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1962-04-24 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十四日(火曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————    委員異動 四月十九日委員佐野廣辞任につき、 その補欠として最上英子君を議長にお いて指名した。 四月二十日委員最上英子辞任につ き、その補欠として小幡治和君を議長 において指名した。 四月二十一日委員小幡治和辞任につ き、その補欠として佐野廣君を議長に おいて指名した。 四月二十三日委員野溝勝辞任につ き、その補欠として亀田得治君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            永末 英一君            市川 房枝君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            高橋  衛君            西川甚五郎君            林屋亀次郎君            前田 久吉君            亀田 得治君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            須藤 五郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君   政府委員    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    国税庁長官   原  純夫君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    国税庁間税部長 上田 克郎君    運輸省自動車局    車両課長    堀山  健君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○租税及び金融等に関する調査  (租税行政に関する件) ○財政法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について報告いたします。  去る十九日付をもって佐野君が大蔵委員辞任されましたが、二十一日付一をもって大蔵委員に選任されました。   —————————————
  3. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 右の異動により、理事が一名欠けることになりましたので、委員長はこの際、先例に従い、理事佐野君を指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。   —————————————
  5. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) なお、二十三日付をもって委員野溝君が辞任され、その補欠として亀田君が委員に選任されました。   —————————————
  6. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) これより、租税行政に関する件を議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 私は、鈴木自動車株式会社脱税問題につきまして、若干御質問をいたしたいと思います。  鈴木自動車株式会社というのは、代表取締役鈴木俊三、本社は御承知のように静岡県でありますが、この会社は、昭和三十四年三月十六日に軽四輪自動車スズライトTL型、これを貨物自動車として運輸大臣より認定をとっております。ところが、その後鈴木自動車が実際に製造し販売しているスズライトTL型は、座席後方ストッパーをはずしております。したがいまして、昭和二十九年九月一日あるいは同三十五年九月三十日の通達等に照らしましても、明らかにこれは乗用車と見るべきものだと考えます。鈴木自動車のほうは、結局、乗用車を実際は作りながら、認定だけは貨物自動車として、ごまかしてその認定をとっておる。そういう結果、私の計算では約八億の物品税脱税というものが行なわれるわけでして、このことはすでに世間でも問題になっておるわけでございますが、この問題に対する国税庁扱いですね、現状どのようになっおるのか、お聞かせを願いたいと思います。まず、長官から。
  8. 原純夫

    政府委員原純夫君) ただいまお尋ね鈴木自動車株式会社スズライトの課税の問題、私も大きな税務行政の、何といいますか、責任という意味で、大体の話は聞いておりますけれども、ただいまお尋ねの筋は、脱税かどうかというような話になって参りますので、私として、具体的にこの私がお答えするよりも、本来ならばもう少し担当責任の者をしてお答えさせるほうがいいと思いますが、ここに間税部長上田消費税課長塚本が参っております。事柄の具体性からなるべく離れないためにも、その者たちお答えさしたいと思いますが、いかがでございましようか。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 けっこうです。
  10. 上田克郎

    説明員上田克郎君) お許しを願いまして、現在どんな扱いになっておるかという現状を申し上げてみたいと思います。  問題が提起されましてから、私たちは、名古屋国税局がその担当でございますので、名古屋国税局長からの上申を待って問題を処理いたしたいという事務手続にやっておりまして、三月の末になりまして、名古屋国税局長からの上申が参りまして、現在のところ、その上申と、それから技術的な観点並びに法規的な観点、それから資質の問題、そういうような点について現在検討中でございまして、最終結論はまだ出していない段階でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 本件は、もちろん運輸当局にも関係のあることですが、当局としてはどのような処置をとられておるか、お答えを願いたい。
  12. 堀山健

    説明員堀山健君) 本件につきましては、この問題、いろいろ問題が起こります前に、大阪の陸運事務所において発見したものでございまして、その後まぎらわしい問題につきましては全部改造命令したはずでございます。それで今日に及んでおります。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 まあ具体的な疑問点等については、おいおい一つずつ聞いていくことにいたしますが、ただいま両者からお答えになりました点について、若干まず確かめておきたいと思います。  その第一点は、この三月末に名古屋国税局から国税庁上申が参ったというように言われておるわけですが、それはどういう内容のものか。その点を明らかにしてほしいと思います。
  14. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 現在、局から参っております意見につきましては、なお局との照合と申しますか、承服の問題もございますので、最終的な結論を出しますまでは、その内容は申し上げかねると思います。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 そんな、内容をどうして申し上げかねるわけですか。中間段階において、名古の国税局長がこれこれの意見を持っているということをあなたのほうにおっしゃってきたわけでしょう。
  16. 上田克郎

    説明員上田克郎君) さようでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 それは重要な参考になるわけです、われわれにしてみれば。そんなことは何も隠す必要がないことでして、莫大な税金がうやむやになるかならぬか、重大な問題に直面しているから、わざわざこれは委員会を開いているわけです。そんなことが一体答えられぬというのはおかしいじゃないですか。
  18. 原純夫

    政府委員原純夫君) 私からお答えいたします。名古屋の局から上申が来ていることは事実でございますが、ただいまここで問題が取り上げられておりますように、可否の問題、相当慎重に検討した上で外部に対しては申し上げるべきだと思います。もちろん、税務部内は庁、局、署と段階も分かれておりますし、いろいろな人間が担当いたしておりますが、担当いたしております者の意見をそれぞれそのまま部外に申し上げるということは、必ずしも妥当かどうか問題だという意味で、今間税部長が申しましたので、その点はひとつ御了承いただきたい。何分、私どもは、組織全体として結論を出しておるということであれば、全体としての責任として申し上げるわけでありますけれども、まだそれまでの段取りに至っていない、検討の余地を残している段階でありますので、その点はぜひ御了承いただきたいと思います。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そういうことでは了承できませんよ。私たちはわれわれなりにこの問題というものを現実に当たって調べておるわけなんです。相当なこちらも確信を得たから、きわめて個人の問題に見ようによってはわたって恐縮だが、しかしこういうことは放置できない、こういうことで取り上げておるわけなんです。本来ならば、私の意見としては、当然国税庁が指揮をとって、そうしてしかるべく強制捜査をやって、書類等を押えておくべきなんだ。現物もしっかり押えておくべきなんだ。それは最後に私は聞きますが、そういうことがなされてもおりませんで、そうして中間国税局から一応の上申が来ておる。それは国税局長意見でしょう。最終的にそれを取り上げる取り上げないは、これは別です、あなたのほうが。何もそんなことを聞いておるのじゃない。そんなことはわかり切った話です。しかし、こういう問題ですから、中間的にでも、そういう地方責任者が出しておる意見があれば、それを明らかにしたって何も差しつかえない。そんなことにあなたのほうは拘束されるべきじゃないし、私のほうもそれに拘束されようと、そういうことを申し上げておるわけでもない。だから、そういう程度のことを、部内のことだから申し上げられぬというようなことでは、何のために委員会を開いて質問をしておるかわからぬことになる。あなたのほうが最終的な結論を出しておるのなら、私は聞きません。結論が出ておらぬというから、それじゃその中間段階にある人の、これも結論的な上申かどうかわかりませんが、一応お聞きしておこうというわけです。無理ですか、そういうことは。
  20. 原純夫

    政府委員原純夫君) どうも、私はちょっと、もう少しお考えいただきたいなと思います。税の問題、いろいろむずかしい問題が起きます。判断のむずかしい問題が起きます。その場合に、税当局として最終結論に至らない、なお練っているという段階において、その一部、特に国税局長税務署長というものの意見を公式に部外に表明するということは、やはり相当問題ではなかろうかと私は思います。そうして税務行政を健康にやって参るためにも、私は必ずしもそれが当然だというふうには思いませんですが、いかがでございましょうか。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 大蔵大臣をひとつ呼んで、今の点をはっきりしてほしいと思います。そんなばかなことはないです。これは昨年の五月以来の問題なんです。そんなものを一年近くも結論を出さずにいて、そうして違反をしている者は、あちこち頼み歩いて、もみ消し運動をやっているわけです。それを、結論が出ぬから、中間のそういうことも一切言えない。問題が起きて一月か二月かというなら、それも聞こえるでしょう。そんなことは私は筋が通らぬと思う。必ずしもこれは問題の本質じゃないわけですけれども、そんな、何も秘密にする必要はない。一年たっているんですよ。だから、これは大蔵大臣を呼び出して、一体そういうやり方がいいのかどうか、これをひとつ、委員長、要求します。
  22. 原純夫

    政府委員原純夫君) ちょっと、私のほうの事情でございますが、昨年からの問題とおっしゃられてたいへん恐縮でありますが、私どものほうに上申書が参りましたのは、実は先月終わり、ぎりぎりのところで参ったという状況でございます。  なお、もみ消しというお話があって、たいへん、私、今間税部長に聞いて、どういうことなんだろうかといって、心苦しく感ずるのでございますけれども、私どもとして何か予断を持ち——予断といいますか、そのためにそういうことをしているとすれば、たいへんけしからぬことなんですけれども、もう少しはっきりおっしゃっていただきたいと思うのですが、私どもはそこまで聞いて、そういうことがあってはたいへんだと思いますので……。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そういう、本件に関するはなはだ僕ら心よからず思っている問題もたくさんはらんでいるわけです。それはぼつぼつ聞きましょう。しかし、一年もたっている問題を、国税庁としては先月だとおっしゃるのですが、それ自体が私は大体ふに落ちない。しからば、その長期の間、地元の国税局では何をしていたのか。その間あたためていたわけですか、問題を。だから、これはひとつ大臣を呼んで、そういう税務行政のあり方、これは私はふに落ちない。答えないというようなばかげたことはない。
  24. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 国税庁長官に申し上げますが、大蔵委員会質問ですから、もう少し責任のある明白な答弁はできませんか。  速記をとめて。   〔速記中止
  25. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 運輸省のほうにちょっと確かめておきます。改造命令したと先ほどお答えになったが、どのように命令されたか。それは、いつそういう命令をされたか。
  27. 堀山健

    説明員堀山健君) 実は軽自動車というものは制度的に届出制という制度をとっておりまして、登録とか検査という制度は全然ございません。それで、いわば届け出さえすればよろしいという格好になっております。ただ量産される車につきましては、型式承認という制度をとりまして、ある一定の規格の中に入っておるかどうかということを確かめて、それからそういう——要するに、検査はございませんので、量産車に対しては型式認定という制度をとって、それで代表的な車を見ておる、こういうことでございます。そこで、そういう量産車、これは鈴木もこの車については量産いたしておりますので、よく改造ということが非常に多くございます。そこで、改造のつどそういう面について届出があれば確かめる。それから、同時に、この問題にも関係いたしまして、多古屋の陸運局においてまぎらわしいと思われる部分についてはまぎらわしくないようにという指示をしたはずでございます。そういうことでございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 そのまぎらわしいという点について具体的にどういう指示命令をされたのか。このまざらわしい部分は、私ここへ持ってきておりますがね。これはストッパー、ほかのものもありますが、どういう指示をされたのでしょうか。ここに模型もあります。
  29. 堀山健

    説明員堀山健君) 具体的には、名古屋陸運局において指示いたしましたので、具体的などういう形ということは、詳しくは聞いておりません。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 それは、いっそういう命令をされたのか。
  31. 堀山健

    説明員堀山健君) 今手元でその日付がはっきりいたしません。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 文書命令されたんですか。
  33. 堀山健

    説明員堀山健君) 名古屋陸運局から口頭指示したはずでございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 第一、こういう重大な問題を起こしておって、口頭指示するというような、役所ってそんなルーズなもんでしょうかね。それは一々すべてのことについて、そんな文書によって云々ということは必要ないでしょうが、やはり問題が起きている場合の行政指導なんですから、疑いがあればこそ指示をしているわけでしょう。これは当然文書によってなさるべきものでしょう。文書によってなされておれば、その文書写しを見せてもらえば、私たち運輸省の考えは、もうえらい人が出てきてここで答弁してもらわぬでも、わかるわけなんです。そんな、一体口頭でというようなことを言ったって、だれが口頭で、会社のだれにちゃんと伝えたんです。どういう言業で伝えたんですか。それをはっきりして下さい。はっきりできるでしょう、そういう点。
  35. 堀山健

    説明員堀山健君) 報告は正確に文書の形で聞いておりません。電話で通報を受けましたので、具体的には今わかっておりません。
  36. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  37. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 国税庁のほうに具体的に聞きますが、このスズライトTL型の型式認定申請は、三十四年の初めに出ておるわけですが、その申請書には、これは当然なことでしょうが、図面はちゃんとついておるわけでしょう。
  39. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 納税の場合の非課税か、貨物自動車であるかという型式につきましては、陸運局認定に従って税務署はやっておりまして、税務署に直接設計図まで詳しい図面をつけての申請というのは来ておりません。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 ただ、認定運輸大臣がするのですから、それは運輸省であることは間違いない。だけれども、あなたのほうは税金問題が起きておるわけですから、だから、そういうことも私はお調べになっていると思って聞いているのです。
  41. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 御指摘のとおり、税金を取っている関係からいいますと、当然それは調べるべきだと私は考えております。それで、結論的になりますが、この問題の処理につきましては、その図、面を取り、厳密に当たり、もっと詳しく調べるべきであったというふうな印象は持っております。しかし、実際問題としてそれをやっておらないのはたいへん遺憾であったと思います。本来ならば、当然図面も取り、現物もよく確認した上で、それからまた技術的な知識を持った上で、検討すべきであったろうという感じは持っております。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そんな、問題が起きてから、認定の仕方をごまかしたかどうかということが問題になっている問題について、もとの書類税務当局が持っておらないなんていうようなばかげたことはないですよ。そんなものは係官が、名古屋陸運局にあるのでしょうが、飛んで行って、まずそれを調べる、当たりまえのことなんです。いまだにそれができておらないというようなことは、そんなことで資本家の巧妙なそういう脱税行為なんかがどうして防げますか。  じゃ、自動車局のほうはどうですか。当初の型式認定申請書図面というものがついているはずですが、それは今どこにあるのですか。
  43. 堀山健

