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1962-05-06 第40回国会 参議院 地方行政委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月六日(日曜日)    午前十一時十九分開会   ―――――――――――――   委員異動 本日委員井川伊平君、村山道雄君及び 鍋島直紹君辞任につき、その補欠とし て野本品吉君、小柳牧衞君及び田中清 一君を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小林 武治君    理事            野上  進君            増原 恵吉君            秋山 長造君            基  政七君    委員            北畠 教真君            小柳 牧衞君            西郷吉之助君            田中 清一君            館  哲二君            津島 壽一君            野本 品吉君            湯澤三千男君            加瀬  完君            松澤 兼人君            松永 忠二君            矢嶋 三義君            中尾 辰義君            杉山 昌作君   衆議院議員    修正案提出者  高橋 英吉君    修正案提出者  丹羽喬四郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    自 治 大 臣 安井  謙君   政府委員    法政局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁刑事局長 新井  裕君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    自治政務次官  大上  司君    自治省選挙局長 松村 清之君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国会議員選挙等執行経費基準  に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 小林武治

    委員長小林武治君) ただいまから委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日付をもつて委員井川伊平君、村山道雄君が秤任され、補欠として野本品吉君、小柳牧衞君が委員に選任されました。   ―――――――――――――
  3. 小林武治

    委員長小林武治君) 公職選挙法等の一部を改正する法律案国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がございますので、これを許します。松永君。
  4. 松永忠二

    松永忠二君 総理質問いたしますが、自民党委員からも質問が出ておった際にお話がありましたが、この法案参議院に回ってきて非常に時間が少ない。その上に、これは世論からも相当強い批判が出ているわけです。で、衆議院審議経過の際も、社会党委員が欠席のままで採決をされている。こういうふうな状況の中に、また同時に参議院では、野党が全部衆議院送付に非常に不満だ。原案復帰を主張するという、こういう点についても、意思が統一をされているわけです。そういうふうに非常に問題の多い法案であることは、私が申しあげるまでのこともないわけです。ところが、新聞等で報道されているようなものを見ますと、自民党衆議院修正したままを成立させるのだ、しかもこれは参議院自民党に対しても、両院議員総会党議として決定したものだから、再修正はしないのだ、こういうことを国会対策委員会やあるいは幹事長の間でも話し合いがまとめられた。なお、その報告に対して、総理は、あらゆる犠牲を払っても今国会成立をさせるのだ、こういうふうなことを言われていることが報道されているわけです。しかも、そういうことが事実であるということもいろいろな方面から聞いているわけなのでありますが、衆議院を通過した際に、党議できめれば、それに拘束されるのだ、衆議院できめたとおりにそれを通さなければいけない、野党の全体が参議院でどんなに反対をしていても、それは数で押し切ってやるのだというようなことであるとすれば、私たち参議院審議なんというものは必要がないと思う。   〔委員長退席理事増原忠吉着席自民党党議で、衆議院段階決定したことは、あくまで参議院自民党も拘束するのだ――そうなれば、今現在数の多い参議院における自民党は、数で押し切ろうということであれば、野党はどんなことを主張してみたところが、それは帰趨はきまっているものだと私たちは思う。これじゃ参議院審議権というものを全く無視したものだと思う。あるいは、よくあなたがいろいろな機会に、十分にひとつ論議を尽くし、話し合いした上で問題をまとめていくという、そういうようなことを言われているわけだけれども、これではそういった趣旨とも全く違ったものだと思う。一体参議院審議過程修正するというようなことについては、当然なことだ、またそういうことはあり得ることだと、こういうようにお考えになっておられるのか、またそれとも、新聞の報道されているように、もう衆議院段階でそういうふうなことがきまっている以上、それを再修正しないで、あくまでこれを通すのだ、こういうことであるのか、これについてのひとつ総理見解をお聞かせいただきたいと思うわけです。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 衆議院におきまして修正可決した議案を参議院で通していただきたいということは、私の希望でございます。念願でございます。しかし、問題は、議会運営議会議決権の問題と政治的の考慮の問題と別個にお取り扱いになっていただきたいと思う。私は政治的にぜひ通していただきたいということを幹部の人に言っておるのであります。しかし、それだからといって、参議院審議権を無視しようという気持は毛頭ございません。事柄が違う問題であります。
  6. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、政治的な問題と審議権の問題とは別だ、こういうお話なんでありますが、政治的に通してもらいたいということは、つまり、あくまで参議院における審議権を尊重して、参議院意見の一致したところで通していただきたいということであって、あくまで再修正はまかりならぬと、そういう方針ではないということですか、その辺はどうですか。その二つの関連をお聞きしておるのであって、別個の問題であるというあなたのお気持はわかるけれども、それはどういう関係にあるのかということを私は聞いておるわけです。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 参議院全員一致ということを私は希望いたしておりまするが、やはりこれは民主主義の多数決でございますから、これは参議院において適当に善処されることと思います。ただ、私といたしましては、衆議院を通過した案が最良なものと考えますので、このまま修正せずに通してもらいたいということは申し入れてあるのでございます。
  8. 松永忠二

    松永忠二君 あなたはあらゆる犠牲を払っても今国会成立を期したいという、それはどういう意味でありますか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あらゆる犠牲を払ってもと私は言った覚えはありません。ぜひとも通してもらいたい、こういうことでございます。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 私たちは、公職選挙法というものが非常に重要な意味を持ったものだから、したがって、これは十分な審議をするということを考えているわけなんです。それで、そうなってくると、今野党の総括の質問が最初に行なわれているわけで、まだ私たちの議院でも、いろいろな方々が質問したいと、まだ十分、総理質問の終わったあとでも、関係者のほうからいろいろな質疑を重ねていきたい、こういうふうに考えておるわけです。しかし、御承知のとおり、会期は七日まで、それで今参議院のかかえておる法案の中には、いろいろ重要な法案があることは、御承知のとおり。産業投資特別会計の問題にいたしましても、あるいは農業基本法関連をした農協法改正、あるいは農地法改正、あるいはその他設置法関係した関連法案もたくさんある。こういうふうなものをかかえて、しかも本地方行政委員会の中にも重要法案をかかえておるわけなんだが、そういう中で、一体あらゆる犠牲、つまりぜひ通してもらいたいというようなことをあなたがおっしゃっておられるのだが、そういうことと関連して、一体この国会成立を期していくということが非常に困難だということを私たち考えなければいけないと思う。また、あなたのおっしゃるように、当委員会が円満に審議を進めていくためには、相当な時間も必要であることは事実である。こういうことを考えあわせたときに、七日までにこれを成立させるということは、私たちから言わせると、自民党のきめている党議決定を強行していくということになると思うのです。そうじゃなくて、十分な御審議をいただいて、参議院審議権を尊重して参ります、こういうことと一体そういう時間的な関係とはどういう関係があるというふうにお考えになっているのか。   〔理事増原恵吉退席委員長着席〕 それとも、十分ひとつ参議院審議権を尊重して審議をしてこれを通してもらいたいと、こう言うのか。それは、非常にあなたのおっしゃることが時間的に無理じゃないか。そういうことは非常に並行できない条件ではないかというふうに私たち考えるのですが、この点はいかにお考えですか。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 参議院におきまして御審議の上、会期内に通過するようお願いいたしておる次第でございます。どうぞその意味におきまして、十分御審議願いたいと思います。
  12. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ、そのいろいろ審議経過、時間的な問題等考え合わせてみて、もしも、その他の重要法案もあることであるので、最悪の場合には、どうしても通してもらいたいということを具体的に実行するためには、会期も延長しないといけないという気持ちをお持ちになっておられるのか。そういうことを考えても、なおかつ審議を慎重に、しかも重要な関係法案本国会成立をしていきたいという気持を持っておられるのか。その点についての、会期延長の問題についてのあなたの考えは、どういうお考えを持っておられるのですか。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今、会期延長の問題につきましては考えておりません。本国会内でぜひ通していただきたいということでございます。
  14. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、まあ参議院審議桁は十分に尊重するのだ、重要な法案でもあるから参議院でも十分な御論議をいただきたい、そうしてまた、重要な法案は、その他の法案も全部ひとつ本国会成立をしていきたい、こういう今お話だつたと思う。だから、公職選挙法については今国会成立を期したい、しかしそれは参議院審議権を尊重するという意味から十分な審議をしてもらいたいということについては、あなたはお考えになっているのだと思うのです。気持としては原案でいきたいと思うけれども、十分審議をした上で意見がまとまれば修正という方法もあり得ると、そういうことまで拘束をする気持はないんだと、こういうことなんですか。そこをひとつ再度お答えいただきたいと思います。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお言葉にもありましたごとく、政府はいろいろ苦慮いたしました結果、原案を作成し、また衆議院審議過程におきまして修正案が出ました。そして、その修正案につきましても、議員総会できめ、また衆議院で討論の結果決定したものでございます。したがいまして、参議院自主的審議権は、これはもちろんわれわれはゆるがせにすることは考えておりません。御審議を願うことは当然でございますが、私の気持といたしましては、衆議院議決の案でひとつ御審議を願い、それを参議院のほうでどうこうされるということにつきましては、私はとやこう言うわけじゃございません。党の気持として、党の幹部に言っているだけでございます。要は、参議院において決定されることだと思います。
  16. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃひとつ、今言った趣旨から考えて、委員長質問いたします。  今質問から通じてわかったことは、池田総理は、とにかく気持としては、衆議院で通った原案で通してもらいたい、しかし参議院が十分に慎重に審議をされるというふうな審議権について別にそれをとやかく言っている話じゃないし、参議院審議権については十分尊重していきたいと、こういう気持を持っておられる。したがって、私は、委員長も――委員長国会役員であって、やはり参議院審議を十分尊重していくという考え方に立っていると思うのです。したがって、十分にひとつ論議を尽くしていくということをやらない限り、非常な強硬な手段に訴えてやっていくというようなことを考えている気持は私はないと思うのです。こういう点については、委員長として考え方をここでひとつちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  17. 小林武治

    委員長小林武治君) 十分審議を尽くしたいからして、休みも返上し、また夜までもやりたい、しかしてわれわれ国会役員としては、与えられた会期内にできるだけ議了することがわれわれの責任である、こういうことを考えております。その責任の前提のもとに、ひとつ十分できるだけの審議をしたい、こういうふうに思っております。
  18. 松永忠二

    松永忠二君 で、国会会期内に十分審議をするということ、これはもちろんだと思うのです。しかし、同時にまた、こういうふうな、さっき申しましたように、世論も相当な問題を持っているし、あるいは参議院野党も相当な意見を持っている、あるいは社会党もこれについては審議経過の際からも非常な問題を持っていると、こういうことになってくれば、瞬間的に考えて非常に困難だということについてはお考えになっておられるのですか。それとも、そういう点については、時間的な経過考え、それを円満に会期内に成立するためには、各方面意見をひとつ勘案して円満な解決をはかっていこうという、こういうお考えの上に立って、なるたけ会期内にひとつ成立を期していきたいと、こういう態度なのか、その点はどうなんですか。
  19. 小林武治

    委員長小林武治君) これは、四日の口に総理がおいでになったときにも、衆議院からの送付がおそきに失したために十分の審議期間を持ち得ない懸念があると、こういうことを申し上げております。われわれとしては、しかもなお与えられた時間内でできるだけの審議を尽くしていきたい、こういうふうに考えております。
  20. 松永忠二

    松永忠二君 まあ委員長から話があったとおり、審議時間も非常に少ない、しかも重要な法案である、そういうようなことから考えれば、どうしても二の際、そういうことをカバーしていくためには、各党派意見を十分尊重していくということは非常に必要だと思うのです。したがって、そういう基本線に立って、時間の少ない審議期間の中でできるだけの審議をしていくという、こういう方針であるべきだと思うのです。一方的にきめられたことを強行するというようなことを考えることのないように、ひとつ委員長審議に当たっていただきたいと思うわけです。これはひとつ、その点を強く要望をしておきたいと思うのです。その点いかがですか。
  21. 小林武治

    委員長小林武治君) 要望としてお聞きしておきます。
  22. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃひとつ、次の問題に移っていきたいと思うのですが、総理にお聞きをするわけですが、選挙制度調査会というものが政令でできておった。ところが、その政令でできておった選挙制度調査会を、法律に基づく選挙制度審議会に切りかえていった。これは一体どこに趣旨があるというふうに考えておられるのか、この点はいかがですか。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来政令選挙制度調査会を設けておりましたが、私は、さきの総選挙の結果にかんがみまして、この重要な制度につきましてはやはり法律によることにし、しかも慎重に審議を願い、また答申政府は尊重するという強い立場から、権威あるものにすべきだと考えまして、さき国会で御審議を願い、法律に基づく器議会をこしらえたのでございます。
  24. 小林武治

    委員長小林武治君) なお、質問者答弁者に申し上げておきますが、先ほどからもお話しのように、審議期間もきわめて短いという関係もありまして、ひとつ質疑答弁をできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。また、重複にわたらないようにひとつ。
  25. 松永忠二

    松永忠二君 今御答弁があったように、政令できめてあるものを法律に変えていくということについては、この前の選挙制度審議会設置法提案の理由の中にもその趣旨が十分に書かれて、現行制度を全般にわたって再検討を加えて、党派をこえ、国民全体の協力を得て理想選挙を実現する、そのために強力にして権威ある選挙制度審議会を設置して、そうしてこの答申を尊重して、改正案国会提案をしていく、こういう趣旨であると思うのです。今総理の言われたことも、それと同じことを書っておられると思うのですが、この選挙制度というものに対して国民世論というものをどういうふうに考えていくべきものなのか、また選挙制度改正については、審議会というものをほかの審議会とは違った立場というか、そういう点についてどういうふうな審議会に対する態度でこれを処理をしていくべきものであるのか、特に選挙制度改正に対して国民世論というものをどういうふうに取り扱っていくべきものなのか、また特に審議会というものについての取り扱いの基本的な態度というものはどうあるべきであるのか、こういう点については総理はどういうふうにお考えになっておられるか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたとおりに、従来の調査会というのは、設けるのは法律でありましたけれども、その組織、権限の内容というのは政令できまっている。今度の審議会は、その解議会内容その他も法律できめました。したがいまして、非常にそれが強くなっておるのであります。私は、そういうふうにし、しかも民間の有識者を入れまして、そうしてこれらは一つの世論代表のように一応考えておるのであります。しこうして、法律にもありますごとく、この答申を尊重するという規定を置きました。できるだけ世論の動向に沿っていこうというのが私の考えです。
  27. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことを私聞いているのじゃなくて、そういう世論代表であると考えられる審議会、そうしてまた選挙制度に対する国民世論というものをどういうふうに考えていくべきものなのか、そういうことを私はお聞きしているわけです。こういうことを言う人が非常に多いわけです――選挙制度というのは、国民議会政治運営に当たる人とか政党を選ぶ方式をきめるものが選挙法だ、したがって国民の思想というものが第一に尊重すべきもので、また選挙される人たちには非常に都合が悪いかもわからぬけれども、選ぶのは国民なんだから、国民が公正な選挙ができるような、そうして最も適当な人を選ぶことができるような一番いい方式というものをきめればいい、そういうふうな意味からいけば、選挙制度改正の基本的の態度というものは、まず国民世論を第一義に尊重していかなければできないものだというふうに考える、またそういう世論代表する審議会意見というものがそういう形で基本的な態度として尊重されていくべきものだ、こういうふうなことを私たち考えるのですが、総理はこういうことについてどういうふうな御見解を持っておられるか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体そういうふうな線で私ども進んでおります。
  29. 松永忠二

    松永忠二君 大体というのは、どういうことなんですか。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体は、おおむねということです。(笑声)
  31. 松永忠二

    松永忠二君 言葉の解釈ならば字引を引いてわかるのであって、現実の総理大臣選挙制度改正に対する基本的な熱意というようなものを私は伺っているわけだ。まず、選挙制度改正というものについては、選ばれる人の立場で問題を解決するのではなくて、選ぶ人の立場から最も都合のいい方式考えていくべき問題だ、そういうふうなことを私は申し上げているわけなんです。これについては御異議はないと思うのですが、大体御異議はないということなんですか、その趣旨は全く賛成だということには言えないのですか。それはどういうふうなお考えなんですか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりしないのですが、国民代表というものはやはり国会でございます。国会できめればいいと、こういうことなんですが、しかし、やはりお話のような点がありまして、世論と申しますか、国民のそのときの考え方というものをひとつ出してもらうために、学識経験者の集まった審議会でいろいろ討議を願い、そうして国民代表している国会で、それを審議する、こういうことでございます。普通ならば国会だけでいいわけなんでございますけれども、こういう問題はやはり、一般気持と申しますか、世論というのは少し言い過ぎ――一般気持をくむ意味におきまして羅議会を設けた。そうして、できるだけ、われわれ国民代表でございますが、それにひとついい知恵を貸してもらおうということで行っておるのであります。だから、一般気持はできるだけくんでいくように、審議会を設けて審議を願い、そうして国民代表たる国会で御審議を願う、こういう格好をとっておるのであります。
  33. 松永忠二

    松永忠二君 政令できめてあったものを法律に基づくものにきめて、特に答申を尊重しなければできぬというようなことを、特にそれを条文の中に入れておいた、こういうことについては、国会できめればいいのだけれども、一般の人はどんな気持を持っているのか、その気持を聞いてみようじゃないか、参考に聞いてみようじゃないかというような気持ではなかろうかと私は思う。特に選挙制度改正については、議員という立場からどうも公正を期しがたい、こういう点を議員自身の反省の上に立って、そこで別個なひとつ法律に基づく審議会を作り、あなたのおっしゃるように強力にして権威ある審議会を作って尊重していこうじゃないかという気持で作られたと思うのです。あなたの今あとから説明されたような気持というものは、少し法律を作った建前からいって違っているように私たちは思う。そういうお気持だから、結局審議会のほうでも、いろいろそういうことをどうも軽視であり侮辱であるという言い方になるのではないかと思うのですが、つけ加えたほうが本体なんですか、それとも前に言われておることが本体なんですか、いかがですか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前に言っておることも、あとから申し上げたことも、一体です。同じ気持でございます。
  35. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、総理の言うのは、世論をひとつ十分に尊重して、審議会意見を尊重してやっていきたい、そういうために法律を作って制度を作ったのだと、こういうことについては、別に御異議はないわけですね。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。
  37. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、あなたのおっしゃった、私たちは強力にして権威ある選挙制度審議会を作ろうと、しかも党派をこえ、国民全体の協力を得てこういうふうなものを作っていこうと、こういうふうなことだと思うのですが、ところが、世論一体この選挙制度改正についてどういうことを言っているのかといえば、自治省の案については全く不満だ、自民党修正案については憤りを感ずると、こういうふうなことを言っているわけです。しかも、選挙制度審議会では、御承知のとおりに、二月の二十七日に審議を打ち切った。この審議を打ち切る際には、議員定数差止にはすみやかに結論を出すが、それ以外の区制政党法などの根本問題の審議はしばらく中断するというような決議を出しておられるわけなんです。まあそのときの審議状況というようなものなどが新聞にも報道されていますけれども、ある委員は、審議会政府自民党幹部により侮辱され、無視されたと考えるべきだというようなこと、あるいは中間報告意味審議を中止し政府を厳重監視するようにしたい、こういう発言をした人の意見が多数を占めて審議の中止を決定をしたということになるわけです。一体こういうふうな世論審議会意思表示がなされたということについては、やはりあなたが提案をされて、あなたがお作りになった、つまり総理府の中へ置いた強力にして権威ある選挙制度審議会というものの判断としては、非常に尊重したという建前と違っているというように私たちは判断をしているのですが、この世論選挙制度審議会考え方というのは、これは間違いなんですか。これについては、どういうふうなお考えを持っておられるのですか。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、会の答申を尊重、審議いたしまして、その線に沿って案を出したと確信をいたしておるのであります。したがいまして、審議会の方々がどう言われておりますか、その言われたことに対しましての批判は差し控えたいと思います。ただ、公聴会その他の模様を見ましても、私は大体今の案でこの際は一応通して、参議院選挙に間に合うようにしたほうがいいのじゃないかという気持が相当あることを察知いたしておるのでございます。これはそのとおりではないから、いろいろ御批判はございましょうけれども、全体といたしましては、私は過去の選挙制度よりもよほどよくなったという確信を持っております。
  39. 松永忠二

    松永忠二君 で、この選挙制度審議会がこの重要な区制とか政党法などの根本問題の審議を中断したということは、ある意味から言うと、そういう審議を放棄したということにもなると思うのですがね。そういう重要な審議会がそういうことをやらなきゃならないというようなことになったことについては、私たちは単に自分の出した結論が尊重されなかったという程度のことじゃないと思う。また、そういうやり方をしたことについて批判はしないと言うけれども、この選挙制度審議会を作った建前からいうなら、趣旨からいうなら、全く考えていることと実際と迷ったという結果になると思うのです。で、私は、こういう決定選挙制度審議会がしたということは、作られた原案というものがやはり十分に尊重されないということを裏づけるものだと思うのだけれども、その私の意見についてはどういうお考えを持っておられますか。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、答申に基づきまして法案提案せられ、それが国会審議せられておりますので、一時審議会は停止しておると思います。しかし、もう今後審議会は開かぬというふうなことは、私はないと思います。これが通ったならば、また審議会の方々にも続いて御審議を願いたいと思うし、また御審議下さることを期待いたしております。
  41. 松永忠二

    松永忠二君 私の聞いているのは、その強力にして権威ある選挙制度審議会として設けられたものが、その設けられた趣旨の一番茶木になる問題をしばらく中断をする、しかも、それは明らかに、そこの論議の際に、自分たち答申について今後どういうふうな政府態度に出るかということを監視するためにするのだ。その前にも、つまり尊重しなければできないという決議をやっているわけです。したがって、この選挙制度審議会は、明らかに政府の出した原案というものが自分たちの設けられた趣旨を十分に尊重していないのだという、そういう判断をしたと私は思うのですが、そういう私の判断のとり方が間違いなんですか、そういうことをお聞きしているのです。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 審議会の方方のお考えに対するあなたのお考えにつきましての私の認識その他につきましては、申し上げないほうがいいと思います。
  43. 松永忠二

