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1962-03-08 第40回国会 参議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月八日(木曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————     委員異動 本日委員郡祐一君辞任につき、その補 欠として堀木鎌三君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 武治君    理事            野上  進君            増原 恵吉君            秋山 長造君    委員            西郷吉之助君            館  哲二君            津島 壽一君            鍋島 直紹君            堀木 鎌三君            松永 忠二君            中尾 辰義君            杉山 昌作君   衆議院議員    発  議  者 松平 忠久君   国務大臣    自 治 大 臣 安井  謙君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁保安局長 木村 行蔵君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改  正する法律案内閣提出) ○産業雇用適正配置に関する法律  案(衆議院送付予備審査) ○公営企業金融公庫法等の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度分として交付すべき  地方交付税総額特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○質屋営業法及び古物営業法の一部を  改正する法律案内閣提出)   —————————————
  2. 小林武治

    委員長小林武治君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案質疑前回をもって終局いたしておりまするので、これより直ちに討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  3. 秋山長造

    秋山長造君 私は、社会党を代表いたしまして、本案反対討論をいたしたいと思います。  近年、暴力犯罪、特に銃砲刀剣類等を用いての悪質犯罪がますますふえつつある現状にかんがみますとき、今回の改正が、飛び出しナイフその他危険な刃物の規制を一そう強化し、銃砲刀剣類所持許可年令を引き上げるとともに、その譲渡制限を設けようとしていることは、十分首肯し得るところであります。また、来たるべき東京オリンピック大会に備えて、射撃競技用拳銃所持許可射撃場指定に関する規定整備をはかっていることも、時宜を得た措置と考えるのであります。しかしながら、今回の改正案が、第五条第三項において、銃砲刀剣類所持許可人的欠格条件として、本人のみならず、新たに同居親族個人的事由まで包含することにしている点、さらに第二十四条の二を新設して、警察官銃砲刀剣類等に関する調査権及び一時保管権限を与えようとしていることには疑問を持たざるを得ないのであります。まず、第五条第三項についてでありますが、従来、銃砲刀剣数所持許可人的欠格条件は、本人自身事由に限られておりましたのが、本項の新設によって、新たに同居親族個人的事由まで含められることになっているのであります。これはやくざが配偶者その他の名義を使って申請するような場合に備えての規定と思われるのでありますが、当面、同居親族とはいえ、いわば他人の人柄、前歴、行為等によって、申請者本人所持の自由が制限されるという法理論上の難点があることを否定できないと思います。さらに本項において用いられる「人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当理由がある者」とか、「銃砲又は刀剣数を使用して他人生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認められる者」とかいう文言は、不許可基準規定としてはきわめて不明確で、具体性を欠いており、恣意的裁量が介入しないという保証がないのであります。また、同居親族かどうかの認定はどういう方法によるのか。同居人の有無、その状況調査等に籍口して私生活への不当介入が行なわれる危険があるのではないか。  次に、第二十四条の二についてでありますが、本条は、銃砲刀剣類等による危害を未然に防止するため、警察官調査権及び一時保管権限を与えようとするものでありまして、警察官による調査及び一時保管が往々にして強制的になるおそれが大きく、憲法上の疑義を生ぜざるを得ないのであります。なるほど本条第一項は、調査の対象を銃砲刀剣類等であると疑われるものと、銃砲刀剣類等が隠されていると疑われるものに限定しており、しかも、その調査及び第二項の一時保管は、あくまで相手方の行なう「提示」「開示」または「提出」の行為を前提とするもので、警察官が捜索したり、差し押えしたりする権限を認めたものではないと説明されております。しかし、本条での銃砲刀剣数等には、新たに刃体の長さが六センチメートル程度の小型の刃物まで含まれるのでありますから、銃砲刀剣類等であると疑われるものとか、それが隠されていると疑われるものとかいってみましても、現実には疑われるものということに籍口して、所持品調査のようなことが行なわれる危険はきわめて多いものと言わねばなりません。しかも、提示し、開示し、提出するのは、相手方任意によるというけれども、現行法類似規定解釈運用に照らしてみましても、実際の取り締まりに当たっては、強制の要素が入る余地がきわめて多いのであります。すなわち警職法第二条第一項に、「停止させて質問することができる」という規定がありますが、それは任意規定といわれながらも、停止させる行為については、肩に手をかけるとか、腕を引っぱる等、相当程度実力行使が許されるというのが、有権解釈になっております以上、本条における「提示させ」「開示させ」「提出させ」の解釈についても、必ずや相当程度強制、すなわち実力行使が肯定されるであろうことは、あながち邪推、杞憂とは言い切れないと思うのであります。なるほど、この点の批判にこたえて、第三十八通常国会における衆議院地方行政委員会附帯決議の趣旨を取り入れ、警察官本条による職務を行なう際には、その身分を示す証明書提示して身分を明らかにすること。本条規定する警察官権限は、危害を予防するため必要な最小の限度において用い、いやしくも乱用にわたるようなことがあってはならない旨の規定が設けられているのであります。われわれもその誠意を認めるにやぶさかではありませんが、刑事訴訟に関係する法律規定によらない限り、身柄を拘束され、もしくは答弁を強要されることはないとする具体的な保証規定を備えた現行警職法においてさえ、質問のための提示相当実力が許されるといたしますならば、かかる抽象的な訓示規定に、はたしてどれだけの実効が期待できるだろうか。竿頭一歩を進めて、本条が断じて強制を許さず、捜索したり、差し押えたりする権限を認めたものでないことを法文の上でも明定されなかったことを深く遺憾とするものであります。  以上の理由によりまして、私は、本案反対をいたすものであります。   —————————————
  4. 小林武治

    委員長小林武治君) ただいま委員異動がありましたので報告いたします。  本日付をもって委員郡祐一君が辞任され、その補欠として堀木鎌三君が委員に選任されました。   —————————————
  5. 小林武治

    委員長小林武治君) 本案について、他に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  7. 小林武治

    委員長小林武治君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。なお、  諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  9. 小林武治

    委員長小林武君) 次に、産業雇用適正配置に関する法律案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。衆議院議員松平忠久君。
  10. 松平忠久

    衆議院議員松平忠久君) ただいま議題となりました産業雇用適正配置に関する法律案について、提案理由と、その概要を御説明申し上げます。  東京わが国人口の一割以上も集まり、南九州所得全国平均の半ばにすぎないということは、異常の事態といわねばなりません。数年前から対策を迫られておりました過大都市地域格差の問題は、高度成長政策によってさらに大都市とその周辺産業人口が集中し、その生産面生活面隣路を開く公共投資総額の七割近くに達するという悪循還を招き、交通地獄に代表される多くの弊害を引き起こしております。一方それ以外の地域における公共施設はますます立ちおくれ、人口は減り、地域格差はいよいよ拡大して参りました。  したがいまして、この際、奇形児のような経済不均衡を正すには思い切った国の措置が必要でありまして、過大都市は「抑制」から進んで「解消」に努め、同時に、全国数ヵ所に一大工業地域を造成するとともに、全国各地開発都市建設を行ない、産業適正配置と、その地域における雇用の安定をはかること、端的に申しますと、通勤できる都道府県内数ヵ所に工業地帯ができるよう、現実に効果のあがる施策を強力に集中し、経済の均衡ある発展をはかることが、今日最も緊急であり、お互いの努めと存じ、ここに本法律案提出した次第であります。  今、この法律案概要を申し上げますと、  第一に、内閣総理大臣は、国土総合開発計画に適合する開発拠点地区指定して開発基本計画を作り、国が全額出資する産業設備公団の手で、土地確保工場その他の施設整備賃貸を行ない、新たに広域経済圏中核となる地域を作ろうとするものであります。なお、この指定には、その経済圏労働力の需給ができ雇用が安定するよう配慮することにいたしました。  第二に、内閣総理大臣は、知事申請により数ヵ市町村にわたる経済圏開発中核とすることができる開発拠点地区指定して開発基本計画を立て、その周辺労働力によって大いに産業開発しようとするものであります。また、著しい変動による産業不況地域には、その再開発について特別の対策をとらねばならないよう配慮しました。  第三に、知事は、関係市町村長申請により、農産物、林産物、畜産物または水産物の加工業開発に適するところを開発小拠点指定して開発基本計画を作り、その地域開発と、農山漁村加工業への進出、所得の増加、就業の増大をはかろうとするものであります。  第四に、右の中拠点地区、小拠点地区開発には、国と都道府県が出資する開発公社を設立して、その都道府県における産業開発を総合的に行なわせ、開発に必要な土地確保工場その他の施設整備賃貸等をすることにしました。なお、この開発公社都道府県の一元的な開発機関となるよう考えております。  第五は、既成の大工業都市へさらに産業人口が集中しないよう、大規模な工場新設や増設を制限する工業制限区域指定することができることにしました。また進んで過大都市解消する積極的対策として、工業制限区域内の工場開発地域に移転するときは、工場新設、労務者の移転等に特別の措置を講ずることにしました。  第六は、国や地方公共団体は、開発計画を達成するため用地、水道、輸送、教育、厚生その他の施設整備就業上必要な教育または職業訓練施設整備を急ぎ、許可その他の処分、国有財産譲渡、貸付に便宜をはかり、工場建設に必要な資金の確保に努め、国は地方公共団体の行なう事業費補助地方債に特別の配慮をするものとしました。  第七に、電気料金は、製造原価への影響が大きく、その低料金工場誘致のきめ手の一つでもあります。しかも、今日低開発地域ほど料金は高い傾向にありますので、開発計画に沿う工場電気料金は、一般よりも低減されるよう特に法律措置することにしました。  第八は、工場地帯建設のため、最近地方公共団体負担が加重され、また地方税を減免するため、一般行政が圧縮されるおそれがあります。この法律は、国が多くの負担画期的開発をやろうとするものでありますから、特に一項を設け、補助を行なうときは、その行政水準が低下しないよう考慮することにし、地方税の減免は行なわせない方針であります。  最後に、開発に関する重要事項調査審議するため、総理府に産業雇用適正配置審議会を、また都道府県産業雇用適正協議会を設けることにいたしております。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  11. 小林武治