    説明員堀山健君) これは名古屋陸運局本省に控えがございます。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 その図面写し提出資料として願えますな。
  45. 堀山健

    説明員堀山健君) これは現在作っております寸法と同じでございます。出すことはできると思います。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、最初の認定申請のときについておる図面、並びにその説明君がおそらくあるはずと思いますが、それをひとつ、出せるというから、資料として出してもらうように要請しておきます。  それから、この型式認定の経路はどういうふうにして実際はおやりになるのですか。
  47. 堀山健

    説明員堀山健君) これは道路運送車両法施行規則軽自動車型式認定という項目がございますが、その規定によりますが、これは大臣認定を受けるということでございますが、これは内部の通達陸運局長が実質審査するという仕組みをしております。そこで、軽自動車の場合には、陸運局長が現車を見て、その申請者の言っておることと現車が一致しておるということを確認いたしますと、その書類本省に送付いたします。本省においてその型式承認をする、こういう仕組みをしております。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、運輸大臣型式認定をする前に、地方陸運局において現物を必ず見ておる、こう理解していいのですね。
  49. 堀山健

    説明員堀山健君) さようでございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 それで、あなたのほうにある図面写しには、このスズライトTL型という、この問題になっておるのは、例のストッパー部分ですが、その点はどういうふうになっておりますか。ストッパーがちゃんとつくようになっておるのですか、あるいはストッパーなしで座席が七十度に傾くというふうになっておるのか、 どうなっております、図面は。
  51. 堀山健

    説明員堀山健君) 図面は非常に簡単なものでございまして、そういうストッパーがついているついていないということは、これは鈴木自動車だけにかかわらず、すべてについて詳細な製作図面みたいなものは私ども要求しておりませんので、ついておりません。ただ、本件の場合、貨物車乗用車かということで問題になっておるわけでございますが、これにつきましては、貨物、乗用を分ける基準が私どもございますので、それによって、その寸法に従えば当然貨物車に該当するということで認定したわけでございます。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 ストッパーがついておらなければ、乗用車設備貨物積載設備との面積率が逆になりますからね、本件については。だから、当然、その認定をしたということは、図面にもストッパーが入っていなければならないはずですが、そういう点が明確になっておらないわけですね、図面的に。
  53. 堀山健

    説明員堀山健君) これは通常の場合には、何か取りつけ具がないと、その背当てというものがぐらぐらいたしますので、必ずこういった背当てというものが当然ついております。そして乗った状態においてその寸法が維持されるというように、必ず取りつけ具がついておるのでございます。そのとき、そういう形のものがついて、その結果、寸法基準に合ったということだと思います。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 この図面自体において、後部の座席が七十度に傾いておれば、これは面積の率が違いますから、あなたのほうは認定されないはずです。だから、認定されたということは、ストッパーがついておるわけです。ところが、ストッパーというようなこういうものを図面に書かないで、そうしてここの泥よけの部分が直接ストッパーを仲介にしないで座席のところに九十度の角度でくっついておる、そういう図面になっているでしょうか。どちらなんですか。ストッパーがついておれば、図面にこれは必ず表われるわけですがね。
  55. 堀山健

    説明員堀山健君) 認定申請に出された図面には、こまかくそこまでは書いてございません。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、図面自体の作成というものが、ことさらにその点をあいまいにしておるというふうに私は感ずるわけです、その点は。だから、これは図面を見た上で、さらにもう一度意見等もお聞きすることにいたします。  そこで、ただいまお答えになったところによりますと、必ず陸運局のほうでは現物を見ているはずだ、こうおっしゃっている。現物を見れば、この図面はなるほど不明確なものでございましても、このスズライトTL型のストッパーというものは、必ずこれは目につくけですね。それはあなたもお認めになるでしょう。
  57. 堀山健

    説明員堀山健君) 当然、ついておりませんと規定寸法に入らない。したがって、貨物自動車にならないので、当然ついておったと思います。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 ところが、そのついているストッパーがどういう状態のものであったかというようなことは、お調べになっておりますか。きちっとこのストッパーが泥よけと座席の背面の間に固定されているかどうか、あるいはネジでちょっとつけてあるのでいつでもこれを取れる、ここが問題になっているわけです。それは、そういう点はどういうふうにあなたのほうでは御検討になっておりますか。私のお聞きするのは、もし現物を見ておれば、これはネジストッパーをつけてあるということがわかるわけです。何で一体ネジでとめてあるのか、これは検査官としては、検査を通ったら必ずこれをはずすのじゃないか、当然これは想像すべき問題なんですね。だから、その図面だけではわからぬかもしれぬが、現物を見ておれば、こういうネジでとめてあるようなストッパーを、なぜ簡単に運輸省として型式認定を与えたか、ここに非常な疑問を持つわけなんです。これはどうなんですか。あなたのほうが構造の改善まで命令されたという以上は、その辺のいきさつというものは十分もうすでにお調べになっているはずです。どうしてこういうネジでとめてあるストッパーを簡単に認めたか。ほかの自動車でこういうものはないでしょう。
  59. 堀山健

    説明員堀山健君) 実は、軽自動車は非常に手続その他も簡単な制度になっておりますので、これを初めに認めた当時は、扱いが非常に簡単な面があったと思います。ただ、今御質問ネジでとめることがいいか悪いかという問題ですが、これは自動車部分にはネジだけでとめてある部分が非常に多うございまして、必ずしもネジだけでいけないということになるかどうかということは非常に問題だと思います。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 必ずネジだけでとめるかどうかということは問題だと思うとおっしゃるが、この自動車構造を見ますと、座席うしろのほうに二つあるわけですね。これにストッパーが、こう九十度で背中もたれが立っているわけです。これでは、ここへすわっておれないわけです。だから、どうしてもこれは、工場から外へ出てしまうと、ストッパーというものが要らぬのです。そんなものは専門家が気がつかぬわけがないですよ。若干うしろが傾斜しなければ工合が悪いわけです。スズライトの広告見たって、ちゃんと四人乗り、こういうふうにして、その当初から、これは鈴木の本社で作ったビラですが、宣伝しているわけです。それで、この宣伝しているこれにはストッパーはないのです。これはもう自白文書なんです。見てごらんなさい。これは知っているんでしょうけれども、はっきりおっしゃらぬが、初めからそういうふうにして、四人乗りで宣伝しているわけです。これはあなた、座席の格好と、乗車設備と、それから荷物積載設備の面積の比率の関係と、そういうことを検討すれば、専門家が工場へ行けば、このストッパーネジどめしてあるのはおかしい、そんなことぐらい感づかぬようなことで、一体監督なりそんなことができるものじゃない。鈴木自動車もそうです。その写真見たら、初めからストッパーなんか無視している。これは代理店もみんなそう言っていますよ。だから、それを現物を一体見たのか見ぬのか。おそらくあなたの言われるのは、現物を見て認定するはずだという意味でしょう。
  61. 堀山健

    説明員堀山健君) これは現物を見て認定したものでございます。ただ、写真でございますが、認定したときにはストッパーがついてその寸法以内に入っていたことは事実でございます。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 そこははっきりおっしゃるが、それはネジどめだったんでしょう。
  63. 堀山健

    説明員堀山健君) そのときの記録には、ネジどめであったということは書いてございませんでした。ですから、ネジどめであったか、そうでなかったかということは、ちょっとわかりませんです。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、ネジどめでなかったとしたら、構造をごまかして認定を受けたということになりますな、あとはみんなネジどめになっているわけですから。
  65. 堀山健

    説明員堀山健君) 要するに、本件の場合に、荷物の面積とそれから客席との間の寸法の問題でございまして、そういうストッパーがついていなければ当然乗用車になるということは事実でございまして、そういうことを認めることにはなりませんし、それから提出された図面においても現物においても、そういう寸法にならないようになっております。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 その結論のところだけは、きちっとあなたおっしゃいますがね。一体名古屋陸運局型式認定のために現物を見に行った人はだれです。
  67. 堀山健

    説明員堀山健君) 本日資料を持って参りませんので、当該の人間の名簿を今手元にございせんので……。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 それはまあお調べになれば、ずっと記録があるわけでしょうから、わかりますね。
  69. 堀山健

    説明員堀山健君) その当時の記録を見れば、全部判明いたすはずでございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、その点は記録を拝見していただきまして、次回に、その実際に認定のために品物を見に行った人、その人の名前を明確にしてもらいます。  それから、次に、いろいろまだ関連したことがたくさんありますが、問題点だけひとつ触れておくことにします。この認定を受けた後に、鈴木自動車昭和三十四年九月からこのTL型を製作、販売しておるわけですが、まあ認定のときの事情は先ほどのようなことですが、その後の状況をですね、その後ストッパーというものは全然無視されてしまっておるわけですが、そこまでは陸運局として知らぬことだと、おれのほうは認定のときだけきちっと押えておればいいんだというふうにおっしゃるかもしれませんが、そういう点は、本件脱税の疑いありということで問題になるまでは、全然運輸省のほうは関知されなかったわけでしょうか。
  71. 堀山健

    説明員堀山健君) この軽自動車は、検査制度というものがございませんために、使用も届出ということだけで、実は実際の車を陸運事務所に持ってこない。それから、使用の過程におきましても、一回届け出ますと、やめるまで車は持ってこなくてもよろしいということで、車を全然見る機会がございません。したがって、当初認定したときにストッパーがついて、寸法基準に合う。寸法に合ったものがその後どうなっておるかということは、実は使用の過程で当局が見る機会がなかったということでございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、まあ今からごらんになりますと、その写真をごらんになればわかりますね。それはもう当初の製作品ですわ。昭和三十四年九月当初の製作品なんです。まだ現在のようにうしろ座席が二つに分かれておらぬ、長いすのときのやつなんです。初めからそういうふうにストッパーを取って宣伝もやれば、もうみんなやっておるわけなんです。それはもうその写真に写っているのは、明らかにこれは脱税になるのでしょう。違反でしょう。型式認定に反しているものでしょう、写真に写っておるやつは。それはわかりやすく写真にとったのです、その鈴木自動車の宣伝文は。
  73. 堀山健

    説明員堀山健君) この絵が、この写真がTL型であるとすれば、図面状態からして乗用車の形をとっておるものと思います。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 それから、昭和三十五年九月から、鈴木自動車におきましては、ベンチ式なやつを——当初のやつは座席がずっとベンチ式になっていた、これを座席を二つに分けたわけですね。これは相当大きな形といいますか、構造上の変更になるわけですが、こういう場合には運輸省がタッチされぬわけですか。
  75. 堀山健

    説明員堀山健君) 一番初めに申し上げたように、型式認定、それから同時に改造、大きな改造、こういう場合に陸運局扱いますが、ただ、ものによっては本省がアドバイスといいますか、一緒について見るということはございます。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私のお聞きしますのは、必ずしも本省でなくてもいいわけでして、地方陸運局が、これなんか相当大きな変更だと思うのですよ、そういう際にはやはり地方陸運局としてはタッチする機会があるのではないかと私感ずるから、聞くわけです。
  77. 堀山健

    説明員堀山健君) この程度のものですと、必ず何らかの方法で確認するはずでございます。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 それであれば、このベンチ式なやつを二人座席にするというときに、このストッパーの細工というものが、ごまかしというものが、これはもうはっきりわかるわけなんです。一体昭和三十五年の九月の、座席を二つに分ける場合に、名古屋陸運局でその改造にタッチされた方ですね、これも書類をお調べになればわかるはずですね。
  79. 堀山健

    説明員堀山健君) そのときの検査した人間はわかると思います。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら、それも、その実際に検査した人の名前、これも次回に明らかにしてもらいます。  ところで、お聞きするわけですが、今度はあなたの感じを。この二人用にいたしますと、非常に複雑なものがくっついてくるわけなんです。それは、今まで座席がベンチ式になっている場合には、左右にストッパーを一つずつ入れておけば、まあ検査のときだけはごまかせるわけだ。ところが、今−度の場合は、二人座席にするためにこの座席の間にこういうものを一つ入れなければいかぬ。バック・クッション・ステーという名前で呼んでおりますが、こういうものがこう入るわけです。そうしてこれを入れるために、その下のほうにこういういろんなものがまたこうくっついてくるわけです。したがって、上実際に物を見ておれば、ネジどめ式でストッパーをここに使ってやっておるということは、これはもうだれでもわかるわけでして、 ストッパーを使わなければ、先ほど申し上げたように、座席が、こんな格好で座席にすわることになるのですよ。そんなばかなことはない。四人乗りで非常に快適なスズライトTL型なんといって宣伝しているのですからね。当然、あなた、これはそうなるように、もうそのときにそんなことに気がつかぬようでは、監督官としての資格なしですな。あなたはそう思いませんか。
  81. 堀山健

    説明員堀山健君) 元来、軽自動車というものは、もともと、大きさが制限されておりますので、快適といいますか、非常に乗車設備なり乗り心地というものは制限されるわけであります。したがって、快適ということは非常にむずかしいと思います。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 いや、まあ快適かどうかということを聞くんじゃないわけでして、最初の場合にはベンチ式になっていて、ストッパーを利用するとしても、左右だけにちょっとくっつければいいから、あるいは見落としということもあり得るかもしれぬ。が、しかし、このベンチ式を二人座席にする場合には、こういうステーなんかをまん中に入れたりして、複雑な構造上の変化になっているわけです。これが、いやもうこれは工場から出てしまったらストッパーを取ってしまって寝かすに違いないそんなことがわからぬようなことはないと思う。その点を聞いている。あなたならわかるでしょう、と言っている。どうです。
  83. 堀山健

    説明員堀山健君) これはもともと、設計が無理なことなんでございます。これは、この鈴木TL型だけでなくて、すべてについて軽自動車というものは設計が無理なわけでございます。したがって、いろいろ工夫をいたしまして、何とか規格の中に入るよう工夫をしておりますので、これはすべてに共通する問題だと思います。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、あなた、はっきりおっしゃて下さいよ、何らの疑念も持たないで昭和三十五年九月の改造を認めたのは、もう当然だ、そういう意見ですか、あなた、はっきり言って下さい。
  85. 堀山健