    松永忠二君 申し上げないほうがよいというお話だけど、私はそれを聞いているのです。そうすると、あなたは結局十分に審議会を尊重したのだという、こういう認識を今でもお持ちになっているのですか。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、尊重いたしまして案を作り、そうして審議会は、今国会審議中でございますから、審議会審議は中断されておりますが、この国会でこの法案が通りましたならば、審議会はまた継続して御審議下さることを私は期待しております。
  45. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、選挙制度審議会答申を尊重しないという気持を持っておるとか、あるいは私がそういう判断を持っているということは、全くの誤解であるという、そういう御判断なんですか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたのお考えは、あなたのお考えです。私は先ほど申し上げたような気持で進んでおります。   ―――――――――――――
  47. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員異動について御報告を申し上げます。  本日付をもって委員の鍋島直紹君が辞任され、補欠として、田中精一君が委員に選任されました。   ―――――――――――――
  48. 松永忠二

    松永忠二君 首相は、テレビなどで、審議会答申よりも党の意見を尊重したのだというようなことを言われた。あるいは大平官房長官の発言とか、あるいは赤城総務会長の発言等が相当やはり委員を刺激していることも事実のようです。これは、こういうことをおっしゃったのですか、この点はいかがなんですか。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 官房長官あるいは総務会長の申し上げていることは、私は正確に聞いておりません。
  50. 松永忠二

    松永忠二君 あなたのはどうですか。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、審議会意見よりも党の意見を尊重するのだということは、言った覚えはございません。審議会意見は十分尊重しているということは、本国会におきましても再三申し上げているわけであります。しかし、審議会答申を尊重いたしますが、やっぱり党の考え方も、私としては、政党内閣でございますから、それも耳をかすことは当然と思います。
  52. 松永忠二

    松永忠二君 中止している選挙制度審議会に対して、あなたはどういうふうな処置をされるつもりなんですか。任期は六月の十五日になっている。したがって、六月十五日の任期切れを待っておられるのか。あるいは、あなたの選挙制度審議会を作られたときに説明をされたことは、任期を二年にしておいたのでは答申がおくれるから、一年で、しかも早く答申してもらって、それを実施していきたい、こういうふうに考えておられるように私たち委員会で聞いたわけです。この中止している選挙制度審議会に対して、どういうふうな措置をしていくつもりなのか、その点はいかがですか。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会が閉会になりましたら、審議会のほうへ連絡いたしまして御審議を続けていただくよう要請する考えでございます。
  54. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、定数の是正というものについては、答申を出してもらって、そうしてこれをできるだけ早く法律改正していきたい、こういう考えなんですか。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは審議会法にも載っておりますように、全般にわたって御審議願うことになっております。定数、区制の問題につきましても、御審議があることと思います。ただ、衆議院の決議にありましたごとく、定数、区制につきましては慎重にという附帯決議がついていることも、審議会委員諸公は御存じと思います。
  56. 松永忠二

    松永忠二君 私の言っているのは、定数是正の問題です。そうすると、六月十五日の任期切れ前に、あなたは国会が終了すれば審議会を再開してもらって、それでその審議会を設けた趣旨に基づいて、根本の問題について審議を進めて答申をしてもらいたい、こういうことで、そういうことを実行に移されるのですか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。
  58. 松永忠二

    松永忠二君 この前昭和三十五年の衆議院選挙の実施をされた結果、公明な選挙を実施しなければできない、こういうふうな点で、連座制の強化ということと、それから選挙資金の規正ということは、その中の最も重要な部面であって、また答申でも一番力点を置いていた点だと私たち考えているのですが、この問題は公明選挙実施という場合に非常に重要な問題であるし、またこの前の衆議院選挙のことから考えてみて、選挙法改正の際にやはり相当抜本的な改正をしなければできないという気持を私たちも持っているわけですが、これについては、やはり総理もそういうお考え方については同様なんですか。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙の公明のために、やはり選挙資金等につきましても十分今後考えていかなきゃならぬ。したがいまして、審議会のほうにもそういうことで御審議を願っておるわけでございます。
  60. 松永忠二

    松永忠二君 まずこっちの質問していることをひとつよく聞いておいていただきたいですが、連座制の強化と選挙資金の規正ということは、今度の選挙法改正をしなければできない場合の重要な課題だと私たち考えているのですが、これについてはいかがですか。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体私もそういうふうに考えております。
  62. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、たとえば今度の答申の中でも、私は最も尊重されなければできない部面のものだと思うのです。ところが、今度の答申に対して、政府原案というのは、この二つの問題について相当拘束をしているわけですね。これは私が今さら申し上げるほどのことはないので、親族に対しての選挙違反、あるいは相当広範囲にわたった選挙運動を主宰する者、あるいはそれに対する判決の確定後失格に直ちにするというような問題、こういうような問題については、いろいろ、政府原案を見ると、家族の選挙違反の問題については、「意思を通じて」というような言葉をここに挿入をした。それからまた、相当広範囲に選挙運動を主宰した者というところには、候補者、総括主宰者から定められた者というワクをかけたり、あるいは刑事判決確定により直ちに効力を生ずるというようなことを、失格裁判を受けてからというにとに改めた。それをまた修正案では、今度またそのところを「三箇以内に分けられた」ということで、活動を完全に一つ制限を、ワクをひっかけた。選挙資金の問題については、選挙資金、政治資金についての寄付を禁止したものを、「当該選挙に関し」とワクをかけた。後援団体の寄付、供応というものに対しては、「当該選挙に関し」とワクをかけられた。また、それを今度修正案では、「一定期間」というふうにかけた。今度の選挙改正しなければできない、公明選挙改正しなければ推進できないという中で、最も連座制の強化と選挙資金の規正というものが重点的に取り上げられなければできない。それについては、答申もまた力点を入れてこれについて答申をしてきた。それにワクをかけ、また修正案をかけてきたわけなんです。こういうことは、答申を尊重するということには結果的にならないのじゃないかと思うのですが、こういうことでも、答申は尊重されていると、こういうふうに判断していいのですか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 連座制の問題につきましては、いろいろ考慮いたしました。三点ございまするが、総括責任者の問題は、ふやしまして、そうしてまた、出納責任者も前一人だったのを今度数をふやすようにいたしております。御指摘のように、親族の問題につきましては、いろいろ議論がございましたが、やはり、選挙の公明ということと同時に、何と申しますか、個人の人権ということもわれわれはあわせ考えなければなりません。そういう関係上、答申を尊重しながら、実際に合うようにと思って、法的技術上の問題等考え原案のようにいたしたのでございます。また、政治資金、選挙資金は、なかなか困難な問題でございます。私は、政党法あるいは政治資金規正法等につきまして、審議会でひとつこの上とも御審議願い、そうして政党自体がもっとよくなるような方法を講じながらだんだんに進めていくべきものだと考えまして、原案のようにいたしたのであります。  また、後援団体の番付その他につきましては、やはり何と言いますか、ポイント、期限を置いたほうがいい、いつからはいけないか、いつからならいいかということにつきまして非常に疑問な点を残すことはかえってよくないという考えのもとに、参議院選挙においては三カ月、片一方におきましては解散後、こういたしたのでございまするが、しかし、半前連動という名前のつくものにつきましては、これは、その期限は適用にならぬことは、御承知のとおりと思っております。
  64. 松永忠二

    松永忠二君 むしろ、あなたの御説明になったよりは、逆に、意思を通じて親族がやったかどうかとか、あるいは候補者とか総括主宰者から定められた者でなければできないとか、あるいは国から補助されたり、あるいは請け負ったりする関係の団体からの選挙資金、政治資金、いずれも禁止をするものを、「当該選挙に関し」と、こういうワクをかけた。あるいは供応についても、「当該選挙に関し」と、こういうふうにワクを入れたのは、全く骨抜きだ。あるいは刑の執行についても、禁固以上あるいは執行猶予の判決を受けなかった者というようなワクをかけたのは、今までの資料からしても全く骨抜きであって、これでは実際の効果を上げることができないのだ、こういう議論が非常に強いわけなんです。これについて、あなたはどういうふうなお考えを持っておられますか。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これはやはり、選挙の公明ということと、個人の人権ということと、法がはっきりわかりやすくと、いろいろな要点から考慮いたしまして、これが適当だと私は結論を出したのであります。取り締まりのみに頭を使いますと、それは少しなまぬるいという点があるかもしれない、批判があるかもしれません。しかし、いろいろの実情等を考えまして、そうして少なくとも今の状態よりも数歩前進ということから、こういう原案を出したのでございます。政治資金の問題につきましても、今後十分政党の活動とにらみ合せまして考慮しなければならぬ問題だと思っております。
  66. 松永忠二

    松永忠二君 一体世論というものは、どっちを支持しているのですか。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世論と申しましても、やはり私は、国会での御審議が一番だと考えます。もちろん、新聞、雑誌等の意見も聞きますけれども、新聞、雑誌等の意見どおりに政府というものはなかなかいくものじゃない。それは参考にはいたさなければなりません。したがいまして、私といたしましては、そういうものも十分参考にいたしまして、そうして結論を出した次第でございます。
  68. 松永忠二

    松永忠二君 選挙制度改正ということについては、議員の判断というものが常に公正だ、国会というものがすべて世論よりも、ほかの考え方より公正だというようなことになりにくいということから、選挙制度審議会の中でも特別委員という制度を設けたんじゃないですか。したがって、この選挙制度改正というものに対しては、ほかの法律の問題よりも違った角度から、世論考えていくべきものであり、審議会答申考えていくべきものだということを私は申し上げているのだが、いや、そういうことではないのであって、ほかの法律と同じように、世論はいろいろあるけれども、一番その世論代表できるのはつまり国会議員であり、国会審議だ、こういう確信で、そういう態度でありますか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、答申も尊重し、そうして一般世論と申しますか、マス・コミの意見も頭に入れ、そうして国民代表である国会議員の方々の意見――これは主としてわが党でございます、その意見を聞いて、そうして原案を作ったのでございます。
  70. 松永忠二

    松永忠二君 あなたのお話を聞いておりますと、個人的な人権の問題にも関連をすることであるのでというお話もあった。しかし、審議会は権威ある強力なもので、そういうことについても一応の判断をされていると思う。そういうことについてのやはり論議が不十分だったのですか、審議会が。そういう御判断をなさっていらっしゃるのですか。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 審議会は、半年余りにわたって、非常に熱心に審議下さったのでございます。私は非常に敬意を払っております。不十分であるとはもちろん考えておりません。
  72. 松永忠二

    松永忠二君 そうなってくると、おかしいじゃないですか。特に、基本的人権とか、そういうような問題は、別に何も政治情勢の上に立って判断できるものではなくて、最もそういう権威ある人たち論議をされて、その範囲内で解釈をされたことであって、その論議というものは最も公正に批判は行なわれていくんじゃないですか。そういうところについて欠陥があったんですか。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 欠陥があるとかないとかいう問題でございません。審議会答申を見まして、われわれは今の法体系上立法技術的にどういうように処置すべきかということで、われわれの意見を入れて、案を作ったのでございます。審議会意見が欠陥があるとかないとか――審議会審議会としての意見を出した。それを尊重しながら、立法技術的にどうやったらいいかということにつきまして、われわれは考慮したわけでございます。
  74. 松永忠二

    松永忠二君 これは、選挙制度改正というものは、そのときの選挙状況、あるいはそういうふうな状況に基づいて法律を作っていく。それが明らかに違憲であるという場合には、これを直さなければいけないけれども、その情勢に応じて選挙法律を作っていくことが必要だと、こういう見解に立って私たち審議会がそういうことをやられていると思う。だから、やはり選挙の現実に行なわれている姿の上に立って、今何を措置すべきかということで、しかもそれは、憲法違反でない範囲において判断をされたのが私はこの考え方だと思うのです。しかも、まあ特に特別委員を設けた理由というのは、やはり理由があると思う。そうすると、選挙制度審議会に特別委員を作ったというのは、一体どういうふうに解釈をしていけばいいのですか。
  75. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙制度全般につきまして改正をするのでございまするが、区制難につきましては、やはり国会議員が直接の利害関係のある場合が多いのでございます。したがいまして、区制等につきましては、特別委員が参加しない、ほかの問題については参加をする、こういうことで特別委員というものを設けたのでございます。
  76. 松永忠二

    松永忠二君 そうなると、特別委員がいわゆるその最後の議決に参加をしなかったということについては、これはどういう考え方をとっているのですか。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは特別委員の方の気持でございまして、するしないは、内閣の関知することではございません。
  78. 松永忠二

    松永忠二君 私は、その特別委員というものを設けておいて、あなたのおっしゃるように、区制とかそういう問題については参加をしない、議決には参加をしない。しかし、選挙というのは、特別な状況もあるので、特別委員を入れて、実情をも考えながら、しかもなおかつ公正な、選挙の特有性から考えてみて、特別委員を作って、その選挙制度についての意見を十分に討議をさせる……。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお話し申し上げましたごとく、特別委員を設けました趣旨はそういう意味で、そして区制等につきましては参加しない、こういうことだけをきめたのでございます。一般の今度の答申につきましては、特別委員が議決に参加しなかったということは、特別委員の個人的な考えであったと思うわけでございます。内閣といたしましては、参加するなとか、どうこう指令を出したことはございません。個人の意思でそういうふうにされたと聞いております。
  80. 松永忠二

    松永忠二君 特別委員を入れて、そういうものを入れて審議会を作ったということは、審議過程の中に、実情をも兼ね合わせながら、しかもなおかつ、公正な第三者的立場から選挙制度改正については論議をしなければできないという意味審議会も作った。十分審議会の構成においてこれが完全に実施をできるような配意を行ないながらこの審議会というものを作ったと思うのですが、この点はいかがですか。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体そういう気持で入ってもらったわけであります。
  82. 松永忠二

    松永忠二君 そうなれば、その選挙制度審議会の構成についても非常にそういう点を配意をしたのであって、しかも選挙制度そのものが、国民立場から議員というものの陥りやすい弊害をも除去してやっていこうというのだから、その答申というものはほとんど百パーセントいれられてしかるべきものだと思うのです。その答申が、原案を作る過程の中で修正を受け、またその原案修正を受けたということは、これはやはり、建前からいうと、筋からいうと、これはどうもいい方法ではなかった。結果的にはどうも、選挙制度審議会を作った構成についても配意をしてきたということからいうと、非常にいい結果ではなかったという御判断をなさっているのですか、どうですか。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、制度としては非常にいい、そうしていろいろ特別委員意見も吐かれたと思います。結果においてどうこうという批判は私は加えませんが、われわれとしては、審議会としては慎重審議の上に答申されるものだと考えております。特別委員がその議決に参加するしないは別問題といたしまして、十分審議されて答申があったものと私は考えております。
  84. 小林武治

    委員長小林武治君) 松永君に申し上げますが、審議期間が短いということもあり、また総理の御都合もありまするので、ところが他にもまだ質問の希望者がある。したがって、私としては時間をできるだけ公平に使いたいと思いますので、適宜ひとつお含みおきの上お願いいたします。
  85. 松永忠二

    松永忠二君 私の聞いたことを端的にお答え下さい。相当配意をして作られた選挙制度審議会答申というものが、原案修正をされ、またその政府原案をその後修正をされていって、これを百パーセント尊重といいますか、九〇%尊重するということはできないような方向に行ったということは、建前としてはどうもおもしろくなかったという、こういうようなお考えを持っておられるのですか、いやそれでいいんだというのか、それを聞いているわけですがね。やはり、法律を作ってこういうふうになったことについて、その情勢のいろいろな問題があるとしても、これはやはり建前としては、できるだけそういうことを避けていかなければできないものだというお考えを持っておられるのですか、どうですか。
  86. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 答申につきまして十分に検討して、政府はこれが最良の案として御審議願うことにいたしました。しこうして、審議の途中において四カ所の修正がございましたが、この四カ所の修正のうち、三点は政府考えておる趣旨に沿っております。ただ、これを具体的に明確化しただけの問題で、基本的の考え方を変えておりません。そうして、もう一つは事前運動の点でございますが、これは衆議院審議過程におきまして、私は選挙の自由ということから原案を出したのでございますが、今の実情から申しますると、少し行き過ぎの点がある、現法律でいいんじゃないかという意見が与野党を通じての意見のようでございましたので、私は実際に沿うよう、その修正でいこうということにいたしたのでございます。また、連座規定の点におきましていろいろ修正意見がございましたが、これは私は、自分は自民党の総裁として、これはやめたほうがいいということで断わった点もあるのでございます。で、政府案を修正してと申しますか、この修正は、私は政府案の基本を変えるものでない、かえって正確になった、わかりやすくなった、こう考えております。ただ事前運動の点は、私は与野党意見を――間違っておるかもしれませんが、私としては、これは皆さんがあまり行き過ぎだという気持があるなということを感じて、そうして修正することにしたのであります。で、政府原案に対して修正を加えたとおっしゃいますが、これは修正は、そのもとを傷つけずに改善した、こういうふうに心得ております。
  87. 松永忠二

    松永忠二君 まあ、政府原案修正したことについてあなたのお考えになっていることは、私は少し違うと思う。「数箇に分けられた選挙区」というのは、「三箇以内」というふうに区別をした――「数箇に分けられた選挙区の地域のうち」というのを、「三箇以内」というふうに限定をした。当該選挙に関し一定の期間を加えたということは、はっきりさせたことか。それとも――いわゆる初めの答申趣旨から言うならば、それをもう少し広範に、相当広範にわたってと、そういうような答申をされている。あるいは、後援団体等の寄付や供応についてはすべて禁止をするということを、「当該選挙に関し、」、こういうことで非常に一応ワクを入れる。その当該選挙というのを、また一定の期間にしぼって、あるいは相当の広範にわたってというような答申がなされたのを、それを数個に分けられた地区、こういったのを、また三曲以内に分けた、こういうようなワクのかけ方は、はっきりさせたということなのか。それじゃ答申趣旨はどこにあるというわけなんですか。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この数個というのを三個に分けたのは、狭過ぎると思われるかもしれませんが、大体出納責任者あるいは総括責任者に限らず、相当選挙に広い範囲で携わった人に連座規定を置こうとするのでありますから、私は、数個というよりも、やはり三個なら三個にしたほうがはっきりしていいと考えておるのであります。今後拡張したものについての問題でございますので、数個ということよりも、三個、こうしたほうが私は実態に沿うと考えたのであります。
  89. 松永忠二

    松永忠二君 あなたの説明は、私たちは納得はできません。答申趣旨は、そういうことじゃなかったわけです。答申は、もっと広範囲なことを言われた。それをだんだんだんだんワクをひっかけてはっきりさせたというけれども、事実上はますます適用を困難にさせている。適用がしかも小範囲になってくるということになってくると思う。そうすると、言葉をかえて申し上げますと、今出てきている修正案、つまり衆議院送付修正案が最善のものだという考え方を結局持っておられる。答申を最も尊重して、最もよいはっきりさせた最善の案がつまり参議院に送られてきたのだ、こういう判断をあなたがされておるのですか。私たちは、そうじゃなしに、答申趣旨を十分尊重していきたいけれども、各般の事情もあったので、今の段階としてはこの措置以外にはないのではないかという判断をされて、最善の案として政府は出されたものが、またいろいろな各般の事情からやむを得ない措置として、また修正案として参議院に送られてきた、こういうふうに判断をするのですが、あなたの今までの御答弁によると、答申を最も尊重して最善の案として政府案を作り、その最善の案ではっきりしてないところをますます明確にして、そうしてこの修正案として参議院に送られてきたのであって、もう上の上だという、そういう御答弁に尽きていると私は思うのです。そういう判断をあくまでおとりになっておるのですか。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、尊重し、政府が熟思の結果提案いたしました。そして、衆議院でその原案を最良のものと申しております。しかるところ、いろいろ御審議の結果、修正案が出まして、そうして私は、今の事前運動の点につきましては、これは政府考え方が非常に理想的なものだ、修正案は現実的なものだ、このものにつきましては、現実的なものに今の場合はしたほうがいいということでやったのでございますが、二、三、四の三点につきましては政府案がはっきりされた。そこで、今の段階といたしましては、私はこれが最良のものだと心得ております。しかして、いろいろな点につきまして、たとえば政治資金の問題とか、あるいは政党関係等とありますが、これはまた定員、区制問題等かね合う場合もございますので、いずれまた別個に検討をしていかなければならぬ点も多々ありますので、今後の審議に待つことにした。ただいまは、参議院選挙を控えて、この案が最良の案であると考えて御審議願っておる次第でございます。
  91. 松永忠二

    松永忠二君 世論といいますか、一般でも言われておることは、この公職選挙法改正にあたって、総理大臣が、答申を尊堂するということについて、もっと一貫した態度で党の意見を取りまとめていくというようなことをなさっていったなら、もう少しやはり今出てきたものよりも違ったものが出てきていたのではないか。やはり、この前審議会を作ったときにおっしゃったことは、政治に対する信頼を高めたい、そういうような意味選挙制度審議会を作っていった。だから、そういうふうな立場に立って、より一そう答申を尊重していこうという立場に立って、総裁としての責務を果たされ、あるいは総理としての努力を重ねていったということになれば、なおこの公職選挙法も、早く時期的にもまとまるし、またその内容もより以上答申を入れるような方向に行ったのじゃないかという、こういうふうな意見もなかなか出ているわけです。事実また、最初に総理質問した湯澤氏――自民党委員ですら、ここまでおそくなったことについては、総理責任じゃないかというお話もあった。そういう点について、やはり総理府の中に審議会を設けられたのであって、そういう意味から言うならば、総理が率先してこの答申を尊重するという意味で、党内を説得し、案を作り、それを政府原案として作って努力をしていくということであれば、もっと結論の出方も早いし、また答申についても非常に近づいたものになるじゃないかという、こういう点について、そういう考え方があるわけなんですが、具体的に総理は、それは全くの誤解であって、こういうふうに努力をしたという、そういう事実があるのですか。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 審議会で熱心に御審議いただいた答申案を得まして、早く政府案を作るよう関係省に話しを、ことに自治省法制局に話をして案をこしらえた。一カ月余りで案ができたのでございます。私も検討しまして、これで行こうということになりました。その後、党からも修正案が出ましたが、今ちょっと触れましたように、親族の連座の規定につきまして、また今の修正案が出ました。これは私は押えました。いろいろ考えまして、この選挙法というものは、御承知のとおり、調査会で二、三回も答申が出ましたが、法案になるに至らないことは、あなた方の御存じのとおりなのでございます。私は、ぜひとも今国会に案を出して通さなければいかぬということで、極力推進して参ったのでございます。  御承知のとおり、選挙法改正というものは、普通の法律案とは違って、なかなか厄介だということは、もう御存じのとおりなので、私はよくもまあここまで来たという工合に思っておるのであります。それで、こういうものを一ぺんにぴしゃっとというわけにはなかなか参りません。ことに、先ほど申し上げましたように、定数とか区制問題等関連しまして、政党法あるいは政治資金規正法ということにつきましても、この上とも検討を加えなければならぬ問題がございますので、この際としては、これが最良案として、とにかく参議院選挙に間に合うようにということで進んできております。
  93. 松永忠二

