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木村禧八郎君 ただいま
政府当局のほうから大体四つの点をあげて、至急
通則法を制定実施する必要があるということを述べられたのであります。
第一の
理由は、現在
日本には
税金の種類が非常に多い。それぞれの
税金がそれぞれの
税法として
規定されているが、これを通ずる共通の問題を個々の
税法の中に
規定されている。たとえば申告とか、更正決定とか、再
調査審査の要求とか、あるいは税務職員の質問検査権とか、加算税とか、利子税とか、罰則、こういう各
税法に共通な問題が各
税法にそれぞれ書かれている。そこで、こういう共通な
規定は
一つにまとめてしまったほうが
納税者あるいは徴収者を通じて便利ではないか、これが第一の
理由のように承ったのであります。
第二の
理由は、非常に
税法が難解である。だから、これをわかりやすくする。これが第二の
理由である。これは確かにそのとおりだと思うのです。第一の
理由もごもっともだと思います。今の
税法は、人によると、非常に難解である。読めば読むほどわからなくなってくる。ある人は、一読して難解、二読して誤解、三読して迷宮入り、四読して了解に達せず、こういうふうに言っている人もあるわでけあります。この難解な
税法をやさしく書き改めるということは、これは私はよろしいと思います。
それから、第三の
理由として、
納税者に不利な点のいわゆる救済
規定、これをもっと明確にしていく。これもけっこうであります。しかし、今
納税者に対して不利な点と言われたのは、
税法自体よりは、その
税法をもととして行なわれる通達にあると思うのです。この前もここで論議になったのですが、いわゆる通達行政である。実際の
納税者は、
税法よりもむしろ通達というものが権威があるように実際には受け取っているのです。各税を通じて、この通達が、非常に法律をこえた通達行政が行なわれており、しかも通達が十分に
国民にこれまた明らかにされておらないのです。
税法による
税金が苛酷である、重いという感じよりも、むしろ通達行政が非常に
納税者に恐怖を与えている。これは実態だと思うのです。問題は通達行政にあるのですが、ですから、かりにですよ、
国税通則法でそういう
規定をしても、行政を改めないと、実質的に
納税者の救済というものは保証されないと思うのですね。いろいろ聞きますが、実際通告処分なんか、国犯法に基づいてまるで罪人扱いにして通知したりなんかする事例がたくさんある。それは例をあげろといえば
幾らでもあります。それがはたして救済されるかどうか、これは問題なんです。
それから、第四点としまして、
政府が
税制調査会に諮問して、各学界の
意見を聞いた、三年間にわたって慎重に検討してもらったと、こう言われますが、これは小
委員会において実質的に
審議したわけです。これには、この経過を見ますると、非常に問題があるわけです。この小
委員長の松宮さんという方は東京の税理士会の会長なんです。これは
日本税理士会の会長でもあります。この松宮さんは、東京税理士会長をやめさせられたのですよ、この答申をしてから。その
理由はなぜかというと、これは税理士に重大な
関係がある法律なんですが、答申を行なうときに税理士に何ら
意見を聞いていないのですね。そこで非常に問題になってもめまして、それでこの人は東京の税理士会長をやめさせられたのですよ。そういうような人なんです、この
委員長が。十分に各方面の
意見を聴取していないのであります。しかも、小
委員は、小
委員のメンバーを見ますると、ほんとうに税務行政に経験のある人がおりますか。おったら、どういう人がおりますか。小
委員のメンバーを見ますると、ほんとうに税務行政に明るい人は私はいないと思う。それは学者だけではだめなんです。
税法に明るい人だけではだめなんです。これは徴税
規定ですね、徴税の手続きをきめる基本法なんでありまして、税務行政、今の通達行政というものはどういうふうになっているか、そういうことについて十分経験があり、また学識のある人がやはり小
委員会のメンバーにならなければならぬと思うのです。十分に
審議されたと言われますけれども、まず小
委員長に問題があるのであります。また、この
委員のメンバーにも問題があるのであります。
それから、学界の、