    説明員堀山健君) 当時直接現車を見ておりませんので、ちょっと感じとしてはわかりませんです。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは現在、二人用のTL型をごらんになっているのでしょう、見ていないのですか、まだ。
  87. 堀山健

    説明員堀山健君) 見ておりません。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 こういう型式の監督というのは、これは本省は、担当課長はあなたでしょう。
  89. 堀山健

    説明員堀山健君) 私でございます。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 あなたが担当課長であれば、こういう問題が起きて、そうして改造命令まで出した、こういうことであれば、当然あとからでもいいから見ているべきじゃないですかね。国税庁のほうは見ているのですよ。肝心の認定をするあなたのほうが、問題が起きても、まだそれも見ておらぬ。それは現物をごらんになれば、今申し上げているような点、これはすぐ納得がいくのですよ。なるほどこれは無理なことをしているというのが……。見ておらぬなんて、そんなこと大体不熱心じゃないですか。(「見て承知して、許しておったのと違うのか」と呼ぶ者あり)見ておっても、見ておったと言うんじゃ、私の言うことを認めざるを得ないから、ごまかしているのじゃないですか。見ておらぬという、そんなばかげたことはないでしょう。
  91. 堀山健

    説明員堀山健君) こういう問題が起こりまして、貨物乗用車というものにつきましていろいろ関心を持って、ほかの車について、こういった型式のものについてずっと調べたことはございます。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの車について調べるくらいのものが、問題になっている本件の車を見ないなんて、そんなことはあなた想像できますかね。国税庁ですら、私にも、一ぺん現物を見てくれるか、御説明しますから、というくらいな親切な説明があったくらいなんです。あなたのほうが認定のもとじゃないですか。もとが全然現物に当たっているのか当たっておらぬのか、わかのわからぬようなことをしているから、問題が起きても、なおかつまだ見ていない、そんなことで通りますか。きょうでもさっそく、帰って、国税庁のほうで見せてもらいなさい。順序がきわめて逆ですよ。ごらんになった上で、私の言うのが無理かどうか、次回に答えて下さい。
  93. 堀山健

    説明員堀山健君) 次回にお答えいたします。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、次に若干進めますが、この本件問題が起きまして、鈴木自動車脱税、違反をやっている、こういうことがまあ出てきたわけですが、その後、そういう問題が起きた後、あなたのほうはどのようにして実態についての調査をされましたか。つまり、構造改造を命じたとおっしゃるわけですが、その前の段階で、実情はどうなっておるのか、そんなストッパーもつけないでどんどん走っているのじゃないか、その点についても調査を実際に真剣におやりになったかどうか、それをお聞きします。
  95. 堀山健

    説明員堀山健君) 先ほどお話ししましたように、検査ということがございませんので、常時車の状態を把握するという方法がございません。ただ、昨年の五月、大阪陸運事務所においてこれを発見した。その以後において改善の措置をとった、こういうことでございます。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 大阪陸運事務所がこの鈴木自動車ストッパーをつけないで走っているのを見つけたのは昭和三十六年の五月、昨年の五月ですね。
  97. 堀山健

    説明員堀山健君) はい。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 大阪の陸運事務所の金本野州三氏がそれを見つけて、運輸省の御指示も仰いだわけですね。で、そこで、構造の改善を命ずるのはいいのですが、どの程度そういう違法な状態がやられておるのかということを調べるのが、これは当然だと思う。これは、もちろん国税庁のほうは税金を取るほうですから、もっとその点は積極的に調べなければならぬのかもしれませんが、しかし、順序からいきますと、あなたのほうがまず、実情を把握するという努力というものをなすべきですね。なすべきでしょう。そんなことをしないでもいいのですか。そこをちょっとお聞きします。
  99. 堀山健

    説明員堀山健君) 実態を把握すべきだと思います。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 どのような努力をされましたか、実態把握のための。
  101. 堀山健

    説明員堀山健君) これは生産数量、それからストッパーと申しますか、着脱がある意味において容易である、こういうことについて調査いたしました。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 それは生産数量と着脱が容易である、そんなことはちゃんと、あなた、ネジでやっておるのですから、調べないでも大よそ想像のつくことだし、生産数量なんかは、毎月、私は今持ってきませんでしたが、雑誌に載りますね。そんなことは何も簡単なことなんです。実際は、そのストッパーの着脱するのを、ストッパーを実際ははずして、そうして違法な工場からの出荷をどの程度やっておるのか、これを突きとめなければいかぬわけでしょうが。どうも今のお話を聞きましても、あまり熱意がないようですね。  そこで、私、端的にお聞きしますが、この問題が起きましたその発端は、これは偶然なことでありますが、鈴木自動車の代理店である関西スズライトの社員が、本件自動車をもって大阪の陸運局へほかの用事で行った。たまたま金本君が、前々からおそらく多少疑問でも持っていたのでしょう。それに目をつけた。そこで、私はお聞きしたいのは、関西スズライトは、これは大阪における唯一の代理店です。関西スズライト責任者を呼んで事情を聞けば、すぐわかるんじゃないですか。どういう状態で工場から出していたか、そのことを聞いてみたのですか。
  103. 堀山健

    説明員堀山健君) 大阪の陸運局を経由してその問の事情を聞きました。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 その間の事情というのは、摘発された事情の意味がどうも今のお答えでは強いと思います。私のなぜ突きとめないというのは、鈴木自動車が関西スズライト自動車を渡すわけでしょう。渡すときに、ストッパーをつけておるかおらないか。渡すほうは、税金がこわいから、それは何とかかんとかごまかすことを言うかもしらぬけれども、渡されるほうのことも聞いてみたらいいんじゃないか、それを聞いたかと聞いてている。どうですか。
  105. 堀山健

    説明員堀山健君) 直接は聞きません。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 直接は聞かぬといったって、そんな調べようで、何が問題であるか、真相が出てくるのですか。関西スズライトは代理店の中でも一番大きいわけでしょうが、大体二千五百台くらい今まで扱っているわけです。一つもストッパーをつけたものは受け取っておらないのです。ところが、昭和三十五年九月からベンチ式のやつが二つに分けられたころから、これは相当、前の構造よりも違反の疑いが一そう強いということで、ストッパーだけを十台に一組くらいは別に渡してくれるのです。そういうことをやっておる。車のほうはつけていない。車は車で、ちゃんと寝かしたまま、別個にストッパーだけを十台に一つくらい店に渡しておる。何か問題が起きたら、いや、これをつけるのを忘れたというふうなことでごまかす。そういったようなやうなやり方でやっておるわけです。そんなことを直接の取引先を調べないで、一体何を調べておるのか、これはわけがわからないですね。  そこで国税庁のほうにお聞きいたしますが、あなた、こういうものを、私が今お尋ねしたような点について、何台くらい一体そういう疑いのあるものが出ておるだろうかという点について、お調べになりましたか。調べる方法、結果、そういう点をおっしゃって下さい。それから、もう一つは、ストッパーがついておらぬ場合には、ストッパーをつけないままで工場を出しておるという場合には、私はこれはもう明らかに物品税法違反だと考えておるわけです。その点の見解、それらについてひとつお答え願います。
  107. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 問題が起こりましてから、名古屋では名古屋の取引先について調べたようであります。そこで、現在までの段階で、ある数量の車についてストッパーをつけないで出荷した事実があるように聞いておりますが、これはまだ調査の段階でございますので、はっきりと何台というところまでは申し上げかねるのでありますが、そういう事実があるようであります。もしそれが事実であるといたしますと、今御指摘のとおりに違反の嫌疑が濃厚だろう、さように考えております。なお、この型式が非課税のものでございますので、申告がないわけでございます。問題が起こりましたので、われわれは事実問題として何台がはたしてストッパーなしで出たかどうかということの確認が大事だろうという考えのもとに、われわれはそれの調査を進めておる、こういうことであります。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、その調査の進め方ですね、それをお聞きしておる。私がさっき申し上げたように、代理店へ結局渡しておるのですから、渡した先に聞かなければ捜査にならぬじゃないか。関西スズライトに確かめましたか。
  109. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 現在の段階では、関西のほうはまだ確かめていないように聞いております。名古屋スズライトの代理店で一応調査をやったように聞いております。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 関西スズライトから問題が持ち上がったのでしょう。だから、これは一台違反車があったことは間違いないわけです、確実に。そうすると、普通の、税法違反にかかわらず、どんな捜査でも、具体的な問題が起きたところからずっとたぐっていくのがあたりまえじゃないですか。それを関西スズライトに対していまだに問い合わせもせぬというのはばかげたことです。そんなことしておるなら、関西スズライトにひとつ来てもらってここで証言してもらいます。こんなことじゃ不名誉なことでしょう。当然やるべき捜査の方法なんです。それはなるほど問題の発端は鈴木自動車と関西スズライトのそういう偶然なことで、その後両者の間でもめておる。しかし、物事というのは、大体もめごとからほんとうの悪事というものは露見するんです。私は、だから、両者のもめごとなんかはどうでもいいんです。これは問題は別なんです。どんなものだってそうですよ。なぜそれに対してお尋ねをしてやらないのか、ふに落ちないんですな、そんな捜査の方法は。で、それは適当な機会にお調べを願えますか。
  111. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 当然調べなければいけないと思います。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 まあお調べになれば、すぐこれは相当数の台数というものははっきりしますよ。実際に受け取った人がそう言っているんですから、そんなことはもう問題にならぬ。  そこで、次にもう一つ重大な問題ですが、たとえストッパーをつけていても、このネジどめでやっておりまして、こんなネジですな、こんな。これはすぐ取れるわけです、いつでも。こういう場合には、ストッパーがあると見るんですか。どうなんです。そうして宣伝文書からいいましても、これはもう形だけなんだということが、きわめてそういうふうに想像される場合ですね、私はこういうのも脱法行為だと思うんですね。こういうのがいわゆる脱法行為だと。ストッパーをつけていないのなら、こんなものははっきり、これはもう税法違反なんだ。こんなものを疑いがあるというようなことをあなたおっしゃったが、こんなものはもう明確なことだ。ちゃんと、あなた、面積の比率できまっているわけですからね。あなたのほうの通牒できまっているわけですから、客観的にはっきりしている、だから、問題になるのは、たとえストッパーをつけても、こんなネジ、いつでも取れる、宣伝文書からいって取られる公算が強い、世間も大体そう考えているという場合に、脱法行為とみなすのかみなさないのか、そこの法律見解、これは少し大きな常識に立って判断しなければならぬ問題ですから、長官からひとつ考えをお聞きしたい。
  113. 原純夫

    政府委員原純夫君) 確かに本件は合法的な脱税をはかられたのかなという疑問のあるケースであります。そこで、その場合に課税上どういうことになるかといいますと、私の考えでは、やはり工場から出るときにストッパーをつけて、そして貨物積載面積はこうだ、乗用面積はこうということで出ますと、たいへん遺憾ながら、今の税法では、それをこのストッパーはもうすぐ取れるんだからないと同じだと、そうすれば面積は変わってくるということで認定して課税するまではできるかできぬか、私はこれは非常に困難じゃないかという感じがいたします。まあそういう際にこういうことがいろいろ起これば、やはり法律上の手当を必要とするのではないかと私は思います。私ども担当官庁といたしましては、実は初め三十四年、五年と出ておりました間は、ただいま間税部長が言いましたように、認定型式貨物自動車であるということで、申告もございませんものですから、まあたいへん申しわけないんですけれども、そこまで気がつかなかった。その間、実地の工場調査はやっておるようです。しかし、それはまあスズライトの工場を、物品税課税の自動車もあるわけですから、そういうのを中心に調べると、この車もそういうときにはストッパーがついておったというような報告を私は受けております。工場からストッパーをつけて出すという以上はまあかなり実態的にはいかがかと思っても、どうも法律上課税は非常にむずかしいということで、それが昨年になりまして外部からの話があって、これはいかぬなというふうに思って調べてみますと、いろいろお話のようなつけないで出したというようなものもあるというようなことから、そういうようなものについて課税処理をしなければならぬということで、追っかけて調べておるので、調べました結果では、まあ市中に出てからストッパーが取られたというものは相当あるようで、そういうふうなことで、私としては実態的には非常に遺憾だと思います。ただ、法律的にこれを課税できるかという段階になりますと、工場を出るときはとにかくストッパーがついて、そうして貨物積載面積が半分以上あったのだという主張になれば、課税は相当困難じゃないかという感じがいたします。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 国税庁長官がそんなゆるい解釈をされるのは、私はふに落ちないと思うのです。これは明らかに、だから、こういうやり方がつまり詐偽的その他不正の手段をもって脱税する、ごまかしというのはこれなんですよ。ストッパーがないやつははっきりした脱税なんです。ごまかしの手段で税を免かれるといううちへ入るのですけれども、これは、だから、脱税であると同時に、税法上のやはり刑事事件として告発すべきなんです。こんなもの、ストッパーをつけて走っているのは実際ないのですから。工場からストッパーをつけて出していないのが実態のようなんです。全体として見る場合、代理店みんな当たってごらんなさい。関西スズライトなんていうのは真相を言うものだから、向こうとけんかになっているわけですよ。ほかの代理店は知りませんよ。それは親会社と、小会社、代理店といったような関係で、真相と言うかどうかわかりません。しかし、実際はそうなんです。だから、それがはっきりすれば、これは全額課税できますわね、その点がはっきりすれば。ところが、これをつけて出したとしても、実際にこんなものはすぐ取られるということがはっきりしておるのですから、そういう場合にはそんなものはついておったってごまかしですよ。検察庁あたりの考え方はそうですよ。これは普通の法律解釈ですよ。詐偽というのは、そういうことを詐偽というのだ、ごまかし。だから、今長官がそのようなことを言われますが、その辺の解釈はちょっと長官だけのとりあえずの解釈なんですか、あるいはもう少し国税庁として何か検討でもされた、あるいはまた私はこの問題は検察庁とも打ち合わせてほしいと思うのです、意見としては。私のほうはこれは検察庁へ告発しますよ。当然検察庁からあなたのほうにやはり問い合わせがあるはずです。それはもう少しほんとうの実態を見た上で、やはり、だから、解釈をしてほしい。あなたのほうは、まあ実際にストッパパーがなしでおるのはわずかだというふうな大体感じでしょう、それが実態としてわからぬから。もうその点がすでに間違っているのだと、相当多数のものが出ているのだということになれば、それじゃほかの残りもストッパーをつけて出した分についても、ごまかしだというようなことが、これは解釈上成り立ちやすくなるわけですね。その点をもう少し実態を究明された上で、今おっしゃった点の法律解釈というものをやるべきだと思いますが、どうでしょう。
  115. 原純夫