    松永忠二君 今度の公職選挙法改正の問題を通して、あるいは選挙制度審議会等の関係を通して、一体政治に対する信頼を高める結果になったのかどうかという点については、どういう御判断をなさっておるんですか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、選挙法改正ができるのとできないのとは、政治に対する信頼がよほど違ってくると思います。その感状におきまして、完全無欠のものとは思いませんが、これを通していただいて、今度の参議院選挙がりっぱにできるならば、それによって政治に対する信頼も高まってくることを私は期待いたしております。
  95. 松永忠二

    松永忠二君 こういうふうに審議会審議を中断するとか、あるいは世論のいろいろ反撃があるとか、そういうふうなことを通して、あなたが考えられたように、政治に対する信頼を高めるということについて欠けるところがあったのじゃないかというようにも私たちは判断する。しかしまあ、これをあなたは作ったのだから、作ったものを通すということによって、これはせめて政治に対する信頼をかち得ていきたいと、こういうお話です。そうなると、話を最初に戻して、本国会で必ず成立させるという御決意だと思うんですが、そうですか。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、政府原案を出したときに、いろいろ批判はございました。そうして、党の修正案につきましても批判がございましたが、その後において、私は名前を言いませんが、有力新聞なんかは、この際これを通すべしだという社説も見たことがございます。それで、今と相なりましては、先ほど申し上げましたように、完全無欠、理想的なものじゃないけれども、この際この段階としては通すべきだということが私は世論だと考えておるのであります。したがいまして、先ほど来申し上げておるとおり、時間は非常に短くなって、まことに申しわけありませんが、この際としては、ぜひ通していただきたい、これが私の信念でございます。
  97. 松永忠二

    松永忠二君 この際これを通すのはしょうがないんじゃないかというようなことの意見があることも事実ですね。しかし、同時にまた、選挙改正というものをこの程度でお茶を濁されてはたまらない。だから、この際はこれをむしろ通さないほうがいいんだ、そうして、この程度のものでは国民も満足しないのだし、また、せっかく作った審議会としても、その建前を十分果たすことができないんだから、むしろこの際はこういうものは通さぬほうがいいではないかという意見も、これはあることは私は事実だと思う。全然逆な世論も実は相当強いことも、これは事実だと思う。しかし、私は、政府としては、通すということについての世論を尊重して、ぜひ今国会で通すというかたい決意があることはわかったわけです。そうすると、会期が非常に短いんだから、ぜひ通すということをあくまで貫くということになれば、時間的な問題については、不可能の場合には、その際また考えるという、そいう態度ですか。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろ世論があるようでございますが、私は、この際としてはこれで通すのがいい、そうしてまた、いろいろな点とかね合わせて再検討を加え、区制問題等も結論を出すほうがいいという、この世論が多いと思います。したがいまして、ぜひ通していただきたい。じゃ、時間が短いからどうかという問題につきましては、私はここで申し上げるわけにいきません。会期中にぜひ通してもらいたい、こういう考えでございます。
  99. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、この会期の中でこれを通して、選挙をいつやるというお考えなんですか、選挙の期日。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだはっきりきめておりませんが、大体七月一日というふうに、党のほうでは考えておるようでございます。まだ決定いたしておりません。
  101. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、総理は、さっきお話がありましたが、あらゆる犠牲を払っても今国会成立を期するという、そういう考え方、そういう言い方というものは、この決意を表わす正しい言い方ですか。まあ新聞紙上では、鈴木自民党幹事長に、こういうふうなことで、つまり、今国会成立をさせるという、そういう決意を語られているようですけれども、この点はどうなんですか。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答え申し上げましたように、あらゆる犠牲を受けても、あらゆる犠牲を払っても、こういう言葉は使っておりません。極力これを通してもらいたいということを言っておるのであります。
  103. 基政七

    ○基政七君 総理にお伺いいたしたいのですが、まず最初に、先ほど松永委員からもお話がございましたように、当委員会としては、たいへん時間がなくて、この重要な法案審議に非常に私も責任を感じておる一人として、遺憾に存じておる次第でございますが、そのおもな原因が、聞くところによりますと、どうも党内の取りまとめに非常に時間がかかって、総理もたいへん御苦労されたと思うのでありますが、そのために、当委員会にこういうふうな非常に重要な法案審議が十分できないという結果になりましたことについて、総理はどうお考えになっておりますか。まずお伺いいたしたいと思います。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) せんだってここで御答弁申し上げましたように、衆議院段階におきまして、非常に時間をとったこと、その結果として、参議院に参りまして、時間が非常に少ないということにつきましては、遺憾の意を表しております。しかし、できるだけ御審議をいただいて、会期中に通していただきたい、こういう強い念願を持っておるのであります。
  105. 基政七

    ○基政七君 私ども、選挙法のように大きな法案については、党内それぞれ御意見もあることと思いますし、取りまとめもなかなか困難であると思いまするが、もうすでに再々総理に御答弁願っておりますように、その骨子になるものは答申案にあるわけでありますから、それほど実は調整に困難を来たすということは、答申案に対する考え方の問題だと思うのです。そういう点がこれからの審議会答申に重大な問題をはらんでおると思いますので、この際、総理に、ぜひ、こういうことの二度とないように、総裁としての心がまえなり、総理としての心がまえなり、この際、ぜひ、そのことについての御答弁をいただいておきたい。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げましたごとく、この選挙法改正ということは、他の法案と違いまして、なかなか毎回非常に困難を見る問題でございます。もう提案までにも非常に議論がございまして、御承知のとおり、審議会をたびたび開きましてもできぬという状態です。今回は、世論の支持もあり、また、皆さんも非常に御熱心でございますので、ここまで審議が進渉してきた状況でございます。で、私は、今回、これを通していただくと同時に、今までの経験にかんがみまして、今後の選挙法改正につきましては、万全のかまえをして、会期末にどうこうということのないようにいたしたいと考えております。
  107. 基政七

    ○基政七君 それでは、私、ひとつお尋ねをいたしたいと思いますことは、先般来、参議院の本会議に、この公職選挙法改正案の御提案がございました際に、各党の質問の最重要な点は、どこまで答申を尊重するかということの一点にあったと思います。その際に、自治大臣も総理大臣も同様に、十分尊重したという御答弁がございました。その後、御承知のとおり、自民党修正案が四点にわたって行なわれておりまして、この四点には、かなり、答申案から見ますと、後退をし、しかも、公明選挙について相当重要な影響を持つ法案が出されておるわけでありますけれども、現在でも、やはりその当時のように、答申案を尊重しておるという御答弁をお持ちでありますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げておりますように、この修正案につきまして、答申案と変わっておるところは、事前運動の点でございます。これは私は、審議会状況にかんがみまして、これはやはりこの際は、現在の状況でいいのじゃないかということだけ、あとの三点につきましては、私は、政府原案趣旨をそう変えたものじゃなしに、はっきりして、かえってよくなったと考えております。  なお、党内のことでございますが、親族関係の連座規定でいろいろ議論がございましたけれども、これは私は、よすべきだというのでやめたわけなんでございます。原案を出しましたときと大体骨子においては同じである、こう考えております。
  109. 基政七

    ○基政七君 実は私ども、社会通念より考えて、尊重というのは、やはり私どもの生活上、約束事であって、たいへん重要に考えなければならないというふうに私は考えておるわけであります。ところが、国会答弁では、すでに総理も御承知のとおりに、この審議会法ができます際の三条のあの義務規定につきましては、私は、やはり一般の人も非常にこの点は重視しておったのじゃないか、こう考えておるわけであります。ところが、内容がすでに世論で明らかになっておりますとおりに、相当答申案が後退しておる、こういうことになりますと、尊重に対する社会通念がゆがめられて、しかも、国会という、大事な立法の府であります国会で、しかも、政府がみずからこれを後退を認めるということにつきましては、相当私は、子供の教育上もあまりよろしくないのじゃないか。むしろ、この点は、私は、率直に総理がやはりここで究明されまして、そうして特に審議会のほうにもやはり実を示して、誠意をお示しになることのほうが、将来の審議会の進行にもたいへん大きな影響力を持つのじゃないかと思いますが、この点について総理はどうお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  110. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点につきましては、私は、自分自身として、審議会委員の方々に直接連絡はいたしておりませんが、やはり私の、何と申しますか、と同じような立場におられる党の有力な方々につきまして、私の心境は申し上げてあるはずでございます。尊重しておるか、尊重していないかということは、これは他の人の批判もございましょうが、私といたしましては、できるだけその答申案に沿うようにやってきたのであります。途中におきまして、これをもっと離らかすという意見もありますが、これはいけない、政府としてこういうことで行っておるのだという意味で了解を得たような次第でありまして、私といたしましては、そのとおりではございませんけれども、趣旨は十分尊重いたしまして、そうして連座規定におきましても、お話のような点に親族の点も入れる、範囲もこれを拡大する、一応の線は尊重してきておるわけであります。その他の点につきましては、ほとんど答申案どおりでございます。
  111. 基政七

    ○基政七君 そこで、私は、自治大臣がお見えになりましたから、少し朝日新聞に掲載されております点について、ここで確認と御意見を承りたいと思うのでございますが、当時自治省案が多年問題になっております際に、連座制の問題に関連して、同居の点が、一応意思を通じたというふうに改正されます際に、自治大臣は、朝日新聞の、これは二月二十二日でありますが、「同居の表現について手直しするのが、答申尊重のワク内で精一ぱいだ」、それが今度は、同居で、意思を通ずるというふうに変わっておりますね。この辺の関係と、この新聞によりますと、尊重の線がぎりぎりだとすれば、同居の親族で意思を通じた者ということになりますと、非常に後退をしておりますから、この意味を率直に受け取るとしますれば、尊重から相当後退したということに一応考えられますが、どうお考えになっておりますか。
  112. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 親族条項の適用につきましては、総理もおっしゃるとおり、私は相当にこれは慎重に考えなければならないという考え方で種々検討したわけでありまして、意思を通ずるというのは、これは最初からだれが考えても当然の前提であろうと思います。全然知らないでやられたもので、候補者がそれを責任を負わなければならないということは、これは無理だと思います。その上で、しかし、そう条件をしぼる際に、同居というものは、あるいは入れなければいかぬのじゃないかという趣旨をいったのだろうと思いまして、当時の発言は、よく覚えてはおりませんが、そういう趣旨で私ども考えております。
  113. 基政七

    ○基政七君 そこで、その点は、意思を通じたとか通じないということの認定なり、判定というものは、私はこれはもうきわめて困難だと思います。ですから、やはりこの公明化を進める際の連座制の問題など、あとでまた総理に御質問いたしたいと思っておりますけれども、これは非常に重要に考えなければならないと思うのが、こういうふうに一歩、二歩後退したということになりますれば、やはり率直に私はかぶとを脱がれて、尊重をああいうふうにやったけれども、実際上非常にむずかしかった。そこで、中間的なことだという意味には私はとりたくないのでありますけれども、そういう実情について、御説明があったほうが国民は納得しやすいんじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  114. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 親族条項は、非常にめんどうな問題でありまして、これは大きくいえば、憲法論からも議論が出る。いろいろな問題が御承知のとおりあるのでありますから、これはいろいろな角度から非常に慎重に検討をやったことは事実でございます。現在でもまだこの政府案が過酷であるというような批判も実際上ないわけではないのでありますが、しかし、そこは私ども答申をできる限り尊重しなければならないという建前もありまして、ああいう形で取り上げたわけであります。
  115. 基政七

    ○基政七君 私は、それでは連座制の問題について、よけい時間がございませんから、端的に一、二点お伺いしたいと思いますが、私は選挙を公明化し、そして候補者の立候補をできるだけやりやすく、そして金のかからない選挙を行なおうとしますれば、なるたけ制限はやはり狭めたほうがいいと考えている一人でありますが、それと同時に、また、違反した場合には、その違反には厳罰をもって臨むということが、まず私は公明化の実現のためにたいへん重要だと考えております。そこで、連座制が答申案より後退いたしましたのは、政府の説明によりますと、憲法の問題に疑義がある、しかも、裁判権との関連世論が十分納得しかねるという、ああいうことで一歩後退したように私は受け取っているわけでありますが、そういうふうに受け取ってよいのでございますか。
  116. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) けっこうです。
  117. 基政七

    ○基政七君 そうましすと、私は、井手成三さんの、「劇薬的手法が必要」であるという選挙制度に対してのお考えが出ているわけでありますが、その中に、人権無視であるということを理由にしているけれども、たとえば民事訴訟法における訴訟参加の方法も工夫すればあるのじゃないか、それからもう一つは、法文を具体化するにあたって、できれば関係者選挙犯界の起訴と同時に、検察官は連座による当選無効の訴訟を起こせば問題はないのじゃないかという意見があるわけです。これは私はやはり選挙の公明化とうらはらの関係で、十分検討に値する内容のものだと思うのでありますが、こういう間脳について政府は御検討なさいましたかどうか、この点は特に私は総理にこのことについてのお答えをいただきたいと思います。
  118. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ただいまのは、検事提訴の手続の関係だろうと思いますが、この点につきましては、なるほど提訴の手続法まで法律で変えれば一つの可能性のある方法も考えられるというような議論まであったわけでありますが、これは最高裁までのいろいろな判断も要するし、時間的にも非常に間に合いかねるということで、今日の一般の常識論、法律学者の常識論、あるいは専門家の常識論をとってこういった提訴の手続をとったわけであります。
  119. 基政七

    ○基政七君 そこで、私は具体的にこの問題はお尋ねをいたしているわけですけれども、この答申案の中で、やはり連座制を強化するということは、これはたいへん重要な問題だと思います。また、答申案のほうも、それだけに非常に慎重に検討されて答申されたと思うのでありますけれども、その際に、こういう傾聴に値するような、しかも、具体的に意見を出されている問題について、そのように私は軽率にお扱いになるというのは、やはり選挙の公明化に対する政府態度を疑いたくなるわけです。この点はもう少し私は自治大臣も十分にひとつ御答弁願いたいと思います。
  120. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 決して軽率に扱ったわけではないのでございまして、これは関係各省とも十分打ち合わせましたが、しかし、これを根本的に提訴手続まで変えるというような問題まで起こってくることについては、非常に問題が広くなってくるので、ちょっと簡単にいかないという意味で、これは決して軽率ではなくて、現在の法律専門家が最も妥当であろうといわれる手続法を、これは私どもとしては採用いたしたということでありまして、もし専門的なあれでございましたら、法制局長官もおりますし……。
  121. 基政七

    ○基政七君 少し誤解をされているのじゃないかと思いますが、私は、やはり連座制は答申案どおり、違反が確定すれば、そのままやはり失格するというのは建前だと思います。これは少しきつ過ぎるという御意見があったり、憲法に疑義があるというようなことで、日本の民主主義を守っていく大事な議会制度の根底をなす選挙の問題でありますから、これはやはり私は相当重要に考えられるべきだ、そういう意味で、私は先ほど来御質問申し上げたわけです。ですから、ぜひ、法務大臣がおいでになりますから法務大臣に、経緯と法的な立場で、もう少し御説明いただきたいと思います。
  122. 林修三

    政府委員(林修三君) 立法にあたりまして各方面意見を調整した最終の責任者は私のほうでありますから、私からお答えいたします。  連座制で問題点は数点あったわけであります。一つは、ただいまおっしゃいました手続の問題、つまり当然失格とするかという問題、それから連座制の範囲を、たとえば親族まで拡大するかという問題と、この二つがおもな、また、世間でも問題にしておりますが、憲法的に、あるいは法律的にいっても大きな問題点でございます。手続の点につきましては、これはいわゆる形式的な刑罰ではございませんから、直接に憲法三十一条の問題ではないのじゃないかという議論ももちろんございます。ございますけれども、これは非常にある人に不利益を与える処分であるということは事実でございます。  それからもう一つは、連座というものは、要するにある人が一定の犯罪をした場合に、他の人が一定の効果を受けるわけです。その人が犯罪をしたことについて、それから連座をさせるという法律関係が一見明瞭である場合、あとでちょっと御説明いたしますが、たとえば親族、親とか子が一定の犯罪をした場合に、連座させるというのであれば、これは親か子かという事実ははっきりしております。したがって、その人が一定の選挙犯罪にひっかかれば、それを当然連座させても、たいして問題はないわけであります。連座させることがいいか悪いかは別問題、しかし、今度答申に入りましたのは、いわゆる相当広範囲に選挙運動を主宰した者、あるいは法定選挙額のうち相当程度の出納責任を負った者、こういうやはり認定問題が入っておる。したがって、認定問題として、やはり候補者自身がどこまでそれに造反するか、候補行のほうで地区主宰者と見ていたか、出納責任者と見ていたかという問題が出てくる。それを候補者のほうに全然かかわりなく一方的にきめてしまって連座させるのは、やはり法定手続として公正でなかろうという議論が出てくるわけであります。これについては、しからばどうすればいいかということについては、どうしてもやはりその当市者をこの訴訟に参加させる、あるいは少なくとも当事者が――当選者ですが、それに異議ある場合に訴訟が起こせる、訴訟上争える、こういう制度が必要じゃないか、そういうわけになるわけであります。その方法として、今お読み上げになりました井手さんの言われたような議論もございますが、これは今、自治大臣が言われましたように、刑訴手続全般にわたっての相当大きな手直しをする必要がある、短い期間にはとてもできないというわけで、やはり常識的な当選訴訟というのが一番いいのじゃないか。それは訴訟が促進されれば問題が解決するわけでありますので、そういう方法をとったわけであります。  それからもう一つは、連座制の範囲の問題であります。これはいわゆる連座というのは、必ずしもいわゆる選挙関係した人が選挙犯罪をしたから当然に連座さしていいという問題ではないと思います。つまり連座というのは、当選者が相当何方衆かの多数の票を取って、その票の中に相当たくさんの不正の票がまじっていると思われる、そういう推定がなされるという場合に、連座という問題が意味を持つべきだと思う。かりに、だれかが一票か二票を買収したからというので、これは他の票全部無効にするというのでは、やはり多数の国民意思を無視するものである、これはむしろそういう場合には、やはり減票制をとるほうがほんとうだろう。連座をする以上は、やはり当選行の票が相当多数にわたって不正であるという推定が必要であると思います。この点は、まあことしの三月に最高裁の判決が出ておりますが、やはりそういう立場をとっております。つまりあれは総括主宰者の連座規定を憲法違反でないとした判決でございます。その理由としてあげているのは、やはり総括主宰者が違反をやれば相当その当選者の票はよごれている、相当多数汚れているという推定ができる、そういう前提に立って判決をしている。したがいまして、今度入りました地区主宰者とか、あるいは地区責任者とか、あるいは出納責任者に準ずるような人、これの問題はこれは比較的問題はないと思います。ただ表現のいかんの問題であります。しかし、親族になりますとそう簡単にいかないわけであります。親族が、親族であるがゆえに、一票買収した、二票買収したというのを当然に連座にかけるというのは、これはなかなか筋の問題が、相当問題が出て参ります。おそらく審議会答申された趣旨も、親族なるがゆえにというのではなくて、親族はやはり候補者の分身である、あるいは総括主宰的な積極的な選挙運動をしてその候補者の相当の選挙運動を分担している、そういう立場から親族に連座制をかけようという御趣旨だろうと思うのであります。そうだとすれば、親族であるというだけの一点をもって、一票を買収した、二票を買収したというものを連座制にかけるというのは、これは公正でない、こういう問題が出てくるわけであります。したがいまして、ここでやはりいわゆる当選者の分身的な存在であるということを立証するためには、意思を通ずるとか、あるいは同居とか、そういう問題がどうしても出てくるわけであります。御承知のように、衆議院社会党修正案が出ましたときも、意思を通じという要件は入れておられます。これは絶対的な、要件だと私は思うわけであります。それがなければ、やはりどうしても憲法上の問題が出てくる。  それからもう一つは、相当その親族のやった違反行為が、やはり公判で、いわゆる総括主宰者でも、出納責任者でもない場合は、――あれは当然それにひっかかりますが、ない場合に、連座にひっかけるためには、やはり相当広範囲に当選者の得票はよごれているという推定が必要だ、そのためには、やはり買収犯罪も相当悪質である、あるいは広範囲にわたっておるという推定が何らか入れる必要がある。それを間接的に入れる方法として、禁錮刑あるいは執行猶予がないというような方法を入れてある。そういう観点から実は立法したわけでございます。
  123. 基政七

    ○基政七君 今の御説明はそのとおりだろうと思うのですが、ただ、答申案でもその辺の検討が、私は、先ほど松永委員からお話がございましたが、相当やはりこの問題は慎重に検討された内容だと思う。そこで根本的に大事な問題は、その連座ということが明らかになって、しかも、犯罪認定が明らかになって刑事罰が確定したら、そのまま直ちに自動的にそれが失格するということとの関係においてどうなるかということを、私は実はお尋ねしたい。それはもちろん、これは法理論の上から見ればいろいろ問題があるにしても、一般世論としては、そこまできびしくやらなければ、日本の公明選挙というものは実現できないんじゃないか、また、そういうことによって、相当今の選挙がよごされておるわけですね。そういうことは事実として明らかなんでありまするから、その大事なところを抜きにしたような、抜け道のあるような法案ということでは、やはりほんとうの目的に達しないんじゃないか、そういう意味合いで、先ほどの井手さんのような意見は、相当私はやはり傾聴に値する、十分検討してみる価値のある間脳じゃないか、こういうふうな意味を申し上げたんです。
  124. 林修三