学識経験者の
意見を十分聞かれたといい、あるいはまた三年間十分に
審議されたといいますけれども、
財界、学界において有力なる
反対があるわけなんです。まず、関西
経済連合会、関経連、これは日経連の関西のこれは支部でありまして、これは
財界を代表するものであります。この関西
経済連合会が「
国税通則法制定に関する
意見」として、昨年十二月十八日に
反対の
意見を、これを発表しております。有力なる
財界の団体でございます。それは長いものじゃありませんから、私ここで
反対の
意見を一応紹介します。こう述べているのですよ。「
政府は、
税制調査会の「
国税通則法の制定に関する答申(三六・七・五)」に基づいて、
国税通則法案を今次通常
国会に提出し、来年度中に施行する予定であると伝えられる。
国税通則法制定の趣旨として、答申は「租税
制度の基本的な仕組みないしは各税に共通する事項、すなわち租税に関する通則事項と称すべきものについては、この際、これを統一的に整備
規定することが必要」であり、従って「このような法律として
国税通則法の制定が望ましい」と述べている。然し答申に盛られている諸項目を仔細に検討するとき、単なる
通則法的な
内容を持つもののみに止まらず、税務官庁の権限の拠り所となる根本法・基本法的な
性格を有しているものが多い。最近伝えられるところによれば、立案
当局は若干の項目については、」さっき
局長が言われましたように、「当面
法案化を見合わせ、将来の検討に委ねる模様であるが、なお税務官庁の権限を不当に強化し、租
税法定主義の原則を破って
納税者の利益を侵すべき項目が数多く残されている。詐偽その他不正行為に基づく脱税防止に万全の努力を必要とするは勿論であるが、
国税通則法の制定に関する基本的な
考え方其者に
納得し難いものがある。」と述べているのです。さらに続けて、「
国税通則法は、手続
規定の統一を目的とするものである以上、その範囲を逸脱すべきでない。又この種法律は
国民生活に直接且つ深刻に影響するものであるから、充分な時間を与え慎重な
審議を尽して後、その草案を発表して衆知せしめ、
国民各方面の輿論を充分に反映する所要修正を加え、然る後始めて立法措置を採るべきものである。拙速を要する
理由も、これを容れる余地もない。よって蒼惶のうちに多くの問題点を内蔵する法律を制定施行せんとする
政府の方針に対し、当連合会は次の
理由から絶対に
反対するものである。」、これは
財界の
意見ですよ。
そして、
反対理由の第一に、「徴税
当局の権限を不当に強化することになる」、つまり「
国税通則法の制定に関する答申によって窺い知られる限りに於て、徴税
当局の権限が不当に強化される。これを列挙すれば次の如くである。」、まず最初は、「「
税法の解釈及
課税要件事実の判断については、各
税法の目的に従い、租税負担の公平を図るよう、それらの
経済的意義及び実質に即して行なうものとする」という
税法の解釈及び適用に関する一般原則を
規定するということであるが、このような解釈及び適用に関する
規定は
税法以外の他の法律についてはその例がない。答申の
説明によれば、この
規定は実質
課税の原則、租税回避行為の否認、同族
会社等の行為計算の否認、無効又は違法の行為の
課税、
法人格の否認など多種多様の解決の最後の拠り所となる
規定であるとされているが、その
内容は複雑難解であって、かかる解釈原則
規定の解釈そのものが問題となる。このような
規定を設けることは租
税法定主義の趣旨に反するが如き自由な解釈適用の門戸を開き、税務官庁の権限を不当に強化し、いわゆる通達行政の弊害が公認せられることとなる。」、いみじくも指摘しているのです。それから第二の
理由として、「租税回避行為の否認に関する原則的授権
規定を設け、租税回避行為の成立要件については漠然と
規定し、ただ節税の目的以外に
事業上の合理的な目的が存する場合などに限り、否認しないものとしている。これは租税回避行為の否認を容易にし、時に税務官庁がこれを濫用する慣れなしとせず、立証責任を転換して、
納税者に租税回避行為に該当せざる旨を立証する困難を負わしめるものである。」、それから第三の
理由は、「行為計算の否認に関しても、同族