    政府委員原純夫君) 私、ただいま申し上げました言葉にも、はっきり、これは課税にならぬと断言はまだ私はいたしておりません。非常に困難だ思います、というふうに申し上げております。冒頭に申しましたように、私、全部を把握して判断するという段階にまだ至っておりませんので、私の申し上げているそういう点を留保して御了解願いたいというふうに思います。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連してお聞きしておきますが、鈴木自動車スズライトTL型を現在までにどれくらい製作しておりますか。これはどちらからでもいいですが。
  117. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 私のほうの現在までの調査では、三十六年九月までに約二万五千台ということになっております。二万五千台ちょっと欠けます。しかし、約二万五千台でございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、大体私のほうの調査とも一致しておるようですね。私のほうでは、三十四年九月から昨年の十二月までの調査ですと、一万七千三百十六台、こういう数字が出ておりますが、月が長いですから、大体同じくらいになると思います。  そこで、それで計算いたしますと、代理店渡しの価格がおよそ五十三億一千二百万になるわけです。それで、物品税率が一五%ですから、これに課税するといたしますと、七億九千六百八十五万円、約八億になるわけです。国税庁として、ひとつ、八億の税金が入るか入らぬかという重大問題であるわけですから、先ほどの問題点につきましては実態調査をもっと遂げられて、そうして積極的なひとつ取り組みをしてもらいたい。  そこで、もうそろそろ終わりたいと思いますが、本件につきましては、なぜもっと税法上認められた捜査方法を活用しないのか、これが疑問でたまらぬわけです。ちょっとした中小企業の脱税等がありましても、ばっと来て、押えたり、帳簿を持っていったりするわけなんです。なぜ、本件については、問題が起きてから一年近くにもなるのに、先ほど来のお話ですと、陸運局陸運局だが、国税庁にいたしましても、ゆっくりやっておられる。これはふに落ちません、どういうわけですか。
  119. 原純夫

    政府委員原純夫君) 庁側といたしましては、昨年この問題が私どもの官庁のほうに指摘されましてから、かなり早い時期に、以後そういうことのないようにという意味で、今のストッパーですか、これを、そういう取りはずしがきくということじゃ困る、ぴしゃっとくっつけてしまってくれということを申し上げて、昨年の秋からはそういうふうになっておると思います。その前のものにつきましての調査の仕方が徹底しないというおとがめがあるとすれば、なお私ども反省しなければならぬ点は反省したいと思いますが、何分ずっと貨物自動車認定されて申告もなかったものであり、かつ実際上税抜きで売られておった。  先ほどの法律論のほうの補足になりますが、しいて取るとすると、買った方が課税物品になるような改造をされて使っているということになりますね。もしストッパーをつけて出して、あとはずしたとしますと。そこにはまた課税問題が起こらないでもないのですけれども、それもなかなか実際問題として行ないがたいというようなことで、既往のものについては、実は型式が立った型で、つまりシートが垂直になった型で認定を受けておりますし、一、二回見ましたときも、それで出ておるというので、大部分はそれで出たのだろうというような気持でやっておったわけで、実はただいまお話しの大阪のほうの代理店には、ストッパーなしで大部分が出ているというような点まで実は思わなかったというのが、率直なところなのであります。その辺が足りないという御指摘でございますから、これは先ほど間税部長から申しましたように、追っかけて急いで調べたいと思います。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 最近はストッパーネジでとめないで、溶接させておる。おそらく構造の改善を命令したと陸運局がおっしゃるのはそのことだろうと思いますが、ところが、それも、これはちょっとくっつけてありますけれども、専門家に開きますと、ぽんとたたくとすぐ取れてしまうのです。これが取れますと、また元の木阿弥です。そうしてごまかすためには、いつでもこんなところにネジなんかあけれるわけです。そういうことが実際上行なわれておるのですよ。これは溶接のやつを取ってしまって、あとまた穴をあけるとか、そんな操作を代理店に頼みに来るわけです、お客さんから。お客さんから頼まぬでも、当然そうあるべきものだというのでやっておるのがある。ちゃんと伝票等があるわけです。せっかくネジの穴を埋めて、溶接さしておるのを、ぽんとたたくと取れて、またここのネジの穴をあけておいてくれ、そんなことをやっておるのです。これがつまり詐偽その他不正な手段をもっての脱税なんです。それをお客さんに回すというのはおかしいですよ。そういうことを予想して鈴木自動車自身がやっておるわけですから。ぽんとたたいて取れないようにしておいたらいい。ほんとうに座席の角度というものを、窮屈だけれども九十度垂直にしておく。それなら、第一、広告のビラを変えなければだめですよ。おかしいですよ。こんなものは脱税にならぬということは絶対に言えませんよ、そういう多少の細工をしたからといって。  そこで、たとえばその書類等の問題でもそうなんです。やはり書類などをちゃんと押えておれば、たとえばストッパーのこういうのを、どうせ下請に出すのでしょう。下請関係に幾ら出したとか、問題が起きたから、急にストッパーだけたくさん作ったようにしようと思っても、それは書類を押えておいたらできやせぬ。そういうことからいろいろなことがわかってくる。それを、書類を一年間ほうっておいて、あなた、そんな……。話にならぬですよ。それは関西スズライトのようにはっきり言うてくれる代理店がたくさんあればいいですけれども、ほかはみんなそれぞれ商売さしてもらっているのですから、それは想像したってわかるでしょう、大体気持が。だから、したがって、この一年間延びておるということは、この脱税事件をほんとうに摘発するには非常な大きな支障になっておる。これはもう間違いない。そういう意味で、今後の調べ方については、よほど工夫をしてもらわなければならぬ。私のいろいろ考えもありますが、あまりにこういうところで言うと、また鈴木自動車の人も傍聴していて、裏をかかれますから、遠慮いたしますが、これはほんとうにそうしなければ実効は上がってくるものではない。それで、あなたのほうがごまかされたというのでは、ちょっとこの問題を知っている人の納税意欲というものは低下しますね、はっきりと。まあそういうわけでして、大体、一応きょうのところはこの程度にいたしておきます。  それで、質問の途中でも委員長のほうに要求をしたわけですが、本件が計画的な脱税行為だという点をはっきりさせるには、初めの認定の事情から明らかにせぬといかぬです、これは。先ほどの答弁では、初めの認定書類図面からがどうも判断を狂わすような、そういうふうなことをやっている。が、狂わされるほうも私はどうかしていると思いますが、そういう点があるわけなんです。したがいまして、その点、それから認定がおりた後に途中構造が変わっているわけなんです。その際において、どうしてそれがするすると通っていくのかといったような点、こういう点等が明らかになって、それと実際の工場からの出す状態ですね、こういう点等をもっと明らかにしなければならぬし、それが明らかになれば、法解釈が違ってくると私は考えておる。そういう意味で、ぜひ参考人等を呼んでほしいというふうに考えております。どうせこれは御相談を願いたいわけですが、名前だけ申し上げますと、鈴木自動車工業株式会社の、これはいろいろ人はあるわけですが、代表的に代表取締役鈴木俊三、それから関西スズライト自動車販売株式会社の酒井久仁夫、木村宏、それから大阪陸運局の車両関係担当している金本野州三、名古屋陸運局の車両の係長のはずですが、斎藤円瑞、それから現在運輸省の鉄道監督局に勤務されて、その当時名古屋陸運局車両課長でありました、したがってこれは最初の認定に相当重要な関係のある人ですが、飯塚義政、こういうような人をぜひ呼んでもらいたいというふうに考えます。そうすることによって、一そう本件についての真相を明らかにしたい、こう思います。  最後に一点、要求したい点がありますが、ちょっと関連質問があるようでございますから……。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 本件につきまして国税犯則取締法の適用を受けないのですか。それによって調査とか、あるいは質問とか検査、そういうことをやっておらないのですか。国犯法に基づいてやっておらないのですか。
  122. 上田克郎

    説明員上田克郎君) やっておりません、現在。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま亀田君からいろいろ具体的な質問があったわけですね。これは国犯法を適用しませんと、どうですか、みな証拠物件やなんか隠したり隠滅したりする危険はないですか。私は非常に疑問に思っておりますよ。当然国犯法によってやられているのじゃないかと思ったのですがね。どうしてやらないのですかね。
  124. 原純夫

    政府委員原純夫君) 私の推察でございますが、先ほど申し上げましたように、ストッパーというのをつけて、とにかく出るときは、もうわれわれの法令、通達から解釈して、これは貨物自動車だというような形で、当初の認定も受け、それで出しておったものと、私ども——どもといいますか、現地の税務署員はそう判断しておったというふうに私は推測いたします。そうなりますと、先ほど申しましたように、実態的にはかなり問題があると思いますけれども、どうも税法上これを課税物件だというふうにはなかなか言い切るには困難が多いなというようなことで、脱税犯として国犯法の発動をするということをしなかったのだろうと私は思います。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在もしていないのですか。
  126. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 現在もやっておりません。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの長官のお話ですと、最初はストッパーを取りつけて、貨物自動車というような規格になっている、ですから、これを犯則と認めるということは困難であると言われたのですが、その後問題が起きたのですよ。それで、事態が非常にはっきりしてきたわけでしょう。それであるのに、現在もまだそれを国犯法に基づいて、質問とか物件の検査、そういうことをやられていないとなれば、今度証拠物件なんかは、これはまあいろいろ隠滅してしまうし、またいろいろさっき亀田君が言われましたが、ほかの代理店と話し合って、そういう証拠等を隠滅し、また話し合いによってごまかす疑いも出てきますし、ですから、どうもよくわからぬですね。何か中小業者の、零細業者なんかについては、非常にきびしくやる場合もあるように聞いているのですがね。本件について私は実情もよくわかりません。亀田君の今の質疑を通じて内容がわかってきたのですが、常識として非常に私はおかしいと思う、まだ国犯法に基づいてやっておらないということは。今後やはりこれを適用されないのですか、今後も。
  128. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 一番最初申し上げましたように、名古屋からの上申が参りまして、事実関係の調査と、それから法規関係検討、そういうものを今やっている段階でございまして、現在までのところ、まだ国犯法をすぐ適用するしないというところまでは判断いたしておりません。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おかしいですね。じゃ、今後のことを伺いましょう。先ほどの亀田君の質問によって、かなり明らかになったのじゃないですか。われわれがここで聞いておりましても、もうこれは明白に国犯法適用の対象ですよ、これは。それをやらないということは、何かその当事者に、今後証拠を隠滅したり、それから今後の脱税に関する問題を有利にしたりするその余裕を与えるようなものでありまして、どうも私は常識として考えて、適用しないというのは非常におかしいじゃないですか。何か事情があるんじゃないですか、底に深い。そういうような疑念を抱きますよ。ほかの中小業者なんかは、国犯法を適用して、どんどんやっている例があるのであります。今の亀田君の質疑によっても、われわれ第三者から見ておってかなり明らかですよ。これはおかしいですね。もう一度伺います、長官から。これは重大な問題ですよ。
  130. 原純夫