    委員長小林武治君) 本案質疑は、後日に譲ります。   —————————————
  12. 小林武治

    委員長小林武治君) 次に、公営企業金融公庫法等の一部を改正する法律案及び昭和三十六度分として交付すべき地方交付税総額特例に関する法律案の両案を一括議題として、前回に引き続き質疑を行ないます。両案に質疑のある方は御発言願います。
  13. 秋山長造

    秋山長造君 財政局長にお尋ねしますが、この九十八億円の繰り越しの理由というのは、これは時期的に間に合わないということだけなんですか。
  14. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 計画的な配分をいたしますためには、どうしても法律改正を要するわけでございますし、法律改正をやってから配分をするということになりますと、非常におくれますので、来年度計画的に配分するために繰り越したいというようなことであります。
  15. 秋山長造

    秋山長造君 計画的に配分できないというのは、時期的にできないということですか。
  16. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) そのとおりであります。
  17. 秋山長造

    秋山長造君 今までこういう例がありますか。
  18. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 昨年も同じような措置をとらざるを得なかったわけであります。
  19. 秋山長造

    秋山長造君 二月の半ばに補正予算は成立しているわけなんですが、そういたしますと、少なくとも四十日は年度末までに期間はあるわけですけれども、それでやはり配分はできないですか。
  20. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 法律の成立がいつになりますか、そこにも問題があろうかと思うわけであります。先回の委員会でも一申し上げたわけでありますが、国の側から見ました場合には、計画的な配分をするためには、翌年度基準財政需要額改正、それとあわせて考えたほうがよろしい、また、地方団体側から考えても、年度末にぽっつり金が来るよりも、やはり計画的に使うためには、新年度財源として総体的に把握して予算編成したほうがよろしいと、こういうようなことでございます。
  21. 秋山長造

    秋山長造君 ただ三十六年度地方財政が、当初の自治庁での財政計画なり、あるいは交付税配分計画なりで満ち足りたものなら、間に合わねば新年度へ繰り越すということも、これは了承できるわけですけれども、やはり地方財政としては、財政計画も非常にもうぎりぎり最小限度窮屈な財政計画を組まれて、それを地方団体へ、押しつけという言葉は悪いかもしれぬが、やらしておるわけなんでして、やはり実際の地方財政としては、財政計画から、——これはむだ使いをするということじゃなしに、必要やむを得ざる出費として相当はみ出している面が多々あるのじゃないか。たとえば、今問題になっております高校生急増対策なんかにしましても、政府のほうは新年度から三ヵ年というような計画で、政府なりの財政計画を立てておられるようですけれども、地方実態からいえば、少なくとも三十七年度、この四月に入学する高校生に対する対策は、新年度になってからじゃ間に合わぬわけなんで、結局三十六年度のうちに、とりあえずの対策はやっておかなければならぬというようなことで、ほとんどの都道府県において、この新年度から、あるいは学級を増設するとか、定員をふやすとか、あるいは新しい高等学校新設するとかというような計画を必要に迫られてすでに進めておるわけですね。そうしてその経理についても、今の地方財政ではとてもまかなえないというようなことから、税外負担なんかは抑えていくという政府の繰り返された方針にもかかわらず、実際にはそういう税外負担あるいは地元負担というような過大な負担がかぶせられておる。そうしてまた、その負担を引っかぶる側にしても、問題がやっぱり子供の問題だし、教育の問題だ、ということで、税外負担は抑えるのだ、いかぬのだということを考えながらも、やっぱりもう背に腹はかえられぬということで、相当過大な負担を甘受しておるというようなことが、これは地方実情じゃないかと思うのです。そういうことだけを取り上げて考えても、地方は満ち足りるどころじゃなしに、これはもう非常に困っておると思うのです。そういうことに対する手当としても、何とか計画的にやろうとすれば、新年度じゃなければやれぬということも、自治省立場としては一応わかりますけれども、地方財政としては、やっぱり年度内にもらえるものはもらいたいということが、これはぎりぎりの要求じゃないかと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 地方財政実態は、財源の少しでも多く来るようにしなければならないというような点については、別に異存はないわけでございます。ただ、御承知のように、第一次補正で二百十億円地方交付税増額になりました。これはもうすでに全額配分を了したわけであります。第二次補正で百二十八億円が増額になったわけであります。このうちのやはり三十億円ぐらいは配分年度内に了するわけであります。要するに普通交付税を計算いたします場合に、財源不足額が算定される、それを完全に補てんし切っていない部分は補てんする、こういう建前をとっておるわけでございますので、三十億円程度のものは配分されるわけでございます。あとの九十八億円余りのもの、これは特別交付税として、法律改正をしなければ配分をすることになるわけであります。特別交付税として配分を受けたほうがよろしいか、あるいは新年度基準財政需要額改正を行なった上で配分を受けたほうがよろしいか、私は、必ずしも地方団体はとにかく三月中に配ってもらったほうがよろしいのだと、こう期待しておるとは思わないのであります。やはり地方財政計画というものをちゃんと組み立てて、その上に立って配分をする、したがって、地方財政計画策定後特殊の事情が起きた、たとえば給与改定なら給与改定という問題が起きてきた、その場合には、必要な財源措置を国において講じてもらう、こういう期待を持っておるのじゃないかと思うのであります。したがいまして、九十八億円を三十六年度に配らないで、なお相当期間国に利用しておくのだということになりますと、地方団体は非常に不満を持つだろうと思うのでありますけれども、追っかけてこれは計画的に三十七年度配分するわけでありますので、必ずしも三月中に配ってしまえと多くの地方団体が期待していると、こういうような点については、賛成いたしかねるという気持を持っておるわけであります。
  23. 秋山長造

    秋山長造君 それで、今申し上げました高校生急増対策で、各県とも一国が何も見てくれぬということで、地元でいろいろやっておりますね。その経理について、税外負担だとか、地元負担とかいうようなものは、ずいぶんこれは巨額な負担をかけております。そういう事態に対しては、自治省のほうはどういうふうに指導されるのですか。
  24. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 高校生地方急増対策の問題につきましては、三十六年度すでに地方債計画のほうで三十億円を計上して府県が積極的にそういう措置をとっていけるような方法に踏み切って参っておるわけであります。ただ、私たちとしては、全体計画を早く作るべきだという希望を持っておったのでございますけれども、いろいろないきさつからそれがおくれまして、三十七年度予算編成と合わせましてこれが策定されるというようなことになったわけであります。御指摘のように、公立高等学校につきましては、府県責任を持つ立場にあるのだろうと思いますし、その府県公立高等学校を作ります場合に、土地その他の部分市町村に提供させる、こういう傾向が従来からあるわけでございます。私たちといたしましては、あとう限り財政秩序を確立していきたい、国民との間においてどこがそういう問題の責任を持っているのかということを明らかにしていかなければいけないじゃないか、こういう気持を強く持っておるわけでございます。そういうこともございまして、府県立高等学校である限りは、用地府県確保すべきである、そういう建前から、三十六年度におきましても府県自分土地購入する場合には、府県土地購入についての地方債許可いたしかたから、だから、できる限り府県自身土地購入するようにしてほしい、こういうことを言って参ったわけであります。その結果、ある程度府県自分購入するように踏み切ったと思います。そういうこともございまして、三十六年度では、土地購入について二十三億の地方債許可いたしました。三十七年度におきましても、そういう意味の地方債許可をいたしたいということを地方団体に言っておるわけでございます。なおまた三十七年度地方財政計画編成にあたりましては、税外負担解消したい、そういうことを打ち出しておるわけでございまして、地方財政計画あるいは地方交付税配分等において、その精神を明らかにしておるわけでございます。そういうようなことを今後も強く訴えながら地方団体の自覚を求めていきたい、そうして国民との間においてどこが事務責任を負い、どこが経費の負担責任を負っているかということを明確にしながら財政秩序をはっきりさしていく努力をして参るつもりでございます。
  25. 秋山長造

    秋山長造君 局長のおっしゃるとおりにやられておればいいのですけれども、実際には、今の局長の述べましたように、幾つかの県では、それは県の責任土地購入までやっているかもしれませんけれども、まあ私なんかの知り得た範囲では、県が県の責任でやっているところはないですね。ほとんどやはり地元負担というようなことで、もうせっぱ詰まって、いやおうなしに地元の方もこれはもう泣き寝入りをするというような形で地元負担をどしどし押しつけて、そうして急場を切り抜けるということをやっている県が多いのじゃないかと思うのです。こう思うのですが、その実情はお認めになりますか。
  26. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 県によって区々でございまして、今おっしゃったようなことで、市町村なりPTAなりが悩み抜いている実情もよく承知いたしております。ただ、私がこういう経過をたどっているということを申し上げたことも事実でございまして、三十六年度におきまして、三分の一くらいの府県でしょうか、あるいは四分の一くらいにしかなりませんでしょうか、そういう団体自分土地購入するようになったわけでありまして、同時に、二十三億円の地方債許可いたしたわけでございます。また、税外負担解消とか、あるいは財政秩序の確立とかいうことを叫び続けて参っております結果、市町村に転嫁することをしない団体も出てきているわけでありますが、その割合を引き下げる団体も出てきておるわけであります。しかし、依然として苦しみ抜いている市町村を持った県も相当数ございます。こういう問題につきましては、将来さらに一そう財政秩序がはっきりして参りますように努力していくつもりでおるわけでございます。
  27. 秋山長造

    秋山長造君 ただ、将来努力をされることは、もちろんけっこうなんですけれども、新年度財政計画を見ましても、高校急増対策に百三十三億という数字が出ておりましたが、その他の補助金等を加えて百五十億、その中には土地購入費というのは含まれていないでしょう。三ヵ年間に百八十万坪要るという数字を聞いております。これに対して、どう手当をするかということは、まだはっきり具体的にはきまっていないというように聞いているのですがね。その新年度財政計画での高校急増対策についての土地購入の点はどういうふうになっておるのですか。
  28. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 三十六年度において公立高等学校用地のための土地購入しなければならない、その額が文部省の計算では五十九億円くらいと言っているわけであります。その七割程度のものは地方債を許下したいということで、土地購入については、四十億円別途地方債許可したい、こういうことを考えているわけでございます。一月の末に、全府県の総務部長を集めまして、新年度予算に備える打ち合わせをしました際に、そのことも明らかにいたしまして、伝えているわけでございます。
  29. 秋山長造