    政府委員(林修三君) 井手さんは私どもの実は先輩でもございますし、十分あの御意見も私は新聞紙上でも拝見いたしました。ただ、井手さんの言葉の一部をとらえるわけではありませんが、井手さんも、自分が法制局におったらこういう案を出すだろう、政府案のような案を書いたろうということをあそこで書いておる。しかし、いわゆる選挙界の実情からいえば、毒薬を盛らなくてはいかぬという趣旨も書いてある。そこになりますと、実はいろいろ問題でございますが、私ども実は法律専門家の立場としては、やはり違憲になるおそれのある法律、あるいは少なくともそういう可能性のある法律を実は提案するということは、ちょっとやはりわれわれとしては責任上できない、そういう問題がございますが、そこは十分国会で御審議を願いたいというふうに考えております。
  125. 基政七

    ○基政七君 それでは総理大臣にお伺いいたしたいのですが、これから先の答申は、区制の問題も出ますし、それからそれに伴って比例代表の問題をどう加味するか、統一方式にするかしないかという非常に重大なたいへん奇妙な問題が答申されるかと思うのですが、その際に、先ほど申し上げたように、今度のように党内事情のために容易にまとまらないというようなことは、やはり私は国民の側から見ても、まことに遺憾だと思うのですが、これは総理も遺憾だという表明もございましたからそれでいいわけでありますが、そこで、これをこれから扱っていく際に、やはり事前ということは困難かもしれません。しかし、答申案が出ますと、さっそく党間の十分な意見を調整して、できればこういう大きな法案であり、民主主義の根底を左右するような選挙法でありますから、ぜひ各党間の意見の一致を見るように、そういうような努力をするべきだと思うのですが、このことについて総理大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  126. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはり民主主義で話し合いの政治が望ましいことでございますから、自分は外交問題その他重要問題につきましては、そういうふうにしていきたい、こういう気持は持っております。具体的に今これをどうしてもやるのだというお約束ができないのは、今の実情から基先生もおわかりいただけると思います。方向といたしましては、私は十分、委員長、総裁の会談にするか、あるいは党の幹部の会談にするか、そういう問題につきましては、そういうふうな方向に向かって進みたいという気持はございます。
  127. 基政七

    ○基政七君 それじゃ、だいぶあとの人がおせきのようですから、あと一、二点だけにいたしたいと思いますが、原則的な問題について、私は総理意見を伺いたいと思います。これは私は、こういう選挙法のようなものは、実は全部算三者にゆだねたほうがより公正でより明るい、そうして国民の期待できる選挙法であり、さらに日本の議会政治を守っていく上にたいへん大事だと思います。そういう意味では、実は私の意見としては、この答申案をまあそのままに、国会がごく形式的に、手続的に扱ってもいいじゃないか。すべての点にというわけには参りますまいけれども、一回それくらい思い切ったことをこの次にやってみるべきじゃないか。そうしなければ、なかなか国民が、議会政治に対する信頼を高め、さらに日本の今のような実情から脱却して、そうして国民全体が文字どおりに喜んで政治に参加する唯一の選挙に参加するということは、なかなか容易ではないんじゃないか。そういう意味でぜひ総理にこの点をどうお考えになっておりますか、私はお伺いをいたしておきたいと思います。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう議論があることは私も聞いておりますが、私はその点につきまして、総理としての意見は差し控えさせていただきたいと思います。  イギリスにおきまして、こういう選挙制度につきまして委員会を設けてやる。労働党内閣のときには、その委員会答申修正したやに聞いております。なかなか各国とも議論がございますが、国会として、この重要な法案を第三者がきめたとおりでいくということは、そこまで一般にまだ行ってないんじゃございますまいか。議論としてはあることは知っております。よほど考えなければならない問題と思います。
  129. 基政七

    ○基政七君 そこで、私は、これはまあ全く私見ですけれでも、答申案を全面的に国会議員が参加してやるというよりも、やはりある部分に限ってやるというような、ごく常識的なことで考えてみる必要もまた私はあるのじゃないかと思いますが、この点いかがですか。たとえば区制の問題については、それについてはもちろんこれはいろいろな関係がありますし、十分に検討してみなければならぬと思うのですが、その範囲は、国会議員が参加するとか、これは申し合わせ以外には出ないと思いますが、そういうやはり工夫をしてみる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  130. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまお答えしたように、なかなか工夫をすること自体が踏み切ったことになりますので。
  131. 基政七

    ○基政七君 私、やはりこれは思い切ってやるべきだと思うのですけれども。  それでは次に、最後のことでお尋ねいたしたいのですが、今審議会で問題として、たいへんまあ重要でありますし、また平の性質上、これは政府のほうで十分お考えいただかなければならぬ点は、私は、三部会の公明選挙の問題だと思います。これには相当予算も要りましょうし、それから教育との関係があり、地方団体との関係もございますし、それから民間団体との協力も願わなければならぬわけでありますから、これが非常にむずかしい問題ではありまするけれども、この第三部会の答申については、特に政府のほうでその気になっていただかないと、その実は容易にあがってこないんじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、総理、この点についていかがにお考えでございますか。
  132. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は第三委員会答申も拝見し、そうしてまた、私は日ごろ公明選挙運動につきましては、できるだけ予算を組もう、こういうのでやって参っております。昨日もお話し申し上げましたごとく、一昨年は一億ばかりでございます。今度地方を入れまして七億くらいになっております。私は、今度の選挙につきましては、公明運動を積極的にやっていきたい。要すれば、予備費を出すとか、こういう気持で進んでおります。
  133. 基政七

    ○基政七君 それでは、大体私の時間はございませんから、ぜひその点は、今日現在でもそれはすでにやらなければならぬ問題ですし、私は、たいへん政治の明朗化のために、公明化のために大平だと思いますから、ぜひ総理のほうでもお考えいただいて、この公明化運動についての推進のために、一大御奮起をこの機会にお願いを申し上げて、御希望をしておきたいと思います。
  134. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 質問が重複いたしましてはなはだ恐縮でございますが、若干総理にお伺いいたしたいと思います。それで、先ほどから答申案の尊重論について、ずいぶん論議がございましたが、要するに、政府案が答申案よりか非常にりっぱにできておればこれほど問題にならなかったと思います。答申案よりか若干内容が落ちておる、改悪のほうに修正を加えられておるというわけで、まあ問題になっておるのじゃないかと、私はこう思うのですが、答申案の尊重論議は抜きにいたしましてお伺いしたいと思うのですが、やはり一つの法律というものを改正するには、何のために改正をするのか、改正をする目的というものがございますが、じゃ、公選法の改正の目的は何か。それはまあ言うまでもなく、買収、供応等の悪質な違反をなくして、明るい選挙にしたい、こういうわけで選挙制度審議会を作ってその答申案が出たわけです。ところが、その答申案に政府が再修正を加えて、その政府修正案にさらに自民党の四項目に基づく修正を加えられた。そうして、まあ国会会期末があと一週間くらいしかないときに、まあきずだらけになって息せき切って当参議院地方行政委員会に姿を現わした。そうしてさらに、われわれ野党が協議いたしまして、四派共同いたしまして再修正を申し入れたところが、それもどうも工合が悪いというわけで、私どもも非常に不満を持っておるわけです。そこで総理は、この法律案ではたして所期の目的を達成することができるのかどうか。まあ選挙区の区割りの問題あるいは公明選挙の推進の問題もありましょうけれども、それは別にして、この法案のみについて、ひとつお伺いしたいと思います。
  135. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来お答え申し上げましたようにい今の選挙法では、さし向き参議院選挙におきましても非常に不便だと思います、ポスターとか、いろいろな点から申しまして。で、私は、そういう点につきましては、これは各党一致して御賛成だと思います。ただ問題は、連座制の問題、高級公務員の問題、そうして政治資金規正の問題等ございますが、少なくとも今の状態よりも今度はよほど進んできておると考えます。したがいまして、これが万全の、どこの国の法律よりもいいとは私は申しませんが、少なくとも今の状態ではよほど改善せられている。しかもまた一方では、審議会審議を続けていっていただく上におきまして、今後のあれから見ましても、また、これを改善する機会もございます。ただいまはこれでひとつ進んでいって、よほどよくなったと私は考えております。
  136. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 不完全ではあるけれども、何とかこの際お願いをしたい、こういうわけですが、そこで私がお伺いしたいのは、二月ごろの新聞に、大野副総裁がこういうことを言っておるのですね。選挙をやったことのないしろうとの理想案だから困る、また大平官房長官が、あの改正案だと、評論家のように偉い先生ならいざ知らず、われわれ凡俗は選挙に出られない、こういったようなまあ人を食ったような放言をしておる。これは笑い話といえばそういうふうにとれないこともありませんけれども、やはりこういったような考え方、まあ言葉は言い過ぎになりますけれども、選挙法なんかあまりさわってもらいたくないのだ、こういうような考え自民党諸君の多数の中に底流しておるのではないか、こういうふうな考え方もあるわけです。この点について、総理は、自民党総裁として、どういうふうにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  137. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは全体の話を見なければ言えませんけれども、御両人とも選挙法改正につきましては非常に熱心で、しかも、今回これをぜひ実現さそうと努力しておる方々でございます。私は、真意はこの法案を実現さしたいという気持に変わりはない。非常に熱心な方々だと存じておるのであります。
  138. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで、この公職選挙法という法律に対するところの政治家の考え方ですね、要するに、今主権在民でございますし、やはり有権者が一堂に会して国政を運営すると、そういうことは実際問題として不可能だと、ですから、主権を持つ一人々々の国民選挙を通じて、そうしてわれわれの代表を出す、代表になった者にひとつ国政をゆだねようじゃないかと、こういうことになっておるわけですね。そこで、選挙法というのはむしろ国民のものじゃないかと、こう思うのです。ですから、国民立場というものを第一に尊重しなければならない。それを選挙されるほうが勝手にこれをひねり回して違憲だ合憲だと、すったもんだでやっとできたわけですが、やはり選挙法に対する観点そのものが開進っておるのじゃないかと、私はまあこういうふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あらゆる問題はみんな国民のためのものでございます。何も、選挙法国民のもので、ほかの法律その他がそうでないというわけじゃない、全部が国民のものでございます。われわれはその国民にかわりましていろんな制度を設け、あるいは行政を監視しておるわけでございます。選挙法だけじゃないのでございます。やはりそういう気持で、国会におきまして、国民のものであるという気持で御審議願っておるのであります。ただ、こういう問題につきましては、やはりわれわれもそのときと場合とによりましての学識経験者意見も聞いて国民のものにしなきゃならぬという考え審議会を設けてやったような次第でございます。あくまでわれわれは国民のために、国民とともにということで進んでいかなきゃならぬと思います。
  140. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ答弁は承りましたけれども、必ずしも総理の御真意じゃないのじゃないかと、私はこう思うのですよ。ほんとうに自由民主党の総裁として、総理大臣として、この選挙法じゃこういう抜け穴があると、どうしてもまずいとお考えになるならば、かつて総理は、経済のことは私にまかしてくれと、このような強い確信も申されたわけですから、むしろあのような強い指導力と確信を持って党内の調整に当たるべきではなかったかと、総理のために私は非常に遺憾に思うのですがね。  そこで、問題点もずいぶん論議もありましたけれども、二、三お伺いいたしますが、この政治資金の問題ですが、国または地方団体から補助金、負担金、財政投融資の援助を受けている会社、法人等は、政党や協会等に対して寄付してはならない、これが出ているわけですね。ところが、答申案は、当該選挙に関してと、こういうことを入れたということで、これはどうなんですか。選挙のためなら悪いけれども、政治のためならよろしいということなんですが、選挙献金と政治献金の見分け方ですがね、これは私どもしろうとから考えてみましても、はなはだむずかしいのじゃないかと、かえって警察当局や検察当局を迷惑させるだけじゃないか、こう思うのです。この見分け方といいますか、判断の仕方というものはどういうことが基準になるのか、総理にひとつお伺いしたいと思います。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) なかなかむずかしい問題でございまして、政党は政治活動をし、また選挙を応援する、また政治家も自分自身も政治活動をし、そうしてまた選挙もやる、そこのけじめはなかなかむずかしい問題でございますが、しかし、大体におきまして、政治資金と選挙資金というのは理論的には区別できるわけであります、理論的には。実際問題としてどうするかということはなかなか困難な問題だと思います。したがいまして、そういう問題を困難だからといって、全部網を掛けてしまうということになりますと、なかなか今の日本の社会経済情勢から申しますと、必要な政治資金も得にくい、こういうことになりますので、私は政治資金規正法が完備されるまでは、今のように選挙に関してということでいくよりほかにはいたし方ないのじゃないかと思います。
  142. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 今の件につきまして、警察庁長官の御意見をお伺いしたいのです。それと法務省の刑事局長のひとつ……
  143. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) ただいま総理大臣からもお述べになりましたが、理論的にははっきりと分け得るものだと思います。実際にあたっては、具体的に検討をしないとなかなかむずかしい問題があると思います。
  144. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 刑事局長、どうですか。
  145. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 考え方といたしましては、ただいま総理並びに警察庁長官からお述べになりましたとおりでございまして、はっきりと観念的には分け得るものでございます。ただ選挙に接近した場合に、それが政治資金とみなされ得るか、あるいは選挙の運動の資金であるというふうに見られるかという、その区別になって参りますと、事実問題といたしまして認定に困難を感ずる場合があり得ると思います。
  146. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 認定に困難なものをやはり法案として成文化しますというと、政府選挙違反をやれと、こういうような抜け穴があるのだと助長しているみたいに私は思えるわけなんですが、こういうところをもう少しはっきりすべきじゃないかと、これは世論の声もたくさんあるわけです。いかがですか、総理大臣
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いや、これははっきりいたしたいと思っていろいろ研究はしておるのであります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、政治資金規正法の問題等々と勘案しまして今後十分検討していかなきゃならぬと思います。ただ今の場合におきまして、今までの法律よりも今度のほうが政治資金ということに対しましての制限は強化したわけでございます。その点でひとつ御了承願いまして、このむずかしい問題は今後十分検討していきたいと考えております。
  148. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、そういったような法理論は別といたしましても、やはり国または地方団体から補助金を受けておる、交付金を受けておる、こういう金は相当膨大な金額に上ると思うのですが、その補助金なり、交付金なり、負担金、そういったものを受けておる団体――つまり、この補助金というものは一体だれの金かといいますと、これはわれわれの税金ですね。税金を補助金としてもらった団体が、どうもありがとうございました、お世話になりましたというだけで、その金をまた政党に献金をするということは、どうも私は納得がいかないんじゃないか。そういうところに腐敗政治、腐敗選挙というものの原因が根ざしている。まあこういう笑い話もあるんですよ。一千万円の補助金を受けたいというわけで、それ上京じゃ、それ陳情じゃ、それ安会だというわけで、運動費を五百万円ばかり使った。で、まあ残りは、補助金を受けたのは五百万円だと、こういうようなことになるわけです。ですから、私は、むしろこういう国から補助を受けているような団体は、たとえ政治資金であっても、それは国民の税金の金なんだから、やめたほうがいいと、こういうふうにはっきりとすべきじゃないか。こういうところは私ははなはだ理解しがたいんです。この点ひとつ総理にお伺いしたい。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう点がございますので、そういう会社から選挙資金を出してはいかぬ、受け取ってはいかぬということにしたわけです。ただ、大きく政治資金と申しますと、今の現状から申しまして、補助金を少し受けているからというので、これは一般民主政治の発達に貢献しようという政治活動に対して一切タッチできないということもいかがなものか、こういうので、今回は、選挙資金につきましては、そういうものはいかないということにいたしたわけでございます。
  150. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そういうような税金の補助金を受けておるようなものは、政治献金をする資格がないと私は思うんですな。もらっておいてまた出したんじゃ、それじゃどうも、元も子もなくなってしまう。で、こういったようなことが、後援会の寄付禁止の問題にも同じようなことが言えるわけですが、後援会の寄付禁止の件については、これも政府原案のほうは、当該選挙に関してということを入れた。これはどうもはっきりしないから、三カ月というワクをはめた。つまり、任期の満了の前、九十日から選挙期日までの間は、後援会の選挙区に対する寄付の禁止、供応接待等をしてはならぬと、こういうふうになっておるわけですが、それでは九十日以前ならばよろしいのか。それは九十日以前はよろしいわけですね。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それが事前運動ということになりますと、これは期限はないわけでございます。供応その他が事前運動に当てはまる場合は、これはやっぱり違反でございます。
  152. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ後援会が最近は非常に流行でございまして、それはまあひどいのがございますし、わずか百円ぐらいの会費でもって、千円ぐらいの料理を出す宴会をする、帰りにおみやげを持たしてやる、あるいは映画や観劇その他に招待をするということはもうあちこちでやっている。選挙のベテランになりますと、まあ三カ月以内はちょっと工合が悪いから、それでは四カ月以前にちゃんと手配を済ましていく。まあくろうとならばそういうよなことはやるでしょうしね。この点がどうも私は抜け穴のように思うわけです。これは抜け穴になりませんか。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、この事前運動に当てはまるのならもう抜け穴になりません。それから事前連動でも何でもなし、ほんとうに後援という意味でやるのなら、これはある程度、今の社会情勢からいってはやむを得ないのじゃないか。では、いつからにするか、取り締まることを、ということになりますと、やはり期限があったほうが、私は法を守らす上からいっても適当じゃないかという考えでございます。
  154. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 事前運動になれば取り締まると、まあこうおっしゃったわけですが、それならば立候補の意思をまだはっきりとしていないというような人がやった場合は、これはどうなるわけですか。立候補するかしないかまだわからないけれども、まあするような、しないような――まあ心の中ではそう思っておるけれども、警察が調べにきた場合に、おれは何も立候補すると言っていないじゃないか――大体後援会を作る人は、立候補の意思のない人は作りませんよ。後援会組織というのは、選挙に当選させるためのひとつの組織ですから、立候補しない者が後援会を作って、その金を使う、そんなばかなことをする人は一人もないですね。この点はいかがですか。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的な問題でございますから、警察庁あるいは……。
  156. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ええ、じゃ、柏村長官でけっこうです。
  157. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) これも、先ほど総理大臣お述べになりましたように、事前運動と認められる証拠が出て参りますれば、これは当然違反ということになるわけでございます。
  158. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあそんな証拠の出るような、そんなへまをやっていたのじゃ、もうこれはその効果もないし、また、そういうようなへまをやるような人ならば、当選なんかおぼつかないと私は思うのですが、その問題は一応それで打ち切りますけれども、次に、連座制の問題です。これも基君のほうからもずいぶん質問がございましたし、ただ、私がお伺いしたいのは、連座の問題ですね。これが違憲になるか合憲になるかでもって、ずいぶん審議を尽くされている。ところが、国民世論は、当然、総括責任者あるいは出納責任者、そういう人が悪質違反をした場合には、自然失格にしてほしい、まあこういうような世論も相当あるわけです。そこで憲法三十一条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」、三十二条のほうは「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」、まあ、こういうふうにあるわけでして、この点について、先ほどから法制局長官の御答弁もあったわけですが、これはまあ違憲というわけですか。長官、お伺いしたい。
  159. 林修三

    政府委員(林修三君) 直ちに違憲とはっきり断定することも問題でございまして、先ほども申しましたように、憲法三十一条は、まあ、形式的にいえば、そこにありますように、刑罰を科せられないということでございます。連座というものは必ずしも刑罰ではございません。形式上の刑罰ではございません。そういう意味において直ちにそこにひっかかるかということになると、そう断定的には言えないと思います。ただ三十一条や三十二条の趣旨からいって、やはりそこに認定問題が入っておる部面がございます。つまりそれが主宰者、出納責任者あるいは地区主宰者等については、これはやはり当選者のほうにおいても、当然言い分があるはずです。それは認定問題がどうしても入ってくるわけです。そういう認定問題が入るものについて、当事者が何ら関与できない、あるいは言い分を述べるチャンスがない、あるいはそれを訴訟上争う手段がないというようなことがいいかどうかと、そこに相当やはり適正な手続として問題があるんじゃないか、そういうことでやはりこれは当事者がそこに争い得るチャンスを設けておくのが、憲法全体の趣旨から至当じゃないか、かように考えておるわけでございます。
  160. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで違憲、合憲の問題は、これは最終的には最高裁まで持っていかなければわからないけれども、ただ国民が問題としておりますのは、現実の面において、当選者が、あるいはその参謀が違反をしたと、それで刑事罰がきまって、さらにまた裁判官が裁判をするというと、一審、二審、三審、大体七、八年か十年ぐらいかかるのじゃないかと、そして候補者は涼しい顔をして議席を持っておる、ここに不満があるわけですがね。かりにあなたがおっしゃるとおり、これは合憲であると、違憲であると、こういうふうに一歩引き下がって考えた場合に、それではこの矛盾というものをどうするのかと、裁判が十年もかかったのでは間に合わないじゃないか、その間に二回ぐらい選挙をやっている、この矛盾をどうするのか、この点についてひとつ総理にお伺いいたします。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 違反があって、それが裁判にかけられて長くかかる、てん然としてまた再選、三選されて出てくる、これはいかぬじゃないかと、お話のとおりであります。だから、やはりそういうことにつきましては、早く裁判を確定するように努力すると同時に、そのもとのやはり違反のないようにひとつ公明選挙運動でいくよりほかにないと思います。
  162. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 百日裁判という規定がございますけれども、それはやはり実際上むずかしいことであって、しかも、先ほどから私が質問をいたしておりますように、政治献金か選挙の献金かはっきりしない、そういううやむやの法案を作って、そして警察、検察当局がこれを調べる、そういうところにまた裁判が長くなるのです。これは実際問題として、百日でやれといっても、百日でできないようになっておるのですからね。そういう点はひとつもう少し慎重に考えるべきじゃないかと私は思うわけです。  それからこれは、答申案のほうにも関係あるわけですが、選挙期間が、今度は二十五日から二十三日になったわけですが、何のために二日間削ったのか、全国区なんかとても二十五日でも一ぱい一ぱいなんです。一ぱいじゃない、足らないのです。それにまた二日削るというのは、どうも私は納得できない。これは自治大臣にひとつ……。
  163. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは今の二十五日がいいか、二十三日がいいか、いろいろ議論があるであろうと思いますが、今のあまり長い期間そういった選挙の期間を持つことはどうであろうという、いろいろな世論もあったように存じまして、これはひとつ事務的に見て、これならでき得るし、選挙期間もこの程度でよかろうといったようなことで、主として答申の線を尊重して、これならばおかしくあるまいというので取り上げたわけであります。非常に絶対の根拠というのはこれにはないと私は思っております。
  164. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 答申案のほうには、それは事前運動を認める、事前運動を百回認めると、それならば私は二十三日はわかるけれども、それを今度は、修正案で事前運動は削って、そうしてまた二十三日に持ってきたんでは、これはもうとても全国区あたり忙しくてできはしません。そうすると、結局、金でひとつやれと、地下運動を促進しているみたいに私は思う。これならば私は非常に自民党向きじゃないか、こう思うのです。社会党の諸君も反対いたしておりますし、われわれ公明選挙を推進する者は、堂々とひとつ言論でもってやれば、全国区は県が幾つありますか、四十何県あると思いますが、一日で三県くらい回らなければ回れない、こう思うのです。その点どうなんですか。
  165. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) そういう意味からいいますと、これは五、六十日かけたほうがいいじゃないかという議論も出ようと思います。やはり選挙の期間というものは、なるべく短くやって能率的にやれというのが答申の主たる御趣旨でもあったように思いまして、この各方面意見を尊重して二十三日という、わずか二日でございますが、縮めたわけでございます。
  166. 小林武治

