郵政大臣にも御質問を申し上げて、いわゆる航行安全審議会におがけになって、その結論として、これは当然改正すべきものだ、こういうことであります。それに関連して電波法改正もあなたのほうから郵政大臣に要請があったように伺う。閣議におきましても、斎藤大臣からこの問題について、積極的にこの両法案を出してやるべきだ、こういうふうにおっしゃったということであります。先ほど申し上げましたように、この審議会には五名という審議委員が辞任を表明して、この審議に参加していないのです。そこにやはり運輸官僚のかいらいになった航行安全審議会の結論に対しては納得できぬという一つの分野があるわけですね。この点について運輸大臣としてのお考えを承っておきたいと思います。
  76. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) この法案は航行安全審議会の結論によって出したとおっしゃいましたが、これはそうではございません。運輸省がこういう改正をいたしたいというので諮問をいたしました。その答申があったという事実でございまして、航行安全審議会からこういう改正をすべしということになったので運輸省はやることに踏み切ったんだという趣旨ではございません。これを改正いたしたいのは、運輸省の本来の考え方である、こういう改正をするについてどうか、ということについて答申があった。その答申は、おっしゃいますように、一部の方々は採決にあたって退席をせられた事実がございますけれども、航行安全審議会といたしましては支障がないと、そういう答申をもらっているわけでございます。
  77. 山田節男

    山田節男君 これは少なくとも法的な、いわゆるスタチュートリ・コミティと申しますか、これは運輸大臣の諮問機関であります。これによってできたものです。これは諮問だから、その答申がどうであろうと、民主的にやられようと非民主的であろうと、また、そんな利害関係者の五名がこれに対して参画してない答申であろうが、かまわないのだ。これは運輸省がきめることだ。こういうことでは、航行安全審議会の権威というものはないわけです。諮問機関としての権威が全然ないわけです。たとえば郵政省における電波監理審議会あるいは電波技術審議会、これに対してはやはり大臣が諮問をするわけですね。単なる形式だけのものならば、こんなものは必要はない。少なくとも運輸大臣が良心的に取り扱われようとすれば、この航行安全審議会におけるこういう非常に不完全な、瑕疵のある、また正規のメンバーがそろっていない審議会の答申、これをそのままとるということは、私はどうかと思うのです。あなたとしては、これは諮問機関のことだから、その内容はどうであろうと、そういう経過で、何といいますか、結論を出したものを取り上げたのだから、何らこれは支障ないのだということをおっしゃいますがね、これは形式論であって、そこに私はどうもいわゆる運輸官僚の云々ということをいわれると思うのです。やはりこの官僚行政の本体を現わしていることになると思うのです。それでいいのだと斎藤大臣おっしゃることは、どうも私は、少なくとも民主的な国としての行政として解しかねるのですがね。
  78. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 審議会の委員が全員そろって賛成をしていただくということは、これは最も望ましいことでございます。しかしながら、時と場合によって、あるいは立場上賛成ができがたいという方もおられても、これはやむを得ないことでありまして、事柄の本質上、航行安全に支障がある、かように考えまするならば、こういう提案はいたしませんが、航行安全上支障がないという確信を得、それと同時に、なるほど全員おそろいではありませんでしたけれども、安全審議会としては今申しましたような答申をいただいております。したがって、航行安全審議会の御意向も伺ったということには——これはほんの形式的だとおっしゃいますが、しかしながら、全員でなければ非民主的だということもいかがであろうか、私は、委員の過半数が、しかも過半数を欠いている、定数を欠いたということであれば別でありますけれども、過半数の方がよろしいと認定をされれば、その審議会の意思だと、かように考え支障がないと存じます。
  79. 山田節男

    山田節男君 それはまあ斎藤大臣の言われることも理屈はあります。しかし、もう少し民主的に考えると、やはり少数意見といっても、せっかくこういう諮問機関があって、それにおいては少数であろうとその意見は聞くということが、この諮問機関の答申を権威あらしめ、また大臣も自信を持ってこれは実施することになる。  それではお聞きしますけれども、そういう審議会に参加しなかった利害関係者の団体が、斎藤大臣にどういうことを意思表明しているか、あなた御存じですか。
  80. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 今おっしゃいますのは、審議会の委員が十一名でございまして、そのうち賛成はできないということでお加わりにならなかったのが、いわゆる海員組合の代表の方一名でございます。海員組合からは私は意向を聞いておりません。
  81. 山田節男

    山田節男君 こういう多数決とおっしゃいますけれども、六対五といいますか、こういう委員だけで一方的にこういうものをやられて、そうしてそういうことによって、大臣が今後とられる法律の改正の結果、従来の無線通信無休執務体制というものが限定執務体制になった場合、これはありていに言えば、そういう利害関係を持っている団体が、その法律が改定になっても、どうあろうと、もう実力で従来のいわゆる無線通信無休執務体制を堅持するのだ、これは一つの労働争議の状態になる。そういうようなことは、大臣として当然予想されなくちゃならぬし、そういう一方的な、出席の過半数だからいいのだというようなことをおやりになると、それによって起こる事態に対して、大臣は責任をおとりになるというような覚悟でおやりになっておるのだろうと私は思うのですが、この点どうですか。
  82. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) なるべくそういう事態の起こらないように希望をいたしているわけでございます。委員十一名のうちで十名で決定をされました。先ほど申しましたように、一名の委員が反対をせられ、参加をせられなかったということでございます。私は、このために、今おっしゃいましたような事態の起こらないように希望をいたすと、こう申し上げる以外にないと思います。
  83. 山田節男

    山田節男君 今そうおっしゃることけ、こういうことの強行によって起こる事態に対しては、運輸大臣責任を持って——郵政大臣じゃない、運輸大臣が全責任を持っておやりになるという意味ですか。
  84. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) そういうことが起こるのは運輸大臣責任だと、こうおっしゃれば、あるいはそうかもわかりませんが、私は運輸大臣といたしましては、そういうことの起こらないようにいたして参りたいと念願する以外にないのでありまして、それは私は郵政大臣に半分責任があるなんということは申しません。あるいは国会の責任だということも私は申しません。だれの責任であるかということは、私はこれは軽々に言うべきことではないと思います。
  85. 山田節男