    秋山長造君 では、土地購入費は、起債ということが確定しておるのですか。
  30. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 先ほどお話しになりました数字のほかで地方債を考えているわけでございます。先ほどお話しになりました数字のうちには、土地購入費は入っていない、別途の措置をする、そのほうが負担転嫁を排除するには好都合ではなかろうか、こういう気持自治省としては持っているわけであります。
  31. 秋山長造

    秋山長造君 その起債額は幾らですか。
  32. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 三十七年度で予定いたしておりますのは、四十億円でございます。三十六年度においてはすでに許可をいたましたのは二十三億円であります。
  33. 秋山長造

    秋山長造君 それから、高等学校の問題は、それでもって一応の御説明はつくことになるわけですけれども、税外負担についての百億の整理をしていくというお考えのようですが、さらに何か税外負担を禁止して、そうして財政秩序を確立していくというために立法をなさるということを聞いておったのですけれども、それはどうなっておるのですか。
  34. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 三十五年にも税外負担の整理の問題を取り上げたわけでございます。その際に、地方財政計画に所要の金額を計上し、地方交付税法を改正しまして、基準財政需要額に所要の財源を算入するわけです。第三に、地方税法を改正しまして、府県は、用地購入については市町村に転嫁してはならない、市町村は、の経費については住民に負担を転嫁してはならない、こういうふうに禁止しておるわけであります。その禁止規定の範囲をさらに広めていきたい、こういう考え方を持っているわけでございます。その一つとして、府県立高等学校の経費を市町村なり住民なりに転嫁することを禁止したい、こういう考え方を今日なおとっているわけでございます。ただ、いろいろ考えて参りますと、どういう立法の仕方があるのだろうか、そこで実は悩み抜いているというのが、その現状でございます。といいますのは、もうすでに急増対策が、御指摘になりましたように始まっているわけでございます。相当市町村なりPTAなりは、その負担をさせられているわけであります。また、将来についての約束も、多くのものはしておるわけでございます。そこで、その際、禁止規定をかりに制定いたしたとしますと、もちろん約束したものがほごになる、あるいはまた、そういう結果、すでに一部を寄付した団体は、返せという問題が起こってくる、何かいろいろな混乱が起きるのじゃないかということを心配しているわけであります。そうなってくると、直ちに禁止規定を制定するのがよろしいのか、あるいは自主的な工夫に待つように、そういう雰囲気を一そう強化するといいましょうか、財政上の措置もするし、また、国としてもそういう負担転嫁を排除する呼びかけを一そう強めていくとかいう方向で、円滑に転嫁排除を期待していくほうがよろしいか、そういうことについて、非常に苦心しているという実情でございます。何かいい知恵が出まして、立法措置で、ぴしゃり禁止しても混乱が起こらないというような立法の仕方があるなら、私たちとしてはそれを取り上げたい、しかし、今申し上げますような実情から、なかなかいい知患が出ていないというのが今日の段階でございます。
  35. 秋山長造

    秋山長造君 もちろん、これは一方的に、法律で禁止してみたからといっても、財政の実情がそれに即応しなければ解決するはずはないので、今のように、自治省のほうでは、税外負担をやめろやめろと、財政秩序の確立だということを、機会あるごとに言ってきておっても、実際には、それに税外負担をかけないで済むだけの財政的な手当というものがなされておらなければ、これは問題にならぬと思うのです。今日の実情は、まさに、その点が現われておると思うのですが、そのためにも、これは、新年度交付税法の改正のときに、高校急増対策の問題について、もう少しこまかく究明したいと思っておるのですが、たとえば、この経費についても、知事会あたりで要求しておる金額と、それから当事者、文部省の出している数字、それから自治省の出しておる数字、これ非常に開きがあるのですね。知事会のほうは、三ヵ年間で、高校急増対策費として千三百億という数字を出しておりますね。それから文部省のほうは八百八十億という数字を出しておる。それから閣議決定の線は五百五十三億だと、こういうように、非常に当事者によって、出しておる数字が、これがけた違いな開きがあるのですね。こういうところにも、やはり自治省が笛吹けども、地方のほうはそれに従わないで、やたらに地元負担だ、税外負担だというようなもので切り抜けざるを得ないという問題が出てきていると思うのですが、政府のほうの五百五十三億という数字が、どういう根拠で出されたのか、単価がどういうように見積もられておるのかというようなことに、私は問題があろうかと思うのですが、それにしても、それぞれの見方はあるでしょうけれども、やはり今の地方の、さっき申しましたような実情からいいますと、やはり交付税の見積もり方にしても、何にしても、自治省計画が、あまりにも地方実情、今日の経済情勢、特に、土地なんかのべらぼうな値上がりというようなものにぴったり即応してない点があるのじゃないかというふうに考えるのですけれども、その点どうですかな。
  36. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 税外負担の整理という点が、笛吹けども踊らずという格好になっておるのじゃないかということでございますが、これについては、私たち若干異議を唱えたいのでございます。少なくとも、都道府県市町村に転嫁してはいけないという項目を新たに定めまして、三十五年度地方財政法の改正を行なったのであります。税外負担の状況を、昭和三十二年度について調べたことがございます。さらに、三十五年度についても調べたわけでございます。そうしますと、府県市町村へ転嫁しておったものが顕著に減ってきております。これは事実でございます。また、高校生急増対策が出て参りましたので、この関係でどうなるかという問題は、これは別個の問題についてあろうかと思うのでございますが、ただ、今申し上げました点で、三十二年度と三十五年度と比べますと、三十二年度には、府県市町村へ転嫁しておりましたのは六十三億円でございます。三十五年度では、それが二十四億円に減っておるわけでございます。約四十億円程度の減少を見ておるわけでございます。この間、財政規模が非常に大きくなっていることを考えますと、かなりこういう点が緩和された、是正されたと、こういえると思うのでございます。しかし将来、なお一そう私たちとしては努力を払って参りたいと考えております。  第二の高校生急増対策の経費の見積もりについて、知事会側と政府側とに食い違いがあるという御指摘がございました。政府側では自治省、文部省、大蔵省三者合意であの計画を作ったわけでございますので、政府部内には何ら食い違いはないはずでございます。ただ、それを見積もります場合に、構造比率でありますとか、あるいは建築単価でありますとか、そういうものについては、国が予算においてとっております方針を、そのまま踏襲して参っております。国の予算単価が実態から見ると若干低目である、そういう問題があるといたしますならば、高校生急増対策計画にも同じ問題があろうかと私は考えるのでございます。知事会側が、何か私たちのこの三十七年度計画に対しまして、二百億円前後不足していると、こういうような数字を持ってこられたもので、私は、こんな大きな開きを持っていることについて、非常に疑問を抱いているのでごいざます。一体どういうことで知事会がこういう数字を明らかにされたかということについて、非常に不満を持っている一人でございます。それが現実府県予算に計上された数字であるのか、あるいは予算がきまりますまでの過程の数字であるのか、あるいは高校生急増対策だけの経費であるのか、そのほかに老朽校舎の改築の経費は含んでいるものであるのか、そういうことは一切わからないのであります。また、予算が確定する前の計数の取りまとめのものでありますので、私はその間に若干、今申し上げましたような疑問の点が入っているのじゃないかというように思うのであります。いずれにいたしましても、予算がきまった結果について、十分な調査をしたいと考えているわけでございます。現に文部省が、そういう趣旨で調査をされているわけでございますので、こういう数字が出て参りました結果について、また、具体の政府計画について、修正すべき点があれば、私は積極的にそういう努力を払えばよろしいじゃないか、こう思っているわけでございまして、問題は高校急増対策ができることでございますし、数字は今後なお十分検討しながら、そういう方向の解決に努力していかなければならない、かような気持でいるわけでございます。  なお、この際申し上げておきたいと思うのでありますが、政府が考えております総額五百五十四億円の高校生急増対策の経費、三十七年度百五十四億円、これは土地を含んでおりません。そのほかに一般の、たとえば老朽校舎の改築等のような問題は、これに含まれていないわけであります。言いかえれば、従来から高校の建築などについて、決算で見ますと、百億円ぐらい使っているようであります。同時にまた、基準財政需要領にも、校舎とか設備とかいうようなものを、減価償却費の形で算入しておりますものが、やはり百億円ぐらいあるわけであります。これは高校生急増対策の経費を新たに盛るからといって、減額はいたしていないものであります。それの上積みとして、総計五百三十四億円の高校生急増対策の経費を政府としては考えているわけでございます。この辺が知事会の言われているところと、政府の考えているところとの間に、若干食い違いがあるのじゃないかと思うのであります。こういう点は、今後さらにきまりました地方団体予算等を検討しながら、どうやって円滑に具体の高校生急増対策がとられていくだろうかということについては、留意をいたして参りたい、かように考えております。
  37. 秋山長造

