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木村禧八郎君 私は、本
改正案に
反対するものであります。
反対の理由の第一はですね、この
改正案の
趣旨は、近年世界主要国の
通貨が交換性を回復するようになり、いわゆる
短期資本の国際的移動が大幅に自由になった結果、
短期資本の流出によって
国際収支の安定が脅かされるように至っているので、その対策の
一つとして、
加盟主要工業国十カ国が六十億
ドルを限度として基金に自国
通貨を貸し付けて
国際通貨基金の資金的基礎を充実し、その機能を一そう強化するという点にあるのでありますけれ
ども、との
貸付によって
短期資金の流出による
国際収支の不安定を基本的に解決する役に立たないと思うわけです。そればかりでなく、
国際収支の不安定の原因がどこにあるかという基本的な問題の所在をかえってそらしてしまいまして、根本対策をおくらせたり、あるいは根本対策の樹立を妨げる結果になるのではないかと思うことが第一の
反対の理由であります。
短期資本の移動による
国際収支の不安定ということは、具体的には
アメリカの
ドル危機ということにあると思うのであります。そこで、この六十億
ドルを限度とする
貸付の問題を
考える場合には、
ドルの
危機の原因は一体どこにあるかということをもっと根本的に
考えて、その真の原因に対して対策を立てなければならないと思うわけです。この点については、最近も国際的に非常な関心を持たれ、そうしてその
ドル危機の原因に対する対策等もいろいろ提示されているわけであります。
私は
ドル危機の原因に二つあると思うわけですが、その
一つは、
アメリカの
国内政策にあると思います。それは、
アメリカが一カ年約七十億
ドルに上る資金を、ソ連に対抗するために軍事
援助とかあるいは
経済援助等によって約七十億
ドル援助をやっているわけですが、その七十億
ドルの
援助は
アメリカの貿易の黒字によって埋めているわけですが、貿易の黒字が大体四十億
程度でありまして、残り三十億
ドルは
国際収支の
赤字になっているという点、それからまた、
アメリカが対ソ防衛のために予算の半分ぐらい軍事費に使っているわけです。こういう結果、
アメリカの
国際収支が
赤字になって、そうして
ドルの不安が起こるわけだと思うのです。そして
アメリカの
ドルと金との間に差ができておりまして、今
アメリカは金木位といっておりますけれ
ども、実際には
ドルは金ではないわけでして、金に対して減価している、価値が減っているわけであります。したがって、最近の国際
通貨の不安定を除去する根本的な対策は、まず
アメリカに対して、
ドルの
危機の一番基本的な原因である、そういう軍事的な
政策に基づく
アメリカの
国際収支の
赤字というものを、これをやめさせることを要請しなければならないと思うのです。
それから、第二の
ドルの
危機の原因は国際
通貨制度にあると思うのです。今の国際
通貨制度はいわゆる金為替本位になっておりますが、実質は
ドル為替本位であります。世界的に今金が不足でありますので、
各国は金以外にポンドとか
ドル等の
外貨を
外貨準備に充当しておるのでありますが、この
外貨準備、
ドルあるいはポンドによる
外貨準備というものは、一国
通貨を、いわゆるナショナル・カレンシーをもってインターナショナル・カレンシーにかえようとしているわけでありまして、本来ならば金をもって
準備しなければならないのを、
ドルというある特定の国の
通貨を
準備に充てているわけですが、その
ドルが不安定なわけですが、その
ドルの不安定は結局金の不足に原因があると思うのです。金不足の原因についてはいろいろあるのでありますが、貿易壁が非常に多くなるので新産金をもってこれを補えない。大体世界貿易が年々五、六%増加していくのに対して、新産金は大体一・五%
程度、金額にして約年間七億
ドル程度にすぎない。それから、もう
一つは
アメリカが
ドルが減価しているにもかかわらず、一オンス三十五
ドルに金価格を押えているという点に金不足の原因があると思うのです。本来ならば、
アメリカが金価格を引き上げ
ドルの切り下げを行なえば、
アメリカの金
準備がふえるばかりでなく、
各国の金
準備もふえるわけなんですが、
アメリカが無理に