    山田節男君 その点はこれ以上私御質問申し上げません。  そこで、まあ最初に戻るわけですけれども、一体運輸省が船舶職員法の一部改正電波法改正によって日本の海運事業を合理化させて、いわゆる国際的レベルの無線通信の制度にしていく、そうして海運業の国際競争力を増強しようという御趣旨でこういう法案をお出しになっていることが、過日説明にあった。そこで、これは運輸大臣として海運の合理化ということにつきましては、これは戦後、戦争によって非常な犠牲をこうむっておる船舶の不足、これも徐々に回復して、御承知のようにこれは政府においても海運造船合理化審議会というものを設けて、すでにその答申も出ている、かような合理化のための条件があるわけですね。その中の一環として、電波法並びに船舶職員法一部改正をお出しになった。私から申せば、もっと根本的のものが、第一順位として出すべきものがあるのじゃないかと思う。たとえば、今日の海運事業で日本ぐらい乱脈を加えていると申しますか、群将割拠と申しますか、実に何というか、統制もなければ、また総体としての力を発揮するような、いわゆる国際的に対抗すべき海運の統合的な団体もない、実際上の団体はあるかもしれぬけれども、しかし、実力を持っておる対国際、国内団体も何もない。そういうふうになりますと、私はまあまず第一、海運合理化の審議会による答申の程度においても、日本の海運合理化をこういうような人員の問題以前に、あるいはそれより優先して合理化させるべきものはたくさんあるのじゃないかと思う。これは大臣も内容御存じだと思いますが、たとえば海運業者の合同であるとか、あるいは海運業の運営に伴ういろいろな解決すべき点があると思う。少なくとも斎藤大臣の就任されて以来、この海運事業の合理化というものにつきまして、一体政府としてどういうような指導をしておるのか、また、どういう指導をしたけれども海運業者は依然として聞かないのだという、そういう点があればひとつ御説明願いたいと思います。
  86. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 海運造船合理化審議会にも日本の海運の将来に対しましていろいろと答申をお願いいたしております。政府といたしましてはその答申の趣旨を尊重して、まず第一に、海運の基盤の強化をはかって参りたい、かように考えまして、先般も運輸省設置法の改正を願って、そうして海運企業整備計画審議会というものを作っていただくことに相なりました。そうして海運企業に対しまして、一定の政府の財政的な援助を与えますることにより、今日の償却不足やあるいは元本の未返還ということなどをなくして、海運企業の基盤の強化をはかって参りたい。ただいまこれにつきましてもせっかく法案を準備中でございます。同時に、海運業界自体におきましても、できるだけ冗費を省き、そうして海運の事業の合理的運営をいろいろとはからして参っておるわけでございます。今日世界の海運界は、どの国もそうでございまするが、やはりできるだけ少ない経営費で事業を経営して参りたいという行き方になっているわけでございます。私は海運の基盤を強化し、振興をはかりますためには、やはりそれに乗っておられる海員の方々の福利の増進、待遇の改善ということも、これは欠くことのできない必要なことだと、かように考えております。したがいまして、今日世界の国際水準で要求しているより以上の要求をもって臨むという点をまず取り除くことも一つ方法である、かように考えておるわけであります。これが航行の安全であるとか、あるいは人命の安全であるとか、あるいは気象業務というものについて重大な支障があるならば格別、さようでないならば、これは国際水準並みにいたしますことが、やはり日本の海運界の国際競争力を少しでもつけるということになると、かように考えますると同時に、私はオペレーターを初め、また海員の方々の待遇改善にも私は向け得られる。これから日本の産業が、先生に申し上げることははなはだ恐縮でございまするが、伸びて参れば、やはり人手が足りなくなってくる。少ない人手で能率を上げてやって行くということが、これが日本の産業に与えられた使命であり、日本の伸びるゆえんでもあるのでありまするから、そこで、そういった意味合いから、合理化をはかって行くということが一つの大きな要務だと考えております。御承知のように、今日船の運航自身につきましても、相当オートメ化がはかられつつあるわけでございますが、そういうような意味合いからも、世界の水準あるいは国際条約が要求しているより以上の義務を日本の海運に負担をさせることはいかがなものであろうか、かように考えているわけでございます。
  87. 山田節男

    山田節男君 これを逆にいえば、私が申し上げる一つの観点は、海運業界においては船一ぱい持っておれば日銭が入ってくるからやめられぬ、こういうのが共通心理だというふうに私は聞くわけです。先ほど申し上げたように何十という船会社があるわけですよ。そういうようなものをまず合理化するということが、これはもう国際競争力を増強するためにこれは前提条件として必ずやらなくちゃならぬことなんです。私も多年海運造船振興協議会に役員として、これは運輸省あるいは郵政省にかなり協力してやっておりますが、この答申が出されても、たとえば、戦時補償の問題であるとかあるいは利子補給の問題であるとか、それをやる条件として、まず、海運業者がその系列をひとつ整備して、こういう群将割拠のありさまではなくして、政府がこれに対する助成、これはイギリスでもアメリカでもイタリアでもフランスでも非常にやっておるのですから、当然これは政府として国の責任において助成しなくちゃならぬことは当然でありまするけれども、その受け入れの態勢ができないところに、換言すれば、海運業者が合理化しないところに政府が積極的に助成できない、あるいは国会も助成を正しいとし得ない状態にある。一方においてそういう根本的な合理化を渋っておきながら、今あなたがおっしゃるように、合理化の一片として、政府が出した資料によりますと、この船舶職員法改正電波法の一部改正によって、通信士の整備によって年間セーブし得る金というものは十七億弱じゃないか。十七億弱というこの金は、日本の海運業全体からいえばきわめて少ない金ですね。ですから、そういう点を人的にしわ寄せをするというようなことは、これは最後にやるべき問題で、その前にやるべきことは、今申し上げたような、もっと何百億、何千億という合理化しなくちゃならぬものがある、それをほったらかしておいて、まず船舶通信にしわ寄せして、口実においては国際的レベルにするのだと、しかもその内容においては、これは大臣も御存じのように、外国無線通信とは勤務条件が全然違っておる。そこでまず人に先にしわ寄せをしちゃって、小さい魚をつかまえて大魚を逸しておる。こういうやり方が運輸大臣として正しいかどうかということです。あるいは日本の海運業の将来にとっていいかどうかということです。そこを私はお伺いしているのです。
  88. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) その点は私も同感でございまして、先ほど申しますように、日本の海運基盤強化に関する臨時措置法と名づけるようなものを近く提案いたしたいと、今大蔵省と折衝中でございます。これによりまして、必要な系列におけるあるいは合併ということも行なわれてくると思いまするし、指導もいたしたい。それには政府は与える援助のめどを示さなければなりません。それを示す法案を近く提案をいたして御審議をわずらわしたい、かように考えております。  無線通信士の船の上における労働条件のあり方というようなことも、これもやはり改善を加えて、そうして、りっぱな資格を持った無線通信士の方方には、やはり外国並みの労働条件でやってもらうように指導をいたさなければならぬと考えておるわけであります。
  89. 山田節男

    山田節男君 これは、まあ経費節減の可能額についての運輸省の出された資料に基づいて、ついでですから……。この人件費においては約十六億八千八百万節減可能であるといっておりますがね、先ほど西崎電波監理局長が言われたように、こういう限定執務体制になってきた場合に、従来の国内向けの公衆通信、これはもう非常な交通上の障害を来たすんじゃないか。これは事実数字が現われておりますが、国際電報をやれば一通四千円、国内の公衆通信をやれば二百円、その差額が少なくとも三千八百円ですか、こういう点を、国際通信費というものは当然ふえるんだと、これはふえるわけです。しかし、それを抑制するということを、これは電波監理局長答弁の中に言っておられるし、たしか運輸大臣の提案の理由の説明にもそれが入っているんじゃないかと思う。一体公衆通信を抑制し得るということはどこに根拠があるか。先ほど申し上げたようにこれは一つの事業体ですからね。抑制するということは実際可能なのかどうか。可能ならば、どういう品目についてさせるということを、政府が自発的にできるかどうか。これは大臣でなくても、海運局長あるいは船舶局長でも御答弁願いたい。
  90. 辻章男