    政府委員原純夫君) 先ほど来申し上げておりますように、私ども担当管掌は、この自動車ストッパーがついて出ておったという判断で、今まで国犯法の発動もしておらなかったと思います。本日、実はたいへんうかつな話で恐縮でありますけれども、本日大阪関係のこの話を伺ったのであります。そういうようなことであります場合には、その問題もかなり深刻な問題になって参ると思います。ただ、この席で私が本件に国犯法の発動をするしないという結論を申し上げるのは、また別な意味でもいかがかということにも思いますし、本日、強い、この事実の基礎に基いての御指摘を受けたということを、私銘記いたしまして、今後の私どもの行政で誤やまりなくやっていきたいと思います。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は国犯法をあまり乱用すべきじゃないと思うのです。これはまた業者にいろいろ迷惑をかける場合もあるのでありますから、それは長官の御答弁も了とできます。しかし、きょうはかなり具体的なまあ証拠あるいは資料に基づいて質疑を行なわれまして、われわれが聞いておりましても、当然対象になるんではないかと、こうまあ考えたわけですから、その点は長官は疑惑を残さないように、やはり厳正な、そういうことに対して厳正なやはり態度で臨まれるように。そうしませんと、徴税上あるいは納税上悪い例を残しまして、国民にも納税上悪い印象を与えますから、その点は十分に善処されることを私は希望しておきます。
  132. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の木村委員質問に関連するわけですが、午前中の亀田委員質問並びにまあ政府側の答弁によって、まあ私が聞いておるところでは、脱税行為があったということは明白であると思うのです。脱税行為があったということは、これはさっきの答弁で私はっきりしていると思う。いわゆる工場を出る際にストッパーがついていない、ついていなかった、そういう事実があればこれは脱税行為である、そういう答弁があった。そうしてさらに、ストッパーがついておったかどうか今調査中であるけれども、しかし、今日までの調査ではストッパーがついていないものがあったという説明があった。そうすれば、どの程度ストッパーがついていなかったか、それは今後の調査に待たなければいけませんけれども、何台かはストッパーがついていないで工場から出ておる、出荷されておるという事実というものが今日までの調査で明らかになっておるわけです。そうすれば、それは金額にして幾らの脱税になるか知りませんけれども、すでに脱税行為があったということは明白です。そうすれば、これは法に基いて調査する、これは当然しなければならぬ措置だと私は思いますが、今後も、しないという答弁であれば、私は脱税を黙認しておるといわれてもしようがないのじゃないかという今感じを持っているのです。どうですか、間税部長
  133. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 今後も、しないというつもりは毛頭ございません。先ほども亀田先生からの御指摘ありましたように、調査方法などについても、今後大いに検討しなければならないと思っておりますし、事実がはっきりいたしますと、法によって当然進めていかなければならないと考えております。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 では、最後に。まあ次回にもう少し突っ込んだ何をいたしますが、ともかくこの本件については、きょうはまあ数字だけの点を申し上げたわけですが、いろいろな問題がやはりまつわっているわけです。この国税庁長官のことはもちろん聞いておりませんが、たとえば最初の型式認定の際とか、あるいは本件の問題が起きてから、関係官庁の方が工場に行かれておる。そういったような場合においても、たとえば浜松市の高砂という料亭がありますが、こういうところでやはりごちそうになったりしておるわけです。まあ一々名前とかそういうことは、いずれ必要等になれば、単なるごちそうだけじゃなしに、ほかのことについてもこれは申し上げますが、それと、まあ私がこういう質問をやるということだけで、いろいろな人からこう、連絡が来るわけです。私は、その辺のところから見ても、これはまあいろいろな経験でわかるわけですが、ずいぶんやはりもみ消し運動というものが行なわれておるわけです。事実これは長官のところへはどの程度来ておられるか、これは知りませんが、 だから、まあ私たちとしてはそういう政治的な圧力でうやむやにされるということであれば、これはもう社会党としてはなおさらそういう点は了承できないわけでして、まあ補足して木村さん、荒木さんからも御指摘がありましたが、ひとつ強い態度でこの問題の処理をお願いしておきます。一応本日はこの程度で。
  135. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩    ————————    午後一時二十三分開会
  136. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  財政法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法律案は、去る十七日衆議院において、「昭和三十七年四月一日から施行する。」とあるのを「公布の日から施行する。」と修正議決され、本院に送付されましたので、御報告いたします。  では、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次、御発言願います。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず大蔵大臣に、この財政法二十九条の改正に関連してお伺いしたい点は、現在のこの二十九条では、「予算作成後に生じた事由に基き必要避けることのできない経費……に不足を生じた場合に限り、予算作成の手続に準じ、追加予算を作成し、これを国会に提出することができる。」、こうなっておりますが、今度の改正の第一点は、「必要避けることのできない経費」ですね。この点を「特に緊要となった経費の支出」と、こういうふうに改正しているわけですね。そこで、われわれの解釈では、現在の規定よりは、つまり現在の規定では、「必要避けることのできない経費……に不足を生じた場合」、非常にきびしい規定になっていると思うのですがね。これに対して今度は「特に緊要となった経費の支出」、こういうふうに改正してありますけれども、この点が現行法よりはゆるく解釈されるのではないか。問題は、何が緊要かということが問題になるわけですが、この場合現行法の規定と、それから改正の「特に緊要となった経費の支出」という場合ですね、この緊要度ですな、その点について改正案ではかえって、何というのですか、今の規定よりはゆるく規定されているように思うのでありますけれども、この点はどうなんでございますかね。
  138. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 実際的には、この字句が変わっても、この緊要度の問題についての変化があったというふうには考えていません。実際問題は従来と私どもは同じに考えております。ただ、前からこの字句を中心のいろいろな疑問も生じたいきさつから見まして、欠くべからざるということについての語感が非常に問題となっておりましたので、こういう字句に改めたのですが、実体的には、私どもは緊要度というものを今度のこの改正によって別に変えた、考え方を変えたということではございません。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならば、字句を変える必要もないと思うのですが、やっぱり字句をこういうふうに改正するについては、そこに何らかやはり具体的な理由があるのじゃないかと思うのですけれども
  140. 上林英男

    政府委員上林英男君) 「必要避けることのできない」という表現でございますけれども、この語感が与えますところは、どうもそれがなければ国政運営が不可能となるほどの絶対不可避のものだけが追加の対象になるというような議論、そういうこともありまして、御存じのような三十五年度の補正予算に産投資金への繰り入れなどの問題が起こったわけであります。しかしながら、実際問題といたしまして、この補正予算の規定の運用におきましては、緊要度がきわめて高いという意味に現実には運用されているわけでございます。たとえて申しますると、たとえば年度の途中で給与を上げるというような場合に、それのために補正予算を組む。それがなければ国政の運営が不可能であるかどうか、必要避けることができないかどうかという判断の問題につきましては、いろいろ議論があるところだろうと思います。したがいまして、その例からもおわかりいただけまするように、この「必要避けることのできない」という文言の意味しますところは、予算単一主義の原則にかんがみまして、みだりに補正予算を作成するということは財政の紊乱を招くものであるから、それは慎まねばならないという趣旨である。実際問題といたしまして、運用につきましても、今申し上げましたように、特に緊要度が高いという経費に限り補正予算を組むという趣旨で運用をされておるわけでございます。したがいまして、この言葉をことさら変えなくてもいいのではないかという議論も、もちろんこの制度を御議論いただきました財政制度審議会でもあったわけでございまするけれども、あのような経緯にかんがみまして、むしろ誤解なりあるいはそういう議論を招かないように、実態に合わせて文言を修正したらどうか、こういう御意見であったわけでございまするので、それに応じまして修正を加えた、こういうことでございます。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれとしては、この改正の根本的な趣旨が、今の財政法は、学者の意見なんかの公述もあったのですけれども、これは財政民主主義に基づいて規定されたものであるけれども、それは非常に自由主義経済をもとにしておるのであって、弾力的な運用がかなり制約されている。それで、この財政、民主的な財政法を制定した当時と、その民主的な、財政民主主義の原則ができた当時と現在とでは非常に事情も変わってきておるのであるから、運用面においてもっと弾力的な運用ができるように改正するというのが、この根本の趣旨だと思うのですよ。根本の趣旨はどこにあるのですか、この改正の。やはり私が今申しましたように、根本は、窮屈過ぎる、ですから弾力的に運用できるようにというのが根本の趣旨でしょう、この改正の根本の趣旨は。
  142. 上林英男

    政府委員上林英男君) 実は、この今回お願いを申し上げております二十九条の改正は、趣旨といたしましては技術的な改正でございます。その改正の経緯につきましては、御存じのように、産投資金への繰り入れの問題にからみまして、それを疑義をなくすように、あるいは議論が起こりませんようにという趣旨で、いろいろ御議論を願いましたことが一点と、もう一点は、二十九条におきまする規定によりますと、一項が追加予算の規定、二項が修正予算の規定になっておりまするけれども、運営の実態といたしましては、補正予算は一体として運用されておるというような問題、あるいは字句の書き方におきまして、若干、学説なりで議論がされておりますような問題につきまして、技術的に制度を整備するということが主たるねらいになっておるわけでございます。したがいまして、実質的には今までの制度をより弾力的にしたということでは私どもはないと考えております。と申しますのは、従来の規定によりましても、私どもの考え方では、産投資金への繰り入れのごとき措置も適法にできるものである、こういう趣旨かと思うものでございます。ただ、今回の規定におきまして、そういうことにつきましての論議がなくなりまするように条文の技術的な整備をはかるということでございます。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府の趣旨は一応わかりました、少し詳細に伺いたいのですが、「予算作成後に生じた事由に基き」ということでございますが、予算作成後というのは、予算作成の段階をどういうふうに解釈しておるか。この間、慶応義塾大学の高木壽一先生ですが、当委員会に参考人として来ていただいて御意見を伺ったのですが、「予算作成後」とするよりは、むしろ「予算提出後」とすべきではないか。予算作成後というのと提出後という間にはどういう差異があるのか、この点を伺いたいわけです。予算作成というのはどの段階をさしていうのか。
  144. 上林英男

    政府委員上林英男君) 憲法の規定によりまして、予算は内閣が作成することになっております。したがいまして、この憲法の規定を受けまして、財政法二十一条によりまして、その前にいろいろな手続があるわけでございますが、財政法二十一条によりまして、「大蔵大臣は……予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。」、こういう規定がございます。これによりまして、閣議の決定を経て予算を作成いたしまするので、この閣議の決定の時期が予算作成の時期になるわけでございます。ただいま御質問の、提出の時期、提出後というふうに改めたほうがいいという御議論も一応ごもっともな御意見でございまするが、実際問題といたしましては、この二十一条の規定によりまする予算作成閣議は、同時に国会へ提出する閣議、いわば通常にはむしろ提出閣議といわれておるのでございます。したがいまして、ここ数年来の慣行といたしましては、予算を作成いたしますと同時に提出をいたしております。したがいまして、作成後と書きましても、提出後と書きましても、実体的には差がないのが実情でございます。  なぜその場合に「提出後」と書かないのか、こういう御議論もおありかと思いますけれども、これは御承知のように、予算の作成段階におきましては、まず概算の閣議決定がございまして、それに基づきまして予算を作成して、あらためてその作成と同時に提出をする、こういう手続になっております。その間におきまして、印刷その他の時間がこれに要するわけでございます。一たん作成をいたしまして、その後もし提出までに変更の必要があるということは、今までの慣行から申しますと、実際はないわけでございますけれども、もしありました場合にも、そういうような実際問題として予算書の印刷その他の時間的な問題もございますし、時点といたしましては、憲法に基づきまする内閣の予算を作成する時期以後に起こりましたいろいろな問題に応じて、その時点をつかまえて、それ以後の問題については追加予算というような構成をとっておるわけでございます。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に伺いたいのは、私はこの改正で一番問題になると思っておりますのは、現行の二十九条の第二項「予算の成立後に生じた事由に基いて、既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、その修正を国会に提出することができる。」、この規定を今度「予算作成後に生じた事由」というふうに変えてしまったところに私は非常に問題があると思うのです。  そこで、伺いたいのは、この「予算作成後」といっておりますけれども、これは本来ならば予算案としなければならないと思うのですね。本来は予算じゃないと思うのです。国会で承認された後において予算となると思うのです。それを伺いたいのは、なぜ財政法で、まだ予算が成立しない前の段階について、「予算案」としないで「予算」というふうに規定しているか。法律につきましては、御承知のように、たとえば憲法五十九条ですね、「法律案は……両議院で可決したとき法律となる。」となっているのですね。ところが、予算については、まだ国会で承認を得ないのに、みんな予算、予算と規定してあるわけですね。そこで、この財政法規定は、まだ国会で承認しない前の予算案についての規定と、それから国会で承認されて予算となった場合の規定と、二つあると思うのです。これは異質的なものだと思うのですね。同じものじゃない、予算案と予算の規定でありますから。ところが、こういうふうに修正してしまいますと、みんな同質的な規定になってしまうと思うのです。そこで、これは非常に字句にこだわるようですけれども、なぜ財政法で「予算案」とすべきところをただ「予算」と規定して、それで国会成立後の予算、それがほんとうの予算ですね、予算というべきものだと思うのですが、そこの区別をしないのですか。法律についてはちゃんと法律案と法律というものを区別しておるのですがね、どういうわけでそういうふうになっているのですかね。
  146. 上林英男

    政府委員上林英男君) これは憲法自体がそういうふうに明定をいたしておるわけでございまするので、財政法もそれにならったわけでございます。ただいま法律案につきましては、憲法五十九条の規定をお読み下さいましたけれども、予算につきましては、七十三条におきまして、内閣の行なう事務といたしまして、「予算を作成して国会に提出すること。」というのがございますが、内閣が作成する段階で「予算」と呼んでおるわけでございます。また、憲法八十六条におきまして、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」というふうに規定されておりまして、この規定にも内閣が作成する段階において「予算」と呼んでおるわけでございます。もちろん、この予算といいますのは、内閣が作成する段階におきましては効力を発生いたしませんで、八十六条の規定に基づまきして国会の議決をその成立要件といたしておることは確かでございます。したがいまして、国会の議決を経たものは成立をし、効力を発生した予算である。内閣の作成いたしました予算はまだ効力が発生いたしておりません。けれども、したがいまして、通常の常識ではそれは案と称すべきものかとも思われますけれども、今度は用語の点につきましては、憲法におきまして、ここに書いてございますように、政府の作成した段階において「予算」というふうに呼ばれておるわけでございますので、財政法におきましても、そういう例にならったわけでございます。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはそのほかに憲法六十条でも、「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」とか、予算案とすべきところを予算、予算となっておるのですよ、憲法が。それで、法律については法律案と、これは可決される以前は案となっているのですね。これにはやっぱり理由があるんじゃないですか。ただ、憲法で規定されているからそうだというだけでは、説明にならぬと思うのですよ。それはそれなりにちゃんと理由があるんではないですか。
  148. 上林英男

    政府委員上林英男君) この用語の問題につきましては、実は学説その他いろいろ議論があるところでございます。たしか日本帝国憲法の時代におきましても、同じような規定になっております。その当時の立案者の趣旨につきましては、憲法史的にいろいろ議論があるところでございます。もっとも、その当時の憲法と現在の憲法とは性格を異にはいたしておりまするので、同じような表現にはなっておるからといって同じ学説が適用するというわけのものではないわけでございますけれども、したがいまして、明治憲法の時代におきましては、たとえば日本の帝国憲法が例にならいましたと称せられますプロイセンの憲法におきましては、ある意味では予算というものは、何といいますか、行政の執行の一分野に属するものであり、それについての国会の議決を得て、それによって行政府自体がその予算の執行に当たるのであるというような学説があったわけでございますけれども、もちろん、現在の憲法におきましては、帝国憲法と違いました国会中心主義がうたわれておるわけでございますから、おのずからその解釈自体には違いがあると考えております。ただ、用語といたしましては、憲法自体が政府の作成しました段階におきまして「予算」という言葉を使っておりますし、ただしその予算につきましては国会の議決を経ましたあとでなければその効果は発生しない、いわば成立要件としては国会の議決が要るわけでございますから、確かに通常の用語の例に従えば、おっしゃるように予算案というものに実体的にはなるというふうに考えておるわけでございます。
  149. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は字句にこだわるわけじゃないですけれども、実際この予算の場合は、ほかの法律案と違って、法律案は議員がいわゆる提出することができますね。ところが、予算案は、予算については、これは内閣に一応、それはまだいろんな議論もあるでしょうけれども、一応内閣に作成、それから提出権があるわけしょう。そこで、実際問題として、今の政党内閣ですね、議員内閣制のもとでは、政府が作った予算案が大体まあ予算として成立するであろうという前提に基づいているのじゃないでしょうかね。だから、法律案とそういう点で非常に性格が違いますね。一つの理由はそういうところにあるのじゃないでしょうか、法律案と予算案との違いはですね。それで、大体予算案ではあるけれども、今の現状ではこれを否決するということも今までほとんどない。そういうところから見て、大体修正は多少あっても、修正の場合には政府がまた修正案を出すという形でしょう。ですから、「予算案」とすべきところですけれども、大体それはまた国会で承認されて予算になると、そういう前提があるから、「予算案」としないで「予算」としていると、こういうふうに解釈できないかどうかですね。法律案の場合とだいぶ違いますね、その点は。
  150. 上林英男