    委員長小林武治君) 矢嶋委員に申し上げますが、審議都合上、質疑時間を十五分に制限して質問をお願いしたいと思いますが、もし御異論があれば……、(「それはいかぬ、委員長」「横暴だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)十五分に制限して許可します。
  167. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 本委員会としては総理は初めて御出席になられたわけで、かつては御病気をなさって御出席をされなかったので、この重要法律案に計画的に質問を構成して質問ができないことをはなはだ遺憾といたします。私は委員長気持を体してやりますけれども、あまりそうきついことをおっしゃらないように、前もって要望を申し上げておきます。きょうは総理への質問でございますけれども、この雰囲気の質問としては、総理以外に、法案内容を解明する必要がありますので、他の方々にも質問をいたします。私も紳士的に内容的に簡明に質問いたしますから、お答えになるほうも簡明にお答えいただくし、委員長もその気持でおっていただきたいと思います。  まず総理に伺いますが、総理は次のごとく考えていると了承してよろしいかどうか。それは、今の日本の選挙ではあまり金がかかり過ぎるから、総理として、総裁としても、それを体験をしている、とにかく金のかからないような選挙としていかなければならない、政治資金の問題は最も大きな問題であって、このたび答申を受けてこの程度にしたが、これでは決して満足できるものではない、したがって、次の機会には、できるだけ早い機会に答申の線に沿って善処すべきものと考えている、かように了承してよろしゅうございますか。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙に金がかかるということは、選挙の公明に対してよくないことであります。できるだけ金がかからないようにいたしたい、そうしてまた、要る金につきましては、やはり筋を明らかにするようにしたい、こういう考え方を持っているのであります。したがいまして、今後におきましてもわれわれとしてそういう方向に研究を進めると同時に、審議会におきましても、御検討願いたいと思っております。
  169. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法務大臣並びに警察庁長官にお伺いをいたしますが、選挙資金と政治資金を区別した形で法案が作られたので、その認定等に困難性があり、法の運用に苦慮をする。しかし、総理趣旨に沿ってこういう改正が行なわれた以上は、あなた方としては努力はするけれども、法の運用に非常に困難性がある。したがって、この趣旨を生かすためには、近い将来に法の運用は容易な形に改正する必要がある、かようにお考えになっておられると了承しますが、いかがでございますか。
  170. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 政治資金と選挙資金との関係等の問題につきましては、仰せのとおり、事実上なかなか認定困難な場合があろうかと思います。しかしながら、それについては、十分証拠資料その他を検討いたしまして誤りなきように善処して参りたい、かように考えます。
  171. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 法務大臣のお話しになりましたのと同じ考えであります。
  172. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺いますが、政治資金は、総理としては、個人献金を将来主体とすべきものだと考えておる。それから国民選挙等に際して届けられた支出報告書を信用していない。だから、うそを言わなくてほんとうに正しい報告がなされるようになる必要がある。たとえば、総理の前回の選挙は、選挙法定費用は六十四万二千八百円、ところが、届出は五十四万二千六百三十七円となっております。これで済んだとは何人も私は信用しないと思う。たとえば自由民主党の諸君でありましたならば、党から公認料として少なくとも百万円はもらって帰るわけです。それ以外に自分が所属している派閥の師団長から若干もらって帰るわけですから、そこに政治資金と選挙資金の区別のむずかしいところもあるわけですが、いずれにいたしましても、あなたに限りません、日本の政治家が法に基づいて届けられている数字というものは、国民はあまり信用していないと思う。こういう点はやはり、矢嶋も含めて、早急に国民からほんとうに信用されるようになるということは何よりも大事だ、かように私は考えますが、総理も同感のことと思いますが、念のために伺います。
  173. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治資金並びに選挙資金が一般大衆個人から出されることが、私は理想的だと思います。私も、わが党の国民協会を作りまして、この政治資金の筋をはっきりするように、それからまた国民協会としては、主として個人本位にいくように私は指導いたしておるのであります。  それから選挙資金の届出の問題でございますが、実はまことに申しわけないのでありますが、私は選挙のときに一切選挙区へ帰りません。人まかせにいたしておりました。出納責任者は私は正確に届けたと考えております。したがいまして、私もそれに署名したのであります。
  174. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは聞きおきましょう。  警察庁長官にお伺いをいたします。この選挙法の解釈運用に困難性があるところも関係あると思うのですが、選挙に対する取り締まりを見ていると、どうも警察としては、落選した人をねらう傾向がある。だから、日本の政界、政治家には勝てば官軍思想があります。この点は、僕は警察庁長官としては、その傾向があるということを認めるべきだと思います。そしてそれが是正を行なうべきだと思います。要求します。  それから特に地方選挙の場合に、警察官とその地域の有力者との関係からか、あるいは人情がからむのか、法の運用が適正でなくて非常に遺憾な点がある。そこに地方選挙は非常によごれてくる。それが国会議員選挙の場合に波及するという傾向はきわめて顕著だと思います。したがって、私は警察当局としては、きわめて公正に対処し、特に地方選挙の粛正に努力することは、日本の現在の選挙の実態から最も必要だと思いますが、この点、御所見を簡単に伺います。
  175. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 法の解釈上、立証非常に困難な問題等もございまするが、取り締まりに対しましては、極力厳正公平にいたす考えでおります。  なお、地方選挙におきまして、有力者との腐れ縁というようなお話でございますが、そういう点についてはないことを私は信じておりまするが、今後とも十分に指導徹底をはかりたいと考えております。
  176. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 日本の政治家は、選挙に勝てば警察の手は入らぬ、落ちたらたいへんだぞと皆言っている。実践している。勝てば官軍思想がありますよ。あなた方自体、実態からいって、落選した人ばかりねらっている、こういう点は厳に僕は是正すべきであると確信を持って主張いたします。この点は要求いたしておきます。  次に、総理に伺う前に法務大臣に伺いますが、衆議院審議段階において、親族の違反の場合の取り扱いについて、ずいぶんと神経過敏な程度に取り扱われたようです。与党の修正段階において、親族の人で違反した者を取り締まるにあたっては、特別配慮をする。まあ専門語でいえば、逮捕等のような場合には、請訓事項にする、こういうような希望条項が自民党議員総会で確認されたやに承っているわけですが、これが事実だとすれば、法務大臣は政党人が任用されております。そうしますというと、請訓事項となるというと、それを通じて時の政治権力を持っている内閣が、野党に対して弾圧の具にこれを供するおそれが出てくると思うのですが、非常に重要な点と思いまするので、そういう申し合わせを了承していると思いませんが、していない、そういうことはあり得ないということを、明確に本席でしていただきたいと思います。
  177. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 候補者本人の選挙違反事件が失格事由になる、あるいは総括主宰者、出納責任者の特定の選挙違反が、これがいわゆる連座事由によって、したがって候補者の失格に及ぶということは御承知のとおりでありますから、現行のこの場合におきましても、事重大でございますから、十二分にこういう問題については慎重なる取り扱いをいたしております。したがって、今回の連座範囲の拡張に際しましても、従来の候補者自身の違反あるいは総括主宰者、出納責任者の違反の場合に準じて、いわゆる地区主宰者でありますとか、あるいは親族の場合でありますとかいった場合においても、事重大と考えまして、でき得る限り慎重に取り扱って参ろうと、かような考え方でおるだけでありまして、したがって、それ以外に特殊な、特別な取り扱いをするということは考えておりません。
  178. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法務大臣に重ねて伺いますが、連座制の問題については、かなり答申案を大幅に修正されました。しかし、この改正案がかりに公布施行された場合に、その成果を上げるためには、すなわち審議会答申を生かしていくためには、裁判の促進、すなわち選挙事犯については、百日以内に云々というワクがかかっているわけですが、実態はそうでありません。今後この条章が生きるように最大限の努力を法務省、裁判所当局でしなければ成果が上がらない。こういう努力をする確認を皆さん方はなさっているものと思いますが、この席で明確にお答えいただきます。
  179. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 選挙関係の三事件の公判等につきましては、従来と異なる裁判のあの精神を体しまして、極力今後といえども努力をいたしまして、早い結着になるようにいたしたい、かように考えます。
  180. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法の第六条の第二項の改正から、今後は、各都道府県選挙管理委員会は、即日開票を義務づけられたものと考えますが、総理にお答えいただきます。
  181. 松村清之

    政府委員(松村清之君) 私からお答え申し上げますが、今回の第六条の改正は、即日開票を義務づけたものではございませんで、都道府県、市町村の選挙管理委員会が報道機関等を通じまして、定刻に、まあ現在もやっておりますが、国民に対して開票の結果を知らせる努力をするような規定にいたしたのでございます。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 重ねて伺いますが、国民選挙権を行使すると、その結果を早く、一刻も早くですね、主権者に知らせるようにしろということが、僕は大精神だと思うのです。幾らその管理委員会が報道陣に云々しても、開票の始まる時刻がおそくなればできないわけであって、この法の精神が流れているところからすれば、これは不可能な場合はやむを得ないけれども、あとう限り即日開票の方向づけを僕はこの改正法の精神はしているものと思いますが、重ねて伺います。
  183. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) もちろん、その開票を早くやるということが前提でございまして、まあこれにつきましては、特に一昨年の衆議院の総選挙のときに、即日開票をするところを非常にふやしまして、今度の参議院選挙でも、あとう限りこの即日開票をするように努力をして参るつもりでございますが、今のところ大都市関係を除きましては、まあ大体そういう方向にいくのではないかと考えております。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺います。制度器議会審議態度には、総理は満足をしていらっしゃる、したがって、一年で任期が来ますが、どうも好ましくない答申をした、与党に一名を投じたから、だから、そういう委員を入れかえようというお考えは持たれておられないで、今の選挙制度審議会委員諸君の審議態度には、総理としては敬意を表し、満足している、かように了承してよろしいかと思いますが、いかがでしょう。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、御熱心に審議せられた各委員に対しては、敬意と満足の意を表しております。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に重ねて伺います。選挙制度審議会が超党派的に発足をしたこの経緯から、国民の有権者の選挙をやる際のルールである選挙法原案の作成を委託をしたこの気持で、選挙制度審議会答申を見ることが、基本的な問題として最も大切なことだと思いますが、総理のお考えを、今後予想される答申に対処する基本的心がまえが必要でありますから、あえてお伺いいたしたい。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 心がまえは変わりありません。私は、あくまで法三条にありますように、審議会答申を尊重する考えでございます。
  188. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その前提に立つならば、答申が出て、政府案を作る過程、それから政府案ができて、衆議院に提出して以後の衆議院における審議過程におけるあなたをささえている与党の一部諸君の効きというものは、ややわがまま勝手な意見が横行して、総裁をして困らせた、こういう点は総理としては私はお認めになられるだろうと思います。そういう姿というものは、近代的民主政党、組織政党としての体質上からいって、遺憾の点があり、日本の政権をささえている与党の総裁としては、そういうことの今後ないように、与党の本質改善をはからねばならぬという心境に総裁としてあられるものと思いますが、お伺いいたします。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 党内のことでございますから、とやこう言いたくはございませんが、私は、わが党はいろいろ議論はしておりまするが、党の全体の気持には異論はあっても、一糸乱れず、それに従っていくという昔からの気風が流れております。
  190. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理、もう一つこの点についてお伺いしますがね、私は総理をとっちめようという気持はないんですよ。しかし、与党のあり方というものは、日本の政治に非常な影響性を持っております。それだけに質問の対象になるわけです。今度の選挙法取り扱いにあたっても、社会党にも派閥がありますが、お宅にも八個師団があるわけです。その中の一部の人は、選挙法そのものよりも、池田いじめ、池田体制をゆるがすために、この選挙法をこうしてやろう、ああしてやろう、参議院にこうちょっかいをかけよう、こういう派閥政治の角度から選挙法をながめているということは、私は許すことのできない点だと思う。この点、私は池田支持ですよ。それでは僕は組織政党、民主的な近代政党というものに資格の欠除するものがあると思います。総理の顔色が変わったから、私の発言を認めていると私は判断するわけですが、この点について、総理、率直に日本の政党の前進のために、日本の政治の向上のために、謙虚に反省する面のあるくらいの御発言があってしかるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民主主義のもとにおきましては、お互いに議論をし尽くし、そうして相手の立場を十分尊重しながら議論を尽くすことは当然のことであります。党内におきまして、いろいろの問題について、いろいろ議論があることは、私は、これを避けるべきではないと思います。大いに議論すべきである。しかし、全体としての考えをきめる場合におきましては、これはもうわれわれは多数決の原則によって、そうして一糸乱れずいくことは、今度の選挙法改正の場合におきましても、はっきりいたしているのであります。私は、政党内における議論は当然である、しかし、党としての意見はやはり民主的に、全体的にまとめていく、この方向で進んでおります。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 与野党を問わず、党内で議論があることはけっこうです。しかし、それは前提として、常に公正であり、善意のものでなければならない。その点に私は遺憾の点があるように判断をしておりますから、あえてお伺いをいたしたわけです。  次にお伺いいたしたい点は、高級公務員の立候補制限の問題でありますが、ここで私は長々とは論じません。ただ、総理にお伺いいたしたい点は、これは憲法問題云々ということを言われておりますが、こういう審議会から答申があった場合に、日本の政界において、官界において反省の色が出てこなくちゃならないと思う。ところが、こういう答申があった後に、私はここで名前をあげることを差し控えますけれども、少なくとも数人、単数ではありません、複数の方々です。ある方は与党の有力、実力政治家と非常に密接な関係にある高級公務員の方が退職されて、むしろそういう実力者から勧められて退職をし、そうして現にそういう元の官庁に関係のある建物に事務所を置いて、そうして組織を利用して、活発に事前運動をされている、この姿は私はいけないと思う。過去どういう  ことがあったということは申しません。同僚の中にも元の高級公務員で、組織をフルに使って立候補された方があります。しかし、その当時はそう議論になっていなかったので、私はそういうことを問題にしません。しかし、こういう答申のあった時点からは、政党政治家としても、また官界においても、反省がなければならないと思う。これに対する総理見解と、あわせて、最近、政府と補助金あるいは交付金等についていろいろと関係のある会社へ、政府の高官諸君が天下りしていく人事があまりにも多過ぎる。これは御承知のごとく、人事院の承認を得ればいいということになっておりますが、非常にルーズになっていますね。だから、人間はどなたでも、それは人間的弱みがありますよ。今の事態を許すならば、その高級公務員のポストにあるときに、やっぱりその魚心水心で、私は政治、行政というものがゆがめられると思う。したがって、最近の高級公務員が関係のある会社、法人へ天下りしていく、あの傾向は、人事院規程というものを今より厳重にやる必要がある。このことを高級公務員の立候補制限とあわして、この際、池田政治の指向するところを明確にひとつお答えいただきたい。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高級公務員の立候補制限につきましての答申につきまして、いろいろ検討いたしましたが、先ほど来お答えしておるように、高級公務員なるがゆえに被選挙権を剥奪するということは、私は、法体系上非常に疑問がございます。したがいまして、公務員の地位を利用して、そうして選挙の事前運動をする、そういう事前運動あるいは地位を乱用することを取り締まることが先決だと考えまして、法案のごとく、御審議を願ったのでございます。  また、天下り人事につきましては、従来からいろいろ言われております。人事院規則によりましてある程度の制限、また人事院の意見を聞くことにいたしておりまするが、これを、全部公務員の民間への就職をとめるということも実情に沿いません。したがいまして、今度は、今後ともこういうことによって弊害の起こらないよう善処いたしたいと思います。
  194. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここで総理への質問をちょっと一問はずして、衆議院のこの修正案提出者に一問いたします。  それは、あなたのところでは附帯決議を四項目にわたってされて、そうして内閣、行政府にげたを預けておられる。この中の第(四)項ですね。「選挙運動の公営の拡大、連座制の強化、高級公務員の立候補制限、政治資金の規制について」格段の努力をして、次の国会で云々という決議をされているわけですがね。この中の「選挙運動の公営の拡大」とか、「連座制の強化」とか、「高級公勝負の立候補制限」とか、「政治資金の規制」という点は、四項目にわたって修正されたこれと、私は矛盾すると思うのですがね。こういう修正をしたので、心のうずきに耐えかねて、罪滅ぼしのつもりでこういう決議をされたのではないかと邪推いたします。それではほんとうの力ではないと思うんですがね。その点のところを、この修正者としてはどういう認識を持たれておられるか、簡潔にお答えいただきたい。
  195. 高橋英吉

    衆議院議員(高橋英吉君) まあいろいろその点については議論がありましたので、いろいろ議論をしているうちに、問題はますます複雑で深刻だということがはっきりわかったわけであります。したがって、これはもう今後、やはり真剣に、一そう詳しく研究しなければいかぬ、検討しなければいかないというふうなことの結論になったものですから、そういうふうな附帯決議をしたわけであります。とにかく、まあむずかしいことだから、今後の……。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 矛盾を感じませんか、矛盾は。
  197. 高橋英吉

    衆議院議員(高橋英吉君) 矛盾というほどではないですけれども、今申しましたように、ほんとうにむずかしい、われわれの理想と、それからまた現実とを調和する上に、これを法文化することはなかなかむずかしい、もっと研究しなければいかぬというふうな結論になったわけで、決して矛盾は感じないわけなんです。
  198. 小林武治

    委員長小林武治君) 矢鳩君に申し上げますが、時間がだいぶ超過しておりますので……。
  199. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 高橋さんに伺いますが、非常にむずかしい、むずかしいが、この決議の第(四)項にあるように、「選挙運動の公営の拡大、連座制の強化、高級公務員の立候補制限、政治資金の規制」等々については、選挙制度審議会答申の方向に逐次これから努力していかなければならないことを、第一院としては確認をしているし、その線に沿って、今後内閣は格段の努力をすべきであるという要求をしている。かように了承してよろしゅうございますね。
  200. 高橋英吉

    衆議院議員(高橋英吉君) 精神においてはそういうふうにとっていただいていいと思います、答申の精神。
  201. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法務大臣にお伺いします。先ほど私は名前をあげないで、一般的に表現をいたしました高級公務員立候補制限の問題でありますが、答申と違った形でここに法案が提出をされておりますが、この百三十六条の二、法案でいえば二十一ページ以後ですが、これを厳密に読めば相当のものだと僕は思うのです。したがって、私はこういう席でありますから、名前をあげたり具体的な内容は申しませんが、そういう方方というものは、この法案成立したならば、百三十六条の二に該当するおそれきわめて濃厚である、幾ら私が遠慮してしゃべっても、該当するおそれきわめて濃厚である、かように私は判断いたしますが、法務大臣の御認識をお答えいただくとともに、罪人を、犠牲者を作らない意味で、警察庁長官も適当なる時期に、適当なる警告を発する、これは予防警察のあるべき姿だと思うのですが、そういう角度から警察庁長官も、現状というものをいかように認識をされ、今後いかに対処されようとされておられるか。それぞれの方々からお答えいただきたいと思います。
  202. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま御指摘の問題については、私といたしましてまだ何らの報告を受けておりませんが、ただいまの御意見に即しまして、今回の選挙違反等の取り締まりにつきましては、十分誤りなきように進んで参りたいと思います。言うまでもなく、審議会答申趣旨並びに国会における論議状況等をも十分参酌いたしまして、法の運用に誤りなきを刺したいと存じます。
  203. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) ただいま法務大臣のお述べになりましたと同じ見解でございます。
  204. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に、要望も含めて申し上げますが、その方はもう五へん全国的にこの書面を出されておりますよ。相当な金だと思うのだ、僕は。これは高級公務員でも、そんな金がどこから出るだろうかと思う。僕のところにも来るのですよ。私ども持っているわけですがね。こういう点は、僕はみずからも反省していただかなければならぬし、その人には、通俗語でいえば、親分がついているわけですね。そういうことは謙虚でなければならぬと思うのです。その親分さんという人は閣僚の一人ですよ。そういう点、僕は選挙制度審議会答申をこれだけ変えられただけに、これはやはり反省自粛が必要で、総理、総裁としても適切なる指導があって僕はしかるべきだと思うのですが、御所見を承ります。
  205. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は事実を知りませんので、よく取り調べまして善処いたしたいと思います。
  206. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私が申し上げたような……。
  207. 小林武治