    政府委員(辻章男君) おっしゃるように、船舶通信は、業務通信ということは結局各会社の仕事上の通信の問題でございますので、船主団体のほうとわれわれのほうと懇談いたしまして、大体一日に三百通ぐらいの電報は各社におきまして節減するような方針で検討いたしまして、大体その程度のめどはついたということでございます。で、いろいろと業務通信の問題あると思うのでございますが、先ほど電波監理局長からもお話が出ましたように、一番典型的なものは、現在、これはまあ戦時中からの慣習で、正午の位置を各船が本社のほうに知らすというふうな今まで運営を行なってきておりまして、これは全廃していこうというふうなのを初めといたしまして、各業務通信を各社が自主的に抑制する、そういう考え方でございます。
  91. 山田節男

    山田節男君 今の御答弁では、いわゆる業務通信というものが、ただ正午の通報という、これはまあ毎日とすれば三百六十五ということになりますけれども、そうじゃなくて、事業通信というものが抑制し得るということ、これは私はおのずからそこに限度があるのじゃないかと、ですから合理化の一環として、たとえば船員に関する通信、こういうものはしない、そういうものは省いていくのだという御方針になると思うのですが、そうじゃなくて、事業通信だけでも抑制するなんということは、これはこれこれの営業の妨害になるということですね。実際通信を抑制するなんといっても、商業上やむを得ないものはどうしてもやらなければならない。抑制するなんということをかりに船主側で言っても、これはわれわれとして抑制する論拠にならないのです。だから、少なくとも政府としてこういうデータを出すからには、もっと具体的な、ただ正午の通報というくらいなものじゃなくて、具体的にそれじゃどうして節減できるか、現実問題としてそういうことは私どういうような口実で具体的に言えるのかですね、これがわからぬわけですね。もっと具体的に話してみて下さい。
  92. 辻章男

    政府委員(辻章男君) ただいま申しましたのは、業務上の通信を全廃するというのじゃございませんで、先ほど申し上げましたような正午位置とか、その他いわゆる報告事項等を整理いたしまして、そういう態勢にいたしまして、各社が自発的に通信を抑制する、これは社の方針でございますから、各船もその方針にのっとって参りますれば、通信の抑制が可能である、かように考えております。
  93. 山田節男

    山田節男君 そうしますと、かりにこれはまあ全部国際通信でやるという場合ですね、一通四千円として、国内通信二百円——三千八百円として、そういう正午の位置を通報することを全廃さすことによって、年間どのくらい金額によって節減できますか、年間どのくらい船主負担が軽くなるのですか。数字的論拠が出ているわけですね。
  94. 辻章男

    政府委員(辻章男君) 今その的確な数字は持ち合わしておりませんが、もし御必要ならば後刻御通知申し上げたいと思います。
  95. 山田節男

    山田節男君 いや概算でも……。船主側ではそういうものをもって運輸省に説明したに違いないのですからね。正午の位置だけを通報しないことにおいて年間何億円節約できますということを、これは説明しておるに違いないのです。そうしなくっちゃあなた、こういう大きな問題に対して国際通信の抑制ということは政府に対して言えないわけですね。
  96. 辻章男

    政府委員(辻章男君) これは今数字は持ってないのでございますが、正午の位置の通報をやめることによりまして幾ら金額を節約するということが議論にはなってなかったのでございまして、法律の改正によりまして非常に通信疎通が、状況が悪くなるおそれがあるのじゃないか、それに対して、ある程度通信料が軽減されないと、というふうな改善方策を考慮すべきじゃないかということが議題になりました。問題はその通信料を節約することによって幾らの金額を減らし得るかということでなしに、どの程度通信を節減し得るかという考え方でものを考えたわけでございまして、今おっしゃったような数字はちょっと持ちあわせていないのでございます。
  97. 山田節男

    山田節男君 それでは、今のような御答弁では、この国際通信の抑制ということによるその節減がどの程度ということは、具体的に示されないのですから、これが数千万円のものなら、これは問題にする必要はありませんけれども、少なくとも常時、数百はいの船が対象に上って、そういうような船舶の国際通信を通じてやっているのを全廃したということになれば、相当の金額になるだろうと思うのです。けれどもその資料がないというのでは、幾ら質問してもだめなので、これ以上いたしませんが、もう一つ運輸省から出された資料の中で、今度は無線通信士を三人を最後には一人にする、新造船においては初めから一人とするのですから、そうしますと、定員削減によって船のスペースを積荷のほうに転用し得る、大体一万トン当たり五十立方メートル節約できる。これは私は船員でないからよく知りませんけれども、大体一万トン、三千トンなら三はい、五千トンなら二はいということになりますが、実際こういう五十立方メーター、通信士の定員の削減において節減できるかどうか、実際問題として、それほど今日無線通信士がぜいたくな事務室と居室を持っておるかどうか、これは調査しなければわかりませんけれども、それによって少なくとも年間四億五千万の積荷による増収を期待しておるという、こういう数字を出しておるのですが、これは一体どうですか、事実に相違ありませんか。
  98. 辻章男

    政府委員(辻章男君) これは無線通信士の定員の減少によりまして、そのスペースを貨物に充当するというふうに仮定いたしますれば、こういうような数字になるわけでございますが、今後作ります新造船は、一名という法案の改正が通りますれば、一名ということで、当初から設計いたしますから、無線通信士の定員削減によりますスペースは、貨物のスペースに当初の設計からやり得るわけでございます。ただ現存、すでに動いております船で、かりに定員が減って参りましたものを貨物のスペースに充てますれば、改造費その他が要るわけでございますので、したがいまして、これは注に書いてございますように、これは一応計算上は、全船舶につきまして、こういうように計算してみればこうなるということでございまして、したがいまして、この四億五千七百万円という数字を、私どもはこの通信士の定員削減の経費節減可能額ということには考慮に入れないで考えておる次第でございまして、これが必ず現実化するということにつきましては、実現は困難である、かように考えております。
  99. 山田節男