    政府委員上林英男君) 言葉の点につきましては、確かにいろいろな経緯があってこういう問題ができておるわけでございます。ただ、実態から申しますと、予算というものは国政の運営に一日も欠くことができないわけであります。法律案につきましては、これは恒久的な制度でございまして、主として新規政策を行ないます場合にとられるものでございまするので、まあ一日も欠くことができないというほど緊迫性というものが予算に比べますとないということが、よくいわれておるわけでございます。したがいまして、予算につきましては法律よりも成立要件を緩和いたしたし、その他いろいろな法律案と違いました効力の発生要件その他につきまして、憲法上そういうものが予算については確保されておるというわけでございまして、したがいまして、わが国の憲法におきましては、予算というものと法律というものが俄然と区別をされた形式の格好で規定されておるというわけでございまして、そこらの点はその法律と予算との対象といたします内容によりまする差異であるというふうに、こう考えておるわけでございます。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 字句の点はその程度にしておきますが、実はこういう質問をしたのは、私は二十九条の二項において、「予算の成立後に生じた事由に基いて……予算に変更を加える必要があるときは、その修正を国会に提出することができる。」、それから第一項のほうは、これは「作成後」ということになっているわけです。そうすると、私は予算の成立後に生じた場合の予算の変更、これは予算案の段階と違うわけですね。ですから、私はこれは今度の改正のようにすべきじゃなくて、やはり「予算の成立後に生じた事由に基づいて」というこの規定は、やっぱり残しておくべきものだと思うのですよ。異質的なものを同質的なものでみんな規定してしまうのですよ。なぜ私はそうかというと、どうも一応理屈としては、予算作成後といえば、予算成立後も含むのだ、こういう理屈も立つわけですよ。立つわけだけれども、二十九条二項にわざわざ「予算の成立後」という規定を設けたのは、私は前から何回も言っておるように、今度の新憲法では、国会に増額修正をすることができる権限が一応あるわけですよね。そういう場合に、政府が今度は予算の繰り延べとか節約とか、かなり大幅のそういうことをやる場合ですね、そういう場合には、修正予算を国会に提出して国会の承認を得なければできない、こういう規定をここに設けたわけなんでしょう。旧憲法では、暫定予算あるいは実行予算を組めばよかったわけです。ところが、実行予算というものはできないんだという規定だと思うんです、これは。ですから、非常に大切な規定だと思うのです。そこで、今度の修正案のようにいたしますと、その点がはっきりしてこなくなると思うのですね。非常に私は、今の二十九条の二項の規定というものは、そういう民主的財政になったについて、新しくこれを入れた規定なんです。そういう重要な意味を持っている規定なんですから、やはりこの規定が生きるようにしておかなければいけないので、一応改正するとしましても、予算案の段階と予算が成立したあととは違うのでありますから、ただ「予算作成後」というだけで一本でこれを全部規定してしまうというのも、これも立法の精神なり、趣旨というものが何か没却されてしまうような気がするのですよ。ですから、成立後生じた事由に基づいて予算——そのときこそ予算ですね、予算に変更を加える必要がある、そのときはまさに予算なんです。ですから、予算案の段階と予算の段階と一応区別して、そうして規定したほうが私は正しいのではないか、そう思うのですよ。どうも「予算作成後」と一本に規定してしまうのは、一応理屈としてはわかりますよ。作成後といえば全部それ以後も含むということは、それは理屈としてはそうですけれども、この点いかがですか。どうも私はこの点ふに落ちないのですが。
  152. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御指摘のように、「予算」という言葉には、内閣が作成しました段階にありますものも予算と申しますし、国会で議決を経まして成立をいたしました予算も予算と称するわけでございまするけれども、この二十九条の改正をお順いしておりまするのは、先生の御指摘なさいましたような意図を持って作ったわけではございません。御指摘の現在の規定におきまする二十九条の二項によりまする予算の修正の制度自体も、そのまま踏襲をしておるつもりでございます。  ただ、なぜそれを一つの条文にまとめたかと申しますると、それは現行の二十九条におきましては、あたかも追加予算と修正予算とは別個の予算としてあるような感じに規定をされておるわけでございまするけれども、実際の運営といたしましては、御存じのように、補正予算として一本としての運営をされておるわけでございます。したがいまして、その実態に合わせまして規定を設けるほうが適切であるというふうに考えたわけでございます。それにつきましては、実態として運営をいたしまするにあたりましては、修正予算とそれから追加予算の要件が違っておるということになりますと、いろいろ不便が起こるわけでございます。たとえば当初予算を国会に出しましたあと、何らかの事態により補正予算を組まざるを得ないというような事態が起こった、その場合に、追加予算につきましては、もちろん現行の規定でも提出できるわけでありますすが、その財源といたしまして既定経費を減額するというような必要があったというような場合には、これを提出することができないというのが現行の規定になっておりまして、これは論理的にもおかしいということに考えられているわけでございますし、そういうようなもし問題が起こりましたときに運営上不便でもございまいます。そこで、一本に要件を改めると同時に、補正予算として一体的に運営することが可能になるように制度を合理化したいという趣旨でございます。したがいまして、先生が御指摘になりましたような二項の予算の修正の精神と申しまするか、もしそういう予算の修正の必要がある場合においては、現在の二十九条の二項と同じ趣旨で運営されるべきつもりで改正をお順いしておるつもりでございます。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に。あまり時間がありませんので、大臣にひとつこの際伺いておきたいのですが、この三十七年度の予算を編成する過程で、景気調整の建前から財政の編成なりあるいは運営を考えるべきだと、こういう議論が出て、それで一応予約繰り延べというのですか、その問題が起こったわけですね。財政と景気調整との関係ですね、これについては大蔵大臣はどうお考えで、今後予算の編成なりあるいはまた財政の運営なりについて、景気調整との関係でどういうふうにこれを考えていかれるか。この際、私は財政だけ考えても、財政だけで景気調整しようとしても、いわゆる金融と一体的に考えなければそれは完全な景気調整になりませんし、たとえば三十七年度予算は大型予算だけれども大蔵大臣の説によれば、たとえば食管会計とか公債償還、そういう方面に使う分はこれは実際にすぐ使われないのだ、だから形は大型でも景気に与える影響というものはそんなに大きくないのだと、こういう大臣は御説明をされておったわけです。しかし、それは食管会計に繰り入れたり公債償還したりする分は、やはり国民の分は、やはり国民の税金の引き揚げになっているわけですね。その分を日銀の貸し出しをふやすことによってこれをカバーしてしまえば、景気調整にもならぬと思うのです。それから、外為会計の場合も同じだと思うのですね。したがって、財政と景気調整との関係について、この編成の過程で予約ということも問題になりましたので、そういう点について大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。これを今後どういうふうにやっていかれようとしているかですね。
  154. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) この財政で調整策を考慮しても、それだけ日銀の貸し出しでそのままふえるということだったら、財政上の考慮はそう意味がなくなるということは事実でございますので、財政的にそういう調整の考慮をするというときには、当然金融政策においてもこの財政政策と見合った運営をすべきであって、したがって、日銀の貸し出しという政策についても、そういう点が考慮される運営を望まなければならぬという関係になりますので、これはそう機械的にうまい運営ということはできないかもしれませんが、政府日銀間においてやはり運営の基本的態度の協議なり了解ということがあって運営するよりほかには、実際上はうまくいかないのじゃないかと思っております。
  155. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際問題として今どうなんですか。原則として、大体財政の引き揚げ超過、あるいは外為の場合非常に輸入超過になった場合の引き揚げ超過ですね、そういうものが日銀貸し出しで大体原則としてカバーする、こういうことになっているのではないでしょうか。実際はそうなっておりますね。
  156. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) ただ、現実にはある程度そういうことになっておるとしましても、この引き締め政策というものをもって日銀が窓口で締めるという方針をとる以上は、同じ金が出るにしましても、これは最小必要限度にしぼられることは事実でございますので、貸し出しがある程度ふえるということはやむを得ないとしましても、そのふえ方については相当の規制が加えられた貸し出し増ということになって、そのほうが安全性を持っているということは言えるだろうと思います。
  157. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、まだ質問ございますけれども大蔵大臣は衆議院の本会議のほうに行かれるそうですから、一応私の質問はこれで中断しておきます。
  158. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記とめて。   〔速記中止
  159. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を起こして。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この法案に直接関係ありませんけれども財政法の十条についてちょっと伺いたいのです。財政法の十条ですね、「国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」となっていますね。そこで、附則の第一条を見ますると、「第十条及び第三十四条の規定の施行の日は、政令でこれを定める。」となっていますね。ところが、第十条に関しては政令が出ていない、こういうことを承っているのですが、それは事実でございますか。
  161. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御指摘のとおりでございます。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、どうしてこの施行期日を政令で定めないのでしょうか。十条については。
  163. 上林英男

    政府委員上林英男君) この規定につきましては、いろいろの議論があるところでございます。この規定を設けました一つの趣旨といたしましては、財政法ができまする以前におきましては、主として中央集権的な機構が強い。したがって、その以前におきましては地方公共団体に対しまして国が法律に基づかずしていろいろの事務を行なわしめたということが特にいわれまして、そういう場合には今後は法律をもって規定を設けようという趣旨であるといわれておるのが、一般にいわれているところでございます。したがいまして、その趣旨に従いまして、たとえば地財法、あるいはたとえば公共土木の災害の国庫負担法というようないろいろな法律によりまして、国の事務を地方公共団体に行なわしめまする場合には、法律に基づき、かつ、その費用の負担などを明示するというような法律を必ず作るようにいたして参っておるわけでございまして、そういう意味におきまするこの第十条の趣旨はおおむね現在においてもすでに達せられたと、こう考えてもいいのではないかと考えております。  なお、もう一つこの法律につきまして議論がございますのは、ある意味では、この十条につきましては財政法の三条にございます租税法律主義の延長というような議論もございました。したがって、そういう場合におきましては、特定の私人その他に国の事務を行なわせるような場合にも法律に基づく必要があるという議論があるわけでございます。これにつきまして特にいろいろと議論されますのは、たとえばPTA寄付金とかいろいろそういうものでございます。そういう趣旨もございまして、御存じのように、国の事務に要する費用等につきまして寄付を仰ぐというような場合には、強制的な寄付はこれをしてはいけないというような閣議の決定もいたしておるわけでございます。  まあいろいろそういうような経緯もございまして、この十条の精神に従って各般の法律措置あるいは行政措置というものを行なっていこう。しかし、そういう改正その他につきましてはそういう配慮をもって行なっていくことにいたしましても、なおいろいろと現在の行なわれておりまする既存の制度の中には、必ずしもそれに、この法律の制定の当時におきましてはそぐわない点もあったかという点もございまして、この財政法の一般の規定よりもおくれましてこれを施行しようということで現在に及んでいるわけでございまして、実質的には大体この十条の規定の精神に従って措置がなされているという実情でございます。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならば、この附則の「十条及び三十四条」——三十四条は一応あれですが、「十条及び三十四条の規定の施行の日は、政令でこれを定める。」、これは要らないわけですね、もしそれならば。ある以上は、なぜこの施行期日をこの十条のみに限ってこれを政令で出していないか。やはり私はそこに、今お話しのように、地方自治体に国が不当な負担をさしている点が多々あるので、この施行期日を定めるとちょっと工合の悪い点が国にあるのではないか、そう解釈されるのですよ。一応地方財政法の十条の四などを見ますと、たとえば国民年金とかあるいは健康保険、そういうものの事務費等については、これは地方自治体はその負担の義務を負わないということにもなっているようです。あるいはまた、地財法のたしか十二条でしたか、学校建築とかあるいは警察とか、そういうものの建設等については、これは地方自治体に負担を負わしてはならないということになっているのでしょう。そういうことにね。その点はどうもやはりルーズになっているのではないかと思う。現実にはそういう規定になっているのですよ。そういう法律が出ておりますけれども、実際は地方自治体に負担さしていますね。御承知のとおりですよ。国民年金の事務費なんかは、これは国の補助では足りな  いのですからね。地方自治体、かなり持ち出しになっているのですね。非常に問題なんです。これは厚生省にお聞きになれば明らかです。足りないのです、具体的に。それで、問題になった市もあるのですよ。監察委員が監査しましたら、確かに足りない。それで。市が持ち出しているような事例がたくさんあるのです。そういうこともありますので、ですから、十条は、はっきりと施行期日を政令で定めて、この十条を実施に移すべきだと思うのですがね。この点は非常におかしいと思うのですよ。なぜこれを施行してはいけないのですか。
  165. 上林英男