    委員長小林武治君) 矢嶋君に注意を申し上げます。(「質問時間の制限をするということは、委員長理事打合会でやらなければいけない」と呼ぶ者あり、その他発言するもの多し)矢嶋君、もう一問だけに願います。
  208. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと待って。質問を変えるのだから……、あなたの意を体してやるのだから……。  で、総理、まあ時間の関係もありますし、あまり個人的な名前をあげることは私は快しとしないので申し上げませんけれども、やはり総理もよくお考えされる必要があると思いますので、この点はこれ以上は突っ込みません。  総理にお伺いしたいことは、あなた、その最良の案というものが幾つもあるわけですね。政府原案を提出された場合に、衆参の本会議で、これは最良の案でありますということを速記に残してあるのです。これははっきり、私はここへ持ってきているわけですよ、それで、きょう他の委員質疑を承ってみますと、ずいぶんと与党さんでこうひねり回されて、あなたも苦しんだろうと思う。そうしてこういう修正案が出てきて、まあ参議院自民党の有識ある諸君も、えらい修正をしてきたものだと、これは再修正したいというのが、これはもうここまで出ているわけですよ。ただ、党人的な立場で言わないだけでね。こういう修正をされて、これは最良の案という、さっき他の委員答弁されているのですが、それでは総理、一国の総理として、見識に欠けるところがあり、なお信念に欠除するものがあるのではないでしょうか。提案されて半年もたたないわけなんですからね。数カ月しかたっていないわけなんだから。だから、総理としては、総裁としては、答申からやっぱり後返しても、政府原案をきめたならば、政党政治ですから、それはやんちゃ者もおるですよ、中には、あなたの与党の中にも。そういうところを押えて統制をし統率をして、党内を、さらに閣内を、そうして政府原案成立するように努力される姿が私はオーソドックスで、あるべき姿だと思う。われわれ野党政府案でいこういこうとこう言っているのも、全くこれはおかしなことなんでね。総理としては、野党の支持に感謝すべきであり、反省を私はする必要があると思うのですが、この点いかようにお考えになられますか。お答えいただきたいと思います。
  209. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げておりますとおりに、修正案につきまして、第一の直前運動につきましては、これは私は、政府原案から相当離れておると思います。しかし、問題の四つのうち三つは、政府原案の不明な点をはっきりしたのでございます。私は政府原案を非常にゆがめたとかなんとかいうことに考えない、これは、はっきりさしたということによりまして最良の案たる定義が動かないと思います。
  210. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は……。
  211. 小林武治

    小林武治君 加瀬君に申し上げますが、加瀬君に、時間を十分に制限して質疑を許します。(「それはおかしい」「まだ質問しているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  212. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺いますが、定数是正の件ですね、これは人口と議員定数とのアンバランスを是正をする必要があると総理はお考えになっておられ、選挙制度審議会において早急にその答申があることを期待をし、その答申があった場合には、それを尊重し、可及的早い機会に立法府の審議を仰ぐ基本的態度であるということと、それから先刻来の質疑応答を承っておって私感じたことは、総理としては、近き将来に比例代表制を加味した小選挙区制総理個人としてはあるべき姿として好ましい、こういう見解を持たれているものと推測をしたわけでありますが、御答弁、御確認を願いたいと思います。
  213. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この定数の問題のアンバランス並びにその他の問題につきましては、審議会答申が出家した場合に、政府として態度をきめます。今、私がアンバランスの問題についてどうこうと、あるいは比例代表の点についてどうこうという私の意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  214. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、私はこの法案の逐条で伺いたい点があるわけでありますが、その分加瀬委員質疑の時間をたっぷりひとつお与えいただきたいと思います。それで私は質疑を一応ここで終わります。
  215. 小林武治

    委員長小林武治君) 先ほどの委員長の発言の条件で加瀬君に発言を許します。
  216. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、懲罰を受けておるわけではありませんので、ほかの委員と同様な発言の機会を与えていただけるものと了解いたします。  政治活動と当該選挙に関することとの区分けをどの点からつけるか、まず総理に伺います。政治活動と当該選挙に関することとの区分けを政治資金規正の上でどこでつけるか。
  217. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来答弁したとおりでございまして、理論的には分けられます。しかし、実際問題は、その事実に当たってでないと判定は困難だと思います。
  218. 加瀬完

    ○加瀬完君 政治資金として寄付された金が選挙に使われても、目的が政治献金であれば問題にならないということですか。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは、判断の問題でございますが、政治資金として出されたものは政治資金に使われることと思います。
  220. 加瀬完

    ○加瀬完君 それじゃ、自民党の今までの実例から見て、次の点は次のように解釈してよろしいか。三十四年の下半期までの自民党の献金は十七億八千万、三十五年の下半期の献金は十八億九千万、これは選挙があった年です。で、選挙のない三十五年上半期、四億五千万、三十五年度の上半期の四億五千万と下半期の十八億九千万とを比べて、その差額の十四億四千万は、これは選挙に使われた金である。したがって、選挙資金だと、こう解釈してよろしいですか。
  221. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そうはなかなか断定しにくいと思います。政党はやっぱり政治を、政治運動をやることを主体といたしておりまするから、選挙があった期間の分は全部選挙資金というわけには断定できないと思います。
  222. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、政治活動資金というものはどういう使途に使われたものですか。このワクをはっきりと示して下さい。
  223. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治運動に対して使われたお金でございます。しかし、その政治というものは間接に選挙に役立つことはこれは当然のことでございます。しかし、政治資金として使われたと認められる場合におきましては、これ政治資金と取り扱われる。
  224. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、総理の後援会である宏池会の三十五年度下半期の収入総額のうちから支出された金は、八千九百八十二万八千九百十円と、こういう届出になっております。この内訳は、援助費、組織活動費、交際費、遊説費、調査費、こういう名目になっております。これは政治活動費だと、こういう自治省大臣の御答弁でございましたが、それは間違いございませんね。
  225. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どなたに、――私にですか。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 両方とも。
  227. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、宏池会は、私の政治活動の後援会でございますが、総裁就任以来一度も行ったことはございませんし、会計も私は見ておりません。
  228. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 届出の内容は、明らかに政治活動のものだと考えております。
  229. 加瀬完

    ○加瀬完君 政党及び政治団体の選挙費用の届出中、それでは次の団体は次の金額を示しておりますが、間違いありませんね。宏池会は今のとおり。それから十日会は一億八十八万一千二百円、蓮庵会は九千八百万四千円、新政治経済研究所は五千二百万円、周山会が約二億一千百万円、第一国政研究会が約一億七百万円、これは自治省の資料でありますから、お認めになりますね。
  230. 松村清之

    政府委員(松村清之君) 自治省の資料、あるいは官報によるものでございますれば、間違いございません。
  231. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣に聞きますが、あなたが先日から説明しております援助費、組織活動費、これは選挙費用として届け出てあるのです。政治活動費ではないのです。御訂正なさいませんか。あなたが今、宏池会の内訳が、援助費、組織活動費、交際費、こういうものは政治活動費とおっしゃった。ところが、届出は、選挙活動費として届けてある。あなたの答弁は辻って  いる。
  232. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これはどこへどういうふうに届けたかは、私はこの前のあなたの御質問のときも、宏池会の内容を別に聞いたわけじゃなかったのですが、組織活動といったようなものは一体どういうものだと言われるから、これは政治的に活動する費用である。それから、届出の様式に従って届出されたものの内容が政治活動の届出であれば、これはもう明らかにそう認める以外に方法はないということでございます。
  233. 加瀬完

    ○加瀬完君 法務大臣に伺いますが、選挙費用として届出されておるものが、個人の、たとえば宏池会は百万円ずつ三十四人に援助費として渡してある、選挙費用として。ところが、もらった者は届け出てない。これは明らかに違反じゃないですか、どうですか。
  234. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御質問だけでは、私ちょっと実態がはっきりいたしませんので、お答えいたしかねます。もう一度お願いします。
  235. 加瀬完

    ○加瀬完君 この前の委員会では、政治活動費として各個人に援助費として百万ずつ渡したのだという御答弁であった。この場合でも、選挙関係に使われたということが明瞭であれば、これは選挙の費用の届出の中に記載されておらなければ違法であると、そういう疑いを打たれるという御答弁が刑事局長からあった。いろいろ調べてみると、はっきりと選挙費用として届け出ておる。選挙費用として届け出ておって、百万円ずつもらった者が、収入の中に入れてなければ、これは明らかに届出の違反じゃありませんか。刑事局長、これは私の言うとおりでしょう。
  236. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまの前提になります事実関係から申せば、それは仰せのとおりでございますが、受け取った人が選挙資金として受け取ったのであるか、あるいは政治活動の援助金として受け取ったものであるか、そういう点の事実関係が明らかになりませんと、直ちに違法祝するわけには参らないと思うのでございます。
  237. 加瀬完

    ○加瀬完君 この宏池会なり十日会なりの届出は、選挙費用として届け出てあるのです。その選挙費用の内訳が、各個人に百万なり二百万なり行っているわけです。当然これは選挙費用として受け取っていると認定されるでしょう。ところが、個人の届出の中には、それはだれも含めておらない。これは明らかに違法ではないか、前提がはっきりしておる。
  238. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御笠間の趣旨は、私にはこう解釈されると思います。いわゆるそれを渡した側の意思と、それを受け取った側の意思に不一致があるように思える。そういたしますと、これについては、その事態の具体的な案件について、その事態を明らかにしないと、直ちにいずれとも判定いたしかねる、このように考えます。
  239. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、あなたのもらった分があるけれども、あなたはどう判定されたのか。(発言する者多し)
  240. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員外の方は、お静かに願います。
  241. 加瀬完

    ○加瀬完君 答えられないなら……。
  242. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私は、当時の実態がどういうふうになっておったか、今記憶いたしておりません。
  243. 加瀬完

    ○加瀬完君 ことほどさように、政治資金というものと選挙資金というものは区別がつきません。これを「当該選挙に関し」というワクをかぶせたって、政治資金という大まかな分け方でいけば、法務大臣自身がけろりと忘れるようなとぼけ方で、みんな逃げられるのじゃありませんか。これを総理大臣、どう思う。「当該選挙に関し」なんていうことは、今まで以上に金をもらってもいいということになるとは思いませんか。
  244. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今まで以上にもらうとかもらわぬとかいう問題でなしに、われわれは、今までの選挙費用につきましては、制限を加えておりました。今回の改正によりまして、その制限を拡大しようとしておるのであります。政治資金なりや選挙資金なりやということは、非常にむずかしい問題です。だから、選挙費用にしてしまえという議論もございましょうし、政治活動ということは、民主主義の発達に非常に心要なことでございますから、今の場合といたしましては、一応むずかしいけれども、政治資金と選挙資金を分けてやり、今後において、十分この点について検討を加えていこうというのが私の考えでございます。
  245. 加瀬完

    ○加瀬完君 今までは選挙費用と政治活動の費用というのは分けてあるのです。分けておって、政治活動であるべきものも選挙費用として全部使われているわけです。形式的にも届出は選挙費用、こういうやり方はずさんだとはお考えになりませんか。
  246. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、そういう問題に自分で携わっておりませんので、具体的な問題につきまして答えるわけには参りません。
  247. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは例を申します。直接あなたの宏池会を開く前に、十日会を例に出します。選挙費用として届出のある中に、組織活動費として、川島正次郎二千六十万、福山赳夫二千二百万円、交際費として田中龍夫五百三十万円、福田赳夫二百二十万円、遊説費の名目で、福山赳夫四百十万円、川島正次郎三百六十万、こういう報告がされておる。これではまるでどんぶり勘定ではありませんか。これが選挙活動費の届出ですよ。こういう経理でフリー・パスしているわけです。こういう経理報告のままで公明選挙が期待できるとお考えになりますか。
  248. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな事例はございましょうが、今後やはり選挙を公明にするために、そういう問題についても検討を加えていこう、そういう考えでおるのであります。
  249. 加瀬完

    ○加瀬完君 当然検討を加えるべきものがワクの外に押し出ているんですよ。現状を維持するような法案政府みずからが作っているじゃありませんか。答申がこういう点をきびしく取り締まろうとしておる、そのワクをはずしてしまったのが政府じゃないですか。この点どうですか。
  250. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げておるとおりに、政治賞金と選挙資金というものはなかなかむずかしい、今後この問題を検討していこう、こういうことであるわけであります。
  251. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたがそういうお考えなら、答申案が尊重されなければならないのに、答申案でワクをせっかくはめたものを、無理にこれを取りはずしてしまったのはどういう理由ですか。あなたの考えとそれじゃうらはらじゃないですか。反対ではありませんか。
  252. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 加瀬さんの御質問でございますが、この答申案におきましても、政治資金の、団体の政治資金を全面的に禁止しろとは言っていないのであります。これは要するに、特別の政府の補助を受けておるようなものについて、今度制限をしろ、こういうことなんであります。したがいまして、今御質問の点は、これはまだ将来根本問題として、いろいろ政治資金規正法の問題等とからんでこれは検討していかなきゃならぬということを政府は申し上げておるのでありまして、ちょっと問題がはずれておると思います。
  253. 加瀬完

    ○加瀬完君 はずれているのはあなたの答弁だ。答申は、政治活動資金までワクをはめなければ公明選挙はできないと、こういうふうに言っているのです。あなたのほうは、政治活動資金は自由だ、当該選挙に関してだけ取り締まりの対象としようとした。そういうことをすれば、今言ったように、まるでどんぶり勘定でやっていることが大手を振って通るわけです。これでは答申案とはまるで迷うというわけです。  さらに質問を進めましょう。政府が、または与党が特殊な利害関係にある団体から寄付をもらうことは好ましいことだとお考えになりますか、総理大臣
  254. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この政治活動ということは、民主主義の上において必要なことなんであります、だから、補助金と申しましても、その額にもよりますが、非常に大きい会社が、ある技術振興のために、何十億円という会社が補助金をもらった、しかも、それは二、三百万円というときに、もうその人は、その会社は政治活動のほうには全然寄付していないのだということが、今の状態でいいか悪いかという問題を考えなきゃなりません。将来につきましては、よほどわれわれも検討を加えまして、そうして国民協会等によりまして、政治資金あるいは選挙資金の公明化に向かって進んでおります。したがいまして、程度の問題でございます。だから、私は片一方において政治活動が必要であるという前提のもとにおきまして、何でもかんでも冷すぐ縛ってしまうのだ、くくってしまうのだということはいかがなものか、将来研究していこうというのが私の立場でございます。
  255. 小林武治

    委員長小林武治君) 加瀬君、時間が過ぎておりますが……。
  256. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、あなたの後援団体である宏池会は、こういう団体から、以下述べるような金額を受け取っておりますが、次に述べる団体は、政府と何ら関係がございませんか。たとえば東京証券取引所正会員組合一千五百万、蒸溜酒懇談会一千二百万、酉政会九百万、金曜会一千万、三友調査会七百五十万、財政研究会、これは自民党です。三千七百万、全国米穀問題同志会一千万、全国旅館政治連盟一千二百万、全国乗用自動車協会二千万、これらの団体は、政府の施策に無関係だと言われますか。
  257. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 宏池会は私の後援団体でございますが、会計経理の内容につきましては、一切存じておりません。私は宏池会の代表者でも何でもございません。それから今の各団体につきまして、法に違反しているかどうかということは、これは自治省でお調べ下さることと思います。
  258. 加瀬完

    ○加瀬完君 その自分の後援会を、そこに行ったことがないから関係がないでは通らないですよ。寄付をした者もおれば、寄付の金額もあがっている。しかも、それぞれみな政府法律あるいは補助金その他が政府の施策に全部関係がある団体です。たとえば全国旅館政治連盟というのは、これは政府から交付金も出ております。それから遊興飲食税の引き下げが本年度行なわれております。全国乗用自動車協会などに至っては、ガソリン税引き下げの資金として集めた金を自民党に献金しているのです。ガソリン税なり、あるいは自動車の運賃なりということは、政府に直接関係があるのじゃないですか。酉政会、蒸溜酒懇談会は酒の組合です。本年度の酒税の引き下げはどうですか。関係ありませんか。そういう関係のあるところからみな献金が行っているのです。こういうことで公明化がプラスの方向に積極的に進められるとお考えになりますか。
  259. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、そういう疑いは持ちませんが、とにかく政治資金を公明にするために、わが党におきましては、国民協会等によりまして資金の筋道をはっきりしよう、こういうふうに努力を今しているところであります。
  260. 加瀬完

    ○加瀬完君 それならば、今度の選挙法改正で、なぜこういうところから政治資金を仰ぐことをきっぱりとめないかというのです。
  261. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) いろいろ先ほどもお答えしましたように、答申の御趣旨は、御承知のように、政府から補助金をもらっているとか、直接の関係のある団体からのこの政治献金は禁止しろ、一般の団体からの政治資金を禁止するのはまだ時期尚早である、しかし、将来はこれをいろいろ検討して万全を期せよというのが、この答申の案でありまして、私どもは、それを採用しようと思いましたが、今も御指摘のとおりに、たとえば政府がやっております政治とか、あるいは全般の政策の問題というのは、多かれ少なかれ個人の、国民の、あるいは団体の利害に関係があることは間違いないわけであります。それを一々どこかにこれが政府と密接な関係があるとか、補助金というものに限定を近くかということは、技術的にも非常にめんどうな問題であります。そこで、今これを一定の、政府が補助金を出しておるという団体につきましても、中身を調べてみなければなかなか判定がつきにくい問題があるから、ひとまず、選挙につきましては、実際そういったことで明らかに補助金を出しておるとか、関係の密接なものは禁止をしよう、そうして将来の問題としてはもっと、今総理も言われましたように、これを合理的なものにだんだん持っていくのには若干時間もかかるし、技術も要するから、将来はそういうことを十分検討していきたいというのが、ただいまのこの案を出しておる精神でございます。
  262. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ただいま審議中の選挙法……(発言する者多し)……に関する質疑打ち切り……(「まだ審議中だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)……の動議を提出いたします。
  263. 小林武治

    委員長小林武治君) ただいま……(「何だ何だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)……に……(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)   〔午後二時四十九分委員長退席〕   〔午後五時十二分委員長着席
  264. 小林武治

    委員長小林武治君) この際、特に加瀬委員質疑を許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  265. 小林武治

    委員長小林武治君) 加瀬君。
  266. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣、先ほど質問が非常に最後混乱いたしましたので、確認したいと思いますが、一昨日でしたか、大臣が御説明をなさいました援助費あるいは組織活動費、そういうものは宏池会や十日会の場合は、選挙費用である、広い意味の政治活動費ではない、これはお認めになりますね。
  267. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 項目の内容だけから申しますと、これは私は、選挙費になる場合、あるいは広い意味の政治活動費になる場合、いろいろあろうと思いますが、届出が、選挙費として今の選管に旭川になっておれば、これは選挙費ということに当然相なろうかと思います。
  268. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、政治活動費というものと選挙費用というものは、届出の形式だけで区分けをする以外に区分けの方法はないということになりますね、今までは。
  269. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 現在のところ、一応それによって区分けをするということになろうと思います。
  270. 加瀬完

    ○加瀬完君 これも先ほど指摘をしましたように、十日会のほうの例をとれば、川島正次郎さんが二千六十万、あるいは福田赳夫さんが二千二百万、そういうようなどんぶり勘定で、これは選挙費用だというので届け出られて、それがそのまま合法として認められておるというような選挙費用の報告並びに使い方というものでは、公明選挙という点から考えれば、相当これは考慮をしなければならない余地がある、そういう意味の政治活動費なり、選挙活動費なりというものには相当検討しなければならない問題を含んでおる、これはお認めになりますか。
  271. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) たとえば、その政治団体からある個人、領袖が相当の金額を受領しておるということ自体は、幾ら受領しようとそれはかまわないと思う。それが個人の、その個人の選挙費用にそれをまるまる使ったとか、あるいはまるまるでなくとも法定費用の範囲をこして使ったということになると、これは明らかに不正ということになります。同町に、そういう個人が扱った金、あるいはその全体の、選挙応援のための遊説費に使うとかなんとかいうようなことは、それはそっちで使い道があろうかと思いますから、これはやはり実態を分析してみませんと、ちょっといいとか悪いとかいう判断はできにくいと思います。
  272. 加瀬完

    ○加瀬完君 会派の選挙活動費として計上報告されたものが、たとえば二千二十万なら二千二十万、二千二百万なら二千二百万という大づかみだけで、その選挙費用がどう使われたかという明細は一切わからない、しかし、届出としてはこれは合法だということであれば、これも大づかみにだれかが受けて、あとはどのように配っても、配った行き先、あるいは配った御当人は何にも責任がないということであっては、これは公明選挙という点からいえば、明確な費用の使い方、あるいは報告だと言われないと思いますが、この点どうですか。
  273. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 技術的に非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、今の建前でありますと、たとえば政治規正団体である後援会が、ある特定の候補者、その候補者に対して幾ら金を渡しても、それは自由である、受け取るほうも自由である、それを選挙にもし金を、法定費用以外にその個人の選挙に使ったということであれば、これは違法である、こういうことになると思います。
  274. 加瀬完

    ○加瀬完君 選挙費用として、その会派では計上しているんですよ、十日会なら十日八会、福田赳夫さん二千二百万。ところが、その選挙費用の二千二百万が、あとはだれにどう使われたという報告はないわけですね。しかし、今までそれで通っている、こういう通し方をしては、これは政治資金と言ったって、選挙資金と言ったって、同じように買収その他悪質選挙に利用される原因を作るようなものじゃありませんか。
  275. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) そういう金がもし個人の買収等に使われるとすれば、それは明らかに違反でありまするが、そうじゃなくて、今のたとえば同志の全国遊説のために班を組んで動く、あるいは特定の費用のために、自分の選挙でなくて、この選挙関連して費用を使うというような場合も非常にあり得るわけでありまして、そういうような場合に、それが買収に使っているということであれば、これは明らかに違反でありますが、それ以外の場合には、これはちょっと個々にどうだという判定は、現実の個々の問題でなければおろせないと思います。
  276. 加瀬完