    山田節男君 そういうあなたの御説明だと、なぜ運輸省がこういう点を、われわれによく資料として出したか理由がない。実際可能性もない。それから四億五千万円というのは一つの架空の想定にすぎないのだというものをわれわれ国会に出されて、このあなたから出されている船舶職員法、あるいは船員法の改正を正当化するという理由にならないのじゃないですか。それなら、あなたがこういう資料を出したことを撤回しなければ、われわれはこれを一つの起点として今御質問をしているのですから、非常な無責任きわまると思うのですが、どうなんですか。それならばこんなものは出す必要はない。
  100. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) われわれは、従来この通信士の定員を削減する場合の経費の可能額については、いろいろ検討を加えておったわけでございますけれども、貨物スペースの増加によります運賃収入の増加という面においては、実は現存船につきましては、なかなか困難な問題であるというふうに考えております。また、今後の新造船につきましても、具体的にそのスペースにどの程度の貨物を積んで、その運賃収入がどの程度になるかというような推定を下すことは非常に危険でございますので、やっておらなかったわけでございます。前々回の委員会におきまして、森中委員であったと思いますけれども、この資料を御要求になりましたので、取り急ぎ推定を加えまして、いろいろの仮定を設けまして計算いたしたわけでございます。この四億五千万円という数字につきましては、したがいまして今後の新造船のものも含んでおらないわけでございまして、仮定の上の数字でございます。
  101. 山田節男

    山田節男君 だから仮定の上のなら、われわれはこの法律の是非を論ずる資料としては、きわめて根拠薄弱なものといわなければならない。これはもう撤回するなら撤回することにしてもらわないと、私の質問の論拠というものと、非常にそごをきたすわけです。こういうものを出した間の事情はいざ知らず、こういうものを基準として論ずるのではないなら、一応政府委員からそういうことを言明してもらいたいと思います。
  102. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私どもは、この法案を提案をいたしましたのは、これで経費が幾ら削減できるからとか、そういう銭勘定で出しているのではございません。今日御承知のように、何といっても人が大切であります。大切な人をむだに使うということは、これはよろしくないわけでありまして、やはり大切な人は大切なように働いてもらわなければなりません。そういう観点を主にして、ここに法案を提出をいたしておるわけであります。ただいま御意見のありました通信士を減らすことによって一体幾ら人件費を節約できるか、あるいはスペースを利用することによってどれだけの利益があるか、あるいは電報料はどうであるかということについて、先般、森中さんから御質問がありまして、その資料を作って至急に出せということでございましたので、お出しをいたしまして見ていただいておるわけであります。われわれは、これができますからというわけではなくて、御参考のために、どれくらい減るものか審議する必要があるから出してみろ、こういうことであったわけです。私たちも、それはどれくらい節減できるだろうかということは、これは一種の常識としてまあ知っておったほうがいいということはあるわけでありますが、しかし、それなるがゆえに、こんなに節減したいからこうするのだという趣旨ではございませんから、その点は御了承いただきたいと思います。
  103. 山田節男

    山田節男君 これは時間が切迫しますから、これ以上その問題について触れませんが、次に両法案の改正が実現するということになりますと、問題は、やはり二級通信士が全面的にあぶれてしまう、こういう問題ですが、これに対する対策、これは運輸省がやるのか、あるいは電波監理局がやるのか、あるいは文部省がやるのかわかりませんけれども、少なくとも運輸あるいは郵政両省として、これをどういうふうにする御計画ですか、具体的な案をお持ちですか。
  104. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 通信士の需給につきましては、ただいま御指摘のありましたように、二級通信士の過剰の問題が出てくるわけでございまして、これは三年間の暫定期間がございますので、その間に十分消化し得る問題であるというふうに、われわれは考えているわけでございまして、具体的に申し上げますれば、現在の通信士乗組員定数は約二千七百名でございます。そのほか定員以上に乗り込んでいるものもございますし、また予備員がございますので、約四千名の通信士が現在海運界に活躍いたしておるわけでございますが、その減耗補充が大体年間三百名程度でございます。それから大体一年間に新しい通信士の需要というのは、法律が現状どおりといたしますれば約三百名、したがって六百名の需要があるわけでございます。しかしながら、法律が改正されるといたしますれば、約そのうち百五十名程度のものが減少するわけでございますけれども、それにいたしましても、約五百名程度のものはどうしても求人しなければならないというような状況でございますので、そういう点から、その問題は暫定期間の間には十分解決し得る問題であると思います。
  105. 山田節男

    山田節男君 かりにこの法案が実施されるということになると、少なくとも三年後には、いわゆる第一種局というものがなくなって、第二種局の乙、それ以下になるということになりますと、従来この通信長ということは一級通信士と、こういう経歴は要らなくなると思いますね。そうしますとね、これはまあ省令か何か知りませんけれども、一級通信士としての資格といいますか、経験がなくても通信長になる。いわゆる第二種局乙ですから。そうしますと、船主側からいえば、非常に安い月給で雇えるのだと、そうして経験のある一級通信士、老齢化、かなり年齢を加えておる優秀な通信士というものは次第に淘汰されてしまって、実際の職場における全般的にいろいろの不安をかもすのじゃないかという、これは一つの労働問題としてこういうことが予想されるわけですがね。これに対する政府の対処する何か方策がありますか。
  106. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私はかように考えておるのであります。この法律は、船に乗せなければならぬ最低限度をきめておるわけでございます。これだけを乗せなければ船が出航できないということになっているわけでございます。ところでその最低限度は三名が一名になるという場合に、それじゃ船主がみんなおろしてしまうか。これはおっしゃるとおり私は労働問題だと思います。やはりこれは組合と船主側との話し合いによって、おそらくそんな無理なことは私はできない。失業者を出すというようなやり方は私は絶対にさせないように指導して参りたいというふうに考えております。先ほど局長が申し上げましたように、今日新しい通信士の需要が非常に多くて、むしろ船を作ってもそれに乗ってもらう通信士の方々を獲得するのに非常に困難を来たしているという状況であります。減耗補充にも困難をしているという状況であります。非常に大切な人でありますから、私は、これは船主と通信士あるいは海員組合との話し合いによりまして、そういう失業者を、この法律の改正によって起こさせないように私は十分の配慮をいたして参りたいと、船主側にも要望をいたしておるわけでございます。
  107. 山田節男

    山田節男君 今おっしゃるように、船舶通信士は一方においては非常に不足状態である。特に新造船の増加によって、通信士の需要は増すばかりだ。これはわかるわけです。そこでお伺いしますけれども、この船舶通信士、現在足りない、いわゆる補充しなくちゃならぬというこういう無線通信士の一般教育と申しますか、そういうものを養成すると同時に、需給の調整ですね。私たち現実に見ておりますのは、いわゆる船の上の無線通信というものは非常に労働条件が悪い。意欲がない。ですから、どんどんもう陸へ上がってしまう。しかも現在の無線通信船舶上における労働条件はオーバー・ロードであり、そうして無味乾燥である。厚生施設も十分でない。どうしても陸のほうに魅力がある。これが現実じゃないか。ですから、この点について、一方においては無線通信士が足りないという、これに対する一般教育、これは運輸省それから郵政省、実際的には私は文部省じゃないかと思うのですが、少なくとも政府関係三省が、一般教育に対してどういうことをするのか。あるいは今申し上げた過不足といいますか、今不足が多いかもしれぬけれども、余っておる分もある。それで、この需給の過不足というものに対する調整を行政的に考える必要があるのじゃないかと思うのですが、これは運輸大臣はどういうふうなお考えをお持ちですか。
  108. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) おっしゃいますように、私は日本の国全体といたしましては、この需給の過不足は文部省あるいは郵政省で十分立ててもらっておると思うわけであります。ただ、海よりも陸のほうが待遇がいい、あるいは生活が楽だというようなことで、船に乗る人は非常に少なくなっているというのはおっしゃるとおりの現状でございます。これは通信士だけでなしに、一般の海員についてもしかりであります。どうしても通信士、特に通信士を初め海員の待遇をよくしていくということが、これは今後日本の船主のとらなければならぬ方策だと考えております。で、それには船舶海運業の基盤の強化もはかってやらなければなりません。合理化もいたして参らなければなりません。同時に、少ない人手で、そうしてよき待遇をして働いてもらえるというような体制を作っていくことが必要だと、かように考えて、そのように指導して参りたいと考えております。
  109. 山田節男