    政府委員上林英男君) この規定につきましては、先ほど申しましたように、いろいろ議論があるところでございます。しかし、その精神自体につきましては、この規定の趣旨に従っていろいろの措置を講じていこうというわけでございます。したがいまして、制度といたしましては、ほぼこの十条の趣旨を満たす段階であるというふうに考えております。  御指摘になりました国民年金の事務費につきましても、これは国が負担をいたしますることになっておりまするので、その専務費も出しておるわけでございます。もちろん、出しまするときに一定のワクを設けまして、基準になりますような経費でもって出しておるわけでございます。各団体ごとにいろいろな使い方をいたす場合もあるわけでございまするから、それに応じて全部出すということではないことになっておりまするので、あるいは団体におきましては、よけいに使ったというところがあるかもしれませんけれども、国から出しております事務費につきましては、これは法律の規定によりまして、一定の計算をして出すことにいたしておるわけでございます。  ただ、この十条につきましては、かねてからずいぶん議論がございまして、中には、この規定自体についても再検討し、あるいは要らないじゃないかという議論もないではございません。こういう規定につきましては、財政法全般を考えまするときに、なお慎重に検討いたしたいと考えておるわけでございます。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今のお話ですと、もうすでに個々の法律においてこの十条の精神は十分に生かされているから、これを実施しなくても差しつかえないじゃないかというお話ですが、これはやはり法律に基づかないで負担させているような面も他にあるのではないか、また今後ある可能性も出てくるのではないか、こう思われますので、私はこれは削らない方がいいと思いますし、やはりこれは施行してどこが悪いんですかね。私は、これを施行しておけば、法律に基づかないでそういう国の必要とする費用を負担させる場合が今後もあるかもしれない、そういう事態を防ぐことができると思うのですよ。ですから、実施しておいたらいいんじゃないですか。どうしてそれを実施しないのか、私にはどうしてもわからぬのですね。何か非常に支障があるのですか。実害がなければ、一応施行しておけば、今後そういう弊害が起こる場合のことを予防し得るのですからね。どうしてこれを施行しないのですかね。
  167. 上林英男

    政府委員上林英男君) 確かに、これを施行いたしましても、そう大きな変革はないと考えます。ただ、これの規定の解釈その他につきましては、いろいろの御議論もあるところでございまするし、実質的にはこの規定の趣旨に従って諸制度が作られておると私ども思っておるわけでございますし、この規定自体の問題につきましても、議論があるところでございまするので、財政法全般の問題の一環といたしまして検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、どういう議論があるのか、ちょっと紹介していただきたい。この規定自体にも議論があるというのですけれども……。
  169. 上林英男

    政府委員上林英男君) 先ほど申しましたように、この規定の趣旨とするところは一体何かというところにつきましても、実はそもそものところから議論があるわけでございます。一つは、先ほど申しましたように、地方公共団体の関係でございます。これにつきましては、地方財政法その他によってこれと同じような趣旨の規定が置かれておるということも、議論としてあげられているところでございます。したがいまして、地方自治という概念がもうすでに地方自流法の体系におきまして確立されているという問題もございます。もう一つは、私人に対する委任ないし事務委任などの場合におきまする費用負担の問題でございまするけれども、これも現行憲法の建前からいって、そういうような場合には法律に基づくということは必然的な結論であり、むしろこういうものがなくても当然ではなかろうかという議論もあるわけでございます。ただ、その場合におきまして、現在の実情におきまして、確かに閣議におきまして強制的な寄付は取らないようにということにいたしております。そのとおり運営されていくものと思いますけれども、いろいろな事柄の実情におきましては、たとえば自分の子供が行っておりまする学校にいいプールを作りたいというようなことで、皆さんが集まって寄付を募り、プールを作るというような場合ももちろんあるわけでございます。そういう問題との関係において、この十条をどう解すべきかというような議論もないわけではございません。したがいまして、そういう意味でいろいろの議論もあるところでございまするので、この十条の規定につきましては、なおよく検討をしたいということであります。
  170. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 租税行政に関する件を議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  171. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国税庁長官お尋ねしたいと思うんですが、私たち最近にある文書を手に入れておる。この文書が実際にあなたのほうから出たものかどうかということを確かめておきたいと思うんです。税務署非常事態対策、要綱というようなものをあなたのほうで作成された記憶がありますか。
  172. 原純夫

    政府委員原純夫君) 国税庁本庁ではそういうものを出したことはございませんけれども、局、署においては、個所によってそのような名前のものを作っているようなところはあるように承知しております。
  173. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これはどこの税務署で作ったものかわからないんですが、参考までに私少し読み上げてみたいと思います。「〇〇税務署非常事態対策要綱、〇〇税務署警備班服務要綱」、第一条から第十四条までの条項があるんですね。これが何の目的で、どういうことを予測して作られたかということについて意見を聞いておるわけなんですが、  それで、別表で編成表がついている文書なんです。こういうものをごらんになったことがありますか。
  174. 原純夫

    政府委員原純夫君) そういうものが署によって出ておるということは承知しております。そこて、詮議の対象として見たのではありませんが、そういうもののあるいは見たことはあります。
  175. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これはどこの税務署で作ったものですか。あなた、ごらんになったというならば、その所在はおわかりのことと思いますが……。
  176. 原純夫

    政府委員原純夫君) ただいまの文書は部内文書であって、私、どういうところから須藤委員が手にお入れになったのか疑問に思いますが、今どこの署というのを私は覚えませんが、また何といいますか、先ほどの公開論じゃありませんが、公開しろという趣旨でのお話でしたら、ちょっとまた後ほど申し上げたいと思います。
  177. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたね、これは本省で作ったものじゃないけれども個々の税務署で作って——そういうものを作ったということは知っているというふうにさっきお答えになった。それで、私今参考までに読み上げたのだが、それであなた今ごらんになったということをおっしゃっていらっしゃるわけだ。それならば、あなたのほうではどこの署でこれを作ったものか、どういうことを想定し、どういう目的をもって作ったものかということは、よくおわかりだと思うのですよ。そこで、参考のために私は伺っておきたいのです。
  178. 原純夫

    政府委員原純夫君) やはり近ごろといいますか、特に近ごろだけでもございませんが相当期間——まあただいまお読み上げのものには地震、火災というようなこともありますが、それ以外の、集団的な、暴力的な圧力を受けるというようなことがありますので、そういうような場合に、税務署の管理者として、また署員としてどう対応するかどうかというのが、やはり税務を円滑に運営していく場合においてきわめて重要なことでありますので、それぞれそういういうような心配のある署について、署がそういうような規定を定めて、ふだんからそういう不時のことに備えておくということは、私はしかるべきことかと思います。で、今どこというのは、私、手元に資料もありませんし、ありましても、それを申し上げるのがいいかどうかは留保させていただきたいと思います。
  179. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これはどこというよりも、全国的な税務署でこういうものを作っているということじゃないのですか、どうですか。
  180. 原純夫

    政府委員原純夫君) そこまで行っているかどうか、まだそこまではつかんでおりません。
  181. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その第二条の第三号に、「有形、無形の集団的威力を」という言葉が使われていますね。「有形、無形の集団的威力」というのはどういうことなんですか。
  182. 原純夫

    政府委員原純夫君) 要するに、人が、納税者にしろ、納税者以外の人にしろ、税務署に押しかけられるという場合、数多く押しかけられて、そしていろいろ御要求になる。あげくに、器物を損壊したりあるいは管理者に対して暴行を加えられたりというようなことがありました。で、そういうようなこと。まあ、かつては火焔びん事件というようなことがありまして、税務署もやられたことがございます。近ごろ火焔びんまではいきませんけれども、そういうような暴行的なことはまだ近ごろある程度ございます。
  183. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、何ですか、納税者をそういう暴力をふるうものと想定してこういうものを作ったのですか、どうなんですか。それならば、ずいぶんおかしいことだと思うのですが、国民をこういう暴力をふるうものと想定して、こういうもうをあらかじめ用意して納税者に臨むという態度は、これは僕は税務署としておかしい態度だと思うのですが、どうですか。
  184. 原純夫

    政府委員原純夫君) 納税者を全部そうだと言っているのでなくて、中にそういう乱暴をなさる方がある。これはあるいは納税者でない人もまじっておるかもしれません。いずれにしましても、決して私ども納税者を全部そういう乱暴する人だというような前提でやっているのじゃございません。しかし、現にそういうような混乱を来たさしめられたというケースが間々ありますので、そういう場合に備えがなくて国の行政が混乱してしまうというようなことがあっては、これは一般社会に対しまして申しわけないことでありまするし、私ども税務行政担当者としてはまことにそういうようなことになってはいかぬことでありますので、万一の場合に備えて、そういう場合にどうするかということを考え、かつ、規定としてそれを明らかにしておくということは私はしかるべきことではないか。普通のプライベートの家庭におきまして、大事があった場合に何と何を持って出る、そしてどこにそれがあるということで、持って出たものはどうするということは、やはり常々から備えがあるのがまずまず妥当なことじゃないかと思われるのと同様に、官庁におきましても、そういう備えはしておいてしかるべきではないか。そのゆえに、今お話しのような納税者を乱暴者と頭から言っているというようにお取りいただくのはいかがかと私は思います。
  185. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この非常事態対策要綱というのは、地震、火事、風水害に名をかりているけれども、その目的とするところはそうではないと私は思うのですよ。国税通則法を通して、これから税収奪が始まるわけですが、それについて国民から不当だという要求が集団的に起こった場合に、それを弾圧する一つの方法としてこりいうことが考えられたのじゃないかと私は思うのです。そしてこういうものができれは、えて国民を弾圧する立場に立ちたがるものなんですよ。その例がもう方々で起こっておるわけです。  私は、この間名古屋でその一例が起きまして問題になったので、陳情を受けて、名古屋税務署へ行って来ましたよ。名古屋の東税務所で起こった問題です。もうすでに御存じかと思いますが、このとき二十五人ほどの民主商工会の人たちが四つの、要求を持って署長に面会に行ったわけです。第一の要求はこうなんです。申告納税制度を尊重して税務行政を民主化してもらいたいという要求です。第二の要求は、三十六年度確定申告について理由のない調査はやらないでほしいという要求です。それから三番目が、更正決定は原則としては出さないでほしい、これが三番目。四番目が、不意調査はしないでほしい。この四つの要求をもって署長に面会に行ったわけです。ところが、総務課長のところで、署長に会わせろ、会わさぬということになったわけですね。それで、二十五人が行って、二十五人署長に会わせろと言ったら、二十五人は会わさぬ、五人会え。五人ではこちらは困るんだから、二十五人全部会ってこちらは話をしたい、こういって行ったわけです。ところが、総務課長がこういう暴言をはいたのです。一人ずつでもけっこうじゃないか。じゃ、この名古屋の東部民商には七百七十人の会員がおるわけです。毎日一人ずつ会いに行ったら二年かかるじゃないかと言ったら、二年かかってもかまわぬじゃないかと総務課長が言った。そこで、押し問答になったらしいですね。ところが、そのときに居合わした男が、近藤という総務課の課長であり、兼間税課員だと称しておる大男が、民主商工会の事務局長の胸ぐらをつかんで、両腕をつかんで、引き倒そうとした事件が起こったというのです。それで、みな憤激して、国会まで訴えて来たわけです。それで、私この間行ってきて、東税務署の田口というんですか、署長にも会いましたよ。それで、いろいろ話をして、署長もこれから気をつけるということで帰ってきて、話しは一応おさまってはいるわけなんです。しかし、何じゃないですか、これだけの四項目の要求を持って署長に会いに行ったら、署長は二十五人に会ったらいいじゃないですか。話をすればわかる。やはり官吏としては、納税がスムーズにいくためには、いろいろ話し合いをするということが望ましいじゃないですかしら。
  186. 原純夫