    秋山長造君 地方のほうにも若干問題はあるかとも存じますけれども、ただ、先ほど来申しますように、三十六年度内に、高校急増対策相当程度進めなければならぬという地方実情で、相当やはり経費がかさんでいるということは、これは否定できぬと思うのですね。そういうこともあるわけですから、国のほうで五百五十三億という計画、そうして初年度百五十四億という計画を一応立てておられるわけですけれども、それを実情を無視して、今後もそれで押し通していくということは、私は困ると思うのですね。で、地方のほうでも、これは十分検討に検討を重ねて、確実に政府に正確な数字を出してもらわなければ困りますけれども、しかし、同時にやはり政府のほうも、一たんきめた数字だから、それにあくまで実情のほうをはめ込んで合わせていくんだということでは私は困ると思うのでね。地方のほうも地方のほうですけれども、政府のほうでもやっぱり財政計画というものはもう少し余韻を持たして、さらに地方実情、特にこの年度がわりなんか相当あなた方がまだ把握しきっておられないような要素が私はたくさん出てくると思うのですよ。そういう点も十分調査をされた上でやっぱり弾力性を持って対処してもらわなければ困ると思うのですがね。
  38. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと関連。今のお話ですがね、高等学校の積算の中に、危険校舎の改築とかそういうものを含んでいるだろうとこういうお話で、そういうものを含んでの数字ではちょっと困るようなお話もあった。ところが、現実に高校急増対策というのは、何も高等学校急増対策だけやればいいというわけじゃないと思う。ふだん行なっているやはり危険校舎の改築というのが同時に並行して行なわれなければ非常に支障も出てくるわけなんです。だから、やはり地方実情からいえば、常時行なっている高校の危険校舎の改築とかそういう問題はやはり続けて行なわなければできない。そういう中に、なおかつ高校の急増対策が出てくることによって財源的に非常な不安が出てくるということを指摘をしておると思うのです。事実、私たちの静岡県あたりの高校急増対策は四十億なんですね。計画としてはことし十五億を実施をしたいというようなことを考えている。今お話しになった百五十四億に用地買収の起債の金額が約四十億とそれまで含めて、補助、起債を全部用地まで含めて静岡で約四億二、三千万円程度ということであろうと、こういう計算を今県のほうでしているわけであります。そうなってくると、十五億の中で四億ではとても十五億の計画を進めることはできない。もちろんあなたのおっしゃるように、これは都道府県立の学校だから、都道府県相当責任を負わなければならないのは事実だけれども、少なくもとにかく後に責任を負うとしても、起債のワク等についてはやはりもっと拡大をしてもらわなければ、財政的に困るということは当然だと私たちは思うわけです。だから、そういう点については何か急増対策だけ措置すれば従前の措置が少しくらい手が足りなくてもいいのだという考え方はおかしいと思うのですよ。私は、だから、普通やっている高校の対策になお急増対策が出てきているということと、それを含めての地方対策の中で財源的に非常に急迫を告げているというのはこれは事実だと思うのですよ。だから、そういう点は、やはりお話のように、もっと実態を把握してもらわないといけないのじゃないかと私思う。なお、文部省がおらないが、進学率等についても三者で協議をされたそうですけれども、事実上あの計画の百二十三万の進学率の六二、三%では進学率が低いじゃないか、やはりもう少し、一般でも言っているように、六五%くらいの進学率は今の経済計画の中から当然出てくる数字だといううふうに言われている。しかも百三十三万というのは昭和三十八年から四十年まで、昭和三十七年のまた人員増という問題もあるわけですからね。こまかい数字は私たち今用意しておりませんけれども、そういう点でやはり秋山委員も言ったように相当強い要望が出てきていることと、事実それはあなたおっしゃっている金額が相当問題だというお話だけれども、その言い方の中には私たちは首肯できない点があると思う。通常行なっている高校の対策というものにあわせてそれが加わっているというところに大きな問題点をもう少し考えてもらっていいのじゃないか、こういうようにわれわれは考えているんですがね。
  39. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 政府計画も弾力性を持って当たっていくべきだというお話、全く私たちはそういう方面については同感でございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、問題は高校生急増対策を円滑に遂行していくということでございますので、それに計画自身が合致していない場合には計画を直すべきだ。間違った計画をしゃにむに押しつけていくというようなことは、当然とるべきでないことだと、こう思っております。したがいまして、今後もなお先ほど申し上げましたように、実態を検討し続けていきたい、こう思っておるわけでございます。  なお私たちは全体計画を明らかにしていきたい、こう思っているわけでございまして、府県ごとでその進め方には若干食い違いがございます。したがいまして、年次割りを作った場合に、三十七年度に大部分を仕上げてしまうという場合には、その総額は、政府の考えている百五十数億円と、地方団体の考えている金額全体を合わした場合との間には食い違いが起こってくるということもあり得るのじゃないか、こう思います。現にまた、いつピークがくるかということについては、全国的には三十八年なんでございますけれども、県によりましては早かったりおそかったり、若干食い違いがあるようでございます。ことに、松永さんがちょっと私の説明を誤解されているのじゃないかと、こう思うのでありますが、私は危険校舎を含めて悪いと言っているのじゃないのであります。国の急増対策を非難するための別個の数字を持ち出してきて、違った基礎で非難されることは困るじゃないか。政府急増対策には老朽校舎の改築は入っていないのだ、府県側の数字の中にはそれを入れている、食い違った線で議論をされては困ると、こういう意味でございます。従来から、先ほど申し上げましたように、百億円ぐらいは地方団体が使っているわけであります。また、基準財政需要額にも百億円ぐらいのものは算入しているわけであります。これは、このままにしているのだ。三十七年度もそれは続けていくわけであります。その財源はしていくわけであります。別途プラスする部分として三十七年度百五十四億円を掲げておるわけでございますし、総体計画としては五百五十数億円のものを考えているわけであります。同じベースで比較をいたしませんと比較にならないわけでございますので、食い違いの原因が、あるいは年次割の点にあるか、あるいはまた、危険校舎がこれに含まれているという問題のところから発生しているのか、あるいはまた、確定予算じゃなしに一つの予算折衝の過程の数字が上がってきているからそういう食い違いが出てきているのか、そういうことをさらにきわめていきたい、そうして善処したい、こういうことを申し上げたわけでございます。  なお、進学率のことにもお触れになったわけであります。遊学率が六二、三%では足りないと、こういう趣旨の御発言だったように思うのであります。全国的に見ました場合には三十八年の中学の卒業生が一番多いわけであります。このときが二百五十万人であります。だんだんこれが減っていくわけでありまして、将来これが百五十万人を割るわけであります。六割以下になるわけであります。したがって、かりに六〇%の遊学率を維持できるだけの校舎がととのったとしますと、逆に卒業生が六割に減ってしまいますと、一〇〇%の進学率を維持できるだけの校舎ができ上がった、こういうことにもなるわけであります。もちろんピーク時についてはすし詰めを考えているわけでございますし、また、将来は校舎の内容をよくするとかいろいろな問題がございますので、ピーク時における六〇%の進学率を維持できる校舎というものがそのままずっと持ちこたえていける性格のものではない、こう考えているわけでございますけれども、ピーク時に六〇%を考えていることは六二、三%の進学率を目途にした計画にしかなっていないのだというような意味でありますと、これはそうではなくて、中学卒業生があと急速度にだんだん減っていくのが実態であるということを私はつけ加えさしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  40. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと私はあなたの説明には納得できないんですがね。違った質のものを出してきて話をするのはおかしいという話だけれども、地方財政が受ける圧力というものは同性質のもあだと思うんですよ。危険校舎の改築というようなもの、日常普通のときに急増でない対策としても行なっている高等学校対策と、たまたまここに急増が出てきたために伴う一つの財政的な負担というものは、なにも質の違った、受ける市町村の財政的な負担には質的に違いはないわけです。だから、私たちは、かりにこういう合わせた金額を出してきてそうして高校の急増に対して特別な法律をこさえて財政的な補助をすべきだということは、理屈は通てっると思うのです。私は何も高校の急増は別個のものだから、別個な数字を出して別個なものとしてそれを主張するという、そういうよりはむしろ筋合いとしては、平常行なわれている高校の対策と同時に並行的に、このある期間、一定の期間だけ急増のために伴う財政負担があるので、これを相対的にどうするかという問題が地方の問題だと思うのですよ。ただ費用はこっちが平常のことであり、こっちは急増のことだから別個のものだという、その考え方だから、したがって、高校急増の数字が小さくなればその法律的な措置は不十分でもいいんだというような考え方じゃ困ると私は思うのです。  それからもう一つの、あとの進学率のお話が出てきているわけですけれども、私はこの進学率というものはもっとやはり向上すると思うのです。もちろん中学校の生徒数というものについては、これは減少があることは事実だと思うのです。減少はあるけれども、その減少していく生徒の数と、今の六〇%、六二、三%というものがいつまでも現状で維持されてるわけじゃないと思うのですよ。だからあなたの説明だと、生徒は今後ピークをこえれば減るじゃないか。それでふえてるときに六〇何%のものがあれば、今度は減っていくときに六二、三%ならば校舎が余るんじゃないか、こういう話のように私は聞いてるわけですがね。事実上は高校の進学率というものは各府県とも非常に向上してきているし、事実われわれももう少したてば義務制というような面や、あるいは全員入学などということも、これは今の事態としては当然高校の入学等については最も不適なものを除外して、大体高校の教育は希望どおり受けさしていくというのが筋だと思うのですよ。だからそういう点からいえば、私は今のあとの説明も納得がいきにくいので、あるいはこれはまあ相当見解の相違というような点もあると思うのですがね。ただ見解の相違じゃ済まされぬところがあると思うのですよ。それで御説明ちょっと納得できませんからね、一言申し上げたわけです。
  41. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 松永さんが頭に描いておられる知事会の数字というものと、私が答弁申し上げました知事会の数字との間に食い違いがあるんじゃないかと思うのであります。といいますのは、特別立法とか特別補助とか、こういうことを言ってた際に知事会が言ってた数字、これは松永さんが言ってらっしゃる数字のことなんだと思うのであります。私が不満を持ってるということを申し上げましたのは、政府案がきまってから後に知事会が全府県からまとめまして、政府案の三十七年度の百五十数億円という数字は二百何億円か不足していると、こういう意見を公にされたのであります。これに私は非常に不満を持ってるということであります。これはもちろん老朽校舎を加えての議論でありますれば、百五十四億円に今入っております百億円前後のものが加わって二百五十数億円と、こういうことになるのかもしれません。それと比較して論ずべきじゃないか、あるいはまた、百五十数億円という政府案と比較するのなら、二百何億も足りないという中に老朽校舎のものが入っているならそれを滅して比較をすべきじゃないか、こういうわけで申し上げているわけでございまして、若干お互いに頭に描いておった知事会の意見なるものについての食い違いがあるんじゃないかと、こう思うわけでございます。老朽校舎の改築も大いにやらなきゃなりませんし、また、急増対策に備えて、一そうそういう点についても力を注いでいかなきゃならぬ問題だろうと、こう思っております。本質の問題については別に松永さんの御意見に異存があるわけじゃございません。  なお、進学率の問題についての御意見について、私数字だけ申し上げておきたいと思いますが、政府案の急増対策の結果でき上がった施設それによって何%の進学率を維持できるか、こういうことであります。他面に中学の卒業生がどんどん減って参りますので、施設の規模が変わりませんでも、生徒が減りますれば進学率が向上できても収容できる、こういうことになるわけであります。生徒の減っていくのが非常に激しいものですから、三十八年に六三%であるものが三年目の四十年には六三%、四十五年には八一%、五十年には九〇%、こういうような数字になっていくわけであります。そういう点を申し上げておるわけでありまして、実際問題としては古い校舎を取りこわさなければならぬものもございましょうから、これだけの者を必ずしも収容できる施設をそのまま続けていくというものでもありません。また、校舎の規模もさらによくしていかなければなりませんので、その点からもそれだけの収容力がないということになってくるわけでありまして、一応紙の上でこういう計算になるにすぎないということになるのかもしれませんが、生徒の減少がかなり激しい。したがって、ピーク時における六〇%の遊学率を維持できる施設というものはそう低い数字のものでもないのだ、こういう意味で私は申し上げておきたいと思うのであります。
  42. 秋山長造