    山田節男君 まあかりにこの法案が実施されて、三年後には従来の三名のものが一名になる。そういたしますと、この三年の間に新造船がどんどんできてくるわけです。そのものは、今度は新しい一つの運営によって初めから今度は一名にしてしまうのだ。そういたしますと、既存の船舶には三名のものが二名になる。二名のものが一名になる。そのさ中において、かりにこれがことしの十月に実施されるということになると、それから三年後、三年間にはかなりの数の新造船ができるのじゃないか、そういたしますと、既存のものはこれは三名のものが二名になる。新造船においては、当然これは二名置かなくちゃならぬような規格の船は、もうそういうような規格を、初め一名という規格でしておるのだから一名でいいんだ、こういうふうになりますと、ちょっとアンバランスの気持がする。片っ方において既存のものについては三名のものを二名にした。しかし新造船は初めから一名なんだ。このことは、今の改正法案の法文で見ますと非常におかしいと思うのです。そういうように思いませんか。わかりましたか、私の言うことは。既存の船はですね、三名が二名になり、二名が一名になりますですね、この法案によって。ところが新造船は、かりにこれが十月から実施されて、十一月に進水された新しいものは、もうこれは一名ということになるわけですね、当然この法律によれば。置かなくちゃならぬ三名だけれども、今度改正になれば、二名置くべきものが、これは初めから一名になる。それならそれでこの改正案に何かそういったものが、適用されるようなものが明文化されないとおかしいじゃないかと思う。私の質問意味はおわかりになりますか。わかるでしょう。
  110. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) ここ三年間は新造船とそれからその他の船との間に労働条件がアンバランスができてくるじゃないかというお尋ねかと思いますが、まあ一名は最低限度でございますから、一名でもいいわけでございますが、その会社の労務管理その他から、あるいは見習生を乗せるとか、あるいは法律は要求していないけれども、二名を乗せていくとか、先ほど申しまするいわゆる労働問題という観点から、船主は、私は適当な方法考えて、今おっしゃいますようなことのないように、通信士の不平のないようなやり方を考えていくだろう、かように考えております。
  111. 山田節男

    山田節男君 大臣、どうも私の言い回しが悪いからよくおわかりにならないが、既存の船は、現在ある船は三名が二名になるでしょう、当然ね。ところが新造船は一人というように、スペースから、あるいはオートメーション化するああいう部面が非常に合理化されて、一名でいいんだというので一名で、たとえば今年十一月に進水して、この法律が改正されるものとして、これによれば二名乗っけるべきものが、初めから新造船なので一名でいいようにしてあるから一名でいいんだということが許されるんなら、こういう法律の改正案の内容は、そういう解釈できぬのじゃないか、それなら附則か何かつけなければ……。法律は三名の者を二名にする段階的な観点からいくと、その法的処置がないじゃありませんか。それならば新造船を一名にするということは、この法律を変えなくちゃおかしいじゃないですか。この改正法の体裁からいって、内容からいって、そういうことできないじゃないですか。
  112. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) どうも山田さんのおっしゃる意味がのみ込めないんですが……。
  113. 山田節男

    山田節男君 いや、今これが適用されるのは、何だったかありましたな、現行のいわゆる無休体制でやる第一種局が五百五十七隻でしょう、これが三年後にはいわゆる八時間、第二種局乙になる。それから現行の十六時間のものが八時間になるのが三百八十二隻ある。そうしますと、かりに第一種局に認められておるものですよ、これは今言ったように三名が二名になる。現行法でやれば第一種局の三名が、改正すれば二名ですわね。新造船を作るでしょう、そのものは一名ということでやる、三年後じゃない。船主なんかに聞くと、これから作るものは一人だ、これさえ通れば一人にするということを言っているんですから、それが国際競争力を増強するんだということを言っているのだから、それならば法的にそういうアンバランスが出てくる。一方既存のほうはまだ二名、新造船の場合は一名だということになるわけでしょう。第一種局じゃなくして第二種に相当するものは二名でしょう。ところが一名でしょう、新造船については。それはどうですか。
  114. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) この条文の問題でしたらば、この附則の第二項に現存船の場合にはこういう経過措置を適用する、そうでない新造船のものはいきなりもう今度の終局の改正案が適用になる。こういうことになっているわけです。
  115. 山田節男

    山田節男君 だから言っている。だからそうなるんでしょう。そうなった場合に、いい言葉がないけれども、要するにアンバランスじゃないかというのだ、その問題なんですよ。そういう一つのアンバランスを、ただ新造船に適用するといっただけじゃ、今言ったアンバランスを是認している、それがいかぬじゃないか、それがどうかということです。
  116. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申しましたようにその実体がおかしいじゃないか、法文の書き方がおかしいじゃないかというのでは……
  117. 山田節男

    山田節男君 実体もおかしいけれどもこの法案の附則によって新造船は一名でいいんだというようなやり方ですね。
  118. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) それは経過措置としてやむを得ないと、こう考えておるわけです。そこで起こってきまする不都合は、一人乗っている船と、あるいは二人乗っている船とある、これはその労働条件としてどうもアンバランスじゃないか、こういうお尋ねか、あるいは通信疎通上そういうことが困るじゃないかというお尋ねか、アンバランスとおっしゃる点は。労働条件ならそこは船主と通信士の話し合いでやっていけるでありましょうし、また、電波疎通の面からは、これは支障がない、電波局のほうで今考えておられると思います。
  119. 山田節男