会社以外の他の場合にも適用し否認し得る場合を拡大しようとしている。而も、租税回避行為の場合と同様、いかなる行為計算を否認しようとするのかの基準となる法的要件は不明のままに残されている。」、第四は、「租税債権の期間制限として、賦課権即ち更正決定権の存続期間を延長する特例を新設し、この特例の場合に於ては
現行法の場合と異り
現行の消滅時効の枠内に止まらず、除斥期間の延長と共に租税の時効をも延長するものとしている。このことは租税の消滅時効による法的安定の
制度を無視するものである。」、第五は「資料提出義務の違反に対して従来の処罰
規定のほかに更に過怠税を課する
制度を新設しようとしている。」、第六に「印紙
税法について、過失のないことの立証責任を
納税者に負わせ、一方的な通告処分によることとしている。」、これが、有力なる
財界の団体である関経連が、徴税
当局の権限を不当に強化する
理由としてあげている点であります。
それから第二に、関経連は「
納税者の利益保護のための
改正が考慮されていない」ということ指摘しております。その
理由として、第一は「通告処分の
制度を従来通り存置しようとしているが、この
制度については訴願、訴訟による不服審査の途はなく、刑事訴追を免れようとすれば一方的な通告処分にも
納税者は忍従しなければならないという不合理があるので、至急
改正を要する前時代的な
制度である。」と指摘しております。また、第二に「税務行政事件訴訟について訴願前置主義を存続することも、
納税者の欲する裁判上の救済を阻むこととなるので、他の一般の行政事件訴訟と同じく選択制とする
改正が必要である。」、先ほど主税
局長は、
納税者の救済々々と言いながら、この訴願前置主義を存続しているのであります。これでは救済にならない。さらに第三の
理由として、「一般的に、
国税通則法によって税務官庁の権限の強化が意図されているのであるから、これとの釣合いからも、
納税者の利益保護のために税務官庁の恣意的権限の行使を制限する措置が必要であるにも拘らず、かかる配慮は全く行われていない。」、こういうふうに指摘しているのであります。
さらに第三の
理由としまして、「国税審査団
制度が第三者的なものとなっていない」という点を指摘しているのであります。「答申によれば、協議団の名称を国税審査団と改め、「第三者的
性格を
制度上明らかにする」ことになっているが、「法令等の解釈につき疑義を生じた場合には、すみやかに
国税庁長官の判断を求めることとすべき旨を法令上明らかにするものとする」と述べいるから、国税審査団の第三者的
性格は結局否定されていることになる。よって
納税者保護のため国税審査団に
納税者の代表を加え、真に強力な第三者的なものにする必要がある。」と述べております。
それから第四には、「一旦制定されると改廃が容易でない」、これはさっき私が述べましたが、関経連もその点についてこう述べています。「
税法は一般的に言って、毎年度予算の
関係、事情の変遷などから比較的容易に改廃されるものであるが、根本法的
性格を有する
国税通則法は一旦制定されると容易に改廃されない
性格のものであることは
国税徴収法、
国税犯則取締法の例を俟つ迄もなく、想像し得るところである。従って制定迄に充分論議を尽しておく必要がある。」
それから最後に、「
法案を
国民に公表していない」として、「
国民の利害に甚大なる影響を及ぼすこのような租税問題の根本法制定について、
政府は法制
審議会にかけることもなく、又
法律案要綱も公表せずに一挙に
法案の作成に着手しようとしている。これは
国民の
意見を軽視若くは無視するものというべく、極めて不明朗である。よって
法案の
国会提出を急ぐことなく、事前に
法案乃至要綱を公表し
国民の
意見を充分反映させる必要がある。」、こう述べているわけです。
で、これは十二月の十八日に発表された
意見でありますが、私はこの
意見は妥当であると思うのです。で、なぜ急ぐかということを疑問としてしているわけなんですが、いろいろ疑義があるのになぜそんなに急ぐのか。十分に
国民にこの法律の趣旨
内容、そういうものを、それが法律としてこういう
法案を提出するということを公表して、また各方面の
意見をよくいれて、そして
法案化すべきなのに、なぜ急ぐのか、その急ぐ
理由がわからぬというがこの趣旨であります。それを具体的に
財界の有力なる団体である関経連が述べているのですよ。自民党の人、いかがですか。
財界の人が述べている。