    政府委員原純夫君) まず、先ほどの非常事態対策要綱でありますが、何か通則法で収奪を強化するんだと、それに対して反発が起こるだろう、その反発を押えるために作ったんじゃないかというお話で、ちょっとそういうことで御了解を願いましても困りますので申し上げたいんですが、まず第一に、私、通則法はいろいろ議論がございましたが、私はこの通則法によって収奪が強化されるということは、まずほとんど根拠がないと思うんでございます。それは先般御審議になりました委員会でもお聞きになりましたように、おっしゃっておられる議論は、従来の税法がきつ過ぎる、だからゆるめろと。この通則法はゆるめているわけです。ゆるめ方がどうも足らぬので、お気持のようなゆるめようでないから、えらい強化々々とおっしゃいますけれども、僕は、非常にこの通則法が権力を強化して収奪をやるんだというのは、まことにいわれのないお話だと思います。私、長官としては、税務職員に対しまして、就任以来三つ柱を立てて教えております。その第一の柱は、税務署はとかくけむたがられるところ、敷居の高いところだから、近づきやすい税務署になりなさい、ということを言っております。近ごろは特に、納税者が来たら兄弟が相談に来たつもりでお教えしなさいということを言っておるので、通則法を中心にしてあのように言われますけれども、せっかくの私どもの努力に対して、どうも私から言わせますと、事実でない表現でお責めになるので、これはぜひひとつその事情を御判断になって、通則法は従来以上に税務官署の権力を強化するのでない、御不満なら御不満で、弱め方が足りないという御不満ならば、そうおっしゃっていただきたいと思うのであります。事実はそうなんでございますので、ぜひこれは、私どもせっかく心からそういう気持で、近づきやすい税務を確立するために努力しておりますので、どうもおっしゃられるところでいきますと、何か人間の好意とか善意とかいうものを一切ひっくり返されるような感じがして、私、お願いでございますが、その点お願いしたいと思います。  なお、非常事態対策規則というようなものは、そう近くでなくて、やはり淵源をたどりますと、かって火焔びん事件のありました十何年前ごろ、やはりこれはいかぬということで急遽制定した。それがその後若干の修正はあると思います。そういうような経緯を経てできているということで決して今回通則法が通るから、これでひとつ大いに納税者を絞め上げるというようなことは全然誤りでありますので、こういう規定ができました歴史的な時点からいいましても、むしろ端的にいえば、火炎びんに対して守らなければならぬというのでできたものを、その後だんだんそういう形のものでなくて、別な形の撹乱といいますか、そういうようなことがある場合に備えることになったという点を、ご了承いただきたいと思います。  それから、第二段の名古屋税務署の問題でありますが、私も聞いておりますが、お話の筋、私の聞きましたところと若干の相違がありますので、それを申し上げてみたい思います。第一違いますのは人数でありますが、ただいま二十五名程度というお話でありましたが、私のところに参っておる報告では五十数名の民主商工会員が来られたということであります。それから、まず五十数名が署に来られる。そうしてまあ相当数が会いたいというお話なすでありますが、署において平穏にお話しになる形としては、かなり多過ぎるんじゃないかと私ども思います。したがって、署の管理者がお会いするならば人数をしぼってほしいと申し上げたのは、しかるべきことではないかというふうに思います。それから、近藤という者は民主商工会の事務局長の胸ぐらをつかんだというお話でありますが、どうも私の聞いておりますところは、かなりに、五十数名の方が要するに多数によぬ威圧でございますね、これを加えられて、そうして押し通ろうとされた。人数をしぼって下さいというお話に対しても、かなりに強引に反発をされた。そういう圧力を受けた意味では、こちらの者のほうが強く圧迫を受けておって、むしろこちらの瀞のほうにそう申したいと申しますか、そういうような感じがあって、決して当方で暴力をふるったというようなことはないというふうに私は承知いたしております。そういうようなことございますので、そのようにご了承をいただきたいと私は思います。
  187. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 暴力をふるった者が、私は暴力をふるいましたとは言いません。私、行きましたときにも、暴力は強く署長も総務課長も否定しておりました。しかし、やられた本人がそばにおり、そうしてそれを目撃した人間がたくさんおるのです。五十数名押しかけたと言われますけれども、そのときに二十五名くらいの現実に人間を連れて私は東税務署に行ったのです。それで、私がおるから、二十五人全部会えと言ったら、田口署長は会った。それで円滑に話が進んでおる。署長が会う前に総務課長のところで人数を制限することによって、まずもんちゃくが起こってしまう。会えば何でももんちゃくなしに済むことです。それが会わす会わさないで、もんちゃくが起こって、結局そういう不祥半が起こる。これが各税務署に私は起こる大体のケースだと思うのです。そこで、私は田口署長に、あなたが今おっしゃったように、税務署員というものはとにかくだれにでも会って、よく話し合って、納税が円滑にいくようにはかられるのが税務署長の任務であり、またそうあってもらいたい。だから、これからは二十五人来たら二十五人にお会いなさい。この部屋に二十五人なら入るし、ここへ五十人が入らぬことはわかっている。だから、常識的に判断して五人でなくちゃ何か会わないということでしたが、今後はできるだけ大ぜいの人に会って話し会って、そうして納得の上で納税をしてもらうようにしたらどうだと言ったらよくわかりましたと言うので、私は帰った。ところが、それから国税局長にも会いました。国税局長も、最初は暴力問題を否定しました。しかし、労働組合の人や、ろいろな人、第三者が、たくさん目撃したところの人が、そうじゃない、事実はこうこうだと説明したら、しまいには黙って謹聴しておりました。だから、あなたもおわかりになったでしょうといって、私は帰った。こういうことが名古屋だけじゃないと思います。方々でこういう非常時体制の要綱のようなものをたてにとって、税務署員が常にねじりはち巻で、事あればというふうな意気込みでやれば、こういうことは往々にして私は起こるんじゃないだろうか。これは国税局長官としてはよく部下に、こういうことの起こらないように注意をしてもらいたいと思うのです。名古屋の問題は、私はこれだけにしておきますが、だから、そういうことのないようにこれから注意をしてもらいたい。大いに話し合いで、あなたがさっきおっしゃったような精神で、とにかく話し合いで納税が円滑にいくように、お互いに納得できるまで話し合うという方針を私はとってほしい。  ときに、東京でこういうことが起こっておるのですが、長官は御存じないでしょうか。東京の上野にある医療法人土田病院の理事者に起こった事件です。土田病院の理事には東大の内村教授、国立神奈川大学の島図教授、順天堂大学の懸田教授など一流の人物がおるわけですが、士田病院はかねてから相続税・贈与税、債務不在確認訴訟を起こしておるところなんです。この病院の理事者である国立神奈川大学の島園教授のところへ最近東京国税庁の署員が面会を求め、島園教授に尋問の形式で質問するといって質問を始めたのです。いやしくも国立大学の教授に対して尋問の形式で質問するとはけしからぬことだと私は思いますが、島園教授も毅然として、尋問とは何事かと一喝したので、国税庁の署員も前言を撤回した。また、同じようなことが東大名誉教授の内村教授に対しても行なわれたように聞いております。長官はこういう事実を知っていらっしゃるかどうか。
  188. 原純夫

    政府委員原純夫君) その事実は私は聞いておりません。  それから、なお、先ほどの何は穏やかにやるようにというお話で、私どもも穏やかにいたしたいと思いますが、ただ、須藤さんにお願いしたいのは、私率直にいって、五十人が押しかけて全部会え……。
  189. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 五十人じゃない、二十五人。
  190. 原純夫

    政府委員原純夫君) 私のほうは五十人なんです。全部で会えというのは、これはやはり衆の力で威圧されようとすると穏当を欠く雰囲気になっておりはせぬかというふうに思います。その辺のところも、どうかそういう方々によくお話しいただきたい。お互いに穏当にやっていこうというふうに思っております。  ただいまの土田病院でございますか、その分は私知っておりません。
  191. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 土田病院のこと御存じないのですか。もしも御存じなければ、よく調べて善処されたいと思うのですが、こういうことがすでにやられておる、そういう訴えが来ておるわけです。ということは、先ほどあなたは、国税通則法は税収奪のための、国民を弾圧するためのものじゃない。——それでなければけっこうなことです。あなたは、あの中から五項目削除されたわけですね。何で削除をしたか。あの五項目が生きておれば、やはり弾圧立法だということがはっきり出てくるのじゃないですか。どうですか。あの五項目を削除することによって、そうじゃないとおっしゃっても、もともと五項目入っておったということであの国税通則法が何をねらいにしておったかということがよくわかる。国税通則法から削除されたようなことが土田病院において現に行なわれておるというような事実があるじゃないですか。
  192. 原純夫

    政府委員原純夫君) 通則法関係の論議を私ここで蒸し返して申す気持はございませんけれども、五項目を削除いたしましたのは、いろいろまだ議論の尽くさぬもの、また他の分野との関連もあって、情勢がそういうものを税法で具体化するのに適するのを待つ必要もあるというようなことを、政府側は御説明申し上げたと思います。五項目、なるほど実質課税にしろ、租税回避行為の抑圧にしろ、あるいは帳簿の記載要求にしろ、なるほど中に納税者に対して強く当たるといいますか、納税者がこれによって影響を受けていくという面はあると思いますけれども、私、あれが全然強権的な悪であるというようにお考えになるのはどうか。租税回避行為をやる者があれば、それはやはり私は押さえなければならぬと思うのです。ただ押える押え方があまりにも抽象的、一般的に書いてあって、読み方がどうでも読み得るというようなことはいけない。そういう点で、なお十分議論を詰めるということであったのでありまして、精神自体は私はそう悪い精神だとも思わない。  私、少し税についての感じを申しますれば、政府は何でも取り立てるものだ、納税者は一歩でも納税義務というものに対してマイナスのほうの、つまり脱税なら脱税、回避でもなんでもいいというようなことは、当然お考えになってもいないだろうと思いますので、やはりほんとうにいい税務関係が成り立つためには、官庁側は、先ほど言いましたように、近づきやすい親切な態度でいきます。同時に、納税者のほうもだんだん所得なり何なりの源というものは、これは社会で経済行為をやって所得をあげる、そのためには道路の恩恵も受ける、港湾の恩恵も受ける、いろいろな国あるいは地方団体の財政、あるいは国、地方団体の営みの恩恵を受けて所得を得ておるわけでありますから、その所得について分に応じて納めるということについては、やはり積極的なかまえでお願いするということじゃないかと思って、私ども通則法の気持も、決して強権でどうというようなことでなくて、むしろそういう理念、そういう理想を頭にえがきながら考えたものであるということを、私つけ加えて御了解願いたいと思います。
  193. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これも一週間くらい前に起こった事件なんですが、足立区の曙町に清水鋼業株式会社というのがある。この会社は一億三千万円の負債をかかえて倒産し、債権家委員会の管理下にあるわけです。そして法人税の滞納が四十七万円か四十八万円になっておったのです。税務署の差し押え額は五十万円だったということで、差し押えてしまった税務署は取り過ぎたのだから返すという通知があったので、使いの者が出頭した。ここまではいいわけなんですが、その次が問題なんです。出頭した者に対して税務署員は、お前の所得税も未払いだ、個人でも法人でも清水鋼業の場合は同じだと称して、法人税を所得税に充当するといって、使いの者に個人の判を押さしたという事実がある。要するに、返す金で個人の税金をこれで払っておけということで、金を払わずに判を押さした。こういうこともすでに起こっておるわけですから、国税庁長官、こういうことについてどういうふうに考えられますか。
  194. 原純夫

    政府委員原純夫君) 具体的な事柄につきましては、実際に具体的な事柄全部を当たってみませんと、にわかにどうとは申せませんので、一応形の上では、法人の過納額といいますか、差し押えによって公売した額だと思いますが、この代金が余れば法人に返すということでありますから、個人とは違うということは言えましょうけれども、もう少し具体的な事案については、事案全部の詳細を聞いた上で判断しなければいかぬと思いますので、よく調べてみたいと思います。
  195. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一点伺いますが、四月五日に国税通則法反対の全国代表者会議が参議院会館でありました。そのとき、全国税東京地連の沼波委員長が処分されたので、代表者会議の決議に基づいて四人の代表者が、長官に面会も抗議文を手渡そうと国税庁に行ったのです。そうしたら、たった四人の国民の代表に対して守衛二十数名がワッと取り巻き包囲したという事件が起こったのです。たった四人に対して何ごとか、こういうふうにどなりつけたところ、ようやく包囲から脱して総務課長との会話は次のごとくである。代表「長官に会いたい。取り次いでくれ」、課長「会われない。自分が受け取る」、代表「包囲するとはけしからぬ。長官に抗議する」、課長は長官に連絡しに行って、帰ってきてからの返事が「長官は皆さんに不快の念を起こさしたことについて遺憾に思うという話だった」、一体長官は、国民の代表に対して原則として会うのか会わないのか、どういう方針なのか、国税庁及び各税務署は納税者の大衆的な話し合いを制限する方針なのかどうか、この点を伺っておきます。
  196. 原純夫

    政府委員原純夫君) ただいまのことでありますが、ちょうどこれは冒頭に御質問に対してお答えいたしましたように、いろいろな過去において苦い経験があるものでございますから、庁自体も用心することがあります。ちょうどあのときは統一行動かなんかで重ねて相当動員をかけて、今の多数による威圧を加えるというおそれがあった日のように私は記憶いたします。そしてそういうことは、庁においても、私のやっておる間ありました。何かのときになだれ込みというのですか、初めはおとなしくという話だったのが、なだれ込まれて混乱したという話がありました。そういうことがありましたものですから、庁の長官室近傍が混乱しちゃいかぬ。長官室だけじゃありません。庁で混乱があってはいかぬということで、万一そういう多衆による威圧的な行為があった場合に、率直に申しまして、部屋の中に入られてしまいますとなかなかむずかしいのです。そのためには、やはりそれをお断わりせんならぬ。お断わりするには、そういう方々は実力をもってお入りになろうとされますので、お断わりするにはやはり数が要るということで、そういう備えをやはりしておる。そのときは結局四人であったのですけれども、さあ来たと——そう君つちや失礼ですけれども、さあ来たかと誤認したのです。誤認して、守衛がサインを出したので、すわといって集まったのですが、それは誤認であったので、あとから申し上げたように、来られた方に不快の念を起こさせたのは遺憾であったということを申し上げたのですけれども、懲戒の問題は、懲戒処分に対するいろいろ世間でも御批判があると思いますけれども、私やはりそれは部内の問題であって、部外の方からあまりそれについて言ってこられるのをお会いするというあたりのことは、相当慎重でなくてはいかぬ。事柄によると思うのです、その面会の御要求があった場合に。ということを考えて、懲戒事案については、御案内のとおり、組合交渉についても、これは交渉議題でないというふうに規則ができておるような工合で、どうもあの沼波氏の処分につきましても、ずいぶん、無根であるとかなんとかいうふうな話が出ますけれども、私どもとしてははっきりそう確認して、これはとうていわれわれの職場に置いておけないという判断で懲戒処分をされたものでありまして、そういうような気持で応対いたしましたので、御了承いただきたいと思います。
  197. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 先ほどあなたは、だれにでも会てよく話し合いをするのが私の精神だと、あなたはおっしゃったわけです。だから、僕はそう信じたいのだけれども、この間すでに、四人行ったのに会わないで追い返したということがあるから、あなたの言うこととあなたのやっておることはどうも一致しない。それがあなたのやり方が全国の税務署にずっと移ってしまって、結局問題ばかり起こす結果になりはしないか。だから、あなたがさっきだれにでも会ってよく話し合うのが自分の精神だとおっしゃったが、そういうような精神でこれからずっといっていただきたい。
  198. 原純夫

    政府委員原純夫君) 私は、近づきやすい税務署にしなさいということで、率直に申して、多衆をもって威圧を加えてくるという人には、私はそういう形では会うつもりはありません。やはり会う人の何といいますか、態度があまりにそういう暴圧的であるというときは、お断わりするのがむしろ当然だというふうに思いまするし、また面会の御要求がありましても、事柄次第ですね。懲戒事案について部外の方がどうだというようなのは、大体事実も御存じない方のはずなんです。御存じない方が、結局そういう、あれは乱暴を働いたというようなことその他が事由になって懲戒になったのですが、御存じないのを、働いた人たちから聞いて、それはうそだというようなことのお話が多い。組合では、あの事件以来、全国各地から電報やなにかが参りますけれども、私どうも、事実もわからないのに、何かそういうふうにうそだというようなことを言うあたりは、何かやはりこれは話の内容としても非常にはずれた話じゃないかというふうに感じます。ですから、やはりお会いするのも事柄次第、またおいでになる方のやり方というようなことも、実際上こちらの態度にも影響があるのは御了解いただかなくちゃならぬのではないかと思いますので、極力私どもとしましても、非常識にわたらぬように穏やかにいたしたいと思いますが、どうかそういう点、会いに来られる向きに対しても御了解いただきたいと思うわけです。
  199. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会      —————・—————