    ○加瀬完君 選挙費用として計上しているんですよ、政治活動費用として計上してあるわけじゃないんですよ。届出の選挙費用なんです。選挙費用として届け出られたものが、どのような内容選挙費用として使われたかということが明細にわからないような届出であっては、届け出てもこれは不備でしょう。
  277. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは見方の問題でありますが、たとえば三十五年の総選挙の際に、選挙費の届出の、ある人にとっては、たとえば千万とか二千万の選挙費用としての選挙献金というか、を受け取っている。しかし、自分の選挙費は、法定の費用の範囲内であるという届出をしている例もあろうと思います。こういうものは、現在の解釈では、やはり合法である、そのあとの残りを今何に使ったか、選挙費以外に使っているとか、持っている場合に、それを今届出のために明細を記する必要はなかろう、こう思います。
  278. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、合法、非合法を雷っているのではないのです。合法ですよ、届け出て受けつけているのですから。しかし、二千二百万だの二千万だのという金が、一人の人の受け取るだけで手渡されておって、選挙費用という名目でありながら、その明細は一切わからないという、その届出の方法、あるいは現在行なわれている選挙費用の届出の通例認められている内容というものには検討の余地があるだろう。なぜならば、選挙費用でありますから、選挙費用の末端に至る明細までなければ一体費用超過したのかしないのかわからないですね。広報活動等の政治活動に使ったというなら、あなたのおっしゃるとおりでいいですよ。選挙費用として使ったという届出であって選挙費用は川島正次郎が二千二百万というだけでは、どうにもならない。あなたさっき遊説とかなんとか言っているけれども、たとえば福田赳夫さんの場合なら全部に関係しているんですよ。組織活動費には二千二百万、交際費には二百二十万、遊説費には四百十万、一人の人がこういうつかみ金でもってどんぶり勘定で受け取って選挙費用ですと、それはどういうふうに散らばしたかということが明確にならなければ、これは疑ってみれば切りがないでしょう。そういうような使い方で政治資金というのは選挙費用に使われておりますから、答申のほうでは政治活動資金そのものもこれは規正をしなければ公明選挙は期することができない、こう指摘をしていると思う。ここに理想選挙普及会、市川房枝先生のおやりになっておる会が発行したパンフレットがあります。これで見ると、先ほど言ったように、宏池会は百万ずつを三十四人に渡しているんですよ。名前を言ってもいいですよ。そこらにさっき並んでいた人だってみな関係している。三十四人が百万ずつもらっておって、それは選挙費用ということになっておるのに、先ほどから言うように、今度は選挙費用の収入の部のほうには記載をしておらない。しかし、それは慣例として今まで逝った、これからもこれが通るであろうということであれば、「選挙に関し、」というワクを幾らはめたって、やはり政治活動資金と選挙活動資金というものはごっちゃになって、受け取り方あるいは渡し方によって答申の意図しているような方向にあるいは政府が御説明するような方向には効果を現わすことはできない。このように思いますので、くどいですけれども念を押している。これらの点はまだ研究が御不足のようですから、十二分に研究して、これは区制その他もっと根本的な選挙法改正の問題が出たときには、あるいは政党法といったようなものが考慮される場合は、政治資金全般についてもっと十二分に考慮をしていただけるものと了解してよろしゅうございますか。
  279. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) その点につきましては、私休憩前のときも御答弁いたしましたように、答申の線におきましても、今回は、そこまでの選挙資金の届出の内容をこう区別しろとか、こういうことにしろという方針は述べられていないのでありまして、これはあくまで政治献金についての一定部分の政府献金というような政府の補助機関といったようなものについての制限をしろという趣旨でありますので、この答申案にそれをさらに選挙に関してというものに縮めた形で出しておるわけであります。しかし、この法案とか答申の線と全然別に今御指摘のようないろいろ問題を牛ずることは事実だろうと思います。したがいまして、今お話のように、今後政治資金の規正とか、あるいは政党法というような問題が議論されます場合には、また、これは審議会でもいろいろ御議論になろうと思います。また、そのなりました点を十分われわれも参照いたしまして今後も検討を進めていきたい、こう思います。
  280. 加瀬完

    ○加瀬完君 答申案は今私が指摘しているような点も問題にして規正しなければならないと言っておるんです。ですから、選挙活動資金だけではなくて政治活動のための寄付金までも特殊な条件でワクをはめていかなければだめだとおっしゃっているわけでしょう。  もっと質問を、時間がありませんから進めますと、こういう問題はどうですか。都市銀行有志から一億三千六百五十万、これは自民党だけに献金しております。三十五年の下半期です。それから日本証券業連合会から四千万、石油連盟から五千六百七十五万、私鉄経営者協議会から五千万、日本造船工業会から四千三百五十万、日本船主協会から四千万、自動車工業会から三千九百四十四万、その他さっき言った全国乗用自動車あるいは全国旅館連盟等から多額の寄金が特に自民党関係に多く行っている。これはみんなそれぞれ政府の政策あるいは法律等に関係のある団体です。こういう団体からこのような多額の寄付を受けることは、答申の線からいってもこれは十二分に考慮を要する問題だとはお思いになりませんか。これは総理大臣に聞くべきですけれども、総理大臣おりませんから、伺います。
  281. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 私は、今のような点は、先きほども申し上げましたように、政府の政策そのものはすべて国民の生活あるいは団体の生活に関係のあることなんでありますが、それを極端に持っていけば、今度は名人の税金が下がった、その下がったということで個人の献金をやることもおかしいじゃないかという極端な議論にも極端に言えばなりかねないと思いますがしたがって、その区別をつけていくということがなかなか私は非常にめんどうな質問だと思うんです。しかし、これは何度も言っておりますように、そういった非常に関連の深い団体からは、あるいは関連が深くなくても団体というものの献金は、なるべく差し控えるように今後は徐々に値していったほうがいいと、理想は私どもはそう思っております。また、総理もそういう線で考えておられる。ただ、現実の政治として今一ぺんにそういうものをばたばたと片づけていくわけにはなかなか参らぬから、これは今後十分検討していきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  282. 加瀬完

    ○加瀬完君 答申案はばたばたと片づけなければ公明選挙は期し得られないと、こういう答申です。あなたのおっしゃるようにばたばたと片づけていっちゃ選挙もやれないということは諮るに落ちるで、結局そういう受くべからざるところから資金を受けなければ選挙がやれないという選挙のやり方は、これは政府としても反省しなければならない問題だろうと思う。たとえば昭和三十四年度にテンサイ関係のく会社から自民党は献金を受けています。そうしてテンサイ振興法を通している、そのときに。今度は五千万くらいですけれども、この前の私鉄の運賃の値上げの場合には一億をこえる献金が私鉄関係からありました。それで私鉄運賃というのも値上がりが通っている。旅館だってそうです。あなたの担当の遊興飲食税というものが下がっている。こういうことであっては、献金と政府あとから作られる法律あるいは補助費というのが結びつけば、国民は疑惑を受けざるを得ませんよ。瓜田にくつを入れずということであれば、答申のようにもう少し個人の献金とか関係のない会社とかに制限をして、今の選挙ができなくなるからといってこういう関係の会社から野放図に金を受け取ることは、これはもっと姿勢を正すべきじゃないですか。
  283. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 今の選挙ができないから野放図にこういうものを放任しておくというのじゃないのでございまして、たとえば船主協会にいたしましても、あるいは旅館組合といったような組合自体については、今の答申案でも政治献金を禁止する精神だとは私どもは思わないのであります。これは政府から直接補助をもらっておるような団体について禁じろ、こういう話だったが、その範囲をきめるのがなかなかめんどうだから、短時日でなかなか現実にもむずかしいから、とりあえず選挙を前にしてはまず選挙についての献金を禁じよう、こういうふうに考えておるのでありまして、いろいろな各種団体が、これは自由民主党に限りません。社会党にも民社党にもそれぞれ額に応じた献金はそれぞれ肌衣までもあるわけでありますが、これはしかし、何らかの関係政党なり政策に関連がないというものは、これはおそらく詰めていけば日本じゅうなかろうと言うこともできます。しかし、そういうような関係がありまするから、将来の問題としてはこれはもう団体は禁じたほうが理想であるというふうにわれわれも考えます。しかし、それは今直ちに全部ばっさりやれというふうに答申も言っておるわけじゃありませんし、また、われわれも現実のこの世界で政治をやっていきますために非常にいろいろな費用がかかることも事実なんでありまするから、そういったものは今後ひとつ合理的に検討しながら漸進的に合理的なものに持っていきたい、こういうふうに考えておるわであります。
  284. 加瀬完

    ○加瀬完君 現在の昭和三十五年の下半期の選挙の、総選挙のあったときの期間の献金の中で、政府の交付金補助金その他いろいろの利便を与える関係の筋から、たくさん献金を受けておるじゃありませんか。ないとは言えないでしょう。
  285. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 中にあると思います。そういう問題につきましては、少なくとも今度は政治献金については、これを禁ずる、こういう建前を今度の法律はとったわけでありまして、これはたしか言われますように、政治資金とこの選挙資金というものは、現実においてなかなか区別しにくい面はたしかあります。これはですから将来十分検討もされ、合理化もされていかなければならぬとは思っておりますが、今すぐこれを全面的に及ぼせといっても、これは無理だろう、こういうふうに思って、とりあえず範囲を選挙に限ってはある、そういうものをやる、現に御承知のとおり、現行法におきましても、すでに選挙献金を禁じられておる団体があるわけであります。こういうものにつきましては、非常に粛正が現実においてされておる。かつて弊害があったので、そういうものをとめたことによって、ある意味で相当少なくとも粛正はされておるというような例もあるわけでありますが、それの範囲を現在の、今度の法律で相当拡大をしよう、こういうことであります。
  286. 加瀬完

    ○加瀬完君 拡大をしようといったって、選挙関係の資金か政治関係の資金かというものは、理論的には判別できるけれども、具体的には判別できないということであっては、どうにも、取り締まりようがないでしょう。だからもっと大きなワクでこういった疑惑を持たれるような献金の道を防ぐという方法を抜本的にとるべきだ、答申案はそうですよ。もらえるものは勝手にもらってもいい、選挙関係しなければ何をもらってもいい、こういつておりません。選挙関係ない政治献金というのがありますか、一体。分けられないということは、あなた方、理論的には分けられても、具体的に分けられないということは、あなた方、御説明のとおり、それならば公明選挙というものを考えるならば、こういう野放しな政治献金というものをこのままワクをはめないで認めておくということが腐敗選挙のもとですよ、あらためて伺いますが、選挙に金がかかり過ぎるとはお思いになりませんか。もっと金のかからない選挙をということを建前に考えなければ、公明選挙は推進されないとはお考えになりませんか。
  287. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) できるだけそういうふうに仕向けていきたいと思って、徐々に今度の法律案でも、その端緒に手をつけておるという次第でござ  います。
  288. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは大蔵大臣に聞くべきかもしれませんがね、経済再建懇談会では法人税法の第九条第三項並びに同法人税法施行規則の第七条、これによりまして、寄付しなければ利益として税金にとられるのだから、税金で取られる分を寄付しろ、 こういう各会社、工場にあてて割当てをいたしておりますね。これが正しい政治資金の集め方だとお考えになりますか。選挙局長笑っているけれども……。
  289. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) どういうふうな金の集め方をしたか、私ども現実によく知りませんので、何とも言えませんが、現に今日の法律の中で、一定の交際費、寄付金あるいは政治献金を含めての一定の率のものが通常経費に落とされる、これは今日の法律はそういうふうになっていることは事実でございます。
  290. 加瀬完

    ○加瀬完君 この自民党並びに自民党関係のそれぞれの有力な政治家の後援会に寄付している団体の中には租税特別措置法を初め、税法上の恩典を受けている会社も相当ありますよ、税法上の恩典は受けながら、当然払うべき税金を払わなくて、その分を政治献金にして、税金の相殺をしているということは好ましい方法とお考えになりますか。
  291. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) その税法上の恩典というのがどういう形になっておりますか、今の一般法律のきめておりますように、一定金額の寄付金なり交際費あるいは政治献金というものは一定の額までは通常経費に落とされるという法律はございます。したがって、それで恩恵を受けているというとり方をするならば、そういうふうに言えるかもしれませんが、これは現行法でそういうことを認められておるわけでありますので、現在のところこれはやむを得ません。
  292. 加瀬完

    ○加瀬完君 租税特別措置法だって適用されていますよ。
  293. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 租税特別措置法の場合につきましては、私はこれは別個にその新産業といいますか、特殊な産業自体が非常に犠牲的な面で新しい分野を開拓させるという税の目的から、これはそういう措置を設けておるのでありまして、それが普通にいう補助金をもらったと同じように扱えるかどうか、そういう問題についていろいろ疑問がありますので、今後こいつを十分検討していただいて、より合理化したものにしていきたいというふうに私ども考えております。
  294. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなた知っておって御答弁なさるなら権謀術数を弄し過ぎますよ、知らないならばもう少し実態を勉強して下さい。そんななまやさしいものでもありません。財界の献金で何ら利益の伴わない献金というものはありませんよ。ですから説をなす者はこれは先に手数料を払っておいて、あとでいろいろな利益を与えてもらう、その手数料なんです。こういう悪口すら出ているわけですから、これは御検討いただきたい。  最後に時間がきましたので、大体、法定選挙費用の単位費用を増していきますと、三百五十万なり平均四百万なりということに今度なりますね、このように今の二倍半にも三倍にも金をかける選挙というものを打ち出すことが公明選挙になりますか。
  295. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 費用はなるべく少ないほうが私どももこれは選挙にはいいことであるというように思います。しかし、そうだからといいまして労働力や事務に当たる者をただ無料で使えばいいのだ、何か正直な話が、特殊な関係の人とか、あるいは組合関係で別に報酬の方法があるから、そこへ行って働けというような場合は、これはそういうこともあり得るでしょうが、全部の人をそういった労務、費用等につきましてもそれをただで使えばよろしいのだという考え方は私どももあまりとれない、そういうような観点から器議会におかれましてもいろいろ合理的検討をされ、ある程度の増額はやむを得ない、むしろそれのほうが公明化するゆえんであるというような答申趣旨があるものでありますから、私どもはその線に沿っての合理的な計算を今度はやる、こういうふうになっております。
  296. 加瀬完

    ○加瀬完君 合理的だとおっしゃいますが、たとえば二年に一度くらい衆議院選挙があるとすれば、専心国会に専念しておった議長が四百万の金を持って選挙に臨める、そういう打算が出てきますか。
  297. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 衆議院は四百万というような計算にはなるまいかと思います。二百万か、ちょっとのものじゃなかろうかと思いますが、それにしましても今の額よりか相当ふえることは事実であります。しかし、その計算が、そういうふうな金がどこから出るのだといういろいろなこれは議論の点はあるかもしれませんが、今合理的に計算をいたしますと、ことにこの点は特に審議会等のいろいろな御意見を集めまして、そうしてその精神によって計算をいたしますと、大体合理的な法定費用が今のような形で出てきておるわけであります。
  298. 加瀬完

    ○加瀬完君 これで終わりますが、二百万としても一体二年間に二百万の金というものをやすやすと選挙費用を出し得るという計算が成り立ちますか、結局まじめに議員をやっている人なり知識人などというものは今度の選挙には出られないということになりますよ。金がない限り出られないということになりますよ、ということは専心国会に専念することでは選挙には出られないわけですから、何らか金を得る方法を考えるという立場にこれは議員自身をも追い込まざるを得ない、あるいは知識人のような優秀な方たちを出そうとしても金がない限り出られませんから有識人は国会に出てこられない、こういう道をふさぐ悪法ですよ。こういう選挙費用の改訂というのは、特に三十人ずつ何人でもかえられるというような形になればあとで問題が出るでしょうけれども、これは選挙技術の上からいっても問題を残す。時間がありませんから質問ができませんけれども、こんな初歩的なことを一体どういう御認識で答申案をお受け取りになったか、私は非常に疑問をもたざるを得ない。金のかからない選挙という点をどれだけ重視して一体案をお作りになったか、この点非常に疑いをもたざるを得ませんので、金のかからないということのためになぜ一体選挙の法定費用というものをもっときびしいワクをはめなかったのか、それから、幾らでも選挙のときは金が集まるという方法をなぜ断ち切らなかったか、これを二つ、私は結論を出さなければ公明選準はできないと思いますので、これは御所見を最後に伺います。
  299. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) おっしゃるとおりで、金のかからない選挙をやるということは建前でございます。しかし、何でもかんでもただでやって金を使わなければよろしいというわけには、これだけの広い選挙区をもってやる以上、いかないのが普通でございます。ただ特殊の人については、これは労務費なり事務費を払おうと思っても要らないというような方々、そういう方々もいらっしゃると思います。また、別の方法でそういうものが保証されているために、これは使わなくても済むというような身分、階級の方々もおありかもしれません。しかし、正当なそういった報酬だけは払わなければいかぬ、私はそういった労力あるいは事務労力の提供に対しては正当な報酬は払い得ることまでは規定しておくのが正しい。それを絶対払っちゃいかぬときめることが、今日の民主主義の世の中で正しいことじゃない。なにも払わなければならぬのじゃないのでありますから、払わなくても済むような人が、それ以内でおやりになることは、これは非常にけっこうだと思いますが、しかし、その程度のものは私は認めなければいけない、こういうふうに思っておるわけであります。
  300. 小林武治

    委員長小林武治君) 速記をとめて。   〔午後五時四十二分速記中止〕   〔午後六時一分速記開始〕
  301. 小林武治

    委員長小林武治君) 速記を始めて。  これより、両案について御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  302. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっておりまする二法案に賛成の意を表するものであります。  この際、特に言及をいたしておきたいことは、議題になりました二法案は、申すまでもなく、たいへん重要な法案でございまするが、衆議院における審議が、いろいろ理由はあったと思いまするが、たいへんな期間を要しまして当院に送られ、本委員会において審議をいたしまするのに十分の期間があったと申せなかったのは、まことに残念でございます。一般的に、法案審議衆議院から参議院に送られまするのには、十分に審議の期間を見て送付されるべきものであると思いますが、特にこのような重要法案については、この点を衆議院においても十分考慮をすべきものと考えるし、政府当局においても、その意味において格別の配慮と協力を願わなければならぬと思うのであります。この趣旨は、委員長が本法案について本会議に御報告になりまする際に、的確に要望の表明をしていただきたいと考えるのであります。  公職選挙法等改正案は、選挙制度審議会答申趣旨に基づきまして、選挙の自由と公明を期するため、選挙運動の制限を緩和をし、特に政党本位の選挙連動を推進をするため、政党その他の政治団体においても所属候補者のために選挙運動を行なうことができる道を開き、その政治活動の制限を緩和し、これに伴い確認団体の制度の合理化をはかり、なお、確認団体に所属しない候補者に対して、推薦団体による選挙連動を認めることとし、また、選挙公営の拡充強化と合理化をはかるとともに、選挙運動費用の合理化及び選挙違反に対する連座制、選挙犯罪による公民権の停止、選挙に関する経費の規制等の弧化によって公明選挙に資することが期せられ、さらに、選挙が常に一定の規律と秩序のもとに合理的に行なわれるため、選挙手続の改善によって選挙の管理執行の合理化をはかることなどの、いわば画期的な大改正を行なおうとするものであります。本案全般で、選挙界の現状に対処し、長年にわたる世論にもこたえるものとして、選挙公明化の実践に寄与し、わが国の民主政治の健全な進展に資するものと考えるわけであります。  また、国会議員選挙等執行経費基準についての改正案は、公職選挙法改正に伴うもの及び公務員の給与改定、賃金の変動に対応して、実情に即した執行経費基準を確保し、選挙の執行に遺憾なきを期そうとするものでありまして、これまた適当の措置であると思うのであります。しかしながら、両案を通じまして、本委員会審議経過に至りましても明らかなように、また、政府当局もしばしば答弁において言明をされたごとく、今回の改正は、いまだ選挙界のいわゆる宿弊を芟除するための十分な改正が達成されたとは言いにくいと思うのであります。この点については、さらに政府においても選挙審議会答申等にも基づき、一そう抜本的な、完全な改正について十分の努力と配慮を重ねてもらいたいと考えるのであります。そうした意味合いにおきまして、私は自由民主党と参議院同志会共同提案にかかわる附帯決議を提出をいたしたいと存ずるのであります。     公職選挙法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、選挙が民主政治の基盤であり、公職選挙法はその基本法であることにかんがみ、今後更に改正を行なうこととし、その改正に当っては、特に左の諸点に留意すべきである。  一、世論の動向を明察して厳正なる態度をもって臨むこと。  一、選挙区制改正特に衆議院議員選挙区別定数の不均衡是正については、急速に措置すること。  右決議する。  以上であります。
  303. 秋山長造