    山田節男君 この新造船は一人で、ちゃんと設備も大体一人の建前として十分完備している。これは労働条件もあまり違わない、二人でやる場合も一人でやっても。アンバランスじゃないかもしれない。その間労働条件においても片方は古い船で二人でやっているのと、一人でやっているのとオーバー・ロードじゃないかもしれない。そのことは私は問題じゃない。ただ、今のような附則において現存のものは二名である。新造船に限って例外というわけではないけれども、一名でいいようにしてあるので、一名でいいんだ、そうすると、少なくとも三年間片方が当然第一種甲のものが二人ならば、第一種甲に相当する新造船も三年間は二人だというのが建前ですね。ところが今の法案によりまして新造船は一名にするのだ、こういうふうにうたっている。だから運輸省としては船舶行政といってはおかしいけれども、船は同じだ。新造船は一名にする法律だから一名でいいんだという場合に、二足のわらじを一人ではいているというような格好がする、実際の行政がですね。そういうことの事態がアンバランスじゃないかというのです。
  120. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 確かにその間は同じトン数であっても一名でいい船と二名の船とある、アンバランスとおっしゃればアンバランスでございます。しかし、それがどこに不都合かということになりますと、私のほうは大して不都合はないじゃなかろうかと考えます。
  121. 山田節男

    山田節男君 委員長、この海運行政については、ちょっと私、もう少し聞きたいのですけれども、時間よろしゅうございますか、大へんに時間がなにしましたけれども……。
  122. 安部清美

    委員長安部清美君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記を起こして。
  124. 山田節男

    山田節男君 質問が非常に前後しますけれども、電電公社のほうの人に御質問申し上げたいのですが、この海岸局の問題ですが、先ほど来、電波法の一部改正ということによって国際通信の問題が起き、それから現状のように船舶から日本海岸局へ、地球の果てから通信されている。非常に安くやってもらう、この点は非常にいいんですけれども、先ほど来、るる申し上げたように、非常にこの通信疎通が現在の海岸局では飽和点に達しておる。達しておるということは、要するに受信能力といいますか、通信疎通力が非常に阻害されておるということですね。この海岸局に対して、電電公社として、少なくとも今問題になっておる海上人命安全という点、その他受信、通信の面からいって、どういうような将来のプランを持っておられるのか。それから現状の疎通の非常に混乱しておる状況ですね、これをひとつお示し願いたい。
  125. 山下武

    説明員(山下武君) 電電公社施設の海岸局の設備は、数年前までいろいろと欠点がありましたので、逐次内部の整備を加えたりしてやって参りまして、特に一昨年の五月から新しい電波の割当を郵政省から五波ほどいただきまして、通信能力の拡充をやっておるわけでありますが、それらの効果といいまするか、現在の時点におきましては、海岸局の設備の能力の点からいいますると、まだ相当の余裕がある。ただ、ある時間帯において船のほうから一斉に呼んできましたときに、全部が全部すぐ通信ができぬものがあるかもしれませんけれども、私のほうでの資料といたしましては、現在の時点においては、設備が不足しておるためにどうしても電波が停滞して困るということは、それほどないと思っております。ただ、将来の計画といたしましては、既往でもそうでございましたが、年々船腹の増加に伴いまして通信増加しておりますので、新しい周波数の割当を受けまして、そういう通数の自然増に対応しまして、公社といたしましても設備の増強をはかっていきまして、サービスとして悪化しないように、そういう方針でおりまするが、現実的に、現在の海岸局を今どうするというふうなことは考えておりません。
  126. 山田節男

    山田節男君 今非常に楽観的なことを言われますけれども、われわれのところに出されておる資料によると、現在外国からいえば、銚子、長崎、神戸も、短波だったらば海外から受けられるのじゃないかと思いますが、これによりますと、非常に銚子、長崎でこれをキャッチして、通信を受信するということが、場合によったら数時間たっても、待ち合わしてなかなかできないということです。それから実際これはもう中波と短波と送受信を見ますと、相当なこれは数になっております。それで、最悪の場合には二時間も三時間も待たなくちゃならないというのですが、今あなたのおっしゃるように、現在の二ヵ所の海岸局で十分だということは、これは私言えないと思う。あなたがそういうことを言われる数字的な根拠がありますか、具体的に。
  127. 山下武

    説明員(山下武君) 数字をここに各時間別のものを持っております。ただ、私のほうで調べましたのは、船のほうから海岸局に打ってくる電報につきまして、その受付時分と私の海岸局のほうで受信しました時分等を対比いたしまして、どの程度船で送られているのかということから見て、それほど著しい支障はないように思っておるのでございまするけれども、ただ、これは船側の内部のいろいろな事情で、実際電報を受け付けても、あるいは送信するときに送信の受付時刻というものを、実際の受付でなしに、送信可能に近い時刻にしておられる場合があり得るかもしれません。そういう船の中におけるいろいろな取り扱いの内部のことはちょっと私どもよくわかりませんので、海岸局に到着いたしましたもの、あるいは海岸局のほうから船へ送ります電報につきまして所要時分等を調べますと、ある時間帯においては多少おくれているのもあるかとは存じますけれども、各時間帯の現在の周波数で疎通し得る能力全部を使いますれば、まだ多少の余裕があるという程度の数字になっております。
  128. 山田節男

    山田節男君 これはちょっと運用局長の言われるのは、あなたのほうは受けた実際の数字からいっても、それは受ける側のことで、先ほどから申しておりますように、たとえば切符を買うのに窓口が一つしかない。受ける職員は一人、そこに十人も、極端にいえば三十人も五十人も行って待っている。あなたのほうで受けた数はわかるけれども、打つほうの現実の混雑は、これはいろいろな数字が出ている。実際にオペレーターなり船に乗っている者、これはあなたのほうには見えない。そういう非常な疎通の障害といいますか、混雑があるわけです。ですから、今のものを倍にすれば倍の受信ができるということがいえる。したがって、現状でまだ余力があるというようなことは、これは言えないと思う。  なぜそういうことを私が申し上げたかというと、地理的な条件は違うにしても、アメリカの例なんかとってみますと、少なくとも日本でいえば、電電公社施設に相当するパブリック・コースト・ステーション、これは海岸線が広い狭いの差ということがあるかもしれませんが、向こうから申しますと、いろいろな海岸局を入れますと合計百三十くらいある。それに対しての電信電話で連絡できる海岸局が百に近いものがある。こういうような、きわめて大まかですけれども、国の内外の航路に対する海岸局の問題も含まれているかもしれませんが、今問題になっている外航の船に対して、遠距離の通信、しかも日本としては英連邦アメリカに対して、外国に対する中継地点を持っていない。そういうことになりますと、現状で十分だ、余力があるということは、私はちょっとどうかしていると思うのだが、この点はどうですか。あなたのほうからごらんになったならば、まだ百通くらい受ける余裕があると言うが、実際その裏からいうと、幾らしてもできないから、一日にかりに二百通あるところだが、実際海岸局をキャッチして出せるものは百通しかないというのが現状じゃないか。私はそういう前提のもとに質問をしている。あなたはそうじゃないと言うが、それにはその裏づけがなければならないはずです。
  129. 山下武