    秋山長造君 財政局のおっしゃるように、知事会の数字の中に危険校舎の経費は含まれておる。自治省のは含まれていない。そこで食い違っておるのだということだけなら、それは話は非常に単純だと思うのですけれどもね、実際はそうじゃなしに、そういう面があれば、それは標準の取り方をあわせて議論したらいいわけなんですけれどもね。そうじゃなしに、やはり政府のほうの見積もっておられる経費の基礎になっておるいろいろな単価の取り方なんか非常に食い違っているんじゃないですか。いつも問題になるように、一般公共事業なんかでもそうですが学校の建築なんかについても建築費の単価、あるいは用地なんかについての単価というようなものが、やはり政府の案が相当その実情とかけ離れている数字が基礎になっておるというようなところにやはり問題があるんじゃないですかね。
  43. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 私は食い違いの原因を老朽校舎の改築が含まれているだけだと申し上げたわけではございませんで、食い違いの原因を将来明らかにしていきたいと、こう考えているので、予想される問題としては単価の問題もあれば、構造技術の問題もあれば、あるいはベースが違っておる、あるいは老朽校舎の改築を入れる、入れない、こういう問題があるんじゃないか、こういうようなことを申し上げたつもりでございます。私たちとしては、年次割は府県としては切実な問題でありますだけに、少しでも早くこういう問題を完成したいという気持を持つわけでございますから、どうしても繰り上げていくことになるのではないか、こう思うわけでございます。したがいまして、全体計画について政府の考えているところが少な過ぎるかどうか、府県の考えているところがどうかというようなことをまず検討しなければならないじゃないか、その上で年次割に入っていったらいいじゃないか、こういう気持でおるわけであります。御指摘ございましたように、私たちは、明らかに単価は政府のほうが低過ぎると思っております。この単価だけで、はたして建築を府県の思うように建てられるかどうかということについては、私たちは非常な疑問を持っておりますし、これもさらに実態を明らかにした上で、計画の上に不合理性があれば、それは是正しなければならぬのではないか、こう思っておるわけであります。
  44. 秋山長造

    秋山長造君 しかし、その点は実態に即した線をやはり今後早急に出していただきたいと思います。それから先ほどおっしゃった市町村への転嫁が三十二年六十三億円、三十五年二十六億円、明らかに減っておるということも数字としては一応了承しますが、ただ先ほど申しましたように、三十六年度なんかの場合、特に高校急増対策なんかでずいぶんまた市町村の転嫁というものがふえておるということが想像できるのです。だからそういう数字をも十分集めていただきたいと思う。  それからもう一つは、なるほど府県から市町村への転嫁分は数字の上でそういうふうに三十二年から三十五年は減ったとおっしゃるのですが、じゃその市町村の住民に転嫁された税外負担というものはどういう数字になっておるかわかりますか。
  45. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 市町村からの転嫁されている数字は、三十二年度では二百五十三億円であったわけであります。三十五年度について調査いたしました結果では二百四十七億円でございまして六億円しか減少しておりません。まだ十分でないと思います。ただ財政規模が非常に大きくなっている点から考えますと、減っているということは、相当な効果がこの面についても上がりつつあるというふうに考えてもよろしいのじゃないかと、こう思っておるわけであります。満足しているわけじゃございませんけれども、経過的にはそういう数字になっておるわけでございます。
  46. 秋山長造

    秋山長造君 それからもう一点伺いますが、今度の地方財政計画を見ますと、繰り越し分の九十八億円というものを含めて三十七年度地方交付税として四千五百八十一億円という数字が出されておるわけです。そうして、それは前年度地方財政計画で組んだ三千七百七十三億円の交付税に対して八百八億円の増で二一・四%ふえているんだ。地方財政の規模は一九・五%ふくらんだのに比べて、交付税は二一・五%ふえているわけだから、それだけこの地方財政に対して親心を示したんだというような説明がこの前あったのですが、この数字についても、九十八億円の繰り越し分をも含めてそういう説明をされることは、私はちょっとどうかと思うんですがね。九十八億というのは、本来三十六年度に配られる金であって、三十七年度はその九十八億円の繰り越し分は除いて考えなければ、ほんとうの実質的な三十七年度地方交付税ということにならぬのじゃないかと思うんで、むしろ考えようによっては、前年度に渡すべきものを新年度に含めて、そうしてそれでふえたんだふえたんだと言って、地方に恩を売りつけるような格好になるのじゃないかと思うんですがね。その点はいかがですか。
  47. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) お話のような問題があろうかと思います。ただ、そういう意味で正確に比較するということになりますと、三十六年度の財政規模につきましても、三十五年度から送ってきましたものを控除する。したがって、また三十七年度の分についても三十六年度から送ったものを控除する、そして比較するということになろうかと思うのであります。ただ、三十六年度は三十五年度から送って参りました地方交付税が、たしか二百七億円あったのじゃないかと思うんであります。三十七年度へ送りました額よりももっと多い額を三十六年度は前年度から受けて参ってきておりますので、両方控除して比較いたしますと、財政規模の伸び率等はもっと大きなものになるのじゃなかろうかと、こう思います。
  48. 秋山長造

    秋山長造君 二百七億円……。
  49. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 二百七億円でございます。
  50. 秋山長造

    秋山長造君 新年度地方財政計画につきましては、高校生急増対策等も含めてまた別な機会に御質問したいと思いまして、この法案についての質疑はこの程度でやめます。
  51. 小林武治

    委員長小林武治君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  52. 小林武治

    委員長小林武治君) 速記を起こして。
  53. 秋山長造

    秋山長造君 公営企業金融公庫法案の資料について、ちょっとお尋ねしたいと思うのです。  公営企業の概況、これを見ますと、地方公営企業の中で特に交通事業、それから病院事業、この二つだけは、他の事業は大体黒字でいっているようですが、交通事業と病院事業はどうも思わしくないような数字が出ておるんですが、しかもその数からいいますと、相当なやっりぱり数を占めておりますね。交通事業のほうは、公営企業の中で一三%ばかりの比重を占めているし、それから病院事業は、準公営企業の中で二三%という比率を占めておるんですが、この交通事業、病院事業に対して、どういうような方針で臨んでおられるのか。
  54. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 御指摘のように、交通事業と病院事業の最近の経理は特に苦しいようでございます。一番の原因は、人件費が増加してきている反面、料金収入にそれほど大きな伸びを期待できないという点にあろうかと思うのであります。これら両部門は特に多数の職員をかかえなければならない部門でございます。電気事業のようなものになりますと、固定資産の比率が非常に大きいわけでありますから、人件費のウエートが低い。したがって、公務員の給与改定が行なわれ、公営企業部門もそれに合わせてある程度給与改定を行なっていかなければならないといたしましても、影響は電気事業などは少ないのでありますが、交通事業や病院事業においては、それが非常に大きな数字になって表われて参るわけであります。他面、交通料金が押えられているとか、あるいは診療報酬が必ずしも十分に引き上げられていなかったとかいうような問題がありましたために、急速にその収支が悪化して参ったわけでございます。しかし、診療報酬等についても若干是正されて参ってきているわけでございますし、また、地方団体のほうでも企業合理化のための努力をいろいろ重ねて参っておりますので、今後そういう事態の改善に勢力していけるのじゃないかと、こう思っております。しかし、基本的に交通事業につきましては、私たち多くの公営企業にあっては料金改定をしていただかない限り、合理化の努力だけではどうにもこの問題を打開できないのじゃないか、こういう気持を持っているわけであります。また、昨年来交通料金の改定を申請しておりまして、まだそれについて政府の決定がないというようなものも相当数ございます。同時に、合理化への努力を期待いたしますために、相当な赤字をかかえてしまっている公営企業につきましては、再建計画を立てて参りまして、再建計画を立てた団体については赤字資金の融資あっせんを行ない、そうして再建計画の年次の経過に従いましてその赤字額を減らしていく。言いかえれば、融資あっせん額をふやしていくというようなことで企業の立ち直りを期待するというような方針を三十七年度からとりたい、かように考えておるわけでございます。
  55. 秋山長造

    秋山長造君 三十七年度からですね。  その再建計画にかかる企業がどのくらいありますか、交通事業について、あるいは病院事業について。
  56. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 赤字を出しているものが多いわけでございますけれども、その全部について必ずしもそのような措置をとる必要はないのじゃないか、こう思っておるわけでございます。特にたとえば赤字額が収益の二〇%をこえているとかいうようなところで線を引いていきたい、こう考えておるわけでございますけれども、そういうようなところから、一応十億円くらいの金額でさしあたりの再建指導はできるのじゃないだろうか、こういうように見通しを立てておるわけでございます。
  57. 秋山長造