    ○秋山長造君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま議題になっております両法案に反対をいたすものであります。  第一に問題にしなければならないのは、本選挙法改正経過についてであります。そもそも民主政治の根本が選挙にあり、しかもきれいな選挙にあることは申すまでもありません。年来公明選挙が叫ばれて久しいのでありますが、選挙の実態は回を重ねるごとにますます悪質になり、いわゆる物量選挙の色が濃くなってきているのであります。特に一昨秋の総選挙は、わが国選挙制度が始まりまして以来の空前の腐敗選挙だと言われておるのであります。だからこそ、その選挙後、ごうごうたる選挙粛正要求の世論が盛り上がりまして、この世論にこたえて、政府選挙制度審議会設置法案を国会提案をいたしたはずであります。そうして特にその第三条には、「政府は、審議会から答申又は意見の申し出があったときは、これを尊重しなければならない。」こう法律の条文に明定までいたしたのであります。そして、その提案説明において安井自治大臣は、「党派を越え、国民全体の協力を得て、理想選挙の実現を期する。世論も、また強くこれを待望しているものと思う」。さらにまた、「新たに強力にして権威ある審議会を設置し、各界各層の学識経験者をわずらわして調査審議を願い、その答申を待って、これを尊重して、改正案国会に提出するつもりであります」。そしてさらに、その上に、「答申または意見具申のあったときは、政府としてこれを尊重して、所要の措置を講ずべきことは当然でありまして、特にこの趣旨を明記することにいたしました。」このように説明をされておるのであります。しかるに、昨年の十二月二十六日に、選挙制度審議会から相当大部な第一次答申政府の手に提出をされまして、特に二月の十二日に自治省案が発表をされましてから、この本法案がまとまりました三月一日に至るまでの経過を顧みますときに、私どもははなはだ遺憾の情を禁じ得ないのであります。この自治省案そのものが、すでに答申案の線からは相当後退をしたものであったことは後ほど申し上げますが、さらにその自治省案が、自民党の部内において、当時の新聞言葉をもってすれば、まるでハチの巣をつついたような大騒ぎを引き起こしまして、そうしててんでんばらばらに、勝手ほうだいな注文をつけあるいはこれをいじくり回しまして、そして三月一日の政府原案にようやくこぎつけたのであります。しかもさらでだに答申案を重要な点で骨抜きにしたという悪評さくさくたるこの政府原案が、衆議院審議の最後の段階におきましてさらにいわゆる便乗的な改悪修正を受けまして、私どもがここに受け取ったところの選挙法改正案というものは、どの点から見ましても私どもは断じて納得のできない、認めることのできない改悪の行なわれたあわれむざんな法案になってしまっておるのであります。このような経過考えますときに、私どもはこの法案に対処した政府当局の御苦労は御苦労といたしまして、結果的にはこの御苦労が実を結んでおりません。したがって、国民の求めた、ほんとうに選挙の明朗化、公明選挙の確立のための選挙法とは認めがたいと断ぜざるを得表せん。  第二には、政府原案の内応についてでございます。まずこの政府原案は、つぶさに検討いたしてみますと、選挙制度審議会答申の多くの点を取り入れておることは私どもといえども認めるにやぶさかではございません。たとえば郵便立候補を禁止するとかあるいは電極立候補制限とかあるいはさらに無料はがきをふやしたとかあるいはポスターの数をふやしたとかあるいは選挙犯罪についての短期時効の制度を廃止して、一般犯罪並みに刑事訴訟法によってこれを処置するとか、その他いろいろな改正点がそのまま取り入れられておることは事実であります。その限りにおいては一歩前進であることもまた私どもは十分認めるところであります。しかしながら、しょせんこれらの点は、いわば今回の選挙改正問題のいわば枝葉にすぎない、枝葉末節と言っては語弊がありますけれども、露骨にはっきり言えば、枝葉末節にすぎないのでありまして、この選挙制度審議会答申の骨組みとも言われるべきものは、何と言いましても、これは連座制の強化であり、また、高級公務員の立候補制限であり、政治資金の規正であり、後援団体の寄附の禁止であったはずであります。しかるにこれらの選挙制度審議会答申のいわば大骨とも言われるべき、骨組みとも言われるべき第一の連座制の点については、問題の親族連座でございます。これがだんだんと後退をし、骨抜きにされまして、結局ただいま皆さんがごらんのように、親族の頭に同居の親族と、まず制限をつけ、さらに意思を通じてというところでさらにしぼり、さらに禁錮以上の刑に処せられというところでさらにしぼり、その上に執行猶予のつかない場合に限るということにし、さらに検察官の公訴を待って初めて当選無効、こういうように幾つかのワクをつけましたために、実質的には、これにかかるものが一体何%あるか、一%もないと私どもは過去の経験から断ぜざるを得ない。結局これはこの連座性の答申は、完全に骨抜きにされ、有名無実にされたと言わざるを得ません。  第二の高級公務員立候補制限の問題にしても、これは現実の問題として、わが国の選挙に非常な悪弊を及ぼしていることは、これは多くを申し上げる必要はないことであります。にもかかわらず、これに理屈にならない憲法違反、その他の理屈をこじつけて、そしてこれを完全にくずしている。一般公務員の選挙運動の規制というふうにぼやかしてしまっているのであります。これではすでに国家公務員法なり、地方公務員法なりに規定されていることを、ただ選挙法に移しかえたにすぎないのでありまして、およそ審議会答申のねらいとは、これは別な問題になってしまっているのであります。  第三の政治資金の規正についても、国から補助金、補給金、その他、特別な援助を受けているような会社法人が、そもそも政治献金をすること自体がはなはだ矛盾があり、弊害が多いことは、これまた申し上げるまでもありません。選挙制度審議会が従来の経験と、そして国民世論とを代表いたしまして、そしてこれを禁止しようというきわめて妥当な答申を出しているにもかかわらず、これに「当該選挙に関し」というワクをつけることによって、事実上これも有名無実にしてしまったことは、先ほど来の各委員の御質問できわめて明白であります。  さらに第四の後援団体の寄附の禁止の点にいたしましても、これを「当該選挙に関し」と、これまたワクをつけたことによって、この後援団体の寄附の禁止のねらいとした最も露骨な事前運動というものが、完全に骨を抜かれて、そして手放しということになってしまっているのであります。その他、数々の問題がございますけれども、これらいずれをとってみましても、これは政府が何と強弁しましょうとも、これは答申の重点を完全に骨抜きにしたものであるということは、これは明らかであります。このような意味で私どもは、衆議院段階においてこれらの点を答申どおり忠実に実行すべき内容を盛ったところの修正案を提出をいたしたのでありますけれども、遺憾ながら多数を占める自民党の反省を求めることができなかったことは、はなはだ遺憾であります。  第三の点は、衆議院修正の問題であります。衆議院修正責任者の説明によりますと、衆議院修正は金のかからない明るい選挙をやるために、単に表現上、技術上の修正政府原案に加えたにすぎないのだ、こういうことをおっしゃったのでありますが、しかし、衆議院の行なわれました修正点のどれ一つとして、金のかからない明るい選挙ということではなくして、逆に今より一そう金がかかり、一そう不明朗な選挙になるような修正を行なわれているのであります。  特に衆議院修正の第二点であります。選挙運動に使用するところの専務員に対して報酬を支給する道を開いたことは、単なるこれは事務的な問題とか、法文の技術上の取り扱いの変更とかというような簡単な問題ではございません。申すまでもなく、わが国の選挙法は、これは城前から一貫をして、選挙運動員という者には、報酬は出すべきではない、こういう精神をもって一貫してきているわけであります。判例等もその精神で一貫してきておったはずであります。しかるに、従来選挙に使用される労務者のワクの中に含めておったところの事務員を、今度、労務打から引き離して新しく選挙運動に使用する事務員、いわゆる運動員の中に含めて、そうしてこれに一日七百円の報酬を与えるということでありますから、狭義の意味選挙運動員と、そうしてこの選挙運動に従事する、使用される事務員との区別というものを、だれが一体明確につけるのかという点が、はなはだ問題でございます。これが実際問題になりますというと、一日三十人で、一人に七百円ということになれば、二十日毎日交替するようなことはなかろうといっても、これはただ想像にすぎない。選挙の実態に直面いたしますと、必ずこれを入れかえ入れかえして、かりに二十日間といたしますれば、総計四十二万円の報酬を払わなければならぬということになる。しかも、四十二万円でとまればいいわけですけれども、選挙の常として、だれに報酬を払って、だれに払わないというような分け隔てのっけられないことは、いやしくも選挙をやった経験者ではきわめて明白であります。したがいまして、これをトンネルにして、突破口にして際限もなく選挙運動員に対する報酬という名目において、いわゆる買収的な行動が行なわれるであろうことはきわめて明らかであります。まつり、修正者がねらったところの金のかからない選挙のためということが、言葉とは逆にますます金のかかる選挙、ますます買収の行なわれる選挙に道を開くことは明らかであります。  さらに修正の第三点の後援団体についての寄付でありますが、これまた「当該選挙に関し、」というワクを原案がつけたのをさらにしぼりまして、当該選挙前一定期間、衆議院のごときは、解放の翌日から投票日まで、こういうことになりますれば、もう後援団体に対する寄付というものは野放しにやってよろしいということを慰めたと同じ結果になることは明らかでございます。  さらに第四項の連座の対象となる地域主宰者が、政府原案におきましては、数個に分けられた地域の責任者となっておるのを、さらに三個に分けられた地域の一または二以上の責任者、こうなりますというと、たとえば四個に形式的に分けさえすれば、もうこの制限にはかからないというような結果になってくるのでありまして、これまた、数個に分けられた地域責任者を規制しようというこの原案のねらいは、完全にはずされてくることは明らかであります。  さらに改正の第二項の事前演説会百回以内を認めようということは完全に削られ、さらに選挙中に行なわれる個人演説会の回数制限を、原案は撤廃しようとしておったのを、この修正案では、再びもとに戻して、今までどおり六十回の制限を存続しようとしたのでございまして、これまた前の修正点と同様、政府原案に対する、さらに後退、数歩後退の改悪修正であることは明らかでございまして、私どもは、こういう点からも本案には賛成できないものであります。  さらに第四点といたしまして、本委員会において本法案審議したその日程と状況についてであります。元来衆議院参議院と二院制度をとっておる建前からいたしましても、特に参議院はいわゆる良識の府とされておるだけに、党派は別にし、また、この法案に対する賛成反対の議論は別にいたしましても、少なくとも冷静に十分時間をかけて慎重審議をすることが参議院の生命だと思います。この点が抜けましては、およそ参議院なんかの存在は無意味だと断じても私は言い過ぎでないと思うのであります。しかるに、先ほどもお話がありましたが、本案が、政府原案が三月一日に衆議院提案されまして、実に二月間もみにもみ抜いて、ようやく本委員会審議が始まったのは去る三十日からであります。三十日に三時間ばかり本案についての審議をやり、二日には参考人を呼びまして三時間半やりまして、四日には三時間、五日には一時間足らず、そうして本日六日には四時間余り、こういうようなことで、全部参考人の時間まで入れましても十四時間半にすぎないのであります。参考人の時間を除けばわずかに十一時間であります。この程度の審議をもって、これだけ問題の多い重要法案をいきなり衆議院修正どおり強行しようという態度に対しては、私どもは断じて承服することができないのであります。特に一昨四日には、私どもは、衆議院修正に対して腹に据えかねるものがありますので、社会党、民社党、同志会、無所属クラブの四派の委員全員が連名をもちまして、自民党側に対して、われわれは政府原案審議会答申を重要な点で骨抜きにしたことにはなはだ不満である。せめて、この際衆議院の便乗修正の点だけでも元に戻すようにぜひとも配慮してほしい、こういうまことに妥当な当然な申し入れをいたし、必ずや政府並びに自民党側において、われわれの真意を了解され、われわれの期待どおりこれらの点についての再修正を考慮され善処されることを期待しておったのであります。昨五日の日には、さらに重ねてこの点についての申し入れを行ない、さらに政府当局に対しても、同じような申し入れをいたしまして、私ども、ひたすらにこれらの点が貫徹されることを期待し望みをかけておったのでありますが、本日の朝に至りまして、遺憾ながら自民党側から、いずれも党内事情によりまして、受け入れがたい、承諾しがたいという拒絶の返答があったことははなはだ遺憾でございます。  こういう状態で私どもは、この審議を早々に済ましてしまって結論を出してしまうということには、はなはだ心残りである、はなはだ不満であります。言葉をかえていえば、私どもは、こういう生まれるときにすでにいろいろな悪因縁がつき、さらにまた審議過程におきましても、十分といえないまでも、曲がりなりにもという程度の時間すらかけることができないで、こまかい点はすべて触れることなくして早々の間にこれの審議を終了してしまうというようなことに対しては、われわれ自身、この委員会に席を置くものとして、責任を持つことができない。まあ、このようなもろもろの理由において、わが社会党は、ただいま議題になっております両法案に対して反対をいたし、さらにただいま増原君から御提案になりました附帯決議につきましても、その内容に対しては、はなはだ不徹底の感じを免れないのでありまして、遺憾ながら反対せざるを得ないのでございます。(拍手)
  304. 基政七

    ○基政七君 私は、民主社会党代表して、ただいま議題となりました二法案に対して、反対するものであります。  まず、討論に入る前に申し上げなければならないことは、本案に対する参議院審議の期間はきわめて短く、率直に申せば、私ども審議委員に選ばれた者といたしましては、審議不可能並びに本案返上をむしろ主張したいところであります。このようなきわめて不満足な条件のもとに審議を進めてきたのでありまするが、私どもが本案に反対する第一の理由は、本法案は、選挙制度審議会答申の中で最も重要な部分と目される個所を骨抜きにし、さらに、これに対して、自民党が四点にわたる修正改悪を加えたという点にあります。そもそも金のかからない選挙、正しく清い選挙こそは、全国民があげて待望しているところのわが国における重要な政治目標の一つであるのであります。したがって、選挙制度審議会にかけられた期待は大きく、かつまた審議会設置法の第三条において、政府みずからの提案によって規定したように、答申を尊重しなければならないという条項は、審議会にかけられた国民の期待がその背景に厳然として存在しているのであります。もとより今回の答申中間報告の形で行なわれたものであって、選挙制度全般にわたるものではありませんが、答申案の骨子として、選挙の公明化を期するためには、高級公務員等の立候補を制限する、連座制を強化する、政治資金の規正をきびしくする等が明記されていたのでありまするが、政府案は、これらの諸点を無視したのであります。  本法案は、このように答申を無視した政府案についてさらに自民党が四点について修正したものでありまするが、これら諸点のうち、特に私がここではっきり反対の意向を示しておきたい点は、第一に、第百九十七条の二として、実費弁償をする選挙運動事務員を新たに設けた点であります。これは現行法においても、ややもすれば悪用されていた実費弁償の労務者の範囲をさらに拡張したものでありまして、この結果として、買収の合理化、選挙費用の膨脹を法みずからが助長するものであると言わざるを得ないのであります。  第二に、私が反対理由として明記したい点は、第二百五十一条の二、第一項第三号におきまして、連座制の対象となるいわゆる地域主宰者に関しましては、選挙区を三個以内に分けて、その一つの地域の選挙運動において違反行為があった場合、連座の適用をするという修正が行なわれたのであります。この点に関して審議会答申においては、選挙区において相当広範囲にわたって選挙運動を主宰した者ということに、審議会意見が一致したのであります。自民党修正は、答申にある相当広範囲にわたってというばく然たる規定を三個以内に選挙区が分けられている場合においてと、数を明記した条文に改めたと外形上は見えるかもしれませんが、この自民党修正は、答申が法改正を目標とした、質量ともに選挙運動の主宰者であった者に連座制を適用せんとした意図を、三個以内という、選挙区三分割の形式的な規定にすりかえてしまったのでありまして、三分割とは何ぞやというあいまいな観念をめぐって、このような改悪が、連座制強化についてどれほどの効果をあげることができるでありましょうか、私は疑わざるを得ないのであります。  また私どもは、先ほど秋山委員からも御意見がありましたように、この選挙法改正するにあたって、自民党を除いて、四派は、まじめに、誠意を尽くし、真剣に法の立場考えて、りっぱな選挙法を作るために非常な努力をいたしたのでありまするが、それにもかかわらず、自民党の党内事情によって、私どもの善意と誠意が認められなかったことについては、はなはだ遺憾に存じて、秋山委員とともに、私もはなはだ強く遺憾の意をこの機会に表明をいたしておきたいと思います。  さらに次に附帯決議の点でありますが、私も、この法案の附帯決蔵の企図する点はやや了解できないことはありませんけれども、法全体の立場から見て、これではまだ不充分と考えて反対をいたす次第であります。  以上で討論を終わります。(拍手)
  305. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、ただいま議題となりました公職選挙法等の一部を改正する法案等に対しまして、反対の意思を表明するものでございます。  いかなる法律改正するにも、その改正の目的がございます。今回の選挙法改正の主たる目的は、一体いずこにあったのか、それは、害うまでもなく、過去何回となく繰り返してきた選挙の経験から目に余る買収供応等の悪質違反を追放して、明るくきれいな公明選挙の実をあげ、健全なる民主主義の基盤を建設せんとする全国民の切なる要望であったのであります。しかるに、昨年の十二月、選挙制度審議会答申が提出されるや、この答申案の柱ともいわれる政治資金の規正、後援会の寄付ないし供応接待等の禁止、連座の拡大、当選者の自然失格、高級公務員等の立候補制限等に至りましては、政府の手によって全くの骨抜きの修正を加えられ、また、衆議院審議過程におきまして、自民党より四つの改悪修正が加えられ、しかも、本国会会期あと一週間に控えて、性急に本院地方行政委員会送付され、この重要法案審議促進を強要されましたことは、全く参議院の存在価値を軽視せるものと考えざるを得ないのであります。およそ参議院は、衆議院の行き過ぎを是正することこそ、参議院本来の使命であります。したがって、審議経過中に、野党四派と慎重なる協議の上に、自民党改悪修正案の再修正を要求したにもかかわらず、野党四派の意見に何ら考慮しなかったことは、民主政治の基本法ともいうべき選挙法改正の特殊性にかんがみ、まことに遺憾とするところであります。  およそ選挙は、主権を持つ一人々々の国民が、議会政治運営に当たる人と政党とを選ぶ一つのルールであります。したがって、その委任する人と機構とをいかなる方式で選ぶかについては、国民意思を第一に尊重してきめらるべき筋合いのものであり、したがって、選挙は、法は、むしろ国民のためのものでなくてはならないと思うのであります。かかる観点に立つならば、このたびの改正法案は全く政治家の自己本位にのみ考え改正ではないか。そこに抜本的な改正案である答申案を尊重し、それが法制化を断行するだけの勇気が政府自民党に欠除している原因がひそんでいるものと断ぜざるを得ないのであります。  以上、要するに、本選挙法改正法案は、現行法よりやや若干の前進の点は認めるのでございますが、本改正法案の主眼点である買収、供応等を未然に防止する何らのきめ手もない、全くのざる法化したことであります。政府の猛反省を促す意味におきまして、私は、二法案並びに附帯決議に反対いたします。  以上であります。
  306. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 私は、ただいま議題となっております二法案に、参議院同志会を代表して賛成をいたします。  二法案のうちで特に問題になるのは、公職選挙法等の一部を改正する法律案でございますが、われわれは、池田総理大臣が機会あるごとに選挙の粛正、公明選挙の実現ということについて、非常な意気込みをもって意思を表明されておりまして、大いに期待をいたして参ったのでありますが、今日われわれの前に示されておりまする衆議院送付法律案は、これとは相当違っている、非常に満足すべき状態でないということをわれわれは考えるものでございます。特に選挙の粛正をして公明選挙をやろうとして、一番中心になるべき連座制の強化であるとか、あるいは公務員の職務利用の規制であるとか、選挙資金と後援団体に対する寄付の規制というような日本は、何としても抜本的な粛正をしなければならぬと思いまするが、これらが、われわれに示されている衆議院送付の案においては、徹底したものになっておりません。そういうわけでありますから、われわれはこれを何とかして、せめて政府原案の線にまででも返して、われわれの理想に近づいたものにしたいということで、これが修正をはかったというようないきさつは、先ほど来、秋山、基、中尾三君から詳細御説明がございましたので、そして、その説明並びに意見は、われわれとほぼ同じでございますので、ここに省略をいたしておきます。ただ、この経過において、われわれが感じとったことは、選挙制度審議会答申から、政府原案がきまるまでのいきさつ、政府原案が、さき衆議院において修正されてきたいきさつ、また、これを再修正しようとしたわれわれの努力がついに実を結ばなかったいきさつを考えまして、非常にこの選挙法改正ということは困難なものである。まあそれは当然でありましょう。この法いかんによっては、われわれ議員個人の生き死にに関係することであるし、また、その所属政党の消長にも関することでありまするから、非常にむずかしいことであろうと思うのであります。こういうようなものにつきまして、理想を掲げて一挙にそれへ持っていくということは、これは実際問題としてむずかしいのじゃないか。なまはんかのものに対して賛成することによって、理想の火を消すという憂いもありますけれども、まあ、なまはんかであろうが何であろうが、とにかく現状より一歩、数歩前進しているならば、それをほぼ認めて、その上に、さらに次々と、順々にやっていかなければ、この種の法律案改正選挙の粛正というものは、実際問題としてできないのじゃあるまいか、こういうふうにわれわれは考えるものであります。この点、同じような批評をし、同じような修正行動をとってきた前記の三君と、最後のところで、われわれは多少考えが違っているものであります。そういう意味で、われわれは、今日示された案は、決して満足なものではないけれども、現在の法律案に比べれば数歩前進しているものである、これを足がかりにしてさらに完全なものにする一つの一里塚にこれを使うほうがベターであろう、こういうふうな考えから、この送付案に賛成するものでございます。  したがいまして、われわれは、先ほど増原君から御紹介いただきました附帯決議の中の、特にその第一項におきまして、世論の動向を明察して厳正なる態度をもって臨まれんことを政府に望むということであります。どうかひとつ政府においては、ぜひ世論の動向を明察していただきたい。明察した以上は、党内事情がどうであろうと、何がどうであろうと、厳正な態度をもってこれに臨んでいただきたいということを特に申し上げまして、賛成の意見を終わります。
  307. 小林武治

    委員長小林武治君) これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  308. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  公職選挙法等の一部を改正する法律案及び国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案の両案全部を問題に供します。  両案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  309. 小林武治

    委員長小林武治君) 起立多数でございます。よって両案は、多数をもって、衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例によりまして、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  次に、増原君の討論中にありました附帯決議案を議題といたします。  本附帯決議案を当委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  311. 小林武治

    委員長小林武治君) 多数でございます。よって本附帯決議案は、多数をもって当委員会の決議とすることに決しました。  ただいま決定いたしました決議に対し、所管大臣から発言を求められております。これを許します。
  312. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 当委員会に、この国会を通じまして、政府から御審議を願いました案件は、二十数件にも及ぶかと存じます。なお、特にこの公職選挙法初め、新産業都市建設促進法でありますとか、あるいは地方公務員退職年金、また災害基本法その他数々の重要膨大なる案件がございましたにもかかわりませず、これを全部審議議了していただきましたことに対しまして、心からお礼と感謝を申し上げる次第でございます。  なお、特にこの本法律案につきましては、審議の日数も非常に少なく、休日も多かったにもかかわりませず、終始真摯な御討議を願いまして、無事終了さしていただきまして、これまた、小林委員長初め、また与野党委員の皆さんに、衷心より敬意と感謝をいたす次第でございます。  なお、ただいま採択されましたこの附帯決議につきましては、御趣旨非常にごもっともなことであります。この御趣旨を尊重いたしまして、私どもも今後善処いたしたいと思う次第でございます。ありがとうございました。
  313. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 選挙が、民主政治の基盤であり、したがって、選挙が公明に、かつ自由に行なわれるようにいたしますことは、当然の理想であります。この点につきましては、全く同感でございますので、附帯決議の趣旨も、公明にして自由な選挙に寄与するものと考えますので、将来の法改正にあたりましては、極力善処して参りたいと、かように存じます。   ―――――――――――――
  314. 小林武治

    委員長小林武治君) 最後に、委員長として一言ごあいさつ申し上げます。  本案の衆議院よりの送付がおそきに失し、十分なる、審議期間を持ち得なかったことは、まことに遺憾でありまするが、本案の重要性に顧み、当委員会としましては、異例の措置として、連休を返上し、連日熱心に審議しましたことは国民各位もいささか了とせられることと信ずるものでございます。  この間、委員長の不手ぎわ等もあり、委員各位に非常な御迷惑をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げまするとともに、各位の本案に対する連日の真摯かつ熱烈なる御審議に対しましては、委員長として、重ねて衷心より敬意と感謝の意を表します。ありがとうございました。(拍手)  次回は明日午前十時とし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十六分散会