ドルを金に結びつけて金価格を変えない、引き上げない、そういうところにやはり金の不足の原因があると思うのです。ですから、第二の対策としては、私は金価格の引き上げということが国際的な
通貨不安を除去する対策でなければならないと思うのです。
この国際的な
通貨不安の対策としては、たとえばトリフィンの案のように国際的な
通貨を創設すべきだといういろいろ意見もございますけれ
ども、国際
通貨は結局は金でありますから、金不足の問題をやはり解決する必要があると思うのです。ところが、今回の六十億
ドルの
貸付によっては国際
通貨の不安定を解決する役には私は立たないと思うのです。それはほんのこうやく張りのような手当にすぎないと思うわけです。これでは
通貨不安定の根本的な原因がどこにあるかということが十分に解明されないで、そしてそれに対する根本的な対策がむしろ回避される、こういうマイナス面があるのではないかと思うわけです。これが
反対の第一の理由であります。
第二の理由は、この
貸付については、
IMFの規約の第七条によってこれは規約上できるわけでありますけれ
ども、しかし、その
運用については、これは通常貿易に基づく
赤字を補てんするという場合にのみ
運用さるべきであるわけです。
アメリカは、
国際通貨基金が発足するに当たりまして、この
運用について、通常の貿易取引の
赤字補てん以外にはこの資金は
運用すべきではないということをはっきり確認しておるわけであります。それにもかかわらず、
アメリカはその後
ドル危機に際会しまして、この
IMFの
運用に関する規約ですね、これは第六条で規定しておるわけでありますけれ
ども、これを拡大解釈しまして、そうしてホット・マネーの移動に伴う
国際収支の不足を補てんすることができる、こういうふうに解釈して、この
貸付資金の
運用をはかろうとしているわけです。本来ならば規約を改正して行なわなければならないのでありますが、規約の拡大解釈を御都合主義で行なっているわけです。これに対しては
各国からも非常に不満が出たわけでありますが、最後的には
各国はその拡大解釈を承認したわけでありますから、承認した以上は、本質的には規約に違反するのだけれ
ども、これは
運用されていくと思います。しかし、本来の
趣旨からいえば、
IMFを設けた
趣旨からいえば、これは変則的なものであって、そういう面からいって、これはホット・マネーの移動に伴う
国際収支の不足をこういう形で補てんすべきではないと思うのです。それはあくまでもその根本の原因にさかのぼって、この施策を講じなければいけないと思う。これが第二の
反対理由であります。
第三は、
日本の
外貨事情は、これまでの質疑を通じて明らかになったのですが、今
アメリカの
市中銀行から
借金をしなければならないような
状態になっております。また、
日本の
短期資金は大体二十一億
ドルぐらいあるのですが、これに対して
外貨準備は
アメリカの
借金を入れて十五億
ドル程度でございます。そういうような
状況であり、
日本はそういう二億五千万の
貸付をする
余裕がある
状態ではないと思うのです。したがって、この
貸付協定には私は参加すべきではないと思うのです。これが第三の理由です。
それから、第四の理由としましては、かりに
協定に参加するとしましても、もっと
日本としては——
IMFの
理事会等で
フランスその他
各国から、これはアングロサクソン
通貨の安定をはかることが主であり、たとえば
ドル危機の防衛対策の一環なんであって、
アメリカの犠牲になるということが非常に
論議されたわけです。そうして基本的対策としては、
IMFの資金の拡充強化以外の基本的対策を講ずるべきである。つまり、
各国の
通貨政策、
国内の
経済政策というものが、国際的
通貨不安を根本的に除去する対策でなければならぬということが強調されておるのですね。
日本もやはりそういう意見を十分にあそこで開陳して、そうして
協定に
賛成するなら
賛成すべきであったと思うのでありますが、これまでの質問を通じて、今の
国際通貨基金の規約に毒反しないのだということで、この
協定に
賛成しているわけです。いかにも自主性がないということが明らかになりました。そういう点で非常に遺憾に感じたわけであります。
以上のような諸点から、この
法案に
日本社会党として
反対する次第であります。