    秋山長造君 私は、特に交通事業なんかについて、財政の再建というとすぐ公共料金の値上げということへ常識としていくのですが、やはり公営企業でもあるし、すぐ料金値上げということへいくのでは公営企業としての意味がないのじゃないかと思うのですがね。もう少し別な血でやっぱり合理化を考えられるべきじゃないかと思うのです。で、まあ大体独立採算という考え方がどうしても前提になりやすいと思うのですけれども、この独立採算という考え方を全面的に否定するということでは、また別の面の問題が起こるかとは思うのですが、やはりこの公営企業の財政の再建をはかるという場合、その性質からいいまして、ある場合にはやはり思い切って本会計から繰り入れていくということも考えなきゃいかぬのじゃないかと思うのですけれども、その点はどういうふうに考えておりますか。
  58. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 御指摘にありましたように、収支が立たないからといってすぐに料金の問題に持っていくということは、私も間違っているとこう思います。ただ、今公営の交通事業から料金改定を申請しているそういう中には、バスの料金でありますと、昭和二十六年に改定したままになっている、あるいは電車事業でありますと、昭和三十年に改定したままになっているというようなのがあるわけであります。こういうような団体につきましては、たとえば国家公務員の給与ベースでいいますと、そのときからは一・九倍になっているわけであります。あるいはまた、日本国有鉄道はその後におきまして料金改定をやっているわけでございます。したがいまして、やはりそういう団体については料金改訂せざる限りは収支は立たないのじゃないだろうか、こう思っているわけであります。しかしながら、その場合でもそれだけで問題を解決すべきだというような指導はしているつもりじゃございませんで、物件費を切り詰めていきますとか、いろいろな点について合理化対策を立てさせたい、こういう気持でおるわけでございます。また、企業によりましては一般会計から相当の額を出資していくことが妥当だと考えておるわけでございまして、そういう意味の地方公営企業法の改正を昨年お願いいたしたわけでごいます。さしあたって病院事業などについては、ある程度一般会計から建築費などについては持ち出していくことが妥当ではないだろうかというような考え方も持っておるわけでございまして、そういう趣旨の指導もいたしたわけでございます。今後お話のような点につきましては、一そう私たちとしても研究を続けていきたいと思っております。
  59. 秋山長造

    秋山長造君 収益の二〇%をこえる赤字を出している事業というのはどのくらいありますか。何割くらいありますか。
  60. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 今ちょっと件数を覚えていないわけですけれども、全額で申しまして、そういう団体の赤字額が九億円、交通事業と病院事業だけで九億円程度であったというふうに記憶いたしております。
  61. 秋山長造

    秋山長造君 それに対する対策として再建計画を立てさせて、そうして起債その他で、融資のあっせんその他で何とか立て直していけるという大体見通しなんですか。
  62. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 立て直しへの努力を求め、また、今申し上げますような援助もしたいと、こう考えております。ただしかしながら、先ほどちょっと触れましたよう兵ものによっては料金改定の措置をとらざるを得ないものもあるのじゃなかろうか、こう思っておると、こういうことでございます。
  63. 秋山長造

    秋山長造君 私はこの公営企業についても、まあ何でもかでも国を当てにするということは、これはいけませんけれども、しかし、その重要性を考えた場合、やはり国のほうとしてもある程度資金的なめんどうは見るという建前が必要じゃないかと思うのですね。そのために必要ならば、地方財政再建整備法なんかのような、公営企業の再建整備法というような立法でもやるか何かして、とにかく国のほうでもう少し公営企業というものに対してめんどうを見ていく。特に設備費ですね、いろいろな設備費なんかのような基礎的な経費については、やはり建前はこれはもう地方責任においてやるということになるのでしょうけれども、ほうが全然知らぬ顔ということではいかぬのじゃないかと思うのです。やはり国のほうが相当めんどうを見ていくという面がないと、ただ場当たりでもって料金を上げるとか、あるいは赤字が出たから融資のあっせんを受けてちょっとつじつまを合わせるというようなことでは、やはり同じことがまた繰り返されていくのじゃないか、抜本的な解決にはならぬじゃないかというような感じを持つのですけれども、いかがですか。
  64. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 国としても公営企業が円滑に遂行されますようにいろいろな面で援助していかなければならないと思います。従来自治省が特に力を入れて参りましたのは、公営企業の経営面あるいは運営面でございまして、地方公営企業法を制定いたしまして、人事とかあるいは会計とかというようなものについて、一般行政とは違った制度を取り入れるようにいたしたわけでございます。さらに融資面でございまして、公営企業金融公庫を設立いたしましたのも、そういう趣旨に出ておるわけでございます。また、地方再建計画の上におきましても、一般会計の地方債はこれを抑えながら、公益企業面におきましては毎年相当な大きさで増額をはかって参ってきておるわけでございます。今後もそういう努力をして参りたいと思います。  ただ、問題になりましたのは、すでに赤字に陥ってしまったそういう公営企業をどうするか、こういう問題でございます。そういう意味で財政再建の特別立法でもすべきではなかろうかという意味のお話が今あったわけでございます。私たちも実はそういう点についていろいろ苦慮いたしたわけでございまして、当初は立法もしてみたいと、こういう考えを持ったわけでございましたが、いろいろ考えて参りますと、私たちは、再建整備の手段を直ちに料金改訂に求めるつもりはございませんけれも、先ほど来申し上げましたような公営企業もあるわけでございますので、料金改訂の手段を取らざる限り赤字問題をどうにもできないという公営企業が現実にあるわけでございます。そうした場合のそういう団体料金について改定を認めることができるだろうかどうだろうか、たいへんむずかしい経済情勢になって参ってきておりますので、料金改定についてもある程度弾力的な施策を国としてとらざるを得ないのじゃないだろうか、こう思うのでございます。そうなって参りますと、再建整備法は作るわ、料金改定は認めるわけにはいかないわ、いつまでも赤字から脱却できないわというようなこともあり得るわけでございます。そうしますと、そういう団体についてはある程度期間を融資のあっせんでつないでいかざるを得ない。こういう事態も考えられますので、そういう面でも弾力的な指導、援助の措置がとられるように、さしあたりは融資のあっせんというようなことで、事実上再建計画を立ててもらい、そういう面の指導をし、政府資金のあっせんをやることによって企業努力も期待していこう。こういうようなことを考えるに至ったわけでございます。御指摘のような点につきましては、将来とも一そう研究を続けていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  65. 秋山長造

    秋山長造君 それからもう一つは、最近各地区で地域開発計画がずいぶん進んでいるわけですね。そこで土地の造成をやったり、あるいは工業用水道の建設をやったりというようなことで、公社だとか公団だとかいうようなものがずいぶんできつつあるわけですね。こういうものと、それから従来の公営企業というものとの関係といいますか、そういうものはどういうように考えておられますか。
  66. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) 私たちは、地方団体の本来の任務に属するようなものについては、地方団体の直接の責任としてやってもらいたい。こういうように思っておるわけでございます。民間の事業においても、そういうことが広く行なわれている。また、そういうような仕事を地方団体の仕事としてやっていくことが、地方団体のいろいろな目的を達成するに容易だろうという場合に、必ずしもそれを自分の仕事としてやっていくよりは、公社組織でやっていったほうがいろいろな面で都合がいい。たとえば人を得る場合にも、むずかしい人事行政から離れて、特殊な技能を持っておる人を特別な待遇で、それを随時雇用していくことができるとか、あるいはまた、一々議会の議決を経なければ処置ができないというようなことじゃなしに、機会を見て適時適切に措置をやっていけるというふうなものをかかえていくというような場合には、私は公社組織をもってやっていくという地方団体実態もよくわかり得るような気持がいたすわけでございます。そういうことで公社、公団がいけないのだ、こういう気持をわれわれは持っていないわけでございます。問題は地方団体の本来の仕事をあえて公社、公団組織をとっていく、あるいは地方債許可がうるさいからそれをくぐってしまうのだとか、あるいはまた、不必要な人事面を緩和したいのだとかいうようなことはよくない、こういう気持でおるわけでございます。
  67. 秋山長造

    秋山長造君 それからこの統計数字を見ますと、公営企業の事業数というものがずいぶんふえておるのですね。事業はふえておるけれども事業の種類というものは、大体地方公営企業の定石がきまってしまって、ちっとも種類としてはふえていないわけです。この事業がふえていくのはいいんですが、種数がちっとも変わらないという点はどうなんですか。自治省としては、新しい公営企業の種類をふやしていくというようなおつもりがあるのですか、どうですか。
  68. 奥野誠亮

    政府委員奥野誠亮君) いろいろな分野にわたって地方団体が活動していくことは、それによって住民の福祉が増進されて参りまする限り好ましいことだと思うのでございます。しかしながら、それより以上に、たとえばいまだに水道の給水戸数が五〇%にしかなっていないとか、あるいはガスの使える地区というものが限られているとかいうようなことは、是正すべきだと思うのであります。住民の生活を利便にする、それを通じて福祉の増進をはかっていく、そういうことのでき得ない地域は、地方団体が積極的に水道事業なり、ガス事業なりを取り上げて、住民の生活を豊かにする努力をする、これが非常に大切なことじゃなかろうか、こう私は思うのでございます。最近事業数がふえて参ってきておりますが、水道事業、ガス事業、こういうようなものが多いわけでございます。範囲の広がっていきますことは、これも望ましいわけでございますけれども、より以上に今申し上げますように住民の生活が豊かになる、限られた地域だけじゃなしに、日本の全域にわたってそういう傾向が強まっていくことを、私たちとしては期待をしているわけでございます。
  69. 小林武治

    委員長小林武治君) 両案についての質疑は、これにて終局したものと認めて御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認めまして、さよう決定いたしました。  速記をとめて。   〔述語中止〕
  71. 小林武治