    説明員(山下武君) ただいま先生のおっしゃいますように、船の中におけるいろいろな取り扱いの面から申しますと、公社のほうであるいは周波数の、ある時間帯で足りないために、送ろうとしてもこちらの局が出ないでいろいろ御迷惑をかけている点があるかとは存じますけれども、実は、そういうデータが私のほうではないのでありまして、そういうお話はときどき聞きますけれども、具体的にそういうデータを持っておりませんので、実は先ほど申しましたように、私のほうに来ます電報につきまして、船の中で何時に受け付けて、こちらに何時に着いたのだ、あるいはこちらの海岸局へ陸上から来た、銚子なら銚子に着いた電報を、船を呼びまして、船側に送り込んだ時間というものを、両方対比いたしますと、先ほど申しましたように、決して余裕があると、そんなりっぱなものであるというほどに申し上げることはできないかと存じますけれども疎通の能力という点から見ますと、決して今がぎりぎり一ぱいになっておって、少しも余裕がないというほどではない、そういう趣旨で申し上げたわけであります。   〔委員長退席理事寺尾豊君着席〕
  130. 山田節男

    山田節男君 時間がありませんから、次に移ります。  次に、電電公社の海岸局についてですね、先ほど来申し上げておるように、ロンドンでの一九六〇年の海上人命安全条約ですか、これは外航船ばかりでなくして、国内船についてもこれは海上保安庁、その他の関係あることですけれども、この条約がかなり従来とは基準の高い無線設備、あるいはオペレーター、その他の基準というものを上げることを強く要請されておるわけです。そうなれば、やはり国内の、あるいは近海航行、あるいは今あなたのほうでやっておる港湾におけるいわゆる電話がありますね、こういうようなもの、あるいは瀬戸内海における内海航路の海上の航行安全のための海岸局の設定、こういうことが必要になるのじゃないかと思う。そういたしますと、現状は非常にその点において特に電電公社は海岸局というものについては無関心とは言えないけれども、非常に等閑視されておる、これは国内の海上保安庁の遭難防止からいいまして、公社であるあなたのほうとしては、当然海岸局というのは増設することが必要じゃないかと思うのです。これに対しての何か計画をお持ちでしょうか、どうでしょうか、この点をお伺いしておきたい。
  131. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) あるいは御質問の趣旨を取り違えておるかもしれませんが、日本の内航船に対する無線局の設置、こういったものをもっと強化すべきでないかと、こういうふうに了解してよろしゅうございましょうか。
  132. 山田節男

    山田節男君 ええ。
  133. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) この点につきましては、確かに先生おっしゃるように、われわれも非常に関心を持っておるわけでありまして、現在一部、公社でありませんけれども無線利用組合、そういったようなものを結成いたしまして、自家用の海岸局を作りまして、そこと交信している、通信しているという例も相当あるわけでありますが、やはりこういった行き方にはおのずから限界があるわけであります。特に内航船の航行区域といったようなことを考えますと、やはり電電公社におきまして一元的にこういったものの対策を講じてもらうということが必要じゃないかということで、実はこの点につきましては、現に運輸省も一緒になりまして、関係者間でいろいろ内航船用のための海岸局の整備、もちろんその相手であります内航船自体に対するできるだけの経済的な無線機器も含めまして、現在いろいろと計画を進めておるわけでありまして、遠くない将来に実現するんじゃないか、こういうふうに確信いたしております。   〔理事寺尾豊君退席、委員長着席〕
  134. 山田節男

    山田節男君 今のあなたのおっしゃることは、これはアメリカの例で、たとえばカナダとアメリカの例のいわゆるセントローレンス運河においては、航行安全確保のため、電信シグナルじゃなくして、いわゆる電話のオート・アラームというようなことまでやらしておるわけですね、実際。ですから電電公社として、少なくとも近海航路の海上航行安全ということになれば、単なる今電電公社がやっている港湾の出入港に便利のための電話ばかりでなくして、今申し上げましたように、海岸局の設置によって航行安全のための電信シグナルじゃなくして、電話のオート・アラームということを実際やっておるわけです。もっとも国内的な内航船については、これは言葉の障害はないのですから、国際航行とは違いまして、日本語に統一されれば、電話によるオート・アラームということもやれるのです。そういうことも含めて航行安全、ことに瀬戸内海における海難状況が非常に多いということ、それは小型の船舶が多いということもありましょうけれども、無線施設をやるだけの資力がないという、そういう現実の事実もありますけれども、しかし、瀬戸内海における内航路の遭難というものは、これは年間において、あとで海上保安庁に聞きますけれども、相当な数に上っている。そういうものを防止するためには、今申し上げたように、電電公社の海岸局の増設と、これを計画的にやるということは当然のことじゃないか。ですから、これは今の御説明によって、将来政府が電電公社に対して、こういう計画的な施設をやれ、ということは、これは希望になりますけれども、電電公社としても至急ひとつこのことについての具体的な案を立ててもらいたい。これだけお願いしておきます。  最後に、海上保安庁にちょっとお聞きしますけれども、今の両法案の改正に関連して、ひとつ伺っておきたいと思いますることは、外航、いわゆる大洋を航行している船舶で、オート・アラームあるいは警急警報によって海上保安庁で海難を防止したという例、それからそういったような防止はできなかったのも含めて、これはきわめて最近の、たとえば一九六〇年でも五九年でもよろしゅうございますが、海上保安庁で年間どのくらいな、一九六〇年なら一九六〇年において海難の実際の救助をされたか、この数があればちょっと示してもらいたい。
  135. 樋野忠樹

    説明員(樋野忠樹君) オート・アラームでやりまして救助したという例は今はございません。  それから海難の実態でございますが、三十五年の統計でございますが、三千二百三十三隻が海難した隻数でございまして、救助は千三百五十五隻、九千百九十四名でございます。
  136. 山田節男

    山田節男君 海上保安庁の巡視艇でやっておるこの救難施設ですね、その施設がやる日本の沿岸は大体何キロまでを海上保安庁の救難の責任区域として定められておるのですか。
  137. 樋野忠樹

    説明員(樋野忠樹君) 現在の海上保安庁の所有しております特殊の宗谷であるとか、あるいは灯台補給船若草、あるいは水路観測船の拓洋とかございますが、それは一応巡視船としての海難救助で、実際現有勢力で一番大きなものは千トンクラスでございます。したがいまして、これらの海難救助の行動範囲は、大体千マイルが限度でございます。
  138. 山田節男

    山田節男君 そうしますと、今度電波法改正、先ほどの船舶職員法改正によって、いわゆる通信士無休執務体制限定執務体制になるわけですね、そういった場合に、今お述べになった救難といいますかね、海難救助の実績を述べられましたが、これがオート・アラームの設置、少なくとも航行中の商船が——これは客船、貨物船含めてですよ——限定執務体制になった場合に、オート・アラームの実施によって、今日のオート・アラームの信頼性から見て、絶対に——絶対とは言わぬけれども、とにかく今お述べになった程度のものは海難救助できるという、あなた自信がありますか。
  139. 樋野忠樹