    委員長小林武治君) 速記を始めて。   —————————————
  72. 小林武治

    委員長小林武治君) 次に、質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案議題として質疑を行ないます。
  73. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 若干説明をしてもちいたい点があるんです。質屋及び古物商の数は現在どれくらいであるか。それでその最近の増減の状況ですね、はっきりした数でなくてもいいんですが、増減の状況と、そして質屋、古物商に対する行政処分、それから司法処分の状況を大ざっぱな状況でいいんですが、そういうものをまず聞かしていただきたい。
  74. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) お答えいたします。お手元に差し上げてございます資料で、白表紙の三十七年二月の日付で本法律案に関する資料、国家公安委員会の資料——その点お手元にありませんようですから訂正いたします。それで内容を申し上げますと、最近の統計によりますと、質屋は約二万軒でございます。それから古物は市場主を入れまして約十七万でございます。そのほかに古物が行商、露店を兼ねておりますのが七万七千くらいでございます。そのほかというのは正確でありませんが、古物商の中に内数として入っておりまして兼業いたしております——十七万の中に入っております。  それから増減の状況を申し上げますと、昭和二十五年が質屋が約一万九千、それが二十六年が一万七千六百くらいになっておりまして、その数が約二千軒ばかり減っております。それから二十七年が二万七千四百軒ばかりであります。これも前年三十七年に比較しまして、約二百軒質屋は減っております。それから二十八年一万八千軒ばかりであります。これは約七百軒ふえております。それから二十九年は約一万九千軒でございまして、これは約一千軒ばかり前年に比較してふえております。それから……。
  75. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 毎年じゃなくてもいいんです。
  76. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) それではごく最近のを申し上げますと三十三年は二万一千軒でございまして、これは、前年に比較して四百軒ふえております。それから三十四年は二万一千軒でございまして、大体、前年度に比較して、ほとんど同じでありますけれども、若干、三百ばかり減っております。それから先ほど申し上げました三十五年が二万軒ばかりでありますから、これが約六百軒ばかり減っております。質屋は、ここ一両年数百軒ぐらい減っております。  それから古物のほうは、市場主を含めまして三十三年が十六万七千軒ばかりであります。三十四年は十六万八千軒ばかりであります。これは約七百軒ふえております。それから三十五年は、先ほど申し上げましたように、十七万軒でありまして、約二千軒ばかりふえております。  露天商のほうは、先ほど申し上げた三十五年に対しまして、三十四年が七万八千軒ばかりでありまして、やはり露天商のほうは、三十五年が三十四年に比較しまして、七百軒ばかり減っております。それから三十三年は八万軒ぐらいございます。これも三十四年が二千軒ばかり減っておりまして、古物商を除きまして、大勢を申し上げますと、質屋、行商、露天も減っておりますが、最近そういう状況でございます。  それから行政処分の関係でありますが、行政処分のおもな内容は帳簿の記載義務違反とか、確認義務違反とかいうのがおもでございますが、その件数を申し上げますと、許可の取り消しをいたしましたのが百十三件でございます。これは昭和三十五年の統計でございます。それから営業の停止をいたしましたのが二百二十七件でありまして、これも三十五年の統計でございます。それから司法処分は、やはり無許可営業とか確認義務の違反で司法処分されたのが多うございますが、 これは、送致いたしました件数が八百九件、三十五年の統計でございます。それで、送致いたしました人員が八百五人でございます。  以上、申し上げたとおりでございます。
  77. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 質屋は、今民営と公益とでやっており、将来もやはり両建でいくことがいいということであろうと思うのですが、現状における公益質屋と民営質屋との利用の実績、その主要な違いはどういうことでしょうか。内容、実績の違いと利用の実態
  78. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) 現状の利用の状況を申し上げますと、これは全国の統計ではございませんが、東京都内の調査の結果が出ております。それによりますと、三十四年でございまして、若干古うございますけれども、三十四年の都内の質屋の軒数が約二千軒、公益質屋が六十四軒でございます。この両者の貸し出し状況を申し上げますと、民営の質屋のほうは、昭和三十四年の十二月末現在で貸し出し残額が約二十九億円程度であります。それから公益質屋は、一億六千万でございます。両方合わせまして約三十億というのが、民営及び公益両質屋の利用状況であります。で、年に大体三回回転するというのが一般の常識でありますので年総額にいたしまして、東京都内では、両種類の質屋利用額は、約九十億円というふうに見られます。  それから公益質屋と民営質屋との相違でございますが、第一点は、経常主体につきまして申し上げますと、民営質屋は、御案内のとおり、法できめております欠格条件に該当しない限りは、だれでも営業をいたすことができる。公益質屋は、公益質屋法によりまして、市町村または社会福祉法人でなければ経常できない、こういう経営主体の差がございます。  それから許可権者は、民営質屋は都道府県公安委員会許可いたすことになっておりますし、それから社会福祉法人が、公益質屋を経営いたします場合は、都道府県知事許可を受けることになっている。市町村は自由にこれは許可ができるわけでございます。  それから国庫補助の関係でありますが、質屋営業に対しましては、民営質屋に対しては国庫補助はございませんが、公益質屋に対しましては、設備に要する経費の二分の一以内の国庫補助がございます。  それから貸付金額の制限に関しましては、民営質屋営業につきまして、金額について制限がございません。公益質屋につきましては制限がございまして、一口二万円、それから一世帯五万円、こういうふうになっております。  それから利率の差がございまして、質屋営業の貸付利率は、百円につき一日三十銭まででございます。公益質屋のほうは、原則として利率につきまして百分の一・二五、すなわち月利一分二厘五毛をこえることができない、こういうふうになっております。  それから流質期限につきましては、質屋は三カ月以上の契約でなければならない。公益質屋につきましては四カ月以上、こういうふうな相違がございます。
  79. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 そうすると、実際の扱いとしては、やはり公益質屋のほうが、小口のものが多いということに実績としてはなっておりますか、大体のあれでいくと。
  80. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) 概略申し上げますと、やはり公益質屋のほうが小口が多うございます。
  81. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 質屋、古物商のように、何というか、一般庶民の生活に密接な関係を持っている公益的な企業で違法行為があった場合の罰則というものが、現在のようなままでいいのか。この点について研究されましたか。たとえば無許可営業とか名義貸しとかいうようなものであっても、最高三年以下の懲役、十万円以下の罰金というふうなことになっているが、こういう点について改正をする必要があるかないか、その点についての研究をされましたか。
  82. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) この点につきましては研究いたしました。大体他の法令の罰則とのバランスを考えまして、いろいろ検討いたしました結果、この質屋営業の営業方法を公正に正しく運営するために、まあ現行の質屋営業法の罰則の限度で十分であるという結論でありまして、現在これを改正する必要は認められないと思います。
  83. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 それじゃ、次のあれに入りまして、今度は第一条関係で、第一条に関連をして、第二十二条から有価証券を除外をしたということが重要な改正の一つになっておりますが、有価証券を除外することによって、被害者の保護という点についてどういうようにお考えになるか。説明によりますると、その点についての心配はないというようになっておるようでありますが、有価証券の流通性の実態に着眼をしたということが改正の主体であろうと思うのです。被害者の保護に欠けることはありませんか。
  84. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) ただいまお述べのとおり、有価証券の高度の流通性というものに着目いたしまして、今回除外いたしたわけでありますが、それと同時に、現在質屋に有価証券を預け入れる、質物として預け入れるという実例が非常に少のうございまして、その有価証券の関係で問題があったということはございませんし、また、有価証券の本質からいいまして、商法の適用を受けまして、また小切手法の準用もいたされまして、即時取得という関係からいたしまして、やはり金銭に準ずる扱いを受けておりますので、本来の姿に返していくということが正しいと思いまして、今回除外したわけでありますが、その観点で被害者の、一般に比較して特に不利だというふうには考えられないと思います。
  85. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 次に、改正の一つの点でありまする質屋の許可証の更新制度をやめたということは、質屋というものの営業が何というか、継続的なものである、安定したものであるということは私はいいことだと思うのですが、何といっても質屋は犯罪捜査上、あるいは防犯上、他の営業とはちょっと変わったところがあるように思うのですが、防犯上の点では支障はありませんか。
  86. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) ただいまお述べになりましたように、比較的変動が、営業内容、営業の実態から申しまして激しくありませんし、それから設備などの関係からいたしまして、質屋が転々として住居を変えるということもありませんし、それに現行質屋営業法の中に、立ち入り検査、質問というような監督権もございますので、十分平素からの立ち入り検査というような観点から把握ができますので、防犯上支障はないと存じます。
  87. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 現在立ち入り検査というか、調査というか、そういうものは、実情としてはどういう程度にやっておりますか。
  88. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) どの程度、どの回数というような、具体的に申し上げるほどの数字はございませが、そのとき、必要に応じて各都道府県公安委員会の管理のもとに各警察署で立ち入り検査をいたしておりまして、年一回といいますか、あるいは地方によって若干迎いますけれども、年数回やっておるようなところもあるようでございます。
  89. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 次の改正点は、流質期限を短縮することでありまするが、営業者である場合に限るとあって、この営業者というものの説明を少ししていただいたらいいと思いますが、なぜ営業者に限ったのか。説明によりますると、むしろ流質期限を短縮したほうが、質置主の利便が多いという意見改正がされておりますが、不利な点はないか、質置主をなぜ営業者に限ったのか、営業者とはどのような内郷のものであるか、同業者である質屋、古物商も営業者に入るのか、そういう点について御説明をお順いいたします。
  90. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) 営業者と申しますのは、法律的定義からいたしますと、営利の目的をもって同種の行為を反復継続して行なう者をいいまして、ただいま御質問の古物商あるいは質屋も当然含まれます。具体的にいいますと、電気器具商が電気器具を質に入れるという場合でございます。この関係で、特に質置主に不利な点はないかというお尋ねでありますが、この点不利な点はないと思うのであります。と申しますのは、こういう業者は、経済的地位におきましても、一般の貧乏学生が質に入れる場合と違いまして、質屋と対等の地位あるいはそれ以上の経済的地位がありまして、この点で非常に不利であるということも言えませんし、それからこれは業界からの要望にも理由としてあげておりますように、かさばり物件、あるいは変質しやすい物件というものが最近相当流質いたすわけで、こういうものは相当設備を要しますし、それから早く処置をしないと価格が変動するというような関係もありまして、流質期限が数ヵ月というような長いことになりますと、かえって質屋から敬遠されるということで、質置きをする場合に、なかなか不利な立場に置かれるということもありますし、それから長期でありますと、当然貸付金も低くなりますので、比較的こういう業者は短期にたくさんの金を入用だという場合も相当あるようでございます。そういう意味合いから、むしろこれは質置主のためにもなる規定でありまして、もちろんこれは質屋と質置主両者の協議でやりますが、その協議の場合に、対等の地位で十分に妥当な結論一が出るのではないかと思います。
  91. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 次に、第十八条関係の改正ですが、現行の十八条第二項と、改正案との違いをもう少し説明をしていただきたいと思うのですが、狩に命令で定める方法によって確認云々と改正案にあるのですが、この確認のための方法として、現在どういうふうなことを考えられておるか。従来の案では、そういうことがはっきりしなかったからというようなことが改正理由になっておりますが、現法と改正案との相違の説明と、政令で定める方法というものは、どういうことを考えておられるかを説明してもらいたいと思います。
  92. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) 現行第十八条の第二項によりまして、質物の受け取りにつきまして「正当な権限を有することを証するに足りる資料を呈示した者以外の者に質物を返還してはならない。」、こういうふうになっております。正当な受取権者であるということを証明する十分な資料を呈示した者でなければ返してはならない、こういうふうに、この返還に関しての規定はこの規定だけであります。ところが、その返還にあたって確認する方法、具体的にどの程度の確認をした場合にそれが正当な受取権者であるということを十分に認定したということで責めを免かれるかというような、いわゆる確認の方法についての具体的な規定なり、あるいは確認した場合の責任の限界というものについて、現行法では全然触れていないわけであります。したがいまして、今度は、これは業界からの要望もありまして、具体的に確認する方法を命令で定める。その命令で定めた方法によって受取権者であることを確認して返還した場合は正当な返還とみなす。すなわち有効な返還とみなす。したがって、たとえ結果においてそれが正当な受取権者でなかったという場合でありましても、賠償の責めを免れるというような規定になっておるわけであります。この命令で定めます方法につきましてはいろいろ考えておりますけれども、質屋営業の業界からの要望によりまして、質札を持ってくれば、それで免責してもらいたい。質札に免責証券の性格を与えてもらいたいという要望でございますけれども、しかし、質札だけ持ってきまして、それで渡したらもう免責されるというようなことになりますと、非常に支障が生ずるわけでありまして、たとえば質札が盗難にあいましたり、あるいは遺失しました場合のことも考えられますので、質札だけ持ってきたのでは免責にするわけには参りませんし、で、質札または質置主の委任状を持ってくるというような場合、その質札または質札及び委任状等の呈示を求めて、それを見てはっきり相手であることを確認する。そのほかに、相手方に、質物の受取権限があるかどうかということを確かめる所要の質問をいろいろさせる。こういうことで、内容がおもなものです。その質問の内容は、相手方の住所、氏名、職業、年令、あるいは受け戻しの請求を受けた物品の品名、数量、特徴などを質問するということで、そういう、常識、社会通念から考えまして、当然なすべき確認の方法をうたいたいと思っております。
  93. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 もう一点伺いますが、盗品及び遺失物の回復の問題でありますが、盗品と遺失物については一年以内は、何といいますか、善意無過失に質屋が取得した場合でも無償で回復できるという規定があるわけですが、これ実際の運用は、被害者または遺失主と業者と大体半額負担というふうなことになっており、警察の指導というか、も大体そういうふうになっておるようでありますが、そういう点について何か指導についての改正なり何なりお考えがありますか。現状のままで行かれるつもりですか。
  94. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) この質物返還にあたりまして、法律上は無償で回復ができますわけでありますけれども、質屋と被害者あるいは遺失主との間において、その返還に関しましては、私権上の問題であります、民事上の問題でありますので、この返還にあたりまして警察がいわゆる積極的に入りまして、どっちか一方に偏しましてあっせんするというようなことは適当でないと思いまして、従来からも当事者側から要望があって何らかのあっせんの労をとってもらいたいという場合には、それに対しまして警察が助言をしましたりあるいはある程度のあっせんの労をとるという程度のことは従来からいたしましたが、今後もいたすわけでございます。ただ、ただいまお話のとおり、実際の当事間が協議して返還する場合に、何らかの形においてある程度の弁償をしているというのが実情であります。その場合に、半々という場合も相当ありますし、あるいは七割、八割もありますし、全額という場合もありますし、一割という場合もありまして、それぞれ当事者間の実情に応じてお互いに返還し合って、有償で弁償しておる場合もあります。また、無償の場合ももちろんございます。こういう、ただいま申し上げましたような方針につきましては、やはり従来どおり民事に積極的に介入しない、しかし、あっせんの労を頼まれる、あるいは助言を頼まれました場合には、十分その両者間の希望に応じて助言なりあっせんをするということはいたしたいと思います。
  95. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 業者側からいいますると、無償回復というのは困るので、有償回復にしてもらいたいという陳情があったように思うのですが、そういうことについて法律改正するという意向は現在のところまあない。現状のままでやはり実情に即して若干の有償でやる、何かそれにある程度適当な基準みたいなものを設けるということは、事実上は非常に困難かと思うのですが、その点についてはあっせんをする場合に、まあ大体実情は警察が入ってあっせんして何か言えばそれに従うということになるかと思うのですが、若干の基準を設ける、有償の基準を設けるというようなことは考え得られませんか。
  96. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) そういう考え方も一案かと思いますが、実際にそれぞれの土地実情がまちまちでありまして、また、土地の慣習もいろいろございますので、なかなか一律にその基準を設けることについては疑問があろうかと思います。ただ、現在各県でそれぞれ各県の公安委員会の独自のやり方で褒賞制度を設けまして、そういう善悪の質屋が、質物が盗品であったことがはっきりいたしまして警察に協力してきた、また、被害者に返還した、無償で返還したというような場合におきましても、できるだけそれを感謝するあるいは防犯上で協力してもらった意味合いで、県によっては県のほうで費用を出していただきましたり、あるいは防犯団体のほうからそういう財源を符まして、いわゆる褒賞制度というものが、全国的ではありませんけれども、三十数府県行なわれております。あるいは一案といたしましては、こういう業界の方々の共済制度を作って、それに対してできるだけその共済制度が育成されてしっかりした基盤を持ち、そこから財政的なバックをするというようなことも一案かと思います。
  97. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 この法案の改正については、業者関係から今までいろいろ陳情があったと思うのですが、その事項を私も今全部よく覚えていないのですが、今度の改正で、その要望が少なくとも大部分達成されているように思うのですが、業者等の相当切実な要望で今度の改正で取り上げられなかったものがありますかどうか。上げられなかったとすれば、その理由はどういうところにありますか。
  98. 木村行蔵