    説明員(樋野忠樹君) 海難の救助に対する救助率とか救助見込みの御質問でございますが、これは要するに、海難の発生場所に非常に影響するのは先生も御指摘のとおりでございます。大体昨年度の海難発生の巨岸別の例から見ますと、大体九〇%が五十マイル以内の近い所でございます。遠洋海岸は最近小型からだんだん大型の漁船が多くなりまして遠洋に参ります関係上、七十二隻の遠洋カツオ、マグロ漁船の海難が発生しております。しかしながら、そういうソロモン群島であるとかいうふうな所に参りますと、私どもの現在の活動勢力範囲外でございますので、そういう非常に遠方の海難に対しましては、直ちに救助し得るということはできかねますが、私どものとりましたる現在の方法といたしましては、米軍の航空機によります出動要請、それから海軍の艦艇によりますところの救助措置をそれぞれ外務省を通じたり、あるいはまたそれぞれのオペレーションを通じまして要請しておる次第でございます。
  140. 山田節男

    山田節男君 これ非常に飛びますが、今の海上保安庁あるいは船舶局長あるいは電波監理局長の三つに関連質問になるかとも思いますがね、この一九六〇年のロンドンの海上人命安全条約の改定を見ましても、このオート・アラームというものが絶対に百パーセント信頼性がない、そうしますというと、四八年の海上人命安全条約を見ましても、とにかく改善したオート・アラームを付けなくちゃならぬ。ところが一九六〇年のやつを見ますと、さらにその基準を高くしなくちゃならぬ、近代的な、信頼性のあるオート・アラームを設置しなくちゃならぬ、こういうふうに、四八年においても、六〇年においても、こういったようなオート・アラームが絶対の信頼性がないというような感じを与えている。私らにちょっと配られたデータを見ましても、日本の現在使っているオート・アラームを見ても、いろいろな故障を起こしている。だから絶対の信頼性がないということが説明に出ている。この六〇年の条約を見ましても、これも改善されたオート・アラームを、近代的なタイプのものを装備しなくてはならぬ、こう書いてありますけれども、一体国産のオート・アラームの最も進んだもので外国製品に絶対に劣らないというか、劣らないだけのものを、今申し上げましたように百%と言わなくても、少なくても九五%のオート・アラームとして、いかなる場合においても完全に、何といいますか、機能を発揮し得るものかどうかですね。この点について、どなたかひとつ関係のほうで。
  141. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) オート・アラームにつきましては、再々この委員会におきましても議論になったわけでございますが、その際にも申し上げておりますように、オート・アラームは百パーセント通信士の代用になるものではない、こういうことはわれわれも認めるのにやぶさかでありません。したがいまして、だんだんとそれを人間の聴覚に近づけるように改善していくということは必要だと思います。ただ、先ほど引用されました安全条約の古い形式のものの問題ですが、これはわれわれが理解しておるところによりますと、オート・アラームについての技術基準というものが国際的に確定しましたのは一九四八年以後でありまして、それ以前のオート・アラームに対する要件というものは、きわめて抽象的で、具象的なものではなかったわけです。したがって、その一九四八年前に設置された、また承認されたそういうオート・アラームは、四八年以後にそれぞれの主官庁によって承認された形式のオート・アラームに変えてもらわねばいけないというのがこの一九四八年、あるいは今度の一九六〇年、ここで引用されておるのでありまして、今度の六〇年の条約が実施された暁は、四八年以後に承認されたものもそれに取りかえなければならないというわけじゃないわけです。それから先ほど海上保安庁の御説明で、オート・アラームによる救難の例はないということの話がありましたが、これは私が理解しておるところでは、先ほども申し上げましたように、やはりそれは海上保安庁のように人命の安全の救助ということをその主たる任務といたしておるところでは、オート・アラームによるよりは、人間を乗せて、それで百パーセント確実を期したほうがいいということで、おそらく海上保安庁の巡視船にはオート・アラームが装備されていない、こういうふうに理解しております。
  142. 樋野忠樹

    説明員(樋野忠樹君) 先ほど先生に御回答申し上げました当庁のオート・アラームによる救助はないということは、今、監理局長が申し上げたとおりでございまして、当庁の海岸局によるオート・アラームが載っていないので、それによる救助の実例がないということを申し上げた次第であります。
  143. 山田節男

    山田節男君 そうすると、今のように一九六〇年の条約の新協定が批准されるということになりますと、一九四八年のものよりも、もっと性能の確実であるものをしなくちゃならないということになっておりますけれども、たとえば、現在の時点において、国産の、いろいろメーカーはあると思いますけれども、かりに代表的なこういうオート・アラームを作るメーカーの製品とアメリカ、イギリスその他ヨーロッパの先進国の技術の相当進んでいる国の作ったものと、絶対に遜色はないのか、あるのか、これはもちろん性能の検査といいますか、をやる上で、そういう国際的な開きがあったろうと思う。その点で、日本の製品で十分間に合うということは、責任をもって言えますか。
  144. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 過去におきましては、日本外航船通信士による無休聴守、いわゆる三直制をほとんど実施しておった関係で、オート・アラームをしいて装備する必要はなかったわけであります。したがいまして、オート・アラームの国内船に対する実績というものは、残念ながらそう多くはなかったわけでございます。ただ最近、昨年あたりから相当装備する船がふえて参っております。昨年の暮れですか、の実績では七十隻ほどあります。それからもちろん日本外国に対する輸出船、これには百数十ぱいの船に日本のオート・アラームが装備されておるわけであります。実績としてはこういった程度でありまして、そういった意味からいいまして、従来は、おそらく率直にいいますと、先進国英米等に比べまして劣っておった時代があると思います。しかしながら、最近におきましてはそういう需要が相当ふえてきたというような状況もありまして、日本のオート・アラームの機器は相当格段に進歩してきたということは、実はわれわれのほうでは、御承知のように、オート・アラームに対する型式検定という制度がありまして、実用の状況に近いような状況を作りまして、そこでいろいろの、まあたとえば振動試験であるとか、温度試験であるとか、あるいは混信があった場合にどうだとか、そういう実用の場合の状態と同じ状態を作りまして、そこでいろいろテストをやりまして、その上で国際的な基準に合致しておれば型式承認をする、こういうことをやっておるわけであります。また、実は最近代表的と思われまするアメリカと英国と、それからノルウェーの製品につきまして、国産の製品と比較試験をやりまして、その結果は、日本の製品は外国水準並みにはもちろんいっていますし、ものによっては上回っておる、こういうような結果が出ておりまして、われわれとしましては、もちろんオート・アラームの問題につきましては、いろいろまだ国際的に欠点がありますけれども、そういった点はもちろん今後鋭意改善について努力する必要はあると思いますが、少なくとも現在においては国際水準もしくはそれを多少上回っているのじゃないか、こういうふうに見ております。
  145. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  146. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記を起こして。
  147. 山田節男

    山田節男君 それでは、まだ関連質問若干ございますけれども、時間も相当たちましたし、私個人としても時間がございませんので、残っている問題は他日の機会に譲らさしていただくということで、本日の質問はこれで打ち切りにいたします。
  148. 安部清美

    委員長安部清美君) 本案につきましては、本月のところ、この程度にとどめておきます。  これにて散会いたします。    午後四時五十四分散会