    政府委員(木村行蔵君) ただいまお話のありました無償回復請求権の点でありますが、これは長年業界からのほうでは、この無償回復請求権の規定を削除してもらいたい、こういう要望が熾烈にございました。しかし、これは民法上の、いわゆる遺失主なりあるいは盗品の被害者というものの、被害者保護の民法百九十三条の建前もありますし、いろいろなむずかしい問題がありまして、業界ともいろいろ話し合いました結果、現在はこの無償回復請求権の規定についての改正につきましてはいたさない、いたさなくてもけっこうであるという話し合いになっておるわけであります。  それからもう一つ大きな点は、質屋の営業者の距離の制限の問題です。これも相当要望がありましたわけでありますけれども、これは御案内のとおり、憲法二十三条の職業選択の自由というものとも関連いたしまして、非常にむずかしい問題でありますし、先ほど申しましたように、質屋営業というものはむしろ漸減の形にもありますので、必ずしも過当競争というような形にすぐ追い込まれているとは思いません。したがいまして、距離制限の問題につきましては、私たちも消極的な見解で業者と折衝いたしまして、これにつきましては業者におきましても了解いただきまして改正に載せなかったわけであります。  そのほか、いわゆる譲渡担保形式の金融行為法律的に言いますと、買い戻し約款つきの売買契約、これは非常に質屋の質権設定の契約と類似しておりまして、相当最近これを利用するものが多いわけであります。これは質屋に類似する行為であるから、むしろ質屋営業の中に入れて取り締まりをしてもらいたい、こういう要望があったわけでありますが、これにつきましては私たちもいろいろ慎重に研究し、関係省庁とも相談いたしたわけでありますけれども、この譲渡担保形式の金融行為といいますのは、やはり質屋の行為と、経済的な社会的な生まれた基盤といいますか、必要性がだいぶ違うと思うのであります。そういう社会的な理由経済的な理由もございますので、今回はこれにつきましては入れない。  また、利子の点でございますが、この利子の点についての要望がございましたが、これにつきましても実は二十九年に法の改正をいたしまして、相当質屋営業者にとっては有利な利子計算方法その他改正いたしておりますので、今回質屋営業者の業界からの請願どおりにやる必要はないということで、これも折衝いたしまして御了解をいただいたのであります。  それから古物のほうにおきましては、そのほかに無償回復請求権の問題も質屋と同様熱望がありましたけれども、ただいま申し上げたようないきさつで了解いただいております。  それ以外に古物業界からの独自の要望といたしまして、全国的なこの古物業界の防犯組織を、法的な根拠を持ったものを作ってもらいたい。そういう法的根拠を持てるような改正をしてもらいたい。こういう請願が質屋と異なって出ております。これにつきましては、いろいろ研究いたしましたけれども、古物商というものは千差万別でありまして、非常に実体の把握がむずかしいのと、また、これを組合として全国的なものを結成するということも、なかなか機が熟していないようであります。そういう意味合いもありまして、今直ちに現段階において法的根拠を持ったこういうような措置をとる必要はなかろうということで、古物業界とも折衝いたしまして御了解いただいているような状態であります。
  99. 小林武治

    委員長小林武治君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  次回は、三月十三日午前十時開会とし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十五分散会